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1955-11-10 第22回国会 衆議院 社会労働委員協議会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十一月十日(木曜日)    午前十時二十六分開会     ————————————— 協議事項  炭鉱労務者災害に関する事項  健康保険問題等(七人委員会の報告  等)に関する事項     —————————————
  2. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) これより社会労働委員協議会を開きます。  皆さんの御推挙によりまして、私が座長を勤めます。  炭鉱労務者災害に関する事項に関し発言を求められておりますので、これを許可いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 昨年の八月三十一日に太平洋炭鉱において事故がありまして以来、非常に事故が頻発しておるわけでありまして、ことに重大な災害が勃発しておりますことは、非常に遺憾にたえない次第でございます。太平洋に続きまして三菱夕張あるいはまた住友赤平、さらに三井の田川あるいは今次の災害になっておるわけでありますが、私は先日党を代表いたしまして、現地にお見舞並びに調査に参りました。今次の雄別茂尻炭鉱災害につきましては、まことに遺家族は気の毒な状態にありまして、中には前の災害において御主人がなくなり、さらに再婚をされて、また今度の災害によって御主人を失っておるという御婦人もございました。あるいは前の災害において次男がなくなり、今度は三男がなくなった、こういう御家庭もあったのであります。さらに五カ月ほど前に母親がなくなり、さらに今次の災害で父親がなくなって、新制中学の三年生の娘さんと、さらに小学校一年の学童が、ただ孤児として残っておる、こういう悲惨な家庭もございました。  そこで私は、最近かように矢つぎばやに、しかも非常な大きな災害が起つておる、こういうところの原因はどこにあるだろうか、こういう点の一般的な保安行政について、一つ当局の見解をお聞かせ願いたいと考える次第であります。
  4. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 ただいま御指摘のございましたように、確かに、本年に入りましてから重要な災害、目についた災害が非常に多いことは、まことに遺憾でございます。三菱の大夕張爆発がございまして、さらにまた六月に入りましてから三井田川の爆発がございましたので、当局といたしましては、もちろん十分な監督を加えておりますけれども、さらに経営者に対して一そうの努力を求めるために、本年の六月三十日に通商産業政務次官から石炭協会の会長を呼びまして、厳重なる警告書を手交いたしまして、将来の善処方を要望した次第でございます。  しかるに、さらに十月に入りまして、住友赤平炭鉱におきまして、前回と同様な自然発火をいたしました際の密閉作業中に爆発事故を起しましたので、さらに徹底した指導をいたしますために、十一月十六日から二月の終りにかけまして、ガス爆発予防強調運動を起しまして、この期間内に十分なる施策の徹底をはかるべく準備をいたしておりました際に、重ねて十一月一日に茂尻炭鉱爆発事故を起しましたことはまことに残念に存じておりますが、この事故にかんがみまして、さらに厳重なる巡回監督を加えるとともに、場合によりましては、採炭方式の再検討というものを加えまして、重ねてかかる不祥事の再発することのないように、十分なる指導をいたしたいと考えております。
  5. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 労働省にお尋ねいたしますが、鉱山保安行政だけが通産省に残っておりますので、炭鉱災害等については、いわば労災保険を扱うということだけになっておると思いますが、一般産業の最近における災害推移傾向、さらにあなたの方では、実際給付を支払っておられますから当然おわかりになると思いますが、そういった場合における鉱山推移傾向、これをあわせてお聞かせ願いたい。
  6. 富樫總一

