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1955-07-06 第22回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月六日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       伊東 隆治君    楠美 省吾君       高岡 大輔君    夏堀源三郎君       並木 芳雄君    山本 利壽君       福田 篤泰君    渡邊 良夫君       高津 正道君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       今村  等君    西尾 末廣君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  矢口 麓藏君         外務省参事官  安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君  委員外出席者         外務省参事官  石井  喬君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月五日  委員楠美省吾君及び今村等辞任につき、その  補欠として高岡大輔君及び松本七郎君が議長の  指名で委員に選任された。 同月六日  委員芦田均君及び松本七郎辞任につき、その  補欠として楠美省吾君及び今村等君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 七月四日  関税及び貿易に関する一般協定への日本国の加  入条件に関する議定書への署名について承認を  求めるの件(条約第一六号)  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間の延  長に関する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一七号) 同月五日  韓国抑留漁船第六丸六丸等乗組員帰還促進に  関する請願外一件(原捨思君紹介)(第三三四  七号)  韓国抑留漁船第十二共進丸乗組員帰還促進に  関する請願外一件(原捨思君紹介)(第三三四  八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一  部を改正する法律案内閣提出第一二一号)  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号  関税及び貿易に関する一般協定への日本国の加  入条件に関する議定書への署名について承認を  求めるの件(条約第一六号)  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間の延  長に関する議定書締結について承認を求める  の件(条約第一七号)     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしたいことがあります。日本海外移住振興株式会社法案について、農林水産委員会より連合審査会を開きたいとの申し出がありますので、これを受諾したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なければさように決定いたします。  なお開会時日につきましては、理事会の御協議に基きまして、来週火曜日午前十時より開会したいと存じますが、御了承を願いたいと思います。     ―――――――――――――
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 次に、関税及び貿易に関する一般協定への日本国加入条件に関する議定書への署名について承認を求めるの件及び日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を一括議題とし、政府側より両件に対する提案理由説明を求めます。園田政務次官。   関税及び貿易に関する一般協定への日本国加入条件に関する議定書への署名について承認を求めるの件  関税及び貿易に関する一般協定への日本国加入条件に関する議定書への署名について、日本国憲法第七十三条第三号ただし書規定に基き、国会承認を求める。     …………………………………
  5. 園田直

    園田政府委員 ただいま議題となりました関税及び貿易に関する一般協定への日本国加入条件に関する議定書への署名について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、昭和二十七年七月に関税及び貿易に関する一般協定すなわちガットへの加入申請を行なったのでありますが、当時は米国が大規模な関税交渉は行わないとの方針をとっておりました関係もあり、わが国加入前提となる関税交渉会議が開催されるに至らず、やむを得ず一昨年の仮加入宣言によりまして暫定的制限的な参加を行なったことは御承知通りであります。  しかしながら、政府といたしましては、もとより仮加入に満足するものではなく、わが国通商貿易伸長の見地から一日も早く正式加入を実現すべく努力を続けて参りました結果、昨年十月の第九回締約国団会議の決定に基き、本年二月二十一日からジュネーヴにおきまして関係国関税交渉を行うこととなり、交渉参加国は、十七カ国の多きを数えたのであります。この交渉は、利害関係の複雑な関税に関する多角的な交渉でありますだけに、困難かつ長時日の折衝を必要といたしましたが、先般ようやく妥結するに至り、その結果に基きまして、わが国加入条件を定めるこの議定書が作成された次第であります。  この議定書によりまして、わが国は、一般協定締約国わが国ガット上の関係に入ることを希望する国から、その国が現在までに行なって参りました関税譲許適用を受け、また、関税以外の各種貿易制限についてもその無差別適用利益を受けることとなるばかりでなく、ガット締約国団会議を通じて、国際貿易に関するわが国発言権を確保することができるようになるのであり、かくしてわが国通商上の利益を確保増進する上において多大の便益を得ることになるわけであります。  この議定書への署名につきましては、国会開会中のことでもあり、本来ならば事前に御審議をわずらわしました後、署名を行うべきでありましたが、さきに本委員会において御報告いたしました通り議定書付属関税譲許表が最後まで確定するに至らず、署名開始期日である六月七日以前に国会に提出して御審議をわずらわしますことは、技術的に全く不可能でございました。  しかるに、この議定書は、もともとわが国の要請に基き、かつ、わが国署名を当然の前提として作成されたものであり、さらに、他の締約国のすみやかな署名を促す意味においても、率先わが国署名することが絶対に必要と認められましたので、政府は、その責任におきまして署名が開始された六月七日にまっ先にこれに署名し、国会承認は、憲法第七十三条三項ただし書の規定に従い、事後に求めることといたしたのであります。  わが国率先署名は、会議参加国早期署名を促すこととなり、六月七日には、カナダ、デンマーク、フィンランド、イタリヤ、ペルー、スエーデン及びウルグァイが、八日には、米国が、十日には、ドミニカ、ギリシア及びノルウェーが、十一日には、ニカラグァが、十三日には、チリが、三十日には、パキスタンが署名し、現在までに合計十四カ国の署名を獲得するに至ったのであります。  以上の事情を御了察され、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に、議題となりました日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国中華民国との間の通商及び航海に関する事項は、昭和二十七年八月、日華平和条約効力を生じまして以来、同条約附属議定書第二項の通商及び航海に関する取りきめによって律せられて参りました。この取りきめは、元来日華両国の間に通商航海条約締結されるまでの暫定取りきめでありまして、その存続期間である一カ年が満了する際にさらに二年間延長されたのでありますが、その延長期間も来たる八月四日をもちまして効力を失うことになっております。一方、わが国中華民国との間にはまだ通商航海条約締結される段階に至っておりませんので、このたびこの取りきめの存続期間の再延長につきまして中華民国政府交渉いたしました結果、八月五日から一年間延長し、その後は三カ月間の予告期間をもって廃棄通告がなされない限り、そのつど自動的に一年間ずつ延長されること、及び、正式の通商航海条約締結されたときはその効力を失うこととすることにつき意見が一致いたしました。よって七月二日、外務大臣と在本邦中華民国大使との間において、その旨の議定書署名を了した次第であります。  この議定書締結いたしますれば、日華両国は、従来と同様、それぞれ相手国国民、産品及び船舶に対して、関税課金等に関する最恵国待遇を、また、海運、航海及び輸入貨物について並びに自然人、法人及びその利益について最恵国待遇を与えることになるわけでありまして、このことは両国間の通商貿易関係の増進に資し、相互利益に合致するゆえんと信じます。  よって、ここにこの議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  6. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて提案理由説明は終りました。質疑次会に譲ることといたしますから、さよう御承知を願います。     ―――――――――――――
  7. 植原悦二郎

    植原委員長 次に日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑通告順によってこれを許します。穗積七郎君。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 この前の本法案審議のとき、私ちょっとお尋ねしたのですが、日本人が今一番外からの危害に対して心配いたしておりますのは、アメリカ日本基地原爆を持ち込んで、それに伴います被害が一番身近かで、しかも現実性のある危険だということで心配しておるわけですね。それに対して特にあなたは防衛立場に立って、日本の安寧と秩序を守るための責任長官でもあるわけですから、そこでこの問題については先般重光外務大臣が、アメリカ無断で持ち込むような心配はないと思う。もしあったときにはこれを辞退する云々というような御答弁があったようですが、これは一体何を根拠にしてそういうことを言われるのか。そういうことは条約にはございませんし、むしろわれわれの解釈によれば、非常の場合には、向うから一方的に行われる危険すらあるというふうにわれわれは考えておるわけです。そこでこの前あなたにお尋ねいたしましたら、重光外務大臣が向うのある有力な人に会って話をした結果、心配ないと言っているからそれを信じて、私は心配ないと思っている、こういう御答弁であったので、それははなはだ不確かでございますから、あなたの今の防衛庁長官としての立場から、はっきりあなたの判断において安心できるかどうか、もう一度重光外務大臣とよくお話した上で御答弁いただきたいといって、その問題については留保のままになっております。従って恐縮でございますが、壁頭にきょうはその問題について、この前不明確でありました点をおただしいただけたかと思いますので、長官から最初にお答えいただきたいと思います。
  9. 杉原荒太

    杉原国務大臣 重光外務大臣が五月三十一日にアリソン大使からこういう言明を得ておられます。それは米駐留軍は、現在日本原水爆を持ち込んでいない。米国日本承諾なしには、日本原水爆基地としない、こういうはっきりした言明を得ておられます。私はそういう両国政府代表者の間の話でありますから、それを信じておる次第でございます。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 これはそういう議事録とか何か、正式の文書の中に残っておるのですか。相手がそういうことを言った覚えがないといえばそれきりだと思うのですが、それはどうですか。
  11. 杉原荒太

    杉原国務大臣 それは外務大臣がはっきりとそういう言明を得ておられますから、私はそれを信じていいと思っております。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 あなたが個人的に重光外務大臣のそういう言葉を信ぜられるということと別個に、そういう主観的問題でなくして、日本国民はそういう個人的な、または主観的な保証でなくて、客観的な合理的な保証がなくては、われわれは安心するわけにいかないことは当然のことと思います。しかもあなたは防衛長官であること以上に、練達した外交官としての経験識見を持っておられるあなたが、そういうような個人的話し合い、しかもそれは何ら記録にも残っておらない、こういうことで日本の全人民の今の深刻な問題がかかっているわけですが、そういうことで一体安心していいものかどうか、外交上の合理性は一体どこにあるのか、まずあなたの外交官としての御経験なり御識見から、そういう個人的談話信頼性について御所見を伺っておきたいのです。
  13. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはアメリカ政府代表として日本にいる大使から公けに外務大臣が得ている言明でありますから、それは公けのものであることに相違ございません。これは信じてよろしいと思います。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことはわれわれは何ら法的なる拘束力はないと思うのですが、しかも今度やがて出てくるであろうと予想されます濃縮ウランの問題について、議定書に残っている問題でもこれは何ら法的拘束力はございません。さらに先般結びましたMSA協定に伴います全文の共同声明アリソン岡崎さんとのあれも何ら法律的拘束力はないことを岡崎さんにしてしかもなおかつ言明しておられるわけです。従いまして女書にも議事録にも、公文の中に何ら残っていない、今の全くのあったかなきかその信憑性必ずしも客観性のない個人談話により、日本の最も深刻な治安の問題がかかっているというようなことではわれわれは不安でございますから、あなたがもし信じられるなら、その客観的な拘束力についてこれを確保するためにもう一ぺん再確認して、しかるべき方法でちゃんと公的な拘束力のあるようなものになしかえておく必要があると思うのですが、御所感いかがですか。
  15. 杉原荒太

