○鈴江
政府委員 御
説明申し上げます。お
手元に資料として「
産業技術開発金庫骨子案」というのが行っていると思います。昭和二十五年一月二十九日
日本学術
会議の作成いたしたものでございます。この金庫を
政府の方で設立するよう考慮せよというのが学術
会議の勧告でございまして、かなり古いものでございます。この試案は、財界の方並びに学界の方が協力されて作ったものでございますが、簡単に申し上げますと、これは
一つの特殊金融金庫ということになっておりまして、二の基金及び経費にありますように、基金は五十億円として、五カ年間
政府がそれに対して
予算を組み入れるというのでございます。融資の方法というのがございます。これは一応融資をしてよいかどうかということを審査するわけでございますが、これの全体の骨子として
考えられておりますのは、
研究の実用化、
試験を行う場合に、この金庫が金を貸し付ける。そうして金を借りました人が成功いたしました場合には、借りた金に二割五分の報償金を加えて金庫に弁済する、それから失敗いたしました人は、せっかく金を借りましてもそれがうまくいかなかったという危険があるわけでございますので、そういった失敗をいたしました人は、不合格と認定をいたしましても、借りた金の二割五分だけを返せばよい。でございますから、成功した人は借りた金に二割五分を加えて返し、失敗した人は借りた金の二割五分を返せばよい。金庫のいろいろな経費が必要でございますが、これはそういうことを
考えないで、ごく簡単に
考えますと、金庫から四人金を借りたといたします。これも金額によりますけれども、同じ金額を借りたといたしました場合に、三人成功して一人不成功に終っても金庫はとんとんというようなプリンシプルとしては簡単なことであります。現在でもそうでありますが、新しい
工業化
試験をいたします場合どこからもなかなか金が出ないが、こういうようなやり方をすればその方にも金が回って、
日本で最も必要といたしておる実用化
試験の費用が出るではなかろうかというような案でございます。当時スタックでこれを受けまして、いかに具体化するかということでいろいろ
考えたわけでございますが、司令部がございましたから、司令部に行きまして、こういうものを作りたいが見返り
資金の方から金を出してもらえないかという折衝をいたしたわけでございます。司令部としてもこれは
日本の
産業開発に必要だというようなことを
考えられたようでありますけれども、見返り
資金というのもなかなかそう簡単には出ない、いろいろワクがあって簡単にいかぬというような話もございましたが、たまたま
日本開発銀行というものが設立される機運にございましたので、司令部の方でそういうふうな銀行でやったらいいんじゃないかというようなこともありまして、スタックでは当時の安本というようなところとよく
連絡いたしました結果、それでは
日本開発銀行でこの問題を取り上げたらどうかということになったわけでございます。
もう
一つ資料の2「
産業技術審議会設置について」というのを差し上げてございます。その
あとの方に「
工業化
試験に対する見返り
資金の融資について」というのがございます。結果は、金庫ではございませんでしたけれども、
開発銀行からそれを貸し出すようにしようということになったわけでございまして、その一にありますように、「優秀な
技術研究成果の
工業化
試験に必要な
資金を見返
資金から融資する」と閣議決定のときにはこう書いてあったのでございますが、これが実際には
開発銀行に移ったわけでございます。
その融資の
対象につきましては
技術審議会、これは
産業技術審議会と言っておりますが、そこで審査をいたしまして
技術的な裏づけを十分いたしまして、それを
経済安定本部において
経済政策とあわせまして選定をしよう。その結果見返り
資金の中から金を貸すことにしようというような
一つの案であったわけでございます。大体それは当初としては一億
程度ということを
考えておりました。その
技術審議会と申しますのは、資料二の初めのページにありますように、米国対日援助見返り
資金の融資計画をやるためにと書いてございますが、総理府に
産業技術審議会というものを置きまして、
技術の審査をする。これは会長はスタックの副会長であります国務大臣、
委員は
関係各省次官とかあるいは
技術的な判断にたんのうな学識経験者の方々をお集めになったわけでございますが、そういうところで
技術的に十分成功するかどうかということを審査をして、それを見返り
資金の方に持っていこうという
構想でございます。それでこういう閣議決定を得たわけでございますが、先ほど申し上げましたように、見返り
資金というものはいろいろ変りまして、
日本開発銀行がこういった
産業開発の銀行として設立されたわけでございます。そこで
開発銀行がそれを取り扱うということになりまして、
産業技術審議会の選考いたしましたものは各省、もちろん安定本部も入りまして相談をして、それを
開発銀行の方に推薦をいたしたわけでございます。
開発銀行といたしましては、
技術的な裏づけはその方でやってもらいますので、
あとは
会社の信用
状態の方を十分調査いたしまして、その方もよろしいということになりますれば融資に相なったわけでございます。どの
程度のものがあがりましたかと申しますと、これは資料三にございますが、
最初に二十六年の四月にそういう審査を始めたわけでございますが、各省で五十四件受けつけまして、各省でもいろいろふるいをかけまして、審議会に十六件参りました。そのうち審議会としては八件を採択しまして、それを
開発銀行の方に申し入れましたところが、二億五千二百三十万円という金が融資されたわけでございます。第二回は一億八千五百万円、第三回はかなりふえて参りまして五億一千万円、こういうふうにずっと順調に参ったわけでございます。ところが昨年度になりまして
開発銀行の金が非常に乏しくなったと申しますか、デフレの影響も受けたのでございましょうが、
開発銀行に対します回収
資金が非常に乏しくなりましたので、その金繰りが非常に苦しくなったということで、
産業技術審議会から推薦いたしましたものについたはきわめて微々たる金額しか融資を受けなかったのでございます。そういうことでありまして、第五回の融
資金額は五千百万円ということになっております。それでわれわれといたしましては、ただいま
経済審議庁と話し合っているのでございますが、三十年度には少くとももう少ししっかりしたワクにおいてこれを一応のめどをつけて、
開発銀行の融資のワクを一応作ってもらいたいということを申し入れているわけでございます。
経済審議庁としても相当好意的なお
考えのようでありますが、まだ具体的にどれだけ貸せるかということはきまっておりません。それで今まで融資を受けましたものを合計いたしますと、四十二件ございまして、十二億の融資ができております。その題目の一例を申しますと、資料三にこまかく書いてございますが、たとえば第一回の西
日本重工の大型舶用ツー・サイクル・ジーゼル・エンジンの問題、これなども
研究は非常に時間がかかるものでございますが、きわめて優秀なエンジンができまして、最近それの試運転をいたしまして、各
方面に披露いたしたようでございますが、これはジーゼル・エンジンといたしましても非常に画期的なものでありまして、スイスのズルツァー等においても非常に注目をしておるというような成果をおさめております。その他いろいろございますけれども、こういったことで金額はきわめて少かったのでございますけれども、融資を受けましたものはそれぞれ相当な成果を上げておるという状況でございます。
簡単でございますが、以上御
説明申し上げます。