運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-08 第22回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月八日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 高木 松吉君    理事 山村治郎君 理事 南  好雄君    理事 山中 貞則君 理事 山田 長司君    理事 神田 大作君       今松 治郎君    菊池 義郎君       薩摩 雄次君    志賀健次郎君       松岡 松平君    三田村武夫君       米田 吉盛君    鹿野 彦吉君       久野 忠治君    塚原 俊郎君       二階堂 進君    福永 一臣君       猪俣 浩三君    高津 正道君       辻原 弘市君    西村 力弥君       大西 正道君    春日 一幸君       小林 信一君  委員外出席者         証     人         (元文部省教科         用図書分科審議         会副会長)   石井 一朝君     ————————————— 七月八日  委員田中彰治君、濱野清吾君、山本猛夫君、生  田宏一君、久野忠治君及び井手以誠君辞任につ  き、その補欠として薩摩雄次君、今松治郎君、  山村治郎君、塚原俊郎君、鹿野彦吉君及び猪  俣浩三君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員塚原俊郎辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として二  階堂進君が議長指名委員に選任された。 同 日  理事田中彰治委員辞任につき、その補欠とし  て山村治郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  小、中学校における教科書関係事件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。
  3. 山田長司

    山田委員 ちょっと会議を開く前に聞きたいことがある。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 議事進行ですか。
  5. 山田長司

    山田委員 そうです。昨日新聞記者に伺いましたら、委員長がきょうの証人喚問が終ったらば月曜日の十時から委員長名新聞記者に対して何か談話発表するという話をしたそうですが、このことについては、中間発表委員長だけで勝手にやるのでなくて、ぜひ理事会に一度諮って、しかる後に御発表願いたいと思うのですが、その点、明らかにしていただきたいと思います。
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 中間発表するという約束はしません。それは、はっきり申し上げますと、この間中間発表したらどうかという記者団側からの話がありましたから、まあ中間発表というようなことでなしに、談話の形で話し合いをするのなら二、三日うちにしましょうと言ったけれども、その時期が過ぎてしまったから、そこで、それじゃ一応そういう話をしたけれどもやめにしましょうということになっておるので、私もあの新聞は見ましたが、十一日中間発表するというようなことを約束したことはありません。何か思い違いだろうと思います。その前に中間発表をしてくれという要求がありましたけれども、中間発表といういうわけにはいかないから、それでは諸君話し合いをしようかということを、先週の話ですけれども、したことはあります。しかし、幹事の方に時期が過ぎたからもう中間発表でもないだろうということで話し合いをしてあるのであって、日をきめて中間発表するというようなことを言ったことはありません。また、中間発表というような正式なものであれば、当然理事会に私は諮っていたします。
  7. 山田長司

    山田委員 了承しました。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 前会に引き続き、小、中学校における教科書関係事件について調査を進めます。直ちに記入より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになっておられる方は石井一朝さんですね。
  9. 石井一朝

    石井証人 そうです。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 この際証人一言申し上げますが、現在わが国において小中学校における教科書は多極多様にわたり、大小出版業者が乱立の結果、それり検定並びに採択等に関しとかくり風評も生まれ、これが学童並びに父兄に及ぼす影響等を懸念し、世上大いに関心を抱いておる向きもありますので、義務教育の本旨にかんがみ、これが真相を明らかにすることはきわめて意義あることと考え、本委員会は本件の調査に着手した次第であります。証人におかれましては率直なる証言をお願いいたします。  それでは、ただいまより、小、中学校における教科書関係事件について証言を求むることになりますが、証言を求める前に証人一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族のあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当り理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるりであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。   宣誓書の御朗読を願います。   〔証人石井一朝朗読〕  宣誓書  良心に従って、真実を述べ、何事も  かくさず、又、何事もつけ加えない  ことを誓います。
  11. 篠田弘作

    篠田委員長 それては、宣誓書署名捺印して下さい。   〔証人宣誓書署名捺印
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはそのつど委員長許可を得てなされるようお願いいたします。まず委員長から概括的に証言を求め、次いで各委員から証言を求むることになりますから、御了承下さい。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになっていてよろしゅうございますが、お答えの際は御起立を願います。  まず証人の略歴について述べて下さい。
  13. 石井一朝

    石井証人 大正七年七月二十九日生れ、当年数え年三十八才、昭和十三年愛媛師範学校本科第一部を率業いたしました。その後愛媛県の小中学——現在の高等学校ですが、主として音楽科を担任いたしました。終戦とともに念ずるところがありまして教員組合運動参加をいたしました。昭和二十一年愛媛教員組合結成参加をいたしまして、情宣部長等を歴任いたしました。その後上京をいたしまして、現在の日教組前身でございます全日本教員組合協議会結成参加をいたしまして、その最高闘争委員などをいたしました。その後日教組結成されるに至りまして、その編集部長出版部長等を歴任いたしました。昭和二十六年であったと記憶いたしますが、退職をいたしまして、それから日教組機関紙であります教育新聞編集を担当いたしまして、昨年十一月の七日にわけがありまして退職をいたしまして、今日に至っております。以上であります。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 証人教科書行政に関与したことがありますか。関与したことがあるとすれば、そのいきさつ、関与していた期間、並びにその期間中における職務内容等について具体的にかつ詳細に述べていただきたいと思います。
  15. 石井一朝

    石井証人 昭和二十三年愛媛県知事の推薦によりまして文部省教科用図書審議会委員に任命されました。これは現在の名称は教科用図書検定調査審議会と申します。その前身でございます。その後二十七年まで五ヵ年間同審議会の副会長をいたしました。その間、昭和二十三年には現行教科用図書に関する臨時措置法原案などに目を通す機会を得ましたし、また国会でこれが可決、通過いたします際にも、国会方面などに出向きまして、もよりの議員の方々にお話を申し上げた例などもございます。ちょうど今日御出席高津正道委員文部委員であったというふうに記憶いたしております。その後現行検定基準原案作成、同時に検定規則原案作成などに参加をいたしました。また、文部省が例年出しておりますところの展示会指導の手引きであります展示会実施要綱などの原案作成などにも参加をいたしました。その討議にも参加いたしました。通じまして五ヵ年間、あるいは文部省の方と当事のCIEなどに教科書問題について交渉に出かけたこともございます。大よそ教科書行政の各分野にわたりましてその詳細を知り、なお、重要事項については文部大臣に建議する機会を与えられていたわけでございます。大体の状況はその程度であります。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 文部大臣の持っておる教科書に対する検定権は適正に行使されていると思いますか。もし適正に行便されていないと思うならば、その事実を具体的に述べて下さい。
  17. 石井一朝

    石井証人 文部大臣検定権は、御承知のように掌校教育法第二十一条、文部省設置法教育委員会法その他関係法規に明記されているのでありますが、ただいまの御質問は、文部大臣が持っておる検定権行使が適正にいっているかどうかというふうな御質問であったように思うのでありますが、これについては私はきわめて悲観的な経験と具体的な事実を存じておるものであります。一言で申しますと、現在の文部大臣検定権行使——すなわち検定事務であります。調査員がやっておるところの原稿に対する採点事務調査であります。これは全くでたらめである、一言に申し上げますとそういうことになると思うのであります。少しきつい言葉でありますが、私は現在文部大臣検定済みと書いてある教科書内容を信頼する気にはなっておりません。信頼すべからざる数々の具体的事実も、ここに教科書とともに持って参りました。少し時間がかかりますが、私はなぜそういう見解を持つに至ったかということを御披露申し上げたいと思うのであります。  まず第一の欠点は、各教科書どれを見ましても、表現表記など実にてんでんばらばらでありまして、まとまりがないということが言えると思います。教科書全般につきましてこれを詳細に調査することは大事業でありますので、現在その調査仕事を私並びに教員諸君とともに進めておりますけれども、ただいまの段階で申し上げましても、表記表現など、これは非常にばらばらでありまして、その間に脈絡がないということが言えます。たとえば、外国の国名に関する表現でありましても、実にばらばらなんです。ソビエトという国がございます。普通はわれわれソ連というふうに言っておるし、外務省の欧米六課で聞きましたところ、外務省の文章などもすべてこれはソ連ということになっているという話でございます。新聞を見ましても、すべてソ連ということになっている。厳密にはソビエト社会主義共和国連邦というのだそうでございますが、そのソビエトのソと連邦の連をとってソ連というふうな言い表わし方が日本では常識化している。ところが、ある一部の教科書には「ソ連」と出ている場合もございます。一部の教科書には「ソヴィエト」というふうに出ている場合もあります。一部の教科書にはソヴエトの書き方が違うのでございます。「ソビエト」と書いているのもございます。ハヒフヘホのヒの濁点を打った「ソビエト」、てんでんばらばらであります。これはささいなことのようでありますけれども、教科書が正確を期してたんねんに作られていない、同時に、調査がたんねんに行われでいないということを物語る有力な材料にたるように思います。  それから、もう一つ、これはかなり大きい問題でありますか、各教科連絡がほとんどとれていない。たとえば、国語り教科書で習熟いたしました国語能力がそのまま社会科に持ってこられておるかというふうに見てみますと、これはそういうふうになつていない。あるいは社会科教科書はむずかし過ぎて読めない。あるいは、これは出版社に聞きましたところが、私の社では社会科、理科、その他一ヵ年言語能力を下げて編集してございますというような話でございましたが、いずれにいたしましても、連絡がとれていないということは言えると思います。  これは十分具体的な調査を進めておりますので、お求めがございましたならば用意をして参じたいと思うのでございますが、教科書の数は三千点ばかりでございます。この調査を全部やるということは相当容易でない仕事なのでございます。大体以上のようなことが現在特徴的な点として申し上げることができると思います。  しかし、これは誤りと称すべきものでありまして、至って罪が軽いのであります。直せぱ直ることなのでありますが、以下申し上げることは、はなはだおもしろくないのであります。日本教育基本原理というものを根本的にくつがえすおそれのある——名づけて偏向教育などという言葉がはやりましたから、その言葉を今使いますが、そういう可能性をはらんだ教科書、これが目下盛んに続出しつつあるという現状を私は指摘しなければならぬ。こういう一連の教科書には、総じて封建性に対する反逆という精神が非常に濃厚に出ている。これは私はよいと思うのであります。わが国民主主義を国是といたしておるわけでありますから、その点に踏みとどまっている限りそれはよろしいことであるし奨励しなければならないことであると思うのでありますが、私がここに持って参りましたこれらの教科書に現われておりますところり封建性への反逆というのは、民主主義というわれわれ小通常考えております原理からはずれて、著しい左翼小児病的な高まりに包まれておると言うことができると思うのてありますが、それを今から、全部を申し上げるわけにはいきませんが、御紹介を申し上げたいと思います。  まず、これらの教科書は三つの特徴を持っております。それは、日本労働階級生活がきわめて悲惨なものあるということを故意に、必要以上強調したがっている。そして、それが社会制度の欠陥から出るんだ、つまり資本主義社会の矛盾からくるんだということを強調したがっておる。それから、もう一つは、ソ連と中国をいたずらに礼賛をする。その前でわれわれの国が卑窟な態度をとらなければならないようなことを強調したがっているというふうに認められます。そういう作為がこの教科書の中に働いておるわけでございます。それをただいまから申し上げます。  これは、ちょうど展示会の最中でございますので、出版社名前などはばかりたいと思いますが、高等学校社会科一般社会教科書がございます。その中に「教育民主化するための機関」、こういう単元がございます。教育民主化するための機関に何があるかという解説であります。冒頭に教育委員会が取り上げられております。これは私はよろしいだろうと思います。その次に教育委員会に並んで教員組合が取り上げられている。こういう説明がついている。「さらに教育民主化するための機関として、教員組合がある。」、これは希望的仮説であると私は思う。教員組合はなるほど教育民主化をスローガンに掲げてはおりますけれども、それはそういう運動をしているということでありまして、別に教育委員会と並んで教員組合教育民主化するための機関として正式に認められた事実はないわけです。これは希望的見解一つ作為になって現われていると言うことができると思うのであります。   〔「委員長議事進行について」と呼ぶ者あり〕 その点にこういう記事がございます。「教員組合労働組合一つであるから」と書いてございます。これは、現在日教組が総評に加盟いたしまして労働運動をやっております。運動それ自体はそうでありますけれども、教員組合労働組合であるとは認められていない。労働組合ではない。あれは職員団体であります。法律の上でこれは明確なことでありまして、そういうことは子供に誤まった観念を与えないように正確に書く必要がある。しかも日教組のごときは任意団体であります。これは労働三法の適用を受けざるのみか、完全なる任意団体である。   〔「委員長議事進行に関して、続行々々」「なぜ許さないのか」「発言中だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  18. 石井一朝

    石井証人 証言を続けてよろしゅうございますか。
  19. 篠田弘作

    篠田委員長 大西正道君、何も君興奮することはない。一応これが終ってから発言を許します。  証言を続けて下さい。
  20. 石井一朝

    石井証人 それでは続いて申し上げます。その終りに、やはり教員組合解説の中の一節にこういうことがございます。「日本教職員組合も、その活動目的のなかに、教職員の待遇、労働条件維持改善とならんで、学術研究民主化とか、民主主義教育の建設などをかかげている。」、ここまではいいのでありますが、その次が問題であります。「この目的達成のために、教育委員会委員国会地方議会議員教員代表者を送っている。」、これは皆さんどうでありましょうか。教育委員会委員国会地方議会議員は、これは教員代表ではないのであります。その地域に住んでいる住民の、有権者の代表でありまして、教員代表衣ではない。こういうような表現は、正確でない。そういう向きもありますけれども、これは正確ではない。今申し上げているのはまだ罪の軽い方なんです。しかも、教育法律というものが現在ありまして、これは悪法であるという非常に名高い法律であります。それはそうであるかもしれませんが、とにもかくにも法律がございます。この法律は、選挙に当って教員が特定の候補者を支持しまたは反対するために選挙運動をしてはならないというので、完会に制限したわけでないけれども、大幅に制限しているということになりますと、そういう趣旨から記載するといたしますと、ずいぶんこれは模様が変ってくるということにならなければならない。あれこれ考えますと、これは非常に正確ではない。誤解を招く。年端もゆかない子供誤解を与える要素が多分に含まっている。こういう政治的に波紋を起すおそれのあるような問題については、著者は各方面の意見を聞いて正確に書く必要がある。同時に、文部省検定も厳密を期する必要があると私は思うのであります。それから、これは先ほど申し上げました労働者生活が非常に悲惨であるということを強調したいという面から出てくる誤謬でありますが、こういうことが書いてある。労働者の性格を述べて、「第三に、労働者労働によって作られたものは、労働者のものとならないで雇用者のものになる。」、労働者労働によって作ったものは自分のものにならないで資本家のものになる、こういうわけであります。「この点では、奴隷・徒弟に似ており、農奴とちがっている。」、こういう表現があります。これもそうであるかもしれませんが、比喩のつり合わないところから来る非常に間違ったものであります。   〔「説明しなくてもいい「してもいいじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  21. 篠田弘作

    篠田委員長 不規則発言を禁止します。
  22. 石井一朝

    石井証人 こういう言い方は、たとえば、この論法で行きますと、月とスッポンも似ているというわけであります。それは両者とも羽がないからであると言うことができると思う。これはたとえに持ってくる材料が違っている。あるいは意識的に違えているのではないかと想われる節もある。こういうような不正確な記述がございます。それから、この教科書労働組合運動のテキストの観を呈しているのでありますが、数々の問題を持っている。これは社会党の人がごらんになっても問題がある。たとえば、ここに三ページにわたって争議やり方解説してある。これは労働組合の現在の組合員でも知らないほど詳しいいろいろなやり方が書いてある。
  23. 篠田弘作

    篠田委員長 読んで下さい。
  24. 石井一朝

    石井証人 ずいぶん長いんです。(「何時間かかってもいい」と呼び、その他発言する者多し)そういうわけで、問題のある個所を申し上げます。   離席する者多く、議場騒然
  25. 篠田弘作

    篠田委員長 御着席を願います。  御着席願います。委員諸君は御着席願います。山中君も神田君も御着席願います。御着席願います。石井証人続行願います。
  26. 石井一朝

    石井証人 証言続行中でございますので、御清聴をわずらわしたいと思います。私は文部省検定事務がずさんであるということを立証したいために申し上げておるのであります。その旨でお聞き取り願いたいと思います。(「逸脱しないでやれ」と呼ぶ者あり)逸脱しないように気をつけております。  ただいまの争議のところの解説でありますが、(「それは教科書じゃないね」と呼ぶ者あり)——教科書なんです。
  27. 篠田弘作

    篠田委員長 不規則発言は許しません。
  28. 石井一朝

    石井証人 こういう記事があります。教科書には「組合員がストライキを続行しているときに、職場にはいって働く人をストライキ破り(Scap)という。これは雇用者に買収された組合員であることもあるが」という記述が出ております。これは一部の事実です。そういう事実、買収される場合があるかもしれませんが、行き過ぎた表現であって、子供に正確な判断を与え、正確な労働運動を理解させることにはならないと思うであります。(拍手)それは争議が先鋭化しておりますと……。
  29. 篠田弘作

    篠田委員長 途中ですか、石井君に申し上げます。あなたのお持ちにたっているその本は教科書ですか。
  30. 石井一朝

    石井証人 教科書でございます。本年展示会に展示されたものでございます。
  31. 篠田弘作

    篠田委員長 何会社出版のものでございますか。
  32. 石井一朝

    石井証人 実教出版でございます。
  33. 篠田弘作

    篠田委員長 続けて下さい。   〔「本の名前は何というか」と呼ぶ者あり〕
  34. 石井一朝

    石井証人 一般社会。  ただいま申し上げましたことは、子供に正確な判断を与えないおそれがあるから私は申し上げておるのであります。たとえば、争議が長期化し、非常に先鋭化しますと、皆さん承知のように第二組合ができます。第二組合が就労する場合がございます。こういう場合にこの表現だと、それは雇用者に買収された組合員であるという印象を与えることになるのです。私は労働運動子供たちに正確にわからせたいと思いますけれども、この教材は公正に判断させる材料にはならないのです。そう判断せざるを得ない。(「高等学校教科書だ」「黙って聞け」と呼ぶ者あり)やりとりはいたしません。あとで申し上げます。  それから、小中を申し上げます。   〔「委員長議事進行」と呼ぶ者あり〕
  35. 篠田弘作

    篠田委員長 議事進行に関する許可の時期は委員長がきめます。それは規則によってきまっています。
  36. 石井一朝

    石井証人 これは中学教科書にもございます。これは正確でないということを立証するために私は申し上げるわけであります。中学社会科であります。   〔「何年生か」と呼ぶ者あり〕
  37. 篠田弘作

