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1955-06-02 第22回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二日(木曜日)     午後十一時三分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君    理事 森下 國雄君 理事 大平 正芳君    理事 奧村又十郎君 理事 春日 一幸君       宇都宮徳馬君    杉浦 武雄君       坊  秀男君    前田房之助君       山本 勝市君    淺香 忠雄君       川野 芳滿君    黒金 泰美君       小山 長規君    薄田 美朝君       古川 丈吉君    石村 英雄君       石山 權作君    木原津與志君       横山 利秋君    井上 良二君       川島 金次君    田万 廣文君  出席政府委員         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税関部         業務課長)   崎谷 武男君         大蔵事務官         (銀行局特殊金         融課長)    加治木俊道君         労働事務官         (労政局労政課         長)      有馬 元治君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 五月三十一日  昭和三十年の夏季賞与に対する所得税臨時  特例に関する法律案松原喜之次君外十二名提  出、衆法第六号)  揮発油税すえ置きに関する請願(佐々木更三君  紹介)(第一三七二号)  国内産かんきつ原料果実水に対する物品税撤  廃に関する請願菅太郎紹介)(第一三七三  号) 六月一日  揮発油税すえ置きに関する請願今村等君紹  介)(第一五〇四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件所得税法の一  部を改正する法律案内閣提出第一五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  地方道路税法案内閣提出第三一号)  輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法  律案内閣提出第三三号)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第三四号)  砂糖消費税法案内閣提出第三五号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第六〇号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九八号)  昭和三十年の夏季賞与に対する所得税臨時  特例に関する法律案松原喜之次君外十二名提  出、衆法第六号)     —————————————
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議を開きます。  まず連合審査公開会申し入れについてお諮りいたします。農林水産委員会において審査中の砂糖の価格安定及び輸入に関する臨時措置に関する法律案につきましては、当委員会において審査中の特殊物資納付金処理特別会計法案と密接な関係がありますので、農林水産委員会に対して連合審査会を開会するよう申し入れたいと存じますが、これに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお連合審査会開会の日時につきましては、両委員長の協議により定めることとなっておりますので、委員長に一任を願っておきます。     —————————————
  4. 淺香忠雄

    淺香委員 議事進行。先週のたしか金曜日であったと記憶しておりますが、私から食糧庁に対して、輸入の小麦の数量に対して二十九年度並びに三十年度の比較表その他を要求しておきましたが、いまだに資料が出て参りません。また一昨日厚生、文部、農林の方へも要求いたしましたのが、厚生省だけはただいま資料を入手したようなわけでありますので、特段の促進方委員長において一つ御努力いただきますようお願いいたします。
  5. 松原喜之次

    松原委員長 承知いたしました。なお淺香委員の要求がありますので、本日もしくは明後日の委員会農林大臣出席を求めて、交渉いたしております。  次に、一昨三十一日当委員会審査を付託されました昭和三十年の夏季賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案議題として、提出者より提案理由説明を聴取いたします。横山利秋君。
  6. 横山利秋

    横山委員 ただいま議題となりました昭和三十年の夏季賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案について、両社会党を代表して、その提案趣旨内容について御説明申し上げます。  わが国の生活様式から、夏季におきましては、年末におけると同様特別に経費のかさむ事情もあり、これを考慮して、年来夏季賞与が支給されているのでありますが、近年俸給賃金頭打ちの傾向にあり、定期昇給すらも円滑に行われず、一般給与生活者生活事情は苦しいため、特にこれらの賞与に期待するところが大きいのであります。こういう事情で、これらの賞与のうちから税金が引き去られることは、低額所得者にとっては特に耐えがたいのであります。よって夏季賞与について五千円を限り所得税を免除して、幾分でもこれらの人々生活を潤そうというのがこの法律案であります。  この法律案によってどれほど減収になるかにつきましては、いろいろと推算できるのでありますが、おおむね六十億円と見たらよかろうと存じます。これによる減収に対する措置といたしましては、この法律が成立しましたならば、政府において所要の措置を講ずべきであり、この程度は何とか切り抜ける道もあると存ずるのであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  7. 松原喜之次

    松原委員長 これにて提案理由説明は終りました。本法案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  8. 松原喜之次

    松原委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案税制改正法律案一括議題として、質疑を続行いたします。石山權作君
  9. 石山權作

    石山委員 私は国税庁の方に退職手当の件についてお尋ねしたいと思います。  終戦以後、例の過度経済力集中排除法独禁法によりまして、おのおのの大きな会社が分割されたのでございます。その結果、分割されたのを契機にしまして、退職所当を形式上清算したという場合もあったのでございます。しかしその後労働組合法が施行されまして、前に清算されたものが継続するというふうな労働協約を結んだ会社も多々あるのでございますけれども、実際最近のように退職者が出た場合、地方税務所においてはそれをば通算しない。集中排除法によって分割された前歴をば認めないという形によって課税をされているというふうに聞くのでございます。その実態を二つお知らせ願いたいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 退職所得に対する税額の計算方法につきまして、昨年度の改正で、勤続年数を加味して控除額計算して、その上で税金計算するように変ったわけでございます。その際今の税法によりますと、就職してから退職するまでの期間、それはもちろん表面上解釈しますと、退職金をもらう会社からということに一応なるわけでございます。従いまして、今御指摘のような場合にも、税法の一応の字句解釈から行きますと、やはり新しい会社に勤め出されましてから退職されたとき、その年数によるというのが文理解釈としましては一応成り立つわけでございます。私どもも、今までは実はその解釈で一応来ていたわけでございます。ところが最近になりしまして、それではどうも実際に合わない。お話のように、強制的に解放なり合併等が行われまして、その際に名目だけの退職金はもらっている。しかもそれがインフレで、ほとんどなきにひとしくなっておる。そこであと会社から退職金を出す際に、それではいかにも気の毒だというので、前の会社就職期間を通算しまして退職金を出すという例があるようでございます。そういう例の場合にも、税法文理解釈を厳密に行きますと、どうもちょっと拡張解釈するのが無理なところもあるのでございますが、しかしそういうふうに原因が非常にはっきりしている。しかもいろいろなやむを得ない事情あと会社から退職金をもらう場合、従いまして前の期間を単純に通算いたしましてやるということが計算上非常に明らかになっておる場合におきましては、文理解釈をあまり一方的にやるのも無理であろうと考えまして、最近その点につきまして、何らかの通算的なやり方をやりまして、控除額計算するということを目下検討いたしております。近いうちに、なるべくそういう方向で実際に合うようにいたしたいという考えであります。御了承願います。
  11. 石山權作

    石山委員 官庁と違いまして、民間の場合はいろいろな引き揚げのような場合、たとえば樺太、朝鮮、こういうところからたくさんの人たちが引き揚げたわけなんですが、その場合の清算の仕方は、実にあいまいなんです。階級的に清算するとか、会社のポストによって清算されて、それ以外は清算しないというのならわかるが、ある人にはした、ある人にはしない、それは証拠が那辺にあるかということがわからないのです。それを一律に、分割されたからといっても、ただ名目的に分割されたのであって、内容から言えば、人的にも、会社の機構を見ましても、資本の分割から見ましても、前の会社とは全然変っていないわけです。それをば法的な解釈によって、たとえば昭和十八年で打ち切られたとか二十年で打ち切られたというようにしゃくし定木にやりまして、労働組合はそれを可と認める、労使双方がそれを認める。こういうふうになった場合におきましてでも、税務署の方々が法的な解釈異議があるというふうになりますと、非常に気の毒に思います。特に安い時代に、長い間働いて来て、終戦後のインフレによって名目的なものを与えられたとしましても、法的には打ち切られる。しかしそれであっては、私は法のほんとうの精神は生きないと思う。特に民間においては、年金その他がまだ確立しておりません。恩給も確立しておりません。頼みになるのは退職手当一つであります。それをば年限が加算されないとするならば、長い間民間企業育成のために働いて来た産業人々にも私は気の毒だと思うのです。ここのところは当時の、終戦後の集中排除独禁法がしかれたああいう混乱期における特別の境遇をよく考えられて、あたたかい法的な解釈を下していただきたい、私はこういうふうに要望します。  それからもう一つお聞きしたいのでございますが、財産税査定に関しまして——財産税のみではないと思いますが、税務署ではある種の密告制度をばやっておる、そうしてそれには報償を出しておると聞いておりますが、どうでございますか。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 現在におきましては、先ほどお答えいたしました通りでございまして、今までの解釈がやや形式的な文理解釈に走り過ぎておるという点がございますので、もう少し実態考えて、法の趣旨に合致し、しかも非常に乱にわたるおそれのない限界におきまして、できるだけ実際に合うような常識的解釈をいたしまして、そうして実情に合うようにいたしたいと思います。  それからなお後段の問題でございますが、後段の問題につきましては、密告制度と申しますか、一定の通報をした方に報奨金を出す。また終戦後単に財産税だけでなくて、全部の直接税につきまして、実は司令部等の勧奨もありまして行なってきた制度であります。でありますが、どうもやりました結果相当の実効が上がりましたが、一面日本人の感情に会わないというところがございましたので、昨年来この制度を一切やめることにいたしました。報奨金を出して、そういうようなことをやることはいたさないことになったのでございます。正義感に燃えた通報は私どもいただいておりますが、金ほしさのための通報ということはやめることにいたしております。御承知願います。以前は単に財産税だけではございませんで、法人税所得税につきましても、こういう制度がございましたわけであります。
  13. 石山權作

