運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-12 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十二日(火曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君    理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君       植村 武一君    小川 半次君       草野一郎平君    小島 徹三君       横井 太郎君    越智  茂君       倉石 忠雄君    高橋  等君       中山 マサ君    野澤 清人君       八田 貞義君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       横錢 重吉君    井堀 繁雄君       受田 新吉君    神田 大作君  出席政府委員         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 總一君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         議     員 早川  崇君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 濱口金一郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 七月十一日  委員横井太郎辞任につき、その補欠として牧  野良三君が議長指名で 同月十二日  委員牧野良三君及び佐々木更三君辞任につき、  その補欠として横井太郎君及び多賀谷偵稔君が  議長指名委員選任された。     ————————————— 七月九日  健康保険における医療給付費の二割国庫負担等  に関する請願神近市子紹介)(第三八一九  号)  同(片山哲紹介)(第三八二〇号)  同(水谷長三郎紹介)(第三八二一号)  同(小坂善太郎紹介)(第三八二二号)  同(中馬辰猪紹介)(第三八二三号)  同(眞崎勝次紹介)(第三八二四号)  同(淵上房太郎紹介)(第三八二五号)  同(木下哲紹介)(第三八二六号)  同(田中利勝紹介)(第三八二七号) 同月十一日  健康保険法等の一部改正に関する請願(阿左美  廣治君紹介)(第三八四一号)  同(阿郎五郎紹介)(第三八四二号)  同(青木正紹介)(第三八四三号)  同(青野武一紹介)(第三八四四号)  同(赤城宗徳紹介)(第三八四五号)  同(赤松勇紹介)(第三八四六号)  同外一件(茜ケ久保重光紹介)(第三八四七  号)  同(淺香忠雄紹介)(第三八四八号)  同(足鹿覺紹介)(第三八四九号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第三八五一号)  同(荒舩清十郎紹介)(第三八五二号)  同(有田喜一紹介)(第三八五三号)  同(有馬英治紹介)(第三八五四号)  同(有馬輝武紹介)(第三八五五号)  同(淡谷悠藏紹介)(第三八五六号)  同(赤路友蔵紹介)(第三八五七号)  同外一件(小笠公韶君紹介)(第三八五八号)  同(五十嵐吉蔵紹介)(第三八五九号)  同外一件(井岡大治紹介)(第三八六〇号  同(井谷正吉紹介)(第三八六一号)  同外一件(井手以誠君紹介)(第三八六二号)  同(井出一太郎紹介)(第三八六三号)  同(伊藤好道紹介)(第三八六四号)  同外一件(猪俣浩三紹介)(第三八六五号)  同(池田勇人紹介)(第三八大六号)  同(石田博英紹介)(第三八六七号)  同(石田宥全君紹介)(第三八六八号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三八六九号)  同(石村英雄紹介)(第三八七〇号)  同外一件(石山權作君紹介)(第三八七一号)  同(稻村隆一君紹介)(第三八七二号)  同(今松治郎紹介)(第三八七三号)  同(宇田耕一紹介)(第三八七四号)  同外一件(宇都宮徳馬紹介)(第三八七五  号)  同外一件(植木庚子郎君紹介)(第三八七六  号)  同(植原悦二郎紹介)(第三八七七号)  同外三件(遠藤三郎紹介)(第三八七八号)  同(小川豊明紹介)(第三八七九号)  同(大倉三郎紹介)(第三八八〇号)  同(大島秀一紹介)(第三八八一号)  同(大高康紹介)(第三八八二号)  同(大西正道紹介)(第三八八三号)  同(大橋武夫紹介)(第三八八四号)  同外一件(大橋忠一紹介)(第三八八五号)  同(大村清一紹介)(第三八八六号)  同(大森玉木紹介)(第三八八七号)  同(大矢省三紹介)(第三八八八号)  同外一件(奥村又十郎紹介)(第三八八九  号)  同(加賀田進紹介)(第三八九〇号)  同外一件(加藤清二紹介)(第三八九一号)  同(加藤高藏君紹介)(第三八九二号)  同(加藤常太郎紹介)(第二八九三号)  同(風見章紹介)(第三八九四号)  同外一件(片島港君紹介)(第三八九五号)  同外四件(勝間田清一紹介)(第三八九六  号)  同(上林與市郎紹介)(第三八九七号)  同(神近市子紹介)(第三八九八号)  同(川崎末五郎紹介)(第三九〇〇号)  同(神田博紹介)(第三九〇一号)  同(川野芳滿紹介)(第三九〇二号)  同(川俣清音紹介)(第三九〇三号)  同(川村善八郎紹介)(第三九〇四号)  同(川村継義紹介)(第三九〇五号)  同(菅野和太郎紹介)(第三九〇六号)  同(木崎茂男紹介)(第三九〇七号)  同(木原津與志君紹介)(第三九〇八号)  同(木村俊介紹介)(第三九〇九号)  同(菊池義郎紹介)(第三九一〇号)  同北吟吉紹介)(第三九一一号)  同(北澤直吉紹介)(第三九一二号)  健康保険法等の一部改正に関する請願北山愛  郎君紹介)(第三九一三号)  同(吉川久衛紹介)(第三九一四号)  同(久野忠治紹介)(第三九一五号  同外一件(久保田鶴松紹介)(第三九一六  号)  同(久保田豊紹介)(第三九一七号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第三九一八号)  同(小枝一雄紹介)(第三九一九号)  同(小金義照紹介)(第三九二〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第三九二一号)  同(小島徹三紹介)(第三九二二号)  同(小平久雄紹介)(第三九二三号)  同(小西寅松紹介)(第三九二四号)  同(小松幹紹介)(第三九二五号)  同(小山長規紹介)(第三九二六号)  同(五島虎雄紹介)(第三九二七号)  同(河野金昇紹介)(第三九二八号)  同(纐纈彌三君紹介)(第三九二九号)  同(佐々木更三君紹介)(第三九三〇号)  同(佐竹新市紹介)(第三九三一号)  同(佐藤榮作紹介)(第三九三二号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第三九三三号)  同(坂本泰良紹介)(第三九三四号)  同外一件(櫻井至夫君紹介)(第三九三五号)  同(欄内義雄紹介)(第三九三六号)  同(齋藤憲三紹介)(第三九三七号)  同外一件(笹山茂太郎紹介)(第三九三八  号)  同(須磨彌吉郎君紹介)(第三九三九号)  同外一件(薩摩雄次紹介)(第三九四〇号)  同(志村茂治紹介)(第三九四一号)  同(重政誠之紹介)(第三九四二号)  同(島上善五郎紹介)(第三九四三号)  同外一件(下平正一紹介)(第三九四四号)  同(下川儀太郎紹介)(第三九四五号)  同(首藤新八紹介)(第三九四六号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第三九四七号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三九四八号)  同(田中伊三次君紹介)(第三九四九号)  同(田中織之進君紹介)(第三九五〇号)  同外一件(田中武夫紹介)(第三九五一号)  同(田中龍夫紹介)(第三九五二号)  同外一件(田中稔男紹介)(第三九五三号)  同(田中久雄紹介)(第三九五四号)  同(田中正巳紹介)(第三九五五号)  同(田村元紹介)(第三九五六号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三九五七号)  同外二件(高津正道紹介)(第三九五八号)  同(高橋禎一紹介)(第三九五九号)  同(高槽等紹介)(第三九六〇号)  同外二件(高見三郎紹介)(第三九六一号)  同(竹山祐太郎紹介)(第三九六二号)  同(外一件楯兼次郎君紹介)(第三九六三号)  同(塚原俊郎紹介)(第三九六四号)  同(辻原弘市君紹介)(第三九六五号)  同(中村高一君紹介)(第三九六六号)  同(堤康次郎紹介)(第三九六七号)  同(戸塚九一郎紹介)(第三九六八号)  同(渡海元三郎紹介)(第三九六九号)  同(徳安實藏紹介)(第三九七〇号)  同(中垣國男紹介)(第三九七一号)  同(中川俊忠君紹介)(第三九七二号)  同(中嶋太郎紹介)(第三九七三号)  同(中原健次紹介)(第三九七四号)  同(中村梅吉紹介)(第三九七五号)  同(中村寅太紹介)(第三九七六号)  同(永井勝次郎紹介)(第三九七七号)  同(永田亮一紹介)(第三九七八号)  同外一件(永山忠則紹介)(第三九七九号)  同(長井源紹介)(第三九八〇号)  同(灘尾弘吉紹介)(第三九八一号)  同(並木芳雄紹介)(第三九八二号)  同(成田知巳紹介)(第三九八三号)  同(丹羽兵助紹介)(第三九八四号)  同(西村力弥紹介)(第三九八五号)  同(野澤清人紹介)(第三九八六号)  同(芳賀貢紹介)(第三九八七号)  同(野田武夫紹介)(第三九八八号)  同(野原貴紹介)(第三九八九号)  同(長谷川四郎紹介)(第三九九〇号)  同(濱地文平紹介)(第三九九一号)  同(濱野清吾紹介)(第三九九二号)  同外一件(原茂紹介)(第三九九三号)  同(原彪紹介)(第三九九四号)  同(平塚常次郎紹介)(第三九九五号)  同(平野三郎紹介)(第三九九六号)  同(廣川弘禅紹介)(第三九九七号)  同(福井順一紹介)(第三九九八号)  同(福井盛太紹介)(第三九九九号)  同(福田篤泰紹介)(第四〇〇〇号)  同(藤枝泉介紹介)(第四〇〇一号)  同(藤本捨助君紹介)(第四〇〇二号)  同(古井喜實紹介)(第四〇〇三号)  同(古島義英紹介)(第四〇〇四号)  同(古屋貞雄紹介)(第四〇〇五号)  同(帆足計紹介)(四〇〇六号)  同外一件(穗積七郎紹介)(第四〇〇七号)  同外一件(細迫兼光紹介)(第四〇〇八号)  同(本名武紹介)(第四〇〇九号)  同(牧野良三紹介)(第四〇一〇号)  同(正木清紹介)(第四〇一一号)  同(松浦周太郎紹介)(第四〇一二号)  健康保険法等の一部改正に関する請願松尾ト  シ子紹介)(第四〇一三号)  同(松原喜之次紹介)(第四〇一四号)  同(三田村武夫紹介)(第四〇一五号)  同外一件(三鍋義三紹介)(第四〇一六号)  同(宮澤胤勇紹介)(第四〇一七号)  同外一件(武藤運十郎紹介)(第四〇一八  号)  同(村上勇紹介)(第四〇一九号)  同(森清紹介)(第四〇二〇号)  同(森山欽司紹介)(第四〇二一号)  同(八百板正紹介)(第四〇二二号)  同外一件(安中鹿一君紹介)(第四〇二三号)  同(山崎始男紹介)(第四〇二四号)  同(山下春江紹介)(第四〇二五号)  同(山中貞則紹介)(第四〇二六号)  同(山花秀雄紹介)(第四〇二七号)  同(山本幸一紹介)(第四〇二八号)  同(山本正一紹介)(第四〇二九号)  同(山本利壽紹介)(第四〇三〇号)  同(横井太郎紹介)(第四〇一二号)  同(横川重次紹介)(第四〇三二号)  同(横路節雄紹介)(第四〇三三号)  同(横山利秋紹介)(第四〇三四号)  同(渡邊良夫紹介)(第四〇三五号)  同外一件(早稻田柳右エ門紹介)(第四〇三  六号)  同(亘四郎紹介)(第四〇三七号)  同(花村四郎紹介)(第四〇三八号)  同(山口喜久一郎紹介)(第四〇三九号)  同(山口好一紹介)(第四〇四〇号)  同(山口丈太郎紹介)(第四〇四一号)  同(竹尾大紹介)(第四〇四二号J審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員追加選任  覚せい剤取締法の一部を改正する法律案早川  崇君外四十名提出衆法第三九号)  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九四号)  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一一号)  医業類似療術行為期限延長反対に関する請願  (保科善四郎紹介)(第二〇九五号)  医療機関に関する件     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず医業類似療術行為期限延長反対に関する請願文書表第二〇九五号を議題といたします。  本請願は、七月十一日付をもって紹介議員保料善四郎君より、取り下げ願い提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって本請願取り下げを許可することに決しました。
  4. 中村三之丞

    中村委員長 この際、小委員追加選任の件についてお諮り申し上げます。医療機関に関する小委員会の小委員の数は、現在八名となっておりますが、これに一名追加して九名となし、その小委員選任につきましては、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、井義高君を指名いたします。     —————————————
  6. 中村三之丞

    中村委員長 次に、日程に追加いたしまして、早川崇君外四十名掲出の覚せい剤取締法の一部を改正する法律案議題となし審査に入ります。提出者より趣旨説明を聴取することといたします。早川崇君。
  7. 早川崇

    早川崇君 それでは覚せい剤取締法の一部改正法案、四党共同提案になっておりまする法律案提案理由説明を申し上げたいと存じます。  覚醒剤弊害を取り締るための法律改正は昨年実施されたのでございますが、その後覚醒剤事犯悪質化等が絶えませんので、このたび次の重要な二点にわたりまして、改正をいたしたいと存ずるのであります。第一点は、罰則強化でございます。昨年の改正のときに、覚せい剤取締法違反者に対する罰則は、いかなる理由でございましたか、あへん法並びに麻薬法取締法よりも軽く刑罰が設けられておるのでございます。ところがその後の経験から申し上げますならば、アヘンまたはヘロインよりも、覚醒剤による弊害の方がはるかに国家社会に及ぼす影響が大きいのでございます。なぜなれば、ヘロインアヘンの場合には、精神分裂というものを起しませんが、覚醒剤中毒にかかりますと、精神分裂を来たしまして、私の和歌山県に一例をとりましても、そのためにすでに一カ月間に三件、四件にわたる殺人事犯が起っておる始末でございます。従って、この際罰則を少くとも麻薬取締法並びにあへん法並みに平等にするということが第一点でありまして、常習としての違反は一年以上十年以下の懲役、または情状により一年以上十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金というように、麻薬取締法並みに引き上げたのでございます。  第二の改正要点は、現行法では、覚醒剤取締りということは実施しておりますが、これを製造する原料に関しましては、全く野放しの状態でございます。そのために容易に覚醒剤が製造いたされるわけでございまして、この際覚醒剤原料をも規制をいたしまして、根本的に覚醒剤製造事犯取締りをいたしたい、かように考えておるわけでございます。しかしながら、これによって不当に薬剤業者を圧迫しないように、この法律においては各般の工夫をこらしておるわけでございます。  以上二点が改正要点でございます。現在覚醒剤中毒経験者は二百万、常習中毒者五十万ないし六十万といわれておるのでございまするが、この二点の改正がなされて一層取締り強化されまするならば、おそらく私の見るところでは、少くともアヘン中毒者あるいはヘロイン中毒者程度の少数にまで覚醒剤中毒者を減少せしめ得るとかたく確信を持っておる次第であります。  もう一つ、覚醒剤問題で遺憾に存ずるのは、覚醒剤製造業者の約半数近くが北鮮系朝鮮人であるということでございます。しかも北鮮系朝鮮人は、みずからヒロポンは注射いたしません。そこに日本民族の頽廃を来たす非常におそるべき原因もあるかと私は存ずるのでございまして、このまま放置しておきまするならば、かっての英国による中国のアヘン禍というようなおそるべき弊害なしともしないことをおそれておるわけでございます。  以上は、はなはだ簡単でございまするが、各党共同の御提案になりまする覚せい剤取締法の一部を改正する法律案提案者の一人といたしまして、提案理由を御説明申し上げた次第でございます。何とぞ慎重御審議の上、原案通り御賛成いただきまするよう、お願い申し上げる次第でございます。  それから一言つけ加えておきますが、事務当局の印刷の誤りで、正誤表がまだお手元に配付しておりませんので、明日お手元にお配りいただくことになっております。御了承願います。
  8. 中村三之丞

    中村委員長 以上で趣旨説明は終りました。  なお本案に対する質疑その他につきましては後日に譲ることといたします。     —————————————
  9. 中村三之丞

    中村委員長 失業保険法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の二法案一括議題となし、質疑を継続いたします。横錢重吉君。
  10. 横錢重吉

    横錢委員 次に資格確認の件についてお尋ねをいたします。今度の改正の特徴は、従来は強制加入で、第六条規定をそのまま適用されただけでありましたが、今度の場合には資格確認条項が入って、ここで被保険者資格確認される、特質を確認されることになったわけでありますが、この資格確認条項は、八百万の被保険者を対象として行うのであるから、これは相当事務量であろうと思うのであります。従ってこれは大へんな問題であるが、現在のこの職安の配置の状況は、一体どうなっておるのか。職安の数とか、あるいは各県別の定数とか、こういうような具体的な内容について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  11. 江下孝

