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1955-05-13 第22回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十三日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 井出一太郎君 理事 白浜 仁吉君    理事 松浦 東介君 理事 鈴木 善幸君    理事 中馬 辰猪君 理事 稲富 稜人君       赤澤 正道君    五十嵐吉藏君       伊東 岩男君    石坂  繁君       楠美 省吾君    笹山茂太郎君       原  捨思君    本名  武君       足立 篤郎君    大野 市郎君       助川 良平君    田口長治郎君       松野 頼三君    松山 義雄君       赤路 友藏君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       石田 宥全君    楯 兼次郎君       芳賀  貢君    伊瀬幸太郎君       川俣 清音君    佐竹 新市君       中村 時雄君    日野 吉夫君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         国税庁長官   平田敬一郎君         農林政務次官  吉川 久衛君         農林事務官         (大臣官房長) 安田善一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      大坪 藤市君         農林事務官         (農地局長)  渡部 伍良君         農林事務官         (農業改良局         長)      小倉 武一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      正木  崇君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鹿野 義夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局防         疫課長)    尾崎 嘉篤君         農 林 技 官         (農地局建設部         災害復旧課長) 大塚 常治君         建設事務官         (河川局次長) 植田 俊雄君         建 設 技 官         (河川局防災課         長)      淺村  廉君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 五月十三日  委員楠美省吾君、野原正勝君、有馬輝武君及び  淡谷悠藏君辞任につき、その補欠として藤本捨  助君、小枝一雄君、足鹿覺君及び井手以誠君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員より調査報告聴取  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第二九号)(予)  農業災害に関する件  農業課税に関する件  小豆の取引及びその価格安定措置等に関する件     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。  北九州及び山口農業災害視察をいたされました委員の方の御報告を兼ねて、この災害問題についての審議を進めることにいたします。災害視察報告を求めます。原委員
  3. 原捨思

    ○原(捨)委員 過日私ども本委員会から北九州地方水害調査派遣されましたので、その報告をこれから申し上げます。  去る四月十五、十六日の両日にわたり、北九州及び山口方面に三百ミリないし、四百ミリをこえる大雨があり、農作物を初め、耕地、土木、建設鉱業等の各方面にわたり総額六十二億円以上に達する大災害を引き起しましたので、これが現地調査のため、本委員会より委員派遣を行うことと相なり、不肖私が団長となり、自由党から中馬委員社会党井谷委員、同じく社会党から最初川俣委員を予定せられておりましたが、都合により稲富委員が交代して参加せられ、以上四人をもって班を編成、これに藤井専門員が同行し、なお現地におきましては、眞崎議員が御案内として参加せられ、山口福岡佐賀長崎の四県につき現地調査を行いましたので、ここにその概況を御報告申し上げます。  去る六日東京を出発、翌七日午前七時半、山口県小郡駅より乗車せられた同県橋本副知事から、車中にて災害状況説明聴取いたし、車窓から視察を行いました。  次いで福岡県に入り折尾駅に下車いたし、同県庁案内にて、遠賀川流域被害状況視察し、地元農民代表の方から陳情を受けた後、福岡県庁到着同所にて被害概況聴取の上、福岡佐賀長崎の三県関係者調査に関する打ち合せを行いました。なおその際、熊本県は今回の現地調査の対象になっておりません関係上、係官を同所派遣の上、被害状況説明がございました。それによりますと、被害総額約一億円程度ではありますが、福岡県寄りの地域に集中しており、降雨量も二百六十ミリに達し、地域的には相当の被害を引き起している旨の報告がございました。  次いで同県庁出発佐賀鳥栖市役所到着、同地の災害状況説明を聞き、また陳情も受け、特に日本住血吸虫病防除について強い陳情を受けました。さらに同市市内旭町、於保里における被害状況視察いたしました。それより自動車の中から災害状況視察しながら、佐賀県庁到着同所において鍋島高知事から県下災害状況一般的説明聴取の上、市町村代表県議会議長農村水産各種団体代表の方から真剣な陳情を受けました後、同県下に宿泊いたしました。  翌八日早朝、まず長崎農林部長より災害概況について説明聴取の上、折からの雨をついて出発地すべり危険性が最も強いといわれている佐世保平松部落を訪れました。同部落は海抜三百メートル以上の高所で、山の中腹に所在し、傾斜は四十五度に及び、このまま放置いたしますときは、大降雨の際には大地すべりを引き起す危険がありますので、地下水の所在、その流出する経路等を掘さく機、または電波探知機等により調査研究するとともに、地下水を抜く方法を講じており、この地下水を除去する方法はすこぶる効果的であると称せられております。その際特に部落農民から、政府は今般この地すべり防止対策補助金補助率を現行の九割から五割に引き下げようとしているとのうわさであるが、もしそのようなことになりますれば、われわれはこの耕地を放棄せざるを得なくなりますので、かかることのないよう格段の御尽力をお願いいたしたいとの悲痛な訴えを聞いたのであります。  それより佐世保炭鉱に至り、まず今般の災害による犠牲者に深甚なる弔意を表し、次いで同県厚生部長から災害発生当時の状況と、現在とられつつある対策につき説明を聞いた上、遺体発掘災害救助に奮闘している自衛隊、警察隊等にも敬意を表して同町を辞去して、佐世保市役所到着同所にて佐世保市及び県北町村の災害状況及び陳情等を承わり、さらに同市相ノ浦被害状況視察の上、車を返して再び佐賀県に向い、武雄市に到着いたしました。同市にて、同市長を始め隣接町村長から、被害状況説明並びに陳情を受けました。次いで同市内高橋、鳴瀬を始め、牛津、芦刈、千代田、神崎、三根、北茂安、豆津等の各町村被害状況をつぶさに視察いたし、また各所で農民各位から真剣な陳情等を受けまして、福岡県久留米市に到着同所に宿泊いたしました。翌九日久留米市役所において同市及び山門、三井、三潴の三郡及び柳川市民代表の方から、被害状況説明及び陳情を受けました後、宮ノ陣、北野、大刀洗等の各町村視察の上、夕刻博多に帰着、同夜帰途についたのであります。  今次水害の特徴としてあげられる点は、大体次のごとくであると考えられます。まず第一に、四月中旬における降雨量としては、全く前例を見ない記録的大雨であったということであります。すなわち福岡気象台調べによりますると、明治二十三年回気象台が設置せられまして以来、本年で六十六年目に当りますが、この間四月中旬の降雨量で今年のごとき大量に達したことはなく、今日までの記録では、明治三十五年が百七ミリを最高とし、次いで、昭和二年が百二ミリで、自余はいずれも百ミリ以下であります。しかるに本年のそれは三百四・六ミリに達しておりまして、梅雨末期に現われる豪雨に類似しており、従来の型を破った異例の大雨であります、この福岡気象台調書資料「四月における累年旬別降水量」は末尾に付しておきましたので、速記録ができ上りました節詳細はごらんいただきたいと存じます。第二点は福岡佐賀両県は有明湾に面し、この方面は、いずれも干拓地でありまして排水の便が悪く、満潮時には、海水面よりも低くなるという状態にあり、また日本海に注いでいる福岡県の遠賀川のごときも、二十八年の災害当時、河口に堆積した土砂が今なお除去されておらず、一般排水が非常に悪いことがその被害を著しく大ならしめております。また長崎県は、山岳が直ちに海に迫っており、降った雨は直ちに河川を氾濫せしめるという急峻な地勢をなしております上に、地すべり、山くずれ等により押し流された土砂、またボタ山から流出したボタ等河底を埋めて、これまた排水を不良にし被害を一段と加重していることであります。  第三点は、これらの地方はいずれも最近連年風水害をこうむります。山口県は二十六年には二回にわたり猛烈な風水害をこうむり、また一昨昭和二十八年には九州一帯に激甚な大水害をもたらし、これらの災害に対する復旧が今日なお完了しておりません関係上、この面からも被害が一段と大きくなっているのであります。  第四に、以上の結果として冠浸水の滞水時間が長く、従って災害が特に麦類菜種蔬菜ソラマメバレイショ等農作物に集中されたということであります。  以上により、その被害総額現地側調査によりますと大約六十二億円に上っているのでありますが、その内訳を申し上げますと、山口県約四億三千万円、福岡県十九億四千万円、佐賀県二十二億円余、長崎県十六億四千万円、その他熊本和歌山両県の災害を加えますと、前述のごくと六十二億円に達するのであります。さらにこのうち、農作物耕地林野水産等農林水産被害について見ますと、山口県三億二千万円、福岡県十五億七千万円、佐賀県十億五千万円、長崎県九億五千万円に上り、更に熊本和歌山両県それぞれ一億円、計二億円を合算しますと、総計三十二億五千万円に上り、約五割以上が農林水産関係被害となるのであります。  御承知のごとく水害による被害は、県下全部を一様におおうものではありませんが、その反面被害地域災害は激甚であり、そうした被害地域が各県とも全県下に広く散在しているのでありますが、中でも特に災害が著しい事例を御紹介いたしますと、佐賀芦刈村のごときは、一村で五千万円以上の損失をこうむり、作付面積七百七十一町歩中冠水四百町、浸水三百七十一町となり、作付面積の全部が冠浸水を受け、収穫皆無が二百五十町歩に上っております。またその減収率は小麦六〇%裸麦八〇%大麦のごときは実に一〇〇%に達し、粟種七〇%ソラマメ七五%、バレイショ及び蔬菜はいずれも八〇%となっている状況であります。  また従来あまり事例のない被害といたしまして、福岡三潴郡におきましては、ペーパーハウスと称する簡易温室約、五万坪が、水害を受けて多大の損失をこうむりました上、同温室内に栽培中のキウリ、トマト等もまた多大の損害を受けているのであります。さらに福岡県の筑後川沿いは、従来蔬菜バレイショ等種子生産地帯でありましたが、これがまた大損害をこうむりまして、今後の種子供給に大きな支障を来たものと憂慮されるのであります。  今次のごとく四月中旬にかような大水害をこうむった事例がいまだかつてありません関係上、この被害評価にはいずれも多大の困難を来たし、被害各県におきましては、この被害評価を正確にするため、去月二十七日農林省九州農業試験場被害基準打合会を開催いたし、九州農業試験場技官、同九州統計指導宮室技官及び長崎佐賀福岡熊本及び山口県の技術者水害現地被害標本を持ち寄って検討の上、麦類につきまして被害基準を作成いたし、各県は、これに基いて被害調査をいたし、これら被害評価客観性科学性確保に努めました。この被害基準は今後の参考になると思いますので、末尾に掲げておきますので、後ほど御高覧をいただきたいと存じます。  事実今次被害評価はなかなか困難で、ソラマメはすでにまっ黒くなっておりますので一見してわかりますが、麦類菜種等は青々としている場合が多く、注意をして観察しないと見誤りやすいのであります。しかし当時ちょうど開花期または出穂期に当っておりました関係上、受精障害または稔実障害を引き起し、穂は出ておりましても未充実でありまして、穂を透かして見ますと、中はからでありまして、透いて見えるのであります。また抜いて見ますと大部分根が腐敗し、または生育をとどめておりまして、これまた稔実を不可能にしているのであります。なお福岡統計調査事務所の見解によりますと、水分土壌、並びに空気との間に密接な関係があり、冠浸水の時間的長さによってのみ被害を評価することは困難でありまして、土壌中の水分空気とのバランスを失すると被害が大きくなることも考えられ、また逆にこのバランスが保たれれば、それだけ被害を少く食いとめ得るわけで、なお今後の推移を見なければ正確な被害は判明しないであろうとのことでありました。  なお米の場合災害後よくなることがあるが、麦類の場合は悪くなるともよくなることは絶対にないというのが一般農家の見方でありました。  次に今般の調査にあたり現地側から強く要望された事項について申し上げます。  まず応急対策として要望せられましたのは、  一、経営資金融通等に関する措置であります。被害農林漁家に対し、利子補給及び損失補償を伴う経営資金融通並びに既往農林漁業資金及び災害融通資金等償還延期措置を講ぜられたいこと。  二、麦類共済金については、概算払い、仮払い措置を講ずるとともに、可及的すみやかに全額払いを行い得るよう取り計ること。また任意共済である菜種につきましては、去る二十八年災害の場合と同様、連合会に対する資金あっせん方途を講ずるとともに、既往借入金返済につき延期の手段を講ぜられたいこと。  三、今後麦類菜種その他園芸作物に関しさび病菌核病その他病虫害の発生が必至と認められますので、これが防除徹底を期するため防除器材薬品費につき補助せられたいこと。  四、本年まきつけ用麦類菜種ソラマメ等種子確保に要する経費及び災害地代作用蔬菜和子購入費に対する補助並びに果樹、茶、桑等樹勢回復用肥料、農薬の購入経費についても補助せられたいこと。  五、飯用麦貸付をせられたいこと。六、今次水害は風速二十メートル内外の強風を伴いましたため、漁港施設、貝類、養魚場等に多大の被害を与えているをもって、すみやかに魚港災害並びに土砂流入堆積による養魚場復旧をはかるため補助並びに金融の措置を講ぜられたいこと。  七、林野及び林道の崩壊地が各地に発生しているをもって、これが急速な復旧のため高率補助措置をとられたいこと。  八、農林水産業施設災害復旧について、とりあえずつなぎ資金融通せられたいこと。  九、開拓地については、その特殊性にかんがみ、特別の考慮を払われたいこと。  以上でありますが、特に経営資金融通共済金の概算払い、あるいは飯用米貸付等につきましては、速急に措置すべきものと存じます。  次に恒久対策といたしましては、  一、デフレの影響が農村経済に浸透しつつある現況にかんがみ、耕地関係災害については、二カ年をもって復旧工事を完了するよう予算措置を講ずることとし、特に初年度に緊急を要する工事が多いため、全復旧事業量の六〇%以上の予算計上をせられたいこと。なお二十八年災害復旧工事は三カ年をもって完了すべきであるにもかかわらず、これに対する予算執行は半ばに満たない状況にありまして、復旧は著しく遅滞いたしており、このため今次水害が加重せられたと見られる点もありますので、二十八年災害同様の高率補助の適用を考慮せられたいこと。  二、地すべり防止対策事業に関し恒久的立法措置を講ぜられたいこと。  三、連年災害により災害農林漁家の疲弊はなはだしいので、小災害復旧事業についても高率補助取扱いをせられたいこと。  おおよそ以上のごとくであります。  最後にわれわれ調査団として特に強く感じたことを申し上げたいと存じます。  第一に、前にも申し上げましたごとく、今次水害が単に降雨量が多いというのみでなく、各河川とも排水が悪く、滞水時間の長かったことが被害を非常に大きくしているのでありまして、排水をよくすることが根本対策であると思います。それには河川の合理的な改修、排水施設強化を行うことがまず肝要であります。前に申し上げましたごとく、遠賀川河口には二十八年水害当時の堆積土砂が今なおそのまま放置されているがごときは、まことに遺憾でありまして、政府はすみやかにこれが除去の措置を講ずべきものと存じます。また排水につきましても、電力料金関係上、平時排水の必要のないときは作業をを中止いたしておりますので、今次のごとき予期しない水害に際しましては、排水施設を持ちながら排水作業を行ない得なかったという事例もありますので、これら排水用電力料金取扱いについては格段措置を講じ、排水作業強化を期すべきものと存じます。  さらに有明湾に面する方面は、大部分干拓地であり、他方干がたが非常な勢いで前進いたしており、佐賀海岸の干がたは年十メートルずつ前進し、百年間には一キロ前進することになるとのことでありますが、この干がた前面は降起いたし、排水が悪く、佐賀市のごときでさえ満潮時には海水面より低くなるとのことであります。また有明海の潮汐の干満差が非常に大きく、満潮時には多大の水量が遠く上流まで逆流いたし、洪水の場合は、氾濫を助成する結果となるのであります。従いまして、これが抜本的対策といたしましては、有川湾の大規模な干拓を実施いたし、既成干拓地前面の干がたを田面より低いところまで干拓することであります。眞崎議員の御説によりますと、佐賀県だけでもさしあたり二万町歩干拓が可能であり、米五万十石、麦二十万石の増産を期待し、一万数千戸の入植が予定せられ二、三男問題解決にも大きく寄与することができます。その他これに伴う排水改善等による増産を考慮しますれば、その利益莫大なものであります。近時連年風水害により年々数百億に上る損失をこうむっているのでありますが、この一カ年の損失に相当するだけの経費を投入しますれば、この事業がりっぱに完成するのでありますから、国家百年の大計に基いて、これが実行を期すべきものと存じます。  第二に、特に長崎県において顕著であります地すべり、山くずれ防止対策徹底を期することであります。これは単に耕地または山林等の保護の見地からのみでなく、人命を尊重し、安んじて生業に励み得るという人権の基本に関する問題であると存じますので、これに対する恒久的立法措置を講ずべきものと存じます。佐世保ボタ山崩壊のごとき、全く予想せざる災害であったと称せられておりますが、果して不可抗力のものであったかどうか、慎重に検討して今後に備えると同時に、流出したボタ山河川を埋め、河床を高くしている事実は、私たちが現実に見もし、また佐世保地区におきましては現地側から強調せられた点でもありまして、これらボタ山の流出の防止並びにこれに基く災害復旧につきましては、農林、通産、建設関係当局間において緊密に連絡の上、早急に実現をはかるべきであると存じます。  第三に、菜種に関する任意共済の問題であります。現在この共済を行なっておりますのは福岡県のみでありますが、現地側要望事項の際にも申し上げましたごとく、二十八年の災害当時共済金の支払いに不足し、農業共済基金から三千五百八十五万円を借り入れ、自後五カ年間に年賦償還することになっておりますが、このたびの水害により菜種は大損害を受けました、福岡県の調べによりますと、菜種被害を二億七千万円余と推定しておりますので、その共済金支払額も五百六十万円に上り、保険料徴収額は二百万円で、差し引き三百六十万程度の不足が見込まれております。  前述のごとく、二十八年災害当時の借入金もなお二千万円以上ありますので、この際何らか強力な助成措置を講じませんと、任意共済の存立は不可能になるのではないかと憂慮せられるのであります。現地側におきましては、大豆、菜種については国が再保険してこれを育成強化せられたいと強く要望しておりましたが、この点につきましては、共済制度に関する小委員会においても十分検討するようお取り計らいをお願いいたしたいと存じます。  最後に、九州地方を初め、台風、水害等被害連年こうむるいわゆる災害の頻襲地帯に対しては、農林水産災害防除並びに災害復旧及び農林水産の振興に関する特別立法措置を講じ、農民漁民をして安んじて生業に精励せしめる方途を講ずることが肝要であろうと存じます。  なお二十八年災害復旧につきましては、三、五、二の割合で三カ年をもって復旧工事を完了するよう予算的措置を行うものと一般に了解されておりましたところ、今日までに実際には四割程度財政支出がなされたにすぎない状況にあり、災害農民は、この国の態度に対し嫌怨たるものがございます。かくては法の威信にも関することでございますので、二十八年災害復旧につき何らかの形で結末をつけ、農民の納得のいくよう措置する必要があろうと存じます。  以上はなはだ簡単で要領を得ないところもございましょうが、一応私の御報告を終ります。なお被害状況の写真、被害作物見本等は持参してございますのでごらんをお願いいたします。その他の詳細の資料専門員室にございますので、それについてごらんを願いたいと存じます。(拍手)
  4. 綱島正興

    綱島委員長 この際この災害に関する質疑ということは午後に護りまして、一応政府側から簡単に御所見を披瀝されんことを望みます。
  5. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいま災害に関する御報告を承わりました。政府といたしましても、ただいま被害状況調査中でございます。調査員派遣をいたしておりますし、府県の方からまだ詳細なる被害状況報告等もございませんが、この調査と見合いましてただいま検討中でございます。前年、前々年等災害に対する対策前例もございますので、誠意をもってこれに対処する所存でございます。     —————————————
  6. 綱島正興

    綱島委員長 この際委員長から特に官房長官に申し入れをいたしておきますが、開拓融資保証法の一部を改正する法律案がすでに参議院に提出されており、本院に対しましては予備審査に付されておるわけでございますが、この法律案は同法案の第一五条一二項中、一億五千万とあるを二億円に改めること。この政府の出資は三十年度予算においてこれを出資するという旨が付則に記載されておること等の事情から見て、政府予算を伴う法律案でございますので、衆議院に先議されることが、予算先議事情等よりかんがみ、かつは大体の先例より推測いたしまして妥当だと考えられますのに、何がゆえに参議院に先議せしむる手続に出られたかについて官房長官にその取扱いをただしたいという考えから御出席を願ったわけであります。一応御釈明を求めます、
  7. 根本龍太郎

    根本政府委員 開拓融資保証法の一部を改正する法律案参議院に先に付託いたしましたことは、昨年の例によったことでございますが、しかし委員長から御指摘になりました通り、本法律案予算を伴う法律案でございまして、予算衆議院先議という建前上当然これは衆議院に先に付託すべきであったと思います。まことにこの点は遺憾に存じまして、今後かかることのないよう十分注意をいたしますゆえに、今回につきましては何とぞ御了承の上すみやかに御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  8. 綱島正興

    綱島委員長 本件について質疑の通告がございますからこれを許します。川俣委員
  9. 川俣清音

    川俣委員 この際内閣代表されて官房長官に御答弁を願いたいと思います。衆議院の先例集第百三十七項に「予算関係がある法律案は、概ね予算とともに提出される。」また憲法第六十条第一項の規定によって、予算関係ある法律案は先に衆議院に提出されるのを例とする、こういうふうに先例集にはあります。もちろん憲法上は、予算提出の専属権を持っております内閣の権限は、これを認めておりますものの、憲法六十条によりまして当然衆議院において先議権を持っております。衆議院において予算上の措置について財政上の審議権を持っておるのでありますけれども、先例があるにかかわらず、あえて先例を無視せられました理由を第一に明らかにせられたいと思います。  第二といたしましては、確かに先例におきましても、参議院またはかっての貴族院には予算を伴うところの法律案を先議された例はないことはありません。しかしながらたびたび本院におきましては、予算を伴うところの法律案は、憲法の六十条の規定を正確に準用して、すみやかに是正するようにということが運営委員会などにおいて決議になっておる。それと同時にかってそういう悪例が許されない事情として、国会法の修正が行われまして、議員提出の法律案といえども、予算を伴うものについては大きな制約を加えておる。これらの例からいいまして、予算を伴うところの法律案につきましては、かつてありましたような衆議院に先議をしないという悪例を取り上げるということの条件で国会法の改正が行われておる。それを昨年はこれをやったからことしもいいということにはならない。条件が違ってきておる。この二点について、一つ内閣代表して明らかな御答弁を願いたい。
  10. 根本龍太郎

    根本政府委員 川俣議員から御指摘の通り、これは予算案は衆議院先議の本来の体制からして、衆議院に先に提出することは当然だと考えております。従いまして政府としては遺憾の意を表する次第でありまして、これは手続そのものについては欠陥はございませんが、何と申しますか、不注意があったということを認めまして、遺憾の意を表する次第でございます。今後かかることのないよう十分に関係各省に示達をしておる次第でありまして、実は本日の閣議におきましても、こういう事例があったことについて私の方から各閣僚に対して御連絡を申し上げておる次第でございます。どうかこの点で御了承のほどをお願い申し上げます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 国会に対する提案権というものを非常に重要視しておりますために、各局あるいは各省の行政府から国会に提案されるものではなくて、少くとも総理大臣名において、記名捺印されて国会に提出されるものであります。従いまして一事務官とか一省の大臣とかの責任ではなくて、内閣総体の責任なんです。従ってこういうことを各省に注意したからということによって今後是正されるものではなくて、内閣の統一された意思というものを国会に反映しなければならない規定になっておりますので、その点を重要視しておるのです。これはひとえに官房長官の責任なんです、この点についてもう一度伺いたい。
  12. 根本龍太郎

    根本政府委員 御指摘の通りでございます。今後十分に気をつけまして、今後かかることのないように注意いたします。
  13. 綱島正興

    綱島委員長 松野頼三君。
  14. 松野頼三

    ○松野委員 官房長官予算を伴う法律案がこの委員会に何件提案されているか、御存じなんですか。
  15. 根本龍太郎

    根本政府委員 ただいま具体的に調べて参っておりませんが、大体……、(「何も知らぬじゃないか」と呼ぶ者あり)近く提案されるものも含めてのことだと思いまするが、大体七件と考えております。
  16. 松野頼三

