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1955-07-11 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十一日(月曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君    理事 田原 春次君       大村 清一君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    粟山  博君       山本 正一君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    小金 義照君       田中 正巳君    田村  元君       松野 頼三君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       下川儀太郎君    鈴木 義男君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         人  事  官 入江誠一郎君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠雄君         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 七月九日  軍人恩給支給額引上げ等に関する請願眞崎勝  次君紹介)(第三七四五号)  恩給法の一部を改正する法律の一部改正に関す  る請願眞崎勝次紹介)(第三七四六号)  海軍特務士官並びに准士官処遇改善に関する  請願保科善四郎紹介)(第三七四七号)  長野県上田市の地域給引上げ請願松平忠久  君紹介)(第三七四八号)  北富士演習場使用条件に関する請願内田常  雄君紹介)(第三七四九号)  米軍飛行機等の騒音による教育上の損失補償に  関する請願内田常雄紹介)(第三七五一  号)  米軍演習による生活補償に関する請願内田常  雄君紹介)(第三七五二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  八一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)  通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四一号)  公務員の給与に関する件     —————————————
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより会議を開きます。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、まず政府より提案理由説明を求めます。石橋通商産業大臣。     —————————————
  3. 石橋湛山

    石橋国務大臣 通商産業省設置法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  改正内容は、第一に通商局に置かれております次長を一名増員することであります。通商局は現在十四課に分れておりまして、その事務量が膨大であるために、局長の下に次長を一名置きまして局務の整理に当らせておるのでありますが、局長を補佐して次長処理すべき事務として、輸入関係におきましては外貨予算作成外貨資金割当輸出関係におきましては輸出承認バーター契約許可中共貿易問題の処理等、特に錯雑した問題が山積しているのみならず、渉外関係におきましても、局長にかわりひんぱんに行われる通商交渉に出席する必要がございまして、さらに事務範囲が広範なために国会の関係委員会も多数にわたりまして、政府委員としてもきわめて多忙となっている状況であります。従いましてこの際次長を一名増員して二名といたし、事務処理の適切を期することといたしました。  次に改正点の第二といたしましては、去る四月一日に国際的供給不足物資等需給調整に関する臨時措置に関する法律が失効いたしましたのに伴いまして関係条文を整理するとともに、すでに存置の必要のなくなりました物資需給調整審議会及び電気自動車充電技術者資格検定審議会を廃止することといたしました。  以上が本法案の概要でありまして、何とぞ慎重御審議の上御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより質疑に入ります。田原春次君。
  5. 田原春次

    田原委員 新しく設けようとする二人目の次長は何をされますか。
  6. 岩武照彦

    岩武政府委員 この御提案いたしました法律が成立いたしました暁には次長二名と相なりますので、その事務分担につきましては一応次のように考えております。一名は通商局政策と申しますか、いろいろ輸出振興あるいは通商協定等の問題を扱います。残る一名は一番事務のひんぱんで多忙であります輸入関係仕事並びにバーター貿易等の問題を扱いたい、こういうふうに考えております。
  7. 田原春次

    田原委員 従来大蔵省通産省、それから外務省との間に人事交流が一部なされたと思いますが、この新しい第二次長通産省出身の者が大体当ることになっておりますか。外から人事交流で持ってくる、そういうエキスパートを充てるのですか、性省上どっちですか。
  8. 岩武照彦

    岩武政府委員 人事交流をやっておりますことはお話の通りでありますが、さしあたりこの法律が成立いたしまして最初の増加いたします次長は、これはまだ十分大臣の御決裁を得ておりませんけれども、省内からやりたい、こういうふうに考えております。
  9. 田原春次

    田原委員 次長はもちろん本省にお置きになるわけですか。
  10. 岩武照彦

    岩武政府委員 さようでございます。
  11. 田原春次

    田原委員 通産省関西に支局というか、分庁のようなものを置く考えはありませんか。
  12. 岩武照彦

    岩武政府委員 通商関係は、御指摘のように、関西方面が相当日本貿易量の大きな部分を占めておりますので、現在地方機関といたしまして通産局というものを持っておりますが、大阪通産局におきましては、特に通商事務のために通商部という特別の部を一つ持っております。ほかの局におきましては通商関係事務商工部の中の通商課というふうな一つの課でやっておりますが、大阪におきましては特に一つの部を設けてやっております。ほかに神戸に通商事務所を置きまして約三十名余りの職員を擁しまして、通産局に持ってきませんで、現地でできるだけの事務をさばきまして、通商関係の御要望に沿いたい、こういうふうになっております。
  13. 田原春次

    田原委員 ただいまの御説明は、私の聞いたのと少し意味が違うのです。私の聞こうとしたのは、関西四国、中国、九州等から通産省本省許可認可のために実に厖大な人が来なければならぬ。従ってたとえばこういう次長でも置く場合に、関西に置いて本省と同格の決裁をする、一々大臣まで来なくてもいいようにしたらという気持があったから聞いたのです。ところがただいま御説明ですと、全国にある地方通産局のうち大阪は受け持ちが多いので部になっているだけで、四国九州のものは、本省で受くべきものを大阪通産局限りでやるということにはならぬわけでしょう。権限としてはやはり地方通産局程度なんですね。
  14. 岩武照彦

    岩武政府委員 権限的には御指摘通りであります。通商関係あるいは産業関係事務にいたしましても、現在できるだけ地方通産局長権限を委任しておりますことは、あるいは御承知かと思いますが、輸出関係におきましては輸出承認その他の事務を、いわばほとんど大部分と言っては語弊がありますが、相当大きな量を輸出関係は委任しております。  それから輸入の問題でございます。これもできるだけ地方に委譲する建前でやっておりますが、何分御承知のように、この輸入関係全国的に見ないとなかなか処理のむずかしい問題もございますのと、それからもう一つは、いろいろむずかしい問題もございまして、比較的大臣の御決裁を直接要する事項が多うございますので、輸入関係輸出に比べまして、比較的権限委譲の幅が少いのは実はやむを得ない事情になっております。そうしまして先ほど申しました意味は、現在大阪中心といたします日本貿易量は、全国のおそらく四割ぐらいになっていると思いますが、その関係仕事のうち相当な部分地方に委譲いたしておりますので、実質的には相当のところが大阪通産局長限りで処理されているような実情でございますが、御指摘のような事情かございますので、なおわれわれとしましてはできるだけ各局、特に機構の充実しております大阪通産局に対しましては、事務、ことに通商事務権限委譲は引き続き行いたい、このように考えております。
  15. 田原春次

    田原委員 バーター契約許可通産局限りでなくて、全部本省になっていると聞いておりますが、そうでございますか。
  16. 岩武照彦

    岩武政府委員 さようでございます。この問題は、理由を申し上げますと、バーターにつきましてはいろいろな利害得失等がございますので、これは本省におきまして大臣決裁で判断した方がいいというふうに考えて、さようにいたしております。
  17. 田原春次

    田原委員 最近の貿易界傾向各国とも輸出をやりたい、同時に今度はその輸出品を受ける国からいうとまた輸出をやりたいから、自然輸出だけもしくは輸入だけということは実はあまり大きくならない。最近の傾向を見ますと、むしろバーター契約というか、輸出入を一本にした国際間の契約というものが進んでいる形になっている。従って地方本省仕事をある程度委任するとすれば、バーター契約許可を、内容等によっては地方通産局に許すというふうにしなければ、非常に業者は迷惑してくる。実例を私は二つ聞いている。一つは南朝鮮から雑貨類を買っている、わずか四、五十万円ぐらいのものですが、それに対してバーター日本から書籍を送っている、その書籍を、東京まで来て旅館に二週間おってだれだれ著辞典一冊、だれだれ著教科書一冊ということまで明細に書かして出さしている。四、五十万円の取引に対して十日間もおったのでは、何ということはない、東京に来た旅費によって非常に損失を招く、ところが扱いバーター契約はすべて本省である、しかも本省バーター契約を扱う人は一人か二人だ、陳情に来ると書類が山のごとくある、とても順番を待っておっては幾らかかるかわからない。多少誇張があるのか、事実かどうかわかりませんが、方針としては敏速を要する貿易上のことでありますから、バーター大臣決裁をするという建前はくずさぬとしても、扱い量あるいは金額あるいは毎年大体やるようなものに対しては、大幅に通産局仕事を分けてやったらどうか。地方から来る百万円以下のものはこれでたいへん迷惑しておる。何億、何十億というものに対しては、国の輸出政策バーター契約大臣決裁することはわかるわけです。しかし私が今お聞きしておるのは、次長を二人置くなら、二人とも東京に置くのでなく、大阪に一人置いてある程度の決裁権を与えておいたら、扱い上非常に楽なんじゃないかと思う。戦前にも大蔵省と当時の軍需省ですか、やはり局長課長を入れかえて、あるいは軍需省の中に大蔵省課長がそのまま入ってやったことがあるのです。ですから、これは結局能率化の問題になるわけですが、バーター取引契約に関して、そのいかんを問わずあくまで中央本省大臣決裁を仰がなければならぬという、その根拠をお尋ねしたいと思うのです。
  18. 岩武照彦

    岩武政府委員 絶対に本省でやらなければならぬという根拠もございませんが、ただ実情としてこういうことがございますので、御了解を得たいと思います。それはつまり民間の個々商社バーターの場合でございますが、輸出の方につきましては比較的問題は少いのでございます、これは特殊なものしかあれしておりませんから自由にやらせておりますが、輸入の方につきましては、御指摘の魚の場合もそうでございますが、その他のいろいろな農林水産物等につきましても、農林大臣と協議する、その同意を得てやることになっておりますので、これはそういう設置法建前になっておりますので、個々のケースではございませんけれども、ある季の数量でございますとか、あるいは品物の種類でございますとか、あるいは時期とかにつきまして、これはその品物ごと農林省当局と打合せをやっておるような事情でございます。従いまして、バーターにかかります輸入の方にはそういう品物が比較的多いわけでございまして、実情といたしましては特に農林水産物が多いのでございますが、そうしますと、地方にまかせますと、そういう品物数量とかあるいは時期等につきまして、あるいは価格等の問題もあると思いますので、やはり農林省当局と打ち合せをして処理するということが、実は実情でございます。その結果、バーター契約全体につきまして本省処理することが比較的多いのでありまして、まあ本省ということを考えたわけでございます。そういう実情考えてやったわけでございますから、そういうふうな問題のないような商品同士バーターでございますれば、これは状況によりまして地方におまかせするということも考えております。
  19. 田原春次

    田原委員 現在、五百ドルか千ドルぐらいの契約は、たしか地方通産局とか税関にまかされておると思うのですが、こういう小額のバーター契約についても同じく大臣決裁を仰ぐのだということになると、どうしても密輸の傾向が強くなってくると考えます。ですから、これは規則を重視する方がいいか、実情を重んずる方がいいかの分かれ目にあると思うのですが、皆さんのように中央におって考えれば、これはほかの省にも関係があるのだからということで、中央でやった方がいいということになるかもしれませんが、しかしそのことによって小さな業者は非常に迷惑をしておるわけです。ですから、せっかく設置法改正する機会でもあるし、そういう意味から、もしも次長を二人置くのであるとすれば、大阪に一人ぐらい置くべきであると考える。東京に二人置くことによってかえって仕事が煩瑣になるのでは困りますから、大阪にも一人置いて能率を上げるようにすべきだと思います。従って、これは質問の範囲じゃないかもしれぬが、近き将来はバーター取引といえども、一定額一定物品については地方通産局に委任する、そうして地方決裁できないものは中央で取り扱うようにしたらどうか、こういうことを私の希望として申し上げておきます。  次はバーター契約でここ数年来大へん問題になっておることがある。それは何かというと、ソ連圏ルーマニアの一番大きな輸出品である石油日本に入れようとした、日本繊維製品向うにやって向うから石油を入れるという計画がもう三、四年前からあるということを聞いておるわけです。しかるに通産省がこれをどうしても決定し得ない。これは石油が新たにルーマニアから入ってくることになれば、それだけ新規に増量になればいいが、一定量しか入らないということになると、既存の石油業者にしか利益がいかない。それでバーター契約本省ですると称しながら、二年も三年も許可も不許可もせずに引っぱっておくということは、いかにも通産省が他の反対業者の運動に動かされておるのではないかという気持を強く持たざるを得ないわけです。やるならば公平にやるべきである。またやり方からすればアメリカから入れる量を減しても、新しい日本綿製品等の出るバルカン地域等にマーケットを開くならば、むしろルーマニア石油を優先的に入れるべきじゃないか、この点についての大臣のお考えを聞いておきたい。中共貿易ソ連貿易等も最近いわれておりますが、バルカン貿易としてチェコスロバキアからは鉄、ユーゴスラビアからは農産物、ルーマニアからは石油、そういうふうに日本の必要な品物向うから買い、また日本製品を売ることですから、バーター契約本省で一本にするというならば、政策的に大きなものを扱って新境地を開いてはどうかと思いますが、これに対する通産省の態度がまだはっきり出てきておらぬ、あなたの考えはどういうところにあるか、これについて一つ考えを聞かせてもらいたい。
  20. 岩武照彦

