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1955-06-15 第22回国会 衆議院 商工委員会科学技術振興に関する小委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十五日(水曜日)     午後一時五十九分開議  出席小委員    小委員長 前田 正男君       小笠 公韶君    齋藤 憲三君       神田  博君    堀川 恭平君       加藤 清二君    櫻井 奎夫君       帆足  計君    佐々木良作君       中崎  敏君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術行政         協議会事務局         長)      鈴江 康平君         工業技術院長  駒形 作次君  小委員外出席者         参  考  人         (経済同友会産        業政策部会長) 進藤武左エ門君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 小日会議に付した案件  科学技術振興に関する件     —————————————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず参考人として出席されております経済同友会産業政策部会長進藤武左工門君より、科学技術振興対策の一環として、科学技術開発公社に関する御構想について承わることにいたします。進藤武左工門君。
  3. 進藤武左エ門

    進藤参考人 ただいま御紹介にあずかりました進藤でございます。実は科学技術振興につきましては、岸同友会代表幹事中心でわれわれ参画しておったのでありますが、岸さんがごく近く外遊されますので、きょうは私がかわって御説明申し上げたいと思いまます。  ただいまお話のように、科学技術開発公社という一つ構想を作りまして、これを世間へ発表いたしまして、経済同友会といたしましてはできるだけ実現していただきたいということで各方面にお願いしておりますが、この科学技術開発公社構想は、これと並行いたしまして、科学技術に対する国の行政機構の問題あるいは科学技術教育の問題と関連しての構想というふうにぜひお考え願いたいと思います。  最初にごく概括的に経済同友会科学技術開発公社構想に対する考え方を申し上げたいと思いますが、御承知のように今度の大戦を契機といたしまして、科学技術が各国とも非常な進歩をしていることは申し上げるまでもないことであります。この進歩が急速になるだけ、ことに非常に高度の科学技術を必要とし、また非常に大きな規模組織を必要とし、あるいは巨大な資金を必要とするというふうなことになりますと、これに対しましては、国として科学技術振興に対しますしっかりした方針をきめられまして、そしてその方針によって組織を作り、その方針によって予算を得、その方針によって運用を大きくやりまして、しかも長年月にわたって、世界におくれをとらないように進んでいかなければならないと考えているわけでありますが、われわれといたしましては、科学技術振興につきまして、具体的の方法としましては、科学技術に関する総合行政機関をぜひ作っていただきたい、これを土台として国の科学技術促進に対する行政面をしっかり立てていただきたいということ。その次には科学技術教育、つまり基礎教育をしっかり立てまして、その基礎教育の上にしっかりした応用技術を進めていく、あるいは基礎教育をしっかりし、その上に将来の発展を打ち立てていくということにしなければなりませんので、ぜひ科学技術教育に対します教育方針をしっかりし、現在の状態を刷新していかなければならぬと考えているのであります。それからことに、今度は具体的になりますが、同友会中心といたしまして、御承知のように生産性向上の問題を取り上げまして、生産性向上協議会を提唱したのでありますが、これは幸いに国並びに各方面の御賛同を得まして、すでに発足して、着々仕事をやっておられることは御承知通りであります。これと並行しまして、われわれは科学技術促進に対する実施機関として、お手元に差し上げました科学技術開発公社を設立したいという考えを出したわけであります。今までも科学技術振興に対しましては、国としていつまでも重要だということは唱えられておりますし、ことに戦争直後におきましても、議会において科学議員連盟というものをお作りになりまして、科学技術振興促進決議案というものを全員一致で可決されたことも御承知通りでありますが、しかしその後の日本科学技術行政あるいは科学技術促進に対する施策を見ますと、どうも予算の面におきましても、あるいは運営のろうと思います。予算等につきましても、今なお国家予算が非常に窮屈であることはわれわれ一応納得できるのでありますが、しかし科学技術振興に対しまして、果して今の予算でいいかどうかと申しますと、これは実は心配にたえないというふうに考えているわけであります。  従来の科学技術振興に対する大体の考えを見ますと、一つは特に文化促進という考え方から、科学技術振興政策が取り上げられているのではなかろうか、従いまして国の経済の問題、あるいは現実工業技術問題等との関連を見ますと、やや縁が薄い方面科学技術振興政策というものが取り上げられておったじゃないかという気がいたしますが、われわれの提唱いたします科学技術振興は、日本経済促進する、つまり日本経済をしっかりする、国の経済をしっかりし、将来国がしっかりした国家になるという経済政策との関連におきまして、この科学技術促進政策をとり、科学技術開発公社を提唱するわけでございますから、この点を特に御了解を願っておきたいと思うのであります。以上のような趣旨で経済同友会でいろいろ検討いたしまして、お手元に差し上げました科学技術開発公社に対する提案というものを作り上げたわけでございます。あとでゆっくりごらんを願いたいと考えているわけでありますが、、ごく概要を御説明申し上げます。  この科学技術開発公社の設立の目的は、今申し上げましたように、政府行政方針によく即応しまして、そうして重点といたしましては大体基礎研究部門における総合研究強化、それから新技術開発利用促進特許権輸出入調整活用中央研究所運営、こういうふうなことを大きな項目として取り上げているわけでございます。  このうち特に三の特許権輸出入調整活用という問題は、現に日本の今とられております科学技術振興に対しまして、よく外国特許権を購入してやっている、しかもその額が相当額に上っているようでありますが、これはやはり国がしっかりいたしまして、そうして逆に言いますと、われわれの特許を海外で使ってもらうというふうな積極的の考えも織り込んでいるわけでありまして、どうも外国技術が進みますと、簡単に特許を買って日本で製作するという安易な考え方日本工業が進みますと、これではなかなか経済発展を期することはできませんので、第三の特許権輸出入調整活用という問題は相当積極的な意図を含んでいるわけであります。  