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1955-05-11 第22回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十一日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 井出一太郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 中馬 辰猪君 理事 稲富 稜人君       赤澤君正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    伊東 岩男君       楠美 省吾君    笹山茂太郎君       野原 正勝君    足立 篤郎君       大野 市郎君    助川 良平君       田口長治郎君    松野 頼三君       赤路 友藏君    有馬 輝武君       淡谷 悠藏君    井谷 正吉君       石田 宥全君    楯 兼次郎君       芳賀  貢君    伊瀬幸太郎君       川俣 清音君    佐竹 新市君       中村 時雄君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席政府委員         林野庁長官   柴田  栄君         水産庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         参  考  人         (日中漁業協議         会中国派遣代表         団副団長)   山崎喜之助君         参  考  人         (日中漁業協議         会中国派遣代         表)      高橋熊次郎君         参  考  人         (日中漁業協議         会中国派遣代         表)      谷村 高司君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 五月十日  委員有馬輝武辞任につき、その補欠として足  鹿覺君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として有馬  輝武君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十日  畜産物価低落に対する対策確立に関する請願(  助川良平紹介)(第五一〇号)  菱太良土地改建区連合の県営土地改良事業促進  に関する請願池田清志紹介)(第五五六  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  漁業に関する日中両国民商協定に関し参考人  より説明聴取昭和三十年度農林水産関係予算に  関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 綱島正興

    綱島委員長 ただいまより会議を開きます。  本日はまず漁業に関する日中両国民間協定について参考人説明聴取を行います。御承知の通り去る四月十五日日本国日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会との間に黄海東海漁業に関する協定締結せられたのでありますが、幸い本協定締結に当られました日中漁業協議会山崎喜之助君、高橋熊次郎君、谷村高司君の御出席を得ましたので、この機会に本協定締結に至りましたいきさつ並びに本協定内容について御説明を願いたいと存じます。  なお本協定は、いわゆる民間協定でありまして、今後になお幾多の問題が残されておると思うのでありますが、さらにまた他の海域における類似のケースも今後生ずることなども予想されますので、これらの点についての業界の御意見をもあわせて御開陳願えれば、当委員会わが国水産業に対する基本的な方針の策定に寄与するところ大きいのではないかとも考える次第であります。参考人のお方は、この点も御考慮を願っておきたいと思います。  それではこれより順次御意見を承わることにいたします。時間の関係もありますので、山崎参考人に三、四十分間お願いいたし、その余の方から補足説明を願ったり、質問に応じてお答えを願ったりする方がよかろうかと存じますので、さようお含みをお願いいたします。  それでは山崎喜之助君。
  3. 山崎喜之助

