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1955-06-16 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十六日(木曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 森 三樹二君 理事 田原 春次君       大村 清一君    長井  源君       林  唯義君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    山本 正一君       大坪 保雄君    大橋 武夫君       小金 義照君    田中 正巳君       田村  元君    福井 順一君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    下川儀太郎君       渡辺 惣蔵君    鈴木 義男君       中村 高一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君         専  門  員 安倍 三郎君         専  門  員 遠山信一郎君     ————————————— 六月十四日  委員渡辺惣蔵辞任につき、その補欠として長  谷川保君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員船田中君及び長谷川保辞任につき、その  補欠として大橋武夫君及び渡辺惣蔵君が議長の  指名委員に選任された。 同日  理事三浦一雄委員辞任につき、その補欠とし  て床次徳二君が理事に当選した。     ————————————— 六月十三日  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部を改正する法律案(千  葉信君外五十二名提出参法第一〇号)(予) 同月十五日  国務大臣私企業等への関与の制限に関する法  律案八木幸吉君外三名提出参法第一一号)  (予) 同月十四日  恩給法の一部を改正する法律の一部改正に関す  る請願加藤精三紹介)(第二一五九号)  石川県下の地域給指定等に関する請願岡良一  君紹介)(第二一六〇号)  京都府加佐町の地域給指定に関する請願(柳田  秀一君紹介)(第二二一六号) 同月十五日  岐阜県関ヶ原町の地域給指定に関する請願(大  野伴睦紹介)(第二二五二号)  岐阜県大垣市の地域給引上げ請願大野伴睦  君紹介)(第二二五三号)  岐阜県垂井町の地域給指定に関する請願大野  伴睦紹介)(第二二五四号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する請願  (菅太郎紹介)(第二二九六号)  恩給法の一部を改正する法律の一部改正に関す  る請願早川崇紹介)(第二二九七号)  養護教諭恩給不合理是正に関する請願(杉村  沖治郎紹介)(第二二九八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  一〇〇号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  八一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)     —————————————
  2. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今回提案いたしました国防会議構成等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容概要を御説明いたします。  御承知の通り、さきに第十九回国会において成立をみました防衛庁設置法は、その第三章におきまして国防会議のことを規定いたしておるのであります。すなわち内閣国防会議を置くこととし、国防基本方針防衛計画大綱防衛計画に関連する産業等調整計画大綱防衛出動可否等につきまして、内閣総理大臣は、国防会議に諮問すべきものとし、また、国防会議は、国防に関する重要事項について、必要に応じ、内閣総理大臣に対し、意見を述べることができるものといたしております。しかして、国防会議構成その他必要な事項は、別に法律で定める旨を規定いたしておるのであります。  政府は、以上のよう国防会議の任務にかんがみ、これが構成等につきまして慎重に検討して参ったのでありますが、ここに成案を得ましたので、今回、本法律案提出いたした次第であります。  次に本法律案の主要なる点を申し上げます。  国防会議議長及び議員をもって組織するものとし、議長は、内閣総理大臣をもって充てることとし、議員は、副総理たる国務大臣外務大臣大蔵大臣防衛庁長官経済審議庁長官並びに識見の高い練達の者のうちから内閣が両議院の同意を得て任命する五人以内の者をもって充てることといたしております。しかして、国務大臣以外の議員の任期は、三年といたしております。なお、議長は、必要があると認めるときは、議員以外の関係国務大臣統合幕僚会議議長、その他の関係者会議に出席させ、意見を述べさせることができることといたしております。  以上のほか、議長及び議員の職務上の秘密保持国務大臣以外の議員任免等につきまして所要の規定をいたしております。  なお、国防会議事務につきましては、内閣総理大臣官房に、国防会議事務局を置き、これを処理させることといたしております。  以上が本法律案提出理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  3. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 本案及び防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題となし、これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。江崎真澄君。
  4. 江崎真澄

    江崎委員 私は、ただいま上程になりました諸法案につきまして、本日は、主として鳩山総理大臣質問をいたしたいと思います。鳩山総理に対しまして、今度のこの国防会議構成等に関する法律案上程を機として、私は本会議現行憲法改正の御意思ありやなしやということを申し上げたのでありますが、総理は、憲法とは関係がないというふうにお答えになりますとともに、自衛のために必要な限度においての防衛力の建設というものは、私は憲法違反にはならないと思います、というふうに本会議で御答弁になったのでございます。  そこで私は率直にお尋ねをいたしたいのでありますが、総理は、在野当時に、しきりに吉田内閣に対して、自衛隊違憲論をもってきめつけられたのであります。そして自衛隊というものをいつまでも日陰者立場に置いてはならない、これは憲法改正して十分に防衛力を持ち得るようにしたいということを、むしろ言葉を励まして具体的におっしゃっておられたのであります。ために自衛隊及びその隊員は、前回の総選挙におきましては、この鳩山さんに投票するならば、われわれの日陰者立場も、あるいはまたあらゆる期待も報われるのだというので、集団投票までして、あなたの態度期待をしたということは、あまねく伝えられておるところでございます。一体この点につきまして、鳩山総理は今日でもやはりこのままでいいのだ、憲法第九条というものは、そのまま変えなくて、これが自衛に関するものであるならば、どんな大きな自衛力でも持ち得るのだというお考えに立っておられますか。まずこれから伺いたいのであります。  きょうは六時ごろまで、終日鳩山総理答弁に立ってもらうというお話でございますので、そのままでけっこうでございますから、すわったままでお席から御答弁なさってけっこうでございます。
  5. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 江崎君が言う通りに、私は三年ほど前には、しきりに、日本自衛のためにも憲法改正しなければ軍隊を持つことができないということを申したのは、あなたのおっしゃる通りであります。その後におきまして自衛隊法ができ、防衛庁設置法ができまして、憲法九条は、自衛の目的のためならば、自衛のために必要な限度においては兵力を持ってもよろしいというよう主張が議会において通ったのであります。それですから、そういうような状態においては、今日の自衛隊憲法違反ではない、憲法はそういうよう解釈するのが適当だというよう考えを改めちゃったのであります。二法案が通ったからというふうにおっしゃるのは、どうも最近の御心境ように思うのですが、これが通ってからでも、あなたはやはり第九条というものは改めて、十分防衛力を持たなければならぬということを、当時の予算委員会でも、あるいは初の西下の車中談においてもおっしゃっておられるのであります。そこで私どもは申し上げたいのでありますが、そうすると、憲法というものは世論推移というものによって適当に読み違えていいものであるか、勝手に読みかえていいものであるか。いかにもこれはもとはそうであったが、吉田内閣の手によって多数をもって——むろんそのとき反対もあるわけですが、多数をもって二法案が通過した。だからそれは勝手に読みかえていいものだ、時々刻々適当に読みかえていいものであるというふうに御解釈になっておられるのでありましょうか。その点伺いたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法というものは、解釈によってどうにでも——時代変遷とともに、解釈変遷によって変っていくというように言い切ることは困難だと思いますが、しかしながら、疑問のある条項国民判断によって変っていくべきものだと思います。これはひとり日本ばかりではなく、イギリスなどにおいてもやはり解釈によって憲法適用が違ってくるということは通説だと私は思っております。
  7. 江崎真澄

    江崎委員 政府責任者が、自分政府責任においてこの憲法解釈考え方の改めをする、こういうことはあり得ると思いますけれども、たまたま鳩山総理ように、きわめて強度な自衛隊違憲論を唱え、そうして二法案が通過したあとにおいても、依然として憲法第九条というものは改正をしなければならぬのだということを強くおっしゃり、それが国会において質問を継続するにつれてだんだんだんだん変っていくということは、いかにも無定見のそしりを免れないのではないかというふうに思いますが、この点はいかがでございましょう。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそうは考えません。
  9. 江崎真澄

    江崎委員 そうすると結局憲法というものは、世論推移に従って勝手に読みかえるとまでは言い切れないとおっしゃるけれども現実の問題としては、総理の場合は読みかえておられるわけでありますが、たとえば明治憲法の場合、この間のあの大戦争の場合におきましても、専制的な総理というものができまして、そうしてあのときに、誤まれる総理の指導のもとには、多分に国民は、あの米英討つべしという形で戦争の方向に挑発されておったわけであります。そうすると、そういう形に国民世論がなってくれば、あの明治憲法はどんなに読み違えて戦争に引きずろうがどうしようがいいということに、この話を進めていけばなると私は思うのでありますが、鳩山総理の今日ただいまの考え方というものはきわめて危険な考え方だと思うが、この点一体どういうふうに考えられますか。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第九条はとにかく疑いのある条章ですから、やはり先刻あなたが言われた通りに、私は改正した方がいいとは思うのであります。しかしながら、自衛のために兵力を持っていいというのは、これはやはり大ていの人がみなそういうよう意見を持っているのでありますから、決して無理な解釈ではないのであります。それを国民が同じように、自衛のための兵力を持つことは第九条に規定している制限外だというよう解釈をするならば——そういう解釈が一般的になって、それが国会を通過したならば、そういうよう解釈の方法をとるということは決して危険ではないと私は考えます。
  11. 江崎真澄

    江崎委員 そうすると、結局これは、あなたが総理になってみられて初めてはっきりしてきたわけでありますが、吉田総理が、憲法第九条は変えなくても自衛隊はできる、自衛に関する限りの設備はできるのだといって言い張ってきたあの主張というものがむしろ先見の明があって、あなたが言うところの自衛隊違憲論というものは実は誤まりであった、やはり総理になってみると、現実政治というものは非常にむずかしいものだなあとしみじみ御反省になった結果が、言葉の言い回しはともかくとして、こういう結論になったものと解釈してよろしゅうございましょうか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、やはりこれは憲法第九条の解釈の問題であって、多数の人がそういうよう解釈するのが適当であると思うならばそれに従ってもいいと思います。吉田君は、とにかくあそこの兵力というものをやはり非常に禁止せられておるものと解釈しておったと思います。吉田君は、禁止をしておるものと解釈をしておるものと思います。それですから、兵力というものの非常にむずかしい解釈をして、近代的の兵力戦力というものでなければ持ってもいい、近代的の戦力を持つことは、やはり九条の禁止するところでありますというように、吉田君は唱えておったのであります。ですから私はそういうようには解釈いたしません。自衛のためならば、近代的な軍隊を持ってもいいものだと、いささか吉田君とは考えが違うのであります。
  13. 江崎真澄

    江崎委員 これはだんだんはっきりしてきたのでありますが、要するに吉田総理は当時近代的戦力なきものはこれは軍隊と言わない、こういう建前だったが、自分自衛のためならばいかなる近代的な戦力を持とうとも、それは第九条には何らさわりがない。これは非常に憲法の読み違い方が大きく変って、国民に対して、吉田内閣は欺瞞をしておると言われた総理自身が、逆に国民を大きく欺瞞せられようとしておるものとしか思われません。むしろ戦力なき軍隊から、戦力あるところの軍隊に移して、何ら省みないんだ、てんとして恥じてないんだ、こういうふうに承わってよろしいのでありますか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自衛のためならば、その自衛のため必要な限度においては、戦力を持ってもいい、そういう解釈の仕方をしております。
  15. 江崎真澄

    江崎委員 これは私は容易ならぬ話になったと思うのでありますが、どこの軍隊でも、自分の国の軍隊侵略軍隊であるというような看板をあげておる軍隊はないと思います。どこの軍隊でも自衛のためにということを言っておりますが、しからば鳩山総理のおっしゃるところの自衛軍隊と、同時に、またしからざる軍隊との区別は具体的に言うと——これはどうぞ具体的にお答え下さい。どういうふうでありましょうか、その違いをはっきりおっしゃっていただきたいのであります。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことについては私はお答えする能力がありません。自衛のために必要なりやいなやということは、その専門家の言うことでありますから、私には答えられません。抽象的に、自衛のために必要なる戦力は持ってもいいと思うのであります。その判断は私にはつかない。客観的の……。
  17. 江崎真澄

    江崎委員 これはどうもあいまいもことしておるのですが……。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 客観的の情勢できまるものでして、私が自分勝手にきめるべき問題じゃないと思います。
  19. 江崎真澄

    江崎委員 これは総理大臣はとにかく国家防衛ということに対しては、最高指揮権を持っておられる方なんです。そして国防会議法案をいよいよ上程せられて具体的審議に入ろうというこのやさきだから、私はその基本問題をお尋ねいたしておるわけであります。ただいまの御答弁によると、近代的な戦力を持っても、自衛に関する限りは、これはさしつかえないんだとはっきり言明をせられるから、重ねて私はそれをお尋ねしておるのです。一体自衛に関する限りというのはどの程度か、どの範囲であるか、これがきまらずして、自衛という言葉は大体成り立たぬのであります。この辺はっきりしていただきたい。そんな無責任なる御答弁はありません。
  20. 江崎真澄

    江崎委員 これはだんだんどうも東条内閣のときの御答弁とすっかり同じになってしまって、民主的が売り物の鳩山先生にしては、いささかどうも御答弁があいまいもことし過ぎると思います。必要な限度とか、その場に応じたということになるならば、英米を向うに回しても、あるいは蘆溝橋で侵略的な進軍をしても、そのときに必要限度とかあるいはまたその場の状況に応じたということは、その主観においてはあの場合においてもあったはずです。こういうことを考えますときに、あなたの言葉というものははなはだどうもあいまいとして、将来に禍根を残すようにしか思われませんが、いま少しくこの点を具体的にはっきりとおっしゃっていただきたい。自衛とは一体どうなんですか。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本国土を守る必要にして、相当なる限度という以外に答弁のしようがないじゃありませんか。
  22. 江崎真澄

    江崎委員 さよう答弁の仕方しかないなどでは私ども了解いたしません。これはたとえば竹島にどこかの国が動いた、最近でいうならば朝鮮、特に南鮮が刺激的な態度に出ておるわけでありますが、あれははっきりとした島根県の一部であります。ああいうよう場面で、一体その領土を、しからば今おっしゃるように侵されるというときに、そうすると自衛隊というものは出動するわけでございますね。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのときの情勢によって判断をして、このたびの国防会議ができれば、そういうよう会議において決定すべき問題だと考えております。
  24. 江崎真澄

    江崎委員 どうも自衛力というものの定義を、具体的にお示しにならなくて、自衛のためならば、どんなに近代的戦力を持ったものでもいい、自衛のためならばもういよいよそれでは原子爆弾までも考慮に入れていく。いやこれは国防会議に将来諮ってきめるんだというように、いずれまたお答えになるでありましょうが、あなたが自衛のためならばどんな近代的戦備を持ってもいいとはっきり言い出されるから、しからば自衛としからざる場合はどう違うかということをはっきり申し上げておるのに、それ以上お答えできませんでは、自衛場面ということがきわめてあいまいもことならざるを得ないのであります。これははっきりした事実です。この与党の委員の皆さんだって、これははっきり御了解になっておると思うのでありますが、これは一つむしろこの際はっきりなさった方がいいじゃありませんか。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛のためといえば、日本国土を守るということよりほかに申し上げようがございません。日本国土を守るために、必要にして相当なる限度においては兵力を持ってもいい。攻撃的の武器じゃございません。日本国土を守るために、防衛するために、必要な限度においては武器を持ってもいい、兵力を持ってもいいと思うのであります。
  26. 江崎真澄

    江崎委員 たとえば、何も九州まで軍隊が来なくても、竹島を占領してしまった、竹島に来てしまった、こういうときにはどうなるのですか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 竹島日本領土であるということはその通りであります。けれども兵力を動かすか動かさないかというのは、情勢によって判断するわけであります。できないということを言うわけにもいきますまい。
  28. 江崎真澄

    江崎委員 どうもこの点ははっきりしませんな。どうも同じようなことを繰り返しておっても時間の関係がありますから、これはあとにこの点についての、はっきりした御答弁は留保しまして、委員長お聞き及びの通りですから、自衛のためならば、どんな戦力でも持つことができるとはっきり言い切っておいて、しかして自衛というものと、自衛でない場面というものはどう区別したらいいかということについて、速記録をごらんになって、総理自身でもあとからゆっくりお読みになるとわかるのですが、何らはっきりとお示しになりません。これはあとから委員長責任において、はっきりと一つ答弁機会を得たいと思うものであります。  そこで話を進めますが、(「江崎君、話にならぬ、もっとつかなくては……」と呼ぶ者あり)話にならぬね。これに関連して一緒に問題にしたいと思う。結局そうすると、今度憲法調査会をお作りになる。きょうかあすか閣議にかけて、具体的に法案作成に取りかかろうということであるらしいが、憲法調査会を作られて、いずれの機会にか憲法を改められるわけでありますが、少くとも将来日本というものは、侵略戦争などに、自衛となるにしろ、どういう言葉になるにしろ、これが使われるなどということは、われわれ国民としてありようはずはないと信じております。しからば、憲法第九条というものは、ただいままでのあなたの御答弁によれば、調査会を作っても、将来永久に自衛の戦いを進めていく限り近代的武器でも何でもできるというふうにはっきり言い切られる以上は、憲法第九条はもう変える必要は永劫ないんだ、こういうお考えに立っておられるわけでありますね、その点いかがでございますか。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 九条に自衛のためには兵力を持ってもいい、よろしいというように変えた方が私はいい。解釈に疑問があるのでありますから、疑問の起きないよう明文をもって明確にした方が国家のために有利だ、そういうよう考えております。
  30. 江崎真澄