    江下政府委員 確認事務を実施いたしますと、仰せのごとく非常な事務増加になるわけでございます。本年度予算におきましても、特にこの確認事務を実施いたしますために、二百五十人の、これは臨時職員でございますが、この増加を認めていただいておるのであります。安定所は、全国で出張所も入れまして五百三十五カ所ございます。定員といたしまして本定員臨時職員全部入れまして一万五千人でございます。大きな都市には数カ所ざごいますし、小さくても市には大体一カ所、あるいは町にもございますが、そういう分布でございます。
  12. 横錢重吉

    横錢委員 今の点さらに落ちたようでありますが、各県別定員あるいは職安の全国的な数、これを一つお答え願います。
  13. 江下孝

    江下政府委員 全国的な数は、今申し上げました一万五千人であります。  そこで各県別は……。
  14. 横錢重吉

    横錢委員 事業所です。
  15. 江下孝

    江下政府委員 全部の職安に働いております職員定員数が一万五千人、これが五百三十五個所に分布されておるわけでございます。各県別のは、後ほど資料で提出いたします。
  16. 横錢重吉

    横錢委員 現在の職安状況を見るのに、設備その他は各官公署建物に比較して著しく劣っておると思う。きわめて劣悪な事業所の中で働いておる。しかもこの仕事内容からいいまして、そういい設備もなかなかできない現状なのかとも思うのでありますが、ただこの点が問題になってくるのは、安定所職員の場合における休業率の高さということである。大体ほかの事業所においては三%いなし五%程度が休業しておる率でありますが、安定所の場合においては、一〇%を越える休業者を出しておる、しかも、安定所の中における空気の汚染度はきわめて悪いこのために、たくさんの者が出ておりますので、そこで二百五十人の臨時の人の増員というようなことをやっても、実は現在休業しておる者の補充程度にしか当らない。しかもまた、これを内容的に見るならば、職安の中では、いろいろな仕事をしておるので、現実失業保険を取り扱っておる者は一事業所で二名ないし三名、多いところでも五名程度しか当っていないのではないか。従ってこの程度人員では、とうてい確認条項仕事の量としてさばき切れない、労働強化になってくる可能性が出てくる。現実にこれをやろうとしたならば、少くも千人程度の人数は必要とするのではないか、こう考えておるが、この間の事情はどうであるか、お伺いします。
  17. 江下孝

    江下政府委員 お説の通り安定所設備あるいは陣客というものは、私に非常に苦しいということは承知いたしております。そこで、実は毎年安定所建物あるいは人員増加等につきまして、予算的にも折衝をいたしております。本年度におきましては、今申し上げましたように、二百五十人という増加でございますが、実は二十九年度中におきまして、特に予備費をもちまして増加したものも入れますと、二十九年度当初に比較いたしまして三十年度におきましては八百九十九人の増加を見ております。もう少し定員をふやすということも、私どもは必要だと思いますし、今後もこの点については、十分の努力をしたいというように考えております。  なお、不衛生な点と欠勤率が非常に高いということも、私も承知いたしております。この点については、人事院方面とも絶えず折衝いたしまして、ああいう特別な仕事に従事しておる者に対する特別な手当というようなものも考えられるならばということも、実は折衝はいたしております。現在安定所におきましては、日雇い関係労働関係を担当いたします者に対しましては、特別に人事院規則によりまして一号俸の特別増給をいたしておりますが、今後ともこの方面にさらに努力をいたしまして、できるだま快適な職場で快適な仕事ができるよう、私としては全幅の努力を払って参りたいと思います。
  18. 横錢重吉

    横錢委員 この仕事をやろうとすれば、そういうふうに相当人員をふやさなければできないということは、事実だと思うのです。しからば、人員をふやすという点について考えてみたときに、今日の国家財政も窮迫を告げておりますし、かつまた国の方でこの措置をするならば、その影響は必ず地方財政の上にも影響していくのであります。従ってこの資格確認条項というものが、そういうように財政相当程度圧迫をするような無理をしてまでも行わなければならない必要性を持った問題であるかどうかという点が、この際問題とされなければならないと思うのでありますが、あえてこの点に関して、財政上のこういうような無理をしてもやらなければならない理由について、どの程度検討されたか、この点さらに承わりたいと思います。
  19. 江下孝

    江下政府委員 この失業保険事務は、現在もそうでございますし、全額国費で実施をいたしております。従って今後も地方財政に迷惑をかけることはほとんどないのでございます。やり方といたしましては、確認の当初におきまして、相当膨大な事務量が一時に出るわけでございます。つまり、今までやってなかったことを新たに着手するわけでありますから、各事業場から名簿を取りまして、それを安定所に備え付けると、これまでの事務が、相当大きいのではないか。その後、もちろん加除訂正は必要でございますが、当初やりますときに事務量が非常にふえる。そこで、それに対しては、私どもはこの夏の期間を利用しまして、できるだけアルバイト等をたくさん入れまして、特別にこのためには書類の整備をやらせるということで、どうにかこの点についてはやっていけると思います。  なお、それほどまでにやらなければならないと言われる点ごございますが、先般も申し上げましたように、私どもとしましては、これは使用者、労働者両者からの醵出の金、それに三分の一の国庫負担がついておりますから、すべてこれは法的な経理でございます。これらの経理の適正な収徴あるいは支出を行うという見地に立ちますと、どうしても私どもといたしましては、この制度を採用しなければいけないというふうに考えておる次等でございます。
  20. 横錢重吉

    横錢委員 それでは、次に二百六十億円の備蓄金の活用についてお伺いをいたしたいと思います。現在までに失業保険の備蓄が二百六十億に達しておるわけでございますが、この膨大な金は、一体どういうように保管をされ、またどういうように活用をされておるのであるか、現在の内容について一つ承わっておきます。
  21. 江下孝

    江下政府委員 正確に申しまして、二十九年度末には二百五十億円になっておりますが、この二百五十億円につきましては、すべて大蔵省資金運用部に預託をして運用しておるということに相になっております。これは法律の規定によりまして、そういう建前になっております。運用部で各方面にこれを運用しておるわけでございますが、この運用の結果といたしまして、利子の収入が三十年度において約十二億を見込んでおります。この十二億につきましては、先般御説明いたしましたように、この中から五億五千万円は失業保険の福利施設に充当し、残りにつきましては、失業保険事業を行います国の行政事務費に充てておるというのが実情でございます。
  22. 横錢重吉

    横錢委員 五億五千万円だけ今年度から福利施設に回すという折衝でありますが、大体この利子そのものが問題であるのに、さらにその中の約半額程度しか回さないということも、どだいおかしなものである。それならば、現往までに一体どの程度の金額を労働省の方では使っておるのか。かつまた、この利子の中から事務費にこれを使っておるということを言うておるのですが、大体事務費というのは、これは政府の方の予算から出さなければならないように明文が出ておる。ところがこの利子の方から出して差しつかえないものかどうか、この点についてももう一つ承わりたい。
  23. 江下孝

    江下政府委員 仰せの通り、私どもとしましては、この積立金運用収入につきましては、これは当然民間から徴収した金の運用でございますので、一般の福利施設に還元すべきが建前と存じます。事務費に充てるということは、本筋ではないと思います。ただ、現状におきましては、この法律の規定がややあいまいなために、大蔵省といたしましてはそういう措置をとっておるのでございます。  そこで、実はこの福利施設費の内容でございますが、当初におきましては、これは全部事務費の方に回しておった。これでは非常に困るということで、一昨年からこの福利施設に回し始めてから昨年は約四億、今年は五億五千万円にこれをふやしたのであります。来年度におきましては、ぜひとも全額福利施設に充当するように、私どもとしては努力をいたしたいと考えております。
  24. 横錢重吉

    横錢委員 第二十八条には、国が三分の一のほか、事務費に要する経費を予算の範囲で負担する、こういうふうになっておるのです。ところが、この積立金の利子の中から出す金というものは、一体予算の中に繰り入れて使っておるのであるか、繰り入れずに使っておるのであるか、その辺はいかがですか。
  25. 江下孝

    江下政府委員 繰り入れて使っておるわけであります。
  26. 横錢重吉

    横錢委員 二百六十億、去年の暮れで二百五十億といいますが、この二百五十億の金の運営というものは、全体が失業保険の被保険者のものとして考えられなければならない。従って、それを所管するところの労働省として、これは重大な責任があろうと思う。これを資金運用部資金に回して大蔵省の方にゆだねてしまう、その行き先は一体どこに使っておるのかというと、これは大体財政の投融資ではなかろうかと思うのですが、こういうような産業の方面に回す性質の金ではないのであります。従って利子の分の五億だとか四億だとかいう小さな金額をもらって、この運用でがまんをしておる段階ではなくて、この二百五、六十億の金全体を、労働省が被保険者の福利施設等に回し得る限度において回していかなければならぬ、こういうような性格のものだと思うのですが、労働省はこれを改正してやっていく考えはないのですか、この点について伺いたい。
  27. 江下孝

    江下政府委員 現在預けております二百五十億の金は、公債、社債その他財政投融資に活用しておるのでございます。私どもといたしましては、この二百五十億の金は、民間で積み立てた金でございますから、できるだけ民間の福祉に還元するように使ってもらいたいということを折衝いたしておるのでございます。ただ御承知の通り、この金は短期保険でございますので、実は長期の融資に適当しないのでございまして、私どもは大蔵省に対しまして、労働者の住宅建設にこの金を回してもらいたい、あるいは就職資金の貸付に回してもらいたいということを二、三年折衝いたしておりますが、これは預金部の金でございまして、それを資金運用審議会でやるのが建前になっております。これはひとり失業保険だけではございませんで、ほかの社会保険の金は、全部そういうふうに預金部の資金で運用する建前になっておりますので、やむを得ないかと存じますが、問題はこの運用について、今申し上げましたように必要に応じて折衝いたしておりますが、短期資金であるという関係で、なかなか労働者の福利施設にうまく回っていないというのが現状でございます。しかし、仰せの通り、私どもとしては、この金はできるだけ労働者の福利施設に回すという建前で、大臣もそういうふうに御説明したと思いますが、今後努力をするつもりで、本年度は了承願いたいと思います。
  28. 横錢重吉

    横錢委員 福利施設を五億五千万の中において実施しようと考えられておりますが、しからば、その内容はどういうものか、どういう形でこれを行おうとしておるか、この点についてお伺いいたします。
  29. 江下孝

    江下政府委員 五億五千万円の使途でありますが、このうち約五億は総合公共職業補導所、つまり短期の技能養成の施設を設置いたしたいと考えております。あとの約五千万につきましては日雇い労働者の簡易宿泊施設に充てたいというふうに考えております。どこにどういうように作るかということは、現在検討をいたしておる段階であります。
  30. 横錢重吉

    横錢委員 さらに一つ伺います。各種の改正点が出ましたが、現在本法の中にあるもので、日雇い失業保険の給付の額でありますが、これは一級が百四十円、二級が九十円というきわめて低い額であって、現実の生活情勢には合わないところのものである。この金額を支給して生活の保障をするということは、日雇い労働者の場合においても困難な、低過ぎる額である、こう考えるのでありますが、この額について、なぜ改正案が出ないか、あるいはまた出す意思がないかどうか、この点についてお伺いいたします。
  31. 江下孝

    江下政府委員 この日雇いの失業保険でありますが、これは御承知の通り数年前に新しく設置した制度でありまして、この制度の利用者は、六割以上が失業対策事業に就労する人たちであります。問題点は、これらの額を引き上げる、あるいは言われておりますように段階をなくすというようなことにいたしますと、どうしても現在の保険料では間に合わないのであります。現在は労働者一人一日の負担は二円であります。これをもし二百円に引き上げる、あるいは段階をなくすということになりますと、この保険料を相当程度引き上げなければならないという結果に相なるのであります。一方におきまして日雇いの失業保険は、御承知の通り現在就労日数の非常によろしい地帯におきましては、この恩恵はないのであります。就労日数の非常に多い東京都の日雇い労働者の方々は、保険料がほとんどかけ捨てになっておるというのが実情であります。そこで私どもといたしましては、保険料の引き上げということが伴いますために、この保険制度を改正することには、どうしても踏み切りができないのであります。絶えず検討はいたしておるのでありますけれども、現段階におきましては、失業対策事業に働いておる人が相当部分を占めております就労日数をできるだけふやしていく、この方向で努力していく方がほんとうの行き方ではないか。国で二十一日確保して、そのほかに保険を出すというのは、やや構成として非常に不明確でございます。私どもの考えとしては、保険料の値上げを伴うような改正を行うよりは、むしろ就労日数をできるだけ多くしていくという方向に努力をすることが、結局これらの人たちの福祉の増進ということになると思いますので、現在のところは、そういうふうに考えておるのであります。
  32. 中村三之丞

  33. 横井太郎

    横井委員 今度のこの労災保険の中に、総トン数五トン以上の漁業を取り入れられました基本的な考えを、一つ承わりたいのであります。
  34. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 今回五トン以上の漁船にいたしました理由は、御承知の通り三十トン以上のものにつきましては、船員保険法でカバーされておるのであります。そうしてこの五トン未満をなぜ入れないかということが問題になるのでございますが、この漁船を今回強制適用事業にしたゆえんのものは、提案理由にもございましたように、近年台風その他によりまして、災害が相当ふえたということに主たる原因があるわけでございます。五トン未満におきましては、御承知のように、主として陸岸に近接いたしました作業をいたしますので、五トン以上のものに比べまして非常に災害が少いのであります。海上保安庁の調査によりますと、五トン未満のものと五トンから十九トンまでのものとの災害比率は八倍、八分の一というふうなことになっておる。こういうところから、五トンで線を切ったような次第でございます。
  35. 横井太郎

    横井委員 五トンを基準といたされましたのは、考えようによっては、大体いいとは思いますが、漁業の種類によっては、相当近距離であっても危険の多いところもあるし、あるいは遠距離であっても、比較的危険の少いところもある。しかも、人間の数からいうと、漁業の種類によって、非常に遠方へ行っても少くていい、沿岸であっても多いというように、漁業というものは、非常に特殊性があるわけであります。そこで五トンというのは、少しトン数が多くて、三トンぐらいが妥当でないかというような見解もあるが、この点はどうですか。
  36. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 ごもっともな御意見でございますが、五トン未満と申しますと、大体水産庁とも相談し、業界とも相談した線でございます。五トン未満の漁船の従業員につきましては、相当部分が家族従業者が乗っておりまして、本法によって保護されまする雇用労働者は、大体平均五人未満ということになるようでございます。一般に労災保険の製造工場におきましても、五人未満の事業は、すべて任意適用になっておるわけであります。そこで、一応そういう線を引いたのでありますが、先生のおっしゃいますような場合におきましては、業界なり水産庁なりと連絡いたしまして、従来もそうやっておったのでありますが、できるだけ任意適用、任意加入を勧奨いたしまして事態に善処して参りたい、こういうふうに考えます。
  37. 横井太郎

    横井委員 この五トンか三トンかということは、相当議論があるようでありますが、三トンを限度とすることが非常に叫ばれておりますので、将来なおよく研究していただきたいと思います。  それからカッコ書きの中に、河川、湖沼とか、平静なところには適用するかせぬかという問題であって「労働大臣の指定する水面」ということがうたってあるのですが、平静か平静でないかという大体の見分け方、あなた方のお考えはどういうところにあるのですか。
  38. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 河川、湖沼というのは非常に明瞭でございますので、法律に明確に規定したのでありますが、その他の少いところという大臣の指定する水面として、現在一応考えておりますのは、東京湾だとか−私その方の専門家ではございませんが、水産庁なり海上保安庁と連絡いたしまして、そういう入り組んだ湾、これを大体考えておるわけであります。
  39. 横井太郎

    横井委員 そうすると、あなたの方では、どの湾とか、どの海とかいうものを一々調べて、そういうものを指定されるわけですか。
  40. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 この点につきましては、主として業界からの要望等もございまして、こういう弾力規定を設けたわけでありまして、一つ一つ関係方面と連絡し、過去の海難事故等の実績等をも参照し、かつ台風との関連なども勘案いたしまして、ここに労働大臣が指定する手続をとりたいというわけであります。
  41. 横井太郎

    横井委員 海というものは、非常な特異性がありまして、今まで平静であっても突風が吹いてくる、突風があってもやがてやむというようなこともあるのですが、そういうようなことはどう考えておられますか。
  42. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 仰せの通りの事情でございますので、この労働大臣の指定水面というものは、河川ないし湖沼に準ずる限度の、きわめて制限された範囲内で指定していきたいと考えるわけであります。
  43. 横井太郎

