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1955-06-23 第22回国会 衆議院 決算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十三日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 上林與市郎君    理事 椎名悦三郎君 理事 徳安 實藏君    理事 山中 貞則君 理事 山田 長司君    理事 吉田 賢一君       床次 徳二君    横井 太郎君       生田 宏一君   小笠原八十美君       片島  港君    三鍋 義三君       細田 綱吉君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  窪谷 直光君         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局国有財         産第一課長)  天野 四郎君         大蔵事務官         (国税庁長官官         房会計課長)  喜田村健三君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      村山 達雄君         大蔵事務官         (国税庁徴収部         長)      中西 泰男君         会計検査院事務         官         (検査第一局         長)      保岡  豊君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十八年度政府関係機関決算報告書     —————————————
  2. 上林與市郎

    上林委員長 これより会議を開きます。  この際、一昨日の理事懇談会の趣旨に基きまして昨日の理事会で申し合せを行いました事項について、一言御報告を申し上げます。  本委員会において、ただいま審査をいたしております、昭和二十八年度決算に関する今後の審査方法についてでございますが、従来は各省庁等所管別にそれぞれ重点事項をあらかじめ研究の上決定し、その重点事項を中心に審査をいたして参りました。今後もこの方法により会計検査院検査報告中比較的重要と患われるものを重点事項として取り上げ、あらかじめ委員各位のお手元まで配付することといたしまして、昭和二十八年度決算審査については、これによって重点的に運びたいと存じます。なお重点事項以外のものについても、委員各位において必要と認められる場合においては随時審査を行うことにいたしたいと存じます。  なおお手元審査日程表通り開会日時をあらかじめ予定し、各省各庁所管別に順次審査を進めることにいたしましたが、これは一応会期の延長を予定し、会期中に農林省の所管まで審査を予定いたした次第でございます。  次に発言の時間についてでありますが、委員会会議の時間を十分考慮して、ただいまのところ小会派からの委員出席がございませんので、民主党、自由党、両派社会党の四党にそれぞれ時間を配分し、その範囲内において御発言を願いたいと存じます。ただし必要に応じ各党の間で話し合いの上、時間の割当は融通のあるものといたしたいと思います。  以上、昨日の理事会での申し合せ事項について、審議参考になる点だけを御報告いたした次第でございますが、御了承願いたいと思います。     —————————————
  3. 上林與市郎

    上林委員長 それではこれより昭和二十八年度決算報告中、大蔵省所管について審査を進めます。すなわち昭和二十八年度決算検査報告九十五ぺージより百二十七ページにわたる報告番号五四ないし八三三を一括議題として、審査の促進上そのうち報告番号五四ないし五八、七五、七九、九二、九六、一〇一、一〇三ないし一〇九、一二四ないし一二六、一二八及び一二九を重点事項といたします。右のうち租税の項については会計検査院及び国税庁当局より説明を聴取いたし、質疑に入っておりますので、本日はまず大蔵省所管のうち租税の項を除く部分についての説明を聴取し、そのあと大蔵省所管について一括して質疑に入りたいと存じます。  会計検査院説明を求める前に、お手元昭和二十八年度決算審議重点事項案というものを配付してありますが、これは昨日の理事会でいろいろ御相談申し上げました点を重点といたしまして、調査員室調査員並び調査主事の御勉強を願い、審議に資する点だけをとりまとめて配付しておりますので、御参考にしていただきたいと思います。なお決算委員会審議日程表を配付しておりますので、これも御参考にしていただきたいと思います。それでは保岡検査第一局長より説明を求めます。保岡説明員
  4. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 先般租税案件につきましては、全部の案件につきまして御説明申し上げましたから、本日は国有財産について一応重点的に申し上げます。国有財産案件といたしましては、百五ページ物件九五から始まっております。九五から九八は「旧軍用財産整理が著しく遅延しているもの」というもので、これは二十七年度にも取り上げた問題でありますが、国有財産台帳に記載されていないもの、これが一番管理ができないのでありますが、従って使用料徴収決定もしていない、そのうちに借り受け人によってほしいままに処分されているというのが従来からあったわけであります。二十八年もその案件がたくさんあるのでありますが、ここに四件だけ特に著しいものを出しました。そのうち重点と思われます九六号について御説明いたしますと、山北の江戸川化学工業過酸化水素製造装置の一部を使用させたまま長期にわたって放置していたものでありまして、台帳記載漏れもありましたし、付属品の破損、亡失に対して損害求償をしていなかったというのであります。こういう種類のものがこの会社以外にまだ二十社ばかりございまして、同じ状態であるということを知りましたので、本年四月当局にそれを掲げて照会いたしまして、当局処理を期待しているわけであります。その処理に対する回答はまだ受け取っておりません。以上遅延しているものについて重点的に御説明申し上げました。  次に「契約外物件を搬出されたもの」これは売り渡し物件買い取り人が搬出するときに売らない物まで持ち出されてしまったものでありまして、契約履行現場監督の不十分と考えられるのが九九と一〇〇であります。  次に一〇一について説明申し上げます。一〇一号は二十三年九月から使用させていました機械鉱山土砂崩壊埋没返還不能となったという申し出を受けまして、四十万円の現品のかわりに鉄くず三トン、六万円程度のものを提供させて、現品返還されて現存していたように台帳は落さずに置いておきまして、昨年になって、他のくず化機械を売り払ったときに便乗いたしまして、この鉄くず三トンを売り渡し、表面は返還されていた機械を売ったことにして、そのとき台帳から落していたという件であります。金額は大きくありませんが、物件貸付管理をいたしまして、埋没したという日が二十四年三月、埋没したと申し出た日が二十六年十一月というのが第一おかしいのでありまして、また使用させる使用条件炭鉱用機械器具製作用でありまして、鉱山に持ち込むことは違背ではないかとも考えられますし、どこまでも現品返還またはこれにかわる求償をすべきものであるのに、くず鉄三トンで手を打ったということ、その後また作為の経理処理をしていたという点で取り上げたものであります。  次の一〇二と一〇三はともに売り渡し価格が低価なものという件でありますが、この一〇二はそれに管理が悪かった、徴収決定未済であったというのも含んでおります。重点といたしまして一〇三号を説明いたします。  一〇三号は、今申しましたように売り渡し価格が低価だというものでありますが、これはボンベを売り渡したのであります。この売り渡す場合に、価格の基準となります現品価格調査が徹底した調査とは認められなかったのでありますし、この経過年数も適当にとっておられない点で欠点があるものであります。本院で調査した上実情に合せて計算いたしますと、全体で四百四十八万円という計算が出ます。実際売られたものは全体で百六十二万円でありますが、四百四十八円という計算が出ます。これは一個当り特殊鋼製品は十万円となりまして、これでも当時の売買実例価格を下回る程度になります。相手方も現に使用しているものでありますし、これで十分取引ができたと思います。比較的市場性のあるこのような物件公開入札によらないで売り渡すときには、特に事前に調査を慎重にされて予定価格を作成されなければならぬというのであります。この安く売却したという案件は、二十七年度には相当ありましたけれども、三十八年度は非常に減っております。当局の御留意になった結果と思います。  次に一〇四から一〇九は、用途を指定して売り渡したもの、それが転売されていた、転売されていたにもかかわらずそのままに放置されていた、こういうのであります。  簡単に申し上げますと、一〇四号は、元海軍水路部土地工作物工作物というのはコンクリートへい七十一間ばかりでございますが、これを巴冷蔵に二十五年十二月に売ったものを三年経過いたしました二十九年二月指定した用途に供していないので注意いたしましたところ、その後七月に組合連合会によりまして競売されてしまったのであります。  一〇五号は、二十六年一月に元統計局の隣の土地工作物はやはりへい、木柵でありますが、これを母子寮遺児寮などの施設に使用する条件売り渡したものでありますが、六月、八月に松竹と日本輸出林業転売したもの、次の三件はともに元貯金局土地でありまして、一〇六号は二十六年三月機械器具集積倉庫敷地として萱場工業に、一〇七号は、事務所及び倉庫敷地として倉田商店に、また一〇八号は、四月工場及び倉庫敷地として日本産業売り渡したものであります。ともにこれを東京築地青果に六月、九月、十月に転売しました。一〇九号は、二十六年二月聖霊病院に滋賀県の元飛行隊建物解体移築条件として、病院建築資材として売り渡したものを、その解体業者である山本鋼業転売してしまったのであります。以上の転売差益の合計を集計してみますと、四千五百十万七千九百九十六円となります。  次の一一〇号から一二七号は、売り渡し代金使用料徴収処置の当を得ないものというのでありまして、一一〇号と一一一号は、これは売り払いでありまして、代金納付前に引き渡してはいけないのでありますが、代金納付前に引き渡して収納がおくれているわけであります。  一二一号から十六件は、使用料に対しまして当然の債権であります徴収決定がしていなかったものを取り上げたもので、原因といたしましては、売払予定とか、売払申請のあったために延び延びになったという理由のものが争いのでありまして、このうち九件であります。そこで二十九年九月末に徴収決定未済額とこの表から合計いたしますと二千三百万円でありますが、このうち今申しました売渡し関係して延び延びになったというものが大部分で、千八百万円であります。  このうちの重点として今お引きしましたものとちょっと遣うかもしれませんけれども、一二四号、これはおしまいから四番目でありますが、相国寺境内地で譲与から除外された土地を同志社大学、染織試験所成安女子学園洋裁専門学校などが使用しておる。それですから、二十二年五月以降の使用料徴収すべき筋合いのものでありますが、それが徴収していなかった。  一二五号は、多賀城海軍工廠土地二万余坪、建物三千余坪のうち、土地一万五千坪、建物二千坪を多賀城製鋼というものに使用させていたのですが、二十七年、二十八年画年度徴収決定していなかったものであります。これも売り払いの申請があったものですからおくれたという理由であります。  それから一二六号は、四日市燃料廠山の手福利施設外十七カ所の電力線路架空電線売り渡したのでありますが、売り渡すまで使用していたのでありますから、当然その使用料徴収するのが筋合いというわけであります。  次に不正行為のうち一二八号、これは一一八ページになりますが、これは高茶屋、鈴鹿の二つの場所の国有財産管理及び管守等を業務としておりました職員がとったというのでありますから、これは処置ないわけでありまして、管理として最も悪いと思うのであります。  以上御説明申し上げました国有財産に関する案件は、一〇三号を除くほかはみな管理欠点が多かれ少かれ付随しております。国有財産管理改善がまだ望まれるわけであります。  以上説明申し上げました。
  5. 上林與市郎

