運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-25 第22回国会 衆議院 商工委員会日本経済の総合的施策並びに国土総合開発に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十五日(水曜日)     午後一時五十六分開議  出席小委員    小委員長 山手 滿男君       秋田 大助君    大倉 三郎君       長谷川四郎君    淵上房太郎君       加藤 精三君    南  好雄君       櫻井 奎夫君    田中 利勝君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    松尾 金蔵君  小委員外出席者         議     員 齋藤 憲三君         議     員 永井勝次郎君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 五月二十日  櫻井奎夫君五月十九日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度経済計画に関する件  人口並びに雇用計画に関する件  総合資金並びに産業資金計画に関する件     —————————————
  2. 山手滿男

    山手委員長 これより会議を開きます。  まず昭和三十年度経済計画に関し調査を進めます。本件について政府側の御説明をお願いいたします。調整部長松尾政府委員。     —————————————
  3. 松尾金蔵

    松尾政府委員 昭和三十年度経済計画大綱という取りまとめました印刷物がお手元に参っておるわけでありますが、これを中心といたしまして、なおもう少し詳しい資料もお手元に差し出してありますので、あわせて御説明を申し上げたいと思います。三十年度経済計画大綱としてお配りしておりますこの内容は、先般四月の十九日に閣議決定をいたしたものでございますが、これはさらに基本的には先般一月の閣議了解を経て公表せれました総合経済六カ年計画構想に基きまして、その初年度としての三十年度経済目標と、それからその姿を想定いたしまして、かつその目標達成のために必要な政策につきまして、基本的な考え方をここに取りまとめたものでございます。この大綱で見ていただきますように、大体その全般におきまして、さきにも申しました目標達成のための政策に関する基本的な問題をここに表明いたしておるわけでございます。そういたしまして、八ページのところに主要経済目標という表題で、これ以下におきましてこのような構想に基きまして、どのような経済の姿を想定すべきであるかということをおもな経済指標によって示しておるわけでございます。この九ページのところに掲げております主要経済目標ごらんになっていただきますと、まずここで三十年度国民総生産がどれぐらいの規模になるかということが、大体三十年度経済規模を見るための一つの目安と相なるわけであります。そういたしましてこの国民総生産は、ここにございますように昭和二十九年度におきまして七兆三千六百三十億、これは推定実績でございますが、これに対しまして三十年度が七兆五千五百九十億、比率をとってみますと、前年度に比べまして二・六%の上昇を示しておるわけでございます。この国民総生産計算とその次の欄にございます国民所得との関係とは、これらを取りまとめましていわゆる国民経済バランスを作って試算をするわけでございますが、その内容は、この十七ページのところの付表の第一表に掲げておる通りでございます。この表を見ていただくとわかりますように、まず計算のスタートとなりますものは、分配国民所得でございますが、御承知のように二十八年度五兆九千六百四十九億、これは積み上げ計算に基きましたところの実績でございます。さらに二十九年度六兆一千九百七十億、これはまだ若干の推定が入っておりますけれども、これもやはり一応積み上げました実績数字になっておるわけでございます。この従来の国民所得実績から三十年度国民所得推計をいたすわけでございますが、その内容は第二表に分配国民所得としてその内訳があがっております。なお、この表よりもさらに詳しいものをきょうお手元印刷物で配付いたしたわけでございますが、この第二表の国民所得を見ていただきますとわかりますように、大きく分けまして勤労所得個人業主所得、それから法人所得、この辺が大きな項目に相なるわけであります。特に勤労所得はこの構成比のところでごらんになりますように、大体国民所得の約半分近くを占めておるわけでありますが、この勤労所得は二十九年度までの実績の上に本年度において賃金及び雇用者の数がどのように変動するであろうかという点を推計をいたしまして、そのような変動指数をかけて三十年度勤労所得推計をいたしたわけであります。また個人業主所得関係は、個人業主が取り扱いますところの、生産面においては生産の量、具体的には鉱工業生産生産水準が問題になり、さらにその物価水準が問題になるわけであります。これを前の表に戻って見ていただきますと、鉱工業生産は一・五%の上昇想定をいたしておりますし、農林水産生産水準は三・六%の上昇想定いたしております。また卸売物価につきましては、前年度に比べまして、平均をとって二形の物価の低落を想定いたしておるわけでございますが、これらの変動指数をかけまして個人所得を算定いたしたわけであります。  法人所得につきましては、本年度経済全体の景況を見まして、従来の法人税等から想定されます推定実績の上から推計をいたしたわけであります。これらの推計を加えてみますと、三十年度国民所得は六兆三千二百三十億、こういうふうに想定されるわけでございますが、これを国民総生産規模の形に引き直しますのには、ここに調整項目といたしまして税の関係を加え、補助金等を差し引き、それから資本減耗引き当て等を加えまして、つまり国民のふところに入る所得から、これをいわゆる消費の価格に引き直すというような考え方による調整をいたしますと、ここに国民総生産の額が出てくるわけでありますが、これはここにございます三十年度七兆五千五百九十億、前年度に比べまして二・六%の上昇を示すことに相なるわけでございます。さらにこのような国民総生産の価額が今年度経済の動きの中で、どこに消費され、どこに支出されていくかという点が、この以下に示しているところであります。国民支出の額は、基準が七兆五千五百九十億でございます。国民支出の中で、特に問題といいますか、重要な項目といたしましては、本年度個人消費にどれだけ振り向けられるか、また国内資本形成、特に民間資本形成にどれだけ振り向けられるかという点が本年度経済の形として重大であるわけであります。この個人消費関係は、日本経済の基盤を強化し、また資本を有効に投じて経済の成長を期しますためには、そういう観点だけから申しますと、個人消費はむしろ少いことが望ましいわけでありますけれども、これは前の表にもございますように、本年度一・二%の総人口増加があるわけであります。従いまして相当数就業者増加も出てこなければならないわけでありますし、賃金等もそう下るということも期待できないわけであります。そういう点から申しますと、片方個人貯蓄がどれだけふえるかという点を抜きにして考えてみますと、やはりどうしても個人消費はふえざるを得ない、ここで想定をいたしておりますのは四兆七千六百九十億、前年度に比べまして二・三%程度の、個人消費支出総額における増加はやむを得ないというふうに考えて想定をいたしておるわけでございます。しかしこの個人消費支出は、御承知のように総人口消費でございますから、これを一人当り消費水準に引き直して考えてみますと、これはその次の第三表に個人消費支出の一人当り消費水準が示されておりますが、これでごらんになっていただけますように、総人口から一人当り名目個人消費に直しまして、さらにそれに物価変動を織り込んで、実質個人消費支出、これを一人当り計算をいたして参りますと、前年度に比べて二・八%の個人消費支出増加、いわゆる消費水準が前年度に比べて二・八%実質において上昇し得るというような想定をいたしておるわけでございます。  次に重要な項目は、資本形成でございますが、この中の政府資本形成本年度予算から引いてこられる数でございます。この金額の絶対額はそれほど大きな金額ではないのでありますが、民間資本形成関係がどうなるかという点は、これは本年度のみならず今後の日本経済構成等にも重要な項目であります。これらの点はここにございますように、本年度一兆二千四百九十億、これは前年度に比べまして、一一・六%の民間資本形成上昇を見込んでおります。これを前年度の姿と比較していただきますと、二十八年度から二十九年度には逆に指数におきまして、八二・二%、つまりここで一七・八%程度、二十八年度から二十九年度の比較では民間資本形成低下して、きておるわけであります。これは一つには御承知のように二十二年度が一部にいわれましたような資本投下の非常に大きかった年であります。いわば過剰投資の年というふうにもいわれたのでありますが、そのような二十八年度に比べますと、二十九年度にはこのように資本形成低下いたしておるのであります。