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1955-06-09 第22回国会 衆議院 商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月九日(木曜日)     午後一時五十八分開議  出席小委員    小委員長 伊藤卯四郎君       小笠 公韶君    鈴木周次郎君       野田 武夫君    長谷川四郎君       加藤 精三君    神田  博君       小平 久雄君    櫻井 奎夫君       永井勝次郎君    八木  昇君       佐々木良作君  出席政府委員         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  斎藤 正年君         通商産業事務官         (工業技術院調         整部総務課長) 水間 光次君  小委員外出席者         議     員 齋藤 憲三君         通商産業事務官         (大臣官房物資         調整課長)   中野 正一君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所長)  兼子  勝君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所鉱床部         長)      佐藤 源郎君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所燃料部         石炭課長)   須具 貫二君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所技術部         企画課長)   朝日  昇君         参  考  人         (日本瓦斯協会         会長)     本田 弘敏君         参  考  人         (日本化学工業         協会会長)  池田亀三郎君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  総合燃料対策に関して参考人より意見聴取     —————————————
  2. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  本日は、総合燃料対策について、参考人各位より御意見を伺うことにいたします。  参考人各位には、御多用のところ本委員会に御出席を下さいまして、厚くお礼を申し上げます。さきに政府におきましては総合燃料対策に関し閣議決定を行い、当委員会におきましても先般来種々調査検討を加えているのでありますが、この際参考人各位よりそれぞれのお立場からこれに関する忌憚のない御意見を承わり、本問題調査参考にいたしたいと存じます。  本日の参考人として御出席をいただきましたのは、日本瓦斯協会会長本田弘敏君、日本化学工業協会会長池田亀三郎君でございます。  それでは本田参考人よりお願いをいたすことにいたします。
  3. 本田弘敏

    本田参考人 ただいま御指名を受けました本田でございます。私は東京瓦斯の社長で、日本瓦斯協会会長を兼ねておるものでございます。  かねて国会におかれましては、わが国総合燃料対策を確立することがきわめて緊要であり、またこの政策の確立は、基礎産業である石炭鉱業安定策としての重要な問題であるとされまして、当委員会におかれましてもっとにあらゆる方面から調査検討されておりますことは、われわれ燃料関係に携わるガス事業者として、まことに感謝にたえないところでございます。特に本日は、この重要な委員会ガス事業者として皆様の御参考までに意見を述べさせていただく機会をお与え下さったことを、ガス事業者を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  またわれわれガス事業の五カ年計画の実施につきましては、日ごろ皆々様からいろいろと御支援をいただいておりますことに対しましても、この席を拝借いたしまして厚く御礼申し上げます。私はガス事業の経営に当っております見地から、私見を申し述べまして御参考に供したいと存じます。われわれガス事業者は、昭和二十八年から五カ年計画を実施し、本年は第三年目に当るのでありますが、皆様方よりも去る第十九回国会以来再三にわたってこの五カ年計画の完遂を要望され、われわれガス事業者を鞭撻されているところであります。都市ガス増強計画は、申すまでもなく第一には公益事業としてのガス事業本来の使命に基くものであります。このガス事業本来の使命は、現在及び将来の旺盛な需要に即応するという公益的使命と安全、衛生、便利かつ経済的で、運搬、貯蔵、灰捨て等の不要である都市燃料として最適なガスを確実に供給して、家庭生活合理化をはかるという社会的使命との二つの重大使命を帯びているものであります。  次に第二の使命である国民経済的使命は、従来ややもすれば一般から見のがされて、ガス事業は単なる一般消費産業とみなされる傾向が強く、あらゆる点において、他の事業に比べましてあと回しにされた扱いを受けている現状でありますが、この国民経済的使命わが国の乏しい燃料資源を有効に利用して、石炭からガスをとると同時に、副産物としてコークス、タール、ベンゾール等重化学工業に不可欠の原料供給いたしますこと、また石炭大量安定消費によりまして、石炭鉱業合理化ないし安定化に寄与いたしますこと、さらに大量の薪炭材を確実に節約し、山林の過伐による風水害原因を防止して、毎年一千億円前後にも達する災害関係国費が節減されることは申すまでもなく、木材資源合理的利用に貢献いたしますことという三つの意義を持っております。これらの緊急かつ重要な問題の解決は、都市ガス増強計画達成いかんにかかっているということができると存じます。  ここにガス普及率石炭ガス化コークス化について少しく補足的な御説明を申し上げますと、木材家庭燃料として大量に消費しているのはわが国のみでありまして、わが国ガス普及率は、現在一三%内外にすぎませんが、欧米ではすでに四半世紀前に都市はほとんど一〇〇%ガス化されておりまして、各国の全人口に対するガス普及率は現在イギリスでは九〇%以上、アメリカでは八〇%以上、独仏でも五〇%にも達しているのであります。従いまして石炭有効利用すなわちガス化コークス化される率は、欧米諸国では石炭の総消費量のうち二〇%以上を占めておりますのにかかわらず、わが国ではわずか八%にすぎないのであります。  御承知のように、石炭をなまだきする一次エネルギーの形態にとどめないで、ガス化コークス化する二次エネルギー転形いたしますと、その転形過程におきまして各種の石炭の成分が回収されまして、ただに資源有効利用となるばかりでなく、生産過程が長くなりますので、それだけ雇用量を増し、付加価値増加いたしまして、国民経済の発展にも非常に貢献することになるのであります。  このような緊急かつ重要な要請に基きまして、ガス事業の五カ年計画昭和二十八年五月に通産省において省議決定され、さらに去る一月二十一日の閣議において、木材資源利用合理化方策の一環として、都市ガス普及向上をはかるよう要請されました。ここにガス事業の五カ年計画重要国策として認められることになった次第でありまして、われわれガス事業者はその責務の重大なることを痛感し、総力をあげて国家要請に沿うべく日夜惜しみなき努力をいたしている次第でございます。  本年はいよいよこの計画本格的段階の第三年目を迎え、今後にますます困難な隘路が輻湊して参ることと存じますが、皆様の御援助によりまして、完全に所期の計画を遂行いたしたいと念願しているものであります。五カ年計画の過去二カ年の実績は、各事業者とも、当初期待いたしておりました国家財政投融資がほとんど得られなかったのでありますが、増資の繰り上げと、社内留保によって何とか設備資金をまかないまして、大都市では計画を上廻る拡充を見せ、全国的にもほぼ計画を達成いたしました。原料炭も昨年は二十七年に比べ約四十九万トン、一八%を増加消費いたしております。また、ガス需要は、過去二カ年の実績に徴しますと、大都市では当初の計画よりはるかに上廻り、今後ともますます増勢の傾向にありますが、コークスは昨年以来のデフレ政策の浸透に伴いまして、当初計画をかなり下回り、今後の好転も当分望めないと存じますので、このようなガスコークス需給に見合いますよう、昨年末にガス生産方式等を検討いたしまして、当初計画を改訂いたしました次第であります。改訂計画概要はお手元にお配りいたしてありますが、今年以降の三カ年について概要を申し上げますと、需要家数は昨年末の二百二十万九千戸を本年は十九万八千戸、来年は二十一万四千戸、再来年は二十二万七千戸とだんだんしり上りに毎年新規需要家を増す計画になっております。これは現在ガス生産設備に余裕がありませんので、どうしてもこのような計画になるのでありますが、ただいまの見通しとしましては、現在数万に達する未処理需要家は三十二年末に一応解消するよう努力している次第であります。石炭使用量は、昨年に比べまして本年は二十万七千トン、来年は三十五万五千トン、再来年は七十二万五千トンと増加いたします。三十二年度の七十二万五千トンのうち七十万トンは内地炭で、外国炭はわずか二万五千トンしか増加しないこととなっております。またこれを五カ年計画を通じて計算いたしますと、内地炭で約百五万トン四四%増で、外国炭は十五万六千トンで二八%となっております。ここでちょっとガス事業者がなぜ国内炭のみに依存しないで、外国炭を使ったり、重油を使ったりするかという理由を申し述べさせていただきたいと存じます。私どもはあとう限り国内炭を利用することを念願といたしているのでありますが、日本石炭は粘結性に乏しいので、良質なコークスを製造するに適しないのでありまして、今次終戦時までは、満州、中国、樺太等から大量の粘結炭を移輸入いたしていたのでありまして、これが絶えた今日では、米国等より輸入いたさなければ、ガス事業供給いたしております化学工業用コークスの七五%余、鋳物用コークスの六五%を、これらの需要先の要望する品位のコークス供給が不可能になるのでありまして、一定量の良質の外国炭は、ガス事業にとって欠くことができないのでございます。なお、わが国原料炭出炭量は、全出炭量の二〇%内外で、そのうちガス事業に荷渡しされるものは、常にその三分の一程度でありますが、これは安定した需要でありまして、現在においても原料炭の滞貨は少量であるように存ぜられます。また一般炭完全ガス化外国では発達しており、わが国でも硫安製造用の装置として企業化段階にあるのに、ガス事業では考えられないかとの御疑念があるかと存じますが、ガス事業者としても常に化学の進歩に留意いたしまして、海外事情も実地に調査し、また日本一般炭外国に送って試験を依頼するなど、あらゆる手段を講じて研究しておりますが、ただいまのところでは、都市ガスとして一般炭完全ガス化して、果して安定したガス供給することができる確信が得られませんので、なお引続いて研究している次第であります。しかしながら、私の東京瓦斯では、豊洲の新工場建設に当っては、コークス需給に即応して、石炭完全ガス化ができ、しかもコークス原料として増熱水性ガスによることもできるGI方式を採用することにしまして、既に機械の発注を行なって、着々とその建設の方向に向っております。近年わが国大都市ガス事業者重油を使ってガス生産するようになりましたが、これは原価が安いからやっているのではないのでありまして、全く別の理由であります。公益事業としてガス事業者需要家の欲するときにいつでもその需要に応ずる用意を整えておかなければならないことは当然であります。  ガスは熱源として使用されますので、夏と冬とでは当然その使用量に非常な開きがありまして、厳寒期には夏季の二倍にも達し、また気候の変り目には、日々使用量が激変し、一日のうちでも、予想外の変化が起りますので、これを普通の石炭乾溜方式ではとうてい需要にマッチした生産が不可能でありますので、機動性のある油ガスを短時間に大量に生産してピーク時に間に合せなければ、円滑なガス供給ができないためでありまして、ことに大都市ガス事業者にとっては必要欠くべからざるものであります。  そこでこの油ガス用重油をどのように見込んでいるかを申し上げますと、昨年度の実績は十二万二千キロリットル、本年度は十五万九千キロリットル、三十一年度は十八万八千キロリットル、三十二年度は五万八千キロリットルと見込んでおります。三十三年度以降は、現在の経済情勢が持続するといたしますと、増熱水性ガスがフルに操業されることになりますので、油の使用は相当減りまして、その分だけ石炭増加する見込みであります。  次に、今年以降の計画遂行見通しでありますが、今後三カ年間に設備資金が約三百八十億円を必要としまして、これに社債及び借入金の返済に約二百二十億円、増加運転資金約二十億円、合計六百二十億円に達する膨大な資金の調達ができるかどうかが第一の大きな問題であります。いま一つの重要問題は、新規投資に伴いまして当然増高いたします資本費が、現行料金では一キロリットル当り三円四銭が三十二年には約二倍の五円九十四銭となり、この資本費増加額は三十二年においては実に百十九億円に達することであります。その内訳は、現行料金原価に対しまして、支払い利息配当金法定準備にあっては三倍、法人税住民税固定資産税税関係で、三・九倍、減価償却費が三・八倍となり、一方ガス販売量は一・八倍しか増加しないのであります。もちろんガス事業者は、あらゆる企業努力をはかっているのでありますが、このような資本費の飛躍的な増加は、いかなる企業努力によっても全部を吸収することは、全く不可能であります。  財政経済政策の基本であります低物価政策は、今後ともますます強力に実施せられ、料金値上げは、極力避けられることと存じますが、ガス料金は、従来から低料金に押えられておりますため、資本の蓄積が少く、従って経理上の弾力性がありませんし、過去の料金改訂に際しましても十二分に企業努力を織り込んでありますので、企業努力によって吸収する余地が非常に少く、大部分がガス料金原価にはね返ることになるのであります。  ガス事業がこのような事情に立ち至りましたのは、一般物価が四百倍以上にもなっているのに、ガス料金は二百倍程度に押えられているためでありまして、今日までは、コークスの軟調により異常なストックを擁しながらも、石炭の値下りによりましてどうにか事業を運営できましたが、今後は自力ではとうてい設備の更新、拡張ができない時期に到来したのであります。電気事業にあっては、つとに多額の低利長期国家財政投融資と租税の大幅な軽減とによって、開発計画を進められているのでありますから、ひとしく公益事業であり、しかも、都市ガス拡充することによって、国家的にも、社会的にも多方面にわたって大きな寄与をもたらしますガス拡充計画については、電力開発計画と何ら遜色のない重要国策と存じますので、設備拡充に必要な資金は、少くともその半額程度は、日本開発銀行等国家資金より融資され、その返済期間は二十カ年、利率は年六分五厘位で確実に融資されるよう、かつ特別ワクとして予算に計上されますよう、また、将来ガス料金値上げ要因を避けられますよう、法人税免税物産扱いと、新増設設備固定資産税電気事業並みに減税するとともに、創設の趣旨が失われ、しかもガス料金と混淆して、料金を実体以上に不当に高いものと錯覚させます電気ガス税は、すみやかに撤廃する方針を確立されたいのであります。以上のような特別施策が講ぜなければ、われわれガス事業者に課せられているこの重要な国家要請にこたえることができない現状であることを御了察下さいまして、各位の御理解と御支援を切望してやまない次第であります。  最後に、今後の住宅政策都市ガス普及計画について一言申し述べさせていただきますと、戦後は、わが国人口は毎年百万人前後増加を続け、ここ数年は同様な趨勢にあるといわれ、かつその増加人口都市に集中されることも明白でありますので、現在われわれが実施いたしています毎年二十万戸の新規ガス需要計画では、人口自然増を充足する程度で、毎年四十万戸以上の住宅建設計画とはマッチできませんので、この五カ年計画に引き続いてさらに長期計画を立てて、要望に沿いたいと存じております。ただいまの計画は、最低限度の是が非でも達成させねばならない計画と存じ、背水の陣をしいて建設に邁進いたしております。どうかこの上とも何かと御鞭撻、御支援を願いまして、総合燃料対策を樹立されます際には、あわせて前述しましたような適切妥当な施策を講ぜられますよう重ねてお願いいたす次第であります。  以上で参考意見を終ります。長らく御溝聴いただきましてまことにありがとう存じます。
  4. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 それでは池田亀三郎君に参考意見を伺うことにいたします。
  5. 池田亀三郎