    上林委員長 次に大蔵省当局において補足説町があればこれを許します。管財局長
  6. 窪谷直光

    窪谷政府委員 会計検査院当局から詳細に御説明がございましたので補足して申し上げることもないかと思いますが、一言補足的に説明を申し上げたいと思います。  固有財産管理処分につきましては、日夜その適正ならんことを期して努力をいたしておるのでありますが、二十八年度の決算におきましてもまたこういうふうな指摘を見ましてはなはだ遺憾に存ずる次第でございます。検査院の初めの方で御指摘になりました旧軍用財産整理が著しく遅延しておるという問題でございますが、これは当初相当膨大な財産を所有いたしまして、しかも当時空爆その他の関係記録書類等を焼失しておったもの、あるいはまた終戦の当時に焼失をされたものというふうなことがありまして、未整理のものがなおあると思うのでありますが、これはずっと引き継ぎまして鋭意その整理努力をいたしておるのであります。だんだんとその事務が進捗をいたして参っておるのでありますが、なお完全な整理をいたしますにはあと若干の時日を要するかというふうに考えております。  それから次の契約外物件を搬出されたものという件でありますが、これはまことに現場監督の不行き届きであります。何とも恐縮にたえない次第であります。こういうことのないように将来注意をいたしたいと思います。  それから一〇一番の機械亡失しておるにもかかわらず、土砂埋没をしたということにいたしまして整理いたした件でございますが、これは当初機械貸付をいたしまして、その後土砂によって埋没をして返還が不能になったという申し出があったのでありまして、そこで直ちに損害賠償請求をいたしたのでありますが、相手方がなかなか応じないということから、できるだけ国損を少くするという意味で、さしあたりその相手方が持っておりました鉄くず三トンを提供させたということでございます。その整理がはなはだ不明朗であったということでございまして、まことに恐縮に存ずるのでございますが、その後善後措置といたしまして、これは成規の手続によりまして整理がえをいたしますと同時に、貸付相手方であります原口某に対しまして、使用料請求並びに機械亡失損害賠償というものも請求をいたしておるのでありますが、原口某事業に失敗をいたしまして、全然別の小さな事業をやっておりまして、現在までにわずか一万円程度しか回収ができておらないのでございます。生活にもなかなか苦しいというふうな状況でありまして、一時にこれを回収するということは不可能な状況でございますが、相手方もできるだけ返したいということでございますので、若干時間をかけましてもその国損補てんに努めたいというふうに考えておる次第でございます。  それから次の機械器具売渡価額が低きに失したという問題でございますが、これの売払価格につきましても、できるだけ精通者等意見も徴しまして、誤りなきを期しておるのでありまして、この一〇三番で御指摘がありましたものにつきましても、一応とにかく意見を徴したのでありますけれども、その意見の徴し方が不十分であったということからこういう事態が起って参ったのであります。今後はさらにもう少し広い範囲に、精通者意見等を十分に徴してやって参りたいと思うのであります。ただここで御指摘をいただきましたものそのものにつきましてはなかなかこれはそう需要が多くあるというものではございませんで、実はこれと同様のものを昨年及びことしの初めにかけまして入札処分をいたそうといたしたのでありますが、この大多喜天然瓦斯に売り払いました価格までに達しない入札価格でありまして、これは契約ができないでおる、売り渡しをいたさないでまだ今日まで保存をいたしておるというようなものでございまして、なかなかこの中古品価格につきまして、こういうふうな理論的な、指数的な方法では必ずしもいきにくい面もありますので、これにつきましては、十分に精通者意見等を徴した上で処置しなければならないというふうに考えておる次第であります。  それから次の用途指定違反の問題でございます。ここに検査院から御指摘をいただきましたものが数件ございますが、はなはだ遺憾なことでございまして、しかも転売等によって物件回収がなかなかできない。なおかつこの転売に至りましたのは、その事業体の財政不如意というようなことが多分に原因をいたしておりますので、損害賠償をいたしましても、なかなかその回収が困難であるというふうな状況でございます。従いまして今後におきましては、用途指定をして売り払います場合には相手方の資力、信用なりあるいは事業遂行能力なりというようなものをできるだけ十分に調査をいたしまして、そういうような事業の蹉跌が起らないと認められるものに対して売り払いをいたすというふうなこと、それからさらに従来はその売り渡しをいたしましたあと監査がなかなか行き届かなかったのでございますが、三十年度から国有財産監査官という専門の係を置きまして、計画的に用途指定をして、売り払いました財産がその指定通りに適正に使用されておるかどうかということにつきまして監査をいたしまして、違反事項を未然に防止をするということに努めることを主眼といたしたいと思うのでありますが、なお違反が起りました後に発見が非常におくれますと、ますます処置が困難に相なるので、できるだけすみやかに発見をして適宜の善後措置をとるというふうなことで仕事を進めたいというふうに考えておる次第であります。  次に、国有財産売渡代金及び使用料徴収が妥当でないという点でございますが、これは先ほど会計検査院から御説明があった通りのことでありまして、売り払い交渉がありましたので、売り払い交渉が成立をいたしましたときに整理をいたすというふうな考え方も、これを担当いたしました部局にあったようでありますが、それもわずかな日数ならそういう処置もあるいはやむを得ないかと思われますけれども、こういう長い期間交渉中だというので放置するのはまことに遺憾なことでありまして、こういう点につきましても事務改善努力をしていきたいというふうに考える次第であります。  最後に、一二八番の職員不正行為でございますが、これはまことに残念しごくなことでございまして、職員の公正な職務の執行というのは行政の基本でございます。私どもといたしましても常にあらゆる機会にこういう非違の起らないようにということで戒心を求めておったのでありますが、こういうふうな非違を惹起いたしましてまことに申しわけなく存ずる次第であります。この職員はそれぞれ刑事の裁判にかかりまして、第一審の判決がありました。さらに不服といたします者が高等裁判所に控訴を提起いたしたのでありますが、本年の二月の中旬に高等裁判所判決がございまして、それぞれ刑が確定をいたしておるのであります。また行政上の処置といたしましても、それぞれ懲戒免職その他の処置を講じておるような次第であります。なお横領をいたしました金額が三百二十六万円ということに相なっておりますが、これも本人からできるだけ回収をするという建前で、五月末までにわずかではございますが、十六万八千円だけ回収ができて参りまして、あとは月賦その他の方法でできるだけ国損補てんに善処いたしたいというふうに考えておる次第あります。  簡単でございますが、検査院の御報告を補足いたしまして、御説明した次第であります。
  7. 上林與市郎

    上林委員長 それでは質疑通告がございますので、順次これを許します。私の手元には二人から通告がございますが順序はどうしましょうか。   〔「委員長一任」と呼ぶ者あり〕
  8. 上林與市郎

    上林委員長 それでは吉田委員
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 まず国税庁長官に伺います。できるだけ簡単に伺いますから、一つ簡明にお答えを願うことにしたいと存じます。  第一点は、足立税務署のできごとでありまして、納付済納税者に対して財産差し押えを執行したという事件であります。この納税者の名前は檜山庄吾であります。この内容は資料が出ておりますので、要点だけを一つ御説明願いたい。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまお尋ねの事項につきましては、昨日新聞紙上へ出ましたので、直ちに国税庁としましては、重大な関心を持ちまして調査いたしたわけでございます。その結果、大体事実は新聞に記載された通りのようでございますが、率直に申し上げまして、私が平素心がけておりますことに反することになりまして、まことに遺憾しごくのことだと実は存じております。問題は若干ございますが、税務署は最近古いものを整理する、これは私どもとしましては漫然とほったらかしておいてはいかぬ、注意して整理するようにと言っておりますので、このこと自体はいいことだと思います。ただその督促に当りましては、納まっているか、納まっていなかは特に念を入れて調べた上で、実際の督促をやれということをやかましく言っていたのでございますが、どうもそれを十分やっていない、部内書類のつき合せを十分にやらないで、現場に臨んだからでございますが、これは非常に遺憾なことだと思います。もう一点は、実際臨んだ場合に、御本人はおいでにならなかった、その際にいきなり差し押えまでやってしまうということは、これは非常に急ぎ過ぎた措置でございまして、常識上どうもそこまで行きましたことは当を得ない、行き過ぎの措置だと実は考えます。私、かねてから二重督促は絶対にしないように、いわんや納めた人の差し押えをするようなことはとんでもないことだと、常々警告を発しておったのでございますが、こういうことは非常に遺憾に存じております。今後私どもとしましては、こういうことが起きないように、この機会にさらに一そうの徹底をはかりまして、十分善処する考えでございます。なおその場合、税務署の方に伺った際に、納めたということをはっきり申し立てておらなかったということでありますが、これは部内調査を十分やりますれば、こういう問題は起きなかったわけでございます。そういうことは一応の言いわけとしか聞えません。私どもとしましては、内部で納税したことが記録によって明らかである限りにおきましては、よく調査した上で行くべきでありまして、再びこういうような間違いがないように十分の注意をさせるようにいたしたいと存じます。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいま御答弁がありましたけれども速記録の上では、事実関係が明瞭になりませんと、何のために、何に対する御答弁であったかわかりませんので、どういう事実であったかということを概要御説明願いたい。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 徴収部長からその事実を御説明いたさせます。
  13. 中西泰男

    中西説明員 事実の概略を申し上げます。納税者は、今お話のありました檜山庄吾でございますが、それは昭和二十六度の再評価税でございまして、税額は二千七百三十円。これが納付期限の二十七年の二月二十八日を過ぎまして、滞納になりましたので、同年の四月二十八日に督促状を発送しております。それに従いまして月後同二十七年の七月十五日に係員が納税者の宅に出張いたしまして、千円を収入いたしております。その後二十八年の四月六日に納税者の方が署に来られまして、残額の千七百三十円を署内の派出銀行に払い込みになっておられます。納付状況はこういうことになっております。  それに対しまして、いわゆる台帳と申しますか、一人別の徴収簿には成規納付済みの消し込みが行われておるのでありますが、当該係員から滞納整理に出かけます徴収の係員への連絡が十分でなかったために、滞納処分票の消し込みが行われておらなかった。その処分票を持ちまして松田某事務官が納税者の宅に出かけまして、納付方を慫慂いたしましたところ、奥さんが、もうしばらく待ってくれ、こういうお話であったのであります。その点、松田事務官の処置にやや適切を欠いた点は、私どもまことに遺憾に存ずるのでありますが、その場でラジオ一個を差し押えた。翌日納税者が署へ来られましてあれはすでは納付済みであるということを申し述べられましたので、署内でその調査をいたしました結果、納付済みの確認をいたしましたので、ただちに差し押えを解いて、不行き届きの点を納税者に対して厚くおわびをいたした、こういう事実でございます。
  14. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで二、三点伺いたいのですが、第一は、昭和二十八年四月六日に残額の千七百三十円を納付して、これで完納になっております。この督促をいたしておりますのが二十七年四月二十八日付であります。そういたしますと、督促状が出されてからすでに満三カ年を経過しており、税を完納いたしましてからすでに満三カ年以上を経過している、このようなことなのに、一体なぜ税務署において納付しているかいなやを調べることができなかったんでありますか。督促状を発送してから三カ年以上も経過しておる者に向って差し押えに臨むというようなことが一体なぜ起るのであるか。こういうことをまず第一に伺います。それはどういういきさつでありますか。
  15. 中西泰男

