○大戸
説明員 逐条につきまして御
説明をさせていただきます。この条文の中心的な条文は、第九条の二と第十一条でございますが、その他の条文は簡単に、第九条の二はややこま
かく説明いたします。
まず最初に九条の二を一項ずつ朗読しながら
説明さしていただきたいと思います。
第九条の二
政府は、第二条の
規定により売り渡す生糸として
輸出適格生糸(輸出に適する種類、繊度及び品位の生糸で省令で定めるものをいう。以下同じ。)を保有する必要があるときは、
農林大臣の
指定する者を相手方として、その者が、
農林大臣の定める
条件に従い
買い入れて
保管する
輸出適格生糸のうち、その買入後
政令で定める期間を経過してなお
保管しているものを
買い入れる旨の
契約を締結することができる。
この一項は、昨日来局長からしばしば申しましたように、最低
価格すなわち現在は十九万円でございますが、十九万円の最低
価格と二十三万円の
最高価格を維推するのがこの
繭糸価格安定法の一番重要なねらいでございますが、現在
政府においては一俵も手持ち生糸がございませんために、糸価が非常に暴騰いたしましたときに、これを二十三万円で売り出して防止するということができないのであります。そこで
政府が糸価が暴騰しましたときに売り渡すことができる生糸として
保管する生糸をこの
規定によって
買い入れるわけであります。ただこの場合、内需、輸出をも含めた生糸一般の値段を維推するためには、相当多量の糸を
政府が持たねばなりません。この九条の二でねらっております保有生糸は、糸価が暴騰しましたときにも、少くとも輸出だけは
政府の手持糸を放出することによって二十三万円の
最高価格を
維持できるようにということで、輸出に適する生糸のみをこの第九条の二で
買い入れんとしておるわけであります。それが
輸出適格生糸でございまして、カツコの中に書いてありますように、輸出に適する生糸として
農林大臣が
指定した生糸に限るわけであります。たとえば現在十九万円の最低
価格の
買い入れは、相当低額の品質の悪い糸を買っておりますので、これを買います適格生糸の糸と申しますと、たとえば二一中については三A、二A、Aというところで、BCの糸は買わないというような格好でございます、その糸を買います場合、
政府がかりに一万俵の
輸出適格生糸を持ちたいからということで、いきなり
政府が一般市場に買い出しますと、その
政府の買い行動によって糸価がはね上り、糸価に悪影響を及ぼすということが当然考えられるわけであります。そこで
政府が直接市場から生糸を買わないで、
農林大臣の
指定する者が一般市場と申しますか、
製糸家から買いまして、一定期間保有した後、その保有期間中に生糸の値上りが起らなかったというような場合、一定期間の後に始めて
政府が
買い入れるということにしておるわけであります。そこでこの
指定する者につきまして、午前中いろいろ御
質疑が出たのでありますが、それについては後ほ
どもうちょっと進めてお話しするとして、その
指定する者が
農林大臣の定める
条件で
買い入れて、その
買い入れを
政令で定める期間を経過してなお保有しておるものというこの
政令で定める期間というのは、大体六カ月を予定いたしておりますが、その
指定する者が六カ月間持った糸に限って
政府が買うということになっておるわけであります。その場合
政府が
買い入れますところの
買い入れ価格は二項に書いてありますので、まず
買い入れ価格を先に申しまして、それから
輸出保管会社の方へもう一度戻りたいと思います。
前項の
規定により
契約を締結する場合における
政府の買入れの
価格は、
政令で定めるところにより、海外における生糸及び主要繊維の市価並びに物価その他の経済事情を参酌して、
農林大臣が定める。
政府が
輸出適格生糸を持つために最低
価格ではなくて
買い入れるわけですが、その
政府買い入れ値があまりに高いときには、それによって市場一般の値段がそこまでつり上って参りまして、そのためにかえって輸出を阻害するということになりますので、
政府が
買い入れます
価格というのは、最低
価格、すなわち十九万円よりは高くてもいいのでありますが、海外に売れ得る
価格というところで
買い入れることが必要でございます。そこでこの
買い入れ価格の決定には、もっぱら海外におきますところの生糸の市価を重点におきまして、それから海外における主要繊維、競争繊維の
価格、特価その他の事情を参酌して
