○
友末参考人 今回
政府が
国会に提出されておりまする
地方財政計画案、及びこれに関連いたしますところの二、三の
事項について、
意見を申し上げたいと存じます。
お
手元に
意見の要旨を差し上げてあると存じますが、それに従って申し上げたいと思うのでございます。実は非常に急でありましたために、多少
文句等につきまして練れておらない点もございますので、この点はあらかじめお許しをいただきたいと存じます。
まず端的に
結論から申し上げますと、この三十年度の
地方財政計画案は、
現行の
制度やまた今
国会に
提案を予定されておりますところの
関連法案の精神を、はなはだしく逸脱しているようでございます。従いまして、筋の通らないと思われますものが数多いばかりでなく、
地方財政の
実態からも著しく遊離いたしておりまして、今日の非常な窮乏をさらに激化せしめるという結果になるものと考えざるを得ませんので、部分的な手直しをするというようなこともとうていでき得ません
関係から、一応全面的な組みかえを願うべきではなかろうか、かように考えているものでございます。
すなわち、
昭和三十年度の
地方財政計画の
策定に当って、どうしてもとらなければならない基本的な
方針といたしましては、まず第一には、過去におきますところの
赤字を
解消していただくこと、第二には、将来にわたって
赤字発生の
原因を根絶していただきますこと、第三には、
地方財政計画の立て方といたしましては、過去における
地方財政平衡交付金制度に基く
方式は、これは当然一擲いたしまして、
現行の
地方交付税制度の
建前によるべきでありますること、これらはいずれの方面から考えましてもおそらく御
異論のないところであろうか、かように実は考えるのであります。しかるに今回
政府の
策定にかかっておりまする
地方財政計画というものを
検討いたしてみますると、これらの基本的な重要な
事項は、ほとんど取り入れられておらないのでございまして、以下順を追うて若干申し上げてみたいと存ずるのでございます。
まず第一に、過去の
赤字の
解消につきましては、
政府の方とされましてもいろいろ御
検討をされておる模様でございまするが、いまだ確定いたしました
方針が明示されてはおらないのでございます。しかし聞き伝えまするところによりますれば、
政府とされましては
地方財政再建促進特別措置法案というものを
検討されておりまして、近く
国会にも
提案される運びになるのではなかろうか、かように考えておりまするし、またその裏づけといたしましては、約二百億円の
再建特別債というものを認めることによって、これを措置していこうというふうな
方向に進んでおられるようであります。もとより過去のこの大きな
赤字を
解消いたしまするためには、さような
方法によりますることも確かに
一つの
方法と思うのでございまするが、何分にも過去の
赤字というものの額が非常に大きいのでございまして、
昭和二十九年度の
赤字見込み額を加えますると、五百六十億円ぐらいに相なるのではなかろうか、かように考えておるのでございます。
昭和二十八年度の
決算に基きまする
赤字は、御
承知の
通りに四百六十二億円、かように
自治庁でも認定されておるようでございます。これに
昭和二十九年度の
増加赤字見込み百億円というものを加えますると、五百六十億円という大きな額に相なるのでございまするが、その大きな
赤字の
実態というものと、それからこの
赤字を生んで参りました
原因というものにつきましては、いろいろ議論のあるところではございまするが、主として国の
財源措置が今まで年々不十分であったということなどにかんがみますると、今回予定されておりまするところの
再建特別債の二百億円ではあまりにも過少なものではなかろうかというふうにも考えられます。またその
利子というものが
一般の
起債の場合と何ら異なっておらないのでございまして、このことは実は当を失しておるのではなかろうか、
地方の
責任のみによってこの問題を解決されるという色彩がかなり
利子の面におきましても強く出ておりますように感ぜざるを得ないのでございます。さらに二百億円の中身については、そのうち百五十億円の
公募公債というものが予定されておるようでございまするが、これは
政府の
特別処置によりまするところの
赤字債の本質から考えまして、きわめて不適当なものでありまするばかりでなく、
公募公債の三十年度の総額というものは、前年度に比しまして約二倍の三百八十億という巨額を予定されてくるのでございまして、かような大きな
公募債というものが、今日の
市中銀行の
状況から考えまして果して完全に消化されるものであろうかどうか。これらの点につきましても多大の疑問を持たざるを得ないような次第でございます。従いまして過去の
赤字の
解消につきましては、
最小限度、
地方制度調査会の答申にもありまするように三百億円以上の
政府資金をもって、これをまかなうこととされまして、さらにその
利子も無
利子か、または年三分
程度の低
利子によってこれに対処されますることが事の性質から考えまして至当ではなかろうか、かように考えておるものでございます。
次に、第二に将来にわたって
赤字発生の
