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1955-07-26 第22回国会 衆議院 外務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十六日(火曜日)     午後一時三十八分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君       伊東 隆治君    池田正之輔君       高岡 大輔君    夏堀源三郎君       並木 芳雄君    山本 利壽君       稻村 隆一君    高津 正道君       細迫 兼光君    森島 守人君       松岡 駒吉君    松平 忠久君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君         通商産業事務官         (通商局次長) 大堀  弘君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 七月二十六日  委員小牧次生君辞任につき、その補欠として松  平忠久君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月二十五日  韓国抑留漁船乗組員帰還促進に関する請願(  池田清志紹介)(第四四九〇号)  同(高津正道紹介)(第四四九一号)  李ライン撤廃等に関する請願床次徳二君紹  介)(第四五五九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間の延  長に関する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一七号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。通告順によりまして質疑を許します。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 日本貿易を増進するという見地から申しまして、あらゆる国との通商関係を増進することの必要なことはもちろんでありますが、中国関係におきましては台湾国民政府中共政府というものがありまして、そういう関係貿易におきましても非常に微妙な関係にあるわけであります。そこで第一に伺いたい点は、台湾との貿易でございますが、昨年の実績によりますと、日本からの輸出が六千百余万ドル、台湾から日本への輸入が六千三百余万ドルということになっておりますが、本年の見込みは大体どの程度になっておりますか。政府委員からでけっこうです。
  4. 湯川盛夫

    湯川政府委員 本年度は、去る四月に国民政府との間に取りきめました貿易計画によりますと、片道おのおの九千四百万ドルということになっておりまして、大体その計画通りいくものと期待しております。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 一方中共との貿易でございますが、昨年の実績日本への輸入が大体四千万ドル見当、それから日本から中共への輸出が二千万ドル弱ということになっておりますが、本年の予想は輸出入ともどのくらいになっておりますか、その見込みを伺いたいと思います。
  6. 湯川盛夫

    湯川政府委員 中共との貿易の本年の見通しでございますが、これはバーターとか決済の問題がごたついておりますので、そういった条件によってかなり違いが出るかと思いますが、一応本年の一月から五月までの実績を申し上げますと、輸出が一千二百三十二万ドル、輸入が三千七百六十一万ドルでございますが、大体これが五ヵ月分でありますから、これの倍よりか若干多いもの、輸出については大体三千万ドルくらい、輸入については六、七千万ドルということにこのままでいけば相なるかと思います。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 中共との貿易考える場合におきまして関連して伺いたいのですが、日本韓国貿易であります。日本中共との関係から、日本韓国との関係にある影響を及ぼしておるようでありますが、日本韓国との貿易は、昨年は日本からの輸出が三千六百万ドル、向うからの輸入が六百八十万ドル、こういうことになっておりますが、本年の日本韓国との貿易関係はどういう見通しでありますか。
  8. 湯川盛夫

    湯川政府委員 韓国との貿易につきましては、最近いろいろな事情であまり活発に動いておりませんが、輸入の方はただいま韓国米を約十万トン買うかどうかという問題がございまして、韓国側の確答がありませんので、ペンディングになっております。これが入って参りますれば、相当輸入になります。輸出の方は昨年後半期から非常に向うで買い控えまして、大した量はございませんが、本年に入ってからの数字は、今ちょっとここに持ち合せはございませんが、あまり大きな数にはなっておらないと思います。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、去年日本から韓国輸出が三千六百万ドルになっておりますが、ことしはこれが相当減る、こういう見込みですか。
  10. 湯川盛夫

    湯川政府委員 御承知のように、韓国に対しましては約四千万ドル近い累積債権という問題がありまして、そういう決済点等がありますし、また先方も目下のところ日本からの輸入ということをあまり活発に行なっておりませんので、両方の理由からして、本年度の対韓国輸出というものは、昨年度より数量においては減ると考えております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの政府当局の御答弁によりまして、大体本年の日本台湾との貿易日本中共との貿易日本韓国との貿易見通しがわかったのでありますが、こういうふうに日本が一方においては台湾韓国との貿易を増進しよう、一方においては中共との貿易促進しよう、こういうふうなことになっております関係で、どうも両方ともわれわれの満足するような貿易状態になっておらぬ、こういうふうに思うのであります。そこで最近の台湾との貿易あるいは中共との貿易を見ましてもいろいろ問題が残っている。国民政府との貿易関係におきましては、国民政府の方で、中共取引する日本商社中共との商売はしないという誓約書を出さなければ、そういう商社とは国民政府商売をしないということになっておりまして、これについては、日本政府におきましても、いろいろ台湾国民政府に対して話し合いをしておったようでありますが、この問題の今日までの経過、現在一体どうなっているか、伺いたいと思います。
  12. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ただいまの御質問でございますが、しばらく前に、台湾国民政府信託局の方から、台湾のいろいろな物資日本輸入する場合に、その取扱い商社を指定する際に、各商社から中共取引をやっていないという誓約書をとった事実がございます。これに対して日本側といたしましては、日本貿易で立っていかなければならない国で、中共との貿易もやはり必要である、中共に対しては戦略物資は出さないことにしているし、平和的な貿易はぜひ続けたい、従ってそういう商社を一々吟味するというようなことはやめてもらいたいという趣旨で、しばしばいろいろなルートで話をしてきたのであります。それに対して台湾では、中共取引するということは一種の通敵行為になるので、自分の国にはそれは許せない。またそういう中共取引している商社台湾政府機関である信託局取引するということも間接通敵行為になるから、やはり自分らとしては相手方の商社を吟味せざるを得ない、こういう趣旨で答えております。しかし何分措置が非常に穏当を欠きますし、また日本平和的通商影響を及ぼすということは、こちらとしてはおもしろくないのであります。向うの理論を決して納得したわけではなくて、その後も何とか向う態度を改めてもらうように反省を求めておりますが、しかし先方言い分は終始同じでありまして、この解決にはなかなか時間がかかることと思います。それは向う信託局の問題でありましたが、最近になりまして、今度は台湾政府物資局が、向う入札を行う場合に、入札参加条件として、今度はもう少し広く中共並び中共を含むソ連圏取引していないという念書を入札の際につけて出すという話がありました。これに対して日本としては同じ態度で臨んでおるわけでありますが、しかし向うはやはりその主張を撤回をいたしておりません。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと、日本商社にだけそういう要求をして、日本以外の国の商社にはそういう要求はしないのでありますか。
  14. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この信託局東京パリとロンドンと、たしかアメリカのニューヨークですか、それだけにあるそうであります。しかし先方言い分によりますと、信託局のやっている取引の大部分日本であって他はネグリジブルである。しかしほかに考えていることもそれは考えているけれども、これは問題にならないほどであるから今のところはやっておらない、そういうことでございます。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 そこで大臣に伺いたいのですが、日本国中華民国との間の平和条約附属議定書によりますと、「各当事国は、相互に他の当事国国民産品及び船舶に対して次の待遇を与える。(1)貨物の輸出及び輸入に対する、又はこれに関連する関税、課金、制限その他の規制に関する最恵国待遇」、つまり日本国民産品船舶に対して中国最恵国待遇を与えるということが、ちゃんと議定書に載っておりまして、その議定書の期限が今度延長になるわけであります。この条約から申しますと、国民政府日本商社に対しまして最恵国待遇を与えなければならぬ立場になっておると私は思うのでありますが、今の政府当局説明によりますと、大体これは日本商社だけでありまして、それに対して中共あるいは中共を含む共産圏との商売をしたものには商売をしない、そういうふうなものでありまして、どう見てもこれは差別待遇と思わなければならぬのであります。政府はこの条約上の権利に基いて国民政府と強硬に話し合いをする意思がありますかどうか、外務大臣からお伺いをしたい。
  16. 湯川盛夫

    湯川政府委員 先ほどちょっと申し落しましたが、この点につきましては日本商社だけに対してそういう誓約書要求することは、この議定書最恵国待遇にも違反するのじゃないかということを抗議のうちにいつも申し添えております。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 政府の方ではせっかく国民政府に対して措置をとられておるようでありますが、これまでの経過から申しますと、なかなか日本側主張が通っておらない状況であります。外務大臣責任大臣としてこの問題について、どういう方針をもって今後臨まれるわけでありますか、伺いたいと思います。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 わが方の主張を貫徹するために、十分一つ抗議を続けていこう、こう考えております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど政府委員から説明がありましたように、日本台湾に対する輸出は去年が六千万ドル、本年は大体九千万ドルまで持っていこう、こういうわけでありまして、日本輸出貿易全体から申しましても相当重大な問題であります。日本輸出貿易全体が十八億ドルと見ましても、相当の大きな部分をこの台湾に対する日本輸出が占めているわけでありまして、日本輸出貿易全体から申しますと、非常に重大な問題でありますので、これはぜひとも従来の主張を貫徹するように、政府におきましては強固な決意をもって今後とも国民政府話し合いをしていただきたい、こう思うのであります。  問題は次に中共貿易でございますが、一方そうふうな形におきまして国民政府との貿易台湾との貿易を増進すると同時に、一方中共貿易促進する、こういう態度をとっておりまして、中共貿易につきましても今の政府態度は、必ずしも徹底しておらないと思うのであります。たとえば日中両国民間貿易協定ができまして、政府鳩山総理ですか、これに対しまして通商代表部の設置、それから決済問題につきましては強力な支持を与える、こういうふうになっておりますが、その後最も大事な決済問題につきまして、なかなか話がつかないために、中共貿易が足踏みの状態になっている、こういう状態であります。最近中共からの大豆輸入の問題などにつきましても、決済問題が大きく出て参りまして、結局中共からは大豆は入らないというふうなことになったようでありますが、片道三千万ポンドの貿易をするというふうな民間貿易協定を作りましても、結局決済の問題、それからもう一つは従来から問題になっておりますココムとの折衝で禁輸品目を緩和するということが解決しないと、なかなかその目的を達しないのでありますが、この決済問題につきまして一体政府はどういう方針を持っておるのか、もしこの問題が解決しないと、中共貿易中共貿易と声を大にして申しましても、私はなかなか進まぬと思うのでありますが、一体外務大臣はこの問題についてどういうお考えでありますか、伺いたいと思います。
  20. 湯川盛夫

    湯川政府委員 決済問題につきましては、民間でできました協定では日本銀行人民中央銀行との間で決済をするようなことに将来はいきたいということが書いてありますが、それはいろいろ困難もあると見通されたせいでありましょうか、さしあたりは現行決済方式によるというふうになっております。中央銀行間の決済ということになりますと、日本銀行の場合には、まだ承認していない中国中央銀行日本中央銀行である日本銀行が直接に決済の取りきめをするということは、今の時期ではまだ尚早だという意見と、もう一つアメリカ外国資産管理法関係で、日銀としてもいろいろな危険が予想されますので踏み込めないということで、その方は今のところなかなか進めない状態にあります。従いまして現行決済方式を活用していくという、さしあたりそれよりほかはないと存じております。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 最近大豆輸入問題なんかでこの決済問題が大きくなりまして、たとえば大豆日本輸入に対してはバーターでなくポンドで払ってもらいたいというふうなことで、政府の方でもいろいろ考慮を払っておるようでありまして、最近の新聞報道によりますと、通産省では新しい構想をもって、従来のような個別的なバー夕ーでなくして総合的なバーターをやっていこう。そうして片道三千万ポンドくらいの輸入輸出をやろう、こういうふうな構想を発表しておりますが、そういうふうな構想片道三千万ポンドの輸出輸入ができるのでありますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  22. 湯川盛夫