次に仕事は大体どういうことをやるかといいますと、第一に総合研究強化をいたしたいと思うのであります。これはさき申し上げましたように、科学技術振興経済発展基礎をなすという程度までわれわれは考えておりますので、できるだけ大規模研究組織を作りたい。しかも予算の問題がございますから、できるだけ現存の大学であるとか、官公立研究所であるとか、あるいは民間企業研究所その他の研究機関と十分横の連絡をしながら全体としての効率を上げ、お互いに総合的に結果を上げていこうという考え方を持っているわけであります。  その次の技術開発利用でありますが、これは従来も特許権はとったが、それが企業化するのに資本が必要でありますから、せっかくの技術者努力が世の中に浮び出ない、あるいは努力に対して報いられないというふうな点もございましたので、こういう点につきましては、今度の公社がこの特許権を獲得しまして、国の資金においてこれを最も有効に運営していきたいというふうな考え方を持っているわけであります。そのほかここに書いてありますように新しい技術を発明し、あるいは新しい技術を編み出したら、それをできるだけ経済的に活用していきたいというふうに考えているわけであります。  それからその次には、さっき申し上げました特許権輸出入調整活用でありますが、これも国家資本でやるのでありますから、できるだけ国全体としも、あるいは企業個々でも経済的な運用ができるような調整をはかりたいというふうに考えておるわけであります。  それからその次には中央研究所運営でありますが、これは公社に直属しておりまする中央研究所を新しく説置いたしまして、国の研究方針あるいは国の研究機関に従いまして公社自体研究をがっちりやっていこうというふうな考え方研究所を作ったのであります。それからそのほか国内にありまする各研究機関その他と連絡をとる一つ中心的存在というふうな考え方も持っておるわけであります。  それからその次には科学技術情報サービスサービスというのはちょっとここで適当かどうかわかりませんが、要するに科学技術日本国内あるいは外国科学技術が今どんな状態になってるるか、こういうふうになっておる、ああいうふうになっておるという情報を積極的に各方面へ提供し、あるいは各方面から御提供願って、それを編さんし直して各方面研究機関研究にお役に立つようにしたいという考え方で、科学技術情報サービスということを書いてあるのであります。  その次に科学技術公社性格はどうかと申しますと、これは今まで申し上げた通りでありまして、もう御推測できると思いますが、これは公益性を持った、つまり国家的に役に立つ、国家的に有用であるという考え方性格をこれへ織り込みまして、そしてその運営等国家科学技術促進方針によって仕事運営をやっていくというふうに考えておるのであります。しかし、これは一つ公社ではありますが今の国家財政状態から申しまして、国家だけに依好するという考え方でなくて、できるだけ独立採算制でやっていこう、公社ではあまりすが勘定としては独立採算をもって進んでいこうということを考えております。独立採算制は、さっき申し上げましたように特許権運営の問題でありますとか、あるいはあとで詳しく書いてありますが、各方面研究を委託して委託料でやっていくというふうないろいろの業務考えましてそしてできるだけ独立採算制をもってやっていこうということであります。しかし今申し上げましたような公益性を付するために、出資は全額これを政府が負うということであります。そしてあと組織の問題につきましては、いろいろ電源開発会社でありますとか、今国家資金によってやっておる会社と大体大同小異の考え方でございますが、しかし直轄研究所公社が直接持つわけであります。これもいろいろ理屈を言っておりますと時間がかかりますが、これは全然われわれ科学研究所の方へお話ししたわけでも何でもありませんで、今ですと科学研究所中央研究所にしたら一番現実的で手っとり早いじゃないかという考え方でここへ書いたのであります。  それから財政の方は、政府出資としましてさしあたり総額五十億、年に十億円ずつ政府出資するというふうなことにしたいと思うのであります。そして独立採算制といたしまして、いろいろ運営の面でできるだけこの五十億円のほかは国家資金にたよらないということで財政はまかないたいと思うのであります。  それからその次に事業計画でありますが、これはいろいろここへこまかいことが書いてございますが、項目だけ申し上げますと、集団研究、つまり一つ研究と申しましても最近の科学技術状態から申しますとなかなか簡単ではない、時間も長年月かかりますので、組織あるいは集団研究というふうな大きな規模によって総合研究運営をはかりたい。そして期間もだらだらになってはいけませんから、一応三カ年くらいを限度として一つの問題を片づけていきたいというふうな考え方でここへ書きました。そして研究対象としましては、これはいろいろ議論がありまして、われわれはここへ並べたのでありますが、実はこの運営につきましては、国の衆知を集めて研究課題をとらなくてはならぬと思うのでありますが、さしあたり同友会で並べて見ましたのは、原子炉用の原材料の研究、それからストレプトマイシンというような有用菌探究、低カロリー炭あるいは微粉炭の研究、それからガス化、つまり低カロリー炭火力発電にいかにして利用するかというような研究になってくると思います。砂鉄あるいはラテライトによる製鉄の研究をどうしたらいいか、石油の化学工業開発に対する研究、それから電導性合成樹脂研究等委員の間で考えついて並べたわけでありますが、これが適当か不適当か、新しい課題として各方面で御検討願いたいと思うのであります。  次に財源の一つとして契約研究、つまり委託契約をして研究するというもので、ここへいろいろ並べてございます。  次には新技術開発いたしまして、国の経済に寄与しようというようなことでいろいろの問題を並べてございます。  それから中央研究所運営につきまして、できるだけ効果を上げるようにという考え方で書いたわけでありますが、中央研究所運営のやり方についても一応の構想をここへ書いてございます。これはごらんくださればよくわかります。  次は大へんこまかいことでありますが、本部事務局業務の大綱とする点を書きまして、これを科学技術開発公社同友会構想としまして各方面へ差し上げて今御検討を願っておるわけであります。これに対する金の裏づけは裏の方へ参考に書いてございますように、収支の計算でありますとか、あるいは収入の状態あるいは支出の状態というふうなもので、われわれとしてはこの構想でいけば十分やっていけるだろうという自信を持って作ったわけでございます。  大へん粗雑でありますが、以上考え方と、科学技術開発公社構想の筋だけを申し上げました。なおお手元に差し上げました資料をごらん願えばけっこうだと思います。  以上をもちまして私のお話は終ります。
  4. 前田正男