    岩武政府委員 ルーマニア石油の話は私も聞いておりますが、これはこういう事情であるようであります。石油をどこから入れるかということは、これは現在のように英米関係以外からも入れたいとわれわれも実は考えております。ただこのルーマニアの場合に問題になりましたのは石油値段でございます。値段というのは、結局製油所が引き取るときにそろばんに合うか合わぬかということになるわけでございます。これは外貨と申しますか、結局見返りの綿布との関係になりますから、価格の問題が一番の問題になるわけであります。御承知のように、ルーマニアの油は硫黄分が少し高いのでございます。そういう関係かどうかわかりませんが、どうもその当時契約面に現われました値段英米のものに比べて、はっきり数量は覚えておりませんが、大分高かったのであります。高いので製油所側が喜んで引き取らない。そこで輸入業者からその石油の何割かに相当するほかの油の割当をふやしてくれ、いわゆるメリットでございますが、それを相当大きな幅を要求してきたわけでございます。そうしますと、一体何のことだかわからないことになりまして、比較的高いものを買うためにその商社によけい外貨をつけなければならぬ、英米系の油の外貨をつけなければならぬ、そういうことでは話が少しおかしいのじゃないか、もう少し値引きができるように交渉をしたらどうかということで再三やったわけでございますが、結局いわば採算点と申しますか、ほかの油に匹敵するまでの値引きの話がうまくいきませんで、たしかこの話は今消滅になっておると考えております。事情はそういうことでございます。決してよその関係があるからといってこれを押えたわけではありません。そういうふうに持っていくものにつきまして、価格上、あるいな若干品質上の問題があったからということでございます。
  21. 田原春次

    田原委員 ただいまの御答弁によると、外貨を使うから云々ということを言われましたが、このルーマニア石油を入れるということの話は、バーターであったと思うのです。従って日本商品を出して向うから油を買うわけです。なお向うの油の品質が悪いとか硫黄分が多いとかいうことになれば問題でございますが、こちらで使えるものであったならば、新市場の開拓であるから、試みに本契約に入る前にやってみることが必要だと思います。それらの努力をせずに放置しておるというところに、これはどうも英米石油に圧迫されているのではないかという心配があるわけであります。でありますから各国から平等に必要なものを買うということになり、同時にまた日本輸出品を引き取るということになったならば、はなはだしく劣悪な品質で高価なものであるならば別でありますけれども、大体これで間に合うというものならば買うべきではないかという私の意見に対して、ルーマニア石油は今後絶対に入れないつもりであるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  22. 岩武照彦

    岩武政府委員 御指摘のように、ルーマニアは新市場でございますので、われわれとしては、綿布が出ますことは非常に歓迎しており、何とかしてこの契約ができ上るように考えておりますけれども、今申し上げましたように、製油所へ渡す値段がほかの油に比べて高くなるものですから、輸入業者は、メリットとして普通の英米系の油の割当を自分によけいくれというような要求がついて参りまして、それではちょっと話がおかしいじゃないか、もう少しリーズナブルな値段になるように向う交渉したらどうかということで、実はメリットの幅も、全然メリットをつけないということではないのですが、あまり幅が大きいものですから、これはどうもいかがかということで値引き交渉を再三再四やったわけでございますが、どうも商社の方ではこれ以上どうにもならぬようだからということで、一応手を引いたというふうな実情でございます。今後もリーズナブルな値段で油がくるような市場でございますなら、これはああいう市場でございますから、わが国の綿布なりあるいはその他の市場としてわれわれとしても注目しておりますので、極力やりたいとは考えております。ただその後いろいろ事情がわかったのでございますが、ルーマニアの油は、戦前は相当出た有望な地帯であったのでございますが、最近はだいぶん減っているようでございます。百万キロを越えた時代もございましたが、最近はどうも四、五十万キロ前後ではないかというふうにいわれておるようでございます。従いまして、今後日本に永続的にきわめて多量の油が入れられますかどうか、これはいろいろ問題があるわけでございまして、決してわれわれとしましてはルーマニアのみならず、北樺太などソ連圏の油を阻害しているということではございません。
  23. 田原春次

    田原委員 そのメリット英米の油をよけい買うようにする必要はないと思います。問題は綿布輸出業者それから石油輸入業者、それから通産省関係担任官くらいがルーマニア油田等一つ調べて、ルーマニアというのは日本商品の新市場可能性があるならば、できるだけその実現の方向に向って調査するくらいの準備を進めていただきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、外貨予算作成外貨資金割当という点であります。御承知のように、外貨予算外貨資金は、通産省からもいろいろ意見は出るが、結局大蔵省決定権を持っておるのであります。自然大蔵省貿易に対して直接の官庁でないにもかかわらず、非常な容喙権を持っている。そのためにまた弊害が相当多い、そういう例をわれわれは知っておる。一例を映画輸入にとりますと、映画ははなはだしく不公平なものであって、結論的に申しますと、これはぜひ変えなければならぬと思っております。現在は年間に外国から百七十本かの映画が入っておる。その中で、占領期間中に入ったアメリカ映画を実績と称して、百七十本のうち百二十二本もアメリカ映画を入れて、残る四十何本かをイギリス、フランス・イタリアあるいはスエーデン等に割り当てておる。はなはだしく不公平である。これはその間にいろいろな問題が介在しておりまして、通産省で片づけ得ずにおるわけです。従って外貨だけの点で大蔵省が見ておりますから、御承知のようにギャング映画が入ってくる。きょうの新聞を見ましても、十八、九才の子供が二人の女を殺したとかいうことが出ておりますが、そういうように簡単にピストルをもてあそぶということは、確かに日本古来の美風にあらずして、輸入俗悪映画からくる弊害です。従ってこれは、何ドルというワクがあるから何本入れるということで大蔵省中心考えておるところに弊害があるのでありまして、映画のごときは、むしろ通産省においてすらも不適当と思われるのであって、できれば文部省、厚生省が中心となり一般の良識ある人人が扱っていく。日本におるわれわれが外国映画を一本も見られないということでは困りますよ。高いドルを使って買うならば、それによって日本民族の独立の気魄を涵養し、あるいは産業技術振興、あるいは青年の娯楽の中において良識を高めていくというようなものをサンプルの意味外国から買うならばよいけれども、二言目には人を殺すようなアメリカ映画を入れるということは、外貨資金割当において、通産省がお預けを食って大蔵省が携わっておるからであります。そこでせっかく次長をふやすというならば、外貨資金割当等についてはもう少し自主性を持たせる。映画以外の問題もありますけれども、映画は単なる商品ということでなくて、その人心に及ぼす影響がはなはだ強い。でありますから、たとえばブラジルのように、日本人がすでに四十万もおるところに日本映画が行かない。それはブラジル政府映画輸出入規則からいって、ブラジル映画を買う国から映画を入れておるからである。日本にはブラジル映画は入りません。そのほかアルゼンチンでもビルマでもインド、インドネシアの映画も入らない。どうにか二年くらいたってようやく一本くらい入るような状態である。要するに外貨資金割当が、銀行屋のような、財布のひもを締めておる大蔵省に握られておる通産省のだらしなさからきておると思います。通産省は頭を下げっぱなしで、ごきげんばかり伺っておるから大蔵省が少し思い上ってくる。そんなところまで何も干渉する必要はない。この機会に次長を置くというならば、最初に質問したように、人事交流をやって、大蔵省為替局にあなたの方から一人くらい課長を出す、そうして大蔵省からもかわりに一人もらって省内的に転換をするというくらいの気魄があるかどうかというと、そうではなくて、ただ平面的に並べて第一次長、第二次長を置いておくということでは、役人が一人ふえるだけだ。われわれが審議しますからには、あくまでも公平に、どの省を特にカバーするというわけではないが、せめて映画くらいはよく調べて、文化的にこういう映画を入れた方がよいということになったならば、きまったワクの中から融通するくらいの融通性があってほしいと思います。固定的に北米映画を百二十二本も入れていくという理由はないと思います。公平に言って、百七十本入れるとするならば、さしあたり半分くらいならアメリカ映画を入れてもよいと思います。そうすれば多少名画も入って参ります。今のような西洋チャンバラ映画はごめんをこうむりたい。被害甚大であります。そういう点について通産省は少しも言えない。次長を入れるならば、大蔵省の為替局長くらいを通産省次長にしておいて、そのかわりにとりこにして、これとけんかをするという作戦があるかどうか、その意思がないならばあまり意味がないと思いますが、石橋さんの考えはどうですか。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御説はきわめてごもっともであります。映画の問題は実は現在も少し困っておるわけであります。何とかほかから入れたいと考えておるような状態でありますが、今までのいろいろのいきさつがあって、アメリカ映画を一挙に減らすということも困難の事情があるものでありますから、これからそういう点について一つ御趣旨のようにやりたいと考えております。
  25. 田原春次

    田原委員 これはバーター契約許可ということで扱い輸出を奨励をするというのでありますから、今後外国映画を一本入れる場合は、日本映画を一本買う、こういう条件をつければアメリカさんでも日本映画を年間に百二十本買わなければならぬということになって、従って自分で減らしてくる。現にアメリカに行っておる映画は「羅生門」とか多少名の売れたものは行っておりますけれども、それ以外ほとんど出ておりません。御承知のように、太平洋沿岸のカリフォルニア、オレゴン、ワシントンあるいはハワイ、日本人のたくさん集まっておるところには、毎日日本映画をやるところがありますが、フィルムがなくて困っておる。だからブラジル式に少くとも日本映画を買うところの本数を交換的に買うという方針をきめる、そうでなければ各国に一本ずつ割り当てる。百七十本のうち、一本ずつ割り当てる。八十カ国あれば八十本ぐらいはノルウエーとかイスラエルという国からのまだ見たことのない映画も見られるようになるのであります。そうして残りを過去の実績にするとか、あるいはバーターとするとするならば、いながらにして世界の映画が見られます。そうでなくて、今までのような占領中の一方的なやり方を実績と称してふしぎに思わぬところにふしぎがある。独立の完成は何よりも大事です。いわんやドルを使うのです。そこで最も近き将来に、必要とあらば国会の適当な委員会大蔵省映画担当官を呼んで、そこで皆さんと対決させて確約をとってもいいと思う。来年からは少くとも一国に偏重するということをしないような気魄を持ってもらいたいと思う。これは希望でありますが、バーター契約に関しては、映画に関して一本に対して一本という方向に持っていくべきものだという考えを持っておりますが、これに対する見解はどうですか。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 原則としては、映画に限りませんで、ほかのものも、お説のようになるべく多くのところから輸入をして、そして日本商品輸出したい。こういう方針で今指導をしておるわけであります。映画にしましても、国内の需要の関係もあり、一挙にアメリカ映画を減らしてほかの映画をふやすということも、いろいろな関係から困難がありますから、徐々にやる以外に道がないと思いまして、現在それに努力をしておるわけであります。
  27. 田原春次

    田原委員 徐々にやるといっても、一体この内閣が何年続くか、来年ごろに交替しますと、また新しく研究しなければなりませんから、まあその任にある間に方針だけは立ててずっといくようにしてほしいと思う。  それから貿易一般についてもう一つ聞きたいことは、ソ連圏でもなく、そしてソ連に近い性格を持っておるユーゴスラビアとの貿易の問題です。これまた過去数年間あいまい模糊としたうちにきておる。通商協定もできておらぬ。戦前の通商協定の条項だけをかりに生かすということでありまして、新しく通商航海条約を結んでおりません。しかるにユーゴは日本から物を買いたくて、ビスコース、プラントの千数百万というものを買っておる。引き続き今後も車輪とかレールとかいうものを買いたいという。ところが通商航海条約がないから非常に日本側に不便になっております。向うからは現金で払えないから向うの小麦だとかあるいはトウモロコシだとかあるいは鉱産品を原料に買ってもらいたいという。ところが小麦にしてもトウモロコシにしても、アメリカやアルゼンチンから大量に買って、新しい市場としてユーゴがあるにもかかわらず、買うことができない。これに対する熱意もまた通産省は足らない。よろしく新市場開拓のために特に日本のプラントなどがバルカンの一角に出るということは大きな歴史的な意義があるわけです。すぐ近くにドイツがあり、またベルギーあり、フランスあり、イギリスあり、工業技術の進んだ国があるのに、はるばる日本からものを買っておるし、また今後も買おうというのに対して、向う品物を買うためには、必要となればアメリカの小麦くらいはお断わりしてでもユーゴの小麦を買ったらよろしいと思うのですが、そのことになりますと農林省、通産省というようなことでじんぜん四年間、まだめどが立たない、こういうことは少くとも通商局次長一つふやすというくらいならば、先ほどあなたの説によれば通商政策をやるためにはぜひとも世界を見渡して新市場の開拓をする、そのためにはもちろん過去の実績をもった石油に対しては北米、小麦に対してはカナダあたりが少し減らされることはやむを得ないのです。その点の抵抗を排して新市場を開拓するくらいの勇気と見識を持たなければならぬ。勇気と見識ばかりに次長を置くのか。特に置くというならば何か特色を持たなければ、われわれ議員としてもどうも不安でいかぬので、この際方角は新市場の開拓のためにはどういうことでもやる、そのためには英米からの買付品も減してもやむを得ぬというくらいの説明がほしいと思うが、どうですか。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 よくわかりました。ユーゴの問題は直接に今小麦などの引き合いを聞いておりません。そういう引き合いがあればその場合場合によってむろんわれわれとしては考えるのであります。何しろ今の通商関係は、先ほど官房長からも言いましたように、水産物については農林省、それからまたいろいろの渉外関係においては外務省と今いろいろの故障も確かにあります。そこでそういう故障を一々取り除いて、もう少し強力な通商政策をやりたいというのが私どもの念願であります。今回次長を一人新たに置きますことを機会に、御趣旨のように、一つ強力なる通商政策を実行するように各省とも連絡をいたしたい、こう考えております。
  29. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 粟山博君。
  30. 粟山博