    湯川政府委員 中共との貿易は昨年も約四千万ドルの輸入に対して、輸出が二千万ドルというふうに非常なアンバランスな状態にございます。そこで従来とってきた方針はいわゆる逆トーマス方式というのを利用しまして、そうして大体輸入した分は輸出ができるというふうにして、このアンバランスを是正したいということで来ておったのであります。最近新聞に出ております通産省の新方式と申しますのは、従来せっかくそういう逆トーマス方式でやっておりましたが、なかなかこちらの輸出先方が約束通り輸入してくれないために追っついていきません。そこで新しい方式として、もし向うが三千万ポンドの輸入ということをば確約すれば、こちらもその輸入する際の条件を必ずしも逆トーマスでなくてももう少し総合的に全体として考えよう、こういった趣旨考えられます。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 大体決済の問題はわかりましたが、そうしますと、今度は結局問題は、中共に対する輸出禁止品目を緩和するという問題が何とかならなければ、中共貿易促進しないのでありますが、この間のゼネヴァ巨頭会談において、両陣営の間の貿易その他思想、そういうものの交流を今後ますます強化したい。こういうふうな話が出まして、結局共産陣営自由陣営との貿易増進という傾向が一そう強くなったと思うのでありますが、政府はこのココム・リストの緩和の問題について、むろんこれまでもできるだけの努力をされておるのでありますが、今後一体どういう方針でこれをやっていくのでありますか。それからまたこれに対する見通しを、外務大臣から伺いたいと思います。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 お話の通りゼネヴァ四国会談では、東西陣営交流の問題まで一応取り上げられた形になっております。しかしこれらについては、すべて将来開かるべき外相会議において具体的に考慮されるということになっております。そこでその結果を見なければ東西陣営の間の交流、従って貿易関係がどうなるか、さらに緩和されるかどうかというようなことも、具体的にはわからないのでございます。しかしそういうことが取り上げられたということそれ自身が、非常に明るい気持を起させることになりますので、その点は日本中共貿易についても、間接ながらいい影響を与え得るものと、こう考えております。そこで将来いろいろな機会に、中共の問題も国際的に考慮に上り得ることもございましょうし、また日本といたしましては、いろいろな機会をとらえて中共貿易の拡大に資するような手段をとる、すなわち外交交渉をとることの機会ができてくるだろう、こう考えております。それはあるいはぜネヴァにおいて、パリにおいて、あるいは特にワシントンにおいてそういう機会があり得ると思っております。また東京においてはむろんのことでございます。機会を十分とらえてそちらの方に向けていきたい、こう考えております。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 それでは時間もありませんから、もう一点だけ伺って私の質問を打ち切ります。それは貿易そのもの関係ありませんが、日本国民政府との平和条約の問題でございますが、この第三条におきまして、日本中国政府におきましては、両方国民財産権の問題は、将来日本政府中華民国政府との間の特別取りきめの主題とする、こういうことになっております。この問題は日本人在外資産の問題とも大きな関係があるのでありますが、台湾にある日本人財産日本にある台湾人財産、こういう問題は日本政府中華民国政府との間の特別取りきめの主題としてこれを話し合うということが、国民政府日本との平和条約の第三条にあるのでありますが、この問題はその後取り上げられておらぬように私は見ておるのでありますが、どういう事情でこういう財産権に関する重大な問題がそのままたな上げになっておるのでありますが、この点を一つ伺いたいと思います。
  26. 中川融

    中川(融)政府委員 日華平和条約第三条に基きまして、相互財産権をどういうふうに解決するかということにつきまして、協定を結ぶことになっているのでありますが、これにつきましては一昨年以来台北におきまして、国民政府当局交渉開始を申し入れているのでございます。先方準備不足と称してこの交渉に応じていないのでございます。これは台湾から引き揚げられた方々の権利保護というような見地から見ましても、ゆるがせにしておくことができない問題でございますので、さらに最近、一ヵ月ほど前と記憶いたしますが、再度公文をもって先方交渉開始方を申し入れております。それを受け取ります際に、先方当局者は、これはやはり準備がなかなかかかるので、すぐには応じられないかもしれないということで受け取っておりますが、日本としてはあらゆる手段を尽してこの交渉開始方を督促しているのでございます。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 政府においてせっかくこの問題を取り上げて、国民政府との間に交渉促進をしておられるということでありましてけっこうと思いますが、日本人の持っている財産と、それから台湾人の持っている財産と、その比率と申しますか、両方金額まではどうかと思いますが、大体どのくらいの割合になっておりますか伺いたい。大体の見当でけっこうです。
  28. 中川融

    中川(融)政府委員 的確な金額は、私もちょっと覚えておりませんが、台湾に置いてある日本人財産の方が、日本にある台湾財産よりも、相当大きいのでございます。
  29. 植原悦二郎

  30. 森島守人

    森島委員 私は土曜日に、北澤委員質問に関連しまして、いわゆる重光外務大臣対外声明に対して御質疑したわけでございます。それに対して御答弁もいただきましたが、私としては納得がいかぬ点が多々ございますので、会期も切迫しておってはなはだ恐縮ですが、きょう重ねて私は重光外務大臣の御所信を伺いたい、こう存じておるのであります。  第一に、これはあまり注意を引かなかったのですが、このレファレンスの五十号に、中国との国交調整問題の翻訳が載っております。これによりますと、「われわれは、イデオロギーの如何に拘らず世界の全ての国と友好関係を結びたい希望であることを留意せられたい。従ってわれわれは相互に受諾できる条件ソ連中国との正常関係を回復する意思を有する。」ただし書きがちょっとありますが、こういうふうに明確に書いてあるのでありまして、私は大臣に対する質問に入るのに先だちまして、田中情報文化局長にこの対外声明というものはどういうふうな方法でお出しになったか、この翻訳は外務省でおやりになったのか、あるいは図書館側でおやりになったのか。この二点と、対外声明は、おそらくあなたが西洋人にお渡しになったことと思いますが、これに対して事務当局としてのあなたの御見解を伺いたい。この中国との関係というものは、私は中共を意味しているということを確信しておりますが、これは事務当局としてはどういうふうにお考えになっているか、この点を伺いたい。
  31. 田中三男

    田中(三)政府委員 お答えいたします。今のを公表いたしましたのは、十二月十一日と記憶しております。それで今御指摘になりましたものは、たしか前日の夕方と思うのでございますが、横文字の原文が私の方に回りまして、これを公表する準備をするように、こういうことであったのであります。ところが翌日になりまして、この翌日というのは、閣議あと日本文外務大臣談が出まして、これをすぐ発表するように、またこういう指示がございました。ちょうど横文字の方は前の晩から指示を受けており、日本文の方は翌朝閣議あと指示を受けたのであります。そういうわけで、たまたま時期がちょうど重なりまして、同じような時刻、しかし日本文の方が先に発表いたしました。あとでよく事情がわかったのでありますが、日本文声明閣議の了解を得たあと政府の正式の声明としての報道であります。それから英文の方は実は大臣が御就任の前から、外人方面から大臣就任になった際の今後の外交についていろいろの問い合せがあった模様でありまして、それを取りまとめたものであるということが私の方にもすぐわかったのであります。こういうわけで時期的にたまたま一致したわけでありますが、趣旨は全然違ったものであるというふうに了解いたしております。
  32. 森島守人

    森島委員 中国との正常関係というのは、あなたとアジア局長はどういうようにお考えになっておりますか。
  33. 田中三男

    田中(三)政府委員 ここにあります中国という言葉は、このただし書き英文では一つの文章になっておるのでございまして、訳文の方は、「但し、これは、自由諸国とわが国との基本的協力を妨げないことが条件である。」こういうただし書きがついておるわけであります。これを一括して私どもは解釈をして、結局ここにある中国というのは、中共台湾も含めた全般の中国関係であるというふうに解釈をしております。
  34. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま情報文化局長の申した通り考えております。
  35. 森島守人

    森島委員 私はこれはしいて形式のことは追及しない、実質の問題が日本外交政策の根本問題である。幸いにしましてこの中でうたわれておる日ソの関係につきましては、実質的の交渉に入られたわけです。ここにいかに御答弁がありましても、中国との正常関係を回復するということを書いてある以上は、これは中共を意味しなければ意味をなさぬと私は断定いたします。第一台湾等をひっくるめたというのならば、表現も別になってこなければならぬ。またそれなら台湾中共を制圧するか、中共台湾を併合するか、その先までお考えになって組閣早々政府対外方針を御声明になるものでないと私は確信いたしております。しかもソ連と同列に置いておるという点、イデオロギーのいかんを問わずというふうな点から考えまして、それは中共を意味しておるということに解釈するのが、私はいやしくも常識ある人の解釈であろう、こう断定するのであります。  次にもう一点御指摘したいのは、土曜日の重光さんの答弁を見ますと、非常に私はわからない。奇々怪々とでも申さなければならない。必ずしも中共承認するのだという結論にはならぬと思うという一節もございますし、今日においても日本とシナとの間には正常関係を回復したい、それから中共政府承認する意味であるとかなんとかいうが、私は日本とシナ民族との間には、どうしても正常関係を回復しなければならぬと思う、こうありまして、一見きわめて明白なようでありますが、外務大臣はいやしくも外交方針外交運営の責任者でございます。いやしくも中国の問題をお考えになる以上は、相手方がなければならぬことである。国民全体として、台湾を入れますと、六億八百万、そういう多くの民衆を相手にして具体的な政策をお立てになるということは、これはあり得ないことだ。中共を相手にするか、あるいは台湾を相手にするか、さもなければ両方が合体するのを待つかという以外には、私は方法がないと思うので、中国国民を相手にして正常関係を回復する。これは文化人や学者の議論ならば、私は受け取れますが、いやしくも現実の外交政策を遂行する責任のある外務大臣としての御答弁とは受け取れないのでございますが、この点に対する御見解を一言でよろしゅうございますから、はっきり申していただきたいと思います。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 今私の説明について不信を表せられましたから、私はあえて弁明をいたします。私どもは何十年とシナ問題をやっております。私どもは、シナの、たとえば張勲の政府だとか、南京政府だとか、北京政府だとか、これは相手としておりません。シナ民衆というか、シナを相手にして、シナと日本との間を常によくしようと心がけておる、それは森島君もわれわれと一緒に仕事をしておられたときには、全くその考えでやられておった。これは私は確信して疑いません。これは正式なものは声明ですが、しかし英文で書いてあるものは、実は私のとぎれとぎれの談話を集めたもので、それでも私はこの字句をつかまえてあえて議論しない。あなた方、特に森島君のような人にそういう誤解を与えるということは、私は非常に遺憾に思い、残念に思う。それは私は幾重にも不敏を謝しますけれども、ここのなににはこう書いてある。相互に受諾し得る条件ソ連中国との正常関係を回復する意思を有する、ロシヤに対しても、シナに対しても一つ正常関係を回復して日本との関係をりっぱにやろうと、こういう一般的な考え方をここに表わして、そうしてすぐその次の行にはソ連中共との——わざわざ中共とここに書いてある。その中共との貿易についてはこうこうである、こう書いてある。それでありますから、私は、私のように解釈してもこれは少しも差しつかえないことで、またそう解釈することが、私は非常にいいことだと思う。今すぐできぬことをやろうと思ったってできぬのだから、中国状態がだんだん改善をして、日本との間の関係をノーマライズし得るように希望することは、私は当然のことだと思う。それは私は文章や、要するに会話で言ったことをつづり合せてあるのだから、それで逃げるわけではありません。不完全である。不完全であるから不完全であると指摘されることは、私は、それに対してもし不都合があったら何もこれは陳謝するに異存はございません。しかし私はそういう不信を問われるということになれば、私は一言せざるを得ない。私はそう考えておるのです。
  37. 森島守人

    森島委員 ただいま張勲だとか、古いお話が出ましたが、私も在支十年です。張作霖の政府も、張学良の政府も相手にいたしました。北京政府も相手にいたしました。しかしその根本の観念は中国の民衆と手を結ぶことであることは、これは私といえども人後に落ちません。しかし現実問題といたしましては、やはり共産党政府も相手方とし、広東政府を相手方としなければならぬ。現実の政治の問題としては、中共政府を相手方にするかいなかという問題でございます。  なおこまかい点で相済みませんが、日本文では貿易のところには中共と書いてあるとおっしゃいますが、そういう点まで御指摘になったならば、私は英文を指摘しますよ。ここにはっきりロシヤの方はソビエト・ユニオン、中国の方はチャイナ、こう書いてありまして、日本文中共というのは間違いといわざるを得ないのでございます。  次に私が三月六日かに質問しましたときに、中共はすでに中国大陸の不動の権力を確立しておるということを申しまして、御見解を伺ったわけですが、それに対する鳩山首相並びに重光外務大臣の御答弁は、不動の権力を確立しておるのだ、こうおっしゃったのです。これには間違いございませんか。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 その通りです。
  39. 森島守人

    森島委員 そういたしますと、私はさらに移ってお尋ねしたいのです。サンフランシスコの講和条約あと、これは自由党の吉田さんがダレスの圧迫に屈しまして、台湾政府を認めた。これは私は近代における日本外交史上の一大失態だと考えております。その後における極東の情勢もここに胚胎することが非常に大きい。これは一々例をあげませんが、重光さんはこれが失敗であったかどうか——これをいかにお考えになりますか。むずかしい問題と思いますが、率直な御意見を伺いたい。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 吉田ダレス書簡というものがここにあります。このうちに、「日本政府は、究極において、日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります。」ここにもチャイナとある。これは中国である。私の方もやっぱり中国であります。こういうことにおいて同じである。日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望する、こういう点においては、共通でございます。
  41. 森島守人

