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1955-07-26 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十六日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       小川 半次君    草野一郎平君       小島 徹三君    山本 利壽君       横井 太郎君    亘  四郎君       越智  茂君    加藤鐐五郎君       中山 マサ君    野澤 清人君       八田 貞義君    岡本 隆一君       滝井 義高君    長谷川 保君       横錢 重吉君    井堀 繁雄君       受田 新吉君    中原 健次君  出席政府委員         厚生政務次官  紅露 みつ君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         参  考  人         (日本赤十字社         副社長)    葛西 嘉資君         参  考  人         (日本赤十字社         総務室長)   岡田 好治君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 七月二十六日  委員白浜仁吉君辞任につき、その補欠として草  野一郎平君が議長の指名で委員選任された。     ————————————— 七月二十五日  優生保護法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第一八号) 同日  療術師法制定反対に関する請願高津正道君紹  介)(第四四九八号)  健康保険における医療給付費の二割国庫負担等  に関する請願野田卯一紹介)(第四五四四  号)  同和問題に関する請願足鹿覺紹介)(第四  五四五号)  同(有田喜一君外十四名紹介)第四五四六号)  国立療養所附添廃止反対等に関する請願(堂  森芳夫紹介)(第四五四七号)  国分市上水道敷設請願池田清志紹介)(  第四五六七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員及び小委員長選任  参考人招致に関する件  クリーニング業法の一部を改正する法律案(大  石武一君外八名提出衆法第五六号)  母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改  正する法律案植村武一君外十六名提出衆法  第六四号)  医療機関に関する問題     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  この際小委員会設置の件についてお諮りいたします。本委員会に付託された請願審査のため、請願審査小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。  次に、本小委員の数を五名となし、その小委員及び小委員長選任については、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、小委員には    植村 武一君  中山 マサ君    横錢 重吉君  吉川 兼光君    中原 健次君以上五名を指名いたします。  次に小委員長には、吉川兼光君を指名いたします。     —————————————
  5. 中村三之丞

    中村委員長 次に、大石武一君外八名提出の、クリーニング業法の一部を改正する法律案議題となし、審査を進めます。  質疑通告がございますのでこれを許します。滝井義高君。
  6. 滝井義高

    滝井委員 環境衛生部長に、ちょっと一、二点お尋ねしたいのですが、現在急激にクリーニング業者が増加をして参っておるわけですが、現在全国にどの程度クリーニング業者がおるのか。同時に、今までの法律では、十人以上の従業員を持っているところは、ドライクリーニング師を一名置くことになっておるのでありますが、そういう十人以上の使用人を持っておるクリーニング業者というものは、どの程度あるのか、ちょっと御説明願いたいのであります。
  7. 楠本正康

    楠本政府委員 お答えを申し上げます。現在クリーニング業を実施しております業者数は約二万一千軒でございます。そのうち、ドライクリーニング業を実施し得られますものが約三千六百、その他ドライクリーニングは実行いたしませんが、一般洗たくを行いますものが約一万六千五百軒と相なっております。なお十人以上常時使用人を使っておりますクリーニング業は、全国で約二百五十六軒に及んでおります。
  8. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五人以上の業者は、どの程度になっておりますか。
  9. 楠本正康

    楠本政府委員 この点は、いまだ正確な資料を調査中でございますが、最近私ども全国平均数を調べましたところが、従業員数は約三人余りでございます。従って、五人以上というものは比較的数の少いものと私どもは考えております。
  10. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これは業者の方で調べた数でありますが、五人以上使っしおります事業場は、約二千軒というのが業者側報告であります。
  11. 滝井義高

    滝井委員 このクリーニング業営業者届出でございますが、今までの法律によりますと「営業者は、厚生省令の定めるところにより、クリーニング所の位置、設備及び従事者数相当期間内に都道府県知事に届け出なければならない。」となっておる。理容師美容師等は、法律改正で、前もって稼働設備その他を検査して、それから許可業になったわけです。このクリーニング業は、一応届出で済むことになるのですが、クリーニング業法の第五条にある「相当期間内に」というのは、これはどういうことになるのですか。
  12. 楠本正康

    楠本政府委員 これは、特にあらかじめとは規定してございませんが、もちろん基準に合いますれば、私どもといたしましては、当然営業を行なっていいものと考えておりますので、できるだけすみやかに届出を受けまして、その結果、基準等に欠けているところがあれば、イソスペクションによってこれを改善していただく、かような考え方で進んでおります。従って、これほ許可というような気持はございませんので、かような措置をとっておるわけでございます。ところが、今回改正をお願い申し上げました理容師美容師法におきましては、多分に許可制度という意味を含めておりますので、そこに大きな差等が出て参っておるわけでございます。
  13. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連して。今伺いますと、理容師美容師法は、そういう建前で今度御改正になりましたのに、このドライクリーニング業に対しましては、それと違った今までのやり方をお続けになるのは、どういうわけでしょうか。種類は違いますけれども、同じ衛生に関係するところの法案であろうかと思いますのに、そういう何と申しますか、てれこ、てれこの法案をお出しになりますのは、統一してやれないのでしょうか。これは一方からするならば、美容師は女がやる、これは男性がやる。なぜ女性にきつく、男性にゆるやかになさるのか。これは私としては聞き捨てにならないところでありますので、お伺いいたしておきたいと思います。
  14. 楠本正康

    楠本政府委員 理容師美容師法改正におきましては、先般もこの席上でお答えを申し上げましたように、これは最近美容師理容師でない第三者美容師理容師を使って営業を行うような者がとみにふえて参っております。従って、ここらに単に衛生を離れまして、相当調整をはからなければ、業界の混乱を来たすという見通しでございます。従って、これを許可制度に近いものにいたしまして、その都度第三国人経営、あるいは第三者経営等を合理化していきたい、かように考えてやった措置でございます。ところがクリーニング業におきましては、いまださような弊害と申しましょうか、実情が現われておりませんので、一応届出の原則に従いまして、現状通りで進んでいるわけでございます。
  15. 中山マサ

    中山(マ)委員 そういう者が現われていないと言われましたが、そういうことは実際に絶対にないと御断言になれますか。やはりそういうような第三者的な人たちがやっているところもないことはないと思うのでありますが、そういうふうに、男性の方は、特に全国的に調査もなさらず、多分そういうことはないであろうというような、何と申しますか、そういう考え方に立って、男性の方はただ届出でよろしいということは、どうも私はふに落ちないと思うのでありますが、もっと徹底した調査をしていただけますでしょうか。
  16. 楠本正康

    楠本政府委員 クリーニング業は、御承知のように、必ずしも一定の身分を持った者だけが行える営業とは考えておりません。従って現在も、だれでもクリーニング業は行えるわけであります。今回たまたま当委員会の御改正によりまして、五人以上従業員を使っているところにおいては一名以上のクリ一ニング師資格を有する者を置くということだけでございまして、当然資格のない者がやってもいいわけでございます。ところが、美容師理容師につきましては、これは当然資格のある者以外はできないことになっております。従って、そこに大きな差を私どもは考えているわけでございまして、さようなことはあり得ないことであります。将来もし万一にも、クリーニング一定資格を持った者以外はやってはならないというようなことにでもなりますれば、これはまた別なことを考えなければならぬ、かように思っておりますが、さようなことは、私どもとしてはあり得ないことだと、こう考えている次第であります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 現行法におきましても、今度の改正においてもそうですが、クリーニング師になるためには、試験を毎年一回以上都道府県知事がやることになっておりまして、この試験科目は、衛生法規に関する常識公衆衛生に関する常識洗たく物処理方法、こういう工合になっているのですが、実際にこの試験は、具体的にはどういう工合に行なっているのか。これだけでは、抽象的でわかりにくいのですが、それを御説明願いたい。
  18. 楠本正康

    楠本政府委員 この点は、毎年少くとも一回都道府県知事試験の日取りを公示いたしまして実施をいたしております。なお試験に当る者は、この法律に定められました科目に従いまして、都道府県担当官が問題を提出し、試験に当っております。
  19. 中村三之丞

    中村委員長 御質問がなければ、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、本案についての質疑は終了したものと認めます。  次に、討論に入るのでありますが、本案につきましては、別に討論通告もありませんので、これを省略し、直ちに採決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  22. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本案原案通り可決せられました。     —————————————
  23. 中村三之丞

    中村委員長 植村武一君外十六名提出母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案議題となし、審査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許可いたします。長谷川保君。
  24. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいま上程されました母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案について、政府側にお尋ねいたします。  私はこの法律が出ましてから、全国を回りまして、この法律くらいりっぱに行われている法律は珍しいと思って、非常に喜んでいるわけです。また全国母子家庭でも、非常にこれを望みとし、力として励まされて希望を持って働いていらっしゃる、非常に私は感激している者です。ただこの法律の弱点は、最初から私どもが指摘しておりますように、いずれにしましても資金が非常に少い。今日まで二年ですか三年になりますか、全部で出されております資金が、延べでなくて総額で、実際の額が幾らになっておりますか。うっかりしておりましたので、それを伺っておきたい。
  25. 太宰博邦

