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1955-05-10 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 松岡 松平君    理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君    理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       亀山 孝一君    草野一郎平君       小島 徹三君    床次 徳二君       山本 利壽君    横井 太郎君       亘  四郎君    越智  茂君       小林  郁君    中山 マサ君       八田 貞義君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       受田 新吉君    神田 大作君       山口シヅエ君    山下 榮二君       中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田辺 繁雄君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 浜口金一郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 五月九日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として武  藤運十郎君が議長指名委員に選任された。同月十日  委員武藤運十郎辞任につき、その補欠として  滝井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月七日  理容業界安定対策確立に関する請願黒金泰  美君紹介)(第三三一号)  同(石田博英紹介)(第三三二号)  同(高木松吉紹介)(第三三三号)  同(中村三之丞紹介)(第三五〇号)  同(丹羽兵助紹介)(第三五一号)  同(高橋等君外一名紹介)(第四四一号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付適用  期間延長に関する請願(山村新治郎君紹介)(  第三三四号)  美容師法制定に関する請願山花秀雄紹介)  (第三五二号)  同(瀬戸山三男紹介)(第三八四号)  国立療養所附添廃止反対に関する請願外一件  (八木一男紹介)(第三五三号)  同(野原覺紹介)(第三五四号)  同(岡本隆一紹介)(第四四二号)  同(西村榮一紹介)(第四四三号)  向ノ丘に久保病院設置反対に関する請願(福田  篤泰君紹介)(第三五五号)  東京外地引揚者寮修築費国庫補助に関する請  願(淺沼稻次郎君外二名紹介)(第三五六号)  同(園田直紹介)(第四五二号)  西部ニユーギニア等遺骨拾集に関する請願  (辻政信紹介)(第三五七号)  牛根地区及び柊原地区保育所設置請願(二  階堂進紹介)(第三八五号)  技能者養成機関助成費国庫補助に関する請願  (灘尾弘吉紹介)(第三八六号)  鹿屋公共職業安定所垂水分庁舎の昇格に関する  請願二階堂進紹介)(第三八七号)  国立療養所附添廃止反対等に関する請願(山  花秀雄君外一名紹介)(第四四四号)  同(三鍋義三紹介)(第四四五号)  同(淡谷悠藏紹介)(第四四六号)  健康保険による医療費の被保険者負担反対に関  する請願外一件(岡本隆一紹介)(第四四七  号)  日雇労働者待遇改善に関する請願横山利秋  君紹介)(第四四八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  昭和三十年度厚生省関係予算説明聴取等に関  する件  昭和三十年度労働省関係予算説明聴取等に関  する件     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず昭和三十年度厚生省関係予算につきまして発言の通告がございますので、順次これを許します。岡本隆一君。
  3. 岡本隆一

    岡本委員 数項目質問したいのですが、そのうち大臣が来られるまでの間、二、三の問題について質問したいと思います。  まず第一に、人口対策費の中の生活困窮者受胎調節普及事業費補助金であります。受胎調節の問題が、今までどういうものか厚生省では母性保護として取り扱われておりまして、人口対策としては取り扱われておらなかった。それが初めて人口対策として取り扱われるようになつたのでございまして、非常にけつこうなことでありますが、この生活困窮者に対する受胎調節普及方法は、どういう機関にやらせて、どういう方法でおやりになるのか、その方針を承わりたいと思います。
  4. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいまお尋ねの、生活困窮者に対する受胎調節普及する方法でございますが、これは生活困窮者に対して器具薬品を、生活保護法該当者に対しては無料で、それからボーダーラインの層にある者に対しては約半額で支給したいというふうに考えておるわけでございます。それの実施に当りましては、保健所社会福祉事務所と密接に連絡をしながら、して参りたい、そういうふうに考えております。
  5. 岡本隆一

    岡本委員 そうしますと、保健所社会福祉事務所から連絡のあった者を呼んで、集めて指導をやっていく、こういう方針ですか。
  6. 山口正義

    山口(正)政府委員 受胎調節普及に関します指導方法は、保健所の所内で指導いたします方法と、それから保健所から出かけて参りまして、所外指導いたします方法と両方ございます。この際実施いたしますのは、主として所外へ出かけて行って指導してやりたい、そういうふうに考えております。それから器具薬品普及方法に関しましても、一々保健所へ呼んでということでなしにやりたいというふうに考えます。
  7. 岡本隆一

    岡本委員 先般来モデル地区受胎調節指導をやられた成績がおありだと思います。どういうふうな状態か、お聞かせ願いたい。
  8. 山口正義

    山口(正)政府委員 厚生省自体として、直接今までモデル地区というようなものを設定したわけではございません。ただ厚生省直轄機関として国立公衆衛生院というのがあります。そこで人口問題を取り扱つております部門の者が、山梨県、神奈川県、東京都下モデル村を三カ村ばかり作りまして、あるいは東京都が東京自体考えで、墨田区それから郡部の方にモデル地区作つて実施いたしております。そこでは、先ほど申し上げましたように、まず広報宣伝をいたしまして、それから今度は指導員が出かけて行って、いろいろ個別的に話をする、あるいはグループを作つて話をするということをいたします。それから必要に応じて器具薬品を無償でやるということをいたしまして、実施をいたしております。そういうところでは、モデル地区よりましては、まだわずか一年くらいの経験しかないところもございますが、公衆衛生院がやつておりますのは、もう数年の経験を得ておりますので、成績によりますと、受胎調節実施の率非常に上って参っております。それに伴つて、いわゆる妊娠率それから出生率というものが全国の平均よりもずっと下つてきております。そういうふうに非常に成績を上げております。
  9. 岡本隆一

    岡本委員 大体、受胎調節には非常に忍耐努力が要る。今、日本人口状態のあり方というものは、比較的知性が高くて、そしてまた意思の強い人、そういう人たちの間では受胎調節が盛んになっている。意思の弱いそして知性の低い人たちの間では普及程度が少い。だから、いわば人口の逆淘汰が盛んに行われている。従ってこの問題は、日本人口の将来を左右する非常に重要な問題である。いい素質を持つた人たち子孫がどんどん減つて素質の芳ばしくないような人たち子孫がふえる傾向にあるということが出て参りますと、これから二十年、三十年後の日本民族の将来というものは非常に危ぶまれる。従ってこの問題は、ほんとうに国も本腰を入れてやつていただかないといけない。そこで今取り上げられておる方法というものは——もちろん生活困窮者のすべてが素質が劣悪だというのではありません。しかしながら、その中にはある程度素質の悪い人が含まれておるということは、隠せない事実だと思う。従ってそういうふうな素質の悪い人たちに非常に忍耐努力の要る方法をもって受胎調節をやっていくというふうなことをなさろうとされても、なかなか容易な問題ではないと思う。生活困窮者の中に受胎調節の問題を厚生省から持ち込んでいただいてどんどんそれを進めるに応じて、それに同意してそれを進んでやっていくというふうな人たちは、その中の素質のいい人である。生活困窮者の中の素質のいい人たちは、なるほどすなおに応じて積極的に協力すると思います。しかし、素質の悪い人々は、長い間にはコンドームとかペツサリーとかいうものを使うことをおつくうがつて、結局は行き当りばつたりにどんどん産んでいく。そういう人々は、もう妊娠しましても、さしあたり産んだらその子がどのような不幸な状態に入っていくかというようなことも考えない、無責任に産みつぱなしていくというような人たちが多い。そういうような人たちに、忍耐努力を要求しても無理だと思います。従って、ほんとう日本人口の逆淘汰を防ごうということを考える場合は、むしろそういう人たち忍耐努力をしなくても受胎調節ができる方法考えていかなければ、日本人口問題の将来の恒久的な対策としては無理ではないか。そういう意味からいきますと、出てくるのは優生手術だと思う。すでに三人、五人の子供があり、しかも非常に生活困窮状態に追い込まれておる人に、政府の方で国の費用でもって、本人同意があり、同意というよりも、むしろ本人希望があれば、あなたはどうだ、こういう方法を国がしてあげるが、もう子供を産むのをこの辺で打ち切つたらどうだというふうなことを国から勧めて、そうしてなるほどそんなけつこうなことがあるのなら一つつてもらいましょうというふうなことで優生手術を受けさせる方法も、この中にお取り入れになことが私は必要だと思うのです。ことに優生手術についは、近年どんどん発達してきて、男子の精管の結紮に至っては、もう外科手術でもってやれる、それは御承知だろうと思う。弁当箱を持って仕事の帰りに医者へ寄つて手術を受けて歩いて帰れる、そういうふうな状態になっており、費用もそんなにかからない。だから、そういう方法でもってどんどん優生手術を奨励して、そういう不幸な状態にあり、生活困窮状態にある人の受胎調節をやっていくというようなことをお取り入れなつたらどうかと思うのですが、その辺についてのお考え一つ聞かせていただきたいと思います。
  10. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま岡本先生の御指摘のように、受胎調節普及状況を実際にいろいろ調べてみますと、やはり普及率のいいのは教育程度の割合に高い人、教育程度の低い人は普及率が悪いというデータがはっきり出てきております。従いまして、これをただいま御指摘のように逆淘汰を防ぎながらこの受胎調節普及させていくということにつきましては、よほどその実施方法に注意をしてやつて参りませんと、御趣旨のような心配が起る可能性が非常に多いと思うのでございます。ただいま優生手術を、さらにもっと広くやつたらどうか、そして政府がそれに対して予算上もいろいろ奨励的に考えたらどうかというお話でございますが、現在の優生保護法立場からいたしますと、御承知のように優生手術をいたします範囲というものが主として遺伝的の優生という意味から、遺伝的の疾患を持つた者に対して実施するということ、あるいはこれ以上妊娠を続けると母体生命に危険を及ぼすというような場合に一応法の建前が限られております。それに対しまして、予算上も強制的な優生手術に対する費用を公けに負担するというような経費を計上しております。さらに奨励的にやるということについては、今までもいろいろ議論は出ておりました。私どもの方でも検討はいたしておりますが、また法の建前もございまして、そこまで踏み切るというようなところまでは行っておりません。御指摘のような点もございますので、私どもそれぞれ専門の方々の御意見もよく伺いながら、今後検討さしていただきたい、そういうふうに考えております。
  11. 岡本隆一

    岡本委員 優生保護法では、すでに数人の子供を有し、出産のたびごとにその健康状態が悪くなっていくおそれがあるという者にも、やはり優生手術をやつていいということになっているのです。従って法を改正しなくても、それは優生保護法適用範囲に入ってくると思う。それからまた、もしそういうことが妥当であるというふうなお考えであれば、これは法の改正をやればいい。私たちも、何どきでもそれに協力する用意がございますが、どういう御意見でしよう。
  12. 山口正義

    山口(正)政府委員 現在の法の建前でございますと、人工妊娠中絶の場合とは、やや表現を異にいたしております。人工妊娠中絶の場合には、母体の健康に障害を及ぼすというようなことでございますが、優生手術の場合は「生命に危険を及ぼす」と、ややニュアンスの違つた表現を用いてございます。これはやはり優生手術をするということと、人工妊娠中絶をするということの本質的な差を、そこでお考えになって、実行されていると思うのでございます。しかし、御指摘のような点は、今まで専門家の間でもいろいろ御意見が出ておりますけれども、まだ私どもとしてはすぐそこまで法の改正をお願いする、あるいはそういうふうに予算的にもいろいろお願いするというところまでは到達しておりません。御指摘の点は、私ども十分検討させていただいて、今後推し進めて参りたい、こういうふうに考えております。
  13. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連して。今月の「経済指針」という雑誌表紙の上に、日本人口はもう下りかけておるというのを大きく出しまして、そうして受胎調節というものは日本の行く末に非常に暗いものを与えるものである、これは結局性の解放を国民に与えるようなものであるということをここに書いておるのでございまするが、私はこれを見まして非常に驚いたのであります。私どもも、厚生省のお仕事の中で、これが非常にいいことであるということを考えて、これまでその問題についてずいぶん関心を持ってきたのでございますが、こういう問題が世間に広く雑誌を通じて、しかもそれが雑誌表紙にこういうことを大きな文字で書いて出しておりますことは、厚生省のこの新しい考え方に、非常な逆行をやつておる活動であるということを考えておりますが、こういう問題に関しての厚生省広報活動は、どの程度までおやりになつたか、また今後どの程度までおやりになる考えであるか、伺つておきたいと思います。これはこの問題を逆にいたしまして、非常に悪い面を勧めておるような感じのする論文が中に出ておりますので、広報活動模様を聞かせていただきたいと思います。
  14. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御指摘雑誌は、まだ私見ておりません。ただ、日本人口減つてきているというようなことは、これは先生も御承知のように、決してそういう状態ではございませんで、増加率がやや減少してきているということでございまして、現在のような状態で、しかも受胎調節が相当普及して参りましても、昭和四十五年には人口一億を突破するというような、これは人口問題研究所専門家の統計的な観察によって、そういう数字が出ているわけであります。決して日本人口が現在減つてきているというようなことはないのでございます。私どもこの家族計画普及さしていく、それは人口問題の立場からも、あるいは健全なる家庭生活、合理的な家庭生活を推し進めていく上からも、ぜひ必要だと考えておりまして、その広報活動といたしましては、新聞の論壇を利用させてもらう、あるいは放送、雑誌その他で広報活動をやつております。昨日も省内でその話が出たのでありますが、今後さらにこれを推し進めていかなければならぬと思っております。本年は日本世界家族計画会議というのが開かれることになっております。その機会もとらえまして、さらに全国でいろいろ講演会などをやりまして、この広報活動を推進して参りたい、そういうふうに考えております。
  15. 中山マサ