    石山委員 おやめになったということは大へんよろしいのですが、前の契約されておる事項が未解決になっておるのが私たち周辺にあるわけです。これは、一生懸命働いている全国の税務関係の諸君から見れば、わずかの事例だと思うのですが、密告制度を非常に重用して実績が上った、そのために栄転してしまった。しかしその密告した人に対しては何ら解決をつけないで行ってしまった。それがおととしから続きまして、今年になっても何ら解決がつかないというふうな面があるわけなんですが、今年になっておやめになったとなれば、そういうふうな中間にいて一生懸命——あまり感心したことではないと思うけれども、この制度を信じてやった人に対してはどういう措置がとられるものか、お伺いしたい。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 この制度は昨年度からやめたのでございますが、昨年のたしか三月三十一日以前と思いますが、それ以前にすでにそういう密告をされた方につきましては、それぞれ法律の適用がございまして、そういう人々に対する跡始末は、もちろんその当時の法律に基きまして、経過規定あとにおいてもなお生きておりますので、その分につきましては、きちんとケリをつけまして、それぞれ処理するということになっておりますので、その点御了承願いたいと思います。
  15. 石山權作

    石山委員 この密告制度が私の周辺で活用されたことは、山林価格査定において生まれたことであります。山林というのは、御承知の通りどこでもそうだと思うのですが、いなかへ入りますと、地図などは役に立ちません。非常に膨大な面積を擁し、それが山林地帯であっても、荒蕪地とか、あるいは河川敷地名目上なっておる。これが一県であれば割合に査定しやすいと思うのですが、私の周辺にあった密告はずっと九州、北ば北海道まで各県にわたって山林を持っているという富豪であります。農地解放はなされたけれども山林だけは解放にならない。そうして特にそういうふうな山林の主がもうけていたというような事例があるのでございますが、それに対して、何か特別な財産査定法を用いてやっておられるかどうか、伺いたいと思います。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお話密告との関連の問題でございますか、それとも、山林所得なり、あるいは富裕税調査自体を現在はどういう方法でやっているかというお話でございますか、私ちょっとお尋ね趣旨がわかりかねたのでございますが、山林につきましては、特に大口山林所有者につきましては、いろいろな方法調査いたし、特に、全国的にもできるだけ均衡を得るようにというので、国税庁におきましても、国税局を指導いたしまして、大山林所有者富裕税並びに所得税の公平な査定ということには、非常に努力いたしておるのでございます。そういう場合におきましては、それぞれ必要に応じまして、現場に出かけまして調査する場合もございます。しかしそういう方法は、経費等関係がございますので、そういうことをしないでもいい範囲内におきましては、そういう方法はとらず、それ以外におきましては、そういう方法をとるということで調査をいたしておる次第でございます。お尋ね趣旨があるいはよくわかっていないかと思いますが……。
  17. 石山權作

    石山委員 これからも、財産取得のときにはいろいろ山林地所の問題になると私は考えておりますので、いざござのないようにということを十分お考えになっていられると思うけれども山林地帯の県では、これを非常に厳格に考えているものですから、特に私はそういうことを要望しているわけです。  それから、この前のときにも、私はちょっと主税局の方にお尋ねしたのですが、一昨年あたりだと思いますが、偽造された印紙がはんらんしておった。そういうような点では、国家の収入に莫大な損害を与えたわけなんで、その善後措置、その他がいまだはっきり公表されておらない。非常に残念なことですが、国家にどのくらいの損害を与えたのか、国家がどういうようにして——あるいはある程度は認めたのでしょうか。先ほど善意においてやったというやり方と、悪意との境目がいろいろ論議せられていたようでありますが、いずれにしても、善意であれ、悪意であれ、偽造印紙を使用して登記した以上は、莫大な損害国家に与えておる。それをどういうふうに処理されて、その結果はどういうふうになっているかということを伺いたいと思います。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 この問題は、まず第一は、不正をやった人間の徹底的追及ということが一番大事な問題だと思いますが、そういう点につきましては、検察庁、警視庁ともだいぶ力を入れまして、相当不正の摘発が行われたように私は見ております。名前をあげるのは恐縮ですが、主として登記所とか、その他にだいぶそういう事犯があったようでございます。そういうところにつきましては、摘発すると同時に、それぞれの各庁におきまして、今後においてそのようなことがないように、重要な警告なり訓示を発してやってきたことと存じております。  それから歳入に及ぼす影響でございますが、その後そういう不正の余地がないようないろいろな方法をさらに考えたらどうかというので、先般主税局長からも申し上げましたが、大口登録税を納めるような際には、印紙税で納めるよりは、むしろ現金納付でやった方がかえってはっきりしていいということもございまして、登録税現金納付の道を法制上も開くようにいたしました。最近はこれもだいぶ利用されてきておるようであります。そういう方法で、制度としましても、できるだけこういうことがないようにいたしたわけであります。なお歳入に及ぼす影響でございますが、これは、その当時新聞等にも伝えられておりますけれども、その後ああいう偽造なり再使用が大がかりに多いとは考えておりません。印紙税歳入の状況から考えましても、そう一時伝えられたような大きい額ではなかったのではないかと考えられます。しかしこれは、率直に申しまして、非常に精密な計算というものはその当時におきましてもなかなか困難でございましたが、今も、非常に的確な計算は困難な問題だと思っております。むしろあの当時、あまりにも関係した人が多くて、またケースが多かったものですから、額としましては非常に大きく言われたのではないかというふうに見ておる次第でございます。  それから、なお善意偽造印紙を買ってそれを使った人の問題。これは法律的にいろいろ問題がございまして、その点は前回主税局長が御説明申し上げた通りだと思いますが、それよりも、ああいうことが二度と起らないようにするということが何よりも大事なことだと私ども考えております。今後とも、今申し上げましたような趣旨を一そう徹底させまして、再びないようにいたしたいと存ずる次第でございます。
  19. 石山權作

    石山委員 税関の方は来ておられますか。——最近の新聞を見ますと、貿易がそろそろ頭打ちをしてきているというふうにいわれております。今までの黒字は、国際価格が高くて、われわれの買いだめがあったから黒字だったが、だんだん赤字になる心配があるとかいうようなことをいわれておりますが、やはり関税に対しましては、私たちは、日本貿易のために非常に心配しているわけなんです。その中においても、最近の新聞を見ますと、ガット加入が非常にまずいのだ、たとえばガットに加入しても、イギリスが三十五条を適用する、こういうようなことを言っておるのでございますが、そこら辺を一つ説明願いたいと思います。
  20. 崎谷武男