    山崎参考人 山崎でございます。貴重なこの機会を与えていただきましたことを感謝いたします。簡単に民間漁業協定内容について御報告を申し上げたいと存じます。  日中漁業協議会から選任されたわれわれ漁業代表は、一月八日羽田を出発し、十日北京に到着、三カ月余滞在して、中国漁業協会代表との間に日中漁業問題に関する交渉を行い、四月十五日調印を終り、十九日帰国いたしました。以下交渉経過協定の概要を御報告申し上げます、  順序といたしまして、日中間漁業問題の概要を御紹介いたしておきたいと思います。  一、昭和二十九年十二月末、東海黄海における日本機船底びき網漁業の概況、機船底びき網漁船七百八十一隻、五万八千六百八十九トン、トロール漁船五十八隻、二万九百三十トン、合計八百三十九隻、七万九千余トンとなっております。年間漁獲昭和二十九年二十九万二千トン、この価格約百五十億円、前年昭和二十八年度の漁獲二十七万二千トン余でありました。同じ期間における昭和二十九年十二月末の東海黄海における中国機船底びき網漁業の概況、機船底びき網漁船二百八十七隻、このほかに目下建造中のもの四十四隻、トロール漁船四隻、合計三百九十一隻、二十九年中の漁獲十一万五千九百トンであります。  次に中国沿岸漁業の概況、中国側の発表によれば渤海、東海黄海における中国沿岸漁業漁獲高は約六十三万トンといっております。渤海から黄海、主としてこういう沿岸でございます。われわれの推定はこれよりももっと多くの漁獲があるであろうと思っております。なおその大部分は機船底びき網漁業漁獲対象となる底魚であります。  この漁業交渉のきっかけは、昨年ここにおられる田口先生あるいは参議院の松浦先生等が参加されました国会議員団が、中国周恩来総理に要望されたことを契機といたしまして交渉が行われたものであります。日本側は昨年十一月に漁業関係七団体の参加のもとに、日中漁業協議会を設立いたしまして、交渉団体といたしました。中国側はこれにこたえて中国漁業協会準備会を設立し、交渉の最後の過程においてこれを正式に中国漁業協会といたしました。これに先んじまして、昭和二十七年民間団体日中漁業懇談会、並びに昭和二十八年漁業者村山佐太郎氏が、中国の紅十字会の趙安博氏と会見してこの問題を話し合っております。なお昭和二十九年の初めに、全日本海員組合から、中国の全体的な労働団体である全国総工会に対して、諸種の要請を行なっておるものであります。  日本代表は十一名でありました。その選出の内訳は、底びき漁業者六名、全漁連一名、海上労働者五名、陸上労働者一名、ほかに随員五名、合計十四名の代表団でありました。団長は七田末吉氏でありました。中国側代表は十名でありましたが、中途で二名が欠員となりました。その内訳は前の水産管理総局長、地方水産局長海上労働者代表各一名、青島及上海国営水産公司の社長各一名、中国漁業協会幹部四名、代表兼顧問として、昨年の秋中国紅十字会代表として来朝したことのあります趙安博氏が同じく参加いたしました。団長は楊煜という人でありました。  会談経過をかいつまんでお話し申し上げます。日本側は先ほど申し上げました日中漁業協議会中国側中国漁業協会がそれぞれ代表となって協議をいたしました。この協議対象となる漁業機船底びき網漁業を限ったものでありました。この交渉は九十五日間行われ、最初の四十五日は双方主張が対立いたしておりました。中の十五日は、協定成立のための協力について考え方双方に近寄せるということの結果を得た期間でありました。最後の三十六日間は具体的問題の協議協定書等の作成及び調印等に要した日取りであります。このために正式な協議を十回行いまして、いろいろの形式を整えました。そのほか委員会及び私的な小会合等、全体を通じて約百回会合を行いました。  交渉内容につきまして、日本側は、過去の問題の解決と将来の問題の協定、この二つが大きな目的でありました。その結果といたしまして、将来の問題を協定したのであります。過去の問題は解決を見るに至りませんでしたが、日本代表団といたしましては、中国政府に対する書簡をもって懇請いたしまして、具体的な解決の方法及び時期を待つことといたしました。このたびの協定協定期間は本年の六月十五日から来年の六月十四日まで、満一カ年間が有効期間であります。協定書は十一条からなる本文と、四つ付属書によって形成されております。このほかに備忘録交換書簡交換、ほかに七田団長から中国政府に対する抑留船釈放の要請の書簡、こういったものが形式的に残るものであります。この中で備忘録は、中国側の強い要望が協定の中に盛られなかった問題を、双方がその主張経過を述べ合ったものであります。往復書簡協定外水域――この線からこちらが協定水域で、これからこちらが協定外水域であります。この協定外水域について中国政府の意を体した中国漁業協会代表団との交換往復した書簡であります。次に七田団長中国政府に要請する書簡は、先ほど申しました日本抑留船の釈放に対する要請の書簡であります。  会議経過をいま少し詳しく申し上げたいと思います。一月十三日、日本側四つの議案を提出いたしました。それは、一、東海黄海における日中両国漁船平和操業に関する問題、二、過去の事件の解決に関する問題、三、海難防止人命救助に関する問題、四、漁業資源保存のための研究及び資料の交換に関する問題、以上であります。  一月十七日、中国側三つ議題を応諾いたしました。それは、一、東海黄海の漁撈に関する問題、二、海難防止人命救助に関する問題、三、資料の交換及び資源共同調査に関する問題。  一月十九日、日本側中国側が前回提出いたしました三つ議題について話し合いを進めることに同意し、その際この三つ議題を話し合うことに上って、残された一つの問題、すなわち過去の事件の解決に関する問題も自然と解決を促進できると思うという旨を述べておきました。これに対しまして中国側は、中日両国漁業問題を解決するには今後の問題を解決することがまず先である、今後の問題を解決するのが主であると答えました。なお日本代表の質問に対して中国代表は、双方の間で中国が提出した三つ議題について話し合いがまとまれば、今後拿捕事件のごとき紛糾は起らないものと思うと答えました。  一月二十二日、中国側からさきに提案を示しました。一、このたび話し合う漁区には次の地域は含まれない。それは中国政府の規定した機船底びき網漁業禁止区域――二つあるのですが、この点線、これが昨年の七月まで中国が実施しておった中国機船底びき網漁業禁止区域であります。その後われわれが行きましてから中国側が示した機船底びき網漁業禁止区域と称するものは、この辺からこの線でございます。この機船底びき網漁業禁止区域、それから舟山群島軍事航行禁止区域、及び北は鴨緑江の河口から南は山東高角から外十二海里に線を画した以西の軍事警戒区域――舟山島の軍事航行禁止区域というのは、この大きい線の内側にございます。それから鴨緑江河口から山東高角に至る外十二海里、これはここからこちらでございます。及び軍事作戦区域である北緯三十九度以南、これから南でございます。台湾はこの辺にございます。軍事的な区域三つ漁業区域が一つ、これはこのたび話し合う地域に含まれないと主張いたしました。そうして会談原則は、中日両国漁業界友好増進平等互恵平和共存の基礎に立って合理的に漁場を利用し、両国人民漁獲物に対する需要を満たし、資源の枯渇を防ぎ、紛争の発生を避け、一方が東海黄海漁場を独占しようとする行為を防ぐことであるといって、この五つの具体的な目的を述べたのであります。そうしてこの目的実現のために、中国沿岸に連なる漁場は、まず中国利益を考慮し、同時に日本利益を考慮に入れ、次に日本沿岸に連なる漁場は、まず日本利益を考慮し、同時に中国利益をも考慮に入れるべきである。このために東海黄海漁場を適当な区域に分け、漁獲量漁船のトン数を確定すべきである。もし日本代表がこの原則に賛成ならば、次の会議に具体的な提案をする、このように述べたのであります。その具体的な現われは、こういうことであります。中国がまず中国利益を先にして次に日本利益を考えるというのは、この青線からこういうふうになってこうなっております。この線は東経百三十四度でございます。それからまず日本利益を先に考慮し、次に中国利益をというのは、東経百二十五度から東、この区域であります。そうして、中間のこの漁区日中両国が平等にここで漁獲をするのだ、両方に開放されておるのだという考え方であります。これに対しまして日本代表は、中国沿岸資源保護区域を設定して、この区域内では中国及び日本双方機船底びき網漁船の操業を抑止する、そういうことを内容とした日本案を提示したのであります。それはこの前の中国禁止線よりもっと内側に入った、こういうふうな線です。要するにこの禁止線よりももっと区域を広げた、こういった線です。言いかえれば、ここのところは日本に開放せよということであります。なお、日本案提案資源保護区域は、大体中国の旧華東軍政委員会で作った機船底びき網漁船禁止区域を少し小さくしたものであります。これに対しまして中国代表は、日本案は実際上平等互恵原則が考慮されていないと非難し、双方原則には大きな隔たりがあるから、双方話し合いの上で基礎を見出すまでしばらく休会し、その間に相互の意見の接近をはかりたいと提案いたしましたので、日本側もこれを了承したのであります。これは第四回までの公式全体会議においてこういうことになったのであります。  次にこの打開のために小委員会及び個別会談を開始いたしました。一月二十二日の正式会談経過にかんがみまして、一月三十一日から三月二日までの間に小委員会を三回、日本側は公海の漁業の自由の原則を強く主張し、中国案の撤回と四つ協議除外区域を設けることに反対をいたしました。中国側はあくまで自説をまげず、また四つ区域の除外は政府の指示であるから民間同士の話合いで討議すべきものではないと主張し、双方意見の接近は不可能な状態でありました。その結果、小委員会は三面をもって打ち切りました。以後は双方代表が個別的に私的な会談を行いました。この期間が約三週間続きました。しかし双方の一致した見解に到達することはできませんでした。  二月三十三日この双方意見を整理するために第五回の正式全体会議を開きました。日本側から、これまで小委員会及び個別的個人会談の結果、日本代表として中国案を承認することはできないが、中国側の真意も了解できたから一応日本代表は帰国して日本漁業者の総意をまとめた上で新しい提案を用意し、再び会談したいと考えて、休会を提議いたしました。しかし中国側は、今回の会談日本側数年来の熱心な要望の結果、中国周総理の言明に基いて日本代表を招いたものであって、現在のところ日中漁業問題を解決するにはこの民間会談が唯一の道であるから、休会すべきではないと思うと激しく日本側を非難すると同時に、その反省を求め、休会に同意いたしませんでした。  次に二月二十六日第六回の正式会談におきまして、日本側は前回までの会談経過を詳細に述べ、日本代表の態度を説明し、中国代表の前回の発言を反駁いたしましたが、しかし決裂を避け、二、三ヵ月休会する方針のもとに帰国後国内において取りまとめた新提案を持って来たいという意向を発表いたしました。その新提案の構想、これは概要でございますが、構想は次の通りであります。  一、日本代表はこの会談の結果、中国漁業東海黄海に依存する度合いの高いこと及び中国が自国の漁業保護育成に努力していることを知ることができた。沿岸漁場中国が圧倒的に優勢を占めているが、沖合いの底びき網漁業日本が優勢を占め、中国は劣勢である。これらの事実に基いて漁場合理的利用、両国民の需要の充足、紛争の防止、資源保護漁場独占防止等の五つの目的を達成することには双方の利害を調節する何らかの措置が必要であると考える。  二、そのために将来の恒久対策としては東海黄海全城にあげて適正漁獲量を決定し、適当な漁船数協定する必要があると思う。  三、また暫定的措置としては、中国沿岸に近い漁場両国漁船の特に競争する場所及び時期を限る。おもな魚種を対象として小区画かつ短期間両国漁船の入り合う隻数協定する必要がある。  この三つをわれわれは今考えておる。こうした見解を基礎として、帰国の上、日本漁業者の総意をまとめて再び会談したいと考える。これに対しまして中国代表は、今の日本側三つ意見は討論の価値があると自分たちは思うから、具体的案を示されるならば大いに歓迎する。ぜひ協議をまとめるためにそういうふうにしてくれないかということを述べました。ここで初めて会談の行き詰まりが打開せられる見通しがついたのであります。  二月二十八日、第七回全体会議におきまして、日本側は前回の中国側の発言に基き、第一から第六までの六つ区域期間について案を提示いたしますとともに、本国の了解を取りつけるために代表権限拡張等を求め代表二名を帰国せしめたことを報告いたしました。その六つ区域は、この図によりますと、大体この一区はこの図より少さく、二区もこれよりは少し小さく、こうなっております。三区はこれから下がございません。四区は同じ。五区は大体同じ。六区はこれから下がございません。  これに対しまして、三月二日、第八回正式会談におきまして、中国代表から、日本案六つ区域及び期間を八つにいたしました。さらに個々の区域期間を大幅に延長する、実質的には日本案の四倍に相当する修正案を提出いたしました。ここはもう少し大きく、この辺まで、ここももう少し大きく、問題の第五区というのをまん中に作くる、ここに第八区というものを作くった。大きいものでありまして、日本側の第一回に提出いたしましたものよりも実質的には約四倍に相当するものであります。  三月五日、第九回の正式会談におきまして、日本側中国修正案に対して反対意見を表明するとともに、双方の案を近接するために少数の委員協議することを提案し、中国側も同意をいたしました。これから少数委員によって漁業分科委員会を構成いたしました。  三月十一日から十六日まで、六回の委員会を開き、さらに三月十九日から双方団長、副団長との会見等を行いました。その結果は、中国修正案のごの第五区、これは備忘録双方主張経過を述べることにいたしました。それから中国側がつくりました第八区、従ってこれは当然中国もこれを撤回いたしました。なお六つ区域制限期間内に入り会う双方漁船数は、それぞれの漁区における漁船収容能力をきめて、これを双方に割り当てるという方式ではなくて、また双方隻数の比率をきめるというものでもないという前提のもとに、まず日本側から適当と思われる各区に対する隻数を示し、そのあとで中国側が各区に対する隻数を示した結果、第三区を除きましては双方とも相手側隻数について論議することなく、これを相互に認め合ったものであります。第三区の場合と申しますのは、この漁区日本側は百二十隻の船を入れることにしたのであります。中国側は四十隻の船を入れたいというのであります。中国側は、自分たちは長い間の体験に基いて、この三区の資源は割合にやせているから、一挙に多くの船を入れると資源が枯渇するので、日本側はその点について意見はどうか、再考してくれないか、という希望がございまして、われわれ日本側協議いたしました結果、これを八十隻ということに日本側がみずから修正したものであります。  次に、こういうことによりまして大体の協定の構想がまとまりまして、これを起草委員会に移すことにいたしました。そのほか特に技術的な分科委員会を設けてそれぞれ活動をいたしましたが、特に漁場秩序の維持の取りきめをいたしますにつきましては具体的な方法を決定しております。これは非常に特色のあるものと考えられるものであります。こうして大体まとまりまして、四月十四日第十回正式会談を行い、起草委員会でまとめました協定本文及び付属書備忘録を上程いたしまして相互に確認をいたしました。そうして、四月十五日調印式を行い、日中両文の協定書二通に双方が署名いたした次第でございます。  以上が会談経過でありますが、さらにこの会談において双方の重要な論点になった点を少し詳しく御紹介いたしたいと思います。  一、協定水域につきまして、会談の当初、中国側中国政府のすでに決定した四つ区域、すなわち軍事区域三つであります。漁業区域が一つであります。その軍事区域は、ここからこれを軍事警戒区域、それから軍事航行禁止区域として、これは舟山島付近で漁業禁止区域から、内側に入っております。及び北緯二十九度以南軍事作戦区域及び機船底びき網漁業禁止区域、この新しい線を主張しております。これを今回の話し合いから除外すべきであると主張いたしました。これに対して日本側は、軍事上の区域は別としても、少くとも機船底びき網の禁止区域漁業上の区域であるから、話し合いに入れるべきであると主張いたしました。その理由は、一国の国内法が公海において直ちに他国の漁船に適用されるべきではない、これは日中双方話し合いの上でそれを適当と認めたならば、双方協定によって資源保護区域として守ることにしたいというのが日本側主張でありました。特に中国の示した機船底びき網漁業禁止区域は、一九五〇年に華東軍政委員会の設定した区域よりもさらに拡張されており、それを追究いたしましたところ、一九五四年中央政府が新たに規定したものだが、まだ批准を終っていないという説明であったので、まだ批准されていないものならば、われわれの意見を取り入れて適当な資源保護区域として協定しようではないかと主張したのでありますが、中国側はこれを用いず、中国政府の規定したものを民間会談で修正することはできない、まして中国政府が法律を設けるときに日本漁業者意見を聞くというような必要はないと強く主張いたしました。また北緯二十九度以南作戦区域は、この区域日本漁船が行けなくなることは日本側としては非常に大きな影響があるので、日本側はこの区域協定の中に入れるべきであるといって強く主張いたしましたが、中国側は、二十九度以南は作戦中であり、危険である。日本漁船が入らないようにお勧めしたい。もし入って操業した場合いかなる事態が起っても、これはその当該漁船の責任であるというので、これはしいて入ってはならぬとは言っていないのであります。従って日本側は、独自の判断で自己の責任において行うことは差しつかえないと解釈いたしまして、それ以上は追究しなかったのであります。要するに四つ区域の除外については日本側としては釈然としなかったのであります。どうしてもこれを話し合い対象としようとするならば、会談は決裂のほかないと判断いたしまして、会談開始後約四十五日くらいたって双方ともこの区域については話を触れないことといたしました。そうして話し合い対象になる区域のみについて協議を進めることといたしたのであります。しかしながら中国側は最後の起草委員会で再びこの問題について触れまして、協定第一条の協定水域の表示の方法として四つ区域を除外することを明示したいと主張いたしたのであります。この際も日本側は、協定水域の表示は協定した水域だけでいいのではないかと主張いたしまして、これを撤回させたのであります。ところが、日本側協定書日本側の元の草案の第三条にこういうことを入れておったのであります。これは日中双方機船底びき綱漁船六つ区域以外ではいかなる場合といえどもその操業を制限または禁止されないことを保障しなければならない。こういう条項を入れてあったのに対しまして、中国側はそのただし書きとして、再び次のようなことを申し出たのであります。鴨緑江河口の薪島から北緯二十九度に至る警戒区域及び機船底びき網漁業禁止区域の線より西、つまり中国側ですね。そこへは日本漁船は入って操業してはならないとつけ加えることを主張いたしました。その理由として、そういう線があることを協定のどこかに書き入れて日本漁船に十分注意してもらいたい、またそういうことを知ってもらいたい。こういうことが目的だと強く主張し始めたのであります。日本側としては、この問題は協定そのものが不平等の協定になることと、協定水域外の水域における日本漁船の義務を規定することはできないことなどの理由をあげて論争いたしました。一時はこの問題で暗礁に乗り上げたのでありますが、すでに協定の実質である漁場問題も解決し、あとわずかのところで全部が解決するという大局的厚地から、これを双方往復書簡に譲るということを提案いたしまして、結局書簡の形で落ちついたわけであります。  次に漁場問題につきまして、日本代表日本を出発するに先だちまして、資源保護を伴う公海の漁業の自由の原則に基いて、中国沿岸資源保護区域を設定し、その区域内では日中双方機船底びき網漁船の操業を抑止するということを主眼とした案を用意したのであります。しかし中国は、日本が予定した資源保護区域は、中国政府の規定した機船底びき網漁業禁止区域であるから討議できないと主張しました。そうしてこれを話し合いから除外する区域とし、話し合いのできる水域については、大まかに言えば、先ほど申しました東海黄海を三分割した案を出したのであります。日本側中国側考え方は誤りであることを指摘して強硬にこれと論争をいたしました。しかし中国側は、東海黄海の沖合いにおける漁船の勢力は、圧倒的に日本側が優勢であり、しかも勝手気ままに、縦横無尽に操業しておるではないか、中国漁船は安心して操業することができない、すなわち日本漁船は一方的に東海黄海漁場を独占し、中国漁船の操業を排斥している、これがすべての紛争の原因であるから、平等互恵原則に反するこのような操業方法は容認できないと主張いたしました。そして協定目的は前に述べました五つの目的、すなわち漁場を合理的に利用し、両国人民の需要を満たし、紛争の発生を避け、資源の枯渇を防ぎ、一方が漁場を独占して他方を排斥する行為を防ぐようにするために何らかの措置が必要である、もし日本側中国案に不賛成なら代案を示されたいと要求したのであります。日本代表といたしましては、日本から用意していった構想ではとうてい円満な妥結に達しないことがわかりましたので、代案として先ほど申し上げました六つ区域について、期間を限って双方漁船数を限定する案を提出したのであります。なぜこのような案を日本が提出したかと申しますと、中国側の指摘した漁船の競合による紛争という事態が起るとすれば、それは漁群の密集する時期に、またごく狭い場所に漁船が多数に集中することから起るものであるから、従ってそういう時期と場所について何らかの制限をすれば紛争を避けることはできるという見解に基いたものであります。この日本の新提案に対しては中国側原則的には同意いたしましたが、中国側の提出した修正案は、日本案を一とすれば四に当るほどの区域期間を拡大したものでありまして、特に東海黄海のまん中に新たに五区あるいは八区といったようなものを設けた案でありました。日本提案いたしました六つ区域は、いずれも中国側沿岸に近い区域で、両国の漁業調整をするには適切な場所であります。中国案の五区、八区は調整上必要のないところでありますから、日本といたしましては公海漁業の自由の原則の良心的な立場から譲ることはできないとして大いに論争したのであります。しかし中国は、第五区につきましては最後まで最も根強く反対したのであります。この五区を制限しなければ中国漁船の安全操業が確保されないし、また中国漁業生産を維持することができない、この区域では、場合によっては日本漁船の優勢を認めてもよいからこの区域を設定すべきだと主張いたしました。結局この区域は討議の結果備忘録として交換することに妥結したのであります。また第八区は中国側がこれを撤回したのであります。このようにして成立いたしました六つ区域及び期間は、日本が当初案を立てましたものを一とすれば一・七に拡大されたのでありますが、中国側修正案に比べると相当に縮小され、大体において日本原案に近いものになったのであります。なお六つ区域に入り会う双方漁船数は、先ほども申し上げたように、双方の比率をきめたものではない、またおのおのの漁区収容能力を算定して割り出した数でもないことを念のために申し上げておきます。同時にこの規定した漁船数は、入り会う漁船を特定するものではなくて、常時稼働している船の数でありまして、入れかわることができるものであります。すなわち漁区で操業する最高の隻数をきめたものでありますから、その数をこえなければ差しつかえないのであります。またこの期間外は完全に自由であります。結局日本漁船は、この協定によって大きい漁業上の制約は受けないのであります。  次に拿捕事件解決について申し上げます。中国側はこの会談の当初は、話し合い目的は将来の漁場問題を解決することだと言い、話し合いがまとまってこれを実行するなら、今後拿捕事件のごとき紛争は起らないと理解してよいと言明いたしましたが、過去の事件の解決につきましては、それは中国漁業協会の関知しないところである。また中国漁業協会は新たに生まれた団体であるから、過去の事件については何ら知らされていない、こういう態度をとっておりました。日本側は、会談の初めにこの問題を持ち出したのでありますが、中国代表がこれについて触れることを避けていましたので、適当の機会を待ったのであります。しかし漁区問題の話し合いもまとまり、調印の見通しもつきましたので、三月の三十一日、日本側団長及び副団長から正式に中国代表団に申し入れをしましたが、中国側はさきに述べましたような態度にかわりがありません。ただ日本代表の意向を関係方面に伝えるということでありました。日本代表周恩来総理に面会して、直接お願いしたいと考え、そのあっせんを依頼いたしましたが、周総理がバンドン会議に出発されたあとであったので、その希望がかなえられませんでした。で、日本代表の藤見を、周総理あての書面にしたためまして、中国側団長に伝達方を依頼いたしました。中国側も快くこれを承諾いたしましたので、そのうちに何らかの中国政府の回答もしくは意向がわれわれに知らされるものと期持しておるのであります。周総理あての書簡の要旨は次のようなものであります。周総理の言明に基いて漁業会談が開かれ調印の運びになったことを感謝します。ついては過去の未解決の事件をこの際解決していただくよう御配慮を願いたい。解決の方法としては釈放可能な船はすぐ釈放していただきたい。もし事情があるものは何らかの解決の方法を示されたい、こういう意味のものであります。  次に協定及び付属文書について申し上げます。協定本文、付属文書その他の文書については、ごらん下されば大体おわかり願えると思うのでありますが、一、二申し上げたいと思うことを補足いたします。この有効期間は一年間であります。これはこのような協定は当然政府間でなさるべきものであるから、長期にわたるべきではない、また自動的に延長する規定も設けない方がよいという中国側主張によるものであります。但し有効期限が到来しても政府間で協定がいまだできないような場合には、再び協議してもよいというふうにお互いに話し合ったのであります。協定の第九条に、双方がそれぞれ自国の政府に対して日中漁業問題の解決についてすみやかに話し合い漁業協定を締結するよう促すものとするという規定のあるのも、前述の理由に基くものであります。  協定の当事者につきまして、言うまでもなく日本側日中漁業協議会が責任を持ってこれを実施するわけであります。しかし実際にはなかなか困難な面もございますので、関係御当局の御協力を得たいと考えております。  付属文書、付属文書は協定本文と同等の効力を有するものであります。第一号は六つ区域の位置、期間漁船の数を規定し、第二号は漁船の操業秩序についてこまかく規定してあります。これは漁場における紛争や事故を防止するために、中国側の希望及び日本側の希望もありまして、特に詳細に取りきめたものであります。今後これを実施することによって漁場における苦情の発生を防ぐことができると信じております。第三号は緊急避難及び海難救助等についての処理方法でありまして、特に漁船相手側の港に緊急避難する際の手続を詳細に記録してあります。この実施についても関係御当局の御協力を得たいと思っております。第四号は相互に漁業に関する資料や文献の交換を規定したものであります。  次に往復書簡及び備忘録、これについてはいろいろと御批判もあると思いますが、会談を円満にまとめるためにとった措置でございます。  以上今回民間代表が結んで参りました漁業協定の大要であります。われわれ漁業代表団といたしましては、いかにして平和に安全に操業することができるか、またいかにして日本の正当な利益を守り、この協定が将来他国との漁業協定等に悪例とならないように、またこの協定が理論的に適正であるか、また実質的に適当であるかにつきましては、忌憚のない御批判と御協議を得たいと考えております。しかし民間交渉という限界もありまして、また両国間に国交のないという状態のもとでは、十分に意を尽せなかったことを御理解願えば、われわれ代表団としては非常に仕合せに存ずる次第でございます。それにつきましても、今後は一日も早く国交が調整され、政府間の交渉によって漁業条約等の締結をしていただくことを切望するものであります。またわれわれがこの協定をいたしましたにつきまして特に感じますことは、日中両国の異なる理想に基いて諸制度がいろいろと大きく変ったものがあります。それを現実的な問題によって一致させよう、こういう点に特に努力したと考えております。  最後に、中国側がこの問題について終始きわめてまじめであり、そうして建設的な態度で臨んでくれた、こういうことをあわせて御報告いたしまして、私の報告を一応終らせていただきたいと思います。
  4. 綱島正興