    中西説明員 お話の点まことに私ども事務の不行き届きでございまして、遺憾にたえない次第でございます。仕事のやり方といたしましては、納付済みがありましたら、直ちに内部の台帳管理しております係から徴収係の方に連絡を回しまして、その方で消し込みをするという手続をとっておるのでありますが、それが十分に実施されておらなかった、この点が一つであります。それと今お話がありました、二カ年間も、納付済みになってからその照合ができずに、さっそく滞納整理に出かけていって差し押えをしたというこの事態でありますが、これはわれわれといたしましても、従来の滞納の繰り越しの際には、一人別に滞納処分票と台帳とを完全に照合する、少くともこれは年一回実施するということによって、台帳面と滞納処分票との完全照合を行うということをいたしておりますと同時に、これは内部的な扱いでございますが、係員が滞納整理に出かけますいわゆる分担地域が変りますごとに、自分が分担した滞納処分票とその後整理済みになって次の者に引き継ぐ処分票との対照というものを十分いたしまして、こういうことのないようにふだんから留意をいたしておったのでありますが、それが今お話のありましたように、この事案におきましては、それがきわめて不完全にしか行われておらなかったという点につきましては、十分私どもとして今後こういった事態のないように、さらに各局署にその励行方を指示したい。同時に相当期間署の方から納税者との接触が保たれることなしに急に出かけるというようなことのないように、そういった場合には事前に文書あるいはその他適当な方法によりまして滞納者に納付方の慫慂をいたしまして、その上で御本人の事情を伺って、自余の措置をとる、こういう点につきまして局署にそういった措置の励行方を指示いたしたい、かように考えております。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの六月二十三日付提出の資料によりますと、納税の催告に行ったときに、納税者の妻スミというのが、待ってくれ、こういう説明になっておりますが、私どもの調べたのによりますと、納付済みであるからお払いできません、こう言ったというのでありますが、この点に対する調査はされたのかされないのか、その点どうなんですか。
  17. 平田敬一郎

    平田政府委員 この調査は、昨日とりあえず私どもの国税局を通じまして、税務署につきまして事実を調査いたしたわけであります。その際にこういうことを言っているのでございますが、御指摘のように納税者につきまして調査するということまではまだいたしておりませんので、この点はあるいは事実に反することなきにしもあらずと思います。事実に反するかどうかなおその点よく調べまして善処いたしたいと思います。しかし先ほども私申しましたように、いずれにいたしましても、これは部内の資料の整理が著しく不十分であったということから起きているのでありまして、納税者の御本人がおられなくて、御家族の方がおられてはっきりしていなかったのにいきなり差し押えまでいってしまったということは、どうも言いわけが立たないと私ども考えるような次第でございまして、吉田委員のお話になるような点は事実をもう少し調べまして、その納税者のおっしゃる通りとすれば、なおさらどうも不適正だと考える次第でございますが、その点さらによく調べまして善処いたしたいと思います。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さきの徴税部長のお話によると、翌日本人税務署へ来て説明をしたので、それで帳簿を調べて納付が明らかになったから解除した、こういう御説明でありますが、そうではなくしてやはり領収書を探してけしからぬと思って税務署に来て、そうしてその趣旨を陳情して結局帳簿を見たら完納になっておったので差し押えを解いた、こういうのが経緯ではないかと思うのであります。果してそうだといたしますと、領収書をもし納税者が紛失でもいたしておりましたらこれは事であります。一々帳簿を見る前にやはり差し押えた手前もありますから、領収書でも持っていかなければなかなかけんもぼろぼろで交渉にも乗ってくれなかったのではないかと思います。領収書が見つかったのでこれはほんとうに幸いなことだと思うのであります。そういうことでありますならば、領収書を金庫にでも置いて永久に保存するという処置でも講じなければ、納税者は安心して日を過ごすわけにいかぬと思います。これは納税者全体といたしましては、私はまことに危険なことであると思います。こういうところはずいぶんと数あるのじゃないかと思われますが、領収書を持ってきたので初めて帳簿と照合した、こういうのがほんとうの経緯じゃないのでしょうか。
  19. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お話の点は、さらに事実を調べまして必要な措置をとりたいと思いますが、考え方といたしましては、まあ納税者がかりに領収書がない場合におきましても、どうも納めたようだという申し立て、納めたからという申し立てがありました場合におきましては、もちろんこれは部内書類全部をよく調べまして、その上ではっきりしたことを結論づくべきものでありまして、領収書がないからといって、ただ一点のそれだけの理由でいきなり行政処置ということまでいってしまうことは、これは何と申しましても少し早まった措置だと私思うので、そういう点今後とも十分注意いたしまして、そういうことのないように努めたいと思います。
  20. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大体徴税官は差し押えというようなことをやりつけておりますので、魚売りが魚を殺すのと同じように、差し押えについて納税者がどんな精神的な恐怖と打撃を受けるかというようなことについてあまりお考えにならぬのじゃないだろうか。こういうことすら実は考えるのであります。これはよほど御注意になりませんと、ことに婦人のごとき、差し押えを受けたというような場合には精神的ショックもあることでございますので、なれている人は別といたしまして、なれない人でございましたならば、これは大へんな打撃があったものと思います。あなたの方ではこれは入っておったからそれでは取り消しておきましょう、解除しておきましょう、それで済むかもわかりません。しかし納税者の側にとりましては、これはぬぐい去ることはできないのであります。こういうこともありますが、一体徴税官の方におきましては差し押えというようなものをそう簡単にむぞうさにやるというような考えでおるのですか。よほど慎重に臨むというような態度を徹底させておらぬのであろうか。その点について一つ長官のはっきりしたお考えを聞いておきたい。
  21. 平田敬一郎

    平田政府委員 いつも私は差し押え、公売というのは実は伝家の宝刀で、最後の補償手段として本来あるべきものであって、いきなり差し押え、公売といったようなことをまっ先にぶら下げていくのはどうも感心しない、こういうことは実は部内ではいろんな機会に十分述べておるのでございますが、いざ現場で具体的に仕事をやって参りますと、どうも仕事をやる際の常識的な措置でございまして、配慮が不十分な点が多くて、このような事態が起きますことはまことに遺憾に存じます。私どもそういうことにつきましては、一そう将来努めまして適正をはかりたいと思う次第でございます。
  22. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで私は昨日足立署に参りまして、係官についていろいろと伺っておりました際に、投書をしたことに対して相当な反感を持っておられますので、御説明にいわく、本人は投書の意思がなかったのだけれども、何か同居しておった学生がおってそれがあえて投書した。むしろ本人は迷惑がっておる、こういうような趣旨の御説明がありました。これはやはりそういうようなお考え方だと、自己の非をたな上げしておいて、そうしてこのことを明るみに出したということに対して恨みを持っておる、そういうことが心理的に私はあるのじゃないかということを直感したのでございます。そうしてその投書を見ますと、なるほど一学生と書いてある。学生がけしからぬというようなお考え方の御説明が付加されたのであります。でありますから、投書というものが非常に税務署そのものにむしろ悪感情を持たした、こういうようなことが結果的に起きておるのではないかと思います。果してそうであるとするならば、これは泣き寝入りを強要するというのが税務署の態度であると申さねばならぬのであります。こういうことでありましたならば、善良にして正直なる都民は、ほんとうに税務署の前に泣かされて殺されるというようなことがあっても、これは表に出ないことがあるかもわからないということを私はおそれるのであります。こういうようなことが被疑が明らかになるということは、みずからもって相済まぬということは当然なのです。ところがああいうような御説明がありましたので、私は一驚した次第であります。そういうようなことを、税務署の署長並びに徴税官なんかにおいて一体そんな考えを持っておるのであるか。長官としてどうお考えになりますか。
  23. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま吉田委員の御意見の点は、私全く同感でございまして、実は先般各位にお配りいたしたかと存じますが、税務運営方針というのを定めまして、徹底をはかっております。  それから本日お手元に配りましたが、苦情相談所の活用といったようなことにつきましても、いろいろ工夫いたしまして、できるだけそういうことのないように努めておるわけでございます。しかしお話の通り、どうも一線の職員は、新聞に載せられることを非常にやはりいやがる心理が働いたのでございましょう。吉田さんおいでになってお話の際に、これもまた少し常識はずれのお答えをしたことをまことに遺憾に存じますが、そういう点につきまして、今後ともいろんな機会に指導、監督いたしまして、適正を期するように心がけたいと存ずる次第でございます。
  24. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 転じまして大口滞納の分について質問さしていただきたいと思います。  前回の委員会におきまして御説明になりました五千万以上の滞納のうち、現に配当を継続している会社があるということでございます。そこでその会社は一体何ゆえに配当の継続をして、そうして五千万以上も国の税金を滞納しておるのであるか、この間のいきさつと、何ほどの配当が行われておって、どんな事業であるのかというようなこと、これを一つ御説明願いたい。
  25. 平田敬一郎

    平田政府委員 私から要点を申し上げまして、なお詳細な点を徴収部長から御説明いたさせることにいたします。三つありまするうち、一つは、実は査察部でやりまして、調査して、一定の事実に基きまして決定をいたしたわけでございますが、その後証拠の点につきまして、その当時十分典拠がなかったのが出て参りまして、審査請求が出て、その証拠資料を収集して目下審査を継続中でございます。こういうものにつきましては、いきなり強制措置までいきますのはいかがであろうかということで、審査をなるべく早く完了する見込みでありますが、それまで一応待っている、これが一つであります。  その次は事情が若干違うようでございますが、滞納になった前後に、売掛金と申しますか、それの回収が非常におもしくろいかなくて、なかなか金繰りに困っている、まあ配当をしておりますので、配当をやめて税金を納めるというのも一つの本筋だと存じますが、そこまでいきますと、事業の継続自体がなかなか簡単にいかないというようなことを訴えられまして、その結果、何カ月かに分納して漸次納めていくという申し出があって、それを認めまして今日まできておる、その滞納額は半分程度にまで最近減っております。今後はさらによく事実を調べまして、どのようにするか、なおもう一ぺん検討いたしたいと思っておりますが、それが一つでございます。  それからもう一つの会社は……。
  26. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もうちょっと具体的におっしゃって下さい。
  27. 平田敬一郎