    ○松野委員 私が聞いておりますのは、この委員会予算を伴う法案ですでに提案になったものが何件ございますかということであります。
  17. 根本龍太郎

    根本政府委員 本農林水産委員会関係ある法案は現在まだ出ていないと思います。
  18. 松野頼三

    ○松野委員 その状況を見て、これが参議院に——この法案は最初なんでしょう。予算を伴う法律案はまだ一件も出てない。最初の一件の問題なんだ、この一件を不意点によって——六件、七件出して八件目にたまたま不注意なら不注意でいい。予算を伴う法律案はたびたび国会からも請求をされておって、そうしてやっとできたという最初の第一の法案を、手続きの違いで出したとか出さぬという問題ではない。私は不注意じゃなしに、不誠意の問題だと思う。一件も出ていない。本委員会に一件も出さずにおいて、たまたま参議院に出すなんて、これは不注意じゃありませんよ、不誠意ですよ。二件も三件もというならば、審議の状況によってたまたま参議院に回しました、それはいいでしょう。一件も出ておらぬで、われわれは毎日々々督促しておる。そうしてたまたま出てきたら、参事院に回しました、これは不注意じゃない、不誠意ですよ、どうでしょうか私の言うのがほんとうか、あなたの言うのがほんとうか、あなたの御心境を一つ伺いたい。
  19. 根本龍太郎

    根本政府委員 政府は不誠意ではございません。他の法案については、まだ法案の準備ができておらないので、提出になっておりませんが、これは近く出す予定でございます、
  20. 松野頼三

    ○松野委員 あなたがそういうふうな御答弁ならば、やはりこれは不誠意じゃなしに、あなたは意識的に参議院に回されたということなんだ。(「その通り」)意識的に回したという以外にないじゃないか。私があなたの意思を聞いたら、意識的に回したら回したという理由を言えばいい。何か理由があるのでしょう。
  21. 根本龍太郎

    根本政府委員 いろいろとおしかりを受けましたが、参議院に先議したことについてはおわび申し上げておる次第でございます、この点御了承を願います。
  22. 松野頼三

    ○松野委員 もしこの法案が非常におくれまして——御承知のように、予算審議を督促になるかわりに、予算を伴う法案はほとんどお出しになっていない。これはあに農林委員会ばかりじゃありませんので、その責任は十分政府でお考えいただかないと、予算がかりに上りましても、関係法が上らなかったら予算の執行ができない。そのときはどういうふうにお考えです。かりに申しますならば、名委員会において予算関係のある法案がみな、修正され、否決された場合の予算取扱いは、官房長官内閣としてはどういう——全体のお考えとは参りますまいが、少くとも内閣官房長官、大番頭としてたびたび記者会見においても、予算が否決されるようなことがあるならば、これは政府で重大責任を感ずるとか、一兆をこえるようなことがあったら解散するとまでおっしゃるならば、大官房長官なのだから、一応一つ所信をお伺いしてみましょう。
  23. 根本龍太郎

    根本政府委員 予算が成立しても関係法案が成立しないという場合を御指摘になっておられるようですが、われわれはさようなことのないように御協力を願い、政府も今後努力して、さようなことのないようにいたしたいと思います。
  24. 松野頼三

    ○松野委員 御協力願うのは、これは全大臣みな御協力願うと月頭ではおっしゃる。誠意は別として……。その意味を聞いているのではない。私たちは、おそらくこういうものがこの委員会を全部無修正で通るという見込みはない。なぜないかというと、この委員会空気を御存じない法案がみな出ている。国会の意思とほとんど相反したものが各委員会に出ているから、無修正で通るということをおなたがおっしゃるならば、出す方が無理だ。悪い法案を出して、直すことは国家、国民のために当然で、これを通すならばおそらく国民の方から怨嗟の声がわれわれ野党にくる。今日いよいよ予算が中盤戦になったときに、どうです。遺族会の方から修正してくれ、国民健康保険の方からわれわれのために修正してくれという陳情がみな野党に来ている。これを見れば、当然陳情が与党に行くべきだ。与党の法案が悪いから陳情がこっちへ来ている。中には与党の議員が陳情に来られる。この状況では、国のためにこの予算が無修正で通ることはいいことじゃないというのは、すでに常識なんだ。従ってあなたの立場もそれに協力する意味で、予算がもし通る場合にはこの程度までは修正しますということがあるべきだ。その腹を私は聞いている。
  25. 根本龍太郎

    根本政府委員 今そういう問題について私の方の所見を申し上げる段階ではないと思います。そういう事態になったときに内閣全体として申し上げなければならぬと思います。
  26. 松野頼三

    ○松野委員 それでは、端的の例だが、一兆をこえたとぎには内閣は解散するとおしゃったことは、あれは事実なんですか。
  27. 根本龍太郎

    根本政府委員 私は記者団会見において一兆億円を突破した場合に解散すとは言っておりません。これは記者団会見において、予算案が重大なる修正を受けた場合には政府はどういう意向だ、こう言われました。これにつきましては、私自身が決定すベきではなく、閣議で決定すべきことですから、あらかじめ、言えませんが、現在与党並びに閣僚の中では、政府が重大なる責任を負わなければならぬような場合においては二者択一でしょう、総辞職か解散かという、どっちかに追い込まれる可能性はあるでしょう、その場合における空気としては解散論がかなり強いようですということを言っただけであります。私は、まだ国会も本格的審議にいかない前に解散するとかなんとか、そういうことを申しておりません。
  28. 松野頼三

    ○松野委員 一兆という言葉は、おそくら全国民の中には、あの新聞記事を読んで——あなたの言葉がほんとうなら、新聞はうそを書くということだ。一兆をこえたらということを確かにおっしゃったはずである。一兆をこえた場合というのは、おそらくただいまのケースの中に出てきているだろうと思う。一兆は重要な要素だというお考えの上に一兆という意味をおっしゃっただろうと思う。もう、一つは、一兆の予算というものは重要なものかどうか。重要な段階というけれども、一兆という予算のワクがあるのかないのか。この点くらいは記者会見で発表になっただろう。記者に発表になった以上はわれわれ議員に言えないことはないでしょう。新聞がうそを書くはずはない。あなたの言葉では、まるで新聞がうそを書くみたいだ。かってある総理大臣が、新聞は盛んにうそを書くと言ったことはあったが、あなたもそういうことを言うのでは大して変りばえがない。その点をひとつ……。
  29. 根本龍太郎

    根本政府委員 先ほど申した通り、これは新聞記者会見と申しましても、私が旅行中に二、三の新聞記者が来まして、いろいろ話をするときに、一兆円のワクを政府は堅持する方針か、政府として一兆円のワク内において出した予算は堅持するのが当然だ。そのときに話が出たのは、大幅に修正するという野党各位の御意見もあるようだが、重大なる修正を受けて、政府の政治責任を問われるような段階になった場合には、どうかという質問でございました。それに対して先ほど申し上げたような話をした、こういうことなのです。
  30. 松野頼三

    ○松野委員 くどいようですが、一兆という言葉は何も念頭の中にはなかったのですね。
  31. 根本龍太郎

    根本政府委員 私が申したのは一兆円を堅持するかということについては政府は堅持する。ところがそれに加えまして重大なる修正を受けまして、政治責任をとらなければならぬときにはどうかという質問でございました、それに対して先ほどのようなお答えを申し上げた、こういうことです。
  32. 松野頼三

    ○松野委員 それじゃ一兆は念頭における重大な問題なのですか。一兆をこすかこさぬかということをお聞きしているのです。
  33. 根本龍太郎

    根本政府委員 重要ではあるでしょうが、一兆円を一銭でもふえたとかなんとかいうことによって内閣が非常に寛大な責任をとらなければならぬというところまでいくかどうかは、これは私だけの判断では政府としての態度はとるわけにいかないでしょう。
  34. 松野頼三

    ○松野委員 先ほど申されたようにこの問題は特に不誠意でこの通りにやった。それは間違いであったと謝罪されるのですから、今回だけは許します。この次はこの委員会はこのままでは過しませんから、再びこういうことのないように。この次はいけませんよ。こういう警告を与えて、謝罪されるなら今日はこの程度にします。それともう一つは、農林委員会には要求があった場合には必ず出てきてもらわないといけませんよ。この次には必ず出てくるという御真意を伺って、私の質問はこの程度で終ります。
  35. 綱島正興

    綱島委員長 別に御質疑はありませんか。——なければ委員長からこの際官房長官にお質ししておきたいことが一ヵ条ございますことは、さきに本委員会理事会において申し合せをいたしまして、国庫の補助金打切りまたは補助率の引き下げ等に関する法案は、各関係のある委員会においてこれを審議することが国会の常任委員会の建前から当然であるという結論に達しました。従って右の旨の内容を持つ法案を提出されるときは、各常任委員会別に付託ができるように用意をして提出せられるべきであるという結論を当委員会理事会において決定をいたしております。そこでその旨を議長まで申し出ている次第でございますが、この際官房長官に一応伺っておきたいことは、世間のうわさでございますから必ずしも事実かどうかはしれないが、このたびの予算補助金との見合いから、あるいは事業量と予算額との見合いから、補助金の一部の打ち切りもしくは補助率の引き下げ等が予定されているように推測されたり風聞されたりいたしておりますので、これに対しては特にその法案を各委員会関係事項別に提出いたされて、各委員会がその常任委員会の職分と責任においてその妥当性を審査することができるような便宜をはかって提出されることを本委員会理事会において決定をいたしているのでありますが、これに対する御意向を一応官房長官にお伺いしたい。
  36. 根本龍太郎

    根本政府委員 補助金の整理その他の関係につきましては、本委員会のみならず各関係委員会もあるようでございます。これについてはすでに前内閣当時におきましても、こういう問題については特別委員会を設けて一括してそこで審議したという例もございまして、なお議院運営委員会におきましても、この処理について、どうするかについて野党の国会対策委員長会議あるいはまた議運なんかにおいて、そのために特別委員会を設けるかどうかというような問題を御審議のようでございます。従いまして本委員会理事会の御決議の点は承わって参りますが、これを私一人限りにおいてどうするということを今お答え申し上げることは困難でございます。各党との態度のこともございますので、十分に各党とも御連絡の上そうして結論を出したいと考えているのであります。
  37. 綱島正興

    綱島委員長 委員長よりもう一応申し入れをいたしておきます。実はなるほど先年自由党内閣の当時さような一括した提案をいたした事実はございます。それらの審議の結果等から利害得喪を深く考慮いたしまして、本委員会理事会において、さようなことは非常によくない結果をいたすという考え方から、おのおの専門の委員会においてこれを審査する方が妥当な線が出るという結論から出ているのでありまして、かりに一回の先例があるということからそうして差しつかえないということにはならぬと思うのであります。それからいま一つ議院運営委員会であるというお話でありますが、この問題は運営委員会の問題よりも前に問題があるのであります。一括した法案として出されれば、もちろん運営委員会は特別委員会をこしらうよりほかにはないでありましょうが、提案者自身において分割して提案すれば、運営委員会はさような問題は起らないのであります。従って本委員会理事会において決定いたしました事項の本質的事情から申し上げますと、政府において提出されるときは、名委員会の審査をまつような線で御提出を願えば議院運営委員会の運営事項と相ならないのであります。その点の誤解がないように、その前の問題として私どもはその提出経過において各常任委員会がその機能を十分発揮することができて、しかも補助率打切りもしくは引き下げ等が、妥当な線であるべきことを見出すために各常任委員会において審議ができるような提案をせられたい、こういうことを、この際特に農林委員会の決議に基いて実は政府に申し入れをいたしておきます。
  38. 根本龍太郎

    根本政府委員 申し入れの点は承わりました。もとよりこの点は政府の提案の仕方によるのでありますが、従来の経緯からこの問題が各党の国会対策委員長会議なんかで問題になって、その調整の任に当られておるようでございますので、国会の運営を円滑にするために各党の意見も十分にそんたくしてやるのが、これまた政府として当然ではなかろうかと考えます。その点の方面も十分に考案し、当委員会の申し入れは十分承って善処いたしたいと存じます。
  39. 綱島正興

    綱島委員長 それからさらに委員長からこの際内閣に勧告をいたしておきます。先ほどから委員より質疑がございました通り、予算審議が衆議院先議の建前から、今後予算を伴う法律案は絶対に衆議院にまず提出いただきますように、この点を特に委員長から申し入れをいたしておきます。
  40. 松野頼三

    ○松野委員 ただいま委員長から御要望の補助金の打ち切りの問題は、各党対策委員会におきましても、官房長官御承知のように特別委員会で審議することがよかろうという意見は承わっておりますが、法案の提案の形式まではきめておりませんから、当委員会の希望するように法案の提出方法を審議の便利なようにされることは、少しも各党国会対策委員長会議の趣旨に反しない、この趣旨と農林委員会の趣旨もあわせておやりになって少しもさしつかえないのであります。その通り一つお願いいたします。
  41. 川俣清音

    川俣委員 補助金等の整理に関する法律案が成立いたしましたときに附帯決議がついております。これは特別委員会が全会一致であったと思うのですが、将来こういう提出の仕方は悪例であるから、こういうことのないようにという附帯決議がついております。しかも委員長説明をさらに補足いたしますと、委員会別に法案を提出するというのではなくして、おのおのの法律案の改正または停止でありますので、法案ごとに出すべきである、本来の法案の姿のままにおいてそれを改正または停止すべきである、全体的に廃止するならば、おのおのの法案の廃止案を出すべきである、こういう意味で所管が結局は常任委員余の所管別になるというような結果でありまして、法律案そのものの改正案または停止案として出すべきである、こういう意味でありますからこの点誤解のないように政府側におきましては、先般のこの法律案の経過から見まして、二年という時限立法にいたしましたのも、当分というのを二年という時限立法にする。さらに参議院におきまして一年という時限立法に修正されました理由も、この提出の方法が悪かったためが相当含まれておりますので、また再びその悪例を踏襲しないように厳重な戒告が必要であると思います。この警告を発しまして私の質問を終ります。     —————————————
  42. 綱島正興

    綱島委員長 これより引き続き開拓融資保証法の一部を改正する法律案を議題といたし審査に入ります。まずその趣旨について政府説明を求めます。政務次官。     —————————————
  43. 吉川久衛

    吉川政府委員 開拓融資保証法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。  わが国食糧自給態勢確立の一環である開拓の重要性にかんがみ、開拓者の農業経営の確立をはかることは何よりも緊要でありますので、政府は、これらの開拓者に対しその必要な資金の融通について各般の措置を講じている次第であります。すなわち、政府は、これらの開拓者に対し農機具、家畜等営農の長期基本資金は、開拓者資金融通法をもって直接融通しているのでありますが、その他の肥料、飼料等を購入する短期営農資金融通方途として昭和二十八年七月開拓融資保証法を施行し、中央開拓融資保証協会を設立して、現在までに一億五千万円の政府出資を行い、この基金をもって開拓者の債務を保証し、営農資金の円滑な導入をはかって来たのであります。  その後、この制度に対し開拓者の加入もふえ、また営農の進展に伴い資金の需要も増大して参りましたため、現在の中央開拓融資保保障協会の基金をもってしてはとうてい開拓者の債務保証の要請にこたえられない段階に立ち至りましたので、政府は、さらに五千万円を昭和三十年度一般会計から中央開拓融資保証協会に対し追加出費してその保証力の増大をはかり、開拓者の必要とする短期営農資金の融通を円滑にし、もって開拓者の営農の確立を期する次第であります。  以上が改正法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。     —————————————
  44. 綱島正興

    綱島委員長 農業課税の問題について調査を進めます。本委員会におきまして三月三十日、農業所得に対する適正課税に関する件を決議いたしまして関係大臣に送付しておきましたが、この際本決議に対し政府のとられた処置についての説明を求めます。特に国税庁長官出席を求めておりますから、国税庁長官よりこの際処置の大要を御説明願います。
  45. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 農業所得税の問題につきまして先般当委員会あるいはその他国会でだいぶん問題になりまして、皆様からの御要望もございましたので、あるいは御決議もございましたので、さっそく私どもといたしましてはその趣旨の徹底に努めることにいたしました。一つは私の方から各国税局長に対しまして直ちに電報をもって示逹いたしたのであります。そのおもな要点は、実は今国会におきまして先般申しました通りでありますが、なお当時におきまして、たいぶ全国的に未決のものがございまして、紛議をかもしていたような事態もありましたので、急いで更正決定を行うようなことはしないで、よく再調査すベきものは再調査いたしまして、納税者と話し合った上で、できる限り修正申告なりあるいは追加申告を出してもらいまして、それによって納税が円滑にいくように、その際におきまして、あとで修正申告等を出された場合におきましては、加算税等の徴収は行わないでやるように、それから所得が著しくふえたために納税に困難を感じられるような納税者に対しましては、所得税法の認めるところによりまして、五月末日まで徴収猶予等の措置も十分とるようにということを、さっそく電報をもって各局長に示達し、それを直ちに各税務署に通知するような措置をとった次第でございます、それでもなお趣旨等が十分徹底しないと困ると思いまして、国会の速記録の要領を各国税局に対しまして直ちに配付いたしまして、今私が申し上げました趣旨が一層よく徹底するようにいたした次第でございます。その後の状況は、大体全国的に見ますとおおむね話か進んでおりまして、大体におきましては円滑に進んできているように見ております。ただ御指摘の新潟県の一部におきましてなおまだ話し合い中のものもあるようでございますが、こういう向きに対しましては、特に関東信越局に注意いたしまして先ほど私が申し上げましたような趣旨をよく徹底しまして、円滑に話し合いをつけて納税してもらうように、なお目下鋭意折衝中でございます。要点を申し上げますればそのようなことでございます。
  46. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ただいま、長官の御報告を承わりますと、局長あてにそれぞれ要綱を電報で指示を与えたということでございますが、これはただ局長あてに電報でもって指示を与えられただけでは十分末端まで浸透しておらないのではないかと考えるのでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  47. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが電報でもって指示いたしましたが、その最後に、なおこの通達はそのまま直ちに税務署に通達されたいという一項目をつけ加えておりまして、おそらく紛議のあるようなところには少くとも各国税局から直ちに同じ趣旨のことを電報で注意いたしたろう、こう考えている次第であります。
  48. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そうしますと、大体国税庁関係の部内は大よそ浸透しておると理解してよろしいと思うのでありますが、そのことが一般の納税者に対してはほとんど周知徹底いたしておらないのではないかと考えます。ただいま長官から、新潟県の一部においてはというお話がございましたが、これは特に新潟県のわれわれの方でその周知方の手配をいたしましたので、浸透はしておるけれども、そうでない全国的には、部外には全然周知徹底の手続が行われておらないと考えるのであります。ある税務署に参りますと、そうした指示が与えられたことを厳秘に付して、全くさような事実はないと否定しておる税務署長もあるわけであります。そういたしますと、決議の趣旨というものは全く不徹底に終って、五月三十一日までの期間でございますので余日幾ばくもないということになるわけでありまして、はなはだ遺憾にたえない次第であります。しかしながら、まだ時日があるのでございますから、一般納税者に対する周知徹底についての処置をいかようにお考えになっておりますか、承わりたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 なお、部内の徹底方につきましては、その後私ども内部で局の幹部の会議等の機会もございましたので、そういう際にも十分趣旨を徹底させるようにいたしたことをつけ加えて申し上げておきます。外部に対する方法といたしましては、結局におきまして各税務署におきまして、問題になっておる際におきまして、今お話のように秘密にする必要は一つもないのでありまして、そういう際に、こういうことはよく考えるからということを十分話してやるのがむしろ当然のことだと実は思っていたのでございますが、御指摘のような、必ずしも私どもの真意を解しない署長があったといたしますれば、それは本旨でございません。そういう際におきましては、さっそくそういう点についても進んで取扱い方を説明してやりまして、徹底方をはかるようにいたしたいと思います。新聞紙その他で一般的に公表すると申しましても、適当な方法が今ございますか、どうですか、ちょっと私今はっきりしたことを申し上げかねますが、もちろん私どもいたしますことは、一般的に公開いたしましてやるべき筋合いのものだと考えますし、そういう頭で今後とも対処していきたいと考えておる次第でございます。
  50. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大体わかりましたが、新聞広告等の処置とおっしゃるけれども、そういうことでなしに、大体の町村では、農業協同組合などが預金の中から代払いなどをいたしておりますので、一般と申しましても農協または農業委員会あるいは市町村当局にまでその旨の達しが行われるならば周知徹底ができると考える。その徹底の処置をすみやかにおやり願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  51. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 今年は大部分実は済んでしまっておりますので、今ここで全面的にやるということにつきましてはいろいろ問題があるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、なお未解決で残っておる地域につきましては、お話の通りのような方法も考えまして、できるだけ徹底いたしまして、お互いに知り合つた上で円滑な話をしていくようにいたしたいと思います。
  52. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 もう一点だけですが、三月二十九日の本委員会において、国税庁長官は、所得の標準というものは市町村民税並びに国民健康保険税の標準とされるのであって、この点における影響の甚大であることを指摘いたしましたところ、それは別途市町村との間において適当な処置をしたい、こういう答弁があったわけであります。自治庁その他との関係において、その点についていかように取扱いをなさっておりますか、この点一点だけ伺います。
  53. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 お話の通り、結局所得の調査は、国の所得税、市町村民税あるいはその他のそういう賦課金に関連しまして非常に重要な関係がある。特に地方におきましては、むしろ市町村民税の方に非常に重要な影響があるという点を考えまして、昨年自治庁との間に一種の協定を結びまして、調査なりその他について市町村当局と税務署とお互いに協調しまして、協力関係を保ってやっていくというようなことを申し合せまして、それを税務署の方には私どもの方から流し、地方団体の方には自治庁から流してもらったことがございます。ただそう申しましても、実際上は、事実上の関係で税務署もできるだけ市町村と連絡をよくして、緊密にやるようにということは私ども始終言っております。実際問題としましても、所によっては非常にうまくいっているところもある。ところが所によりましてはなかなかうまくいかぬところもなおあるようであります。この問題はいろいろ問題がございますので、本年はさらに私ども国税庁自体で、もう少し徹底した実地調査をいたしてみまして、その上で、そういう共助関係をどういうふうに持っていけば一番妥当なことになるだろうかということを本庁自体で徹底的に調べまして、それに基きまして税務署を指導し、あるいは必要なことにつきましては自治庁から市町村に勧告をしてもらうというような道を開きたいと思いまして、実は先般来せっかく計画を立てておるのでございます。そういたしまして、でき得る限り両者の関係が円滑に、しかも個々の納税者の実情をよく所得調査に反映させまして、公正な課税ができるように努めたいと考えておる次第でございます。
  54. 川俣清音

    川俣委員 この際、本委員会の決議に果して沿うたような通達をなされたかどうかということを検討いたしたいために、通達の内容の写しを本委員会に提出されたいと思う。それから、通達の効果と申しますか、権威はどのようなものであるか。この通達を実行しなかった場合に、あるいは通達を無視したような場合においては、どういう処置を過去においてとってこられたか、この二点。
  55. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 通達は非常に簡潔に、しかも意を尽すように書いておりますので、ここで読み上げさせていただいてもいいかと思いますが……。
  56. 川俣清音

    川俣委員 正式な写しを出して下さい。
  57. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 それではそのようにいたします。通達につきましては、もちろん私どもの職務上の訓令と申しますか下級官庁に対する一つの指令でございまして、当然下級官庁はこの趣旨に従って実行すべきものだと考えております。従いまして通達に明瞭に違反するような場合には、それぞれその事情調べて必要な監督上の措置を今までもとっておりますし、今後もとる考えでございます。
  58. 日野吉夫

