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1955-07-22 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十二日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       小川 半次君    亀山 孝一君       小島 徹三君    床次 徳二君       山本 利壽君    横井 太郎君       亘  四郎君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    小林  郁君       中山 マサ君    野澤 清人君       八田 貞義君    岡本 隆一君       滝井 義高君    長谷川 保君       柳田 秀一君    横錢 重吉君       井堀 繁雄君    受田 新吉君       神田 大作君    堂森 芳夫君       中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (薬務局薬事課         長)      尾崎 重毅君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 七月二十一日  委員福田昌子君辞任につき、その補欠として横  銭重吉君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月二十一日  母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改  正する法律案植村武一君外十六名提出衆法  第六四号)  社会福祉事業等の施設に関する措置法案小林  英三君外五名提出参法第二一号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正す  る法律の一部を改正する法律案三浦一雄君外  四十九名提出衆法第五二号)     —————————————
  2. 中村三之丞

    ○中村委員長 これより会議を開きます。  まず医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を続行いたします。大橋武夫君。
  3. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私どもは、先週以来医薬分業についての議員提出法案について審議を重ねて参ったのでございますが、厚生大臣におかれましては、この問題は、御所管事項に非常に重大な関係のある問題でありますから、さだめしこれについては、いろいろな御感想もおありのことと存ずるのでございます。そこで、今日は特に大臣の御出席をわずらわしまして、この法案に関連して御質問を申し上げたいと存ずるのでございますが、まず第一に、今日問題になっております医薬分業についての基本的な考え方は、どういうお考えでありましょうか、これについての大臣のお考えを承わりたいと存じます。
  4. 川崎秀二

    川崎国務大臣 私に医薬分業の基本的な考えを申せということでありますが、これは私個人の場合と厚生大臣としての立場は全然違いますので、あらかじめお断わりを申し上げておきます。  私は医薬分業の非常に強硬なる促進論者でありまして、従って今日出ておりまする修正案に対しましては、個人としては賛成することは絶対にできないのであります。しかし、厚生大臣としての立場は、就任の当初に党との約束がありまして、医薬関係法案につきましては党の決定に従うということを冒頭に申しておりまするので、国会での審議ということをすべて尊重いたしまして、善処をするつもりでございます。私の今日の立場を申せとおっしゃるならば、昨年の二十国会でしたかの十二月三日に決定された院議を尊重いたしまして、厚生大臣としての職責を尽しておるわけでございます。
  5. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、大臣のお考えは、改正法律については、できるだけ予定通り実施したい、こういう考え政府としての機構の運営にお当りになっておられるわけですね。
  6. 川崎秀二

    川崎国務大臣 さようでございます。
  7. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、この改正法律実施の再延期であるとか、あるいは改正法律修正というようなことについては、政府としては積極的にはお考えはない、こう承わってよろしゅうございましょうか。
  8. 川崎秀二

    川崎国務大臣 さようでございます。
  9. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは、重ねてお伺いいたしたいのは、この改正法律、すなわち明年四月一日より実施されることを予定せられております改正法律実施ということが、果して支障なく行われることができるかどうか。すなわち、実施が可能であると考えておられますかどうか、どうでございますか。
  10. 川崎秀二

    川崎国務大臣 昨年の国会における速記録を、大橋委員も十分御承知と思いますが、あの際におきまする各党派の意見をくまなく拝聴いたしてみますと、只野直三郎君という無所属の委員の方だけがその動向からはずれた議論をなさっただけでありまして、この席におられる山下春江さんはもとより、当時の松永佛骨先生あるいは佐藤芳男君、また社会党両派の御意見は、医薬分業実施するに当って厚生省準備が十分でないということが、最大公約数のようであったのであります。従いまして、本年は予算案におきまして一千四十万円の医薬分業調査費なるものを計上いたしまして、準備に着手をいたし、この国会閉会中といいますか、大体七月で終りますか、八月に延期するようなことはないと思いますけれども、その期間に十分なる宣伝啓蒙並びに調査をいたしまして、そうして秋において大体準備態勢を整えるということで進んでおったのが、厚生省考え方であったのであります。従いまして、この国会は、多分前国会での両院の意思というものを御尊重いただければ、医薬関係に関する法案並びに措置というものは、政府からも出しませんし、議員からも出ないと思っておったのでありますが、非常に情勢が変って参ったように伺っておりますので、そういうことになりますれば、またそういうことで対処しなければならぬ。今のところは、会期も非常に迫っておりまするし、一応従前と同じように準備態勢を固めるという方向に努力をいたしておったのでございます。そういう経緯だけを御承知置き願います。
  11. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで現在政府の進めておりますところの実施準備ということと並行いたしまして、今日医薬関係者の間に、この実施をめぐっての紛争が起っておることは、これは大臣もすでに十分御承知のことと存ずるのでございます。そこで、この紛争の根源というものは、一体どういう点にあると大臣はにらんでおられるでございましょうか。
  12. 川崎秀二

    川崎国務大臣 いろいろ内容についての御議論はあると思いますけれども医薬問題に対する紛争は、今始まったことではありませんで、七十年間の抗争史ということを世間では申しておりますけれども、それに伴って占領治下において、サムス准将なる者が医薬分業に対しての強力な推進をなし、かつ今日昭和二十六年に成立をいたしました、いわゆる改正案なるものより一そう強い、強制的な医薬分業というものを行なった際におきましては、占領治下における強圧というようなことが加わって、国内における医師関係方々の非常な反対と相待って、中和してできたのが現在猶予されておる医薬分業法という歴史的な背景がありますから、それを正しい日本の客観情勢にマッチさせていきたいということが、今度の関係修正案なるものが提出をされたことであろうと伺っております。それに対して、薬剤師側と申しますか、今日実施をしようとしておる案を墨守しようという者との抗争だというふうに拝見はいたしておりますが、しかし、いろいろ錯雑した事情もありまして、どこに論争の主点があるかということになりますと、そのときに応じて、だんだん変ってくるようでありまして、現に私、新聞紙上でしか拝見しないのでありますが、大橋修正案なるものが出ておるようであります。そうなりますと、また考え方もだいぶ変ってきております。従って、必ずしもどこに論争点があるかというよりも、相当露骨に申せば、医薬関係者の非常に歴史的な闘争史背景にしての感情的な部分も、かなり加わっておるのではないかというふうにさえ、客観的には見られるのであります。しかし、これは私が医薬分業推進論者立場としてでなしに、厚生大臣としての客観的な立場からながめまして、そういうふうに国民には印象づけられておるのではないかというふうに私は思っております。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員 確かにこの医薬抗争というものは、長い沿革のある問題でありますが、特に来年の医薬分業実施をめぐりまして、非常に激化しつつあることは事実でございます。そしてこの問題についての論争点というのは、いろいろそのときどきにも変っておるし、また対策が出るごとに論争点も移りつつある、こう申されておりますが、私はこの医薬分業に関する紛争というのは、単に法制上の論点が論争の的になっておるというような、いわゆる純粋な制度的な法制的な論争ではなくして、その背後には明瞭に医薬関係者間における経済的な問題がひそんでおるのではないか。この経済的な問題を土台にして、今日の医薬論争というものが続けられておる、こういうふうに見ておるのでございますが、大臣はこうした見方については、いかにお感じになられるでございましょうか。
  14. 川崎秀二

    川崎国務大臣 ただいま申されたことは、確かに私もそういう見方を一部持っておるものでございます。すなわち、単に制度的なものでなしに、医薬問題というものをどう取り扱っていくか。医薬分業ではなしに、たとえば新医療費体系をどう取り扱うかが、保険にもいろいろからんできましょうし、経済上の最近の諸動因にも大きな影響があることは事実であります。従って、ただいま申されたことの意味が、まだ深く私にはわかりませんけれども経済上の諸動因によるということは事実だと私は思っております。
  15. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、大臣医薬分業の問題というものは、医薬間における職分の配分をどうするかという問題であると同時に、医薬間における所得の配分をどうするかという、より一そう経済的な問題を含んでいるものである、こういうふうに御理解になっておられると承わってよろしゅうございましょうか。
  16. 川崎秀二

    川崎国務大臣 差しつかえございません。
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣がさようにこの医薬分業問題についての御認識を持っておられるといたしますと、この問題は医薬関係者生活上の利益影響する問題であり、従って、これは明らかなる経済問題としての面を考えなければ、この問題の解決策というものは完全でない、こういうふうにお考えになることができるのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
  18. 川崎秀二

    川崎国務大臣 突き詰めて考えますれば、そういうことは十分に配慮して解決しなければならぬことは事実だと思います。
  19. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、私どもは、この問題の相当な要因となっております経済面について、相当掘り下げた検討をいたしてみなければ、この問題の対策が立たない、こう言わざるを得ないと思うのでございます。そこで、大臣にお伺いいたしたい点は、この医薬分業ということによりまして、医薬関係者生活上の利益に、一体どういう影響が生じてくると、大臣は御想像なさっておられるでございましょうか。
  20. 川崎秀二

    川崎国務大臣 これが実施されますれば、露骨に申して、従来の医師立場というものが、薬剤師調剤権というものが従来より一層浮きぼりにされますから、従って多少従来持っておった既得権益というよりは、むしろスフィア、自分の影響を及ぼす範囲というものが縮小されるということは、事実だと私は思っております。従って、医師立場において非常に今後利益になる、医薬分業実施をされるということになれば、そのことによってピロフィットが多くなるというふうにも考えないのであります。そういうことから、分業法というものが実施される場合における医師立場というものは、十分に他の面において考慮しなければならぬというふうに私どもは思っておったのでありますが、大体総括して申し上げれば、そういうことがまず第一の点ではないかというふうに考えていたのであります。
  21. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、この医薬分業実施によりまして、将来経済面において利益を予期することのできぬ者がだれで、不利益を予期しなければならない者がだれであるかということは、これは大臣のただいまのお言葉で大よそ想像ができると思うのでございます。そこで、私伺いたい点は、一体今日まで政府、ことに事務当局とせられまして、この医薬分業実施に際しまして、関係者に与えるところの経済上の利益不利益ということについて、当局者としてはどういうふうにお考えになっておられたのであるか。またこの医薬分業を実済するに当って、この利益不利益を生ずるであろうということを、十分承知の上でこれを実行しようとしておられるのであったか、あるいはまたその利益不利益調整しなければ、実施は困難であるとお考えになっておられたかどうか。さらにまた、この利益不利益調整しなければならぬとお考えになっておりましたならば、その調整のためにどういう方法をとるべきであると考えられたか、そして今日までどういう措置をとってこられておるか。こうした点につきまして、大臣は御就任早々のことでもありますので、従来長年問題になっておりまするこの問題の責任者であられますところの政府委員から承わりたいと存ずるのでございます。
  22. 川崎秀二

    川崎国務大臣 ちょっと私からも申し上げます。ただいま私が申し上げたことは、原則であり、かつまた、それが医師全体に大きな不利益をもたらすとは私は考えておらぬ。ただプロフィットが、あるいは今まで持っておった影響力、あるいは既得権というものに対して、多少影響があるということを申し上げたわけでありますけれども、これをこの医薬分業の持っている思想の線に乗せつつ、次第に摩擦なく実行するという形で実は行きたかったのであります。従ってその時期は、先般の第二十国会において延長法なるものが通って、延長法の中に意味するところは、各自によりましては、かなり深い突っ込みをされておる討論もありますけれども、集約しますと、政治論的には、やはり厚生省準備が足りないということに相なりますので、それならば、一つ私は在任中に十分の努力をいたし、ことに国会閉会になりますれば、フルに行政面にもタッチができますので、一カ月ないし二カ月の期間がありますれば、その間において、薬剤師医師会、利害が相当相反してはおりましょうけれども、一致し得る点もあり得るのではないかというような考え方をもちまして、部下に命じまして、摩擦のないような方途はあり得るのではないかと言っておるのであります。そこで、医薬関係審議会がもし連続的に開催され——ただいまときどきはやっておりますが、ときには中断をされることがありますので、これを閉会と同時に強く推進しまして、その期間中に幹事会の案を出そうじゃないか。幹事会の案には、医薬分業実施に当っては、なるべく摩擦のない、また、たとえば地域を限定するとか、あるいは医師処方せん交付に対しまして、従来よりは一そう医師側に、この法案自身よりは進んだような、医師側の方にプロフィットのあるようなやり方も考えてみたらどうか、そういうようなことも考究してみろというようなことを申しておって、でき得る限り閉会中に両方の歩み寄りを策したいという考え方でおったわけであります。先ほどのことに付加いたしまして、私の心境を申し述べまして、先ほど御質問のありました具体的な点は、曾田局長から答弁させていただきます。
  23. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 いわゆる新医療費体系の基本的な考え方というものにつきましては、私どものところが担当いたしておりましたので、私から一応……。
  24. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ちょっと失礼ですが、医療費体系の問題ではなく、先ほど承わりました利益不利益調整という基本的な問題です。
  25. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 その意味で、私からお答えいたします。私ども考え方としましては、必ずしも医師に重大な収入減という影響を与えずして、この分業ということが可能なものではないかというふうに考えた次第でございまして、今日におきましても、医師調剤はいたしておりますけれども、その調剤のためには、薬品あるいは調剤に要するいろいろな設備、機械、物資及び人件費というようなものを要しておりますので、その部分だけを、薬局調剤いたした場合には薬局で支払う。それ以上の、いわゆる医師技術料投薬に合せて支払われておりました部分だけは、極力正確な資料に基きまして、そのまま医師手元に残しておきたいというふうに考えた次第でございます。従って、その分業によって医師が損失をこうむるようなことのないように私どもは考慮いたし、実際にもある程度は可能であるというふうに思っております。  それに対しまして、薬剤師の方といたしましては、これは調剤仕事が変って参りますから、調剤に要した少くとも人件費というものは、薬剤師収入増になって参ると思います。その他この薬品購入あるいはこの取扱いというようなものにおきまして、特殊な教育も受けているものでございますので、物の節約というような点、あるいは時間の節約というようなことで、医師のもとにおいて調剤いたします場合よりも、あるいは掛りが多少減少するかもしれませんが、この部分薬剤師収入増になって参る。そういたしますと、薬剤師収入増の分だけが医師収入から回されたものじゃないかということをよく聞くのでありますが、私どもは率直に申し上げますれば、医師のもとにおきまして、医師自身調剤をしている手間もないではありませんけれども、多くは看護婦あるいは調剤助手というようなものが行なっておりますのが多いのでありまして、その人件費が、薬剤師調剤手数料をおおむねまかない得るというような考え方でございます。  ここまでで、お答えは終っていいのかもしれませんが、さらに今後の見通しの問題につきましては、これはいろいろな見通しが立ち得るわけでありまして、薬品節約というようなことを、私どもとしては期待いたしておるのであります。一部の方々は、節約でなくて、かえって浪費が起るんだというような御意見もあるようであります。将来のことについては、いろいろ意見が分れている。私どもは、むしろ節約し得るのではないか、そうすれば、その節約分医師あるいは薬剤師技術料、あるいは患者医療費負担の軽減に回し得る余裕がここから出てきはしないかということを考えている次第であります。
  26. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、医務局長は、これを実施すれば、当然医者は減収になるということだけは、お認めになっておられるわけですか。
  27. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 何と申しますか、いわゆるグロス・インカムと申しますか、名目上の収入は、投薬に対する収入がありませんから減じますが、実収入は減じないというふうに考えております。
  28. 大橋武夫

    大橋(武)委員 収入というものは、御承知通り金額で計算するものでございますから、金額金額を比較しなければ、どちらがふえたか減ったかわからない。あなたは実収入は減じないと言っておられますが、全国医師収入におきまして、月平均収入幾らであり、この医薬分業実施によって減少するところの収入幾らであり、また支出面において節約される収入幾らであるという数字をお持ちになっておられると思いますから、それを一つお示しいただきたい。
  29. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま正確な数字を持っておりませんが、ものの考え方は、大体御了解願えるかと思いますので、正確な数字ではありませんけれども一つのたとえの数字としてお聞き取りを願いたいと思うのであります。
  30. 大橋武夫

    大橋(武)委員 たとえとはなんですか。
  31. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 昭和二十七年の調査でございますが、それは今日必ずしもそのまま適用はできませんし、また私も数字を的確に覚えておりませんので、数字の食い違いがあるかもしれませんが、これは昨年資料としてもお示しいたしましたし、また後ほど御必要があれば正確な数字でお示しいたしたい、さような意味であります。  大体一日一剤が二十八円かであったと思うのでありますが、医師に支払われる投薬の量であります。
  32. 大橋武夫

    大橋(武)委員 一剤でなくて月収について言って下さい。
  33. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 月収にいたしますと、これもきわめて大ざっぱな概算でありますが、内科の医師でございますと、二十人足らずの患者であります。二十人……。
  34. 大橋武夫

    大橋(武)委員 全国のお医者平均を伺いたいのです。
  35. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 平均数字でございますと、これは計算すれば出ますけれども、今手元に持ってきておりませんので、資料を取りにやらせますから……。
  36. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは、資料が来るまで他の質問を続けます。  あなたの御説明によりますと、医者は何らの損はない、こういうわけですか。従って、この分業実施については、医薬関係者は将来経済上何ら計算の損をする者も利益をする者もないというお考えですか。
  37. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 先ほども申し上げましたように、医師としては実収入は減じない、そして薬剤師といたしましては、医師のもとで調剤に当っておりました看護婦あるいは薬剤師というものがおりますが、これと、それからその薬品原価と申しますか、購入価格と申しますか、ここういうようなものにおいて若干のプラスが出てくる、この分が薬剤師の方の収入増になる、さような意味であります。
  38. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しろうとの私どもの頭の中ではっきりわかることは、分業の結果、従来医師調剤いたしておりましたその医師調剤という仕事が取り上げられまして、調剤薬剤師の手に与えられる。従って、調剤手数料というものは医師の手から薬剤師の手へ持ち主を変更するということになるわけでございます。その際に、医師調剤手数料というものは、これは医師調剤の実費であって、それには医師という仕事に伴う報酬と申しますか、あるいは俗な言葉でいえば、利潤と申しますか、そういう利潤は、この調剤手数料として従来医師に与えられておった金額には一銭も含まれていないものである、こういうことになれば、あなたのお話の通りでありますが、そういう前提でお考えになっておられますか。
  39. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもは、現在における診料報酬のうち、投薬料として支払われましたものは、薬品あるいは調剤に要するものの値段及び調剤人件費というもののほかに、いわゆる診察料医師技術料というものが含まれていると考えております。
  40. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、従来患者からは薬代としてお医者さんがもらっておられるその金額の中には、診察料も入っておれば、医者技術料の全部が入っておるのである、こういうお考えですか。
  41. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 たとえば三十円の薬治料薬代というもののうち、たとえばでございますが、二十円ならば二十円が薬の原価と薬の調剤に要するもろもろの経費である。そういたしますれば、それを超過する十円というのが医師技術料診察料的なものであるというふうに考えております。
  42. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、その十円は今度どっちへ行くのですか。
  43. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 その十円は医師のところに残るわけであります。
  44. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その十円をだれが医師に払うのですか。患者は払う責任はないわけですよ。
  45. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは診察料として医師に支払うということにいたしております。この診察料の中には、処方せん料も含むと私ども考えておるわけであります。
  46. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それを患者から医師に支払わせるという法的な根拠が、どこにありますか。
  47. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師患者に提供いたします診療、それからそれに対する患者の支払いということは、自由診療におきましては患者医師との——私も法律的には詳しいことは存じませんけれども、結局個人個人との一種の契約と申しますか、さような性質のものであると思っております。従いまして、これは幾ら支払うというようなことが医師から請求され——これはいろいろ事情がございましょうが、大体慣習として、患者の方でもどれくらいのものというふうに期待して参るでありましょうし、あるいはいろいろな経験によりまして、非常に高いということになれば、患者がまた次の別の医師のところに移っていくというようなことで、おのずからその社会における一つの慣用の報酬が出て参ると思うのであります。法的な、とおっしゃいますと、結局これは必ずしも法ではないかもしれませんが、いわゆる公的な診療とでも申しますか、社会保険あるいは生活保護、こういうように一応規則できめてございます診療報酬の支払い方というところでだけ規制が行われるというふうに考えております。
  48. 大橋武夫