    中山(マ)委員 大阪市といたしまして、今の器具をそういうふうなボーダーラインとか、あるいは生活保護を受けておる人にかって散布したことがあるのです。ところが、それが使われていないということを大阪市で調査いたしておるのでございますが、いわゆるボーダーラインの人、あるいは生活保護を受けておる人たちにこういうものを頒布なさいます場合に、それが使われておるかどうかということを監督なさる一つ機関があるのでございましょうか、それはどういうふうになさるおつもりでございましょうか。
  16. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま中山先生の御指摘の点は、非常に重大な問題でございます。ただ器具薬品をやりつぱなしというのでは、横流しの心配もございますし、また実際に使われないという点がございますので、私どもはこの三十年度の予算がもし成立いたしまして、それを実施に移して参ります場合は、その指導器具薬品の配布というものを並行して一緒にやっていく、監督と申しますか、あるいは指導でそれをよく使わせるというために、実地指導員あるいは保健所の職員を十分それにタッチさせて、あとどういうふうに使われたかというようなことを十分指導して参りたい、そういうふうに考えております。
  17. 岡本隆一

    岡本委員 次に、らい対策費の項目でありますが、最近らい収容所の患者さんから、たくさん手紙が参りまして、留置場設置が企てられておるが反対である、こういうふうな訴えが参りました。そういうふうなものを作らなければならないような状態収容所内部があるのかどうかということをお聞きしたい。
  18. 中村三之丞

    中村委員長 岡本さんに申しますが、医務局長はまだ来ていないのです。留保していただいて、後ほどにしていただいたらどうですか。
  19. 岡本隆一

    岡本委員 それではその問題はあとにいたしまして、次の問題に行きます。  児童保護費の中で保育所の問題でありますが、昨年保育所保育料が値上げになりまして、そのために保育所入所希望する子供が、非常に減つて参っておる模様であります。京都市の例をとりましても、京都市全体で、本年度保育所を出て小学校に入っていく子供がたしか五千五百ほどあります。それに対しまして、保育所入所希望して参りました子供が六千五百ほどありまして、その差約一千になっております。従来は、保育所が非常に狭き門でございまして、入園希望者が殺到して、それを取捨選択するのに困るというような状態にまでいっておつたのでありますが、それがいよいよ保育所のふたをあけてみますと、今度はその保育所のあちらこちらでもって定員に満たないところが出てきておる。そういうことになりまして、結局そのうちで保育所入所できない子供は、保育料負担に耐えない家庭子供でありまして、実際はほんとうに措置されねばならない子供が、保育所への入園をはばまれておるということになっておると思います。従って、近来新聞紙上でも、保育所幼稚園という言葉でもって呼ばれておりますが、保育所が比較的生活にゆとりのある子供を収容しておる幼稚園のような状態になっておる。ほんとうに貧しい人たち保育所子供を預けて働きに行かねばならないというような不幸な母子家庭子供保育所に入れない。そして母親は日日働きに、子供は薄暗い路地の奥に一人こそこそと遊んでおるというような状態が町に出て参っておる。こういうふうなことでは、何のために保育所作つておるかわからないということになっていく。従って、保育料はもっと値下げをする、もっと個人の生活状態をよく考えて、そして保育料をきめる基準というものの線を下げてもらわねばならない。厚生省ではどういうふうにお考えになっておるか、承わりたいと思います。
  20. 太宰博邦

    太宰政府委員 保育所は、従来一昨年までは平衡交付金措置費が入っておりまして、いわば、これは御承知通り国からまとめた額を地方に渡しまして、それでもってよろしくやつてくれという式でございました。それが一昨年度から国庫補助金にも戻つたわけであります。国庫補助金に戻つていろいろ検討してみますと、日本全国の各地で、その保育料基準が非常にちぐはぐで、まちまちであります。そこで国の補助として見ますからには、その基準がまちまちにならないようにしなければいけないということでへ昨年来その努力を重ねてきたわけであります。今お話保育料の問題に限定して考えてみますと、従来の場合は、親、保護者から徴収します額が少くて、結局その分は市町村費で持ち出しておったりなんかしておった。またその他の裕福な家庭からうんと取つて、それでまかなっておつたというように考えますが、こういうふうに国の一定の基準でこれを指導いたしていきますからには、やはり困つた家庭をなるべく入れるようにして、裕福な家庭の方には遠慮していただかなければならぬ。それから保育料徴収にいたしましても、やはり国の財政の中でこれをまかなうわけでございますので、人情としてはなるべく安い方がいいのでありますけれども、そうもいかない節がある。やはり親が負担できる限度においては負担してもらうようにしなければいけない。児童福祉法建前がそういうふうになっておるのです。そこで、そういう面から見てみますと、どうしても全国のうちで、端的に申しまして大多数といってよろしいかと考えますが、大多数のところは、従来費用の取り方が少かった。そこで、それはこういう徴収基準でおやりなさいということを昨年示したわけであります。不幸にいたしまして現実の問題として、その前の平衡交付金時代親たちが納めておりました保育料と比較しますと、それが相当高くなっておる。そこで、何でもかんでも、高くなれば一応文句を言うのは、人情として当然やむを得ないことだと思うのであります。そういうようなことから、その辺に対していろいろごたごたして参つたように考えております。これにつきましては、昨年あたりも、たとえば保育所子供が来ますと、うちでおやつを出しておった費用が浮くじゃないか、その費用は当然保育料の中にすでに入っておるのですから、その分を差し引いてみますと、たとえば八百円の保育料が高いというお話を聞くことがあるのでありますが、そのうちで三百円かそこらは、うちにおつてもそのくらいのものはおやつとして出しておる。そういうことを考えますと、ほんとう保育所に来てかかるという経費は、差引五百円ということになるのじゃないか、そういうようなことについては、まだ親たちの間にも十二分に納得のいく説明も不十分であったこともあろうかと思います。そういう点も十分認識していただく努力もして参る必要があろうかと思います。それから徴収基準そのものにつきましても、実は昨年作りまして、私ども自身もこれが完璧なものと思っておりません。大筋においては変える気持はございませんが、個々の点については、これは是正して、なるべくいいものにしていきたい。こういう点も見受けられますので、これは引き続き今年度検討いたして、できるだけよりよきものにし、またその親たち気持というものもできるだけ事情の許す限りこれを反映させていきたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 岡本隆一

    岡本委員 きめられておる基準が絶対的なものでないから、大いに是正していきたいというお考え、しごくけつこうであります。現実に京都市の例を見ましても、非常に基準が高く定められておつて、その基準に従つた措置費が送られておるものでありますから、実際徴収しておる市の金額との間には大きなギャップがあり、それが累積して参りまして、市の方では非常に措置費の面で赤字が出ておる。それで、今度は各保育所へ渡してやる金がどうしてもおくれる。従って、一番のしわ寄せが保育所にいくというような傾向が出てきております。二、三日前の東京での新聞を見ましても、五千円から六千円くらいの程度の女中をしておる家庭子供が、やはり五、六百円の措置費負担しなければならないというような投書が新聞に出ておりましたし、また京都市の例を見ましても、やはり親子二人ないし子供合せて三人、母親一人と子供一人ないし二人という家庭で、七千円程度の収入があれば、七、八百円の保育料負担しなければならないということになっておるのであります。これでは、やはりその人が一戸を構えて三度の食事をして、しかも保育料負担していくということになると、相当の負担になって、つい苦しむのでありますから、保育所子供を入れないで母親は働きに出るという現実が出てくると思います。こういうことになりますと、せつかく児童福祉法があつて、すべての児童が同じように天の恵みを受けなければならない、暖かい日の光の中で、また涼しい風の中で、子供はすくすくと育たなければならないという精神でもって児童福祉法ができており、また保育所が設けられておるのに、そういう子供が、せつかく国のあたたかい心の中の保育所の中にも収容されることができないということになってくるのでありますから、従ってこの基準をできるだけもっとあたたかい心で考えていただいて、国もいろいろ各方面にお金がいりますから、つい社会福祉の方面には回しかねる、しかしながら社会福祉を完全なものにするということが政治の目的だとも言えるのであります。従って、政治の中で一番重要なことは、社会福祉事業なのであります。だから、そういう面にはもっと金を惜しまないでどんどん要求していただいて、こういうことの是正をしていただくということにお願いいたしたいと思います。  次にもう一つ、同じ児童福祉関係の問題でございますが、各所の福祉施設を見て回りまして、子供の寝ている寝具が非常に悪いのです。毛のすつかり切れてしまつた軍用毛布ですね、粗悪な軍用毛布の数枚があてがわれておりまして、畳の上へ毛布を敷いて、そして、また薄い毛布を二、三枚かぶつて子供が寝ておるというふうな状況を見ますと、何かもう心が痛むのです。あれは何とかならないものかしらということを私かねがね思っておるのです。これは単に京都府だけではなかろうと私は思うのです。戦後医療費が乏しかったために、たくさんの児童の収容施設が設けられたときに、軍の余剰物資が回されて、それがそのままになって、いまだに改善されていないと思うのです。従って、これを何とか本年度、もしくはそれが不可能なら来年度にでも一斉に更新して、せめて敷きぶとんだけでも厚い暖かい綿の入つたもので寝させてやつていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  22. 太宰博邦

    太宰政府委員 ただいまのいろいろな収容施設の寝具についての御意見でありますが、非常にありがたい御意見だと考えます。御承知の通り、決していいものを与えられておるわけではないのでありまして、何とかしてよくしてやりたいと思っておりますけれども、やはり国の財政その他の関係で、なかなか思うようにいかないことは、まことに申しわけないと考えております。今年度あたり何とかできないかというお話でありますが、できるだけのことをしてみたいと思うのですが、全部を今年度というわけには参らないと思います。できるだけのことは努力してみたいと思います。
  23. 岡本隆一

    岡本委員 次は引揚げ対策費であります。先日委員会からの御指名によりまして、舞鶴引揚援護局に、ソ連から帰ってこられました人たちをお迎えに参つたのであります。そのときの模様は、委員長からも御報告があったと思いますが、援護局が非常に膨大でありまして、かつてのように大量の引揚者がどんどんあつてそれを受け入れなければならないというふうな状態でありましたら、あれだけ大きな援護局の建物も必要であろうと思いますが、今では少い人たちがぼつぼつ帰ってこられるのに対して、あれだけ大きな施設を持つ必要はなさそうに思うのですが、これからもなお大量の引揚者があるかもしれないという予想をまだ持っておられるのかどうかということをお伺いしてみたいと思います。
  24. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 前年のような、前々年ですか、ああいうような大量の引き揚げがあるということにつきましては、ちょっと見通しがつきませんが、一応三十年度におきましても三千人の集団引き揚げを予定しております。今まで五百人でも六百人でも集団引き揚げとして帰られます場合には、相当に手が込みますので、いましばらくは——今引き揚げにつきまして、いつが終局であるかという見通しは、これはちょっと簡単にはつきかねますが、ただいまのところは、もう若干は要るというふうに考えております。
  25. 岡本隆一