    杉原国務大臣 アメリカ政府代表者言明でありますから、それが日本外務大臣に対する言明でありますから、私はこれを信じてよいと思っております。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 それは今まで外務省としてもそういうことで相手をある程度拘束しようということであるならば、しかもそれにあなたにしても重光さんにしてもそれが公的なる拘束力を持つものだ、法律上持たないけれども政治上それは非常な拘束力を持ち得るのだという信念をお持ちであるならば、なぜ一体当時何月幾日こういうことを話したときにこういう言葉で言われたということを公表されなかったのか。いまだに重光さんは公表されていない。今度も私ども質問しなければ、そういうことは公表されないわけでしょう。だからもう一ぺんアリソン言葉を正確に言っていただきたい。特に問題になりますのは日本国承認の問題でございますが、これは行政協定二十四条における協議字句解釈とともに承認ということが非常に問題になる。さらに先般の富士地区におきまする地元の承認の問題についても、実は非常にこの言葉は問題になるわけです。無断ではやらないけれども承諾条件とするのかしないのか、どういうことなのか。持ち込むことについては基本的には拒否はしない、拒否はしないが持ち込む場合には断わってやってもらわなければ困るという条件付なのか。この解釈については今までの例から見ましてもまちまちでございまして、非常に不安を伴いますから、特にその点を一つ間違いなく言葉を明らかにして、その字句解釈についてもここで明らかにしておいていただきたいのです。
  17. 杉原荒太

    杉原国務大臣 外務大臣は他の委員会でも、最近も同様の趣旨のことをはっきりと御説明になっておる次第でございます。
  18. 岡田春夫

    岡田委員 関連して。ただいま長官の御答弁によると、信ずるというお話がありましたが、あなたはお信じになるかもしれませんが、客観的にこういう問題はどうであるかということを先ほどから穗積委員が聞いているわけです。今度の問題について、あなたはそれでは両国間においてこの個人的な談話拘束力があるとお考えになっておるのかどうか。
  19. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは決して個人的の話ではないのでありまして、アリソン大使アメリカ政府日本における代表者としての公けの立場において言っていることでございます。
  20. 岡田春夫

    岡田委員 それでは拘束力があるものと解釈してよろしいのですか。
  21. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは政府代表しておりますから、その言明に反することはできないものと思います。
  22. 岡田春夫

    岡田委員 拘束力があるとお考えになるならば、この間あなた方の内閣である鳩山内閣において日米共同声明をお出しになったが、これの解釈について予算委員会でいろいろ論議されました。あの共同声明書面によって行われたにもかかわらず、その拘束力鳩山内閣限りの拘束力である、こういう点が明らかになったわけでありますが、この問題については、書面によらざる談話が今後においてどの程度の拘束力を持つとお考えになるか。
  23. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはアメリカ政府のいわゆるコミットメントになると思うのでありまして、そういうふうにアメリカ政府として日本外務大臣に対して言明しておるのでありますから、その意味におきましてこれに反するようなことはできないものと考えます。
  24. 岡田春夫

    岡田委員 答弁が違うのです。私が言ったのは、この政府限りにおける拘束力であるか、それとも今後永久に続くところの拘束力であるか、その点を伺っておるのです。
  25. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今申します通り、これはアメリカ政府の公式の言明でありますから、あくまでもこれはアメリカ政府の公式のものとしてこれに反するようなことはできないと私は思います。
  26. 岡田春夫

    岡田委員 私の伺っているのは、反することはできないと思うという向う側の問題ではなくて、これによって生ずる義務関係拘束力の問題、これが今後どのように続いていくことができるかということを実は伺っているのです。あなたのお話のように、これに反することはできないであろうと思いますという道義的な問題を私は伺っているのではないのです。
  27. 杉原荒太

    杉原国務大臣 アメリカ政府が正式の代表者によってそういうことを言明しておりますから、従いまして私はこれに反することはできないものだと思います。
  28. 岡田春夫

    岡田委員 それでは談話によるところのいわゆる申し合せと申しますか、これはアメリカ政府代表者、いわゆるこちらの出先官憲としての正式の談話ですか。
  29. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは日本における代表者としてのアメリカ大使言明でございます。
  30. 岡田春夫

    岡田委員 そうするとこの談話は正式の書面による議定書と同じものであるとあなたはお考えになりますかどうか。
  31. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは今申しますように、議定書の形にはなっておりませんけれどもアメリカ政府としての公式の言明でありますから、その意味においてこれに反するようなことはできないもの、だと私は考えます。
  32. 岡田春夫

    岡田委員 議定書と同じものであると解釈してよろしいかどうか、この点客観的に私は伺っておきたいのです。これに反するかどうかという問題はまた別の問題ですが、その談話というものの性格それ自体が、文書に表わされた議定書と同じものであるかどうか、その性質を伺いたい、そういうことを言っているのです。これに反するかどうかということはまたあとで伺いたいのであります。
  33. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはその形式文書形式でありませんけれども、実質的に見ましてそういう言明がされておりますから、その意味において私は今申します通りにこれに反するようなことはできないと解釈いたします。
  34. 並木芳雄

    並木委員 この問題は先日来討議されまして、私も非常に重要なことであると思っております。そこで国民の側からいきますと、大臣アメリカ政府の要人との間の口約束でこれが永久に守られるかどうか、こういう不安かあると思います。ですからそれを一掃するためには、日米安保条約並びに行政協定に基いて事前アメリカ日本との間で協議がととのわなければ、原子爆弾というようなものを日本に持ち込むことができないのだということを、はっきり政府言明されることが肝要であろうと思います。条約局長がおりますが、条約局長責任者ですから、この際安保条約行政協定原子爆弾との関係を明らかにしていただきたい。そして日本政府から先方に対して文書でこういうことを交換することはできないか、ただいまの御質問も口頭だと不安だから、それを共同宣言あるいは交換公文と同じように見ることができるかということは、私は質問としてはもっともな質問だと思うのです。それを一つ専門であり責任者である条約局長から、はっきりこの際御答弁していただきたいと思います。
  35. 下田武三

    下田政府委員 原子爆弾の問題と安保条約行政協定との関係ということでございますが、御承知のように安保条約は、極東の平和及び安全のために日本におる米軍が使用することができるということをきめたのが主眼でございます。また行政協定はそのための米軍の配備を規律する条件を定めたものであります。そして本委員会におきましてしばしば指摘されましたように、別に行政協定そのものにおきましては、駐留米軍がいかなる兵器を持ち込んでいいとか悪いとかいうようなことは書いておりません。しかしながら行政協定締切当時には、今日のこの事態は実は予想されておらなかった問題であります。そしてこの問題は非常に重要な問題でございまして、原爆を使うというような事態は、当然行政協定二十四条によって協議をしなければならない問題であることは、これは自明の理であると思うのです。そこでただいま問題になっておりますのは、米軍日本において原爆を持ち込み、それを使用することの日本に及ぼす不安からいたしまして、これを持ち込まないというコミットをした。そしてそのコミットの仕方が適当でないという御意見がおありのようにお見受けしたのであります。およそいかなる政府対外関係におきましていろいろなコミットをいたします。そのコミットのうちには、法律的に厳格な条約のような女書コミットするのが適当であるというものもございますし、またその事柄の性質上、おのずからそういう法律的に拘束する条約のような形式をもってするのを不適当とするものもあるのでございます。このような原子爆弾のような問題、これは国際的に原子爆弾の戦術的の使用禁止というような国際条約ができておりますならば問題はございません。しかし各国の努力にもかかわらず、まだそういう国際的な約束がないときに、アメリカだけにある特定の地域において永久に使用するなという法律的の約束をしろといってみたところで、これはアメリカに限らずどこの国でもできないことは、今の国際情勢からいたしまして私はやむを得ないことだと思います。そうであるといたしますと、この際この時におきまして、アメリカとしては現に日本原爆を持ち込んでおらぬ、そして将来もし持ち込むようなことがあれば当然日本協議して、日本承認を求めると、外国におる一国の最高代表者たる大使が、その相手国外務大臣に対して公式に言ったということの公式のコミットメントは、現在の時代においてなし得る最高コミットメントであると私は思うのであります。それじゃこれをただちに条約にしろと言いましたところで、これは先ほど申しましたように、現在の時代に適さないということは御承知のことであると思います。でございますから私どもは今日の日本といたしまして、これ以上のコミットを求めることは不可能である、これがちょうど適当なコミットメントである、そう存じておるのであります。
  36. 並木芳雄

    並木委員 そこで私確かめておきたいのでございますが、最近の立川とか、横田、木更津、伊丹その他の飛行場の拡張に際して、私どもは全然知らないのですけれども、そういう方々が知っているのかどうか、これは原子爆弾を持ってきてここで積みおろしをするのだということを盛んに宣伝する一部の人がいるのであります。このことはもちろん私はただいままでの政府答弁で問題にならない、全然根拠のないことであると思っておりますが、それをはっきりしていただきたいのでございます。それで今までアメリカの方でどういう種類の飛行機が何機来ているとか、また陸上部隊は何人どこへ配属しているとか、海軍の方はこうだとか一々その動静について政府に先方から通告がなされておるものでございましょうか。全然日本政府米軍及び国連軍の動静については、つんぼさじきに置かれておるものでもりますか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  37. 杉原荒太

    杉原国務大臣 第一の原爆の点につきましては先ほど申し上げた通りであります。それからアメリカの軍の動静等は、これは公けになっていないわけでございます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと委員長に申し上げておきますが、長官に本法案審議について他に質問があります。原子兵器持ち込みのことについて私の質問を終ったら一ぺん途中でやめますから、それで関連してやっていただきたい。  ちょっと条約局長にお尋ねしますが、ここで問題は二つあると思うのです。一つはこういう談話拘束力について問題がある。第二点は承諾を求める云々というその内容について問題がある。それで二つに分けてお尋ねしますが、これは私は何らかの政治的な拘束力はあるかもしれないが、国際法上法律的な拘束力はないと思うのです。おわかりだと思うから説明は省略いたします。ですからそれについてあなたのお考えをお聞かせいただきたい。あなたは大臣ではないわけですから政治的な判断はなく、条約局長としてごく客観的な合理的な御答弁をいただければいいのであって、それをどう解釈するかは大臣の任務だと思いますから、申すまでもないことですけれども、あなたが条約局長としての立場に立って、この談話法律的な拘束力はない、かすかなる政治的または道徳的な拘束力はあると言えば言えるでしょう。また事実を確かめなければなりませんが、もしあったと仮定するなら、それ以上のものではないと私は思うのです。それについてあなたの正確な御解釈をこの際伺っておきたいと思います。
  39. 下田武三