しかし三十年度におきましては、経済六カ年計画初年度という構想から申しましても、やはり必要な資本投下は当然期待しなければならないというような構想によりまして、ここで前年度に比べて一一%の上昇、これを二十八年度から三カ年の姿をとってみますと、二十八年度から二十九年度に相当急カーブを描いて低下いたしました資本形成が、三十年度におきましては、まずその半分程度押し戻して上昇するような姿を想定いたしておるわけでございます。  なおそのほかの総支出政府財貨サービス経常購入及び政府資本形成、これらは本年度の一兆予算及び地方財政規模ともあわせて考えましてここに計数を盛ったわけでありますが、このように個人消費政府及び地方公共団体消費、あるいは資本形成、さらに民間資本形成、これらの国民総生産がどのような形で支出されるかということの姿をここに想定いたしておるわけであります。このような国民経済計算の形で日本経済規模とそれから大体の方向が、これによって計算されておることに相なるわけであります。  なお前の九ぺージの表にもどりまして、上の方の欄から入って参りますと、ここで本年度の労働問題、雇用問題が上の方に示されておるわけであります。ここで三十年度計画のみならず、いわゆる六カ年計画計算方式は、総人口から生産年令人口を引きまして、そこからどのくらいの人数が働く意思を持って仕事を求めておるかという、いわゆる務働力人口を出しておるわけであります。これは生産年令人口に達したものに労働力率をかけて、労働力人口というものを出すわけでありますが、これは二十八年度では六七・六というのが実績であります。二十九年度は六七・七というのが実績でありますが、三十年度はほぼこれと同じ水準労働力率を出しまして、労働人口計算いたしますと、ここに四千百十八万人の労働力人口本年度就業機会を与えなければならないということに相なるわけであります。そういたしまして、この労働力人口に対してどれくらいの就業者見込みがつくかという点は、各産業部門ごとに対してある程度試算をいたしまして——もちろんこの推計は非常にむずかしいのでありまして、必ずしも十分な推計はできないのでありますけれども、一応生産伸びでありますとか、あるいは商業部門活動状況等から推計をいたしまして、従来の実績にその推計を入れますと、大体本年度経済活動規模にそのまま合致する就業者見込みの数は、ここにございますように四千五十五万人に相なるわけであります。そういたしますと、その差である六十三万人という、昨年度とほぼ同じ程度失業者が今年度残るという形に相なるのでありますが、しかしここには何もしないで六十三万の失業者数にとどまるというふうには予想されないのであります。これはむしろ失業者の数を前年度以上にふやさないのにはどういうふうな対策をとったらいいかということをあわせて考えまして、就業者の数を出しておるわけであります。本年度状況から申しましたような労働力人口関係から申しまして、約八十万前後の労働力人口増加がここにも出ておるわけであります。それに対しまして鉱工業生産伸び経済活動伸び等計算いたして参りましても、大体十三万ぐらいの就業者見込みの穴があいてくるように推計をいたされるようであります。この十三万ぐらいの就業者の穴に対していわゆる失業対策その他による特別の就業機会を与える対策が必要になってくるわけでありますが、これらは本年度予算でほぼ十三万ぐらいの就業機会増加失業対策等によって行い得るように計算はされますので、それを加えまして、四千五十五万人の就業者数になりまして、ここに失業者の数は前年度以上にはふえないというような対策を織り込んだ想定をいたしておるわけであります。なおその次の若干の項目先ほど来御説明をいたした通りであります。  次に鉱工業生産、それから農林水産生産水準でございますが、鉱工業生産は御承知のように前年度あのような、いわゆるデフレ引き締めといわれました時期にもかかわらず、ここでごらんになりますように、やはり前年度においても一・二%程度鉱工業生産水準上昇を示して参っておるわけであります。また最近の生産実勢も必ずしも弱くはないようであります。現在の日本生産構造なり生産設備等から見ますと、おそらく有効需要がつけば、やはりどうしても伸びようとするような潜在力日本産業は持っておると思います。しかしそれが本年度どのように生産伸び得るかという点は、主として国内消費国内投資、それに輸出等による海外有効需要が、この生産水準を支配する大きな項目であろうと思うのでありますが、先ほど来御説明をいたしましたように、個人消費も相当ふえまして、二・三%程度上昇を示しますし、資本形成、特に民間資本形成では一割以上の資本投下増加を見込んでおります。従いまして、これらの点は鉱工業生産上昇ファクターに相なるわけでありますが、しかし他面国際収支関係ごらんいただきますと、輸出関係ではたしか前年度の十六億ドルの輸出に対しまして、本年度約五千万ドル程度輸出増加を期待いたしております。しかし他方特需関係におきまして、前年度五億八千九百万ドルの特需の収入であったのに対しまして、本年度は四億二千万ドル程度、ここに一億数千万ドルの特需減少がやむを得ないのではないかというような姿が想定されるのでございます。そういたしますと、かりに輸出の方で五千万ドル増加いたしましても、特需の方で一億数千万ドルの減少があるといたしますと、海外需要の面は前年度に比べて、むしろ若干減るという姿に相なるわけであります。この点はむしろ鉱工業生産に対する有効需要の面ではマイナスファクターに相なっておるわけでありますが、これらの点のプラス・マイナスを勘案いたしまして、大体鉱工業生産伸びようとする実勢有効需要結びつきを考えてみますと、本年度一・五%程度鉱工業生産上昇を期待できるであろうというふうに想定をいたしたわけであります。農林水産生産水準関係は、これは想定鉱工業生産水準以上にむずかしいわけであります。御承知のように天候に支配されやすい生産でございますし、その推定はやはり一応平年度作に相当する天候ということを一応想定をいたしますと、ここにございますように、前年度に比べまして、三・六%の上昇、これは昨年度におきまして一応平年作ということになっておりますけれども、やはり米の関係は若干平年作以下になっておったわけであります。そういう関係を考えてみますと、この程度上昇に相なるであろうというふうに想定をいたしたのであります。  次に物価関係に入りますと、これは御承知のように前年度、この表に実績が示しておりますように、大体三%程度卸物価が前年度より低下をみたのであります。最近の物価の趨勢は、まず横ばいということに相なっておりますが、これも先ほど来申しましたような生産物資需給関係から想定をする以外にはないと思いますが、先ほど申しましたように、国内消費及び投資はふえましても、海外での需要が若干あるいは相当程度低下することを考えてみますと、しかもなお生産伸びようとする実勢にあることを考えてみますと、この程度年度間平均における物価低下を期待できるであろう。特に御承知のように前年度末ごろ、鉄鋼及び非鉄金属中心とします物価上昇機運があったのでありますが、これもすでに御承知のように、最近はそういう物価上昇機運はなくなったようであります。全体といたしまして、物価横ばいというよりも、弱含みというように想定いたしたのであります。  その次のCPI、いわゆる消費者物価関係は、これもやはり農水産物等のでき工合にもかなり影響されるのでありますが、本年度繊維その他を中心として、消費物資もかなり値下がりが期待できるでありましょうし、また農作物も平年作であることを予想いたしますと、この程度低下を期待し得る。一・七%程度低下を予想いたしたのであります。  なお最後に国際収支関係でございますが、これは先ほど輸出特需につきまして、御説明をいたしたのでありますが、片方輸入関係を見てみますと、前年度輸入がここにございますように、十六億九千二百万ドルの実績を示しております。しかしカッコ内の数字に示してありますように、ユーザンスによる支払い繰り延べが若干ございましたので、そのユーザンスによる支払い繰り延べを除いて考えて、いわゆる裸の形に直しますと、十七億九千七百万ドルの輸入支払いがあったわけであります。しかしこれは御承知のように二十九年度輸入はかなり低いと申しますか、生産活動等から見ますと、かなり低目で進んできたのでありまして、御承知のように、いわゆる在庫の食いつぶしによって、この程度輸入にとどまるのではないかというふうに考えられるのであります。在庫の食いつぶしがどのくらいかという想定は非常に困難でありますけれども、よく言われますように、約一億ドル程度在庫の食いつぶしというようなことがほぼ常識的にも判断できるのであります。さらに本年度生産上昇輸出伸張というようなことを考えてみますと、本年度大体二十億ドル程度輸入が必要であろうというふうに想定をいたしたのであります。ここではドル・ユーザンス増加も入れました、いわゆる支払い繰り延べの形では十八億八千万ドルの輸入でございますが、ユーザンスによる支払い繰り延べを別にして考えますと、十九億一千万ドルの輸入というふうに想定をいたしまして、これで大体生産国内消費等関係バランスもとれるという想定をいたしておるわけであります。