    ○粟山委員 この機会に石橋通産大臣にお伺いします。ただいま参考に御配付になりました通産省権限、現行規定と改正後の規定の中で、この資料を拝見いたしますと、第三十及び第三十一が削除されるようである。おそらくこの問題はこの内閣委員会よりも通産省委員会において詳しく御審議を得られるものと思うのでありますが、定員法に関する限り、ここに通産大臣にお目にかかる機会を得たのであるから、簡単ながらちょっとお伺いしておきたいのですが、こういうような削除が行われるということは、これは現在の日本輸出入状況からみて、もうこれまでに目に余るやみ取引というようなことは大分おさまってきた。そうして輸出入のバランスの状況もだんだん順調にいっておるというようなすなおな見通しの上から、こういうような条文の改正になっておるのでないかと思うが、大臣のお考えはどうですか。
  31. 石橋湛山

    石橋国務大臣 経済的の意味はお話の通りでありますが、これを削除するのは法律関係で、この根本法がなくなりましたからこの条項を必要としないということであります。これを削除するのは法律関係でございます。
  32. 粟山博

    ○粟山委員 ところでまだ一つ伺っておきたいことは、何といっても日本輸出を多くしようと思えば資材を多く外国から仰がなければならぬ。そういう貧困な資源のあり方における日本状況から推しまして、輸出を盛んにしなければならぬという国策の上からすれば、ますます資材の輸入というものは大きく期待される。さようにいたしますれば大きな資金がいる。金融資金の大きなものに依存しなければならぬのは当然でありまするが、今までせっかく官庁の思いやりで、「国際的に供給が不足する物資等の使用、譲渡若しくは譲受又は引渡の制限又は禁止を命ずること。」それから「国際的に供給が不足する物資等の譲渡を命ずること。」というようなことは、これは資材の円満な交流を期せられて、官庁がやみ時代の弊害を押え、物資の偏向を調整するために行われたものと考えられる。もしこれを取ってしまった暁において、善意に解しましても、大資本に対して、小さな資本でまかなっている中小企業の多くのもの、それらのものの必要とする外国依存の資材などに対する非常な困るような状況を来たすようなことがありはしないかということも考えられるのだが、こういう点について何か官庁では特にお心づかいを持っておられるか、お聞きしたい。ことに今日は、中小企業といっても、今まで標準にしておる労働者、使用人などの四百、五百というようなものは、資本金額からいっても運転資金の上からいっても、相当大きな金額を要する。しかるにそれ以下の中小企業者というものが数多く、やはり日本の大きな輸出産業につながっておるのであります。そういう面における資材を取り入れようというときに、金が不足しているために資金に困るようなことがありはしないか。私はちょっと言いにくいのでございますけれども、資金のない面の中小企業の人々が、適当な安価な輸入資材を求めるのに、一そうこのために苦労を生ずるようなおそれはないかということをちょっとお聞きしておきたい。
  33. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまは、国際的に輸入をしようと思えば、輸入できない物資というものはまずないのでございます。従って国際的に不足する物資についての臨時措置法というものがなくなりまして、手続上こういう条項を削ったのでありますが、お話の中小企業等に対する資材の供給という問題は、別途に外貨割当その他の関係の場合にそのことは十分考慮をしてやっている次第でございますから、国際的に不足というよりは、国内の外貨割当等関係から、現在はいろいろの需給の調整を要するものはございますが、そういうものについては調整をいたしておる次第でございます。
  34. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——なければ、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  35. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 次に公務員の給与に関して調査を進めます。本件について質疑の通告がありますので、これを許します。森君。
  36. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は給与の勧告についてお尋ねしたいと思うのですが、担当の大久保国務大臣、それから人事官等は御出席ですが、私はきょうは人事院総裁はぜひ御出席を願いたいと思っておったのですが、やはり病気が相当悪くてきょう出席できないというのですか、あるいは二、三日したら出られるというのですか、その点をお尋ねしたいと思います。
  37. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 二、三日して出られますかどうか、ちょっときょうのところは出席いたしかねているわけです。
  38. 森三樹二

    ○森(三)委員 こうした勧告問題は、人事官が出席されておりますけれども、やはり総裁は勧告に対する最高の責任者として本日は出席願いたかったのです。しかし病気であることは聞いておりまして、悪いというならば、やむを得ない。  そこで公務員に対する給与ベースについて、昨年七月十九日に人事院から国会及び内閣に対して給与に関する報告がなされました。しかしながら当時の人事院の考えとしては、当然給与ベースの改訂をすべき段階であったけれども、当時の経済的な情勢等によって、経済の不確定要素のために勧告を留保する、このような報告がなされた。そうしてまたいよいよ一ヵ年経過いたしまして、今年の七月十八日までにはぜひ勧告しなければならないような情勢になっているのでありますが、これに対する人事院の御所見をお願いしたい。本来ならば、昨年やはり給与ベースの改訂を勧告すべきであった。しかるにそれが留保された以上は、本年はどうしても人事院は責任をもって給与ベースの引き上げの勧告をなさねばならぬ、かような考えを強く持って質問を申し上げたいと思うのです。御所見をお伺いしたい。
  39. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 お話の通り昨年勧告を留保いたしまして、その後経済情勢などを見ながら留保を続けて参ったのであります。本年もすでに七月になるのでございますが、同時に毎年やっております三月現在における民間給与その他についての調査を進めまして、これは相当大がかりな調査なものでございますから、若干日にちがかかりまして、しかしそれもようやく大体目鼻がつきかけましたので、昨年は七月十九日でありましたから、おそくも七月十八日までには、報告なり人事院の勧告なり、人事院の見解をきめなければならぬわけでございまして、今週中に結論を得たいと思っております。
  40. 森三樹二

    ○森(三)委員 今週中に結論を得たいといわれているのでありますが、昭和二十八年に人事院が勧告をされて、昨年の一月一日から現行の給与が実施されているわけでありますが、しかし人事院は、国家公務員法第二十八条の規定に基いて、当然毎年一回はこの給与の実態を調査して、その俸給表の給与を百分の五以上増減する必要があると認定された場合には、法律上当然に国会と政府に対して勧告をしなければならない情勢であります。昨年勧告を留保し、しかもその後における経済の情勢、またわれわれの判断からいたしましても、昨年留保してありましたのですから、その建前からいっても、本年は何ら留保した理由というものは存在しなくなっているのであるから、この際人事院は公務員の生活を守るという建前において、勧告なさるべき当然の条件が具備されている、このように考えているのであります。そこで全国の公務員はこれに対する非常に大きな期待を持っている。私は人事院がやはり明確に所見を国会において表明されることが正しい行き方であると思うのでありますが、これに関して人事院の考え方、そうして人事院は勧告をされるかどうかという重大な立場にあるのでございますが、もしも勧告をしないというような考え方が少しでもあるとするならば、私は大きな誤りじゃないかと思うのです。人事院は過去一ヵ年間、昨年勧告して以来、全国におけるところの民間給与の実態あるいは公務員の給与の実態を調査してきた。従って材料は相当正確に収集されておる、またその材料に基くところの判断からいっても、もはや勧告をしなければならない段階にある、諸条件は具備されている、かように考えておるのであります。これについて明確に一つ御答弁を願います。
  41. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 ただいまのお言葉の通り、公務員法二十八条によりまして民間給与、生計費及びその他の条件と大体三つの要素を勘案いたしまして、俸給表が適当でありますかどうか国会と政府に同時に報告または勧告することになっております。そこで昨年大体民間給与との差が一〇%程度ございまして、ただいまお話しの通り一般経済情勢につきまして不確定な要素がある関係上、一般国民の税負担から来る公務員の給与につきまして、早急に上げるべきかどうかとということで留保して参ったのでございます。今年の状況につきましてまだ正確に資料を整備いたしませんし、またこれを整備いたしました上は国会と政府へ同時にごらんに入れることになるのでございますが、公務員の給与という要素、それから民間の給料の内容につきまして、また昨年と大分違った要素もあるようでございますし、その他の条件も勘案して最後にどういうふうに結論をつけますか、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  42. 森三樹二

    ○森(三)委員 人事院は東京における機構あるいはまた札幌、福岡、大阪等に各支所がありまして、絶えず全国の調査をやっておられると思います。しかもこの一ヵ年間において人事院がなされたことは、昨年は勧告を留保し、今日まで実際において内部的には資料収集等をやってこられたかもしれませんけれども、外部的には人事院の意思というものは何ら表明されておらないのです。人事院では相当正確なところのデータに基いて結論というものが出ていなければならぬと思う。何も裁判の判決でもするような気持で、その意思をひた隠しにしておく必要はないと私は思う。むしろわれわれとしては、あなた方が昨年勧告を留保しておった事態にもかんがみ、ことしはぜひとも一つ公務員の給与を改善するために勧告をしたいというような希望というものは当然出てこなければならぬと思います。勧告するのかしないのか、まだ資料がはっきりしないというようなことでは、私は納得できないと思います。人事院の機能というものが全く権威を失墜し、昨年の勤務地手当の勧告にいたしましても、それさえも政府が実施しておらない。しかも人事院というものはもちろん独立の機関として勧告し、かつそれに対するところの予算についても人事院は努力すべきものだと思う。それが証拠に、従来給与ベースの勧告あるいは地域給の勧告がなされる場合においては、人事院当局もしばしば説明されておるがごとく、あらかじめ政府と話し合いをしてそうして勧告しておったような場合もあるわけです。そういうようなことから考えるならば、昨年なされたところの地域給の勧告に対して、現在までまだ何らの予算的な措置が講じられておらない。これに対しては総裁初め人事官も、やはりその実現については政府当局に対して強力に努力すべきものである、このように考えておるのでありますが、今申し上げた二点について一つ御答弁を願いたいと思います。
  43. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 まず地域給の問題でございますが、お話の通り、従来大体地域給は各市町村の名前も出ます関係もございますので、その影響も考えまして、あらかじめある程度予算のめどをつけまして勧告いたすという前例になっておることは御存じの通りでございます。ところが昨年は御存じの通り、現在は財政上交渉いたしましても、実際問題として地域給についての予算が計上される見通しがございませんので、さればといって不均衡を是正する必要がありますることは両院の御要望もございますので、どうしてもこれを何とか実現したいという希望のもとに、前回に限りまして予算のめどをつけず勧告いたしました。その後もわれわれといたしましては、勧告いたしました以上これを実現することを衷心より希望して参りましたわけでございますが、現在の財政的な見地から今まで認められずに参っておるのでございます。  ベースと申しますか一般の給与問題につきましては、御存じの通り、この地域給と全然違いまして、財政あるいは政府の予算に計上されるかどうかということはわれわれ考慮せずに、純粋に公務員の給与としてかくあるべきという線で、そのときの状況によりまして報告または勧告いたしておるわけであります。従って今回につきましても、その問題はわれわれとしては考慮せずに態度をきめたいということでやっておるのですが、ただずっとお話しの通り、もちろん人事院といたしまして昨年勧告を留保して以来、留保でございますからこの公務員の給与をいかにいたすべきかということにつきましては、研究をいたして参っておるのでございますが、今回民間給与調査実施の結果につきましては、これは相当多額の予算もいただいて綿密に調査いたしておりますので、この結果を見ながらさらにそこに判断をいたしたいというのが、ただいま申し上げた趣旨でございまして、その点御了承を願います。
  44. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいま人事官は昨年以来民間給与の実態等も調査しておる、それを勘案して結果を出したいと言われておるのですが、昨年来調査したところの民間給与の実態を一つお聞かせ願いたいと思います。ですが、人事院調査は基準内給与について主としてやっております。これは三月現在一万四千六十四円でありまして、前年同月に比べまして大体三・八%増加いたしております。そういうわけで人事院の調査の方が若干毎月勤労統計よりは高くなって出ておりますけれども、大体昨年に比べて三・八%くらい増しておるわけであります。この増加歩合が前年に比べまして約半分と申しますか、前回の調べにおきましては民間給与の一ヵ年内における上昇率が大体九・五%でございまして、今年はそれが約三・八%ぐらいになっておるわけであります。なお御参考までにいわゆる民間のベース・アップの状況、これもある程度詳細に調べたのでございますが、昨年も調べました結果と対照いたしますと、昨年のベース・アップの状況は調査しました全事業場の約四一%の事業場がベース・アップいたしておりました。それが今年はベース・アップがずっと減りまして、六・七%、その平均のベース・アップ率が昨年は大体四・九%ぐらいでございましたが、今年はそれがずっと減りまして〇・七%、そういうぐあいで民間の給与内容といたしましては、前年に比べまして今回の調査の前一ヵ年というものはよほど減少しておるような状況でございます。そういうふうな大体の態勢でございます。
  45. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは昨年の勧告を留保した当時におけるところの民間給与が、一昨年から昨年の三月までの上昇率が九・二、三とか言われたのですが、それと昨年の三月から今年の三月までの上昇率は三・八というようにおっしゃったのです。そうしますと、それを足すとやはり一三、四%の上昇率、すなわち一昨年の三月から今年の三月までの上昇率をプラスすれば、一三、四%の上昇率になると思うのです。しかも昨年勧告しなかったことは、いわゆる不確定要素というものを人事院としては認められたから勧告しなかったのであるが、今年においては昨年からの経済情勢等については非常に正常化している、そういう観点からするならば、どうしても私は勧告せざるを得ない立場に現在なっておると思うのでありますが、人事官あるいは瀧本さんあたりの意見はどのような方向を考えておられるのか、率直に一つ御答弁願いたいと思います。
  46. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 お話の通り、昨年の九・五%と今年の三・八%、合計一三・三%というものは、つまり民間の、人事院の勧告を留保しております間に上りました。これはお話の通りだと思います。と同時に公務員の方におきましては大体その期間内におきましていわゆる定期昇給、級別定数の改訂等によりまして大体五・九%くらい増加いたしておるわけでございます。今年のこれは、最後に多少違うかもしれませんが、本年一月現在の公務員のベースが一万六千二百円、今年の七月には一万六千五百円くらいに推定されるのではないかと考えます。そこで公務員と民間との現在の給与の差と申しますのは、一二・何%と五・九%の差額はもちろん当然出て参ります。またこれは民間と公務員との全体の大きい趨勢における差でございますが、われわれの方のやっております民間給与調査におきましては、こういう調べと並行いたしまして、各職場を公務員の職場と大きさその他において大体均衡を取りつつ、各階層別に比較いたしますので、あるいはこれよりも大きい差が出て参るかもしれません。しかしながら御存じの通り公務員の給与といたしましては、現実の民間給与と公務員の給与との差という要素、これはもちろん重大視しなければならないのでございますが、それと同時にその他の公務員の給与を定める場合に、やはり一般の労働経済情勢と申しますか、そういうものも考慮してきめなければなりませんので、単に民間給与と公務員の給与との御指摘の差があるということだけでは、直ちに公務員のベース・アップをすべきものだという結論も出て参りませんので、その点を慎重に考慮したいと思っておるような段階でございます。
  47. 森三樹二

