運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-06-17 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十七日(金曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君    理事 田原 春次君       大村 清一君    長井  源君       保科善四郎君    眞崎 勝次君       粟山  博君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    田中 正巳君       田村  元君    福井 順一君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    鈴木 義男君       渡辺 惣蔵君    矢尾喜三郎君       中村 高一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁次長   増原 恵吉君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 六月十七日  委員大橋武夫君辞任につき、その補欠として船  田中君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月十六日  和歌山県新庄町外二箇町の地域給指定に関する  陳情書(第二〇一号)  茂原飛行場設置反対に関する陳情書  (第二二一号)  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部改正に関する陳情書  (第二  二四号)  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部改正等に関する陳情書  (第二四八号)  薪炭手当制度化に関する陳情書  (第二四九号)  金鵄勲章年金復活に関する陳情書  (第二七八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  一〇〇号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  八一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)     ―――――――――――――
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案、及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案一括議題とし、質疑を続けます。大坪保雄君。
  3. 大坪保雄

    大坪委員 私は今回御提案になりました国防会議の問題は、これは国の将来の運命にも関するような重大なる事項であると考えますので、その基本的なものについてニ、三総理にお尋ねいたしたいと存じます。非常に入りかわり立ちかわり各委員がお尋ね申し上げるのでありますけれども、これは今申し上げましたように、将来に非常な影響を及ぼすのであるということをお含み下さいまして、御答弁を願いたいと存じます。  今度国防会議構成等に関する法律案をお出しになったのでありますが、今日の日本国内情勢社会情勢等からいたしまして、そして今日自衛隊がなおいわゆる日陰者のような待遇を、法律上も一般からも受けておるというような現状であり、自衛隊に関する法律論もまだ論議の途中であるというようなことでありまして、今日国防会議というものが設置されるについて、これの受け入れ体制とでも申しますか、そういう国の社会情勢というものが、まだ熟していないのではないかとさえ思われるような感じがいたすのであります。それをどうしても成立させねばならぬ、非常に急いでお出しになった理由はどの辺にあるのであるか。この国防会議に付議すべき事項のどういう点を急いで諮問しなければならぬとお考えになるのであるか。国防基本方針か、国防会議大綱か、または国防基本方針なり大綱なりに関連するいわゆる防衛産業と申しましょうか、その計画等についてであるか、今日非常に急いで——ども考えでは今申し上げたように、社会情勢からはまだ熟していないような感じのするものだ。日本は敗戦をいたしまして、アメリカ進駐軍から国防軍を持ってはいけない、申さば非常なる重病人の絶食を命ぜられたような状態であったものが、隠れてこっそりおかゆを食っているというような状態のところに突然こわ飯を出された、それも半煮えのこわ飯を出されたような感じがいたすのであります。今日国防会議をすみやかに設置していかなる事項をまず諮問しようとなさるのであるか。その点を一応あらかじめ伺っておきたいと存じます。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戦争後の日本が最も先に重きを置いてやらねばならぬことは独立完成であると思います。独立完成には、一国をなす以上はやはり自分の国を守るところの自衛兵力を持たなくてはならぬことだと思います。いつまでもアメリカ駐留軍によって日本防衛をしてもらうということは日本独立完成するゆえんにはなりません。そこでどうしても自分の国を自分の力で守るというためには長期計画を持たなくちゃならぬ。長期防衛計画を立てるためにはどうしても国防会議を開いて根本長期計画を立ててもらわなければなりませんから、国防会議法を作らなければならぬと考えゆえんであります。
  5. 大坪保雄

    大坪委員 長期防衛計画を持たねばならぬということ、その考えからして国防会議設置を急がれるというお気持はわかるのであります。しかし先般来本院の本会議ないし各委員会同僚のいろいろの諸君から防衛六ヵ年計画設定についての質疑があったのでありますけれども、これも総理防衛庁長官の御答弁ではただいま検討中であるということでなかなかはっきりした御計画の内容が示されておりません。そういう事態でありますから、私どもはそうお急ぎになっておるのではないような感じさえ受けておったのであります。しからば国防六カ年計画とでもいうべきものは、結局国防会議ができてから御設定になるおつもりでございましょうか。
  6. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。長期計画につきましてはただいま鋭意研究中でございまして、成案を得ました上は、そしてまた国防会議が実現を見ました上は、その国防会議に諮りまして、しかる後に政府としての計画を決定いたしたい、こう考えております。
  7. 大坪保雄

    大坪委員 ちょうど杉原長官が御答弁になりましたから、関連して、簡単にお伺いしたいと思います。国防基本方針と称するものはどういうことでございましょう。国防をやるということであれば、これにはどうしても仮想敵国というものがなければならぬと私は思うのでありますが、そういう点について防衛庁では今どのようなお考えをお持ちになっておるのでありますか、それを伺いたいと思います。
  8. 杉原荒太

    杉原国務大臣 国防基本方針、将来にわたってどういう方針で行くべきか、これは非常に重要な問題でございます。不肖私の考えておりますところによりますれば、わが国の平和、つまり戦争の防止、それから独立、つまり日本政治的独立を保つ、このわが国の平和と独立を守る、そうして国の安全を保つということが国防目的だろうと存じます。それがためにどういう基本方針をとっていくか、こういう問題がいわゆる国防基本方針に関連する問題だと思います。
  9. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまの長官の御答弁はきわめて抽象的で、私はそういうことをお伺いしておるのではございません。これは総理にお伺い申し上げたいと思います。申し上げるまでもなく、自衛隊法の第三条には自衛隊行動基準がはっきり定められてございます。「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛する」というのが自衛隊任務ということになっておるのであります。私がこういうことをお伺い申し上げますのは、とにもかくにも今日自衛隊というものがある。総理は昨日本委員会において、今日の自衛隊は役に立つようになったと思う、こういう御答弁でございました。今日国防を担当するものとして、日本自衛のためにとして、とにもかくにも自衛隊を設けられておる以上は、役に立つ自衛隊でなければならぬと思うのであります。国防上、国民の信頼のつなげるような役に立つものでなければならぬと思うのであります。その場合に私ども考えますことは、今回人員の増加なども提案になっておるのでありますが、申すまでもなく防衛を担当する自衛隊員に国を守る、あるいは民族の安全を保持するという、任務に対する自覚がなければならぬ。その任務に対する自覚責任感があって、初めて国民の信頼し得る自衛隊ができると、私どもはこう思うわけであります。そういう自覚を持たしめるためには、自衛隊員として何を目的とし目標として今日訓練を続けまた覚悟をきめるか、そういう基準目標がなければならぬと思うわけであります。その場合に私が考えますことは、今日必ずしもその目標がはっきり差し示されておらぬのではないか、自然自衛隊の中の精神力の振起が必ずしも十分でないのではないかというような心配をするわけであります。  そこで総理にお伺い申し上げたいと思いますことは、そういう自衛隊目標をはっきりさせるという意味から、直接侵略とは一体何であるか、どういう場合にそれは起るものであるか、それを一つお伺いいたしたいのであります。申すまでもなく、総理自衛隊最高指揮官であらせられますから、最高指揮官としての総理はそういうものに対する認識ははっきりお持ちになっておるものであると存じますのでお伺いをいたします。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本防衛は、日本の独力で外国の直接侵略に足りるとは私は思っておりません。やはり国際連合の支持によって、集団安全保障によって日本防衛するより仕方がないと思うのです。だけれども集団安全保障を受くるまで日本防衛しなくてはならない、その限度防衛力日本として持たなくちゃならぬ、それだけのために自衛隊が役に立つような働きをしてもらいたいと思っておるのであります。  先刻あなたの御質問の中に、仮想敵国はどこだというお話がありました。あなたのお話を聞いてみると、仮想敵国というものを考えて、それに対抗する精神力自衛隊に養おうとする、言いかえてみれば、日本自衛隊の人が共産主義が非常に日本に危険であるということを心から思って、それに対抗するような精神力を養わなくてはだめだということが、あなたの御質問の中にあると思うのでありますけれども、私どもとしては仮想敵国を今日考えることは外交上あまりおもしろくないことであります。仮想敵国ということは考えておりません。けれども世界の平和を維持する国際連合の一員として集団安全保障をするのには、一国をなす以上どうしてもそれに沿う程度の兵力を持つことが必要だと思いますので、世界平和維持のために必要なる限度日本防衛する兵力を持ちたいと思っている次第であります。
  11. 大坪保雄

    大坪委員 総理はただいまははっきり仮想敵国は持たない、しかしながら日本もやはり集団安全保障に参加して国を守るよりほかはない、それまでの間に自衛隊を強化すると仰せられたのでありますが、総理のお考えになっております集団安全保障機構で、日本はどういう国々集団安全保障を結んだらいいとお考えでございましょうか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もとより自由主義国家群集団安全保障を結ぶのが賢明だと考えております。
  13. 大坪保雄

