○安田
政府委員 私から
委員会及び
委員長の皆様方のお許しを得て、
農林省
関係におきます今国会提出予定
法律案の概要を申し述べさせていただきたいと思います。
過般本
委員会には同
関係法律案の件名の一覧表を御提出申したわけでありますが、目下のところ御提案申し上げたいと思っております
農林省に関する直接のものといたしましては七件でございます。なお実質上
農林省に
関係の
法律案でございますが、特別会計の会計法のゆえをもちまして大蔵省所管として御提案申し上げたいのは三件でございます。そのほかに
農林省所管物資等に関連いたしまして、関税定率法とかその他のものがなお必要かとも存じますが、一応以上のものについて御
説明申し上げます。
このうち砂糖の価格安定及び輸入に関する臨時
措置に関する
法律案は
農林省及び通商産業省の共同提案となるものでございます。この内容につきまして、すでに
参議院農林水産委員会に付託をいたしました
開拓融資保証法の一部を改正する
法律案を除きましては、現在せっかく
政府部内において成案を得まするように、同時にまた成案を得まして来週の前半を目途といたしまして、一、二を除いて大
部分法案が提出されまして御審議をいただきますように努力中でございます。従いまして最終的な決定は見ていない分もございますが、できるだけすみやかに、法案を提出いたしました際詳細御
説明をいたすことで御了承を願いまして、本日はその骨子について御
説明を申し上げることにつきまして御了承を得たいと存じます。
まず第一は、農地担保資金
融通法案でございますが、本法案は自作農の維持とその経営の安定をはかりますために、農地を担保といたしまして必要な資金の
融通をはかることを目的としておるものでございまして、これまでも自作農維持の見地からいたしまして、自作農創設特別会計という、
農林省で受け持っております特別会計におきまして、年々同会計の償還金の余裕をもちまして、農地を買い取り売り渡しする
方法によりまして、事実上は融資を行なって参りました。しかしその額は僅少でございまして、とうてい農村の要望を満たすのに十分でございませんので、このような資金の要望に加えまして、また農家の施設の資金につきましても農家の需要が大へん大きいのでございますが、零細なる農家には信用を受ける力が少うございますので、それに対しまする資金の借り入れが困難な
状況でございます。これに極力対応いたしますように、長期かつ低利な資金を
農林漁業金融公庫を通じまして融資する制度を確立することを目的として作成中のものでございます。
そのおもなる内容といたしましては、他の金融機関から必要な資金などの
融通を受けることの困難な農業者に対しまして、農地または採草放牧地を抵当といたしまして、経営規模の小さい自作農が農地または採草放牧地を購入いたし、また小作農がその小作地を購入いたしますためのその資金、または自作農が疾病、
災害等によりまして農地をそのまま保有することが困難な事態が生じました場合に、これを維持いたしていきますための資金、さらには農業経営の零細化
防止のために、相続があります場合は均分相続の分割が行われる建前になっておりますが、その相続財産である農地または採草放牧地につきまして、他の共同相続人の相続分を継承者が取得をいたしまして、農業経営の零細化の
防止をすることに資する、こういうための資金を貸しつけることをおもな目的といたしておるのでございます。あわせまして、現在
農林漁業金融公庫は、原則といたしまして、農家の共同施設につきましての資金を
融通いたしておるのでありますが、もっぱら個人の用に供しまする農業施設の購入
建設などに必要な資金を、原則といたしまして農業協同組合または農業協同組合
連合会の資金
融通と協調融資、協調
貸付をいたすことにしようといたしておるものでございます。
貸付金の利率は、農地などの取得あるいは自作農の自作地の維持をいたしまするための資金といたしましては五分五厘、農業用の施設についての融資といたしましては七分五厘といたしまして、その償還期限は、前者は十五年以内、後者は十年以内と法律で定めるようにいたしまするほか、抵当農地等の評価、
貸付条件の変更、公庫の業務の委託などにつきまして所要の規定を設けることにいたしたいと考えておるのでございます。なおこの資金
融通は零細な農家の維持安定をねらいとしておるのにかんがみまして、資金の
貸付を受けようとする者に対しましては、農業経営安定計画を作成いたさせまして、この計画が適正でありまたこれを達成するために
貸付が必要であるということの都道府県知事の認定を受けることを要するようにいたしたいと考えておるのであります。
地方庁は安定計画の達成に必要な援助指導をいたしまして、
貸付金の償還が円滑に行われるように
措置することといたしたいと考えております。
第二に、
農林漁業金融公庫法の一部を改正する
法律案でございますが、これは
昭和三十年度における
一般会計から同公庫へ九十五億円の出資を行うことにいたしましたので、目下これに関して御審議をお願い申しておうわけでございますが、一応その出資を建前といたしまして、公庫の資本金を従来の四百五十六億七百万円とありまするのを、五百九十一億七百万円と改訂をお願いしたいと思っておるのであります。また同公庫は、これまで日本開発銀行から借り入れをいたしておりました資金がございまして、その額は約二十一億一千九百万円でございまして、年々金利の支
