○米田
政府委員 ただいま
提案理由の
説明がございました
水防法の一部を
改正する
法律案につきまして、逐条的に御
説明を申し上げたいと思います。
まず第二条第五項の
改正でございますが、現行法におきましては
水防計画の内容として水閘門の操作を定めておくこととし、ダムをそのうちに含めて
現実に運用いたしておるのでありますが、字義上、水閘門のうちにダムを含めて解することは、やや困難でありますので、これを明確にいたしたものであります。ダム、水門、閘門等人為的に操作ができる
施設については、その操作の
方法によっては
災害を助長する危険のあるものであることはいうまでもないことでありまして、
洪水時において
水防上必要な操作と
水防との
関係をあらかじめ調整しておく必要があるものであります。
第二条第六項及び第七項は、新たに設けたのでありますが、第六項は、現行法第二十九条の中で
規定してありましたのを、条文の形式を整理するため、定義として
規定することといたしました。
第七項につきましては、後ほど申し上げますが、本
改正法では、
建設大臣及び
都道府県知事が
水防警報を行うこととなっておりますので、その定義を明らかにいたしたものであります。すなわち
水防警報とは、
洪水予報、気象
予報等の
予報により、またはみずからの水位、流量その他
河川の状況の判断により、
洪水または
高潮による
災害が起る危険があるときに、
関係水防管理団体に対し
水防を行う必要がある旨を警告することでありまして、これによって
水防上必要な指針を与え、
水防活動が迅速かつ適期に行われることを確保しようとするものであります。
第六条第二項中「扶助」を削りまして、第六条の二の
規定を新設いたしましたのは、
水防団長、
水防団員の
災害補償の
制度を確立いたしたものでありまして、
水防団長、
水防団員が
公務により死傷した場合における善後措置につきましては、現行法においては、扶助という名目で
水防管理団体の措置にまかせられておるのでありますが、この際見舞金的性格を持つ扶助をやめ、
公務災害補償として
水防管埋団体の義務といたしたのであります。
補償の
基準につきましては
水防管理団体が議決または条例で定めるのでありますが、国といたしましては準則を定めまして、少くとも消防機関に属する者が受けておる
補償と均衡を失わないよう指導いたしたいと
考えております。
第十条の
改正は、
洪水予報に関するものであります。現行法第十条の見出しは「気象
予報」となっておりますが、実体は
洪水予報に関する
規定でございまして、現在も
中央気象台はこの
規定によりまして、気象の観測から判断いたしまして、
洪水または
高潮のおそれがあることを
予報し、
建設大臣及び知事に通知いたしますとともに、一般に周知の措置をとっておるのであります。見出し及び第一項の
改正は、この際実体に即した見出しをつけるとともに、字句の整理を行なったものであります。
第二項は、新たに水位、流量を示す
洪水予報に関する
規定の整備を行なったものであります。現在利根川、
淀川等重要な
河川につきましては、
建設大臣及び
中央気象台が協力して、すでに水位、流量を示した
洪水予報を行なっておるのでありますが、この際これを
法律上の
制度として確立することによりまして、より的確迅速なる
予報を行うとともに、さらに他の
重要河川にもこれを及ぼしていきたいと
考えております。水位、流量を示す
洪水予報を行うためには、
河川の状況、上流の水位、流量、実降雨量、予想雨量等を総合的に判断してなさなければならないものでありまして、これがため
建設大臣と
中央気象台とは共同して行うことといたした次第であります。実施に当りましては、両者があらかじめ基本協定をつくり、運用に遅滞、そごを来たすことのないよういたす所存であります。
なお、
予報の結果につきましては、
建設大臣及び
中央気象台がそれぞれ全面的に責任を有するものであります。
第三項は、
洪水予報を行う
河川の指定でありまして、
建設大臣が運輸
大臣に協議して定めることといたしました。
第十条の二は、知事が、
洪水予報を受けた場合において
水防管理者等に通知する旨の
規定であります。現行法第二十九条は、これと同一趣旨のものでありますが、指定
水防管理団体のみに関するものでありますので、これをその他の
水防管理団体にも及ぼすものとし、かつ
洪水予報との関連を明らかにする意味において、