    平田政府委員 それでは徴収部長から先に事実を詳細に申し述べさせます。
  28. 中西泰男

    中西説明員 お手元の資料の十四番目でございます。これはいずれも法人税の滞納でございまして、二十九年の四月には一億三百万円、それがこの二十九年度中に六千九百万円の収納がございまして、五千六千万円の滞納になっております。これはただいま長官から申し上げましたように、石綿パイプ製造業でございまして、これは売掛金の回収が非常に遅延いたしましたために、資金繰りが非常に窮屈になって参りました。こういった関係から増資を計画いたしまして、その増資の目的、あるいは金繰りをうまくつける金融等のために、若干無理な利益計上をいたしたような状況になっております。これに対しましては、すでに工場、住宅その他建物等をすべて差し押えをいたしておりますが、現状におきましては、先日付の小切手等の納付預託がありまして、七月末までにこの残税額の完納を予定しておる、こういう分納の計画になっております。  次はお手元の資料の十番のパルプ業でございます。これは同じく二十九年の四月末で九千九百万円の滞納になっておりましたが、二十九年度中に新規に一千百万円滞納が発生いたしましたが、同期間中に四千万円滞納の分の収納がございまして、差引いたしまして三月末でなお七千万円の滞納になっておる、こういった状況でございます。この滞納の原因につきましては、この会社の工場は富山地区にあるわけでございますが、原木の集散等の点から見まして、立地条件が非常に悪くなっておりまして、そういった原木の手当の関係から九州地区の方に工場の増設を計画いたしまして、その建設資金はおもに借入金によってまかなったのでありますが、一部やはり手持ち資金に食い込みまして、そのために滞納が発生した、こういった関係になっておるのであります。その後、二十九年の十月に増資をいたしまして、この資金は一部借入金の返済にも充てられたのでありますが、滞納税金の納付に一部が充てられておる、こういう現状になっております。差し押え関係は、簿価約五億五千万程度に上るのでありますが、いずれも工場財団の差し押えをいたしておるのであります。この配当の関係につきましては、これは増資あるいは金融画の考慮からこういった利益配当をいたしておるのでありますが、これは関係会社並びに会社の重役等に対する配当は一切未払いの方で停止いたしております。ただいまの処分方針といたしましては、押えております工場財団が遠隔の地にありますことと、売却が非常に困難であるというようなことも考慮いたしまして、さらに滞納者におきまして適切な納付計画を立てるならば、それに従って若干の期間は猶予しても、完全に滞納税額の整理を見る方が徴収上有利ではなかろうかという考え方から、一時処分を猶予しておるのであります。目下のところ、この十二月ごろまでには大体完納の見込みを分納計画その他におきまして検討いたしておるのでありますが、さらにこの点は突っ込んだ調査をいたしましてできるだけ猶予期間を短縮したい、こういう方針でございます。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 十一号の説明を願います。
  30. 中西泰男

    中西説明員 十一号の運送業でありますが、これは審査請求にかかる事案でございます。審査の内容は運送契約、公用の請負契約に基きまして、運送中に損害が発生した場合に、その損害補てんに充てるために収入金の一部を相当以前から積み立てておったのでありますが、この積立金は事故発生に伴う弁償金の確定がきまらないために留保されておったのであります。この積立金が果してお金になるかどうかという点について審査請求になっておったのでありますが、これは事実関係が相当広範にわたりますし、また相当複雑になっておりますために、ただいま協議団の方におきましてせっかく審査を進めておるのであります。大体この秋ごろには結論に到達し得るのではないか、こういう状態になっております。徴収面におきましては、審査請求にかかわるものにつきましては、その審査請求の内容につきまして相当の理由が認められるような場合におきましては最後の差し押え、公売といった段階までは行かないで、一時猶予して審査の決定を待って最終的な処理をする、こういう方針をとっておるのであります。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 十号のパルプ製造、製紙業並びに十四号の石綿パイプ製造業、この分についてはいずれも株主に対する配当があるのですか。それは何ほどの率でありますか。
  32. 中西泰男

    中西説明員 十四号のパイプ会社でございますが、これは二十九年の十一月期の配当率は一割になっております。それから十番のパルプ業は、最近の二十九年の十二月期の配当は二割の配当になっております。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第一伺いたいのですが、十一の運送業、これは何運送会社か知りませんが、一億五千五百万円の滞納があって、しかも二十七年度の法人税であります。審査請求中といえどもこれは差し押え処分もないのであります。しかもこれは「滞納整理し、完結の見込」ということが書いてある。完結の見込みといったら最近において完納するという趣旨とも考えられますが、これは一体どういうわけなんでありましょうか、差し押えする必要はないのでありますか。
  34. 中西泰男

    中西説明員 お答えいたします。これは滞納会社からの申出もありまして、審査の決定があれば直ちに納付する、また私どもといたしましても当該滞納会社の事業並びに資産の現況等から判断いたしまして、納付については心配なかろうという判断をいたしておりますので、差し押えを控えまして実はまだ待っておる、こういう状態であります。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから十号のパルプ及び製紙業の分でありますが、これは二割の配当をいたしております。しかも滞納しておるのは法人税二十六、七、九年度、こういうふうにわたっておるのであります。二割の配当といいましたならば、これは普通以上の配当であろうと考えるのでありますが、どうしてそういうようなものに対して、もっと積極的に回収ができないであろうか。これが七千万円も滞納いたしておりますし、何ほどかの工場財団の差し押えがあるように御説明があるのでありますけれども、こういうふうな七千万円もの税金が早く取り立てられることによって、零細な納税者の困難がどれだけ緩和されるかわからぬと思うのであります。簡単な差し押えで民衆が苦しむことがあると思えば、一方こういうふうに差し押えを受けながら数年前の分の納税がまだできずして二割の配当をしておる、こういうような点についてはもっと考えるべきではないかと思うのだが、その妥当性はもう少し詳しく聞かぬとわからぬと思いますけれども、いずれにしましても世間の目では、国民といたしますれば、二割の配当とすれば少し高率配当に過ぎるのではないかと思いますが、国税庁長官の所見はいかがですか。
  36. 平田敬一郎

    平田政府委員 実は私、一年ぐらい前ですか大口滞納をいろいろ調べてみまして、配当しておるのに滞納がある。いろいろな事情があるにしても常識上おかしいではないか、そういう点、もう一ぺん配当しておるものについては特に審査を厳重にして、早く片づけるようにしたらどうかというので、実は部内でもそういう趣旨で一ぺんやらせたのでございます。そこでだいぶ片づいたのもございますけれども、御指摘通り三件ほど大きなのが残っておる。ところがその後だんだん督励しまして、向うもだいぶ勉強して納めてきておるという事実が一方においてある。それから一方におきましてはやはり会社が金繰りに困って、いろいろな関係で減配してしまうと事業の遂行上非常な影響がありまして、ひいては納税上もかえって思うような納付がいかないといったような懸念がある場合には、これはやむを得ずしようがない、なるべく早く納めさせることにして処理をしたらどうか、こういうことで来たわけでございまして、もう一ぺん最近の事情に基きましてよく調べまして、さらに一そう早く促進することができるかできないかということを検討してみたいと思います。大体考えようとしましてはお話のような頭でいって、それでもなお片づかないものが残ってきておるということでございますればよく検討いたしたいと思います。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題はやはり長官は簡単に考えておるようでありますけれども、私どもといたしましては、つまり国民の感情といたしまして、やはりこういうような大口滞納につきましては一応は配当なしという状態が望ましいのであります。たとい五分といえども配当するというのであるならば、それは納税の方へ回すべきではないか、また株主といえども七千万円も税金をうっちゃっておいて——これは何ほどか入ったとおっしゃっておるけれども、また十四号の石綿パイプの会社も五千六百万円の税金をうっちゃっておきまして配当するということは、それは過去において何ほどかの納税があったにいたしましても、完納するまでは配当を打ちとめるというような措置こそ国民の感情に合うと思うのでありますが、もっと厳重な態度でこれは臨まれないものであろうか、こういうふうに思うのですが、いかがですか、その点を伺いたい。
  38. 平田敬一郎

    平田政府委員 原則論としましては私ども実は全く同じ考え方を持っておるわけでございまして、大部分のものにつきましてはそういう趣旨で督励を加えまして、それぞれ処理をいたしておるわけでございますが、この大きな方で本件が残っておるという情勢でございます。しかしもう一ぺんこの辺で、お話のようなことはまさに私も社会一般の感情だと存じますので、もっと早くできないかをよく検討いたしまして、適切な措置をとりたいと思います。
  39. 山田長司

    ○山田委員 関連質問。中小企業が税金にあえいで、何とも生活に困って電話まで差し押えされて困難な仕事が続けられているときに、こういう大口の滞納があり、しかも配当は公然となされておるというような現状からかんがみて、一応二、三大きな滞納港を呼んで、この委員会で、いかなる事情において法人税が二十六年、二十七年において滞納されておるのか。その実情を伺ってみたいと思うんですが、この点一つお取り計らい願います。
  40. 上林與市郎

    上林委員長 ただいまの山田委員の御発言は次の理事会で御相談して、適当に取り計らいたいと思います。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは今の問題につきましては理事会の御協議の結果質疑を継続することにいたしたいと思うのであります。  次に固有財産の問題について二、三聞きたいのでありますが、報告番号一〇五、百十三ページ、これによりますと、二十六年一月七十八万余円で売った土地工作物が翌年の六月に二百四十九万円で松竹株式会社に売られております。松竹株式会社というのは映画、劇場の会社かと思いますが、しかも国が売ったのは財団法人の河田母子厚生会、これは公益的な法人であります。こういうのは一見いたしましても実に奇怪千万だと思います。これは一体今日どうなっておるんだろうかということ、なおこれがまだ今日において未解決でありますならば、私はやはりこれらにつきましては一つ他の分とも合せまして、いずれも転売先、売り渡し先の代表者を一つ当委員会にお呼び出しを願って、詳細な事情を伺ってみたいと思うのであります。そこで現在にどうなっておるのか、この点についての御説明を求めます。
  42. 窪谷直光

    窪谷政府委員 河田母子厚生会の、この売り払いをいたしました当初の代表者は河田清貞という方でありますが、二十七年の五月に死亡をいたしまして、あとは清貞氏の妻が経営いたしておるのでありまして、現在は用賀で母子寮と保育園の経営をいたしておるということでございます。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういうことを聞いているんじゃないんです。その結果どうなったかというんです。母子厚生会が今どうなっているかを聞くんじゃないのであります。この問題はどうなりましたかということを聞いておるんです。
  44. 窪谷直光

    窪谷政府委員 これはこの河田母子厚生会の当初の事理長でありました清貞氏が死亡いたしたのでありますが、あとでよく調べてみますと、この財産の取得売買につきまして理事会にかけておらないということでございまして、転売金の使途等も目下のところではまだ判明をしておらないという状況でありまして、調査をいたしておる段階でございます。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 松竹株式会社というのは例の有名な劇場の松竹ではないんですか。
  46. 窪谷直光

    窪谷政府委員 ちょっと今はっきりいたしませんので調べまして……。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題はもう検査報告が出て長らくたつのにまだお調べになっておらぬというのでありますから、これも時間を節約する意味におきまして、現在の母子厚生会の代表者、松竹株式会社の代表者を当委員会参考人として御喚問願って、詳細な事情を御聴取願いたい。この点お計らいを願いたいと思います。  それから次に伺いますのは、百十五ページ、報告番号一一五、東京都が国から四千何がし坪の土地を借り受けて、しかもこれが昭和二十二年から二十九年三月までの期間、使用料が百十一万円余りで昭和二十九年九月末現在未収納が七十余万円ということであります。東京都ともあろうものが、国から土地を借り受けまして数年間使用料を払わない、こういうようなことは一体どういうわけなんです。大蔵省が誤まっておったのか、東京都か誤まっておったのか、とかく東京都というところは国の土地の使用についてはっきりしない問題があまり多過ぎるのであります。現在なお徴収未済であるのか、これは国が間違っておるのか、東京都にあやまちがあるのか、一体どちらに不当な理由があるのか、その点はいかがですか。
  48. 窪谷直光