    ○日野委員 通達を出されたことは承知いたしておりますが、その通達の、反響を国税庁長官はどう聞き取っておられますか。このくらいの通達が出れば、そこにいろいろの反響があると思う。私などは不幸にして国税庁関係の部内の反響はわかりません。部外の方はわれわれよく承知しておりますが、部内にあったいろいろの反響をどう承知しておられるか。困ったという声とか、いろいろあると思う。この反響によっては、今石田委員から指摘されたように、さらにこれを周知徹底させる方法もとらなければなるまいと思う。中には、迷惑しておる、一度決定したのをさらに再調査などすることになっては大へんだから、できるだけこれを周知徹底させまいとする動き等も、これは考慮しなければなりません。あなたのところに寄せられたこの通たちに対する反響をお伺いしたい。
  59. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 これは前回私が申し上げた通りでございまして、その当時なお未解決で残っておる問題につきましては、私ども通達の趣旨が十分徹底しまして、そういう方向で実は動いておると思っております。更正決定の実際なども非常に慎重にやっておるようでございまして、実際上はよく調べまして、話し合いでやるというふうに動いておるものと実は見ております。その点は御期待通り行くのではないかと思っております。それからすでに話し合いのついたものにつきましていろいろ御議論がございましたが、これは前回におきましても、私よく意を尽して御説明申し上げた次第でございまして、理屈上はっきりした間違いがあるような場合におきまして、これを直すのは当りまえだ。ただ大部分話し合いがついたあとでありますれば、お互いに多年の関係もあるので、今後のことは別といたしまして、よく話し合って、できますならば納得しまして納めてもらうようにしたいということをつけ加えさせていただいておる次第でございます。こういう点につきましては、率直に申し上げましてそれぞれの地方であるいは若干問題があったところもあるかもしれませんが、先般局の幹部を集めまして会議いたしました際におきましては、私どものところにはやはり新潟県の問題が一番問題として残っておりまして、その他の地域につきましては、大体におきましてもう二十九年分の問題といたしましては、もちろん例外は若干ございますが、解決済みということで了承しておるのでございますが、もしもその点問題がありますれば、いろいろあるいはお話も、必要なことは承わって善処いたしたいと思いますけれども、大勢は大体そういうところにあろうかと存じておる次第でございます。
  60. 日野吉夫

    ○日野委員 いずれ課税標準等につきましては委員会で十分検討しますが、五月三十一日という期限がありますので、部内にまだ徹底していない、長官が言われるような趣旨でこれを取り扱っておるかどうかということについては、若干の疑問なしとはしないので、この点についてもし通達の趣旨を十分了解できないものがありまするならば、部内への趣旨の徹底の手続等は、審議の期間中といえども国税庁において十分とられるように要望して、あとは別個の審議に移りたいと思います。     —————————————
  61. 綱島正興

    綱島委員長 この際お諮りをいたします。東京穀物取引所におけるアズキ等の取引の問題に関連しまして、質疑をいたしたいという申し出がありますが、これを許すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 綱島正興

    綱島委員長 しからばこれを許すことにいたします。佐竹新市君。
  63. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は河野農林大臣に質問したいと思っておりましたが、御支障があるそうでありますから、吉川政務次官に御質問をいたしたいと思います。  昨日東京穀物取引所においてアズキの暴騰のために立ち会いが不能になったということは各新聞に出ておるので御承知だろうと思うのであります。わが党が本年の一月二十一日か二十二日だったと思いますが、河野農林大臣にアズキの暴騰の問題に対しまして申し入れをいたしましたときに、河野農林大臣は、絶対量が少いのであるから、中国方面から雑豆を入れて値段の調整をするか、またこうしたような絶対量の少いものを取引所において相場の対象にするために値段をぐんぐん引き上げられて、それがために消費者に迷惑をかけるということは遺憾であるから、こういう点について、これを対象とするかしないかということも考えてみる、こういうようなことであったのであります。しかるに今日に至りましても昨日のごとき大暴騰をいたしまして、取引は停止したというような実情になっておりますのにかんがみまして、一体申し入れましたことを、どのように具体的に勧告とか、あるいは勧告だけでなく、その他の方法をとられたかということに対する経緯をこの際御報告願いたい、かように思います。
  64. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいまの御質問の問題については、私は新聞でこれを承知しまして、さっそく調査をさせております。調査中ではございますが、担当の局長から答えてもらうことにいたします。
  65. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ことしの初めでございましたか、お話のような事情が小豆の取引についてございました。農林省といたしましては、取引所の実態ともよくにらみ合せまして、自粛と申しますか、警告と申しますか、そういった措置を講じたのであります。具体的に申しますると、建玉の制限をいたしまするとか、あるいは証拠金を引き上げまするとか、そういうことの措置によりまして、その後相場はだんだんと安定して参りまして、先月ごろは九千円を下廻るといった状況になって、私どもも安堵しておったのでございますが、その後先月の中ごろから今月にかけまして、だんだんとまた相場が上向いて参った、こういう実情にございまして、私どもも価格の推移を通じまして監視を実はいたしておったところでございまして、この一両日前からその措置について実は具体的な考究をいたしておったところであります。
  66. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 この問題は新聞にも出ておりますが、真偽のほどは不明でありまするが、私は、大体市場の商売人の評判になっている点は、から株を動かすということ、これがおそらく一番大きな問題であろうと思う。そういう点に対して、農林省の方から、今改良局長のお話を聞きますと、警告を発した、勧告をしたということでありますが、それにもかかわらずなおこうしたことをやっておるということになりますると、一体勧告というものはどの程度のいわゆる効力のあるものであるか。勧告をしっぱなしにしておいて、それでも一時はそうなったがまだ値段が高くなっているというようなことでは、農林省の権威にかかわると思うのですが、その農林省のいわゆる勧告というのは、一体どれだけの権威のあるものか、お答え願いたい。
  67. 小倉武一

    ○小倉政府委員 もちろんこれは私どもの法律上の形式に基いた措置ではございませんで、事実上の行政措置でございます。法律に基く権限が背後にある、その権限に特に基いてやったということではございません。もちろん取引所につきまして、主務大臣の監督権がございまして、相当厳重な処置ができるようになっております。お話のような取引の場合によっては、一部あるいは全部の停止をするといったような権限ももちろんございまするし、あるいは委託なり受託の関係について違法なことがございますれば、その者に向ってそれを停止するといったような措置もございます。そういう具体的な権限に基いてやったことではございませんで、どの程度の権威といったようなことではございませんが、一般的な指導監督ということに基いていたしたのでございます。もちろん先般いたしました措置は、その後取引の安定とともにある程度緩和して参っておりまするけれども、最近の実情にかんがみまして、なお健全な取引の行われますような措置を実は考えておったところでございまして、昨日の取引についての善後措置を一方関係者において講じさせますとともに、慎重にかつ迅速に今後の措置検討し、実施して参りたい、かように存じております。
  68. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 どうも私にははっきりわからないのです。厳重な措置をとると言われるが、処置とは一体どのようなことをなさるのであるか。  それからもう一つ、一番重要な問題は、絶対量が足らないからこういう問題が起きるのであります。これは吉川政務次官からお答え願いたいと思いますが、大体アズキの生産地は北海道ですが、全国的な生産量がどれくらいあって、消費量が一カ年どのくらいあるか。この消費と生産のバランスはどういうふうになっておるか。もしこれがこういうようにつり上げられて、消費者に多大の迷惑をかけるということになると、それがやはり物価、生産の問題に影響してくるわけであります。そういうような関係になると、先般河野農林大臣の言われたように、中共方面から雑豆を入れて値段の調整をするとかいうようなことを、勧告をしても聞かなければ、農林省はそういうなにがあるのだからやられたらどうなんです。それをやらずにおいて、絶対量の少いものをこういうような値段に引き上げさせて、勧告してもどうもできないというのでは、農林省はその責任は一体どうなるのですか。     〔「政務次官、答弁々々」と呼ぶ者あり〕
  69. 小倉武一

    ○小倉政府委員 小豆の生産の事情でございますので、事務的なことでまず御答弁をいたしたいと思います。御承知の通り二十八年、二十九年、冷害等の関係で、御指摘のように生産が非常に少かったのであります。そういうことも去年あるいはことしのようなことが起る根本的な原因であろう、これはもちろん御指摘の通りであります。従いまして小豆の実需の不足分について充足するということは大切なことでありますが、実はこの小豆は、御承知の通り一種の日本独特の生産物でございまして、これと同じものはあまり外国にないのでございます。朝鮮とかあるいは満州のものもございまするが、十分入って参りません。従いましてこの実需要に見合う措置といたしましては、雑豆を必要に応じて入れる、こういう措置を講じております。また取引の量の問題につきましては、わずかではございますが北支等のアズキを上場いたしまして代替ができるというふうな措置も講じて、できるだけ取引の最もふやす、こういう措置は講じておるのであります。
  70. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 政務次官にちょっと答えていただきたいと思うのですが、このアズキの生産地は北海道なんですが、北海道の生産者にこれだけの値段が——われわれの立場から言うならば、作ったときにそれだけの値段で買い上げるということは、これは統制が撤廃されておるのですから……。しかし生産したものはすでに協同組合あるいは大きな商人の手によって買い取られてしまっておる。いわゆる一流のメーカー、たとえば第一商事とかあるいはその他の大きな商事会社とかが一手に買い占めておる。それを一つのから株で動かしておる。そのために消費者が迷惑しておるのですが、そういう調整をとるために、いわゆる値段を下げるにはそういうような勧告のしつぱなしではだめなんですから、今言うように雑豆でも入れて、そうしてあなたの方で本委員会を通じて値段の調整をするとかいうようなことをはっきり言うと、値段は下っていくのです。だからそういうことを故意にやらしておるということは、何かその裏にからくりがあるのではないか、こういう評判は、行くところはどこへ行くかというとすべて農林省に行く。農林省の裏の方で動いておる者が怪しいのだ、こういうことが言われるのだ。それを明白にするためには、大体このくらいの量を入れて値段の調整をしたい、こういうことをはっきりやられないと、幾ら勧告したって、またぞうこういう事件が起ってくるわけです。吉川政務次官は農民の味方、また消費者の味方だと言われるのですから、あなたの口から、農林省はこういう態度でこの値段をこうさせたいということを、はっきり御答弁願いたい。どうですか。
  71. 吉川久衛

    吉川政府委員 まことに御指摘の通りでございます。実は私新聞で見て初めて知ったようなわけでございまして、その間のいきさつは事務当局から聞きましたが、ただいままでの調査報告では、まだ私にははっきりいたしておりません。しかしそういう事実がございますれば、私はさっそく予定されております百六十万ドルばかりのものを緊急に輸入いたしまして、その間は当事者とも十分話し合いをしていきたい、そうしてあわせて一方では緊急の輸入の措置をとって価格の安定をはかっていきたい、かように考えております。
  72. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 皆さんのおじゃまになりますから私はこれで質問を打ち切りますが、このことは政務次官から河野農林大臣にはっきりと言っておいてもらいたい。なおあらためてわが党から申入書を出しますが、こういうことになりますと消費者は非常に迷惑いたします。今の吉川政務次官のお言葉はから手形にならないように、実際に早く、やってやらないと、小いさ商売をしているものなんかアズキの値上りのために非常に迷惑している、それがために消費生活にはね返ってくる、こういうことになりますから、一部のそうしたから株を動かすというような事実があれば、これは私は重大な問題だと思う。改良局長はそういう事実があるかないか現場に行って見るくらいの監督権はあるでしょう。そういうこともやらずにおいて、ただこういう警告は発した、また処置をとるというぐらいではいけない。やはりそういうときに、こういう事実がある。倉庫に入れておいて動かしているのかいないのかというようなことぐらいをみずから行って見て、勧告をした責任をはっきりしなければいかぬ。そういうことがないから農林省がごまかされたような形になっている。そういうことでは農林省に対する権威というものがなくなる。河野農林大臣も吉川政府次官も、農民の味方だということを選挙の演説で絶えず言われておるのだから、この際はっきりした態度をとってもらいたい。また事務当局がやらなければやらしたらいいのです。そうしたら値段はお互いに調整されてくるのですから。そのことをもって質問を打ち切ります。
  73. 吉川久衛

    吉川政府委員 先ほどの私のお答えの中に私の勘違いがございました。四月——九月分の割当は百五十万ドル。百六十万ドルと申し上げたのは百五十万ドルの間違いでございますから、訂正をいたします。そうしてこれは一つ緊急輸入の手を打ちます。それから事実については十分調査をし、それを検査する権限もございますので、御指摘の通りにいたしますし、また大臣にもさっそくお話をいたしますが、私の言うことは大体聞いてくれると思っておりますから、どうぞその点はおまかせを願います。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの小豆の価格不安定の問題ですが、これが一つの方策としては、国外から不足量を入れて手当するということも必要でありますが、問題は、絶えず国内における需給関係の趨勢をやはり把握しておくということが大事なことだと思うのです。もちろん今小倉局長が言われたように、生産地においては昨年、一昨年が不作になっている。そのためにどの程度国内における需要が枯渇しているというような数字は、総体的に見ておおよそ把握できるのではないかというふうに考えられる。ですからその不足量に対して、この原因がはたして絶対量が足らぬところから来る原因であるか、あるいはその取引所等を通じて商行為というものが正常に行われているのか、おらぬのかというような、両面からの判断がどうしても必要でないかと考えるわけです。ただ単に外国から雑豆を入れるということは、非常にけっこうかもしれませんが、その場合においては外貨をそれに振り向ける、またそれによって別な面における利権とか、不当利潤の追求等が行われないとも限らないわけです。ですから基本的にはどの程度需給関係の面において不足しているか、これをどの程度具体的に調整すればこの混乱が正常に復するものか、そういう基本的な数字の把握がどうしても必要だと思う。ですから今次官が言われたように、大臣は私の言うことは聞くだろうという安易な感傷の上に立った発言でなくて、実態がどういうようにあるかというその説明をここでなさったらどうですか。
  75. 吉川久衛

    吉川政府委員 芳賀さんの御指摘のように、確かにそういう調査について少し十分でない点があったかと私は思います。従ってこの価格並びに現物の需給の安定については、農林省において責任がございますから、積極的にそういう点に遺憾のないように今後努めますから、御了承願います。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なおこれに関連して、たとえば外国からの食糧輸入等が国内の農産物に与える影響が非常に甚大です。一例を今年の砂糖の輸入計画にとっても、前年度よりは約十万トンくらいふやして九十五万トンくらいの輸入を行うというこの計画が一応きめられたことによって、たとえば国内におけるバレイショ澱粉であるとか、カンショ澱粉の値下りが顕著になってくる、そういう事例が次々出てくるわけです。やはり外国からの農産物の輸入計画と国内における食糧農産物等の価格の安定のバランスを、やはり農政を通じて調整することがどうしても必要であると思いますが、ここにもやはり鳩山内閣の思いつき外交とか財政計画の弱体性があると私は指摘したいのですが、次官はそういう点に対してはどういうお考えを持っておられますか。
  77. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいま砂糖のお話を例にとられましたけれども、砂糖の消費量については相違はないのであります。前年度の繰り越し等の関係もあって、輸入の数量に増減はございましたけれども、御指摘の点については先ほどお答え申し上げたように、これはきわめて重要な問題でございますから、慎重の上に慎重を期して善処したいと思っております。
  78. 川俣清音

    川俣委員 この際政府にお尋ねしておきたいのですが、一体小豆をどういうわけで商品取引所に上場しなければならなかったか、またどういうわけでこういう上場を許すに至ったか、取引所を認めるに至ったか、この点をはっきりしておいていただきたい。なぜ農林省の監督のもとにこういうものを上場させるに至ったか、それはどういう理由なんですか、その理由をまずお聞きしたい。提案された提案理由はここにありますから、説明が不十分であったら私の方から説明してもいいが、とにかく説明していただきたい。
  79. 小倉武一

    ○小倉政府委員 とくと御承知のことでありますので私から申し上げるのはいかがかと思いますが、お尋ねでございますので申し上げますが、雑穀等につきましては統制が解除されて参りまして、大部分はほとんど完全な自由な取引にまかせるということになっているのであります。従いましてこういう自由市場におきまして相当量の取引のあるものにつきましては、価格の形成が公正に行われるということが必要でございます。取引所の大きな機能の一つはそういうところでありますので、もちろん品物によりまして適格なもの、不適格なものの、いろいろありますが、そういう点も勘案いたしまして上場のものに認めておるのでございます。なお実需者あるいはまた生産者側から見ましても、先行きの価格が幾らになるといったようなことを知る必要もございまするし、あるいは品物を仕入れる者にとりましては、将来の価格の変動というものに対しまして一種の保険的な作用を、取引所を通ずることによりましてできる。こういったようなこともございまして、そういう機能に着眼いたしまして取引所というものを再開いたした、また雑穀等の上場を認めておる、こういうことでございます。
  80. 川俣清音

    川俣委員 穀物取引所を再開して、新しくいろいろな保護をいたしておりまする理由として、今改良局長が述べられておりますが、第一に大量の取引が迅速かつ確実に行われることであり、第二には公正な相場を形成することであり、第三には価格の平準化作用が行われることであり、第四に価格変動に対する保険作用を営むこと、これらの必要から上場させておる。しかも法律の目的には「商品の生産及び流通を円滑にし、」とある。従ってこれは生産ですから、おそらく日本の生産ということです。外国の生産のことは考えていない。そうすると商品生産及び流通を円滑にして生産を刺激していこう、取引を円滑にしていこう、こういうことだと思うのです。ところが昨日行われたようなこんな状態は、この法律の目的を達成するがために起ってきたものじゃない。逆じゃないですか。何のために一体この法律を作って保証しておかなければならぬ理由があるのか。しかも小豆は昨年度政府の手当が悪いために、また三十年度予算においても手当が悪いために、どれだけ生産されるかわからないような状態である。この原資である小豆に対する手当も予算もみずから削減しておって、一体上場価値があるかどうかということを念頭にないような状態に置いておる。しかも昨日行われたものは、日本に生産されている以上の取引が行われておる。こんなばかなことがありますか。生産された以上のもの、倉庫にある以上のものが対象になって売買なんというものがありますか。おそらく生産された中で流通をはかるというのでありますから、何割かの流通をはかるということだ。倉庫にある以上のものが取引の対象になるということは、どこにそんなことがあるのですか。目的をちゃんと明らかにしてこれを監督しなければならないのに、目的を逸脱して起ってきた事件をこんなに保護しなければならぬ理由がどこにあるか。この点を明らかにしてもらいたい。
  81. 小倉武一

    ○小倉政府委員 取引がいろいろございまして、現にたとえば東京穀物取引所でございますれば、東京の倉庫にあるだけのものが取引の対象には必ずしもなっておらない場合もございまするし、あるいはまた全国の在庫と申しますか、現在ある実物ということになりますと、これはどのくらいあるかということは推定することがなかなかむずかしいのでございます。そこへ持ってきまして、おっしゃるように現在の事態が過当な投機取引かどうかということもなかなか実は判断に苦しむのでございますが、そういうような過当取引になるようなことはもちろんないようにしなければならぬという趣旨は、もう御承知の通りでございます。
  82. 川俣清音

    川俣委員 どれだけの数量があるかわからないというのだったら、取引の理由の大半が喪失するのです。大体日本に流通する数量はどのくらいかということが、取引の一番重要な要素でなければならぬ。取引所の大きな要素は、一体なかなかつかめないものを、取引の動きによって大体の数量がつかめるというところに取引の意味があるのです。それ以外には意味がない。従っておそらくこういうような思惑が出てきたとか、あるいは取引を停止しなければならないという事態は何であったかというと、これはからである。からということはないということなのであります。売手が続けられない、現物を続けられないというところから起って来た。これは東京の倉庫だけではありません。全国の倉庫から見て売り続けることができないという結果中止しなければならない。数量がないということなのか、これだけの数量があるのにこういう中止をしたというならもっと問題は大きい。どちらなのですか、ないので中止したのか、あってもなおやれなかったのか、これは重大なことですよ。どっちなのでありますか。
  83. 小倉武一

    ○小倉政府委員 もちろん売方に立つ人も、買方に立つ人もある程度の想定を立ってやっておりますので、生産の見込み、あるいは在貨の見込みというものは持ってやっておるわけであります、取引所の機能というものは、実はそういういろいろな人の見方、価格の動向なり、あるいは需給の動向についてのいろいろな人の見解が総合されるということでございますので、その結果は価格に現われますから、価格が上れば品物が逼迫する。こういうように逆に推算する。こういうことはできますけれども、的確に現在私どもが、五月初みに幾ら在庫があるかということは、すぐにはなかなか把握できかねるということを申し上げたのであります。
  84. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと川俣委員、長くなるなら午後にいたしませんか。
  85. 川俣清音

    川俣委員 こういう答弁では長くなります。
  86. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいままで局長がお答えいたしましたが、川俣委員の御指摘のような問題は、取引所が取り扱う商品の中には、これはほかにも考えられる問題だと思いますが、そうなってくるとこれは非常に重大なる問題だと思います。たまたま起りました小豆の問題については、ただいま調査中でありますが、特に督励をいたしまして、調査の結果はまた皆様に報告するつもりでございますが、その上で取引所の基本的の問題については何かと御検討をいただかなければならなくなるかもしれません。ただいまとにかく調査中でありますから、どうか一つもうしばらく御猶予をお願いしたい。
  87. 川俣清音

    川俣委員 しばらく猶予するわけにいきません。一方において停止しておってしばらくの猶予などというわけにはいかないのです。これは日本の農産物の生産上にいろいろの大きな問題があるのです。あなた方はそう言うけれども、ことしの生産目標をまだ立っていないじゃありませんか。予算を見てごらんなさい。こういうものの種子確保するためのいろいろの手当をしたらどうか。あるいは原資の確保をしたらどうか、これは北海道が災害を受けた後なのであります。こういう手当のことも考えていかなければならない。手当がなければやめなければならぬという問題が起きてくる。これは十分や五分で結論をつけるとか、調査などという、そんななまぬるいことはできませんから、午後にやるならそれでけっこうであります。あらためてやります。
  88. 綱島正興

    綱島委員長 午前の質疑はこれにて打ち切り、午後は正二時から再開いたします。なお午後においては災害に対する質問、予定される法律案説明等を求めますので、関係のあるすべての政府委員出席をしていただきます。  それでは暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  89. 綱島正興

    綱島委員長 午前に引き続き会議を開きます。  小豆に関する緊急の事態に対する質問を継続いたします。委員に申し上げますが、あとの日程も非常に詰まっておりまして、盛りだくさんでございますから、どうぞ政府側もどちらもしごく簡明直截に、効率的に一つお進めを願います。川俣委員
  90. 川俣清音

    川俣委員 農林省においては、米麦に続く重要食糧として雑穀類の増産に相当程度の犠牲を、また従憑指導を行ってきたと思います。最近に至りましてから、単に農産物価格を維持しょうということで、大豆、小豆等の雑穀は除いておりまするけれども、この構想は、やはり米麦とともに作られておるところの農産物であり、価格が一方的に高騰しますことによりまして、地方によりましては麦から雑穀に移行していくわけでございます。ことに北海道のような雑穀地帯におきましては、いかなる種類の農産物を植え付けるかということが、農村の経済の上に大きな影響を持っておる問題でありまして、従いまして、ある特定のものだけが非常に高くなるというようなことになりますと、農業をしていよいよ投機的な農業に追いやることになるのであります。一番雑穀の多い北海道にとりましては非常な危険なことであります。北海道農業自体が大陸農業でありまするので、比較的商品生産に力を農民がいたしておるようなわけであります。たとえばハッカでありまするとか、あるいは一時トウモロコシに主力を注いだというような、北海道農業を混乱に陥れしめたようなことは、あまりにも商品農業生産に力を入れ過ぎた結果であります。ところが戦後食糧不足からいたしまして、いわゆる内地から入りまする主食の類の統制または輸送の困難からいたしまして、みずから主食を作らなければならないような状態になりましたので、北海道もいよいよ正常に入ってきた。今後この雑穀地帯、北海道ばかりじゃございません、岩手県等の雑穀地帯において、一体どのように指導しあるいはこれを助成していくのかということが、今重要な課題でなければならぬと思う。しかし、今問題はそういう根本問題に触れているときじゃありませんから、一応これは概念として申し上げて、そこに作られる小豆類が公けの取引上米の二倍というような値段になるということは、一体妥当だとあなた方はお考えになるのか。どうなんですか。
  91. 小倉武一