    基準局長富樫總一君 一般的な概況につきまして、十分な資料をただいま持ち合せておりませんので、今連絡をして取り寄せをしてお答えいたしたいと思います。大体の感じといたしましては、昨年来一部土建それから御承知のような漁業等におきまして、相当の業務上の災害がふえております。しかし製造工業におきましては、かねてから労災メリット制度あるいは安全措置に関する官民の一致した努力によりまして、顕著とは申し上げかねますが、相当努力の成果が現われて、われわれの方といたしまして最近特に力を入れておりますのは土建あるいは貨物運輸、そういったところになお相当事故がございますので、それに重点を置いていろいろ指導しておるような次第でございます。  石炭につきましては、お話しの通り所管が違いますが、労災関係から申しまして、通産当局に対しまして、常時密接な連絡をとりつつ、その災害防止を要請しておるような次第でございます。
  7. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 通産省にお尋ねいたしますが、戦後の災害傾向あるいは推移をどういうように御判断になっておるか。保安行政がかなり行き届いておるので、だんだん死傷者が減っておる、こういうように御判断になっておられるかどうか。最近の場合は一応特殊な場合と考えても、一般的な傾向は、どういうような推移を示しておるかお聞かせ願いたい。
  8. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 終戦直後は、非常に混乱の状態にございましたので、災害件数もきわめて多かったのでございますが、昭和二十五年から御存じのように鉱山保安法を施行いたしまして、厳重なる監督指導をいたしました結果、災害件数は顕著な減少傾向をたどって参りまして、戦前の一番悪い状態に比べますと、半減するというような状態にまで改善をいたしました。しかし、私どもといたしましては、なおさらに改善の徹低を期するために、昨年の七月から鉱山災害減少三カ年計画というものを設定いたしまして、各山ごと減少計画を作成させまして、これが達成を指導いたして参りました。その結果、昨年の災害件数は、もちろん一昨年に比しまして非常に減少いたしましたし、また本年に入りましても、かなり大きな事故はときどき起っておりますけれども、全体といたしましては昨年に比べて災害件数も、また死亡者数におきましても昨年よりは減少しております。従いまして、なおこの努力を続けるならば、さらに改善するであろうというふうに私は考えております。
  9. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 私は統計的に見た場合に、必ずしも災害が減っていない、こういうように考えるわけであります。それは災害件数は減っている、軽傷者は減っている。最も多く減っているのは、軽傷者が減っているのであって、死亡及び重傷者は減っていない、こういうふうに私どもはこの統計判断をするわけであります。  具体的に申し上げますと、先ほど基準局長メリット制お話をなさいました。メリット制によって、かなり経営者の方で考えて、それを順守した結果だんだん災害が減った、こういうようにお話になっているけれども、私は必ずしもそうでない、メリット制のおかげで、むしろ軽傷公傷として扱われないで統計から消えている、こういうような判断をしているのであります。なぜかといいますと、死亡者重傷者も減ってないで、しかも強度率がふえている、全然変らない。強度率と申しますと、要するに事故によって喪失しましたところの喪失日数を、総労働時間数で割っているのでありますから、これは一つのけがによってどのくらい本人が休んだか、それを総労働時間数で割っている。この強度率が変らないと、災害が減ったとは言えないと思う。最も顕著に非常に減っているように見えますのは、ほとんど軽傷であると考えるわけであります。軽傷重傷を含めまして、一番多いのは二十五年のようでありますけれども、その前の二十二年と現在を比較すると、ほとんど変っていないということであります。これは千人当りの負傷数を見ますと、ほとんど変っていない。すなわち、これは基準法が施行になった当時でありまして、いわゆる従来経営者はこれは公傷である、こういうように取り扱ってきたままを取り扱っていた当時である。そういたしますと、ふえてきておりますのは昭和二十四年、二十五年、二十六年、それから二十七年ごろからずっと減ってきているわけでありますが、これはほとんど軽傷が減っている。死亡重傷が減らないで軽傷が減っているというのは、むしろメリット制によって、何とかして災害件数を少くしようというので、それくらいは不注意じゃないか、こういうわけでほとんど取り扱ってくれないところに問題があると思うのであります。この炭鉱大手におきましては病院を持っているものですから病院だけの治療はするのですが、それは一応包帯等も巻いて、公傷手続はとらなくてもいいじゃないか。傷もかなりなおるものですから、とらない。そうすると統計上現われて来ない、こういうふうになっていると思うのであります。  そこで、たとえば二十八年一月から十二月、同二十九年一月から十二月を見ると強度率がむしろふえている。これは鉱山保安局の鑑修されました炭鉱保安情報によっても明らかであります。その情報によりますと、一応頻度率といいますか度数率といいますか、要するに災害件数を総労働時間数で割った分につきましては、たとえば昭和二十八年におきましては八五・六ですが、二十九年においては七九・三六になっている。軽傷の方はといいますと、軽症の方は全部で一応五万一千四百五でありましたのが、三万六千八百七十四になって減っておる。ですから頻度率は八五・六から七九・三六に減っておるのですが、強度率を見ると、二十八年には八・六であったのが、二十九年には一〇・〇六になっておる。こういう点を見ると、私はどうも災害は減っていないということを考えるわけであります。  そこで私は、保守行政についてお尋ねをいたしたいのです。これは私は十分承知をしていなかったわけですが、十一月の三日の朝日新聞に、二十九年度から予算が削減されて、旅費が二千二百万円に減らされたので、監督基準を変えた。そこで事故のない大手においては年一回程度、それから目標を遂行したか遂行しないかによって、あるいは月に一回とか四カ月に一回とか六カ月に一回というようにしておる、こういうことを書いておられますが、どういう基準であなたの方は巡回検査をされておるか、これをお尋ねいたしたい。さらに私が先ほど申しましたことは、考え方として間違っておるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  10. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 最初に災害率お話を申し上げますと、なるほど御指摘のように、災害減少というものは、強度率を見なければはっきり断定できないわけでございますが、私の方で、先ほど申し上げました三カ年計画を立てまして、これが実施をするに当りまして策定しております強度率算定方式を申しますと、死亡には百をかけ、重傷には五をかけ、それに軽症を加えましたものを稼働人員で割りまして、これを千倍したものをAといたしまして、このAの目標を作りました。こういった計数がどうなっておるかと申しますと、二十七年のこの実績は二・六九五になっております。それが二十八年は二・三八一、それから二十九年は二・三と記憶しております。ちょっと数字がはっきりいたしませんが、二十八年よりも減少いたしております。こういう経過から見まして、強度率の点を考慮いたしましても、災害は漸減はいたしておるというふうに考えられます。しかしながら残念なことには、死亡者数字というものは顕著な減少を示していないということでございます。この点につきましては、さらに保安教育徹底を期しまして、さらに徹底的な減少をはかるような指導を今後行いたいというふうに思っております。  それから第二に、監督官巡回基準の点でございますが、これはなるほど御指摘のように、三十年は二十九年に比べまして若干旅費減少を見ておりますけれども、これは大したものではございません。従いまして、旅費が足りないために監督を怠るということは絶対にございません。この与えられました旅費の合理的な使用をいたしまして、監督徹底を期したいというふうに考えまして、この三十年度の監督検査実施要領というものを作りまして実施をいたしておりますが、第一は、全国鉱山災害減少三カ年計画実施以来、二十九年度中におきまする鉱山災害率実績、これは先ほど申し上げましたA目標——強度率の与えられております山につきましてはAの目標、それ以外のものにつきましてはB、これは頻度率だけでございますが、そういった目標をきめまして、この災害率実績が、鉱山保安監督部で作りました数字の第一期の災害率目標に対しまして二倍以上の鉱山は、石炭鉱山においては三カ月に一回以上、石炭以外の鉱種鉱山につきましては四カ月に一回以上、それからこれが二倍でなく、同率以上二倍までの鉱山につきましては、石炭については六カ月に一回以上、石炭以外の鉱種鉱山につきましては二カ年に三回以上、これ未満の非常に成績のいい山におきましては、石炭鉱山でも一カ年一回以上、石炭以外の鉱種鉱山は三年に二回以上というような基準を設定いたしましたが、もちろんこういった基準には関係なく、ガス炭塵爆発坑内出水というような危険を包蔵しておる山におきましては、三カ月に一回以上という基準巡回をいたしております。先般事故を起しました茂尻炭鉱におきましては、特に危険な山といたして、ほとんど毎月巡回監督実施いたしまして災害発生予防指導をいたして参った次第でございます。
  11. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 強度率の話がございましたが、労働省の方の強度率は、喪失日数を総労働時間数で割って、さらに千時間を掛けて強度率を出されておる。あなたの方では今お話がありましたが、一応死亡を百とし、重傷を五とし、軽傷を一として、それに千を掛けてそれを稼働延べ人員で割っておる。これは統計でありますから、私はとやかく言うわけではありませんが、石炭協会で出しておりますあなたの方で監修をしておられますのには、やはり労働省と同じような強度数を出しておる。そういう点でこういう統計もなるべく一元化をしてもらいたい、かように私は考えるわけであります。  そこで、さらに今の問題についてつけ加えて申し上げますと、ほんとうはこれは基準局長から聞けばいいのですが、基準局長資料を持っておられぬようですから、私の方で調査をしたものについて申し上げてみますと、たとえば炭鉱労災補償金は、二十四年度においては十七億七千百六十四万六千円を払われておる。それが二十五年、二十六年、二十七年、二十八年とふえて、二十八年では三十三億五千五十五万六千円、こういう金額になっておるのであります。いわば二十四年から二十八年にかけて二倍にふえておる。これは賃金が二倍にふえておるということだけでなくて、賃金は大体物価指数その他から見れば一・三五程度しかふえていない。そこで、これは端的に労働災害が実質上ふえておる。もっとも、これは死亡がありますから、死亡は千日分というのが出て来ますから、必ずしもそうは言えないでしょうけれども災害全般としては、むしろ非常に考えなければならない問題になっておると思う。  そこで、さらにそれを大手中小に分けて災害状態を見ますと、大体大手中小では、その災害状態は、倍以上中小大手よりも災害が多い、こういう状態になっておるのであります。そこで中小に対してどういうようにあなたの方では監督をされておるか、これをお聞かせ願いたい。
  12. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 ただいま監督基準を説明申し上げましたが、御指摘のように、確かに災害件数中小に非常に多いものでありますから——中小指導につきましては、しっかりした団体もございませんので、監督部が中心になりまして、いろいろの講習会を持ち、あるいは研修を行い、さらに業者を集めて特別な懇談会をするというような形式をもちまして、指導に遺漏のないような手を講ずるようになっております。
  13. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 九州ことに福岡におきましては、この二、三年中小炭鉱災害が、しかも大きな災害が起っておる。これは私は非常に遺憾であると考えるのであります。たとえば延べ百万人で、二十八年におきましては大手が四・八人の死亡に対して中小は八・六人、これは二倍になっておる。重傷者大手が二百二十七人に対して、中小は三百三十四人、軽傷が二百三十五人に対して八百六十九人、こういう状態を示しておると思うのであります。これは明らかに中小炭鉱労働者保安教育というよりも、設備に問題がある、かように考えるわけでありますが、この設備について、十分注意を喚起されておるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  14. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 中小設備につきまして、特にはなはだしく悪いというような事態を発見いたしましたケースは少いかと存じますが、何分にも非常に山の数が多いために——御存じのように炭鉱は、作業の進展に従いまして、自然条件が変って参りますので、時々刻々変る条件を十分に指導することは非常に困難でありますけれども、極力巡回監督を強化して、いやしくも施設の面で不完全な作業労働者にしいるというようなことのないように指導いたしております。  なお、中小炭鉱主の中には、あるいは法律順守の精神に乏しい者があるということも予想されますので、私は、昨年鉱山保安局長に任命されましてから、機会あるごとに、悪質な法律違反に対しては厳重なる司法処分を行うという方針をもちまして、監督官を督励し、さらに検察庁とも十分な連絡をとりまして、法律順守を期するというような措置を講じまして、一般的に中小業者に対して覚醒を求めるというような措置をとっております。
  15. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 保安監督について、さらにお聞かせ願いたいと思いますが、二十九年度のガス爆発指定別炭鉱状態を見ると、非常に奇異に感ずるのは、二十六件ございますけれども、そのうち乙種炭鉱が十三件、一部乙種炭鉱が九件、甲種炭鉱が四件しかない。要するに、ガスの多い甲種炭鉱は四件しかなくて、あなたの方で比較的これは大丈夫です、一般炭鉱ですからガスは少いと判を押された炭鉱から、今申しますように、乙種炭鉱で十三件、一部乙種炭鉱で九件、甲種炭鉱の方はむしろ四件しか起っていない。あなたの方で監督基準を変えて、なるべく災害の少いところはあまり行かない、こういうようにされておりますけれども災害の少いと思ったところから災害が起っておる、こういう状態ですから、私は必ずしも区別して行うことはできないのじゃなかろうか、これはもう少し強化をする必要はなかろうかと思うわけです。これについてお聞かせ願いたい。
  16. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 ただいま御指摘通りに、乙種炭鉱におけるガス爆発事故が非常に多いものですから、この点に検討を加えまして、十月の三十一日付で石炭鉱山保安規則を改正いたしまして、乙種炭鉱に対しましても、甲種炭鉱と同様な規制を行うというように省令を改正してこれが実施をはかりつつある状態でございます。
  17. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 あなたの方では、法律を改正したり省令を改正したら、すぐ行われるようにお考えでありますが、私は保安監督行政というものは、あまりやっていないのじゃないかという危惧さえある。なぜかというと、特免区域災害が起っておるという例を私は知っておる。特免区域というのは、甲種炭鉱ガスが多いということで、一般坑内要員については規則の七十八条を適用して、こういう検査をしなければならぬということになっておる。ところが炭鉱の方では特免区域をなるべく拡大をしてもらいたい、こういうことで、盛んにそういうような希望が述べられておったと思うのです。ところが、これは大丈夫である、この炭鉱は大体ガスが多いけれども、この区域は大丈夫ですといって、特免区域としてそういう制限を緩和した地域から、ガスが発生して爆発が起っておるという事件を知っておる。昭和二十六年の四月には大之浦炭鉱において起っておる。さらに昨年の五月には、三井芦別炭鉱において、特免区域で起っておる。これは坑内機関車のパンタグラフの接触がよくないためのスパークによって起っておる。しかし、特免区域であるからといって、あなたの方で特別に免除をしている区域からガス爆発が起っておるということは、私は何をいいましても監督行政の不行き届きであると考える。  そこで私は先般札幌の鉱山保明監督部長に会いまして書類をもらったわけですが、それによりますと、最近起りました事件について、監督部のとった処置が書いてあります。今指摘いたしました昭和二十九年五月九日の三井芦別のトロリーのスパークによるガス爆発の問題について、これの行政処分として、保安管理者については口頭戒告始末書を取っておる。さらに坑内保安係ハッパ係員については口頭注意をしておると書いてあるが、特免区域に指定した監督官にはどういう処分がされたか、これをお聞かせ願いたい。
  18. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 特免区域におきましてガス爆発事故が発生いたした事実はございますが、これは私は必ずしも監督が不十分とか、あるいはその特免処分が不適当であったというふうには考えられないと存ずるのであります。と申しますことは、そういった特免処分をいたします場合には、その坑道なりその場所の通気量なり、あるいはガス存在状態、それから扇風機を一定時間とめました後のガス状態というものを、監督官みずから十分調べまして、支障のないという判断を下した場合にのみ、特免手続をとっておるような次第でございます。ただ、かりにある一部に落盤があったとか、あるいは何らかの事故でもって扇風機が一時とまった、こういった場合に、それが予想された時間内に運転を開始しなかったというような予測し得ない事態が起りまして、その特免地域内のガス量がふえたというような事実があるために、特免地域事故を起したというふうに私は判断いたしておりますので、特に監督官手落ちがありまして、そういった事故特免地域におきまして起ったというふうには判断していないのでございます。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 甲種炭鉱に指定されてガスが多いということになっておる、そのなっておる炭鉱で、わざわざ特免区域というのを設けておるというのは、これはもうどうやっても安全であるという、少くともそういう状態でなければ、私は特免区域というものは設けられる性格じゃないと思う。一般的にはガス指定炭鉱にしておって、その部分だけは特免区域にしておるのですから、この地域においてガス爆発が起った、たとえば芦別の場合には異常な気象であった、最近にない気象であったから起ったとこういっても、私はそれではその監督の義務は免責されないと思う。やはりどういう状態にあっても、特免区域というものを、わざわざそのガス指定炭鉱に設けるのですから、設ける以上は、ある一般注意力をもってすれば災害は起らない、こういう地域でなければ、私はすべきでないと思うのです。それができたのですから、それなら私は申したい。なぜそういう異常であって、偶発的なものであるとするならば、保安管理者に対して、あなたの方では戒告処分をされる、注意をされるのか。処分をしておって、そうして監督官の方は手落ちがないというととは、私はあり得ぬと思う。当然監督官特免区域を指定したのですから、私は第一には監督官がこの場合には責任がある、かように思うわけですが、どういうようにお考えですか。
  20. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 監督官指導につきましては、毎年東京に監督課長会議を開催いたしまして、十分なる監督指導方針を授けておりますが、さらに監督部長に対しましても、先ほど申し上げましたように、責任者処分ということについて十分な処置をとらなければいけない。要するに同種の事故を起すようなことがあっては申しわけありませんので、これが改善指導に力をいたすことはもちろんでありますけれども、起しました事故責任追及というものは、絶対にゆるがせにしてはならぬというふうに指導いたしております。  特免地域の問題につきましては、ただいま御指摘芦別の場合には、異常な気圧のためだというような自然現象で起ったと存じますが、こういった事態に際しましても、絶対に安全であるという場合に限って特免をなすべきでありまして、その点につきましての監督官判断というものは、さらに再検討を要するかと存じますけれども、今後絶対にそういった事態が重ねて起らないように、十分指導いたしたいというふうに考えております。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 あなたの方は、保安管理者並びに坑内保安兼ハッパ係員には行政上の処分をされておるわけですよ。そうして自分のところの監督官、それを認めて、それは絶対安全であると言った監督官には——何も私はこれを刑事的な責任を問えとか罷免せい、そういうことを言っておるのじゃないのです。それば常識でお考えになったらわかると思うのです。これについては保安監督官は責任をとらないで、保安管理者とその係員のみ責任を追及されておる、こういう態度はおかしいじゃないか、こう言っておる。事の起りは、監督官の方が安全ですと言ったところから事件が起った。これについては、具体的に芦別についてはどういう処置をとられたか、お聞かせ願いたい。
  22. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 その点、私はまだ調べておりませんけれども、おそらく鉱山監督部長は、監督官に対して十分なる注意を与え、叱責をしたというふうに私は想像しております。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 私は現地に参りまして率直な感じを申し上げますと、実は保安局長を含めて保安監督部は、あまり事故責任を感じていない、こういうように感じたわけであります。これは私は社会党を代表をして行きましたから、何も公務ではありませんけれども、参議院の阿具根、横山両議員は、労働委員会の正式派遣として行かれた。ですから、これは公式な公務を帯びて現地に行かれたわけです。ところが現地では、私はこれは第一の責任は、行政上の問題は保安監督部です、鉱山保安局ですから、当然出て説明もあるべきだ、こういうように考えておった。ところが、基準局の方は出ていろいろ御説明もあり、われわれも十分いろいろお聞きいたしましたが、当の委員については、監督部からは積極的な何らの説明もなかったわけであります。それで現地に行きまして、あすこにおりました、監督部から派遣されました石炭課長に会いまして、われわれも事情を聞き、また聞かれたようでございます。それから、さらに札幌に帰って、こちらから出向いて、そうして監督部長に意見を聞いた。われわれは、行きましたときに保安局長はもう東京にお帰りになった、こういうことを聞いておりましたところが、なに保安局長はその次の日の五日の午前に、札幌において記者会談をして、今度の災害自然発火ではない。さらに、炭塵爆発であるということまで言われたかどうか記憶がないのですが、そういう新聞発表をしておる、ですから、何だ札幌にいたんじゃないかということになって、参議院の連中は相当ふんまんを持って帰っておる。そこで、これは第一次責任、直接の責任保安管理者にあるのですから、監督部の方は何か事故が起って困りましたなという、よそごとのように考えておるようだ。これは監督部が、あるいは保安局が、従来議決機関からあまり監視をされなかった関係にあるのではなかろうかと私は思う。一般労働行政とかその他は、これは県会にもありますし、国会議員が直接やっておる。ところがあなたの方は通産省にあって、鉱山保安というのは通産省にあったかと忘れるくらい、議員の方でも、率直に言いまして、これは軽んぜられておる。おそらく正木さんがほんとうの保安行政について国会で答弁されたことは、あまりないだろうと私は想像する。私は実はストライキ規制法のときに、当時の吉岡鉱山保安局長に答弁を求めたところが、どうも率直に言いまして、これはしろうとのような答弁しかされない。しかし保安局長という人は、私は当然技術屋であるから、しろうとであるはずはないと思って、敬意を表して質問をしておった。ところが後になって繊維局長にかわられた。何だ繊維局長にかわられたのか、あれは法科出身であったか、こういうので私は意外さに驚いたわけであります。私は正木さんがどちらの系統である、そういうことはとやかく言いませんけれども、とにかく通産省全般として、鉱山保安行政というものに非常に軽視しておると思う。今、大臣が来られたら聞くつもりですが、一般的にそういう感じをわれわれは受けた。そこで、今具体的に茂尻炭鉱の問題について、さらにお聞かせを願いたいと思う。  茂尻炭鉱におきましては、なるほど五月、六月、七月、九月、監督官が入坑されておる。そうしてガスが多いということで、三つありました切羽を二つに変えられておる、そうして炭鉱の方もその指示通り従っておる。ところが災害が起きた、こういうことです。そこで、最終的に行かれました保安監督官は、どういう指示をなされ、注意をなされてきたか、これをお聞かせ願いたい。さらに炭鉱の方は、その指示に従ってどういう措置をとられたか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  24. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 九月六日に参りました監督官は、近藤監督官と申しますが、この際注意をいたしました事項は、第一に前回注意を与えましたガスの問題は改善されて、いずれもガスは一%以下に減少いたしておりましたが、全体的に通気に窮屈な状態を認めまして、将来の根本的な改善をするように指示をいたしました。従いまして、現在の風道の取り明けをさせるとか、補修をする。あるいは坑道個所の維持に務めるという指示を第一にいたしました。それからこの炭鉱は、災害としては落盤が割合に多いので、その原因は主として矢木の間から漏れる落石が多いというふうに認められますので、坑道の矢木がけも一般に少ないというので、さらにそれを増強するように指示をいたしました。第三点は、十番層坑道の上下盤が不良でありますので、この倒壊を防止するように、側壁をさらに密にするとともに、先受けを十分にやるように指示をいたしました。第四に、六片の十番上下立ち入りにおきまして、三番方でワクを伸ばしまして、補修中でありましたが、巡回のときにすでに装填されている状態でありましたので、今後は飛ばされたワクの建て直しは直ちに実施いたしまして、ワクなしで作業を進めないように、係員の教育をしてほしいという指示をいたしました。第五に、七片の九番層の払いは、巡回のときに充填作業中でありましたが、払いの下部はまだ充填されておりませんので、上下盤の乱れもだいぶ認められましたが、その後作業時間、作業方法等を考えますると、研充填も不足だというふうに思われましたので、その点につきまして改善をするように命じました。第六は、六片の九番、十番各層とも沿層坑道の笠木の上に炭塵の付着が多く認められましたので、炭塵を落しておきなさいということを指示をいたしました。第七番に各払いの漏斗口の散水が不十分である。これは炭塵の発生の防止のため必要でございますので、漏斗口からこぼれる場合のことを考えまして、こぼれ炭を防止するとともに、十分に散水をして、この炭塵防止の目的を達するよう指導いたしました。第八は、六片の九番層の払いは間もなく終了する予定でございますが、特に坑道が低く、充填車がひっかかるというようなこともありまするので、この点を改善するように命じました。第九番目には、五片の大坑道の引き立ての風管岩が進行がおくれておりまするので、これがおくれないように風管の延長作業をしなさいという指導をいたしました。第十番目に、各所に設置されたはしごは危険でありますので、その設置の方法を改善するということを命じました。第十一番目は、六片の各沿層坑道及び五片、六片間十一番昇の清掃をしなさい。これも炭塵防止の見地から指導をいたしました。こういような報告を得ております。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 その後経営者の方ではどう処置をしたと判断されておりますか。その指示事項について、これは直接関係のない、たとえば九番層、そういう点は、私は今度の災害に直接関係がございませんから、その事項に対して処置をしたことは要りませんけれども、一応直接関係のあります六片並びに七片の十番層あるいは十一番層、こういうことに対する指示について、どういうように経営者はやったというように御判断になっておるか、お聞かせ願いたい。
  26. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 これは九月の巡回でありまするので、その次の巡回におきまして、指示が実行されておるかどうかという点をチェックすることになっておりましたのに、災害が起りましたので、ただいまは直接の災害原因の調査に当っておりますので、それが完了いたしますると同時に、これらの指示につきましても十分なチェックをしていきたいというふうに考えております。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 では確認をされておらないようですが、今度の災害はどういうような状態で起り、これだけ大規模な災害になったか、これをどういうように御判断になっておるか、お聞かせ願いたい。
  28. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 これは、今度の災害の原因と申しますと、六片の十番層の坑道の掘進先におきましてハッパを施行いたしておりました。これは十月一日の二番方がハッパをかけまして、そのハッパが、たまたまその二番方の数方前から発見しておりました引き立ての断層付近から、かなり多量のガスが湧出したものと推定されまするが、このガス爆発限界にまで達しておった際にハッパをかけまして、これが、ガスが引火してガス爆発を起し、さらにその爆発が一時的な原因となりまして、途中の坑道にあったと思われまする炭塵爆発を誘発し、さらにこれらの二つの爆発によって起されました一酸化炭素が坑道をはって参りまして、ガス中毒を起す、こういった三つの原因から非常に多数の罹災者を出した。もちろん最初の原因となりましたガス爆発も、これは石炭規則では、ハッパのつどガス検定を行うことになっておりまするので、かりにガス検定をハッパのつど行なっておりますれば、爆発限界にありながら、それを承知しながら、点火するというような乱暴なことは行われなかったと考えられます。そういった事情で、おそらくガス検定を最初行なったが、何回目かにガス検定を行わずに爆薬に点火した、こういった事態が推定されるわけでございます。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 十番層六片の延び先の断層面から五十メートルくらいのところの通気についてお聞かせ願いたいと思うのですが、これは圧縮空気によるエア・ゼットを使っておる。これが私は車風になっておりはしないか。要するに空気が巡回をして、そうして普通の通気の状態にならない、こういう状態になってはおらないかと思うのです。さらにもう一つは、私はあまりにも大きな災害——これは当然炭塵爆発が次から次へ起っておるから、これだけ大きな災害になっております。ガス爆発だけですと、ガス爆発してしまえば、それほど大きな災害にはならなかった。これが炭塵爆発になっております。炭塵が非常に多い。そこで炭塵処理が十分できていなかったのではなかろうか、こういう点が考えられるわけです。そこで私はこのエア・ゼットの車風の問題と炭塵の処理について、どういうように経営者の方ではなされ、またあなたの方では処置し、どういうふうに御判断になっておるか、お聞かせ願いたい。
  30. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 最初の十番層六片の坑道詰めの通気の状態でございますが、この点につきましては、ただいま調査を続行中でございます。それ以前におきまする状態は、六片の払いの方から風管を入れまして、そこにゼットを吹かしておった。この風量とか、あるいは上盤とか下盤の坑道の温度差とかといった点につきまして、なお十分に調査をいたしました上で、五十メートルの延び先が、通気の状態がどうであったかという判断を、これからいたしたいというふうに考えております。  それから炭塵の状況につきましては、本年に入りましてから参りました監督官監督の状況を調べてみますとたびたび炭塵の四散状況を認めまして、これが政善を指導し、あるいは岩粉だなを設置する、増置する、あるいは散水をする、清掃をするということをたびたび指示をいたしております。その次に参りましたときは改善されておるようでありますので、おそらくこの指示は、ある程度は守られておるとは思いまするけれども、先ほども指摘のように、炭塵爆発を誘発いたしましたことは、確かにその辺の問題があるように考えられまするので、この点につきましても、十分捜査を続行したいと考えております。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 事件が起りまして、捜査をしていただくために私は聞いておるのではないのであります。事前の処置がどうあったかということを、むしろ聞いておるわけであります。この茂尻炭鉱は、私が申すまでもないのですが、昭和十年には自然発火によって九十五名死んでおる。昭和十七年には六名なくなっておる。昭和二十五年にはガス爆発で十五名の死亡重傷十名、二十六年には自然発火で十名の死傷と重傷十名、今度六十名、こういういわばいわくつきの炭鉱でありますから、私はもう少し監督行政としては徹底してしかるべきではなかったかと思うのであります。問題が起りました十番層の六片の砥先からずっと後退をして、相当の地点に参りますと、当然大きな爆発ならば、骨粉だなに落ちておらなければならないのに、岩粉だなに岩粉が載っかって何の異状もない。こういうことを考えますと、これはガス爆発としては大したことではなくて、むしろ炭塵爆発がこれだけ大きな爆発をもたらしたのではないかとさえ考えられる点があるわけであります。そこで私は、もう少し炭塵の処理が十分であれば、これだけ大きな災害は起らなかったのではなかろうかと思う。そこで散水とか、あるいは岩粉、さらに炭壁注水もしておったという話でありますけれども、実際われわれは七片に入ることができませんでしたから十分見ることはできませんでしたけれども、しかし六片の浮遊炭塵並びにこの炭塵があります状態を見ると、やはりかなりの炭塵がある、こう想像せざるを得ないのでありますが、この炭塵の処理について、どういうように指導されておったか、もう一回御説明願いたいと思います。
  32. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 炭塵の処理につきましては、十分清掃いたしまして炭塵の存在を防ぐわけでございますけれども、なるほど御指摘のように、私も六片、七片も全部回って参りましたが、遺憾ながら排気坑道にありまする岩粉だなは、今度の場合は全然意味をなしていない。岩粉だなというものは、爆発はどうしても人気の側に延びて参りますので、人気側に岩粉だなを置かなければ岩粉だなを置いた意帳がないということを認めまして、今後は人気側に岩粉だなを設けることを厳重に指導するということを、監督側に強く申して参りました。そういたしますと、かりに一部に炭塵爆発が起りましても、人気側にある岩粉だなが作用いたしまして、それ以上の炭塵爆発の誘発ということは防止できるというふうに存じますので、こういった措置を今後厳重に行うように指導いたして参りました。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 爆発は入気の方がプラスに、排気の方はマイナスになっていくわけです。そういうことはわかっておるわけですが、今後さらにそういう点について注意を喚起したい、こういうお話ですけれども、従来は大体どういう指導をなさっておったか、これをお聞かせ願いたい。
  34. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 従来ともそういった方針指導して参ったと存じますが、何分にも人気側に岩粉だなを置きますと、作業上非常に不便な状態になる。また、かたがた作業上の不便な状態改善する措置はもちろん講じますけれども作業員自体がいやがりまして、そういったことが十分行われなかったということは、非常に遺憾に存じておる次第でございます。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 私はしろうとですけれども、この炭塵の防止について、どういう方法が今行われておるかというと、たとえば、現在岩粉と水と一緒にして壁に塗るような方法をアメリカではやっておる、こういうことを聞いております。ところが、私は実は現地の札幌の監督部長に会いましたら、水と岩粉は一緒になるとだんごのようになって役をなさないから、散水区域と岩粉区域は別にしたい、こういういうようなお話になっておる。ところが、昨日私は工業技術院の資源研究所の方に来ていただいて聞いてみた。そうして専門家に聞きましたところが、いや最近では水と岩粉と一緒にして壁に塗るということも考える、こういうことであります。どうもしろうとから見ると、専門家の意見が違っておる、かように考えるわけですが、今後あなたの方では、どういう指導を抜本的になさろうとしておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  36. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 もちろん岩粉の散布が一番いいわけでありますけれども、水を併用する方法もあると伺っております。しかしこれらの方法は、いずれもその場所における自然条件に即応したものでなければ、作業上また保安土も支障があるわけでございますので、一がいにこれだけがいいのだという結論を出すことは少し早計かと存じますので、その場所々々に応じた具体的な指導を今後やっていきたいというふうに考えております。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 具体的な問題はあまりここではまだはっきりしておりませんので、私これ以上追及いたしたくないと思いますが、昨日九州の福岡の赤池炭鉱ガス吐出があったように聞くわけです。私、昭和二十六年の七名の死亡いたしました爆発事件にも、実は弔詞を読みに行ったのですが、またその山で爆発があったということを聞きまして、非常に感慨無量なものを感ずるわけです。そこで、赤池炭鉱災害はどういう状態であるか、これを一つお聞かせ願いたい。
  38. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 赤池炭鉱ガスの吐出事件は、さっそく係官を福岡からも、また東京からも現場に派遣いたしまして、目下調査中でありますので、その調査を待たなければ正確なことは申し上げかねますけれども、ただいまのところは、たまりましたガスの吐出事故によりまして、埋没並びに窒息というような犠牲者を出したものと考えられます。この赤池炭鉱は、従来とも非常にガスの多い炭鉱でありますので、いろいろ先進ボーリングを行うとか、あるいは今度の場合は、切羽は後退式のようでもありますので、そういったガス吐出の危険は割合に少いはずであったのでありますけれども、どういう原因か吐出を起しております。この点につきましても、さらに詳細に検討を加えたいと考えております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 ガスが少いはずであったのにという、この前の太平洋も、少いのに災害が起った。もちろん太平洋の具体的に起りました炭鉱甲種炭鉱でありましたが、先ほど申し上げましたように、乙種の方がむしろ件数として多い。こういう点は、私は保安技術を徹底的に検討する時期が来ているのではなかろうか、かように考えるわけであります。さらに私は、設備の不備による災害が非常に多い。ことに落盤に次ぐ災害は、運搬系統の災害であります。運搬系統の災害は、いわば脱線であるとか、あるいはワクと炭車の間にはさまれる、こういう事件であります。これは設備さえよければ、車道さえよければ、あるいは坑道さえよければ、あるいは車両が完全であれば、当然防げるものである、私はかように考えるわけであります。私は中小炭鉱には、この種の災害が多いのではなかろうかと思うのですが、実は私の知っている人も、二、三日前に私の選挙をしてくれまして、その一週間ほど後に行ってみましたら、死んでおる。なぜ死んだかといえば、明治以来のアーチが地圧のために少し曲っておる。そうして規定の三十センチの炭車との間の距離がない、こういうことで、その炭車がぶつかって脱線をして、はね飛ばされて重傷を負うて死んだ。これは当然設備の不備が人を殺した、私はこう言わざるを得ない。しかもそれはさお取りですけれども、そのさお取りは、これはぜひ直してくれ、この個所は危険だということを再三言っておる。それが直されてなくて、かように死傷者を出しておる。こういうように設備による災害が非常に多くて、それが軽微の場合は、それは本人の不注意じゃないか、死亡した場合は、これは不可抗力だ、こういうことで、私はどうも全般的に改善をされていない、かように考えるわけです。ことに、先ほど申しましたように、中小炭鉱は、大手に比べて二倍の災害の率を示しておる。不況になれば、ますます保安は第二次的になって、生産第一主義である、こういうように行くと思いますけれども、一体こういう設備の不完全に対してどういう措置をされ、監督をされておるか、これをお聞かせ願いたい。
  40. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 もちろん設備の点検等につきましては、巡回監視のつど、重点的に監督を行なっておりますが、ただ申し上げておきたいのは、おそらく、これは私の推定でございますが、どうも労働者も鉱業権者も保安管理者も、長い間災害が起りませんと、危険な場所でも、あるいは危険な作業でも、安全と誤解いたしまして、そういった作業を続けていくという傾向があるのではないかと考えられます。従いまして、保安教育を大いに行いまして、客観的に危険なのであるという認識を持たせるのが、一番問題の解決の早道ではないかと考えております。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 しからば、保安教育について私はお聞かせ願いたいと思うのですが、なるほど、私は確かに保安教育の不徹底さが、災害をもたらした面がかなりあると思う。ことに私は太平洋炭鉱の場合のMS電気雷管の使用、これは果して一斉にやったものか、断発式で行なったものかはっきりしておりませんけれども、MS電気雷管は、いわば新しい機具に属するわけです。あるいはまた刻々と変化するこの状態に対処する措置が不完全ではなかったかと思う。先ほどの茂尻炭鉱にしても、今まで岩石であったところが石炭面が現われてきて、そこでガスが湧出をしておる。これは仕事を始めてから、きのうかきょう起ったいわば石炭面である。これもやはり処置が私は十分でなかったかもしれない、かように考えるわけであります。太平洋におきましても、数日前からガスが増加しておる、しかも加速度的に増加している。こういうことに対して、私は従来と同じような考え方でやはり行なっておるのではな小ろうか、そこに災害が非常に多く、しかも大きな災害が起っておる。そこで刻々変化をするこの状態についての教育が、きわめて私は不徹底ではないかと考えるわけであります。そこで、教育をする、教育をすると言われますけれども、具体的にはどういう教育をされておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  42. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 ただいま申し上げましたように、保安教育の重要性を認識いたしまして、本年からは一つもっと突っ込んだ保安教育をしょう、いわゆる規則の周知徹底をはかるとか、あるいは技術の指導をするとかいうことは、もちろん必要でありますけれども、それのみにとどまらず、災害発生の心理的あるいは生理的な原因を追及し、検討いたしまして、その心理学的な見地からこういった災害予防するというように、心理学的な見地から対策を立てまして、心理学を応用した教育を行いたいというふうにも考えております。もっと砕いて申し上げますと、たとえば、朝女房とけんかして出てきたといった労働者が、よく災害を起しております。それから二十年間も勤務いたしまして、しかも六年間も無事故で勤務しておりましたエレベーターの巻上機の運転手が、二番方で入りまして、たまたま坑内に下る前に事務所でボーナスをもらった。そのボーナスの使用みちを考えておったばかりに、インディケーターの針を見ながら天井へケージをぶつけてしまった。こういう事故もありますので、そういった不注意、さらにその原因になっておりまする点を心理学的に追及いたしまして、その面からの改善指導をはかるということも、大いに必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 私は、第一に政府が保安行政考えておるかという点に疑問を持つ。また業者の方も、保安は生産と表裏一体だとかなんとか言われますけれども、実際はどうも生産第一主義でいっているのではなかろうか。日本人全体が——実は昨日も森永の話があったのでありますが、人間のとうとさを知らない。こういうところにこういう災害や、あるいは異常な思わぬ事故が発生しているのではなかろうかと思うのです。最近の炭鉱の機械化につきましても、これは御存じのように、今、縦坑方式だ。これは政務次官に聞きますから、御答弁願いたいと思うのですが、縦坑方式というものは、こういうのかというと、結局運搬系統をよくする、あるいは坑内のポケットの拡充にいたしましても、これは坑内にポケットを置いて、石炭を十分に送り出せない場合に、そこに貯蔵しておく、あるいは木製炭車を鉄製炭車にかえるということも、結局箱を大きくして運搬をよくしようということ。そこで、機械化といえば、だんだんからだが楽になるというのが機械化でありますけれども、今度の場合は、むしろ単位労働時間に運搬系統の機械によってどんどん追い使われるというのが炭鉱の機械化の状態である。そこで、労働密度がだんだん濃くなる。要するに、てんてこ舞いをしなければならぬという状態に機械化全般がなりつつあるようにあると考えるわけであります。環境の悪いところで、ますます労働密度が濃くなるという状態になりますと、やはり保安というものは第二次的になって、とにかく炭を出さなければならぬ、もう箱が来たら、箱待ちという時間がなくなる。こういうことになりますと、私はだんだん災害が多くなるのではなかろうかと考えるわけです。そこで一体政府は、保安というものをどういうようにお考えであるのか、お聞かせ願いたい。
  44. 島村一郎