    下田政府委員 国際法の本にも書いてございますように、国際約束というものは必ずしも文書でなくてもよい、口頭の約束もあるということでございますから、本件の場合は文書がございませんでも、インターナショナル・コミットメントで明らかに法律的にも効果のある約束だと思うのであります。もちろん法律的の意味以外に、政治的、道義的の大きなコミットであることは申すまでもないのであります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 それではその問題について関連してちょっとお尋ねをしておきますが、先ほど申しましたMSA協定に伴いまして、岡崎アリソン共同声明の中で最も問題になりましたのは、外地出兵の義務は負うものではない、これは国際法上何らお互いを拘束するものではないということで、これは単なる政治的な申し合せにすぎないということを、アメリカ一辺倒の岡崎さんですら実はこの委員会において答弁なさった。今日の濃縮ウランに対しまする交換公文の中に記録されたものについても、あなたの先般の御説明でも、これは法律的に何ら拘束力を持つものではない、こう説明されたわけですが、もっと厳密にこの談話とそれとどう違うのか、もう少しちゃんとした答弁をしていただきたい。
  41. 下田武三

    下田政府委員 岡崎大臣の言われましたことは、その言われた内容自体が法律的意義を発生するのじゃなくて、MSA協定自体から法律的には海外出兵の義務が出ないという法律的事実を声明の中で明らかにされた、つまり解釈を明らかにされたのでありまして、声明自体から法律的効果が発生するのではございません。協定から発生いたします法律的の意義を声明で明確にされたということであると思います。またウラニウム協定の交換公文は、私は全然法律的の義務がないと申したわけでございません。つまりひもになるかならないかという点が問題でございまして、私の見解では法律的なひもにならない、つまり将来もし日本側が希望するならば、動力用の原子炉についても援助を与えることについて追加の協定をすることを協議する用意があるという趣旨であります。ですから法律的に申しますと、協議をするという義務があるわけです。しかし将来もし日本政府が希望するならば、あげてわが方の意思による、法律のひもにはならないという点を私はこの前強調したつもりでおるのであります。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 その点は私は非常に不十分だと思うのです。それじゃさっき岡田委員があげました先般の防衛分担金に関する共同声明の場合でも、これは現内閣に限るものだといってその時期を限って条件がついておる。それと区別して、この談話はそういう拘束力を持ち得るということは私は納得ができないのです。杉原さんにしても、あなたにしても、外交官としての経験識見日本国民の安全のために利用されないで、むしろそれをごまかすために利用せられるということは、はなはだわれわれは遺憾です。私はこれは法律上の拘束力はないと判断せざるを得ないのであって、政治的な拘束力はあるかもしれない。しかしそれ以上のものではない。法律的な拘束力は持たないと思うのです。そこをはっきり区別してもらいたい。拘束力には法律的、道徳的、政治的拘束力等いろいろあると思うのです、法律的拘束力は私はないと思うのです。その点をはっきりしていただきたい。一体何を根拠にしてそういうことを言われるのか、もう少し精密かつ正確に御答弁をいただきたいと思います。
  43. 下田武三

    下田政府委員 先般の防衛分担金に対します共同声明、これの性質についてもたびたび御議論がございましたが、あの中には、御承知のように前半の一、二、三という交渉の結果到達しました合意を記録した部分がございます。これは政府限りの合意でございます。ただこれは国会で予算が承認されることを条件としての合意でございますから、国会を拘束する合意ではありませんが、政府限りといたしましては、これはあくまで約束でございます、後半の方は御承知のように政府の方針や政策を述べたものでありまして、これは現内閣といたしましてはもちろんその実現をはかるべきであります。また現内閣といたしましては、後継内閣に対しましてその実現方を強く希望するものでありますが、これは政策でございますから、もし内閣がかわりますれば、いかなる内閣といえども独自の政策を立て得ることは当然のことでありますから、これは法律的に次の内閣まで縛るというものではございません。しかし前半と後半とは明らかに法律的の意味が違っておりまして、前半は国会を拘束はいたしませんが、政府といたしましては明らかに合意でございます。それから今回のアリソンの意思表示というものは、先ほど申しましたように、国際約束というものは必ずしも文書をもってするを要しないわけであります。明確に日本承認を求めるということを言っておるのでありますから、これ以上私ははっきりした約束はないと思うわけでございます。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 約束はわかっていますよ。それが法律的な拘束力を持つということをはっきり説明してもらいたい。政治的には拘束力はあるでしょう。
  45. 下田武三

    下田政府委員 法律的に拘束するものは必ずしも文書をもってしなくてもいいという国際法の通説でございます。現代におましては条約なり協定なりの文書による約束が多いわけでありますが、必ずしも文書によらざる約束を排除することにはなっておりません。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 それでは長官にもお尋ねしてはっきりしておきたいと思いますが、長官法的拘束力があるという解釈ですか、政治的拘束力があるという解釈ですか、どちらですか。
  47. 杉原荒太

    杉原国務大臣 それはアメリカ政府日本政府との外交上における一つの措置でありますから、私は外務省の見解に従うべきものだと考えております。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 杉原さんにしては非常に不満足な非良心的な御答弁で、外務省解釈によらざるを得ないというのはいかにも事務官僚的な御答弁ですが、私の聞いておるのはそういうことではなくて、再々申すように、日本人が今一番心配していることについてあなたが――日本の平和と秩序を妨害する危険について、一番大きな危険はこのことなんです。ですからそういう問題について責任を持っているあなたが、外務省解釈がそうだからそれに右へならえで何ら批判をしたり検討する必要はないというような、めくら判を押すような御答弁では、これはとてもしようがない。そういうことではわれわれ安心するわけには参りません。ですから国民に向って防衛上の治安維持の責任を持っておるあなたは、かくかくの理由によって、こういう確かな証拠があるから、これは国際法上法律的な拘束力を持つものであるから、諸君はどうぞ安心してもらいたいということを、国会を通じてはっきり、私が質問しなくても進んで明らかにさるべき職務上の責任があると思うのです。それに対して外務省解釈に右へならえだというようなことではどうかしていると思うので、もう一ぺんお尋ねいたしますが、これはあなたの御解釈によれば、一体政治的な拘束力を持つものであるか法律的な拘束力を持つものであるか、どちらの御解釈でありますか、外務省解釈ではないあなた独自の御見解を伺いたいと思うのです。
  49. 杉原荒太

    杉原国務大臣 アメリカ政府がその正式の代表者によって公式に言っておることでありますから、その点の拘束力はあるわけでございます。私はその点をもとにして考えていいと思っておるわけでございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 さっぱり御答弁が前へ進まないので、あなたは私が察知するのに、やはり政治的な拘束力にすぎないというふうに思っておられるから、そういう苦しい御答弁をされるのだと思います。そういう政治的拘束力なら政治的拘束力でいいのです。問題はそれからその前提に立ってまた前へ進むわけですから、一つ前へ進むために政治的拘束力とお考えになっておられるのか、法律的拘束力とお考えになっておられるのか、どちらかをはっきりお答え願いたい。そういうばく然としたお話でなくて。
  51. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはただいま条約局長が申し述べたと同様の見解を持っております。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 それではわれわれの国際法上の常識からいきますと、こういう口約束で安心するわけにはいきません。ですからそれがもっと明確にしかもこういうことが、――もしアリソンが死んだりあるいはまたやがて更迭してどこかへ行ったり、政治的な発言権がなくなってしまったような場合に、そういうことをどうも記憶しておらぬというような話になってしまえば、それっきりのことであって水かけ論です。ですから何か速記録に残っておるのか、テープレコーダーをとってあるのか、あるいはもう一ぺん文書で、日本国民が原子力問題については、他の民族と違って特殊な神経質な心配をしておるから、安心してもらうためにこういうことを五月三十一日にちゃんとアリソン大使は言われたが、その通りに間違いないか、それを国民に向って一つ安心させるために、アメリカ政府自身のちゃんとした承認を求めたいということでもって明らかにすべきだと思うのです。それくらいのことは当然だと思うのです。それをおやりになるのが当然だと思いますが御所見はいかがでございますか。
  53. 下田武三

    下田政府委員 ごもっともな御意見でございますが、先ほど申し上げましたように、まだ国際的に原子兵器の使用禁止という約束ができていないときに、ある一国に対してある特定地域に使用してはいかぬという禁止を永久的な規定としてやることは、これはできないことは明らかだと思います。しかしながら、一国の正式の代表者相手国外務大臣に公式に述べたという約束をいかに取り扱うべきかという問題に入ってくるわけでございます。従いましてこれを文書の形、条約とするということはこれは適当でございません。しかしこれにつきましては先例もございます。英国に米軍の飛行基地が設けられましたときに、労働党の左派の方から、飛行場の基地を作る前に、これは原爆基地に使用されないという保証政府は求めたかという質問が出まして、チャーチル首相は、それはもっともな心配であるといってアメリカ側に対して、これが実際の原爆戦争に使用については、アメリカ政府は当然英国政府承認を求めることになったといって、議政壇上で国民にその経緯を明らかにしたことがございます。でございますから、重光外務大臣はそれと同じことを、――これを国会で発表されるにつきましても、アメリカ側の承諾を得た上で、最も効果的な発表方法をおとりになったわけであります。英国の例にかんがみましても、今日といたしましてはそういう公式の約束を取りつけ、それを国会の席上で発表なさるという手続が、私は最も時宜に適した方法ではなかったかと存じておるのであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 その国会において発表する場合に、アメリカ承認を求めたということですが、これはいつだれがどこでやったのですか。
  55. 下田武三

    下田政府委員 外務大臣国会で抽象的な御答弁をなさいました後に、米国側に対して、国内の論議にかんがみてこれをやはり公けに発表されたい気持から、アメリカ側の了解を求められまして、アメリカ側の了解の上で正式に発表をなさったわけであります。それはいつであったか、私は記憶しておりません。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 これはやはりことごとく外務大臣にもかかっており、もとはそこから出ておるわけですから、外務大臣がお見えになってから、今の不明確な点については続けて明らかにしたいと思いますから、その点に関する質問は留保いたしまして、続いて今度は内容について質問いたします。  先ほど私が心配した通りに、ここに承諾なくしてということがあるわけですが、これは行政協定の場合でも、この間の富士地区の演習の場合でもそうですが、原子兵器の使用を日本政府が根本的に絶対に拒否するという権限は、国際法上というか、国際通念上認められない。すなわち日本は、アメリカがアジアの治安の維持のためにこの国に基地を置くことをアメリカ承諾を与えておる。そのアジアの治安を守るためにこういう武器々使うことが必要になってきたという判断の上に立ったときに、理由のいかんを問わずこれを使用することをお断わりするということは、今あなたの言った通り、国際通念上そんなことは無理な拒絶であって、そういうことはなし得ざることだという前提にあなたはすでに立っておられる。この前、山梨県知事が、あそこで実弾射撃をすることは絶対に困ると言ったことは、実は協定違反の言葉なんだ。協定そのものは、やはり基本的原則としては実弾射撃をすることを承認しておって、そうしてやるときには承諾条件とするというのであるから、正当な理由をつけた、時間を延ばすとか、やっては困るとか、いつまでは困るとか、そういう協議に応ずる権限はあるけれども、これを根本的に、永久的に拒否する権限はないのだという解釈であったわけです。今度の場合にもそれが出てくると思うのです。行政協定二十四条の協議の問題についても、将来そういう事態が起きてきたときには必ず出てくるのが当然であって、無断にはやれない。事前承諾は求めるというだけのことであって、それに対して日本政府日本国民がこれを絶対に拒否する権限はない。そういうものは認められていない。またはそういうことをやって事定上使用を不可能ならしめるような断わり方は、今の安保条約の基本的精神に反するものであるという解釈が必ず出てくるにきまっておる。アメリカが言うでしょうし、アメリカ一辺倒の日本の政治家、または外務省の方々もそういうことを言われるに違いない。現にもうすでに、世界で今日原子爆弾の禁止の条約というものができておらぬときに、アメリカに向って日本基地において絶対に使ってはいかぬなんと言うのは非常識だ、そういうことを言うのは無理なお断わりの仕方であるということをあなたは今おっしゃっておられる。ですからその承諾を求めるということの内容の解釈が実は簡単ではないわけです。今までの例からいきましても、こんなことで安心しておるわけにはいかない。やがてそういう深刻な事態が起きたときには必ずこれが出てくると思うのですが、まず、条約局長にお尋ねする前に、長官からそのことについて御答弁をいただきたい。
  57. 杉原荒太