    大橋(武)委員 健康保険の問題は、これは政府がお支払いになるのですから、政府が払わなければそれっきりの問題ですから、これはしばらくおくといたしまして、今日医療は原則的に自由医療でございますから、自由医療を根本として考えていく必要があると思うのです。そこで局長は、ただいま三十円のうち二十円は薬屋に払うのだ、十円は医者に払うのだ、こう言われますけれども、一体医者がその十円を取って、果して患者が快くそれを払ってくれるような環境が、今日世の中にでき上っておりますか。
  49. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 いわゆる初診料、再診料という形で診療報酬が支払われる、もちろんそれに、医師投薬いたしますれば、いわゆる投薬料、あるいは注射をいたせば注射料、そのほかの検査をいたしますれば検査料、手術料というようなものが加わるわけでありますが、私は、さような診療報酬の新しい姿というものが国民の間によく普及いたして参りますれば、あるいは普及に努力をいたして参りますれば、かなり理解をしてもらえるものというふうに了解いたしております。
  50. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたは今日まで、この新しい法律を施行する準備の過程において、そういうことを国民に理解させるために、どういうことをやってきておられますか。
  51. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしまして、は、いろいろ私どもが出ました会合、あるいは衛生部長の集まり等がございましたときには衛生部長に、かような姿が医薬分業になれば現われてくるのである、またそのことについて、適当な形で一般国民にも周知方をお願いしたい、非常にむずかしいであろうけれども、できるだけさような努力を払われたいというようなことを直接に申し伝えて、ある程度は逐次伝わっておるというふうに考えております。
  52. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣、大体今の局長のお話をお聞き取りいただいたと存じますが、ただいま局長は、三十円のうち二十円が薬剤師で、十円は医者が当然要求するのだと言っておられます。そこで、大臣にお伺いいたしたいのですが、一体そうした場合において、ほんとうに医者がその十円を患者から取り立てるということが、今日の状態において可能でございましょうか。大臣はこの問題をどういうふうにお考えになっておられましょうか、政治家としての御識見から、お答えをいただきたいと思います。
  53. 川崎秀二

    川崎国務大臣 内容については、ただいま医務局長が答弁いたしましたことが、一貫しての厚生省側の考え方であります。従って厚生省としては、昭和二十六年の法律を改正したその案に沿って努力しておるのでありますから、こういうこともできるということで進んでおるものと私は考えます。それを裏打ちをしなければならぬのが、厚生大臣立場であろうと思いますが、事実上政治問題として、あるいは政治家として申すならば、これはよほどうまく態勢が整わないと、実施はできない。つまり、今の問題にいたしましても、そういうふうにするような準備をしなければなりませんので、問題は準備態勢のいかんにかかっておるというふうに私は考えております。
  54. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで、大臣に続いてお伺いいたしたい点は、大臣もまた、この医薬分業というものは、医師もこれによって損をしないのだ、また国民もこれによって損をしないのだという状態において実施できる、こういうことについて、確信をお持ちになっておられるのでしょうか。
  55. 川崎秀二

    川崎国務大臣 私はそういうふうにしなければならぬと思っておるのであります。従って、今秋までにはそういう態勢を整備したいということで進んでおったのであります。
  56. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、大臣のお答えは、医師も犠牲を要求されてはならないし、国民もまたこのために犠牲を要求されてはならないのだ、そういう状態でしなければならぬ、そのためには相当準備が必要であるから、この秋までに準備をしなければならぬのだというお考えであると思うのであります。ところが、今日この医薬分業の問題について、特に医師側から強力な反対が出て参っておりますことは、その医薬分業ということの実施によって、経済上の犠牲をこうむる者が自分たち医師の側ではないか、こういうふうに考え、従って医師生活権の擁護ということが、おそらく多数の医師の強い反対運動の動機になっておるのではないかと私は見ておびますが、大臣はこの運動について、そういう見方は妥当していないとお考えになりますか、あるいはそういう動機が十分に考えられるとお考えになりますか。
  57. 川崎秀二

    川崎国務大臣 先ほど私が答弁を申し上げましたようなことからいたしますれば、医薬分業実施するということは、医師会並びに医師の団体としては、当然従来の線より、その医師の持っている各種の機能において一部侵されることになるのでありますから、従って生活権を擁護するというような運動が起ってきたということの根拠がそこにあるということは、私も否定いたしません。しかし、私どものような立場、たとえば厚生大臣としての客観的な立場から申しましても、生活権擁護という立場もありましょうけれども、それが相当事実以上に大きく取り上げられているように、私には感ぜられるのであります。
  58. 大橋武夫

    大橋(武)委員 事実以上に大きく取り上げられているという点は、どういう点でございましょうか。
  59. 川崎秀二

    川崎国務大臣 改正法は、御承知のごとく医薬分業と申しましても、かって占領軍当局が考えておったような、あるいは諸外国の一部の先進国が実施しているような強力な医薬分業ではないのでありますが、それが、相当医薬分業が強制的に実施される。強制的とは、調剤権との問題にしても、あるいは戦時立法の問題にしても、それぞれいろいろございましょうけれども、最初占領軍当局が日本に押しつけようとした案が、そのまま実施されるかのような印象を、一部ではしているところもあるのであります。これは御承知だろうと私は思っております。従って、そういうふうに反映をしてきているところがございますけれども、しかし御質問の点はそういう点ではなくして、生活権擁護の点があるかどうかということでありますから、それは私は一応認めているわけであります。
  60. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私はこの問題については、依然として、経済的な問題として経済的な面について十分な考慮を払う必要があると考えているわけでありまして、この点については、大臣におかれましても、そういう本質を把握しておられることは、非常に力強く考えるわけであります。しかしてまた政府においても、こういう面について、従来相当注意はいたしておるようでございまして、いろいろと今後の準備を進行されておられるのでございますが、そこで私は大臣にお伺いしたいが、来年の四月の実施を目途といたしましたならば、今日その受け入れ態勢をよほど急ぐ必要があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  61. 川崎秀二

    川崎国務大臣 その通りでございます。  もう少し御答弁を申し上げますれば、来年の四月一日から実施する、八月、九月は、この医薬分業をそのまま改正案通り実施をするといたしまするならば、厚生省の全力をあげて医薬関係審議会の円満なる結論を出すようにお願いをし、少くとも十月、十一月の候においては、これに対するファウンデーションと申しますか、基礎工作を完成して、そうして四月一日までの間は準備期間ということで進みたいと思っておったのであります。それで、もし十月、十一月の候まで医薬分業の改正法案の意思というものが国民全般に徹底をせず、また医師側が受けるところの打撃が相当に大きいということになりますれば、その際においては、政府としても十分に考慮をしてみなければならぬということになると思うのであります。そこで、いろいろ御質疑はありましょうけれども、私はここで先ほど来の御議論に申し上げておきますれば、政府としての今日の考え方は、延長法案が第二十国会で可決をされて、これが両院の意思であるということである以上、その際最も議論になった厚生省側の準備不足ということについて万全を期して、第一にこの秋までに新医療費体系を整備するとともに、今秋までに厚生省側の準備を完了いたしまして、その際は厚生省側の準備が進んだかどうか、受け入れ態勢が大丈夫かということについての判定は、内閣ではなしに党の政調会が決定をする。その政調会の決定を尊重して内閣が決定をするということで、今日の政府としての態度はきまっておるわけであります。従って今日いろいろ内容について御論議はありますけれども、私は党人でありますので、この内容についての論議は、なるべく社会労働委員会で論議になっても申さないようにせよということの厳命を受けておりますので、従いまして、それに対する政府の対処策だけは申し上げましたけれども、内容についての論議なり、私の従来個人として持っておりますニュアンスをこの席上において申すことは差し控えたい、かように考えておるような次第であります。
  62. 大橋武夫

    大橋(武)委員 受け入れ態勢が必要で、いろいろ準備をしておられるという点はわかりましたが、私は医薬分業の受け入れ態勢を整備するということは、ただいま大臣の言われたようないろいろな委員会をこしらえたり、あるいはその委員会でいろいろな事務的な基準を決定したりすること——これはもとより準備態勢でしょうが、しかしこの問題の本質が経済的な問題であるという以上は、こうした経済的な変化について、医薬関係者の側において適用し得るような体制を整えることが、医薬分業受け入れ態勢の眼目でなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。そこで、こうした点から考えますと、医師から調剤による所得が失われるといたしましたならば、御承知のように、現在の全国の開業医の大部分方々については、その所得の大部分を占めているものは調剤料であります。いわゆるお薬代というものが、お医者さんの今日の収入の大部分を占めておるということは、これは現実の社会事実なのであります。そして、このお薬代の所得があればこそ、今日お医者経済生活というものは成り立っておる。従って医薬分業に対する受け入れ態勢を作るということになりましたならば、この薬代がなくなった場合においても、医者生活影響を生じないという医者生活状態、あるいは医者収入方式というものを、漸次分業に即応するような方式に変えておくことが最も大切なことだと、こう私は考えるのでございますが、大臣はいかにお考えでございましょう。
  63. 川崎秀二

    川崎国務大臣 ただいまのことは、御議論として承わっておきます。
  64. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私の聞いておるのは、あなたが私の話を聞かれたかどうかということではないので、私の申し上げた事柄について同感なのであるか、それとも反対なのであるか、その御意見を伺いたいと思うのであります。
  65. 川崎秀二

    川崎国務大臣 先ほど私が申し上げました内閣の決定並びに党の決定にも影響を持つことでありますから、私は自分の意見を申し上げることを遠慮いたした次第であります。
  66. 大橋武夫

    大橋(武)委員 どういう意味ですか。あなたの言われることは、内閣の決定に反するからここでは言えない。そうすると、鳩山内閣は、国会委員会における委員質問に対して、答弁しないという方針を決定しているのですか。これは国会無視の重大なる問題であって、果してそういうことでありましたならば、われわれは議会人として、断固鳩山内閣と戦わざるを得ない。はっきりお答えを願いたい。
  67. 川崎秀二

    川崎国務大臣 今回の医薬関係審議問題は、御承知のように議員提出法律案であります。従いまして、これに関連をして起ってきておりまする問題について、特に厚生大臣が内閣の決定について、たとえば今日まで両院の院議としてきめられたことの線に沿って努力しているという線で答えますことは、お答え申し上げますけれども議員提出法案につきまして、私がその内容についていろいろせんさくをいたし、またそれに影響を持つような発言ばなるべく差し控えたいと思っていることが、議員提出法案に対する尊重の趣旨ではないかと、かように考えているのであります。
  68. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたは、私の質問を誤解しているのじゃございませんか。私の聞いていることは、大石君の提案にどうかという意見を私が聞こうというのではございません。私が今伺っている点は、あなたは先ほど、来年の四月から新しい医薬分業法実施したい、こう言っておられる。それには準備をしていると、こう言っておられる。そうしてまた、これを実施するについては、当然受け入れ態勢が必要であると思うと言っておられる。そこで、あなたが必要と思うところの受け入れ態勢というものは、いかなる内容のものであるかということを確かめるために、この質問をしているわけでございます。それに対して、大石君の法案に対する意見だからこれは言えない、こういうような御答弁は、全くお門違いと思います。重ねて一つお答えをいただけるものなら、お答えをお願いしたい。
  69. 川崎秀二

    川崎国務大臣 できるならば、ごかんべんを願いたい。
  70. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、あなたは来年の法律案実施についての準備については、一切ここでは言われない、こういうことを言われるわけですか。
  71. 川崎秀二

    川崎国務大臣 そういうわけではございませんけれども議員提出法案について、私がそれに非常な大きな影響を持つような発言は、一切差し控えたいと思います。
  72. 大橋武夫

    大橋(武)委員 一体何のために来ているのです。何のためにこの方は、わざわざ大きなからだを運んでここにおいでになったのですか。われわれは政府の代表として政府が説明すべき事項を説明していただきたいから、今日はお忙がしい中を特に御出席いただいている。しかるに、政府が当然実施責任のあるところのこの医薬分業法案の準備の状態について、説明の限りにあらずとは一体何事でありますか。委員長の職権をもって、しかるべく御処置を願いたい。
  73. 中村三之丞

    ○中村委員長 お答え申し上げます。大橋君の御要求によって、私たちは厚生大臣をここに出席させたのであります。答弁の内容につきましては、私からここに申し上げることはできないと思います。ただ私は、大橋君の御要求によって厚生大臣の御出席を要求しただけでございます。
  74. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それじゃもう少し他の問題について聞きたいと思います。準備の状態について、政府は答弁の限りでないと言われたことを、よく記録にとどめていただくと同時に、委員長一つよく御記憶をいただきたいと思います。そこで……。
  75. 中村三之丞

    ○中村委員長 ちょっと大橋君、待って下さい。今厚生大臣から発言を求められております。
  76. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は発言中であります。私はこの医薬分業の現在の新しい法律を来年から実行するにつきましては、少くとも現在の医者の所得という上において、またこれは現在の日本の医療の慣行として、医者薬代という名目で、実際上一切の患者から受ける報酬を一まとめにして受け取っておられる。これは日本の社会の現実の慣行でございます。そこで、この慣行のもとにおいて医薬分業を行うということでは、これは非常な混乱を医者経済に及ぼすであろうことは、申すまでもないことであります。そこで、この薬代と一口に言われるものを分ちまして、医者診療並びに技術についての報酬部分と、調剤手数料並びに純然たる薬価、つまり調剤手数料を含む薬価、こういうものとを別個に区別して計算するという慣行ができ上る。そうして、しかも医師生活というものが、主として診療並びに技術の報酬によって維持されるような状態ができ上っておるということが、この新しい法律によるところの分業の受け入れ準備として絶対に必要である、こう考えておるのでございますが、この問題についてどうお考えになりますでしょうか。
  77. 川崎秀二

    川崎国務大臣 ただいま御議論になりました点は、私も同感をいたすことが多々あります。  それから、先ほどの問題につきましては、私個人意見は持っておりまするけれども、それは今日御承知のごとき情勢でございまして、民主党の政調会におきましても、最終的に今度出ました議員提出法律案について党の態度を決定される瞬間に迫られておるようなわけでありまして、私の意見を申し述べることが、支障のあるような部分もあるのであります。私は非常に苦しい立場にありまして、党の多数の申しておることには従わなければならぬのが、党人としての務めでありますので、御遠慮を申し上げたのであります。もし個人としての意見を言えというならば、私は幾らでもありまするけれども、しかし厚生大臣といたしましては、ただいま申し上げたような事情であるということを御承知おきを願いたいと思うのであります。
  78. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大体同感される点が多々あるということでございますが、おそらく同感しておるけれども、党の関係があるからはっきり言えないという程度の御返事だと了承いたします。  そこで、今日医薬分業の問題が、非常な問題となっておりますのは、先ほど申しましたごとく、今日開業医が薬代として患者から受け取っておる金には、医師診療その他の技術に対する報酬と薬価と認むべきものとが一緒になって入っておる。そこで、これを別別に社会の習慣の上において区別するような慣行を作るということが、この受け入れをスムーズにする上からいって必要だ。ところが、いまだ今日なおそういう慣行ができていないというのに、来年の四月からこの新しい法律を実行しなければならないというところに、今日の混乱の原因があるのではないか、こういうふうに私は推察いたしておるのでございますが、大臣はいかにお考えになりますか。
  79. 川崎秀二

    川崎国務大臣 そういうところに問題があるというよりも、そういうことを非常に大きな影響力を持った団体が指摘しておることは事実でありまして、確かに問題点がそういうところに指摘されておるということは、私も認めるものでございます。
  80. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、少くとも政府とせられましては、医薬分業実施しようとすれば、こうした診察その他の技術に対する報酬と純然たる薬価というものを、医療制度においては区別して支払う、こういう慣行を育成していくということが、分業に対する受け入れ態勢として必要だということだけは、お認めになっておられるのではありますまいか。
  81. 川崎秀二