    大坪委員 総理のただいまの御答弁、もとより自由主義国家群集団安全保障をやった方がいいと考えるというお答えでございます。まことにさようであろうと思うのであります。そういうお答え前提には、今日申すまでもなく世界二つ世界に分れているということをお考えの上であろうと存ずるわけであります。民主主義自由主義国々集団安全保障網を作ろうとしている、現にすでにいわゆるNATOとかSEATOというものができているわけでありますけれども、これらはただ主義経済主義等を同じゅうするから、あるいは思想を同じゅうするから集団安全保障をやるというのでなしに、集団安全保障をやるということについてはやはり国防上の危険を感ずる、国防上の危険を感ずるからさようになったものであるに違いない。今日世界国々で、アメリカソ連はあるいは別かもしれませんが、それを除くいかなる国といえども一国だけでその国の安全を守り得る力のある国はない、また自信のある国はない。アメリカソ連といえどもそれはないでございましょう。でありますから、いろいろの集団安全保障機構をこしらえているわけでありますが、片一方民主主義自由主義国々はやはり集団安全保障機構を作る。これは何かといえば、やはり国防上の不安を感ずるからである、不安を感ずるということは何か、みずからの自由なり独立なり安全なりを害せられるというおそれがあるからであると見なければならぬと思うのであります。世界二つ世界に分れている。これは総理もただいま前提としてお考えになっていることであると思うのでありますが、申すまでもなく、民主主義自由主義の陣営に投じて、集団安全保障を期待したいということであれば、これに対する危険を感ずる相手方は何としても共産主義を奉ずるいわゆるソ連中心とした共産圏国々であろうといわなければならぬ。そういう結論をつけるほかないと思うわけであります。そういたしますと、ソ連中心とする共産主義国々自由主義国々、すなわち日本仮想敵国と言えるのではないかというように思うのでございますが、その点についていかにお考でございましょうか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連中共とは日本侵略国家考えて、そしてかつては同盟を結んだことがあります。その際に私考えたのでありますけれども日本を今日の力をもってして世界侵略者というように考えることは非常な誤りだと思います。事実不可能なことで、日本世界侵略者と言われて、そして日本仮想敵国として中ソが防衛を結んだということは実にばかばかしいことだと思いました。それですから、日本がまたソ連中共仮想敵国と言うことはいたずらに両国間の感情を害するものだと思いますので、そういうようなことは言わない方がいいと私は考えております。
  15. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまの総理のお心持は、日本総理大臣としてのお気持としては私はよくわかります。ただ総理は同時に自衛隊最高指揮官でいらせられる、最高指揮官である以上は、自衛隊目的を差し示すということが私は自衛隊員の士気を高揚する上から、精神力を築いていく上からきわめて大事だと思うのであります。これは外交上支障があるというようなこともございましょう。従ってこういう席上でははっきりソ連ならソ連というものを仮想敵国ということは言えぬという事情がございますかもしれませんが、しかしながら自衛隊最高指揮官としては目標は定めなければならぬ、仮想敵国のごときものはやはり自衛隊員には一応差し示さなければならぬというお気持はございませんですか。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自衛隊教育する人たちが完全に教育してくれればいいと思っております。
  17. 大坪保雄

    大坪委員 実は私はその点まで触れるつもりはなかったのでありますが、これは非常に大きな問題だと思います。最高指揮官部下のだれかにその教育なりあるいは目的なりというようなものをまかせきりにしておいていいのであろうか。今日の事態は、世界情勢も一応いわゆる共産権平和攻勢によって落ちついたような状態であるし、同時にわが国国内も必ずしも不穏な状態ではないのでありますけれども、こういう状態がいつまでも続くということは考えられないので、そういう場合に最高指揮官——特に部隊のごときものは最高指揮官が明確に方向を差し示すのでなければ行動を非常に誤まるおそれがある。特にわが国におきましては、まだ思想界も相当動揺したものがございまして、一体どっちに国民が向っていっていいのか、その帰趨に迷っているような者も少くなかろうと思います。自衛隊員の中にもそういう者が出てこないとも限らない。自衛隊がせっかく国を守るための訓練を受けても、そのほこ先がどっちに向いていくかわからぬということでは、国民はきわめて不安であります。部下に大きな目標あるいは主義というようなものをまかせきりにして訓練教育をするということは、まことに大へんなことだと思うのでありますが、やはり自衛隊のことは部下にまかしておけばいい、最高指揮官ではあるけれども、知らぬでいいというふうにお考えでございましょうか、もう一度そこのところを伺いたいと思います。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊世界の平和を維持するということが目的でありますから、世界平和の維持に芳ばしくないことはできるだけ避けなければならないと思っております。すなわちソ連中共仮想敵国として自衛隊を作るということは、必要ないと思っております。
  19. 大坪保雄

    大坪委員 総理ソ連は今日他国侵略するる気持はないと思うということをたびたび予算委員会等同僚委員質問お答えになっているようでありますが、ソ連日本に対しても侵略をしてくる意思はないと今でもやはり確然とお考えでありましょうか。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連日本に対する態度は変ってきたと考えております。
  21. 大坪保雄

    大坪委員 それはどういうことが理由になっているのでございましょうか。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連は今日は世界戦争を回避する方に回っていると思います。
  23. 大坪保雄

    大坪委員 それは大体どのくらい続くとお考えでありましょうか。永久ソ連世界侵略するというようなことは考えないであろうとお考えになるのですか、ここ数年はそうしないだろうというふうにお考えなのでございましょうか。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 永久にわたっては私はここで明言することはできません。近き将来においてはそういうことはない、世界戦争ソ連が望んでいるということはないと確信をしております。
  25. 大坪保雄

    大坪委員 これはあるいは水かけ論になってしまうおそれがあるかと思いますが、私は総理はやはり自衛隊最高指揮官であられますし、将来たとえば憲法が改正せられて、——そのときまで総理が御在任であるかどうかわかりませんが、国防会議ができた場合に、国防会議議長におなりになる方でありますから、そこのところをもう少しはっきりしておいていただかないと、自衛隊というものを作っても魂の入らない兵隊になってしまうおそれがあるのではないかと私は心配するから、あえて重ねてお尋ね申し上げたいと思うのであります。私どもソ連に対しては、これは言うまでもなく、共産主義祖国である、世界共産党祖国である。これは私がここであらためてかれこれ申し上げるまでもなく、総理すでに十分御承知の通りでございますが、共産党、特にソ連を中核とする国際共産党は、世界赤化完成されるまでは世界の平和はないのだということで、ある場合には武力をもって、ある場合には平和的手段をもって、世界赤化共産主義による世界の革命を企図いたしておる。それをもう世界の各国々でそれぞれ行なっておるわけであります。のみならず武力侵略もたびたびやっておる。御承知のように、一九三八年の秋には、フィンランドに理由のない理由をこしらえて戦いをいどんで、カレリア地峡を取り上げておる。その翌年の一九三九年には、ドイツが、御承知のように、ポーランドに侵入を始めて、第二次世界戦争が起ったのでありますが、その月の中ごろには、ソ連ドイツに対して宣戦するのでなしに、ドイツ侵略を受けておるポーランドに対して侵略して、ポーランドドイツと半分ずつ分け合って取っておる。その翌年あたりにはバルト三国をいつの間にか合併しておる。特に切実に私どもが反省させられますことは、世界戦争の末期でございます昭和二十年八月九日、これは私どもがどうしても忘れることができない。ゆえなく——どもからすれば、ほとんどゆえなくとも申したいのでありますが、日本にも侵略戦争をいたしておる。そうして当時の首相スターリンは何を言ったかというと、日露戦争のあだを討って痛快であるみたいなことを言っております。こういうように相手国が弱い、相手国が弱まった、あるいは他国の干渉が強くないというときには、武力侵略もたびたびやっておる国であるのであります。今日は、これはチャーチルが今年の三月一日下院で、国防白書の中ではっきり言っておるのでありますけれどもソ連はいわゆる原子力兵器において、とうてい自由主義国家群戦いをいどんで勝つ見込みがないから、今は一応ほこをおさめた格好になっておるということを言っておるし、従ってわれわれはその準備を今後抑制力として続けていかなければならぬということを言っておるのでありますが、今日は一応おさまったようなことであるけれどもソ連の持っておる意図というものは、私どもはとうていこれは軽視することはできぬと思うのであります。ここしばらくの間は、ソ連日本侵略する意図はない。それは来年するか再来年するか、三年後にするか五年後にするか、それは何人といえどもソ連指導者以外にはわかりっこない。であるからといって、ソ連仮想敵国でない、ソ連日本に対して侵略をしないであろうというようなことで済まされるかと私は思うわけであります。いずれにしましても、国を守る国防軍あるいは自衛隊というようなものには、仮想敵国と申しますか、その目標というものがはっきり定まっていなければならぬと思うのであります。しかしこの点は追及いたしましても、総理はおそらくはただいまの御答弁以上の御答弁はおできになりますまい。しからば日本自衛隊が、今日国を守るについて目標を持たねばならぬ、その目標ソ連以外に何があるか、中共があるか、北鮮があるか、南鮮があるか、フィリピンがあるか、何かそういうものがあるとお考えでございましょうか。全然仮想敵国的なものは何も持たないで、ただ訓練をしておるということでございますか、その点を明確にもう一度お伺いをいたします。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 仮想敵国をきめまして訓練をすることは害があると思いますので、私はそういうやり方には賛成できかねます。
  27. 大坪保雄