農林大臣が定めるのであります。午前中局長から申しましたように海外、特にアメリカにおきましては、四ドル五十セントならば大体いつでも買えるということが言われておりますので、大体この四ドル五十セントくらいを見当にとって、日本の糸価に直してみますと、二十万円くらいならば大丈夫だろう、これはもちろんこの
法案が成立いたしましたならば、
繭糸価格安定審議会に諮問してきめるわけですが、大体二十万円程度が妥当ではないかと今のところは考えておるわけであります。
そこで今度は一項に戻りまして、この
指定する者、すなわち
保管会社が一般の
製糸業者から生糸を
買い入れて
保管するわけでございますが、これは六カ月
保管いたしますので、
政府へは、今申しましたかりに
政府へ二十万円で売り渡すというように二十万円という
価格がきまりましたならば、
会社は六カ月間
保管するわけですから、その二十万から六カ月間の金利、倉敷、
経費を差し引いた額をもって一般
製糸家から
買い入れるわけであります。その
買い入れました糸を六カ月間持って、二十万円で売るのでありますから、
会社としてはこの間に利益はないわけであります。そこでもう
一つ、この
会社の
買い入れについて重要なことは、この
製糸家から
会社が糸を買いますときには、これに売り戻し
条件、
製糸家の方から申しますと買い戻し
条件がついておるわけでございます。すなわち
製糸家はこの
会社に十九万円で糸を売りますが、その
会社の
保管期間、すなわち六カ月以内ならばいつでもこれを買い戻すことができるという
条件をつけて
会社に売るわけであります。従いまして
会社に十九万円で売りましたが、その後六カ月以内に糸価がずっと上って参りますと、その
会社に売った
製糸家は糸を、かりに三カ月後にそういう
状態が生じて買い戻すといたしますれば、三カ月間の金利、倉敷が大体月に二千円かかるとしますと、十九万六千円で買い戻して一般市場へ売ることができるわけであります。従いまして
会社がこの糸を買いまして、持っておるうちに値上りがなかった場合には、この買い戻しがこないわけであります。買い戻しがこないままに六カ月間たってしまいますと
会社はこの糸を
政府へ、先ほど申しました二十万円という
価格でかねての
契約に従って売るわけであります。従って値が上ればこれは売り戻しされて市場へ放出されていくのでありまして、この点で市場にまず悪影響を、
政府の買いによって及ぼさないというのがねらいでございます。
さらにもう
一つの
——これはこの
法律直接のねらいではございませんが、そのようなことによりまして、糸価は一般に十九万円という最低線までは下落せずに、ある程度それよりも高い、
政府の二十万円買い上げというような線に近いところでやや安定するのではないかというようなことも、この効果として考えられるわけであります。
それから
会社のことにつきましては、けさほど配付いたしました
日本輸出生糸保管株式会社案というものがございますが、これは別に蚕糸局で作った案でもなく、大体この
法律ができる場合を予想しまして、
製糸業者を中心として現在考えられておる案でありまして、私
どもも大体この案のようなことなればこの
法律案の
趣旨に適合しておると考えておるのでございます。お手元にあります中で、今私の申しました
会社が
製糸業者から生糸を
買い入れます場合、及びそれに売り渡す、つまり買い戻し
条件に従って売り渡す場合のことがその
会社の
業務というところに書いてございます。その一として、「輸出生糸の買入」という項がそれでございまして、今申しましたように、
製糸家から申し込みがありますれば、その糸を、今の設例で申しますと、十九万円で買って
保管をするわけでありまして、それを売り戻し
条件によって売り戻す場合がその一、二、三、四の算用
数字の四の方に書いてございます。しかしながらこの六カ月間
保管をしております間に糸値がずっと上りました場合、当然その
会社に売った
製糸家は、先ほど申しましたようにそれを十九万円に金利、倉敷を加えた額で買い戻しまして、それを市場に当然売るわけでございますが、もっと高くなるのを待とうというような投機的な考え方から、長く値上りを待っというようなことは許されないことでありますので、生糸の値段が二十三万円、すなわち
最高価格までにいきました場合には、
会社はその元売ってきました
製糸業者に対して、もう糸値が二十三万円しておるのであるから買い戻せということを
要求いたしまして、これを市場に出すわけでありまして、そのものが買い戻しをやらない場合は、
会社自身がこれを二十三万円で処分するわけであります。なお今朝この
会社について、
独禁法との
関係の御質問がございましたけれ