水防活動の章に
規定したものであります。
第十条の三は、第十条の二による通知により、またはみずから判断して、
洪水または
高潮のおそれがあることを知った場合における
水防管理者等の通報義務に関する
規定でありますが、これも現行法第三十条にありますのを、前に述べたと同一の趣旨により本章に
規定いたしたものであります。
第十条の四は、定義の御
説明の際申し上げました
水防警報に関する実体
規定でございます。第一項は、
建設大臣及び
都道府県知事の
水防警報を行うべき義務と、
建設大臣及び
都道府県知事が
水防警報を行う
河川、
湖沼または
海岸について、包括的にその分野を定めたものであります。第二項及び第三項は、
水防警報を発した場合における警報事項の伝達に関する
規定であり、第四項は、第一項によりまして
建設大臣または
都道府県知事が
水防警報を行う場合における
河川湖沼、
海岸についての公示の
規定であります。
第十条の五は、
水防団及び消防機関の出動に関する
規定でありまして、現行法第三十一条と同一の趣旨でありますが、
対象を、指定された
水防管理団体のみならず、その他の
水防管理団体にも及ぼすこととし、
水防警報と出動の
関係を明確に
規定したものであります。
第十六条の
改正は、
水防管理団体が、
水防のため緊急の必要があって、他の
水防管理団体、または市町村に応援を求めた場合における
費用は、応援を求めた
水防管理団体が負担する旨を明確にいたしたものであります。
第二十条第二項は、
水防上緊急を要する通信のために、
建設大臣、
都道府県知事、
水防管理者等が優先的に利用できる通信
施設のうち、日本発送電株式
会社通信
施設につきましては、同社はすでに廃止されておりますため、これを電気事業通信
施設と改めたものであります。
第二十九条から第三十一条までの
規定は、さきに申し上げました
通り、第三章
水防活動の章に、第十条の二、第十条の三、及び第十条の五の
規定を設けましたので、これを削除することといたしました。
第三十二条の二は、
水防管理団体の
水防によって利益を受ける市町村の
費用負担の
規定でございます。
洪水または
高潮により、一たん堤防が決壊し、またははんらんいたしました場合におきましては、その及ぶところきわめて広範な区域にわたる場合がしばしばあるのでありまして、
水防管理団体の
水防は、単に当該
水防管理団体のみならず、他の市町村を利すること人なるものがあります。かかる場合におきまして、当該
水防に要する
費用を、
水防を行なった団体、
水防管理団体のみの負担に帰せしめず、利益を受ける市町村にも負担をさすことは、公平の見地からぜひとも必要であります。よって新たに受益市町村の
費用負担
制度を定め、
費用負担の責任を明確にいたすことといたしました。第一項は受益市町村の
費用分担に関する基本的
規定であります。第二項は受益市町村が
費用を負担する場合に、その額及び負担の
方法につきまして、当事者が協議して定めることといたしました。第三項及び第四項は、協議が成立しない場合においては、
都道府県知事が、当事者の申請に基きまして、あっせんをなし得る
規定を設けたものであります。
第三十三条の二は、
水防に要する
費用についての国の補助に附する
規定であります。現在国は、
予算措置でもって
水防施設に要する
費用の補助をなしておるのでありますが、これを
法律上の補助とすることによって、
水防に関する補助の
制度を整備し、国の責任と管理を明確にいたしたものであります。第二項は、国の補助は、
国民経済上、
洪水による影響が重大な
河川についてなされること、補助
対象となる
水防施設の範囲は、政令で定めること、補助率は、都道府県が
水防管理団体に対し補助する額の二分の一以内とすること等について
規定し、第三項では国の補助額の限度は、
水防施設の設置に要する
費用の総額の三分の一以内とすることについて
規定いたしたものであります。
第三十四条の
改正は、現行法において、一般居住者が
水防に従事したことにより死傷した場合に、扶助金を支給することといたしましたので、
水防管理団体が
災害補償をなすべき義務があることを明確にいたしたものであります。
基準につきましては、準則により指導いたしたいと存じますが、大体の
考えを申し上げますと、警察官に扶助した
災害給付に関する
法律の例にならいまして、給付基礎額を定めて
