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1955-05-31 第22回国会 衆議院 商工委員会科学技術振興に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月三十一日(火曜日)     午後二時四十二分開議  出席小委員    小委員長 前田 正男君       小笠 公韶君    齋藤 憲三君       長谷川四郎君    堀川 恭平君       神田  博君    小平 久雄君       櫻井 奎夫君    中崎  敏君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         工業技術院長  駒形 作次君  小委員外出席者         議     員 阿佐美廣治君         議     員 片島  港君         議     員 田中 武夫君         総理府事務官         (科学技術行政         協議会事務局総         務課長)    阿部 武夫君         通商産業事務官         (工業技術院調         整部長)    讃岐 喜八君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力平和利用に関する件  科学技術に関する予算及び行政機構に関する件     —————————————
  2. 前田正男

    前田(正)小委員長 これより会議を開きます。  この際申し上げますが、小委員外商工委員方々の御発言は、随時これを許したいと存じますので御了承願います。  科学技術行政機構に関し調査を進めます。この際神田博君より発言を求められておりますのでこれを許します。神田博君。
  3. 神田博

    神田(博)小委員 ただいま委員長お話もございましたように、私はこの際科学技術庁設置に関する決議案を提出いたしまして、満場の委員方々の御賛成をお願いいたしたいのでございます。  申し上げるまでもなく、近時原子力の発明に伴いまして、科学技術におけるところの諸般の施策を高度に打ち立てなければならないというような情勢であることは、申すまでもないことと存じております。しかるにわが国の科学技術情勢を見ますと、どうも複雑多岐にわたっておりまして、その成果を上げることがきわめて困難な情勢のように考えておりますので、この際これを強力なものにいたしたい、一つにまとめて十分成果を上げるようにいたしたい、こういう趣旨考えまして、ここに科学技術庁設置に関する決議案を提案する次第でございます。  朗読いたします。    科学技術庁設置に関する決議案原子力平和的利用を推進し、科学技術飛躍的発展を期するため、原子力統轄機構を含む科学技術行政全般総合調整と刷新の目的をもって、この際総理府科学技術庁を設置することを要望する。   右決議する。  以上の通りでございます。どうかこの決議案につきましては一つ各党あげて、満場の賛成をお願いいたしたい。以上提案いたします。
  4. 前田正男

    前田(正)小委員長 ただいまの神田君の動議のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 前田正男

    前田(正)小委員長 御異議ないものと認め、以上の趣旨を小委員会全会一致意見として、次回の商工委員会に小委員長から中間報告することとし、委員会においてただいまのごとき決議を行うよう申し入れることにいたしたいと存じます。  この際この問題について通商産業大臣から発言があります。
  6. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御趣旨は非常にけっこうでありまして、私個人としては賛成でございます。ただこれをどういうふうに政府が取り扱うかは、本日ただ通産大臣一人ではお答えいたしかねますから、御趣旨を十分尊重して、政府においてしかるべく取り計らうということだけを申し上げてごあいさつといたします。どうもありがとうございました。
  7. 前田正男

    前田(正)小委員長 それでは次に原子力平和利用に関し調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。齋藤憲三君。
  8. 齋藤憲三