    江崎委員 現在の条項のままであなたはもうよろしいといっておいて、そうして憲法改正をするならばそういうふうにはっきりと書いた方がいいと言われるのですが、そうするとこれは今はそういうふうに書かないやつをあなたが勝手に読みかえて、近代的戦備を持とうとなさっておると思っていいわけでございますね。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 解釈はさっき私が申した通り解釈しておりますけれども、明瞭に明文の上に示した方がいいと考えております。
  32. 江崎真澄

    江崎委員 これはどうもはっきりしないのですよ。これは私どもは実は保守陣営で、要するにもうじき自由党も内閣を作らなければならぬのですから、何もことさらにあげ足を取ったり、まさか総理いじめようなどと思ってかかっておる質問ではございません。ところが吉田内閣のときに自衛隊違憲論というものをしきりに唱えられておった。それが輿論の動向が変ったからここへ来て変ったのだ。同時に第九条というものはむしろこれを一歩進められて、近代的戦力のないものは軍隊といわないのだと言っておった吉田内閣をもう一つ踏み切ってしまって、むしろ近代的戦力でも何でも持ち得るのだというふうに、えらく大飛躍をされた。もし鳩山一郎という在野当時の人が現在ここにあるならばもう大へんなことですよ。吉田総理がここの場面でがあがあ言われた程度じゃございません。むしろ大へんな形になってあなたに批判の矢が向けられることはこれは当りまえのことなんです。なるがゆえに、私どもはこの変遷心境を伺うと同時に、その区別を伺っておるのであります。しかもこの憲法をそれじゃどうなさるのかといえば、やつぱり変えなければいかぬとおっしゃる。一体どっちがほんとうなのですか。これははっきり言っていただきたい。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戦力自衛のために必要なる戦力というのでありまして、あなたのおっしゃるようにどんな戦力でも持っていいというように言うと非常に憲法明文に反してくるように思うのです。憲法明文ははっきりはしていなくても自衛のためならばその必要な限度において持ってもいいということが解釈できるのでありますから、やはり武器戦力すべて、必要にして相当な限度だということに制限をせられていると私は思うのです。防衛のために必要なるという条件がいつでもつきまとってくると思うものであります。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これはだれがきめるといっても客観的の情勢がきめるというよう考えております。
  35. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 杉原国務大臣から答弁をいたすそうです。
  36. 江崎真澄

    江崎委員 私は総理の御答弁を先に求めますと言っておる。あとから杉原さんに詳しく承わることはけっこうであります。     〔発言する者多し〕
  37. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 杉原国務大臣補足答弁を聞いてからにいたします。補足答弁をして下さい。
  38. 杉原荒太

    杉原国務大臣 補足答弁をいたします。憲法解釈といたしましては、自衛の目的のために、そうしてなおかつ必要相当の限度、こういうことが言えると思います。そうしてこれを現行法に基きまして、さらにもう少し具体的に申し上げますならば、御承知の通り、現行の法制のもとにおきまして、自衛隊の任務ということが明瞭に規定せられております。その任務と申しますのは、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つために、直接侵略及び間接侵略に対して国を防衛するということを主たる任務としてきめられております。そうしてさらにその任務の遂行のために必要なる武器を保有することができるということが法律にきめられておりますから、私はそこがやはり一つの基準になるものだと考えております。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 だれがきめるかという御質問でありますが、これはこのたびの国防会議法に書いてある通りに、国防会議がきめるわけであります。
  40. 江崎真澄

    江崎委員 今日私はこんなふうにこだわった質問になろうとは実は思わなかった。それはなぜかといいますと、要するに吉田内閣の当時、吉田総理答弁は衣の下によろいが見える、だからこの九条は改正しなければならぬ、つづめて言えばそれだったでしょう。ところが今日は、はっきりと第九条のもとで、衣なんか要らないと言って、衣をかなぐり捨てて、どんな近代的兵備でもできると言われるから、これは重大問題ですよ。しからば第九条というものは憲法調査会によって改正するときには、もう変えぬでもよろしいねというと、それは字句のあやだけ変えればよろしいというふうにしかわれわれは現在の御答弁では取れない。九条というものをはっきりと読み切ってしまわれる。大手を振って近代的戦備ができるとおっしゃっておられる。だからその自衛の範囲というものは、世界各国どの国を聞いてみたところで、おれの国の軍隊自衛力以外の侵略軍隊であるなどという看板を掲げた軍隊は、世界どこの国にもございません。ございませんから、総理のおっしゃるその言葉というものは、言いかえてみるならば、現行憲法のもとでも侵略的な戦争に持っていくことができるという、非常な危険な状況というものを包蔵しておるといわなければならぬのであります。だからわれわれはあえて保守陣営の者であるがゆえに、そういう危険なことを包蔵しておる総理のこの御答弁がそのままであってよかろうはずがないから、詳細に、むしろ親切に、それでよろしゅうございますかといってお尋ねをしておるわけであります。私は今はっきりとわかりやすく御質問をし直したわけでありますが、この点について今私が繰り返して申し上げたように、もう一度はっきりとここで総理から御答弁を賜わりたいと思います。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は防衛のために、自分国土を守るために、必要なる限度において自衛力を持ってもいいということを言っておるのでありまして、その半面にはもとより侵略のために兵力を持つことはできないものと言っておるのであります。防衛のための兵力というものはどういう兵力かといえば、防衛のために必要なる兵力を持ってもいいということであろう、それ以外には説明のしようがございません。
  42. 田村元

    ○田村委員 関連して少し申し上げたいのでありますが、総理総理大臣であり、かつ国防会議ができ上ればその議長になられるお方である。そういうお立場にある総理自衛の定義を一つ定義づけることもできない。そうして自衛にとって必要にして十分なる兵力を保持するということを言われるけれども、それがどういうものであるかということの明示すらできないというようなことで、どうしてわれわれが国防会議というこの重要問題を審議することができるでございましょうか。まずこの点をはっきりとしていただきたい。そうしてたとえば自衛ということになれば、外国から攻められる、外国から攻められる場合にそれを撃退するだけが自衛であるのか、そうするとあたかも楠木正成の千早城になってしまうのであります。これは籠城であります。そうでありますから外国から攻められた場合、相手の基地までこちらが爆撃して、後顧の憂いをなくするということまでをもって自衛とされるのか、そういうような意味においていろいろと御答弁を願いたい。とにかく自衛の定義というものをもう少し率直に申していただかないと、われわれは審議に入れない。はっきりしていただきたい。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛のためということは、先ほど杉原君が言いましたように、国土を守るということでございますから、国土を守る以外のことはできないと私は思うのであります。あなたのおっしゃったように、飛行機でもって飛び出していって、攻撃の基地を粉砕してしまうということまでは、私は今の条文ではできないと思います。
  44. 江崎真澄

    江崎委員 これは実際どうもはっきりしないですわ。その限度場面というものを具体的に承わりたいと言っても、一向それはお答えになろうとしません。ただ勝手に憲法を読み違えておられます。だからわれわれが非常にここでおそれることは、あれくらい自衛隊違憲論を述べられて、そうして少くとも鳩山先生の終始変らざる、第二次内閣を作られるまでの動きというものは、自衛隊違憲論憲法九条はどうしても改正しなければならぬ、これが終始一貫した主張であったのであります。これがにわかに第二次鳩山内閣を作られるに及んで、予算委員会でも、あるいはもうすでにこの国防会議をかけて、いよいよ国家国防基本方針に触れていこうという場面になってくると、ひらりと体をかわされたのみならず、これが吉田総理踏襲あたりならいいけれども、あれとは違うといって、衣をかなぐり捨ててまた前進をしてしまわれる、こういう勝手気ままに、とにかくこれを世論の動向などと称して、単に総理世論というものに迎合して憲法を勝手に読み違えることができるというふうに、われわれは解釈せざるを得ないのでありますが、その方がまた自衛力は持ち得ると言う。その限度はどうかというと、あくまで国土防衛というのが目的だというので、これは吉田内閣当時よりももっともっとあいまいもことなってしまっておるところに、危険性を持つ。軍備は勝手に持てるが、自衛限度というものは、これは存じません、わかりません、この程度でありますということで行かれるならば、また世論は今度は韓国討つべしとか、あるいはどうもソ連との外交交渉も、これは総理の思うつぼとはだいぶん違って、ずいぶんきびしい要求が向うから出されるという情報が今朝の新聞にも出ておりますが、そういうあり方が変ってきて、この世論の動向が変ると、今度はまた勝手に、いや、これも自衛戦力であるといって、侵略的な動きをせられぬとも限らないじゃありませんか。憲法解釈においては、少くともこれを今の自衛問題にたとえるならば、もうこれは侵略に進まれたくらいの大飛躍をなさっておられる。だから自衛の限界はどうかということを今お尋ねしておるわけであります。われわれは好意をもって、そうしておすわりになって御答弁していただいてけっこうだくらいに申し上げたのでありますが、こういう重要な問題をただいいかげんに過ごそうとおっしゃるような心がまえでは、これから国防会議法案の各論に入りようがないじゃありませんか。もう少しはっきりとした御答弁を賜わりたいのであります。の信念を申し上げておるわけであります。
  45. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 議事進行。今鳩山首相の答弁を聞いておると、われわれは全然納得が参りません。特に自衛のためだとおっしゃいますが、今の進んだ近代戦において、攻撃をかける軍隊はあらゆる近代装備を持っております。そうしますと、鳩山さんの御答弁を聞いておると、これは原子爆弾もあるいはその他の水素爆弾、そういったものもすでに保有してもいいという答弁だと思うのであります。現在の平和憲法においてすらそういうことをお考えになっておる。このままでこの国防会議の議案を審査して参って、あいまいのうちにこの国防会議が決定されますならば、こういった首相を議長に持ち、そういった考え方に従う閣僚や、そういった諸君が推薦した議員をもって構成する国防会議は、全く日本にとって危険千万なものだと思う。従いましてこれは鳩山首相以下慎重な検討をされて、もっとはっきりした根本的なものをここに明示して、そうしてわれわれが安心してこの法案審議できるような状態にしなければ、私はこの法案審議続行は不可能と思うのであります。従いまして暫時休憩をするなり、適当な方法によって政府当局のはっきりした態度をおきめ願って、きまったらわれわれに一つ聞かしていただきたい、こういう動議を提出いたします。
  46. 江崎真澄

    江崎委員 今同僚の茜ケ久保君から動議が提出されましたが、これは総理がきょうは第九条の解釈において具体的にはっきりと踏み切った答弁をしたのであるから、この心境の変化をはっきりしたならしたとか、あるいはまた九条の解釈はこのままでいくとかいうふうに、だんだん突き詰めていって、自衛力の限界というものを具体的におっしゃるならば、せっかく総理もきょう一日六時まで出ようといって来られたのだから、何もわれわれはここでこだわってこれを流してしまおうとか、休憩で、ももうとか、そういう気持はないのでありますから、もう少しこの点は具体的に御答弁をいただきたい。杉原さんがさっきおっしゃったような、あのおざなりな答弁は、あなたからあらためて聞かぬでも、これはすでによくわかっておるのであります。総理が第九条のもとにおいても、自衛のためなら、どんな戦力でも持ち得ると言われた、それから話が進んできておるのでありますから、それにふさわしい思い切った御答弁をおっしゃっていただいた方がいいと思いますが、いかがでしよう
  47. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 ただいまの江崎君のお話は、先ほどの御注意もありますので、政府の側においても十分打ち合せた御答弁があることと思いますし、他の問題もありますから、質疑はこのまま続けていって、それから政府の方からまとまった答弁をしてもらうということにしたらいかがでございますか。
  48. 小金義照

    ○小金委員 それは根本問題がはっきりしないと、各逐条の審議とかその他に入っても、またもとへ戻るんです。それだから、それよりもむしろここでは憲法第九条の問題が中心のようですから、かつて在野のときはそう考えたが、今はその考えを変えたとおっしゃっても少しも差しつかえない。それで自衛力を支配するのは、これは国の客観的情勢だとばかり考えられて答弁されるから、それじゃ世論に追随するのか、こういう質問になってしまう。それよりも総理大臣として一国の国政をあずかるんだから、自分の信念においてこういう程度の計画でやるんだということをおっしゃるのでなければ、六カ年計画を持ち出された鳩山内閣の意義はないじゃありませんか。だから審議を進められてももとへ戻ることをお覚悟なら、お続けになったらどうか。
  49. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 先ほど動議を出しましたが、私は今の鳩山首相の御答弁では、このままでは一向に進まぬと思う。いたずらにこういうことを繰り返すことはむだでありますから、私は、この際政府としてもはっきり態度をおきめになって、腹を据えてこの委員会に臨んでもらいたい、こう思うのであります。このままではこの委員会審議の続行はとうていできないと思います。
  50. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 それでは暫時休憩いたします。     午前十時五十九分休憩      ————◇—————     午前十一時十五分開議
  51. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 それでは休憩前に引き続き再開いたします。江崎君。
  52. 江崎真澄

    江崎委員 重ねて申し上げますが、ただいま問題が混乱いたしました根本は、われわれ自由党といたしましては、憲法九条というものは近代的戦力を持たないもの、いわゆるこれは軍とは言い得ないという立場に立ってこれを解釈して参ったのであります。ところがきょう鳩山総理ははっきりと近代的戦力を持ってもそれが自衛のためであるならばいかなる戦力も持ち得る、これは速記録を調べてみるとはっきりするのですが、自衛の範囲ならばどんな戦力でも——どんなという言葉をたしか使われたように思いますが、持ち得るというふうにおっしゃっておられる。あとからは適当な範囲とかあるいは防衛の目的に反しない範囲という補足語をお使いになっておるようでございます。かつて在野当時の鳩山総理が、衣の下によろいが見える、こういうことでは自衛隊そのものの士気にも影響するし、また国民をだますものであると言っておられた。これが今日幾変転して、もう衣をかなぐり捨てて、第九条のもとで自衛のためならばどんな戦力でも持ち得る、どんなという言葉をかりに削っても自衛のためならば戦力を持ち得るのだ、戦力ある軍隊にはっきり踏み切っていかれた。しからば自衛というものはどの範囲を自衛というのであるか、こう質問をしたところが、一向どうもこれに対して満足をする御答弁が得られない、こう要約することができると思うのであります。これに対して政府におかれましては、はっきりとした答弁をおまとめになって、政府のはっきりとした見解をここに提示していただくことによってこの論議を進めたいと思います。委員長のお取りなしを願います。
  53. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 この際休憩をいたします。午後一時より再開をいたします。     午前十一時十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  54. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前における江崎君の質問に対し内閣総理大臣より答弁があります。この際これを許します。鳩山内閣総理大臣
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が先ほど申し上げましたことで、憲法を改めなくても自衛力が持てると申しましたのは、言葉が足りなくて誤解を招きましたが、その真意は、自衛のため必要最小限度防衛力を持てると申したのでありまして、決して近代的な兵力を無制限に持ち得ると申したのではありません。また自衛のためというのは、他国からの侵略を受けた場合に、これを排除するため必要な限度という意味で申したのであります。吉田内閣当時、戦力という言葉を解しまして、近代的戦争遂行能力というふうに言っておられましたのは、もちろん傾聴すべき見解と思うのでありますが、私は戦力という言葉を、日本の場合はむしろ素朴に、侵略を防ぐために戦い得る力という意味に使っていまして、こういう戦力ならば自衛のため必要最小限度で持ち得ると言ったのであります。その意味において、自由党の見解と根本的に差はないものと考えております。独立国家としては主権あり、主権には自衛権は当然ついているものとの解釈に立って、政府は内外の情勢を勘案し、国力に相応した最小限の防衛力を整えたいと考えているのであり、従ってその限界は、国力の現状においてはきわめて限られたものになるのでありまして、他国を脅威するような原水爆等の攻撃的武器を持つ考えもなく、また憲法を改めない限り持てないものであると考えております。江崎君が本会議で六カ年計画を示せとおっしゃいましたが、防衛庁で検討の最中であり、さらに慎重に各方面から検討するため国防会議に付する必要を認めますので、ここに国防会議法案提出した次第であります。私が野党時代に表明した見解は、その後変えたことは先ほど申し述べた通りであります。また先ほど述べました答弁のうちで言葉の足りなかった点は、何とぞこの際御了承をいただきまして、本会議審議に御協力を賜わるようお願いをいたす次第でございます。
  56. 江崎真澄

    江崎委員 だいぶ落ちついた、はっきりした御答弁になりつつあるようでございますが、しかしまだ肝心なところが抜けているといわなければならぬと思います。それは必要最小限度戦力を持てるというふうにだいぶん言葉が消極的になって参りましたが、だいぶん今までは野放しで御答弁になっておったことだけは事実であります。そうすると、結局過去の自衛隊違憲論、第九条違反であるという点を非難攻撃せられたことは、今日ではこれはやっぱり間違いじゃなかった、吉田内閣当時の答弁というものはあれでよかったんだ、こういうことにお考えになったものとわれわれは了解していいわけでございますか。
  57. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 御解釈通りであります。
  58. 江崎真澄

    江崎委員 そうするとあと多少の食い違いという点、ただしこれは多少の食い違いではあるが、根本的に大きな違いがあります。それは、われわれ自由党としては、今日でもこの自衛隊に向って考えておりますことは、陸海空のその整備というものは、近代戦遂行の能力がないものは、これはあくまで戦力ではない、この見解を推し進めて今日に至っているのでありますが、一体ただいまの御見解によると、必要最小限度のものであるならば第九条そのままで戦力は持てるのである、総理は、戦力であってもそれは持てると、こういうふうにおっしゃるのでありますが、憲法第九条の二項は一体そういうふうに読めるでありましょうか。同項は明らかに戦力の保持というものは禁止する、これははっきり書いてあります。だからそこに吉田内閣当時の一つの方向というものが出ておったわけでございます。しかしあなたは、戦力であってもそれが必要最小限度のものであれば持ち得ると、こうおっしゃいます。これは憲法制定のときにも、自衛のために戦力を持てるとすると、結局近代的な軍隊を持つことを防ぐことができないから、自衛のためであるなしにかかわらず戦力というものは持たぬ、こういうふうに説明をせられてこの憲法というものはできておるのでありますが、この点についてもう一度はっきりとお示しを賜わりたいのであります。
  59. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点については法制局長官から答弁をしてもらいます。
  60. 林修三

