運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-25 第22回国会 衆議院 内閣委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十五日(月曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君       大村 清一君    長井  源君       林  唯義君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    粟山  博君       大坪 保雄君    小金 義照君       田中 正巳君    田村  元君       福井 順一君    船田  中君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    下川儀太郎君       鈴木 義男君    田原 春次君       中村 高一君    矢尾喜三郎君  出席政府委員         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君  出席公述人         元陸軍大臣   下村  定君         軍事評論家   大井  篤君         成蹊大学教授  佐藤  功君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  国防会議構成等に関する法律案について     —————————————
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより国防会議構成等に関する法律案について公聴会を開会いたします。  開会に当りまして公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず、貴重なるお時間をさいて御出席いただき、厚く御礼申し上げます。本委員会はすでに先般来本案の審議を進めておりますが、その重要性にかんがみ、本日は特に広く学識経験者の御出席をわずらわし、それぞれの立場、御経験からする国防会議構成等について、忌憚なき御意見なり御批判なりを承わることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考になるものと存ずる次第であります。  それではこれより逐次御意見を承わることにいたしますが、一応全部の御意見を伺った上で委員各位より公述人各位に対する質疑を行うことといたします。  なおこの際念のため公述人各位に申し上げますが、衆議院規則によりまして、各位の御発言委員長の許可を得ること、またその発言の内容は意見を聞こうとする問題外にわたらないこと、公述人から委員に対しての質疑をしてはならないことになっておりますので、お含みおきを願います。なお御意見は御一人当り二十分程度にお願いいたします。それでは下村定君。
  3. 下村定

    下村公述人 私のような老兵がかような席で皆様にお話申し上げることは、まことに光栄の至りに存じます。時間の関係もありますので、まず順序としまして、私の考えております国防会議というものの必要性ということについて、ごく簡単に二、三カ条申し上げます。続いて、ただいま国会に出ております法律案のこれまた若干項につきまして、私の意見を申し上げたいと存じます。  最初必要性でありますが、これももう皆様の耳にはたびたび入っていることと思いますからなるべく省略いたします。  その第一に申し上げますことは、国防会議現代の複雑な国防問題の情勢に即応させるということであります。申すまでもなく、日本におきましては、内閣総理大臣自衛部隊指揮統率最高責任者でありますが、現在の非常に複雑な国防の諸問題は、なかなか一人の力をもって裁決し得ることのできないのはもちろんのこと、かりに主任庁主任になりまして起案をしてほかの庁がこれに補足協力するという程度でもなかなかできないと思う。ことに問題の性質上緊急を要することもありますから、どうしてもこれは何らかの手段をとらなければならぬ。現に各諸大国におきましても、近代、特に第二次大戦以後におきましては、ほとんど一様に、名前や機能は多小違いますけれども、その国の元首または総理大臣のもとに権威ある国防審議機関を作っておるのであります。ほとんどこのことは共通の原則になっております。  第二に申しますことは、いわゆる文民優位性を現実に実行すること、それから国防の諸問題が片寄つた政策、あるいは一時の政変によって左右せられないというこの点であります。今先に申しました国防問題の複雑なことにかんがみましても、ことにやかましく言われておりますところの政治軍事を支配するというこの大原則を、しっかり遂行するという点につきましては、どうしても国防会議というものが必要と考えるのであります。皆様とくと御承知のように、日本憲法下におきましては、総理大臣の権能が相当に広く、何とかこれを適当に抑制する必要もあります。また政変その他によって国防問題の一貫性がくずれるというようなことがあっても困るのであります。こういう意味合いからして、私が第二として申し上げました意見は、単に国防会議が必要であるということのみならず、その国防会議構成そのものが、ただいま申しました目的に沿うように、いわばわが国現在の独得の着想をもって作らなければならぬと考えております。  第三に申し上げますことは、すみやかにわが日本国防方式ないし防衛の諸計画自主性を確立する必要であります。御承知のように、現在の自衛隊は、その発足当時の情勢によりましてやむを得ない点もあったでありますが、今においても米国に対して従属的な色彩を濃厚に持っております。また一方におきましては、日本当局防衛に対する態度が不得要領でありますために、米国あたり日本に対して当然なすべき積極的の援助をもちゅうちょするという態度を認めるのであります。かような好ましからぬ状態からすみやかに脱却しますことは、日本の独立を完成するためにも、また米国と適切なる共同防衛の実をあげるためにも、きわめて必要なのでありまして、私の考えをもってしますれば、当局はこの際国防問題を単に防衛庁に依存する態度を一擲をしまして、すみやかに国防審議機関を作って、これによってわが国の国情に即する、また自主的なしっかりした計画を立てる必要があろうと思うのであります。以上三つのことが私が国防会議を設置する必要として考えておることでありますし、同時に、もし国防会議が設置せられるならば、ただいま申し上げましたようなことが、そのおもなる目的でなければならぬと存ずる次第であります。  次には法律案そのものに移ります。その中で今日私申し上げますことは、第四条の中の第一項の第六号、すなわち国務大臣以外の議員に関する件、次は第八条、関係大臣会議出席に関する件、最後に第十条の会議事務局に関する件、これだけを取り出して意見を申したいと思います。  まず第四条、民間から選出される議員につきましては、新聞等を見ますと、何か特別の事情で少し動きがあったように承わっておりますが、本日私はそれに関係なく全く白紙の態度でかねて考えておりますことを率直に申し上げます。その点は御了承いただきたいと思います。私はこの第四条の第一項第六号、すなわち民間から適任な方を簡抜をして議員に加えるということには賛成であります。その理由といたしましては、先ほど私があげました国防会議必要性三カ条、このいずれから見ましても必要と存ずる次第でありますが、特にわが国現状におきましては、もしこの民間議員の参加ということが法律から削除されましたならば、国防会議を今日設置する目的の大半は没却されるのじゃないかということを私はひそかに憂えております。ただいま私は日本現状においてということを申しましたが、その現状ということの第一は、国の制度の問題であります。さらに申しますと、先ほど申しましたように、日本の現在の憲法下におきまして閣僚だけで国防会議を組織いたしますと、ややもすれば国防施策方針が片寄ったものになる不安があります。また政変その他一時の政局の変動によりまして一貫性を失う、常続性を失うという憂いもあると思う。でありますから、将来憲法などが改正されまして、こういう不安が除かれますまでは、これはやむを得ず民間のしかるべき方を議員に加えて、そうして超党派的の見地から、また一身上の進退に関係なしに縦横無尽にこの識見会議の上に発揮していただく必要があるだろうと思うのであります。  次に現状と申しましたその第二であります。これは人の問題であります。この民間から議員を任用するということについて反対される方の議論の中には、よく外国にそういう例はないんだということをおっしゃる方がだんだんあります。それはその通り、ありません。がそれだけを見て民間から議員を出すということに反対をするのは、私をして率直に申さしめれば、たての半面、議論としては完全でないと思います。私は実はこの敗戦後外国に行ったこともありません。また浪人をしておりますので、いろいろな研究調査もはなはだ不十分でお恥かしいのであります。しかしながら自分のことを申してはなはだ恐れ入りますが、戦前におきましては、若いころに前後四年にわたりまして、第一回には第一次大戦後における連合国大使会議専門員として、また続いてはジュネーヴにおける国際軍縮会議帝国全権の随員といたしまして軍人といたしましては比較的多く、欧米諸外国政治家やないし有数な外交官の、軍事関係ある国際会議における会議統裁ぶりとかあるいは質問応答ないしは個人の意見というものを実際に聞く機会を得たのであります。そのころから私はひそかにこれはだいぶ程度は高いというて実はうらやましく存じておりました。今度の戦後におきましては、続いてあるいは文書により、あるいは外国視察に行かれた先輩や友人の方の視察談を総合してみますと、私の観測はやはり当っておるんじゃないかと思います。ことに偶然ではありますが、この七月十三日にフランス国防参謀長ギヨーム大将が三日ばかり日本に滞在せられました。私は偶然ある会合で会いましたので、直ちにこの問題を確かめてみたのであります。御承知のように、軍人は集まりますと、とかく政治家や何かの悪口を言いたがる、ギヨーム大将はそのとき悪口を言いませんでした。後に彼の言ったことを申しますが、私はギヨーム大将言葉をもってしましても、諸外国政治家、ことに直接国防関係ある仕事をしておられる当局者軍事常識というものは、相当に高いもんだということを感知したのであります。むろん私は先ほど言いましたように、軍事以外のことはわからぬ一老兵であります。日本の国内のこともそれ以外のことはさっぱりわからぬのでありますが、最近この三、四年間国会におきまする歴代政府のおえらい方の御答弁をつぶさに拝聴しておりますと、どうも私ども見ましてもはなはだ心細い。これで果して国防方針を作るとか、あるいは日本で最も必要な文権優位の確立というようなことができるだろうかというとひそかに考えておる次第であります。このことはむしろ皆様の方が私よりもお感じになっておると思うので、これ以上は申しません。