    太宰政府委員 お答え申し上げます。これは昭和二十八年度から実施いたされまして国庫負担分といたしましては昭和二十八年度が七億九千四百万円ほど、昭和二十九年度が五億七千万円、それから引き続き昭和三十年度は五億、こういうものを国庫で支出いたしております。
  26. 長谷川保

    長谷川(保)委員 地方に回りまして、この貸付及び返済の実情を見てみますと、これくらいまじめに返済されているものも少い。実をいうと、この法律を作りますときには、私どもはむしろこれは返済できずに残るのじゃないか、大部分はそうなるのじゃないか。しかし、それでもいいじゃないかというように考えたのですが、非常にまじめでありまして、実にこれくらいよいよ返済されている貸付金も珍しい。非常にりっぱに運営されているので、感心しているのですが、しかしながら、いずれにしましても、各地でやはりお母さんたちの願いは、小さい村あたりに参りますと、一人か二人しか借りられない、何とかとれをもっとふやしてくれと言う。拝見しますと、ただいまお話しのように、だんだん毎年出ます全体の金が減っております。もちろん前のやつが生きているわけでありますから、全体としてはふえているわけでありますけれども、これをもっとふやしてあげる必要がある。これくらいりっぱに生きている金はないのですから、ぜひとも、もう来年度の予算を組む時期が来ておりますが、この点は、来年度は特にふやしてやりたい。ことに、政務次官は御婦人でございますから、この点御理解いただいて、ぜひともこれをふやしていただきたいと思う。当局の御意向は、大体どんなふうでございましょうか。来年のことで鬼が笑うかもしれませんが。その点を……。
  27. 紅露みつ

    紅露政府委員 母子福祉資金でございますが、これはただいま長谷川先生からお話しのように、全く償還率はりっぱなものでございまして、もっと増額してもらいたいということは、私どもかねがね要望しているのでございますが、どうも地方財政とのからみ合いがございまして、十分地方がこれに対応できないというような面もありましょうかして、もっと増額したいということも、そのためにちょっとはばまれているような状態でございますが、いずれにいたしましても、国庫から増額されるということになれば、地方におきましても、やはりそれに刺激もされるでありましょうと存じますので、来年度におきましては、どのように実現されますかはわかりませんが、それに向っての増額の努力ばいたしたい、かように考えている次第でございます。
  28. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御存じの通り地方に参りますと、地方財政が枯渇しているときでございますので、この点が地方といたしましては、非常に困っている点でございます。それで、こういうように出ております予算、これを各府県で使い切れないところがございましょうか、現状はいかがでしょう。
  29. 太宰博邦

    太宰政府委員 本年度の予算五億を大体府県で全部消化するように、いろいろと折衝もいたしておりますが、率直なところを申し上げて、相当残るのじゃないか、かような見通しを持っております。
  30. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これはそれぞれの地方婦人団体母子団体にも御尽力いただいて、そういうことのないように、私らもお勧めをしたいと思っておりますが、もしそういうような傾向、地方財政が枯渇している今日では乗り切れぬということであれば、私たち母子福祉という立場から申しまして、これは法律自体をもう少し考えなければならぬじゃないか、こう思うのであります。だから、こういう点についても、ぜひとも当局としても御尽力をしていただきたいと切にお願いを申し上げる次第でございます。  それから、この改正案では、ごらんのように、大学に参ります子供たち就学資金を、今度二千円から三千円に増していただくように、私ども法律を作ったわけでありますが、高等学校に参ります者の就学資金でありますが、これが七百円では私は少いと思う。当然一千円にふやすべきだと思いますが、当局にはそういう御意向は全然ないのでしょうか。
  31. 紅露みつ

    紅露政府委員 高等学校の点でございます。それも私どもかねがね考えているところでございますが、どうも育英資金との均衡というようなこともございまして、にわかにはこれは実現できないと存じますが、御趣旨のあるところは私どもも同感てございますので、今後これも努力して参りたい、かように考えております。
  32. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほど来申しておりますように、これくらいうまく行われている法律はございませんから、ぜひともそれらの点について、さらに一段の改良をせられるように当局に切に望みまして、私の質問を終りたいと思います。
  33. 中村三之丞

    中村委員長 ほかに御質疑がなければ、本案についての質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 中村三之丞

    中村委員長 御異議もないようでございますから、本案についての質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論通告もございませんので、これを省略し、直ちに採決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君は御起立を願います。     〔総員起立
  36. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本案原案通り可決せられました。  なお、ただいま可決せられました両案に関する委員会報告書作成等につきましては、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  38. 中村三之丞

    中村委員長 この際、参考人招致に関する件についてお諮り申し上げます。黄変米に関する問題について、来たる三十日、参考人を招致してその意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めてそのように決します。  なお、その参考人の選定につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  41. 中村三之丞

    中村委員長 次に、医療機関に関する問題について発言を求められておりますので、これを許可いたします。  なお本問題につきましては、日本赤十字社社長葛西嘉資君及び総務部長岡田好治君を参考人として御出席願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めてそのふうに決します。吉川兼光君。
  43. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 実は私ども委員会に、医療機関に関する小委員会というものがありまして、そこを主として、最近各地医療機関すなわち病院視察が始められておりまして、私は去る土曜日の第一班の視察に加わりまして、さる病院を見てきたのでありますが、最近国立病院療養所であるといなとにかかわらず、いわゆる医療機関経営運営等につきまして、とかくの批判をわれわれは耳にするのでありまして、本日は医療機関に関するこの時間に、私はそれらのことについて、若干の質問を申し上げたいと思います。  まず私は、日本赤十字社について、当局並びに本日御出席参考人に御質問をいたすのでありますが、昭和二十七年の十三国会で、日本赤十字社法というのが成立を見たのであります。この成立の際に、衆議院あるいは参議院におきましていろいろな議論が行われておりますことは、当時の速記録を見ましても、それは明瞭になるのでありますが、そのとき参議院におきまして、日本赤十字社法成立させるに当りまして、附帯決議を行なっておるのでございます。この附帯決議は、きわめて重要な問題を列挙してあるかのように私は思うのでございます。すなわち附帯決議の第一には、機構並びに人事刷新、その二は募金、三は会計監査、四は役員選任、五は医療経営、六は委託業務、七は救護業務従事者の扶助というような重要な点を取り上げまして、附帯決議を行なっておるのであります。この附帯決議が、どの程度実施されておるかということを、まず私は厚生当局から伺いたいと思うのであります。
  44. 安田巌