    篠田委員長 発言委員長許可を得てやって下さい。
  38. 石井一朝

    石井証人 標準中学社会の「上」でありますから、一年生が使うものであります。(「委員質問に返事する必要はないよ」と呼ぶ者あり)これは、現在の経済機構についていろいろ書かれた教科書でありますが、その中に賃金に関すす説明がございます。以下のごとく記述してあります。「賃金労働に対する報酬として労働者に支払われるものであるが、これは、労働者があすもまた健康で働くのに必要な生活費に、自分が働けなくなったのちに自分あとをついで働く子供生活費、更にその子供がりっぱにおとなになるのに必要なだけの教育費とが計算されて支払われなければならない。」、こう書いてある。こういう賃金理論もあるにはありますが、一般的でありません。同一労働同一賃金という賃金理論もございます。これは生活保障給理論でありましょう。この理論でいきますと、とにかく家族一体がみんな食って飲んでゆたかに生活できるということが条件であって、労働に関する質だとか量だとか、そういうものは全然問題にならないわけです。ところが、実際の賃金支払いの形態はそうじやない。子供は矛盾を感ずるだろうと思うのであります。学歴によって差等があり、経験年数によって差等があり、労働時間の長短によっ差等があるわけであります。これが丁寧懇切な賃金解説をするのならばいいけれども、こういう一方的な、ただ一部の論を広げて全体となすような傾向は誤謬である、こういうふうに申さざるを得ないのであります。これらの私が申し上げましたものに、不正確である、正確を期する記述にするためにはもう少し配慮しなければならぬという点で申し上げたのであります。  ところが、以下私が申し上げますものは、主として小学校の教科書でありますが、これは、先ほど申し上げましたように、中国、ソ連を礼賛すると申しますか、賛美をすると申しますか、そういう形が露骨に出て、それに反する勢力——たとえばアメリカでありますね。たとえば現在の日本でありましょう。そういうものを非常に陥れて書く。そのために意識的な省略と誇張をやる。書かれてあることは、議論をすれば事実であると立証することができるかもしれないけれども、その間に、事柄が事実であったにしても、誇張と省略がある。大事な点を省略して、大事でない点を誇張しておるというふうな向きもあるのであります。  たとえば、六年生の社会科教科書、主として地理的内容を持った教科書でありますが、この中にアジアの諸地域の状態が書いてございます。まず冒頭に南鮮、朝鮮のことが書いてあります。この朝鮮の記述の中に、朝鮮の地勢、風土、地理を語る言葉の中に、「広い田んぼをつききった大きな道路を、外国の軍用自動車が、すなけむりをあげて走っていくすがたも見えます。」、こう書いてある。つまり、これは地理と何の関係があるのか知りませんが、ここで外国の、朝鮮ではない外国の軍用自動車が砲煙を上げて走っておる、それを書いてあるわけです。事実でありましょう。事実ではありましょうが、そういうことをわざわざ地理の教科書に書く必要はないと思う。あるとすれば、北鮮も同様のことを書いてしかるべきである。ところが、北鮮には何も書いてない。朝日新聞の和田記者でありましたか、金日成さんか何かに会ってそのレポートを送っておる。その記事を朝日新聞で読みましたが、北鮮には中共の人民義勇軍が鴨緑江を渡ってから平壌に着くまで至るところにいたと書いてある。とにかく、私は、均等でない、一方的であるということを申し上げておくわけです。  次にビルマのことを書いてあります。「イギリスやアメリカのせわになっています。」と書いてあります。それからフイリッピノのことが書いてありますが、「アメリカの軍事基地となっています。」と書いています。これはそうであるかもしれませんが、その他のことを書かないで、アジアのこれらの国々だけがそういう状態あもということを強調する結果になっておる。なぜならば、中国がソ遮の対華援助に関する協定で莫大な援助を受けてただいま五カ年計画進行中であるということは一言も触れてないのであります。これは非常に公平でない。私は公平な教育を望みます。そのために、この教科書編集というものはきわめて片寄っているということが言えるし、また言わなければならぬと思うのであります。こういう本で教育されたのではかなわぬと私は思うのであります。  それから、もっと意識的な間速いは、この教科書に中国という項目を取り上げておりますが、その中国の中に台湾が含まっております。記述り形態としてはこれは非常に見解の異なるところであります。台湾が中国のものであるかどうかについては、これは皆さんの方かよく御承知だろうし思うので、私は申し上げません。  それから、もう一つそれと同様の誤まりがございます。歴史の教科書でございます。日露戦争の結果、日本が樺太をもらったと書いてあります。樺太をもらったのはいいのですが、南樺太の下へカツコいたしまして「ソヴィエトのサハリン」と書いてあります。これはある教科書では「サガリン」あるいは「サハレン」となっているのもあります。表記はまちまちでございましょうが、いずれにいたしましても、南樺太の下にカツコして「ソヴィエトのサハリン」と書いてある。これは果して現在の国際法上ソビエトの領土であるかどうか、これはまた皆さんの方がお詳しいのでしゃべることを避けます。これは、私は、意識的な書きかえと申しますか、編集だと断ぜざるを得ないのでございます。  さらに、そういうことに類する誇張と省略の中には許しがたいものがあります。この歴史の教科書中に、中国と日本が古い昔から交わってきた歴史がずっと書いてあります。それはいいことであります。私はこの教科書の前半からその事柄を拾ってきたのでありますが、中国との関係を語る言葉は全部、まねをした、学んだ、勉強しに行った、そういうことはかりであります。その後半は全部、日本が大陸侵攻をやってめちゃくちゃに中国人民をいじめた、その悲惨な中国人民の状態が中国の版面で書かれてあります。その中に、そういう傾向を保つために一つの歴史の書きかえが行われておる。これは許せない。これは学者としても許せないと思います。これを書いたのは歴史学者でありますけれども、元文のところがあるのです。皆さん承知のように、蒙古来、これはこの教科書によりますと中国が攻めてきたのではないということになっている。中国は侵略国家ではないから、そういうことを子供に意識づけなければならないので、中国は攻めてこないことになっている。蒙古が攻めてきたので中国の人民は塗炭の苦しみを受けて、実は日本の方へ手をたたいて拍手を送っていたというり記述になっている。ところが、歴史の教えるところによりますると、江南軍は范文虎という中国人が将軍でありまして、范文虎に率いられた十万の大軍が何そうかの船で博多に攻めてきたわけであります。明らかに中国車が日本に攻めてきたわけであります。それをわざと書かないですりかえて書いてある。こういうことは私は教科書編集する者の良心として許せないことだと思うのであります。こういうひどいことが行われております。  まだあるのです。中学社会科であります。この教科書は全体が平和運動のテキストの体裁をなしているのです。平和運勅はいいことであります。私も平和は好きであります。好きでありますけれども、ここで説かれておる平和運動の形態というものは、これは教育の公正なる運営を阻害するおそれが多分にある。この書物は平和を脅かすものはすなわち戦争であると書いてある。戦争の歴史を書いてある。それはその通りであります。近代に入ると戦争の原因か変ってきたと、こう書いてあも。近代とは産業革命を経て資本主義社会にたっら今日であります。今日は戦争の原因が変ってきたと書いてある。そうして次のように書いてある。「産業革命を経て近代にはいると、経済情勢の変化とともに、戦争の原因もいろいろの新しい要素と結びつくようになった。そのおもなものは資源の取り合いでる。」、こう書きまして、そのあとに、フランス、アメリカ、ドイツが市場争奪と植民地の争奪をやったことが書いてあります。そうして日露戦争もそうであったと書いてある。第一次大戦もそうであった、第二次大戦もそうであった、そうしてここでは資本主義社会が爛熟するとそれか帝国主義化して市場と植民地を争奪するために戦争を起すんだということが書いてある。が、しかし、ここで考えなければならないのは、そういう戦争は国民の全体が総意を固めてやるのではないと書いてある。だれがやるのか。それは日本の国民がいろいろと平和運動をやってきたこともわかる。その戦争をやるのはだれだ。この教科書はそれは死の商人であると書いてある。デス・マーチャントと書いてある。「それは戦争によって利益を得る人々であると考えなければならない。戦争によって国民の大部分は苦しみ悩むけれども、きわめて一部の人々は戦争によって得をする。だからそういう人々は、政治家をそそのかしたり、国民が戦争を好きになるようにしむけたりして、戦争をくわだてる。こういう人々のことをふつう「死の商人」とよんでいる。」——一部の資本家のたくらみによって政治家がそそのかされて戦争か起るんだということを書きまして、その次に、それでは戦争の原因はわかった、戦争の原因を除去することが平和への道だと書いて、どうすればいいか、——社会的原因の除去と書いてある。子供なりにこの言葉は翻訳してありますけれども、「社会の改善が必要である。」、こう書いてある。社会改革と申しますか、つまり今まで述べ立ててきたような資本主義社会を別の仕組みにする必要がある、それが平和運勅なんだということで結んであるわけであります。私はこの思想の当否は言いません。そういう考え方も世界の一部、日本の一部にあります。その思想の当否はここで論じませんけれども、義務教育である公教育が公正に運営されるためのこれが要素になるかどうかということは、賢明なる方々はおわかりになっていただけるだろうと思うのであります。ただ、念のために申し上げておきますが、この平和闘争の原理は、過日スターリンが発表しましたスターリン論文と全くウリ二つなんであります。スターリン論文の定式化されたところを子供言葉に直すとそういうことになるのであります。   〔「そんなことを言う必要はない」   と呼び、その他発言する者多し〕
  39. 篠田弘作

    篠田委員長 続行して下さい。
  40. 石井一朝

    石井証人 こういうことを書いてございます。これは「ソ同盟における社会主義の経済的諸問題」というスターリン論文であります。その中に、「現代資本主義の基本的経済法則の主要な諾特徴と諸要求とは、大よそ次のように定式化することができよう。」——つまりひな形が作れるというわけです。そうして次のように書いてあります。「最大限の利潤を取得するという、まさにこの必要こそ、独占資本主義をかり立てて植民地やその他の後進諸国を債務奴隷化し、系統的に強奪し、多くの独立国を従属国に転化し、現代資本主義の巨頭たちにとって最大限の利潤を引き出すのに最良のビジネスである新しい戦争を仕組み、最後には、世界の経済的支配をかち取ろうと試みる」、こう書いてある。これが現代資本主義社会機構で行われる定式化されたひな形だと書いてある。このひな形がここにそっくりあるということ、このひな形がいい悪いはこの議論の対象ではないが、少くとも日本義務教育の中でかくのごとき思想が教科書を通じて子供に植えりけられるということは、私は賛成できないのであります。  それから、同様の誤りがたくさんあります。これは小学校の社会科教科書であります。歴史を内容とする教科書であります。これも、一々申し上げると長くなりますから、簡単に申し上げます。これは、先般ソヴエトが発表いたしました経済学教科書、あれはむしろ政治学教科書と言った方が正しいと思うのでありますが、それに示されてある社会発展の法則をそのままここに移し入れてきただけのものであります。まず原始共同体があってやがて奴隷制になり、封建制になり、資本主義社会になり、社会主義社会に発展するのだ、その社会の発展の法制は歴史的必然性を持っているんだということを裏打ちした教科書であります。
  41. 篠田弘作

    篠田委員長 ちょっと読んで下さい。
  42. 石井一朝

    石井証人 これは長いので、詳細を申し上げるときりがないのですが、こういうことを書いてあります。まず原始共同体の発足を次のように記述してあります。「とれたものは、みんなでなかよく分けあったのです。あみも、船も、野も、山も、だれのものでもなく、みんなのものでした。」 原始共同体がですね。それから次に奴隷制の始まりを書いてあります。「こうして、富んだ人と、まずしい人のちがいができました。ときには、むらとむらのあいだに、戦いがおこることもありました。勝ったむらは、負けたむらのもをどれいにしたり、みつぎものをとったりしました。」——奴隷制度が発足した。それから、以上のような要領で、封建制度の発足したこと、資本主一義社会が発足してきたことを、それぞれその言れは戦争と不況のことだけしか書いてないのであります。しかも、その間で、日露戦争が日本が悪くてでたらめであったというふうな記述なのです。こういうふうに書いてございます。「そのころのロシアは、皇帝がたくさんの軍隊をもって、あちこちに手をのばしていたので、世界じゅうからおそれられていました。だから、中国の領土へせめこむのは、日本もロシアもおなじことなのに、日本国民の多くは、これは正しい戦争だと思って戦いをつづけました。」、こう書いてある。つまり、正しいと思ったのは間違いだというのですから、間違っていた戦争だと、こういうことになるわけです。私はすべて戦争に正しいとは申しませんが、日露戦争がこういう言葉で非難されなければならない要素は持っていなかったと思う。たとえば資本主義が欄熟して資源の争奪、市場の争奪をやったにしても、非ば双方にあるのでありまして、それは私どもかしつとしていたらソ連に併呑されたかもしれない。われわれの祖先が戦ったということは、その日露戦争に関する限り必ずしも間違っていたとは言い初れない。子供たちにはそう教えたくないと思うのであります。ところが、この教科書は、日露戦争はわれわれの祖先の誤りだ、そして反戦運動をした人がいたと、幸徳秋水をあげております。堺利彦をあげております。こういう人々は反戦運動をしたのかもしれませんが、これを教科書に特筆大書して取り上げて、正しくない戦争だというふうに印象づけるのはどうかと思われるのであります。やや正確でない記述だと思うのであります。  この点に関して、私は、一体ソ連はどういうふうに教えているのだろうかと思いまして、ソビエトの初等教育教程をとってみました。ソ連の学習指導要領です。(「講釈を聞いているのじゃない」と呼ぶ者あり)でも私は申し上げたい。この中に日露戦争の記述がございます。ソ連の学校では、日露戦争を教えるのに、こういう教案を掲げております。日露戦争、戦争の原因、旅順港、奉天、対馬と、戦況の詳しい説明があります。それから、帝政ロシヤの敗北、非常に不名誉な講和を受けたこと、そして最後にロシヤ敗北の原因というものを考えさせている。まことに丁寧な戦争教育であります。日本教科書でこういうことが教えられるのと、ソ連でこういう教育が行われていることとを対比いたしましたときに、日本という国はどこへ行ったのだろうと私は思うのであります。これは日本語で書いてありますけれども、内容は中国の歴史の教科書であり、ソ連教科書であると申しても差しつかえない。こういうこともございます。日本の大皇族——族と言えるかどうか、よく知りませんが、天皇氏というか、今の天皇陛下の興り、それを書いてあるくだりがあります。この教科書によりますと、これは日本書紀あるいは古事記にのっとっていないと思われる。なお調べてみようと思いますが、これは支那の後漢のあとにできました魏という国が書きました魏史を中心にして書いてある。ヒミコという女の王がいて、中国にみつぎものを奉つたとか、そんなことを書いてあります。これは魏史という書物に出ている。日本書紀とか古事記とかにはそういうことは書いてない。古事記、日本書紀は正確でない、それは認めます。けれども、われわれの祖先が作って残した古典でありますから、全面的に信用はできないが、こういう記述もあると書いたらどうでしょう。わが国教科書でありますから、よその国の歴史の本を持ってきて、それだけで押すというのは、どうも主を客とし客を主とする趣きがあると思うのであります。私は、言葉が過ぎるかもしれませんが……。   〔発言する者あり〕
  43. 篠田弘作

    篠田委員長 よけいなことを言わないで下さい。暑いから上着をとって下さい。
  44. 石井一朝

    石井証人 ただいまここにもございますから、ついででありますから……。   〔山田委員「自由はなかなかいい証人を呼んだな」と呼ぶ〕
  45. 篠田弘作

    篠田委員長 山田君、不謹慎な発言は禁止いたします。
  46. 石井一朝

    石井証人 もうやめようと思ったのですが、もう一つ申し上げます。これは、中国、ソ連を礼讃するために、わが国を卑屈にとらえるという表現一つの現われであります。日本の農業のことについて書いてあります。——日本じゃなくて世界中の農業。これは、飛行機で種をまいている写真を掲げまして、中国では飛行機で種をまくのだ、それから、中国では農作物を荒すイナゴを飛行機から薬をまいて大量に殺す、ソビエトはトラクターを使うのだというて、先方の農業の水準が非常に高まっているということを強調しております。そしてわが国の農業の水準のところになりますと、日本の農業はどうでしょうかと書いて、農業水準のきわめて低劣であるということを記述し、最後に、日本の農業がどうしてこんなに立ち遅れているか考えてみなければなりませんと書いてございます。私は、日本の農業の水準が高いか低いかよく知らなかったので新聞で調べましたところ、ソ連の今交渉をやっておるマリク全権が、七月一日の読売新聞に出ている談話によりますと、こういうことを言っております。「ソビエトとしては日本の農業と造船業に深い敬意を払っているが、特に農業についてはかってスターリン時代にもこの高い水準には注目すべきだとの報告を行なったことがある。」と、この教科書がほめたたえている国の代表者日本の農業の高い水準を賛美しております。これはどっちがほんとうであるか、よくわかりませんけれども、読売新聞記事の報道が正確であるとするならば、これはみずからひざを屈して他国に盲従というか、そういう卑屈な態度の現われであると私は断定せざるを得ない。  いろいろ申し上げたいとことはたくさんございますが、以上のようなことはここに数限りなくあるのですが、大体そのくらいにしておきます。  これは総じて、私はこういう教科書文部大臣検定済みというので文部省のあの虎ノ門の門から出てきたということは世紀の喜劇であると思うのであります。同時に、いかに検定調査仕事がずさんに行われておるかということであります。それを端的に物語っていると思います。こういう俗説があります。調査員名前を公開しないで、非公開にして、文部省はカーテンの陰に隠れてかってなことをやっておる、みんなそう言っております。そうかしらとみんなそう思っておる。事実は案に相違してかくのごとしであります。文部省がひもつきを作っておるならば、こういう教科書は出てこないはずだ。なぜならば、調査員は五人おりますが、そのうち一人が拒否権を行使すれば、落第するのです。総点が千点で、一人の調査員が零点をつけますと、陽の目を見ることはありません。つまり拒否権を行使し得る仕組みになっております。だから、文部省のひもつきならばこんなものを通すわけがないと思います。これは落第でなければならぬと思いますが、堂々と出ているところを見ると、しかも展示会に並んでいるところを見ると、文部省検定調査の事務は、前々からずさんであると思っておりましたが、これは聞きしにまさるものであると言わなければならぬのであります。これは、私は、文部官僚の重大な責任であるとともに、場合によっては、こういう教科書の出現——現にこれは出ております。採択もしてあります。これで教育されることになりますと、文部大臣の責任問題にもなると思います。  そこで、以上のようなこういうずさんな検定調査の事務が行われる原因について、私は所見を申し上げたいと思います。これは調査員の制度がいけないということであります。皆さんもすでに文部省その他からお聞き取り下さっただろうと思いますが、千二百名から千四百名に及ぶ者が毎年交替でやっております。しかもこれらは現場の教員で学校の仕事を持っております。私は調査員の何名かに会って話を聞きましたが、彼らはこう答えております。忙しい、それが期間がきまっている、非常に短い……。
  47. 篠田弘作

    篠田委員長 石井証人にらよっと申し上げますが、文部省検定の問題ですから、調査員の問題はまたあとでお伺いいたします。
  48. 石井一朝

    石井証人 それでは、私の申し上げる証言はそういうことになります。結論的に申しますと、文部官僚の手でやっているという検定事務は大へんずさんであり、とても信用の置ける状態でないということを強調して、証言を終ります。
  49. 篠田弘作

    篠田委員長 大西正道君より議事進行について発言を求められておりますので、これを許します。大西正道君。
  50. 大西正道

    大西委員 今、約四十五分くらいにわたって証言があったわけですが、私は、これは証言だとは思えないのです。大体、今の委員長質問は、教科書に対する文部大臣検定権が適正に行われておるかどうか、こういうふうな問題であります。従いまして、検定権という問題も、これは問題はありますけれども、一応検定基準にのっとって事務的に行われておるのであります。ですから、それが適正に行われておるかどうかというような、そういうところの証言証人に求めればいいのに、今承わっておりますと、私が途中で議事進行に関する発言を求めましたが、これは決して他意があって求めたのではないのであります。今の話はだれが聞きましてもこれは証人の歴史観の開陳であります。一つ一つ教科書をあげて、こういう歴史観は間違っておる、正しくないと自分は思うのだということを言っておられる。これは、私、聞いておりまして、証人の含蓄の深さ、研究の深さを聞いてまことに面白いことではありましたけれども、こういうことをもって証言に充てるということになると、これはまことのもってけたいなことになる、私はこういうふうに考えます。
  51. 篠田弘作

    篠田委員長 それは議事進行ではありません。あなたの意見は許しません。
  52. 大西正道

    大西委員 しかも、正しい行使が完全に行われておるかどうかということの証言ではない。そういうことをもしも委員長が弁護して許されるということになれば、私はこの証人に対するこれからの証言の求め方というものは非常に変ってくると思います。
  53. 篠田弘作

    篠田委員長 そんなことは議事進行ではありません。
  54. 大西正道

    大西委員 従って私は言うのです。私は……。
  55. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの見解の相違は別ですが、そんなものは議事進行ではありません。
  56. 大西正道

    大西委員 そういうことでに、行政監察特別委員会教科書問題に対する適正な検討というものは的をはずれて……。
  57. 篠田弘作

    篠田委員長 はずれていない。
  58. 大西正道

    大西委員 何か政治的な問題を含むようなことになって、これは本委員会の名誉にも関するものと思います。(発言する者多し)そこで、私は、委員長に対して、今後委員会の運営に関してはもう少し良識にのっとった一つの運営をお願いしたいと思います。(「やっているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)それでは私は申します。私は証人とは前々からの知り合いでありますが、これに対して公正な立場たもって聞きたいと思って発言を求めると、ことさらにあなたは私の発言を拒否される。さらに、自由、民主両党の諸君は、何でもないことに対して猛然として反発を起される。これでは絶対に公正な議事の運営はできないと思います。
  59. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、委員長から申し上げます。発言を封殺するということを申されておりますけれども、発言は封殺しておりません。これは、御承知の通り、衆議院規則の百二十九条に「議事進行に関する発言は、議題に直接関係があるもの又は直ちに処理する必要があると認めたものの外は、これを許可する時機は、議長がこれを定める。」ということがありまして、同時に、委員会においては委員長がこれを定めるのでありまして、大西君の議事進行に関してどういう時機にこれを許すかということに、これは委員長判断によるものであります。  それから、もう一つ文部大臣教科書に対する検定権は適正に行使されておるかどうかという問題で、適正に行使されておらないという実情を説明するためにあらゆる教科書をあげておるということは、何らさしつかえありません。あなた方も質問の時間が十分にありますから、その証言の途中において、何か意図を持つか、あるいは何か自分たちの個人的な考え方で発言を妨害するような態度こそ、議院の神聖を汚しますから、その点はお互いに注意してやっていきたいと思います。委員長においでもし不適当な処置があったならば、その都度あなた方の方から御注意願います。
  60. 大西正道

    大西委員 今の委員長の解釈に対して申し上げます。これは私の意見ではありません。今あなたは百二十九条をとってその時機は委員長の権限であると言われましたが、これは間違いであります。百二十九条はこういうふうに規定してあります。「議事進行に関する発言は、議題に直接関係があるもの又は直ちに処理する必要があると認めたものの外は、」こういうふうにあります。私の申し上げておることは最も直接に関係のあることだから申し上げた。これを委員長が……。
  61. 篠田弘作

    篠田委員長 それはあなたの個人的な考え方であって、それは委員長がきめます。委員長の権限です。
  62. 山中貞則

    山中委員 今の衆議院規則の解釈ですが、場合によっては、議事進行の動議は何ものにも優先する権利を与えられております。しかしながら、それは、ある議題について一つ発言をなされておる過程にそれを断ち切って取り上ぐべき問題ではありません。これを断ち切り得る場合は、委員長の不信任、また本会議等においての演説、討論等をいたしておる者に関する不信任等が取り上げられた場合の程度であります。
  63. 篠田弘作

    篠田委員長 よくわかっております。  次に、証人にお尋ねいたしますが、教科書の採択は自由かつ公正に行われていると思うか、行われていないとするならば、その事実を具体的に説明して下さい。
  64. 石井一朝

    石井証人 ただいま、採択は自由かつ公正に行われているかという御質問でございますが、この点につきましては、私よりも皆さんの方がはるかに豊富な御知識を持っていらっしゃるだろうと思います。公正に行われていたい。これは、酒食の供応などは、すでに業界の代表者が、遺憾ながらというただし書きがついているが、これを認めているわけです。リベートなどもお認めになっていらっしゃいます。これは公正と言えるわけはないのであります。不公正というのは、私見によりますと、他の業者が対抗し得ざる手段でやる、これを不公正と称するのでありますが、そういうことになりますと、金でやる不公正競争もあります。それからリベート、これも金になりますけれども、そういうものでやる不公正もございましょう。それはもう今までるる記入を御喚問になってお聞き取り願ったのでありますから、私から重ねて申し上げる何ものもないと思います。ただ、自由に行われているかどうかについて若干ございます。それは組織的な圧力が採択にかかっていないかどうかという問題です。これは、そういうものがかかっておれば自由とは言えない。それから、何か教育委員会とかなんとか、そういうものの圧力があるかないか、こういう問題についても数々の証言があったようでありますから、私も、前段の御証人各位と同様に、公正であるとは申されない、また自由であるとも申し切れない個所が多々あるということを申し上げるにとどめておきます。
  65. 篠田弘作

    篠田委員長 証人は、教科書の採択に関し、日教組が本年の六月教科書の評価基準——採択基準を作って各都道府県教組委員長あて通達した事実を知っておるかどうか、知っておるならば、評価基準の概要を説明し、その評価基準に該当すると思われる教科書について具体的に説明して下さい。
  66. 石井一朝