    ○森(三)委員 今人事官は、昇給等によって五・九%程度の上昇をしているからというお話でありましたけれども、しかしこれは当然に法規に基いて昇給していくのであって、あなた方が勧告したから昇給したものじゃない。これは一昨年の三月から昨年の三月まで上昇したところの九・二%と、昨年の三月から本年の三月までの上昇率の三・八%、これを合計したものが一三%ということになる。それから引くというような観念は私は出てこないのじゃないかと思います。これはあなた方が勧告して上ったものじゃないのですから、自然的な法規に基く昇給なのであるから、これを引くということは理論的にはもちろんできないし、実際的にもこれは通用しない話だと思うのです。それに対する御答弁を願いたい。
  48. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 もちろんお話の通り、これを差し引いて民間給与との差をわれわれとしては考えるという線ではございませんので、一応の御参考に申し上げましただけでありまして、御指摘通り五・九%は何も勧告に基くいわゆるベース・アップじゃないのでございます。ところが民間の過去ニヵ年間における一三・三%、これもベース・アップというものじゃございませんので、ベース・アップ自体は先ほども申し上げました通り、最近の情勢では、民間会社におきましては全体の趨勢としては非常に激減いたしておりまして、結局民間の差にも、前からそうでございますが、最近はベース・アップと昇給——その間いろいろな要素がございますけれども、それらを加えた全部の、つまり民間の賃金総額と申しますか、平均額の上り方が一三・三%、公務員にはその間ベース・アップがございませんでしたので、民間の昇給部分よりは公務員の昇給部分がだいぶ大きいのでありますが、しかしながら昇給とかベース・アップ等を含めた公務員と民間との、ただいま昨年あるいは一昨年来のあり方を申し上げたわけであります。そういう今お話のような非合理な点があるといけませんので、別途民間給与の現実を押えまして、公務員の給与の現実を押えまして、先ほど申し上げましたように、職種別民間給与調査をいたしております。この職種別民間給与の結論というものが一応公務員と民間との差というふうになって参ると思います。今のいわゆる自然増といいますか、増加のものも民間給与の差でございますし、それから職種別のものも民間給与の差でございます。これは見方の違うところから出て参るのでありますが、公務員が昇給したから差し引くというような意味では決してございません。
  49. 森三樹二

    ○森(三)委員 給与問題になりますと、いつも総裁が委員会に出席して質疑応答をなさるので、私は入江人事官と質疑応答をするのは珍しいわけであります。巷間では、総裁は公務員の給与ベースの勧告の時期になるといつも病気になりがちだといっておりますが、私はそんなことを信じたくないのですが、しかしせんだっての大久保給与担当大臣の御発言の中に、政府は公務員制度調査会に公務員の給与問題もその答申を求めてある。私どもはいつも地域給の問題等につきましてその実現方を大久保さんに強く要求するのでありますが、大久保さんはいつも、それは公務員制度調査会の結論が出てからわれわれは善処したいと言って、その公務員制度調査会の結論を一つのたてとして、この地域給の予算措置を遷延し、昭和三十年度の予算案の中でも何らこれが実現されておらないという実情であります。われわれがその政府の責任を追及しますと、それが大久保さんのおきまり文句です。しかもせんだって私どもは、その公務員制度調査会のメンバーの内容をお聞きいたしましたが、はからずも人事院総裁も公務員制度調査会の委員になっておるのです。私は政府と独立して、別個な機関として公務員の給与問題を勧告する重大な責任にある人事院は、政府の諮問機関、隷属機関というようなものに入ることは非常に反対です。しかしながら結局その委員を、嘱託といいますか、任命されたわけでありますが、なぜきぜんとして、自分は全国の公務員の立場と政府の立場との間にあって適当な勧告をしなければならぬ立場にあるのだから、そういうものはお受けしないのだといって、総裁は拒否しなかったか、私はまことに遺憾に考えておるのでございますが、それらの場合においてあなた方に、これを引き受けようかあるいは拒否しようかというような相談があったかどうか、こういうことに関しても一つ意見を承わりたいと思うのです。と同時に、大久保国務大臣は、現在においてもこの公務員制度調査会の結論を得なければ、勤務地手当の問題についても、あるいは本俸の手当の問題についても、給与ベースの引上げ等についても、一切政府の具体的な処置をしないというような考えを持っているのかどうか、もしそういう考えがあるとするならば、私はこれは非常に法を曲げたおそるべき考えだと思う。人事院は、もちろん公務員法二十八条に基いて独自の調査、独自の判断をすべきでありまするけれども、そこが非常に不明朗な関連性といいますか、言わず語らず人事院総裁を公務員制度調査会委員に引っぱり込んでおいて、そうしてそこには国務大臣が四、五人も出席し、不問のうちに目に見えない圧力をかけていると言われてもやむを得ないのじゃなかろうかと思うのです。そういう形において、人事院というような不羈独立な機関に対して目に見えない圧迫を加えて、そうして昨年の勤務地手当の勧告についても——われわれこれは国会でもってほんとうに火の出るような質疑応答がなされた結果、昨年の五月二十九日の勧告がなされたのでありますけれども、しかし今日また大きな本法の給与ベースの勧告をしなければならぬ段階にきておる。昨年はついにこれを留保した。本年はもう絶対に、理論的にも実際的にも勧告しなければならないところの事由が明々白々である。しかしこれをしもまた不明朗な政府の圧力によって勧告を阻止されるというようなことがあったとするならば、人事院の職権、権限というものはその機能を摩滅した、いわゆる巷間にいうところの、人事院の制度を廃止しなければならぬというところにきておるのではないかと思うのです。こういうことに対して、人事院はほんとうに独立機関としてあくまでも公務員の給与を守っていくという考えがあるかどうか、政府の公務員制度調査会とかいうような大きな機関の中に巻き込まれてしまって、総裁が身動きのできないところにきているのであるかどうか、これを人事官並びに大久保さんにお聞きしたいと思います。
  50. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 公務員制度調査会委員に総裁がなることは、われわれも承知しておったわけでございます。この問題は、御指摘通り、公務員制度調査会は政府の諮問機関でございますから、法律上内閣の所轄でありまして、政府と独立している人事院の最高責任者が公務員制度調査会の委員になることにつきましては、われわれもいろいろそのときに考えたわけでございます。公務員制度調査会は公務員制度全般の問題について検討され、人事院は人事院でもちろん公務員制度について検討する義務があるのでありますが、政府としても、公務員制度調査会において検討される場合に、現在の公務員制度の実態ないし従来の沿革でありますとか、そういうことにつきましては、人事院が実際をよく存じておりますので、人事院の責任者が公務員制度調査会に出まして、その実態について人事院としての見解を述べるという方がむしろよいのではないだろうか。しかしながら公務員制度調査会の結論いかんにかかわらず、人事院としては、どこまでも公務員制度についての見解を述べるということにつきましては、それによって制肘されることはないという見解のもとに、総裁が委員となっているわけであります。公務員制度調査会は、一般の任用、給与その他の公務員制度についての一つの検討の機関でございまして、公務員法二十八条の人事院の責任と申しますものとは全然関係がありませんので、公務員制度調査会とはその議事いかんにかかわらず、われわれとしては独自に検討を進めているわけであります。この点はぜひ一つ御了解願いたいことと同時に、この問題につきましては、私から申し上げるのはいかがかと思いますけれども、従来人事院総裁が公務員制度調査会の委員になっているということによって、政府から何ら特別なこれに対する意見の発表というのはわれわれ聞いておりませんから、これは間違いないことと信じております。
  51. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 森さんからのお尋ねの点でありますが、なるほど人事院総裁が公務員制度調査会の一員としてお入りになっているのは事実でありますけれども、これに向って政府としては注文は一つも申し上げたことはありません。そればかりではなく、人事院の独立機関としての機能を発揮する点におきましても、ちっとも干渉いたしません。これは全く人事院が独自な立場、独自の見解を持って公務員のために活動しているわけでありまして、この機能は決して侵害いたしません。なおまた人事院総裁が公務員制度調査会に出て言われますことは、一般の人よりも、公務員の制度、給与その他の点について造詣が深いと思いますから、この知識を吸収して日本の公務員制度向上のために働いていただくことはけっこうなことと考えております。けれども今申しました通り人事院本来の性格を破るようなことは決していたしません。十分尊重いたします。なおまた先ほど来入江さんに対してしばしばお尋ねがありましたけれども、ちょうど人事院として勧告の時期が参っておりますので、私どもは政府の態度についてもなるべく言うのを避けて、もっぱら人事院の決定に基いて審査いたしたいと存じまして進んでおるような次第であります。この点御安心願いたいと思います。
  52. 田原春次

