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1955-07-04 第22回国会 衆議院 文教委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月四日(月曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 伊東 岩男君    理事 並木 芳雄君 理事 坂田 道太君    理事 竹尾  弌君 理事 辻原 弘市君       高村 坂彦君    杉浦 武雄君       野依 秀市君    藤本 捨助君       米田 吉盛君    永山 忠則君       河野  正君    島上善五郎君       野原  覺君    山崎 始男君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席政府委員         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会         ラジオ局教育部         長)      川上 行蔵君         参  考  人         (日本放送協会         ラジオ局長)  春日 由三君         参  考  人         (映画俳優連合         会事務局長)  池田 義信君         参  考  人         (女優)    西山都留子君         参  考  人         (女優)    森山 淑子君         参  考  人         (作家)    今 日出海君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 七月四日  委員加藤鐐五郎君辞任につき、その補欠として  永山忠則君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 七月一日  教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受  ける公立学校職員等について学校看護婦として  の在職を準教育職員としての在職とみなすこと  に関する法律案赤城宗徳提出衆法第三八  号) 同日  櫛引東小学校宝谷分校へき地教育振興法適用  の請願松澤雄藏紹介)(第三一二一号)  櫛引東小学校たらのき代分校へき地教育振興法適用  の請願松澤雄臓君紹介)(第三一二二号)  大網小中学校へき地教育振興法適用請願  (松澤雄藏紹介)(第三一二三号)  大網小学校田麦俣分校へき地教育振興法適用  の請願松澤雄藏紹介)(第三一二四号)  大泉小学校大半分校及び松沢分校へき地教育  振興法適用請願外一件(松澤雄藏紹介)(  第三一二五号)  本郷小学校大針分校へき地教育振興法適用の  請願松澤雄藏紹介)(第三一二六号)  本郷小学校熊出分校へき地教育振興法適用の  請願松澤雄藏紹介)(第三一二七号)  本郷小学校名川分校へき地教育振興法適用の  請願松澤雄藏紹介)(第三一二八号)  本郷小学校へき地教育振興法適用請願(松  澤雄藏紹介)(第三一二九号)  妻沼小学校危険校舎改築に関する請願荒舩清  十郎君紹介)(第三一三〇号)  写真師法制定に関する請願三鍋義三紹介)  (第三一三一号)  同(中馬辰猪紹介)(第三一三二号)  同(赤路友藏紹介)(第三一三三号)  同(上林山榮吉君紹介)(第三一三四号)  同(木崎茂男紹介)(第三一三五号)  同(帆足計紹介)(第三一七六号)  同(平田ヒデ紹介)(第三一七七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会教育に関する件について参考人より意見聴取     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  社会教育に関する件を議題といたします。  まず参考人指名についてお諮りいたします。今日出海君、川上行蔵君、春日由三君、池田義信君、森山淑子君、西山都留子君、以上の六名の方を参考人として指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際委員長 より一言ごあいさつ申し上げます。参考人の方には、御多忙中わざわざ当委員会のために御出席をいただき厚く御礼申し上げます。  さて教育を受けつつある学生生徒文化面への進出、並びに映画放送等社会教育に及ぼす影響、また最近におきましては、放送協会映画関係者との間に起りました問題等につきましては、当委員会におきましては非常な関心を寄せているところであります。  本日は、国会文教委員会といたしまして、教育立場から、国民の深い関心事である教育面文化面に御造詣の深い皆様のそれぞれの立場から忌憚のない御意見を拝聴し、当委員会の今後の審査に資したいと考えます。  池田義信君。
  4. 池田義信

    池田参考人 池田義信でございます。今委員長よりのお話がございましたように、今度の放送の問題から端を発しましていろいろと世間を騒がせ、また皆さんにいろいろと御心配かけましたことに対しましておわび申し上げますが、幸いに昨三日私ども、と申しますよりは映画界日本放送協会側との話し合いによりまして、六時四十五分この問題は円満な解決をいたしたことをまず第一に御報告を申し上げたいと存じます。その観点から私がこれから御報告申し上げますことは、一応両者の間にこの問題は円満な解決をしたということと、それから今後両者協力して文化向上のためにお互いに努力しようということを話し合ったということをまず第一に申し上げて、そうして私の申し上げることはそれ以前のいろいろのいきさつがございましたが、大体においてその経過の御報告だけさせていただきたいと思います。  事の起りは新聞にも報道されてありますが、昭和三十年の六月十九日、NHK全国中継第一放送、「時の動き」におきまして「売春等処罰法案のかげに」と題します録音ルポタージュ放送されましたが、この放送を私は聞いてはおりませんけれども、それを聞きました人々から、月曜日方々から問い合せがございましたり、それから、君たちこの放送を聞いて何をしているのだというようなお話もございましたり。また日俳協会側からも、今この問題に対して方々から、俳優側からはいろいろ意見が出ておるので協議しておるというお話がございましたので、一応その内容を確かめなければいけないのではないかしらということで、私どもの方といたしましてはNHKに参りまして、その録音放送のテープを聞かしていただくことを申し込みましたが、その録音放送を聞かしていただきまして、これは私どもだけで解決する問題点でなく、もうちょっと研究する必要があるというところから、これを速記することのお許しを得まして速記をとりまして、それを持ち帰って私どもいろいろ相談をいたしましたが、まず第一に世間の注目の的となっております売春等処罰法案は、婦人議員の尽力で、いよいよ国会提出されましたという言葉から始まりまして、その紹介提案者の一人であります神近市子代議士をして、法案提出の目的について語らせ、これに対して業者の団体の事務局長をして反対趣旨意見を述べさせたあとに、アナウンサーが、この法案に反対する業者の意気込みはまさに驚異とするに足ります。そうして赤線区域業者全国で一万六千、働いている女性は六万、また赤線区域近くの芸者などを合せると、全国で春をひさぐ婦人たちはざっと五十万人といわれております。それではその売春世界はどうなっておるのでしょうか、という言葉から始まっておりまして、そこへ具体的に登場いたします人々は、新宿の赤線区域から逃げ出したという女給さん、それから芸者との問答、さらにおめかけさんを友だちに持っているという某婦人、それからその生活状態を語らせましたあとで語を継ぎまして、それから映画女優についていろいろのうわさをしまして、ある撮影所の大部屋にいる女優さんは、ということをアナウンサーは述べまして、女優とおぼしき女性談話をとっておるのであります。その談話を引き受けて、こうしてみますと、世の中にはからだを張った商売がずいぶんあると思います。そんなこととはつゆ知らないで、スクリーンにうっとりとするお嬢さん方に、一体何と申し上げたらよいのでしょうかということが、アナウンサーの結びの言葉にあるのであります。そしてその後に家庭裁判所調停委員花村法務大臣神近代議士などの説明放送して終了してあったのであります。この放送によって明らかであります通りNHK売春婦一種として、つまり売春世界に働く女たちとしてまず女優を取り上げたということ、それからスクリーンにうっとりとするのは何とも言いようがないというような趣旨でありましたので、これは私どもとしては大きな問題ではないかということから、私どもの方でこの問題について非常に関心を持ちまして、映画産業経営者側と、それから俳優協会側と相談いたしました結果、私どもとしましてはこれは黙っているわけにはいかない、抗議を申し上げなければいけないのではないかということから端を発したのであります。そういたしまして、二十三日には、一応NHK側に対してまず第一に文書をもって御抗議を申し上げようということで、御抗議を申し上げたようなわけなのでございます。そうしまして、これに直ちにお返事をいただくことは、向う側としてもさだめしいろいろの御事情があるからお困りになるであろうということを考えましたので、日曜をはさみます二十七日にこれを御回答いただきたいということで、その間約四、五日を置いたのであります。私どもの方といたしましても、その間はその問題を一応抗議をしたことによって少しも会合いたしておりません。二十七日のお返事を待って私ども態度を決しようということで、四、五日の間待っておったのであります。そして二十七日の午後二時に口頭をもってごあいさつをいただきましたが、そのごあいさつは、昭和三十年六月二十三日の日本映画連合会日本俳優協会とからの抗議書に対し、日本放送協会は次の通り回答する、昭和三十年六月十九日第一放送、時の動き放送内容は、映画俳優及び映画製作者を侮辱する意図で企画放送したものでは毛頭ありません。またその事実もありません。従って貴協会並びに貴会の要求には応じられません。なおこの放送について疑念、お尋ねがありましたらいつでも話し合いをいたす用意があります、という口頭回答をいただきました。これで見ます通り、私どもの方は抗議をいたしました。向うの方では侮辱する意図で企画放送したものでは毛頭ない、これは当然なことだと思うのであります。かりにもし公共放送たるNHKがこういうことを企画いたしたとしたならば、これは大問題であります。だから向う側といたしましては毛頭ないということが当然だと思うのであります。それからまたその事実もありませんということも、これ当然だと思うのであります。だから、従って要求に応じられないというのがNHK側態度であります。そうしてこの放送について疑念があったらばいつでも話し合いをする用意がある、私どもの方は、協議協議を重ねて疑念がないと断定いたしたので実は抗議を申し上げたようなわけで、そのとき口頭回答をいただきましたときには、何ら疑念を持っておってしたのではないのであります。従って疑念は持たないから話し合いをいたす用意があると向う様で言われても、これに対して話し合いをしたいということを申し込むわけには参りません。例を申し上げて大へん失礼ではありますが、自動車の運転をなすって、かりに人をひいてけがをさしたときに、怒るのがほんとうだと思います。何するんだと言うのは人間常識として当りまえで、人間感情としてそういうことは言うだろうと思うのであります。そのときに、いやお前をひくつもりでここを通ったんじゃない、何言っていやがるんだ、それでぐずぐず言うなら話に来いというならば、何か筋が通らないように私どもの方では考えたのであります。それでこの文書を受け取ることはいたずらに対立を深めることではないか。しかしこの口頭回答を受け取ることは——だから私どもの方といたしましては、これを、回答を認めない方がいい、回答と認めるならば、われわれはこれに対して断固戦わなければならない。従って、何も私どもNHKと私どもが対立することを快しとするのではなくして、この問題をあくまでも究明する、そうして抗議に対して何らかの意思表示をしていただき、そうしてなおかつ何か円満な解決が得られるならばそういう方向に持っていきたいというのが私どもの真意なのでありました。従いまして、この口頭回答は、回答と認めない方が穏やかでないかということで、口頭回答では誤解があるやに思われますので、実はその口頭回答は私が受け取ったのでありますから、口頭回答誤解があるということになりますと、私の伝え方が非常に間違っているということで、私の面目はつぶれてしまうのでありますけれども、そういうことで言い張っておったのでは何もなりませんので、その口頭回答では誤解があるやに思われますので、どうか済みませんけれども、もう一度考え直して文書返事をくれないかという文書をまた私が持って参りまして、春日局長にお会いして、しかもその間多少の協議をする時間を置いたのであります。持って参りましたときは午前十一時、回答時間は午後四時、その間五時間ほどの間を置いて、そうして私どもの意のあるところはおくみ取りいただけるものとわれわれは解釈して、口頭回答を実は回答と認めないで、どうぞもう一度誤解があるといけないから回答し直していただけませんかということを申し上げたのでありますが、残念なことに、そのとき午後四時まで待つ必要はない、今直ちに回答したいという御意見なのでございまして、私と高田君とは、果してその回答を受け取ったことがどういう重大事になるかというようなことを非常に苦慮いたしましたが、なお両人相談いたしまして、一体どうするか、受け取るか受け取らぬかいうことを、そこで私ども二人相談いたしました。ということは、私どもの意のあるところがNHK側にわかるだろうと私どもの方は思ったものですから、高田君に、この回答を四時まで待つか、ここで受け取るかどうするかということを相談いたしましたところ、向う様がそうおっしゃるなら、ここでその回答はいただくよりしかたがないではないかということから、それでは四時までもお待ちになるまでもなく回答なさるというのであるならば、回答をいただこうではありませんかということから始まりまして、春日局長の口から、NHKとしての態度はきのうと毛頭変ってない。従って回答を再び出す必要はない。あれをもって完全なる回答であるというお話がありました。そこで初めて私どもはこれがほんとうNHK態度であり、回答であるならば、ここから出発しなければならぬ、これが大事なポイントであるということからわれわれはこれはいけない、これは非常に大きなことになる、どうするかということでみんな集まりまして、その午後四時から、これは困ったな、やはり向うがそういう態度であるならば、われわれはあくまでもその態度に対して、これを糾弾し、われわれの要求を貫徹しなければならないのではないかということから始まって、あと皆さんの御存じのように、ずっと論争し合ったのであります。たとえば今日ここに久慈君がおりますが、久慈君などは直ちに、NHK出演に協力しないというような態度を表明されましたが、だんだんと俳優協会側の何となく盛り上った気持が、NHKに不出演するとか、あるいは映画会社の方はフィルムを提供しないというような問題が起ってきたのであります。これは世間から見まするならば、われわれの報復手段のように、非常に誤解されておりますが、決して報復手段ではないのであります。なぜならば、NHKアナウンサーは、そういうこととはつゆ知らず、スクリーンにうっとりとしているお嬢さん方はということで結んでおります。しかも売春世界に働いている人々ということから話が始まって、その間に映画女優を取り上げてあるとするならば、そういう考え方を持っていらっしゃるNHKに、私どもはどうして自分映画を提供することができるでしょうか。NHKにそういう映画を提供することは、すなわち自分仕事の恥辱を自分で平気で言っていることと同じことになるのではないかしらとわれわれは考えて、われわれが提供しないのは報復手段ではないのだ。当然遠慮すべきだ。女優さんたちもそうだ。そこでそういうふうにはずかしめられているのに、なおつか放送に出て泣いたり、笑ったり、怒ったりする演技がどうしてできようかという考え方か、NHKに不出演というようなことを女優さん方、俳優さん方はお申し合せになったのであります。  しかしながらいろいろと日を経ましたが、これではいかぬ。こういうことでお互い文化産業同士が、しかもマス・コミュニケーションというような放送映画新聞、出版、そういうようなところのわれわれの業界の仲間で、こういう泥試合をしておってはいけない。日が延びれば延びるほど、いろいろな面において国民皆さん方に迷惑をかけることはいけないのではないかしらということをわれわれも考え、NHKも考えられ、すみやかに何らか円満な解決方法を考えたいというようなお話がございましたので、私どもは直ちに昨日午後一時から午後六時まで、両者会談いたしまして円満な解決を遂げたというようなわけでございます。それで私どもは、女優さんたち文部大臣に対して事情説明に参ったということの一端は、今も委員長からお話がございましたように、社会教育の面からいって、また芸術行政の面からいって、現在文部大臣所管の中に、視聴覚教育行政とそれから芸術行政二つ行政所管をされているのでありますが、映画はその二つの分野において所管されております。たとえば芸術部門の中に、国家予算によって芸術祭が執行されます。これは非常に少い予算ですけれども、とにかく芸術祭国家予算によって執行されている。その執行されている芸術祭の中に映画部門も参加しておりますし、放送部門も参加しております。また文部大臣賞というようなもので映画を選奨しております。また文部大臣の名によって芸能選奨も施行されております。また教育映画等審査委員会などにおきまして、やはり映画の選定をしております。そういうあらゆる角度から映画というものは、現在国民大衆の支持によって成り立ち、また何らかの意味において、国民社会教育の面においても、所管当局はこれを選奨し、この質的向上をはかりつつあるので、こういう所管大臣に、一体どういう考え方映画女優というものを見ていられるかどうかということのお考えを一応お伺いしようではないかということと、それから、一応現状を説明しておかないと、ただいたずらにわれわれがおもしろがって騒いでいるかのごとく思われてはいけないということから、女優さんたちが全部行きたい、どのくらいになるか、約二百人くらいになる、そんなに行かれては困りはしないかということ、それから、これはただ事情説明で、どうしても文部大臣に会いたいということだから、だれか代表を選んでおいでになったらいかがかということで、四十人くらいの代表の人を集めて文部大臣説明申し上げたのであります。文部大臣は、あなた方は芸術家立場映画のお仕事をなさっているのだ、どうか自重してもらいたいという大臣のお言葉でございまして、女優たちは、やはり文部大臣女優売春世界に働く者じゃない、やはり芸術家的立場から仕事をしておられる者だという言葉を聞いて、みな帰ったようなわけでございます。しかしこれは二日までの事情でございまして、三日からは局面が展開いたしまして、両者は非常になごやかに話し合いをいたしまして、先ほど御報告申し上げましたように、昨日六時四十五分をもちまして円満解決をいたしたようなわけでございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 質疑はあとにいたしまして、放送局春日由三君にお願いいたします。
  6. 春日由三