原因を根絶いたしまするがためには、
地方財政計画の
基礎となっておりまするところの
既定財政規模を、この際根本的に再
検討いたしまして、これを合理的な
基礎の上に立って、まずあるべき正しい姿となし、その上に
昭和三十年度において当然生じて参りまするところの
財政需要の増減というものを加減してこれをきめますることが絶対に必要なことではなかろうか、かように思うのでございます。しかるに
政府の
原案を見ますると、
既定財政規模につきましては、
昭和二十五年度以来のいわゆる
積み上げ方式を依然踏襲されておるのでございまして、何らこれに
是正を加えられておらないのでございます。従って
赤字発色の
原因というものは、相変らずこの
既定財政規模の中に温存されまする結果となっておりますることは、はなはだ遺憾な次第でございまして、一方において過去の
赤字を
特別措置法まで作って
解消しようとされまするこの
態度と、それから
既定財政規模を変更しないという
態度とは全く矛盾するものといわざるを得ない次第でございます。よって、
既定財政規模につきましては、あくまでも
昭和二十八年度の
決算を
基礎としてこれを十分に洗って、そうして合理的な
検討を加え、これに
昭和二十九年度の
新規財政需要を加算して算定されますることが、三十年度の
地方財政計画を
策定する土において当然とらるべき
態度ではなかったか、かように考える次第でございます。さらに三十年度の
新規財政需要につきましても右の
基礎の上に立って算定さるべきことは言うまでもないところでございまするが、これにつきましても
政府の
原案というものは、
既定財政規模に
是正を加えられなかったために、勢いこの不当な
算定基準に基いてあえて過少にこれを見積らざるを得ないという重大なる誤まりを犯す結果となっておるのではなかろうか、かように考えておるものでございます。
次に、第三に
現行の
地方交付税制度のもとにおきまするところの
地方財政計画は、過去において行われて参りましたところの
地方財政平衡交付金制度とは全く異なり、
計画上
財政の
収支というものが完全に符合するということが理屈の上からいきましても
異例に属することであるのであります。通常の場合におきましては、これが符合しないで必ず相当の
相違を生ずるというものではなかろうか、かように思うのでありままるが、今回の
政府原案は最終的には
異例の結果を示すということになっておるようであります。当初私
どもが聞いたところによりますると、
自治庁の
事務当局の
原案によると、約百四十億円の
赤字が出るという結果になっておったようでございまするが、これがだんだんと閣議あるいは
閣僚懇談会等で御
検討になりました結果、一夜にして政治的に百四十億の
赤字が
解消したというふうに聞いておるのでございます。かようにまでしなければならぬ意図がどこにあったのか、全く了解に苦しむのでございます。これは従来の
平衡交付金制度のもとにおいて、毎年毎年
地方財政収支の不均衡が出てくる、その場合にあるいは
起債をもって穴埋めいたしますとか、あるいはまた
節約をもってこれを処置するとか、あるいは単価を変更するとかいうようなことが政治的に行われまして、
結論においては無理に
収支を合せて参った。この悪例をやはり
地方交付税制度のもとにおきましても行われたというような感じが非常に強くいたすのでございまして、
政府みずからが
地方交付税制度の
建前をじゅうりんされたものといわなければならぬのではなかろうか、かように実は考える次第でございます。かかることが繰り返されまする以上、
地方交付税の
繰り入れ率というものはいつまでも変更しないでよろしい、もし実質上の
赤字があれば一方的に筆先でもってこのつじつまを合せていくということができることになるのでございます。かかる不合理な
地方財政計画というものは全く
実態と遊離し、何ら権威のないものになり下るおそれがあるのでありまして、このことは
国家財政の上から申しましても、また
地方財政の上から申しましても、私
どもといたしましては絶対に承服できない点でございます。
なお
地方財政は
現行の
行政制度等を
基礎として進んで参りますると、
別紙の二にありますが、
知事の
意思いかんにかかわらず年々当然
財政需要というものがふえて参るのでございます。
昭和三十一年度から三十五年度までの
消費的経費の
増加見込みを一応調べてみたのでございまするが、三十一年度は二百六十六億円当然ふえるのであります。その中の大きいものは
給与費の
関係でございます。さらに
公債費の増でございます。三十二年度はさらに二百三十七億、三十三年度は二百四十五億、三十四年度は二百二十三億、三十五年度は二百十五億、かように年々二百億ないし二百四、五十億のものが
知事の
意思いかんにかかわらずどんどん累増して参っておる
状況でございます。五カ年間にはその
増加額がとにもかくにも五倍以上にも達するという趨勢になっておるわけでございます。
そこでこれらに対しまして
中央、
地方を通じますところの
行財政制度の根本的な
改正を行うことが強く要請されておるのでありますが、特に累増の根幹をなしまするところの
公債費の問題につきましては、あるいは