    安田政府委員 日本赤十字社法ができましたときに、参議院厚生委員会附帯決議がつけられましたことは、お話し通りでございます。それにつきまして、私どもの方からは、その後すぐ各府県知事にあてまして、こういう趣旨法律ができた、なお寄付金等についてはこういうふうにしろということについての次官通牒を出したわけでございます。その後、見ておりますと、いろいろここにございますけれども、詳しくはまた副社長葛西さんからお話しがあると思いますが、社員制度の確立ということにつきましては、非常にその後努力をされておるのでございます。ただ経過規定にもありますように、社員制度一般の白い羽根の募金を一挙に切りかえることは、いろいろと困難がございますので、そこは暫定的に認めてよろしいというふうな規定もあるわけでございますが、そういう意味で、現在では大体社員の募集と、それから一般の寄付金募雑というものが、半々くらいにまでこぎつけられておるというふうに見ておるわけてございます。これが一、二に対する御回答になるかと思うのであります。  それから、本部支部機構というのは、これはその後いろいろと改善されまして、現在でははっきりといたしておるつもりでおります。  それから医療機関運営機構につきましても、いろいろ日赤の方で御努力になりまして、本部衛生部長、専門のお医者さんを置きまして、十分努力をしておるように私は見ております。  それから支部長民主的選出方法でございますが、これが当時問題になりましたのは、知事支部長を兼ねておるのがどうかというようなことが、主として問題になったのでございます。しかし、これは日赤社法による選出が民主的に行われておるということでございますならば、たまたまそれに知事が選ばれましても、私どもとしては何とも言えないところでございます。実際問題といたしましても、日赤の仕事というのは、国や地方公共団体と非常に密接な関係のある部分が多いのでありまして、そういうことで、実際選挙をいたしてみますと、知事が個人として選ばれるというふうな状況があるようでございます。現在知事でない人が支部長になっておるところも、数県あるやに記憶いたしております。  それから、人事刷新等につきましては、これはその後副社長以下がかわりまして、そうしていろいろな改善が行われておりますので、大体目的は達せられたのではないかとういうふろに考えておるものでございます。  募金につきましては、一の「現在の募金は社費の徴収による財源の不足分についてのみ当分の間認めること。」というのは、先ほど御説明申し上げた通りでございます。それから「ニカ年後においてもなお相当額一般募金を必要とする場合は、厚生大臣許可を受けて行うこと。」これは許可どういうことが当るかどうかわかりませんけれども、そのつど日赤から私どもの方に届出がございまして、私の方でそれを了承したこういうことでおやりになっておるのが現状でございます。  それから会計監査につきましては、これは政府会計監督を強化することというのでございまして、私どもといたしましても、努力をいたしておる次第でございます。  それから役員選任でございます。これもいろいろ民主的な方法で理事、評議員が選ばれておるわけでございますが、私どもの見るところでは、ここに掲げられてありますような条件を満たす人が、役員選任されておるとういうふうに考えておるのでございます。  それから「医療機関経営は本社の直営とし、公的医療機関としての性格を明確にし、且つ非常災害時においては、救護機関としての使命を発揮するよう、その運営方針を改善すること。」というのがございます。これは、日赤病院とういうのは、御承知のように全国各地にございますし、一つの府県の中でも、一カ所だけでなくて数カ所あるようなところもございまして、本部でもって全部を直接やるということは、なかなか困難かと思いますけれども支部の監督を厳重にいたしますことによって、ほぼその目的を達しておるのではないかというふうに考えておる次第でございます。なお、この救護機関としての使命を十分に発揮するようにということでございますが、この点につきましても、災容救助法その他の関係法令にかんがみまして、十分連絡をいたしておるような次第でございます。  それから「国は救護等に関する業務の委託を積極的に行い、これに関する助成の実を挙げること。」、これは実は予算等の関係がございまして、あまり御期待に沿うようなことができておりませんけども、この法律ができましてから翌年の二十八年度、それから二十九年度、三十年度と引き続きまして、大体五百万円ばかりのものが、主として災害のときに使われます医薬品関係その他の補助予算として、日赤に交付されておるような現状でございます。  それから七の、救護業務従事者の扶助につきましては、これは大体ここに書いてあるようなことを、政令の改正によっていたしたわけでございます。  以上でございます。
  45. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 きわめておざなりな御答弁で、はなはだ不満足でございまするが、当局は、おそらくその程度しか御存じあるまいから、これ以上の御答弁は無理かもしれません。あとは一つ参考人に、まず附帯決議の各項目について簡潔な御答弁をお願い申し上げまして、なお進んで後ほどお伺いしたいこともございますが、まず第一項の機構並びに人事刷新でございます。この中で一、二、三、四、五、六と分れておりますが、一つこの六項目にわたりまして、どういう進捗状況であるかということを、きわめて簡潔に御答弁願いたいと思います。
  46. 葛西嘉資

    葛西参考人 お答え申し上げます。この一と二を便宜一緒に申し上げた方がいいかと思います。  御承知のように、赤十字は、社団的な性格であるものですから、社員制度を基礎にして、そして財政の基礎を固めるという御趣旨だと思います。まことにごもっともでありますので、ぜひそういうふうにせねばならぬということで、社法制定以来努力いたしてきております。今、社会局長からもお述べになりましたように、二十七年、二十八年、二十九年、三十年と——三十年はまだ集計ができておりませんが、一般募金と申しますか、寄付金と申しますか、それに財源を仰いでおるものと、社員制度による社費でまかなっておるものとを比べてみますと、これは逐年増加をいたしてきております。三十年度のごときは、社費によるもの約七割、募金によるもの約三割という目標で努力をいたしております。従来の実績によりますと、やはり社員の方が、県によりますと十分いっているものもございますが、県によると目標を達しないものもありまして、目標よりは若干下回っておるのが実情でありますが、そんなふうにして努力をいたしてきております。しかし、社員制度の根本につきましては、御承知のように終戦の直後、まだごたごたしておるときにきめたものでありますので、若干現在の実情に合わないものがあるのじゃないか、新しい社員制度というものを一つ考えなければならないのじゃないかということになりまして、先般部内の役員会の議を経て振興室という新しいものを作りまして、吉川委員御承知の水野君をその室長にいたしまして、今新しい社員制度を作るべく努力をいたしております。そして、これはただいまのとこでは、大体来年の五月の赤十字運動までには、新しい社員制度によりまして——これは政府の方のお許しも得ねばなりませんし、内閣の賞勲部等の御協力も得ねばならぬのでありますが、そんなふうな諸般の手続を終えまして、来年の五月の赤十字運動期間までには、新社員制度によって発足し、そしてこの参議院の決議にありまするように、社費による財源を確保し、社員制度の基礎を固めていくというふうにやって参りたいというわけで、目下鋭意その準備を進めているわけでございます。  それから第三の項目でありますが、機構の改善ということがいわれておるのであります。これはいろいろな面から検討したのでありますが、まず本部。——東京の本部であります。ここでは、やはり組織というものが、人間も非常に多いというようなことから、これを簡素強力にする必要があるというわけで、機構を縮小し統合いたしまして、ただいまのところでは三部四室というふうなものにいたしております。そして、これは人事の方の刷新にも関係がありますが、ほとんど全部——全部じゃありませんが、三分の二くらいの部長、室長というものを新しく任命をいたしたわけでございます。副社長であります私も、実はそのときにかわって、二十八年の二月から就任をいたしておるようなわけでございます。  それから、支部機構につきましても基準を作りまして、ただいま本部でやっておりますように、それをまとめまして、そうして大きいところ、東京とか大阪というようなところには部を作り、小さいところは二課くらいでやっておるというようなことで、逐次人員等を整理いたしまして、簡素強力なることにして参りたいというふうにいたしておるわけでございます。  第四の医療機関の運営につきましては、あとの五のところに経営についての国会の意思もはっきりいたしておりますので、このようなふうにいたしまして、実は昨年の初めであったと記憶いたしておりますが、医療施設規則——赤十字の中の病院診療所等の規則があるのでございますが、これを改正いたしまして、医療施設規則というものを作りまして、これで今ここにあります。ような公的医療機関としての性格を明らかにし、災害の場合における赤十字の医療施設の特色を発揮させるというようなことをうたいまして、これを全国的にやっておるわけでございます。ここに直営というようなことがあるのでございますが、この国会の御趣旨は、本社がみな経営をするということではないように伺っておるのでありますが、ただ、各府県ばらばらにいろいろなことをやっておっては困るのではないか、一つの赤十字の仕事としては、一貫した方針のもとにやっていく、こういう御趣旨のように伺っております。たとえば、東京の渋谷にあります中央病院のように、本社が直営いたしておる病院もあるのでございますが、こんなふうにいたすこととは、実は多少無理があるというふうに考えております。と申しますのは、今赤十字の医療施設は、大体百六十余あると思いますが、これらの施設、北は北海道から南は鹿児島に至る間のこれらの施設を、東京におる一つのものが指揮、支配をするということは、病院管理の面から、あるいは病院監督の面から行き届かない面があるというので、現在ではそれらの一部の地域的な仕事を支部という機構を置いてやっておりますので、これに管理、監督をやってもらう方が適当だということから、先ほど申し上げました医療施設規則にもその点を明らかにいたしまして、根本の方針は本社においてきめますけれども、その細部の監督、指導、管理という点については、これを支部長の手元でやるということでやっております。繰り返しますが、申すまでもなく公約医療機関としての性格を明らかにすると同時に、災害救助ということが赤十字の医療施設の非常な特色であり、やらなければならぬことだというわけで、医療施設規則の第一条の一番最初に災害救助ということを書いて、機会あるごとにこれらの医療施設を督励いたしております。先般来、いろいろな災害等の場合には、規模は小そうでございまして、能力があまりありませんので、十分なことはできなかったとは思いますけれども、能力の範囲内では、この点については相当の成績を上げておるのじゃないかと、大へん手前みそを並べるのでありますが、自負しておるような次第でございます。  それから、第五の支部長の民主的選出につきましては、先ほど社会局長からもお話がございましたが、これは知事としての人を選ぶのじゃないという御趣旨であるのでありますが、今のところ、この知事選挙の前までには、知事さん以外の人が支部長である県は四つございます。北海道、京都、徳島、千葉、この四つが知事以外の支部長になっております。それ以外は、みな知事さんが便宜上なっておる。これは事情を聞いてみますと、やはり支部長というのは、先ほども局長から申し上げましたように、民主的に選ぶといいますか、地方の評議員会というのがありまして、その評議員会で選ぶことになるのでありますが、もちろんやはり知事さんである何のたれがしさんにお願いするほかはないではないかというようなことになって選挙されておるのが、実情のようでございます。ただしかし、四つの支部だけは、今のように別の方がなっておられます。この間の知事の選挙後については、まだそれがはっきりいたしませんので、私も今はっきり覚えておりませんが、もう四つ五つの県が、今の知事さんがならずに、前の知事である人がそのまま支部長の職にあるということになっております。それらはすべて民主的選出と申しますか、民主的に下から盛り上ってきた評議員会の自主的な判断によってやっておるというようなことになっております。  それから、人事刷新は、先ほど申し上げた通りであります。
  47. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 今日はあまりたくさん私の質問の時間がいただけないようでありますが、実は詳しく聞いておりますと、問題はたくさんあると思うのです。今の参考人お答えの中で、第二項にあります「社費による財源を確保すること」というこの項ですが、昨年度の日赤予算における社費の収入とその他の収入、たとえば募金など、こういうものの割合を、ちょっとお示しを願いたいと思います。
  48. 葛西嘉資