払いを行っておりまするが、これを今回は日本開発銀行に返済をされまして、その金額に相当する額を、産業投資特別会計から
農林漁業金融公庫が出資を受けたものといたしまするために必要な法律条文の改正を行いたいと存じておるものでございます。なおさきに述べました農地担保資金
融通法による
貸付は、右の公庫の増加出資金と資金運用部からの借り入れ資金からまかなうことになっておる次第ございまして、約二十七億を予定しておるのでございます。
また
開拓融資保証法の一部を改正する
法律案は、
昭和二十八年度から開拓者の短期営農資金の
融通の
方途といたしまして、中央開拓融資保証協会を設立して、現在までに一億五千万円の
政府出資を行いました。この基金をもちまして開拓者の債務を保証いたして参るのであります。主としてこの制度によりまして短期資金の
融通を円滑ならしめるように努めておるのでございますが、この制度に対しまして開拓者の加入もふえ、また営農の進展もございまして、資金の需要も増大して参りましたので、
昭和三十年度におきまして
一般会計から中央開拓融資保証協会へさらに五千万円の出費を行うことといたしまして、合せまして資本金を二億円と改めたいと存じているものでございます。
次に繭糸価格安定法の一部を改正する
法律案であります。これは現行法におきまして生糸の輸出増進と蚕糸業経営の安定をはかりますために、繭及び生糸の価格の安定をはかる目的をもちまして、
政府は申し込みに応じまして最高価格でその保有する生糸を売り渡し、最低価格で生糸を買い入れる制度を現在設けているのでありますが、一方で
政府が一俵の生糸の手持ちがないままに発足いたしましたので、最高価格で市価を押えることが困難な事態を生ずる場合も過去にはございました。今後もあるおそれがございます。他方繭の値段の非常な低額に対処する特別な
措置が具体化をされておりませんので、それらに対しまして繭糸価格の安定をはかる意味において現行法では不十分な点があることにかんがみまして、現行法の不備を是正、補強をいたしまして、これ
がために生糸の補充買い入れの道を開きますとともに繭の価格維持のための繭の共同保管の助成と
政府買い入れの制度を新たに設けることにいたしたいものでございます。
改正の内容といたしますところは、第一に生糸につきましては、従来の最低価格によります
政府買い入れのほか、
政府が輸出用生糸を保有する必要がある場合には、
農林大臣の指定するものがあらかじめ
農林大臣の承諾を受けて保管した輸出用生糸を、生糸の生産費の額の範囲内におきまして
農林大臣の定める額で買い入れることができるようにいたしたいと思っているわけであります。
第二点といたしましては、繭につきまして、
政府は繭の価格の異常な低落を
防止いたしますために、繭の価格が生糸の最低価格に見合う
農林大臣の定める額を下るおそれがありまして、共同保管をしまして繭の価格を維持することがもし認められます場合におきましては、
農林大臣の指定をいたします農業協同組合
連合会があらかじめ
農林大臣の承認を受けて乾繭を共同保管いたしました際に、その
連合会に対しまして保管に要した
経費について
補助金を交付することができることといたしますとともに、さらに一定の保管期間中にどうしても販売ができなかったために、保管期間を経過してもなおやむなく保管をしている乾繭がある場合がございますが、このときには
政府におきましてその申し込みに応じまして、
農林大臣の定める額で買い入れることができることといたしまして、これに伴い必要な規定をいたしたいと思っているのでございます。なお現行法では、
政府の保有生糸は整理売却あるいは新規用途または新規の販路に向けて売る場合のほかは最低価格以外では売ることができないことになっておりますが、
政府の手持ちが著しく過剰となりました場合において、保有数量を越える数量を生産費を下らない額の時価で売り渡すことができるようにいたしますとともに、この際あわせて改正をいたしたいと考えているものでございます。
次に
農業災害補償法に基く家畜
共済の臨時特例に関する法律の一部を改正する
法律案でございますが、これにつきましては
農業災害補償法の特例といたしまして、試験的に現行の死亡廃用
共済と疾病傷害
共済と一元化いたしまして死廃病傷
共済を実施しておりまして、試験の結果も相当認められておりますが、全面的な一元化を近い将来に期しまして、なお慎重を期するために、とりあえず本年
政府といたしまして御審議を願っている
予算編成上において、
予算を計上いたしておりますところにも従いまして、今年十月一日失効する本法の有効期間をさらに延長したいと考えているのでございますが、この
取扱いについてはなお数日間の研究をさせていただきたいと思って
検討中でございます。
次に砂糖の価格安定及び輸入に関する臨時
措置に関する
法律案について申し上げますと、砂糖は、その供給の大
部分は御承知の通り輸入砂糖に仰いでいる現状におきまして、また国内産等も生産がございますし競合する農産物もあるわけでございますが、昨今の需給
関係及び外貨
事情等に起因いたしまして、ややともいたしますと価格の変動を生じやすく、これによりまして一面
関係企業に砂糖の中間利潤が
発生をいたしまして、他面国民生活にもまた食生活改善上にも影響を及ぼし、特に国内農産物の