    ○小倉政府委員 北海道の畑作地帯、その他北海道に限りませんが、畑作地帯におきまして主要な作物でございまする雑穀につきまして非常な価格変動が起り、そのために農業経営全体の健全な発達に支障があるということについては、もうこれは御趣旨の通りだと思うのであります。雑穀に限りませんけれども、非常に高くなるということになりますると、輪作その他農業経営の健全性を阻害するということは、これはもう御承知の通りでございます。また小豆価格につきまして、これが必ずしも適当な価格でないというようなことも、あるいは見方によりましてそう見られると思いまするが、昨年、一昨年と続きました不作のために、またこれにかわる輸入ということも、特殊の商品でございますので容易にできないといったようなことで、事情は御了察願えると思いますが、根本趣旨はかように私どもも考えておるのであります。
  92. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、この取引所法を設けるに至りましたのは、生産を助長し、その融通を円滑ならしめる、そういう趣旨で、その促進作用としての流通経済の面から促進作用を行おう、直接政府が助成をするよりも、こうした価格操作によって大いに生産を助長しようという、こういうことだと思うのです。それが異常な価格を示すことは、他の農産物の作付に影響するからということで考えなければならぬ。その点はその通りです。ところが今度の破綻をいたしました内容を見ますると、一番生産に関係のない時期において、生産者にとっては一番不利な時期において価格が高くなっている。生産された時期から安くなるというような取引の状態を起して、ここで休止になった。そうすると、この取引所法の目的を何も達成しないのじゃないか、運用しておるのじゃないか、ちょうど買付の時期に高くなって、あるいはなるということの見通しがついて生産を刺激するが生産に関係のないときに高くなって、いよいよ生産されたときに安くなるというようなことは、もうこれは生産に寄与する結果になりません。先ほど言ったように農業政策上、いたずらに小豆だけが高くなってはならない、これは農業政策上こう考えられていいことだと思う。それには私も異論はない。だけれども、投機の対象として、他の重要な農産物の価格を何とか処理していかなければならないという農林省がこの義務負っておるときに、北海道においては主要な小豆の価格がいたずらに高くなる。しかも何ら生産に寄与しないというような取引でありまするならば、これは無用の長物であると同時に害毒を流すということになりはしませんか、この点どうですか。
  93. 小倉武一

    ○小倉政府委員 取引所法の運営いかんによりましては、御存じのように取引上弊害を来たすといったようなことももちろんあり得ることでございまするので、そういうことのないように十分監督をしなければならぬと思いますが、今問題になっておりまする小豆につきましては、ちょうど端境期にだんだん向うときでございますので、直後生産に対して関係がないといったようなこともございまするが、なおまた産地には相当数量のものがございまするし、またこういうときでありまするというと、取引上よけいに投機的なことも行われ得る。午前中川俣委員から御指摘のように、価格の平準化作用が取引所にあるわけでございまするので、それがなかった場合にそれを比較してどうこうということを申し上げることはできませんけれども、そういう作用はやはり今のところ含んでおります。また生産者に対しても、現在の価格ばかりでなく、先々の九月、十月の価格がどうであるかということを今から取引所が判断をつけているということも生産者に対しましてある程度の考え方を与えるということにも便宜ではないか、かように存じておるのであります。
  94. 川俣清音

    川俣委員 実物取引、実際の取引の面よりも取引所の価格が幾らか先行しておる。幾らか先行して先高になる、先安になるということは、これは取引所の機能として当然出てくることです。しかしながら現物の取扱いとこれほど大きな開きを生じておるということは、少量の取引と大量の取引と違いがあるとはいいながら、あまりにも大きな開きが出ておるということは、これは取引所法を悪用しているということになりはせぬか。そういう目的ではできていないはずです。この法律の命ずるところによりますれば、あるいはこの法律を提案せられました理由によりますれば、価格の平準化作用を行わしめるために適切な方策として取引所法を作るのだ、あるいは公正な相場を構成する上からこういうものを作るのだ、こういう趣旨でできた。その趣旨に大体近い形で相場ができておりますれば、弊害よりもこれはむしろこういうことによって雑穀類の円滑なる取引を盛んならしめる。円滑なる取引の結果生産にいい影響を与える、こういうことになれば、これはもう生産と取引が結びついた取引所の取引方法ということになります。これらと違った形が現われてくると、一体何のために取引所を置かなければならないか、目的と違った結果を現わすようなことであれば、これは監督不行き届きなのか、あるいはこういうものを上場させることが悪いのか、こういった問題が出てくるのじゃないか。あるいは役人が悪いのか、一体きのうあたり起ってきたところを見ると全部に該当する。一番悪の面だけが非常に強く出てきておる。それならこういう小豆類のような限られた数量のものは、こういう危険性を伴うものである、将来やめたらどうかということがあまりにも露骨に出てくるのじゃないか。何かその点幾らかまだ置いた方がいいという理屈が出てきますか。小豆などをもう少し上場させておいた方がいいという理屈が出てきますか。私はどうしたって出てこないと思う。これは、小倉局長、改良局長を責めるのは非常に気の毒だが、職責上監督の地位にあるからこれはやむを得ない。農林省は、あるいは蚕糸はあっちの窓口だ、あるいは大豆は食糧庁だ、みな違っておる。通産省はそこにいきますと、一つの取引所に対する監督は一本にして、かなり強く監督権を発動しておるようなんです。最も生産と関係が深いということでわざわざ通産省の所管から——取引所でありながら通産省から農林省に持ってきているゆえんのものは、生産と非常に関係が深いという点を重視して農林省の監督のもとにこれを置かしめている。その機能を果せないようだったら、通産省から持ってきた意味はないじゃないですか。
  95. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お話の通りでございまして、国内の統制がありませんために流通過程の影響を生産に及ぼすことは、生産をむしろ主として担当いたしまする農林省といたしまして最も不手ぎわであります。別途農林経済局におきまして、取引所一般については監督をいたすことになっておりますが、本日たまたま物資の担当局長としての改良局長がおいでになりましたので、お話の点も出たかと思いますが、なお今後一層努力いたします。目下の問題につきましては、大臣、政務次官におかれましても、午前中に申されましたように緊急手を打つように努力いたしておりますので、御了承願いたいと思います。
  96. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 政務次官にお尋ねいたしますが、この穀物取引所の構成を見ますと、山崎商事の会長が取引所の理事長をしておるのですが、山崎商事というのは売方で、いわゆる穀物の取引をしておるわけです。こういう理事長の職にある者が、要するに自分が商売をしていながら理事長のいすにおって、取引所の妥当な運営ができるかどうか。こういう者を理事長に認めておくということは——理事長というよりは、むしろから売りをして、そしてここで大きなもうけをする、こういう考えをもって非常に農民、消費者に迷惑をかけておる、こういう者を認めておるのは、監督上の立場からいって一体どういうことなのですか。
  97. 吉川久衛

    吉川政府委員 取引所の構成は御案内のことと思いますが、会員組織になっておりますので、会員の中から理事長を互選でございますか、選挙するようになっていると承知をいたしております。それが適当であるかないかということについては、私は取引所のことについてはなはだ不案内でございますので、もう少し勉強させていただこうと思います。
  98. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そういう会員の中から互選をするということになれば——これはよく条文を見なければわかりませんが、しかしこういうことになっておると、そういう者は、いくら監督したって農林省の言うことは聞かない、必ず自分本意に値段をつり上げて相場をやるのです。そういうことは悪いと思えば、これはやはり何か法的な改正をすることを国会を通じて要求すればいい。こういうことを認めておくところにこういう問題が起きるのです。そういう点については今後どういう考えをお持ちになりますか。
  99. 小倉武一

    ○小倉政府委員 御説のような点について検討すべきではないかということについては、これは御意見ごもっともなところもあると思います。なお私どもも検討したいと思いますが、東京穀物取引所の理事長の今のお話の山崎さんは、そういうこともあろうかといったようなことで調べましたが、この四月からは自分ではやっておられないようでございます。しかし制度の問題としてなお考究すべき点があろうかと思います。
  100. 川俣清音

    川俣委員 私の質問に対する官房長の答弁は、聞いていないことを答弁している。私が聞いたのはそうではない。通産省は窓口を一本にして監督を強化しているが、農林省はばらばらにやっているではないか、それだからできないのではないかということが一点なんです。もう一つは、これは商工省と言われた時代からだと思うのですが、商品取引所については商工省が監督したい、これに対して農林省は——政治的な争いからではないでしょうけれども、その理由によりますと、国内農産物の生産に非常に影響の深い取引所であるから、生産を重要視して農林省の監督に置くべきだということで、あなた方の先輩が強く主張されて、農林省の所管になっておるのです。流通経済だけを重要視されるならば、農林省の所管から通産省に移したっていいんじゃないのですか。この二点をお尋ねしているのです。これは所管の問題ですから、官房長かあるいは政務次官にお願いいたします。
  101. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私の答弁の下手なせいでまことに申しわけございませんが、先ほどお答え申し上げました通り、農林省におきましても取引所に関しましては農林経済局において窓口を一つにしまして、取引所としましては統一をしてやっておりますと申し上げたのであります。  第二点につきましては、流通の過程におきまする問題で生産に悪影響があるようなことは、生産から流通、消費に至りますまでたとい直接統制がございませんでも、担当いたしまして、その仕事をいたしております農林省としては、これは当然農林省でよく仕事をいたさなければなりません。特に農林省は国内生産に重点を置いてすべきでありますので、この見地からの流通過程の問題でも、取引所の問題でも十分にいたすべきだと考えておりますということを申し上げたのであります。
  102. 川俣清音

    川俣委員 あなたの答弁によると、生産から流通にかけて農産物生産上非常に大きな影響があるから農林省の所管にしておるということですが、その通りだと思うのです。しかし現実にはその通りに現われていないじゃないですか。あなたの説明を裏切られたことが起きてきても、それを何も発動できないということならば、農林省の所管にしておくことはむだじゃないですか。あなたの説明通りのことが起きてきていれば問題はない。農林委員会であえて問題にしない。あなたの説明と相反する重大なことが起ってきているから問題なんです。これがどれだけ生産に悪い影響を与えているか、流通の面において悪い影響を与えているか、これを悪い影響を与えていると見ないのですか。私はそうなると思って真剣にあなた方に質問をしているのです。そういう生産に寄与したいということであなた方の所管にしておきながら、その所管の目的が速成できない現実ではないですか、これをどう思いますか。
  103. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 川俣先生のおっしゃる通りの事由から農林省で所要の監督のもとに、直接統制をいたしているわけではございませんが、取引所をして取引所に上場する品目として掲げて目的を達しまするように意図してやっておりましたところ、最近になりましてそういうことが急に起りましたので、これから至急その本来の目的に沿うように緊急措置をとりたいと思っているわけであります。
  104. 川俣清音

    川俣委員 窓口が経済局だということですが、経済局長は今までこれに対して警告なり、監督上の注急あるいは指示を与えたことはございますか。これは急に昨日起ったものじゃないですよ。一月に起り、二月にまた起り、今度はもう四回目です。中止をするというようなことは開場以来初めてですけれども、わずか五カ月の期間のうちにこのような動きは四回あったのです。この四回目がとうとう破綻になってきた。これはもう一度再開できるかどうか重大な問題ですよ。あるいはつぶれてしまうかもわからぬ。そうすると、わざわざ国会に法律を出して、これは私の方の所管に置かなければうまくいかないなんと言っておったことが一つも実行できない。そうするとなわ張り争いということになりませんか。自分の方に引っぱってきておいて何にもやらない。今までどのくらいこれに対する注意や指示を与えておったか。
  105. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 こういう問題が数回起ったということは御質疑の通りであります。ただ本問題につきましては、主として窓口といたしまして改良局長の方でやってもらっておりますが、内部といたしましてはいろいろ相談いたしております。私自身から申しつけないで、改良局長の方から指示した、かように御了承を願います。
  106. 川俣清音

    川俣委員 そこなんですよ。農林省は生産に関係あるということで、かなり蚕糸局に重要な指示権を実質的に与えておった、あるいは改良局に与えておったと思うのです。それだけに関係が深いのです。官房長、どうなんです。窓口一本にして相当強化監督させるというが、今の答弁によると、そうじゃないじゃないですか。どっちの答弁がほんとうか。
  107. 安田善一郎

    ○安田政府委員 建前といたしましては、私が最初申し上げました通りでありますが、時たまたまアヅキのことでございましたので、内部の打ち合せといたしまして、改良局長と経済局長が大臣に御報告申しながら指示を受けられて便宜処理をされておった。品目としては改良局、取引所といたしましては経済局で、時の運営はそのときにおいてやった次第でございます。
  108. 川俣清音

    川俣委員 それでは説明になりませんよ、官房長。私の聞きたいのは、生産に関係が深いということで蚕糸局に実質上の第一次監督権を与える。単に窓口として取り次ぐところのルールとしてはあるいはそうなっておるかもしれない、それなら説明はわかります。あなたの説明通りだとすれば、これは大臣というか、官房長の統制といいますか、各局がばらばらにやっていることをそのまま見のがしておるということになる。あなたの説明の通りだとすると、農林省の綱紀まことに頽廃しておる。説明通り行われていないということなんです、私はそうじゃなくて、やはり生産に重要度を置いておるために、所管の種別のところに第一次の監督権的なものを置いておるのだ、私はそう善意に理解しておる。しかしあなたの言うように窓口を一本に強化して、そこで監督しているということになると、実際は違ったことが行われておる。それを黙認するのですか。これを黙認しておるのはだれの責任ですか。官房長ですか、大臣ですか。
  109. 安田善一郎

    ○安田政府委員 私の申し上げておるのは、川俣委員とちっとも違わないのでありまして、取引所として取りまとめてやるのは経済局でやっておりますが、生産に重点を置いて仕事をすべき農林省でございますので、たまたまアヅキのことでございますので、生産を主として担当しております品目に重点を置きまして、改良局長に内部でよく打ち合せた上処理をしていただいておるということであます。
  110. 川俣清音

    川俣委員 どうもくどく言うようですが、水産物については水産庁がやっておる。蚕糸については蚕糸局がやっておる。それは農林省の特徴だと思っておる。それを否定しない。あなたがあえて否定して監督を十分やっておるというから問題になる。やっていないのです。生産の増強あるいは生産を維持することが農家経済の上に重要だということで農林省がやっておられるのであるから、その目的達成ができないような取引所のあり方であったのではいけない、通産省がこれを監督する以上に十分な注意を払わなければならないということを、みずから責任をもって感じておるかということなんです。通産省は単なる流通経済を見ておればいいのです。ところが農林省はそうではない。水産物にいたしましても、蚕糸にいたしましても、あるいは雑穀にいたしましても、国内生産物、農物産として非常に関連が深いからとあえて主張されておるのだから、その主張されたことが達成できるようにしていかなければならないのではないか。達成できないようなことが起っても、これから調査いたしますでは、何をやっておるのだということになる。これはあなた方が毎日やっておらなければならない行政のことなんです。それだからこそ通産省から農林省へ持ってきてあるはずなんです。所管だけおれの方へよこせと言っておきながら、何もやれないのだったら、向うへ持っていった方がよほどいい。これが通産省だったら、みんな並べておいて、もっとこっぴどくやるのであるが、農林省は幾らか顔見知りだから遠慮しておる。遠慮しておるのでやらないと思っておったらもってのほかです。
  111. 吉川久衛

    吉川政府委員 川俣委員のおっしゃることまことにごもっともでございます。その通りでございます。ことにただいま現われておりまする取引所の少くともアヅキに関する限り、これは生産者はもちろん消費者のためにも非常に悪い現象であると思います。こういうことを放置するわけには参りませんから、適切な措置をすみやかにとるということを午前中も申し上げたつもりでございます。(川俣委員「いつまでにやるのか」と呼ぶ)期限はすみやかにやるつもりであります。
  112. 綱島正興

    綱島委員長 川俣君、予定がだいぶあってこの問題は緊急質問だから、あらためて理事会でも開いてこの問題をやるわけにいきませんか。
  113. 川俣清音

    川俣委員 ではもう一点。これは重要なことでありますので、一つすみやかにやっていただきたい。これは通産省から持ってきたものなんです。十分な責任を果すことができなかった場合には、責任を追究しますから、今日のところはこれでかんべんしておきます。     —————————————
  114. 綱島正興

    綱島委員長 それでは今日のかねての日程である第二十二国会に提出予定の農林関係法律案について当局の説明を求めます。
  115. 安田善一郎

    ○安田政府委員 私から委員会及び委員長の皆様方のお許しを得て、農林関係におきます今国会提出予定法律案の概要を申し述べさせていただきたいと思います。  過般本委員会には同関係法律案の件名の一覧表を御提出申したわけでありますが、目下のところ御提案申し上げたいと思っております農林省に関する直接のものといたしましては七件でございます。なお実質上農林省に関係法律案でございますが、特別会計の会計法のゆえをもちまして大蔵省所管として御提案申し上げたいのは三件でございます。そのほかに農林省所管物資等に関連いたしまして、関税定率法とかその他のものがなお必要かとも存じますが、一応以上のものについて御説明申し上げます。  このうち砂糖の価格安定及び輸入に関する臨時措置に関する法律案農林省及び通商産業省の共同提案となるものでございます。この内容につきまして、すでに参議院農林水産委員会に付託をいたしました開拓融資保証法の一部を改正する法律案を除きましては、現在せっかく政府部内において成案を得まするように、同時にまた成案を得まして来週の前半を目途といたしまして、一、二を除いて大部分法案が提出されまして御審議をいただきますように努力中でございます。従いまして最終的な決定は見ていない分もございますが、できるだけすみやかに、法案を提出いたしました際詳細御説明をいたすことで御了承を願いまして、本日はその骨子について御説明を申し上げることにつきまして御了承を得たいと存じます。  まず第一は、農地担保資金融通法案でございますが、本法案は自作農の維持とその経営の安定をはかりますために、農地を担保といたしまして必要な資金の融通をはかることを目的としておるものでございまして、これまでも自作農維持の見地からいたしまして、自作農創設特別会計という、農林省で受け持っております特別会計におきまして、年々同会計の償還金の余裕をもちまして、農地を買い取り売り渡しする方法によりまして、事実上は融資を行なって参りました。しかしその額は僅少でございまして、とうてい農村の要望を満たすのに十分でございませんので、このような資金の要望に加えまして、また農家の施設の資金につきましても農家の需要が大へん大きいのでございますが、零細なる農家には信用を受ける力が少うございますので、それに対しまする資金の借り入れが困難な状況でございます。これに極力対応いたしますように、長期かつ低利な資金を農林漁業金融公庫を通じまして融資する制度を確立することを目的として作成中のものでございます。  そのおもなる内容といたしましては、他の金融機関から必要な資金などの融通を受けることの困難な農業者に対しまして、農地または採草放牧地を抵当といたしまして、経営規模の小さい自作農が農地または採草放牧地を購入いたし、また小作農がその小作地を購入いたしますためのその資金、または自作農が疾病、災害等によりまして農地をそのまま保有することが困難な事態が生じました場合に、これを維持いたしていきますための資金、さらには農業経営の零細化防止のために、相続があります場合は均分相続の分割が行われる建前になっておりますが、その相続財産である農地または採草放牧地につきまして、他の共同相続人の相続分を継承者が取得をいたしまして、農業経営の零細化の防止をすることに資する、こういうための資金を貸しつけることをおもな目的といたしておるのでございます。あわせまして、現在農林漁業金融公庫は、原則といたしまして、農家の共同施設につきましての資金を融通いたしておるのでありますが、もっぱら個人の用に供しまする農業施設の購入建設などに必要な資金を、原則といたしまして農業協同組合または農業協同組合連合会の資金融通と協調融資、協調貸付をいたすことにしようといたしておるものでございます。貸付金の利率は、農地などの取得あるいは自作農の自作地の維持をいたしまするための資金といたしましては五分五厘、農業用の施設についての融資といたしましては七分五厘といたしまして、その償還期限は、前者は十五年以内、後者は十年以内と法律で定めるようにいたしまするほか、抵当農地等の評価、貸付条件の変更、公庫の業務の委託などにつきまして所要の規定を設けることにいたしたいと考えておるのでございます。なおこの資金融通は零細な農家の維持安定をねらいとしておるのにかんがみまして、資金の貸付を受けようとする者に対しましては、農業経営安定計画を作成いたさせまして、この計画が適正でありまたこれを達成するために貸付が必要であるということの都道府県知事の認定を受けることを要するようにいたしたいと考えておるのであります。地方庁は安定計画の達成に必要な援助指導をいたしまして、貸付金の償還が円滑に行われるように措置することといたしたいと考えております。  第二に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案でございますが、これは昭和三十年度における一般会計から同公庫へ九十五億円の出資を行うことにいたしましたので、目下これに関して御審議をお願い申しておうわけでございますが、一応その出資を建前といたしまして、公庫の資本金を従来の四百五十六億七百万円とありまするのを、五百九十一億七百万円と改訂をお願いしたいと思っておるのであります。また同公庫は、これまで日本開発銀行から借り入れをいたしておりました資金がございまして、その額は約二十一億一千九百万円でございまして、年々金利の支払いを行っておりまするが、これを今回は日本開発銀行に返済をされまして、その金額に相当する額を、産業投資特別会計から農林漁業金融公庫が出資を受けたものといたしまするために必要な法律条文の改正を行いたいと存じておるものでございます。なおさきに述べました農地担保資金融通法による貸付は、右の公庫の増加出資金と資金運用部からの借り入れ資金からまかなうことになっておる次第ございまして、約二十七億を予定しておるのでございます。  また開拓融資保証法の一部を改正する法律案は、昭和二十八年度から開拓者の短期営農資金の融通方途といたしまして、中央開拓融資保証協会を設立して、現在までに一億五千万円の政府出資を行いました。この基金をもちまして開拓者の債務を保証いたして参るのであります。主としてこの制度によりまして短期資金の融通を円滑ならしめるように努めておるのでございますが、この制度に対しまして開拓者の加入もふえ、また営農の進展もございまして、資金の需要も増大して参りましたので、昭和三十年度におきまして一般会計から中央開拓融資保証協会へさらに五千万円の出費を行うことといたしまして、合せまして資本金を二億円と改めたいと存じているものでございます。  次に繭糸価格安定法の一部を改正する法律案であります。これは現行法におきまして生糸の輸出増進と蚕糸業経営の安定をはかりますために、繭及び生糸の価格の安定をはかる目的をもちまして、政府は申し込みに応じまして最高価格でその保有する生糸を売り渡し、最低価格で生糸を買い入れる制度を現在設けているのでありますが、一方で政府が一俵の生糸の手持ちがないままに発足いたしましたので、最高価格で市価を押えることが困難な事態を生ずる場合も過去にはございました。今後もあるおそれがございます。他方繭の値段の非常な低額に対処する特別な措置が具体化をされておりませんので、それらに対しまして繭糸価格の安定をはかる意味において現行法では不十分な点があることにかんがみまして、現行法の不備を是正、補強をいたしまして、これがために生糸の補充買い入れの道を開きますとともに繭の価格維持のための繭の共同保管の助成と政府買い入れの制度を新たに設けることにいたしたいものでございます。  改正の内容といたしますところは、第一に生糸につきましては、従来の最低価格によります政府買い入れのほか、政府が輸出用生糸を保有する必要がある場合には、農林大臣の指定するものがあらかじめ農林大臣の承諾を受けて保管した輸出用生糸を、生糸の生産費の額の範囲内におきまして農林大臣の定める額で買い入れることができるようにいたしたいと思っているわけであります。  第二点といたしましては、繭につきまして、政府は繭の価格の異常な低落を防止いたしますために、繭の価格が生糸の最低価格に見合う農林大臣の定める額を下るおそれがありまして、共同保管をしまして繭の価格を維持することがもし認められます場合におきましては、農林大臣の指定をいたします農業協同組合連合会があらかじめ農林大臣の承認を受けて乾繭を共同保管いたしました際に、その連合会に対しまして保管に要した経費について補助金を交付することができることといたしますとともに、さらに一定の保管期間中にどうしても販売ができなかったために、保管期間を経過してもなおやむなく保管をしている乾繭がある場合がございますが、このときには政府におきましてその申し込みに応じまして、農林大臣の定める額で買い入れることができることといたしまして、これに伴い必要な規定をいたしたいと思っているのでございます。なお現行法では、政府の保有生糸は整理売却あるいは新規用途または新規の販路に向けて売る場合のほかは最低価格以外では売ることができないことになっておりますが、政府の手持ちが著しく過剰となりました場合において、保有数量を越える数量を生産費を下らない額の時価で売り渡すことができるようにいたしますとともに、この際あわせて改正をいたしたいと考えているものでございます。  次に農業災害補償法に基く家畜共済の臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案でございますが、これにつきましては農業災害補償法の特例といたしまして、試験的に現行の死亡廃用共済と疾病傷害共済と一元化いたしまして死廃病傷共済を実施しておりまして、試験の結果も相当認められておりますが、全面的な一元化を近い将来に期しまして、なお慎重を期するために、とりあえず本年政府といたしまして御審議を願っている予算編成上において、予算を計上いたしておりますところにも従いまして、今年十月一日失効する本法の有効期間をさらに延長したいと考えているのでございますが、この取扱いについてはなお数日間の研究をさせていただきたいと思って検討中でございます。  次に砂糖の価格安定及び輸入に関する臨時措置に関する法律案について申し上げますと、砂糖は、その供給の大部分は御承知の通り輸入砂糖に仰いでいる現状におきまして、また国内産等も生産がございますし競合する農産物もあるわけでございますが、昨今の需給関係及び外貨事情等に起因いたしまして、ややともいたしますと価格の変動を生じやすく、これによりまして一面関係企業に砂糖の中間利潤が発生をいたしまして、他面国民生活にもまた食生活改善上にも影響を及ぼし、特に国内農産物の関係をも不安にさせるおそれがございますので、必要な砂糖の輸入をはかります一方、国内農産物の価格との調整を考慮いたしまして、価格の安定と需給の調整を砂糖についてはかることを目的といたしますが、あわせましてまた輸入砂糖の過分の中間利潤については納付金の徴収をする措置を講じまして、もって国民生活の安定に寄与するということを本法案は目的といたしているものでございます。  法案の内容といたしましては、農林大臣が毎年精製糖の供給量、消費購買力などから見ました価格や国内農産物の価格及び家計費などを勘案いたしまして、定めた価格を基準といたしまして、安定帯価格を定めて公表をいたしまして、必要な輸入量を確保する行政上の措置と相まちまして、安定帯の価格の範囲内に砂糖の市価を維持するとともに、安定帯価格を越えて製糖業者等の販賀価格が上る場合におきましては、これらのものの販賀価格について必要な勧告をすることができることといたしたいと思っております。なお目下砂糖の市価を安定帯価格の範囲内に維持いたしますために必要最小限度の砂糖を政府において保有をいたしまして、価格の調節を行う必要も考えられますので、この法案の最終の作成に至りますまでにおきまして、政府が輸入された砂糖の買い入れ及び売り渡しを行い得る道を設けるかどうかにつきまして、関係省と目下協議をいたしているのでございまして、成案を得ますれば提出の上御審議をお願いいたしたいと思っているのでございます。右のような砂糖の安定帯価格を設けることに即応いたしまして、輸入業者が砂糖を輸入する場合には、通商産業大臣はその輸入業者に対しまして、安定帯価格を基準として定めた予定販売価格と輸入予定価格との差額について納付金を政府に納めなければならないことにいたし、これを外貨資金の割当を行う際の条件とすることといたしているのであります。この納付金の処理につきましては、大蔵大臣の管理する特別物資納付金処理特別会計を新たに設けまして、その会計において取扱う建前に相なっている次第でございます。なおこの法律案は一応昭和三十三年三月三十一日限り効力を失うことといたしたい予定で取り急ぎ成案を努力中でございます。次に愛知用水事業公社法案でございますが、これは国際復興開発銀行の融資及び漁業農産物見返り資金によりまして愛知用水事業を短期間に能率的に実施するために愛知用水事業公社を設立いたしまして、食糧の増産に寄与することを目的といたしたものでございます。従いまして現在国際復興開発銀行とせっかく折衝中でございまして、余剰農産物の受け入れにつきましても、最終的に現在は確定をいたしておらない面もございますので、法案の内容につきましてもなお検討中でございますが、その骨子といたしておりますところは、同公社は業務といたしまして農林大臣の定める事業計画に基き、ダム及び水路の建設による灌漑排水事業、未墾地の開墾事業を行いまするほか、発電、上水道及び工業用水のため、電力会社及び地方公共団体から委託を受けて、共用施設の建設事業を行うことといたしますとともに、建設事業により生じました諸施設の管理に当ることといたしたいと思っておるのでございます。これらの事業資金は、さきに述べましたように、世界銀行からの融資及び余剰農産物見返り円資金を借り受けることといたしますとともに、関係県及び農家などより負担金を徴収いたしまして、また同時に政府からの交付金を受けまして公社が償還をすることといたしておるのでございます。  このような事業を行う公社でございますので、その役職員は国家公務員といたしますほか、政府からも交付金を公社に支出するなど、公社の組織及び運営につき必要な規定を設けることといたしたいと考えております。また政府は公社がその国際復興開発銀行からの資金の借り入れ契約に基きまして、外貨で支払う債務について保証契約をすることができる規定を設けたいと存じておるのでございます。  最後に、農林関係の特別会計法案について申し上げますと、開拓者資金融通特別会計法の一部を改正する法律案がございますが、これは従来より加えまして、新たに開拓者資金融通特別会計において貸付金の償還金を同会計の行う融資の貸付金の財源に充てることができること、及び開拓者資金融通関係の事務取扱費を同会計におきまして支弁することができること、その他これまでの法文の条規の整理のため必要な改正を加えたいと思っておるのでございます。  また第二といたしまして、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案がございますが、これはさきに述べました繭糸価格安定法の一部改正に伴いまして、糸価安定特別会計法を繭と糸であるところの繭糸価格安定特別会計法に名称を改めまして、同会計におきまして繭の買い入れ、売り渡し、交換、繭の共同保管に対する助成などができますようにいたしたいと思っておりますとともに、生糸及び繭の買い入れ資金の充実をはかるために、証券の発行、一時借入金、繰りかえ金及び借入金を行い得る規定を新たに設けたいと考えておるもものでございます。  なお以上のほか愛知用水事業と同様に、国際復旧開発銀行からの借入金及び余剰農産物見返り資金をもって、北海道及び青森県における大規模な機械開墾及び灌漑排水事業を行いまするため、その資金会計といたしまして機械開墾事業特別会計法案等につきましても、関係方面と了解ができました場合には提案を申し上げて御審議をお願いしたいと予定いたしまして検討中でございます。  以上提出予定法案の概要を申し上げげた次第でございます。
  116. 綱島正興