    綱島委員長 質問の通告がございます。川俣委員
  5. 川俣清音

    ○川俣委員 日中間に正式に国交が回復されていない現状において、幾多の困難な問題が山積しておる中にあって、民間外交遂行のために尽されたその労苦に対して、多大な敬意を表するものでございます。しかも非常に困難な中において、平等互恵平和共存原則に基きまして、漁業資源を保護し、双方漁船操業中の紛争を避け、これによって日中両国漁業界の友好協力を増進するために、よく困難を克服されました努力にあらためて感謝の意を表するものでございます。しかし当委員会といたしましては、参考人をお呼びいたしましてここに陳述を願いましたのは、単なる経過をお聞きしたいということでなくして、これらの民間協定に基いて、国内漁業にどのような影響を与えるかということについて、重大な関心を持っておるためにおいでを願ったのであります。と申しまするのは、今の御報告の中にもありますように、国内法を犯して協定ができないという主張中国側からなされたようであります。民間団体としては、国内法をあえて犯してまで協定する権限がないという主張をせられたようでございます。同様に日本側におきましても、日本国内法を将来改正していくか、あるいは新たに制定するかという義務づけられた協定になっておるのかどうか、この点は非常に重要だと思うのです。ただ日本国内法に触れない範囲において協定されたのか、あるいは協定に基いて、真にこれらの協定を有効ならしめるためには、国内法の制定が必要なのかどうか、この点が一番重要な点であるのです。この点についてお触れがなかっものでありますが、触れる必要がないのであるかどうか。
  6. 高橋熊次郎

    ○高橋参考人 ただいまの御質問にお答えする前に、なぜこの漁業協定が、民間協定という形式を採用しなければならなかったかについて、説明申し上げる方がいいのではないかと考えます。
  7. 川俣清音

    ○川俣委員 それは国交が回復してないのだから、よくわかります。その必要はないのです。
  8. 高橋熊次郎

    ○高橋参考人 というのは、先ほど申し上げましたように、昭和二十五年十二月以来昨年年末まで、百五十八隻の拿捕漁船がございまして、もちろん当初われわれ業界関係者が政府に対して、この問題を解決することを強く要望した一方、さらに、当時は御存じのように占領軍が駐在しておりましたので、総司令部等に対してもわれわれはこの問題を善処していただくべく、いろいろ直接にも間接にも、政府を通してでもお願いしたのでありますけれども、当時の状況はなかなか日本政府にしても、占領軍当局にいたしても、この問題を解決するような方向になかったと思います。というのは、拿捕の理由は、その後いろいろ中国訪問をした人たちを通して聞いたのでありまするけれども、表面的には領海侵犯の疑いであるとか、あるいは朝鮮戦争や対台湾政府戦争等におきましてスパイ的な容疑があるということで日本漁船を拿捕しておるのでありまするけれども、実際において私たち見るところでは、どうやら当時のアメリカの国務省顧問のダレスさんが、中国やソ連を除外した対日平和条約を結ぼうという方向を積極的に表わしておったときで、あるいはスパイ事件や領海侵犯のほかに、中国除外して対日講和条約があるかというような報復的な意図が、かなり強くこれらの背景の中に動いておったようにわれわれは見てとったのであります。従って政府を責めるばかりではどうにもならない、何とかしてこの問題は、中国がわれわれの要求に応じられるような方向で、現実的な立場から、われわれ以西底びき関係者の利益というものを守っていくという方向よりほかに手がないのではないか、こういうような示唆を当時の貿易協定等を通してわれわれは受けまして、そうしてこの問題を民間協定という、民間同士話し合いという形において、一応正常な政府間における外交折衝による解決までの暫定的な方法として、それ以外には手がない、こういうように考えまして、この民間協定という形をとるべく、そのように実現すべくいろいろな方法を講じたのであります。そのような経緯におきまして、われわれが昨年十月の周恩来声明によって向うへ参ったのであります。  もちろんこの考え方の中にも、単に法的に何ら抵触しないというようなことだけではなく、むしろ日本国民の全体から、あるいはまた国会――衆議院、参議院等における水産委員会等のいろいろな発言等から考えまして、この際民間協定もやむを得なかろうという意向が顕著に現われたと私たちは考えまして、国の利益ということを全然おろそかにして、以西底びき業者の利益だけできめるという形においてこの問題を進めたのではないということを、特にこの際強く説明申し上げておきたいと思います。もちろん交渉の中におきましては、われわれは単に以西だけの問題でなく、他に悪い影響があってはならない――日本は御存じのように、アラフラ海の問題で濠洲ともあのような状況の中にございます。特にきわだった問題といたしましては、韓国の李承晩ラインの問題がございまして、それらにこの問題が悪影響あるというようなことになっては非常に困る。単に以西底びき業者だけの利益であってはならない、かように考えましてやりましたので、私たち代表団一同も、またわれわれ十四名を一致して推薦したところの日本漁業者の皆さんも、もちろんわれわれはそのような利益の上に立って――周囲の情勢は全般的に、もちろん国会の方の関係考え方も、すべてがそれをやむを得ないとして支持しておるというような考えで――もちろんわれわれは、先ほど来繰り返して申し上げますが、法的にのがれさえすればいいというような考えではございませんで、振り返ってみて、私たちはこの問題をよくやった、こう考えております。そのよくやったという考え方は、あるいは独善だとお笑いになるかもしれませんけれども、私たちは、単に中国漁業利益日本漁業利益ということだけでこの問題が推し進められたとするならば、このようなわれわれに利益するような協定は不可能であった、少くとも中国の対日政策という大きな目標があったために、中国の漁民の利益というものは若干犠牲を払わされたのではないか、その上に立ったこの協定であるという印象を調印後私たちが受けていることをもあわせて申し上げておきたい、かように考えます。
  9. 川俣清音

    ○川俣委員 私の質問を誤解されておるのです。私はそういうことをお聞きしておるのではないのです。
  10. 綱島正興

    綱島委員長 川俣委員、ちょっと補足して説明があるそうです。
  11. 川俣清音

    ○川俣委員 誤解しておるから、その答弁じゃ困るのです。民間で遂行されたその労苦に対しては多大の敬意を表する。やったことについて、そのよしあしを非難しておるものでもなく、その労苦に対しては多大の敬意を表しておるのです。それだからこそあなた方が協定を結んだ裏づけのものが必要じゃないのか。あなた方だけでやってよろしいのか、あるいはどうしても国内法の整備が必要じゃないか、そのことをお考えになっていないのかどうか、これをお聞きしておるのです。それをやられたことについて非難しておるのじゃありません。せっかくここへ参考人としてお呼びしたのは、あなた方の意見を聞くのではなくて、協定をされました以上は、おそらくその裏づけとなるような国内法の整備が必要であろう。一体そういうことを考えなしに協定されたのであろうかどうか、あるいは国内へ帰ってこられて、その整備を必要とされたのではないか、こう思うのです。そこでその点をお聞きしたのです。
  12. 山崎喜之助

    山崎参考人 この協定国内漁業にいかに影響するかという御質問がございました。その一つといたしまして、この漁場におきますところの組織的な漁業といたしましては、日本側では機船底びき網漁業が唯一といっても差しつかえないかと思うのでございます。この機船底びき網漁業の三十八年中の漁獲高は二十七万二千トンであります。二十九年中の漁獲高は二十九万一千トンであります。二十九年の九月以降この漁場における中国寄りの治安は非常によくなりました。日本側漁船の活動が相当敏活になりました。そういった要素も含まれて、これだけの増産になっておる、このような見方も一つあると思われます。  それからもう一つは、この六つの小漁区を決定いたしました。これは約一万三千平方マイルくらいでありまして、全体のこの漁場に対して割合に低い率でございます。ところがこの漁場に対して日本漁船がもし全力をあげて稼働いたしましたとすると、大体二千航海くらいやれるのであります。現在東海黄海においてどのような航海数を実際に行なっているかと申しますと、五千七百航海弱でございます。相当諸状況が修正されて、よい状況のもとに六千航海と見たといたしましても、三三%程度のものがここで就業できる。漁場の率、期間から見ると一〇%以下だ、こういう点になりまして、日本の稼働し得る範囲は相当拡大されたということでございます。ただし、それでは中国禁止区域日本が認めておるかということでございます。これは認めておりません。ただわれわれの自主的な考えによって、行かないということを言っておるのであって、彼らが主張する、なぜ禁止区域を作ったかということについては、われわれは決してこれを認める態度をとっておりません。と申しますことは、この中国禁止区域は、まず漁業資源を保護するということをわれわれに対する大きい理由としております。しかしながらあの禁止区域の中におきまして、中国機船底びき以外の底びき網漁業――風力による底びき網漁業その他の漁業において、約六十万トンに近い漁獲をなしておるのでありまして、これが資源保護の見地から禁止されたと言えないのであります。国内漁業調整に基くものでありますから、われわれはこれを論議することを避けまして、ただ単に向うが来るなという線に自主的に行かないということを約束したのみであります。こうして将来公的な政府交渉する場合の発言を拘束しないようにしたつもりであります。  それから日本側代表がこういう約束をして、この実施に自信があるか、また政府はいかなる裏づけをするであろうか、それを求める必要がないかというお説でございますが、機船底びき網漁業者は大きい組織で組織が保たれております。一応民間協定にふさわしい自主的措置をまずやらせたい。これは権力でもってやるよりは自主的な自覚が第一であるという方向に今進んでおるわけであります。さらにこれに権力の裏づけがあれば非常に完璧と思いますけれども、たとえばこの権力の裏づけによって、この漁業協定を民間が行ったことがすべて政府の承認のもとに行われたというふうな形をとって、将来日本政府が困るようなことがあってはならないということを懸念するものでございます。まずわれわれは、われわれ民間が協定いたしましたその精神に基いて、民間が自主的にやっていけるだけのことはやっていこう、こう思っておる次第でございます。
  13. 川俣清音