補償するようにいたしたいと
考えております。なお第十六条の
規定により応援した
水防団員等に対しても、本条の
対象となっておりましたが、これは第六条の二によって、それぞれ所属
水防管理団体が
補償することといたしました。
第三十四条の二は、
水防に従事した者で、当該
水防に関し著しい
功労があったものに対し、その
功労に報いる
報賞の
制度を設けたものであります。現在におきましても、
水防功労者
報賞の費目から
水防犠牲者に対して
報賞金を支給していたのでありますが、その
制度上の根拠を明らかにしたものであります。
報賞の具体的な
方法につきましては
建設省令で定めるのでありますが、その
功労の
程度、献身の
程度によりまして、差をつけたいと
考えております。特に
水防により死傷した方に対しましては、相当な金品を交付することを考慮いたしております。
第三十五条の二は、
建設大臣及び
都道府県知事の
水防に関する助言及び勧告の権限を明確にして、
水防活動がより強力に運営できるようにしたものであります。
次に、附則について御
説明申し上げます。第一項は、施行期日に関するものでありまして、公布の日から施行することといたしました。
第二項は、気象業務法の
改正でありますが、気象業務法の気象業務に関する基本的
制度に関する
法律でありまして、気象、地象、水象等に関する観測、
予報、警報等につき、
中央気象台の権限及び責任並びにそれらに関する
制度を定めたものであります。今回の
水防法の
改正によりまして、
水防活動との関連において、
水防活動の利用に適合する
洪水予報の
規定が整備され、
建設大臣が
中央気象台と共同して行う
洪水予報の
規定が設けられましたので、
洪水予報の
制度の観点から
規定しいる気象業務法を
改正する必要を生じたのであります。
まず同法第十三条の
改正についてであります。現在
中央気象台は、第十三条第二項の
規定により、
洪水について、主として気象の観測により、一般の利用に適合する
予報及び警報を提供することができることとなっておるのでありますが、
洪水の影響及ぶところが甚大であることにかんがみ、
中央気象台が行わなければならないことといたし、所要の
改正を行なったものであります。
第十四条の二は、
水防活動の利用に適合する
予報及び警報の
制度に関する
規定であります。これはさきに述べました
通り、本条は
水防法第十条に対応する
規定でございまして、第一項は、
水防法第十条第一項に対応して
中央気象台が行う
高潮、
洪水等の
予報及び警報について、第二項は、
水防法第十条第二項に対応して、
重要河川について
中央気象台が
建設大臣と共同して水位、流量を示して行う
洪水の
予報及び警報について
規定したものであります。第三項は
予報及び警報をする場合における周知措置について、一般の利用に適合する
予報及び警報等、同一の措置をとる必要がありますので、第十三条第三項を準用したものであります。第四項は、気象業務法によりますと、
中央気象台以外の者が
予報業務を行う場合には、第十七条の
規定により運輸
大臣の許可を要することとなっており、また
中央気象台以外の者が警報を行うことは、第二十三条の
規定により禁止されているのでありますが、
建設大臣が
水防法及び気象業務法に基いて、
洪水の
予報及び警報をする場合には、当然のこととして適用がない旨を宣言いたしたのであります。
第十五条の
改正は、
水防活動の利用に適合する
予報の性格上、警報事項を通知さす相手方に、
建設省及び都道府県の機関を加えたものであります。
第十七条、第二十四条及び第三十七条の
改正は、第十三条の
改正に伴い、字句の整理を行なったものであります。
次に附則第三項は、
建設省設置法の
改正であります。
建設大臣が
洪水予報及び
水防警報を行うこととなったため、建設本省及び地方建設局の所掌事務に関し、
規定の整備を行なったものであります。
さらに北海道におきましては、北海道開発局が
建設省の事務を分掌することとなっておりますので、北海道開発法を
改正し、
洪水予報及び
水防警報の実施は北海道開発局が所掌し、
建設大臣が主務
大臣としてこれを監督することといたしました。
以上が本法案の内容でございますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御議決あらんことを切望いたします。