    池田参考人 私は今御指名を受けました池田でございますが、ちょうど歯を痛めまして、義歯をはずしておるのではなはだお聞き取りにくいと思いますが、御容赦願います。  きょうは突然のお呼び出しでございまして、あまり用意はいたしておらないのでございます。第一は総合エネルギー対策、これが閣議決定になったようでございます。ことしの春でございましたか、前内閣時分にもこれと同じような問題で閣議決定がありましたし、また通産委員会の決議もあったことは承知しております。私ども経団連で私が総合燃料対策委員長といたしまして、ずいぶん長くかかってこの二月に結論を得たのでございますけれども、それと今度の閣議決定を比較してみますると、あまり変っておりません。ただこれを見ましての私の感じを簡単に、率直に申し上げますが、全般的にはむろん異見はございません。私もこのエネルギーの問題それから総合燃料対策問題等を考えました場合に、ほんとうにこの狭い国土に——先ども話があったように、やがて十数年後には一億の人口になると思います。この人口をかかえ、乏しい資源によりまして憲法に保障されました平和な文化生活ができるかどうかということなんでございます。はっきり申し上げますれば、今度の六年計画にもこのエネルギーの問題ははっきり解決されておらぬと思いますが、私は不可能だと考えます。そこで大体文化生活を上げまして、二十七年が六千五百カロリーの石炭換算で一・二一トン——一体このエネルギーをどうして得るかということになりますと、私どもは自信がございません。そうしますと結局は人口問題で解決するにしても、生まれた者は殺すわけにもいきませんから、これから受胎調節等をいたしましてもなかなかめんどうな問題でございまして、結局はやはり生活程度を下げる——文化主舌を上げるよりはむしろ生活程度を下げるということを考えなけれで解決はつかないのじゃなかろうか、こう思うのでございます。そこでなおこの燃料、あるいはエネルギー資源でもよろしゅうございますが、これを考えた場合にいかにも心細いのでございまして、たとえば水力、今までは水主火従となっております。松永構想でこれを逆にいたしまして火主水従にする、これはけっこうだと思います。ただしかしこれによってもなかなか問題は解決しにくいのでございまして、二千二百万キロワットの水力がもう十年も開発しましたら有利な点はおそらくなくなるだろうと考えます。豊富低廉でなくかえって高い電力をわれわれ消費者は使わなければならないというふうになることは当然だろうと思います。それから石炭にいたしましても百五十万トンくらいは埋蔵量を見ておられますけれども、これまた実際に有利に安く掘れる石炭というものはずっと減るのじゃないか、こう考えたりいたします。石油は三十四万か三十五万くらいしか出ておりませんが、これとても百万キロリットルまでいくのに容易じゃない、天然ガスも大きな期待はできない、こんなふうに考えます。しかも薪炭は燃やしてはいけないのでありますから、そういうふうに考えますと、ますます心細くなるというように考えられるのでございます。しかし何といたしましてもやはり日本エネルギーの大宗は水力とそれから石炭にある、これはいなめない事実だと思うのでございます。そこで今言いましたような結果から見まして、どうしても私どもは何かここで至急に総合エネルギー対策を確立しませんといかぬということは理の当然でございまして、政府でも結局こういった総合計画につきましての閣議決定になったことと思うのであります。ただ私どもは最近の傾向はどうかというと、いろいろ戦時中から、私も大体石炭屋が本業でございますけれども戦時中あるいは戦後のいろいろな国の経済情勢その他政治情勢からいいまして、石炭業というものはまことに不健全な復興をしたのでございます。不健全な復興もいたしましたが、同時にかりに健全な復興をいたしましても、生まれついた条件の悪いものはよくなるはずはございません。結局不良な条件をカバーしていくには、技術の振興よりほかにはないと考えております。しかしある程度、これは程度が問題でございまして、ある程度の適正な出炭量を維持するということは、これは国策としてはっきりここできめていただきたいと思うのであります。ただ適正な程度といいますのは、五千五百万トンがいいのか、五千万トンがいいのか、四千五百万トンがいいのか、四千万トンがいいのかということは、非常に大きな問題でございます。これは私も意見がございますけれども、今日は申し上げませんが、とにかくある程度適正な、適正量をきめましたならば、これは何としてでも国策として徹底した政策を立てて維持していくということが絶対必要だと思っておるのであります。そこで原則といたしまして、今度の閣議決定には大体私は賛成いたします。ところが今の適正出炭量をまずきめて、これを維持していくためには、石炭業は非常に弾力性の乏しいものでございまして、ほかの産業と違いまして、ちょっと工場を休み、また始めるといったことはできません。一度つぶしたものはなかなか復興はむずかしい。また新しくやりましても、四、五年はかかります。そんなことからいたしまして、この石炭業というものは特殊性というものを十分考えまして、エネルギー対策を立てる必要があるだろう、こう思います。先ほどタウン・ガスのお話もありましたけれども、これよりはもっとむずかしい弾力性のない厄介な企業だと考えております。この点を考えました総合燃料対策でなければいかぬのだろう、こう考えるわけでございます。そこで私は、大体の考え方は石炭鉱業といったものは、そういったようなことを十分認めまして、国家といたしましては絶対ある適量は生産維持しなければならぬということをすべて国策のもとに考えていただきたい、こう思うのでございます。従ってこれに応ずるためにはある場合にはある程度の強い行政指導も必要であろう、また法的な規制も当然必要になると思います。そんなことからいたしまして、今度の石炭鉱業に関する合理化法案あるいは重油消費規正法案、今度の関税法案といったものを政府がお出しになったのだろうと思います。そこでこれにつきましては総合エネルギー対策石炭対策がございますが、この法的な措置に対する論議がいずれ議会でもされておることと思いますけれども、これには私は必ずしも意見はないわけではございません。大体申し上げますと、この関税問題からいいましても、どうも消費者という立場がほとんど無視されているのじゃないかという気もするのであります。これはきょうの問題でないと思いますけれども、たとえば残存炭鉱に十五円の賦課金をかけるとか、あるいは関税は全部消費者で負担されるかのような説明があったかのように聞いておるのであります。石炭の値段を引き上げるために関税をかけるというようなことを伺ったこともありました。これらの点私どもも必ずしも賛同できませんが、ただしかしある程度関税をかけて、これをはっきりすれば、むしろ目的税にする。これはフランスやドイツでもはっきりしておりますので、むしろその方が今よりはベターではないか、こうも考えておるわけでございます。  なお重油転換、消費規正等につきましても、ちょっとこれにつきましても考えたいと思いますのは、たとえば日本は、過去十カ年、といってもそのうちの最高数と最低数を除きました年での平均した数字を見てみますと、これは御承知の通り最近はここ数年間続きまして大豊水でありましたが、これが変りますと、八百万トンの石炭が二割変りますと百六十万トンくらい減る。大体日本は百四十万トンから百五十万トンが適正貯炭でありますのに、二十八年に四百二十万トンくらいの貯炭がありまして、あの石炭危機にそれから追い込まれたといってもいいのじゃないかと思います。そんなふうでこの調節を石炭業だけでカバーしていくことはむずかしいのでございまして、その点では重油輸入等につきましても、ある弾力性を持つような法規が必要ではないか、こんなふうに考えております。  それから石油対策でございますけれども、今申し上げたことと関連したことを申し上げますと、とにかく私ども需要者の立場から、なるべく関税のかからぬ重油を使った方が今は安いのです。安いから使いたいのですが、もっと深く掘り下げて考えますと、石炭はおそらく労銀が四九%くらいでありましょうか、そのほかの坑木だ何だといったものの労力を入れますと、おそらく六七、七〇%くらいの労銀になっていると思います。日本産業の将来を考えますと、これは当然雇用関係というものを考えないでは国策はきまらない、こう思っております。そういたしますと、ただ安いから便利だから重油を輸入していいということにはならぬだろう、こう考えるのであります。われわれはあくまでも実際国の経済政策なりあるいは社会政策なりを考えた上での重油対策をきめなければならないじゃないか、こうも思っておるのでございます。そういう面では私は関税もある程度は賛成いたしましたし、また考え方はそういう面から考えていかないといけないのじゃないか、こうも考えておるのでございます。それよりも石油の対策といたしましては、いかにも日本の石油資源の調査探鉱が不十分だと思います。たとえば一番いい例は、ドイツでもあるいはフランスでもあんなに油が出ると思っておらず、イタリアの天然ガスどもあんなにあるとは予想されなかったのでありますけれども、各国とも探鉱の結果相当天然ガスなり重油が出ておるのでございまして、これに対して考えますと、私どももっともっとこの閣議決定の趣旨によりまして石油資源の探鉱に力を入れたらどうか、そのためにはその場合あるいは関税目的税も必要になるかもしれないというふうにも考えておるのでございます。ちょうど天然ウランがない、フランスにもないといっておったのですが、それは探さなかったからないのでありまして、日本も探さなかったからないのか、あるいはほんとうに探してもないのかということが問題だろう、それと同じことが考えられるのじゃないか、こうも考えておるのでございます。  それから天然ガスには意見がございません。  それから化学への有効需要、これはただいま都市ガスについてでございますけれども、私どもの考え方といたしますと、あるいはガス事業者の考えと、また私ども総合的に使います需要者の立場からいいますと、変った意見が出るかもしれぬと思っておりますが、大体において都市ガスを大いに奨励するということは私どもの結論にもはっきり出ておるのであります。  それから都市ガス対策、これは申し上げません。  電力対策も、これはまたこちらで松永さんからお話があるそうですから申し上げませんが、少くとも石炭を新しい発電所を作りまして——今悪いのは熱効率がおそらく一三、四%くらい、アメリカで新しいのが四二くらい、今度新しくやりかけておるものが三二%くらいになるのじゃないかと思うのであります。こうして技術が進歩いたしますと、石炭付加価値が上るのでございますから、多少石炭が高くてもこういうふうな過程において吸収できるということでございまして、私ども消費者からいうと、そういう方面に努めなければならぬ、こう考えておるのでございまして、松永さんなどにも、相当仮定が入っておりますから、あんなふうになるかどうかということは相当研究の余地があるだろうと思いますけれども、これは十分精細に研究いたしまして結論を出すべきだろう、こう考えておるのでございます。  それから薪炭につきましては、ただいま本田さんからもお話ございましたが、私どもの結論でも、もう薪炭をたくといったようなことは絶対やめるというくらいにしまして、これを石炭に持っていって石炭需要を確立するということが必要じゃないだろうか、あるいは便利なところはむろんタウン・ガスにかえていくということもけっこうだろう、こう考えておるわけでございます。大体私は、実はきょうここで拝見しました総合エネルギー対策を読みまして、私どもが結論を出したのと大した違いありませんが、ただこれを見ました感じを今申し上げたのでございます。  大体今申しましたようなことからいたしまして今度の三つの法律も出たのだろうと、私どもはこの法律の出たことに対しましても、ただいま申しましたような石炭のある適正出炭量は、繰り返して申しますが、確保すべきだという見地から考えておるのでございます。そこでそれにはやはりただ民間だけでもいかぬと思います。われわれ需要者とそれから石炭業者ということだけで話が解決つく問題ではないと思いますので、これにはぜひ先ほど申しましたように政府がある程度行政指導をする、あるいは法的規制をしましてでもこれを調整していくべきだ、こう考えておるものでございます。そこで石炭業者からしますと、むろん高いといわれております昨年の今時分でございますと、大体アメリカから見ますと三倍、イギリスから見て二倍、ドイツから見まして一・七倍ぐらいだったのです。その後石炭が非常に下りました。今度合理化法案で二割下げるよう、あるいは三割下げようということをいわれておりますが、私はあの数字には非常に懸念を持っております。