関係をも不安にさせるおそれがございますので、必要な砂糖の輸入をはかります一方、国内農産物の価格との調整を考慮いたしまして、価格の安定と需給の調整を砂糖についてはかることを目的といたしますが、あわせましてまた輸入砂糖の過分の中間利潤については納付金の徴収をする
措置を講じまして、もって国民生活の安定に寄与するということを本法案は目的といたしているものでございます。
法案の内容といたしましては、
農林大臣が毎年精製糖の供給量、消費購買力などから見ました価格や国内農産物の価格及び家計費などを勘案いたしまして、定めた価格を基準といたしまして、安定帯価格を定めて公表をいたしまして、必要な輸入量を
確保する行政上の
措置と相まちまして、安定帯の価格の範囲内に砂糖の市価を維持するとともに、安定帯価格を越えて製糖業者等の販賀価格が上る場合におきましては、これらのものの販賀価格について必要な勧告をすることができることといたしたいと思っております。なお目下砂糖の市価を安定帯価格の範囲内に維持いたしますために必要最小限度の砂糖を
政府において保有をいたしまして、価格の調節を行う必要も考えられますので、この法案の最終の作成に至りますまでにおきまして、
政府が輸入された砂糖の買い入れ及び売り渡しを行い得る道を設けるかどうかにつきまして、
関係省と目下協議をいたしているのでございまして、成案を得ますれば提出の上御審議をお願いいたしたいと思っているのでございます。右のような砂糖の安定帯価格を設けることに即応いたしまして、輸入業者が砂糖を輸入する場合には、通商産業大臣はその輸入業者に対しまして、安定帯価格を基準として定めた予定販売価格と輸入予定価格との差額について納付金を
政府に納めなければならないことにいたし、これを外貨資金の割当を行う際の条件とすることといたしているのであります。この納付金の処理につきましては、大蔵大臣の管理する特別物資納付金処理特別会計を新たに設けまして、その会計において取扱う建前に相なっている次第でございます。なおこの
法律案は一応
昭和三十三年三月三十一日限り効力を失うことといたしたい予定で取り急ぎ成案を努力中でございます。次に愛知用水
事業公社法案でございますが、これは国際復興開発銀行の融資及び漁業農産物見返り資金によりまして愛知用水
事業を短期間に能率的に実施するために愛知用水
事業公社を設立いたしまして、食糧の
増産に寄与することを目的といたしたものでございます。従いまして現在国際復興開発銀行とせっかく折衝中でございまして、余剰農産物の受け入れにつきましても、最終的に現在は確定をいたしておらない面もございますので、法案の内容につきましてもなお
検討中でございますが、その骨子といたしておりますところは、同公社は業務といたしまして
農林大臣の定める
事業計画に基き、ダム及び水路の
建設による灌漑
排水事業、未墾地の開墾
事業を行いまするほか、発電、上水道及び工業用水のため、電力会社及び
地方公共団体から委託を受けて、共用施設の
建設事業を行うことといたしますとともに、
建設事業により生じました諸施設の管理に当ることといたしたいと思っておるのでございます。これらの
事業資金は、さきに述べましたように、世界銀行からの融資及び余剰農産物見返り円資金を借り受けることといたしますとともに、
関係県及び農家などより負担金を徴収いたしまして、また同時に
政府からの交付金を受けまして公社が償還をすることといたしておるのでございます。
このような
事業を行う公社でございますので、その役職員は国家公務員といたしますほか、
政府からも交付金を公社に支出するなど、公社の組織及び運営につき必要な規定を設けることといたしたいと考えております。また
政府は公社がその国際復興開発銀行からの資金の借り入れ契約に基きまして、外貨で支払う債務について保証契約をすることができる規定を設けたいと存じておるのでございます。
最後に、
農林省
関係の特別会計法案について申し上げますと、開拓者資金
融通特別会計法の一部を改正する
法律案がございますが、これは従来より加えまして、新たに開拓者資金
融通特別会計において
貸付金の償還金を同会計の行う融資の
貸付金の財源に充てることができること、及び開拓者資金
融通関係の事務取扱費を同会計におきまして支弁することができること、その他これまでの法文の条規の整理のため必要な改正を加えたいと思っておるのでございます。
また第二といたしまして、糸価安定特別会計法の一部を改正する
法律案がございますが、これはさきに述べました繭糸価格安定法の一部改正に伴いまして、糸価安定特別会計法を繭と糸であるところの繭糸価格安定特別会計法に名称を改めまして、同会計におきまして繭の買い入れ、売り渡し、交換、繭の共同保管に対する助成などができますようにいたしたいと思っておりますとともに、生糸及び繭の買い入れ資金の充実をはかるために、証券の発行、一時
借入金、繰りかえ金及び
借入金を行い得る規定を新たに設けたいと考えておるもものでございます。
なお以上のほか愛知用水
事業と同様に、国際
復旧開発銀行からの
借入金及び余剰農産物見返り資金をもって、北海道及び青森県における大規模な機械開墾及び灌漑
排水事業を行いまするため、その資金会計といたしまして機械開墾
事業特別会計法案等につきましても、
関係方面と了解ができました場合には提案を申し上げて御審議をお願いしたいと予定いたしまして
検討中でございます。
以上提出予定法案の概要を申し上げげた次第でございます。