    杉原国務大臣 向うは日本承諾なしには原爆を持ち込むことはないということを言っておるのでありますし、また外務大臣もしばしば国会でも言明しておられますように、今また条約局長も申しましたが、原爆の問題というものは安保条約の予想していないところだ、こういうわけでございますから、拒否については日本側として自由の立場にあるものだと私は解釈しております。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 それでは続いてお尋ねしますが、いかなる事態においても、あなたはこの国の基地原爆を持ち込み、原爆をこの基地から使用することを拒否なさるおつもりであるのかどうか。状況のいかんによっては、これに承諾を与えるおつもりであるか、どちらでございますか。
  59. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは要は私こう考えます。原爆を使用し合うような戦争という事態というものは、そういう悲惨なことはとうてい耐えられないところである。そうしてまた国民もその点非常に心配しておる状態でございますから、そういう国民の意思に反して政府で勝手にやる、そういうものじゃないと思います。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 勝手にやるといって非常に言葉を濁されますが、私の聞いているのは、われわれはいかなる事態においても、この国の基地原爆を持ち込み、この国の基地から原爆を使用するというようなことは、国民のひとしく反対するところだと信じます。政府もそういうお考えで臨むべきあって、この承諾を求めるということについては、その承諾は、いかなる条件においても、いかなる時期においても、拒否すべきものだと思いますが、状況いかんによってはこれに承諾を与えるおつもりであるのか。いかなる事態においても、いかなる時期においても拒否されるおつもりであるのか、どちらでございますか。その点はっきりしておいていただきたい。
  61. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は、こちらが原爆の使用とか、あるいは持ち込みとかいうことを認めるような事態ということは、今想像できないのでございます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 想像しないことが突発的に起るのが国際情勢でしょう。われわれの常識からいえば、今こんなに兵隊などをふやす必要はないと思うのです。軍縮は可能であり、平和外交は可能だと鳩山さんが言いながら、どんどんアメリカにしりをたたかれて軍隊を作っておるわけですからね。だからそういうことをいえば、ふやす必要のない国際情勢であるにかかわらず、突発的にどういうことが起きるかわからぬらか、天から落ちてくるかもわからぬから、それに備えるために云々と言われるわけですから、あなた方の解釈によれば、いつ、どういう事態が起きるとも限りません。そういう場合に、どうされるつもりであるか、それについて心配だからお尋ねするのです。
  63. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は日本原爆基地になって、そうしてしかも日本の国に悲惨な事態が起る、そういうことは絶対にないようにすべきものだと考えております。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 これは非常にはっきりしないのです。そういうふうにぼかされないで、やはり良心的に、もう少し国民に安心させるために、お答えいただきたい。ところがそういう含みのあるような、ぼかしたような答弁をなさるというと、そこからまた揣摩憶測が出てくることは当然でございます。並木君がさっき、一部の諸君が――一部の諸君というのはわれわれのことでしょう。われわれが、航空基地が拡大されることは原子兵器使用の可能なことを見越してやっておるのだと言ったのを、つまらぬことを言っておると言うが、それは当然なんです。あなたがそういうことを言われるのは、そういうことを裏書きしておるのです。だからこの際はっきりとお答え願いたい。絶対にやらぬということを……。
  65. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは、日本国民が非惨な目にあうようなことは絶対にあっちゃいかぬから、国民の意思に反してやるようなことは絶対しないということを外務大臣も今までも申し上げておる通りでございます。私はその外務大臣意見と同じでございます。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 すべてやられるときは、国民の意思はどうだというようなことは勝手に主観的に解釈されるのであって、たとえば昨日の憲法調査会の論議に当っても、国民の世論はもうすでに憲法改正反対の――憲法改正ができない条件を満たすような投票をしておるわけです。それが国民の意思だというのに、そんなものは間違った意思であって、ほんとうに憲法改正をして再軍備を強化することを願った意思ではないというふうに、まげて勝手に主観的な解釈をされて、どんどん先に行かれるものですから、国民の意思に反する。国民の意思に合致してやるというような条件国民の意思が迎えるならば、原子兵器を持ち込むことに承諾を与える。国民の意志に反するならば、国民の意思を無視してそういうことをしないというような、そういう条件でもってこの問題に対する態度をきめられることは、これは私どもとしては非常に不安定でございますから、こんなもので安心するわけにはいきません。それよりあなた自身、または現鳩山内閣自身のほんとうの信念を一つ聞かしていただきたいのです。あらゆる条件、あらゆる時期においても、原子兵器の持ち込み並びにこの国の基地からの使用に対して反対をいたします、それを許容することはいかなる場合においても考えておりませんということを、はっきり御答弁いただきたいのです。
  67. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は今申し上げましたように、われわれがこれを持ち込むことに承諾するというようなことは、今とうてい考えることはできません。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 今の情勢がそうじゃないということじゃないのですよ。今の情勢が、原子兵器を使うような情勢であるかどうかということを聞いているのじゃなくて一むろんそれは、使うときはもっともらしい情勢を作り上げるか、それを説明してやるにきまっておる。ですからそういうことを私は言っておるのですよ。そのときこそが危険なので、今この際に原子兵器を使うというようなことを、何もとっこつとしてわれわれは心配するということじゃありません。むしろ国民の世論なり国際情勢の判断については、あなた方はそういうことを言っておらんで冷静な判断をしないが、冷静な判断をすれば、このような耐乏生活を要求する予算を組んで、兵力を増強するような約束をするはずはないのですよ。それを無視しておやりになっておられる政府であり、あなた方てございますから、だからこそわれわれは心配して聞いておる。今の情勢がどうだということを言っているのじゃないのです。そうじゃなくて、もっともらしく見えるような情勢が起きたときにも、原子兵器を使用するということは、その目的のいかんにかかわらず、原子兵器戦争というものは、その目的以上の罪悪を人類に及ぼすものであるから、われわれはあくまで反対するという態度をおとりになるのかどうか、その点を私は聞いているのですから、はっきりしていただきたい。情勢判断ではありません。
  69. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今私はとうてい日本政府として、原爆を持ち込むことに承諾するということを、今情勢を判断いたしましても考えられないのでありますが、仮定の問題といたしまして、万一敵側が使用した場合に、こっちが黙っておらなければならぬか、こういうことまで考えていくと、これはなかなか断定的には言いにくいものがあると思う。しかし私はとうていそういうことは今の情勢としては考えておりません。
  70. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積君、もういかがですか。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 これは実は時間が幾らかかってもやらなければならない重要な問題ですが、きょうは他に質問者もおありになるから、私一人でやって迷惑をかけてはいけませんから、一まずこれで打ち切って、この問題は重要ですから、鳩山さんと重光さんに重ねてお尋ねすることにいたしたいと思います。留保して質問を終ります。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して。大へん大切な問題ですので、確かめておきたいと思います。先ほど条約局長の御答弁を聞いておりますと、いかなる政府コミットする。という場合に、いかなるものをも条約にするとか、あるいは書いたものにするとかいうことはあり得ない、話だけの場合があり得る、こういうふうにおっしゃいました。そういたしますと、もしもこの政府がかわるなりあるいは大使がかわった場合に、次の政府が新しくコミットしなければ、前の政府コミットしたものは有効でないかどうか、こういう点を一ぺん確かめておきたいと思います。
  73. 下田武三

    下田政府委員 いやしくも一国の大使が公式に相手国政府に申しましたことは、その大使が更迭いたしましょうと、またその本国の内閣がかわりましょうと、これは政府の同一性の見地から、やはり続くものと思います。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、結局法律的な拘束力――時間がないので大へん飛躍した言い方ですけれども、今までの質疑応答を通じておわかりと思いますが、そうすると、結局法律的の拘束力もあるというふうに、なぜはっきりここでおっしゃれないでしょうか。
  75. 下田武三

    下田政府委員 口頭の約束でも、これは法律的の拘束力も、また政治的、道義的の拘束力もすべてあるわけであります。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 それならば、なぜこの問題は文書として書き表わすことができないでしょうか。どういう問題を文書として書き表わすべきであり、どういう問題が書き表わせないかということに、私どもは疑問を持たざるを得ないのですが、この点わかるように教えていただきたい。
  77. 植原悦二郎

    植原委員長 その点条約局長は、きわめて明瞭に説明しているのですが、どうかよくお聞き願いとうございます。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題を、なぜ文書にしなかったかということを聞きたいのです。
  79. 下田武三

    下田政府委員 口頭の約束にとどめたために、いろいろ御不安があります。その場合に、その口頭の約束をいかなる形式で公けのものとするかという方法は、いろいろございます。先ほどの、チャーチル首相が議政壇上で公けにしたという形式、これは重光外務大臣によって踏襲されたわけでありますので、私ども国会を通じて国民に分けにされたということは、それの拘束力を与える最も大きな方法じゃないかと思います。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、日本内閣がかわった場合にも、重光外相が国会で公けにした以上は、これは心配ない。こうおっしゃるのでしたら、もしもアリソン大使がやめてほかの大使にかわった場合でも、これは何ら差しつかえない、こういうふうに了承してもいいわけですね。  それからもう一つ杉原長官にお尋ねしたいのは、先ほどからの穗積委員の御質問に対する答弁を伺っておりますと、私どもどうしても納得のいかないのは、そういう原爆を持ってくるような事態を作らないようにするというふうに答えていらしって、どんな持ってくるという申し込みをされても、これを拒否するかどうかということに対しては、いつでも答弁をそらされておりますけれども、私どもとしてははっきりと、そういうような申し込みには応じられないというふうに、なぜお答え願えないかということがまことに疑問ですけれども、う一度この点をはっきりさせていただきたい。
  81. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今そういう申し入れもないのでありますが、またかりにありましても、今政府としてはそれはとうてい応ずることはできません。ずっと先の一つの仮定の問題までは、私今想像できませんけれども、そこまで含めて言え、こうおっしゃいますと、それは具体的の状態というものと別にして、断定的に今私が申し上げることはできないと思うのです。
  82. 森島守人