    ○川俣委員 やや私の問わんとすることに触れられたのですが、もう少し触れたいのは、民間代表と言いながら国際上の義務を負っておるわけです。従ってその義務を誠実に履行するという建前をとっていかなければ、今後の国交の回復の障害になるであろうという懸念があるわけです。単に純然たる民間団体協定であるから、これを国内的に無視してもいいということにはならない、私はそう思うのです。従ってこれらの協定上義務を日本の業者が負っておるわけです。国が負ってないにしても、少くとも業者が負わなければならぬ。ところがその漁業者の義務を自主的な団体だけによって遂行できるのか、あるいは何らかの裏づけが必要であるのではないか、自主的にやるとすれば一つの弊害が起きないとも限らない。なぜかというと、日中貿易におきましても同様でありまして、一部の利権業者の利益代表するような傾きもできてくる。そのことは国内法全体の上からの一つの障害にもなるわけであります。できるならば、これらを公正に履行させるためには、国内法の整備がある程度必要ではなかろうかと考えられるわけであります。従って協定されました当事者といたしましては、政府にたよることなく――政府というのは行政機関です。国会は立法機関ですから、立法機関に対して何かの御希望はないのか、こういう点をお尋ねしておるのです。あなた方、政府々々と言うけれども、政府なんかいつかわるかわからない。民間代表政府々々と言うのはおかしいです。せっかく国会にお呼びしたからには、立法機関である国会に何らかの意思表示が必要でないのか、こういう点をお聞きしておるのです。
  14. 山崎喜之助

    山崎参考人 御好意ある御質問を承わりまして、まことにありがとうございます。先ほども申しましたように、この漁業協定というものは、従来の日本漁業のあり方より相当飛躍しております。しかしながら一応これをなすべしとして私たちは決定して参りました。そうしてその方法を今日われわれ当事者である漁業協議会でしきりと研究、立案いたしております。目下具体的な問題について協議中でございます。この結果に基きまして、この国会にお願いする筋もあるいは出てくるのではないかと思っております。極力一応自主的にやろうという考え方は持っておりますが、お願いしなければならない点も出てくると思っております。どうかその節は一つよろしく御援助をお願いしたいと思います。
  15. 綱島正興

  16. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっとお尋ねいたします。山崎さんが言われた最初の言葉の中に、機船底びき漁業に限ったということがございましたが、このことはただいまの御答弁の、この海域における操業はほとんど底びきが唯一のものであるという考え方の上に立っておるのですか。この機船底びき網漁業に限ったというのは、これは中国側の意思ですか、それとも日本代表の意思ですか。
  17. 山崎喜之助

    山崎参考人 これは機船底びき網漁業以外には、日本はできるだけ触れないようにいたしました。と申しますことは、この禁止区域日本では受け入れがたいものなのでございます。しかし、この禁止区域を作ったのは、機船底びき網だから作ったのだと中国主張しておるのです。日本側でこの禁止区域でどういう漁業をやるであろうかといいますと、最近長崎県あるいは鹿児島県の一部からはえなわ漁業が出漁しておるそうです。これは約八十そうあるそうです。これは底びき網のように下を荒しませんから、適当な船が操業しても資源的には大した問題ではないのです。しかし、今この問題を出して、はえなわ漁業はこの禁止区域の中に入ってやられるかと質問いたしましたならば、それは入ってはいけないと言うことは火を見るよりも明らかだと思いました。もう一つは、サワラの流し網が山東東角付近でやっております。これも機船底びき網とは資源的に関係はないけれども、もしこの際何か言うとすれば、必ずこの禁止区域の問題をまた持ち出すに違いない、こういうふうに考えまして、この二つの漁業はいずれも将来は伸びる漁業でありますが、将来は将来のこととして、そのとき解決した方がいい、今火をつけない方がいいと考えて触れなかったわけであります。
  18. 赤路友藏

    赤路委員 その操業関係ではわかるのですが、この協定本文の第四条には、事故があった場合の救難の措置がきめてあります。この第四条は機船底びき網漁業だけに限るわけですか。
  19. 山崎喜之助

    山崎参考人 漁業協定漁業の面につきましては、先ほど申し上げた通りであります。この協定書の第四条には、底びき機船の緊急事故のことが書いてございますが、この付属書の緊急のところには、単に漁船とうたいまして、すべての漁船を包含しておるわけでございます。
  20. 赤路友藏

    赤路委員 今の付属書第三号には、「本協定第四条にもとづき、日中双方漁船」というようになっております。確かに日中双方漁船ということですから、これは一般の流し網とか、あるいははえなわも入ることになりますが、その頭に「本協定第四条」とある。本協定の第四条には、日中双方機船底びき網漁船というように限られておる。そうなってくると、この付属書は第四条が基本なんですから、従ってこれは一般の漁船は入らないことになるわけです。私がお尋ねしたいのは、底びき網漁船操業それ自体については、それは将来の問題として残されることはよくわかるのですが、少くともこういう緊急事故のあった場合には、単に底びき網漁船だけでなしに、他の漁船をも当然含むべきではないか。この点が私はどうにもこの条文上から納得がいかないので、どういうふうなお考えであったか、お尋ねしておるわけです。
  21. 高橋熊次郎

    ○高橋参考人 山崎さんというお話でございましたが、海難の方の委員を私やっておりますので、赤路さんに私からお答え申し上げたいと思います。協定本文について先ほど山崎さんが言ったように、われわれといたしましても、操業に関する限りにおいて、われわれは底びき以外を代表していないという立場をとりまして、しかし漁船の海難を救助するという問題につきましては、当然その問題について全般を含むべきであるという主張をいたしたところ、中国側としては、それは人道上の問題であるから、中国側としても、中国のジャンク船等が遭難したような場合にはこの措置を準用してもらうべきであるというようなことで、われわれは了解事項として機船底びき以外全般の漁船を含むという形を明確に了解をしておりますので、そのことをお答え申し上げておきます。
  22. 赤路友藏

    赤路委員 その点で要望しておきますが、日中漁業協議会の方ではえなわ業者あるいは流し網業者にその由を御通達願いたいと思います。  それから次にお尋ねしたいのですが、六つ漁場期間を区切り、隻数制限して操業する、それ以外のところは期間隻数制限もなしに自由に操業していいのかどうか。
  23. 山崎喜之助

    山崎参考人 自由にできるわけであります。
  24. 赤路友藏

    赤路委員 そうするとこの付属書第一に大体各漁区別の隻数制限があるわけなのですが、おっしゃる通り日本の方は以西底びきとトロールで八百四十九隻になるわけですが、これだけのものが全部完全操業ができるのか、あるいは減船処置をとらなければならないか、その点御見解はどうですか。
  25. 山崎喜之助

    山崎参考人 完全操業という意味にいろいろでございましょうが、最近は御存じのように李承晩ラインと称するものがあり、これは相当大きく底びき漁業に影響しております。それから、北緯二十九度以南中国の希望としては入ってくれるなといっておりますが、日本漁船はやはり相当程度出漁しております。それから例の軍事警戒区域というこの区域には日本の船は最近出ておりません。そういうわけでございまして、昨年の六、七月ごろからの状態からいえば、少くも二、三〇%いわゆる操業は楽になる状態になっているわけでございます。それの稼働の成績は、先ほど申しましたように昭和二十八年度より昭和二十九年度は約一一%増産いたしているわけであります。ですから漸次漁場問題は改善されつつある。さらに李承晩ラインの問題が改善されれば、戦前の形とあまり違わないところまでいくであろう、こういうふうに考えられております。減船整理の必要があるかということは、これは政治的な問題でございまして、私たちが申し上げる筋でないように思われるのであります。少くも現状は維持するにさしつかえない。中国側は一九五四年におきまして四十四隻の漁船を新造している。さらにまた黄海における漁船の勢力を拡大しようとする意思ははっきりしているわけであります。漁場資源は同一のものを漁獲しているのでありまして、減船問題等については、これはそれぞれの国の考え方によって決すべきものであると思います。私は減船の必要などはないと思います。
  26. 赤路友藏

    赤路委員 これは政治問題だという山崎さんのお話は、一応政治問題と了解しますが、今言ったように、これは国の処置にまつべきであるというのは当然だと思います。そこで日本代表四つ禁止区域の開放について申し入れをした場合、中国側の方では、民間同士話し合いで決定すべきではない。これは当然政府双方がその交渉において解決さるべきものであるということを言ったということでございますが、私もそう思うわけであります。そこで民間代表の方々御足労願って、非常に御苦心を願ったわけなんですが、お帰りになってからこれらの件について政府当局の方に強く要望されたかどうか、その点はどういうふうになっていますか。
  27. 山崎喜之助

    山崎参考人 われわれはこの協定を四月十五日に調印いたしまして、これを持ち帰りまして、われわれを選出いたしました日中漁業協議会にその承認を求めました。五月七日協議会はこれを承認いたしました。そうしていろいろのこの裏づけになる具体的な問題を各漁業根拠地においてやっております。それらによって具体的な処置方法が今度考えられるわけでございます。それらに基きまして、もし必要であればそれぞれの関係御当局にお願いすべきものがあれば、お願いをしようということでございまして、今私たちは協定をし、そうしてその協定協議会に報告し、協議会はこれを承認し、私たちは一応解任された形になっております。今後は協議会においてこの報告に基き善処されるものと思っております。われわれそれぞれの私見は持っております。
  28. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大へんいろいろお骨折りをいただいてありがたいことだと思うのです。協定は形は民間と民間とのいうことになっておりますが、いずれにしても、大きく日中の国交をさらに正常化する一つのこれは足がかりになろうかと思います。そういう意味においては、これが誠実に守られるか守られないかということは非常に大事な問題だと思う。従ってこれを実行するための国内措置というものが、非常に実は重要になってくると思う。今までの話では、目下検討中であって、その検討の結果立法措置なりあるいは行政措置なりが必要なものについてはそのつどお願いをするというお話でありまして、ごもっとものことと思う。  そこで問題になりますのは、私どもよくわかりませんが、今度の付属書の第一項を見ますと、大体六つ漁区に入る日本の船の総数は三百七十六隻のように計算されます。最初のお話で総数が八百三十九隻。この協定外の海区にももちろん以西底びきが出ているわけでございましょうが、特にこの海区が問題になります点は、いろいろの意味もありましょうが、日本漁業者から見れば、こういう海区はかなり有利な海区だと考えられるわけです。従ってこの三百七十六隻の船をどう配分するか。つまりどの船がそういう海区に割当てられるか。あるいはこの割当をする場合にどうやるかということがよほどうまく行きませんというと、なかなか協定の実行ということが困難になるのではないか。その結果は、結局この協定をこのまま実行できないという危険性が非常に多いと思う。はたしてこれらの措置が、自主的に以西底びきの団体としてできるのか、あるいは日中漁業協議会だけでできるのか、あるいはそれらに対して主管庁その他の政府なりの行政的な参加が必要なのか、こういう点が一つの大きな問題になろうかと考えられます。同時にこれらに関連して、これらの船の入漁船の割当等についていろいろ好ましからざる弊害も出てくる点もある。はっきり言えば、こういう点についてある意味においてこれらがけんかをする、あるいはこういうことをめぐって漁業団体間にいろいろな紛争が起ることも考えられ得るわけです。従ってこういう点についてはどのように今お考えになっておるか、また進めておられるか。同時に、特にこれらの入漁船をきめるという問題が非常に大事な問題になってこようと思う。これに対する監視なり管理なりの問題、こういう問題が非常に大きな問題となろうと思いますが、これらについてはどんなふうに今進められておるか、あるいはこれらについて、水産庁その他との間に何らかの話が進んでおるかどうか。特にこれらが公正に行われるということが非常に大事な問題ではないか、こういうふうに考えますが、これらについてはどうですか。
  29. 山崎喜之助