    岡本委員 まだ相当大きな集団で引き揚げてこられるということが考えられるものがあれば、それもなお当分あの状態のものを持っていただかなければ仕方がないと思いますが、ただこの間から再三新聞紙上で私見たのですが、援護局が引揚者を受け入れられる場合に、身の回り品を配給しておられる、その配給されるものが非常に粗悪であるということが報道されておる。私も先日そういうことを新聞で読んでおりましたので、あの引き揚げをお迎えに参つた場合に見てみたいと思っていたのでありますが、引き揚げてこられた方に、受け入れ態勢についてあなた方何も御不満ありませんかと言うて私聞いておつたのであります。帰つた、内地へ着いたうれしさからか、何もそういうことはない、非常にけつこうだといって返事しておられましたので、私も援護局の方に対して遠慮して、どんなものを配給しておるか見せてくれということは言わなかった。しかしながら、その後また昨日の新聞にこういうことが出ております。援護局は引揚者たちにいろいろの贈りものを用意している、女には配給時代のスフのブラウス、毛布がもらえたら子供のオーバーにでもと思っておつたのに、その毛布は戦争中の粗悪な兵隊用のもので、オーバーどころではなかった。男のSさんには兵隊の上着、ズボン、戦闘帽、軍手、兵隊ぐつ、皮バンド一式が与えられる、温厚な青年紳士のSさんも、この親切な贈りものには何か一言言いたくなつた、そこで小銃と剣はと聞くと、それはありませんという返事だったというようなことが新聞に出ておる。これはSさんならずとも、私だつて今の時世にこんなものをもらつたら、そう言うと思うのです。こんなものを上げるのだったら、ほんとうに上げない方がましだと思う。スフの薄いそんなはだ着であるとか、あるいは今時分に戦闘帽だとか、軍手、兵隊ぐつをもらつて、そんなものをはいてどこを歩くのです。こんな配給をされる援護局の考え方というものは、何でもいい、くれてやつておけばいいのだ、こういう気持でやつていられる以外には考えようがない。何ぼ国に金がなくても、戦後十年の間向うで苦労を重ねて帰ってきた人なのです。また迎えに行く人も、ほんとうに桟橋に上ってこられたら、涙をもって迎える、私だつて、わずかな期間でありますが、たつた二カ月の間朝鮮で捕虜生活をしてきたが、その二カ月の間というものは、ずいふん待ち遠しかった、毎日毎日家へ帰ること以外何にも考えていなかった。たつた二カ月ですらそれだけなつかしい内地なのです。十年の間捕虜生活をして、やつとの思いで内地へ帰り、しかもその最初にもらうものが、それほど心のこもってないものだったら、日本という国は何と水くさい国だろうと思うと私は思うのです。私たち国民は、そんな冷たい心でもって引揚者を迎える気はさらさらない。かりにそのために何万金、何十万金の金を上げてもらつても、ちつとも私たちは不服には思わない。だから配給されるものは、もっとほんとうに間に合う、もっとほんとうに心のこもつたものを配給していただきたいと思うのですが、いかがでしよう。
  26. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 支給等について、何でもくれてやつたらいいのだという考えでやつておるわけでは毛頭ないのでありまして、ただいま御指摘のようなことは、つい二、三日前に私もその記事は拝見いたしましたが、そういうふうな感じを受けますことについては、十分反省して、今後やり方については考えたいと思います。
  27. 岡本隆一

    岡本委員 今の引き揚げの問題については、大いに反省してやつていきたいというお話でございましたが、この次からは、うまくやつていただけますか、念を押しておきます。どうぞよろしくお願いいたします。医務局長はまだお見えにならないのですか。
  28. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 今呼んでおりますから……。
  29. 岡本隆一

    岡本委員 それではこの程度で打ち切つておきまして、また後ほど……。
  30. 中村三之丞

    中村委員長 それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後二時まで休憩いたします。     午前十一時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  31. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  質疑を続けることにいたします。大橋武夫君。
  32. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 今回新内閣の発足に当りまして、新進気鋭の新大臣をお迎えしたことは、まことに心強く思う次第であります。ところで、先般これは新聞紙に出ておりました記事でございますので、真偽を一つ大臣から御言明をいただきたいと思いますが、五月六日の経団連の会合に御出席になりました厚生大臣が、軍人恩給は社会保障に切りかえるべきものである、こういう御意見を発表された、こう伝えられておりますが、これにつきまして真偽のほどをお伺いしたいと思います。
  33. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 経団連の会合へ参りまして、社会保障全般にわたって、本年の予算、それから将来の展望につきまして、若干意見を申し述べておいたわけでございます。その際に、主として健康保険の問題につきまして、相当詳しく話をいたしたのでありますが、そのあとに、自分の所管の一部には関係しておるけれども、全体としては恩給局の関係で内閣の所管ではあるのだが、自分の軍人恩給に対する所見もこの際申し述べて、将来の参考にしていただきたいということで申しました記事が、一部分朝日新聞でありますか、掲載されております。その他の新聞にも一、二行書いてありました。これは趣旨が不徹底でありまして、朝日新聞に大体のことは書いてありましたが、なおつけ加えなければならぬ点がありますので、この際その私のしやべりました全体をお話ししてみたいと思います。  軍人恩給については、遺家族の関係もあり、遺家族の今日における社会的環境から、まことに心情同情すべき点が多々あるので、今回計上された六百五十一億の旧軍人恩給及び遺家族保障でも、なお足りないものと自分は思うので、これで満足いたしておるのではないから、逐次この拡充に努めたいと思う。ただし、この際自分の将来の国家財政にわたる展望を申すならば、軍人恩給は本年遺家族保障費等を入れて六百五十一億、文官恩給を入れると八百二十三億になる。さらにその他の恩給関係の経費を入れると、九百八十二億という膨大な数字になっておるそうであります。これは九百八十二億というのは、当日は申し上げませんでしたが、今日さらに研究いたしまして九百八十二億になります。そこで将来、自衛隊が数年前から、保安隊、警察予備隊当時からできておつて、これが中枢の幹部がやめることになると、自衛隊の恩給も出て来る。そうすると旧軍人恩給とこの自衛隊の恩給を入れると、おそらく数年後には千億に近いものが出て来るのではなかろうか。これを軍人恩給という名前で世間に発表することは、将来国家財政の規模が、かりに一兆二千億になるにしても、他の国民に与える影響からして、非常に重大な問題になって来る傾向を私はあえて指摘しておく。従ってその際においては、旧軍人恩給というものは、むしろ遺家族関係の費用が、社会保障的考慮をもって作成された過程もあるので、でき得る限り社会保障的考慮を払つて、下に厚く上に薄いという考え方で処置をするのが当然ではなかろうか。高額所後者に対しては相当考慮する必要があるように考えるので、従って将来社会保障的考慮をもって大いに扱う必要がありはしまいかということの見解を述べたことが、新聞に掲載されたのであります。
  34. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 お話はよくわかりましたが、さらにこの点について、お確かめいたしたいと思うのでございます。そういたしますと、社会保障的考慮を必要とするのは、軍人恩給だけでありますか、それとも文官恩給をも含めてのことでございますか。
  35. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大きな社会政策的見地からいたしますれば、当然文官恩給もその対策として考えなければ、公平を失することになりはしないか、かように考えております。
  36. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、新聞では軍人恩給だけのように書いてありましたが、恩給一般についてのお話であったと承わります。そこで、この点についてさらに大臣のお考えを承わりたい点は、今日の恩給制度というものは、これはいわば給与の延長として考えるべきものでございまして、従って恩給だけについてこれを変えるということは、考え方として片手落ちではなかろうか。すなわち、給与体系というものの中の恩給でございますから、恩給についてある程度の改革を考える場合においては、当然その前身でありますところの給与についても、あわせて考えて行かなければならぬと思うのでございます。そうすると、大臣のいわゆる社会保障的な考慮が恩給に加えられる場合において、その前身でありますところの給与一般については、いかなる考慮が払わるべきものでしょうか。
  37. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 将来社会保障制度といいますか、私が申したのは、今日の段階といえども、いわゆる社会保障的考慮を払う必要があるけれども、将来はさらに社会保障の大きな政策から、これと十分結びついた政策をしなければならぬ。これは、今直ちに制度そのものを変更するということにはならないのであります。その際にも、私は明確に申したのでありますが、これは国家財政将来の展望というものを、一つの大きな基礎にして話をしたのであるから、その旨御承知を願いたいということもお断りをいたしておるのでありますが、しかし厚生大臣として責任のある言明をいたしたのでありますから、決してこれを否定することはいたしませんけれども、しかしながら、今日恩給制度を直ちに変えるということの趣旨は、いろいろ年金制度などにも関係がありまして、なかなか困難ではないかということは当日も申したのであります。そこで、ただいま恩給というものは、その制度の発足からして給与体系というものに深い関連があるから、給与全般をも見通してやらなければいかぬじゃないかという趣旨の御質問でありますが、もとよりそういうことになろうと思います。思いますが、まず恩給をそういうような形において取り上げ、変革をしていこうというときには、やはり今日行われている各種の年金とむしろ深い関係を持って、恩給制度というものを検討する必要があるんじゃないかというふうに私は考えておるのであります。これは、少し長くなりますけれども、御承知のごとく、諸外国等におきましては、すでに恩給というものを全廃をいたしておるところがありまして、年金的な組み方をしておる国もあるのであります。これを直ちにまねをするとか、将来まねをするということはいたしませんけれども、年金的な考え方が、今世界の各国で非常にまじめに取り上げられ、実践をしておる国家もあるのでありまして、それとの結びつきの方が、むしろ深いのではないかというふうに考えております。
  38. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 社会保障というのは、今日の文化的な国家が、その一般国民の生活を擁護するために、政府の責任として行ういろいろな生活上の保護の制度だと思います。従って、この場合に考えられる社会保障の対象と国家との関係は、これは国家対一般国民という関係で観念すべきものであることは申すまでもありません。しかるに、従来恩給につきましては、国家対一般国民としてこの恩給制度が考えられているのではなくして、この国家は、使用者としての立場における国家が、使用人であった者——むろんこれは国民の一部ですが、使用人であった者に対する関係において恩給という制度を作つておるわけであります。この両方を混同するということは、これは考え方として非常な変革なんですが、大臣のお考えは、その変革をあえてすべきだという前提のもとに立っての御意見でございましょうか。
  39. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 もとより恩給は、国家の当然の報酬といいますか、ただいま御指摘なつたような考え方で行うべきが当然だと思います。しかしながら、今日の旧軍人恩給というものは、非常に生活に困っておる遺家族というものが、実体を大部分占めておるようにも考えられるのでありまして、そのような意味合いからすれば、将来自衛隊の恩給問題というものが上って、そうして国民が、実際に旧軍人恩給を取り扱う場合に、軍人恩給という形で国家の歳出の一〇%に近い、あるいはそれをこえるようなものが出てくると、非常に他の国民からして理解しにくい面もあるのではないかというような関係から、将来旧軍人恩給というものは考慮をし直してはどうかということを申したわけでありまして、その点十分御了解を願いたいと思うのであります。
  40. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 よくわからない点は、まず、自衛隊が今後拡充されていって、関係者がふえてくれば、軍人恩給が非常にふえるように言われますが、自衛隊は軍人恩給ではなくて、これは一般の恩給を取ることになっておるのであります。その点については、大臣はどうお考えになっておられますか。
  41. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 将来の仮定の問題でありますから、深く論及することは避けたいとは思いますけれども、今後数年後における自衛隊というものは、やはり文官ではないのではないかと私は想像いたしておるのであります。
  42. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 どうもちょっとおかしいのですが、一体自衛隊の職員は、軍人恩給の適用は今ないのです。現在は一般恩給法によって処理されている。それを軍人恩給というようなことを言われることがおかしいので、現在の職員には、軍人恩給をこれから受け取るべき人はないわけです。これはかつての職業軍人あるいはかっての兵役に従事された方に対する恩給が軍人恩給なのですから、こういう点について、まずはっきり大臣としては一つ御研究をいただいて、その上で、十分に御研究の結果、こうした重要な問題について意見をお述べいただくということが、私は責任あるお立場大臣として必要ではないかと思うのです。そこで大臣は、旧軍人の遺家族の援護法においては、この援護というものは社会保障的な考え方ではなくして国家保障の精神でもってこの法律ができ、また援護が行わるべきものであるということが明文をもってうたつてあるのですが、これはむろんごらんになって、御承知だと思いますが、いかがでしょうか。
  43. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまの御質問の前に、先ほどいろいろ御教示をいただきましたことについては、十分拳々服膺して研究をいたします。それから、ただいまのことは承知をいたしております。
  44. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 これについて大臣は、ただいま具体的な御方針をお持ちになっておるわけでもないようでありまして、今後十分に御研究の上、決定的な御意見を伺う機会がまたあるかと思いますが、この問題はきわめて精神的な面を多分に含んでおる問題で、金額がどうこうというものでなく、国家に功労があった旧軍人の遺家族というものが、一般の貧困者として与えられる社会保障という制度によって救われるべきだということについては、やはり国家に対する功労者の子孫としての誇りというものがあるだろう、こういう点は、国の政治の上においては十分考えるべきことではなかろうか。ことに大臣の御方針は、将来大いに自衛隊を拡張して軍隊にでもなさろうというのでありましたならば、一そうこうした精神的な面を御考慮の上、この問題について最終的な結論をお出しいただくように希望するわけでございます。私の質問はこれで終ります。
  45. 中村三之丞