そこでかりに私の観察が誤ってないものとしまして、諸外国日本との間にどうしてこんなに開きができたかというようなことを考えてみますと、これは私どもにも大きな責任がある。すなわち過去におきまして軍は国防というものを壟断しまして、必要以上に軍事秘密にしたのであります。これはまことによろしくないことでありました。しかしそれはそれといたしまして、私はここにはなはだ僭越な申し分でありますけれども、今後日本政治家諸公におかれましては、もっともっと今よりも深刻に軍事問題というものを御研究いただきまして、軍事専門の者の知能に対してはより高い識見実力を持って、適切に軍事上の意見をコントロールし、また利用のできるものかあったらこれを活用するというふうに、ぜひやっていただきたいのです。これこそほんとう文権優位でありまして、私はその日の来ることを一日も早くあるように心から念願しております。そういうふうになれば、それこそ国防会議閣外から人を呼んでくるような必要はないのであります。こういうふうに考えます。  次にやはり反対論の一部としまして、内閣責任制という理論から、閣外の者を入れるのは適当でないという御意見があり、相当根拠があるようでありますが、私は一方におきまして責任ある法律専門家の口から必ずしもそうじゃない、諮問機関であり、また民間から出る議員が公務員としての地位を持つならば、必ずしも内閣責任制原則をくつがえすものではない、憲法に違反するとは言えないということを承わっております。私はそのいずれが正しいか判断をする力はありませんけれども、もしそういう解釈ができるとしたならば、何も民間議員を入れないといって戸を閉める必要はないと思う、もしそういう法律論、しかも解釈のしようによってはそうでもないものをたてにとりまして、かりに入れるべきものを入れないでおくというと、私は非常な危険が生ずると思う。皮肉な言い万でありますが、議員諸公——議員というのは皆様のことではありません、国防会議議員であります。国防会議議員諸公が何かむずかしい問題が起ったときに、苦しまぎれに暮夜ひそかに自分の縁故のある者、その他自分の都合のいい専門家を連れてきまして、こっそり意見を聞く、私はこれほど危険なことはないと思う。そんなことをやるくらいならば、権威のある者をちゃんと公式にその地位を与え、責任を持たせて、堂々と国防会議の席上で意見を言わせて、それを統制したたらばよい。うっかりするとそんなことになる。うっかりするとじゃない、私はこれについて過去数年間あああんたことをしてくれちゃ困るなということを経験した。これは単なる参考に申し上げます。  それからまた説をなすものは、国防に関する問題といったって、それは内閣国会に対して責任を持ち、世論に押されてやることなんだ、世論を基礎としてやることなんだ。何も国民の一部のほんの少数の者が内閣のお手伝いにいく必要はないという方もあります。それも一応ごもっともであります。しかしこれは私に言わせますと、原則というものと、仕事のやり方というものを混同しておる。原則はそれに違いありません。しかし世論、々々といったって、世論から国防計画が具体的に生まれるものではない、国会に対して責任を負う、その通りであります。議員提案法律というものもあります。ありますけれども、実際この国防問題のような継続した、しかも非常に機微な問題を、常に議員立法によることはむろんできない。だからいやしくも現在の日本情勢におきましては、やはり閣僚だけでは国防会議としては物足りない。  それからまたある方は民間の者を入れると秘密が漏れやすいとおっしゃる。これも理屈はあります。しかしその反対も言える。私はむしろ権威のある人を責任を持たせて会議に出しておけば、そういうことはかえって少くなると思う。そういう不注意は少くなる。先ほど申しましたように、自分がわからぬので、こっそり局外の人を連れてきてやるというようなことはかえって少い。ある問題について造詣の浅い大臣方が、かえってそういう機会が多いのじゃないかと思う。少々皮肉でありますが、そういう感じも起る。  そこで最後に私は民間から選出をする議員の人選ということにつきまして、一言したいと思います。  この方々は申すまでもなく視野の広い、しかも国防に直接つながりのある問題、すなわち軍事とか科学、技術、産業、経済、あるいは国際問題、外交といったような、それぞれのいずれかの問題について一流の権威者であることが必要であろうかと思うのでございます。そこで軍事について申しますと、私のような軍人の古手を国防会議に加えるかどうか、ああいう者を加えちゃいけないという議論が盛んに出ております。ごもっとも千万だ。いやしくも軍事上のりっぱな識見判断力を持った公正な人物であれば、何も古い軍人なんかを引っぱり出す必要はない。古い軍人以外の方をその議員に選出するのが一番けっこうだと思うのであります。ただここにちょっとつけ加えて申しますが、どうも今ごろでも古い軍人といいますと何かしら危険人物あるいは前科者のように心得て、これを千編一律に排撃をする、あるいは敗残の将は兵を語る資格なしというわけで、せっかく戦後苦しい思いをして軍事研究を続けておる若い有能な人も十ぱ一からげに排斥する傾向があるようであります。これは私はどうもふに落ちない。人権尊重の上からいいましても、人物の登用という意味からいいましても、純良な民心に与える影響という点から見ても、こういう時代錯誤はすみやかに取り去るべきじゃないかと考えるものであります。以上が第四条の第一項第六号民間議員に関する私の意見であります。  次は第八条関係大臣等出席の項であります。ここで私が申し上げたいことは、防衛庁統合幕僚会議議長というものがあります。あれは常に会議に出すべきものだと思うのであります。その理由を簡単に申しますと、国防という以上、ほとんどすべての場合に多かれ少かれ軍事事項関係のないことはまずなかろうと思います。でありますから、この会議に臨むに当って文官でありますところの国防大臣、今ならば防衛庁長官が、その軍事幕僚長である統合幕僚会議議長を帯同して会議出席をして、必要があったときに即座に統合幕僚会議議長をしてその軍事専門意見を述べさせるということはきわめて自然であり、有益であり、必要であると思います。これは国防会議民間議員を入れるということよりももっと重要であると思う。統合幕僚会議議長というものは軍事専門に関しては政府最高責任者である、それが自分の職権内のことについて国防会議意見を言うことはきわめて自然なことである、ほかの運輸大臣あるいは農林大臣という方が臨時に出て意見を言われるのと同一に取り扱うべきものではないと私は信じております。現に各国の例を見ましても、アメリカ以外にはすべて、たとえば参謀総長のような最高責任地位にある軍人会議構成員にいたしております。アメリカはやっておりませんけれども、承わるところによりますと、現在の大統領は常に統合参謀本部議長を手元に呼んで意見を聞き、また国家安全保障会議にも出席をさせておるということであります。古い話でありますが、前々大統領のルーズヴェルト氏も、海軍リー提督補佐役として、国内的にもまた国際的にも重要な会議には常に帯同いたしたということを聞いております。これらは多少筋は違いますけれども、軍事政治とのつながりを密にするという考慮の現われであろうと思うのであります。  そこで日本法律案を見ますと、議長である総理大臣が必要と認めたときには統合幕僚会議議長臨時に呼び出して意見を述べさせることができると書いてあります。一応それで道はあいておるのでありますけれども、果してそれで遺漏なく行くでありましようか。国防に関する問題は緊急を要することが多いのであります。意見を具申する側から申しますと、常に会議出席をしてその経過を知り、問題の要点を握っておればこそ、適時に適切な説明もでき、意見具申もできるのであります。これが臨時に天下りに呼び出されて突然大事な問題を聞かれたって、いかに練達の士でも思う通りにはいかない。思う通りにいかないということは、そこに何らかの重大なる欠陥を生ずる憂いがあると思うのであります。  そこでまた少し横道に入りますが、先ほど申しましたフランス国防参謀長ギョーム大将の私に答えましたことを簡単に申します。私は将軍に対して、まずフランス政府諸公に対する彼の忌憚なき観察を聞き、また国防会議等情勢について、ごく短時間でありますけれども、意見を聞いたのであります。その答えは要約すると次の通りであります。現在自分——自分というのはギョーム大将自分の接しておる政府の高官は、文民——フランス文民と申しません、文権、権であります、文権優位を実行するのに適任である、また実際において実力上その権限を持っておる、同時に絶えずわれわれの意見を必要とし、またこれを求めておるのである、こういうことを第一に申しました。第二には、国防会議のようなものは絶えずこれに接触しておらなければ、大事なときに時期を失するのみならず、非常にむだが多い、私は自分旅行等で出られぬときでも、一週間に一ぺんは必ず各軍の——各軍というのは陸海です、陸海軍参謀総長を集めて会議をして、そして国防会議に対する意見具申の案を作って、自分がおらなくても出すようにしておる、しかし私は議決には参加しない、こういうことを申しました。むろん外国人たる私に対して申したことでありますから、多少の掛値もありましょうが、大体においてこれはうまくいっておるなという感じを受けました。御承知のように、フランスというところは戦争にはいつもパッとしないところでありますけれども、この文権優位という点については日本よりまあ先輩だなと思いまして、これも一応うらやましく感じた次第であります。  これを要しますのに、統合幕僚会議議長を常に国防会議に出すということは、私は軍事専門見地からすこぶる重要だと思っております。会議ほんとう議員として議決に参加させるということについては、なお研究を要すると思いますけれども、少くも常時出席をさせるというふうに、できましたらば政府案の御修正を願いたいと存ずる次第であります。  最後に第十条の国防会議事務局について簡単に申します。私は政府案規定、すなわち内閣国防会議事務局を常設するというこの規定には賛成であります。続いて起る問題はその機能でありましょうが、これはまだそこまでいっておらないようであります。私は私案は申し上げません。ただしこれは庶務的にただ会議のおぜん立てをするというだけでは役に立たぬと思うのであります。またこれが防衛庁に属するというようなことはこれまた弊害があると思います。私の考えをもってしますれば、その事務局のおもなる職員は、これは兼任でなしに国防会議幹事役として適任な人を要るだけ集めまして、そのほかに各省からの兼任の人が加わる。そうしてやることは何かというと、各省、各庁からそれぞれ出て参りますところの議案を整理し、会議資料を整理をする、そうして審議のしやすいように会議そのものに提出をすること、いま一つは、必要に際しては事務局みずからある議案を作り、あるいはある資料を整備するというだけの機能を備えることが必要と考えるのであります。  以上をもちまして私の所見を終りたいと存じます。はなはだ失礼な言葉も使ったと存じますが、この点はおわびを申します。(拍手)
  4. 宮澤胤勇