    大坪委員 これは見解の相違ということになります。これ以上は追及申し上げません。ただ私が非常に心配しますのは、やはり自衛隊員に国を守れと言っても、どこからどういう敵が来るのであるか、来ないのであるか、そういうことが一向にわからない、あいまいもこたる状態訓練をしても、ほんとうの兵隊と申しますか、自衛隊員の力というものは出ない。これは俗に言う仏作って魂入れない、それこそわら人形のようなものになり終るのではないかということを心配いたすのであります。しかしながらこれについて私は今後これ以上総理を追及いたしましても、おそらくこれ以上の御答弁は得られますまい。  ただ私は総理に一言この点について申し上げまして、こういうものではなかろうかということを感じますので、それについてお答えがいただければ幸いと存じます。と申しますことは、先刻申し上げましたように、イギリスの前首相チャーチルは、ことしの三月一日下院において、イギリス国防白書というものを説明いたしております。これは御承知であろうと思う。その中にチャーチルは、イギリスの安全と独立を守るについて注意すべき相手方はこういうものであるということを明らかに言い切っておるのであります。試みにそれをちょっと読んでみますと、こういうことを言っておる。「NATO諸国はアジア及びヨーロッパにおいて共産側継続的侵略と進出とを前にして結合してきたのであった。」共産側継続的侵略ということをはっきり言っております。さらに「自由世界のすべてを通じて米国の核優位が存在せざれば、ヨーロッパはすでに衛星国的状態に陥っていたのではないか、また鉄のカーテンは大西洋、英仏海峡に達していたのではないかという感じが広まっておる。」こういうことも言っております。しこうしてさらに「われわれがともに団結して抵抗せんとし、またこの世界の大きな間隙を作り出したものは、実に共産党であり、またその野望の揚言とその改宗者的活動なのである。共産側として今やすべての核兵器を禁止すべしというのはやさしい。そうなれば、現存兵器についての共産側の優位はますます圧倒的なものとなるであろう。」原子兵器を除けば、その他の兵器では共産側が圧倒的に強くなる。「これも平和をもたらすかもしれない。しかしそれは自由世界の共産制度に対する隷属化という形をとるだけである。」こう言っております。私ども同感であります。世界の平和ということを盛んに言っておる。その世界の平和ということは、世界の共産化をなし終えた後のことを言っておるのであります。今日戦争をしないとか、侵略をしないということではないのであります。さらに続けて「世界戦争は核兵器の抑制力によって阻止せられるかもしらぬが、」すなわち原子兵器をうんと持っておることが戦争を防ぐ力だ、抑制力だ、それがあれば戦争にはならないんだ。「共産側世界の多くの部分において侵透及び蚕食政策を進めるため、軍事行動に訴えるに至るかもしれない。」限定目的を持った朝鮮型の限定戦争もあり得るということをはっきり申して、国民にも警告を発し、軍隊の精神団結の基礎としておると私は思うのであります。こういう態度が私はやはり政治家には必要であると思う。総理は、ソ連という名前をあげては国交上支障があるというお考えもございましょうけれども、一体国際共産党なら国際共産党でもよろしゅうございますが、こういうものは他国侵略意図をやっぱり持つものであるとお考えになるのであるかどうか。もう一度簡潔でよろしゅうございますからお伺い申し上げたいと思います。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 共産主義が誤まっておる主張である、自由主義が尊い考え方だということを国民に徹底せしむることは必要だと思いますが、いたずらにソ連を敵とし、中共を敵とするというような発言は注意した方がいいと私は思っております。
  29. 大坪保雄

    大坪委員 そこで私は質問の方向を少し変えて、ただいまは直接侵略についてのことに関してお伺い申し上げたのでありますが、自衛隊法第三条は、同時に間接侵略に対する防衛のことも定めてございます。先般五月十二日かの本院の予算委員会で相川勝六委員質問に対して総理お答えになって、日本共産党は暴力革命はやらないものと思うというような意味の御発言をなすっておいでになりますが、現在でも日本共産党は暴力革命はしないものとお考えでございましょうか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうような発言をしたことにちょっと記憶がないのでありますが、現在において暴力革命を計画はしていないと思うという意味で私は答弁したことがあります。とにかく共産党が何と言いますか、派手に表面に立って暴力革命をするということを引っ込めておるのが現状でありますから、そういう答弁をしたのであります。
  31. 大坪保雄

    大坪委員 暴力革命を引っ込めてるとお考えになった、お考えの基礎はどういう点でございますか。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは一時はどこの爆弾がなくなったとか、いろいろのそういう事件がありました。共産主義者が暴力革命を計画しておることが露骨であったのです。ところが国際共産党を解散したり何かしまして、表面的には共産主義者が暴力革命をただいまはひそめております。それを申したのであります。
  33. 大坪保雄

    大坪委員 俗にあらしの前の静けさという言葉もございます。今日はなるほど国内は静穏のごとく見られます。しかし私ども総理の御注意を少し喚起して、この点についてもう少し深刻にお考え願い、率直な御答弁をいただきたいと思いますことは、これは総理も十分御承知の通りでございますけれども日本世界戦争に敗れまして、アメリカの進駐軍が上陸して参って、日本共産党員を解放して、その活動を実は援助した。徳田球一氏初め共産党員が出獄し、また支那において日本の敗戦のために非常な働きをしてきた野坂參三氏が帰ってきて、そして共産党を再建いたしたのでありますが、当時は野坂參三氏の意見として伝えられておりますが、いわゆる平和革命論、愛せられる共産党ということを建前として、国内において各種の宣伝活動を続けた。その結果が驚くべき数の国会議員をも出したようなことでありました。それが一九五〇年の一月コミンフオルムから批判されたのであります。平和革命ということはあり得ないという批判を受けた。当時いろいろな抵抗的な言論をやったようでありますけれども、結局このコミンフオルムの批判にこたえまして、そうして暴力主義に移ったのであります。それが御承知のいわゆる火炎びん騒ぎ等である。一九五〇年五月一日の皇居前広場の騒擾事件にしましても、大阪吹田の騒擾事件にしましても、その他交番の襲撃、鉄道の転覆、いろいろ暴力行為に出たのであります。しかしこれも昭和二十七年秋の総選挙の結果等にもかんがみたと思われますし、また徳田球一がコミンフオルムの機関紙において日本共産党の暴状をたしなめて、国民の信頼を基礎とした行動をとるようでなければいかぬということを忠告したのでありますか、その忠告に従って今日はおさまった形になっておるのであります。おさまったのは暴動的暴力行為を頻発することをおさめたというにすぎないのであって、これは暴力革命をやめるということを言っておるわけではございません。大体暴力革命がない共産党というものはあり得ないのです。これは一九五一年の十月ごろとされておりますが、五全協——第五回全国協議会を開いて、そこでいわゆる新綱領というものを定めておる。その新綱領はやはり暴力革命でなければいかぬということをはっきりうたっておるのです。平和革命ではいかぬのだということをはっきりうたっておる。しかも本年一月一日のアカハタ、これは共産党の機関紙でありますけれども、さらに共産党の中央機関誌である前衛においても、この五全協のとききめたいわゆる新綱領は誤まっておらぬ、正しかったのだ、この見通しは今日の情勢からしても正しかったのだ。われわれはこの新綱領を具現することに今後努力を続けなければならぬということをうたっております。これは昭和三十年、一九五五年の共産党の活動方針を示しておるというようなことでございまして、とうてい暴力革命を放棄しておるなどということは考えない。今日は一時静かにはなっておるけれども日本共産党が暴力革命を企図しないというような前提で、たとえば自衛隊を指導される、指揮されるということは、私はきわめて危険であると思うのであります。その点についてもう一度くどいようでありますが、総理のお考え伺いたい。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は共産党及び共産主義に対する研究調査は怠ってはいけないと思います。そうしてそれに対抗するために民主主義自由主義の精神を国民に徹底していかなくてはならないと考えております。
  35. 大坪保雄