    通商産業政務次官島村一郎君 炭鉱関係の問題につきましては、むしろ私より多賀谷委員の方が詳しいと存じます。従って、私から説明がましいことを申のもどうかと存じますけれども、私も一、二炭鉱を見学してみますと、なるほど縦坑が運搬に利用されることはごもっともでございますが、そのほかに通風の面なんかについても、あれが有効的なもので歩、ろうと考えます。しかし、末段のお話になりますと、炭鉱経営者にいたしましても、政府にいたしましても、増産第一主義でいくことは、きわめて危険なわけで、とうとい人命にまでも影響する問題でありますから、まず第一に、鉱山は保安を第一要件として監督もし、あるいはまた関係者におきましては、十分にそこに力を入れて熱心に保安の問題を検討して、災害の起らないようにしてもらいたいというふうに持っていくことが、私どもの務めであろうと考えます。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 どうもさっぱり内容のない見解を聞いたわけですが、とにかくこれは私は大臣が見えましたら、さらにお聞かせを願いたいと思いますけれども、先ほど私が説明しましたように、最近災害が減っていない。数は減っているが、それは軽傷ばかりです。なぜ減ったか、よく調べてみると、実はメリット制といって、災害が起った場合には、災害の多い炭鉱は料金が高くなる、こういうことを労災の方できめたものですから、小さなけがは、こんなものなんか問題ないじゃないか、これは本人の不注意だ、こういうわけで公傷に認めない。そこでメリット制以来ずっと数が減っておる。しかし死亡が減らない、重傷が減らないのですから、私は、これは一つ災害は減っていない、こう判断をせざるを得ない。大きなけがが減らないで、小さいけがだけ減ったというのも、これもどうもおかしいと思う。私はどうもその点は納得できないわけでありますが、政府としてはどういうようにお考えであるか、これは大臣からお聞かせ願いたいと思います。  もう一つお聞かせ願いたいのは、事件が起りました場合に、先ほどは特免区域の話を私はしたわけですが、これは甲種炭坑も乙種炭坑の場合も同じことですし、また監督官に対する責任を追及したかもしれないというような先ほどの話でありますが、どうも監督官は人ごとのように考えておる、こう思わざるを得ないわけです。そこで、事件が起りました場合に、監督官処置が悪かった、こういうような場合には、責任を追及された従来の例があるかどうか。どういう大きな事件のときには、実はどういうように内部ではなったのだ、こういうことを一つお聞かせ願いたい。
  46. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 そうした大事故を起した場合に、監督官責任が認められます場合には、私は大臣からしかられますし、私はさらに監督部長をしかり、監督部長はさらに監督官に厳重なる注意を喚起し、さらに将来を戒めるという措置を講じた例はあります。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 具体的に……。
  48. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 先般の四月に起りました佐世保炭鉱のボク山の崩壊事件につきましては、私は大臣からしかられました。
  49. 滝井義高

    ○滝井義高君 ちょっと関連して、一つ二つ聞かせていただきたいのですが、実は最近非常に炭鉱災害が多くなってきて、たとえば私の選挙区なんかにも、今年の初めごろには三井鉱山があります。昨日は赤池鉱業所でガスの噴出があったわけです。この赤池鉱業所なんかは、昭和九年にもやっておりますし、二十五年もありましたし、二十六年もありました。また昨日ある。こういう工合に、こういう大手筋の炭鉱にも非常に災害がある。今、多賀谷議員の御指摘になったように、さらにそれらの大手よりも中小は、もちろん十人、二十人という災害はないにしても、三人、五人というような死傷者が出る災害はひんぱんに起っておる。それらのものは、もちろん落盤等によるものもありますが、主として湧水とガス爆発なんです。さいぜん多賀谷議員からも御指摘になったように、トロが走ったとか、脱線したというようなことは、これは災害としては、ある程度注意をしておけば、すぐに防止できるものなんです。ところがガス爆発や湧水というようなものは、これはやはり科学的な鉱山行政が現在の採炭の中に相当加えられてこなければ、なかなか防止ができない面があるわけです。そこで、われわれ人間の病気というものは、その体質あるいは生活環境あるいは食いものによって起るように、やはり炭鉱は私は生きていると思う。従ってその生きておる炭鉱については、その主要な災害の要素をなすものは、やはり炭層、通気、採炭法、坑内気象条件というようなものが非常に重要なものになってくると思うのですが、現在通産局の方では、災害が起ると、安保官がいち早く坑内に飛び込んで、その原因の探求についてはきわめて急でございます。しかし、しからばその起る前に、その炭鉱の、今言った生きておる炭坑の気象条件とか、採炭の方法とか、炭層の状態について、それほど急に調査をやっておるかどうかということなんです。私、具体的にお聞きしたいのですが、たとえば福岡通産局の石炭関係を扱う保安監督官というものは、一体何人おるかということです。それをまず第一に御説明願いたいと思う。
  50. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 ただいま通産局とおっしゃいましたけれども保安監督部のことと存じますので、保安監督部の方の関係を申し上げますと、私の方では本省を含めまして、約四百人の人員がおります。そのうち福岡は百十名置いておりますので、福岡におきまする保安監督部としては、かなり強化されておるというふうに考えております。そのうち半分以上は石炭関係関係しておりますので、人員の点につきまして、遺漏があるというふうには私は考えておりません。  それから技術の指導について、あるいは遺憾な点があるのではないかというようなお話がございましたが、これは監督官のほかに、なお技官もおりますし、あるいは各地の通産局の石炭部あるいは鉱山部というところにも技術者がおりますので、それらの関係官と常に密接な連絡をとりまして、あるいはさらに技術的な研究を重ねまして、技術面の指導につきましても十分行なっておるというように考えております。
  51. 滝井義高

    ○滝井義高君 今福岡だけで百十名、そのうちの二分の一は石炭関係の仕事をやっておられるということでございますけれども、そうすると、今度は地元の実際の石炭事務所と申しますか、そういうところに多分保安班というようなものがあろうと思います。そういうところには、大体どの程度の常駐者を置いておりますか。
  52. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 飯塚、直方、田川等の派遣班には、大体一カ所に五人ぐらいずつの監督官を常置しております。
  53. 滝井義高

    ○滝井義高君 そうしますと、現在日本の炭坑は非常に老朽化したために、坑道が長くなって参りまして、この坑道が長くなるとともに、古洞と申しますか、そういういわゆる昔掘った跡なんかが非常に多くなって、炭坑の内部情勢というものが非常に複雑になってきた。いわば地質と申しますか、地層が非常に荒れてくる形が掘ったために出てきておる。たとえば田川だけにしても、中小炭鉱を合せれば相当たくさんあると思う。そういう中で五人くらいでは、その炭鉱の情勢を十分監督指導するということは、私はとうていむずかしいのではないかと思うのです。そういう点で、一度起った山にやはり災害が繰り返されてきておるということは、具体的にその指導がうまくいっていないということを示している。  それからいま一つは、地図の問題があると思うのです。現在われわれが鉱害の問題で、たとえば特別鉱害、一般鉱害をかける場合に、ある部落の一局部は特別鉱害にかかっている、そうするとAという家は特別鉱害にかかっているが、その隣のBという家は今度は一般鉱害にかかっている。だから、これはおかしいじゃないか、地図を見せてくれというと、なかなか地図は見せない。そうすると、地図はありませんとか、そこは掘っていませんとかいうことで、地図がわからなくなってしまう。そうすると、今度は大手から中小に移されて、小さい炭鉱が掘っている。おそらく保安図というものは、甲種の炭坑では三カ月、乙種で六カ月に一回ずつ保安部長に出さなければならないことになっておりましょう。前の大手の掘ったときの地図がどうなっておるかわからぬようになっておるという実態が鉱害と関連して非常に多い。そうなると、あの辺は新敷である、掘ってないというので中小炭鉱が掘っていると、あにはからぬや、そこには空洞があって涌水が出てたくさんの死亡者が出たということが非常に多いのです。しかもそのために中小の山は——この前も富樫さんに言ったのですが、中小炭鉱労働者は保険料を支払っていなかった、だから労働者は死に損だ、鉱業権者なり炭鉱主が破産の宣告を受けなければ労働者はもらえないのだ、こういう事態が起っております。だんだん調べてみると、そこは昔掘ってしまった跡だ、こういうことです。そういうことは保安監督官なり通産局なんかで、施業案のときにぴたりとそこらの地図がわかっておれば、何ら問題なく防げるのです。そういうものが鉱害に関係してくる。前の人が掘ったところだと、その人が鉱害を持たなければならない、いわゆる鉱害問題がからまってくる。今ここでちょっと本を見てみますと、鉱山保安に関する諸問題として、やはり通常の陥没その他が重要な関係があると書いてあるのですが、私はやはり鉱害と保安というものは無関係ではないと思う。そういう点で、現在あなたの方の保安官は、現実の坑内の配置あるいは坑道の状態、ポンプの据え方、切羽の状態ということのみの地図を主眼にしておって、もとの掘った跡なんかというものは、おそらく隠されてしまっておるのではないか、そういうところに赤池なんかの空洞なんかからガスが突出してくる。いつかも私の付近には湧水が再々あったのですが、そういうことが関連しておるのじゃないかと思うのですが、そういう御指導はどういう工合になさっておるか御説明願いたい。
  54. 正木崇

    鉱山保安局長正木崇君 私の先ほどの御説明が不十分だったので補足をさせていただきますが、たとえば田川なら田川に五人の派遣班がおりますけれども、その五人だけがその地区の炭鉱の保安を受け持っておるわけではございませんで、福岡に常駐しております監督官が自己の担当のリストを持っておりまして、その状況によりまして次々に巡回して参りますので、人数の点につきまして監督が足りないのではないかという御心配はないように存じております。  それから鉱害問題でございますが、これは鉱山保安法にも書いてありますように、鉱害の予防は鉱業権者の義務でありますし、またそれを指導することも私ども責任でございますが、坑内の、特に何回も鉱業権が譲渡されましたあとの坑内状態というものは、きわめて複雑でございまして、把握に非常に困難を感じております。しかし、われわれとして全力をあげまして、特に出水とか、あるいはガスの突出というような事態も予想されまするので、でき得る限りの指導をいたしておりますけれども、やはり場合によりますと明確につかみ得ない事態が発生いたしまして、不幸な事件が起るし、非常に残念に思っておる次第でございます。
  55. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 多賀谷君、通産大臣に御質問を願います。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、最近、昨年八月の終りに北海道では太平岸炭砿というものが爆発いたしました。さらに三菱の大夕張あるいは三井田川、さらに住友赤平、今度の茂尻炭鉱の六十名の災害になったわけであります。実はこの炭鉱は、昭和十年にも九十五名の死者を出しております。さらに昭和十七年、さらに昭和二十五年、二十六年と今度の災害、こういうことになりました。われわれ実は現地に参りましたけれども、全く悲惨の限りでございます。もとの災害で御主人がなくなり、またその後再婚されて新しい主人がなくなっておる。あるいは母親が五カ月前になくなって今度父親がなくなって、中学校の三年生の女の子と小学校の一年生の男の子がただ孤児として残されておる。あるいはこの前の災害では次男がなくなり、今度は三男がなくなっておる、こういうように、非常な災害が相次いで起っておる。また本日の新聞を見ますと、九州赤池におきましては、大体十一名くらい死亡者が出ておる、こういうように聞いておるのですが、最近矢つぎばやに起って参りますこの炭鉱災害について、大臣はどういうようにお考えであるか。これは  一つ保安行政の最高責任者である通産大臣の所見を承わりたいと思います。
  57. 石橋湛山