    石井証人 存じております。ここに資料がございます。手元にありますのは東京都の某中学で私が入手したものてありますが、東京都の教員組合は指示十号というのでこれを各学校に出しているようです。日教組が出しております教育情報に載っております。こういうふうにただし書きをして出しているようです。「以下の評価基準は、日教組教文部が関係者の協力をえてまとめたものですが、」というような断わり書きをつけて全国へ出しているようであります。私はかつて日教組におりましたし、教科書のことにも深い関心を持っておりましたので、取り寄せてその内容を検討をしてみました。その結果、どうもこれは妥当でないと思うのであります。私は、この点につきましては、こういう採決基準を教職員の組織である日教組が全国一律に出す、そのこと自体に問題があると思います。自由と民主主義は好きなはずなんてありますから、統制的な手段を加えない方が日教組としてもよろしいのじゃないか。この採択基準が文部省から出たとすれば、おそらくこれはハチの巣をつついたような大騒ぎになること受け合いであります。従って、日教組の場合でも、かくのごとき採択孫準と称するようなものは、たとい拘束力がないにしても、——東京都の教員組合の場合はこれは指示十号で出ております。こういうものを出すべきではない。形としてもこれはまずいが、その内容を検討してみるときに、さらにそのまずさに気がつく。この採択基準中見ますと、これはずべて観念的な問題ばかりなんです。こういうもので教科書の良否を判定するということは冒険であります。一例をあげますと、こういうことです。平和を妨げているものについて説かれているか、つまりそれが社会の矛盾から生まれてくるものであることの説明がなされているか、そのたぐいの基準でありまして、ただいまもお話がありました通り、非常に政治的なにおいの強い傾向が出た基準ばかりであります。教科書の良否を判定するのに、かくのごとき観念的なもので評価をするということは危険であり、冒険的な行為であると思います。教科書の良否は、活字の大きさもありましょうし、表現表記が適切であるかどうかという問題もありましょうし、教材の配列が適当であるかどうかという問題もありましょうし、教科書の質をきめる多くの問題があるはずであります。そういう問題を抜きにいたしまして、こういう基準ばかりで採択をさせようというのは非常に誤まっている。しかも、これと、先ほど申し上げましたこれらの教科書と符節が合うのです。こういう基準に従ってこういう教科書ができている、あるいはこういう教科書に従ってこの基準ができているという、その相関関係が確実に立証はできないけれども、思想としてはちゃんと脈絡がついている、こういうことであります。  それから、もう一つの問題は、この基準を書いたものがだれであるかという問題であります。もし必要があってこういう基準を書いてそれをよりどころにして教科書の採択をするというととであるならば、それは現場の一人一人の教員から討論をして集めてきて、そうしてほんとうに民主的な手続でこの基準をきめるべきであると思うのであります。それが順当な民主的な手続であります。ところが、日教組はこれを関係学者の協力を得て作ったと書いてあります。日本教育新聞の報道によりますと、講師団の全面的な協力を得て作ったと書いてあります。これは天下り式のものであります。これは日教組に私は照会したのです。私を非常に毛ぎらいするでありますけれども、私がたずねて行って、この基準をだれが書いたか教えてくれないか、書いた人によっては問題だというふうに聞きに行ったのですが、なぜか書いたものを教えてくれない。それらしい者はわかりました。そういうことを総合いたしますと、日本教育新聞の報道によるように、これが講師団の手によってできたものだ、こういうことが言えるようてあります。そうなりますと、これは容易ならぬ問題があると私は思う。なぜなら、講師団のうちの多数の諸君教科書の著者である。これは非常にまずいことになると思う。片一方の手で教科書を書き、片一方の手で日教組にそれと符節の会うような採択基準を与えて、これを採択せよというのですから、もしそうだとすれば、——日教組は言ってくれませんから名前はわからぬけれども、講師団ということになれば、そういう方々がいることは事実であります。これは不公正運動の最たるものにたると断ぜざるを得ない。そしてこれは日教組にとっても非常に不名誉なことであると思うと同時に、私は現場の教員にも聞きましたが、組合運営にとっても許されないことだ、天下り式にこういう基準を押しつけて、指示十号——拘束するものではないというけれども、指示というのはかなり拘束力を持っているのです。こういうものを各学校に送って、この線で採択をなさいというようなことになると、これは容易ならぬ問題である。これはさまつなことでありますけれども、考えようによっては重要でありますが、この採択基準の末尾にこういうのが出ている。展示会実施要綱抜粋として、「ことしの教科書展示会は次の要領で開くよう、文部省から各教委に通知されています。」——文部省展示会の実施要綱が出ているぞ、各県の教育委員会に次のようなものが出ているという、抜粋だというよりも抜き書きというのでありましょう。これをこう変えてあるのでありますが、これは抜粋ではない。意識的な書き変えであるわけです。文部省の展示合実施要綱はここにございます。それと照合をしてみますと会わない。教員組合に都合のいいようなことが書いてある。これも非常に公正でない。たとえばこういうことが書いてあります。「教委が採択の方針、方法をたてるための委員会を設ける場合もあくまて教育中心の民主的構成とする必要がある。」、文部省からこんな実施要綱は出ていないのです。文部省はどう書いてあるかというと、こういうふうに書いてございます。「教育委員会が採択の方針や方法をたてるための委員会を設けるような場合においてもその機構や人選に注意し、あくまでも教育中心かつ代走的方法によってなされたい」、しかるに、これには民主的構成とする必要があると書いてある。それから人選に注意しろということが書いてある。言いかえるとそういうことになるのかもしれませんが、これは少し行き過ぎた書き変えである。こういうことは教員組合はやらない方がいいと私は思うのであります。非常に不公正な形になる。  大体その程度のことを存じております。
  67. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、教職員の団体が特定の出版社教科書を特に採択するよう要請する旨の指令を出した事実を知っておるかどうか、知っているならばその事実を説明して下さい。
  68. 石井一朝

    石井証人 教職員の団体というのはいろいろあります。教員組合もありましょうし、いろいろなサークル、文化団体というようなものがございます。そういうものの中でさような動きがあったということは聞いておりますけれども、正確にここに証拠をあげてそれを論ずるまでのものは承知しておりませんが、かつて公正取引委員会が、学校生活協同組合が採択について不公正な動きをしている状況があるというので、私のところへ一緒に調べてくれないか、資料があったら出してくれないかというようなことで来たことがあります。私も公取の方へ出かけたことがございます。その節、私が持っていたのじゃなくて、公正取引委員会の方からその種の資料を見せられたことがございます。それによりますと、教員組合委員長が、生協の名義であったかと記憶いたしますが、採択を希望するように受け取れる文書を流したようであります。これは今手元にありませんが、公正取引委員会で見せてもらった記憶はございますから、もし御必要なら、こちらの方でお伺いになっていただけば、判明するのではないかと思います。
  69. 篠田弘作

    篠田委員長 教職員が地方別に各教科ごとに研究会を作り、特定の出版社と契約し、教科書編集をしておる事実を知っていますか。たとえば、北海道においては北海道国語教育連盟、北海道社会科教育連盟、東北においては東北理化研究委員会、新潟県理化教育研究会等が教育出版や大日本図書と提携してそれぞれ教科書編集しておるが、こういう事実について記入の見解を述べて下さい。
  70. 石井一朝

    石井証人 そういう事実のあることは伺っております。私の見解でありますが、これは非常にむずかしい教育的な問題も含んでおるのでありまして、簡単に割り切って申し上げることは不可能でありますが、教育においてその地域性を強調するというのは今日の定式化した一つの増え方でありますから、ローカルの特色を出すという意味でそういう地方版が作られるということは必ずしも不当ではないと思われますが、これはときにそういう話を聞くことがございますけれども、なるべく採択とからまないようにこれが行われる——採択とからんでこれが行われるということになりますと、せっかくの教育的な良心がふいになる、そういうふうに思われます。この地方版の必要はだいぶ方々で言われておるようでありますが、私は必ずしもこま切れの地方版が必要だとは思わない。昔は農村用と都市用がございましたが、もし差別をつけるということであるならば、そういうふうな割り方でもいいのではないか。これは、各県それぞれ、愛媛県版とか高知県版とか長崎県版とかいうふうなものを作り始めますと、なかなか困難なむずかしい問題が併発をするのではないかと考えられます。ただいまのところ、企画、編集は良心的な発意に基くものと思われますが、その運営を公正にやってほしいものであるというふうに私は考えます。
  71. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書出版社の一部には教科書販売のため教職員もしくは教職員の組織を利用しておるような事実はありませんか。もしあればその実情を述べて下さい。
  72. 石井一朝

    石井証人 教職員を販売に利用するということは、これは天下周知の事実でありまして、これは数々の証人証言したはずでございます。組織という点になりますと、別に機関で正式に決定をして、どこそこの教科書を採択するとかしないとか、そういうことをきめるような、そういう暴挙をする者もいないでしょうから、組織を利用するということはあからさまにはないだろうと思います。しかし、利用したいものだというくらいの気持はあるでしょうし、そのはしりくらいはあるかもしれない。以上であります。
  73. 篠田弘作

    篠田委員長 現に利用されておるようなことはありませんか。
  74. 石井一朝

    石井証人 はっきりここで申し上げるほどの的確な材料を持ちません。
  75. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書供給の問題でありますが、まず教科書の供給機構の実態について述べて下さい。
  76. 石井一朝

    石井証人 教科書の供給機構は、私の承知しておりますところでは、東京に中央の配送社がございます。これは自家配送をやっておる会社もございます。配送業務をやっておりますのは、日教販とか教販とかいわれる会社でございます。また取次に各都道府県に特約店というものが存在をいたしております。これは一県一店の場合もございますし、一県二店の場合もございます。その特約店の末端に取次所と称する小売店がございます。これは、大体、私が聞きましたところ、ないしは調査いたしましたところを見ますと、配送会社は定価の六分五厘から七分の手数料、特約は大体四分の手数料、小売店は一割二分の手数料を取っておりまして、二割三分、教科書の総価格を百二十億といたしますと、二十七億六千万円、二十八億円ばかりの金額に手取りマージンがなるように思うのであります。これは非常にむずかしい問題を含んでおりまして、この供給機構の取り分が、計算によりますと、教科書を作る製造原価の半額を上回るというような状態であります。大体、教科書の原価は、御承知かとも思いますが、四五%から五〇%ということでやっておるようであります。そうなりなすと、教科書の製造原価の半額を上回る金額が供給機構へ投じられているというような計算になります。その莫大な手数料に相応する業務内容があるかどうかということが一つの問題になると思います。非常にひどい言い方をすれば、中間搾取のための機構ではないか。たとえば、配送会社のかわりに日通を使い、特約店をなくしてしまって——現在現品は配送会社から小売店へ行っておるわけであります。特約店には現品が来ないわけであります。供給の事務の本格的な部面を担当しないわけであります。特約店をなくするわけにはいかないかというような問題も出て参ります。何しろそういう機構でありまして、この機構の運営のいかんによっては、二十八億何がしの金が、子供のために急きて使われるか、全く死に金になってしまうかという、教科書一つの部面を形づくる重大な問題になってくるのであります。現状はややその運営について改善の趣きがあるように私は承知しておりますが、昔は経営方針なり運営が非常にずさんな非民主的なものであったというようなことを認めざるを得ないのであります。  それと、もう一つの問題は、配送会社、それから特約機構というものが、それに相応する業務内容が不明確なために、金融機関化するという一つの傾向を持っております。これはまた別の弊害を招きます。出版社は大体自己資本が非常に少いのでありまして、銀行融資にたよっておるけれども、近ごろの本屋は一ぱいありまして、来年つぶれるか再来年つぶれるかわからないような状態でありますから、銀行の方も気やすく金を貸さない。そこで、金融状態がうまくいかないので、特約ないしは配送会社を金融機関化するという傾向が現われております。これは前金という形で金を借りておるようであります。金融機関化するのではありますけれども、いわば高利貸し化であります。補給利子というのをとっておりますけれども、これは銀行利子よりも絶えず高目であります。おそらく現状もそうであろうと思うのでありますが、昔は相当ひどい率がございました。こういうふうに特約店なり何なりが金融機関化するということは、特に教科書の供給部面の公正な運営を妨げると私は思います。その傾向は今日も絶無だとは言えないだろうと思います。これは関係業者が大いに自粛を要する点であろうと思います。  大体そんなところであります。
  77. 篠田弘作

    篠田委員長 学校生活協同組合教科書の供給業務を取り扱ったいきさつについて、知っているところを述べて下さい。
  78. 石井一朝

    石井証人 これはつぶさに承知しております。特約店というものが、今申し上げましたような機構で、あまり仕事をしないのに金もうけをしていたわけであります。戦争中はいわば一種の官業でありまして、この供給業者というものは一県一店でありますから、完全に独裁的な状態であります。そこで、全部が全部そうだと言うのではありませんが、学校の教員に対して扱いが残酷である。つまり、具体的に申しますと、荷物を梱包のまま学校にぽんと投げ込んで、先生一つこれを配本して下さい、先生一つ代金を集めて下さい、こういう調子であります。そうして、先生に苦労させておいて——私も記憶があります。本屋の店までリヤカーを引いて小使いと一緒に取りに行った。そうして子供に売ってやって、代金を集めてやって、ときには足りなくなったりすることもあります。そのときには自腹を切って払って、そうして本屋に届けて、小売店は一割二分の手数料をちゃんととっておったわけです。ですから、先生にも少しはお茶代くらいくれてもよさそうなものでありますが、それは出さないで、運動会に鉛筆を寄付するくらいであります。そういう状態であるところに持ってきて、さらにこういう現象が起きてきた。今ではありません。当時です。教科書発行会社が非常に金融難に陥って、それで前金を特約店に催促する。ところが、特約店の方も、銀行から金を借りて貸したの」では、銀行利子との差額だけしかもうからぬ。そこで、学校の子供から前金を集めた。学校の子供に、早く金を出さないと教科書が来ないからと言って、子供には利子を払わないでいいですから、子供から集めた。そうして、出版社の方からもらう補給利子はまるのままふところに入る。こういうような状態にあったのであります。そこで、私は、当時教科用図書審議会委員をしておりましたので、この委員会の中でその問題を出しまして、この委員会には特約業者の代表宇都宮さんとおっしゃる方でございましたが出ておりまして、私どももしょっちゅうけんかばかりしておったのでありますが、そういうことを申し立てて、御善処を要望したのです。直して下さい、こういう供給の状態を改めて下さいということを申し上げました。それは改めますとお約束はして下さいましたが、なかなか改らない。各県からそういう知らせが来る。そこで、審議会で議題として出して、これは教員の手で供給ができるようにしたら業者の刺激になるのではないか、学校の教員にしても人を雇ってやればそのくらいのことはできぬことはないというふうな意味から、審議会へこの案を出しました。当時占領軍がおりまして、担当官はハ一クレスと申しました。これがなかなか承知しなかったのであります。業者の方もいろいろ運動なさったようで、なかなか承知しなかったのでありますが、私はその実情をしさいに述べて、——当時はお米の登録制もあった。米にだって買う店を指定する制度があるじゃないか、教科書子供の主食みたいなものだから指定制にしろということを強調いたしましたところ、それではわかったが、一つうなずけない点がある、——何だと聞くと、利益金の処分はどうするのだ、こういう質問であった。学校の教員はそういうことをやってもうけた金をどうするのだ、こういうふうなお話でございました。そこで、利益金は、雨が降ったときにかさのない子供たちもおる、学校は貧乏でラジオのセットのないところもある、そういうものに投ずるというふうに、私はそうやるつもりで申し上げたのであります。そうしたところが、それならよかろうというので、採択カードというのが当時ございました。その末尾に取次店を指定する欄をつけて、そうして好みの自分の気に入った取次店を指定してもよろしい、こういうふうに制度がなったわけであります。そういう採択カードが配られたわけであります。そこで、そういう問題のあった県、特に私の県、愛媛県などの問題のあった県などが、教科書の供給を民主化するというふうな意味から、業者のそういう不当な扱いに刺激を与えるという意味から、生協——学校生活協同組合をその指定欄に書いて始めたのが、生協が教科書を取り扱うに至りましたことの起りでございます。
  79. 篠田弘作

    篠田委員長 公正取引委員会は学生協の教科書特約供給は教科書の採択と密接な関係があると警告しておるけれども、証人の所見を述べて下さい。
  80. 石井一朝

    石井証人 これも厳密に申し上げるには非常にむずかしい問題でありますが、公正取引委員会に入っておりました各種の資料を、当時は拝見させられたのでありますが、拝見させられましたときには、そういう見解が成り立つということを認めざるを得なかったわけであります。必ずしも採択と無関係であると言い切るだけの材料がないという状態でございました。これは、当初のつもりで運営をされておりますと大過なかったのでありますが、だんだん仕事をしておりますと、いろいろ欲目も生じまして、そういう結果になってきたのであろうと思いますが、公正取引委員会で見せられた資料によりましても、はなはだしく採択をひずませるというふうな状態ではなかった。しかし、完全に採択と関係がないとは言えない、そういうふうな状態でありました。
  81. 篠田弘作

    篠田委員長 先ほど証人は、学校生活協同組合教科書を扱って、その利益は児童の福祉あるいは設備のために使うつもりでやった、こういうふうに言われましたが、そのつもりでやったというのが非常にデリケートだと思うのだが、果してそのつもり通りに行ったかどうか、その点について。
  82. 石井一朝

    石井証人 私は生協の皆さん方にも機会あるごとにそういうことをお勧めいたしました。けれども、私は生協の役員でもないし、何でもありませんで、私の申し上げることが決定的に採用されるかどうかは当時でも疑問であったのでありますが、聞くところによりますと、愛媛県の生協は利潤を投じて無料宿泊所を子供たちのために作った。これは非常にいいことである。その他には、そういう例を聞きませんのみか、こういう状態がありました。歩戻しということをやった。これは非常に端的でよろしいのですが、歩戻しは公正取引違反なんです。生協で扱ったら、生協がもうければ教科書の値段が安くなるわけで、学校へ歩戻しする、そういうことをやった県がございます。これは公正取引違反である。小売価格を変動するということはいけないことなんです。他の業者が競争し得ざる手段で競争するということが不公正競争なんだから、やめた方がよろしいということを申したことがございます。しかも、ほんとうにこれを還付するなら教科書の代金を払った子供に返さなければならぬ。そこで、厳密に出ているかどうかということについては疑問もあるので、そういうことも勧めたことがございます。おそらく今日ではやめておるのではないか。その利益金の処分については私は詳細を知ることができません。今日従ってそのもうけた金が当初目的といたしましたような教育的な運動なり内容なりを持った事柄に使われているかどうかについては私はここで申し上げることができません。愛媛県の例以外には聞いたことがないのです。
  83. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、教科書編集についてでありますが、教科書発行会社における編集者の実態について。
  84. 石井一朝

    石井証人 編集という状態につきましては、申し上げたいことがあります。これは、すでにこういう教科書が出てきているということ、先ほど申し上げましたこれはどういうことを語っているかということになりますと、出版に責任の負える編集陣がないということです。編集機構が確立をしていないということ、編集部はございましても、それは不確定な状態ではないかと思われるわけであります。たとえば、文芸春秋の編集長はだれだろうと言えば池島さんだ、週刊朝日は扇谷さんだとだれでも知っております。しかし、教科書会社の編集長はと言えは、首をかしげてだれも知っている者がない。だから、編集部というものが軽視せられておる、そういった感情が一般にあるのではないか。これは原稿を外注するという習慣から発生する。外に原稿を依頼する、何々先生、ネーム・バリューのある、ポスター・バリューのある先生に頼めば売れるぞという、外へ原稿を依頼する状態でありますから、各出版社編集機構は十全な形でできない。そこでこれは教科書編集の上に如実に現われてくるという結果になるのです。たとえば、各教科との連絡がとれているかという検定基準がございます。そのことは十分重視しなければなりません。しかし、原稿を依頼された一人の著者は、自分で各教科連絡がとれているかどうかわかりっこない。そこで、出版社編集部に属する人々はそういう仕事を担当すべきであります。たとえば、理科の教科書に使われている用語が、六年生同士で一方にはむずかしくて一方にはやさしいというような現象はないか、用語は統一されているか、用語表現が的確であるか、それから、国語の教科書に科学教材があるならば、理科の編集委員が、その教材に科学的な誤まりはないかどうか、そういうことを調べる。教科書出版なんでありますから、誤まりはないかどうか、その編集には一番金をかけて、機構も確立しなければ、よい教科書ができるわけがないのでありますから、その点、現在の出版社の機構は、私の存じている限りでは、それはいろいろ程度の違いはありますけれども、十全なものだとは思えない。同時に、かけている経費も伺っておりますと少いようです。原価の構成要素の中で編集費が少な過ぎる。二%ぐらいのようであります。これではりっぱな教科書ができるわけはないのであります。ほんとうにりっぱな教科書を作ろうという意図が出版会社にあるなら、編集費にうんと金をかけて、編集陣を確立して、そしてそこへ研究機関を設置して、現場の教職員諸君からたくさんの意見を聞いて、資料をもらって十全な研究体制を確立する必要がある。今のままですと、教科書編集についていろいろ責任的な行為ができる状態ではなかろうと思います。安倍能成先生編集、だれそれ先生編集というので、非常に御高名な方ばかりで、要はキャッチフレイズみたようなもので、非常に先生方を商品化した扱いが出る。そういう売り物にしようというふうな傾向が教科書の上に現われてくる。これは教科書の質を向上させる方策とは言えないわけであります。この点、出版社皆さん方に非常に深い自省を求めたいというふうな気持を持っておるわけであります。  それから、もう一つここで申し上げたいことは、この編集の機構の中にほんとうに現場で教壇に立っておる教職員の意向というものが反映する仕組みになっていない。先生はいつも売り手なのであります。宣伝の対象なのであって、いい教科書を作るためのパートナーとは見られていないということです。これは非常にいけない。現場の教職員の、実際教壇に立って授業をしている、教科書を使って教えている教職員の意向というものは反映しなければならぬ。今は大学の教授だとか、えらい先生方が、書斎の中かどこか知らないけれども、何か総合雑誌に自分のエッセーを書かれるぐらいのつもりで書いておられる教科書がある。これまで、あの先生なら大丈夫だ、この先生はどうだということで現場の教員が使っておる。こういうものであってはならない。日教組の講師団の中にも多数教科書の著作をいたしておるようでありますけれども、こういう方々は編集についてはアシスタントであればいいのであって、教科書を作る者は、実際教育活動をやっておる教員の中からそういう力が盛り上ってこなければならない。こういう点については日教組などもしかく努力をしなければならないじゃないかと思うのであります。  以上のような状態であります。
  85. 篠田弘作

    篠田委員長 編集と採択の分離されておらない実例がありますか。もしあったら、その実例を具体的に述べて下さい。
  86. 石井一朝

    石井証人 先ほどお話が出ました地方版にはややその気配がある程度でありますが、しかし、これは編集と販売と関係ないとは言い切れないわけであります。本を書いた、著者になった人人は、やはり何としても自分の本は多数採択されることを希望したい。従って、あらゆる機会にその採択を慫慂するという現象は起きてきます。部数が多ければ印税もふえるわけでありますから売れた方がいい。全然関係ないというふうなことは言われない。それが公正の域を逸脱しない程度であるならば、認められるであろうと私は思うのであります。ただいまの御質問によりますと、関係があるかないかということでありますから、それは関係がないとは言えないと申し上げるよりほかにないのであります。
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、教科書の発行についてでありますが、教科書を発行しておる会社が大小九十六社といわれておるが、大小乱立に至った理由はどこにあると思われるか。
  88. 石井一朝

    石井証人 現在教科書会社は九十幾つございます。日本という狭い状態から考えて、数が多過きるという見解が成り立つのであります。どうしてそういうふうになったんだ、これはいろいろな要素があるだろうと思います。文部省検定がもう少し厳密であったら、あんなに会社がふえないであろう、検定がルーズだから、出せば必ず多少修正せられましても通る、——検定がルーズということも一因だと思います。それから、教科書はもうかるというふうに思っているということも一つの原因じゃないか。教科書はやればもうかるんだというふうな考え方から安直におやりになる。出版という企業は非常に簡単なもので、電話一本でできるとも言われるくらいのものですから、思いついてひょいとおやりになるという現象が起きてくる。聞くところによりますと、発行会社に何か問い合せしようと思って電話をかけたし、場所が次々に移転していて、事務所はわからぬという会社もあったそうであります。そういうふうな現象も起きてくると思うのであります。  それから、もう一つ、これはさだかではありませんが、ほぼ確実だと思いますが、こういうことを聞いております。雑誌を出すと言うと銀行は金を貸してくれないが、教科書を出すと言えば金を貸してくれるということで、金融出版的な傾向が一部にある。そういうわけで、われもわれもと教科書編集を思いつくというようなところから、この教科書発行会社の数がふえてくるのではないかと私は考えます。
  89. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、教科書の価格の問題でありますが、文部省の定めておる価格基準は妥当と認められるかどうか。
  90. 石井一朝

