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1955-06-25 第22回国会 衆議院 商工委員会科学技術振興に関する小委員会及び総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会連合会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十五日(土曜日)     午前十一時一分開議  出席小委員   科学技術振興に関する小委員会    小委員長 前田 正男君       小笠 公韶君    齋藤 憲三君       長谷川四郎君    堀川 恭平君       神田  博君    小平 久雄君   総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委   員会    小委員長 伊藤卯四郎君       阿左美廣治君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    野田 武夫君       加藤 精三君    永井勝次郎君       八木  昇君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術行政         協議会事務局         長)      鈴江 康平君         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      石原 武夫君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         特許庁長官   上野 幸七君         工業技術院長  駒形 作次君  小委員外出席者         議     員 松前 重義君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術行政機構に関する件     —————————————   〔前田科学技術振興に関する小委員長委員長席に着く〕
  2. 前田正男

    前田委員長 これより科学技術振興に関する小委員会及び総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会連合会を開会いたします。  科学技術行政に関して調査を進めます。まず科学技術行政機関に関して、委員外発言がありますので、これを許すことについて御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。  本日は、過ぐる五月三十一日に科学技術小委員会において可決いたし、六月一日商工委員会におきまして可決いたしました科学技術庁総理府に設けるという決議案に基きまして、委員長手元において、各党においてその趣旨に沿いますところの科学術庁設置についての大体の構想に基いた設置要領を作成いたしました。お手元に配りました資料でございます。この資料に基きまして、私から少しく説明をさせていただきたいと思います。  過日の決議にも書いてあります通り原子力統轄機構を含めた総合調整と刷新の目的を持った科学技術庁総理府に作る、こういうことでございましたので、この趣旨にもございます通り日本基礎研究というものと応用研究というものを有効な成果を上げるように連絡していきたい、こういうような観点に基きまして、大体別紙設置要領通りの任務と権限を持ったものを考え上げたわけであります。  そこでこれは要領をお読み願いましたならば、大体おわかり願えると思うのでございますが、この中で特に御説明を加えたいと思いますことは、原子力平和利用に関する審議会の問題でございますが、これにつきましては、学術会議の方は行政委員会を作ってもらいたい、こういうような希望を申し述べておりまして、本日の新聞によりますと、正式に昨日の学術会議決定をいたしたようでございます。従いましてそこの設置要領の三と四は、一応四の方は学術会議の、もし行政委員会式のものを作るとすれば、こういうようなものはどうだろうかという一つの案でございます。しかしながらわれわれといたしましては、なるべく三のような、科学技術庁とは一応独立した機関ではあるけれども原子力平和利用審議するというような機関を設けたらどうか、大体こういう意向を持っておるのでありまして、従いまして原子力審議機関につきましては、統轄機関については、二つの意見をここに出しておるわけであります。なお五の科学技術行政協議会法の改正の問題は、科学技術庁ができると同時に、なるべく学術会議意見というものを尊重する必要があるので、この科学技術行政協議会というものを活用するために、さらに審議事項をふやしたわけでありまして、また六の航空技術審議会は、現在総理府にありますのを、科学技術庁付属機関にする、こういうようにいたした案でございます。これに対しまして皆さんから御意見その他がございましたならば承わりたいと思っております。小笠君。
  4. 小笠公韶

    小笠委員 実は科学技術行政総合調整機能を充実せしめ、かつ日本産業振興とうらはらをして、科学技術を計画的に増進せしむるの要のあることは申し上げるまでもありません。私どもはそういう意味におきまして、現在の行政機構にこの機能を充足する行政部門が欠如しておるというふうにも考えるのであります。従いまして、こういうような欠如しておる、しかも刻下日本経済再建におきましても最も基礎的事項であるこの問題をやる上におきまして、何らかの補完措置がとらるべきであると思うのであります。この補完措置につきましては、さきに科学小委員会決議を経まして、商工委員会決議とも相なり、科学技術庁設置決議がなされておること御承知通りであります。私は民主党の一員といたしまして、本問題に関しまして、どういうふうな行政組織を考慮すべきか、それが国内の諸般の情勢から考えて最も適当であるかというようなことについて考えておったのでありますが、たまたま日本民主党の中に、科学技術特別調査委員会が設置せられまして、検討を加えておるわけでございますので、現段階までにおきまする情勢を御報告申し上げておきたい、そうして御参考にしていただくと好都合かと思いますので、小委員としての立場、また民主党の党員としての立場から、一応ここに経過をお話し申し上げたいと思うのであります。  私どもの党の調査特別委員会におきましては、先ほど私が申し上げましたような趣旨で、何らかの補完措置によって、計画的に現在のばらばらになっておる科学技術行政をまとめなければならぬということについては、意見が一致いたしておるのであります。でありまするが、ここに問題は、新しい独立官庁を作るのがいいか、あるいは他の機関の中にその機能を行わしめるがいいかというこの基本的な問題に対しまして、審議を進めて参ったのでありますが、今日までのところ、日本の諸情勢から考えまして、まだ最も大事なものが欠除しておる。この欠除をすみやかに一日も早く機能を少しでも補完していくという意味から見まして、今回経済審議庁経済企画庁に改変されるに際しまして、科学技術総合調整並びに計画性をこの役所の中において行わしめるという基本的な方針が適当ではないかという多数意見が目下進んでおるわけであります。どういう部を作り、どういうふうな所掌の課を作るかという問題はいろいろ研究を要すると思いますが、基本的な考え方として、そういうふうに動いておるわけであります。最終的に党の意見決定をみたわけでありませんが、調査委員会としては一応そういう結論に達しかかっておるということを申し上げまして、御参考に供したい、この立場だけを明らかにいたしておきたいと存じます。
  5. 前田正男

    前田委員長 ただいまの御意見につきましても、私どもよく拝聴さしていただきたいと思いますけれども、過日の委員会において、決議のあとで、高碕大臣及び石橋大臣からは、この決議案に大体賛成であるというような趣旨答弁をいただいておりますので、一つ民主党の中におきましても、なるべく党と政府を御調整の上、御尽力のほどをお願いいたしたいと思うのでありますが、この問題につきまして、ほかに御意見なりあるいは政府側に対して御質問の方がありましたならば一つ……。——松前君。
  6. 松前重義