    ○林(修)政府委員 お答えいたします。その点につきましては、先ほど総理大臣からお答えいたしました点の中にも含まれておったと思いますが、実は結局戦力という言葉の使い方の問題になるであろうと思います。いわゆる近代戦争遂行能力という限度をこえるものが戦力であるという解釈が、吉田内閣当時の御解釈であります。従いまして、それ以下のものは戦力ではない、そういう考え方であった。先ほど内閣総理大臣からお答えいたしましたのは、戦力という言葉は、むしろ文字通りもっと素朴に言いまして、いわゆる戦い得る力というよう言葉で、もし読めば、一切の——警察力も戦力であり、あるいは今の自衛隊戦力であるということになるかもしれない。しかし憲法九条一項、二項をあわせて読めば、自国を守るために必要な最低限度自衛のための実力、そういうものを持つことを禁止するものとは考えられない。この点は大体前の、当時の解釈と同じことと思います。そういう意味でお答え申し上げたのでございまして、その限度内容につきましてはそう大した差はないのではないか、結局戦力という言葉の使い方の問題である、そういうふうに先ほど総理大臣お答えしたものとかよう考えております。
  61. 江崎真澄

    江崎委員 法制局長官のせっかくの御答弁でありますが、自由党と大した違いはないと、こうおっしゃられるわけで、それはちょっと困ります。今までの鳩山総理の言動というものは、大した違いはないかもしれないが、いや自衛隊軍隊と言って差しつかえがないとおっしゃるし、また杉原防衛庁長官は、あなたが防衛庁長官になられた当時の最初の内閣委員会におきまして、私の質問に対してはっきりおっしゃった。この自衛隊というものは、国際的に見るならば軍隊と言って差しつかえのないものでありますとはっきり言明をいたしておるのでございます。だから自由党当時のいわゆる近代戦遂行能力なし、これは戦力ではないというのと大差ないとは言い切れない。法制局長官がはっきりそうおっしゃっても、一つはこれを国際的に見れば軍隊だと言い、また同時に自衛隊は事実上の軍隊である、しかもそれは戦力を持ち得るのだ、しかも憲法九条においては何らこれを拘束するものではない、改正する必要はない、こういう理論が大手を振って通るものとはわれわれどうも了解できないのでありますが、しからばこの点について話を進めるとして一体自衛隊というのは軍隊であるのかどうか、この点を在来の御見解を含めながらもう一度ここではっきりとおっしゃっていただきたいと思います。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 言葉の問題だものですから答弁したくらいのでありますが、軍隊という文字の解釈によります。今日では自衛隊と言う方が正しいのであります。しかし自衛隊軍隊かと言われれば、何といいますか、自衛隊軍隊にあらずということは言えないでしょうと思います。それならば普通の軍隊と同じかということが起るのでありますが、普通の軍隊とは違うとは言わなくてはならないと思います。(「何も違わないじゃないか」と呼ぶ者あり)その点については法制局長官から答弁してもらいます。
  63. 江崎真澄

    江崎委員 法制局長官より、これはちょうどそこに杉原防衛庁長官がいらっしゃるから、法制局長官から承わらぬでも、責任の衝にある杉原さんから一つ今の総理答弁補足して、一体軍隊であるのかないのか、国際法的には軍隊だとあなたはおっしゃったが、その点についての御見解と、それからまた自衛隊は一体軍隊とどう違っておるのか、ここら辺はこれは基本問題です。国防会議を始めようというときに、憲法九条の解釈もいいかげん、戦力の問題もいいかげん、また自衛隊の性格もいいかげん、こんなことで国防会議を作ってさあ議論しろと言われても、しかも自由党もまた保守党だからどうだろうかと言われても、これはてんでお話に乗れないじゃありませんか。この点一つ補足御説明を願います。
  64. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。自衛隊が昨年の七月の法律によりまして、その主たる任務として直接侵略に対して国を守るということが加えられましたので、それ以前の予備隊とは違った性格を持ったものだと私は思います。そうしてただ外国からの武力攻撃等に対処する任務を持っておるものは普通には軍隊と呼ばれておるものと思います。従いまして常識的に言いますならば、その意味におきまして軍隊と呼ぶことはできるであろう。しかしながら自衛隊の名称というものは法律によりましてちゃんと自衛隊というふうにその呼称もきまっておりますし、法律的に軍隊と呼ぶためにはやはり法律改正を要するのであります。その法律改正なくして軍隊と公けに呼ぶ必要はなかろう、こういうふうに私は解釈しておる次第でございます。
  65. 江崎真澄

    江崎委員 どうも総理大臣も、それから今の防衛庁長官も適当に法律を読みかえたり、勝手な解釈を下しておきながら、さあと開き直ると今のような御答弁をなさる。これは軍隊ではないわけですね。自衛隊というものは軍隊じゃないのですね。軍隊なんですか。それだけでけっこうです。ないし武力行使される場合に軍隊として取り扱われるもののいろいろな実例が上っておりますが、そういう取扱いにおきましては、私は軍隊としての、たとえば捕虜の取扱いを受ける権利を持ち得る、そういうふうに解釈をいたしております。
  66. 江崎真澄

    江崎委員 どうも防衛庁長官としてもあまりはっきり御答弁いただけませんから、ともかく総理に御質問を向けますが、結局そうすると、先ほどの御答弁といい、いわゆる自衛隊違憲論はやはり私の間違いであったと解釈してもいいというふうに、さっき御肯定になったようにわれわれは解釈するわけでありまして、今日までの鳩山総理自衛隊違憲論とか憲法第九条はきわめて疑義があるからこれを変えて、そうして十分な防衛力を堂々と持ち得るような形にしなければならぬということは、たまたま当時の政府でありました吉田内閣に、社会党両派がこれは憲法違反であるということで集中して攻撃をいたして、この攻撃に乗ってあなたが政権をうかがわんとする一つの手段として、当時活発に述べたのであるけれども、やはり同じく保守的性格を持った内閣をここにお作りになってみると、そういう攻撃をした程度のものではなくて、やはり当時の自由党の見解というものが正しい、こういう御認識に立たれたのでありますか。あまり大きな違いはないと先ほどはっきりおっしゃったのでありますが、やはり誤まりを正せられるのでありますならば、われわれはこれを了解するにやぶさかではございません。この点につきまして自由党の見解はなるほど一応もっともだというふうに考えての今日の御心境で、今後は今日までのような放言はなされぬのでありましょうか。この点を簡単でけっこうでありますからはっきりお答えを賜わりたいのであります。
  67. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法九条に対しての解釈は、先刻申し上げました通りに、私は意見を変えました。     〔「意見を変えて自由党と同じになったのか」と呼ぶ者あり〕
  68. 江崎真澄

    江崎委員 だからこれは自由党と大差ないということで、やはり自由党のあり方というものは、今日では肯定なさっておると見て差しつかえございませんですね。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しましたことによって御了解を願いたいと思います。
  70. 江崎真澄

    江崎委員 どうもなまず問答みたいなことを、私は好まぬのでありますが、結局今度は憲法第九条でいわゆる必要最小限という修飾語が入ったのでありますが、戦力を持てる、これは九条二項で明らかに保持を禁止しておるのですよ。そこでさっき法制局長官もあいまいもことして、あまり実質においては変らぬということを言われるが、今日国民の頭に入った印象は、自由党の吉田さんの説明と鳩山さんの説明というものは、戦力は持てない、戦力は持てると、非常に違った印象を与えておるのであります。だからこういう問題が起きてくる。言葉はだんだん穏やかになってきたのでありますが、どうぞこの点についてもう少し親切な——これは国民に親切という意味ですが、はっきりとわかりやすい御答弁を願いたいと思います。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、戦力という言葉の使い方で意見が違ってくるのでありまして、戦力という文字を普通に戦う力というよう考えれば差しつかえないと思うのであります。
  72. 江崎真澄

    江崎委員 これは押し問答しておる程度ですが、今までの手放しの放言のあり方からだいぶんお改めになったようでありますから—これはまた関連質問があれば、わが党の諸君からもいろいろ御意見があることと思います。そうすると憲法第九条というものは改正しなくても、必要最小限ということになったわけであります。ところが、今度はいよいよ憲法改正のために憲法調査会というものを発足させられるわけでありますが、総理憲法第九条はどうしても改正しなければならぬという切実な問題は適当にお読みかえになりまして、現在このままならあまり痛痒を感じぬような形になりつつある。先ほどの御答弁によれば、自衛のためならば持てると、疑義のないようにはっきりしたい、こういうふうにおっしゃっておったわけであります。しかしこれは少くとも言葉のあやであって、解釈の上から言えば改正しなくてもいいというふうに考えられるのであります。結局第九条を改正せられた上は、必要最小限というものをしからば度外視して、今までは自衛軍隊であったが、今度は多少それに色をつけるよう軍隊にだんだんお変えになるのであるかどうか、同時にまたこの場面にあって、九条はそれではっきりわかったのでありますが、憲法改正とはどういう点を主として変えたい、また変えなければならぬと総理大臣として思っていらっしゃるのか、これを一、二点具体的にあげていただきたいと思います。それは憲法調査会がきめてくれるのだというのでは、今内閣に予算計上までして憲法調査会をわざわざ作るところの必然性に欠けます。総理大臣として当然こうこうこういう点は改正をしなければならぬ、またこういうものを作るのだという、その具体的な点を一、二おあげ賜わりたいのであります。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法九条の解釈については、今江崎君が言われたような意味に解釈しております。  憲法改正をどういう点においてするかということについては、憲法改正については広く考えれば前文から始まりまして、最後の条文に至るまでに改正論があることはあなたも御承知の通りでありますが、そのうちでどれを採用するかということにつきましては……。
  74. 江崎真澄

    江崎委員 総理が痛切に考えておられる点、これだけは変えなくちゃいかぬというのがあるはずですね、もう第九条じゃないようですが……。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 痛切に考えておりますことは、第九条も改正したいと思いますけれども、先刻申し上げましたような次第で、前に改正したいという熱度と今日とは非常に違うことは御承知の通りと思います。前にはやはり自衛のためにも防衛してもいいということを明白にする必要があったと思いますが、このごろでは自衛隊もでき、防衛庁ができたりなんかしまして、その必要性が薄らいできたということはあなたのおっしゃる通りであります。  それではどこを改正するか、ただいま順序立てて申し上げるわけには参りませんけれども、これは私は神川君の書いたように、やはり広汎にわたって研究した方がいいとは思うのであります。たとえば予算に関しての国会の権利だとか、あるいは最高裁判所の権限であるとか、あるいは国会議員の議員立法に関してであるとか、いろいろな点について日本の国情に適合するよう改正した方がいいと思っております。
  76. 江崎真澄

    江崎委員 第九条がぼけてきたものですから、たいへんお苦しい答弁になって参りますが、少くともきようのこの戦力の問題、それから自衛隊軍隊と呼ぶかどうかという問題、これは今までの御放言とはずいぶん御答弁が変って参りました。自由党とは大差ない、自由党の線だといわんばかりのところへ来たわけであります。これに関連しまして、これはきょうの速記録あとで読んでみても聞いた通りで、よくわかるわけでありますが、残念ながらはっきりしたものをわれわれ承わったとは思えません。これは国防会議審議、また同時に憲法調査会を作る法案もいずれ当委員会に出されるはずでありますから、そういう場面でなお政府としての統一した、はっきりした御答弁を私は要求いたしておきたいと思います。う形容が使われたかどうかわからぬが、一年一年の場当りの軍備計画では困るから、やはり国の長期経済計画とにらみ合せて六カ年計画を作らなければならぬということを言っておられるのであります。あれは四月の議論であったわけでありますが、現在すでにもう数カ月を経、しかも衆議院は予算が通過しておる段階でありますが、この防衛六カ年計画について防衛庁としてはおよその見通しを持っておられますかどうか、鳩山さんの質問に入る前の関連事項として、あなたにこの点を伺ってみたいと思います。
  77. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。長期計画の必要性につきましては、かねて一昨々年でございましたか、吉田前自由党総裁と改進党の重光総裁との間のお話し合いのときも、その必要性を認められて、長期計画というものを立てていこうというお話し合いがあったと思います。そしてその後自由党においても、改進党におきましても、それぞれ長期計画案をお立てになっておる。その根本としては、これも非常にむずかしいことであるけれども、その方がかえって適当だという御認識のもとになされておることだと思います。私らもそれと同じ考えで実は長期計画の必要を考えておりまして、現内閣におきましても、ちょうど一方経済の再建につきまして六カ年の計画を立てるという方針をもって臨んでおりますので、それに見合った防衛の長期計画を立てていきたい、そういうことで実は今検討を加えておる次第でございます。御承知の通り防衛の長期計画の必要性は私は十分認めますけれども、これを立てるに当りましてはいろいろの方面からいろいろな意見を徴し、ことに日本の国力、今の経済の現状等から見まして、実に深刻な検討を要するものだと考えておりまして、せっかく検討中でございます。そしてこれはまたひとり防衛庁限りの見地からのみ決定できることでもございません。しかし私らの方といたしましても、当然の職責といたしましてせっかく研究いたしておりますが、まだその成案を実は得るに至っていない次第でございます。
  78. 江崎真澄

    江崎委員 総理大臣どうですか、あなたの施政演説でもこの長期計画に触れておられますが、自由党の場合はどうぞ誤解のありませんように—日米安全保障条約の線に沿って自衛という場面を受身の立場に立ってどんどん実行して参ったわけでございます。けれどもあなたの方は六カ年と区切って、相当先まで見通しての計画をお立てになろうというところに問題があるわけであります。六カ年の計画を立てようとせられる根本的な理由総理にお尋ねしたいと思います。この六カ年という年数はどこから出てきたのか、たとえば総理が組閣当時の新聞記者会見ですか、はっきりおっしゃいましたように、日本自衛力が充実した場合には、すみやかに米軍に日本国土を去ってもらわなければならぬ、また去ってもらうことは当然である、これはわれわれ了解できるのでありますが、この六カ年計画というものは、結局六カ年先にはアメリカ軍が撤退するということを想定してお作りになる六カ年でありますか、ただ漫然と六年というものが出てきたものではないと思うのでございますが、この点いかがでございましょう。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本防衛計画はできるだけすみやかに完成いたしたいのでありますけれども、国力に応じた防衛計画を立てていかなくてはならないものでありますから——六カ年防衛計画というものは、経済の方でたまたま総合経済六カ年計画というものを立てることになっているものでありますから、経済力、言いかえれば国力に相応した防衛力を作りたいという意味から六カ年というものをめどにしたのであります。
  80. 江崎真澄

    江崎委員 それは大体いつごろ成案を得られる見込みでございましょうか。
  81. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛長官からお答えをいたします。
  82. 杉原荒太

    杉原国務大臣 実は先ほども申し上げましたように、防衛庁といたしましては今鋭意研究中でございますが、事の非常な重大性、それから諸条件の困難性の事実がございます。そこで防衛庁自体としても成案を得ますのにまだ実は相当の時間を要すると私は考えております。今大体いつごろということを申し上げ得るまでのところには実は至っていない次第でございます。
  83. 江崎真澄

    江崎委員 どうも一向にはっきりしません。いつごろできるというめどぐらいはおっしゃられぬと国防会議にかけようもないわけで、総理も、また同時に防衛長官もしきりに言いふらされた六カ年計画がいつまでたってもできぬようなことなら、国防会議もそうあわてて御審議申し上げる必要はないというようなことにも受け取れるのでありますが、結局それはともかくとして、重要な国土防衛計画のめどもなかなかつかない、ところが一方においては先般防衛分担金の削減をめぐりまして、米軍の飛行基地の拡張問題というものは、いち早く五つの飛行場の拡張という点でオーケーをしておられるようでございます。肝心なわれわれの防衛力の計画というものを自分の方から大きく旗を掲げてこれを立てなければ、国土防衛はできないのだ、またこうすることが本筋であるというようなことをおっしゃるなら、どうしてにわかに五つの飛行場拡張というような線に向ってだけは早急に進められるのでございましょうか。少くともわれわれの常識からしますれば、五つの飛行場を一挙に拡張するというようなことは、残念ながら共同防衛という本来の線から逸脱しているものではなかろうか、こういう点を非常に心配するものであります。なろうことならば、一つ日本の長期防衛六カ年計画というものをはっきりおきめになって、それから五つの飛行場の拡張問題などというようなことは、それとにらみ合せながらお取りきめになることの方が、今政府の御答弁から察するのに妥当であるようにわれわれ考えるのでありますが、この点は鳩山総理はどうお考えでありましょうか。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛長官から答弁をしていただきます。
  85. 江崎真澄