このように輸出特需及び輸入関係のほかに、貿易外の統計をとって参りますと、昨年度三億三千九百万ドルの国際収支黒字に対しまして、本年度は五千三百万ドル程度黒字にとどまる。その主たる原因は、輸入における増加と、特需減少が大きな作用をいたしまして、前年度に比べて国際収支バランス黒字は非常に減りますけれども、しかし特需における一億数千万ドルの特需減少の上に、しかもなお国際収支が五千万ドル程度のとにかく黒字を示す。国際収支バランスがとれるという点は、やはり輸出努力によると思うのであります。本年度十六億五千万ドルの輸出目標は、前年度に比べてその伸びが低いではないかという見方もあるいはあるかと思いますが、十六億五千万ドル程度輸出伸張も、実際の問題としては各市場別の実情を考えてみますと、これもなかなかむずかしいといいますか、努力を要する輸出目標であろうと思います。しかしこの程度輸出達成がなければ、本年度国際収支バランスをしないということにも相なるわけでございます。このような輸出への努力と同時に、国内労働力人口増加に対する就業機会をできるだけ与えて、失業者の数をふやさないように、こういう点が三十年度経済計画の主要な目標に相なっております。一応これでおもな経済指標の御説明を終ったのでありますが、なお資金面関係がこれまでの御説明では除かれております。入っていなかったと思いますが、それは別に総合資金需給バランス産業資金需給計画をお配りしてあるはずだと思います。時間の関係で簡単にその点も御説明さしていただきたいと思います。  資金の面について考えますと、三十年度資金の全体の姿がどうなるかということは、最終的には日銀券総額発行残高がどうなるかということの姿になって参るわけでありますが、御承知のように、本年度は前年度に引き続きまして、いわゆる健全財政健全金融の建前という基調のもとに、三十年度経済を進めようという考えから入って参りますと、通貨の総量におきましては、前年度に比べてそう大きな変動はない。その基調は同じである、大差ないという前提に立って、本年度資金需給見込みを立てたわけでございます。御承知のように二十九年度末の日銀券発行残高は五千三百七億であったのであります。三十年度末における日銀券発行残高もほぼこれに近い、いわゆる大差ないことを想定いたすべきであると思います。そして本年度資金需給の総合的な形を見て参ります際に、政府財政資金の対民間収支がどうなるかということと、金融機関関係収支がどうなるか、この二つの大きな経路に分れるわけでございますが、財政資金の対民間収支はすでにしばしば説明されておりますように、前年度千九百億円の散超に対しまして、本年度七百億程度の散超が予定されております。財政資金面からの散布超過は、前年度に比べてかなり減少をいたすわけでありますが、しかし片方金融機関関係手元資金手元に集まります預金関係は、前年度実績は五千九百億円であるのであります。これは本年度状況では、先ほど来御説明をいたしましたような国民所得の中の個人所得、この個人所得の中でどれだけが貯蓄に回るであろうかということ、いわゆる貯蓄性向計算いたしまして、その想定をいたしまして、本年度預金増加額を見込むわけであります。本年度は六千二百億、前年度に比べまして三百億程度預金純増を期待し得るというふうに考えております。そのほか金融債は二百三十億で、前年度大差ないのでありますが、政府投融資関係では、これはいわゆる財政投融資関係から、財政投融資運用額だけではなくして、運用されると同時に、回収の面を差引計算をして出してみますと、政府投融資金額は、前年度に比べてやや増加する計算に相なって参るのであります。ここでは千百一億というふうに想定をいたしております。このようにして参りますと、金融機関手元に入って参ります資金吸収額は、七千八百八十五億、これは前年度に比べまして五百五十六億の増加を示しておるわけであります。このような資金がどのように運用されるであろうかという点は、金融機関手元からは、いわゆる貸し出しの形で出て参ります。また一部には有価証券の形で資金運用されると思いますが、貸し出し関係は、前年度におきまして四千億の民間金融機関貸し出し実績として出ておるのでございます。本年度全体の姿から考えてみまして、先ほど申しましたように、財政資金の対民間収支散超が、前年度よりも減っておるわけでございますが、それとバランスをとって資金需要面を考えてみますと、当然金融機関手元からの貸し出し純増は、前年度よりも増加しなければならないと考えざるを得ないのであります。ここでは一応五千三百億円と想定をいたしております。前年度に比べまして千三百億円の貸し出し純増を期待しておるわけであります。そのほかに有価証券への運用があるのでありますが、これらを合わせて参りますと、金融機関手元における運用額は七千二百五億、前年度に比べまして五百七十二億の増加というふうに想定をいたしたのであります。この七千二百五億という金融機関資金運用額と、先ほど説明をいたしました金融機関資金吸収額七千八百八十五億との差額は、いわゆる金融機関手元資金としては余裕のある計算になるわけでありますが、そのうち六百八十億円程度は、いわゆる日銀借り入れの返済に充てられるであろうというふうに想定をいたしまして、現在の金融機関のいわゆるオーバー・ローンの形は、六百八十億円程度本年度においても改善されるというふうに想定をいたしたのであります。これは前年度千六百億の日銀借り入れの減少年度間で出ておりますが、本年度も引き続きまして六百八十億円程度の日銀借り入れの減少想定いたしたのであります。こういたして参りますと、日銀券は全体で約七億程度減少を見て、最終的には日銀券年度発行残高は五千三百億で、当初に申し上げましたような意味で、通貨の発行総量におきましては、前年度大差ない。いわゆる資金面基調は前年度とほぼ同様であるというような計算に相なるわけであります。このような総合資金需給見込みから本年度産業資金の供給見込み想定いたしたのでありますが、産業資金はただいま申しました総合資金の中の産業用に向けるだけの資金を切り離して想定をいたしておるのであります。この表でごらんになりますと、まず産業資金の供給源としましては、社内留保、減価償却等の内部資金等がまずあるわけでございますが、そのほかに財政資金あるいは民間資金等から産業資金に動員されますいわゆる外部資金の二つに分れるわけであります。内部資金関係は前年度とそう大きな変動はございません。減価償却等において、固定資産の増加による若干の増加がございますが、内部資金に大きな変動はないわけでございます。しかし外部資金関係になりますと、まず財政資金関係で、開銀、輸銀以下、いわゆる財政資金を取り扱っております金融機関別に、その貸し出しと回収の差額をとってみまして、いわゆる貸し出しと回収との差額の純増分だけを計算をして参りますと、その合計額におきまして、前年度の千二百四十五億に対しまして、本年度千三百四十四億というふうに、前年度よりも約百億程度増加が期待されるのであります。さらに民間資金関係に入りますと、株式、社債等には若干の増加は期待できると思いますが、それほどの大きな変動はございません。しかし貸し出し関係から参りますと、先ほど来申し上げましたような金融機関手元資金状況から申しまして、また財政資金の散超の減少に対応する考えから申しましても、貸し出し金額は前年度に比べてかなりふえることを期待できるし、また期待すべきである。前年度の三千七百億に対しまして、本年度四千九百億、ここで千二百億円程度貸し出し増加を期待いたしておるわけであります。本年度は全体から申しまして、先ほど来申しましたような投資の面における資金需要増加ももちろんあるわけでございますが、これはこの面では前年度の九百八十億に対しまして、千百億のいわゆる設備資金貸し出し増加を見込んでおります。しかしそれ以上に本年度先ほど申しましたような生産活動の上昇、あるいは輸入増加に伴いますところの輸入原材料の買い取りのための資金需要増加、あるいは前年度全体のいわゆる生産の段階、あるいは流通の段階におきましても、かなりの在庫減少があったのでありますが、この点は若干在庫の補充が本年度に行われるであろうというようなことを想定いたしますと、運転資金の面で、かなりの資金需要増加が予想されるのであります。この面から、いわゆる運転資金貸し出しの面は前年度の二千七百二十億に対しまして、本年度三千八百億、ここで約一千億の運転資金貸し出し増加想定いたしております。全体といたしまして総資金におきまして、前年度の九千九百九十四億に対しまして、本年度一兆一千九百十億、約千九百億程度の全体の産業資金増加想定いたしたのでありますが、そのうち特に大きく資金需要の面を考慮いたしまして、増加を予想されますのは、先ほど説明いたしましたような、金融機関貸し出しの面で、特に運転資金貸し出し、逆にいいますと、運転資金需要増加が多いであろうというところに、一番大きな変動要因があるだろうと思います。  一応全体の需要資金の面を御説明申し上げた次第であります。
  4. 山手滿男

