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1955-07-13 第22回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十三日(水曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 須磨吉郎君    理事 北澤 直吉君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       池田正之輔君    伊東 隆治君       大森 玉木君    菊池 義郎君       草野一郎平君    高村 坂彦君       高岡 大輔君    夏堀源三郎君       並木 芳雄君    山本 勝市君       山本 猛夫君    山本 利壽君       横井 太郎君    江崎 真澄君       福田 篤泰君    渡邊 良夫君       稻村 隆一君    川村 継義君       高津 正道君    細迫 兼光君       森島 守人君    今村  等君       松岡 駒吉君    松平 忠久君       岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 龜夫君         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局長第二         課長)     安川  莊君         通商産業事務官         (重工業局航空         機課長)    宮本  惇君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 七月十一日  委員田原春次辞任につき、その補欠として吉  田賢一君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員芦田均君、池田正之輔君伊東隆治君、菊  池義郎君、並木芳雄君、福田昌子君、和田博雄  君、今村等君及び吉田賢一辞任につき、その  補欠として山本猛夫君、高村坂彦君大森玉木  君、山本勝市君、横井太郎君、稻村隆一君、川  村継義君、松平忠久君、及び戸叶里子君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として今  村等君が議長指名委員に選任された。 同日  理事須磨吉郎君及び戸叶里子委員辞任につ  き、その補欠として須磨吉郎君及び戸叶里子  君が理事に当選した。     ————————————— 七月十二日  特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間  の協定の締結について承認を求めるの件(条約  第一八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  参考人招致に関する件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一  部を改正する法律案内閣提出第一二一号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより会議を開きます。実は昨日農林水産外務連合審査会におきまして、議事進行発言のもとに足鹿覺君より、連合審査会をもう一回開いてくれるように委員長において取り計らえないかというような御発言がありました。当時委員長は、理事及び外務委員会了解がなければできないことであるから、明朝理事にお諮りしてみようということでお答えいたしておきましたが、今朝理事にお諮りしたところ、昨日外務農林水産委員会連合審査会は、約六時間以上、外務委員は御承知通り遠慮してさらに質問することなく、農林水産委員のみに発言を許して審議を進めました。それ以上連合審査会において質疑を継続する必要はないということを理事諸君においておきめになりましたから、このことを御報告申して御了解を得ておきます。その旨は委員長より農林水産委員長にお知らせいたします。     —————————————
  3. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次に前会において戸叶委員より気象観測に関する問題について保留の質疑が通告されております。この際これを許します。戸叶里子君。
  4. 戸叶里子

    戸叶委員 二週間ほど前に、ただいま委員長お話になりました高層気象観測地点米軍が三カ所廃止するという問題で私は質問をいたしました。それに対しまして条約局長の御答弁によりますと、これはだんだんに日本に施設を返すという意味で、かえってよいことだというふうに答弁されたのでございます。ところが六月二十三日の朝日の夕刊を見ましたときに、それによりますと、このような地点が急激に廃止されるときには、台風のシーズンに向っていろいろな問題があるというようなことが書いてあったのでございます。この点に対して何かもっとはっきりした点、すなわちこういうふうな観測所を廃止することに対して協定というようなものがどうなっていたかをこの際御答弁願いたいと存じます。
  5. 安川壯

    安川説明員 お答えいたします。この問題は新聞報道が多少事実に違っておりますから、その点も含めて御答弁いたしたいと思います。  米軍が三カ所の高層気象観測所を廃止するということは事実でございますが、その事実に至ります経過について、誤まった報道がなされております。新聞報道によりますと、米軍が一方的に、抜き打ち的に廃止するために、日本側気象観測に非常に支障を起すということでありますが、これは米軍が一方的にやった問題ではないのであります。この問題はすでに一年以上前から合同委員会の下にあります気象関係分科委員会で、日本側気象関係者米軍側気象関係者協議を行いまして、その協議に基きまして昨年の九月に気象関係分科委員会で双方の合意ができまして、それによりますと、米軍が三カ所の高層気象観測所を廃止するかわりに、米軍の持っておる高層気象観測用設備日本側無償貸付する。それに基いて、日本側は従来米軍が行なっておりました高層気象観測日本みずからの手でやるという合意ができたのでありまして、それを合同委員会で同じく昨年の九月正式に承認いたしました。これが合同委員会日米間の合意になっております。従ってこれを廃止するということは、一方的な米軍の措置ではなく、行政協定に基きます合同委員会の正式な日米間の合意に基くものであります。それからこれによって台風観測その他にいろいろ支障が起るという問題でありますが、その点も十分に考慮して日米間の協議が進められております。これが支障があるかどうかということはもちろん相対的な問題でありますから、米軍も従来通り観測を行い、しかも日本側もそれに加えて同じ観測をやるということになれば、それに越したことはないと思いますが、それはあくまで相対的なものでありまして、気象台専門家の話を聞いてみましても、向うが廃止することによって台風観測に致命的な支障を起すというようなことは絶対にない。それからまた長い目で見れば、米軍が廃止することによって、日本側自体気象観測能力が全般的に向上する、しかもそれに基く設備その他米軍から無償貸付を受けるという有利な条件になっておりますから、全般的に見れば廃止することによって、こちらが得る利益の方がはるかに大きいということであります。
  6. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま御説明にありましたように、日米合同委員会気象観測の方の九月二十七日の覚書でこれがきめられたとおっしゃったのですけれども、この覚書には合衆国空軍日本における現行高層気象観測を中止すると書いてあります。そしてそれだけで、いつ中止するとか期限が切ってないのですけれども、こういうふうに日米合同委員会覚書期限なしできめて、そうして適当なときに、自分が都合いいと思うときに、アメリカ側がそれを中止してもいいようになっておるのでしょうか。ほかの問題もありますから伺っておきます。
  7. 安川壯

    安川説明員 こういう問題で期限を切って合意することはもちろんございます。この場合には期限を切る必要がないと日本側が判断して一応打ち切る時期は米軍側にまかすということになっております。
  8. 戸叶里子

    戸叶委員 今度の問題はちょうどこの前騒がれました定点観測の問題と同じような問題でして、こういうふうに突然に打ち切られますと、日本の方といたしましても、それを日本側が引き受けて準備するまでに、無償といいましても、すぐにそれをやれるような設備をするにしてもなかなか問題があると思いますけれども、そういうふうな場合に、一応いつごろというような目安を考えての覚書というふうにした方がいいのじゃないかと思いますが、この点について予算なんかの関係がどうなっているか伺いたいと思います。  それから時間がないのでもう一点続けて伺いたいのは、この気象観測に使う機械を日本に貸与したのは、これはMSA援助によるものでしょうか、それともどういうものの援助によるものでしょうか。
  9. 安川壯

    安川説明員 こちら側が貸付を受けまして、こちら側の設備をする時間は、予算関係がございまして、設備に要する費用も、米軍側費用を負担することになっておりますので、工事そのもの気象台がみずからやります関係で、一応日本側予算で金を支出しまして、あとで米軍から返還を受けることになっております。そこでその予算は今年度の予算に計上しなければならぬ関係がありますから、日本側設備はそれだけおくれるわけであります。それはもちろんそういう時期的のおくれということを当時から予想して、気象台としてはこれで差しつかえないということで期限を定めずにきめたものだと思っております。  それから無償貸付の方はMSAとは全然関係ございません。これは合同委員会合意に基きまして、気象台米軍の間に別に契約を結びまして、その契約に基いてアメリカから貸付を受けることになっております。
  10. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ。そうしますと、さっきちょっとはっきりしなかったのですが、今年度の予算の中にこれに必要な経費は入っているわけなんですか。それからもう一つは、板付などの飛行場拡張というようなことがいわれておりますけれども、それに何か関係がないかどうかということと、そうしてこういうふうな重要な問題ですから、日米合同委員会覚書においては、その中止をする大体の日付は今後はやはり書いておいた方がいいのじゃないかと思いますので、この点は要望として申し上げておきます。
  11. 安川壯

    安川説明員 予算暫定予算に一部入っておると聞いております。それから残りは今度の本予算分に全部計上してあります。それから飛行場拡張関係ないかという御質問でございますが、これは全然関係ございません。と申しますのは、この話が出ましたのは、先ほど申し上げましたように一年以上前からの話であります。飛行場拡張の問題が出る前からすでに協議されている問題であります。それから向うが廃止いたします場所は、板付小牧三沢と三カ所ばかりでございますが、三沢板付については飛行場拡張はいたしません。小牧だけであります。そういう関係から飛行場拡張とは関係ございません。     —————————————
  12. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次に政府側より発言を求められておりますから、この際これを許します。園田外務政務次官
  13. 園田直

    園田政府委員 この際御報告を申し上げます。原子力協定案仮訳に関して、英文テキスト和文テキストの間に食い違いがあると新聞指摘をされましたが、これに関しまして御報告を申し上げます。  仮調印いたしましたのは、御承知通り英文案をもって仮調印をいたしましたが、仮調印の事実を発表することになった際に、一般の便宜のために案文の内容を発表することとなり、外務省におきましては急遽仮の訳文を作成したものであります。この訳文日本側限りの仮訳でございまして、すなわわ訂正することがあり得る未確定の訳文として発表したものでございます。もちろんこれに関しましては、経済審議庁あるいはその他の方面と急遽でございましたが、一応専門語については意見等も聞いて訳したわけでございますが、新聞指摘されておる和文テキスト英文テキスト食い違いがあります。  その学者側意見仮訳との食い違いは、第一条C、「ラディエーション」これは外務省仮訳では「放射性物質」と訳しております。学者側意見ではべータ線ガンマー線などの「放射線」と訳すべしとの意見でございます。  その次には第一条C、D、第四条に書いてございます「スペシャル・ニュークリア・マテリアル」、これを外務省仮訳では「特殊核分裂性物質」と訳し、学者側意見では「特殊核物質」と訳したが適当であるという意見のようでございます。米国原子力法の定義によれば、核分裂のみならず核融合物質も含むような訳をしてございます。  その次には第三条のCの「イラディエイテッド」、「放射能を失った」と仮訳をしているのを、「照射された」という学者側意見のようであります。  次には第七条Cの「賃貸された資材状態及び使用並びにその資材使用されている原子炉運転状態を随時観察すること」と仮訳をいたしておりますが、その言葉の「フロム・タイム・ツー・タイム」、この「随時」は、「資材状態及び使用」の観察のみにかかって、「運転状態」の観察にはかからないとの学者側意見のようであります。  こういう意見もございますから、外務省といたしましては、この仮訳新聞発表いたしましたし、関係各省にはごく一部を限って参考として仮訳と断わって提出をいたしておりますが、これは米国側にも通報されておりませんし、これによって仮調印もなされていない問題でございます。ただいま御報告申し上げました仮訳についての学者側仮訳との食い違いは、今後日本語正文を作成する場合には、十分専門的な学者その他の意見を徴して、正しい日本文テキストを作成したい所存でございます。その際もし仮訳が適当でないということであれば、当然これは訂正したいと考えております。  以上御報告を申し上げます。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は非常に大事な問題で、日本外務省の権威に対しまして非常な恥辱をこうむった問題で、われわれは軽視するわけにはいかないのです。従って取扱い方の手落ち並びに内容についてこの際お尋ねいたしておきたいのですが、その質問に入ります前に、特にもう一点私は訳文について指摘をして反省を求めたいと思いますのは、仮訳としてわれわれの手元に参りました第六条でございます。第六条の「機密資材通報を含む場合」云云とありますね。これは原文を見ますと、「イフ・ザ・トランスファー・オブエニ・サッチ・マテリアルズ・オア・イクィプメント・アンド・ディヴァイセス・オア・ザ・ファーニシング・オブ・エニ・サッチ・サービセス・インヴォルヴス・ザ・コミュニケーションオブ・リストリクテッド・データ」となっております。インヴォルヴスの訳が問題になっておるわけですが、ここでは「含む」とありますが、われわれの語学の常識によりますと、インクルードでございますならば、秘密資料を含むだと思いますが、インヴォルヴスの場合は、秘密資料通報する結果になると訳すべきではないかと考えるわけです。そのいずれに訳すかによりまして内容に非常に大きな変化を条約上生ずるわけでございますが、それについて次官または条約局長は、この点についてお気づきになったかどうか、まずその点もあわせて伺いたい。先ほどの御説明では、一条のC、D項、三条のC項並びに七条のC項についてのみお話がありまして、第六条のこの「通報を含む」となるのか、あるいは秘密資料通報する結果になる「結果」をさしておるのか、そうなりますと、非常に内容が変ってくると思いますが、その点については今次官から何ら御報告がありませんでしたが、検討なすったかどうかお尋ねいたします。
  15. 園田直

    園田政府委員 ただいま御指摘の第六条の「含む」という言葉についての解釈についてもやはり検討する必要があると考えております。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 ただいまは、新聞紙上を通じて学界から誤訳が指摘されたということでございますが、大体これを外務省自身ワシントンで先月お結びになって、それからこれを訳されるまでに責任を持ってやってこられたことなのです。向うから参りました通報文書を訳して、訳し違いとは違うのであって大体交渉するに当って、その内容自身について正確な理解なくして協定を結ぶなんというばかな話はないが、一体今になってもまだいずれが正しいのか、またはあなた方が訳された訳が正しいと思っておられるのか、あるいは学界指摘したものが正しいと思っておられるのか、あるいはさらに第三の他の正訳があるとお考えになっておられるのか、指摘された点については学界意見も後に聞いて正訳を出したいというお考えですか、内容自身についてのお考えはどうなのですか。
  17. 園田直

    園田政府委員 今指摘のあった点につきましては、十分正文を作って、議会なりその他に提出をし御相談申し上げる際には正訳をして出したいと考えます。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 正訳についての外務省意見はまだまとまってないのですか、その後何ら検討していないのですか。
  19. 下田武三

    下田政府委員 条約日本語正文を作るということはこれは重大な問題であります。特に今回の場合は、慎重を要しますのは日本国内法令原子力関係の術語の言葉がきまっておりますならば、条約はそれを借りますればいいわけなのですが、今回の場合は条約まつ先原子力という新しい分野における日本語のテクニカル・タームをきめなければならぬという問題でございます。でございますから、私どもといたしましても、最も慎重な態度をもって臨みまして——もちろん日本語正文を作る場合には、外務省のみならず、関係各省、広く学者意見も徴しまして、そうして実はこの細目協定の話も相当進みまして、そうした上に協定に振り返らないと、私は日本語正文というものはきまらないと考えておったわけでございますから、正文はじっくり落ちついて細目協定の話もまもりまして、そうして振り返って協定日本語の正確な言葉をきめよう、その上でアメリカ側通報いたしまして、日本語になるとこうなりますといって、アメリカ側にも日本語について納得させた上で、正文を作りたいと存じておったわけでございますから、私ども条約的見地から申しますと、仮の訳を発表するということは最もいやなことであったのであります。しかしながら先ほど政務次官が申されましたように、仮調印の事実か発表されると、仮調印されたものは英文が存在するにすぎないのであります。ですからどうせワシントン英文が発表されるのでありますから、新聞社が勝手に英文をお訳しになってもいいわけであります。私どもは知らぬといってもいいわけであります。しかしながらそれではあまり不親切ではないか、これほど関心を持っておる問題について、新聞社が勝手に英語を日本語にお訳しになったものによられたいというのは不親切だと思いますので、私どもの慎重をたっとぶ態度を譲歩いたしまして、拙速をたっとぶということで、仮の訳でありますということをお断わりした上で配付したのであります。でございますからちょうど新聞にたとえて申しますと、まだ校正部に回らないゲラなのであります。ゲラであるということをお断わりした上で配付しておるのでございますから、仮ということはサブジェクト・チェンジであるわけです。ですから初めから、変りますということをお断わりして配付してあるわけでございまして、私どもは当然、先ほど政務次官が申されましたように、また私も御説明申しましたように、最も慎重にこの問題を処して、そうして新しい分野における日本語のテクニカル・タームを正確にきめていきたいと思っております。まだ実はその段階ではなくて、単に新聞社にかわって、仮の訳文を御参考に供するという意味でやったのであります。しかしそういう手段にいたしましても、外務省が発表するものである以上は、もう少し時間がありましたならば慎重にいたしたいと思ったのでありますが、先ほど申しましたように拙速というお頼みでありましたので、こうい問題が起りましたことは当事者といたしまして申しわけなく存じております。しかし私どもの真意は、最も慎重に、正確な日本語正文を作りたいということにあるのでございますから御了承願いたいと思います。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 今伺いました御答弁の中で問題が二つあるのです。一つは、これは仮訳であるから間違いがあっても大したことはない、責任は持たないのだ、こういうように軽くお考えになっておられるが、とんでもないことだ。もう一つ重大なことは、その最終決定をするしないは別でありますが、こういうふうに学界からも世間からも指摘されながら、外務省ではこれに対する外務省自身としての、責任者としての正訳に対する検討すらしておらぬということ、これは実に驚くべき御答弁と私は思うのです、ただその取扱いについて、私は外務省責任をもう少しただしてみたいと思いますが、その前に順を追って、特に政務次官大臣にかわって御答弁いただきたいことは、まず第一にこういう間違いを起しました原因を見ますと、技術者を入れておらぬことです。さきに下田条約局長も言われる通り、今まで全くなかった新しい、われわれの概念になかった言葉や問題を処理するのだ、しかも相手国との間に重要な協定を結ぶ、単なる売買契約ではないのです。義務を生ずるような協定を結んで、これを受け入れる場合に、技術者専門家を入れなかったということは、大きな一つのミステークだと思うのです。これはすでにこの問題が出ましてから、われわれ当委員会におきましても、責任者である重光外務大臣または高碕長官に、技術者を入れて間違いなくやりなさいと言ったら、そのようにいたしますといって、交渉中に御答弁になったのです。それにもかかわらずろくな技術者も入れないで、学者も参加せしめないで、外務省だけでちょこちょことやってしまおうとしたところに大きな問題があるのです。ですからそのことを一体どう反省されておられるかをお尋ねするとともに、第二には、今の政務次官お話では、今後正訳を書くときに学者意見も聞くということですが、そうではなくて、この協定においては、本協定よりさらに重要な細目協定がこれから結ばれるわけですが、その細目協定交渉に当っては、日本の良心的な最もすぐれた科学者を参加せしめ、そしてその意見を聞くべきだ、その形については私は一々指図はいたしませんが、交渉に当って文章の訳の問題ではないのであって、内容そのもの協定そのものの取りきめに対して学者意見を聞くことが私は必要だと思うのです。そういうことについてどういう反省をされ、今後どういう処置をされるつもりであるか、その点をお尋ねいたします。
  21. 園田直

    園田政府委員 一般的にお答え申し上げますと、条約案は発表前は秘密にすることが外交上の慣例になっておりますので、条約案日本テキストについて広く部外に相談することは、普通の状態ではなかなか困難でございますが、専門的な条項が今後増加してきますので、できる範囲で専門家協力を仰ぎたいと思っております。本件に関しましては当初より工業技術院技術者を入れて相談しておりますし、各日本学者、各界にも、必要な部面においてはそれぞれできる限り通報、相談をいたして参りました。今後は御質問の趣旨を十分考慮してやりたいと考えております。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 細目協定は一体いつからいつまでの目標で、どこでおやりになるつもりですか、見通しをちょっとお伺いしたい。
  23. 河崎一郎

    河崎政府委員 細目協定は、近くゼネヴァで開かれます国連の平和原子力会議の状況を見まして、その上で大体ワシントン交渉いたす予定でございます。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 それについては、今私が要望いたしまして次官からお答えいただきましたように、ぜひ日本原子学者を動員されてその衆知を集め、その意見を聞いて交渉に当って、悔いを後に残さないようにしなければいかぬと思うのですが、その点についてもう一ぺん次官から御確答を得ておきたいと思います。
  25. 園田直

    園田政府委員 十分いろいろな学者、各界の御意見等をしんしゃくしましてやりたいと思っております。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つ、問題はこの署名調印は英文だけで調印なさったようですが、こういう誤解を招くような問題については当然事前に正訳をされて、向うへも示して、日本文の確定的なものを調印のときの対象とすべきだと思うのですが、一体どういうわけでそういうことにされたのか。
  27. 園田直

    園田政府委員 仮調印交渉当事者間の合意でありまして、右の合意は一方的に変更し得ないことに従来からなっておりますが、今回の仮調印英文協定案についての合意に達したわけでありまして、問題となった日本文はその仮訳でございまして、日本語正文はこれから作成をしますが、その正文を作成する場合におきましては向うと相談して、それと合意のもとに作成することに相なります。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 調印の前だと正訳をされてやるべきだと思いますが、それをやらなかったのはどういうわけですか。
  29. 園田直

    園田政府委員 それは正式調印で実施をいたします。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 ほかに他の委員からも御質問があろうと思うので、私は最後に一点だけお尋ねしてこれで他の委員の御質問に譲りたいと思います。これは仮訳であるから責任がないというような非常に無責任なお答えでございましたが、しかも訳もちょっとした、それほど重要でない個所ならよろしゅうございますが、もしこの誤訳が誤訳として認められるとするならば、取締りあるいはアメリカに対する協定内容について非常な食い違いを生ずるわけです。従ってこういう仮訳であるから責任を持たぬというような、それほど重要に考えなくてよろしいというお言葉ですと、われわれとして心外です。この問題に対する今後の取扱い方、こういうことはあとあとのことにも関係いたしますから、申し上げておくのですが、一体これはどういうふうに御処理なさいますか。この仮訳はまだわれわれの手に誤訳のままあるのです。それをどういうふうにお取扱いになるつもりであるか。
  31. 園田直