    石井証人 文部省現行の定価の認可基準は、最高価格制度と申しまして、ページ当りの最高単価を押えてあるのであります。これは、私が教科用図書審議会委員であったときに、諮問に応じて建議をいたしました。それに基いて作りました。従って一半の責任があるわけでありますが、これは合理的かつ科学的なものではないのです。作るときからそうであったわけであります。当時、文部省は、ここにございますが、しろうとが見たのではとてもわからぬような非常に精細な教科用図書の定価算出方式というものを作っておりまして、これを見ますと実にこまかいのであります。印刷用紙のことから始まって、組み版、——これはアメリカ人が作ったのでありますが、輪伝機が一分間に何回転するかというところまではかって書き上げた原価計算の方式であります。これは後に至って矛盾が生じたのです。紙の統制がはずれたことによって、ここへ書き加える原価を構成する要素としての紙の値段が押えられなくなった。それは、買手、売手でありますから、統制がはずれますと、安い紙を買う人もあるし高い紙を買う人もある。それを一律にこうだといって原価計算の中にぶち込んでしまうわけにもいかない。そういう矛盾が発生した。そこで、文部省は、統制は廃止になったのではなくて停止になったのだというので、勧告価格というものを設けてやってみたのでありますが、勧告価格なる制度を作りましても、この原価計算の様式の中に加えられる用紙の代価は勧告価格まではいいということにしたのですが、そうしますと、たとえば勧告価格がポンド当り五十円だとしますと、四十五円で当時買うことも可能でありまして、四十五円で買ったものをポンド当り五十円ということで原価計算方式の中に書き込んで参りますと、ボンドについて五円もうかる。たとえば一千万ボンドの紙を使うとしますと、坐して五千万円もうかる仕組みになる。この原価計算方式にこういう矛盾を生ずるというので、現行の最高価格制度をやったのでありますが、それは、当時の教科書の価格をずっと調べまして、これの平均値を出して、そうしてページ当り単価を出すのですが、頭の上に出る教科書は何冊あるかを調べまして、大体それより上に出るものはない——たしか学校図書の教科書が一種類か何か最高価格より上に出るものがありました。それで、まあいいだろうということできめたわけですから、教科書がどういう手続で作られ、印刷費が幾らで編集費が幾ら、特約のマージンが幾らでというような厳密な原価計算はやっていないわけであります。従って、これは合理的ではありません。これは非常に技術的な困難がありますが、もう少し合理的にする必要がある。それを、原価を構成している諸要素を抜き出して明らかにすれば、現在教科書が高いの安いのと言って大へん問題になっているようでありますけれども、そういう点もすべての国民が納得できるような形で解決できるんじゃないか。現在は原価を構成している諸要素は各出版社で秘密と申してもいいような状態でありまして、文部省調査する権限がありますから、考課表を出さしてみればわかるのでありますが、しかし、どういう状態になっておるかはなかなかっかみにくい。が、私の聞いたところでは、大体編集費は二%で、直接生産費、つまり紙代とか印刷代というものは四五%から四七、八%くらい、印税が五%から六%、特約、小売のマージンが一六%、配送が七%、返本が五%くらいある、それから宣伝費、見本本を作ったりする費用が七%から一〇%、残り一〇%くらいが営業費になっておるというのが実情のようであります。この原価を構成しているところ諸要素は、このままながめてみましても、数多くの問題があるように思うのであります。この問題を抜き出して大勢の人の目の前に見せることによって、——教科書業者は高くないと言っているし、文部大臣は高いと言っておるようでありますが、どっちが正しいかということの判定ができるだろう、こういうふうに考えておるのであります。
  91. 篠田弘作

    篠田委員長 現行教科書制度に対する証人の所見を述べて下さい。
  92. 石井一朝

    石井証人 非常に大単元的な御質問でございまして、なお私自身としても考究をしなければならない点がございますので、断定的なことは申し上げられませんが、私は、現行制度は数々の欠点を持っている、その欠点を是正する必要がある、しかもそれは目下の急務であるというふうに考えます。  その是正の方法は、政令、省令等の改正で事足りる向きもございますが、大きくは国会教科書の独立立法をいたしまして法制の上で整備する必要があると考えます。現在の教科書に関する法律諸規定はてんでんばらばらでありまして、学校教育法の中にあるかと思えば、教育委員会法の中にちょっぴりとある、文部省設置法の中にちょっびりとあるというような工合で、非常にばらばらな状態であります。教科書に関する臨時措置法は、あれは臨時の措置法で、そのつもりであったものが今日まであるわけであります。これは絶対に独立単行法として法制的な整備をする必要がある、その段階に来ておる、このままでおきますと日本教科書行政はいたずらなる混乱に陥るというふうに思います。  その節、文部大臣検定権があることが是か否か、いろいろな問題が出てくるだろうと思うのであります。それで、私はこういうことを考えております。最近民編国管という言葉がありますが、一部の人がこれを提唱しておる。行政をもって教科書行政の改正であるというふうに称しております。そしてまた、その民編国管論に対して、主として革新派と言われる方々の中で絶対反対という運動がございます。私はこれを見て非常に珍妙な風景だと思っておる。民編国管というのは新制度であるかのごとくお思いになって、提唱なさる人もなさる人なら、絶対反対と言う人も言う人だ。なぜなら、今日の制度が民編国管なんです。今日ただいまの制度が、民間で編集して、国家が管理する。その国家の管理の度合いについていろいろ意見があるのでございますが、現行の法規は、文部大臣検定権があること、文部大臣に著作権があること、文部大臣に発行者を監督する権限があること、その発行指示を与えること、場合によっては発行指示を取り消すこともできる、それから文部大臣に定価を認可する権限があること、文部大臣に供給計画についての拒否権があることというのは、出版社の方から供給計画書を出します。たとえば、生協を使って供給したいというと、文部大臣は、これを不穏当だと思ったら、変更を命ずることができます。  そういたしますと、教科書行政の各分節にわたってこのくらい強力かつ広範に権限が与えられるという時代は、固定時代を除いてはないと思う。こういう状態であります。しかも、これは、今日御出席高津委員なとも御承知のように、当時あの法律は全会一致であったと記憶しております。何人も反対することなくこれが通過したわけでありますから、国会が良識と善意ある国民大多数の負託にこたえて文部省に託し、文部大臣に託した一つの権限であり、同時に義務であって、このことは今日といえども私は正しいと思うう。こういう状態を見るにつけて、義務教育の公正な運営ということを考える立場からは、今日の程度の管理権を文部大臣が持っておることは、今までの国会が与えてくれたように今後の国会においても与えられる方が日本教育の今後のためによいのではないかというふうに私は考えております。この間朝日新聞の報道で見ましたところ、松村文部大臣は、整理、値下げが主眼で、内容に触れたくない、制度の改正をやりたいということの談話を発表しております。そういうことは厳密に言えば改正でも何でもないのです。値下げをしたいなら、大臣が合理的な根拠をお持ちになってどんどん値下げをすればいいのです。その権限が大臣にあるのです。教科書の数が多いから整理をしたいというなら、制度を改正する必要はない。検定教科書に有効期限をつけるとか、新たに出てくる検定教科書に対しては当分受け付けないとか、いろいろな方法によって現行の法規で文部大臣はその整理をすることが可能なんでございます。ですから、これは新制度でも改正でも何でもない。合理的、科学的な根拠がなくてはまずいですが、あるなら、そう思われたら勇断をもって堂々とおやりになればよろしいわけであります。私はそういうふうに考えております。  それから、発行会社などの状態につきましては、これは発行業者にもいろいろ意見があるようでありますけれども、何としても国家全体お立場から、こういう不要不急に属するような投機的出版はおやめになった方がいいのではないかと私は思う。企業整理などということを申しますと言葉は非常にきついが、現在あるあの多数の会社は何らかの穏当の方法で整理する必要がある。それはこういう理由によって申し上げます。先年広島図書という会社が破産いたしました。教科書が行き渡らなくなりまして発行不能に陥った。学校の子供が大へん迷惑をいたしました。毎年発行不能に陥る会社がございます。これは当然なんであります。非常に投機的な出版なんで、山かけ出版なんでありますから、もし採択部数が少ければ、その会社は四苦八苦しなければならないし、場合によっては発行不能に陥らなければならない。その点については教科書も映画雑誌と何ら選ぶところがない。そういう過度の投機性を持たされているわけです。そこで、発行不能に陥って倒産した会社は例年二つ三つであるという数で安心するわけにはいかない。大手筋の会社といえども、採択部数ががくんときたら、これは明年はどうなるかわからない。教科書というような公的な性格を持ったもの、子供があれほど大事にしておるものを、かくのごとき不安な状態に放置しているということは観迎すべきでない。だれでもがいつでも教科書を作れということは自由でありましょう。自由は尊いでありましょうけれども、その自由を行使することによって、子供たちが使う教科書全体がそういう不安定な状態にさらされているということであれば、ほかにもうかる仕事がないわけではないのですから、その自由の行使を少し遠慮するというふうなことが、国民の輿論として考えられてもいいんじゃないかというふうに思います。これは法的な措置を加えるということは非常にむずかしいかもしれませんけれども、行政上の事務手続でそういうことが可能だと思うのです。たとえば出版の資格を厳正に審査するというふうなことがあってもよいだろうと思います。出版社はああいう世間を騒がすようなトラブルを起した場合には発行を停止させる、二度と教科書を発行させないようにするというふうな基準、それに類するものが教科書というものの性格から考えて一つくらいあってもいいと思います。そういう形で考えますと、現在多数存在する教科書発行会社の穏当な形でい整理というものも考えられる  総じて、これは、国会方面などの御努力によりまして、日本教科書行政に一貫性を持たせていただく、公正な運営ができるようにしていただきたいというふうな考えを現在持っているわけであります。
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 委員長よりり尋問は一応終了いたしました。  この際お諮りいたします。理事田中彰治君が委員辞任されましたので、その補欠選任を行わなければなりません。これにつきましては、先例に従い委員長において指名いたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なければ、山村治郎君を理事指名いたします。  午前の会議はこの程度にいたしまして、午後は二時より再開いたします。  なお、直ちに委員長室において理事会を開きますから、理事諸君委員長室にお集まり下さい。  また、午後は第十三委員室に変更いたしました。  暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  95. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際御報告申し上げます。先刻の理事会におきまして協議の結果、本委員会の運営につきましては、本委員会の権威のために委員諸君の格別の良識ある行動と御発言をなされるよう申し合せいたしましたので、この点御了承願います。  これより委員諸君発言を許します。理事会の申し合せ通り、一人十五分程度にお願いいたしたいと思います。福永一臣君。
  96. 福永一臣

    ○福永(一)委員 私は午前中証人証言を聞いたのでありますが、教科書の中に、いわゆる偏向的思想の色彩の濃い、しかも明らかに左翼的な思想をがんぜない小中学生の頭の中に植えつけんとする意図があまりにも歴然たるものがあって、全く驚きのほかはないのであります。一方的にソ連、中共をほめちぎって礼賛して、そうして当然それに対して説明をしなければならぬいろいろな問題についてはこれを伏せている、こういうような極端な偏向的な編集をしている教科書が現にあるということは、まことに驚かざるを得ない。しかもその検定の責任にあるところの文部省は一体何をしているのか。私は文部省の中にこういう出版業者あるいは編集者あるいは執筆者と志を同じくするような役人がいるのではないかというように考えざるを得ないのでありますが、証人は、今までの経験に照らして、文部省の中にこういう係の人がおるかどうかということをどう考えられるか、ちょっと御説明を願いたい。
  97. 石井一朝

    石井証人 ただいまの御質問は、文部省の官僚の中に私が指摘いたしましたような図書の編集と気脈を通ずる者がいるのではないか、こういう御質問でございました。私はこの点についてはさような事実はあるまいと存じます。にもかかわらず、なぜかような書物が出るかということでありますが、これは以下申し上げますことをお聞き取り願えばわかるのであります。  現在、法は文部大臣検定権を与えてありますけれども、実際検定事務に当っておるのは千二百名に及ぶ調査員、これが評価、採点をいたしまして十六名でもって構成される検定委員会に付議いたしまして、でき上ったものを文部省の官僚がただめくら判を押すというだけのことであります。文部省には実際何の実務も存在しない。従って、この点については文部省は実務については無関係であるという意味において無罪でありましょうけれども、私が先ほど文部省の責任を追及いたしましたのは、検定規則その他の省令を改正することによってかような事態が避けられるという可能性を与えられておりながら、それをサボっていたという点であります。  これはもう少し詳しく申し上げますとこういうことになります。終戦直後、昭和二十三年にこの検定制度ができましたときには、国会文部大臣検定権そのほか広範かつ強力な権限を付与いたしましたが、当時は、皆様も御承知のように、文部大臣というところを読みかえねばならない実情にあった。それはCIEというところであります。文部大臣検定する、文部大臣が何々すると書いてあるところは、ほとんどがCIEでもって行われたという事実があります。これは文部省昭和二十五年三月に作って出しました検定手続の解説に詳細載っております。これによりますと、日本調査員調査いたしました原稿は英文に直されまして、日本調査員のところをパスしたものだけが民間情報教育部に送られたわけであります。ここの責任者はハークレスと申しましたが、この占領軍当局で厳重な検定を受けたわけであります。文部大臣がいたすべきところをすべて占領軍当局がやっておった。文部大臣検定権があると規定はされていましたけれども、文部大臣は実はメッセンジャー・ボーイと申しますか、そういうふうなただ送り届けをする程度の事務でありました。ですから、講和発効とともにいち早くこの権限は文部省の中に移しまして、十分責任の持てる公正な検定事務を開始すべきものであったと思うのでありますが、どういうわけでありますか、占領政策、占領時代の遺風が今日までそのまま踏襲されておるというのが実情でございます。  従って、文部省は、この点につきましては、制度上に難点があるとは申せ、全然ノー・タッチというふうにひとしい状態であった。従って、ただいま御質問のような御懸念はないであろうと私は思います。
  98. 福永一臣

    ○福永(一)委員 まず、私も、文部省の役人の中にそういう思想の人がないということは大体あなたの証言で了解いたしますが、しかし、全く文部省はノー・タッチ——しかも、こういう内容のものは、国民はだれが聞いても志ある者はみんな顔をしかめます。こういうものが堂々と文部省の玄関から出てくること自体が、私は文部省の非常に重大なる責任だと思います。そうして、こういうずさんきわまる検定の方法、こういうことがどこから来ているか、なぜ文部省はそういうふうにサポタージュするのか、なまけるのかということを、あなたがお気づきの点があるならばお教えいただきたい。
  99. 石井一朝

    石井証人 これは、過日文部省の方とも話したのでありますが、問題は現在の調査員の仕組みにあると考えます。私は元調査員をしておられた方にも会ってお話を伺いましたが、先刻も申し上げましたが、何しろ期間が限定されている、それから自分はみずから本務とすべき職業を持っている、しかもその千二百名に及ぶ人が大体において事務上の手続の関係から東京近郊で求められる、これが毎年々々入れかわってその事務に従うわけで、そこで、これは調査員の方々には大へん失礼な申し分ではありますけれども、実は、この不手ぎわを責めるということは、ある人々にとっては難きを責めるというふうな状態になるのではないかと思うのであります。それから、もう一つは、千二百名もの者を東京近在でもって毎年交代させるということ、しかも、その中に、教科書の著作に従事している者を省くとか、一ぺんなった者は原則として二度はやってもらわないとかいう附帯的条件がありますために、勢い玉石混交にならざるを得ない。まあ調査員の方々にははなはだ酷な言葉になるから申し上げにくいのでありますが、つまり調査員の質的低下、そういう問題と、労働過重と申しますか、時間的に十分処理し切れないというような状態を引き起す。それで、ある調査員のごときは、私は採点はもう勘でやっておる、こういうことを言っておられる方もある。ここに私は問題があると思う。そういう調査員の仕組みの中にその原因がひそんでいる。実は、こういうふうな著書、教科書を見ましても、それがいけないのだと気がつくいとまがない、そういう方もいらっしゃるだろうと思う。教科書に書いてある内容にすっかり賛成して、自分は合格させたという方もおるかもしれません。同時に、そうではなくて、ただ漫然と原稿を見て、そのまま見過ごしたという方もあるいはいらっしゃるのではないか。要するに調査員制度に問題があるのであります。
  100. 篠田弘作

    篠田委員長 石井君に申し上げますが、各委員質問は十五分に限られておりますから、御答弁もなるべく簡略に願います。
  101. 石井一朝

    石井証人 それでは以上で終ります。
  102. 福永一臣

    ○福永(一)委員 それでは、制度上の欠陥であって、千何百名もおるような調査員の中には、こういうけしからぬ内容を故意に見のがすような、思想的に偏向している人はいないのですか、どうでしょう。
  103. 石井一朝

    石井証人 私は、その詳細を具体的に調査しておりませんので、断定的なことを申し上げられませんが、絶無でもないし、つまりそういう方々がいらっしゃるということを完全に否定する材料は持っていないということであります。
  104. 福永一臣

    ○福永(一)委員 それでは次に移ります。日教組から指令されて全国の教職員に流されたという午前中のあなたの教科書採択の基準なるもの、これは、あなたのおっしゃるところによると、いわゆる日教組講師団がこれに裏づけをして、あるいは筆を加えるか、書いたか、そういうものを流した、こう言われるのでありますが、この日教組講師団、いわゆるメンバーはどういう人がおるのですか。またその講師団の性格はいかなるものでありますか。そうしてまた、これと日教組との関係は具体的にどういうふうになっておりますか。もう一回繰り返しますと、この日教組講師団のメンバー、性格、それからついでに思想的傾向、それと日教組との関係、そうして、その講師団のメンバーの人がみずから執筆をして教科書に集録されている具体的事実があるならば、それも一つお示しを願いたいのであります。
  105. 石井一朝

    石井証人 日教組の講師団と申しますのは、日教組が日光で最初にいたしました教育研究大会、その後例年続けて参っておりますところの教育研究集会の助言者であり指導者である学者諸君のグループを言うものと思います。これは、ただいま申し上げましたように、日教組教育研究集会の持ち方、その運営の仕方その他について、日教組中央執行部に助言と指導を与えるという任務を持たされているものと思います。このメンバーの中には、教育学者、それからその他各学界にわたる各分野の学者諸君がおりますが、その構成メンバーは、これは日教組の中でもよく問題になりましたが、私見によれば、やや一方的に偏した傾向があるものと認めざるを得ないのであります。これは、私が書きました書物の中でもそういうことを申しております。ただいまここに名簿は持ちませんけれども、端的に申しますと、マルキシズムに立脚して物事を考える方が相当多数おられるものと確認をいたします。以上でございます。
  106. 福永一臣

    ○福永(一)委員 それと日教組との関係……。
  107. 石井一朝

    石井証人 日教組との関係は以上申しましたようなことですが、教科書の著作者になっているかということですが、私の目につきましたところ、宮原誠一さん、高橋碵一さん、周郷博さんなどが、今日持って参りました書物の中に名前が見えております。その他のことにつきましては、ただいま手元に資料がございませんが、かなり多数の方が教科書編集に従っていらっしゃるはずでございます。これは、もし精細な資料というようなお言葉でございますならば、後刻調査をいたしまして提出いたしてもよろしゅうございます。
  108. 福永一臣

    ○福永(一)委員 では、そういう資料が整いますならば、参考になりますから、一つ提出を願いたいのでございます。  次に、教科書出版社が一体どういうわけでこういう一方に片寄ったような内容編集して売り出すか、こういうことに私は非常に疑問を抱くのであります。まず、出版業者の中にそういう思想傾向の者が集まって出版業を営んでおるというのがあるのか、あるいはまた、そういう内容を盛り上げなければ日教組その他そういう方面の思想的偏向の教育をやろうという左傾的な非常に大きな団体の意向に迎合する——言いかえるならば、それたちの意を受けなければ売れない、商売のために、売るためにこういう内容をあえて出版業者が編集して中に集録するのか、この二点です。出版業者自体が思想的に左傾しているのか、あるいは商売的に仕方がないからこれを収録して迎合して売り出すのか、この二つの点を承わりたいと思います。
  109. 石井一朝

    石井証人 これらの出版社の責任者につきましては私も平素から熟知の間柄でありますが、この件につきましては具体的かつ詳細に伺っておりませんので、どういうお心持でそういうことになったのであるかは、つまびらかでございませんが、ただ漫然と著名の方であるからという程度じゃないかと思われます。いずれにいたしましても、これは直接面接をいたしまして伺ったことではございません。その辺の事情につきましては、はっきりしたことは申し上げることができません。
  110. 篠田弘作

    篠田委員長 福永君に申し上げますが、あたなたの時間が来ておりますから、簡単にお願いします。
  111. 福永一臣

    ○福永(一)委員 私はあなたの答弁に満足できませんが、日教組教科書採択の基準などを流すようでございますが、それに迎合して、それにぴちっと合うようにあらかじめ編集するという傾向はありませんか。
  112. 石井一朝

    石井証人 これは、ただいま申し上げましたように、もしそういう御質問であるなら、伺っておけばよかったのですが、出版社に伺いません。御質問の意味はよくわかりますけれども、責任のないお答えはできませんので、これは、はっきりしない、わからないとお答えするほかはありません。
  113. 福永一臣

    ○福永(一)委員 いわゆる学生協、学校化活協同組合、この目的は、午前中のあなたの証言で大体わかって、これはけっこうなもりとおもいますが、このごろのあり方についていろいろ世間で聞きます。これが日教組の政治的資金の出どころになっているのではないか、あるいはこの組合日教組の出店になっておるのじゃないか、あるいはまた、これで非常にスキャンダルが起っている話も聞いておりますが、あなたの知っておられる範囲において、一つこれを御披露願いたい。
  114. 石井一朝

    石井証人 生協設立の当初の目的は午前中申し上げた通りでありますが、その後の運営につきましては、私は直接タッチしておりませんので詳細はわからないのではありますけれども、公正取引委員会あたりから警告が出ました事実、それから私が存じておる事情を総合いたして考えてみましても、全然採択と無関係であると言い切るわけにはいかない、そういう意味で、生協——現在は会社になっておるのではありますけれども、反省すべき点は多々あるということは確認をいたします。その利益金の処分につきましては愛媛県のただ一つの例を申し上げましたが、その他のことにつきましては詳細分別ではございません。ただ、聞きました話などはございますが、こういう席上でうわさ程度のことを申し上げて後刻紛糾の種になっても困ると思いますので、これ以上は申し上げ切れないと思います。
  115. 福永一臣

    ○福永(一)委員 証人は、きょうは、せっかく来ておられるりですから、遠慮なく一つわれわれの質問に答えて下さい。私がいろいろ聞いたところによると、何か生協の中で洋服地の横流しとか、児童服なんか横流しして着服したという事実がございますが、そういう事実はございませんか。
  116. 石井一朝

    石井証人 いろいろございますことを私も聞いておりますし見たこともございますが、本委員会教科書行政に関する行政監察であります。そういう意味から、そのような証言をいたさなければならないような零囲気になった場合はともかくといたしまして、ただいまのところは、そういうことについて申し上げることははばかりたいと思います。しかもうわさ程度のことで申し上げて、紛糾するようなことがございましても困ります。
  117. 篠田弘作