    綱島委員長 委員長からこの際資料として注文をしておきますが、今あなたが説明されたことが速記が回ってくるまで時間があると思うから、急いで一つプリントして出していただきたい。来週の火曜から大臣の出席を求めて質疑をすることになっておりますので、それに間に合うようになるべく早く……。
  117. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 用意しておりますから本日でもすぐ……。
  118. 足立篤郎

    ○足立委員 ただいま官房長から説明のありました法案の取扱いにつきましてちょっと伺っておきたいと思います。家畜共済の臨時特例に関する件でありますが、ただいま官房長の説明にも、なお慎重を期するために死廃病傷の全面的な一元化についてはしばらく見合せて、一年間臨時特例を延長するのだ、しかし数日間研究させてくれという含みのある御説明でありますから、なお農林省としても御研究になるものと思います。私の承知しておる範囲では、共済制度につきましてはいろいろ農民から非難や不満がございますが、この家畜共済に関する限り特に疾病傷害を一元的に取扱うということを試験的にやりました地域につきましては、意外に評判がよいということは農林省自体もすでに御承知と思います。これが従来ガンとされておりましたのは、獣医師会の方の反対が強かったということでありますが、これも制度をやってみますと意外に協力的になって来たという今日の段階におきましては、私どもの感覚では、これはぜひとも、もう試験期間を過ぎておりますので、全面的に一元化をしてもらいたいという気持が強いのであります。なお昨今まで農林省においても一元化の法案を出すのだという準備をされておったようでありますし、今まで共済団体の会合におきましても、その方針が経済局から明示されておるという事実にかんがみましても、この際ぜひとも思い切って一元化の法案を出していただきたいと思います。これは申すまでもなく疾病傷害を一元化することによりまして早期の診療ができますことは非常なプラスだ、これは国家的なプラスだ。とても保健所あたりで手の届かないような、発見できないようなものを早期診療によって発見できる、これは大きくいって保健衛生の面からいっても大きなプラスになっておると考えます。従いましてこの点はぜひともお考え願いたいのですが、ただ最近聞いておりますところによりますと、補助金の問題について大蔵省側において反対があるというようなことも聞いておりますが、これは特別会計の中で死亡廃用と疾病傷害を一元化することによって死亡廃用の面の支出が相当節約できるという見通しになっておる。これは当然だと思います。早期診療が徹底すれば必ず死廃事故というものは未然に防止できる。その黒字で疾病傷害の力の掛金に対する助成をしていくという内輪の関係でありますれば、私は人間の健康保険の助成金などと引き比べられて、この面にだけ厚く出すというのは困るという大蔵省の考え方は間違っておるのではないか、これは特別会計の内部でそういう操作をすることによってこの制度を助長し、大きくは国家の家畜の保健衛生という面にプラスになればけっこうじゃないか、こんなふうにも考えるのですが、その間の事情はどうなっておりますか、これを打ちあけてお説明を願いたいと思います。
  119. 大坪藤市

    ○大坪政府委員 ただいまの御意見の点でありますけれども、大体家畜の衛生の点につきまして足立先生お話の通りであります。政府部内においても、予算編成当時におきましては、一応大蔵省との話し合いが最終結論に至りませんでしたので、予算の建前といたしましては、現在のいわゆる試験を一年間延ばすということで一応編成いたしております。しかしながら予算の額自体には変更を来たしませんから、いよいよ法律をつくるまでに話し合いをつけようということで今日に至っておると思うのであります。いろいろ大蔵省と相談いたしました結果、私どもといたしましては、ただいま先生の御意見の通り要望いたしておりますが、大蔵省の方面でこの点につきましてまだ異議があるのでございまして、最終的な結論に到達していない。従って法案といたしましてはここ数日かかってこの点をさらに調整して参りたいと思うのでありますが、一応十月一日で失効いたしますが、そういう関係を考慮し、政府部内で調整がつかない場合は、もう一年試験を延長するということで進まざるを得ない、こういうことになるのでございます。数日間御猶予を願いたいというのは、そういう意味であります。
  120. 足立篤郎

    ○足立委員 政務次官にお願いをいたしておきます。ただいまの問題は政務次官もよく御承知と思いますが、大蔵省の方でこまかな問題で反対をしているように聞いているのです。これは大きな見地から、しかもいろいろと問題の多い共済制度の中でこういういい制度を伸ばしていくという点については、政治的に積極的にお考え願って、ぜひこのトラブルを御解決になって、こういう形でなくて、本法に繰り入れて、むしろ臨時特例をやめてしまって、制度としてこれを全面的に一元仕していくという方向で、ぜひとも解決していただくようにお願いしておきます。  なお砂糖法案の内容につきまして、今官房長のお話を伺って驚いたのですが、これは政務次官に伺いますが、今の御説明の内容では、はっきり申し上げると、これは砂糖価格つり上げ安定法案、また裏を返して言えば、関税二重取り搾取法案であると思う。決してこれは安定じゃない。     〔網島委員長退席、足鹿委員長代理着席〕 民が要望している安定というのは、国際価格に比べて不当に高いのだから、安くしてもらいたい。むろん北海道のテンサイ糖あたりの保護政策は必要でしょう。これは別問題として——ですから、こういう形で法案が出てくるのでは、取扱いについてよほどお考え願わないと、私どもにわかに賛成できないのですが、賛成するか反対するかは別として、聞いて驚いたのですが、政務次官は一体どういうようにお考えになっているのですか。中間利潤を納付させて安定帯価格できめるのだといえば、当然高いところにきまります。これらは外貨割当の問題に関係してくるわけですが、政府は安くしょうというのではなくて、もうけよう、そうして高値につり上げようとしている。不足すればその上に価格は上るでしょう。こういうことは一体どういうふうにお考えになっているのですか。この法案の取扱いに関連して、政務次官の気持を伺っておきたい。
  121. 吉川久衛

    吉川政府委員 お答えいたします。その前の農業災害補償制度の問題については、足立委員と全く同感でございますので、最大の努力をいたします。第二の問題につきましては、お説のような議論もなかったわけではございません。しかしながら中間にあまりに大きな利潤が占められておるというような具体的な問題等もございまして、種々検討をいたしたのであります。その結果消費者に負担をさせるのではなく、中間の利益を国が吸収して、日本のテンサイ糖の生産とも見合って無理のない措置がとれるのではないか。こういう観点からこのような結論を得たわけでございますから、十分一つ御審議を願いたいと思います。
  122. 足立篤郎

    ○足立委員 私が今砂糖法案について伺ったのは、取扱い上の関係から内容に触れましたけれども、内容について申し上げておるのではなくて、むしろこういう法案をお出しにならぬ方がよいのではないか。もしお出しになるならば、ほんとうに安くして安定するような内容のものにしていただきたい。これはもう一ぺんお考え直しを願いたいということなんです。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま足立委員からも質問がありましたが、内閣が提出を予定される法案の概括的な説明を聞いたわけです。これに対して私たちはとやかく言う考えはないのですが、ただ五番目の農済法の改正の問題であります。これは昨年一カ年間を通じても、当時の農林委員会でも、二十数度の小委員会を開いて、しかも共済制度改正の審議会等においても、相当の成案を得る段階まで行っておる問題が非常に多いわけです。ですから、それは全般の抜本的な改正にいかぬとしても、ある程度成案がまとまった問題等に対しては、やはりこの時期において相当筋の通った改正法律案を出すべきであると考える。ただ彌縫的にこの家畜共済の一部の問題だけに対して、しかも期間延長というような形で改正法律案を用意されるということは、われわれの本意とは非常に隔たりが多いわけであります。ですから、どうして故意にこういうことを怠るつもりであるかどうかということを、一応お聞かせ願いたい。
  124. 吉川久衛

    吉川政府委員 芳賀委員の御疑念は全くごもっともでございます。せんだって私はこの委員会において足鹿委員にお答えをしたのは、ぜひ中間答申案を具体化したいということを申し上げて、責任を感じております。しかしながら、はなはだ残念なことでございますが、これを具体取的にり上げるまでに、時間的な関係で相当な困難がございました。今これを取り上げるということになりますと、三十年度の米には少し時間的に無理が生ずるのではないか、こういうことを憂慮いたしましたので、しばらく見送って、次の機会に一つ御検討を願いたい、こういうことになった次第でございます。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の吉川次官の御答弁では了承しない。あなたが全然しろうとの農林政務次官であればそれでもよいわけですが、ともかく今まで農林常任委員までやっておって、その経過も知っておるわけです。ですから、この法案改正が遅滞しておる原因がどこにあったかということをもう少し具体的に説明されたい。私が言う通りに、故意にこれを遅滞さしておるのか、あるいは別に原因があって、たとえば農林省の首脳部の人事等によって——この改正問題等を中心に非常に苦労してきた小倉さんが今度改良局長に回っておる。そういうような人事の異動等によってこの法律案の提出がおくれておるのか。政治的な一つの意図があって、何か恐怖心を持ってこれをおくらしておるのか。これは率直に解明されたらどうか。
  126. 吉川久衛

    吉川政府委員 芳賀委員の御心配下さる点は全然ないのでございます、ただ準備に手間取ったというだけでございます。     〔「何の準備だ、準備の内容は何だ」と呼ぶ者あり〕
  127. 松野頼三

    ○松野委員 何の準備かを聞いている。そんな答弁で君たち国会を乗り切ろうなんて僣越な話だ。さっきの砂糖の話だってでたらめな答弁だから、中間の経費についての統計資料をこの法案とあわせて要求しておく。そういうふうに一々ごまかして通るものじゃない。だから、こういう工合にせっかく委員会が督促しておる法案があるなら、政府を督励して一日も早く法案を作ればいい。それを督促してもなおかつできないから、なぜできないかという内容を聞いておる、それを言わなければだめだ。
  128. 吉川久衛

    吉川政府委員 そういうむずかしい理由はないのでございますが、ただ基準反収の調査とか、あの中間報告に基いて、これを制度上具体化するための根拠となるものについて少し調査が手間取ったと申しますか、十分な結論が得られなかった、こういうわけでございます。
  129. 川俣清音

    川俣委員 芳賀委員から、農林委員会として非常に重要な質問が出ている。政務次官は三十年度に実行する見込みがないからと言うが、この特別国会に法案を出さなければ、三十一年度もできません。おそらくこの農業共済のために臨時国会を開くにもなかなか至らないでしょう。今後臨時国会を開くとすれば、短期の国会ということになるでしょう。そうすると、こういう事務的に繁雑な、他にもいろいろと関係の深い問題は、短期の臨時国会ではなかなか審議できるものではございません。こういう重要な法案は通常国会においてやるのが大体至当です。そうすると、ことしの十二月あるいは来年の一月ということになって、法案が通るときにはもう三十一年度には実行できない事態が起るでしょう。三十年度ではない、三十一年度にも実行できない。ですから、少くともこれはいろいろな議論のある問題であるから、問題は問題として出されて、そうして国会の意思を聞く、あるいは一般農業団体の意見も農民団体の意見も聞いて、これはまとめてあげなければならぬのです。政府だけでいい案を作ったと思いましても、ずいぶん直される案です。それを覚悟で出さなければならぬ。完璧なものなんというのはおそらく出せない。これは十数回にわたってわれわれが苦労して、いかにすれば農民のためになるか、日本の農業のあり方からして、どういうあり方がいいかということを、政党の立場を離れて、事務的にみな真剣に取り組んだ問題なんです。それですからなかなか容易に得られなかったのであるから、これをもっと継続してすみやかに、中間報告を求めるとかいうなまぬるいことではなくして、どうしてこれを具体化するか、これに真剣に取り組まなければならぬ。これは詭弁で、あるいはその場限りの答弁ではのがれ切れるものではない。そうでしょう。
  130. 吉川久衛

    吉川政府委員 この問題については、当時の足鹿委員長初め、川俣、芳賀両委員その他の各位が非常な御努力を下さったことは、私も委員の一人として十分承知をいたしておりましたので、それの実現のためには十分私も考慮をしたのでございます。しかし、決して他意あったわけではございませんが、近くせんだってまで続けて参りましたこの協議会を再開いたしまして、そして皆様に最終結論を出していただき、三十一年度の米には必ず間に合うようにいたしたいと考えておりますから、一つ御了承願います。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま吉川政府委員から、三十一年度においてというようなく話がおりましたが、昨年度この改正案等に対する審議をやったときの情勢と、今日政府が考えておる、たとえば米の集荷制度の問題等は、情勢が客観的に見ると変ってきておる。今政府の考えておる米の集荷制度というものは、統制撤廃を前提としての予約買付制度をやろうということで、成功しても失敗しても統制撤廃に持っていくんだという意図がある。ですから先に延びれば延びるほど、今の政府の政権担当の時期が延びれば延びるほど、共済制度の根本的な改正というものは至難な情勢になってくるのです。だからあなたの言うのは逆なんです。先へ逃げれば逃げるほど、これは困難なことになるということを気づいて言っておるのかどうか。やらなければならぬとすれば、そういう情勢に大きな変化がくる前に手をつけなければならぬのではないかと私たちは考えておるが……。
  132. 吉川久衛

    吉川政府委員 芳賀委員の米の統制撤廃は実に危険である、今さようなことを考えるということさえも無暴であるという考え方は、私もあなたと同じでございます。従って見通しのつくまではさようなことは軽々に口にすべきでないと思う。ただいまのところは、私は何らかの形で統制は続けていかなければならないと考えておりますから、ただいまの問題については、さような前提に立ってやっているのではないということだけ御了承をお願いします。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これ以上追究はいたしませんが、来週早々農林大臣の出席を求めて、農業政策の諸般の問題に対する質疑をやるわけです。当然共済制度の根本改正の問題にも触れていくわけですから、そのときには事務当局といたしまして、今日まで作業を進められた共済制度改正に対するまとまったもの、この段階まできておるんだというものを、具体的に必ず用意されておかれるべきであるという御注意だけ申し上げておきます。
  134. 川俣清音

    川俣委員 さっき政務次官は、なるべく早い機会に成案を得て法案を出したいと言われたが、大体いつごろ出せる予定ですか。
  135. 吉川久衛

    吉川政府委員 実は麦からとも考えたわけでありますが、これは実際問題として非常な困難があるような意見が強いので、やはり米からかかるのが一番安全性がある、こういうことで、三十一年度の米から、従ってその時期に間に合うようにするためには、この特別国会においてでなければならないということになればですが、私は協議会等で皆さんから十分御意見をいただいて、各党の皆さんの御納得のいくような線が出てくれば、それを法案に具体化しても、その通過は御協力を得て、そう長時間かかるものではないと考えておりますので、そこは無理のないように一つ皆さんの御意見を尊重して進めて参りたいと思っております。
  136. 川俣清音

    川俣委員 私の聞いておるのはそうではなくて、いつごろまとめて、法案としてどの国会に出されるつもりか、この特別国会なのか、臨時国会なのか、それを聞いておる。
  137. 吉川久衛

    吉川政府委員 三十一年度の米に間に合う時期にいたしたいと考えております。
  138. 川俣清音

    川俣委員 そうするといつですか、通常国会前でしょうな。通常国会ですとちょっと間に合わない。
  139. 吉川久衛

    吉川政府委員 通常国会で間に合わないとすれば、臨時国会になるだろうと思います。
  140. 川俣清音

    川俣委員 これは通常国会では間に合わないことは明らかです。三十一年度から実施するのですから、少くとも法律として十二月か一月ころまでに公布しないと準備ができません。これは普通の法律と違うののです。みな掛金をするような準備をしなければならない。これの徹底をはからなければならぬのだから、出てから三カ月から半年を要するのです。ほんとうを言うと一年を要するのです。円滑な運営をはかるには、短かく見ても三カ月や四カ月はかかる三カ月と見ても十二月までに成立しなければならない。すると通常国会では間に合わない。そうすると臨時国会だということになります。     〔足鹿委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 吉川久衛

    吉川政府委員 私は、協議会等において皆さんの御意見を十分出していただいて、各党の納得のいくような結論が出て、それを法律の上に表わすことになれば、そう長い御審議の時間はいただけなくてもよろしいのではないということと、それからそういう方向がきまれば、あとは並行的に諸準備を進めていったならば、ただいまの御懸念はなくなるのじゃないか、かように考えております。
  142. 川俣清音

    川俣委員 この特例国会に出されるのか、それとも臨時国会を召集してこの審議をかけられるのか、どちらかと聞いているのです。この国会に出されるのか、あるいは通常国会では間に合わぬことはあまりに明らかですから、そこで臨時国会でやられるのか。臨時国会になると、当然補正予算を組まなければならぬ。     〔「農林委員会の権威のために警告しろ、こういう不勉強なことではいかぬぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  143. 吉川久衛

    吉川政府委員 私は、これを実施するために実際どれくらいの期間を要するかということについては、実はまだ不勉強でよくわからないのです。ただ、今事務当局の方の意見も聞いてみますると、三月三十一日までに通れば間に合う、こういうように言われますから、私は通常国会が正常に開かれるならば、その点は心配ないのではないか、かように考えます。
  144. 川俣清音

    川俣委員 それは今の法律をあまり変えないということであれ、ば三月三十一日まででもいいでしょう。しかし問題はそうじゃない。根本的な改正を必要とするという決議に基いて法案を出すことになっておる。根本的な改正を行うということになると、これはどういう単位で掛金をやるのかというような問題も起ってきます。従って、そう三月三十一日で——普通の法律と思っては、これは間違いです。どういう単位で一体掛金をするのかという、みなおのおの負担と義務がついておる。従ってこれには三月三十一日に法律ができて間に合うわけがありませんよ。事務当局はそういうしろうとだけれども、あなたは幾らかでもくろうとでしょう。実際実施面についていうと、この共済保険というものは、まず連合会徹底し、それから末端に徹底し、農民の個々に徹底しなければならぬ問題なんです、従って一片の指導監督じゃないのですそんな通常国会を待ってなんということは、これはしろうとなら大胆で言えますけれども、あなたのようなくろうとは、とてもそんな大胆なことを言い切れるものではない。
  145. 吉川久衛