しかしある程度はぜひ下げてもらわなければいかぬし、下るでしょうと思いますが、ただしかしこれはあまり数量を出し過ぎますと、石炭の特異性からいいまして、豊富低廉にならないので、豊富かえって高価ということがあり得ることでございまするから、繰り返して申しますと、相当慎重に適正出炭量はきめていただきたい、こう思っておるのでございますが、それには石炭業者としてもコスト引き下げに対しまして今以上に十分に努力をする必要があるだろう、こう思うのでございます。そこで私ども需要者として、やはりほんとうの国の政策に沿うためには協力しなくちゃなりませんし、また責任もあるわけでございます。それに私もかつて石炭業者であった立場からして、今化学工業関係に身を置いているのでありますが、化学工業から石炭鉱業を見ますと、石炭鉱業界の方ももっと視野を広くしまして、石炭化学工業というものをもっと深く御認識になって、われわれと一緒に協力してもらった方がいいのじゃないか、こうも思うのでございます。しかし今実際を申しますと、怒られるかもしれませんが、石炭業者に非常に手を広げていろいろなことを研究するほどの力はないかもしれません。私はちょうど三十年前に石炭掘りからやっておりましたけれども、もう日本はただ石炭掘りだけで安んじてはいかぬというので、化学工業をやらなくてはいかぬと思い立ちまして、ちょうど二十年前に会社を創立いたしましたが、終戦後引っ込んでおります。しかし今日はこの石炭化学工業のまた革新の時代にきたのだろう、こう考えられるわけであります。そんなふうに考えまして、私どもは先ほども申しましたように適正出炭を維持したい。できるだけここで石炭需要量を増していきたい、こう考えておるものでございまするから、それには私どもといたしましてはできるだけ付加価値を高めまして、その間に価格の高い点を吸収して参りたい、こう思っておるわけであります。大体の私どもの考え方はそういう考え方でございます。そこで、化学工業とは申しませんが、一体粗悪炭というものは、私ども日本現状でありますと石炭を掘っているのではありませんで、硬炭、ボタ炭を掘っているのでありまして、この硬炭を一体どう処理するか、あるいは石炭でも洗い減りがありますし、そのほか粗悪炭、あるいは今までロスになっているものをキャッチしまして、これをどう使っていくかということは、これは非常に重要な問題だと思います。これは皆さん、御承知でありましょうから申し上げませんが、最近になりまして塩はほとんど食料塩が半分くらいしか国内生産はございません。その半分と、そのほか工業塩は全部輸入に待っておるのでございますが、それらを今海岸に近い、あるいは島にある炭鉱で、製塩をいたしますと、今のように食料塩が国策として保護される限りは相当利益あるコストで出るだろう、こう思いますから、これはぜひ一つその方面にもっと力を入れてほしい、こう思います。ただしかし今までの真空高圧法等もまだ技術が確立しているとも私は思っておりませんで、それらの問題も共通の問題といたしまして国が中心となり、あるいは専売公社が中心でもいいと思いますが、ぜひ協力して、あるいは研究組合を作る等によってこの研究、技術を確立して参りたい、こう思っておるものでございます。なお私ども立場からいいますと、これら塩素は非常に化学需要が多くなります。そんなことから申しますと、場所によりましては何も固形の食塩を作る必要はないのでございまして、途中の液体の食塩水にしまして電解等に持っていくということも考えられるのじゃないだろうか、こうも考えるわけであります。そのほか坑内のメタンガスでございますが、おそらく石炭に換算しますと三百万トンくらい一年にあるだろう。これをみんな利用するといったようなことは考えられませんけれども、これはぜひ坑内保安上からいいましても必要なことでありまするからして、これをキャッチいたしまして、あるいは自家発電に使いますとか、タウン・ガスに使いますとか、あるいは天然ガス同様に化学工業方面に使うということは考えられようと思います。これはちょうど日本瓦斯化学が新潟の天然ガスを使いまして今メタノールを作っておりまして、従来ありましたメタノール工場はだんだんやめて、そちらからメタノールの供給をしておる。それから硫安、アンモニアを作るとか、尿素を作るとか、いろいろな方法があるだろうと考えられるわけであります。  それから先ほど家庭用燃料薪炭をやめまして、家庭燃料を作るということもございますが、大体微粉炭は二百四十万トンから三百万トンくらいあると計算されておりますが、これらも有効に利用することが必要じゃないだろうか、こう思っております。これは粗悪炭の利用でございます。  それから他の良質炭の利用でございますが、先ほども言ったように、発電所が水主火従火主水従になりますと、ここで非常に能率が上るということも、これはわれわれ石炭消費者としての義務だろうと考えております。しかし能率が非常に上りますと、絶対の石炭消費量は上るわけでもなさそうでございます。結局出力は非常にふえるけれども、絶対の石炭消費量はそれほどでもないということになるのじゃないかと思います。メタンガスのことは申し上げません。  乾溜工業でございますが、これがなかなか問題だろうと思います。私はタウン・ガスにつきましては、日本は、先ほども、いろいろコークスを作るので外国炭を入れるとかということがございましたけれども、いかにも日本の粘結炭が足りないのでございますからして、できればこれも国策としましてある程度完全ガスをもっと研究する余地があるのじゃないだろうか。これは私全然しろうとでございまして、これは本田さんの畑でございますから申し上げませんが、そうも考えておるのでございます。そのほか乾溜によるコークスでございますが、これも従来のようた利用方法だけではどうかと考えます。いろいろ高度化したものにもつとやっていきますと、多少コークスが高くてもその間に吸収いたしますれば負担力が出るということでございまして、これは時間もありませんから申し上げませんが、近ごろ議会でも有機合成事業の育成の決議もなさったようでございますから、この点をずっと進めていってもいいのじゃないだろうか、こう思うのであります。たとえば天然ガスからいたしましても、ただメタノールを作るということでございませんで、もっと先から先まで考えていくということも必要じゃないかと思います。これはコークスからもございますが、さらにその出ましたガスの利用法等は今日差し上げました私の書いたものがございますから、それでごらん願うことにいたしたいと思います。  それから、タール中からいろいろなものができますが、これなどももっと私どもは高度化したものに持っていきたい、こう考えております。これも書いたものに譲りまして申し上げません。ただ日本独特の研究といたしまして、溶解抽出により、高圧高温により処置すると無灰炭になりまして、アルミニウムの電解等にも使えます。低い温度で常圧にいたしますと膨潤炭になります。あれは弱粘結性炭を強化することもできます。あるいはまた練炭の粘結剤にもなりますことは御承知の通りであります。  そのほか水素ガスの問題、これがなかなか問題だろうと思います。ただ、今から二、三十年くらい前からですか、石炭化学工業といいますとすぐ人造石油ということで、私どもその当時相当大騒ぎしたものでございますが、ちょうどこの人造石油業法ができたのは昭和九年だったと思いますけれども、近ごろはそれではいけないのでありまして、ことに日本のような場合は、もしこういうようなものを扱う場合は、もっと高度化したものをやるということが絶対に必要になるわけでございます。これも書いたものをごらん願うことにして申し上げません。  それから炭素化の問題、これはおもしろい問題でありまして、アメリカではカーベート、イギリスではゼラニウム、ドイツでもやっております。日本でも最初やりまして、これがいろいろな面に範囲の広いものでありまして、こういうものを伸ばしていったらどうかとも考えております。  それからなお水素を作る、アンモニアを作る、硫安を作る、尿素を作るという場合でございますが、私ども前にやっておった時分は電解より石炭の方が非常に安かった。その当時は私どもガス法でやったのでありますが、石炭が三倍くらいに上っても石炭による方が電解よりも安かったのであります。最近ではこれが逆になりまして、水の電気分解法によって水素をとるというふうになっておりますが、なお現在でもしかしそういった水の電気分解法によるものが、これは硫安でございますが、三三%、石炭法によるものが六七%になっております。石炭は二百五十万トンくらい使っておるのでございますが、これとても今のような状態では比較研究する余地があるのじゃないか。これは私は自分で計算しておりませんから確信はないのでございますが、これは私だけでございませんで、エネルギーを考える人で私と同じような疑問を持っておる人がございます。そこで、一体石炭法でやっていいのかあるいは水の電気分解法でやるのがいいのか、これが一つ問題点じゃないだろうか、こういうふうにも考えておるのでございます。それには、今度日本水素工業でも、具体的にいいますとコッパースから、つまり常磐の割合に低品位炭を使いまして完全ガス化しましてこれを硫安原料あるいは尿素の原料にするようになっております。これとよく比較になります日産化学では重油を分解して水素塩にすることを考えております。この辺のところは先ほど申しましたように雇用関係も考えて、われわれが重油を使った方がいいのか石炭を使った方がいいのか、あるいは電力を使った方がいいのかということで、これは国策として考える余地があるのじゃないだろうかと思います。私はかつていたしましたとき、ウインクラーを使いました。そのとき、前の計算でございますけれども一キュービックメーターの水素に対しまして大体十一円五十銭、普通のガス化しますと、ウインクラーによりますと七円八十銭、コッパースによりますと六円七十銭、こんな計算になりまして、非常に進歩したのでございます。たとえば宇部興産でもコッパースを使っておりますけれども、あれよりは格段の進歩をいたしました。こういったことを考えまして、私どもやはり総合的なこの辺の比較研究も必要じゃないだろうか、こんなふうにも考えておるのでございます。  大へん時間が超過いたしましたが、なおドイツでの最近の石炭の処置の問題でございますけれども、これはかつては先ほど申しましたように人造石油といった問題がやかましく取り上げられておりました。これはOX法もございましたし、フイッシャー法もございました。最近では改良フイッシャー法も、OX法もできまして、ただ人造石油といったものじゃございません。ずっと高度化した芳香族の炭化水素を作りまして、高級アルコールとか脂肪酸とか合成樹脂可塑剤とか洗剤とか溶剤とか石けんとか、高級燃料等を作っておるのでございます。こんなふうに、なおルルギーも同じでございます。私どもは乾留炉をずっと前、ドイツが使ってないときに初めて使って見たときがございましたが、ルルギーの完全ガス化法として非常に進歩をしました。こういう点を考えまして、特に私は感じるのでございますけれども、どうも日本が東南アジアに技術協力をするといったようなことをよく言われますけれども日本は何かというとドイツ、アメリカから技術をもらったり援助を受けておるような状態で、東南アジアにおける技術援助ができるものかと私は心配するものであります。先ほど申しましたが、やはり技術の振興ということが何をおいても目下の急務じゃないだろうか、こう考えておるのでございます。そこでドイツは日本以上の戦災を受けました中で、さっきもコッパースの話をいたしましたし、ルルギーの話もいたしましたが、あるいはアセチリン関係——このことは申し上げませんでしたけれども、ああいう方面の画期的ないろいろな発明をしておるのであります。日本もPBレポートを手本にしてやっていた時期は過ぎました。そして何かというとドイツに走るという状態にあるのでございまして、これは日本として、今後ともわれわれの立場としましても、よほど反省してこの技術振興というものに思いをいたしていくのでなければいけないのじゃなかろうか、こうも考えまして、私は繰返して申し上げます。ある程度石炭生産は絶対に維持すべきである。これには政府石炭業者も需要者側も協力する義務がある、こう考えております。それには私ども需要者といたしましてはできるだけ一つこれを高度化利用をいたしまして、そうして多少炭価は高くとも私たちの手で、技術の進歩によって吸収していって協力したい。これよりほか方法はないのじゃないか、こんなふうにも考えております。大へん時間を超過いたしまして恐縮いたしました。これで私のお話を終えさしていただきます。
  6. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 これにて参考人の方方の御意見の開陳は終りました。  質疑の通告がありましたのでこれを許します。小笠公韶君
  7. 小笠公韶