    篠田委員長 福永君に申し上げますが、あなたの時間は来ています。
  118. 福永一臣

    ○福永(一)委員 何も洋服問題を追及するのじゃありません。教科書問題が中心でございますから、それをことさらに聞くわけではございませんが、私は学生協のあり方について多大の疑問を持っております。あなたも持っておられるということを私は確認いたしますが、これはあとでいろいろ質問があると思いますから、もう少しはっきり答えてもらいたい、こういうことを一言付言いたしまして、私の質問を終ります。
  119. 篠田弘作

    篠田委員長 松岡松平君。
  120. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 証人にお尋ねいたしますが、先ほど、証人は、編集に携わっておる原稿書く学者グループということを述べられましたが、それはいわゆる講師団というものですかどうか。
  121. 石井一朝

    石井証人 日教組教育研究集会の講師団については先ほど申し上げた通りでありますが、それに学者グループという名前がついておるような場合があるかもしれませんが、それは俗語でありまして、正確にはこれは講師団であったと記憶しております。   〔委員長退席、南委員長代理着席〕
  122. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうしますと、日教組にある講師団というのは、メンバーは大体どのくらいの数であるか。
  123. 石井一朝

    石井証人 手元に名簿を持って参りません。うろ覚えでございますが、二、三十名いたかに思います。
  124. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 その講師団の思想的傾向というものは大体においてどういう傾向にあるとお思いになりますか。
  125. 石井一朝

    石井証人 私は、先般もこの点については発表をしたことがございますが、日本の公教育の公正を期するための教育研究の会の助言者、指導者といたしましては、公正を欠くきらいがある、その思想が一方に偏しておると思われる方々がいることを確認いたしております。
  126. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 その一方に偏しておる思想というのは、具体的に言って共産主義、あるいは左翼的な社会主義、こういう部類に属するものでありますか、それを一つ具体的にお述べ願いたい。
  127. 石井一朝

    石井証人 正式に共産党に入党なすっておる方もいらっしゃいますから、その方々は共産主義者でありましょう。そうでない方々もいらっしゃいますが、いろいろな書きものを拝見いたしますと、底流をなしておる、学問的論説の発表の基礎になっておりますところの思想は、マルキシズムと申しましょうか、ソーシャリズムと申しましようか、そういうものを基調にしてものをお考えになる方もいらっしゃることを確認いたしております。それは、その方々がお書きになったものをもとにして私は申し上げておるのであります。
  128. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうしますと、その一方に偏しているというその偏しているのは、いわゆるマルクス・レーニニズムとか社会主義とかいうものであるという趣旨でございますね。
  129. 石井一朝

    石井証人 そういうわけでございます。
  130. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それではお伺いをいたしますが、こういう講師団を好んで各出版社が執筆をさせているというその出版社の社名について、御記憶になっている出版社をここで述べていただきたい。たとえば実教出版株式会社、これなんか、あなたがさっき非常に偏向もはなはだしいと述べられた出版社であります。それから中教出版株式会社その他、あなたの方に御記憶になっている出版社がありましたら、ここでお述べ願いたい。
  131. 石井一朝

    石井証人 先刻も申し上げましたように、教科書の種類が三千点ばかりございます。目下調査をしております。そのようなこともあわせて調査をしたいと思っておるのでございます。ただいまのところ、本日持って参じましたそれらのものに出ている程度でございます。
  132. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうしますと、この委員会に、あなたが見て一方に偏しておると思われる原稿を採択して検定を受けた教科書を出している出版社の社名、その内容についてさらに詳しく御提出願えますか。
  133. 石井一朝

    石井証人 多忙ではございますが、私の研究題目にもなっておりますので、調査をいたしたいと存じております。御必要があるなら、後刻また御提示申し上げます。
  134. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 まことに御苦労だと思いますが、日本教育のために、ぜひともそのことはなし遂げていただきたいことを、本員から切に希望します。  角度を変えましてお伺いいたしたいのでありますが、この教科書の販売につきまして、先ごろからいろいろな出版社証人を本委員会で取り調べております。先般私が質問いたしまして答えを得ました講談社の業務部長の証言によりますと、教科書の販売について最もまじめだと思われる講談社ですら一三%の間接費すなわち宣伝費を払っているとおっしゃっている。証人のお取り調べになったところによると、一般的にどのくらい間接費、宣伝費を払っておるか、一つお伺いしたいのであります。
  135. 石井一朝

    石井証人 大体平均をいたしますと一割見当ではないかというふうに考えておりますが、これはそれぞれの社によりまして相違がございまして、しかもこの経費の内訳は非常にわかりにくいことでございますので、十分確かなことは申し上げられませんが、私が会いました業者の諸君の意見を総合しますと、大よそ一割見当ではないかというふうなことが言えると思います。
  136. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 私が調べました講談社の業務部長の証言は一・二%で、これは少い方だと言うておりました。証人の言う一〇%ということになりますと、もっと少くなりますが、しかしながら、一般の商品の販売から見まして、間接費に一〇%以上からの金をかけるというのは異例番外に属する莫大な費用であります。この莫大もない、百億かりに売ったとすれば、ともかく十億からの宣伝費を払っているということになりますと、それだけの金が一体どういうふうにして人々のふところに入り込んだか、これが私どものきわめたいところなんです。先般も講談社の業務部長に伺いますと、あるいは弁当を供給するとか、いろいろな方法をおっしゃっておりますが、証人か関知しておられるところによって、各出版社が、展示会その他の場合に現地に出向きまして採択に努力いたします際に用いる手段、方法——温泉に勧誘するとか、あるいは物品を提供するとか、あるいは料理屋へ招致するとか、そういうような方法について、具体的に知っておられる点をここでつまびらかにしていただきたいのであります。
  137. 石井一朝

    石井証人 この宣伝費の内訳でありますが、午前中も申しましたように、見本本を作って出すというような行為がございます。これは本来ならば見本本は作ってはならないのであります。見本本を使用するのは展示会に展示する冊数があれば足りるわけであります。その他のものは作らないことが原則なのでございますが、この見本本を相当多量に作りまして献本をいたします。これは無料であります。同時に、学習書ですか、教師用書に該当ずるようなものですね、手引書のようなもの、こういうようなものを作って各学校に出すというような関係から、この一割に当る金額の相当多量のものが、本来ならば必要でない経費に食われて散ずるということが言えると思います。それから、いろいろ供応であるとか、ごちそうを出すとか、そういうようなことにつきましては、先刻も申し上げましたように、業者の協会の示務局長の方もそういうことは事実だと申し上げておるわけでありますし、今まで出ました各証人も、そのことが絶無ではない、数多くの例があるということを証言しておるわけでありますから、私はもう重ねて申し上げる必要もないと思う。とにかく、そういう形態の金銭の費途が行われることは確実であるようであります。
  138. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そういたしますと、この販売に厳正を期するならば、こういう間接費を節約することができる、それが直ちに結局教科書の販売価格に影響して値下げが可能だ、——どのくらい可能だとお考えになりますか。
  139. 石井一朝

    石井証人 これは、先刻も申し上げましたように、原価を構成しております諸要素を慎重に検討いたしまして、合理的かつ科学的な数字をはじき出さないと、ここで卒然と申し上げてもまことにまずい結果になると思うのでありますが、私の考えによりますと、問題は、この一割に当っている宣伝費を何とかできないか、それから、もう一つは、供給機関に投ぜられるところの多額のマージン、これに再検討を加える、——大体午前中にも申し上げましたが、編集費が二%で、直接生産費が四五%から四八%ということにいたしますと、こういう一冊の本ができて、われわれの目にとまるまでには、これの定価の半分あれば足りるわけであります。あとの半分は、教科書の周辺で働いているのが、うごめいているのが、そういう人々が食っている勘定になるわけであります。従って、これに合理的かつ科学的な検討を加えるというようなことによって、どの程度値引きができるかということが判断されると思います。たとえば、それを直ちに一割とか二割とかいうことは申し上げられませんが、ただしこういう歴史的事実だけは申し上げられる。それは、最高価格制度をしきましたその最初の年には約二割定価が下りました。最高価格をきめるときに、経営者当りの単価をきめて、その下で競争しろ、こういうような価格制にしましたところが、大体二割下ったという記録があるように思います。従って、値下げの可能性はなくはない。それが幾らになるかは相当慎重な調査を必要とすると思うのであります。以上であります。
  140. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 私に与えられた時間が十五分しかないので、あまり多くを聞くとまた他の発言を妨げますので、できるだけ簡単にして終りたいと思っておりますが、あなたは、日教組におられたときに、おそらく今まで御供述の趣意を省察いたしますと、マルクス・レーニニズムを奉持するような人人とはおよそ反対の立場にあるということを私どもは感知いたしますのですが、そのためにあなたの活動が非常にはばまれたり、あるいはそういう反対の思想的立場の人から迫害を受けたりしたような事例がございますか。ありましたら、どうぞ忌憚なくお述べを願いたいのであります。
  141. 石井一朝

    石井証人 この点は、いわばわが家の世帯に属するようなできごとに関する証言でございます。多くを語るのをはばかりたいわけでありますが、過度にわたる迫害とか、そういうものは——私は別にこわくはないわけで、意に介しませんが、過度にわたる迫害とか何とか、そういうものはありません。多少のいやがらせはございます。その程度です。
  142. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それでは、最後にお尋ねいたします。あなたの教育に関する見解は、公平でなければならぬ、右であろうと左であろうと、一つの思想にへんぱに流れてはいけない、こういう御見解でありましたが、ともかく、この教科書問題はかなり日本の政治問題として重要な問題であります。あなたは適切にお考えになっているが、結論として、この教科書というものは、今のように自由競争させて種々雑多な教科書を販売していることよりか、一本にまとめて供給したら、原価も安くなり、内容も厳選されるとお考えになりますか、これだけ承わりたい。
  143. 石井一朝

    石井証人 私が午前中申し上げましたことは、義務教育が公教育であるという建前に立って、しかも子供たちがまだ思想的にも学問的にも成熟していない段階であるから、おとなの間でいかような主義主張の違いがあろうとも、それを教育の現場に持ち込んで、子供を種にした争闘にならないようにしたいという趣旨から申し上げたのであります。現場の教職員が共産主覇者であろうと社会主義者であろうと、あるいは民主党員であろうと自由党員であろうと、それは思想の自由であり、学問の自由でありまして、そういうことはとやかくは申しません。おのがじし自由にやったらよろしいと思うのでありますが、教職員が一たび教壇に立ちましたときには、その自由の原則が全面的に適用されるとは言えないわけであります。そこには公教育として持たなければならない教育の法的制限もございましょうし、社会的な制限もございましょうし、それは完全に自由であるとは言い切れない。その限度を見きわめて教育活動に従事すると同時に、その限度の中で教科書も作られてほしい、こういうふうな港え方でございます。  そこで、ただいまの御質問の、教科書を一本にして検定して配給する、——これはそのままお言葉では十分わからないのですが、昔のような、文部大臣が著作をしてそれをそのまま配給するという教科書制度、純粋な意味の国定でございますか。その点、ちょっと……。
  144. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 その点は私は考えが多少違うのです。私の考えを申し述べるわけにはいかないが、私の言うのは、一本にまとめる、——そのまとめる内容は、民主的に原稿を採択するかどうか、それは別問題で、これは民主的にきめる。昔のように文部省の役人が勝手に自分の意思で、自分の考え方できめるという一とは私は賛成しません。一つの種類で、その一つの種類をきめるまでにはあらゆる段階を経てきめるのですが、今のように、ただ標準だけきめて、そして各出版社に原稿を作らせて、これを検定している、しかもその販売は各自おのおの別個にやっている、これは費用のかかる一つの方法なんです。費用を削減して内容を厳選するには、やはり検定一つにして、それを各出版社に入札なりいろいろ安い方法で印刷させる。それを配給するには、配給機構というものを一本にすれば、一番これは安価にいく。競争させれば費用はよけいかかるのです。これは常識的な問題でありまして、そのことを今あなたにお伺いしているのであります。
  145. 石井一朝

    石井証人 これは、そのように実施している国もございます。ソ連、中国がそうでございます。これはそれなりの弊害があると思うのであります。それで、一種類にしてしまえば安くていいじゃないか、こういう御意見でありますが、それはなるほどそうではありますけれども、高いだの安いだの、種類が多いだの少いだのということは、私に言わせますと教科書の持っているところの属性であります。それは安い方がいいですが、この間の文部大臣の談話のように、ひどく重大なものとして、しいて取り上げる要素じゃないと思います。問題は内容であります。内容でありますから、一本にきめてただ一つにしましたときに起きてくる弊害を考えますときには、ソ連、中国でやっておりますような、そういう形に今日の日本がやるということには賛成いたしかねる。ただし、最近新聞紙上などをにぎわしております。教科書は種類が多ければ多いほどいいのだという、あの俗論には反対いたします。中には、大学の教授であるといわれるような方が、教科書を一人の子供ごとに一冊ぐらいに種類を多くして、そして悪書は子供の手で追放というようなことを言われているのを読んだことがありますが、そういうような状態は歓迎いたしません。従って、私は、戦前のような文部大臣が著作権を行使して一本でやってしまうという国定ではないけれども、現在のような野放し状態じゃない制度を夢見ながらお話を申し上げたわけであります。
  146. 南好雄

    ○南委員長代理 松岡君に御注惹いたしますが、持ち時間が経過いたしておりますから、簡略にお願いいたします。
  147. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 あなたのおっしゃるようにすればいいのだが、たとえば、本が数ありますと、今のようにいかがわしい本がたくさんできて、片一方の本ではレーニンを神様のごとく言い、片方は釈迦を仏様だと言う。結局子供は信ずるのですよ。そうすると、本がいろいろに分れているということは、結局国民思想が混乱する原因になりませんか。
  148. 石井一朝

    石井証人 教科書が私が午前中申し上げたような状態であることによって、教科書を通じて日本教育にある種の混迷が起きているということは認めます。これは公教育の建前を貫く立場で文部大臣が処理をすればいい、私はこう考えております。文部大臣がそれを処理いたしますことは、国会が法に託して文部大臣に与えた権限であると同時に職責なんでありますから、そういう点につきまして御懸念の向きがあるならば、文部大臣は諮問機関の点見を通ずるなり、みずからがそう考えるなりして、公正に問題を処理していけばいいのでありまして、その職責と権限が法によって現在文部大臣に付与されております。ただ、その行使が厳格でない、中正でない、そういう現状を私は指摘したのでありまして、ただいまのような御懸念は、文部大臣その他の努力によって解消できるものと思考いたします。
  149. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 これで終ります。
  150. 南好雄

    ○南委員長代理 高津正道君。
  151. 高津正道

    高津委員 石井証人お尋ねしますが、あなたは、偏向教育、それも左翼的な偏向教育ともとれる若干の実例をあげられたのでありますが、   〔南委員長代理退席、高木委員長   代理着席〕 私は、それは不完全列挙法に基くものであって、その確率はきわめて低いと思うのであります。二千編も三千編もある教科書の中から、これは左翼的だという部分を拾っていく場合には、そのくらいは出てこようかと思うのであります。農民の所得を調べる場合に、坪刈りをやるのに、どこの坪刈りをやれば農民に有利になるか、農民に不利になるか、小作に有利か大地主に有利か、そのやり方でどうにでも動くのであって、福岡県のある選挙区で世論調査をすれば革新政党がすきだという世論調査が現われる、それから農村のずっと山間部へ行けば自由党がすきでたまらぬというのが非常に多く現われるというように、場所によりますよ。そういう不完全な列挙によって推論をして結論を引き出して、古い人を喜ばせるような証言だけやられては困るのでありますが、あなたは、それでも、自分の議論はへんぱな、いわゆるサンプリング・メソッドではなしに一方的な、左へ幾らか寄ったようなところだけを自分はきょうは頼まれたのじゃあるまいが証言をしておると——片寄っていますよ、あなたの証言は。この点はどういう理由によるものであるか、その点を聞きたい。
  152. 石井一朝

    石井証人 終りのところをもっとはっきり言って下さい。頼まれたとか……。
  153. 高津正道

    高津委員 いや、その言葉は取り消しておきましよう。
  154. 石井一朝

    石井証人 私は全部の教科書を調べたとは申し上げておりません。三千点あるわけですから、容易な調査ではない、現在調査を続けておりますが、ただいまわかったところではこれこれだと申し上げたのであります。そこで、その結果は先刻申し上げた通りでありますが、ただいま高津委員のお話の中で、納得のいかないことが一つあるので申し上げます。それは、あなたの論法でいくと、殺人をした場合に、百人殺したから悪いけれども、一人ならいいじゃないかということになる。そういうことはいけないのであります。私は、たった一つの例でも、たった一冊の教科書でも、たった十冊の教科書でも、こういうことが公教育の中に現われてくるということ、こういう動きなり考えなり着想なり、そしてそれをやっている人々のあることを問題にしているのであります。これが全部の教科書にわたっているわけではないからそれはいいのではないかというふうなことでございましたら、それは公教育の建前の上から一つお考え直しを願いたい。むろん私も全部がそうだと申し上げているのではございません。
  155. 高津正道

    高津委員 これは、数が少いからそれを見のがせと言うのではなくて、そういうふうな右への片寄りもあれば左への片寄りもあるわけであるから、それを、貴君のように教養のある、日教組の中央執行委員もやっておったような人が、なぜそういう一方的なことだけを証言されるのであるか、その点を聞くので、少い部分は許せということを主張しておるのでないことはわかるはずであると思う。
  156. 石井一朝

    石井証人 質問ではありませんので……。
  157. 高津正道

    高津委員 いろいろな偏向があるのを、なぜ一方だけを偏向として言うのか、こういう質問で、これが質問でないと言うのは、いたずらに質問を回避するものである。
  158. 石井一朝

    石井証人 別に質問を回避はいたしません。よく御納得のいくまでお話を申し上げたいと思います。もし、私の目に触れました教科書で、現行の主権在民をきめました憲法を否定して、昔のような天皇陛下万才という教科書があったら、それも私は問題にします。ただいまのところ、そういうものはございません。以上でございます。
  159. 高津正道

    高津委員 それでは、たとえばここに小学生の理科五年の中、二葉株式会社の出版にかかるものでありますが、十五ページに、オリザニン・レッドというものがすっかりよくわかるようになっておるのだが、ビタミン注射という中にそれが載っておる。これは大へんな広告ですよ。また、次のページを見ると、雪印チーズ、これが全くその表装のままに、そうしてまた雪印バター、こういうような広告が載っておる。多く例はあげませんが、この一例を見ても、こういう偏向があるが、それらの点には全然触れておられない。それを言うのです。あるいは、思想的の面で言うならば、毎日のように新聞記事に軍事基地のことが現われておるのに、軍事基地という言葉は、教科書の中には、われわれの見る限りではほとんど見えないのであります。これは六年半も続いた自由党内閣があり、またそのあと民主党の内閣が続いてああいう文部大臣が現われておるのでありますが、軍事基地という言葉教科書の中にない。これは文部大臣がいろいろ干渉をするからそういうことになるのであると思いますが、あるいは、また、われわれから見れば非常に親米的な表現、資本主義制度擁護的な表現、そうしてそういう思想があるのを私は見ております。(「どこにある」「出してくれ」と呼ぶ者あり)これは、私は証人でないから、今一々ここで並べ立てることはできないが、それは教科書をここに並べれば私は指摘しますよ。私はそれを感じておるからこれを言うのであるが、後日文書をもって本委員会に提出してもよろしい。そういう偏向に対しては何ゆえに本証人は沈黙を守るのか。
  160. 石井一朝

    石井証人 そのバターだとかチーズだとかいうものは私は目にとまりませんでした。それは広告か何かでございますか。そういう現象がございましたら、それを指摘して、お互いに直すような雰囲気を作ることにつきましては、やぶさかではございません。  それから、軍事基地云々ということですが、これは今私が申し上げました教科書に明らかに出ております。小学校の子供は、初等教育で、基礎学習をしている段階の子供なのです。こういう子供のうらに、そういう大人でも解決がむずかしい——資本主義か社会主義かというような命題は、今世界中の人間が悩んでおり、どっちかを選択しようとしてまだ未解決の問題です。私はそういうものを子供の中に持ち込んでこれを教育する必要はなかろうと言うのです。基礎学習だ、初等教育だ、そういう見解に立って、だれが見ても、右左を言うなら、右が見ても左が見てもまず無難だというところで、読み書き、そろばんを教えてもらいたい、こういうことです。
  161. 高津正道

    高津委員 これは話をあとに残すことにいたしまして、証人日教組編集部にいた際にKという筆名でもって実に幾多の左翼的な論文を書いておられたのであって、これは否定されないと思います。昨年の十一月までこの組織の中におられたのであるが、そのあなたが、そのような急角度の、何というか思想的な転換をなさったのは、どういう事情に基くものでしょうか。
  162. 石井一朝

    石井証人 これは私の個人に関係することでございますから、ただいま本人かここに来ておりますから、胸の中を申し上げます。いいろ書きましたものがございます。そのものは、個人と申し上げてよい場合もございますが、日教組という組織の中でしゃべっているわけです。それは日教組運動方針なり何なりに、逆らわないように書くことが絶えず、求められているのです。組合の指示、指令を見てごらんなさい。意思を統一するとか何とか一ぱい書いてある。異なった意見がございましても、それは民主的な手続であるかどうかは知りませんが、そう変った意見を発表することができないのであります。こういう状態での苦渋というものは、引き合いに出してまことに工合が悪いのですが、ここに御出席大西委員も御経験のはずであります。  それから、私の考えが変ったではないか、こういうことでございますが、若干変ったことがあるかもしれません。しかし、これは進歩であるかもしれません。向上であるかもしれません。その深い理由については申し上げません。いや、論争をするなら、私は進歩だと思っていると申し上げることができます。けれども、そういうことを論争しても仕方がありません。ただ私は、思想というものは絶えず固定したものではないということを申し上げるにとどめます。そういう方々はたくさん世の中にいらっしゃるわけです。
  163. 高津正道

    高津委員 労働運動をやられる場合には、弾圧がくるし、誘惑がくるし、その上、貧乏は大体にしてつきまとう。私も、過去三十八年の間運動をやってきた間に、その三つに悩まされたのであります。あなたは全く短かい期間にころっと変られたのであるが、それは弾圧によるものであるか、誘惑によるものであるか、それとも貧乏の苦しさに耐えられないで陣営を変えられたのであるか。それはその証言の信憑性の根本に関するものである。
  164. 石井一朝

    石井証人 私は本席にもし出頭しなければ罰金一万円以下、禁錮一ヵ年という脅迫状みたいなものをもらって出て来たのです。しかも多忙であります。証人に対してただいまの高津委員発言ははなはだ非礼である、かように考えます。私はあなたに呼び出されてここで難詰されているのではない。証言を求められている。私のそういう一身上の問題について非常に非礼にわたるお言葉をお吐きになるということは、私は、御年配にしてはおわかりが悪い、かように思います。
  165. 高木松吉

    ○高木委員長代理 高津君に申し上げます。なるべく問題をはずれないように御質問願いたいと思います。
  166. 高津正道

    高津委員 これは、礼か非礼かの問題ではなくて、石井証人発言の信憑性の根本にかかわるものなんです。どういう動機、どういう事情でこういうふうにころっと変った意見をここで発表されるようになったか、その動機を聞くのであって、それは非礼だ、自分は答えない、苦しめるために呼んだのか、——それではいかぬと思う。共産党から出て共産党を攻撃して、それでもってずっと楽に生活しておる者もあるのであるし、日教組を攻撃しておる人もあるわけです。だから、その点を……。
  167. 石井一朝