  46. 岡本隆一

    岡本委員 結核対策についてお伺いしたいと思います。結核予防の方針としまして、健康診断の実施対象を大きくする、もう一つは要注意者に対する精密検診を強化していくという方針をおとりになつたことは、非常にけつこうであると思うのであります。ところで、こういう方針をおとりになりますと、保健所仕事が非常にふえてくると思うのであります。ところが、保健所費の方を見ますと、定員の七五%をそのまま据え置く、現員のままでやるということになるのですが、それでもってこれだけの膨大な仕事保健所が十分にやつていけるかどうかということがまず第一点。  その次には、健康診断をどんどんやりますと、隠れている患者が掘り出されてくる。そうしますと、治療の対象が非常にふえて参ります。それともう一つは、近年外科的な療法が発達いたしましたので、結核の治療費が非常に高くつく。今まででありますと、安静にさせておくだけでしたが、このごろではどんどん肺切除をやつている。従って比較的初期の患者も肺切除をやつているので、治療費が非常に高くなる。薬物療法、化学療法でやっていくにいたしましても、パスとかマイシンとかいうようなことで治療費が相当高くつく。ところで患者はどんどん掘り出されていく。さらにまた治療方針の近代化とともに、治療費はどんどんかさむというふうな状態になっているにかかわらず、結核の医療費が減額されている。従ってこれはある程度、昨年の当初予算をお組みになつた当時と今とは薬品が少し値下りになっております。そういうものを見込まれたのではあろうと思いますが、しかしそれにいたしましても、減額になっているということでは、こういうふうに大きな結核予防対策を立てておきながら、この予算でそのワクがまかなえるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  47. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいまお尋ねの結核の健康診断の対象を広げたことによって、保健所にかかる負担が非常に多くなるのであろうに、保健所費用が増額されていないというお話でございますが、保健所の人件費につきましては、一応の基準考えておりまして、現在はいろいろな事情でそれが充足されておりません。従いまして三十年度の予算におきましては、実際に充足されております人員よりも少し上回りまして、また今後充足して参りますに必要な手段といたしまして、人件費の単価をかなり大幅に上げて、いい人を持っていきたいということを考えているわけでございます。また健康診断の対象が広がつて参りますと、保健所にじつとしておるだけの健康診断ではなかなか目的が達せられませんので、保健所の機動力を増すという意味で、レントゲン自動車を少くともAクラスの保健所に一台ずつ備えるような方向へ進みたいということで予算を計上していただいております。また健康診断の実施率を上げますために地区衛生組織、民間の組織を活用して実施していきたいという意味で、保健所を中心としての地区衛生組織を育成するという予算を計上しておりますので、保健所の人員を直ちに大幅に増加するということはなかなかむずかしい問題もありますが、できるだけ人員の増加をはかりますと同時に、機動力を増し、また一般の人たちの協力を得て、幅を広げました健康診断の対象をできるだけ多くこなしていきたいという所存でございます。  それから第二の点の、健康診断を大幅に広げていけば、おそらく患者が多く見つかるであろう、それに対して結核の医療費の公費負担予算額が昨年度に比較して減少しているという御指摘でございます。これはただいま御指摘のございましたように、医療の内容につきましてもだんだん変革してきております。全般に治療費は外科手術が非常に普及して参りますときには、かさんで参つたのでございますが、最近では化学療法による治療が、相当外科療法にとつてかわるというような反面も現われてきております。また化学療法の内容につきましても、ストレプトマイシンとかパスというものにかわりまして、比較的安価なヒドラジツド、パスというような組み合せでいくというようなことも考えられるようになりまして、昨年当初に予算を組みました時と情勢が大分変つてきておりますので、一応これだけの予算によって、医療の対象を大体まかなっていけるのではないかという見通しで予算を計上しているわけであります。
  48. 中村三之丞

    中村委員長 岡本君に申し上げますが、大臣に対する質問があれば、先にやつていただけませんか。
  49. 岡本隆一

    岡本委員 それでは大臣にお伺いしたいと思うのですが、結核の治療というものが非常に高くつくという点と、もう一つは、国民的に広く蔓延しておつて、しかも感染せしめるような状態にある人が、療養しないで職場に働いているというような現象が、今でもたくさんあるようであります。従って、こういう人たちを全部治療対象の中に繰り入れて、なおつてしまわなければ結核の予防というものは完全にできないし、また日本から結核を駆逐することができないわけであります。従って、そういう結核の治療というものは、個人の負担においてやることは、今の日本の国民の経済状態においては不可能でありますので、そういう治療については、国が大きくめんどうを見なければならない、このような意味で結核予防法ができていると思うのです。ところが、その結核予防法が治療費の負担の面におきましては、実際的には国が半分、一般患者から半分出るのであります。しかしながら、健康保険あるいは生活保護法の対象になっている人たちには、全部それを健康保険もしくは生活保護費用に転嫁せしめてしまつて、結核予防法としてはそのめんどうを見ておらないということになっているわけであります。従いまして、健康保険経済にはそれが大きくしわ寄せされまして、健康保険の赤字の原因というものは、結核治療費がほとんど大きく繰り込まれてしまつたということに基因するのであります。そのために、患者もいろいろ不自由をしなければならないし、また治療の面に当つている医者もいろいろな面において大きな被害を受けているわけでありますので、少くも結核対策としては、結核治療費は国費で負担していくというような態度をお持ちにならなければならないと思います。ところが、今度の予算にいたしましても、また今後の方針といたしましても、そういうことは感じとれないのでありますが、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  50. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘になりましたことは、前の公衆衛生局長に対する御質問などともあわせまして、かなり広範な結核対策についてのお話であったかと思うのであります。確かに結核対策費用が、直接的には昨年よりも二億一千五百万円少くなっております。しかしその内容は、ただいま衛生局長からもお話申し上げ、また私としてもお話申し上げたい点は、新規事業というものに対して制限はありましたけれども、従来行なっておりましたことはこれを踏襲し、むしろ充実をさせた予算を組んでおるのであります。  それから、ただいま御指摘もありましたが、御承知のごとく、健康保険の赤字対策並びに収支の均衡政策の上におきまして、政府が相当な対策を本年は立てておるわけであります。すなわち、長期債として六十億並びに国庫負担十億ということになりますと、実際に健康保険の医療給付費の六割を占めておる結核に対して、これだけのものを投下したわけでありますから、実際の結核対策費としては、昨年より目の子算用にして三十数億はふえておると思うのであります。しかし、三十数億ふえてはおるけれども、それはしわ寄せが健康保険に来たのではないかということは、御指摘の通りでありましてその点結核対策をもう少し筋を一本にしてやれというような議論も各所に起つて来ておりますし、あるいは結核保険などというものを作れというような世の中の意見もありますけれども、今日結核保険を実施するには、社会保険を統合しようとしておる折かり、不適当な点も多々ありますので、やはり現存の対策を強めて行くよりほかにないと考えておるのであります。従いまして、本年の結核対策予算としては、御指摘の通り私も決して満足しておらぬのであります。しかし、これと健康保険の赤字対策をも含めましての一応の対策、一応の償いをいたした、まあこの程度において本年は御了承を願わなければならぬのではないかと考えておりますが、将来への対策といたしましては、せつかく厚生大臣として就任をいたしたのでありますから、社会保険の強化並びに結核対策には十分の力を入れたい、かように考えておる次第であります。
  51. 岡本隆一

    岡本委員 結核対策の足らざる分を国で三十数億めんどうをみて、長期債であるとか国庫負担でもって補つてやる、こういう御意見でございますがこれは健康保険経済自体にとりましたら、借金は借金で返さなければならない。従って従来にやはりそのしわ寄せばやつてくる。わずか十億の金を出していただきましても、膨大な結核の治療費という面から見ましたら、これは九牛の一毛で、結局健康保険の被保険者自体がみずからの手をもって結核の治療費を負担しておるということになっておる。しかしながら、ないよりはある方がましで、そういうふうな健康保険経済の中に国庫負担金をお持ち込みになつたという英断に対しては、私は大臣の御苦心も大いに多とするものでございますが、しかしながら、この程度では非常に少いのでありますから、もっともっと大いにふやしていただかなければならぬ。従って、来年からこの十億の国庫負担をさらに大きく、数倍に見積つていきたいという抱負をお持ちになるかならぬかということを、この機会にお聞かせ願いたいと思います。
  52. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 それははっきり御答弁を申し上げます。私は本年十億の定額負担ということには満足もいたしておりませんし、非常に残念に思っておる次第であります。露頭を出したというだけでありまして、決して満足な成果ではありません。しかしながら、この十億出して定額負担ということになりました経緯を考えてみますと、社会労働委員会の御決議もあずかって力ありましたので、私は来年は国庫負担は当然である。財政の事情が許すならば、それを上回るようなところへまで持って行くべきが、いかなる内閣でありましても当然の施策であるというふうに考えはいたしております。
  53. 岡本隆一