    齋藤委員 きょうの朝日新聞でございますが、ウラン受け入れ交渉につきまして「日本側修正案訓令」と原子力発電にも米国の規制を受けるのではないか、こういう記事が載っておったのであります。そこで積極的にこの濃縮ウラン受け入れた方がいいと主張しておった藤岡博士も、その見出しは「不明を恥じる」こういうことで、これは原子力問題に関して今大きな話題を投げておる濃縮ウラン受け入れに対して、何か少し出過ぎたような今までの態勢ではないか、もっと慎重にこれをやらなければいかぬのじゃないかというふうな全体の記事に見えるのであります。ところが私の考え方からいたしますと、この問題になっておりまする原子力のいわゆる濃縮ウラン受け入れに関するアメリカトルコ共和国との協力のための協定という問題になっております第九条を英語で書きました原文と、訳しておりまする日本語とを対比してみますると、協定全文を通読すると、これは当然こう書くのが当りまえで、これはもし書かないとすれば非常にふしぎな協力協定。しかしこれは単に今やりますところの実験炉は決して電力を出すための実験炉でなくして、ただ医療とかその他のほんとう実験のための濃縮ウラニウム受け入れであって、これが医療とか、その他農業または原子炉というものをどうして作るかというようなことのために研究として必要なのであって、もしそういう研究が将来実を結んで原子力発電ほんとうにやろうとするときには、アメリカから援助を受けるということを望みたい、そういう希望を持っておるという第九条の条約のように解釈されるのでありまして、この朝日新聞記事というものは私にとりましては真意を捕捉することのできない記事なんです。決して従来の態度日本政府としてくずす必要はない。濃縮ウラン受け入れるその受け入れ方法等に対してはこれから交渉する。もしも真にこの新聞にあります通り、第九条が将来アメリカによって全部拘束されるおそれのあるものであったら、そういうことを是正していけばいいのであって、決して私は濃縮ウラン受け入れ交渉に対して早まったという感じはないのでありますが、通産大臣としてはどうお考えになっておられますか。
  9. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私もけさその新聞を見まして驚きましたが、そういう事実があったことを聞いておりません。ただ、この間駒形技術院長が来まして、今度の交渉についての相談をしました。そのときに——私は英文を見ませんが、日本訳されたトルコとの協定文なるものを持ってきて私に見せまして、卒読しましたが、今の九条のところにきて、将来なお協力する可能性を検討するとかなんとか書いてあるのですから、文章の上からいえば何も差しつかえはないように思うけれども、しかしながら今までいろいろ例があって、どうも私ははっきり記憶しておらないけれども、最初アメリカとの話し合いは非常に簡単であるように思ったものが、あとになってだんだんむずかしい条件が出てきた例が今までもあるように思うから、やはりよほど気をつけてもらわなければ困る。ことにもし秘密協定などでもあるようだったら、あとでやっかいなことになるから十分気をつけてもらいたい、第九条については、そういう意味で一つぜひ検討してもらいたいと言うておきました。駒形さんの言うのでは、実はいっそのこと第九条を削除しようかというように自分たち考えておるということも言っておりましたから——きょうも参議院の予算審議会でだいぶやっておるのですが、その点については御心配になるようなことにはならないと私は確信しております。しかしなお十分注意してやっていきたい。ただ齋藤君のお話のように、濃縮ウランを入れることは日本研究の促進には非常に役立つことですから、あとひもつきとかなんとかいうことさえなければ、これを受け入れ態度政府としては変えるつもりはございません。
  10. 中崎敏

    中崎委員 関連して。今大臣答弁によりますと、何か後日ひもつきがなければというお話のようでしたが、ひもつきがあるかもしれぬということに非常な濃厚な懸念が出てきた。そこで藤岡博士も、軽率にそういうことがないものだと信じ切っておったために賛成しておったのだけれども、この協定内容等を見て、そういう懸念現実に濃厚になってきた、だから自分としては不明を謝するのだということをはっきり言うておられる。政府の方では交渉を前進させるために、そうしたような方針訓令をすでにしておるということを聞いておる。そうすると、これは今大臣も言われるように、ひもつきでないとすればいい。しかしひもつきであるという懸念が九九%も濃厚に出てきておる。従前の幾多の例から見ても、そういうふうな心配もあり得るということを大臣も今心配しておられる。そういう現実に対して一体どういう処置をとられようとするか、言いかえれば、ひもつきでないような考え方の上に立って訓令はやっておられるのではないかと思う。それが現実ひもつきが多分に心配されるような事態になってきて、その訓令を取り消すとか変更するということを直ちにせられるような考えがあるのかどうか、これをお聞きしておきたいと思います。
  11. 石橋湛山

    石橋国務大臣 訓令外務省が出したのですから、私はどんなものが出ているか知りません。それから協議もどこでするのか、実は私はよく知らないのです。私は東京でやっておるのではないかと思っておった。現にそういうわけですから、私としては交渉の現在の状況を知りませんから、はっきりしたお答えはできませんが、しかし私の関する限りにおいては、これは絶対にいわゆるひもつきになるような条項ではいけない、それから急いで六月一日とか何とか、それまでにやりたいという話もあるそうでありますが、何もそれは——それがおくれれば研究が一年おくれるというような不利益はあるかもしれぬが、しかしながらあと懸念があるような憂いが少しでもあるならば、何も急いでやる必要はないので、一年間延ばしても差しつかえないということを、とにかく通産省関係限りにおいては私は申しておるわけであります。ちょうど専門家が来ましたから、その専門家に……。
  12. 中崎敏