    石井証人 よくわかりました。ころっと変ったわけではございません。教科書に関する意見につきましては、私が日教組におるときに書きましたものがあります。これは、日教組諸君が、教科書について知る者が何もいない、——その指令を出すときに、指示を書いてくれとかなんとかいうことで、私は書いてやりました。そのときのパンフットが今残っております。手元に持っております。私が先刻から申し上げたことをそっくりそのまま書いております。大差ありません。同じです。  それから、日教組に対するいろんなあつれきがございましたので、あなたがそうおっしゃられたと思いますけれども、日教組やり方に対して私は内心穏やかでなかったということは、それを立証する文献もございますから、もし御不審なら見て下さい。大阪の教員組合の書記長の東谷敏雄君が手紙をよこしております。それを読んでいただけば、私がいかにはるかに遠い時期から現在の日教組やり方について不満を持っておったかということがわかるような仕組みになっております。そういう手紙を見て下さい。仕組みと申しましたのは手紙でございます。何か誘惑に負けたとか、弾圧がこわくてそうなったというふうな、そういう言い方をなさりたいのでしょうけれども、そういう事実はございません。
  168. 高木松吉

    ○高木委員長代理 高津君に申し上げます。持ち時間が経過いたしましたから、簡略にお願いいたします。
  169. 高津正道

    高津委員 大阪の東谷敏雄氏から来たあなたに対するそれを立証するような手紙というのは、何年何月に発せられたものであったか。
  170. 石井一朝

    石井証人 事件の発生直後です。事件と申しますのは、私が出た、その直後です。これは、私の友だちの、行をともにしました佐藤豊君あてのものになっておりますが、中の文面は二人あてのものであります。
  171. 高津正道

    高津委員 あなたが日教組を出られたのは昨年の十一月で、その後のことであるというに至っては、時間があまりに短かいので、何かほんとうに重大な問題にぶつかってなら、それならその人はそう変るであろうという類推がわれわれはできるが、ずっと日教組の中にいて、内部では黙っていて、出てからどんどんどんどん悪口をあらゆる雑誌などに発表するというその変り方というものは、どういう理由があるか。何か理由があろうと思うのであります。それを虚心坦懐にお答えを願いたい。
  172. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 議事進行について……。
  173. 高木松吉

    ○高木委員長代理 ただいま議事進行について発言を求められましたから、これを許します。佐々木君。
  174. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 本委員会教科書に対する調査を行なっているのでありまして、ことに本日石井証人に対しての証言を求めることは教科書の問題を中心として証言を求めることが当然だと思います。ただいま高津委員証言を求めている内容は、石井証人の思想的ないわゆる変動とかあるいは行動で、こうしたものは教科書に直接関係はございません。教科書の中にそういう思想が植え込まれているかどうかということであったならば、これは本問題に関係がありますが、こうした議論を継続しておりますと、この問題が進行いたしませんので、議事進行上かかる証言委員長において厳に御注意あらんことを、私は議事進行として申し入れるものであります。
  175. 高木松吉

    ○高木委員長代理 承知いたしました。  高津君、時間がたちました。——石井証人に答弁させます。
  176. 石井一朝

    石井証人 虚心坦懐に語れということでございますが、私は虚心坦懐に語っているのです。私は日教組関係の諸君とも事前に会ったのです。この行監に出るということについて、先方から話しかけてきたから、会いました。とんでもない。妙ちきりんなことを言うのです。そういうことではない、教科書の問題を議論するところなんだ、日教組自分らの間に起きたいさかいとか抗争というものは場所を転じて論ずればいいじゃないか、いつでも論ずる機会がある、そういうことは曲解しないようにということを言っておいた。だが、皆さんの方からそういう御質問も出るかもしれないと私は思いましたので、あなたがお聞きになりたいようなことの立証になる東谷君の手紙を持っております。これはこういうふうに書いてあります。非常によけいなことなんです。私は申し上げるのがわずらわしいのですか、「前略新聞に突然あなたと石井君のことが発表され実は大へん驚いています。先日も和歌山に行ったとき偶然木崎君と何年ぶりかに会い一ぱい飲みながらあなた方のことを話したことでした」、その次が問題です。「現在の執行部に強い批判を持っておられることについてはかねがね承わっておりましたが」、こういうふうに書いてございます。私は何かを見てがらりと突然変異を起したのじゃないのです。それは曲解しないでいただきたい。ただ、たまたまああいう現われ方をしたということなんでありまして、私は隔意なくしゃべっているつもりですから、他意なくお受け取り願いたい。
  177. 高木松吉

    ○高木委員長代理 高津君、時間が経過いたしました。  大西正道君。
  178. 大西正道

    大西委員 証人はなかなかえらい気概で、かえってこちらが尋問されているような状況ですが、今のお話を聞いておりまして、あなたが突然に思想を変えたのではないというお話でありましたが、私も、率直に言って、あなたと古いつき合いであるので、かなり今度の日教組の解雇事件には驚いておるのです。その点をやはりある程度明らかにしておかないと、私はあなたのおっしゃる証言に対しても二、三やはり疑問に思うところがあるから、申し上げます。あなたがこれまで書いたものは日教組の命令によって書かされたのだ、——教育新聞に書いたものはそういう趣旨のことであったのだが、あなたは日教組機関紙以外に著書あるいは論文の発表かあると思うのだが、これを一つ今度提出して下さい。私も大体目を通しているのです。それであなたは自由な意思を発表しておるが、そのとき突然に変ったことがどういう関連にあるかということを私はまた後に実証してみたいと思うのです。なお、解雇された直後どこかからひもがついたかどうかという問題もありますが、これは私から申し上げません。後に具体的な立証をあげてあなたに質問なさる方もあると思いますから、とりあえず、あなたの日教組関係以外の自由な著書、それから発表した論文を一つ提出していただくことをお願いしておきます。  あなたは、今の委員長質問に対して、非常に長時間初めに意見の開陳があったのでありますが、そのおもなものは教科書の公正という面について教科書内容が偏向しているということを具体的な例をたくさんあげられた。そういう事実は私も認めます。しかし、あなたの言う偏向としてあげられた例は、今の国際情勢から申しますと、米ソ二大陣営から申しますと、いわゆるソ連系の事案を書いたものを全部あげられたのです。労使間の関係で申しますと、労働者の方に有利に書いてあることをあげられたのです。賃金の問題につきましてもその通りである。そこで、私は申すのでありますが、現行教科書の中にはあなたの言われたような事実もありますが、また反対に、アメリカ礼讃的な、資本主義を謳歌したような、労働者に対してことさらの忍従をしいるのが妥当であるかのごとき印象を与えるような具体的な事実がたくさんございます。これもあなたは容認になると思う。そうしますと、あなたの偏向というのは一方的な左翼的な革新的な面ばかりを取り上げて偏向だと指摘されたのであって、もう一方の側の偏向を認められないのですか。
  179. 石井一朝

    石井証人 私は、ここで社会主義が是か資本主義が是かという論争はしたくない、それはこの場所での論争ではないと申し上げておる。私は、公教育の建前を守るように、公教育の立場を守るために……。   〔大西委員「よろしい」と呼ぶ〕
  180. 高木松吉

    ○高木委員長代理 証人発言を許しています。   〔大西委員委員長、私に与えられている時間ですから」と呼び、その他発言する者あり〕
  181. 高木松吉

    ○高木委員長代理 大西君に発言を許します。
  182. 大西正道

    大西委員 十五分の時間に聞くのですから、私が言うときに簡潔に答えてもらいたいのです。  あなたは、偏向という例を、革新的な面ばかりをあげられて、偏向だ偏向だ、これが公正に行われていないと言われるけれども、反対に、アメリカ賛美、資本主義礼賛、そういう面の具体的な事実が教科書の中にあるのだ、これもあなたは教科書の中にあると認めるか認めないかということを聞いているのです。それを答えてください。
  183. 石井一朝

    石井証人 無条件なアメリカ賛美とか、そういうことならいけないでしょうが、こういうことだけは言っておかなければいけないと思うのです。今言いかけたのはそれですが、学習指導要領に御注意下さい。学習指導要領を読みますと、——これは法的な根拠があります。日本教育はそれに従ってやらなければならぬことになっておる。それには、社会科の学習指導要領を読んでみると、有能な社会人になるように、適応することを求めておる。ライフ・アジャストです。ですから、その線に沿っていなければならぬ。
  184. 大西正道

    大西委員 私の言っておることをそういうふうにはぐらかさないで、事案があるのですから……。偏向というのは、革新的なものを書いただけが偏向ではなしに、保守的な——社会主義が悪ければ、資本主義だって否定してもいいのです。あなの言われるような教科書検定基準は、あなたもそういう委員をしておられたし、私も検定委員をしておったのだから、ここで云々されてあなたから聞かないでも、私は知っておるのだ。そこで、あなたは、公正な立場ということの中に特定の政党や特定の宗派に片寄った思想や題材はいけないというこの根拠に基いて、革新的な内容は偏向が多いと言おるのだが、しかし、私の言うのは、特定な政党や革新的な政党がその批判の対象になれば、保守的な政党だって批判の対象になるのだ。ですから、私の言うのは、あなたのあげた具体的な事実というのは、革新的な面ばかり、国際情勢から言えばソ連圏に属する例ばかりをあげたのだが、反対側の事実もあるから、それを偏向と認めるか認めないかということをあなたは言えばよいのです。
  185. 石井一朝

    石井証人 保守、革新と申しましても、おのずから限度がございまして、その限度内では私はよろしいのじゃないかと思う。その限度を逸脱したからには、それは保守であろうが革新であろうが偏向である、こういうように思います。
  186. 大西正道

    大西委員 たくさん反対の例があるのでありまして、この点につきましては、やはり文部省検定というものが、あなたの言われるように、公正に行われていないとすれば、反対の面からもこの点は大いに検討しなければならぬと私は思っております。  次に、あなたは日教組の評価基準、採択基準云々についてのお話をいたしましたが、さきだってお聞きしますが、あなたや私が教科書のあの検定の審議委員になった以後、指導要領なんかがたびたび改変されておるのです。また検定やり方にも多少の変化が見られるのだが、こういうものは一体あなたは民主的な教科書のあり方から申して進歩であると考えられるか退歩であると考えられるか、どっちですか。
  187. 石井一朝

    石井証人 採択のやり方は私は変っていないように思います。従って、これに関しては別に意見がない。学習指導要領の改訂については意見はございます。これは教科書編集上にも支障を来たしておりますので、ああいう小刻みな改訂は不賛成です。改正をするならば、もっと大幅に、十分世論を聴取して改正すればいい、こういうふうに考えております。
  188. 大西正道

    大西委員 内容的にどうですか。特に社会科などは内容がかなり変っておるのだが、こういう傾向についてはどうですか。
  189. 石井一朝

    石井証人 妥当なものもありましょうし、妥当でないものもありましょう。
  190. 大西正道

    大西委員 妥当なものもあり、妥当でないものもあるのでありますが、大体世の中の論調を見ますと、文部省の国定化の好ましからざる方の傾向——民主的な思想を否定して、封建的なものへ、民主的な形からあるいは全体主義的な形へ、こういうふうな好ましからぬ傾向があるように聞いておるのでありますが、こういうものに対して、ある特定の教育団体が、これに抵抗するために、あるべき採択の基準というようなものの大まかなものについて、これを自分の団体のもとに流すということは、これはあえて悪いことではないと思う。問題は日教組の採択の基準でありますけれども、学者の意見を聞いて天下り的にきめるということはよろしくないという証人見解であったけれども、これは、この内容を少し見れば、たとえば社会科の部のところにどういうことが書いてあるかと申しますと、「アジアに対する旧来の先入観が払拭されているか」、これが一であります。二は、「アジアやアフリカの経済のおくれが、気候や風土の点からのみ説明されているようなことはないか」、三は、「各局族の自主独立を要求する運動が正しくとりあげられているか」、こういったような問題を具体的に示して、これを教科書の採択の基準といたしておるのであります。私は、こういうことは決して警戒すべきことでもなし、むしろ、とうとうとして反動的な方向に流れつつあるところの文部省の指導要領の改変その他から見て、こういう指導を与えて、そうして一般の現場の先年方の正しい採択の立場に一つの示唆を与えるということは最も適切なる処置なりと考えております。それを、ただこういう評価基準という名前だけをもって、これがよろしくないというこの考え方については、もう少し内容を研究される必要があるのではないかと思うのだが、これも簡単に答えてもらいたい。
  191. 石井一朝

    石井証人 内容は十分検討しました。検討しましたから、午前中あのように申し上げました。私は、午前中にも、封建制に対する反逆日本の国是だからよろしいと申し上げた。ただ、日教組の問題について、ただいまのお話でありますと、あるべき基準ならいいじゃないか、こういうお話です。これがあるべきものだというふうに考えられるなら、——考えられても私は賛成できない。そういう統制的なやり方はよろしくない。が、さらにその上に、これはあるべきものではないのです。それは内容的に十分あなたにお話し申し上げることはできます。あるべきものじゃないです。
  192. 大西正道

    大西委員 証人見解は非常に何かにとらわれ過ぎておると私は考えます。これについてはこれ以上この証人に対しての証言は求めません。  次に、日教組の講師団が非常に偏向しておると言うが、そして、あなたがその一例としてあげられ、高橋碵一というのが講師団に入っておると言うが、本年度の日教組の講師団のメンバーの中には入っておりません。あなたが委員であった何年か前のメンバーの中には入っておったかもしれません。そういうものを根拠にして、一括して講師団が偏向である、しかもこれがマルキシズムの立場に立っておるなどという証言は、私は今後もう少し研究をされたがよろしいのではないかと考える。私はここにこの講師団の名前を全部持っております。実は進歩的な人もおります。しかし、私は、これのみをもってこの日教組の講師団が左翼偏向なりという、そういった証人見解はいささか私は納得がいかないのでありますが、あなたの意見を簡単に述べて下さい。
  193. 石井一朝

    石井証人 私は自説をくつがえしません。偏向いたしております。その事実を列挙する前に、最も端的にその証拠をお見せしましよう。日教組の講師団が指導した長野県の研究集会がございます。この研究集会を日本共産党の機関誌「前衛」が取り上げて何と書いてあるか。この研究集会は党の指導下で行われたと書いてある。しかも、その教育研究運動内容そのものが党の綱領の線に合致している、具体的に高まっていると書いておる。そうして、これが新しい形の労働運動だと書いておる。しかも、なおつけ加えて、これが一昨年ウイーンで行われた世界教員組合会議の際に採択された民主的教育に対する基本原理でありましたか、それと全く一致しておると書いておる。こういうことがあるのであります。
  194. 大西正道

    大西委員 共産党が、自分らの党勢拡張のために、各民主的な団体、労働団体を、自分らの指導下にあるとか、自分らの政策綱領に一致しているとか言うことは勝手である。こういうことは共産党がこれ左でたびたびやってきた。こんなことをもって日教組の講師団がどうだこうだと言うことは、これこそ前に高津委員が心配したことがどうやらここらで立証されそうな気がいたすのであります。この講師団に対して、公教育の立場である言われるけれども、この中に革新的な人が一人、二人おりましても、私はこういうことを聞くのですが、そういう人がおる東京大学の教授はこれは偏向していると言うだけの勇気があなたにありますか。よもやそういうことは言えないと思うのであります。一人、二人そういう人がおっても、りっぱな国家公務員として大掌教授の要職にあるのです。この四十名に近いこの講師団の中に一人や二人そういう人があったところで、これは私は共産党員だと言うものは一人もおらぬと確信をしております。そういうのを、ことさらに、確実な資料も持たないで、こういうふうに左翼偏向だということを言われることにつきましては、納得がいかないのであります。  次に私は委員長質問に関連してあなたにお尋ねをいたしまするが、教科書会社が乱立するのはどういうわけだろうかという御質問に対して、あなたはこういうことを言っておられる。……
  195. 高木松吉

    ○高木委員長代理 大西君に申し上げますが、時間が経過いたしましたから、簡略に願います。
  196. 大西正道

    大西委員 まだ時間じゃないでしょう。
  197. 高木松吉

    ○高木委員長代理 時間です。
  198. 大西正道

    大西委員 私が言うのには簡略にと言って、答弁は黙ってそのままやらせる、そんなばかなことがありますか。
  199. 高木松吉

    ○高木委員長代理 それは、あなたが聞いておるのだからやらせるのです。ちゃんと時間を見ています。
  200. 大西正道

    大西委員 それでは、もう少しやらせて下さい。
  201. 高木松吉

    ○高木委員長代理 それならいい。
  202. 大西正道

    大西委員 教科書会社が多い、教科書が多いということについて、検定をもう少しきつくすればいいという意見をはかれましたね。私はこの見解についてはもう一回あなたにお伺いいたしますが、私は、検定をきつくして、教科書の数を少くするというような方向でなしに、検定は一定の基準に従って、おおらかな線で通して、そうして、採択の面で、展示会を十分に開いて、教師の自主採択を十分にできるような機会を与える、研究の期間を与える、こういうふうなことをして、検定はむしろゆるくして、そうして教師の個々の採択に十分なる責任、裁量を持たせるというのが私は新しい検定制度の本旨だと思います。あなたのように、検定を少くして、——たとえば後に言う民編国管の問題でありまするが、民主党の諸君は三種に限定をすると言っておる。それが国定じゃないなどというようなことを言っておるのでありますが、これは後に論じまするが、こういう傾向は私は検定の精神を殺すものだと思う。やはり、検定はゆるく、そして採択には十分な機会を与えるのが正しいのではないかと思いますが、この点についてのあなたの見解をお聞きします。
  203. 石井一朝

    石井証人 そういうやり方もありましょう。しかし、私が申し上げたようなやり方もある、採択が公正に行われるということ、それから採択に関して全国の教職員諸君が確実な研究と確実な自信を狩りてその採択が行われるという状態を附帯条件としなければ、あなたの案に賛成するわけにはいかぬ。
  204. 大西正道

    大西委員 次に、あなたは、民編国管というような問題を国定か検定かということで講じていること自体がナンセンスだというような意見だったが、あなたは民編国管なんというような突拍子もないことを言い出した民主党の某議員のその内容を聞いておらないのではないかと思う。この内容は、検定だと言いながら教科書を三種ないし五種にしぼるというのです。初めは二種ないし三種にしぼるということだったが、われわれの反撃にあって、三種ないし五種と言い出した。(「おれは一種だ」と呼ぶ者あり)一種だと言う元気な人もおるのでありますが、これが検定ということのあり方だろうかと思う。また、都道府県一本に採択する、これが大体民編国管の内容で一番問題になるところだと思うのだが、こういうように、今の採択を都道府県一本にするとか、検定を三種に限定するとか、これは民編国管と言おうと何と言おうと、これはまさに国定への一歩前進なりと断定して差しつかえないと思う。こういうことを考えますと、やはり民編国管というような問題は、今の検定制度を守らんとする立場からいたしますと、まことに重大な問題である。おそらく、あなたも、今の教科書がこのままで、数の多いことをよいと言えないことはわかっております。だからといって、価格が高いしとか、転校したら不便だとか、あるいは兄貴のものはもらえないとか、そういう抹消的な、便宜的な目的解決のために根本的な検定の本質を私は忘れてはならぬと思うのでありますが、この点についてあなたのまじめなところの見解を聞きます。
  205. 石井一朝

    石井証人 私は絶えずまじめに申し上げております。ただいまの御意見でありますが、先刻も申し上げましたが、文部大臣が著作権を行使して、それが一本の形で全国に流通する戦前の形の国定制度というものでは、私は反対だとはっきり申し上げます。ただし、現状のような野放図な状態には賛成できない。教科書制度を、そういう国定の方向と反対に自由出版の方向に考えますと、その度合いから言うと、これは問題の起る言葉でありますが、誤解しないでいただきたい。いわゆる文部大臣の管理権というものを公正に行使するという意味で国定の方へ近づくかもしれない。けれども、国定のことは私は賛成しているわけではない。あまり野放図にしない方がよかろうという意見であります。
  206. 高木松吉

    ○高木委員長代理 大西君、時間が経過しております。発言者が多うございますから……。
  207. 大西正道

    大西委員 それでは、これで終ります。
  208. 高木松吉

    ○高木委員長代理 山村治郎君。
  209. 山村新治郎

    山村委員 先ほどの証人のお答えを聞いておりますと、そのうちに重大な問題が一つあったのでございます。それはどういう点であったかと申しますならば、それは、証人がこの行監の委員会出席されようとする前に、日教組の方々が、あなたのところに会いに来て、妙ちきりんな問題をあなたに話しかけられたということがあったそうでありますが、その妙ちぎりんの問題とは、あなたを強圧するような点であったか、あるいはあなたに対するいやがらせであったか、あるいはあなたに対する哀訴嘆願であったか、それの実情を一つぶちまけていたたきたい。
  210. 石井一朝

    石井証人 どうも、教科書の問題からはずれて、しゃべりづらいのでありますが、これはたまたま会ったのです。書記次長の塚原という人。そして、何か非常に間違った考え方を中心にして、私が行監に出ていって、日教組の不利益になることをぼんぼん言い立てる、そして某々々々、四人くらいになりますか、来たるべへき選挙の妨害をするというようなことを言ったわけです。それで、とんでもないことだ、そういうことはさらさら考えておらない、あくまでも日本教科書がこれでいいのかということを中心にして自分はしゃべるつもりである、だからそういう御懸念のないようにしてもらいたいというようなことだったのであります。まだその他にもございましたが、それはここでは申し上げません。私は、これは全く個人の立場で話をするというお話でしたから、個人の建前でそういうことをおっしゃったのであろうと思いまして、あえて問題にしていなかったのであります。日教組から出しておりますところの日本教育新聞という機関紙があります。その機関紙を見ますと、同様趣旨のことが書いてある。私のことを国定論者のひもつきであるとこきおろしている。これは非常に工合が悪い。こういう誤った考え方で私の証言を聞いて下さるということは、問題の本質をはぐらかすことになる。実は、日教組出身の方もこの委員の中で多いわけでありますから、払は冒頭にそのことをお断わり申し上げておいて、公正な立場で受け取っていただきたいということをお願いしようと思ったのですが、それはことさらに言わずもがなのことだと思って言わなかったのです。それで、そういうことでやりとりが行われまして、先ほども、社会党の方から、私の一身上のいろいろな弁明を求められ、御質問もございました。そういうことにつきましては、くさぐさしやべりたいことばありますけれども、本席はさような席じゃないので、私は避けたいというふうに考えておりますので、そういう考えで証言を申し上げたわけであります。どうも、無理やりにそういうことを掘り起されような御質問をなさいますと、私自身もはなはだ迷惑いたしますし、また当委員会の品格に関係することになりはしないかとも思うので、お避け願いたい、こういうふうに思っております。
  211. 山村新治郎