    ○小笠小委員 それでは私は池田参考人のお話を伺いたいと思います。池田参考人のお話を伺いますと、石炭鉱業について、適正生産量をあくまで維持しなければならない、適正生産量を維持しながら、それを高度的に利用することによって、重油その他競争燃料との競争力を確保して参らなければならない、こういう趣旨のお話であったと思うのでありますが、現段階におきまして、石炭鉱業の維持の上におきまして、適正生産量を確保するということは私どもぜひ必要だと思います。私も同感だと思うのですが、ここに経済諸条件が違うのであります。この経済諸条件が違うところをどういうふうにして現実に持っていかれようとするのか。お話の論旨があっちこっち飛んでおるようでありまして、私は理解が困難であったのですが、総合燃料対策の中の石炭鉱業維持のために、特に販路の確保を、現実の事態に即して、しかも経済性を無視しない範囲においてこれをやっていくには、どういう具体的な方法をお持ちであるか、それを伺いたいと思うのであります。
  8. 池田亀三郎

    池田参考人 これは非常にむずかしい問題と思います。先ほど申しましたように、石炭のコストを下げるように、私は政府の責任ということは申しませんでしたけれども、これは政府がある程度育成するとか、行政指導するとかいうことは必要だと思います。たとえば、私は詳しいことは存じ上げませんけれども、縦坑六十八本を掘りますのに開発利子の八分五厘を六分五厘にする。それから三百万トンの炭鉱を買収するために残存炭鉱から十五円の賦課金を取る、これは仄聞ですからあるいは間違っているかもしれませんが、そういうことであってはいけないと思うのでありまして、政府の責任といたしましては、金利を下げるのなら、もっと下げてほしいと思います。それから賦課金等はやめてもらいたいと思います。それからなお石炭業者の責任も、私申しませんでしたけれども石炭業者といたしましても、私ははっきり申し上げるならば、今のような犬牙錯綜した鉱区のままで六十八本掘るのがいいのか、あるいはもっと整理統合して掘った方がいいのか、この辺は一つ検討をする必要があるのではないかと考えております。そこで私ども需要者といたしましては、なるべく石炭業者とも協力いたしまして、付加価値を高めるように努力して参りたいと思っておるのであります。ですから適正生産量といいましても、五千万トンがいいといっても、これは無理だと思います。大体大勢からいいますと、石炭から液体燃料にかわるということは世界の大勢でございまして、この大勢にさからっていくことは、なかなかむずかしいと思うのでございます。そうかといって、手放しで、先ほど申しましたように外貨とか雇傭の関係もございまして、そういう点からいたしまして、われわれは重油が安いから重油を使うということではいかぬので、ある程度はしんぼうして、その利用効率を上げるとか、あるいは高度化するとか、付加価値を上げるとかいうことに努力していきたいと思っております。
  9. 小笠公韶