    山崎参考人 日本の船は、先ほど申しましたように、八百数十そうであります。これが常時沖合いで稼働する数は、大体一旦平均四百四十隻くらいと考えられます。それであの六つ区域に割り当てます数は、漁場の全体的な配分からいきまして、それほど割り込まなければ困るという数ではなくて、割合に余裕があるのでございます。それから中国側漁船の数は先ほど申しました数ですが、距離が近いために日本よりは稼働率が八十%くらいよいのでございます。そうして常時沖合いで操業いたします数はせいぜい三百隻くらいと考えておるのでございます。これに対しまして、あの三つ区域で最も膨脹した一定の日を摘出してみますと、三百数十そうを稼働せしめ得る数になっておるわけであります。中国の要求は実際の数よりは水増しになっておるわけです。しかしあれだけは稼働する船がないわけでございます。ですから絶対的な漁場の中においては、あの二つ合せた数よりは余裕があるのではないかと考えられるわけであります。日本側漁船の態勢はどうなっておるかと申しますと、この機船底びき網漁業全体が日本遠洋底びき網漁業協会という一つ団体に属しておるのであります。それでそのおもなるものは、下関、戸畑、福岡、長崎でございまして、それぞれが支部になっております。双方が連絡をいたしまして、この割当はむずかしくない、こういうふうに考えておるのでございまして、内部的な摩擦はまず起らないであろうと考えておりますから、従ってこれから生ずる間接的な弊害も少いと思っております。ただ私たちが懸念いたしますことは、道義的に守るということは結束ができるわけでございますが、万一違反した者があった場合にいかなる措置を講ずるかということについては、事業者団体法あるいはいろいろと民間でなし得る限度があるわけであります。こういう点はもう少し実際問題を究明いたしましてから、立法府あるいは行政府に必要があればお願いをするという態度をとるべきではないかと考えておるわけであります。特にこの漁区政府の監視船が行動するということが必要な場合があると思うのでございますが、この漁業協定に基く政府の行動ということについては、政府にもまた立法府にもいろいろ考えがあるかと思いますが、やはりそうした監視船、監視方法ということは考えるべきであろうと考えておるわけであります。いずれにいたしましても、民間協定というものの実施については限度があると思いますので、われわれはこの第九条におきまして、できるだけすみやかに両国政府漁業協定を結んでほしいというこの一条だけを、この協定の中で政府の問題として唱えておるわけです。その他には何も政府を出していないわけであります。以上のような状態で、割合にすべり出しは円満にいくのではないかと考えております。
  30. 久保田豊

    ○久保田委員 日中漁業の問題につきま  しては、非常に困難な事情があったにかかわらず、一行がこの問題についてある程度の解決点を見出されたごとに対しまして敬意を表する次第であります。ただ、この隻数の問題について少し奇異の感を抱く点があるようでございますから、この一点だけお伺いいたしたいと思うのであります。  支那東海の底びき網漁業は、ほとんど中国寄りでございまして、日本側には適当な漁場がないのでございます。従って日本の八百四十九隻はほとんど支那東海の、しかも中国寄りで操業をしておる。さらにこの漁場の開発の経過を考えてみますと、日本側が今日まで努力をしてすべてを開発してきた漁場でございました。漁場の価値及び過去の努力という点から考えまして、この中国寄りの漁場そのものに対して互恵ということだけで進むことは、何だか割り切れないような気持がするのでございます。そこで今回協定海域で隻数を決定されたということでございますが、第一区において日本側で四十六隻、三月一日から四月三十日まで出漁ができる、こういうことになっておりますが、従来三月一日から四月三十日までの間に、この第一区の漁場におきまして、日本漁船がどの程度に出漁しておったものであるか。同様に第二区、第三区、第四区、第五区、第六区までのこの季節における日本漁船の従来の出漁船数、その問題について、もし数字がわかっておりますればお教えを願いたいと思うのであります。  第二に、中国側といたしまして、実際操業しない隻数、水増しの隻数を確保しておる。この隻数は将来漁業協定でも締結するときに有利な地位に立つために、さような気持でやっておるのかどうか。その点を第二点としてお伺いいたしたいのでございます。  第三点といたしまして、現在中国が二百八十七隻、建造中のものが四十四隻、こういうことでありますが、中国の底びき網の将来の趨勢というものは、非常な勢いでもって隻数をふやそうとしておるかどうか。言いかえますと、日本漁船制限問題を考える際に大きな参考になる問題と思いますから、その点三点だけを一つお答え願いたいと思います。
  31. 山崎喜之助

    山崎参考人 この六つ区域にどれだけ稼働しておるかということは――大体機船底びき網船ですが、これは昭和二十九年の九月まで、その前の一年間で総稼働数の二%くらいらしいのでございます。その後治安状態がよくなりまして、少くもこのままでいけば一五%程度のものは当然操業するであろうと考えられておるわけであります。それに対しまして先ほどのような稼働数が考えられると申し上げたわけでございます。この点は漁場価値判断によりまして漁撈長がいろいろ操作いたしまするし、また漁獲物の価値等によって若干の変化があると思いまするが、日本漁船の稼働を大きく制約するものではないと考えております。正確な数を実は持ち合せておりません。  それから、中国側が示した各漁区についての数等は若干の水増しがあり、日本側は真実のものを出しておるという趨勢であります。しかしながらこれは先ほど申しましたように、三つ合せたものが漁場収容能力ではない、また二つの数を対比したものが漁船の勢力を表示する比率ではない、お互いにとりあえずこれだけの数を入れることにおいて全体的な調整がとれるという希望の数を述べたのであります。日本側も、中国側の数が、ふくれているということは認識しておりましたが、あえてこれを指摘いたしませんでした。しかしこれは一カ年間の操業実績によって、ふくれた数であるということはおのずからわかるわけでございますから、方法はあると思っておりますし、そういう点に触れないようにしたわけであります。  中国側漁船が将来どういう傾向で進むかということにつきましては、先ほど申しましたように、昭和二十九年度すでに用意している新造船が四十四隻あって、これは三十年度から稼働すると言っております。相当に積極的であります。またわれわれ漁業者と私的会談の際においても、やはり今後は漁船は少くも百トン・クラスの優秀船を用意すべきであるというふうな意向がうかがわれております。ああした統制経済、計画生産の国でありまするから、私は今後相当に発展するであろうと思います。また向うの文献等によりますと、この漁業を主宰しております地方の水産公司は、相当高率な収益を収めております。こういうような状態でございますから、漸次漸進的に勢力を増強してくると思うのであります。その場合、いつかは日本中国が恒久的対策として漁船の数あるいは全漁獲の数、あるいはもっと科学的な資源維持の方法等を協議すべき時期が来るのではないか、このように考えておるものであります。
  32. 田口長治郎

    ○田口委員 この協定海区における隻数の問題は、私は、シナ東海黄海における拿捕事件の起る前、すなわち朝鮮事変以前の状態における日本漁船の入漁、その数によって考えるべきものであると考えるのでありますが、今の話を承わりますと、拿捕、抑留の危険が出て、自由に操業されない状態と比べて稼働率が多くなった、こういうふうに承わりますが、どっちを標準にして判断されたのでございますか、その点を一つお伺いいたしたい。
  33. 山崎喜之助

    山崎参考人 私が先ほど申しました数は、昭和三十八年ごろの稼動の率をもって申し上げたわけでございます。それから朝鮮戦争前のいわゆる平和な時代を想定して、また平和な時代にはあの六つ区域で、あの期間どのくらい操業したかということにつきましては、確実な資料を持ち合せていないわけでございます。
  34. 田口長治郎

    ○田口委員 ほかの機会におきまして、詳細研究する機会があると思いますから、本日はこの程度にいたしておきます。
  35. 綱島正興

    綱島委員長 それではこの際委員長から参考人の方にちょっとごあいさつを申し上げます。  日中間漁業問題が国民の非常な注視を集めておる中に、いろいろ御努力を賜わりまして成果を上げていただきましたことを感謝いたしますとともに、今日は特に御出席いただきましていろいろその間の事情を委員会で明らかにしていただきましたことをお礼を申し上げます。  午前中はこれにて終ります。午後は二時から開会いたしたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十七分開議
  36. 綱島正興

    綱島委員長 これより休憩前に引き続き会議を開きます。  林野庁予算について説明を求めます。
  37. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 昭和三十年度におきまする林野庁関係の予算案に対しまして、概要を御説明申し上げたいと思います。  まず一般会計につきましては、一般費におきまして二十九年度総額十四億八千八百七十八万五千円でございましたものが、三十年度におきましては一部削減を見まして十四億一千百六十一万円と相なりまして、差引七千七百十七万五千円の減ということに編成いたしております。また公共事業費につきまして、内地関係すなわち農林省所管関係といたしまして、二十九年度におきまして百一億九千七百三万二千円でございましたものが、三十年度におきましては九十四億一千二百四十八万三千円、差引いたしまして七億八千四百六十四万九千円の減と相なっております。さらに北海道開発庁関係の総理府所管で計上いたしておりまする公共事業費、北海道分が二十九年度におきまして六億三百十六万四千円に対しまして、三十年度は五億四千六百四十五万円、差引いたしまして五千六百七十一万四千円の減ということに相なっております。  さらに特別会計でございますが、私どものお預かりしておりまする特別会計の一つの森林火災保険特別会計におきましては、二十九年度におきまして歳入歳出とも三億九千百九十一万円でございましたものを、三十年度におきましては三億三千七百十九万五千円の歳入歳出で編成をいたしておるわけであります。  また同じく特別会計におきまして、国有林野事業特別会計におきましては、二十九年度におきまして補正を加えまして、歳入歳出とも三百五十四億一千万円でございましたものを、三十年度におきましては四百七億八百三十万九千円、差し引きまして五十二億九千八百三十万九千円の増と相なっております。  そこでそれぞれの費目につきまして簡単に御説明を申し上げたいと存じますが、そのうち、特に今年度において多少変更あるいは特殊の計画をいたしたものについて、取り上げて申し上げたいと存ずる次第であります。  まず一般費につきまして申し上げますと、一般行政費に関しましては、庁費等の節約によりまして幾分減少いたしております。  国有林野事業特別会計へ繰り入れの減少につきましては、これは特別会計におきまして直轄治山事業を担当いたしております職員の給与が主体でございますが、国有林におきまして保安林の買い入れをいたしました結果、従来直轄事業をいたしておりましたものが国有林野事業に組みかえになりましたものの減でございます。  保安林整計画の実施は、計画に基いての増でございます。  なお森林計画におきまして三千二百八十一二月四千円を減を見ておりますものは、昨年度におきまして保安林整備に伴います保安林の管理実行計画を別途に積み立てておりましたものを、今度は森林計画の一環として実施することになりまして、森林計画全体において整備することによりまして、一部森林計画の経費を振り向けるというような関係によりまして、減額を見たものがあるのでございますが、その他には変更はございません。  それから五の森林組合及び同連合会育成指導、それと六の再建整備等は、それぞれ計画に基いての実行でございまして、前年度と実行におきましてはほとんどかわりはございません。  七に上っておりまする林業改良普及の関係におきまして、五百九十三万円増額になっておりまするのは、御承知のように林業改良という事業は、農業等と比較いたしまして非常におそく出発いたしました関係上、当初に計画を立てまして、年次計画によって整備するように相なっておったものが、その年の財政事情等からいたしまして、計画が非常に変更になり、またさらに人員の削減等の一律処理にあいまして、非常に窮屈な事業を行って参ったのでありますが、普及活動が非常に活発に行われておりまして、少数の人数をもって相当の成績を上げておるという事実が認められまして、一般削減の今日、特に林業改定普及事業に関しましては、地区普及員の人員増加が認められまして、地区普及員として官名の増加を含めた経費として、三十年度は前年度と比較いたしまして増額を計画することができるように相なった次第でございます。  次に八はほとんど前年度と同様でございます。九、森林病害虫防除に関しまして、一部減少いたしておりますが、これは内容的に相当の変化がございまして、御承知のように森林病害虫の大宗とも申しておりました松食虫の関係は、引き続いて実施いたして参りました防除の効果が相当に現われて参りまして、昨年あたりからだいぶ衰えて参っておりますので、防除費も一部削減も可能と相なっておるのでございます。その他クリタマバチにつきましても、昨年あたりからは天敵の異常な増加によりまして、繁殖率が非常に弱って参りました関係もございまして、これらは一部防除費の必要がなくなって減額いたした次第でございます。反面におきまして、北海道に昨年の九月起りました十五号台風に伴いまする風倒木の虫害防除の関係は、新しい仕事として、大きな問題として取り上げざるを得ない結果に相なったのであります。そこで国有林の防除事業と併行いたしまして、民有林関係の防除を対象といたしまして、新しく約四千万円の増加を見て、合計いたしましてここにお示ししておるような計画となった次第であります。  次に九の有益鳥獣保護利用の関係は、一部節約を見た程度で、これが保護利用の施設の維持管理に支障のない計画をもって予算を編成いたしております。  十に優良種苗普及の経費がございますが、そこに約千七百万円余の減少を見ておりますものは、従来毬果の採取に対しまして補助をいたしておりましたものを、一応今年度はこれを削除するということに相なっておりまして、多少困難な点はあると存じますが、優良種苗育成に対しまして万全の措置を講ずることによりまして、その目的を達するという見通しをもって、減額編成をいたした次第でございます。  十二の林業試験場の運営に関しましては、ごく少額でございますが、増額いたしております。主たる増加千六百万円ばかりを見ておりますものは、昨年度におきまして林業試験場に林産研究施設が完成いたしまして、新しく林産研究の強化をはかるということになってこれが増加を見、節減と総計いたしまして、百七十八万三千円の増と相なっておる次第でございます。  次に公共事業の関係について申し上げたいと存じます。林野関係の公共事業はいずれも治山治水対策として考えられる問題でございまして、特にそのうちで大きく取り上げて参っておりまするのは、まず保安林の整備とこれに伴いまする対策を考えて参っておる次第でございます。三十年度におきましては、特に重要な水源地帯の保安林の水源林造成に対しまして力を用いたいということで計画を進めた次第でございます。予算におきまして、治山事業といたしましては、総額におきまして昨年度に比較いたしますと一億八千八百余万円の減少になっておりまするが、そのおもなるものは、治山事業中の直轄治山事業でございます。これは先刻も申し上げましたように、従来直轄治山を行って参りました民有保安林につきまして、国有林において買い上げまして、国営事業として実施するというものに切りかえて参りました結果、直轄治山事業の減少を見ておる次第でございます。事業総量におきましては、国有林においてこれを実施するということによって減少させない、さらに強化するという方向にあるということを御了承願いたいと思うのであります。従いまして治山事業の補助といたしましては、前年度よりも多少増加をいたしておる次第でございますが、とりわけ水源林造成に関しましては、二十九年度におきまして一万二千三百七十九町歩の水源林造成を計画実施いたしたのでございまするが、三十年度におきましては、倍額以上、二万七千二百町歩を計画いたしまして、今日重要水源地域の保安林地帯におきまする全要水源林造成地域が約四十三万町歩程度あるという調査になっておりまするが、そのうち買い上げを予定いたしておりまするもの、あるいは後刻説明申し上げまするが、公有林野につきまして官行造林を拡張いたしまして、水源林造成を行いたいというもの等を一応除きまして、約二十七万町歩につきましてなるべく早い機会にこれを一応造林を完了いたしたいという計画のもとに、本年度から出発いたすということに相なった次第でございます。それの経費を新しく計上いたしまして、これが約四億九千万円程度組まれておる次第でございます。  次に造林事業でございまするが、造林事業に対しましては、二十九年度におきまして二十九億一千八百八十七万円計上されておりましたが、三十年度は遺憾ながら三十七億四百三十六万円に減少を見ております。差引三億一千四百五十一万円の減と相なっておるのであります。
  38. 綱島正興