ども、今申しましたように、この
会社は店を開いておりまして、
製糸業者からその十九万円なら十九万円という値段での売り渡しの申し込みがあればこれを買いまして、買い戻しの申し入れがありますればこれを売ります。六カ月たてばこれを
政府にそのまま売るという、全く機械的な操作だけをやる
会社でありまして、この
会社自身がみずからの意思をもって、今糸を買おうとか、今糸を売ろうとかというようなことは全然しない
会社でありまして、その
意味において、
会社には何ら自分の判断によって糸値を上げ下げするとか、売りの出動、買いの出動ということはなく、もっぱら受動的に受け身に働く
会社でありますので、この
会社自身につきましては、
独禁法の問題はないわけでございます。ただこの
会社を利用して
製糸家が、一時一万俵なら一万俵この
会社にタナ上げをして値上げをはかろうというような共同行為が売手の方の側にあった場合には、
独禁法にかかるわけでありまして、これはこの
会社自身がいかなる
性格であるかというような点には
関係がなく、
独禁法それ自身の問題として考えられるわけであります。
次に第三項でございますが、その第三項をざっと読みます。
政府は、第一項の
契約に基く買入の結果保有する
輸出適格生糸の数量(第二条の
規定による買入又は第十二条の二第一項の
規定による加工若しくは交換の結果保有している
輸出適格生糸がある場合には、その数量を含む。)の合計が生糸の輸出を確保するために必要と認められる一定数量をこえることとならず、かつ、その
輸出適格生糸の数量の合計に他の
政府保有生糸の数量を加えた総数量が
農林大臣の定める生糸の
価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量をこえることとならないように、同項の
契約を締結するものとする。
ついでに四項。前項の一定数量は、
政令で定める。
この三項の
規定は、
政府が第九条の二によりまして、輸出についての高値押えのために保有する
限度をあらかじめ
政令できめておきまして、その
範囲内だけで
政府は九条二の特別
買い入れができるというふうにしておるのでございます。これは輸出確保のためには、相場が上りましたときに、ある一定期間を
政府の持っておる糸を二十三万円で出しておれば、大体一月ぐらいたてばそういう
状態がおさまるでありましょうから、そう非常に大量
政府がこの
輸出適格生糸を持っておる必要はなかろうというので、まずその数量を押えておるわけであります。そうしてその数量の
範囲内で、
政府はこの第九条の二による特別
買い入れをやってよいということでございます。もっとも現在の場合を想定いたしますと、この数量は大体
政令で一万俵程度が適当であると考えておるのでございます。かりに一万俵と
政令でこの数量を押えて
指定いたしました場合に、現在のように一俵も
政府が手持ちを持っていないときですと、今から始めましても一万俵までは
政府がこれによって第九条の二による
買い入れができるわけでありますが、それよりも先に糸値が一度下りまして、十九万円による
政府の下値
維持のための買入、すなわち現行法の
規定によります最低
価格による買入が行われまして、この最低
価格による
政府買入がまずありまして、かりに
政府が相当数、一万俵なり二万俵持ったといたします。その中に輸出に向く、
輸出適格生糸がありました場合には、もう
政府は先ほど申しました一万俵の適格生糸をこの特別
買い入れによって買う必要はありませんので、すでに
政府が他の
規定によって
買い入れた生糸を持っており、その生糸の中に
輸出適格生糸がある場合には、この
政令で定めておりますところの一万俵から、そういうすでに
政府が持っている
輸出適格生糸の数量は差し引くという
規定でございます。なお
政府が糸を持ちます場合は、現行法では十九万円による
買い入れだけでございますが、今度後に御
説明いたします十一条によりまして、
政府が繭を買う場合もあり得るわけでございまして、
政府が繭を買いまして、その繭を
政府が委託加工なり交換によりまして糸にいたして保有しているものがありまして、その
政府が保有している糸の中に
輸出適格生糸がある場合には、同じくその第九条の二で買い得る数量から差し引くわけであります。
五項の
第六条の
規定は、第二項の場合に準用する。
こう書いておりますのは、
政府がこの特別
買い入れ価格をきめましたときにはこれを公示するということを
規定しているわけであります。
第九条の三は、現在
政府が自分の持っております生糸を売り渡すことのできるのは時価が二十三万円、すなわち