    岡本委員 そのお言葉を承わりまして、今後とも大いに大臣の御尽力をお願いしたいと思います。ことに少壮気鋭の大臣でございますので、党内にあつて、軍事費に優先して社会保障費を獲得するということのために、党内世論を喚起していただくようにお願いしたいと思います。  次に、結核療養所の運営費の問題でございますが、この運営費の中で、つき添い婦を廃止して、そのつき添い婦のかわりに常勤の労務者を入れるということをこの間の御説明で承わつた。先般来からも、そういう問題が出ておりますので、たくさんの療養所内の患者さん、あるいはつき添い婦から、私どもの方へ投書が参っております。私、これはもう一応現況を見てみないことには、お話にならないと思いましたので、この間連休があったのを幸いにいたしまして、療養所を二カ所ほどたずねてみた。見て参りました施設は、大体六百五十人ほどを収容するところの療養所二カ所であります。その結果によりますと、その療養所の看護婦の定員が、大体今の現員でも十分であるとは思えない。大体一カ病棟に五十名ほどの患者さんが収容されておりましたが、その病棟に大体、外科病棟のように手の多くいるところでは七、八人、九人、少いところでありますと五、六名なんです。婦長を交えて五、六名でありますと、実際六名として婦長以下の者は五名になるわけです。その五名の中から一名は週に一回の休暇をとつて休みます。それからもう一人は準夜勤で、午後五時から十二時までの勤務につくわけです。それから一名は十二時から午前八時までの勤務につくわけです。そうしますと、患者五十名に六名の看護婦が配当してあつても、実働の人というのは婦長を加えて三人になるわけです。そうしますと、それでは内科の手術をしていないような手の比較的少い患者さんといえども、十分なことはできないのです。患者さんには食事も運んでやらなければならないし、あるいは注射もしなければならない、検温もしなければならない、それから安静度一、二度というふうな患者さんであれば、便も取らなければならない、あるいはときには、からだのあかもふいてやらなければならないというふうな非常にたくさんの仕事があるのでありますけれども、わずか二人や三人の着護婦が何ぼ一生懸命に働きましても、その人員では十分にやつていけない。従って内科の患者さんで、現実に喀血をしておる患者さんが、やはり自分で便所に行っておるし、あるいはまた非常に熱があつて苦しい、あるいは動くとせきが非常にひどく出て困るというふうな患者さんも、やはり自分で便所へ行っておるというふうなのが療養所の現実です。そういうような欠陥を補うために、つき添い婦というものが重症患者につけられる何があるわけであります。ところが、そのつき添い婦がなくなって、患者二十五名に一人の雑仕婦に入れかえるということです。ところが病院側では、なるほど病院側の意見としましては、病院の手でもって全部の人を把握して、自分の手で使つていきたい、こういうふうな希望がありましたし、なるほど医者として病人の管理をやっていくという点においては、それは便利じゃないかとも思うのであります。しかし実態を考えていきますときに、二十五名に一人の雑仕婦が配当されましても、それが三交代になりますと、結局七十五名に一人というふうな配当数になるわけであります。従ってそういう程度では、とても今つき添い婦がついているような看護というものは行き届かない。従って、収容されておる患者さんは、今まで以上の苦痛をしんぼうしなければならないという現象が出てくるということを私は憂えるのです。  さらに、もう一つ大きな問題となって参りますのは、外科病棟の場合であります。御承知のように、このごろはどんどん結核の外科療法が行われておりますが、これは胸を十センチ以上大きく切りまして、そして数本肋骨を切つて胸を広げて、胸の中に手を突つ込んでやるずいぶん荒つぽい手術であります。そういう手術をやつたあと、患者さんにその模様を聞いてみると、約十日間ぐらいはとても痛むそうです。そうして、まくら元についておりますナース・コールが自分で押せるようになるのが、大体手術後十日ぐらいです。十日間くらいまくら元のナース・コールが押せない。そういうような状態になっておる患者さんからつき添い婦をとつてしまうということは、相当危険を伴う。入院しておる患者さんに会つていろいろお話を聞いてみたのでありますけれども、自分の家族の者につき添いに来てもらつても何にも役に立たない。自分の母親であるとか、あるいは兄弟であるとかいうような人に来てもらつても、病院の勝手はわからないし、それだけでなしに、そういうふうな手術直後の患者さんの扱い方になれておらないから、どうしていいかわからない。こちらがまたものを言おうと思っても、二、三日、数日間というのは、ものを言うのも苦しい。従ってこっちが言わなくても、してほしい人、よくなれた熟練者、つき添い人がいないと困る、こういうふうなことを申している人がある。この話は、私と医者とそれから患者さんと三人でもって——別に、例の患者グループというものがございますね、そういうようなものであるとか、あるいはつき添い婦であるとか、そういう人がそばにおつての話じゃないですから、患者のほんとう気持だと思います。そういうふうな話でありまして、また医学自体も、何かつき添いがないと、外科の胸郭内の開胸術のような手術は不安で困る。というのは、重体になるとナース・コールを押せなくなるからです。重体になって容態が危険に瀕すれば瀕するほどナース・コールを押す力がなくなるのだから、従って、絶えずそこに一人ついている者がなければ、開胸術というような手術はどうも不安で困るという意見もございまして、私はそういう各方面の人たちのいろいろな意見を聞きますときに、つき添い婦をなくすことは人道的な問題じゃないか、単に経費の節減であるとか、あるいは病院の管理運営の面での便不便とかいう問題を乗り越えて、とにかくこういう重症の、ことに手術後の患者には、つき添い婦をどうしてもつけるようにしてもらわなければいけないと思います。従って、厚生省の方で今お考えになっているところのつき添い婦廃止という問題は、思いとどまつていただく必要があると考えるのでありますが、大臣はどういうようにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  54. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 つき添い看護の問題につきましては、非常に各方面から陳情もあり、またつき添い看護婦の個人個人の実情を考えてみますと、生活の問題からやむなくつき添い看護婦に入られた方が多く、ことに生活困窮されておる未亡人の方なども、相当にこの方面で活動していただいた状態からいたしまして、非常に実情はよくわかりますし、また、ただいま御指摘のような療養所によりましては切りかえの途中におきまして、つき添い看護をやめたためにウィークになつた点が多々あるのではないかと思います。しかしながら、国の病院経営、療養所経営の理想からいきますれば、次第に完全看護の方に持っていくことのために、いろいろな障害を乗り越えてその実現をはかる方が筋道ではなかろうかとも考えております。つき添い看護というのは、日本の特殊な事情でありますが、現在国立療養所におきましては、約一万一千名の看護婦が患者の看護に当つておるのでありますけれども、これを万全を期するために今回新たに二千三百名でありますか、増員をお願いいたしておるわけであります。そこで二十五ベツトに対して一人の看護婦を置いて、そうして完全を期していきたいという形をとるために、今までつき添い看護で達しておりましたことを、今回は転換をしていきたいというふうに考えたわけであります。この方針は実は、私の前任者の当時からきめられたことであったのでありますけれども、切りかえのときには、よほど実情を顧慮して、これが円滑にいかなければいかぬのではないかという個人的な見解なども申し述べておいたのでありますが、原則といたしましては、やはり今回とりました措置が妥当ではないかというふうに私は考えておるのであります。ことに、つき添い看護に当つております者は、患者との個々の契約によりまして看護に当るものでありますから、他に重症者がおりましても、これに手が回るというようなことがないために、不公平な面も出ておりますし、また看護婦の資格を有することが要件であるにもかかわらず、実際資格を有する者はきわめて少数だというような実情もございます。さらに、先ほど御指摘もありましたように、病院、療養所経営というような面からいたしますれば、療養所長の指揮に入っておらない、そのために今日まで非常に不都合なこともなかったわけではないのでありまして、そういうような種々の理由が重なりまして、今度のつき添い看護婦に対するつき添い看護婦の廃止というよりは、むしろ完全看護に一歩ずつ充実をし、近づきたいという考え方から転換が行われようといたしておるのであります。なお実情につきましては私も十分承知はいたしておりませんので、ただいま申されたようなことは十分考えていかなければならぬとは思いますが、これらのことにつきましては、政府委員から詳細に答弁させていただくようにいたしたいと思います。
  55. 岡本隆一

    岡本委員 大臣御用がおありでしたら、先にあなたの分だけ済ませて、あと詳しくは政府委員にお願いしたいと思います。私は大臣のおっしゃる理想はよくわかるのです。私も医者でございますので病院側が自分の手の中に、結院で看護に従事するすべての人を掌握したいという気持もわかるのであります。ただ問題は、その看護力のいかんという問題でありまして、二十五床に対して一名の雑使婦では、大臣考えていられるような完全看護はできるものではない。少くともこれの三倍、四倍の人数を配当しなければ、手術後の患者を十分に看護することはできない。こういうなまはんかな方針をもって完全看護に突入なさろうとすれば、これは毛を吹いてきずを求めるものである。人道上の問題であるという点を私は申し上げておる。つき添い婦を雑使婦にかえる、あるいは看護婦にかえる、できれば有資格者の看護婦にかえていただくことは一番いい。しかしながら、療養所内の定員ないしは看護に従事する人数の問題を私は言っているのであつて、従って今のような形での切りかえ方というものは、何ぼなんでも人道上の問題でないかということを私は申し上げておる。
  56. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘のようなことは、個々の部面については相当に現われてくるかも知れませんので、非常に注意をしなければならぬということは申しておるのでありますが、先ほど申し上げたような趣旨で、次第に完全看護の方向へ向けたいという考え方ではあるのであります。しかしながら、二十五床に一人ということは、これをもって完全看護ができようとは私ども考えておりませんし、逐年これを増強をいたしていきたいと考えております。ただ、今日の状態におきましても、でこぼこはありましようけれども、大体つき添い看護婦の今日までの程度のことは、今度の切りかえによっても、全般的に見ればそう大した支障なしに次第に充実することができるのではないか、こう考えておるのであります。
  57. 中村三之丞

    中村委員長 岡本君に御相談しますが、厚生大臣予算委員会から呼ばれており、まだ大臣に対する質問は三人おありなんです。どうぞ一つそのおつもりでお願いします。
  58. 岡本隆一

    岡本委員 それではこれで打ち切ります。私に大臣の今の御答弁では不満です。ということは、制度が変つたときは、いろいろごたごたして運営が円滑にいかない。そのときこそ十分な人手が要るのであつて、切りかわつて後、年がたつてだんだん仕事になれれば、むしろ人は減つていってもいい。従って、そういう観点からいくならば、切りかわるときに大きな危惧を持ちつつ少い人手に切りかえていくということには非常に大きな危険をはらんでくると思う。療養所に収容されている患者さんの実態も知らないで、あるいは運営していけるかどうかについての十分な御理解もお持ちにならないままでやつていかれるということに対しては、私は非常な危惧を持ちますので、本年度このような形でどうしてもやつていきたいという大臣のお考えであるとするならば、一度大臣も療養所へ行って、そういう手術をしてもらつている、あるいは手術をしてもらつて直後寝ている人をごらんになつた上で、方針をきめていただくことをお願いしたい。御希望を申し上げて、一応これで質問を終ります。
  59. 中村三之丞

    中村委員長 八田貞義君。
  60. 八田貞義

    ○八田委員 私は、一兆円予算に縛られて厚生行政の予算が非常に削減をされておる、特に農村の生活と結びついている簡易水道の予算が、昨年度に比べて一億の削減をされておることについて、大臣の御所見を伺いたいと思います。  大臣もすでに御承知のように、今日公衆衛生は、政府並びに国民の側から非常な発達を見て参りましたが、なお昨年におきましては、全国に赤痢の発生を見ておるのであります。特に農村におきましては、流水使用による水道問題が赤痢発生の原因である、こういわれておるのであります。昭和二十七年度に初めて簡易水道が施行されまして、これが農民の飲料水対策としてははなはだ好ましいものであるということから、これの発達を見てきておるのでありますが、このように予算が削減されましては、とうてい住民の希望を達成することができないのであります。特に、すでに補助を受けまして水源の問題も解決したところにおきまして、その水を引つぱつて飲むことができない状態になっておるのであります。特に農村の婦人の生活の向上は水道からと言われるくらいでございますので、どうか大臣におかれましてもこの簡易水道の予算の増額に対しまして、ぜひとも御尽力をお願いいたしたいと思うのであります。今年度の六億四千万円では、一人当り四千円といたしまして、国庫負担は四分の一でありますから、給水人口は約六十二万ということになっております。このようなことでは、厚生省の三十年度計画は百二十万と伺つておるのでありますが、その半分しか満たせないような状態になっておる。すでに水源を作つて、それを作つてそれを引けないでおる状態、さらにまた、半分しか給水人口を満たせないような状態なつたのでありますから、大臣におかれましても、この点についてどのようなお考えで進めていかれるか、御意見を拝聴いたしたいと思います。
  61. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 簡易水道の問題につきまして、根本的な方針についてのお尋ねでありますが、簡易水道は、ただいまお話がありましたように、恵まれざる農山漁村、ことに中小の町村におきまして、簡易水道をやるということにおきまして、非常に大きな効果をおさめておる事業であるというふうに、私ども認識をしております。昨年予算案が出ましたときに、やはり簡易水道の費用が落ちておりまして、私どもは野党として、当時の政府と協力して修正をした発議者の一人でありますが、本年もまた実は第一次の——これは内輪のことを申して恐縮でありますが、経過は御承知の通りでありまして、第一次の査定のときは全額削除されておつたのであります。幸いにしまして社会労働関係の委員の方々の党派をこえての御要求もあり、かつ党側におきまする強力な主張もありまして、六億四千万円まで復活を見たのであります。その過程におきましては、大蔵大臣などにも強く申しまして、他のものよりも簡易水道を優先してくれ、水道関係では簡易水道に重点を置いてくれということを申してここまできたのでありますが、昨年の当初予算八億に比べましてなお一億六千万少いことは事実であります。実は本年の鳩山内閣の政策では、社会保障の充実ということは非常に強くうたわれておつたのでありますが、社会保障のうち、特に社会保険の強化、そのうちでも健康保険ということに重点を置きまして、いろいろ経費のやりくりをいたしました結果、簡易水道のごとき重要な問題をも、いろいろな予算の振り合いのために、この程度のことにしか終らなかったということは、はなはだ残念であります。従いまして、簡易水道の重要性を、われわれが認識をしておらぬということではないのでありますから、その点は十分にお含みおきを願いたいと存ずるのでありまして、今後簡易水道の全国的な整備計画につきましては、いよいよ充実をしていきたいというふうに考えはいたしておるのであります。
  62. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、大臣予算増額については手一ぱいのことであつて、全然一兆円予算のワク内ではできない、こうおっしゃるのでありますか。
  63. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 鳩山内閣としては、これ以上のことはできません。
  64. 中村三之丞