    山手委員長 ただいま政府より説明のありました諸問題について、御質疑はございませんか。  この際、議員永井勝次郎君より小委員外の発言を求められておりますので、これを許すに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山手滿男

    山手委員長 御異議なしと認め、これを許します。永井勝次郎君。
  6. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 三十年度経済計画大綱の第一ページの、この計画の前提条件となる部分について、ここに第一に国際経済情勢は良好に推移する、こういう予定を立てておるが、どういう根拠でこういう想定が出てきておるか。それから輸出競争は今後さらに激化するとあるが、どんな形で、具体的にどういう方向にこれが激化していくのか。それから特需が相当減るであろう、こういうことでありますが、特需を一体国内産業構造の中でどんな位置を与えて、どんな形で、どんな性格でこれに対処していくのか。そういった関係一つ総合的に御答弁願いたいと思います。
  7. 松尾金蔵

    松尾政府委員 三十年度経済計画大綱を策定いたします際に、ここに書いてございますような計画策定の前提というようなものを想定しないと、かりに国際経済情勢に大きな変動がありますと、このような計画そのものが大きく影響されてくるわけでございます。ここで国際経済情勢は良好に推移するであろうが、と申しましたのは国際経済圏におきまして、現在程度の国際平和の形のままで国際経済全体として発展をし、上昇を続けていきますと、おそらく、現在の各国それぞれの立場から輸出市場がそうむやみに大きいわけではございませんから、各国の輸出競争がその面からも非常に激化してくるであろう。御承知のように英、独、仏のみならず、イタリアその他各国いずれも輸出競争に専念をして、自分の国の経済自立、あるいは外貨の獲得に県命になっておるわけでございますが、これが国際情勢が全体に現在程度の平和な情勢で経済発展をして参りますと、当然各国との輸出競争に打ち勝って、自分の国の経済の立場を強化しょうということになることは、一応予想されるわけであります。これはこういうことになるならぬというよりも、一応常識的に現在考えられる程度のことを前提として計画を策定した、こういうつもりであります。  なお特需関係でございますが、特需先ほど説明いたしましたときにも触れましたように、前年度に比べまして一億数千万ドルの特需減少本年度起るであろうと申しましたのでありますが、これは特需金額想定そのものが非常に、相手方のあることでむずかしいわけでありますが、しかし全体としましては、御承知のような狭義の特需減少もかなり大幅に最近出て参っております。そういう状況におきまして、日本側の立場から、やはり国際収支バランスをとる上から、特需をほしい、ほしいというだけで進むわけにはもちろん参りませんし、日本経済構造全体から申しまして、もちろん特需の中で完成兵器の部分が決して多いわけではございませんけれども、完成兵器以外に一般の物資サービス等も特需の中に入ってくるわけでありますが、全体から見て参りますと、今後だんだん減っていくであろうし、この減っていくことを食いとめることで、日本経済の中における特需の位置をいつまでもつないでいこうということは当然できないし、むしろ六カ年の総合経済計画自身が、特需のゼロの場合に経済自立を達成することを目標としておるわけでございますから、この点はむしろすなおに本年度四億二千万ドル程度まで特需が減るだろうということを率直に推定をしたということでございます。
  8. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 国際経済情勢に対する分析、それから輸出競争における管理貿易の現在のワク内において、競争が激甚になるのか、あるいは自由貿易という方向の形において激化する情勢にあるのかというようないろいろな問題については、なお論議のあるところでありますが、一応この説明した内容について順次尋ねて参ります。  二ページの二行目に、三十年度においては経済の安定に相当な重点が置かるべきは当然だとしてありますが、これは資本投資のワクをふやさないで、そのワク内操作でこれを重点的にする、こういうことがこの内容なのかどうか、これが一点。  その次に雇用増大の要請があるとしてありますが、われわれの見るところでは、かえって失業が増大する見通しが濃厚であって、雇用需要が増大する要請という見通しはわれわれには想像されないのでありますが、それがどういうところにこの雇用増大の要請が刺激されてきておるのか、この点。  次にはずっとまん中ごろにいって、資本蓄積の増強、重要産業資金の確保というところに参りまして、投資の重点化、効率化ということがうたわれておるわけですが、これは内容的に従来のいわゆる投資の重点化、効率化というような一つ考え方と、また具体的な政策の上に現われてくる一つのものとの間に、一体どういう違いがあるのか。  その次には、そのためには資本蓄積及び重要産業資金の確保が必要とされて、法人税であるとか個人税、こういう減税措置によって、一一・六%の民間資本の形成の増大を期することができるとされていますが、具体的に、法人税でどのくらい、個人所得税においてどうというような、各税の間から、どれだけの蓄積資金がこの中から出てくるのか、具体的にこれを一つお示し願いたい。  それからその次には、三十年度以降の予算において、あるいは経済計画内容において相当問題になってくるのは、やはり米国余剰農産物の買い入れ計画、これが相当問題になってくるのでありますが、これらに対する交渉の経過と計画内容、これを明らかにしていただきたい。  それから輸入特殊物資に関する問題。これをどういうふうな形で特別会計の中でどういうふうに処理するか。  それからその下の方に世銀の借款と今後この計画の中で予定されておる内容と違うのか違わないのか。今までの交渉の経過なり今後の見通したり、こういうものを一つ一括して説明していただきたい。
  9. 松尾金蔵

    松尾政府委員 まずお話の第一点の、「経済の安定に相当な重点が置かるべきは当然であるが、」ということの意味でございますが、これは先ほど来御説明を申しました、総合資金需給バランスにおきまして、最後の日銀券発行残高が、前年度と同じように、最終的にほぼ横ばいだという形で比較的具体的に現われてきていると思います。先ほど説明申しましたように、財政資金関係では、散布超過が、前年度よりも千二百億ほど減るわけでございます。しかし片一方、金融面の操作におきましては、それをほぼ補うくらい運用増加があります。しかし金融機関自身も、相当程度日銀の借入金を返済いたしまして、金融面も若干正常化の姿に戻り、財政面もやはり前年度に引き続いて健全財政基調に立って、いわゆる健全財政健全金融の形で、しかもなお必要な資本投下は重点的にやっていく、そういう意味の、経済基調の安定性をくずさないでこの経済計画を遂行していこう、こういう意味合いになると思います。  それからその次の、「雇用増大の要請がある」という点は、あるいはこの表現は少し不適当であるかもしれませんが、ここで申しておりますのは、先ほど説明でも触れましたけれども、前年度に比べまして八十四万の労働力人口増加があるわけでありますから、この労働力人口増加に対して、片方完全失業者の数をふやさないという方針からいたしますと、どうしてもいわゆる雇用、就業増加政策が要請される。ここで申しておりますのは、雇用増大をしなければならないという、その要請を言い表しておるつもりでございます。  それから第三の財政投融資の重点化、効率化、あるいは全体の資金の重要産業への運用を確保する、その方策はという点でございますが、これもここにごく簡単に触れておりますようなことを大体敷衍することになると思いますけれども、現在の情勢で、いきなり資金の統制とか直接的な強い規制ということは考えられていないわけでございまして、先ほど来申しましたように、現状で資金をどういうふうに重点的に運用するかというと、それをいわば誘導して行くような性格をある程度持っておると思います。その財政投融資の額をふやすのみならず、その運用においても重点化、効率化をはかって、それと大体歩調の合うような民間資本の動員が行われますならば、これでいわゆる資金の効率的な運用ができる、まあそういうことにしなければならないわけでございます。従来でも、大体どういうものが重要産業であるか、どういうところへの資金運用が望ましいかということは、事実上財政投融資の面等ではかなり具体的に示されておったわけでございます。同時にまた、市中金融機関も、そういう考え方はほぼ頭に入っておるわけであろうと思います。しかしこういう資金運用についての考え方等につきましては、さらに検討を加えまして、金融機関に対しましても、政府の意のあるところをよく納得してもらって資金運用をしていただくというような方法が、並行的に考えられなければならないと思います。  なお余剰農産物の関係でございますが、これは前内閣からの引き続きの案件として、御承知のように、具体的な協定を結ぶ日が近く迫ったところまで進んで参っておるわけであります。現在まで御承知のような経過的な問題も若干あったのでありますが、それらの点につきましても、アメリカ側と大体了解がつきかかっております。いずれ近い機会に買い入れ計画の実施に関する向うとの話し合いの結果の協定といいますか、そういうものができると思います。  輸入特殊物資の関係は、これも御承知と思いますが、本年度輸入特殊物資から上る利益を吸い上げて、それを産業投資特別会計の方へ移して、それから財政投融資の方へ回すというようなルートを一応現在では予想しているわけであります。特殊物資は、御承知のように、砂糖のみならず、パイカンあるいは、バナナというようなものが予想されているわけでございます。  なお世銀借款の関係でありますが、これはここに書かれておりますように、農業開発、電源開発、鉄鋼業、さらに細目的には機械、石炭というようなものが従来から一応世銀との交渉の過程に上っているわけでございますが、特にここにあります農業開発、電源開発、鉄鋼業は、向うとの交渉がはっきりと進捗しておるものであります。現在最終的にはまだきまっておりませんが、何回も向うから調査団等が参っておりますので、いずれ近くそれらのものについても世銀借款の実現ができるというふうに考えております。
  10. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 もう一つ法人税とか個人税とか、税別にどれだけ何があるか具体的に……。もし何だったら資料で出していただいてよいのです。
  11. 松尾金蔵