    春日参考人 NHKラジオ局長をいたしております春日と申します。最初に、池田さんがおっしゃいましたと同じように、今回の「時の動き」の放送映画界と紛争を起して、あるいはそのために映画女優方々出演していただくことができなくなったこともありましていろいろ世間様をお騒がせしたわけでありますが、何としましても第一番に、聴取者方々に御迷惑をかけたこと、及び映画界方々映画俳優方々に御迷惑をおかけいたしましたことを遺憾に存ずる次第でございます。  大部分のお話経過は、ただいま池田さんが映画連合会事務局長として、最初からのこの折衝の、池田さんのお言葉を借りれば、お使いとして、接触された関係から、映画連合会立場でほぼ筋を追ってお話になったのでございますが、この点につきましては、またNHK側立場で、後ほど簡単に説明させていただきたいと思います。幸いに文教委員会に出させていただきまして、NHK仕事ということに関してお話を申し上げることができ、かつお教え願うことができますのは、初めての機会でございますので、若干この点に触れて、これが本題に入る導火線になっていくわけでありますから、触れさせていただきたいと思います。  御承知のように、日本放送協会は特別の法律でできました、いわゆる一種の公共企業体的な性格を持った放送事業体でございますから、その後日本にたくさんできました商業放送と違いまして、広告放送をいたさない。そのかわり毎月定額の、いわゆる受信料というものを、ラジオ受信機を持っている家庭からいただくところの権利と申しますか、そういうものを法律で認められております。そのかわり今申しましたような商業放送的なことは一切してはいかぬ、放送を通じて国民の福祉に役立ち、日本文化向上に寄与するようにしろというような法律上の義務を持たされております。具体的には放送内容は真実でなくちゃならぬ、それから問題点はいろいろの角度から扱わなければならぬというふうな条文がございます。そういうような法律上の性格から、当然放送番組を作ります比率と申しますか、そういうものでも著しい違いが出てきておりますので、正確な数字ではございませんが、簡単に申し上げますと、現在ニュース社会教養教育というふうな番組が全体の七〇%近く、それから慰安、娯楽及び日曜、土曜日のスポーツ中継というものが三〇数%というような比率で、かなりウエートが社会とか教養とか教育というものに置かれているわけでございまして、一例をあげますれば、後ほど教育部長から御説明いたすと思いますが、たとえば中学校小学校という義務教育のための教育放送というものを二十年来やっているというふうな形が出るわけであります。  さてそういうような観点から、私ども社会で起る国民生活に密接な関係のある大きな問題を、できるだけいい時間に取り扱って啓蒙運動をして参りたいという一つのねらいを持っているわけでありまして、この仕事に当っておりますのがラジオ局社会部というところでございます。社会部で持っております番組一つにこの問題になりました「時の動き」という放送があるわけでございます。この放送は刻々に起きて参ります社会問題、政治問題、経済、各方面の問題をあるいは録音構成とか、あるいは座談会等の形式で取り上げまして、その社会的意義社会的背景、どういうふうにそれを発展させていくべきかというような聴取者方々啓蒙に当たる番組でございます。これを私ども仕事の方で参りますと、ゴールデン・アワーと申します第一放送の夜間の十時以前の線に置きまして、その日のお昼過ぎでも何でも問題が起きますれば、前から予定した番組を振りかえてでもできるだけニュースに直結した大きな社会の問題を取り上げて解明し、聴取者方々にお知らせしていくという立場をとった番組でございまして、現在ほかの番組をはずせるような用意をしてございますが、結果的にやろうと思えば連日夜の第一放送のいい時間でやれるようになっている、これが私どものプログラムの組み方の、この問題に直接関係のある「時の動き」に関するわれわれの考え方でございます。  さて今度問題になりました時の動きのいわゆる「売春等処罰法案のかげに」と申します番組は、たまたま売春等処罰法案国会に上程されます機会に、日本が経済的に非常に貧しく、そして経済的な安定がない、そういうふうな社会事実が背景になって、人間が自分の最もとうとぶべき肉体を金銭にかえるという残念な問題がここにある、それで肉体を金銭で売るということがいかに人間としての尊厳を汚し、なすべきことでないかということをまず徹底させる必要がある、それから正しい男女関係の確立を意図したい、それから金銭にかえなくてもほかの、たとえばだまされない、誘惑されたりして、人間というものは目分のからだをみだりにそういうふうな手段に使うべきでない、自分自身は大事にしなければならぬ、ことに婦人の人権を尊重し、男女ともどもに人権の尊厳というものを大事にしていかなければならぬ、それからさらに一部の女性を犠牲にして他の女性の貞操を守るというふうな、人格を無視した考え方というものは絶対に成り立つべきものではない、こういうふうなことをいろいろ要素として考えまして、そういうねらいから、聴取者売春というものの実態と、それからその温床、あるいはそれに類する問題点というふうなものをずっと拾っていきまして、貞操というものの価値とか人間の肉体の尊厳とか、そういうものを訴えたかったというのが企画者のねらいでございます。  さてこういうふうなねらいから、私ども売春等処罰法案提案者お話、あるいは赤線区域業者のこれに対する反対気勢というふうなもの、それから赤線区域で働いている女の人の話、それからからだを売らなければ立っていけないという芸者さんの人の話、そういうものをずっと並べまして、その次にこれは今度の売春等処罰法案の対象にはならないかという前提を一つはっきりと置きまして、先ほど池田さんもおっしゃいました二号を友だちに持っている女の人とか、結婚相談所——戦後結婚相談所と称して男女を媒介している商売が多いということは新聞紙上で御承知と思いますが、そういうものの正体、あるいは今問題になりましたところの撮影所の大部屋の女優さんのお話、離婚関係が戦後非常に安直になり、愛情問題よりも経済問題でやっているようだという離婚相談所の調停員のお話とか、最後に花村法務大臣売春等処罰法案というものについて、これで十分だと思っていないが、とりあえずこうすることが必要なんだというお話、それからさらに結びに神近さんのこれで完全な法律とは思わないが、私どもは一歩々々一里塚としてやっていかなければならないというふうなお話を並べまして、この問題に直接関係のある、それのバック・グラウンドというか、周辺、その他一般に肉体、愛情という問題が取り上げられたわけであります。率直に申しまして、こういう取り上げ方が百パーセント妥当であるかどうかというような価値判断になりますと、いろいろな考え方が出てくることはいなめないと思うのでございますが、一番大事な問題点で、早くも出発点から大きな誤解がございましたのは、先ほど御説明の——実は池田事務局長もお聞きになったのはあとのようにお話を承わりましたが、私自身も旅行中で聞かなかったので、これはあとから聞いたのでございますが、はっきり申しましたように、処罰法案の対象となるものとそうでないものとの一線を画しているところは非常に慎重にやっているわけですが、この放送がなされましたのが実は十九日日曜日の夜九時四十分ということでございまして、たまたまこれが映連の方でどういうふうに問題になりましたか、私は不在でよく聞いておらないのでありますけれども、私の責任者としての報告をとりましたことによりますと、これは三日置きました二十二日の夜あたり、映連の方でこれを問題にしている向きがあるというふうなことで外部から記者諸君にNHKはどう考えるかということを直接担当者が聞かれたのでありますが、どう考えているかわからぬものに返事のしようがないというふうなことを答えたということで、そうしましたら二十三日の木曜日に一、二の新聞映画連合会日本映画俳優協会の東京支部長、大阪支部長の連名のお名前でたしかお出しになったと思うのでありますが、このNHK放送に対しての抗議書並びに要求書、それからその回答の日時、条件というもののきちんとそろったものが出てしまったのでございます。当事者である私どもは、その日の午後に、先ほどのお話のように、池田さんと高田さんから私の方の赤城次長と長沢社会部長がこれを受け取ったというような経過でございます。私どもはこの問題をやっていく前に、もちろん第一次的には内容的にずいぶん検討いたしましたが、第二次的に内容を御確認になることも必要であるし、抗議とか謝罪要求の前提に、放送いたしたのは私どもでございますから、われわれの方に直接抗議なりお話があるべきではなかろうか。私が申しているのは新聞の記事が間違っているということではございませんで、新聞に大きく出てしまいますと、社会通念でございますが、これは一つの事実になります。その事実が前提でNHKに対する抗議なり批判なりが出てくるわけで、問題はそこから放送そのものを直接聞いた方々考え方と、放送は聞いたし、新聞も読んだという方、あるいは新聞だけを読んでこの問題を知った方——これは事実その後の投書を見てもそうなんでございますが、いろいろ違った方々意見なり批判なりが出てきて、それが実は私の解釈からいえば、この問題を大きくした理由ではなかろうかというふうな気が私はしているわけでございます。それでいろいろ、私は旅行から帰りましてこの抗議書も拝見し、それから謝罪要求内容も考え、同時この放送もずっと検討してみたのでありますが、どう考えてみましても、もちろん先ほどの社会番組の前提といたしまして、映画の製作者や映画俳優さん方を侮辱するつもりというものが毛頭ないことは事実でございますし、またこれの取り上げ方が、映画の製作者や映画俳優さんを全部侮辱しているとはとても認めがたいという結論に達したわけでございます。そういうわけで、それではどういうふうな手段でお答えしようかというので読んでみますと、その謝罪要求の方法として、放送でかくかくの謝罪文を全部流せ、あるいは全国の有力紙にその謝罪の内容を全部発表しろというふうな条件がございまして、しかもその内容、日時その他は事前に抗議した人たちに相談しろということもございます。それをそのまま考えますと、要するに私どもはイエスかノーかという返事しかできないように仕組まれておるというように判断いたしまして、そういう意図もなければ、そういう事実もないと思われるので、どうもその抗議要求はお断りするより仕方がない。しかし実はここにももう一点お互いに行き違いがあるのであります。三十年来お互いに同じようなマス・コミュニケーションの仕事をしている社会的地位を持っておるのだし、いわゆる親戚づき合いの同業であるから、何か話し合いによって円満なる解決をすべきではないかというようなニュアンスで、この放送そのものについて疑念やその他の点があったら、いつでもお話し合いをする用意がある、こういう表現になった。しかも私どもあとで承わったのでありますが、映連の側では、文書で発表すべきなのに口頭ではけしからぬというような受け取られ方であった。私どもは、文書というものでは、相手方から受け取って感じたように、いわゆるニュアンスの感じられない、イエスかノーかしか答えられないという判断から、むしろ口頭で二点を申し上げて、それでお話し合いをする用意があるのだ、いつでもお話し合いいたしたいのだというふうなことをにおわせて、この方がやわらかいのではなかろうかというような、全く善意に出たのであります。この回答は、先ほど言ったように赤城次長と長沢社会部長が二十三日に映連から受け取りまして、二十七日の午後三時という締め切り時間が指定してありましたので、二時過ぎに口頭で持って参ったわけであります。それに対して映連側では、この回答NHKに誠意がないというような御判定で、文書でやったのだから文書で寄こせばいいというようなことで、翌日さらにその旨の申し入れがありましたことは先ほど池田さんがおっしゃられた通りであり、今度は私自身も出まして、この問題について池田さんとお話を申し上げたわけであります。この問題につきまして一時間くらい懇談しました。私的に、どうですか、お話し合いに入る必要があるじゃないかということをただたび申しましたが、池田さんは映画連合会事務局長という立場ですから、そこでいろいろお話し合いする権限も持たないということで、慎重にお考えになってお帰りになりました。これからが例の俳優さん方がいわゆる出演しないとかいろいろ大きな社会問題になってしまったわけでございます。どんな紛争でもそうでございますが、前提から、内容の問題もさることながら、手続的と申しますか、方法論的に食い違いが重なってこんなにこじれたのだということを、昨夜、両者集まって一日がかりで解決しましたあと、私ひそかに反省をしておるような次第でございます。実は昨日の両方の交渉委員話し合いで、あの共同声明以外は何も外部に申さないという御約束をいたしたのでございますが、この国会は別の場でございますし、同時に、池田さんの方の立場経過説明がございましたものですから、私ども経過説明をあらましさしていただきまして、あと御資問ございましたらお答えさしていただきたいと思います。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に、参考人西山都留子君にお願いいたします。
  8. 西山都留子