    綱島委員長 数字がプリントと違いますね。
  39. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 少し旅費を一つぐらいに固めたりした関係で、端数が違ってくると思います。  対象の面積が、二十九年度におきましては三十一万三千七百三十七町歩というものを計画いたしておりましたものが、三十年度におきましては、二十九万一千町歩ということに相なりまして、ここに二万二千七百三十七町歩の減少ということに相なっておるのでございまするが、先刻申し上げました水源林の造成と官行造林と合せますると、ほぼ総体の造林面積には減少がないという状況に相なっております。半面造林者の非常な御協力によりまして、融資によりまする造林が相当活発に相なって参っておりますので、融資造林等をも含めまして、森林計画に指定いたしておりまする造林計画はぜひとも完全に実施できるように強力に指導をいたして参りたいかように考えておる次第でございます。  次に林道の事業でございまするが、林道事業に対しましては、二十九年度におきまして総額十六億六千八百四十二万円でございましたものが、三十年度におきましては十五億九千八百万円、差引いたしまして七千四十二万円減となっております。これを奥地林道と一般林道とについて見ますると、奥地林道につきましてはほぼ前年度量、あるいは多少の増加を見てこれを計画することができるようになりましたが、一般林道につきましてはやや減少を余儀なくされておるのでありますが、最近の林道の情勢を見ますると、一時よりも相当整備いたして参ったという関係等もありますので、あるいは財界の不況等からいたしまして速急林道を整備するというような希望の減少等も含めまして、森林計画に計画いたしておりまする林道以外については、やや希望が不活発に相なって参っておること等をあわせて、かつは融資によりまする林道の慫慂等をもあわせまして、多少困難な点はございますが、やや計画量の確保をしたいということで最大の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。北海道につきましても、公共事業費につきましては大体以上のような各事業別に整備いたしておる次第でございます。  次に災害復旧の関係を簡単に申し上げますと、災害復旧関係の事業費といたしましては、昨年度におきましては八億七千五百三十二万一千円でございましたものは、本年度におきましては七億三千九十二万四千円、差引いたしまして一億四千四百三十九万七千円の減少となっておりますが、これは主として災害総量の減少が大きな理由でございまして、林野関係におきましては、二十六年度までの災害は全部復旧完了いたしております。二十七年度におきましても、わずか残っておりますものの三分の一を目標としてこれを実施する、二十八年度につきましては総量の六五%、二十九年度につきましては総量の五五%実施を目標として計画をいたした次第でございます。  以上一般費につきまして簡単に御説明を申し上げましたが、次に特別会計に関しまして御説明を申し上げたいと存じます。  森林火災保険の特別会計は非常に規模の小さな特別会計ではございますが、非常に堅実な歩みをいたしておりまして、だんだん森林所有者の理解も深まって参りました。徐々ながらこれが徹底をいたしまして順次その目的を達成いたしておりますので、三十年度において、二十九年度よりも多少歳入歳出の増加を計画いたしましてこれが熱意にこたえたい、かように考えている次第でございます。  次に特別会計の一つであります国有林野事業特別会計でございますが、この特別会計は主として国有林野の産物の計画的な伐採によりまして林野の計画的施業を維持して、一面におきまして林産物の自給増殖をはかるとともに国土保全に役立てたいということで実行いたしておる次第でございます。従いまして伐採量につきましては将来の収獲捕捉を勘案いたしまして、いわゆる調整減伐量を越えないということを原則といたし、ここ数年来その範囲内すなわち年間総伐採量四千六百万石内外を計画対象として進めて参った次第でございますが、三十年度におきましては、御承知のごとく北海道におきまする十五号台風の風害木整理に伴いまして、やむを得ない増伐を余儀なくされるに至ったのであります。もちろんこの増伐にあたりましては、北海道内におきまする生立木の伐採計画は極力これを圧縮いたしまして、さらに内地国有林野につきましても、北海道材の内地輸送に伴って調整を要する地方に関しましては、極力その競合を避けまして、総合的な利用を取り計らうような方針のもとに調整をはかったのでございますが、結果といたしましては、相当伐採童心増加と相なったのでございます。三十年度の総伐採量は五千六百六十余力石と相なった次第でございます。この伐採量を立木処分と直営生産別に計画いたしまして、立木処分によりますものを、用材につきましては千六百二十万石、薪材におきまして千三百十六万三千石、合計いたしまして二千九百三十六万三千石を計画いたし、直営生産の対象資材といたしまして、用材で二千五百二十四万七千石、薪材におきまして二百万七千石、合計二千七百二十五万四千石を計画いたした次第でございます。  次に北海道におきまする風害木の処理に伴いまする予算の関係を簡単に御説明申し上げたいと存じますが、十五号台風によりまする風害木に対しましては緊急にこれを処理する必要がございますので、歳入予算関係といたしまして考えますると、被害木を対象とする立木並びに製品処分によりまする収入は約八十億円余ということに一応算出されるのでありますが、一方先刻申し上げましたように、北海道内における生立木あるいは関係内地国有林におきまする伐採の調整減量等を勘案いたしまして、資金計画によりまする歳入減約二十六億五千万円、これを両者相殺いたしまして、収入増として五十三億五千万日余を計上いたした次第でございます。これに対しまして歳出予算につきましては、この歳入予算を引き当て財源といたしまして、被害木を極力早期にかつ的確に処理をいたすような緊急措置を講じた次第でございます。このために従来北海道におきましては立木処分を主体といたしまして約六割ないし六割五分、直営伐採四割ないし三割五分という実施の割合を、逆に直営伐採を六割程度まで増加するというような措置を講じましたための製品事業量、あるいはこれが急速搬出のための林道事業費、さらには虫害防除、火災予防あるいは跡地の更新のための調査費等を計画いたしまして、反面におきまして、北海道においてはもちろん災害地域以外の計画を極力圧縮し、さらに内地国有林におきましても既定計画量を圧縮、繰り延べする等の措置を講じまして、一応五十三億五千万円の範囲内において緊急措置を計画いたした次第でございます。  なお国有林野事業といたしましては、治山事業におきまして二十九年度を初年度といたします治山治水上の重要な保安林を国有林に買い上げ、かつ事業を実施するということで進めた次第でございます。三十年度におきましても、これが計画に基きまして五万町歩の買い入れを予定いたしておりますが、これに要します経費十五億を計上いたしまして、さらに二十九年度に買い入れました五万二千四百三十一町歩と本年度買い入れます地域とを対象といたしまして治山工事費を十六億七千五百九十二万円計上いたされておる次第でございます。これを合せまして二十七年度からこの会計の負担において実施いたしております国有林の治山工事費を十三億四千九百五十二万八千円計上いたしておるわけでございます。  さらに国有林野整備の仕事でございまするが、国有林野整備臨時措置法によりまする国有林の売り払い及び交換は、二十九年度末をもって一応終了いたしたのでございますが、同法による売り払い代金をもっていたしまする買い入れば、今後もなお行われる次第でございまして、さらに町村合併促進法第十七条の規定によりまする国有林野の売り払い、あわせて不要存置林野の売り払いは引き続いて行われる次第でございます。国有林野整備臨時措置法によりまする売り払い及び交換の実績は、大体売り払いにおきまして総件数二千二百九十六件、面積十三万八千九百四十九町歩を実施いたしまして、交換では百五十一件で、国有林で提供いたしましたものが五千三百四十二町歩、取得いたしましたものが九千七百八町歩ございます。さらに引き続いて行われます町村合併促進法によります売り払いは、従来は国有林野整備臨時措置法の期限内完了を目途といたしまして、町村合併促進法によるものはやや時間のずれを見ておりました。従いまして今日まで実施いたしましたものはわずかに九件、千十五町歩にすぎないのでありまするが、今日まで申請のございましたものが百二件、四万三千八百十七町歩ございますので、今後におきましてはこれを急速に処理いたす見込みでございます。  かようにいたしまして、三十年度におきましては、本事業によりまして民有林の林野整備に伴います買い上げ費を三億、それから売り払い、調査等の経費を三千三百十一万六千円計上いたしておる次第であります。  次に官行造林事業でございまするが、公有林野心自行造林事業は、森林資源の増強施策といたしまして大正九年に法案の制定を見まして発足いたした次第でございますが、爾来所期の目的を達成いたしまして、二十九年度末までに造林完了いたしましたものが、二十八万余町歩に達しております。一応さきの公有林野宮行造林事業の目標でありまする三十万町歩の造林完了につきましては、三十一年度をもって完了することといたして、三十年度分を計画いたしておる次第でございます。さらに既往の成果にかんがみまして、今後拡充強化をいたすことが、刻下の急務であるとされております森林資源の増強対策上非常に重要なことであるというふうに考えまして、三十年度予算におきましては、既成計画の分として六千町歩を計上いたしておりまするほかに、新規計画といたしまして、水源林造成のための目標八万町歩、普通林の公有林目標十五万町歩、合計いたしまして二十三万町歩を新しい対象として本年度から出発いたしたいということで計上いたしておる次第でございます。従いまして初年度三十年度におきましては、水源林対象といたしまする百行造林として、五千町歩、普通林といたしましては既定計画分がございまするので一応明年度の種苗の準備を主体といたしまして、新しい計画は二千五百町歩にとどめた次第でございまするが、これに要しまする経費四億七千二百二十万円を計上いたしておる次第でございます。しかしながらこの四億七千一百三十万円の中には、三億円の種苗事業費を含めておりまするので、予算の配分上造林事業費と一括して施業することが合理的であるという見地から、造林事業費に含めて計上いたしておる次第でございます。従いまして予算面におきましては、この新規事業費といたしましては二億七千二百二十万円となっておりまして、既定の計画を含めまして、官行造林総額八億四千三百九十三万四千円ということで計上いたしておる次第でございます。  まことに簡単でございましたが、大要以上御説明を終ります。
  40. 綱島正興

    綱島委員長 川俣委員
  41. 川俣清音

    ○川俣委員 この際明らかにしていただきたいと思いまするのは、昨日配付になりました官房からの概算要求事項別一覧表と今の説明との間に幾分の相違がありますので、この点を明らかにしておいていただきたい。それから一般会計の分で、前年度限りの経費とありますが、これは何をさすのかということ。次に特別会計の中で、これはプリントの間違いじゃないかと思うので、訂正しておいていただく必要があると思うのです。それは特別会計の第八ページの一般会計への繰り入れが減となっておるが、これは間違いのようですから、この三点について……。
  42. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 総計におきましては相違はないと存じます。各費目ごとの経費におきまして多少の相違がありまするのは、旅費庁費等を一括いたしまして、一般費にしたというような点で、多少相違が出てくるものもあるかと存じます。総額におきましては変りはないわけでございます。前年度限りと申しますのは、当年災で打ち切りになる災害復旧費でございます。
  43. 綱島正興

    綱島委員長 今の質問の、八ページの一般会計への繰り入れというのは、これは三角だけがよけいなものでしょう。
  44. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 国有林の一般会計への繰り入れ……。
  45. 川俣清音

    ○川俣委員 八ページの下から四行目。
  46. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 ああ、これは逆でございます。
  47. 綱島正興

