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1955-07-18 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十八日(月曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       臼井 莊一君    小川 牟次君       亀山 孝一君    小島 徹三君       横井 太郎君    亘  四郎君       加藤鐐五郎君    小林  郁君       高橋  等君    中山 マサ君       野澤 清人君    八田 貞義君       岡本 隆一君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       八木 一男君    柳田 秀一君       堂森 芳夫君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 正示 啓次君         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚 生 技 官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         衆議院法制局参         事(第二部長) 鮫島 真男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 七月十六日  委員山本利壽辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  山本利壽君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員牧野良三君及び受田新吉辞任につき、そ  の補欠として横井太郎君及び田原春次君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法  律案内閣提出第六九号)日雇労働者健康保険  法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇三  号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (八木一男君外十四名提出衆法第一七号)  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正す  る法律の一部を改正する法律案三浦一雄君外  四十九名提出衆法第五二号)  駐留軍労務者健康保険問題     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず三浦一雄君外四十九名提出医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題となし質疑を続行いたします。野澤清人君。
  3. 野澤清人

    野澤委員 前回に引き続きまして質疑を続行いたします。前に処方せん義務発行除外例についてお尋ねいたしたのでありますが、さらにこの点についてお尋ねを申し上げたいのであります。  処方せん発行することを、医者立場からきらうということでありますが、これを抽象的でなしに、実際に即した考え方から御説明を願いたいと思います。
  4. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 これは先般御答弁申し上げたように、いろいろな病状によりまして、知らせることがいかぬということ、これが一番おもなる点であります。また具体的にというお話であれば、医師調剤を受ける者に処方せんを書くというととは、むだな骨を折らせるということからであります。御承知のごとく、処方せんには向うの名前を書いたり、生年月日を書いたり、薬の名を一々書き、分量も書き、使用期限が幾日か、そして医者住所氏名、いろいろな手続をしなければなりません。これは、そこで薬をもらうという者には、明らかに煩瑣な手続であると思うのであります。
  5. 野澤清人

    野澤委員 重ねてしつこく申し上げますが、医者が姓名を書き年令を書いて処分を書き上げなければならぬということの煩瑣ということは、診療ワク外の煩瑣だと思うのであります。これに対して、医者主観だけで煩項だ、から処方せんは書きたくない、こういう議論は成り立たないと思うのであります。この問題について、医薬関係審議会等においても相当論議もされ、さらに第十国会において分業法案が成立いたしますときにも、かなり突っ込んだ質疑応答があったようでありますが、こうした問題について、ただ概念的に煩瑣だから書きたくないのだということでは、理由にならぬと思うのであります。何らかこれに対して、はっきりした根拠が浮ばなければならぬと思うのでありますが、この点、お伺いします。
  6. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私の答弁の仕方が悪かったかもしれませんが、これは私が申さなくても、野澤君はよく御承知のことであろうと思いますが、一例を申し上げますれば、たとえば、私ども病院診察をいたします。そして何十人という入院患者を見て歩きますが、一々処方を変えなければならぬ場合がございまして、その場合、ただいまの例によりますれば、助手に向ってこれこれの薬をこうしろということを言うわけでありますが、これを朝の一時間の間に何十人の患者に一々処方せんを書いて見せるというようなことは、煩瑣過ぎると思います。ただ形式的にそれを取るということは、この一例をもってしても、これは容易ならざる煩項であって、無用なことであると私どもは信じております。あなたの方から言えば、無用じゃない、大いに有用であるとおっしゃるでありましょうが、それは見解相違と申さなければならぬのであります。とにかく私どもは煩瑣であって、その結果はどうかと申しますれば、やはり患者の負担が軽くなるという理由は少しもなかろうと思うのであります。
  7. 野澤清人

    野澤委員 加藤先生こんにゃく問答を聞いておっても、はっきりしませんから、大石君の方にお伺いします。  それでは具体的に、どういう場合に不必要と思われるのか、この点をはっきりしていただかないと、国民大衆は、医者主観によって処方せんは出したくないのだ、出したくない理由には相当根拠があるのだという想像をたくましゅうすれる憂いがあるので、お医者さんにとって、まことにお気の毒だと思いますので、この際はっきりした態度を表明していただきたい。
  8. 大石武一

    大石委員 ただいまの野澤さんの御意見は、まことにごもっともであります。以前にも申し上げました通り、今度の法案では、処方せん発行することを別に拒否はいたしておりません。ただ患者の希望します場合に、処方せん発行しなくてもよいという除外例がございますが、これは別に処方せん発行することがいやだというわけではないのであります。なるほど、先ほど加藤提案者より言われましたように、事実一々処方せんを書くことは、非常に煩瑣な場合がございます。一例を申し上げますれば、大学病院の例でございますが、処方せん大学薬局へやっておる。とのような場合に、患者に一々書いて見せなければならぬ必要は私はないと思うのであります。書くことは、ほんとう手数でございまして、病院だけに通用する処方せんの書き方がございますが、それを患者に見せる場合には、それでは通用しませんから、一々日本語に書き直すなり、ほんとうにわかりやすいラテン語に直すことは、容易ならぬむだな手数でございます。それもありますし、それからもう一つ、これはまだきまったことではございませんが、私は処方せん発行する場合には、原則として処方せん料を取ることが妥当であると考えております。これからの近代的な感覚からいえば、とにかく人は働いただけの報酬をもらうことが正しいと思います。従って、処方せんを書く場合には、当然処方せん料を取ることが、私は一番新しいやり方ではないか、こう考えるのでございまして、別に、その医者から薬をもらう場合に、わざわざ二重の処方せん料を払って処方せんをもらう必要もなかろう。もちろん、患者処方せんを出すことは義務でございますが、患者が特にその医者から薬をもらう場合には、処方せんを出さなくてもいいということにした方が、むだな費用が省けるだろう、とのような気持であります。
  9. 野澤清人

    野澤委員 何べん問答しても、納得のいく御返事が出ませんので、一応保留しておきましょう。保留しておきますが、今、大石君のお言葉では、処方せん発行することは医者診察義務である、こういうことをおっしゃられておる。義務であるならば、多少煩瑣であっても、これは行うのが建前だと思うのです。それを単に医者が事務的に煩瑣であるという理由でこれを拒否するということは、当らないと思うのです。この点に関して、あくまでも加藤先生大石先生も、これは医者が不便だから、また厄介だから書かないのだ、こういうことを主張されていますが、大学病院あたりに行けば、たとい院内処方というものであっても、一々書いておる実情です。書き得ないというのは、むしろ開業医の場合において、多少煩瑣であるということが言い得るかもしれませんが、この煩瑣ということだけで、もし世の中の事柄が解決するならば、たとえば、物品を売りまして領収書を出すのも煩瑣であり、レストランで料理を幾種類も食べて、その料理の単価を書いて金を取ることも煩瑣であります。そういう主観的な煩瑣によって、国の規定というものがあいまいに曲げられていくことは、国民の感情としても、国家制度としても、これは絶対に避けなければならぬことだと思うのです。  そこでお尋ね申し上げたいととは、私が前回秘密治療ということを申し上げて、そういうことは知らぬということをおっしゃられましたが、秘密治療の反語である医療内容の公開に対して、きわめて不親切であると私は思うのであります。なお医者自身として、自分患者診察した上に、その患者はこれこれの経過をたどっておるからというので投薬する内容一般患者に示しても、何ら差しつかえないと思うのであります。その処方せんを一応発行しておいて、それを患者に持たせて、その上で患者がどこから薬をもらうかということをこの前の国会できめられた。これが最も合理的であり・民主的だという見解のもとにそうきめられた。従って、薬事法の中にこれを入れているものを、さらに逆戻りするように医師法の中にこれを舞い戻らした、ここには相当の故意または作為が働いておると思われるのです。それは、単にめんどうだからという理由だけでは、せっかく第十国会であれだけの騒ぎをしてきめられた議員諸君の面子もゼロになるし、国会の権威も失墜することになるのではないかと思うのであります。極論するようでありますが、私は、むしろこの医薬分業ということを、あなた方が絶対に拒否するという精神ならば、それはわかりますけれども、この間加藤先生大石先生も、医薬分業を暫定的に推進する意味においてということで今度の改正案を出された、こういうことでありますと、医薬分業に対する理解が那辺にあるかわからないわけであります。従って、処方せん発行することが厄介なのではなくて、発行するのが当りまえなのでありますから、当りまえの場合に対して、これをどうしても患者治療支障がある、あるいはまた医者治療方針をきめる上においても不行き届きがあるからという理由除外例を設けるというのなら、意味があると思います。この点に関しては、医薬関係審議会で一年以上ももみにもんで、どんどん今成案を作っておる、これまで御破算にしようという考え方には、相当作為がなければならぬ。作為根拠は何かというと、医者自体は、自分技術を公開することをきらっている。たとえば、一人の患者処方せんを渡す、これが町の薬局に行き、二回、三回と続いていくうちには、その医者技術内容国民に暴露される。従ってその医師技術内容に対する大きな恐怖観念から・処方せん発行ということに対して、あらゆるもっともらしい理由をつけて拒否される理由があると思うのであります。こうした事柄を今後とも続けていくということであれば、日本国民ほど不幸なものはない。従って、との提案理由説明にありますように、国民患者立場から立案したというものの、その第一ページからして、すでに国民の意思をじゅうりんして、しかも国家の新しい制度に対する撹乱方策をするものと考えられますが、この点どういうふうに御弁明になりますか、お伺いいたします。
  10. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。ただいまの野澤委員のお考えには、少し誤解があるように思いますので、それをお答えいたしたいと思います。私どもは、処方せん発行を拒否いたしてはおりません。処方せん発行することを前提として、との制度を認めておるのでございます。だだ、先ほども申し上げましたように、野澤委員の申されましたように、除外例においてのみ処方せんは出さなくてもよかろう。もちろんその場合にも、患者処方せんをほしいと言えば、必ず出すのであります。決して処方せんを出すととは除外いたしておりません。  それから、医者がその処方せん発行することによって、医者技術内容が暴露して、医者信用を失墜するのをおそれて処方せん発行しないのだということでございますけれども処方せんを書くというととは、これは医者技術の一端でございます、全部ではございません。その前に診断をし、その他の治療をすることも、たくさん重大な問題がございますので、これはもちろんその手当の一部でございまして、決して処方せんだけが医者の技、町内容の全部ではございません。またかりに、処方せん発行して薬剤師に二回、三回いきました場合に、一体だれがその医者技術を批判するのでございますか、薬剤師医者技術はわからないはずでございます。医者薬剤師の薬の作用と薬量、そういうととはわかりますけれども、その病気診断がどのような診断であり、どのような病気進行状態であり、どのような治療を要するかということは、薬剤師はわからないはずであります。そういうことがわかったら、私は不思議だと思います。従いまして、幾ら処方せん薬剤師発行しましても、それによって医者技術内容が暴露されて、医者信用を失墜するということは、私には考えられないことでありまして、これは少し思い過ごしではなかろうかと思う次第であります。繰り言ではございませんが、私は処方せん発行するのを、決して拒否してはおりません。この法案の一番大きな前提は、医者患者診療して、投薬することが必要であると認めた場合には、必ず処方せん発行しなければならないと第一番に規定してございます。   〔委員長退席中川委員長代理着席〕 ただその患者が、医者から薬をもらいたいと言った場合に、あるいはどうしても処方せん発行することが患者治療上不都合な場合にだけは、処方せん発行しなくてもよい建前になっております。それでも患者が、医者から処方せんをもらいたいと言えば、これは出さなければならないのでございますから、別に処方せん発行することを拒否しているのではございませんので、一つ誤解のないように御了解願いたいと思います。
  11. 野澤清人

    野澤委員 大石さんの説明を聞くと、もっともらしく聞えるのですが、医薬分業に対して、医師診察をし薬剤師調剤をするということは、明治六年の太政官布告以来、一貫した日本医薬制度を確立する上においての考え方であります。そうした考え方によって、一方は医学教育をし、薬学教育を発展させていく、しかも五万有余の薬剤師が今日完成しております社会情勢から見ると、当然一方は医学の真髄をきわめ、一方は薬学をおさめた者が社会的に両立している。こういう現況から見れば、当然調剤分離ということが考えられなければならない。調剤分離ということを考え前提としては、本質的なもの以外に付帯する大きな条件としては、処方せんがどれだけ出るかということだろうと思うのであります。従ってあなたの言われるように、今度の改正案の二十二条というものは一応は原則的には処方せんを出すということを示しております。しかし「ただし、次に掲げる場合においては、この限りでない。」というただし書きでありますが、「一 患者又は現にその看護に当っている者が特にその医師から薬剤交付を受けることを希望する旨を申し出た場合」「二処方せん交付するととが患者治療上特に支障があると認める場合」、この二つの場合を取り上げてあるのであります。第三者考えますと、きわめて妥当な項目のように考えられますが、これは基本法でありますところの第一項の精神を九割九分まで破壊する文案でありまして、これをしますというと、患者診察したお医者さんというものは、処方せん原則的に出さなくていいのだ、こういう結論に到達するわけであります。そこで第十国会では、こうした法律はむしろ薬事法の方にというので、一応処方せんをもらってから、どちらから薬品をもらうかという自由選択権を、処方せんを握った上で与える。これでも一般には、完全分業ではなくて任意分業であるといわれるまでの議論が起きておるのであります。こういう経過から見て、今度のこの改正案を出された精神というものは、全く医薬分業考え方精神を、そのまま踏みにじるような行き方であるというように考えられるわけであります。  そこで、医務局長が見えられましたから、第十国会において論議された当時から、さらにまた昨年の医薬関係審議会等において述べられました処方せん義務発行に対する除外例について、どういう話し合いがあったか、これを一つお述べを願いたいと思うのであります。
  12. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この問題につきましては、いわゆる医薬関係審議会におきまして、いろいろと幾つかの意見が出、それを次第に調整して参っておるわけであります。御承知のように、まだこれが一通りまとまるという段階までは至っておらぬのであります。いかような意見が出て、それがどの程度にまとめ得るかということにつきましては、これは非常に重要な御質問でございまして、私、口頭であまりあやふやなことを申し上げてもいかぬと思いますので、医薬関係審議会の今までの記録等を参酌いたしまして、必要があれば資料として差し上げたいというふうに考えております。
  13. 野澤清人

    野澤委員 局長にお願いしておきますが、明日までに資料提出していただけますか。
  14. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 よろしゅうございます。
  15. 野澤清人

    野澤委員 幸い薬務局長医務局長と見えておられますので、この際一応政府立場に立たれておるお二人にお尋ね申し上げるのですが、分業法案の変形が、ここにこうして改正案として提出されましたけれども医師法改正案のこのただし書きの条項を、そのまま国会が受け入れるという段階になった場合には、分業精神は生きていくか、死ぬかという問題であります。率直にこの点をお伺いしたいと思います。
  16. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもとしましては今日いわゆる昭和二十六年の法律が明年の四月一日から施行されるものというふうに考えておるわけであります。その精神から参りますれば、今回御提出になりました新しい改正案でございますが、これはすでに皆さんも十分御承知とは存じますけれども、全く同じものであるというふうには考えられないのであります。すなわち、従来の二十六年の法律によりますれば、本人、患者または看護に当る者が薬剤調剤医師に求めようと、薬局に求めようと、一応処方せん患者または看護に当る者に交付されなければならないということになっておるのでありますが、今回の改正案によりますれば、薬剤交付を希望するということを医師に申し出た者には、処方せんを渡す必要がないという、この点が一つ重大な相違であるというふうに考えておるのであります。私どもは、二十六年の法律建前に立ちます限りは、これは少からぬ大きな変更であるというふうに考ておるわけであります。
  17. 野澤清人

    野澤委員 少からざる大きな変更であるといいますが、医薬分業に対して、いい方に少からず変更になっておるのですか、逆行するような悪い方に変更になっておるとお考えですか。
  18. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私ども再々申し上げますように、二十六年の法律立場に立つ限り、一応処方せん患者に渡しまして、そして患者がその上で医師から調剤を求めようと、薬局から求めようと、これは全く自由に選択できるという建前が、今までとってきた方針でございます。それから参りますれば、今度の方針は幾分くずれてくるということになって参ります。
  19. 野澤清人

    野澤委員 薬務局長にちょっとお尋ねしますが、今医務局長の方では、幾分、ちょっと悪い方になるというような意味のことを言われて、相当の変革であると前に説明しておいて、ちょっぴり濁しておりますけれども、こういう態度が、今日まで医薬制度を誤まらしめた政府の優柔不断なる態度だと思うのです。そんなことでなしに、もう少しはっきりした見解を示してもらいたいと思うのです。これは非常に重大な問題だと思います。しろうとの、いわゆる第三者議員諸君から考えますと、うらはらになっているから、何でもないように考えられますが、分業そのもの建前からいくと、大きな逆行であると私は考えておりますので、との点に対して薬務局長はどういう御見解を持っているか、あいまいなお返事じゃいけません、はっきりした御見解をお伺いたしたいと思うのです。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごく率直にお答えいたします。二十六年の法律が今回のような改正をいたされたと仮定いたしますと、処方せんの出方は非常に少くなる、これは自明の理だと思います。それからなお、国民の自由という立場からでございますが、私ども、二十六年の法律がとっておりまする処方せんを手にしてから、いずれで調剤してもらうかということを国民選択をいたすことが、今回の、処方せんをいただく前に薬剤交付を希望するかどうか、それによって処方せんをやるかやらないかということがきまるという制度よりは、国民にとってはより自由だと考えております。
  21. 野澤清人