    田原委員 官公吏の勤務地手当、俗にいう地域給でありますが、これに対して入江人事官は将来廃止すべきものと思うかどうか。なお大久保給与担当大臣も地域給についてこれを廃止すべきだと考えるかどうか。廃止するのであればどういう代案があるか。これについて別々にお答え願いたい。
  53. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 勤務地手当につきましては、小委員会におきましてしばしば御検討でございまして、経緯その他についてはすべて御存じの通りでございます。そこで今後の勤務地手当を一体どうしたらいいかということにつきまして率直な見解を述べさせていただきますと、御存じの通り、これは私から申し上げるまでもございませんけれども、大体勤務地手当と申しますのは、公務員の生計費を基礎として設置するということが法の趣旨でございます。ところが生計費につきましては、現在の状況は、東京をかりに一〇〇といたしますと、一番低いところは約四〇%の差がございます。大体全国について二〇%くらいの差がございます。そこで大体生計費を基礎にした何らかの勤務地手当に類似した差額の手当の支給があるということは、むしろ公務員の給与の均衡を保つ上においては必要なのでございます。ところがこれが実際問題といたしまして、これも申し上げるまでもなく、何さま全国範囲にわたっておりまして、ことに一つの県内におきましても隣接した町村があり、それがそれぞれ勤務地手当が違っておる。そこに合理的な基礎、標準を発見することはなかなか困難でございますので、やはり全体として生計費の差に基く何らかの手当を置くことが必要でありますにかかわらず、これを置いておりますと、そこに人事管理上と申しますか、国会にもいろいろ御迷惑をかけますし、われわれの方としても非常に困難な問題でございます。そこでこの二つの問題をどうして調整するかの問題になるのでございますが、勤務地手当を廃止するということは、廃止する方法もいろいろございまして、廃止するにいたしましても、勤務地手当という一つの名称と申しますか、ただいま申し上げた通り、そこに生計費に基く給与の地域差というものが何らかの形でございませんと、これはまた非常に給与の均衡を失します。そこで地域給そのものを廃止いたしましても、何らかそこに生計費を基礎にした若干の給与の差を認めては行きたい。ところがこれはいろいろな案がございまして、この案は十分御存じの通りでございまして、都市手当というものを設置いたしますとか、あるいはイギリスの制度にもございますように、全国を大きくブロックにわけまして、大体の各隣接町村ごとに紛糾が起らないような制度にいたしますとか、あるいは地方公務員と国家公務員との連関をなくいたしますとか、そこにいろいろございますけれども、われわれといたしましては、根本問題としては、これは人事院の立場でございますが、地域給の廃止と申しますか、地域給の制度の変更によりまして、都会における公務員に対しましても、実質賃金と申しますか、実質の給与が減らないようにはしたい。これはぜひ人事院の立場としてはお願いいたしませんと、先ほど森さんからもしきりにお話がありましたように、元来公務員の給与と民間の給与と差があるのが通常でございますから、できるだけ地域給の改廃によって都会の公務員の給与が実質的に犠牲を受けるようではいけませんので、それが犠牲を受けないで人事管理上いろいろ現在の紛糾を避けるようにいたしたい。そこで一体どういう方法があるかということになりますと——えらい堂々めぐりをするようでございますが、一種の都市手当とか、あるいは広地域的にきめるにいたしましても、やはりすぐ直接な隣接との間に問題が起りますので、ある程度の経費と申しますか、相当多額な経費がここにございませんと、公務員の実質的な給与を減らさないでこの問題を片づけるという——一部の公務員、ことに国家公務員は大都市に集中しておりますから、この都市に集中している国家公務員の給与を下げないでこれを片づけることは非常に困難じゃないかと思っております。そこで人事院といたしましては、経費の問題をお前たちは考える必要があるのじゃないかということになりますけれども、現実の問題として相当多額の経費を計上することがなかなか困難な現状におきましては、先般小委員会人事院から意見を出しました通り人事院の勧告の線、あるいはそれに予算があればまたそれに準じたいろいろな案が出ましょうが、ともかく現在の不均衡を是正いたしまして、それをちょうど選挙法別表のごとく凍結をいたす。これは非常に微温的な措置になるかもしれませんけれども、実際問題としてそういうふうな方法しか現在のところでは考えられないのじゃないだろうかというのがわれわれの率直な一つの見方でございます。
  54. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 入江さんのお話とちょうど重複するような形になりますけれども、地域給の問題は、元来できた当時のことを考えてみますと、地域における物価差を中心としてできた制度である。ところが経済が安定してきて、物価差というものはほとんどなくなってきた。そこでもし地域給を置くとすれば、物価差に存立の理由を求めずして、生計費の差に求める、生活費の差に求めるという以外に方法がないと思います。つまり入江さんの言う通り東京に住んでおる人と、町村に住んでおる人とでは、生計費が違うのであるからして、そこに理由を求めて地域給を置くという以外に方法がない。そこで委員会の空気を申し上げれば、大体において物価差を中心とした地域給は廃止すべしという議論が強いのです。けれども廃止した後の跡始末をいかにすべきかということになると、議論はなかなかわかれております。あるいはこれを本俸に繰り入れろという議論もあります。本俸に繰り入れると、これは恩給の対象になって国家財政が因るだろうという反対論もあります。それでなくむしろこれは額を減らさない範囲において、ほかの方法においてほかの手当を一緒にして簡素化した手当の中に入れたらどうか。今日の手当制度は約十ある。十もあるという手当は、支給する方から見れば、実にめんどうで厄介です。そんなにたくさんの手当を置く必要はないじゃないか、それよりももっと簡素化して、手当の数を減らして、その中へ地域給の手当も入れて手当として保存すべしという意見もある。意見は区々に分れておりますけれども、とにもかくにも、いずれにしても、廃止するにせよ廃止しないにせよ、既得権でありますから、既得権を侵害して現在の公務員からこの手当を減らすという方向には行かぬと思います。まだ確定したことはきまっておりませんけれども、論議の内容はそういう話をしております。
  55. 田原春次

    田原委員 廃止するにせよ、廃止しないにせよ、現在はなはだしくでこぼこがあることはお認めになられると思います。それがゆえに昨年五月人事院も勧告しております。従って今年は昨年程度の勧告を再び出すべきものと思います。そうしてある程度のでこぼこを廃した後に、今大久保大臣が言うような新しい形式なり、あるいは入江さん等の考えておるような考え方にするといたしましても、もう一度昨年と同様の程度のものを勧告する意思があるか、用意があるか、これをはっきりさせてもらいたい。
  56. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 この地域給の再勧告をせよというお話でございますが、勧告につきましては、昨年勧告いたしましたものについて、国会におかれてもこれを審査され、いろいろまた人事院の勧告の内容についてさらにこれを検討されて増額されたものが出ておるわけでありまして、これをさらに一度意見を申し上げましたものを、もう一ぺんまた繰り返して勧告いたすということはいかがかと存じますので、現在のいろいろ国会における御審議状況をわれわれとしてもお待ちしておるわけでございまして、再勧告の意向は持っておりません。
  57. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこで先ほど人事官から公務員制度調査会に総裁が入っていることはやむを得ないのだというような御答弁がありました。大久保さんからも何かそれがかえって公務員の立場を守るために都合がいいのだというお話がありました。これは納得できない。人事院というものが、独立機関である権威を守るためには、そうした政府一つの諮問機関の中に入ってはいけない。それは私ども昨年吉田内閣当時において、人事院を廃止して人事院の機構を縮小し、総理府の一外局として置くというような法律案が提案されたことがある。これに対してわれわれは絶対に人事院の機構を改革してはいけないという立場において戦いました。そしてついにその法案を廃案にせしめて、現在の人事院というものをわれわれは守り続けてきているわけです。従ってあくまで政府人事院というふうな立場に立つのであって、それが公務員制度調査委員に入って意見を述べることは非常にいいような印象を与えますが、逆に意見を述べるのではなくて、そこには政府を構成しておるところの閣僚が四、五名構成員の中に入っております。結局ミイラ取りが、ミイラになってしまう。そこで自分の意見を十分に反映して、そこでリードしようとしても相手方が政府の権力を持つ数が多いわけなんです。たとえば勤務地手当の勧告を、政府は予算がないからしないようにしてくれといってみんなに泣きつかれる。あるいは本俸の給与ベースの勧告は、少くとも現在の段階においてはとても予算措置ができないということを言われますと、ついそれに引っぱり込まれるおそれがあるから、やはり裁判官と同じような独立の機関として存在している以上は、そういうところへ入って、そうして間違いのもとを作ってはならない。やはりあくまでもきぜんとして、人事院はあれだけの機構を持っているのですから、いろいろの材料を集め、データを発表し、常に政府を啓蒙することがいい。しかし政府一つの機関の中に入って、自分がとりこになってしまっては困る、こういうふうに私は主張しておるのであります。  そこで私はさらに申し上げたいのは、昨年の勤務地手当の勧告が五月二十九日になされましたが、その後七月十九日には勧告をしなければならぬけれども、いわゆる経済上の不確定予算のためにこの勧告を留保するという、単に報告にとどまった。私らはいろいろ考えますと、とにかく地域給の勧告をすれば、もちろんそれには多少地域的に区切ってありますから、公務員全体に及ぼすものではないけれども、しかし公務員の大多数の諸君が、それによって本俸の大体五%も給与の増額がなされる結果になる。そういうにらみ合せの結果、七月のつまり勤務地手当の勧告の後になさるべきところの七月十九日の勧告を、勤務地手当の勧告をしたために結局ストップをして勧告をしなかったのではなかろうか、そういう印象を非常に強く与えているのです。それと関係があるかどうか。これについて人事官並びに瀧本給与局長なんかの御意見を聞きたいと思います。
  58. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 ただいまの地域給と昨年の勧告との関係は全然ございません。と申しますのは、事実を申し上げますと御了解がいくかと存じますが、もちろんわれわれ人事院の立場といたしましては、公務員の給与が何らかの形で改善されることは衷心から希望いたしておりますが、われわれのおあずかりしております国家公務員につきまして申し上げますと、大体約半数以上が都市に集中しているような状況でございます。かりに地域給に対する勧告が入れられましても、都市における国家公務員の生活は何ら改善されないわけであります。やはり地域給の問題は、もちろんその結果においてはそういう地域給が上りました地方の公務員の給与は改善されますけれども、どこまでも生計費に基く冷静ないわゆる地域差指数の改善というところから勧告をいたしておりますので、それによってとうてい理論的に、いわゆる公務員の全体のベースが考慮されたのでは公務員としてもかないませんことで、そういう地域給の五月に勧告したから七月に留保したとか、あるいはそういうことを見越して勧告したとか、そういう点は理論的にはそういうことはあり得ないことでありまして、その点は一つ御了解願いたいと思います。
  59. 森三樹二

    ○森(三)委員 もちろん入江さんが答弁されたごとくにあるべきだ、あるべきであるのですけれども、昨年はそのような結果になってしまった。そこで一般の受ける印象は、とにかく人事院は勤務地手当の勧告を国会の強い要請によってとうとう勧告をした。そこでとにかく公務員に対する一つの顔を立てたのだから、本俸の給与ベースの勧告をしなかったものであろうということが巷間流布されている。われわれはもちろんあなた方のきぜんたる態度において、そうしたことがあるべきはずはないと思うのでありますが、巷間ではそういうことが非常に言われている。そこで私どもは、そのようなことを言われているところの本俸の給与ベースについて、本年またまた勧告を留保するというようなことがあったとするならば、非常に私は遺憾にたえないと思うのです。先ほども申し上げましたように、人事院の機構そのものが私は問題になってくるじゃないかと思う。私どもはやはり罷業権やあるいは団体交渉権を剥奪されているところの公務員は、全く人事院にすがっている。人事院を信頼している。人事院の正確な調査と勧告をほんとうに一日千秋の思いで期待しているのが今日の日本の公務員の実情であります。もし人事院がこのような実際の状況を無視して、勧告をまたまた留保するようなことがあったとするならば、これは人事院の機構の問題にもちろんなると思うと同時に、公務員の生活というものは何によって保障されるか、この方はもちろん一つの大きな問題になるのでありますが、これに対して人事官はどういうお考えを持っているか。われわれはもしも人事院が勧告するようなことが今後なされないとするならば、公務員は罷業権もあるいは団体交渉権も、これは憲法上保障したところの権利を与えられなければならない。これを剥奪しておいて、そうして一方に保護する機能というものが十分に発揮されないならば、私は憲法上の公務員の生活の保障というものは全く無視されてしまうと思う。これに対する御所見はどうです。
  60. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 ただいまの問題につきましては、御指摘通り人事院は公務員の団体交渉権を停止されておりますかわりと申しますか、それにかわって人事院がベースその他の給与について見解を発表するということがございますから、人事院はどこまでもその関係を十分考慮に入れて、善処しなければならないことはお言葉の通りでございます。ただ人事院といたしましては、公務員法の精神によりまして、一つの中立機関と申しますか、もちろん政府並びにその財政関係がどうだからというて、勧告すべきことを勧告せぬとか、そういうことは十分いましめなければなりませんけれども、そこは冷静に、公務員の給与が諸種の要素からかくあるべきであるという線において、見解を発表さしていただくわけでありまして、その点についてはいろいろ御批判はあり得ると思いまするけれども、十分法の精神は守っていきたいと思います。
  61. 森三樹二