    中村委員長 長谷川保君。
  65. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 大臣がいらつしやるので、一点伺つておきたいのでありますが、例の健康保険の問面であります。今度七月以後保険料率を千分の六十五に上げるというお話であります。今日までこの赤字の問題で大臣が奮闘されたことにつきましてしては、深く多とする次第でありますが、しかしこの料率を上げる問題については、私ども異議があるのであります。日本健康保険の保険料の料率は、決して世界的に見て低くない、非常に高いといわれておるのでありますが、まずこの点について、現行の千分の六十という料率をどういうふうにお考えになっていらつしやるか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  66. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 健康保険の赤字財政を処理いたしますときに、まずその赤字については千五百万人も被保険者並びにその家族がいるわけであるから、従って一部は国庫負担をしなければならないということを強力に主張いたしましたのは御存じの通りであります。しかし、それだけで本年の赤字財政六十数億をカバーすることはできませんので、やむなく健康保険の料率を引き上げたわけであります。そのときの私の考え方といたしましては、この前暫定予算のときに長谷川委員から御質問もありました通り、最終的には自分は患者の一部負担だけは絶対避けたい、こう申し上げておいたのでありまして、健康保険の料率の問題についてあえて触れなかったのは、やむを得ずんば健康保険の料率は引き上げなければならぬのではないかということを、当時も考えをいたしておったのであります。ただいま御質問の料率の問題でありますが、これは今日公務員の共済組合の料率なども千分の六十二、あるいは六十四分というような数字を出しているところもありまして、それらと比べますと、千分の六十五にいたしたのも、今日の健康保険の財政からいたしまして、やむを得ない措置ではなかろうか、かように考えている次第であります。もとより、こちらから進んで健康保険の料率を引き上げようという主張をいたしたのではありませんので、やむを得ずとつた措置であることを御了解願いたいと思います。
  67. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私、今ちょっと聞き落した点があるかもしれません、聞き違いであったかもしれませんが、共済組合におきましてもっと高い料率があるということは考えられるのです。ただ健康保険という点で、現行の程度の給付では、これは世界的に見て非常に高いのだというように考えられるのでありますけれども大臣はそれをどうお考えですか。
  68. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この組合管掌の健康保険の方でも、この健康保険の料率より高い数字をとつていることがあることは御承知のことと存じます。それから世界的な水準も、大体この程度にまでは行っているのではないかと私は想像はいたしておりますが、世界の健康保険並びに妊産保険においては、国家によりまして患者の一部負担をも実施をしている国もあるのでありまして、その意味からすれば、保険料率の引き上げをこの程度に行うことは、今日の日本の経済事情並びに健康保険の財政状況からしては、やむを得ないのではないかというふうに考えをいたしたわけでございます。
  69. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今の健康保険の世界的な料率につきましては、もちろん給付の内容を土台にしなければなりませんので、簡単なことは申し上げられないわけでありますが、これにつきましては、厚生当局から一応資料を出していただきたい、こうお願いをしておくのであります。  なお、今の組合管掌につきましては、給付の内容が違いますから、その点をお考えいただかないと、千分の六十以上のものがあるといたしましても、内容がずっとよくなっておりますので、今の給付内容を土台にしまして考えませんと違うと思う。それはまたいずれ後の問題といたしまして、次回に適当なときにまた伺うことにいたします。  新聞の報ずるところによりますと、今度健康保険適用範囲を同一世帯内の三親等までにするということでありますが、その点はそういう方針をおとりになるのでございましょうか。
  70. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 三親等にしようという考え方をもちまして、今保険審議会の方で、こちらで出しました原案を練つてもらつている最中でありますから、詳しいことは政府委員から御説明申し上げます。
  71. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そこで、もう一つつておきたいのでありますが、今回初年度及び本年度の健康保険の赤字財政合計七十億円に対して、処置ができるようになり、そのうちの十億円が一般会計から受け入れられているのであります。来年度以降の見通しでありますが、先ほどもちょっとお話がございましたが、いただきました資料を拝見いたしまして、この保険料率の引き上げ及び三親等以内の者の医療あるいは標準報酬の等級の改訂、こういうことだけでは、この赤字の問題はとうてい解決することはできないと考えられますし、その他のいろいろ検査を厳重にするとかなんとかいうことをいたしましても、これはとうてい解決できないと思います。それで国民健康保険に国家から二割の助成金が出ていることは御承知の通りであります。ここで当然一歩を進めて健康保険及び国民健康保険、船員保険等に対しまする法的な国庫負担の制度をいたすべきである、こう思うのでありますが、これらにつきまして、どういうような方針をおとりになるおつもりでありましようか、伺つておきたいのであります。
  72. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘の前段のことでありますが、本年の赤字は一応処理はいたしたのでありますが、将来のことになりますと、これだけでは不十分でありますので、御承知でもございましょうが、健康保険並びに船員保険の財政の収支均衡に関する委員会というものを設けまして、実は本日その第一回の会合を開きまして、稲葉秀三君あるいは今井一男君外七名の学者の方にお願いしまして、七月の末ごろまでに、来年度あるいは再来年度くらいまで見通した長期の収支財政計画を立ててくれということを申しましたわけであります。  それからただいま御質問のことにつきましては、私も同感でありますが、これを法律で直ちに規定するかどうかにつきましては、なお政府としては検討いたしたい。しかし私——これは政府と同義語でありますが、政府といたしましては、とにかく本年は十億の定額負担でありましたが、来年以降につきましては、一割の国庫負担をすべきであるというふうに考えはいたしております。
  73. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この前も申し上げたのでありますが、日本の医療の水準が世界的な水準にあるということ、それから日本の国民、ことに勤労大衆の収入が非常に低水準にあるということ、ここに日本の医療問題の非常な悲劇があると思います。従いまして、どうしてもこれは単なるあやふやな助成金とか、あるいはそれに近いようなものではいけないのであつて、やはりこれは法的に十分な基礎を持つた制度といたしまして、この問題を解決していかなければならないと、こう思うのであります。将来、ぜひともそういうふうに進められるように希望しまして、この点につきましての私の質問を終ります。
  74. 中村三之丞

    中村委員長 関連質問を許します。滝井義高君。
  75. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと二、三点関連して質問します。  実は保険料率が千分の六十から千分の六十五まで引き上げられるわけですが、問題は、減税を政府は今度三百二十七億からやることになりました。ところが実際に減税を受ける人というものは、下の方の低額所得者というものは全然減税を受けない。たとえば一万円とか一万三千円月収のある人は受けない。ところが、この人たち健康保険の保険料というものは千分の六十で、たとえば、一万円の人ならば健康保険で三百円取られる。それから一万三千円なら四百二十円取られる。そうすると、同時に千分の六十五に上れば、その比率に応じて三百円なり四百二十円というものは上ってくることになる。しかも、減税の恩典にはちっとも浴さない、同時に健康保険は上る。しかも今度のいろいろの措置によって、社会保険の個人的な負担というものが多くなっていく情勢が出てくる。そうしますと、政府は減税々々と言うけれども、減税の恩典を受けないいわゆる盲点になる層が出てくる。しかもそれは社会保険料については確実に上っている。しかも、社会保険の標準報酬からいけば上の高収入の人たちの保険料の率はずっと少い。これは同じ率でいきますから、段階性がないのでありますから少い。国民健康保険はそうはいかない。これは所得割、資産割、人頭割、平均割というようにいろいろのバラエティに富んだ課し方をやる。ところが健康保険はそうはいかない。従って収入の多いほど、いわば健康保険の保険料率をかけたもの、それを取られるのは大して多くないのです。ここに一つの盲点が出てくることになる。ところが低額所得者は、減税よりか、むしろ保険料の料率を下げてもらうという要請が起ることは当然です。私はこの点は、今回の料率の引き上げに当つて、盲点になり、減税を受けない層については、保険料率を上げない措置を講じなければ、非常な不平が出てくるおそれがあると思うのです。この点、一つ大臣に、ここで率直に御答弁願いたいと思う。
  76. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまのお話、確かに被保険者に対して料率を引き上げるということになりますれば、一万円の場合について何々という数字は出てくるわけでありまして、それだけ上ることは事実であります。これは医療給付の内容というものが、次第に拡大をしてきておるわけでありますし、その機会が多くなってきておるわけでありますから、国庫が負担をする以上は被保険者も、先ほど長谷川委員にお答えいたしました通り、この程度負担をしてもらわなければ赤字財政を切り抜けることができないとしてとつた措置であります。  ただいま標準報酬のことについて、上の方はそれほど上らないということでありますが、それはそうではなくして、今度は今まで三万六千円で頭を押えておりましたものを七万円まで引き上げまして、むしろ上の方が高過ぎるという議論が、すでに社会保険審議会あたりでは、かなり経営者側から出ておるような状態であります。それで等級を、今までは二十階級でありましたのを二十八に直しますと、一番上の七万円の人は四千五百六十八円でありますから、相当多額に取られるというので、むしろその点に対する修正的な意見などが出ておる状態であります。その点については、ただいま保険局長から説明をいたさせますけれども、そういう実情もあるということは御承知置き願いたいのであります。しかし減税との関係は、御指摘の点も確かにあることと思います。私は肯定をいたします。
  77. 滝井義高

    滝井委員 保険局長には、あとで詳しくお聞きいたします。今度三万六千円の山を七万円にするということについては、政府方針は、厚生年金その他に入ると、今回は非常にかけ離れておることになる。その点についてはまた議論いたしますが、私の言う意味は、こういう意味であります。月収一万円の人は所得税はなし、ゼロです。保険料は三百円払う。ところが三万六千円月収ある人は所得税は四千五百九十一円現行で払う。保険料は千八十円なのであります。ところが月収十万円の人は所得税は三万二千七百四十円払うが、保険料はやはり千八十円です。こういうことを言うのです。千八十円、これは同じなのであります。ここに、なるほど医療というものは、それは貧富の差もなく、全部適正診療が行われなければならぬ。ところがこの思想は国民健康保険ではそうなっていないわけであります。所得割、人頭割、資産割、あるいは均等割と四つくらいになって、国民健康保険には課せられるようになっておる。同じ受ける国民健康保険健康保険とこういうふうに違う思想があるならば、健康保険についても、三万六千円以上の高額については、減税ににらみ合せて低額所得者と同率の百分の六をかけたものを保険料にすれば、これは国民健康保険と同じ思想が出てくることになるわけであります。そういうことを言っているわけです。従って、この料率を上げることによって、下の方の人は減税は受けないが、上の人は減税を受けるのですから——三万六千円というのは実際に減税を受ける、下の人は減税を受けない、しかも保険料率だけは上る、こういうことなのです。そこに一つの盲点があるわけです。七万円その他については、いずれまた伺うことにします。  それからいま一つは、先ほど大臣は、十億の負担では満足しない、一切の負担のしわ寄せが健康保険の会計にかかってきた、こうおっしゃった。なるほど健康保険の会計にもかかったが、しわは医者と患者に寄つてきた、それと関連して、つき添いの問題や、あるいは入院の基準の問題が出てきておると思うのです。そこで、まず大臣にお尋ねしたいのですが、今度いろいろ処置をされました十億の負担をもらうために、療養担当者や保険者や被保険者は、非常な犠牲を払うことになるわけです。大体医療給付の適正化という考えのもとに、乱診乱療を防いだり、保険証の不正使用を防いだりいろいろやりますが、大臣はそれからどの程度の財源が出るとお考えになっておるのですか。
  78. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この健康保険の赤字問題が起きましてから——赤字が出てくることには、従来の乱診乱療もあるだということは、前厚生委員会委員からも指摘をされましたし、また一般の世論でもあったのであります。そこで厚生省当局としても、大体一月を起点にしまして相当な努力をいたしました結果、事情にも変化がありまして、大体健康保険の赤字は本年どのくらい出るかといったときに九十一億か二億出るということが定説のようだったと思うのでありますが、それが今日では六十二、三億までに変化をいたしましたのは、その後における措置によって相当赤字の問題の内容が変つてきている。本年は、今日のようなやり方をするならば、六十数億で済むだろうということに変つてきた分だけこれらによって変化してきたというふうに言えるのではないかと思うのであります。
  79. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十億ということになるわけですか。これはきわめて重大なところだから、明確に答弁してもらいたい。
  80. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 その中には、乱療乱診だけではなしに、収納率の引き上げなどもむろん含まれております。
  81. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは、いわば乱診乱療の防止とか、あるいは保険証の不正使用の防止とか、それから九一%の保険料の徴収率を九三%くらいに引き上げる、そういうものも含めて約三十億だということですね。そうしますと、保険料率を千分の六十から千分の六十五に引き上げて幾らになるか。いま一つは、標準報酬の等級の改訂をやられたのですが、これが大体幾らになるか。料率の引き上げで幾ら、標準報酬の引き上げで幾ら、この二点をお尋ねします。
  82. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 本年度の分といたしましては、料率の引き上げ分によりまして二十五億七千八百三十八万五千円、等級改訂増し分として五億七千八百八十万六千円、こういうことになっております。
  83. 滝井義高