    ○通商産業大臣石橋湛山君 御質問の通り災害が相次いで起っておりますことは、はなはだ残念であります。また申しわけないと感じております。先ほど事務当局からお答えしたように、通産省としてはできるだけの注意を払ってやっておるわけでございますが、それにもかかわらずかような災害が起るということは、先ほどの御質問にもありましたように、特に日本の炭鉱が老朽化して、その結果が近ごろになってひどく現われたということもあろうかと思います。なお、それらの点は十分研究し、もし人員が足りないなら人員をふやしますし、二、三日うちに炭鉱の最高責任者を集めまして、一つ十分話し合いをして、彼らに注意を促し、現場の者の不注意ということも、どうもあるようでございますから、現場に従事する君の教育等についても、十分今後やれるようにいたしたい、こう考えております。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 実はこの鉱山保安法ができましたときに、大臣御承知であろうと思いますが、所管の問題について非常にもめた。これは官庁のなわ張り争いというのではなくて、労働者の方は労働省に持ってきてくれという、こういう要求をしたわけであります。ところが、いや、これは生産と表裏一体をなすからというわけで、これは官庁が取ったというわけではなく、従来の関連があるからというので通産省になった。労働者の方は、労働者の保護をするのは労働省だから、ぜひ労働省にしてくれという、これは全炭鉱労働者の希望であったのであります。それを通産省の方が、おれの方でやるのだというので、その後やられたのですが、法律ができてから、さっぱり能率が上っていない。要するに保安の行政が完全に行われていないというのは、私は非常に遺憾であると思う。先ほど局長からも答弁があったのですが、大臣のところに統計を見せて、かように災害が少くなっておりますと言って説明をするのかもしれぬと思いますけれども、少くなっておるのは軽傷なんです。むしろ軽いけが、それで死亡重傷は依然として変らない。しかも、実際けがをして休んだ日を、千人当りあるいは百万人当りで計算をしてみますと何ら変っていない、旧態依然たるものがある。しかも最近は、ガスが非常に多いといって甲種炭坑という指定をいたしました。ことにこれは厳重にするというのですが、甲種炭坑よりもむしろ乙種の方がよけい災害が起っておる。あるいはまたこの炭鉱ガスは多いということで、特別に厳重にしなければならぬという甲種炭鉱の指定をしておるのですが、それの中から、特免区域といって、この地域だけはガスが少い、こういうように指定をされておるその特免地域から、ガスが発生して事故が起っておる。こういうことを見ますと、一体保安行政というのは、十分やっておられるのかどうか、これを私は非常に危惧するのであります。大臣なんかは、どうですか、保安行政というのが通産省にあるというようなことは、今ごろになって気がついたのじゃなかろうかとさえ思うのです。先ほども話しましたけれども一般労働行政なら労働委員会ですが、なるほど通産の委員会というのは間口も広いし、生産がおもですから——さっき局長にも話したのですが、あなたは就任されて国会で答弁をしたことがありますかと聞いたくらい、これはポケットになっておる。ですから、私はこの問題は重大に考えてもらわなければ困ると思うのです。公企業でありますと、これは大臣の引責辞職という問題が、国鉄にしてもその他にしても起るのですが、これは幸いにして私企業ですから、当面の保安管理者というのがいるので、最高責任者を呼んで厳重に警告を発するということで、大臣の責任は済むかもしれませんけれども、私は保安行政全般について考えてもらいたい。  もう少し率直に言いますと、大体保安監督行政というのは、純然たる技術行政です。これは一般の同じ石炭局の石炭行政あたりと違いまして、景気変動がどうあろうと、そんなことは関係ない。これは純然たる技術的な監督行政である。ところが、歴代の最近における保安局長を見てみますと、この前の保安局長は違っておりましたが、大体事務官である。技官はほとんどなられていない。ですから、保安局長というのは、何か局長にしなければならぬ、次のポストまですわっておってもらいたい、こういうような取扱いを通産省ではされておるのではなかろうか。これは私は直接大臣に責任があるから、大臣に聞くわけですが、あなたはそういう考えではなかろうと思う。これは純然たる技術行政ですよ。技術行政でありますから、学校において法律を学んだ方、その方が知識が少いというわけではありませんが、大学にはとにかく各学部があるのですから、その学部を出られた方を一応専門家として考えられていいと思う。その純然たる技術行政を法科出にまかせておかれるということは、いかに通産大臣がこれを軽視しておられるかを実証するものであろうと思いますが、一体どういうように保安行政をお考えであるか、一つ人事行政についてもあわせて御答弁願いたい。
  59. 石橋湛山

    ○通商産業大臣石橋湛山君 保安行政を軽視しているなどということは毛頭ございません。なるほど技術に強く関連しているに違いないのですが、技術行政を事務官出の者がやれないということもないと思う。ですから、これは何しろ故障が起ったのですから、どこかに欠点があり、われわれにももちろん非常に責任がありますから、その責任は痛感して、改良しなければならぬと考えております。ただ、先ほどお話のありました労働省に移すがいいかどうかという問題は、行政上かなり考究を要すると思う。何しろ石炭を掘っていく、鉱物を掘っていくということと保安行政は、やはり緊密な連絡をとっていかなければならぬのでありますから、これが二つのところに分れていて果してうまくいくかどうかということに私は疑問を抱く。やはり今まで通産省にあったから、何も保安というような非常なめんどうな問題をいつまでも通産省に置きたいというような考えは私は持っておりませんが、実際の仕事の上において、保安の方とたとえば石炭局とは緊密な連絡をとっていかなければならぬことが多いと思いますから、やはり制度としては現在の方がいいのではあるまいか。なお研究はいたそうと考えております。決して軽視しておるわけではない。また私が最近初めて保安のことを知ったというわけでもないので、報告はしばしば受けておりますが、何しろ最近災害が相次いで起ったということについては、何とも弁解のしようがないので、はなはだ申しわけない、はなはだ残念だという以外にないのでありますから、何とかこれを取り返すように保安行政を強化することに努めたい、かように考えます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 一般の製造工場だって、みな技術を伴っております。これらの安全は全部労働省です。基準法から安全を除いておるのは、鉱山だけであります。保安行政は技術を伴うからといえば、みな技術を伴うのであるが、坑内は特に技術を伴うから、しろうとにはわかりにくいからという意味でしょう。それならば、なぜ純然たる技術監督行政であるものについて、いやしくも局長をし私は正木さんがおられるので、先ほどから言いにくいのですけれども、率直に言いますと、なぜそういうような扱いをされておるのか。私は今まで国会で保安局長に来てもらって、いろいろ答弁を聞いたこともある。ところがこの局長は一体炭鉱を知ってるだろうかと思っておかしくなった。しかし、これは技術屋の権威者であろうと思って敬意を表して聞いておったら、後に繊維局長になったりその他になったので、何だ事務官だったのかと、はっきりわかったのですが、これは坑内保安行政を軽視している一つの現われであると、こう考えざるを得ないわけです。ですから、私は今後とも、一つ大臣にこの問題については十分考えていただきたいと思います。労働者の方は、率直に言いまして、現地の保安監督官に対して非常な不信の念を持っておる。あるいは来ても、現地に入らなかったのじゃなかろうか、あるいは酒ばかり食ろうてクラブで寝ておったのじゃなかろうか、こういうことすら現地の連中は言っておる。もちろん災害があって急遽調査に来た人は、そんなことはありませんけれども、そういうように言っておる。なるほど、現地に調査に見えた場合に、保安管理者に指示されるのが、系統からいえばその通りです。何も労働組合などに相談をされる必要は、法律的にはございません。しかし、労働組合というものが現実にあり、被害を受けるのは労働組合の組合員ですから、一言くらいは、君のところはこういう注意をしておいたから、一つ組合の方も会社に話して、その個所を注意してもらいたいと言うくらいの親切心があってしかるべきだろうと思う。今度災害が起っても、労働組合には全然どの監督官も行っていない。会社の方には行っておる。そういう点が、ささいなことでありますが、ああいう六十名からの災害が起った際には、非常に大きな問題として浮び上ってきておる。これは非常に悲しむべきことであります。今後一つ注意をしてもらいたい。  そこで、私はさらに具体的にお聞きしますが、実は予算の旅費なんか削減されておる。あなたは、保安行政については十分やっておると言われますが、旅費なんか削減するということは、保安行政を軽視しておると言わざるを得ない。北海道に行ってみますと、先ほど直方、田川、飯塚の方のことがありましたが、滝川で二人、夕張、釧路で一名ないし二名くらいしか現地には行っておりません。北海道は札幌から行こうといっても、なかなか簡単には行けないのです。ですから、私はそういう点についても十分考えてもらいたい。これは逆に私が労働省の肩を持つわけではないのですが、労働省になりますと、滝川の労働基準局だけでも三十五名おります。そうすると、直接関係者でなくても、事務あたりの連絡はそれでできる。手が足らない場合はそれが一緒にできる。こういう運用の妙が発揮されるわけですが、残念ながらそういうことが発揮されない。一名や二名やっておったのでは、連絡だけでかかってしまう。こういうことで、私はもう少し機構的にも考えていただきたいと思うわけです。しかも北海道は、災害がどんどん起っておるのに、現在女の事務員を含めて七十一名である。それを今度二名減らして九州に持ってくるということになっておる。今災害がどんどん起っておるときに、人間を減らそうということさえ行われておる。一体大臣は知っておるのか、知らないのか知りませんけれども保安行政についてどういう考え方であるのか、もう一度お聞かせを願い、三十一年度の予算編成については、どういうふうにされるかお聞かせ願いたい。
  61. 石橋湛山

    ○通商産業大臣石橋湛山君 今の御注意の点は、ありがとうございます。御注意に従いまして、ひとつ勉強するようにいたします。三十一年度はちょうど、不幸にしてこういう事故が予算編成前に起りましたから、そのつもりで今かかっております。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 さらに保安技術について、これはなかなか技術上、各国においても特効薬というのはあまりないそうでありますけれども、私は保安技術について、一つ抜本的な研究をしてもらいたい。これは炭鉱が現在非常に不況でありますから、炭鉱の資本を集めるということは無理であるかもしれません。そこで私は、政府が積極的に乗り出して、この保安技術の研究をやってもらいたいと考えるわけであります。そうしなければ、年々歳々これを繰り返すだけでありまして、結局災害が起る。そうすると検察庁も一緒に乗り込む。そうして死んだ者に対して、これは不注意で死んだのだから起訴するわけにい寺ませんから、その監督責任にある保安管理者を起訴する。そうすると、死んでおるものですから、結局証拠不十分、こういうことになって罪にもならない。罪にせよというわけではありませんが、責任をとる人もない。また役所の方も、事故が起ったからといって、別にその責任監督行政上とったという話も聞いていない。ですから、私はもう少し技術の研究と同時に、監督に対する責任その他について、はっきりしてもらいたい、かように考えます。  さらに私は今後の問題として、実は合理化法案で、あなたの方は非常に高い能率を要求されておりますが、ことにわれわれも通産委員会指摘いたしました縦坑を対象にしない炭鉱の能率、これは率直に言いまして、非常に無理だと考える。それを遂行しようとすればこういう状態になって、災害が起る、かように考えるわけです。まあ大臣の方は合理化法案では膨大な資料を作って、生産の方だけは発表されましたが、法案の方は、一体五カ年計画でどういうようになるのか、お聞かせ願いたい。
  63. 石橋湛山

    ○通商産業大臣石橋湛山君 その点、むろん考えなければなりませんことで、特に保安の技術と言いますか、これは局長からも聞いておることがありますので、そういう点については十分注意をして、さっそく三十一年度になりますか、次の予算においては、しかるべく措置をして、研究したいと考えております。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 大臣も忙しいようですから、私、別の機会に申し上げるとして、本日はごく簡単に質問を終えさせていただきたいと思いますが、実は縦坑の開さくにいたしましても、先ほど政務次官に話したのですが、これは結局手続の問題もあるでしょう、いろいろな問題もあるでしょうが、運搬系統の強化ということに尽きておる。最近木製炭車を鉄製炭車にしたり、あるいは坑内にポケットを作ったり、あるいはコンベア・システムにしておるのは、結局運搬系統です。運搬系統というと、同じ単位労働時間の中に、労働密度を大にするということであります。結局てんてこ舞いするということである。結局、運搬系統に追われるということになる。そうすると、保安というものはなかなか完全にいき得ない。私はこのことが悪いというのじゃありませんけれども、そうすると、ますます保安がおろそかになる。そこで私は生産第一主義を一つ改められて、もう少し保安に重点を入れていただきたい。まあ表裏一体であるからということでカムフラージュされて、年々歳々災害が減らないというような状態では非常に困ると思います。  さらに、先ほど実は局長にるる話をしたのですが、中小炭鉱が大体倍被害が多い。同じ千人なら千人労働者を使いまして、その統計を見ますと、ちょうど二倍災害が多い。死亡者も多いし負傷者も多い、こういう状態であります。そこで現在労災によって金が払われておるものですから、直接は腹が痛まぬという関係もあるでしょうが、なかなか保安設備について、中小炭鉱では十分な措置がされていない。さらに、先ほど滝井君からも話がありましたが、古洞に水が出たというような場合、あるいは十分ガスの検定が行われないで爆発したという例がありますが、私は中小炭鉱にも、一つ徹底的な保安監督をしていただきたい、かように考える次第です。一つ大臣の最後の答弁を求めて質問を終ります。
  65. 石橋湛山

    ○通商産業大臣石橋湛山君 御注意はごもっともであります。最近中小炭鉱災害が多いというのも、最近の石炭市況が悪くて、それだけいろいろな設備もできない、注意も足りない。ことにあなたのいう今のスピード・アップがその点において無理なところもあったということもあろうと思いますから、今の石炭合理化法によって石炭鉱業を安定するということは、保安上にも、決して悪い結果はもたらさないだろうと私は思うのであります。しかしなお石炭を掘るということと、保安ということはむろん表裏一体をなさねばなりませんから、御指摘通り、今後必ず保安の上において大いなる力を尽すように事務当局も督励しておるわけでありますから、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  66. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 炭鉱労務者災害に関する事項について、ほかに御質問ありませんか。  それではこの事項に関する質問は終了いたしました。  午後一時半まで休憩をいたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後二時十二分開会
  67. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 休憩前に引き続きまして、社会労働委員協議会を再開いたします。  いわゆる七人委員会の報告等に関する事項につきまして協議をいたしますが、政府の発言があればこれを許可いたします。川崎厚生大臣。
  68. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 厚生省におきましては、健康保険の財政の根本的改革につきまして、本年の五月、七人の学識経験者の方々に依頼をいたしまして、具体的な方策の検討をお願いいたしておったのでありますが、その結論として七人委員会の報告という文書が作成されましたので、過般発表をいたした次第であります。  この報告書におきましては、まず健康保険財政の現状を徹底的に分析をし、その基礎の上に立って、保険制度全般にわたって強力適切な諸対策を実現する必要のあることを述べているのであります。  厚生省といたしましては、この報告書に述べられております諸般につきまして、目下具体的な実施方策を事務当局検討させている最中でありますが、何分にも報告書は非常に広範囲にわたりまして対策を立てておりまして、実施に当りましては、単に一健康保険の問題としてばかりでなく、厚生行政の各方面においても非常に大きな影響のあるところでありまして、また対策案の各問題の相互間にも、種々調整を必要とする複雑な関係が存在をいたしておるのであります。また政府の諮問機関であります社会保険審議会におきましても、今日自主的に健康保険の財政対策について検討中でありまして、近くその結論が出るものと思われますが、これらをも勘案いたしまして、省としての方針を固め、社会保険、社会保障制度両審議会に諮問いたしました上、明春の通常国会におきまして御審議を願うことにいたしたいと考えておるような次第であります。
  69. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 以上で政府よりの発言は終りましたが、次に発言の通告がありますのでこれを許可いたします。滝井義高君。
  70. 滝井義高

    ○滝井義高君 ただいま厚生大臣から、七人委員会の報告を受け取った後における政府の考え方について御説明をいただいたのですが、きわめて初めは処女のごとく終りは脱兎のごとしというのが、大臣の今の報告のようでございました。かつてわれわれが二十二特別国会で、健康保険の赤字問題を論議している過程においては、大臣の七人委員会の報告を待つことは、まさに旱天に慈雨を待つがごとくに待っておれらた。いよいよこれが出て見ると、今のようなことでございます。私たちは、今の御答弁のような状態では、政府がほんとうに日本の社会保険の赤字について熱意を持ってやっているのかどうかということを疑わざるを得ない。と申しますのは、七人委員会とも重要な関連を持っております医療費体系というものは九月に出るというのが二十二特別国会を通じての大臣のお約束でありました。また七人委員会の結論というものは、少くともこれは九月には出ます。あの七月の二十二国会が終る際に、七月には中間の御報告を出すという御約束をしたではありませんかと言ったら、大臣は、それは九月になると言っておりました。実際は十月になりました。十月に報告が出た後に、多分大臣は新聞記者会見においても、政府がこれに対するまとまった考えを出すのは十一月五日から十日までの間に出すのだと、こう言明もされているように私は聞いておるのでありますが、どうも今のお話では、いよいよその態度が出てくるのは来春の通常国会だ。こういうことになれば現在の日本の社会保険の赤字の問題は、ずるずると引き延ばされていくという事態が起らないとも限らぬ。大臣は今までいろいろ御言明になった点と、今の御言明とは、だいぶ開きがあるように考えられるのですが、もうちょっと、その間大臣のはっきりしたお考え、いわゆる政情不安定でございますけれども、いずれにしても大臣の施策というものは、たとい内閣がかわっても、次の内閣には引き継がれていくべききわめて基本的なものだと思いますので、もう少しはっきり一つお答え願いたい。
  71. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 お断わりをいたしておきますけれども、速記録をお読みいただければただいまの答弁はきわめて明瞭なことではないかと思うのであります。来年の国会におきまして御審議を願うということは、つまり法案関係あるいは予算関係であります。それまでに、いかに早くやりましても、予算と関係のあることでございますし、これは本年の予算と関係のあることではなく、明年度の通常国会における予算において処理をいたすべきが根本対策の当然の帰結だと私は思うのであります。対策はそれ以前において処理をいたしまするから、御安心を願っておきたいと思うのであります。  また政情不安定と申されましたが、政情は、不安定であったものが安定化しそうな形勢でありますので、保守党が一本になりますれば、強力な施策を断行できますし、内部でいろいろ議論をいたしましても、一本にきまればこれは国会の多数決等によりまして、強力な政治が展開できますから、御安心を願いたいと思います。
  72. 滝井義高

    ○滝井義高君 大臣は少し考え方が違っておるではないかと思う。少くとも七人委員会がこういう対策を出したならば、内閣の根本的な対策というものは出てこなければならないはずである。あなたは厚生省にわざわざ、日本の社会保険医療に関する根本的な対策を検討するために、企画室と申しますか、作っておられるはずです。七人委員会の答申をごらんになっても、社会保険を根本的に赤字の解消をやられるとするならば、まず医療保険の方向づけの基本線を少くとも出さなければならないということをいっておる。私は二十二国会でも、社会保険に関する基本的なこととして、社会保障の経済六カ年計画に見合う年次計画というものが必要だ、社会保障六カ年計画というようなものが必要じゃないかと言ったら、大臣はその通りだ、そういうものを作るということは、これは本会議の質問を通じてもはっきりしたし、予算委員会の質問を通じても、はっきりされておるはずです。赤字対策としていろいろ法案を出すことは、これは来春でかまわぬと思う。その前に、少くとも日本の社会保険の方向づけの基本的なものは出してこなければならぬと思うのです。少くともこういう方向へいくんだ、従ってその方向はこういう工合になるから、通常国会にはこういう工合に具体的に法案として出してくるんだという、まずその法案の出る前抗の基本的な、日本の経済の六カ年計画に見合う基本的な計画の構想というものが、もう今ごろ出てこなければならないはずだと思うのです。少くとも十月十日に七人委員会から出てから一カ月たっておるが、一カ月事務当局は遊んでおったわけではないと思う。まあ大臣がニュージーランドからお帰りになったら、少くともその具体的なものについて、まとめたものは御発表になるおつもりであったのじゃないかと私は思うのです。少くとも、臨時国会というものは、いろいろ延びておりますが、当初の予想では十一月の初句には開かれるという予想もあったわけです。今、私が大臣に聞かんとするものは、具体的な法案の問題とか、予算がどうだということは、あとでまたお聞きしてもかまわぬのですが、少くとも赤字対策に先行しなければならぬところの基本線なり、年次計画なりというものはどういう考えかという、これはわざわざ予算まで出して、税金を使って企画室でやっておられるはずだから、その基本方針だけをまず明確にしてもらわなければならぬ。
  73. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 社会保障六カ年計画は、年内に確実に発表いたしたいと思います。それからただいまの、まあどういうことでお話しになったのか、非常に抽象的でありますが、具体的にお答え申せば、今回の健康保険に対する財政対策の考え方は、七人委員会というものに私は非常な信頼を置いてお願いしたわけでありますから、百パーセントまでは行かなくても、七人委員会の案が基礎になったものを予算案その他に盛り込みたい。しかし御承知のごとく、社会保険審議会並びに社会保障審議会という正式の機関があって、それぞれ労使並びに中立委員の立場からいろいろな御議論のあることと思いますし、その方面との十分なる協調を得たいという関係もありますから、その方々の意見をも徴した後に、最終的な線を出すということに順序はなると思います。
  74. 滝井義高