    森島委員 私はそれは非常に御答弁が困難だろうということは予期しておったのです。しかし、吉田さんがチャイナという字を使って、あの台湾の一孤島の国際的落武者のような蒋政権を認められた。そうだから、自分の方でも中国という字を使って、中共政府に関する問題をごまかしてもいいのだという御答弁は、私は納得できません。次に私は、時間もありますから、お伺いしたいのですが、重光さんのお考えからいたしますと、どうも台湾問題や中共の問題が片づかぬ限りは、中国の問題には現在以上に手を触れてはいかぬのだというふうに私はとらざるを得ないのですが、この点の御見解はいかがでありましょうか。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 私は当分の間そうだと思います。これは今急に——これはこの前非常に森島君からやかましく言われたことを覚えております。一体外務省でものわかりのいいと思うお前までが、中共承認をどうしてどんどんやらないのか、というような趣旨のお話があったと思って、まことに私は恐縮いたしたのでございますが、私はまだ当分世界は大きく——だんだん変ると思う。それを今無理をして日本だけの行動をとるということは、少しまだ時期を考えなければならぬ、こう思っておる。そこで、せっかくのお話でありますから、私も十分に考えたのです。御意見も、大局的な方向としては私は少しも異存のないところでございますけれども、こういうことは実際問題としてはいろいろな利害関係を現実的に考えなければいけない。少し早い。特に、貿易々々と申しますけれども、今中共貿易よりも台湾貿易の方がずっと多いような状況であります。そこで貿易で比較するわけには参りません。参りませんが、これは従来かのら行きがかりもあるし、そう急がないでも、世界の情勢の変化ということを待てば、おのずから解決することは解決するのである。少し私はしんぼうすると申しますか、形勢をよく見つつ処理していくことが一番いいのじゃないか、こう考えておるのであります。いつまでもというわけではございません。また形勢いかんによりましては、これまた大きくステップをとる時期も来ましょう。しかしそれは今どうでしょうか。私は今それをやらぬ方がいいと思っております。
  43. 森島守人

    森島委員 私も大体において重光さんの御意見は賛同せざるを得ぬのですが、ただ今度のジュネーヴの会議に関連しまして、私は極東会議が開かれる時期があるいは近いうちに来るのじゃないか。その場合には日本としては最も大きな、緊密な関係を持っておる台湾問題はどうしても考慮しなければならぬ。台湾問題を考慮するとなりますと、中共承認するかしないかという問題に帰着せざるを得ないのであります。日本が押し詰められた状況に立つことは私は必然だと思う。その場合には日本として台湾の問題について具体的に確たる方針をきめておかねばならぬ。私は何らか御方針があるかいなか、これを承わりたいと思う。漫然と国際情勢の推移を待つというのじゃなしに、今から一定の方向に従って準備をしておかなければならぬと思うのでございますが、これに対して外務当局として何らかの具体的な方策を持っておられるか、承われれば非常に幸いだと思います。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 四国会談にいわば引き続いてでございますが、引き続いて、東亜方面に関する国際会議があるであろうという見通しは、これは私は確かだろうと思う。ここで公式に私は申し上げるのには少し行き過ぎると思いますからそれはお許しを願います。しかし考えてみますと、大体今回の四国会談はヨーロッパの問題を軌道に上らせる結果になったと思うのであります。目的はもちろん世界の緊張緩和、こういうことにありますが、しかし実際は取り扱った問題を数え上げてみるとヨーロッパ問題でございます。そうするとアジア問題ということは、必ず引き続いて国際間に取り上げられなければならぬ問題になるわけでございます。それだから論理的の結論からいっても、私はそうなると思う。それからまたそういう工合にだんだん形勢を仕向けていかなければなりますまい。また日本としてもその間に貢献すべき方法はあり得ると思います。さようなことになります。そうなるとお話の通り台湾も——台湾だけじゃないと私は思うのでありますが、これは主要な問題として取り上げられる。台湾問題、朝鮮問題だけじゃないと思う。そうであるからしてこれに対する準備は手落ちなくしなければ、われわれの職務が勤まらぬということになります。だからそれは及ばずながら非常に努力をいたしておるわけでございます。しかしそれならば台湾問題をどうしようとか中共をどうしようとかいう具体的の考案を、今われわれの頭にいろいろ練ってはおりますけれども、それを申し上げるのはお許しを願いたい、こう思うのであります。十分そういう方向は今お示しの通りに私どもも考えております。努力いたしたいと思います。
  45. 森島守人

    森島委員 台湾の問題につきましては、台湾省民の間に省自治という主張も強いようであります。それからまた国際連合に委託するという議論もあるようでございますが、台湾は歴史的、地理的関係から見ましても、また講和条約関係から見ましても、あくまでこれは今九割以上の地域を現実に支配しておる中共の手に帰すべきものであるということは、疑いないところであると私は断定したいと思うのであります。他方やはり台湾省民の希望等もいれますと、これはわが党の主張じゃございません、私の今さしあたりの考えとしましては、これはやはり中共内部の問題として片づけるという建前のもとに、何らかの方法で高度の自治を台湾の省民に与えるという方法が、最も妥当な解決策ではないかと私は考えておるのであります。ちょうど満州事変前における東三省政権、あるいは重光さんも非常に御関係になった華北政権のいわゆる自治論、これは軍部が力を入れましたが、軍部でないのです、中国内部の問題としてそういうふうな方向に何らか御尽力になるのが、過去において台湾中国に対する非常に豊富な経験を持っておられる重光外務大臣のとらるべき方法じゃないかと私は存ずるのでございます。ただこれは示唆するにとどめておいて、別にお答えはいただきません。
  46. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  47. 岡田春夫

    ○岡田委員 重光さんに一つ基本問題を伺いたいと思うのですが、委員長にこれは御了解を得ておきたいと思いますけれども、二十分の時間の制限でありますから、大臣には基本の問題についてのみ伺いまして、その他の問題についてまだ伺いたい点があります。これは外務省の関係の方に伺いたいのでありますが、この点は時間の関係で今の場合においては留保いたしておきますから、この点は御了解を願っておきたい。  日華平和条約が三年前に結ばれたのですが、今議題になっております議定書の基礎としての日華平和条約の問題について、これはいろいろ議論すべき点があると思いますけれども、いわゆる台湾政府の性格の問題については、これはやはり重要な問題として、どうしてもこの機会に議論をしておかなければならない問題だと私は考える。そこでまず第一に、今森島君からも質問がありましたように、日華平和条約を結ぶに当って直接の動機になりましたのは、ダレスと吉田総理との書簡のやり取り、これは直接の、しかも公文書としての関係が出てきているわけです。そこでこのダレスあての吉田書簡というものは、その当時の岡崎外務大臣答弁によりますと、吉田内閣限りの法的拘束力を持つものであるが、それ以降の内閣においてはこれは拘束力を持つものではないということが、はっきり実は昭和二十七年の五月二十三日に岡崎外務大臣答弁をいたしております。(「読んでみろ」と呼ぶ者あり)今御希望がありましたから、読んでみてけっこうですが、「これは条約ではありませんから、あとで違った政府が将来——いつのことかわかりませんが、出て来た場合に、これを拘束するということはありません。」と断定をいたしております。この点は重光外務大臣として間違いはないかどうか、今の内閣においては、この書簡についての拘束力はないと考えるが、この点はいかにお考えですか。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 条約論でございますから、条約局長からお答えをいたさせます。
  49. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいまお読みになりました岡崎前外務大臣答弁は、やはり法律的に言われたのでありまして、次の内閣は法律的には拘束されない、そういう見解を言われたのだろうと思います。でございますから、結局これは政治問題であります。道義の問題であり、また外交政策の問題であるという意味であろうと考えます。
  50. 岡田春夫

    ○岡田委員 法律的な拘束力はないということはあなたはお認めになりましたけれども、それでは道義的政治的な意味において何らかの義務関係を持つというか、何らかの道義的な拘束を受ける、このように解釈するとして、そういう解釈に基いて、先ほどの外務大臣の御答弁あるいは最近の外務省としてとっておられる政策は、そういう観点に基いて行なっておられるのだと解釈してよろしいですか。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  52. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ伺いますが、吉田書簡の内容を見ると、あなたもごらんになりましたように、対国民政府についての考え方と、それから中華人民共和国政府についての考え方について、その内容が詳しく述べられております。特に中華人民共和国政府に対する態度については、その当時朝鮮戦争の関係がありましたので、国連が侵略の定義をしたというようなことや、あるいはまた中ソ友好同盟条約日本に対する敵対的な関係にあるからである、こういう二つの理由が主となって、中華人民共和国政権に対しては友好関係を結ばないという結論を下しております。こういう考え方はいわゆる吉田内閣一流の考え方でありますが、中華人民共和国政府に対しては敵対関係に立つという思想に立って、それに基いてそういう態度を出しているわけです。しかし重光外務大臣あるいは鳩山総理大臣の今までの意見を聞いておりますと、そういう敵対関係に立つのではなくて、鳩山内閣の外交方針というものは、近隣友好の関係に立ってお隣同士が仲よくやっていく、こういう考え方に立っていくわけなんでありまして、外交政策の基調としては本質的に違ってきていると思う。そういう違ってきている本質が二つあるにもかかわらず、前の内閣のそういう道義的あるいは政治的義務関係を負わなければならない。そういう点は、その二つの基調と義務関係との関係はどういうようになって参りますか、この点を伺いたい。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 私の考えを申し上げましょう。お話の通りに、この書簡はそのときの情勢についていろいろ述べております。そうであったろうと思うのであります。今お話のありました朝鮮関係の問題、中ソ同盟条約関係——朝鮮関係の問題のごときは、そのときは非常にアキュートであったことは御承知の通り、また中ソ同盟条約のごときも、締結された当時には、ほとんど日本に対する中共方面の論調というものは極端であったことは御承知の通りである。さような空気であったことは、これはもちろんでございます。しかしそういう時代においてできた文書ではありますけれども、これは日本政府の首班が、アメリカ政府首脳者とかわした書簡でありますから、これはそれ相当日本としてはこれを尊重しなければならぬと私は思います。内閣がかわろうが、これは尊重しなければならない。しかしながら事態が変ればこの値打も非常に変ってくるのであります。私は今日の事態と当時の事態とは非常に事態が変ってきた、こう思います。そう思いますから、われわれも先ほど問題になりましたが、しかし中国方面の形勢もずっと変ってくる——と思う。それに順応して日本措置も、態度も、外交方針も変って差しつかえない、こう考えております。しかしそれはこれを全然ほごにしてしまうということではありません。これを尊重しなければいけない。それだから事態が変るに従って変るということはこれは当然のことであると思う。そこでわれわれはこういう事態であるのにもかかわらず、中共との間の貿易関係も進めていきたい、またさらにロシヤとの関係は国交の正常化をやっていきたい、こういうところに進展をして、これは何も逆転したわけじゃない、前進してきたのだ、私はそう考える。しかしながら今すぐ中共承認するということはこの文書からいえば正反対なことになりますし、それはいま少し事態の変遷ということ、世界の状勢の変遷を待つことが、しかるべき措置だということを先ほどから私は意見を申し述べておる次第でございます。
  54. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはほんとうはもう少し議論をしたいのです。しかしながら二十分という時間ですから残念ながらこれ以上触れられないのですが、しかしながらあなたの意見を伺っておりましても、吉田書簡の基調になっているものは、中ソ両国に対して日本が敵対関係に立つ、これを基調としてあの書簡が書かれているのであって、そういう書簡に基いて何らかの義務関係、道義的な政治的な義務関係を生ずるとするならば、善隣友好の関係に立って中ソ両国と仲よくやっていこうとしている鳩山内閣の政策の基調と本質的に矛盾してくるのじゃないか、この点を私は先ほどから言っているので、どのようにあなたがお話になろうと、その矛盾している事実を認めないわけにいかないと思う。これが第一点。  それからもう一つは、カイロ宣言、ポツダム宣言の規定について一つお伺いをしたいと思うのです。これは条約局長に特に伺っておきたいのですが、すでにカイロ宣言は当事国間における合意に到達した、いわゆる宣言的な役割を果していると同時に、このカイロ宣言は国際法上の拘束力を私は持つと思うのです。こういう点についても当事者間に対する拘束力は少くとも効力を持っていると私は考えますが、この点はどうであるか、この二つを一括して、まず第一の点について大臣の御意見があるようだからお答え願いたい。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 私の先ほど申した方針とこの書簡を尊重するという方針とが、決して矛盾をしていないということを結論的に申し上げます。カイロ宣言の法律的効果、これは宣言でございますから、法律的効果というのはどういうことをねらっておられるのか、拘束力は、たとえばカイロ宣言にこうあるから日本台湾は永久に放棄したのだ、これを認めたから放棄したのだ、これははっきりと条約にこれを処理して法律的な効果が生ずるものである、私はこう考えております。
  56. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし宣言だから宣言であるということではなくて、宣言という言葉を使ったから法律的な拘束力はないということは断定できないと思うのです。戦争宣言だって宣言ですからね。だからこれはやはり国際法上の拘束力、法的な拘束力を持っていると私は思う。少くとも当事者間、いわゆるカイロ宣言の場合においては三国間における拘束力は当然持つと解釈すべきだと思うのです。この点が一つと、それから台湾並びに澎湖島の領土の帰属問題について、国際法上の観点から二、三伺っておきたいと思うのですが、この領土の帰属問題は、主として日本中国との二つの国の関係によって規定されるべきものと私は解釈しておる。もちろんそれの基礎になっているのはカイロ宣言でありますけれども、それはどうしてかと言うと、先ほど森島君も言われたように、台湾、澎湖島というのは本来中国本土と不可分一体の関係にある。これは歴史的にも、地理的にも、民族的にも不可分一体の関係にあったものである。ところがこれが御承知の通り、日清戦争の結果下関条約によりまして日本に帰属するということになった。ところがそれが今度の戦争が始まるに当って昭和十六年の十二月に中国——当時の中華民国日本に対して対日宣言を布告した。それと同時に従来の日中両国間にある一切の条約は、この日と同時に破棄するという破棄宣言が行われている。そこでそのあとで今度の日華平和条約を見ると、日華平和条約の第四条によって昭和十六年十二月の破棄宣言を認めますという意味のことが明確にうたわれておる。そうすると下関条約を破棄したということを日本側も認めたことになる。そうするとこの台湾、澎湖島の領土権の帰属の問題は、当然清国時代の関係に戻るべきだと解釈する。ということは結局中国本土と台湾、澎湖島は不可分一体のものとして中国に帰属すべきものと解釈すべきである、このように規定すべきだと私は考える。その裏づけとして先ほど言ったカイロ宣言に基いて当然台湾、澎湖島は中国に戻すべきであるということが規定されている理由から言ってもそれは裏づけられていると思うが、そうでないとお話になるのであれば、その理由をお話願いたい。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの法律関係条約局長に十分研究をしてもらって、条約局長において一つ十分意見を立ててもらいたいとこう思います。しかし私は今のこれに対する御答弁として、あなたの言われる議論のようにそうはならぬように思うから、その点だけは私は申し上げておきたい。それは第一の点は、あなたはカイロ宣言によってカイロ宣言の関係者の間に法律的関係でこれはきまっておると言われておって、そうして台湾、澎湖島の問題は、中国日本との間において始末をつけなければならぬ問題であるとこう言われる、ここに矛盾を私は考えておる。しかしカイロ宣言で関係国の間にちゃんときまっておるなら何も日本中国との間で始末をすべきではない。しかしそれはまあそれにしておいて、それから日本台湾政府との間にこしらえられた平和条約、この第四条ですかによって日清戦争後の何はもうやめてしまった、廃棄したのだ。こういうことだから台湾、澎湖島が全体の中国なるものに返るのだ、台湾に行くのじゃないという議論はどうでしょうか。実際上の勢力は台湾政府台湾と澎湖島にも持っておるということが条約にもちゃんとあるわけだが、そこで日清戦争後の日清関係条約は破棄されたから、今の相手方の国民政府に返るのでなくして、不可分の中国に返るのだ、こういう御議論ですね。しかしそれは不可分の中国ということを台湾も、おれは不可分だと思って大陸全体をおれの領土だといまだに主張しておるのだから、台湾は別にこれに対して不服はないでしょう。ないでしょうけれども、実際台湾と澎湖島を持っておるのは台湾国民政府だから、それと平和条約を結んできたのだから、当然台湾国民政府にこの領土は属しておるものだ、こういうふうに考えることが順序じゃないでしょうか。それが法律論というものだと思います。
  58. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務大臣の御意見は全然誤まりであります。なぜ誤まりかというと、今、国民政府に領土権が帰属すると御答弁になった。間違いありませんか、その点もう一度確かめておきたいと思います。それは間違いないなら間違ないでいいです。領土権が帰属するなら帰属するとおっしゃって下さい。
  59. 下田武三