    崎谷説明員 ただいまの御質問は、ガットに加入しても、果して日本関税上どういう利益を得られるかという御質問と、イギリスについての御質問だと思います。  第一の問題につきましては、ガットに加入することによりまして、今まで最恵国待遇を与えている国もございますが、それがガットという条約によってはっきり縛られる。事実上最恵国待遇を与えております国はその通りでいいわけでございますが、それが条約によってはっきりする。それから、若干の国が今まで最恵国待遇日本に与えておりませんのが、日本に対して、ほかの国と同じように低い税率を適用することができる、これは確かに利点であると思います。そのために日本輸出競争力が若干ふえて参りますので、貿易も伸びることを期待しております。  なお、イギリスその他の国が三十五条を援助するという問題につきましては、そういうおそれが多分にございますが、イギリスのごときは、今まで事実上最恵国待遇を与えておりますので、三十五条を援用して条約上の最恵国待遇日本に与えませんでも、事実上今までの関係は持続していけるものと期待しております。そのほか、日本ガット加入は認めるが、どうしても三十五条を援用いたしまして、日本に対して最恵国待遇を与えないという国が出て参るおそれはございますが、それは、従来よりも改善されたということにはならないことは事実でございますけれども、従来よりさらに悪化したとか、マイナスになったということでもございませんので、この点は、交渉その他で今後を期待いたします。けれども、さしあたりはやむを得ない国が若干は出てくることは仕方がないことと存じております。
  21. 石山權作

    石山委員 この日本ガット加入について、四月か五月の中ごろだったと思いますが、イギリスではそれに対して白書を発表したようでございます。それについて、大体は同情的であるけれども、たった一つ貿易割当制があるからというふうなことに拘泥しているようでございますが、果して内容はその割当制のためなのか、それとも、われわれが常に懸念しているところの、日本の紡績のダンピングに対応ずるところのイギリスランカシャー資本政府を圧迫しているのかどうか、こういう点も一つあわせてお聞きしたい。
  22. 崎谷武男

    崎谷説明員 イギリス関係は、実はきわめてデリケートでございますが、白書で想像いたしますところでは、今の御意見のようなことが確かに述べられております。もちろん私どもとして想像いたしますに、イギリスの国内の政治情勢その他から言いまして、ランカシャーの圧力ということも十分に考え得ることでございますし、また日英間に今後さらに問題になっていきます、毎年やっております日英貿易会談といったようなもの、それによって日本への輸出幾ら日本からの輸入幾らというふうに毎年目安をきめて参っておりますが、それの今後の交渉の仕方、やはりそういうものを頭に置いてあのような白書を発表したのだとは想像いたしております。
  23. 石山權作

    石山委員 この日本ガット加入に対してイギリスの渋っている点、あるいはイギリスが三十五条を適用すればそれに追従していくイギリス経済圏と申しますか、そういう国が四、五カ国あると思いますが、それらの国に対する見通し、それから日本ガット加入を拒否するイギリスの態勢に対して、日本が何らか手を打っているのか、どういう対策を持っているのか、そういう点を一つお聞かせ願いたい。
  24. 崎谷武男

    崎谷説明員 イギリスに対してどういう手を打っているかという問題でございますが、これは外務省の方で——日英関係のいろいろな問題がございますが、ガットについても、いろいろな問題の関連におきまして、日本に有利な解決ができるように十分に交渉しておることを私ども確信しております。  なお、もちろんイギリスに、オーストラリア、南アフリカ、サウス・ローデシアといったような英連邦諸国の若干の国がくっついていくことは予想されますし、なおフランスのような国も、イギリスと同じような歩調をとるのではないかと今のところは考えております。
  25. 石山權作

    石山委員 次は、最近アメリカのクーパー法案でございますか、この法案ジョージ修正案によって日本に非常に不利に展開された。結論的に言うならば、一月一日現在において否定をされるわけでございますから、向う三年間一五%方据え置きの形だということになります。そうしますと、私たちは常に産業人としてコストの問題を云々されておりながら、関税において常に一五%も差をつけられては、コストの問題よりも、むしろ関税によってわれわれの問題が圧迫されているのじゃないか、こういうふうに考えられますが、アメリカはよく東南アジアに行けとか、いろいろなことを言っておるのであります。しかし東南アジアに行くためには、ガットに加入しなければまずい。それではアメリカが一生懸命力を入れてくれるから、アメリカとの貿易をより以上に盛んにしたいというふうになると思うのですが、それがクーパー法案によって非常に困難を生ずるわけですが、それについて一つ説明を願いたい。
  26. 崎谷武男

    崎谷説明員 クーパー法案がジョージ法案によって修正されましたことによって、日本側といたしましては、これからまとまります日米関税交渉の結果についての今までの期待というものは、大体関税交渉によって一定のレートになりまして、それからさらに当初のクーパー法案によりますならば、七月を基準にいたしまして、今後も二五%の関税引き下げの期待ができるというところにあったのでございますが、今のジョージ法案によって、その期待が全然持てなくなったということは事実でございます。これはきわめて遺憾なことでございますので、政府側も、その点は十分にアメリカに問題を提起したわけでございます。これはアメリカの国会によってそういう修正がなされましたので、私どもとしてはまことに遺憾なことだと思っておりますが、ただ関税交渉の方は、一応関税交渉の途中におきましてそういう問題が出ましたので、そのことも十分に考慮に入れて日米折衝に当ったものと私ども承知しております。
  27. 石山權作

    石山委員 そうすると、アメリカに関する限りは、現在ジュネーヴにおいて行われている関税交渉は非常に悲観的だということになるのでしょうか。
  28. 崎谷武男

    崎谷説明員 当初関税交渉をいたしますときには、クーパー法案による、さらに今後三年間の減税というものも期待しておったわけであります。それについては、期待は全くできないような情勢になって参りましたが、関税交渉そのものについては、今までクーパー法案の修正を除きまして、順調に進んだものと承知しております。
  29. 石山權作

    石山委員 外国のことを批判するのではなはだおそれ入りますけれども、わが国としましては、現在におけるアメリカとのMSAの関係上、どうしてもアメリカが一番日本関税などでは特典を与えなければならない立場だとわれわれは常識上解釈するわけなんですが、その常識を越えて、国内政治のいろいろな点があるかもしれませんけれども、われわれに対する印象から見ますると、非常にふに落ちない点が多々あるわけなのでございます。そういう点はやはり政府の努力、交渉委員の熱意によって少からず改良される部面も今後あるのではないか。もちろん困難だと思います。困難だと思うのですが、アメリカが大きく立てている外交政策その他から見れば、日本に一五%の外国との差別をつけるという建前は、いささかこれは回り道だと思う。この回り道を本筋に戻す手は多々あると思うのですが、その努力は開始しているわけなんですか。
  30. 崎谷武男

    崎谷説明員 御趣旨はまことに同感できてることでございまして、もちろん政府側におきまして、十分にアメリカ側に交渉を今後もしていくわけでございますが、何しろ今度の修正そのものが、アメリカの業者の利害関係によってアメリカの国会を動かしてなされましたものだけに、きわめてむずかしいことと思っております。しかし、今後ともそういう点はできるだけの努力をもちろん続けていくつもりでおります。
  31. 石山權作

    石山委員 労働省の方おいでになっておりますか。——労働金庫に関して二、三お聞きしたいのでございます。前国会において、働く者の福祉施設として、共済的な意味も含めまして、労働金庫法が幸いにして国会を通過いたしまして、その管轄権が大蔵省と労働省にあるわけなのでございます。たまたま金庫が順調に発達しているというふうにわれわれは見ていたのでございますけれども、順調に発達していくには、関係官庁の指導よろしきを得ることと、労働組合の、あるいは労働金庫に関係している人たちのまじめな研究心と事業に対する熱意によってこれは伸びていく。特に新しい労働金庫の分野でございますから、考えさせられる部面がたくさんあると思います。監督官庁としても、より以上の心配があったと思うのでございますけれども、先ほど千葉の労働金庫に起きました事故は、監督官庁が御心配なすっているという意味はよくわかるのですが、いささか職権を越えたような印象をわれわれは受けざるを得ないのでございます。金庫の持つ特殊性、金庫の持つ預金者に対する安全感、信頼感、預金の秘密、こういうふうなものがいささかそこなわれたのではないかという印象を受けるのです。特に金庫に関する限りは、大蔵省の方がむしろ私は先輩だと考えていたのでございますけれども、労働行政の一環ということで、労働省の方でやったようでございますけれども、千葉県の労政課でとられた措置、労働省の本省のとられた異例な措置、こういうものはいささかわれわれとしては納得し得ない点があるのでございます。この千葉労金の経緯を簡単でいいのでございますから、労働省が見た経緯を御説明いただきたいのでございます。
  32. 有馬元治