    園田政府委員 仮訳提出いたしましたのは、審議の対象として提出したわけではなくて、仮調印をいたしました事実というものを発表するに際しての参考として、提示したわけであります。従いまして仮訳であるから、誤訳であっていいというわけではございませんけれども、その誤訳と申しますのは、専門的用語にどのような言葉を使うかということが問題でございますから、その点については十分検討をいたしまして、外務省として両国の合意の上に、正式正文の中に使われる日本語正訳が出ましたならば、それを通報をし、正文提出をするつもりでございます。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、いずれにしても、総括的に申しますと、非常なミステークであったということを、園田政務次官外務省を代表して率直に認めておいていただきたい。今後こういうことのないように、一つここで確約しておいていただきたいのです。
  33. 園田直

    園田政府委員 外務省として御指摘の点は十分注意をいたしますが、特にこの点でわれわれとして注意をすることは、このような専門的用語を正式に両国の合意に基いてやらなければならぬものを、要旨をなるべく早くお伝えするためにとった今度の仮訳提出の手段、これは今後大いに研究しなければならぬと考えております。訳等につきましても十分注意をいたします。
  34. 植原悦二郎

    ○植原委員長 ちょっと伺いたいのですが、ただいま問題となっておるような諸点につきまして、日本学者間ですでに一定した翻訳用語があるかないかということを伺いたいのであります。
  35. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申し上げましたように、全く新しい分野におけるテクニカル・ターム日本語をきめるという問題でございます。実際の日本の実情を申し上げますと、専門の学者間ですら定訳がなくて、学者により、おのおの好きなような日本語を作って使っておられるというような状態でございます。従って私どもが問題を処理するに当り、どうしても慎重ならざるを得ないゆえんでございまして、委員長の御指摘通り、この問題はまだ学者間でも定訳ができておらないという状態でございます。
  36. 植原悦二郎

    ○植原委員長 学者間でその問題を討議する場合、あるいは説明する場合でも、用いている翻訳語の用語が一定しておらぬというふうに了解してよろしいですか。
  37. 下田武三

    下田政府委員 全部が全部まちまちであるということはありませんが、非常に多くの問題がありますので、テクニカル・タームについては学者間で一定したものができておりません。
  38. 植原悦二郎

    ○植原委員長 岡田春夫君。
  39. 岡田春夫

    ○岡田委員 今外務省の言っていることは非常にごまかしなのです。委員長あなたもごまかされている。あなたもよく聞いておかなければわかりませんから、勉強していただきたいと思うのですが、さっきからたとえば穗積君の言った六条のインヴォルヴの問題にしても、これはきょう始まった問題じゃない。ところが先ほど園田政務次官説明した場合において、六条のインヴォルヴについては、これは再検討するということは全然初めに言っておらない。ところがこの前の外務委員会において、下田条約局長は知っているはずなのですが、インヴォルヴとインクルードと違うはずじゃないかということを言っている。これはテクニカル・タームじゃありません。これは中学校のコンサイスを見てもわかる。インヴォルヴの翻訳は、当然の結果としてもたらすという意味のことが載っている。インクルードというのは、広い意味の含むということが載っている。そればかりじゃない。七条の問題にしても、これは私は一月前にあなたに指摘しているはずです。下田条約局長も知っているはずだし、園田政務次官も知っている。これはどういう点かというと、「フロム・タイム・ツー・タイム」の問題である。この関係をよく読んでみますと、「ツー・オブザーヴ・フロム・タイム・ツー・タイム・ザ・コンディッション」が前の文章にかかっておって、それから「アンド」があって、それから別な文章になっているのです。ですから随時という意味のフロム・タイム・ツー・タイムというのは前の方にだけかかって、あとの方にはかからないということを、一月前に私は指摘しているじゃありませんか。こういう点を指摘しておるのに、仮訳でありますからこれはあまり調べませんでしたと言う。先ほど園田政務次官は、学界から注意がございましたからというのだが、私の方で、国会で注意したことについてはあなたは全然無視している。国会のことは全然黙殺してしまって、学界のことだけを考えて、あなたはそう言っている。こういう点を一月も前に私が指摘をしておるのに、外務省としてフロム・タイム・ツー・タイムについて少くとも検討したことがあるかどうか。これはトルコ協定と全文が同じで、トルコ協定仮訳のときは随時というのは全体にかかっておる。ところがこの日本協定の場合にも、原文のフロム・タイム・ツータイムというのは全部にかかる。すなわち言葉をかえて言うならば、トルコ協定と同じ内容のものをそのまま仮訳という格好でほおかぶりをして、外務省はきわめて無責任態度で、国会の注意などは黙殺してしまって、あなた方は勝手にテクニカル・ワード、などといって、いいかげんなことでこういうような訳をごまかして出そう、そういう魂胆が明らかに暴露されておると思う。こういう点はもっとあなたは慎重な態度答弁してもらいたいと思う。
  40. 園田直

    園田政府委員 ただいま御指摘になりましたインヴォルヴ及びフロム・タイム・ツー・タイムの個所は、すでに国会で指摘されておる点でございますから、先般御報告申し上げましたのは、新聞指摘された個所に付随して申し上げたのであります。
  41. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは学界から言う前に、私の方が先に言っている。そういう点を研究したことがあるのかどうかということを聞いている。あなたの言うのは、学界がそういうことを言ったから、私の言った一月前のことを思い出して、検討いたします。そんなことではあなたは無責任だ。少くとも良心的であると私は考えている園田政務次官が、そういうことを答弁されるとは私は考えない。おそらく外務省の立場上困って、そういうつらいことを言ったのだと思うが、むしろ率直に御答弁になった方がいいと思う。私が指摘したことについて検討されたことがあるかどうか。
  42. 下田武三

    下田政府委員 穂積先生と岡田先生の御指摘になりましたインヴォルヴとフロム・タイム・ツー・タイムという点でございますが、その御指摘のございましたときに、これは実にいい点をおつき下さった。私ども、専門的見地からいたしまして、実はこの訳を作るのに最もむずかしい点でございます。インヴォルヴの点は、最もはっきり訳してしまいますと、穂積先生のおっしゃいますように、そういう「結果を来たす」という場合もございます。しかし一般の場合には、日本語には、インヴォルヴもインクルードも両方とも「含む」と訳している場合が多うございますが、場合によっては、含むという言葉では正確に概念を表わし得ないので、他の言葉を使うことが適当である場合も十分あり得ると思うのであります。  それからフロム・タイム・ツー・タイムについては、英語ではそこにオブザーヴという動詞が二つアンドで結ばれておりますが、フロム・タイム・ツー・タイムという副詞句を、アンドツー・オブザーヴ・フロム・タイム・ツー・タイムと繰り返す煩を避けるために、同じような動詞が二つ並んでおる場合に、前の方だけ副詞句をあげるという場合もあるのであります。こういうところは、実は正文を作る場合は、アメリカ側とよく協議して、アメリカ側の英語の意図は、一体フロム・タイム・ツー・タイムを一カ所置いただけで両方にかからせるもののであるかどうかという点もよく検討して、日本語では全部にかけるか、あるいは一カ所で済ますかということは、日本語正文をきめる交渉の段階においてよくきめなければならぬと考えております。両先生の御指摘になりました点は、私ども前から慎重に考えておるところでありますが、しかし正文をきめる段階に至ります前に、仮訳文を作るときに、とりあえずフロム・タイム・ツー・タイムの点につきましては、トルコ協定のものをそのまま借り、かつ一方では普通の条約に使っております含むという訳語を使っております。これはもう少し正文を作る際には慎重に検討いたしたいと思っております。
  43. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は何も二つだけの例を言ったのじゃない。たとえば第三条のイラディエイテッドという問題にしても、これはテクニカル・ワードではありません。こういう点だって問題があるのですが、この訳の関係だけをあまりやっていると時間がかかるから、簡単にやりますけれども、フロム・タイム・ツー・タイムの問題にいたしましても、これは文学じゃない。これは条約であり、協定なのです。それはいろいろな英文学や詩を作る場合においては、フロム・タイム・ツータイムがどこへかかるとか、韻の関係でどうなるとか、そういう問題はあり得るでしょう。しかし条約の場合において、フロム・タイム・ツー・タイムがどこにかかるかということは、これははっきりしている問題です。ここでアンド・ツー・オブザーヴ、アンドをつける場合には、フロム・タイム・ツー・タイムをどこへ置くかという問題が出てくるわけです。条約ですから、そういうような英文学的な、あるいは散文詩的な、あるいは詩のような、そういうような韻の関係でフロム・タイム・ツー・タイムをどこに置くか、そしてこれがどこにかかるかなんというような、大学の英文学の講座を私はここで聞こうとは思っておらない。そういう問題を私は言っているのじゃありません。あなたはそういう形でごまかしになっているけれども、これを読んでみれば、常識としてだれでもわかる。こんなことをごまかしてはいけません。第三条のイラディエイテッドの問題にしても、私は先ほどからたまたまイラディエイテッドの問題については触れなかったから、あなたは答弁されておらないけれども、この問題だって、別にこれはテクニカル・ワードではありません。こういう問題については私が前々から指摘しているのに、こういう点を黙殺されて、仮訳という名目で国会に出して——国会に出しているということは非常に重要です。そういういいかげんな仮訳を国会に出すということは、国会を無視しているということになるのじゃありませんか。この点が一つ。  もう一つ、これはぜひ伺っておかなければならないのは、アメリカが今度の日本との協定を結んだ場合において、仮調印をするということは、これは正式のアメリカ原子力法の手続に基くところのいわゆるイニシアルなのです。これはあなたもこの前の委員会でお認めになっている通りだし、参議院の委員会でもお認めになっている通りだ。イニシアルをした限りにおいては、アメリカの国内においては、このイニシアルに基いた協定文をもって大統領の承認を得て、そして三十日間アメリカの国会でこれをさらさなければならない。原子力法に基いてこういう義務関係があるのです。そうすると、この仮調印によるところの英文だけをあなたの方ではイニシアルをして作った。そして正式の調印の場合には、英文日本文と両方正文として発表する。こういうようなおつもりであるのかどうか。仮調印の場合だけは英文を一応出しておいて、そして今度は正式調印になると、日本文と英文と両方お出しになるのか。こういう点はどういう関係になっているのか。少くとも正式調印をする前に今度の仮調印というのは、今言ったようにアメリカとしては重要な手続を踏まなければならない問題です。こういう場合において、仮調印の文章と全然違うような、いわゆる日本文において——あなたは仮訳だからいいんだと言っておられるけれども仮訳と全然違うような正文が出てきた場合において、アメリカ内におけるところのいわゆるイニシアルされた協定分自身に効力の問題がもう一度問題になってくると私は解釈せざるを得ない。この点についてはどのようにお考えになっているか。それについては、そういうようには解釈しませんとあなたは御答弁なさるでしょう。なぜならば、英文だけをイニシアルしたからである、こういうように御答弁になるだろうと思うが、正式の調印の場合、日本文と英文で正式に調印して、仮調印の場合はイニシアルは英文だけということになると、あなたがかねがね言っているように、日本アメリカと対等な立場で協定を結ぶのだ、その関係英文日本分で結ぶのだと言っているが、日本文はいわゆるイニシアルしないで、英文だけでイニシアルするということで、こういう点でも明らかに日本の隷属関係が暴露されているじゃないですか、外務省の立場が出ているじゃないですか。
  44. 下田武三

    下田政府委員 第一の点でございますが、これは仰せの通り、何もただいま御指摘になりました点だけに限らず、またイラディエイテッドの問題もありますが、これは全文にわたりまして、正文を作る際は慎重に再検討いたしたいと私は思っております。何も新聞指摘し、または皆様の御指摘になりました点に限らず、もっと全面的に私どもは慎重に再検討いたしたいと思っております。  第二の仮調印の点、これは仰せの通り、岡田さん最もよく御存じの問題でございますが、全く仮調印というのは、アメリカの国内法上の必要からそれに応じて行なったものでございます。そこで条約仮調印は、もし日英両文で署名すべきものでありましたならば、仮調印のときから条文を仮調印する場合もありますし、またそうでなくて、交渉当事者が実際に交渉に当って使った言葉だけについて仮調印する場合もあるのであります。これはどちらでも実は大した問題ではないわけでございます。また仮調印のときから日本語テキストを作って仮調印しないのは対等ではないじゃないかと仰せになりますが、これは実は仮調印の場合は、そのとき使っていた言葉でそうして現実に合意ができたときにおいてイニシアルして内容をきめるという問題でございますから、最後的に当事国を縛るという文書に日英両語のものを作るという問題とは私はおのずから別だと思います。仮調印はあくまでも便宜の問題でございますが、本調印の場合はそのテキストによって両当事国を拘束するという重大な問題でございますから、もちろん正式の調印の場合には、日本文として慎重に検討いたしました正文を作りまして、それにつきまして日本語ではこうだということをアメリカに納得させた上で、両方で取りきめたいと考えております。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまり時間をかけてはいけませんからこれだけで終りますが、最後に一点だけお伺いしたい点は、たとえば今申し上げたイラディエィテッドの問題にしても、あるいはスペシャル・ニュークリア・マテリアル、この問題にしても、これは訳の仕方によっては本質的に内容が変ってしまうわけです。ですから、こういう訳の仕方によって本質的に内容が変った場合においては、この協定全体を再検討しなければならないような場合ができてくることもあると私は考えざるを得ない。たとえば特殊核分裂性物質、この問題にしても、学界の説くところによると、この中には水素爆弾の関係する面も入ってくるということになってくるわけです。そうすると、この訳の仕方によっては、その内容自体が本質的に変ってくる場合もあり得るわけです。そういう場合において、本質的に内容が変ってきた場合において協定全体を再検討する意思があるのかどうか、この点を最後に一点だけ、これは多分に政治的な問題ですから、園田政務次官に、条約局長とあまり相談をしないで、あなたの率直な御意思を伺っておきたいと思うのですが、あとで取り消すなら取り消してもかまいませんから、あなたの率直な御意見を伺っておきたい。  もう一つ第二の点は、この前国会に正式に出された仮訳なるものは、至るところに誤まりがある、あるいは疑問がある。外務省の言うところに百歩譲って、誤まりがないにしても、疑問な点があるといたしましたならば、仮訳自体は何ら権威のないものであって、下田条約局長の言っているような、これは校正刷りの前のものにすぎない、単なる参考の資料にすぎないものであって、これ自身よりも、もっとほかに権威のあるものがあるという点をはっきりと断定されるかどうか、こういう点二つだけを伺って終りにしたいと思います。
  46. 園田直

    園田政府委員 仮調印に際しましては、英文によって両国の合意が成立したのでありまして、その日本正文を作る場合にはどのように作るかということは、また両国の合意のもとに作成をいたします。従いまして、個々の訳の相違によって協定全分に対する大きな修正が加えられるとは考えておりません。  なお提示いたしました協定案の仮訳は、先ほどから申し上げます通り、事務的に申すならば、いろいろな専門用語を統一し、正式調印に提示すべき正式の言葉を使って詳細な翻訳をして日本文を出すのが当然でございましょうが、政治的に申しまして、国会を尊重する意味において早急に仮訳をして、その事実と概要を御報告したいという、国会に忠実に報告せんとするために出したわけでございますから、これはあくまで参考資料でございます。
  47. 植原悦二郎

    ○植原委員長 委員長でなくて、私委員としてもう一つ伺っておきたいのですが、日米間の条約は、英文日本文と両方に調印いたすのでありますか。両方に調印するといたした場合に、アメリカ人は英文の方が解釈しいいから、英文による。日本人の多数は、日本語がわかりいいから、日本語による。しかし疑問があった場合に、両者を照らし合せて正確な意味を追及して、その結果によって解釈するものと理解していいかどうか、その点をはっきりいたしておきたい。
  48. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。
  49. 植原悦二郎

    ○植原委員長 森島守人君。
  50. 森島守人

    ○森島委員 大体、穂積君と岡田君の御質問によって、趣旨が明らかになったと思います。私簡単に一、二点お伺いしたい。  まず第一点は、日英両分を正文にするということでございますから、仮調印にイニシアルした場合には、英文のみによってやっている。これは非常に権衡を欠いたものである。こういうふうな実例が、外務省の従来の条約等の場合にありましたか。あればお答え願いたい。
  51. 下田武三

    下田政府委員 正式調印の場合には日本語を使うべき条約で、仮調印の場合に一国語だけでやったという例は、私はあると思いますが、ただいま例が浮びませんので、後日例をお示しいたしたいと思います。
  52. 森島守人

    ○森島委員 追って従来の条約集等について実例を出していただきたい。そういうふうな実例がないといたしますれば、今度は、日英両文を正文としたものは、日本外務省として初めてと申していいでしょう。そうしますと、この重要な問題について、英文のみについて合意が成立したということは、非常に片手落ちである。少くとも日本文についてもイニシァルをすべきものだと思います。アメリカ側の国内事情に強要されたということもありましょうが、実際の場合に、今後日英両文あるいは日露両文の外国語と日本語と合せて、双方に対してイニシァルをするという方法をおとりになるかどうか、そういう御意向であるかどうかという点を承わりたいと思います。
  53. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申しましたように、イニシアルということは、何もそのイニシアルしたものによって、直ちに国家を拘束するという問題ではございません。ただ交渉当事者がお互いに話したことをまとめるという文書でございますから、これは必ずしも当事国の双方の言葉でやらなければならぬということはないと私は思います。できれば、そうした方がいいのでありますが、今回の場合は、仮調印を必要といたしました事情が、もっぱらアメリカ側の事情によるものでありまして、それでアメリカの国会に出すために仮調印する場合に、同時に日本も大急ぎで日本語のものを作って仮調印するというような軽卒なことは許せない事情でございます。先ほど申し上げましたように、全く新しい分野において、いろいろな重要なテクニカル・タームがあるのでございますから、英語と一緒に足並みをそろえて、日本語の方もイニシアルをしたいといわれましても、迷惑きわまることでありまして、アメリカ側はそう申しませんでしたが、たといそう言われましても、私は断わるべき問題だと考えております。
  54. 森島守人

    ○森島委員 私のお尋ねしておりますのは、今度の場合の実例については、アメリカ側の事情でやむを得なかったということは、一応納得いたします。しかし将来の方針として、外務省はいかなる方針を持っておるか。対等でやるのだったら、対等でやるのが当りまえなのです。この点をついたって、議論になるばかりですから、はなはだ苦しい答弁ですが、外務省の御答弁は一応承わっておきます。今後の方針どうですか。
  55. 下田武三

    下田政府委員 例を思い出しましたので申し上げます。今国会で御承認を願いました日加航空協定、これがオタワで英語で交渉が行われましたので、英語のテキストだけでイニシアルいたしました。そういう例もございますので、今後イニシアルは双方の用語でやるという方針をここで申し上げることは、私差し控えたいと存ずるのであります。
  56. 森島守人

    ○森島委員 政策上の問題に関連しますので、政務次官にお尋ねしたい。いやしくも両国語を正文とする以上は、たといイニシアルの場合でも、これは道義的の責任を負うことになりますから、私は双方の言葉でイニシアルをすることが適当だと思う。その点について条約局長は事務当局で御答弁できぬのは当りまえでしょう。政府を代表して政務事官は、いかなる御方針で臨まれるか、この点はっきり御答弁を願いたい。
  57. 園田直

    園田政府委員 今後イニシアルの場合といえども、両国の正文を作ってイニシアルをやるのが原則であると考えます。しかしながら条約あるはい協定調印のために、時間的な問題その他の問題等がありますれば、あるいは英語のみのイニシアルをやることもあることと想像いたします。
  58. 森島守人

    ○森島委員 なかなかずるい御答弁で、将来責任をのがれるような御答弁ですが、これ以上追及はいたしません。  次に伺いたいのは、今度の仮訳についても、相当の誤訳がある。今度は正文を衆知を集めておやりになるということが、必ずしも誤訳がないとは限りません。日本文と英文とを双方正文にしておられます場合に、もし食い違いができた場合には、いかなる方法をおとりになるのでありますか。
  59. 園田直

    園田政府委員 外国語及び日本語による条約文は、いずれも正文でございます。従いまして解釈用語としていずれかを指定してない場合に、両者の間に食い違いがあったときには、当該字句の解釈、分脈からするところの論理的解釈、締結交渉当時の経緯等による歴史的解釈等によって、双方の正文が統一的に解釈されるようにいたしたいと考えます。
  60. 森島守人

    ○森島委員 もう一つ質問申したいのですが、英文テキストについて合意が成立したと言っておられる。外務省でやった仮訳によりますと、実質的に相違がある。これは必ずしも条約局長の言われるようにテクニカル・タームの問題だけでは済みません。内容において大きな開きがあるると見なければならぬ。私はただいま政務次官の御指摘になりました数点につきまして、英文の場合と日本分の誤った仮訳の場合とで、実質的にどんな相違が出るかということをお聞きしたい。
  61. 下田武三

    下田政府委員 御質問の御趣旨がわかりませんでしたが、仮訳日本文と英語とでは実質的にはどういう相違が現われるかという問題ですか。その点でありましたならば、御質問なさる穂積、岡田両先生の方からこういうふうに違うのだということを御指摘がございましたが、私どももその通りだと実は思っております。
  62. 森島守人

    ○森島委員 今一つ、私らもテクニカルを知ってはいない。条約局長といえども、こんな全く新しい問題について、テクニカルな知識はないと思う。仮訳英文の原文による場合に、一体どんな相違が生ずるかということを、一覧表にして資料として提出していただきたい。これをお願いいたします。あとは大体穂積君と岡田君の質問で済んだと思います。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 最後に一点、次官に重ねて要望しておきます。というのは、あなた方この問題をちょっと簡単にお考えになっておられるが、委員長の言ったように、テクニカル・タームの訳し違いじゃないのですよ。たとえば一例を言えば、さっきの第三条のC項のイラディエイテッドのごときは、内容が全然違うのです。物質が違う。そんな理解で協定を結ばれたらたまらない。ですから、園田次官は、すでにあなた方、委員の諸君の御指摘通りに、今度のワシントン交渉においても、仮協定交渉においても、科学者を入れたと言っておりますが、この放射能性を失った燃料要素というような、ありもしないものをあると思っておる程度の科学者を動員したってだめなんです。科学者じゃないのです。この程度のことならわれわれの方が知識があるくらいです。ですから、今度はやはり日本学術会議原子力委員会関係諸君の意見を十分尊重されるようにすべきだということをもう一ぺん確約しておいてもらいたいのです。
  64. 園田直

