○
小峰会計検査院説明員 建設省の二十八年度の
検査結果につきまして御
説明申し上げます。
建設省の支出いたしました
河川改修、
道路改良直轄工事及び
災害復旧国庫負担工事等に要しました
経費は千三百三十一億余万円の大きな額に上っております。
地方建設局管下工事事務所などは百六十七カ所ありまして
直轄工事を担当いたしておりますが、このうち五十一カ所につきまして
実地検査をいたしました。それから
地方公共団体が施工する
国庫負担工事等に対しましては、八百二十七億余万円の大きな金を交付しておるわけであります。このうちの
現場につきまして約一一%ほど
検査したのでありますが、一
工事十万円以上の
不当工事というのが四百五十一
工事、
国庫負担金におきまして一億三千八百余万円、こうなっております。二〇三〇号以下に不当と認めた
事項を摘記してございますが、
直轄工事の施工が
疎漏のため手直しを要するものというのが二件、それから
直轄工事の
設計の
工事費の積算がまずいというのが三件ございます。
直轄工事については比較的経理がいいのでありまして、あまりたくさん
不当事項というのは上っておりません。二〇三六号以下に
補助金といたしまして、
地方公共団体が
施行いたしました
補助工事について
相当数の
批難事項が出ましたので、まとめて書いてございます。まず全国の
工事現場が四万七千ほどあったのでありますが、このうち一一・八%、五千六百四十四カ所の
実地検査をしたわけであります。その結果先ほど申し上げましたように、十万円以上の
不当工事というのが四百五十一
工事、一億三千八百万円、それが出たわけでありまして、一
欄表にいたしましてここに書いてございます。それから
個々の
案件については別表といたしましてあとの方に一欄にしてございます。
それから、代表的な
ケースといたしまして三〇六
ぺージ以下に若干掲載してございます。相当ございますが、このうち
幾つか代表的なものを拾って御
説明いたします。
まず三〇六ページの(1)とありますのは、これは三〇六六号としてあとに表に書いてある
ケースでありますが、秋田県山本都響村の百四十万円の
工事であります。
国庫負担金が百万円、これで
村道の
災害復旧をしたのでありますが、
法長五メートルで、
練石張を
施行したことにしておりますが、実際は百メートルのうち四十八メートルに
法長を一・七メートルでやっている。それから
下流部の三十八メートルは応急的な詰くい工を
施行しただけで
練石張は
施行していない、こういうわけであります。しかも
根入れも
不足いたしておりますので
胴木が抜け出し全面的にはらんでしまって、非常に
工事が
疎漏になっているわけであります。こういうぞんざいな
工事をしたと思われますが、
工事費は百四十万円かかったということにして
国庫負担金を百万円もらったのでありますが、実際の
工事費はわずか五十五万円しかかかっていない。四十五万円
国庫負担金を余らしてしまって、村の
一般経費に充てている、こういう
ケースであります。これはいわゆる
疎漏工事の代表的な
ケースであります。
それからその次の(2)でありますが、これは
出来高不足、
設計過大が若干入っておりますが、
出来高不足で、しかも
事業主体が
国庫負担金だけで
工事してしまって、なお余らしている、こういう
ケースであります。愛知県の幡豆郡の横須賀村の二千七百万円の
工事、
国庫負担金が二千三百万であります。これは七件の
災害復旧をやったわけでありますが、たとえば石垣で申しますと、
裏込ぐり石をほとんどやっていない。また先ほどと同じように、
法長も
不足している、こんな
関係で
工事は千二百万円で済んでしまった。村は四百万円ほど負担するはずだったのでありますが、全然負担しないで、二千三百万円の
国庫負担金のうち千万円余らしてしまった。そうしてそのうちの四百八十万円で
査定外の
工事をやっている、こういう
ケースであります。
それから
一つおきまして(4)、
和歌山県の
水軒川の
災害復旧であります。これは県が直営しておりますもので、
工事費八百七十万円で
護岸の
災害復旧をした、こういうことになっております。
国庫負担金が六百二十八万円いっておりますが、実際は六百八十万円しか金がかからなかった。そうして
人夫賃につけがけいたしまして百九十万円ほど捻出いたしまして、ほかの
工事、県で負担すべき