    松尾政府委員 はい。
  12. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 次のページに行って、中からちょっと下のところに「対内的には、輸出品のコスト引下げ」云云とあります。一応この要点はわかりますが、一体具体的にはこれをどういうふうにやるのか、それからロの場合「貿易商社の強化」こういっておるのでありますが、貿易商社の強化というのは、三井系は三井系でばらばらになっているのをまとめる、三菱商事は三菱商事でまとめる、こういう旧財閥の復元が貿易商社の強化ということになるのか。それから下の方へ行って、輸入先の転換というのはどんなプログラムで、どんな形でこれを具体的に運ぶのか、この点を承りたい。それから、先ほど投資の重点化、効率化というような点についてお話があったのですが、たとえば石炭の合理化をはかるために、縦坑方式で、中小炭鉱を買い上げて重点的な生産態勢を立てるというのですが、そういう場合、石炭は、これの投資がなされ、そうして合理化が完成すれば非常な増産になってくる。その増産になってきた場合、その増産された石炭と並行して、生産に見合った需要が起ってくれば当然これは計画通りに行くわけですが、石炭は石炭だけでぽつんと一つこれを抜き出して、これの合理化をはかるだけで、生産と関連するいろいろな国の総合的な経済施策というものの計画がなされていないし、それが示されていない。電気は電気で合理化をやる、あるいは鉄鋼は鉄鋼で合理化をやる、石炭は石炭でやる、基幹産業から手始めにしてやるというのですが、しかしそのプログラムがちゃんとできておりませんと、これはどういうような形でどういうような方法でやるのか、一体行政の役人のただ指図や、それから構想だけでそういうものがそういうふうに運ぶのかどうか、客観的、経済的の一つの基礎がここに与えられなければこれは動きようがないと思います。そういう関係について一つはっきりとした、今の資金の重点化なり、効率化という形で、基幹産業なら基幹産業でいいのですが、それがはっきりさせて、総合的にどういうように組み立てていくのかというこのプログラム。それから次にはいろいろのコスト引き下げなり何なりというものが一体具体的にどういうように運ばれるか、こういう点を一つ……。
  13. 松尾金蔵

    松尾政府委員 第一の貿易商社の強化というその方策は、会社の合併等により、大企業を作ることに主力があるかということの御質問であったと思うのでありますが、これはもちろん現在までもそういう形で貿易商社の強化がある程度行われておったことは御承知通りであります。今後も戦後のあのような弱小といいますか、小さな貿易商社の乱立あるいは不当な競争という点が、そういう形で整理されながら強化されていくという点は、やはり続くだろうと思います。しかしそれだけで貿易商社の強化が行われるわけではなくて、貿易商社に対しまして、従来政府のとって参りました、あるいは今後とります方策の中にも、たとえば輸出利益に対して、特別の免税を行うような形で、輸出の振興と同時に貿易商社の育成もはかる、あるいはまた御承知のように、輸入の面では輸入の割当をできるだけ商社割当の形で行なっていきますれば、貿易商社の輸入の効率的な運用のほかに、同時にまた貿易商社の強化策にもなるわけであります。そういういろいろな方法で、あわせて貿易商社が国際的な立場で、ある程度の競争的な実力を備えるようにという方策が今後もとられていくことを予想しておるわけであります。  なおそれから次の輸入先の転換についてというお話でございますが、これは御承知のように、日本の貿易の構造がほとんど宿命的といっていいくらいにドル地域からの輸入が非常に多くて、ドル地域に対するバランスが常に悪いわけであります。従来は御承知のような特需によるドル収入でそれが補われてきておるわけでありますが、先ほども申しましたような、特需関係等を予想いたしますれば、理想的には通貨地域別にドルもオープン・アカウントも、それぞれバランスすることが一番望ましいわけであります。もちろんもう一歩進んで、将来のことを考えますれば、通貨の交換が自由になりますれば、何もポンドとかドルとかいう区別は必ずしも必要なくなるわけでありますけれども、現状においてはまだそこまでは参りません。やはり通貨別にもバランスを考えなければならないような状態でありますので、このような輸入先の転換ということを考えざるを得ないのであります。本年度におきましては、大きな品目で申しますと、やはり原綿を従来のようにドル地域だけから買わないで、エジプトでありますとか、シリアでありますとか、ドル地域以外のところに原綿の輸入先を求める。原綿のみならず、油、砂糖あるいは塩というようなものにつきまして、相当程度買付先をドル地域以外に求めるということを想定いたしておりまして、その金額はそう正確な計算もできないのでありますが、この計画考え方から申しますと、少くも五千万ドル以上の輸入先の転換くらいは本年度行う必要があるのではないかというように考えておるのであります。  なお最後の点で石炭あるいは電力等について、個々ばらばらに資本の重点的投下をやって合理化をはかっても、全体のバランスがとれなければ実益が乏しいではないかという点は全く御説の通りであります。資金の効率的な運用をするという際に、各産業部門が、自分のところだけで問題が処理できるわけではありませんので、特に石炭というような問題になりますと、先ほど御指摘になりましたような、今後のエネルギー資源としての石炭の需要がどうなるであろうか、あるいは電力との関係でどうなるであろうかというような、石炭について考えますれば、同時によくいわれますエネルギー総合対策の前提に立った石炭なり電力の合理化、同時に資本の投下がなされなければならないわけであります。これらの点はすでに御承知の石炭の合理化に関する法案の準備と同時に、エネルギーの総合対策内容を目下検討中でありますし、また石炭、電力等の——電力のみならず基幹産業全体につきましては、この計画の中にも大体その生産目標数字が上っておるわけであります。おそらくそれくらいの生産は現在の状態で特に設備の拡張をしなくとも、大体生産目標の数量達成はさほどむずかしいことはないわけでありますが、それよりもむしろコストを引き下げて輸出競争にも勝って、そのような有効需要をつなぎながら生産伸びていくということがやはり前提であります。そういう意味で、財政投融資関係に出て参ります重要産業部門の合理化資金の要求の背後には、それぞれ各部門の合理化計画があるわけであります。その合理化計画は、各部門によって違いますけれども、大体何年間かにわたった合理化計画があるわけであります。それらの点は今回の六カ年計画では、大体各部門への合理化計画を、六カ年の間にそれぞれ一応はめ込んだ計算をいたしております。そのような背後の関係をよく考えた上で、財政資金を初め資金の合理的な運用をはかるというふうに努めて参りたいと思います。
  14. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 その次に食糧増産の問題を相当具体的に聞きたいと思いますが、資料を一つ出していただきたいそれから海運業の系列化、合理化をはかるというのだが、これは具体的にはどういうことであるか、これを示していただきたい。日本通運、日本海運あるいは大阪商船とか三井とか、こういうところに重点的に系列化をはかるのか、はかるとすれば、そういうことがこれの内容だとするならば、そういうことをどういう形で運ぶのか、これを一つ伺いたいと思います。  それからその次の五ページにいって、物価の抑制ということがありますが、ここでいっておる物価の抑制ということの基礎に、物価対策構想一つ伺っておかなければならぬと思うのですが、これをお示し願いたい。  それから今までずっと、資金の重点化とか、あるいはコストの引き下げ、合理化あるいは物価の抑制、生産性の向上といろいろあるのでありますが、こういう施策の基礎になるのは、一体自由経済の思想の上に立ってこういうことをやろうとしておるのか、あるいはそうでなくて、一つの規制の上に立った従来の官僚統制という形で考えておるのか、もっと経済を社会化し、民主化した基盤でこういう問題を処理しようとしているのか、これはどうことがこれらの施策の推進をしていく一つの基本的な態度になっておるのか、その点を一つはっきりと伺っておきたいと思います。
  15. 松尾金蔵