    園田政府委員 承知をいたしました。
  65. 植原悦二郎

    ○植原委員長 もう十二時になりますが、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案を議題として審議を継続しますか、あるいはここでちょっと休憩して、午後一時ごろから始めた方がフレッシュになってよかろうと思いますが、いかがですか。皆様にお諮りいたします。     〔「休憩休憩」と呼ぶ者あり〕
  66. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それでは休憩して、正一時から開会します。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  67. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  まず理事補欠選任についてお諮りいたします。理事戸叶里子君及び理事須磨吉郎君が去る七日及び九日にそれぞれ委員辞任せられ、再び当委員に選任されましたが、これにより理事が二名欠員となっております。その補欠選任の件でございますが、これは御両名を再び理事指名いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 植原悦二郎

    ○植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。     —————————————
  69. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次に参考人招致の件についてお諮りいたします。理事会の協議に基き、明十四日には駐留軍の基地拡張問題について、十五日には韓国抑留者等に関する問題について、十六日あるいは十九日には日本海外移住振興株式会社法案についてそれぞれ参考人を招致してその意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議がございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 植原悦二郎

    ○植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお人選につきましては理事会に御一任願いたいと存じますので、さよう御了承を願います。     —————————————
  71. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。穗積七郎君。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 前会に引き続きまして杉原長官に御質問をいたしたいと思います。すでに内閣委員会においてあなたは防衛六カ年計画についてその案の提示を求められておりますが、それはいつ発表になるのですか。
  73. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。防衛の長期計画につきましては、今日まで種々研究を重ねてきておるところでありますが、今日のところ政府として責任を持って申し上げられる成案を得るに至っていない次第でございますが、さらに今後研究を進めまして、成案ができましたならば適時発表いたすつもりでございます。そういうものは国会にはもちろん国民一般にも政府として責任の持てるものができましたならば発表することが適当であろう、こういうところからやっておるわけでございますから、成案ができました上はぜひ発表いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 大体つごろの御予定でございますか。
  75. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 時期はまだ未定でございますから御了承願います。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 正確に何月幾日ということを申しているのではありませんが、今仰せのように長期計画を策定する御意思があり、できたならば正々堂々と外国へ示す前に国民に示そうという御意思がありますならば、大体のおつもりがあろうと思いますが、どの辺を目標にして作業をお始めになるのか、現に始めておられると思いますが、どの辺の時期を目標にしてやっておられますか。大体のところでけっこうでありますからお示し願いたいと思います。
  77. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今申し上げましたように、その時期は不明でございますから御了承願いたいと思います。せいぜいなるべく早くといういとで努力いたします。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 私は長官に無理な御質問をしているのではないのです。今まで防衛計画の問題につきましては、前内閣時代から再々にわたってこの問題は問題になっておったと思います。これが実は日本の保守政権の外交政策の中心にもなりますし、同時に予算の上でわれわれ国民生活の上に一番関係の深い問題でございますから、この内容、方針というものを知りたがっておる、これは無理からぬことだと思うのですですから、経済六カ年計画と見合って、この問題は当然何よりも早くしなければいけない。実はこの計画の上に立たなければ、新しい内閣としては三十年度予算の軍事費すら組めないはずだと私は思うのです。ですから、大体のところでけっこうですから、また、それについて後になっていろいろな事情で多少延びましても、そういうことをわれわれ一々あげ足をとって責任を追及するようなけちな根性をもってお尋ねするわけではございませんから、大体政府としてもそのことについてあらかじめの目途は言っておかれた方がおためになろうと思う。大体のところでけっこうですから、作業をなさるについての庁内における申し合せ程度でもけっこうですから、ぜひお答えを願いたい。あるいは大臣で差しつかえがあれば、事務当局の方で、今どういう計画で、どういうスケジュールで作業を始めておられるのか、その内容のでき上ったところは別でありますが、大体の計画がわかりましたら、事務的な御報告でもけっこうですから伺いたい。どちらからでもけっこうですから、お聞きしたい。
  79. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御要望の点ごもっともだと思います。そしてまた私ら政府といしたましては、なるべく早く成案を得たいと努めておるわけであります。ことにその間にありまして、計画を作っていく上からいたしましても、一つの重要な要素をなしますアメリカ側援助等の関係というような点につきまして、なるべく早く見通しをつけたいと思っておる次第でございます。そしてまたアメリカ側でも、今いろいろ研究を進めておるようでございまして、そういう点をあわせ考慮いたしまして、なるべくすみやかに作りたいと努力いたしておる次第でございますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカ側は、日本に供与しなくても、希望的案としてでも、長期計画に対する大体のめどを向うからこちらに提示があったのですか。
  81. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 それはまだございません。アメリカ側でも、援助等につきまして、出先だけではなくワシントンの方でも今研究を進めておるように私承知いたしておる次第でございます。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、日本の防衛計画はアメリカの計画を基礎にしてやらなければならぬということであって、その案がきまらなければこちらのスケジュールもきまらない。日本の防衛計画はこれからだんだん——特に鳩山内閣におかれましては再軍備政策をおとりになるわけですから、独立外交政策の中心は、あなた方の政策によって論理を進めて参りますならば、やはり日本の独立軍の編成にあると思うのです。そのときに日本の長期計画を自主的に決定するのに、いまだにことごとく、アメリカの計画がきまらなければこちらもきめられない。日本の計画がいつきまるのかといえば、アメリカの計画がきまらないから、そこで延びておるのだ、それは向うに聞いてくれということでは、どうもわれわれは納得ができないのですが、ちょっとおかしな話じゃないでしょうか。その点はあなた方の政治的な公約といいますか、政治的なモラルから見て、非常に矛盾をしておるとお考えになりませんか。
  83. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 日本といたしまして、長期的の計画を作っていくに当りまして、実際問題といたしましてアメリカ側の相当の援助を得るということは実際に必要だと思います。そしてそういう点についても、今アメリカ側でも研究を進めておる。そして私は、そういう関係を考慮してやるということは、決してわれわれの独立ということと矛盾するものではないと思います。そういう見解に立って、向う援助等の計画をそのまま基礎とするのではなく、日本としての立場はもちろん堅持する、そして日本としての立場を堅持しつつ共同的に考えるということは、決して日本の独立ということと矛盾するものではない。私は独立ということとよその国との共同、真の独立と共同ということは、決して矛盾するものではないと信じております。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 われわれはもとより吉田内閣並びに鳩山内閣のおとりになっておられる再軍備政策については反対です。ですが、安保条約以来日本は自主自衛のできるような再軍備漸増を約束しているわけでしょう。そうしてあなた方が選挙を通じて強く訴えられたことは、独立外交をやりたい、独立自衛軍を作りたい、そうしてアメリカ軍を早く撤退せしめたいということを訴えられたわけです。われわれとしては基本的にはその政策には反対でございますが、あなた方の政策をとって、その政治の論理に従っていきますならば、日本の防衛計画というものは当然日本の独自の判断によって作って、そうしてそのうち、経済的に日本の国内においての負担がこれ以上はできないから、その足りない点についてはアメリカその他友好国の協力を与えてもらいたいという要求をされるのが当りまえであって、向うのあてがい扶持がきまって、それからこっちの案を作るということでは、独立にはならぬと私は思うのです。金を借りたりあるいは一時的な援助を受けることが、ひもつきであるならばこれは従属関係を強めますが、条件によって、内容によりましては、あなたのおっしゃる通り、必ずしもそれによってすぐ日本アメリカの従属化すというようにお考えにならぬということも、言葉の上では一理はありましょう。しかしそうじゃなくて、今言っているように、案を作るときに、日本の案が向うからきまってこなければ作れないというようなばかな話はないのであって、日本日本独自の案で行くべきである。あなた方のお考えによれば、われわれの必要と感じないところの防衛力が必要だとお考えになっておられる。それについては、この前、一体どういう危険があり、どういう情勢判断のもとに再軍備計画をなさるのかといってお尋ねしたら、それについてにお答えがなかった。それではしぼって、案だけでもけっこうだから、案を作るについてはどういうものがあるかと言ったら、それもわからぬという。わからぬならば、その態度についてはどうかとお尋ねしたら、態度については、自主的に内外の情勢を判断してこれこれの防衛計画を作りたい。それについては、これ以上日本の国民の経済的負担力がないからアメリカに求めるということならば、計画が自主的に行われておるともある意味においては言えるでしょうが、しかしそうでなく、日本の案そのものが、アメリカの計画がきまらなければきめられない。こういうことでは明らかに従属関係だといわざるを得ないと思うのです。その点はおかしいと思うのです。ですから、アメリカの応ずる応じないは別として、日本の国民にあなた方が示そうという内容は言うまでもなく自主的にきめらるべきものであって、そうしてそれは一体いつごろきめられるということは、アメリカの都合ではなくて、日本の国内の都合できめられると思いますから、重ねて私はそのことについての方針をお答えいただきたいと思うのです。
  85. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。今穗積委員のおっしゃいましたところの、日本側として基本的に自主的の態度できめるべきじゃないかということは、これはごもっともで、むしろ私は当然なことだと思います。それを基本にしてきめなければならぬことだと思います。その際におきまして、今申し上げましたように、その案を作っていく過程においてアメリカ側援助等の関係をも考えながら案を作る、その資料を得ていくということは当然だろうと思うのです。それは何も日本の自主的なことと矛盾するものではないと私は考えておる次第でございます。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 どうも私ども満足するわけにはいかないのです。しかし遺憾ながら委員長もお聞きの通り、きょうは実はこの法案をでき得べくんば質問を終了して、採決まで持っていきたいと思いましたが、こういうお答えでは審議ができないと思うのです。大体の目標をお示しいただければいいと思うのですが、委員長どう思いますか。われわれ委員会として納得することができない。本委員会として大体の目標をおあげになって発表しようというのだから、私の質問は無理な質問じゃないと思うのです。すなおにお答えいただいたらいいと思うのですが、委員長の御所見を承わりたいと思うのです。
  87. 植原悦二郎

    ○植原委員長 委員長はこの際所見を述ぶべきじゃないと思います。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 委員会と政府との法案審議についての御所見について……。
  89. 植原悦二郎

    ○植原委員長 委員長はこの場合意見を申すべきでないと存じております。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだどうも遺憾でございますが、それでは少し内容にわたってお尋ねいたしますが、先般報道関係の報ずるところによりますと、今までできておった素案、これは長官の言葉をかりれば、最後的な決定案でないから、素案はあったけれども、これを発表することはできない。かって木村私案というものがあったが、それは内閣の案ではなかったから発表できない。あるいはこの場合におきましては、防衛庁の案であって、政府の最後的な案になっていなかったかもしれませんが、そういう計画が再検討されなければならない。そのおもなる理由はアメリカとの関係、すなわち日本の今あなた方が支持されておる防衛方式は、アメリカとの個別的な集団安全保障体制をとっておるわけですね。そうなりますと日本の防衛は、アメリカ軍の計画、アメリカ軍の作戦方針の一環とうて日本が何がしかの兵力を担当し、作戦もこれの一環として行動することだと思うのです。ところがそれについて日本独自の防衛計画としては、アメリカとの関係を再検討して、もう少し自主的な計画を持たなければならない。特に問題になっているのは、今までの力点が陸上軍に置かれたものが、空軍に力点を置かなければならない。こういうことが報道されておりましたが、果して今の防衛計画を検討される作業の中で、そういうことが問題になっているかどうか、具体的にお尋ねいたします。事務当局の方でけっこうですが、そういう事実の有無をお尋ねするわけでございます。
  91. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私からお答え申し上げます。日本の自衛体制というものを考えて参ります場合に、日本といたしましてほんとうの厳格な意味における自衛の最小限度の防衛力を持ちたい。少くとも独立国としてはそういうものを持ちたいということは当然のことだと思います。ただその際におきましても、日本一国だけでは日本の国を守るだけの能否の問題、現実に持てるかといいますと、私はまず不可能である。従いましてそこから実際上いわゆる集団自衛と申しますか、他の国との共同防衛と申しますか、そういうふうなことを重要な考慮の中に入れて考える以外にないと思います。従いましてその際にそれじゃどれくらいのものを持つのが適当か。これはいわゆる国力との関係もあります。またその目的が、決してよその国に対する攻撃的な侵略的な空軍を持つとかそういうことじゃないのですから、もっぱら日本の国を守るということになる。つまりもっぱらの専守防衛という考え方でいくわけであります。しかもそれをどう申しましょうか、われわれ侵略の場合を希望いたしませんが、万一そういう場合にも、少くともある期間というものは、集団自衛の関係に立つものの支援のあるまでの期間というものは、日本として守るということが一つ考え方の重要な要素になるのじゃないかと思います。そうして今それでは空軍というものを特に重視したのはどうか、こういう点から見ますと、今申しました前提からいたしましても防空関係の方は、御承知通り財政力の関係からいたしまして非常に金のかかることであります。そうしてまた日本は本来の目的は、決してよその国を戦略爆撃とかそういうことはございません。日本の上空の防空ということが主眼になる、そういう点からいたしましても、なるほど近代防衛からして防空というものの重要性は認めなければならぬが、しかし能否の点からいたしましても非常に大きな防空力というものを持つことはできないと思います。そういうことを今考えているわけでございません。必要最小限度のものは整えなくてはならぬと考えております。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどから防衛計画についてまだ見通しはつかないということでありますが、しかし現に始めておられることは事実のようであります。そうしますと最終的の内容までは別ですが、今問題になっている点はどういう点か、検討する点についてどういう点を問題にして討議されているか、その問題点だけでもお示しいただきたい。それは何も将来のことじゃなくて、現に省内において討議されている問題点だけでけっこうです。ですからこれは率直にお示しがいただけるだろうと思います。
  93. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。その点につきまして、先ほど申し上げましたアメリカ側援助等の関係がどういうようになるかというようなことは、非常に重要な点だと思います。それと関連いたしましてそれが当然に日本の財政負担力との関係が生じます。また財政負担力の方の見地からいたしましても、そういう点が特に慎重に検討せられる点だと思います。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 私が申しましたのは、対米援助関係とかあるいは国民の経済的負担能力の問題とか、そんなことはわかっているのですよ。そのことを私は聞いているのではないのです。防衛計画そのものを具体的にどういう点を問題にして討議されているかということです。陸海空の編成の問題であるとか、あるいはまた空軍ならば空軍の中で一体どういうところへ力点を置いていくとか、それとの比重、防衛計画そのものについての内容、中身そのものについて問題になっている点をお示しいただきたい。アメリカとの援助関係とか経済関係とか、そんなことを私は聞いているのではございません。私の質問しているのは、防衛計画プロパーについて、どういう点が一体今事務当局で問題になっているか、問題として討議研究されている点だけでけっこうですから、お答えいただきたい。
  95. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今御質問の点が、実際は私先ほど申し上げましたことと非常に密接な関係を持つわけでございまして、大きなワクとしてそれが関係を持つわけでございます。そして大体の考え方といたしまして、アメリカの駐留軍、ことに地上軍の逐次撤退ということは、当然考えなければならぬことだと思います。従いまして、そういう点はすぐそれじや陸上自衛隊をどういうふうにするかということと、非常に関係を持ってくるわけでございます。そしてさらに多少それに付随的と申しますか、関連いたしますが、民主党内にもいろいろの意見がございまして、いわゆる民兵制度的なものを考えたらどうかという御意見もございます。それについてもよく検討を加えなければならぬことだと思っておるわけでございます。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 今杉原長官からは、つまり大きな問題として討議すべき点を、長官の立場また政府の立場として一部おっしゃったと思います。さらに私が伺っているのは、もっとこまかい点なのです。ですから、あえて問題点としてこういう目標でやっているということじゃなくてもけっこうですが、所管は私知りませんが、おそらく林防衛局長じゃないかと思いますけれども、一体この計画を検討される場合に、どういう資料を今基礎的なデータとしてお集めになっておられるか、この事実だけでけっこうですからお示しいただきたいと思います。
  97. 林一夫

    ○林(一)政府委員 大きな点は、先ほど長官からもお話があったように、アメリカ援助の問題だとか、あるいは財政の問題ということになると思うのでありますが、このような点についても、やはり援助の点については、その内容、どういうものが期待できるか、あるいはどういうものであるかという点も、大いに検討していかなくちゃならぬと思います。従来使っていました装備について、どういう点を改良していかなくちゃならぬか、日本人の体格にはどういうものが合うか、日本の地理的条件には、どういう装備が適合するかという点についても、大いに研究していかなければならぬ問題でありますし、また研究しておる問題であります。装備については、いろいろの問題があるのであります。いつまでもアメリカの供与に期待できるかどうかも問題でありますし、もちろんそういう点は、現在から大いに折衝して先の見通しもつけなくちゃならないし、その内容についても、ただいま申しましたように大いに検討していかなければならぬという点があるのであります。財政の点につきましては、これは比較的簡単でありますが、これは経審方面あるいは大蔵省方面とよく折衝しまして、これもなかなか先の見通しを立てるということは、私の方としてははなはだむずかしいことでありますが、このような点についても、絶えず事務的な連絡はやっておるのであります。また編成というような点につきましても、これも従来の部隊の運用の経験から考えまして、こういう点にもう少し重点を置かなくちゃならぬ、こういう点にもう少し改良すべき点があるのじゃないかというような点もありますし、また空に重点を置くという意見もありますが、果して財政的にやっていけるか、あるいは世界的な飛行機の装備はどういうふうになっているか、これから始める国はどういうものがいいかというような点、拾い上げるといろいろたくさんの研究すべき点、あるいは検討すべき点があるのであります。そういうような点はせちろん前から研究を継続しておりますし、現在も、今後も継続していかなくちゃならぬのでありますが、そういうようないろいろのデータを集めて、これを総合して全体的な計画を検討しているのでありますが、これを具体的に、数字的にここで申し上げることは、なかなかできないのであります。そういうような点に目を配りまして検討しているわけであります。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 今のお答えでは、装備並びに部隊編成がおもな研究の題目のようでございますが、私がお尋ねしたいのはそうじゃない。あなたが装備関係の方ならそういう話でいいと思いますが、そういう兵器、装備、部隊編成等を研究することと、長官やあなたの言われたこととの中間があるわけですよ。つまり陸海空の三軍のバランスの問題とか、あるいはそれを中心にする編成の問題、そういうことが私は問題になるべきだと思う。そういう点についてどういう点が問題になり、一体どういうデータを集めておられるのか、それを伺いたいのです。
  99. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私からその点申し上げます。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 あなたはこまかい具体的なことを御説明できますか。
  101. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 穗積委員の御質問は、主として、たとえば陸と海と空というような関係を、どういうふうにするかという点をもとにしての御質問があったようでありますから、それに関連して私からお答え申し上げますが、私らの方の内部におきましても、その関係をどういうふうにするかということは、確かにまだ大きな研究の課題になっております。ことに空の関係などを一体どういうふうにするか、そしてこれをどの程度——こういうふうに申し上げたら多少はっきりするかと思いますが、保有機数など、これは日本としては非常に限られるわけでございますが、同じ保有機数にいたしましても、それに装備する兵器等のいかんによっては、割に少い機数でも航空防衛力そのものは、あるいは増すことができるというようなこともあるわけであります。空の方の航空自衛隊とほかとの関連、これも確かに大きな課題でございます。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 報ぜられるごとく、防空兵力の増強に、これからは力点を置いていくということは、これはわれわれそう了解してよろしゅうございますか。
  103. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 近代防衛上、防空という方面が非常に価値の高いものであるということは、これはむしろ常識であろうと思いますが、たださればといって、それじゃいわゆる空中心主義かというと、そういうふうな言葉で表現するようなことは、今考えていないのであります。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 私の伺っているのは、今までは陸上軍が主でございましたが、その従来の比重をさらに防空兵力の方へより多くウェートを置いていく。そういう趣旨で私は伺っているのですが、そういうふうにお考えですか。
  105. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 従来現実にすでにできております陸上自衛隊、海上自衛隊、それから航空自衛隊の勢力の比率からいたしますと、申し上げるまでもなく陸が非常に主になっておるわけでございます。それでは今後どれをどういうふうな比率で考えるか、これが非常に大きな研究問題でございます。すでにその点について既定計画としてこうだというのはまだきまっていないのであります。そういう点よく考慮してやっていきたい、こう考えております。
  106. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど林局長のお答えの中に、各国の兵器並びに装備の研究しておるということですが、これはむろんデータをとらなければこれからの長期計画方針など立ちはしない。およそ防衛計画というものは相手を仮定してのことですから、どうも今のところ世界各国の、特にアメリカとソ連、中共関係も装備、兵力、作戦等は、これは当然知らなければならないと思うのです。ですから今われわれ問題にしております秘密保護法は、昨年のMSA協定によって、アメリカできめた秘密——いかなるものが秘密であるかはアメリカがきめる。そのうちでわれわれが受け取ったものだけを従属的に、しかも自然発生的に向うできめればすぐ自動的にこっちがそれを秘密対象にして、この法律によって人民を取り締らなければならぬということになっているのですね。ですが、今度はアメリカもわれわれと個別的な集団安全体制ですか、安保条約その他によりましてやっていこうということであるならば、アメリカがやっておる今の一番最高の兵器並びにそれに対する技術、作戦方式、これを当然日本にも示されるべきだと思う。それがなければどういうことを目標にして、どういう世界的な、つまり兵器の水準、装備並びに作戦計画がどういうふうになっているかということを知らずして日本の防衛計画は立たぬと思いますが、そういう情報はアメリカ秘密なく日本政府にはあるいはまた関係の防衛官には示しておると思いますが、その事実はいかがでございますか。林局長にお尋ねいたしたいと思います。
  107. 林一夫