    ○小笠小委員 お話を伺いまして、どうも私はぴんとこないのです。総合燃料対策の問題の中で中心点は、現実の問題として石炭重油の問題にあると思うのです。その点につきまして、御説明の中で石炭鉱業の維持のために適正出炭量を確保することは、どうしてもやらなければならない。それに関連して必要なる行政的措置なり、立法措置を講じなければならないというお話があると同時に、一方において人の雇用の問題を考えつつ、重油は安いからというのみで輸入させてはいかぬという考えを述べておられる。重油は安いから輸入してはいけないという意味は、具体的に言うと、石炭鉱業合理化までの過程においては、重油の輸入の調節によってこれをつないでいこうという御意図かどうか。もしそうだとするならば、一面から申しますれば、重油を使うという面については、それだけの合理性があること、いわゆる効率の点において、あるいはその他の点において合理性を持っておるということはすでに御承知の通りであります。こういう問題との調整をどうとっていくか。お話が非常に断片的であって、いかなる点をどういう方向へ持っていけば石炭の適正生産量を維持していけるかということが私は理解ができなかったのであります。特に重油の輸入の問題と関連してはっきり御説明が願えますならば非常に幸いだと思います。特に石炭鉱業合理化臨時措置法案に盛られました、弱小炭鉱の整理に伴います買収資金の負担関係がどうなるかというような問題は過渡的な問題であります。そういう問題でなしに、基本的な燃料対策として今の問題をどう考えるか、はっきりと御意見をお示し賜わりたいと思います。
  10. 池田亀三郎