    ○西山参考人 私、轟夕起子でございます。ただいまの春日局長お話で、一番大事な点が抜けていると思うのです。それはこのたびのあの放送あとアナウンサーの締めくくりの言葉に、「世の中にはからだを張った商売がずいぶんあると思います。そんなこととはつゆ知らず、スクリーンにうっとりしているお嬢さん方に何と申してよろしいやら」というようなお言葉がございましたのです。今度みんなが怒っているのは、その言葉が私たちを大へん侮辱しているということの一つに取り上げたからでございます。また放送局としては、私ども女優を絶対侮辱する意思はなくてあの放送をしたとおっしゃいますけれども、そういう一女優の言を取り上げるということは、私たちの職業を売春処罰法案の対象としてやはり一応認められているのではないかということを私たち感じて、このたびの騒ぎになったわけでございます。  私たち女優は、女優という職業を芸術家という誇りを持って任じております。またその誇りがなければ日々仕事をやっていくわけには参りません。また、売春婦的な行動をしなければよい役がもらえないとか、そういうようなことは絶対にございません。また一本の写真に二千万円も三千万円もかかるような仕事で、一女性が肉体を提供したとか、そういうようなことで仕事をやっていけるような安易な映画界ではないと存じます。私こういうところでしゃべるのは初めてでございますから、せりふをしゃべるようには参りませんことをどうぞお許し下さい。 (笑声)  それから今度の新聞にこのような漫画がございました。ある人が水をまいておるときに通りかかった人にその水がかかったというわけです。その水をかけた人が大へんあやまっておりましたところ、その人の女房が出てきて、ちょっとあんた、どうしてあやまっておるの、NHNのまねをしなさい、こう言ったということが出ておる。それと同じように、やはりそういう意思がなくても人を傷つけるということは世の中にあると思います。最近日本映画も大へん国際的に認められて参りましたときに、私たち女優としての地位もやはり皆さんに認めていただきたいのでございます。私たち女優はやはり仕事場では一個の労働者であります。はなやかな人気稼業といわれ、皆さんからいろいろ好奇の目で見られておりますけれども、決してそんなことはございません。日々の訓練のきびしさ、私たちは生理休暇というようなものはいただいておりませんし、それから徹夜で仕事をすることもございます。決して皆さんがながめていらっしゃるようなはなやかなものではございません。そうするとある人たちは、そういうはなやかなものでないそのきびしさの中に、競争が激しいからそういう問題も起ってくるのじゃないかとおっしゃいますが、もし一部にそんなことがございましたら、それはどの社会にもありますことで、別に女優に限ったことではございません。不心得な一部の人間のために全体の女優がそういう誤解を受けて見られるということは、私たち大へん心外でございます。そういうわけで、議員の皆さんには私たちの職業をぜひ御理解していただきたいと思いまして、きょうこの場に出て参りました。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に参考人として古垣鉄郎氏のかわりに来られました日本放送協会教育部長川上行蔵君。
  10. 川上行蔵