最高価格に達しているときに二十三万円で売るというだけが現行の
規定でございまして、そのほかに例外といたしましていわゆる整理売却、
政府が持っている糸が悪くなったとかいうときに時価で売却する
規定はありますが、原則としては
最高価格による売り渡しだけが現在の
規定で許されているわけでありますが、今回の第九条の三によりまして、
政府が将来相当の糸を買うことが予想されるわけであります。そこで
政府が第二条の
規定による
買い入れ、すなわち最低
価格の下値支持のための
買い入れ、あるいは第十二条の二の第一項の
規定による加工もしくは交換によって保有する生糸、すなわち繭で
政府が買いまして、それを糸にしたもの、それからそういうふうにして
政府が持ちました生糸が非常に多量になりまして、
最高価格を
維持するために、つまり二十三万円
維持のために、
政府が持っていることを必要とするその数量を越えて
政府がかかえ込んだという場合には、その
最高価格を
維持するに必要な数量を越える
部分は
最高価格でなくとも売り渡すことができるということを
規定いたしているわけでありまして、これによって特別会計の
資金繰りに弾力性を持たせるということになるわけでございます。しかしながらこの
最高価格二十三万円を
維持するために
政府がどの程度の糸を持っておればいいかというその数量は、なかなか算定がむずかしいのでございまして、現在今度の糸価安定特別会計法の
改正を別途
提出いたしておりますが、それでは大体下値押えのためには十九万円
維持のためには三万俵持っておれば大体いいのではないかという考え方をいたしておりますが、下値押えのために必要な数量を三万俵といたしました場合には、上値押えのためには何万俵持てばいいかということは、なかなか理論的には困難でありますが、まずこれよりはやや少くてもよいのではないか、三万俵よりも少くていいのではないかというように考えられるわけでございます。しかしながらこれはいずれ
政府が相当糸を持ちまして、こういう
事態になったときにきめればよいのではないかと思いまして、この
法律ができましても、まだ
政府が一俵も持っていない段階におきましては、これは別に数量をきめる必要はないのではないかと思っております。しかしながら
政府が生糸を必要以上に持ち過ぎた場合、売ります場合に、
政府の売り出しによりまして時価をくずしては困るのでありますので、時価がある程度高いときに限ってそういう
政府の持ち過ぎた生糸を売ることができるように二項で制限いたしております。すなわち
政府が糸を持ち過ぎまして売り渡す場合、今申しました場合は生糸の市価つまり市場
価格が生糸の
生産費以上になるときに限って売り出すことができるという
規定でありまして、ここで「繭の
生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額」というのが生糸の
生産費でございまして、現在の最低
価格十九万円、
最高価格二十三万円ときめる基礎となっている
生産費で、本日お手元に配付いたしました
繭糸価格安定審議会に
提出しました
最高価格及び最低
価格の算定に関する
資料をごらんになりますと、本生糸
年度に適用されております最低
最高価格の基礎となっております
生産費がそこに出ておりますが、二十九年の
生産費に取ってみますと、生糸一俵の中に占めております繭の
生産費が十六万八千四百三十六円、それに対して繭の取扱い手数料、それから
製糸家の
生糸製造販売費を加えました二十二万五千五百五十三円という
数字が出ておりますが、この
数字がすなわちこの第二項に申しておりますところの「繭の
生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額」を加えた額であります。このように必要以上の糸を持った場合には売り渡すことができ、かつ糸の市場
価格が
生産費をつぐなう額以上であるときには売ることができるのでありますが、その売る方法につきましても、かりに五千俵余剰生糸を持っている、そこで五千俵売るときにも、一時に市場に放出するということは避けまして、何回かに分割して売る、あるいは何カ月か前から予告しておいて売るというような方法を講じて、売り渡しによって生糸の時価に悪影響を及ぼさないようにしなければならないということを第三項に書いているのでございます。「第一項の
規定によりましては、生糸の時価に悪影響を及ぼさない方法によってしなければならない。」というのがその
規定でございます。
以上が今回の