地方債の
償還期限を延長いたしまするとか、いろいろと方策があると思うのであります。これらのことを行いましで、これから先、
地方財政に大きな重圧を与えまするところの
公債費の問題を解決いたしまして、そして
地方財政の苦しい
状況を軽減しなければならぬことは申すまでもないところでありまするが、他面、今後の
地方債の
適用に当りましては、従来のように
一般財源に肩がわりせしめるための
地方債はやめて、そして
適債事業に
地方債の
適用を限定するという
方向も絶対にとらるべきである。かようにいたしませんと、
公債というものが毎年々々ふえまして、
地方財政の
弾力性は全くなくなってしまう、かような
状況にあるわけでございます。なお今日、毎年
心々消化が困難な
公募債が増加して参っておるのでございまするが、これらにつきましても特に考慮を要するものではなかろうかと考えざるを得ない次第でございます。
以上申し上げましたような理由によりまして、今回
政府が
提案になっておりまするところの
昭和三十年度の
地方財政計画は
別紙一の
通り、
一つ全面的に組みかえを願って、
地方財政も
国家財政と同じように、その
健全性を確保していくという
方向をとるべきではなかろうかと考えておるのでございます。
そこでこの際
別紙第一の組みかえ案を簡単に御説明申し上げておきたいと存じます。左の方にあるのが
政府の
原案でございます。右側の欄が組みかえ案でございます。第一の
経常的経費の中の
昭和二十九年度
既定地方財政規模の問題でございまするが、先ほど申し上げましたように、
政府の
原案の二十五年度の
決算を従来
通り基礎とされて積み上げられております。それによりますと、六千七百七十六億というものが
規模になるのでございますが、これを二十八年度の
決算を洗って
基礎として考えますると、四百七十億ばかりふえまして七千二百四十六億というものが
既定財政規模になるべきであろう、これが最も
現実に即応いたしましたところの正しい姿の
既定財政規模であると考えざるを得ないのであります。
次に三十年度の
新規財政需要の中で、3の
一般職員及び
教育職員の昇給に伴う
給与費の増でございます。これにつきましては御
承知のように
昭和二十六年の十月に
給与費の切りかえが行われまして、
都道府県一般職員につきましては三百四十八円、教員につきましては三百四十九円、
市町村職員につきましては五百七十六円を引き下げられたのでございます。しかし
現実におきましてはさような
引き下げ工作は何ら行われておりません。これは
決算を洗ってみてもはっきり出て参るのでございます。なお、
義務教育費国庫負担の精算末
済分が、当初におきましては未済はあまりないようになっておったのでありますが、最終的に四千人の低い人数の
基礎をとられました結果、そこに
実情と合わないものが出ているようでございます。これを適正な姿に立て直しますれば、
政府の
原案によりまする七十二億が三十六億ふえまして百八億になるのではなかろうかと思うのでございます。
あとは
政府の
原案と大体同様でございまするが、三の
節減等に伴う
経費の減は、
財政需要にあげますることは当を得ないのではなかろうか。先ほど申し上げましたように
既定財政規模をまずあるべき正しい姿にしておきまして、そして三十年度に生じますところの当然増、当然減を加減して
財政需要を出し、一方
歳入とにらみ合せてそこに
差額をはっきり出しまして、その
差額をいかなる
手段方法によって処理するかということが、
地方交付税制度のもとにおけるところの
地方財政計画の立て方になるべきじゃなかろうか、かように考えまして、
節減等に伴うところの
経費の減は、
経常的経費の中に含めなかったわけでございます。
投資的経費につきましては、
既定財政規模が二十四億ばかり違っております。これは二十五年度と二十八年度の
決算の
相違でございます。それから三十年度の
新規財政需要といたしましては、
失業対策事業費の中で二十二億ばかり違うのでございます。
自治庁の当初の
計画によりますと、
資材費の
超過負担の三十円というものは
財政計画の中に入っておったわけでございますが、百四十億を消すための
一つの
手段として、この
超過負担は見込まないというふうに変って参った
事項でございます。やはり七十五円というものは
現実に
資材費にかかっておるのでありますから、これを
基礎に進められることが至当ではなかろうか、かように思うのでございます。それから
単独事業費の
節減、これは七十六億
政府原案には見ておられますが、これも、当初の百四十億
赤字が出ます場合においてはなかった項目でございます。その中に
公共事業の二十億が入っているやうに聞いておりますが、かりに二十億入っておるといたしますと、今後の各省との
関係あるいは
補助金との
関係、その他非常にむずかしい問題が起るのではなかろうか、かように考えるものでございます。
単独事業は、すでに
財政需要の方におきましても減って参る
関係から、また
現実に各県がほとんど
単独事業ができません
実情から考えまして、これ以上の
節減を見込むことは、実行不可能であろうという考え方から、組みかえ案につきましては、減を見込んでおらないのであります。