    松前重義君 私は委員外でありますが、特別発言をお許し願いたいと思います。ただいまお話があったのでありますが、大体この科学技術行政に関する問題は、戦争前からの問題であります。およそ日本の政治というものは、科学技術に対する認識が非常に薄かったのでありまして、どうしても海外におくれておる日本科学技術を世界のレベルにまで上げるのには、重点的に科学技術をつかさどるところの行政官庁を作る必要がある、こういうことがわが国後進性特異性として考えられて参ったのでありまして、かつて戦争前に技術院を作りまして、それが戦争の中においてあの戦争態勢の中に巻き込まれて、技術院航空中心とした技術院として出発したのであります。こういうわけで、とにかく一応の中核体はできたようでありましたが、戦争という非常に奇形的な国家態勢に歪曲されまして、従って科学技術全体の行政をこれによってつかさどる態勢にまで立ち至ったのであります。その後において終戦に際会いたしましたときに、技術院東久邇内閣において廃止された。私はこれは非常に間違ったと実は思っておりますが、とにかく廃止された。廃止されまして、そうして技術に関する行政というものを総合的に取り扱うものは、ほとんどここにその芽ばえさえも見ることができなくなったのであります。その後通産省において一応工業技術院なるものが、どうも私どもが名前を忘れるくらいに細々とできておるということであります。こういう状態であります。しかしこれは通産省系統のいわゆる工業関係技術向上に向っての努力を払うために生まれた研究機関行政機関であります。ところが研究というものは非常に広範であり、基礎研究から、あるいはまた農林の関係から、もちろん通産を中心とし、運輸問題、飛行機の研究もあれば、あるいはまた厚生関係研究がある、建設関係もある、いろいろありまして、その範囲は決して経済とのみつながるばかりでなく、その基礎であるところの、いわゆる科学という問題につながらなければならないのであります。でありますから、経済との関連性において、国民生活の直結、あるいは衛生、あるいは健康管理、こういう医学の方面、薬学の方面とか、あらゆる点に関連性を持つものでありまして、とにかく一局、たとえば経済審議庁のごときところでやるということも、これは非常にお考えになった案の一つ結論ではありましょうけれども日本が最も欠除しておるところの科学技術向上、ことに後進性を取り戻すという意味においては、これは重点性を持たせた行政機関を作らなければ、とても追いつくものではない。何とか一緒にしてやるというような考え方は、アメリカあるいはヨーロッパの先進国等レベルにまで、わが国科学技術が一応到達しているときには考えられるものであると思うのでありますが、そこまで行っていないわが国科学技術を急速にそこまで進めていくのには、やはり一つ専門機関車をつけなければならない。貨車も、客車一緒につないでいくということは、当を得た、現在の日本のやり方に対処した行き方ではないのではなかろうかと私は思う。  経済科学庁という案が前からありました。自由党の中にも昨年ございまして、ことに迫水久常あたりはこういうことを主張していました。しかしこれはわが国現状、ことに歴史的な特異性後進性というものを背景にして考えるべきものである。そういう意味でその案に対しては非常な敬意を表しながら、やはり科学技術に対しては一つ専門機関車をつけてもらいたい。客車貨車一緒につないで持っていったんでは、とてもそれは追いつくものではない。こういう考え方のもとに立って、昨年も科学技術庁を提案したような次第であった。こういう見地からいたしまして、民主党の方々におかれましても、一つこういう諸説があるということを御参考に一応申し上げてみたいと思うのであります。こういう点から見まして、私は日本後進性というものを中心にして、少しばかり通産省お尋ねしてみたい。  最近終戦後におきましても、科学技術後進性のゆえに、非常にたくさんの外国品わが国に受け入れた。品物の受け入れならばまだそれだけでいいのでありますが、特許権わが国に輸入いたしまして、その特許料工業界においては相当払っておるはずなのであります。わが国という狭い市場を、いろいろな資本家たちがそれぞれ外国技術をもって自分市場としたいという、すなわちお互いに日本資本家がこの狭い市場において争う。特許権を輸入するときは、当然市場というものはわが国だけに限定されて、海外にはその製品輸出を大体禁ぜられておるはずなのであります。わが国貿易政策は、これで全く閉ざされるのでありますが、こういう状態になっておる現状を私どもは否定するわけには参らぬと思うのであります。通産省ではいろいろこれらの輸出に関しましても、技術的な面から、あるいは特許庁もお持ちでありますのでいろいろ御調査をなし、そうしてこれらに対する統計もお持ちであろうと思うのであります。日本工業独立後進性の回復に対する有力なる資料でありますので、一体今幾ら海外特許料を支払っておるのか、わが国にできない品物外国からどのくらい輸入したのか、これは二十九年度あたり統計でけっこうであります。年々どのくらいの特許料ロイアリティ海外に支払っておるのか、この支払った裏にはどういう協定があるのか、二、三の特異なものについては私はよく知っておりますが、その大体の傾向数字などにおきましても大体の傾向でけっこうですが、御答弁をいただきたいと思います。大体わが国後進性現状についての御説明を伺いたいと思います。
  7. 岩武照彦

    岩武政府委員 今松前議員お尋ねでございますが、外資導入と一口に言いますが、そのうちの技術提携、具体的に言いますれば、パテントの実施権の獲得あるいはノウ・ハウの利用、それから人間の招聘によります技術援助、それも入ると思いますが、そういう関係で年々幾らくらいのロイアリティその他を払っておるかというお尋ねでございますが、これにつきましてはちょうど手元に的確な資料を持っておりませんが、大体の実績の見当から申しますと、昨年あたりで約二千万ドル前後かと記憶しております。若干数字が違うかと思いますが、その見当かと存じております。  それから今お話がございましたが、製品輸出等について輸出が制限されておるやのお話がございました。これは個々の契約によりましていろいろ状況も違っておりますが、普通そういうふうに全然輸出を禁止しておるというふうな外資導入契約はできるだけ認可しないような方向考えております。現実にはむしろ地域を限って輸出を認めておるというふうな契約が多いようであります。なかんずく東南アジア方面市場は、ある意味ではそういう範囲でされる契約という格好になっておりますが、実情はそういうふうな全然輸出を認めないというものよりも、ある範囲市場を限って輸出を認めておるというのが多いようであります。  それから技術が遅れておりますために、外国からいろいろな機械装置その他を買っておる額のお話でございますが、これは具体的に申し上げますと、現在の機械装置類輸入等は年間一億ドルをちょっとこえておると思いますが、これは機械等につきましては、極端に申しますれば一つ申請ごとにその性能あるいは用途それから価格等を審査いたしまして、国内でできるものに比べまして性能がすぐれている、あるいは価格が著しく安い、あるいはその結果輸入しましても国産品の生産を阻害することがないような品物等に限りまして輸入しているわけでございます。その範囲のものは、これは遺憾ながら現在の日本工業水準をもってしましては生産できにくい品物でございます。機械工業等につきましては相当技術提携も進んでおりますが、やはり多方面のいろいろな種類性能等もございますから、相当範囲は輸入せざるを得ない、こういう状況でございます。その他の品物につきましては、全部が全部とは申しませんが、むしろ量的な面で足りないから輸入しておるという品物が多いかと記憶しておりますが、しかし化学製品などにおきましては、やはり機械類と同様、国産のものでは性能規格等が落ちる、あるいは価格が著しく違うというふうなものもあるようでございます。
  8. 松前重義

    松前重義君 二千万ドル、七十億ですね。
  9. 岩武照彦

    岩武政府委員 大体その見当かと思います。
  10. 松前重義

    松前重義君 相当な、これは何も品物が入ってこないで、ただ特許使用料だけであります。資源の少い日本はせめても頭の資源をもって海外輸出する、海外からロイアリティをとるというなら話はわかるのでありますが、遺憾ながら後進性のゆえにただいま二千万ドル、七十億という特許料がただ単に払われておる。物は一つも入ってこない。しかもそれは市場協定は大体わが国ということに限られておるのが多いと思う。これは私は知っておりますから、いろいろ御説明もあったようですが、範囲は、多少拡大しても限定されております。日本経済発展にはむしろ災いする、非常に阻害をするということです。私の聞いたところによると、テレビのごときは、ある会社はフィリップスと組む、ある会社はRCAと組む、ある会社はしかるべきところと組むというわけで、それぞれ外国と組んで、わが国市場外国技術によって争っておる、すなわちその特許によって争っておる。特許料はそれぞれ海外に出されておる、こういう無統制状態にあり、しかも日本経済はそのためにどんどん吸い取られておる。そういうことは、本質的な技術政策がないというところに問題があると私は思う。こういう点に対して、今の通産省機構の中で、工業技術院がやるべきだとおっしゃればそれきりでありましょうが、おそらくそういう問題に対する権能はないかと思うのであります。従って、どこでおやりになっておるか存じませんが、そういうものは外資委員会か何かの外資の問題で扱っておられるのではないかと思うのです。いずれにしても現状というものはまことに乱雑で、日本産業にとっては遺憾しごくな点が多いのであります。  これを要するに、現在の通産省だけの責任でなくて、国家全体の機構として技術政策が欠けておる、技術的な行政が欠けておるというところにあると私は思う。こういう意味におきまして、現在の通産省においては、非常な大きな欠陥行政機構にあるのにもかかわらず、ただいまお話がありましたように、多少なりともそこに通産省のできる範囲統制と申しますか、こういう問題に対する一種のコントロールをしていく、そうして国家全体の経済に稗益するようにしていくということは当然のことであると思います。それはどういうふうにして今のところおやりになっておられるか、またやろうとしてもどういうふうな役所としての欠陥があるのか、この辺を第一にお伺いしたいのです。  第二の問題は、忍は昨年フランスへ行ってみたら、フランスは今非常に復興しております。驚くべき復興ぶりです。みんな西ドイツヘばかり行っておられますけれどもフランス復興ぶりは工業的に大したものであります。そのフランスへ行って、いろいろこれらの問題を調べてみると、フランスではそれぞれ政府の指導のもとに、ちょうど日本でいうなら工業会のようなものを組織いたしまして、それに相当な力を持たして、そうしてその工業会が、何か自分の国で海外より劣ったものがあるときには、どうしても特許権を輸入しなくちゃいけない、そのときにはどうするかといえば、業者政府もみんな一体となって、どこの特許のだれの発明品が一番よろしいかということを調査して、それがきまれば、それ一つをその工業会として輸入いたしまして、業者共通にそれを使っておる。日本はそれぞれ海外会社と組んで海外特許権を使って、日本市場を争っておる。フランスは同じ種類のものはたった一つ特許権を輸入して、それを共通に使っていくというところに、フランス経済の現在の興隆の姿があるのです。フランス技術官庁と協力をいたしまして、こういう傾向をたどってきておるのでありまして、従ってこのような経済復興を見ておる。私はやはり資源の少い日本としては、いわゆる頭脳資源というものを開発するばかりでなく、あるいは御提案のような科学技術庁のようなものが必要であるばかりでなく、同時にまた技術輸出入に関する相当な国家的な意欲がこれに働かなくてはいかぬ、こういうように思うのであります。これらに対しまして通産省では工業方面におきましては、ただいまのお話もありましたから、ある程度のお考えを持っておやりになっておることだと思うのでありますが、その点伺いたいと思います。
  11. 岩武照彦