    ○森島委員 関連質問で、条約局長にお尋ねしますが、これはいずれ大臣にもお尋ねしたいと思うのですけれども、五月三十一日にアリソン大使重光外務大臣との間で、重要な会見があったことは御承知通りであります。これにつきましては外務省として、その重要な問題については記録をとっておられると私は信じておりますが、記録がとってありますかどうでしょうか。
  83. 下田武三

    下田政府委員 記録というものは、別にとっておりません。
  84. 森島守人

    ○森島委員 かかる重要な問題につきましては、特に将来の正確を期するために、記録をとるべきものだと私は思う。今チャーチルの例をお引きになりましたが、私は別の例を引きましょう。たとえば、今ビルマとの賠償問題が相当重要になっております。大体妥結圏に来たと伺つておりますが、この問題がごてました最も大きな問題は、岡崎君が、最初の二、三年は一万二千ドルでよろしいということを言ったと、こう伝えられている。しかしビルマの当時のウ・チョウ・ニェン外務大臣代理は、二千万ドルと言ったということで、双方の間の意見が合致しなかった。しかもそのときには議事録もとってないということで、水かけ論になった。かかる重要な問題についても意思の合致ができていなかったが、日本国民にとって非常な重要な問題であるこの原水爆問題について、記録をとられなかったということは、私はきわめて不自然だと思う。その理由を伺いたい。
  85. 下田武三

    下田政府委員 一外務省限りの議事録よりも、国会で正式に声明されまして国会議事録に載るというほど大きな記録というものは、私は国としてないと思うのであります。
  86. 森島守人

    ○森島委員 それではもう一点進んでお伺いいたしますが、国会言明したのが一番いい、有効な方法だとおっしゃる。しかしそれにもかかわらず、国会内においても非常な疑惑がある、心配がある、日本国民全体の間においても非常な心配がある、この心配をなくすることが外務省としての私はとるべき責任である、こう信じておるのであります。これに対して何らか方法が私はあると思う。お答えありませんか、なければ私からお教えします。
  87. 下田武三

    下田政府委員 外務省の記録でもいろいろございます。ほんとうに記録としてそのときの事実をつづるものもあります。しかしそういうものはないということを申し上げたわけでございます。後日になって御承知のように各局とも執務報告というものを作っておりますから、そういうものを作ります際には記録として現われております。またそういう事実を出先の大公使等に知らせるという文書もこれまた記録の一種と見られるわけであります。そういうものは公けにできるものではありませんが、外務省の事務的な見地からしまして困らないような書類は、それはあると思います。
  88. 森島守人

    ○森島委員 私の尋ねているのは、そのような外務省限りの一方的な記録ではないのです。私はもう一歩進んで申しますと、今言ったような重要な会談の内容を両者一緒に書きものにしてこれを確認するという方法をおとりになることができぬか、またはアリソン大使はこういう声明をしたということを重光外務大臣からアリソン大使にもう一応コンファームする手紙を出して、それに対するアメリカの確約をお取りつけになることができないか、これくらいのことができなければ外務省存在の理由もない、こう私は信じておりますが、その点に対するお考えはどうです。いずれ私は大臣にお問いいたしますが、条約局長の御所見をあらかじめお伺いしておきたいと思います。
  89. 下田武三

    下田政府委員 防衛分担金妥結の際の日米共同声明のようにサゼストなさったものではないかと思うのでありますが、御意見の点は外務大臣によくお話して私どもの参考にいたしたいと思います。
  90. 森島守人

    ○森島委員 もう一点私御注意申し上げたい。両国間で完全に合意ができたということで、大野・ガルシア協定、これなんかも仮調印までしておった、そして日本から全権もお送りになった、しかもこれが破れた事実があるのですから、単なる一片の口頭の約束か応答を議会で報告しただけでは、完全に国民を安心させるだけの効力は私はないと思う。口頭の約束でも法的効力があるという説は私は肯定いたします。しかし法的効力をさらに一層確実にするために有効な方法をおとりになることを私は切に要望しておきます。いずれ外務大臣に対してこの点はあらためて御質問申し上げるつもりでございます。
  91. 和田博雄

    ○和田委員 これは外務大臣にも聞きますけれども穗積君が大体いろいろな点で聞いたのですが、ただ私一点だけ聞いておきたい。それは原爆の貯蔵の問題について、安保条約行政協定を結ぶときにそういうことは予想しなかった問題であるということを言われたのですが、それはほんとうにそうだったのか私伺っておきたいと思います。われわれは安保条約行政協定に反対したときに、やはりこういう条約を結べば、この次の戦争は水爆の戦争だということがはっきりしているのだから、日本としては言質を与えることは困る、日本のいわば非常な運命に関することだということで反対したことを記憶している。事実あの当時の情勢からいえば、なるほど占領状態であったけれども、平和条約なり安保条約、それからことに行政協定を結ぶときには、世界の緊張も非常に強かったし、原爆、水爆の戦争だということが大体常識になっていたと思うのです。もしもその問題を全然頭の中に入れずにおいて、安保条約やあるいは行政協定を結んだとするならば、これは私は非常な政府の失策だったと思うのです。そうではなくていろいろ考えておったのだが、平和条約や安全保障条約を早く結びたいために、外務省の方でもそういう点について論議を尽さなかった、そういう今あなたがおっしゃったようなことだとすれば、私はあのときの世界情勢や国内情勢から見て納得できない、その点は今原水爆の貯蔵のことが問題になっているから、何とかうまくつじつまを合せようというのではなくて、われわれはこの問題についてはもっと真剣な率直な討論をして、日本の国としての行くべき大きな道を考えていくことが筋だと思うのです。ですから防衛庁長官なんかは、いろいろ条件はあっても、今の政府責任としては、向うから申し込んできたら拒絶するとはっきり答えて当然だと思うのですが、気がつかなかった、予想外であって全然論議にならなかったという点は、事実はどうなのか、その点だけを確かめておきたいと思います。
  92. 下田武三

    下田政府委員 安保条約及び行政協定締結当時に、原爆戦が当然これに伴って起る問題であるというようには、日米両国とも考えておりません。従いまして交渉の過程におきまして、原爆のゲの字も実は出ていないのが事実でございます。
  93. 和田博雄

    ○和田委員 軍事上の、ことに原爆、水爆のことについては、おそらく秘密であったことであろうと思います。しかし原爆なり水爆なりがこの次の戦争の主要な武器なるということは、軍事専門家の間には私は常識であったと思う。各国ともにそれぞれ原水爆の点について研究も進めておれば、いろいろな意見が相当あったと思う、そういう点についてアメリカ側が言うことを拒んだのか、わざと言わなかったのか、あるいはこちら側がほんとうに不勉強でそういう問題は提出しなかったのか、そういういろいろなケースが私は考えられる。それでその点はあまりそういうことを強調されることは私はかえってどうかと思う。日本政府というものが将来を考えずにその場だけのことを考え外交交渉をやってきたという実証みたいになってしまう。そういうことはわれわれとしては言葉をもう少し度しんでもらって、もっと真正面からこの問題に対してのお答えをしてほしいと思います。
  94. 下田武三

    下田政府委員 安保条約行政協定締結当時に、原爆の問題が両当事者の議にかりに上ったといたしましても、私は規定はやはりあの通りではなかったかと存ずるのであります。つまり行政協定米軍の持ち込む兵器に制限を置かなかったということは、制限がないから直ちに原爆を持ち込んでいいという結論には私はならないと信じているのであります。つまり機関銃はどういうのは困るとかあるいはタンクは重いものは困るとか、そういう問題が実はその過程で取り上げた問題であります。また先ほど穗積委員の御指摘になりました演習場の問題も、具体的にどこの地区でどういう演習をするかということが問題であります。ところが原爆の問題はこれはまるでカテゴリーの違う問題であります。原爆を持ち込むとかあるいは米第七艦隊を持ち込むとか、太平洋艦隊を日本に繰り入れるということは、たとい日本に持ち込む兵器に何ら制限がないといたしましても、これは事柄の性質上当然日本政府承認を得て行うべきことである。でありますから、私どもは実はこれは当然のことと思っていた次第でございます、ただ国内で非常に論議がやかましかったので、重光外務大臣が先般の保障をアリソン大使から取りつけられた、そういう過程でございます。
  95. 和田博雄

    ○和田委員 私はどうも今の説明はかえっておかしいと思うのです。アメリカの世界政策で今までずっと一貫して変っていない点は、われわれはやはり日本を再軍備させるという点だと思うのです。その点は私は変っていないと思う。それからあの当時アメリカ原爆はたしか優位な状態にあったと思う。原爆戦においてアメリカは優位なところにあって、その上に実はあぐらをかいておった。それが後になってソ連も原爆、水爆を持つことになってあわてちゃった。しかしごく最近の世界の情勢は変ってきておるが、私はやはり今でもまだ日本を再軍備させるという点は変っていないと思う。そうすれば向う側としてあの当時のような世界的な緊張の強かったときに、常に頭の中に描いておったのはソ連だと思う。それから広島や長崎へ原爆が落ちて一番驚いたのはどこかといえばほかの国ではない、やはりソ連だ。今度の戦争でこんなことをやられたのでは困るのだというので一番驚いて、そのときから片一方でもずっと原水爆を持つようになってきたというのが、世界の常識です。ですからそういうような世界の情勢のときに、兵器に制限はないけれども、当然原水爆については、向うが入れようといってもこっちは必ずしもそれを受け入れなくてもいいという論議はできない。兵器に制限がなければないほど、やはり向うは当然これを入れたらどうだと言ってくるのが普通の常識です。安保条約があなたの言われるようなものならば、あんな大きな経験を経た、原爆経験を生かして、当然あの条約のどこかに原水爆の問題に触れているのが私は当りまえだと思う。それを触れずにおいて今までずっときて、そして今になって事は何もなかったのだ、こう言って原水爆の貯蔵の問題に対して政府責任をのがれていこうとするのは、私は少し無理だと思う。やはり政府としては態度を少しはっきりと出して、拒否するのだという態度を打ち出してこそ初めてものが筋道に返ってくるのだと私は思う。これはあなたの答弁以外で大臣答弁だと思うのですが、これは防衛庁長官どうですか。あなたは今持ってくることは考えられないとおっしゃいましたが、持ってこようとしたときは当然拒否するのだということを、鳩山内閣鳩山内閣として答弁されたらいいと思う。そうでないといつまでも物事がごたごたもやもやとした中にあって、しかも政府の政治責任に対する私は国民信頼性はなくなると思う。国会の中だけで政治をやっているのではない。やはり国民が全部注意しておる。そのときに鳩山内閣がもしアメリカ側からかりに原爆の貯蔵という問題があっても、ただ単にコメットメントとか政治的であるとか法律的な義務があるとかないとかということでなくて、政治としての責任においてそれは当然拒否する。そういう意思だということを私ははっきり言われることの方がいいと思いますがどうですか。これは杉原さんにお尋ねいたします。
  96. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は和田さん今御質問でありますが、その点は実は先ほど私の見解は申し上げたのでございます。
  97. 並木芳雄