    ○森(三)委員 とにかく私どもは、あくまでも今日の段階においては、昨年の勧告留保、そうしてまたその後におけるところの民間給与の実態においても、やはり上昇を示しておる。そこでもしことし勧告しなければ、二ヵ年間人事院の職責を果さなかった結果を招来すると思うのでありまして、この際人事院は、何ものにも拘泥せず、また何ものにもおそれないところの決意をもって、公務員の本俸の給与ベースを引き上げることを、強く勧告することを要望してやまないのであります。  それと同時に、大久保国務大臣にお尋ねしたいのでありますが、あなたはいつの場合においても、公務員制度調査会の結論を得てからこの地域給の問題を処理したいということを言っておられますが、この態度は私は遺憾であると思うのです。私は先般も申し上げましたように、この制度調査会は一つの科学的な見地に立って、そして公務員制度全体を調査することは、政府権限であり、けっこうだと思うのでありますけれども、それと同時に、人事院が勧告したところの勤務地手当の実施、これが予算措置というものは、すなわち政府や国務大臣法律を守るという憲法の規定に基いて、その予算を実施するということが当然なされなければならないところの職責であろうと思う。従ってこの公務員制度調査会の結論は結論として別にして、政府はあくまでもこの人事院の勧告というものを尊重し、これを予算化するだけの決意というものがなくてはならない。そういう考えを守っていかなければ、幾ら人事院が勧告をいたしましても、これは絵に描いたもちに終ってしまうと思うのです。そういうような、人事院の勧告を守らなくてもいいというようなずぼらな習慣、惰性というものを政府考え方の中に、あるいは国会におけるところの答弁の中に出すということは、私は非常に遺憾であると思う。やはりあくまでもわれわれは憲法、法律を守って、そうしてこれを実施するという考え方に立たなければならぬと思う。大久保国務大臣は、もちろん公務員の生活の保障ということはお考えになっておられるかもしらぬけれども、しかし今日の日本の財政上非常に困難であると言いながら、軍事予算については、政府は惜しげなく出しておるけれども、公務員の生活の保障という給与問題に対しては、全く金を出ししぶっている。そしてあなたは予算上非常に困難であるからということも、間々発言の中に用いられておるのでありますが、私はあくまでも勧告というものを実施するためには、いかに苦しい財政であっても、これを予算化するところの毅然たる態度を持することは、これは現在の鳩山内閣のみならず、今後のあらゆる内閣に要請さるべきことであると思うのであります。その決意を持たなければ、私は給与担当大臣としての資格がないということをしばしば申し上げている。そういうような態度を今後堅持されなければならぬと思うのです。あなたは閣議においてもそのような発言をされることが、給与担当大臣として当然であり、あなたの職責であると思うのでありますが、これに対する所見をはっきり御答弁願いたいと思います。
  62. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 人事院の勧告は十分尊重しているのでありまして、これはしばしば私が申し上げました。この人事院の勧告が一つの動機をなして、私は公務員制度調査会ができたと思います。しかし人事院の勧告と公務員制度調査会の性質は全然違うのです。人事院は、あなたの言われる通り公務員の利益の代表機関です。しかも法律的に根拠を持っているのです。一方調査会は、これは内閣の作った諮問機関です。どこまでも諮問機関たる性格はとれないのです。従って尊重する程度は違うと思うのでありますけれども、せっかく作りました調査会であるし、また公務員全般にわたっての検討を加えよう、決して地域給ばかりでなく、全部に検討を加えようとして熱心に勉強しているのですから、この結論も相当尊重しなくちゃならぬ、こう思うのであります。そのために、決して人事院をどうする、こうするという考えは毛頭ございません。法律及び憲法の保障についても同様であります。この点はしばしば申し上げたところでございますので、御了承を願いたいと思います。
  63. 森三樹二

    ○森(三)委員 それは私も大久保国務大臣の御意見はしばしばお聞きいたしましたが、どうしてもあなたの観念の中に誤謬があると思うのですよ。公務員制度調査会は、それはあなたが勉強のためにおやりになるのはけっこうだと思う。大いにおやりになったらいい。しかしその結論というものは、この間も私どもはあの委員の中の小委員会委員長でありますか、東大の田中一郎教授と商大の田上教授を小委員会においで願って、いろいろ意見の交換をしたのですが、全く何らわれわれの期待するところの結論というものは出ておらない。私は先般も申し上げましたように、あの人々は大学の教授であって職業を持っている。一週間に一ぺんや二週間に一ぺん公務員制度調査会に来られましても、その結論が出るはずがない。しかも政府の都合のいいような結論を出そうとしているから、なお一そう混乱を伴っている。私は公務員制度調査会は、公務員の給与やあるいはその他の全体のことを研究なさる機関としてあることに異議を差しはさまないけれども、それと別個に、当然法律できめられたところの、この勧告なら勧告に基くところの、なされなければならない国務大臣としての職責、政府としてなすべき職責を、なぜなさないかということです。そこを明確に区別して、そして御答弁を願わなければならぬので、ごっちゃにしてはいけない。予算措置をすべきところの義務を負わされているところの勧告を、公務員制度調査会というような機関によってこれをカムフラージュして、それを防波堤として、そして予算措置をしないということは、私は非常にいけないと思うのです。そこは明確に区別して今後も政府としての態度をきめなければならぬし、また大久保大臣としての御答弁があってしかるべきだと私は思いますが、大久保さんの御所見をお尋ねしたいと思います。
  64. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 森さんの御意見もっとものところがあるのでありますけれども、この間公務員制度調査の内容の報告をしておりましたその中に、もうすでに総会の論議も終り、小委員会の論議も一通り終って、総会と小委員会における両方の意見を、今まとめかかっているようです。実を申せば、私は六月中にこれをまとめたいと希望しておったのですが、それはできなかったけれども、おそくも今月中には整理を終って、主要な問題についての骨子は、八月中でも、夏休みをせずにでも一つ総会に提案したい、こういう考えを持っておりますので、もうしばらくであります。ほんとにしばらくです。せっかくここまで待っていただいたのですから、もう一奮発して、そしてせっかくの、森さんの熱心には感謝しますけれども、地域給だけ一つ解決しても、またすぐその問題が起ってきます。現在参議院においては薪炭手当を作れといってきております。手当が十もあるのにまた薪炭手当を作れといって要求してきておる。この処理をどうするか、これだって全国ではない、寒冷地の一部に薪炭手当を一年一回支給しろという要求が出ておる。そういうものを一つ一つやられたのではなかなか解決がしにくい。私はなるべく一括して、公務員制度そのものと給与制度と同時に解決するのが妥当じゃないか、こういう感じを持っております。しかも先ほど申しました通り長いことではないのですから、しばらくごしんぼうを願います。
  65. 高橋等