    岩武政府委員 技術振興に関する通産省基本的態度いかんというお話中心だろうと思います。現在通産省でやっておりまする技術振興施策としましては、これはもう先刻御承知だろうと存じますが、国立研究機関によりまする重要な研究促進民間におきまする各種の研究企業化という問題に中心を置いてやっておることは、すでに予算等に表われておりますので、御承知だろうと思います。われわれ仕事をやっておりまして、一番感じますことは、官民ともにいろいろな研究分野では、基礎的な研究につきましては相当優秀で、かつ国の経済発展に役立ち得る、かつ外貨収支の節約というような面で相当見るべきものが各所にあるように思われます。ただそれを現実企業化の面に乗せていくというつながりがだいぶ欠けておるのではないかと思っております。通産省にも国立研究所が十一ございますが、その研究室を回りましても、これはほんとう日本資源をうまく利用して、これができれば日本経済発展のある一翼はになえるというようなものもいろいろあるように思います。ただそれを現在の企業コマーシャルベースにどうして乗せていくかという点が一番問題だろうと思います。もう一つは、その一歩手前の実験室的な研究を、ほんとう企業化の前提になりまする工業化試験あるいは応用試験にまで持ち込むというつながりもなかなか十分でないように思います。これは官立の試験所で申し上げましたが、民間試験所においても同様だろうと思います。それからもう一つは、これはもう通産省内部の問題になってはなはだ恐縮でございますが、現実経済施策とそういうふうな研究テーマ、あるいは研究の進み方等とのつながりがやや十分でない点もございますが、これは内部の問題でございますので、われわれもそういうふうな現実経済情勢の動きと研究態勢をより緊密に持っていく必要があるということは感じておりますけれども、基本的に考えてみますと、やはり現在の日本企業のように資本蓄積の少いところで、しかもある程度有益な芽を持ちながらこれを現実化し得ない、企業化し得ないこのつながりを何とかしてつけるのがまず必要なことだと思います。もちろん資源有効開発利用の問題でも同様だと思いますが、どうしたらそういうふうな優秀な研究現実コマーシャルベースに乗せて企業化していけるかという点が実はわれわれとしては非常に苦労しているところでございまして、その点から申しますれば、現在われわれがやっておりますような、工業試験補助金でありますとか、あるいは国立試験所における工業化試験促進でありますとかは、そういう要望に応じますものは九牛の一毛とは申しませんが、きわめて微々たるものであります。これを何とかして促進拡大する方法はないのかと思ったわけでございます。  それからもう一つは、先ほど御指摘のありましたように、各研究団体総合調整ができていないということ、これも一つだと思います。これはひとり通産省だけの問題ではございませんで、国内の各分野の全体を通じまして、国のはっきりした方向に基いてそういうふうなテーマ調整しあるいは欠けておるところを補いまして促進し、これを実用化して参るという方向を、いわば総合性といいますか、あるいは一貫性といいますか、そういう面も必要だろうと考えております。どうも微力にしてあまりこれはいいという強い施策も打ち出しておりませんが、何かそういうふうな方向持ち出したいと思います。なお御指摘のありましたテレビ等特許の問題がございますが、これは日本技術水準が遅れていることば当然でございますが、さりとてあのRCAあるいはフィリップスみたいな比較的多種目にわたります総合的な特許を使わないで、同じようなスピードでテレビ生産を日本でやっていくということになりますと、これはひとり技術態勢の問題だけではありませんで、相当むずかしいことになるだろうと思います。ことに戦争中の空白もございまして、当時の事情といたしましては、ある程度そういう方向にいかざるを得なかったと存じておりますが、ただ御指摘のように、民間の受け入れ態勢がばらばらで、各社が競ってそういうふうな特許に飛びつくというふうな形は、これはいかにも残念でございますので、今御指摘がございましたが、フランスの例もございます通り、何かそういうふうに同じ外国のパテントを利用するにいたしましても、もう少し総合的な見地から調整ができないものかということは、これはわれわれいつも感じております。たとえば一例を申し上げますれば、こういうこともいいかどうか知りませんが、ある種の企業家の研究部面といいますか、そういうものでパテントの実施権をとって、これを傘下の企業利用させるとかあるいは特殊なパテントにおきましては、国でこれを利用開放するということができれば非常にけっこうだと思っております。現在のところいろいろな企業側の態度もございまして、そういう態勢が一挙にできないことははなはだ残念に思っております。
  12. 松前重義

    松前重義君 詳しい御答弁ありがとうございました。そこでもう一ぺん集約いたしまして二つだけお尋ねいたします。  かつて八木・岡部サーキットというものがあった。これは私の専門ですが、それはマイクロウエーブでありました。これは私どもの学生時代でありましたから、今から三十年くらい前にわが国においてマイクロウエーブが世界で初めて出た。これはアメリカでも注目し、英国あたりでもドイツでも注目いたしまして、世界の称讃を浴びたのはその当時でありました。ところがわが国において発明され、発見されたところのマイクロウエーブは、アメリカとおいて育ち、英国において具体化して電波兵器となり、テレビとなって現われて参ったのであります。結局レーダーというものができて第二次世界大戦で日本がむざんにやられたのは、やはりレーダーが一つの大きな問題であります。日本自体がみずから持っておる宝を、宝ということを知らないで、それが洋行して今ごろ帰ってきて盛んにマイクロウエーブ、マイクロウエーブと近ごろ国会あたりでも言い出した。実業界が近ごろになってアメリカから輸入したマイクロクエーブだとか、あるいは英国から輸入したマイクロウエーブだとかいって、外国のものだから今度食いついてきたというような日本経済界の実情であり、また政界の実情であります。こういう歴史もわが民族的な非常な悲劇だと思いますが、こういう悲劇が起るということはまだほかにもたくさん例がございます。三島博士の三島鋼にいたしましても、本多博士のKSスチールにしても、このKSスチールは世界で最もいいパーマネント・マグネットの材料であったのが、私がウエスターン・エレクトリックに行ったら、ウェスターンが盛んに製造して当時日本で輸入しておった。それで私は日本に帰ってきてい日本特許だからこれは日本で使うべきだといって、住友金属にやらせたことを記憶しております。このようにして日本科学というものは一ぺん洋行して、そうして外国製品としてわが国が高い値段で購入するということは、日本の政治と経済界の悲劇だと思う。こういう態勢に放置したのでは、日本民族は永遠にアジアにおいて貧困な立場に置かれるより方法はないと思う。こういう悲劇をどうして解決するかということが今度の新しい国作りのあり方でなければならぬと思って、日夜これについて心を砕いておったのでありますが、要するにこの問題は何といっても日本経済という考え方が、やはり科学技術というような根底からの、いわゆるゼネレイティヴな、創造的な頭脳資源の開発というものは第二義にして、現実的な金繰りだけを考えておる、いわゆる大蔵省的な考え方にすぎない。こういう考え方に終始しておるならば、いわゆる高利貸しによって支配される社会において結局世界の落伍者になるより方法はないと思う。大蔵省の人はおられぬでしょうから多少悪口は言っていいだろうが、とにかくそういうことであります。でありますからどうしてもここに科学の世界と技術の世界と経済の世界とを日本国内においてつながなければならぬのでありますが、遺憾ながら経済の面というものが科学技術を軽視する傾向をたどってきて今日に至っておる。科学技術一緒にすると、結局それに対する理解のない諸君によって、科学技術というものが独立機関でないから進まないという考え方を私どもは非常に持っておるのであります。持っておるのでありますが、何をおいてもこの科学の世界の発明発見ということが日本で起っても工業化されないというところに、両者の間に非常に大きな溝がある、スリップがある。歯車がかみ合わないというところにそういう非常に大きな欠陥があるのでありますが、これを一つ何とか全面的に総合化して、科学技術とをつないでやる、生産技術ともつないでやるという役割を果すことが新しい科学技術行政として必要ではないかと私どもは思う。この歯車というものが今までなかったから、科学科学のまま洋行してしまって、それが日本に帰ってくるときには高い値段になって帰ってくる。そうして日本経済を圧迫する作用をなしてきているのが現実であります。優秀なる頭脳を持っておる日本人が、せっかくの頭脳資源を金で輸出するのではなくただ取りされておる。そしてこれが今度は特許権となってわが国に渡ってくる。こういうみじめな格好がわが国の歴史であった。どうしてもこれは、文部省その他にも研究所がありますが、そういう研究所といわゆる工業技術とをつなぎ、これを製品化するという役割を務めるだけの作用をするものが日本には必要であると思う。工業技術院においては、ある程度そういうものの工業化に対する補助金等を出してこの促進に当っておられることは承わっておりますが、とにかく全般的に見て文部省その他の通産省以外の研究所との関係においても、これらの問題を総合化する必要があると私どもは思っております。それで工業技術院長に伺いたいのですが、今までの経験に照らしましてこういう問題に対してどういう御所見をお持ちであるか、大体の感想を伺いたいと思います。
  13. 駒形作次