    中崎委員 通産省関係においては、そういうふうにしておられるというが、これは重要な問題でありまして、閣議決定等によって扱われてきた問題だと思う。その決定された方針に従って外務大臣が事務的な処理をする、大体そういう方向であると思うわけです。そこで私たちはかねがねこの問題については実は非常に心配しておった。ところが政府の方でも非常に積極的に熱意を持っておられる。あるいは学者間においても反対は依然として強かった、ようでありますけれども、大勢においては賛成に傾いておる。そうした一番熱心にそういうことを唱えておる藤岡博士が、誤まっておったというようなことが現実に出てきたということになれば、もう一度再検討しなければならぬ重大な問題になってくるのではないか。私どもも濃縮ウランをそのまま技術的指導を受けて受け入れてやることは、いかにも研究の上には早道であるということはわかる。ところが日本においてはそのほかの方法等によってもある程度研究が進められてきておると思うのでありますが、必ずしもこの濃縮ウランのみによらなくともいける道はあるということは私ども了解しておるのであります。そうすると、この際そうしたようなひもつきがあって、将来国家的独立の上においてもあるいは国家産業の上においても大きな制約を受けるようなおそれがあるというふうな事態に立ち至ることが、特に強く心配されるようなことになれば、もう一度再検討するような考え方はないか。あるいは閣議でも招集して、もう一度その点を重要問題として取り扱うような考え方はないかどうかをお聞きしておきたいのであります。
  13. 石橋湛山

    石橋国務大臣 実はきょうそういう御説を伺っていささか驚いておるのでありますが、われわれの知っておる限りにおいては、特に非常なひもつきになることが懸念されるような新たな事実が現われてきたということは知らないのであります。ですから前の方針通り注意をしつつ協定をするということに変りはないのでありますが、しかしそういうふうに問題が諸方で論議されるようになりましたならば、あらためて一つ検討するということはいたそうと思います。
  14. 中崎敏

    中崎委員 先ほどの大臣のお言葉によると、そうした事態が起れば必ずしも急ぐ必要はない。まあ七月半ばのアメリカ国会の一応終るのを目標にして妥結を急ぐというような方面に今訓令が出されておるのではないかと思うのですが、その問題については、大臣は重要である場合においては、さらに一年間延ばして来年の次の何に間に合うようにでも考えることもあり得る、そういうお考え変りはありませんか。もしそうであるとすれば、そうした考え方の上に立って閣議などにおいても十分に御主張願って、慎重に見通しをつけて、これなら国民的に、また国家的に安心がいけるんだという見通しの上に立って、適宜の措置を講ぜられることを要望しておきたいと思いますが、もう一度この点について大臣答弁を要求しておきたいと思います。
  15. 石橋湛山

    石橋国務大臣 最初から申し上げますように、われわれは始まりから、いわゆるひもつきという簡単な言葉で表わしておるような、将来の日本研究等拘束を受けるような条件は絶対にいけない、もしそういうことであるならば濃縮ウランも残念ながらお断わりしよう。それからもしその話し合いが至急にまとまらなくて、濃縮ウラン受け入れ研究するということが一年間おくれても、これは万やむを得ないという態度をとっておるのでありますから、お説の通り今後においても十分注意をして、決して皆さんに御心配をかけるようなことはいたさないということをはっきり申し上げておきます。
  16. 中崎敏

    中崎委員 イギリスの方からも濃縮ウラン受け入れに関する何らかの用意があるように伝えられておるようですが、この点について何らかの交渉をするような努力をされたのかどうか。またそういうような考え方があるかどうか。いろいろな条件等を比較検討してみて、そうしてこれがほんとう日本国家として最もいい方法であるというふうな努力をされたかどうかお聞きしておきたい。
  17. 石橋湛山