    窪谷政府委員 東京都の使っております土地はカッコ書きでごらん願いますように、元南豊島の御料地でございまして、これは元々皇室財産であったのでございますが、昭和十年の十月以降、無償で宮内省から東京都に貸付をいたしてきた財産でございます。それが昭和十年の十月に永久に無償貸与ということで東京都が宮内省から借り受けをいたしておったのでございますが、終戦後昭和二十二年の四月に国に物納になったのであります。従いまして、その後は国有財産法の適用を受けもわけでありまして、従来そういうふうな約束がございましても、新しい国有財産法によって無償の扱いはできないということで、東京都と交渉をいたしておったのでありますが、なかなか東京都の方では従来の経緯からその考え方に同調して参らないというふうな状況であったのであります。最近に至りまして東京都の方でも国側の主張を了承いたしまして——さらに東京都はその土地を今現に都立新宿高等学校の用地として使っておるのでありますが、恒久的の用途として使いたいということから売り払いをしてもらいたいという申請が出て参りました。売払価格は千八百万円で、本年の三月に調停を了しました。この代金は間もなく収納予定になっておるのでございます。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 本年三月に一千八百万円で東京都に売り渡すことに決定してまだ代金はとらぬ、それはどういうわけですか、すでに長年の間多額の使用料未済があるにかかわらず、売買契約が成立して東京都は二千万円に足らないようなものをどうして国に払うことをしないのか、これは契約と同時にとるというくらいな厳重な態度で臨むのが私は至当じゃないかと思うのですが、それはいかがですか。
  50. 窪谷直光

    窪谷政府委員 まことに仰せの通りでありまして、処置がゆるやかに過ぎるというふうに考えますので、早急に善後処置をいたしたいと考えます。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、これは至急に報告をせられるようにお計らい願います。  次の一一六号でありますが、日本電電公社、これも政府関係機関といたしまして、国との間に少からざるいろいろな財政経済上の関係もあるにもかかわらず、これはまた莫大な国の土地を——二万六千余坪、建物が約五千坪、莫大な土地であります。これも二十九年九月現在徴収決定未済、こういうふうな実情にあります。これはどういうわけなんであろうか、現在どうなっておるのですか。
  52. 窪谷直光

    窪谷政府委員 これもはなはだ遺憾な件でございますが、昭和二十一年一月に、元逓信省の逓信講習所に対しまして、この建物及び土地貸付をいたしたのであります。ところが同講習所が北多摩郡に校舎を新築いたしまして、講習所そのものは移転をいたしたのでありますが、そのあとを関東の電気通信局が職員寮として使用をいたしたのであります。それがここに掲げられてあります土地の面積でございます。もともとはこの土地は八万三千坪の土地でございまして、講習所は当初全部を使っておったのでありますが、二十七年十二月にそのほかの土地返還を求めまして、残りの土地職員の宿舎の用地及び宿舎として使うことにいたしております。今日まで処理がおくれておりますのはまことに恐縮でございますが、給水施設等につきまして若干協議が整わないということから今日までおくれてきたのでありまして、これも間もなく協議が整って処理ができるというような見込みでございます。いずれにいたしましても、非常におくれて参りまして、恐縮に存ずる次第であります。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次は一一二号、これは日本赤十字社であります。これまた莫大な土地、三万七千余坪、これも二十九年九月現在におきまして使用料が七百三十八万円、まだ徴収未済、こういうことになっております。日本赤十字社の関係でありますから、普通の営利会社、商事会社とは全く違うのであります。厖大な土地について、これまたどういうわけでこういうふうになって、現在どうなっておるのでしょうか。
  54. 窪谷直光

    窪谷政府委員 これはやはり同様にもともと皇室財産でございまして、明治二十二年一月以降宮内省から無償で日本赤十字社に貸付をいたして参ったのであります。ところが昭和五年に至りまして、坪年額二銭五厘というきわめて名義的な使用料徴収をいたしてきたのでありますが、それが昭和二十二年の四月に、先ほどの件と同様に国に物納に相なったのであります。そこで日本赤十字社に対しましては、この土地をできるだけすみやかに買い取ってほしいというような交渉をいたしておったのでありまして、当初全面積が土地にいたしますと七万三千坪ございまして、そのうちで売却済みのものが三万一千坪ございます。ここに掲げてありますのは、その残りの土地でございまして、これに対しましては、赤十字社の方ではなかなか資金繰り等から買い取りができないというようなことから、値段をもう少し下げてもらいたいというふうな交渉が行われておったのでありますが、その交渉がなかなかまとまらないままに、これが使用料徴収すべきものがおくれて参ったということでございました。ことしの四月に至りまして調定をいたしたのでございますが、まだその使用料徴収ができるというところまで参っておらないのでありまして、徴収の督励をいたしておるのでございます。相手がこういう公共的な施設を経営いたしておるものでございますので、できるだけすみやかに徴収をしなければならないことは当然でございますが、また遺憾ながら徴収ができていないという状況でございます。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この際さっきの一一六号とあわせて一〇五号とともに、関東財務局長並びに電電公社総裁に代表者として当委員会に出てもらって、この間のいきさつをなお詳細に聞き取るということにいたしたいと存じますから、お計らいを願いたいと思います。
  56. 上林與市郎

    上林委員長 ただいままでの吉田委員の御発言、これもやはり理事会で御相談してしかるべく処置したいと思いますから、そのように御了承を願います。  徳安委員、御発言ございましょうか。——それでは徳安委員
  57. 徳安實藏

    徳安委員 国有財産の点について、簡単でございますが伺います。  ただいま吉田委員から御指摘されましたけれども、これを一々質問しておったのでは大へんでございますから、私は各項に対する質問は省略いたしますが、指摘された事項に対する跡始末と申しますか、結論が、聞いておりますとほとんどついていないような状態ですから、当委員会といたしましても遺憾の意を表せられるままで承認してしまうという結果になっている。この二十八年度の決算は、おそらく今国会では承認にはならないで次の国会まで持ち越されると思いますが、指摘されました正しからざる案件に対しては、結論はこうなったのだ、こうしたのだというような工合に、もう少しはっきりするような事務処理を希望したいと思いますけれども、御所見はいかがでございますか。
  58. 窪谷直光

    窪谷政府委員 まことにごもっともなことでございまして、私どもといたしましてもできるだけすみやかに処置をいたしたいということで努力いたしておるのでありますが、なおこういうふうに結論が出ないでおることを遺憾といたします。
  59. 徳安實藏

    徳安委員 もし当局でほんとうにそういうお気持がございますならば、指摘事項として会計検査院から御報告になりまして私ども手元に参りますれば、当然委員会にかかって、これが議題になるまでに、一部は御報告がございますけれども、遺憾であったという程度でなくて、この案件はこうしたという結論の御報告があれば、先ほど吉田委員からのお話しのように参考人などを出さなくても、御説明だけで納得が行くのではないか、今後戒めていくという程度で済むのではないかと思うのです。それが、どうも御説明だけで納得が行かなくて、当該関係者まで参考人に呼んで聞かなければならないというような気持になるということは、今申したような点に遺憾の点があるからだろうと思いますが、もう少し何とか誠意を示されて、御説明だけで私どもが納得して、今後お互いに気をつけていこうという程度で承認し得るようにお取り計らい願いたいものであります。  なお、関係者の処置に対して、不正なもので刑事事件を起したものは裁判の決定を見なくちゃわからないわけでありますが、そうでないものに対しても、結論を見ますと、処罰といいますか懲戒といいますか、そうものがどうも非常にゆるやかであって、私どもの常識から考えるならば、もう少しきつく戒められたならばどうかというように考える点があるのであります。これはひとり国有財産ばかりではなく全部についてでありますけれども、ちょうどいい際でございますから、固有財産関係についてでも、関係者に対する処置に対してもう少し厳重になさろうというお気持はないのか。大体今まで私どもにお聞かせ願った程度のものがほんとうに妥当公正なのか、こういう点の御所見を一つ伺いたいと思います。
  60. 窪谷直光

    窪谷政府委員 こういうふうな不正事件に直接関係があった者に対しまして、懲戒免職その他の処置をするのは当然でございます。お尋ねの点は、監督者の責任の問題だろうかと思いますが、この一二八号に報告されましたものにつきましての、具体的な事例でございますが、直接に監督をいたしておりましたのは津財務部の管財第二課長というのであります。それに対しましては減俸の処置をいたしたのであります。減俸の額は必ずしも多くはございませんで、一カ月の一割の減俸をいたしたのでございます。それからさらに具体的に、この事件の起りました場所の監視長というようなところに対しましても、同様に減俸の処置をいたしておるのであります。それから若干の期間関係をいたしまして、その後に転任いたしましたものにつきましては、戒告の処分をいたしておるようなことでございまして、この緩厳の度合につきましては、いろいろ御意見もあろうかと存じますが、できるだけ緩厳よろしきを得て、またあと職員の戒めとなっていくというふうなところをねらいまして、やっておるつもりでございます。
  61. 徳安實藏

    徳安委員 次に国税庁の方にお伺いいたしますが、最近の集計されたもので、国税庁関係で二十九年度の未収がどのくらいになっておりますか。大体のものがわかっておればお知らせ願いたいと思います。
  62. 平田敬一郎

    平田政府委員 本日の資料としまして、実はお配りいたしました中にございます、滞納の総件数、総額。決算委員会の資料の中のまん中ごろ、十一ページでございます。
  63. 上林與市郎

    上林委員長 衆議院決算委員会資料、昭和三十年六月二十三日、下に国税庁と書いておりますね。ではこれについて御説明願います。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 本年四月末までの統計がやっとまとまりましたので、それを御参考までにお配りをしたわけでございます。これによりますと、総滞納と申しますか執行停止その他を含めまして、まだ未解決になっている一切のものでございます。それが本年四月まででやはりなお一千三億四千七百万ということになっております。前年同期に比べますと、約百億程度減少はいたしておりますが、件数もなお七百六十三万七千件という多数に上っておるのでありまして、これを私どもいかにして合理的に処理するかということに、いろいろ努力いたしておるわけでございます。  なお内訳といたしまして、執行停止をしておるもの、これはほとんどたな上げでございますから、それを差し引いた滞納の総額も七百六十八億から七百十九億に若干減っておりますが、まだしかし相当多額に上っております。さらにそれを徴収法に基きまして正規の徴収猶予をやったもの、あるいは執行猶予をやったもの、そういう措置をまだやっていないで、未整理の滞納になっておるものというふうにずっと整理いたしておる次第であります。  なお税目別にもそれぞれ示しておるわけであります。概計を申し上げますと、全体としましては減っておりますが、源泉所得税と物品税だけが、やはり所得のあるなしにかかわらずかかる関係もあるのではないかと思いますが、昨年来の金繰り、デフレの影響を受けまして、遺憾ながら若干この二つだけが滞納が増加しております。あとの分はそれぞれ若干ずつ減少しておるのが、実際の状況でございます。
  65. 徳安實藏