    ○有馬説明員 今石山委員からお話がありました千葉労金の検査の問題でございますが、これは昨年の十二月九日に、われわれの方の労働本省と、それから関東財務局との共同検査で、この金庫の検査を実施したのでございますが、その結果、その検査の直後におきまして、千葉労金が検査を受けたというふうな新聞記事が地方版として出たのでございます。これは検査を受けたこと自体について、当時そういう新聞記事が出たということにつきまして、協会側からもいろいろ御注意がありまして、われわれも県を通じまして、どういういきさつで地方版に出たのかという調査をいたしたのでございますが、結局のところ県側も、新聞記事が出た真相につきましては、はっきりしたいきさつがわからない。新聞記者がいろいろと推側をいたしまして、地方版の記事にしたのだろうというような程度の報告が当時あったのでございます。その後この労金に対する検査の結果を取りまとめました検査の示達書を、大蔵、労働の両省で作成いたしまして、いよいよ示達をいたしましたのが五月の初句であったと思います。この示達の機会をとらえまして、またまた読売新聞地方版に、ある種の検査結果の暴露記事のようなものが出たのでございますが、そのときにわれわれもこの記事を読みまして、この記事がどうして出たのか、県側からあるいは漏れたのではないかというような見地で、いろいろと県側を調査したのでございますが、結局のところ県の副知事の友納氏からの状況報告によりますと、県としては、この記事を読売の記者がでっち上げるにつきましては、検査の結果読売に情報を漏らしたいきさつは全然ない、従ってこの記事については、県としては責任を負い得ないのだという報告があったのでございます。われわれも読売の記事と報告書をつき合して当時いろいろ調査したのでございますが、この記事は報告書の内容とある点においては似ておりますが、ある点においては全然推測にすぎないという点が多々ございまして、結局のところ、読売の記者がふだんからよく勉強しておって、いろいろな連中から情報を集めて、結局検査の結果こういう示達があったのであろうというふうな推測を下して書き上げた記事であろうというふうな推定をいたしているのであります。千葉の労金に対する検査の結果が新聞等に漏れましたいきさつは、以上申し上げました通りでございます。
  33. 石山權作

    石山委員 審査の結果示達書をば、わざわざ本省に呼んで労政局長より直接手渡した。こういうことは毎回やっているのでございますか。
  34. 有馬元治

    ○有馬説明員 検査の結果を直接本省に呼びつけて、県と理事長とに示達したことは異例でございまして、千葉の場合が初めてのことでございます。それは当時千葉の労金の理事長でございまする横錢氏の選挙違反事件の調査が警察の手で進められておりましたので、われわれとしましても、現地でこれを示達するということにつきましては適切でない、また当時金庫に対して反対派のいろいろな動きもございましたので、現地において示達するのは適当でないというふうに判断いたしまして、わざわざ本省に呼んで示達をした次第でございます。
  35. 石山權作

    石山委員 労働省の関知する限りは、千葉労働金庫は、その内容において新聞に報道されたような内容を具備していたものであるかどうかということを説明願いたいと思います。
  36. 有馬元治

    ○有馬説明員 先ほども申し上げました通り新聞に報道されておりまする記事の一部につきましては、示達書と合致している点もございますが、一部については、全然当っていない点もございます。そこで、示達書をここで具体的に指摘をして申し上げるのは少し適当でないと思いますので、具体的には申し上げませんが、一部については当っており、一部については当っていない、従ってわれわれとしては、推測記事だというふうに判断しているのでございます。
  37. 石山權作

    石山委員 そういう言い方をすると、すべてのものがうまくいくわけなんです。何か一つうまく当って、あとは当らないということは、これは当りまえの話なんで、そういう話では新しくできた金庫、しかも労働者の零細な金によって共済、あるいは相互扶助の精神で運営されていく労働金庫にとっては、私は嘆かわしいと思います。そういうやり方であればこそ、私に言わせれば、やり方が冷酷なように思われてなりません。特に私たちの強調したい点は、金融機関の慣例、金融機関の秘密性、金融機関の信用、こういうふうなことにあまり携わっていないところの県の労政課当局がこの問題にタッチしたところに欠点があったのではないか、こういうふうに思われてならないのでございます。皆さんの御弁解を聞いていても、そういうふうな印象を受けてなりません。こうなりますと、今回の問題を機会にして、機構を変えてみるというふうなことを労政当局では考えておらぬかどうか。
  38. 有馬元治

    ○有馬説明員 県に検査というふうな仕事をタッチさせるので、こういう機密が漏洩するんだというふうな御鷲見であろうと思います。従って県から検査権限を引き上げろというふうな御意見にもあるいはなるかと思いますが、私どももこの金庫の検査につきましては、一昨年来大蔵省の指導のもとに、ようやく検査の概念をつかんで実施に移った段階でございまして、第一線の県におきましては、いろいろとふなれな点とか、あるいは不手ぎわの点が現在のところあるだろうと思います。しかしながら、検査の技術的な面についてはそういうことが言えましても、検査が漏れるということは絶対にないようにということは、初めから厳重に県をそういうふうに指導しておるのでございまして、千葉の例のように、検査の結果をめぐって一部の新聞に記事が漏れるということは、これは結果としては非常に遺憾なことだと考えております。しかしながら、このケースをとらえて、すぐに県から検査権限を召し上げるというふうなことは、現在のところわれわれとしては考えておりません。こういう事件に通じまして、さらに機密保持について県側の注意を喚起いたしまして、さらに検査技術のまずい点、あるいは不手ぎわな点は今後十分指導して参りたいと思います。
  39. 石山權作

    石山委員 労働金庫に対する皆さんの指導の中には、金庫は政治的な勢力に巻き込まれてはならぬ、こういうふうなことを大へん強調されているのです。しかし近来千葉労金だけでなく、二、三の金属を見てみましても、何か与党内閣と申しますか、ボス的な特別な力を加えたのではないかというような印象を受けざるを得ない実態を私は見ているのですが、そういう点は絶対になかったと言い切れますか。
  40. 有馬元治

    ○有馬説明員 金庫の検査について、ある種の勢力に押されるということは絶対にあってはならないことでございまして、われわれも絶えずその点について十分注意をしており、具体的な検査の計画におきましても、そういう誤解の生じないように、府県なりあるいは大蔵省なりと絶えず連絡をとりながら、そういう点については十分配慮いたしておるつもりでございます。具体的にどういうケースを御心配になってある極の勢力に押されて検査の公正を欠いたと言われるのか、具体的な御指摘があれば、また具体的に私もお答えいたしたいと思います。
  41. 石山權作

    石山委員 最近における選挙以前、あるいは選挙後の各労金の検査の状況を、あなたが表をお見になれば意図がはっきりわかると思います。あなたが御調査になれば、なるほどとうなずかれる点が私はあるのではないかと思います。こういう点は、はなはだおもしろくない論争になるので私指摘申し上げませんけれども、私は、私自身の判定からしても、今回の労働金庫の検査には、いささか行政機関がおもねって労働金庫をば監査したという経緯が見られてなりませんので、労働金庫を政治的な勢力から中立的に分離するということが確固たるものであるとするならば、今後そういうあやまちの絶対にないように私は要望したい。  もう一つは、この千葉県の労政当局に対して、あなたの方では何か特別の注意や何かをなされたか、またこれを契機にして、地方の労政課に特別の何か、示達をなされたかどうか、こういう点をお話し願いたい。
  42. 有馬元治