    ○林(一)政府委員 外国の武器その他一般の装備品の水準あるいはその種類とか性能というようなものについての情報とお伺いしてよろしゅうございますか。
  108. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。特にその新兵器です。
  109. 林一夫

    ○林(一)政府委員 実はその的確なる資料はまだございませんから、そういうようなものの情報は入っておらないのでございますが、まあわれわれ事務当局としましては、新聞とか雑誌とかいろいろありますから、そういうものによって研究をやっておる程度なのでございます。
  110. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、たとえば先般できました戦闘機ですね、あれなんかも日本新聞紙上でも写真だけは出ましたが、おそらくこまかいことはいかぬのでしょうが、そういうものがどの程度に一体——特に空軍関係は、飛行機並びに科学兵器である原子兵器についてもそうでありますが、特に空軍関係であるいは海上、陸上ともに新しい兵器がどんどんできて、その水準は変っていると思うのです。従って日本でこれから自主的に防衛計画を立てるためには、どういう装備、どういう兵器を目標にして、どういう点に力点を置いていくかということは、世界の日進月歩のそういう兵器や技術というものを常にわれわれ知っていなければ、日本の案というものは立たぬと思います。立ててみたけれども大東亜戦争ころに毛のはえたようなものや、古いものをあてがわれて、いざということになったならばさっぱり役に立たなかった。この間までは新兵器だと思ったジェット機が、もうすでに世界はこういうことになっておって、時速にいたしましても、その能力にいしても、全然問題にならなかったということでは問題にならない。ですからあなた方はアメリカ防衛計画についても、援助についても、日本の国民には示さないことでも、向うとは相談しておるようですから、それであるなら親類か親分か知りませんが、持っておられるアメリカに対しては、くれる、くれないは別として、世界の今の兵器科学の水準、軍事科学の水準はどこまでいっているのですかということは当然にお尋ねになるだろうと思いますが、それはお尋ねになるのですか。またお尋ねになったことはございますか。あるいはまた向うからそういうことを示したことがあるのか。その間に対するお話し合いはどういうことになっているのか、それを一つお尋ねしたいと思います。
  111. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいまも申しましたように、われわれ事務屋としましては入手できますところの新聞とか雑誌とか、そういうような資料によって……。
  112. 穗積七郎

    穗積委員 それは公開されたものだけですか。
  113. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そういうものの程度でありまして、向うから正式にそういうことがあるとか、こういうものがあるというサゼスチョンというものは全然いただいておりません。
  114. 穗積七郎

    穗積委員 お聞きになるということはないのですか。
  115. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただそれは個人的なつき合いにおいてどうだという話し合いです。これはもう個人的な知識の交換という程度であります。そういうものは個人間には雑談の程度においていたします。向うからこういうものが今ある、こういうものが水準であるというようなことは別に受けておりません。
  116. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカ秘密にしておる武器の一部を日本が供与をされたときに、これの秘密を守る義務だけ日本国民が負担をして、その取締りだけは受けて、そうして日本自身が、共同において防衛体制をやろうというアメリカに対して、今申しました通りに国民一般に示すのではなくて、日本の計画をするについて——しかもその計画はアメリカに対して義務を負っておる増兵計画である、そういうことをすることに対して情報を提供しないということはおかしい話なのです。情報は提供しない、こちらも請求する権利はない、そういう話をしたことはないというのはおかしな話ですが、これはどういうものでしょうか。長官から尋ねしたい。そういうことで防衛計画が立つでしょうか。
  117. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。穗積委員の今おっしゃいます、いわゆる機密的なもののうちでも、これは分けて考えなければならぬと思います。日本側向うが示し得るものとそうでないもの、これはアメリカに限らずどこの国でもその国独自の非常に厳格な、非常に高度な軍事機密として取り扱われて、どんな友好国に対しても示していない軍事機密があるということは想像にかたくないのであります。御承知通りアメリカとイギリスとの関係ですらアメリカが示していないものがあるということは私ども想像しておるのでありますが、そこで一がいに軍事上というよりも日本側に今日示しておりますのは、この秘密保護の対象になっておるものでございます。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 それでその内容はわかりました。そこで一歩進んで今度は、日本の計画は自主性を持った計画だ、こうおっつしゃる、独立自衛軍を作るのだ、こうおっしゃいますが、そうなりますと、アメリカは示さなくてもこちらから情報を探知しなければならない。それならアメリカの兵器なり軍事科学がどこまで進んおるかということの情報を知らない、井戸の中のカエルで昔ながらの知識でやるわけにはいきません。ですからそれを探知する必要があると思いますが、一体情報はどういうふうにしてお集めになっておられますか。
  119. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その点は私ども事務当局として非常に困っておる問題でございまして、現在のところやはり新聞、雑誌、図書、まあいろいろの最近の資料をできるだけ集めるように努力しておるわけであります。これらはいずれも公刊されたものです。こういうものをいろいろの方法によって入手しまして、そういうものによって広い情報を知っておるという程度であります。
  120. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今の点は今後の日本の防衛のことを考えていきます場合に非常に大事な点だと思うのです。それだから私はこの点をできるだけ努力していきたいと思う。その手段といたしまして、今まで非常に限られているわけでございますが、しかしながら外国の進んだ兵器等のこともこちらができるだけ研究しなければならぬ、あらゆる方法をもってしなければならぬ、ことにその一つの重要なことと思っておりますが、たとえば防衛庁の職員を海外等に派遣するというようなことも、私は必要なことだと思っております。今日までこういう点非常にまだ思うにまかせぬ状態にありますから、これは私は非常に必要なことだと思います。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、わが国にはMSA協定その他今度の艦艇貸与協定等によりまして供与されていない武器またはインフォーメーションであって、そしてわが方でそれ以外の公開されていないもの、向うの国内において秘になっているもの、また外国人に対しても秘になっているものをこちらが探知しなければならぬことは当然のことだと思う。これは今おっしゃった通りアメリカがイギリスに対してすら秘にしている、国際関係が、または世界が一つになっていない以上は、国と国との間の秘密というものがあるならば、アメリカの秘の判が押してあるから、これは知ろうとしないということでなくして、秘になっているものこそわれわれは知らなければならぬ。そうでなければ、世界水準を基準にしてのわれわれの計画は立たぬわけです。そういう努力は一体どういう機構でやっておられるか、今までそんなことは全然やっておらぬのですか。そんなことをやっておらぬで一体防衛計画が立つのですか。
  122. 林一夫

    ○林(一)政府委員 外国の秘とされている装備の内容については私ども探知するようなことは今までもちろんやっておりません。われわれの参考となるべきものは、なるべく広く合法的に収集してこれを研究しているわけであります。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 それではやっておられるわけですね。
  124. 林一夫

    ○林(一)政府委員 外国の秘としてあるものの内容についてはやっておりません。
  125. 穗積七郎

    穗積委員 では探知する方法は、方法にして合法的な方法でしょう。
  126. 林一夫

    ○林(一)政府委員 合法的な方法で入る資料によっては大いに研究しているわけであります。
  127. 穗積七郎

    穗積委員 今の点が大事です。方法にして合法的な方法でアメリカで秘になっているものもわれわれは探知してしかるべきだ、知ってもかまわぬと思う。ところが方法にして合法的であっても、なおかつ秘になっているものについてはもう目に入れない、推理もしないというのですか、そんなばかな話はないです。その点はどうです。今はこの法律や条約向う秘密だけを守る義務を負わされておって、そしてこちらの秘密というものはないというような、そんなばかな話はない。長官のおっしゃった通り、各国の軍事計画には、こういう集団的な防衛体制をとっておったにしても、おのおのの間において秘は幾らもある。独自の計画もあるのです。そういうことであるならもとより知るべきだと思うのですが、今おっしゃった点をはっきりしておいていただきたい。政府のとるやつですから、方法は合法的でよろしい。しかし秘になっているものも合法的な方法において入ったものに対しては知る意思を持つのか持たないのかということで す。
  128. 林一夫

    ○林(一)政府委員 合法的に入ってくるものは大いに資料といたしたいと思います。
  129. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと合法的に入ったもの、または推理によって入ったものは、この法律の対象になりませんね。これは当然だと思うのですが、念のために伺っておきます。
  130. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この法律の対象となりますのは、先ほど穗積委員が言われたようにMSA協定に基くもの、船舶貸借協定によって日本に供与されたところの装備品の秘密個所、これがこの法律によって保護されるということなのであります。
  131. 穗積七郎

    穗積委員 それ以外は対象になりませんね。
  132. 林一夫

    ○林(一)政府委員 はい。
  133. 穗積七郎

    穗積委員 外務省にお伺いいたします。今言ったような軍事情報の収集というものは、再軍備計画をお立てになる以上はやはりやるのが当然の論理になってくると思いますが、出先機関はおやりになっておりますか。
  134. 下田武三

    下田政府委員 この問題は行く行くはただいま防衛庁から御答弁申し上げましたように、海外に防衛当局の出先を置いて解決すべきものだと思っておりますが、ただいままだそういう出先の組織ができておりませんので、これは本来外務省がやるべき仕事であるかどうか疑問ではございますけれども、しかし国際協力局の一部におきまして、海外の軍事情報を集めるという仕事はやっております。
  135. 穗積七郎

    穗積委員 ついでにお尋ねします。特に今言いました意味アメリカとの関係をお伺いいたしましたが、共産圏の軍事情報もむろんとるべきだと思う。とるつもりでおやりになっていると、あなた方の政策や論理に従っていけば、推測いたしますが、これはどういうふうにやっておられますか伺いたい。
  136. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在私ども事務当局がやっておりますものは、共産圏だとか非共産圏だとかいうようなことは区別なく、外国全部のいろいろの情勢を知りたいので、先ほどから申しましょうに、一般に公けになっている新聞、雑誌というようなものによって資料を集め、あるいはときには外務省にお願いしまして出先公館が入手したいろいろの資料がありますので、その情勢、資料、こういうものも拝借いたし、あらゆる資料によって検討いたしているわけであります。
  137. 穗積七郎

    穗積委員 お集めになった資料で当らずといえども遠からずという程度の——カーテンをとってみたらびっくりするようなものができておったというようなものはないだけの自信をお持ちになっておりますか。これは共産圏、非共産圏を問わず、世界のあらる武器その他装備あるいは作戦計画、軍事科学の水準について、情報をお集めになって努力しておられるようですが、そしてその上に立って、まだきまっておらぬようだが、日本の防衛計画を立てようとしているわけですから、あけてみたら笑いものになるようなおもちゃのような軍隊を、国民の負担と犠牲において作っておったのだということのないような自信を持っておられますか。これは情報についてですよ。
  138. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほどから申しておりますように、装備に関する諸外国の情報によりますと、なかなかはっきりしたところがわからない。こういうような程度であろうとか、あるいはああいうような程度であろうというきわめて漠然とした新聞、雑誌に出ているようなものですから、はっきりした性能とかいうことはわからない。従ってそういう意味におきまして、ただいまお話のあったような、はっきり現在の装備が段違いのものであるというような判断はまだできないでおりますが、たとえば航空機につきましても、現在私ども聞いておりますところでは、F86というジェット戦闘機がございますが、これらがNATO諸国の第一線機として目下使われておる機種でございます。そういうようなわけで、別に私どもの方が貧弱な装備であって、特に諸外国にすぐれた兵器があるということは、まだあまり存じておりません。
  139. 穗積七郎

    穗積委員 実はあなた方もお聞きになっておると思うが、今度われわれ委員会で問題になっております、やがてまた問題になる濃縮ウラン協定というものをアメリカとこの間仮調印した。それで当ってみますと、日本の政府の諸公が実に世界の科学的水準について無知であり、無関心と言っていいほど、眼前の雑務だけに引きずり回されており、そういうことに対して全く無知であるということに実は驚いておる。われわれも実は勉強する機会もなし、文科出身ですから、こういう科学方面について知識がないのですが、この協定が問題になりましてから、寸暇を惜しんでわが国の科学者とともに勉強さしてもらっておるが、政府の諸公に当ってみると、それよりなおかつ原子力問題を中心とする世界の科学技術の水準に対して、無関心であるとともに無知であるのです。こんなことで防衛計画というものは立つものかどうか、こんなものは立てたって、さっきも言いましたように、人形のおもちゃを国民の負担において作っているようなものであって、ばかばかしくてお話にならない、こういうことなんです。ですから原子兵器のことは、日本が持つ持たぬは別ですが、世界の装備された軍備を持っておる国々は、それを中心にして作戦計画を立て防衛計画を立てておる。ですからそれに対してわれわれが無知であって一体防衛計画が立ちましょうか。ですからそういうことの情報については、先ほど言いましたようにお尋ねしてみたら不十分ながらとっておるということです。しかもそのことは確かに重要であると思うから、これから防衛官も海外に派遣をし、おそらくは同時に外務省の出先機関も動員をして、そういう情報をおとりにらろうとすることであろうと思うのであります。そこで逆に私は杉原長官にお尋ねいたしますが、アメリカ国に対しては日本秘密はないわけです。全部国民の知らぬことまで裏から知られておる。しかしそれ以外の国は、一体日本の再軍備の計画が、どういう装備どういう武器を中心にして、どういう作戦計画に従ってこれから立てられようとしておるかということについては、またどの程度の軍事的な科学を身につけておるかということは、これは最近日本の再軍備問題がアジアの各国において問題になりつつありますから、これは関心を持ってその実情を知りたがっていると思うのです。ですからそういうことについて、一体アメリカ以外の諸外国は日本の再軍備計画、その内容等について、現在までの装備でもけっこうですが、そういうものについてこれを探知することに努力しようとしておるとお思いになりますか、そうしてそういうものが外国人または日本人とを問わず、そういう情報をなるべくとるように努力しているとお思いになりますか、防衛当局のお考えを伺いたいのです。
  140. 林一夫

    ○林(一)政府委員 外国がそういうような情報を集めておるというようなことがあるかどうかというような御質問ですか。
  141. 穗積七郎

    穗積委員 そうです、日本国内において……。
  142. 林一夫

    ○林(一)政府委員 外国が日本国内において、われわれ防衛関係のそのような編成とか装備とか、そういうものについて情報を集めておるというようなことははっきり伺ってはおらないのでありますが、これはそういうこともあるのではないかという個人的な考えというか感想というか、推測は持っております。そういうものがはっきり行われておるということは全然聞いておりません。
  143. 穗積七郎

    穗積委員 先般自衛隊の中に共産党工作が行われているというようなことが新聞その他にでかでかと書かれております。非常にアジテーティヴな記事を載せておりますが、そういうことは自衛隊の内部においてはもとよりないでしょうね。これは秘密保護法が昨年できましてから私が最初に質問いたしますと、この法律の取締りの対象になったものは、ほとんどないというような御報告だったのですから、当然だと思うのですが、そういうことはございませんですね、はっきりしておいていただきたい。
  144. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在までにそういう事例がないかということですね——この法律の適用を受けたような事例はございません。
  145. 穗積七郎

    穗積委員 それから今の情報問題が大事ですから、ちょっと伺っておきますが、外国の情報をとる場合に、防衛官、外務省の出先機関を駆使する、ドライブするということですが、さらに、かの地におる外国人に情報提供を委託する、あるいは外地のそれぞれの国におります民間人に情報提供を委託するというような方法をおとりになる考えでしょうか。
  146. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 まだそこまでいっておりません。なおここで私ちょっとつけ加えて申し上げますが、情報といいましても、いろいろ事柄についてございますが、装備等の関係につきましては、これはこちらも十分研究を重ねていかなければならないわけでありますから、防衛庁の技術研究所におきまして、特に世界のいろいろの資料なども集めまして、できるだけの研究はいたしておるわけでございます。もちろん非常に限られますけれども、決してそういう点をなおざりにするわけではない。非常に限られておるけれども、その制約内においては努力しておるということをつけ加えておきます。
  147. 穗積七郎

    穗積委員 きょうの私の質問の第一点は、防衛計画の作業についてのお尋ねでございました。それに伴ってこの法律に関係のあります秘密関係が彼とわれとの間にある、そういうことをお尋ねしたわけでありますが、もう少しお尋ねしたいのです。この問題はまだ次に質問者がありますから、ここで締めくくっておきたいと思いますが、最後に長官にお尋ねいたしますが、今あなたは時期を画して防衛計画を発表するわけにはいかない、その時期は申し上げるわけにはいかないと言われたが、あなたにここで念を押しておきたいのは、今国会中にそれを発表する時期になりますか。なりませんか、それだけお尋ねしておきます。
  148. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今国会中にということは、なかなか困難であると考えております。
  149. 穗積七郎

    穗積委員 それでは次の質問に入りますが、実は先般この法案審議の途中に外務次官にお尋ねしたのですが、お答えができがたいので、今度は最も責任者である防衛庁長官に聞いてくれということで、実は留保になっておる事柄がある。それは何かと申しますと、日本の防衛計画です。先般あなたは内閣委員会でもそういうことを言われたようですが、防衛計画が進んで、そうして長期計画が完成するようになるとともに、並行的にアメリカの駐留軍が日本を撤退するという趣旨のことなのです。そのことを私はお尋ねした。そうしたらその後あなたは内閣委員会でその可能性についてお答えになっておられるようでありますが、私はその可能性については実は信ずることができないわけであります。あなた方は選挙時において、独立自衛軍強化を国民に納得せしめる一つの理由として、これを作らなければアメリカ軍が撤退しないのだ、これを作ればアメリカ軍が撤退するので、軍事的にも完全な独立国になり得る、軍事的独立国にならなければ、独立国になれないのだというような趣旨の宣伝を盛んにされた。国民の一部には、そういうことにだまされて、そういうことにかすかな愛国心を感じて、この再軍備計画に賛成される理由の一つアメリカ軍の撤退ということを考えておる人がある。私はそんなことはごまかしだと思います。撤退に対する見通しについては、われわれはないと思います。あなたは外交官だから何ですが、最近アメリカでは、日本のアジアにおける外交上の価値について論議が行われております。その傾向を見ますと、日本は政治的、経済的にはもう大した価値はない、残った価値は軍事的価値のみというような判断をしておる。そういう意味では、経済的にアメリカの仕送りによって完全なる独立経済に持っていくなんということは不可能だ。そうなるならば中共その他をも含むアジア諸地域との経済的な基盤の上に立たなければ、この国の自立経済はできなくなるだろうという常識的な判断をするようになっておりますが、逆に残っておるのは軍事的価値のみで、これをおろそかにすることはできないという点だけはさらに浮き彫りにされて強くなってきておる。そうしてこの安保条約が無期限になっておる点も、さらにこの条約を廃棄する場合には、次のより強国なる軍事同盟の中に入らなければならぬように追い込められる糸口がちゃんとできておる。そういう点から見ますならば、私は日本における基地はよほどの内外における革命的な事件が起きない限り、しかもあなた方が再軍備計画をおとりになっている以上はこれは困難だとわれわれは判断いたします。ところがあなたは先般の委員会でそういうふうにお答えになっておる。それで私は園田外務政務次官に、撤退の可能性ありと思うというから、どういうことを根拠にしておるのだと言ったら、答えられなくて、長官に尋ねてくれということでした。それで質問の趣旨はおわかりになったと思う。  そこで一つお尋ねしたいことは、撤退の可能性ありというばく然とした話でなくて、客観的に具体的にどういうことをもってそういう撤退の可能性ありとおっしゃられるのか、その結論でなくて条件を示していただきたい。
  150. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 駐留軍の撤退に関することでございますが、これが日本側の自衛隊の増強と関連を持っておることは事実であります。そうしてそれの充実、整備に伴って逐次撤退する意向があるということは私もそう思っております。ことにその中で地上軍の方は日本側の整備に関連いたしますけれども向うでもなるべく早くこれを撤退したい意向であるということは、私は申し上げることができると思います。空、海の方はさらにおくれましょう。この方は日本側の整備との関連からいたしましても、また日本側としてもこの方はそう速急には参らない、こういう関係にある次第でございます。
  151. 穗積七郎