    江崎委員 これは総理から聞きたい。根本的な問題です。総理に承りたいというのは、あの防衛分担金の削減のときに、四月十九日に日米共同声明というものを発せられております。これは予算委員会においてしばしば問題になったところでありますが、そのときの共同声明にはっきりとこの五つの飛行場の問題をうたっていらっしゃる。われわれはこれはどうも共同防衛という線からは逸脱している、妥当性を欠く、こう思っているからお尋ねしているわけです。お答え下さい。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあの共同声明は、安全保障条約によっての共同防衛の点から出てきたものと確信をしております。いかに飛行場が拡大せられつつあるかというような具体的な問題については、防衛長官から御答弁いたします。
  87. 杉原荒太

    杉原国務大臣 アメリカ軍が使用しております飛行場につきまして、御承知の通り、ジェット機が使用されるに従って、従来の滑走路の長さをもってしては不足で、それがためにいろいろな危険がある、そういうところからアメリカ側でもかなり前から自分の使用しております飛行場につきまして、もう少し安全に飛べるように拡張してもらいたいという希望があったわけでございます。そしてその数も相当数あったのを、日本側といたしましては、それについては実際の経費の負担の問題もございますし、一挙にそうたくさんできもしませんし、ずいぶんこれをしぼりまして、今五つ考えてやっている次第でございます。折衝によって——これは共同防衛の線から逸脱するのだという解釈に立つから、まあまあで押えてきた。これが、にわかに爆発して五つの問題が起きた。これは総理大臣から御答弁をいただきたいと思うのですが、一体総理は先般の北富士の演習場のあの紛争の問題、それから立川を初め米空軍の基地拡張の問題、これによって今周辺住民がいかに不安動揺をしているかということをあなたは御存じでありますか。これはただ単に防衛長官だけにまかして、自分は知らぬなどと言っててんとして省みないという体の問題ではありません。これは国家的な大問題だ。二年も前から押えに押えてきたものが、今ここになってなぜ爆発しなければならなかったのであるか、われわれは多分に疑問を持っております。この点についてやはりそれは当りまえだとお考えになっておりますか。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の聞いているところによりますれば、飛行機が改良せられまして、非常に被害が多かったそうです。けさ空軍司令長官が見えましたが、昨日も飛行場が小さいために飛行機がすっかりこわれてしまった、日本が飛行場を拡大してくれることに熱心であることについて自分は非常な敬意を表するというようなことを言っておりましたが、飛行場が小さいために改良せられた飛行機が被害をこうむることが多かったものでありますから、急に飛行場の拡張という問題が起きたと私は観測しております。
  89. 江崎真澄

    江崎委員 この問題こそ、われわれも同じ保守陣営ではありますが、今まで吉田内閣当時に二年間も延ばし延ばしにしてこれたものが、今にわかになぜ日米共同声明というような、半分以上も、むしろ全部の責任を背負わされた形においてあなたが声明を発しなければならぬという点に追い込まれたゆえんのもの、これはわれわれ非常に重要問題だと考えております。いわゆる防衛分担金の削減をめぐって非常に御苦心なすったことはこれは世上承知の通りでありますが、しかし防衛分担金を削減して、そして一兆円の予算内においてあらゆる公共事業も民主党の公約もやってのけるんだということで、しきりに選挙演説をはなやかに打って歩かれたことは御自身において御存じの通りであります。なるほど昭和二十九年度よりも三十年度は百二十五億防衛分担金においては減りました。けれども、その条件としては防衛庁費を百二十五億程度ふやせということで、双方合せて千三百二十七億の総ワクにおいては昭和二十九年度も三十年度も何ら変りはございません。ただ世間的にはなるほど百二十五億の防衛分担金の減額はなされたかのごとき錯覚を国民に起させることにはなりました。もちろんわれわれ日本自衛隊防衛庁でありますから、これに百二十五億を加えられれば日本自衛隊防衛庁が充実することでありまして、よさそうなものでありますが、現実においてはあなたが考えられたように、何らこの防衛分担金の軽減によって公共事業も行われなければ、あるいは国民経済の負担が軽くなったということも考えられないのでございます。ただ民主党の面子を立てて国民の目をごまかすことだけはできた。けれども重光さんがアメリカに行くといったのをワシントンからけられて、東京の大使館で条理を尽して話し合ってくれということで、非常に当時面目を失墜されたのであります。もしあのとき分担金削減ということが思う通りにいかなかったならば、あるいは鳩山内閣総辞職という場面に追い込まれたかもしれません。まあ必死であったことはお察し申し上げますが、結局実質においては何ら変らない。千三百二十七億のワクで自衛隊にやったか、防衛庁費が減ったかというだけの問題である。けれどもこの面子を立ててもらったかわりに、五つの飛行場を拡張するために、八十億の予算計上をいたしますというお荷物をちょうだいしたとしか、われわれには解することができないのでございます。従って今日あなたがこの飛行場の問題を軽く考えられておられるとしたならば、われわれはこれを大きく国民に訴えていかなければなりません。防衛分担金の削減というこの取引をめぐって、そうして五つの飛行場拡張ということが周辺住民の困苦、周辺住民の憤怒というものを踏みにじって、取引の具に供されたものであるとわれわれは解釈いたしておるものでございます。この点、総理大臣どうでありますか、はっきりお答えをいただきたいのであります。何かもっと実質的ないい物をほかにおもらいになりましたか。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛長官から答弁いたさせます。
  91. 江崎真澄

    江崎委員 いや、だめです。あなたからはっきり御答弁下さい。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は大体のごときり知りません。
  93. 江崎真澄

    江崎委員 これは根本問題です。私は何もこまかい話を承わろうというわけではない。防衛六カ年計画、防衛六カ年計画と言いながら、その計画をまだあなたは就任後すでに何カ月になります。相当の期間がたつのにまだめどもなければ見通しも立たない。そんな見通しの立たないことを言っておられる防衛庁長官に、簡単に五つの基地の拡張問題などきめられて一体どうなりますか。だから私ども総理に一体どういうお考えで五つもにわかにおきめになるかということをお尋ねしておりますから、これは総理、その妥当性についてはっきりおっしゃる責任があなたにあると思います。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は飛行機の性能が変ったので非常に飛行場が狭くて被害が多いから飛行場の拡張をやってもらいたいということだけは聞いておるのでありますが、それがどういう程度、どういう期間内においてというようなことは私は存じません。それから防衛分担金の交渉なり防衛庁費の話なりは、一萬田君と重光君と防衛庁長官の三人において折衝したことでありまして、その詳細のことは三人が一番よく知っておりますから、三人の中の一人の杉原君から聞いていただきたいと思います。
  95. 江崎真澄

    江崎委員 これは杉原防衛長官からも聞きましょう。けれどもこの基地問題は総理がお考えになっておるほど簡単な問題じゃないのです。この五つのうち、しからばこれを減らそうと思われるか、あるいは共同声明をした以上は、これは五つともやっちまうおつもりなのですか。それからもう一つ、この時期はいつまでにやっていいかわからぬというような話ですが、それを聞いてわれわれもいささか安心の感をいたすのでありますが、いつまでにやっていいかわからぬような問題ならば、飛行場拡張問題というものは相当先に延びるものとわれわれも総理程度に認識して差しつかえないわけなのですね。この点一体どうなのです。それは大事な問題ですよ。
  96. 杉原荒太

    杉原国務大臣 現在政府におきましては、今の大体五つの飛行場の拡張ということは、これを向う側の要求を認めるということは、必要だと実は認めております。しかしそれに伴いましていろいろと関係住民の方々との間に極力御了解をしていただくよう一つ努力いたしまして、そしてこれを実行したいと考えております。することができるように、あるいはまたB52、これは発動機が八つもある大へん大きな爆撃機でありますが、こういったものもあるいは気がまえられておりはしないか、こういう点がわれわれは不安でたまらない。何もこれは社会党の専売特許じゃありません。少くともこういうことは共同防衛という線から逸脱するものではないかどうか。これは非常に重要な問題です。六カ年計画が立っておらぬという場面に、総理大臣が勝手に外務大臣大蔵大臣にまかせて、こんな五つの基地拡張問題というような重要問題を、いつまでやっていいかわからぬ、そんなことは私は知らない。大蔵大臣外務大臣にまかせてあるというような軽々しいやり方でやっておられるとするならば、日本の運命をあなたにおまかせするわけにはいかぬということになります。これは周辺住民だけの問題じゃありませんよ。この点一体どうでありますか。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は安全保障条約の範囲内においての、自衛軍のための防衛力の増強と思っておりますので、攻撃的なものについては拡張はないと思っております。
  98. 江崎真澄

    江崎委員 総理自身ももう少し基地問題の重要性をお考えになっていただきたいと思います。そこで私ども総理大臣に御要求いたすのでありますが、どうも総理はこの問題については御認識が足りないようであります。けれどもこれは国家的に見て大きな問題です。そんなバイカル湖の西を望むようなB52というような大型爆撃機が、一体要するのか要らぬのか。これは国民として不安でたまりません。同時にまた二年間も押えてきたものを、五つもにわかに大拡張をやる、こういうやり方にはわれわれは納得することができません。少くともこれなどは日米安全保障条約の線に基くものとはいいながら、国防基本方針に属する問題だと思います。だから国防会議にかけて、防衛六カ年計画をだんだんかためていきたいとおっしゃるのであるならば、この国防会議にかけて、五つの飛行場の拡張問題もきめていかれるような形にせられることが妥当だと思うのでありますが、この点について、はっきりと総理大臣また防衛庁長官からお答えを承わりたいのであります。あなたの御都合だけで六カ年計画は知らぬ存ぜぬ、それだけでこんな大きな、国家の運命をかけた基地問題をやられたのでは、われわれは安心しておまかせすることができません。どうぞはっきり御答弁願いたい。
  99. 杉原荒太

    杉原国務大臣 この飛行基地の拡張につきましては、先ほどから申し上げた通りでありますが、安全保障条約及びそれに基く行政協定の規定によりまして、アメリカ側の必要とする施設の提供をなすことになっているわけであります。その際におきましても互いに相談の上、実はこれだけのことはわれわれの方でもやるということになっておりますので、これは条約の履行、国際信義上から申しましても、実行することが必要だと考えております。なおこの詳細につきましては、御承知の通り、これは調達庁でやっておりますから、その担当大臣から皆様に申し上げることが適当だと思います。
  100. 福井順一

    ○福井(順)委員 関連して。五カ所の航空基地拡張問題についての鳩山総理大臣防衛庁長官答弁は、今まで本委員会におきまして調達庁長官答弁したことと全く食い違っておる。私が調達庁長官質問いたしまして、長官答弁したところによりますと、アメリカのただ単なる要請によって五カ所の航究基地を拡張するものではないということを、再三再四答弁しておる。これは日本防衛上の必要から拡張するんだ、こう言っておるのでありますが、ただいまの答弁を聞きますと、鳩山総理大臣はアメリカの飛行機が新型になって長い滑走路を要するので、大へん故障やけが人ができている、そこでアメリカの強い要請があったので、早急に飛行場の拡張をしたい、こう言っておられる。どちらがほんとうなのか。日本防衛の見地から五カ所の航空基地を拡張されるのか、アメリカの要請によって拡張されるのか。これは重大な問題でありますから、一つはっきり答弁していただきたいと思います。     〔委員長退席、高橋(禎)委員長代理着席〕
  101. 杉原荒太

    杉原国務大臣 調達庁長官の申しましたことを援用なさいまして今御質問でございますが、私直接聞いておりませんが、調達庁長官がそういうふうにお答え申し上げたといたしますと、私の解釈をもっていたしますと、もともとアメリカの駐留軍というのは、日本の安全のために駐留ということが認められた。御承知の通り、日米安全保障条約に明記してありますように、日本自衛上必要な手段をまだ持っていない。それだから日本防衛のために、暫定措置として日本を守るために、アメリカ軍の駐留を希望するということが、あの条約の中にもうたわれておる次第であります。おそらくそういう意味において申し上げたことと私解釈いたします。
  102. 福井順一

    ○福井(順)委員 調達庁長官の本委員会における再三の答弁は、今あなたの答弁を聞きますと、大へん逸脱しているように思いますから、よく一つ注意をして意見をまとめておいていただきたい。またの機会質問をいたします。  それから鳩山総理大臣は、いつまでに航空基地の拡張をするかわからぬということを言われましたけれども、これは大へんに急いでおられる。先般も地元の代表を連れて、総理大臣のところへ伺いまして陳情したのでありますが、そのときに、善処をするということを約束されましたが、一向に善処されない。地元の反対にもかかわらず強制立ち入りをするということ、そうして調査をするということを通達いたしてきております。しかもその期間がまことに短い。一週間とか十日とかいうような短期間の猶予で、その間に承諾をしなければ強制立ち入りをするんだというようなことを強硬に申し入れをいたしてきておる。いつまでやるかわからぬということを総理大臣は言われますけれども、何らかの事情によって大へんに急いでおられると思うのでありますが、大体いっころまで、どういう拡張をしたいという目途がついてることと思いますが、大体のところを御説明願いたい。
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたにお目にかかって、その後二、三日のうちにテーラー大将とアリソンとに、あなたたちが見えてこういう問題があって、非常に重大問題に発展するかもしれないから、よく調査をしてもらいたいということだけは私はそう言いましたですよ。その後忙しかったもので、その結果はまだ聞いておりませんけれども、今調達庁長官が見えるそうですから、参りましたらお聞き取り願いたいと思います。
  104. 江崎真澄

    江崎委員 それでは調達庁長官が来てからはっきりお尋ねしたいと思いますが、これは総理一つ、こういうやはり国防基本方針に関するようなことは、国防会議というものをせっかく作ろうというわけでありますから、それができてから、そうしてまた防衛六カ年計画というものと同時に、五つの飛行場の妥当性というものとをにらみ合わせながらおやりになることにして、見送られることが適切ではないかと考えますので、この点を一つはっきりと要望いたしておきたいと思います。は非常に強硬に領土の問題もノーと来たし、あるいは捕虜帰還の問題もノーと来た。いやこれは外交交渉の常道だ。ちょうどバナナのたたき売りのように、一番初めは高くてだんだん安くなるのだというふうに総理は甘くお考えになっておるかもしれませんが、一方では五つの飛行場でバイカル湖の西を望むというような、大型爆撃機の発着をそのままよろしいといって、共同声明をのんでおいて、一方ではまたソ連に媚態を呈しておる、この二また外交を堂々とやってのけられる、ここにわれわれは問題があると思う。こんなことではソ連ばかりではありません、どんな国だって本気になって交渉をするものじゃないでしょう。だからこういう結果、強硬態度を示されるのもそれはまたむべなるかなと言われても私はいたし方がないと思うのでありますが、少くともまたアメリカ側にしてみれば、いわゆるソ連、中共に対してのあなたの二また外交、媚態外交というものに警戒するあまりこの五つの飛行場をにわかに拡張して、そうして共同防衛の線から逸脱した基地拡張をやってのけようということになったということもわれわれには考えられるのであります。だからどうぞあなたはこの問題を御研究になって、将来五カ所のものならばこれが一カ所か二カ所、比較的実害の少い場所で話し合いがつくように御努力願えるかどうか、この点を一つ簡単な御答弁でいい話でありますから、努力をせられるのか、あるいは仕方がないからあくまでやってのけてしまわれるのか、はっきりと御答弁を賜わりたいのであります。
  105. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの発言は傾聴いたしました。できるだけ早く国防会議が設置されまして、これらの問題が十分に討議、進行するようにいたしたいと思います。
  106. 江崎真澄

    江崎委員 わかりました。結局そうすると国防会議ができてからこの飛行場の拡張問題も十分慎重におやりになるということに今承わって、それはもう大へんけっこうであります。われわれもそうありたいと思って先ほどからしきりにお願い、また御質問をしておったのでありますが、御了解をいただければそれでけっこうでありますから、次に質問を進めたいと思います。
  107. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議ができるまで、現在のいろいろの防衛計画の進行をとどめるというわけには参りません。すでに着手しておりまする計画を国防会議が設置できるまで待ってくれということは、事実の上においてできないとは思いますけれども国防会議を早くこしらえて、すべての問題を検討していくのが最も利益であるというように申したのであります。
  108. 江崎真澄

    江崎委員 また話が変ってきたのでありますが、どうもうしろの声がしきりにいろいろと雑音を入れられるようであります。しかしこれは総理よく研究して下さい。あなたが相当ソ連に媚態外交をもって当っておられるそのはね返りが、アメリカ側を刺激して、余分な基地拡張というような形になっておるとしか思われませんので、この辺については相当御研究になって、国防会議におかけになって、初めにあなたが賢明なる御判断によって御答弁になりましたように、国防会議によって——何もこれをおやめになる必要はありません、合法的に基地の測量なりをなさるとか、あるいは住民の声を聞くとか、そういうことをおやりになるでありましょうが、決定的なものはあなたが最初お答えになりましたように、国防会議と並行してこの問題を解決していかれるというふうになさることの方がいいと思っておるのであります。どうぞその点をお含みの上で御善処を賜わりたいのでございます。次にお尋ねをいたしたいのは、総理は経済力に応じた自衛力を整えたならば駐留軍の撤退を実現するようにしたい、これをはっきりおっしゃっておるのでありますが、アメリカ軍の撤退の時期、これは早く撤退させることがいわゆる自衛軍を作るという、少くとも軍備を充実するというあなたのかねてからの所論に合う話でございますが、大体のめどをどの辺に置いておられるのでございますか。防衛六カ年計画はまだできておらぬという話でありますが、およそのめどというものは総理の胸中にはっきり気がまえられておると思いますが、いかがでございますか。
  109. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 総合経済六カ年計画もまだできておりませんし、これに比例して作っていきたいという六カ年の国防計画もできておりませんので、めどがいつだということは申し上げられません。
  110. 江崎真澄