    ○有馬説明員 第一点の問題は、こういうことだろうと思いますが、若干弁解といいますか、御説明いたしたいと思います。昨年度の労金の検査計画は、検査の第一年度としまして、計画が全体として年度末にずれまして、第四・四半期に検査が比較的多く行われたのでございます。従って総選挙、地方選挙の時期とたまたまダブつたのでございまして、これは前もって計画を進めておったのが、計画全体として若干第四・四半期に集中した。それがたまたま総選挙、地方選挙の時期にぶつかったというのにすぎないので、その辺は、故意にわれわれがこういう計画を初めから持ったというのではないというふうに御理解願いたいと思います。  さらに千葉県の具体的な指導でございますが、この事件のすぐ翌日から、千葉県の副知事に、こういった事例が結果として起らないように厳重な警告を発しておきました。また全国的にもこの事例はまだほかに若干ありますが、そういう事例を取り上げて、厳重に警告を発する予定にしております。
  43. 石山權作

    石山委員 先ほど私は、知事に権限をゆだねる点をあなたにお問いしたのですが、ほんとうは労政課長あたりに聞く方があるいはいいかもしれませんけれども、これを契機にして、金融機関の本元である大蔵省に労働金庫の指導育成を移譲してしまうというふうなことを考えられませんか。
  44. 有馬元治

    ○有馬説明員 お尋ねの点がちょっとはっきりいたしかねますが、検査の権限だけを大蔵省に一本にしろと、こういう御意見ですか。それとも労金に対する指導面も含めて、現在の共管体制を大蔵省の専管に移せ、こういう御意見でありますか——私からそういう重大なお答えはしにくいのでございますが、現行法も各党派共同一致でできました議員立法でございますので、現行法のもとで十分育成指導ができるものと考えております。
  45. 石山權作

    石山委員 今回の事件、それから先ほどの第四・四半期に検査が集中的に行われたこと、これは労働省その他が実際の労働組合の気持というものにタッチしているならば、何も故意に選挙期間に無理に強行するという手はないのだ。これを強行しなければならないというところに、政治的中立をば逆に政治の中に巻き込んだということになりかねない。これは、労働行政をば政治的に運営しようとする労働省の役人さんたちの意図がほの見えるような気がしてなりません。ですから、もちはもも屋にまかせ、この際労働行政の政治的な運営とは別個に切り離して、金融機関としての育成監督が必要ではないかというふうに考えられてならないのでございます。これはあなたと討論するのでなく、大蔵省あるいは労働省でもよろしく御研究を願いたい。またわれわれ労働金庫側としても、この点を機会にいたしまして、いかにして政治の中立を守りながら、労働運動の中に労働金庫を育成発展させるかということについていろいろ考えてみたいと思うのですが、私の受けている印象としては、これは、金融機関として大蔵省にすべての権限を移管した方が、どうもいいのではないかという印象がしてならないということを一言つけ加えて終ります。
  46. 松原喜之次

    松原委員長 春日一幸君。
  47. 春日一幸

    ○春日委員 昨年の募れの本大蔵委員会におきまして、中小企業金融公庫の融資対象の中に映画館を加えろという議決が行われました。それはただし映画館の防火設備、衛生設備に限って対象にしろという委員会の決議が行われまして、当時大臣の答弁も、もとより国会の意思であるから、十分尊重してこれを実行しようということになっております。申し上げるまでもたく映画館は、特に最近におきましては、ニュース映画、あるいは文化映画、教育映画等を通じて社会教育にもはなはだ貢献してる面もありましょうし、わけて健全レクリエーションとして堅実な事業であることは疑いをいれないところであろうと思うわけでおります。ところが映画館に対しましては、娯楽機関という一般通俗的な概念から、金融基準においても非常に低いところにおります。わけて公けのそういう資金的な援助も受けられないような立場にありますことは、はなはだ不当なことでなかろうかと思うのであります。われわれは社会的に貢献しておりますこういう機関に、国の金融機関を通じて援助の手を差し伸べるということは当然なことと思います。しかもこれは、入場税その他を通じてそれぞれ国の財政収入の重要な分野を担当しております。いずれにいたしましても、これは委員会の決議なんだから、その国会の意思を尊重するという大臣答弁が誠実なものであるならば、当然すみやかにそういう行政措置を講ぜられなければならぬと思うが、本日そればどういうふうな経過をたどっているか、これに対して答弁を願います。
  48. 加治木俊道

    ○加治木説明員 お話の点、われわれの方でもその後検討を加えておりますし、またこちらで御決議になった経緯もよく存じておるのでありますが、決議に対してどう考えるかということであれば、私が御答弁申し上げるのはあるいは適当でないかと思いますが、ただわれわれが事務的に検討いたしましたところを披露させていただけば、われわれとしては、中小公毎の融資対象として映画企業を取り入れていいという結論にはまだ達しておりません。その理由といたしますところは、単純な娯楽機関というような考え方でこれを律するのは適当でないというお話でありますが、映画というものが果してすべて文化的な価値を持ったものであるか、あるいは健全娯楽と考えていいものかどうかという点については、私ではちょっと判断はつきかねますが、いずれにしても、今のところ中小公庫の資金は、努力はしておりますが、すべての中小企業者にまんべんなく供給するほど十分でないのであります。従って最も緊要度の高いものから順次取り上げて御不便をかけないように配慮するというような配慮を加えざるを得ないのであります。そういった意味におきましては、今のところ娯楽機関というものは一応われわれはすべて対象外にいたしております。なるほど要請されている資金は、衛生とか通風、あるいは防火、そういう観点からの特殊な資金のようでありますけれども、もし娯楽機関であっても、防火なり、あるいは衛生施設の観点から必要な資金であれば貸さなければならないというように決定いたしますとすれば、他の機関についてもやはりそういう防火なり、あるいは衛生の見地から同様に見てやらなければならないというふうに考えざるを得なくなるのではないか、一応今のところ、われわれとしてはまだ結論に達しておりませんが、やや否定的な見解を持っております。これはきわめて事務的な見解であります。
  49. 春日一幸

    ○春日委員 課長にこういう問題について答弁を求めるということは、はなはだ適切ではないかもしれませんけれども、しかし今の答弁に関連して一言だけ戒告をしておきます。あなたは今映画が健全娯楽であるか不健全娯楽であるか、私はまだ結論を得ていないと言うけれども、本日映画が不健全娯楽だというようなとほうもない考え方を声明している官吏というものは、はなはだ不穏当な官吏と申さなければならないのでありまして、映画館というものは、今ニュース映画、文化映画、その他健全レクリェーションのトップを行くものである。これをなお懐疑的な言辞をあえて吐くというようなことは、あなたの頭脳を疑わざるを得ないと思うのであります。よく慎重に各資料を調べて、もう少し勉強されることをお勧めしておきます。  それからもう一つは、そういう結論に到達していないといろいろ理論を述べられましたけれども政府というものは、国会の意思に基いて行政を運営していかなければならぬのであります。国会は映画館を健全娯楽と認定し、しこうして、なかんずくその全面的な施設を対象とするのではなくて、中小企業金融公庫の資金源が今充足されている段階でないので、従って映画館の中の時に防火設備、それから衛生設備、これは大衆が絶えずそれを利用する立場において、防火設備に遺漏があれば人命に危険をもたらすものであり、不衛生であればそのまま国民に悪い影響を及ぼすと存ぜられる。彼らが資金を得られないために、そういう危険な状態に置かれているものなしとしない。だから、そういうものが融資の申請を行なった場合には、やはりこれを対象として貸し出してやった方がいいだろう、こういう認定を国会が行なっているのです。本委員会で満場一致でもって行なっている。従って満場一致で行なった国会の意思に対してあなた方がとかくの批判を行うということは、これは申すまでもなく国会に対する反逆である。そういうような官吏の存在は日本政府の中においては許されないということをこの際一言申し上げておきたい。  それからもう一つ。あなたは判断を誤まっておられる。貸さなければならないとすれば、他にまたいろいろなものに貸さなければならぬことになると言われるが、金融というものはそういうものではない。すなわち利用者としての対象を追加するということは、貸すことができるということであって、貸さなければならないというような規定を本委員会がしようというような考え方はもとよりないのであり、またあなた方の政令も、法律も、そんな貸さなければならないというような条項は一カ条もない。だからそういうように詭弁を弄して国会の正しい論理をあやまたしむるような答弁を行うということは、まことにもってのほかである。いずれにいたしましても、あなたの御答弁ピンからキリまではなはだなっていないし、大蔵委員会が満場一致でもって決議した事柄が、本日半歳を了せんとしてなおその措置が実施されていないということは、政府の怠慢もはなはだしきものであろうと思うし、当時その決議に対する大蔵大臣の答弁も、国会の御決議でありまする限り、その意思を尊重して云々、こういうことを言っておったにもかかわらず、これまた本日までその措置が行われてたいということは、これは大臣の政治的責任を問わなければならぬ問題にもなろうかと思いますが、いずれお帰りになりましたら、河野銀行局長、藤枝泉介、こういう連中に一つ相談されて——泉介もこの問題については賛成をされた一人でありますから、どうか大蔵委員会の決議がすみやかに実施されるよう、あなたも事務的に促進されるよう強く要望いたします。  次に国税庁長官に、まだ五分ばかり時間があるようでありますから、この前懸案になっておりました一つの問題を解決したいと思います。あの幼稚園に対する所得課税の問題は、従来どういう工合になっておりましたか、昭和二十九年度からこれが変ったようでありますけれども、それはどういう工合に現在変っておりましょうか、幼稚園といい、保育園といい、これは社会的にもまた教育的にもはなはだ大きい任務を持っております。こういうものに対する課税措置は、それぞれ政治的な配慮が加えられなければならぬと思うのでありますが、二十九年度以前はどういうぐあいに取り扱われておったか、二十九年度以後においてはどういう工合に変更されたのか、それを一つ御答弁願いたい。
  50. 平田敬一郎