    葛西参考人 二十九年の実績を申し上げますと、社費、寄付金を合せまして集まりましたものが、端数はありますが、約六億九千三百万円ばかりでございます。その中で、社費によるものが三億百余万円、それから寄付金、いわゆる募金によるものが三億九千百余万円——端数は切り上げます。そんなわけで、比率を申し上げますと社費の方が四三・四九%、寄付金によるものが五六・五一%ということになっております。  御参考までにちょっと申し上げさせていただきますが、その前年は三十一対六十八、それから二十七年の方は二十五対七十四という実績になっております。こんなふうに、逐年社費の方が増しつつあるということでございます。
  49. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 社員制度の確立ということで、ただいまるる御説明がございまして、大体指向されておるところはわかりますが、二十九年度あるいは三十年度の、現在までわかったところでよろしいのですが、目標に対して、どの程度社員獲得ということが行われておるかを、ちょっと聞いておきたいと思います。
  50. 葛西嘉資

    葛西参考人 二十七年度を申し上げますと、大体目標は社費二七%、寄付、募金の方が七三%というようになっておるのでありますが、実績の方は、遺憾ながらそれを下回りまして二十五対七十四というふうになっております。これによりました社員の総数は百三十四万余人というように社員を獲得いたしております。それから二十八年の方はこれもやはり五十一対四十八の目標数で、このときは、すでに社費の方をよけい目標しておったのでありますが、実際は先ほど申したように三十一対六十八。しかし社員の数が二十七年が百三十四万だったものが二十八年には百八十八万人、それから二十九年は六十三対三十六であったものが実績は四十三対五十六ということでありますが、社員の数はまた増しまして二百十八万人というようなことで、社員の数は逐年増してきておるようなわけでございます。
  51. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 それでは、時間の関係もございますから少し飛ばしましょう。  今御説明の中にありました大きな項目の第五であります。医療経営、本社の直営とし、公的医療機関としての性格を明確にして云々とありますが、この公的医療機関としての性格を、どの程度に明確にしておるのかということを、一つ数字をあげて聞きたい。
  52. 葛西嘉資

    葛西参考人 ただいま医務局長がおられますが、公的医療機関政府の方の御意見はあると思います。私どもの方としましては、他の一般病院、診療所と違いまして、いわゆる公的医療機関としての特色といたしましては、申すまでもなく患者の取扱い等においても違わなければなりませんし、また医療の資に乏しい者等については、できる限りそれらの便宜をはかってやるということでなければならぬ、こういうふうに具体的に申すと考えております。ただ赤十字の現状から申しますと、実は医療機関の大体の一年間の予算というものは、約七十億足らずのもののようであります。これらの財源で、今の社会医療費と申しますか、かような点をやって参ることには、なかなか苦心が要るのであります。以前は、赤十字といたしましては大体ベッドの一割くらいのものは、かような軽費もしくは無料の診療を取り扱うベッドとして予算等を作ってあり、足らない金の方はこれを本社なり何なりが分けてやるというような制度になっておったそうでありますが、御承知のように終戦後の赤十字には、かような余裕の財源がないのであります。現在は大体のところは支部で白い羽根の援助なり何なりでまかなってもらうというように考えております。それから白い羽根等がなかなか窮屈で回らないというところは、大体病院、診療所が独立採算、独立費用というか、その収入で出る方をまかなっていくというようなことになっておるのが、偽わらざるところの実情であります。従いまして、理想は以上のようでありますけれども、なかなかその通りにいかないというのが現在の実情であります。しかしながら、これはほうっておいてはいけないわけであります。どうしてもかような方面にやらなければいかぬということで、過般お年玉つきの記念はがきの方から一千数百万円の金をもらいまして、そういう専門の療棟を作って、社会医療の方のことをやるということをいたしたり、あるいは先ほど説明いたしました医療施設規則の第十条のあとには今のような点をはっきりいたしまして、でき得る限りそのようなふうにやって参るというふうに努力をさせております。  結論的に申し上げますと、目標は高く掲げて実施すべく努力をいたしておりますが、赤十字の財政の関係で十分にいっていない、しかしできるだけしております、そのようなことが結論であろうと思います。
  53. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 赤十字社の、公的医療機関の性格を、当局はどの程度にごらんになっておるか、医務局長から一つ……。
  54. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 私どもが考えております公的医療機関の機能というものにつきましては、かなり多岐にわたっておるわけであります。この多岐にわたる機能が、日赤ならば日赤、あるいはさらに個々の病院に対して全部果されるということは、必ずしも期待いたしておらないのであります。一つの一番重要な問題は、非常にばく然としたことではございますけれども、今日わが国の医療の根幹となっておりますいわゆる自由開業医制度の欠陥を補うということが、非常に総括的な点でありますけれども、大きい役目であると考えております。いわゆる無医村というようなところに対するいろいろな施設、それから無医村ではございませんでも、十分専門的な診療を行う便宜がない、あるいは収容施設がないというようなところでは整いました病院を作り、そして専門のサービスをするということが、一つの大きい任務でありまして、この意味は赤十字におきましても相当に果していただいておる、その診療の水準と申しますか、こういうようなものも、かなり高い度合いを維持していただいておるというふうに考えておるのであります。  それからもう一つは、いわゆる他の施設、特に民間開業医の方々に対して、技術的な援助をいたすというような点であります。これも非常に広範ではございますけれども、いろいろ患者の診断が十分にできない。ことに検査の問題でありますが、こういう検査をするというようなことについては、検査室の設備等も十分に整えて、他から送られてきました検査材料等についても、十分な成績を上げるように利用していただく、あるいは入院患者がベッドを求めておるというようなときには、その患者をお預かりするという点でありまして、この点につきましても、各地日赤相当の役割を果されておるものというふうに考えております。  それからもう一つは、教育的な任務でございまして、いわゆる看護婦の養成あるいはインターン生の教育訓練というようなことでございます。これも多くの日赤病院は、相当いい施設を持っておりますので、私どもとしては、かなり満足のいく御協力を得ておる。ことに看護婦の養成につきましては、非常に前からの歴史もございまして、わが国の看護婦教育につきましては、国立の施設とともに重要な背骨のような役割を果していただいておるというふうに考えております。  それから、さらに公的医療機関の担当いたしておりますことは、いわゆる調査研究の仕事でございます。この点につきましても、相当にいろいろ御検討を願っておるというふうに思います。  それからもう一つの点と申しますか、これもちょっとばく然としておりますけれども、公的医療機関のもう一つ背負っております仕事は、国あるいはその地域社会とでも申しますか、もっと言いますれば国民、地方民といってもいいと思うのでありますが、その福祉のために、いろいろと事業が行われておる、その事業に協力をするということであります。たとえば社会保険とか、あるいは生活保護、児童福祉というようなことに協力をするということでございます。この点につきましても、衛生教育の面だとかいろいろな点で、相当の御協力を願っておる。もちろん、今申し上げましたことは、日赤からも私どもが公的医療機関として期待しておるところを、相当にやっていただいておると申し上げたのでありますが、決して私ども現状をもって十分だとは考えておりません。今後ともさらにますますこの目的を充足いたすように御努力を願いたいものだというふうに考えておる次第であります。
  55. 安田巌

    安田(巌)政府委員 今の医務局長の御答弁に、私どもの方の関係を一つだけつけ加えさせていただきたいと思います。  災害救助法で、日本赤十字社が医療救助活動を援助するということが書いてあるのであります。そこで、各府県知事と各府県日赤支部が事前に契約をいたしまして、そうして災害が起った場合には、日赤が医療班を出しまして、その他一般的な応急の医療救助の活動をするということが、現在私どものようなところでは一番大きな仕事になっておるのであります。このことをつけ加えておきます。
  56. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 今の御当局の御答弁は、私いささか抽象的なように思いますので、もっと具体的にだんだん聞いていくつもりでおりますが、私は今当局お答えを求めましたのは、二十七年に作られました日赤法の附帯決議の第五項に、特に公的医療機関としての性格を明確にし云々と書いてある、その二十七年の日赤法ができる前の日赤病院の状況と、この附帯決議ができた後の公的医療機関としての性格が、どの程度違っておるか、ちょっと聞きたかったのですが、それはそれでいいでしょう。  そこで、地方のととにつきまして、いろいろここに地方の材料も来ております。それは後ほど話の経過であるいは伺うかもしれませんが、幸いに本部直営の中央病院というのが、先刻副社長のお話の中にちょっと出たようでありますが、今の中央病院における公的医療機関としての性格を現わす具体的な数字のようなものでもあれば、それを伺いたい。私の方にも多少材料がありますので、それを出してお伺いしてもよろしいのですが、できればそちらの方で、こういう点はこうだというお話を承われれば承わりたい。
  57. 葛西嘉資