    前田委員長 参考人に対する質疑があればこれを許します。
  5. 齋藤憲三

    齋藤委員 ちょっと最初の方の御構想を承わりかねたのでありますが、科学技術開発公社の今のお話でありますと、相当思い切った構想のもとに計画されているように存ずるのでございますが、行政機構確立があります以上、こういう科学技術開発公社というものはうまくいかないことは、行政の面に沿うて御研究になっているということで、これは申すまでもないと思うのであります。経済同友会では、行政機構確立というものはどういうふうにあれば科学技術開発に対して非常に便利であるかということをお考えになったことがありますか。
  6. 進藤武左エ門

    進藤参考人 お答えいたします。具体的にあまりこまかいところまでの案は作っておりませんけれども、われわれとしては、科学技術をまとめてやるというふうな行政官庁を作っていただきたい。それの実行機関のような形にもし科学技術公社がなれば非常に運営がうまくいくというふうに考えております。
  7. 齋藤憲三

    齋藤委員 それはわれわれもそういうふうにありたいと考えておるのでございます。  もう一つ伺っておきたいのは、科学技術開発公社、こういうものをお作りになりまして、実際中央研究所をお持ちになり、そうしてその研究をおやりになるときに、ここにいろいろな事業計画のテーマを選んでおられるわけです。たとえて申しますならば、選択対象となる重要課題参考例、これは私も大体こういうふうな形で科学技術というものは重点的に行かなければならぬものだ。科学技術開発公社というものをお作りになって、一般の広い視野に立ってあれもこれもというふうに全部をおやりになると、結局奏功しない。それですから科学技術開発公社お作りになって、中央研究所がその実際の業務をやっていくのでしょうが、これに対しまして、ここへ並べられましたいろいろな題目がございますが、これは経済同友会におかれましていろいろ御研究をなさいまして、国家として必要な順位にお並べになったのですか。それともそういうことでなくピック・アップしておく必要があるということでお並べになったのでありますか。どちらですか。
  8. 進藤武左エ門

    進藤参考人 実はこの程度のことを一つやったらどうかというだけの話でありまして、事務局で作り、委員で話し合っただけでありますから、この順位が適当であるかどうか、あるいはもっとほかに問題があるかもしれません。これは一つ考え方としてまとめただけでありますから、実際の問題になりますとさらに再検討の余地が十分あると思います。
  9. 齋藤憲三

    齋藤委員 私もこれをよく拝見いたしまして、後日いろいろ意見を申し述べたいと思っておるのでありますが、たとえて申しますならば第二の設置要綱の中に目的というのがございまして、注釈が加えられてあります。それは「ここにいう基礎研究産業技術基礎研究、すなわち後述の重要課題有用菌探究」を例にとれば各種土壌菌の収集、純粋培養、菌の性質研究応用的培養、分離、精製、動物試験臨床試験までを含む」こういう注釈がついておるのでございますが、私から考えますと、これだけの問題を取り上げて、世界的にこれをやり上げていくということになりますと、これは組織も金もすこぶる膨大なものを必要とすると思うのです。注釈に書きますと簡単に書けますけれども、土壌菌を一々探しまして、新しい菌が見つかるかどうかということの試験だけでも、これは相当な人員と設備を必要とする。またたとえば一つ見つかりました場合、これを純粋培養して、一切の構成的な性質研究し、臨床実験まで持っていくということが、これは非常に大きな仕事だろうと思うのであります。そこでまず私たちの構想といたしましては、今から科学技術開発公社というものを練りますときに、今日までの日本生産態勢というものに寄与するということではなく、むしろ将来の日本生産態勢というものはかくあらねばならないということに対して重点を置くというような構想で、これを一つ立てていこうというならば、私は非常に意義があると思うのですが、科学技術開発公社構想根本として、どういうふうなお考えを持っておられますか、一つ承わりたいと思います。
  10. 進藤武左エ門

    進藤参考人 お説全く同感でございます。しかし先ほど申し上げましたように、科学技術開発公社一つ総合運営をやっておって、現在の各研究機関とも十分連絡しながらやっていくということでありますから、たとえば中央研究所にいたしましても、これは今までというよりも、将来の問題をどうしていくか。それから日本経済にどういうふうに寄与していくかという問題を中心として新しく取り上げて、あるいは現在の各研究所と総合的にタイアップしまして、そうしてみずからも手を下すということで進んでいきたいと思いますが、ここに並べましたのは、今谷研究所でおやりになっている総合研究を何とかお手伝いできたらという面が入っておるために幅が非常に広くなったわけでありますが、お話通り、どういうふうにすれば今後の日本経済発展させるのに最も有効に寄与できるかという問題が、金とのにらみ合せになりますが、十分重点的に取り上げなければならぬと思います。お説の通りであります。
  11. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の御質問申し上げております根本考え方は、私はナチュラルサイエンス一般社会科学も追及していく根本の問題というものは、結局生命の起源を追及していくんだと思うのです。だからナチュラルサイエンスでもソーシャル・サイエンスでも、究極するところは一致する、いわゆるワンネスであるということは間違いない、科学根本だと考えている。そういう点から考えますと、今日の最高度にあるところの世界科学のレベルというものは結局放射線、いわゆる量子物理学微生物学と、こういう二つに分れている。これを見ると、大体そういう角度においてピック・アップされているんじゃないかと私は思うんです。それですから、そういう構想のもとにこの科学技術開発公社微生物原子力を取り上げているので、そうして原子力を取り上げていくと、これはある一つのピラミットの先端であるから、これだけの分野は入る。微生物科学を取り上げていくと、今行われているところのすべての生産部面において、これだけの分野が入る。こういう識別をなさいますと、将来の産業というものは、ほとんど原子力産業微生物中心とした工業の範疇に入るんじゃないか。これは現実を見ると入らないという方もありましようけれども、よくこれを検討してみますと、一として放射能、原子力時代からのがれ出るところの産業というものはない。この二つを押いてえくという構想のもとに、思い切って日本生産態勢を将来において最高度に上げるという構想でおやりになるというならば、われわれもこれは大いに賛成をしたいと思うんですけれども、月並みにあるようなものと相競合するような形における公社というものは、ある意味において屋上屋を架するものじゃないか、私はそういうふうに考えているのですが、これは参考のために伺うのですが、一つどういう考えでこういうことを御構想になったか、伺いたい。
  12. 進藤武左エ門

    進藤参考人 大きな考えとしてはおっしゃる通りでございます。しかしわれわれといたしましては、日本の現在の経済の問題も無視するわけにはいかないのでありますし、世界技術の現在の水準の問題も考えなくてはなりませんので、そういう点を考えますのと、それからどうしても経済問題との関連——つまり文化政策としてでなく、経済政策としてこういうものを具体的に作ってそうして具体的にどんどん実際に物を作り上げて、日本経済開発に寄与しょうという、その考え方としてはごもっともでありますけれども、事実といたしましては、具体的な問題が一々取り上げられていくと思います。ねらいとしてはおっしゃる通りでありますけれども、その点の調和をどうするかという問題は、ただ、今ある施設がやっていること、あるいは屋上屋を架するということは、これは絶対にやらないために、総合運営もやらなくてはなりません。それから今の企業で、やりたくても金がないからできないというような問題も、当然この会社国家資本としてやっていくというようなことから、ねらいとしては今おっしゃる通りでありますが、具体的の問題としてはより現実的なねらいをやっているわけです。
  13. 小笠公韶