    穗積委員 明敏なる杉原長官ですから私は質問の時間を節約するために多くを申し上げませんでした。ところがあなたはそういうことにお答えにならないので時間がかかるのです。この前もちょっと申しましたが、アメリカは朝鮮戦争以来陸上軍は現地調弁でいきたいという考えを持っておることは歴然たるものです。陸上軍というのは一番費用がかかって、アメリカの作戦で一番苦手で、しかも犠牲の一番多いものなのです。ですからあの経験で、特にアメリカの空軍と陸軍との対立から、陸上軍の問題が陸軍によって強く主張され、それにかわるものとして現地の陸上軍の肩がわりを考えておることは事実です。その兵力をアメリカの対共産圏作戦の兵力の中に見込んで計算しておることも確かです。日本の地上軍十万とか三十何万とかいうこともそれはわかっておるのです。ですからその犠牲が多くて、それでアメリカの留守家族から文句が多くて、人気が悪くて、そうして一番危険性の多い、費用の伴うこの陸上軍は日本の陸上自衛隊が強化されるとともにそれを待ってどんどん引き揚げをやるでしょう。しかし近代戦争はもう陸軍の時代ではございません。言うまでもなく海軍でもなければもう空軍の時代なのです。この空軍の主導権さえ握っておれば、その国を独立軍事国として立ち上らせることはできない。そのイニシアチブはあくまでアメリカが握って軍事的な従属国として把握ができるのです。だからあなたが言っているように、国民に訴えてアメリカ軍を撤退せしめて、日本アメリカから独立せしめるんだなんということは、もう夢のような話なのです。あなた方自身もそのことは知っておると思うのです。だからさっき言われた通り、近代作戦はもうすでに陸上から空軍に移りつつあるから、防衛計画も空軍に主力を置いていきたい、比重を置いていきたいということは、これは木村長官以来の防衛庁の考え方なのです。ところが空軍並びに海軍、特に空軍につきましてはアメリカは撤退の意思はない、むしろ強化の意思がある、そう言わなければならぬ。ですからアメリカの駐留陸軍が撤退を始めたというようなことによって、アメリカがこの国から軍事的に手を放すというようなことは当然考えられない、そんなことは考える材料にはならぬということなのです。そこでそれ以外の材料を示していただきたい。あなたがこの国の防衛力が増強されたならば、やがての時期にはアメリカ軍は完全に撤退をする。それを目標として完全なる軍事的独立を与える、日本を軍事的従属から解放するという見通しをあなた方は国民に訴えておられる。それでこの再軍備政策に賛成してなけなしの税金を取っておくのです。しかしそういううそを言っておやりになってはいけません。正直にやってもらいたい。これはアメリカの軍事的なイニシアチブのもとにおける従属陸軍である、肩がわり陸軍であるということをはっきりして、われわれ国民の賛否を問うべきだと思うのです。そういうことで私の方の考えが間違っていたらば訂正していただきたい。われわれが誇大偏見でそういうことを言っているならば改めていただきたい。  そこであなたは撤退する可能性ありとおっしゃいましたが、陸軍の一個師団や二個師団が撤追するのはそんなことは当然のことなんだ、もう二十五年の暮れからきまった政策ですよ。だからこそ自衛隊の増強を要求してきている。それ以外に何がありますか。軍事的に完全に解放せしめる一体客観的な条件がどこに出ておりますか。MSA協定前後からどこに出ているか、それを具体的に示していただきたい。
  152. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 いろいろ穂積さんの御観測、御意見等がございましたが、その中で日本軍がただアメリカに従属する、そういう考えは、私毛頭ございません。(穗積委員「それはあなたの主観にすぎない」と呼ぶ)そうじゃございません、そういう建前ではございません。これはあくまで日本の安全ということが基本になるわけでございまして、それがために、単に日本一国だけで、単独では自分の国の安全すら守れないときに、よその国とある程度の共同的の関係に立つということは、私は決して従属というそういうような言葉で表現すべきものではないだろうと思います。  それじゃその共同の関係というものは、内容をどうするかということが問題になると思います。その際アメリカ側では地上軍はなるべく早く引くという考えを持っておるものと私は推定して差しつかえないと思います。アメリカアメリカとしてその利益を考えるのは当然だと思います。そしてそれが共同の利益に達しますならばそれで私は差しつかえないことだと思います。それから空軍の関係につきましては、日本の実際の国力からいたしまして、整備といいましてもそう高い程度のものはできませんし、またアメリカとかソ連とかああいう大国のようなものを持つことは考えておりません。またできもしないことでございます。そういう点につきましては、今後いわゆる共同防衛の関係をどういうふうにするか、それから平時において、共同防衛というか外国軍が国内にとどまっていることについての問題は、一朝事ある場合に支援にくるというようなことも、一つの共同防衛態様として考えられるわけでありまして、そういう点は今後日本側の航空自衛隊とか海上自衛隊などのある程度の増強整備に伴って、重要なこととして研究していかなければならない問題だ、私は私見としてそういうふうに考えております。
  153. 植原悦二郎

    ○植原委員長 穂積君、もう一時間半になりますが、最後のお話は見解の相違で、幾ら言うても同じ場所をただ行ったり来たりするだけですから、どうかほかの質問者のことも御考慮願います。
  154. 穗積七郎

    穗積委員 私は今の従属問題については、これは単なるお互いの主観の問題だけではなくて、客観性があると思うのです、特に軍事的のものにつきましては。ですからあなたが主観的に、共同作戦をとってもそれは従属じゃないとおっしゃいますか、それは客観的に軍の編成それから作戦——一体日本のどこにありますか、条約の中に、一朝事あるときには日本向うの作戦に協力しなければならない義務を持っておる、それから何かをやるときには協議をすることだけは向うはオブリゲーションとして負っておりますよ。それ以外に何がありますか。われわれが向うに対して要求する権利がどこにございますか。従属関係というものは客観的なのです。ですけれども、きょうはこの問題はこの法案審議に直接関係がありませんから申し上げないのですが、機密の問題について申し上げれば、私の聞いているのは、アメリカ軍がこの国から撤退する可能性がありやなしやということです。だからそのことについてお答えいただきたい。従属性の解釈についてはやめましょう。その議論は他日に譲りたいと思います。きょうはこの法案審議にしぼって話を進めろということでありますから、私はその問題は他日に譲って、そうしてこの防衛計画を進めることによって、アメリカ軍が徹退する可能性がどこにあるか、その客観性をどこで証明できるかということを伺っておるのですから、従属関係ではなくて、撤退の問題について具体的にお答えいただきたい、あなたはそれについて何ら触れておりませんから。
  155. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は触れたつもりでございます。先ほども申し上げました通り、地上軍の方は割合に早く撤退する可能性がある、これはもちろん全般にわたることでございますが、日本側の自衛隊の整備と関連してでございます。それから空及び海の方はおくれるでありましょうということを、これもまた日本側の整備との関係において申し上げておる次第であります。
  156. 穗積七郎

    穗積委員 陸上軍の漸次撤退——完全撤退ではありませんが、部分的撤退の可能性はありましょう。それは私も認めます。ところが空軍、海軍の撤退の可能性はどこにありますか。一体どういう約束がなされましたか、どういうお話をなさいましたか。あなたが内閣にお入りになってから、いつ、だれとお話をされたか。吉田内閣時代からそんな話は一ぺんも出ておりませんよ。そういう見通しが条約のどこにございますか。むしろわれわれは軍事的な防衛力増強、兵力増強の義務と、同時にやがて軍事同盟に参加する——参加すべき義務まではいっておりませんが、何か逃げ道を作っておるような条約協定を結んでおりますよ。それ以外に、このアメリカが軍事的に完全なる撤退をするという約束は、条文の上ではどこにもないのですから、あなたは何か話をしておられるだろうと思いますが、話をしておられますか。この間の原爆問題と同様に、外務大臣が話をされたというなら、それでもよろしい。どういう話をされてそういうことをおっしゃるのでしょうか。われわれは客観的な情勢判断からいたしまして、そんなことは全く国民を欺くものである、欺かぬならば、あなたの笑うべき主観的独善にすぎないと思うのです。そうでないということを客観的に説明していただきたい。
  157. 植原悦二郎

    ○植原委員長 穂積君の言うことも考えだと思う。防衛庁長官の言うことも防衛庁長官の考えで、幾らやっても、これは水かけ論ですから、撤退するという約束をしたって、撤退するまでは事実が出てこないのです。だから証明できないことですから、結局は議論になってくるのです。
  158. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 条約の建前からいたしますと、安保条約それ自体の建前が、日本日本の国を守る自衛権を持っているが、まだ自衛権を行使する手段を持たない、そういうところからあれができておることは御承知通りでございます。その建前からいたしまして基本的にそういうことに相なると思いますし、また今日までしばしば向う側の責任者もその線に沿ってのことを言っておるわけでございまして、私は当然そうだと思っておる次第でございます。
  159. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはございませんよ。それではお尋ねいたします。あなたは先般の内閣委員会において、この委員会における園田外務次官より一歩前進して答えておられる。やがてこれをやったならば安保条約はなくなるのだ、国民が頭の上にかさをかぶって憂うつである安保条約がなくなるのだというような言葉まで言われておる。そんな可能性はありませんよ。今の政策からいったら、ないですよ。ですからそれをあなたはもしあるというならば、一体何を根拠にして言われるのか。そういう話をしておるとおっしゃいますならば、いつ、どこで、だれがどういう話をされたか、それを言っていただきたい。
  160. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、いつ、だれが、どこでということを申し上げるまでもないくらいにこれは明らかなことなのです。それで私はこう考えます。いろいろこれは議論で、撤退問題の解決はなかなかできないと思うのです。現実に日本の自衛体制が整備することが、一番撤退の客観的な基礎だと考えております。
  161. 穗積七郎

    穗積委員 そうじゃありません。それでは一体あなたの今の撤退ということは、空軍、海軍まで完全撤退を目標にしておやりになるつもりですか、それを伺っておきます。あなたの最終目標はどこにあるのですか。
  162. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは、それじゃ日本に駐留したアメリカ海軍と同じものを今すぐ作るかということに関連するでしょうが、そういう大きなものは日本としては作れもしませんが、作る意思もございません。しかし全体として陸海空合せて日本のある程度の防衛力、自衛力ができますれば、それならば私は、空海の方だってそれで全然撤退がないのだというふうに断定してしまうようなものじゃない、なるほどこれは陸よりもおくれましようが、絶対に全然目標がないのだというふうには見ておりません。
  163. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの目標、内閣の目標を聞いているのです。陸軍だけではなくて、海軍、空軍まで完全撤退を目標にして進んでおられるはずだから、目標を聞いておる。
  164. 植原悦二郎

    ○植原委員長 穂積君、それは結局議論になります。
  165. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今まで申し上げましたところで御了承願いたいと思うのです。
  166. 穗積七郎

    穗積委員 それでは撤退問題については、もう日本でございますから、小笠原、琉球も含んでおりますね、あなたの言われる言葉の中には。
  167. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 沖縄までも含めてのことは、私は今ここで何とも申し上げることはできません。
  168. 穗積七郎

    穗積委員 それはどういうわけでしょうか。かの地は日本の領土権が認められて、日本国の領土でございます。それに対して、撤退するならそこまで含むのは当然だと思うが、こんなことは聞くまでもないが、念のために聞いた。答えられぬ理由をお伺いしたい。
  169. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 それは非常に大きな国際情勢に関係することだと思います。そういう点からいたしまして、今こうだということを私申し上げるこはとできないということをはっきり申し上げます。
  170. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ心外のお答えで、アメリカに対して……。
  171. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それは結局議論の問題です。(「いや、当然だよ」と呼ぶ者あり)それでは私が聞きましょう。私は、安保条約の性質と極東における情勢がすべての問題を解決する、こう答えるより仕方がないと思うのです。(「委員長大臣になったんじゃないじゃないか」と呼ぶ者あり)そう思いますが、いかがですかと聞いているんですよ。(笑声)
  172. 穗積七郎

    穗積委員 外務当局にお尋ねしますが、これは条約局長にお聞きするのは不適当で、重光さんがおられれば適当なのですが、最近アメリカのとっております極東政策並びに日本に対する価値評価には、さっき私が申し上げたような傾向が非常に強いと思うのですが、外務省でとっておられる情報はどういうことですか。
  173. 下田武三

    下田政府委員 米国の日本に対する考え方といいますか評価、これは言論自由の国でございますから、極端から極端にわたっております。アメリカの一部ではもう日本にはさじを投げたというような見方をしておるものもあるし、また日本を非常に高く評価したというものもあります。しかしながら私は安保条約締結当時のアメリカ日本に対する考え方というものは、基本的にはちっとも変っていないと思っております。
  174. 穗積七郎

    穗積委員 最後に杉原さんにこの際申し上げておきますが、私はあなたは非常に良心的なそして容観的な国際情勢を判断されることについては、外務省関係者の中の出色だと敬意を表しておったのです。その良心についてもわれわれは高く敬意を払っておったが、この秘密保護法審議に当ってのあなたの答弁はまことに不満足でございます。ですからきょうはこの程度で他の問題に移りますが、この防衛関係は大きな外交関係の中心の問題ですから、一つぜひとも外務委員会独自の国際情勢の問題のときにも一ぺん出て、そのときには法案審議とは関係ないですから、肩を軽くして御発言を願いたいと思うのですが、それをお願いしておきます。  それから最後に私がお尋ねしたいのは、さっき言いましたように、この秘密保護法アメリカ秘密に対する日本国民の義務を規定した法律でございます。そこで政府の方針によれば、いつできるか知りませんが、さっきお話のように独立自衛軍を作りたい、そしてその独立自衛軍は単に共産圏のみならず世界各国、アメリカをも含めた友好国に対してもお互いに軍の最高の機密というものはあり得るのだ、こういうことは当然の帰結だということが、あなたの論理の中から生まれてくる。そうなりますと、この法律をいつまでもやっておったのでは、日本にあります機密というものはアメリカに対して秘密でなくなっておるのです。すなわち秘密保持において日本アメリカに対して独立性を持ち得ないだけの格好になっております。こういうことをやっておれば、われわれが昨年この法律が出ましたときに反対いたしましたように、もうすでに一つの芽からもう一つの芽が出てきておる。やがて日本の再軍備計画とともに、日本独自の軍の機密保持の法律というものを要求する議論があなたの党内からも出ておる。私は見通しとしてそういうふうに発展する論理になると思いますが、あなたはそれに対してどういうお考えを持っておられますか、この際伺っておきたいと思います。
  175. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今回の法案に規定しております秘密は、アメリカの防衛秘密であるとともにまた日本の防衛秘密になることは申すまでもございません。     〔委員長退席、大橋(忠)委員長代理着席〕 それでは将来それ以外に、さらに広い意味の防衛秘密保護法を作る意思があるかどうかということに関係するかと思いますが、そういう点は今後慎重に考えていかなければならぬと私は考えております。まだ決定いたしておりませんがそういうことであります。
  176. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員長代理 戸叶里子君。
  177. 戸叶里子

    戸叶委員 私も杉原長官に防衛計画のことを伺いたいと思いましたが、すでに穗積委員からの御質問もございましたので、これに対して幾多の不満がございますけれども、きょうは省略いたしまして、ごく簡単にこの法案に関係したことだけを伺いたいと存じます。  まず第一に長官はこれはお通しになりたいと思っていらっしゃると思いますが、民主党の中でもみな意見がおまとまりになっているのでしょうか、この点をお伺いいたします。
  178. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは民主党内においては完全にまとまっております。
  179. 戸叶里子

    戸叶委員 今回出されました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案なんですけれども、これは秘密保護法があって、それに対しての一部改正です。今回のものだけは小さなものですけれども、これの親法となりべき秘密保護法というものは非常に大きな法律です。それが審議されましたのは昨年の五月でございました。委員会通りましたのが五月十八日、当時の改進党、今の民主党はこれに対して反対をなさった。そして十二対十二でようやくこの委員会を通っております。今その親法のどの条項も改正しないで、前には反対したものをそっくりそのまま認められて、この艦艇の貸与をこれにくっつけていくというのはどういうわけか、私にはちょっとわからないので、この点を伺います。
  180. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私も深い事情はよく存じませんが、当時の改進党の態度というものは聞いております。それで戸叶先生のおっしゃるのは、私の申し上げることと矛盾するのじゃないかという意味であるかと存じますが、あの当時の事情を私はよお存じませんが、秘密保護法それ自体に対する反対じゃなかったのじゃないかと私は想像いたしておる次第でございます。そしてまた決して単に形式論じゃなく、改進党と民主党というのは違うものであることは申し上げるまでもないことでございますし、現在の民主党の方々は完全に同意いたしております。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 何か言葉じりをとらえて大へん恐縮なんですが、改進党と民主党は違うとおっしゃいますけれども、大部分の改進党の方が民主党にいらっしゃるわけです。私は当然この法律に対する論議がなされない方がどうかと思うのです。なされないでそのまま通そうとなさる意図が、私はどうしても了解できない。あの当時の反対の理由というものはごく簡単に申し上げますと、先ほど穗積委員が触れられましたように、非常にこれはアメリカ迎合的である。アメリカ秘密というものを日本がそのまま認めるのであって、日本には何ら自主性がない、こういうのが論拠になっておりました。私どもはこの点も問題ですけれども、もっと重要なことは、秘密保護法そのものに対して反対をしたわけなんです。そういう点から見ましても今日そういうふうな矛盾を含んだ点を改正しないで、この親法をそのまま認められて、しかもこれをつけ足そうとしておられるということが、どうも私どもにはわからないのですけれども、その点もう少し杉原長官に伺いたい。
  182. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 大体先ほど私から申し上げましたことにあまりつけ加えることはありませんが、その当時果して今戸叶先生の指摘されたような点が、改進党の反対理由であったか私実は存じないのですが、しかしその点についきましては、アメリカの防衛秘密であるとともに、装備品等を日本に持ってきて日本の防衛のために使うわけでございまして、これは日本の防衛秘密であることは言うまでもないことでございますから、これに対しては現在の民主党の方々は完全に一致した意見をお持ちになっておる次第でございます。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 それは実は私もその委員会におりまして、そうしてそのときに反対された委員の名前もよく知っておりますし、それからまた今その方は党の外交関係の方の責任者だと私は了承しております。そうしてそのときにはっきり言われたのは私が今御説明しましたような理由で反対をされておるわけなんです。それは速記録をごらんになってもはっきりするわけなんです。そういう点からお考えになってみましても、長官はやはりもう一度民主党の方々と前にはこうであったけれども、今度はこういう理由で賛成するのだというふうな納得のいくような線をお出しになって私どもにお示しいただければ、私どもとしても議論できると思うのですけれども、その当時のことがよくわからないからというふうでは、どうも私は納得できないわけなんです。そこに速記録があったらそれをお読みいただいたらいいと思うのですけれども、この点はどうなのでしょうか。おそらくこの中にもその当時いらっしゃって反対された方がいるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  184. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 申し上げるまでもなく、改進党としては改進党のお立場、御意見がございましたでしょう。しかし現在の民主党は改進党ではございませんから、一つそれで御了承願います。
  185. 戸叶里子

    戸叶委員 もしも言葉じりをつかまえるならば改進党という政党に属しているときには反対だけれども、その名前が民主党になればすっかり変るのだ、こんなふうにしか解釈されないわけでして、この問題は私は非常に重要な問題だと思うんです。ややもするとこの秘密保護法自体が拡大解釈されますと、非常に弾圧になる傾向があるわけなのです。そういう意味から考えましても反対をされていた方が多かったのではないかと思います。しかし今責任ある地位にあって、そうして何らかの圧力が、あるいはまたいろいろなアメリカとの関係においてそうせざるを得ないというふうな立場であるのかどうか。その背後関係というものも伺いませんと、私どうも納得がいかないわけであります。
  186. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 いわゆる背後関係とか圧力ということは、全然御心配いただくようなことはございません。なおこれが実際の運用、適用におきまして乱用にならぬようにする、ほんとうの厳格な適正な運用をせにゃならぬということは、非常に大事な点だと思いまして、またその趣旨で運用してきておる次第でございます。将来もその方針でございます。
  187. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は当時おいでにならなかった、また御存じない長官にいろいろ伺ってもわからないと思いますので、過日反対された方々が今日納得をした理由というものをはっきりさせていただきたい、こうお願いする次第でございます。私としては実は納得ができないわけなんです。杉原長官にそれを申し上げましても、長官御存じでないことですから、きょうじゅうにこれに対するはっきりした線を討論前にお出しいただきたい、これを要望いたします。ほかの方の御質問に御迷惑になると思いますからこれをどうぞお出しいただきたいと存じます。これはもちろん討論に入る前にお聞かせいただきたいと思います。次にもう一点お伺いしたいことは、憲法の五十七条で国会が要求すれば秘密会を開いてもよいということがございますけれども、この秘密会では当然いろいろな国防上の秘密というようなものはあり得ない、秘密もこの秘密会では話ができる、こういうふうに了承いたしますけれども、その点はいかがでございますか。
  188. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御質問の御趣旨は、この法で規定せられる防衛秘密を対象にしてのことでございますか。
  189. 戸叶里子

    戸叶委員 そうです。
  190. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お答え申し上げます。はなはだこれは重要な法律問題でございますから、はっきりしたところを調べまして、あとでお答えいたしたいと思います。
  191. 戸叶里子

    戸叶委員 きょう私どもの好むと好まざるとにかかわらず、本委員会は採決したい、こういう御希望を持っていらっしゃる。そういたしますと、私どもいろいろ態度を決定する上におきまして、そういうことをはっきりいたしておかなければなりませんので、なるべく早くやっていただきたいと思います。  もう一点お伺いしたいことは、この秘密保護法の親法案の方を見ましたときに、アメリカでこの法案によって受ける罰というよりも、日本に持ってきた場合に与える罰の方が、非常にひどくなっておるわけなんです。こういう点に対しては杉原長官はどうお考えになりますか。この点は前の秘密保護法が討議されましたときにも、問題になりましたけれども、長官はおかわりになりましたので、そうしてまた非常に人道主義的なお方でありますから、そういう点に対するお考え方はお違いになるのではないかと思いますので……。
  192. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま戸叶先生のお尋ねでございますが、戸叶先生はどこからお調べになりましたか存じませんが、条約の建前も向うと同じ程度の秘密保護の措置をするというようになっておる。そういうわけで別に向うより高くしたということはないのであります。もちろん違っておる点もあると思うのでありますが、それはやはり法律体系を自主的にきめるという趣旨で違っておるところもありますが、向うよりも特にこちらの方を高く罰するというようなところはないと思います。
  193. 戸叶里子

    戸叶委員 ところが取締りが強化されているわけです。それはその条項を申し上げますと、「何人といえども合衆国に損害を与え、もしくは外国に利益を与えるため使用する意図を有しまたは使用すると信ずるに足る理由を有して、」という条件があります。ところが日本の方の法律の三条には、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもって、」とはっきりきめて、そこでスパイを取り締るということが規定してあることがわかるのでございますけれども、そのあとにまた、「又は不当な方法で、」ということが書いてあるわけです。それだけつまり加えられているわけです。これはアメリカの法律に全然ない要件になっておるわけでして、このこと自体を考えてみますと、アメリカと同級の取締りになり、日本に対しては、さらにそれだけ「不当な方法で」ということをつけることによって、よけいな取締りが強化されているわけなんです。この点を私は伺っておるわけです。
  194. 林一夫