    大坪委員 くどいようでありますが、国民民主主義自由主義の精神を徹底していけば、それで足りるとお考えになるのかどうかが問題であると思うのであります。自衛隊法三条のいわゆる間接侵略、これは外国の教唆または干渉によって、国内に大きな内乱や騒擾が起きた場合というのが、大体間接侵略の定義みたいなものであろうとされておるようでありますが、外国の教唆または干渉による国内の内乱ないし騒擾というものは、共産主義を奉ずる国々なり、あるいは人々なりの教唆または干渉による、日本共産党の蜂起による内乱騒擾以外には考えられないと思うのでありますが、そういうもの以外に何か間接侵略考えられるようなものがあると総理はお考えでありましょうか。
  36. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 間接侵略というのは、やはり共産主義の企てというのをさしておると思います。
  37. 大坪保雄

    大坪委員 少しはっきりしたようであります。しからば総理日本自衛隊最高指揮官として、国内間接侵略と称すべきものが起り得る可能性があるわけであろうが、その場合はこういうものであるぞ、それに備えて訓練を積めということを教育方針としてお示しになるものと、私はただいまの御答弁で信じたいのでありますが、それでよろしゅうございましょうか。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は共産主義が何ものであるか、共産主義の調査は必要だと思います。それに対して思想的な防御は十分にしなくてはならないと思いますが、仮想敵国としてソ連中共を指摘することは望ましくない、これは先刻申し上げたように思っております。
  39. 大坪保雄

    大坪委員 仮想敵国としてソ連中共を差し示すことは適当でないということは、先刻いわゆる直接侵略についての考え方についてお尋ねしたときの総理のお考えで私は了承いたしております。これ以上の御答弁を望むことは無理だと思うことで了承いたしておる。しかし私は先刻申し上げましたように、チャーチルのごとき勇気をもって、もう少し国民に方向を差し示すようにしていただきたいということを念願しておるのでありますけれども、これ以上総理にお尋ねしても無理だと思うから御質疑をとどめておりますが、今お尋ねしているのは間接侵略の問題なんです。外国の教唆ないし干渉によって国内に内乱や騒擾が起る、そういう場合に対する自衛隊任務を掲げておる。それは共産党党の蜂起以外にはないと私は思うのである。大体そう思うと総理も言われたのでありますから、やはり今日間接侵略に対する防衛という点については、総理は明らかに自衛隊員に方向を差し示していただかなければならぬ、かように思うわけであります。共産党に関して私はさらに申し上げたいこともございますけれども、なお同僚委員の諸君の御質問もあろうと思いますから、大体総理間接侵略に関するお考え方がはっきりいたしましたから、一応この程度でとどめておきたいと思います。  最後にもう一点私はお伺いいたしたいと思うのでありますが、私がこれらの直接侵略なり間接侵略なりについていろいろ総理にお尋ね申し上げましたのは、とにもかくにも今日十数万人の自衛隊というものがある。今日人員をも拡充されようとしておるのであるけれども、いかに人員を拡充しまた優秀な兵器をこれに与えても魂が入らなければこれは力にはならぬと思いますから、今総理に、自衛隊に魂を入れて下さいということをお願いする意味で実は申し上げておる。そういうものができ上らないで、いわゆる魂の入らない兵隊であるならば、私は多額の国費を費して自衛隊などというものを作らないで、警察予備隊のようなものでけっこうだろうと思うのであります。その点をはっきりしたい。自衛隊最高指揮官としての総理考え方がどうであるかということが、私は自衛隊の隊員諸君が勇気を起し得るかいなかの分れ目をきめるものであると思うからでございます。  それでもう一点お伺い申し上げたいと思いますことは、これはやはり自衛隊員の士気に関することでございますが、この間実は自衛隊のある飛行機にちょっと乗せてもらったことがございます。飛ばない飛行機でございました。ところが私乗って驚きましたのは、飛行機の中に書いてある文字がすべて英語である。いろいろの道具ももちろん日本製ではない。これは私はやむを得ぬと思う。それで隊員の一、二の方に話を伺ってみましたところが、訓練はすべて英語でなされて、おる。たとえば飛行機の操縦にしても通信にしてもそうである。従って非常に難渋する。これが日本語であれば非常に技術の修得も楽であろうと思うけれども非常に苦しいという話でありました。そこでいろいろの方面から自衛隊全体の訓練の状況を尋ねてみたのでありますけれどもアメリカ軍の顧問団があって、これが新兵器等については訓練をするわけであるが、その訓練はすべて英語においてなされておるということだそうであります。これは最後に総理にお伺いしたいと思うのでありますが、その関連として防衛長官の御答弁をいただきたいと思うのであります。それは現在米軍の顧問団の数はどれくらいであって、その顧問団はどういう任務を持ち、日本軍の訓練をするのはどういう事柄について、またその訓練の方法はどういうふうにしてなされておるか、この点を一応防衛庁長官から伺ってみたいと思います。
  40. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。現在の軍事顧問団と申しますのは、御承知の通り、相互防衛援助協定いわゆるMSA協定に基くものでございまして、あの協定に基いて援助をする。その装備等の援助をアメリカ側の政府の代表として日本国内において遂行するというのが任務でございまして、それはあの協定ではっきりときめておりますように、アメリカ大使館の一部を構成する身分を持っておるものでございます。  それから先ほど飛行機の中のことをちょっとお触れになりました。そしていろいろ英語でやっておるということは飛行機の場合等は事実でございます。今の航空自衛隊の現状からいたしますと、飛行機についての操縦等の技術を修得するということが一番当面の重要なことになっておりまして、現実にまたその飛行機等もアメリカから供与を受けておるものが大部分でございますし、その操縦等につきましても、アメリカの操縦士等からその技術の修得を受けておる場合が多い実情でございます。
  41. 大坪保雄

    大坪委員 もう一点長官に関連してお伺いしたいのでありますが、陸上自衛隊や海上自衛隊にも米軍顧問団は入っておりますかどうか、そしてその顧問団が訓練をやっておるのであるかどうか、やっておるとすればその訓練はやはり英語でやっておるものかどうか、その点をお伺いいたします。
  42. 杉原荒太

    杉原国務大臣 いわゆる軍事顧問団と申しますのは、先ほど私が申し上げた通りでございます。前のいわゆる予備隊時代とはその点は事情は違っておりますが、なお細部につきましては政府委員から答弁させていただきます。
  43. 増原恵吉

    ○増原政府委員 補足をいたしまして御説明を申し上げます。現在顧問団と称するものの人員は、下士官を合せまして三百名少々欠けておるというところで、正確な数字は今覚えておりませんが、三百名足らずでございます。これはほとんど全部が東京におりますが、ごく一部が北海道の札幌、九州の福岡、それと富士学校におるわけでございます。これらの人たちは、長官から申し上げましたように、MSA協定によりまして供与されました機材その他が、いわゆる日本防衛のために適切に使われておるかどうかを監察をするという任務、権限を持っておるわけでございます。現在におきましてはこの人たち自衛隊訓練に参加をしておることはございません。なお航空機の問題について御質問のございました点は、現在航空機の訓練につきましては、浜松あるいは築城等におきまして米空軍の人たちから教育を受けております。これは顧問団ではございません。米空軍の方の訓練を受けておるのでございます。そしてこれが英語の訓練を受けておることも事実でございます。この主たる理由は、現在日本の航空管制は米軍が担当をしておるということになっておりまして、空に上りますと、航空管制上の指示が全部英語で出るということでございまして、これはなるべく早い機会に日本の方で航空管制を担当するということになりたいと私ども熱望をいたしております。その関係で英語の訓練を受けておるということに相なっておる次第でございます。
  44. 大坪保雄