    松尾政府委員 海運業の系列化という点は、これは運輸省の方で御承知ように前にもそのような考え方をたしか審議会でございましたか、そこで海運業の合理化の観点から相当検討されたはずであります。またそのような内容のものを海運業界にも示されて、最近は状況が少し変って参ったかと思いますが、いわゆる海運業の景況の非常に悪かったときにはかなりの程度にこの海運業の系列化が進んだように伺っております。私も海運業のことはあまり専門でございませんのであまり詳しい御説明はできないのでありますが、そのように伺っております。  それから次の物価の抑制という点でありますが、これは先ほど来申しましたような意味で、本年度物価物資需給関係から想定いたしますと、大体物価基調は弱いということ、これは現在の三十年度経済の姿をそのまますなおに見てそういう物価基調が弱いということが想定されるのでありますけれども、しかし片方はそのような状況であるから、ただ何ら対策を講じないで、あるいは何らの手を打たずして成り行きまかせでは物価想定通りに下るとは必ずしも言い切れない面があると思います。ここに書いてありますように、公企業料金その他の面におきまして、政府自身が物価の抑制に絶えず努力をしておるという態勢が必要であるということをここに示しておるわけであります。御承知のように、現在は物価の抑制と申しましても、物価そのものを直接に抑制する方策を政府は持っておるわけではありませんので、わずかに地代、家賃等の面において若干の物価の制限措置があるわけでありまして、そのほかの面でも公企業料金あるいは重要物資等幾つかの物資についてそのような制度が残っておるだけでありますが、そういう面から政府が絶えず物価の抑制措置を忘れずに講じていけば、物資需給の全体の想定から見て、物価の二割程度低下が予想される、こういうふうな意味合いでありまして、特別の物価統制その他が考えられているわけではもちろんございません。  また最後にお話のありました全体の計画達成政策基調はどこにあるのか、自由経済であるのか、統制経済であるのかというような点につきましては、三十年度経済計画のこの方には特にうたっておりませんけれども、これのもとといいますか、これと関連のある六カ年計画構想の中のとびらのところにはそのような意味合いのことに対する考え方を示しておるわけであります。そこでうたっておりますように、やはり個人及び企業の創意はこれを生かしながら、やむを得ない限度で若干の規制は行うけれども、経済態勢としては当然自由経済の態勢を基調として考えられておるわけであります。
  16. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 それから一番おしまいの方へいって賃金の問題ですが、ここでは一部産業部門を除いては特に企業経営の好転は望めず、こう言っております。これは不況を予想しておる。それならばどういう形でその不況が具体的に現われてくると見ておるのか。それでその不況を予想しながら失業者は前年並みに見ておるのは大きな矛盾ではないか。そして失業者を単に失業対策で吸収していく、これはもっと拡大再生産において、あるいは将来の自立経済の拡大発展の中にこれを組織してこれを動員していくというような労力の転換を内容としながら、一つの経過的な措置としてそういう失業者ができてくるのをどこまでも失対で処理していくというのか、これの内容になっているものを伺いたい。  それから最後の産業資金でありますが、これは予算上の支出方式をどういうふうに考えておられるか。それからその支出効率はどういう形で具体的に現われてくると見ておるのか、この点を伺いたい。
  17. 松尾金蔵

    松尾政府委員 賃金のところで特に企業経営の好転は望めずというふうな説明をいたしておりますのは、先ほど来申しましたような意味で、本年度からいきなり拡大均衡と申しますか、すべてに経営が大幅に伸びるというような考え方を三十年度経済ではとっておりませんで、おそらく前年度に引き続いて経済基調はそう変らないという観点に立ちますと、企業経営は、特殊の部門は別といたしまして、全体的には大きな経営の好転は望めないであろう、こういうふうな、いわば常識的な判断に基いておるわけであります。しかしそのような経済不況といいますか、好転しない経済状況のもとでは就業増加も望めないではないか、また望めないような経済状況失業対策だけに織り込んでいっていいのかというあとの問題は、確かに重要な問題となると思います。しかし本年度の形でもやはり生産は、先ほど申しましたように、鉱工業生産におきましても一・五%程度生産上昇を見込んでおきましては二・六%の増加を見ておりますように、経済全体の活動としてはもちろん前年度に比べて相当程度規模が大きくなるわけであり、経済活動もそれだけ伸びるわけであります。従いまして、当然そこには就業者のある程度増加は期待されるのであります。しかしそのような就業機会増加以上に、先ほど申しましたように、八十何万という労働力人口増加の点、つまり本来の就業機会増加以上に労働力人口増加が大きいために、その穴埋めとして過渡的にはどうしても失業対策によってつながなければならないというような状況にあるわけであります。決して失業対策事業で就業機会を与えていくことが理想でもなければ、根本的な考え方でないことはむしろ当然であります。やはり基本的には産業活動なり経済活動なりを大きくし、活発にして、そこに就業機会を与えて吸収させるのが、自立経済なり、そういう観点からくるところの当然の理想でありますので、失業対策は過渡的な措置というふうに御了承願いたいと思います。  それから資金の点の質問を私ちょっと意味を取り違えておるかもしんませんが、先ほど来御説明いたしました資金関係、特に産業資金関係は、その際に項目を分けて御説明いたしましたように、内部資金と外部資金の二つに分けてその資金が調達されるわけでありますが、内部資金内容は、社内留保と減価償却等でございますから特に御説明を必要としないと思いますが、外部資金関係で、財政資金の面は、先ほど説明のときに触れましたけれども、開発銀行、輸出入銀行、農林漁業公庫、中小企業公庫、国民金融公庫、これらのいわゆる政府金融機関本年度予算において計上されております。これらの機関に対する新たな財政投融資の額と、それからこれらの金融機関本年度中において資金の回収をやりますし、その他利息等の収入がございますが、それらの資金を合計した、いわゆる運用額が貸付額として出てくるわけであります。しかし同時に産業資金の供給の面からいいますと、資金貸し出しの一面にはいわゆる回収があるわけでありますから、その運用額と回収額との差額が、本年度産業資金の差引純増に出てくるわけでございますので、ここで計上いたしておりますのは、そういう回収、貸し出しの差額のいわゆる純増額を、つまり前年度に比べてこれだけさらに産業資金純増額が出てくるというような計算をいたしております。従いまして金融機関から出る形といたしましては、各企業の側から申しますれば、企業によりましては、本年度借り入れができなくて返済だけが出てくるという企業もありましょうし、あるいは逆に返済はなくて借り入れだけ、あるいはその中間というようないろいろな組み合せが出てくるわけであります。金融機関貸し出しの場合もほぼ同じような考え方であります。
  18. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 産業資金関係は、一つ資料で出していただきたいと思います。それからこの雇用の問題ですが、これも資料として出していただきたい。これは今の部長の話では、鉱工業生産が一・五%上昇するから、それだけ雇用量が増大するのだ、こう見込んでよろしいという話だったのですが、われわれの見るところでは、企業の合理化、これが非常に要請されておる。そこに産業資金投資がなされて合理化が進む。従って主としてこの鉱工業生産上昇というのは、企業の合理化による生産性向上、こういうような形で出てくる比率が非常に多いので、この生産の増強に比例した雇用というものは逆に減っていく。減る率が大きい。従ってこれによって関連産業その他いろいろ総合的な面で吸収していく面も出てくるであろう。そういういろいろな雇用の転換、労働力の転換というようなことが、総合的にスムーズに行われなければいけない。それを直線的に一・五%の上昇が即雇用量の増強なんだ、こういうような考え方は、大きな誤謬を犯しているのではないか、この点一つ重ねてお伺いしたいと思います。何と申しましても、人口はどんどん増加して、稼働労力が非常にふえていく。その中において目標が完全雇用にある。こういう場合、そうして一面企業の合理化を促進していく、こういういろいろな矛盾したファクターがそこにたくさんある。それをどういうふうにこの完全雇用の頂点に結びつけるかというところに、いろいろ問題があると思うのですが、部長の今の考え方からいうと、非常に雑駁で、この問題は基本的に検討されていない。不十分である。不十分なままに口の先だけでやっているのではないか、こう思うのであります。  そこで次に尋ねたいことは、この計画の実施機関は一体どこか。それから計画の実施については、これはやはり責任政治の建前から、実施したならば年度年度これを公開して、そうしてその実績を発表していかなければならないが、そういうことが考えられておるかどうか。それからこれに対する計画推進のためのいろいろな基礎資料というものは、非常に膨大なものが必要であろうし、そういう要求したい基礎資料がたくさんあるわけですが、そういう資料については、要点はわかっておるわけですから、この計画樹立における基礎となるデータについては、こっちから求めなくてもまずそういう資料を積極的にそちらの方から出してもらいたい。それに基いてさらに足りないデータを要求する、こういうふうにしたいと思う。  今言ったように雇用の問題、それから計画の実施機関、それから計画実績を公表していく、こういう民主的な運営をはかっていかなければならぬと思いますが、これは事務当局に聞くのは無理かと思いますけれども、一体どういう構想であるか、これだけ伺いたい。
  19. 松尾金蔵