    ○駒形政府委員 お答えいたします。今松前先生からお話わが国の工業技術外国に行って、そしてかえって向うから帰ってくるという例はいろいろあります。しかし工業技術の問題は、経済の問題と密接に関係して進めていってこそ、その効果的な結果が得られることもこれまた事実であると私は思います。そういう意味で私どもの方といたしましても、工業化の試験、応用研究等でいろいろとできるだけのことはいたしておる次第でございます。本年度は工業化の費用として三億余、応用研究につきまして二億余でしたか、私どもとしては決してこれで満足しておるものではありません。これの実施に当りましては、大学の教官の指導によりまして会社がその工業化あるいは応用研究をやっておるものがそれに相当含まれておるのでありまして、文部省関係基礎的な知識がこの面においても相当入っておるということも申し上げておかなければならぬところであります。要するに私どもといたしましては、科学技術の振興が非常に重要であり、科学技術全般を考える前にどこにその重点を向けていたたきたいかと申しますれば、経済自立という面にこれを向けるような工合にしていくべきであると私は思っておる次第でございます。
  14. 松前重義

    松前重義君 非常に御尽力になっておられることはわかります。全般的に見て科学技術に関する日本態勢がまた整備していないために、通産省としてもこの現実の歴史の歩み、世界の動きにおっつかないという状態に対して非常な努力を続けておられることは敬意を表しますが、しかし先ほど来民主党の方からもお話がありましたけれども、何をおいてもとにかくここに科学技術に関する機関車一つ作って——これは通産省の出店みたいなものになると思うのでありますが、急速にこれらの機関車を動かして今までの欠陥を補足し、外国の汽車に追いついて行くということが必要であると思うのであります。しかし何も外国のまねをするのではなくて、わが国にはわが国独自の最も得意な産業に向って重点性を持ったいき方をすべきであって、資源の豊富なアメリカのまねをして同じようなものを作っていったのでは永遠に追っつかぬと思う。やはりドイツがドイツ独自の工業を持っておるように、スイスはスイスの工業を持っておるように、またオランダはオランダなりの工業を持っておるように、得意の方向に向って根本的な方針なり政策が樹立されなければならぬ。そういう総合的な方向決定するもの、工業においては通産省の裏づけをするような強力な組織体が必要である。個々の行政はもちろん通産省においてやる、あるいはまた農林省、運輸省、厚生省、建設省等においてやる、こういう意味においてただいま委員長が提案されました科学技術庁の設置は、内容として必ずしも完全ではないでありましょう。日本機関車にはならなくて、せいぜい通産省のあと押しぐらいにしかならないでしょうけれども、しかし一応機関車たるべき芽ばえをここに作られるということは非常に必要だと思うのであります。こういう意味合いにおいて、ただいま提案されました趣旨内容等については検討の余地は多少ありましょうけれども、私は大体において賛成をいたすものであります。これに対して通産省の事務当局とされましてどういうふうな御意見をお持ちであるか伺いたいと思います。
  15. 岩武照彦

    岩武政府委員 ただいま松前先生から科学技術庁の問題を機関車にたとえられましたが、まことに適切な御比喩かと思っております。ただ先ほど私が申し上げましたし、また院長から申し上げましたところは、機関車がどこへ走るかという問題がむずかしい問題じゃないだろうか、いわば機関車なりあるいはその他のものは、言葉は極端ですが、目的に到達する一つの手段であり、方法ではないだろうかと思うのでございます。従って、目標をきめるのはこれは大きな政治の問題であり、あるいはその国の置かれております客観情勢によってきまることだろうと思いますが、科学技術はその目標により早く、より効果的に到達する一つの方法であり、手段であるのではないだろうか、こういうふうに私は思うのでございます。そういうふうな大きな考え方がかりにできたといたしますれば、行政の問題といたしましては、その与えられた目標にどういうふうにして到達するかという橋渡しの役目ではないだろうかと思っております。端的に申しますと、一国の発展の目標はおそらく経済発展国民生活向上だろうと思います。そういうふうな目標と、それにどうしたら効果的にいけるかという、この科学技術の採用、接近、実現の問題かと思います。従いまして行政機構といたしましても、そういうふうな国の目標を立てておりますところと、その手段的な意味を持っております科学技術とが、比較的近い、また緊密な組織で連携し、同じ機構として動いた方が、あるいはより有効にこの問題を処理し得るのではないだろうか、こういうふうに実は考えておるわけであります。先ほど先生の言葉もございましたが、むしろもう少し近い段階で、両者の総合調整をはかった方が、あるいはこの行政の問題としましては、適切な効果を上げるのではないだろうか、こういうふうな考え方をいたすわけでございます。そうしますと、科学技術経済発展とを比較的緊密な機構で連絡さすということになりますと、一つ考え方としましては、経済の総合企画調整をやっておりまする、現在は経済審議庁でございますが、それと表裏密接な組織で、この技術行政の総合企画あるいは調整といった機能を持つ方が適切ではないだろうか。もう少し具体的に申しますと、科学技術庁経済審議庁なり経済企画庁との調整の問題は、結局もう少し高いレベルの、いわば内閣なりあるいは政治の問題となるわけでございますが、問題はむしろその上へ上げるより、下の段階の方で調整した方が、少くともこの技術行政経済行政との行政面の考え方としましては、より有効であり、かつ適当に行われるのではないだろうか、こういうふうな気持を持っておるのでございます。従いまして具体的に、それでは一体どこの役所にどういう部を設けてそうするかというお話になるかもしれませんが、そういうふうな行政テクニックの問題は、いろいろな見方があると存じます。最終的に通歴省はこうだと考えておりませんか、ただ一応の意見といたしましては、経済審議庁に数個の技術担当の部を設け、原子力もその中に入ると思いますが、そうして各庁に分属しておりまする自然科学方面の応用面に属しまする研究技術的な問題——技術的な問題と申しますのは、いろいろな付属した問題がありまして、小にしますれば技術者の渡航問題から始めまして、いろいろな技術導入の問題あるいは外貨資金の割り振りの問題、そういうふうないろいろな調整問題が残っておると思います。そういうふうな行政面に密着した個々の仕事を、より有効に処理して参るというふうな配慮も必要ではないだろうかと思っております。そういう意味をもちまして、実は通産省の事務当局の一応の考えといたしましては、この科学技術庁という独立した官庁よりも、もう少し下のレベルで、経済技術の、あるいは一部の研究所の総合調整と企画を強力にやった方が、いろいろな経済施策とすぐ密着いたしまして、現実の仕事としまして、動いて参るということが言えるのではないだろうかと考えております。もちろん大きな方向を、どういうふうな科学技術なり研究経済の線に沿って取り上げるかというふうな基本的な問題は、これはいろいろ各方面意見も聞き、総合する必要はあると思いますが、これを行政機構の問題に還元して申しますれば、やはりそういうふうなやや低いレベル調整した方が適当ではないか、こういうふうに考えております。
  16. 松前重義