    大坪委員 時間がございませんから、ただいまの政府委員の御答弁に対して、私は他でお聞きした事柄等についての重ねての質問はやめることにいたしますが、ただ一点総理にお伺いを申し上げ、またできるだけ御善処を願わなければならぬと思います点は、これはもちろんMSA協定等もございますし、それによるやむを得ざる約束もあろうかと思うのでありますけれども、今日自衛隊の隊員の士気を高揚せしめて、国民の信頼にこたえ、国民の期待に応ずるような防衛上の実力を発揮するためには、何としても任務に対する自覚とそれによる責任感が出てこなければならない。言葉をかえれば、精神力が旺盛にならなければならぬと思うのであります。それが日常私どもの触れた自衛隊の諸君の言動からしましても、特に飛行機の場合は、今の航空官制等のこともございましょうが、英語による教育がされておる。要するに語学本位と思われるようにさえある。英語が相当熟達しなければ、他の方面における技術が優秀であっても、なかなかすぐれた自衛隊員にはなれないようになっておるという実情があるようであります。また一面国民の一部の中には、日本自衛隊アメリカの傭兵だと称しておる。傭兵にすぎないのだからと称しておる。これがやはり自衛隊の各方面に、英語で訓練され、英語のみで話をしなければ上達をしないというふうなことになりますと、自衛隊員自身の中に傭兵思想が出てくるのではないかということを私は危惧いたすわけであります。従いましてこれは今後のアメリカとの折衝にかかるわけでありますが、軍事顧問団のごときものも、これは他の方法で十分補いがつくものである。たとえばアメリカの武器に習熟するためには、アメリカに学んでくればよい。日本国内においては日本人による日本自衛隊員訓練というものがなされるという事態になっていかなければ、私は士気は高揚しないものと思う。そういうことに対して総理はいかにお考えでございますか。私は相なるべくは、すみやかにアメリカと交渉をされて、しかも新武器等に対する技術の習得のごときは、すぐれたる数人の留学生を出して、これに学ばせて、これらの人々、要するに日本人の手によって日本国内においては訓練をするというような方式にいくように私は交渉を願いたいと思うのでありますが、その点に関する総理のお考え、また今後に対するお気持というものを承わりたいと思います。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 士気の高揚はもとより必要な事柄でありますから、よく検討いたしまして善処をいたします。
  46. 大坪保雄

    大坪委員 私はただいまの程度の御答弁では満足いたしかねます。要するに私は、総理日本自衛隊最高指揮官としての十分なる御覚悟、御決心というもの、あるいは総理自体が自衛隊最高指揮官としての認識を十分持っておいでになるかどうかとさえ実は疑うようなことでございます。とにもかくにも今日国の平和と独立を守り、民族の生活を守るために自衛隊というものがある。これがある以上は、やはり目的に沿うようなすぐれたるものに仕上げていかなければならぬ。国民の信頼と期待もそこにあると思う。それは最高指揮官たる総理が十分お考えにならなければならぬ点であると思う次第でありますが、今までの御答弁によっては、私は非常に失望を感ずるものが多いのであります。隊員諸君に非常に気の毒な感じさえいたします。これは時間の関係がありまして、私はこれ以上お尋ねすることをやめますけれども総理はとくと一つお考え下さいまして、自衛隊員の士気を高揚して、ほんとうに国民の信頼するような自衛隊総理はすでに自衛軍とさえ称しておられるが、そういうものを作り上げられるように御努力願いたいと存じます。これをもって一応私の質問を終ります。
  47. 杉原荒太

    杉原国務大臣 一言つけ加えさせていただきたいと思います。自衛隊訓練日本が主体になってやっているのでございまして、航空に関しましては、技術の習得を国内でもアメリカの空軍についてやっておりますし、その技術の習得のためにアメリカに派遣してやっているものもある現状であります。それだけつけ加えておきます。
  48. 宮澤胤勇