    野澤委員 大体今度の改正案というものは、医師法ただし書きにおいて、すでに分業法をむしろ破滅に導くような悪質な改正案だというように私も考えておったのでありますが、政府の方方からも、法律二百四十四号からは逆行するというような御証言がありました。これは一つ提案者の方において、十分に御勘考を願いたいと思うのであります。  そこで、ついでに提案者のお二人の方々からは、医者診察をして、処方せんを出すのは厄介だから出したくないのだ、こういうことをるる申されておるのですが、診察に対して処方せんを書くというととは、医師主観だけで、厄介だから書かなくてよろしいという提案者理由というのは、何ら根拠がないと思う。この点、せっかくおいで願ったのですから、医務局長はどういうふうにお考えになられますか、御解説を願いたいと思います。
  22. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師診療に当ります場合に、できるだけむだな時間を省いて患者に対する実質的なサービスの時間にこれを振り向けるというととは必要なことだ、できるだけさような方向に進むべきだというふうには考えるのであります。しかしながら、ただいまの処方せんを作成するということにつきましては、原則としては、医師が愚考に投薬をいたします場合には、これはあくまでも従前からも処方せんは書くべきものたった、また現実に書いている方も非常に多い、また病院におきましては、必ずのように処方せんを一ぺん患者に渡して、患者薬局に持っていって薬剤をもらっているというような実情でありまして、医師としては処方せんを書くことが、少くとも望ましいことだというふうに考えております。
  23. 野澤清人

    野澤委員 加藤先生大石先生も、政府見解おわかりだと思いますので、一応念だけ押しておきます。  ついては、第二の問題として、この改正原案を見ますと、もちろん薬事法もそうでありますが、医師法刑事罰を除いたという点であります。五千円の罰金をきらってこれを行政罰にしたというような考え方からでありますが、こうした考え方根拠は、どういう点から御出発になっておりますか、お尋ねいたします。     〔中川委員長代理退席委員長着席
  24. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 その前に、政府答弁がありましたが、野澤君がお聞きになることは御自由でございますが、いわゆる二百四十四号は、来年の四月一日から実施される法案でありますがゆえに、事務官がよく言うととは当然でございまして、感想といたしましては、事務官としては当然過ぎるほど当然なことを答えたのでありまして、むしろお聞きになる方が、やぼとは失礼でございますが、やぼではなかろうか、こう思っておる次第でございます。私ども処方せんを出すことを拒否すると  いうのではないのでありまして、処方せんは出さねばならぬという原則を持っておるのであります。それがある疾病に対しては、これは控えた方がよかろう、そういう控えた方がよかろうというのに加えるのに、煩雑ということもあるのでございますがゆえに、率直にお答えいたした次第でございます。おそらく私は処方せんを出さないなんて者はいまだかつてなかろうと思います。何万人の中でございます、あるいはどういう心得違いの者がおるかもしれませんがかような罰則はほとんど用なきものでございます。処方せんだけでなく、ほかに医師法においては相当罰則があるのでございまして、こんなものはあってもなくても大した相違はないと思ってこれは省いた方がよかろう、こう思ったのでございます。
  25. 野澤清人

    野澤委員 加藤先生にお尋ねしたことは、そういう事柄じゃなかったのですが、どうも質問事項に答えられないで、ウナギ問答をしても始まらないと思いますから、大石君から一つ御回答を願います。
  26. 大石武一

    大石委員 いわゆる刑事罰を削ったというととは、医師法の中に、すでに医師がいろいろな不正なことをしたり、あるいは医者の名誉を汚すようなことをしたり、いろいろな悪いことをした場合には、営業の停止であるとか、あるいは免許状の剥奪であるとかいろいろな行政処分がありますから、それ以上にさらに悪いことをした場合に五千円の刑事罰を加えるということは、屋上屋を重ねる感じがいたします。前の行政処分だけで十分じゃないか。少くとも、行政処分は五千円の罰金よりは重いはずでありますから、これだけで十分であろうというところから、刑事罰を削ったわけであります。  それから、ちょっと政府委員答弁に間違いがあったような気がいたしますので、申しておきますが、先ほど、大学病院では、患者に一応処方せんを渡して薬局からもらっておるではないかというお話でありましたが、これは病院だけでなく、どの医者でも必ず処方せんを書くのであります。書いて、それを患者に持たせるなり、看護婦に持たせるなりして薬局に行って薬局から薬剤師調剤した薬をもらっておる。大学病院では処方せんを渡しておるではないかというお答えは、間違いだと思います。おそらく大学病院では符牒で書いてございますから、しろうとの患者が見て、その符牒がどのような薬であるわかるわけではございません。それは間違いだろうと思います。それから、そのような処方せんでいいならば、医者患者診察して投薬する場合、その患者処方せんを持たせて、それを自分病院薬局に持たせてやれば事足りるのでありまして、あの考えは、ちょっと間違いではないかと思いましたので、自分考えを申し上げておきます。
  27. 野澤清人

    野澤委員 処方せんの問題は、大体論理が合っていないのですから、幾ら問答をしてもケリがありません。どの患者にも処方せんをやっておるといいながら、めんどうだから発行したくないという。論理が全然尽されていないのですから、提案者はきわめて無知識であると私は断定いたします。  そこで、刑事罰の問題ですが、あなたは、行政罰で営業停止や免許状の取り消しという項目があるから、五千円の罰金は過重になるので必要はない、五千円の罰金よりも営業停止、免許状の取り消しという方が重いはずだということを説明をされております。それでは現在開業医の中で、こうした処罰を食っておる人が相当あるとお考えでございますか、この点お伺いいたします。
  28. 大石武一

    大石委員 私は詳しい統計は知りませんからわかりませんが、営業停止や免許状の取り消しは、さほど多くないと思います。
  29. 野澤清人

    野澤委員 さほど多くないと概念的にお考えなのか、今後相当多くなるという見通しをつけておられるのか。なぜこういうところにこだわりを持つかの気持がわからないので、お尋ねしておるわけです。刑事罰行政罰にかえるという根本の考え方が、刑事罰よりも行政罰の方が重いのだというお考えで、あなた方はこうしようというのか、軽いのだということでこうしようというのか、その根拠をお聞きしておるわけです。
  30. 大石武一

    大石委員 もちろん私は、刑法上でどちらが重いかわかりませんけれども、とにかく営業停止とか免許取り上げの方が実質的には五千円以下の罰金よりもつらいと思います。ですから、これだけでありますから、屋上屋を重ねる必要はないのではないか。近代的な国家は、なるべく人を罰する刑罰は少い方がいいと思うのであります。そういう意味で取ったのであります、他出息はございません。
  31. 野澤清人

    野澤委員 ここにもお医者さんの独善的な考え方が、巧みにひそんでおると思うのです。どういう不徳義なことをしても、自分たちは刑法には照らしてもらいたくない、行政罰で巧みにのがれたいのだ。現に保険監査等でひっかかりまして、取り消し処分等を食いますと、そのお医者さんは、あらゆる手を講じまして復権運動をいたしております。こういう人たちの心理状況を見ますと、世の中のため、社会のため、人命救助の大任に当っておるのだということを理由にして、盛んに要請されてくるのでありますが、大石君の今の説明を聞きますと、行政罰刑事罰とどっちが重いかわからぬということですが、そういうことになりますと、これは問題外だと思います。そんな考え法律を立案して、しかもこの暑いさなかに国会を惑わすという行為は、良識ある議員のやるべきことではないと私は考える。そこで、見解相違だと加藤先生から言われればそれまででありますが、その問題に対しましては、そういう事項を防止するのが目的血のか、あるいは続出してくる不徳漢を軽く処罰して同業者を救うという考えが基本なのか、その点をついておるのであります。それであなた自身は、どっちが重いか知らないで刑事罰行政罰にかえたのだ、こういうお話では、あなた自身のお考え方がこの法案を通じて何ら明らかにされておらないと思うわけです。もう一度あなた自身が、これは医者を守るための法律なのか、ほんとう国家制度として、そういう人たちを作らないように防止するための一つの刑罰なのか、こういうことについてのはっきりした御見解を承わりたいと思います。
  32. 大石武一

    大石委員 私、先ほどお答え申し上げましたように、これからの文化的な新しい国家というものは、できるだけ罰則の少いものにしたいと思うのでございます。そういう意味から申しまして、たとえば医者がよけいこれから犯罪を犯すかどうかということは、単に医者の仲間だけの問題ではなくて、国民全体のレベルの問題だと思います。国民全部の民度、教養が高まれば、そのような犯罪は少くなって参りますし、国民のレベル、民度が上らなければ、やはりその階級に相応した犯罪は必ず出るものだと思うのでございます。そのゆえにおきまして、国民の民度を高めるということが、世の中を文化的にする、楽しいものにする大きな前提だと考えております。ただ処罰だけで犯罪を防ごう、罪を防ごうという考え方は、私はあまり賛成できないのでありまして、この点は私の常識的な見地から、このような法案提出したわけでございます。
  33. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 今の野澤委員の質問に関連いたしまして、私の伺いたいと思いますのは、大石委員は、刑事罰をやめて行政罰一本にされる、こういう御説明をなさっておられますが、一体行政罰として医者にどういう罰を課せられますか。
  34. 大石武一

    大石委員 つまり営業の停止あるいは免許状の取り上げというか、そのような行政罰がございます。
  35. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それは行政処分ではありますけれども、それは一体罰でしょうか。
  36. 大石武一

    大石委員 そのほかにも、いろいろな場合、たとえば、処方せんを作らないで投薬をした場合には二年以下の懲役とか罰金というような刑罰があります。
  37. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それじゃ医務局長に伺いたいのですが、今の医師法によるところの医師の免状の取り上げとかあるいは一時免状の停止、こういうのは罰でございますか、それとも医師監督の必要に基く行政上の措置であって、罰と観念すべきものではないのですか、どちらですか。
  38. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私ども法律の専門家でございませんので、間違っておりましたら、ここに他の政府委員もおりますので訂正していただきますが、私どもは、行政処分はあくまでも処分であって、罰ではないというふうに考えております。
  39. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 大石君もお聞きのように、大石君は行政罰だといって、医師の免状の取り上げあるいは免状の停止というものを罰であるように御説明になっておられますが、ただいまの政府委員答弁によりますと、これは罰というべきものではないのであって、医師に対する行政監督上の一つの行政処分にすぎないのです。従って、大石君のこの原案によりまして、処方せん交付義務に違反した場合の刑罰というものをやめてしまうということになると、それは結局罰を課さない、こういうことになってしまうのです。これは大石君の考えておられる本来の考え方と、食い違ってくるのじゃないでしょうか、いかがでございましょう。
  40. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。私もどうも法律のことはよくわかりませんで、なるほど、今御指摘によりまして、初めてわかったような次第でして、赤面の至りでございますが、ただ、私が今言ったように、なるほど罰でないとおっしゃればその通りでございますかもしれませんが、実質的に医者にとっては痛い処分でございますので、これでも十分そのような医師の不正行為は防ぎ得ると考えたわけでございます。
  41. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 なるほど、それは処方せん義務に違反した場合に、行政官庁におかれまして、必ずそういう行政処分を信賞必罰的にされるということならばですけれども、これは大石君の言われるように、相当痛い制裁のききめがありますので、法律の予定しております義務を強制する結果になろうと思います。しかし、おそらく現在の厚生省の方針としましては、そうしたことについて、あらゆる場合に、ただそういう行為があったからといって、必ずこれらの行政処分をするというようなことは、やっておられないのじゃないかと思うのです。と申しますのは、医者の免状の取り上げとか、あるいは免状の停止ということになりますと、その医者が業務をすることができない。これは単に医者が困るばかりでなくして、その一地方にわずかの医師しかいないとか、あるいは十里の間に一人しか医者がいないとかいうような場合においては、その地方の住民から医者を取り上げる、あるいはある期間医者をなくしてしまうというような、非常に重大な社会的影響を伴うことになりますから、おそらく厚生当局としては、そういう場合においては、たといその行為が処罰に値する行為でありましても、免状の取り上げとか、あるいは停止というようなことは、そうした実際上社会的な影響を考慮した場合においては、必ず信賞必罰的にやるのだということはできないのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。そうなりますと、この罰則を全廃するということは、そういう状況のもとにある医者に対しては、ほとんど制裁的なものがなくなってしまうという結果になるのでございまして、これは非常に重大な問題になると思うのでございますが、この点について、重ねて承わることがあれば承わりたいと思います。
  42. 大石武一

    大石委員 全く大橋委員のお話の通りでございます。実際そうなる可能性が多いのでございます。これに反発するということは、ちょっとできないのでございましてなかなか困難でありますけれども、私は一応こう思うのであります。というのは、法律による罰におきましても、微罪とかあるいは情状酌量する場合が大ていで、初めは許してくれまして、しかったり、あるいは起訴猶予にしてくれたり、あるいは執行猶予ですか、いろいろなありがたい恩典がありまして、なるべく罪なく、一回のあやまちで今後はこれを犯さないという建前で、今の法律は行われていると思うのでございます。たとえば、医者のこのような行政処分にしても、おそらく一回で行政処分に付して営業を停止するとか、あるいは免許を取り上げるということは行われないと思います。しかし、とのような問題が取り上げられれば、非常に医者の不名誉でございます。やはりある程度面子を重んじ、名声とかいろいろ自分信用というものを考える以上は、こんなことが二へんも三べんもあったのでは、医者は非常に恥かしい思いをするでありましょうから、十分に今後の犯罪を予防することができると思いまして、このように考えたわけであります。
  43. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 今、大石君は犯罪予防と言われましたが、処方せんを出すべき場合に処方せんを出さないということは、犯罪なんですか、それとも犯罪ではないというお考えですか。
  44. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私も法律はしろうとでありまして、この問題は、いずれもう一応専門家と研究いたしましてお答えいたしたいと思います。
  45. 柳田秀一

    ○柳田委員 大橋前法務総裁からお話がありましたが、私思うのですが、なるほど世の中は社会秩序を維持する上において、やはり刑事罰というものは必要だ、刑法は確かに必要だ。しかし、刑法そのものは善か悪か、これを哲学的に考えてくると、私は刑法というものは、どんな場合でも悪だと思う。ただ社会秩序を維持するための必要悪だ、かように解釈している。そこで、今提案者にお尋ねしたいのですが、その処方せん発行問題に対する行政処分なり刑事罰という問題についてでありますが、根本的に医師の任務は何か、こう考えると、やはり国民あるいは人類の健康の保持、増進、確保、こういうところに任務があると思う。従って、そういう医師本来の任務に違反した場合には、やはり社会秩序の上からも刑事罰を課すなり、特に罰則を加えるのは当然だと思う。ただ・それが医師本来の任務に反しない場合——今いろいろと処方せんの問題もありますが、来年四月から施行される予定の法律におきましても、患者または現に看護に当っておる者から薬剤を希望すると申し出た場合は、やはり薬剤を渡す。こういうことになって参りますと、処方せんそのものの発行発行というようなことは、医師本来の任務から逸脱しておるかどうかというところに観点を持っていって考える必要があるのではねいか。従って、そういうような医師本来の任務そのものから逸脱しておらぬ——医師本来の任務というものは、処方せんの問題ではなく、国民及び人類の健康の確保だ。それから逸脱した場合は刑事罰だ。本来の任務に反しておる。しかし、本来の任務を逸脱しておらぬ場合は、いわゆる罰ではない、かように解釈してもいいのではないかというふうに考えるわけであります。従って、今ここで行政処分罰の問題があったが、そういうような観点から理論的にこれをお考えになって提出されたのですか。ただ行政罰の方が、実際的にはその医師にとっては非常な不名誉であり、精神的にも物質的にも事実痛い処分だ。しかし、さらに刑事罰が重いのだという比較論とか観念論でお考えになったのか。やはり本来そういう刑は刑法あるいは行政処分というような理論を十分に研究された上でお出しになったのか。それはどうかということを尋ねなければ、単に行政処分より刑事罰は軽いのだ、重いのだとか、医師に直接与える被害とか、そういうような常識論では、私は通用しないと思う。やはり法案提出される以上は、その法案提出されるときの理論的根拠というものがはっきりしていなければならぬのではないか、かように思うのです。いかような考えでお出しになったのですか、理論的な根拠一つお示し願いたい。
  46. 大石武一

    大石委員 御趣旨はよくわかりましたので、もう一ぺん理論的に研究して参りたいと思います。
  47. 野澤清人

    野澤委員 昔の言葉に、馬脚を現わすということがあるが、この提案者は、実際馬脚の方を頭に乗っけて出てしまったので、もう問答無益だと思うのです。ただ一つ、この罰則を削除するという考え方は、医者の基本的な人権を尊重するために罰則を取ろうとしてかかったものか、国民大衆を相手にして罰則を取ろうとしてかかったものか、この精神的な面についてお尋ねをいたします。簡明にお答えを願います。
  48. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。これはやはり医者の基本的な人権を尊重したいということが、大きな建前でございます。
  49. 野澤清人