歳入につきましては、多少
異論はございますが、一応
政府の
原案を採用いたすと仮定いたしますと、(三)にございますように、
歳入歳出差引過不足といたしまして、
交付団体分五百六十五億が
赤字となって参るわけでございます。この姿が、
制度の上から申しましても、また
現実の上から申しましても、赤裸々な正しい姿ではなかろうか。これに対していかなる
方法をもって
赤字を消していくかということでございます。
まず
節減等に伴う
経費の減でございます。これにつきましては、国の
施策、国の
責任においてお願いをいたすものもありますし、
地方団体自体の
責任においてやるものも出てくると思うのでございます。かように、
責任を明確にして
赤字を消していくことが、今後絶対に必要になるのじゃなかろうか。今までは
財政計画の中に一本にして入れられました結果、
中央の
責任であるか、
地方の
責任であるか、全く
責任の不明確なものになっておったわけでありますが、かように国の
責任、国の
施策でお願いするものの第一は、
寄付金等の抑制によります
節減額が、
交付団体で二十三億ございます。これは
財政需要の方で
政府としては二十一億見ておられます。これは二十五年度の
決算を
基礎とされておるからでありまして、二十八年度の
決算を
基礎として考えますれば、さらに二億ふえまして、二十三億が出てくるというふうに考えております。
それから、
地方財政事務の簡素、
合理化をはかりましたために出て参ります
節減額五億、これは
政府の
原案と同じでございます。それから
地方団体自体の
責任で
節約を行う。これは旅費、
物件費、
交際費等の
節約でございますが、
政府の方としては六十一億
交付団体に見込まれておるようでありますが、まず私
どもの
地方の
実態から考えますれば、非常に困難ではございますが、こういう際でございますから、
計画上も少くとも一割
程度は見込む必要があるというふうなことで、三十四億を見込んでおるわけであります。
それから
給与費についての問題が二百八十七億、これは
規定財政規模から出て参るのでありますが、
政府の力としては、これについてはこの秋までに
実態調査をやって、結果が出てから何とか考えようというふうに大体の
方針が進んでおるのでありますが、これらも
財政計画の外に置いてやみに葬るのでなく、やはり出しておきまして、
実態調査ができて解決される場合におきましては、
交付税の税率の
修正によってこれを行うことが適当じゃなかろうか。そういたしますと、
交付税は四・五五%これに対しては引き上げるべきである。もし
実態調査の結果二百七十八億というものが多くなれば、その率も変りましょうし、また低くなれば、その率も低くなってくる。これ以外に約八十億
交付団体分がございますが、それは
交付税に
関係ございませんので、計上いたしておりません。かような操作をいたしましても、なお二百十六億の
赤字が最終的に出て参るのでありまして、少くとも
地方交付税の
繰り入れ率の
修正によって問題の解決をはかるほかないじゃないか。そういたしますと、三・四二%ふやす必要がある。昨年であったかと思いますが、衆議院におきましては、三十年度の
地方交付税は、少くとも二五%にすべきであるというふうな
結論が一応出たのでございますが、不幸にして参議院において
修正されて、おそらく二二%になったという経過があると思うのでありますが、これらの点から考えますと、少くとも二五%
程度のものは衆議院でお考え願い、また
地方行政
委員会でお考え願って御努力願った線が、まず適正に近い線ではなかったかというふうに実は考えざるを得ない次第でございます。実はかように考えておりますので、この際
地方交付税の
制度の精神に従い、また地力の
実態に即応いたしまして、
地方財政計画を全面的に再
検討いたされまして、組みかえを願うべきじゃなかろうかと考えておりますような次第でございます。
なお
財政計画との関連もございますが、
現実に各
地方団体とも金繰りに非常に追い詰められております。過去の大きな
赤字をかかえております
関係もあり、また
政府の予算が暫定予算であるというようなことも折り重りまして、実に毎月の金繰りは容易でない
状況でありまして、すでに県によりましては、職員の
給与費が全部は支払われないというのも出てきようといたしておるわけであります。昨年は六月ごろから出たのでありますが、本年はもっとたくさんの府県の給与の遅配あるいは不払いが出るのではなかろうか、かように非常に心配をいたしておるわけでありますが、さような苦しい金繰りの
関係にもございますので、今年度に限って
地方債の元利償還額——これは約三百七十億円と見込んでおりますが、これをとりあえず一カ年間延期を願いまして、この窮乏にあえいでおりますところの
地方々々が、
現実に何とか切り抜けて行かれるように応急の措置を願うことが適当ではなかろうか、かような考えをもちまして、これらにつきましては別途
政府にお願いを申し上げておるような次第でございます。
以上はなはだ簡単でございますが
昭和三十年度
地方財政計画に対しますところの
意見を申し上げました次第でございます。