    川崎国務大臣 その通りでございます。
  82. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは、そういう意味の受け入れ態勢を作り上げるという点において、昭和二十六年以来今日まで、政府はいかなることをなすっておられたのでございましょうか。
  83. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医薬分業実施になりました暁に、医師あるいは薬剤師に対しまして、いかような報酬の支払い方をするかということが、いわゆる新医療費体系の根幹なのでございます。これは昨年一応基本的な考え方国会にもお示しいたしましたが、さらに再検討をするようにということで、その後検討を続けておるわけであります。私どもとしましては、二十七年の三月及び十月に行いましたような調査を再び繰り返しましても、おおむね二年の日子を要するというふうに考えておりますので、これは再び繰り返すことが困難であるというふうに考えまして、ただ許されました期間に私ども努力をいたしまして、得られるだけの資料は何とかして集めたいというふうに考えました。この根幹は、二十七年から三十年、今日に至りますまでの約三年間の時間的なズレがあります。この時間的なズレの補正をある程度加え得る要因については再考いたしたい、こういうように考えまして、いろいろな診療行為——今具体的に問題になりますのは、患者一人ならば一人についての投薬の剤数というようなもの、あるいは医師一人が見ます患者の数というようなことであります。かようなものについての——まあこればかりではございませんが、要するに医師患者に与えます、いろいろな診療行為の頻度というようなものが、あるいは増加し、中にはまれには減少しているものもあるかもしれませんが、この動きを一つはっきりつかみたい。そうしてその動きによる補正をいたしたい。それからもう一つは、この投薬に用いました薬品原料でございます。この薬品の消費というものがどの程度に変ったであろうか。この方が調査としては、より困難なのでありますが、何とかそれをうかがい得る若干の調査をいたしていきたいということで、これも加味いたして、現在さらに調査を進めておる途中でございまして、この結果が出て参りますれば、それをも含めて、もう一ぺんこの検討をいたしたいというふうに考えております。  そのほかいろいろこの新医療費体系を昨年お話し申し上げました際に、国会あるいは医師会、歯科医師会、あるいは薬剤師協会という方面からいろいろ意見も出ておりますが、ここいらもあわせて検討をいたしておる状況でございます。
  84. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今、局長からお述べになりました問題は、薬価が幾ら医者報酬幾らという金額をきめる方法についてお述べになったことと思います。私の伺っているのは、そうではないのでありまして、金額ではない。今日はお医者さんに対するお礼はお薬代として一まとめに払うことになっている。その中に、これが診察のお礼、これが再診のお礼、これがお薬びん、これがお薬代、これがその他の技術、こういう区別はしていない。そこで、どうしてもここで医薬分業をやる、しかも医者経済にあまり大きな影響を与えないということになりますと、少くとも世の中の習慣といたしまして、お医者さんに対するお払いは、薬代と技術に対するお礼と二包みに区別して分けて持っていくものである、そういう習慣を作るということが必要ではないか——必要だというお話だった。そこで、金額の計算についての御準備はよくわかっておりますが、そういうお医者さんに対する一般患者のお礼を二日に分けてすべきものである、こういう習慣を確立するために、政府は今日までどれだけの努力をなさっているか、その努力の跡を承わりたい、こういうのが私の質問であります。
  85. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この点につきましては、昨年の秋、この問題が国会でも論議されました際に、世間に対しましても、医薬分業になった暁にはかような診療報酬の支払い方が行われることを予想しているということを公表いたしました。この点を、先ほども申し上げましたように、できるだけ国民の間にも知らせ得るように、あるいはまた新聞等に対しましても、かような姿を予想しているということを話し、記事も若干載ったと思うのでありますが、必ずしも十分ではなかったようであります。過去においては、この点の知識普及と申しますか、宣伝と申しますか、かようなものが非常におくれがちであったと思うのでありますが、実は先ほど大臣も申されましたように、三十年度といたしましては、この点を国民の間にもっと周知徹底させていかなければならぬではないかということで、広報関係の予算も若干組んでいただいているわけでございます。大体、これは八月と予想されておったと思うのであります。かようなことによりまして、今日までのところ、非常に不十分であったとは考えておるのでありますが、今後さらにこれを努めて参りまして、今までの状況におきましては、私ども来年の四月までにこの心がまえをもう少し高めて参りたい、それからさらに、この診療の……。
  86. 柳田秀一

    ○柳田委員 関連して一点だけ。今大橋委員質問しましたのは、非常に大事なことです。そこで、この医薬分業の問題は、昭和二十六年に大体の方針がきまっているわけです。だから、大橋委員は三十年度のことを言っているのではない、過去においてどのような努力をしたかということを聞いているのです。現に二十六年、七年、八年と、厚生省は何もしておらぬことは事実だ。厚生大臣もそう言われた。これは新医療費体系の額の上の計算だけではなくて、そういう一般修整も何も、遺憾ながらやっておりませんと、率直にお答えになったらいい。これから後のことを言っているのではない。暑いさなかですから、議員の言ったことは、あなたはよくそしゃくして、ぐずぐずろくでもない答弁をしないで、率直にお答え下さい。
  87. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 いろいろな政府の見解を国民の間に周知させますに当っても、政府としまして、ある程度の固まった見解を持たなければなりません。そのための調査、基礎的な検討というものは進めて参りました。
  88. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたは周知とかなんとか言われますけれども、周知といっても、教えたからといって、それが直ちに実行されるような世の中ではございません。世の中の習慣、ことに人の生活上の慣習というものは、理屈を聞いただけで改まるという簡単な問題ではありません。そこで、あなたのお考えによりますと、今日まで医者のお礼というものは、お薬代というもの一本でいっている、こういう慣習があるとは、あなたも御承知通りであるが、四月になったならば、別々に支払わなければいけないぞということを数えれば、そしてその周知をよくしさえすれば、自然にそういう習慣ができ上るだろう、こういうふうにお考えになっているのではないかと私は承わっておるのでありますが、どうでございますか。
  89. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 あるいは言葉が過ぎるかもしれませんが、医師診療費を患者に請求いたします場合には、あの程度中身も書いて請求いたします。こまかい一々のことについては書きませんけれども、ある程度は書いているわけであります。たとえば入院料が幾ら、あるいは処置料が幾ら、手術料が幾らというような程度のことは若干書まきす。あるいは全然書かずに一まとめにして請求することもございますが、さような意味におきまして、再診料及び調剤が行われました場合には、薬品代というものが請求されましても、これが一枚の請求書に書かれて参りますれば、国民としましては、これは中身が分れて請求されているだけで、私はそれがゆえに診察料を払わないというようなことは、まず起らないのではないかというふうに実情から考えております。
  90. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは、今度は具体的に伺いますが、あなた方は昭和二十六年以来今日までに、薬代診察料その他は別々に請求しろという指導を、医師会に対して一回でもやられたことがありますか。
  91. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 さようにいたしたいということを医師会は申しております。医師会の方では、これは必ずしも今のところ賛成だということを申されておりません。
  92. 大橋武夫

    大橋(武)委員 とにかくそういうふうに国民大衆をこの医薬分業にならせるためには、数年前から、およそお医者さんの請求というものは、薬代とほかの技術料は区別して患者に請求すべきである、こういうふうにお医者に徹底する。そしてお医者の請求を通じて国民大衆に、医者に対する払いの中で、薬代診察料その他の技術報酬は別であるという観念を植えつけるということが、私は最も大切なことであると考えているわけであります。そういうことが行われなければ、いつまでたっても国民の間の医者の技術に対する報酬薬代というものを一括して考えるという観念は抜けません。そういう抜けていない状態のもとに、突如として薬代がこれこれ、技術に対してはこれこれというようなことになりますと、これは国民としては非常にびっくりする。お薬をもらわなくても、こんなにお医者さんに金を取られるのか、こうなる。大体今日の日本の習慣においては、お医者へ行くのはお薬をもらうから金を払うと思っているのです。実際農村等における自由診療の実情を見ますと、薬をやらずに金だけ取るなんということは、農村の開業医の習慣にはほとんどないことです。それが突如として、あそこのお医者さんは薬をくれないのに金だけ取るぞというようなことになりましたならば、これは医者にかかる人が急になくなってしまう。従って、その点を医師会の諸君は心配されて、今日こうした反対の強い運動が起っている、こういうふうに私は考える。おそらく大臣も御同感ではないかと思う次第です。そこで私といたしましては、この医薬分業をスムーズにやるためには、どうしても国民大衆の間に、薬代医者に対する報酬というものは別物であるということを植えつけ、そしてそれを慣習として国民の生活自身の上に受け入れていくということが必要だと思うのです。こういうことが、この医薬分業に対する受け入れ態勢のほんとうの中身でなければならぬというのがわれわれの考えですが、厚生省事務当局の諸君は、どういうふうに考えておられるか。
  93. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 確かに大橋先生の言われましたような事情が、特に農村等にあるということは、私ども承知いたしておるのであります。しかしこのことは、今も申し上げましたように、診察が行われ、そしてこの診察料——その中に私どもとしては、いわゆる処方せん料というものが含まれておると考えておるのでありますが、かようなものと、それから薬品、こういうものが一緒に請求されるという形におきましては、その実態においてさほど事情が変ったというふうには感じられないのではないか。また私どもとしましては、今後のことを申しますと、しかられますけれども、まあ九カ月ぐらいの期間がある、あるいはもう少し短かくなりましても、その間にかような筋を取るのであって、患者が支払う医療費としても、総合的には変りがないのだということを十分徹底いたしますように、私ども努力をいたしますれば、相当理解してもらえるのではないかと考えておる次第であります。
  94. 大橋武夫

    大橋(武)委員 また、あなたは理解ということをおっしゃるけれども、理解と慣行というものは違うことですよ。慣行というものは、生まれたとき以来の生活に根ざしたものなんだ、理解というものは、聞けばそのときすぐわかる、わかるけれども、これが慣行として生活に取り入れられるかというと、なかなか実際取り入れられないのが今日の実情なんだ。そこで、医者の諸君の医薬分業に対する非常な心配の種があるわけです。今日まで二年余りの間、何らこうした慣行を育成することに努力をしておられない、あるいは努力をしておられたかもしれぬが、何ら実際上効果を上げておられないところの厚生当局の諸君が、これから来年の四月までわずか九カ月の間に、必ずこれをなし遂げて見せると幾ら口で言われたところで、国民はこれを信用することはできないということをはっきり申し上げまして、私の質疑を終ります。
  95. 中村三之丞

    ○中村委員長 それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後二時十九分開議
  96. 中村三之丞