    平田政府委員 その前に、たしか前会調査してお答えするということで御留保申し上げてあることがございますので、それをちょっと御報告申し上げますと、昭和二十九年分の予定申告で減額承認申請をされた納税者が十六万六千人ございます。それに対しまして、承認をいたしましたのが十二万八千人、約八〇%弱程度は、全部または一部でございますが、主張をいれまして、減額の扱いをいたしております。前会どのくらいの状況かというお尋ねでございましたので、この機会に御報告申し上げておきます。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっとわかりませんが……。
  52. 平田敬一郎

    平田政府委員 二十九年の六月前の実績よりも低い額で申告したい、予定納税額よりも低い額で申告したいというので、減額の承認申請をされた方が……。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 幼稚園ですか。
  54. 平田敬一郎

    平田政府委員 いや、これは別の問題でございます。前会お尋ねがございましたので……。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 資料で出して下さいませんか。私はすべて文書で処理することにしているから、一つ……。
  56. 平田敬一郎

    平田政府委員 簡単でございますから、もう一ぺん申し上げます。この前、予定申告の際減額承認申請がどのくらいあるか、国税庁が申請したのを認めておるのがどういう状況かというお尋ねがございまして、正確な数字はこの次調べましてお答えいたしますと申し上げておきましたが、その数字でございます。十六万六千人が減額承認申請をなさいまして、そのうち十二万八千人の方々はそれぞれ減額したところによりまして予定納税額をきめるということにいたした次第でございます。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 それでは幼稚園の問題はあとにしまして、その問題で一つ……。だから私どもは申し上げておるのです。少くとも全納税者の中で十六万人というものが、税務署がお知らせというものを出されたことに対して異議があるという減額申請を行なった。そこで調べてみると、その中の八割をこえるものがやはりその納税者の主張が正しかった、こういうことに相なるのであります。これはまことに重大な事柄でありまして、ことほどさように、お知らせなるものがずさんきわまるものであるということを証明する数字であろうと思うのであります。従いまして、このお知らせ制度たるや、十六万何千人の諸君が申請して、調べてみると、その中の八割まではなるほどあなたのおっしゃる通り減額せざるを得ないという。すなわち、納税者に対してとにかく不当な脅威を与え、徴税当局もかような煩瑣な手続をとらなければならぬというような現行制度に対して、これは抜本根塞的な解決をはからなければならぬ。私がこの前質問いたしましたときに、ずぼらな中学の教師が採点する場合の扇風機の方式を述べたことがありましたが、税務署のお知らせというものが、あたかもそれに匹敵することをこの数字によって証明されたようなものであります。実情はそのような状態であり、さらに制度としては、法律に規定していないことがやられておるのであります。従って、どうかこの数字からも、十分一つお知らせ制度がすでに法律違反であり、またその現実はこのような結果を得ておるというこの事態にかんがみまして、すみやかに法律の範囲内に立ち戻られることを強く要望いたしまして、それから幼稚園に入ります。  幼稚園は、二十九年以前は一体どういうぐあいな課税の方針が行われておったか、その後はどういうふうになっておるか、御答弁を願います。
  58. 平田敬一郎

    平田政府委員 前段につきまして、あるいは私の説明がまずかったのか、少し春日委員、問題を取り違えておられるようでございます。はなはだ恐縮ですが、もう一ぺん申し上げます。今申し上げましたのは、翌年分を一応予定で納める際には、前年の実績に基いてやるという制度になっておることは御承知の通りでおります。この前年度の実績は、去年納税者から昨年分として御了承を得た額です。でありまするが、本年になって状況がいろいろな事情で悪くなった、災害でよくなかった、あるいは商売が著しく悪くなったというので、本年分としましては、これで予定納税をするのはつらい、それで本年分としましては、減額して予定納税したいからそれで納めさせてくれ、こういうのが減額承認申請でございます。お知らせの問題とはちょっと違いますので、それだけ申し上げまして御参考にしたいと思います。  それから幼稚園の問題につきましては、税法の建前といたしまして、幼稚園等でありまして文部省から正式の認可を受けまして、いわゆる学校法人としまして正規の手続を踏んでいるものにつきましては、幼稚園等に対しまして課税をいたしておりません。ところでそういう手続を踏むに至らない、まだはっきりした姿にまでなっていないものが相当ございます。こういう事業は、経営者個人の専業的な色彩が実は大分強いわけであります。もちろんだんだん発展いたしまして、手続を踏んできちんとなるものもだいぶございます。私どもは、そういうものは大いにそういうような方向になっていただきますのは、けっこうだと思うのでありますが、まだそこにまで至らない幼稚園、学校経営、いわゆる本式の学校まで至らない経営をやっておられる方々に対しましては、やはり経営者の所得を調査しなければならないわけでございまして、それを調査いたしました結果、毎年若干の方々がやはり所得税を納税するだけの所得ありといたしまして、納税していただいているわけでございます。もちろん年々調査をやっておりますが、昨年も、場合によりますと、前から漏れておったのがあるいは新しく調査されまして、納税者になられた方もおありだろうと思いますが、やはりそれぞれのところにおきまして所得税を納めてもらうということは、これはどうもやむを得ない。
  59. 春日一幸

    ○春日委員 二十九年度前はどうですか。
  60. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは別段特に方針をかえているわけではございません。ただ年々税務署もだんだん調査がうまくなっていきまするので、それに応じまして、あるいは今まで課税漏れになっていた方で課税された方々が出てきたことはあるかと存じます。別段それ以上特別の意味はございません。
  61. 春日一幸