    ○下田政府委員 この問題は簡単に結論だけ申し上げますと……。
  60. 岡田春夫

    ○岡田委員 領土権の帰属の問題だけでけっこうです。今大臣国民政府に帰属するとはっきり言われ、速記録に残っておりますが、これでいいのかどうか、この点を一つ伺いたい。
  61. 下田武三

    ○下田政府委員 大臣国民政府とおっしゃいましたのは、中国という抽象的なものに帰属するという点を岡田委員がおっしゃったのだろう、そう念を押されたのではないかと思いますが、私の考えを申します、サンフランシスコ平和条約日本は樺太や千島あるいは台湾、澎湖島に対する領土権その他の請求権を放棄しております。サンフランシスコ条約は放棄したというところですべてストップであります。あとはまだ未決に残しておるわけであります。
  62. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると今大臣のおっしゃったのと違いますね。国民政府に帰属するということではないということを今はっきり言ったわけです。サンフランシスコ条約に基いて日本権利、権原を放棄したのであって、その帰属の関係ということはサンフランシスコ条約自体にはうたっていないし、それから日華条約においても、これはうたってあるかどうか、この点伺いたかったわけですが、日華条約において領土権がどこに帰属するとうたつてあるか、私はうたっていないと思うのですが……。
  63. 下田武三

    ○下田政府委員 日華平和条約では領土権の帰属をうたっておりません。ただ御承知のように附属交換公文で適用地域の問題があったと思います。
  64. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうなんです。これは私も速記録をゆうべ調べてみたのですが、領域という意味では、いわゆる施政権者としての領域という意味では、国民政府にその権限を日本側としては認めている。しかし領土主権というものを国民政府には認めておらないと解釈すべきだと思う。そこで大臣に伺いたいのですが、それでは国民政府というものは台湾、澎湖島に対しても領土主権を持っておらない。ましてや中国本土に対しては領土主権なんか持っておらない。現実に考えて、中華人民共和国政権がはっきりと支配し、領有している事実、これは事実関係としてある。そうすれば蒋介石政府なりいわゆる国民政府というものは、領土の主権を持たざる国だということをわれわれは今規定してもいいかどうか、その点を伺っておきます。
  65. 下田武三

    ○下田政府委員 日華平和条約は、先ほど申し上げましたように、国民政府に帰属すべき領土はどこかということは明確にいたしておりません。おっしゃるように、ただ管轄権と申しますか、支配する適用地域の問題でありますが、しかしこういう状態は国際間でまれな例ではございますけれども、戦時中オランダのごときはイギリスに移り、カナダに移っておる。そういう異例的の事態もあるわけでありまして、これは領土権の帰属が必ず明確になっていなければならぬというわけではないのでありまして、台湾、澎湖島の領土権の問題は、先ほど申しましたようにサンフランシスコ条約で最後的に決定しておらないのでありますから、これは結局将来の決定に待つべきものであろうと思います。
  66. 岡田春夫

    ○岡田委員 今オランダの例等を申されましたが、しかし事実としては国民政府あるいは中華民国政府というものは、領土権を持たざる国であるということだけは間違いない。この点はどうですか。
  67. 下田武三

    ○下田政府委員 これは先ほど問題になりました抽象的な観念としての中国、オール・チャイナという抽象的な観念があるとすれば、それに帰属すべきやはり伝統的な本来の領土というものがあるべきである。しかし現実には二つの政権があって、どことどこまでが、いかなる条約によって、どういうように領土が帰属してしまったかいとう、領土に関する法律関係が明定されていないという状態であると思います。
  68. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはおかしいと思う。事実関係はあなたがおわかりの通りです。しかし事実関係を基礎とするおよそ国際上の問題については、法的な裏づけがなくちゃならないし、その点からいって、国民政府が現に所在するところの台湾、澎湖島は、領土権それ自体は国民政府には与えられておらない。この点は最終的に決定されておらないと言ってもいいと思います。とするならば、オール・チャイナという事実関係からいけば、そういうことも成り立ち得るとは言うけれども、実際問題として、それでは国民政府の持っておる領土は具体的にどこにあるか。
  69. 下田武三

    ○下田政府委員 国民政府主張によれば、現に中国大陸も彼らの伝統的の領土であるということを主張しております。
  70. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもっと進めましょう。私は中華民国政府それ自体の主張がどうであるかということを聞いているのじゃなくて、平和条約を結んだ場合における、これは特に現在の鳩山内閣として国民政府についてどのように考えるかということを私は伺ったわけです。(「進行々々」と呼ぶ者あり)しかし、これも進行という皆さんの意見がありますから、進めますけれども、そこでもう一つ伺っておきたいのは、現在、中華人民共和国政府国民政府との間に紛争が起っておりますね。この紛争は国内の内戦と規定すべきであると私は考えるが、この点いかがですか。
  71. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りだろうと思います。
  72. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは内戦と規定されたのですが、米台条約によると、この内戦の一つ政府である国民政府に対してアメリカ政府が軍事的な援助を行うところの協定を行なっている。そうするとこの援助ということは、明らかに国内の政治上の問題に他国が関与したという内政干渉になると思うのですが、この点はどのように考えておりますか。
  73. 下田武三

    ○下田政府委員 その点が昔と違う点でございまして、国際連合というものができましてからは、その国際連合の安保理事会の決議ができまして、それで国際的行動に出ておるわけであります。そういうような状態は昔はなかったことなのでありまして、国連という国際機関が、たとい内戦であってもそれが国際の安全及び平和は害ありと思えば、対外的の軍事行動の対象にするという世の中になりましたので、その点は私はアメリカは別に不当ではないと思っております。
  74. 岡田春夫

    ○岡田委員 その安保理事会の決定というのは、朝鮮問題に関してだと思う。朝鮮問題に関してはその通りです。しかしあなたも御承知のように朝鮮問題は休戦の状態であります。台湾の問題というのは朝鮮の問題をもって規定すべき問題ではないと私は考える。特にこれは国連の安保理事会でそういう規定をしいることはあなたのお説の通りだし、私もわかっております。しかしそれをもって米台条約を律し得るという根拠にはならないと私は思う。こういう点について伺いたい。
  75. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り朝鮮問題についてできた決議ではございますが、それは要するに中共を侵略者と認定いたした決議でありまして、そういう侵略者がそばにおるからこそ、国民政府相互防衛援助条約を結びまして、その相互防衛援助条約の中で一定の条約区域というものを設定いたしまして、その区域で武力攻撃が発生した場合には助け合うという規定をしたわけであります。
  76. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはちょっと問題です。そうすると今の御答弁によりますと、朝鮮問題によって侵略決議を受けたわけです。従ってこれによって、アメリカあるいは国連の規定によって、アメリカと中華人民共和国がその関係を規制するには、すべて朝鮮問題に関する限りの問題であると私は考えますが、それ以外のあらゆる問題についても、侵略を決議したからあらゆる問題で中華人民共和国は侵略者である、あるいはこれは常に、永久に罪人であるという規定になってくるわけなので、これが朝鮮問題に関連をするということであるならば、これは台湾の問題についてもそういう規定は成り立ち得る。しかし朝鮮に関連のない問題についてそれも規定ができるということならば、これは非常に問題があると思う。そしてもしあなたの御答弁のように、朝鮮の問題に基いて侵略者の決議をした、そのために台湾の問題も規定すべきだというならば、この台湾の防衛条約も、朝鮮の問題に関連をして、朝鮮の問題に目的を持って、そのことのためにこういう防衛条約を作ったのだ、もっと言葉をかえていうならば、朝鮮にもう一回戦争を勃発せしめるためのそういう意味の条約として結びついているのだ、こういう意味にも解釈できると思いますが、この点はどうですか。
  77. 下田武三