    ○中村委員長 休憩前に引続きまして会議を再開いたします。  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 このたびの医薬分業に関する法律案審議に当りまして、私はつくづく感ずるのでありますが、特に生活水準の非常に低いわが国において、いかなる制度の改革をする場合であっても、直接に明確に、この国民生活利益する改革でなければならぬということであります。この点は、先般来お医者さんの側と薬剤師さんの側と、それぞれの立場で強烈なる意見の交換がされて参ったのでありますが、私はお医者さんでもなければ、薬剤師でもない立場から、公正な判断をなさなければならない立場議員として、ここでそういう感をことに強うしておるのであります。従って今から政府に対してお尋ね申し上げたいことは、今申し上げたような観点から、政府実施されつつある現行改正法なるものを進める場合においての問題であります。現行改正法を進められる場合において、政府としては、次の点にいかなる用意をしておられるか。その第一点、現在におけるお医者さんと薬剤師さんとのそれぞれの所得は、どの程度に見積っておられるのであるか。これは医師の側と薬剤師の側で、いろいろ討論されている間においても、そのお互いの収入という問題も、十分その基礎に置かなければならぬので、厚生省がお調べになっておられる医師生活程度はどうなっておるか、薬剤師生活程度はどうなっておるかということを、その所得の数字によってお示しいただきたいと思うのであります。
  98. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 御質問の点につきましては、ただいま十分な資料を持ち合せておりませんが、昭和二十七年に調査いたしました二百十七カ所の診療所につきまして、医師の所得というものが大体算出してあるのであります。数字のところは多少正確を欠くかもしれませんが、私が記憶いたしておりますのでは、当時といたしまして二万七、八千円ぐらいであったと記憶いたしております。それから薬剤師につきましては、開局薬剤師調査は非常に困難でありまして、私ども実は資料を持ち合せておりません、ただ勤務をいたしております薬剤師の給与は、その当時におきまして、たしか一万二、三千円ぐらいであったと思っております。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 その所得額というものは、いろいろな支払いをした純益であるか、あるいはそういうものを全部含めた所得総額であるか、いずれでありますか。
  100. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 今申し上げましたのは、純所得でございます。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 純所得の上において、お医者さんと薬剤師さんの間においては、すでに薬剤師さんが半分以下の低位にあるという結論が出ているのです。これは開局薬剤師の例を今取られたようですが、そのほか薬剤師の場合には、調査の困難な事情もおありだと思うけれども、総括して医剤の所得が高いところにあるというのは、今日においても政府としては御確認に相なりますか。
  102. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 先ほど薬剤師収入と申しましたのは、開局薬剤師については調査ができませんので、病院、診療所に勤めております薬剤師の給与でございます。たしかその当時の勤務医の所得は二万二、三千円ぐらいであったんじゃないか、多少記憶に狂いがあるかもしれませんが、おおむねそれぐらいと思っております。さようにいたしましても、ただいま仰せのように医師の方が薬剤師よりも給与が上であったということだけは認められると思います。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 今度の改正法によるならば、医薬分業が明瞭にされて、医師の所得が減り、薬剤師の所得がふえるというような結果になると、総括的に政府は御確認になりますか。
  104. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 午前中にもお答え申し上げましたように、もしも医薬分業の暁に、処方が薬局に流れまして、薬局薬治料と申しますか、薬価が支払われるという結果になりますと、医師に払われる診療費の総額は減じて参ると思うのであります。しかしながら、医師の実収入というものは、必ずしも減じないというふうに私ども考えております。それから薬局の方で収入がふえるかどうかということでありますが、これは薬局で支払われますいわゆる薬代というものは、それだけの額が薬局でふえるわけではございますけれども、もちろんこれが全部薬剤師の実収入になるわけではございません。薬自体も使います、またいろいろ調剤のための消耗品もございましょうから、そういうものを差し引いたものが薬剤師調剤技術料ということになるものと考えております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 私はもう一つ背景になる数字調査をお願いしたい点があります。それは医薬分業推進された場合に、医師薬剤の双方が、技術料とかその他において重なっ負担を患者にかけるような部分はどうなっておるかという点であります。
  106. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私ども考えておりますのでは、医師薬剤師と両方に負担がかかるということを、医薬分業後に期待する点は、まずないと考えております。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 社会保険総医療費なるものが、これはどの調査会でしたか提出されておるのでありますが、これによると医薬分業によって国民に与える新たなる負担増加部分が百三十七億余りあるようにこれに示されておるのです。これは厚生省が何か関与された数字でありましょうか。
  108. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまお話しございましたその資料なるものがいかなるものであるか、私どもちょっと存知いたしておりませんので、お答え申し上げかねます。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 医師会の側においては、医薬分業によって莫大な国民に対する負担増になる、また社会保険体系がくずされてくる。また薬剤師の側の方々に言わしむれば、むしろそうした負担が軽減されるのであると言うておりますが、厚生省は、これに対していかなる見解をお持ちでしょうか。
  110. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 前にもお答え申し上げましたように、私ども医薬分業後における医療費の支払い方というものを、いろいろ考案いたしておるのでありますが、これはそのために総医療費が高じないということをめどとして立てております。また逆に申しますれば、医師、歯科医師に支払われる実収入に、減少を来たさないということをめどといたしております。私どもが試算をした限りにおいては、大きな狂いはないというふうに考えております。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 これは基本的問題に関連する別な立場からの問題が一つあるわけです。それは医薬なるものは、製薬会社で作られておるわけでありますが、医薬を作る製薬会社に対して、そうした薬を安く作るような政策を、政府としてはとるべきではないかと思うのであります。この点、薬務局長にお伺いしますが、政府はいかなる対策を製薬に関しておとりになっておられますか。
  112. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 医薬品のいいものが安く供給されるということは、非常に望ましいことでございます。政府といたしましても、そういうことを目ざして努力をいたしておる次第でございます。ただ、御存じのように、今日ば統制経済でなく自由経済の時代でございますので、政府医薬品の価格を自分できめる、あるいはこれに政府が職権をもって規制するというふうな建前はとっておりません。今日私どもがとっております措置を、大体大まかに申し上げてみますと、次のようなものになるのでございます。第一番目は、医薬品の価格が下りますためには、御存じの通りに、その医薬品産業の企業が合理化されまして、むだを省くということが問題でございますので、企業合理化を促進するための行政指導を行なっておるわけでございます。さらに具体的な問題としましては、非常にわずかな経費ではございますが、新しい技術を研究いたしまして、その新しい技術を採用することによりまして非常に企業が合理化されるというような、新技術の工業化試験というふうなことに対しまして、企業合理化促進法によって若干の補助金を出しております。しかしながら、大勢といたしましては、さような補助金があるから企業が合理化されるというわけではないのでございまして、むしろ現在の大勢は、主体としては各企業々々の企業努力によって企業を合理化して、安いものを売って販売競争に勝つという建前が基本になっておりまして、それに対して政府が行政指導を加えておるということが、まず第一番目の問題であります。  それから第二番目の、これは非常に効果を上げた施策でございますが、非常に高価な医薬品、御存じの終戦後出て参りましたペニシリンとか、ストレプトマイシンとか、最近のオーレオマイシンとか、クロロマイセチンとか、テラマイシンとか、さような非常によくきく薬は、御存じのようにその発見が外国に依存いたしておりまして、わが国はずっとこれを輸入して参っております。これは製品を輸入いたしますと、非常に高価なものにつくわけでございます。従いまして、だんだんと製品の輸入をやめさせるようにいたしまして、バルクで——バルクと申しますのは、大きいもので輸入するとか、あるいは中間の製品で輸入をするとか、だんだんとそういう措置をとりまして、なお進みましては、これらのものを国産化する努力をいたしておるわけでございます。そしてこれを国産化いたしますためには、外資導入をいたしまして技術提携をいたすわけでございます。   〔委員長退席、中川委員長代理着席〕そして、これを国産化することによりまして、非常に安くなっておるのでございます。さようなことをやっております。  なお、別個に租税の関係措置でございますが、税法の関係で企業化に非常に困難を伴うものであって、しかも重要なる医薬品であるという場合には、法人税の免除とか、あるいは固定資産税の軽減とか、そういうふうな税法上の措置をいたしておるようなわけでございます。大体大きく分けますと、さようなことになると思うのでございますが、しからば、実際に一体医薬品の値段はどういうふうになっておるかということを、私が今手元に持っております資料でちょっと御説明を申し上げてみたいと思います。昭和二十七年十一月と一年八カ月後の二十九年七月の薬価の調査をいたしましたので、そのときの数字を申し上げてみたいと思います。全体の指数が二十七年の十一月を一〇〇といたしますと、二十九年七月が八二という指数を示しております。これは医薬品全般の指数でございます。重要な医薬品、ことに最近非常に慣用されております十種類くらいの重要医薬品につきましてその数字を取ってみますと、全体の指数が二十七年の十一月と二十九年の七月とを比べますと、大体六割見当に下っております。個々のものについて申し上げてみますと、たとえばアスピリンのごときは九〇という指数でございます。イソニコチン酸ヒドラジッド、これは非常に下っておりまして、二一という数字でございます。サントニンは八七、ズルファジアジンは六八、結核に使われますパスは六四、ストマイは四六、油性プロカイン・ペニシリンは四一というふうな数字になっております。以上は二、三の例を申し上げたわけでございますが、大体そういうふうな価格の状況を示しておるわけでございます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 薬価はそうした政府の施策の恩典に浴して、漸次低下しつつあるということを聞きまして、一応喜ぶべきことだと思います。これは今後さらに、今申されたような諸施策が強力に遂行されて、政府としては医療費の国民に与える負担額を、できるだけ減少させる基礎にしようというお考えが、さらに一そう強くおありかどうか、そういう点について、具体的な御計画でもあれば、承わりたいと存じます。
  114. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 医薬品を安くいたしますことにつきましては、最初申し上げましたように、私ども今後あとう限りの努力をいたしたいと思っております。それについて、何か具体的な計画があるかという御質問でございますが、ただいま申し述べましたような施策を強力に押し進めるということが、結局具体策ということに相なるのではないか。私、ただいまかように考えておるわけでございまするが、何か先生の御質問の御趣旨が、別にあるかと存じまするが、再質問々待ってお答えいたします。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 公共的性格を有する薬局を作るとかいうような御計画、あるいは病院薬局の開放というような問題をさらに真剣に考えてみるとか、こういう点におきまして、単なる競争でなくして、公共性を強める意味立場からの薬価を、少しでもそうした手数料その他において軽減できる道を考えるとかいうことは、御計画にありませんでしょうか。
  116. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 公営薬局というものは、実はかつて一両年前に、私ども役所の内部でそういうことを考えまして、予算の要求等もいたしたことがあるのでございますが、遺憾ながら実現をいたしませんでした。それで、先生の今おっしゃっておりますことは、薬局をそういうふうなものにするというととも、そのことに関連がございますが、むしろ医薬品の価格を下げるということでありますれば、製造元自体のコストを下げるということが一番の問題でございまするので、医薬品の製造について何かそういうふうな措置をとるかというふうな御質問も含まれておるんじゃないかと思うのですが、ただいまのところ、特定のものにつきましては、あるいはさようなことを考えなければならないのじゃないだろうかというふうな品目がございますが、これはむしろ価格を下げるというよりは、その薬の本質から論じられておるところでございまして、価格を下げるために政府が何か自分でこれを経営するというふうな意図は、ただいまのところ持っておりません。  なお御参考までに、数年前であったと思いますが、ストレプトマイシンが日本に輸入されました当時におきまして、これは結核について非常に大事な薬である、しかも国産品を興さなければならない——輸入品は、その当時は非常に安かったのでございます。ところが、国産品が非常にコストが高くつきまして高かったのです。そういうふうな事態に対応いたしまして、政府が少いところの予算を計上いたしまして、一口に申し上げれば、その価格をプールするというふうな措置をストレプトマイシンにつきましてはとったことが数年前にございます。その結果、国内産業が非常に育成されまして、今日におきましては、生産コストが外国にあまり負けないようなところまで成長をして参ったのでございまして、さような予算上の措置、もっともこの予算は支出をいたしますと同時に、見合いの収入があったのでございます。そういう予算でございますが、財政上の措置をかってはとったことはございます。しかし、そういうふうな措置をとるような品目は、目下のところ私ども考えておりません。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと関連して、医師の医療行為に問題を移して、提案者であられる加藤先生にお伺いします。この処方せんを書く書かぬの議論が、しばしば繰り返されておるのでありますが、このことに関して、ちょっと先生の御意向を伺いたいことがあるのです。それは、医師は処方せんを書くということによって、一つ責任を持つことになるのです。またその診断というものに対する一つの確信も持つことになるわけでありますが、その処方せんの公表されるということのために、そうしたお医者さん自身が診断に対する確信とか、あるいは責任とか、もしくは自覚の観念が非常に強くなられて、よいお医者さんがどんどんでき、ずるいお医者さんは敗れていくという優勝劣敗の結果ともなって、医師の資質が向上するように私は考えますが、いかがでございましょうか。
  118. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 はなはだ失礼でありますが、率直に申し上げますと、処方せん自体によりまして、その医師の技術がわかることもありますが、大家でありましても、平凡なる処方によってやることがあるのでございますがゆえに、これを外部の第三者が見て、たとい医師が見ましても、この処方が非常によいものであるか、悪いものであるかということは、その直接の病人を見なければ批判ができませんので、そこで、その処方を薬局へ持って参りましても、その方の知識の比較的少い人が、これがよい処置であるかどうかということを知ることは、すこぶる困難なことであると思います。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 私は、お医者さんの立場、お医者さん自身の問題として、お医者さんの資質がどんどんと向上していくという立場からは、今までのような形よりは、はっきりと原則として処方せんをどしどし書き、それに対する責任を持つ、こういうような形に行くことが、ひいては国民の体位の向上に好影響を与えるものではないかと考えるのです。この点、原則としてはお認めいただけましょうか。
  120. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 あるところは、そういう部分もありますし、あるところは、そういう部分もない、こうはつきり申し上げます。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 処方せんに対しての料金を取る原理、理論的根拠について、どなたか尋ねられた方があるかもしれませんが、これをお尋ね申し上げたいと思います。
  122. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 ちょっと意味が取りにくうございましたので、もう一度……。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 処方せん料という処方せんに対する料金を徴収することに対する理論的根拠です。
  124. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 処方せんは、一つ医者の技能の一部でございまして、たとえば、外科で申しますれば、手術が大部分ですが、内科で申しますと、それがおもなる処置であろうかと思います。   〔中川委員長代理退席、委員長着席〕これは技能全体ではないのでありまして、技能全体というよりも、これも技能でございますので、処方せん料を取るのが当りまえであるのでございます。それは、こういう処方を盛るという技能の一部でありますがゆえに、処方せん料を取るというのは、当然なことであろうと思います。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 診断と処方と双方に対して、それぞれ別々の立場の料金を取る体系は当然のものだということでありますが、従来は処方せんを書かなかった場合が通例でありますので、診断料だけが上ってきたわけだと思います。従って、薬剤師の方の側からするならば、処方せんそのものは、診断の料金を考えて、それを含まれた処方せんの料金というふうな見方も下されないことはないと思うのでありますが、この点いかがでございましょう。
  126. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 ただいまの慣習によりますと、診断することは、あす診断すればあす、あさって診断すればあさってと、その時でとに診断料を取るよりも、むしろ診断料というものは一ぺん取っておきまして、それが期限が一カ月とかなんとかいうきめがありまして、その間は診察料というものは取らざるということで取らぬのであります。一回取っておきますと、ある期限内は取らぬのであります。それが慣習のように存じております。しかし、特別なやり方で申しますれば、その見た日ごとに、診察をしたごとに診察料を取るというのが当りまえでありますが、慣習によりますれば、一カ月とか一カ月とか三カ月とかいう一定の初診料でやっておりますがゆえに、それは入らぬわけであります。今の日本の現状で処方せんのみを出すということになりますと、処方せんの中に診察料とか、そのときどきの技能も含まれていくということに相なるのであろうと思います。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 甲というお医者さんが、診断の絶果処方せんを書きました。その処方せんを持って乙というお医者さんのところへ行って調剤を依頼するという場合があり得ましょうか。
  128. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 私はそれは、昨日でありましたか一昨日でありましたか、申しましたが、医者は誇りがあるのでありまして、人の処方せんを持って、たとえばだれかの処方せんを持って私のところへ来て、この処方せんによって薬を盛ってくれというのは、傷つけられたことになります。侮辱された、自負心がそれだけ汚されたことでありますがゆえに、これは多くの場合ないのであります。ただ実際問題として、そういうことがありといたしますれば、自分の恩師が遠隔の地において見た、それで処方せんを持ってだれそれのところへ行けと言うと、その病人がその処方せんを持ってくるのでありますが、これが小使が取りに来たとか、給仕が取りに来た場合には、それは盛らぬのであります。これを、もし調剤をしたとすれば、その医者は診察せずして投薬をしたということで罰せられるので、盛りませんし、もし盛る場合があるといたしますれば、その病人が来て、先生こういう処方をいただきましたがと言う、ああそうですかといって見れば、もうそのまましても、これは人の処方ではなくして、その処方がいいから自分のものにしたというのでありまして、それはほかの処方をまねたということは全然ないのでありまして、自己の処方になったことであるのでございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 この政府実施を要望されております現行法改正なるものが実施された場合において、お医者側としての一つ考え方を私お尋ねしたいのでありますが、ある特定の薬剤師を指定して、そうして何人かのお医者さんがその薬剤師を指定して、そうして何人かのお医者さんがその薬剤師調剤せしめるというような、そういう形態のものを作れば、その間が非常に円滑にいくということが想定されないでしょうか。
  130. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 それはなるほどそういうお考えでいって、薬剤師はその共同の医者の出資によりまして、完全に薬を備えておりまして、その人はその薬を処方のごとく盛っても盛らなくても、自分のふところには影響がないという場合が想像されますと、そういうものが作られる時も私は来るであろうと思います。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 またここでは問題になるわけですが、無医村とかあるいは無薬局村とかいうところの問題であります。また距離のはなはだ遠いところに薬局があって、お医者さんのところで処方してもらう方がいい、こういう場合についての特例は、それぞれ今修正あるいは改正案として用意されている案に見受けられるのでありますが、お医者さんの立場からは、薬剤師というものをできれば自分の勢力範囲内に置いて、そうしてお医者さん自身は、調剤技術においては薬剤師に一歩譲らなければならない点があるのだから、その点を補うために、病院のような形のものに近い、今私の申し上げたような場合などを含んだ方法をとっていくということになれば、その間において、その指定された薬剤師は、非常に高度な努力をして、薬品の整備についても、また調剤技術についても、みがきをかけるという結果になる。そういうことになれば、医薬分業がこのまま遂行されたとしても、大した痛痒がないということが、医師の側からも見られると思うのでありますが、この点、いかがでしょうか。
  132. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 そういう場合がありますれば、おそらくそういう場合も来たり得るであろうと思います。ただし、一つ御注意願いたいことは、ここに、ただし何々の治療上支障がある場合ということがあるのでありまして、こういうものを患者がもらいまして、たとえば、一例を申しますれば、この病人は神経的なものであるから、乳糖をなるたけ飲ませておけばよろしい、ほかの薬を使うと癖になりまして、いろいろその結果、からだに障害を及ぼすがゆえにこういう薬でよろしい。しかし病人がその処方を見ますと、何だ、こんなばかなことというそういう場合もあり得るのでありますがゆえに、そういう治療上支障のある場合におきましては、たといそういう完備せる薬局がございましても、これは本人に渡すことができません。たとえば普通、ゆうべから腹痛を起してどうも下痢がある、吐きけがある、これはもう一向かまいませんがゆえに、そういう機関が自然の現象によりましてできて参りますれば、そういう処方を渡しても、何もかまわぬ、こう思います。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 私は、最近におけるお医者さんの収入という点につきましては、先ほど医務局長から御指摘になられたように、薬剤師より高いところにある、その点は認めますが、海外から引き揚げたお医者さんとか、あるいは新しく大学を出た人々の数が多いとかいう点で、お医者さんの生活そのものは、従来の戦前のときのような比較的恵まれた階層であった時代とは、比較にならぬ窮迫した状態にあることも私認めます。従って、お医者さんの生活も、十分というのは無理かもしれませんが、ある程度の保障がせられ、また薬剤師さんの立場も守られて、そうして国民もまた医療の完全な実施の恩典に浴する、こういうようなことになるならば、まことにこれはけっこうなことでありまして、われわれはできるだけそういう形の方向へ立法措置をとりたいと考えておるわけであります。そこで、お医者さんの方々は、お医者さんの立場というものを捨てて、こういう法律を作ってもらいたい、薬剤師さんも薬剤師さんの立場を捨てて、こういう法律を作ってもらいたいという、それぞれの立場で御要求になっている点も、私は認めます。しかし結果的には、その間の利害相反するような形に闘争が展開されて、この段階に立ち至っておるのでありますが、こういう重大な段階になって、議員は今お互い、きわめて良心的に行動しているわけです。このときに、もし国会でほんとうの姿を誤まられた形に結論が出たとしたならば、われわれは、後世に非常に相済まぬ仕事をしたことになるのです。そこで、今特に慎重を期さねばならぬ一つの問題が起ってくるわけでありますが、お医者さんの側から言うならば、この医薬分業法律実施されたならば、国民の医療費は大いに増額するのだ、また医師薬剤師の双方に非常にむだが降りかかってくるのだというような、経済的な事由で反対される点がある。薬剤師さんの方から言うならば、医薬分業によって、むしろ国民の医療費負担は軽減するのだとおっしゃるし、厚生省は先ほどから、大体現状維持だとおっしゃる。こういうふうに、三つの経済的な結論が出ているわけです。これをわれわれはどう判定するかということになるのでありますが、この際さらに医師薬剤師のそれぞれの側から、真剣な、何ものにもとらわれない高い観点に立って、祖国の将来を憂え、民主の安定を考え数字一つお出しいただくような、そういう三者間の御協議というようなものは可能性がありませんでしょうか。
  134. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 ごもっともなお説でありまして、そういうことができれば、まことにけっこうでございますが、なかなかこれは作文のようなことになりまして、できたときはまた環境が違います。また何年もかかって作りますと、また環境が違います。しかし、そういうことを着手せなくてもいいと申すわけではございませんで、一面はそういうことをやるのでありますが、しかし、こういう問題は、医者薬剤師の両方が、安くなる、いや高くなるということを、かれこれ申しておりましても、これは悪く言えば水かけ論のようなことでございます。私どもの信ずるところによれば、手数が多くかかれば不便になる、そして負担も大きくなる、また国民の信頼感というものは、そのどちらにあるのであろうかということを私ども思いまするが、たまたま私は衆議院議員であると同時に医者でございますがゆえに、幾分勝手な議論になるかもしれませんが、私はその点におきまして、私がたまたま医学の知識を少し持っておる立場よりしまして、こういうことをすれば、利便は不便に相なり、負担は重くなる、そして国民は信頼感をどちらに置くかという現実の事実に即して見ていただきたい。すなわち、これは私どもがかれこれ言っておりましても、水かけ論でございますがゆえに、良識あるしろうとの皆さまによりまして適当なる御判断を願いたい。要は、医者も生き、薬剤師も生きなければなりませんが、主とするところは、国民の全体がいずれが利便であり、いずれが負担が軽くなるか、いずれを国民は好むかというところが主でありまして、そして薬剤師医者生活という問題は従の従でよかろうと、こう思います。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 局長にお尋ねしますが、お医者さんの側の出された資料と、薬剤師さんの側の出された資料とを、厚生省は特に比較検討して、厚生省考えというものをいつも出されると思います。そして厚生省独自の見解もまたそれに加えたものが出ていると思うのですが、今の国民医療費の問題であります。新医療費体系が今用意されつつあるので、その途中で数字を出すのは非常にむずかしいということでありますが、現在までわかったところでは、できればお医者さんと薬剤師さんと双方を合せた意味の協議会のようなものを持って、双方の意見を十分取り合って、その間の重なった部分とか、あるいは行き過ぎた部分というものを是正するような努力を、厚生省としては何かの形でなさったことがありましょうか。
  136. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまの点につきましては、私ども率直に申し上げて、さような話し合いをぜひ進めたいというふうに考えておるわけであります。いきさつから申しますれば、ずっと古いことになるのでございますが、昭和二十六年の法律が出ます際、その前に特別な察議会、協議会等が設けられまして、そのときに医師会、歯科医師会あるいは薬剤師会からいろいろな資料が出ました。この資料は、ただいまお話がございましたように、医師側からは、経費が非常にかさむであろう、薬剤師側からは、経費が節減されるであろうというような資料が出ておったことは、私ども承知いたしておるのであります。これらを検討しました結果、私どもといたしましては、先ほど申し上げたように、医師の実収入を現実に薬局でいわゆる薬治料というもので支払うという形が考えられる、経費の増高を来たさずに考えられるというふうに考えて、昨年政府考え方を公表いたしたのであります。その後につきましては、私ども医師会あるいは薬剤師協会から伺っておりますのは、国会等の参考人あるいは公述人として、こちらに呼ばれまして、いろいろ御意見を開陳されましたその資料を、私どももちょうだいしている限りでありまして、それ以上に詳細な点につきましては、非公式にお話し合いは多少いたしておりますけれども、おのおのの側から自分たちの側として考えておる説を主張なさるのでありまして、いろいろ私ども考え方を御説明は申し上げておりますけれども、御賛成を得るという段階には至っておりません。私どもは、できるだけさらに打ち割って御相談する機会を持ちたいと考えております。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 あわせて厚生省厚生省立場からそうやられたということでありますが、またそれを公表して、できるだけ周知徹底もはかりたいということを考えておられるようであります。それと関連することになるのですが、厚生省は常に高い見地からこの問題を考えていきたいという努力をされつつある現在、現行改正法二百四十四号に、医師法の二十二条にいたしましても、また薬事法の方にいたしましても同じことでありますが、具体的にどんな場合に出さなくてはならないかという点について、省令を掲げなければならぬ規定があります。その省令を作る用意を準備的にしなければならぬとこの法律に書いてあるのでありますが、その経過措置として、厚生省がこの法律実施しようと考え準備として、いかなる省令を考えておられるのか。その省令の範囲は、これに掲げてあるところは、いささか狭小の感もするのでありますが、しかし結果的にはある程度の結論が出ておるのじゃないかと思うのですが、現行改正法をそのまま実施するとしての用意を進められておる、現段階における省令の用意された事項というものを、お示し願いたいのです。
  138. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この点については、法に基きまして、御承知医薬関係審議会というものが設けられまして、この関係者が集まりまして、いろいろこの問題を検討いたしておるのでありますが、まだ大臣に対する答申というような段階には至っておらないのであります。いろいろ論議が進んで参りまして、最後的な段階というところまではいっておらないのでありますが、医師会からの案及び薬剤師協会からの案、またそれに対する各団体からの批判的な見解というものが、かなり出尽したというような状況にございます。これを幹事がまとめまして、大体四つの事項に取りまとめまして、これでもって、基本的な点については、この医師会、歯科医師会あるいは薬剤師協会の御意見が、おおむね盛られておるのではないかという案が出ておるのであります。しかし、これに対しても、両者ただいまのところでは、最後的に賛意を表されるという段階には至っておりません。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 その案というのが、幹事案ですか。
  140. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 さようでございます。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 私は、厚生省としては、この医薬分業の問題は、多年にわたる懸案事項でもありますので、実はもう今ごろは実施されていなければならなかったものが、こういうふうになってきている現状でありますから、政府としての立場では、この法律実施されるという準備のために、努力が続けられておらなければならなかったと思うのです。お医者さんの側、薬剤師の側の案も、幹事案というものもあるのでありますから、そういうものを加えて十分検討して、できるだけその準備というものが、政府自身として常にあらゆる努力が傾注された形で表現されなければならぬと思うのですが、まだ幹事案以外のものは、省令としては形の上に表わされたものはないわけですね。何かほかに用意したものがありましょうか。
  142. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これはいわゆる二十六年の法律の幾つかの条文に関係のあることでありますが、そのいずれにおいても「厚生大臣は、前項但書に規定する省令を制定し、又は改正しようとするときは、医薬関係審議会意見をきかなければならない。」というような規定が関係の各条についておる。かような次第でございますので、この医薬関係審議会意見を聞いた上でなければ、省令を定めるということはできないことになっております。この意見を伺って、答申を待っておるわけであります。この答申がまだ出て参りません。ただ政府としては、この審議会に幹事も出ておりますので、幹事がこの審議会の内部において、審議会の意見を取りまとめるようにいろいろ努力をし、幹事案のようなものを作成した次第であります。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 まだその答申が出ていない段階だというお言葉であります。しかし、法律はあと七カ月もたてば実施されようとしているのであります。ある程度の結論が出ておらないと、法律実施する準備というものが要るのですから、そのまぎわになってからこういうものが公けにされたのでは、これはこの適用を受ける国民はもちろん、お医者さんも薬剤師も含めて、大へん迷惑をするわけです。親切な立場からいうならば、このごろはもうはっきりしたものが答申で出ていなければならぬと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  144. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしましても、できるだけ早く答申を得まして、そして省令も定めていただきたいというふうに考えているわけでありますが、何といたしましても審議会の決定がございませんと、さような措置ができないのであります。実質的には、先ほども申し上げましたように、すでに各方面の立場からの御意見をしんしゃくして、かなり具体的な幹事案がまとまっております。これでもってよろしいか、多少手を加えるかということで、すぐにも公表できるものというふうに考えております。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 政府は、今まで医薬分業に対しては、国策として一応きまっておりながら、その実施に対する熱意を欠いたといいますか、怠慢であったというようなことが、この災いを起して、国民世論の動向に非常な混迷を与えたように思うのでありますが、いかがお考えでありましょうか。
  146. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この点につきましては、いろいろのお立場から御批判があるものと思うのであります。これは多少個人的な見解になるかもしれませんが、私どもといたしましても、もう少し明確に、具体的に、世間に公表すべきものは公表してもいいじゃないか、あるいは午前中にも申し上げましたように、この問題の政府部内あるいは関係者間の検討の状況を、国民にもっと知らすべきであったのではないかということは、反省される点でございます。またこれを公表すること自体についても、いろいろ各方面で、それを積極的になすべきである、あるいはいましばらく控えるべきであるというような、幾つかの御意見がございましたために、ただいまのような御意見を拝聴するような状況になっているというふうに思っております。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 政府が、すべて法律実施しようとする場合には、できるだけ便宜を尽して、国民に周知徹底されなければならないわけです。この医薬分業を規定した現法律なるものは、これはもう法律になっている、ただ実施を待つばかりであるという段階において、政府立場からいわしめるならば、とにかくそれに対する十分の周知徹底の方途を、あらゆる角度から尽さなければならなかったと私は思うのです。ところが、今まで医師会あるいは薬剤師協会等を通じて世論というものが盛り上ってくる。そこで、政府もそういうことに耳を傾けなければならなくなって、漸次そうした周知徹底に事欠くようになって、そして国民の前に、この医薬分業の二つの大きな勢力の対決を印象させるような場面に立ち至ったわけです。私は国民がこの医薬分業に対する理解を持つために、政府は過去においてもっと親切な道をとるべきじゃなかったかと思うのですが、それがないため、国民自身がこの法律の内容について、周知徹底することを得ない段階にあったように思います。これは政府医薬分業に対するいろいろな反対意見等に、やや耳を傾けられた結果じゃないか、こう思うのですが、そうした周囲の情勢に押されて政府が動いてきたかどうか、御見解を伺いたいのであります。
  148. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは御批判でございますので、何とも申し上げかねるのでありますが、政府といたしましては、御注意いただきましたような点を十分注意をして、この問題の周知徹底方をはかるべきであるという考え方は、終始持っておったわけであります。ただこれが思うにまかせず、十分成果をあげ得なかったということについては、私どもとしても、非常に自分ながら自己批判される点であります。先ほど申し上げましたように、今後のことを申し上げては恐縮でございますけれども、この時期も迫って参りますし、昭和三十年度においては、この点に大きく乗り出さなければならぬということで、予算等におきましても、若干の措置をとっていただいたような次第であります。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 法律実施機関は政府であって、政府は常に法律に注意しなければならないということになるわけです。国会が新しく法律を作った場合は、さらにその法律に従っていただかなければならぬのでありますが、その法律ができるまでは、従来の法律に基いた実施がされなければならぬわけです。従って周囲の情勢に押されて、政府がその実施を遠慮するとかいうようなことがあるということは、政府としては怠慢である、私はこう思うのです。だから、この点は、立法機関はわれわれの方が受け持っておるのでありますし、また局長さんたちは、政府立場から、国会で作った法律を国民の上に忠実に施行するというお役目を持っておられるので、その点をはっきりとされて、厚生省は周囲の情勢を勘案しながら右顧左晒するというような行為は、絶対に慎しむべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  150. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしましても、右顧左胸をしたり、あるいは特殊な立場方々意見に引きずられて、あるいは遠慮をしておったという意味ではないと思うのでありますが、おしかりを受けますならば、私どもがあまりに慎重過ぎたと申しますか、そのことから、ぐずぐずしておったというおしかりを受ける結果になったのだと思っております。弁解がましくお取りになるかもしれませんが、さように考えております。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 私はもう間もなく質問を終りますが、今度は医師の犯罪についてお尋ねしたい点があるのです。医師法違反、あるいは刑法上の堕胎罪等に関して、医師がどのくらい処罰されておるか。これは今度の改正案にも関連する問題でありますので、そういう数字資料がなければまた何ですが、わかり得る限度で伺いたい。刑法上の犯罪あるいは医師法違反というような立場からの医師の犯罪行為——この間もある無免許の医師が、何かごまかして厚生省から免許を得て医者をやっておったという事件も起っておるようですが、こういうようなことも、われわれとしては非常に不安な問題でありますので、医師の犯罪ということは、非常に大事な問題であります。それと同時に、薬剤師の同様な立場からの犯罪というようなものについても、これは今度罰則を設けることについての可否論にも影響しますので、そういう実態を明らかにしていただきたいのです。
  152. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師の犯罪につきましては、医業に関係のございます、あるいは間接にしろ関連のありますものについては、ある程度私どもの方に取りまとめができております。またいろいろな行政処分については、これは所管事項でございますから、明確な数字がございます。しかし、広くと申しますと、これは必ずしも私の方でつかみ切れません。ございます限りの資料は、整えてお目にかけたいと存じます。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 それは資料としてあとから出していただくことにして、総括して医師の犯罪はおよそどの程度であり、行政処分はどの程度であるか、非常に多いか、あるいはきわめてまれであるかということをお尋ねします。
  154. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 直接私どもの所管でございます医師の行政処分の点だけについて申し上げますれば、資料を持ってきておりませんので、正確な数字ではございませんが、年々二、三十件、もう少し幅を持たせますれば、数十件という程度でございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、平均して各県に一人前後くらいずつの行政処分ということに了解してよろしゅうございますね。
  156. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この数年の実情は、各県に一件以下であろうと考えております。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 薬剤師の方で、そうした違反者に対して、あるいは免許を取り上げたというような事案はどうですか。
  158. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 私もはっきりした数字は記憶しておりませんが、昨年度の行政処分——免許取り消しというのは、いわば行政処分としては死刑になりますが、免許取り消しはほとんどございませんで、若干の期間の免許の停止でございます。これがたしか二十件以下、あるいは十件前後だったか、その辺がはっきりいたしませんが、たしか二十件は超過しておりません。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 現実にお医者さんの中においても、社会保険の点数その他についての差し繰りをする、あるいは水増しを考えるとか、あるいは妊娠した婦女が優生保護法の規定によらずして堕胎せしめられるとか、あるいは薬剤師が禁止事項に属している薬剤を販売するとか、こういうものは、相当の数に上るとわれわれは見ております。ところが、そういうものが、今申し上げたような点において全国で数十件、一つの県で一件以下あるいは薬剤師で二十件以下というきわめてまれな、八万のお医者さんと二万の薬剤師さんに比較したならば、まさに暁の星にもならない程度の行政処分しか受けておらない、あるいは刑法上の責任が問われていないということになっているのですが、この点は、薬剤師に対し、また医師に対して、社会そのものが非常に寛容である、その人格識見等に対する信頼感を持っているというようなところからそうなっているのだし、またそういう犯罪を犯しても、これを摘発しようという、そうした気持を抑制していると私は思うのです。その点は医師とか薬剤師とかいうものは、社会的に非常に高度な知性と人格の持主であるというふうに見られている一つの証拠でもあると思うのですが、ここで問題になるのは、現行法では三年以下の徴役あるいは三万円以下の罰金という厳重なる罰則が設けられてあるのですが、加藤先生のお出しになられた今度の案には、それが削除されてある、こういうことを考えてみると、この際実際のお医者さんや、あるいは薬剤師さんで、その職分を汚して、社会的にも嫌悪すべき行為があった者は、はっきりと処断すべきである。そういうことがはっきりすることによって、医師に対する信頼も、また薬剤師に対する信頼も増大すると私は思うのであります。従って、罰則の強化については、罰則があったから、それで医師薬剤師が非常に窮屈な思いをしなければならぬという意味でなくして、むしろそういう規定があってこそ、社会の秩序が保たれ、また医師の信頼も強められると、私はこう思うのです。単なる行政処分などによって、ほとんど全国で数十件しかないようなこういうこと、あるいは薬剤師にしても二十件ぐらいしかないようなこういうことで、ここにあげられてある実質的な違反行為がそのままやみに葬られるというようなことは、私は国家の秩序を保持する上からは、認められないことだと思うのでありますが、この点厚生省の側からの御見解と、加藤先生の御見解と、双方の御意見を伺いたいと思います。
  160. 加藤鐐五郎

