○前田(正)
委員 この際石橋
通産大臣及び高碕経審長官に
質問をいたしたいと思うのであります。この
科学技術行政及び原子力の問題につきまして、過日この商工
委員会におきまして全会一致をもって決議をいたしまして、両大臣からその決議には
賛成であるという
趣旨の御答弁をいただいたのであります。従いまして私たちは
政府がこの原子力の問題、
科学技術行政の問題について御
提案になるものと思って待っておったのでありますけれども、いずれにしても一向に御
提案の御様子がないようであります。そればかりではありません、過日小
委員会におきまして実は通産省の官房長の
意見を求めましたところが、われわれの小
委員会の決議にはあまり
賛成しないで、経済審議庁と一緒に
科学技術をやったらいいのだ、こういうことを申されました。われわれといたしましては、事務当局の
意見でありますけれども、はなはだ不本意であります。そこで過日私は小
委員会におきましてこの決議案の
趣旨に基くところの
法律要綱を作成いたしまして、各
委員のお手元にお配りをいたしたのであります。さらにその要綱に基きまして、ただいまお配りいたしましたような、
法律案の要綱及び原子力平和利用審議会設置法案の原案とを作りまして、これを衆議院法制局と相談いたしまして、こういうような法案の準備をいたしたわけであります。この法案につきましては、私どもの方の自由党におきましては、政務調査会に諮りましたところ、この内容については全員
賛成でありまして、商工
関係及び行政部門においても
賛成であります。またわれわれの方から
提案するならば内閣
委員会においても迅速にこの問題を処理しようという協力的な申し出もあるわけであります。しかしながらわが党におきましては、こういう
科学技術の新しい役所を作るというのは極力
政府が
提案すべきものではないか、こういうような話がありますので、私はこの際緊急
質問をいたしまして、
政府でこの法案は提出するお考えがあるかどうかということを聞きまして、
政府がこれを提出するお考えがないならば、私はあらためて議員提出をいたさなければならぬというような重大な決意をしなければならぬと思うのであります。そこでこの際両大臣から
政府の誠意ある答弁をお願いしたいと思うのであります。まず
科学技術行政につきまして問題になるところは、何と申しましても一部
政府の事務官僚が考えておりますような経済と科学をつなごうというような考えでは、私は
日本の
科学技術の行政を確立することができないと思うのであります。私たちの
日本で一番、また世界的にもすぐれておると思われることは、応用の問題ではなくて基礎研究の問題であります。基礎科学の方は世界的にも相当有力な地位を持っております。しかしながらそれが応用ができないために、たとえばレーダーの点等を申しましてもおわかりの通り、
日本で学問的に考えられましたものが、よその国において実用化されて、しかもわが国の敗戦の
一つの原因になったというような実例まであるのであります。従いまして私たちは
日本の発展のためには学問と科学とをいかに結ぶかということが重要な問題である、こう考えておるのであります。従いまして
政府の役人が考えておるような経済と科学を結ぶということはそう重大な問題ではないと考えておるのであります。そこでこの学問をいかに
科学技術と結びつけるかということについては、ぜひとも総理府の外局といたしまして、総合
調整するような
科学技術庁というものを設けなければできないと思うのであります。また私どもは経済審議庁の人たちにもいろいろお話を伺っておりますけれども、現在の学術
会議、
科学技術行政協議会その他の問題をそのままにいたしまして、経済審議庁とこれをくっつけて——今度経済企画庁と名前が改められます官庁が果して十分にこの問題を処置していけるかというと、私はできないと思うのであります。やはり私は、これらの学問と
科学技術をいかに結びつけるかという問題を解決しないで、
日本の
科学技術の行政というものはあり得ないと思うのであります。
次に大きな問題といたしましては原子力の問題でございます。この原子力の問題につきましては、かねてから学者その他各方面におきまして、当然これを統括する機構を作るのが
ほんとうではないかということを考えておるのであります。また
政府もこの統括機構を早く作りたいということを申しておられたのであります。高橋大臣はまだ御
出席になりませんけれども、そういうことをたびたび明確に申されておる。ところがこの統括機構ができる前に、御
承知の通り原子力の濃縮ウランを受け入れるところの仮条約を結ばれた、ところがそれが新聞に出ておりますように、その条約には誤訳があったということで騒いでおるのであります。これはなぜかと申しますと、