工事に使っているし、残りが七十五万円ほどありますが、これを預金で持っている、こういうことであります。県の
直営工場でこういうことをやるのはちょっと珍しい
ケースであります。
それから飛びまして(6)、
山口の干見折川の
災害復旧でありますが、これは四百二十万でやることにして、
国庫負担金が三百万円いったのであります。これは昨年の
検査報告で、
渡船を使っているのを、橋があったことにいたしまして、
百間橋というりっぱな
コンクリートの橋を作ったという
ケースがございますが、それの取りつけ
道路であります。せっかく橋ができましたが、取りつけ
道路ができていないために、現在橋がまだ使われていないのであります。その取りつけ
道路を今度は作るために、
災害を受けもしないのに受けたことにしてやっている途中に私
ども検査に行ったわけであります。
百間橋のかかっております川の支流の
堤防に小さい
道路があったのでありますが、これを自動車が通るような大きな道に直しまして、そして国道とつなごう、こういう
目的のためにやったのであります。これは
災害をまるきり受けていなかったわけであります。
それからその次の
山口県大津郡の油谷町の
ケースであります。これは三百四十八万円で、
渡船が
災害を受けて流されてこわれた、こういうことで
国庫負担金が三百十四万円いったのでありますが、実際はこの船は全然沈没しておらぬ。そうしてほかの全然
関係のないところで沈没しました船の写真をつけまして
国庫負担金の申請をしたわけであります。これがまんまと通ってしまいまして、結局新しいりっぱな船を作りまして、元の船はほかへ売ってしまった、こういう
ケースであります。これなんかは非常に珍しいのでありますが、先般来
参議院あたりでもだいぶ問題になりまして、
新聞なんかにも大きく出たわけであります。
それからもう二つほど申し上げますが、(8)の松山、これはやはり
疎漏工事の代表的な
ケースであります。これは海岸の
堤防二千百六十五
平方米を
施行したわけでありますが、
工事費が二百五十五万円、
国庫負担金が二百四十一万円でありますが、
根入れを満足にやっていない。そのためにでき上ってすぐにこわれてしまった、こういう
ケースであります。そして金が余りまして、
国庫負担金二百四十一万円のうち五十五万四千円余らしてしまったわけであります。もちろん地元は一文も負担しておりません。この五十五万円を余らして、これを小学校の校庭の
整地工事費に使っていたという
ケースであります。
その次の(9)のやはり四国の宿毛でありますが、これは
架空工事の代表的な
ケースなのであります。九十九万六千円で
道路の
災害復旧をしたということにして、
国庫負担金が六十九万七千円いったのでありますが、実際はその
道路はこわれていない、
災害を受けていない、
工事も何もやっていないで、まるまるこれは
補助金をとってしまったわけであります。
以上は従来やっておりました
工事の
事後検査の代表的な
ケースをお話ししたわけであります。従来
事後検査はずっと引き続いてやっておりますが、どうも
事後検査だけでは
検査の効果の万全を期し得ないというため、
早目に、
工事に着手する前に行って、たとえば
便乗工事とか
架空工事とかあるいは二重
査定、
建設省と
農林省と
両方から
査定をとって
補助金の二重取りをするというような
ケースが非常に多いのでありますが、こういうものを早く洗い落してしまわなければいかぬということを痛感したわけであります。
ところが二十八年は御承知のように異常な大
災害があり、しかも
国庫負担率が非常に高くなりましたので、従来のような
便乗工事なんかをどんどんやられてはかなわぬ、こういうことを考えましたので、昨年の一月から四月にかけまして、初めて事前の
早期検査というものをやったわけであります。やりましたところが、
農林省関係、
運輸省関係、
建設省関係、合せまして非常にいろいろなものが出てきて驚いたわけでありますが、結論を申し上げますと、
建設省関係で二十億円余りは
査定を減らしてもらう。
査定は
建設省がおやりになりますから、
会計検査院で
注意しておりますのは、
便乗がひどいものじゃないか、あるいは
農林省で
査定がついている、こういうようなことでいろいろお話しして、結局二十億円ほど
工事費で減ったわけであります。
農林省で申し上げますと、