    松尾政府委員 就業者見込みは、確かに御指摘のように非常にむずかしいのでありまして、先ほどの私の、鉱工業生産伸びを例にとって、経済活動全体としては前年度に比べて大きくなるだろうということだけの説明では、確かに言葉が足りなかったかと思います。しかし私どもの考えといいますか、ここまでの結論を出しますには、やはり一応は産業部門別に、本年度経済活動がどうなるかということを想定して、一応部門別に当ってはみているのでありますが、これはもちろんいかに精密を期しても、精密は十分期し得ないのであります。しかしすでにこの委員会に前にも配付資料として、三十年度就業目標という資料を配付しているはずでございますが、それをごらんになればわかりますように、大体産業部門別に見まして、第一次から第三次までの産業部門を拾ってみますと、第一次産業であるいわゆる原始産業農林水産業等は、これは生産伸びましても、御指摘のようにこの面で就業者増加する期待は、非常にむずかしいわけでありますので、ここでは前年度に比べて就業者増加はあまり見ておりません。ほとんど横ばいに見ております。第二次産業も、特に製造業者におきましては、先ほど来申しましたように、大体各部門ごとに一応数字は積んでみるわけであります。しかし、確かに御指摘のように、たとえば石炭のような場合には、これは本年度においても引き続いて就業者減少が出てくるだろうと思います。生産増加しても、就業者は減るだろうというふうに想定いたしております。しかし全体として見ますと、やはり石炭鉱業の合理化のために、片方に機械の生産が興るとか、あるいは経済活動全体が伸びる状態であれば、若干のいわゆる就業者増加は期待し得るはずでありまして、この点は先ほど提出いたしました資料におきましても、三十万程度就業者増加を第二次産業で見込んでいるのでありますが、しかし現在の状態では、やはり何といっても第三次産業部門、いわゆるサービス業、商業部門あるいは公益事業、運輸、通信等の事業、こういう面への吸収が、やはり従来からの実績からいいましても、相当大きく出てくるようでありますので、実数、いわゆる絶対数の就業者増加は、むしろ第三次産業部門にかなり大きな期待を持っております。これは従来の実績が大体そのような実績を示しておりますので、そのような実績による想定をいたしているのであります。そういうふうに計算はできるだけ精密にやってみたとは申しましても、これは確かに御指摘のように非常にむずかしい計算でありますので、この程度想定しか現状ではできないのじゃないかと思います。  それから計画の実施機関の問題でございますが、計画の実施ということになりますれば、最終的には現在の政府機関、政府の内部においては各省、特に経済関係の各省が、このような計画目標に置いて実施を進めるということになるわけでありますが、しかしそれを推進し、またそれを取りまとめていく立場から申しますれば、当然経済審議庁が、ただ計画の立てっぱなしというわけでは、もちろんないわけであります。当委員会でも御審議を願うことと思います、経済審議庁の機構の問題の際にも、そのような配慮をある程度、あるいは相当程度織り込んで考えられております。  最後の、実績の発表をすべきではないかという点は、これは申すまでもないことであります。従来の経済審議庁の仕事の運び方から申しますと、大体年度当初に当年度経済見通し、いわゆる経済観測をやっておったのであります。そして翌年度になりまして、前年度実績を分析いたしまして、御承知経済白書を出しておったわけであります。ところが今度の三十年度経済計画は単なる経済観測だとか経済見通しというにとどまらないで、六カ年計画目標達成のための初年度としての計画であるというふうな構想で進んでおるわけでありますから、そういう意味から申しますと、この計画と実施の結果がどうなったか、おそらくこのような計画がこの計数通りに一分の狂いもなく実績に出てくるとはだれも想定できないことであります。そのような計画実績との食い違いは、従来の形で申しますと白書という形にあるいはなるのかもしれませんが、いずれにしましても実績はそのつど発表といいますか、当然公表して批判を仰ぐことになると思います。
  20. 秋田大助

    ○秋田小委員 経済六カ年計画構想なりそれに基く三十年度経済計画大綱はほぼ概要を承知いたしたのでございますが、ただいま永井君から資料提出の御要求があり、私の要求もほぼそれと同じことと思いますが、ただいま永井君は三十年度計画大綱をもとにして御要求されたので、三十年度だけに限っておられるように誤解されるおそれがあると思いますから、私ははっきり念を押しておきますが、六カ年にわたりましてこの経済計画を完成、遂行、成功せしめるに必要な前提条件となるものは、国土の総合開発のある程度計画並びにその上に樹立されるところの石炭あるいは電力、石油、造船等の基幹産業その他重要な基盤となる産業のある程度の合理化の実現だと思います。そういうものに対する資金の裏づけがなければこれはできない。おそらく経審では国土総合開発計画の事業並びに基幹産業その他の重要産業の合理化に対する所要資金、それの産業別及び事業項目別の資金配分というもののおよその見通しをつけておられると思う。われわれもそれを考えなければ経済自立六カ年計画なんということは主張できないのですが、その具体的な細目というものがわれわれではわからない。やはりそれのために経審というものはあられるのでありますから、大体の資金の配分目標という計画図を六カ年にわたって一つ資料として出していただきたい。それは限定されたもので、あなたの方に責任を負わせようというつもりは毛頭われわれは持ってない。審議過程に大体の目標を立てるだけで、国民経済あるいは国際経済の推移とともに当然それは変更さるべき数字だろうと思いますので、そういう軽い意味で一つ御心配なく考えられて資料を提出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  21. 松尾金蔵

    松尾政府委員 ただいまお示しのございました資金の点は、実はこの計画の裏づけとして御指摘のように非常に重要なものであるにもかかわらず、非常に算定がむずかしいのであります。特に各産業部門あるいは国土総合開発という点まで触れますと、非常に問題の範囲が広汎であります。従いましてそれだけの作業がまだ十分できていないような実情でありますけれども、しかし特に重要な産業部門ということになりますと、若干の算定があるわけでありますので、十分御満足のいくような数字というわけにはあるいは参らないかもしれませんが、できるだけ出したいと思います。
  22. 秋田大助

    ○秋田小委員 十分満足すべきものはあるいは出ないかもしれないということですが、大体のところでけっこうだと思います。
  23. 山手滿男

    山手委員長 この際議員齋藤憲三君より委員外の発言を求められておりますので、これを許可するに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 山手滿男