    葛西参考人 中央病院における公的医療機関の性格というお尋ねでありますが、この中央病院といえども、やはり先刻申し上げました日本赤十字社医療施設規則のその一つでございますので、この第一条には先ほども申し上げましたように、第一の特色としては、災害救助をやらなければならぬというようなことを書いてございます。この災害救助については、先ほど安田局長からも補足的にお述べいただきましたように、移動救護班を作って、有事の際には、これを出動させるということで、各地に救護班を置きまして、有事の際には何どきでも行けるような救護班——班数は本社直営で全部で十三でありまして、諏訪と山陰が抜けますから八つか九つぐらいですか、今手元に資料がないのではっきりしたことは申し上げられませんが、そういうもので、すぐ出れるような態勢にしております。それから資材の備蓄、そういうもの等もやっておるわけでございます。  第二には今の社会医療と申しますか、そういう点であります。大体中央病院においても、今こまかい数字がありませんが、健康保険の患者あるいは生活保護の患者あるいは軽費または無料の患者を取り扱っておるというものが、大体八割以上の患者がそれであろう、残りの一割ちょっとのものが自費患者というような実情になっておるというふうに私は記憶しておるが、今ちょっと資料がございません。そういうことで、社会医療という面にやならなければならぬ。  それから第三には、医療施設としてありますのは、看護婦の養成事業、これは医務局長からちょっとお述べになりましたが、あそこにも日本赤十字社女子短期大学というものを作りまして、看護婦を年々養成して、災害救助等の第一線に働くいわゆるナイチンゲール精神を持った看護婦を養成するというわけで、これは長い伝統でやっております。そのほかに一般医療といたしまして、先ほど医務局長からお話しになりましたいろいろな調査研究資料でありますとか、あるいは入院等の場合の措置でありますとか、あるいはまた医療社会事業というような部を作りまして、これらの患者と家庭との関係、あるいはまた患者と医療費の関係というようなものを総合調整するような機能等もいたしておるつもりでございます。  ただ、何にいたしましても、先ほども医務局長からお話がありましたように、やろうと思って掲げてある目的は高いのでありますが、何といたしましても財政が十分でございません。ことに中央病院は、御承知のように明治二十三年かに建てた病院でありまして、非常に腐朽しておるということで十分ではない、財政的に非常に十分でないというようなことから、思うようにいかないのは、残念でございますが、できるだけ冗費を節約して、患者へのサービスあるいは公的医療機関としての特徴を生かすようにして参りたい。先般院長も都築正男博士になってもらいましたし、事務長等の更送もやりまして、——これは本法制定以後であります、かえまして、これらの線に沿うように努力をいたしておるわけであります。
  58. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 お伺いしたいのは、なかなかどうも多岐にわたり、今の看護婦の教育機関等につきましても、あるいは調査機関等につきましても、別の項目で伺いたいと思いますが、私が中央病院というものを限りましたのは、中央病院のベッドの総数と、それからそのベッドの中で、社会保険に使用のできるベッドの数、私の方にはこういう数字が入っております。間違いがあれば訂正してもらいますが、ベッドの総数では六百十八に対して、その中で健康保険いわゆる社会保険に使えるのが百ベッドしかない。従って大多数の入院患者は、いわゆる差額徴収をされておる。点数をざっと計算してみたのですが、入院料を完全看護、完全給食、完全寝具というものを全部完全に行なっておるというふうに計算しても三十七点で、東京におきましては四百六十二円五十銭にしかならない。ところがあなたの方の一般入院料というものを見ますと、九つの階級に分かれておって、一番安いのが四百七十円であって、高いのは一日の入院料が二千二百円も取っておる。そして百ベッドしか社会保険に使っておらないということがもし事実とすれば、今あなたのおっしやる入院患者の八割が社会保険あるいは生活保護等の患者であるということと、私の数字とどうも合わないのですが、もし私の方が間違いであれば一つそれを訂正しておいてもらいたい。
  59. 葛西嘉資

    葛西参考人 ただいま資料を持って参りませんでしたので、この六百有余のベッドのうちで、どのくらいどうなっておるかということは、今ちょっと何とも申し上げられませんが、大体私大ざっぱに申し上げますと、八割くらいまでが生活保護法もしくは健康保険の患者であろということは間違いないと信じております。  ただ、今の入院料等においても二千円くらいの病室があることもこれは事実でございます。赤十字は単なる社会医療だけの施設ではないと思いますので、先ほど医務局長の言われましたように、医療水準とか、あるいは調査研究とかいうような点からも、やはり公的医療機関としての使命を果さなければならないというようなことでありますので、いい部屋に入って、ゆっくり十分な治療を受けたいという希望者に対しましても、それに応ずる責任がある、そういう機能を持たなければならない病院の性格もあるのであります。一律に全部、これは例をあげるとおかしいかもしれませんが、たとえばそれを目的にする済生会の病院というようなものとは、やはりそこが違って、相当の部屋で静養したいというようなものがあれば、それらを利用していただくという機能も、赤十字病院としては持たなければならない。こういうわけで、今申しました二千円ばかりの部屋も幾つでありますか、数は私は知りませんが、あることは事実であります。ただしかし、何といいましても、赤十字全体のあれを見ましても、中央病院もその通りでありますが、八割くらいなものは、これらの社会医療の収入面から見てそうでありまするので——これは吉川さんは大へん資料を持っておるので、こっちは資料を持たずにやるのですから、ちょっとこう言っては失礼かもしれませんが、六百十幾つのうちに百しかないというのは、これは何としても間違いだと私は思うのでございます。
  60. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 それではちょっと話を転じて伺いますが、赤十字の本部あるいは支部というような組織と病院との間の会計は、一緒のものでありますか、それとも病院は特別会計になっておるものでありますか、そういう点を一つ。
  61. 葛西嘉資

    葛西参考人 大体大きな病院につきましては、なるべく特別会計として処理をしていけという指導方針になっております。そして大きい病院は、大てい特別会計にしております。それから、最近特別会計にした病院もございます。しかし、病院でありましても、支部等の都合によって、たとえばまだ十分独立企業ができないというような場合、相当多額の白い羽根からの募金病院に入れなければいけないという病院等は、一般会計のワク内でやっているところもございます。中央病院は本社の特別会計としてやっております。
  62. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 白い羽根が出ましたから伺いますが、さかのぼって、白い羽根というものと日赤との関係ということから聞いていきたいと思います。大体日本赤十字に全国で募集しました白い羽根の募金は、何割くらい来ているものでありますか。あれは途中で控除されますか。たとえば募金費といいますか、最初は地方事務所はたしか二割くらい引くと思っておりますが、それから地方支部が引く、そういう形でだんだん減らされて、本部に届く金が大体何割くらい来るかということです。
  63. 葛西嘉資

    葛西参考人 本部の方に届きます金は、募金の一割六分ということになっております。それから地元の方の募金の雑費と申しますか、あるいはポスターを刷るとか、あるいは資材を作りますとか、いろいろそういうものが要るのでありまして、今の本社の取りきめといたしましては、それらのものを合せまして一割以内ということになっております。従って、全体から二割六分を差し引いた七割四分というものが、支部に残っております。ただ、今の支部、たとえば地区分区といっておりますが、市町村等で奉仕団の費用でありますとか、あるいは青少年赤十字の費用というような事業が、その地区分区にもあります。これらの地区分区の事業として、支部の方に、残っております七割四分の中から、それらの事業に充てるために申請があって、内容を審査したものについては——これは支部によって違いますが、若干またそれらの支部に事業費の援助として交付しておる実例はございます。
  64. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 今の募金の問題でありますが、御説明によりますと、病院はなるべく特別会計ということを本社としては慫慂しておるということですが、そうして独立でできるところは独立採算でやらせて、小さいところには白い羽根の募金の中から本社が援護金を送っておる、こういうわけですね。その白い羽根の募金の中から、実際に病院に援護金として出されております金は、その十六%の中からどのくらいの額が行っているかということが一つ。それからその行っている病院名のようなものがわかれば、それを一つあわせて伺っておきたいのです。
  65. 葛西嘉資

    葛西参考人 ここにあります資料を見ますと、今のそれらの募金の中から、医療施設の中に入れております金が二千三百五十万円余りということになっております。これを募金の比率にあれしますと七・三%というようなことでございます。従って、大部分のものは独立採算でやっていると、こういうこ  でございます。
  66. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 そうすると、中央病院のようなところには、白い羽根の募金の金は、一銭も行ってないのですね。
  67. 葛西嘉資