    小笠委員 簡単に一つ伺いたいんですが、先ほど冒頭のお話で、科学技術振興の問題として、第一点は総合調整計画官庁を作りたいというような話、第二は教育問題を取り上げた。その第一点でありますが、総合科学技術行政総合調整機関を作る場合に、この科学技術開発公社との関係、そのそれぞれの持つ業務分担関係がどうなるのか。これは目的のところに「政府行政方針に即応して」こう書いてありますが、見方によりますれば、この開発公社自体現実経済諸情勢に即応して、現実的な研究計画性重点性を選ぶ、選んだ上においてさらに各機関を動員してその実施に邁進せしめる、こういう行き方になると思うのであります。少くとも前段の総合調整あるいは重点的計画性をとるという問題は、上位の行政機関でとるのか、これでとるのか、ともすればダブってくるおそれがあるのじゃないか。この科学技術開発公社性格論行政機関とのボーダー・ケースのところが非常に問題になると思うのであります。屋上屋を架するおそれが多分にありやせぬかと思うのです。本問題は見方によれば、御説明のように即これにいわゆる科学技術総合関発調整なり計画性を持たして、御説明よりももう少しその点を強めればこれでやれるような気もするのですが、そこらの関係を一応伺っております。
  14. 進藤武左エ門

    進藤参考人 政府科学行政機関を作っていただきたいというのは、調整基本方針あるいは考え方、国の方針というものは行政機関でおやりになると思います。その方針によって具体的にこうしなければならぬ、ああしなければならぬという問題は、おそらく科学技術公社中心になって関係者とお話し合いの上、実際問題としてやらなければならぬというふうに考えておるわけでありますが、これは結局運営の問題でありまして、あくまでも科学技術の何をやるかという方針については、行政機関基本方針をおきめにならないと、今お話のようにいろいろダブる点も出てきやせぬかという心配もあります。これは運用の問題でありまして、われわれなお研究しなければならぬ問題だと思います。
  15. 小笠公韶

    小笠委員 これは運用の問題の面もありますが、新しく作る機構の権限の限界のきめ方だと私は思うのです。ちょうど専売公社、電電公社のような公社団体のように、その行政方針を各省がやっている、そういうふうな関係になるのか。これの性格を相当強めれば科学技術に関する総合行政という問題の影は非常に焦点がしぼられてくると私は思うのです。また焦点をしぼった方がこの御構想を生かすゆえんじゃないかという気もするのですから、ここは運用という言葉じゃ逃げられぬじゃないかと私は思うのであります。一つ十分御研究を願いたいものだと思います。
  16. 進藤武左エ門

    進藤参考人 これは率直に申し上げまして、予算つまり政府から五十億出していただいて、年に十億という資金がきまります。そのほかいろいろ収入がはっきりしますから、その予算運営については全面的にまかしてもらう方が私はいいのじゃないかと考えております。ただ運営の基本だけはこういうことをやるべきだ、たとえば原子力の問題をやるべきじゃないかとか、こういう問題をやるべきじゃないかというような問題、あるいはこういうやり方をしたらいいじゃないかというような行政の面だけを、大綱を政府がおきめになったら、運営面は、予算と人事だけを政府がおきめ願ったら、あとは全面的におまかせを願うという方が手っとり早いと私は考えるのであります。
  17. 齋藤憲三

    齋藤委員 工業技術院長はこの案をどうお考えになりますか。
  18. 駒形作次

    ○駒形政府委員 私ども、経済同友会でその案をお立てになりました当初におきまして、今お話がありましたようなことを伺いまして、この構想の中で科学技術をわが国の経済自立に結びつけて、その面で推進をしていかなければならないということは私ども同感でございます。ただ私ども考えておりますのは、先ほどお話がありましたような、将来の方向ということはごもっともでございますけれども、現在の段階におきまして、どこに一番大きな欠点があるかということになりますと、それは実際新しく技術ができましても、それが植えつからないという点でございます。新しい技術企業化という面におきまして私どもも非常に困っておるのでございます。現在は開発銀行あるいは中小企業金融公庫等で新技術工業化の資金をお考え下さることにはなっておりますけれども、その実績を見ますと、非常に少いのでございます。これは開発銀行なりあるいは中小企業金融公庫なりが、何しろ一応コマーシャル・ベースに立って仕事をしていくという、そういう性格がそこにありますので、従って新しい技術工業化するという段階になりますと、そこに危険率の大きいということを免れないことでございますから、従って現在のような結果になる、それが本質的なことである、こう私どもは考えておるのでありまして、新しい技術工業化するということ自体目的にしたそういう何らかオーガニゼーションというものがどうしても必要になってくるのではないか、そういうふうに考えます。技術開発公社もその面をお持ちになるのでありますから、その面におきましては私ども賛成でございまして、極力そういったことを何らかの形でやらなければならぬことになる。  もう一つの私どもの考え方といたしましては、やはり技術を総合的に進めていくというそういう考え方、これは賛成なんであります。新しい技術企業化の問題になりますと、これは金だけでは解決できないのでありまして、一面におきましてそのオーガニゼーションというものは技術の銀行でなければいけないと思います。金の銀行であると同時に技術の銀行である必要がある。金及び技術の銀行であるようなオーガニゼーションが必要である。たとえて申しますと、特許、発明というような問題がありますと、これは何らかの形で技術的の銀行であるところから企業する方に渡されていって、それが実現するような工合にすべきである、こういうふうに思うのでございます。従いまして私が今申し上げましたようなオーガニゼーションに重点を置いて、あまりほかのことを考えないでやる組織の方がいいのではないか、こう私どもは思っておるのでございます。従いましてそれ自体がむしろ中央研究所を持たない方がいいであろう、それは金及び技術の銀行であるようなそういう組織であった方がいいであろう、こういうふうに考えておるのでございますが、しかし最後的に同友会の案に対しまして私どもが結論を下すというようなところまでは実は参っておりません。現在そういったような、私が今申し上げましたような考え方を一応持っておるという程度でございます。
  19. 齋藤憲三