    ○滝井義高君 七人委員会の報告が基礎になったものを予算案に盛り込みたいということでございます。そういう御答弁がありましたので、少し横道にそれるかと思いますが、先般大臣がわれわれに、協議会であったかと記憶しますが、今年自分の方としては、千四百億をこえる要求を大蔵省にやっておるのだという、いわゆる予算要求の基本的な構想を多分私聞いたと思いますが、その中においては七人委員会とは違った重要な線が出ておるのです。と申しますのは、大臣の方では、社会保険については一割五分の国庫負担というものを要求せられておるのです。そうすると、七人委員会は、必ずしも社会保険における一割五、分の国庫負担というようなものは何ら報告書にはうたっていないのですね。これは私は日本の今後の社会保険運営の上において、国庫負担をとるか、それとも七人委員会のような報告の線でいくかということは、日本の社会保険の性格を規定する上に重要な一つの分岐点を形成する私はポイントだと思うのです。そうしますと、大臣は七人委員会の報告を基礎にした予算要求をやるのだ、もうすでに予算折衝は始まっておる。少くとも防衛分担金を除く以外の予算というものは、大綱的には大蔵省ではもうすでにほぼ見通しがついておるという情勢が来ていると思うのです。やがて通常国会が開かれるとするならば、来年の参議院選挙を控えて、予算というものは年内にあげなければならぬという情勢にある。従って大蔵事務当局としては、予算の査定というものは相当進捗しておる。そういうときになって、社会保険の一割五分の国庫負担を必ずしも七人委員会は要求してない。こういう基本的な大きな食い違いの問題を、予算は来年であるから、それまではおれの方は答弁をする必要はないというようなことでは、これは今の危機に直面する社会保険をまじめに検討していく態度としてはどうも私は納得がいかない。そういう基本的な点について、大臣は、あくまでも要求通りの国庫負担の実現に邁進をしていくのか、それとも今言われるように、七人委員会の報告を基礎にするならば、その一割五分の国庫負担は撤回されるのか。この点、予算委員会以来大臣の御答弁は、来年は少くとも一割の国庫負担を確実にやるんだという御言明であって、七人委員会の答申はそれとは違った状態に出てきておる。こういう点、基本的な大臣の態度と七人委員会の報告の態度とは違う。こういう点、きわめて重要な段階に参っておるわけです。私たちは、大臣が国庫負担をあくまでも貫いていく、七人委員会の意向は無視してでも貫いていくということにでもなれば、臨時国会が始まって早々にでも、国庫負担の実現のこの委員会の議決でもしなければならないのではないかとさえ思っておるくらいでありまして、その点、大臣に明確にお答えを願いたい。
  75. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 これは国会における所信の発表がおくれまして、まことに恐縮でありますが、昨日健康保険組合連合会の大会におきまして私が申しましたことと、同じようなことをこの際申し上げたいと思います。  七人委員会の答申は、私が最も信頼をして、また民主党の政調会から勧告がありまして設けた委員会でありまするから、その委員会の答申は、百パーセントに尊重したいと思っておるのであります。またそれに対する批評をこの際述べることは、せっかくの膨大なる、いわば日本でいろいろな審議会はありましたけれども、今までの審議会を見ておりますと、これは批評してよろしいと思うのですが、大体官庁が書いたものを、一週間前から小委員でも設けて練り直してやる、一夜作りではないけれども、少くとも一週間作りというのが、従来の審議会の傾向であったように思うのであります。しかるに今回の七人委員会は、合宿作業、あるいは自分の職業をむしろ一定期間放擲してまでも非常な御努力を願って、いわば日本におけるビヴァリッジ報告とまではいかずとも、社会保険白書といって毛よいものができたと思うのであります。その意味において、私は七人委員会から答申のありましたことは、百パーセントとまではいかずとも、それに近い信頼を置いております。  ただ私どもの感じと多少違う点は、経済的な合理性を貫くの余り、国庫負担の問題については、政治的な要請に対して必ずしも、ある意味においては政治的でなかったということはいいかもしれませんけれども、その点、これはやはり政治家として判断すべきものが、七人委員会の報告を越えてあり得る、それが私は国庫負担の問題ではないかというふうに今日考えをいたしております。  社会保険審議会、社会保障制度審議会がどういうお考えであるか知りませんが、国庫負担の問題については、私のみならず、両審議会の委員の大多数の方は、一定率の国庫負担をお考えになっておると思いますので、それらをも取合せて考えなければならぬ。また政党政治でありますから、新たに立党を予想されまする保守新党においては、おそらくこの問題についての相当な前進政策をとると思いますので、それらをも合せまするならば、国庫負担の問題については、ひりと七人委員会考え方にのみ支配されることはあり得ないということは、昨日健康保険組合連合会の総会においても言明をいたしたことであります。それを演繹して今日申し上げておるのであります。  また、先ほど以来滝井委員からいろいろお話がございましたが、七人委員会もいろいろ国庫負担の問題につきまして分析して、aからeまで、またそれに対して対策としてaから同じくeまで、非常な深い掘り下げをして書いてありまするけれども、しかし国庫負担というものが、赤字が出たからといい、あるいは元来すべきものだという議論は成り立たなくても、しかし今日の医療補償の充実の段階において、ある部分におけるところの国庫負担は、当然要求してしかるべきではないかというようなことも書いてあるのであります。これは答申の仕方がいろいろ多岐にわたったものでありまするから、国庫負担がただいままで各系、各団体からいわれておるような、国庫負担二割をやれとか、一割五分を断行せよというような端的な要求にはなっておりませんけれども、国庫負担というものを否定した考えではないと私は思っております。これらをも勘案をいたしまして、必ずこの問題については国民の間に相当政治的な要請が起る、その政治的な要請の方にわれわれはウエートを置かなければならぬ。だから七人委員会の答申というものを尊重するということは、国庫負担の問題については、やや私は七人委員会の出したるところの結論よりも、より高い政治的要請というものがあり得るという考え方に立っておるということを率直に表明いたしておきます。
  76. 滝井義高

    ○滝井義高君 そういたしますと、大体大臣の政治的な御答弁はよく了承がいきましたが、具体的には、今年度大臣のもとで要求をいたしております一割五分の要求の線は、そのまま大蔵省に要求をしていくと、こう了承して差しつかえありませんですね。
  77. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 今私どもから出しておりまするのは、財政の健全なる収支を立てたいという形から、一割でなしに一割五分を出しておる。しかしこのことは、七人委員会の答申以前の話でありますから、七人委員会においては、患者も負担をしろとか、あるいは標準報酬も、先般国会で否決せられたのでありますが、さらに強力な措置を講じて引き上げをせよというような答申もありますので、それこれ勘案をいたしますれば、今後予算上の変化というものはあり得る。予算要求の変化はあり得るが、私は当初から述べておりまする通り、最低一割の国庫負担だけはやりたいということを、公式の機会においても言明をし、今日に至っておるのであります。これは七人委員会の答申を得ました今日といえども、各般の政治情勢は、国民健康保険がすでに二割の国庫負担をしておるのに際して、一方は労働者という特殊の層ではありまするけれども、すでに千五百万という多くの被保険者並びに家族をかかえている以上は、やはりこれらに対するところの医療給付費の赤字を発端として、財政収支均衡策のためには、一割程度のものは最低線として要求をしなければならぬのではないかというふうに、今日は信念をいたしておりますが、事務当局どもこれらの問題について深い検討を加えておる際でもありまするから、最終的なお答えは、近い将来また公式に発表したい、私の考え方としては変りがないということを、申し上げておきたいと思います。
  78. 滝井義高

    ○滝井義高君 大蔵省に財政懇談会というものがあって、すでに昨日でございましたか、国家の歳出緊縮の基本方針とでもいうようなものを発表しておりましたが、その中においては、社会保険の赤字のために、国が金を出すべきでないというような意味の意見が実は出ておるのです。これは財政当局としては、あるいは当然かとも思われるのでございますが、すでに大蔵省の財政懇談会という、いわば大蔵大臣をバック・アップする懇談会にそういう意見があり、七人委員会自体が、なるほど国庫負担をするということは言っておりますが、しかし定率をぽっとかける式のものではないということは、これをよく読めばわかると思うのです。そういう場合に、ある程度諮問機関的なものがそういう意向を持っておるということは、今後の日本の社会保険の推進の上に、私はやはり考えておかなければならない重要な点ではないかということを、意見として述べておきます。  次に、この答申を、私は今日はこまかく御質問いたしたくはございません。ただその七人委員会の報告をめぐる一、二の疑問点だけをお尋ねしたいのですが、この七人委員会の報告と、先般も私御質問したのですが、厚生省で昨年以来非常に熱意を持ち、七人委員会のこの報告と同じように、私たちが貴重な資料としてその具体的な成果を念願いたしておる医療費体系との関係でございます。大臣は、この医療費体系と七人委員会の報告との関連を具体的に先般私が質問したときには、明白な答弁をいただけなかったのですが、どうお考えになっておるのか。七人委員会のこの日本の医療の現状分析は、昭和二十四年を基礎にしてやっております。医療費体系は、御存じのように昭和二十七年を基礎にしてやっておるのです。二十七年と二十四年では、日本の経済情勢というものは相当違っておりますので、出てくる結果というものは、ある程度違ってくるかと思うのです。違ってくることが当然ではないかと思う。やる人も違うであろうし、とった資料もある程度相違しておるであろうから、結果は違うかと思いますが、この調整の問題です。現在、すでに一つ作業が進行中だし、一つはでき上ってきたわけですが、大臣はどういう工合にお考えになっておるか。
  79. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 もとよりこれは相関性は相当にあると思いますけれども、しかし健康保険の赤字対策ということと、新医療費体系というものは、やはりスタンディング・ポンイトが違うものであって、全然別個のものであると私は考えておるのであります。新医療費体系は、なるべく早く発表いたしたいと思っております。巷間には初診料をどうするかというような問題につきまして、すでに相当センセーショナルな記事なども現われておりますが、いまだ最終的に決定したものでもありませんし、現に私は、相談には応じておりますけれども、進行しておりまする事態の報告だけを受けておるわけで、内容については、まだ専門家の間で十分検討した後に私どもの手元に出したい、そういう状態でありますから、新医療費体系の問題は、多少時間がかかると思います。しかし、これは昨年のような年末差し詰まった国会の直前に出すというようなことなく、なるべく今月の下旬までには新医療費体系を整備して発表いたしたい、かように考えて準備を進めておるような次第であります。
  80. 滝井義高

    ○滝井義高君 そうしますと、大臣は七八委員会の結論と新体系とは、全然別個のものとして十一月の下旬にお出しになる、こういう御答弁でございますが、七人委員会のこの結論的なものと申しますか、主力を置いた点はイ、ロ、ハ、ニ、ホの五つあるのです。薬品、衛生材料、医療器具を廉価に提供する方策、医療機関の負担軽減方策、診療報酬支払い方式における技術料の尊重、結核入院の事前審査、政府発行請求書による受診、こういう五つの点が、まず第一に主力を置いて実行すればやるべきものじゃないかという意味のことを言っておるのです。この五つのものを見てみますと、これは医療費体系に重大な関係を持っておる。物と技術とを分離するということになれば、物は原価主義だという考え方は、即そのまま薬品、衛生材料、医療器具の価格の問題に関連してくる問題なのです。あるいは技術料を尊重するということは、即そのまま医療費体系にやはり重要な——物と技術を分離した場合の技術料をどうするかということは、重要な関連があるわけです。従って、七人委員会の報告は、私も確かに日本における画期的な労作だと考えております。こういう画期的な労作というものは、当然来たるべき日本の医療の革命的な医療費体系には、私は取り入れられてちっともさしつかえないのじゃないかと思うのです。その点、今のように分離をしてお考えになるということになれば、日本の少くとも医療の基本的なものを形成するものとして、おそらく健康保険の死命を制していくだろうと思うのは、私はやはり医療費体系ではないかと思うのです。そういう意味で、全然これを別個に考えるということは、七人委員会のせっかくのこれだけの労作を惜しいと思います。むしろこの際大乗的な見地から医療費体系を出すことが少しおくれてでも、十二月の中ごろになってでも、これを取り入れて十分脈絡をつけてやることの方がいいの荷ないかとさえ考えられる一節があるのですが、その点、もっと基本的な医療費体系と七人委員会の報告との関係を、もうちょっと明白にしていただきたいと思います。
  81. 曾田長宗

    ○医務局長曾田長宗君 技術的な点でございますので、私からお答え申し上げたいと思います。しかもこれは薬務局あるいは保険局の方にも関係のあることでございますが、かわって私要点だけ申し上げます。  ただいま滝井委員から言われましたように、この七人委員会の報告という中に、新医療費体系と関連のあることが、かなりあるじゃないかというお話でございますが、確かにあることはあるのでございます。しかしこの根本的な態度は、大臣からお話がございましたけれども、この非常に広範にわたってはおりますけれども、七人委員会の報告は、主として当面しておる健康保険及び船員保険の赤字対策という立場に立って論じられておるわけであります。私ども昨年からいろいろ検討いたしております新医療費体系は、これは保険の赤字をどうする、こうするということを、必ずしも主眼とはいたしておらぬのであります。この日本と申しますか、わが国の医療費の支払い方というものを、より合理的に内容のわかるような建前にいたしたいというふうに考えております。再々言われておりますように、この物に対する報酬というものと、それから医師の技術料として支払われる部分というものとを明確にいたしておきまして、そしてこの時間の推移というものに応じた動きというようなことは、物は物の価格の変動というものによって調整して参るというような考え方が正しい筋ではないかというようなことで、それをいろいろなこまかい点について検討いたして参ったのであります。この限りにおきましては、私どもは再々申しておりますように、との医療費の増高あるいは下落というようなことを、いわゆる新体系に切りかえたからといって、この変化が起ってくるというようにはなるべくしたくない。なるべく今まで通りであって、そしてより合理的な姿に近づけて参りたいという考え方をいたしておるのであります。でありますから、ここでいろいろ例のこの差額徴収とか、あるいは一部負担とかいうようなことが論じてありますが、かようなことは、新医療費体系におきましては、一応問題外として論及いたしておるような次第でございます。このこまかい点について、全然関連がないとは申し上げかねますけれども、この趣旨においては二本建で問題を検討してよろしいものと承知して検討を進めておる次第であります。
  82. 滝井義高

    ○滝井義高君 二本建でやっていただいてけっこうだと思いますが、私はどうも非常な関連がある感じがして仕方がないのです。というのは、日本の社会保険経済を離れて新体系を作られるならば、それでけっこうだと思います。しかし、少くとも当面百億をこえる赤字を持っておる日本の社会保険を基礎にして、その基礎の中で合理的な医療費体系を作ろうとするならば、これはそういう抽象的な医療費体系では、お出しになっても現実性がないということで、これはだめだということになる。学者のいわゆる頭で描いて、そうしてまあみんなに理想を教えるというだけのことならいいのですが、現実に政治の舞台でやろうとするならば、私はそれではもうものの役に立たないのじゃないかと思うのです。やはり少くともこの赤字対策というものは、当面の赤字ばかりをうたっておりません。おそらくこれは私は一つの内閣ができて、これに出ておるだけを当面の赤字対策としてやれたら大したものだと思う。むしろ、これは日本の現実から見れば、相当多くの理想図をこの七人委員会の報告は描いておる思う。それをどうも、これは現実の赤字対策であって、私の方の医療費体系というものは、これはまあ何と申しますか理想的なようなことをおっしゃるけれども、私はむしろ逆じゃないかと思う。医療費体系で出てくるところの初診料六・二〇一二点、再診料の四点とか、処方箋をゼロにするということの方が、この報告よりか、もっと日本の医療の死命を制する現実性のある重要なものであると思う。私はむしろそれは逆じゃないかとさえ思われる点があるのです。そういうことは、いわゆる内容に入りますから、今日は申し上げませんが、次にお尋ねをしたいのは、現在社会保障制度審議会においても、厖大なと申しますか、いわゆるそれぞれの団体に配って、日本の社会保険医療費制度というものをどういう工合にしていくか、どういう支払い方式にしたらよいかという、非常に厖大な諮問案を出してやっておることは、これは大臣も御存じだと思います。すでに社会保険審議会も、この七人委員会の答申を基礎にしたか、あるいはこれに負けないりっぱなものを作ろうとしておるかどうか知りませんが、とにかく赤字の問題について始めております。それから七人委員会の報告、医療費体系と、現在日本の百億をこえる政府管掌健康保険赤字解消の問題に、いわば四つのものが取り組んでやろうとしておるのですが、一体それらのものから出てきたいろいろな意見というものは、おそらくこれはいろいろ食い違いが出てくると思います。それらの群盲象をなでると申しますか、この百億の健康保険の赤字をいろいろな人々がなでておるのですが、厚生省はどれをとらえたらよいのか。七人委員会は、大臣の個人的なものかもしれませんが、こういう権威あるものを出しておる。社会保障制度審議会も出すであろう、社会保険審議会も出す、医療費体系も出てくる。こうなった場合に、大体厚生省はどうやるのですか。それらのものは、これは諮問機関だから、幾ら答申案が出てきても、最終的には答申案通りにやったことはないのであって、大がい工合が悪ければ変えてしまうということであるが、やはり基本的な日本の健康保険の赤字をこういう方向でやるのだという、基本方針だけは明白にしていただきたいと思う。いろいろこまかい点は問題ないと思うのですが、とにかく次の臨時国会から通常国会にかけては、おそらくこの四つのものが出てくるだろうと思います。その場合に、どういうさばき方をやるのか。前は二つでございましたが、今度は四つの点を合せて明白にしていただきたいと思います。
  83. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 これは私が責任者でありますから、お答えをいたします。政情のいろいろな変化がありましたが、保守新党が結成をいたされれば、非常に強力な施策ができるということは、見通しがつくと思うのですが、果してそれがいい施策になるか悪い施策になるか、われわれが今後努力をいたさなければならないのであります。とにもかくにも、政局に対する責任を十分にになう党ができるわけでありますから、社会保険審議会、社会保障制度審議会の御意見も十分伺いますが、最終的には党の政調会できめたものを今度は断固断行いたします。
  84. 滝井義高