    池田参考人 お答えいたします。私は安いから輸入してはいかぬとは申さなかった、もし言葉が足りなかったら修正いたします。ただ安いから幾らでも輸入してもいいということでは済まぬ、こういうふうに申し上げたと思います。これだけは修正しておきます。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 小委員外の商工委員の方々の質疑も随時に許したいと思いますので御了解願いたいと思います。齋藤憲三君。
  12. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 ただいま参考人の御両人の御意見を承わりましたが、総合燃料計画における石炭の利用の問題はきわめて大きな問題でございまして、とうてい短時間に参考人各位に御質問申し上げて御回答賜わることはできないと思っているのであります。はなはだ残念ですが、よく速記録を拝見した上にさらにまた機会をお作り願って本日のお話に対する御質問を申し上げたいと思うのでありますが、端的に一、二お伺いしておきたいと思うことがございますから簡略にお答えを願いたい。第一点は本田さんにお伺いしますが、今日の都市ガスは、御経験によりますと大体どの程度の戸数の都市に対して石炭を用いてガスの配給ができるものか。
  13. 本田弘敏

    本田参考人 常識的に申しまして、現在のガス事業は七十九ほどございまして、その大部分は小規模の事業でございます。それが先ほど申し上げましたように何とかやっていけているということは、従来の古い設備を持っているからでありまして、これから新しく事業を営みますということになりますと、相当の需要家を持たぬとなかなか経営困難じゃないか。私どもガス協会でいろいろ調べてみておりますが、結局昨年末の調査では人口十万以上、九万以上、八万以上の市がそれぞれ二市ずつありまして、五万以上八万未満が三十二市、五万以下が二百三十六市に及んでいますが、これが未普及都市なのでございます。これに対しまして現在経営をしておりますが、大体一都市で三千戸以上の需要家があれば、一応経営は成り立つものと考えています。従って、密集人口が二万以上ある都市でなければ、ガス事業の経営ができないと存じますので、最近の市では少くとも私どもの見当では人口五万以上くらいなくては困難じやないかというふうに考えております。要するに新しい設備資金が非常にかかりますので、それである程度の利潤を上げて経営をしていくということはなかなか容易なことでないと思います。話がついでになりますが、現在東京ガス料金が一立方メートル十五円七十銭というようなことも結局古い設備をほとんど使っておりますので、これから五カ年計画で五カ年間に二百三十五億というような膨大な資金を使いますというと、結局先ほど申し上げました低利長期政府資金を融通していただくとかあるいは租税公課の減免とか、そういうことなしではとても今の料金ではやっていけない。そういう私が希望しますような諸条件が今後いれられますとすれば、新しい事業ももっと人口が少くともあるいは何とかやっていけるかもしれません。現在の何では人口が少くとも五万ぐらいなくてはなかなか経営困難じゃないか、そういうように私は考えます。
  14. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 もう一つだけ。東京ガスガス発生の過程におけるガス廃液からゲルマニウムの抽出について御援助なさっていると聞いておりますが、それは一体どういうことになっているか。どのくらいの御計画をもって御援助なさっているのか。
  15. 本田弘敏

    本田参考人 援助をいたしているのではございません。私の方自体でやっております。これは石炭研究所と協力してやっておりますが、ただいままで酸化ゲルマニウムを大森と鶴見の工場である程度の数量取っておりますが、まだまだ企業化する域までに至っておりません。やはり相当最初の見込みよりは困難だということがわかって参りました。もっぱら今ものになるように努力しておりますが、現在のところまだ企業化する程度のところまで行っておりません。
  16. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 もう少し突っ込んでお伺いしたいのですが、これは企業化するお見込みがあるのですか。というのはゲルマニウムの採算率が外国生産費に比較して現在は非常に割高になっているという話を聞く。将来何かそこに外国の製品に比較いたしまして大規模な生産過程を持てば採算率を引き下げて外国製品に匹敵するような、ゲルマニウム工業の基調をなすようなゲルマニウムの抽出がガス廃液からできるか。今までの御研究でそういうふうな見通しがついておられますか。
  17. 本田弘敏

    本田参考人 ガス廃液からゲルマニウムを抽出するということは東京ガスで初めて採用した方式なんです。ガス廃液というものは、ガスを還元するときに必ず出るもので、原価としてはただ捨てるものから抽出するのでございますが、ほかのいろいろな石炭の灰がらとかいうものからゲルマニウムの製法は多々あるようでございますけれどもガスの廃液からこしらえるということは原価としては一番安くつくだろうという見込みのもとにやっているのでありまして、もちろんただいま研究を持続しています以上成算を持っております。これは期限がいつになって果してわれわれの希望する額に達するかどうか。ただいまにおいては酸化ゲルトニウムにおいても量が少い、いろいろの関係がありまして企業化しないのでございます。それでも一応ペーする程度にはなっているのでございます。
  18. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 まだいろいろ伺いたいのですが、後日に譲りまして、池田参考人にお伺いいたしたいのであります。先ほどお話の間に、石炭化学工業の問題がだいぶ出たのでございますが、日本総合燃料対策のうちに、お話の通り石炭が非常に重大なウェートを持っているということは、これはもうお話の通りであると私は思っております。いろいろお話の中にございました通り、一億四千万俵の木炭を今日のままで使っているということは、もう私の聞いた範囲内においてもその寿命は十年ないし十二、三年しかない。どうしても家庭燃料においてもこれは石炭に置きかえなければならぬ。石炭に置きかえるということになりますと、石炭を乾留してコークスあるいはコーライトにして、これで練炭か何かを作って、家庭燃料に置きかえるという方法を考える。そういうことになりますと、石炭化学工業というものはどうしても徹底化されなければならない。ところが私が今まで石炭局あるいはその他から承わりましたお話によりますと、どうも世界の化学工業の水準において石炭化学工業が成り立たないのだ、これは石油化学工業と比較いたしますと、石炭化学工業は採算的に成り立たないのだ、だからそこに日本石炭合理化の根本策においても非常に脆弱性がある、こういうお話を承わるのですが、私の考えとしては、たとい多少の脆弱性があっても、日本の国情から考えると、石炭化学工業というものは日本として絶対にやっていかなければならぬ一つの性格を持っているのではないかと思っております。その点でいろいろ方々で調べてみますと、必ずしも石炭化学工業というものは悲観すべきものではない。むしろ石油化学工業と石炭化学工業というものは並行して発展していくべきものであって、その過程において初めて粗悪炭の利用とか、あるいはもっと高度の石炭の利用率というものが出て参りまして、日本石炭鉱業合理化にほんとうの筋金が入るのだ、今日提案されているがごときいわゆる石炭鉱業合理化臨時措置法というものは、単に縦坑を掘るとか、弱小鉱業を買いつぶすとか、これはほんとうの臨時措置であって、かくのごときものであってはとうてい石炭鉱業合理化というものはできないのだ、もっと思い切ったコール・ケミカルというものが確立されて初めて、石炭鉱業合理化というものにある一つの大きな筋金が入るのだ、こういう説もたくさんあるので、これは非常に迷っているのでございます。簡単でよろしゅうございますが、池田参考人は今までの御経験、御体験によって、日本石炭化学工業というものは、石油化学工業と相対比しても十分発展の余地がある。国策としてこの石炭化学工業というものは強力に推進していかなければならぬものであるというお考えをお持ちになっているのですか、そうでないのか、これを一つ承わりたい。
  19. 池田亀三郎

