○
齋藤小
委員 私の御質問申し上げた
趣旨が少し不徹底のようでございますから、蛇足でございますがはっきりさしておきたいと思うのであります。
アメリカと
トルコの
双務協定は、初めから、
原子力の非
軍事的利用に関するという項目がうたってあるのであります。また第七条には、
原子兵器に関する
研究もしくはその
発達または他の
軍事目的のために使用されないこと、並びにその資材が権限を与えられていないものまたは
トルコ共和国政府の
管轄権外に移管されないことというふうな
条項が規定されておるのであります。同時に今度はその第十条に、この
実験用原子炉というものは
——この中には
動力発生用原子炉、
試験的動力発生用原子炉または
特殊核分裂物質の生産を第一次の
目的として設計された
原子炉は含まれない。どういうものかというと、これは
一般的研究及び
発達の
目的、
医学的治療または
核分裂に関する
科学及び
技術の訓練のために、
中性子及びその他の
放射性物質を生産するために設計された
原子炉だというのです。ですから今度の
濃縮ウラニウムというものは、全く
一般に
考えられておるところの
原子力発電とは
関係ないのです。ただ
中性子とか
医療とか、そういう
科学用の
実験のために、わずか二〇%の濃縮せられた
ウラニウム二三五を六キログラムやる、こういうのです。それでこれを
日本に貸与しておいて、そしてだんだん
研究が進んで、
日本が
動力用の
原子炉を作り得るような時代になったならば、
アメリカともう一ぺん
相談してくれぬかというのが第九条なんです。この第九条を読んでみると、何も
拘束力はないのです。だから
英文にも、ちゃんとそのことが書いてある。ここに、ホープという字とエクスペクテーションという字が使ってある。将来発展していったならば、
原子炉を作るときに
相談をすることを希望するということである。何らの
拘束力もない。
原子炉の問題じゃない、将来のことを言うておるのであります。それでありますから、この
濃縮ウラニウムを持ってきていろいろな
研究をやる。
日本でもそのうちに
天然ウラニウムや重水を使用する
増殖炉というものができたならば、こんなものは不要になってしまう。
私がのっけから申しておりますように、われわれの観念というものは、軍事的に
原子力を使おうというのじゃない、
平和利用のために使おうということなんです。平和のために使おうという
原子力が、
日本の力でどうしてもできない。
日本で作ろうと思っているうちにどんどん
日本の
大勢がおくれてしまって、
世界の進運から落伍する。こういうことなら、いやでもおうでも他国の力を借りなければならないときもあると私は思う。それがいやだというならば、われわれは
劣等国になって滅亡するということしか
考えられないのであります。でありますから、この
拘束力のないところの第九条におびえて、いかにもこれによって将来
ひもつきが行われるようなことを
考えるのも、私はある
一つの行き過ぎじゃないかと思います。
藤岡博士は、どういう
考えをもってこういうことを言われたかわかりませんが、ひょっと
考えて、これは大きな
ひもつきじゃないかしら、だからこの
責任がおれのところに来ると困るから
注意をしてくれと言われたのかもしれません。それで私もいろいろ調べてみると、何ら
拘束力はない。
外務省へ行って、
外務省の
専門家にいろいろ解読してもらったら、何も取り立てて
拘束力を有するものではない、こういうことである。今の
実験用原子炉を作る、
濃縮ウラニウムを貸与するということからいけば、将来もしこれが実を結んで、
日本で大きな
原子力発電を作るときには、
アメリカに向って
協力を求めてくることを望むということは当然のことじゃないか、こんなものは何も
ひもつきではないよということであったのでありますが、私は今この結論を得ようとするのではありません。しかし実際問題として、
ひもつきだ、
ひもつきだ、将来大きな支障が来るのではないかというようなことで、いわゆる
濃縮ウラニウムというものの
実体がわからぬために、疑心暗鬼を生じて、ちょっとしたものでも、これは
ひもつきじゃないかというようなことは、私はもう少し
研究をしてから
態度を決定した方がいいのではないかと思う。大体
濃縮ウラニウムというものはそういうものではないと思っておるのですけれども、この間も
千谷博士に聞いたのですが、これだけの、
国会くらいの大きさの二%ないし二〇%の
濃縮ウラニウムを持ってきて、一発の爆弾ができるかと言ったら、できないと言うのです。だから
濃縮ウラニウムの
実体というものを見ていくと、われわれの
考えているところの
濃縮ウラニウム論というものは、風声鶴唳に類するものではないか。そういうものではない、もうポピュラライズされたところの商品ではないかと私は思う。ですから、そういうことのために、何も
ひもつきだ、
ひもつきだと騒ぐ必要は
一つもないのじゃないかとも
考えられるのでありますから、どうか
一つ当局におかれましては、十分に急速に
専門家の
意見を広く求められまして、この
協定文も十分に検討を加えていただくと同時に、ただいまここで
決議になりました
日本の
科学技術というものを
——いわゆる
科学技術の高度の
行政力というものがないからこういうことになってくるのだろうと思うのです。
一体藤岡博士という人は何を
専門にやられたのか知らぬけれども、ある人から見ると、あれは
ほんとうの
原子核の
研究をやったのじゃないから、
ほんとうの
原子核というものはわからないのだと言う人もある。私らはよくわからぬ。ですから一体だれの説を信頼していいか、われわれにはわからない。ある人に言うと、何を言ってる、
濃縮ウラニウムに関するあんな
記事というものは、五十行もあればいいのだ、それ以上の
記事は、あれは
日本の
科学技術のレベルが低いということを
世界に証明しておるところの
国辱的記事だ、こう言う者さえあるのです。ですから、
駒形院長も
院長として
責任があまり重いものだから、徹底したことは言えない。結局
科学技術行政の徹底した
——いわゆる
国家のすべての問題を
最高度から決定するところの
科学技術行政というものがないから、こういうことになってしまうと私は思う。てんでんばらばらです。迷うのは、
国民だけでなく、
国民の選良たるわれわれも迷わなければならない。まことに不幸この上ないと思うのでありますから、特に
一つ、こういう
事態に直面したのでございますから、本日の
決議を御尊重下さいまして、さっそく
科学技術庁新設に対する
当局の御決意を固められるように
一つお願いをしておきたいと思うのであります。