    齋藤委員 あまり時間を取りたくないからなるべくはしょって御質問申し上げますが、今の工業技術院長お話の結論は、やはり中央研究所運営というものはこれは考えものじゃないかというような御構想であります。私先ほど御質問申し上げたことも、先輩小笠委員の御質問の中にもありましたように、この科学技術開発公社というものの考え方は、うんと目的をしぼった方がいいのではないかということなんです。と申しますのは、この案をずっと拝見いたしましても、結局対象とするのは今の科学研究所なんです。実行方法としては科研を対象として考えておられる。こう考えてみますると、この中にもいろいろ羅列されておりますが、今現実に国営の研究所の中にすばらしい研究が完成されて、生産体制に移されていないものが何十あるか何百あるかわらないと思う。ですからそういうものを選択して、これを中間工業試験機関に移しあるいはマス・プロダクションに移す、そういう行政は必要だと思う。しかしこういうものの下に中央研究所を作って、そうしてまたいろいろなテーマを抱きかかえて実験研究をやっていくということになったら、一年に十億なんという金では私はできないと思う。そうでなく、私が先ほどからお話を申し上げたのは、もう将来日本というものはこうなるのだ、世界というものはこうなるのだという見通しをつけておいて、科学技術開発公社というものは原子力を取り上げて、原子力だけでやるのだ、あるいは微生物だけやるのだ、微生物中心とした生産体制を確立するのだ、あるいは原子力を主題としたところの生産体制を確立するのだ、そのために一年間に十億つぎ込んで、原子力中心とした一切の生産体制をここへ集約して、それから新しい国家の生産体制を築き上げていくのだ、こういうのならばわれわれははっきり頭へ浮んで問題の割り切りができるのです。そういうところへ科研というものが浮んでくるならば原子力体制を確立するために科研を充実していくということになるのですけれども、八百屋の店にいろいろなものを並べたように、あれもこれもということになると、今まである国家試験所あるいは研究所と競合し、屋上屋を重ねるようになるのです。そういうことは号の国家財政において許されないと思う。それですから、今の日本の町家体制を見ると、これはわずかな調査だけですが、一番盲点というものはやはり原子力微生物であります。英国なんかは、微生物発酵工業というものを将来の工業として取り上げているにかかわらず、日本はこれに対する体制というものはほとんどないのですから、そういう将来の高慶の生産体制を樹立し得られるところの問題をつかまえて、これに重点を置くというしぼり方をやるならばこういうものが光ってくるのではないか、そういうふうに私は考えて今念のために技術院長のお話も承わったのでございます。私はそういうふうに考えた方がいいのじゃないかと思いますが、これに対してどうお考えになっておりますか、一つもう一ぺん簡単に……。
  20. 進藤武左エ門

    進藤参考人 われわれの初めの考え方は、たとえばアメリカのリリエンタールが委員長である原子力委員会というふうな対立的なものは考えておりません。ただ、今言ったような日本経済を立てていくのに工業技術が非常に今の形ではおくれる。では何を取り上げて進んでいったらいいかということを重点的に取り上げるのですが、一つのものにしぼるということじゃないわけです。そこで今の既設のものと競合しない、相互共同研究もやる、あるいは委託研究もやるという形になるのですが、その運営をやりますのに、実際の研究機関を持たないと、きゅうきゅうたるものになりはしないかというふうな気がいたします。幸いあそこの科学研究所がありますから、それを今の形でそのままわれわれは引き受けるという考えは全然ございませんが、ああいう施設を引き受け、そうしてあそこに種を作ってそれを土台としてりっぱに進めていこう、それがより現実的じゃないか、そう考えます。
  21. 前田正男

    前田委員長 それでは進藤参考人に対する質問はこの程度にいたしまして、皆さんが資料を読まれて、質問がありましたらまた適当な機会にお願いいたしたいと思います。  進藤参考人には御多用中のところ本委員会のために御出席下さいましたことを厚く御礼申し上げます。  次に、この案とよく対照的に考えられる案でありますが、日本学術会議から昭和二十五年の一月二十九日付で改訂案とされまして出しておられます「産業技術開発金庫骨子案」は、すでに科学技術行政協議会において取り上げた案でありますので、科学技術行政協議会の事務局長から説明を求めたいと思います。
  22. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 御説明申し上げます。お手元に資料として「産業技術開発金庫骨子案」というのが行っていると思います。昭和二十五年一月二十九日日本学術会議の作成いたしたものでございます。この金庫を政府の方で設立するよう考慮せよというのが学術会議の勧告でございまして、かなり古いものでございます。この試案は、財界の方並びに学界の方が協力されて作ったものでございますが、簡単に申し上げますと、これは一つの特殊金融金庫ということになっておりまして、二の基金及び経費にありますように、基金は五十億円として、五カ年間政府がそれに対して予算を組み入れるというのでございます。融資の方法というのがございます。これは一応融資をしてよいかどうかということを審査するわけでございますが、これの全体の骨子として考えられておりますのは、研究の実用化、試験を行う場合に、この金庫が金を貸し付ける。そうして金を借りました人が成功いたしました場合には、借りた金に二割五分の報償金を加えて金庫に弁済する、それから失敗いたしました人は、せっかく金を借りましてもそれがうまくいかなかったという危険があるわけでございますので、そういった失敗をいたしました人は、不合格と認定をいたしましても、借りた金の二割五分だけを返せばよい。でございますから、成功した人は借りた金に二割五分を加えて返し、失敗した人は借りた金の二割五分を返せばよい。金庫のいろいろな経費が必要でございますが、これはそういうことを考えないで、ごく簡単に考えますと、金庫から四人金を借りたといたします。これも金額によりますけれども、同じ金額を借りたといたしました場合に、三人成功して一人不成功に終っても金庫はとんとんというようなプリンシプルとしては簡単なことであります。現在でもそうでありますが、新しい工業試験をいたします場合どこからもなかなか金が出ないが、こういうようなやり方をすればその方にも金が回って、日本で最も必要といたしておる実用化試験の費用が出るではなかろうかというような案でございます。当時スタックでこれを受けまして、いかに具体化するかということでいろいろ考えたわけでございますが、司令部がございましたから、司令部に行きまして、こういうものを作りたいが見返り資金の方から金を出してもらえないかという折衝をいたしたわけでございます。司令部としてもこれは日本産業開発に必要だというようなことを考えられたようでありますけれども、見返り資金というのもなかなかそう簡単には出ない、いろいろワクがあって簡単にいかぬというような話もございましたが、たまたま日本開発銀行というものが設立される機運にございましたので、司令部の方でそういうふうな銀行でやったらいいんじゃないかというようなこともありまして、スタックでは当時の安本というようなところとよく連絡いたしました結果、それでは日本開発銀行でこの問題を取り上げたらどうかということになったわけでございます。  もう一つ資料の2「産業技術審議会設置について」というのを差し上げてございます。そのあとの方に「工業試験に対する見返り資金の融資について」というのがございます。結果は、金庫ではございませんでしたけれども、開発銀行からそれを貸し出すようにしようということになったわけでございまして、その一にありますように、「優秀な技術研究成果の工業試験に必要な資金を見返資金から融資する」と閣議決定のときにはこう書いてあったのでございますが、これが実際には開発銀行に移ったわけでございます。  その融資の対象につきましては技術審議会、これは産業技術審議会と言っておりますが、そこで審査をいたしまして技術的な裏づけを十分いたしまして、それを経済安定本部において経済政策とあわせまして選定をしよう。その結果見返り資金の中から金を貸すことにしようというような一つの案であったわけでございます。大体それは当初としては一億程度ということを考えておりました。その技術審議会と申しますのは、資料二の初めのページにありますように、米国対日援助見返り資金の融資計画をやるためにと書いてございますが、総理府に産業技術審議会というものを置きまして、技術の審査をする。これは会長はスタックの副会長であります国務大臣、委員関係各省次官とかあるいは技術的な判断にたんのうな学識経験者の方々をお集めになったわけでございますが、そういうところで技術的に十分成功するかどうかということを審査をして、それを見返り資金の方に持っていこうという構想でございます。それでこういう閣議決定を得たわけでございますが、先ほど申し上げましたように、見返り資金というものはいろいろ変りまして、日本開発銀行がこういった産業開発の銀行として設立されたわけでございます。そこで開発銀行がそれを取り扱うということになりまして、産業技術審議会の選考いたしましたものは各省、もちろん安定本部も入りまして相談をして、それを開発銀行の方に推薦をいたしたわけでございます。開発銀行といたしましては、技術的な裏づけはその方でやってもらいますので、あと会社の信用状態の方を十分調査いたしまして、その方もよろしいということになりますれば融資に相なったわけでございます。どの程度のものがあがりましたかと申しますと、これは資料三にございますが、最初に二十六年の四月にそういう審査を始めたわけでございますが、各省で五十四件受けつけまして、各省でもいろいろふるいをかけまして、審議会に十六件参りました。そのうち審議会としては八件を採択しまして、それを開発銀行の方に申し入れましたところが、二億五千二百三十万円という金が融資されたわけでございます。第二回は一億八千五百万円、第三回はかなりふえて参りまして五億一千万円、こういうふうにずっと順調に参ったわけでございます。ところが昨年度になりまして開発銀行の金が非常に乏しくなったと申しますか、デフレの影響も受けたのでございましょうが、開発銀行に対します回収資金が非常に乏しくなりましたので、その金繰りが非常に苦しくなったということで、産業技術審議会から推薦いたしましたものについたはきわめて微々たる金額しか融資を受けなかったのでございます。そういうことでありまして、第五回の融資金額は五千百万円ということになっております。それでわれわれといたしましては、ただいま経済審議庁と話し合っているのでございますが、三十年度には少くとももう少ししっかりしたワクにおいてこれを一応のめどをつけて、開発銀行の融資のワクを一応作ってもらいたいということを申し入れているわけでございます。経済審議庁としても相当好意的なお考えのようでありますが、まだ具体的にどれだけ貸せるかということはきまっておりません。それで今まで融資を受けましたものを合計いたしますと、四十二件ございまして、十二億の融資ができております。その題目の一例を申しますと、資料三にこまかく書いてございますが、たとえば第一回の西日本重工の大型舶用ツー・サイクル・ジーゼル・エンジンの問題、これなども研究は非常に時間がかかるものでございますが、きわめて優秀なエンジンができまして、最近それの試運転をいたしまして、各方面に披露いたしたようでございますが、これはジーゼル・エンジンといたしましても非常に画期的なものでありまして、スイスのズルツァー等においても非常に注目をしておるというような成果をおさめております。その他いろいろございますけれども、こういったことで金額はきわめて少かったのでございますけれども、融資を受けましたものはそれぞれ相当な成果を上げておるという状況でございます。  簡単でございますが、以上御説明申し上げます。
  23. 前田正男