  5. 大井篤

    大井参考人 これは私の印象なのでありますが、昨年以来、国会言論界で問題になっているところを見ますと、何かしら、国防会議使命性格といった根本的なことについて、人によって考えが違っているのではないかと感ぜられるのであります。そしてそれは、さらに世界情勢現代における国防のあり方とかに関する考え方の相違によるもののように察せられるのであります。私の見解を述べる前に、私はアメリカ国家安全保障会議について、一つの例を述べてみたいと存じます。  アメリカ国家安全保障会議が第一回の会合を開きましたのは、一九四七年九月二十六日のことでありますが、そのときの議事が、アメリカでは国家安全保障会議議事の標本的なものであり、国家安全保障会議使命とか性格とかを、ほとんど基礎づけてしまったものとして、識者の間に、今日いわれているのであります。  では、この第一回の会合では何が議題になったかと申しますと、最初会合のことでありますから、本議題に入る前に事務局長スーア海軍少将から会議構成一般についての説明があり、次にトルーマン大統領から、ディス・イズ・マイ・カウンシル、この国家安全保障会議は、私の、つまり大統領のための会議なんだという念を押す意味発言があり、それから、中央情報局長ヒレンケター海軍少将世界情勢説明があって、本議題に入ったのであります。  その本議題は何であったかと申しますと、イタリアの共産党情勢に対するアメリカの対策の論議なのであります。当時イタリアの政府はデ・ガスペリを首班とする中道内閣でしたが、共産党勢力がずいぶん伸びてきていました。それを社会党首のネンニが利用しようとしてかかっている。ところが、逆に共産党に利用されるかもしれないというのがアメリカの心配であります。それにチトーは、当時はまだソ連側についていたのですが、このチトーが共産党を支援するおそれがあり、イタリアが赤化する危険が非常に強かったのであります。西欧にとって、イタリアの赤化は、地中海の海上交通線があそこで断たれることを意味し、トルコ、ギリシャ、エジプトなどという戦略要域がソ連の手に帰し、それからイラン、イラク、サウジアラビアの油田地帯もソ連にとられる、とにかくこれは西欧にとって一大事だったのであります。そういうことが第一回会合の本議題だったのであります。そこでわれわれは、現代における国防とは何を意味するのかということを考えさせられるのであります。申すまでもなく、国防とは国家の安全と存続を保持することであります。国家を作り、それによって国民の生活を維持するという制度が世界の現段階で採用されているからには、国家の安全と存続を保持すること、つまり国防ということは、国民によって期待されている国家至上の使命なのであります。ところがわれわれは、昔はそれでよかった国防形態をそのまま頭に持っていて、国防というものを武力とか戦争とかに百パーセント結びつけて考える傾向が残っております。むろん密接不可分な関係はありますが、元来、国防というものは、武力行使や戦争などよりはずっとずっと広いものでありまして、いわゆる冷戦も国防の重要問題なのであります。今日のような原水爆時代におきましては、どこの国だって、戦争をせずに、国家の安全と存続の保持、つまり国防を達成せねばならなくなったことは申すまでもありません。こういう世界情勢というか、人類史の段階というかにおきましては、冷戦状態を大きく頭に浮べて国防問題と取り組まねばなりません。国防は非常に複雑になっております。ことに日本は資源の少いところに非常な過剰人口を養わねばならず、反面、東洋における唯一の工業国として、世界戦略上の一つの天目山的地歩を占めているために、国防問題は一そう困難であることは申すまでもありません。それだけに、国防のためには絶え間なく、ずっと先を見通して、りっぱな手を順序よく打っていく努力と英知を必要とします。昨年以来、国防会議問題にからんで、防衛出動の可否を審議することがこの会議の最大使命であるかのような議論をされる方がありましたが、私は、それでは焦点がはずれていると思います。事態を防衛出動まで持っていかないように、いわゆる戦わずして勝つというようにせねばならぬのでありまして、防衛出動の可否を論ずるような事態にしては、国防の施策としては下の下策になります。やはり防衛庁設置法第四十二条にも第一に書いてありますように、国防の基本方針を議することが、何といっても国防会議の最も重要で、最も基本的な使命と存じます。その他の任務はむしろ次等的なものであって、従って民間人を入れる入れないを考えるにしましても、事務局をどうするかという問題にしましても、すべてこうした考え方を中心とすべきだと存じます。いわんや防衛出動などの必要が起りそうもないから国防会議の発足は急がないなどいう頭では、現代国防ほんとうの姿を忘れていると申したいくらいであります。  ところが、戦争せずに国防を全うするための重要方策が問題になるのでありますが、現代国防は、実際問題として一国単位では考えられなくなってきたという事実、つまり集団安全保障体制ということが国防考える上に常に忘れてならないことであります。たとえば現にとられている日米安全保障体制の問題は、わが国だけの防衛計画とか、自衛力とかの問題よりも、実際的にはもっともっと国防会議議題としてふさわしい問題と思うのであります。日米安保条約締結当時は、国防会議はありませんのでいたし方はなかったのでありますが、今度国防会議が発足したら、その改訂問題などがここで真剣に取り上げられるに違いないと存ずるのであります。こう申しますと、こんな問題は閣議で取り上げてもいいじゃないかという議論が出てくるかもしれません。しかし、こうした集団安全保障の問題は、普通の条約と違って、関係国全部の国防計画防衛計画に関連する問題でありますから、国防の要請に応ずる程度に突っ込んだ話し合いをするためには、機密保持も大いに必要でありますし、事務の取扱いも相手国に負けないように能率的に運ばねばなりません。それは初めから閣議などというところでじゃらじゃらもんで処理するには不適当なものであることは、説明を要しないところだと私は存ずるのであります。国防会議というものは内閣の一員たる総理大臣諮問機関であります。イギリス内閣国防会議発達の歴史を見ましても私は感ずるのでありますが、国防ということの重要性にかんがみて、その担当を総理大臣みずからやっている。これが一つ。ところが総理大臣は大へん忙しい、しかも国防のことは大へん重要でもあり、また幾多の分野の国務の総合でもあるというので、関係大臣に補体をさせて、そこで総合して慎重審議するという構想で発達したもののように思われるのであります。この構想は英連邦諸国やアメリカ等、民主主義を大切にしている国々で採用せられております。また日本国防会議もこの構想からなっているように思われ、民主主義体制の育成のためにまことにけっこうなことだと存ずるのであります。従ってこれはインナー・キャビネットとも違うし、経済閣僚懇談会というふうなものとも違う。ましてや昔の枢密院とか元老会議、重臣会議というようなものともまるで違った性格のものでなければならないのであります。国防会議は総理みずからのための会議であり、     〔委員長退席、床次委員長代理着席〕 理が全責任を持って自分の腹をきめて、それから閣議に臨んで、閣議の一員として閣議にかけて、連帯の決議に持っていく。こういう順序になるわけであることは申すまでもありません。それでありますから、責任はきわめてはっきりして参ります。国防重要性にかんがみ、国防会議の困難性にかんがみて特にこういう制度をとったんだ、私はそういうふうに考えておるのであります。こういうようなイギリスの構想を見ますと、責任はきわめてはっきりしている。閣議が国会と国民とに対して責任をはっきりさせている。閣議の中での責任者はだれかというと、おれだと総理が明々白々、隠れのないことにしております。太平洋戦争の開戦や終戦に関する外国人の批評などを見ますと、痛烈なことを言っている。日本という国の政治はへんてこにできている。だれがほんとう責任者かわからない。宮中、内閣、軍部、重臣、枢密院、青年将校、それらがおのおの実権を持っていて、牽制し合ったり、責任をなすりつけ合ったりしている。それだからずるりずるりと開戦に引きずり込まれたし、終戦もなかなかできなかったという批評なのであります。当らずといえども遠からず、痛い感じがいたすのであります。このことから考えましても、民間人を入れて政府の権限をチェックしようなどということは、再びこの過失を侵すことになりかねないように私は考えるのであります。総理の専制横暴を抑制しようという役目を国防会議にやらせるというのは、百害あって一利なしと私は思うのであります。だから専制的な総理を選んでおいても国防会議で抑制してくれるから安心だなどという油断心を、だれかが起したならば、この方の心配がかえって大きいのじゃないか。そんな専制的な総理を選んだときはもうおそいと思うのです。ヒットラーが出たからナチができたのでなくて、ナチの勢いが大きくなったからヒットラーが出たんだ。そういうときには、総理は国防会議など敬遠して、勝手な抜け道を作ることなど簡単にできることなんです。演習の名のもとに防衛出動をやらかすことがないとだれが保証できますか。専制横暴を防ぐのは、そんなむりにとってつけたような制度を作り上げるよりは、国会従って国民に対する任責が明らかになるようにしておく方が、幾らいいかわからぬと思うのであります。実際問題としても、友邦と手を組む集団安全保障でなければ国家の安全を守れなくなったこの世の中に、日本の総理が勝手に防衛出動などできるものではないと思うのであります。集団安全保障を結んでいる諸国政府と了解をつけた上でなければ、幾ら独裁者でもできない相談であることは、名前ははばかりますけれども、現にこの極東地域においていい例があるということは、皆さん御承知通りでございます。ある一部には日本は民主主義が未熟だからとかいう理由で、総理のチェックを考える向きもあるのでありますが、これも私は正反対考えております。イギリスのような国でさえ、その国防会議を作るときには、内閣や大臣の責任をあいまいにさせないように特に注意したということを白書に強調しております。それでこそ民主主義が守られていくのであると思うのであります。民主主義制度を維持し育成するということは、なまやさしいことではありません。生命をかけて守る積極的な努力と勇気が必要なのであります。初めから日本は民主主義が未熟だからとあきらめて、民主主義に反するような制度を作るという考えでは、何を守らんがために国防をするのかという意見が、一方から出てくるのもいたし方ないと思うのであります。ほんとうに総理を助けるために民間人を入れるという考えもあるようでありますが、これは一つの理屈はあると思う。しかしながら、それならば民間人としてでなくして、国務大臣として内閣と一蓮托生の気持で入れるべきであると思うのであります。これは責任内閣堅持の必要からであります。現在の法律案のように、内閣の運命と関係のない、しかも国会閉会中でも事後承認を当て込んで任命できるような定め方は、賛成しかねるのであります。意地悪く考えますと、内閣の引け際に何か有力団体の代表者を送り込むという心配もないではないと思います。そういうことになってから、次の国会で取り消させることは、そう簡単にできるものはないと私は思うのであります。そしてその次の内閣国防会議は、こういうような水の中の油のような人が出たら——見方によってはいいかもしれませんが、先ほど私が申し上げましたチェックという問題が出て参りまして、もてあますようなものになりはしないかという考えを持っております。そんなことをするよりも、事務局とか下部機構とかいうものを、現代国防の要請に応ずるようにちゃんとしたものにすることが必要であり、賢明な方法であると思うのであります。特にここにりっぱな諜報機関を設けて、国防上の観点から情報を収集、整理、分析、評価する。これは防衛庁とか外務省だけにたよらないで、ちゃんと別にここに設けて、国防会議を有名無実ならしめないようにすることが要点だと思うのであります。それから事務局も、少数でもいいかもしれませんが、精鋭有能の士を集めてやるということが必要であると思います。もちろんいわゆるワーキング・グループと外国でいっている各省からの派遣員がこれに加わるべきだと思います。世間には国防会議軍事に対する政治の優越を確保するために必要だ、この面を特に強調される向きもあるようでありますが、それはもっともなことであります。しかしそれはもともと軍事政治の一部にすぎないものでありますから、当然のことであります。またそこに大いに期待をかけるということも当然なことであります。しかし実質的にどうして優越させるかということが問題になるのであります。結局防衛庁や統合幕僚会議などに負けない有力な諜報組織を国防会議みずから持つということが一つの点。それから先ほどのように、有能の士を入れるということが一つの点。上の大臣級は忙しいのでありますから、大臣の単なる会議のほかに、こういう下部機構にちゃんと筋金の通った者を入れておくということが必要だと思うのであります。しかし根本問題からいえば、政治軍事に対する優越を保つには、それよりも政治家とか言論人などというものが、もっともっと国防とか軍事とかに同情、理解、判断力を持つことが必要だということは申すまでもないことであります。  これで私の陳述を終ります。(拍手)
  6. 床次徳二