    並木委員 先ほど長官に私お尋ねいたしましたときに、米軍及び国連軍の動静は公表されておらぬとの御答弁でございました。公表はされておらないけれども日本政府には通報はあるのでございますか。
  98. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは米軍の動静ということは、向うとしても公けにしていないわけでございまして、従いまして日本政府に対しても一々通報はございません。
  99. 並木芳雄

    並木委員 その点一まつの不安が残るのです。日米安保条約で私どもアメリカに守ってもらっております。ですから守ってもらっておる方に今これこれの兵力これこれの機種、こういうものを配備しておるということを通告するのは当然だと思うし、また日本政府としてもそれを知っておく義務があると思うのです。そうしないと今あなた方がお立てになっております防衛何カ年計画というものは、駐留米軍と密接不可分のものでございますから、的確な計画が立たないわけです。もし何か向うから通告がないならば、せっかく先ほど来御議論がありましても、もし軍部の方でいきなり飛行機に原爆を載せて日本基地に持ってきても、通告されませんから、知らない間に日本基地が使用されるということがあり得るという心配が出てきます。これが杞憂であるならばけっこうでありますが、その点今までそういう状態であったならば、どうしても今後米軍に対して動静を知らしてもらうように政府としては申し入れをすべきであると思いますが、その御意思はございませんか。
  100. 杉原荒太

    杉原国務大臣 御承知通りアメリカ軍の動静については、アメリカ軍として公けにしたもの以外は秘密になっておって、日本の国内法でも行政協定に基く特別の法律ができて、これは秘密に相なっておる次第であります。
  101. 菊池義郎

    ○菊池委員 防衛長官にお伺いしますが、アメリカの軍事基地日本の方々にありまして、ソ連とか中共とか、そういう日本を敵国なりと友好同盟条約に明記しておる国々は、日本にある軍事基地アメリカ原爆が持ち込まれておらない、また将来も持ち込まないと考えておるのでありましようか。軍事基地がある以上は、アメリカ原子爆弾は軍事基地に持ち込まれておるということを当然向うははっきり考えておると私は考えておる。それについて防衛長官はどうお考えになりますか。
  102. 杉原荒太

    杉原国務大臣 向う側がどう思っておるかという御質問で、なかなかお答えができないのでありますが、御質問の御趣意はどういうことでありましょうか。
  103. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連や中共は日本の軍事基地アメリカ原子爆弾が持ち込まれないということを信じておるかどうか、それについてどういうふうにお考えになりますか。
  104. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私その点はちょっとお答え申しかねます。
  105. 菊池義郎

    ○菊池委員 今社会党の諸君が盛んに議論せられますが、原子爆弾が持ち込まれたところで、それは日本の領土に落す爆弾ではなく、敵の領土に落す爆弾である。それはちょうどしろうとが消防署ができれば火事が出るとか、病院ができれば病人が出ると考えるのと可じ愚論であると思う。敵の方では日本の軍事基地原子爆弾があろうがなかろうが、戦争になれば必ず原爆をもって襲い来たることは当然であります。当然でありますからして、これに備えるためには日本原子爆弾を置かなければならぬ、かように私は信ずる。何も原子爆弾が持ち込まれたからといって、それをおそれる必要はない。それは日本の領土に落す爆弾ではない、敵の領土に落す爆弾である。そう考える場合に、何を一体おそれるのか不思議なのであります。それについて防衛庁長官はどういうふうに考えられますか。
  106. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私はこう考えます。大規模な原子兵器などを使うような事態になれば、人類の破滅ということは形容詞ではなくほんとうであると思います。従いましてそういうことのないように、これは国民もまた希望しておることであります。イギリスなどで今度水爆を作りますのも、決して使うためではない。むしろ大戦を回避するためです。それが主眼であるということははっきりしておると思います。原子爆問題についてはそういうふうに考えるべきものだと思います。
  107. 菊池義郎

    ○菊池委員 軍事基地日本に作る以上は、これは戦争を予想して作っておるのでありまして、だてや酔狂に軍事基地を作るのではない。でありますからして敵の方といたしましても戦争になれば、日本原爆があろうが、なかろうが、軍事基地原爆を備えておろうがなかろうが、原爆をもって襲い来たることは当然であります。でありますからして、それに備えるためにも原爆日本に置いた方が、むしろ利益であろう、安全である、かように考える。それに対して防衛庁長官はどうお考えになりますか。
  108. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は、先ほど申し上げました根本的な考え方を基礎にして考えております。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 重光外務大臣にお尋ねいたしますが、あなたは今突然見えたので、親切に答弁していただくために、親切にちょっと経過を申し上げておきます。  実はただいま、MSA協定に伴います秘密保護法審議中でございます。その際に、日本国民が今一顧心配しておる、外から日本の平和と生活を脅かすものは、ソ連、中共の直接または間接侵略というようなことではなくて、それよりも、アメリカの軍隊が日本基地原爆を持ち込んできて、それに伴ういろいろな危険や被害というものを非常に心配しておる。それに対して、先般重光外務大臣は、アメリカが原子兵器を持ち込むようなことはないと思う。持ち込む場合には、承諾なくしては持ち込まぬと思うというような答弁をなすったが、それについて、防衛責任にある杉原長官に、あなたは独自の立場に立って、それをどういうふうにお考えになっておられるかということについて、今質問をしておったところです。当の外務大臣がお見えにならぬとよくわからぬ点もありましたので、待っておったわけでありますから、質問を続行いたします。  まずその問題からお尋ねいたします。最初にお尋ねしたいのは、五月三十一日にあなたがアリソン大使とお会いになったときに、現在日本基地には、アメリカ軍隊の原子兵器は持ち込んではない、また将来持ち込む場合には、日本政府承認を求めた後にこれを行うと言われたというのですが、この問題は非常に重要な問題でございますし、書いたものは何も残っていないということですから、あなたの所管に関係の一番深い外務委員会でございますから、ここで、アリソンの言った重要な点を、正確に御報告をいただきたいと思うのです。
  110. 重光葵

    重光国務大臣 その点については、私は明確にお答えいたします。私は、それはアリソン言葉として申し上げるわけには参りません。私の了解として申し上げます。そして、これは十分確かな了解でございます。それはたびたび申し上げた通りアメリカ軍隊は、日本において今日原爆は持っておらぬという第一の事実であります。それから、アメリカが将来日本原爆基地にする意図はないということでございます。原爆日本承諾なくして――日本承諾すればむろんのことでありますが、承諾なくして原爆基地にするようなことはない、こういうことでございます。これが私の了解でございます。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 これは非常に重要な問題でございますから、特に国民心配しておるところですから、お尋ねするのですが、あなたとアリソン大使との話し合いが事実であるといたしますならば、あなたの主観においてということですが、それを向うへお確かめになりましたか。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 それは私が責任をもって申し上げるわけでございます。そこで、そのことについて私は誤解はないと思います。これは、はっきり申し上げます。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 その後、先ほど条約局長お話によりますと、あなたが国会においてそのことを明らかにされる前に、その内容についてと、そのことを国会において発表することについて、アメリカ側にもう一度確認を求めるというか、承認を求められた事実があるということですがそれはいつどういう形でお求めになりましたか。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 私はそういう了解をはっきりするまでは、いろいろな手段をとりました。しかしながら外交相手方のあることでございますから、それは一々御追及にならぬようにしていただきたい。私は責任をもって先ほどのことを申し上げているわけであります。そこで、このことについては誤解がない、また誤解をしてはならぬことだと私は考えております。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 実はわれわれとしてはあなたを信用しないわけではない。またあなたの国会に対する責任はそれで明らかになると思いますが、問題は対外的なことでございますから、問題はアメリカにあるわけで、あなたがいかに国会において声明をなさり、その答弁をなさっても、日本国会並びに国民に対する政治的な責任は生じますけれども、それによってアメリカを拘束することはできないと思うのです。従って一体どういうわけでそのことを明らかにしていただくことができないのか、よく了解ができないのですが、どういう事情でございましようか。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 それは向うとそういう条約でもできれば、むろんはっきり条約そのものを公表いたします。私は公表をする形になっておらぬから申し上げぬのであります。外交上の話し合いの順序というものは、そうであろうと思います。しかし私は、はっきりそのことを私の責任において申し上げることができるのであります。これは日本国会だけじゃない、私の言っていることはどこにも――向うの国会にも当然伝わっていることであります。それで私は責任を持ってそういうことを申し上げるわけであります。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 そういうあなたの主観的な責任感で、国民に対する責任感でもって、あなたの承知されたことがうそであるとか責任感がないとかいうことじゃございません。アリソンが死ぬ場合もございましょうし、あるいは更迭する場合もございましょうし、いろいろいたします。特にこの問題は心配な大きな問題ですから、言うのであります。日本国民は特に原子兵器の問題については、世界の民族で一番被害をこうむった国民で、この問題については神経を痛めているところですから、それを安心させるために、あなたはもう一ぺんその話し合ったことを向うへ文書をもって確かめるということをして、それに間違いないという返事をとって、それを国民に発表されるのが、私どもは適当だと先ほどから話し合っておったわけです。それに対して、事が事でありますから、あなたが丁寧にそういうことをしても決して相手国に対して失礼ではない。私はそういうことで外交上のエチケットに反するものだとは思いませんから、そういうふうになさるべきだと思いますが、そういう御意思はございませんか。
  118. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今までの経緯から見て、私がはっきりと了解しておるところを申し上げておるわけで、これは包み隠しなく申し上げておるわけであります。しかしそれだからどういうことをどういうふうに話したかということを申し上げるのは、私としてやるべきことでないと考えておるから、そういうことを申し上げておるわけであります。しかしお話のようにさようなことを条約とか文書形式にする、機会もしくは時期がくれば、それは私はそれもけっこうだと思います。しかし私は外国の代表者と話し合いをしていろいろ自分の了解したことは、これはもうたとえば人がかわるとかいう御心配がありますが、そんなことは、私は実は心配をしておりません。それで十分である、こう思っておりますから、また適当な機会でもありましたら、今の御意見のようなことも一つ十分に考えてみることにいたします。   〔「関連質問」と呼ぶ者あり〕
  119. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、重要ですから、次の問題に移る前に打ち切りますから、関連はそのあとに委員長お取り計らい願いたいと思います。  実はこの問題は、私どもそれだけでは安心ができない。ですからすぐ一ぺんやっていただきたい。そして公表していただきたいと思うのですが、そういうことであるならば、あまりそのことを押し問答いたしましても時間を費すだけですからなにいたしますが、次にあなたとアリソンと話し合ったことについての了解事項に対する拘束力の問題についてお尋ねいたしますが、これは当然政治的な拘束力を生ずると思いますが、それが国際法上の法的拘束力、そこまでは及ばぬものだとわれわれは考えますが、当の重光外務大臣はこの両者の了解事項の拘束力について、政治的な拘束力とお考えになるか、国際法上の法律的な拘束力があるとお考えになるか、その点をお答えいただきたい。そしてその理由を付して御答弁をいただきたいと思います。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題については、これが条約的の拘束力があるか政治的の拘束力があるかということについては、私自身は実はその点を考究する必要がないと考えておる。これは十分こちらが信頼し得る了解でございますから、これによってそれを信ずること、また向うがこれを信ぜしめること、お互いに信じ合っていることが一番確かだと私は考えております。しいて言われれば、それは政治的拘束力、こう言われるでしょう。けれども、その点は間違いのないところだと私は了解しておりますから、実は安心しておるわけでございます。この安心が安心がならぬ、こういう御批評も一応私は無理な御批評とは申しません。しかしながら外交関係でこのくらいもうはっきりしておるものを、さらにいろいろ疑点を残すような手段をとることそれ自身果してどうかと思う節もございます。そうでありますから、私はこの了解を最も正確な了解と考えておって間違いはないと考えておるのでございます。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしたのは、あなたの主観の問題ではなくて、実はその両者の間におきまする言葉を通じての了解事項の拘束力の問題をお尋ねしたのであります。そうするとあなたは、あえて言えば政治的な拘束力を持つものだと考える、こういう御答弁でございました。ところが先ほどから条約局長は、これは法律的な拘束力をも持ち得るものであるということを非常に強弁――強く主張されたのでございます。われわれはあなたの常識的な御答弁をむしろ歓迎するものであって、当然これは国際法上の法的な拘束力を持つものではなくて――政治上の拘束力責任はありましょう。そうでありますならば、この問題がやがて持ち込むというような事態を生じましたときに、または持ち込む意思を向うが持ち込んで日本承諾を求める事態になったときに、これは非常に重大でございますから特に言うのですがわれわれはそういう単なる政治的な拘束力程度のことでは安心するわけには参りません。一方この増兵の義務につきましては、安保条約またはMSA協定を通じてこちらは法律的な義務を負っておるわけです。そういうことですから法律上の拘束力を持つような手だてを次に進んでお考えになるべきだと思いますが、その点についてお尋ねしたいことは二点。一点は、あなたの政府の中においてこの拘束力解釈について不統一でございますから、ぜひともこういう重大な問題については解釈を統一していただきたい。第二点は、われわれと同じ解釈で、重光外務大臣法的拘束力を持つものではなく政治的拘束力だということですから、それを一歩進めて法的な拘束力を持つ方法について、責任のある内閣ですから、そういうふうにお進めになるべきだと思いますが、重ねてこの点は明らかにしていただきたい。
  122. 重光葵