    ○滝井義高君 そういうことでございますならば、あまり詳しくはできませんが、大体国庫負担その他の問題については、強行されるそうでございますから、そのくらいにして、もうあとは、こまかい点は、質問がいずれ具体的になってからやりたいと思います。  最後に少し、あまり関連がないことですが、保守新党ができて、大臣が厚生大臣であられるかどうかはわかりませんけれども——これはちょっと七人委員会の報告と関連はありませんが、大臣がおられますのでお尋ねしておきたいのですが、実は森永の中毒事件に関連をいたしまして、大臣は、多分九月の二回目の協議会であったかと思いますが、現在の日本の公衆衛生というものは、やはり末端の充実が必要だ、国防省を作るよりか、まず社会福祉省というものを先に作らなければならないんだという意味の御答弁があったのです。ところが、最近のこの地方の行政の状態を見てみますと、すでに青森県、秋田県、福島県、富山県、滋賀県の五県においては、衛生部を廃止をした。衛生部を廃止するということはどういうことかというと、まあ森永の中毒事件のような、食品衛生監視員というものの機構が、具体的には小さくなり、そしてだんだん人数が必ずしも多くはならないということを意味するわけです。あの協議会の答弁においても、現在食品衛生関係の監視員というものは、実際の定員の六割か七割しかないのだということを、大臣は御答弁になっておる。しかも兼務というものが相当おる、こういうことなんです。自治法では、人口百万以下の県では、少くとも四部は置かなければならないことになっている。人口百万ないし百五十万では六部置かなければならぬことになっている。ところが百万以下の県が衛生部を廃止するというのなら、まあまあ財政上やむを得ないということもある。ところが、百万から百五十万くらいの、六部置かなければならぬようなところが、廃止の方向にある。しかも現実にそういう廃止というものは、だんだん燈原の火のごとく広がって、地方財政困窮のために、まず予算を断ち切るところは何かというと、これは昔からよく言われておるように、学校の教育費か、あるいは衛生関係なんですね。もうこれはさまっておる。すでに日本の行政の状態は、そういう状態にある。学校の先生が多い、先生をちと減らさなければいかぬ。先生のベース・アップを廃止しなければいかぬ。衛生部を減らそうじゃないか。衛生部を減らすために、一つ民生部と一緒にしよう、労働部と一緒にしよう、こういう形が出てき出したということなんです。これは現在の日本の医療というものが、あまりにも治療医学というものに重きを置いて、病気になってからあわてるけれども、まず病気になる前に手を打って、そうして治療費を節約しようという点が欠けておる。健康保険の赤字が多いということは、予防医学が行われていないということを意味する以外の何ものでもない。こういう点は、現在地方財政の赤字のために、ますますそういう状態が激化してきている。しかも保健所というものはあるけれども、いつか私が申しましたように、これは昔のサービス行政として、性病の予防、結核予防のためにできた。保健所というものが監督機関になってしまっている。いつかもここで言ったのですが、官庁のうちで一番おそろしいところはどこかといったら、私は税務署が一番おそろしいと言うかと思ったら、今は税務署とは言わないそうです。一番には労働基準監督署、二番目は消防署、三番目が保健所で四番目が税務署ということになっているということです。こういう状態から考えてみると、現在の保健所というものが監督行政になって、いわゆる予防的なサービス行政というものがだんだんなくなっている。こういう点で、保健所というものは監督行政で、いい医者も雇えないで、そういうことなら一つ予算を削ろうじゃないかということになって、おる。そこで日本の社会保険の赤字を解消しようとするならば・予防的な面にもっと厚生大臣は力を入れてもらわなければならぬのじゃないかということなんです。森永事件で末端行政を強化しますと言ったけれども、現実はそうなっていない。これはもう都道府県の予算書を出させて、府県の状態を大臣ごらんになると、衛生部の予算というのは非常に虐待を受けているということがおわかりになると思う。保健所の医者なんというものは充実しておりません。こういう情勢なんです。しかも、結核予防費なんというものも削られてしまって、兵庫県とか東京都のような富裕県ほど、公費負担の結核予防費の四分の一の負担を出していないということなんです。これは七人委員会にも数字として出ておる。私もいつか指摘いたしましたが、こういう状態は、明らかにこの健康保険の赤字の問題とともに、もっと予防医学というものを大胆率直にやる以外には、日本の医療費の赤字は解消できないのじゃないか。病人がなければ食えないという制度じゃなくて、病人が少ければ食える、医療担当者が食えるという体制をこの際作ってもらうことを最終的にお願いし、大臣のそれに対する御構想をお願いして、私はこれで終りたいと思います。
  85. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 ただいま御指摘ないしお話しをいただいたことにつきましては、私も全く同感でありまして、現に閣議あるいは地方財政関係懇談会におきまして、新聞紙面には現われておりませんが、先般来内部において相当論争を続け、かつ衛生部の廃止などにつきましては、正面から反対をいたしておるのであります。先般来その他の微妙な問題もありまして、官房の方では発表いたしておらなかったのでありますが、事実は、先般の地方財政懇談会におきまして、厚生省の外郭団体の補助金、あるいは零細なる補助金の削減等が、地方財政の問題とからんで相当問題になりました。その際に私どもも申しておりますし、また閣僚も大体承認をいたしました線は、今回地方財政の赤字を解消するために、第一は給与費の問題、第二は各種の委員会の整理の問題、第三は補助金の削減、零細な補助金を切ろうという動きがあるが、そのうち農林経費などは、河野農林大臣が今回考え方を変えられまして、何か基金的なものに転換しようという新しい試みを持っておられるようでありますから、従って問題になるのは、厚生、建設両省の補助金関係のものが、相当問題になるのであります。その際に私どもの申したのは、社会保障の関係は、もしこれを切るということになれば、たとえば売春婦の更生保護の問題にしても、世帯更生運動にしても、あるいは産児制限、受胎調節の問題等、みな零細なものだが、それぞれ切れないじゃないか。切るよりも、これを引き上げなければならぬ問題が多々あるのであるから、むしろ国が大きな負担をして、地方財政に負担をかけないようなやり方にしなければならぬということを力説して、その考え方には各閣僚も賛成をいたしてくれておるのであります。しかして問題の点は、これほど社会保障の実態がだんだん拡大をして、現に生活環境の問題が非常な重大な問題になっておるにかかわらず、地方では東北の六県あたりは衛生部を廃止したりなどする、非常に残念な現象だと思います。あの際に、われわれもう少し声を大きくして奮闘しなければならなかった点は、御指摘通りでありまして、全く私といたしましても、大体衛生部の廃止の問題は、今年の二月ころからすでに実施をしておるようなところもありまして、問題がちょうど中途になったような形で、声をあげるのを失したような形になっておりますが、今はこれ以上衛生部というものを廃止してはいけないということを、特にただいまのお説のような趣旨で、相当閣内においても検討いたし、また知事の間でも一ぺん廃止しておるところが、どうもあまりうまくいかぬ、むしろいろいろな問題が出てきて、復活をしなければならぬような傾向にある県も一、二あるそうであります。私は日本の行政機構の整理、ことに地方財政の赤字問題からいたしまして、機構を整理する場合、ちょうど今のお説のように四部ということになりますれば、衛生部というものは、なかなか困難だと私は思います。現に民生部とかあるいは土木部とかいうものの比重が、今日衛生部よりも多い県も相当あると思います。従ってそういう中では、やはり民生部の中で奮闘してもらう以外にないと考えておりますけれども、六部ということになりますれば、当然日本の福祉国家を将来形成したいという憲法の趣旨からしても、また国民の声といたしましても、衛生部を存置するのが私は当然ではないかと思います。他の部がだんだん縮小していっても、衛生部を六部以上のところで落すというようなことは、今日の日本にはあり得ない措置だというふうに考えをいたしておりますので、幸い滝井議員のようなお説が出たことは、私どもも非常に力強く感じておるような次第であります。諸外国を回ってみましても、すでに保健大臣、衛生大臣というものも、各国には相当おるのであります。そのほかに社会保障大臣もおるわけでありますから、従って、その点からいたしますると、衛生部のこれ以上の廃止の問題については、相当大きな政治問題として、私は与党の内部においては奮闘いたしたいと思いますから、これは超党派的な問題として御後援を願いたいと思うようなわけでございます。
  86. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 岡本隆一君。
  87. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 私も七人委員会の報告が出まして、それをめぐる来年度予算に対して、厚生大臣がどういうふうな態度をもって臨まれるかという基本的な構想をお伺いしたいと思います。滝井君からも、かなり掘り下げた質問がございましたが、一、二の補足的な質問をいたしたいと思います。  七人委員会の報告を見ますと、赤字の原因の一番大きなものを、結核対策に見ておるように思うのです。政府が、結核予防法を作っておりながら、それに対するところの予算措置が少いために、全部それを保険財政に転嫁してしまった。このことが、結局は健康保険の赤字を築き上げてきた。また同時に、政府が保険財政の収入に見合って、それに伴うところの支出を考えないで、支出をどんどんサービスとして大きくしていく、そこに大きな赤字の原因が出てくる、こういうふうな結論をいたしておるように思うのであります。そこで、来年度の予算を編成するに当って、結核対策というものをどのように大幅に増額していかれるか、こういうふうな点についての大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  88. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 健康保険の問題に関連しまして、結核対策が非常に大幅に論ぜられておることは、御指摘通りであります。ことに、先ほど答弁をいたしましたが、「結核対策との関連」という章まで設けまして、そして結核公費負担制度というものを充実しなければならぬという所論が相当に書かれております。それから国庫負担の問題でも、一律に国庫負担をするというよりは、むしろ結核対策と関連をして、結核の部分について補助をすることの方がよいのではないかと思われるような示唆をこの中に含んでおることも事実であります。昨年民主党の内部におきましても、国庫負担を今日の十億の定額負担が実施をされますときに、結核の部分につい一負担をしたらどうかというような御議論もあったほどでありまして、これは相当の研究問題だとは思いますが、先ほど私が答弁をいたしましたように、健康保険につきましては今日、各方面の情勢を勘案して最後にはきめることでありますが、医療給付費に対する一割国庫負担ということを一応考えて進んでおるわけでありますが、結核対策全般につきましては、従来の補助が実際結核予防法に規定されておるように行っておらぬというような関係で、公費負担の率を引き上げようということで、今日三分の二の公費負担ということで予算編成に臨んでおるようなわけであります。
  89. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 昨日厚生省に、相当結核療養所の患者及びつき添い婦等が団体交渉と申しますか、団体陳情に参っておるようでございますが、少くも社会保障というものは、結局は貧と病の悩みを解消するということが重点でなければならないのであります。なお、ああいうふうな陳情が続けられておる。このことは、来年度予算においても非常に関係があると思う。もしも政府が従来通り方針をとっていかれるならば——健康保険において、あるいはまた結核対策費において、従来通りのような方針をとっていかれるならば、また厳冬のころに同じような陳情攻勢で出てくると思う。こういうことは私は好ましくないと思う。このことは、やはり政治の貧困を示しておると思う。従って、そういうことがないようにやっていただきたいと思うのでありますが、それについて、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、またどのような措置を昨日はおとりになり、今後はまたどのような方針をとっていかれるか、それをお伺いしたい。
  90. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 結核対策につきましていよいよ充実をしていかなければならぬことは、ただいま数字をもって申し上げた通りでありまして、ぜひとも本年は予算の中におきまして結核対策を充実したいと考えて、従来より飛躍的な措置をとるつもりであるのであります。本年度の予算編成に臨む私ども考え方といたしましては、第一に国防費が、もしかりに本年の初冬におきまする日米関係の相互分担金との関係からいたしまして、多少でも自主的軍備費というものがふえる、分担金の方は減るけれども、自主的な軍備体制の金がふえるということならば、それと見合うような社会保障費にしてもらわなければならぬ。社会保障費というものが特に防衛費と対照的な性格を持つものでありますから、これに重点を置いてもらわなければならぬということを、厚生省として申しておるのであります。党の方の意見も、だんだんそういうふうに固まってきておるように聞いております。  第二の点は、ボーダー・ライン階層に対するところの政策を強力に推し進めたい、これが私の明年度の予算に臨むところの考え方の第二点であります。  第三点が、結核対策というものを充実をしていきたいというふうに考えをいたしまして、先ほど御答弁を申し上げました線で進んでおるのでありますが、ただいま御質問の、陳情が出るのはどういうことか、これは確かに国民の要望しておる線まで社会保障費ないしは結核対策というものが充実しておらぬというところに原因があるということは、私も否定はいたしません。しかし、陳情をなさるにも、いろいろな順序も方法もありまして、でき得る限りその代表者を選んで少数の方が御陳情を願うというようなことでありますならば、われわれも進んで御面会をいたしたい、かように考えておりますけれども、結核で休んでおられる重病の方がその中に加わって集団的な陳情をされるということは、これは御療養を願うということが筋道でありますから、そのことが始終繰り返されるようなことはあまり歓迎はいたしたくない、かように存じておるような次第であります。昨日はどういうような措置をとったかということでございますが、とにかく厚生省の関係責任者に会いたいということでありまして、夕刻に至りまして、各局長が面会をしたように聞いております。
  91. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 昨日の陳情の模様は、私直接その場におらなかったので、存じませんが、しかしながら、ああいうふうな事態があった場合には、同じ会われるなら、すみやかにお会いになって、そうしてある程度の満足を与えて帰すというふうな方針をとられたらよかったと思うのであります。しかしながら、そうではなくて、なかなか局長さんあたり面会に応じられなかった模様でありますが、それは非常に遺憾だと思います。今後そういうことのないようにしていただきたいと思うのであります。  それはその程度にいたしまして、七人委員会の構成の問題でありますけれども、私どもいろいろな質問をいたしますたびに、七人委員会が答申を出すからという御意見でございまして、七人委員会の答申が出て参りましたが、さてその七人委の構成を見ますときに、保険者の団体の代表であるというふうな目で見られる人が二人と、それから学者が三人、それからその他の人でありまして、構成が少し片寄っているように思うのであります。従って、それから出てきておる結論というものが、保険経済の赤字をどうして埋め合せるかというふうなことだけが中心になりまして、ほんとうに日本の医療制度をどうしていくか、あるいはまた日本の医療内容をどのようにして充実させ、どのようにして向上させていくかというふうな面についての検討が、不十分であるように思うわけでございますが、大臣は答申書をお読みになりまして、そのようなお感じをなさらなかったかどうか、伺ってみたいと存じます。
  92. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 七人委員会を任命したときに、こういう御議論がありますれば、またいろいろ考えもいたすのでありますけれども、私はこの七人委員会の委員を任命いたしましたときの気持としては、社会保険審議会、社会保障制度審議会におきまして、労働組合の代表者あるいは経営に直接関係をされて健康保険の組合を自分で持っておられるような方々も参画をしておられますし、あるいは社会保障といえば、何といっても医療関係の方々が中心でありますから、それらの人々も審議会に入っておられます。そういう方々の御意見を聞いて最後にきめるわけであります。ことに最近の傾向といたしまして、やはりそれぞれの利害も相当に入って参りますから、これは最終的には審議会で伺うべきが筋だというふうに考えまして、七人委員会は、むしろそういうことから離れた、いわば真にこういうサークルにおいて中立的な立場に立ち、かつ財政的な見解を十分に持ち合せた人にお願いをするのが筋であろうと考えまして、もっぱらその点に重点を置いた人選をいたしたわけであります。しかし、委員長、代表委員以下いずれも社会保障の問題につきましては多年、ひとり学究的のみでなく、現実の分野におきましても、相当御活動いただいている方々でありますから、従って医療問題等について、そう抜かりのある答申が出たものとは私ども考えないのであります。また世間も、大体健康保険財政の建て直しということについては、やはり財政に重点を置いたこういう学者の意見を基礎にした方がよかろうという雰囲気ではなかろうかと思います。各新聞の投書などを見ましても、かなりそういう投書も載っておりますので、私はこの答申を基礎にして政府の対策を立てたいと思いますが、御質問の、七人委員会の構成は片寄っているのではないか。これは医療という面のみを重視いたしますれば、その方面のドクターとか、あるいは医薬関係者はおりませんけれども、すでに社会保障の面から見た医薬方面ということについては、相当な経験者が盛られているものと確信をしているような次第であります。
  93. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 できるだけ中立的な人をというお考えのもとに選ばれたという御意見でございますが、この中で、たとえば清水さんのごときは、かつて厚生省に長くおられて、保険関係のことをやっておられた方のように思いますし、しかもそれが船員保険協会の会長であるというふうな方でございます。少くとも社会保険というものを構成する場合に、その構成の要素というものは、保険者と被保険者と療養担当者の三者からできていると思います。従って、もしも公正な立場におけるところの結論を出すという場合においては、そのいずれの人をも入れないが、あるいは入れるなら、その三者の意見を徴するという方針がとられるのが、私は至当であろうと思います。ところが少くもこの中には、保険者は入っているが、被保険者と療養担当者は入っておらないという形態がとられているのでございます。従って、その出て参りますところの結論というものは、そういうふうなにおいが強い。その点について、被保険者及び療養担当者の間から不満が出ていると私は思うのでございます。しかも厚生大臣は、この七人委員会の答申を公正なものと見て、百パーセント生かすようにしていきたいというふうな御意見を今述べられたと思うのでございますが、この七人委員会の答申書は、私が今申しましたような性格のものというふうな考え方のもとにおいて、七人委員会の結論を生かしていくという態度をとっていただきたいと思うのであります。それについてのお考えを承わりたい。
  94. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 これから後の対策につきましては、もとよりただいま御指摘通り、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会だけでなしに、医師会あるいは薬剤師会等の関係諸団体の意見を十分勘案いたしまして、そうして最終的には党の政調会の意見によってきめたいというのが私の考え方でございます。
  95. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 最後に一言お尋ねしたいと思います。少くもこの七人委員会の答申書の中には、日本の医療機関の内容の充実もしくは向上というふうな点についてのことが触れられておらない。日本の医療機関というものは今どこも赤字であり、同時にまた、その医療機関に働いている従業員というものは、非常に低いベースに置かれております。医療機関はどんどん消耗していくし、また療養担当者、またそこに働くところの人たちがだんだん窮乏化していくということは、現実的に見のがせない事実であります。しかも昭和二十三年にベース・アップが行われたきり、ほとんど保険財政の面における報酬というものには、ベース・アップが行われておらない。その不適正を先般の協議会で私が指摘いたしまして、大臣のお考えを承わりましたところ、大臣は、それはその通りだと思う、従って七人委員会の結論を見た上で、今度の新しい医療費体系を立てるときに、その中に十分それを勘案して診療報酬というものも調整していきたい、こういうふうなことを委員会で御答弁になったのでございます。しかしながら、七人委員会はその問題に何ら触れておりませんが、今後の対策として、大臣は来年度の保険の予算をお組みになる場合に、その点をどうお取扱いになるつもりか、承わらせていただきたいと思います。
  96. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 多年この方面のことにつきまして深い研さんを持っておられる岡本委員のお話でございまして、ごもっともとも思います。しかし、この七人委員会の報告の中にも、百九十六ページ「第二章医療機関の負担軽減方策」といたしまして、医療機関の建設ないし近代的設備をするための対策につきまして相当に論ぜられております。もとより、お話しのような深い掘り下げをしなかったという点は、あるいは御指摘通りかとも思いますけれども、一応は触れて——たとえば税制上の処置であるとか、事務の簡素化であるとか、医療費の緩和、医療従事員の資格及び養成というようなことにつきまして相当に触れておりますので、これも相当にわれわれといたしましては参考にして進まなければならぬと思います。医療機関の整備につきましては、いろいろと考えもいたしておりますが、これらの具体的な問題につきましては、もしただいま答弁をせよということでありますならば、医務局長から答弁をさせていただきたいと思います。
  97. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 今のは、たとえば税制の面であるとか、そういうふうな負担軽減の面でありまして、それは個人開業医ですね、そういうようなものに対してはある程度の恩恵はあるかもしれませんが、しかしながら、公立病院であるとか、あるいは組合立病院であるとか、そういうふうな病院の施設の向上であるとか、あるいはまた従業員の処遇というものについては、何ら大きな影響はないと思います。従って、税制の面におけるところの考適というようなことよりも、実質的には、原則的には適正な報酬、さらにまた適正な課税というものがあっていいと思うのです。従って、そういう変則的な方法でなしに、もしも診療報酬が不適正であるというなれば、やはり適正な形においてなさるべきであると思うのでありますが、それについて、大臣はどうお考えになりますか。
  98. 曾田長宗