    ○床次委員長代理 佐藤功君。
  7. 佐藤功

    ○佐藤公述人 国防会議構成等に関する法律案につきまして意見を申し述べるようにということで参上いたしたのでございますが、ただいままで伺っておりますと、下村さん、大井さんはもっぱら軍事専門家としてお話しになりましたようでございます。私は軍事専門家ではございませんので、憲法あるいは法律の観点から申し上げたいと思います。  下村大井公述人は、憲法法律の問題につきましては何もお触れになりませんでした。これは考えようによりましては憲法九条でありますとか、そういう憲法論はもはや意味がないという御意見であるのかもしれないと思って拝聴していたわけであります。しかし国防会議賛成する立場からもあるいは反対の立場からも、両方の立場からやはりこの憲法問題は考えていただかなければならない、依然として考えていただかねばならぬと私は思っております。つまり防衛庁設置法がすでに成立をしておりまして、防衛庁設置法によって国防会議目的はすでに定まっているわけであります。あるいは国防会議の権限の一つでありますところの防御出動の可否、その防衛出動は自衛隊法にすでに定まっているわけであります。でありますから、この国防会議構成等に関する法律というものは、防衛庁設置法、自衛隊法の立場から申しますと、当然できなければならないものであることは申すまでもございません。しかしこの二つの法律に対しましては、御承知のように、現在なおそれは憲法に違反するという議論があるわけでございますし、私もそのように考えておるものであります。その立場から申しますと、この国防会議構成等に関する法律案によりまして、国防会議を設けるということは、これが防衛庁設置法、それから自衛隊法と不可分のものであるといたしますれば、それはさらに違憲を重ねることになるといわざるを得ません。この法案につきましての内閣委員会の今までの議論議事録によって拝見をいたしますと、やはり以上述べましたような違憲論、それから合憲論、この二つの立場が戦わされておりまして、そしてそれが並行してついに一致しないで今日に至っているように見受けられます。政府原案の立場は防衛庁設置法、自衛隊法は合憲であるという立場をとっていることは申すまでもありません。ただその場合に、これはこの委員会の初期におきまして、特に江崎委員と鳩山首相との間に論議がありました点で、委員各位の御存じの点でございますが、今までの政府、つまり吉田内閣当時からの政府解釈と若干違ったような解釈が言明されたわけでございます。これはあの六月十六日の日の鳩山首相の言明でございますが、要するに自衛のため必要最小限度の防衛力は持てる。しかし決して近代的な兵力を無制限に持ち得るというわけではないということであったようでございます。しかしこの点につきまして詳細述べる必要はないと思いますので簡単に申し上げますが、憲法論といたしましては、自衛のためなら戦力を持てるというふうに考えますのならば、それは理論的には限度がない。つまり自衛のためという目的からの制約があるだけでありまして、近代戦争遂行能力に達するとか達しないとかいうことは、そこでは理論的には問題にならないはずであります。しかし現実問題としてどれだけの戦力を持つことが妥当であるとかいうことは、これはその国の財政、外交、経済その他の判断の結果であるわけでありまして、理論的にはそこに何らかの限度があるというふうには言えないはずであろうと思います。鳩山首相の六月十六日のこの言明と申しますのは、吉田内閣当時皆様御存じのように、戦力というものに一定の近代戦争遂行能力という限度をつけましたその解釈とは異なりまして、自衛のためなら戦力を持てるということで、いわば解釈を変えたと私は思っておりますが、しかしそれがなお自衛のためなら制限なく持てるというところまでは踏み切れない。そこに理論的にいまだ不徹底であるものと考えております。そしてそれはこの戦力論争というものをさらに不明確なものにし、さらに混乱させたことになっておると思います。そういう憲法九条の解釈が不明瞭であるということから、この議事録を拝見しておりますと、自衛隊の憲法上の性格が不明瞭である。あるいは防衛出動がいかなる場合になされるかということが不明瞭である。あるいは侵略のおそれがあるというときにも防衛出動ができるというのでありますが、その侵略のおそれがある場合ということの意味も不明瞭である。あるいは海外派兵ができるかというような点についても不明瞭になっておるようであります。つまりこういうような国防会議を設けるに当りまして、その前にはっきりときまっていなければならないようないろいろの問題がいずれも不明瞭のままに今日に至っておるという現象が出ておると思います。そしてそれはどこからくるかと申しますと、これはやはり防衛庁設置法あるいは自衛隊法というものそのものが憲法上無理であるというところからそういう論議も出て参りますし、またそれらが明確化されない結果になっているものだと思うのであります。つまりそれを裏から申しますと、本来この国防会議というようなものは、これは正式の軍隊——正式と申しますのは、つまり憲法上におきましても何ら異論の生ずる余地のないような明確なものとして正式な軍隊が設けられまして、そしてまたその結果国防方針国防というような観念も何らもう異論のないものとなりましたあとでありますならば、これは国防会議を設けるということはきわめて自然であり、また必要なことだと思います。しかしそれが今日いろいろ議論がありますのは、これはやはり現在の憲法のもとにおきましていろいろの無理が積み重なってきておる。そこに先ほど申しましたようないろいろな問題が不明確なままに残されておる。そこに国防会議というものを設けようというところにいろいろの議論が出てくるということだと考えるのであります。でありますから、私は憲法論の立場から申しますと、国防会議というものも違憲であるといわざるを得ませんし、従ってそれを設けるということでありますならば、これは憲法の改正という手続きをとった後において設けるということでなければならないと考えるのであります。防衛庁あるいは自衛隊法、これもすでに成立してあるのではないかというふうに言われるかも存じませんが、そこに国防会議を設けますならば、さらに違憲を重ねることになるばかりでなく、今までお話し申し上げましたように、そこにいろいろの無理が生じて、あるいは国防会議を設置する必要を認めておられる人々の側からいっても、その目的を達成し得なくなるのではないかと考えるのであります。それで憲法論あるいは違憲論の立場からする私の意見はその通りでありまして、そう申し上げますと、それではあとは何もこれに関して意見を述べる必要もないかのように思われるのでありますが、以下述べますことは、つまり違憲論の立場からはそういう議論がある。かりにこの法律が成立いたしましたとしても、そういう立場の人々からは依然としてそれは違憲だと言われざるを得ないと思います。しかしながらかりにこの法律が成立するといたしました場合にも、今まで述べましたようないろいろの論議あるいは無理というものを、できるだけ少くするという意味におきまして、政府なりあるいは政府与党の側の方々に次のような点を考えていただきたい、そういう意味で以下の点を申し上げるわけでございます。  国防会議を設けます根本の理由につきましては、今までお二人の公述人からいろいろ御意見がございましたが、これは私はいわゆる軍閥の復活を防止する、あるいは軍人に対する政治の支配を確立するということ、これが根本の理由であろうと考えます。それはまた一言で申しますと、いわゆる民主的なコントロールを軍事というものに加えるということであろうと思います。その点は、政府説明などにおきましても認めているところでありますし、何ら異論のないところでございましょう。そうしてそういう民主的なコントロールという点を達成いたしますために、この国防会議の構成、それから権能、この両面においてなおこの国防会議賛成の側におきましても、次のような点を考慮していただく余地があろうと考えるわけでございます。その構成の点の第一は、これは閣僚以外の、つまり民間議員を加えるという点を削除してはならないという点でございます。第二は、元軍人民間議員たり得ないということを法律に明記すべし、明記した方がいいという点であります。三番目は、事務局の問題、事務局を強化せよという点でございます。この三つの点でございますが、まず便宜上、初めに元軍人の問題を申し上げたいと思います。  これは御承知のように、今までの論議におきまして、元軍人を入れるか入れないかということは、政府側からはっきりとした答弁がなされておらないわけでございます。識見高い練達の者という標準で人選をするのであって、特に軍人であるなしということを標準とはしないということで態度が示されているわけであります。この点は大井下村公述人は元軍人であられましたので、はなはだ申し上げにくい感じがするのでありますが、これには御承知のように、反対、対立的な考え方があるわけでございます。そうしてこれはたとえば警察法を見ますと、国家公安委員の資格といたしまして、任命前五年間に警察の職業的公務員の前歴のなかった者でなければならないという規定がある。これは警察法の改正以前におきましては、御承知のように、もっと厳密であったわけでございますが、それが若干緩和されたわけでございます。そうしてこの規定は、やはり過去の警察というものを再現せしめてはならないという大きな観点から、元警察官が排除されているというよりほか考えようがございませんし、またそれには私は理由があると考えているわけでございます。そこでこの国防会議の構成メンバーにおきましても、私はそれと同じ趣旨で、そのような制限を法律上明記することが望ましいと考えております。  第二の民間議員を入れるという点でございますが、これは今までいろいろ議論のありました点でございます。私は民間議員が入っていないのであれば、この国防会議を設ける意味がないと考えるわけでございます。もしも民間議員を入れないといたしますならば、これは関係閣僚の懇談会というに異ならないことになります。その場合に各大臣の間の調整がはかられなければならないということは当然でございますが、しかし各大臣の間の調整がはかられねばならないということは、これは国家行政組織一般についてすでに何ら問題のないところでございます。内閣法の趣旨あるいは国家行政組織法の趣旨はまさにそこにある。でありますからそのことだけで規定をするというのであれば、それは何ら規定を要しないことでありましょう。つまりこの種の制度を設けるのには、民間議員を入れるというところに特に積極的な意味があるといわなければなりません。それでそれに対しましていろいろ修正の問題が起きているように伺っておるのでございますが、民間議員を削除せよという立場、これはいろいろの立場から主張されるわけでございますが、一つ責任内閣制の立場であります。つまり国会に対して内閣責任を負わねばならぬ。民間議員を入れるとその責任があいまいになる。たとえば防衛出動の可否を決定した。ところがそのあとで国会が承認を与えなかった。そのときに内閣責任を負えるかもしれないけれども、民間議員は何ら国会に対して責任が負えないではないかという御主張があるようであります。しかし責任内閣制のこのような議論、すなわち内閣が全責任を負わねばならぬ、そのためには民間人を参加させてはならないという議論は、これが徹底いたしますと一切の諮問的な委員会民間委員を参加させてはならないということになるわけであります。