    野澤委員 ここにも大きな矛盾が出まして、提案理由では、国民立場患者立場から改正案提出した、患者の便宜のためにこういう案を作ったのだという解説をされております。しかるに、ただいま聞いてみますと、最も重要なこうした罰則を削除する事柄について、自己本位の医師立場からこれを削除したのだという考え方は、大いに改めてもらう必要があるのではないか。おそらく国民の世論というものは、あなたのおっしゃることには納得しないと思う。  そこで、これは一つ医務局長にお尋ねいたしますが、行政処分を受けた場合と刑事罰を受けた場合と、医者そのものに対する影響でなしに、国民自体にとっての影響というものは、どういう差があるとお考えになりますか、一つお答えを願いたいと存じます。
  50. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 一応私ども考えておりますととは、先ほども大橋委員の御指摘にもあった点でございますが、刑事罰といたしまして、たとえば罰金を課せられたというような場合におきましては、診療はそのまま継続できるわけであります。それに対しまして、行政処分といたしましては、免許の取り消し、あるいは期間を定めての医業の停止というようなことができるわけでありますが、この処分をいたしますれば、多かれ少かれ医業を行うことを幾らかの期間停止されることになるのであります。地方によりましては、との処分は相当国民の医療に対して重大な支障を来たすおそれがある。にもかかわらず、非常に質の悪いと申しますか、間違った医療を施されるのでありますれば、これはなきに劣るわけでございまして、むしろさような点等も考えまして、軽々しく医業の停止ということは、やはり命じないというように私ども考えております。相当慎重にこれを取り扱いたいと考えております。
  51. 野澤清人

    野澤委員 前半の回答は、近来まれな名回答だと喜んでおりましたが、しまいの方がさっぱりばく然としてわからぬ。これが厚生官僚の本質的な答弁の仕方だと私は思うのです。私が特にお尋ねしたことは、行政処分と刑事罰との差異についての、国民立場からの正当な批判の根拠というものが必ずなければならぬと思う。それは、一つの町に二軒の医者があった、あるいは一軒しか医者がなかった。そして、たとえばその医者が半月なり一カ月なり業務停止を命ぜられたらば、そこの住民はどうなるかということであります。その土地の人は全然医療が受けられないという非運に到達するわけでありますから、そうした面についての国民立場からお出しになったというならば、これは一応論拠として立つわけであります。ところが、五千円くらいの罰金では、現在のお医者さんのふところからすれば、大したものではないと思う。その五千円の罰金を課せられても診療ができるとすれば、国民立場というものは、当然これは救われるという考え方に到達する。そういう点から、最初に、との改正案国民患者立場から立案したというあなた方の根拠というものは、全くくつがえってしまう。むしろ単に医師の身分を擁護するために手前勝手な立案をして、罰金刑に処せられたのでは世間体が工合が悪い、営業停止や免許の取り消しというのは、よう厚生官僚もやらぬだろう、また地方の官吏も、そういう不届きなことは医者に対してはやらぬだろうという封建的な特権的な考え方というものが浸透しておって、そのままここに馬脚を現わしてきたものと思われるのでありますが、そうした法的根拠、あるいは理論的な根拠については、全然検討をしてないようでありますから、今晩寝ずに一つ勉強していただいて、明日でけっこうでありますから、ゆっくりこの点御回答を願いたいと思うのであります。  ただ、医務局長が前半まで説明されたことは、非常にけっこうなことで、このくらいはっきりした答弁はないと思って、私ひそかに喜んだが、末尾がさっぱりわけがわからぬ。こういううやむやなところに、分業七十年もの闘争丸。繰り返さなければならない医師の悪質な論拠がひそんでいると思うのであります。どうかこうした面について十分再検討をされ、答弁をされる際には、はっきりした御答弁を願いたい。  そこで、こうした罰が実際に行われるかどうかということについての私の見解であります。少くとも現在の医者考え方というものは、おそらくこうした処罰者はきわめて少いのじゃないかという感じがいたします。けれども、実際面に当ってみますと、少いと想定しておりながら、かなりの方が浮んでくる。これは保険の監査面からごらんになりますと、よくわかることであります。そこで保険局長にお尋ねするのでありますが、今日まで、保険医の監査をされた場合の資料提出していただくように、この前お願いしてありますが、いまだにそれが出ておりません。またパーセンテージについても、全然出ておらないのであります。社会保険医療担当者として指定取り消し処分を受けたいわゆる事故内容調べというものも、昭和二十八、二十九の二年度についての詳細な資料が厚生省にあるはずであります。これを明日までに一つ委員会に御提出を願いたい。それによって、各委員の方の公正な批判のもとに、今後の医療関係の法律に対して、果してこうした刑事罰等が必要であるがないかということの論拠を求めようとするものであります。どうかこうした点について、政府の方でも極力御協力を願って、これらの資料提出していただく、同時にまた大石君の方でも、この論拠については、十分御検討を願いたいと存じます。何かこれに対して御回答または御意見があればこの際承わりますが、なければ、次に続行いたします。
  52. 大石武一

    大石委員 一言お答え申し上げます。私どもは、国会議員としての立場からこの提案をいたしたのでございまして、医者立場からという見方をなさらないようにお願いいたします。  それから先ほど、医者刑事罰をなくしたのは、医者の人権尊重の立場からであると申し上げましたが、その通りであります。医者国民の一人でございますので、十万の国民の人権は当然尊重しなければならぬと考えております。  それから、なぜ医者の人権を尊重したかといえば、これはそれ以外の国民大衆には、私は大した影響はないと思います。そのような、しょっちゅう刑事罰なり、あるいは行政処分なりあるような医者は、私はむしろない方がいいと思う。それはどの社会におきましても、ピンからキリまでございます。くずというものはできるだけ淘汰された方がいいと思います。しょっちゅうとのような刑事罰なりあるいは行政処分を受けるような者は、やはりそれは当然医者としての資格がないと思う。そういうわけでございますから、たといその町に一人しか医者がなくてその医者が行政処分にあって営業が停止さ率としても、町民の方ではこのような悪徳医師治療は受けたがらないと思います。幾らでも考え方はあると思いますが、これが私のこの条項に対する考え方であります。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長にちょっとお尋ねいたしますが、医師調剤能力があるとお認めになるかどうか。先にそれをちょっと質問して、そのあと関連質問いたしますが、これを一つ
  54. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医師にも、ある程度の調剤能力はございます。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 ある程度でけっこうだと思います、調剤能力がある。調剤能力がある人が調剤をして、反社会的な害というものが患者に及ぶかどうか。
  56. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 調剤能力のある医師調剤するということ、それ自身は、患者に特別な支障はございません。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 反社会的な害というものは起ってこないということを確認できました。  それから、罰金刑に処せられた、いわゆる刑罰を受けた者は、医師法の七条ないし四条に関連をして行政処分を受けられると自分考えておるが、その関連はどうか。
  58. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 刑事罰を受けました場合、すべて行政処分を受けるとは限りませんけれども、今までの実情によりますと、その罰の種類によると思うのでありまして、今申し上げました通り、行政処分を受けることもあり、受けないとともあるという状況になっております。
  59. 野澤清人

    野澤委員 次に提案者に、薬事法改正原案についてであります。第二十二条「調剤師、医師、歯科医師及び獣医師でない者は販売又は授与の目的で調剤してはならない。」こういう新しい画期的な文案が生まれて出てきたのでありますが、これをお出しになった理由と、その根拠とをお示し願いたいと存じます。
  60. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。ただいま滝井委員から質問がありまして、医務局長答弁されましたように、私は医者にも調剤能力があると考えますので、当然この条項は妥当であると考えた次第でございます。
  61. 野澤清人

    野澤委員 重ねて大石君にお尋ねしますが、日本の医制がしかれてから、いまだかつてこの調剤の問題について、医師薬剤師、歯科医師等が同列に扱われたことは皆無なんであります。日本の国で医薬制度をしきましてから以後というもの、こうした画期的な考え方では、今まで全然法制化されておらないのでありますが、ここでこうした思い切った事柄をされたというととは、どういう根拠からでありますか。
  62. 大石武一

    大石委員 その長い間の歴史はさておきまして、私はこの方が——どうせ医者患者に投薬する場合がございますから、そのような場合には、患者に何らの不安も与えないように、当然医者調剤し得る能力があるということを明記した方が妥当であると考えております。  もう一つ、ただし、この第二十二条は、第二十五条の二の条項と関連して考えなければならぬ問題と思いますので、その通りお願いいたします。
  63. 野澤清人

    野澤委員 歴史的なことは論外だということでありますが、お調べになる煩瑣を防ぐために、大石さんに一応私の方の調査事項だけを申し上げましよう。太政官布告が出たのが明治六年の六月一日であります。これで初めて医者というものの始まりがありまして、明治八年の五月十四日に医制がしかれたわけであります。その医制の第二十一条には、「医師タル者ハ自ラ薬ヲ鬻クコトヲ禁ス」これが第一項であります。第二項には「医師処方書ヲ病家ニ附与シ相当診察料ヲ受クベシ」これが医制の第二十一条であります。明治八年であります。それから明治二十二年の三月十五日に法律第十号をもつて、薬品常業竝薬品取扱規則というものが公布されております。その第一条に「薬剤師トハ薬局ヲ開設シ医師処方ニ拠リ薬剤ヲ調合スル者ヲ云フ」、二項に「薬剤師ハ薬品ノ製造及販売ヲ為スコトヲ得」、そうしてその取扱規則の法律第十号の附則第四十三条に、「医師ハ自ラ診療スル患者処方ニ限リ第二十六条第二十七条第二十九条二従ヒ自宅ニ於テ薬剤ヲ調合シ販売授与スルコトヲ得」「医師ハ第三十四条二従ヒ医師タルノ証明書ヲ以テ薬剤師薬種商製薬者ヨリ毒薬劇薬ヲ買取ルコトヲ得」としてあります。さらに大正十四年四月十三日、法律第十四号によりまして薬剤師法が制定された。その第一条に「薬剤師トハ医師、歯科医師又ハ獣医ノ処方箋ニ依リ調剤ヲ為ス者ヲ謂フ」と規定してあります。第二項には「薬剤師ハ薬品ノ製造及販売ヲ為スコトヲ得」、その第五条に「薬剤師ニ非サレハ販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為スコトヲ得ス」、とれが原則論であります。「薬剤師販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為ス場合ニ於テハ薬局ニ於テ之ヲ行フヘシ」、ただし、この薬剤師法の附則にも第三項として「医師、歯科医師又ハ獣医ハ其ノ診療ニ用フヘキ薬品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第五条第一項ノ規定ニ拘ラス調剤ヲ為スコトヲ得」と規定してあります。それから昭和十七年の十月三十日厚生省令第四十八号で、国民医療法施行規則の第三十二条に「医師又ハ歯科医師患者ヨリ薬剤交付ニ代ヘ処方箋ノ需アル場合ニ於テ其ノ診療支障ナキトキハ之ヲ交付スルコトヲ要ス」、こう規定されております。また明治三十九年の九月内務省令第二十七号、医師法施行規則というものが公布されておりまして、昭和八年の十月に改正されておりますが、第九条の二には「医師患者ヨリ薬剤交付二代へ処方箋ノ交付ノ需アル場合ニ於テ其ノ診療支障ナキトキハ之ヲ交付スルコトヲ要ス」としてあります。また昭和十八年三月十二日・法律第四十八号で公布されました薬事法の第二条に「薬剤師調剤、医薬品ノ供給其ノ他薬事衛生ヲ掌リ、国民体力ノ向上ニ寄与スルヲ以テ7一本分トス」、第十五条「薬剤師二非サレハ販売又ハ授与ノ目的ヲ以テ調剤ヲ為スコトヲ得ス」、この薬事法の附則の四十七条に「医師、歯科医師又ハ獣医師ハ其ノ診療ニ用フヘキ医薬品ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依り第十五条ノ規定ニ拘ラス調剤ヲ為スコトヲ得」、こういうふうに規定をしております。  この歴史的な経過から判断いたしましても、調剤行為というものは、初めから薬剤師のいわゆる本則的な行為でありまして、これがいまだかつて医師あるいは歯科医師と同列に待遇されたことはないのであります。こうした立法の精神あるいは経過から判断いたしまして、今回のあなた方の提案された改正案というものは、全く医薬制度に対する革命的、あるいは暴力的な行為であると解釈されるのでありますが、との点に関して、どうしても同列でなければ調剤権がなすというお考えでありますか、それとも法律二百四十四号の第二項の規定によって、みずから診察したものには調剤できるということが、調剤権を認定したとお考えになりますか、この点をお伺いいたします。
  64. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 ごく概括的に、私からお答えいたしたいと思います。太政官布告のその昔のいろいろなお話が、ございましたが、一応歴史的に見れば、さようにも思えますけれども、私は太政官布告当時——明治八年とか、ただいま仰せになりましたが、これはただ外国の制度をそのまま申しただけのことでございまして、これは長与専斉氏が当時少しくしくじったというようなことを言ったことも私は見ておるのであります。ただ模倣制度をやっただけであります。その後、先般も申しましたように、だんだん文化も進み、複雑になりますれば、これはだんだん分れてくるのが本質でありますけれども国民のいろいろな慣習、いろいろな情勢によりまして、それが自然に発達すべきものは発達いたしますが、法律だけをもって、むやみに理論だけでこうしろということには、世の中のことは参らないと私は思います。たとえば、せびろも、だれも法律でもって着よと命じたものはございませんが、これが便利でありますれば、はかまから、羽織から自然にこうなるのでありまして、ただいまのような法律が、たとい外国の制度でどうでありましょうとも、それがわが国の実情に適し、国民の福利すべての点に適しましたならば、そう行くのでございます。原則論は別として、過去七十年とか何十年間かれこれしてまだ結論が出ぬというのは、これは実情に即せざるものでありまして、私どもは、理論は理論として尊重しますけれども、政治家は実情を見なければならぬと思うのであります。しかして今回の改正案といたしましても、原則としてはこう行かなければならない、こう申しておりますがゆえに、理論としては少しもそこには矛盾しておらないと、こう思う次第であります。
  65. 野澤清人

    野澤委員 大分おなかがすいて承りましたから、もう一点だけで午後に譲りたいと思います。  非常に高邁な加藤先生の御意見を聞いておると、誉わめて斬新的な御意見だと善意に解釈いたしますけれども大石君にお若いところをお聞きしておきます。ここで医師、歯科医師、獣医師と並べなければならないという考え方は、どういう考え方なのでありますか。その点同列に扱わなければならぬという理由を三つお尋ねいたしておきます。
  66. 大石武一

    大石委員 どうもこれは提案者が二人おりまして、私は非常なウィーク・ポイントのように見えますので、質問されてはなはだ恐縮であります。ただいまの御質問でございますが、医師、歯科医師並びに獣医師というのは・扱う場所並びに対象は多少違いますけれども、大体同じような業態でありますので、このように扱った方が無難であろうと考えまして、かようにいたした次第であります。
  67. 中村三之丞

    中村委員長 午前中はこの程度にとどめまして、午後は二時まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後二時四十三分開議
  68. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  この際お諮りいたします。八木一男君外十四名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、成規の手続をもって撤回の申し出がありますが、本案はすでに委員会の議題といたしました関係上、衆議院規則第三十六条によりまして委員会の許可を得なければなりませんが、これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、本案の撤回を許可するに決しました。
  70. 中村三之丞

    中村委員長 三浦一雄君外四十九名提出医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を続行いたします。  この際、大石提案者より発言を求められておりますから、これを許可いたします。大石君。
  71. 大石武一

    大石委員 午前中の質疑に対して、保留いたしました点について答弁申し上げます。  医師免許の取り消しまたは停止は、けさ医務局長答弁された通り、行政罰ではなくて、単なる行政処分でございます。従って本案は、処方せん交付義務に違反した医師に対しては、刑事罰行政罰を課することを廃止しようという趣旨でございます。処方せん交付は、罰をもって強制すべき事項ではなくて、医師としての職業道徳からいって当然のことでございますが、重き罰を課するのは不適当と考えまして、もしこれを強制する場合は、行政処分が適当だと考えたのでございます。従って、この改正案の趣旨は、処方せん交付義務の違反は、従来犯罪として刑罰の対象となっておったのでありますが、これを犯罪でなく、従って処罰されないことにしようという趣旨でございます。
  72. 中村三之丞

  73. 野澤清人

    野澤委員 午前に引き続きまして質問を継続いたします。  薬事法の第二十二条の改正案を見ますと、従来、薬剤師原則的に調剤権を負わされておったのでありますが、今回の改正案によりますと、医師、歯科医師さらに獣医師も同列に調剤権を付与しよう、こういう構想のもとに提案されたようであります。先刻提案者にお尋ねいたしましたところが、確たる御返答がないのであります。再度特に大石君にお尋ねいたしますけれども——決して加藤先生を忌避するわけではありませんが、従来の日本の立法の慣習というものが七、八十年も競っておるにもかかわらず、どういうわけでこれをあえて新たな構想につかれたが、その理論的な根拠、あるいはまた理由がありましたならば、詳細に御説明願いたいと思います。
  74. 大石武一

    大石委員 御承知の通り、調剤は、医者患者診察して、医者が作った処方せんについて行われるものでございます。その調剤の基礎となるべき処方の作成は、これは医者だけに認められておりまして、薬剤師には認められておりません。従いまして、処方を作る能力は、その患者のあらゆる生理作用なり病理作用なり、さらに薬剤の性能について、十分な専門的な知識なくしてはできないものでございます。体この調剤権を特定の者——今までは薬剤師でございましたが、特定の者に限って認めようというこの法の精神は、専門的な知識のない人の手による調剤の誤まりから生ずる危険を防止しようということにあると思うのでございます。従いまして、医者処方作成能力が認められ、調剤に関する専門的知識のあることが証明されておりますから、その医者調剤能力を否定するということは、調剤権に関する規定の建前からいって、おかしいと思うのでございます。ことに実際におきましても、新しい医師法二十二条の除外例から申しまして、当然医者調剤をするということがございますので、これに調剤権を認める。ただ薬剤師の職業というものがありますから、その職能を侵さないように、お互いの職分を守るようにという意味で、その調剤の権限をごく縮小して、医者診察をした、そして自分発行した処方せんだけに限るということに限定したわけでございます。これがこの精神でございます。
  75. 野澤清人