    ○林(一)政府委員 初めの方の目的の方は、はっきりしております。あとの方の「不当な方法で」ということは、昨年も不法な方法でとか、あるいは不当な方法でというような、いろいろな御意見がありまして、不当な方法がいいのじゃないかということでおきめになったわけで、特にこの点を強くしたというような点はないのじゃないかと思うのです。
  195. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの林局長が御説明になりました通り、この前も問題になったわけです。私が特に申しますのは、この前これに対して改進党の方でも取るとか、取らないとか大へん問題にされた点であります。そこで私が特に杉原長官にお伺いしたのは、杉原長官は非常に人道主義的な方だと私は了承しておりますので、そういう点から考えても、この点はどうお考えになるかというので伺ったわけであります。
  196. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 このもとになります法律の条文につきましては、これは昨年の制定に当りまして、国会でも非常に熱心に御審議いただきましてきまったものでございますから、私はやはりこれは尊重いたしまして、その前提のもとに今回の法案の一部改正というものをお願いいたしておる次第でございますから、どうぞ御了承願います。
  197. 戸叶里子

    戸叶委員 「不当な」という言葉は、アメリカの方になくて、日本の方だけにあるので問題になったわけなんです。今の御答弁を聞いておりますと、そういうふうに内容的にならないように気をつけて、というふうな御答弁でございましたけれども、法律に書いてございますと、取締りに当る人は、その法律に書かれている通りにやるのが、義務を尽すというふうな結果になりまして、どうしても日本人に対して非常にきびしくなるという結果になるわけです。     〔大橋(忠)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで私は、この点も十分に御考慮になったどうかと思いましたけれども、どうもあまり御考慮にならないようでございまして、これ以上のことを申し上げましても、私と大臣考えの違いになるわけですけれども、こういう点をもう少しよくお考えいただきまして、そして日本人に対して、より強硬な取締りということがこの一事にも現われておりますならば、今後どんなに秘密保護法を拡大解釈しないというふうに御答弁願いましても、どうも信じられないような気がするのです。そして秘密でないようなものにでも、人によっては、これは秘密なんだけれどもといって非常に誇大妄想みたいになるような、またそれを誇りとするような言い方をしたり、また人心を圧迫するようなことになりはしないか、あるいは言論の自由を奪いはしないか、こういう点が非常に私は心配になりますので、この点もう一度長官の覚悟のほどを伺いまして、先ほどの御答弁はあとから伺うことにいたします。
  198. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 その点は御心配のないようにぜひやっていかなければならぬところでございまして、また今日までもそういう点に特に留意してやっておるわけでございます。今後ともその点は特に注意してやっていく方針でございます。
  199. 戸叶里子

    戸叶委員 しかし取締りの方は長官がおやりになるのではなくて、これは裁判官の方がおやりになるのですから、その点に対して今の答弁をどういうふうに保障できるでしょうか。
  200. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは裁判の場合におきましても、この法律それ自体の中に、特に一般の法令の作り方としてはかなり特例的だと思いますけれども、この法律につきましては、特にその点の留意規定もありますので、そういう点は、裁判に当りましても一つの特に法的な基準として守らなければならぬものでありますから、そういう点を見て、裁判官としてもこれに拘束されるわけでありますから、そういう点が一つの保障だと思います。
  201. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうようなときには、長官はいつでも裁判官と相談をしておやりになると了承してもよろしゅうございますか。
  202. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 裁判に当りましては相談にあずかるわけには参りません。
  203. 林一夫

    ○林(一)政府委員 戸叶先生のただいまおっしゃったような趣旨のことですが、昨年原案について、参議院で附帯決議といたしまして第七条を加えたわけです。この法律の適用に当っては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならないというような一条も入った。そういうような点も総合して考えますと、人権尊重ということでもって、適用なり解釈を非常に厳格にするという趣旨が入っていると思う。これらの点で十分やっていけるのではないかと思います。
  204. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、その附帯決議が裁判官を縛るだけの権限がないように考えますので、それに対しての御答弁を願いたい。
  205. 林一夫

    ○林(一)政府委員 今のは秘密保護法第七条に一条が入っている。読み上げますと、「第七条この法律の適用にあたっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない。」という一条が加わっております。
  206. 戸叶里子

    戸叶委員 その点はわかるのですが、それでは先ほどの不当なというような条項に対しては当てはまらないように思いますが、この点もう一度伺います。
  207. 林一夫

    ○林(一)政府委員 不当というのは、初めは不法という言葉を使っておった。不法よりも不当の方がいいというようなことで不法より少し広くなりまして、社会通念上妥当を欠くというような方法でもって探知、収集した場合ということに少し拡張されたわけであります。ただしその解釈なり実際この法律を適用する場合には、十分注意して、拡張して解釈したりあるいは基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならないという一条を入れたわけです。全体的に見てこれでバランスがとれているのではないかと考えております。
  208. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそう思わないのですけれども、幾ら繰り返しても同じだと思います。ただ私が不思議に思うのは、なぜ日本にだけ「又は不当な方法で、」とよけいなことをくっつけたかということです。それがわからなかったものですから伺ったわけですけれども、これはもう議論になりますからけっこうです。
  209. 植原悦二郎

    ○植原委員長 岡田春夫君。
  210. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の問題は重要だと思うので、特に杉原さんは鳩山内閣の大臣ですから伺っておきたいと思います。「不当な方法で、」という問題について、今林局長の答弁によりますと「不当な方法で、」ということは社会通念上不当な方法でということをさしているのである。これについては拡張の解釈は許せないということを法律の条文上に明文として規定してある。このように今御答弁になっております。従って社会通念上これを見た場合に、これを拡張した解釈をする場合には、法律上の規定によってこれは認められないという点については、林局長の答弁通りであると思う。しかし社会通念上拡張解釈をしないでも、「不当な方法で、」というそのことの事実は残っており、しかもこのことの事実はアメリカの法律と比べてみた場合に、その不当な方法というこのような社会通念上の問題は、これはアメリカの法律よりも日本の法律の場合においては、このような点だけよけいにつけられている。この点に問題があるのだということを先ほどから戸叶さんが問題として取り上げられているわけです。こういう点からいうと、日本の国民に対してはこの防衛秘密の問題は、アメリカの国民に対して行われる秘密よりも、日本の国民に対して行われる秘密保護、そしてその保護法に反する場合の罰則、これは日本国民の場合の方が強いのだ、こういう点が先ほどから戸叶さんの言っている点です。  そこであなたも御存じのように、この秘密保護法を結んだ場合の議定書の中にはこう書いてある。「日本国政府が、第三条1に従って執ることに同意する秘密保持の措置については、アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、日本国が受領する秘密の物件」云々、このあとは関係ありませんから除きますが、議定書のBとして明文に明らかになっている点は、この秘密保護に反する場合における罰則あるいは秘密保護の等級というものは、アメリカ日本の場合には同等である、これが条約上の根本の精神になっているわけです。この根本精神に反して、日本の国内法に作られたところの秘密保護法においては、先ほど申し上げました通りに「不当な方法で、」というような一項も加わった。言葉をかえていうならば、アメリカ秘密保護よりも一段と過酷なものが行われている。ですから先ほどから戸叶さんが問題であるといって質問をされているわけです。少くともこの議定書に反する秘密保護法というものが作られている。これは吉田内閣の時代に作られたのです。ですからその当時の改進党、現在の民主党の中におる諸君も、こういう点について反対をしたのです。あなたの場合においてこのように議定書に反する秘密保護法を、これは吉田内閣のときと同じようにきわめて適当であるとお考えになるのか、あるいは議定書の精神に沿って、過酷な面に関してはこれを改正する必要があるとお考えになっているのか、この点を先ほどから戸叶さんが伺っているわけです。これは憲法上の問題あるいは条約上の問題にも関連いたしますので、林局長からではなくて、むしろ新しい長官としての杉原さんから、もう一度はっきりとこの点を伺いたいと思います。
  211. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私今詳しくアメリカの法制との関係において、堂々と断定的に申し上げることは非常にむずかしいことだと思います。どちらが広いか広くないか、なかなかこれはむずかしい問題であると思うのです。それから議定書の趣旨でございますが、それとこの法律が反する点があるとか、あるいはそれを逸脱する点があるというふうには私解釈しないのであります。
  212. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ杉原長官あまり御存じないようですから、むしろ技術的な点で林さんにまず伺いましょう。「不当な方法で、」ということは、アメリカの法律の条文に明文化されておりますかどうですか。
  213. 林一夫

    ○林(一)政府委員 「不当な方法」という言葉アメリカの法律にはございません。
  214. 岡田春夫

    ○岡田委員 「不当な方法で、」ということが問題になっておるのです。ですから同等なものであるならば、条文上に「不当な方法で、」という言葉があるならば、これが社会通念上の解釈として不当な方法でということで、これに反する限りにおいては当然司法機関において処罰の対象になります。これはおわかりの通りである。そこでこの「不当な方法で、」という文字が日本の国内の法律にあるとするならば、そうしてアメリカの国内法にないとするならば、これは日本の国内においては過酷であるということは明確であります。これはあなた自身アメリカの国内法を御存じにならなくとも、あなたの部下におられる林さんが、アメリカにおいてはないけれども日本の国内においてはあるんだということを認めておられるとすれば、この事項に関する限りは少くとも日本の国内法が過酷であるということは明確です。そこで過酷であるとするならば、議定書の内容には反しないとお話しになっておるけれども、先ほどから申し上げたようにこういっておるじゃありませんか。議定書のBには「アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保する」と書いてある。等級まで書いてあるとするならば、処罰の対象になるべき、事犯の対象になるべき「不当な方法」ということが日本の国内法だけに書いてあるとするならば、これは同等なものじゃないということがはっきり言えるじゃありませんか、あなたはお認めにならないというのですかどうでしょうか。
  215. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は今までこういうことが頭にあるのでございます。そこの規定は、この秘密の区分等についての同等の等級、こういうふうに実は私は頭に読んでおりました。協定の議定書の解釈問題でございますが、なお一つ条約局長からもその点政府としての見解をはっきり申し上げたいと思います。
  216. 岡田春夫

    ○岡田委員 長官が防衛の責任を負って、それによって国民が違反した場合に、おいて処罰をされるという場合にあなた自身が今のように解釈しておりましたということではきわめて重大です。ここにはっきり書いてあるのですよ。議定書のBに「秘密保持の措置については、アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保すると書いてある。秘密保持の問題についてはこういうことだ、これに反するものは当然さっき言ったように秘密保護法が出てくるわけです。ですから防衛秘密の事項についての区別がこういうことでありました、今まで私は解釈いたしておりましたということでは、あなた御自身議定書のBすら御存じないということになるわけではありませんか。こういう点はきわめて重大ですから、もっと明確にあなた御自身の答弁を伺いたいと思います。これは外務省条約上の問題ではありません。むしろこの秘密保護法によってそれに違反した者が処罰をされる場合、特にあなた自身の防衛庁の中において、その違反した者が処罰の罪を受けるというなら、長官が適当に酌量するということもあり得るでしょう。しかしあなたも御存じのように、民主主義の原則は三権が分立していることであり、司法上の問題になると、あなたがいかように御解釈になっても、この点が違っている限りにおいて、司法機関においては「不当な方法」ということがいわゆる罪の対象になるのです。ですからこれが問題になっている。しかもその罪の対象になるべき法律を作っているのがあなたのところなんです。だとするならば、この法律解釈は単なる条約上の解釈ではないのです。秘密保持についてはどうかということが書いてある。先ほど言ったように、「不当な方法で、」という国内法と議定書が違うということを、はっきりあなたはお認めにならなくちゃならないと私は思うのだが、この点はどうですか。
  217. 林一夫

    ○林(一)政府委員 議定書にあります同一の等級の措置を講ずると申しますのは、たとえば秘密を指定する場合に、日本では機密、極秘と指定をいたし、そういう指定区分を向うと同一等級にするという意味でございます。そうして先ほどから「不当な方法で、」ということをおっしゃっておりますが、アメリカの法律を見ましても、ここにありますように、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」という以外にもいろいろの制限がございましてその目的以外の方法によってこういうようなことをしても犯罪になるということを具体的にきめておるのであります。その具体的のきめ方がたくさんあるのでありますが、そういうようなものと比べて「不当な方法」ということを使ったわけであります。それと比べたら別に広くはなっていないのであります。
  218. 下田武三

    下田政府委員 条約の議定書のBの解釈の問題ですから説明させていただきたいと思いますが、結論におきましては、先ほど杉原長官がおっしゃった通りでございます。この秘密保持の措置においては、「アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のものを確保する」ということの意味は、締結当時明確に両国の意思が合致しておったのでありますが、それはどういう結果かと申しますと、向うが極秘としておるならば日本側も極秘とする、向うが単なる秘であればこっちも秘とするという、秘密の程度の取扱いについての歩調を一にするということでございます。従いまして「不当な方法」という処罰の方法については、附属書Bの関知せざる問題なのであります。その処罰の方法につきましても、当時両国間に、何も処罰の方法までアメリカに歩調を合せる必要はないのだ、刑罰の内容その他も日本で自由にきめていいのだということをはっきりいたしております。なおついでに「不当」という条件が加わったことを申しますと、これは処罰するための要件が加重されておるのでありますから、たとい「不当」という語がアメリカの法律にございません場合におきましても、これは適用を受ける国民の方からいいますと、処罰するためには不当でなければいけないのですから、それだけ保護が厚いということに相なるわけであります。不当でない場合には処罰されないで済むわけであります。かえって人権尊重に即したものであろうと思います。
  219. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは戸叶さんの質問にむしろ関連して、私の質問は実はほかにあるので、それをやらなくちゃならないのですが、今条約局長がそういう答弁をされたから私はこれでは済まないのですが、秘密の範囲が広がっているということなんです。それは「不当な方法で、」ということで国民を保護しているということではないのです。国民に知られないところがより広がっているという意味なのです。しかも国民に知らされない部分を、アメリカの法律よりもより広げてしまった、不当な方法で知ってはならないということで広げてしまった。法律の解釈からいくならば、より広げることによって、国民の見ることの自由、知ることの自由、聞くことの自由を拘束するというのが、法律解釈上の基本的な考え方だと私は思う。あなたの解釈から言うならば、国民を保護する意味において秘密はできるだけ多い方がよろしいという解釈になってくると私は考えます。国民のまず基本的な人権として、知ること、見ること、聞くこと、これは憲法に規定されている。憲法どころではない、これは基本的な人権です。この基本的な人権を拘束するために秘密保護の問題が出てきているのであって、そしてこの秘密保護の場合に、「不当な方法で、」ということで、一段秘密保護について拡大した適用をしている限りにおいて、これは明らかに国民を保護するのではなくて、国民の権利をじゅうりんするということなのです。そういうことは、あえて議定書の場合においては書いてないけれども日本の国内においては自由に作っていいのだということに、アメリカ側との話し合いのときになったのだ、こういうお話ですが、そういうことがもし事実だとするならば、そういう話し合いであるにもかかわらず、日本の政府、当時の吉田政府においては、国民の基本的人権を侵害するより大きな秘密保護の法律を作った。言葉をかえていうならば、国民の基本的人権を侵害しようというような秘密保護法を作った。これは日本の国民の基本的な人権を侵害して、アメリカにおべんちゃらを使うための法律を作っているのだ。アメリカがそこまで要求しないのに、日本の政府の方が作っているのだということになるじゃありませんか。あなたの答弁から言うならばそうなる。そういう点からいっても、あなた自身の御答弁によってもむしろ逆の結果が来ているということに解釈せざるを得ないことになってきます。
  220. 下田武三

    下田政府委員 これは昨年の外務委員会におきまして詳しく論議された点でございます。それを御承知のことと思いますが、問題は「不当」という言葉を使って「不法」という字を使わなかったのはけしからんという点でございました。なるほどたとえば防衛庁の職員を酒で酔わせて、酔っぱらってついしゃベらすように努めたという場合に、果してそれが不法と言い得るか。あるいは女じかけでやった、それが不法と言い得るか。そう言いますと、不法な方法でというのは確かに狭過ぎる、不法でなくても不当な方法でもやはりこれは処罰しなければいけないというので、「不当な」という字にきまったと私聞いております。そこでしからば、アメリカの法律に「不当」という字がないのに、日本の場合に「不当な」という字を入れたのはけしからぬということでありますが、しかし処罰の要件を加重しますということは、それだけ処罰をすることが困難になるのであります。たとえば防衛庁の機密を知っている職員が気が違いまして大声で秘密をしゃベったとします。その場合に向うの人がつい聞いたとしても、これは不当なことでも何でもないのであります。でありますから不当でなければ罰せられずに済みます。ですから「不当な」という要件を一つ加えたといたしますならば、それだけ処罰される危険か減るわけでありますから、私はこれは決して悪いものではないと思います。
  221. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはあなたさかさまですよ。こういうことをやってはいけないという当然あるべき処罰規定というのは——アメリカの国内法と同じ処罰規定はあるのですよ。これについて完全に二つが同じものであったとするなら同等だと言えます。しかしそれ以外のことについてまた「不当な方法で、」ということがついた場合に国民の基本的な人権が侵害されるのは当りまえではありませんか。この従来の規定というものを制限する意味で、不当な方法というこの処罰規定の中で、不当な方法だけをという意味ならこれは別なんです。しかし違うのですよ。これ以外にプラス・アルファとして「不当な方法で、」ということが出ている。だから国民の人権をより侵害すると言えるのです。そういう意味じゃないですか。
  222. 林一夫

    ○林(一)政府委員 「不当な方法で、」についていろいろ言われておりますが、アメリカには先ほど申しました秘密保護法に、ある目的以外に、いろいろの方法をもって探知収集をやった場合に該当するという規定がある。具体的にたくさん並べておるのです。だから範囲は非常に広いのであります。こちらの方はそれをただ「不当の方法で、」というふうに縮めたわけなのです。アメリカの方は具体的にいろいろ——読み上げてもけっこうなのですが、いろいろたくさんな具体的条件がある。こういうものと比べると別に広くはないのです。
  223. 植原悦二郎

    ○植原委員長 その点は御議論になっても——不当なということは、私はむしろ縮めた方に解釈してもできると思いますよ。だからそこは意見の相違だから、幾ら議論しても水かけ論ですから、どうか次の質問をして下さい。
  224. 岡田春夫

    ○岡田委員 いやこれは、林さんは文科出の方かどこの出の方か知らないが、法律をやっておりますれば、列挙主義と包括主義がどちらが広いかわかると思うのです。列挙主義なら限定するのですよ。不当というのは包括なんですよ。だから不当であるというので包括する限りにおいて、列挙主義より広いのは常識なのです。アメリカの国内法でいえば、列挙主義で書かれているのに、日本で書いているのは「不当」という包括的の規定で、これは広いということは明らかであるということは、法律の文案を作られるあなた方としてもぜひ考えていただかなければならないし、これはあなた方の解釈が明らかに誤まりだということを断定せざるを得ない、ほかの方に聞いてごらんなさい。  次に私の質問に入りますが、先ほど穂積君の質問に関連して、これは杉原長官の御答弁によると、相当長期の防衛計画は今作りつつある。この相当長期ということは大体何年を意味しているのですか、この点を伺いたい。それから相当長期というものを今作っているのならば、短期のものはすでにできているのかどうか。時間がありませんから一ぺんにまとめて私は言いますが、短期のものは作っているのかどうか、それから本年度の計画はすでにできているのかどうか。本年度の計画についてもできているとするならば、具体的の内容を伺いたいと思うのであります。
  225. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 長期的と申しますのは六カ年計画、こういうことであります。それから短期的の計画は三ヵ年、これはまだできていないのであります。それから本年の計画は、今度予算の前提となっております計画及びその増勢に伴う法律案を今御審議願っておるのでありますが、これが本年の計画になっておる次第でございます。それからさらに一言加えさしていただきますが、本年の予算措置におきまして、国庫債務の負担行為におきまして、ジェット機の組み立て生産につきまして三十二年度にわたる分をお願いいたしまして、これが予算が通っておる、こういうわけでございます。
  226. 植原悦二郎

    ○植原委員長 岡田君。私はなるたけ審議の場合に少数派の発言権、質問権を尊重する意味でずいぶん時間を与えておりますが、今のあなたの御質問は、大がい穂積君の質問の中に入っているように解釈もできるのですから、あなたは解釈できないとおっしゃれば、それはあなたの主観ですけれども、なるべく大ぜいのこともお考え下すって簡単に御質問を願いたいと思います。
  227. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ私委員長に伺いますが、私はこのあとどういう質問するかあなたは御存じですか。
  228. 植原悦二郎

    ○植原委員長 議論はしませんけれども、なるべく大ぜいの人のことを考え質問を願いたい。あなたに対する議員としての権能を尊重しておるのですから、その点御了承願いたいと思います。
  229. 岡田春夫