    葛西参考人 はっきりした数字がありませんが、本社の方の白い羽根の募金から集まりました一割六分のうちから、中央病院には五百万くらいだと思います。これは看護婦養成事業その他の方へ行っております。
  68. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私の聞いておるところでは、看護婦養域事業には、むしろ中央病院から上った金から少し金が出ているはずです。中央病院に入院しておる患者に対して、白い羽根の募金の金はおそらく一円も使われてないというふうに私の調査ではなっております。間違いであれば訂正してもらうのですが、今のお話では、どうもはなはだ明瞭を欠くのですが、本社の直営のものは中央病院、産院、それから諏訪病院の三カ所あるわけですね。とにかく東京の本社のひざ元にあります中央病院に対して、白い羽根の募金の中から五百万行っておるのですか。これは間違いないですね。
  69. 葛西嘉資

    葛西参考人 ただいまの中央病院と申しますのは、公的医療機関としての一つの機関として、看護婦養成の仕事があるわけであります。それらを一体としての話であります。その看護婦養成の日本赤十字社女子短期大学の経営は、今吉川委員がお述べになりましたように、この病院の方からも、補助金というか経営費が出ております。本社の方からも、今の五百万円かと思いますが出ております。それらを合せて看護婦養成の仕事をして、そこを卒業した者が中央病院へ勤務し、あるいはまた災害救助に出るというふうになっております。ただ、それを離してしまって病院等の経営に白い羽根の募金の金が行っておるか行っておらないかということになれば、これは行っておらぬのがほんとうであります。しかし、全体の看護婦養成事業というものを、大体一つの病院の附帯事業としてやっております。ことに今の医療施設規則等におきましては、看護婦養成の仕事ということが、1つのやはり特色になっておる。かような意味で、私は看護婦養成事業を含めた中央病院に対しましては、白い羽根から回り回って上って参りました五百万円ばかりの金が出ております。諏訪にもそれに類するものが出ておりますし、産院にもそれに類するものが出ております。これらは究極するところ白い羽根から入っておるというふうに御承知いただいて差しつかえないと思います。
  70. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 だんだん明瞭になってきますが、そうしますと、看護婦短期大学ですか、いわゆる看護婦の教育機関に出しておる金が、白い羽根の募金から出ておる金が五百万、これはわかりました。ところが、この看護婦養成機関に対しては、ただいま御答弁の中にありましたように、中央病院の収益の中からも何がしかの金が出ておる、その金額はわかりますか。それの見当はわかりますか。その五百万円は、教育関係の予算の何割に当るのか、それによって大体出ておる金がわかるだろうと思います。
  71. 葛西嘉資

    葛西参考人 今の数字は、岡田君からごくラフなものを申し上げますが、それまでの間に、実ばちょっと申し上げておきたいと思います。  赤十字の看護婦養成の仕事と医療施設の関係でございますが。これは赤十字の看護婦というものは、災害救助でありますとか、そういういろいろな特殊の仕事をしなければならぬというわけで、自分のところで使う看護婦というものは、一つ自分のところでりっぱなものを作って、それを使う、こういうことで、医療施設規則としては、自分のところで使う人を一つ自分のところで養成するというようなことが、沿革的にも出ておったようであります。従いまして、それらの人の大部分が残るわけであります。そういう人のために、病院としても相当の金を出すということはこれは、当然のことで、今、部内にそれに対する批判というものはない。自分のところで病院から金を出して、自分のところで大部分の使う者を出すというようなことで、今看護学院が、ちょっと数は忘れましたけれども相当あるわけであります。それらはみなそういうことになっております。ちょっと数字を申し上げます。
  72. 岡田好治

    岡田参考人 ただまの短大の経費でございますが、私の方で補助の対象にいたしておりますのは、教育費とそれから教員の人件費、こういったやうな、もっぱら経常費でございます。それが一応、今私の記憶では七百万だったと思います。それのおそらく六割を見たと思っております。そのほかにまかない費や何かは、これは別になっております。
  73. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 別にといいますと……。
  74. 岡田好治

    岡田参考人 これはまかない費は、おそらく病院の方が負担しておるはずであります。病院の方の経費でございます。というのは、実習で手伝いますから、その労力奉仕に対して、まかない費の方でまかなっておる、こういうことでございます。
  75. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 どうも非常に聞きたいことが多いので困るのですが、今看護婦養成に対してのお話がございましたので、ちょっと伺いますけれども、例の看護婦の身分保障といいますか生活保障といいますか、そういうことについて伺いたいのであります。今年の春でございましたか、山本何がしとかいう、第一回のナイチンゲール賞をもらった八十何才かの老看護婦が、それこそ陋巷に窮死したといってもいいくらいの最後を遂げたように思いましたが、あれは、たしかなくなったのは日赤病院だったと思います。現在も養老院には、そういうナイチンゲール賞をもらった名誉の看護婦でありながら、そういうところに収容されておる人もあるという話を聞いておりますが、この看護婦養成というものに対して、ただそういう技術面だけの養成で終っておるのか。それを日赤で使う以上は、たとえば老後の年金であるとか、退職金であるとかいうようなことは確立しておらないのか。そういう人々がそういう最後を遂げるというの、制度が悪いのか、不備なのか、本人たちの心がけが悪いのか、そういう点についておわかりの点を一つ伺っておきたいと思います。
  76. 葛西嘉資

    葛西参考人 山本ヤヲ女史の点については、当時新聞にも出ておりました。私どもも、非常に心を痛めたことでございます。赤十字の現在の制度を率直に申し上げますと、退職金の規定がございまして、赤十字の看護婦が退職した場合には、それぞれ勤務年限、現在の給与等に応じまして、一時金を出すことになっております。山本ヤヲさんの場合も、相当勤められまして、後進に道を譲られたときには当時としましては、相当額の金が山本さんに渡ったのであります。しかし、山本さんがやめられてから、御承知のように一万や二万、金があったところで、ほとんど戦後のインフレで問題にならなくなってしまったのが大体の実情のようでございます。ですから、その責任はどこにあるかというと、インフレが責任だと言うより手がないのじゃないかと思います。従いまして、かやうなことで、現在も、看護婦さんがある程度勤められるということになれば、現在は現在の貨幣価値に応じた退職金が、一時金が出ることになっております。古い看護婦さん等については、百万円を越す金額が一時金として本人に行くことになっております。しかしながら、それでは十分ではないのでございます。これは私どもとしましては、ぜひ何とか今のお話しのような年金というやうなものをやらなければならぬというふうに考えるのでありますが、何も赤十字の財政というものは、それらの長い人に年金をやるほどの、まだ財政ではないのでございます。しかし現在赤十字の看護婦といえども、今御承知の厚生年金法にはかかっておるのでございまして、やがて厚生年金が実施になる時期になりますれば、これらの退職者については、掛金も納めておりますから、その恩典には浴することができる。しかしそれの実施までの間は、実は年金というものはないのであります。昨年ナイチンゲール百年祭に当りまして、総裁陛下からナイチンゲール賞の受賞者をお呼びになったとき、参議院厚生委員会に彼らを連れて参りましたときに、感謝の決議があると同時に、当時の草葉厚生大臣に対して、議員の方からお尋ねがありまして、こういう人については、国家として一つ何とか老後安定の道を講ずべきではないかというようなことがあって、趣旨はもっともだから研究しますというようなお話があったのであります。厚生省御当局でも、いろいろ寄り寄り御研究をいただいておることとは思いますけれども、何せそういうような状態でございます。しかし、私どもの内部でも、今の御趣旨で——これらの看護婦さんで養老院に入っておるような人は、実は今お述べになった通りでございます。ナイチンゲール賞をもらっている者でも、香川アヤという人は東京の養育院に入っております。これらの人は独身で長い間、六十幾つ、あるいは七十に近くなるまで勤めるというようなことで、身寄りの者もほとんどなくなってしまい、ほんとうに孤独になってしまって、寄るべがなくなるというような、非常に気の毒な状態でございます。従いまして、これらの人に対しましては、何か老人ホームといいますか、看護婦のホームを一つ作る必要があるというわけで、今研究をしておりますが、なかなかこれは金に関する問題でございますので、十分なことができないで弱っております。ただ山本ヤヲ女子等につきましては、今述べになりましたように、起居が不自由になりましてからは、ずっと赤十字の中に看護婦の同窓会館みたいなものがあるのでありまして、そこへ入りまして、自分の妹さんが来まして、私も参りましたが、一室で妹さんと二人で後輩の看護婦どもがめんどうを見て、最後は病院で安らかにゆかれた。最後の危篤のときも、私参りましたのですが、看護婦、御厄介になって相済みませんというようなことを小さい声で申しました。私は、ここはあなたのうちじゃないか、あなたのうちにおるのに済まぬということを言う必要はない、心置きなくやりなさいと言って、かわるがわる後輩の看護婦が見舞ったというようなことで、山本ヤヲさんだけは、そんなことでございましたが、できるだけそういうふうにして参りたいと思います。全体の多数の赤十字看護婦の老後の安定ということについては、まだ大きな問題が残っておりますことは、その通りでございます。
  77. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 看護婦さんだけでなく、日赤従業員は、そういう点から見ますと、給与ベースにおいても、あるいは退職その他の生活保障の点についても、はなはだ問題が残されておるようでありますが、本日私はそこまで論及する時間がないので、それはまた後日に譲りたいと思いますが、今の募金の使い道について、いろいろな疑惑があるかのように私ども聞きます。特に副社長の社宅なんかも募金で建っておるということですし、しかもそれには、前にやめられたあなたの前任者の副社長が、おやめになってからも、まだその中に住んでおられるというような話もあるのです。これはそう大して大きな問題でないかもしれませんが、しかし募金というものの性質上、そういうことが果してあるのかどうかということを、一つ明確にしておいてもらいたい。
  78. 葛西嘉資