    松前重義君 われわれの意見とはだいぶ違います。今のような経済の下請けのような形でなければ技術は一人立ちができない、何かやはりレールを与えて、方針を間違ったらとんでもないところへ行くから……。しかし御心配にならないでもいいです。技術者は三鷹事件は起しません。そういう概念の上に立っておられるあなた方の優越感のゆえに、日本の国はこんなに経済的な貧困な状態に立ち至っておると私は考えておる。これは私のひがみであるかどうか知りませんが。であるからこそ、こういうふうな科学技術庁のようなものを作って、閣議のようなああいうおじいさんばかり集まっておる中に、少しばかり清新の気を打ち出してやろうと思っておる。そういう概念の上に立っておると、あなたの考え方は、見れば私どもよりは年は若いようだけれども、少し旧体制のお考えではないかという感じがするのですが、私は少しお考え直しを願いたいと思う。とにかくこういう後進性国家というものは、一応やはり機関車を専門につけてぐっと進んで、そうして世界のレベルに達したならば、あなたの言うような理論の上に立っても差しつかえないと思う。その方が私はいいだろうと思う。理論としては一応成り立つけれども、歴史性というものを考えなければならぬ。日本が世界の先進国に比較してどういう立場にあるかということを歴史的に考え、タイムのファンクションというものをその中に入れなければ、政治はただスタティックになって、静的になって、絵にかいたもちになってしまう。生命というものは、やはりタイムのファンクション、時の流れによって生々発展していくものである。そういう一つの相対的な理論の上に立たなければ、いわゆる法律というようなワクの中ばかりで物事をお考えになっては、どうも箱詰めになった品物のようなもので、生命のないものになってしまうのじゃないか、こう私は思うのです。その辺はやはり歴史のダイナミックな大きな流れの中にこれらの問題を考えてもらわなければいかぬと思います。それはおそらくあなたとは根本的に意見が違いましょう。しかし私は戦います。こういう目的のために私は衆議院に出てきた。何もこんな国会に出る必要はありません。よそでやった方がよほど楽です。とにかくこの問題をやらないと民族が危ないと思ったから出てきた。これは正直に私の意見を申し上げて、もしあなたの方でお考え直しいただければお考え直ししていただきたいと思います。まだたくさん申し上げたいことがありますけれども、きょうの質問はこの程度にとどめておきます。
  17. 前田正男

    前田委員長 加藤精三君。
  18. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 私実は松前先生に帰っていただきたくないのです。ちょっと具体的な問題をお聞きしたいと思っておるのですが、よろしゅうございますか。——簡単です。直截簡明に言うのが私の特徴ですが、科学技術庁の設置についてこの原案をお作りになった御当局者、現在の前田委員長と、両方にお尋ねしたいのですが、どうも具体的にはどういうことになるのか、さっぱりわからない。われわれ率直にお伺いするのですが、大体科学というものは、日本では大学が中心になって、大学というものが国境を離れた一つの真理を追求するもののように基本的に考えておるわけですが、これと科学技術庁というものとはどういうふうに関係するのかということが一つと、それから技術価のことは通産省担当でいいのか、この工業技術院というようなものは、こういう官庁ができても、依然として通産省に置くことでいいのかどうかという点と、それから応用の学問というものは広範囲なものがあるでしょうが、たとえば文部省の学術研究費というようなものは今度は科学技術庁で扱うことになるのか、そういう具体的な面をまずお二方から話していただくと輪郭がはっきりするかもしれませんから一つ……。
  19. 松前重義

    松前重義君 私が申し上げましていかぬかもしれませんから、前田委員長がおりますので譲らしていただきたいと思います。
  20. 前田正男

    前田委員長 それでは私からお答えしますが、今の学問との問題につきましては、私たちの一番考えておるのは、日本の学者、学術の間に非常にいい考えがありながら、それがいわゆる技術となり、経済となってこないという点が一番離れている大きな面ではないか。従ってわれわれのこの科学技術庁の特に大きなねらいは、この学者と政府とそれからいわゆる経済界というものとをつなぐというところに一番大きなねらいがあるわけです。先ほど松前君も例をあげておりました、せっかく日本でいい学問的なものがあっても、それが実用化されなかったという例が非常に多いのじゃないかと思います。それがためにぜひこの際科学技術庁というものを設けたいと思っておりますが、さっきの経済技術庁というようなことになりますと、経済技術を結ぶということで、学問、特に文部省関係の仕事と結ぶということは非常にむずかしいのじゃないか。それでこれは第二点になりますが、文部省で持っておりますところの予算というものはどういうふうになるかということでございますけれども、文部省の持っているいわゆる純粋の学問の範囲である講座研究費というようなものはこの際科学技術庁では予算見積りということの調整をいたしませんけれども、付置研究所以下のその他科学技術研究補助金とかそういうものが文部省にありますけれども、そういうような大学についております付置研究所から始めまして、文部省で出されておりますところの補助金等はこの科学技術庁においてやはり予算見積りということは総合調整して、学問の研究成果というものと、それから通産省その他で出しておりますところの補助金等はこれをつないでいくというふうにいたしたいというのが次のねらいです。  それから第三点でありました工業技術院とはどういうことになるかということでありますが、これは実は一部には科学技術省というものを作りまして、そういうものを全部吸収したらどうかということがわれわれの党においてもあるいは民主党あるいは社会党——社会党の松前君がその科学技術省の提案者であったのですが、そういう御意見も多々あるわけですけれども、しかしながらそれを一ぺんにやるということも困難でありますし、またそれが果していいかどうかということも——現在科学技術の全般を見ております行政者もなければまた政府の責任者もおりません。そういうようなことはやはり科学技術全般を見るところの責任の大臣、そういった責任者ができましてから、そういうことをまたさらにどうしたらいいかということを考えてもらったらいいのでありまして、とりあえずここでできますのは、科学技術の総合企画官庁と、特殊のどこの省にも属さないような特殊研究を実施するということでありますから、工業技術院はそのまま残る。またそのほか運輸省や農林省、それから厚生省にありますところの研究機関その他は全部そのままに残しまして、その研究の事務とそれからその予算の見積りを総合調整していく。ただどこにも属さないところの問題、たとえば原子力でありますとかあるいは航空の基本的なものだとか、あるいは特に資源開発であるとか、こういう問題は、現在資源調査会でありますが、そういったようなものはこの科学技術庁がやっていく、こういうふうにいたして、要するに行政の責任者を作りまして——われわれ皆さんと同じでありまして、あまり私も実はよく科学技術のことを知りませんけれども、とにかく各方面のえらい方に会いますと、学者でも経済界の人でもあるいは官吏の人でもみんな日本の将来の発展のためには科学技術のこういうことやったらいい、ああいうことをやったらいいと、ずいぶんいい意見を聞くのです。いい意見を聞くのですけれども、それを一人でもまとめて実行に移していく人がおらぬ。結局われわれが国会である程度のことをやらなければいかぬ、こういうようことでありまして、しかも各党の政策を見ておりますと、最近は全部国策として科学技術をやっていこう。いわゆる政策をきめ、国策をきめるのにはどうしてもその科学技術というものを大きく出していこう。日本で現在国策をきめ、政策をきめるところはどこかというと内閣であります。従って先ほどの岩武政府委員とはわれわれはちょっと考えが違うわけでありますが、科学技術というものを国策として打ち出していくという点において、内閣においてこれを発言をし、そうして調整をしていく、こういうふうな科学技術庁というものを作らなければならぬのではないか、こういうわけで過般の決議をお願いしたものをもとにして具体的な設置要領を作ったのであります。
  21. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 小委員長の御意見をお聞きしますと、心配が一つもないようです。この案に賛成ですが、通産省が反対なようでございますので、大臣を至急呼んで、そして大臣に通産省の事務当局の言うのが悪いのだということをはっきり言わしていただきたい。そうでないと手っとり早く済まない。こんなことでぐずぐずしておったらしょうがないだろうと思う。現在の通産省は、たとえば現在の工業技術院あたりで、この前も申したのですけれども、東京工業試験所というのか何かで、低品位石炭からあれをとる試験をしている、その試験費が何十万円しかないというようなことで、東京ガスの方ではとんでもない大きな金をかけてどんどん試験しているのと比較して、さっぱり比較にならぬような経費でやっているというような現状ではだめなので、そういう点でも通産省は、経済科学技術と一致させるなんといっているけれども、ちっともそっちの方に予算を配当しないだけでも落第のうちの落第であると思う。亜炭を山ほどかかえている山形県なんかは、もっと国家科学技術奨励の恩恵に浴したいのだけれども、さっぱりそれがなってないというのでは、従来の通産省は落第だと思うのです。それを改革するために内閣に置くというのだから、通産大臣にはっきり、従来はうまくいかなかったからこういうものを作ってくれということを言わしていただいた方がいいのじゃないかと思いますので、通産大臣の御出席を求めます。
  22. 前田正男