    ○春日委員 そこで前段の御答弁の中に、私が聞き違えた面もありますが、その御答弁についてもやはり異議があるわけなのです。と申しますのは、インフレ高進期は、所得が年々だんだんと累増していくというような実態の上に立って、前年度の所得額というものをその年の所得額にするというような事柄も、これはあり得てよろしかったでありましょう。けれどもインフレがストップし、むしろそれがデフレの傾向をたどるということになりますと、前年度の所得を基準にして、そうして申告を行なっていくということは、今そのケースの中にも示されておりまする通り、本年度は前年度よりもうんと減っておるという形で、二期、三期で調整をするものはする形になりましょうけれども、所得の実額が違ってくるわけなのです。前年度より少いという状態があらゆる企業体に出てくるわけなのです。だから去年より所得額が減ってくるというこの実態において、前年度の所得を基準にして申告納税を行なっていくというこの制度そのものに対して、われわれは今や批判を加えなければならぬ段階に立ち至った、こういうことを前回申し上げたわけでございます。果せるかな今の数字によりましても、前年度の所得から十六万何十人の人々が収入減を来たしておる、そうして調査してみるとその通りだ、こういう形になるわけでありまして、私の先般の所論は正しかったという形になるわけです。そもそも所得額の本質というものは、実際の所得実額を対象とさるべきものであって、現実に二期、三期でどういう調整ができるといたしましても、その当初の申告額は、当核年度の所得実額というものを対象にして課税をされるのが本性的なものであって、余分なものを申告しなければならないというような状況にこの制度を置くということは、私は間違っておると思います。従いまして、前年度実績を申告基準にするという現行制度については、今や根本的に検討批判を加えなければならぬ段階に立ち至ったと私は考えておりますが、この問題は、きょうの私の質問の本旨ではありません。あなたが余分なことを言われるから、私も余分な質問をいたしたような形になってしまったのでありますから、この問題にはもう触れないでおきます。  そこで幼稚園の問題でありますが、私ども調査いたしました範囲によりますると、二十九年度以前は、大中小の幼稚園を問わず、所得税が課せられておらなかった。法律はそういう執行を認めていなかったのでおりますけれども、しかしながら幼稚園の本来になっておりまするいろいろな任務から考えて、社会的にも教育的にも貢献するであろうから、こういうような社会事業、教育専業に従事する者は、課税しないでおこうじゃないかというような国税庁長官の付帯の方針というようなものでありましょうか。いずれにしても、終戦後この幼稚園に対しては、課税されないというのが各国税局において踏襲されておった普遍的な方針であると伺っておるのであります。ところが二十九年度からその学校法人制度ができて、学校法人に対しては非課税にする、こういうことになりますと、学校法人に対しては非課税にするという特典を設けられたのに、学校法人ならざる一般の幼稚園に対して非課税にするというのでは、全然けじめがつかなくなってしまうので、学校法人にならないところの幼稚園は課税しようじゃないか、こういうようなことで、新しく課税の方針がとられるに至ったのではないかと思われるのであります。  そこで長い間、終戦後七年間にわたって、法律によらずして、行政指導とでも申しましょうか、こういう幼稚園に与えられておりましたところの特権が今回忽然と国税庁の一方的な判断で課税されるということになるといたしますと、ここに多くの問題が発生いたして参ります。と申しますのは、学校法人でいいではないかという説でありますけれども、これまた学校法人には一定の基準がある。土地、建物、その他いろいろな制度に基準がありまして、だれでもなれるというわけではございません。従ってその基準に満たないで、それよりも低いレベルにあるために学校法人になれない諸君に今度新しく税金が及ぶということは、私は事業そのものの性格から考えまして、これはむしろ今までの法人がよろしいと思う。今回これを契機として、いわば比較的小さい幼稚園に税が及ぶということは、私はどうかと考えます。これはわれわれがうかつでありましたが、法律によらずして非課税にしておったということは、これは疑義の生ずるところでございましょうが、ならば適当な法的措置を講ずるなり何なりいたしまして、今や幼稚園がいろいろな画において——ある意味においては、幼児の託児所的な性格を持ち、また基礎的な教養等においても貢献いたしておりますので、これについて、税法上の特典を従来通り受けられるような何らかの配慮を加えられる必要があると思うが、これに対して長官はどういう工合にお考えになっておりましょうか、答弁を求めます。
  62. 平田敬一郎

    平田政府委員 私も御趣旨のように、あまり小さい幼稚園を追っかけ回す、そういうものを対象にして一生懸命になるということは、これはどうもそういうつもりではございませんし、またそういう筋合いのものではなかろう、こう思います。従来から特に非課税にしてきたというわけではなくて、やはり実際上調査がそこまで行き届いていなかったということではなかろうかと思っておりますが、ただ法律もはっきりいたしまして、けじめをつけなくちゃならぬというものは、これまた一方税を執行する官庁といたしましては当然のことでありまして、そういう意味合いにおきまして、今お話のような、今まで実際上税を納めなかったものが納めるようになる人か出てきたのではないかと思っております。ただその場合考えていただかなければなりませんのは、ちゃんとした学校法人になりますと、学校から給料を経営者というか、代表者がもらうということになりまして、その給料に対しまして、やはり所得税をちゃんと納めてもらう、こういう道が開かれてくるわけでございます。ところが法人にならないで、全く個人でやっておられる場合におきましては、別に給料をもらうわけではございません。しかしそういう人は、やはり学校の、一種の幼稚園の経営によって、生活の資にしておられる方も全部ではないでしょうがある。そういう場合におきましては、その人個人の生活に充てられる所得というものがやはりあるわけでありますから、従いまして、そういう面に対しましては、法人になりますと当然給与所得が課税されますが、法人になってないと、課税の道がないことになっておかしい。やはり幼稚園の経営という一種の事業から所得を得て、それを使っているということになりますから、全然非課税にすることは、私はやはり行き過ぎではないかと思います。そういう性質のものでございますから、あまり一生懸命になってそういうものばかりを追っかけ回さないようにしろという意味でありましたら、私どもそういうつもりで運用をはかっていいと思いますけれども、けじめがついてはっきりなった場合には、これを全然ほったらかしておくというわけにはいかないものであると御了承願いたいと思う次第であります。
  63. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は全国に幾つありますか、幼稚園当事者にとっても重大な事柄になっておりますので、この質疑応答を通じて一つ明瞭にしておきたいと思います。  そこで明確にしておきたいことは、今度の学校法人の制度ができ上る前は、幼稚園に対しては課税されていなかったのです。それは法律の根拠なくして課税されなかった。長官の答弁によりますと、税務職員が未熟であって、そういう方面に手が届かなかったと答弁されておりますけれども、そういうようなことでは、これは許されない。国会も政府法律によらずこれを見のがしてあるというのは、それはやはり幼稚園の持っておるところの社会的な教育的な任務を高く評価した結果であろうと思うのであります。今長官が御答弁になりましたように、学校法人の制度が幼稚園にも及ぶことになると、学校法人にあらざる幼稚園は課税されなければならぬ。今度学校法人にあらざる幼稚園に対して課税が及ぶという新しい事態をここにもたらして参りました。そのギャップをいかに徴税行政を通じて調整していくかということが問題の焦点でございます。ギャップは二つあります。  その一つば非常に零細な幼稚園であって、学校法人になろうと思っても学校法人の規格を具備し得ないというものについては、課税するか課税しないか。今長官の答弁によりますと、そういう小さなものはなるべくとらえないように行政指導を行なっていきたいということであります。それは長官の一つのお考え方ではありますけれども、はっきりした法的な根拠を持たないで、末端税務署に浸透するかどうかは危ぶまれます。この問題も明確に願わなければならぬと思います。  それからもう一つは、昭和二十九年度におきましては、学校法人になった幼稚園——これは五月になったものも、十月になったものもありましょうけれども、そのなるまでの間の分に対して、その課税の及んでいるのがたくさんございます。所得を追求されるものがたくさんございます。ところがその経営者は、自分の財産を全部学校法人に寄付してしまっております。私立学校法第三章の学校法人によりまして、害付された財産は、学校法人が後日解散することありとも寄付者に帰属しないという規定がありますので、財産は全部学校法人にいってしまう。そしてその経過期間における所得は、本人に課税されてくる。こういうことになりますと、本人は財産は全部学校法人に寄付して、税金だけ自分が納めなければならぬということになりますと、これは担税力がないという形に相なります。担税力がない者に対して税金を課するということは、これまた政治的に検討を加えなければならぬ。本来ならば、学校法人に寄付した場合には、それを損金とみなすとかなんとかいうような経過措置が私は当然考えられるべきであったと思うのでありますが、学校法人に寄付した場合でも、それは損金に算入する制度がありませんので、従って所得は所得、損金とは認められないということで、税金が学校法人に切りかえた人々に及ぶ。しかも彼らは納めようにもその税金の出どころがない。納めようと思えば借金しなければならないし、そういう借金を背負えば、将来学校法人の経費の中に暗いものを作らなければならぬ、こういうことになると思うのであります。従いまして、私はこの少数——といっても全部では相当ありましょうが、二十九年度に学校法人に切りかえた人で、当該年度あるいはその前の所得、こういうものは累積されておりますから、そういうものに対しては、特に個人所得は追求しない、なぜかならば、そういう所得はあったであろうが、そういう所得は机になり建物になり、土地を拡張することに使われて、しかもそれは全部学校法人の財産に帰属して、本人に帰属していないのだ。こういう事実認定の上に立って判断すれば、私はそういう経営者から税金を取らなくても、不均衡というようなそしりを受けることはないと思います。  それで、以上申し上げました二つの問題、すなわち学校法人になり得ないような小さい幼稚園に対しては、今まで通りの方針で、税金をかけないという方針の確認、それから学校法人に切りかえたものの過年度における所得については、それが学校法人に寄付されたものである限り、制度的にはそれを損金とは見なさないけれども、特別の認定を行なって、事実上の損金として、学校に寄付されておるならば、それを所得の中から控除する。こういうことによって、今まで長年にわたって幼稚園に対して国会と政府とによって与えられましたところのこの恩恵を、そのままこの過渡期にそれが十分均霑するような工合に一つやっていただきたいと思うのでございますが、長官の御所見はいかがでありますか。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 前段の問題については、気持としてはごもっともなところがだいぶん多いと思うのであります。学校の中にも、幼稚園の場合は、お話通りの気持がぴったり来ると思いますが、たとえば服飾学校、洋裁学校といったような類似学校が実はだいぶございまして、そういう経営によりまして、相当な所得を上げ、あるいは個人的にも相当な生活をしておられる方も相当あることは御承知の通りでございます。こういう人々に対しましては、学校法人だから課税しないということになりますと、これはどうもやはりバランスがとれていない。幼稚園の場合でも、さっき申し上げましたように、学校にちゃんとなりますと、給与所得の形で経営者に税がかかってくる。ところがならないと、全然課税しないということになりますと、自分の生活に充てる分が一つ所得税、市町村民税その他におきましても、課税の対象にならないということになってしまったのでは、ちょっと行き過ぎではなかろうか。従いまして、あまり零細なものにつきましてむずかしい追求はしないで、常識的な調査をやりまして、納得いくくらいのところで納税してもらうというような線くらいが、常識的には私は妥当なところではあるまいかというふうに実は感ずるわけでございまして、そういう点、いろいろなお実態もさらに調べてみまして、できる限り皆様の御常識に反しないようなことになるように運用していきたいと思います。さっきちょっと私聞きましたところによりますと、たしか二十万前後の所得を得ておるというように報告を受けたのでありますが、そのくらいの所得でございますと、やはりちょっとした労働者でも大体そのくらいの所得がありますから、それくらいの分の所得に対しまして所得税を納めてもらうということは、たとえば幼稚園の経営者であっても、よく話せばおわかりになるのが多いのではないかと思います。しかし今までのいきさつもございますし、また御趣旨もございますので、よく実態を調べまして、あまり常識上おかしなことにならぬように運用をはかっていきたいと存じます。  それから後段の問題は経過的な問題だと思いますが、これは学校の施設を学校法人に害付した場合には、特に譲渡所得税は課税しないことになっておりますので、財産から税を納めてもらうという場合は、学校にちゃんとなった場合にはない。問題は、その人の前の所得でございます。学校になる前の一種の学校経営の所得、これがあとになって課税されて、その税金を納めるのに苦労される、こういう問題がある。これは額がそれほど大きくなりまして、寄付したところの財産を取りもどさなければ納まらぬものであるか。実際はそういう程度に至らぬものが大部分だと思いますが、その辺のところをよく調べまして、あまり無理なことはできるだけ避けていきたい。学校になる前の所得につきましては、これは所得自体が無理のないところでありますれば、やはり建前上納めていただくほかはないと思いますが、その辺も実情をもっとよく調べまして、できるだけ実際に合うように運用していきたいと思います。
  65. 春日一幸