    横井委員 労災法の適用を受けるのは三十トン未満であって、あとは船員保険の方で適用する、こういうことでございますが、現在の三十トンというものは、将来大いに考えなければならぬと私は思うのであります。漁船というものは、小さな伝馬船から大は三万トン級の大きな船がある。従って、一体どの線で切るかということは非常にむずかしいと思う。そこで、現在の状態において、三十トンで切ったならば、一体どちらが得なんでございますか。損得ということはおかしい言い方でありますが、被保険者の方からいえば、船員保険の適用を受けるのが得なのか、労災保険でいくのがいいのか、この三十トンの切り方というものは、非常な問題になると思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  44. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 この船員保険法と労災保険の間に、三十トンで線が引かれておる、この三十トンの線の引き方というものは、必ずしも労災保険の観点から線が引かれておるということでなく、同じ労働者の中でも、船員について特殊の労働行政、労務管理をやる、その場合の線をどこに引くかということで三十トンになった。そうして船員につきましては、国際労働条約その他によりまして特殊の措置も講ずる。その特殊の措置を、一体国際的船員と国内的船員、漁夫との線をどこで引くかというようなことで、大局観からいって昔から三十トンという線がありますが、その三十トンのすでにきまった線を受けて労災保険ではそういうことになっておる。もちろん時代の進運によりまして、ずいぶん昔にきまったこの三十トンの線を、今日なお墨守していいかどうかということは、今後における重要な検討の課題であると存じますが、全体の法体系におきまして、労災保険についてだけ特殊の線を今日検討するということは、はなはだ困難かと存じますので、全体的観点から、今後研究課題として取り扱って参りたいと考えます。
  45. 横井太郎

    横井委員 船員保険の方の関係で、三十トン以上の大きな漁船に乗っておる人も、船員と漁夫との二つにわかれておる。そこで、漁夫と船員であっても、同じように現在は取扱われておるのですが、三十トン以上の漁夫と三十トン以下の、今度労災法の適用を受ける漁船の漁夫とどう違うのですか。同じもので二様に取扱われるのだが、その間の関係を一つ承わりたい。
  46. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 重ねて申し上げますように、他の一般的観点から、労働行政につきまして、海上労働行政と、何と申しますか労働省でいう労働行政との間に、どこかに線を引かなければならぬということで、昔から画一的に三十トンということができまして、ただいま先生のおっしゃいましたその境目における漁夫の扱いについて二、三の取扱いになることは、私どももいかにも割り切れないような感じがいたしますが、先ほど申し上げましたような事情で、労災保険についてだけ特殊な扱いをするということは、はなはだ技術的にも困難でもございますので、近き将来の検討課題ということで御了承願いたいと思います。
  47. 横井太郎

    横井委員 最近は、漁業そのものの性質が非常に変りまして、沿岸の漁業から外洋へ、外洋へと出ていく傾向があるのです。それは漁業において、沿岸の魚というものはだんだん少くなった。従って外洋へ、外洋へというのは、一般の漁業の進み方なんです。従って、船が外洋へ参りますので、船そのものも、漁業の種類によってだんだん大きくなる。従って今までのいわゆる漁船の考え方と、それから最近もしくは将来における漁船の考え方とは違って参るのです。従ってこういうものは、いわゆる船員保険の関係の方で扱うのがいいのか、漁船そのものを考えていくのがいいのかということは、よほど将来考えてもらわなければならぬと思うのですが、それに対するお考えを一つ承わりたい。
  48. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 私どもといたしましても、この漁船関係、漁業の実態関係等につきましては、率直に申しまして十分な知識経験がございません。ただ、近年、災害が非常に起り、任意加入のものはよかったのでありますが、そうでないものが、資産がないために、直接に労働基準法によって一時に多額の支払いを強要されて困るというようなことで、強制加入の声が業界方面からも出て参る、水産庁からも要望されて、こういうことにいたしたのであります。そういうことで、それから遠洋漁業の方向に進んでいくというような事柄につきましては、謙虚に専門の水産庁なり業界と打ち合せ、今日のところまずこういう程度ということで、原案を策定いたしたのであります。先生のおっしゃいますように、終戦後におきまするいろいろ各般の情勢によって、沿岸漁業の態様も相当変化し、また今後とも変ることも予想せられますので、一たん法律がきまったからというて、これに固執することなく、弾力的な態度で将来は将来の事態に応じて善処して参りたいと存じます。特に先生は、その方のいろいろな御知識などお持ちのようでございますので、いろいろその際御教示いただきたいと思います。
  49. 横井太郎

    横井委員 当局自身も認めておられる通りに、この三十トンというのによって、船員保険とかあるいは労災保険とか、適用を受ける関係上、いろいろな問題が出てくると思いますが、この点は一つ十分考えていただきたいと思います。  それから、今度五トン以上の漁船が強制の適用を受けるようになるのでありますが、漁業というものは、種類によりまして、いろいろな人が集まって資本金を持ち寄って、そうしてやる事業が多いのであります。こういう場合に、一体事業主はだれになるということをお考えになるのか、これを一つ承わりたい。
  50. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 これは抽象的に申しますと、数人が出資して共同でやりますれば、そこに雇用労働者というものはないわけであります。雇用労働者がなければ、労災保険法はもともと適用がないわけであります。しかし、おっしゃいまするように金を出し合って、同時にその実態が協同組合というようなものになって、出資者が同時にその協同組合出資者、同時に出資者の子弟なども一緒になってその協同組合の従業員のような形をとる場合もある。実態はそこら辺です。何も共同出資の場合に限りませず、季節的に半農半漁の労務者が、歩合制で働くというような場合におきましても、その雇用の態様なり賃金の額なんか、必ずしも明確でありません。従来とも、五トンないし三十トンにつきましては、任意加入によりまして今日すでに六万七千の被適用、被保険労働者があるのでありますが、これらにつきましても、それぞれわれわれの方の出先機関と、その業者同士と話し合いをいたしまして、その雇用形態なり賃金の協定なりをいたしまして、技術的に保険の適用可能の態様を整備して取り扱っておるのであります。強制加入になりまする場合におきましても、そういう協定の態様を整備するように指導いたしまして、その間円滑を期する所存でございます。予算におきましても、そういう強制指導の経費なども、若干組んでおるわけでございます。
  51. 横井太郎

    横井委員 今、非常に抽象的なお話でございましたが、私は具体的に一つ聞いてみたいと思います。たとえば、甲乙丙丁というような数名ないし十名くらいの者が組んでやった場合、それがお互いに出資してお互いが労働者であるような場合には、この強制適用に入るのか入らないのか、一つ承わりたい。
  52. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 ABCが金を出し合って同時に働くという場合に、金を出し合うという立場においてそこに協同組合というものができ、そして彼は出資者であると同時にその協同組合の雇用人であるという形を法律上整えておれば、本法の適用がある、抽象的法律論の建前からいうと、そういうことになるわけであります。実際の扱い方といたしましては、ABCDEFGがおって、それがみな金を出し合う。しかし、実際は零細なる労働者とほとんど変らぬし、自分たちの子弟もそこで一緒に働く。そこで、一つ災害に備えてこういう保険の利益を得たいということでありますれば、先般御審議いただきましたけい肺法におきましても、一人親方の石工が、協同組合を作って同時に使用人になって保険の恩恵を受けるということも、まあ多少無理であるきらいもありますけれども、便宜上認めるということを申し上げたのでありますが、漁船におきましても、実態やや似たところがございますので、法律上差しつかえないような態様を整備いたさせまして、希望すればその扱いをしたいと考えております。
  53. 横井太郎

    横井委員 弾力性のある適用は、非常にけっこうでございますから、ぜひそういうようにしていただきたいと思います。  そこで、今、協同組合というような法的な根拠のある組合の場合でございましたが、任意組合とか申し合せとか、そういうように勝手に金を出し合って組合を作る、しかもそこに子弟も働かせるというような雑多な業態があるわけですが、こういう場合は一体適用を受けるのか、受けるような弾力性を持ち得るものかどうか、その点を一つ承わりたい。
  54. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 任意組合の場合は、私どもの方といたしましては、非常に好ましくないのでありますが、その場合におきましても、漁師さん方のことでございますので、一々法律上の協同組合といいましても大へんであろうという実情も勘案いたされますので、私どもの方の出先機関が一緒になりまして、この書面上の協定で、まずこれで間違いなかろうという段階であれば、必ずしも法定組合でなくても、任意組合でも認める方針でございます。
  55. 横井太郎

    横井委員 それから、漁船が存否がわからなくなってから、大体一カ月間わからぬと、この適用を受けるというように聞いておりますが、一カ月間というのは、どういうような根拠で一カ月間と限定されたか、それを承わりたいと思います。
  56. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 漁船による保険適用につきまして、その存否がわからない、じんぜん保険を適用いたしますと、いつまでも保険料の徴集とか、その他のことがからみまして、金銭的にも、手数の上におきましても、政府及び被保険者ともに迷惑いたすわけであります。できるだけ早目に不明の認定をした方がいいのであります。しかし同時に、どこまでも存否不明でありますので、その推定がくつがえるようなことがあまり多くても、いかがかと考えまして、一応そのところで、まあこの程度ということでありますが、一応のよりどころといたしましては、船員保険法におきまして、同じような船舶の存否不明の場合の推定期間を一カ月といたしておりますので、その船員保険法の一カ月を一応よりどころにいたしたのでありますが、心持はそういう心持できめたわけであります。
  57. 横井太郎

    横井委員 それから十五条の二ですか、そこに「船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となった際現にその船舶に云々」と書いてございますが、たとえばこの間のように、衝突をして、そこでその間に行方不明になったというような場合もあり得るのです。たとえば衝突をした、そこから落っこったというような場合もあり得そのですが、そういうものもこの中に入るのですか、入らぬのですか。
  58. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 衝突して船から落ちて行方不明になったという場合は、二行目の下の方の「航行中行方不明となった」というところへ入るわけでございます。
  59. 横井太郎

    横井委員 それからこの適用を受けるのは、航行中行方不明になったというのだが、船は長い間航海しておるわけです。都合によっては、十日も二十日も航海しておるのだが、そのうちで、航海中でありながら、実は航海しておらないときがある。たとえば、機関に故障が起きて、一週間も十日も流されていることがあるが、こういうような場合には、一体航行中に入るのか入らぬのか。
  60. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 言葉の字義の上から申しますと、ごもっともな御質問でございますが、その間におきましても、ともかく従業員はそれ相応の漂流、海難に対する抵抗作業を行なっているというふうに一応推定されますので、その間における海難事故は、航行中における事故というふうな扱いにいたす所存でございます。現にこういう言葉は、船員保険法において同様の字義をもって同様の扱いにいたしておりますので、さような扱いにいたしたわけであります。
  61. 横井太郎

    横井委員 そういうような場合には、一応航行中と見られますが、全然航行中でなくて、停泊しておる場合もあり得る。たとえば航海しておる場合に、非常にしけ模様になった、従って母港でなくて、その近所の湾内へ避難した。あの湾へ入れば非常に静かだから、あの湾へ入るというので、湾に入った。ところが、湾に入りましても、暴風だと非常に船がほんろうされ、従って船の上で作業している者が、いつの間にか水にさらわれてなくなることが実際あり得るのです。その場合には航行中でなく、ほんとうに港に停泊しておるのですから、そういう場合に、全然この適用を受けぬとなると、非常な不合理なことになりますが、それはどうですか。
  62. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 その場合でも、事態によりまして、航行中の、岩壁付近にいかりをおろす、あるいは綱でつないでおったものが切れて、とにかく岸から離れたというような場合などは、これによって認定し得るのでありますが、そうでなく、岸にちゃんとひっつけておいて、なおかつほんろうされて転落して行方不明になったというようなものは、多くの場合、この推定規定を待たずして、若干の日時にその人が死んだかどうかということが明らかになるであろうということで、船員保険法もそういうことにいたしておりますし、本法もそういうふうにいたしておるのであります。もともとこの三カ月における死亡の推定と申しますのは、民法上から申しますと、失綜宣告は三年でございます。民法の一般原則に対しまするきわめて特殊の例外の扱いでございますので、この例外の扱いをまれに考え得る、きわめてまれな事例にまで広範に広げることはいかがかと、こういう立法の精神で、船員保険法もそうなっておるから、それに準じて本法案もさようにいたしたのであります。本法の運用におきましては、その事態々々に対処いたしまして、善処して参りたいと考えておるわけであります。
  63. 横井太郎

    横井委員 そうしますと、今の航行中というのは非常に広義に解釈して、たとえば航海中にそういうような避難をして、避難港へ入って停泊中であっても、そういう災害が起きた場合にはこの適用を受ける、そういうように非常な広義に解すると解釈していいのですか。
  64. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 厳密に接岸し、いかりをおろし、綱をもって岸壁のくいにつなぎつけておくという厳然たる事実がある場合は別といたしまして、切れまして、台風に対して従業員が抵抗して働いておるという場合は、広義の意味における航行と、先生がおっしゃいますように、この航行は相当程度広義に解釈して扱っていきたいと存じます。
  65. 横井太郎

    横井委員 今のお話だと非常に不合理が出てくる。同じ港へ入って停泊しておっても、いかりが切れて流れておるときは、この適用を受けるが、いかりにつないである場合はいかぬというの、だが、いかりにつないであっても、しけが来ますと、船の上は水で一ぱいです。従って船の上面で作業しておる者は、水にさらわれることは幾らでもあるが、今の解決だと、これだけ除外されて、いかりが切れたときだけ適用を受けるというと、非常にややこしいのですが、それはどうなんですか。
  66. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 そういうふうに突き詰められてくると、とにかく事態のどこかで一線を引いた場合には、その線の限界においては、截然たる白黒の扱いが別になるということで、常に起ることでありますが、ともかく最初に申し上げましたように、民法のきわめて厳重な一般的原則に対抗する例外措置でございますので、通常起り得べき航行中における事故ということにいたしたのであります。ただ実際上の扱いで、この法律の適用によりまして、短期推定によって事態が円満に扱われることが望ましいという面から、実際上の運営におきましては、できるだけ広義に解釈した方が、遺族その他に対して便利でございますので、そういうことにしたいという所存でございますが、理屈を申しますと、先ほど申しました理屈である。同時に消極的に申しますれば、波にさらわれて落ちた、そういう場合について、接岸地あるいは湾内でございましょうので、三カ月以内に存否が原則的にまず明らかになるであろう、こういうふうに考えておるのでございます。
  67. 横井太郎

    横井委員 その点がはっきりしないのですけれども、実際においては、そんないかりが切れなくても、波にさらわれるのは幾らでもあるのです。ことに三十トン未満というような小さな船では、波にさらわれて死ぬような者は幾らでもあるのです。だからこの適用は、よほど広義に解するように適用していただかないと、救われないのですから、その点を一つお願いをいたしておきたいと思うのです。それから、三カ月間生死がわからぬ場合には、この法の適用を受けるのでありますが、三カ月後に、かりに、——こういうことはあり得るのですが、漁船が行方不明になって、もういないものだとあきらめておったのだが、実はほかの島へ流れ着いておった、あるいはほかの船に救われたというような場合がしばしばあるのですが、その場合の扱いはどうするのですか。
  68. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 これはあくまでも「推定する」とあるのでございますから、後にそれに反する事実が出た場合は、その推定がくつがえされて、初めから生きておったという扱いになるわけでございます。従いまして、遺憾ながら、たとえば遺族補償あるいは葬祭料など給付済みの場合には、それの還付を必要とするということになるわけであります。
  69. 横井太郎

    横井委員 大体私の聞くのは、それくらいでございますが、とにかく漁業そのものの性格が、非常に不明確なものなんです。今の期間の問題にしろ、あるいは船がつないでおるとか、動いておるとかいうようなことは、非常に不明確な場合が多い。従って、この文字通りの解釈でもって適用をしてもらうと、漁業に関する限りは、非常に不合理なものが出て参りますので、実際の適用については、十分一つ広義な解釈で適用をしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。これで私の質問を終ります。
  70. 中村三之丞

    中村委員長 中村英男君。
  71. 中村英男

    中村(英)委員 肉体労働者の求職の取扱いの問題ですが、現在労働省は、各県の知事や職業安定所長に対しての訓令によって、肉体労働者の取扱いを二種に分けてあるようですが、これはそういう訓令でやっておることが違法であるかどうかという点、これをまず伺いたい。
  72. 江下孝