    野澤委員 ぼつぼつ迷論が出始めました。この処方せんの作成能力というものが医師にあることは間違いないですね。そこで、調剤能力というものが医者にあるという根拠をお示し願いたいと思います。
  76. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私からも一口言うことをお許し願いとうございます。医者は病人をなおす全責任を持っておるのでございますがゆえに、それは手術あるいは注射、いろいろなことがございますが、当然薬を調剤するということも治療一つでございまして、これは持つべきが本来でございますがゆえに、ここに明記いたしたのであります。実例を申しますと、助産婦というものは子を産まする一つの免許を持っております。医者は助産婦の免許を持っておりませんが、医者が助産婦をして悪いということはないのであります。私は法律のことは知りませんけれども、司法書士が訴状や何かを書いても悪いことはなかろうと思う。弁護士みずから筆をとってもよいし、これにまかせておいてもよいのでありまして、その助産婦の問題であります、看護婦の問題でありますが、医者看護をしてはならぬというごとはないのでありまして、この意味において、治療の全責任を持っておる医者調剤権を持つのは当然なことでありまして、これについて、かれこれ議論がありますので、ここに今度もう一つうたった、愚念を押したというにすぎぬのであります。
  77. 野澤清人

    野澤委員 どうも加藤先生を拒否するわけじゃないが、いつも観念論ばかりで非常に恐縮なんです。今の助産婦の問題は、上から考えていくと、確かにそういう議論はある程度まで容認せざるを得ないと思うのです。  それでは、加藤先生にお尋ねいたしますが、大廈高楼の建築をする設計技師が、この設計をしたからというて、れんが積みから壁塗りまでできるかどうかという問題です。ここに分業の本旨があると思うのです。設計技師に石を積ませ、セメントをこねさせ、壁を塗らせ、窓を置かせるというととは、おそらくでき得ないと思うのです。こういう点から見て、この調剤能力というものと処方作成能力というものには、おのずと限界があると思うのであります。そこで、こうした問題について加藤先生議論するのは、あまりにもおそれ多いから、大石君にお尋ねいたします。  調剤能力の限界とは、どこまでをさすのであるか、一応御説明を願います。
  78. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 加藤君にというお話もありましたので、一応ちょっと……。  私が今申したことは、抽象論ではございませんで、こういう問題は現実について話さなければならぬと思います。もちろん調剤の知識は、薬剤師の方がよくお持ちになるととは、これは認めます。治療の方面で、これが生理的にどう作用するかという問題につきましては、私どもの方が比較的長い時間、忘れたことは別といたしまして教授を受けております。また実際論を申しますと、調剤学の問題でありましたが、薬理学、薬物学というようなことは習いましたが、——これははなはだ失礼な言い分で、間違うかもしれませんが、調剤学の講義を聞きますと、講師はわずかの間でそれをやめてしまうのであります。今はどうか知りませんけれども、こういうことを一つ——すなわちそれは非常なむずかしい学問ではない、こういうことであるのではなかろうかと想像いたすのでございます。  それから薬剤師というのは、ほかに薬事法によりまして、薬剤師としては、御承知の通りに医薬品を調製、鑑定、保存、調剤交付に関する実務で、分析、検定ということがございまして、その意味が少しく違うのではなかろうか。少くとも私どもは、下手であるかもしれませんけれども、その能力は持っておるべきもので、またその処方を作成する能力のある者が調剤をする。調剤ということは、あの乳ばちに入れてごとごととかき回したり、いろいろな、大体そういうことをすることでございますがゆえに、その能力はあるものであると、いささか自負しておるかもしれませんが……。こまかいことは大石君からお答え願います。
  79. 大石武一

    大石委員 どうも今の加藤さんのお話で、述べることもほとんどないのでございます。先ほど調剤能力の限界とかいうことでございましたが、ちょっと私はどういうことか理解できないのでございますけれども調剤をするというととは、つまりそこにある処方せんによって薬を作り上げるということになると思います。その場合に必要なことは、その薬物の薬理作用というもの、その薬物についての正しい知識、そういうものと、だれでも必要でありますが、正しく分量をはかる能力、これがあれば私は十分であると思います。このような点から考えますと、医師にも薬剤師には多少劣るかもしれませんけれども、不安心でないだけの調剤能力はあると考えられるのであります。
  80. 野澤清人

    野澤委員 言葉じりを取って気の毒ですが、医師にも、薬剤師よりは多少劣ると思うが調剤能力があると思いますと言うのですが、劣ると思っているのですか。   〔「それは謙遜か」と呼ぶ者あり〕
  81. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。それは多少謙遜が入った言葉でございます。
  82. 野澤清人

    野澤委員 もう少しまじめな態度で返事してもらいたいのです、やじの言葉そのままで返事されたのでは回答になりません。  そこで、この調剤能力という問題について、私はこの処方せんを作成する行為と調剤行為とは、全然別な行為だと思っております。処方せんを作成する能力があるから調剤能力があると逆及的に結論することは早計だと思います。ただ長い間の習慣で、一応自己の診察した者に対して調剤を認めてきたという経過的な事実はありますが、この能力を同一視するという根拠が、私にはわからないのであります。そこで、大石君にお尋ねしていますことは、医者調剤能力があることについての、能力を認定するかしないかという点については、すでに法律二百四十四号でも、自己の診療した患者にみずから調剤する場合はということで、一応改正法でも医師調剤能力というものは認めておるはずです。それを、さらに薬剤師と同格にするというところに、何らか根拠があるのではないかというお話をしましたところが、あなたの御回答では、幾分劣るかもしれないが調剤能力があるのだ——幾分劣るということは、法文の中に書いた場合に、同列でよろしいという議論は成り立たないと思います。もう少し端的に、医師も歯科医師薬剤師も同格の調剤能力があるというその根拠を、提案者として御説明願いたいと思うのです。
  83. 大石武一

    大石委員 多少、劣るかもしれないけれどもと言ったのは、気持ばかりでなくて、多少劣ったにしましても、十分に間違いない調剤能力があるというととが前提でございます。それで、実際に調剤するのでございますから、調剤する以上は、当然その権能というものを認めた方が、調剤してもらう患者にとって安心だろうと思うのでございます。そういう意味調剤権を認めたのでございますけれども、ただ薬剤師という職業もあり、医師とは別でありますから、両立するように、ことさらに医者の権限を制限して、そうして権能は認めるけれども、その医者調剤に関する権限というものはここに制限して、あとの大部分の方は薬剤師の方にまかせようという趣旨でございます。これははっきり分業建前をとっておる考えでございます。それから、歯科医師、獣医師についても同一の調剤権を認めたとおっしゃいますが、その通りでございます。ただ歯科医師は、歯科の方が中心でございます。それに関する調剤権でございます。獣医師は、人間以外の獣についての調剤権でございますから、これは当然医師と同等の意味において認めてよろしかろうと思います。
  84. 野澤清人

    野澤委員 どうも論拠が薄弱ではっきりつかめないのですが、それでは明治初年以降発達してきました医学薬学における学問の分野というものに対して、大石先生はどういうお考えをお持ちになっておりますか。
  85. 大石武一

    大石委員 私は薬学というものを、医学の一部と考えております。医学というものは、基礎医学、臨床医学、その他薬理学あるいは薬物学といいますか、そういうものを一切含めたものが医学でございまして、そういうものを十分にマスターしなければ医者になれないと思うのでございます。
  86. 野澤清人

    野澤委員 そういう、日本がアメリカの領域かソ連の領域かというようなことを聞いたのではないのです。要するに学問の分野というものは、画然と国家が認めて分離して、薬学医学というものの教育を成立させておる以上は、それ相応の根拠があると思う。この学問の尊厳に対するあなた自身の、提案者として理解の程度がどの程度までいっておるかをお尋ねしておるわけです。
  87. 大石武一

    大石委員 私の申しましたのが、ちょっと言葉が足りなくて、なるほど薬学という方は、医者がやっている治療行為なり、患者をなおすということ、病気をなおすということに関しての薬学のことでございまして、そのほかにも薬学としては、いろいろな分析であるとか、鑑定であるとか、なるほど普通の医者が学び得ない重要な問題がございます。その点は確かに認めておりますけれども、今私が申し上げましたことは、患者をなおす、病気をなおす、予防するという意味においての薬学を申したわけでございます。
  88. 野澤清人

    野澤委員 私の質問した事項に答えてもらえないのですが、学問を尊重するという建前から、薬学医学というものが分化されて現在施行されているのだ。しかも薬学生も医科大学生も、おのおの教養を受けているのだ、この事実に対して、あなた自身はどういうふうな考え方を持っているかというのです。学問に対する尊敬の気持があるのかないのかということを、聞いているわけです。
  89. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。十分に学問の立場を尊重いたしております。
  90. 野澤清人

    野澤委員 尊重されるという建前ならば、国家が必要があって薬学分離して薬剤師を養成しているわけです。医者の必要があって医者を養成しているわけです。との分化過程から見て、結果において医師薬剤師も同一資格になるというととはあり得ないわけです。それを調剤に関する限りは医師薬剤師も同一だという論拠が、私にはわからないのですが、この点いかがでございますか。
  91. 大石武一

    大石委員 調剤ということは、やはり薬学のうちのごく小部分だと考えております。でありますから、その小部分に関しましては、当然どの方面におきましても同格の程度はあってよろしかろうと思う次第でございます。
  92. 野澤清人

    野澤委員 これは、何ぼ一問一答をやっても議論は尽きないと思いますので、あなたも大学の助教授までされた方でありますが、現在の大学教育教育課程の中でどうなっているかということを、私の方から御説明申し上げます。東大の医学科の教授科目でありますが、とれにはとういうふうに発表になっています。医学概論、解剖学(及び実習)、組織学(及び実習)、発生学、生理学(及び実習)、生化学(及び実習)黴菌学(及び実習)、病理学(及び実習)、病理学説、寄生虫病学、薬理科(実習)、衛生学(実習)、血清学(実習)、法医学(実習)、公衆衛生学(及び実習)、栄養学、機能検査実習、内科学(及び実習)、同診断学実習、内科物理療法学(及び実習)、外科学(及び実習)、整形外科学(及び実習)、産婦人科学(及び実習)、眼科学(及び実習)、同検眼鏡実習、小児科学(及び実習)、精神医学(及び実習)、皮膚科学(及び実習)、泌尿器科学(及び実習)、耳鼻咽喉科学(及び実習)、放射線医学(及び実習)、麻酔学、歯科学(及び実習)、こういうふうに医学部規則第三条によって、これだけの必修課目が示されています。これに対しまして医学部規則第十三条による東大の薬学科教授科目を申し上げますと、調剤の学問というものがはっきり分離されているわけです。調剤学、製剤学、薬局方特論、薬剤学(及び実習)、薬剤、薬業経済、理論化学、無機薬化学、有機薬化学、薬化学及び薬品製造学実習、定性分析化学、定量分析化学、物理分析学、薬品分析学実習、無機薬品製造学、有機薬品合成化学、化学機械学、解剖学、生理学、薬用植物学(及び実習)、生薬学(及び実習)、植物薬品化学(及び実習)、生理化学(及び実習)、動物薬品化学、醗酵化学、衛生化学(及び実習)、公衆衛生学、裁判化学(及び実習)、微生物学(及び実習)、微生物薬品化学、薬理学、薬品作用学、生物学的検定法総論、薬物学実習、これが第十三条に示された必修科目であります。この通り学問が分離されまして、その結果国家試験検定を受けまして医師薬剤師の資格を現在得ておるわけであります。  こういうふうに国家一つ制度の上に立って一応医師薬剤師の学問分野を分離させ、国家免許を与えますについての試験制度まで課しておるということは、それから派生します法律の規制に対しても、おのずから分離されるのが至当であると思うのであります。この点に関して、提案者として加藤さん、大石さんの方の考え方は、あくまでも調剤能力があるから同列に扱う、こういう考え方根拠がわれわれにはわからないのであります。学問の尊厳を主張される大石さんの立場から見て、こうした改正案が出るということは、何らかそこに他意がなければならぬのじゃないかという感じがいたしますが、これについてはっきりした御回答を願いたいと存じます。
  93. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私ども医者は、治療が専門でありまして、そういう学問を習っておるととは当然であります。薬剤師の諸君は、薬物に関したる専門知識があるのは当然でありまして、そういう学科科目が必須科目としてあるのは当然のことであります。ただ、調剤の点に至りましては、これはまたお気に入らぬかもしれませんが、きわめて簡易とは申しませんけれども、ただいまの調剤であれば、薬局において乳ばちでごとごとやるとか、あるいは浸剤とか、煎剤を作る、あるいは水に薬を練るというようなことでありまして、その化学的変化を直ちにそこに起すような場合は、これは医者の能力の何でありますけれども、そういうことは大した——大したというと言葉は惑うございますが、そう非常に深淵な学理を習わなくても、先刻私が申しましたごとく、調剤学の講義を聞くと、講師はわずかの時間でやめてしまうというような実例もあるのであります。これは現代のことであります。私は薬物というものは、将来だんだん進んで参りまして、錠剤の時代が来るだろうと思います。もし錠剤の場合に参りましたときに、この錠剤を用い、錠剤をかみ合せる、これでよいということになれば、これも調剤であると思うのであります。将来は私どもは、医学の進歩は水薬や粉薬ではなくて、ずっと錠剤の時代がすでに来つつあるのでありまして、錠剤を配合してまぜることすら、これも明白な調剤なのでございます。それもできないなどということは、これは全く医者治療の本来の使命の大半を失することでございますがゆえに、将来をおもんぱかってこういう文句を入れた次第でございます。
  94. 野澤清人

    野澤委員 だんだんと御高説を拝聽しておると、多年医師会が主張してきました錠剤は調剤にあらずという理論と、今の加藤先生の理論とは、全然正反対でありまして、だれにでも錠剤で作れるごと自体が調剤ではないかというお説であります。そういう議論はあと回しにしまして、大石君に特にお尋ねいたすのでありますが、この調剤能力というものと、それから処方作成能力というものとは、おのずと区分さるべきものか、同一のものと考えるべきか、その見解を明らかにされたい。
  95. 大石武一

    大石委員 私は区分さるべきものだと思います。
  96. 野澤清人

    野澤委員 それでは調剤能力の限界ということの御説明がありませんが、調剤能力ということと調剤行為とには、おのずから区分さるべき内容があるかないか、同一とお考えでありますか、あるいは区分さるべきとお考えでありますか。
  97. 大石武一

    大石委員 われわれの出しました法案は、結局医者自分診断して自分調剤し得ると考え患者についてのみ調剤するわけでございますから、これはそう深遠な学理はなくても、医学を勉強するために修得した薬理作用、薬剤に関する知識をもってすれば、あとは正しい量を正しくはかるという調剤能力さえあればできると思うのであります。それ以上のむずかしいことは、薬剤師の手にまかせなければならぬと思います。
  98. 野澤清人

    野澤委員 お医者さんの考えております調剤能力のうちには、問題点が二つあると思います。その一つは、今、大石君が言われたように、薬剤師でなければならない部分もあるということ、これは当然だと思います。従って、たとえばサントニンと重曹のびんがこわれてレッテルがはがれた、そうしてこれがサントニンだと思って重曹を患者にやってしまったり、重曹だと思ってサントニンを飲ませたというようなことができますと、保険衛生上大きな問題になりますから、専門家に調剤をまかせなければならぬ、こういう技術点からの議論一つと、それからもう一つは、医者調剤能力というものの中には、だれが何というても、本質的に看護婦や御夫人や女中さんが調剤する調剤行為までを調剤能力といわれておるように思われるのですが、この点大石さんのお考えはいかがでございますか。
  99. 大石武一

    大石委員 初めのサントニンと重曹の話でございますが、そのような場合は普通あり得ないととで、あれば過失でございます。そのような場合には、医者ならずとも過失でございますから、サントニンであるかどうかということを分析する余裕はなかろうと思います。従いまして、このような場合はどのような場合にも相通ずる過失だと思います。  それから奥さんや看護婦さんが調剤することは、調剤能力とは思いません。たまたまそのようなことがかりに医者の中にあったとしても、私はそのような奥さん捻り看護婦さんなりの調剤能力と認めるものではございません。医者自体の能力を認めておるのであります。
  100. 野澤清人

    野澤委員 第一番目の問題は、過失の問題だと言いますが、そういう過失のある場合に薬品鑑定をするのが、いわゆる薬剤師の本分だと思うのです。それで、お医者さんにまでそれを強要することはどうかと思いますが、この調剤を中心にしてあるいは薬品鑑定、分析を中心にして学問が分離し、また薬剤師国家免許というものが与えられておるということを申し上げたくて申し上げたのであります。  それから第二点の看護婦や女中やあるいは奥さんにやらせることは、医者調剤能力でないという御判定ですが、私はむしろ調剤能力の範囲として、こういう方々の調剤行為までも含むものだと考えておるのであります。この点あなたの方では、そうではないという御見解のようですが、そうでないとしたならば、どういうことが医者調剤能力でございますか、それをお聞きしたいと思います。
  101. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 能力ということは、医者が責任を持てば、実際問題として分量を間違いないように乳ばちの中に入れる、それからあとの作業は、監督して包ませることはよかろう、私は常識としてこう考えるのでありまして、初めから何を何グラム、何を零コンマどれだけということは、当然医者がすべきである、こう思っております。
  102. 野澤清人