    池田参考人 お答えが非常にむずかしい御質問でございまして、私はっきり申しますと、さっきも申し上げましたように、私三十年前に石炭掘りから石炭化学工業にかわる発意をいたしまして、十年後に至って初めて三菱化成を創立したのでございます。それからちょうど三十年になります。私さっき石炭化学工業についても、ここに大きな変革がなければいかぬだろう、こう申し上げたのですが、今申しましたように、石炭局長そのほかのお話があったということなんですが、私も同じようにそういう懸念を持っております。ただ、しかし今は石炭と油と比べると、油が非常に安いということを言われますけれども、もしかりに二割も三割も石炭コストが下るということであれば、日本の油と比較しましても、そんなに悲観することはないのではないか、こう思っております。もう一つは、今油は世界的のカルテルでございます。新しい油田もあちこちに発見されておりますから、供給には不自由はないかもしれません。けれども運賃としては、大体こんな運賃であったらやっていけないだろうと思います。実際日本の現在での船会社の状態を見ましても同じでございますが、ただタンカーの方だけは普通の貨物ほど上っておりませんが、大体どうでしょうか。私も詳しいことはわかりませんが、今の石油精製会社で買っている油というものの運賃は、おそらく三七%から四〇%くらいじゃないかと思います。かりに運賃が倍になったらどうするか。すぐここで二〇%か二五%油の値段が上るということになりますから、もし石炭が二割、三割下るということになりますと、逆に相当値ざやの詰まるところが、四割から五割詰まるということも考えられることではないだろうかと思います。そうですから、ただ現状を見まして、石炭化学工業としてどうしても成り立たない、また燃料としても、エネルギーとしても同様だということは早計じゃないだろうか。こう私は思います。そんなら今私の考えは、これをどうしたらどうなるという確信は持っておりませんが、ただ、しかし石炭化学工業というものは、日本ではあまり研究に熱が入っておりません。石油化学工業の方は、最近十一社くらいも石油化学工業をやろうといった会社が出て参りましたけれども、これとても、私ども委員会に出て聞きましても、それほど確信があり自信を持って考えておるのじゃないと思います。とにかくバスに乗りおくれてはいかぬというものもかなりあったと思います。むろん政府としても、これは行政指導をなさいますが、そのうち生きるのが三社か四社だろうと思います。それもあるいは危ないのかもしれないと思います。そういうふうに考えまして、今石油化学工業というものははやりものになり過ぎておるのではないか、もっとほんとうに国家政策として考える場合には、ほんとうにそういう点の見通しをつけていかなければいかぬのではないだろうかと思います。お前の見通しはどうかと言われますと、私はそういう面を研究しておりませんが、ただドイツの現在の状態でも、OX法あるいは改良フィッシャー法に変りまして、いろいろ研究、進歩しております。それから先ほど申しました、多少石炭が高くても、付加価値を高めることが非常に進歩しておりますから、この進歩ということも、やはりわが国においても予想してもいいのではないか。こういう点を見ますと、日本では、これはおそらくどこでも研究してないんじゃないかと思うくらいでございますから、ぜひ政策としても取り上げて研究する余地があるのではないか、こう思うのです。
  20. 齋藤憲三

    ○齋藤憲三君 ただいまお話を承わりますと、私の懸念しておったことをやはり池田参考人も懸念しておられる。日本ではペトロ・ケミカル・インダストリーというものが一つのはやりものになって、これからやろう——その石油化学工業の重要な特許はみな外国が握っておる。日本はこれからやろうというのですが、果して日本で成功するか成功しないか。あるいはその石油化学工業から出てくるところのいろいろな製品というものが、どれだけのコストを持って生まれてくるか。また今お話を承わりました石油化学工業というものも、世界的にフィッシャー法とかその他いろいろな方面についてもまだ改良の余地がある。日本では大きくこれを取り上げていくところの研究過程というものがまことに貧弱だ。こういうことになりますと、われわれ国策決定の任に当っておる者は、一体どうしならよいか、これを一体どういう角度に研究を進めていったらよいか、一体コール・ケミカルの進歩というものは世界的にどれくらいの進歩過程にあって どれだけの化学工業が行われて、どれだけの製品が、どんなコストで出てきておるか。石油化学工業はどうか。こういうものに対しても的確な何かの調査をし、それに判定を与えるところのものがなければ、いかにわれわれ国民の選良が万能であっても、とても判定ができないと思っておる。私は、日本の行政機構その他政治面において大きな欠陥があるのではないかと考えておるが、長年石炭を掘り石炭化学工業に従事せられた参考人は、そういう点に対しましてはいかにお考えになっておりますか。簡単でよろしゅうございますから一つ所懐をお申し述べ願いたい。
  21. 池田亀三郎

    池田参考人 私も同じような心配を持っております。大体今もお話に出ましたけれども、たとえば同じ有機合成物を作るのでも、一体カーバイドからアセチレンを作るのがよいか、石炭からいったものがよいのか、石油化学工業からいったらよいのかというようなことを、総合的に考える機関もないと思います。ですから私はぜひこういう点では——一番欠陥もあって、技術進歩ということが、あらゆる面でかけ声は非常に大きかったのですけれども、かけ声だけに終りまして、とかくそういう面を総合的に、長期的に考える行政機構もないし、民間にもそういうふうな組織は私はないと思います。これは私どもの年来の主張でございましたが、とかく国会もいろいろ決議案等を出されますけれども、これも政策面には大して実行されてないと思います。そこで何とかこの機会をもちまして、こういう面を総合的に考えていくような機関、調査もし、情報を集めることもいたしますし、そのほかいろいろ研究をやる、あるいは政府も補助する、あるいは共同研究もやらす、委託研究もやらすというふうなことを総合して企画する、そしてこれらの連絡調整もはかるというような、力強い、権力の大きなものをここに一つ作っていただくよりほか方法はないだろうと思います。おそらく現在では政府にもないと思います。民間にもありません。それを私どもは前々から非常に遺憾に思っておりまして、ぜひそういう機関を作ってほしい——これはどこの国だって、アメリカだってイギリスだって、そういうふうなものがほとんど、大統領か何かのブレーンとしてあるのでございます。日本のような技術がおくれておる、ことに資源が乏しい国としましては、あるいは外国以上にこういう点が必要ではないか、かようにふだんから痛感しておるのでございます。
  22. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 私も本田参考人に、簡単に三点ほどお伺いしておきたいと思うのでありますが、最近の発表を見ますと、ドイツで低品位炭の完全ガス化ということが成功して、相当世界的になっておるようです。日本でも低品位炭の完全ガス化ということが十分研究されて、直ちにやれる程度になっておるかどうかということが一つでございます。  いま一点は、現在ガス消費量は、先ほど伺っておりますと、日本は世界的に低い、文明国としては低いようでございます。現在の三倍程度——欧米におけるガス消費量の最低の国程度ガス化をすれば、日本石炭消費量をどの程度現在より増加するという数字が出るかという点でございます。  いま一点は、これらの低品位炭の完全ガス化設備——ガス消費量を先ほど申しました現在の二倍程度、いわゆる六〇%近くとして設備をするとすれば、どの程度設備資金が要るか、こういうことについての計画というものができておるかどうか、この三点を  一つお知らせ願いたいと思います。
  23. 本田弘敏

    本田参考人 第一点の、低品位炭を完全ガス化する方式、これは先ほどの私の意見のうちにも一応簡単に申し述べておきましたが、現在では、低品位炭をそのまま完全ガス化する方式はまだ使っておりません。ただ先ほども申し上げましたように、私の方で今度豊州で採用いたしますGI式の装置でございますね、これには低品位炭も使えるという見通しのもとにやっております。今まで、先ほど申し上げましたように、日本の低品位炭をドイツあたりに送りまして、果して完全ガス化ができるかどうかという試験も再々やっておりまして、今度のGI式ではそれができる見通しのもとにやっております。  第二点は何でございましたか。
  24. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 第二点は、現在のガス消費量の三倍くらいの——欧米において一番低い国が六〇%くらいとさきに伺ったのでございますが、その程度の消費率までガス量を高めていくとすれば、現在の石炭消費量をさらに何倍くらいの量に増加することができるか、こういうことをお伺いしたい。
  25. 本田弘敏

    本田参考人 これも具体的にどうということはまだ計算されてませんが、ガスの量と石炭の量は比例するのでございますから、現在のガス普及率が三倍になれば、結局石炭の量もそれに比例して当然ふえるわけになります。それでその数量は計算すれば出るわけでございますが、今その数字を持っておりません。
  26. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 その数字の問題というのも大略でよろしゅうございます。別にはっきりした数字でなくて、大体何倍くらいに石炭消費量がふえるかということ、それから先ほどお尋ねしました、今のガスをとる方法はコークスをとる方法でありますので、従って外国から原料炭を輸入しなければなりませんが、ドイツでの完全ガス化というのは、コークスをとらない、いわゆる低品位炭を完全ガス化をしてしまう、こういう方式のようであります。従って、これらの設備をするために大ざっぱに見てどのくらいの資金が要るか、こういうことでございます。
  27. 本田弘敏

    本田参考人 ただいまのお話のコークスを製造するために外国炭が要るということは、一部の肥料業者その他に供給する高級なコークスをこしらえるために外国の輸入炭が必要でありまして、ただガスをこしらえるためにはあえて外国炭の必要はないのであります。現在私どもの全体の石炭の消費数量のうち約二割二、三分が外国炭になっておるのでありますが、これは先ほど申し上げましたように、特に肥料業者その他に対して供給します上質なコークスをこしらえるために輸入しておるのでございます。今の御質問は完全ガス化のためにどれだけの費用が要るかということでございますか。
  28. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 そうです。量を三倍くらいにふやすための建設資金ですね。
  29. 本田弘敏

