○高橋(一)
政府委員 私どもも今度の六全協の決定を、先ほどその内容を記載した「ア力ハタ」を手に入れましたわけで、十分検討しておりませんので、確実なことは後にあらためて
政府に
報告しなければならないと思っております。ですから一般の新聞の報道や何かによるごく概略の点について簡単に申し上げたいと思います。
徳田書記長が死亡したからといって、別段
日本共産党の動向にさしたる変化はないと私は
考えております。党内人事において変化は若干あるかもしれませんけれども、全体の動向としては、そのようなことには影響されないというふうに
考えております。
それから六全協の決定について一、二点申し上げますと、規約を改正してプロレタリア独裁という言葉を削ったという点であります。これも別段実質的な問題ではないと
考えております。党は、いわゆる権力を奪取するまでの行き方につきましては、新綱領に民族解放、民主革命ということを言っておりまして、これはむろん平和的になされるものと
考えてはならないということで、暴力革命方式を綱領の上でも明らかにしているわけであります。規約の第二条は、その権力奪取までのことにつきましては、新綱領と同
趣旨を要約して書いてあるのでありまして、ただそのあとの行き方、権力を奪取して後の行き方につきまして、原文の正確な点は失念しましたけれども、この人民民主主義革命が勝利を得た後に、党はプロレタリアート独裁を強め、社会主義社会を建設し云々と、こういうふうにあったのであります。それを今度は「党は、
日本の社会的経済的発展と
日本国民の意志にもとづき、必要な道をとおって社会主義社会を建設し、それを通じて共産主義社会の実現を終局の目的とする。」というふうにしたわけであります。この点何ら実質的な変更でないと申しますのは、もうすでに党は将来のいわゆる
日本革命というものを、人民民主主義革命と規定しているのでありまして、人民民主主義革命においては、権力を奪取した後、その第一段階においてはいわゆる人民民主専政であるということであって、プロレタリア独裁ということはこれを正面からは言っておらないのであります。でありますから、ただそのことを言っているだけであります。ところが人民民主専政というものは、東欧
諸国あるいは
中共その他の実際の経験に基く国際的な規定におきましても、プロレタリア独裁の機能を果すものということにされておるのでありまして、実質的には何ら従前と変更なく、ただプロレタリア独裁という非常に露骨な表現を避けて、一般的な印象を改善しようというねらいであるように思います。非常に宣伝がにぎやかにかかわらず、実質的には何ら変更を見ておらないようであります。
それからもう一点。党は今回の六全協において、一九五〇年すなわち昭和二十五年以来のいろいろなあやまちを自己批判しておるのであります。この点につきましては、私どもの方で五月に
内閣に
報告しました「
日本共産党の
現状」においてすでに問題点を指摘してあるのでありますが、当時朝鮮
戦争がありまして、その戦線における共産側の擁護のために
日本共産党が動員されまして、そうして非常に国内激化の政策をとったわけであります。そのときに、たまたまもう
中共が政権を握って非常に元気な時代でありまして、党の戦略戦術につきましても、中国共産党の方式が非常に押しつけられた形跡があります。その結果、いわゆる根拠地であるとかあるいは独立遊撃隊であるとか、あるいは火炎びんであるとかいうような武装闘争路線が非常に出たのであります。ところが
日本政府及び国民のこれに対する反応が、中国とは全く実は違っておりまして、むしろ先進資本主義
諸国におけると同様の反応を示したのであります。すなわちそのような過激の方法ではかえって不利であるというような反応を示したのであります。この点が党の今後の戦略、戦術にとって非常に重要な点なのでありますが、これを、今回の六全協の決定の中でこのようにいっております。「
日本は発達した資本主義国であるが、
アメリカ一国に占領され独立を失っている従属国である。」云々というふうに申しておって、中国共産党が革命
運動をやっておった当時のような、古い中国のようないわゆる封建的な国ではなくして、むしろ資本主義国型の国であるというふうに規定するに至っているようであります。それで新綱領には、先ほど申しましたように非常に中国型と申しますか、植民地従属国型の運用が従来なされておるのでありますが、この点は党が従来の実践を通じて、やむなくこのような新綱領の運用の変更をいたさざるを得ないというふうに至ったものと
考えるのであります。戦法としては、いわゆる共産党のいう革命退潮期の戦術に徹底したのであって、革命退潮期というものは、当然革命高揚期を
予定しておる一歩後退、引き継ぎのときの戦術である、それ以外に本質的な変化はあるようには思えないのであります。