    徳安委員 これはあとからまた拝見いたすことにいたします。  次に長官の御意見を伺いたい点は、脱税でなくて、損金と認められるべきものと考えて計算したものが、たまたまこれが損金じゃないんだという考え方から、税金が申告したものよりかたくさん取れるというような場合があるわけです。そういうような場合におきましても、これは私ども脱税と認むべきじゃないと思う。これは見解の相違でありますから、見解が一致したところで初めてきめて払うべきだ、こう思っておりますが、そういうような場合におきましても、加算金などは、払うものと税務署との間の見解が一致しないで延び延びになりまして、そして加算金が非常にたくさんかかるというような例がございますが、こうした初めから脱税するという気持でやったものは、これは加算金も妥当だと思いますが、そうでなくて、これは脱税ではない、当然損金として落すべき金だという見解から、善意に計算をして報告をしたものか、たまたま税務署でこれはそうでないんだということで、摘発されたようなものは、これは脱税として加算金をそうたくさん取るべきではない。もしそうだとするならば、早くきめて計算してやるべきであって、一方的な考え方で、半年も長くほっぽらかして、加算金をうんと取るということはよくないことだと思いますが、長官の御意見はいかでございますか。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話のように、別に帳簿を作為するわけでもなかった、自分としては当然経費になるべきものとして計算してやっておる、それをあと税務署が調べまして、これは経費として認められない、こういったような性質のはっきりしたものでございますならば、これは脱税云々の問題は当らないと思います。従いまして重加算税の問題にはならないと思います。ただ過小申告加算税というものがありまして、この方は見解の差異がありましても五%ずつ引きますから、やはりどっちが正しかったかをきめて、最後には訴訟で最高裁までいくわけでございますが、それは別といたしまして、これでいいといわれたところの額と、最初に申告されたところの額との差額につきましては、これは過小申告加算税だけはかかる、こういうことになっております。なお利子税の方は、今お話のように、非常におくれて税務署がいってきたために困るという非難もありましたので、一年間だけは利子税を取ります。一年を過ぎて決定が行われた分につきましては、その分についての利子税は課税しない、こういう現行法の建前になっております。
  67. 徳安實藏

    徳安委員 いずれにいたしましても、税務署はなかなか損はしなくて得をとることばかり考えてうまくやりますから、われわれしろうとには不可解な点もありますが、法律の建前でそうだとしますればやむを得ませんけれども、やはり見解の相違によって出たもの等は、あまり深く追及されなくて、穏やかな気持で早く話をつけて、早く決定をして、税金を納めさせるということがいいのじゃないかということを私ども常識上考えるわけです。  なお最近徴税に当って調査されることが非常に御親切になった。私どもこれは非常に感謝しておる。方々を聞きましても非常に親切のようです。親切のようですが、親切であると同時に、きわめて掘り下げが厳重で、そしてそれはほんとうに一切がっさいガラス張りでなければどうにもならぬという調べ方です。これは技術的にもうまくおやりになっておりますからけっこうだと思いますが、一つもうまみがない。ひっつかまった以上は、ほんとうに根こそぎやられるという今の行き方、これは決して悪いとは思いません。思いませんが、御親切であると同時に、ただ摘発ばかりでなくて、指導の面におきましてもできるだけ一つ指導されて、そうして両者の間に不愉快な感情などが起らないような徴税事務をとっていただきたい。これまでは権柄ずくでしたが、このごろは非常に親切なようです。これはまことにけっこうなことだと思います。なお本庁の方ではそういうことはないと始終言われるのですが、地方の税務署に行きますと、割当が来るのだということを平気で言うのですが、これはほんとうなんですか。本庁で言われるのがほんとうか、地方の税務署長が言うのがほんとうですか。どっちがほんとうでしょうか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  68. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほどお答えしましたことでちょっと一カ所落しましたのが、納税者の言い分、つまり申告額と決定額と合わなかった際に、納税者の言い分がなるほどもっともだ、十分事情がある。——税務署の見解を聞いたら、最初は税務署がはっきりしなかったが、あとで見解をはっきりして、それは経費として認められる、こういうような場合は、それはやむを得ざる事情があるといたしまして、さっき申しました過小申告加算税も課税しないことができることになっております。これは個々の事情によって違うかと思いますが、それを追加いたしておきます。  それから第二点の徴税調査方法でございますが、これは私どもできるだけ親切に、かつ公正にやるようにということをモットーに掲げて、できるだけ勉強するようにいたしておるわけでございます。調査方法は、やはりあちこちいいかげんな調査で済ますよりも、なるべく調査省略できる人は調査省略して、ほんとうに調査すべきところは丁寧な調査をして、むしろほんとうの意味におきまして、なるほど税務署はよく見るところは見るという意味で、違った意味でまた信用を得るように努めたらどうか、こういう考えでいたしております。小納税者の場合におきましてはいろいろな配慮を加える場合もございますが、中以上の納税者の場合におきましては、あまり手かげんといったようなことを加えるのはどうかと思いますので、むしろ納税者の言い分のうち正しいと思う言い分はもちろん聞き入れるということにやぶさかであってはならぬということも言っておりますが、あまり適当に処理するといったようなことはいかがであろうか、お互いに税法を正しく守るという考え方で当たってもらいたい、こういう考え方でやっておる次第でございます。  それからなお最後に割当という問題でございますが、これはこの四、五年間はほんとうに全然いたしておりません。署長がそんなことを言ったとすれば、ちょっととんでもない何かの見当違いなことを言ったのではないかと思いますが、今日ではそういうことは全然やるべきではない、戦後の異常な状態のもとにおける非常緊急措置でありまして、割当をやったわけではございませんが、努力目標というものを示したのです。しかしもうそういうことは第一必要もないし、それから弊害ばかり多いので、そういうことは全然やるべきでない、もっぱら個々の納税者に当りまして、税法のみが税務官吏が権限を振い得る唯一の基準であるから、税法を正しく守って納税者に適用いたしまして、正しい徴税をするようにということで、鋭意努めておる次第でございます。もしもさらにそういうことがございましたら、よく署長なんかを呼びまして、突っ込んでいただきたいと実は思う次第でございます。
  69. 徳安實藏

    徳安委員 今長官から聞いたのですが、ほんとうにそうはっっきりおっしゃるのでしたら、私どもも安心します。地方でそういう話を聞きました時分には、どこからそういうものが来たか、問いただしてみますが、過去におきましては本庁に聞いたり国税庁に聞くというと、そんな割当なんかするもんかという話でございますけれども税務署に聞くと、これこれに対してはこれだけの割当が来た、ことしは二割増しとか三割増しとかいうことで、何としてでもこれだけはかけなくちゃいけないのだということを係から私も始終聞いております。いずれがほんとうであるかということについて迷っておりましたが、そういうことは全然ないのだ、かりにことし一つの税務署が一千万円の税金のあげるところがあって、ことしそれが五百万円になっても、現実がそうだから差しつかえないのだ、そういう考え方だと思いますから、それなら非常にけっこうだと思います。  なお、こういう点について一つ長官にお考え願いたいと思います。同じ一つの業種で県によりまして査定の方法が違うのです。一例をあげてみますと、かりにナシのごときにいたしましても、千葉県のナシ、長野県のナシ、鳥取県のナシ、こういうものの一反当りの収入が幾らかというような問題に対する査定基準が、その税務署によってみな違うようです。こういうことは、徴収事務からいいましても、とられる方からいいましてもあまり愉快なことじゃありませんから、なるべく高い方に地ならしせずに、使い方に地ならしをしていただいて、払う方が否んでみな公平な税金だという観念で払えるようにしていただきたい。私はいつかこのことをお話したこともありますけれども税務署により非常に通うのです。これはいかがでしょうか。これは場所によりまして相場も違いましょうし、地価等にも関係ございましょうけれども、もう最近果実なども出回る時期になりましたから、全国的におしなべて一反当りの収入等については各税務署とも同一の基本的方針によって査定していただけるような通牒でも一つ至急に出していただいて、そうして各地の団体が寄って相談しましても、どこの税務署も同じだというような気持になって、喜んで税金を納める、こういうふうにしていただきたいと思うのです。今聞いてみますと、いやあそこの税務署はこうだ、ここの税務署はこうだ、東北の税務署はこうだ、関西はこうだというようなことを年中口走りまして、税金を納める上においても非常に不平不満を言っておるようであります。こういう点について妥当な基礎を定められて、それを全国的に一本にしていただくような徴収方法について御通牒でも出していただけませんか。
  70. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの御趣旨が、全国的にできるだけ統一をはかって不均衡がないようにというそれだけの意味でございますと、ごもっともだと思いますが、ただ地方によって状況がだいぶ違うと思いますので、状況が違うのを何か国税庁で一本の基準でやるということは、かえって実情にも即しないことになりまして、公平の結果にはならないじゃないかと思いますが、理由なくして、ただ税務署が違うから、あるいは人の考え方が違うために違いがある、これはとんでもないことでありまして、できる限りそういう実情をよく調べまして、それに応じまして妥当な統一をはかっていくということは必要なことと存じますけれども、ただ全国一本の標準でいくということにつきましては、私どもそこまではどうも行きがたいと思うのでありますが、いかがなものでございますか。
  71. 徳安實藏

    徳安委員 これはおそらく各委員も方々から聞いただろうと思いますが、県境で、岡山県に営業所を持っておれば非常に税金が安い、鳥取県に持ってきた場合はとたんにとんでもなく高くなってしまう。ですから、営業の実態は鳥取県にありましても、なるべくなら岡山の方に本店を置いておいて、こっちは営業所にする、こういうことは鳥取県にはたくさんございます。それから豊かな税務署でうんと税金を納める階級の住んでおるところは案外税金がゆるやかで、貧乏な、税金を納めることのできないような貧民階級の県は、とにかく割当があるのだから、何でもとるだけとらなければならぬから、少し酷なようでもとらなければならぬ、こういうような説明を私は聞いておるわけであります。今一例として申し上げましたナシにしても、リンゴにしてもあるいはブドウにいたしましても、それほど大きな地方的な差異はないと思うのです。一つの品種によってあがる収入というものはそんなに大きな違いはない。それが長野県の二十世紀あるいは千葉県の二十世紀の一反当りに対する収入の計算方と、鳥取県の二十世紀の収入に対する計算方とは非常に違う。こういうことはある程度まで一本にやや近いものにしていただくことの方が妥当ではないか、こういうふうに考えるわけですが、この点一つ伺いたいと思います。
  72. 平田敬一郎

    平田政府委員 状況が同じであるにかかわらず違ったことになるということになったらこれはおかしいのであります。それは果樹畑などにつきましては、国税局が各税務署間のそういうことに対する歩調をそろえることについて終始監督しており、それから国税局の監督につきましては国税庁である程度の調整をはかっておるわけでございます。  それから状況が違う場合にはいたし方がない、やはり差がある方がいいんじゃないかと私ども考えます。そういうい点実際ではなかなかむずかしい点でございますから、できるだけ私ども勉強いたしまして公平をはかることに努めたいと思います。なおそういう点については具体的に問題をそれぞれ行政庁に御提出を願いまして、よく検討いたしまして公平を期していくようにいたしたいと思います。
  73. 徳安實藏