    江崎委員 どうもそれがおかしいのです。結局、たとえば国防会議を作るというこの問題一つを取り上げてみましても、大体アメリカ軍がいつごろ撤退するものであるかというめどがなくては国防会議をせっかく作っても議題のかけようもないし、また同時に審議のしようもない、いたずらに小田原評定の場を作るとしかわれわれには思えぬのであります。しかもあなたが経済力に相応した自衛力を作って米軍はすみやかに撤退してもらうのだ、こういう建前に立っておりますからあえてお尋ねしておるのでありまして、およその目標ぐらいはお示しになることの方が、国防会議審議をしていく上にも便利ではございませんかいかがでありますか。
  111. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 遺憾ながら、ただいまはそのめどを申し上げる機会に達しておりません。
  112. 江崎真澄

    江崎委員 どうも肝心な話は全部ぼけてくるのですが、しかし先般防衛庁長官自衛隊法一部改正法について、私は本会議で御質問を申し上げたそのときに、今度この自衛隊を増強するについて九州方面に方面隊を一つ新設する、そこで私はあなたにお尋ねをしたわけです。特に九州方面の重要性にかんがみということをこの自衛隊法一部改正の提案理由の説明としておられるのであります。一体この重要性とはいかなるものかといってお尋ねをしましたら、あなたは、これは速記録によると「万一の場合を考えまして、いろいろの場合を考えて考慮しております。」と言うておる。これはきわめてふざけた答弁です。提案理由の説明では九州地方の重要性にかんがみといっておきながら、その重要性はいろいろの場合または万一の場合を考えましてと言う。万一の場合やいろいろの場合ならば、何も九州方面隊ばかりではない。九州方面隊の九州の重要性という言葉は、あえて提案理由の説明にこれを使う必要はありません。これはわれわれの常識をもってするならば、鳩山総理は知らぬと言われるけれども、少くとも九州方面の重要性というものは、アメリカ兵が北海道から引き揚げた、この次は九州から引き揚げるのであろうかいなと考え一つのケースがあります。あるいは対馬を南鮮が刺激します、竹島を刺激いたします、そうすると南鮮に考慮を用いての重要性であるのかいなというふうにも考えられます。あるいはまた鳩山総理の甘いお考えとは大へん大きな違いが今朝の新聞によって明らかでありますが、やはりこれは仮想防衛対象国というのは中共であるかソ連であるのかいなというふうにも解釈ができます。こういう不安な説明をこのわれわれの委員会においてはっきりしておきながら、万一の場合、いろいろの場合というさような御答弁はもうわれわれを愚弄するもはなはだしいと思う。これは民主党の諸君でもおそらく怒られるだろうと思うのでありますが、この重要性とは一体何であるのか、はっきりと一つ総理の前でお答えになる義務があると思う。提案理由にはっきりおっしゃっておるのでありますから、ここでお答えを願いたいのであります。の整備をいたしていくに当りまして、その配置等の関係で九州方面もやったがいいだろう、こういう趣旨で申し上げております。それから撤退の関係でございますが、アメリカ軍ではかねて日本自衛力の整備に伴って自分たちの方でも日本撤退の意思があるということを今までたびたび申しておるのでありますが、それはいついかなる時期ということはまだ私らも一般的には承知しておりませんが、最近実は約五千名というものが撤退するというふうに承知いたしておるのでございます。
  113. 江崎真澄

    江崎委員 特に九州方面の重要性にかんがみということは一向御答弁がないわけですが、それはどうなんですか。このことを答えられぬようなことなら、あなたは法案提出のときになぜそんないらぬことを言いますか。言わずにおけばいいじゃないか。言った以上その重要性とは何ぞや、中共、ソ連とは親しくやりますといって、今使節まで送っておられる。そうすれば中共、ソ連は除外しているのか。そうすると竹島を刺激したり対島を刺激する、韓国が侵略してきては困るという、そういう重要性なのか。それともそれは具体的にいって、アメリカが北海道の次には九州から撤退を希望しておるという重要性なのか、どうなのか。私ども具体的にむしろあなたに御答弁のしやすいように御質問をしておる。答えられぬようなことならそんな思わせぶりをなぜわれわれに提案理由の説明としておっしゃいました。これは責任がありますよ。いいかげんな話じゃありません。ぼやかしたり、答えられぬようなことを、われわれのこの内閣委員会自衛隊法一部改正法律案の提案に当ってなぜ言いますか、はっきりお答えいただきたい。どういう重要性なのか具体的にお答えになったらいいのです。そうむずかしい話じゃありません。北海道の次には九州からアメリカ兵が撤退するのですか。そういう希望が内々あなたの方に入ってきておるのじゃありませんか。
  114. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今どこそこが仮装敵国で、それとの関係においてなんということは私は申し上げることはできません。私はやはり日本自衛隊の配置におきまして、九州方面ということは順序からいたしましても必要だと考えておる次第でございます。それから撤退等の関係でございますが、これは今アメリカ側で日本自衛隊の整備充実に伴って撤退の一般的の意思があるということを私承知しておりますけれども、それがどこそこのということは実ははっきりしていない点が多いのでございます。
  115. 江崎真澄

    江崎委員 そうすれば、なぜ九州方面の重要性にかんがみなんという言葉をお使いになったのか。これは言った方がいいのです。それを言わずに何もかもぼかして、しかも自分の方からそういうことを提示しておきながら、何にも言わない。これでは委員会をやってみても何にもならぬと思います。重要性をはっきりおっしゃい。それとも取り消しますか。ただばく然と思いつきによって九州に方面隊を作るだけであって、実は重要じゃなかったのですな。いろいろ万一の場合を考えてひょいと思いつきでやっただけなんですね。
  116. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は委員会でも申し上げましたように、いろいろの観点からいたしまして、日本国防上の必要からいたしまして、やはり九州方面隊だけは必要だと考えておる次第でございます。
  117. 江崎真澄

    江崎委員 きょうはこれを突き詰めて参りましても、はなはだどうも政府側からは満足した答弁が得られません。自衛隊憲法第九条を改正しなくても戦力と言い得る、ときにこれは軍隊であるとも言い得る、その線に対しての御答弁は、大体吉田内閣当時と同じようなものであると最近では悟りましたという工合に、お答えになってきたようでありますが、この点も突き詰めて結論的にはっきり言うならば、今日吉田内閣と大差ない、吉田内閣考えておった線が大体正しいと御認識になっておるようでありますが、違っておる点は、吉田内閣のこの問題に対する考え方と、今日鳩山内閣——きょうだいぶお考え方を改められたようでありますが、そのお改めになった場面でどこがどう違うのか。この問題についてきょうもう一ぺん繰り返してくどい話を聞こうとは思いませんから、なおはっきりとした定見を打ち出される必要があると思います。もうほとんど違わないのだというところに来ました。実はあれが正しかったのだとおっしゃったも同様でありますから、われわれもそういう線であるならばある程度理解ができるのでありますが、違うとするならば一体どう違うのか、なおこの点ははっきりされなければならぬと思います。また同時に五つの飛行場の問題は、共同防衛という線に沿った日米安全保障条約、この線からいって総理大臣は、いつまでにこれが、仕上がるものか、またこれが一体ほんとうに共同防衛の線にかなったものであるのかないのか、こういうことすら十分御認識もなくして八十億というような大きな予算を計上して、しかもこれをやってのけよう、こんな危険きわまる話をそう簡単においそれとやれるものではありません。これは吉田内閣ようにすべからく一つ共同防衛の線に沿って五つのものを幾らかに減らして、同時にまたこれを拡充するのであるならば、これは国防基本方針に沿う線のものであるが、どうか。こういった点からもそんなしろうとの西田労働大臣や——あの人は何も知りはしません。杉原防衛庁長官にして西田さんに聞かなければ十分御答弁ができぬというようなことをおっしゃる。そんな無責任なことで一体これが攻略目的をもって作られるものであるか。日米共同防衛の線において重要性を持ったものであるかどうか、十分の御答弁総理からできないようなものを、しかく簡単にわれわれは、基地拡張が住民だけの犠牲においてなされ、しかも国民の大きな犠牲を将来にしょわなければならぬというような問題を片づけるわけには参りません。この問題についての御答弁もはっきりと私は留保をいたしたいのであります。また少くとも防衛庁設置法改正あるいは自衛隊法の一部改正、こういった法案が今一括上程されておりますが、みずからが九州方面の重要性などというような不穏当な言葉を使っておきながら、われわれが不安に感じて、しからばどうでありますかと聞くと、それは万一の場合とかいろいろの場合とかいって言いのがれをする。こういうあり方では国防会議の各論にも入れないではありませんか。私は先般国防会議の各論のおもだった点について御質問を申し上げ、本日もここに用意をいたしておるのでありますが、私の既定の時間ももう過ぎておるようでありますから、この各論につきましては、同僚委員の御質問と、さらにまた将来にかけて当然これは鳩山総理大臣にも杉原防衛庁長官にもはっきりとした御答弁をいただきたいと思っております。大体基礎が固まらなくて国防会議法をここに出してこられた。さあ事務局はどうするのか、民間人は白紙である、どうだああだとそういう問答をしてみたところで、これはいささか小田原評定に終る感なきにしもあらずと思います。少くとも根本の問題は以上三点に締めくくったのでありますから、この次にははっきりと御答弁を賜わりたいのであります。あとは同僚委員質疑に譲りまして、私の質問を留保いたすものであります。
  118. 宮澤胤勇

  119. 下川儀太郎

    ○下川委員 先ほど来江崎君の質問に種々総理答弁されておりますが、われわれ社会党は全く今までの答弁では納得がいきません。御承知の通り、われわれは前の第十九国会におきまして全面的に防衛法案には反対しておる。しかもその当時は、先ほど江崎君が指摘されておる通りに、鳩山総理もやはり違憲論の立場に立って反対されたように私は聞いておる。これに対する答弁がいろいろございましたが、しかし私たちは先ほど来あなたの答弁を聞いておると、国防会議に関連する重大な問題、一つ自衛隊の性格、二つはいわゆる自衛の問題、この二つがあいまいもこになっておる。この二つの問題の明確な解決がなければ国防会議の必要はないと私は断定する。最初の自衛隊の問題、この問題は憲法違反であるということは前からあなたも主張されておった。それが世論によってあるいは国会が承認したから、いわば日本の諸情勢によって自分も一応認めたという形で答弁されておる。しかし私はここが問題だと思う。あなたは憲法をあくまでも守り抜くという立場に立って、主張としては再軍備計画には自分は賛成しておる。そうしなければならぬという主張を持っておる。しかし現在の憲法ではそれはできないから、憲法改正してその上で自衛隊軍隊に持っていこうとする考え方だったと私は思う。それが今日変ってきておる。ですから私は問題はそこにあると思う。世論の動向によってあなたが自分主張された意見を今日ねじまげておられる。私は自衛隊の性格を聞く前に、あなたの心境をお聞きしたい。言うならば世論の動向によってあなたの主張が変えられたということ、今日の世論、また日本の歴史的な文籍を見ても世論は権力者が作っておる。正しい意見もこれが愚昧な世論によって抹殺されることが多い。いわんや国民的な立場の投要をするなり、あるいは世論を喚起した上で自衛隊軍隊として認めさせるならば、これは一応わかる。ところが一部作られた権威者の世論が支配をして自衛隊——いわゆる軍隊である自衛隊を、憲法違反の中において作られたということは、私は世論に対するあなたの見解が、信念が、いわばみずからあるいは保守勢力の作った世論に負かされたといって至当だと私は思う。またわれわれはこの自衛隊の問題については、国民的な世論を聞いたり、あるいは世論の指導者である学識経験者を国会に呼びました。記憶するところによりますと、自由党あるいは民主党、その方面から野村吉三郎元海軍大将、それから軍事評論家の斎藤忠氏、かつての陸軍中将である遠藤三郎氏、それから同志社大学の田畑教授、それらの有識者を呼んだ。呼んだところが、保守の方々、いわゆる再軍備を主張する方々、あるいはまた再軍備反対の立場に立つ人々もこぞってこれを憲法違反だといっている。自衛隊をつくるそれ自体がもう憲法違反だと主張されておる。これは共通の立場に立って憲法違反主張しておられる。これらの学識経験者はおそらくいずれの立場にも属しておりませんでしたが、いわばほんとうの真実に徹した世論の代表者であったと私は思う。従ってそういう学識経験者の世論を土台にしてこの問題が展開されるならばいい、あるいはそういう人々の意見を聞いて、それらの意見の上にあなたが思想的なあるいは心境的な変化を来したというならば、これは私たちは考える。ところが世論の動向という考え方の中には、私は多分に政治的な含みがあると思う。自分の信念は——いわゆる平和憲法であるが、自分の政策に相反しておるからこれを一応改正に持っていって、自分主張を遂げようとするところの考え方、これを現在のままでいわゆる違憲でないという立場においてこれをたぶらかそうとするそういうあなたの心境は、はなはだ不愉快なところがあるのです。まずその心境を明確にしてほしいと思います。
  120. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本憲法において軍隊を持つことは憲法違反だと考えておりました。けれども自衛隊法が成立をして自衛隊というものによって日本国防を担任する。日本侵略するものに対しては、自衛隊がこれを防衛することをもって任務とするということが議会を通過いたしまして、それが世論の支持するところとなった今日におきましては、自衛隊によって日本国防を担当してもらうということが、私は日本世論だろうと思う。それが憲法違反でないということの解釈日本国民はなったと思うのであります。それですからそういうよう自衛隊法ができた後においては、これを違憲であるといって無効にするということはとうてい日本の国情許さざるところと思うのであります。
  121. 下川儀太郎

    ○下川委員 それはあくまでもあなたの自画自賛の世論だと思う。これは日本軍隊を持つということは、重大な問題です。従ってたとえその名前が自衛隊であろうとも、その性格内容は、これはもう軍隊といっても差しつかえない。その軍隊自衛隊の名のもとにつくられる、これは当然国民投票によって決するとか、あるいはまたあらゆる宣伝機関を通じて自衛隊軍隊である。そうして日本はこれを作るが、お前たちはどうする、そういう世論喚起の上において、これが賛成を得たならば、これは一応世論といい得るでしょう。ところがあなた方自身の口にするいわゆる世論によってこれを左右されるということは、はなはだ私は間違っていると思う。従ってこの自衛隊の性格は、先ほどから聞いておると、自衛隊軍隊であるとあなたは称しておる。あるいはまた参議院の予算委員会におきまして、八木幸吉君の質問に答えて、やはり軍隊と言っておる。そうなるとここで明確にしていただきたいことは、陸海空を保持するこの日本自衛隊は、軍隊と称していいのかどうか。これを一つ明確にしておきたいと思います。
  122. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻江崎君の質問に答えました通りに、軍隊という定義によりますけれども日本への侵略に対して、自衛隊がこれを防衛することをもって任務とする、これと戦うことをもって任務とするという自衛隊は、軍隊といっても差しつかえないと私は思います。ただしさればといって、その軍隊が世界のいわゆる軍隊と同一の意義を持っているかというと、同一の意義を持つことはできないのであります。この点において軍隊とは違う点がありますから、当然紛争を解決する手段としての軍隊、戦う力を持っているのが軍隊ですけれども、そういう軍隊ではない、また軍事裁判所があるかというとそれもない、それですから普通の軍隊と同一視はできない。けれども日本に対する侵略に対して防衛する、戦う力を持っていることをもって任務とする以上は、これを軍隊といっても差しつかえないと私は思っております。
  123. 下川儀太郎

    ○下川委員 江崎君に対する答弁と同じように、あいまいもことしておるのであります。もうすでに常識的な軍隊なんである。しかしこれは自衛隊であって軍隊でない、ちょうど第十九国会のときも同じよう答弁が当時の木村長官からなされた。しかしいわゆる社会通念からすると、陸、海、空の軍隊を持っているものは、これは当然軍隊として認定してもさしつかえない。ところがそれは世界各国の軍隊とは違う。そうなると今日ビルマにも軍隊があり、インドにも軍隊がある。アジアの諸国家、今日独立された弱小国家にも多少軍隊の名において現わされておるものがあります。そうすると、日本自衛隊はそれらの弱小国家以上の装備あるいは科学的の兵器を持っておる。そうすると、自衛隊軍隊でないとするならば、一体よその国家軍隊は何になるのか、いわゆるあなたの比較的な立場においてこの軍隊の定義を下したと思いますが、それでは日本外のそれらの国は軍隊といわないのか、それを一つお伺いしたい。
  124. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本自衛隊軍隊といっても仕方がないと思っております。だけれども軍隊といっても仕方がないのは、軍隊が世界共通に使われている軍隊とはいささか違う点がある。これは先刻申したのであります。言葉の使用の問題ですから、これは人口によってその軍隊というものはある程度制限するのと、普通に使うのと、言葉はやむを得ないことだと思います。それはその人の自由だと思います。君に対する答弁中に、客観的に聞いておりますと、自由党は自衛隊を提案されたときに、今日の自衛隊はこれは軍隊でないという同じよう答弁をされた。ですからわれわれの聞くところによりますと、この憲法第九条を侵す、あなた方の方は侵さないというかもしれない。しかし陸、海、空の武力を持っていても、名前が自衛隊であるとするならば、あえて憲法を侵しても差しつかえないのか、私たちはかよう解釈する。名目は自衛隊なんだ、名目は軍隊という名前を出さない、しかしながら中味は軍隊なんだ、そして憲法を侵す。これではあまりにも国民を欺瞞しておるではないか、さよう考えるのですが、いかがですか。
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛の目的の限度において自衛隊を持つということは、憲法違反にはならないと思うのであります。
  126. 下川儀太郎