    葛西参考人 実は私の就任の前のことに属しまするので、人から聞いたりしたことでお答えを申し上げることを、お許し願いたいと思いますが、副社長の社宅並びに職員の住宅を、赤十字が戦後買ったことは事実でございます。買ったのは、ただし白い羽根の募金からではないのであります。そのあれはどういうことかというと、これは、私政府におって、政府側で知っておったのでありますが、当時進駐軍の方から、コーヒーのだめになったものの払い下げがありました。その払い下げというのは、私知っておるのですが、それをどこへやったらいいかという相談が駐留軍からありまして、まあ日本赤十字社が適当だろうということで、そのコーヒーの現物を赤十字にくれました。そのくれたものを、当時の赤十字社において売却をして、相当の金ができたのであります。その金の一部で当時の副社長の社宅を買い、それから職員の住宅を——これは恵比寿にあるのでありますが、そこに職員合宿所を買いました。それは現在持っております。それですから、それは事実であります。募金ではないのであります。
  79. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 副社長のうちに住でおるというのは。
  80. 葛西嘉資

    葛西参考人 これはそうであります。私は自分のうちがありますから、自分のうちに住んでおりますが、その前の副社長は、うちがなかったものでありますから、私が入るのが当りまえですけれども、まあうちがあるからいいというようなことで入らなかった。これは非常にお気の毒だと思いまして、私は私のかわりに入っておってもらっていいと、こう言うたので、それで入っておるのであります。
  81. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 まあ赤十字社の副社長ともなれば、お気の毒だという気持を持つことはいいのかもしれませんが、しかしちょっと公私の混同のように思うのです。この附帯決議の中にも、人事刷新ということが特にうたわれておって、その人事刷新の対象になって副社長の交代が行われたのではないかと思うのですが、それからもう二年有半もたっておるのに、そういう公けの建物に、関係のない者が二年幾らもそこにおられて、そうしてお気の毒だというようなあなたの個人的な側隠の情だけではどうにもならぬのじゃないか。私ども、今日の住宅難の際ですから、別に前副社長に個人的にどういうものがあるわけでもないので、そういう問題をここでそう大きく取り上げたくはありませんが、しかしながらこれから日本赤十字の問題について、いろいろわれわれは論議を進めていきまする場合に、こういう問題も看過できなくなるかもしれませんので、一つ早急に解決されてはどうか。これは単なる私の希望的なことを申し上げておきたいのであります。  白い羽根の募金ということにつきましては、まずそれだけではなく、共同募金につきましても、いろいろな議論があるのでありまして、例の霊友会事件であるとか、あるいは当時の法務総裁の問題であるとか、いろいろなことが国会で問題になっておるのであります。私は日本赤十字社の財源の過半が、今日のところ募金によっておるということの事実から見まして、赤十字社の経営というものは、きわめてデリケートなものであり、まだ国家的な意義の重大なものでなければならないと思うのでありますが、こういうような日赤の中におきまして、ここに私持っておりますが、仙台地方におきまして、毎日の地方版をにぎわしておりますような大事件が起っておるようでありまして、それは要するに会計の乱脈であります。これは、すでに本社においても御存じのところであろうと思いますが、最近の新聞によりますと、事務局長はいよいよ辞表を提出するであろうということが出ております。経過的に見ますと、古い自動車を売るといって、売ったその金に若干の金を足して新車を買うというようなことで、理事会か評議員か、そういう役員会を通しておきながら、古い車は売れておらないのに、新しい車にすでに乗っておるとか、いろいろこまかいことが出ております。これに対しても、事務局等のお話では——ことごとくそうではありません、私も全部読んだわけではありませんで、拾い読みでありますが、本社の了解を得てやったということが、この記事に出ておるのでございます。こういうような事実は、拾い上げると全国的にあるのではないかと私は思うのです。といいますのは、必要があれば、私どもこれから手分けをして、われわれの党の組織で全国的に探してみてもよろしいのですが、どうも募金だからというので、零細な金でありますから、むしろ大事にしなければならないものを、相手の知れない金だというので、少し軽んじている風があるのではないか、こういうふうに私どもには受け取れるのです。  それから、たとえばあなたのおひざ元でありますところの中央病院についてみましても、先刻私が申し上げましたように、病院には募金の金はそれこそ一文も渡っておらず、病院のベッドの数における社会保険その他の使用数といいますのは六分の一にも達しない。聞くところによりますと、大きな保険会社なんかと契約をいたしまして、ほとんどふりには入れないというように聞いております。しかも、看護婦養成その他のものについては、独立会計を病院に求めておいて、その中から、今の御説明の中にもありますように、四割近いものが、食費であれ、手間賃であれ、いずれにしましても、そういう負担が逆にかけられておる。国民の側から申しますと、これでは何のための募金であるかと言わざるを得ないのでありまして、中央においてもとかくの話を聞かないでもありませんが、特に地方におきましては、このように歴然たる事実が新聞にうたわれておる。こういう際において、私は、この日赤法ができました当時の審議の模様の速記録もここに持ってきております。時間があれば、これを読み上げたいのでありますが、今日は時間があまりないので、話をきわめて端折って質問をいたしておるのでありますが、そういう募金というような貴重な金を受け取っておきながら、その使途において、なお私は必ずしも十分な考慮が払われておらないように思うのです。これは必ずしも本社に限ったことじゃありませんが、この際伺っておきたいことは、赤十字社といたしまして、財産目録といいますか、資産調査といいますか、そういうものが明確にできておるかどうかということを聞きたい。あれば、それを一つこの際提示願えるかどうか。この際願えなければ、後ほど文書でもけっこうだから、提示してもらえるかどうかということを、お聞きしたいのであります。
  82. 葛西嘉資

    葛西参考人 吉川委員のお尋ねでありますが、前の副社長が実際行く先がなくて入っておることは事実であります。何も関係のない者を入れておるというお話でありましたが、前の副社長の伊藤さんには、今赤十字の理事をお願いしておりまして、理事としていろいろ御協力を願っておることは事実であります。それだけ申し上げます。  それから浄財で——過般仙台の宮城県支部のことで新聞をにぎわしたことは、御指摘の通りでございますが、これは私は遺憾なことであって、相手が知れないのであるから軽んずるというようなことは、とんでもないことでございますので、かような浄財であればこそ、一文といえどもゆるがせにしてならぬというふうにかたく信じております。ちょうど十八日だと思いますが、東京の本紙の朝日新聞の地方報告欄に、白い羽根の疑いといいますか、疑惑といいますか、そういう記事が載っておりましたので、私は七月二十日付をもちまして全国の各支部に対しまして、将来戒めなければならぬ。ことにあの新聞記事では、今吉川委員がお述べになったように——私の記憶が間違いなければ、そういう点で赤十字の幹部あたりがないがしろにしておるのではないだろうかというような記事があって、これは容易ならぬことであるので、われわれはこの不信を払拭するためには、事実をもって示すより仕方がないというわけで、厳重な注意の勧告をする書簡を各支部に送っておきました。私どもは、今お述べになりましたように、一つぜひ戒慎をしてかような間違いのないように、かような浄財、かようなあたたかい気持のものであればこそ、いささかの疑惑もないようにしなければならぬ、こういうふうにかたく心に期して指導をして参るつもりでございます。今お述べになりました中に、全国的にこういうものがあるのではないか、われわれの組織を通じて調べるということでありますが、私どもも、かようなことがあってはならぬというふうに考えまして、全国府県には臨査員というものがおりますし、われわれの方にも監査の専任者がおりますので、これらを派遣してやっておりますが、仙台の場合は非常に特異な例であるのでありまして、——ただしかし、不正というか、忌まわしい不正費消というようなことはなかったのであります、会計の帳簿が、ほとんどできておらぬのであります。帳簿不始末というようなことが原因であったようです。これば今席におります岡田君を派遣いたしまして、帳簿等をきれいに整理いたして、近日厚生省の監査もやっていただくことになっております。資料を整えておるわけでございます。ただしかし、あそこは病院の建設等がありますものですから、接待費が多過ぎたとか、あるいはまた今の帳面につけ方、予算の差引、予算の款項の流用禁止の本社の規定を無視しておるとか、数え上げれば限りがないわけでありますが、幸いにして今の不正費消というような忌まわしいことがないということは喜んでおるわけでございます。これは申すまでもなく、私どもは厳重に国会議員の皆さんの御協力も得てやって参りたいと思っております。  それから、いろいろお述べになりました中で、どうして赤十字の基礎を固めますには、財源を確保しなければならぬ、そのためには、前にもありましたように、社員の制度というものをはっきりきめて、その社員制度の基礎を固めるということが大事だと思ってこれをやっているのは、先ほど申し上げた通りでございます。  なお、最後に御要求になりました赤十字社の財産調査並びに資産目録は、先般代議員会——これは総会みたいなものでありますが、それで承認を得た目録がございますので、これは後刻委員長を通じてお手元に上げることにいたします。
  83. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 もう私の与えられた時間が迫って参りましたから、私自身としては、はなはだしり切れトンボの質問で、もう少し突っ込みたいと思いますけれども、この辺で一応とめておくことにいたしましょう。しかし、これで赤十字に対する私の発言は終結したものというふうにはお取りにならないように願いたいと思うのであります。  最後に伺っておきたいことは、日本赤十字社法の第二条に「国際赤十字事業の発展に協力し、世界の平和と人類の福祉に貢献するように努めなければならない。」——前にも少し文句がありますが、要点はそういうようなものと思います。さらにまた提案者の説明の中にも「赤十字条約加盟各国において、この条約の崇高な使命を達成するために奉仕しようとする、平和を愛好する人々によって組織せられ、その活動は」云々、こういうふうに述べられておるのでございまするが、日本赤十字におきまして、いわゆる世界平和運動といいますか、そういうことに対して、従来どういうことをやられたか、あるいは将来どういうことをやろうとしているか、その構想のごときものがあれば、この機会に明らかにしておいてもらいたい。
  84. 葛西嘉資