    前田委員長 本件について何か質疑がありましたら、これを許します。
  24. 小笠公韶

    小笠委員 ちょっと伺います。産業技術開発金庫骨子案、これは二十五年一月二十九日ですが、現在でも学術会議はこの意見を支持されておるかどうか。
  25. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 学術会議におきましては、その後新しい案というものは考えておりませんけれども、おそらくこの骨子案をやはり支持しておるのではないだろうかと考えられます。しかし学術会議の中にはやはりこういった部会もございまして、いろいろ検討はしておりますので、私もその点ちょっとはっきりしたことは申し上げかねますけれども、これを変えたいという意向は少くとも聞いておりませんので、こういう思想を持っておる方もまだ相当おられるのではないかというふうに考えております。
  26. 中崎敏

    ○中崎小委員 少し聞いてみたいのです。今の点ですが、二十五年当時の経緯だけは聞いたわけです。その後相当年月もたっておりますし、必ずしも事態が同一だとも思えないので、さらにこの点について参考意見としてあなたの方にもう一度念を押して確かめてみたいと思います。内容についてでありますが、五十億円をまず予定して、五ヶ年間のうちに払い込むということになっておるようですが、その五十億円を考えられた根拠、大体どういう範囲にどういうふうに処理していくか、そうして一口ごとの、たとえば貸し金の限度、出す金の限度なども一応考えられたか、そこらのところをちょっと……。
  27. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 お答え申し上げます。ただいまの学術会議でどういうふうな考え方をしているかという御質問でございましたが、この点につきましては、幸い駒形工業技術院長が学術会議の会員でおられますので、駒形会員からお聞き下さいますと、もう少しはっきりしたことがわかるのではないかというふうに考えます。  それから五十億円といたしましたのは、その根拠も私どもはっきりいたしておりませんけれども、当時工業試験の補助金といったようなものが通産省にございまして、各省にもございましたのですが、そういったものが大体年に合せまして五、六億じゃなかったかと思います。それで年間十億というふうに見ましたのは、大体そういう工業試験なんかで成功したものが、またさらにもっと企業化をするような段階の試験になりますと、もっと金がかかるということで、少くともその倍くらい要るのじゃないだろうかというようなことを考えたのじゃないかと思いますが、貸出限度とか、そういったことにつきましては、まだそこまで学術会議検討しておらなかったように私聞いております。
  28. 駒形作次

    ○駒形政府委員 学術会議で二十五年にやりましたのは、先ほどスタックの鈴江事務局長からお話がございましたが、これは先ほどのお話のように、この案が、開銀の融資ということで一応企業化に対して金が出る、そういうふうに変形をいたしましたので、この考えをさらに推し進めるということでなしに、一応そういうことで進んでいくということで、学術会議の方もそのままになっておるのでございます。しかし学術会議の中には研究成果実用化委員会という常置委員会がございまして、そこでこの問題をときどき研究はいたしておるのでございます。先ほどもちょっと話がありましたように、この科学技術研究が進んで参りまして、実際に企業化するという段階のところが十分でないということは、科学技術の成果が最後の段階がくびれておりまして、うまく全体の流れがつかぬ。言葉は悪いのでございますが、その流れがふん詰まりになっておるというてふうにも見られますので、これは非常に重要なこととして考えておるのでございます。  それからもう一つの御質問の五十億というのはどういうものかというお話でございますが、これは資料一の六のところにこういう式を立てまして、そうして不成功率が幾ら、それから成功したものは幾ら、そうしてそれに対して金が返ってくる、こういうような計算をいたしまして、大体三十億ないし五十億くらいあればそれ自身で回転していく、であるから、五カ年ぐらいにこれくらいの金になるように政府から出してもらって、そうしてそれを一応積み重ねておけば運転ができる、こういう考えのもとに一応出したものでございます。
  29. 中崎敏