    ○春日委員 実はただいまお話し申し上げましたように、慣習法とでも申しましょうか、幼稚園には課税しないということで、所得が累積されました。その累積された所得は、これだけ幼稚園でもうかったからこの校舎を建てた、今度累積された所得でいすを買った、机を買ったという工合に、不動産化されて、そうして今度学校法人法によってそれを全部寄付しちゃったわけです。従いまして、慣習法ではないにしても、今まで課税されなかったというような点、その所得を全部物にかえ、かえたものを幼稚園に寄付してしまった、それが今度所得に課税するという形になって、税務署ではさかのぼってその所得のもとをついていくという形になりますと、その累積されたものを、税法でいけば五年間さかのぼることもできるでありましょうし、そうなってくると、今までかけないでよかったものが一ぺんに取られるという、いわばペテンにかかったような目にあう諸君もたくさんあります。問題の存するのはそこであります。従いまして、そういうような、明らかに過去の個人営業、すなわち幼稚園営業によって得た所得が学校施設にかえられて、しかもその学校施設が学校法人に寄付されてしまった、こういう実体のものに対しては、税金が及ばないというのが私は当然の措置であろうと思います。こういうようなことがもし問題になるならば、この法人税法が審議されますときに、譲渡所得を非課税にしたと同じように、学校法人に寄付する場合には、これを損金として算入することができるという一項目を設ければよかったのでありますが、あなた方もうっかりし、われわれもうかつであって、当然になさねばならぬ処置を怠ったのでありますから、一つ償いのために、措置で十分彼らに不当な負担の及ばないようにお願いしたいと思います。  それから前段の学校法人たり得ない幼稚園を今後どうしていくかという問題でありますが、できるだけ深くしんしゃくを加えていこうという長官の御答弁でございます。とりあえずはそれでお願いするといたしまして、ただ学校法人と個人営業との不均衡、それは、源泉徴収によって一方は給与所得を納めている。片方は何も納めていないという点。これはしかし行政指導で、学校法人ならざる幼稚園にしてその従業員なり経営者がやはり給与所得を納めているというようなものについては、税法上の不均衡というようなそしりも、これによって解決できると思います。現実には幾らかの従業員、保母を置いて、その経営者がそういう経営をしております場合、彼らが良心的な措置をいたします場合、私がちょっと当ったところでは、その経営者たちは、学校法人でなくても、やはり給与所得をいつしか納めている、こういうのが相当たくさんございます。納めてないのもありましょうが、納めた分は、これは学校法人と権衡を保たれるわけでありますから、すなわち学校法人になるまでの間、彼らがみずから給与所得を納めている場合においては、今までの例によって、とにかく所得税の捕捉をできるだけ猶予していく。こういうような方法はおとり願えないものでありましょうか、その点お伺いしておきます。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 前段につきましては、既往にさかのぼっておるようなことはないと思いますけれども、実情をよく調べまして、酷苛にわたるようなことはないように、取り調べた上で善処したいと思います。  それから後段の話につきましては、学校法人になりませんと、やはり個人の事業ということに一応今のところなりまして、そこに勤務しておられる経営者以外の人、これはもちろん月給は払われるでしょうから、源泉課税はちゃんといただいていると思いますが、御本人自体の所得に対しましては、実は源泉課税するといいましてもしようがない。これは一種の能力なき社団といったような概念を取り入れて、能力なき社団から月給をもらっておるという場合、そういう法規を作れるか作れないか、これは私ども多年そういう問題を研究してみたのでありますが、そういう場合には相互の責任関係がはっきりしないので、現在立法措置がとられていないのであります。今までのところは、法人でなければ、経営自体は個人の経営である。そうしてきますと、経営から生ずる所得は、これはやはりその他の事業所得——もちろん営業ではございませんが、その所得に課税する、そういう一種の法人でない特別の団体から代表者が月給をもらうということを認めることは、今まで理論的にもどうも限界がむずかしいので、その取扱いをいたしていないわけでございます。そういう道を今後どうするか、これは研究問題だと思いますが、今のところによりますと、税を納めてもらうとすれば、その他の事業所得として、御本人分だけは納めてもらうほかないかと思う次第でございます。しかしそれにつきましては、今のお話、あるいは全体のことからいたしまして、特にそういう点をやかましく調べるということもないと思います。その運用に当りましては、できるだけそういう気持でいきまして、徹底をはかりたいと思います。
  67. 松原喜之次

    松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明三日午前十時より大蔵、地方行政、運輸、建設四委員会連合審査会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十三分散会