    ○下川委員 もう一度明確にしておきますが、そうすると、かつては憲法改正しなければ自衛隊軍隊のそしりを受ける。しかし今の心境は自由党同様に現憲法下においても、自衛隊の名によって軍隊は作り得る、そういうふうに確認してもよろしゅうございましょうか。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。軍隊という言葉はその人によって使い方は違うとは思いますけれども自衛の目的の範囲内において戦う兵力を持つことは、憲法違反にはならないと思います。
  128. 下川儀太郎

    ○下川委員 この問題につきましては、これは明確にあなたが答弁されておりますから、われわれの立場からいずれ反対いたしますが、自衛という言葉が今出て参りました。この自衛という問題は先ほど来も江崎君が聞かれ、全然明確にされておらない。いわば自衛の中において限界が明確にされておらない。どこからどこまで自衛であって、どこからどこまで攻撃であるか、これがまずわからない。たとえば相手国が——敵国と称されておるもの、あるいは日本に野望を持つ国が、ある拠点から空爆しようとする。そういう場合にいち早くそれを察知して、これをこちらから空襲する、そういう場合はいわば防衛という名においてこれはできます。昔から日本には攻撃は最大の防禦だという言葉が残されておる。昔流にものを考えてくると、侵略されるおそれがある、侵略の気配がある、その侵略の気配を知った場合において、当然これはこちらから空襲するでしょう。そうなってくると、この限界が一方においては攻撃となり、一方においては守る態勢になってくる。その限界がまず明らかにされておらない。また日本がある国に空襲を受けた、それを日本の飛行機が追って行く、追って途中で引き返す立場であるのか、それとも敵の拠点まで空襲してとどめをさしていくのか。そういう点の限界もまた明らかにされておらない。こういうことに対してどのようにお考えでございましょうか。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本国土が直接に侵略されたる場合に、これを防衛するということが自衛隊の任務と思うのであります。防衛を先走って、侵略のない前に、侵略せられるということをおもんぱかって侵略を先がけするということは、防衛の範囲を逸脱するものと考えております。
  130. 下川儀太郎

    ○下川委員 そうなると、たとえばその次に私が質問いたしました、向うが空襲して来た場合、これを追って行って途中において引き返したものかどうか。あるいはこれを最後までとどめをさすべきか。たとえば世界戦争への誘致と考えられる客観的なそういう険悪な情勢の中にあって、そういうことがされた場合、これは非常にデリケートな問題です。ですからいわゆる自衛の問題、防衛の問題は、その点まで明確にしておかないと、東条内閣時代のあの轍をまた踏まなければならない。ですから防衛即攻撃、こういうことを考えて参りますと、私たちはこの際やはり重大な問題でございますから、明確にこういうことはなされておいた方がいいと思います。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は直接侵略したるものを撃滅するということは、防衛の範囲内と思います。
  132. 森三樹二

    ○森(三)委員 関連してちょっとお尋ねいたしますが、ただいまの下川君の発言に対する鳩山総理お答えでありますが、自衛隊の行動に関しまして、自衛隊法の第七十六条には、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」云々と書いてあります。従いまして、私はこの国防会議が成立しましたあかつきにおいて、その出動の可否につきましては、たとい現実に攻撃を日本がされない場合においても、おそれがあるという七十六条の規定によって、自衛隊の出動し得る場合がある、かよう判断しておるのであります。それに対しまして私は、鳩山総理が先ほど来の各委員質疑に対しまして、非常に自信のない答弁をされておる。私はあなたが今後この重大なるところの国防会議議長として、重大な責任を負う方でありますが、現在の憲法においては、すなわちかつての天皇の統帥権にも似たる、すなわち新憲法下におけるところの総理大臣の地位というものは、実に最高無二のものであります。私は先ほど来の首相の自信のない答弁を聞いておりますと、この方が国防会議議長になるのか、われわれ国民は全く安心してまかすことができない。すなわちその国防会議において出動を決しました場合に、総理大臣がきぜんとしてこれを日本の国際情勢あるいは日本の自主性から判断して食いとめ、適当な判断をする能力がないというよう考えを私は持つに至りましたが、ただいまの下川君の質問に関連しまして、この自衛隊法の七十六条には外部からの武力攻撃のおそれある場合も含んでおります。従いまして私は総理のただいまの御答弁自衛隊法の規定は食い違いがある、かよう考えますが、御所見をお伺いしたいのであります。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は私の答弁したことが正しいと思います。おそれのある場合においては、これに対処することについて国防会議に検討してもらうということは、まさにしなくてはならないことだろうと思います。
  134. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは、先ほどあなたから、現実に攻撃された場合に限って自衛隊の出動があり得るのだというような御答弁がありましたが、このおそれがある場合もここに当然規定されておるのであります。それをあなたとしてはお認めにならないのですか。これだけ質問しておきます。
  135. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 おそれのある場合に直ちに武力行使をしてもいいという解釈は、私はとりたくないと思っております。場をとられる場合は、当然日本は拒否しなければならない。あるいはまた防衛という立場に立ってみても、やはり日本はそばづえを食うことだろう。そういう場合において、自衛という問題、あるいは今日の自衛隊の出処進退というものは非常に重要になってくる、防衛のためといいながら、あえて第三次世界戦争に突入するような危惧を私たちは考えてくる。しかもあなたの御承知の通り自衛隊の指揮監督権は総理大臣が持っておる。従って総理大臣が指揮監督権を持っておる限りにおいては、その総理大臣考え方一つ、あるいは総理大臣といっても一人でなったのじゃない。率いる政党がある。その率いる政党の首領が当然これに合致するわけだ。あなたのような人は別でありますが、もしもファッショ的な、いわゆる軍国主義的な人が出てきた場合には、やはり防衛のために作られておる自衛隊が、侵略のために左右されるおそれをわれわれは考える、こういう際にはどういう態度をとられるのか、指揮監督権を持つ総理大臣立場に立っての御答弁をお願いしたいと思います。
  136. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊法律が明示している通りに、侵略をせられたる場合にのみ出動するものと考えております。
  137. 下川儀太郎

    ○下川委員 私の質問しているところは、日本国だけの問題でなく、アメリカならアメリカと共同防衛する場合において、アメリカは侵略的な立場をとる。しかし条約を結んでおる日本自衛隊はあくまでも防衛だけにしか出動しない。そうすると、今のあなたの御答弁によりますと、アメリカが攻略しても自分たちは関知しない、いわゆる自分の国を防衛するだけであって、アメリカとの共同作戦には自分たちは乗らないということでございますか。
  138. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さよう考えております。安保条約においても、安保条約は日本防衛するために共同動作をとる約束をしておるのでありますから、日本防衛するという限度においてのみ共同動作をとるのですから、日本侵略をせられたる場合においてのみ発動し得るという、自衛隊法律と少しも矛盾はしないものと私は考えております。
  139. 下川儀太郎

    ○下川委員 その件でありますが、しかしそれは戦後におけるいろいろな日米関係の実態におきまして、たとえば朝鮮戦争時代におきましては、やはり日本は当然海外派兵をしなくてもいい立場に置かれておった。ところがこれは当時の文献にもありますけれども、釜山沖等々に日本がいわゆる国家公務員のいろいろな名において出動せしめられておる、こういう実態がある。ですから、われわれはそういう実態が今度波及した場合に、勢い大きな戦争の中に介入するおそれがある。現実的に過去において日本が派兵の任務を果した、掃海艇が大きな任務を果しておるとか、あるいはたま運びの役割を果しておるとか、いろいろな形が今日実証されてきている。ですからそれをわれわれはおそれるのです。いわゆる防衛という名において、日本を守ってやるのだという名において、日本国民が動員される、自衛隊が動員される、あるいはひいては海外派兵にまで発展せしめられる。アメリカの言ってくることを日本の自主性によってはね返すという決意と勇気がおありならば、何も私たちはさような心配は要りません。ところが往々にして大きな圧力によって日本の政治がねじ曲げられておる。その実態を把握しておるから、われわれはそれに非常な危惧を感ずるのです。ですから、総理はこの際どういうアメリカの要請が来ても、日本を守る、日本はあくまでも平和的な憲法下においての正しい国民としての歩みを続けるのだという観点に立って、そのようないわゆる強制された立場にあったときには、これを拒否するだけの勇気と決意があるかどうか。それがなければ先ほどの答弁は私はでき得ないと思います。
  140. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカの占領を受けておる時代ならばともかくも、現在日本は独立をしておりますから、独立している国家として、日本の名誉のために、法律を破るようなことを強要せられないようにいたすつもりであります。の日本の運命を決する重大な問題として、私たちは考えていかなければならぬのであります。従いましてこの一項から五項の重要な協議事項につきましては、われわれはよほどの注意と、よほどの国民的な関心を持っていかなければ、これは東条内閣時代と同じような非常にファッショ的な政治の伏線になってくるおそれがある。これについてどのようなお考えを持っておりますか。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの国防会議は、そういうような弊害が生じないようなために国防会議を作って、うまく運営をしていきたいと思うのであります。同時に、日本が再軍備をして、またがっての戦争ような事態に再び突入するという危険は、もうとてもないと私は思っております。
  142. 下川儀太郎

    ○下川委員 その見解も一応わかりますけれども、しかしあなたのような良心的な、いわゆる英知に富んだ方が総理大臣でおられるならばいい。しかし歴史は変遷する。どういう総理大臣が出てくるかわからぬ。われわれは現実の問題から将来の日本考えなければならぬ。もし悪い法案を作ったときに、第二次戦争で置かれたと同じような悲劇をわれわれが繰り返すことを考えるときに、やはりこの際そういう大きな法案に対しましては、これは単に鳩山総理の見解だけでなくて、やはり将来に残す法案であり、将来に悪用されるおそれのある法案であるだけに、私たちは十分これを注意しなければならぬと思う。従って先ほどは国防会議のいわゆる目的等について言いました。たとえばこの中の第四項に防衛出動の可否という一項がある。これも非常に重大な問題です。これは自衛隊法の中にもありますけれども、もし海外出動あるいは国内出動の場合は一体どうするかというと、これは総理大臣が指揮監督権を持っておりますから、総理大臣の命令によって出動することになる。しかしこれは国会の承認を得る、あるいは国防会議の諮問を受けるということが裏づけされております。しかし国会が開かれておらない場合には、国会の承認を経なくとも、事後承諾で総理大臣は出動命令ができるといっておる。これが危険であります。もし総理大臣個人の、あるいは国防会議とのその二つの相談によって、自衛隊が海外出動なり国内出動する場合がありとする。しかしそれが国会の承認を経なかった出動であった。国会にかけたところが、それは内乱を引き起すおそれがあるとか、あるいはまた国際的には世界戦争に突入するおそれがあるからいけないといわれて、国会の否認を受けた場合は、当然やはり総理大臣の名において撤兵せしめなければならぬ。ところが今の近代的な戦争あるいはまた国内の情勢に関しまして見る場合は、引き揚げの命令を出したときにはすでにおそく、世界戦争に発展していった、あるいは国内の全面的な騒擾に発展していった、暴力的な革命の線まで発展していったというようなことがなきにしもあらずであります。ですからその出動する場合において、国会の論議の上になって、あらゆる有識者の声を聞いて出動せしめられるならば、これは未然にいわゆるいろいろな騒乱に介入することが防げるけれども、単独にあなた並びに国防会議の協議によってなされた場合には、取り返しのつかない運命が日本に招来してくる。だからこれは自衛隊法案のときにわれわれは反対をし、非常に主張いたしました。ところがこれは事後承諾でもいいということになっておる。事後承諾によってなされた、いわゆる自衛隊の出動が日本の運命を決するということをわれわれは憂える。ですからこの第四項の防衛出動の可否を国防会議に諮問するという文字が出ておりますが、これは国会が開会されていないときに諮問されると思うし、あるいは開会中に諮問されるかもしれない。しかしこの重大な第四の防衛出動の可否をやはり国防会議に諮った場合、もしそれか良識のある国防会議議員であるならばいざ知らず、その中にあってファッショ的な人々、あるいはまた思想の対立のその一つの乱用として自衛隊を出動せしめる場合もある。労働者は低賃金のために戦いをする場合、いわゆる労使の対立、それを利用して自衛隊を出動せしめる、かような資本家的な考えの方もあるかもしれません。そういうことを考えますと、この目的の中における防衛出動の可否は非常に重大になってくる。この点どのようにお考えですか。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はできるだけ政治が優先をするように、国防会議をこしらえたわけでありますから、政治が優先するという態勢をくずさないようにやって参りたいつもりでおります。とにかく建前からいえば、国会を召集してでも承認を得べきものだと考えております。特に緊急の侵略を受けた場合、つまりどこかに侵略軍が参った場合、その場合だけが事後承諾ということになっておるのでありますから、大した間違いは起きないだろうと私は考えております。
  144. 下川儀太郎

    ○下川委員 それははなはだ甘い考えでございまして、従来のいろいろな歴史的なものを見ましても、あらゆる戦争の勃発はやはり偶然から発してくる場合もある。あるいは国内の今日の情勢などは、これは鳩山内閣はどうお考えか知りませんが、やはりわれわれ側から見ると、ちょうど川崎厚生大臣も来ておられますが、やはり社会保障等々の点が非常に弱い。ですから食えない大衆が当然生きる権利を主張してのいろいろな問題もかもされてくるでしょう。また国外問題にいたしましても、これまた同じように、きょうのソ連のいろいろな態度を見ましても、いわゆる米ソの対立というものが一応平和的な緩衝状態に置かれたように見える。しかしやはり戦争というものの過去の歴史をひもといてみますと、これは必ずしも安全とは言えない。従いましてその中に介入するということ、われわれが火中のクリを拾うということは避けなければならぬ。これは御同様であると思うのでありますが、そういった場合に、やはり国防会議の諮問機関が重要な審議をするということになっておりますと、勢い海外出兵の場合とか、あるいは国内出兵の場合におきましては、当然その一挙手一投足が国の興廃を支配するということになります。その点は十分お考えになってほしいと思う。同じ同志が計画することになる。だから正しい、たとえば防衛計画にしろ、あるいは出動の可否にしろ、きめる場合には同志みずからが、腹のわかっている人々がきめるのでありますから非常に危ない、ファッショのおそれがある。いわば独裁的な総理大臣がもしあった場合は、その他の閣僚を圧迫するでしょう。あるいはまた他の有識者に対しても協力方を要請するでしょう。そういうふうに意見はあってもやはりその独裁的な立場に立つ者が議長であり総理大臣である限りにおきましては、いかに国防会議を作ったにしてもこれは独裁的な立場に置かれていくということは間違いはございません。鳩山さんはいいかもしれない、しかし鳩山さんだけがこの法律を使うのではございません。鳩山さんの後にたれが総理大臣になるか、その次はたれが総理大臣になるか、歴代の総理大臣がいい人ならばいい、これがファシストである場合においてはこの国防会議というものを乱用して、またむげない戦争に突入するという結果も生ずるであろうし、あるいは暴動を起すよう立場に追い込む場合もわれわれには考えられる。従って国防会議はいわゆる自分の下僚である大臣たち、あるいはまた有識見者といっても、自分に協力せしめられるような人々を選ぶに違いないと思う。この点に対して明確なる答弁をお願いしたい。
  145. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議はただいまの御心配のようなことが起きないようなために考えた制度でありますけれども、お話のような危険も絶対にないということも言えないわけでありますから、どうかお互いに注意をし合って、そういう場合の生じないようにしていきたいと思います。識見の高い練達の人をあなた方の承認を得て作るわけでありますから、どうかそういうような識見の高い練達の人を諸君の力によって集めて、そういう危険のないようにしていただきたいと思います。
  146. 下川儀太郎

    ○下川委員 それは口ではそういうふうな御答弁をされるでしょうが、現実は私はそうはいかないと思う。これはもうどんな立場をかえてみても、やはり自分の同志が優先してくる。有識者にしろあるいは大臣にしろ優先してくる。だから政治の公平が保たれない、ほんとうの運営ができ得ない、むしろ国の運命を決する、われわれ国民の仕合せを不幸にするか不幸にしないかの大きな問題を、この国防の名においてかついでおる。従ってそういう同志的な結合あるいは政党的な結合、一つの派に偏するようなそういう国防会議は、これはファッショになるおそれがあるということは多くの人々の指摘するところです。ですから、ファッショにならない公平な立場に立つ、しかも国内のいろいろな暴動が起きた場合は、その暴動の根本原因はどこにあるか、政治の貧困だとみずからを自省するような人があればよい、しかしそれを不逞のやからとして指揮権を発動して自衛隊を出動せしむるようなことがあると、逆にこれは暴力革命の原因を作っていく、だから、私たちはそういうことを考えると、むしろ国防会議は閣僚を入れる、あるいは自分指名する協力者を入れるということではなくして、公平な立場において国民会議を持つなり、あるいは議会との重要な立場を検討し、その上に立って行うべきでありまして、われわれは二度と東条内閣の当時のあの独裁政治の轍を踏みたくない、従って、われわれはこの国防会議に、こういう閣僚を羅列してありますれども、また有識者が、これも総理大臣の任命になっておりますけれども、これはファッショにいくおそれがあるとして絶対私たちは反対する。もちろん自衛隊その他には反対しておりますが、なおこれがもし通るとすれば、これはあなたのようなごりっぱな方で、よく人間の心理をつかんで、いろいろな立場に立ってものを考える方ならいい、しかし誤まれるいわゆる独裁者があなたの次に生れたときは一体どうするのか、この法案はあなただけが使用するのではない、先ほどくどく言ったように、あなたが使用するのではなくして、後世に——あるいは変えられるかもしれませんが、ある程度の歴史的の役割を果すのだ、日本の運命の歴史的なものを果すのだ、そういうことを考えると、いわゆる同志的な結合、一党一派に偏したようなそういう国防会議を作るということは、まさに独裁政治への前提としてわれわれは反対しなければなりません。その点についてどのようなお考えでございましょうか。
  147. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議について、そういう危険が生ずるようなおそれがあれば、任期は三年でありますし、三年ごとに国会の承認によって新しい人にかわるのでありまするから、どうかそういう危険のないようにみんなで協力して人選していきたいと考えます。
  148. 杉原荒太