    川上参考人 私川上行蔵でございます。NHKにおきままして青少年を対象とする教育番組、それから学術科学を扱っております成人教育的な番組、そういうものを担当しております。NHK番組全体の編成方針といたしましては、家庭において親子で一緒に聞いてもらってもよい、そういうようなつもりで番組を組んでおります。その意味におきます限りにおきましては、NHK番組は、すべての番組社会教育的な効果があるのではないか、またそういうような目的を忘れてはいけないのじゃないか、そういうつもりで編成いたしております。ただそう申しましてもあまり漠然としておりますが、教育部の番組におきましては、その一般的な意味ではなくて、もう少し専門的なと申しますか、あるいは特殊の領域としての教育という問題が非常に重要である、日本の再建は教育から始まるのだ、そういうような趣旨におきまして、教育を一般の人に理解してもらうのだ、そういう番組、たとえば家庭と学校のような番組、それから青少年を対象とした直接の教育番組、たとえばさっき春日局長が申しましたように、学校放送番組、あるいは科学の啓蒙をする「やさしい科学」、それからまた学校に行けない青少年のための番組、高等学校講座、これらは通信教育を受けておる高等学校生徒諸君が資格を得ることを目的として、その学校に籍を置いておるのですが、実際上放送の助けがないとなかなか資格がとりにくいので、そういうような番組を組んでおります。そういうような教育番組NHKでは非常に大事にしておりまして、現在第二放送番組のほとんどはそういう教育番組で占めており、今申しました以外の番組では語学講座、NHK教養大学、あるいはいろいろな問題を中心として社会教育教養特集というような番組もたくさん組んでおります。  それで最近出版とか映画とかラジオとかの子供たちに與える影響という問題につきまして、非常に論議が盛んでございます。マス・コミニュケーションに対する批判が非常に強いのでございます。そういう問題につきまして私たちは実は前から十分な配慮は払っておるつもりでございます。その前提がさっき申しましたように家庭で親子が一緒に聞いてもらってもいいのだ、そういうことが私たちの具体的な基準と申しますか、そういうふうなつもりで組んでおるのでございますが、その放送の影響性が今回の事件におきましても非常に大きいということを身にしみて痛切に感じましたので、今後とも一層注意して番組を編成して参りたいと思います。  それで今回の問題につきまして二、三私たちの知り合いの教育者の方に子供たちに対する反響を伺ってみましたところ、子供たちがその放送を聞いていなかった、そういう事実から前提の事実がわからないせいだろうと思いますが、あまり子供たちの間には意見がなかったようでございますので、私たちは今子供たちにそれがどういう影響を与えたかということを申し上げることはできません。しかしおとなの世界にこれだけ放送というものが論議されるのでございますから、今回の放送じゃなくして、たとえば子供の時間とかあるいはいろいろなクイズ番組、そういうものが子供たちにどういう影響を与えるかということは、社会教育の面から十分に注意して組んでいかなければならないということを考えております。そういうようなことを申し上げまして、一応お話しを終ります。ありがとうございました。
  11. 佐藤觀次郎

  12. 森山淑子

    森山参考人 久慈あさみでございます。私もこういうところでしゃべるのは生れて初めてで、大へん固くなって、万分の一もしゃべれないような気がするのですけれども、議員の方たちもむずかしい顔をしてお聞きにならないで、もうちょっと——お願いいたします。  今回の問題で、私たち女優として大へん侮辱されました。それというのは、私たち映画のために、映画芸術のために、自分たちのその芸術の向上のために一生懸命にやっておるのでございます。それを売春婦の対象として私たちが持ち出されたということは、そのことだけでもって大へんな侮辱になると思うんです。私たちはまた日本の文化国家の発展のために、映画を通していかによい作品に出るか、いかにいい映画に出るかということが目的なんです。またここにいらっしゃる議員の方たちの奥さんにしろ、お子さんにしろ、きっと映画をごらんになると思います。今度のような問題が起ったあとでは、売春婦と同等に扱われた女優の出ている映画を皆様そういう方たちに見ろとおっしゃいますか、見るのをやめろとおっしゃいますか。私はそれを世の方たちに問いたのです。そして今度の問題で私たち一般大衆から大へんに誤解をされたことも多いのでございます。今まで映画社会というものがきびしい社会であり、またそういういやらしい社会であるというような通念がございました。私もそういうことはずいぶん今まで聞いておりましたけれども、実際に映画生活五年間を暮して、そういうことは一度もございません。それははっきり申し上げます。映画界というものはそんな甘い世界ではないのです。私たちは芸術向上のために毎日々々勉強して、少しでもいい写真に出ようとする努力だけで一ぱいなんでございます。ですから私今度の問題が解決できなかった場合には、全世界映画の団体を通じて、映画女優の名誉のために皆さんに協力をしていただくつもりで用意はしていたんでございます。でもこれは日本のこういう映画界のごたごたですから、これを全世界に知らすということが、私たちはとても恥かしかったのです。どうして今の日本は私たち映画仕事というものをもっと認めて下さらないのでしょうか、そんなに私たち映画女優という仕事がいやしいものなのでしょうか、それを私たち皆さんに問いたいと思うのです。  また御質問がありましたらお答えいたします。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 参考人日出海君にお願いいたします。
  14. 今日出海

    ○今参考人 私は小説家でありまして、この問題には直接利害関係もございませんし、全く第三者的な立場でございます。しかし今お話しを承わっておりますと、昨日円満解決をしたというのですが、なかなか語気荒くて、どこに円満さがあるのかわからない。ところがこの問題を静かにながめてみますと、ささたる問題とは当事者の方はお思いにならないでしょうけれども、第三者に響く問題としては、これほど大新聞が一週間にわたって毎日大きく報道して、社会の大問題にするほどの問題では少くともない、というような印象を受けるのであります。確かにどっちがいいの悪いのというふうなことは、私ははっきり申せませんが、まあ今伺っておりますと、アナウンサーが少し言い過ぎた、これは久慈さんは世界映画女優に訴えたいというところまでお怒りになるのは少し大き過ぎますけれども女優をしていたらさぞ侮辱を感じたろうということはわかるのであります。そこで、おい、言い過ぎたぞ、少し言い過ぎたな、頭をかいて失敬したなで済むべき問題ではないか、話せばわかる問題ではなかろうかと思うのでありますが、やはり映画連合会俳優協会というような一つの組織をもってこれを抗議し謝罪を要求するということになると、今度はまた放送局という一つの組織を持ったところで、アナウンサーの問題、言い過ぎの問題というように、今局長、部長が書類をお持ちになってのお答で、何らそこにちょっと言い過ぎたというふうなニュアンスもなく、堂々たるお話しで、こうなってくると組織と組織の問題になって参りますと、なかなかやっかいなものじゃないか。そしてこれは作家の場合でも、女優の場合でもそうでありますが、多少やはりそこに社会から一種正当に見られない、何かおもしろいことのようにながめられるわれわれはまだ存在でありまして、非常に商売としてはまじめにやっていても、何となくあれは小説家の言うことだとか、あれは女優の言うことだというような、やや軽く見られたり、あるいはこっけいに見られたりするというようなことが、まだまだ社会的な地位を十分に得ておらない証拠でありまして、こういう問題でもって、女優あるいは俳優というものはもっと社会的に自覚しなければならないという一つの契機を与えられたように私は思うのです。こういう問題はとうとう国会文教委員会の問題にまで取り上げられたという大きな結果になりましたけれども、きっと皆様もお考えになりますごとく、実にこれほどの問題ではなかったのだ、もっと簡単に話せばわかった問題がここまできたということ、なぜきたかということの方に、今の日本の姿、あるいは現状というものが如実に出ているように思うのです。今池田さんも、はなはだ整然とおっしゃいましたけれども池田さんという方ははなはだ温厚篤実な方でありまして、文章をもって何月何日までに回答せよというような人ではない。春日さんも局長などという名前を持っておりますが、私の高等学校からの友だちで、はなはだのんきな人でありまして、何も文書をもって回答せり、当方に間違いなしと突っぱねたというような人物でないんです。そういう人たちが寄るとこういう問題になったということの方に——はなはだおもしろいと言っちゃ失礼でありますが、問題があるんじゃないか。こういうことは日本ではしょっちゅう起り得る大きな争議であるとか衝突とかいうようなものの中にこういう性格があるのでありまして、もとはといえばやぼなことは言いなさんなで済むことなんです。実はきのう円満に解決してしまいましたけれども、私なんか単なるヤジウマでありますが、議員の方がこういう問題を少しまじめに考えられて、やぼなことは言うなと逆に双方に言っていただいたら、実はきようの文教委員会で手打ちが行われるんじゃないかと思いまして伺ったわけなんであります。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより質疑に入りますが、参考人方々に申し上げておきます。委員の質疑に対し御答弁を願う場合には、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、その点御了解を願います。また衆議院の規則の定めるところによりまして、参考人委員に対して質疑を行うことはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承を願います。  それでは社会教育に関連して各委員より参考人方々に、簡単に御質疑を願いたいと存じます。辻原弘市君。
  16. 辻原弘市

    ○辻原委員 今参考人方々から問題の経過について承わったのでありますが、最後に今さんからもお話がありましたように、私どもがこの問題を取り上げましたのは、決してこの紛争の中にわれわれ自身が入って、どちらがどうであるかというようなことをただそうという考えではなかったわけであります。ただ今日社会教育の面で、今視聴覚の問題を池田さんの方からもお話になりましたけれども、視聴覚教育の問題が、社会教育にとどまらず、学校教育において今日ほど大きく取り上げられているときはないのでありまして、そういう観点から見ました場合に、視聴覚教育の最も重要な部分を占める当事者同士の中で、かかる紛争を生じたことは、非常に遺憾であったわけであります。そしてこの問題の解決が長引けば長引くほど、いろんな誤解や、あるいはその間にかもし出される雰囲気によって、純真な生徒児童たちに与える影響が少しとしないというような観点で、われわれとしてはできる限りすみやかにこの問題を解決してもらいたいという希望を持って、事態の推移を見守っておったわけでありますが、幸い昨日話し合いが円満に進み、解決を見ましたことは、私たちとしては実に御同慶にたえないところであります。  特に私はただ儀礼的に御同慶にたえないということを申し上げるのではなくて、それには二つの理由があるわけであります。なぜかならば、これは先ほどから轟さん、久慈さんが強調せられましたように、映画芸術の中でそれぞれの役割を果される重要な立場女優さん方が、事芸術の問題では、あくまで女優立場というものは芸術を追求しているんだという認識の上に立って、問題の大小はいろいろ考え方もあるだろうと思いますけれども、とにもかくにもそういう見解をもってこの問題を取り上げられたということは、そういった認識を一般に強く与えてその立場を明らかにし得た、それが日本芸術行政、さらにそれに関連して視聴覚教育の上において大きい結果をもたらしたのではないか、そういう意味で御同慶にたえないということを申し上げている次第であります。同時に私はNHKが、これは国が補助している放送機関でありますけれども、その役割というものはあくまで公正なマス・コミュニケーションという役割を果すという本来の使命について、放送の自由を確保しなければならないという立場で終始せられ、そういう立場を保持されて解決の方法を見出されたこと、これも御同慶にたえないと考えている次第であります。従ってこの問題を契機にして、ともども、先ほど声明書の中にも触れられておりましたが、日本の視聴覚教育、ひいては日本文化向上芸術行政、こういったものの上に大きな向上を、こういった問題を機縁にしてやっていかれる心組み、こういうものに対して私は今後十分期待をもって見守っていきたいと考えるのです。  この問題はそれとしてそれ以上申し上げることはありませんけれども、ただNHKあるいは映画界等の問題の中に、最近私どもとして非常に関心を持っておるその他の問題がありますから、この機会に一つ皆さん方の該博な御意見を承わっておきたいと思います。それは何かと申しますると、先般来よく新聞で取り上げられていますが、まだ十分成人に達していない子供たち出演の問題であります。特にその出演の問題をめぐって学校教育、特に教育者側に立って考えれば、子供のいわゆる教育管理という面と、それから子供の持っている天分の芸術性を発揮させていくというこの両面に立たされて、教育者それ自体が非常に悩んでいるという問題をときどき訴えられているわけであります。そういった点についてどういう配慮をそれぞれ当事者の側は加えられておるのか、この点を、幸いきょうはNHKからは教育部長さんも見えられておりますので、川上さんの御意見をまず最初にお伺いいたしまして、さらに映連の方では池田さんがそういう方面について御見識をお持ちなさっておられると思いますのでお伺いしたいと思います。受け入れ側といたしまして久慈さんなり轟さんの方から、そういったいわゆる豆スターといわれている人々に対するあなた方の御認識をこの際承わり、最後に今さんの方から、一般的な見方として、こういった問題をどう処理すべきか、またどういうふうに教育的にこれを扱っていったらいいのか、個人の持っている天分を生かしてやるという方向をはばまないで、教育的に両立させていくような方向はどういった方法によって見出し得るのか、この点を私はこの機会に承わり、われわれも決して単にまだ自立性を持たない教育環境の中に含まれておる子供だから、そういうことは好ましくないのだということできめつけられないので、持っている天分をまっすぐ伸ばしていきたいと思うけれども、そのことによって逆に他の子供たちに及ぼす影響というようなこと、またその子供の将来、ただもてはやされるだけで、単なる人気者であるというだけでは、あなた方の言われるほんとうの芸術を追求させていくという、そういった子供の将来を展望できませんので、この点についての御意見を承わって私の本日の質問を終りたいと思います。
  17. 川上行蔵