    徳安委員 いいお話聞きました。じゃあ私の方で事実を持って参りますから、どうかそういうときには四の五の言わずに気持よく取り上げていただいて、そして同一国税局内ならこれはいいのです。これは国税局長だけで話しがつきますが、国税局が違うところでは、これはどうしたって国税庁で調整していかなければなりませんから、事実を持って参りましたら、ぜひ妥当公正、みなが納得して払えるような数字を出していただきたいと思います。
  74. 生田宏一

    ○生田委員 今の徳安先生の御質問に関連してお聞きしますが、もし具体的な例を持ってきて、そして税務署の管轄が違うからというので、同じような状態のものが一つ高い、一つ低い、それを低い方へ合せるのですか高い方へ合せるのですか、低い方へ合せていくなら国の税収がだいぶ減っていくと思いますが、それを一つ聞いておきたいと思います。
  75. 平田敬一郎

    平田政府委員 これはどうも実情によりけりだと思いますが、よく調査をいたしてみましてどちらが果して妥当なものであるか判断しまして、それによって歩調をそろえるということになると思います。必ず低い方に歩調をそろえるとも言いかねますし、また高い方に歩調をそろえるという必要も一向にないと思います。よく事情を調査いたしまして、公平なところで統一をはかりたいと思います。
  76. 生田宏一

    ○生田委員 それから管材局長にちょっとお伺いしたいのですが、国有財産の売却のときに、大体国の評価の基準があると思いますが、二十五年に売却した場合と二十九年あるいは三十年に売却する場合と大体評価の率がどの程度にされておりますか。
  77. 窪谷直光

    窪谷政府委員 必ずしも二十五年に対してというふうな率の使い方はいたしておりません。たとえば土地等につきましても、土地によりまして、相当付近の類地の騰貴の工合が違っておりますので、できるだけその付近の売買実例等を参酌をして決定をするということにいたしておりまして、それも二十五年を基準にするというようなやり方は実はしておらないのであります。
  78. 生田宏一

    ○生田委員 それでは累年でけっこうですから、終戦後ですから二十年から三十年までの大体の値段、国有財産の売却実績によるあなた方の方の算定の基礎というのは大体どのくらいの比率になっておりますか。
  79. 窪谷直光

    窪谷政府委員 何か単価的なものでございますか。
  80. 生田宏一

    ○生田委員 いやそうじゃないのです。物価の変動等によって物の上り下りがあることは御承知の通りであります。ですからその基礎をどういう率において考えているか、それは地域的な条件によってあるいは環境によって多少の上り下りはあるでしょう、またべら棒に高くなっていることもあるし低くなっていることもあろうと思いますが、大体日本の国内における物価指数等から考えまして、国有財産処分するときには、三十年を一〇〇としますならば三十年までの間にどのように物価が騰貴していて、どのような基準によって国有財産の売却というものをやっておるか。
  81. 窪谷直光

    窪谷政府委員 土地柄によりましてだいぶ違いますが、一般的な目安として私どもが利用いたしておりますのは、勧業銀行の土地価格調査でございますが、それを大まかな目安として一つ頭に置きましてそのほかに個々の具体的な、付近で売買実例等がございますれば、それをあわせてしんしゃしてやるといったふうなことをやっておりますので、そういうふうな大見当な資料といたしまして、あるいはまた私ども今利用いたしております勧業銀行の土地価格の推移の指数というものが御参考になるかと思いますが……。
  82. 生田宏一

    ○生田委員 その勧業銀行の指数はどういう指数になっておりますか、それをお聞きしたいのです。
  83. 窪谷直光

    窪谷政府委員 ただいまちょっと手元に持っておりませんので、あとで資料として御提出いたしたいと思います。
  84. 生田宏一

    ○生田委員 先ほどからの委員の方でほとんどお聞きになっておるようですが、私先ほどから拝見していてどうもおかしいと思うものが一つあります。「用途を指定して売り渡し国有財産に関し処置当を得ないもの」のうちの一〇六、一〇七、一〇八の三つですが、これは昭和二十六年の三月に萱場工業株式会社、二十六年の三月に同じく株式会社倉田商店、また二十六年の四月に日本産業株式会社、この三つに売り渡しているのですが、それを東京築地青果株式会社が二十六年六月と二十六年九月、二十六年十月にまとめて買っておるのです。これは半年もたたないうちに売却契約ができて転売しておるのです。これは計画的なことだと思うのですが、事情はどのようになっておりますか。東京築地青果が計画的に三つの会社に国の方へ売り渡しの申請をさせて、そうして転売して自分の方に買ったように思われるのですが、これはどういう事情であったのですか。
  85. 窪谷直光

    窪谷政府委員 一〇六番は、昭和二十六年の三月に、鉄道用車軸の付属品その他の機械集積用倉庫の敷地で売り払いをいたしてものでありまして、その後数カ月を出ずして転売をいたしておるのであります。それから一〇七番は、若干古いものでありますが、二十三年の十二月から倉田商店に、占領中でございますので、一時使用の許可をいたしたのであります。その後その使用者に帽子と雑貨等の輸出用の倉庫用地として売り払いをいたしたのであります。その次の一〇八番は、これも同様に二十三年の十二月に一時使用許可をいたした土地であります。その上にパンの製造工場を作るということであったのでありますが、それがやはり資金難等のために、それからさらに電力事情が、なかなかパンに必要な電力の割当が受けられないというふうなことから転売をいたしたのでありまして、いずれも売り払いの時期と転売をいたしました時期とがあまりに接近いたしておりますので、今お話のように、何か計画的に仮装名義でやったんじゃなかろうかという疑いを持って実は私ども調査をいたしてみたのでありますが、どうもそういうふうな確証も得られないというふうな状況でございます。
  86. 生田宏一

    ○生田委員 あなたの方は調査をしたでしょうが、それは確証が出るはずはございません。こういう環境は完全に計画的だと思うのです。確証がないからといってそのまま置いておくわけにもいかないケースだと思うのであります。ほかにも御質問があったようですが、このケースは、これは私の個人的断定でありますが、もう判然としている。この処置については、このままやっておくつもりなのか、あるいは転売ということを認めずに、あなたの方で引き取るつもりがあるのか、ここを聞かしていただきたい。
  87. 窪谷直光

    窪谷政府委員 用途指定売り渡しは第三者の転売先まで効力が及びませんので、これは売り払いをいたしました相手方に対して転売差益損害賠償請求をする以外に道はないのでございます。その損害賠償請求は目下やっておるわけでございますが、まだ解決はいたしておりません。
  88. 生田宏一

    ○生田委員 もし理事会関係者を喚問なさるというならば、この関係者も添えてお願いしたいと思います。
  89. 上林與市郎

    上林委員長 了承いたしました。山田君、大体申し合せの時間が参りましたから、一つ御協力を願います。
  90. 山田長司

    ○山田委員 この際簡単に平田国税庁長官に伺っておきたいのです。それは納税思想に非常に影響のあることで、前にも管財局長にちょっと伺ったことがあるのですが、明確を欠いておりますので、平田長官に伺っておきたいと思うのです。それは労働者に対しては勤労所得でぱきぱき所得税がとられているけれども、山林所得者に対しては、まことに明確を欠いている点があると思うのです。実はこれは私の郷里に起っている事件なんですが、農民組合の諸君が立木を詳細に調べて、これはどう考えてみても、売買価格というものは無税になる価格とは考えられないという事態に立ち至ったわけでありますが、現在の山林所得の場合における税のとり方が、かりに二百万円くらいの売買の場合は、それが税金がかからずに済んでしまうというような事態まであるので、山林所得者というものは税金を納める方法として、実はごまかして税務署報告しているわけです。それで植林費とか管理費とかその他の必要経費を除いてしまうと、大体二百万円くらいでも税金がかからないような方法があるわけなんです。その山林所得に対する税のかけ方の改正について、何か国税庁長官として考え方を持っておるかどうか、参考に伺っておきます。
  91. 平田敬一郎

    平田政府委員 山林所得につきまして、前会いろいろ御意見もあり、私も答えましたが、その趣旨はさっそく部内の広報で税務署へ流しまして、ことに大口の山林所得者には的確を期するようにということを、通達ではございませんが、私の談の形で出しておきました。その際に申し上げましたように、大口のものにつきましては、各種の資料を集めて適正を期するようにという考え方で、今までもおりましたし、また今後も一そう努力したいと思います。ただ御指摘の点は、おそらく税法の問題にもだいぶ関係してくるかと思いますが、山林所得につきましては、実は税法で相当緩和された規定がたくさん設けられております。これは戦後植林が非常に困難である。切りっなぱしでなく、あとどうしても植林して、早く山林を育てなければいかぬ。こういう一種の山林政策の見地から、所得税におきまして相当大幅な緩和規定が設けられておる。再評価と所得税と両方で、山林所得については負担が実は相当軽くなっております。それでそのことも前会申し上げましたが、前会の御説明の中で、ちょっと不正確の点が一点ございましたので、この際直しておきますが、山林所得が、最後に課税する場合半分にして計算すると申しましたが、五分五乗の方法で所得税を算出するということを少し言いそこねましたので、この点直しておきます。税法でだいぶ特例が設けられておりまして、その結果は、山林所得についてはほかの所得よりも、実際問題として負担は相当低くなっております。これがいいか悪いかは、所得税の負担の公平と山林政策の問題と両面からいかにして調整をはかるかという問題でありまして、むしろ国会ではあの法案を出しました際には、これでもなお不十分だというので、相当な意見が出たことも記憶しております。そういう状況であります。しかしこの問題は実施したあと状況に応じまして、また実際に応じて果していかにするのが山林政策の行政にもマッチし、また負担の公平をはかるゆえんであるかということを、もちろん今後もよく検討いたしまして、そのときどきに妥当する立法が行われるように、私どもとしても十分配慮いたしたい、このように考えます。
  92. 山田長司

    ○山田委員 この際参考までに、やはり長官に申し上げておく必要があると思いますが、実は事実勤労所得者で、地方の町村から税金がかかっていっても、その税金を納めないという事例が起っているわけです。それはどうしてかというと、どんなに少くとも二百万円の山林の売買をされているという山林地主があるわけです。それが税務署報告は百万円と報告した。百万円と報告して、さらにその中から必要経費及び管理経費、植林経費というものを全部除いてしまうと、五〇%は必要経費として除けるし、あとの二五%が管理経費とか植林経費として除くようにし、十五万円までは無税になるということになるのですが、そこのところをどうにかごまかして、無税にするという事態がある。これが石灰山に働く労働者に響きまして、何千人かの中に、山林所得者についてはこういう無税政策がとられているというか、そのままほうってあるのに、労働者は毎日食うや食わずに働いているのに税金がとられる、そんな事態があるかという憤激がすでに生まれているわけです。そのはずです。なぜかというと、植林経費というけれども、あなた方も知らないはずはないと思うのですが、青い羽根運動で、一本の杉の苗木の補助として出ているのが大体六円です。そのほか補助費として大体苗木一本に六円ぐらいの補助が出ております。そうすると、杉の苗一本が十円で買えるので、大体杉の苗一本植えるのについて山持は二円の利益があるわけです。ですから人手間を入れてかりに二百本の杉の苗を植えても、四百円の手間を払っても、なおかつ山持に対しては利益があるという状態です。そういうことが今日はっきり勤労階級の人たちにわかってきているのですし、青い羽根のインチキ性も大体そういう点でわかっているのです。そうすると、税の対象になっておらぬ植林費というものは、これは当然税金の対象にしてもいいということになるはずです。こういう点が全然改変されていないために、大へん納税思想に悪い影響が今現われているのですが、税金の対象とならぬ植林費というものを、国税庁として対象とする意思があるのかないのか。これによって山林所得者にかかってくる税金の率がずいぶん変ってくると思いますが、その点どうお考えですか。
  93. 平田敬一郎