    野澤委員 大体はっきりしてきましたので、加藤先生でも大石先生でもけっこうですが、今度の薬事法改正案の第二十五条の二に「医師又は歯科医師は、医師法第二十二条各号の場合又は歯科医師法第二十一条各号の場合において自己の処方せんにより自ら調剤するときのほかは、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」と規定してあります。「自己の処方せんにより自ら調剤するときのほかは」ということでありますが、「自ら調剤する」という事柄は、医者みずからが分量をはかるという意味でございますか、との点をはっきりしておきたいと思います。
  103. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。医者自から分量をはかるか、医者が十分な指導監督をしてやらせるか、どちらでもよろしいと思います。
  104. 野澤清人

    野澤委員 特にこの条文で「自ら調剤する」と明記された理由があると思うのですが、これは自分の責任において第三者にやらせてもよろしいという御解釈でございますか。
  105. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私は自分の責任において自分調剤するということでなければいかないと思っております。それで、ただ補助、包むことであるとか、紙袋の名前を書くとか、こういうことはよかろう、こう思っております。
  106. 野澤清人

    野澤委員 これは非常に重大な問題ですが、昨年医薬関係審議会におきまして、みずから調剤するということの定義について、甲論乙駁がありまして、今、加藤先生の言われたような趣旨で一般のお医者さんが解釈されるなら、しごくけっこうだと思います。しかしながら、そのとき問題になりましたことは、現在の開業医が全部処方せんを町に流したならば、果して調剤が間にあうかどうかという統計が出て参りました。この点に関しては、浦和市の開業医と薬局の所在とを分解いたしまして、人口の比率とさらに患者の数、それから昨年の七月二十八日だと記憶しておりますが、一日間の来患者の数とその処方せんの枚数とを、医師会が全部統計をとりまして、一薬局当りの処方せんの枚数を出されたのであります。そうしてほとんど半数以上に近い薬局の所在があるにもかかわらず、その医師会の調剤時間と口数を比較いたしますと、一薬局が、はなはだしいのは二十四時間ぶっ続けて調剤しなければ、とうていその調剤行為の一日分ができない、こういう統計まで出してとられたのであります。そうすると、それほど煩瑣な調剤というものを、お医者さんみずからが診察をしながら分量をはかる、診察をしながら薬包紙に包むところの行為を果して補助できるかどうか、また責任においてそれだけができるかどうかということが論議の中心になったわけでございます。これは薬剤師から出た資料でなしに、医師会から出ました資料でございます。従ってそのときにわれわれが強く主張しましたことは「自己の処方せんにより自ら調剤する」ということは、つまりお医者さんが自分患者を見て調剤行為をする、紙に包む程度の補助行為は第三者でも仕方ないじやないか、ことまで了解せられたとしましても、現在の医療のかたわら調剤行為が果してできるのであるか、そこで調剤能力と調剤行為との分解点というものが、おのずと生まれてくべき筋合いのものじゃないか、ここに分業理論も生まれ、分業の優秀なことも謳歌されるのじゃないか、こういう考えを持っておるのでありますが、ただいま提案者である加藤先生から、医者調剤する場合も自分でやらなければいかぬ、こういう御確証を得たので、これを金科玉条としてちょうだいいたします。今後は、おそらくどういう法律が出ましても、この権威ある国会において加藤先生のようなりっぱなお医者さんの議員の方が、しかも提案をされる際に、みずから調剤するという行為についての御解説がありましたから、当然これは国民も厳重に監視し、また一般患者の方々がこれらについて関心を持つことは当然だと思います。従って、第三者的な批判というものも、相当今後強く要求される場面でないかと思うのであります。  こういう関連からいたしまして、今度はさらにその調剤行為というものに対して、医師、歯科医師また薬剤師というものを同列に扱わざるを得ないというこの論拠というものは、全く分業理論を逸脱した行為でありまして、分業の本筋というものは、医師診察をして薬剤師調剤するのが分業の根本理念であります。この根本理念を法文の上でこういうふうに改ざんして、それでもまだ分業精神を踏襲していくのだという説明は当らないと思いますが、大石君自身が新しい感覚で、これでも分業であるというお考でありますか、お尋ねいたします。
  107. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。との法案は、医薬分業ということを前提といたしております。ただし、長い間の日本の医療上における習慣なり考え方がございますので、これを一挙に改革するということは、私は日本国民考え方、習慣の上からいたしまして、相当の混乱と不便を来たすと思うのであります。従いまして、将来理想的な医薬分業を目標といたしておりますけれども、そこに向って一歩ずつ国民の理解と努力とによって近づけていかなければならぬと考えております。その段階が、私は現在の私たちの改正案であると考えておるのであります。私たちは、将来医薬分業になればけっこうだと思います。医薬分業があって一番得をするのは、医者薬剤師であります。おそらくほんとうの話は、患者は困ると思います。私は今から四、五年前にアメリカへ参りました。アメリカでもニューヨークとかシカゴとかボストン、サンフランシスコとかいう町しか見て参りませんでしたけれども、どこへ参りましても、これは強制的ではない、医者薬剤師の合意の上の完全分業でございます。実に不便でございました。たとえば、私はとても疲れて夜騒騒しくて眠れない、簡単なカルモチンくらいほしいと思って薬剤師のところへ参りました。絶対に売りません。医者処方せんがなければ売らぬわけでございます。そこで、どうすればいいか、医者のところに行く。医者のところへ行くには、前もって何日の何時に来いというアポイントを受けなければ見てくれない。行けば必ず十ドルの診察料と相当処方せん料を取られます。日本なら、現在薬剤師のところへ行って、カルモチン一箱百円なら百円で簡単に買えるものが、わざわざ十ドルの診察料を払う。何にもない、医者はただ話を聞くだけで、それならばといってカルモチンを処方せんに書いてくれるだけであります。そして薬局へ行けば、びんに入ったカルモチンをもらうだけであります。それで十ドルの診察料と処方せん料を払わなければならぬというわけで、国民にとっては、実に愚かな非常な負担だと思います。ただ、アメリカの国民は金持であり、豊かであるから、とのような負担に耐えられるだけであります。そして、向うで調べてみますと、医者薬剤師と結託して——日本医者薬剤師がけんかしておるけれども、アメリカは反対で結託しております。そしてある薬剤師のところに医者処方せんが何枚か来ると、その何割かがリベートとして医者のととろに戻っていく。そして薬剤師はいわゆるドラッグ・ストアであり、これは町角の一番便利なところにあります。アメリカは、いなかから来れば、ドラッグ・ストアに行って、どの医者がよいかということを聞いて、その紹介によって医者のととろに行くのでありますが、その紹介に対して何割かのリベートがいくのであります。これがアメリカの現在の医薬分業実情でありまして、実に不便でございます。私は身をもって体験いたしまして、これでは実際、将来は医薬分業はけっこうだと思いますが、これを直ちに実施したのでは、国民が一番困ると思います、確かに医療費が高くつくのであります。そういうわけでありまして、これは漸進的に、将来文化が発達すれば、分業になるのは当然でありますから、分業に向っていくのはけっこうでありますが、漸進的に向っていかなければならぬという考えのもとに、来年の四月から実行されるのは少し急激過ぎはしないか。あの時分は、昭和二十六年であります。私も国会議員をし、あのときは厚生委員をやっておりまして、あの昭和二十六年の法律の制定に賛成をした一人でございますが、あの時分は、要するに日本はまだ非占領国でありまして、サムスという人の考え相当支配しておった。これはアメリカ人でありまして、アメリカの医薬分業前提とした考え方であります。従いまして、行き過ぎであると思いますので、その罪滅ぼしのためにも、この際多少修正いたしまして国会議員としての職責にとたえたい。こういうわけでこの修正案を出したので、決して医薬分業をやめさせるとかなんとかいうのではない、それは理想としておりますけれども、そこに行くのには多少段階がございますので、低い段階から上っていかなければならぬと考えておるだけであります。  調剤の問題に関しましても、調剤する能力は医者にもあると認めておるけれども、その能力を発揮するのはわずかな部分の、自分診察した自分発行した処方せん患者に限定しまして、分業精神をはっきりと示しておると考えるわけであります。
  108. 野澤清人

    野澤委員 二日間にわたっての議論の中で、博学多識な大石君の分業論を聞いて安心しました。アメリカの極端な例の話、カルモチン一つもらうのに不便だという話が、分業全体の不便論には絶対に通用しないと私は信じております。なおまた、医者が自己の診察した患者に限り調剤をちょっぴりやるだけだ、しかも分業の理念というものは貫いているのだというただいまの御説明であります。先ほど太政官布告からずっと続いて二十三年、二十六年の法律改正まで、私が過去の法律を基本にしまして御説明申し上げました日本医薬制度というものは、初っぱなから薬剤師調剤する、医師診察をして処方せんを出すものであるという基本方針を貫いてきております。との貫いてきております法律を、ことさら今回の改正案の第二十二条で同格にこれを扱わなければならぬということは必要ないのじゃないか。調剤能力においても技術においても差があると認めながら、わざわざここに並列したという意図がわからないのであります。  そこで、学問の尊厳ということについて、先ほど御質問申し上げたのですが、アメリカではドラッグ・ストアに行っても、カルモチンを売ってくれない、医者診察を受けなければならない。これがいわゆる分業精神だと思うのです。ところが、現在の日本薬局というものは、処方せんによって薬を売るべくきめられておるものであっても、便宜的に多少その人の人格によっては手心が加えられざるを得ない社会情勢なのです。これは国民保健衛生上は、こういうことをしておってはならないのだ、やはり多少の不自由不便はあっても、医師医師技術を尊重する、薬剤師薬剤師技術を尊重するというのが世界の風潮であり、また理想的な形じゃないか。たとえて申し上げますならば、現在米ソ二大勢力の対立といわれておりますが、私たちがソ連に抑留生活をしております当時のソ連における医師薬剤師立場などでは、こういう極端な例があります。つまり、薬品に関しては、医者は絶対に容喙できないという民主的な規定になっております。それで薬品に関して薬剤師の言ったことは、絶対これは守らなければならぬということになっております。たまたま大戦直後に、シベリアの収容所の管理局に味の素のカン入りがたくさん送達された、これを医務室に送達してきたわけであります。そうしますと、そこにおります男の少佐の薬剤師でありますが、それを胃散か何かと間違えたらしい、これを患者に対して一さじづつ飲ませろという命令が出たのであります。そこで、医務室の総大将をしています医者の中佐の方に、これは栄養剤であり、また調味剤であって、日本では食料にかけて使うものであるから、患者にこれを飲ませても何にもならないのだということの意見書を出しまして、るる詳細に申し述べたととろが、その中佐の方は、これは薬剤師が命令したのだから、お前たちは言うことを聞かなければいかぬ。そういうことで、約二ヵ月間この味の素が薬の代用になりました。管理局長のところに直訴をいたしまして、初めて調味料であるということがわかって医務室から遠ざけられた。こういう一つの事実を見ましても、いかにかの国の人々が相手方の職業に対し技能に対して尊重するかということが、はっきりわかるわけでありまして、日本のように便宜・主義的に——今、大石君は、アメリカでは医者薬剤師とがリベートを取り合っているというお話でありますけれども、アメリカのように、医者を紹介した薬局にリベートが来たり、また薬局を紹介した医者のところにリベートが行くくらいなのは、まだまだこれは民主的だと思うのです。現在の日本の医療というのは、全く医師の独壇場であります。秘密治療をして、しかも搾取をしているのは医者だということであります。その間、専門家の薬剤師をなるべく近づけないようにしようというのが、今度の改正案の骨子であるように感ぜられる。これは一つの感じでありますから、せめてこうした医師薬剤師というものがあくまでも抗争を続けるのでなしに、話し合いもし、お互いにお互いの領域を尊重しながら十分勉強されるような立場に持っていくべきじゃないか。にもかかわらず、ここに調剤権というものが、多年薬剤師にその原則的な条文があったにもかかわらず、これをあなた方は無理やりに薬事法の中に、医師、歯科医師薬剤師を同格に扱おうという魂胆については、謀略以外の何ものもないのであります。もし万一ありとすれば、政治的な含みだけだと思います。この点に関して、もう一度大石君からはっきりした御見解をお聞きいたします。
  109. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。これは別に謀略もございません。政治的な含みもございません。実際は、先刻野澤委員からお聞きしましたが、いろいろとこれに近いことは附則にあるから、これはあらためて持ってこなくてもいいではないかというお話でございましたが、どうせ附則にあるものならば、日陰のむのでも存在の価値があるならば一つ日の目を見させて、ここで本文の中に入れても、実質はそう違わないだろう。この法案が通りましても、患者希望する場合とか、実際に医者のが調剤をする場合があるわけですから、そのような場合には、医者にも調剤能力があるということを明記した方が、患者が安心できるだろうと思うのでございます。それだけでございます。
  110. 野澤清人

    野澤委員 薬事法の二十二条の問題について、政府の方の見解をお聞きしたいのでありますが、分業の理念を一貫して遂行するために、たとい暫定的でも医薬分業を将来理想的な形態としてやらなければならぬということを、加藤先生大石君も言うています。そこでこの二十二条の「薬剤師医師、歯科医師及び獣医師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」こういう条文を作るということは、医薬分業の完全廃棄の法文であるように感じられるのですが、この点、医務局長の御見解をお尋ねいたします。
  111. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医務局長よりは、薬務局長からお答え申し上げた方がいいと思います。
  112. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医薬分業というものは、先ほど来、諸先生方からお話がございますように、診断治療、処置というものは医師に、調剤薬剤師にという原則が、医薬分業であるわけでございます。従いまして、調剤につきまして薬剤師原則であるということは、先ほど来野澤委員から御紹介がございましたように、明治初年以来、わが国の法律制度がとって参りました則原でございます。沿革的に見ますれば、さようなことでございまするし、それからさらに、おれもお話の中に出ておりましたが、薬剤師という制度を国が認めまして、そうしてこれに大学を設け、さらに国家試験を課してこの薬剤師制度を作っておるという建前からいたしましても、調剤薬剤師原則であるべきだと私は考えております。さような意味合いからいたしまして、医薬分業に対する方向といたしましては、ただいま御審議になっておりまする改正案は、いわば非常なる後退であると私は考える次第でございます。
  113. 野澤清人

    野澤委員 ただいま政府の言明によりますと、医薬分業法律二百四十四号からは相当の後退であるという政府見解が明らかになったわけでありますけれども大石君自身、医師調剤能力というものがはっきりあるのだという認定は、どういうところから出発されて、それから薬剤師と同格であるということが、どういうところから出発されているのか、この点、もう一度はっきりしてもらいたい。何べん聞いても、これがはっきりしないのです。
  114. 大石武一

    大石委員 私は、薬剤師医師は同格であるとは申しておりません。ただ調剤することができるということを認めておるだけの話でございまして、薬剤師と同じように調剤することができる。しかもその場合は、ごく限られた、一小部分の、自分診察をした、自分発行した処方せんだけに限るというのでございまして、決して同等とは考えておりません。ただ現実の問題は、今薬務局長が後退と申されましたが、いわゆる医薬分業という考え方からすれば、確かに後退でありましょう。しかし私どもは、理屈よりも、医薬分業考え方の人と、そうでない考えの人がありますから、それを別にして、現実の患者診療面から申しますと、ある程度この部分の後退はあっても、それは私は決して医療の全体の後退ではないと考える次第でございます。
  115. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 ただいま後退だとか前進だとかいうことがありましたが、原則としては、文化が進みますれば分業になるのは当然でありまして、一歩一歩それに進んで参ります。ただ後退と思われることは、占領治下におきまして躍進し過ぎたのであります。自然よりも躍進し過ぎましたがゆえに、これをもとに戻しまして正常な形にしたい、こういうのでありまして、決して後退ではないのであります。これが前進主義であるのでありまして、私ども一つの理想を持ちながら、現実に地を踏みしめて一歩々々進まなければならぬと思っております。ことに、政府局長答弁を、政府全体の御答弁だとお思いになりまして、非常に意を強くしたような御発言でございますが、先刻申し上げた通り、政府は来年四月一日より実施させるという改正案に基いていく考えでございますがゆえに、政府といたしましては、さような答弁をいたすのは、これは事務官として当然なことでございまして、これで鬼の首を取ったように御確信になるのは、いささかいかがかと存ずる次第でございます。
  116. 野澤清人

    野澤委員 きわめて進歩的な古典的な意見を吐かれる加藤先生としては、ごもっともな御意見であると思いますので、いつも加藤先生にお答え願うことを快しとしてないのであります。占領政策の行き過ぎであると言いながら・明治初年時代から、薬剤師の本業というものは調剤であるという原則論を、ことさらにこの改正案の二十二条に盛り込んだというととろに、時代逆行のはなはだしいものがあると思うのであります。決して政府の所見をして鬼の首を取ったようなつもりは毛頭ございません。従って、あなたと議論しておったのでは、徳川時代以前の議論ならいざ知らず、最近の医薬制度については、むしろ失礼の段が多いと思いますので、お尋ねを遠慮しておるわけです。  そこで、前置きは一応そうしまして、大石君にお尋ねいたしますが、この第二十二条の第一項の条文というものは、先ほど申し上げましたように、政治的な含みでこれを出されたのか、あるいはまた、あくまでもこれを強行突破するというお考えでお出しになられたのか、この辺のところをお伺いいたします。
  117. 大石武一