政府の責任あるところの行政官庁に原子力の審議をする機関というものがないのであります。いわゆる閣議決定の利用準備会というようなものがあるにすぎない。私はこれではこういうような誤訳問題が起ってくると思うのであります。さらに最近におきましては、高碕大臣の言といたしまして、財団法人の原子力研究所を作るというようなお話が出ておりますが、原子力研究所を作ることは私たちも
賛成でありますが、この問題についてもまた問題点が別にあるわけであります。すなわち濃縮ウランを受け入れられましても、その濃縮ウランに使うところの炉とか濃縮ウラン受け入れのための予算というものが現在ありません。現在あります予算というものは第一炉の予算であります。従ってこの予算というものを早く実用化しなければならぬ、またこの濃縮ウランを受け入れるについても、
政府としては早くその方式をきめられて予算化のための努力をしなければならぬと思います。従いましてこれらの問題を審議する機関というものをどうしても早く作らなければ、単に財団法人の原子力研究所というものを作って、それでもって話を進めていくわけにはいかないと私は思うのであります。従いましてこの原子力問題におきましては、何といたしましても国論を統一するための原子力の平和利用に関する審議会というようなものを早く作る必要があると思うのであります。ところがこの問題につきましては、学者側は行政
委員会を作る、あるいは官庁の方におきましては単なる審議機関を作るというようなことで
意見が不統一のためにこの問題が延び延びにされまして、条約の締結であるとかあるいは財団法人であるとか、こういうようなことを進められておりますので、今日いろいろと入りまじった問題があると思うのであります。せっかく国会を開いておる最中でありまして、しかもこの商工
委員会においては全員一致をもって原子力機構というものを含めた
科学技術行政を確立しようじゃないか、こういうように決議されておりますから、そういうような法案を提出されて、この国会において少くとも
政府は原子力の統括機構を確立され、
科学技術を確立されるという必要があるのじゃないかと思うのであります。そのままにしておいて単なる既成事実を作っていきますと、今日問題になっておりますような条約の誤訳問題とか、さらに財団法人の研究所におきましてはいろいろとつまらない問題が起ってくると思います。これはやはりこういう統括機構というものを早く作って、国論を統一いたしまして、それに沿って官民その他学界もみなあげて協力して
日本の発展のために努力していくべきであると私は思うのであります。そういう
意味におきまして、ただいまお手元に配りましたように、大体われわれの決議に基きまして衆議院の法制局において両法案はいつでも
提案できるような態勢を整えつつあるのであります。この問題につきましては
両派社会党の諸君も、党の方の態度はまだ未決定のようでありますけれども、しかしながら決議の
趣旨もありますので、大体決議に御
賛成のようでありますし、また資料として配りました通り、新たに十月から出発いたしましても、予算は三年で二千五百万円ほどしか要らない、しかもこれはじきに要るわけではありません。人員が充足されてから要るのですから、実際には千五、六百万円の金を予備金から支出すればできる、しかも来年度の
科学技術の予算の重要な査定ができるということでありまして、
政府といたしましても大して問題のないことであると私は思うのであります。こういうような
意味におきまして、大体私たちの党におきましても、この内容については商工、行政部門等の政務調査会においては
賛成である、
社会党の諸君も多分今までの経過から見て
賛成されると思います。もし
政府が提出されないというならば、われわれも党の正式機関に諮りまして、議員提出の手続を進めたいと思うのであります。もしこれを提出するということになりますれば、私はこの国会において通過することはむずかしくないと考えておるのでありまして、私たちも好んでみずから提出いたしたいとは思っておりません。行政機関でありますから、なるべく
政府が御
提案になるのが
ほんとうであると思っております。しかし
政府の方では一向に進められない、ことに過日のお話ではあまり
賛成でないような答弁を伺いましたので、私はこの際
政府が
提案されるのに必要なように、法案も資料も整えて、あしたにでも
政府が
提案できるように用意いたしたのでありますから、この際
政府が御
提案になるかどうか、また
民主党の諸君の中には、一部経済企画庁に
賛成であるような話も出ておるようでありますけれども、またわれわれの聞いておる範囲の中には、私たちの
科学技術庁の方に
賛成である方もあるように私たちは聞いております。そういうようなことで、
民主党の中では党議はまだきまっておらないようでありますけれども、そういう決議案の
趣旨もありますので、これはいよいよ御提出になるということになれば、多分
賛成されるように思います。大体国会の情勢はそういうような
状況でありますから、
一つこの際大臣の率直な御
意見をお伺いいたしたいと思うのであります。