    高橋(等)委員長代理 この際暫時休憩いたしまして、午後一時半から再開することにいたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  66. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を継続いたします。大橋武夫君。
  67. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 私は、先日の当委員会におきまして、防衛六ヵ年計画のでき上るのの困難な理由を伺ったのでございますが、その間において、民兵制度を採用するかどうか、これについての態度をきめることが先決であって、そのためには民兵制度を研究する必要がある、こういうお話でございました。この民兵制度については、民主党内にもいろいろな意見があるんだが、今よく聞いていないからということでございましたから、次回までに大臣が民主党の民兵制度についての御意見を十分にお聞き取りの上、その結果について伺わしていただきたい、かようにお願い申し上げておった次第でございます。本日は、まず最初にこの点についてのお答えをいただきたいと思います。
  68. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。民主党としての民兵制度に対する統一的の意見というものは、私まだそういうものは固まっていないように思うのでありますが、民主党におられます方々の中に、いわゆる民兵制度といいますか、そういう傾向考え方を持っておられる方があるのでございます。そういう方々の間でも、それでは具体的にどうするという点になりますと、必ずしもまだそこまではっきりしていない点があるように私は思います。まず第一は、いわゆる正規の防衛力のほかに、自衛隊のほかに、平素から若干の訓練を施しておいて、そして有事の際と申しますか、必要があります際に、正規の自衛隊の補助的役割と申しましょうか、そういうものをするようにするのが適当ではないか、そういうことが大体通じた考え方だと存じます。
  69. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それについてまず伺いたい点は、徴兵制度という基盤がなくして、果してそういう民兵の募集というようなことが可能であるかどうか、これについてはどういうお考えでしょうか。
  70. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 その点は、この問題を考えます際に、実際問題といたしまして一番重要なところじゃなかろうか、私どもは今日まで研究した結果では、そういう感想を持っておるのでございます。そしてこれは私が特に申し上げるまでもなく、外国の事例などではいろいろ歴史的の沿革もあり、また社会的の特別の基盤というようなものは、そこからだんだん発達しておるようにも思います。そしてその間にありまして、今御指摘の点、徴兵制度と申しますが、とにかく義務制ないしは半義務制的なものが背景にあって、そしてそこに存立されているようなものが多いように思います。しかるに今日日本実情からいたしますと、今政府といたしましても、徴兵制度というようなことは実際問題としてこれを考えておりませんし、そういう点からいたしまして、ほかの点もまだ考えなければならぬと思いますけれども、第一は、そういう点からいたしまして、この民兵制度というものには、実行問題として相当むずかしい問題があるのではないか、こういう感想を持っておる次第でございます。
  71. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、防衛庁としては徴兵制度の基盤がなければ民兵もなかなか困難だ、こういう基礎的な御見解を持っておられると了解いたします。現在自衛隊にはたしか予備員の制度があるのではないかと思いますが、その予備員の制度というものは、現在どういうふうに運用されておるでございましょうか。応募した人員とか、あるいはその訓練の状態、また装備の状態、それから基幹要員というものがどうなっておるか、これを伺いたいと思います。
  72. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御承知通り、予備自衛官という制度が認められておるのでございます。これはある程度の予備の力を持つということが非常に大事だと考えており、その趣旨からこの制度ができたものだと思います。そして御承知通り法律定員といたしましては、一万五千名というものが制度的には認められておる次第でございますが、これはなかなか一挙に行くことでもなく、またそれを一挙にということは、初めから考えてやったわけでもございませんけれども、年々予算等の関係もございまして、それからまた希望者の実績等も見てやっていかなければなりませんので、今日までやってきているわけでございますが、最近に、これは六月一日現在でございますが、志願いたしております者の数が四千三百二名ということに相なっております。内、すでに任用の手続を済ませております者は三千五百三名でございます。これは実際問題といたしましては、この希望者の中から選考によって採用を決定するわけでございますが、特別のこれを除外する理由がない限り、原則としては、志望した者はほとんど任命しているような状況でございます。そうして、今日まず法律によって年に二十日以内の召集訓練ということが予想されておるわけでございますが、今日まで実行しておりますところはきわめて短期間でございまして、ことしは八月に五日間だけ訓練する予定でございます。これはもよりの自衛隊の部隊に召集いたしましてやる次第でございます。
  73. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 この予備自衛官は、おそらく必要な場合には正規の部隊に編入されまして、そうして正規の部隊として行動されるものと思うのであります。民兵ということになりますと、予備自衛官と違いまして、訓練においても十分でない、ことに平素は部隊をなしておらない。必要な場合に急遽召集して部隊を組織するということになりますと、前回の委員会において大臣のお答えを願いました陸上自衛隊のさしあたりの任務というものは、侵略に際しまして、与国からの来援を得るまでとにかく数ヵ月間自力で戦うこと、これがまず第一の主要な任務だ、こういうことになりますと、その主要な任務の続行している間に民兵というものを必要なところへ部隊として行動さしていくということは事実上において不可能ではないかと思うのです。従ってそういう点において、民兵というものをたといこしらえてみましたところで、これを正規の部隊の代用として考えるということは不可能だと思うわけでございます。  さらにまた、最近におきまする自衛隊というものは、いわゆる機械化部隊でございますので、訓練が生命なんであります。この訓練という点において十分でない民兵というような制度によっては、この訓練を生命とした機械化部隊でなければならぬ主力部隊の働きを期待するということは、実際上において不可能だ、こう考えられると思うわけでございます。こういう点からいいまして、民兵というものは究極において主力部隊にかわるものではなく、補助的な役割ということにとどまるといわなければならぬと思うのでありますが、この点についての大臣のお見込みはいかがでございますか。
  74. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 その点につきましてはお説の通りだろうと思います。
  75. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすれば、まず防衛六ヵ年計画というものを考えるに当っては、主力部隊というものをまず考え、そうしてこの民兵というものはこれに従属して考えるのが考え方の順序だろうと思うわけなのであります。従って今後の日本の防衛力の目標をどこに置くかという場合については、民兵がどれだけあるから主力部隊は減してよろしいということよりも、まず主力部隊としてどの程度のものが必要かということをきめることが第一だ。すなわち一応の計画としては民兵というようなことを考えずに、主力部隊でもって必要量を決定するというのが考え方の順序ではないかと思いますが、これは大臣はいかがにお考えになりますか。
  76. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今の大橋委員のお考え方につきまして、一つの大筋としては私もそういうふうになるのじゃないかと思いますけれども、もう少し具体的に考えてみますと、こういうことはやはり考慮に入れなくちゃならぬのじゃないか。お説と必ずしも矛盾することじゃないと思いますけれども、いわゆる民兵的なものを作る、こうなりますと、必然にそこにそういうものを教育するもの、教育要員、教育機関というものを必要とするわけでありまして、教育するものは、もし現在の制度を前提として考えますならば、やはり自衛隊の中の一部をそれに充てるということになろうかと思うのでございます。そういたしますと、そこから民兵制度なるものを織り込んで考えます場合には、そっちの方に要員を回さなければならぬ、そういうふうな関係が生ずると思います。今の段階においてすぐそういうことをするのは、今の自衛隊自体の、ことに幹部要員というような点を相当重点的に考えなければならぬときに、それだけの余裕があり得るかどうかという点などもよく考えなければならぬ点だろうと存じます。
  77. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そういう点がありますから、まず六ヵ年計画というものをお考えになるについては、考え方としては一応民兵というような要素は除外して考えるということが物事を簡単にするのじゃないか。一応民兵というような要素を計算外に置いて、どの程度の部隊数、どの程度の人員が必要かということを予定し、しかる後このうち補助的な仕事については民兵をもってかえることもできるものもあるでございましょう、そういうものは民兵によってかえるという計算をし、そこでその民兵のための教育要員が幾らいる、こういうことにしなければ、いつまでたっても計画というものは立ちようはずがないのであります。そういう意味において、大臣は、アメリカの地上軍が撤退した後において、日本の地上部隊としてはどのくらいのものが必要だという目標をお立てになっておるでありましょうか。地上部隊の人員につきましては、普通に何万とかあるいは何個師団というような単位をもって呼ばれると思うのですが、それについて大臣は大体どの程度の見当をおつけになっておられるでありましょうか。
  78. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今考えております、また研究しております目標といたしましては、この間から申し上げておりますように、一般的に申し上げますならば、一朝事ある場合に、少くとも若干の期間持ちこたえ得るだけの最小限のものが一つの目標になるかと存じます。そういう点につきまして、今数字的にこうということを、それが大事なわけでありますけれども、まだそこまで決するに至っていない次第でございます。私思っておりますままを申しますが、どうしても日本は独力では自衛すらできない、自衛の目的すらなかなかできがたいのが実情でございます。これはどうしても集団自衛といいますか、もっと具体的に申しますと、アメリカとの協力関係ということが防衛関係でどうしても必要だと思うのでございます。これは私はむしろ当然なくらいにそうだろうと思うのでございます。従いましてアメリカとの関係につきましても、この計画を立てますにつきましては、ある時期になりますならば、やはり話い合いをするのが適当であろう。私は私見としてそう思っておる次第でございます。アメリカ側でもまたいろいろと研究しておることと思います。そう推断して私は誤まりないと思うのであります。アメリカ側としてもなお研究の段階にあるものだと私は判断いたしておる次第であります。そういった点などからいたしましても、日本側としてもこの研究を進めるとともに、最後の案を作っていきたい、そうしてもちろんある程度の案が固まりますれば、これは決して国民に対して、またいわんや国民の代表たる国会に対して示さない、秘密にする、そういうものじゃございません。むしろそういうことの必要のためにこそ、そういうものを実は考えておるわけでございますから、適当な時期になりましたら、ぜひそういうことも国会にはもちろんお示しして御批判を仰く、こういうことにいたしたい。私としてはそういうふうに考えておる次第でございます。
  79. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 この点はまた後に伺うことにいたしまして、前回の委員会におきまする私の質疑に対する大臣のお答えといたしまして、来年度におきます増強計画というものは、今年の予算が成立していないからまだ言えない、こういうお話でございました。先般、御承知のように、予算も成立いたしたのでございますから、来年度の地上部隊あるいは海上部隊、航空部隊、これについてはどの程度の増強計画をお持ちですか、これをお答えいただきたい。
  80. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 来年度におきましても自衛隊のある程度の増強ということは必要だと考えております。それではそれをどれだけにするか、これは将来の一つの目標的なものと違って、さらに具体的な来年度すぐ実施の計画になるわけでございますから、この点につきましては予算とともに、今三十年度の増勢の計画を伴う法案を御審議願っておるわけでございますが、そういうものとの関係において一つ考えていきたい、こう考えておる次第であります。
  81. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると来年の計画はまだないというわけですか。
  82. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今申し上げました通り、なるべく早くと苦慮しておる次第でありますから、今申し上げました事情によりまして、実は来年度の実施計画というものはまだ事実立て得ない状況にある次第でございます。
  83. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 大臣は前回の委員会におきまして、陸海空の増員計画というものは、相互の関連性のある総合的な計画でなければならぬし、またそういうことでやってきておるという趣旨の御答弁を述べられたわけであります。今日御承知通り、すでに予算が成立いたしたのでございますが、この予算の中には、明らかに海上部隊については来年度の計画が入っておる。また航空部隊におきましては、来年度並びに再来年度の計画が入っておるのであります。この計画は全体の総合計画のいかなる部分であるかということを御説明になることが、当然その責任であると私は思う。ぜひともこれはお答えを願わなければなりません。
  84. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 先ほどお答え申し上げましたのは一般的に申し上げた次第でございますが、今御指摘通り、来年度の予算外国庫債務負担行為等に予想しておりますので、本年度の国庫債務負担行為において艦船の関係で警備船四隻、それから中型の掃海艇三隻というものがございます。これは本年度においてその契約そのものはするつもりでございます。それができ上りますのは翌年度にわたるかと存じます。  それからもう一つ航空機、ジェット機F86とT33、これの調達につきまして国庫債務負担行為を三十二年までにわたってのものを計画いたしまして、予算の関係は御承認をいただいておる次第でございます。これは昨年の九月ごろからだったと思いますが、日本で航空自衛隊の整備充実ということを考えまして、その航空自衛隊の整備充実というものを考えます場合に、F86というものがやはり一つ中心にせざるを得ないであろう。そうしてまたこれの練習機として必要欠くべからざるT33、こういうものの確保を希望しておったわけであります。そこからだんだんと話がアメリカ側との間に進みまして、その問いろいろ話し合いの弾力はありますが、本年に至りましてこれが具体的にだんだん話が進みまして、そうしてアメリカ側からいわゆるMSA協定に基いての援助としてF86を約七十機、それからT33、これは練習機でございますが、これを約九十七機、これの部品等々と、それから技術的の援助をアメリカ側から得まして、そうしてこれを日本国内で組み立て生産する、こういう計画を立てて実は国会にそれに必要な予算をお願いしたわけでございます。従いまして今予定といたしましてはT33の方は三十年度に約九機分くらい組み立てを終るということを予定いたしております。  それから三十一年度におきましてはF86が約二十七機、それから三十一年度におきましてT33の方が六十七機、三十二年度におきましてF86の方が四十三機、それからT33の方が二十一機というものを三十二年の六月末までに納入を完成するようにいたしたい、こう考えている次第でございます。
  85. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 今のお話にありました予算外国庫負担契約による艦艇並びに航空機というものは、これは明年並びに明後年の増強計画の全部ですか、一部ですか。
  86. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは一部と考えております。
  87. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 一部あれば全部がなくちゃならぬでしょう。その全部を私は伺いたいというのです。
  88. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 当然御説の通りのことでございますが、その全部につきましてはまだ実はその計画を作り得ない実情にある次第でございまして、これからそれをどうしても作らなければならぬわけでございますが、それにつきましても飛行機の方など、これも特にアメリカ側の供与の関係アメリカ側の援助の関係が非常に重大な関係を持つわけでございまして、まだアメリカ側としてもいろいろ研究しているようでございますが、こうだという計画を立てるところまで至らないような状況でございます。
  89. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 大臣の言われることは私は承服することはできません。大臣が言われることは、これは計画の一部である、しかし全部は今言われない、こう言われるのです。しかし一部というものは全部があって初めて一部があるのだ。全部がなくして一部などという観念はあり得るはずはないのでありますから、一部がある以上全部の計画を私はどうしても伺わなければならぬ、こう思うわけでございまして、重ねて御答弁をいただきたい。
  90. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 筋合いからいたしますと御説の通りでございますが、事実上から申しましていろいろ関係ございますけれども、その中で先ほども申し上げましたように、アメリカ側からの供与の関係アメリカ側からどれくらいを期待できるかということについて、アメリカ側でも今後のかなり長期にわたってのことを研究しているようでございまして、そういう点結論的にこうだということがまだ実は不明でございますから、実際上まだ計画は立てにくい、こういう実情にあることを御了承いただきたいと思います。
  91. 松野頼三

    ○松野委員 ちょっと関連でお尋ねいたしますが、大臣の答弁承服できないことがたくさんあるし、あとの言明にもずいぶん矛盾がある。これはちょうどいい機会ですからお尋ねしておきますが、あなたはそういうことは予算編成前には言っていないのです。いいですか、これをよく読んでみますよ。防衛計画が確定しないから防衛分担金がうまくいかないんだ、日本側の基本的態度として長期防衛計画を確定することが先決である、これが防衛折衝の前にあなたが言われたことなんです。あなたは、日本の防衛計画がきまらないからアメリカとの防衛分担金の交渉が進まないのだ、こう言って、防衛折衝に入られるときには何らかの案をお持ちになったはずである。今度の議論は逆に、相手がきまらないからこっちがきまらないという。そうではないのです。日本の防衛計画がきまらない限り防衛分担金の交渉はできない、この態度であなたの内閣は予算の折衝に入られた。そのときにあなたは何かお持ちになっておる。ただいまの御答弁と逆なんです。あのとき発表された意見はそうです。防衛計画があって初めてアメリカと防衛分担金の折衝ができて、今日とにかくああいう不評ながらも一応形がついた。防衛計画がなければ、ああいうものはまとまりっこなかった。今日の答弁は逆に、相手方がわからぬから私にはわかりませんという。そういうことはない、ちゃんとあるのです。あなたは防衛計画を作ろうという努力をされておるのですか、いないのですか。どうしても工合が悪いというなら、われわれも手伝いをするから、どこが工合が悪いかお示し下さい。工合が悪いならそのまま出ぜばいい。全部出せないなら、その出せないという理由を出してもらいたい。あるいはそこにわれわれの努力する余地があるかもしれない。特に自由党は場合によっては協力する余地があるかもしれない。あなたは防衛計画に対する熱意が全然ないと思う。予算のときにはこんなに大きなことを言っておきながら、またある程度までアメリカに示しておきながら、今日は何です。全部まとめて出せということは、できなければできないでいい。あるだけはこの機会に出すべきです。そういう不純な態度では、われわれは断じてあなたの真意を実は了解することはできません。答弁願います。
  92. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今引用なさいましたのは、どういう場合にいかなる時期で私が申し上げたか存じませんが、私はたまたま就任しましたが、その以前からこういう考え方はしておりました。それは、撤兵の問題とか、それから防衛分担金の問題とか、そういうものをなるべく合理的に解決していくためには、日本側としてある程度の長期的の計画を持つことが大事だろう、そういう計画を立てることの非常な困難さということはだれしもわかることでございますけれども、しかしなるべくならば一つそういうことを持つのが望ましいことだろう、こういう考え方を私はしておりました。あるいは今松野さんの御引用なさいましたことも、私がかねてそういう考え方をしておった、しかも私が就任いたします以前の時代においてそういう考え方をしておったのが、特に何らかの、たとえば新聞等にでも出たのではないかとも私想像しますが、しかし考え方は、私そういう考えをいたしております。
  93. 松野頼三

    ○松野委員 ではもう少し明確にいたしましょう。三月の二十三日、一萬田、重光、杉原長官の会談の結果、この予算の山となる防衛分担金の折衝に関しては、日本の長期の防衛計画がない限り、アメリカ側との交渉は進まないから、ということです。これは二十三日です。ではもう少し続けましょうか。今度はやはり同じように、重光、一萬田、杉原、これはおそらく二十三日の次の第二回目の会談でしょう、防衛庁では三十年度計画とともに、三十年度を初年度とする新防衛計画の策定を完了し、政府の長期防衛計画もほぼこれを中心としてまとめる案があるという。あなたの方は策定しておるのです。それが大体閣議で確定する見通しがあるというのです。このときには政府の方はまだきまっていない、しかし防衛庁の方の計画はすでに策定しておる、これが内閣案として出るかどうかまだきまっていないというのが二十三日です。防衛庁にないということはあり得ない。またあなたのこういう言葉を次々と聞くと、ないなどということはおかしい。自由党のときの前大臣と引き継ぎ事項か何かありましたか。
  94. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今新聞のことをいろいろ御引用でございますが、分担金の交渉に当りましても、もしすでにそういうものができておれば、それは非常に役立ったと思うのでありますけれども、実際問題として政府がこの長期防衛計画を立ててやっていきたい、そういうことになりましたのがちょうど私の就任いたします少し前の時期だったように聞いております。そして分担金交渉の際には、その折衝に当られました外務大臣から、日本政府としてはこれから長期の防衛計画を作るようにやっていく方針を最近きめたのである、という意味のことは申されたのでございます。一方防衛庁の内部におきましては、いろいろと研究を以前から重ねてきておることは事実でございます。それがまだ先ほども申し上げますような事情もございまして、政府として成案を得るところまで至らない実情でございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  95. 松野頼三