農林省は八十七億円ほど減ったわけでありますが、
建設省は二十億円ほど減らしてもらうことになったわけであります。私
どもが
検査いたしましたのは、
査定額が一県で二十億円以上に上った
災害の大きいところをよって十五府県やったわけでありますが、四万七千八百ほど
工事個所があったわけであります。
査定額が九百六十九億円、そのうち私
どもが見ましたのが一万四百カ所、五百一億円について
早期の
検査を実施したわけでありますが、行ってみますと、先ほど申しましたように同一
個所の
工事を
建設省と
農林省が
両方で重複して
査定している、あるいは
建設省の
査定だけの場合でも
河川の
護岸工事と
道路の
鋪装工事等が重複しておった、そういうものが相当出てきたわけであります。また
災害を受けていないのに川の幅を広げたりあるいは
護岸改良をするというようないわゆる
便乗工事、それから
石崖や
コンクリートの材料を
工事の
現場付近で取れるのに遠方から運搬するようにして、
設計過大、
水増しといいますか、そういうものが非常にたくさん出てきたわけであります。三一二ページのところに
一覧表として出してございますが、結局二重
査定が三億七千万円、
便乗その他十二億、
設計過大が四億七千万円、合計で二十億五千万円、これを最終的に
建設省で減らすということになったわけであります。
個々の
ケースについて
幾つか代表的なものを御
説明いたします。
三一三ページの(2)でありますが、熊本県
阿蘇郡
白水村。
阿蘇郡は非常な
災害を受けまして、ずいぶん大きな
査定がついたのでありますが、これから申し上げる分はいわゆる二重
査定、
農林省と
建設省と同じ
工事に対して二重の
査定がついてしまった、こういう代表的なものであります。まず
査定総額が
一つの村で一億二千万円というような大きな
査定がついたわけでありますが、今の
白水村、それから隣の村の長陽村というのが五千百万円という
査定がついたのであります。ところがこれが別に
農林省で同じ
個所に
査定がついておりまして、完全にダブっている。そこでこれは全部減らしていただいたわけであります。
一つの川で図面を見ますとぴたっと合ってしまうのでありますが、川の名前だけ違っておったというのがこの中に入っております。今申しましたのは
農林省、
建設省両方で
査定が、ダブったのであります。
その次に
便乗、
改良その他
国庫負担の
対象としてはならないもの。こういうものに
査定がついたという代表的なものを申し上げます。三一四ページの(2)としてある
案件でありますが、福井県の遠敷郡
奥名田村の県道。これは千三百万円で
道路千五百二十メートルを幅員二・五メートルから三・五メートルに復旧するというので
査定がついたのでありますが、実際行ってみますと
国庫負担の
対象にならない小さい二メートル以下の小道で、しかも今度
工事をやったところで行きどまりになってしまいまして、その先には連絡する道がない、こういう
道路であります。
それからもう
一つ便乗の代表的な
ケース(4)であります。これは
和歌山県の紀の川。
和歌山県もずいぶんひどい
災害を受けたのであります。千九百万円の
査定で
護岸延長三百七十メートルる復旧することにいたしておりましたが、そのうち二百二十メートル
工事費千百万円については全く被害の事実がないのを
災害を受けたということで
改良工事をやる、こういう
ケースであります。
最後に
設計過大、
水増し設計と一口に言いますが、この代表的なのを
一つ御
説明しておきます。三一六ページの(2)であります。奈良県吉野郡の野迫川の
災害復旧であります。これは一億六千三百万円の大きな
査定がついたのであります。
コンクリートの
護岸延長五千七百二十二メートルを復旧することにいたしていたわけでありますが、
コンクリートの
砂利や砂が
現地に十分にある、それを使う
設計にしないで四キロも先から運搬することにしている。それから今の
砂利、砂を使いますと
河床堀さくも同時に行われるわけでありますが、その
河床堀さくは別に
工事費を見ているというので非常に大きな
設計過大が出たわけであります。一億六千三百万円のうち二千二百万円が過大だ、こういうことでこれは減らしていただいたわけであります。非常に簡単でございますが、ざっと御
説明申し上げました。御
質問にお答えいたします。