    江下政府委員 職業安定法の規定によりまして、安定所の窓口に職を求めに行きます者に対しては、これはすべて受け付けなければならない、こういう建前になっております。ただ、求職者の内容としましては、大きく二つに分けられる。安定所の窓口といたしましては、一般の求職と日雇いの求職というように二つに分けまして、一般の求職は一般の窓口、日雇いの求職は日雇いの窓口、この日雇いの方々につきましては、特別に登録という手続をとって、各個人々々にある程度のはっきりしたひもをつけるということを実施している、これが実情であります。この日雇い登録者が、最近の総計で全国の安定所に約四十三万登録しておるのでございます。この四十三万の日雇いの登録者に対して、安定所といたしましては、その日その日の職業のあっせんをいたしておるわけでございます。ただこの緊急失業対策法に基きまして、特にそういう日雇いの労働者に対しましては、必要な場合においては国で事業を興しまして、これらの事業に失業者を吸収する。こういう建前になっておるのであります。  そこで、それではこの日雇いの求職者のうち、どういう人をこの対象にするか、こういうことになると思います。いろいろ考え方はあると思います。窓口に来る人を全部対象にするということも、一つの行き方だと思います。現在労働省でやっておりますやり方は、この日雇いの求職者の中で、特別な資格条件を備えておる者に対しまして、特に政府として予算措置を講じて就労日数を確保しておるのであります。その資格と申しますのは、第一失業者である、これは当然でございます。ほかに仕事があるとかいうことでは困る。もう一つは、主たる家計の担当者である、この二つの条件をつけてやっておるのでございます。先ほど申し上げましたように、根太的な考え方として、失業対策事業にいやしくも国が就職あっせんをするということは、やはり最後の国としての失業救済手段であるわけでございます。すなわち、この経費につきましては、ほんとうに必要な人にこれが最も有効に使われるということでなければならないと思うのであります。そういたしますと、この対象を以上のような者に限定をいたしましてこれをやることが、やはり適当ではなかろうか。もちろん、主たる家計の担当者以外の方でも、失業しておる人はあるわけでございます。しかしながら、これらの人は一般の窓口に来ます人と、言ってみれば同じでございます。安定所は、御承知の通り自由利用の建前でございますから、安定所に来れば必ず就職が確保できるというわけには現在参っていないのでございます。そういう方々にはまことにお気の毒ではございますけれども、政府として持ちましたこの乏しい予算の中から実施する場合におきましては、やむを得ずそういう一つの資格要綱というのを定めて実施しなければならぬ。そこで、四十三万のうちその資格要件に合います者が約二十九万、これらの方々は主たる家計の担当者でありますから、必ず二十一日の就労日数を確保してやる、こういう建前で現在考えておるのでございます。
  73. 中村英男

    中村(英)委員 そこで、こういう資格を、これは扱いではなくて、労働省が訓令でそういう扱いをしておるということになると、あとの四十三万から二十九万を引いた者は、二十一日は確保されないわけですが、そういうことが現在の日本の憲法なり、国家行政組織法あるいは職業安定法に抵触をしないかどうか、そういう点を心配するのです。私どもは、やはり失業者であるという資格においては同じだから、ただその主たる家計を営んでおるかどうかということが違うだけです。それをそういうふうな訓令で振り分けをして、四十三万のうちで二十九万引いた残りの数は二十一日の就労がないわけです。おそらく十日か十一日の就労と思うのですが、そういうようなことが、日本の憲法なり、あるいは職業安定法、国家行政組織法に抵触するかどうか、私は抵触すると思うのですが、その辺はいかがですか。
  74. 江下孝

    江下政府委員 これは私どもとしましては、憲法あるいは法律の規定に抵触するというふうには考えておりません。これは適あるいは不適の問題であろうと考えております。もちろんそういうふうに失業者がたくさん出ました場合、国なり地方団体でできるだけ事業をたくさん興しまして、そうしてこれらの失業者を吸収してやる、これは私は必要なことだと思うし、結局予算の問題とも関連いたしますので、予算をたくさん獲得いたしまして、こういうふうにやるということは、これは必要だと思います。しかしがら、それは安定所の窓口に来る人のうち、だれでも窓口に来れば二十一日の就労は確保できるかどうかということは、これは国全体の予算の問題でございますし、また当面の失業問題に対処する一つの政策の適、不適の問題であると思います。仰せの通り、もしこれらの人にも職を与えてやるということになりますと、これは相当大きな予算を必要とする、こういうことになりますから、先般通過いたしました予算では、一応現在の基準によりまして失業者の資格を定めてやる建前にいたしております。  将来の問題といたしましては、私どもはできるだけ予算の面とにらみ合せまして、一般の失業者に対しても就労日数の確保できるように、努力はして参らなければならぬと思います。
  75. 中村英男

    中村(英)委員 そうすると、この十四万前後の人たちは、この間の日雇い労働者の参考人の話を聞いても、おそらく十日か十一日の就労、こういうことになるわけです。そうすると失業保険にしても、日雇い保険にしても二カ月二十八日の印紙がないということになりますから、実際には失業保険や日雇い保険が適用されない事態があるわけです。この十四万については、今の数字は十四万ですが、こういうデフレ経済の中で失業者がどんどんふえてくる、そうしで就労の場所がだんだん狭まってくるということになりますと、おそらくこの数字は増大してくるのであろうと思います。政府は今度の失業保険改正提案理由に、いろいろ健康保険の整備拡充をして、失業対策事業の拡充と相待って一そう効果ある失業保障を行い、もって失業者の生活安定に資したい所存である、こういうふうに言っておるけれども、実際には、現在十四万あるいはそれ以上ふえてくる人は、そういう保障の恩恵に浴せない、適用されない事態があるわけです。
  76. 江下孝

    江下政府委員 安定所の窓口に登録いたしておりまして、失業対策事業の適格者として安定されない方々が十四万ばかりあります。安定所で把握いたしましたこれらの人々の就労日数は、大体月に十四日をちょっと上向っておるというのが平均であります。だから地方によりましては、あるいは先生の仰せの通り資格のつかないという方があるかもしれません。なるほどこれらの人々は、失業対策事業としては、今申しますように、不適格者であります。しかし、一般の民間の公共事業なり財政投融資関係の事業に動きます分は、優先的に私どもであっせんをいたします。そこで、大臣からも申し上げましたように、失業対策事業を今回百二十億から百六十八億にふやしますと同時に、公共事業関係で失業者吸収に適しております道路事業、河川事業等を、今度の予算では約百億近く見ておるのであります。そこで、今平均十四円しかございません、これで大体相当部分の人は適用されると思うのですが、それらの事業に不適格者に優先的にあっせんをしていく、こういう改正をとりますれば、御心配の点は相当減るというふうに考えておるのであります。  それから私も非常に気の毒な方々だと思いますが、ただ非常にむずかしい問題といたしましては、安定所の一般の窓口の求職者との関連におきまして、すべて政府が保障するということになりますと、相当大きな予算が要ることになりますので、将来国の財政問題ともにらみ合せまして改善は加えていきたいと思っておりますが、直ちに適格基準を撤廃すると、相当大きな問題があるのじゃないかと考えておりますので、この点につきましては、今申し上げましたような線で、できるだけ公共事業その他に就労日数をふやしていく線をとることによって、問題の解決をいたしたいと考えております。
  77. 中村英男

    中村(英)委員 これはこの間の参考人の陳述で、私どもも大体いろいろな内容がわかったのです。これで質問を打ち切りますが、そのときにも議論として、そういう掛金のかけられる、二十一日就労できる者だけを対象として考えていっておるのではないかという質問があったのですが、一番問題になったのは、事業主も本人もかけない。そういう人たちをどうして適用者にしていくかということを十分お考え願いたいと思います。  これで私の質問は終ります。
  78. 中村三之丞

    中村委員長 午前中ばこの程度にとどめまして午後二時まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      ————◇—————    午後二時三十七分開議
  79. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引続きまして会議を再開いたします。  まず医療機関に関する小委員会よりの要望によりまして、医療機関に関する問題について、政府当局より説明を聴取いたします。曾田政府委員
  80. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 医療機関状況につきまして、報告を命ぜられましたのでありますが、いかなる点について御疑問をお持ちでございますか、そのことを十分につかみ切っておりませんので、ごく簡単に申し上げまして、また御質疑に応じてお答え申し上げるということがよろしいのではないかと思うのであります。  私ども、特に名をあげて報告を命ぜられました施設のうち、一つは国立の足利療養所の問題でございます。足利療養所は、足利市の大沼田町にありまして、もちろん結核療養所でざごいますが、ベッド数は三百十八、五月中一日平均の患者数は二百六十七名、これに対しまして職員かが名、そのうち医師が七名というようになっておる療養所でございます。この足利の療養所につきまして御報告を求められた御趣旨は、最近足利の療養所におきまして、患者とこの院の管理者との間に若干の紛争がございましたので、おそらくその状況を御報告申し上げるように調査を命ぜられたものと存ずるのであります。  六月十六日に患者大会が開かれまして、所長の退陣を含む十四項目の要求決議があり、その決議文を所長に交付いたしたというような事情がございました。これよりも先だちまして、特に地元の各新聞社、あるいは地元関係の県会議員、国会議員その他関係諸官庁等に陳情書と申しますか、ただいまの患者の要求項目を書き並べましたものを郵送いたしたというようなことがございました。このことは、私どももあとになって知ったわけであります。その要求の内容につきましては、御質問がありますればまた詳細に申し上げますが、外科医による手術を行なってもらいたい、手術の件数がこの療養所においては少いというようなこととか、あるいは面会所を作ってくれ、外気舎を廃止しないでもらいたい、浴場をもっと増設してほしい、洗濯をもっと徹底的に頻繁にやってもらいたいというようなこととか、あるいは残飯が出ておるはずであるが、その残飯の処理によって得られる収入のうち、患者に少し分配してもらいたいというようなこと、それから先ほど申しましたように所長の退陣を要求するというようなこと、十四項目を伝えて参ったのであります。  六月十八日に施設側としては、所長退陣というのでは、所長としても応待ができない、そのほかの項目についてはいろいろ考究するということで、この検討をいたしました結果を患者側に回答いたしました。その間、患者はその回答書を見まして、これでは誠意が足りないというふうに言い張りまして、直ちに二十名の患者がすわり込みを開始した。もちろんすわり込みをした患者は、大体二時間ずつ交代ですわっておったというふうに聞いております。  六月十九日に、地元関係の県会議員あるいは衆議院議員の方がいろいろ調停し、他方患者説得ということも試みられ、また施設側に対しても、できるだけ早く問題を解決するために、譲歩できるものは譲歩するよう考慮してほしいというような御意見が伝えられたのであります。施設側としましては、前回よりもさらに若干譲歩した第二回の問答をいたしたのでありますが、患者側はそれを不満としてすわり込みを解かぬという回答がございまして、その夜も前夜と同様に、患者は交代しながらすわり込みを続けたような状況であります。  二十日になりまして、また新たに衆議院、参議院の地元に関係の先生がお見えになりまして、いずれにしても、このような事態を長く続けることは、患者のためにも、また所のためにも適当でないというようなことで、所としても患者の要望をいれられるものはいれてほしいという仲介があり、一方患者に対しては、すわり込みは何としても中止すべきだというような御勧告がありまして、同日の夕刻すわり込みが廃止されたというような状況でございました。  その後、この二十日に回答いたしました所の意見について、その具体的な実施方法を、さらにこまかく折衝したということを患者が申し出て参りました。  六月二十八日に、患者といろいろ話し合いをいたしたというようなことでございましたが、その際に、特に残飯問題については、患者としては要求を引き下げるというような話であったそうでありますが、それと同時に患者自身が残飯を集め始めまして、外部の特別な人たちに——業者と申していいかと思うのでありますが、その残飯を買い取る者を所内に入れまして、それに売り渡すというようなことをいたしました。そうして、所から申しますと、残飯は出ていないということを申しておるのでありましたが、さような事態が続く以上は、施設側としましても、所の管理上、あるいは所内の衛生上から申しても、さような状態は適当でないというので、その中止方を申し出ておるわけでありますけれども、患者側はそれを承知せず、まだその状態を続けておるというふうに私どもはただいま報告を受けておるのであります。その後七月四日にもまた参議院の方がお見えになりまして、こういうように所と患者が長い間対立しておるということはおもしろくないから、何かはっきりと結末をつけるようにというふうに話し合いがあったのであります。しかしながら、その患者の要求の中には、所長の一存できめるわけにもいきかねるというふうに考えたらしいのでありますけれども、患者からの要望がきわめて強烈であるというようなところから、約束をしても、所長自身として実行できるかできないか、かなり疑わしいような事項まで含んで、一応やるように努力をしましょうというような話をつけたようでございます。  さような状況で今日にまで至っておるのでありますが、今日におきましても、この所長退陣というような問題及び残飯の処理の問題が特に中心となっていまだに問題がくすぶっておるような状況でございます。  大体この足利の問題につきましては、いかなる点を御報告申し上げればいいのか、必ずしも的確にはわからぬのでありますが、今の患者と施設との紛争の問題についての、きわめて概略的なことを御報告申し上げた次第であります。  それから国府台病院の問題につきましては、これも御趣旨がよくわからないのでありますが、国府台病院は、名前の通り千葉県市川市の国府台にございまして、病院の入院定数は七百九十、うち精神病床が四百八ということであります。国立病院の中におきましても、精神病療養所と一般の国立の病院との中間の性格を持っておりまして、特異な存在の一つでございます。それから職員定員が三百九十名、現在はほとんど定員一ぱいでございますが、三百八十四名になっておるような状況でございます。先ほど申し上げましたように、病床の数は定められておるのでありますが、二十九年度の実績は幾分下回りまして六百五十二人、一日平均でございます。こういうような状態になっておるのであります。なおそのほか、外来患者といたしましては、二十九年度の平均に四百十二人ということになっております。それから完全給食は全入院患者に対して実施いたしておりますが、完全看護は、精神科の患者だけに実施いたしておるわけであります。  それから寝具の設備も、原則として全患者に給与貸与をいたしておるような状況であります。  それから診療費の負担状況は、社会保険が、入院患者といたしまして四四・七%、外来は三八%、生活保護法は、入院が三四・八%、外来は六・六%、自費は入院におきまして一九・一%、外来は五四・四%、そのほか、わずかでありますが、減免等の患者が一%程度、入院においても外来においてもあるというようなことでございます。  この国府台病院の一つの特徴は、先ほども申し上げましたように、一般病院と精神病院との両方の性格を持っておるのでありまして、あまり国立病院の中では、かようなたぐいのものはたくさんないのでありますが、一つには、一般患者の診療に当ります際にも、いわゆる精神的な要因と申しますか、かようなものを十分に考えて処理していく、あるいはまた精神病の患者といたしましても、明確に精神病院であるということのために、患者が診療を受けにくいというような状況が薄らいで、一般患者として病院に見てもらって、実際に精神障害がありますならば、それを詳細に検査し、また治療を受けるというような姿になっておりまして、比較的精神病者である、精神病の診療を受けに行くということを他に知られたくないというような人たちには、喜ばれておるというような状況になっておるわけであります。  御質問の趣旨、この調査を命ぜられました趣旨が何であるか、これも正確につかみかねるのでありますが、先般式場病院が火災を起しまして、すぐ近所にございますものですから、被災患者をこの国立病院に引き受けました。その際に、かなり荒廃した病床に患者を入れたというようなことが、不適当ではないかという注意を受けたことも一時あるのであります。大体国府台の精神病床は、軍時代にできたものでございまして、決してりっぱな施設というわけには確かにいかないのでありまして、最近若干補修いたしまして新しい病棟を作るというようにして、逐次古い病棟を廃止いたして、新しい病棟に改めたいというふうに考えておるわけであります。古い病棟で、まだ廃止にはなっておりませんそこに収容をいたしたというようなところで、決して医療法から見て、医療法に抵触するよりな病棟ではないのでございますけれども、ことに新しい病棟等ができますと、その比較の上から、非常に見劣りがするというようなところから、ひどい病棟に入れたのではないかというようなお話が出たのであろうというように了解いたしておるのであります。  なお私どもとしましても、式場病院のすぐ近隣にございましたので、とりあえず患者を収容いたしたのでありますが、これが相当長期に収容看護をするということになりますれば、より適当な施設に移すことが適当であろうというふうに考えまして、きわめてわずかな者はまだ国府台に残っておりますけれども、大部分の者は国立の武蔵療養所、千葉県にあります下総療養所、両療養所に分散収容いたしたような状況でございます。  大体国府台病院の状況もこれくらいにいたしまして、御質問がございますればわかる限りはお答え申し上げたいというふうに考えております。  それからもう一つは、財団法人生光会清瀬療養所についてでございます。この生光会につきましては、いろいろ当委員会においても詳細なる御調査が行われたようでございます。私どもといたしましては、この療養所がいかような状態になっておるか、特に医療法の建前から、どういうような状況であったかということを承知いたしておるだけでございまして、御希望の調査事項というものを、十分お話し申し上げることができるかどうか、非常におぼつかなく考えておるのでありますが、一通りのことを申し上げますれば、経営主体は財団法人生光会、これは昭和二十九年の三月に東京都の認可を受けたということになっておるのであります。管理者は石原という医師でございます。病床は二百三十六床、これは全部結核病床ということになっておりまして、従業員は、医師が五名、看護婦が二十九名、その他十五名、合計四十九名ということになっております。  医療監視の結果は、これは新しいまた報告は参っておらぬのであります。二十八年度の報告が定期に東京都から送られましたものが参っておるのでありますが、その結果によりますと、特に医療監視の結果、あまりにも悪いというような結果は出ておらないのであります。これはももろん日常の平生の状況として監視を受けた場合だと思うのであります。それが、御承知のように六月でございましたか、看護婦を中心とする従業員組合と、療養所の理事者側との間に、特に給与問題をめぐっていろいろ争議が起った。一方従業員組合の方では、外部のいろいろな友好団体から応援を得るというようなことがあり、理事者側としましては、その行為に行き過ぎがあるというようなところで、警察に連絡して、その取りしずめにかかってもらうというような措置をとり、また他面において、言葉が悪いかもしれませんけれども、右翼がかった団体というものを所内に招きまして、そしていろいろ警備に当らせるというようなことがきっかけとなって、いろいろ紛争が激化いたしました。そしてこれを組合側から不当労働行為だというようなことで、東京都の労働委員会に提訴したというふうになっておるのでありまして、今日のところにおきましては、私ども東京都からの報告を受けております限りにおいては、十分注意はしておるが、患者の治療上、今のところ特別な非常措置をとるというような必要もない、十分監視をしておる状況であるというふうに報告を聞いておる次第であります。  私どもといたしまして、一応調査いたしましたことは、おおむね以上のようでございますが、なお御質問がございますれば、逐次お答え申し上げたいというふうに思う次第であります。  それから、なおもう一つあげられました病院としては久我山病院があるのでありますが、久我山病院につきましては、社会局の方でお調べを願いましたのて、社会局の方から大ざっぱにでも御報告願った方がいいのじゃないかと思います。
  81. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 久我山病院のことでございますが、これは直接には東京都の所管になりまして、東京都の衛生局とそれから民生局の共管になるわけであります。厚生省といたしましては、私の方と医務局と両方が所管になっております。  これは元岩崎通信機株式会社の付属療養所でありましたものを、二十四年の五月四日の財団法人久我山病院ということに設立登記がされたわけでございます。それから二十四年の十一月一日の医療保護施設の認可がございまして、二十八年の五月二十八日に、社会福祉法人という制度ができましたときに社会福祉法人に組織変更が認可になりまして、そして今日に至ったのであります。  当初は、結核療養所で五十八床でありましたものが、二十五年度に五十八床をまた増床いたしまして計百十六床、それから二十六年に百二十床を増床いたしまして二百三十六床になり、さらに二十七年度に三十六床を増床いたしまして二百七十二床になったというのでございます。  それで、取扱いの患者は、生活保護の患者が百四十二名で五五%、それから保険の患者が百八名で四二%、一般が七名で三%、計二百五十七人ということになっております。  これが問題になりましたのは、経営がうまくいかなくて赤字を出しておるということで、従業員にもそれから患者にも不安を与え、内部からいろいろそういったようなことが陳情があり、結局は、何とか監督官庁でそれを監督し指導をいたしまして、うまく経営ができるようにしてくれという趣旨だと思うのでございます。これを、内容を本年の三月から東京都でもって調査をいたしました。それから二、三日前から、やはり都の衛生局と民生局で、今日もやっておると思いますけれども、さらにその後の状況もにらみ合せて監査指導をいたしておるわけであります。  そこで問題は、たとえて申しますと、二十八年度の事業の実施状況を見ますと、収入の合計が五千七百十二万八千百八十四円となっております。支出が六千九百八十三万四千四百五十一円となっておりますから、差引千二百七十万円の損失金となっておるわけであります。それから二十九年度は、少しよくなりまして、収入が計六千七百九十五万円に対しまして、支出が六千八百二十六万三千円ばかりでございますから、損失が三十一万千六十一円となっておるのでございます。こういった赤字ができる原因を調べてみますと、たとえば二十八年度の内訳を見てもわかりますけれども、収入は大体これを診療収入でございます。支出の方を見ますと、人件費が千八百八十八万円となっております。それから医療費が七百九十二万円、患者費というのがございまして、これは食費その他と思いますけれども、千五百八十八万円ばかり、管理費というのが二千九十一万円、減価償却費が六百二十二万九千円——管理費、減価償却というのが相当大きく見込んであるわけでございます。  そこで、こういうふうに赤字が多い原因として、私どもが見て感じますことは、負債が非常に多いということでありまして、負債の合計は、この中には仮預金等も入っておるのでありますけれども、五千八百四十万円あります。この中に、銀行から借りておるものばかりでなくて、個人から相当高利の金を借りておる。個人融資の中に、これは理事者の関係者から借りておるのでございますけれども、月五分というのがあるのであります。こういう金を借りておりましては、入院料が高いか安いか知りませんけれども、これでは赤字が出てくるのが当りまえでございます。そこで、理事者の間で、いろいろ不健全な病院経営につきまして、責任問題をめぐってあつれきがあったのでありますが、その後理事長の岩崎という人が辞任をいたしましたので、役員会の問題は一応解決した形になっております。  そこで、現在負債の整理状況といたしましては、金利の月五分というのを、二分に引き下げるように話しております。そのほか銀行の融資に借りかえをしょう、こういうことを努力しておるのでございます。ところが、理事者の方に言わせますと、こういう問題が新聞に出て、患者さんも従事員も少し騒いだものですから、銀行がこわがって貸さないということがございまして、借りかえがちょっと困難になっておりますけれども、現在、重ねて都庁が行って、いろいろ調べましたり指導いたしておりますので、何とか一つこれをつぶさないで、負債をもう少し安く返すように利子を下げで整理をいたしまして、本来の目的が達せられるようにいたしたいと思います。なお経営面につきましても、いろいろまだ私どもが見ましても、注意をしたいような点がございますから、そういう点をはっきりさせたいと思っているような次第でございます。いずれまた東京都で現在監査しております結果がわかりまして、解決策がつきましたならば、随時御報告申し上げたいと思います。
  82. 中村三之丞