    吉川政府委員 実は昨年の十二月中間の御答申をいただきましたときは、三十年度産米からやるということであったと記憶をいたしております。そういたしますと、十二月、一月の通常国会——これは選挙の結果特別国会になりましたが、この国会でもやれば間に合うという議論——議論はしたくはありませんが、という見通しではなかったかと思うのです。しかし私は、それは実際やってみて非常にむずかしいと考えます。そこでこの協議会の制度は、これを継続して御苦労を願って、皆さんの御答申を最大限度に尊重をして、それを法案の中に織り込んでいくならば、委員会に御提案申し上げた際に、そう時間がかからないのじゃないか、そうしてそれに並行して諸準備をいたしていったならば、その点は私そう心配はないのじゃないかと考えるのでございます。
  146. 川俣清音

    川俣委員 これは事務当局がかわったから、三月三十一日で来年度から実施できる、こういうことを言われるのですが、今までの苦労された局長、課長は、この実施に際しては相当な準備期間を要するから、早くまとめたいという努力を払われたのですよ。これがうそだったら、われわれにむちうつためにいたずらにこういう言葉を使ったということになる。私はそうでないと思う。早くきめてもらわないとなかなかなか準備期間を要するのだ、こう言ってわれわれを責め立てた。そんなに早く実施できるのだったら、何のためにわれわれにむちうったのです。そんな不見識なことはない。新しい経済局長は、かわったばかりで、実際苦労しておらぬものだから、そう耳打ちされたろうけれども、できるものじゃありません。そこでこの特別国会に出されるのか、臨時国会を開いてやられるのか、どっちか、簡単な質問なんですよ。
  147. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいまのところでは、次の通常国会で間に会うと私は見通しておりますが、なお十分検討の上、どうしてもそれがむずかしいということになれば、別な考え方にしなければならぬと思っております。     —————————————
  148. 綱島正興

    綱島委員長 これより北九州山口及び福島の災害等に関する調査を議題として審議を進めます。  まず北九州及び山口に対する調査報告等を中心としての質疑を行います。なお福島県下における桑園の凍霜害の問題についてもあわせて質疑を行います。質疑の通告がありますから、これを許します。稲富委員
  149. 稲富稜人

    稲富委員 四月中旬に襲いました北九州並びに山口に対する水害の実情につきましては、先刻原委員より詳細に御報告があったのでありますが、これに対しまして、吉川政務次官から、前年度並びに前々年度の例もあるので、それに沿いまして善処するという御答弁があったのでございまするが、私はこれに対しまして、さらに緊急を要しますので具体的な政府の方針を承わりたい、かように考えておりますが、大体の問題は本予算の審議の際においてもまた質問がなされると思いますから、簡略に要点だけを申し述べまして、この際政府のこれに対する対策を承わっておきたいと思います。  最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、先刻御報告にもありましたごとく、本年度の麦並びに菜種あるいはその他の農産物に対する被害は実に甚大なものがありまして、収穫皆無の地域が相当にあるのであります。当然農民に対して、前年度、前々年度によりますと営農資金等の金融措置をやってやらなければならない問題が起ってくると思うのでありますが、これに対しまして政府としてはどういうようなお考えを持っておられるか、営農資金に対する従来の例によりまする利子補給等に対しては、いかなる方針を持っていかれようとするのであるか、まずこの点を承わりたいと思います。
  150. 吉川久衛

    吉川政府委員 先ほど私が御報告を承わって、その際私どもの態度を申し上げておきました通りでございまして、被害状況程度に応じては、前例等もございますので、それらに準じて十分善処したいと考えております。
  151. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、従来のものに準じてやると言われますと、収穫皆無というようなことに対しましては、当然営農資金等に対する特別立法措置が行われなければならないと思うのであります。その場合この収穫皆無のところは、これは当然農林省としての調査の中にも出てくると思いますので、こういう場合には特別立法措置をやられるという方針が政府にあるのであるか、私たちがただいま論議いたしました予算に伴う農林省提出の法律案等も非常に遅れておるような状態であって、はたしてこういうようなときに特別立法措置政府の力としておやりになるだけの熱意があるかどうか、もしも政府にないとすれば、議員立法の措置もとらなければならない、こういうことも考えますので、あわせてその点も政府の所信を承わっておきたい。
  152. 吉川久衛

    吉川政府委員 被害が甚大でお話のような収穫皆無とかいうような問題になって、単なる行政上の措置だけで処理ができないということに相なりますれば、お説の通りの措置をとらなければならないと思っております。
  153. 稲富稜人

    稲富委員 それは、営農資金に対しては、収穫皆無に対しては特別立法措置をやる、利子補給に対する問題等も同じであります。こういうような政府の所信があるということを了解して次の問題に移りたいと思いますが、その点は一つ次の答弁のときに、あらためてその問題も御答弁を願いたい。さらにこの麦の被害に対する共済金の問題でございます。麦に対しましては当然共済金があるのでございますが、この共済金がすでに九割以上の概算払いの適用地がたくさんありますので、これに対してただちにその概算払いをやらなければいけない問題があるのであります。これに対しまして、政府として共済金払いに対する金融措置等もまたおやりにならなければいけないと思うのでありますが、これに対する政府の考え方をこの際承わっておきたい。
  154. 吉川久衛

    吉川政府委員 前の問題は、私の申し上げました通り、行政上許されております範囲内で措置のとれない場合は、当然おっしゃる通りの措置をとらなければなりません。それからあとの問題は御意見の通りでございます。
  155. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると麦類に対する共済金の概算払いの問題は、当然そういう措置をとってもらえると思うのでありますが、共済の対象外の被害が相当あります。これはかつては樹勢回復等の名目のもとに補助金等の支給をやられた点が前年度、前々年度にはあるのであります。先刻の政務次官の御答弁によりますと、前年度、前々年度の例によって善処するということでありますので、本年度もこの共済外の農作物に対しましては何かの方法、いわゆる樹勢回復その他の方法をもってこれに対する補助等をやられるお考えがあるかどうか、この点も承わっておきたい。
  156. 吉川久衛

    吉川政府委員 そのように考えております。
  157. 稲富稜人

    稲富委員 実に政府は考えていらっしゃるようでわれわれ非常にけっこうに思うのでありますが、さらに麦等において収穫皆無以外の土地におきましては、やはり水害のために麦の品質が非常に低下したものがありますが、これに対して当然等外麦設置の方策を講じてもらわなければならぬと思うのであります。さらに麦等は農民は食用として多量に持っているのでありますが、この麦が皆無等になったために食糧に非常に困るという農家が生じてくる。二十八年度のごときは、この災害農家に対しましては政府米の払い下げ、貸付等もありましたので、今度の場合も食用麦に対する貸付特別立法措置等を、やはり前年度あるいは前々年度なりに応じましておやりになる御意思があるかどうか、この点も一つ承わりたい。
  158. 吉川久衛

    吉川政府委員 昨年、一昨年の災害の場合と同じにこの問題も農林省としては、被害程度に応じて同様にやりたい考えでただいま検討いたしております。
  159. 足立篤郎

    ○足立委員 関連して、ただいま稲富委員からの御質問に対して、政務次官は非常に御理解ある御答弁で、私どもも意を強うしたのでありますが、実は凍霜害の問題であります。福島あるいは静岡県におきましても、あるいはまたその他の県においても、四月の凍霜害の被害が相当大きいように聞いております。私は静岡県ですから静岡県の様子はよくわかるのですが、お茶あたりも当初予想された被害よりはるかに大きな被害を受けまして、一番茶あたりは壊滅状態であります。桑におきましても同様の被害がありますし、その他の果樹においても意外な被害があるように聞いております。この際こういう被害調査の結果判明いたしました場合には、ただいま御答弁になりました趣旨と同じように、これにあわせて御措置願えますかどうか、この点を承わりたい。もう一つは調査資料を御用意願いたい、この二つをお願いいたしたい。
  160. 吉川久衛

    吉川政府委員 稲富委員にお答えしたと同様な措置を講じたいとただいま検討をいたしております。
  161. 綱島正興

    綱島委員長 それからちょっと御注意をいたしますが、農林省以外の人が特に午前中より見えておって、一向質疑にも入らずに長く待たせておったような事情等もありますから、農林省の人はいつもこの委員会で質問をするのに都合がいいと思いますから、特に他の省の関連から先に御質問を願います。御参考のため申し上げますが、通産省の鉱山保安局長、建設省の植田河川局次長、同防災課長、厚生省の公衆衛生防疫課長、大蔵省の鹿野主計官等が出席いたしておりますから、こちらに対する質疑を先に願います。
  162. 稲富稜人

    稲富委員 それではただいま委員長の御注文がありましたので、農林省の関係はあとまわしにしまして、最初に大蔵省の災害担当の鹿野主計官にお尋ねしたいと思うのであります。いずれ農林省に対します私たちの要望は当然予算が伴うものでありまして、おそらく農林省から大蔵省に対してこれに対する要求があると思うのであります。ところが私たちの従来の経験から申し上げますと、農林省ではただいま次官が言われるように、農村の問題には非常に早わかりしてもらえますが、予算面におきまして常に大蔵省から出さないようにするということが大体の実情であるのであります。しかしながら先刻から報告にも聞かれたように、本年度の災害というものは、収穫期を控えまして農民の収入は全然なくなるというような実に悲惨な状態でありますので、われわれ農林委員会といたしましても、これに対しましては十分なる検討をし、しかる後に農林省としてもこれに対する対策というものに慎重に考慮されると思いますので、その結果が出ました上で、農林省から大蔵省にその予算の請求がありました場合は、大蔵省も十分協議の上、その実情に応じてこの予算の裏づけに対して応じてもらいたい、こうわれわれは考えるわけでございます。大蔵省から主計官が見えておりますが、大蔵省を代表して来られておると思いますので、その点をこの際承わっておきたいと思います。
  163. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 本日は主計局長が予算委員会のために出られませんので、災害の担当をいたしております私が説明員として出席させていただきました。担当する部局も割に狭いものでございますから、今委員の方が申されましたように、ただいまここで大蔵省を代表して説明員としてお答えすることはできかねるかと思います。今おっしゃられました趣旨につきましては、すぐに帰りましてよく局長、次長にお伝えの上、十分研究してお答えするようにいたしたいと思います。
  164. 稲富稜人

    稲富委員 ぼくは大蔵省の代表として来てもらいたいと言った。実は大蔵大臣に来てもらいたいと思ったのだけれども、大蔵大臣は予算委員会関係があるので、代表が来てもらいたいと言った。単に説明官として来たということでは大蔵省の説明を聞く必要はないので、われわれは大蔵省が、この予算の裏づけに対してどういうような考えを持たれるか、こういうことを承わりたいのであって、これではわれわれは非常に不服なのであります。これに対して委員長は、大蔵省から出席される係官は、もっと責任のある方が出席されるように一つ委員長として取り計らい願いたいのです。
  165. 綱島正興

    綱島委員長 今日も予算委員会がありますので、主計局長と次長とは予算委員会に出ておるのでどうしても来れない。その次は、公共災害担当の鹿野主計官そこは実際にこれに当られる人で、農林省もこの主計官に一番撃退される門口なのですから、この人に来てもらったことは私は妥当だと思って取り計らっておりますから、御了承願います。
  166. 稲富稜人

    稲富委員 それでは鹿野主計官は妥当であるという委員長のお言葉でありますので、鹿野主計官を非常に信頼しまして、そのことを特に鹿野主計官にお願いしますから、主計官より局長並びに大臣には、この農林委員会としての意のあるところを十分一つお伝え願いたいということをくれぐれも要求しておきます。
  167. 川俣清音

    川俣委員 この際主計官にお尋ねしておきますが、行政的にできる面はあなたは担当しておられるのか、御答弁願いたい。もしも答弁できないということになりますると、主計局長もできないはずなんです。法律にないことをやれるわけがない。大臣もやれない。そうすると農林委員会で法案を作ってくれればそれに従う、こういう御意思でありますか、その点だけ伺っておきます。
  168. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 主計局には主計官というのはたくさんおります。主計官は一応分担をきめておりますから、農業災害といいましても、私が担当しておりますのは、端的に言いますと公共施設災害国庫負担に関する法律に適合する関係災害農林水産施設暫定法に基く災害、簡単な言葉で言いますといわゆる公共事業関係災害を担当いたしておりまして、それ以外のことにつきましては、まことに申しわけないのですが、勉強不十分で、お答えいたしましてもあるいはとんちんかんなことになるかもしれませんので、よくお聞きしてお伝えいたしたいと思います。
  169. 川俣清音

    川俣委員 そうすると関係法案受け持ちの担当部分については責任を持って答弁できる、担当以外のことについてはできない、こういう意味ですか。それともあなたの言われたのは、単に担当官であって、行政の範囲を逸脱するようなことはできない、こういう意味にも私はとれたのです。それならばお言葉の通りだと思う。そこでそれは当り前のことであるから、法律を作って、あなた方にこの法律を誠実に実行してもらうように法律を作るのだが、それでよろしいか、こう聞いておる。
  170. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 担当しておる部分について責任をもって答えることができるかというお話でございますが、何分きょうは説明員としての資格でこちらに来ておりますので、私らの判断で許される範囲のことは責任をもってお答えする以外に方法はないかと思います。
  171. 井出一太郎

    ○井出委員 主計官が見えておりますから二、三お尋ねしたいと思います。  この災害報告にもありました地すべりの問題については、今回も非常に被害が大いきょうでありますが、二十八年度の水害については九割補助の特別立法をいたしました。それで聞くところによりますと、大蔵省ではもうすでに二カ年実施したのであるからあとは打ち切る、こういうような考えがあるやに承わっておるのであります。建設省ではそういうことをすでに地方庁に伝えておる。農林省でもそういうような計画があるやに承わっておりますが、その点について特に私は承わっておきたいと思います。大蔵省、建設省、農林省、三省にわたってお尋ねいたしますが、特別立法のあの法律に対してどういう解釈——解釈というとおかしいのですが、厳たる事実でありますけれども、どういう運用をなさっておるか。また今度の四月の水害における地すべりについてはどういう対策を持っておられるのか。この二点を大蔵省、建設省、農林省にお尋ねいたします。
  172. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 この法律に基きます地すべりに対する高率補助につきましては、放置しておくと著しく災害発生のおそれあるというふうに規定しておりますが、全国的に地すべり地帯あるいは崩壊地その他たくさんありまして、至るところ長雨があり、あるいは台風によって豪雨がもたらされますと、災害を受けるおそれのあるところは全国的に非常にたくさんあるかと思います。二十八年災害崩壊地地すべり等につきしましても、当然同様に今後に災害発生のおそれがあるわけでありますが、あの法律の解釈といたしましては、そのまま放置しておきますと通常の状態でもどんどんくずれ落ちて、災害を受けて非常に負担にたえかねておるような地方に至急に措置しなければならないような事業を行うときに、当然この法律に従って高率の補助が出されるのであり、その二十八年の災害でくずれたもの等については、全面的にこれを回復するまで全部高率補助をしてやるという解釈ではなく、そうしますとおそらく他の地方につきましてもやはり崩壊のおそれのあるところはたくさんございますから、そういうものとのかね合いもあって、ほんとうに二十八年度至急やらないと危ないというようなところの土地については高率補助をとるベきではないかというふうに私らは解釈いたしまして、各省とも相談して、そういう個所を選んで重点的にやっていくというふうに考えております。
  173. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいまお話のございました二十八年の地すべりの問題は、ただいま大蔵省から説明がございましたが、この点につきましては御承知の通りでございまして、実は建設省と大蔵省の意見とがまだ完全に一致しないままに残っておるわけでございます。大蔵省はただいまのような説明をおとりになりますし——この御説明の中には、全然無視していいというわけではございません、考え方はわからぬわけではございませんが、あの法律に書いてあります法文の上から見まして、果してそう読めるかどうかということについて、私どもまだ大蔵省と意見が一致するところまで参っておりません。従いまして私どもこの問題につきましては、まだ未解決のままでございますが、放置はできませんので、一般砂防事業の方で三分の二の補助で実施いたしまして、差額につきまして、これが二十八年の特例法によって実施すべきであると決定いたした際におきましては、差額は当然その県に対して支払うべきものであると考えておる次第でございます。  その次に本年度の地すべりの点でございますが、本年度の地すべりにつきましては、午前中あるいは御説明があったかと存じますけれども、私どもは午後一時から参りましたので事情はよく承知いたしておりませんが、地すべりがございまして、それが公共土木施設災害のあの法律に該当いたす場合におきましては、当然あの法律によりまして補助いたす考えでおります。しかしこれは二十八年度の災害でございませんので、通常の年の補助率によって補助いたすほか仕方がないかと思います。
  174. 大塚常治

    ○大塚説明員 農林省の地すべり予算は、大きく農地保全事業としてただいま提案されております予算案の中に入っておりまして、その地すべり対策事業費の小さな内訳についてはまだ大蔵省と協議が整っておりませんが、大きな方の総額は前年度と同様でございますので、本年度も同様程度予算がつくものと考えております。
  175. 井出一太郎

    ○井出委員 主計官から意外な答弁を承わったが、あの法律は私などが作ったのです。立法の精神はこちらが一番よく知っております。具体的に申すならば、北九州地帯において、当時二十八年度の地すべり地帯としてある県においては十何カ所指定され、崩壊し危険に瀕しているという認定を受けておる。その中で、現在工事を終えたものはその三分の二しかやられていない。あとは、同じような危険な状態であっても、予算関係からやられていない。それを、もう二カ年済んだから、重点的にして、今度は各県との均衡もあるので一般補助に直したい、こういう御趣旨のようでありますが、あまり勝手すぎる解釈ではございませんか。予算上いろんな都合があるかもしれません。しかし、法律でこれとこれとは必要であると建設省や農林省などの主管省がきめ、指定し認定したものを、もう二カ年済んだからということで打ち切って、一般補助を交付しよう——これは現行の法律を無視するものであり、じゅうりんするものである。けしからぬものだと思います。この際、所管が若干変るかもしれませんが、建設省にお尋ねします。特にひどかった長崎県、佐賀県において、何カ所地すべり地帯として認定されたか、そのうち現に何カ所工事が進んでおるか、危険の度合いはどうであるか、各府県との折衝の事情について御説明をいただきたいのであります。
  176. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいまのお話のような御質疑が出るのでございますれば準備いたすのでございしますが、御連絡ございましたのは本年四月の九州の豪雨ということでございましたので、詳しい資料を持って参っておりませんので、別の機会がありますれば持って参りたいと思います。
  177. 井出一太郎

    ○井出委員 それでは後日伺うことにいたしますが、建設省としては何カ所も必要である地すべり地帯の危険防止について、大蔵省の考えておられることについて了承できますか。それでいいと建設省は良心的にお考えになっておるのか。その点を確かめておきたいと思います。
  178. 植田俊雄

    ○植田説明員 先ほども申し上げました通り、二十八年の特別立法の法文の精神から考えまして、大蔵省のお考えになっておられることは了承できないと考えております。
  179. 井出一太郎

    ○井出委員 農林省はどうです。
  180. 大塚常治

    ○大塚説明員 農林省は引き続き予算もつけておりますが、ただ本年度の予算実施に当りまして、建設省に準じて補助率の九割を五割に引き下げたらどうかというような申し入れを大蔵省から受けましたが、私の方はできないと言ってお断わりしております。まだ予算も成立いたしませんし、その実施の段階になっておりませんので、現在のところはそのままになっております。
  181. 井出一太郎

    ○井出委員 もう一点。あの災害復旧は主管省は、土木事業については建設省である、農地復旧については農林省である。これは間違いはないと私は信じております。大蔵省が何と言おうと、法律に従ってどんどん要求なさい。これを要望いたしまして、あとはあらためて質問をいたします。
  182. 稲富稜人

    稲富委員 ただいまの二十八年度災害に対して鹿野主計官にお尋ねいたしたいと思います。先刻の地すべりの問題でも、三十年度の災害であるから二十八年度の法律は適用しないのだというような御解釈であったのでございますが、それは非常に間違っておる。二十八年度の災害が完成されていないがために本年度の災害が大きくなっておるという実例がたくさんある。これは政府の責任なんだ。ことに地すべりに限らず、これは後にお尋ねしようと思っていたのでございますが、今度の農作物災害等におきましては、二十八年度災害の跡始末ができていないがために災害が大きくなっておる。これは明らかに政府の責任なんです。しかもこれは御承知の通り憲法七十三条には、法律を誠実に執行し、国務を総理することが内閣の使命であり義務である。政府は憲法に違反して義務を果していない。その結果災害を生じておる。大蔵省がそういうふうな解釈を勝手にするならば不都合なことであって、これは大蔵省としての解釈であるか、内閣としての解釈であるか、重大な問題でございますので主計官からはっきり聞いておきたい。
  183. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 今申し上げましたのは大蔵省の解釈として申し上げたのでありまして、今河川局次長農林省の災害復旧課長から御異論を表明しておられますので、内部でよく相談してお答えいたしたいと思います。
  184. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと委員長から発言いたしたいと思いますが、昭和二十九年の予算のときに、地すべり対策予算十八億というものは全額たな上げになって、一つも予算が通過しなかった。これは非常に不都合なことで、そのために建設省でも非常に難儀をされて応急の措置をされたようでありますが、これはおそらく大蔵省は御存じないだろうと思う。現にもう村中が若い者と年寄りと分れて、若い者はみんな耕作をやめて——耕作をやめなければ、水を引くから人命にかかわって来るから逃げ出さなければならぬと言うし、年寄りは先祖以来の田を遊ばしておくわけにいかぬというので、村中対立になっておるところがあるのです。わきと公平になるとかなんとかいうことは、これはあなたの頭の程度を疑うのです。その話は私は実に遺憾に思う。私は選挙中でしたが、引っぱり出されて——代議士の選挙中というものは一時間の時間も惜しいのです。それでも引っぱって行かれた。ことしは田を植えるか植えないかということで村の中で対立しておるから来てもらわなければならぬということで、選挙演説をやめて仲裁に行かなければならぬほど危険な状態にある。そういうことをあなた方は考えられて、非常な間違いだから、もっと誠実に、やはり頭を具体的事実にかえていかなければいけません。これは非常な間違いですよ。たとえばこういうことです。今度視察の人も行ってこられたのですが、一つは佐世保市の平松という所です。それは水抜けの道路工事を少しずつやっていくのです、ところが上にはもう地割れで湖水ができておる、それがいつ突破してくるかわからない、早くその水が引けるところまでやってくれなければ——予算さえもらえばすぐその危険地帯はなくなるのです。もしも一ぺんに水が流れて来たら佐世保市の早岐は全滅するだろうといわれておる。この早岐は何千もありますよ、村方だけじゃないのです。そういう村を、こぞって年寄りはがんばってそこにおろうと言うし、若い者は逃げてしまおうという状態を、あなた方は二年も三年もほうっておるのですよ。これは容易なことじゃない、あなた方考えをかえてもらわぬとだめですよ。
  185. 稲富稜人