    石橋国務大臣 英国等からそういう申し出を受けたことは絶対にございません。
  18. 長谷川四郎

    長谷川(四)小委員 今日これだけの研究をするのに、毎年アメリカ予算だけで邦貨換算一兆五百億という莫大な金を使って研究をしているのであって、無条件というか、何ものもなく日本にこれを使用させようなどという考え方は、私はおそらくあり得ないことだと思います。どんな小さいものでも、一つパテント料を払うには、どれくらいの金額を日本から払っているかという、この一例をとってもわからなければならない。ただここへわれわれがこの濃縮ウランを持ってきて、さらにこれを再製しようとか何とかいう考え方でなくて、その濃縮ウランを国内で研究をし、さらに科学をより高度に持っていこうという考え方だけなら、そういうひもつきといっても程度の問題であって、その程度によってはわれわれは考慮をすべきであろうと私は考えます。一つのどんな小さいひもでもついたら一切をお断わりするというような考え方であってはならないと私は考えるが、その点は大臣はどうでございましょう。
  19. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その点は先ほども申し上げますように、よほど慎重に考慮しないと、小さなことがあとになってなかなかめんどうな問題になる例もしばしばございますから、これはもう協定をする当事者に十分注意をしてもらうように申してあるのであります。
  20. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の御質問申し上げた趣旨が少し不徹底のようでございますから、蛇足でございますがはっきりさしておきたいと思うのであります。アメリカトルコ双務協定は、初めから、原子力の非軍事的利用に関するという項目がうたってあるのであります。また第七条には、原子兵器に関する研究もしくはその発達または他の軍事目的のために使用されないこと、並びにその資材が権限を与えられていないものまたはトルコ共和国政府管轄権外に移管されないことというふうな条項が規定されておるのであります。同時に今度はその第十条に、この実験用原子炉というものは——この中には動力発生用原子炉試験的動力発生用原子炉または特殊核分裂物質の生産を第一次の目的として設計された原子炉は含まれない。どういうものかというと、これは一般的研究及び発達目的医学的治療または核分裂に関する科学及び技術の訓練のために、中性子及びその他の放射性物質を生産するために設計された原子炉だというのです。ですから今度の濃縮ウラニウムというものは、全く一般考えられておるところの原子力発電とは関係ないのです。ただ中性子とか医療とか、そういう科学用実験のために、わずか二〇%の濃縮せられたウラニウム二三五を六キログラムやる、こういうのです。それでこれを日本に貸与しておいて、そしてだんだん研究が進んで、日本動力用原子炉を作り得るような時代になったならば、アメリカともう一ぺん相談してくれぬかというのが第九条なんです。この第九条を読んでみると、何も拘束力はないのです。だから英文にも、ちゃんとそのことが書いてある。ここに、ホープという字とエクスペクテーションという字が使ってある。将来発展していったならば、原子炉を作るときに相談をすることを希望するということである。何らの拘束力もない。原子炉の問題じゃない、将来のことを言うておるのであります。それでありますから、この濃縮ウラニウムを持ってきていろいろな研究をやる。日本でもそのうちに天然ウラニウムや重水を使用する増殖炉というものができたならば、こんなものは不要になってしまう。  私がのっけから申しておりますように、われわれの観念というものは、軍事的に原子力を使おうというのじゃない、平和利用のために使おうということなんです。平和のために使おうという原子力が、日本の力でどうしてもできない。日本で作ろうと思っているうちにどんどん日本大勢がおくれてしまって、世界の進運から落伍する。こういうことなら、いやでもおうでも他国の力を借りなければならないときもあると私は思う。それがいやだというならば、われわれは劣等国になって滅亡するということしか考えられないのであります。でありますから、この拘束力のないところの第九条におびえて、いかにもこれによって将来ひもつきが行われるようなことを考えるのも、私はある一つの行き過ぎじゃないかと思います。  藤岡博士は、どういう考えをもってこういうことを言われたかわかりませんが、ひょっと考えて、これは大きなひもつきじゃないかしら、だからこの責任がおれのところに来ると困るから注意をしてくれと言われたのかもしれません。それで私もいろいろ調べてみると、何ら拘束力はない。外務省へ行って、外務省専門家にいろいろ解読してもらったら、何も取り立てて拘束力を有するものではない、こういうことである。今の実験用原子炉を作る、濃縮ウラニウムを貸与するということからいけば、将来もしこれが実を結んで、日本で大きな原子力発電を作るときには、アメリカに向って協力を求めてくることを望むということは当然のことじゃないか、こんなものは何もひもつきではないよということであったのでありますが、私は今この結論を得ようとするのではありません。しかし実際問題として、ひもつきだ、ひもつきだ、将来大きな支障が来るのではないかというようなことで、いわゆる濃縮ウラニウムというものの実体がわからぬために、疑心暗鬼を生じて、ちょっとしたものでも、これはひもつきじゃないかというようなことは、私はもう少し研究をしてから態度を決定した方がいいのではないかと思う。大体濃縮ウラニウムというものはそういうものではないと思っておるのですけれども、この間も千谷博士に聞いたのですが、これだけの、国会くらいの大きさの二%ないし二〇%の濃縮ウラニウムを持ってきて、一発の爆弾ができるかと言ったら、できないと言うのです。だから濃縮ウラニウム実体というものを見ていくと、われわれの考えているところの濃縮ウラニウム論というものは、風声鶴唳に類するものではないか。そういうものではない、もうポピュラライズされたところの商品ではないかと私は思う。ですから、そういうことのために、何もひもつきだ、ひもつきだと騒ぐ必要は一つもないのじゃないかとも考えられるのでありますから、どうか一つ当局におかれましては、十分に急速に専門家意見を広く求められまして、この協定文も十分に検討を加えていただくと同時に、ただいまここで決議になりました日本科学技術というものを——いわゆる科学技術の高度の行政力というものがないからこういうことになってくるのだろうと思うのです。一体藤岡博士という人は何を専門にやられたのか知らぬけれども、ある人から見ると、あれはほんとう原子核研究をやったのじゃないから、ほんとう原子核というものはわからないのだと言う人もある。私らはよくわからぬ。ですから一体だれの説を信頼していいか、われわれにはわからない。ある人に言うと、何を言ってる、濃縮ウラニウムに関するあんな記事というものは、五十行もあればいいのだ、それ以上の記事は、あれは日本科学技術のレベルが低いということを世界に証明しておるところの国辱的記事だ、こう言う者さえあるのです。ですから、駒形院長院長として責任があまり重いものだから、徹底したことは言えない。結局科学技術行政の徹底した——いわゆる国家のすべての問題を最高度から決定するところの科学技術行政というものがないから、こういうことになってしまうと私は思う。てんでんばらばらです。迷うのは、国民だけでなく、国民の選良たるわれわれも迷わなければならない。まことに不幸この上ないと思うのでありますから、特に一つ、こういう事態に直面したのでございますから、本日の決議を御尊重下さいまして、さっそく科学技術庁新設に対する当局の御決意を固められるように一つお願いをしておきたいと思うのであります。
  21. 前田正男