    重光国務大臣 条約局長が国際間における約束文書によっても口頭によっても、これは拘束力があるのだ、こういう趣旨の説明をしたように伺いました。私はそれはその通りだと思います、しかしながらその文字に明確に書いてないものを政治的拘束力があるのだと解釈すれば、それはそう解釈しても私は差しつかえないと思います。拘束力においては何も差がないのだ、こういうことを申したつもりであります。これは議論になりますからそれはそれとしておきまして、しかし今の御議論の点は、そういうことは念には念を入れておいた方がいいという御趣旨に違いないのでございます。これは全く御同感であります。私は今右から左にこれをお約束するということは、私の今話し合いの関係がございますから、それではすぐやろう、こういうことは申し上げる用意はございませんが御趣旨には御同感でございまして、その趣旨で将来努力することにいたします。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 これは後々のために誤解があるといけませんので確かめておきますが、私が言ったのは、文書であるから法律的拘束力がある、口頭だから法律的拘束力がないということを言ったのではありません。文書であろうと口頭であろうと、その国際間における話し合い、取りきめというものは、法律的拘束力を持つ場合と、政治的拘束力にとどまる場合とあるわけです。それは文書、口頭とを区別して言ったのではございません。その形式を言ったのではありません。そういうことですから了解しておいていただきたい。だから口頭でも拘束力がある場合もある、私は拘束力の中身を言っているのです。この拘束力の場合にわれわれの解釈では政治的拘束力にとどまるものにすぎない。法律的な拘束力を持つものではないと思う。それに対して重光外務大臣はこれはしいて言えば政治的拘束力を持つものだというふうに言われたわけですから、その点については、あなた自身の御解釈について明らかにしておいていただきたい。そういうふうにわれわれは了解して今後の取扱い方についてはそれを基礎にして話を進めていきたいと思います。  続いて私がお尋ねいたしたいのは、承諾を得なければ日本原爆基地にしないということですから、承諾条件になっている。承諾条件になっておりますけれども永久絶対にこの国の基地原爆基地にはしないということを言っておるのではないのであって、条件を付して原爆基地にすることを予期しておるわけですね。それはアメリカ側の腹なのです。そうでありますならば、こちら側としては、いかなる情勢、いかなる時期におきましても、そういう申し入れに対しては、この国に原爆を持ち込み、この国の基地から原子兵器を使った戦闘行為を始めるということは、日本国民は絶対に困るという考え方を持っておるわけですから、従って、将来そういう承諾を求められるような場合がありましても、これは明らかに断わるべきだと思いますが、これに対する外務大臣の所信を伺っておきたい。
  124. 重光葵

    重光国務大臣 今の解釈問題は、それでよろしゅうございますか。閣内で不統一があると言われるけれども、不統一はございません。(穗積委員「不統一です」と呼ぶ)私は不統一はないと申し上げます。
  125. 穗積七郎

    穗積委員 あとでよくお話になって下さい。時間があればもう一ぺんやり直してもいいですけれども、時間がないから私は遠慮して言っておるだけのことです。不統一ですから、よくお聞き下さい。私とあなたの話ではなくて、杉原さんと条約局長とあなたの間で不統一がありますから……。
  126. 重光葵

    重光国務大臣 もし不統一があれば、お話通りよく話し合っておきます。  それから次は、承諾を求められたいときに断わるということ、私は、日本原爆基地になるような場合には、真に日本の死活の問題になると思います。しかしこれは情勢にもよりましょう。国際情勢で、戦争なんぞということがほとんど夢想することもできないようなときに原爆日本にあったところで、これは危険にはならないと思います。しかしながら、そうでない、国際情勢が危険になり、戦争のために原爆が用いられるというような場合になれば、これは日本の死活の問題になると私は思います。日本の死活の問題になるようなものを日本に持ち込まれるといいますか、原爆基地にされるということは、日本はやるべきではないと思っております。しかしながら、これは原爆日本基地として持ち込むという話し合いがあったときに、はっきり日本の態度を表さなければならぬと思います。それを、国際関係をいろいろ想像して今日すっきりさせる必要は実はないと思います。しかしさような死活の問題に関するような問題は、日本としてはこれを承諾するわけにいかないと私自身は考えております。
  127. 穗積七郎

    穗積委員 今の御答弁は私よく理解できなかったのですが、私どもは、いかなる情勢、いかなる時期においても、日本原爆を持ち込み、かっこれを日本基地から使用することは、これを拒否すべきだと思うのです。すなわち、承諾条件にして持ち込むという話し合いですね、承諾条件にして持ち込む場合があるかもわからないということは死文にして、永久絶対に日本原爆基地にしないということに事実上はすべきだと思うのです。そのためには、先般のあなたとアリソンとの間における了解事項について承諾を求められた場合には、いかなる条件、いかなる情勢、いかなる時期においてもこれを承諾しないということを明瞭にしておいていただきたい。今の御答弁をそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  128. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今日のところ、日本原爆基地永久にしないという方向にすべきだと考えております。
  129. 植原悦二郎

    植原委員長 外務大臣は時間をよほど延ばして来ておられますから、一時にはお帰りにならなければならないので、そのおつもりで、なるべく上手に時間をお使い願いたい。
  130. 菊池義郎

    ○菊池委員 穗積君は原爆を持ち込まれることを非常に心配しておられるのでありますが、私はあべこべに、日本原爆を持ち込まれないことを心配して夜も昼も眠れないのであります。ただいま防衛庁長官にもお尋ねいたしましたが、はっきりした御返答がないから大臣にお伺いいたしますが、日本原爆を持ち込まれようが持ち込まれまいが、いざ戦争となれば、日本を敵国なりといって、おりますところのソ連や中共は、必ず日本の軍事基地に向かって襲い来たる、これは必至の事案である、疑いないと私は思います。そういうように、日本はから手で、向うは原爆を持って日本を襲い来たるときにおいて、普通の兵器でこれに応酬するということが一体できるかできないか。一度に五機、十機、二十機の飛行機が原爆を持って日本を襲うならば、一日で、一回で日本は全滅いたします。そういうときには先手を打たなければならぬ。最短距離から敵を襲わなければならぬ。先に先手を打って敵を殲滅するということは、近代戦術の最も巧妙な戦術であります。敵は原爆を持って襲い来たることが必至であるのにかかわらず、日本の方において原爆を持たない、それでどうして日本を守るごとができるか。日本の軍事基地というものは日本を守るために設けられておるのでありまして、守る必要がなければ日本の軍事基地は必要はない。たとえば英国のバーミューダ等にもアメリカ原爆が持ち込まれておると私は聞いている。それであるのに日本の軍事基地原爆がない、それでどうして一たん緩急あるときに日本国民の生命を全うすることができるでありましょうか。そういう愚論に惑わされて、皮相の言辞を政府者からして言われるということははなはだ遺憾にたえないのである。先ほども申しましたが、そこらのばか者は、消防署を作れば火事が出る、病院を作れば病人が出る、だから消防署を作ってはいかぬ、病院を作ってはいかぬと言うが日本の軍事基地原爆というものは決して日本の領土内に落されるものでなく、敵の領土内に落されるのである。それは全く心配はないのである。私は、外務大臣答弁を聞き、また防衛庁長官答弁を聞いてまことに不安にたえない。何をもってまる裸で原爆に対抗することができるか、この点を真剣に考えていただきたいと思うのであります。これについて外務大臣の御答弁をお願いいたします。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 私は、あくまで日本が平穏無事でなければならぬ、また平穏無事に日本が生き得る政策を進めなければならぬ、こういう見地に立っておるのでございます。でありますから、日本自身が原爆基地になれば、仮想敵国――と言ってはおかしいですが、相手がもしありとして、また日本をめぐる戦争が起るとすれば、また危機が起るとすれば、日本原爆基地になっておることそれ自身が危機をいざなうことになりはせぬか、これをおそれておるのでございます。いやしくも、日本がさような原爆を受けるような原因は提供しない方がいいと私は思う。日本が何らのさような原因を作らずして、そうしてその上で、相手方が無法にもそういう場合にやってくるときには、そのときにはいろいろ考えるべきことがあると思う。そこで私は日本の将来を安全にするために、また平和に進めていくためには、いやしくもこちらにさような原因を作らぬようにする、こういうことに関心を持っておるわけであります。決して日本がどうやられても無抵抗主義でおるべきだ、しそういう意味で申し上げておるわけではないのでございます。
  132. 菊池義郎