改正の中の生糸の糸に関するものでございまして、次の第十一条が繭に関する
規定でございます。この繭に関します
規定はすでに局長から御質問にお答えしましたように、現在の
繭糸価格安定法の生糸の値段は最低になったら十九万円で買い、最高になったら二十三万円で売るという十九万、二十三万を
維持するということを中心といたしております。そこで糸値が十九万円に支持されるわけでありますが、その場合に果して繭値が十九万円見合いに支持されるかどうかということについては保証がないわけでございます。そこでこのことは現在の現行法が制定されましたときにも当然考えられたことでございますが、現行法ではこの点は非常に抽象的に
規定いたしております。現行法の十一条でございますが、「
政府は、第二条の
規定による生糸の買入によってもなお繭の
価格の異常な低落を防止することができないと認めるときは、繭の
価格の異常な低落を防止するため必要な
措置を行うものとする。」という抽象的な
規定を置いておるにとどまるのでございます。そこで今回はこの
規定をもっと具体的に、かつ実効が伴いますようにしたものであります。
第十一条を朗読して御
説明申し上げます。
第十一条
政府は、第二条の
規定による生糸の買入によっては、繭の
価格が、
政令で定めるところにより、その
生産費の額を某準とし、生糸の最低
価格及び物価その他の経済事情を参酌して
農林大臣の定める額を下ることを防止することが困難であると認める場合において、
農林大臣の
指定する
農業協同組合連合会が、省令で定める手続に従い
農林大臣の承認を受け、
保管及び売渡につき
農林大臣の定める
条件を遵守し、繭(くず繭その他省令で定める繭を除く。以下この条において同じ。)の
保管をしたときは、
予算の
範囲内において、
政令で定めるところにより、その
保管に要する
経費につき、
補助金を交付することができる。
第十一条の一項は、農民
団体の行います乾繭の共同
保管に対する
補助金交付の
規定でございます。元来
補助金交付だけでありますれば、必ずしも
法律事項ではないのでありますが、こういう
補助金を受けて、こういう計画に基いて
保管をしたものは、次に第二項で
政府が最後には買うことができるという
規定に先だつ
規定として、これを置いておるわけでございまして、まず第一段階においては、農民
団体の自主的な共同
保管によって繭価を
維持する、それで
維持できないときは、第二段階として第二項によって
政府が最後は買い上げるというような仕組みになっておるのであります。そこで条文について申しますと、「
政府は、第二条の
規定による生糸の買入によっては、繭の
価格が、
政令で定めるととろにより、その
生産費の額を
基準とし、生糸の最低
価格及び物価その他の経済事情を参酌して
農林大臣の定める額を下ることを防止することが困難であると認める場合」こう書いておりまして、糸値が下りました場合に、大体糸を買って、糸を十九万円に
維持すれば、繭値もそれに見合って
維持されると一応考えられるが、しかしながらそれだけではなお繭の
価格を
維持できないときにはというのが、この「第二条の
規定による生糸の買入によっては、」と、まくら言葉と申しますか、前に置いてあるわけでございまして、必ずしも
政府がまず糸の
買い入れをやらなければ、この繭の
措置をやってはならないというふうに読むものではなく、これは
政府が生糸の
買い入れをまだやっていない段階においても、糸値が相当安くなってきて、そのために繭値が下ってくるというときには、この
措置を行うことができるわけであります。そこでその場合「繭の
価格が、
政令で定めるところにより、その
生産費の額を
基準とし、生糸の最低
価格及び物価その他の経済事情を参酌して
農林大臣の定める額」と書いてございますが、ここで申します繭の
生産費の額を
基準とするという場合の繭の
生産費の額は、先ほど申しました現在の十九万円、二十三万円を算出いたしますときの
基準となっておりますところの繭
生産費でございまして、お手元に配付してございます
資料の、たとえば
昭和二十九年の繭
生産費について見ますと、一貫当り千六百八十一円でございますが、この繭の
生産費を
基準とし、生糸の最低
価格を参酌することになっております。と申しますのは、生糸の最低
価格というのが十九万円、すなわち
政府買入
価格でございますが、生糸が十九万円に下落しております場合に、もし
製糸家が自分の
加工費をまるまるとろうといたしますれば、それだけ繭値が下に定まってくる。それでこの場合には、糸の安いことの犠牲が養蚕家にだけ及ぶわけであります。そこでこの