    平田政府委員 まず最初にお答えしますが、実際に売却したのは二百万円であるのを百万円と報告したなら、これはどうも正しくございません。実際の売却額をもとにして所得を計算すべきものでございますから、そういう事実があるとしますれば、これは当然修正しなくちゃならぬと思います。また山林所得計算につきましては、前会にも申し上げましたし、また本日お配りしましたプリントにも簡単に記載してありますが、財産税の評価時から一定の倍率をかけたところまでは、これは単にインフレによって名目価値がふえたにすぎないということで所得と見ない。むしろ再評価税の課税の対象とする。それをこえた分を山林所得とする。しかもさらにその所得の中から所得税を課税する際には、今申しましたように五分五乗の方法によって、一時的な性質がございますので緩和して課税する。こういったような措置をいたしているわけでございます。山林所得の見方につきましては、必要経費をどう見るか、これもなかなか複雑でございますが、原則は今までの山林の保育とそれから伐採に要した費用、これは当然必要経費として差し引きますが、将来の投資に相当する分は、これは引かないのを原則にいたしております。
  94. 山田長司

    ○山田委員 長官はやはり山林地帯に生まれていないから、非常に簡単に扱ってしまいますが、たとえば山林地帯に行きますと、ただ伐採して一時に売るだけでなくて、毎年々々おろぬくというのですか、杉の木が大きく育つために何十本か何百本か、その反別によっておろぬくわけですが、こういう場合における所得はまるっきり報告していない、これがまず一つ。それから売却価格については、税務署に対してそれの正確な申告というものはほとんどしていません。その一つの事例を申し上げますと、森林組合が村に報告した金額について非常にうそがあると見て、——これははっきり土地を申し上げると、栃木県の阿蘇郡新合村という村ですが、その村で最初伐採した所得の報告を村会へさしたところが三十五万と報告をした。それはどこの沢なのかという質問をしたらば、その次の日七十万になり、さらにそれはどことどこの沢かと質問したら、次に百五十万になり、遂に村会が一週間続いて、最後には七百五十万になったわけです。それで佐野の税務署から、新合だけがこれだけ徹底して沢の伐採まで調べる状態になったのでは、阿蘇郡じゅうの調査にこういう手きびしい調査をしなければならぬ結果になるから、一応適当なところで折り合ってくれないかという、実は中間折衝があったわけです。実はその折衝に乗って、それが非常に少い金額にまで行ったのです。これは私一つの事例を申し上げたわけですけれども、売却価格というものを調査するためには、私は現在の税務署の吏員だけでは吏員の数が少いのじゃないかという気がするのです。これが一つ。  もう一つは、なぜ少いかというと、人里離れて二里も三里も山の中に行って調べてみなければならぬ事例がたくさんある。今日の税務署の人たちは人里離れたところに行っていません。私は、実は上野村の蓬莱山というところからさらに二里半の山の中に、去年の二月まだ雪のあるときに入ってみたのですが、ここらの山の中に入りますと、ほとんど税務署の吏員は行ったことがないというような話になっているのです。こういうところから見て、税の適正化をはかるためには、どうしてもやはり山林専門の、しかも特に山の中に入って調べる人がなければ、税の適正化がはかれないのじゃないかという気がするのですが、その点長官はどうお考えになりますか。
  95. 平田敬一郎

    平田政府委員 大へんありがたい御鞭撻の御意見を承わりまして、私ども心強く思う次第であります。山林所得の調査につきましては、山林の主産地は紀州とか三重県とかあるいはその他全国にいろいろございますが、そういうところにつきましては、特に人間を資料の収集のために配属いたし、致して、局も十分指導を加えまして、ことに大口の方につきましては、調査を的確にするようにという配意でいろいろ工夫もいたしております。ただ全国の全部の地域につきまして、十分な人員を回すことができないでいることは御指摘通りでございますが、これも土地によって、調査の時期を適当にある程度調整することによりまして、できるだけ人繰りをいたしまして必要な調査はやれますし、ことに相当目に立つ大口の山林の所得者につきましては、実地等につきましてもよく調査いたしまして、適正を期したいと思います。それが今まではなかなか完全にいっていないということがありますことは御指摘通りでございます。今後そういう方向でできるだけ勉強したいと思います。その際に、県によって協力してもらえるところともらえないところとあるのですが、実は県の施業計画、あれに相当付随しました資料があるのでございますが、これをうまくいただけるところは比較的調査がしやすい、そこがなかなか連絡つかぬところはなかなか調査がしにくいというような事情もございますので、これは私ども中央からも極力協力しまして、そういう必要な資料は、課税の資料になる場合には一つ協力してもらいたいということでやっております。それから一番大事なのは各市町村、ことに町村から有力な資料をいただくということでございます。そういう点、税務署側も最近だいぶ町村と連絡をとりまして、協力方を頼んでいるようでございます。しかし町村自体が、立場上今御指摘になりましたような実例もあることであり、正しいところを出しにくいというような事情もございます。そういうことで、できるだけ資料の提供を求めると同時に、必要なときは出張調査をいたしまして、大口の山林所得のものについては、十分遺憾なきを期するように努力いたしたいと思います。
  96. 山田長司

    ○山田委員 森林組合の人たちと税務署の人たちの懇親会などがときどきあるように伺っておりますが、この税の対象である森林所得については、森林組合の人たちからだけ所得報告を聞いて税務署が対処するのではなくて、税の適正を期するために、革新陣営とでもいうか、農民組合ないし労働者の中から、山林所得についての明確化を期するための調査員をあげて、これらの人たちの意見を聞くというようなところまで方法を講ずるというお考えはありませんか。なぜそれを主張するかというと、労働者の場合はびしびし取られているけれども、地方地主の山林所得については——これははっきりここで言うわけじゃないが、ちょうど冬の時期ごろになって税務署の人が調べに行って、ヤマドリを二羽もらって帰るとそれっきりほとんど調べていないという事例があるわけなんです。これは決して栃木県に起っている事例じゃないと思うのですが、一体そういう状態では、税を納めない気持に勤労階級がなることは明確だと思うのです。そういう点で、山林所得並びにどのくらいの価格で売買したのかという調査をするために、勤労階級の意見を聞くというような方法を考えないか、一応伺っておきます。
  97. 平田敬一郎

    平田政府委員 時によると税務職員の中にも不心得な者がありまして、問題を起すことがあることは遺憾に応じます。調査に行っておみやげをもらって、ろくな調査をしないで帰るというようなことは、もちろんとんでもない話でありまして、職務怠慢のそしりを免れないので、よく監督いたしましてそういうことのないように勉強いたすつもりであります。それから資料につきまして、いろいろ各方面から意見を聞くということ自体はこれは私は一向差しつかえないと思います。ただそういう際にそういうところと相談してきめるというわけにもいくまいかと思います。もちろん御趣旨の通り、納税は公平ということが一番大事なことでありまして、他人の税につきましても正義心の見地で、正しい資料を御提出願う、あるいは御意見を承わるということは、これはむしろ非常に歓迎すべきことだと私どもは考えておりますが、そういう方と相談して話をきめるという筋合いのものでないことだけは御了承いただきたいと思います。
  98. 山田長司

    ○山田委員 税の適正化をはかるために私が頼みたいことは、旧来の方途だけでなくて何か新たな方途を考究して、やはり知らない世界を知っている人がいると思うので、そういう点も提出方を考えて、まじめな人だけが税を取る対象でないように願いたいと思うのです。そういう点で一つお考え願いたいと思うのですが、いかがですか。
  99. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の御趣旨は全く同感でありまして、私どもも実はそういう頭で仕事をやっておりますことはかねがね申し上げているところであります。ただ具体的にどういう方法でそれをやるかということになりますと、いろいろな方法があると思いますが、私どももできるだけ工夫いたしまして、適正課税のできるように今後とも努めて参りたいと思います。
  100. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 関連して一点だけ……。ただいまの山林所得の問題は非常に重大なことであると感ずるのであります。もし今山田委員が御質問になりましたように、百万円の所得がある山林主が村において納税しなくてもいいというようなことでありましたなら、これは私は納税意欲というものはもうなくなってしまう。そこで全国の山林所得というものがずいぶん莫大に、当然国に納めなければならないものが納められずにあるのではないだろうか、こういうことまで想像をたくましゅうするのであります。この検査院指摘しました百二十二ページの(ア)というところに「山林所得の資料について税務署間または署内各課間の通報連絡をしなかった、」こういうふうなことを一つ五六〇号ないし七〇四号の間の問題について指摘しておるのでございます。こういう点から見ましても山林所得というものに向って、これはやはり国税上の重大な課題として、私はこれは何らかの新しい対策と態度に出てもらわなければいかぬと思うのです。そこできょうすぐでなくてもよろしいから、国税庁におきまして長官は全国の山林所得に対しましてもっと根本的な考え方、対策というものを国税徴収の上から考えましてお立てになっていただかねばならぬのではないか。でなければ問題は次から次に私は起ってくると思います。きようでなくてもよろしいから文書にしてでも適当に出していただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
  101. 平田敬一郎

    平田政府委員 山林所得につきましては、実はことに大口の方に重点を置いてやっておるわけでありますが、先般来直税部会議あるいは課長会議等におきましても、いろいろ調査方法その他につきまして——それは先ほど私その一端を触れましたが、協議をして徹底をはかるように鋭意努力しておるところでございます。しかしなおお話の通り地方で——ことに地方へ行きますと、目に立つことが相当多くて、それが納税思想に重大な影響があるという御意見は非常にごもっともでございますので、なお一そう私どもそういう角度からいろいろな方法を考えまして、適正化を期していくようにしたいと思います。しかし事柄は一つや二つの簡単な方法ではなかなかできませんので、いろいろな方法を講じまして、しかも鋭意熱意を持って努力するということでないと、目的を達しがたいと思いますので、そういう趣旨でできるだけ勉強をしていきたいと思います。
  102. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しからばその点につきましては、適当な、なるべく早い機会に相当内容のある御報告をしていただきたいと思います。また直税部会議で御協議になっておるなら、その内容もあわせて何らかの御報告をしていただきたいと思います。
  103. 上林與市郎

    上林委員長 他に御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じます。  次会は明二十四日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十四分散会