しかしその不合理であることは明瞭であろうと思います。つまりいろいろな委員会民間人が参加するという点は、あらためて申すまでもなく専門的な知識あるいは各界の意見を反映させる、あるいは世論を反映させるということに理由があるわけでございます。その民間人を入れました委員会の答申なり意見なりを採択するかどうかということは内閣の自由であり、またさらにそれを国会に提出するということでありますならば、それを国会がいかにするかということは、これまた国会の自由であります。つまり民間議員を入れないということは、何ら責任内閣制という問題と矛盾しないといわなければりなません。さらに国防会議の場合には、特にその設置の理由として、これは政府の提案理由その他によりますと、慎重を期するためであるとか、大所高所から判断するためであるとかいうことで説明されておりますが、しかし政府側によりましては、必ずしもはっきり言われておりませんけれども、そういうような理由よりも、これは内閣総理大臣の独裁化を防する、あるいは政変にかかわりのない一貫した国防計画などを樹立をするということが国防会議の設置の理由であろうと思います。そしてそういう目的のためでありますならば、閣僚だけでは意味がない。閣僚総理大臣の下僚的なものでありますし、任免権を握られておる。あるいは同一政党のメーバーであることが原則でございますから、そこに今申しました総理大臣の独裁化をチェックする、あるいは政変にかかわりない一貫性を持たせるということは、そこではいつでも達成できないことにならざるを得ません。英米のこの種の機関に民間人は入っておらないということがいわれるわけでございます。これは先ほどのお話がございましたが、その通りでございます。  たとえばアメリカの場合、国家安全保障会議のメンバーは、大統領、副大統領、国務長官、国防長官それから国防資源委員会委員長あるいは軍の長官あるいは次官で、大統領が上院の助言と承認によって任命する者、それから軍需委員会委員長あるいは研究促進委員会委員長というようなものがそのメンバーであります。そこには民間人は入っておらないわけでございます。しかしアメリカの場合は、今上げましたところからもおわかりになりますように、国防関係政府機関というものが非常にたくさんにある。これはそれぞれの理由に基いて設けられたものであるわけでございますが、非常にたくさんにある。そして権限が分割をされておる。しかもいわゆる独立的な委員会が多いということであります。そこでそういう非常にたくさんの、しかも独立的な政府機関を総合調整するという必要が特に多い。そこに国家安全保障会議が設けられた理由の大きなものがあるといえると思うのであります。ですから、そこには民主的コントロールという点よりも、そういう点に重点があるというところから、民間人の参加ということは、そこではなされておらないということだろうと思います。そうして民主的なコントロールという点は、しからばどうやって達成されているかといえば、これはアメリカにおきましては、いわゆる文官優位の原則というものがそれぞれの段階において確立されているということであるわけでございましょう。しかしこれに反しまして、日本の場合には、国防関係政府機関というものの数はきわめて少い、またそれを調整するという点でならば、閣議でもって調整し得ないわけではございますまい。それよりもむしろ民主的な統制の必要ということの方が、日本の場合には特に大きい。そうしてその場合には、先ほどから述べましたように、民間議員を入れる必要がそこにあると言えると思うのでございます。  それから第三の点の事務局の問題でございますが、国防会議内閣総理大臣の諮問にこたえる、あるいはおそらくは防衛庁その他で原案を作りました国防計画というものを承認をする、それから第三番目に国防に関する意見を随時具申をする、この三つの任務を持っているわけでございますが、その中で特に国防計画、その原案はおそらくは防衛庁統合幕僚会議というようなところで作られるのでございましょうが、それを承認するというその機能が最も重要であるわけであります。その役割を果すために、その判断の材料を提供するという意味事務局機能が要求されることになろうと思います。そうしてその場合に防衛庁はおそらくは防衛の観点、軍事的の観点から防衛計画国防計画を立てる。そこで国防会議といいますのは、そういう防衛あるいは軍事的な観点だけではなく、外交、経済、財政、思想、あるいは世論の動向、そういうすべての材料によってそれを判断する、こういうことにならなければならないわけでございましょう。またそこにはそれぞれの各省の観点から各省意見、それを調整するということにもなるわけでございましょう。そうだといたしますと、この事務局というものは、内閣官房のどこかに小さな形で置かれるというような、そういう小さなものであってはいけないということになろうと思います。そうしてそこには、その機能を果させるために、さらに各省の職員というようなものに加えて、さらに民間専門家というものも加えるということを考えていいだろうと思います。以上が構成の面で、つまり政府原案の立場に賛成の方でも御考慮願いたいと思う点であったわけでございます。  もう一つは、国防会議の権能の面でございます。問題は内閣国防会議国会、この三つの関係の問題になってくるわけでございますが、この国防会議によって、たとえば防衛出動の可否がきめられる。それを可といたしましたときには、さらに国会の承認を得なければならないということになっているわけであります。その場合には、この国会の権限が確保されている。だから国会の側でそれを批判し、あるいはチェックする、コントロールする余地は残されているわけでございます。ところが国防の基本方針でありますとか、そのほか防衛出動の可否以外の国防会議の権限とされている点、たとえば国防の基本方針という点につきましては、これには今のような制度はないわけでございます。これはおそらくは国会内閣に対して一般的な監督権を持つのだ、あるいは国政調査権によってどういう計画が進められているかということを調査することもできるのだということであるわけでございましょうが、しかしこれは委員各位も御存じの通り保安庁時代からでございますが、従来、防衛計画なりあるいは最近の防衛六カ年計画の問題でもそうでありますが、その発表を要求した場合にも提示しないという実例がきわめて多いわけであります。委員会の速記録を拝見いたしますと、九州方面に方面隊を増強するということが自衛隊法の改正でなされた、その理由は何だという質問に対してそれの理由も明らかにされておらないようであります。あるいは防衛六カ年計画を示せということの要求があるようでございますが、それに対していまだ成案を得ていない、未熟なものを出すということはかえって国会尊重のゆえんではないというような答弁がなされているようであります。しかしそれはそんなことはないのでありまして、国会の要求に応じていかなる段階ででも防衛計画なら防衛計画を示すということが国会尊重のゆえんであるといわなければなりません。それが未熟なるがゆえに出せないというのでありますが、もしも未熟であるというならば、未熟な間に国会意見によってそれを改善するということが可能であるわけでありましょう。国会とともに完全な防衛計画を作るという態度でなければならないわけだろうと思うのでありますが、いずれにせよそういうことでなかなか国会の一般的な監督権というものが及び得ないというのが実情であるわけであります。従ってこれは委員各位のお考えを願いたいと思う点でございますが、これは防衛庁法の改正ということになりますのか、あるいはこの国防会議構成等に関する法律案の修正ということになりますのか、それは技術的には私申し上げませんけれども、いずれにせよ何らかの方法でこの国防会議の決定しました国防の基本方針なり、防衛計画の大綱というものを自動的に、つまり法律国会に提出するという趣旨の制度を設ける必要があるのではないかというふうに考えるのであります。防衛計画なり国防の基本方針があるいは一年に一回策定されるということになりますのかどういうのか私は存じませんが、そこら辺はお考えいただくことにして、いずれにせよ自動的に法律上こういう計画国会に提出するという制度を設けることを考えるべきではないかというのであります。この点は軍事専門家からはあるいは機密維持の点から、あるいは技術上の点から御異論があるかもしれません。しかし国会としてはそういう機密維持あるいは技術上、そういう事情と国会による統制ということとを調和する、そういう観点から何らかの方法をお考えになって、そういう制度を明瞭化するということを考えていただきたい。そんなことは問題にならぬというふうに言われないで、そういう点を考えていただきたいと思うのであります。つまり以上のことを申しますのは、私はこの国防会議というものは内閣総理大臣の独裁化というものを抑制するということであろうと思うのでありますが、しかしこの国防会議というものが、さればといって国会から離れてしまう、国会の手の届かないことになるといたしますと、そこでむしろおそるべきものは内閣総理大臣ではなくして、国防会議ということになる場合があろうと考えるからなのであります。それを国会がコントロールによって防止するということから以上のようなことが必要ではないのかと考えるわけであります。具体的な点は以上の通りでございますが、要するに私の申し上げたい点は、まとめますと次の三つになるわけでございます。第一は、憲法論からいって自衛隊法、防衛庁法というものは違憲であると私はそう考えますが、それが違憲であります以上は、国防会議も違憲だといわねばなりません。そうしてそれは今までの違憲をさらに重ねることになる、あるいは罪をさらに重ねることになるといわなければなりません。ですからその観点からすれば、この国防会議構成等に関する法律案というものは成立せしめるべきではないと思います。第二に実質論から申しますと、つまり本格的な国防計画なり、あるいは本格的な再軍備というものが、これによって促進せられるということになりましょう。先ほど今まさに即刻これはやらねばならないのだという御意見がございましたが、しかし私は今の段階においてそれを進めますことは——確固たる方針なり、定見なりを欠いたままでそれを進めることは、将来に禍根を生ずることになるというふうに考えるわけであります。確固たる方針や定見を欠いているということは、憲法上のいろいろな問題がいまだ解決されない、不明瞭なままで残っているということから、そこで初めに申しましたように、いろいろな点について議論が分れ、明瞭な結論に達し得ないということであるわけであります。でありますからもしもこの国防会議を積極的に設ける、絶対に設けなければならぬという立場に立たれますならば、憲法改正ということのステップをまず踏まれる、それがどうなるかわかりませんが、憲法改正が成立をしましたときに、そういういろいろな問題がそこで明瞭になる、その上でこれは設けらるべきものであるというふうに私は考えます。第三番目には、しかし反対論の立場から申しますと、今述べましたようないろいろの弊害と申しますか、それを少しでも少くするという点からなお改善さるべき点が若干あるのではないか、その点は先ほど申しました構成の点と権能の点でございます。以上であります。
  8. 床次徳二