最低繭価をきめる場合における考え方は、そのように糸値が安い場合には、その安い負担は
製糸も養蚕もともに負うべきである。従ってかりに十九万円になっておりますときには、
製糸の方も十九万円というのが、元来繭の
生産費と生糸の
加工費を加えた額の大体八割五分でございますから、十九万円に糸値が下っておりますような場合には、
製糸家も自分の
加工費の八割五分でがまんしろ、一五%の赤字は耐えろ、同時に養蚕家も一五%は犠牲を負うというふうにいたしたい、こういうふうに考えておりまして、そこに
最低繭価の線を引くわけでございます。そうしてその
最低繭価というものを
農林大臣が定めておきまして、それよりも繭値が下るおそれがあると見込まれます場合には、養蚕農民の
組織いたします
団体が、乾繭共同
保管を行うわけでございます。これは大体全国を地区とする
団体を
指定してやった方が、全国的な繭値を支持するという
意味で、その方が大体よいと思っておるのでございますが、そういう協同組合の
連合会が省令で定める手続に従いまして、
農林大臣の承認を受けて
保管をすることになっております。この承認はなぜ必要かと申しますと、これにつきましては本条によります
補助金が交付されるわけでございますので、その
補助金をもらう共同
保管の前提といたしましては、あらかじめ
農林大臣の承認を受けて、どこそこに幾らどういう繭を
保管するということを明らかにして承認を受けておくことが必要なわけでございまして、そういう承認を受け、それから「
保管及び売渡につき
農林大臣の定める
条件を遵守し、」とございますが、この場合の
農林大臣の定める
条件と申しますのは、本来この
保管は
最低繭価維持のための
保管でございまして、繭値が下ろうとしたときには一部の繭をたな上げすることによって、自余の繭は
最低繭価あるいはそれ以上の
価格で、
製糸家に
団体交渉によって売り込もうというわけでございますので、この隔離されて共同
保管をされました繭が、その後糸値も上りあるいは
製糸家の方でこれを買い得る
状態になったために、当初の
最低繭価を割るおそれがあるために
保管したのですが、
最低繭価以上に売れ得るというような
状態になったときには、これは売ってもらうというふうに考えて、そういう
条件をつけるわけでございます。そうしてそう
保管をいたしましたときには、その
保管につきまして
補助金を交付することができるのでありまして、その
保管に要する
経費と申しますのは、主として金利それから
保管料あるいはその乾繭所まで持っていきます運搬料というようなものを考えておるわけでございます。こうやりまして養蚕
団体が
保管をするのでございますが、これは大体普通の場合には昨日御質問が出ておりますが、この場合の養蚕
農家の受け取る金の問題でございます。これにつきましては昨日も局長から御答弁いたしましたように、大体
最低繭価にほぼ近い額は
融資できる、こういうふうに考えます。そこで養蚕
農家は一応この繭を
保管することによって、
最低繭価に近いところの繭代は手に入れることができるわけでございます。その後繭を持っておりまして、
補助金の交付を受けてずっと持っておりまして、
最低繭価よりも高く売れました場合には、当然その高く売れました
部分だけはまた養蚕
農家に戻っていくわけであります。このようにして、一定期間
保管をいたしましても、通常の場合は大体長くて六カ月も
保管しておれば売れると思うのでありますが、それでもなお売れない場合は、最後に
政府がその繭を
買い入れるという
規定が次の二項になるわけでございます。
2
政府は、前項に
規定する
農業協同組合連合会が同項の
規定により
保管する繭を同項の
農林大臣の定める
条件を遵守して売り渡すとしても、
政令で定める期日までにはその全部を売り渡すことが困難であると認めるときは、その
農業協同組合連合会を相手方として、その者が引き続きその
条件を遵守する場合には、その繭のうち
政令で定める期日を経過してなお
保管しているものを
買い入れる旨の
契約を締結することができる。非常にごたごたとした書き方にはなっておりますけれ
ども、要は、この農協が
保管をいたしまして、有利に販売することを非常に努力いたしましたが、どうしても
政令で定めるある一定期日までにはその全部を売り渡すことができないというふうに認められる、すなわちそういう場合はおそらく糸値が非常に悪く、従って
製糸家もなかなか最低
価格で
買い入れないというような非常な不況の場合であろうと思われるのでございますが、そういう