    山村委員 なるほど、今日の委員会の主たる目的は、教科書の問題について重点が置かれなければなりません。しかし、日教組の現状いかんという問題は、やはりこの教科書問題を論ずるに当ってどうしてもこれをさいてはならない重要な問題であるのでございます。従って派生的にそういう問題が出てくるのでございますが、しかし、時間も限られておりますから、その問題はなるべく避けるといたしますが、ただ一点あなたに伺いたい点は、先ほど来あなたの御説明によりますと、文部省はこの検定について全然実質上においてはノー・タッチであったという説明があったのでございます。なおまた、調査員というものは、ほんとうに形式的なものであって、労働的にも、また時間的にも、とうていこれを詳細に調査することはできないような状態に置かれておるままに今日に至っておる、特にこれが占領政策の情性で今日まで至っておるという御説明があったのでございまして、これはその通りじゃないかと思うのでありますが、今までこれらの問題が、あなたの知る限りにおきまして、文部省並びにあなたの関係の範囲において大きく取り上げられたことはございませんか。
  212. 石井一朝

    石井証人 問題になったことはございませんです。と申しますのは、でき上った教科書がどういうものであるかということについて、それを親切に研究する人々もいなかったわけであります。従って、こういう問題が取り上げられた記憶は私はないように思います。しかし、調査員の方々からはそういう声は伺っています。申し上げますと、こういう労働過重状態、短期間に粗雑なことしかできないのは良心的に非常に困る、何とか調査員の制度は改善すべきである、その改善についてはほんとうに責任をもってこの教科書はいいとか、この教科書は悪いとかいうことを言い得るような研究機関も持たしてもらうし、待遇もよくしてもらって、合理的な制度にしてもらいたい、そういう声はございます。それは伺っております。
  213. 山村新治郎

    山村委員 あなたは、先ほど、この義務教育教科書については、これを戦前のような一本になった国定の方向にまとめることについては反対である、しかし、現状のようなばらばらな、国の方針があるいはまた教育の最高方針が一つも一貫しておらない現状については、これもあき足らないから、何とか変えなくてはならないという意見の開陳があったのでございますが、そうしてみると、これを具体的にどういうふうにして現わすかという問題になると、国定でもなければ、結局今のようなばらばらの状態でもないという中間に歩みよる以外にはなくなってくるのじゃないかと思います。特に、一般大衆が教科書に求める声は、先ほど兄さんの本を弟がもらうなどということは小さな問題だということを社会党の諸君が言ったのですが、これは一般大衆にとっては重大な問題です。どういうふうにして教科書を安く買えるか、金を出さないで済むかということは、実際は大衆の父兄が重大関心を示さなければならないと思うのですが、そういう点等から言って、やはりある程度まで国定の方向に歩みよって、——この表現はどういたしますか、民編国管といいますか、国編民管といいますか、その方法はわかりませんが、これからの研究の余地がございますが、いずれにしても、民主的な方法によって編さんされて、しかも今のように数多くの本を必要とせず、なるべく少数の選びやすい方に限定されて、なおその地方々々の特徴に応じた本が選定されるところの方法を、あなたは望まれておるのでございましょうか。
  214. 石井一朝

    石井証人 この問題につきましては、午前中も申し上げましたが、私はこういう見解を持っております。教科書の価格でございます高いだの安いだの、種類が多いだの少いだのということば、いわば教科書の属性に関する事柄である。それは安いに越したことはない。教職員が選択に迷うほど多種多様にあるということもわずらわしいことだし、大体教科書が多様に存在するということがすなわち民主的であるということではないわけです。教科書というものの性格は、学校教育の精神を貫くに足る正しいものであるかどうかという点にあるわけでありますが、そう百花繚乱の状態を求めるのもまた愚かなことであると思うのです。そこで、そういう建前に立って考えますと、まずは現行の分散している法規を一本にまとめて法制的な整備をいたしていただくとともに、現行制度の趣旨を生かしで検定調査の事務が公正に運営されるようにする、その間において自然淘汰的に教科書の種類も厳選されてくるであろうし、また一方、現場の教職員諸君にいろいろと研究をしてもらうことによって、先ほど大西委員が申されたように、採択の面からこれがしぼり上げられるという事態も発生するので、さしたる摩擦も混乱もなく所期の目的が達成されるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。そこで、国定か検定かということで両極的なお考え方をなさるより、その方が優秀な改善策であるように愚考いたします。
  215. 山村新治郎

    山村委員 あなたの御意見によくわかりました。ただ、きょうこの委員会へあなたに来ていただいた当委員会の目的は、この教科書の問題に関連して、果して正しい行政かなされているかどうかということを監察するのがこの委員会の目的でございます。従ってて、その点に触れたいのでございますが、これは、ややもいたしますと、先般来各社の証人によって証言されていますがごとくに、あるいは先生方が温泉へ連れていかれたり、あるいはごちそうになったりする等の例が多分にあったことが言われておりますが、特に、あなたも多分ごらんになったことと思いますが、この「全貌」という雑誌によりますと、教科書を食いものにする日教組と題しまして、相当大きな記事が掲載されておる次第でございます。そこで、各出版会社が自分の本を売らんがために特定の政治家あるいは特定の政党等に現金その他のくされ縁が相当あるとあなたは御認定なさるでごさいましょうか。
  216. 石井一朝

    石井証人 つまびらかな証拠を持ちませんので、何とも申し上げられません。まあその程度です。
  217. 山村新治郎

    山村委員 後刻この問題については山中君からも詳しい質問があると思いますが、あなたは参考にこの「全貌」という雑誌に載っております「労働貴族自書」「教科書を喰い物にする幹部」と題する記事をお読みになったことがございますか。
  218. 石井一朝

    石井証人 読みました。
  219. 山村新治郎

    山村委員 この記事の掲載するところのものは相当真相に近いものがあるということを、あなたはお考えになっておるでございましょうか。
  220. 石井一朝

    石井証人 さように考えます。
  221. 山村新治郎

    山村委員 私は今の証人証言は実に重大な問題だと思うのです。この「全貌」の中には、今名前ははばかりますけれども、実際にはすぐわかることですし、各政治家なりあるいは各労働組合の幹部というものが写真入りでもって指定されているのです。そして明らかに教科書を食いものにするということをこの「全貌」においては指摘をしておるのでございます。しかも証人がこの問題についてこれは真相に近いものであるということを証言されたのでございますから、委員長においては一つこの問題を重大問題として取り扱われまして、なお深くこの問題を追及することを私は提言いたしまして、私の質問は終ります。
  222. 高木松吉

    ○高木委員長代理 山中貞則君。
  223. 山中貞則

    山中委員 ものの順序として、引き続いてただいまの問題を私から証言を求めたいと思います。  山村君からは概略的なお話でございましたので、私は具体的にお尋ねをいたしますが、この教科書現行制度の一番大綱をなすものは、より公正な、そして自由な採択、供給が行われることに最も大きな重点が置かれておると私は考えていますが、そのような意味において、採択面の力を打つ諸君あるいは選択面に直接間接の立場を持っておる人々が供給面の仕事に努力をいたしますと、採択の面に非常な悪影響が起ってくるということを私どもは心配する。その一つの大きな事件としてこれを取り上げておるわけでありますが、そのような意味において、現在の採択権を持っておりますものは、実際には、教育委員会法によりますと教育委員会がこれを採択するとなっておるだけで、はなはだこの採択権の所在が現行臨時措置法では不明確でごいます。この点においては、私はいろいろの問題が起ると思いますが、そのような不明確な現行法規を基礎にいたしております現在の採択の実情は、明らかに第一線の教職員あるいは校長等の人人が非常な力を持っていることは事実であります。そういたしますと、そのような力の結集されたものと言えるところの先生方の集団であるところの日教組というものが採択について相当大きな影響力を持つことは、私は否定できないと思います。そのような意味において、もし日教組に関連のある人々、ことにまた政治家の人々がそのような教科書会社に関係を持って、そしてまた関係を持った行動をしておられるといたしますならば、私どもとしては、はなはだ遺憾なから、これが事実かどうかを知る必要に迫られるわけであります。そのような意味において、私はただいまから、まことに恐縮でありますが、ここに印刷になっております入人について、名前をあげてお尋ねをいたしたいと思います。  その前に、現職の国会議員あるいはまた過去においては現職であった国会議員が、衆参両議員を通じて、教科書会社の編集顧問あるいは参与、嘱託等の名義において教科書会社の販路拡張のための仕事をしておられた人々があるかどうか、あなたは御承知ならばそれを御証言願いたいと思います。
  224. 石井一朝

    石井証人 私の見聞の範囲では、うそは申せません。ないとは言えないと思います。あったと思います。
  225. 山中貞則

    山中委員 この雑誌によりますと、荒木正三郎君は、参議院選挙選挙資金を、これにはKと書いてありますが、K社からもらっておる、あるいは、今度は、ビルマへ社会党大会に行くときにO社から旅費をもらっておる、こういうことが書いてありますが、この点についてはお聞きになったことはありませんか。
  226. 石井一朝

    石井証人 先ほども申し上げましたように、この種の話はきわめて触れたくないのでありますが、事実であるかどうかというふうなお尋ねでございましたら、私の承わったところでは事実である、こういうふうにお答えしたいと思います。
  227. 山中貞則

    山中委員 ただいまお話しになりましたような前提を承知いたしまして承わりますから、事実であるかどうかについて、それだけを御答弁願います。  次は、矢鳩三義君がO社から宣伝工作費の名目で幾らかの金を引き出した、こういうことについてはいかがですか。
  228. 石井一朝

    石井証人 事実でございます。
  229. 山中貞則

    山中委員 相馬助治君が外遊の旅費をもらったといううわさがある、それについて具体的にはその事実ははっきりしておりませんが、具体的には帰ってきてから教科書会社の団体に紹かれて海外の教科書事情等の視察報告をやっておる、こういう事実については御承知ですか。
  230. 石井一朝

    石井証人 そういう話を承わったことはございますが、真偽のほどはよくは知りません。
  231. 山中貞則

    山中委員 先般の、一昨日でございましたかの委員会で、小林信一君が、八芳園において、某日、教科書会社の人々に呼ばれて、自分もその中に入って非常に迷惑をしておる、自分としては天地に恥ずることはない、その当時の文部委員会において教科書会社に関係する法律を通過せしめたときに、単なるいわゆる習慣と言ってもいい程度の軽いあいさつだと思って、自分としては事実そのつもりで行ってきた、こいうような自分の立場を明らかにするようなお言葉がございました。もちろんそうであろうかと考えますが、しかしながら、教科書会社の人々が、衆参両院の文部委員全員というなら話はわかりますが、日教組出身の人ただけを呼んだように私どもとしては見ておるのですが、この雑誌によりますと、芝白金の八芳園というところに教科書会社が集まりまして、自分たちの会社の問題について国会において有利な法律が通過したために、それのお礼として、荒木正三郎君あるいは小笠原二三男君、小林信一君、成瀬幡沿君あるいは矢嶋三義君、こういう一連の、いわゆる日政連というか、日教組の別な御承知の通りの団体でございますが、日政連出身の代議士を招いて、そうしてお礼の意味の宴を張った、こういうことでございますが、そのようなことについてはお開き及びでごさいましょうか。
  232. 石井一朝

    石井証人 会合の目的、経過その他については詳しくはありませんが、そのようなことがございました。
  233. 山中貞則

    山中委員 次に、偏向と認められる例をあげまして、教科書のうちにそのような編集のものが現われてくるようになった原因の一つとして、日教組講師団の人々がこの教科書編集参加しておる、あるいはその編集において相当強力な立場を持っておる、こういうことを一因としてあげられたのでありますが、これもやはり同じ本によりますと、主として日教組の講師団が日教組の立場から考えて社会科の編成に重点を置いておる、ういうふうに書いてありまして、「宮原誠一はZ社の高等学校社会科とG社の中学校、勝田守一はO社、宗像誠也は、その人権教育の主張を盛り込んでA社のもの、周郷博はH社、また、菅忠道、高橋慎一らの、筋金入りの共産党員も、それぞれE社の社会科の執筆陣にもぐり込む、という具合で、いまや、ケンランたる改新系の社会科教科書が出来てきたわけである」、こういうふうに書いてありますが、先ほど証人は具体的には言われなかったのですが、具体的に証言するとすれば、この本に書かれたようなことは事実として証人は肯定されますか。
  234. 石井一朝

    石井証人 それは雑誌でありますから、多少の誇張があろうと思うのでありますが、部分的には正確である、こう思います。
  235. 山中貞則

    山中委員 先ほど、静岡でございましたか、教研大会があったときのことについて、いわゆる共産党の「前文」を取り上げお話がありましたが、この日教組の講師団というものは、委員長の総括質問にもありましたように、新しく指令を流す、いわゆる教科書採択の基準要領等を流す場合において、緊密な協力という言葉表現される重要な立場を持っておられると思います。日教組と講師団というものはどの程度の関連があるものか、その形の上と、それからまた、どちらか一方が意図する場合には一方が直ちにそれに対して順応できるような緊密なものかどうか、そういう面についても知っておる限りお述べを願いたいと思います。
  236. 石井一朝

    石井証人 この講師団につきましては、私も、午前中でありましたか、その後の知っておる範囲のことを申し上げましたが、その程度の知識しかありません。日教組教育研究集会を指導助言するという学者先生の集まりである、こういうことは申し上げることがてきます。
  237. 山中貞則

    山中委員 次に、証人はちょうど愛媛県の御出身であるようでございまして、また愛媛県の教組の運勤にもその草分けから参加しておられたようなお話も承わりましたが、例を愛媛県にとって申し上げますと、戦後愛媛県で、午前中にお述べになりましたような、旧特約店の官僚的横暴というものが教育の上に非常な悪効果を及ぼすという、いわゆる教育良心に基いて、先生方が一つ特約供給所をやってみようじゃないかということで始められたのでありますが、愛媛県などは私どもから見て、一応成功した県であると考える。私どもの見るところでは、大体今愛媛県の学生協の転身したものが扱っておる数は約一億ぐらいに上っておりまして、取次店を直接持っておらない、直接に特約店のままで配給できる形の学生協の転身した会社としては、一六%まるまるの手数料が入る、従って一千六百万円程度の一億に対する手数料というものがそのまま運営に充てられるだけの可能性がある、そういう収入を得ておる、かように考えるのですが、その点はいかがです。
  238. 石井一朝

    石井証人 生活協同組合というものが図書の供給をいたします場合、いろいろ人件費その他の経費がございますから、手数料そのままが利益になるというようなことは考えられませんが、利潤があるということは否定できないと思います。
  239. 山中貞則

    山中委員 愛媛県等においては非常に好ましい例として、先ほど午前中の証言では、生徒たちの無料宿泊所等が建設されたというようなお話を承わりまして、まことにけっこうな、いわゆる先生方の手によって教科書を配給するという当初の目的通りの期待に沿うだけの純益の処分がされておると思うのでありますが、しかしながら、全般的な傾向として、学生協の転身いたします前提としては、次官通達によって好ましからざるものという指定を受け、さらにまた各社あてに公正取引委員会より公取法に違反するものであるという厳重な警告を受けた後に転身をいたしたわけでありますが、現状においても、そのようなことは、私どもとして、会社の形態や機構は変っておるように見えますが、実際においては全く同一のものだと思わざるを得ないような状態で残っております。  そこで、この新興特約と申しますか、その供給所相互間の関連と申しますか、そういうものについてお尋ねをしてみたいのでありますが 私 今手元に持っておりまする資料がございます。これは学生協の全国連合会という名前において決議をいたしまして、学生協で教科書を取り扱っておるところに指令をいたした文書であります。その指令によりますと、三、四点ほどございますが、いずれも旧来の特約店というものに対しましていろいろと欠点を指摘いたし、これを是正するための努力をしようということでございます。しかしながら、それについては、自分たちが新しくそれにかわるために、こういうことが書いてあります。「学生協は発行者と交渉して取次、特約に代って契約を進め、内諾した発行者の教科書展示会において推薦すること」、この一項が私どもにとっては非常に重要なる項目だと考えられます。何となれば、学生協が——今日は形は違いますが、学生協として取り扱いますることは、教科書の供給事務でございまして、これはあくまでも命ぜられた至高の義務である完全供給ということのために最も全力をあげなければならぬものでありますが、この間、一方においては、いわゆる先生方との直接的なつながりというものが公正取引委員会からも指摘せざるを得ないような具体的な形で残っております以上は、先住方には教科書を選定し採択をする権限があるのですから、従って、採択権というものをバックに持ってそのような配給機構を持つことは好ましくないということが私どもの見解である。また公正最引委員会指摘の厚肉でございます。ところが、それは懸念でございますけれども、この文書によりますと、教科書会社と契約が妥結したならばその教科書会社の本を展示会において推薦せよということになりますと、これは私どもが憂えております採択の権利というものがそのままそっくり供給会社としての特権として持ち込まれておることを証明して余りあるものである。従って、その学生協というものは、今日は形は変っておりますが、発足の当初はこのような方針でもって出発したものであるかどうかについで、証人は経緯をよく御承知のようでありますが、もしお知りならば御証言を願いたいと考えるのであります。   〔高木委員長代理退席、佐々木(秀)委員長代理着席〕
  240. 石井一朝

    石井証人 私は資料を見たことがございません。それが正確なものであり、本物であるということになるならば、御指摘の個所はやや妥当性を欠くというふうに考えられます。これはこういう事情でございます。生活協同組合教科書を扱うようになりました経過は申し上げた通りであります。私今もってその動機は聞違っておるものであるとは思っておりませんが、その運営上、公正取引委員会文部省などから指摘されたことがございます。その節に、私は完全に承知はできませんでしたけれども、一理あるというふうに考えました。そこで、当時の文部省教科書課長の鈴木さんに私は申し上げました。生協に教科書を扱わせないというやり方は、文部省は快刀乱麻を断つごとく規定によればすぐできる、供給契約書の変更を命ずればいい、ただそれは抜き打ちでやらぬで下さい、現在生協は人を抱えて仕事をしておるわけでありますから、これを抜き打ちにばさっとやられたんでは、生協が非常に困る、そこで、次官通牒も出ましたその趣旨は一応了解するが、別に現状をにわかに改変する意思がないということを、該当各県へ一つ知らしてもらいたいということをお願いした記憶がございます。そこで、当時の局長は久保田局長でございましたが、久保山局長名で、該当各府県九つであったかに記憶しておりますが、これらの県に対しては現状を改変する意思がないという通牒を出してもらいました。私は、半面、生協の方にも指摘される非はあるから、これに組織の変史をしようではないかということを提案いたしました。それは、生協という名前があるのでは困るから、一つ会社に直したらどうだ、その節は資本金の構成等につきましても、教員だけでなく、いろいろ民主的な形で、一般から疑惑を受けないように配慮した方がよかろうというようなことを、知っている範囲のことをお伝えをして、そうなさるようにお勧めしたのでありますが、これはなかなか私が申し上げたような工合にはいかなかった。この間のいきさつにつきましては、文部省の元教科書課長の鈴木さんがよく御承知でございます。私は特に秋田、佐賀、愛媛の三県を問題にいたしました。これは非常に扱い量が多かったからであります。にわかのことをやられたのでは生協が参ってしまう。私は、せっかく始めた仕事で、大した落度もないものならば、穏便な方法で処理をしてもらいたい、生協も採択などにからんで不公正な面かあるなら反省をする、こういう意味で、当時生協に第一案、第二案などというような調停案を提示して、話し合いをしたことがあることも記憶しております。それは、一つは公武合体論、会社を合せる、できればやめろ、やめた場合は商権の譲渡だから権利金をもらったらいいだろう、もらった権利金で供給協議会を作って、業者と一緒にそれを苦情処理機関にして、その協議会の運営をやったらよかろうというような提策をしたのでありますけれども、組合用語で申しますと、私は当時は浮いておりました。私の言うことがそのまま受け取ってもらえなかった。こういうのが実情であります。ですから、私は、生協に関しましては、今日は会社になっておるわけでありますから、全然法的には疑義がございません。そこで、公取その他から指摘されているような欠点を是正いたしまして、公正な運営をするというようなことで一歩前進をしてもらいたい、とりあえず利益金の処分等につきましては十分子供たち教員たちを満足させることができるような方途を発見してもらいたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  241. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山中委員に申し上げます。時間が参りましたから、簡単に願います。
  242. 山中貞則

    山中委員 非常にお詳しいようでありますから、もう一つお尋ねいたしますが、学生協からその後身である現在の会社に至るまで、生徒が出資をいたしておるわけでございますが、学童が出資をいたしておるその学童の出資金については、卒業と同時に脱退ということは認めておりますが、出資金の処分について、当然それに返還さるべきものである、あるいは、出資金の行われていた期間において純益があるならば、その際においても脱退と同時に払い戻しがあるべきだと考えますが、場所によっては、一括これを学生協あるいは現在の会社に寄付をせしめて、脱退のみを認めておるという傾向があるように聞くのであります。その点については御存じでありませんでしょうか。
  243. 石井一朝

    石井証人 私はもう最近日教組、生協などとごぶさたでありまして、かえって御質問の方のお詳しいようでございます。私はそういうことについてはほとんど存じておりません。
  244. 山中貞則

    山中委員 次に、教科書会社の非公式な慣例というようなものになっておるらしいのでありますが、ここにいろいろ会社から特約店に出した資料もございますが、大体どの会社も、準教科書等を売り込みます場合には、一〇%程度のものをあらかじめ特約店、取次店に指令をいたしまして学校に払い戻しをする、いわゆる一〇%程度のものはリベートを学校に差し上げるから、そのような条件において採択をきめてほしいというようなことを要望しておるようであります。さらにまた、特約店を通らない、いわゆるかつぎ屋さんが持ら込んでおりますところのテスト・ブック等も、そのようなケースのものについてはさらに大幅になりまして、約四五%程度のものが学校側に還元されておるやに、私どもとしては資料を持っておるわけでございますが、まず、そのような点については事実かどうか、御承知かどうか、お知らせ願いまして、さらにまた、非常にお詳しい立場におられますのでお聞きしておきますが、そのようなことが事実であるならぱ、その一〇%ないしテスト・ブックについては四〇%以上のものが学校側に返りました際の学校の経理状況はどういう経理をしておるかということであります。県や市町村等のいわゆる直接予算として計上されて公的に使っております中にはそれは入れられない性質のものでありますから、当然別途に経理されておると思いますが、その経理状況はどういうふうにされており、そうしてそれはどのような使用がされておるかについて、お知りでありましたならば、御証言を願えればけっこうであります。
  245. 石井一朝

    石井証人 そういう前段の話は伺っておりますが、先般大日本図書の方ですか、証言にそれがございました。なるほどと思った程度でございます。詳しくは存じておりません。また、その歩戻しされた金額の使途等につきましても、ただいま十分存じておりません。お答えいたしかねます。
  246. 山中貞則

    山中委員 終ります。
  247. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 小林信一君から発言を求められております。一身上のことに関しますから、小林信一君に許します。小林(信)委員 ただいま証言が、「全貌」の中に書いてあることにつきまして真実であると思うかということについて、了承するということであり、それからなお、「全貌」については私はあまりこれを問題にしておらなかったのですが、お前の名前が出ておるということを聞きまして、簡単に見ただけなんで、事実はあまりよくわかっておりませんが、ただし、その最初の見出しに、この内容はあなたから聞いたことであるというようなことが書いてあるわけなんです。この二つの問題から、中に書いてあることは、ただいま御証言なさいましたように、責任を持てるような真実であるという態度であるか、さらに、あそこに書いてありますよりに、あなたが漏らしたものであるか、この点をまず最初に承わっておきます。
  248. 石井一朝