    中村委員長 説明はこれで終りましたが、質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡本隆一君。
  83. 岡本隆一

    ○岡本委員 足利療養所であります。たくさんの患者から手紙が参りまして、約百通近くはがきが来ておるのであります。それを分類していきますと、一番大きなのは院長の問題、それから外科医がおらないということ、その次には患者の処遇問題でございます。  その院長に対する不満でありますけれども、患者が書いてきておるようなことが事実とすると、院長は、はなはだ気の毒だけれども、けしからぬということになります。そういう点について、厚生省側では、おそらく同じような投書が行っていると思いますから、十分御調査になったかどうかということをお伺いしてみたいと存ずるのでありますが、第一に院長の回診の回数が非常に少いということ、患者から申して参りますのは、二、三年来回診をしたことがないというふうなことを申しておるのであります。しかしながら、これは患者の方のいうことが、全くそれほど虚構とは思えないのであります。少くとも一月に一回か二月に一回ぐらい程度より、私は回診しないのじゃないかと思うのでありますが、こういうようなことは、やはり大ぜいの患者を預かっている病院として、院長がそういうふうな運営をやっているということは、私はこれは病院の責任者として、十分な任務を果していないと思う。  その次に、もう一つ外科の専門医がおらないということ、そうして患者が何ぼ要求しても、その専門医を招聘してくれないということについての不満があると思います。院長みずからが、肺切その他成形なんかの手術に当っている模様ですが——もちろん自分で自信があるから、やっておられるのでありまして、それは自信があればやられたらいいと思いますが、しかしながら、患者の心理というものは、元来が内科の専門医であるということになっておるとしますと、手術を受ける側の者は、やはり外科の専門医にやってもらいたい。かりに技術が上手であろうと下手であろうと、やはり専門医であるということによって信頼の念が高まってくる。だから、院長も手術に当られたらいいと思いますが、しかしながら、これは外科の専門医であるということでもって、一人外科医をそこへ招聘されたら、こういうふうな不満は私は解消すると思います。そういうふうな患者心理というものを全然無視して、おれがやれるのだから、あれでいいじゃないかというふうな考え方というものは、患者の、ことに手術というものを非常にこわいものと考えておる、また胸郭の手術というものは、手術の中でも大手術であります。従ってこういうふうなものにつきましては、患者のみならず、これはだれしもがそういうふうな手術に恐怖の念をいだくのは当然でありまして、そういう手術を受ける患者が、自分の生死を預けるというふうな気持をもって手術を受けなければならないのに、そういうふうな心理を全然無視していられるというところに、私は患者の不満があると思いますが、そういうことについて、御調査の結果を、もう少し詳しくお話し願いたいと思います。
  84. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どものところにも、患者からはがきが参っております。その要望の重さを申しますか、頻度と申しますかは、ただいまお話しのようになっております。院長の問題につきましては、どういうところから院長がさように忌避されておるかということにつきまして、私どもただいままで調べましたところでは、結局実態は今もお話がございましたように、たとえば外科医がいないというようなことを院長のところへ言っていっても、どうも早くらちがあかぬ。あるいはそのほか診療の内容の点についての改善というようなことについて、あるいは所内のいろいろな設備、患者に対するサービスというようなことについても、いろいろなことを要望として出して、らちがあかないというようなことが、間接に院長に対する不満ということでいっておるのではなかろうかというふうに考えておるのでありまして、具体的に院長にどういう非違があったというようなことは、あまりあげられておりませんし、また私どもが調査いたしましたのによりましても、確たるものはないのであります。今の回診を全然やらないというような話は、私ども常識的に考えましても、院長が全然回診をやらぬというようなことはないと思います。また回診をやらぬことはない、やっておるということは申しておるのであります。ただ、回診の頻度等につきましては、患者に満足を与える程度であるか、あるいは普通に他の者が考えましても、もう少し行ってやってもいいじゃないかという点はあろうかと思いますけれども、全然院長が回診をしないというようなことばない模様であります。問題は、今申し上げましたように、結局いろいろな患者の不満というものに対して、これを院長がどうも誠意をもって処理してくれない、要望を満たしてくれないということであろうかというふうに考えておるわけであります。中には、かなり極端な、ここでは申し上げますまいけれども、非常につまらない院長の私生活、これも決して破廉恥的な私生活ではございませんで、非常にお坊っちゃんらしい、少しぜいたくをしておるというようなことなんかをあげて参ったりしておるものもありまして、どうも特に人格的にも、あるいはいろいろな仕事の面におきましても、決してそんなに破廉恥な行為だとか、そういうものがあるというようなことではない模様であります。結局、再々申しますように、その所長としての仕事が、どうもてきぱきとやってもらえないということにあると思っておるわけであります。  それからその次に、結局この療養所の広い意味でのサービスの内容になると思うのでありますが、今の外科医を招聘してもらいたいということに対して、なかなかその要求が満たされないということにつきましては、これは結局人の差し繰りの動かし方の問題もございますので、たまたま外科のあまり得意でない職員で一ぱいになっておりまして、最近になって外科手術に対する患者の要望が非常に高まってきた、さればといってすぐに外科にたんのうな者を入れるというようなふうに差しかえるというようなことも、直ちにはいきかねるというような事情もあったようではございますが、しかし、この専任の職員を入れられないといたしましても、いわゆる非常勤なり、あるいは他の病院から一時出張してくるなり、このような措置によって、この外科手術がある程度できるというふうに措置をすべきであるということは、所長も考えておったようであります。私どもの方にも参って、いろいろと相談をしましたが、近所に栃木の療養所とかその他、あまり遠からぬところの国立療養所から、外科医を日をきめて派遣するというようなことはすぐにでも可能でございますし、また適当な外科たんのうの者が得られますればそれを配置するというふうに措置いたしたいと考えておるのであります。  ただ、これにつきまして、私ども、問題があり、また患者によく理解していただかなければならぬというふうに思っておりますのは、私ども百八十幾つの療養所を持っておるわけでございますけれども、この国立療養所において、すべて平等に外科手術を行うことは、全部の療養所の網として見ましたときに、その運営として適当であるかどうかということは、私どもとしましては、必ずしも割り切っておらないのであります。ことに百床にも足らぬ療養所もございます。かようなところ、一年に数例しか手術を行い得ないというようなところへ大きな手術の設備をする、またたんのうな医師を配置するというようなことば、これは実際問題としてできませんし、またそのほかに、あるいは近隣にりっぱな設備のある療養所もございますれば、国立があればなおのこと、国立でなくても、さような施設がございますれば、むしろ外科手術——これは今日におきましても、御承知のように必ずしも医者だからといって、そう軽々しくやれるものではございませんので、やはり相当設備を持ち、相当な腕のある人たちにまとめてやってもらう、手術が済んで二カ月なり三カ月なりたちましたら、また他の療養所にこの患者を戻してくるということが、療養所の施設を有効に運営する道であろうというふうに考えておりますので、私どもとしては、この外科手術をあまりやれない療養所というものがございましても、それを無理に外科手術ができるようにしろということを、ところによりましては必ずしも強く押し出してはおらぬ、所長に必ずしもそのように指示しておらぬというような状況もございました。ただ、足利が今日のような状態でいいかどうかということにつきましては、私どももここを外科手術を中心とする施設にいたしたいとは必ずしも考えておりませんけれども、しかし、ここにある程度外科手術もできるような態勢、また患者も近所の栃木療養所に行って手術を受けてくれるようにいろいろ勧奨はいたしたいというふうに考えておりますが、どうしても動くこともいやだ、そして足利の療養所におりまして手術を受けたいという若干名の人たちに対しては、何とか満足のいくような措置をとろうというふうに考えておるような次第であります。  それから、その内容については御明示になりませんでしたが、所の医師のうちにどうも不親切な医師がいる、この医師を取りかえてもらいたいというような要求が出ておったと思うのであります。これは、所長も認めておりまして、必ずしも適当でないので、どこか他の施設に移して、そうしてより適当な医師を迎えたいということで、これもすでにこの問題が起る前から、私どもの方にも、局にも来て相談をしておりました。大体話はおおむねついておったころに、こういう不幸な紛争が起きたような事情であります。これはその紛争とは関係なしに、その医員の交迭は考えるというつもりで進んでおります。  そのほかは、先ほど二、三の例をあげて、所内の設備等の改善というようなことについて、患者の要求が出ておるのであります。このうち、確かに所といたしましても、もう少し工夫いたしましたら、直ちにできるのではないかうというような点もございます。さような点は、所長もすぐ手をつけると申しておりますし、私どもも手をつけたいというふうに考えておりますが、中には、これはただ単に足利療養所のみではなしに、御承知のように、戦争中のかなり荒廃した施設を、そのまま私どもが引き受けた関係から、建物とかあるいは設備等については、いろいろ不備な点は確かにございます。そうかといって、それを直ちに、所長が悪いからこのような状態になっておるというようなふうに、私ども足利の問題につきましては、必ずしもそうとばかりいえない問題があるというふうに思っております。これは足利のように、幸心者から積極的に要望の出ましたところとしても、あるいはさような特に患者からは言い出されてはおりません、しかし、かねがね所の職員が患者と接触いたしまして、その要望を十分に感知し聞き取っておるというようなところもございます。かような点とにらみ合せて、逐次またできるだけ急速に整備をはかって参りたいというふうに考えておるような次第であります。
  85. 岡本隆一

    ○岡本委員 この問題が始まりましてから、すでに一カ月余りになるのであります。当初私の方に毎日束のように手紙がやって参りました。その当時に、委員会等で質問もしようかと思っていたのでありますが、その要求の内容を見ますときに、あえてそういうことをしなくても、厚生省でもって善処されたら、この問題は早急に円満に解決するだろう、私はそういう観測でもって、委員会で質問したりすることを差し控えておった。ところが、一カ月後の今日になりましても、まだ解決しないのみか、最近でもまだどんどん手紙がやって参ります。その内容を見ますときに、誠意をもって当られたら、当然解決しなければならないような内容にすぎない。患者の要求というものは、きわめて素朴なんです。また解決にそんな困難な問題は含まれていない。にもかかわらず、今日までこれが解決されないということは、やはりこれはどうも院長にも責任あり、またも局長に責任があると私は思うのです。今まで院長とあなたとお話し合いになって、この問題だけはどうしても譲れない、あるいはどうしても解決がうまくつかないというふうな問題が、どこかにあるのでしょうか。そういう点がありとするならば、それを一つ伺わせていただきたいと思います。
  86. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 まず第一は、所長の退陣であります。患者から所長に引っ込んでもらいたいといいますことは、これはよほど十分な根拠がございませんければ、さようなことを処置するわけには何としてもできかねる。ことに所長自身としましては、いろいろな要求とあわせて所長の退陣を要望されておるというようなことでは、一体自分が折衝資格があるのかどうかということが、まず第一に疑われておるわけでございまして、これではちょっと話になりかねるというような事情がございますし、私どもとしましても、人事はきわめて慎重でなければなりませんので、よほど根拠がなければ、場合によりますれば、今度は所長の方から人事院へ提訴をいたされるのでありまして、よほど慎重に調査した上でなければ、かようなことをよろしいとは絶対に言えないというふうに考えております。
  87. 岡本隆一