    ○中崎小委員 これに一応予定され、考えておる融資の対象になるのは、たとえば原子力利用に関するようなものも考えられる、あるいはまた航空機等の製造技術に関するようなものも予定し得るものであるのかどうか、そこらの範囲を一つお聞きしたいと思います。
  30. 駒形作次

    ○駒形政府委員 この当時はまだ原子力の問題が出ておりませんので、原子力関係のことはこの中には全然考えていない案でございます。それから航空機もこれには実は含んでおりません。一般産業といたしまして考えておったわけであります。
  31. 中崎敏

    ○中崎小委員 そうしますと、たとえば今後多少年限は先になるかもしれませんが、原子力平和利用等の問題が現実的な問題となってきた場合において、金額なども相当膨大になるのではないか。航空兵器等についても、さらにこれが現実の段階においてさらに技術を突っ込んでこれが生産化するということになると、金額的にも相当大きくなるのでないか。そうすると、この五十億円とか三十億円とかいうようなものが妥当であるのかどうかというような問題もあるので、かつてこうであったということよりも、現在これを作っていくとすれば一体どうであるかということが聞きたい。そうした問題をもう一歩突っ込んで具体的に現在の段階にマッチするような案として一つあらためて出していただくことを要求しておきたいと思います。  それからさきにつけ加えて聞いておきたいのですが、この融資の方法の中に、これが成功すれば二割五分の報償をつけて返す、失敗すれば二割五分の金を返すということになっておるようであります。これはあとに計算の根拠などもあるようでありますが、これはどう見ても一つの賭博式の観念が相当取り入れられておる。これはもちろん発明とか実施とかいうものはそういうものが伴うのは言うまでもないのですが、国家的な施策としてやる場合において、こうした考え方の上にのみ立ってこの問題を処理するということが妥当であるかどうかということをも、もう少し考えてみるべき必要があるのではないか。そこで、たとえばうまくいけば二割五分の報償をつけて返すというよりもたとえば、五カ年間貸すならば、その適正な金利というものを一応計算の上に立てて、これがうまくいったときには複利等によらないで返していくというふうな方法も一つの方法じゃないか、うまくいったからといって頭をはねる必要はないのではないかと思う。それからうまくいかない場合には二割五分ということであります。これは設備等に金が投下されておる場合、たとえば自己資本が一部ある場合もあり、またすでに自己の設備が過去にある場合これを使われるという場合もあり得るのでありますが、このような場合において、たとえば機械あるいは地所等を処分すれば二割五分以上の利益が出てくるかもしれない。事業そのものから生まれぬでも、その換価価値というものがそれ以上あるかもしれない。そういうふうなものまで本人によけい別に利益を与える必要もない。そこで損益の程度においてもいろいろあるから、これは二割五分等を標準としていくよりも、そうしたようなことで実情に応じて返し得るような道を講ずることが、むしろ実態に即した政府としての正しい行き方ではないかというふうに考えられるので、これらの問題についてもさらに検討を加えて具体的の案を出される必要があるのではないかというふうに考えるのであります。一応意見を聞いておきたいと思います。
  32. 前田正男

    前田委員長 それではこの問題については、一応学術会議の方に連絡いたしまして、また相談いたしたいと思います。     —————————————
  33. 前田正男

    前田委員長 次に、先ほど来のお話の中にもありました科学研究所の問題につきまして、工業技術院においてこれを政府出資の株式会社にしたらどうかという法案のごく原案みたいなものが考えられておるようでありますので、この問題について駒形政府委員から説明を求めたいと思います。
  34. 駒形作次

    ○駒形政府委員 御説明申し上げます。  株式会社科学研究所につきましては、その研究陣が昔から非常に優秀な方々が多数なっておりますし、現在の科学研究所が経営上の面におきましてもいろいろと不十分のような段階にあるわけでございますので、こういう歴史ある伝統の研究所というものを何とかうまくいくような工合にすることが必要であると考えまして、私どもの方の考え方といたしましては、お配りいたしました株式会社科学研究所の再編成についてというところに書いてありますようにこの会社を再編成いたしまして、国及び産業界の要望に応じまして、生産技術の改善並びにその向上に直接的に資するような工業試験及びそれに必要な応用研究というものをこういうところでやってもらうようにしよう、それで、これは国が金を出す、そのためには、やはりいい方法は、国から国資をいたしまして特別法に基く特殊法人として、そして一方におきましては民間からの資金もこの中に流れてくるような形のものがいいであろうと考えた次第でございます。しかしそれの運営等につきましては十分な考慮をする必要があるのであって、この申しました目的に沿うような研究テーマを選定するように、産業部門の代表者からなる審議会というものを作ってやっていくような方法がいいのであろう。従いまして一応株式会社科学研究所法案というものを実は用意をいたしたのでございます。それでこの場合に私どもが考えておりましたのは、年二億円五年間出資してはどうだろうという考えを実は持っておったのでございます。予算編成の場合にそういうことを要求はいたしたのでございますけれども、いろいろと議論もございまして、特にこのような研究目的といたしました株式会社仕事というものに対して相当無理がある、従ってその仕事の今後のことについてやはりもう少しく状況を見る必要があるのではないかという考え方が一方ございまして、三十年度におきましては補助金として一億円交付するということになって、こういう再編成のもとに出資をして新しく切りかえていくことは見送る、大体そういう経過で先般の予算案におきましても科研に対して補助金一億円というもので国会に提出をし、御審議を賜わりまして衆議院の方でそれを御決定を下さいました、こういういきさつでございました。従いましてこの法案は現在におきましてはこれをどうこうというものではないのでございますけれども、従来の経過といたしまして考えておることを申し上げました次第でございます。
  35. 前田正男

    前田委員長 何か質問がありましたら……。
  36. 小笠公韶

    小笠委員 株式会社科学研究所法といいますか、今の御説明によりますと、これまでの過程においてこういうことがあったというお話であります。現在においてはどうこうとは考えておらないというのですが、そのどうこうと考えていないというのは、こういう案を起案した当時の意見と変ったという意味ですか、その変ったというのは、適当でない、こう考えてどうこうと考えておられるのか、ちょっと伺いたい。
  37. 駒形作次

    ○駒形政府委員 予算案といたしまして政府で提案をされましたのはこういう出資の案ではなかったのでございまして、その趣旨は先ほど御説明申し上げましたように、こういう仕事に対する見通しというところで私どもの内部でもいろいろ問題があったようないきさつをざっくばらんに申し上げました次第でございます。従ってこれは表面から見ますと、少くとも現在の段階におきましてはこの案をごらんに入れるまでもないような状況であるのでありますけれども、経過を申し上げなければならないので一切申し上げた次第でございます。そういう意味でございます。
  38. 小笠公韶