    前田委員長 その点につきましても一つ大臣になるべく出席していただくつもりでおりますが、この前の決議のときは大臣はこの趣旨には賛成であるというお話であります。今の具体的な加藤さんのお話は、私も実はそういう考えで今まで五、六年やっておりまして、具体的なそういう問題にぶつかっておりますが、たとえば科学技術研究費をふやしてくれということを頼まれて、ずいぶん各方面に運動していますけれども、それが実際に具体的にどれだけ効果が上るかということが、学問から応用化まではっきりしませんから、実際に大蔵省その他から予算をとるのに非常に困る。君たちが言っているのは経常費をとるのではないか、人件費をとるのではないか、こういうことをずいぶん言われた。それからもう一つは、科学技術関係の予算というものは各省についておりますから、総合調整してないので、国策的にこういうものをやるということは言えないですから、予算査定をやる場合には一番先にそこが削られる。今度こそれを科学技術庁総合調整して、それから大蔵省とぶつかれば、たとえば資源なら資源はこういうふうにやるということをきめておいたら、そう簡単に各省は自分の予算を削られたから研究費の予算を削っておる、そういうわけにはいかない。これは科学技術庁の予算でなしに通産省の予算になりますけれども科学技術庁が、一応みな各省が集まって、石炭なら石炭でこういう予算をつけようということに各省できめて、それを大蔵省に出したら、自分の方が削られたからそれで研究費を削るというわけにいかない。科学技術庁を作るということで、皆がぶつかって決定したら、総合科学技術予算というものはつくのではないか、こう思っておるわけであります。
  23. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 どうも科学技術の小委員会、燃料小委員会というと人が集まらぬので、これがちょうど科学技術庁が問題にならないバロメーターだと私は考えておる。先ほど民主党内部における一応の科学技術に関する行政機構のあり方についての科学技術に関する特別委員会の、最後の案ではなかったでしょうが、説明がありましたが、あれも私もその一員といたしましては、心から賛成を表しておるのではありません。私の考えから参りますれば、まずできるならば、ちょうどアメリカがテクノロジーを中心として一切の生産体制を整えたと同じように、日本は今日もう一ぺん科学技術に再検討を加えて、日本の生産を高度に組みかえるということが私は日本発展基礎をなすものだ、こう考えておるのであります。それからいきますると、行政機構の中には最高度の性能を持った強力な態勢があって、そこで日本の一切の生産態勢を近代化する、こういうことが非常に必要だとは思いますけれども、これを今実行することができるかできないかというと、私はインポシブルである、こういう結論になるのであります。それで先ほどの民主党経済科学企画庁でありますか、この案を皆さんの御協力を得て一歩前進することがいいということであるならば、私はこの案に賛成をしたい。しかしこの際科学技術庁を実現しなければどうしても根本的にいけないのだというならば、討ち死にを覚悟で科学技術庁の実現に邁進して、今国会でいけなければ来国会にこれを提案するということに、これは今迷っておるのでありますが、これはまず個人的な問題としていずれ御高配を仰ぎたいと思います。  きょうは特許庁からおいでを願っておるので、特許庁関係について少し御質問を申し上げたいと思いますが、この科学技術庁科学技術の面につきましては、特許庁が非常に大きな関係を持つのでありまして、先ほども特許料が一年に二千万ドル、こういうのでございましたが、今日審査官が大体一人当りどのくらいの件数を、いわゆる特許と実用新案とで持っておられるか、これをちょっと承わりたい。
  24. 上野幸七

    ○上野政府委員 今お尋ねの点でございますが、現在審査官のパー・ヘッド処理件数は両方合せて二百八十件になっております。この数字は大体一日に一件を処理するという数字になるのでありまして、アメリカあたりの処理件数、パー・ヘッドと比べますと、内容ももちろん向うとこっちは非常に違いますが、アメリカの約三倍になっております。つまりそれだけロードがかかっておるわけであります。
  25. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 大体その特許は出願を受け付けましてから拒絶をするまで、それから実用新案は受け付けてから拒絶をするまであるいは意見書を求めるまで、第一の段階を経るのに平均どのくらいかかっておるのですか。
  26. 上野幸七

    ○上野政府委員 ちょっと資料を持って参りませんでしたので、正確なことはお答えできかねますが、大体現在出願から公告決定もしくは拒絶の査定をしますまでに、平均一年半、事件によりますと、それ以上長くなりますけれども、大体特許と実用新案につきましてはそのくらいです。意匠、商標関係はずっと短かいのでありまして、大体平均半年から六カ月というのが現状でございます。
  27. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 それは正確な資料一つ御提出を願いたいと思います。私の今まで経ました経験からいうと、特許が一年半ということはない、実用新案ならそのくらいで片づくものがあるかもしれませんが、公告決定ということになると、そんなことで片づくはずがないと思う、今の特許庁には、これは率直に申し上げますと、理論特許を調べる性能はある、パー・ヘッド二百八十件持っておるかもしれない。しかし実際の実験を伴うところの特許はやれない。私らの経験からいうと、特許を出願すると、特許庁がわからなくなると官庁またはそれと同等の権利を有するところの実験所の証明書をよこせ、こういう手を食わすのですが、今でもそれをやっていますか。
  28. 上野幸七

    ○上野政府委員 事件の査定につきましてほかの方面意見を聞くということは、特殊な場合以外はやっておらぬと思いますが、ただ効果作用を判定いたします場合に、どのくらいの効果、作用があるかという認定の資料といたしまして、いろいろな方面から資料をいただくということはやっておると思います。
  29. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 議事進行。科学技術庁の問題が議題でございますので、そちらの方を一つ片づけていきたいと思いますが、石橋大臣わが国における通産問題の最高権威の一人だと思うのであります。これはあまりえらいので、政治家というより評論家扱いにするので、大臣の御意見政府の代表の御意見だかどうだかということがときどきあいまいになりますが、私の主張したいことは、通産大臣はこの原案に賛成であって、通産大臣の下にいるところの政府委員がきわめて歯切れの悪い反対のようなことを言っておる。とかく民主党というのは最近無統制で支離滅裂であります。大臣がはっきり賛成だと表現しておられるならば、どんどんやったらよい。そしてそういうことに対して政府委員が反対をやらなければいい。何が何だかさっぱりわからず、どうも私たちは迷惑する。政府の見解を統一して、この次の小委員会でこういうふうにするのだということを政府から言わせれば、それでいいじゃないですか。小委員会を何回も開くのは時間がきわめてむだですから、政府の統一した見解をこの次の小委員会に持ってくることにして、きょうはこの程度で散会を願いたい。
  30. 前田正男

    前田委員長 ただいまの御発言のように、できるだけ次会には一つ大臣の御答弁をいただくことにいたしたいと思います。特に石橋大臣決議に対して答弁されましたことは、ただいまの経審長官からごあいさつがありましたことに私も全面的に賛成でありまして、科学技術庁の方は趣旨においてはむろん同意でありますが、ただこれをどういうふうな形で実現するかということについて、実はもうすでに経審の万でも研究しておりますので、それに従いまして御趣旨に従うようにできるだけこれを実現することに努力いたします、というような答弁をいたしておるわけですが、しかしもう一ぺん一つ大臣に出ていただくようにいたしましょう。
  31. 加藤精三

    ○加藤(精)小委員 そうでございましたら、それからあと期間も相当たっておるわけだから、経審と通産省とどういうふうに折衝して、どのくらい熱心に真剣にこの問題に取り組んでおるかという、その熱意をテストするために、両方の大臣にここに出てもらって、そうして政府の統一した見解を述べていただく。米の問題のように農林大臣はこう言う、大蔵大臣はこう言うというのは、もう迷惑しごくな話である。主食のことについて政府の見解が分裂しておるというのは、国民不安の最大なもので、こういうことを常に提供しておるのが民主党政府である。民主党委員さんにおかれても私の所説に賛成なようですから、そんなことがないように、こういうことをてきぱきとお片づけいただくように希望いたします。
  32. 八木昇

    ○八木(昇)小委員 今言われました通りで、これはあれだけ世論を沸かして、濃縮ウランの受け入れとか原子力平和利用だとか、そういうことでうろたえて受け入れをやっておる。原子力問題一つとらえてもこれは大問題です。そうして日本ではただアメリカのなすがままに原子力をもらっていこうというのなら、これは話が別です。しかしほんとう日本の自主的立場で将来の原子エネルギーの道を開いていこうとするならば、この問題一つとって考えれば、先ほど政府委員の御答弁のように、経済審議庁の下の方のどこかでこそこそとやるようでは、これは話にならぬです。そういう意味からいっても、これははっきりした政府立場というものをまず確かめておかなければならぬ。その上に立ってどうするか、取扱いも各党でそれぞれ意見が若干ずつ違うようでございますから、小委員長あたりの出された素案に基いて審議をしていくかどうかというやり方についても相当問題があろうと思います。もう少しその辺をすっきりとしてから始めていただきたい、こう思います。
  33. 前田正男