    ○岡本委員 まず第一に、所長の退陣というお言葉でございましたが、所長の退陣要求というものは、私はあらゆる要求の一番あとについたものである、またそういう性質のものだと思うのです。所長が誠意を持ってこの交渉に当られ、誠意を持ってこれの解決に当ろうというふうな模様があるとすれば、所長の退陣ということは起ってこない。そこに、所長が患者に対して大きな不満を抱かせるような言動があるから、それが爆発して所長の退陣ということが出てきたのだ。従って所長がもしも誠意を持って解決に当られ、また局長も誠意を持って解決に当られるというふうな場合には、所長の退陣という要求は撤回される筋合いのものであり、また当然そうなってくると思うのです。従って、その他の点についての解決に、私は誠意を持って当られるのが、これが解決の一番いい道でないかと思う。  そこで、今の外科医の問題でありますが、厚生省の御方針としては、この足利病院で、将来それでは外科手術をやらせない方針であるか、あるいは将来外科手術をどんどんやらせるような施設として使っていくつもりか、そういう点を一つお示し願いたいと思います。
  88. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 足利の療養所を、外科手術を中心とした病院とするか、いなかというお話につきましては、実のところ、先ほど申し上げましたのは、これは全般的な問題として申し上げたのでありまして、どこもかしこも、みんな同じような施設を持ち、同じような仕事をするというふうには考えておらぬということを申し上げたのであります。足利については、さらに慎重に考えて参らねばならぬというふうに思っておりますが、従来からの施設の状況等から参りますれば、むしろ外科を中心とするということは、他の病院の方がより適当ではなかろうかというような考えは持っておりますが、これはまだ決定的なものではございません。
  89. 岡本隆一

    ○岡本委員 仰せのように、すべての病院が同じ方針でもって運営されねばならないということはないと思います。従って、外科手術をどんどんやる病院があり、また他の手術をしない病院があるというふうな方針であってもいいと思いますが、そういう場合には、厚生省としても、ことにこういう問題が起った限りにおきましては、早くそういうおのおのの病院の将来進ませる方針、運営の方針というものをおきめになり、そしてそういうことを患者側ともよくお話し合いになって、そしてまた外科手術を要するような患者については、今度はこういう方針でもってどんどん患者の配置転換をやっていくというようなことをよくお話し合いになるといいと思います。それを、そういうふうなことをおきめにならないで、漫然とこの問題を引き延ばしておかれるというところに、あるいは問題がさらに一そう紛糾していっている理由があるのではないかと思います。  その次にもう一つ、私はただいまのお言葉に対しまして、院長のどこにも非を打つようなところはないというふうなお言葉でございますけれども、しかしながら、やはり回診回数が少かったということ、これはやはりどこまでも事実であろうと思います。少くも患者側が、親切な院長だ、非常にいい院長だという印象を持たない限りにおいては、院長の気持のあたたかさというものは患者に届いておらない。ことに、長期の療養を要するような、結核というふうな病気の治療に当っては、ほんとうにあたたかい温情というものがどうしても必要だと思います。そういう点において、その温情において欠けるところがあったということについて、院長は当然反省をしていなければならないと思うのであります。こういう問題が起ったに際しまして、院長がそういうふうな反省を持っておるかどうかということについて、局長はその後院長とお会いになったことと思いますが、院長がどういうふうな心境を持っておるかということを、あなたが御承知の範囲において、聞かせていただきたいと思います。
  90. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私がこの紛争が起りまして後、所長に会いましたのでは、所長自身は、自分にも非常に足りないところがあったということは認めております。またそのことを、患者に対しても明言さえしたいというふうに私は聞いておるのであります。ただ、今度の紛争にいたしましても、院長だけに謝罪すべき面があったかどうかということにつきましては、疑問もあると思うのでありますが、少くとも院長自身としては、自分にも至らないところがあったという反省はいたしておるようでございます。
  91. 岡本隆一

    ○岡本委員 院長に十分な反省の色があり、また厚生省としてもこの問題を熱意を持って解決していきたいというお気持があるとするならば、私はこの問題は早晩解決されるであろうと思うのでありますが、一応医療機関に関する小委員会も調査に行くことになっておりますし、また私たちも、患者に会って当局の方の意のあるところを伝えまして、これが早く円満に解決するように努力したいと思うのであります。それにつきまして、患者の処遇の問題に対する要求の中で、一番大きな要求は、水の問題であると思います。水が非常に少い。それから雨季になって雨のあと、泥のような水が洗面所に出てくるというふうな模様であります。これは山間地のことであり、水利の便が悪いからであって、これが早急の解決は、相当金がかかるので、あるいは困難かもしれません。しかしながら、これについて、この患者の不満を打開する道をお考えになっていらっしゃるかどうか。
  92. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 実のことを申しますと、この水の問題につきましては、私どものところには、何も言って参っておりません。また所に対しましても、患者からの要望は実はございません。にもかかわらず、私どもあるいは所といたしましては、今、足利の施設でもって、何が一番急務であろうかという点については、水の問題であろうと思っておるのであります。それで、この紛争の起ります数日前に、実は私どもの方の整備課長が現場へ参りまして、実地をいろいろ調査もいたしました。そうして、水には本年度中にも取りかかろうというふうな考え方を持っておったのであります。そうしました間もなく、この紛争が起ったということを聞いたのであります。このときには、水の問題は起きておりません。そうしてむしろその他の問題が、大きく先に出てきております。水のことは、一言も言われておらない。私どもとしましては、十分な経費がございますれば、やはりあれもこれもいたしたいと思っておるのでございまして、逐次一つずつ解決して参らなければならぬが、こちらでは、一応まず水からやりたいというふうに考えておったのであります。また、いろいろ患者からの要望もあるようでありますから、水よりも、あとから出ております問題の方が先だということになれば、そちらを先にせねばならぬというようなことも考えられるのでありますが、私どもとしてはまず水の問題を解決したいというふうに考えております。
  93. 岡本隆一

    ○岡本委員 水の解決には、現地へ行ってみなければ了解しにくいと思うのです。しかし、近くに水源が容易に得られるのか、あるいはまたそれが困難なのか、その辺御調査になっていらっしゃいますか。
  94. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私、ただいま覚えておりませんけれども、今申し上げましたように、整備課長を直接にやりまして調査をし、それから実施計画を立てておるわけでありますから、もちろんこれは実施可能な見通しというふうに思っております。
  95. 神田大作

    神田(大)委員 足利の問題について、岡本委員から質問がありました点に関連いたしまして、ちょっとお尋ねをいたしておきたいと思います。われわれといたしましても、大体解決の方向に向ってきていることを非常に喜んでおるのであります。しかしながら、今後ああいう問題がほかの病院に起るような場合も考えられますので、一つ根本的な考え方を聞きたいと思うのです。  足利の療養所の今度の争議が起りました根本的な原因、それから患者側の考え方に対しまして、局長はどういうような心境、考え方を今持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  96. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どももたくさんの国立療養所をお預かりいたしておりますが、各所におきまして、患者の間にいろいろな不平、不満があるものというふうに考えておるのでありまして、足利におきましても、患者が直接に利用いたしますいろいろな設備、あるいは間接に医療を受けます上に、所のものが仕事をしにいくというような点で、いろいろな不備があるのが、率直に申し上げまして実情であろう。また職員にいたしましても、私ども職員を督励いたしまして、できるだけ患者に対する深切な診療を加えるということを指示しておるのであります。また大多数の者は、そのように努力をしてくれておると思うのでありますが、何しろ大ぜいのことでもございますので、中には十分患者本位に徹しないという点もあろうかと思うのでありまして、足利におきましては、今のようにいろいろ所の設備といたしまして、また職員としても、患者の満足を得られないというようなことが不幸にして起った。でありますから、患者の方からこれを不満だいうふうにして申し出られたこと、これは私どもとして一応お聞きをして、そして先ほど申し上げましたように、直ちに所として実行できるものは、これは実施すべきであり、先ほど申し上げましたように人の交代の問題だとか、あるいは応援の医師の派遣というふうなものは、じきにでもできることなのであります。しかしながら、ものによりまして、たとえば定員の増にまでかかってくる問題ですとか、あるいは多額の経費を要するもの、あるいは各所からも同様な要求が出ておりまして、みな一様に考えてやらなければならぬというふうなものを、足利だけに早くやれというふうに言われましたのでは、 これは必ずしも直ちに実行するわけにいかないというような点もございますので、患者の要望は、私ども所長その他を通じましても、できるだけ患者の意見、希望というものをよく聞き取るようにということは申しておるのであります。しかしながら、私どもとして非常に遺憾だと思いますことは、所の所長以下の職員のその面における努力が足りなかった、あるいは注意が足りなかったというようなことがあるかもしれぬのでありますが、いささか私どもとしても、もう少し手があったのではないかと思いますことは、今度の紛争、少くとも今回の事件が起りますときには、私どもの方には直接知らせてくれずに、むしろ先生方のところとか、あるいは新聞社等に自分たちの要求を出された。そうして所長を引き出したときには、これを全部聞いてくなければ、もうすわり込むというような形であったことが、そこにはまたいろいろな事情があったものとは思いますけれども、方法としてはもう少し穏やかに申し出てもらいたかったという感じを受けたのであります。言い過ぎかもしれませんが、率直な気持を申し上げたつもりであります。
  97. 神田大作

    神田(大)委員 局長がそういうふうに思われる節もないでもなかろうが、私は一番の問題は、患者は病人でありますから、お医者さんに親切に見てもらわなければならぬ。ところが内科の医師が外科医にかわって外科手術をして、非常に成功率が悪いというような点も出ておる。あるいは患者のごときは、何か肋膜へ手を入れてしまったというようなことで患者が犠牲になった。こういうような根本的な患者に対する一つの医療人としての大きな欠陥が患者の不安を来たして、こういう問題が起きた、これが根本原因であります。でありますから、今度の問題が起るに当りましては、要求書をわれわれにだけ出して、所長や局長には見せなかったということは、もう半年前から騒いでおるのですから、所長や局長が知らなかったということは問題ではない。水の問題にいたしましても、局長は先ほど、水の問題は今聞いたばかりだ、そういうことはわれわれの方から出したのだということを言っておりますが、この水の問題は、この前の二十八年ごろの騒ぎのときから問題になっておる。また職員のところには、ふろ場への水はこんな大きなパイプで入れておる、患者のところへは小さいパイプで入れておる。しかも職員の場合は、おふろは同じようなものが二つある。患者は非常に人数が多かったのにかかわらず一つのふろで、十五分、二十分交代で人れておる、こういうようなやり方を長い間してきたところに不満が爆発した。それに対しまして、もっと私は医務局なり厚生省当局が実情を早く調査して、適切な手を打てば、そう強硬に突っぱらなくても、所長の解決で済んだのではないかと思います。今度の争議をわれわれ見まして、もって厚生当局は現地にすぐに調査にいって、悪い点は悪いとして早く直すようにする、厚生省の力でとうていできない点はできないで患者に納得させる、そういう努力が足らなかったのではないか、こういうふうにわれわれは考えるのであります。局長はこの点どういうふうにお考えでありますか。
  98. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 これは私も先ほど申し上げましたように、所長初め所の職員に、患者に対する診療面あるいはその他のサービスにおいて、欠けるところがあったということは、私もさような点があったであろうというふうに思います。また所長自身も、自分に十分足りないところがあったということを、反省もいたしておるような状況であります。ただいまの御意見に対しましては、全く私どもとしましては、言い逆らうつもりは毛頭ございませんが、今後と本職員を督励いたしまして、できるだけ患者に十分なサービスをいたしたいというふうに考えておるのであります。ただいまおふろの話なんかも出たのでありますが、ふろの例を、私先ほど申し上げませんでしたが、医師の交代というようなことと同じように、これも直ちに実施しようとすれば、できることであるというふうに考えております。今は所長はそのように努めておるはずございます。
  99. 中村三之丞