    川上参考人 ただいま辻原委員から教育に対し、またそういう子供たち出演してもらっているわれわれ当事者に対しての非常に御理解のある御質問をいただきましたので、その点について少し考えを申し上げさせていただきたいと思います。  私たち放送でよく子供たち、童謡歌手あるいは一般の学童とかそういう人たち出演いたしております。それにつきましては子供たちがまだ学校へ行っておる、そういう前提のもとにいろいろな出演工作などをいたしております。具体的に申し上げますと、その子供たちが学校で授業を受けるじゃまにならないように、たとえば録音をします場合でも、その学校の授業時間以外のときに来てもらって録音するとか、あるいは家庭に行きまして録音するとか、あるいは夜の録音とか放送をしない、そういうような配慮をいたしております。  それからもう少しその前提に入りまして、子供たちをスターにするつもりではございません。子供たちが学校でいろいろ教育を受ける、その教育は昔と違いまして教科書から勉強するというやり方じゃなくして、いろいろな生活活動の中からいろいろなものを身につけていって、完全な人格を築いていくわけでございますから、その面においてはそれは学校でも認められておるほどでございます。でございますから学校と十分連絡をとりましていたしております。  それからもう一つ、どうしても子供たちが長期連続するとか、あるいはスターになる可能性がある場合におきましては、子供がどうしても出てこなくちゃならない番組におきましても、おとなを代役にいたしております。たとえば現在子供の時間の放送で非常に評判になっております「やん坊・にん坊・とん坊」、こういう放送は実は子供じゃなくして女の方に出ていただいております。声の質がちょうど子供と似ておりますので、それで効果をあげておるのでございます。ただこれは子供の役がサルになっております。ですから一般の子供番組すべてにそれを適用することはできない場合もあると思います。ただできるだけ—先ほどから申し上げましたように、子供たち義務教育を受けているんだ、将来おとなになって必ずしもその面にばかり行くんじゃなくして、りっぱな社会人として活動していくんだ、そういう子供たちの能力をふやしていくんだ、そういう目的を前提にしまして、父兄とそれから学校の先生方と十分に協力をして番組に出てもらっております。具体的に申し上げましても、先日も私たちの方の関係しております児童劇団あるいは合唱団、そういう人たちの子供さんを学校で教えております先生それぞれに局においで願いまして、いろいろお話を伺いまして、そして参考にしたり、あるいは出演の条件をきめたり、そういうようなことをいたしております。
  18. 池田義信

    池田参考人 映画界事情をちょっと申し上げますが映画界には当然子供の出る映画が昨年でも日本映画が約三百七十本ほど作られておりますが、その中に子供を主人公とした映画というものはやはり五、六本はあるのであります。これは子供を対象として子供たちのための映画というような考え方から作られておるのでありますが、この場合私どもの方は従来から映画の子役という問題に対しましては、世界的な通念でこれは非常にむずかしい問題になっておるのであります。たとえば現在はどういうふうになっているかと申しますと、まず第一に校長の証明がなければならぬ、校長のお許しがなければ学童は使えないということ、従ってやはり受け持ちの先生の御了解を得なければならぬということ、それからもちろん親たちはこれに御協力願わなければならないのでございますけれども、たとえば一週間なら一週間——放送の方と違いまして、時間を割って十分とか二十分とかいうわけに参りませんので、どうしても欠席しなければならないような事情にあるのでありまして、そういうときは学業に妨げないようにするにはどうしたらいいか、それからまた休んだ学業をどういうふうに取り返すことができるかどうか、こういうような問題は各撮影所でその受け持ちの先生方と相談されて現在やっておるようであります。長期ロケーションの場合はどうするか、この場合においては集団で行くような場合には学校の先生にお願いしてどなたか適当の方をつけて参りまして、その撮影の余暇に、学校教育と同じようにというわけには当然参りませんでございましょうけれども、宿屋においてその補修程度ということで、あくまでも学業に妨げないような方向をとっておるのが現状でございます。
  19. 森山淑子

    森山参考人 この問題は大へんむずかしいと思いますけれども、現在私の放送しております番組に一人高校一年だったと思いましたけれども、一緒に子供が出ております。その子がある放送劇団に属しておるためにやはり学校も休むこともあり、また宿題を年中スタジオでしているのでございます。その姿を見ると私は一緒に出ているのですけれども、大へんその子供のためにあわれになり、また朝御飯を食べてからお昼を食べる時間もない、夜も食べられないというような状態でいつも放送を続けて、その子がだんだん青くなっていくのを見ると大へん私は悲しいと思います。そうかといってその子供に聞くと、やはり自分はこういう仕事が好きだというのです。ですけれども好きだといってその仕事に打ち込んでしまい、学業を忘れるということはいけないと思います。私も小さいときからこういう道が好きで、たびたび宝塚へも通い、小学校を卒業するときに宝塚へ入るつもりでおりましたけれども、やはり義務教育というものは受けなければいけないと思いまして、そこで断念いたしました。そうして女学校を卒業しましてから自分の好きな道に入り、その間は個人勉強とかそういうことで自分の好きな道に励んだのでございます。結果的には私は今の自分の歩んで来た道がやはりよかったと思っています。ですから今の子供たちが、こういう社会の中でまた自分からやりたいという子供があるでしょうけれども、親がそれをしいる場合がずいぶんあると思うんです。子供は何も知らずにただみんなからもてはやされながらそういう仕事を続ける、ですけれども、やはりその子供の天分というものは伸ばしてやりたいし、まあ私の考えますには、やはり義務教育というものはしっかり受けて、その余暇にそういう天分を伸ばしていってやるのが一番いいんじゃないかと思います。
  20. 今日出海

    ○今参考人 いわゆる豆スターというのは、これはどうしても放送にしろ、映画にしろ、芝居にしろ、子役というものは必要なのでございまして、これを絶対に禁止するわけにもいかない問題だと思うのです。しかしながら大体の場合に豆スターの父兄といいますか、大体親はよろしくない、大体子供をかせがして自分が安楽にしている、あるいはいい気になっているというのが多くって、これは私は第三者として見ていて寒心にたえない問題だと思います。これは一律にどうすればよいかということも言えませんが、大体学校であるとか、あるいはまた家庭、父兄というものをどういうようにしていったらよいか、今池田君の言うように、校長の許可を得るというのはむろん当りまえですが、父兄というものはまことに認識不足な場合が多いのでございますから、この豆スターの問題というのは、単なる浮薄なる一般的人気というものと、それからそれを利用してうまい汁を吸う父兄という問題をもっと大きく考えるべきではないか、そのために豆スター自身の才能まで枯渇さして伸びなくしてしまうおそれもあるし、またそういう雰囲気は必ず同級の子供たちに悪い影響を及ぼすにきまっていると思うのです。この父兄の問題というものが一番私は大きいのではないかと思います。
  21. 佐藤觀次郎

  22. 永山忠則

    永山委員 今回の事件が円満に解決をいたしておりますので、何も御質問を申し上げる点はございませんが、これを契機といたしまして、NHKの方でも将来女性の品位と人格を尊重するという考え方のもとに指導方針を十分確立していくといったような考えで、何らか具体的な考えをお持ちでございますかということです。すなわちそれは放送等内容についての自己反省をするといいますか、あるいはさらによりよいものをやるというようなことで、月に一回なり二回なり芸術者並びに学識経験者その他の識見のある人と懇談会をされまして、一段と高い地位にNHK社会教育の部面を引き上げるという考え方の新構想を持っておられるかどうかという点でございます。ということを申し上げますことは、元来日本社会はきわめて封建的要素が強くございまして、女性の品位と人格を尊敬するという念が非常に薄らいできておったのが過去の歴史でございます。ただいま問題になりましたような子供の人格、品位も高めていかなければならないわけでございまして、日本の将来最も注意しなければならぬ文化国家への躍進を見るのには、女性及び子供の人格、品位をみずから高めるように男性が一層これに関心を持ち、注意をすべきであると考えておるのでございますから、こういう観点で一段の構想をめぐらすというようなお考えがあるかどうか。  なお映画関係皆さんにも御質問申し上げたいのでございますが、旧来映画に出るほんとうに尊敬すべき芸術の人と私生活の人とは別なのだという、割り切った、つまらぬ考えを持っておる時代はすでに過ぎ去りました。映画に出る人の品位と人格を尊敬しながら、その芸術の偉大さに敬服をいたすという状態になり、今日の映画世界的な水準をさらに飛び越え、日本映画世界指導の地位までいこうというようなところに進みつつあることに敬服をいたし、皆様方のこの偉大なる芸術は尊敬をいたしておるものでございます。従ってこういったようなことを契機として皆さん方自体の中に品位と人格を高めて、そしてほんとうに人格と品位の高い者がよりよき芸術の指導者であるというようなぐあいに、皆さん方みずからの会合によってこれを推進するといったような何らかの御計画をお持ちでございますか。すなわち皆さん方みずからの団結によって、きわめて品位の低い、私生活の悪い者は、この重要なる芸術の中心にはなるべく遠慮してもらうといったくらいな強い団結を進められていくお考えがございますか、もうそんなことは必要ないのだというようなお考えでございますか、お尋ねしたいのでございます。次に学識経験者の皆さんにも、今回のことは笑って済ますことであるというような片鱗もないでもないようでございますが、一たん問題となりました以上は、やはり純潔教育という立場から、また社会教育立場から、あくまでも指導者は高度の地位にあらねばならぬのでございますから、学識の立場において社会を強く指導するという観点に立つべきではないかと考えておるのでございます。元来売春法の中でこういう女優問題を取り上げるという、それ自体が、この「時の動き」が興味主義である。今日の新聞を悪く言うわけじゃありませんけれども新聞その他の関係が読者中心主義、興味主義であふっていく傾向があるが、公共的地位を持っており、そして社会教育の重大なる地位にあるNHKとしては、そういう世間的なものに迎合せずして、高い指導的な立場でやるのだということであらねばならぬと考えるのでございます。こういったような点は学識経験者の方で強く指導をしていくという立場で、筆をそういう方面に持っていかれることが必要ではないかと考えるのでございますが、この点に対する御所見を承わりたいのでございます。
  23. 佐藤觀次郎