    山手委員長 御異議なしと認め、これを許します。齋藤憲三君。
  25. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 一年生でよくわからないのですが、経済審議庁の書かれたものを拝見いたしますと、経済計画大綱をお示しになっておるのでございますが、他の実施官庁に関する問題は別といたしまして、通産省に関する繊維、エネルギーその他科学技術の振興対策、基本産業というような問題に関しまして、いろいろここに構想を盛られておるのでございますけれども、これはやはりこの計画を御発表になりますときには実施行政機関とよく打ち合せをせられまして、そしてこれは必ず実施ができるというお見通しの上で立案されると私は思うのであります。ところが一つ、エネルギーについて「燃料自給度の向上および国内燃料の有効利用を図ることを目途としてエネルギー総合対策を確立し、」こういう字句をお使いになっておられますけれども、いうことは立案できるかどうかということです。おそらく私はできないのじゃないかと思う。できない大きな問題をここへお掲げになりまして、そしていかにもこれは今年度行うところの経済政策大綱であるというようなことになりますと、これは私はあえて意地悪く追及するのではありませんが、非常に大きな問題が起きると思うのです。また八ページの「科学技術の振興と新技術産業の助長育成」というようなところを見ましても、「原料輸入の防遏に資するため、石油化学、木材利用の合理化、石炭利用の拡大、チタン等の新金属其の他新規産業の健全な育成を図るものとする。」もしこれをやるといたしますと、先ほど秋田委員からも御質問がございました通りに、これの実施に対する予算の裏づけ及び科学技術の面におけるはっきりした態勢を持たなければならぬわけです。実質的に考えて、この石油化学とかあるいは石炭の高度の利用態勢というようなものは現在の通産省の実施機関において可能であるかどうか。また民間においてこれをやらせようとしてもこういうことができるかどうかということについては、われわれは多大の疑問を持つのです。でございますから、ただいま私重ねて申し上げる必要はございませんが、こういう問題をわれわれが審議いたしまして、御発表になりました大綱をなるほどこれなら実施ができるというような裏づけがございましたら、どうかこの際簡単に、なるべくわれわれのわかりやすい具体的な方策をお示し願いたいと思うのです。そうでないと、何か作文をうまい言葉によって読み聞かされておるような感じで、ちっともわれわれはピンとこないのです。経済審議庁の設置法の一部を改正する法律案が提案されておるのでありますが、もしも実際問題として今後こういう問題にからんで、今までの単なる発表的なことでなくして、こういう考えを取りまとめて、各実施官庁のやり方を総合統一するために経済審議庁の一部を改正するというなら、これはよほど強力なものでなければならない。しかしそうではなくて、従来のようなものをちょっと一段くらい力を強めるというように経済審議庁のあり方を一部改正法律案でやるなら、われわれとしては、この根本的な問題に対してまた考え直していかなければならぬ。科学技術の振興対策にしても、これはここへお書きになりましても、私は経済審議庁及び通産省の実態から考えて、現在の態勢では決してこういうものができるとは思わない。だから一つ簡単な資料をいただいて、これをお書きになった裏づけをちょうだいいたしまして、さらに検討を加えていきたいと思っております。
  26. 松尾金蔵

    松尾政府委員 第一のエネルギー総合対策の点は、先ほど永井委員からの御質問のときにも御説明いたしましたが、当然このような計画のときにはむしろ前提として出ておらなければならないような重要な問題だったと思います。もちろん従来からもしばしばこういう問題についてはエネルギー・アンバランスという見地からいろいろ検討をしておったのでありますが、なかなか御指摘のようにむずかしい問題であります。しかしながらただむずかしいというだけでは問題は解決いたしませんので、特に今後の石炭合理化の問題とも関連いたしまして、エネルギー総合対策の計数と政策の両面からいろいろ検討をいたしておるわけであります。どの程度十分なものかということはいろいろ見方があると思いますが、これは何もしないわけではありませんで、それぞれ検討しておる段階でございます。  第二の科学技術の振興、新産業の育成という点でございますが、科学技術の振興は、現在私も科学技術の内容の詳細な説明をするだけの資料を持っておりませんけれども、あるいは工業技術院なりその他のところで、金額はともかくとして、かなり各項目にわたって、今御指摘のような技術の工業化試験の補助金であるとか、いろいろな形の補助金が現在交付されておるわけであります。そういう点に科学技術の振興政策が出ております。これは必要とあれば資料として御提出ができると思います。  それから新産業の点でありますが、石油化学につきましては、御承知のように現在すでに相当各社に計画があるわけでありまして、おそらく本年度におきまして三つか四つぐらいの企業計画が実施の段階に入るものと思っております。現在では、政府の立場からいいますれば、通産省でその計画を練っておるわけでありまして、検討しておるわけでありますが、それに基きまして、本年度におきまして、おそらく開発銀行資金の問題として表に出て参るのではないかというふうに思っております。  それから木材利用の合理化は御承知のように範囲が非常に広汎でございます。しかしおそらく本年度の問題としては、従来からもすでに部分的には出てきておるのでありますが、たとえば広葉樹を原料とするパルプの生産設備であるとか、その他木材利用の見地から従来も行われておるもの、あるいは新しく手をつけるものもかなりあると思います。  また石炭利用の拡大は、御承知のように低品位炭による製練であるとか、あるいは低品位炭を利用する発電であるとかいう計画も、すでに現在かなり進んでおるように伺っております。チタンは、これはすでに一応日本産業としてはもう出発しておるわけでありますから、現在の状態から、さらに圧延加工の段階まで入るべきだという計画本年度には出て参るのではないかと思います。これらの点も資料が必要であれば若干説明的な資料を提出いたしてもよろしいかと思います。  いずれにいたしましても、全体としてごらんになりますと確かに作文的なところも多分にあると思いますが、決してただ作文のための作文でないことは、これらの計画の作業自体については、関係省とも十分連絡協議いたしまして、それぞれの関係各省の政策を、さらに総合的な立場から取りまとめてこのような作業をいたしておるということで、おわかりいただけるものと存じます。
  27. 永井勝次郎

    永井勝次郎君 ただいま齋藤委員から科学技術の問題について話があったのですが、これはどこどこの試験場でこういうことをやって、どこの大学でこういうことを研究しておるというのではなくて、この科学技術はやはり産業活動、経済活動として実際に役立つものでなければならぬ。従ってドイツのようにやはり徒弟制度というようなところから、徒弟をあずかるには国家試験があって、科学技術を、あるいは公民としての訓育を与え、そういう資格を国家がとらせて、そうしてあずからせていくというふうに、国民全体の基盤を確立し、その中から盛り上っていく科学技術の振興という形が出てこなければ、産業活動として国際市場と戦っていく条件というものは生れてこないと思う。  もう一つ、これはやはり雇用の問題で、学校の教育の関係産業構造の実情とが結びつかないで、こちらでは法科なり文科なりこういうものを主にした大学がどんどんできていく。しかし実際に養成する面で、科学技術の関係の技術者であるとかいうようなことで、産業構造と学校教育というものがやはり合理的に結びついていくような態勢が生れてこなければほんとうではない、こういうふうに考えるのであります。従ってこの計画の中には基本的にはそういう問題も内容として取り入れていかなければならないのではないか。従ってこの点についてさらに一層われわれはお互いに知恵をしぼり合い、力を出し合って、これを合理的なものにしていかなければならないのでありますから、そういうような点もこの計画内容として十分に取り上げて進めてもらいたいという希望を申し上げておきます。
  28. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 私の申し上げましたのは、今永井委員からも御発言がございましたように、たとえば石油化学と石炭利用の拡大、こういう問題を二つ見たときに、経済審議庁としてはその前にあります合成繊維の問題に対しても、いわゆる合成化学の建前から、化学繊維というものを考えて参りますときに、いわゆるペトラル・ケミカルとコール・ケミカルの立場を考えて、そうして科学技術の振興と新技術産業の育成というものを見ていくのかどうかということであります。ただここで石油化学と石炭の効率的利用、こう並べてしまうと、一体日本の大勢からいくと、石油化学を振興させていく方が得か、石炭化学を振興させていく方が得か、世界の大勢と日本の持てるものとをあんばいして、どっちを一体新しい化学工業として伸展させていく方が得策であるか、こういうことを真剣に考えてこういう作文を作っておられるのかどうかということであります。ただこれもあるし、これもあるというふうに羅列的にここへ並べて置かれるのでは、読んでも普通の本屋の本とちっとも違いがない。そうでなしに、日本としては石油化学をあくまでも推進していって、合成繊維やその他の一切の新産業を振興さしていく。これとにらみ合せてコール・ケミカルをどうやっていくか。コール・ケミカルをやっていく場合には、どれだけの予算の裏づけをやっていくと今の石炭の合理化というものはこれだけの合理化がまた行われていく、そういうことをやらなければ経済審議庁のこういう計画なんというものは私は無意味だと思いますが、そういうことをやっておられるかどうかということです。そういうことを今までやっていないので、一段と掘り下げてもっと実際的に機構を改革して、徹底的にやっていかなければならない。ですから、こそくな経済審議庁の機構改革ではなしに、さらに徹底した機構改革をやらなければならぬのじゃないか、こういうことを私は申し上げておるのでありますが、これは大臣でもよろしゅうございます。また質問をいたします。
  29. 山手滿男

    山手委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は公報をもってお知らせすることといたします。  これにて散会いたします。    午後三時四十九分散会