    ○下田政府委員 朝鮮問題についてできた決議でございますが、実は朝鮮の南北も内戦なのでございます。その内戦についてやはり国際的な視野から平和、安全に害があるからこそ国際連合が動き出した。同様の危険が朝鮮以外の地にも予期せられたので、個別的の集団安全保障措置がとられた、そういうことであると思います。
  78. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほどからの御答弁等ではまだまだ私は議論しなくちゃなりませんし、残念ながら全然承服できません。  ただ最後に一点だけ伺っておきますが、中華人民共和国政府国民政府との関係は内戦の状態にある。この内戦の状態の一方の政府国民政府に対して、アメリカが米台防衛条約を通じて軍事援助を行なっておる。これは事実です。逆に聞きますが、軍事援助をアメリカにたよらなければ抵抗のできないような国民政府の存在というものは、これはもはや中国の国内においても正統政府の地位というものは認められないという状態になっている。この事実を認めなければならないと思うが、この点はどうですか。
  79. 下田武三

    ○下田政府委員 これは政治的な御議論でありまして、私のお答えする問題ではないと思います。
  80. 植原悦二郎

    植原委員長 細迫兼光君。
  81. 細迫兼光

    細迫委員 大臣にお伺いしますが、いわゆる中共との戦争状態という観念があります。中共との戦争状態ということについてお伺いします。この日華平和条約が効力を発生すると同時に、中華民国との戦争状態は終りました。しかるにこの中共との戦争状態はまだ終っていないということがいわれておるのであります。それは一体どういうところからそういうことがいわれておるのでしょうか。正常状態にないということはわかりますが、戦争状態にあるということは、どこからその理屈が出てくるか。ちょっと理解し得ないのでありますが、御見解をお示し願いたいと思います。
  82. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の点は、日本中国との間の戦争状態を終結するために結びました平和条約締結の相手方が中国の全領域を支配していないという事実から来る事態だと思います。
  83. 細迫兼光

    細迫委員 それだけでは、中国大陸本土が何か条約上、国際上ブランク状態にあるという意味におきまして正常状態にないということは、これは言えると思うのでありますが、戦争状態にあると積極的には私は言えないのじゃないかと思うのでありますが、御意見を伺います。
  84. 下田武三

    ○下田政府委員 何も日本と大陸の中国と戦争状態がまだ継続しておると見る必要は私はちっともないと思うのです。先ほど申し上げましたように、明確に申しますと、戦争状態を終結すべき相手方の政府が現実に全領域を支配していないということだけでございます。
  85. 細迫兼光

    細迫委員 しかもその戦争状態にはない地域に現実に認めざるを得ない政府が確立をしておるという場合には、いまだ何らの条約も結ばれていない、この正常関係の結ばれていないということは言えますが、しかしそれだからといって、その関係から直接にこの相手に不利益な態度をとらなければならぬというような関係も法律的には出てこないと思うのです。すなわちある一国の、ここで具体的に言えば中華民国に遠慮をして、戦争状態にもない政府に不利益を感じせしめるような行動をとるということは、法的にも理屈はないように思うのでありますが、御見解はいかがでありますか。
  86. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、卑近な例で申しますと、カエルがミミズとけんかしておったのが、ミミズの頭の方と和睦したのだけれども、しっぽが切れておる。で、しっぽの方とカエルとはどういう状態にあるのかという問題でございます。でございますから、御質問の要旨がどこにポイントがあるかよくわかりませんが、要するに条約を結んだ相手方の方に遠慮をして、しっぽの方と交わることを遠慮する必要はないのじゃないかという御質問かと思うのでありますが、これは実は法律問題でも何でもなくて、しいて法律問題が関連いたします部分は、御承知のように国際法の根本原則といたしまして、一国の代表すべき政府を二つ認めるというわけにいかないということがあるだけです。そのしっぽと頭が両方とも分れてはっきり独立国になれば事はきわめて簡単であります。あるいはまたしっぽと頭がくっついて一つの国になるということも、これもまたきわめて簡単であります。現在そのどっちにもはっきりいたしませんから、国際法上もはなはだ説明しにくい事態にあるわけでございます。
  87. 細迫兼光

    細迫委員 さきにも重光大臣がおっしゃいましたように、われわれの考えもわかるけれども、そう先ばしってするほどの情勢でもないというような意味のお言葉がありまして、それもわからないではありません。しかし先ばしってではなくて、イギリスなんかももう承認しておることは御承知の通りでありまして、少くとも御答弁に表われておるような状態におきましては、いわゆる抗戦団体としての取扱いをしていくというようなことなどは、だれにも遠慮の要らない、まただれをも納得せしめる方法ではないと思うのでありますが、そういうことは一応お考えになったことがありましょうか。また将来考え得る問題としてお考え願えるでありましょうか、御答弁願いたいと思います。
  88. 重光葵

    重光国務大臣 私は抗戦団体というようなことよりも、もしやるならばその地域における事実上の政権としてこれを認めるというふうに向けていくべきだと思います。私は、実は事実上そういう権力団体のあることを認めることは国際上何ら差しつかえない、こう思っておりました。しかし、やはり国際上いろいろと問題があるらしいのでございます。そこでもしそうであるならば、国際情勢の変化によってそういう時期がくるならば、事実上の政府として承認していくというふうに向けた方がいいと思います。それからさらに進んでいけば、今度は法律上の承認になるような時期がくるかもしれない。しかし今は、私が先ほど申した理由によって、まだそういうことを見通しておらないわけでございますけれども、それでよかろうと実は思っておるのでございます。たとえば漁業の問題などについても、民間団体あたりで話を進めていくということは、やはり相手のあることを認めるからそういうことをやるのであります。しかしそれは何も国際法上にいう事実上の承認でも何でもない。こういうことは、それをだんだん進めていけばまた事実上の承認になり得るわけですから、それは少し時期を待つ。また世界情勢が逆転せずして現在のような情勢で進んでいくならば、あるいはそういう時期が遠からずくるだろうと考えております。
  89. 細迫兼光

    細迫委員 大臣のお考えも、同情をもって理解できないことはないのであります。願わくは勇気を持って早急にお踏み切りを願いたいと思うのであります。台湾の問題につきまして、ほかにもいろいろ質問したいことがあります。中共との間にいろいろと日本の船が行ったり来たりしておりますが、これに対する台湾政府の妨害というものは今まであったことがありますか、全然安全でありますか、御答弁願いたいと思います。
  90. 中川融

    中川(融)政府委員 商船が中共の港にいろいろ定期、不定期に行っておりますが、これにつきましては、今までのところ国民政府側から妨害されたというような事実はないと思います。
  91. 細迫兼光

    細迫委員 あとにまだ少し触れたい問題がありますが、直接大臣関係いたしませんから後に伺います。
  92. 植原悦二郎

    植原委員長 松平君。
  93. 松平忠久

    ○松平委員 大臣にお伺いしたいのですが、鳩山内閣は台湾に対してどういうことを根本的にお考えになっておるのか。今の台湾国民政府なるものがだんだん大きくなって、中共の方に出かけていくことを希望しておるのか、あるいは中共がいずれは台湾に出てくるようなことになるだろうと思いますが、早急にそういうふうになった方がよいのか、あるいはまた現状のような格好両方で対立関係が続いていくのがよいのか、あるいは日本の将来の安全ということを考える場合に、台湾というものはどういう形で将来いった方がよいのか、その根本的なお考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  94. 重光葵

    重光国務大臣 これは日本の力でどう左右することもできません。できませんからその推移を見ておるわけでございます。
  95. 松平忠久

    ○松平委員 つまり日本の現在の力でどうすることもできない、推移を見ておるというような御答弁でありますけれども、日本としては何らかやはり希望というものがなければならぬ。その推移に対する対策というものがなければならぬと思うのです。そういう対策についてどういうふうにお考えになっておるか。ことに私のお伺いしたいのは、台湾の武装、非武装ということが一番関係のあることではないかと思うのです。つまり台湾の非武装化ということをアメリカでは考えておるだろうと思いますが、その武装、非武装ということが台湾の将来を決定し、日本もこの台湾の武装、非武装によって非常な影響を受けるのではないかと思うのであります。そこで台湾の武装という問題についてどういう考え方を持っておられるか、どういう希望を現内閣は持っておられるかということをお伺いしたいのです。
  96. 重光葵

    重光国務大臣 台湾の武装、非武装は台湾における国民政府の問題として日本は見なければならぬ、こう考えております。
  97. 松平忠久

    ○松平委員 むろんその通りであろうと思うのでありますけれども、現実の問題としてはやはり武装の問題がある程度国際的に解決しなければ、なかなか台湾の問題の解決は困難だろうと思うのです。従ってそれは全然台湾の問題であるのだというふうにまかせきりにして、全然日本としての希望も何も述べないという態度でいいかどうかということなのです。日本としても隣国のことでありますので、何かそこに日本独自の見解なり希望というものがなければならぬと思うのですが、そういうことはお考えになっておりませんか。ここで答えられないなら答えられないでけっこうですが、そういうことをお考えになっておられるか。
  98. 重光葵

    重光国務大臣 国際的な一般の問題としてはむろんそれは考えなければなりません。しかし台湾における軍備をどうするかということは、これは日本が関与することはよくない問題だと私は思っております。
  99. 松平忠久

    ○松平委員 先ほどの大臣の御答弁の中に、台湾の方も中共の方もともども貿易を盛んにしていかなければならぬが、なかなか中共の方はうまくいかないのだという御答弁があったわけですけれども、私は具体的にちょっと伺いたいと思うのです。台湾との貿易を見ておりましても、中共との関係を見ておりましても、台湾中共いずれもほしがっているものは化学肥料ではないかと思います。この化学肥料の輸出について日本政府の現在とっておる態度は、まことに不可解ではないかと思うのであります。それは台湾に対して日本は現在二十五万トン程度の輸出をするという考え方で昨年やったのでありまして、御承知のようにトン当り五十八ドル四十セントという値段で売っておるのでありますが、中共からの注文は六十三ドルの注文が来ておる。それに対して台湾には二十五万トンやるけれども、中共へは昨年の秋までにたった五万トンしかやらない、こういうやり方をしておるのでありまして、高く買う中共へはやらずに、安く買う台湾によけいにやる。しかも二十五万トンやるべきであるという日本の決定に対して、藤山愛一郎氏が台湾へ行ったときには、三万五千トンよけいに契約をしてきて、政府が文句を言ったというようなことを聞いておるのでありますけれども、硫安一つの問題をとりましても、高く買う方へは少くやって、安く買う方へよけいやるということは、一体どういうお考えであるか、その点をお伺いしたいのです。
  100. 湯川盛夫

    湯川政府委員 私の答弁で足りなければ、通産省通商局次長も見えておりますから補足していただきます。肥料の関係者の話を聞きましたところが、肥料の輸出が、日本に対する需要を全部まかなうのに数量的に絶対に足りないということは前提としてあるわけです。そこでそれをどういうふうに出すか。台湾は御承知のように内地式の農法で肥料がたくさん要る、そうして非常に伝統的な長い間のお客さんであります。これはやはり大事にしなければならない。そのたびごとにお客さんを簡単に変えるということはよくない。中共の方は比較的新しいお客さんだ。肥料の出す量がたくさんあればそれは出せます。しかしそういった見地から台湾の方に自然によけい出ていく、そういうふうに聞いております。
  101. 松平忠久

    ○松平委員 台湾の方は古いから、古い方に安くてもよけい出すのだ、中共の方は新しいから高く買っても少く出す、こういう御答弁のようであったのでありますが、私は日本の肥料の値段というものから見まして、やはり出血輸出その他の批判がある場合においては、高く買う方へこそ多く出してやって、そうして日本の肥料の値段を下げていくという政策を、政府自身はとらなければならぬと思うのであります。片方は五十八ドル四十セント、片方は六十三ドル、そういう値開きがあるにもかかわらず、台湾に非常に多くのものを出してやるということは、日本の肥料政策からいっても、きわめて好ましくないやり方だと思うのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  102. 大堀弘

    ○大堀政府委員 先ほど湯川経済局長が御答弁いたした通りでございますが、台湾のように相当以前から長期にやっております場合に、たまたまほかから高い値で来たからといって、それをそちらに急に転換して、値段の少し安い方はほうってしまうということは、やはり物を売り込む政策から必ずしも適当でないと思います。お話のように昨年の台湾の肥料の買付値段は、五十八ドル何がしで若干低いのでございますが、本年度は六十ドル以上、相当値段も引き上げることができると思います。さらに輸出余力は今年度相当ふえて参りますので、台湾といわず、韓国中共向けにつきましても、本年度は昨年よりさらに増額できると思います。この点は市場を拡大するとともに、古い市場も相当維持していかなければならぬ、両方の点をかみ合せましてやって参りたいと考えております。
  103. 松平忠久

