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滝井委員 私も、不正は防止しなければならないと思います。しかし、少くとも
社会保障制度の法律の中に、こういう犯罪捜査にひとしいような条項を入れるということ自体が、いかに日本の
社会保障制度というものをこういう面からゆがめていく道を開くかということを私はおそれるのです。おそらくこれによって、要領のいい医者、要領のいい患者——これは傷病手当金
関係でありますが、それから要領のいい事業主——これは
保険証の不正使用に
関係いたします、これらの人々はうまくくぐっていくのです。それよりか、まずこういう法律できめる前に、自主的にとるべき
方法は幾らでも現在あると私は思うのです。たとえば、現在地方でとっておりますように、それぞれ医者なら医者が寄り集まって、請求書を出す前に、まず自主的に医師会
自身で
保険証の審査をやっておる。そういうことをやっておるところは、ずっと不正使用もなくなるし、請求
点数というものも、きちっと適正診療が行われる状態が出てきておる。ところが、こういうことをだんだんやっていくと、必ず今度は筆先だけでものをごまかそうとする者が出てくることは明らかです。筆先でごまかせば、これは書面審査ですから、何もできない。立ち入っていったところで、カードにそのように書いてあれば何でもない。一々しろうとの患者のところにたずねて行ったって、なかなかわからないという状態が出てくる。また患者
自身にしても、傷病手当金をもらおうとする場合には、医者に行って、先生十日前に来たことにして下さいと言ったらよい。傷病手当金は、医者に行った日から起算されるわけなんです。そして三日の待機になるわけです。こういう患者と医者の微妙な立場というものが同時にあるわけです。こういうものは、一々行って強権で調べ上げてやるというよりか、それぞれ患者の所属する組合か、あるいは
国民健康保険自身の自主的な運営でできると私は思うのです。現実にわれわれはできておるところを知っておる。こういう強権を発動すればするほど、被
保険者なり医者に対する非常な反撃の
機会を与える。そうしてそれが、今言われるように、思想的に大阪の事件等に発展してきて、
厚生省自身手がつかないような事件が出てきたのではないか。まずこういう段階に行く前に、自主的に
保険の内容というものをぶちまけて、そうしてその協力を求める態度が
厚生省に欠けておると私は思う。これを一々摘発して敵に回してやろうとするところに、団体
自身においても、会員の中から一人か二人不名誉な者を出すことは、団体にとっても面子があるので、団体
自身は全部固まらなければならぬ、こういう事態に
厚生省自身が追い込んでおる。それは策の下なるものであると私は思う。むしろ、これは起る前に、予防的な
措置を
考えていくべきだと思う。そういう
意味で、私は、犯罪捜査にひとしいようなこの検査というものは、
保険行政に多くの悪い跡を残すものであると確信をいたしております。
そこで、こういう席上でお伺いするのもどうかと思いますが、今後の
保険行政をやる上に重大でございますからお尋ねしますが、先般の本
会議で、一月においては一億五千万円、二月においては一億二千万円の節約が出てきた。これは行政的な
措置によって、乱診乱療防止によって出てきたものだという御説明であったと
考えます。それならばこの内訳をお尋ねいたしたい。まず医者の側の不正診療が幾ら、
労働者側の傷病手当金その他の不正が幾ら、事業主側の不正が幾らという、この内訳を
一つ御説明願いたい。