    ○加藤(鐐)委員 相当な教育を受けて重大なる責任を持っておる者が、かような犯罪事項を犯しますことは、たといわずかでありましても、まことに遺憾であるのであります。しかしながら、今全国に数十件とか、あるいは薬剤師が二十件ということで済めばよろしゅうございますが、あなたの常識からごらんになるように、精細にやりましたならば、まだ多いかもしれぬと思います。そこで、ただいまの現行法のこの罰則だけでもこれを励行いたしまして、一面においてこの法の峻厳なるところを示したら、私はよかろうと思います。これは医者及び薬剤師お互い人格を高くいたしまして、そうしてまじめにやることが、かえって自己の利益であるという観念に徹しましたならば、こういうことはなかろうと思います。私はただいまのごときかような状態が、たといわずかありましても、まことに遺憾と存じまして、そういうことの絶滅するよう願ってやまないものであります。
  161. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもも、できるだけ罰則というようなものはない世の中が望ましいというふうに考えられるのであります。またそれに触れる人たちの少なからんことを願うわけでございます。一つの法が立てられまして、それを必ず順守すべきであるという建前が出ますれば、特にまた他の法令とのつり合いの問題もございまして、今日におきましても、ただいま御質疑に関連のあります条文には、罰則もついておる状況でありまして、これを多少軽減するということは考えられましても、これを全く削除するということは、必ずしも適当でないのではないかというふうに考えております。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 医師及び薬剤師は、先ほど申し上げたように、国民の職業層においては、最高な知性と技能を持った人であることは、国民すべてが認めている。そういう一番高度の知技を持っている人たが、双方の団体において、この法案の審査をめぐって実に熾烈なる戦いを今展開しているわけです。この戦いの中に、私たちは、さらにそれよりも高度な判断力をもってこの結論を出さなければならない議員としての責任があるわけです。だから私は、このような段階に来ておる際に、政府としては——医療費体系なるものが、すでに確立されておって、そうしてわれわれのこの法案審査に役立つようであったならば非常によかったと、今繰り返し残念でありますが、これはもう仕方ないのでありますけれども、あと一週間を余すこの段階において、この法案の審査、改正案についても十分の審査をすることの全きを得るかどうかという不安が、まだ議員の中にもあります。こういうことを考えると、政府としては、この法案に対して、特に加藤先生の出された法案に対して、これが通過する上においての一つの不安といいますか、疑念といいますか、そういうものが何かの形で残ってはおらぬかと思うのでありますが、政府の所信をお伺い申し上げたいと思います。
  163. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 今回提案されました修正案が、このまま通過いたすと仮定いたしました場合の御質問かと思うのであります。もしもそうであるといたしますれば、私どもとしては、若干の不安を持っております。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 今民間に売薬なるものがありまして、すなわち富山あるいは奈良の地方販売の売薬制度、こういう民間で広く慣例として久しく行われ、厚生省も過去においてそういう一つの実績を認めてきたようなものに対する取扱いについて、お尋ねいたします。
  165. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 御質問の趣旨は、富山等に行われております配置販売業、あるいは一般の薬店で売っております本舗の売薬と申しますか、そういうものについての取扱い、あるいはそういう制度に対する上取扱いを、政府としてはどういうふうに考えておるかということだと思います。これはこの委員会の席上におきましても、別の機会におきまして薬務局長から、たしか御説明があったと思いますが、現在の薬事制度の建前は、この関係の専門の教育を受けました薬剤師、これは身分的な支柱といたしまして、それからなお製造、販売等について適正な、あるいは必要な規制を行なっておるというのが建前であります。  なお、今御指摘の配置販売業あるいはそれに類するといいますか、一応日本に昔からあります薬を取り扱う一つの様態というものは、薬事制度の中におきましても、これを否定するということは、国民の立場から考えまして、保健衛生上、支障を来たすというふうに考えておりますので、薬事法あるいは薬事制度の一つの体系の中に取り込みまして、それで先ほど申し上げました根本的な趣旨をくずさざる程度においてこれを認めておく、しかして妥当に規制をしていく、そういう建前をとっておるわけであります。従って、将来ともその点につきましては、現在のこの状態をなお当分続けまして、それで必要なる規制を配置販売業あるいはそのほかの状態についてやっていきたい、そういうふうに考えます。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 一番最後に、局長さんの御見解でけっこうですが、今、日本の各大学における医師の養成人員、及び適正な日本の医師の配置等を考えるときに、今後大学の医師養成をどういうふうに展開すべきかというような問題について、御所見を伺いたい。また薬剤師についても同様であります。国全体の医療体系から考えた適正な医師の配置というような問題をめぐって、これが基本になる医師薬剤師の大学における養成期間に触れた御答弁をお願いしたいと思います。
  167. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 まず現状から申し上げますと、ただいまのところ年々三千三、四百人の医師が新たに免許を得ております。それに対しまして、死亡等によります医師の減耗がおおむね千人前後でございます。大ざっぱに申しますれば、約二千人ずつ最近は医師がふえておるというような状況になっておるのであります。この状況が、今後同じようにいつまでも続いていくかということになりますと、今は若い医師が多いのでございます。これが相当な年令になって参りますと、死亡数がもう少しふえて参ると思うのであります。御承知のように、最近は日本国民の死亡率が非常に改善されつつありますので、この年令別の死亡率というものを、今後久しい間同じように認めていくわけには参りかねるのでありますが、大体最近の数字に基いて推定いたしますと、今後相当な年数医師がふえて参りまして、十五万前後にまでふえるのではないかというふうに考えます。それ々最高といたしまして、また若干減じて参ります。大体十二、三万というところで平衡状態がくるのではないか。かように考えますと、今度国民の人口の増との問題もございます。この人口も、今のところは、御承知のように、もちろんふえております。このふえ方が逐次減退いたしまして、たしか昭和七十年か八十年ごろでありますか、その辺ごろになると、むしろまた徐々に減少の段階にさえ入るのではないかというふうに推定されておるのであります。大体そのときが一億を若干上国る一億一千万か二千万というくらいなところと考えられております。こういうように考えますれば、私ども現在の三千人程度のものができるということにつきまして、落ちつくところを考えれば、必ずしも過剰であるというふうには言えないかと思うのでありますが、ここしばらくのところは、申し上げました通りに、二千人ぐらいずつふえて参っておるのであります。これは最近では、人口が百万まではふえておらぬ状況でありますので、そうすると、五百人に一人ずつの割合にして医者の方はふえていくということになります。医師が人口に対する比率としては、だんだん多くなっていくという状況であります。この医師の増加が、病院もできます、また医療の内容も向上して参りますので、それに要する医師としては、必ずしもあまりに法外に過大だというわけにもいかぬかと思いますが、傾向としては、人口に対する医師の比率は幾分ずつなり増加している。これが、もしも患者がふえ、また少くとも医療費の支払いを伴うものでないといたしまするならば、医師生活はそれだけ低下して参るということが予想されるのであります。こういうような点で医師の養成を若干抑制すべきではなかろうかという意見は出て参るのでありまして、私どもは、今日より以上に医師を多数に養成する必要は絶対にない、むしろこれを若干減ずるくらいが、さしあたりとしては適当じゃないか。しかし、学校を閉鎖するということも、なかなかむずかしいのであります。せいぜいある程度定員を抑えるということで、私どもといたしましては、二千人ないし三千人というところが、しかるべき養成人員ではなかろうかというふうに考えておる次第であります。あとは医師全国的な地域的な配置を、いかにしたならば適正にやっていけるかということの問題になってくると思います。  なお、薬剤師の問題、それから歯科医師の問題につきましては、一応計算は試みておりますが、一応医師について申し上げました。
  168. 受田新吉

    ○受田委員 医師の適正配置という問題や、医師養成機関に関する人員、定員の問題を今お聞きしたわけですが、大学当局と常にそういう問題について連絡せられまして、新規募集に対する人員増加というようなことがあれば、これは抑制するようにとか、あるいは募集人員を減らすとか、そういうような交渉は、常に厚生省としては医師の適正な配置の上から考慮されてやっておられますか、どうですか。
  169. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 必ずしも十分とは言えないのでありますけれども、随時文部省の方とは、話し合いはいたしております。
  170. 受田新吉