    ○松平委員 ただいまの御答弁に少し解しかねる点があるのです。長い間のお得意であるからよけいに出していくというわけなのですが、昨年の例によりましても、二十五万トン出せばいいと思っておったのに、二十八万五千トン、つまり三万五千トンもよけい出すようにしてしまったというのはどういうわけですか。日本政府自体が二十五万トンくらいでいいというのを、三万五千トンよけい出してしまうというふりに日本政府は指導したのか、あるいは政府の指導のいかんにもかかわらず、そういうふうに業者が勝手にやってしまったのか、やってしまったとするならばそれをどういうふうに取りさばいていったか、その点はどうなのですか。
  104. 大堀弘

    ○大堀政府委員 昨年度決して二十五万トン——に押えろと言ってはおりません。輸出余力ができれば各地域に対しまして輸出をふやしていきたいという考えであります。
  105. 松平忠久

    ○松平委員 私の言っておるのは、二十五万トンに押えろと言っておりながら、二十八万五千トンも契約をしてきて、それに対して政府はどういう処置をしたかということなのです。台湾だから負けておいた、こういうわけですか。
  106. 大堀弘

    ○大堀政府委員 二十五万トンがよろしいか、二十八万トンがよろしいか、これは絶対の線はないわけでございますが、昨年度は二十八万トン程度は出してもよろしいということを了承いたしました。
  107. 松平忠久

    ○松平委員 台湾との貿易についてはこの条約にも関係があると思うのですが、バナナとかパイナップルのカン詰というものは非常にもうかるものだから、少しぐらい硫安が安くても、貿易業者はそういう向うから来る輸入品でもうけて、そのリベートを硫安会社の重役などにやる、こういうようなことを、世間ではもっぱらうわさをしておるのであります。つまり見返りとして来るところのものが非常にもうかるということから、硫安の方は安くても台湾によけい出すということを世間では言われておるのであります。もしそうであるとするならば、これは一部の業者が見返り物資によってもうけて、それで実際こちらから出すものは安くして、国内の肥料の値段にも影響を与える、こういう結果になるのでありまして、もしそういうことがあるとするならば、これはきわめて遺憾であると思うのですが、そういう世間のうわさというものは何らか根拠があるのかどうか、伺いたい。
  108. 大堀弘

    ○大堀政府委員 台湾との貿易につきましては、お話のような点について疑問が起きるような事実としては、昨年の九月まで一つ貿易制度があったのでございます。それはどういうことかと申しますと、昨年の九月まで実施しておりました制度は、台湾に対する輸出業者に対しましてバナナ、パイカンの輸入権を与えておったのであります。昨年までかなりそういう制度が行われておったのであります。これは御指摘のように輸出価格を不当に引き下げるという弊害の点もございます。そういうような弊害の点が多いようでございますので、私どもは昨年九月にこれを打ち切りまして、現在ではそういう制度は実施しておりません。硫安についても同様なことがありまして、昨年までは硫安の国際市況は非常に違っておりまして、国際価格が非常に安かった、日本の硫安価格が非常に高い、輸出についても非常な困難があった、これは昨年の上期までの情勢でございます。最近非常に変化いたしまして、わが方に非常に有利な情勢になっております。現在では御指摘のような弊害は完全にございません。
  109. 植原悦二郎

    植原委員長 松平君にちょっと申し上げますが、外務大臣の時間は、すでにここで定めた時間を経過しております。あなたの質問は、もし政府委員でよければ継続していただくが、大臣に対する質問があるならば、それを先にしていただきたいのです。ただいまのような質問ならば、全部政府委員でできる質問だと思います。
  110. 松平忠久

    ○松平委員 大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、四巨頭会談の結果、大体において東西貿易の緩和ということが非常に可能性が増してきておるように思うのであります。従って、日本中共との貿易は、今までのように特定制度その他がありますけれども、その特免制度等を使うことを非常にちゅうちょしておる、ことに対米関係等の立場から、われわれからすれば必要以上に遠慮しておるように思います。たとえていえば、特免をする場合にパリに行ってやればいいわけでありますけれども、パリにそういうことを取り次ぐ前に、まず東京におけるアメリカの大使館にお伺いを立ててから取り次ぐというやり方をしておるように思うのであります。貿易の緩和の空気というところから、日本がもっと積極的に包括的な話し合いアメリカとはするとか、あるいはココム・リストの特免の制度等は、何もアメリカに気がねせずに直接パリココムに申し入れをするということでいいのではないかと思いますけれども、昨年来吉田内閣当時から、その点は非常に遠慮しておるように思うのであります。その点について、今回のこの四巨頭会談を契機といたしまして、もっと積極的にこれを緩和していくという方策を日本政府自体がおとりになるおつもりがあるかどうか、これをお伺いします。
  111. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ただいまの特認の制度についての御質問にだけお答えいたします。  特認の制度と申しますのは、御承和のように禁輸物資を——これは禁輸物資なのでありますが、ある特別の条件を満たした場合には別にそれを認めてもらうという制度であります。これはココム承認を得るわけでありますが、簡単なものはじかに承認を求めることがあります。またこれがココムで非常に論議があって、必ずしも簡単に通らないと思うときには、事前に関係国にも話をして十分に説得して、いよいよ買いに来たときにみなに賛成してもらう、こういうふうにやりますので、事前に何も連絡せずに直接ココムに出すこともあり、物によっては関係国に内々初めに打診するということもあり得るわけです。
  112. 植原悦二郎

    植原委員長 松平君、あなたの大臣に対する質問はよろしゅうございますか。
  113. 松平忠久

    ○松平委員 今、大臣に対して質問しているのです。つまり、四巨頭会談を中心にしてそういうふうになった東西貿易の空気の緩和ですね。このチャンスをとらえて、積極的に日本がこの緩和を打ち出していかれるかということを聞きたいのです。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 私は御趣旨に共鳴いたします。全くその通り考えております。
  115. 植原悦二郎

    植原委員長 松平君、あなたはまだ政府委員質問がありますか。
  116. 松平忠久

    ○松平委員 政府委員にはあります。  今の湯川君の答弁なのですが、私の言ったのはこういうことなのです。ココムへそういうことを言ってパリにおいて関係国とあらかじめ了解をつけたり、あるいは了解をつけずしていきなり出すということはあり得るだろうと思うのですが、パリへそういうことを言ってやる前に、東京におけるアメリカ大使館に伺いを立てて、これはパリへ言ってやるべきであるかいなかということをイエスかノーかをまず聞いて、その後にパリへ取次ぐということを、従来外務省はやっておられるように伺っておるのでありますけれども、一体そういうことはやる必要はないのじゃないかと私は思う。パリにはアメリカの代表がおってそれが権限を持っているのだから、そのアメリカの代表の意見によって決定するわけであって、東京におけるアメリカの大使が決定権もあるはずはないのである。その東京におけるアメリカの大使にまずお伺いを立てて、イエスかノーか聞いた上でパリへ申請するということををやっておられる、その点が私は不服なのであって、これに対しては一体どういうことになっているのか、そういうことをお聞きしているわけです。
  117. 湯川盛夫

    湯川政府委員 私どもとしては、輸出ができるだけたくさんできればいいということを考えております。それで、そのためにはいろいろな方法を使わなければなりません。ですから、直接いきなり会議に出す場合もあり、事前に関係国に十分話をして会議でサポートしてもらうようにすることもあり、また、ここで話してさらに裏書きしてもらえば都合がいいというときには、そういう方法をとることもあります。しかし、毎回必ずこの大使館に連絡してやっているというわけではありません。要するに、輸出の効果が、承認を得てたくさん輸出できる最もよい方法をとるということでやっております。
  118. 松平忠久

    ○松平委員 東京におけるアメリカの大使館というものは、禁輸については、イエスかノーかというような権限を持っているのですか。
  119. 湯川盛夫

    湯川政府委員 特にそういう権限は持っていないと思いますが、それはアメリカ政府としてきめるわけでありまして、この大使館限りでどうということはありません。ただ、しかし、日本の実情とかいろいろなことを十分話しをして、そうしてこの大使館にも日本の言うところはもっともだ、こういうエンドースメントをしてもらえば通りはいいということはあると思うのです。だからそういうことはしないということではなくて、やはり場合によってそういう手段もした方が効果を上げ得ると思っております。
  120. 松平忠久

    ○松平委員 それは逆の場合もあると思うのです。それをやった場合に、非常に物事を困難に陥れてしまったというケースが非常に多いというふうに私は聞いておる。それで、権限を持っておるのがパリなのだから、私は一々東京アメリカの大使館へお伺いを立てた上で申請をしなければならぬということは、やり方としては改める必要があると思うのですが、将来はそれはどうお考えですか。
  121. 湯川盛夫

    湯川政府委員 私は今のお言葉もありましたが、要するに一番効果の上る方法をとったらいいと思いますので、毎回ここの大使館に行っているわけではないのでありまして、これはこの大使館にもサポートをしてもらった方が有利であるというときには話すこともあるというだけでありまして、ここに話したために逆効果になったということは、私の記憶ではございません。大体においてそれは結果がよかったという場合ばかりであります。
  122. 松平忠久

    ○松平委員 その点についてはこれ以上申し上げませんが、次に台湾関係でお伺いしたいのは、台湾人は非常に日本の書籍、新聞、レコードというようなものを買いたがっておる。従来ずいぶん行っておったと思うのですが、これをほとんど禁止しておるように聞いておるのであります。これに対して政府はどういう措置台湾政府に対してとられたか。現在どういう状態になっておるかお伺いいたしたい。今ほとんどこれは禁止同様で入っておりません。
  123. 湯川盛夫

    湯川政府委員 書籍、雑誌等については、新しい貿易計画相当額入っております。従って今度はかなり向うの需要を満足させることができると思います。
  124. 松平忠久

    ○松平委員 先ほどどなたか伺ったことでありますが、それに関連しましてお伺いしたいと思います。昨年来硫安の輸出について、硫安業者のところにひんぴんと東京における台湾の代表部からいやがらせ的なことが言われて来ておるのであります。しかもその後、ごく最近に至って、ああいう新聞にもありましたように、ほとんど公然と干渉がましいことをしてきているのでありますが、昨年来すでにそういういやがらせを各業者に対して、台湾関係筋から行われてきておることに対しましては、何らか政府台湾に対して手を打たれたかどうかということをお伺いします。
  125. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ちょっとわかりかねましたが、いやがらせというのはどういうことでしょうか。
  126. 松平忠久

    ○松平委員 たとえばある品物を中共へ出すという場合においては、お前の方で中共へ出すのならばおれの方は買わぬぞとか、そういうようなじゃまであります。
  127. 湯川盛夫

    湯川政府委員 肥料の問題では特にそういうことは聞いたことはございません。何か具体的にありますか。
  128. 松平忠久

    ○松平委員 肥料の問題にもあります。
  129. 湯川盛夫

    湯川政府委員 最近の誓約書の問題ですか。
  130. 松平忠久

    ○松平委員 いや、その前、去年からあるのです。
  131. 湯川盛夫

    湯川政府委員 去年は私はちょっとおらなかったのですが……。
  132. 大堀弘

    ○大堀政府委員 これは一般問題としまして最近問題になっておりますが、硫安につきましては、メーカーが売り先につきまして中共向けと台湾向けと一応分けておるというのが現状でございます。これは先方が特に非常にやかましく言っておるわけではございませんか、大体その取扱い量なり販売先から見まして、中共向けにいく人と台湾向けにいく人とがほぼ——むろん中共向けの方は現在少いのでございますが、分けて扱っておりまして、それで現在までは特に問題はないわけでございますが、将来中共向けの量をふやしました場合には、あるいは商社の間の振り合い関係両方に売るというような人が出るかもしれません。そういった場合に今度のような取扱いが出て非常にトラブルが起きるということを心配される向きもあるわけでございますが、私どもは硫安につきましては、今後の見通しとして大した問題は起きないと考えておりますが、一般問題としていろいろ問題がございますので、その点につきましては、現在外務省から出先機関その他先方の大使館その他に折衝していただいておる現状であります。
  133. 松平忠久

    ○松平委員 そういうふうに分けるようになったのは、そのいやがらせが行われてきたのが一番大きい原因だろうと思うのですが、そういうふうに分けるようになる前に、何か台湾に対して手を打ったかどうかということを先ほど来お聞きしておるわけであります。
  134. 大堀弘

    ○大堀政府委員 硫安につきましては、従来までは一応中共向けが三社、その他が大体台湾向けということになっておりまして、別段それで支障がない現状でございます。たまたまそれで差しつかえない現状でございましたので、特にその問題につきまして先方に申し入れたというようなことはございません。
  135. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  136. 岡田春夫