    ○床次委員長代理 これで御出席公述人各位の御陳述は終りました。  これから質疑に入りますが、本日は本会議がありますので、できるだけ簡潔に御質疑を願いたいと思います。質疑は通告がありますので、通告順にこれを許します。まず福井さんからお許しいたします。福井君。
  9. 福井順一

    ○福井(順)委員 下村さんにお伺いいたしますが、先ほどのあなたの御意見では、統合幕僚会議議長国防会議にどうしても列席させなければいけない、しかもこの統合幕僚会議議長の資格は国務大臣にした方がよくはないかというような意見に承わりましたけれども、私はそうすると今国防会議の目途とするところの政治軍事に優先するという建前が全くこわれてしまうのではないかということをおそれるものであります。何となれば、統合幕僚会議議長というものは、あの膨大な機構の上に立った、しかもベテランぞろいの機構の上に立って実力を持った発言をするものでありますから、しかもこれがまたその資格が国務大臣というようなことになりますれば、なおさら全くこれは国防会議意見を圧する、重大なる影響があるだろう、こう思うのであります。従いまして、そういう問題はまたこれは軍事政治に優先するというようなことにもなりかねないと私はおそれるものでありますけれども、これに対する御意見を承わりたいと思います。
  10. 下村定

    下村公述人 お答えをいたします。私の申し上げ方が不十分であったかもしれませんが、私は統合幕僚会議議長が国務大臣と同じ資格で会議に出ろと言うのではありません。資格は依然としてこれは国防長官に属する、今でいえば防衛庁長官の幕僚であります。ただその発言は、先ほどるる申しました必要から、断続的ではいけない、臨時の呼び出しではいけない、絶えず会議の経過に追随し、要点を把握しておって、適時にまた適切に言うことは、これはもちろん必要である。軍事専門ということにつきましては、統合幕僚会議議長はその会議全般の中のたった一人の専門家なんです。しかも最高の地位にある。ですからこれは臨時に呼び出されるほかの方とはどうしても差別がなければならぬと思う。またそれが差別があるのは私は自然だと思う。資格の問題はまた別であります。先ほど申しました通り、私はこれが資格を与えられて国務大臣と同じような資格で会議に出れば、それは軍事専門見地からいえば、一番いいのでありますが、そこまでは考えておりません。少くも常時会議に列席をする、こういうつもりであります。
  11. 福井順一

    ○福井(順)委員 統合幕僚会議議長を国務大臣にすると、かりに今のような御意見がありますならば、これは私は全く反対だと思います。統合幕僚会議議長には議長としての職能というものがおのずからあるわけでありまして、これまた唯一の軍事専門家として国防会議出席させなければならないというお説でありますけれども、これも先ほど来申し上げますように、唯一の強力なる軍事専門家が国防会議出席をいたしまして、強力な発言をするということになれば、どうしても軍事政治に優先するというようなことになりかねないということをおそれますので、私はこれは全く反対であります。もう一回一つ意見を承わりたい。それで私の質問は終ります。
  12. 下村定

    下村公述人 繰り返して申しますが、私は統合幕僚会議議長を国務大臣と同格にせよということは一ぺんも申しておりません。それからその有力なる軍事専門家が会議に出て、それが行う発言というものは、ひいて、ややもすれば軍事政治を制肘するという結果を来たすと御心配でありますが、過去においてはそういうことはあり得たかもしれません。しかし私は、たとい彼がどんなことを言いましても、ほかの議員諸公がさらにより以上の識見を持って高邁なる政治的の考えから軍事をコントロールされたならば、たった一人の統合幕僚会議議長何するものぞと思う。議決に参与させたって、私は差しつかえないと思う。しかし私は議決に参与することまでは要求いたしません。これが私の意見であります。
  13. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連して、私も下村さんにお尋ねしたいと思うのですが、この国防会議法の条文からいいますと、必要な場合に統合幕僚会議議長を列席せしめる、こうなっておりますが、あなたは常時出席せしめる方がいいということを、アメリカの例等をおひきになっておっしゃいましたね。ところが私どもはそうすること自体は結局、何といいますか軍事専門家の意見が圧倒的に国防会議を支配するというような情勢の起きることを非常に心配するわけなのです。私ども社会党の建前としては、いわゆる国防会議法案も、もちろん憲法九条に違反するものであるという建前をもってこの法案の審議に当っておるものでありまするけれども、かりに国防会議法案というものができるという場合においても、できる限り私はいわゆる内閣の連帯責任内閣国会に対してすべての政治上の責任を有するということが明確になっておりまするが、特に国防会議におきましては、統合幕僚会議議長が常時そこに出席するということは、この幕僚会議議長の意向がいわゆる会議自体を支配するというようなおそれが十分あるのではないかと思うのです。ついては私はそういうことまでしなくても、この防衛庁法の第二十六条には、いわゆる「統合幕僚会議は、左の事項について長官を補佐する。」とありまして、いわゆる防衛庁長官は絶えず統合幕僚会議の補佐を受けておるのでありまして、いわば一体不可分の状態になっておるのであります。従って防衛庁長官がその国防会議出席するならば、絶えず綿密な連絡をとっていることが前提となっておりますから、いわゆる統合幕僚会議意見は即防衛庁長官意見となって反映されるということをわれわれは考えなければならぬ。そうだとすると防衛庁長官がこの国防会議の重要なる構成メンバーの一人である以上は、そのように屋上屋を架する必要はないのじゃないか、特に私はそういう気持がいたしますので、お考えをお尋ねする次第でございます。
  14. 下村定

    下村公述人 お答えいたします。ただいまの御説、御心配も私は御無理でないと思います。しかしこれは絶対的のものじゃないのでありまして、入れてはいけない、全部入れろというようなきっぱりしたものじゃない、誤まりのないようにしたいというのが私が望むところなのであります。それはなるほど議長なりあるいは他の議員の方々がよく考えておられて、今呼ぶべきだ、あした呼ぶべきだということでいつもうまくいけば問題はない。しかも申すまでもなくあまりいいことじゃありませんけれども、緊急事態のような場合には真に一刻を争うようなことがある。しかもその処置というものはあらかじめみながのみ込んでおいて処置しなければならぬこともある。そういう場合に用事が起ったらすぐ呼ぶというのと、黙っておっても来ておって、ちゃんと要点を知っておって、そうして適時に発言をする、これは大分違う。これが落ちついた仕事だけならば私はある程度欠席をしてもいいと思うのでありますけれども、どうも私はやはりこれは議決に入れるとかあるいは資格だとかそういうことでなしに、実際の便利の上から、利益の上から必要の上から統合幕僚会議議長は常時出席するのを定則とした方がいい、そう思っております。
  15. 森三樹二

    ○森(三)委員 もう一点だけ……。そうしますと下村さんの御意見は、第八条の「議長は、必要があると認めるときは、関係の国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議出席させ、意見を述べさせることができる。」これは条文上明確になっておるのでありますから、逆に言うならば、必要がないと思えば出席させなくてもいいということですね。ところがあなたの御意見では、常時出席させろ。常時出席させろということは、あなたのお言葉をそしゃくしますと、何となくオブザーバーでもいいから、その場所に来ておって、必要があった場合には発言をさせるというのか、そうでなく、絶えず出席をさせて、発言し得るところの権限を与えた出席なのか、オブザーバー的な出席なのか、あなたのお考え自体そこが明確でないと思う。必要の有無にかかわらず出席させるというならば、絶えず出席して発言することができるわけです。あなたの今の御発言のようですと、何となくオブザーバーとしてその会議にどこかに来ておって、必要があって議長発言を許した場合には特にできるというよう感じを受けるのですが、それはいかがなものですか、どちらの観念なのか、明確にしていただきたい。
  16. 下村定

    下村公述人 オブザーバーという意味がどういうことになりますか、はっきりわかりませんが、私の考えは、原則として会議に始終出ておりまして、必要に応じて国防長官の指示なり、あるいはみずからの発意によって主要なことを発言する、こういう意味なのです。それから先ほどあなたの御質問の中に、常時連絡しておればできるという仰せでありましたが、私の望むところはそれなんです。つまり統合幕僚会議議長が絶えず会議に出ているということは、いわゆる常時の連絡になる。  それを望むのであります。
  17. 床次徳二

    ○床次委員長代理 茜ケ久保君。
  18. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私、下村公述人にお伺いしたいのでありますが、私どもはもちろんこの国防会議設置に根本的には反対でありますが、一応ここに議題となっておりますので質問しますが、私はこの国防会議が、日本のいわゆる自衛隊あるいは防衛庁の自主的な一つの検討から生まれたものでなく、むしろアメリカ等の大きな示唆によって、むしろアメリカ等の要請によって生まれたものであるというように考えておりますが、下村公述人は元の陸軍の最高責任者として、かつての第二次世界大戦日本側の責任をとっておられた方でありますが、私は今回のこの国防会議の設置が今申しますように、日本自体のいわゆる自主的な必要性から生まれたというよりも、アメリカ日本の再軍備を強化拡充させる一つの方途として、アメリカの要請によって生まれたということを考えるのでありますが、下村公述人は、あなたの過去のいわゆる陸軍の長老としての純粋な立場からこの問題をお考えになって、どういったお考えを持っておられるか、その点をお聞きします。
  19. 下村定

    下村公述人 私は今お尋ねになりました、お名前は存じませんが、あなたのお考えと同じであります。国防会議の設置ということは、決してアメリカから使嗾されたものでもなし、日本現状にかんがみ、日本の自主的の国防を確立するために、日本自体の発意によって設けなければならぬものだ、決してアメリカのひもつきではないと思います。
  20. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 下村公述人にお伺いします次の点は、日本で第二次戦争中におきまして、この国防会議に類するようなものが現に存在したことがあるかどうか。存在したならば、どういうふうな構成でこういったことをなされておられたか、その点をちょっとお伺いいたします。     〔「そんな質問には答える必要がない」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 下村定

    下村公述人 それは初めには大本営御前会議、これは軍人だけ、それと同時に、政府の人と、陸軍省、参謀本部の首脳が一緒になった大本営連絡会議、それが戦争中の大部分いわゆる戦争指導をやったと思っております。もっとも私は大平野武士でございまして、中央のこまかいことは存じません。それ以上のことはお答えできません。
  22. 床次徳二

    ○床次委員長代理 公述人の公述された範囲外にわたらぬようにお願いいたします。
  23. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連。——今のお話で、自主的な防衛、こういうお話ですが、今の日本の自衛隊の実情、かりにこれが十八万になりましても、さらにまたこれが増強せられましても、日本の自衛隊というものは私は独立能力を持っていないと思うのです。必ずやこれは他の大きな国、現在でいえばアメリカとの共同作戦をするときにだけしか役に立たない、こういうように私は思われるのですが、もしそうした場合に、国防計画を立てるにしても、作戦計画を立てるにしても、日本独自の決定というものはあり得ないんじゃないか。むしろこうなると国防会議というものは、アメリカの共同作戦上の要求を日本流にこなして自衛隊に押しつける機関になってしまうんじゃないか、こういうふうに私は思わざるを得ないのですが、この点について専門家としてのお考えを伺いたいと思います。
  24. 下村定

