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田邊政府委員 実はこの条文を作るにつきましては、私どももずいぶん研究もいたし、苦心もいたしたのでございますが、一番
議論されました点は、理編上
公務でないものを
公務にするという立法の立場を避けるということでございます。第一条には、
公務上の
傷病に対して
国家補償の精神に基き云々と書いてございますので、どこまでも
傷病は
公務上のものでなければならぬという立場を堅持しつつ、しかも従来の
裁定の結果を是正し、あるいは今後残されている問題を円滑に進めていくようにしたい、これがわれわれの
出発点でございます。そこで、今高橋
委員がおっしゃる
通り、過去において
却下したものは、役所は
公務でないものと認定したものじゃないか、非
公務と認めたものではないか、それを
公務にするということは、非
公務を
公務にすることではないかという有力な反対
意見が部内にあったことは事実でございます。しかし、それは理論的
一般的に非
公務であるものを
公務であるとするという問題を、一応切り離して考えたい。過去に
裁定したものが絶対に正しいものであるならば、そういうことになるかもしれません。しかし、過去において
裁定したことが絶対に正しいものかどうかという点については、反省し、考え直して、みる必要がないかどうかということが、われわれの
考え方であったわけであります。たとえば、ある一定の
病気でなくなっておられます場合におきましても、それだけを考えられて
公務であるかどうかというふうには見られない、
環境のいかんということが非常に大事になってくる。実はこういう
環境でなくなっておるのだけれども、その
環境が
公務であることか積極的に認められないというので
却下になっておる
建前になっております。つまり、非
公務だといって
却下するということでは一ないので、公然であることが認められないということで
却下になっておるわけであります。従って、その際もう一歩進んだこういった
資料があった、こういう
資料が出てくるならば、それは
公務であると認められる可能性は十分あるわけであります。そういう
資料が集められないということから
却下になっておる事例は、相当あるわけであります。そこで一たん
却下したものであっても、その
公務認定の基準というと言葉は妥当でないかと思いますが、
公務という
観念そのものにおいては変りはないが、
公務認定の基準というものについては考え直そうということであります。そういたしました際に、今日まだ未
裁定として保留になっておるものについて
適用がありますと同時に、過去において
却下されたものについても、その条文が
適用せられることは当然であります。あるいはそういう
議論をする人が
政府部内においてあることは、私どもよく
承知いたしませんが、あったことは事実であります。最終的においては、私が今申し上げました
建前に統一されておるわけであります。すでに高幡
委員の御提案になりました
恩給法の
改正案におきましても、
恩給局においてに、既
裁定としてきめたものすら、
援護法のこの条文の発動によって引っくり返るものがあるということは、過去のものにも及ぶということが認められた証拠ではないかと思っております。その点が
一つであります。
それから、この条文の読み方によって右にも左にもなる、
援護審査会の議決という点になると、どうも不安である、右にも左にもなるという御懸念でございますが、従来の興前をそのままとるならば、今であれば、こういう条文の
改正というものは必要でないわけであります。
公務であることが積極的に立証されない場合は
却下するということと、非
公務であることが積極的に立証された場合に
却下するということは、非常に差があるわけであります。こういったことができます以上、
援護審査会における裁決も、この規定の精神に従って運用さるべきものであると思います。もっとも、昨日から申し上げております
通り、
審査会の議決を該当
件数数千件にわたるものについて一一することが適当であるかどうかという点は、別に問題は残りますけれども、これは別に非
公務であることが明らかであるか、明らかでないかを役所側だけにまかせたのでは非常に不安定であるので、こういう合議機関において慎重にやらせたいということがこの提案の趣旨であるということを、御了承願いたいと思います。