  100. 横錢重吉

    横錢委員 今の医療機関の問題に関しまして、若干お伺いしますが、今日当局と患者とが各方面で対立をし、紛糾を起しているというのは、単に今あげられた足利病院であるとか、あるいは久我山病院であるとかいうだけではなしに、おそらく全国至るところの現象ではないかと思って見ておる。今のお話の中にもあったふろ場の点だの、水の点だの、いろいろ問題が出ておりますが、これは単にそこの療養所だけではなしに、たとえば千葉県下の例を見ましても、佐倉の療養所では、紙くずの処理が谷間の中にただ捨ててあるだけです。全然処理をしておりません。こういうような状況、あるいは大切な食器の消毒をするのに、各人の家庭で使う流し一つ、その流しの中で百人をこえる人の食器を消毒する、不衛生きわまりない、そういうところからいろいろな争いが出ておる。これに対して、厚生省は予算がないということが理由でなかなかやらない。ここに国立の療養所における問題が各所で出てきておるのであるし、あるいは財団法人等のものを見ましても、先ほど久我山病院の例も示されましたが、愛世会の場合も同様である。みな金が足らない、金が足らないために必要以上の借金をする、月五分の借金までしてやっておる。そのために数千万円の借金をして病院が成り立たない、成り立たないから、そのしわ寄せはどこへいくかというと、施設が悪いのと患者に対する給食あるいは療養、これらの面にみなかかっていく、そのためにけんか争いが絶えないというのが現状である。しかも今の報告の中でも、これを月二分にするとか、あるいは銀行に借りかえをするとかというようなことを言っておるけれども、銀行では今日は医療機関には金を貸さないようになっておる。銀行には甲乙丙と融資の順序があって、医療機関に対して金を貸すのは順序が丙になっておる。従って甲乙に金を貸して、余ったものでなければ丙には金を貸さぬ。従って、馬に食わせるほど金の余っておるところでなかったならば、医療機関には金を貸さないのが今日の銀行の経理の基準です。従って銀行に借りかえするというようなことは、容易にできるものでないのだから、ほんとうにこういうところで抜本的な対策を講じようとしたならば、銀行の融資の順序から、厚生省がしっかりとがんばって大蔵省をせっついて、これらの対策を立てなければ立っていかない。こういう状態の中にあって、いろいろと出てきておる点をさらにあげて答弁をいただきたいのですが、たとえば医療法人の中においては、患者が活動しようとすると、患者の政治活動を許さないとか、あるいは中における五人以上の集合は、すべて届出をして許可を受けなければこれを認めないというようなことを当局がやっているために、争いを起しておる。これは九十九里であります。あるいは市川のある医療法人の病院においては、普通の郵便というものは全郎届くけれども、日患問盟とかあるいはその他の政治的なものから送っていく書類というものは、全部病院側がカットしてしまう、どこへか別にしてしまって絶対に郵便が着かない、こういうようなことをやっておってまた争いを起しておる。あるいはまた、これは国立の療養所であるけれども、庶務課長が承認したところの牛乳屋でないとこれを飲ませない、ほかの牛乳屋が持っていったものは全部オミットしてしまう、庶務課長が許した一軒の牛乳屋だけ入れておる。その代金というものは、全部婦長がこれを集めておる、こういうようなことを国立の療養所で現にやっておる。しかも、そのマージンは十一円で入れて十三円取る、こういうようなことをやっておるところもありますし、あるいはまた全般の問題では、つき添い婦の制限について、いろいろと論議されて、一応の決議を見たわけであるけれども、千葉の療養所においてはこれを無視するかのように、すでに療養所の中において、一部の人員をさいて完全看護を実施して、つき添い婦のオミットを始めてきた、このことは御存じのことと思うのであります。こういうようなことをして、このために、片方では労働強化になる、片方では完全看護を実施して、モデルを作ったならばこれを全般に広げていこう、こういうような意図をもって実施をしておる、そのためにまた中に争いが起っておる。こういうような問題が随所に出てきておるのでありますが、一体こういうような国立といわず法人立といわず、今日の病院の経営というものは、非常に常軌を逸しておるのではないかというような面が多々あります。あるいはまた、これらの施設の改善がどしどし行われたならば問題は解決がつくのではないか、こういうように見られるけれども、一向に施設が、改善がつかないためによくならない、こういうような状況であるのであります。一体こういうような問題に直面して、内容は一々御存じのことと思うのでありますが、どういうふうに解決をつけようとしておるのか、先ほどの報告に関連して、さらにまたこういう問題についてお伺いをいたしたいと思います。
  101. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 今の御質問の点は、きわめて広汎な問題でありまして、また一口に申し上げますれば、医療施設のあり方というものに対して、厚生省におきましていかような対策を講じようとしておるかというような、きわめて根本的なものでもございます。このように大きな問題に対しまして、的確なお答えを簡単にいたすというわけにもいきかねるのでありますが、御質問のうちの若干のものについて考えておることを申し述べさせていただきますれば、いわゆる患者の自由と申しますか、これが病院に入っておるために、いろいろと束縛を受けておるのではないかということの問題につきまして、これはもちろん病院が患者に対していろいろな行動の制限をするというようなことは、正しくないというふうに私とも思っておるのでありますけれども、病院なるものは、患者の診療あるいは療養ということを主目的といたしております関係から、さような施設に入所されました人たちについては、そこでもって守らるべき特別の秩序というものがやはりあると考えられます。最も極端なことを申しますれば、医師としてその病気の治療のためにベッドから動かない、絶対に仰臥を命ずる、こういうような点からある程度患者が行動の制約を受けるというふうに考えられますことは、入所の際にその施設においてどういうようなことが許され、どういうようなことは自分で控えるべきかということを、ある程度承知して入っていただかなければならぬというふうに考えるのであります。これはきわめて常識的なことではありますが、かような点についていろいろ患者の方が、あるいは施設の方と考え方に幾分ずつずれがあるというようなことが、入院いたしました後においていろいろトラブルを起しておるのであろうと思います。こういうような点については、民間の施設につきましては、私ども直接関与していることではございませんが、少くとも国立の施設というものについては、できるだけ正しいあり方というものを逐次編み出して参りたいというふうに考えておる次第でございます。  それから一、二例としてあげられました庶務課長等のやり方、特に商人を施設の中に入れます場合に、不公平が起らないようにすべきであるという点につきましては、これもこの御指示に私どもも同感でありまして、できるだけ公平に、できるだけ患者に便利をはかるということを主眼といたすべきだというふうに考えておるのであります。ただし、この点につきましても、病院は、ただいま申し上げましたように、これは施設の中でございまして、決して街頭ではないのでございますので、一々商人が個々の病室の患者に、一人々々のところその要求に応じて注文の品物を持って入ってくるということは、私ども必ずしも——これは支障のないところもあるかもしれませんけれども、いかなる施設もそれを絶対に許すべきものだという結論は、出てきかねるのではないかというふうに考えるのであります。ただ、それが行き過ぎまして、特殊な、特に個人的な関係のあるただ一人の商人だけを入れるというようなことは、十分慎重に考慮した上でなければ、さような結論は出てくべきものではないというふうに考えておるわけであります。他によほどの理由がなければ、さようなことをなすべきでないというふうに考えておるのであります。  それから融資の問題等でございますが、医療機関に対しまして、病院の施設を拡張しあるいは改善向上するというために、さような措置が必要であるということは、これは再々国会の方からも御指摘をいただいております。私ども自身としても、その重要性を十分痛感いたしておるのであるまして、何とかその道を講じたいということで努力をいたしておるわけであります。御承知のように、若干中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等からの融資を受ける道々開くことは開きましたけれども、これで必ずしも十分とは考えられないのであります。他面におきまして、先ほどのお話のように、月五分の利子というような高利の金は、これは言語道断でございますけれども、さればと申しまして、今日におきましては、やはり年一割程度の利子は、融資を受けます以上、大体払わなければならぬ。これをさらにさらに低利の融資を行うように措置をするということは、望ましいことであります。また私ども今後も努力はいたしたいと思っておるのでありますが、これが今日におきまして、しかく容易に、しかも多額の十分の額を回せるということは、簡単にはできかねる問題だというふうに思います。そういたしますと、せっかく融資を得ましても、その後の病院経営いかんによりましては、せっかく病院を拡張しても、それだけ患者に利用されない、従ってその収支のバランスも取れないというような結果を生ずるおそれが多分にあるのでありまして、これも厳重な国家統制というものが行われる事業でありますれば別でございます。特に民間の私立の施設等ができますということについては、いろいろと見込み違いと申しますかかようなことが生じまして、そして経営に非常な無理が生ずるというような事態が出て参ると思います。これに対しましては、私ども特別に力強い監督の手を下すというようなことも、今日においては必ずしも適当でないのじゃないかと思うのであります。ただ私どもの考えておりますこと、あるいはいろいろ懸念されますようなことについては、いろいろお話し合いをして、病院の新設あるいは拡張というようなことについても、簡単には考えられない、十分慎重に考えて手をつけなければならぬというふうに御注意を申し上げたいと考えている次第であります。
  102. 横錢重吉

    横錢委員 今の病院の問題も、年一割あるいは年二割という銀行融資の程度ならば、これはどの病院を経営しても、大体立って行くということは常識です。ところが、その銀行融資が受けられないから、その他の融資、特にひどいものは個人融資の、月五分どころか月七分から月一割くらいまで借りておる病院が相当あるから立たない。立たないからして、そのしわ寄せがどこにくるかというと患者にくる。患者にくると、必ずこれは給食費を食うとか、あるいは施設を食うとか、あるいは薬品を食うとか、いろいろなところを食ってしまうから、そこに紛争が出てきているのが現状だというように私は見ておる。だから、もしも現状のようなものが銀行融資に対して、厚生省がほんとうに腹を入れて、大蔵省ももう少しこの点に対して努力をしろというので、厚生省がほんとうに努力をして、この融資順位をせめても乙程度まで上げたならば、この問題はもっと明るく解決がついているはずだ。ところが、今日これを丙のままで放置しておるから、こういうような状態になっておるという点については、これはあらためて一つ考えて対策を立てていただきたいと思う。  それから、今の療養所の中における医者が、絶対安静を命ずる権利があるというようなことは論外であって、そういう患者のことを今話をしておるのじゃない。これは結核療養所の特徴であるところの、からだはある程度のものならば動くようになってきて、しかもまだ社会に復するのには自信がない、こういう人がたくさんある。これがいろいろ集会を持つ。この集会を持つことに対して、当然施設側の方は好まない。そこで、集まってはいかぬ、政治活動は禁止だ、届出をしろ、許可がなくてはいかぬ、こういうふうにやっておるのが現実である。それで、このために争いが起る。こういうようなことに関しては、これは直接厚生省の管轄の中では、私は聞いておりません。しかしながら、法人立のところにおいは、こういう争いが現に起っておる。従って、こういう問題についても、大きな意味においては、監督の責任があろうと思うのです。従って、こういうような憲法無視の態度、あるいはまた患者の生活を少しでも快適な条件の中で療養させるように心がけなければならない施設側が、逆に患者の自由を束縛し、あるいは患者を刺激して、なかなか療養のできないような状況を作っておることに対しては、一考する必要があるのではないかと考えておる。  それから施設の点については、今日の国立療養所は、いろいろな規模があるようでありますが、一体国立療養所の中で、一番劣悪な施設はどこですか。私の聞いている限りでは、北海道の美幌の療養所は、聞きしにまさる日本一の悪い施設であるというように聞いておるのですが、厚生省の目から見ると、今日国立療養所の名において運営されておる施設で、相当劣悪なものが伝えられるようにあるのであろうか、この点をお聞かせいただきたい。  それから、先ほど申し上げた千葉療養所の、つき添い婦の制限をして完全看護を一部実施しようとしておるこの事実について、局長さんは知っておるのかどうか、お伺いしたい。
  103. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 一番悪い国立療養所はどこかということについては、私自身もすべての療養所を回っておりませんので、十分承知はいたしておりませんが、北海道にもひどいのがあるということは聞いております。私が見ました限りにおいては、長野県の御母家療養所、これは皆さんのお耳にも相当入っていると思うのでありますが、これは宿屋で、しかも中の宿屋を飛ばしまして二軒の宿屋というものが、戦争中に御承知の奨健療として取り上げられて、虚弱者を収容したものがそのまま国立療養所の方に引き継がれておりまして、これはほとんど手を加える余地もないのであります。さればといって、これを廃止するということにつきましても、地元からいろいろ強い陳情等がございまして、もう少し時期を見て、いかように処理をするかということを考究いたしておるような状況であります。かような問題につきましては、私どもは私どもの方でいろいろ検討するのでありますが、私どもとしては、さような立地条件の必ずしも適当でないところをいつまでも存置するというのではなく、すでにございます。そしてまたほど遠からぬ他の療養所、そして敷地等もりっぱなところでありますれば、そちらに新しい療養所を建てまして、患者にもそちらへ移っていただくということが適当であろうと思っております。しかし、かようなことが実際問題としてなかなか行いかねて、非常に劣悪な施設がそのまま残っておるというような状況もありますので、私どもも、いろいろ個々の療養所について検討をやっております。できるだけかようなものは何かの形でもって整理し、あるは整備して参りたいと思っております。  それから千葉療養所で、モデル病棟を作ろうとしているかどうかということにつきましては、これは私ども今般こちらでいろいろと御審議も願い、また私どももこちらでの御決議の趣旨というものも十分承わっておるのであります。これはその際にも申し上げましたように、私どもとしては、つき添い婦を廃止するしないということは、さような形でもって問題を取り上げておるつもりではないのでありまして、病院の看護体制をできるだけあるべき姿に持って参りたいということが念願なのでありまして、千葉療養所等でも、その看護体制を改むべきものがあるというふうに私は考えておるのであります。そのうち全面的ということは、これはいろいろ困難があろうが、一部分から逐次実施のできるところは実施して参るということについては——私、詳細な報告は聞いておりませんけれども、必ずしも私ども趣旨に反するものではないというように考えておる次第であります。
  104. 横錢重吉

    横錢委員 今の千葉療養所の考え方について、局長の答弁はきわめて問題点があるのでございます。これは衆議院においてもそうであるし、参議院においても決議が行われたと思うのです。その場合においては、現行の療養の体制を暫くすることなくやっていけ、こういうような趣旨の決議が行われておるのであります。ところが、この千葉療養所の中で行われている方法というものは、ある面については悪くしておる。これが全然こちらの方に影響を与えずにまだやっているというならばお説の通りですが、そうでなく、片方に対しては、これを実施するために看護婦の手を取り上げている。すなわち条件を悪くして、一部に対してだけ療養の完全看護の体制を作ってやるというようなやり方は、決して好ましいやり方ではないし、また衆参両院の決議の精神に反するものではないかと考えるのであります。従って、国会が継続中から早くも決議を無視するところの態度に出てこれをやっているという事実をどう考えるか、伺いたい。
  105. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもは、先般の予算の御審議を願っております途中、あるいはその前からも、私ども一つ意図いたしております筋は、人手のたくさんいるところには看護婦をよけいに回しまして、そうして看護婦の手を若干省き得るところから、むしろさような忙しい方に回していくということで、体制を逐次整えていくということを方針といたしております。たとえば、今まで七人に一人いたところが八人に一人になった。これはきわめて軽症なところでございますれば、さようなことがございましても、患者の診療の上に重大な支障を来たすということがなしに、そうして一方においてより重症な患者さんに当然加えられなければならぬ看護の手を厚くしていくというのは、私どもとしましては、より合理的な看護体制にいくものであると考えているわけであります。  なお、ただいま御指摘になりました具体的な事例、いかような病棟で、いかような配置を考えているかということにつきましては、私どもも十分その現地の状況を見まして、患者に大きな不便を与えないというように指導をして参りたいと考えております。
  106. 横錢重吉

    横錢委員 今の局長の実際に当ってみるという点については、ぜひお願いいたしておきます。この間まで論議された問題が、その熱もまださめないうちに、こういうような片方に被害を与え、片方に完全看護を実施するというようなことでは、これは先ほど冒頭にも申し上げましたように、今日の医療機関の中における紛争というものは決して絶えないのであります。従って、この問題がまた新たな紛争の種になって出てくることは予想されるわけであります。従って、まだ実情についてよく御存じないのでありましたならば、早く事情を御聴取になっていただいて、国会の決議の線において実施されるように希望を申し上げ質問を打ち切ります。
  107. 中村三之丞