  24. 春日由三

    春日参考人 お答え申し上げます。御指摘の最後の点でございますが、昨日お話し合いをいたしました際に、一部の方々に、今先生のおっしゃいますような誤解があったことは遺憾であるという私どもの気持を、先方で誠意として受け取ってくれたわけでございますから、私どもがやったことは百パーセントに正しいのだという観点には立っていないのであります。申しわけない点はおわびして今後よりよいものにしたいと考えております。それから最初の点でございますが、もちろん放送というものの一番大事なと申しますが、実際一番たくさん聞いていらっしゃる方は家庭にあられる御婦人が多いのでありまして、その割合に従来戦前から長い間日本の実情の反映と申しますか、放送でも女性の問題というのは少かったわけであります。終戦後今のような状態になりましてから逐次ふやして参っているわけでございますが、現在午後一時五分から二時まで毎日第一放送でやっております婦人の時間というものは、非常な安定した聴取率をもちまして、非常に好評をもって迎えられているものでございますから、われわれだけのサラリーマン観念で、実は土曜日はいらないのじゃないかと思っておりましたのを、今までの慰安番組を廃止して、この四月から土曜日にもう五十五分婦人の時間を新設したわけでありますが、この聴取率は高くなっております。これが私どものふやした意図と受け入れ側の意図とが一致した実例でありますので、さらに勇気を得まして、夜の「時の動き」との関連のある時間でございますが、月曜日には新しい夫婦関係と申しますか、新しい家庭関係と申しますか、そういうものを啓蒙していく時間として、従来例のなかったことでございますが、この四月の番組改正から第一放送の夜間に新家庭読本という時間を置いてございます。逐次先生の御要望に沿い得る方途をとりつつあります。さらに第二点の、今後今の映画界方々との関係をどうするかというお話でありますが、これは実は昨日の共同声明の中にございますように、今後は両者協議して日本文化向上発展に協力し合って寄与していきたいという抽象的な言葉になっておりますが、内容的には実は交渉委員の間で今先生がおっしゃったようなことも含めて、手打ちを終ったら相談しようじゃないかというような話になっておりますから、まだ具体的にプログラムにはなっておりませんけれども、そういう考え方だけは持っておるということをお答え申し上げまして、御了解を得たいと思う次第あります。
  25. 池田義信

    池田参考人 映画側の問題を申し上げますが、私どもこの問題が起りました際に、俳優たちがみな集まりまして、ゆうべもそうでございますが、とにかく自分たち一つの公人である以上、また芸術家的見地から仕事をしていく以上、われわれ自体も自重しなければならない。俳優協会といたしましては、昨晩も話し合いがございましたが、これによって反省、自粛、自重、向上というような対策をやはりとらなければならない。日本映画女優映画俳優向上させることによって日本映画向上に役立つようにしなければならないというようなことを、昨晩も俳優協会の幹部諸君が話し合っておりましたことを、私はそばにおりまして、大へんけっこうなことだ、さっそくこれは実施してもらいたいということを申し合せて昨晩はわかれましたような次第でございます。
  26. 西山都留子

    ○西山参考人 今まで私たち俳優は結びつきが大へん弱かったと思いますけれども、このNHK問題をいい機会といたしまして、禍いを転じて福となすというような工合に、私たちはこれから横の連絡もとりまして、そうして私生活も芸術上のお仕事のことも、ともにりっぱなお仕事がしていかれますように、映画芸術の向上をはかって、みんな一生懸命がんばりたいと存じております。
  27. 今日出海

    ○今参考人 私が先ほど申したのは、こんなことは笑って済ますという意味じゃないので、私がやぼなことを言うなと申したのは、一般に昔明治の半ばごろまで、やぼとかいきとかいう言葉は、民衆の批評の基準だったと思うのです。やぼなこと言うな、やぼなことするなということは、一つの侮辱でもあり、非常に大きな批評だと思うのです。そういうことは言語、動作、風俗すべてにわたる批評でありまして、今言う花柳界あたりで使うやぼとかいきとかとは趣きを異にした言葉を使ったわけであります。  それから文化向上ということについてお考えになっていらっしゃることについては、私も全く同感でございますが、ただ文化というものはどういうものかということは別としまして、これを高めるということと同時に、文化というものの面積を大きくするためには、高さを高めるだけではなく、底辺を広げていかなければならない。一つの三角形で申しますと、そういう二つの作用があると思うのです。高くならなければなりませんし、また同様に底辺をもっと広げていくということも重要な文化運動だと思います。この映画の中には高める部分もございますし、また底辺を広げていくという任務もあると思うのです。ただ高くなっていくというだけでなく、広くしていくというためには、なかなかその内容も一度に世界的な高さというところまではいかないで、やはり大衆の歩みとともに底辺を広げるということも映画が十分やりつつあることでありまして、そういう面も十分くみ取ってやっていただきたいと私の方からお願いする次第であります。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 並木芳雄君。
  29. 並木芳雄

    ○並木委員 お暑い折ですから簡単に質問をいたします。私実はあの放送を聞いたのでございます。大事な放送でございますから大てい聞きのがしません。聞いて、これは久慈さんあるいは轟さんからおしかりを受けるかもしれませんけれども、ただいまお話のありましたほど、私には皆さんが侮辱されておるというようなことを感じなかった。これはなぜか、私あと問題が起ってから考え直したのですけれども、過去にいろいろこういう批判があったんです。久慈さんもさっき認められました。今までそんな話も聞いていた、しかし自分がやってみて五年間そういうことはなかった。非常にけっこうだと思うのです。しかし私たちが子供のころから、あるいは雑誌あるいは新聞あるいはいろいろの機関でそういううわさを聞いておったことは事実なんです。ですからそういう場面々々によって、あなた方がもっと真剣に、もっと深刻に抗議をなぜしていらっしゃらなかったのか、それが今まで新聞や、ことに私のような者に、あるいはひょつとするとりっぱな皆さんの中に一人や二人そういう不心得の方がおありになるのではないか、そういう盲点を突かれたのが今度の録音ではなかったろうか、こういう意味で私は多少自分の神経が麻痺しておったことを率直に認めざるを得ないわけです。そこで最初春日さんにお聞きいたしますが、ああいう録音をとるときには、もちろんその方に十分その趣旨を徹底させて、これこれこうと言ってそれからおとりになるのですか。
  30. 春日由三

    春日参考人 原則的にはおっしゃる通りであります。ある場合には、私ども仕事の方でいえば、取材活動で相手にマイクを気づかせないで取材する方法が一つあります。たとえば今はありませんけれども、上野のバタヤ部落で、甲がいっても乙がいっても丙がいってもバタヤであることに間違いないという場合には、町の声として取材することがあります。しかしこういう大きな大事な問題の場合には、当然それが放送のプログラムの要素になることを申し上げて、御了解を得てとっているわけであります。その証拠に、その労に対して、先生御承知だと思いますが、大したものではありませんが、お払いをしております。それで御了承願いたいと思います。
  31. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで轟さんと久慈さんに伺いたのですが、あれをとられるとき、そんなことはいやです、私たちはそういうものではないのですということで、いいチャンスがあったと思う。あとからアナウンサーが結ばれた解説をお聞きになれば、皆さんとして怒られるのもよくわかります。しかしあの場合にすらすらと御意見を述べておられたために、私は結論的には、第三者の聴取者の今さんの御意見と同じようになる。私の場合ですが、そのときこれはあまりにも女優さんにむごい仕打ちだったなという感じを与えられなかった。それから、今までいろいろの機会に、きょう御熱心に示されたような抗議をもっとその都度やるべきではなかったか。それが自然々々のうちに麻痺されて、今までの皆さん方態度と、今度のNHKの場合のニュアンスと変ったところが出てきたというところに、何か不自然なところを私は感ずるのでありますが、もしあの録音を轟さんや久慈さんが注文されたとしたら、どういうふうに扱われたでしょうか。参考までにお聞きいたしたい思います。
  32. 西山都留子

    ○西山参考人 ただいまのお話ほんとうにごもっともだと思います。もっと私たちの横の連絡がとれておりますれば、今まで雑誌などに変なことを書かれたりした場合、人気税とかなんとかいうことでもって泣き寝入りしないで、もっと強硬に抗議ができたはずであります。今まで俳優協会は弱体でありましたたために、そういうことができなかった。個人々々で、これは人気税だから仕方がないというので結局泣き寝入りをしておったわけでありますけれども、これを機会といたしまして、そういう問題にはみな一丸となってぶつかっていきたいと思います。  それからあの大部屋の女優さんのお話でございますが、どこのどういう女優さんがお話しになったか存じませんけれども、それは女優という職業を本質的に理解していない人にぶつかったというのが大へん残念なことでございます。もちろん私や久慈さんが出ましたら、決してあのようなお答えはしなかったと存じます。
  33. 森山淑子