状態に至りました時には、
政府はその
農業協同組合を相手方としてその繭を
買い入れる旨の
契約を締結することができるわけでございます。そこで
政令で定める期日までにはというその期日は、大体十二月の末を予定いたしておりまして、つまり
春繭で
保管をいたしました場合を予想いたしますと、その後初秋、晩秋も出、その年の繭が全部出て、繭値あるいは糸値の需給
状況等も判明してなお売れないというような時期でございますので、この繭はもう持っておっても十二月の末までには売れるまい、こう見込まれた場合には、
政府は
契約を締結することができるわけでございます。そこでその
契約を締結いたしましてもなお
保管団体は有利に売れるチヤンスはねらうわけでありまして、有利に売れるときは売っていいのでありますが、
政府と
契約してからもなお有利に販売することに努力したけれ
ども、
政令で定める期日を経過してなお売れ残った、この場合は大体三月の末を考えておりますが、三月の末に至ってなお売れないというように繭は、
政府が
買い入れるという
契約をあらかじめすることができるわけでございます。最悪の場合、売れ残ったならば最後に
政府が
買い入れるという条項がついておりますために、第十一条の一項の方の共同保母におきまして
融資がつき得るわけでございまして、これによって大体一部の繭をたな上げすることによりまして、繭価全体について
最低繭価を
維持することが可能であろう、こう考えるわけであります。そこで
政府が買い上げます場合は乾繭になっておるわけでありまして、第一項で
政府が
最低繭価をきめるわけでございますが、その
維持価格は生繭の値段について出ておるわけでありますが、生繭では
保管できませんで乾繭でずっと持つわけでありますので、
政府が最後に買い上げますときは乾繭になっておりますから、
政府の買い上げの
価格は、先ほど申しました
生産費の大体八割五分というような生繭についてきめました値段に、乾繭は要する費用その他あるいは繭袋の費用というようなものを加えた額で
政府が買い取るわけであります。
そこで第十二条の二は、これは大して重要な
規定ではございませんが、従来
政府は生糸だけを買うことしか書いてございませんので、
政府はその買った生糸を売り渡したり、先ほど申しましたように
最高価格で売り渡し、あるいは虫食いなとができました場合には整理売却として売る
規定がございましたが、今度は繭の
買い入れを行うことになりますので、十二条の二におきまして、
政府はその買った繭を繭として売ることもできるし、あるいは委託加工して生糸にして持つこともできるし、あるいは生糸と交換することもできるということが書いてあるわけでありまして、大体
政府が繭の
買い入れを行います場合は、先ほど来申しておりますように、大体繭の時価の非常に安いときでございますので、
政府の買い上げた繭をすぐ放出と申しますか、売り渡しますと、繭値に影響を及ぼしますので、まず大体多くの場合は、
政府はこれを糸に加工いたしますかあるいは糸と交換して持って、そうして先ほど申しました二十三万円の
最高価格維持のために保有することになると思います。そこで繭を売り渡します場合は、もちろん生糸と交換いたします場合にも、その方法といたしましては、繭の時価に悪影響を及ぼさないような方法によらなければならぬことはもちろんでございまして、かりに繭を売り渡す場合にも少々ずつ売りますとかいうような配慮が必要なわけでございます。第三項は、これは交換をやりますときに、
政府が持っている繭何千貫と糸何俵とを交換しようということができるわけでございますが、その場合に何俵単位でぴたっと参りませんので、その間の差額は金銭で払ったりあるいはもらったりして差額決済をしていくことができる
規定を置いておるわけでございます。
第十二条の三の
規定は昨日もちょっと局長から御質問に応じて申し上げましたが、今回この
法案と同時に
提出されております糸価安定特別会計法が成立いたしますれば、繭糸価安定のために
政府が使い得る金は六十億と少し、これは今まで持っております三十億、それに利子がついておりますが、その三十億の金と、それから
政府が今度の
改正によりまして糸価安定特別会計が借り入れまたは証券を発行することができる額が三十億ございますので、両方合せてまず六十億ばかりの金を使うわけでございますが、これを使います場合に、先ほど来申しましたように、
政府は糸を買ったり繭を買ったりいろいろな場合があるわけでございまして、その場合に、たとえば
政府が
農業協同組合と繭の