    滝井委員 大体これで全貌がわかったのでございますが、そうしますと、赤字の根本的な原因というものは、さいぜん大臣も結核だということには同感だというお話があったのです。私はこの昭和二十六年から二十八年の医療費の増額の状態を見てみますと、これは明らかに入院と結核が社会保険の大きな赤字の原因であったということははっきりしておるわけです。特に二十八年の暮れ以来とられた政府のもろもろの結核対策というものが、その赤字の大きな原動力であったこともはっきりしておるわけです。そうしますと、政府のとつたもろもろの結核対策、しかもそれが進歩的な結核対策で赤字が出たとするならば、そのしりぬぐいというものは、政府がみずから何らかの形でなさなければならぬのではないかと思うのです。この点について、これは今のところ赤字の問題が結核であったということがカバーされてあたかも乱診乱療であったり、あるいは不正な保険証の使用であったりしたことであったかのごとき錯覚が大衆の中に起りつつあるということです。むしろ社会保険の赤字の根本的な原因は、昭和二十六年には五百億であったところの医療費が、昭和二十八年には九百億になつた。しかも一般医療費というものは、昭和二十六年には三百八十五億程度で、昭和二十八年には四百億で大して変つていない。変つているのは、いわゆる入院医療費です。昭和二十六年の五百億のうちの百十五億、昭和二十八年の医療費九百億のうち入院費が五百億を占めた。入院費のうちで、おもなものは何かというと結核です。しかも、その結核は外科的な手術やパス、マイシンの使用で、この長期の疾病を短期の保険でまかなうところに、基本的な矛盾が出てきておる。しかもその矛盾が出てきているときに、昭和二十八年からもろもろの政策を政府はとられました。パス、マイシンを使つたり、いろいろな外科手術をすることをやつてきた。その時から、こういうものをやれば社会保険は赤字になるということは明らかだったのです。私は昨年の八月に、局長にも苦言を呈した。局長はそのときは、社会保険は絶対赤字になりませんということを言つたのですが、私はなると言っておいた。これは明らかに政府の見通しの誤まりなんです。今年一万床の結核の病床を増床すれば、十億の赤字が出ることは火を見るより明らかです。今年一万床の結核ベツトの増床があります。国立その他については相当切つておりますけれども、そこから出ることは確実です出ることが確実であるとすれば、おそらくあなた方は結核の病棟を切るでしよう。川崎大臣は「世界」を読まれたと思いますが、あなたに大内先生が手紙の形で与えております。同時に清瀬病院の院長の烏村さんも言っておる。現在結核の病棟があいておるが、百三十七万人の要注意者が結核菌をどんどん出しておる。しかも国民にツベルクリン反応を陽転さしておる。そういうように結核菌を吐いている人があるにもかかわらず。結核の病床があく傾向が出てきたと言うことは、これは重大なことです。なるほど島村さんは、化学療法の一応の冷たい勝利だと言っておる、あるいはデフレ経済の結果だと言っておる、あるいは生活保護の引き締めの結果だと言っておる。この三つが結核病床があく大きな原因だと言っております。この中で私は、健康保険の会計だけが黒字になっても、日本の医療というものはちつとも進歩しないということです。現在問題は、健康保険の赤字とともに、現在の日本の医療機関が赤字であるというこの二つの問題を、同時に解決しなければいかぬのです。ところが、現在あなた方のとつておる政策を見ると、健康保険の赤字の解消にはきわめて急であるが、いわゆる医療機関の赤字については、何ら注目されていないということです。この二つを同時に解決する方策は、十億の国庫負担という政策ではだめです。日本の医療機関が赤字であるということは、それは一切の健康保険の犠牲が医療機関と患者に来ておることを意味するのです。だから、この根本的な問題の解決をどうするのか、これをもっとはっきりここで言明してもらいたいと思う。単に十億の国庫負担をもらい、六十億の国庫補助をやつても、それはただここ一年をカバーしたにすぎない。これは来年になれば、あるいは今年の終りには、必ず問題が出てくると思う。なるほど現在は、今年の一月以来特に萎縮診療が始まりました。われわれが調査したところでは、医者がだんだん、何と申しますか、請求書の出し方を非常にセーブしてきました。三月なんか特に一部の地域においては、相当の平均点数の下りを見せてきておる。はなはだしいところは三点くらい下つてきておる。これはその影響がだれに行っておるか、患者に行っておる。医療内容が低下してきておることを意味するのです。あなた方は、保険会計の赤字さえ解消すれば、日本の医療機関が荒廃してもいいという考え方らしい。日本の病院協会その他の諸先生方は、現在の日本の医療というものはトーテン・クロイツに来ておると言っておる。脈と熱が交差する段階です。脈と熱が交差する段階は、人間が死ぬ段階です。死の交差点に日本の医療機関は来ておるのだということは、病院協会の、しかもあなた方から補助金をもらつておる国立療養所や済生会の院長が言っておられる。国立病院でも現在赤字なんです。こういう日本の医療機関の赤字をどうして解消するのか。同時に健康保険の赤字を同時的に解決する方策というものを、厚生省はわれわれに示してもらわなければならぬ。これを一つ、川崎大臣はしろうとでむずかしいと思いますが、明白に示してもらわなければ困るのです。
  84. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 医療機関の赤字問題に関連して、種々卓見を述べられたわけですが、昨年健康保険に赤字が出るぞということについては、厚生委員会でも御質問をされておりましたし、私は予算委員会で、当時野党側として同席しておりまして、非常に御熱弁を振るわれたことも、記憶をいたしておるのであります。従ってその当時のことの責任は、前内閣がおもに負わなければならぬところで、私は今日それのしりぬぐいをしておるのでありますが、ただいまの医療機関全体の問題につきましては、御指摘の点もありますので、われわれとしては十分に、これらの問題を今回の保険財政の赤字とも関連して措置をしていきたいと考えております。実はけさ、保険財政の赤字につきまして審議会を設けた際に、単に保険の問題のみに限定してわれわれに諾問をするのかということでありましたから、当面の目標としては、健康保険並びに社会保険に対する赤字というよりは、収支の財政均衡政策について考えてくれ、しかし、その問題から端を発して、種々結核対策であるとか、あるいはこれらに関連する問題について示唆があるならば、他にもいろいろ審議機関があるけれども一つ厚生大臣のブレーン・トラストのような気持として、なるべく近い期間において種種対策を示唆してもらいたいということを申したわけでありまして、その点などについても、相当な効果のある施策をとることはできると思うのであります。  それから今年一万ベツドふやしたことについて、来年また赤が出るぞというような御警告でありました。この点については、従来の内閣が処理し得なかったような赤字が起つてくることについては、十分に警戒をいたしますとともに、もとより来年度予算にも関連はいたしますが、来年度予算は、本年のような窮屈な形で組まれないということは、昨日予算委員会で大蔵大臣が言明いたした通りでありまして、その点は、明年度になりますれば、相当思い切つた対策も立てられる、かように考えておる次第であります。
  85. 滝井義高

    滝井委員 問題は、この健康保険の赤字が、結局結核から由来をするとするならば、本年度の予算に居宅隔離費というのがある。これは私が草葉厚生大臣の時にうんちくを傾けたのですが、そのためかどうかしりませんが、二千五百八十七万六千円計上されておる。私はむしろこの方法を拡充することが、日本の結核の赤字を救う一つのいい方法ではないかと思う。ところが、政府の今度の二千五百八十七万六千円を見ますと、二分の一の補助で、一県五十戸ずつで二千三百戸、一軒一・二坪です。一・二坪というと畳二枚なんです。これでは隔離室を作つてつても困る。やはり少くともこういういい処置をやられるならば、最低四畳半の部屋は設けてやらなければならぬ。これではどうも——二畳の部屋を、どこか軒の下に移動式にするかもしれませんが、これではあまり結核患者を鶏か何かのような扱いをするようで、人道的にいってもはなはだ困る。畳二枚ではどうにもならぬのです。むしろこういう現在の健康保険の赤字というものは、結核療療所を莫大な金を出して作るより——おそらく結核療養所をちょつとしたものを作るとすれば、私は福岡県でも経験をいたしておりますが、二百ベツド作れば、敷地からレントゲンの設備から何から入れると、優に一億はかかる。一ベッド五十万円はかかる、安くても三十万円はかかる。そうすると、居宅隔離室をやつて、そうしてこれに現在の保健所の人員を充実して開業医を結びつける。開業医は健康保険で、結核患者に対してはいわゆる指導料というものがちゃんときまつておるのです。それを一週間で一回やれる規定があるのですから、その程度にしてやれば、恒久的に国の財政から人件費を出さなくてもいいし、下手なものよりか居宅隔離室四畳半ぐらいのものを大々的に、全国的に展開していった方がもっと早い。そうなりますと、今この二千五百八十七万六千円から、五万円、三万円、二万円の三段階ぐらいに分けて、金を持っている人にはもっといいものを作らして、結核患者が出ましたら、これは社会的の疾患ですから、五万円ぐらいやつてけつこうです。これの方が現在の百三十七万の要入院患者を救うことができると思う。せつかくこういういい政策を打ち出していただいておるのですから、これが一・二坪の移動式というよりも、何だったら四畳半ぐらいの移動式にしてもらつた方がいいのではないか、こういうことで基本的の健康保険の赤字を解消してもらう方がいいと思う。  そのほか病院の行政の問題もありますが、これは労働省との関係がありますから、きょうはこれでやめますが、この点について大臣の御見解を伺いたいと思います。
  86. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま滝井さんの御注意というよりか、御提唱の隔離療養施設については、本年度初めてのテスト・ケースとして試みたわけでありまして、成績いかんによりましては、これがただいま御指摘のようなことで、この方の政策がよろしいということに実績が上りますならば、次第に拡充をしていきたい、かように考えておるわけであります。
  87. 中村三之丞