    ○医務局長曾田長宗君 大臣からお答えいただくのがいいのかもしれませんが、私どもとしましては、これは数年来の課題でございまして、また皆さん方からも、国会等においてもいろいろ御鞭撻を受けておるのであります。医師の収入、医師の適正な報酬がいかようなものであるかということは、これまた一つの課題でありまして、先ほどからお話しになってもおりましたいわゆる新医療費体系とも関連があるものである、それを明確にすべきではないかという御質問がございましたときに、私ども、関連はございますけれども、これは一応別個の問題として検討させていただきたいというふうに申しておったのであります。それは、このいわゆる新医療費体系というものを考えていきます場合には、これをとにかく近い将来に実行しなければならない。そのとき切りかえを行う際に、ただ支払いの方法が変ったということだけで医療費の負担がふえるというようなことは、この問題を考えるのに適切でないと考えたところから分けたのであります。結局、医師に対する適正な報酬を出しましても、それでは、それに対する国民の負担能力があるかどうかということが問題にもなって参りますので、実際問題といたしますれば、それとにらみ合せた考慮ということになって参ります。一応それとは別個として、前々回の国会でございますか、岡委員からも何かお話があったと思うのでありますが、一つ基準的な規模の診療所あるいは病院というようなものについて、いかような経費がかかるものかというようなことも、実情ということではなしに、あるべき姿としての検討をしてみようというようなことを申されて、これも私ども一つの問題としていろいろ検討しておりますが、今のところ、まだ結論には到達しておらない状況であります。
  99. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 私が申しますのは、健康保険の診療報酬の引き上げがない限り、いろいろな医療機関の中に働いておるところの、もちろん医師も含まれますが、看護婦であるとか、あるいは薬剤師あるいは雑役婦に至りますまで、そういうふうな人たちのべース・アップが行われないということになります。しかも、昭和二十三年に営まれておった病院の経営というものは、それでとんとんである場合には、今日の状態になってくれば、ほかの薬品その他の諸物価が上ってきておる。しかも入ってくるところの収入額は同じであるということになれば、たとえば年末賞与であるとか、そういうようなものの形において、逆により強く圧縮されて、縮まってくるというのが今の情勢です。しかも、もしもそれをどうにかこうにか切り抜けていこうとすれば、勢い施設をそのまま荒廃するにまかせておかなければならない。タコが自分の足を食っておるのと同じような生き方を、日本の医療機関が今やりつつあるということを私は言うのです。従って、そういうふうな気息えんえんとしたところの生き方をしていかなければならない医療機関を、もう一度蘇生させて、そうして近代的な十分の設備と内容を持つものに更生させていくためには、どうしても診療報酬というものをこの際適正な、時代にマッチしたものとして築き直してもらわなければ困るということを私は申しておるわけです。それについて、今度は来年度の予算でもってそれをどう措置するつもりかということを伺いたいのです。
  100. 高田正巳

    ○保険局長高田正巳君 私からお答えいたします。岡本先生のお話は、おそらく過去の国会におきましてたびたび論議をされました単価問題のことをさしてのお話と想像いたすのであります。この問題は、たびたび質疑があり、また厚生省側といたしましてもお答えをしておるようなことでございまして、その関係の審議会でございますか、委員会でございますか、さようなものも設けて、御検討を願っておるようなわけでございます。従って、私どもといたしましては、これが高いか安いかということについての検討を今いたしておるというような段階であります。来年のことについて、どういうふうな予算的な考えをしておるかという御質問でございますが、当面、御存じのように保険財政が非常に大きな赤字であり、またこのままに推移をいたしますならば、来年もさらに大きな赤字を生ずるというふうな情勢であります。そのために、この七人委員会の報告等も出て参ったわけであります。さようなわけでございますので、これをあわせて一挙に物事を解決いたすということは、非常に至難なことのように私は考えておるわけでございます。御存じのように、かりに単価を一円上げるといたしましても、政府管掌だけで四、五十億の響きになるわけであります。さようなことを考えました場合に、あわせてこの問題を同時に解決いたすことは非常に至難な問題であります。従いまして、この問題と来年度の当面の財政対策というものは、一応切り離してものを考えていきたい、かようなつもりでおる次第でございます。
  101. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 多分そういうふうな御返事であろうと思っておったのです。しかしながら、長い間のこの問題に対する不満というものが、今年は療養担当者の間で相当強くなってきておると思う。従って今度の国会は、今までのような形では済まないと私思うのです。この療養担当者の不満というものは、大きな爆発をしてくる。従って、医療行政におけるところの一つの画期的な事件が起るようなことがありはしないか、私はそういうことを心配しているのです。昭和二十三年から今日までベース・アップが一度も行われておらないというふうなものはどこにもない。従って、こういうふうな形に置いておいたままで来年度予算を編成しようという安易な気持をお持ちになっておられるとするならば、私は厚生大臣は大いに目をつけられると思うのです。この問題は本年、前の国会で私が質問いたしましたときに、二十三年以来ベース・アップが行われておらないということは大きな矛盾であると思う、だから七人委員会の答申をも見、さらにまた新医療費体系の整備とともに、この問題は十分に考慮していきたい、こういうことをはっきり大臣はお答えになっていらっしゃる。速記録をお調べになれば、それははっきり載っております。だから、今年はどうされるのだということを、私は先ほどから大臣にお伺いしておるのでありますが、もう一度大臣から、その問題についてはっきりお答え願いたいと思います。
  102. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 ただいま局長の御答弁申し上げた通りでありまするけれども、しかし、われわれはやはり政治家として対処しなければならぬ点があると思います。この問題につきましては、最近民主党の政調会の方で、いろいろな考え方を持っておりまして、相当分析もいたしておるのであります。ただ、各方面の財政対策等も関連してのことでありますから、今日公務員の年末給与の問題も相当な問題になっておりまするし、その反面ベース・アップは行わないというような方針も、内閣としては堅持をいたしておるようなことですから、やはりそういうものと総合的なにらみ合せをしなければならない。ひとり医療問題だけではなくして、単価問題になりますれば、物価体系にも大きな響きを持つわけであります。従って、これに対する見解は、ひとり厚生大臣の考え方だけできめていくというような方向にはないのでありまして、党の考え方あるいは政府全体としての考え方とにらみ合せつつ進みたいと思いますが、昭和二十三年以来放置をされておりますことにつきましては、われわれもたびたび言明をいたしております通り、決してこれが適正な措置ではないというふうには感じておるようなわけでありますから、なるべく近い将来において結論を得て、天下に所信の披露をいたしたい、かように考えておるような次第であります。
  103. 岡本隆一

    ○岡本隆一君 この答申書を見ますときに、一応政府でもって行政措置でもって解決のつく問題と、それから国会で法律を改正しなければならぬ問題、さらにまた大きな予算措置を伴う問題、この三つに分類することができると思うのでございますが、しかも社会保障制度の進展向上というふうな見地に立って見るときに、社会保障制度をプラスするものという見地から考えられるものは、いずれも予算措置を伴うものばかりでありまして、その他の赤字対策というものは、全部被保険者にしわ寄せしたり、あるいは療養担当者にしわ寄せをするというふうな形のものばかりであります。従って、おそらく私は来年度の方針が、金の要らない安易な道というふうな方向にそれはしないかということを非常に心配しているのでございますが、最後にそういうことが絶対にないように、大いに社会保障制度の大黒柱である保険制度を、よりりっぱなものにしていただくようにお願いして、私の質問を終りたいと思います。
  104. 滝井義高

    ○滝井義高君 関連して、実は診療報酬の問題は、質問の用意をしてきておったのですが、時間がかかるのでよしておったのですが、どうも大臣初めてこの問題と取り組むような御答弁があるのですが、それでは困ると思うのです。現在、厚生省のどこで単価の問題をおやりになっておるのですか、臨時医療保険審議会ですか、どこでしょう、具体的にやっておられれば……。実はこの問題は、昨年五月久下局長から、今やっておりますから、結論はもうじき出ますというお答えをいただいておるのです。この問題について、私は久下局長を不信任するというところまで、実は一ぺん行ったことがあるのです。何ならば一つここで中間報告を、臨時医療保険審議会であったと記憶しておりますが、やられておるならば、そこでどういうことを討議されておられるか、一つ中間報告していただきたい。
  105. 高田正巳

    ○保険局長高田正巳君 御指摘のように、臨時医療保険審議会でございますか、そこで小委員会を作ってこの問題を御研究をいただいておるということは、私も承知をいたしておりますが、その御研究の段階、どの程度のものであるか、中間報告をいたすだけの資料を私本日持っておりませんので、御了承をいただきたいと思います。
  106. 滝井義高

    ○滝井義高君 しからば、あとで一つ全委員の手元に、臨時医療保険審議会がどういう形で単価問題を論議をして、どういう状態であるか、一つその報告をいただきたいと思います。  それから大臣にお尋ねしたいのですが、実はこれは前にも私草葉厚生大臣のときにお尋ねをしたのですが、昭和二十六年の十二月七日に、閣議了解事項として、単価点数について根本的検討をし、これが適正化をはかるという閣議了解をやったのです。その後この問題について、館林医療課長だと思いますが、閣議了解をやった後に、昭和二十八年の二月十三日に向井大蔵大臣の当時に、社会保険診療報酬の適正化について、関係各省においてすみやかに根本的検討を加えるものとする、こういうことになっております。そこで館林医療課長に、どういう状態だと言ったら、まあ折に触れて大蔵省と折衝しておりますという御答弁があったのです。それで、こういう重大な問題を折に触れてとはおかしいじゃないか、久下局長はすぐに結論が出ますという御答弁だったが、どうもその間に食い違いがあっておかしいじゃないかと、実は昨年追い詰めたことがあるのです。こういうように、たとい内閣はかわっても、こういうきわめて人命に関連する政策というものは、当然受け継がれてきておるべきものなんです。この点については、現在折に触れてやられておると思います。推進力は厚生省だと思いますが、関係各省ですから大蔵省そのほかどこが関係がありますか、あるいは労働省あたりも関係があってやられておるかと思いますが、どういう工合に根本的な検討をやられておりますか。実は臨時医療保険審議会というのは、諮問機関であって、私たちは諮問機関がどんなことをやっておろうと、私たちのかかわり知らざることでございます。どうも内閣というものは、自己の諮問機関のそでの下に隠れて、問題がむずかしくなると、まだ委員会の結論が出ませんから、こういって逃げるのです。しかし、じゃ委員会の答申が出た場合に、その答申通りにやるかといえば、これもやらない、これが今までの政治のあり方なんです。それでは責任政治、政党政治のあり方としてはどうも妥当でないのです。少くともこういうことが二十六年にもきめられ、二十八年にも閣議できめられておるとすれば、当然これは責任をもって、できないならばできない理由を天下に明白にするし、で守ればできる理由を明白にする、これがやはり私は政治をやる者の態度だと思うのです。これは客観的な情勢でできないならばできないと、はっきり全国の被保険者、保険者あるいは療養担当者に向って声明をすべきだと思うのです。これをじんぜん、いや検討しております、結論が出ませんといって、今岡本委員から言われたように、二十六年の十二月に現在の十一円五十銭というものが実施せられて以来何も変化がない、それはやはり理論的な根拠だけでも明白にしていかなければ、これは医療を行う上に大きな支障が出てくると私は思うのです。七人委員会が単価問題だけをやるにしても、この倍はかかるとおっしゃっております。しかし、これが五カ月でできたならば、すでにこれは二十六年以来ですから、倍でも二年かかれば出るはずで、すでに昭和三十年も終りになろうとしておる、四年かかっておるのです。これは何と言いわけをされようとしても、保険局を中心とするあなた方の怠慢以外の何ものでもないとしか言えないのです。だから、これはできなければできないでけっこうだと思うのです。その客観的な情勢をやはり天下に声明をしていただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  107. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 私もそう深い財政知識はありませんけれども、私の記憶しておるところによるならば、二十六年に単価問題に対する閣議決定というものがあったことは、ただいま御指摘をいただいて思い返しておるようなわけですが、確かにそうであったと記憶しておりまするし、二十八年の十二月にもそういうことがあったとすれば、これまた事実だと思え、また単価問題に対する改訂要望というものは、医師会だけではなく、天下の医療関係者が相当に要望いたしておることであり、二十三年以来改正されていないということは、私は現在でも不当だと思っておるのであります。しかし、その後における情勢の変化というものが何らなかったとすれば、これは明らかに昭和二十六年の六月ごろから出始まったいわゆる外貨事情の急激なる変化によりまして、当時まで、社会党の西村予算委員をして言わしむれば、日本はこじきのくせに大きな外貨をかかえておるといった昭和二十六年の春の情勢であったにもかかわらず、二十六年の六月ごろから急激に入超による外貨事情が変化をし、また国内における物価が一割六分ないし二割急激に上昇したということによって、二十六年の十一月、突如吉田内閣はデフレ政策に転換いたしたのであります。その際におきまして、われわれや、あるいは民主党の今日参議院議員である堀木君等が発議をいたしまして、この際このままでいくならば、国内の物価事情は、ついに終戦以来二度目のインフレを迎えるようなことになるし、同時に、外貨の問題はついに未曾有の国際収支の赤字になってとどまるところを知らない。従って、この際デフレ政策に転換すべきであるということを言い、公務員の給与ベースに対して赤信号をあげ、あるいはその他の措置をとったのが昭和二十七年の十一月の末から二十八年にかけてのことであったと記憶いたしておるのであります。従って、その後の諸般の物価事情は、昨年度の天までに一割減らすということの目標で進み、だんだんそれが全体に及んでとうとうあらゆる物価の引き下げが行われ、単にその間において電力関係が引き上げられたために、相当な問題を起したことをわれわれは記憶するのであります。従って、その後厚生省がなまけておったというよりは、むしろ外界の事情の非常な変化によって単価の引き上げが非常に無理であるというような、相当に財政事情からするところの——だれも発言はいたしませんけれども、そういう情勢において今回まで推移をしてきたのであって、今回単価問題が再び取り上げられたとすれば、それは公務員の給与ベースあるいは年末手当——年末手当は一時的なものでありますから、これは契機にはならないでありましょうけれども、そういう問題が再び起る可能性がありとするならば、単価の改訂も急を要するとは思いますが、今回までこの二年半ばかりの間忘れられておったのは、物価政策が急激な変化をしたというところに原因があったように、私ども考えをいたしておるのであります。今日これにつきまして、厚生省の中におきましても、十分従来の、二十三年から二十六年の間に上らなかった、それから二十八年の十月までに上らなかったということに対する、他の物価に比べても不当な単価であるということは言えると思いますが、その後の情勢の、二年の間において論議がなかったということは、物価の変化並びに財政の基本的な形態が変ったということではないかと思っております。従って、ただいま御指摘になりましたことについて、再びこれが大きな政治上の論議になりますれば、単価問題というものも、次の国会におきましての相当な与野党間の論議の問題にもなろうし、また政府としても手をつけなければならぬと思いますが、今日までこの二、三年の間どうしておったかということは、そういう経緯で来たのであります。その間にいろいろな政変があったり、厚生大臣がいろいろ変って、そのたびごとに発表の機会がなかったものと思いますが、今日までの経緯はそうではないかということを明らかにして、しかし単価が必ずしも適当でないということは、私も先ほど以来繰り返しておる問題でありますから、これは全体をにらみ合せまして、もしそういうような事態になりますれば、それを断行しなければならぬのではないか、こういうふうに考えをいたしておるような次第であります。
  108. 滝井義高

    ○滝井義高君 今、るる川崎厚生大臣から御説明がありましたが、今までの厚生省の答弁は、大臣が今言ったようか御答弁ではなかったのです。適正であるかどうかはわからないというような御答弁で一貫してきておった。従ってまだ適正であるかどうかわからないので検討中なんだ、こういうことであったのです。大臣が今過去を振り返って、いわゆる日本のインフレからデフレへの政策の転換、そういうものの過程で内閣も変るし、声も起らなかった——実は声は起っておったのですが、小さかったわけなんですけれども、そういう具体的な事情の中で、こういう理由でこれは引き上げが必要でなかったということを厚生省がはっきり言わるべきであったのに言われなかった。また今度も、臨時医療保険審議会あたりにその責任を転嫁して、責任をとろうとしない態度は、いけないと思うのです。だから、これはここ一、二年間は日本の財政事情その他でできないならば、できないということをやはり明白に言うべきだと思うのです。これは過去においてできなかったので、実は社会保険の診療報酬については二五%という課税方式というものがとられてきたわけなのです。これはそういう説得と、それから了解を得れば、その理由が合理的であれば、天下は納得をすると思うのです。従って、こういう問題をほおかむりせずに、やはり全日本の勤労者なり療養担当者の協力を得るためにも、あるいは日本の医療内容を低下させないためにも、今後一つできないならばできない理由をざっくばらんに天下に公表してもらって、みんなに協力してもらって、納得のいく線でやっていく、こういうガラス張りの単価問題に対する取り組み方をやっていただきたいと思いますが、そういうことはできましょうか。  これで私は質問を終らしていただきます。
  109. 高田正巳