    綱島委員長 質問はありませんか。     ―――――――――――――
  48. 綱島正興

    綱島委員長 それでは水産庁予算の説明を聞くことにいたします。水産庁長官
  49. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 それでは水産庁の本年度の予算の概要につきまして御説明申し上げます。お配りしております資料昭和三十年度概算要求事項別一覧表でございますが、これについて簡単に御説明申し上げます。  本年度の水産庁の予算は、一般会計におきましては二十一億三千三十五万八千円でございます。これに対しまして昨年度の当初の成立予算は二十二億百二万五千円ということに相なっております。その後補正等の関係がございまして、実行予算といたしましては約五千万円ふえまして、二十二億五千四百十六万四千円というのが昨年度の予算でございます。本年度の総額の二十一億三千三十五万八千円につきまして、おもな項目についてこの事項別一覧表に従いまして申し上げたいと思います。  第一は、水産庁の一般行政の関係でござ一いまして、人件費がおもでございます。  第二の漁船乗組員養成事業でございますが、これが九百八十三万九千円でございます。この内容は二種類ございまして、一つは小型船舶職員の養成講習会の補助金と、船長、機関長、通信員等の養成の補助金と三つあるわけございます。これは船舶職員法が漁船にも適用になることになったのでございますが、その当時まだ資格のない、現実に漁船に乗っておる人がおりましたので、それに対しまして臨時の特例を設けまして、資格の緩和をいたしておったわけでございます。この資格の緩和が三十一年の三月末で切れるわけでございます。現在漁船に乗船いたしております者に対しましてその資格を取るように講習会を開く、こういうのがこの予算の内容でございます。  次に第四の小型機船底びき網漁業減船整理査及び指導調整、こういう項目がございます。これは五百四十七万一千円、こういうことになっておりまして、昨年度は一億六千百九十万円ということになっておるわけでございます。これは小型底びき網の沿岸との調整のために整理をいたしておりまして、本年が第五年目に当っておるわけでございます。これは各県とも協議いたしましたし、また中央漁業調整委員会にもお諮りいたしまして、本年度は最終年次といたしまして、残りました陸奥湾関係の小型底びき網の整理をする、こういうことにいたしたわけでございまして、その計画に従いまして本年度は五百四十七万円ということにいたしたわけでございます。その結果といたしまして大体小型底びき綱の整理は、トン数にいたしますと十万三千トンほどございましたのが約三万トンほど減船になりまして七万二千トン程度になる、こういう状態でございます。今後この補助金による整理といたしましては、これで一段落いたしまして、今後は問題といたしまして沿岸漁業に対します組織化あるいはそれによります漁船の大型化というふうなことを進めて参る段階に入るかと思います。  次に同じく第五の中型機船底びき網漁業整理転換、これも昨年度の予算は八千三百七十四万円でございましたが、これにつきましても三十八年二十九年におきまして、百十一隻、三千五百四十トンほどの整理をいたしたわけでございますが、二十九年度と三十年度におきましては北洋漁業が相当大きく想定されますので、この北洋漁業に対しまして出漁する独航船につきましては、中型底びき網漁業の権利を持っておる人に限りまして、これが北洋漁業に出漁する場合におきましては、その権利を放棄するというような形におきまして、整理を推進して参つたわけであります。大体この情勢から申しますと、当初われわれが予定いたしましたものよりもだんだん整理が進捗いたしまして、当初七万五千トン程度の現有勢力でございましたのが、本年におきまして、五万四千トンほどの現有勢力になったわけでございます。これでほぼ転換が完了いたしました。今後は、今後の北洋漁業の拡大に伴いまして、従来と同様の方針でもって中型底びき網の転換をはかって参ればよかろう、こういう考え方でございまして、この補助による整理転換は本年度で打ち切りにいたしたわけでございます。  第六の北海道未開発魚田開発は、三千八百六十五万二千円でございます。昨年度の予算は三千七百六十八万九千円であります。これは御承知のように、北海道におきます未開発地帯に漁民を入植する、内地からの入植でございますが、昨年度におきましては二百二十戸の計画でございましたが、本年度におきましては二百戸で、二十戸ほど戸数は減っております。しかし一方におきまして、昨年度、考えておりませんでした診療用あるしは共同倉庫等の補助を新しくつけ加えましたので、戸数は減りましたが金額的には多少の増加ということに相なったわけでございます。  次に第七の沿岸漁業調整、これは各海区の漁業調整委員会委員の手当の補助と、それから海区の調整委員会に設けております書記の俸給の補助、こういう内容のものでございます。これは形といたしましては農業委員会のものに相当するようなものでございます。これは法律的には漁業法に基いて全額国庫が負担するということになっておるわけでございますが、昨年度補助金等の臨時特例によりましてその三分の二というふうに相なっております。この予算は、やはりその臨時特例が延長される、こういう前提のもとに予算が細まれておるわけでございます。職員は規定の計画に従いまして昨年より三名減っておるということでございますのと、海区の数が、これは従来百七十ございましたが、昨年この海区が合同いたしまして、百三十四に相なりましたので、それに応じた委員等の数をはじいておるわけでございます。これが一億百五百九十万円、これに対しまして昨年度は一億一千九百十三万円、かように相なっております。  それから第九でございますが、これは沿岸及び沖合い漁業の取締りで具体的な内容といたしましては取締船の費用でございます。小型の取締り、沖合い漁業の取締り、瀬戸内海の取締り、有明海の取締りということで、取締船の費用でございまして、事務費でございます。  第十は、新漁場の開発といたしまして、新規項目として、取り上げたわけでございまして、一千二十七万円と相なっております。この考え方は、従来各府県の試験場の指導船、それから水産庁の持っておる試験船等によりまして、先ほど申しました整理転換を要する中型機船の新漁場をいろいろ調査をいたしておったわけであります。これは調査もほぼできまして、大体八カ所程度におきまして適当な新漁場が見つかったわけでございます。しかし距離が沿岸よりも相当遠いわけでございますので、やはりこれに補助をいたしまして、試験操業をせしめる、こういう考え方をもちまして府県の水産試験場の試験船をキャップといたしまして、これに民間船当業船を二隻つけまして、一カ所について三隻の形で、八カ所について試験操業をやらしたい。これに対しまして試験場の船につきましては燃料費の補助、それから民間船につきましては漁具等の補助をいたす、こういう考え方でございます。これは本年度一ぱいでございますが、将来さらに試験を続けて参りますと、相当数、百隻程度の中型底びき網の、沿岸との摩擦が相当多いこの操業を相当緩和し得る。そうして新漁場に吸収し得るのではないかと期待しておるわけでございます。もう一つ内容は、まき網漁業の試験操業でございまして、これはやはり山陰の沖合いにかけまして三カ所、三カ統になりますので、一カ統五隻といたしまして、これは試験場の船をつけませんで、民間船でもって試験操業せしめるということで、それの燃料費を補助する、こういう考え方をいたしておるわけであります。これが新漁場開発といたしまして新しく予算を組んだわけであります。場所は大体山陰及び能登沖それから金華山沖、千島海域沖、それから北海道と金華山沖との間等の沖合いを予定いたしておるわけであります。  第十一は、水産増殖でございまして、水産増殖は本年度の予算外が一億二千三十七万円でございます。これに対しまして昨年度は一億三千四百十三万円であります。この水産増殖には三つの種類がございまして、一つは内水面の関係と、一つは浅海の関係でございます。内水面は放流事業といたしまして、アユ、コイ、フナ等の稚魚を確保するためのいわゆる養魚池の補助、これは三項目になっておりますが、昨年度よりも減っておるわけでございます。一方、浅海増殖につきましては、特に魚礁設置、これは各方面から相当希望もございますし、その効果もございますので、本年度はこれに重点を置きまして予算を幾分ふやしておるわけでございます。浅海増殖といたしましては、ノリ、カキ等のために土地を耕転整地する場合あるいは客土する場合、これがノリ、カキ等、に対する養殖の補助でございまして、浅海のその他のものにつきましては、築いそでございますとか、あるいは魚礁を設置するという方法でもって浅海の方面の増殖をいたしておるわけであります。  第十二は、内水面漁業調整であります。調査となっておりますが、調整の誤まりでございます。これは先ほど申しました沿岸漁業調整と同様に、内水面におきます漁業調整委員会の職員と委員の費用でございます。  次に、北海道の流し網の整理、これは既定計画に基くものでございます。  第十四は、水産業協同組合の指導監督の問題でございまして、これは府県の検査に要する費用の補助でございまして、千五百二十六万円でございます。これの昨年度の関係は千六百二十万円でございますが、落ちましたのは役職員の講習費の補助でございまして、職員関係には変りはございません。  第十五は、漁業協同組合再建整備及び整備促進でございます。これは再建整備法に基きます増資奨励金でございまして、法律の規定に従ってその方針で進めておるわけでございまして、二千五百三十八万円になっております。  第六は、漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法施行で、これは二十八年度の台風災害その他十勝沖、オホーツク海の災害等の利子補給であります。これも法律に伴いまして融資いたしましたものの利子補給を計上いたしておるわけであります。  それから漁船保険の損害補償として、漁船損害補償の特別会計に一般会計からの繰り入れが、一億五千七百一万四十円となっております。これにつきまして特に内容の変った点は、昨年度は実施予算といたしまして、拿捕等の関係で九千四百万円の拿捕保険の損失補償金が入っておったわけでありますが、昨年の秋から拿捕の状態はだんだん減って参っておる状態でございますし、またこれは実態がはっきりして繰り入れを要する場合においては、翌年度において繰り入れをし得ることになっておりますので、この当初の予算におきましては、特殊保険の損害補償金は見込まないことにいたしておるわけでございます。これは昨年度九千四百万円あったわけでございます。それからもう一つ違いました点は、従来搭載漁具の保険について実は実施いたしておらなかったわけでございますが、本年度から、漁船が沈没して搭載漁具が全損いたしました場合におきましては、これをやはり保険事故の対象として取り上げることにいたしたいということで、この保険の繰り入れの中に三百万円程度の負担金、これは保険料の差額負担金でございますが、それを見たわけであります。他は保険の推定に基いて一般会計から繰り入れるべきものを繰り入れた、こういう内容のものでございます。  それから輸出水産の振興、水産物取引改善、これは事務費でございますので……。
  50. 綱島正興

    綱島委員長 どういうことをするのですか、水産の振興とは。
  51. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 輸出水産の振興は、輸出水産業の振興に関する法律というのがありますが、それに基きます輸出水産業振興審議会の開催の費用であります。  それから水産物取引改善、これは卸売市場の指導監督の旅費等の庁費であ  ります。  第二十の漁業条約実施並びに漁業協定交渉、これはいろいろな漁業の条約あるいは交渉等、また国際会議等がございますので、その準備をいたしますために国内でいろいろ打ち合せをするための事務費的な費用でございます。  第二十一のオットセイ調査並びに指導監督、これは主として調査船費でございます。  第二十二の捕鯨業指導取締並びに調査、これは日米加の漁業条約に基きまする調査でございます。  第二十三の北洋漁業に関する指導監督並びに取締、これにつきましてはこのたび北洋漁業につきまして船団も増加いたしましたし、また西の方面にも参るということで昨年度より取締船を一隻これは用船でございますが、一隻増加するということの内容になっておりまして、全体といたしまして官船と五隻の取締船でもって北洋漁業の取締に当るわけでございます。昨年度よりその取締船を一隻増加したということが昨年度との違いでございます。  第二十四は、遠洋漁業の取締指導監督並びに新漁場開発、こういうことになっておりますが、これには二つの内容がございます。一つ東海黄海におきます以西の漁場の取締り、それから太平洋におきまするカツオ、マグロの取締の船費でございます。これは昨年度より一隻減っただけでございます。この取締船費は、ここにございますように、取締り関係は一億八千四百四十万円でありまして、その余は新漁場の開発のための調査の費用でございます。この新漁場の開発につきましては、主としてカツオ、マグロの漁場対象といたしておりますので、漁場としては、昨年ごく部分的に調査をいたしましたが、たとえば普通の場合におきますると、百本のはえなわに対しまして五、六本の魚がかかるのでありますが、インド洋においては、昨年の調査からいたしましても三十三本もかかるというような非常に有望な漁場でございます。
  52. 綱島正興

    綱島委員長 何でかかるのですか。
  53. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 百本のはえなわに対しまして、大体かかる率が一般漁場よりは非常に多いわけであります。これに対しまして、恒久的にこの漁場を調査いたしまして、昨年度は一部その調査に基きまして、当業船もそちらの方に移動しておりますが、これを大々的に開発いたしまして、これはわれわれの希望でございますが、将来はこれを直軽出の方向に持っていく、あるいはまた南方に対する軽出に持っていきたい、かような考えをもちまして、新しく調査船を五百トンのものを一漁建造する、こういう計画を予算に盛っておるわけでございます。同様太平注の地域におきましても、南太平洋におきましては、現在南米地方からの漁場が、だんだん南米及びアメリカ方面からもそちらの方に進出いたしておりまするが、月本の側におきましても、現在の漁場よりもだんだんそちらの方に進出する傾向がございまして、これは将来の漁場の競合も考えられまするので、われわれといたしましては先方が手をつけないうちに早くこれの開発調査をいたしておきたい、こういう考え方でございまして、調査船を作りましてこの君平洋、インド洋等の調査に当りたいということで、新漁場開発費といたしまして新規に、昨年度は取締りだけでございましたので一億でございましたが、三億七千九百万円の予算を計上いたしたわけでございます。  それからその次が、アラフラ海のシロチョウ貝の採取の指導取締。これはアラフラ海のいわゆる大陸だなの問題でございまして、シロチョウ貝の採取の問題につきまして、豪州側との間におきまして問題があるわけでございまして、国際司法裁判所に提訴する運びになっておるわけであります。
  54. 綱島正興