買い入れ契約をしたが、現実には一俵も引き取って買っていないというような
状態のときに糸値が下りまして、今度は糸を十九万円で
買い入れの申し込みがあった。この場合には
政府の使い得る金は六十億あるわけでございますが、この六十億の金を糸だけで買ってしまいますと、その前に買う
契約をしてあった繭の方が履行期になっても、今度は
政府の方の金がなくなって買えないというような、
政府が債務不履行に陥るような
状態が起るわけでございます。そこでそれを避けますために
買い入れなりあるいは
契約を行いますときには、
政府が使い得る金がまだ財布の中に幾ら残っておるかということを見て
契約をなすとかまたは
買い入れをしなければならぬということを
規定しておるわけでございますが、それを法文に書きますとこのような非常に複雑な
規定になるわけでございまして、読みながら御
説明申し上げますと、
政府が、第二条若しくは第九条の二の
規定による生糸の買入の
契約又は第十一条第一項の
規定による
補助若しくは同条第二項の
規定による繭の買入の
契約を締結する場合における当該
契約に係る買入又は
補助の金額の
限度は、当該
契約を締結する時における糸価安定特別会計の当該
年度の収納済歳入額(証券の発行及び借入金によるものを除く。)及び糸価安定特別会計法(
昭和二十六念
法律第三百十一号)第十一条に
規定する額の合計額から左の各号に掲げる額の合計額を控除した額とする。非常に複雑でございますが、その初めに言っております第九条の二による
買い入れとか
契約とかいうのが、この糸価安定特別会計の金を出すあらゆる場合をずっと並べ立てまして、こういう
契約をするときにはその
契約を締結するときにおける糸価安定特別会計の当該
年度の収納済み金額、と申しますのは、現在の
状態として申しますと、三十億の金はまだ一文も使っておりませんから、三十億が現在歳入済みとして糸価安定特別会計に入っております。その歳入済みの金額と、それから今度
改正になります特別会計法によって証券発行の
限度額を加えたものから次にずっと並べておりますものを控除していく、控除していくと申しますのは、第一は、
一、当該
契約をする時における糸価安定特別会計の当該
年度の支出済歳出額というのは、その年にかりに糸を一万俵買って、一万俵分代を出しておけば、当然今後買える額からはそれだけ減っておるので、一号は当然であります。それから二号では、生糸の
買い入れ契約金額、まだ買ってはいないけれ
どももう買うことに約束してある額はそれから引いておく、その中の「(当該
契約をする時までに支払われた金額を除く。)」とありますのは、もうすでに支払われたものはその第一号の方で落してありますから、二号では落す必要がないわけでございまして、以下三号、四号、五号は同じように、そういうすでに
契約のできている分は差し引いて考えておるということでございます。それから
六 糸価安定特別会計における
政令で定める
経費の額と申しますのは、最後に
政府がどんどん糸も買い、繭も買い
——非常に一ぱい買ったときを想定いたしますと、金を全部借り入れ
資金に充てて
政府が糸も持ち繭も持っておる。そこで六十億全部はたきますと、
政府が将来この糸を持つためには倉敷料を払わなければなりません。管理の費用がいるわけであります。あるいは証券によって借り入れております金の利子も払っていかなければならない。そういうものの支払いができなくなるわけでありますので、ずっと買って参りました場合の最後のところでは、今まで買って持ったものを将来も少くとも二年くらいの間は持てるような
保管料とか事務費とかいうものは最後までとっておく、こういうのが六であります。十二条は要するに六十数億の
資金の
限度内でやる。ということを書いておるわけであります。
以上が大体逐条の御
説明でございます。
なおついででございますので、今ちょっと申し上げました
資金の問題でございますが、第九条に今度の糸価安定特別会計法の方では、
政府は証券を発行することができる、あるいは一時借入金もできることになっております。それから一時借入金をやった場合に、
年度内に生糸が売れなかった場合、売れれば金が入ってきて返せるわけでありますが、売れなかった場合には
年度内にさらに借りかえができる。それからなおその借りかえもできますし、それからこの会計の負担において証券を発行することができることになっておるわけであります。そうして今度
改正を
提案いたしております糸価安定特別会計法で三十億の借り入れ及び証券発行の
限度を
規定いたしております。