    前田委員長 それではこの問題については一つ次会に政府の責任者の意向の答弁をもらいまして——これをどういうふうに取り扱っていくかという問題について決議案がちょうどできておりますので、その決議案趣旨に沿うて一応要領を作りましたけれども、大臣の意向を聞きまして、それに基いて今後取扱いをきめることにいたしたいと思います。
  34. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 今の科学技術省の問題は、私から申しますと曲りなりにも党としてこういう意見が出てきているのは民主党だけだと思う。自由党も社会党も、ここへ小委員がお集まりになってこの問題に対していろいろ御意見を戦わしになっているが、党としての結論は出てきていないのではないかと思います。ですからまずここに民主党案と委員長試案が出ているのですから、これを一つ各党の政調会にかけていただいて、大体できるかできないかという雲行きを検討していただきたいと思います。ほんとう委員会立法ででもやろうという気ならわれわれも腹のすえ方があると思うけれども、小委員会を開くというとだれも集まって来やせぬ。これでもって各党の意見としてどんどん当局を呼んでやれるかというと私はやれないと思う。そこで一つ委員長にごあっせんを願いまして、今度開くときには、少くとも各党の意見をまとめ、小委員の出席を要求して、当局を呼んでやるということにしていただきたいと思います。
  35. 前田正男

    前田委員長 今の発言の中で、自由党は決議案につきましては政調会にかけて、総理府科学技術庁を置くということで政調会に諮っております。その点は間違いのないようにしていただきたいと思います。
  36. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)小委員 今加藤君や齋藤君、八木君からもこの扱い方の結論的な問題についてお話が出ましたが、各党の政調会にでも持ち帰って、それぞれ各党の考え方をまとめてきて調整するというようなものが、何か委員長のところで作られてあるとすれば、そういうものを一応お出し願って、それに基いて至急各党の態度をきめて取りまとめをするということになると、早く結論が出せるのじゃないかと思うので、そういう点等も委員長に希望申し上げておきたいと思います。
  37. 前田正男

    前田委員長 なるべくそういうふうに取りはからうようにいたしたいと思います。それでは科学技術行政の問題についてはこの程度といたします。  さらに先ほどの質問であります特許庁の問題について質問を継続いたします。
  38. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 特許庁科学技術振興の根本をなすものですから、この際一つ承わっておきたいと思いますが、出願をすると必ず拒絶してよこす。第何条とか特許第何号によってこれは拒絶すべきものという。拒絶に対する意見書を出してやる、そうすると今度は審査官がわからなくなると、それじゃ官庁またはこれと同等の権威ある証明書をよこせという。大半は証明書は出せない。官庁またはこれと同等の権威あるところの証明書を出せと言われたって、頼みに行っても、そんなむずかしい実験なんかできないからよこさない。それで一カ月間に証明書をよこせといって、ついにそれは拒絶になってしまう。それが拒絶になったからやむを得ないとして放擲したものの中から世界特許に現われてくるものがある。そういう欠陥を補うには一体特許庁機構をどう変えればいいか。
  39. 上野幸七

    ○上野政府委員 ちょっと具体的なケースがわかりませんので、はっきりしたことをお答えしかねますが、さっきも申し上げますように資料を審査します場合に作用効果に対してやはり審査官がある程度の心証を持つ必要があるものですから、それをとるために関係方面にデータの提出を求めるということはあると思うのでございますが、それを特許すべきものかどうかということについて、関係方面意見を徴するということはあり得ないわけであります。
  40. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 今やっているかおらぬか知らないけれども、数年前まではある一つ特許を提出すると、これに対して官庁またはこれと同等の権威あるものの証明書をよこせと来るんです。それを今やっているかいないかというのです。
  41. 上野幸七

    ○上野政府委員 ただいまの点ははっきりわかりませんのであとで間違うかもしれませんけれども、今秋の承知している限りではやっておらないと思います。
  42. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 やっておらぬとすると一体あなたの方では実験を必要とする特許に対してはどういう処置をとるか。
  43. 上野幸七

    ○上野政府委員 実験といいますと、今のデータですね。これは特許の審査というものは、建前は一応書面審査、つまり公知公用の事実があるかないか、あるいは新規性があるかないか、それを書面で審査するというのが一応の建前になっております。従って拒絶の理由がない場合には許すというのが建前なわけですから、この場合にいわゆる新規性があるかないか、これが問題によりますといろいろ出てくるので判断を要するわけでございまして、実験してこいというような話は、ちょっとそういうお話は私聞いておらないのですが……。
  44. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 どうも実際から遠ざかっていて話にならない。一つの発明が書面審査で全きを期することができないのは当りまえな話です。それくらいなら特許庁における審査官は読んでわからないものは全部許可すればいい。それならば公告をして異議の申し立てを受けた方が早い。特許庁は要らないということになってしまう。そういうものじゃないと私は思うのだけれども、そうだとすると特許を許可すべきことの根本に対する疑義が生じてくる。単に書面だけでやって一つも実験を必要としないということになると、これはそこに国家的に特許庁の大きな誤りがあると思うが、これはどうですか。
  45. 上野幸七

    ○上野政府委員 この問題は特許法の根本の建前になるわけでありまして、審査の正確を期するために、特許書類をあらゆる方面から収集するということについては最善の努力は払っているわけであります。そのもとにおいてやるわけでありまして、実験して効果が上るか上らないかという問題は二義的な資料になるわけですから、必ず実験しなければならぬという建前にはなっておらないのであります。
  46. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 それじゃ私は自分手元にあるその実験のデータを要求された特許資料をもってこの次にお目にかけますが、今まではそうじゃないのです。書類審査でわかるやつは許可をするが、わからないとなると実験証明書をよこせというのが今までですよ。今やっているかどうか知らぬ、僕は二、三年やらないから。それでみな拒絶をしてよこす。だから日本特許庁というものはもちろん一人当り二百八十件も持って明治時代の形骸の中に埋れているのだからやむを得ないだろうけれども、あれでは世界の特許に遅れることは既定の事実だと思う。ところが特許法の改正が出てくる出てくるというから、われわれは非常に大きな興味を持って待っているけれども、いつまでたっても特許法の改正が出てきやせぬ。一体われわれがこれほど科学技術の進歩に対して一生懸命になっているときに、その肝心かなめの特許庁がそういうように一人当り二百八十件も持って、特許を申請しても二年か三年たってからでなければ公告も出てこないというような体制では、これで科学技術の振興ができるかというと、根本的に私はできやせぬと思う。だから経審も通産省もおられるが、一体この点に対してどういう考えを持っておられるのか。あなた方は口では、行政的に科学技術の振興はやらなければならぬ、大いに発明を助長しなければならぬと言っておるが、一体一ぺんでも特許庁内部に行って、特許庁の実態を調べたことがあるかどうか、それを一つ伺っておきたい。
  47. 岩武照彦

    岩武政府委員 特許の仕事の中身のやり方につきましては、私どもはあまりよく存じません。管理者としまして全体の仕事のやり方につきまして、当面の刻下緊要の要務に沿うべく努力することは、私の職務でございますかう、お話もございますので、なお長官とも十分相談しまして、不当な御迷惑はかからぬようにしたいと思っております。
  48. 上野幸七