    綱島委員長 シロチョウ貝というのは何ですか。
  55. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 これは貝ボタンのボタン原料とかいうふうなものでございまして、製品のボタン等は大部分がアメリカ市場に対して輸出されておるわけでございます。これは今豪州側と、漁区及び採取量等について暫定的な取りきめをして出漁をいたしておるわけでありますが、将来の問題として、国際司法裁判所におきまする提訴等の問題もございますので、その協定を守ると同時に、調査をいたす必要がございますので、これもその船の費用として計上をいたしておるわけでございます。  それから海外底びき漁場開発、三千四十万円。これも新漁場の開発調査といたしまして、南米方面の調査を行いたい。底びき網漁業といたしましては、日本近海は御承知のように大陸だながございませんで、底びき網に適しませんが、大陸だなの非常に距離の多い南米等に相当有望な漁場が予想されますので、これを調査いたしたいというつもりで、現在水産庁で所有いたしておりまする官船を十月ごろから先方に派遣いたしまして、調査をいたしたい。
  56. 綱島正興

    綱島委員長 大陸だなというのは何のことですか。
  57. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 大陸だなというのは陸地と海との続きの関係でございまして、底びきは大体二百ひろ以上の深いところでないとできないわけでございます。これが底びきの漁場になるわけでございます。この陸地とのつながりが狭いか広いかということが、底びきの網の漁場の適否だということになっております。  第三十七の、漁船の管理及び改善でございますが、八百四十四万六千円でございます。これで昨年度と違っておりまするのは、大体漁船の登録でございますとか、依頼検査でございますとか、あるいは沿岸漁船の船大工の講習会というようなものがその内容になっておるわけでございまして、これは府県に対する補助でございますが、異なっておりますのは昨年度超短波の施設ということも補助いたしておりましたのですが、これは三カ年以上続けておりまして、だいぶん普及いたしておりまするので、本年度は一応これを計上いたさなかったわけでございます。  第二十八は漁船研究所、これは漁船の研究のために研究所を設けておりまするが、これの研究室の職員あるいは事務費等がございます。  第二十九のKというのは間違いで、水産業基礎調査でございます。これは水産業の経済的な調査をいたしたいということで、昨年度から続いてやっておるわけでございます。  第三十のインド太平洋水産理事会、これは本年の九月の末に、インド太平洋で、先般の四月に林野会議を開きましたが、それと同様な会議が水産につきまして開催されるわけでありまして、日本が開催地になっておりますので、その費用が、ささいでございますが掲げてあるわけでございます。会場費等は外務省に計上される、こういう建前に相なっております。  第三十一の水産研究管理運営並びに水産資源開発、これは内容が対馬暖流を調査しまして、これもやはり新漁場の開発と同様の目的を持ちまして、しかも対馬暖流は関係府県が相当多数に上っておりますので、ばらばらの各府県の試験調査ではその目的を達しませんので、水産庁が試験調査の設計を立てまして、その設計に基きまして、関係府県の水産試験場の協力を得まして、対馬暖流の調査ープランクトンその他各種の調査、海流調査をいたしておるわけでございます。それが内容一つと、それから都道府県水産試験場の調査費に対する補助金、それから漁況、海況の予報に対する補助金、これを三千九百八十九万円として計上しておるわけでございます。  第三十二は冷害対策に関する海洋調査でございまして、千二百四十万円を計上しております。
  58. 綱島正興

    綱島委員長 冷害対策とはどういうことですか。
  59. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 これは昨年度でございましたか、一昨年冷害の問題がございまして、これが海流の変化と非常に関係があるということで、海流の変化を調査いたしまして、その調査に基きまして海流変化によりまする冷害等の影響の調査、影響と申しますか冷害等の予報の調査に資する、こういう意味におきまして海流、水温の変化などを調査する、こういうことであります。  第三十三、国際漁業の生物調査で千七百万円でございますが、日米加条約に基きまする生物の調査をやる、その調査船の費用でございます。  最後は水産業技術改良普及事業千六百三十五万円でございますが、これは水産の技術改良普及事業といたしまして、水産の場合におきましては農業と異なりまして、一般の改良普及員でございませんで、技術普及として県に普及員を置いてございますが、その技術員の補助とそれからこの漁業の場合におきましては、その地帯におきまする漁法あるいは漁場関係あるいはまた習慣的な網の関係等もございまして、画一的な指導ということが非常に困難でございますので、その地帯におきまする漁船あるいは漁法等の、いわゆる指導者的な人を指導に先立てまして、そうして先達漁船としてそこに補助をいたしまして、一般漁船がそれについて漁撈することによって、技術の改良普及をはかる、こういう考え方をいたしておりますので、その先達漁船の補助等もこれに計上いたしております。そのほかノリ、カキの技術改良の補助、それから水産機械、特に無電あるいは魚探その他の新しい機械に対する取り扱いを講習するという意味の費用に対して、ささいでございますが補助金を計上しております。  第三十六、三十七、三十八、三十九、これは水産研究所、それから真珠研究所、水産講習所、それから北海道の鮭鱒の孵化場の費用でございます。  以上合計いたしまして先ほど申し上げましたように、本年度の予算に要求しておりますのが、二十一億三千三十五万八千円でございまして、前年度の実行予算は二十二億五千万円、こういうことになっておるわけでございます。  これが一般会計におきまする水産庁の本年度予算の概略でございますが、なお公共事業費といたしまして漁港の関係がございます。  お手元に農林省関係公共事業費内訳表がございますが、それの一十六ページでございます。公共事業のうちの漁港関係でございますが、総額といたしましては三十一億八千九百十四万四千円でございまして、二十九年度の実行予算は三四億五千四十八万七千円ということになっておりますが、成立予算の場合でございますと三十二億二千三百八十一万円ということになっております。この実行予算がふえましたのは災害の関係でございます。そこでそのうち内地と北海道について申し上げますと、内地の漁港修築費につきましては十二億五千五十万円でございます。昨年度の実行予算は十二億四千三百四十一万円でございました。これは昨年度の継続二百六十七港を対象として計上しているわけであります。そのほかに災害関連事業としまして地盤変動対策事業費が昨年は六千百四十万円ございましたが、この事業は一応完了いたしましたので、本年は六千百四十万円を地盤変動対策事業費としては計上をいたしておりません。漁港施設の災害復旧につきましては十三億三千六百三十七万八千円を内地と北海道と合せまして災害費として計上いたしているわけであります。昨年度の実行予算といたしましては十五億二千四百四十八万五千円ということになっているわけであります。昨年度のこの十五億三千四百万円の場合におきましては、その当年災、二十九年災害も四億五千万円含まれているわけであります。十三億二千六百万円にも二十九年災までが含まれておりまして、当年災は含まれておらないのであります。北海道につきましては内地の漁港施設費に相当いたしますものが五億八千八百五十万円でありまして、このうち直轄が三億三千八百万円、補助が二億五千五十万円となっているわけであります。合計いたしまして修築事業費が北海道と内地と合せますと十八億三千九百万円になるわけであります。災害は十三億二千六百万円であります。  以上水産庁の予算について簡単に御説明申し上げました。
  60. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと私どもしろうとに意味がわからないのを五つばかりお尋ねいたします。  細つづりの四の四十七ページの小型機船底びき網漁船整理転換補助費というもののうちあなたの説明沿岸漁民の組織化、大型化をやる、こういう説明をされたのですが、どういう意味ですか。
  61. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 それはいわゆる補助金による整理は一応本年度においてこれでもって一段落するわけであります。ただその後におきまする問題として――これは沿岸漁業との摩擦のために小型底びき綱漁船を補助金をもって整理したわけであります。この整理が一段落いたしましたが、沿岸漁業といたしまして別個に予算とは関係なく大型化その他の措置をとらなければならない、こういう趣旨のことを申し上げたのであります。
  62. 綱島正興

    綱島委員長 それは大型化するについて融資の道か何か作っておりますか。
  63. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 大型化につきましては昨年度におきまして漁船の公庫融資計画が十五億でありまして、実績が実は三十億になっているわけであります。本年度は二十億になっております。従来の実績を見ますると、沿岸漁業については公庫融資からは行っておらない。
  64. 綱島正興

    綱島委員長 聞くところはそこなんです。それはどうかするようにしておりますか。大型化と口だけで言ったって沿岸漁民が配給米もとれないようにしておってはしようがないから、何か融資の道を講じておりますか。
  65. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 これは公庫融資と関連いたしまして、やはり沿岸漁業組合の自営等の場合においてはそういう方向に指導していったらどうか……。
  66. 綱島正興

    綱島委員長 それからもう一点、北洋漁業に転換するのが七万五千トンあったやつが四千トン、これは何だかちっともわからない。北洋漁業に中型機船底びき網漁業整理転換というのは法律か何かあるのですか。
  67. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 大体中型底びき網というのは以東底びき網と申しておりますが、これにつきましては補助金を与えまして整理をいたしますのと、それから北洋漁業が再開されましてから北洋漁、業に対して――これは行政の指導方針でありますが、取り扱いとしてこの権利を持ったものだけが北洋漁業の進出を認める。そのかわりにこの権利を放棄して内地を荒らすような中型の漁業をやめてもらいたい、こういうことで整理をするということであります。
  68. 綱島正興

    綱島委員長 それから四十九ページのまき網漁業とありますが、まき網というのと、陳情書などできんちゃく網というのが出ておる。それから片手まわしというのがあるが、これはどういう意味ですか。
  69. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 まき網ときんちゃく網は、網の形としては同じものでございます。ただ大型の場合を大体まき網と言い、小型の場合をきんちゃく綱と言っているのが通例のようであります。
  70. 田口長治郎

    ○田口委員 一そうの船で巻くのを片手まわしというのです。
  71. 綱島正興

    綱島委員長 もろ手まわしというのは両方でやるものですか。
  72. 田口長治郎

    ○田口委員 そうです。
  73. 綱島正興

    綱島委員長 それから放流事業補助費という中に、アユだとかフナだとかおっしゃったが、ウナギはないのですか。
  74. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 放流事業の中では二つございまして、小アユを県が買いまして、それを放流するのに対して補助するのが放流の方でございます。そのほかの淡水魚につきましては、種を取る施設つまり養魚池になりますが、この施設に対する補助費。アユだけは種を取るわけにいかないものですから、それでその稚魚を放流するということにしております。その他のものにつきましては種を取る養魚池を補助する、こういうことになっております。
  75. 綱島正興

    綱島委員長 それで大体わかりました。  川俣清音君。
  76. 川俣清音

    ○川俣委員 この際政府要望しておきます。  先般も総体のときに要望しておいたのですが、一体今度の政府の予算の出し方が悪い。一つは災害のために補正をした。ところが災害がなくなったからというので、それを落した。それでは比較検討にならない。そこで二十九年度の当初予算との比較を明らかにしていただきたい。その資料をあらためて御提出願いたい。これは水産庁ばかりではないのですが、委員長から……。
  77. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 官房から連絡がございましたので、今用意をいたしております。
  78. 川俣清音

    ○川俣委員 それからちょっとわからぬところをお尋ねいたしますが、十二の内水面漁業調整、これが二十九年度の実施予算が千百三十五万四千円、これに見合うものが漁業調整費補助金なのであります。ところがその見合いの金としては、三十年度は千百二十七万九千円になって、予算要求の方は千百三十一万三千円になっておる。これはどういうわけですか。
  79. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 この補助金として掲げてあります千百二十七万九千円と千百三十一万二千円との差額は本庁の事務費であります。
  80. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると二十九年度分には事務費はなかったのですか。
  81. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 二十九年度の千百三十五万四千円の中にも事務費が入っております。本年度におきまする千百三十一万二千円、それと補助費として組んでおります千百二十七万九千円、その差額の三五三千円ほどが事務費として本庁費になっております。
  82. 川俣清音

    ○川俣委員 そういう予算の組み方はおかしいじゃありませんか。二十九年度は職員設置費補助金として六百十八万八千円、内水面漁場管理費補助金として五百十六万六千円、合せて千百三十五万四千円、これには事務費が入っていない。今度は入れるというのはどういうわけであるか。間違いなのか、入れたのか、その点はっきりして下さい。
  83. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ちょっとわからぬようですから、あとで調べて報告します。
  84. 綱島正興

    綱島委員長 本日はこれにて散会いたします。明日は定刻十時より開会いたします。     午後四時七分散会