    前田(正)小委員長 それで何か具体的に政府委員の方に質問がありますか。
  22. 中崎敏

    中崎委員 引続いて質問いたしますが、駒形院長は、かつてというか、最近の例でありますが、濃縮ウラン受け入れの問題については、学者間にもいろいろ意見があるので、それらの意見が一応まとまるといいますか、そうした見通しがつくまで、一つ時をかしてほしいといいますか、慎重にやってほしいというような考え方を持っておられたように思うのでありますが、現実としては、政府の方ではすでにそういう方針を決定して、アメリカの方で取り急ぎ交渉を進めて早急に妥結するような方向へ進んでおるというやさきに、問題になっておる藤岡博士意見が出たようでありますが、一応藤岡博士はどの程度の権威を持っておるかいないかは別として、少くともこの原子力の問題については一応の関心は持って、相当の立場において研究を進めてこられたこと、また調査せられてこられたことは事実のようであります。  そこでまず第一にお伺いしたいことは、今藤岡博士のそうした新しい心境といいますか、言明といいますか知りませんが、それについてどういうふうにお考えになっておるか。そうして学者間においては駒形院長がかつて言われたように、完全に意見か一致した上において、政府に対してそうした立場から進言されたものであるのかどうか、そこをお聞きしたい。
  23. 駒形作次

    駒形政府委員 今までの藤岡氏の発言と、新聞に書いてありました記事ということにつきましては、これは藤岡個人考えだろうと私は思います。アメリカとの交渉は目下話し合い中でございますので、向うとの話し合いがどんな工合に進んでいくかということによりましてわれわれは判断していかなければならないと考えるところであります。こうだろうか、ああだろうかと言って、ただ想像だけしておりますのでは何にもならないと私は考えております。先ほど齋藤先生からお話がありました点、ごもっともだと私は思うのでございまして、今度の濃縮ウランで作られる原子炉一般研究用でございます。トルコとの協定の第九条は将来のことがそこに述べられているということでございます。それはひもつきにならないという見解もありますし、ひもになるということを藤岡氏は考えたのかもしれません。これもやはりその点は十分話し合ってみないことには、結局わからぬと私は思います。目下ワシントンで話し合いが進められておるのでありますから、その点は話し合いの結果を待ってみるべきで、その大体の考え方といたしましては、私は齋藤先生からお話がありましたことでいいのじゃないか、そういうふうに考えております。
  24. 中崎敏