    ○岡田委員 通産省の方が今日しか見えられないそうですから、条約局長にだいぶ聞きたいのですが今日はよします。まず第一に伺っておきますが、去年の九月二十四日に川崎汽船のチャーターの船で日州丸事件というのが起っておるが、この点御存じですかどうですか。
  137. 大堀弘

    ○大堀政府委員 はなはだ不行き届きでありますが私はまだ伺っておりません。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 実は今松平君から肥料関係相当妨害した事実があるというお話もあったので関連して伺うのですが、これは肥料の関係ではないのであります。私たちに入っておる情報を申し上げますが、こういう事実があるかどうかを伺いたいのです。これは外務省の経済局長にお伺いしますが、日州丸というのは九千トンの船ですが、昨年の九月二十四日に中華人民共和国からパキスタン向けの石炭を八千トン積んで航行中に、台風を受けて不可抗力のために退避するために基隆に入港した。ところが、この基隆に入港した日州丸を国民政府は強制荷揚げさして、三週間後になってから船体だけを釈放している。これについて十月十六日に、国民政府の官辺筋では、国民政府の処置は日本当局への報復であると言明をした。そうして国民政府は、台湾に寄航した船で六十日以内に中華人民共和国並びにソ同盟に入港した場合において台湾へ再入港をするという場合には、これを全部拒否する。こういう態度を決定したと伝えられているように私は聞いておりますが、こういう点は御存じですかどうですか。こういう問題なのです。
  139. 中川融

    中川(融)政府委員 御指摘の日州丸事件は、現地の吉沢大使からも外務本省あてに報告が来ていることを記憶しております。たしかその際の国民政府側の言い分は、中共取引して、中共の港に入って、ただいま御指摘のような何ヵ月以内ですか台湾の領海内に入ってきた船については、これをどうするといいますか、ある意味で自分のところでこれを取り調べて、あるいはその載荷等についてもこれを没収するとか、強制買上げの措置をとるのだ、何かそういう趣旨の言明があったかと記憶しておりますが、現地で吉沢大使が国民政府当局と折衝いたしておったと私は承知いたしております。
  140. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは皆さん御存じないようだが、私は特別な情報をもってこれを入手しているのじゃないのです。これは一部新聞にも出ておりますが、これについて吉沢大使がどういう交渉をされて、この問題についてはどういう措置をとられたか、こういう点について私は伺いたかったわけであります。その経過はどうなっているか、この点についても重ねてお伺いしておきたいと思います。
  141. 中川融

    中川(融)政府委員 相当長い期間にわたりまして載荷の返還ということを交渉していたと私は記憶しておりますが、実は詳細ただいま記憶しておりませんので、至急取り調べましてこの次の機会に御報告申し上げます。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではその点については明日また委員会があるはずですから、そのときお答え願いたいと思います。それに関連してこれはまた下田さんの関係になってきたけれども、議定書の2の(d)の(11)の「差別的措置であって」云々の以下の「又は重大な安全上の利益を維持する必要に基くものは、」以下云々とあります。この重大な安全上の利益を維持する必要に基くものはというのは一体だれの安全なのか、そしてその必要というのはだれが判断するのか、こういう点をお聞かせ願いた、いと思います。
  143. 下田武三

    ○下田政府委員 これは一般に通商航海条約に特に戦後認められて参りました例外条項でありまして、セキュリティ・リーズンによる差別的待遇の例外的供与、それをそのままこの議定書にもとったわけですが、これは結局当該国の判断にまかせざるを得なくなるわけであります。
  144. 岡田春夫

    ○岡田委員 当該国といいますと、日本にとっては先方中華民国政府ということであり、その判断は中華民国政府がする、それから安全上というのは今お話のようなセキュリティ・リーズンということになると、防衛上の安全ということを意味するのかどうか。
  145. 下田武三

    ○下田政府委員 当然防衛上の安全でございます。ただ先ほど申し落しましたが、認定は当該国の判断にまかせざるを得ないわけでありますが、何でも勝手なことをやれるというわけではないのであります。そこはおのずから一般国際法上の制約があるわけであります。
  146. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは最恵国待遇の除外措置の点を規定しているのだと私は思うのですが、特に台湾が今御承知のような中華人民共和国政府との関係において防衛上の問題について幾多の危機がある、こういう事態に立っているときに、この安全上の利益を維持する必要という先方の国の適用が非常に広範に規定されると、この議定書を通じて日本に対して最恵国待遇措置が実質上行われないような結果になるのではないか、こういう点を実は私伺いたいのでありますが、この実質の問題と関連してこの点をお答え願いたいと思います。
  147. 下田武三

    ○下田政府委員 これは実は特にこの条約締結当時の事態と結びつけて入れたわけではございませんで、多くの通商航海条約にそういう規定が入るようになりました。先ほど御指摘になりました日州丸関係の場合も安全上の利益と結びつけて実は考えたわけではないのでありまして、わが方は、たしか私の記憶によりますと、日州丸を何日間もとめておいて載荷を没収するというような権利は、国際法上ないと言って抗議したことを覚えております。でございますから、むやみに安全上の利益を維持するための例外的措置というものを振り回されるような危険は私はないと思います。
  148. 岡田春夫

    ○岡田委員 法律解釈としてはそういうことが言えると思うのです。しかし先ほどから多くの諸君から質問が出ているように、日本貿易、いわゆる商取引について、不当な措置を実際上の問題として一部行なっている事例が出ているわけです。しかも現実の問題として台湾海峡においてそのような危険な状態があるとするならば、議定書のこの文章に籍口することによって、社会通念上とはいうものの、実際にそういう危機があるという現状に立って、無制限にこれを拡大されることも相手国としてはあり得ることになってくるわけです。そうすると日本のいわゆる貿易上の、商取引上の保護は行い得ないという結果になると思うのだが、これに対する日本政府の何らかの保護を行い得る道があるかどうか、この点は条約上の解釈よりも、実際上の問題として経済局長なりあるいは通産省の方から伺ってもけっこうですが、具体的な保護の措置が行い得る何らかの規定があるか、あるいは実際どういうような措置がとられているか、この点を伺いたいと思う。
  149. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この安全上の利益を維持するに必要な場合の差別待遇の例外というのは、先ほど来条約局長の御説明申されておりますように最近いろいろな通商航海条約の型にある規定でございます。しかしこれは「事態に相応しており、且つ、ほしいままな又は不合理な方法で適用されない限り、」ということになっておりまして、もちろん無制限にはできないわけでありますし、またそれが不当な場合には相手国の抗議の対象になるわけであります。そう勝手なことを何でもやれるというわけではございません。
  150. 岡田春夫

    ○岡田委員 法律上の解釈の問題はあるのですが、「事態に相応しており、且つ、ほしいままな又は不合理な方法で適用されない限り」この適用それ自体も、これは日本側が適用するのではなくて、ここに書いている法律解釈上から言えば、当然この規定も中華民国政府がこのように判断する限りというように私は解釈すべきだと思う。そうなってくると、今までのように中華民国政府がいろいろな不利益な措置をとっているだけに、そういう問題が条項として入っておっても、この点はわれわれとしては信用できないことになる。こういう点については、これがあったからといって、私は不利益な取扱いについてこれを保障し得る、保護し得る道が与えられているとは考えられないと思います。この点が一つと、もう一つはこれに関連して、この平和条約によると、近いうちに通商条約締結することになっているはずですが、もうすでに三年になっているのに、通商条約がまだ結ばれておらない。なぜこの通商条約が結ばれないのか、しかも今度の議定書の延期の内容によると、今度は一年間自動的に毎年々々延期せられるようになっている三ヵ月前に破棄の通告をしない限りにおいて、今度は議定書が永久に毎年自動的に続き得るということになっておりますが、そういうことから考えられることは、議定書延長することによって、通商条約締結するということのために何らかの障害があるものであるか。あるとするならば、どういう障害であるか。そしてまた日本政府としましては、こういう通商条約に対してどのような努力をされてきたのであるか、こういう点についても伺いたいと思います。  もう一つ、こういう通商条約をもし結ぶとするならば、先ほど申し上げましたように、重大な安全上の利益を維持する云々というような、こういう不適当な条項というものは、通商条約の中に入れるべきでないと私は考えるが、こういう点についてはいかなる見解をお持ちになっているか。
  151. 湯川盛夫

    湯川政府委員 初めの御質問の法律論はともかくとして、無制限に適用されるではないかという御質問につきましては、やはり事態に即応して、ほしいままに適用されない限りということがありますから、もしそれを逸脱して非常に不適当なことをやれば、当然抗議の対象になる。またこれは、結局は両国の国交関係にもよるわけです。それがおそろしく変な形になった場合は別でしょうが、しかし向うでもとにかく日本との友好関係を維持したいと考えておりますときには、その適用についても合理的な基準に従うということは信じております。  その次の御質問の、通商航海条約締結をなぜすぐ始めないかという問題でございますが、通商航海条約といいますのは、準備交渉に長い時間もかかりますし、現在の台湾との関係では相当長時間を要するだろうと思います。また最近の国際情勢にかんがみて、こういった恒久的な条約を作るということは、よほど慎重に用意をしてかからなければならないと思いますので、今すぐやるというつもりはないのでありますが、しかしとにかく国交もあり取引もございますから、現在ある暫定的なものを延長して事を処理しよう、こういう考えでございます。そしてこれは一年ごとに延びていって、永久に延びるじゃないかというお尋ねもございましたが、これは必要が生ずれば三カ月の予告で廃棄できることになっておりますから、そういう御懸念はまずないだろうと思います。
  152. 岡田春夫

    ○岡田委員 少し変えて伺いますが、四月十六日に結ばれている日本台湾との貿易協定——今度は通産省の方に伺いたいのですが、先ほど硫安の問題がちょっと出ておりましたけれども、今度は砂糖の問題を少し聞きたい。この貿易協定によると、砂糖の輸入予定額は大体どれぐらいになっておりますか。昨年と比べて大体どういうようになっておるか、この点を伺いたいと思います。
  153. 大堀弘

    ○大堀政府委員 本年度は砂糖を大体四十万トン買うつもりにいたしております。昨年度は三十万トンの予定でございましたが、実際上は二、三万トンそれをこえまして、三十二、三万トンだったと思います。今年度は四十万トンまで買えれば買ってもよろしい、こういうふうに思っております。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の調べている限りでは、台湾糖というのは豪州糖よりも、あるいはドル地域の砂糖よりも相当高い。たとえば豪州糖と比べれば、台湾糖は二十ドル高い。それからドル地域から買う砂糖から見れば、二十五ドルくらい高い。運賃等を差引計算いたしましても、大体五ドルから十ドル台湾糖の方が高い。私の調べている限りこういう数字が出ているのでありますが、このような高い砂糖をことしは去年よりも十万トンもよけいに買わなければならないというのは、一体どういう理由であるか。そういうことを申し上げると、おそらく答弁一つとして、去年は百十五ドルの砂糖であったけれども、今度は幾らか値下げいたしましたというような話も出るかと思うのだが、値下げはしておっても国際価格よりまだ高いはずです。日本政府がこの協定交渉するに当って、当初砂糖の交渉価格は九十九ドルであったはずです。九十九ドルであったのを百十二ドルで妥結しておるのですが、百十二ドルということになると、国際価格よりも高くなる。このように高い砂糖をなぜ買わなければならないのですか。しかも十万トンよけい買うという理由は、何らか政治的な意味を含んでいるように感じさせる。この点はどういうようにお考えになりますか。
  155. 大堀弘