    ○岡田委員 了解しました。MSA援助について新聞の伝えるところによると、アメリカは今後兵器供与を打ち切っていく、こういうようなことを世界の多くのMSA関係国に対して通告を出している。これについて日本もその中に入っているということが新聞に出ておりますが、兵器の供与については、これを打ち切るという通告をアメリカ政府から日本政府は受けているかどうか、そうしてMSA援助内容が従来の完成兵器からほかの援助の形に変りつつあるということが伝えられつつあるが、この点についても何らかの情報をお持ちであるかどうか、時間をできるだけ節約いたしまして二問ずつ伺って参りたいと思います。
  230. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。兵器の供与を打ち切るという通告は受けておりませんでございます。ただこういうことは非公式に政府に連絡がございます。それは装備品の供与部品につきまして、アメリカ側としても、いつまでも従来のままを継続していくことは、できないものがあるだろうということは、非公式の連絡を受けております。
  231. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると今の御答弁は、部品については今後思うように今まで通りには貸さないことになるかもしれない、こういうことの非公式の通達はあった、こういう意味ですか。
  232. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 そうです。
  233. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし約二週間ばかり前のこの外務委員会において、並木君の質問にたしか林局長が答弁をいたしておりますが、アメリカの艦船の今後の供与は、今回限りで打ち切ることになっている見込みであるというような答弁をしているように速記録では見ておりますが、こういう点からいくと、完成品も供与を打ち切ってくるというような考え方になって来ているのではないか、こういう点を伺っておきたい。
  234. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 艦艇につきましては、アメリカ側の今後の供与ということは期待をあまりできない状況にあると思っております。きっぱりと艦艇はもう一切しない、こういうふうには言っておりませんが、今までの経緯からいたしまして、艦艇の供与については、一つには日本側に造船能力もあるというようなことからも来ておるかとも思います。またアメリカとしても、そういつまでも日本に限らず、何から何まで供与するわけにいかぬというような事情もあると思いますが、大体において艦艇につきましてはこれからあまり期待できない、そういうふうに思います。
  235. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは問題をどんどん進めますが、秘密保護法が適用になってから今月で一年になるのですが、今日までに防衛秘密として指定されたものが何点あるのか、秘密保護法の第一条第三項によると、一、二と二つの点でいろいろな事項が列挙されておりますが、こういう点について何点あるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  236. 林一夫

    ○林(一)政府委員 最近までの点数をあげますと、最近までにMSA協定によって供与された装備品で秘密保護法の防衛秘密の指定を受けたものは、先日穗積委員に申し上げました点以後のを加えまして合計百八十一点になっております。
  237. 岡田春夫

    ○岡田委員 この防衛秘密として指定されるものは、アメリカから指定してくるわけなのですが、その秘密事項それ自体が、日本としては秘密として認められない場合には、この指定を拒否できるかどうか、この点についてはどのようになっておりますか。
  238. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この防衛秘密の条件となりますのは、公けになっていないということなのであります。公けになっていないというのは、アメリカにおいてもまたその他の国においても、日本においてももちろんそうでありますが、全世界いずれの地域においても公けになっていないものであるということが条件になっております。そのような意味におきまして、アメリカからかりにこのものは公けになっていないから、秘密保護の措置をとってくれといってきた場合、わが方としては秘密保護の措置をとるのが妥当であると思います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田委員 妥当でないと考えた場合はどうかと伺っておるのです。
  240. 林一夫

    ○林(一)政府委員 当然それはとるべきだと思います。
  241. 岡田春夫

    ○岡田委員 とるべきだと言われると……。
  242. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私からお答え申し上げます。いかなるものが日本においての防衛秘密になるかということは、この秘密保護法それ自体できまるわけでございます。
  243. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはきわめて抽象的で、その点だけやってもまた時間がかかりますからあとでやることにして、もっと具体的な問題を伺います。これは林さんでけっこうです。T33、これはジェット機だと思いますが、それからF86ジェット機、それからDD駆逐艦、AMS掃海艇、こういうものがすでに日本に貸与または供与になっていると思いますが、この事項についてすでに防衛秘密の事項が指定されておりますかどうですか、この点を伺いたい。
  244. 林一夫

    ○林(一)政府委員 T33についてはいまだ防衛秘密の指定はございません。F86についてもまだございません。あと駆逐艦は、先日申し上げましたように駆逐艦に関する説明書が二十点ほど指定されております。AMSにつきましては装備品の一部について四点指定されております。
  245. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではT33、F86については、今後防衛秘密の指定があるように政府側としてお考えになっておりますか、あるいはないことになっておりますか、どういうお見通しでございますか。
  246. 林一夫

    ○林(一)政府委員 F86につきましてはまだこちらに参っておりませんから、どの程度のものがあるかまだ推測できません。多分あると思いますが、現在のところはっきりわかっておりません。T33は御承知のようにジェット練習機でございまして、そのような秘密装備品はございません。
  247. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは今度は通産省の方にちょっと伺いたいのですが、この間の日米共同声明によって、ジェット機と艦艇を予算外債務負担行為の経費を使って国内生産をやることになったはずです。これについてのアメリカ側との交渉もすでに済んだと伝えられておりますが、この点は済んでおりますかどうですか。
  248. 宮本惇

    ○宮本説明員 この問題は私からお答えするのが妥当であるかどうか、防衛庁の方からお答え願うのがよろしいと思います。
  249. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私からお答え申し上げます。一つはF86とT33ですが、アメリカ側からいわゆるMSA援助に基きましてそれの部品、治工具、それから技術的援助をもって日本の国内で生産する、こういうことの話し合いがかなり前からございました。事の起りは昨年の九月ごろからでございますが、それが初めはこれを域外調達にしてということもございましたけれども、その話がだんだんと移っていきまして、ことしになりましてから、今申しましたように、向うから部品、治工具等の供与と技術の援助を受けて日本の国内で組み立てるという話し合いが進んで、そしてこの話し合いは合意ができまして、さらにこれはもちろん予算の成立を条件にしておりますが、予算も成立いたしましたので、これの実施のための具体的な話をいろいろ進めておるところでございます。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の予算外債務負担行為によって国内生産を行う、この点はきまったわけですが、そこで作られる品物はどういうものか、T33、F86、DD駆逐艦、AMS掃海艇、この四種類は入っておるはずであると私は新聞でも見ております。この点はいかがですか。
  251. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 F86とT33の方は、国庫債務負担行為において五十二億八千万円の内容をなすものでございます。それからことしの歳出予算で五億というものが入っております。護衛艦は千六百トン型でございますが、これが本年の計画として四隻、中型の掃海艇、これは三百二十トンのものでございますが三隻、合計七隻分が国庫債務負担行為の中に入っておる、これが金額にいたしまして約六十億くらいでございます。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで私伺いたいのですが、先ほど林さんの御答弁によると、アメリカから供与される、たとえば護衛艦というのですか、ざっくばらんに言うと、駆逐艦だろうと思うのだが、護衛艦でもけっこうですが、護衛艦には防衛秘密が二十点ある、それから掃海艇には防衛秘密が四点ある、こういう点が明らかになっているわけですが、これと同じ種類の護衛艦と掃海艇はそれぞれ防衛秘密があるということが明確になっている。ところがこの同じ防衛秘密を持っているものを、日本の国内で生産することになる。そこであなたに伺いたいのは、国内で生産する場合においても、防衛秘密という点が、たとえば護衛艦を作る場合二十点あるのであるから、その生産の内容秘密になってくるのではないか。そうすると日本国内の民間生産工場は、秘密のヴェールの中に隠されるのではないかという点を伺いたい。
  253. 林一夫

    ○林(一)政府委員 アメリカのものと同じような護衛艦が今後作られるから、たくさん防衛秘密が出てくるのではないかという御質問だと思いますが、アメリカから供与を受けましたこれらの掃海艇にしろ駆逐艦にしろ、日本で建造しますものとは違うのであります。この指定された装備品の部分につきましては、違うのでありまして、その点は一つ了解をいただきたいと思います。
  254. 岡田春夫

    ○岡田委員 その違うという点を私は伺いたかった。違うということは、秘密の部分だけはやはりアメリカが握っている、秘密でない古いところで、だれでも作れるようなところは日本で作らせる、秘密の部分だけは日本で作る場合には与えられておらないのだ、そういう意味で違うというように解釈してもよろしいかどうかということを伺っておる。
  255. 久保龜夫

    ○久保政府委員 ただいまの質問にお答えいたします。当面の段階においては、ただいまの艦艇の場合は、艦艇の構造等は日本独自でやりまして、これは必ずしも秘密の部分を用いるわけではありません。ただ一部、たとえば掃海具とか、先ほど防衛局長からお話のありましたような秘密部分に該当しておるものは、とりあえずはもらう場合が多い、こういうことであります。ですから将来にわたって、実際秘密区分に属するものを日本に作らせないというふうな意向を格別持っているわけではありません。こちらもだんだんと作りやすいものから作っていく。これは予算の都合と技術の程度、こういうものを見合していくわけでありまして、ただいまお話のようなことは格別ございません。F86の場合は、機体はあまり秘密区分はないように思います。たとえば射撃装置とか、そういったものに秘密区分があるということで、これもやはり漸を追うて秘密区分のものにまで国産化ということが将来においては行われる、かように存じております。
  256. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると今の御答弁は、現在作る船は、秘密部分については作らない。しかしながら今後において、秘密部分についても作るようになってくるであろうという御答弁と解釈してよろしゅうございますか。
  257. 久保龜夫

    ○久保政府委員 船の場合を申し上げますと、もつぱら装備品——掃海具でありますとか、それに載せております兵器の一部がこれに該当するということで、船そのものについは将来ともそういう問題はないと存じております。
  258. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう秘密になっている装備品を作るような場合が出てくるのではないかということを私は伺ったので、そういうものを作るであろうという御答弁があったと私記憶しておるのですが、その点はいかがですか。
  259. 久保龜夫

    ○久保政府委員 それは漸を追うて将来起ってくると存じております。
  260. 岡田春夫

    ○岡田委員 その場合に、国内の生産でそういういわゆるマル秘事項に関するものを作るという場合に、国内の生産体制が秘密というヴェールによっておおわれていく、すなわちアメリカが指定した秘密によって、日本国内の生産体制の一部分を押えるという結果になるのでないかと思う。この点を伺いたい。
  261. 久保龜夫

    ○久保政府委員 それは秘密保護法の中にも、たとえば製作を委託するといったよう場合も予想しておりまして、単に政府機関のみならず、たとえばその場合のメーカーの従事員も適用を受けるような規定に当然これはなっておりまして、もしそういうふうに秘密区分に該当するものを国内で生産するとなりますれば、もちろんその法律の適用を最小限度必要な範囲で受けるということは、当然起ってくると思います。
  262. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの説明によると、今後アメリカの指定された防衛秘密に関するものを日本の国内生産として作る場合ができてくる。そういう場合は、秘密保護法の防衛秘密として指定される条項の中に、国内生産に対する秘密という指定はないはずであるが、こういう点については国内の生産体制それ自体に、秘密を保持するために、秘密のヴェールを設けなければならなくなってくるが、この点との関係はどうなっておるか。
  263. 久保龜夫

    ○久保政府委員 秘密のヴェールというお言葉ですが、今の秘密区分に属するものを製作する場合には、当然それに関するスペックあるいは情報を防衛庁から出すわけです。それを業務によって取得したとか、そういうことによって秘密保護法の適用を受けるわけです。もちろん最小限度に受けるわけです。その限りにおいて秘密を守らなければならぬということになりますが、全面的にその工場が秘密のヴェールという言葉に当るかどうかということは問題ではないかと思います。
  264. 岡田春夫

    ○岡田委員 だんだん明らかになってきたのですが、アメリカだけが知っている秘密アメリカが好きにきめるところの秘密のものを日本で作らせる場合に、その工場はそれを作ることを秘密にさせられる、こういうことが出てくるわけです。従ってアメリカ秘密というひもによって、日本の国内の幾つかの工場がアメリカに直接に縛られる関係が明らかにされていくことになるのではないか。そうなってくると、今度の秘密保護法の改正は、表面においては単に一部分の改正であるけれども、そういう内容を通じて無制限に国内の生産体制に秘密というものが降りかかっていくことになるであろう。そうすると先ほど問題になってきた、いわゆる国民の基本的人権の問題に関連するのですが、この国民の基本的人権としていろいろな聞く権利、知る権利があるが、この秘密に違反した場合、日本の国内にできているたくさんの工場が秘密になってくる、これを知った場合には、国民は全部罰則を受けなければならない。こういうことになってくるのではないかという点をわれわれは心配するのであります。この点はどういうようになって参りますか。
  265. 久保龜夫

    ○久保政府委員 繰り返して申し上げるようでございますが、秘密区分に属するものを国内で生産するための情報あるいはスペックを流すということは当然あり得ます。工場の担当者はそれを受けて、その秘密を守る義務をこの秘密保護法によって負うということは、この法律の精神あるいはMSAの武器の供与を受けるという精神から出ておるわけでありまして、ただいまおっしゃったように、確かにそういう秘密を守る義務を負うということになりますが、ただ先ほどおっしゃったような、工場全体が秘密のヴェールにおおわれるというようなことになるかどうか、これは具体的な実際の問題ではないかと思います。
  266. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは防衛庁長官に伺いたいのですが、新聞の伝えるところによると、ミューチュアル・ウェポン・ディヴェロップメント・プログラムというのですか、MWDP、これがすでに御承知のようにNATOの関係の諸国には適用になっておりますが、日本に対してもこれを適用したい、これについての話し合いをしたいということを、アメリカから申し入れてきておるということを新聞では伝えておりますが、これについては政府の一部では当惑している、こういうような話も聞いております。これについてどのような態度をおきめになっているのか、そうしてすでに交渉にお入りになっているのか、こういう点についてもお伺いをいたしたいと思います。
  267. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。その点につきましては、これもまだきわめて非公式な話でございますが、こういう趣旨のことを言ってきております。それは新しい考案の兵器等の研究、その中でも特に核兵器、原子兵器等はもちろんのことだということははっきりしておりますが、新しい考案の兵器で何か日本側で特に研究に値するようなものがもしもあるならば、アメリカ側としても、これに対して資金的の援助をする可能性について検討する用意がある、こういう意味のことを言ってきております。そこで現在は、それに対しましてアメリカ側援助というものが、どういうふうな内容、条件のものであるかということ、また果して日本側で今そういう新しい考案のものが特にあり得るかどうかというような点を、今内部的に研究しておる段階でございます。
  268. 岡田春夫

    ○岡田委員 今申し上げたMWDPは、やはりMSA法の百五条に基いたものとして、MSA法に関連のあるものと私たちは解釈しておりますが、その点は間違いないかどうか、それが第一点。  それから第二点は、この研究の結果作られた生産品、兵器ですね。これの製造権は、日本が考案権を持ち、考案する能力を持ちながらも、製造の権利というものはアメリカが独占することになっている、こういうようにわれわれは聞いておるのだが、その点はどうか。すなわち日本が頭脳的な協力をしても、作られた品物は日本のものではなくて、アメリカの権利として握られることになっている。この援助を受ける限りこういうことになっているはずであるが、この点はどうか。  第三点は、こういうMWDPについて、今後交渉をされるつもりであるかどうか。先ほどは内容の御説明があったのでありますが、これについて交渉されるつもりであるのかどうか、これが第三点。  それからこれを受け入れた場合において、当然技術の問題ですから、防衛秘密が関連して出てくると私は解釈せざるを得ないのですが、この点についてはどうであるか、この四つの点について伺っておきたいと思います。
  269. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは今申し上げましたように、果して日本側でこれの対象になるような研究のものがあるかどうかが、まず先決問題でございます。そうしてこれは今技術研究所あたりで考えてもらっておるわけでございますけれども、まだ結論を得ておりません。しかし新しい考案のもので果してそういうものがあるかどうかということについては、そうたくさんあるとは予想できません。それからさらに、これを受けるかどうかという点は、実はもう少しよく検討してみませんと結論を得ないわけでございます。それからその援助の内客と条件等を検討しておるというのは、ただいま御質問のような点などがございますので、そういう点今研究しておるところでございます。まだこれをどうする、ああするというところまでの方針をきめるまでの段階に至っていない次第でございます。
  270. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題についてはこれで終りますが、たとえば先ほど申し上げたように、日本の頭脳を動員して、そういう創意をもって作る品物、兵器に対して今の取りきめをやってアメリカ援助した場合には、当然アメリカに製造権が移されることになっておるのでりあますが、そういうようにアメリカに製造権がとられても、なおかつこの協定を受け入れた方がよいとお考えになりますかどうか。  それから先ほどの答弁漏れですが、こういうような技術的研究について援助を受けるとするならば、当然これについては防衛秘密の指定があるであろうと私は考えるのだが、この点はどうですか。ということは、技術研究に対しても防衛秘密が指定されることになると、今後研究自体についても、秘密のヴェールが張りめぐらされることになるので、日本の国内の学術関係、それからさっき申し上げた国内生産体制全体にわたって、アメリカの自由にするところの秘密のヴェールがつけられることになるのではないか、そういう観点から実はお伺いしておるわけです。
  271. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。第一の点につきましては、それを日本側の考案において、また向うとの協力においてやると仮定いたしまして、それが完全に向うだけの独占的な一つの権限になる、そういうふうには取り扱うべきものではないと思います。それから防衛秘密指定云々については、これはそのものによりけりでありますから、一がいに今申し上げることのできない性質のものだと思います。
  272. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はこの程度にしておきます。
  273. 植原悦二郎

    ○植原委員長 高津正道君。
  274. 高津正道

    ○高津委員 第一点は、秘密保護法の一部を改正する法律案提出されたのは六月三日でありますが、今や七月十三日で四十日間を経過しております。最初の国務大臣の提案理由の説明の中に、「昨年、わが国は、アメリカ合衆国との間に、日本国に対する合衆国の艦艇の貸与に関する協定を締結し、すでに艦艇の受領を開始いたしておるのでありますが、」という言葉がありますが、艦艇の受領の進捗状態はその後どうなっておりましょうか。
  275. 久保龜夫

    ○久保政府委員 艦艇の受領状況は、貸与協定による古いものは別といたしまして、昨年度からのものを申し上げますと、千七百トン程度の大型駆逐艦DD二隻、これは現在内地で就役いたしております。それから小型護衛艦DE二隻、これはすでに向う側で入手いたしまして、目下訓練回航の途中にあります。それからAMS掃海艇十隻でありますが、このうち八隻をすでに受領いたしまして、二隻が未受領の格好になっております。二十九年度分としては現況はかようなことでございます。
  276. 高津正道

    ○高津委員 その艦艇は修理を加えられて使用されておるものでしょうか。
  277. 久保龜夫

    ○久保政府委員 もちろんさようでございます。
  278. 高津正道

    ○高津委員 この秘密保護法一部改正案は今回新たに適用される秘密の範囲を拡大するものでありますが、これは日本が独自で廃棄しようとしたり、または換骨奪胎的に改正をしようとすれば、アメリカから文句を言われる、抗議を受ける筋合いのものであります。アメリカ日本を引きずる綱を何本も持っておりますが、その綱の一本を本法律案によって一層強いものにしたわけであります。このような国政の進め方は、世界の大勢に背馳すると思うのです。私たちの持論から申せば、二十世紀の現段階では、婦人の解放、農民解放、軽蔑され、差別されている少数民放の解放、そして植民地の解放ないし隷属あるいは半隷属の解放、一口に言えば人類解放の段階であると思うのであります。しかるにこの法案はそれらの大いなる歴史の方向に相反するものであり、民主党とこの内閣とは、こういうように日本の自由を一寸でも一尺でも、一歩ずついよいよ束縛する方向に国政を進めておると思うが、これに対する防衛長官の見解を承わりたいと思います。
  279. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは昨年の艦艇の貸与に関する協定に基く措置でございまして、しかもこれがきわめて限定された事項についての、装備品の性能とか使用、それから情報等、そういう技術的のことでございまして、これは防衛上秘密にする必要があるというものに限っておるわけでございまして、そういう点からいたしまして、そのことからして今日これを設けた次第でございます。
  280. 高津正道

    ○高津委員 杉原長官はこれは日本の国防上必要なことであり、技術的なることであって、小さいことであるように申されるけれどもアメリカ日本の国政に干渉する一本の綱の向うを握っておるのでありますが、それが一層強まったということになれば、日本の自由というものはそれだけ幅が狭くなったのだと思うのです。これは何でもない。技術的な問題だというのは、あなたも愛国心をお持ちであろうが、そういう考え方は全くわれわれには驚くべき言葉に響くのでありますが、ほんの技術的な、ささいな問題だと相変らずお考えでありましょうか。
  281. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 秘密事項の対象そのものが技術的な事項だと申しておるのでありまして、それの秘密保護について、人権等能の関係から、きわめて慎重にやっていかなければならないということは、先ほどからも申し添えておりますし、またそういうふうにやっていくつもりでございます。その人権等との関係については非常に大事なものだと考えております。
  282. 高津正道

    ○高津委員 林防衛局長は海外のいろいろな国々の情勢あるいは軍事的な情勢を雑誌や新聞や単行本などによってつかもうとしておる、こういう答弁をされると、杉原長官はそれではまだ物足りない、この林局長の言うことの上に、さらに海外に防衛庁の役人を派遣したいと考えておる、こういうように申されたのでありますが、いよいよ自国の防衛のためには海外にまでアタッシェを、あるいはその他の人間を送り出すというところまで民主党は考えておられる。他の点では民主党のやり方に好きなところがあるが、あなたの担当されておるここの部分はひどくわれわれの方向と違うのであります。しかしあなたは外国の軍事情勢、軍事秘密などをなるべく知るように海外に人を派遣する考えを、われわれが反対しても実現しようと強く考えておられるのであるか、この点をはっきりお伺いしたいと思います。
  283. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 日本の安全を保つ上からいたしまして、防衛庁としても外国の事情をできるだけ詳しく知る必要があることは当然だと思いますので、予算等の関係で許されるならば、私は海外の実情を知るためにやることはやりたい、こう考えておる次第であります。
  284. 高津正道

    ○高津委員 あなたのお考えは、なかなか私の質問ではお曲げになるはずもない様子に見受けるのでありますが、外務当局とそういうような話し合いでもなさっておるのであるかどうか。
  285. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 実はすでにワシントンには一人だけ行っております。できますならば来年度においては、他のところにも若干やりたいと私は考えております。
  286. 高津正道