    ○松野委員 御了承するような余地が全然ないのです。だから結局、防衛計画をアメリカに全部示すまでにはいかなかったけれども、一応外務大臣はその方針を御説明になったはずなんです。あなたがアメリカ交渉される余地がなかったならば、外務大臣から交渉されるときに、一応あなたから聞いた言葉の計画をお話しになっておるはずなんです。書面にないというならば口頭でもいいでしょう。前内閣からずっとこういうものは研究はされておるのです。またあなたの内閣になっても、前大臣の大村さんはある程度まで計画を進められたことは事実なんです。ことに大村さんは憲法以上だという防衛に対する大きな解釈をされて、あのときの意気込みは大したものだった。それがあなたのときになってなくなったということはおかしい。あなたは努力されているのかどうか。どこが一体今日発表するのが困るのか。まとまらないというところはどこですか。通産大臣は、経済的に考えて——これも大臣御就任のときに、防衛計画がきまらないから防衛産業の基礎がきまらないで困るということをお宅の通産大臣石橋さんが言っておられる。これも今年の三月です。防衛計画がきまらないから防衛産業もきまらないで、経済六カ年計画に支障を来たしておる。その責任はあなたにあるのじゃないですか。国内の産業に迷惑をかけているのもあなたです。また日本の防衛計画がきまらないで、ことに日本の防衛に対する精神の作興、振興などと盛んに言っていらっしゃるけれども、その精神がきまらないのも防衛計画がきまらないからで、みんなあなたの責任です。隠さずに今日できるまでのことを発表するか、発表できなければあなたは何もしなかったのか、どっちなんです。あなたがしたのなら、あなたがしただけのことを発表なさい。全然発表しないのなら、あなたは無能なんです。今日の場合は現職にとどまることもおかしくなる。どっちなんです。
  96. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御承知通り、今まで防衛庁内でもいろいろと研究を重ねてきておるわけでございますが、この防衛の問題は、ほんとうに政府が責任を持ってきめるまでには、そこに非常に慎重な熟慮を要するものがあるということは当然だと思います。そして先ほども申し上げましたが、今後の計画を作りますに当りましては、実際問題として非常に大きな要素としては、アメリカ側の援助とアメリカ側のいろいろの考え方というものについて、これは重要なこととして考慮さるべきことである。実際問題としてそういう実情でありまして、そしてまたアメリカ側でもいろいろと今研究しているというふうに私は観測している次第でございます。そのほか国内的にも、とにかく先ほどから大橋先生御指摘のありました民兵問題のごときも、いかなる結論を出すかともかくといたしまして、事実党内にもいろいろの考え方を持っておる方もおられるわけでございまして、またアメリカ側の援助等との関係等も不可分の関連を持ってきますが、日本の今後の財政との関係等についても相当時間がかかるのもやむを得ないのじゃないか、私が無能とおっしゃるならば、もちろん私は有能と思っておりません。その点は御批判にまかせます。今のような次第でございますから、御了承いただきたいと思います。
  97. 松野頼三

    ○松野委員 私は今は杉原長官は有能だと言うのですよ。こういうものができなければ将来無能だというそしりを受けるぞという意味です。だから言葉は悪いかもしれませんが、大いに敬意を払っております。ただ今の答弁にもあったように、アメリカが何とか言わなければこちらは一切できないというものではないと思う。お宅の方の現内閣の経済計画においても、大いにアメリカの援助及び特需というものがあるのです。そして大きな幅を占めているのです。そして一応の計画を作っておられる。それにもかかわらず、どうして防衛だけがアメリカの方から確定がなければできないのか、どこができないかをおっしゃって下さい。人員においてできないのか、兵器においてできないのか、あるいは防衛分担金の交渉においてできないのか、何ができないのか、相手方をあなたは予測されているが、それであなた方自身はいいかもしれませんが、われわれには予測すべき資料がない。あくまで日本は独立国だ、また日本大臣というならば自主的にやらなければならぬが、自分の自主性においてやれることとやれないことがあるから、ここまではやれますが、ここまではやれません、そういう限界があなたの答弁にはない。何となくそういう観測をしておりますと言うが、軽気球じゃない。はっきりこの際言ってもらわなければ困る。
  98. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 たとえばアメリカ側からどれくらいの装備の援助というものが期待できるかというようなことは、この計画を立てます場合も非常な重要な要素だと思います。そして今その点につきましてのアメリカ政策が単に日本に対する関係だけでなく、欧州諸国等における関係におきましても一つの転換期にあるものと思います。また最近におきましても、そういう点についてアメリカ側においてもいろいろ具体的に研究している、そういうことを私は承知いたしておるのでありまして、そういう点も実際問題として私この計画を立てるに当っておくれている一つ理由になっていると考えております。
  99. 松野頼三

    ○松野委員 防衛庁の任務は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことでしょう。それならこちらの日本が、日本の安全を保つためにどういう内容を持つべきかという計画を立てなければならぬ。何のためにあなたはやっているのですか。第一あなたは防衛庁法の本旨に違った答弁をしている。日本の国の安全を守るためにだれがこの計画を立てるのです。あなたが立てるのでしょう。まるであなたは逆だ。それでとやかくと防衛庁に関する革新派からの攻撃が集中するのです。その材料はあなたが与えているじゃないですか。日本の計画を立てずに何で日本の安全を保つのです。この条文によれば、日本の平和と安全をはかるのがあなたの職務であり、防衛庁の職務であるのに、あなたの話だとアメリカの方がきまってこなければ日本はきまらない、そんなばかな話はない。日本の本年度の防衛計画、日本の防衛庁費はアメリカがきめたのですか、どっちですか。
  100. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今の松野さんの御指摘でございますが、私は根本において松野さんと同じように考えているわけでございまして、これはもう申すまでもないことだと思いますから、私特に申し上げなかったのでありますが、日本として一体どのぐらいの自衛力を持つのが適当か、そしてまた持ち得るかというような点につきまして、大体の腹がまえといいますか、それをまずして、それを基礎にして考えなければならぬことは当然のことだと存じます。
  101. 松野頼三

    ○松野委員 私がお伺いしているのは、その基礎である日本の計画を早く立てなければ、アメリカとの交渉もできなければ、日本国民に対するあなたの責任も果せないじゃないかという基礎を聞いているのです。あなたの今おっしゃったのも基礎でしょう。私は基礎を示せと言うのだ。基礎は何かといえば、日本独自の防衛に対する一つの構想であり、防衛庁の一つの決定である。それについてあなたと私との間に何らの矛盾がないが、あなたはそれに対して答弁を左右されるから問題が進まない。日本の基礎ができなくてあなたは何をもって交渉しようとするのか。基礎を示せと言っているのですよ。
  102. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 そのいわゆる基礎的なものを作るにつきましても、これは理屈ではなく、実際問題といたしまして、私アメリカ側の援助の関係につきましても、もう少しこっちの考えのもとになる資料が必要だと実は考えている次第でございます。そうしてさらに今後もう少しそういう点がわかって参りますならば、今申します大体の一つの案がきまり得る。これは私の今後の進め方についての考え方でありますが、そこのこっちの政府としての考え方が大体きまりますならば、そのときほんとうにアメリカ側とももっとさらに本式の話し合いをするのが適当ではないか、そしてきめるのが適当ではないか、こういうふうに考えております。
  103. 松野頼三

    ○松野委員 あなたの確定しないという話は一応了承するにしても、交渉すべき原案の基礎ぐらいは示すのが当然です。予算も通過し、すでに防衛分担金の交渉の際にある程度話をされたのですから、その基礎を示さなければだめなんだ。これから先はアメリカとの交渉がなければ決定しないというのなら、それを明らかにすべきであって、アメリカの方との交渉を全部きめろといって無理なことを言うのではない。日本の方針の基礎を示さずにあなたがやるところに無理がある。あなたの範囲内における基礎を示しなさい、内閣として示せなければ、防衛庁の責任において基礎を示しなさい、これはできないことはないと思う。防衛庁における基礎を示しなさい。
  104. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 まだそれのここで責任を持って申し上げるまでのものを実のところきめ得ない次第でございます。その点御了承願いたいと思います。
  105. 松野頼三

    ○松野委員 それは大臣あまりひど過ぎませんか。大体あなたは防衛庁設置法の規定の第一条に書いてあるものが、いまだに自分の方はわからない——わからないで答弁するなどということはあり得るものではない。日本の国の安全を保障するためにどうするかという基礎を示せというのに、基礎が示せないというのは、防衛庁法の第一条が大へん矛盾しているからではないのですか。こまかいことを私言っているのじゃない、基礎を示せと言っている。こんな計画があるものですか。
  106. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今の御質問の御趣旨をあるいは私今まで少し取り違えておったかと思いますが、これは基礎的の考え方といたしましては、日本としては集団自衛のため、アメリカとの共同防衛のもとにおいて、日本として自衛の最小限度の力を持ちたい、これが基本的な考え方であります。それをさらに、実際問題としては、いわゆる国力との関係もにらみ合せなければならぬ、そういう点をもとにして考えていきたい、これが基本的な考え方でございます。
  107. 松野頼三

    ○松野委員 最小限度にして最も有効なものを持ちたいとおっしゃるならば、その最小限度にして最も有効だというものをお出しなさい、何かむずかしいことがある。最小限度にして最も有効だとあなたがお信じになるのだから、その最小限度にして最も有効なものはこれだということを出せと言うのです。
  108. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 その具体案は、たびたび申し上げますように、まだ責任を持ってお示しし得る成案を得るに至っていないのでございますから、御了承願いたいと思います。
  109. 松野頼三

    ○松野委員 それではこの法案を出すこと自身が、すでに提案理由説明に反することになる。提案をおやめになって、取り下げられる方が妥当じゃありますまいか。一体何のために提案されたのですか。
  110. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 基本的には先ほど申し上げましたような考え方を持っておるのでありまして、アメリカとの共同防衛のもとにおいて日本の自衛に必要な最小限度の、しかもそれは国力に相応しながら、適当なもの、そこを基本に考えている、今回提出して御審議を願っておりますのも、その基本的な考え方に基いてやっておるのでございます。
  111. 松野頼三

    ○松野委員 その国力に相応した計画を出しなさいと言っているのです。国力の相応というのは何ですか。何を基準にして言うのですか。全世界の人口からいえば日本はおそらく五番目に位いするでしょうが、あなたは一体何を国力と言うのですか。
  112. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは、国力というものは非常に広い概念だと思いますが、実際問題として考えます場合には、何と申しましても日本の経済、財政力といったようなもの、もちろん人口とか何とかいうものも当然考えなければならぬ、さらにまた考え方として日本の国富といいますか、そういうものも考えなければならぬことだと思います。
  113. 松野頼三

    ○松野委員 国富と言われますが、国民所得は、二十九年度は六兆一千九百七十億、三十年度は六兆三千二百三十億です。あなたの方の防衛力の増強工合はどうかというと、二十九年度は防衛庁経費は七百四十二億、三十年度は八百六十八億であります。予算の面を申しますと、二十九年度の予算が九千九百九十八億、三十年度の政府原案は九千九百九十六億であります。どこに国力に相応というものが数字的に出てきているのですか。国民所得もわずかながらふえた、あなたの方の防衛庁費も一割くらいふえている、しかしながら予算は昨年よりも減っているのです。ほんとうにふえたのは人口がふえたくらいなものです。これでもって、国力のどこがふえたから、こういう予算をお組みになったのか。どこにあなたの言う国力の相応がありますか。
  114. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 数字的に見てここがこう違っておるのではないかということでございますれば、相応という点でいろいろ御議論もあろうかと存じますが、これはおおよその検討というものでやっていくより実際問題としては私なかろうと思います。その際一番考慮しなければならぬのは、やはり国民生活をあまり圧迫しない、また国民生活水準の正常な上昇というものをあまり妨げないようなところまでよく考えてやっていかなければならぬと思います。
  115. 松野頼三

    ○松野委員 だんだん答弁が違ってくる。経済力に応じて、国民所得に応じて、国力に応じてというふうにだんだん違ってきて、最後にはそれは自分の一応の勘だと言う。そんな勘なんかでやられちゃ困る。何べん繰り返してもあなたの答弁は右にいき、左にいく。今日の委員会審議をじゃましているのは、杉原さん、あなたですよ。ですから、あなたはあなたの信念に応ずるところの防衛庁の防衛計画をお出しなさい。
  116. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 たびたび申し上げてきておるのでありますが、長期の計画を立てたいと存じまして、今日までいろいろ研究して参っておりますが、いろいろの困難がございまして、今日までお示しできるような、責任を持って申し上げられるような成案を得ていないではなはだ遺憾に存じますが、これができました上は、もちろんこれは国会に対してはお示しを申し上げます。何もこれを示さない、そういう趣旨ではありませんから、御了承願いたいと存じます。
  117. 松野頼三

    ○松野委員 成案ができなければ草案を示しなさい。草案でいいですよ。われわれもその成案を得るために協力しますよ。これができないのは通産省大蔵省アメリカ関係でできないというなら、そのできない理由を示しなさい。
  118. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 この際暫時休憩いたします。     午後二時五十九分休憩