    杉原国務大臣 先ほどからおっしゃいますように、国防会議にかけます事柄は、いずれもが事国家国民の運命に関するような重大なことばかりでございます。そうしてまたこれは各政府部門の職務の上からいたしましても、ただある一省だけで専管的にやれるような事柄でなく、いずれの省も非常に関係の深いものでございます。そうしてこれは単に防衛庁限りの見地から見ただけじゃなく外交の面、経済、財政の面、その他国内政治一般から見ましても、そういう角度から十分検討をして誤まりのないようにやっていかなければならぬことばかりであります。そうしてこれらにつきましては結局内閣責任を持って処理していかなければならぬ。そうして内閣責任制はどこまでも貫いていかなくちゃならぬことでございますが、こういう重要なことでございますから、もちろん内閣責任を持ちますけれども、しかし内閣として決定をいたします前に、慎重の上にも慎重を期する、大所高所から判断して、国の運命の進路を誤まらないように期したい、そういう趣旨から実はここに諮って、しかる後に内閣として責任を持って決定する、そういう趣旨でございます。従いまして、その構成の人員等の人選につきましても、そういう見地からいたしましてきわめて慎重にしなくちゃならぬ、そうして国務大臣以外の人選等も、その趣旨からいたしまして国会の御承認も得ることを条件にし、そういう趣旨からできておるのでございまして、これは御心配のようなことのないようにというのが実はこの法案の趣旨でございます。それから、鳩山総理は三カ年間の任期だと言っている。とんでもない話で、今日の三カ年は非常な変遷がある、今日平和である国際的な姿が、一年後においてどう変貌していくのか、あるいは二年後においてどう変貌していくのか、これはわからない。そういうことを考えるときに、あなたは、今日この国会でこの法案を通してもらう、それでいいでしょう。そうしてまた打倒鳩山内閣の声にかかって新しい総理大臣が生れる場合は、もしも自分の作ったこの法案によって、そのときの大臣が出動権を発動する、国際紛争の中に介入する、そうしたあやまちを犯した場合においては、あなたは自分のうちにあって自分の作った法案に責められる日が来るでございましょう。従ってわれわれはあなた自身の生涯を考えるとともに、われわれお互いの子孫の繁栄を考えるときに、これはただ単に国会を通せばいい、任期が三年だからまあ三年間がまんして下さいということによって解決する問題ではございません。やはりあくまでも日本的な立場に立って——時代が激しい勢いで変遷しておる今日、あるいはまた原水爆によるいろいろな問題が論及されておる今日、甘い考え方国防会議を決するなどということはもってのほかであります。その意味におきまして、この国防会議はぜひともそういう輿論の上に立ってやるべきである、今日この提案は撤回していただきたい、かよう考える次第であります。
  149. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 三年という意味は、三年で交代するということとともに、三年間身分を保障して公正峻厳なる態度をとってもらい得るものと思って、三年の任期をきめたのであります。識見ある練達の人を集めることによって、御心配のようなことは起らないものと考えておる次第であります。この法案は御心配のようなことの起きないようにする目的を持つ最善の案だと思って出したわけでありますから、撤回する意思はただいま持っておりません。あなたの御心配のないようにするいい方法があるのならばどうか御自由に御修正をお願いいたしたいと思います。
  150. 下川儀太郎

    ○下川委員 幾らやってもどうものれんに腕押しで、自分だけの信念でものを言っておられる。しかし事国防に関すること、あるいは民族と興廃に関することでございますから、任期を三年にするとか、あるいはメンバーを提案通りにするとかいう考え方については、おそらく私の言っていることが国民的な世論だと思う。それをあなたは撤回しない。あくまでも自説を曲げずにこれを通そうとする意思は、逆に考えると、あなたの持っておる考えをこの国防会議と連関して果そうとする。そういう野望的な考えと私は思います。これでは国民の代表として、あるいはせっかく総理大臣になっても、国防会議という重大な問題を自分のなれ合いの一つの諮問機関とし、今後の日本の恐怖を排除するという考え方のない、ただ自分だけの、いわば鳩山内閣考え方をこの国会機会にただ単に表明したにすぎない、ほんとうの立場防衛ということを考えておらないと思う。この点につきましてはいろいろと時間がかかりますから次に譲りますが、ただこの際私がもう一点お聞きしておきたいことは、自衛々々、防衛々々といつも言っておりますが、防衛というものは単に軍事力によってつちかうものではないと私は思う。これは文化的な素養の持ち主である博学な鳩山さんはおそらくよくおわかりのことと思いますが、こうした暴力的な一つの傾向は常に排除すべきである。防衛一つの軍事的な行動、軍事的な組織の中によって解決するということは野蛮人のやることなのです。それに先行するものはむしろ政治であり経済であり文化であるはずであります。ほんとうの防衛というものはやはり政治、経済、文化によって解決する、これをはぐくむことが最高の防衛の方針でなければならない。防衛自衛というと常に軍隊だけのことを考え、兵隊の人数だけのことを考え、科学兵器のことを考える、それはやはり野蛮人の持つ思想なのです。やはり政治的な解決、あるいは経済、文化による解決を先行しなければならぬ。これは国内的においてもそうです。国内的にも、もし暴動を起した場合は自衛隊が出動できることになっておるけれども、しかしその暴動の原因あるいは騒擾の原因は、生活の貧困から来る、ひいて言うと政治の貧困から来る。だから政治、経済、文化、これが最大の防衛でなければならぬ。その防衛を省いておって、ただ単に軍事力の養成によって防衛的な手段をとろうとする鳩山内閣考え方は、野蛮人にもひとしいと私は思う。これに対する御見解を承わりたい。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛が武力によってのみ守られるというその誤まりについては、あなたのおっしゃる通り正しいと思います。あるいは経済力、あるいは政治力、これによって日本の国を防衛するということはまことに必要だと思います。先日百何十名か日本に来ましたMRAのごとき、道徳の振興によって国を防衛するというやり方も考えなくてはならない問題だと思います。そういうことと並行して、やはり今日の時代は武力による平和なんですから、武力を全くないがしろにして日本の国が守れるというわけには参りませんから、武力によって日本防衛することを考えると同時に、政治の貧困を正し、あるいは文化の向上をはかり、あるいは経済の安定をはかり、あるいは道徳の刷新をはかり、そして戦争状態の起きないように、世界の平和か維持せられるように努めなければならないというあなたの御意見に対しては、全く同感であります。
  152. 下川儀太郎

    ○下川委員 最後に一言言わしていただきますが、今の答弁は非常に不可解であります。いわゆる防衛という問題、これは防衛の相手をまず考える。それは当然国際的な情勢が当面させる問題でございますが、そういう国際的な情勢を一体鳩山内閣はどのように処理しておるか、あるいは戦後の吉田内閣あるいはまた鳩山内閣、これらの人々は、ただ単に再軍備する、あるいは自衛隊を作る、あるいは武装する、そういうことによって日本の安全を保つ、あるいは日本の独立を守る、民族を守るという考え方しか持っておらない。ところが防衛するには当然相手国があるはずなんです。国内の治安などは警察力でたくさんだ。ただ守るには相手国があるはずなんです。その相手国は一体どこの国なのか、一体だれが侵略ようとするのか、また侵略されてきても、五十万、百万の軍隊をもってしても、いわゆる対等の立場に立つ原水爆を持たなければ、打ちのめされることは当然だ。たとい日米安保条約がありとしても、アメリカ人は撤退すれば済むでしょうけれども、残された、いわゆる戦場化された日本というものは爆撃されっぱなしだ。廃墟になってしまう。だから防衛ということは火中のクリを拾わないことである。軍隊をたくさん作ったって、われわれは敗れることはわかっておる。またアメリカとソ連がかりに戦いをいどむにしても、その渦中から避けることが今日の政治家の任務でなければならぬ。吉田内閣によって安保条約、行政協定あるいはMSA協定が作られた。全くのひもつきになっている、だから真の防衛日本の独立から出発する、その独立の前提はアメリカとのそのようなひもを断ち切ることなんだ、そして自主中立の立場に立つ政治経済外交をやるべきだ、私たちはかく主張している。そういう点鳩山さんはどのようにお考えになっているのか、この点を最後にお聞きしまして私の質問を終ります。はしない、それですからソ連や中共とも国際友好関係を結んで、そして世界の戦争を避くるように努むべきだ、武力も持つけれども、しかし友好関係はますます深厚にして、そして世界の平和を維持したいという考え方を私はしておるのであります。
  153. 下川儀太郎

    ○下川委員 まだ質問がたくさんございますが、同僚議員に譲りまして失礼いたします。
  154. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 鈴木義男君。
  155. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 だいぶ総理お疲れのようでありますから、できるだけ質問を簡潔にやるように努力いたします。そこで私は下川君の最後の質問を受けてそれを出発点にしてお尋ねしていきたいのであります。それは自衛隊といい、国防会議といい、国防を論ずることでありますから、国防を論ずる以上は、たとい具体的には言えなくとも、抽象的に外敵を考えなければならぬ。間接侵略は問題ではありません。最初警察予備隊を置くときでも、われわれもある程度間接侵略のあることは予想し、警察力を充実しなければならぬということに対しては賛成したけれども、当時の情勢において日本の国をどの国にせよ領土的に侵略ようというような国があろうとは断じて思えないということで、この憲法を作るときにも、もしそういうような不合理なことをやる国があるならば、世界の世論は黙って見ておらないであろうというところから御承知のように今の憲法ができたわけであります。私も憲法審議に参与し、私が第九条の条文の言葉を一部修正いたしているような次第であります。しかるにその後国際情勢が変化したからこの憲法はよろしくないというよう意見が聞えてくるわけであります。一体総理日本の国がどういう方面から危ういというふうにお考えになるのであるか。具体的な国を述べることができないまでも、今世界がアメリカあるいは共産圏との間に対立を来たしていることは顕著な事実でありますが、日本がそのいずれかの片棒をかつぐのでなければ、日本が危ういということはちょっと考えられない。しいて火中のクリを拾うという立場に立つがゆえに危うくなるのであります。共産主義は日本領土的に侵略ようというものでないことは、共産主義を理解したならばわかりそうなものだと思う。ただ南樺太あるいは千島のようなものは返さない、なぜ返さないか、後日日本が共産化するときの贈りものにしようというような含みまで一部には推測されるぐらいで、とにかくそういう意味においてイデオロギーの問題を今までの軍国主義的考えで戦っていこうとしているところに大きな国費の冗費があるのではないか、自衛隊日本ような貧乏な国としては厖大な予算を費しております。無用の長物を作るということについてはよほど考えなければならぬ。これが根本問題であろうと存じます。そういう見地から日本はどういう点を警戒すべきであるか、総理はどういうお考えであるか承りたいのであります。
  156. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本に仮想の敵国があるというようなことは考えておりません。ただ現在の世界の平和というものは、やはり武力をおのおのの国が持っていることによって維持できていると思う。そうして現在の平和というものは、国連の方針によって集団安全保障の形において維持されていくべきものと思うのであります。集団安全保障の一員として平和に貢献するためには、日本自分の国を守るだけの準備はやはり日本国家の義務だと考えております。
  157. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 この内閣委員会で公述人として前の陸軍中将遠藤三郎氏を招聘して御意見を承わったことがあるのであります。速記録にも残っているのでありますが、遠藤氏の御意見によると、今日作っているよう自衛隊、保安隊というようなものはいざという場合には大した役に立たない、そういう言葉を使ったかどうか今記憶しておりませんが、聞いておった印象からいえば、いわばおもちゃの兵隊を養っているようなものだ、もし近代的なほんとうに役に立つものを作るなら考えなければならぬということを述べられた。長く軍隊で生活いたしておったその方面の知識のある方が申すことでありますから、十分傾聴に値する。そういうものをもし養っているとすれば、これは国費の浪費である。そういう意味において総理はこれは十分に役に立つ存在であるとお考えになっておられるか。
  158. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊もだんだんと改良せられていきまして、今日においては役に立つ兵力だと考えております。
  159. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 そこで自衛隊軍隊かどうかということが先ほど非常に詳しく論ぜられたわけでありますが、私もこれを繰り返して言いたくはないが、遺憾ながらこの問題は憲法違反であるかどうかということにかかるのであります。自衛隊憲法違反ならば、その自衛隊を動かすための国防会議というものを設けることは、さらに二重の憲法違反になるわけであります。憲法違反であるかないかということで絶えず議論を繰り返すのでありますが、結局今の国会では数で決している。しかしいかに多数で決しても違法は違法でありますから、われわれは服するわけにいかない。そこで何とかこれを解決するために憲法裁判所を作って、裁判所の判断に訴えようではないかというような一部の動きが出てきているような次第であります。私はあまりむやみに国会においてお互いに決定したことを裁判所に持ち込んで判断を求めるということには賛成いたしません。ある種類のものについては賛成いたしますけれども、そういうことになるのは人情の自然である。しかし国会においてやったことは、国会の中で幾たびでも繰り返して論議を尽していく間に、おのずから勝敗を決することにもなるのでありますから、今われわれは少数でありますけれども、議論だけは国会議員の義務として尽しておかなければならぬ、こう信じますがゆえに、たびたび繰り返した議論でありますが、簡潔に繰り返しておきたいと思うのであります。自由党の議員の方から御議論がありまして、われわれが吉田総理質問したようなことを、また自由党の方から鳩山総理に御質問になっておる。何かちょっと不思議な感じがいたすのでありますが、われわれは、自衛隊軍隊と言ってよろしいということを鳩山総理が率直に言われた、いろいろの機会に言われたようでありますが、これはまことに正直なよい態度であると思っておったのであります。もし前の吉田総理に比して鳩山総理によいところがあるとすれば、この正直であるというところであると思うのでありまして、幾らか横着でないというところを私どもは買っておったつもりであります。ところがだんだんまた逆戻りをして参ったようで、残念に存ずるのであります。どこから見ても、原水爆を持たないだけで、あらゆる装備と訓練と武器とを持っておるのでありますから、自衛隊というものは、世界的常識から見て軍隊である。もっと不完全な軍隊を持っておる国もたくさんあるように存ずるのであります。いま一度確かめますが、軍隊と言ってよろしいかどうか。るのでありますから、これを軍隊でないと言うのも少し無理があるので、軍隊と言っても差しつかえないと思います。
  160. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 その答弁はまことにけっこうであると思います。そこで憲法第九条の解釈になるのでありますが、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」陸海空軍は当然保持しない。その他の戦力というものはそれ以下のものをさしておる。陸海空軍は今日あらゆる戦力を代表しておるものであります。要するに、一切の戦力を保持しないということを意味するのであって、戦力などを、原水爆がなければ戦力でないとか、いろいろ三百代言的なへ理屈を言うものがありますが、これは適用する議論ではないのであります。もっとも、マッカーサー司令郡から参った最初の原案というものは、国家の主権的権利としての戦争は放棄する、この主権的権利というのは静的な概念であって、国家意思が発動されて動く状態にあるときには、国権——スターツゲワルトというのが普通の用例であるから、国権の発動たる戦争を放棄するというふうに私が直したわけでありますが、日本は、紛争解決のための手段としての戦争及び自已の安全を保持するための手段としての、自衛のための手段としてのそれをも放棄する。日本はその防衛と保護を今や世界を動かしつつある崇高な理想にゆだねる、こういうふうになっておったのであります。すなわち自衛のための戦力も一切放棄する。そして当時の世界を動かしておる正義の観念と集団安全保障に託する、こういうつもりでおったのであります。そして現にそれを作るときの吉田総理のごときも、国会の本会議において、われわれの質問に対して堂々と、自衛のためと称して常に侵略戦争が行われてきたのである、ゆえに今後は、自衛のためといえども軍隊を持ち戦争をすることは断じて許さないのである、万一の場合には世界の世論日本を守ってくれるであろう、そういうふうに説明しております。これは速記録に残っておる。それがいけないということで軍隊を持つというのであれば、その立場は違いますけれども、この憲法改正してかかることが良心的であり、正しい態度であることは何人も異論はなかろうと思います。学校の先生など一番困っております。憲法の説明を聞かせる場合軍隊まがいのものが今日本にあるのをどう説明していいか、実に困っておるのであります。でありますから、われわれはどうしてもこれに賛成できませんけれども、やるならば憲法改正してからやるべき仕事である、かよう考えておるわけです。その点について、鳩山総理在野時代に言われたことは大へん男らしいりっぱな言葉であると思っておったところが、どうも非常に言葉を濁されておることは遺憾に存ずるのでありますが、その点についていま一度総理の真意を確かめたいのであります。
  161. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 鈴木君のおっしゃるように、マッカーサーの意向として、自衛のためにも軍隊を持ってはいけない、兵力を持ってはいけないという考え方憲法を作ったということについては、私もそういうふうに聞いております。マッカーサーは、日本自衛のためにも兵力を持ってはいけないというような気分でいたことは私も承知しております。しかしながら、マッカーサーのその気持というものは、今日の憲法には適用しないという考え方なんです。マッカーサーはそういうつもりで日本憲法を作ったのであろうが、その後自衛隊法ができ、その後の日本の世の常識というものは、自衛のためならば兵力をもってよいというように変った。それですから、私は最初はマッカーサーの意思がそこにあり、日本は全くいかなる名目をもってしても兵力を持ってはいけないという趣旨で作られたということを聞かされておるものですから、憲法改正の必要を力説しておったのであります。しかしながら、マッカーサーがそういう意思でこしらえたものはそうであったにしろ、自衛のためには兵力を持つのが当然だという考え方が支配的になったので、私も自分考え方を変更いたしまして、自衛のためならば兵力を持ってもよいということに変ったのであります。
  162. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それはマッカーサーがどう言ったかということは問題ではありません。日本憲法ができて客観的に存在する以上は、平明な解釈として論じなければならぬ問題であろうと思いますから、歴史的にただ言っただけのことでありますが、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」これはだれが読んだってほかに解釈のしようがないことです。それを、自衛のためならば原水爆を除くあらゆる武器を持った軍隊まがいのものを持ってもよろしいというようなことは詭弁にすぎない。ですから総理の以前の憲法改正をしてやるべしという議論が正しいのであります。それにわれわれは敬意を表しておったところが、やはり憲法改正しないでもやってよろしいということを言われるようになった。これでは前の、われわれが盛んに攻撃した吉田内閣とどこも違わないということになってくる。これでは総理のためにもはなはだ遺憾に存じますので、その点を申し上げるわけであります。これはどう考えても、総理憲法改正論と改正しなくとも着々自衛隊を作り、国防会議を作ってもよろしいという議論は、二者択一であるので両立しない。われわれの最も遺憾とするのは、歴代政府が白昼公然この憲法をじゅうりんして意としないことであります。これくらい国民道義を乱すものはないと思う。憲法調査会を作るということも議に上っておるようでありまして、近く提案されるということであります。この最大目的はここにあるんじゃないかと思うのであります。先ほど自由党の方の質問に対して、何か顧みて他を言うような御答弁があったのでありますが、その点をいま一度確かめておきたいのであります。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第九条を明瞭に自衛のためならば兵力を持ってもいいというように、憲法改正する必要はあると今日も思っております。
  164. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 そこで国防会議に移りますが、この国防会議は、その目的を拝見しますと、元の軍の編成、組織、それから防衛出動と称する用兵、作戦とまで言うのは言い過ぎるかもしれませんから申しませんが、少くも兵を動かすということを審議する機関のようでありまして、ある意味では陸海空軍省と参謀本部と軍令部とを兼ねたような、その最高機能を営むものになるおそれがあるのであります。そういうふうに解釈して差しつかえないでありましょうか。
  165. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は国防会議は諮問機関ですから、御心配のような結果にはならないと思います。
  166. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 しかし諮問機関であると仰せられますが、実際問題としては国会にこの問題を承認を求める前におそらく付議するであろうと思う。防衛出動の可否というのは、われわれの立場から言うならば、こういう重大なことは国会審議に必ず付するということになっております。しかるに屋上屋を架するように、しかも民間人も入れて——閣僚だけが全責任を持って決するというなら、これもまた国会に対して責任を負うのであります。われわれの方からは弾劾することもできるし、責任の所在は明確になりますが、そうでなくして民間人も入れた一種の最高顧問会議ようなものに諮問する。諮問はしても実際に結論が出ました場合には、ほとんどこれは尊重することは当然要請されるものでありますから、決議機関と同じようなものになるのであります。おそらくその議に反した行動をとるということは、その議長たる総理大臣において不可能であろうと思うのであります。私は諮問機関であるということをもってこれを軽く見ることは断じてできないと思うのであります。その点はいかがでありますか。効果があるということには言えないと思います。
  167. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 これはあまり法律家的お答えでありまして、法律上の拘束力があるとは私も思いませんが、事実上においてその決定に対して反対するような行動をとることは、総理といえどもできないということはまず断言してさしつかえないと思うのであります。それならば進んでお伺いしますが、何がゆえに民間の議員を加えることを必要とするのでありますか。イギリスやアメリカなどの国防会議あるいは類似の機関を見ましても、民間人というようなものに入れておらない。それぞれ政府部内における責任ある者がその任について、責任の帰着点をきわめて明らかにしておるようであります。わが国防会議において特に民間人を入れるということは、どういう必要を感じておられる結果でありますか。
  168. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在においては民間の識見ある練達の人を集めた方が私はよき結果を得ると思ってやっております。
  169. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それは民間のいろいろな専門家意見を徴することは、徴し方によっては必要でもあり、けっこうでもありましょう。けれども国防会議という、先ほど申したように、いわば陸海空軍省あるいは参謀本部、そういう役割を務めるようなものに民間の人を入れるということは、これはよほど問題が重大でありまして、単に知識を借りるという問題じゃない。もし知識を借りるだけならば、顧問としてあるいは参与として、あるいは専門の嘱託としていろいろの形で民間の専門家の知識を利用することができるはずであります。また統合幕僚会議であるとか議長であるとか、そういう者もこの会議に招致して意見を徴することができるようになっておるのであります。そうでなくして、これはこの決定に対して責任を分担すべき大切な役割を務めるところの閣僚と対等の立場に立つ議員であります。これがもし不適当な防衛出動をした、これに対して国会は承認を与えないというようなときには、当然責任問題が起ってくるのです。閣僚はその責任に対して辞職をすることができ、また辞職すべきでありましょうが、その民間人は何ら国会に対してそういう責任を負うべき立場にはないわけで、こういうわけで責任不明確な存在をここに入れることは、百害あって一利ないのではないかと思うわけでありますが、いかがでありますか。
  170. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。この国防会議構成員といたしまして、いわゆる民間人を入れることの可否につきましては、これはいろいろと御意見があることは当然だと思いまして、私どももこの点につきましては非常に慎重に検討をしたのであります。御承知の通り、昨年のいわゆる三党折衝の結果、いわゆる民間人を若干入れるということが話し合いになっておりまして、今度もそれを骨子にいたしまして作っておるわけでございます。そのできました趣旨は、この事国防に関する非常に重要なことをやることであるから、なるべく大所高所、広い視野から見て、いろいろの角度から見た意見をそこへ出したい、こういうことがおそらく民間人を若干名加えるということの趣旨じゃなかったかと思います。しかしそれにいたしましても、今御指摘の通り、これは実際上非常に重要なことであるものでございますし、その人選等につきましては私特別に慎重を期さなければならぬ事柄であろうと存じております。それから今おっしゃいますようにこれは諮問機関ではございますけれども、それぞれ実際上非常な責任を持っている。諮問を受けたのに対する答申も、みんな非常な責任を感じてやるべきことに違いございません。政治上の責任につきましては、これはあくまでも内閣が全責任を負ってやる、こういう建前でできておる次第でございます。
  171. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それならば具体的に承わりますが、かりにこの国防会議において不適当な防衛出動を決定した、その結果総理大臣が出動を命じ、国会がこれを承認しなかったというときには、国防会議はどういう責任をとりますか。何らの責任もとらないつもりでありましょうか。
  172. 杉原荒太