    中村委員長 滝井君。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 今、足利、国府台、久我山、生光会という四つの病院の医療内容についての御説明があったのですが、その御説明によって看取できることは、どの病院も非常に施設が老朽化するというか、あるいは不完備なものであり、給与は低ベースであるというニュアンスが非常に強い。それから病院の経営が、どれを見ても赤字経営か、あるいは負債が相当あるということです。しかもそれらの四つの病院は、どれも税金を払わない、いわゆる公的医療機関ないし公的医療機関に近いものである、こういう特徴があるようでございます。そこで私はお尋ねいたしたいのですが、すでにこれら公的な医療機関というものは、昭和二十七年の三月と十月のあの医療費体系の基礎をなしたところの医療機関の実態調査のときに赤字であるということなんです。その後厚生省は、それらの赤字機関に対して、どういう指導とどういう手を打ってきたかということなんですが、これを一つ具体的にまず御説明願いたいと思うのです。
  109. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 この問題につきましては、私どもとして、当時実際の調査をいたしました場合に、収支のバランスが赤字に出ておったということは、一応知悉いたしたのであります。しかし、その後の動きというものにつきましては、あれがどのように変貌しておるかということについては、一回の調査からはうかがうことができません。問題としては知悉されました。また保険局等におきましても、あの資料に基く赤字というものについては、十分な注意も払っており、また私どもも、この点について十分な考究を要望して参ったのであります。しかし、さてそれではその赤字を直ちに解消するそのことを、いかような方法で取り上げるか。しばしば一部の方面から唱えられておりますような、単価の改訂というようなことを、すぐに取り上げてしかるべきものであるかどうかというようなことについては、なお検討を要するというふうに言われておったのであります。私どもとしましては、特に医務局といたしましては、その赤字に対して直ちにいかような措置を、収入を増加するということについて、直ちにこの対策をとるというような立場にございませんので、いろいろ関係の方面には、この問題について取り上げて、慎重な考慮のもとに必要な措置をとってもらいたいということを要望するだけにとどまっておったようなわけであります。一面、私どもとしましては、国立病院等も経営いたしておりますので、この国立病院の経営をできるだけ合理的にいたしまして——もちろん国立病院は、黒字を出すことを必ずしも目的とはいたしておりません、まして利益というものを考える筋のものではないのであります。少くとも赤字が出ますれば、一般財政の方から繰り入れをお願いしなければならぬ、国費をふやさなければならぬというような建前から、できるだけ赤字を減少せしめる、解消するというようなことが一つの目標で、もちろん診療の内容を落すというようなことは許されないのであります。できるだけ病院の運営をより合理化することによって、さような経営に持っていきたいというようなことで、いろいろ工面をいたしまして、逐次国立病院の収支の状況というものは改善されておるというような状況でございまして、国立以外の病院、特に民間の病院というようなものに対してこれを指導するということは、私ども今日においては一応できませんので、病院協会等を通じまして、どういうふうにやっていくのがいいかというようなことを、いろいろ検討いたしてもらい、またその研究の結果を、できるだけ広く多くの人たちに知ってもらうというような措置を講じていたような次第であります。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 今の御答弁では、具体的にどんな手を打ったか、はっきりわからなかったのですが、国立病院は、なるほど赤字が出れば一般会計から補てんをしてもらうことはできると思うのです。おそらくそういう手を今打たれたというようなこともあったのです。ところが、今もいろいろ他の政府委員から御説明があったように、財団法人とか社会福祉病院とか、あるいは私的な医療機関というものは、赤字が出ても、一般会計から繰り入れてもらうわけには参らないので、当然赤字の埋め合せとして、それぞれの金融機関なり、あるいは個人から高利で借りるということ以外には、その赤字の解消はないわけであります。従って、それらの赤字の解消がない限りにおいては、これはもうすでに病院協会の神崎博士も指摘せられておったように、施設の修理をやめて老朽化に放置するか、あるいはその従業員の定期昇給なりあるいはボーナスというようなものをやめて、そういう恩典はやめて、同時に労働強化をやるか、あるいはそうでなければ、患者のいわゆる診療内容を何らかの形で低下するか、あるいは今盛んにいわれておるいわゆる水増し診療をやる、こういうこと以外には手がないことになってしまうわけです。そういうことを放置しておって、いわゆる水増し診療が多いとか、あるいは労働争議が多くてけしからぬじゃないかということは、私は政治の姿としては下の下の方だと思うのです。すでにあなた方が、二十七年に赤字が出たということを国民大衆にお示しになったならば、具体的にそれに対する対策はこうだということを持ってこなければならぬと思うのです。今、国立病院は非常に内容がよくなったという御説明がありましたが、あの二十七年以降における日本の医療機関の経営内容というものは、全般的に見て、二十七年よりかぐっとよくなりつつあるのか、それともさらに二十七年よりか悪くなりつつあるのか、この傾向はおわかりだと思いますが、これを一つ、あなたは日本全国の病院の監督者としての立場にある局長として、御説明願います。
  111. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 十分な資料を持ち合せておりませんので、もちろんこのように重大な点については、確たるお答えは申し上げかねると思うのでありますが、ただ、先ほど申し上げましたように、国立病院等の実績から考えますと、必ずしも一がいに悪くなったというふうにだけもいいかねるのではないか。その点は、一つには、数回にわたって保険の点数の改訂、あるいは入院患者等につきましては特別な完全着護とか、あるいは完全給食、完全診療というふうな処置がとられたというような点、それからもう一つは、患者自体がふえておるということ、これから先はわかりませんが、少くとも今までのところでは、このような事態がございます。それから御承知のように、例の結核治療というようなものが、保険で取扱います範囲が広がって参っておるというような点から、必ずしも悪くなったともいいかねる。私も、今のところより非常に改善された、もう二十七年の赤字は解消したというようなことを断言するほどの根拠も何もないのでありますが、今のように、さればといって、ますます赤字がふえたといえるかといわれますことについては、必ずしもそうともいえないというふうにお答え申し上げます。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ二十七年の三月、十月の調査よりか、悪くなったともいえないし、よくなったともいえない、こういうことでございます。そういう答弁は、私は今日の場合はちょっといただきかねるのです。あなたの方は、すでにもう九月には新医療費体系を出されると厚生大臣はおっしゃっておるわけです。新医療費体系を九月に出されるからには、もう少くともあなたの掌握下の国立病院の経理の内容の状態というものは、一目瞭然たるものが出ておらなければならないと思うのです。だから、国立病院の少くとも二十八年度の状態、あるいは二十九年度の状態から見れば、二十七年よりはどうなったかということは、おわかりでなくちゃならぬと思うのです。この点、今のような、いわゆるよくなったか悪くなったか言明できぬような御答弁でなくして、これらの国立病院だけについてでけっこうですから、一つよくなったらよくなった、悪くなったら悪くなったということを、はっきり御言明を願いたいと思います。
  113. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 国立病院に関する限りにおきましては、収支のバランスは改善されております。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 国立病院に関する限りは収支の状態は改善された、私もそう見ております。なぜならば、現在この基金から支払われる金の六割というものは、公的医療機関が取っておるということです。しかも、この四つの病院の実態は、今のあなたの御説明を通じてもわかるように、これらを含めたいわゆる広義の公的病院の入院患者の八割ないし九割というものは、生活保護と健康保険の患者であるということです。しかも、これらの弱き者からの収入というものは、一切掛けにならない、現金で入ってくるものです。そういう確実な収入源を押えた国立病院が、もし税金もなくて赤字であるとするならば、これは国立病院の経営がどうかしておる、その院長が無能か、あるいは乱費が行われておるか、何らかの形だと私は思う。国で施設を作ってくれて、八時間労働で、しかもゆうゆうと院人を治療していくというところで赤字を出しておったら、これは私に言わせれば、院長が無能ですよ。これは改善されなければうそなんです。ところが、そういうところと違って、今度はいよいよ施設や何かに自費をもって投じていく、こういう公的な医療機関になると、いわゆるこういう社会福祉公的医療機関の範疇で、社会福祉法人とか財団法人になると、ちょっと様相が違ってくるのです。国立は、なるほど改善はされているけれども、こういうところになると、そうはいかないと思う。国立は、あなたの今の答弁で明白になっておる、改善されておる。しからば、今度は国立を除いた済生会、赤十字というもの、あるいは今ここに出ておる久我山、愛世会、生光会というような財団法人の類、これらのものの改善はどうですか。これは大よそおわかりだと思いますが、改善されておるやいなや。
  115. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 同じように公的医療機関と申しましても、ただいま御質問の施設等につきましては私ども的確な資料を持っておりませんので、いいとも悪いとも、何とも申し上げかねます。もしも国立病院のような事情が、大体その施設において見られるということであれば、これに向って改善されておるでありましょうけれども、いろいろな特殊事情というものがある、そしてそれが最も悪く働く要因であるということになりますれば、必ずしも国立病院のようにはいかないということは、予想もできます。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、国立病院のような工合にはいかないということで、どうも答弁がはっきりしないのですが、局長さんの方は、九月に医療費体系を出されるのに、国立病院以外には調査をやっていないのですか。公的医療機関の中でも、財団法人や社会福祉法人は無税なんです。私的な医療機関、私的な病院というものは、税金を払うのです。固定資産税、地方税、国税、みな払うのです。そこで、そういう私的な医療機関の問題と同時に、もう少し明白な御答弁をいただきたい。やがて医薬分業の法案も出てきますし、これについて、私らははっきりした態度をとらなければならぬ場面にも追い込まれる。どうせ、そのとき質問しなければならぬですが、今お聞きをしたいのです。あとで資料も要求しますが、何ぞ九月を待たんやということで、ぜひ一つ今度は私たちはあなた方と一緒に医療費体系を作りたいと思っている。もう厚生省だけで作っていただく必要はない、国会と厚生省と一緒に素っ裸になって日本の医療機関の実態を見て、単価の問題その他と取り組んでみよう、そうしなければ、あまりにも問題が大き過ぎる。厚生省一つだけにまかせておいては、日本の医療機関は救えぬという事態が出てくる。そして全日本の国民が一致して日本の医療をどうするという問題、そうしてまた、日本の予算の中でどの程度社会保障費としてそういう医療費を持っていくかということは、先に譲るわけには参りません。もう火がついて燃えておる問題ですから、早く火を消さなければならぬ、こういう考えを持っているのです。だから、時間がありませんから明白に一つ——国立病院はよくなったということは、はっきりわかりました。国立病院がよくなったということはわかったのですが、そういう国立病院に準ずるような社会福祉法人や財団法人の病院は、あなたは御答弁ならぬですが、これをもう少し明白にしてもらって、次に私的医療機関の問題をお尋ねしますから、もうちょっと明白にしていただきたい。
  117. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 私どもは、たとえば都道府県立の病院、あるいは日赤、済生会等というところは、私どもの直接の監督下にはございませんけれども、いわゆる公的医療機関でありまして、国立病院に準ずる性格を持っておりましす。またその経理の状態というようなものも、努めますれば国立病院と同じ程度にその内容が分析できるはずであるというふうに考えておりますので、国立病院においてはどのような資料の整理の仕方をしたかというようなことは話しました。そうして、さような府県立で——府県立と申しましても、県が単位になりますから、さように熱心な県というようなところにおきましては、その県立病院の収支の状況というようなものの整備をお願いいたしております。しかし、これはあくまでも命令ではございませんで、こちらが願っておるわけでございますので、どの程度の資料が出てくるか、あるいはまた特に私ども懸念いたしておりますのは、出て参りましても、これが年々少くとも二つの時期において同じような方法で整理されました収支のバランスというものがなければ比較できませんので、最近の収支の状況というものはあるいはまとまるかもしれませんけれども、さらにさかのぼって動きがどうなっておるかというようなことは、相当むずかしいのではなかろうかということを考えておるわけであります。いずれにしましても、今のように病院の経理内容、経営内容というものが今日どうなっておるか、あるいはこれがどういうふうに動いておるだろうかというようなことについては、私どもの直接管理しております者からは、できるだけ正確なものを、それから直接でございませんのは、こちらからいろいろ話しまして、そして同じような趣旨において実態がわかるような資料を出してもらうようにお願いしておるというようなことであります。  なお、ただいまの御質問の中に御意見としてございましたが、これはまた別にお答え申した方がいいかもしれませんけれども、ちょっと申し上げますれば、私ども昭和二十七年において実施いたしましたような経営分析というようなものは、国立以外においては、再びこれを実施することは困難である、時間の関係から参りましても、困難であるというふうに考えておるのですが、ただ可能なのは、診療行為の頻度がいかように変ったかということだけは調査ができるはずである。少くとも、その頻度の変化による一施設の収入の状況がどのように変ったかというような点だけは、調べてみたいというふうに考えておりまして、これも御承知のように、ただいまその調査を実施し、資料を整備しておるような状況であります。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも私納得がいかないのですが、昨年あの一年三カ月の法案が通ってから、当然半年以内にやってくれという要求は、参議院でもわが党から出ておる。今ごろからぼつぼつやったりするというのでは困るので、とても来年の四月一日から分業なんかできません。それはわれわれ審議するのに二カ月ぐらいかかる。そうしてそれを翻訳して点数に直して、今度はそれを普及徹底せしめて、そして実施するというのでは、とても間に合わぬ。やはりこの国会ぐらいに出してこなければ話にならないのです。だから、これはもう早くやらなければいかぬ、こういうことなんです。  それなら、お尋ねしますが、大体国立病院は改善せられたということでございますが、そうすると、国立病院に、もし今の収入形態で地方税、国税、固定資産税々課して、国立病院は赤字になりますか、黒字になりますか、これはすぐおわかりになると思います。社会保険収入の二八%でありますから。およそ国立病院の固定資産というのは、常識的に見て評価があるはずですから。それは三万や五万の黒字じゃ税金を払えませんが、五千万円、六千万円水揚げのある、今言ったように生光会みたいな病院だったら、普通の私的な病院なら、少くとも四百万円や五百万円の税金は優に払う。そういう点、一つ御参考までに意見を聞かせておいてもらいたいと思います。
  119. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 国立病院が今日持っております財産にいろいろ税金をかけていく、あるいは収入に税金をかけていくというような形をとったときにはどうなるかということになりますれば——そのほかいろいろな新しい設備費等がございます。新しい病院も作っております。改築もいたしております。こういうものを入れていけば、今日多少黒字と申しましても、これは赤字に転じていくという状況にあることは事実でございます。ただし逆に、今日の国立病院の経営が、他の民間の病院の経営に比べて、国立病院が黒字であっても民間の病院は赤字だ、あるいは国立病院でさえも赤字になるのだから、民間の病院は必ず赤字だということがいえるかどうかと申しますと、私は必ずしもそうはいえないと思います。と申しますのは、私どもの国立病院を設立しております趣旨は、これは採算がとれようがとれまいが置かなければならぬ病院、もう赤字を出すことを覚悟して置いている病院がございます。もちろん中に立地条件のいいところでは、相当な黒字を出しまして、その黒字で赤字の病院をカバーしていくというような考え方でございますので、もしも特別に国とか公費の大きな補助がないといたしますれば、私どもは対馬の鶏知病院のように、非常にへんぴなところの病院は廃止せざるを得ないと思います。しかしながら、御承知のように国立病院特別会計は、一応経理の上でできるだけ合理的な収支経営をさせるために、むしろ収入、支出を明確にさせるという意味で、私は特別会計が実施されておるもの——これは多少個人的な見解かもしれませんが、さように思っておるのであります。そういう点から参りますので、赤字を出している病院をかかえておる関係から、その実績をもって直ちに民間病院がいかにあるであろうかということを、強く主張するわけにはいきかねるというふうに考えております。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、今の意見は賛成です。少くとも国家で社会保障の一環としてそういう公的な機関を経営をしておる。税金もとらないというのは、赤字であろうと何であろうとやることでやっておるので、これは当然です。ところが、現在の国立病院が普通の開業医と何ら変らないということは、万人の認めるところです。国立病院が営利性をもっていっておったにもかかわらず、現在日本の国立病院は、営利性を通り越してしまって、常利性さえも追求ができないところまでいっておるのが現在の姿です。これは何も国立病院だけじゃなくて、日本のすべての病院がそういう形になってきた。それは具体的にすでに健康保険と生活保護の患者によって占められ、しかも入りたいという生活保護の患者まで切り捨てなければならぬという実態こそ、明らかに営利性を通り越している証拠である。営利追求をやろうといっても、やれないところまできておるということなんです。なぜか、そんなにどんどん入れておったら、国の財政が持てない、病院の人数をどんどんふやさなければならぬから、予算が持てないということです。その実態が現われてきている。足利療養所が、すでに氷山の一角として現われておる。あるいは国府台がその施設の悪さという点において、氷山の一角として、現われておる。あるいは民間の久我山の病院においては、明らかに年々歳々病院のベッドはふやしておるけれども、未払い賃金がある、約束した給料のベースで払わない、こういうことでさらにその氷山を大きくして露頭として現わしておる、こういうことです。これはあなたの言う通りです。こういう公的な病院は赤字でもいいのだ、赤字でいい病院を、なぜ月に五分の高利で借らせるような状態にだれがしたのだということです。国立病院だってそうでしょう、結核患者が入りたいと思えば、鹿児島だって、足利だって、ベッドはあいている、みんな入れないじゃないですか。赤字を覚悟なら、どんどん入れてやるべきだ。だから、あなたの今言われるのは筋なんです。ところが、あなたの言われる社会保障なんだから、赤字を覚悟で国立の方はやっておると言われる、その覚悟が実現されていないところに問題があるから、わざわざ無税にして、八時間労働で交代もできるような工合に国の金でして、赤字が出たら一般会計からつぎ込んでやるという病院さえもが、やっと改善ができたということならば、一般会計のつぎ込めない、公的医療機関に準ずる赤十字なり済生会とか、それからこういう久我山病院あるいは生光会というようなものは、これは赤字が出るのは当然だと私は思う。だから、当然出る赤字に対して、それを何らかの形で対策を立ててやることが政治だと思う。二十七市にそれが出ることはわかっておったのに、なぜ手を打たないかということです。いわんや私的な医療機関におきましては、ますますその赤字を激しくして、労働の強化と、そうして、しかも施設の老朽化、そうでなければ、悪い医者はおそらく診療内容を低下させる以外にないということです。これは必然的にあなた方の政策によって追い込まれてきておるということなんです。こういう点をもう少し明白に、国立病院を一つのモデルにしてやってもらわなければならぬと私は思う。国立病院が改善されたといって、それで安心してはならないということだと思うのです。  それで、これ以上言っても仕方がありませんから、一つ私はお願いしたいのは、東京第一病院のような一流の国立病院を二つぐらい、それから中流の国立病院を二つぐらい、それから今申しました長野県の御母家の療養所のような最も悪いと思われるような療養所二つぐらいについて、昨年一カ年間の歳入と歳出、歳入は健康保険なり生活保健なりに全部分けて、早急に委員会に出してもらいたいと思います。これは六つくらいでけっこうです。今言ったように、上が二つ、中が二つ、下が二つくらいでけっこうです。これを結核療養所と一般の病院について出してもらいたい。従って、計十二になります。これを至急に出していただきたいと思います。これで私たち検討をしてみたいと思います。  これで私は質問を打ち切っておきます。
  121. 中村三之丞

  122. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今日の説明によりますと、御承知のように久我山病院及び生光会等は、社会福祉法人である。社会福祉法人であれば、社会局長がいなければならぬはずだ。しかも、今日の説明によりますと、これは社会局でお調べになった、その社会局長がいなくなったということはどういうわけですか。先ほど来、実は委員部の方にお願いして、探してもらったが、行方不明だ。こういう無責任な話はない。みずから調査して、われわれが質問の順番を待っておるのに、その責任者がいなくなるということは、一体どういうことです。私は、本日は社会局長がおりませんから、質問をいたしません。委員長におかれまして、どうかこのような無責任な、議員をばかにいたしました態度のないように、厚生大臣の方に厳重に申し入れをしていただきたい。このことをお願いいたしまして、私の質問は明日あるいは明後日、最短のときにおいて、委員長のよしとするときにおいていたしたい。このことを特にお願いいたしまして、今日はこれでやめておきます。
  123. 中村三之丞

    中村委員長 お答えいたします。私も、さっき席をはずしまして、帰ってくるものと思っておったのです。ところが、帰ってきません。社会局長の態度は、あなたのおっしゃる通りです。厳重に申して、次会に御質問の時間をさくようにいたします。さように御了承願いたいと存じます。  それでは、本件に対する質疑はこの程度にとどめまして、残余の質疑は後日に譲ります。明十三日午前十時より、法務委員会と社会労働委員会との連合審査会を、午後二時から社会労働委員会を開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十一分散会