    中崎委員 話し合ってみなければわからぬし、話し合ってみる、これは私たち異議がないのです。ただ漫然と行って話し合ってみるというだけではないでしょう。一つ方針を立てて大体この線に沿っていこうじゃないかというふうな方向がきめられて進められておるに違いない。そうしてまた向うで話を進める過程においてどの程度の権限が与えられておるか。たとえばトルコアメリカ協定、あの程度の内容のものならばもう一応一任されたのかどうか、さらにまた駒形院長は、あの協定は将来のものである、将来に対する希望、期待というふうなものである、従ってそういうものである限りにおいては差しつかえないのかどうか。要するにあれに類するような程度協定であるならば受け入れてもいいとお考えになるのかどうか、それをお聞きしたい。
  25. 駒形作次

    駒形政府委員 あの程度協定ならばとおっしゃいますけれども、それは向うと第九条の点につきましてまた問い合わせてみなければわからぬ。私はこういうことを申し上げておるのでありまして、大体の考え方は、あの程度ならばいいのではないかと私は思っております。
  26. 中崎敏

    中崎委員 この点につきましては、先ほど石橋通産大臣も言われたのでありますが、かつての苦い経験と、われわれ国民から見ればそう言いたくなるのでありますが、苦い経験から見れば、初めはそれほどに思っていなかったのだ。ところが将来のことだといってそのときがきてみたならばひどい目にあった——と言うのは言い過ぎかもしれませんが、思わざるところの困難な問題にぶつかって困っておる場合がしばしばというか、往々にしてあるというか、まああるのだ。この場合においても九条は将来の問題だと院長は言われるのでありますが、それかもしなかなか容易ならぬ問題であるということになるならば、そのときには一体どういうふうな責任をもってこたえようとされるのであるか。先ほど長谷川君が言ったのでありますが、アメリカが何兆ドルかけたか知りませんが、とにかくそれだけ非常に重大視して莫大な犠牲と努力とを払って、人類史上未曾有の大きな発明がされたと思うのでありますが、それについてどんどん急いでやれやれ、ちょうどアメリカ日本に再軍備をどんどんやれと押しつけたとほぼ同じようなことではないかという印象を、私たちは政治的感覚の上に立って持っておるのであります。もしそうであるとするならば、やはり今度は経済的にも軍事的にも大きく押えつけられるのではないか。来たるべき文化、文明というものはこの原子力を中心にやられるという場合に、そんな大きなひもつきが思わざるところにあったということになれば、簡単にこの問題を扱っていいものかどうか、そこがお聞きしたいのであります。
  27. 駒形作次

    駒形政府委員 大臣お話になりましたように、私どもの方は非常に慎重にやるということにいたしておるのでありまして、その話し合いいかんによりまして、それが今年度に間に合わなくてもいたし方ない、こういうふうに考えておるのであります。でございますから、先ほどの第九条はどういう工合に考えるかとおっしゃれば、その点は大いに慎重に話し合いを進めて、そこで判断をしなければいけない。私はこういうことを申し上げるのであります。
  28. 中崎敏

    中崎委員 これは私の印象、感じでありますが、駒形院長は割合最近まではやや慎重論であった。ところが閣議決定の直前であるか知りませんが、そこらを中心にしてやはり政府の今決定したような方針の線にやや沿うておられる。ところが今の言葉によるとやはり本年七月に間に合わぬでもいいのだというふうにお考えになっているのではないかと思うのでございますが、その間の心境といいますか、お考え一つお聞きしておきたいのであります。そしてまたほんとうに今最後に言われるように、もう一年遅れてもやむを得ないというふうにお考えになれば、そういうお考え政府の方に対して責任を持って出されるお考えがあるかどうか、それをお聞きしておきたいと思うのであります。
  29. 駒形作次

    駒形政府委員 私は要するに今度の協定を十分検討して、そこに適当なものであるというふうに判断がつくならば、ということはすなわち話し合いを十分して、そこでそういう判断のつくどきに協定を結べばいいのでありまして、期日のことにつきましては早ければけっこうでありますし、それがいろいろなことでできないということであるならば、それは一年延びてもいたし方ない、私はこういうふうに考えておるのであります。私の心境と申しますれば今申し上げたふうになると思います。
  30. 前田正男

    前田(正)小委員長 ほかに質問はないですか。——ほかに御質疑がなければ、本日の会議はこの程度にとどめます。次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時十七分散会