    大石委員 私たちは、この法案が一番いいと考えまして出したのであります。決して政治的な含みは持っておらないつもりでございます。
  118. 野澤清人

    野澤委員 初めから迷論だと申し上げたのですが、論理の合わない法文を出してきても、それが正しいのだ、ということは言い得ないと思うのです。医者調剤能力というものは、自分診察したものに関する調剤能力だということを、あなたの方では認めておりながら、しかも本文に時代に逆行するようなこうした文章を書かなければならぬというととろに、私は相当の含みがあったのではないかと想像したのです。親切にこれはお誘いをかけたわけです。それをあくまでもあなたの方では正しいものだとするならば、正しいだけの論拠を一つ示してもらいたい。そうでなければ、とうてい納得ができないと思うわけです。学問の分野におきましても、教育課程におきましても、必修科目からみましても、との調剤学というものを修めております薬剤師と、医師が同一資格で調剤権を持っているということは言い得ないのでありますが、との点、あなた自身が認めながら、これが正しいという論拠が発見できないのであります。その点、もう一度お伺いいたします。
  119. 大石武一

    大石委員 七十年か何か知りませんけれども、長い間、医者はやはり実際患者に薬を作ってやっておったと思います。これは野澤委員もお認めだと思います。それから、何か薬事法の附則かどうか知りませんが、また医者は当分の間かどうか知りませんが、とにかく薬を希望する人にはやってもいいという規定があるようでございます。これは明らかに医者調剤することができるから、医者調剤することをまかせてあるのだと思います。医者調剤する能力がなかったならば、ないものにこのような附則であろうと、習慣であろうと、長い間調剤を許すことはないと思います。明らかに医者調剤することができるからという前提のもとに、附則であろうと習慣であろうと、私は許してあると思うのです。ですから、現実に薬を調剤する能力があることを認めておるのでありますから、私は実際に明記いたしましても、何ら理論的にも時代逆行でもないと思います。ただ、分業に進む上には、あくまでも医者が全部薬剤師の職域まで入ったのでは、分業精神に反すと思いますから、二十五条の二において、はっきりと、医者は全部の処方せんに対しては調剤ができなくて、ほんとう自分の見た患者処方せんだけに限定して、薬剤師の職能を侵かさないようにしておる、ここに私は理想があると思っております。
  120. 野澤清人

    野澤委員 法律第二百四十四号を見ますと、薬事法第二十二条には「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。但し、医師若しくは歯科医師が左に掲げる場合において、自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。一、患者又は現にその看護に当っている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤交付を受けることを希望する旨を申し出た場合。二、省令の定めるところにより診療上必要があるとされる場合。三、省令の定めるところにより薬局の普及が十分でないとされる地域で診療を行う場合」2「厚生大臣は、前項第二号及第三号に規定する省令を制定し、又は改正しようとするときは、医薬関係審議会意見をきかなければならない。」こういうふうになっております。しかもこの間には「自己の処方せんにより自ら調剤するとき」ということで、従来附則で認められたものを、本則のただし書きに置いてはっきりと認めているわけであります。これがいわゆる限定された医師調剤能力とわれわれは心得ておるわけであります。こういうふうに、お医者さんの方から見れば調剤権を、長年の習慣によってやってきたにもかかわらず、薬剤師に取られるということを言いますが、今まで習慣としてお医者さんが調剤したのは、いわゆるただし書き調剤であります。その既得権というものを生かしてこの二百四十四号が成立したのでありますから、その成立しておりますものを、さらに本則にこれを薬剤師と並立させるということは、何か含みがあるのじゃないか。しかも限定された調剤であると称しておりながら、本則にこれを認めさせなければならぬ。これも、何十年かの歴史的な事実を裏書きするならばよろしいのでありますが、それをさらに飛躍して後退するような、こうした含みを持った法律改正を意図されたところには、何か含みがなければならぬと思うのであります。この点をお尋ねしておるわけであります。
  121. 大石武一

    大石委員 新しい二百四十四号でございますか、これには明らかに薬事法の中に入っておるのでございますから、その裏返しをすれば、この法案になると思うのです。それで、裏返しをしたわけです、深い含みはございません。なぜ裏返したかというと、実際に調剤するのですし、医者調剤能力があるということを前提としておるから、患者は安心して薬をもらっておるのです。あの医者調剤能力はないけれども患者だから仕方がなく薬をやるのだという印象を与えるよりは、むしろ、どうせ薬をやるのだから、初めから調剤能力があると明記した方が国民は安心ができるし、一番現実に即するだろうと思ってやったわけであります。それ以外に他意はございません。
  122. 野澤清人

    野澤委員 しつこいようですが、あなた方の提案された二十五条の二の「医師又は歯科医師は、医師法昭和二十三年法律第二百一号)第二十二条各号の場合又は歯科医師法昭和二十三年法律第二百二号)第二十一条各号の場合において自己の処方せんにより自ら調剤するときのほかは、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」これは要するに法律二百四十四号のただし書きの条項だと思うのであります。との条項を差し込んでおきさえすれば、いわゆる限定された医師調剤権というものは、調剤能力は法文の上に明らかに認められておる。認められておるにもかかわらず、先ほどのお言葉のように裏返したのだということで二十二条に入れるということは、少し行き過ぎではないか、こういう点を指摘しておるのであります。もっとはっきりした根拠をお述べ願いたいと思います。
  123. 大石武一

    大石委員 何度もお答えしたように思いますが、同じことならば、むしろ患者が納得できる方がよかろうと考えております。
  124. 野澤清人

    野澤委員 非常に妥協性の強い大石君としては、当然そういう言葉も起きるかと思いますが、医師法の二十二条のただし書きで、患者または看護人より要求された場合の調剤の請求、これと薬事法の左に掲げる場合ということの調剤要求の条文とも、ほとんど同であると昨日お答えになりました。それから今二十二条の解釈について、何もこの本文に入れたからといって、大した違いはないじゃないかというあなたのお考え、こういうあいまいな考え方で、少くとも立法府が法律を扱っていくということは、不見識だと思う。少くとも医師、歯科医師を同列に扱ったということは、かくかくの理由でこういうふうにやられたという論理が尽されるならば、それでよろしいのでございますけれども、あなたの説明では、どっちへ向いても大した違いはないから、置いても差しつかえないではないかというような御議論のようですが、分業理念というのは、医師診察をし薬剤師調剤するということが原則であります。その原則をぶち破るような国民薬剤師を刺激するようなこうした文章をことさら出さなければならないというのには、それ相当理由がなければならないのではないか。もし理由がないならば、これはむしろ撤回される方が賢明な策ではないかと思うのです。この点について、くどいようですが、納得のいくまで御説明を願いたいと思います。
  125. 大石武一

    大石委員 医師薬剤師は、それぞれ職業でございます。自分の生計を立てるためには、それは当然自分の存在を主張しなければならないものでございましょうけれども、その両者が存在する一番大きな意味は、国民を健康にする、人類を病気から救って仕合せにする、健康にするというところにあると私は思っております。この国民を仕合せにする、国民を健康にするということが一番の問題点だと思うのであります。そのために、薬剤師制度がある、医者制度があるからこうしなければならないのだという考え方よりも、私は少しルーズかもしれませんけれども国民を中心として、薬剤師医師もこうやった方がよかろうというのが、私の気持であります。そういう点から申しまして、このように置いた方が、患者を安心さすのに一番いい方法ではないか。実質的には、医者薬剤師の権限を侵しておりません。ただ、いわゆる理想と申しますか何と申しますか、完全な医薬分業という形からいえば、確かにこれはおっしゃる通り、あまりよくない法律かもしれませんけれども、こう明記した方が、私は患者に対して安心を与えるゆえんだと考えまして、あえてこのような事項を入れたのであります。
  126. 野澤清人

    野澤委員 悪くばかり言っていないで、たまにはほめなければならぬと思うのですが、今の大石君の卒直簡明なる御答弁は、ほめたいと思います。これは完全な分業を目標にするにはきわめて悪い法律案だということを、あなた自身が説明された。私が先ほどから、政治的な含みがあるのではないかということを再々申し上げておるのは、天下に名だたる加藤先生大石先生がこれだけのものを提案する以上は、どっかで医師薬剤師議員諸君が手を握る場面もなければならないのではないか。こういう含みで一応並べておいて、あとで薬剤師の顔を立ててやろうというくらいの気持でこの案を出されたのではないか、こういうことでくどく聞いておるのですが、語るに落ちるという言葉の通り、あなた自身が、不必要なものであると思っておられるというところまで確証を得たので、安心いたしました。おそらくこの委員会としても、良識ある議員諸君の討論の結果は、こうした行き過ぎの法律は作るべきでないという結論に誘導されるべきじゃないかと思うのであります。提案者自身もこうした見通しをつけているようでありますので、この点深く論議する必要は、私今後ないのじゃないかと思われるわけでございます。  そこで、全体といたしまして問題点になっております医師法改正の、いわゆる処方せん除外例の問題、それから罰則の問題、さらに薬事法の問題の三点を一応御解説を願ったのでありますが、薬事法に対しましての罰則の削除をされました考え方の、その基本的な行き方について、一応御見解を承わりたいと思います。
  127. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。そこのところは、私は今までと変りないと考えておったのでございます。もし法案にそのような落ちておりました不備がございましたら、取調べて後ほど御答弁申し上げます。
  128. 野澤清人

    野澤委員 「第三条中薬事法第五十六条第一項の改正規定を削る。」と書いてありますが、これはどういうことですか。
  129. 大石武一

    大石委員 少し頭が混乱しているようでありますから、明日明快なるお答えを申し上げます。
  130. 中村三之丞

    中村委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  131. 中村三之丞

    中村委員長 それでは速記を始めて下さい。  衆議院法制局鮫島第二部長より答弁をさせます。
  132. 大石武一

    大石委員 恐縮ですが、もう一ぺん質問していただきたいのですが……。
  133. 野澤清人

    野澤委員 「第三条中薬事法第五十六条第一項の改正規定を削る。」こういうふうになっておりますが、これは罰則規定を削ったものと思われますけれども、この点いかがですか。
  134. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 薬事法第二十二条は、来年四月一日から施行されますこの改正法によりますと、薬剤師でない者の調剤を禁止しておるのであります。またそのただし書におきまして、医師、歯科医師また獣医師につきましても、一定の場合以外の調剤を禁止しております。それで、そういう禁止に違反しました場合につきまして、この薬事法の五十六条に、そういう薬剤師以外の者、それから医師、歯科医師、獣医師でも一定の場合以外のものの調剤禁止に違反した場合には罰するというのが薬事法五十六条でございます。  それで、現在の薬事法におきましては、二十二条は、ただ一項だけでございますが、来年の四月一日以降に施行せられることになっておりますこの改正法では、二十二条には新たに二項が加えられておりまして、二十二条は一項と二項とある。そこで現在の薬事法二十二条違反というのを、二十二条一項違反というように改めたのが、この来年四月一日からの改正法の規定でございます。それがこの改正法の第三条中に「第五十六条第一項中「第二十二一条」を「第二十二条第一項」に改める。」こういうふうになっているわけでございます。  それで、今回の議員提出になっておりますこの法律案におきましては、第二十二条は、二項を落しまして一項だけになっております。それから、二十二条はどういうことかと申しますと、ここにございますように、薬剤師医師、歯科医師及び獣医師以外の者の調剤を禁止してございます。そこで、来年四月一日から改正しますのは、先ほど申しましたように二十二条に一項、二項があるのでありますから、二十二条一項違反というように改正しようとしてあるわけでございますけれども、今回は二十二条は二項がございませんで、一項だけでございますから、現在通りの二十二条違反というのでいいことになりますので、来年四月一日から改正しようとする改正はこの際やらなくてもよろしいというのが、この「第三条中薬事法第五十六条第一項の改正規定を削る。」こういうことになります。  そうしますと、どういう結果になるかといいますと、薬事法の五十六条は現在のまま少しも動かないということになりまして、二十二条に違反した者の刑罰が規定してございます。それから二十二条の内容は何かと申しますと、ここにございますように、薬剤師医師、歯科医師、獣医師以外の者の調剤を禁止するというようにございますので、ここに掲げてあります以外の者に対する処罰規定だけが残る、こういう結果になるのでございます。
  135. 野澤清人

    野澤委員 そうしますと、今までの二百四十四号の法律の罰則規定とは内容が全く異なって、医師、歯科医師、獣医師調剤に対する罰則規定は完全に削除される、そして第三者調剤行為に対してだけ罰則が残る、こういうふうに了解してさしつかえありませんね。
  136. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 その通りでございます。
  137. 野澤清人

    野澤委員 ここにも大きな問題点があると思いますので、明日あらためて質疑を継続いたします。
  138. 中村三之丞

    中村委員長 それでは次に内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を継続いたします。  本案について御質疑はございませんか。  なければ、本案についての質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 中村三之丞

    中村委員長 御異議もないようでございますから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  ただいままでに委員長の手元に、各派共同提案にかかる本案に対する修正案が提出されております。この際提出者より趣旨説明を求めます。八木一男君。
  140. 八木一男

    八木一男委員 私は政府提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対する日本民主党・自由党・社会党両派並びに小会派クラブの各派共同提出の修正案の趣旨を述べさせていただきたいと存じます。  まず修正案を朗読いたします。    日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対する修正案   日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第十条第三項、第十六条の二第三項、第十七条の三第二項及び第十七条の三第二項の改正規定中「通算して二十八日分」を「通算して二十八日分以上又は当該月の前六箇月間中に通算して七十八日分」に改める。   附則第一項中「昭和三十年七月一日」を「公布の日」に改める。  以上でございますが、この内容並びに理由について説明をさせていただきます。  まずこの修正案の内容には二点ございまして、第一点は、療養の給付とか埋葬料の支給並びに家族埋葬料の支給、配偶者分べん費の支給につきまして、現行法並びに政府提出改正案においては、その事故の発生前二ヵ月間に二十八日分の保険料を納入していることを要件といたしておりますけれども、その二十八日分に加えまして、六ヵ月間に通算して七十八日分の保険料を納めること、この二つのうち、いずれか一方の要件を満たすことによりまして、保険給付を受けられるようにいたしたいというのが第一項の修正の内容でございます。  もう一つ、第二項に関しましては、政府提出改正案は、七月一日から施行ということになっておりましたが、御承知の通り現在七月一日を経過いたしまして、いまだ本改正案が成立しておりませんので、公布の日からこれを施行することに改めるのが第二点でございます。  この修正の理由につきまして、ごく簡単に申し述べさせていただきたいと存じます。  まず日雇労働者健康保険法につきましては、健康保険制度の適用を最も必要とする人々に対しまして、この法律昭和二十八年に成立いたしまして、この健康保険制度が均器せしめられましたことは、非常に喜ばしいものとして、各方面で歓迎されておったものでございます。しかし、その内容においてまだ乏しい点がございますので、国庫負担の増額によりまして、給付内容の改善とか、あるいはまた通用要件の緩和、適用範囲の拡大というようなととが至急に行われることを期待されておったのでございます。その間において、一部改正によりまして、内容の前進を見たわけでございますが、本年政府がさらに一歩前進した改正案を出されたわけでございます。その内容は、御承知の通り療養の給付期間の延長、あるいはまた埋葬料、家族埋葬料、分べん費、配偶者分べん費の新しい項目の創設、歯科補綴ができるようにする等、一歩前進でございますけれども、その中におきまして、適用要件につきまして考慮が払われておらない点は、不十分な状態にあるわけでございます。現在二カ月二十八日の要件になっておるのでございますが、場所により季節によりまして、この要件では保険料を納めておりながら、そして保険の適用を熱望しておりながら、保険事故が起ったときに、その適用を見ないような不幸な被保険者があり得るわけでございまして、統計によりましても八六・六%の適用しかなく、十三・四%が、いろいろなそういう理由、その他の理由によりまして適用を受けておらないようなことは、はなはだ遺憾なわけでございます。  このようなことの原因は、場所により季節によるもののほかに、まだ二つ原因があると考えられておるのでございます。と申しますのは、就労平均は、全国平均二十一日でございますから、当然二カ月、二十八日ならば適用を見るではないかということも、形式的にはいえるのでございますけれども病気の前にからだの悪くなるのは当然のことでございまして、たとい仕事があっても、非常にからだが疲れておるというようなことのために、自発的に休業をするようなことを考えますと、病気の前には特に就労日数が少く、保険料納入が少くなるために、以前においてはずっと保険適用の要件を備えておりながら、直前の状態によって要件を備えるに至りませんで、保険給付を受けられないというような不幸な事態を方々に見ているわけでございます。また病気にかかりまして、その病気のために休業を余儀なくせしめられました患者が、他の病気を併発いたしましたときに、その前の病気で休んでおりますために保険要件を喪失いたしまして、第二病に対しては保険給付を受けられないというような不幸な事態も起っているのでございます。この点に関して二カ月、二十八日の要件のほか、六カ月間という長期間における要件を定めて、そのいずれか一方によって適用を見るようにした方がいいのじゃないかという考え方が起ってきたわけでございます。社会保障制度審議会におきましても、そのような要件を定めてこの制度の改善をはかることが必要である、本年度において特にこれを実施せしめる必要があるという答申を見ているわけでありまして、各党派においても、この点についていろいろとお考えになりまして、六カ月の要件を定めることは必要だという意見の一致を見たわけでございます。ただ、六ヵ月間に何日の要件にするかにつきましては、いろいろと各党において御意見があったわけでございますが、慎重協議をいたしました結果、今日においては七十八日の要件といたしまして、二カ月、二十八日の要件と相待って、そのいずれか一方において保険給付の適用を見るようにすることが最も適切であるという結論に達しまして、各派共同のこの修正案が出されたわけでございます。  どうか各位におかれましては、この趣旨に御賛同いただき、満場一致御可決あらんことを心からお願い申し上げ、以上をもって提案説明を終らせていただきます。
  141. 中村三之丞