    葛西参考人 赤十字は平和、人類の福祉ということが最高の目標であることは、これは申すまでもなく御指摘の通りであります。最近やった具体的なこれらについての例は何かというと、実は昨年五月オスロで開かれました国際赤十字理事会に、私どもの方の日本代表がイニシアチブをとりまして、原爆の被害を受けた日本として、原爆の平和的利用これは先般国会で御決議になったのと同じ趣旨のものでありますが、それを提案いたしました。これは他の赤十字からも提案になりまして、それらとかみ合せまして、そしてできたわけであります。ことに、実験についての被害を最小限度にとどめるようにするということは、ビキニのあとでありましたものですから、日本の主張によってそれらの項目も入れて、昨年の五月のオスロの会議で、かようなことが国際赤十字で決定したわけでございます。  そのほか赤十字の活動というのは国際的に手をつなぎまして、政治、宗教、人種、あらゆるものを越えて手をつないで平和のためにやっていくという運動は、ここで一々あげるわけにいきませんが、たとえば小さいところからやる青少年赤十字でありますとか、あるいはいろいろな災害等の場合にお互いで見舞をいたしますとか、あるいは意思の疎通をはかりますとか、あるいは引き揚げの促進でありますとか、そういうふうな平和に寄与するいろいろなことをやっておることも、吉川委員御存じの通りであります。非常に広い範囲でありますので、具体的に何をやっているかということは、大体そのくらいで御賢察をいただきたいと思います。
  85. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 もう一点、これは実は私、不的確な証拠を提示するわけに参りませんので、一つうわさ話として申し上げるのでありますが、日赤婦人団体で、日赤奉仕団というもとの愛国婦人会のごときもの、あれが各地にあるわけですが、あの中で、選挙の際などに政党運動をやっておる者があるのです。私も場合によれば、はっきり所などを申し上げてもよろしいのですが、そこまで言わなくても、お話はおわかりと思います。あの日赤奉仕団というようなものが、選挙運動に類するようなことをしていることについては、一つ特別な御処置をとる必要があるのじゃないかと思いまするが、その点はどうですか。
  86. 葛西嘉資

    葛西参考人 赤十字の奉仕団といいますのは、これは終戦後でありますが、赤十字の精神に共鳴をされまして、そして時間なり労力なりを奉仕して、世界の平和、人類の福祉に貢献しようという者の集まりでございます。従いまして愛国婦人会のごときものという仰せでありましたが、趣旨はちょっと違うように私は思います。そういうものがございまして、相当数いろいろあたたかい活動をしていただいておりますが、とかく今仰せになりましたように、選挙の際に選挙運動をするのじゃないかというようなことも、実は私どももこそこそうわさに聞いておるのであります。これはとんでもないことでありまして、赤十字の奉仕団の目的なりあるいは趣旨なり、あるいは心持の中に、かようなことはあろうはずはないわけであります。ことに赤十字は、政治的に全く中立の立場をとっておるわけであります。従って、そのようなことがあろうはずはないわけであります。しかし、さようなことを聞きますので、機会あるごとに、そういうことがないようにしようということを戒めております。ちょうど時たまたま、奉仕団の方も終戦後十年近くの歴史を持ちますので、ここらで一つ再検討をして、健全な出発をしようじゃないかというようなことを寄り寄り話しております。それには奉仕団の憲法といいますか、ねらいといますか、奉仕団規則といいますか、そんなものを作ってみようじゃないかというようなことで、寄り寄り相談をしております。その中に、今お述べになりました政治等から中立をしなければならぬということは、今大事な一つの項目の案にはなっております。さようなことがあってはいけませんので、ぜひ一つそういうことでそれをやり十分戒めて参りたい。これは赤十字の政治的中立性からいっても、まことに困る問題でありまして、戒めて参りたい、かように考えております。
  87. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 いよいよこれで最後にいたしますが、赤十字社の、特に病院療養所その他で働いております従業員の組合であります。私の方に入ってきました材料によりますと、全国百六十数カ所の病院療養所といいますか、そういうところで組合を結成しておりますのが比較的大きな病院で四十二カ所、未組織のところは百数カ所—その残りが未組織なわけでありますが、中には病院長などで、組合の組織を非常に好まないだけではなく、積極的にむしろそれを阻止する、妨害する、こういうような人もあるようでありまして、名前もわかっておりますが、名前は申し上げません。ただ一つの例を申し上げますならば、秋田の病院長から最近武蔵野病院ですか、そとに転勤された院長のごときは、秋田に院長として在職中、秋田、山形、ちょっとはっきりわかりませんが、とうとう組合を作らせなかった。そうして、その方がこちらに転任したあとで、すぐ組合ができております。また現在武蔵野病院においても組合を許しておらない。こういうような事実があるのでありますが、本社の当局として、こういう勤労階級の人々が法によって、憲法によって保障されておりまするところの組合の結成及び組合活動ということに対して、どういうふうにお考えになっておるかということを、明確にしておいてもらいたい。
  88. 葛西嘉資

    葛西参考人 ただいまの赤十字の労働組合の点でございますが、個所数は今お話になったようなことかもしれません、正確にはわかりませんが。ただしかし、従業員の六割ぐらいは組合を持っておると記憶しております。これは申すまでもないことでございまして、かような職員間の経済的な要求に対しまして、組合を組織するということは、憲法で認められたことでございますので、これを阻止するなんということは、ないわけでございます。ことに、ただ赤十字の方は、私どもは、むしろ赤十字の社業伸展——だれも資本家というようなものもないわけでありまして、みんなが患者のサービスをして世の中のためになる、お互いにそういう気持でやっておるのであるから、そういう意味で、お互いに話し合うということはまことにけっこうなことで、大いにそれはいいという建前で、労働組合との交渉等にも委員長の代表等も入ってもらった、実はやっておるわけでございます。今お述べになりましたような、いろいろなこともあると思うのです。これはよく院長さんあたりにも話をしておりますし、現に半数以上も入っておるわけであります。私どもとしては、そのようなことで、できるだけ従業員の協力を得て、そうしてほんとうのサービスをしていかなければならならぬ、こういうふうに考えておりますので、むしろ私ども意見を聞くという立場をとっているつもりでございます。ことに希望等につきましては、退職金の制度、あるいはレントゲン技術者の危害予防の規則等は、希望があったものですから、他に率先してそれを作っておるというようなことでございます。そのほか給与改善その他についても、委員会等があるのでありますが、これらには、労働組合の代表等も参加せしめましてやっておるわけであります。私どもとしては、法で認められたそういう点については、十分尊重をし、そうしてお互いにあたたかい気持でいいサービスがして、いけるようにということを考えて詰るわけでございます。
  89. 中村三之丞

    中村委員長 次会は明日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後一時三分散会