    石井証人 それは私がしゃべったものをもとにして書いたものでございます。従って、見出しその他につきましては、私は全然承知していない。出版社の方で勝手にやったことでございます。だから、先ほど個別的に御質問がございましたので、その個別の問題については、腕組みをしてよく考えてみまして、私の方で事実であると思われるものを簡単に申し上げたわけであります。それは個別に申し上げたはずです。全体としては、ある種の傾向を持った雑誌でありますから、いろいろ表現上若干の誇張もありましようが、大体において、私は、その内容について、私のしゃべったことが中心にして書かれているということを確認するわけであります。
  249. 小林信一

    ○小林(信)委員 そうすれば、あそこに取り上げたものが、確かに、表題にありますように教科書を食う国会議員とかあるいは労働貴族とかいうふうなことになるとあなたは了承して、それを意味するところの内容であるというふうに御了承なさるわけですか。
  250. 石井一朝

    石井証人 見出しその他につきましては、ただいま申し上げましたように、どういう見出しをつけたにしろ……。
  251. 小林信一

    ○小林(信)委員 内容の意味するものが、教科書国会議員が食っているというふうに了承するのかどうか。
  252. 石井一朝

    石井証人 そういうげすな言い方をすれば、それで通用するかもしれません。
  253. 小林信一

    ○小林(信)委員 ぼくはまじめなんだから、あなたも一つ真剣にやって下さい。そうすると、八芳園でもって僕ほか何名かが招待されたのは、時日はいつで、そしてその内容もお知りにならなければならぬ。従って、あなたはそれに対して述べないわけですが、その点についてはどうですか。
  254. 石井一朝

    石井証人 その点につきましては、確実にその話をしたわけではない。ある程度の表現になっておるのではないかと思います。私は今手元にその雑誌がないものですから、どう書いてあるか……。
  255. 小林信一

    ○小林(信)委員 どう書いてあるつて、あなた証言したじゃないですか。
  256. 石井一朝

    石井証人 そういう言葉一つ一つまでは覚えていないのです。本がございましたら見せていただきまして、妥当かどうか申し上げましょう。
  257. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 小林君に申し上げます。順序を変更して、一身上の関係があったものですから関係質問としてお許しいたしたのであります。簡略にその該当する面だけ願いたい。
  258. 小林信一

    ○小林(信)委員 承知いたしました。  あなたの証言が、さながら、今問題になっております教科書が一般から批判を受けておるような、そういう問題を私も一方をかついて、父兄の負担を重くするとか、あるいは教科書制度に対し回復しなければならぬその禍根になるような一人として、今証言されたわけなんです。しかし、私がその八芳園に招かれたときに、私もよく覚えていないのですが、確かに、教科書の融資に対して従来三分の利子をつけておったものを、教科書を安くするという問題から利子を二分に引き下げたことがあるわけなんです。そのときに私は文部委員で、このことに全会一致でもって了解したことがあるのですが、そのあとで私たちが招待されたということを覚えている。私が八芳園へ行ったのはこれが初めで最後なんです。しかも、美妓をはべらしたとか、何かその間において、教科書問題を惹起するような話し合いがなされたとかいうような印象を与えるような内容なんです。それに対して、あなたがそれを了承するとか、あなたがそれをしゃべるとかいうようなことになりますと、これはあなたは非常に無責任で、先ほど来委員からいろいろな疑惑を持たれておるあなたの意図的なものがあるというふうに私は考えるわけなんです。私は、この宴会に出まして、毛頭そういうふうなものを聞いたこともなければ、経験したこともなければ、美妓がはべった事実も覚えていないのです。ほんとうに軽い意味の宴会に私は考えて残ったわけなんですが、私はこの点についてもう一度はっきり御証言を願いたいと思います。
  259. 石井一朝

    石井証人 今これを読んでみましたが、少し書き方が派手のようであります。私はそういう会合があったということをしゃべった。それから、当時、あなたのおっしゃったように、たしかあれは教科書の補償金でございますね、補償金が三分でありましたのが一分になったのですか二分でしたか、そういう直後の会合でございましたことも記憶しておりますが、それはあなたもいらっしゃっておりまして、その会合はあなたがおっしゃったような意味のものであったと私も了解しております。
  260. 小林信一

    ○小林(信)委員 あなたはその際そこにおられなかったでしょうか。私はあなたもいたように覚えておりますが。
  261. 石井一朝

    石井証人 私がいたからこれを知っていてしゃべったわけでございます。
  262. 小林信一

    ○小林(信)委員 そうすると、この問題がこの本に載り、しかも先ほど来のこれを追及するところの言葉に対してあなたが了承されるときには、この宴会に国会議員が何名かおった、そうして教科書問題についてはこういうふうないかがわしいものがあるのだという、その材料かのような質問に対して、あなたはそうでございますというような印象を与えていることは、あなたに対して非常にこれはいけないことだと思うのですが、もう一ぺん、あなたも列席された会合であって、この八芳園の会合に対しては何ら「全貌」に載ったような会合でないということを、私は言明する必要があなたにあると思うのです。
  263. 石井一朝

    石井証人 私は、そういう事実があったかどうかというとをお尋ねになるから、そういう事実があったとお答えしたのであります。これは、いろいろの前提条件がありまして、その前提条件を充足するような会合であったかどうかという質問にとれたと小林さんはおっしゃられるわけですね。それを了承したとすると若干間違いがある。私は、速記録を調べていただいてもわかると思いますが、その会合の目的その他についてははっきりしたことは申し上げなかった。ただそういう会合の事実があったということをお答えした。だから、私が列席しておったかどうかという御質問に対しては、ただいま申し上げましたように、私は事案がそのまの人集めの世話をしたわけであります。列席したことは事実であります。ただし、私は今まで日教組におりますときにはよくそういうことを仰せつかったものでありまして、それは小林さんも御承知のことだと思います。まあ幹事というところでしょうね。
  264. 小林信一

    ○小林(信)委員 それで私も大体記憶を新たにしたり、そうして事の内容というものがここにはっきりわかったわけです。さながら国会議員の中にこういうふうな腐敗堕落した者があって、しかも教育関係の者がこういうふうにかかずつておるのだ、だから教科書問題がこういうふうに腐敗堕落するのだというような印象をあなたの今の言明によって一掃することかできたのですが、あなたがそういうことを軽率に表現したり、あなたはそういう意図はないにしても、そういうふうなものに利用されたりすることによって、あなた自身も非常に御迷惑になり、私たちも非常に迷惑であるし、国会そのものが権威を失うわけなんです。あなたはそういう点に対してはさほど問題にしておらぬようですが、今後の行動等についてあなたに御忠告申し上げますが、ぜひ慎重にされた方がいいと思うのです。私は以上のことでもってこの問題を終りますけれども、私はあくまでもこの問題については、あなたも御承知だと思うのですが、まじめにやってきたつもりなんです。今回この問題が出て私の過去七カ年の政治生活をあなたによって非常にひっくり返されたような気がするのですが、それは単に私だけの問題でなくて、そういうことでもって今国会というものがすべて雷同されるおそれがあるので、あなたもその点をよく考えてもらいたいというようにお願いするものです。
  265. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 暫時休憩いたします。    午後四時四十七分休憩      ————◇—————    午後四時五十分開議
  266. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  山田長司君。
  267. 山田長司

    山田委員 先ほど証人尋問に当って委員長からあなたの経歴を伺われておりますが、最初に私はそのことをもう一度あらためて伺いたいと思います。ただいま証人はいかなる御職業をされておりますか。
  268. 石井一朝

    石井証人 新日本教育者連盟というものを作っております。そこの事務局長をやっております。
  269. 山田長司

    山田委員 あなたは、今度行政監察委員会であなたを記入にするに当って、政党人のだれとお会いになっていますか、最初にそれを伺います。
  270. 石井一朝

    石井証人 篠田委員長と会いました。
  271. 山田長司

    山田委員 篠田委員長とお会いになった場所はどこですか。
  272. 石井一朝

    石井証人 衆議院会館だったと記憶しております。
  273. 山田長司

    山田委員 篠田委員長の事務所でありまする有楽町の電気クラブでお会いになったのはいつですか。
  274. 石井一朝

    石井証人 それば記憶しておりません。会いません。
  275. 山田長司

    山田委員 それでは、会館でお会いになったのは何回お会いになっていますか。
  276. 石井一朝

    石井証人 一回会いました。
  277. 山田長司

    山田委員 そのときにどんな話が進められておりますか。
  278. 石井一朝

    石井証人 これは、そういう御質問があるだろうと思いまして、私は——日教組の書紀次長の塚原君もそういうことを申しました。なぜ篠田弘作に会ったのだ、国定へ持っていく量見だろう、こういうことを申されたのであります。事案は全然違うのであります。これは申し上げたくないのでありますけれども、私は皆さんがそういうふうにお思いになるとまずいので、やはり申し上げなければならぬと思います。それは日教組に関係した、日教組を中心にした放出繊維に関する推定総額二千万円に上る大疑獄事件があったのです。これを当時日教組の厚生部に勤務しておりました郡司という男が証拠書類その他をあげて持って参りまして、石井さんのやっておりましたことに対して、僕は義憤を感じた、こういうことがあるから一つ取り上げて問題にしようじやないか、日教組石井さんのやっていることに対して片っ端から事実無根だと言っておる、これは僕は僕の経験からどうしても事実無根だと言えない、ここに証拠を見せる、こう言って、繊維疑獄に関する推定総額二千万円に上る業務上横領の疑いのある事件でありますが、それを持ってきました。私がその話を聞きますと、当時の文部省が関係しております。商工省も関係しております。安本が関係しております。そういうわけでございまするから、これは行政監察上の問題であろう、そこで行政監察委員会委員長である篠田さんに話して、そうして取り上げ方を研究してもたったらどうであろうかというので、参ったのであります。この事件は、篠田弘作さんから、行監で取り上げるよりも検察庁の問題である、自分はそう思う、そっちに差し回せというようなお話でございましたので、六月十四日告発をいたしております。正式に受理されております。現在捜査段階中でございます。以上でございます。
  279. 山田長司

    山田委員 あなたが作られた生活協同組合の問題を告発するために、銀座八丁目の新橋見番階上におります太田弁護士のところに行かれたのがその事件ですか。
  280. 石井一朝

    石井証人 さようでございます。
  281. 山田長司

    山田委員 この太田弁護士は御承知のように思想検事として追放された人で、あなたはここへ行ってどういう話をされたかわかりませんけれども、とにかくこの場所に行かれてあなたが話されていることは、学生協に不正があるから、この学生協を何とかして、日教組をつぶそう、こういう意図のようなことを言われておるような話ですが、もう少し太田弁護士に話した内容を明細に話して下さい。
  282. 石井一朝

    石井証人 そのような、あなたのおっしゃるようなことは申し上げません。しかも私が一人が行ったのではない。下手人であるところの——下手人というのは言葉が過ぎますが、つまり一緒に仕事をやったところの郡司という厚生部の大将が一緒に行って事件のてんまつを説明したのです。それに私が随行した、こういうことになります。一回でなくて、その後二、三回ですか太田弁護士に法律的な手続その他について伺いました。その節もこの証拠書類を提示した郡司君が同道をいたしております。この郡司君が持って参りました書類は、日教組が当時の放出毛織物処理委員会から出しました請求書を偽造し領収証を偽造した、その偽造したものとほんものとの書類なんです。それを彼が持っていたわけです。それを持ちまして郡司君と同道して弁護士に取扱い方を協議した、こういうことであります。私が日教組をつぶすだとか何だのかんだの、そういうことは話ししないのです。これは、私としては、教職員の団体にかかる不正があるということは許せない、しかも関係者が現在代議士であり、革新政党に所属している、こういうことは許せない、もし事案とするならばこれは糾弾すべきであるという強い決意でもって、私は郡司君と、しかも郡司君が私は義憤を感じたというので来ましたものですから、行ったわけであります。しかも、私は、この郡司君の申し立てによりますと大体証拠書類はあるわけでありますから、偽造した請求書、偽造した領収証もあるわけでありますから事は正確である事と思いましたけれども、もし万が一間違いがあったということでは困ると思いまして、そこで指摘されておる代議士にも会いました。その代議士は、その事実についてはそれを否定はしておりません。その私と会ったときり記録も全部私は後日のために持っております。そういうことで太田弁護士を伺ったのであります。あなたのおっしゃったような目的で伺ったのじやない。私の気持としては、こういう事件もあったということを私が確認できるならば、——私は日教組にずいぶんひどい目にあいました。私のやっていることは、私は事根無根だと一つも思ってないけれども、事実無根である、階級的裏切り者である、そういうばり雑言を浴びせかけております。石井には祖先も子孫もあります。従って、身のあかしを立てたいという気持になるのは当然でありましよう。その記録にある横領について私が非常に注目をしたということであります。
  283. 山田長司

    山田委員 ただいま証人から言われた、革新陣営の代議士の名前はわかっていると言われましたが、その名前をここで明らかにしていただたきたいのです。
  284. 石井一朝

    石井証人 告発をいたしました者は、加藤清二、左社、衆議院です。茂木正三郎、左社、参議院、以上です。
  285. 山田長司

    山田委員 告発された事件はこの事件一つか、それとも、太田弁護士が問題にならないと言って却下されたものがあるようですが、それは何であったか、もう一ぺん伺います。
  286. 石井一朝

    石井証人 そういうものはなかったと思います。繊維疑獄、これは詳細に検討したのです。これは昭和二十四年から五年にかけて起った事件でありまして、そうして公文書偽造の嫌疑あり、一つは業務上横領山嫌疑あり、業務上横領は時効七年、公文書も同じく時効七年、(「そんなことは言う必要はない」と呼ぶ者あり)これを説明しないとわかりません。そこで、この問題は特効ではないし、これはとても計しておけない問題であるから、この事件を告発しなさい、こういうことでざいます。
  287. 山田長司

    山田委員 法律的解釈はいいのです。
  288. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山田君に申し上げしますが、教科書問題とだいぶ離れているようでありますが、なるべく核心に触れるようにお願いします。
  289. 山田長司

    山田委員 私は教科書に関する学生協の問題を聞こうとしておるが、証人が言わないから、そのことについてだけ……。
  290. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 それはわかっておりますが、なるべく教科書問題について発言を願いたいという委員長の希望であります。
  291. 山田長司

    山田委員 証人はかつて日教組の重要な立場に置かれていたというが、どういう事情でおやめになったかわからぬですけれども、やめられた。日本週報にあなたの名前入りで日教組のことが書かれておる。さらに新政治という雑誌にも日教組の悪口を長々と書いておる。さらに先はどから問題になっております「全貌」にも日教組のことが書かれているが、日教組の問題を「全貌」に書かれているのはあなたが書いたものか、それともあなたが口述筆記で教科書問題その他を書かしたものかどちらがほんとうであるか、一応明確にしておいていただきたいと思うのです。
  292. 石井一朝

    石井証人 方々へ書いたものですから、「全貌」へどういうものが載っておるか、しかと記憶はありませんが、私の書いたものもあったと思います。口述で筆記していただいたというのではなくて、しゃべって書かしたというのもあったと思います。
  293. 山田長司

    山田委員 そこで、一応あなたが書いたものかどうか、この「全貌」の……。
  294. 石井一朝

    石井証人 内容を見ないとわかりません。
  295. 山田長司

    山田委員 この中にたくさんわれわれ同僚議員名前がずっと連ねてある。たとえば野原、辻原、荒木正三郎あるいは小笠原二三男というような名前が書かれているが、この点についてあなたは明確に言われておって、口述なされたものですか。
  296. 石井一朝

    石井証人 そういう名前は私はしゃべったと思います。
  297. 山田長司

    山田委員 この際これは確認されるというわけですね。
  298. 石井一朝

    石井証人 先ほどの、個別に御質問を受けまして個別にお答えをいたしました。それを御想起願いたいと思います。
  299. 山田長司

    山田委員 この書物の中から私はさらにあなたに伺うのですが、講師団というものの作られた教科書について、これがいかにもはっきりと、偏したものの書き方をしておるということを明確に言っておるわけですが、この点については、あなたは講師団というもりのメンバーがいずれも偏したものの考え方を持っておる人たちと断定するりかどうか。
  300. 石井一朝

    石井証人 繰り返して申し上げますように、総じて全員の方がそうであると私は申し上げているのではなくて、その中に教科書を現に書いていらっしやる人もある、その書かれた教科書を午前中取り上げて、そこに現われた現象を指摘したのですから、おわかりのことと思います。
  301. 山田長司

    山田委員 これらの考え方は、令部あの考え方に通ずるものであるということを言っておるのです。
  302. 石井一朝

    石井証人 どの考え方ですか。
  303. 山田長司

    山田委員 講師団の書かれている書物、あの考え方に通ずるものであるということを言っているのです。あの考え方とは、あなたは何をさして言われるのか、一応伺います。
  304. 石井一朝

    石井証人 御質問申し上げるのは何か規則に上ると不穏当のようでありますが、あのとはどこに書いてあるものですか。
  305. 山田長司

    山田委員 あの考え方に通ずるということを言っているのです。講師団の書かれた書物の内容その他が。
  306. 石井一朝

    石井証人 ちょっと文書を読ましていただけませんか。正確にお答えいたします関係上。   〔山田委員石井証人に書類を示す〕
  307. 石井一朝

    石井証人 お答えいたします。これは正確な言葉であるかどうかはちょっと疑問がありますが、こういう意味のことであるということだけはわかります。日教組の考えている平和運動ですか、そういう平和運動とか平和闘争とか言われるもの、それから平和教育とか称する一連の平和運動の中身でございます。その思想に近い。それは、厳密に詳しく申し上げますと、日教組の採択基準に現われているものなんです。平和を妨げているものは社会の矛盾なんだという考え方ですね。午前中スターリン論文で申し上げましたその考えであります。その平和運動については私は確固たる信念を持っているのです。平和運動、平和けっこうだが、階級闘争の特殊な形態としての平和運動は賛成できないという確固たる信念を私は持っております。この平和運動の元祖はソ連でありまして、ソ連のF・チェルノフという男が「マルクス・レーニン主義の階級闘争及び民族闘争理論」という書物を書きまして、これは共産党の諸君などもよく知っているようでありますが、その中にこういうことが書いてあります。(「そんなことはいい」と呼ぶ者あり)これは明らかにしたいと思うのです。階級闘争の特殊な形態としての平和のための闘争は、きわめて広範な人民大衆を政治闘争に引き入れることを可能にしている点で特徴的であり、きわだっている、そういうことを書いてあるのです。私はこういう形態の平和運動は反対でございますので、日教組で言っている平和運動というものはこういう危険地帯に入も可能性を持っているということを前々から警告しておりましたし、そういう所信を明らかにいたしたのでございます。あの考えというのはそれであろうと思います。
  308. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山田君に申し上げますが、時間が参りましたので、簡潔にお願いします。
  309. 山田長司

    山田委員 あなたは警視庁の二課の刑事のだれと常に会っていますか。
  310. 石井一朝

    石井証人 常に会っているなどという方はございません。
  311. 山田長司

    山田委員 ときどきでもいいです。会っている人の名前を明確にして下さい。
  312. 石井一朝

    石井証人 二課であるか何課であるかはよく知りません。私のところへたずねてきた方がございます。これに応対をいたしました。この程度です。
  313. 山田長司

    山田委員 その人の名前を明確にして下さい。何回会っているか、回数も言って下さい。
  314. 石井一朝

    石井証人 斎藤と申される方であったと記憶いたしております。
  315. 山田長司

    山田委員 ほかにはないか、同時に、ほかに会っていも人がいるならば、それも明確に言って下さい。
  316. 石井一朝

    石井証人 そのほかにはございません。その方が事務所へたずねて下さったこともございました。回数は二、三度くらいです。
  317. 山田長司

    山田委員 斎藤、それも会っているでしょうが、もう一人会ってなければならぬはずです。その人とあなたに日教組に対する対策をとうして発表するかというようなことまで協議をしているはずですが、その名前をよく記憶を呼び出してお答えを願いたいと思います。
  318. 石井一朝

    石井証人 さような、何と申しますか、悪質の会議、討議をいたしたようなことはございません。
  319. 山田長司

    山田委員 悪質であろうとなかろうと、今まであなたが日教組の問題について会っていることの事実は明らかになっているのですから、このことについてきょう証人は明確にておりませんけれども、これが明らかになった場合にどういうようにあなたはお考えになられるか、一応このことを銘記しておいていただきたいと思います。
  320. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山田君に申し上げますが、時間が参りましたので、質問はそれで打ち切りでございますから……。証人はあの程度の証言をしているのですから。
  321. 山田長司

    山田委員 証人はやると言っておる。だから、やらしたらいいにじゃないか。
  322. 石井一朝

    石井証人 繊維疑獄問題で告発いたしますにつきましてお会いした方もあると思いますが、「記憶はさだかでございません。それはこれが罪に該当するかどうかということを確かめたかったわけであります。そういうことでお会いした方もあったと思いますが、お名前も何も覚えておりません。
  323. 山田長司

    山田委員 私が証人から伺いたい点は、学校職員生活協同組合というものをあなたが作って、しかもあなたが自分愛媛のほらを吹いておるけれども、一応いかにも生活協同組合が悪いことでもしでいるかのごとく言い振らしているが、実際は、日教組からあなたが出たことによって、この日教組をつぶそうという意図で、学生協からそのスタートを切ろうという意図で警視庁の刑事と会っている、今言われた斎藤以外の人と会っておるはずです。このことを今証人は記憶がないようなことを言われておるけれども、その点私の質問は一応終りますが、ありもしないことがかなりあるかのごとく言われておる点があって、ここに問題があるから私は聞いておるわけなんです。
  324. 石井一朝

    石井証人 そういういろいろな流説があるのでございます。私はこれを称してデマと称しております。非常に計画的な傾向があるので、あえて問題にしないことにしております。私が生協を作ったなんと申しますが、私が生協を作ったわけじゃないのです。私は生協を作りません。ただ、生協が教科書を扱うについていろいろと御指導を申し上げたという事実はございます。日教組をつぶすためにまず生協からやろうなんて、こういうことは全然考えたことはございません。日教組の現在のやり方に対して批判を持っております。それを是正したいと思いますので、主として言論戦を展開しておる。智さん御承知の通りであります。これは実に公正な手段であると考えております。ああいうふうな言い方が行われますと非常に問題がはずれるので、この点は私の方から申し上げておきます。
  325. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 この際お諮りいたします。時間も相当経過し、また証人も午前中からの尋問で相当お疲れのことと存じますので、本日の尋問はこの程度にいたし、来たる七月十一日午前十時同君に再び証人として出頭を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  326. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 御異議なしと認めます。よって今日はこの程度にいたします。  石井証人委員長より申しますが、ただいま決定いたしました通り、七月十一日午前十時本委員会に御出頭を願います。本日は長時間ありがとうございました。  なお、他の尋問予定の証人につきましては順次繰り延べることにいたしますから、さよう御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会