    杉原国務大臣 全責任内閣がとるわけでございます。
  173. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それだから私は責任の所在がはなはだ不明確であるということを申すのであります。内閣が全責任をとるならば、何ゆえに民間人をそこに入れるのであるか。入れておきながら、実は責任だけはおれの方でとるといって、暗黙のうちに、実はこれには民間人のアドバイスが入っているのである、われわれだけでやったのではないと、そこに一種の責任をのがれようとする——従来諮問機関というものはそういうことに利用されたのでありますが、国防会議などがそういうことに利用されることになっては、さたの限りであると思うのでありまして、その点についてはわれわれはとうてい納得できないのであります。そこで民間のいろいろな知識を利用しようと仰せられるのでありますが、今予定されているのは、閣僚と同数の委員ということでありますから、わずか五人のようであります。わずか五人ばかりの者で、あらゆる方面の知識なり職能なりを代表して入れることはできないはずでありますから、やはりこれは非常に片寄ったものになるか、少くとも一つの特権的な地位になるわけでありまして、この人選というものは実にむずかしいと信ずるのでありますが、一体どういう基準をもって人選される構想を持っておられるのであるか、総理大臣に承わりたいと思います。ただ練達堪能一点ばりではちょっと困る。もう少し具体的にどういう人選の構想を持っておられるか。
  174. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま全く白紙でありまして、良識ある練達の士という以外には条件はないのであります。たとえば旧軍人であるとかいうようなことを考えておりません。全く白紙で、良識ある練達の人を選びたいと考えております。
  175. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 これは全く白紙でありますというのはどうも驚くべき答えでありまして、大体こういう構想を持っておりますというくらいのことは言えなければならぬ。これがもし通過したならば間もなく実施されるわけでありまして、そのときになってから考えるということは、無責任な話であります。少くも旧軍人というようなものの代表をお入れになるつもりであるか、それを一つ承わりたい。
  176. 杉原荒太

    杉原国務大臣 国防会議の趣旨からいたしまして、ある特定の部門の専門的知識を持っておるとか、専門家というようなことではなくて、もっと広い視野からものが見られる、もっぱらそういう点を重点にして考えるべきだと思っております。
  177. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 われわれもそういうふうに観察をしておるわけでありますが、しからば統合幕僚会議というものがある。これは元の制度でいうと参謀本部みたいなものじゃないかと思うのですが、これとどういうふうな区別関係にあるか、御説明願いたいと思います。
  178. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。統合幕僚会議は、御承知の通り防衛庁にございまして、防衛庁長官を補佐する機関でございます。そしてこの統合幕僚会議で議しましたことは、意見が一致しました場合も、しません場合も、長官のところに報告いたしまして、決定すべき事項につきましては、長官がこれを防衛庁として決定するわけでございます。その統合幕僚会議意見が、そのまますぐ総理大臣に行くということはございません。そういう次第でございます。うに誤解されるのも恐縮でありますから——あくまでわれわれは国防会議というものには反対でありますが、国会議員として審議を尽すことが義務であると考えて、一応論ずべきものを論じておる次第であります。そこで防衛出動ということを一つ問題にしたいのでありますが、一体防衛出動とはどういうことを意味するのでありますか。
  179. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。いわゆる防衛出動と申しますのは、御承知の通り法律で厳格にその要件等がきまっておるわけでございます。「外部からの武力攻撃に際し」とあります。もっと精密に申しますと、「武力攻撃のおそれある場合を含む」というふうに法律はなっておりますが、「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要がある」と総理大臣が認めます場合には、国会の御承認を得て、自衛隊の全部または一部に対して出動を命ずることができる。これが基本のわけでございます。そのあとに、先ほどからいろいろ御指摘がございましたが、特に緊急の場合には国会の承認を得ないで、出動を命じた後直ちに国会の議に付する。そうして不承認の議決があった場合には直ちに自衛隊の撤収を命じなければならぬ、こういうことに相なっておることは御承知の通りでございます。そのあとの緊急と申します場合、これは法の精神からいたしまして、武力攻撃があり、あるいはほとんどそれに近い、ほんとうにやむを得ないものというように特に緊急ということを厳密に解釈すべきものと思います。防衛出動の意義というものはそういう要件を備えておらなければならないと思います。
  180. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 そうすると、間接侵略、内乱のようなものはこの中に入らないと解してよろしいですか。
  181. 杉原荒太

    杉原国務大臣 その場合は次の七十八条の、いわゆる治安出動に該当するわけであります。
  182. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 治安出動は防衛出動には入らない、こういうわけでありますか。
  183. 杉原荒太

    杉原国務大臣 俗に言うところの防衛出動には入らない、それは厳格に区別して規定してるわけであります。
  184. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 そこで防衛出動は重大なことであるわけでありますが、これに対してかつてのあやまちを犯さないために、新しい制度においては国会の事前承認——原則は事前である、事前承認を得ることを要する。これでいわゆる東条大将の専断というようなものが防げるわけでありますが、これをわれわれは非常に重大に考える。たといこれに反対する勢力が少数であっても、国論を動かすだけの力はあり得るのであります。国会において数の表決で負けても、国論を動かすことができる。それでありますから国会の承認、承諾ということは非常に大事だと思うのであります。しかるにここに国防会議なるものが現われて、そうしてこれに諮ったから国会の承認はあとでもいい、必ずそういうことになる傾向を持つと私は信ずるのであります。それに諮って出動をしておいて、国会には事後に承認を求める。それで承認を得られないような場合が生ずるなら事は非常に重大であります。そして責任問題もきわめて重大であるが、さて民間から出ておる議員には責任をとらせるべき道はない。内閣が全責任を負う。内閣は辞職するかもしれないが、議員は辞職しないで済むわけです。自発的に辞職する者があるかないかは別問題です。こういうことでありますから、これは非常に重大な問題であると私は思うのでありますが、一体この国会の承認と国防会議の諮問とをどういう関係に置くつもりであるか、承わりたい。
  185. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。防衛出動というのは非常に重大なことでございますから、それにつきましては国会の承認を得るということが大原則であります。これは運用におきましてもその点を根本にしてやっていかなければならぬと思います。そして国会の御承認を得ます前に総理大臣が、今申しましたような、わが国を防衛するために必要があるという認定をします際に、その認定をしてさらに慎重にする。その前に国防会議に諮ってそこの認定を慎重にするというのが趣旨だと私は思います。決してそれがために国会の御承認を得るという方をおろそかにするということはない、そういう趣旨でございます。
  186. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 杉原国務大臣はそう答えられますが、実際の運用の上において必ず私が心配するようなことが起るということを予言して、その点を一つ大いに考え直していただかなければならぬと存ずるのであります。そこで次に国防会議事務局の構成についてはどういうふうなお考えであるのか。まだ案も出ておらないようでありますが、これは非常に重大だと思う。ある意味においては国防会議そのものにもまさって重大じゃないかと思うのです。陸海空軍省と参謀本部、軍令部、航空司令部を兼ねたようなものに将来成長する可能性を持っておるものではないかと思うのでありまして、これが再びわが国が大軍隊を持つことになる一つのきざしであるということを心配するわけでありまして、国防会議事務局をどういうふうな構想を持ってお考えになっておるか、承わりたいと思います。
  187. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。事務局の問題も慎重に考えてみました。そうして昨年いわゆる三党折衝の際にもこの事務局の問題についていろいろと検討の結果、案ができておるわけでございますけれども、今政府として考えておりますことは、事務局につきましては専任の者は若干名置かなければならぬと思うので、今の内閣官房の者を現在の定員、予算の範囲内でそれに充てたい。それに関係省の者を若干持っていく。そういうふうに考えておる次第でございます。そしてこの事務局の人事運用ということは、私は非常に大事なことだと思います。事務局についてはいろいろ御意見があることも承知いたしております。事務局は申すまでもなく国防会議という諮問機関の事務をやるところでございますが、国防会議が諮問を受けました事項について議員がいろいろと意見を言うためには、いろんな資料がなければならぬ。そしてそれは非常にりっぱなものでなければならぬ。そういう資料を集めるということは、もちろん事務局の重要な仕事だろうと思います。ただ事務局自体が独自の意見を持って行動するというような性格を持つべきものじゃないと私は考えます。
  188. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それはその通りでありますが、実際は事務局が国防会議をリードするということをわれわれはおそれるのです。実際に練達堪能の士であるかもしれないが、いわゆる軍事専門家でなかったり、あるいはある特殊の知識を持っておらない場合には、この事務局の構成があるいは旧軍人であったり、あるいは特殊の専門家であったりいたしますと、そういう者が案を作って国防会議に出す、そうするとうのみにするということは、われわれはいろいろの会議において現に見ており、また体験しておるところでありまして、普通の産業会議とか経済会議等でそういうことがありましても弊害は少いかもしれないが、国防会議などにそういうふうなことがあったならば容易ならぬことであると思うので、事務局の構成、及び事務局がこの国防会議にいかなる役割を務めるかということについては、政府としてもっと明確な構想をお示しになる必要があると信ずるのであります。その点をもう少し詳細に述べていただきたい。資料は提供いたしましょうが、その資料の収集、整理をして議員の参考に資する、そういうことが非常に重要なことであろうと私は考えております。
  189. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 なるたけ質問を簡潔にしたいと努力するのでありますが、この国防会議構成する者がいわゆる民間の有力者であって、しかもそのうちには国防産業の基礎構造というようなものをこの会議で決定するということがうたわれておる。この一つだけを考えても事は非常に重大だと思うのでありまして、将来日本の産業経済をある種の軍需工業の要請に持っていき、あるいはアメリカの要請に応じて日本の産業構造をリードしていくというようなことが行われまするならば、これは実に国家の前途に憂うべき重大な問題を蔵しておると信ずるのでありまして、われわれはこの国防会議構成について総理大臣あるいは国務大臣のもっとはっきりした、責任ある構想を承わらなければ実は賛成とも反対とも言えないのですが、いわんや反対するにしても明確な反対をすることができない。そういうあいまいな提案をされて、そうしてただこれを審議せよ、これに賛成せよということは、はなはだ無責任政府態度であるということを警告を発しまして、私の質問を一応終っておきたいと思います。—————————————
  190. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 この際お諮りいたします。去る六月三日三浦一雄君委員辞任につき理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、これを委員長より指名いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  191. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 御異議なければさよう決します。床次徳二君を理事指名いたします。本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後四時五十一分散会