    森山参考人 もし私があの放送を頼まれましたら、もっと自分の出る番組に責任を持つべきだと思うのです。そしてどういう番組であるかということを検討して、たといそれを受けたとしても、自分のしゃべることをもう少しよく考えていただきたいと、私はそのしゃべった女優さんに対しては抗議を申し上げたいんです。あのしゃべった女優さんの言葉に、からだをそうやって売っていい役を得るということが私たち女優としての一番大切なことではないでしょうかと言っているのです。それが女優として一番大切なことではないのです。そういうところにその女優さんの何か考え違いがあったということと、たまたまそういう女優さんがその放送に引っぱり出されたということが、私たちにとっては大へん遺憾でございます。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは池田さん、今後もう少し具体的に、そういう世間誤解を解くために女優さんの地位を向上させる、それから自粛する、大いに努力する、そのスローガンをどういうふうに生かしていくおつもりでございましょうか。いい機会ですから、具体的に二、三御計画を披瀝していただきたいと思います。
  35. 池田義信

    池田参考人 お答えいたします。今直ちにどういう具体方法があるかと申しましても、私だけで事を決するわけに参らないのでありますが、ゆうべ集まりました席上では、たまたま経営者側の人、それから俳優協会側の人、それから今回のいわゆる大部屋というようなものを包含する労働組合側の人たちが集まったのであります。そういたしまして、映画界としましては、たとえば労働組合側と経営者側が労使の問題だけで——つい現在この問題が起りつつあるときにおいてすら、松竹ではやはりストライキをするとかしないとかいうことを一方では続けていたのでありますが、その委員長がやはりこちらに参りまして、一緒になってこの問題を処理いたしたのでありますが、そのときに、労使の立場というようなものは、ともすればそういう経済面にのみ走りやすいので、こういうときにわれわれはやはり一体となって自分たちの人格を向上し、仕事向上し、そして映画質的向上に努力しなければならない、そういうチャンスに、あるいはそういう協議会とかあるいは懇談会とかそういうものをさっそく作って、そういう方向へ向っていこうではないかしらということがゆうべ八時ごろ皆さんの御意見でございまして、その役はお前がやるべきだというようなお話もございましたので、それは私がやりましょうということで昨晩分れたのでございますが、みんなの気持はそういうところにまで参っておりますということだけを本日は申し上げておきます。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは最後に私、今さんに要望的に御質問して終りたいと思います。  実は私、皆さんにきょう来ていただいたのは、先ほど結論的に今さんがお述べになりましたように、どうぞそんなやぼなことは——こういう言葉は私どもには使いませんけれども、せっかく大事な文化の方面に携わっておられる皆さんですから、いがみ合わないで、何とか円満にやっていただきたい。昔から新聞ラジオ映画は大衆の三大文化財であるということを聞かされております。今度はテレビが出てきましたし、そのうちまた濃縮ウランでも入ってくれば新しいものも出てくるでしょうが、(笑声)要するにこれは大衆文化の殿堂であります。それに従事されている皆さんがこういうことでいがみ合われるということは、私ども第三者は非常に迷惑であります。ましてNHK出場拒否だとか、すぐそういうことでいやがらせをされることは、皆さんの自由ではあるでしょうけれども、せっかく番組を楽しみにしている私ども聴取者は非常に失望するわけです。今度あの番組が出てきても、あのスターの方は出てこられないのかということでは、親もがっかり、子供もがっかり。ですからストライキとかどうとかいうことは伝家の宝刀ですから、あまりちょいちょい抜かないように、なるべく円満にやっていただきたい。実はさっき久慈さんが、私どもの顔を見て、議員さんはこわい顔をしているから、ものが言えないなんて冗談をおっしゃいましたけれども、途中から久慈さんの方がこわい顔をされて、こっちはなごやかな気分でお伺いしようとしたら、久慈さんが柳眉をさか立てて、断じて世界に呼びかけると言われたのでびっくりしたんですけれども、どうぞ久慈さんもあまり柳眉をさか立てないで、こういう問題が出たときに、要するにだれが一番大事なんだというと、見る人、聞く人、読む人です、その人の立場をお考えになって、円満にこういう問題は解決するように努力していただきたいのです。それには今さんのような調停役に立つすいも甘いもかみ分けた方がリードをとらなければいけないのではないか。そこでこれから評論のそういう部門で一役買ってもらうのですけれども、どんなふうにしてその誤解を解くことに努力していったらいいか、御所見もあろうかと思いますから、それをお伺いして私の質問を終ります。
  37. 今日出海

    ○今参考人 どうも並木さんの方がすいも甘いも心得られたお話で、つけ加えることはございませんが、いわゆる社会教育というものは——ここに社会教育局長も来ているようですが、なかなかお役所仕事ではむずかしいので、社会教育がだめだということでなく、社会教育的訓練というものを民衆がまだ身につけていないということに非常に大きな今日の問題というものもあるのじゃないか。世間の物の見方というものが、いわゆる俳優なんかにどっか冷たいものがあって、やっぱり大部屋には変なのがいるんだなという印象を与えたということは、これは放送局ももう少しあったかい目で、そういう悲しき女優も確かにいないとは言えないんで、そういう者ももう少しあったかく見てやるというような態度をとっていただきたいし、また放送局のみならず社会の皆さまが、そういう女優——ここに来ているような出世した女優でなく、出世しない哀れな女優で、実際は身を売ってでも出世したいと思っているのがいないとも限らないのでありますから、一つそういう人にもあったかい目で見てやっていただきたい。私は、こうすればよくなるというような一つの制度や組織ではないと思いますので、どうか議員の皆さまもあったかい目でこの映画というものを見てやっていただきたいと思います。
  38. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 最後に平田ヒデ君。
  39. 平田ヒデ

    平田委員 私は質問と意見を織りまぜまして、ごく簡単に申し上げてみたいと思います。先ほど轟さんのお話の中に、私たちは非常にきびしい訓練を受けつつ、当然休むべき日も休まないで、りっぱな芸術作品を作るべく一生懸命に努力しているのに、売春婦と同様に取り扱われたのは何としても憤激押えがたいものがあると言われましたのは、私まことにごもっともな御意見であろうと思います。ただ一言、先ほどの轟さんのお言葉の中にまことに残念な一言のあることを伺ったのでございますが、それは、この競争の激しい職業、ことにニュース・バリューのある職業については、からだを張る人もあるということは認める、こうおっしゃったのであります。この認めるという言葉が私は問題だと思うのでございますが、これは認めてはならないのであります。これからはこの言葉は取り消されなければならないと私は思うのでございます。決してそうではありません。ごくじみな職業についておられる女性は一生懸命に仕事をいたしております。なりふりかまわずに、ほんとうに生活の問題と取組んでおるのでございます。ただこういうような一般の人が考えておる認めるというこの考え方、いわゆる社会通念が、要するに今度の放送局番組の中に取り入れられたのではないか、こう思うのでございます。私は特に女性としての立場から、私たち仕事の上でりっぱに認められるように努力するということ、そしてその仕事に精進する、そして努力を認められるようにするということが大切なのでございます。仕事によって自分の地位というものをしっかりと確保するということが大切なのであります。男性の方もあまり女性を甘く見られてはいけないと思うのでございます。からだを張るという忌まわしい言葉、これは人の物を盗むよりも、どろぼうすることよりももっと悪いことだ、恥かしいことだという考えに徹しなければならないと思うのでございます。私はこの点については、男性の方も十分に反省されるべきだと思うのでございます。私ども女性の地位を、そして位置をしっかりとこれによって基礎づけるのだということを知っていただきたいと私は切に希望するのでございます。どうかこの点については、大幹部であられる轟さん、久慈さんにも特に指導者として一段の努力をお願いいたしたい。そして私たち女性立場を、基本的な人権を守るという立場から、一緒に手をつないで参りたいと思います。私たちは決して皆さん方の御職業を侮辱的な目でもって見てはおりません。私は映画も非常に好きでございますのでよく見ております。そしてときにはその演技にあるいは芸術的なものに触れて、涙を流して見ているときもあるのでございます。どうか皆さんがよい芸術家となって下さるようにお願いをいたしたいと思います。  それからこれは春日局長さんにちょっと申し上げたいのですけれども商業放送的なことをしてはならぬと規定されていると先ほどのお言葉でございましたけれども、実はそうした仕事も特に女優さん方非常におはでなお仕事になっておるものですから、こういうことのついでに取り上げられて、関心を集められた意図なしとしないのではないかということも、私ふと感じたのでございます。しかし昨日でNHKとそれから映画俳優方々との間も円満に手を握られたのでありますから、どうか仲よく日本文化向上のために努力して下さいますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  40. 西山都留子

    ○西山参考人 先ほど私が申し上げたことを、ちょっと誤解されたらしゅうございますけれども、私はそういうことがあるということを認めると申し上げたのではなくて、大勢の中には、一部にはそういう考えを持っている人があるかもしれないということを申し上げたのですけれども、ちょっとお聞き違いがあったと存じます。もちろん私は仕事によって認められることは、実際の女優としての道だということを確信しております。
  41. 春日由三

    春日参考人 ただいまの轟さんの驥尾に付して申し上げますけれども、私さっき御説明いたしました中で、商業放送的なことはできないということを申しました意味は、広告放送はできないのだ、受信料を全部いただいておるから、たとい聴取率が若干低くても社会教育とか教養とか、学校放送という番組をたくさんやらなければならないという考えに立ってプログラムを立ててあるということを御説明するために、言葉を端折ったわけでございまして、広告放送はできないと御訂正申し上げたらはっきりおわかりかと思いますが、失礼いたしました。
  42. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 最後に小林信一君。
  43. 小林信一

    ○小林(信)委員 この問題はきょうの新聞を見ましても、りっぱに両者の了解のもとに解決しておって、第三者であります一般の人たちも非常に喜んでおるわけでございます。従ってきょう各委員も、円満な解決を期待して実はこの委員会皆さんに来ていただいたわけでございますが、すでに委員会を開いて皆さんにいろいろお聞きする目的がなくなっておるわけでございまして、私もそういう心境でありますので別にもうこれ以上質問をする理由もなくなっておるわけでございますが、ただいまお話を聞いておりまして、一つだけ残念な点がございますので、私はその一つ立場から皆さんの心境をお伺いしたいのでございます。それは俳優側とそれからNHK側と、それから先ほど来第三者の立場からという、第三者の問題でいろいろお話がありましたが、一つ残されている問題があるのでございます。それは貞操を売って生活しなければならない方たちの問題でございますが、それらの問題が少しも論議されておらないわけでございますが、その点から私は一つ皆さんにお聞きしたいのでございます。  まず第一番にNHKにおきましても、また俳優皆さんにおきましても未亡人あるいは事実売春婦として生活している人たち、あるいは生活苦からそういうことを余儀なくされる人たち、こういう人たち社会に非常に多いのでございますが、そういう人たちの生活を題材としてNHKでも放送なされていることがあると思います。また俳優皆さん方がその主役を買っておやりになっておられることがあると思うのでございますが、幸いおいでになりました轟さんあるいは久慈さんから、そういうお役をやっておられたかどうかをお聞きして、そうしてお役をおやりになった場合の心境というものを私はお聞きしたいと思う。またNHKといたしましてもそういうものを題材にいたした場合、何が目的でそういうものを題材にしているか、まずそれから私はお伺いして、そういう生活をしなければならない人たち立場から皆さん一つお考え願いたいと思います。
  44. 春日由三