  49. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 昨日以来憲法上の問題、自衛の問題、そうした比較的理論的な問題が取り扱われましたので、きょう私は、方面を変えて国防会議の機能という点から二、三お伺いしてみたいと思います。  少くともある一つの組織を作る以上は、その組織がどのような現実的な状況の中で運用されるか、これを運用していく力関係がどうか、こういうことをはかっていきませんと、形の上でどんなにきれいなことを言ってみたところで、それは単なる抽象論に終ってしまうと考えざるを得ないわけであります。そこで当然頭に浮かんで参りますのは、この国防会議がほんとうに政府提案のように運用されていくかどうか、こういうことを疑問にせざるを得ないわけです。こう考えて参りますと、第一に頭に浮かんで参りますのは、今大坪さんが御質問になりました軍事顧問団です。軍事顧問団は、あらためて申し上げるまでもなく、日本自衛隊訓練計画の策定、あるいは装備の決定、アメリカから日本に対する援助物資の請求、あるいは日本が援助を受けたいと申し出でるについての勧告をする、こういうような任務を持っております。こう考えて参りますと、軍事顧問団というものの意向を無視して国防会議などというものは成り立たないのじゃないか、軍事顧問団というものが少くとも訓練について日本自衛隊を支配している、こういう状況の中で、いかに国防計画を立ててみたところで、それは独自のものになり得ない、こういうことを考えざるを得ないわけです。たとえば軍事顧問団の忠告に従って、海上自衛隊は二百十八億の予算を組んだわけです。そして十七隻の艦艇をアメリカから貸与を受ける、こういう計画でありました。ところが昨年中に当然貸与を受けるべき十七隻の艦艇が、現在到着しているのはわずかに駆逐艦二隻に、もう一隻小さな船、これきりであります。十月になってようやく十二隻の船がやってくる、こういうことで計画は一年ずれているわけです。国防計画を立てる場合に所有艦艇の数が一年間ずれる、こういうようなことで長期国防計画などというものは立てられるはずがないわけです。従ってかりに国防会議でどのようにりっぱな計画をお立てになっても、供与せられる船あるいは武器などが引き渡される時期というものが一年もずれる。顧問団の意向、あるいはアメリカ軍の意向によって一年もずれる、こういうようなことになれば計画根本的にくつがえってしまう、こういう結果になるわけであります。裏返していえば、どんなにりっぱな長期計画をお立てになっても、軍事顧問団の手によって自由自在にこれをくつがえされ、あるいは促進される、こういう状況になってしまうであろう。また米軍の顧問団の指示に従って訓練を受けておるのです。今大坪さんのおっしゃるように、全部が英語で渡される。注意書まで英語だ。これは単に言葉の問題ではございません。その軍隊の性格を如実に示しているものだといわなければならない。こうした米軍流の訓練をされ、米軍流に指図をされ、米軍流に動かされる軍隊をもっていかなる長期国防計画を立てられるのか。こういうふうに考えて参りますと、国防会議というのは軍事顧問団によって完全に制肘せられてしまう結果に終る。いやもっと悪くいえば、米軍の指図によって日本自衛隊が自由自在に動かされていく。その計画まで作られていく。これをあからさまに示したのでは日本国民が納得しないから、国防会議という中間の機関を作って、あたかも鳩山さん以下の国防会議議員が自主的に作り上げたかのごとき錯覚を日本国民に与えようとするものではないか、こういうふうに悪くさえ解釈をせられるわけであります。従って国防会議議長になられる首相に、軍事顧問団と国防会議との関係がどのようにあるか、軍事顧問団からどのように制約を受け、どのように軍事顧問団の意見を国防会議の中で消化していくか、こういうことをお聞かせいただきたいと思います。このことは日本自衛隊アメリカの隷属軍であるという現実の性格の上に立っての問題であろう、こういうことを抜きにして国防会議を抽象的に法律的に論議してみたところで意味のないことではないか、こういうふうに考えるわけであります。まず第一にこのことをお伺いいたします。これは首相に伺っておきます。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 軍事顧問団と国防会議議長とは直接の関係がありません。事実どうなっているかについては杉原防衛庁長官から答弁をいたします。
  51. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答えをいたします。軍事顧問団の任務ということはいわゆるMSA協定に規定してある通りでありまして、それ以上のことを出ることはございません。  それからただいまおっしゃいました中で、日本が実際このMSA協定に基きまして、装備品等の供与を相当受けておる、これは事実でございます。従いまして今後の長期計画を立てていきます場合にも、このアメリカ側から供与を期待し得る程度等が非常な関係を持つことはこれは否定できません。しかしながら国防会議といわゆる軍事顧問団とは別に何の関係もございません。
  52. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 軍事顧問団の任務を見ますと、被援助国の要求する軍事品目の不足を決定する、あるいは軍事援助の要求準備をすることについて当該国に勧告し及び援助を行う、こういうことになっておりまして、アメリカから日本にいかなる武器が貸与せられるかということについては相当なる権限を持っている、これははっきり出ておるわけです。ところが国防会議において長期国防計画を立てるなり軍事方針を立てるなりいたします場合に、武器というものを除いてはとうてい決定ができない。いかなる武器を供与せられるかということは重要な問題であります。この場合に日本の第九次あるいは第七次の国防計画を見ますと、その約四割までがアメリカの供与武器に依存をしておるという状況であります。四割までアメリカの武器に依存をしている状況において、その武器が不足するかどうかということを決定する軍事顧問団の意見と国防計画を立てる国防会議とが関係ありません、こういうようなことで果して現実が片づいていくものかどうか、私は単に法律を解釈するとか、そう思いますとか思いませんとかいうことでこのことを片づけていくべきではないと思います。少くともこの問題は日本の運命をかける問題である、これは今までの各委員がすべて異口同音に仰せられたところであります。私たちはもっとよく現実を見ながら現実の上に立って、しかもそれがいかなる作用を行うかということを考えていくべきだと思います。ところがかくのごとき強大なる力を持っている軍事顧問団が、国防会議に関係ありません、こういうことでほんとうによろしいのですか、もう一度伺います。
  53. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。私は先ほども申しましたように、アメリカ側から装備品等につきまして今まで相当の供与を受けておる。そうして今後もまた相当の供与を期待すべき状況にあるということは申し上げ、そうしてそれと日本の今後の国防計画は非常に関係があることは否定できませんということは、先ほど申し上げた通りでございます。そうして今度一方日本側として今後防衛力の建設についてどういうふうな計画を立てるかということがまた基本となりまして、供与の方もアメリカ側としてそれじゃどうするかということがきまることも事実であります。そういうふうな非常に相互に関連を持つことであります。そうしてまたアメリカ側といたしましても、軍事顧問団はなるほど日本と直接そういう点に接触面はもちろんあるのでございますが、アメリカ軍事顧問団は本国の政府の意向によって動いておることは言うまでもございません。そうしてアメリカ側といたしましても財政その他の関係で、日本に限らず外国に対して一体どれくらいの軍事援助ができるかということは、これは毎年の予算できまることでございます。向うといたしましても実はそうあらかじめ先々までのことを言い切るようなことはないわけです。そういうふうな関係にあるわけでございます。
  54. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 首相にお尋ねいたしますが、今の杉原長官お話だけでも軍事顧問団というものが日本自衛隊に対して持っている力、あるいは日本のこれから持つであろう武器装備、こういうものについて重要なる影響力を持っていることは察するにかたくないわけです。このことを杉原さんは自白をせられた。こういう関係にある軍事顧問団と国防会議とが無関係で、その議長として私は知りません、こういうことで済むのでしょうか、もう少しその点についてあなたの明確なる御答弁をいただきたい、こう思います。
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカより供与を受ける軍事物資につきましては、軍事顧問団との交渉は必要であります。でありますから国防会議と全く関係ないということは言えますまいけれども国防会議議長とは直接の関係があるとも考えません。
  56. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではお答えにならぬと思うのです。直接会わないから関係がない、こういう意味にしか取れないのですが、影響するところ実に重大であり、軍事顧問団の発言というものを無視して国防会議というものが運営していける、こういう意味ですか。
  57. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 供与を受ける物資につきましては、軍事顧問団が関与いたしますが、国防会議の運営については、軍事顧問団とは関係がありませんということを申したのであります。
  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 運営というと、会議議長統裁のもとに進めていくとか、表決によって決定していくとか、こういうことにしか私には解釈できないのですが、なるほどそういう運営まで軍事顧問団は指図をしないかもしれない。だがしかしそこで議すべき防衛計画の約四割までもについて影響がある、こういうことをあなたは今おっしゃるのですか。
  59. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 供与を受くる物資につきましては、軍事顧問団が関係がありますと申したのであります。
  60. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと国防計画の内容について、約四割近いものは米軍事顧問団の指図に従う、こういう結果にならざるを得ないと思うのですが、それではそのことについてのお答えとあわせて、今度は武器だけについてあなたがお考えになるといけませんので、新しい例を一つ追加させていただきます。今ここで問題になっておりまする自衛隊法改正する法律案、これによりますと、浜松に飛行団を置くということになっております。ところが今まで保安庁のお立てになりました計画によれば、これは北海道の千歳に飛行団を置くという計画であった。ところが北海道の千歳の飛行場を日本アメリカが共用することをアメリカ軍が峻拒した。日本人などに使わせない、こういうことで、やむなくレーダーもない。ある飛行将校に言わせれば、あれを飛行場とお考えになっては困ります、あれは原っぱにしかすぎません。こういう程度の浜松に持ってこざるを得なかった、こういう現実があります。およそ飛行団を日本の国中のどこに置くかということは、重大な国防計画に関係のある、いや国防計画そのものです。こういう問題をアメリカ軍にひじ鉄をぽんと食っちゃって、やむを得ず浜松に持ってくる、こういう問題も出て参ります。国防会議ではどのようにりっぱな計画をお作りになっても、この例のようにアメリカ軍の意思に反するならば、たちまち変更を余儀なくさせられざるを得ない。こういうことであるならば、それは装備だけではなしに、全般的な戦略あるいは根本的な国防方針まで変えていかなければならない状態が出て参ります。こういうことを全然お考えにならずに、ただ国防会議を設けて、長期国防計画を立てる、こういうようなことをお考えになりましても、それは日本という現実から離れてしまった夢にしか過ぎないんじゃないか、こういうことを私たちは考えざるを得ないのであります。ここで夢を見ている場所ではありません。私はそうした現実をやはり十分にお考えになって、なおかつ国防会議をどのように日本の独特のものとして運営し、根本的な対策を決定していかれるおつもりがあるかどうか。どういう方法でやるのか。もっと一言に言えば、対米従属性を、軍隊に関する限りどう打ち切っていくのか。こういうことについての、あなたの最高指揮官としての明白な所信をお聞かせいただきたい、こういうことです。
  61. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もとより日本国防会議でありますから、アメリカの従属的関係において国防会議を運営する意思は毛頭ございません。できるだけそういうような弊害は、もしあったならば排除して参りたいと思います。
  62. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういう心がまえでありますというだけで解決のつく問題ではありません。この問題は日本の軍隊が、実は根本的にはアメリカの軍隊の補完部隊にしか過ぎない、こういうところにあるのであります。こういう点をあなたがどうして抜けていかれるか、こういうことを考えない限り、国防会議もまたアメリカの従属機関に化してしまうだろう、こういうことを私は考えざるを得ないのであります。国防会議の内容を見ますと、防衛計画に関連する産業等の調整計画大綱、こういうことが書いてあります。日本の軍需産業を防衛計画の中でどういうふうにつくっていこうかということをおきめになりましても、ここでまた問題があります。一つの例を申し上げますれば、富士重工という会社があります。この富士重工に対して防衛庁はTメンターというのですか、そういう飛行機を月産十二台まで作るようにということで作らせて、設備を一億何千万円かかげて作らせた。現実に月産十二台の飛行機を作り始めると、アメリカからそんなものはいらない、おれの方からやるからということで、アメリカのTメンターという飛行機が日本の軍隊に供与されることになった。そのために防衛庁の買い上げは月十二台の買い上げが月二、三台に減ってしまう、こうして冨士重工はつぶれそうです。国防産業に関する重大なるいわゆる飛行機工場、こういうものがアメリカの意思によってあえなくもつぶされていく、こういう状態であります。また新しく今日本ではF86という飛行機を作ろうとしております。これはF86というものがアメリカでは時代遅れになってしまった。だから日本へ持っていって作らせよう、こういうことで日本に作らせようとアメリカがしている。そのためにアメリカではノース・アメリカンという会社ではその製作を中止してしまった、古くなってしまったのですから作ってみたってしようがありませんが、そのはけ口を日本に押しつけようとしている。こういう軍需産業の実情ですが、もっと例をあげろとおっしゃればきょう一日お話を申し上げてもけっこうです。こういう実情の中で一体日本独特の国防計画というものは立てられるか、こういう現実を無視して日本独特の国防計画が立てられますか。こういう事実の上にのっとり形だけの軍隊を作っていくならば、それはますますアメリカのためにお役に立つ従属軍をあなたのお手で作っていくという結果になります。あなたが頭の中でどんなに美しいことをお考えになろうと、現実がそういうものができていくというこの事実をあなたは十分御存じの上でおっしゃっているのかどうか。もし御存じの上でおっしゃっているとすれば、日本の軍需産業に対するアメリカの支配、あるいは日本の軍隊に対するアメリカの支配、あるいは軍事基地に対する支配、こういう事実をどう国防会議を帰納させることによって切り抜けていくことができるのか、その具体的なお話伺いたい。これを伺うことなしに、ただ抽象的に国防会議を論議してみたところで、それはほとんど無意味だと思います。これはいかがですか。これは総理にお願いします。
  63. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういう事実をよく存じませんが、あなたのおっしゃるような事実があれば、将来はそういうことのないようによくアメリカと交渉をして、従属関係のないように注意をいたします。
  64. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 しかし今私はそういうことを存じませんが、将来そういうことがあれば注意をいたします、こうおっしゃる。だが、私はもう一ぺん伺います。今そんなのんきなことを一国の総理大臣が言っておられる時期でしょうかどうでしょうか。日本の民族の運命は累卵の危きにあるとこう私たちは考えておるのです。あなたもまた立場こそ異なれ、日本民族が累卵の危きにあるという、非常に心配されたお立場に立って政治をとっていらっしゃるものだと私は了解いたしておりました。ところがこのような日本の民族の運命が決せられる時期に、私は存じませんが、もしそういうことがあったならば将来そういうことのないように注意いたしましょうというような、これでよろしいでしょうか。私はそのことについて鳩山さんにはっきりとしたお答え伺いたいと思います。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろん国防計画は自主的にやらなくてはならないということは当然でありますが、それに対する事実について詳細なる御答弁は、杉原防衛長官から申し上げることにいたします。