    ○受田委員 終ります。
  171. 中村三之丞

    ○中村委員長 野澤清人君。
  172. 野澤清人

    ○野澤委員 連日いろいろな角度から質問をしてきまして、今日は政府当局に決定的な見解を拝聴したいと思うのであります。提案者及び各方面からの御返事をちょうだいしておりますが、特に局長はいろいろとあいまいな答弁をされておるようですけれども、今日は一つ的確に御答弁を願いたいと思います。  そこで、今度のこの改正法案というものが提出されまして、どう考えてみても、医薬分業というものの理念が、すっかりはずれておるような気がするのであります。これは解説を必要といたしません。医師法の第二十二条の条文と一項、二項とを考えただけでも、すでに医薬分業の理念からは遠ざかっておるような感じがするのですが、この点に対する医務局長考え方を端的にお示しを願いたいと思います。
  173. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師法に関する改正部分についてお尋ねでございますが、私ども、この案を拝見いたしまして、このただし書きの二号に「処方せんを交付することが患者の治療上特に支障があると認める場合」ということになっておりまして「省令の定めるところにより」という字句が抜けておるのでありますか、私どもとしましては、全然ワクなしに医師の主観だけにまかすことはいかがかという考え方は持っております。  それからもう一つは、これはあるいは表現だけのことになるかもしれませんけれども患者又は現にその看護に当っている者が特にその医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合」ということになっておりますが、これは実際に患者医師のところへ参りましたときに、薬が要りますかというような言葉で問われました場合に、薬は要りますというような返答があった場合、これはそのお医者様からもらうという意味で、要りますと言ったのか、あるいは薬はほしいですが、処方せんをちょうだいして薬屋さんからもらうという意味であるか、かようなことが必ずしも明確でないというような点、これは字句の問題かもしれません。  それから第三条の罰則の関係といたしましては、先ほど受田委員から御質問がございましたように、何らかの形でこの処罰規定というものが必要でないかと考えておる次第であります。
  174. 野澤清人

    ○野澤委員 初めから断わってあるのに、ぐにゃぐにゃ余分なことばかり言うているのですが、要するに、医師法というものに医薬分業の理念が盛り込まれているかどうかということを聞いているのです。条文については、あなたから聞かなくとも、われわれは一々検討しているのですから、局長としてこの改正案、大石案というものが、医薬分業の理念を遂行するものとして書かれてあるそういう点を、あなたが認定されるかどうかをはっきりお答え願いたい。
  175. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 野澤委員のおしかりを受けるかもしれませんが、私どもといたしまして事実考えておりますことを率直に申し上げますれば、これはまず最初に、医師患者に対し治療上薬剤を投与する必要があると認めた場合ば、愚者または看護に当っている者に処方せんを交付しなければならないという限りにおいて、私は理念は盛られておるというふうに考えます。
  176. 野澤清人

    ○野澤委員 その次はどうなんですか。
  177. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま重ねて御質問がございましたから、その次という意味におきましては、具体的に今申し上げましたように、私どもの趣旨には必ずしも沿っておりません。
  178. 野澤清人

    ○野澤委員 興奮して申し上げるわけじゃないですが、本則において理念が盛られているらしいということと、ただし書きからいいますと、まるっきり骨抜きになっているということとは、全く意味が違うのであります。全体の医師法の改民案というものが、あなたの認定で、分業がこれで遂行できるかできないか、その基本的な政府考え方を聞いているのですから、分割して、これにはこういう精神がある、しかしその先は不満足だ。そういうことは、むしろ委員の方でいろいろ迷いながら質問をしていることですから、総体的に見て、これで分業の精神が織り込まれ、分業が漸進的にでも遂行できるという考え方なのか、あるいは全く骨抜きになっているのか、そういうことを医務局長としてお答え願いたい、こう申し上げているのです。
  179. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまのような全体をひっくるめて、いかように考えるかという御質問につきましては、私の答弁を申し上げる問題としまして、あまりに大きい問題でございますから、御容赦を願います。
  180. 野澤清人

    ○野澤委員 そういうあいまいな答弁をしていると、夜中になっても質問を終らなくなってしまう。簡単に要点だけで済ませようという考え方なんです。  それでは、さらに突っ込んでお聞きしますが、この法文を実際に法律の上にきめられて、分業に突入するのだという太鼓をたたいた厚生省が、たとえば千三百万の予算を取り、国民に周知運動を起す、こういうふうなことまでやっているけれども、果して実際にこれを実施した場合に、お医者さんの方から処方せんが出るようになるかどうか、従来と変りがないかどうか、この一点について、あなたの御見解をお聞きしたい。
  181. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この改正によりますと、私どもの期待しておりましたより、はるかに少くなるであろうと考えております。
  182. 野澤清人

    ○野澤委員 期待しているという数字は、大体百と仮定すれば、どのくらいですか。
  183. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは数字をもって申し上げるには、あまりにこまかい問題でございます。
  184. 野澤清人

    ○野澤委員 そんなふまじめな答弁でなしに、たとえば、強制分業ならば百処方せんが出る。全部出るんだ。けれども法律二百四十四号の精神では、従来政府の方で予定をつけたのは六〇%とか八〇%とかいう数字が必ずあると思う。そういう予定を立てないで、分業法案を実施しますというて、本年一月一日から実施するような格好で新医療費体系まで作って、来年まで延びたから計算はしておらないという理由は立たない。六〇のうち、もしもこういうふうに改正されたら一〇に下るとか、五に下るとか、そういう見当はつくと思う。何もこまかい数字を出せというのじゃありません。またあなたは、こまかい問題だと言うけれども、そうじゃない。分業を一貫してやるということは、医師が診察をして薬剤師調剤をするというのが、分業の本質であります。従って、医師が診察をして処方せんが出ないならば、分業にならぬ。従って、どのくらいの予定の処方せんが出るかということが、分業実施の社会的な実績を上げるにおいて、効果をあらしめる上において必要な条件じゃないか。この点を聞いているのです。そんなふまじめな答弁でなしに、一つまじめにお答え願いたい。
  185. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私、まじめになればなるほど、お答え申し上げかねるのであります。非常にかたくなり過ぎるのかもしれませんけれども、ただ一つの方向としましては、決してこの処方せんの交付を助長する方向に向いておる修正案ではない、むしろ減少するというふうに、私ども考えるのであります。
  186. 野澤清人

    ○野澤委員 一つの事柄を長く説明されるあなたが、この事柄だけは非常に簡単に答えられておる。  そこで、減少するというのは、ほとんど形がなくなるくらいに減少するという意味なのか、現在の医薬制度の上において出ている処方せん程度に下ってしまうのか、あるいはそれよりもふえるというのか、その辺の感じだけでけっこうです。
  187. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもが期待しておるというふうに申し上げましたのは、これはかなり経過的な考え方が入っております。二十六年の分業法律実施になりました直後というようなときには、あるいはなかなか動かないかというふうに思うのでありますが、だんだんとこの法律実施されて、国民の間にもこの制度がよく熟知されて参りますと、相当処方せんが出て参るのではないかというふうに考えております。それに対しまして、今回の修正案によりますと、二十六年ではございませんで、現在の制度とほとんど変りがないじゃないかという感じを国民に与えるように感じられます。そういう意味におきまして、この処方せん交付の量というものがふえて参ることの期待が非常に薄くなって参る、そういうふうに考えております。
  188. 野澤清人

    ○野澤委員 ぼやっとした中から、だんだんはっきりしてきましたが、そうしますと、これはかねてあなた方が期待しておった——その期待の姿もわからないのですが、政府当局としては、医薬分業という看板はあげたが、ほとんど期待はずれになってしまうという結論が出るというように了承して差しつかえありませんね。
  189. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 さようなおそれがかなり盛り込まれているというふうに考えております。
  190. 野澤清人

    ○野澤委員 かなりの程度も、ものさしではかれませんから、相当骨抜きになるというように私の方では一応了承しまして質疑を続行いたします。  ところで、昨年度、新医療費体系が密接不可分の関係提出されまして、国会でいろいろ論議された。その経過から見ますと、二百四十四号の法律の精神に従って、現在政府が新医療費体系の作業を継続している。そうしますと、もしもこの法律が全く分業理念とかけ離れ、あなた方の期待しておったことがほとんどゼロに近い状態になるということを想定しますと、新医療費体系を、やはり九月一ぱいまでにお作りになる御決心か。まだ現在のところでは、法律が改正になっておらないから、その通りでありますと答えてしまえばそれで済みますが、そうでなしに、もしこの法律に変更されたら、新医療費体系の行方はどうなるか、この点についてお伺いしたい。
  191. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては、新医療費体系なるものは、これは医薬分業の有無にかかわらず、一ついろいろ検討して参らなければならぬ問題だという意味で存在している問題ではございます。しかしながら、ただいまの御質問意味は、さような意味の新医療費体系ではなしに、この医薬分業と結びついた最低限の必要を満たし得る新医療費体系、昨年提出いたしましたような意味のものを作るかどうかという御質問であろうかと思うのでありますが、この点につきましては、この修正案通りますれば、これに対して、厚生省当局といたしましては、いかように対処するかということを、いろいろ検討して参らなければならぬと思いますが、ただいま、さしあたり私の考えを申し上げますれば、医療費体系の検討は、やはり進めたいというふうに考えております。
  192. 野澤清人

    ○野澤委員 新医療費体系というのは、一つの形のものだと思っていたら、今ほんとうの意味の新医療費体系と、分業に伴う新医療費体系とある、これは初めて聞いたのです。そこで、私の方でお尋ねしたのは、どちらにしても、ほんとうの意味の新医療費体系なんです。うその医薬分業による新医療費体系ではない。新医療費体系の精神というものは、物と技術との対価を分離して、技術料というものを合理的な算定の基礎に持っていこうという考え方でありますので、それは範囲として、狭い範囲でとりあえず分業と密接不可分のものだけを昨年はやったのだというなら、意味がわかります。しかし、現に二百四十四号に基くところの新医療費体系の操作を続けていますと、大臣も説明をし、しかもまた、その作業は九月一ぱいに完成いたしますから十月に提出する、こういうことを言うているのでありますから、私は二種類の新医療費体系について現在政府が作業を続けているとは考えていない。従って、ほんとうの意味の新医療費体系というものは、医薬分業を前提とした新医療費体系であろうと私自身は考えている。もし、それが間違いであれば別でありますが、そうした作業を継続されておりますが、もし改正法のような医師法になってしまった場合には、処方せんが出ないということの規定がつくとすれば、その新医療費体系は継続されるのかどうか。しかもまた、そのときに行って、何も意味のない新医療費体系を作って国会でもんでみたところが、どうしようもない、こういうことを心配してお尋ねしたわけです。
  193. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、私どもとしては、新医療費体系というものの検討は、さっきも申しましたように、一応続けて参りたいというように考えておりますが、これをいかなる形で、またいかなる必要性があってということになるかは、この改正案が通過いたしましたとすれば、一応慎重に省内で、関係者集まって検討しなければならぬ問題だと思っております。
  194. 野澤清人

    ○野澤委員 そんなことを私は聞いているのでないのです。新医療費体系というものは、医薬分業と密接不可分の関係にあるというのが従来の考え方分業法実施するために、どうしても物の対価と技術の対価を分離しなければならぬからというので、新医療費体系というものが初めて計数的に浮び上ってきた。その継続事業として、予算まで取って今やっている、そのやっている行為が無価値になっては何にもならぬからということで、聞いている。これから慎重に検討いたします、会議を開きます。これは法律が通ってからの話で、それは別の問題ですが、この新医療費体系というものは二つもある。二つもあるということは、今日初めて聞いた。少くともこの分業に基く新医療費体系の操作というものは、きぜんとして政府は作業を続ける、また出たならばこれを実施するのだ、こういう考えでおられるのかどうか、こういうことを聞いているのです。
  195. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしましては、検討は事務的にいたすつもりでおります。
  196. 野澤清人

    ○野澤委員 そうすると、法律が通っても通らなくても、検討は事務的にいたしますというので、結論は出ないということですか。
  197. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私が申しましたのは、ただ検討だけをして結論を出さぬという意味ではございません。検討をして、一応の姿を編み出してみたいと考えます。
  198. 野澤清人

    ○野澤委員 厚生大臣は、八月一ぱいに終って、九月に事務的作業をして、十月にはおそくも出しますと、こういうことを言明された。そうすると、あなたの検討というのは——大体厚生省というところは、慎重に検討というと五年も十年もかかるのです。早くできた検討というものはないのです。そうでなくして、厚生大臣は、もう目安はちゃんと出しているのだから、局長の方としては、九月一ぱいに完成しますと言うのが建前だと思うのですが、何もそこをあいまいにする必要はないと思う。この点、はっきり一つお示し願いたい。
  199. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 今続けております作業は、九月までに一応の形をつけるつもりでございます。
  200. 野澤清人

    ○野澤委員 新医療費体系ができるということはわかったのですが、それでは、多年大きな期待を持ったが、小さな期待を持ったかわかりませんが、法律第二百四十四号が昭和二十六年に国会においてきめられて、その後猶予期間まで設けて今日までの経過をたどっているのであります。この法律が、たまたま議員立法で今度こうした改正をされる。提案者には、これは行き過ぎじゃないか、改悪じゃないかということの質疑は毎日続けてきました。提案者の考え方は、あくまでも国民の立場、あるいは患者立場考えてこの法案を作った、こういう解説をされておる。そこであなたに、政府立場として公平に見て、この法律は国民の立場から立案されたものか、全く医師立場から立案されたものか、この点の御見解をお伺いしたいと思います。
  201. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 議員提案によりますこの案が国民の立場でないというようなことは、何としても私どもは申し上げることはできないというふうに考えております。
  202. 野澤清人

    ○野澤委員 国民の立場と言うて提案者は説明をし、私どもはこれは国民の立場とか、国民の利益をはかって立案されたという提案者に、むしろこれは多年陰謀術策をたくましくした医師側の改悪案だ、こういうことまで、あなたは聞いたかどうか知らぬが経過的には申し上げているのです。そこでこの法律を見てみますと、医者患者を見た際に、なるべく処方せんを出したくない、こういう気持で法律が作られているように感ずるのです。あなたも、身分はお医者さんですが、政府の役人として、局長としてそういう感じを少しでも受けたかどうか、この点いかがでございますか。
  203. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 感じを申し上げることは、どうかと思うのでありますが、この案に対しまして私ども考えております点は、先ほどもいささか立ち入ったような発言いをたしましたけれども、申し上げました通りであります。
  204. 野澤清人

    ○野澤委員 申し上げました通りということの結論は、どういうことですか。
  205. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医薬分業につきまして、私どもが期待しておりましたような効果が幾分減らされると申しますか、結果が十分に出てこないうらみがあるというふうに考えております。
  206. 野澤清人

    ○野澤委員 大事なポイントですが、さっきは相当と言うて、今は幾分と言っているのです。そのはかり方は、どっちなんですか。
  207. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私は、幾分、それから相当ということを、今回の御答弁に前後あるいは使ったかもしれませんが、必ずしも厳密な意味で申し上げたわけではございません。
  208. 野澤清人

    ○野澤委員 別段局長をいじめるために申し上げているのではないのだから、はっきり答えてもらえばそれでいいのです。それで、私がお尋ねしているのは、この医師法の精神は、国民の利益のため、あるいは患者利益のために作ったのだと提案者は言っている。われわれは、むしろ医師側利益をここで生むために作ったような一方的な考え方がないかという見解をもって毎日質疑しておった。そこで局長にお尋ねしたことは、この法文が実際に医薬分業を遂行する上においては、死文になるのじゃないかというお話をしたら、それは後退するという説明をされた。これを総合してみますと、医薬分業という文字はあっても、理念も実体も失われていく現実の姿なんです。こういうことを、あなた自身が率直に認められるかどうか。これは相当も幾分も必要ないのです。ただ率直にあなたが、分業はもう骨抜きになってしまったのだという結論さえ言えば、それでけっこうです。
  209. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 骨抜きという表現に当りますかどうか、再々同じことを申すようでありますけれども、私どもが期待しておっただけの効果が上らなくなるというふうにおそれております。
  210. 野澤清人

    ○野澤委員 政府当局として多年唱道された医薬分業が、法的措置を講じられて、いよいよ実施されるという段階にまできているのです。そうしますと、あなた御自身、あるいは政府当局として、医薬分業という制度を、日本の医療制度の上に採用した方がいいと考えておられるのか、あるいは、これはつまらないからやめた方がいいと考えておられるのか、この点、御見解を明らかにしていただきたい。
  211. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては、医薬分業が、国民医療の一歩前進であるというふうに考えております。
  212. 野澤清人

    ○野澤委員 社会通念として一歩前進であるということは、世界じゅうでやっていないのは、日本とエチオピアだけですから、これはわかる。そうじやなくて、日本の社会制度でもって、あなた自身はやった方がいいか悪いかということを聞いておるのです。
  213. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては、この制度の実現に努めておる次第であります。
  214. 野澤清人

    ○野澤委員 そこで大略はっきりしてきましたので、結論的な御質問を申し上げますが、今回の改正案は、ほとんど効果のないものである、しかも政府は、好ましい制度であるから分業実施したいというので、現在大いに努力しておる。こういう経過から見ますと、今日ただいまこの法律をこういうふうに改正することに対して、政府は反対だという結論になると思うのですが、いかがでございますか。
  215. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては、好ましくないものであると考えております。
  216. 野澤清人

    ○野澤委員 そういう器用な日本語を使わないで、工合悪いなら悪いと、そこをはっきり言うてもらえませんか。いつもあなたはぼけておるのです。私はあまり日本語をよく知らぬから、はっきりと一つ、実際にやるのは不適当である、あるいは適当であるというふうに、イエスかノーか、はっきりしてもらいたい。
  217. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては、非常な不安を持っております。
  218. 野澤清人

    ○野澤委員 それでは、新医療費体系にも一応の作業を継続している、そして九月中にはその結論が出て、予定通りにあなたの方では出せるという態度を示した。それから、分業はいい方法だから十分努力して実施したい、こう言っているが、そこへ突如としてこの改悪案が出まれてきた。そうしますと、この時期にこの法律の結論を出しててんやわんやの国会を騒がして、結論を力の政治で押し切ってしまって、今度出てきた新医療費体系とかみ合せたら、何も意味がなくなって、こういうことでは、政府自体の立場としてもきわめて好ましくない状態だと思う。それで、この改正案に反対かどうかと言うたら、あなたの方では、大体反対のような意向を漏らしておる。第二に、私の方でお尋ねしておるのは、もしもこの法律を改正する必要があるとするならば、新医療費体系のできたとき、また先ほど受田委員から質問がありましたように、医薬関係審議会というものは、法的根拠によって一年以上も審議しておる、あなた自身も委員の一人に入っておるのだから、その経過についてもよくわかっておるはずです。その結論を少くとも八月から九月の半ばまでには出さなければならぬということは、委員もおそらく承知しておると思う。そういう過程にあるとき、何を好んでここでこれだけの三法の改正をしなければならぬかということは、だれしもが持つ良識的な疑問だと思う。これに対して、政府の決定的な考え方を披瀝してもらうことが、審議の途上において、あるいは結論を出す上において、重要なポイントだと思う。そこで、賢明な医務局長に、いろいろな角度からだんだん追い詰めてここまで持ってきたのですが、率直に一つ答えてもらいたい。時期的には、いつごろ結論を出したらいいですか。
  219. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、この改正案は好ましいものと思っておりませんので、時期のいかんを問わず、さように考えております。
  220. 野澤清人