    ○大堀政府委員 御指摘のように確かにドル糖でございますキューバ糖につきましては、一番安いと思うのであります。シフで九十二ドル。ことしあたりはレートが上っておりますから九十四ドルでございます。台湾糖は御指摘のように昨年は百十五ドル、本年度は値下げさせまして百十二ドルにいたしたのでありますが、実は一昨年まではキューバ糖を相当よけい買っておったのであります。四十万トンぐらい買っておったのであります。ところがキューバに対しましては、輸出が全然伸びない。砂糖はただ買って、輸出一つも伸びない。これが現状であります。貿易政策から参りますと、台湾あるいはインドネシアあるいはブラジル、こういった地区から買いますれば、買ったものだけは必ず輸出ができるというのが現状でございます。これはオープン・アカウント協定によりまして、今日までの実績もさようでございますし、今後も買えば必ず輸出ができる、これが現状であります。若干値段は高いのでありますが、やはりキューバ糖との関係からいいましても、むしろこの際キューバからの買付を減らして、こういうオープン・アカウントの地域の方に買付を転換したいというのが、昨年来の貿易政策であります。別に政治的意味はありませんので、経済的の面から見まして輸出の伸びるところから若干高くても買う。値段は御指摘のように高いものでございますから、私どもとしましてはできるだけ将来に向って逐次値段を下げさせていきたい、こういう考えで現在もその方向で折衝いたしております。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは輸入する米の点について伺いたいと思いますが、米は今年はたしか二千五百万ドル輸入する協定になっておると思います。前年度から比べると、大体一千万ドルよけいになっておるはずです。約二倍近くふえるわけであります。しかも輸入される米はこれまたほかの米と比べるならば、高い米を輸入しなければならない。私の方で調べた限りでは、ビルマ米の場合と比べると大体五十ドル高いのじゃないか。それからタイ米と比べると十九ドルくらい高い。あるいは先ほどちょっと問題になりました中華人民共和国の米と比べても四ドルから十五ドル高い。こういうふうに私は記憶しております。このように高い米をなぜ台湾から入れなければならないか。大体百六十八ドルから九ドルくらいで入る計画のように聞いております。こういうことを質問すると、あなたはおそらくこういうことを答弁一つとしてされるだろうと思うのだが、高いけれども、蓬莱米は米の質がいいので日本人に合うから、こういうことを答弁一つとして用意される可能性があります。しかしそう言うなら、中国米だって変りはないはずです。中国米は四ドルないし十五ドル安いわけです。こういう安い米を買わないで、高い台湾米を買わなければならないというのは、これまた政治的な意味があるのではないかと考えるのだが、こういう点はどうですか。
  157. 大堀弘

    ○大堀政府委員 タイ、ビルマ米は外米でございまして、台湾米は準内地米——品質は御指摘のように中国の大陸米も、台湾米も、現在入っておりませんが韓国米も大体準内地米で、品質もずいぶんよろしいわけでございます。値段の点はシフで百七十五ドルでございますが、私どもはこの台湾米につきましては、値段としてさように高いとは考えておりません。かりに品質その他を考えまして、韓国米その他と考えあわせてみましても、決して高い値段ではない、かように考えております。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし品質は抜きにして、米の値段が高いことは事実なのです。ビルマ米やタイ米に比べて高いことだけは事実だと思うのです。これは輸入価格を見ればわかるのです。その点は中共米の問題にしても、中共米の品質と比べれば私はそう違わないと思う。中共米が安いのに中共米の方は入れないで——幾らか入れてはいるけれども、台湾米の方を去年よりふやしているという理由は、どうもそれだけではわからないのです。この点から見ても輸入の面からいって、先ほどあなたの答弁によると輸出を振興させる意味で、部分的にある程度損であっても、そういうものをどんどん入れることによって輸出の振興をはかるのだ、そういうのが一つ方針になっているのだ、これは砂糖の場合でもそれから今度の米の場合もそうだとおっしゃるのだろうと思いますけれども、それでは伺いたいのですが、先ほど松平君も触れた硫安の関係になってくる。硫安はたしか去年よりも幾らか上って六十ドルになった。しかし韓国輸出する場合には六十五ドルで今出している。それから中国に出しているのは六十四ドルくらいで出している。そうするとこういうような高いところに対しては、先ほど松平君も言ったように、できるだけ制限をしてあまり輸出しないでおいて、そうして安い値段の台湾に対しては輸出する場合において、去年よりも九百三十万ドルふやしているけれども、これは実際においてほかの国より安い値段で出している。そうすると高い値段で砂糖や米を輸入しているのだが——これは輸出振興のために輸入してるのだと言うが、出血輸出のために輸入しているということになってくるのじゃないか、輸入の面においても日本国民経済にとってはマイナスであり、輸出の面においても日本国民経済にとってマイナスである。そうすると台湾貿易はどちらにとってもマイナスであるという結果に終りはしないか、こういうように私は感じられるのですが、この点はどのようにお考えですか。
  159. 大堀弘

    ○大堀政府委員 お言葉を返すようでございますが、砂糖はなるほど高い、しかしながら台湾から米とか塩とか買っておりますが、これらの物資につきましては、これはもちろんタイ米、ビルマ米とは品質が全然違うのでありますから、これは国内の取引におきましても値段が違っておりまして、純内地米と外米とは相当格差があるのが当然だということでございまして、私どもは台湾米は決して現在の程度なら高くない、かように考えております。なお硫安の問題につきまして値段が若干低いじゃいないかということは、これは事実御指摘の通りで幾らか低いと思います。これは従来日本の硫安が非常に輸出困難のときにも、相当買ってくれたということもあるわけでありますが、そこはやはりわれわれの立場よりもむしろ業界の立場として三十万トン近い輸出を安定した市場として持っておるわけでありますから、ほかの地域が高いからといって値段を一挙に上げてしまうというわけにもいかない、商売事情からいってもそういうわけには参らないという点もありますので、これはぼつぼつ上げて最近ではだんだん国際価格に近くなっておりますが、私どもが台湾の全体の貿易としましても、硫安は相当国際的に各国から希望がある商品でございますから、何も安売りする必要はないのでございます。しかし現在六千万ドル以上の貿易をやっておりまして、農産物なり、あるいは海産物なり、カン詰とか、雑貨、繊維製品、そういうものが相当に出ているわけてあります。市場といたしましては相当のウエートを持っております。その意味におきまして砂糖等につきましても、これらの商品の輸出が伸びるのであれば、若干高くても買う方が、貿易政策としては有利ではないか、かように考えましてやっております。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまり時間をとるのはやめますが、最後に一点だけ伺っておきます。ことしになって日台貿易協定は去年よりうんとふやしております。三千九百万ドルぐらい往復するとふえているわけです。しかもこれは私は先ほど来政治的政治的と申し上げたのは、日本と中華人民共和国との間の貿易協定が結ばれる前後に、日たちを前後して台湾貿易協定が四月の十六日でしたかに結ばれてこのようにふやしておるということは非常に政治的な意図を持っておる、すなわち日本にとっては台湾の存在というものは重要なんだというようなことを一般に印象づけるために、特にアメリカからそういうような働きかけがあって、そういう形で貿易協定が結ばされたと私たちは解釈しているのです。こういう意味で非常に政治的な意図を持っているのではないかと感じられる点が第一点です。第二の点は、先ほど重光外務大臣台湾における貿易中共貿易と比べれば問題にならないということを言っておられる。ところがこれは全然知らない。どうして知らないかというと、大体日本と中華人民共和国との間の貿易協定を見ると、協定額の金額をドルに換算するならば、片道八千六百万ドルぐらいになるでしょう。そうすると今度の台湾との貿易協定は、たしか九千六百万ドルの片道なんです。そうすると協定額からいうとそう違いはないわけです。この協定額が違いがないところに、先ほど言った政治的な問題があるのではないか、すなわち日本と中華人民共和国との貿易協定額よりも、台湾協定額の方をふやしておかなければ、台湾の存在価値というものがますますなくなってしまうというので、あわてて三千五百万ドルばかりよけいふやした。これは多分にアメリカのさしがねであろうと私は考えるのだが、こういう格好で協定日本の国が結ばされたのではあるまいかと私は考える。なぜならば、先ほど申し上げましたように実際に輸入しておるものも高いものを輸入しておる。輸出するものは安く輸出しなければならないという、こんなそろばんに合わない商売をやっていかなければならないわけです。こういうそろばんに合わない商売をやり、しかもことしにおいてよけいふやすということは、何か政治的なにおいがするとわれわれは感じるのです。こういう点も一つ重ねて御意見を伺っておきたいと思います。まだありますけれどもきょうはこの程度で終ります。
  161. 大堀弘

    ○大堀政府委員 外務省の方からお答えになりますと、かえって政治的な含みがあるというようにとられましてもいけませんので、私どもは経済官庁でありますので率直にお答え申し上げたいと思います。決してこれは政治的干渉なりそういったものは全然ございません。私どもの発議によりまして、台湾との関係からいいまして本年度は米も買い増しができる、砂糖もこの際キューバ糖を減らして台湾糖を買い増すということが経済的に有利である、これだけ買い増すれば必ず輸出を伸ばすことができるという判断をいたしまして締結いたしたわけでございます。その点は御指摘のようなことは全然ございません。
  162. 細迫兼光

    細迫委員 アジア局長にちょっとお願いしますが、あしたでもよいから御調査を願うような結果になりはしないかと思うので、きょうちょっと一言申しておきます。それは沖繩の漁民が的確に台湾のジャンクと思われるものの乗員に二人殺されて四人拉致せられておるのでありますが、それは第三清徳丸の問題であります。これは事態を説明するかわりにこの琉球政府立法院が一九五五年三月五日に決議しておる決議がありますから、ちょっと説明がわりにこの決議を読みます。質問の要点は台湾政府なるものが日本国民の安全についてそう誠実に関心を持っておってくれればいいのだが、それにいささか疑いがありはしないかという疑問を持ちながらの質問なのです。それでは考えなければならぬではないかということに関係するわけなのです。「第三清徳丸射殺事件の調査要望決議」「一九五五年三月五日琉球政府立法院」あて先は「国際連合、国際人権連盟、日本国政府、琉球列島米国民政長官、同副長官」となっております。「去る三月二日午後二時ごろ、琉球列島魚釣島付近東経百二十三度十三分北緯二十五度四十八分の地点で、沖繩佐敷村馬天区四班当間政庸所有の漁船第三清徳丸(十五トン)が、青天白日旗(中華民国政府国旗)を掲げたジャンク船二隻に襲われて、乗組員九人のうち二人が射殺され、四人が行方不明になったという事件について、危難を冒して帰還を全うし得た三人の乗組員(氏名略)等の談話として伝えられるところを総合してみるに、本事件が単なる海賊行為であるかあるいは国府軍の所為であるのかその真相を明らかにすることは困難のようである。もちろんアメリカ政府並びに行政当局においても、いち早くこれが究明に乗り出され、近くその真相発表もなされることと思われるのではあるが、本件が琉球の領海内で敢行された点と、琉球住民の生命、身体、財産に加えられた重大なる侵害であることにかんがみ、これを放任しておくわけにはいかない。われわれはことに行方不明になった三人の同胞がすみやかに救助されるとともに、わが領海内における航海の安全が確保され、住民の不安が取り除かれることを念願するものである。琉球政府立法院はこの事件の真相の正確なる調査と、行方不明になった第三清徳丸乗組員の救助を決議をもって要望いたします。」これが大体事件の内容であります。言うまでもなく琉球人民は国籍日本にあり、そうしてそれに対する行政権などはアメリカに移っておりますが、琉球人民の生命安全を保護する責任なり、権利なりは当然日本政府にも私はあると思うのであります。この事件について何らか政府に報告が入っておるか、これに対して何らか処置をとられたか、いまだしでありますならば御調査の上御報告が願いたい、こう思うのです。
  163. 中川融

    中川(融)政府委員 第三清徳丸の件につきましては、実は三月五日に琉球の立法院が決議して、日本政府にもその決議を送るという趣旨のことになっておるようですが、われわれの手元にそれがつきましたのは、ごく最近でございます。約一週間前に南方連絡事務局を通じましてわれわれの手に入りました。事件の内容は、ただいまお読みになりましたように、琉球の一番南の方の台湾に近い島、非常に小さな島のようでありますが、その島の領海内で青天白日旗を掲げた小さな軍艦のようでありますが、武裁した船によって——初めはその船が難破しておるということで、こちらの船が救助に行ったところが、向うから入り込んできて、それがかえって鉄砲その他をもって二人が射殺され四人が拉致されてしまった。たしか船も連れていかれたのじゃないかと思いますが、どこかへ行ってしまった、こういう奇々怪々な事件でございます。当時その害を受けました人たちがさっそくこれを訴えまして、米軍当局もこれは必ず調査するからという約束をしてくれたのだけれども、その後一向調査が進まぬというようなことから、今の決議のようなことになったようでございます。従ってこれにつきましてはただいま御指摘のように、琉球住民が日本国民であるというようなことにかんがみまして、さっそく事件の概要を米国大使館に知らせまして、さらに調査善処方を要望いたしております。第一次的にはアメリカ当局がこの琉球住民の保護に当るべきでありますので、アメリカ当局に対して日本側の関心を伝えまして、これがさらに徹底的な調査を要望しておいたのでございます。結果につきましてはまだ何ら報告に接しておりません。
  164. 細迫兼光

    細迫委員 なお重ねてアメリカの民政局その他第一線に当るべき筋を督励と申しては語弊があるかもしれませんが要望を寄せられまして、これら犠牲者の安全のために一そうの御努力をお願いしたいと思います。
  165. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十九分散会