    下村公述人 自主的と申しますのは、自分だけでやるという意味ではない。どんな強い国でも、目下の情勢、ことに将来におきましては、いわゆる集団防衛化でなければ国防は全くできません。従って私がかりに自主的の国防計画を立てるとか、国防の基本方針を立てるというのは、その条件下においての話です。もう少し詳しく申しますと、どういういくさを、日本はいやだけれども、考えなければならぬか、どういういくさが行われるか、そのときには、日本としてでなく、全般としてどういう防衛をやったらいいか、そのうちで日本自分で担当すべきところはどれだけあるか、集団防衛の援助によらなければならぬことはどれだけであるか、そこをはっきりする、それを私は自主と言う。アメリカの言う通りに引きずられて、お前のところは陸軍だけでよろしい。よし、十八万作る。これはいけない。あなたの方はそうかもしれぬけれども、私の方には私の方の目標があり、目的がある。だから今は十万しかないけれども、先は必要に応じて作るかもしれない。それよりも私の方はもっと新しい戦力の方がほしいのだから、その戦力の根を今からはやしておかなければならぬ。だから陸上の兵力をふやすということはちょっと待ってもらいたい、これが自主的だ、そういう意味であります。
  25. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお説でわかりましたが、しかし自主的というのは、少くとも選択の自由がこっちにある場合にいうはずだと思うのです。議論になって恐縮ですが、少くとも今の段階で日本に選択の自由ありやいなやということを一つ伺わせていただきたいと思います。
  26. 下村定

    下村公述人 それは最後には相談づくできめることになると思います。最初自分の方としてはこうなんだ、それを立てておかなければものにならぬ。自分としてはこう思う……。
  27. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最終的には自由ありやを伺うのです。
  28. 下村定

    下村公述人 最終的には、相談ですから、それはどうも日ソ交渉と同じことで、何とも言えません。
  29. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 佐藤公述人にお伺いしたいのですが、この国防会議がいわゆる文民優先を確保し、将来自衛隊の大きくなったいわゆる軍隊が、軍隊的の独自の、かつての日本の軍部が犯したような罪を再び犯させぬためにもあると思いますが、私どもが一面また心配いたしますのは、現在のように自衛隊が何かしら軍隊であるということを遠慮しいしいおる間は、そういったこともあり得ると思うのであります。しかしだんだん自衛隊が増強されまして、もう実質的に政治力が軍事力をチェックできない時代が来る可能性があると思うのであります。それはアメリカ、イギリスのように非常に民主主義の徹底した国であり、非常に文官優位の実態が優秀になっているところは、これは別でありましょうが、日本のようにまだそういう点が非常に幼稚な場合においては、私はやはり再び軍部独裁的な状態が現われるような危険を非常に感じるのであります。そうしますと、発足当時にはそういった軍部専横をチェックするために生まれた国防会議というものが、逆に国防会議という存在が、軍部専横を国民の前に何だかベールをかけてごまかすような存在になって、むしろそういったことを実質的には非常に強く押し出していくことにもなり得る可能性があると思うのであります。こういう点を一つ先生の立場から明快に解明をしていただきたい、こう思うのであります。
  30. 佐藤功

    ○佐藤公述人 ただいまの御発言の点は、私先ほどまさに申した点でございまして、内閣総理大臣の独裁化をおそれる、そしてそれをチェックするために国防会議を設けるというのだけれども、逆に国防会議国会から離れてしまいますと、国防会議がかえっておそるべきものとなることがあるということを申しましたのは、御意見と同じ考えで申したわけでございます。ですから、そういう現象を生じさせないためにどうしたらいいかということで、先ほど国防会議機能に対して今から国会の方でそれをチェックする制度を設けておく必要があるということを申したわけでございます。
  31. 床次徳二

    ○床次委員長代理 大坪君。
  32. 大坪保雄

    ○大坪委員 下村さんにお尋ね申し上げたいと思うのであります。先刻あなたの御供述の中に、国防会議には民間議員は入れた方がよろしい、民間議員の入らない国防会議はおよそ意味の大半を失うというようにお話しになって、るる御見解をお述べになったのでありますが、そこで私ども少し疑問を持っておりますのは、民間議員を五人入れるということになっております。見識の高い練達の士ということになっておる。この人たちの国防会議できめるべき事項は、御承知のように、国防の基本方針とか、あるいは防衛計画の大綱とか、あるいはこれらの計画に関する産業等の調整計画の大綱とか、さらに防衛出動の可否とかいうことを諮問するわけでありますが、これらの事項について見識の高い練達の士というような人たちで、ほんとう国防会議議員として内閣の期待するような議員が得られるというようにお考えでございましょうか。時間の節約の都合上少し私の気持を申し上げますが、たとえば国防の基本方針なり防衛計画の大綱に関する事柄等で、産業に関係するというようなものは産業人ということになりましょう、あるいは防衛出動の可否ということになると旧軍人ということにもなりましょう、あるいはいろいろ国防の基本方針をきめるについては法律家というようなことにもなりましょう、こういう人たちはそれぞれ過去の経歴からして、その道には一応達したというような人たちであろうと思いますけれども、これらのこういう国防計画の基本方針の全般について総理の諮問に十分に答え得るというような者は、私はなかなか見つからぬのではないかというように思うのでありますが、それらの人たちが五人ぐらい見つかって、それらの人たちに諮問をすれば大体民間側の意見は十分とられたようになるというふうにお考えでございましょうか。
  33. 下村定

    下村公述人 ただいまの御質問でありますが、私はたとい議員が十人であろうとまた二十人ふやしましても、議員自体によって大事な問題をみずから起案し、審議するようなことはとうていできないと思う。これは先ほどから両先生のお話もありましたが、事務局というものがしっかりしておりましてそこで総合的な準備をして、そうして審議に便利なように、おえら方の少々耳の遠いような人でもわかるようにちゃんとおぜん立てをして出す、それが多年の経験からいわゆる大所高所からやる、そういう程度であります。しかしそれにしましてもむろん完全なことはできないと思う。しかしながら閣僚だけでいわば片手間で国防のことをやるよりもはるかにいい、私はそういう考えであります。
  34. 大坪保雄

    ○大坪委員 さようであろうと思います。それは必ずしも議員の五人の人たちでできるわけのものではない。だから事務局の機構をきわめて膨大なものにして、これが終始検討を加えて議員と連絡をとっておくということにならなければならぬ。しかしその場合でも、今あなたのお話にもございましたように、これは練達の士であるから大所高所からぴたっと判断がつくと仰せられるけれども、結局これは事務局なるもののロボットになると私は思うのです。それよりも私どもの考えることは、必要な場合に必要な事項について、国内のいろいろのそれぞれの練達の士に、五十人でも百人でもいいから、そういう場合に時々にその場その場に応じ、その問題に応じて諮問することがかえって適切ではないか、かように考える。五人の人を選ぶということは五人の人にただ国防会議議員という資格を与えるだけであって、これは事務局のロボットになり終り、ほんとう諮問機関としての役割をなさぬものと私は考えておるのでございますが、その点についての御意見はいかがでございましょうか。
  35. 下村定

    下村公述人 それはいわば見解の相違ということになるかもしれません。私は事務局が適当に審議に便宜なように資料を整理して出す、それから真に権威のある人たちであれば、たとい人数は少数でありましても目的を達し得ると思います。また一面から申しますと、国防の問題は緊急決定を要することもありますし、同時にまた常続的なものである。それを臨時に十人、数十人の人を集めてきてやっても、これは私が先ほど統合幕僚会議議長質疑について申しました通り臨時ではいけないと私は思う。やはり少数でもずっとすべてのことに追随をして頭がそこに向いている人でないと、むろん第八条によりまして臨時にそういう別の人が要るようたったらとるようになっておるのでありますから、その方を適用されたらいいだろうと思います。
  36. 大坪保雄

    ○大坪委員 これは緊急の場合もあるから、そういう場合にはというようなお話ですが、そういう場合も考えて私は民間議員でない方がいい、閣僚でよろしいと思っておるのであります。なおこの問題については、下村さんは大体見解の相違かもしれぬと仰せられたから、私はそれ以上追及する必要はないと思います。  それで私、ちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、下村さんの御意見の中には、先刻佐藤さんが仰せられた民主的コントロールの要があるということは別にお考えではございませんか。
  37. 下村定

    下村公述人 それは私は非常に重く考えております。
  38. 江崎真澄

    ○江崎委員 ちょっと関連で下村先生にお尋ね申し上げますが、今の民間人の問題です。これは私ども思いますのに、民間人によって中立性を保たせたり、それから民間人によって緊急の場合その他にチェックしていく、そのウエートをかけていく、こういう御意見のように承わるのですが、少くとも会議の性質上から申しまして、このチェックするのはあくまで議論的な面でチェックすべきだと思うのです。そうすれば、事務局をうんと拡充して、国防会議ほんとうのブレーンとしての役割を果す機能というものがそこにあるならば、練達の方ではありましょうけれども、民間人をことさらにウエートを置いて入れなくても、会議は円滑に進め得るのではないか、こういうふうに私どもは考えて、ここにきておるのでありますが、この点一つ根本的な点を承わりたい。
  39. 下村定

    下村公述人 事務局を堅実な大きなものにするという御意見でありますが、これはできればけっこうでありますが、実際の問題としてどうかと思います。  それから民間人が、シヴィル・コントロールに関して、閣僚よりもウエートを大きくする、そういう意味で入れるというふうにおそらくおとりになったのかもしれませんが、私はそうは言っておりません。シヴィル・コントロールということは、これは全般の問題でありまして、民間人でなくてもやれることです。ただ国防問題というものの性質上範囲が非常に広くて、またいろいろ制度上の弊害もございますから、ここにさらに民間人を加えて、これを完全なものにしたい、こういう意味であります。
  40. 江崎真澄