  66. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。いろいろとおっしゃいましたが、日本側といたしまして日本防衛力を作り上げていきまするために、アメリカ側からの装備品等の相当の援助を受ける必要があるということは事実であります。私は何ら事実と反することじゃないと思っております。  それから先ほどおっしゃいましたF86等のことでございますが、これも確かにわが国に必要と認めまして、その計画を今進めておるわけであります。そうして御存じの通りこのF86は現在アメリカでも第一線機として使われております。さらにまたNATO諸国に対しましてはアメリカ側から生産して送っておるような現状でございまして、F86は現在におきましても十分価値のあるものだと思っております。もっともアメリカにおきましては、すでにF100代のものの試作研究を行われておることは事実でございますが、それが全面的に切りかえられるまでにはまだ相当の日時があるものと思います。いろいろと御所見がございましたが、われわれの本旨といたしましてまた事実におきまして、何でもアメリカに従属してしまうという、私はそういう考えはございません。またその過程におきまして、アメリカ側からいろいろ援助を受けるということは、われわれは考えておりません。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 このことについては、現実をいかに見るかという問題に帰着いたします。従って総理にも長官にももう少しよく現実の事実を見ていただくことを御注文いたします。  そこで、それでは問題を少し変えまして、これは長官もすでに新聞などで発表しておられますのでよく御存じと思いますが、日本防衛ということについては単独防衛ということは不可能である、日米共同作戦というものが主たるものであるということを言っておられたと思います。言葉は幾らか違うかもわかりませんが、結局必然的に、戦おうとするならば日米共同作戦というものが重要になって参ります。一体日本の軍隊とアメリカの軍隊とが共同作戦をするこの防衛計画は、国防会議で取り扱うのか。もし国防会議で取り扱うとするならば、共同作戦の場合にアメリカ軍の意図というものをどう処理していかれるのか、こういうことを議長にお伺いいたしたいと思います。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛庁長官から答弁いたさせます。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それは一番重要な問題です。国防会議が現に防衛計画大綱を立てるということを目標にしている限り、現実にアメリカと共同作戦をするということが出てくるわけです。しかもこれは日本にとって一番大きな問題でしょう、この問題を、将来国防会議議長になられようとする総理が、私は知りません、長官からお話いたしますということでは、私には受け取れません。どうぞ一つ首相御自身からこのことについて明確な御答弁をいただきたいと思います。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 安保条約によってアメリカ日本とが共同して日本防衛に当ることはあり得ることであります。その際にどういう作戦をとるかということについては今日明言することはできません。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは国防会議で議することですか、議さないことですか。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議においては日本国防を議するのでありますから、当然国防会議会議事項にはなると思います。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 せんだって新聞を拝見いたしますと、五月の十九日の新聞ですが、防衛顧問会議というものを設置する、こういう御発表があったようです。防衛顧問会議というものは、新聞によりますと、国防基本方針自衛隊の現状並びに国家財政と将来の防衛目標など国防白書ともいうべきものを、なるべく早く国民にはっきりした方が防衛対策上きわめて得策であるとの考え方を持っているというふうに書かれておりますが、この防衛顧問会議国防会議との関係はどうなるのですか。
  74. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。私今その新聞記事なるものを初めて知りましたが、防衛庁においてはそういうことの計画は今ございません。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、防衛顧問会議というようなものを作る意思は今後もないわけですね。
  76. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。現在まだ私そういう計画を持っておりません。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、この新聞報道は全然虚構だということですか。
  78. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は新聞の記事についてかれこれ申し上げるのではなく、私はそういうことは全然考えておりません。計画はございません。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それから国防計画大綱あるいは防衛計画に関する産業等の計画調整、こういう問題と最近問題になっております相互武器改良協定というものと何か関連がありますか。
  80. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。アメリカ側からごく最近非公式に申してきておりますことの中に、こういうことがございます。それは、いわゆる原子兵器等でなく、ああいう核兵器ではなくて、新しい考案に基く武器の試作等について、日本側として新しく研究をしてみる価値のあるものがあるならば、アメリカ側としてその援助について考慮してもよろしいということを言ってきております。それにつきましては、第一にはアメリカ側の援助の内容、条件等、また日本側といたしましても、そういう果して新しく考案、試作するようなものがあるのかどうか、そういう点などもよく調べてみなければなりません。まだそういう段階でございます。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この協定に基いて酸素爆雷というのですか、酸素魚雷というのですか、何かこういうものを新しく研究していくというようなうわさを聞いたのですが、これは当然国防計画に関係があり、しかもそれはアメリカと共同で行っていくということになれば、これまたアメリカの容喙するところ多大なものがあると考えないわけにはいかないのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  82. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。先ほど申しました日本側として新しい考案として考えるものが一体あるかどうかの一つの例と申しますか、私、詳しい専門的なことは存じませんが、酸素魚雷というものがあって、そういうものはどうだろうかというようなことで、これはまだ私らの内部でも固まった話としてはございませんが、たとえばそういうようなものはどうだろうかというようなことで、まだそういうところは先ほど申しましたような段階でございます。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 まだ国防会議アメリカとの関係についてたくさん伺いたいのですが、時間もありませんので次の問題に移りたいと思います。  昨日総理は、自衛力の限界ということについて種々御答弁になりましたが、そのうち一つ、二つ疑問がありますので個別的に伺わせていただきます。昨日の御答弁によりますと、こちらからよその国の領土に向って出かけていくということはない、出かけていってはならない、こういうふうに言っておられます。しかし現実には今無線誘導弾などというものが発明せられまして、向うがこっちに入ってこなくても、勢力的に入ってこないでも、無線誘導弾を撃ち合うことによってその国を壊滅せしめることができるという状態に立っております。総理自衛力の限界ということに関して、無線誘導弾の発射あるいはその発射する根拠地、こういう問題についてどうお考えでしょうか。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは日本を直接に侵略するという中に入ると思います。日本を直接に侵略する兵力に対しては、これと戦闘する兵力を持っているわけでありますから、自衛目的の範囲内に入ると思います。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、無線誘導弾を撃つべき根拠地、そこへ日本自衛隊が出動していって向うをぶっつぶす、こういうことも自衛の範囲内に入るというお説ですね。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それはちょっと違いがあると思います。たまを撃つところに出動していってその陣地を壊滅するのは、直接侵略に対する防衛の範囲から逸脱するものと思います。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 無線誘導弾を撃つ根拠、地まで出かけていってその陣地を壊滅するのは自衛の範囲を逸脱する。それでは一体どうするんですか。私もあまり頭がよくありませんのでわからないんですが、飛んでくる無線誘導弾は侵略だから、これに対して防衛できる。だがしかしその根拠地に行って根拠地をつぶすのは自衛の範囲を逸脱している。一体飛んでくる無線誘導弾を空中ででも受けとめようとなさるのか、一つ伺わしていただきたいと思います。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は戦闘のことはよくわかりませんけれども、攻撃する力、出かけるということは自衛の、あそこに書いてある直接の侵略に対して防衛するという範囲外に出るものと思うんですが、それに対して、出ないでもって、こっちも同じようなたまを撃ったらいいだろうと思います。(笑声)
  89. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 出ないでとめる方法であるのかしらん。非常にそこはデリケートな問題だと思うんですが一体、笑いごとでなしに、これはさきの国会で非常に論議せられました海外派兵をするかしないかという問題に関連するわけです。国民は海外派兵をするかしないかということについて、いまだに疑問を感じているわけです。ですからかりによそから無線誘導弾を撃って日本国内へ飛んでくる、こういう場合に、その根拠地を撃つのが自衛の範囲を逸脱しているとこうおっしゃるなら、それじゃどうして防ごうとなさるのか。こっちからも無線誘導弾を撃ってやっつけるというような話なら、それはわかります。だがしかし、一体海外派兵をするのかしないのかということも、もう少し明確にしていただきたい。そこのところをあいまいにしておきますと、ずるずるとそういう事態が起る可能性があります。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、直接侵略に対しての自衛の力があると言うのですから、海外派兵はできない、こう思っております。どうしてそのたまを食いとめるかは、ちょっと私からは…。(笑声)
  91. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それは鳩山さんが兵隊さんでない以上は、それは当然かもしれませんが、しかしこのことはもう少し、笑いごとでなしに、真剣に考究をしておいて下さい。またいつかの機会に伺わせていただきます。  そこで、自分の領土から出ていくのは自衛の限界を逸脱している、こういうお話ですが、ところがそうおっしゃる鳩山さんの指揮下にある自衛隊は、出ていく練習を現実にしているわけです。それは御存じでしょうが、ちょうどこの二月、私たちが総選挙で大騒ぎをしている最中でした。二月十一日から五日間、海上自衛隊は連合艦隊を繰り出して大規模な海上演習をやった。フリゲート艦を初め掃海艇四十一隻、飛行機七機、ヘリコプター三機、隊員六千名、それに米軍潜水艦も出動して、大分県佐伯湾から四国の宿毛湾、鹿児島の有明湾を経て南方へ、つまり台湾へ輸送船団二十隻を護送する演習をなさっているわけです。日本国内から出るのは自衛の範囲を逸脱する、こういうふうに最高の責任者であるあなたがおっしゃる。ところが現実にはどしどしばらばらやっている。こういうことではとてもたまらぬと思うんですが、こうした事実をあなたは十分御存じの上で出ちゃいけないんだ、こうおっしゃるのかどうか、もう一度伺わさせて下さい。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はその事実は知りませんけれども、しかしながら日本自衛隊法の法文から考えまして、そういうことは日本の軍隊はできないはずだと思います。
  93. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 自衛隊の性格から見てそういう演習はできないはずだ、こうおっしゃるなら、もし現実にそういう事実をやっていれば、あなたはその演習に対して断固たる処置をおとりになるかどうか。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自衛隊については昨日来申し述べたのが正しい解釈だと思います。その演習の問題につきましては杉原君から答弁をしてもらいます。
  95. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。今おっしゃいました練習のことでございますが、今海上自衛隊訓練の要目として主点を置いておりますのは護衛、機雷等の処理、そういったもっぱら防衛のことでございます。その訓練といたしまして、船団の護衛に対して潜水艦が来たような場合を想定して訓練する、こういうことを二月にやったのは事実であります。そして潜水艦は現在訓練の対象になるのが日本にございませんので、アメリカ側のその点の協力を得た次第でございます。
  96. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは現実にそこの場所へ行っていないんですから、ここでは抽象的な水かけ論に終ると思いますが、ちょうど台湾をめぐっての国際情勢が緊迫し、しかも台湾に向って、南方に向って二十数隻の船団を護送して走る、そういう練習をやっているという事実は否定できないと思う。このことについて水かけ論をいたそうとは思いません。しかし現実に自衛というものの限界は日本国内から出てはならないんだといわれる総理大臣のお説の陰に、こういうことが平然と行われている事実を指摘するにとどめたいと思います。  そこで次の問題は、これも簡単にお答え願えれば幸いですが、この前総理大臣は原爆の貯蔵についてアメリカ軍と話し合って、向うはこちらの承諾なしには日本へ原爆を持ち込まない、こういう約束ができたというふうにおっしゃっていたと思いますが、いかがでしよう。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカ日本に原爆を持ってこないということは、重光君がアメリカ側とそういう話をして、アメリカ側は了承をしているということを、重光君は委員会か本会議かで説明をいたしました。それを私が伝えて申したことはあります。
  98. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、安全保障条約を見ますと、アメリカ日本に軍隊を駐屯させることができる、こういうことになっております。軍隊は兵隊さんプラス武器です。兵隊さんだけでも軍隊になりませんし、武器だけでも軍隊になりません。武器と人間とが有機的に結びついて一つの戦う力となったときに軍隊になるわけです。ところが条約を見ましても、軍隊を駐屯させることができると書いてあるだけで、軍隊が持ってくる武器についての制限は全然なされておりません。従って安全保障条約を真正面から解釈する限りアメリカは軍隊を駐屯させる権利を持ち、その権利を持っておる以上はいかなる武器を日本へ持ち込むことも権利として可能だ、こういうふうに解釈をせざるを得ないわけですが、今のお話伺いますと、アメリカ日本との間に了解がついた、こういうことになっておりますか、それならば安全保障条約の部分的な改訂になっているのかどうか。こういうことを伺いたいのが第一。第二にはそういうことは明確に国際間の契約としていわゆる条約としてあるいは協定としてきちっと定められているのかどうか、この二点を伺わせていただきたい。
  99. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は受け売りをするわけでありますが、重光君の話を聞いていたのですが、安全保障条約を結ぶときには原爆の貯蔵はまだなかったというのです。それですから安全保障条約のときには原爆というものを予想していなかった、それは兵と軍器とが合体したものが軍隊ということであろう。であるからして普通の軍器ならば兵隊が来れば当然にその軍器というものは兵隊の中に加わるものであるけれども、しかしながら原爆というものは普通の軍器と同一視するわけにはいかない。それであるから安全保障条約後に、そのとき予想してない原爆を持ってくる場合においては、アメリカ日本に諾否を聞いてくるだろう、そのときには日本は断わるという話しでありました。
  100. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のお話し少し順序が転倒しておると私は思うのですが、安全保障条約というのは日本が敗戦した後にできたものです。これはお互いにどんなに意見が食い違ってもこの点だけは一致すると思います。ところが原爆は現実に終戦の年の八月に広島と長崎で使われておるわけです。予想しないなどという話はおかしいと思うのですが、長崎、広島で使われてわれわれはその土地で一カ所で二十何万という人命を失なった、これだけのストライキングな事実があって、その後にできた安全保障条約の中で原爆を予想してない、こんなことはないはずです。当然原爆というものは発明をされ、現実に使用される、現実に役立つものである、こういうことが明確にわれわれは身をもって示されておる。この事実を、そういう予想をしていなかったなどという御答弁では少し詭弁もはなはだし過ぎる、こう言わざるを得ないと思うのですが、もう一度。
  101. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆弾の貯蔵が安保条約上当然に認められているという根拠がない、こういうような説明でありました。条約締結の当時このことは予想していなかったんだから、このことが条約の正当な解釈である、こう言っていました。
  102. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 予想してないというよりも事実なんですから、それで何十万の人が死んでいるのですよ。これは事実ですよ。予想とか予想でないとかいうこととは別個の問題です。それでしかも今あなたもおっしゃるように軍隊の駐屯ということを許しておる、軍隊というのは人と武器との有機的な結合だ、こういうふうにあなたも今の御答弁でお認めになっているわけです。何かお話が支離滅裂な感じがいたしますが、もう少し整理して一つお話しをいただきたいと思います。これは重要な問題ですから総理にどうぞ。
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は重光君が話をしていたのを聞いて取り次いだと最初に申したのであります。それですからそれを繰り返して言ったわけであります。
  104. 杉原荒太