    稲富委員 主計官に、ただいま地すべりの問題が中心に話がありましたのですが、さらに地すべり以外の災害に対しましても、大蔵省の従来の二十八年度災害に対する考え方というものは非常に間違っておる。これは一つこの際主計官に再認識をしていただきたいと思う。それは何かというと、二十八年度の災害が非常に被害が大きかった。なぜ私がこの問題をここに持ち出すかというと、今度の災害というものは、二十八年度災害政府のやったやり方が悪かったために今年度にまた災害をこうむっておる、こういう点から私は二十八年度災害をここにまた思い出さなければいけないのでございますが、御承知の通りあの臨時国会のときに政府は、当然国が支出する金額は千五百六十五億ということを限定なさった。そうしてわれわれは予算の審議をやった。ところが昨年度においては、あなた方は机上査定において千百七十九億と減額されておる。こういうように大蔵省は予算編成に当っても、机上査定だと言って、いかにも水増しが多かったようなことをやられて、勝手にこの予算規模というものを縮小されておるという事実がある。しかもそれがためにせっかく法律ができたにもかかわらず、その法律は空文化しておるという事実なんです。この法律は厳存しておりますよ。しかも二十八年度から三カ年間の継続事業として政府はやると言っている。ところがこれを実行していないというのは政府の責任なんです。おそらくこれは、先刻のあなたのお言葉から聞きますると、大蔵省の意向によって政府がきめたんじゃないかと思う。それがために毎年々々災害で非常に罹災者は今日困っておる。せっかくの法律というものを今日恨んでおる。ああいうような特別立法ができたがために、農村におきましても十分の災害復旧ができる。農民補助が来るものだと思ってこれに対する復旧をやった。ところが政府は勝手にこれを減額して金を出さない。それがために今日では、政府にだまされたという考えを罹災者は持っておる。これは私は政治責任上重大な問題だと思う。しかもこの重大な問題を、ただあなた方が法律の解釈を勝手にして、厳存する法律を無視するような解釈をしてやるということは、私は非常に間違っておると思う。こういうことに対して一つ再認識をしてもらいたいと思うのですが、あなたはその当初——今日係はおかわりになっておるかわからぬが、一つこの実情から再検討して、再認識をしてもらいたいと思うのですが、あなたの心境を承わっておきたいと思います。それによって将来の問題を論じたいと思いますから、その点あなたのお考えを承わっておきたい。
  186. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 二十八年度災害につきましては、非常に大災害の年でございまして、災害の実情の査定額というものも非常に巨額に上りました、もちろん私らも、財政の苦しさから相当に無理なことを各省にお願いして、各省に無理に御納得願ったような形で、二十八年度の予算、二十九年度の予算というものができたわけでございます。その後さらに実際に無理なことになっておるかどうか、あるいは実態が水増しがあるかないかということは、各省と現地に行って調査をさしていただきまして、今回の三十年度予算につきましては、その各省と調査の結果に基きまして予算を計上しております。もちろん十分な予算が計上されておりませんので、災害を受けた方々に対しましては、非常に不満足な程度しか復旧ができない、あるいは復旧しても金が行かないといったような状態だと思いますが、何分にも一兆円の中でいろいろな災害以外の土地改良の仕事も、あるいは開拓の仕事も、治山治水の関係も、特に災害防除する意味での治山造林あるいは河川の仕事にやはり相当の金をさかねばならぬというような気持も一方でいたしますので、予算としては、確かに昔に比べますと災害復旧の進度がおくれて非常に残念なのでございますが、各方面の力といろいろ議論をして、やむを得ずこういうふうな形になっているかと思います。心境を申せという仰せでございますが、災害復旧が遅延しておることについてはまことに申しわけない、少しでも早くそれを復旧することについては全力をあげたい。また一方ワクで縛られながらそういうことを考えますので、気持の上でそう申し上げても、事実が数字として現われないと、また再びおしかりを受けるかと思いますけれども、心境を申せばこれで満足だ、これで十分じゃないかというふうには決して思っておりません。
  187. 稲富稜人

    稲富委員 ただいまあなたの御答弁によりますと、財政が非常に困難である場合は、法律の解釈を曲げてもいいということに結局なるわけでございますね。そういう法律はできておるけれども、財政が非常に窮屈であるから各省と相談して、法律通りにそういうような補助をやらないということになりますと、法律には服さないで予算を編成しても差しつかえない、こういう御解釈のようでございますが、そうでございますか。
  188. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 全般的に法律の解釈を曲げてそういうふうにいたしておるというわけでございませんで、地すべりの、法律の第五条の問題でございますが、これについては先ほど申しましたように、そういう意見をもって処置いたしております。それは一つにはある程度予算が苦しくなりますと、災害復旧あるいは公共事業につきましては、起債が相当つくものですから、補助率等が九割と二分の一までは非常に差がありまして、事業そのものの伸び等については大分違うものです、もちろん予算を九割に十分組んで措置すればそれに越したことはないのでございますが、なかなかそこまで進まないものですから、当面著しい災害の生ずるおそれのある、地すべりまたは山くずれということの範囲をそういうふうに少しでもしぼって、事業量の伸びをむしろ考えた方がいいのではなかろうかという気持も一面いたした点ではあるのでございます。曲げて解釈したのかと言われますと、非常につらいのでございますが、つらいながらそういう解釈をとったらということを申し上げ、ただ両省のお方もまた異議ありと、こう申しておられるわけでありますから、帰ってよく庁内の意見を聞き、両省とも御相談して、いずれまた御報告したいと思っております。
  189. 稲富稜人

    稲富委員 それではこれ以上主計官を責めましても、主計官の立場もあろうかと思いますので責めませんが、結論として申し上げますが、水増ししていく方に対しましては厳然たる態度をとられることはけっこうである。しかしながら一旦査定をされた以上は、九割の補助という法律が現存する以上は、やはり九割補助を国がやることは、法律を作った手前当然これは義務がなければならない。これは法律がそうなっておるけれども、財政上非常に困難であるがために、曲げて支出を少くして、罹災者にその負担を多くすることは、これは法律の執行に当っては間違ったことなのでありますから、この点は一つ、あなたをここで責めたところで仕方がないので、十分一つ大蔵省の方に考え方を変えるように、あなたも係の担当官としてやっていただきたい、こう思うわけであります。
  190. 川俣清音

    川俣委員 これは鹿野主計官に一つ十分注意しておいていただきたいと思うのでありますが、政府与党が絶対多数のときには、大蔵省の意見が絶対多数の国会で擁護されて、かなり法律を曲げられても実際面においてはそれが履行できた。まことに今日の内閣にはお気の毒ですが、大蔵省が今までのような態度で出たのでは、幾つも行き過ぎの法律をあえて作らなければならないような結果になる。そして今までのような工合で逃げておりますと、逃げたのを押えなければならない行き過ぎの法律を作って、行政官の行き過ぎを是正しなければならないという混乱が起きる、昔と同じような大蔵省の権威を振りかざしましても、それは絶対多数の与党のときにはよく擁護されたと思うのですが、悲しいかな少数与党の中において、幾ら意見を主張して行かれましても、それを押えて行かなければならぬという態勢が生れて来ますと、思わざるところに陥るおそれがありますから、十分注意をして発言願いたいと思う。そうでないと、われわれは押えるような法律を作らざるを得ない。このことを帰ったら十分おっしゃっていただきたいと思います。
  191. 綱島正興

    綱島委員長 田口委員
  192. 田口長治郎

    ○田口委員 今日は通産省の鉱山保安局長がおいでになっておるようでございますから、私はこの四月災害のうちで、特にボタ山事件として世人の注目を浴びておりますところの問題について、局長に質問をしたいと思います。     〔委員長退席、稲富委員長代理着席〕  ちょうど問題が起りました時が四月十六日でごさいました。時あたかも地方選挙のまっ最中でありましたために、中央に対する行動が非常に弱く扱われたものと思いますが、しかしながら一瞬にして七十三名の人命を奪いまして、炭鉱住宅十むね、五十四世帯を押しつぶして、被害者六百二十八名を出した。のみならずこれがために農地の排水を著しく阻害をいたしまして、大へんな農産物の被害を惹起した。こういうような問題でございますから、これは軽々に看過することのできない問題であろうと思うのであります。事件が発生いたしまして、現地といたしましては、ただちに警察あるいは消防隊、こういうものが現場に急行いたしまして、救援作業に着手したのでございますが、その被害規模が非常に大きかったために、手の施しようがありませんで、ついに自衛隊の派遣を要請するのやむなきに至った、こういうような事情でございます。それ以来昼夜兼行で死体の発掘作業に努力しておるのでございますが、その中で、子供の手にしつかとセルロイドの人形が握られておる、こういうような状態のものを発掘いたしました。自衛隊の連中も思わず涙を流す、こういうような哀れな状態もあったのでございます。  翻って何ゆえにこういう大事故が突発的に起ったかということを考えてみますと、私はこの原因に二つあると考えるのでございます。その一つは、当時の降雨量が四百二十八ミリというような未曽有の豪雨であった。これに見舞われたことでございますが、他の一つは、天災は人災なりと言ってもいいと思いますが、このボタ山に対する保全対策に一大欠陥があったものと思うのであります。すなわちボタ山は山自体がすでに人工の山でありまして、御承知のように坑内から掘り出された岩石とか、低品位の石炭、こういうものが破棄されまして、でき上ったピラミッド型の山であります。従って山全体がきわめてもろい。その上に水に対する抵抗力が非常に弱い。大雨が降りますと、内部に水がしみ込みまして、それがたまって、そのはけ口がないために、ボタ山くずれを起す、こういうふうに言われておるのでございます。  このように一触即発の危険状態にありますところの山が、九州だけで千二、三百個所もあると思っております。しかもその大部分は農地のまん中だとか、あるいは炭鉱住宅地の周辺に点在しておる。いついかなるときに再びこのような大惨事の発生するかもしれぬといったような状態でございます。  そこで私は通産省の保安局長にお尋ねいたしたいと思うのでございますが、従来この種類のボタ山に対してどのような保安対策をとられて来たのでありますか。私の知る限りにおきましては、鉱山関係のいろいろの保安法規があるのでございますが、これは主として坑内に重きを置かれまして、坑外の、特にボタ山に対しては万全の策が講ぜられたということを、いまだかつて聞いたことがない。今まさに梅雨期を控えまして、当局はこの問題に対してどんな考えを持っておられるか、その点をお聞きいたしたいのでございます。これにつきましても一片の法文を作ることで満足されないで、ほんとうに実質的に指導監督の方策を一日も早く打ち立てられていただきたい、こういうことを強く要望をいたしたい。本件につきまして、科学的の調査に基いて、どういう対策をお考えになっておられるか、重ねてお尋ねいたす次第でございます。  なおあの佐世保炭鉱ボタ山くずれの問題に対しましても、炭鉱経営者といかなる打ち合せをいたして、どういうような救済方法を今講じられておりますか、その点もあわせてお答えを願いたいと思います。
  193. 正木崇

    ○正木政府委員 ボタ山に対する従来の監督等について一言お答え申し上げますと、ボタ山その他鉱害の防除に対しましては、法規がございまして、第一番目には鉱業法によりまする施業案で、鉱害防除に対する事項がございまして、この点につきましての鉱区の所在地の地方通産局長の認定を受けることになっております。それから第二には、鉱山保安法に基きます石炭鉱山保安規則というものがございまして、これによりまして選炭場に付属する設備としてボタ山の認可を地方監督部から受ける、こういう二段構えの法規になっております。この法規が守られておりますかどうかということにつきましては、全国に十カ所の鉱山保安監督部がございまして、そこに擁しております鉱務監督官を炭鉱鉱山に巡回させまして、鉱山の設備状態を常時監督しておる次第でございます。従来ボタ山崩壊というような事故はあまりなかったのでございますが、特に多量の降雨がありました場合には若干の鉱害問題を起した場合がございます。しかしながら昨年の六月に、福岡県の亀山という炭鉱でやはり崩壊事故を起しまして数名の死傷者を出しましたものですから、特に同種事故の今後における発生防止いたしますために、ボタ山の監督につきまして遺憾のないように地方の監督部長には通知を出しまして、監督させております。     〔稲富委員長代理退席、白浜委員長代理着席〕  また特に昭和三十年の監督の方針といたしましても、ボタ山崩壊防止対策を重点し一つに取り上げまして、これが監督を厳にするように申し渡したのでございまするが、これらの施策の途中におきましてあの不幸な事件の惹起を招来いたしましたことは、まことに残念に存じております。なお今後の防止対策といたしまして、御存じのように佐賀県に杵島という炭鉱がございますが、ここでボタ山崩壊に対する研究をいたしますために、九州大学の先生の援助を受けまして研究することになっております。これにつきまして補助金を工業技術院に申請しておりまするので、私どもは昨年からこれをバックいたしまして、この研究の完成をはかりたいというふうに考えております。この技術研究の成果をもちまして今後の監督に資していきたいというふうに考えております。なお鉱務監督官の教育につきましても意を用いまして、昨年こういう土木関係の権威者の方にお願いをいたしまして、全国の鉱務監督官を集めましてこの面の教育をいたしました。従いまして、この昨年の教育に基きまして、今年からは十分にボタ山の問題につきましては意を用いまして監督をいたしというふうに考えております。従いまして漸次今後こういった事故の発生防止できるというふうに考えております。なお今回の佐世保炭鉱の経験にかんがみまして、従来気のつきません点も若干ございますものですから、今回これを機会に、所要の法規に対しましては改正を加え、あるいは技術的指導につきましても十分炭鉱を指導いたしまして、遺憾なきを期したいというふうに考えております。
  194. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいまのお答えによりまして、鉱区及びボタ山の認可制ということは御説明をまつまでもなく私らも存じておるのでございますが、このボタ山の保全に対しまして注意をしろ、こういうような御通知をされたようでございますが、どういう点について指示をされたのでございますか、具体的の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
  195. 正木崇

    ○正木政府委員 ボタ山崩壊の原因といたしましては、今回の場合は異常な降雨であるということが大きな要素として考えられまするので、ボタ山の表面に影響を及ぼします水を完全にボタ山からほかに排除する、これは現行法規でも適当な山腹水路を設けることが規定されておりまして、こういった規定の遵守を大いに将来監督するということでございます。なおその他ボタ山自体の排水につきましても、さらに研究を加えて措置をする必要があるというふうに考えておりますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、杵島炭鉱における試験の結果を参考といたしまして、十分考えていきたいと考えております。
  196. 田口長治郎

    ○田口委員 ボタ山くずれというものが、雨水がしみ込んで、それがたまって一時にはけ出す、こういうような原因のようでございますから、排水施設をさせることはきわめて重大であると思うのでございますが、ボタ山の設置認可に対しまして、そういうような条件をつけてやられるのでございますか。それとも条件をつけておられて、どこも排水設備をしておるかどうか、その点どうなっておりますか。
  197. 正木崇

    ○正木政府委員 この施業案にボタ山の位置と構造というものを記載することになっておりまして、施業案の認可の際に、この構造につきまして、ただいま申し上げました山腹水路が完全であるかどうかという点についての審査をすることになっておりまするけれども、施業案の全部につきまして一々現地における調査をしておりませんので、あるいはその点に現実と書面の上で食い違いが起ったということは考えられまするけれども、書面の上で判明いたしまする限度におきましては、十分審査をしておると考えておる次第であります。
  198. 田口長治郎

    ○田口委員 排水施設、これはきわめて重大だと思うのでございますが、今さら九州大学その他で研究されるまでもなく、常識的にかように考えるのでございます。この施設が完全にできておるボタ山を一度視察をしたいと思うのですが、どこに行ったらそれが見られますか。
  199. 正木崇

    ○正木政府委員 具体的に炭鉱の名前を申し上げるのでございますか、それともどの地方においであそばしましたらよろしいということを申し上げたらよろしいのですか。
  200. 田口長治郎

    ○田口委員 炭鉱の具体的な名前を教えて下されば見にいくのですが。
  201. 正木崇

    ○正木政府委員 大きな炭鉱におきましては、大体どこにおいでになりましても、山腹水路は一応完全にできておるというふうに私は了解しておりますが、実はこのたびの佐世保の事故は、ボタ山の位置、ありました所が斜面でございまして、そこの地形がちょうど地すべり地帯に見られますような玄武岩の台地でございまして、そこに玄武岩の風化いたしました岩屑と申しますか、石ころでございますが、その堆積がございまして、その上にボタ山が形成されておりましたというような特殊な事情がございましたために、降雨排水に十分な能力を発揮できなかったというふうに私は了解しておりますので、一般の平地に設けましたボタ山につきましては、雨水のために特に先般のようなボタ山崩壊という事故を起したことはないというように私は承知しております。
  202. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいままでの御答弁によりまして、ボタ山に対する科学的調査を通産省では今日までほとんどやっておらなかった、こういうふうに私ら解釈して差しつかえございませんか。それから最後に私がお尋ねいたしました、今回の佐世保炭鉱に対する救済を、業者と連絡してどういう方法をとっておられるか、それについても答弁願いたいと思います。
  203. 正木崇

    ○正木政府委員 ボタ山に対する科学的な調査をしなかったということではございませんけれども、御存じのようにボタというものは、年数を経ますと風化いたします。従いましてボタ山の内部における変化の状況につきましては、従来資料がございません。これはボーリングあるいは坑道を切るというようなことによりまして調査の要がございますので、至急この点につきましても研究調査を進めたいというふうに御了承いただきたいと思います。それから先般の事故の罹災者に対する救済の措置でございますが、第一番に考えられますことは、労災保険の保険金の支払いでございますが、この点につきましては主管の労働当局に要請をしておそらく近く解決するのではないかというふうに考えております。さらに鉱業権者に対しましては、罹災者の救済に万全の措置をとるように従憑いたしまして、とあえず罹災家族に対しまして一万円の見舞金を出しておると聞いております。さらに鉱業権者の資力に応じまして、可及的最大の努力をするように要請しております。
  204. 白浜仁吉

    ○白浜委員長代理 原君。
  205. 原捨思

    ○原(捨)委員 ボタ山につきましては、すでに雨期を控えておりますので、その各ボタ山状況は出先の係官から御報告を受けておられると思いますが、現に相浦地区のある炭鉱におきまして、ボタ山が途中から崩壊いたしまして、すでにその先端は鉄道線路に到達いたしております。私はそれを見て、この雨期までに何とかしなければどういうふうになるかと実は憂慮いたしております。その報告を聞いておられるかどうかお聞きしたい。
  206. 正木崇

    ○正木政府委員 先般の佐世保の事故に引き続きまして——実はあの事故の起ります前に、すでに九州の全炭鉱に対しまして、ボタ山の位置、形状に関しまして危険と思われる事項を指摘いたしまして、その点に関する調査を文書をもって照会いたしました。これに対しまする回答を基礎にいたしまして検討いたしたのでございますが、残念なことには、この回答が真実のものに合致しない面があったのかと推定されますが、先般事故を起しました佐世保炭鉱は、この書面の審査だけでは危険と認められないというような判断をしたわけでございます。しかしながらもちろん災害発生後に厳重に調査をいたしてみますと、確かに危険であったということはわかるのでございますが、何分にも九州には七百以上の炭鉱がございまして、それにそれぞれ一カ所以上のボタ山がございますので、全部を調査いたしますと千二、三百ございます。従いまして九州におります保安監督官の数から申しまして、全部のものにつきまして、短期間に現地調査をすることは困難でございますが、一応先ごろいたしました調査に基きまして、危険と認められる炭鉱数十炭鉱ございますが、それに対しましては具体的に指示をいたしまして、予防措置に遺憾のないように警告をいたしたということになっております。
  207. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま局長の話を聞いておりますと、ボタ山の認可についてはあなたの力に権限があるようでありますが、往々にしてボタ山を設置する場合におきましては、地元の農民等の反対がありましてもボタ山を設置するという場合が非常に多いのであります。こういうようなことに対しては、あなたの方は何もそれに対する認可の権限等は適用されないのであるか、この点を伺いたい。さらにまた先刻からお話を聞いておりますと、あなたの方に監督権はあるのだけれども、往々にしてこれが食い違う場合があった、こういうような御答弁もあったようでございますが、食い違いがあったということをあなたの方でお認めになっているということは、非常に監督不行き届きじゃないかと思うのですが、この点に対してどういうような考え方をあなたの方は持っておられるか。さらにボタ山の管理に対して、鉱業権者がどのくらいの責任を持たれておるのか、これに対する監督はどの程度まで及ぼすものであるか、この点もあわせて聞きたいと思います。
  208. 正木崇

    ○正木政府委員 最初のボタ山の認可の権限でございますが、これは実は私かわって御答弁をするかっこうになっておりまするが、鉱山保安の関係ではございませんので、鉱山局の出先でありまする地方の通産局におきまして認可をやっております。その際にボタ山の位置構造につきましての記載がございまするので、鉱山保安監督部長に、認可をする場合に協議することになっております。従いまして鉱山保安の関係から申しますると、この安全性につきましてだけこの施業案の文書によって協議いたしまして返事をいたしております。地元の問題につきましては、鉱区の設定の際に関係町村長なり府県知事の意見を聞きました上で、地方の通産局長が鉱業権を設定しておりますので、その際にただいまお話の点についても、御意見を伺って判断していくというふうに私は了解しております。
  209. 稲富稜人

    稲富委員 そうすると、安全性についてはあなたの方の監督の権限があるとおっしゃいましたが、もちろん安全というものは人間に対する危害ばかりではなくして、このたびのたとえば長崎佐世保の相浦地方の、今原委員から御質問がありましたような点は、従来ありまするボタ山というものが雨ごとに下に流れてくる。そのためにそのボタ山から排出されましたボタのために、川床が上ってしまいまして、川としての機能を発揮していない。それがために雨が降りますと、それが全部たんぼの中にはんらんいたしまして、本年のような災害を生じておる。これは佐世保炭鉱ではございませんが、ボタ山におりまする鉱業権者の悪質な者は、雨を利用してボタを流すようなところさえもあるのです。これに対してあなた方も放任いたしておりますると、これが農業災害に非常に移行してくるのでございますから、こういうものに対してはあなた方は、保安というのはただ単に人命に対する保安ばかりでなくて、農作物その他に対する被害ボタ山から生ずる場合が非常に多いのでありますから、こういうものに対する監督はどういうふうなお考えを持っておられるのか、この点を伺いたい。
  210. 正木崇

    ○正木政府委員 鉱山保安法の建前といたしましては、鉱山における労働者の危害の防止だけでなく、鉱害発生防止も法律の目的でございますし、またこの法律によりまして、鉱業権者は鉱害の発生防止する法律上の義務を打っております。従いましてその義務の履行につきまして、鉱山監督官は監督をしております。さらにもし不幸にして鉱害が発生いたしました場合には、臨時石炭鉱害復旧法という法律がございまして、その法律の運用、またはそのつどの臨時の立法によりまして、災害復旧に遺憾なきを期しておるというふうに御了解願いたいと思います。
  211. 稲富稜人

    稲富委員 それでは、あなたの方は、その鉱業権者に対して十分義務を負わせるだけの権能を持って、ボタ山から生ずる農業災害に対しては鉱業権者に災害の補償までもやらせる、ここまでの権能があるのであるか、ただボタ山の管理に対してのみ権能があるのであるか、その点も一つ……。
  212. 正木崇

    ○正木政府委員 鉱山保安法によりますと、鉱害の発生した場合に、鉱業権者に対しては、その保安法違反の事実を捜査いたしまして、これを検察当局に書類送致いたします。これまでが鉱山保安法によるわれわれの権限でございます。従いまして、鉱害の復旧、鉱害の賠償につきましては、鉱業権者の義務でありまするが、この問題を処理いたしまするのは裁判所になりまするものですから、私の方の権限の外でございます。
  213. 川俣清音

    川俣委員 鉱山保安局長は日本の鉱業法の由来をあまり御存じない。鉱業権というものは授権物権であって、固有の物権ではない。従って施業案をもって行うところの権利なんです。当然その施業案の中には鉱滓処理の問題が含まれた施業案でなければ許可になっていないはずです。一定の条件のもとに鉱業権というものはあるわけです。その条件が満たされなければ、鉱業権自体が失格しなければならぬのだ。当然停止することができる。これを怠るために、鉱業権というものは永久権であったものを永久権を剥奪した経歴もあるわけです。また鉱業権の乱用を防ぐために鉱業権を制限をしておる。また賠償規定もこれに加わってきたわけです。また鉱山局が保安局を分離しましたのも、日本の鉱業の発達に伴う監督を十分強化するために起ってきて、あなたがその任務についておられる。この歴史を十分尊重されないで、任命されたから局長になったのだというような考え方を持っていたら、これは保安局長の職責は尽せませんよ。当然ボタの処理につきましては、鉱滓の処理につきましては、鉱業権を取得するときに当然その契約がなければならなかったのだ。あなたはそうお考えになりませんか。
  214. 正木崇