    中村委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終りました。  次に、国会法第五十七条の三に、委員会は、法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの、もしくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して意見を述べる機会を与えなければならないと規定してありますので、この際内閣より発言があればこれを許可いたします。——それでは内閣の代表として厚生大臣に発言を許します。川崎厚生大臣。
  142. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 修正案につきまして、内閣の意見を申し述べたいと思います。  本法は、ただいま御審議をいただきました通り、日雇い労働者の健康保険につきまして、その福祉を増進させるために一部改正が行われたわけでありまして、各派の御賛成を得ているようでありますが、修正案は本年度予算に若干影響はいたしますが、日雇労働者健康保険の支給要件の緩和を趣旨とするものでありまして、現行の支給要件である二ヵ月に二十八日分以上という原則に影響を及ぼさないことを前提といたしまして、修正案に対し善処いたしたいと考えております。
  143. 中村三之丞

    中村委員長 これにて本修正案に対する内閣の発言は終りました。  次に修正案並びにただいまの内閣の修正案に対する意見についての御発言はございませんか。  それでは次に、内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案並びに本案に対する修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によってこれを許可いたします。小島徹三君。
  144. 小島徹三

    ○小島委員 私は日本民主党を代表いたしまして、本修正案並びに修正部分を除く政府原案に対して賛成をいたすものであります。  本修正の目的は、先ほどの趣旨弁明によってはっきりいたしておりますので、今さらこれを私は追加する必要はないと思います。  ただ私は、この際一言はっきりいたしておきたいと思いますことは、本修正案は、必然的に失業保険の受給要件及びこれにならっている現行日雇い労働者健康保険の受給要件に影響を与えるものでないことは、本修正提出の各党の了解事項であることを明らかにしておきたいと思います。
  145. 中村三之丞

  146. 野澤清人

    野澤委員 私は自由党を代表いたしまして、四党共同提案による修正案並びにこの修正部分を除く政府提案の日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の意を表するものであります。  そもそも、この日雇労働者健康保険法の成立を見た当時から考えますと、今回の改正案は、非常に飛躍的な重要な部分を含んでおると思いますので、こうした面については、さらに政府においては一段と検討を重ねられまして、社会保険の使命といたしますところの適用範囲の拡大、さらに給付内容については、一般健康保険法と同一の内容にまで、今後持っていくべきであると考えますので、こうした面についても、より一層の検討をお願い申し上げ、簡単でありますが賛成の意を表する次第であります。
  147. 中村三之丞

  148. 八木一男

    八木一男委員 私は日本社会党を代表いたしまして、各派共同提出になる修正案並びに修正部分を除く政府原案に対して、賛成の討論を行いたいと存じます。  日雇労働者健康保険法につきまして、改正の必要につきましては、先ほども申し上げましたので省略いたす次第でございますが、現在提出せられております政府案は、一歩前進ではございますが、その内容について、まだはなはだ不十分な点があるわけでございます。御承知の通り傷病手当金という健康保険制度における最も核心となるべき点が、まだ制定を見ておらないのでございまして、月給取りではなしに、日給かせぎであるこの日雇労働者健康保険法の被保険者にとっては、傷病手当金の創設が最も重要な問題であると、私ども日本社会党においては考えているわけでございます。そして傷病手当金の創設初め、その他の改正をなすために、国庫負担を飛躍的に増大する必要があると存じますとともに、適用要件を緩和いたしまして、適用範囲を拡大することが必要であると考えまして、日本社会党におきましては、社会党の右派と共同いたしまして、独自の案を提出しておったのでございます。ところが、この間、質問の際におきまして政府から、現在の案に満足しているものではなくて、翌年以後においてさらに前進した改正案提出するという厚生大臣の御言明もございました。また自由党におかれましては、適用要件の緩和とともに、適用範囲の拡大をできるだけ早くはかる必要があるという御意見であることも承わりましたし、また日本民主党におかれましては、適用要件の緩和について実際に実施をしようという御意向も承わりましたので、最大公約数によりまして、との問題を一歩々々具体的に前進せしめるという立場から、今回におきましては、ただいま各派共同で提出されました修正案、それを除く政府原案について、心から賛成するという態度日本社会党はなったわけであります。  その経緯を明らかにいたしまして、この案について全面的に賛成する次第であります。
  149. 中村三之丞

    中村委員長 吉川兼光君。
  150. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提出改正案の中におきまして、ただいま提案理由説明がありました四党並びに小会派共同修正案に賛成いたしまして、その修正案を除いた政府の原案に賛成をする討論をするわけであります。いい機会でありますから、このたびの政府改正案の問題点を二、三申し上げまして、賛成の討論にかえます。  まず私どもは、今も八木君が申されておったようでありますが、給付内容一般健康保険並みにすることが、この日雇労働者健康保険法の中におきましては焦眉の急であり、かつ重要な問題でなければならぬと考えておりますが、このたびの政府改正案には、この点に対する御考慮がどうも払われておらないと思いますのが第一点、その次は、低賃金あるいは就労日数の低下等にあえいでおります日雇い労働者にとりまして、受給資格の取得期間の軽減がまず行わるべきであると思いますが、改正案はこの点についてもこれを看過しておると思うのであります。さらにまた第三点は、死亡及び分べん給付等を今回新たに創設いたしましたことは、確かに一つの進歩でありますととは間違いございませんが、最も重要な傷病手当につきましては、今も八木君が指摘をいたしましたように何らの対策をも講じていないのでありまして、これは私どもははなはだ遺憾としておるのであります。要するに・今回の改正案は、やはり抜本的な改正がなされておらない。従って日雇い労働者の健康保険といいますものが、真の社会保険としての使命を達する域にはいまだはるかに遠いのである。これは自由党の野澤君ですら、これに論及しております事実をもってしても、はっきりしておるのじゃないかと私は思うのでありまして、これらの点につきましては、政府は大いに考慮してもらわなければならないと思うのであります。  さらに、われわれ社会党といたしましては、八木君を提案者の筆頭にあげまして、両派で改正案を出しておったのでありますが、今、八木君が申されましたように、われわれはこの審議の過程におきまして、政府及び自由党、民主党などのこの問題に対する熱意を十分に認めるに至りまして、このたびは最低の線ではございますがこのたびのような共同修正案をもって一応ケリをつけるということになったのでありますが、との問題について一、二取り上げてみましても、たとえば療養給付の期間は、現在は六ヵ月でございますが、これは少くとも二ヵ年くらいに延長しなければならない。また歯科の補綴も当然できるようにしなければならない。さらにまた埋葬料とか家族埋葬料、分べん費、配偶者分べん費等につきましても、これはただいま政府の出しておりますのとわれわれは同様でございますが、一段とその内容を強化する方面に考慮を払ってもらわなければならぬ。さらにまた出産手当でありますとか、保育手当でありますとか、あるいは配偶者の保育手当、さらに今申し上げました傷病手当等も、近き将来におきましては、必ずこれを創設するというととも考えてもらわなければならぬ。  さらにまた、われわれといたしましては、今の受給要件についてでございますが、共同修正案では、六ヵ月間に七十八日ということにきまりましたけれども、できれば、これはやはり将来は六十日くらいのところに落ちつかせるように漸次改正を進めていってもらわなければならない。さらにまた受給資格につきましては、労働組合員であるとか、あるいは厚生大臣が認めた者というようなことがその要件になっておるのでございますが、かりにこの要件を具備していない者にも、この法律の適用ができるようにしていただきたい。さらにまた、国庫負担は保険給付の五割程度のところまでこれを持っていくというふうなお考えを持って、将来の改正を心がけていただきたい。  こういうようなことがわが党の基本的な態度でございますから、との機会にこれを明らかにいたしまして、賛成の討論にかえる次第であります。
  151. 中村三之丞

    中村委員長 以上で討論は終了いたしました。  採決いたします。まず各派共同提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  152. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本修正案は可決せられました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。本部分を原案の通り可決するに賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  153. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本部分は原案の通り可決せられ、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、本案に対し附帯決議を付すべきであるとの動議が提出されております。趣旨の説明を求めます。小島徹三君。
  154. 小島徹三

    ○小島委員 私は各派を代表いたしまして、本修正案の決定に当って、附帯決議を付したいと存じます。  まず附帯決議の案文を読み上げます    附帯決議案   本修正により受給条件を二ヶ月二十八日又は六ヶ月七十八日と選択せしむることとした。右修正は就労日数につき現下経済上月平均十四日とすることは必ずしも実情に副わずと思わるるにより暫定的処置としてこれを認めたるものなるにつき政府は今後これらの点につき再検討の上適当なる処置を講ずることを期待する。尚本法適用範囲の拡大についても更に至急検討実施せられんことを期待するものである。  以上が附帯決議の案文であります。  何ゆえにこういう付帯決議をつけるかは、もう説明するまでもないと思いますから、何とぞ皆様の御賛同を得たいと思います。
  155. 中村三之丞

    中村委員長 以上で説明は終りました。ただいまの説明に対する御発言はございませんか。  なければ採決いたします。小島君の動議の通り、附帯決議を付するに賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  156. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本案は附帯決議を付することに決しました。  本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。
  158. 中村三之丞

    中村委員長 次に未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を続行いたします。  他に本案について御質問がなければ、本案に対する質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 中村三之丞

    中村委員長 御異議もないようですから、本案の質疑は終了したものと認めます。  ただいま委員長の手元に、山下春江君提出にかかる本案に対する修正案が提出されております。この際提案者より趣旨説明を求めます。山下春江君。     —————————————   未帰還者留守家旅等援護法の一部を改正する法律案に対する修正案  未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  第八条の改正規定中「二千三百五十五円」を「二千九百三十七円」に改める。  第八条の改正規定の次に次のように加える。  附則第四十項中「留守家族手当」の下に「及び附則第四十三項の規定による手当」を加える。  附則第四十一項の改正規定の次に次のように加える。  附則第四十二項の次に次の三項を加える。  (留守家族手当又は特別手当の額に相当する額の手当の支給)  43 未帰還者につき留守家族手当又は特別手当が支給されている場合において、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律昭和三十年法律第  号)の施行後、当該未帰還者が帰還し、又は当該未帰還者の死亡の事実が判明するに至ったときは、当該未帰還者が帰還せず、又は当該未帰還者の死亡の事実が判明するに至らなかったとすれば、留守家族手当又は特別手当の支給を受けるべき者(当該未帰還者が帰還し、又は当該未帰還者の死亡の事実が判明するに至った日の属する月以後において、第七条に規定する条件に該当するに至った者(以下単に「新該当者」という。)を除く。)に対し、その者が支給を受けるべき留守家族手当又は特別手当の額(新該当者に係る分を除く。)に相当する額の手当を、当該未帰還者の帰還した日の属する月の翌月以後三箇月間又は当該未帰還者の死亡の事実が判明するに至った日の属する月の翌月以後六箇月間、毎月、支給する。(恩給法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法との調整)  44 前項の規定による手当の支給に係る未帰還者であった者(以下単に「未帰還者であった者」という。)に関し、恩給法の規定による普通恩給若しくは扶助料(地方公共団体において支給するこれらに相当する給付を含む。)又は遺族援護法の規定による遺族年金を受ける権利につき裁定があった場合においては、その者に関し、当該裁定のあった日の属する月の翌月分以降、当該普通恩給、扶助料又は遺族年金の支給額の限度において、同項の規定による手当を支給しない。  45 未帰還者であった者に関し、恩給法の規定による普通恩給若しくは扶助料又は遺族援護法の規定による遺族年金の支給が行われる場合において、その者の帰還した日(その者が帰還後退職したときは、その退職の日)の属する月の翌月分以降又はその者の死亡の事実が判明した日の属する月の翌月分以降、当該普通恩給、扶助料又は遺族年金を受ける権利につき裁定のあった日の属する月(当該裁定が附則第四十三項の規定による手当の支給を終えるべき月の翌月以後あった場合は、当該手当の支給を終えるべき月)までの分として、附則第四十三項の規定による手当が支給されたときは、その支給された額は、政令で定めるところにより、当該普通恩給、扶助料又は遺族年金の内払とみなす。附則を附則第一項とし、同項の次に次の一項を加える。  2 昭和三十年十月分から昭和三十  一年六月分までの留守家族手当の額を算出する場合においては、第八条の改正規定にかかわらず、同条中「二千九百三十七円」とあるのは、「二千五百八十三円」と読み替えるものとする。     —————————————
  160. 山下春江

    ○山下(春)委員 ただいま議題となりました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案に対する修正案について、各派を代表して提案理由について御説明申し上げます。  修正の第一点は、留守家族手当の月額を本年十月分から明年六月分までは二千五百八十三円に、明年七月以後の分は二千九百三十七円に増額することであります。従来より未帰還者の留守家族に毎月支給しております留守家族手当の年額と、戦傷病者戦没者遺族等援護法の規定に基く先順位者たる遺族に支給する遺族年金の額とは、留守家族と遺族とに対する処遇の均衡をはかる意味からしまして、同額を支給することとなって今日に及んでおりますので、今国会政府より提出されております戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案に対し修正案が提出され、同修正案において、遺族年金の額が本年十月分から明年六月分までは三万一千五円、明年七月以後の分は三万五千二百四十五円に増額されることとなっていることに伴いまして、留守家族手当について同様に、月額を本年十月分から明年六月分までは二百八十三円、明年七月以後の分は六百三十七円引き上げることにいたす次第であります。  修正の第二点は、未帰還者が帰還した場合、または未帰還者の死亡の事実が判明した場合において、手当の支給を打ち切ることなく、未帰還者が帰還した場合は、その帰還した日の属する月の翌月以後三カ月間、未帰還者の死亡の事実が判明、した場合は、その死亡の事実が判明した日の属する月の翌月以後六カ月間、それぞれ留守家族手当または特別手当の額に相当する額の手当を支給するようにしたことであります。現行法におきましては、未帰還者が帰還した日の属する月、または未帰還者の死亡の事実が判明した日の属する月をもって、留守家族手当または特別手当の支給が打ち切られることとなっておりますが、未帰還者が帰還した場合においても、その者は数カ月は無収入状態に置かれていることが多く、その帰還とともに手当の支給を打ち切られるととは、その家族全体にとって、経済的に非常に痛手を受ける結果となりますし、また未帰還者の帰還を待ちわびている留守家族にとって、未帰還者の死亡この事実の判明とともに手当の支給を打ち切られるととは、物心両面にわたり大きな衝撃を受ける結果となるのであります。従いまして、これら留守家族の陥る窮状を救済し、さらにまた、日ソ国交調整に関する交渉が開始され、未帰還問題の全面的解決が期待される現状にかんがみ、最終的段階に到達した留守家族援護を一そう充実する意味から、このように措置する次第であります。  以上提案理由につきまして御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、全会一致、すみやかに可決あらんことを切望する次第であります。  なお修正案はお手元に配付しておきましたので、朗読を省略させていただきますから、ごらん願いたいと存じます。
  161. 中村三之丞

    中村委員長 これにて修正案の趣旨説明は終りました。  次に国会法第五十七条の三には、委員会は、法律案に対する修正で、予算の増額を伴うものもしくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならないと規定してございますので、この際内閣より発言があればこれを許可いたします。  それでは内閣の代表として厚生大臣に発言を許します。
  162. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまの修正案のうち、第一に、留守家族手当の増額につきましては、本三十年度予算の修正によりまして、すでに予算に計上いたしてございますし、かつはまた、留守家族援護の充実を一そうはかる意味におきまして、その趣旨に賛成いたすものであります。  第二に、留守家族手当または特別手当の額に相当する額の手当を、生還者の場合は三ヵ月、死亡処理者の場合においては六カ月、それぞれ延長支給いたします案につきましては、三十年度予算にその必要経費を計上してございませんが、その純増は本年度におきまして約五百万円となりますので、些少の経費でありますし、かつまた国会の強い御要望もございますので、その趣旨を尊重して善処いたす所存でございます。
  163. 中村三之丞

    中村委員長 これにて本修正案に対する内閣の発言は終りました。  次に、修正案並びにただいまの内閣の修正案に対する意見についての御発言はございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 中村三之丞

    中村委員長 それでは次に未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案並びに本案に対する修正案を一括して討論に付するものでありますが、両案につきましては討論の通告もございませんので、これを省略して直ちに採決に入るに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。まず山下春江君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  166. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本修正案は可決せられました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。本部分を原案の通り可決するに賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  167. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本部分は原案の通り可決せられ、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長にお一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
  169. 中村三之丞