    杉原国務大臣 安保条約の解釈適用の問題でございますから、正式には外務大臣からお答え申し上げるのが筋だと存じます。私が外務大臣から聞いて私の了解しておりますところによりますと、なるほどおっしゃいますように、安保条約の文理解釈といたしましては非常にその点疑問があり、場合によっては、あるいは特に制限がない限り、それも含まれるのじゃないかという解釈もあり得るようにも読めますけれども、しかし日米両国の間で、原爆の問題はあの適用範囲外だというふうに、アメリカ側とそういう了解になっておるということを私は聞いております。
  105. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 これは非常に重要なことですから、それではアメリカ日本政府との間に、原爆水爆の貯蔵は安保条約の適用外である、日本政府に了解を得ないで持ってこない、こういうことをはっきり約束した日時と双方の約束をした当事者の名前を一つ教えていただきたい。これは国民の生活、生命にとって非常に重要なことですから、いつ、どこで、アメリカ代表のだれと、日本政府の代表のだれとが会って、はっきりと日本政府の承諾なしには原水爆を持ち込まないという約束をした、こういうことを一つ教えていただきたい。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から違った機会において答弁をいたします。
  107. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは一つ外務大臣に来ていただいて御答弁をいただきたいと思います。もしそれができなければ、文書で明白に一つ資料として私にお渡しいただきたい。午後外務大臣を呼ぶように委員長からお取り計らいをいただきたいと思います。そのときまで私の質問は留保いたします。時間もありませんから、総理大臣長官に対する質問はこれで終ります。
  108. 床次徳二

    ○床次委員長代理 午前中の審議はこれでもって終了いたしまして、午後は一時半から再開いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後二時十七分開議
  109. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後二時十八分散会