    小笠委員 そうしますと、平たい言葉で言うと、これは廃案だと考えてよろしゅうございますね。
  39. 駒形作次

    ○駒形政府委員 現在の段階におきましては一応案が出ていかないのでございますが、しかし将来におきましてまたやはり出資の方がいいということになりますれば、これもまた復活するかもしれない、こういうわけであります。
  40. 小笠公韶

    小笠委員 それはおかしい話なので、本年度の予算に際してこういう要求が出たがうまくいかなくて一億円の補助金に変った、これはやむを得ない。しかし科学技術総合研究促進の上からいって、こういう総合機関を建て直す、そのために政府出資し特別法も作ってやっていくという株式会社組織がいいのだという考え方自体がいかぬと考えておるのか、考え方はいいと考えておるのか、この点を伺っておきたい。
  41. 駒形作次

    ○駒形政府委員 その点につきましてはやはりこういうのが一つの案である、決してこの案はだめだというふうには現在におきましては考えておりません。
  42. 小笠公韶

    小笠委員 わかりました。
  43. 前田正男

    前田委員長 他に科学技術振興に関し質疑があればこれを許します。
  44. 齋藤憲三

    齋藤委員 工業技術院長にこの前質問したのですが、五月十九日の日経の「国産ウラン鉱の精練技術を完成」という記事、これは工業技術院で御調査なさいましたか。
  45. 駒形作次

    ○駒形政府委員 調査をいたしまして、大阪金属でそれをやっておる、それは福島の鉱石を使いまして、特にその方法において特徴ありと私ども思いますのは、最初の段階におきまして篩別選鉱をやる、ふるい分けをやるというところが非常にいいように私考えておるのでございます。
  46. 齋藤憲三

    齋藤委員 私たちはこれを近く調査したいと思っている。それで私が聞いておるところでは、これは画期的な発明であって、この発明がほんとうに完成されるならば、今までのような濃縮ウランを作るよりもはるかにいい方法である、世界的な発明であるということです。それは私は専門家じゃないからよくわかりませんが、その篩別法じゃないのです。UF6という形にすると、六十五度でもってウランが溶けて気化する、これを網の目でもっていわゆる濃縮方法に持っていくのだという話です。あなたの方の調査と大分違うから、これはあなたの方の調査は未了としておきます。  しかしもう一つ御質問申し上げておきたいのは、きょうの新聞で「二〇%濃縮ウランなら三〇キロ」という見出しが出ておるのです。この交渉を見ても、工業技術院長がついておってこんなばかげた交渉をアメリカにさしておるのですか。
  47. 駒形作次

    ○駒形政府委員 今の二〇%濃縮ウラン三十キロというのは、初めから私どもわかっておりました。その意味は、六キログラムというのは、ウラニウム二三五が六キログラムでありまして、そのウラン二三五の濃縮度が二〇%でございますから、六キロを〇・二で割るわけでありまして、五倍いたしまして三十キログラム、だから全体の量は三十キログラムになるわけでございます。しかしながらその中に二三五のウラニウムが二〇%だけ、六キロある、こういうわけであります。実際燃料として濃縮ウランを使います小型実験原子炉におきましては、その六キロの二三五が有効成分でございますので、三十キロといいましても、問題はないわけであります。
  48. 齋藤憲三

    齋藤委員 今私の言っておるのは、そういう説明を聞こうというのじゃないですよ。それが初めからわかっていたなら、この記事がどういう記事かわからぬけれども、十四日今後の問題として次のような点が明らかになった。この六月十四日には、あなた方はもう調査してそういう問題にタッチしたときにわかっている問題を、アメリカと二〇%の濃縮ウラン双務協定を結ぶか結ばないかというときに、二〇%の濃縮ウランの総量は、これは二十キロであったのだというばかげたことが新聞に出るような行政機構の建前で、一体濃縮ウランの双務協定なんかできるのですか。私はそれを聞いている。中学校の一年生か二年生でも計算できるようなことを今さら発見したようなことを言って、二〇%濃縮ウランならば三十キロくらいになる、こんなことを政府が今ごろアメリカに問い合せるということがほんとうだとしたら、技術院長として重大な責任だと思うが、どうですか。
  49. 駒形作次

    ○駒形政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、初めからそのことは私どもわかっておるのでありまして、ただ今日の新聞のことは、私ども承知いたしておらないことでございますし、新聞記者がたといそう書きましても、私どもはその責任まではどうもとるわけには参りません。
  50. 齋藤憲三

    齋藤委員 昨年二億三千五百万円の原子炉築造に関する基礎調査費というものが予算に盛られましたときから、この予算は通産省の工業技術院に所属させて、そうしてこの予算の使途に対してわれわれも期待をかけておった。今度の三億六千数百万円の原子炉予算も、一応は工業技術院の所属として、今参議院で審議されておるわけです。そこへ持ってきて、濃縮ウランの二〇%の現物の貸与が、日本とアメリカとの間に双務協定を中心として連日のように問題になっておる。おそらくこの問題が新聞紙に出ないことはなかった。ところが突如として六月十五日、もはや双務協定の調印がなるかならないかというときに、初めて二〇%の濃縮ウランというものの実態がアメリカに問い合せてようやくわかったという記事が出るというようなことは、われわれから見ると、この原子力問題に関して、政府行政機関の中はまるで支離滅裂で何らの統制がないということになる。一体だれが全責任を持って濃縮ウランの概念というものをはっきりして、その認識のもとにアメリカとの双務協定を結ばんとしておるのか。こんな屈辱的な記事が出ておってわれわれは国民の選良として黙って見ていることができない。国辱ですよ。それに対して責任を追及すべきものがあったならば、一体どこに責任を追及すればいいのですか。それを一つ伺っておきます。
  51. 駒形作次

    ○駒形政府委員 新聞に書いてある三十キロというのは、それは新聞社の責任だと私は思います。私は初めから全体の量は三十キロであるということを承知いたしておりますし、別にそういうことを政府として向うに問い合せたというような事実はないと私は思っております。
  52. 齋藤憲三

    齋藤委員 それではもう一ぺん工業技術院長にこの読売新聞の記事を読んでいただいて、果してこれが新聞社の責任に帰すべき記事であるか、あるいは政府当局の責任に帰すべきものであるか、一つ検討を賜わりたいと思います。それであなたの方から、この新聞記事というものは、あくまでも新聞社の責任に帰すべき記事であるか、そうでないかということを御判断願いたいと思います。これで質問を終ります。
  53. 前田正男

    前田委員長 本日の会議はこの程度にとどめ、次会は追って公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会