    ○高津委員 不正という言葉を使わないで、不当という言葉使用したということは、範囲がばく然とぼやけて広がったのである。だからアメリカの国内法よりも、この法律の方がはるかに広がったのである、こういう岡田委員のはっきりした、何というか社会通念というか、法律常識というか、その考えをあなたはお認めであるかどうか、杉原長官の口から承わりたい。
  287. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これは不当というものの解釈の問題になってくると思います。さらに列挙的に書いてあることとの厳密なそれ自体の一つ一つのものとの関連において言わないと、一般的に言うことはできないと思います。それはごく一般論的には岡田さんの言われることはそうだと思います。ただ本件の場合、それが直ちにアメリカの立法よりもこの方が広いのだというふうには、私は断定はできにくいと思っております。またこれは法律の建前からいたしましてもそう拡大的にすべきものではないということは、法律自体に規定が設けてあるような次第でございますし、実行問題として適正を期していきたい、こう考えておる次第でございます。
  288. 高津正道

    ○高津委員 不法ということは法律に違反することだけを考えて、不法という法律用語ができておるわけで、不当といえば法律違反でないものまでが、それに含まれるということは、これはもうその用語のきちっときまった内容なのです。それであるなら、そうまで言われる必要はない。やはりこのくらいなことは争わずに、野党のものの質問だからといっても、それを認めた上で議論をされてはどうですか。
  289. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は岡田さんなどの言われた点も、一般的の論としてはそうだと思うのです。しかし法律の解釈論として、それでは非常にこれは具体的になるのでありますから、アメリカの法律に書いてあることとどっちが範囲が広いかということは、これは断定はなかなかしにくい、私はそう思います。
  290. 高津正道

    ○高津委員 罪刑法定主義であって、一々書いてあるのは、その書いてない部分は含まれないという意味で、書いてあることが多ければ多いだけ、それが明確なのです。それで多く書いてあればあるだけ非常にはっきりして、それ以外は含まずという意味になるわけです。そのゆえに不法性、法律違反がやっつけられる。不法という文字できちさち限定してない場合は、それは非常に拡大解釈のおそれのあるもので、不法プラス・アルファ・イコール不当なんです。それだから範囲が広がっているので、日本の方がもっと厳密な規定を受けることになっていると思うが、どうか。この質問は、その通りでございますというような答弁をわれわれは期待するものであります。いま一度あなたの意見をお聞きしたい。
  291. 植原悦二郎

    ○植原委員長 高津君、ほぼ時間ですから、御注意します。
  292. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 先ほど私の見解はお答え申し上げた通りでございますから、御了承願いたいと思います。
  293. 高津正道

    ○高津委員 今の形にしてあらためて問うのでありますから、プラス・アルファの加わったものが不当でしょう。それならば拡大になっているぞ、それを認められるかどうか。
  294. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私先ほどお答え申し上げた通りでございますから、御了承願いたいと思います。
  295. 植原悦二郎

    ○植原委員長 高津君、もう時間ですから、御注意します。
  296. 高津正道

    ○高津委員 私は同僚議員の質問を雑音の中に熱心に聞いておったのであって、前のあなたの答弁でわからぬから、むだを省いて簡潔な言葉で私は質問しているのです。それでこのくらいは認めてはどうですか。認めると、下田条約局長答弁と食い違う、ただそれだけのことですよ。
  297. 植原悦二郎

    ○植原委員長 高津君、時間です。これにて本案に関する……(「答弁答弁」と呼び、その他発言する者あり)今の高津君の質問にお答えがありますか。——従前の通りといって、お答えはありません。  これにて本案に関する質疑は終了しました。  先刻の戸叶君の質疑に対して政府からお答えがあります。
  298. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほど戸叶先生から御質問がありました点は、秘密会において秘密保護法の防衛秘密内容が、要求によって説明できるかというお話だったと思いますが、これは私どもはこういうふうに考えております。国会の正当な審議権の発動である限り、できるだけ説明を申し上げるのは当然であると思うのであるが、ただ観念的に申しますと、議院における証人の宜誓及び証言等に関する法律等の場合において、国に重大な利害があるというような問題については、特にこれを拒む道が設けられているわけである。これと同様な趣旨で説明できないようなことも、理論上はあり得るかと思うが、それは具体的な問題として決定するよりほか仕方がない、こういうふうに考えているのであります。
  299. 戸叶里子

    戸叶委員 今の最後の言葉がちょっとわからなかったのですが、もう一度繰り返して下さい。
  300. 林一夫

    ○林(一)政府委員 国会の正当な審議権の発動である限り、できるだけの説明をすることは当然であります。ただ観念的には、議院における証人の宜誓及び証言等に関する法律等の場合において、国に重大な利害があるというような問題については、特にこれを拒む道が設けられているわけである。これと同様の趣旨で説明できないようなことも理論上はあり得るかと思うのでありますが、普通の国会の審議の都合から申しまして、そういうことは通常想像されないことであろうと考えます。
  301. 戸叶里子

    戸叶委員 今の点、長官の意見を伺いたいと思うのですが……。
  302. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいま政府委員からお答え申し上げた通りでございます。
  303. 戸叶里子

    戸叶委員 そうであるとすると、これは大へんな問題だと思うのです。今の御答弁を聞いておりますと、どなたか二、三人が継ぎはぎだからけでお言葉をお作りになったんだろうと思うのですけれども、特に今のお答えを聞いておりますと、これは明らかに憲法五十七条の違反ということになる、こういうことを一体どういうふうにお考えになるか、もう一度はっきり長官にお伺いしたいと思うのですが、確かに五十七条の違反ということはお認めになれないでしょうか。
  304. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 違反とは、この何で考えておりません。
  305. 戸叶里子

    戸叶委員 その理由を伺いたい。
  306. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいま政府委員が読み上げましたが、そこに申し上げている通りの理由でございます。
  307. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは杉原さんにあとで伺いますが、先に答弁をされた林さんに伺います。それじゃ国会において証言を必要とする場合、証人を出頭せしめて証言をさせる場合には宣誓をやる、それによってみずから証言をやることになるわけですが、その証人が証言をする場合——その前にまず、それは国会法の何条にありますか、それを伺いましょう。
  308. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま私が説明申し上げましたのは、法制局の意見でございます。法制局としてもああいうふうに解釈されておるのであります。私どもも同様に解釈しておるので、さように……。
  309. 植原悦二郎

    ○植原委員長 質疑は終りました。(発言する者あり)この機会には質問を許しません。     〔「委員長横暴だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  310. 植原悦二郎

    ○植原委員長 横暴であっても質疑は終りました。法制局長の返答として出た以上は、他の機会にあなた方がその議論をするならば、どこで御議論なさってもけっこうですが、本問題についての質疑は終りました。
  311. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行戸叶委員質問はまだ一つ残っているのです。
  312. 植原悦二郎

    ○植原委員長 いや、その質問はもう終ったはずです。戸叶君の質問から起った問題ですから、政府に対する戸叶君の質問はけりをつけなければなりませんが、これに関連した質問をなさることは許しません。戸叶里子君。
  313. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁も私は満足いたしません。これはあと回しにしろとおっしゃったのですけれども、実は秘密保護法に関連した問題だものですから私が追及したわけです。委員長は先ほど打ち切ってしまいましたけれども、これは重大な問題ですから、もっとはっきりした答弁を早く出していただきたいと思うのですが、もう一点伺っておきます。一年前にはこの親法案に反対をしておきながら、その親法案の基礎の精神でわずかの修正をした、すなわち艦艇貸与に伴ってこの一部修正の協定がなされたわけですが、それを適用しようとするのに対して、その親法案に反対しておきながら、これを賛成と見なしてこの法案に賛成してもらおうと出された。このわずか一年の間の心境の変化といいますか、それに対する具体的な根拠というものをさっき伺ったわけなんですが、何の御答弁もございません。幸いにしてここに園田政務次官がお見えになっておりますから、園田さんに伺えましたら御答弁願いたいと思います。
  314. 園田直

    園田政府委員 前後の質問がわかっておりませんから答弁いたしません。
  315. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは質問を繰り返しましょう。今私は大へん言葉を省略いたしましたからもう一度申し上げます。  実は昨年秘密保護法が国会を通過いたしたわけであります。それもぎりぎりで通ったのです。その当時の委員会において十二対十二で通りました。それは当時の改進党が反対をされれからで、その反対の理由は、これはアメリカ秘密を守るものであって、日本に何ら自主性がないということでありました。(「それは違う」と呼ぶ者あり)それは速記をごらんになればわかるのですけれども、そういう理由で反対されたのです。それがわずかの間に賛成になられた理論的な具体的根拠を実は承わったわけなんですが、それに対する御答弁をいただきたいと思います。
  316. 園田直

    園田政府委員 あとで詳細に速記録を調査してからお答えいたします。
  317. 戸叶里子

    戸叶委員 あとで調査するとおっしゃいますけれども、それでは秘密保護法はきょうは討論なさらないのですか。
  318. 植原悦二郎

    ○植原委員長 討論はいたします。
  319. 戸叶里子

    戸叶委員 するのならはっきりさせていただきたい。園田政務次官はあとから調べて答弁をするとおっしゃったのですが、今討論をしようとするときなんですから、あとから調べるのでしたら私ども調べるまで待っておりたいと思います。御答弁だけはいただきたいと思います。やはりこのまま答を保留して、この法案の採決をするというのは非常に不当だと思うのです。あとから速記をごらんになっても変なものだと思うのです。この法案に対する質疑にそのまま答えないでそうして採決したなんということでは、あとから見てずいぶんおかしなものだと思います。
  320. 植原悦二郎

    ○植原委員長 園田政務次官、お答えしたでしょう。     〔「暫時休憩」「進行々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  321. 植原悦二郎

    ○植原委員長 戸叶さんに申し上げます。答弁しないときにはこれを強制するわけには参りません。園田君はあなたの質問に対して答弁なさらないのですから、これをどうするわけにもいきません。委員長は強制するわけにはいきません。     〔「委員長答弁を要求してないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  322. 植原悦二郎

    ○植原委員長 要求するといってしないものをするわけには参りません。     〔発言する者、離席する者あり〕
  323. 園田直

    園田政府委員 お答え申し上げます。御指摘通り、かつて改進党員の時分には、法律案に反対をいたしましたが、その後改進党が解消して、民主党員になった今日、党から提案されたこの法律案に賛成をいたしております。
  324. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁に対しましても、いろいろ言っていきますと、切りがございませんから、不満ではございますけれども、一応了承いたしまして、私の質問を終ります。
  325. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより討論に入ります。討論通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  326. 穗積七郎

    穗積委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりますMSA協定に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案に対して、強く反対の意思を表明せざるを得ません。  理由につきましては、昨年本法案が本委員会において提案をされ、採決されました場合に、われわれは十分討論をいたしております。従って、私はこれを繰り返すことを差し控えまして簡単に要点だけあげましてその理由といたします。  第一点は、そのもとの協定でありますMSA協定並びに船舶協定、今度の艇艦協定等は、平和を維持し、無防備無戦闘を主張いたしております憲法に明らかに違反することは明瞭でございます。その点について、われわれは反対の趣旨を明らかにいたしておきたいと思うのであります。  第二の点は、日本の憲法をじゅうりんいたしまして、アメリカの権力に屈服いたしまして、強制義務をもって強行しつつあります再軍備計画そのものももとよりでございますが、さらに、この計画そのものがこういう幾つかのひもがつけられまして、アメリカに対する従属性をますます強化するものである。この法案は昨年の採決の場合におきまして、前改進党のいささか良心を持たれた外務委員の諸君は、これに反対をいたされました。その理由としてあげておられるところは、これはアメリカ秘密を守るために、日本国民のみが義務を負うものであるという理由であったのです。これはかすかなる良識でございましょう。当時の改進党の再軍備論者の議員にしても、なおかつこの趣旨を明らかにされて反対をされた。今日の情勢においても、この法律の内容において何ら変化を来たしておらぬのみならず、さらに秘密の取締りの対象を拡大いたしまして、その不合理性を強化し、拡大するものにほかなりませんので、私どもは、この従属性の強化をしいられるものであるということを、反対の第二の理由といたします。  第三は、本法案の内容そのものについてですが、これはかつてわが国におきましては、軍事政策に即応して、取締り法として出て参りました治安維持法、これがいかなるものを人民に要求したか。これは歴史の事実の示すところでございます。しかもこの法律の内容におきましては、昨年の委員会においても論議されましたように、アメリカ国におきまする秘密取締りの法律より、さらに拡大されて、特に問題になりましたのは、不当な方法による資料の聴取でございますが、これらのごときは、拡大解釈される危険がありますし、そのことをわれわれはすでにおそれた。こういう法律案を作るときには、人権を尊重します、人権をいたずらに侵害するようなことはしないと口でも言い、いろいろいたしましても、これが一人歩きをいたしますと、その当時の意思とは全然別個な意思を持ちまして、自分自身で動き出すのです。このことは、われわれ今まで経験を持つところでございまして、何らわれわれの杞憂ではございません。ですから、そのことをわれわれは昨年心配しておりましたが、もうすでにこの法律案の改正という形で、さらに秘密の取締り対象が拡大される。こういうことでもありますならば、改正また改正で、一体どこまで行くかわからない。のみならず、本法案審議に当りまして、杉原長官にわれわれが質問いたしますと、軍事的な機密に対しましては、きょうは日本独自の秘密保護法を作るとは言明されませんでしたが、その前提として、すでに共産国に対してはもとより、自由主義同盟国に対しましても、軍を持ちます以上は、各国それぞれ最高の機密を持たなければならぬ。その相手国の機密を探り自国の機密を守るためには、何らかの措置が必要である、そういう論理を導き出すようなお考えが、すでに今日の討議においても明瞭でございます。従って私たちは、こういうような誤まった政策によって、人権が不当にじゅうりんされることに強く反対せざるを得ません。そういう意味で、私たちはこれをもって第三の理由といたします。  そのほかこまかい点はありますが、昨年の討論の際にこの法案の内容の個個の問題についての反対の理由をあげております。今度の法律案は、同様の内容を持ったものでございますから、個々の条文についての反対理由については、当時の討論に譲りまして、以上をもって私は本法案に強く反対するものでございます。(拍手)
  327. 植原悦二郎

    ○植原委員長 須磨吉郎君。
  328. 須磨彌吉郎

    須磨委員 私は日本民主党を代表いたしまして、本改正案について賛成の意を表明いたします。昨年の日米相互防衛協定が締結せられたことに伴いまして、わが国においては、この秘密保護法ができたのでございますが、引き続いて米国から艦艇貸与に関する協定が結ばれたのでありまして、その艦艇が今やわが国において受領をいたしておることになったのでありますから、当然その艦艇に関する機密の保護について規定をする必要が起つたのであります。その理由からして、本改正案の理由は十分であるものと認めまして、われわれはこれに賛成の意を表明するものでございます。(拍手)
  329. 植原悦二郎

    ○植原委員長 戸叶里子君。
  330. 戸叶里子

    戸叶委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております法案に反対の意を表するものでございます。昨年MSA受け入れによって秘密保護法が国会に提出されました。その秘密保護法のときにいろいろ議論せられたところであり、私どもとしてもその保護法に対する反対理由を十分に述べておりますので、本日はごく簡単にその反対理由を申し述べたいと存じます。  この秘密保護法は、憲法によって保障された国民の権利とかあるいは言論の自由が奪われることが、私どもは非常に心配になる点でございます。さらに今日は、あの秘密保護法に対して艦艇にまで追加せられたのでございまして、今後においても、ますますこういう現象が起きてくるのではないかということを、まことにおそれるものでございます。さらにまた先ほど私は、昨年の委員会あるいは本会議において、改進党が反対をされながら、一年の間にこうして何ら理論的、具体的根拠もなくて賛成された理由を伺いましたが、それに対しましての明快なる答弁をいただけなかったばかりか、なお痛い点をつかれたためか、委員の中からは政府の答弁をさえ阻止するような、まことに非民主的なやり方に出たという点に、私はまことに不快の念を持つものでございます。今回何ら一条の改正もなくして、前の親法案をそのまま認められたというそうした点が、私はまことに了解に苦しむものでございます。この秘密保護法が通過することによりましてまず心配することは、拡大解釈をすることによって、多くの人たちが必要以上に圧迫されるという点を最もおそれるものであり、先ほども私が指摘いたしましたが、憲法違反のおそれさえある法案でございます。詳しいことは省略いたしますけれども、そうした憲法違反であり、言論を弾圧し、そうして秘密を守らなければいけないというような言葉がだんだん伝わって、戦々きょうきょうとして、たとえばアメリカからもらった武器などに対してしゃべっていいことまで秘密ではないか、あるいはこういうことを言うと引っぱられはしないか、絶えずそうした危惧の念に襲われるというような点がございます。こうした面から見ましても私は反対せざるを得ません。  秘密保護法の親法に対しましては、先ほど申しましたように過ぐる国会において詳しく反対しておりますので、以上をもちまして反対の理由とする次第でございます。(拍手)
  331. 植原悦二郎

    ○植原委員長 北澤直吉君。
  332. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は自由党を代表しましてただいま議題となっております日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の意を表明せんとするものであります。  今日、日本として最も大事なことは、政治、経済その他あらゆる面におきまして、日本の独立体制を完成するとともに、日本の安全保証を確保することであろうと思います。しこうして日本の現状におきましては、日本の安全保障を確保するためには、日米安保条約日米相互防衛援助協定等を根幹としまして、日米が協同して日本の防衛に当るという以外には道がないと思うのであります。そういうわけで従来日本としまして日米協力によって日本の防衛を全うする、日本の安全保障を確保するという方針をとって参ったのでありまして、その方針に従いまして、昨年合衆国の艦艇の貸与を受けまする協定日米間に締結したわけでありますが、その協定によりまして、日本は貸与されます艦艇についての秘密保護の措置を講ずることが規定されておりますので、この協定の趣旨に従って、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正しますことは、当然必要であるのであります。そういう意味で私ども日米協同して日本の防衛に当るという大きな方針から考えまして、これは当然必要であるという見地から、ただいま議題になっております法案に賛成をするわけでありますが、昨年この親法案であります秘密保護法が制定される場合におきまして、改進党がこれに反対したそうでありますが、その改進党が民主党に成長して私どもの主張に同調されましたことは欣快にたえません。  以上をもって賛成の理由といたします。(拍手)
  333. 植原悦二郎

    ○植原委員長 岡田春夫君。
  334. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は労農党を代表いたしましてこの法案に反対をいたします。その理由は簡単に申し上げますが、四点であります。まず第一に政府の答弁に対してわれわれは納得ができません。先ほどから防衛計画の内容についても、終始一貫杉原長官は満足な答弁をしないで、この国会の議会答弁だけでごまかそうとしておる、そうして具体的な内容はついに発表しなかったのであります。  第一の点は、先ほどの憲法問題でありますが、私この点について質問しようとしたところが、委員長はきょうは暑いせいか知らぬけれども、急に民主的な態度を捨ててしまって質問させなかったけれども、これは明らかに法制局の解釈は誤まっておる。あるいは国会法においては、証言を拒否するということは証人の立場を保護するという意味において証言の拒否の自由が与えられておる。行政機関としての国会においての答弁の義務とこれは本質的に違うのであります。こういう点をいいかげんにごまかしてわれわれをだまそうとしたって、だまされはしない。われわれは軍事機密の内容について国会においてこれを報告をしなくともよい、こういうことが許されるとするならば、これは十年前の軍部が中心になった日本の国会と同じように、軍国主義の国会というものが具体的に現われつつあるということをわれわれは見ざるを得ない。軍部をどんどん育てつつあるような態度と見ざるを得ない、こういう点に対してもわれわれは断じて賛成はできないのであります。この点が反対の理由の第一であります。  第二の点は、この法案に現われておる性格というのは奴隷根性まる出しである、奴隷根性まる出しという点についても説明を要しない。それは先ほど下田条約局長並びに林防衛局長が言っておるように、アメリカMSA協定の話し合いをしたときに、秘密保護法内容については、アメリカと同等のものでけっこうであるということを言っているにもかかわらず、日本秘密保護法を作る場合に、アメリカの指定する秘密日本で守るというこの秘密保護法を作る場合において、もっと過酷な条件を日本の国民に押しつけようとしておる、こういう点において明らかにアメリカにおべんちゃらを言って奴隷根性をまる出しにしておる、こういう法律案にはわれわれは賛成できない。  第三は、今度の改正というのは、これは穂積君の言われたように、今後どんどん改正するための第一歩の措置である。これは政府が考えている秘密保護法を拡大するための突破口であるという意味においても賛成できない。  第四の点は、これは先ほどの防衛庁の答弁によっても明らかのように、単にこれはいわゆる軍関係だけの秘密ではない。さっきの答弁を聞いておっても、国内生産の面においても秘密のヴェールをかぶせるような形になっておる。これは先ほどある政府委員答弁しておった点を聞いても、日本の国内において防衛秘密の事項に関する装備を生産する場合において、その工場内において秘密の事項ができてくるということを認めざるを得なくなってきておる。こういう点から見て、アメリカ秘密日本の国内の生産の面においてもどんどんとヴェールをかぶせて、これを通じて日本の国内全体に対するアメリカのひもつきの秘密を作っていく、これは単に防衛の問題だけではない。日本の産業全体に対するこういう秘密のひもをつけるという形においても、われわれは絶対に賛成できない。  こういう点からいって、私は絶対にこの防衛秘密保護法の一部改正には反対をいたします。
  335. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成立起立〕
  336. 植原悦二郎

    ○植原委員長 起立多数。よって本案は可決いたしました。  なお本案に関する報告書の作成については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  337. 植原悦二郎

    ○植原委員長 御異議がなければさように取り計らいます。  次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれには散会いたします。     午後五時三十分散会