    ○保険局長高田正巳君 滝井先生のお話、ごもっとものように思いますから、さような方向で私ども考えて参りたいと思います。
  110. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 井堀繁雄君。
  111. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 七人委員会の報告書は、われわれにとりましては、貴重な資料として大いに尊重して参りたいと思います。政府は、近い機会に健康保険法の改正を国会に提案されることと思うのでありますが、その際この七人委員会の報告は重大な役割をするものであろうと想像いたすのであります。そういう意味で、この七人委員会について、厚生大臣のお考えを率直に聞かせていただこうと思うのです。と申しますのは、私ども考えますのに、もし法律を改正しようとする場合には、すでに社会保障制度審議会というような、法律の保護と規定のもとに、りっぱな委員会が存在しておるのであります。さらにまた、法律を改正しようとする場合には、法律が定めておりまする諮問機関としては、社会保険審議会が存在しておるのであります。こういうりっぱな機関が存在しておるにもかかわらず、かかる委員会を設置されましたのには、大臣に深いお考えがあると思うのであります。そのお考えを率直にここで伺っておきたいと思います。
  112. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 これはこの春の国会でも申したことでありますから、御承認を得たかどうかは別といたしまして、私の考え方は、すでに数十回にわたって御説明申し上げておると思うのであります。あらためて申し上げるほどもなく、健康保険に対する財政というものは、非常に大きな赤字を出してきた。本年は七十億というような大きな赤字になるという見地し、昨年度四十億、本年は切り詰めても六十億というようなことであるので、一時しのぎのことではいけない。本年は一応の財政措置はいたしましたけれども、あれをもって足れりとするところなく、抜本的な対策を立てたい。その抜本的な対策を立てる場合に、なるべく早い機会に答申を縛るということになりますれば、相当な学識を持った方々にお集まりを願うべきではないか。社会保険審議会、社会保障制度審議会は、もとよりあります。しかし、今までの社会保障制度審議会の運営の仕方は、政府が出しました案について、その可否を論じていただいて、その答申を得るようなことでありますから、そういうことを待つのではなく、建設的に政府の考えておりまする対策とマッチしつつ正直な白書を出してもらって、そしてそれによって解決をはかりたいというのが、七人委員会を設置したる根本的な理由であり、いま少しく端的に申し上げるならば、社会保険審議会、社会保障制度審議会ともに、厚生大臣ないしは内閣の直接の諮問機関ではありまするが、問題が広範にわたって審議をいたし、かつ具体的な法案その他について審議を願っておるようなわけでありまするから、健康保険という一つの題目をとらえて、それについて政府に対して建設的な案を出していただくという意味合いから、学識経験者の方からする七人の委員に委嘱してこの案が出たわけであります。
  113. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 ただいまの御説明によりますと、社会保障制度審議会では間に合いかねる、あるいは社会保険審議会では、こういう健康保険の抜本的な改正を必要とするような場合には、こういうところでは不十分だという御説のようであります。そういう欠点を、私自身もある程度認めるものでありますが、そうだとすれば、この場合には、この制度に対する改正を企てるか、あるいはあなたが先ほどの委員に御答弁なさっておりましたように、次の健康保険の改正案を政府が用意する場合には、政府部内にありまする機関を動員して立案をされ、あるいは政党政治でありまするから、政調会の議を経て原案をお作りになるということが、今日の場合には常識であります。しかるに、そのいずれにもよろうとしない。まあ第三者、きわめて公平な立場をとる学識経験者という意味で網羅されたのであろうと、先ほど来の答弁を伺っておりますと感ぜられるのでありますが、一体今後、この法律に限りませず、あらゆる法律の改正の際に、そういう道を講ずるようになるということになりますと、一つには法律でわざわざ社会保障制度審議会というものを構成したり、あるいは社会保険審議会といったような公式な機関を設置したものに対する一つの不信行為にもなります。またそれが、あなたがおっしゃるように不十分なものであるならば、それぞれ国費も相当つぎ込んでおりまするし、党の政調がそういうものを立案する、あるいは政府にはそれぞれのスタッフの有能な士がたくさんおるわけでありますが、ここで立案されるということであるべきではないか。弱点があるならば、その点を改善していくべきではないかと私は考えるのでありますが、この点に対する大臣の所見をはっきり伺いたい。
  114. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 第一に、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会にかけ、それによって進めるべきではないか。これは従来も、一つの法案を改正しようと思ったり、あるいは予算の基礎になるようないろいろな問題を論議いたします際におきまして、社会保障制度審議会ないしは社会保険審議会に御相談をしておったことは事実でございます。またそういくべきであると思いますが、健康保険というような特殊な問題について、その財政問題に対する一つの回答を得たいということでありまするから、これは財政の問題になりますると、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会、いろいろな利害関係があります。利害関係があるものを聞いた方がよいという考え方もありましょうけれども、この際この財政負担について公正なる人々の意見を聞く、すなわち公正なる分野に立つ人々の意見を聞くということは必要ではないかというふうに感じて、このことをとったわけであります。  それから、党の政調会に頼んだらどうかということでございましたが、これは実は党の政調会の方から勧告をされまして、やはり党の政調では、一つ社会保障に関係をしておる人々の意見を聞いて、そうして党人が最後にきめた方がよかろうというおぼしめしもあって、私に実は内々勧告がありまして、かような措置をとったわけであります。
  115. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 それではお尋ねをいたしますが、七人委員会というものは、大臣の諮問のために設けた委員会でありますか、それとも党の政調会の委嘱を受けた機関であるか、こういう点について、どういうふうに大臣はお考えになっておりますか。
  116. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 これは前者でございます。党の政調の機関では全然ございません。党は、厚生大臣が今後の健康保険の財政を建て直す上において、そういうやり方をとるのが一番よかろうということを勧告してくれまして、もとより政党政治でありますから、最後は自分のところに相談があるものと政調会は思っておるのだと思いますし、私もそういう手はずを踏んで、最終的な予算措置並びに法律対策はやりたい、かように考えておる次第であります。
  117. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 そうしますと、この委員会の経費は、もちろん厚生省の予算の中から御負担なさったものと思うのでありますが、どういう予算項目をお使いになって、額は大体どのくらいお使いになったか、おわかりになりましたら……。
  118. 高田正巳

    ○保険局長高田正巳君 お答えいたします。当初五十万円くらいの予算で了解を得てあったのだそうであります。実際に幾らかかりましたか、その点は取り調べましてから申し上げたいと思います。
  119. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 私は額の大小をあまり問題にしてはおりません。これは今後もひんぱんに起る事柄だと思いますから、お尋ねをいたしておるわけであります。まあ大臣個人の諮問機関としてこういうものを設けられることは、これは個人の御自由でありますが、額のいかんにかかわらず、少くとも国費の中から支弁をいたして設けるこの種の機関というものについては、われわれはやはり重大な関心を寄せておるわけであります。ということは、くどいようでありますが、大臣は二つのこういう社会保障制度に関係を持つ委員会——特殊なということを特に強調されておりますが、私は社会保障制度の中に占める健康保険の重要性については、十分認識をしておるつもりであります。しかし、健康保険法の改正だけが、特殊なものというふうには理解できがたいのです。でありますから、とにかく重要な法律を改正するために、こういう委員会が続々と設置できるということでありますならば、私は今後、やはりそういう形が、いずれの政党が内閣を担当しても、作られるようになった場合に、額が小さいからいい、あるいは特殊だからというようなことは、理由はいろいろありましょうけれども、これは重大なことになると思われるのでありますが、こういう点に対して、一体閣議にお諮りになってこういうことをしたのか、あるいは厚生省だけのお考えでおやりになったのか、参考のために一つ聞かせていただきたい。
  120. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 明白にいたしておきます。厚生大臣の諮問機関でありまして、川崎秀二の諮問機関でないことはもとより、厚生大臣たる川崎秀二の諮問機関でもないのであります。厚生大臣の諮問機関であります。しかして、これは閣議の了解事項だけでなく、閣議決定事項といたしまして、五月の二十何日でありますか、正式に決定をいたして行なったことであるということをあわせて御報告をいたし、同様種類の機関は、たとえば大蔵省に置かれております財政懇談会も同様種類の機関でございます。
  121. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 明らかになりました。いずれこれは予算委員会の新しい一つの課題になり得ると思うのであります。  そこで次に、この委員会できっと健康保険の問題について熱心な討議をしなければならぬ事態にあるとわれわれは考えておりますので、ちょっとお尋ねいたしておきたいと思いますが、それはこの七人委員会の報告の内容であります。私もまだ不勉強で十分拝見しておりませんけれども、目次だけを拝見いたしましても、かなり広範にわたって御勉強を願ったあとが顕著だと思うのであります。こういうりっぱな報告書を大臣がおとりになった以上は、これをきっと十分に活用されて原案をお作りになると思うのであります。この内容について、大臣は満足すべき内容ときっと思っておいでであろうと思いますが、これを採用なさって法律改正案をお作りになる場合に、すぐ当面するであろうと思う問題がそれぞれあげられております。今月は内容に触れることは遠慮いたしたいと思いますが、とにかく非常に重大な改正を要すべき点を指摘しているようであります。しかも広範にわたるようであります。一体、せっかく国費を費して、しかも従来にない新しい試みをして、こういう委員会を設けて答申をとられたのであるから、もちろんこれが尊重されることになりますけれども、ただ尊重でなくて、こういったものの内容について、大臣ほどの程度法律改正の中に盛り込もうとしておいでになるか、心がまえでけっこうでありますが、伺っておけば、われわれの勉強する方向が定まると思うのであります。
  122. 川崎秀二

    ○厚生大臣君 これは先ほどの御答弁を、さらに演繹して御答弁いたしたいと思うのでありますが、私はやはり健康保険の赤字対策につきまして、特別委員を設けてお願いをしたわけでありますから、この人々の意見は、十分に取り入れて実施をしたいと思います。その十分という意味は、私はこの報告書を拝見しまして、まさに社会保険白書が出たという感じは、その当時も表明した通りでありまして、読みますたびごとにその感を深めているのであります。従って、社会保険に関する部門につきましては、これは一つの今後の基準として、そうして逐年改正の方向に持っていきたい。しかし、非常に広範囲な勧告でありまして、たとえば先般の国会におきまして、社会賞の委員の方あるいは民主党の委員の方、さらには自由党の大橋君その他の委員の方々から、健康保険のことについて七人委員会の答申が出るであろうが、それは大体国費負担ということと、患者の一部負担ということが中心ではないか、予算措置がそれで足りるではないかという御議論があったことも、その中にはあるのでありますが、そのような中心問題だけではなく、たとえば薬品の価格を引き下げることについて、あるいは広告費の問題につきましても言及されているばかりでなく、それについて具体的な対策を立てておられます。それから先ほど御指摘のあった医療機関の問題にいたしましても、あるいはこの中に二十人未満の特別健康保険制度を創設せよというような具体的な御意見、これはかなり決定的な御意見のように書かれておるものもありますし、また先般の国会におきまして社会党並びに自由党両党とも非常に御否定的でありました標準報酬の引き上げについては、むしろこれをやるべきではないかというような、きわめて強い線なども出ておりまして、各般にわたって問題が提供されております。これには明年度の予算措置並びに法律改正に当って、実施のできるものとできないものもあるかとも思います。また政治的な要請において、一つ例示的に申し上げたように、国庫の負担の問題については、単に財政負担という見地からするならば、非常に合理的であると思われるこの七人委員会の答申も、果してそれ以上の政治的な要請が一般国民並びに関係諸団体から起るとすれば、どちらにウェートをかけるかということについては、相当研究をしなければならぬ問題も含まれておると思いますので、そういうものを十分にそしゃくいたしました後に対策を立てたい。まずその前に、政党政治でありますから、政調会の意見によって最後には決するわけでありますが、私の日程を申し上げれば、とにかく今日予算の編成期にかかっておるわけであります。保守合同の問題が片づかない前には、この問題もなかなか大づかみとして実際には予算編成にはかかれない事情にあると思います。政治的雰囲気にかかれない状態でありますが、本来ならばかかっていなければならない。ノーマルな状態ではかかっていなければならぬ状態でありますので、保守合同の問題と関連もいたしておりますけれども、少くとも事務当局検討は、二十日以前において終末をつけてほしいということを申しておるようなわけであります。その後におきまして、政党の分野あるいは政局に大きな変化がありまして、どういう内閣構成になりますかわかりませんけれども、その後におきます措置は、新たにできたるところの政調会が基本となって、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の御意見を承わって、その後において政党の責任において解決をすることになるだろうと思います。従って七人委員会の答申は、できるものとできないものと、大体事務当局が大蔵省と折衝しておっていろいろ呼吸はわかるわけですから、その際において、大体この程度のものは出したいということを厚生大臣の手元に出してくると思います。厚生大臣は、これを受け取ったならば、各政党の御意見も聞くけれども、やはり政党政治の責任上、与党の政調会の意見によって予算編成に臨むということになろうかと思います。  これからの順序を大体申し上げた次第であります。
  123. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 親切な答弁をいただいて、まことに満足しております。そこで、私どもも前回の委員会でこの問題と取り組んだ責任もありますし、ことに川崎厚生大臣は、われわれの質問に対して、健康保険の改正については多くの意見を御発表になっております。そういう意見を総合いたしますと、今度の臨時国会は別といたしまして、通常国会には、健康保険の改正については責任の所在を明らかにする意味でも、相当りっぱな改正案を提案されるであろうと、われわれは期待をかけておるわけであります。不幸にして保守合同の問題で悩んでおいでのようでありまして、この悩みには御同情申し上げておりますが、しかし、それとこれとは混同してはならないし、また並立するものであるということが、今の御答弁で私どもも了解ができました。そこで、次の予算編成にぜひ間に合うように、改正案というものは当然厚生省で用意されるものとわれわれは期待を寄せておるわけであります。そういう意味で、今から申し上げておけば、きっと次の通常国会にはよい案を出していただけると思いますので、そういう意味で事務当局にお尋ねをして、念を押しておきたいと思っております。  今、厚生大臣の御答弁で明らかになりましたように、七人委員会の性格、それからこの七人委員会を設置するに至りました決断が述べられました。これは大臣にとっては非常に勇断だと思うのであります。いいかげんなおせじを言うのではありません、よくやったと思います。しかし、問題はあります。方々に問題が起ってきますが、しかしそれを踏み越えるだけの決意をしておられると思います。そういう大胆な決意の上に立って七人委員会の答申を受けた以上は、その答申をされた内容については、それはできがたいものもありますし、可能なものもありましょうが、可能か不可能かは議会が判断するわけであります。でありますから、その判断の場所は議会でありますが、あまり役人が七人委員会の答申を曲げるようなことがありましては、大臣が非常に迷惑されるだろうと思います。そういうことのないように作業をおやりになると私は思うのであります。そういう御準備ができておいでになるかどうか、またそういうお考えにはっきり立っておられるかどうかをこの際伺っておいて、次に、きっと大臣を補佐されて答弁をなされると思いますが、そういうときに行き違いがあってはなりませんし、今日この場合に念を押しておくことはむだでないと思いますから、伺いたいと思います。
  124. 高田正巳

    ○保険局長高田正巳君 大臣が先ほど来御答弁になっておりますように、基本的原則的には、七人委員会の答申というものを十分尊重してもらいたい、かように考えております。具体的な問題といたしましては、この中に、ものによりましてはいろいろ論議があって、というようなものもございますし、それから非常にけっこうなことでありますけれども、とてもすぐは着手ができないというようなものもございます。従いまして、私どもは一方健保の財政対策を立てなければならぬことは焦眉の急でございます。さような関係から、私どもはこの中でとれるものをとって、来年度から実施をいたすような方向でものを考えて参りたい、さようなつもりで研究をいたしておるのでございます。ところが、これをお読みいただきますと御了解をいただけますように、彼此関連をした問題が非常にあるのでありまして、一つを全面的にとって一つを次の年以降に譲るというようなことでは、非常に変なことになってしまう。関連の他の問題を次年度以降に譲るとすれば、その取り上げる問題についても、問題の深さ等について、この答申そのままではその答申の趣旨に沿わないというふうな関連の問題もあるわけであります。さような点が多々ございまするが、基本的には、先ほど申し上げましたように、この答申の趣旨を十分尊重いたしまして、その方向でものを考えていきたい。抽象的に申し上げてはなはだ恐縮でありますが、さような気持で目下研究をいたしておるような次第であります。
  125. 井堀繁雄

    ○井堀繁雄君 お尋ねしている方が抽象的ですから、御答弁もやむを得ぬと思いますが、それで私は大体わかったような気がいたします。これは次の国会でこの議論をするときには、七人委員会というものはどうしても話題の中心になるわけであります。その場合に、むだを省く意味で申しているわけですが、たとえば、この前の委員会で標準報酬の問題についてお尋ねをしたのですけれども、満足な答弁をいただけなかった。失礼な言い方ですけれども、一体役所はなっていないという感じを、私は国民の立場から、いたしました。というのは、一体標準報酬を把握する正確な資料がない。あるじゃないかということで、二、三われわれの気のついたものを出してみると、それはすぐ答弁には間に合わぬという。今度はなかなかそういう点を指摘しておるようであります。今川崎大臣は、保険料率の引き上げを例にとったようであります。その保険料率を引き上げぬでも済むか済まぬかということは、国会の一番大きな議論の中心をなすと思う。どうしても保険財源が正常な姿でつかめない場合には、保険料率の引き上げもまたやむを得ないという結論になるわけですが、その結論が出る前に、私はぜひ皆さんの方から、正確なむだな討議を行わぬで済むように、報酬実額、標準報酬というものを算定していきますための過去における正確なる資料を用意しておく。それからここでは指摘しておりますが、たとえば勤労所得税の徴収の際に、大蔵省が用意している資料などを勉強せいというようなことを書いておるようであります。これは厚生省にとっては、非常な苦労をしておられる。こういうことは、私どもから言えば、皆さんは専門家であると思いますけれども、皆さんに比べてわれわれはしろうとだ。そういう意味で、厚生省は今大臣の趣旨を十分実行に移すために、できるなら事前に議員に資料を配付するくらいの準備をしてほしい。これはそれぞれのことが明らかだ。ことに今もわが党の同志から指摘されたように、この答申案とまっ向から取り組んでの問題も出ている。たとえば被保険者の立場から、医療費を安くして、完全な医療をしてもらいたいという要求が出るとすれば、医師は医師の立場で完全な治療をするためには支払いも完全に、またその保障を求めてくるといったような問題がすでに出てきておるわけであります。こういうものに対して、それぞれの立場の意見も十分調査、把握されまして、国会に臨んでから、これから聞こうじゃないかという答弁をなさらないように、事前に十分一つ御用意をしていただいて、次の提案に資料をつけて出すように一つ注意をいただきたい、大臣にも、そういう点についてそれぞれの専門家を十分督励をされまして、諸事万端整えられんことを希望しておきまして、私の質問を終ります。
  126. 川崎秀二

    ○厚生大臣川崎秀二君 今のことで、ちょっとこの際申し上げておきたいことは、大へんご注意いただいてありがたいと思っております。また事実健康保険というものは、社会党の委員の方々は特に御熱心であることも、私どもよく承知をいたしております。しかして今度の外遊中にも、日本の社会保障制度はアジアの中で最高だといわれているけれども、老人保障とか社会福祉、ことに児童保障などの面では、相当に遅れていることは事実でございます。そのことも率直に各方面のものと話したのでありますが、その際に、やはりニュージーランドやオーストラリアのような非常に高い水準を保っている国家からでも、日本では健康保険は赤字で困っているようだが、あれは一番充実した制度でないか、国際社会でも相当に高く評価されているということを言われまして、あれは日本の財政ではなかなか持ちこたえられないだろうというような皮肉を言われたくらいであります。このことは、決してその水準を低下させるというような方向に導くべきものでない、健康保険を充実させて、他の保険をこれに接近させていきたいというのが私ども考え方であります。しかし、ただここに生じました赤字の問題については、被保険者自身も相当な犠牲を払われなければ、とうていまかない切れない面もあるかと思いますので、私は国費負担についてのかたい考え方を申し上げたのは、合理性のゆえに国がこの問題に対して責任を負わないということはあり得ないということの信念を申し上げて、変らぬ決意で邁進をいたしたい。たといどのような政局の場面になりましても、党内におきまして有力な発言はいたしたいと存じておりますので、その点をも御考慮をいただいて、社会保険の建て直しということにつきましては十分御協力をいただきたいのであります。しかして、今の資料につきましては、十分部下を督励いたしまして、十分な資料を今度の国会には出すつもりでおります。
  127. 中村三之丞

    座長中村三之丞君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会