    中村委員長 この際、駐留軍労務者の健康問題を議題となし、質疑を継続いたします。滝井義高君。
  170. 滝井義高

    ○滝井委員 幸い川崎厚生大臣もお見えになっておりますので、昨日、本委員会でこの問題について御質疑をいたしましたが、少しく答弁に明確を欠いておりましたので、本日あらためて明確な御答弁をいただきたいと思うものでございます。  それは、駐留軍要員健康保険組合の料率変更については、先般当委員会において、大臣がわざわざ発言を求められまして、十四日の日米合同委員会で結論が出なかった場合には、日本政府としては、最終的に責任を持って駐留軍要員健康保険組合の料率変更の認可を与えるという意味の御発言があったと記憶いたしておるのでございます。これに対して、聞くところによりますと、十四日の日米合同委員会では、米軍の保険料引き上げは保留になったように聞き及んでおります。この際担当大臣として、料率変更の認可を当然与えられるべきだと思いますが、それについて、まず御答弁をお願いいたしたいと思います。
  171. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先日御答弁申し上げた方針は、いささかも変化をいたさず、すでにその手続をとっておるような次第でございます。他の健康保険組合でありますれば、厚生大臣限りにおいて認可をいたし、また駐留軍の健康保険組合も、厚生大臣みずからの権限にあるわけでありますが、国際関係もありまして、閣内におきましては外務、大蔵両省が、この問題の最後の結着を下す際におきましての関係省であります。  その関係省と、ただいま協議に入っておるのでありますが、この両関係省からの言い分は、厚生大臣において認可をする権限に対して、異論を差しはさむものではないが、日米両国の円満なる関係において、結論を若干延ばす方が適当であろうという異論が出ております。私はこの異論に同意をいたしておりませんけれども、外務関係におきましては、最後の締結をする際には、向う側の同意を要するという見解をとっておられるようでありまして、この点、私は同意をする必要がないという見解をとり、内閣におきましても、法制局において同意をする必要はないという見解をとっておるのであります。  この点につきまして、今日では意見の対立がありませんで、同意を要しないと思うけれども、同意をさせた方がよいのだという建前から、外務、大蔵両省におきましては、若干の日時の余裕をもって円満なる妥結をいたしたい、こういう考え方のようであります。しかし厚生大臣としては、これに耳をかすわけには参りません。すなわち今日の健康保険一般の赤字というものが何によって出てきたか、医療費の増大によって出てきたことが明らかであり、かつその終局点は、保険料率を国内においてすら六十五に引き上げた際でありますから、五十八程度に引き上げることは、もはやアメリカ側の回答を待たずして実施をしたいというので、そういう手続を進めておるわけであります。従って、外務、大蔵両省が同意をいたしますれば、直ちに発動するという形になっております。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 今の答弁は、どうも少し矛盾をいたしております。大臣は外務、大蔵の同意がなくてもやる所存である、こういう一応の大前提に立って、最後的な結論は、なお外務、大蔵の同意を待っておる、こういう御答弁で、前後少し矛盾をしておるところがあったようであります。大体いつごろ外務、大蔵の同意を得て認可をされる所存であるのか、そのおよその見通しを一つ説明願いたいと思います。  先般当委員会においては、すでに閣議の了解も得ておるし、何が何でも十四日の結果を待ってすぐに認可するという御発言であった。今日は少し答弁が慎重になられて、幾分心境の変化を来たしておるのではないかと憶測せられる節もなきにしもあらずと思うのでありますが、いつごろ外務、大蔵両省の同意を得て御認可をなされる所存でありますか、お伺いしたいと思います。
  173. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 もう少し詳しくお話しすればよかったのでありますが、認可をする方針には、何ら変りはございません。さらにもう一段階進んで申し上げると、七月分から保険料率を引き上げるということについては、外務、大蔵両省も本日同意をいたしました。その認可を発動する日を、すなわち七月分からは認可を発動するのであるけれども、本日認可をすることと七月三十一日に認可をすることとは、同じ効力だそうでありまして、その間における猶予は、外務、大蔵両省が、その内容において変化がなければ、私としてもこれに対しては、自分方針に変化はありませんけれども、その間におけるところの内閣としての猶予、すなわちこの問題につきましては、鳩山総理大臣に対しても報告をいたしております。鳩山総理大臣も、今日の段階からして見のがすことのできない問題であるという観点から、何か外交折衝につきましても手を打たれるようにも聞いておりますので、その点は総理大臣に——外務、大蔵両省が、今日認可をすることと七月三十一日に認可をすることと変化がないという建前をとられて、内閣としての最後の猶予はされておるようであります。これは認可の権限は厚生大臣にありますが、日米関係の円滑化に対する問題の最後的決定権は、総理大臣にあろうかと思いますので、その点は私も猶予いたしておるわけであります。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、認可の方針はきまっておる、しかも七月分から料率の引き上げは認めるという、こういう二つの前提に立って、認可を下す日にちは七月三十一日までには下す、八月には入らない、こう今の御答弁では了解されますが、そう了解して差しつかえありませんか。
  175. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大体そういうふうに了解していただいてけっこうであります。
  176. 滝井義高

    ○滝井委員 幸い正示さんが大蔵省を代表してお見えになっておるので、正示さんにお尋ねいたします。当然これは日米間の一つの重要な外交上の折衝になっておるわけでございますが、現在聞くところによりますと、すでにアメリカの二世を伴って、この駐留軍の健康保険組合に対して監査が行われておるということであります。アメリカ人は日本人と違って、いろいろ風俗、習慣も異なりますが、なかなか合理主義者なんだ。従って、いろいろ会計、医療規約等を検討した結果、これはどうも本国の了解を得なければならぬ、あるいは陸海空三軍にまたがるものであるから、それぞれ三軍の最高責任者の了解を得なければならぬというようなことで、すでに三月以来の問題でございますからして、これをずるずるとのんでいく情勢もないとは言えない。そのときにおいても、今の川崎大臣の御答弁にありました通り、七月三十一日までに認可をするということになりますならば、一応の政府分担分としての年度末までの一億四千万円の金は、もしアメリカがオーケーを出さない限りは、日本政府において負担しなければならないという事態が起る可能性もあるわけです。そういうような場合には、これは当然七月三十一日までに認可を与えるからには、大蔵省としてもそれを出す御決心であられると思うのですが、そう了承して差しつかえないでしょうか。
  177. 正示啓次

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。滝井委員御指摘のように、ただいま日米両当局が協力いたしまして、この駐留軍労務者の健康保険組合の監査を鋭意やっておるわけでございます。先ほど厚生大臣からお答えになりました通りでございまして、大蔵省は両方の立場にあるわけでございますが、健康保険組合に赤字が出ないようにしていただきたいということも、大蔵省の切なる要望でございます。またその結果、国際的ないわゆる防衛支出金の本来米側において負担されるものが、円滑に米側の負担において支出せられるということも、もとより大蔵省の期待をいたすところでございます。そこで両方の立場におきまして厚生御当局、また外務御当局に対しまして、それぞれ御要望申し上げておるわけでございまして、この点、先ほど厚生大臣がお答え下さいましたような線で、両方の私どもの希望が達成されるように切に念願をいたしておるわけでございます。また私ども、ただいままで外務省あるいは調達庁、また厚生省からも代表の出ておられます合同委員会の分科会、これをパネルといっておるのでございますが、そこの方からの御報告によりますと、大体先ほど厚生大臣お答えのように、事が進められるように承知をいたしておりまして、私ども及ばずながら事務の一員といたしまして、その線で妥結されることの一日も早いことに御協力を申し上げておるような次第でございます。従いまして、滝井委員最後に御質問の点につきましては、私どもといたしましては、日米の基本的な関係から申しまして、また社会保障のきわめて重要な一環でございますととろの健康保険制度の健全なる発展という観点にも立ちまして、ただいま御指摘のようなことのないように、日米両当局の協力の結果、適正な結論が出まして、健康保険も組合の方も健全に発達をいたし、日米関係も円満に進展するというふうな結論の出ることを期待をいたしておる次第であります。
  178. 滝井義高

    ○滝井委員 なかなか名答弁で、ちょっとわかりかねるのですが、この点だけは、一つ念を押しておきたいのです。現在日米の監査委員会の手によって監査が行われておりますが、そうしますと、その結果が、おそらく日米合同委員会あるいはサブコミティに報告をせられると思います。そうしますと、いろいろ検討をすると、その結論が、昨日の大村主計官の御答弁では、サブコミティの結論が出てから認可をすべきだ、こういう御答弁もあったのです。私は、これは一応外交上の関係からいけば、そうあるのが筋だと思います。しかし、これはここ一、二カ月で起った問題ではなくして、すでにもう三月四日に組合会議を開いて、事業主である調達庁の方から出た委員も了承の上で、政府に対して、監督権者である認可権を持っておる厚生大臣に申し出たものなのです4それが長引いて、こういう状態になった。ところが今度は、これがいよいよサブコミティの結論が出た上でなければならぬということになれば、今申しましたような七月三十一日に至るまでには必ずしも出ないかもしれない。そうすると、との組合は御存じのように、四月、五月、六月と暫定でやってきている。もし七月見通しがつかないとすれば、当然これは七月、八月、あるいは九月というように暫定予算を組合自体が作らなければならぬということが一つと、それから今正示さんの御指摘になった赤字を出さないようにするためには、どうしてもこれを引き上げなければならない。引き上げなければ、すでに赤字が出るととは明白になってきております。たとえば、引き上げないままでいけば、二十九年度と三十年度の赤字というものは六億になる、もうはっきりしてきている。だから、これはあなたの言うように、赤字を解消するためには、どうしても引き上げなければならない。その引き上げた場合に、日本政府独自の立場でやったときに、アメリカがいわゆるそっぽを向いた場合の責任というものは日本政府がとるという御言明さえいただいておけば、組合自体も安心をして赤字の克服にも協力をするだろうし、医療にも組合員がかかれるような事態が起ってくるわけであります。私のほしいのは、何もこまかいととまで追求いたしたいとは思いませんが、認可を川崎厚生大臣は与えるという基本方針をとられておるのでありますから、大蔵省としては、わずか一億四千万円でありますから、そういうような場合には一つ政府において責任をとりましょうと、こういう一言さえいただければ、それ以上われわれはここでこまかいところまで言いたくない。そこで、川崎厚生大臣とよく御相談をされて、一つそれを——今、言わぬよと横から言っておりますけれども、しかし一応認可という方針を確認されたからには、これは責任をとるということでなければ、認可してもらった価値がないのです。昨日久下保険局長は、認可なんかは形式的だから大したことはありませんと、こうおっしゃったが、それならば、なぜ今年の四月にやらなかったか。それを後生大事に今まで守ってきたことは、認可ということにわれわれ非常に権限を認めたからこそ、今まで守ってきたわけです。この点、今なかなか名答弁でございましたが、もう少し正確に御答弁を願いたいと思います。
  179. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大蔵省の非常に財政的な負担になりまする行為でありますから、もちろん主計官といたしましても、先の見通しまで立てて御答弁申し上げなければならぬ点もありましょうけれども、せっかくの機会でありますから、私から少しく、どういうような微妙な線になってきておるかということを申し上げていいかと思うのであります。  これは、先般の十四日の会合では、ジョイント・コミティに出た福島調達庁長官から、一体作業はどの程度まで進んでおるのかということを聞いてみますると、ゲーノー少将から言明があって、十四日までに日本の厚生大臣は作業を完成して、そうしてジョイント・コミティに最終的結論を出せという要求をされておる、従って、自分の方もその責任があるから、でき得る限りの作業をせよということを言われておる。作業にかかっておる人員は百五、六十名からありましょうが、三班に分れて作業をしておる。第一は会計経理の問題、これが一番大きな問題でございます。第二は、健康保険組合の規約の関係の問題を調査しておる。第三には、健康保険組合の今日まで歩いてきた足取り並びに庶務関係を調査しておる。第二の規約関係並びに第三の庶務関係の事項については、本月曜日、すなわち十八日までに大体の結論が出ると思う。ただし、会計経理の問題については、たびたび言明をしているように、昭和二十四年までさかのぼらなければならぬ関係もあって、三週間ないし四週間の日時が必要であると思うということを答えておるそうであります。それに対して福島調達庁長官並びに稲垣欧米局次長から、さらに強力なる発言をいたしましたるところ、これについては相当向う側も反省の色を——その前の随時会見の際にも見せておったのでございます。一応四週間かかるというようなことを言わなければならぬ手前もあって、最初はそのような発言をいたしたそうでありますが、なるべく近い機会に出す、そういうことならばなるべく早い機会に出す、また国会において各種の質問もあり、また国内におけるところのことは一健康保険組合の問題ではあるけれども日本最大の組合たるの関係もあって、相当に大きな問題とも考えられるので、捻るべく早い機会に結論を出したい、できれば二十一日のジョイント・コミティまでにテンポラリーな報告をする、いわゆる中間報告を一応するというととを言明したそうであります。そういうような推移になってきておるということを、私に対しまして調達庁長官及び稲垣欧米局次長が申しまして、しばらく猶予をしてもらいたいと申しますから、自分としては猶予をすることはできないからこれは断行する、しかし、関係各省との関係があるので、本日の事務次官会議に正式の発言として事務次官から申すということをその際に申して、厚生省としてはあとへ引けないということである、ただし、外務、大蔵両省がどうしても猶予を願いたいということならば、それは、そのことに同意することはできないけれども、内閣総理大臣が日米関係を考えて、いま少し猶予をすれば同じ効力を発するのだということならば、それは、自分は厚生大臣として、すでに社会労働委員会に対して引き上げるということを言明をし、このことについて、自分の出所進退については天下に声明しておるのだから、事は一健康保険組合の問題であるけれども、食言をするわけにはいかぬということすら申して、そういう推移になっておるのであります。従ってアメリカ側も、けさの情報を聞いてみますと、上の方でどんどん事が運ぶので非常に困っておるというようなことを当人たちは申しておって、ここでの発言が全部漏れるわけでもないでありましょうけれども、注目をいたしておりますので、あるいはそういう方面へも波及するかもしれませんが、申し上げておけば、私がゲーノー少将に会いまして書簡を出して以来の当事者の協力ぶりは、相当なものだそうであります。非常な作業をしておるそうであります。何でそんなに作業が要るのかといえば、先ほど滝井議員から御質問があったように、ワシントンにまで報告書を出さなければならぬ関係で、五十八に上げるということにかりに同意すれば、同意をする基礎というものを出さないといけなということになるようでありまして、その点、非常な緻密な熱心な作業をやってきてくれておりますので、関係当事者、すなわち欧米局次長、福島調達庁長官あるいは鈴木財務官、私の方の山本健康保険課長、ことごとくが、その打診によりますれば、終局的には同意をするのではないか、これは楽観的な観測になるかもしれませんが、そういう気味というか観察で、その際、厚生大臣だけがそんなに早くに認可をするというので強硬措置をとってもらっては困るという陳情もあるのであります。しかし私は、既定方針はくずさずにいた方が、結果的によかろうということで、またそれが当然のことであろうと思いますので、今日続けてさらに督励をいたしておるような次第でありまして、この点、もし最後に間に合わずに引き上げた場合に、向う側がそっぽを向いて、そのために、最後は大蔵省が腹をきめてもらえば、健康保険組合が納得するであろう、ごもっともであります。大蔵省においても、もしそういうような最後の破局が来ますれば、決意をするところがあろうとは思いますが、財政当局として、あらかじめ一億四千万円自分の方で引き受けるということを、今から言明することは、この席上においては困難ではなかろうかというのが、私の大蔵当局の立場を思っての発言であることも御了承願いたい、かように存ずるのであります。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 今のお言葉の中に、重要なことがあるのです。それは福島長官みずからも、もう少し待つ方がよかろうという発言があったということですが、これは私は解せない。というのは、調達庁自身がアメリカ側にかわって事業主になっている。その事業主が組合員と一緒に承諾書を与えて政府に認可をしたのが事の起りです。だから、こういう認可を調達庁が得られないという見通しを持っているならば、調達庁が三月四日の組合会議で、なぜ認可を得られないからちょっと待ったということを言わないかということです。それを今になって言うということが——今日は福島さん見えておらぬから、抗議のしようもありませんが、この点がまず第一におかしいということ。  それから第二点は、今大臣から、私がいろいろ言ったから白状されましたが、会計経理、健康保険の契約あるいは庶務関係その他、いろいろ米軍側で監査が始まったので、これはおそらく二十一日に日米合同委員会に中間報告してくるでしょう。その結果、すぐにそこで結論を得ないで、当然陸海空三軍の調達も必要だし、本国の了解も得なければならぬということになるならば、私どもの今の感じでは、ずっと今までの大臣の答弁、今日の応答などから考え合せて、七月三十一日までには結論を得ないじゃないか。そうすると、七月三十一日になれば国会は終ってしまう。終ると、ちょっとわれわれは手がない。これはあまり責め立てたくないのですが、やはりこれは何らか明白な御答弁をいただいておかないと、暫定予算の関係とか、組合としては料率を上げられなければ、赤字がどんどんふえて、医者への支払いは少くなってきますから、従って医者としては、支払いをしてもらわなければ、いい治療はやれないという結果が当然出てきて、一番損するのは組合の患者なんです。だから、こういう点は、もう少し責任のある——大臣から今るる説明はありましたが、しかし大臣としては自信を持たれているのだから、大蔵省で最終的な責任を持つと言われておっても、見通しがあれば、ここはから手形をやるだけのことですから、実質は何も政府負担にはならない、最後は防衛支出金の中から出てくる、日本政府一般の税金からは行かないのだ、もちろん防衛支出金も税金ですが、最終的にはアメリカに行ったものから返ってくるという形になるのですから、それがここで言明できないということになると、ますますわれわれは疑わざるを得ないので、最後になればおっぽり出されるのではないか。もちろん政府管掌に切りかえていただいてかまわないのです。いよいよとなれば、それでもかまわない。それは大臣の方で六十から六十五に上げられているのですから、政府負担がますます多くなるだけです。政府負担が多くなるか、アメリカ側の負担が多くなるか、最終的には話し合いによらなければならぬと思いますが、こういう点もう少し明確に、大臣があれだけ責任ある御答弁をされたのですから、厚生大臣の答弁でもかまいません、大蔵省があれならわしが責任を持つ、これでもかまいませんから、それを一つ言っていただきたい。
  181. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘のようなことになりまして、とうとう引き受けたわ、それからあとは米軍が払わないわということになりますれば、これは最悪の場合であります。それは政府としての責任は私は持ちます、それに対する善後措置は……。
  182. 滝井義高

    ○滝井委員 今の川崎大臣の御言明を信頼してぜひ一つ御協力願います。
  183. 中村三之丞

    中村委員長 次会は明十九日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会      —————・—————