    ○野澤委員 そんなに突っぱらなくてもいいです。ただ、これが力の政治で追い詰められて、今日か明日にはもう決定しようというのです。政府の態度として好ましくないと言っていながら、時期なんかかまわないというなら、明日にでもきまってしまうのです。そうじゃなくて、新医療費体系がきまり、また医薬関係審議会の結論が出てから、あわせてこの法律も再検討してほしいという政府のしっかりした、きぜんとした態度があるならば、おそらく賢明な委員諸君がそうするだろう。けれども政府の方では、時期なんかどうでもいいが、好ましくないということなら、あるいは力の政治でやってしまうかもしれない。そこで私の方では、政府の態度として、たとい改正するにしても、一応新医療費体系を突き合せてみる、あるいは医薬関係審議会の結論とにらみ合せてみる、その上で改正点が合理的ならば改正いたします、こういうところへ持っていくのが、国会としても最も合理的な議事の進め方であり、政府としても、ただ好ましい、好ましくないというような態度でなしに、今まで相当の日月をかけ、しかもまた準備期間も設け、作業もあなたの方では相当慎重に調査をいたしておりますというのですし、これだけの国家的な費用を使って作業を続けてきた重要問題ですから、少くともそうした時期についても、国家、国民の利益になる案であるならば、局長としては、あいまいな態度でなしに、実際に土下座したって、これが国民のためになることならば実施する、また審議期間としては十月が一番適当だ、あるいは十一月が適当だというような見解が生まれなければならぬと思います。これに対して、私は最後の質問にしたいと思いますから、どうかこの辺明らかにしていただきたいと思います。
  221. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私、申し上げられますのは、さしあたりといたしまして、この改正案に対しては非常な不安を持っているということを申し上げましたが、さてそれでは八月の末になり、九月の末になったらこれでいいかというような意味でございますとすれば、私はただいまのところお答え申し上げられません。
  222. 野澤清人

    ○野澤委員 曲解しているようですが、この法律でいいかということを聞いているのではないのです。少くとも法律二百四十四号を改正しようとする事柄について、まだ医薬関係審議会の結論も出ない、また新医療費体系もできていないときだから、万一改正するならば、そういうものができたときの方がけっこうじゃないかということを聞いているのです。政府立場としては、この三者を突き合せて審議した方が都合がよろしいのじゃないかということを、私はお尋ねをしているのです。
  223. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私は御質問意味を感違えておったかもしれませんが、この改正案が通過するのが、今がいいのか、もっとあとがいいのかというような御質問かと思いましたのですが、そうではなしにこの二十六年の法律を改正する問題、いかなる改正かわからぬけれども、さような問題を検討する時期としては、もう少しあとに延ばした方がいいと考えないかどうかというお考えだといたしますれば、私どもといたしましては、二十六年の法律に従って準備を続けるというつもりでおります。まず私どものやっておりますところを十分に御検討下さいまして、そしてこの御審議を願うということでありまして、さてその時期がいっかと申されますと、どうも私どもとしては申し上げかねるのでありますが、それは少しでも既定方針で準備を進めさせていただける方が、私どもはありがたいというふうに考えております。
  224. 野澤清人

    ○野澤委員 どうもあいまいでしょうがない。検討してもらってと言うが、検討するのはあなたの方が検討しますというわけなのです。私の質問しておるのは、ここまで来たのだから、新医療費体系ができ、医薬関係審議会の結論が八、九月には出るのではないか、こういう見通しをつければ、それらを合せたときの方が合理的ではないか、政府としてはどういう立場なんだ、こう言うておるのです。
  225. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 非常に微妙な点でございまして、私一存でお答えするのはどうかと思うのです。あるいはあとで大臣のおしかりを受けますれば、取り消しをいたしますのですが、率直にそれでは申し上げるといたしますれば、私どもむしろ時期がどんどん迫りまして——これはいつという意味でも必ずしもありませんが、非常にどん詰まりになりまして方針が変ってくるというようなことになりますれば、私どもとしては、これは非常に困ったことであるというふうに考えます。さればといって、私どもに御命令になりました仕事が、まだ一応の目鼻がつかないうちに、また方針が変るというようなことを言われましても、困るわけであります。私どもとして、いつという御意見があるならばお聞きしたいというような出過ぎたことは申し上げかねますが、ただ私ども一般的に申し上げれば、今のような考えでおるということであります。
  226. 野澤清人

    ○野澤委員 取り消すほどの答弁ではないと思いますね、あいまいで、やはり両方にひっかかっておるのですから……。そしてもうこれは問答しても無意義ですから、要するに政府考え方というのは、今度の法案というものが、時期的に見ても、また内容から検討してみても、医薬分業実施ということにははるかに遠い、しかも効果的には相当の期待はずれがある、こういう政府の態度であるということだけ了承します。  それからもう一点、先ほど大橋委員質問しておりますときに、医薬分業というものには経済問題がつきものだ、経済的態勢というものが確立しなければ、分業というものが進められないのだ、こういう質問に対して、うやむやのうちに、大臣の方でもその見解に同意だというようなことを言われておる。さらに、今度はいろいろと受田委員から質問されておるうちに、あなたの御回答は、分業実施しても、この診察の技術と物の対価とが、ただワク内で分離されていくだけであるから、医師あるいは薬剤師双方に対して経済的な変化はほとんどない、こういう解説をされた。これはおそらく医師の実質収入の変化がないという意味を申されたのだと善意に解釈しております。そこで、先ほど昭和二十七年の医師の所得の問題について、医師が二万七千円、薬剤師が一万二、三千円だという御解説を願ったのでありますが、ちょうど健康保険の組合連合会の健保の当面する諸情勢という文書の中に、はっきりした統計が出ていました。これは二十八年度の統計でありますけれども、この統計を見ますと、医師の所得というものが相当の金額に上っている。これは相当根拠のある資料で作られたものだと思うのですが、総医療費千七百七十六億二千三百万円で、これを健保の連合会では医師の総数、歯科医師を含んで十万九千六百六十一人で割っておるのです。そうしますと、医薬一人当りの年収が百六十二万ということ、これを月に直しますと一カ月約十三万円ということになるわけであります。そうすると、その十三万円のうち、何パーセントがこの医業を続けていく上においての経費かはわかりませんが、大体従来のこの統計等から見て、たとえば五〇%にこれを判断しますと一カ月純所得六万五千円という数字が生まれてくる。そうすると、あなたの方で説明された二万七千円とはるかに開きがあり、しかもまた平均賃金の一万七千七百十四円というものから考えると四・二倍くらいの所得になる。これが基礎的な健康保険の連合会から発表された数字であります。こういうふうに考えてみますと、先ほど受田委員にお答えになりました二万七千円とは格段の差がある。ただし、実質収入として——利益としての計算ではないかもしれません、パーセンテージのかけ方で二万七千円にもなれば三万円にもなるというところですが、このいう医師収入状況と現在の薬局収入状況等から判断しまして、少くとも医師薬剤師というものを国家が養成している以上は、その収入のバランスを取ってくれ、同額にしてくれとは申しません。しかし、少くとも同一業態で大学教育まで受けておるのでありますから、その基本数字というものは二万円なら二万円、二万五千円なら二万五千円というものに相近い、しかも勉学の年数等から比較して、比例配分されてもよろしいが、自然そういうふうに増収になるように、お互いに工夫することが必要じゃないか。医師は医療の担当者で、薬剤師は雑貨屋だからということであれば、別問題でありますが、今日の分業闘争というものは、初めから経済闘争でないのだ。現在の薬剤師のように身分法を作るにしましても、薬剤師とは何ぞやと言うても、薬剤師というものは、薬科大学を卒業して国家免許を取った、その業務は何だといったら、何でもありません。製薬もちびっと、劇毒物もちびっと、しかも調剤に関してはほとんど処方せんも出ないという現況です。ここに分業をしなければならないという薬剤師の切々たる願いがある。しかも、それによって医療内容が拡大するとか、医療制度が改悪されるというのではなくて、世界的な常識として医薬分業推進さるべき時期なんです。従って、なるべく薬剤師に処方せんを多く出して薬剤師の業務が成立するよう、また医師の実質収入が少くならないようにしてやっていくことが、ほんとうの行政でもあり政治でもあると思うのであります。こういう意味合いから、あなた自身が、ただ二万七千円、一万二、三千円、受田委員の方では半分ですねということで終りであります。しかし、実際今日の医師の特権的な生活水準というものは、何人が見ても、相当なぜいたくができ、相当な収入があるということはわかっているのです。わかっているにもかかわらず、しかもまた医薬分業経済的な要素を含むものであるから、これを実施してはならない、医者だけを擁護して薬剤師は死んでしまえというような行き方では、時代逆行もはなはだしいと思うのです、こうした面について、今度の改正法の医師法の精神あるいは薬事法の精神等を見ますと、国民や患者立場考えてという提案者の説明はまっかな偽わりでありまして、実際は医師そのものの特権的な立場をいよいよ擁護する上においての一方的な意思表示だ、しかもそれが成文化された絶果は、分業考え方も全然ゼロに近い数字になってしまう、こういう結果になるのでありますので、どうか政府当局においても——この委員会においてあいまいな答弁しかできないというあなたの立場もよく推察はできます、これ以上いじめてもしようがありませんから、ただきぜんとした態度で、よいことを国政の上に反映させるという精神で、どうか今後とも十分な御検討を続けていっていただきたい。これだけ希望いたしまして、私の質疑を終ります。
  227. 小林郁

    小林(郁)委員 関連して。ただいま野津さんのお話を聞いておりますと、健康保険その他の社会保険の支払われておる金額を、医師及び歯科医師の数の合計において割るというと、一人当りが百六十何万円というお話でありました。これは要するに、一人当り正直に割ればそうなるでありましょうが、開業医の実態から申しますと、大学病院とか、あるいはその他公私立の大病院に大部分この収入、社会保険の支払いが吸収されておるのでありまして、実際の個人開業医は、そのお余りをちょうだいしておるというような実情であります。すなわち、これを商売に見立ててみますと、大きなデパートが大資本をもって非常な繁盛をして、周囲の中小企業者がぴいぴいとしておるという実情と、はなはだ相似たるものがあります。私は滋賀県であり、彦根市であります。きわめて小さい市でありますけれども、私どもの方の会員が年々税務署に所得申告をいたしますときに、いろいろ問題が起るのでありますが、まず三、四十万という決定を受ける者が中の上という実情でありまして、二十万ぐらいの決定の者もたくさんあります。そういうことを考えていただきますならば、ただ単に社会保険の支払いを医師の数で割ったというだけでは、その統計は開業医の収入資料にはならぬと私は考えております。もしそれがどうかとお考えになりますならば、保険局の方へでも聞かれまして、大病院がどういう率で取っておるかということを聞かれましたら、はっきりわかるであろうと思います。答弁はいりません。
  228. 滝井義高

    ○滝井委員 今医務局長さんの野澤さんに対する答弁の中に、重要な点がございました。これはちょっと聞きのがしにならないのでお尋ねをいたしたい。それは、今作っている医療費体系は狭い範囲の医療費体系だ、この法案が通れば別な体系を作るという重大な発言があった。これは私はきわめて重大だと思う。今あなたの方でお作りになっておる、九月までにできるであろうその体系は、私が先般公聴会でもお尋ねいたしたように、現状の所得を分析する総医療費のワクというものは、個々の医療機関の所得には変化を与えない分業に必要な範囲に限る、こういうものであったのです。そういう医療費体系というものはだめであるということを、昨年国会は意思決定をしておるはずだ。だめである、やり直してこい。それをまた同じものを九月に作られるならば、私はやめた方がいいと思う。そういうものですか。いわゆる医者技術料というものを時間ではかったようなものではだめなんだということを、この国会は討論を通じてはっきりいたしてきておる。それを、もしあなたの方でやられておるならば、千三百万円というものはこれは別な体系を作ってもらわなければならぬと思うのですが、そういうものかどうか。もう一つは、構想は変らないと言われたけれども、構想は同じでも、やり方はいろいろ違ってくると思う。そういう時間をストップウォッチではかったような技術料の出し方であるならば、これは作ってもらわない方がいい。持ってきたって同じだ。そういうものかどうか、一つ答弁をしてもらいたい。
  229. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは数日前でしたか、新医療費体系の基本的な考え方はこの四つかというふうに御質問が、ございましたときに、その通りでございますというふうにお答えをいたしたのでございますが、私の考えるところによりますと、時間ではかっただけということと、必ずしも合致はしておらないというふうに考えるのであります。私どもとしましては、一応時間ではかりましたものを基準にはいたしますけれども、この中に技術差を含め得るかいなかということについては、検討いたしたいと考えております。
  230. 滝井義高

    ○滝井委員 一応柱というものはああいう柱だが、そのものの考え方については、相当の変化を来たしたものになる、こういうことですね。それでわかりました。それにしても、とにかく総医療費を変えないという点と、個々の医療機関の所得に変化を与えないということは、実現不可能だと私は思います。さいぜん大橋委員質問に対して、実質的な所得は変らない、しかし総所得においては変化がある、こういう意味の御答弁があったが、そういうことは木によって魚を求めることで、とても不可能だと思いますので、これは私ら了解ができません。  それから、この法案が出たら別の体系を作るという、別の体系とは、今言ったような基本的な考え方をどういうふうに違えてお作りになる体系でございますか。
  231. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この改正案がこのまま通過いたしました暁に、いかような体系か考えるか。前の、二十六年の法律のままのものを予想して作るかいなかということにつきましては、私、一応やはり検討の要があるものというふうに考えておる次第であります。
  232. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この法案が通った後には、私の言うあの四本の柱とは一応別個に、新しい観点から体系を考える、こう了解して差しつかえありませんか。
  233. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これも多少私の考え方が入っておるかもしれませんが、その四本の柱というものを動かさなくても、やはりいろいろな考え方をいたして検討すべき余地があるというふうに私は思っております。
  234. 滝井義高

    ○滝井委員 四本の柱を動かさないということになれば、それは別の体系ではないはずです。基本的には今の体系と同じことになるわけですが、それを別の体系と言うのでは、ちょっと意味が通らないと思いますが……。
  235. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私としましては、先ほど申された四本の柱というものを必ずしも動かさなくても、検討の余地がある、検討できるというふうに思っておりますが、私、必ずしも四本の柱を固執しておるわけではございません。もちろん、そのいわゆる四本の柱をも含めて検討をいたすというつもりでおります。
  236. 滝井義高

    ○滝井委員 とにかく、現在厚生省が新医療費体系の基礎としておる理念についても、なお法案が通ったら再検討して別の考え方になり得る、こういう結論になるようでございます。そうしますと、この法律通りました場合には、都市では薬剤師の皆さんも、相当プロパガンダをやるだろうと私思いますが、都市には相当商社も出るだろうと推定されます。そうしましたときに、所得に一種の変化が起ってきます。それは、処方せん料というものは、現在の健康保険では五点です。そうしますと、甲地区では六十二円五十銭、乙地区では五十七円五十銭の収入が新たに医師に加わってくる形が出てくる。あるいは同時に薬剤師調剤として回る分が——現在健康保険で薬剤師技術料はちゃんときまっておりますから、薬剤師の所得にも一つの変化が出て参ります。と同時に、処方せんが五点で出ることによって、健康保険経済にも一つの変化が出てくると思います。おそらくここ半年以内に、処方せんが多く出るにせよ少く出るにせよ、はっきりした現象で一つの変化が出てくると思うのでございますが、私はそのときに、現在あなた方の作ろうとしている医療費体系を、現実の社会現象の中で——現在出ておる改正案というものは、これは医薬分業実施する上において、試験管の中でやる実験ではなくて、あなた方の医療費体系のような、人間の頭脳の中で作為的に作った体系でなくして、具体的にこの医薬分業実施する社会現象の中の実験ができてくると思うが、そういうことがこの法案実施した後に起らないか、それを一つお聞かせ願いたい。
  237. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この法案がこのまま実施になりますと、相当な変化が起ってくるだろうということは、私どもも否定できないのでありまして、その動きが好ましいものであるかいなかというようなことについては、私ども、なお十分検討した上で意見を申し述べさせていただきたいと思います。
  238. 滝井義高

    ○滝井委員 出てくる変化が、あなた方のお作りになる医療費体系に大きく影響を及ぼすということは、お考えになられるでしょう。
  239. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 大きな影響も及ぼしましょうし、また新医療費体系をいかように定めるかによって、この事態も変っていくというふうに思っております。
  240. 滝井義高

    ○滝井委員 それ以上追及はしません。  次に、少しく変りますが、来年から実施せられる法律では、実は私たち不勉強で、獣医師の問題について論議をやらなかった。ところが医師、歯科医師と同じように、獣医師法律的に強制分業の形になっているわけです。この点について、政府としては、あのままで万全だとお考えになりますか。
  241. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 法律二百四十四号の二十二条では、薬剤師でない者は、販売または授与の目的で調剤してはならぬ、そうありまして、そのただし書に、医師、歯科医師調剤できる場合は左に掲げる場合だ、それから獣医師は自己の処方せんによりみずから調剤できる、こういう趣旨のことを文章でうたっておるわけであります。従いまして、もし御質問の趣旨が、獣医師調剤も左に掲げる各号の場合に限られるというふうに御了解になっているとすれば、それは間違いでございます。獣医師は無制限に自己の処方せんによって、みずから調剤できるということであります。
  242. 滝井義高

