○三田村
委員 今
齋藤長官もお述べになりましたが、前段の理由は、これは一応権威のある御所見と思いますが、しかしこれにも別な角度からの意見が成り立つのであります。つまり別段これを必要とする用途がないという御見解は、全く事務的な御見解でありまして、用途のないものならば一年に三十万丁も生産されやしないし、売れやしない。これは多少便利であるという商品価値がなければ商品になりませんから、
業者といたしましてはどういうものがみなの興味を引くか、便利であるかを考える。若い娘さんがきれいな荒物を着てお化粧すると同様に、商品というものについてはいろいろな意匠も要る、工夫も要る。業務に携わる者の切磋琢磨であり、努力でありますから、そういう方向に行くのであります。事務的に見て、これは別段必要とする用途がないという御見解は、私はちょっと了承しがたいのであります。もちろん今
齋藤長官のおっしゃった凶悪な犯罪に非常な魅力を感ずる、ことに不良青少年の間にこれが愛用されるということは、私もその通り承知しておりますから、その点はあくまでも押えたいと思います。けれども、これが別に善意に解する用途はないのだという御見解のもとに立案されるなら、私は少々そのお考えは間違いじゃないかと思います。世の中には、それならこれは善意の上においてどういう用途があるのか、きれいな衣服の上にきれいな意匠をこらすのは、どういう用途があるのかと一々言ってもちょっと
説明に困る業種があると同じことでありまして、明治の初年に特許の
許可を得て今までやらなかったということは、
業者の立場やその社会環境あるいは
業態の面から見て採算がとれず、商売にならなかったのかもしれません。
長官の言われた
ように、戦後の混乱に乗じということがありますが、当時に比べて、敗戦から今日までの
状態はすべての面に新しいものが入ってきた、その中においてナイフを作っている者も新しい工夫をするということは、当然であろうと思うのでありまして、そのことのゆえに需要がふえてきておる。そのことのゆえに生業が成り立っていくのであります。その点は一つお考え願いたいと思います。
それから不良少年や不良青年が凶悪な犯罪に使うからということでありますが、これはだれかの
言葉ではありませんが、一切の社会的欠陥はことごとく政治家の怠慢と無責任によるという
言葉がある通り、こういう不良少年の存在とか凶悪犯の存在ということは、他の
方法において是正しなければならぬ問題でありまして、今
防犯課長の御
説明になりました
ような、それが直ちに犯罪の用に供せられることが、あまりにも顕著なものについては私も禁止もとより賛成でありますが、すべてのものを立法の
対象にして、これを不良青少年凶悪犯罪の防止のための手段にするということは、
そのもののみを抜き出したところの
警察的処置でありまして、私はもっと大きな問題が他にあるということを考えたいのであります。立法の例から申しますと、ここにあります
ように二十七年の警視庁の統計を見ますと、飛び出しナイフが寮二十二件、包丁が二百九件、飛び出しナイフで人殺しをやり脅迫をやる、これは一つ手当をしなければならぬということになると、その次に包丁をやろうじゃないかという理論も成り立つのであります。金づちで人の頭をたたく、あれも凶器だという論理も成り立つのであります。そういう論理が拡大していくと非常に困ると思います。これは立法の先例になるのですから私は申し上げる。しかし
必要性は認めますから、必要の度合いと全体の社会環境をにらみ合せたその中のあるべき姿というものを冷静に判断いたしまして、もとより悪の全部を一片の
法律でぬぐい去ることは不可能であります。その点においてある限界というところまで持っていって、どこに一番いけないものの手当をしていくか、そうしてその手当によって他の警戒へ、他の教訓をどの
ように及ぼしていくかということを立法の際に考えなければならないと思うのであります。私が申し上げるまでもなく、
警察は新しい制度に入りましてからすでに六年、七年になって、新
警察の使命とか任務というものは、すでに十分御体験であり御体得であると私どもは承知いたしております。また同時に、私今国会になってから法務
委員会におりますが、人権じゅうりんとかいう
ような問題を相当やかましく論じられております。別な言い方をいたしますと、こういう
警察のあり方はだんだんオールマイティになりまして、
警察の必要といたしますものは立法的に必ず手当をしていくということは、それが必ずしも
警察のためにならない。
警察の存在価値というものを国民の信頼の中に置くということにならないということを私はしみじみ考える。でありますからこれを申し上げるのでありますが、どうぞその点をお考え願いたい。具体的に、しからばこの法案についてどの
ような線を引くかということについては、同僚
委員各位と御相談いたしまして、参議院の修正点もあると思いますから、この点は考えてみたいと思いますが、これは私は歯にきぬ着せずに申し上げた。そこでこれは三田村一個の意見としてでなくて、戦争中からの長い体験で、
法律や権力でがんじがらめになって、遂にわれわれの愛すべき国と民族も悲惨な運命に突き落した過去への厳粛な反省から、私はこの点を切に申し上げたいのであります。この点についての
齋藤長官の御意見を一応お伺いしておきたいと思います。