    ○正木政府委員 鉱滓の処理につきましてはもちろん施業案の内容で記載してございまするし、また鉱滓の処理の方法につきましても保安法により監督いたしております。この点につきましてただいまの先生のお話で私の権限外というふうな誤解をされたかと思いまするが、それは当然私どもの権限としてやって参ります。ただ鉱害賠償につきましては、これはらち外であるというふうに御了承いただきたいと思います。
  215. 川俣清音

    川俣委員 今日の鉱滓による被害というものは、単にボタ山ばかりではありません。一体鉱山局というものが昔と違ってだらしがなくなってきた。石炭の増産奨励も必要だけれども、安全に資源を開発することが任務である。公けの秩序やあるいは公安を乱してまでも採出しなければならないものと違うのです。従って施業案というものを十分検討しないで、あたかも特権のごとくに考えて、鉱山局の特権のごとく考えて許可するからこういう問題が起るのです。許可の条件、採掘権あるいは試掘権の条件が十分整っていないのに、あるいは施業権を実施をするについて十分な条件が整っていないのに許可を与えるから間違いが起るのだ。そうお思いになりませんか、そこに根本があるとお考えになりませんか。
  216. 正木崇

    ○正木政府委員 施業案の認可につきましては、全部につきまして実地調査ができないという場合もございまするので、あるいはお話のような御心配があるかと存じまするが、しかし鉱山局の出先である地方通産局におきましては、そこでできるだけの調査をいたしまして認可をしているというふうに私は考えております。もちろん施業案によらない採掘をやった場合には、鉱業法によりまして鉱業権を取り消すという処分をいたすことができることになっておりまするので、もしも不正なものがありますれば、そういった面で鉱業の採掘はやめてもらうというふうに考えております。
  217. 川俣清音

    川俣委員 施業案によらないで採掘した場合は鉱業権を取り消しておるのですよ。そこであなた方が調査しなければ、危険であったかなかったかというようなことよりも、施業案通りやっておるのかやらないのか。これを一番先にやらなければならぬことだ。施業案通りやっていなかったならばどんどん取り消してごらんなさい。せっかくそこまで強力な権限を与えておるのです。それを実行できないならおやめになったらいい。やれないなら……。危険であるかないかというその先に、一体施業案通り実施しているのかどうか、これが当然な鉱山局の任務なんです。あとで見たところが危険であった、そんなものじゃありませんよ。施業案に対する考え方が少し軽視になっている、そうお思いになりませんか。
  218. 正木崇

    ○正木政府委員 ただいまの御意見ごもっともでございまして、立ち帰りましてその方の係の者に先生の御意向をよくお伝えしまして、今後施業案の問題につきまして遺憾のないように処置いたしたいと考えております。
  219. 稲富稜人

    稲富委員 それからボタ山の場合、鉱業権者がたくさんボタ捨てをやって、そうして鉱業権者がもうその鉱山に失敗して無能力者になった場合がある。そうしてボタ山が依然として残っておる。その依然として残っておるボタ山がこわれて、そうして被害一般農民に与える、こういう問題があった場合に、そのボタ山を管理する権能はどこにあるのですか、その点を一つ。
  220. 正木崇

    ○正木政府委員 問題が二つございまして、もしも鉱業権が消滅した後におきましてボタ山なり、そういった鉱業施設の残っておるものにつきまして鉱害なり事故が起りました場合の責任は、五年間、前の鉱業権者の責任がございます。しかしながら、もしそれがどこへ行ったかわからないとか、あるいは全然鉱業権を放棄したとか、または資力がなくていろいろな賠償の責任を果すことができないというふうなことになりました場合に、これは所有権の放棄ということになりますかどうかはいろいろ問題がありますので、その点につきましてはなお研究いたしまして別な機会にお答えいたしたいと思いますが、いかがでしょう。
  221. 稲富稜人

    稲富委員 いや、問題はそこに生ずると思うのです。鉱業権者が無能力者であった場合、鉱業権者が五カ年間はこれについて責任を負わされる、責任は鉱業権者にあるがゆえに、ほかのものは手を尽されない、こういう問題が起る。これに対しては、ボタ山による被害というものは、鉱業権者が無能力である、あるいはそれに対する管理を十分やり切れないというものに対しては、国家が責任を持つというような立法措置、法律の改正等を必要にお考えにならないかどうか、私この点を一つ聞くためにお尋ねしておるわけなんでございますが、当然これは国家なり何かがかわって補償しなければ——鉱業権者はボタ山だけ放っておいて逃げてしまった、それがためにその鉱滓は年々歳々雨ごとに被害農民に与える。それを、鉱業権者が無能力者であるがために農民が犠牲にならなくちゃならないということはあり得ない。これに対して国家が補償するなり何なり、当然こういう問題が起ってこなければならぬと思うのたが、これに対して局長はどういうふうにお考えになっておるか、あなたの考えを一つ承わっておきたいと思うのです。
  222. 正木崇

    ○正木政府委員 ただいまの問題確かに御指摘の通りでありまして、法制上の欠陥かと考えますので、十分研究いたしまして、こういった問題がうまく処理されるように研究いたしたいと思います。
  223. 稲富稜人

    稲富委員 それではただいまのこの被害の問題に返りますが、先刻申し上げました長崎県の相浦地方におきましては、川底がボタのために非常に上っておる、このために農民被害をこうむっておる。この川の川ざらいと申しますか、こういうものに対してはどういう考えであなたの方はお臨みになりますか、結論として承わっておきたい。
  224. 正木崇

    ○正木政府委員 ただいまのところ、鉱害であるということになりますと、鉱業権者の責任におきまして復旧をするということになると思います。
  225. 稲富稜人

    稲富委員 それじゃボタが流れてきたということは、現に川に埋まっておりますのでわかりますから、あなたの方で強く言って、鉱業権者にこの川ざらいをさせるとか、こういう問題に対する方法はおとりになりますか。
  226. 正木崇

    ○正木政府委員 私どもの方でできる範囲の努力をいたしまして問題を解決いたしたいと考えます。
  227. 井出一太郎

    ○井出委員 ボタ山の鉱害などについて私は被害地の一人として多くの意見と希望を持っておりますが、本日はなお四月の農業災害についてお尋ねしなくちゃなりませんので、簡単に希望を申し上げたいと思うのです。先刻来危険地帯については調査をするとか、あるいは臨時石炭鉱害復旧法、特別鉱害復旧臨時措置法がある、こういうふうな話がありましたが、現実はそういうゆうちょうなものではないのであります。ボタ山崩壊のために次々に炭鉱の住宅なり、農家が移転をしているということはすでに御承知の通りであります。今ごろこの調査をなさる段階ではないのであります。しかもまた、かりに法律がありましても、御存じのように炭鉱業者は四苦八苦であります。私の佐賀県においては毎月一つか二つの炭鉱がつぶれておる。そういう炭鉱には今、誠意がないことは大体御承知の通りであります。かりにありましても資力がないのでございます。いわゆる共託金と申しますか、それを出すだけの資力がない。そのために鉱害の復旧もできないというのが現実の姿であります。今稲富委員からいろいろ御注意がありましたが、鉱害の起らないように抜本的な対策をこの際やっていただきたい。法律の規定によってどうだこうだというのではなくて、根本的に被害防止する方法を、この際積極的に講じてもらいたいことを希望いたしておきます。  そこで政務次官にお尋ねいたしますが、先刻稲富委員の質問に対しまして割合に気前のいい御答弁があったようであります。初めは非常に気前はよかったが、最後は少し後退した感があったのです。従来の被害対策に準じてやりたい、こう言われたかと思いますが、あとでは慎重にやりたいと思いますので、その点については研究いたしたい、こういうお話でございますが、四月の水害に対するその対策はいつごろまでに成案ができるのであるか。先刻指摘になった営農資金、共済金の問題、病虫害防徐費の問題、種子購入費の問題、あるいは飯用麦の問題、こういった問題について、いつごろまでに成案ができるお見込みであるか。先刻の答弁は、すでに調査官がお帰りになって、おそらくその調査報告をお聞きになった上で、被害が大きいために稲富委員に対してさような御答弁があったものと私は信じておりますので、いつごろまでにこの国会に必要な法的措置なり、行政措置をなさろうという心組みであるか、これを承わっておきたいと思うのであります。
  228. 吉川久衛

    吉川政府委員 いつごろまでに対策が立つかという御質問でございますが、先ほども申し上げましたように、調査官も派遣をいたしておりますし、また帰ってきて報告をいたしているものもございますが、なお災害県の報告も実は待っているわけでございます。これらのものが出そろったところで最後の結論を出したいと思っておりますが、目下並行的に検討は進めております。府県からの調査報告が出そろったときには、はっきりした対策が立つと思っております。
  229. 井出一太郎

    ○井出委員 政務次官は農業災害については大体御理解が深い人です。すでに一部の報告は受けておられると思います。そうしてこの対策をどうすべきかということは、その一斑はすでに出されていると思うのです。いつごろまでに対策が立つというお見込みはあるはずだと思います。なるべくすみやかに並行してということだけでは、子供の使いと同じようなかっこうで、納得しかねるのであります。従来の災害に準じてということもありますし、例もございますし、いつまでものんべんだらりと調査をなさるわけでもございませんでしょうし、今月一ぱいにはとか、あるいは今月の二十日ごろまでにはとか見当がつくはずであります。つかなくては私どもは当局の誠意を認めるわけには参りません。政務次官から誠意ある御答弁が願いたいのであります。
  230. 吉川久衛

    吉川政府委員 関係県が九州、四国、中国、近畿の一部、静岡、福島、北海道とございます。私の方の調査もでございますが、府県からの報告も尊重しなければなりませんし、従ってそれが出てこないと、こちらだけで対策を立てるということも不十分なものになるおそれもございますので、出てこないところは督励をいたしまして、出そろったときに結論の出るようにあわせて検討していると申し上げたのでございますから、いつごろといいましても、はっきりしたお返事はできないのですが、大体府県の報告が出そろったころにはこちらの対策が立てられる時期だと思います。
  231. 井出一太郎

    ○井出委員 そういう御答弁はどうもおかしいですな。大体各府県からは報告が来ているはずであります。それは詳細な何十何円まではわからぬでしょう。しかしどのくらいの対策を構ぜねばならないかという見当のつく報告はすでにあるはずであります。そのためにあなたの方からも調査官を出されたし、また国会からも調査団派遣されて、すでに報告もなさっております。この程度被害であればどのくらいの対策を講ぜねばならぬかということは、あなたの頭の中ですでにできていると思います。それがわからぬ政務次官ではないはずです。
  232. 吉川久衛

    吉川政府委員 四月中旬までのものは明らかになっておりますが、続いての災害等もありますので、あわせて考慮しているわけです。
  233. 井谷正吉

    井谷委員 今の次官のお話では、東北の方の話もありましたが、私どもは九州と山口を見て帰ったのでありますが、土地の人は手のつけられぬような状態で、この結果を非常に待っているのです。ですから、福島県、静岡県あたりには凍霜害も起きたそうですが、そういうものが次々に出てくるのを待っておって、最後にまとめてけじめをつけるということではいかぬと思う。ですから、九州の四月中旬のものだけを切り離して速急にやっていただきたい。もう出張しておられる人もじきに帰られると思います。あるいは帰られたのではないかと思う。ことに県からのは、九州に限ってほとんど出ていると私は思っているのですが、これを切り離して早急にやられる御意見があるかどうか承わりたい。
  234. 吉川久衛

    吉川政府委員 災害に緊急を要するもののあることは私どもも了承いたしております。従って農林省といたしましては、この月末までにははっきりした対策を用意したいと思っております。
  235. 稲富稜人

    稲富委員 農林関係で聞きたいことは、災害についてもまだたくさんありますが、建設省から来ておりますので、あと回しにいたしまして、この際建設省の河川局次長にお伺いしますが、私たちが九州並びに山口災害地を見て痛切に感じましたことは、今度の災害が二十八年の災害と非常に違った点は、水はけが悪いために冠水したことが従来の災害と非常に違うようです。これは河川改修等にも非常に影響があるのではないかと思います。というのは、上流の河川改修をやるということと、下流の水はけというものと並行して総合的な計画を立てないと、こういう問題が起ってくるのではないかと思うのでございますが、これに対して建設省としては、この排水問題についてどういう考え方をとられているか。これが災害に及ぼす影響が非常に大きいので、承わっておきたいと思うのであります。
  236. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいま稲富委員からお話のありましたことは、まことにごもっともであります。河川必ずしも上流だけではございません。下流の方が堆積しておりますと、上流の方に水がたまりまして、それが溢流したり、冠水したり、農地にも災害を及ぼすわけでございます、下流のそういった堆積によりまして、それが治水上支障がある、ひいては利水上にも支障があるという場合におきましては、建設省といたしましても、従来とも努力いたしましてその浚渫をいたしているわけでございます。  そこで関連いたしまして、あるいはお話があるかということを先に前置きして申し上げて恐縮でございますが、先ほどのボタ山等に相なりますと、これが果して鉱害復旧の線でいくべきものか、それとも公共施設として一般的に建設省の対象として取り上げるべきかという問題につきましては、会計検査院等の批判もときどき受けるわけでございます、微妙な問題でもございますので、その個々の川につきまして処置したいと考えておるわけでございます。
  237. 稲富稜人

    稲富委員 個々の川の問題を考えますと、長崎県の相浦地方ボタ山から生じた浸水が多い。筑後川、遠賀川地域はやはりはけ切れない。ことに筑後川におきましては、下流の方に山ノ井川その他の直轄河川でない河川があり、これがやはり直轄河川に流れ込めないという一つの事実がある。遠賀川におきましては、御承知の通り西川でございますが、これがはけ切れないというような事実がある。これはやはり直轄河川と並行し河川計画を立てなくちゃいけない。そういう場合、こういうような西川あるいは山ノ井川というものを直轄河川でないようにおいていくということは、総合的な計画を立てるについてうまくいかないのじゃないか。やはり直轄河川河川計画を立てる以上は、これに関連のある最も影響を来たす西川、山ノ井川のごときは、直轄河川としての方法をとるということが最も妥当じゃないか、こういうことをわれわれ見て考えたわけでございますが、こういうことに対して建設省はどういうような考えを持っておられましょうか。
  238. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいま筑後川、遠賀川のお話がございましたが、私は技術者でございませんので、適切なお答えを申し上げられるかどうか自信もございませんが、御答弁申し上げますと、御承知の通り直轄河川の区域は本川でございますが、その逆水の及ぶ範囲におきましては直轄河川の区域といたしまして直轄で工事をいたしておる現状でございます。ただいま御指摘になりました支川が、あるいはそういう川のうちに含まれますか、まだ工事の計画がそこまで伸びないために直轄で取り上げていないのか、あるいはそういう事情がないために中小河川の対象として残されておるか、その点は十分承知いたしませんが、筑後川、遠賀川につきまして水系全体として治水計画でやらねばならぬことは当然ございまして、筑後川、遠賀川河川計画そのものにおきましては、当然本川のみならず支川についても考慮いたすべき問題と考えておるわけでございます。ただ河川計画におきましては、上流下流を一貫しまして考えねばならぬわけでございまして、先ほどお話のありましたように、本川の下流がどれだけの水をのみ得るかということも、やはり本川計画及び支流計画のときに入れて考えねばならぬ問題でございまして、また工事の緩急の順序から申しまして、あるいは御指摘のような支川の工事がおくれておる場合もあろうかと存ずるのでございます。稲富先生も御承知の通り、建設省は支川につきましても決して無関心ではございませんので、ときに順序について、あるいは御意見もあろうかと存じますが、予算の許す範囲におきましては、支川の流域の方々の利益になりますような工事を逐次いたしておるわけでございます。お話のような川につきましても、予算の許す範囲におきまして、本川の改修とあわせて逐次実施に移して参りたい、こういうように考えております。
  239. 稲富稜人

    稲富委員 今、次長は山ノ井川その他が直轄河川になっておるかどうか、はっきりわからないと言うが、それはあなた知っていらっしゃると思う。特に山ノ井川の問題は直轄河川にしてもらいたいというので、しばしば陳情があったので、河川局次長であるあなたが御存じないということは私は納得できないのです。これはやはりただいま申し上げましたように、直轄河川としての筑後川、あるいは西川においては遠賀川、これと並行してやはり河川計画を立てるべきである。  さらに将来起るべき問題は内水排除の問題であります。ところが内水排除をやりましても、やはり維持費というものに地方は非常に困るので、内水排除をやるというのであれば、やはり国家的施設によって内水排除の問題を検討しなければならないという問題が起ると思うのですが、これに対してあなたはどういう御計画を立てられておるか、その点もあわせて伺いたいと思います。
  240. 植田俊雄

    ○植田説明員 ただいまお話のありましたような内水排除の施設も逐次実施いたしております。今後予算の許す範囲に、また本川の河状が許す範囲におきまして、ああいった工事を続けて参るつもりであります。
  241. 稲富稜人

    稲富委員 山ノ井川の直轄河川の問題はどうですか。
  242. 植田俊雄

    ○植田説明員 直轄河川の問題は、工事能力の問題もございまして、ただいまこの場でお答えし得るほどそこまで結論が出ておらないので御了承願いたいと思います。
  243. 稲富稜人

    稲富委員 建設省に対しましては、今度の水害が、ただいま申し上げましたように、河川の水はけが非常に影響があって、先刻からも御報告がありましたように、二十九年度に数十億の農作物被害を与えた。こういうようなことが水害の原因であるということを十分一つ御認識になりまして、河川計画を立てていただきたいと思うのであります。  それから厚生省の局長にお尋いたしたいと思いますのは、御承知の通りしばしば筑後川流域にただいま申しましたように、浸水によります水害があるのですが、実は佐賀県及び福岡地方日本住血吸虫病といううるさい特殊な病気がございまして、これが水が出るたびにその地域に蔓延してくるのであります。これに対する対策がいろいろ検討されておりますけれども、遅々として進んでいない。それがためにあの地方農民は、たんぼに入るのに戦戦きょうきょうとして生産に当らなければならないという状態でありますので、これはあの地方農民が安心して農耕に従事し得るような意味からいっても、一日も早くこういう特殊な病気を根絶するようにしなければならないと思うのですが、これに対して厚生省はいかなる考えをお持ちになっておられるか、この際その御計画を承わりたいと思います。
  244. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 局長がおりませんので、かわりまして私からお答えいたします。日本住血吸虫病は、ただいま御指摘の通り福岡におきましては久留米市、朝倉郡、三井郡、佐賀県におきましては鳥栖の周辺、それから山梨県、埼玉県、広島県の一部の地域にありまして、この病源体や伝播経過は日本人によって全部発見せられたものでございます。それで何とかしてこれを撲滅したいと思いまして、佐賀県におきましては、たしか大正の初めごろに生石灰をまき、また昭和になりましてからも厚生省式の便所を設けたりしていろいろやっておったのですが、終戦後この問題を取り上げるようになりまして、現在は根本対策といたしましては、たんぼのみぞをコンクリート化すということをやっておるのであります。この日本住血吸虫は、中間宿主といたしまして、宮入貝という小さい貝がありますが、それに寄生をしている小さい、人間の精虫によく似たセルカリアという虫であります。これが貝から出て来て水の中を泳いでおって、田の中で労働している農民を侵す。また川なんかを泳いでおる子供を侵すのであります。さらに病気になって健康が衰える、またひどいのになると腹が張って死ぬということだけでなく、農民の労働力が落ちる。さらにその村にはお嫁さんに来てもらえない、また田植えがきたとき人を雇おうと思っても雇えないというようなことになっておるのでありまして、何とかして撲滅しなければならないと思っておるのですが、われわれの力の足らない関係もありまして、五カ年か十カ年計画でこの溝渠を作っていこうとしましても、予算が十分認められておりません。それで認められました範囲におきまして、これを重点的に配分して済ます、こういうような方法をやっておりまするが、これだけでは現場の急に間に合いません。それで少し応急的な彌縫策といたしまして、現在は石灰窒素とか、さらに近ごろといたしましてはPCPという薬がありますが、その薬をまく、こういうような方法で宮入貝を殺す、こういうことをやっております。それから患者につきましては、保菌者の検査をやりまして調べる、また治療につきましては、貧困者については治療費を補助する、こういうようなことをやって、それにつきまして市町村がやりますことに対して県が三分の二を補助し、国がそれに対して半分補助するというような仕組みでやっておりますが、この病気は先ほど申しましたように、日本で早く発見されながら苦しんでおるということははなはだおかしいことだと思いますので、われわれも何とかして撲滅したいと思って、いろいろ研究もし、また努力もいたしておる状態であります。
  245. 稲富稜人

    稲富委員 弊害があり、被害があることはわかっていながら、力が足りないから十分なことができないというのは実にわれわれは遺憾に思うのでございまして、これほどの、地方としては重大な問題でございますし、現に今課長も言われておりますように、弊害の数々をあげられているのですから、これはもっと厚生省も力こぶを入れて——しかも力がないから長くなってくる。だんだん蔓延するのです。早くこれに対する方法を講ずるように、あなたの方で力が足りないならばわれわれお手伝いしてもいいのだから、もっと力のあるようにしていただきたいと思うのです。そうしないと地方が困りますので……。これ以上あなたに聞いたところで、力がないといえばしょうがないですから、何かの機会に護っておきます。  実は農林関係についてまだ幾らも聞きたいことがありますが、緊急の問題だけ二、三、ずいぶん次官も急いでおりますので……。先刻井手委員から、本年度のこの災害に対しましては、当然病虫害の防除等が必要であるということ質問しておりまして、何とかしたいとおっしゃっておりますが、これは本予算のときに私質問しようと思った問題でありますが、病虫害の防除費というものは削られております。一体何からお出しになるおつもりであるか、予備費からでもお出しになるおつもりであるのか、全然認めていないのにどこから持ってこられるか、その点を一つ次官に承っておきませんと安心ができませんので……。
  246. 吉川久衛

    吉川政府委員 はなはだ残念なことでございますが、三十年度の予算がきまっておりませんから、予備費から出すというわけにも参りません。農林省としては融資あっせんでもとりあえずしておいて、予算がきまり次第その措置を講ずる、こういうことで御了解願いたいと思います。
  247. 稲富稜人

    稲富委員 予算はきまっておりませんが、もうこういう問題が起っておりますし、これは当然ただちにやらなくちゃいけない問題でございますので、あるいは予算の編成に対してわれわれは修正でも一つ要求したいと思うのでございますが、こういう場合は出さなくちゃいけないということを政府も考えておられるならば、快くこの修正等には応じて、融資とかそういうようなことではなくして、これは当然国家として補助をすべき性質のものでございますので、従来のように一つ補助方法をおとりになるように、当然予算の修正をしなければならないと思うのですが、そういうような資融をもってやっていくなんというようなだらしないことでなくて、あなたの方から積極的に予算を要求でもするくらいの熱意をもってやってもらいたい。
  248. 吉川久衛

    吉川政府委員 私の申し上げたのは、予算の修正も何もいらないのです。三十年度の予算が本ぎまりになれば、その中には予備費がございますから、その中からでも出せるのです。ところがそれを待っていられませんから、それでそれまでのつなぎと申しますか、融資のあっせんをして一時やっておいていただいて、あとでそれを本予算で埋めていく、こういう考え方であります。
  249. 稲富稜人

    稲富委員 それから一つだけお伺いして、あとは次にまわします。共済金の問題でありますが、御承知の通り福岡県は採種の任意共済をやっております。二十八年度災害が非常に大きかったので、特別融資を願っておることは御承知の通りであります。ところが本年度また菜種災害がありましたので、なかなか融資の金の返却等にも困難するかと思いますので、当然こういうものは本年度の事情に応じて返済方の延期を願うと同時に、今年度においてはやはりこの金融措置をやってもらわなければいけない、金融措置をやってもらうとしますと、やはりこの特別立法が必要じゃないかと思うのでございますが、これに対してはどういうようなお考えを持っておられるか。
  250. 吉川久衛

    吉川政府委員 御期待に沿えるような措置をただいま考えております。
  251. 稲富稜人

    稲富委員 ほかに聞きたいこともありますけれども、次官も急いでおられるようでありますから、またの機会に譲ることにいたしまして、本日の質問はこれで留保しておきます。
  252. 白浜仁吉

    ○白浜委員長代理 本日はこれにも散会いたします。     午後五時五十六分散会      ————◇—————