    中村委員長 受田新吉君。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 最後にお尋ねするようになりましたが、時間を切り詰めて、大臣の御迷惑のないようにしてお尋ねします。大臣は、就任された最初に抱負として、今も申されたようですが、社会保険の拡充強化ということへ大臣としての抱負経綸を集中する一つの目標を置いておられたようです。とともに、この内閣は、選挙の際に社会福祉事業を大いに振興するのだという公約をうたわれました。この大臣の抱負や民主党の国民に対するお約束などを考えたときに、川崎厚生大臣のこの予算の上に現われた目標が、どういうふうに具現されておるのか、これを伺いたいのでありますが、まず社会保険について、大臣の信念というようなものは、地域社会保険、職域社会保険というようなところに分けて考えた場合に、国民健康保険が現在地域的にまだ普及徹底が十分でない、これらを残された地域にどういうふうに徹底させようとするのか。それに対して本年度の予算には、療養給付の二割の問題が取り上げられておるだけでありますが、残された地域に対する普及徹底をどういうふうに考えておられるか。  もう一つは、職域における社会保険、特に健康保険におきまして、たとえば定時制高等学校の生徒などが、同じ職場に働く者同士として、特別な健康保険組合などを作りたいというような空気を持っておるときに、これにどういうように善処されようとするのか、地域、職域を通じて健康保険が徹底するように、大臣はいかにお考えになっておるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  89. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この内閣のとりました本年度予算案に対しまする措置につきましては、たびたび本会議でも答弁をいたしておりますが、一兆というワクに縛られまして、その中で十分の施策を行わなければならない関係をもちまして、非常な窮屈を感じたことは事実であります。ことに党は、今回の施策といたしましては、重点を第一に住宅政策、第二に減税、第三に失業対策を中心とする社会保険ということで、第一次鳩山内閣の予算編成要綱がきまつたものでありますから、私が担当いたしましてからは、少くとも施策の第三位の序列につけられたにいたしても、失業対策を中心とする社会保障では、厚生省の関係が非常にウィークになるばかりでなしに、積極政策として社会保障が推進されないのではないか。失業対策というのは、一番消極的な対策であつて、それを中心とするという考え方は、今日の失業者の激増からして、当然ではあろうけれども、それでは積極的な施策と言えないということを申しまして、予算の編成の過程におきまして、社会保険の強化ということについて、相当に復活要求その他を通じまして、回復をいたしたつもりであります。もとより、ただいま御質問になっております受田さんなどの政治的立場と、われわれの立場は違いまして、防衛というものにつきまして多少の考慮を払わなければならぬ立場にありますので、その関係から、社会保障費が少い点もありますけれども、とにもかくにも本年度予算では、社会保障経費は一応一千六億という、一兆のワクの中において初めて一〇%を越したわけでありまして、逐次これが増強せられますならば、従来六%、七%というような歳出に対する予算の割合であったことが、非常に面目を新たにして来るものと考えておるのでございます。ただ、この経費が多くなつたということは、決して自負すべきものではありませんで、内容的に充実をして行きたい。その意味では、健康保険にしましても、あるいは国民健康保険にしましても、質的な躍進が考えられなければならないというふうに私は考えをいたしておるのであります。その点では、十億ではありますが、一応頭を出して国の責任を明らかにしたという点で、来年度に対する展望も次第にきいて来るというふうに私は考えをいたしております。御質問の国民健康保険の問題につきましては、二割の国庫負担をいたしましてから、かなり市町村におきまして新たに実施を見ておるところがございます。数字はいずれ後ほど政府委員からこまかい答弁をさせていただきますけれども、国民健康保険の伸び方は相当なものがありますので、この勢いを本年もさらに持続をして行きたいというふうに考えをいたしております。なお定時制の高校に対する健康保険の問題につきましては、ただいま検討をいたしております。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 今大臣は、社会保障費関係の予算が一千六億と言われましたがこれは厚生省関係の一般会計予算の八百三十六億のほかに、どれがどれだけ入っているのか、ちょっとお示し願いたいと思います。
  91. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ここにこまかい数字はありませんが、それを私いつも調べさせておりまして、すぐ発表できると思いますけれども、とりあえず申し上げますならば、厚生省の関係のうち、児童保護費、児童施設費、社会保険費、それから結核対策費、生活保護費等のほかに、失業対策費を加えて一千六億というのであります。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 大臣は、軍人恩給、公務扶助料のごときは、これは社会保障の一環として考えるべき意向を持っておるというように言われたと記憶しております。現実にこうした制度は認めるが、将来はその方向に持っていきたいという理想を持っておられると聞いておりますが、これは間違いありませんか。
  93. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは先ほど大橋委員の御質問にお答えいたしたのでありますが、旧軍人恩給の関係費用は、本年遺家族の扶助料を入れて六百五十一億に達しておる。そうして文官恩給を入れるときに八百二十三億、しかしてその他のこれに類似の恩給経費を入れますと、九百八十億という膨大なものになりまして、将来国家財政に与える影響は相当甚大なものがある。従って、これを軍人恩給という名称で呼ぶときには、かなり一般国民に対して大きな心理的影響を与えるのではなかろうか、また、果してこれが適切であるかどうかということについて、分析をしなければならぬのじゃないかというような意味合いから、自衛隊の恩給問題などが出て来た際には、旧軍人恩給、つまり太平洋戦争以前におけるところの軍人恩給については、社会保障的見地から支給をするということに切りかえたらどうであろうかという意見を申し述べたのでありまして、直ちに恩給制度を今変えるという考えは目下はないのであります。ただ、将来財政に与える影響から、またその本質論から、太平洋戦争の犠牲者というものは、むろん国家のために犠牲になられた方ではあるけれども、非常に困っておる方々に対して支給をするという考え方が一つ、それから軍人恩給という名称を付随したままおることが、果して適切であるかどうかということについて、われわれとしては考えざるを得ないということを申したのであります。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、大臣の見解は、軍人恩給の骨子であるところの階級的観念、すなわちその階級に応じた職務に尽した苦痛の度とか、知性の高さとか、いろいろなものを総合勘案した差別給与ができておるのでありますが、そういうものは、当然社会保障的見地からは廃止するのが正しいと考えておられるわけでありますか。
  95. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは、私は一昨年でありましたか、軍人恩給並びに遺家族援護法が出ました際に、階級差を圧縮するということについて、つまり階級の等差をあれほど作らないという考え方を、野党の当時持っておりました。不幸にして私の主張の通りには全部は実現いたしませんが、一部はその際にも、修正案として今日の法律になりましたものは、私どもの主張が若干は取り入れられております。私は階級差は当然あるものだと思っておりますが、これはこれから先の軍人とかいうものではないのでありまして、太平洋戦争前の旧軍人でありますから、従って今日の段階からするならば、やはりなるべく下に厚く上に薄いという考え方の方が、経済実情に即するのではないかという考え方からいたしまして、階級があつてもその差を圧縮して行くのがよいのではないかというふうに考えはいたしております。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、大臣の御見解は、社会保障制度を加味して考えるということになるように思えます。すなわち、階級制度を認めて、その階級に応じた職務の内容、苦痛の度、犠牲の高さ、こういうものをいろいろ勘案して、現在の給与体系でいうならば、職階制の格づけなども勘案されたような立場からの基本的なものは認めるのだ。それに階級差を縮めて、下に厚く上に薄いことを考慮するということになれば、大臣のお考えは、基本的には社会保障制度に持っていくのではなくて、社会保障制度を加味するような考慮をしたいということになると思うのであります。最初の大臣の御答弁とは趣きが違うと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  97. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私は非常に大きい将来の展望とすれば、社会保障の一環として考えるべきだという議論も起ると思います。それからそういう議論に対して、個人として反対ではありません。しかしながら今日の状態においては、恩給制度を直ちに変えることはできないから、ただいま御指摘のように、少くとも社会保障的考慮を加味して過渡的段階を措置すべきだというふうに考えをいたしております。従って、その期間の問題でありますが、つまりここ一、二年というような近時の問題につきましては、社会保障的考慮を加味した軍人恩給ということになると思います。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊の恩給問題が論議されるのは、自衛隊が発足してすでに五年になるのでありまして、これが今の軍人恩給と考え合せて十二、三年ということになると、もう七、八年したころに、自衛隊の恩給は、今後の問題として現行職階制の格づけにより、そうして過去の軍人恩給はこれを社会保障の方へ切りかえる、一応の目標はそごに置かれているように私承わつたのでありますが、さよう心得てよろしゅうございましょうか。
  99. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ずいぶん遠いことでありますが、そういう考えをしてみてはどうかという意味の発言をしたのであります。正直に申しますと、そういう発言をこの間経団連の席上ではいたしました。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 私は資本主義政党の立場から、軍人の階級差別観念を一応なくし、公務扶助料もそういうものをなくしていく——公務扶助料の方は、ある程度意味があると思うのですけれども、軍人恩給の方も階級差をなくする時代が当然来るように目標を置かれたということは、資本主義政党の閣僚としては大飛躍であると私は敬意を払つてやまないのであります。この点は、少くとも川崎さんでなければ考えられない。さらに社会主義政党の政策に転換をされたことになるのであつて、私はこの点川崎さんの基本的なお考えはわれらと同じものであるということを、今確認いたしました。そこで、今回崎大臣から御指摘なつたように、自衛隊の費用の方などがあつて、この社会保障関係の費用が減る——あなたの党の立場とは違うのだという御指摘がありましたが、目標は同じものであるということを、私再確認をさせていただきます。そこで、もう一つ問題になりますことは、今の政府は、さしあたり軍人恩給法の改正におきまして、一番最下位の兵長の身分にある者の公務扶助料を若干増額して下さいましたが、そのほかの上級の者には影響はないのであります。今後の軍人恩給法の改正については、下の者の基準を上げるところに目標を置くのであつて、階級によるところの比率を上げることは、現在のところ考えていないという方針を今後もおとりになりますかどうか。大臣の御見解ときわめて関連が深いのでありますから、今後の問題として、現在の方針をとる形が行われるかどうか、お尋ね申し上げたいと思います。
  101. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 本年は財政の制約からいたしまして、兵長以下の者に切り詰めたわけでありますが、将来財政がありますれば、やはり全般に及ぶものだと思います。思いますが、その際における考え方といたしましても、当然下の者に厚くするというふうに持っていきたいと私は考えをいたしております。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 大臣は社会保障に関する企画庁を設けたいと、先般閣議で発言をして了解を得たということでありますが、この社会保障企画庁なるものは、これは大臣の御見解では、基本的にどういうことをやるか。すなわち、社会保障制度審議会などのやつている仕事を企画的に整理統合するように考えておる、あるいは内閣の一環として行政機構の上において、社会保障制度審議会などのような民間団体、まあ半民間団体ということになりましようが、そういうようなものと常に連絡を密にして、相互切磋による計画を立てるというようにするのか、この内容もちょっと漏らしていただきたいと思います。  そしてもう一つは、それに関連するのでありますが、この委員会が、社会労働委員会というものに新発足しております。政府としては、かつて自由党内閣のころに、国家行政組織法の改正案といたしまして、社会労働省なるものを考えたことがあるようでありますが、そういうものについては厚生行政と労働行政をどういうふうに調整するか。これは一省としてやることが前内閣と同様自分は基本的にはいいと感ずるかどうかというような点につきまして、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  103. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 社会保障企画庁の案は、ただいま具体的にこれをどういう形で設置をするかということについて、省内並びに社会保障制度審議会、それから労働省、文部省等、社会保障に関係のある省の意見を徴しまして研究中であります。しかしながら、これをもう少し詳しく申し上げますと、昭和二十五年の十月に社会保障制度審議会から、社会保障に対する基本的な第一次勧告というものが出ました。あれは、国家の財政事情という問題を一応除外いたしますならば、日本の今日の段階としては、当然あの考え方に沿うて、社会保障を充実してしかるべきではないかと私は考えをいたしておるわけです。その社会保障の制度に対する第一次勧告の中には、将来社会保障に関する仕事は一省に集めて、行政機構も一元化していくべきだという勧告であったと思います。勧告の中には、それが一つの大きな支柱となって現われたと思いますので、私といたしましては、将来社会保障省というものが当然生まれて、社会保障に関する総合的な行政をすべきではないかというふうに考えるのでありますが、今日、行政機構の問題につきましては、いろいろ全般にわたって検討しなければならぬ問題がありますので、なお直ちにこれを実施することは時期尚早のように思いますので、その前提といいまするか、今日各省にまたがつていろいろばらばらな形で行われております社会保障を、少くとも総合的に企画をする庁ぐらいは作つてはどうかという考え方から、社会保障企画庁というものを審議会の方でもお考えになり、私も個人的に考えておりましたので、先般の発言をいたしたわけであります。これはでき得る限り本年度中に発足させたいという考え方でありまするし、もしでき得れば、本年度中というよりは本年度中にも発足をさせたい。しかし、それは予備費なども伴いますので、本年中に発足するかどうかは、さらに検討をいたしておるのであります。社会保障制度審議会的なものが大きくなるということではございません。これは明らかに各省にまたがつておる社会保障制度を、社会保障の実情を一元化することを前提として、各省に分れておる予算ども企画的に立案をしてもらいたいということが一つのねらいでありましてその意味では、なるべく来年度の予算の始まる前に一応の輪郭をつけたいというふうに私は考えをいたしておるのであります。  それから、あとの質問につきましては、私の考え方としては、将来はやはり社会福祉省あるいは社会保障省的なものを、この社会保障企画庁が立案をして作るべきであつて、そうして内閣としてこれを決定するかどうかはわかりませんが、そういう方向へ進むべきであつて、やはり労働行政は労働行政として、社会保障の部面が、たとい社会福祉省に吸収されるようなことがあつても、労働者に対するサービス省と残るのではないかというふうに考えはいたしております。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、ごく簡単でいいですから今の機会に承わつておきたい。国立病院の地方移譲を考えるために、今年も引き続きこれをやるために、予算の計上を、ごく少額ですがされております。この国立病院の地方移譲は、赤字財政に悩む国立病院の財政を、地方にまかせる結果になるというところに、事実上この法律ができておりながら、進捗しないものがあることは御承知の通りだと思うのです。この点については、国立病院の地方移譲をどのくらい本年度に計画しておるのか、その計画の内容をお聞かせいただきたい。事実こういうことをやることが現実に即さないということをお考えじゃないか。国立病院のままで行く方が、末端においては、患者の立場からも、また病院当局も好都合じゃないか。都合がいいということになれば、それをわざわざ無理してからに地方に移譲する必要はないじゃないかということが一つ。  それからもう一つ、それに関連するのは、国立病院の職員の待遇は、これは一つの技術職として、これまた職階の格づけで、行政職の身分の人よりは待遇が低い。こういう点について、お医者さんのような非常な苦労をする人に対して、給与体系の上において行政職と同等の待遇をするようにする幅を持たせるならば、病院の院長さんその他の優秀な職員がその場に残るであろうが現在のような冷遇をしておると、国立病院のお医者さんなどでは食つていけない、民間で適当にやつた方がいいということになって、欲くを出して、病院の職員でありながら副業に勝手なことをやるということが起ると思うので、この点、こうした病院勤務の職員の優遇策を考える必要はないか。こういう点まで一つ十分御検討いただいた御答弁を願いたいと思うのであります。
  105. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御質問の国立病院に対しましては、国立病院の大幅な移譲というようなことは、目下考えてはおりません。一千八百万円でありますが、国立病院で赤字を出したものに対して、話し合いがつけば移譲するという形で計上はいたしておりますけれども、しかし具体的に話し合いがついたというところは、目下のところは何もないのでありまして、そういう意味合いからいたしますれば、国立病院の地方移譲という問題については、もはや大体結論がついておるようにも思うのであります。  それから、ただいまの給与の問題については、公務員全体の給与体系の問題もありますので、ただいま御指摘のようなことについては十分承わつておきますけれども、地方自治庁長官並びに大久保大臣の方で担当いたしておりまして、給与体系全体として措置をすることに相なると思うのであります。
  106. 中村三之丞

    中村委員長 厚生大臣に対する質問は、本日はこの程度でとどめておきます。      ————◇—————
  107. 中村三之丞

    中村委員長 次に、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。現在大蔵委員会において審議中のあへん特別会計法案は、当委員会の所管といたします厚生行政と密接な関係がございますので、本案の審査のため、連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、そのように決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なお、連合審査会開会の日時等に関しましては、大蔵委員長と協議いたしてきめたいと存じますので、これは委員長に御一任願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。  次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十六分散会