    ○上野政府委員 ちょっと説明を補足させていただきますが、ただいま制度改正の点に対して御質問がございました。制度改正の点が遅れておることは、まことに申しわけないと思っておりますが、何分にもこれはこうかんな制度でありまして、外国の工業所有権に関する諸法等の関係も精細に研究しなければなりませんために、それから手続的にも非常に細部にわたった規定を広範に含んでおりますために、また現在の制定というものがかなり歴史のあかがくっついておりまして、それを整備しなければならぬ、それで日本経済現状とにらみ合せて、どのくらい歴史のあかを処理するかという非常に慎重な検討を必要とするわけであります。元来他の諸法令の改正というのは、しばしばこれは変更が行われ、またそうすることが実際によく合うわけでありますが、工業所有権に関する制度は、権利の得喪に関する問題でありますために、これを変えまして、試みにやってみて、あと工合が悪かったらすぐ直すというわけにも事の性質上参らないのであります。改正しました以上は、向う二十年なり三十年なりは大体その態勢で進む、こういうことにしなければならぬ筋合いのものでありますために、一そう検討にひまがかかるわけでありまして、実はほとんど各部会の答申も、商標部会と特許部会は九分通りできております。意匠もほとんど九分通りできておりまして、ごくわずか残っております。あと残っておりますものはそれぞれ共通の一般問題でありまして、先ほどの審査が遅れるとかなんとかいう問題、その審査を促進するにはいかにすべきか、あるいは審判制度を現在のままでいいかどうか、あるいは今の審査官、審判官の身分は、現在のままでいいのかどうか、そのほか訴訟法との関係で、現在の民事訴訟法に特例を認めた方がいいのか悪いのか、あるいは特許庁でやっております審査審判と、それから裁判所の司法権の発動として行なっておる裁判とのつながりをどうした方がいいか、そういう一般的な問題、共通問題の審議に今かかっておるわけでございます。われわれの努力目標といたしましては、全部それらの審議をこの夏の終りまでには結論を出したい、こういうふうに考えております。さらにそれ以後、これは関係方面に非常に影響が大きいのでありまして、広く各方面意見を聞かなければなりません。そのあとそういう時間を見まして、そして国会の方の問題に出てくる、こういうことになろうかと思いますが、最善の努力をいたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思いますので、御了承願います。
  49. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 なるべく早く近代的な特許法をお出しいただきたい、お願いいたします。  それから特許庁の予算ですが、あれは特許料とそれから今の一般会計からの歳出とはどうなっていますか。
  50. 上野幸七

    ○上野政府委員 特許庁の予算は、専売特許条例制定以来、ずっと黒字が続いていたわけでございます。ところが戦後になりまして赤字に逆転いたしまして、ここ四、五年ずっと赤字になっております。現在も昨年もやはり数千万円の赤字が出ております。
  51. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 総額は何ぼですか。
  52. 上野幸七

    ○上野政府委員 現在歳出が全部で三億一千万円か二千万円であったと思うのでありますが、赤字が現在三千万円か四千万円あるかと思っております。
  53. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 そうすると二億七千万円の収入があって……。
  54. 上野幸七

    ○上野政府委員 そうです。それでこの問題もさっきの一般部会といいますか、共通問題になるわけでありますが、今の料金制度になり出願手数料、登録料、これが妥当かどうかという問題もやはり重要な検討問題になっておるわけでありまして、概して言うと他の諸物価指数あるいは公益関係の諸手数料に比較いたしますと、非常に低目にきめられておる。これは発明奨励という意味で当然そうなっておると思うのでありますが、これが今度新しい制度改正の運用に当りまして、現在の料金の体系でいいかどうか、これも十分検討しなければなりませんので、せっかく今研究しておる次第であります。
  55. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 もう一点だけ。この科学技術庁の問題ですが、科学技術庁というものが実現できるというと非常にありがたいとわれわれは考えておるのですが、その科学技術庁ができない場合に、今民主党考えている経済科学企画庁という案が出ておる。これもわれわれとしては次善の策として通ればいいと思っておる。しかも、これも通らないというときに、一体通産省経済審議庁では原子力問題をどうお取扱いになりますか。
  56. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 原子力の問題はあるいは御承知かと思いますが、原子力平和利用準備調査会というのが内閣にございまして、それの外部機構に総合部会というのがございまして、そこで原子力機構問題を最近今までに三回検討いたしております。まだこれは実は結論が出ておりませんので、はっきり経審としてどうだということは申し上げかねますが、そのうちの経過を申しますと、一番大きな問題は原子力行政機関といいますか、統括機関という問題をどういう形にするかという点で、主としてその出ております委員のうち、行政委員会原子力委員と申しますか、行政官庁たる委員会を支持をしておられる方が、学者側では大体多数のように見受けられます。政府側も、関係省全部出ておりますが、政府側は大体行政委員会には反対でございます。これは従来いろいろ行政委員会も戦後できましたが、いろいろそれらの実績等も考えまして、行政的にはこれが必ずしも適当でない、一応のそうした意見が出ておりまして、これはまだ最終的には決定をいたしておらぬ状況でございます。それからなおどちらにいたしましても、たとえば行政委員会でない場合にどうなるかということになりますと、今ここに御提案になっておりますように、経済科学庁科学技術庁ができればそのうちということになっておりますが、一応この問題を離れて考えました際には、たとえば経済審議庁の中に一つの部局を設けてやるか、あるいは全然独立してやるか、独立した、少くとも経審から離れた内閣に一つの部局を置くかという点については、まだ十分検討いたしておりませんが、これについても意見はまだ分れております。これはまだ十分検討しておりませんが、私の考えでばこの新しくできます統括機関がどこまで仕事をやるかということにも関連すると思います。御承知のようにアメリカのAECは原子力に関しては全部一元的に行政をやっておりまして、他の行政機関原子力行政には一切関与しないという形でやっておるわけであります。それから日本で果してさようなことが適当かどうかということになりますと、相当問題があると思う。その原子力行政ほんとうに一元的にやるということになれば、あるいは独立官庁が適当だということになるかと思いますが、一元的でないということでございますれば、あるいは経済審議庁に一部局を設けるということも一案かと思います。その辺は結論はまだ出ておりません。
  57. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 そこなんですよ。官庁側として原子力問題というものは一元的に取り扱うのか、多元的に取り扱おうとしているのか、その根本を一体どうきめているのか。
  58. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 その点はまだ結論が出ておりません。まだいろいろ検討中でございます。全体の機構をどうするかということとあわせて、内容も一元的にやるかどうするかということを今検討中でございます。
  59. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 そうするとその結論は  どうして出すのですか。
  60. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 先ほど申し上げましたように、原子力平和利用準備調査会総合部会というものを、関係官庁側と民間側とでやっておりますが、今まで三回やっておりますが、七月早早にもやる予定にしておりますし、引き続いてここで検討いたしまして、そこに出ました結論を、内閣にございます原子力平和利用準備調査会に持ち出して、そこできめていただくということで考えております。
  61. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 それはいつごろの予定になっていますか。われわれも科学技術庁案というものを推進していこうと思うのですが、これは大体どのくらい——いつごろそういう結論が出てきますか。
  62. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 今われわれといたしましては、はっきりいつというめどは必ずしもついておりませんで、検討いたしておりますが、政府部内といたしましては、今国会にこの機構問題をさらに持ち出して新しく提案するということは一応考えておりません。暫定的には経審の中に原子力室を設けるということで、今提案をいたしておりますので、いずれ次の国会に間に合うというようなめどで考えております。ここ一週間か十日というほどのあれは考えておりません。ただなるべく早く決定はいたしたいと思いますが、十分各委員の議論は尽していただきたいと思いますので、そういう意味で一時間的なめどはきちんとついておりません。
  63. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 もう一点だけ。たくさんありますが、あとはこの次に譲りますけれども現実の問題としてこの科学技術年報などを見ますと、大体二、三千万円というものはもう日本でアイソトープを輸入しておる。そうしてこれは簡単でありますけれども、双務協定らしきものもひっついておる。そうしますと、放射性物質等に対する取締り法規は当然できなければならぬ。今ごろ考えておることでは私はもうおそいのではないかと思う。広範に広がっておると同時に、地下資源関係からいっても、日本全国各所からもうサンプリングをやって、ウラニウムあるいはトリウムの鉱石が出てきておる。これに対して法定鉱物もまだきまってない。また取扱い法規もきまってない。アメリカから輸入せられるところのアイソトープもそのままほったらかしておる。一体今国会においてこれを解決せずしてまた来国会なんといったら、どういうふうにこの問題が進展していくか。われわれはこういうものに対しては時間的に予測ができないと思っておる。この放射性物質の取締り法というものを作る場合に、どこが一体やるのですか。早急に作ってもらいたいと思っておるのだけれども、一体今どこがこういう法律案を作るのですか。
  64. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねの放射性物質は、もうたしか四、五年前からこっちで輸入を始めて、相当現在入っておるわけであります。これの危害予防と申しますか取締りは当然必要なので、原子力の問題よりもだいぶ先にアイソトープの問題が起きておると思います。この機構ができるできないにかかわらず、現実にすでにそういう問題がございますので、取締り法を作るべきだということは、これは非常に多岐にわたりまして各省のいろいろの権限にも関係いたしますので、今スタックでもって関係各省集まってその法案の検討をいたしておる最中でございます。
  65. 前田正男

    前田委員長 それでは本日はこの程度にて散会いたします。    午後零時四十五分散会