    ○滝井委員 この薬事法の規定から言えば、獣医師はいかなる場合でも、自分の処方せんで調剤できるわけです。ところが、それは省令でもし地域が定められた場合、たとえば十万以下のところならば、それでよいが、十万とこう切った場合に、十万以上の、たとえば二十万の都市に住んでいる薬剤師は、みずからの処方せんではできない場合が出てくることになるわけです。それは医師法か獣医師法かの規定で、診療上支障のある場合以外は処方せんを出すことになっていて、処方せんの関係調剤関係とは別個のものですから、それをよく頭に入れておかなければならぬ。そういう関係は、人間の場合でも同じです。たとえば人間の場合においても、調剤は十万以下の都市ならば、これによって自己の処方せんで無制限に調剤できるわけです。ところが処方せんは、診療上支障がある場合以外は全部出さなければならぬので、十万以下のいなかに行った場合には、もし処方せんが無料ならば問題はないが有料であるとするならば、薬局が十里も二十里も先に行かなければない、そうすると、一度処方せんをもらって薬局に行き、また医者にしてもらわなければならぬという愚を繰り返すことになるのです。そういうことが獣医師についても行われる。一ぺん薬局へ行って薬を買ってから、今度は獣医師に馬のそばへ行って飲ませてもらうということになる、獣医師が薬を調剤することができぬということになると、これは人間についても馬、牛についても、同じ現象がここに出てくる。来年から行われるこの法律の盲点は、医師法においては、なるほど処方せんを出す場合を制限したけれども薬事法でしりが抜けている。こういう盲点があることを実はわれわれはうかつにも気がつかなかった。しかもあなた方は、これは無料だということで割り切っておられるけれども、処方せんは、医者の長い間の経験と技術の結晶が紙の上に表われたものなんです。だから一枚の紙と、これは私再々言うように、日本語でその上に書いてある処方というものは分離して、一枚の紙代は一円であるかもしれないけれども、そこに結晶しておる技術料というものが一円プラスアルファーとして加えられなければならない。だから、これは無料であり得ない。この法律は、いなかの人に対しては、わざわざ地域を区切って医薬分業をやらないことにしておるにもかかわらず、処方せん料を、そういうやらない地域の人までが取られるというばかげた法律を作っておるということになる。理論的にはそうでしょう、はっきりそういうことになっておる。しかも馬や牛に至っては、その矛盾がなお露骨に表われておる、こういうことなんです。それを一つ明白にしてもらいたい。
  243. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 今、お話しの点は、論点は二つあるようであります。一つは、獣医師の点でありますが、これはもう一回薬事法改正法の二十二条の本文をお読み願いたいと思います。本文には「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。但し、医師若しくは歯科医師が左に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。」そこで一号、二号、三号とありまして、今御指摘の点の、薬局の普及が十分でないとされる地域は三号であります。これは左の各号に掲げる場合でございまして、これは「医師若しくは歯科医師が」というしぼりがかかっております。従いまして、獣医師は各号には関係なしに、自己の処方せんにより調剤するわけであります。この点については、解釈は明瞭であると思います。  それからもう一点でございますが、この点は若干問題があると思います。処方せん料を無料にするかどうかというような点は、確かに御指摘のような問題があるかもしれません。しかし、この点は医務局長から御答弁願うことにいたしまして、医師法薬事法の建前から申しますれば、御指摘のように薬局の普及が十分でないとされる地域、すなわちたとえば人口十万以下の都市のような場合に、一応医師法に基いて処方せんは交付する。しかしながらその場合に、薬事法の上においては自分で調剤できるということでありますので、いわば処方せんは出すが、患者はその処方せんに基いて医師から調剤を受けられるということになるわけであります。ただ問題は、処方せん料の無料か有料かという点が、若干問題になると思います。
  244. 滝井義高

    ○滝井委員 だから、無料か有料かによって、この法律は重大な影響を受けてくるし、もしこれが有料だったら、非常に抜けておって、医師法の中に、その普及が不十分なときは処方せんをやらなくてもいいという除外例が当然出てこなければならぬと思います。それが親切な法律の書き方なんです。ところが、無料か有料かきまっていない、そういう懸案事項を、あなた方は無料だと割り切って医療費体系を作っておったところに、一つの問題があったわけです。これは大体そういうことが盲点だということがわかったわけですから、これ以上は追究しません。  それから獣医師法の方は、これはどうも私の不勉強でありましたが、昨日の公述人等の意見を聞いても、何かそういうことが出ましたが、やはりこの法文の書き方も問題があるわけであります。こういう工合に全部一緒に並べて書いてあるところに問題がある。むしろ獣医師を除外例でするならば、もう一項、号をあらためるか項をあらためて、獣医師はやはり人間の処方や何かと同じ取扱いをしない方がいい。これは処方せんをくれとは言わないのですから、私は別に書くべきであったと思います。  これで関連質問を終ります。
  245. 中村三之丞

    ○中村委員長 長谷川保君。
  246. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私、実は先般来数日間席をはずしがちでありましたので、あるいはすでに同僚委員諸君から質問があり、二重になって御迷惑な点があるかとも思いますが、そういう点がありましたら、おっしゃっていただけば、速記録を読みますから、どうか遠慮なくおっしゃっていただけばけっこうであります。  二、三の点について伺ってみたいと思いますが、第一に、昨年新医療費体系の問題を私ども論議いたしまして、これは非常に不十分なものであるからということで、六カ月以内ぐらいにもう一度作ってくるようにということをお願いをいたしました。九月ごろに出てくるというお話を承わっておるわけでありますが、昨年新医療費体系審議をいたしまして後に、特別な新しい発展を当局の方でなされておるかどうか。もし特別な新しい発展がなされたことがあれば、簡潔にどういう点が新しい発展をしているかということをお話しいただきたい。
  247. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 先ほども、実はただいまの御質問に類似の御質問がありましてお答え申し上げた点でありますが、私どもとしましては、もう一ぺん前回のような詳細な調査をいたすだけの時間がございません。さればといって、前に持っておりました資料で、それだけでいろいろ検討するということでも、私どもも職責を尽し得たものとも考えられませんので、少くともこの年次のずれの補正を、得られるだけの新たな資料一つ試みたいというふうに考えまして、いろいろな診療行為の頻度の変化及び用います薬品の分量、従いまして、少くとも薬価基準によります薬品の価格が出てくるのでありますが、さような調査に基いて、このずれの補正をいたしてみたいという計画を進めて、今、着手中でございます。
  248. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 医薬分業の問題につきましては、私ども昨年も、あらゆる点についてお伺いをいたしましたし、またお互いに討議をいたしたわけでありまして、ほとんど論議はし尽されておるのでありますが、昨年伺いましたときに、私どもは非常に心配になった点があったわけであります。新医療費体系の問題ではありませんが、いわゆる分業の制度全般について、いろいろ心配だった面があったのであります。そのうちの少くとも一つは、非常に重大な問題であったわけで、今なお私は、非常な不安を持っておるのでありますが、その当時論議されましたように、この医薬分業をいたしますと、診療責任が二つに分れる。医師診療をし、処方せんを出して町の薬局調剤をする、こういうことになるわけでありますが、そのときに、医師の処方通り調剤をするかせぬかという問題が、非常に心配になる点であります。もし医師の処方通りしませぬならば、これは全く診療ができないことになるわけでありまして、非常に重要な問題であります。こういうような場合に、何かいい工夫があって、処方せん通り調剤ができるというような新しい工夫がその後なされておりましょうか。こういう点、なければないでけっこうですが、何か新しい方法をお考えになっていられるならば伺いたい。
  249. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 特別にそういう点について工夫したところがあるかという仰せでございますが、実際、問題を行います場合には、医師が処方せんをお書きになる場合に、たとえば文字は外国語とか何でも自由でございますので、そういうふうなことから起ってくる混乱であるとか、あるいはまた同じ薬がいろいろな商品名で売り出されておるわけでありますので、そういう点について、たとえば局方名で書くとか、書かないとかいうふうな実際の取扱い上の問題について、お医者さんと薬剤師さん側と双方で御相談をいただき、そのあっせんを役所で行うというふうな具体的な取り進め方をしなければならぬというふうに、実は考えておるわけであります。さようなことを考えておりますけれども、さようなことが先生の御質問の御趣旨であるかどうか自信がございませんけれども、かようなことを実は考えておる次第であります。
  250. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 医薬分業実施しなければならぬという一つの大きな理由は、申し上げるまでもなく、これは秘密診療というものをしない、処方せんを公開いたしまして、不正な診療をやめたい、あるいは水増し請求を防いだりというようなことも、一つの重要な意味であると考えておるのでありますが、しかし、今日不幸にして一部にあると考えられておりまする不正、不徳な医師の諸君の水増し請求というものが考えられると同時に、また資本主義の腐敗した時代でございますから、あまりに利潤追求に急になりまして、当然薬剤師側にもそういうことが考えられる。この点が、もし金の問題だけで済みますならば、けっこうでありますが、診療の根本から破壊してしまうということになりますと、これはもう全くおさまることのできない災いを残すわけであります。従って、この診療責任が二分されてしまって、もし医師の処方通り薬局調剤しないということになりますと、これはもう大へんなことになる。この点が、医薬分業における最大の心配である。これはほんとうにお互い考えなければならぬと思うのであります。これを何とか防ぐ方法はないかということは、常識から申しまして、ほんとうに至難なことでありまして、もっぱら薬剤師諸君の倫理的な、大きな精神にたよるほかないと考えられますけれども、何かここで工夫はないか。私ども考えることは、非常にむずかしい問題でありますから、専門の役所の方では、何かそこに特別な工夫がないか、その後そういう工夫ができておらないかという点を伺っておるわけであります。なければけっこうであります。
  251. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今のその保証をする方法でございます。これは長谷川先生も御存じと存じまして、私申し上げなかったのでありますが、昭和二十六年の医薬分業法というものの中に、新たにつけ加えられました一項がございます。それは「薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、財売又は授与の目的で調剤してはならない。」ということで、この規定が新たにつけ加わった。それでこのことは、医師の処方せんによらないで調剤をするというようなことも禁止をいたしまするし、また同時に、それを変えて調剤をいたしました場合にも、この規定の違反になるということに理解すべきものと存じます。なおこれは従来からある規定でございますが、それと関連をする規定として「薬剤師は、処方せん中疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の承諾がなければ、処方せんを変更し、又は修正してはならない。」という規定もございます。しかも、これらにつきましては、それぞれ罰則がついておりますので、一応法律的な保証はいたしてあるという建前になっております。しかしも、前者に申し上げました分は、二十六年の法律で新設された一項であります。
  252. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この問題が罰則やその他で防げるならばいいと思います。それならば、不正診療とか水増し請求ということは絶対ないと思いますが、医師の処方通りに確実に調剤ができるという見通しが十分ございませんならば、分業をするということは、よほど考えなければならぬ。先日もあるところで、医師の水増し請求は金の問題である、もし処方通り調剤をしないというようなことになって、分量を減らすとか薬を変えるとかいうことになれば、それは重大な問題だということを率直に言われましたが、私も全くそう思います。こういうことは、薬剤師諸君、医師諸君は、十分教養を持っている諸君でありますから、絶対にないということを、私もぜひ言いたいのでありますけれども、残念ながら今日水増し請求その他のことがあることをいかんともしがたい。やはり薬剤師諸君においても、これがないとは言えないと思う。どういう種類の行政処分であるか、種類は伺いませんでしたけれども、行政処分を受けた諸君も、昨年二十件くらいあるということでしたが、こういうことは当然あり得ることであります。この一部の不正をいたします諸君のために、正しい薬剤師諸君に迷惑をかけることは相済まぬことでありますし、法律を作りあるいは新しい制度にするということになれば、完全な方法を考えていかなければならぬ。だから、こういう点で何か工夫があるかないか。至難なことだと思いますが、何か新しい工夫が昨年以来当局でお考えになって進歩したものがあるかないか。その点を伺った方が、提案されましたこの改正案に対する私どもの態度をきめるのに、重要な要素になる。何かそこに新しい工夫があるのではないか。ただいま申しましたように、不正なことを防止する道がないといたしますならば、強制分業をするということは、よほど考えなければならぬ。私は、この分業をやって参りますためには、国民の選択権をうんと広げなければ、この不正を自動的に防ぐ道はほとんどなかろうというように自分では考えておるのでありますが、作か特別な方法をお考えになっていられるか、くどいようでありますがお尋ねをいたします。非常に重要な点でありますので、伺います。
  253. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 一応法律的な保証があっても、それは一口にいえば、悪いことをする者もおるであろうという長谷川先生の御指摘でございまして、これは一応私も納得できないこともないのでありまして、どこの世界にも、悪いことをする者がおるわけでございますけれども、しかし、それは結局薬剤師制度の根本に触れる問題であります。それを防止いたしますような名案というものは、これはなかなかむずかしいことであろうと存じます。結局それを疑ってかかるならば、薬剤師というものを疑い、薬剤師制度自体を疑ってかかるよりほか、ないということに相なるかと思うのでございます。従いまして、長谷川先生の、何か具体案を考えたかということにつきましては、私ども何かいい方法があるだろうかということを、工夫はいたしておりますけれども、結局はそれを的確に防止できるという名案というものは、今のところ思いついておりません。制度自体の問題であろう。  ただ私は、この際申し上げたいと思いますことは、法制的に見ましても薬剤師制度というものは調剤をその本職、原則的な仕事、責務といたしまして、国が認め、また要請されてきた制度でございます。従いまして、薬剤師さんたちは、分業になることを御存じのように希望しておられますので、自分たちの希望に沿った制度になりました場合に、さようなことが行われて、そうしてこの制度の信用を害するというふうなことに相なりましては、これは薬剤師さんたちの希望にも沿わないことにもなりますので、私はおそらくさようなことは行われないもの、こう考える次第でございます。
  254. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 局長のお気持はわかりましたが、いずれにいたしましてもこれは非常に重大な問題で、薬剤師諸君と医師諸君とが同じ経済の中で働くという病院というようなものでありますれば、これは問題はないわけであります。突っ込んで参りますと、開業医の旧問題、あるいは開局薬剤師の制度、またそれらにつながります資本主義社会の制度自体の大きな問題となって参りますが、今日までの薬務局の大体の御意向がわかりましたから、この点はその程どにいたして差し控えておきます。  それから、もう一つ伺っておきたいことは、これは医務局長の御管轄のことでありますが、昨年も医務局長から伺ったことであります。医薬分業をして参りますときに、薬剤師薬局で出します薬の値段、それから診療所で出します薬の値段、これがB価、C価というようなことで新医療費体系に出ておったと思います。この差額は二割くらいであったかと思いますが、どうでありますか。
  255. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 昨年の新医療費体系、ことにこの保険の方に翻訳されましたあの体系におきましては、大体一割くらい薬局購入します値段の方が安いのじゃないかというふうな観点から、薬局調剤をしました場合には、薬の原価だけにつきましては一割方安くなるというふうなしかけであの点数が作ってございます。その当時には、一体どのくらい違うかということの調査がしてございませんでしたので、わかりませんで、さようなことをいたしたのでございますが、先般の薬価調査——これはまだすっかり集計ができておらないのでございますが、先般の薬価調査は、従来と変りまして、その差というものを調査いたしました。これは正確な資料ではございません。私が大体その調査から口頭で報告を受けておりますことは、平均的に見まして、六%ぐらい違うというふうなことを聞いております。この数字は、またすっかり固まりましてから、別にお話を申し上げる機会があるかと思っております。
  256. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほども申しましたように、私は分業をやるとすれば、もうできるだけ国民の選択権を広げる、医師からもらうか、薬剤師からもらうかというその選択権を、できるだけ広げるということが、分業の成否を決する点だと思うのであります。そこで、先ほど来のお話を承わっておりますと、やはり処方せんは診察料の中に含んでいるものと見て無料にするということを、医務局長の御答弁の中に伺ったのでありまして、やはり昨年のその方針を、今なお貫いていられるように伺ったのでありますが、これは無料になりますと、どうしても医師としては処方せんを出しにくくなる、できるだけ出さないようにする。だから、薬を持っていきますかということに先に話がなる、こう思うのであります。同時に、処方せんを出す出さぬということを御心配になっておりますように、処方せんが非常に多くなってくるということで、非常に困ったことになるということにもなってくるということは、考えらわれるけです。しかし、私は先ほどから申しますように、この分業の成否を決しますのは、国民の選択権をどこまで広げられるかということ。その選択権を広げるという基礎といたしまして、結局薬局から薬をもらいましても、あるいは診療所の医師から薬をもらいましても、患者にとりましては、同じ経済的な条件のもとにあるということを作っておくことが必要だと思うのです。そうなりますと、今の約六%のB価、C価ということで表わせるかどうか存じませんが、この差額、これを勘案いたしまして、処方せん代とするということが一つ考えじゃないかと思うのであります。そうしますと、医師から、もし処方せんだけをもらって参りますと、診察料のほかに処方せん料患者の方は払うわけであります。そうしてその処方せん料と六%安い薬局へ行って買うことによって、結局診療所から薬をもらうときと同じ値段になるということになるのでありますが、こういう考え方はできないものでしょうか。医務局長さんのお考えを伺っておきたいと思います。
  257. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私ども前にも御説明申し上げましたように、この処方せん料というものを、無視いたしておるのではないのでございまして、処方せん料というものと診察料というものを分けることが、かなり困難である。それからこの処方せん料というものを狭く限って計算いたしますれば、これは一点以下というような紙代、インク代あるいはそれを書く数分の時間というようなものになってくる。これは一緒に支払いをするということが便宜でもあり、またそれに先生の今おっしゃいましたように、処方せんだけをたくさん出した場合に、それだけ収入がふえるというようなことも、この診療報酬の公正を期するというような意味から、いかがというような考慮も入りまして、これは一緒に支払う方法がよいのではないかというふうに考えたのでありますが、しかし、これは再々皆様方からも御意見として伺っておりますように、患者の今までの慣習というようなもの、あるいはまたさようにいたしますと、事実投薬をした方がいい——処方をやった方がいいというようなものまでも、まあこれくらいのもあならば処方を出さずともいいというような工合に、今度は逆の方に作用が現われはせぬかというような懸念もございます。こういうような点を考えますれば、あるいはその処方せん料というものを、わずかでもいいが立ててみたらどうかということは、これは私どもとしても検討を要する問題である、その利害得失をよくいろいろな立場から検討をしてみたいというふうに考えております。しかし、私ども率直に申し上げますれば、検討すると申しましても、基本になる考え方は、狭い意味での処方せん料と、それから狭い意味での診察料というものを別々に計算いたしまして、これを合せて支払うか、あるいは別個にするかということだけでございまして、その限りにおいては、医師収入が特別にふえるということも考えず、また患者の方からも余分なものを支払うというととは考えておらないわけであります。しかしながら、この際に医師に対して、分業を機会として多少プラス・アルファをつけてもいいじゃないかという議論は、これは別個に立つのであります。ほかからというと、言葉は悪いかもしれませんけれども、その経費を何とかしぼり出す余地があるならば、多少ふやしてもいいじゃないかというようなことは、これは医師に対しても、あるいは薬剤師に対しても、あるいは患者の受けます便宜としての医療費の軽減というふうな、いずれにかそれを幾分ずつでも分けるということは、これは検討の余地のあるものと思っております。今後十分私ども考慮いたして参りたいと思います。
  258. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほど伺いました医師及び薬剤師の昨年度の行政処分を受けました方々の、その行政処分を受けた理由が、今おわかりになるでしょうか。おわかりにならなければ、明日の午後までにお調べになって教えていただくと大へん好都合ですが、それも、できなければ、しいてとは申しません。参考までに一つお伺いいたします。
  259. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師法関係といたしましては、麻薬法違反、それからいわゆる堕胎罪、かようなものが割合に多かったと思います。正確な数字は明日差し上げることにいたします。
  260. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 薬剤師の方につきましては、明日答えさせていただきたいと思います。
  261. 中村三之丞

    ○中村委員長 それではほかに御質問ございませか。  なければ、本案につきましての質疑は一応終了したものと認めるに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 中村三之丞

    ○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  明二十三日午前十時より理事会、十時半より委員会を開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会