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穗積委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております
MSA協定に伴う
秘密保護法の一部を改正する
法律案に対して、強く反対の意思を表明せざるを得ません。
理由につきましては、昨年本法案が本
委員会において提案をされ、採決されました場合に、われわれは十分討論をいたしております。従って、私はこれを繰り返すことを差し控えまして簡単に要点だけあげましてその理由といたします。
第一点は、そのもとの
協定であります
MSA協定並びに船舶
協定、今度の艇艦
協定等は、平和を維持し、無防備無戦闘を主張いたしております憲法に明らかに違反することは明瞭でございます。その点について、われわれは反対の趣旨を明らかにいたしておきたいと思うのであります。
第二の点は、
日本の憲法をじゅうりんいたしまして、
アメリカの権力に屈服いたしまして、強制義務をもって強行しつつあります再軍備計画そのものももとよりでございますが、さらに、この計画そのものがこういう幾つかのひもがつけられまして、
アメリカに対する従属性をますます強化するものである。この法案は昨年の採決の場合におきまして、前改進党のいささか良心を持たれた
外務委員の諸君は、これに反対をいたされました。その理由としてあげておられるところは、これは
アメリカの
秘密を守るために、
日本国民のみが義務を負うものであるという理由であったのです。これはかすかなる良識でございましょう。当時の改進党の再軍備論者の議員にしても、なおかつこの趣旨を明らかにされて反対をされた。今日の情勢においても、この法律の
内容において何ら変化を来たしておらぬのみならず、さらに
秘密の取締りの対象を拡大いたしまして、その不合理性を強化し、拡大するものにほかなりませんので、私
どもは、この従属性の強化をしいられるものであるということを、反対の第二の理由といたします。
第三は、本法案の
内容そのものについてですが、これはかつてわが国におきましては、軍事政策に即応して、取締り法として出て参りました治安維持法、これがいかなるものを人民に要求したか。これは歴史の事実の示すところでございます。しかもこの法律の
内容におきましては、昨年の
委員会においても論議されましたように、
アメリカ国におきまする
秘密取締りの法律より、さらに拡大されて、特に問題になりましたのは、不当な方法による資料の聴取でございますが、これらのごときは、拡大解釈される危険がありますし、そのことをわれわれはすでにおそれた。こういう
法律案を作るときには、人権を尊重します、人権をいたずらに侵害するようなことはしないと口でも言い、いろいろいたしましても、これが一人歩きをいたしますと、その当時の意思とは全然別個な意思を持ちまして、自分自身で動き出すのです。このことは、われわれ今まで経験を持つところでございまして、何らわれわれの杞憂ではございません。ですから、そのことをわれわれは昨年心配しておりましたが、もうすでにこの
法律案の改正という形で、さらに
秘密の取締り対象が拡大される。こういうことでもありますならば、改正また改正で、一体どこまで行くかわからない。のみならず、本法案審議に当りまして、杉原長官にわれわれが
質問いたしますと、軍事的な機密に対しましては、きょうは
日本独自の
秘密保護法を作るとは言明されませんでしたが、その前提として、すでに共産国に対してはもとより、自由主義同盟国に対しましても、軍を持ちます以上は、各国それぞれ最高の機密を持たなければならぬ。その
相手国の機密を探り自国の機密を守るためには、何らかの措置が必要である、そういう論理を導き出すようなお
考えが、すでに今日の討議においても明瞭でございます。従って私たちは、こういうような誤まった政策によって、人権が不当にじゅうりんされることに強く反対せざるを得ません。そういう
意味で、私たちはこれをもって第三の理由といたします。
そのほかこまかい点はありますが、昨年の討論の際にこの法案の
内容の個個の問題についての反対の理由をあげております。今度の
法律案は、同様の
内容を持ったものでございますから、個々の条文についての反対理由については、当時の討論に譲りまして、以上をもって私は本法案に強く反対するものでございます。(拍手)