    ○江崎委員 その点ですが、実は内閣責任制ということとも大いに考え合せておるわけですが、たとえばこの法案による民間人の五人、そして閣僚五名、議長であるところの総理大臣、このときに会議というものは、大体原則として多数決で方向がきまることは当然だと思います。ただこの性格諮問機関であるというわけなのでありますが、民間人の五名に五名の閣僚が加わって、そこに一つの方向ができていく。あるいはまた民間人が中心になって多数決がなされていくというときに、諮問機関であるから別に内閣がこれに縛られないということはいいますが、これは実際上の制度がここにできれば当然縛られることになると思う。このときに一体内閣責任の問題と、民間人のウエートの問題とをどういうふうに割り切っておられますか、これを簡単に承わりたいと思います。もう一つ立ったついでにお尋ねしておきますが、これは日本の今までの習慣と申しますか、とかく練達の人であるから簡単に秘密を漏らすなどというようなことの心配は、する方が取り越し苦労かもしれませんが、しかし秘密が漏洩した場合に、事の性質上、国家国民に非常に大きなマイナスを与える場合、これは当然想像できます。そうして内閣の場合だと、これで内閣総辞職という形になって、その責任が明らかにされてくるわけでございます。今までよくあったことは、とかく極秘事項ということでも、ややもすれば、漏れやすいという場合に、いや人を疑ってはいかぬのだ、そういう前提でものを考えてはいかぬということならそれまでです。もちろんそれが閣僚である場合は、それによって国家国民に大きな損失を与えたときには総辞職であるとか、何かそこに一つのとるべき、明らかにすべき責任態度というものがあるわけです。ところが民間人の場合にはそれがありません。ひいてはこれを内閣総辞職ということにつながらしめるのには、いささかどうも論拠不明の点がなくもないのです。こういう点を私どもどうも心配いたしておりますが、こういった点について民間人を入れなければ、大半の意味が失われると結論づけられる先生の御意見一つ承わりたい。
  41. 下村定

    下村公述人 第一の問題、これは数の問題でございますが、五人か七人か、あるいは三人がいいかということは、まだ残念ながら私は定見がございません。それは一つ立法技術の方でお考え願います。  それから第二の秘密の問題、これはしごくごもっともなお考えだと思いますが、これも私に言わせますと、国務大臣であるからその点はしっかりしておる、民間から出た人であるからそうでないということは言えない。ある場合には反対のこともある。そこで民間から出た議員がもしそういう過失を起したときにどうするかということも、一つこれは立法技術の方でやって下さい。私はわかりません。
  42. 江崎真澄

    ○江崎委員 その場面では非常に不安にお思いになるでしょう。それで責任は当然民間人としてもとらなければならぬそしてそこには一応の責任の所在を明らかにする罰則規定、そういったものが必要だというようなふうにお考えになりますね。
  43. 下村定

    下村公述人 もちろんです。
  44. 大坪保雄

    ○大坪委員 佐藤さんにちょっとお伺い申し上げたいと思います。先刻のあなたの御供述を承わっておりますと、防衛庁設置法も自衛隊法も違憲であるというふうにお述べになったようでございます。従って防衛庁設置法に基く国防会議関係法律を通すということは、違憲の罪をさらに重ねることになる、こう仰せられたのであります。ほんとうにあなたの御見解が正しいということになると、私どもは何をやっておるかわからぬということになるので、私どもはあなたの御見解に従うわけには参らぬのです。そこでちょっとお伺い申し上げたいと思いますのは、あなたは日本のような独立国に——日本も独立国であるが、その日本がという意味です。日本が自衛権があるということには御賛成でございましょうか。はっきり申し上げますれば、たとえば外国の直接侵略とかいうようなものに対して、わが国を守る権利はあるというようにお考えでございましょうか。その点を……。
  45. 佐藤功

    ○佐藤公述人 その問題になると、また九条の話を蒸し返すことになると思いますが、今の御質問については、私はそういう意味の自衛権はあると考えております。ただそれが自衛権を行使する手段として、軍隊というものは持てないし、また戦争という手段にも訴えられない。これはおかしいといえばおかしいのですが、それが憲法ができたときの考え方である、こういうふうに考えております。
  46. 大坪保雄

    ○大坪委員 それでは試みに、日本外国の侵略があったと仮定いたしました場合にはどうして守ればいいのでありますか。日本の国と国民の利益、生命財産、どうして守ればいいのでございましょうか、お教えをいただきたい。
  47. 佐藤功

    ○佐藤公述人 今の憲法の建前では、そういう外国が侵略をしてくるというようなことは予想しておらないと思います。それがその後国際情勢が変りまして、そういう危険が出てきたということでありますならば、その考え方が間違っていたということであり、それは憲法の改正ということで国民の意思を問うて、はっきりさせてからの話ではないかと思います。
  48. 大坪保雄

    ○大坪委員 それでお尋ねいたしますが、あなたも御承知だと思いますけれども、私はかって島根県に在任しておったことがございます。あそこの県有地として竹島という島があるのです。現在もあるはずです。これが今韓国軍に占領されておる。直接日本の領土が侵されておるのです。これに対する手は何ら打っていない。私どもは国土の侵略を現に受けておるのです。それからもう一つ今日李承晩ラインというものがございます。御承知通りでございます。これは国際法の原則慣例というものを明らかに無視しておると思う。韓国の沿岸から近いところでも三十数マイル、遠いところでは百七十マイル、百九十マイルの公海です。これは明らかな公海です。今日国際法を学んだ者の常識として当然公海である。その公海に勝手に一線を画して、そこに入って行く日本の主として漁民、これが権利を侵害されておる、生命が侵されておる、人身が抑留されておる。漁夫や漁船がとられておるのです。私どもはこれは海賊行為だと思う。しかしそういう侵略が現実に行われております。それに対して私どもはやはり手をこまねいてこれを見守っておるべきでございましょうか。こういう場合に対して一体どうすれば自衛権の効果というものが上るのでございましょうか、その点を一つお伺いいたしたい。
  49. 佐藤功

    ○佐藤公述人 そういういろいろの例があるということは私も存じております。しかし、たとえば今御指摘の竹島のようなことが、防衛庁法や自衛隊法にいう侵略されたときというのに当るのでございましょうかどうか。つまり防衛庁法あるいはこの国防会議法なんかで防衛出動ということをいっている場合は、ああいうところよりも、もっといわば本格的な侵略と申しますか、そういうものを予想しているのであると考えます。
  50. 大坪保雄

    ○大坪委員 それではお伺いいたします。私の非常に心配でならぬことは——しかしながら私は今の状態ですぐ兵力を持っていってどうせよということは考えておりません。申しもしません。しかし韓国の大統領の李承晩氏という人は、竹島は韓国の領土であると言ってやっているのです。さらにこれは新聞紙の伝うるところでありますけれども、対馬もまた韓国の領土なりと言っておるのです。現に韓国の領土なりといって竹島を占領しておる。国際法の原則や慣例を無視して、百七十マイルもの公海上で日本の漁民を抑留し、あるいは銃殺し、あるいは漁夫、船等を略奪しておる。こういう事実がある。そういう事実が積み重ねられておって、あの人は対馬を韓国のものだと言っている。もしそれ対馬に韓国の竹島のごとき侵略があったという場合にはどうでございましょうか。これもやはり守らないで私どもは手をこまねいておらなければならぬのでございましょうか。自衛力が持てるか持てないか、自衛力というものはどういうものであるかということについても、あなたの御意見に従って私はお尋ねしているのでございます。
  51. 佐藤功

    ○佐藤公述人 そういう具体的な問題として御質問を受けますと、私も正直に申しまして困るのでございますが、ただ初めに申しましたように、私は御心配になるような、そういう事態が出てきたということは、憲法が予想していなかったことであると思うのでございます。ですから、それが今、やれ竹島だ、何だというところでとどまっておればよろしゅうございますが、しかしこの法案を含めまして防衛三法が考えておりますような、侵略とか防衛出動とかいうのは、そういうものよりももっと大きなものを考えているのである。そうだとすれば、もしもそれを作ろうというならば、今の憲法のもとではできないというふうに考えるわけです。
  52. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は佐藤先生は学者として非常に尊敬いたしておりますが、そういう原則論をはずれた程度論をもってこられては、これは政治の問題が外交上の問題になるかもしれませんけれども、私どもは本日の公述人としての佐藤先生の御意見とはなかなか了解いたしかねるのです。それではどの程度ならば侵略になり、自衛をしなければならぬのであるか。どの程度ならば侵略にならぬし、自衛をしなくてもいいかということは、その場の状況とかいうようなことできまるということでは、私どもはまことに迷ってしまう、困るのであります。そのところはやはり学者として私どもは伺っておりますから、はっきりお教えをいただきたいと存じます。
  53. 佐藤功

    ○佐藤公述人 どういう程度にやれば侵略になるかということは、理論的には国際法の問題であるわけでございます。その場合に、あるいは竹島というものが国際法のとらえ方からいいますと、侵略であるということは言えると思います。ただ日本が、その侵略があるからといって軍隊を設ける、あるいは防衛出動をするということとは、これは別の問題ではないのかということなのです。
  54. 大坪保雄

    ○大坪委員 そこがわからぬのです。それは学者の学問上の議論じゃないのです。それは現実の政治上の問題として、竹島に日本防衛出動をしない方がいいと思うから、していないだけの話である。ただ、あなたは今の憲法上自衛力は持てないのだと仰せられたのですから、そこのところが私どもは心配なんです。竹島の程度や李承晩ラインの程度はがまんするといたしますか。しかしながらいろいろの過失を積み重ねてきた韓国が、もしあやまってもう一ぺん対馬を占領に来た場合にどうするかということがあるのです。私どもは、どうしても独立国は力に相応するある程度の自衛力を持たなければならぬ、その持つということが外国の侵略をおのずから防ぐことになり、外国のそういう侵略の意図を抑制する力になる、かように考えて、自衛力は持てる、従ってある程度の自衛軍は持たねばならぬということで、高い税金を払ってやっておるわけです。それを自衛力は持てない、持つべきではないという議論が世の中に非常に横行するようなことになりますと、私は国民の思想上に非常な混迷を来たすと思いますからお尋ねしたわけでございます。しかし大体佐藤先生のお考えもわかったようでございますから、これ以上の追及はやめておきます。なお私はもう一点尋ねたいと思いましたが、だいぶ時間もたったようでございますから、打ち切ることにいたします。
  55. 床次徳二

    ○床次委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  56. 床次徳二

    ○床次委員長代理 速記を始めて下さい。これにて公述人各位の御意見の陳述並びに質疑は終了いたしました。この際公述人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず御出席を願い、貴重なる御意見を陳述いただきましたことに対しまして厚くお礼を申し上げます。  本公聴会はこれにて散会いたします。     午後零時五十一分散会