    春日参考人 お答え申し上げます。非常に勉強させられます御意見でございまして、実は冒頭で御説明申し上げましたように、あのプログラムの結論を私ども売春等処罰法という非常に狭めた特定対象にしぼって、それを禁止するだけでは、貧困に根ざすところの社会悪としてのからだを売るということは解決できないのではないかと考える。そのためには今先生の言われたようにいろいろの方法があるのであります。あの場合には要するに社会福祉制度と申しますか、それが完備していく必要があるのじゃないか。いわゆる比較的普通の生活をしている人たち、その人たちが今社会の落伍者と申しますか、そういう人たちに対するあたたかい思いやりが要るじゃないかというようなことを実は訴えたくて、結論的にそういうようなアナウンスメントなども入れてあの番組を結んでいるわけであります。今後ともあるいはドラマの形式にいたしましても、あるいはまともな社会福祉の時間にいたしまして、あるいは勤労婦人の時間にいたしましても、私どもは私どもの持っているマス・コミュニケーションの機会を通じて、貧困に根ざす社会悪を絶滅するところの啓蒙運動を続けて、そういう仕事を続けて参りたいということをもってお答えにかえさせていただきたいと思います。
  45. 森山淑子

    森山参考人 ただいまの御質問によりまして、私はこれまた偶然かもしれませんが、先日封切られました「渡り鳥いつ帰る」という写真で、鳩の街の女をやりました。またこういう役は私にとって初めてでございますので、鳩の街にたびたび見学に行き、私の役のモデルになる方ともお会いして、またどういう希望をこの世界に持っているのか、そういうようなことをずいぶん質問して聞いたのです。たまたま私の役は、子供があり未亡人で母親もかかえて生活に苦しめられて、ああいう社会に落ちていった役でありましたので、私はそういうモデルを探して、その方とお話いたしました。一体この社会にいて何に希望を持っているのかとお尋ねしたら、子供と一緒に暮すことだというお話だったのです。私はそのときは、自分の役に対する理解力を強めるためにそういうことをお聞きしたのですけれど、その写真をとっているうちに、自分がその役になり切るというか、掘り下げていくつもりが、よく考えてみますと、同じ女に生れながら、私たちは今度の売春取締り法案の、淫売婦の対象として、私たち女優が侮辱されたということに、たいへん怒りを発したのでございます。ですけれど、同じ女に生まれたそういう女の方たちが、侮辱を与えられているということに対して、私たちのように怒ることもできず、ほんとうに生活のためにあすこまで落ちていっているということが、私にとってはとても悲しいと思います。そしていろいろあの社会の方たちが書いている本を読みますと、今まで食事もできずに何日間も歩き回っていたとき、初めて親子どんぶりを与えられたという、ある女の方の手記を読みまして、これがその人たちを落していく何か一つのきっかけになったような気がするのです。ですけれど私は、そういう世界に落ちていく前に、それだったらもっときたない格好をしても、何をしても、もっと違う道で立ち直っていけるのじゃないかということを、私があの役をやってみて、その役の上から考えまして、強く感じたのでございます。
  46. 小林信一

    ○小林(信)委員 つまらぬことをお聞きしたようでございますが、これはやはり芸術に生きる者には共通しての一つの苦しみであって、こういうふうなことがたまたまありましても、——ただこれが単に自分たち社会的地位の問題だとか何とかというようなことだけでもって、今回の問題が主として論議されておるのですが、もっと掘り下げて皆さんがこの問題を研究されるところに、ほんとう皆さん芸術家としての社会的な信頼というものが生まれたのじゃないかと私は思うのです。不幸にして、自分たちがそういうことを取り上げられたとか、あるいはNHKがそれを取り上げたとか取り上げぬとかいうふうなことでもって終っているのですが、両者とも、そういうふうなものを題材にして生きていくところに皆さんの生命があるわけなんです。ここ一週間の間の皆さんの論争を聞いておりまして、そういうふうなものはただ不純なもので、私たちは大きらいだ、私たちにはそんなことは関係ないのだというふうな印象を与えられているのですが、その不純の中に自分たちが生きていく、そういうことを、社会の人たち皆さんの芸を通して、あるいは放送局のいろいろな放送を通して聞いているのじゃないか。もしああいうふうな論争を簡単に伺っておれば、今後映画を見る場合に、久慈さんなりあるいは轟さんなりが貞操を売る未亡人になったりあるいは戦争の未亡人になったりした場合に、あの人はやっぱりそういうことを実際に体験しているのじゃないかというふうな簡単なことに終ってしまうので、芸道に生きる人としては、この問題を単に自分の問題でなくて、もっと社会的な問題として取り扱っていただきたかった、こういうふうな感がしてならないのでございますが、とにかくこうした者の存在するところを喜ぶ人間もございますし、それを利用していわゆる売春の扱いをして生きていく人間もある、あるいはそういう欠陥を生むところの政治の責任もございます。こういうふうなものが取り上げられるところに、NHKがこれを通して社会啓蒙をわれわれはしておるのだというその立場も明確になるし、そこに生きているわれわれは、どんな批判があろうとも、芸術家というものはそんな批判は度外視していくのだというふうなことがほしかったと思うのです。小説家の人たちがいろいろなこういう事例を小説に取り扱って参りますと、その本を読む人から、その小説家がそういう生活をしているのではないかというふうな批判を受けながらもりっぱに生きていくと同じように、皆さんもそういう道を踏んでいただきたかったと思うのですが、残念ながらNHKの方におきましても、単にこの個所だけに問題を置いておったということは、本来の使命を見失っておったのではないか、もっとそういう点をはっきり、社会の人たちが納得いくように扱ってほしかったと思うのです。また芸をもって苦しんでおられる俳優の方たちも、そこにもう少し社会人に理解していただくような啓蒙がほしかったと思うのですが、そういう点につきましてもう一度御両所から、今度は俳優の方では轟さんに、NHKの方では局長さんにお伺いいたします。
  47. 春日由三

    春日参考人 先ほど申し上げましたように、私どもやはり今先生のおっしゃいますような低いところで、いわゆる抗議であるとかあるいは紛争を来たしているということであってはならないのでございまして、おっしゃられるように、それを一つ社会啓蒙番組として扱っているわけでございますし、今後それをよりひんぱんに、よりいいものを扱って、いわゆる世の中を、日本の国をよりよくするための努力を続けなければならぬということを痛感いたしております。昨日も実は両者協議の際に、いわゆる抽象的でございますが、私ども今後双方協議の上に、日本の文化の向上発展のためにお互いに協力し合いたいというふうなことを申しておりますのは、NHK側映画関係方々で、マスコミの機関というものを世の中をよりよくするために使いたいというふうな、いわゆる先生の今御指摘になったような善意を盛り込んで、それで国民全体と申しますか、聴取者全体と申しますか、あるいは映画をごらんになる全体と申しますか、そういう方々へのお約束にしているわけでございまして、この点何とぞ御了承願いたいと思います。
  48. 西山都留子

    ○西山参考人 先ほどこちらの委員さんは、そのような問題がいろいろ今までにあった場合になぜ一々抗議しなかったか、そういう抗議しなかったことが、私たち世間の人たちから誤解される原因になっているじゃないかということをおっしゃいました。ただいまおっしゃったのは、そういうような問題は超越して自分仕事に邁進しろというようなことをおっしゃいました。やっぱりその人、人によって心がまえも違うし受け取り方も違うと思いますのです。私は、ただいま売春婦の話が出ましたのですけれども、昔「肉体の門」という写真で関東小政という女をやりました。そのときに考えましたのですけれども、その女が何かというと、自分がこんなになったのは世間が悪いのだ、世間がこうさしたのだと二言目に言うのです。ですけれども、私はどうしてもそれがそれだけだとは思えなかったのです。もちろんそういう女を作り出した社会情勢というものは悪いには違いありませんけれども、そういう社会情勢の中にありながら、やっぱり正しく生きている人は生きているのであって、まともな職業についている人はついている人としてあるので、やはりそこにはもちろん女の虚栄というようなものもございましょうし、また楽をして食べていきたいというような気持もあるんじゃないかと、これは大へん失礼な言い方ですけれども、そういう心がまえもあるんじゃないかと思うのです。人間が持って生まれたままの、つまり肉体で、その肉体をそのままで——これ何と言ったらいいのかわかりませんけれども、そのままのもので生きていくということは大へん私は恥かしいことだと思うのです。そこには何の訓練もないし、また人間としての陶冶いうものもございません。ですからこれはやっぱりその人間々々の心がまえということが大切なんじゃないかということを申し上げたいと思います。そんなことでよろしゅうございましょうか。
  49. 小林信一

    ○小林(信)委員 私の意見だけ申し上げて終らしていただきます。そんなことを超越しろという問題ではございません。とにかく売春処罰法規というものは、これは今日の社会情勢を見るときに、実際はこれは政界ばかりでなくて、一般社会の大きな問題であって、取り上げざるを得ない状態になっているわけですが、しかしその陰にあるものは何かというと、それは今轟さんのおっしゃるような、ほんとうにりっぱな人生観を持たない人たちがあって、好んでやるような人があるかもわかりませんけれども、私の見るところでは、戦争未亡人等の生活困窮状態を見ると決してそうではないと思うのです。そういうことを私は申し上げたのでなくて、あなたたちはこういうものを取り上げて、そして社会の不純なものに対して抗議をしているところに生きているわけなんです。そこに芸術を生かし、社会、文化に貢献するというふうなところがあるわけなんです。ところが今度のような問題の場合も、やはりその根本の売春処罰法という問題に触れるところに、あなたたちのもっと社会的な責任があったのじゃないか、こういうことを私は言っているわけなんですが、今のような状態でいれば、そういうほんとうにこれをしなければ食えないというような生活にある人たち、いわゆるあなたたちが材料にする人たちから——極端に申しますよ。何だ、あの人たちは、おれたちのことを材料にして食っているのじゃないか、ところがこういう問題が出れば、おれたちのことはほったらかして、自分だけの問題でお互い立場をきれいにしようというだけでもって問題にしておるという抗議も、口にはいたしませんけれども、あるのじゃないか。そういう社会的な立場というものもあなたたちは考えていくところにお互いの使命が遂行されるのだ、それが芸術の道ではないかというふうに私は考えて、皆さんに、売春をしなければならない立場の人たちから抗議を申し込んだわけでございます。以上でございます。
  50. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 以上をもって質疑を終ります。参考人方々には長時間きわめて有益な御意見の御開陳を賜わり、厚くお礼申し上げます。  本日はこれにて散会し、次会は明五日午前十時より開会いたします。     午後零時三十二分散会