    本田参考人 これはちょっと——低品位炭の製造には、私どもで採用しようとしておりますGI式の約三倍かかりますから、今の三倍に消費量がふえるということになりますと、先ほど申し上げましたように具体的にはっきりしませんが、当然それに比例して建設費がかかると思います。参考のために申し上げますと、私どもの五カ年計画の所要資金が五百八十七億かかることになっております。これを標準にしまして、需用家の数が三倍になるということになりますと、大体これに比例してこの三倍分というようなことは一応目安をつけてもよろしいのではないかと思うのでございますが……。
  30. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 本則さん、今私がお尋ねしましたようなことは、私の質問も非常に大ざっぱな質問でありますので、後日でよろしゅうございますから、今のような点についてあなたの方で資料をおまとめ願えるようでありますればその資料をおまとめ願いまして、御参考に一つ届けていただきますと大へん仕合せだと思います。
  31. 本田弘敏

    本田参考人 承知いたしました。できるだけ早い機会にまとめましてお届けいたします。
  32. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 加藤精三君。
  33. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 ちょっと本田参考人にお尋ねしたいのですが、こまかいことで、かえって安西、富岡、青木の諸氏が見えておられるようでございますからそういう方からお答えいただいた方がいいかもしれません。いずれにいたしましてもこういうことをお聞きしたいのであります。さきに当小委員会におきまして、技術研究所の係官や東京工業試験所の係官に参考人として来ていただいたことがございますが、そのときいただきました参考資料によりますと、低品位炭のガス化という問題につきましてはたしか東京工業試験所の第二部か何かで研究しておられますが、そのときの予算がたしか数十万円しかないと記憶しております。そんなような状態では、とてもこの東京瓦斯等におきまして大規模に試験しておられますようなのとは違って、十分な試験ができないかとも思いますけれども、そこにおられる職員は相当な有力な学者たちだと思います。東京瓦斯が低品位炭の試験をしておられますのとどういうふうに交渉があるものか。技術研究所なりあるいは東京工業試験所の燃料の方の研究と互いに研究を見せ合って協力し合っているか。それとも現在日本にある科学技術の試験所のごときは問題にならぬから、むしろ外国の事例を考えて、外国技術者を派遣しまして調査でもしておられるものか。それからなおかくまでも少い経費をもって相当の大学者が試験しておるならば、業者団体の方からその研究を援助でもしてくれるものかというような点につきましてお伺いしたいと思います。
  34. 本田弘敏

    本田参考人 お答え申し上げます。私どもの方では大体年々ドイツあたりに技術者を派遣しまして実地調査もし、研究もさしておりまして、先ほど申しましたようにGI式では低品位炭の完全ガス化工場を今度実施する予定でそれを採用しております。今お話がありました工業試験その他との研究のお互いの連絡というものはございません。これはお話がございましたように、私どもにとりまして参考になるといいますか、実際私どもの差し迫った問題に参考になるほどの何は今のところお話を伺いましてもないように思いますし、われわれはもう少し迫った切実な何がありますので、技術者を直接向うに派遣して、先ほど申し上げましたように、実地に採用する手はず、段取りにまでいっております。試験費その他の援助というようなことは、私ども現在のところいたしておりません。
  35. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 それから続けて本田参考人にお伺いしたいのでありますが、いろいろ本日承わったところでは、両参考人の御意見からいたしまして、当面の石炭鉱業合理化臨時措置法等に関しましての問題について、法案に書いてある面以外に何か解決点を求められないかという問題についてのきょうはヒアリングだと考えております。そういう面から見まして、どうも幼稚な質問のようでありますが、幸いこの都市ガスの五カ年計画というものがございますけれども、その五カ年のものを三カ年あるいは三カ年半に繰り上げることによって相当大量に石炭を消費するというようなことで、相当目前に迫っておる石炭関係の産業の建て直しの問題あるいは石炭産業不況に伴う社会問題を解決するのにある程度役に立つものかどうか。速度の問題もあろうかと思いますが、それに対する国家的な問題解決に対しての本田社長さんの意気込みというか、経綸というか、そういうふうなものの片鱗を率直に述べていただくことができましたらと思います。
  36. 本田弘敏

    本田参考人 お答え申し上げます。私どもの五カ年計画は二十七年の暮れに立案いたしましたので、その後経過を見ますと、先ほども申し上げましたように、ガス化はわれわれの予想した以上に急増いたしました。最初の五カ年計画の通りにやっておったのではとても皆様の御不便を見るに忍びないものがあると思いまして、結局スピード・アップしなければならないという問題が出て、それとコークス需給状況が最初の見通しよりもかなり悪い、当分好転しそうもない。こういう二つの理由のもとに昨年の暮れに五カ年計画を改訂いたしまして、その結果三十二年末に、つまり五カ年計画の済んだときに供給しますガス量を一年繰り上げて、三十一年には供給できるように計画を変え、またコークス生産量も最初の計画よりも下回るような計画に変更いたしまして、これがお手元に差し上げてあります改訂五カ年計画になっております。そういうわけで今御要望がありましたように、石炭需要量は一年スピード・アップということによりまして、はるかに使用量は増大しておるわけであります。現に私ども最初の計画では一年間約六万軒の新しい需要家を開拓する。これは計画の中に載っておりますが、この四月からすでに七千軒程度需要家を取っております。だんだんふやしまして、月々八千軒、来月あたりは八千軒の需要家が必ず取れる、そういう見込みのもとにやっておる次第でありますから、御期待に沿うことができると思います。その点御質問の趣旨にかなうことじゃないかと思っております。
  37. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 私がお尋ねしましたのは、石炭鉱業合理化臨時措置法ですが、今度の法律案がたくさん失業者を生むことであるし、いろいろの点から見て諸多の産業石炭需要を起すことによって今度のような措置をとらぬで済むならば、とらない方がいいわけですから、その面で都市ガス計画を、残り三年間あるなら三年間、二年間あるなら二年間のものをある程度その半分くらいに短縮して、石炭をよけい使うことによって、この問題の解決になるかどうかという点をお尋ねしたい。国策としての方面をお伺いしたいのでして、家庭ガスのほしい人の需要に早く応じ得るかどうかという問題じゃなしに、どうせある程度都市ガスはふやさなければならぬのなら、一思いに短期間に供給量を大拡充して、そうすることによって石炭の価格の維持とかあるいは石炭不況切り抜けの一助にできるかどうか、その面についてのお考えをお尋ねしておるわけであります。
  38. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 少し国策的なことで、お答弁が無理かと思いますから、一つあなたのお答えできる程度で……。
  39. 本田弘敏

    本田参考人 ただいまの御質問でございますが、ことしは五カ年計画のちょうど三年目に入っております。それで三十年、三十一年、三十二年で完成する予定でございましたが、先ほど申し上げましたように昨年の暮れに五カ年計画を改訂いたしまして、一年だけ繰り上げる、スピード・アップして、それだけ需要家数がふえるということは、とりもなおさず石炭使用量がふえるということになりますので、先生の御期待通りこれが国策としてガス需要がふえるために、いろいろな国策的な問題が直接解決できるというようなことにはなかなか参らないと思いますけれども、少くともその一助にはなっておると私は思います。ただいま三年目になりまして、今度新工場をこしらえますのは、東京湾の中に豊州というところがございます。そこを十万六千坪ばかり埋め立てるのでございます。昨年の五月から埋め立てを始めまして、今月の半ば過ぎには埋め立てが完了する予定でございます。直ちにそこに新工場建設をいたします。この埋め立てにしても今までの話を聞きますと、これだけの土地の埋め立てがこんなに迅速に進捗したということはほかに類例を見ないような特別のいい成績だそうでございます。それというのも、私ども自体が先ほども申し上げましたように、ガス需要が急増したことに対応するために、どうしてもそれだけ早くやらなくちゃならぬという気持の上に業者を督励いたしまして、この好成績を得たのであります。これからも引き続きもちろん工場建設供給方面ではできるだけ万般にわたりまして仕事を早く進めまして、一年早くすることを予定しておりますけれども、できれば一年どころじゃない、一年半も早く進めることは、ほんとうに需要家の要望にこたえることでもありますし、また先生のおっしゃる石炭鉱業の一助にもなるというようなつもりでやっておりますが、全体の大きな営業の問題は別としまして、私どもは私どもなりにその一助をやっておるということを御了承願いたいと思います。
  40. 伊藤卯四郎

    伊藤委員長 他に質疑はありませんか。——ないようでございます。  参考人の方々には御多用中のところ、本小委員会のために長時間にわたり貴重な御意見の御開陳をいただき、本問題調査に多大の参考となりましたことを厚くお礼申し上げる次第でございます。  本日の会議はこの程度にとどめます。次会は追って公報をもってお知らせをすることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会