    ○菊池委員 ただいまの外務大臣お話は、まことに山上の垂訓を聞くようで「人もし汝の右の頬をうたば、左をも向けよ。なんぢを訟へて下衣を取らんとする者には、上衣をも取らせよ。」そういう無抵抗主義では、とうてい国民の生命を全うすることはできない。日本原爆があろうがなかろうが、必ず敵の方では原爆があるものと思って襲うてくる。また原爆がなくても、戦争となれば必ず原爆をもって襲い来たることは必至であります。国際法なんというものは、あってもないようなもので、李承晩大統領が長い間国際法を研究して、アメリカで博士号をとったが、今日になってわかったことは、国際法は全然ないものであるということがわかったというくらいなんです。そのくらい国際法なんというものは当てにならないものであります。ただいま穗積君の意見でありますが、成文法があろうがなかろうが、これを破ることは自由自在です。ソ連の例を見てもはっきりわかる。不可侵条約を結んでも、これをじゅうりんして侵略してきた。これを見てもいかに成文法というものはたよりないものであるかということがはっきりわかる。そこで日本がいかに平和を欲するとも、敵の方で日本を占領しようとかかるならば、最も有力な手段で、すなわち原爆をもって襲い来たることははっきりしておる。幾ら原爆を使わないということで国際間で協定しても、おそらく戦争となれば必ず破られてしまうと私は思う。そういう場合におきまして、原爆を使うには一分一秒を争うのであります。最短距離を行って敵を襲撃しなければならぬ。日本が襲われて、粉みじんになってからアメリカ本土から原爆を持ってくる、そういう戦法というものにありはしない。ほんとうに寸刻を争うのでありますから、日本国民を安全に保ち、日本の国土を安全に保たんがためには、どうしても日本の軍事基地原爆を置くべし、これははっきりと日本に置くべきであると思います。これをどういうように考えておるか、真剣に考えていただきたい。愚論に迷わされてはならぬ。
  133. 重光葵

    重光国務大臣 今のような極端に反対される御意見もあります。しかしこれは非常に有意義な御議論と思いますので、一つ委員会においてもこの両方の御議論を十分にお戦わせ願いたいと思います。しかし私としては、今申し上げた通り日本の今日の国情からして、すべてのことを考究して――永久とは申し上げません。しかし今日はいやしくもさような原爆の目標となるような口実を与える原因は作らぬ方がいい、こういう考えで進んでおる。これが日本の今日のとるべき方策である、こう信じておることを申し上げておるのであります。私は決して現在の国際間において、すべて無抵抗主義を主張しておるわけでも何でもありません。日本は独立国として、十分に自主独立の精神を持って進まなければいかぬと、私はかねがねその見解を持って進んできておるものでございます。しかしながら今日の日本の情勢、事態において、いやしくも日本原爆の目標となるような口実を与えると申しをすか、さような原因を作らぬでいくことが、日本のとるべき道だ、こう考えているわけでございます。
  134. 並木芳雄

    並木委員 先般来飛行場の拡張問題などにからんで、あるいは原爆を持ち込まれるのではないかという一部の人の疑惑に対しまして、重光外務大臣アリソン大使と面会までされて、はっきりきょうのような御言明をされたことは、私どもは非常に満足しているのでありますが、それについて時間がございませんから三点簡単に御質問申し上げます。  第一はただいままで大臣のおっしゃった、日本といふ意味の中に沖縄地区が含まれるかどうか、これはむずかしい問題ですが、できることならば私は含んでもらいたい。潜在主権でありますけれども含んでもらいたいが、この点はいかがになっているのでございますか、それが第一点でございます。  第二点は、アリソン大使日本政府の許可なくしては原爆を持ち込む意思はないと言われました。ところが私はもっと欲を言えば、許可があろうとなかろうと、全然日本原爆基地を持つ意思がないのだと言い切ってもらいたかったのであります。許可があれば持つのか、そんなことはおかまいなしに全然アメリカはそんな意思がないのか、ここはかなりデリケートの違いになって参ります。それともそういうことは現在の段階ではわからないのであるか、これが第二でありますがこの点を明らかにしていただきたいと思います。  それから第三点でありますが鳩山首相はけさの記者会見で、重光外務大臣の渡米についてアメリカは七月に来てくれといってきている。重光外務大臣もできれば行きたいと言っているが、まだきまっておらないというふうに言明をしておられる。これは私はぜひ行っていただきたい。なぜなればこの前日程の都合で行けなくなったときに、われわれはひどい目にあいました。ほら見ろ、今度の内閣アメリカからけられてしまったじゃないか。私どもはそんなことはない、これは今こでの外交交渉で日取りが一ぺんできまることはないのだ、今度の内閣は秘密外交をやらない、正直だから一回の交渉日取りが合わなかったのを公表しただけなのだ、これだけで本現内閣重光外務大臣を信頼してくれと各方面で言い切ってきた。いよいよ七月になつてアメリカの方から来てくれということは、これはまことに一大朗報だ、まことに鳩山内閣重光外務大臣は忌避されておらなかったという証拠でございますから、ただいままでの問題にありました原爆あるいは日ソとの関係、あるいはアリソン大使が奔走されております日華問題等いろいろ重要問題がございます。ぜひ私は行っていただきたいのでありますが、重光外務大臣のお気持、それから行かれるとすればいつごろお立ちになって、どのくらいの日程でお帰りになるかこの際明らかにしていた、たきたい。
  135. 重光葵

    重光国務大臣 御質問のいずれも非常にむずかしい問題ばかりでございます。沖縄は御承知通りアメリカの行政下にある、ここで今日本防衛の見地から申せば、アメリカの行政下にあるのでございますから、日本を守るというような意味で言う場合においては、日本の土地に含まれておらぬと申した方が実際に適していると思います。しかしわれわれが民族的に考え、もしくは伝統的に考え、精神的に考える場合においては、沖縄はむろん日本の中に入っている。これはお話通りに潜在主権ということをアメリカも認めておるわけであります。これは当然われわれは沖縄人を日本人として、わが同胞として感じもし、またそう取り扱っておるわけでございます。  第二点は、また原爆の問題に返ったようでありますが、原爆についてはこの席でも極端から極端の御議論があるわけでございます。そこでこの問題について米国との関係を明瞭にするということは、確かにけっこうなことでございます。しかしながらこれは今明瞭になっておると思います。また明瞭にするという場合でも、今永久に使用しない約束をさせたらどうかというお話のようでございましたが、果してそれが適当であるかどうか、さようなことを条約なり何なりにすることが適当であるかどうかということも、これはよほど考えなければならぬと思う。私は明瞭にするということはしごく賛成でありますし、そういうふうに努力しようと先ほども申し上げておる通りでございます。現在の場合は、私が責任を持って申し上げた程度で十分御安心をかいうような問題にお考えになっていただくことは、私はかえって迷惑に存ずるわけで、実はそういうことではなかったのでございます。もっともこの前はあまりに急であったものですからそううこいとになりましたけれども、しかしその目的は東京でも達し得られたわけでございます。そこで米国側においても、私がアメリカに行って全般の問題についていろいろ話し合いをするという初めの考え方を非常に歓迎しておることは事定でございます。事定でございますが、まだ何とも決定をいたしておりません。まあ議会の用事のないとき、終った後に、向うもまたいろいろ巨頭会議その他があるのでございますから、そういう都合もよく打ち合せをしなければなりません。私自身といたしましては、私がもしさような場合にお役に立つということであるならば、私はどんなことでも、いとうものではございませんことだけを申し上げます。これは前にも申し上げましたが、そういうつもりでおることを御承知願いたいと存じます。
  136. 戸叶里子

    戸叶委員 原爆の問題で、大切なことなので簡単に確かめておきたいと思いますが、このことはアメリカの態度ということについても私どもの参考になりますので、お伺いしたいと思います。重光さんの先ほどのお話を伺っておりますと、五月三十一日の話し合い、それをはっきりさせるまでにはいろいろと手段をとって、そしてようやくその点がはっきりした、しかしその話の過程は外交上の問題であるから追願えることだと私は信じております。  第三の私の渡米のことでございますがこれは渡米を断わられたとかなんとに持っていらっしゃるまでにこの問題が出てきたのは、大体鳩山さんが記者会見で日本原爆基地にしてもいいというようなことを言われたから問題になってきたと思うのですけれども、それに対して国内の世論が大へんやかましくなってきて、そしてこういうところまでこぎつけられたと思いますが、重光さんがアメリカ側と折衝するとき、どうかこういうようなことはこちらが承諾しない限り、原爆基地にしないでほしいという態度で臨まれたかどうかを伺いたいと思います。
  137. 重光葵

    重光国務大臣 そういう態度ではございませんでした。向うの意思表示は、こういうものは日本の意向を無視してやる意向がないということを十分私に了解さしたのでございます。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 その点はこちらの方から、こういうものは望ましくないから、こちらが希望しない限り置いてほしくない、この意思を表明したので、アメリカの方でもそれを了承したのでしょうか、向うの方が先に、こちらの意思表示がなければ原爆基地にしない、こう言われたのでしょうか、その点お伺いいたします。
  139. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の御意図が私にはよくわかりませんが、今申し上げました通りに、日本の意思に反して原爆基地にするという考えのないことを、向うははっきりと私に了解せしめたのであります。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 それではもう一点伺いたいのですが、そのお話の中で、今の安保条約あるいは行政協定の中でも、日本の了解なしには基地にしないということをはっきり言及されたかどうか、この点だけを伺いたいと思います。
  141. 重光葵

    重光国務大臣 安保条約行政協定のこの問題に関連する解釈につきましては、たびたび私の意見を申し上げておる通りでございます。この行政協定締結の当時に原爆のことを予想しておらぬ、これは条約に予想していない新たな問題だとして取り扱うべきものである、こういう解釈を申し述べておるのであります。これは私は日本側の解釈として正しい解釈だと思います。  そこで、それではアメリカ側も同様な解釈をしておるかという質問かと思いますが、さように御了解をいただいて差しつかえないと思います。その点は私は実は日本側の解釈が一番重要だと思います。われわれは日本人でございます。さような場合においては、はっきりと条約にあるとかないとかいうことは自分で見解を立つべき、また立てる権利がある問題でございます。しかしこれについては米国側には異存はないことを申し上げておきます。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 その解釈の点も今度の話し合いで確認をされたと了承していいわけでございますか。
  143. 重光葵

    重光国務大臣 さように御了承下すって差しつかえございません。
  144. 森島守人

    ○森島委員 先ほど条約局長質問したのですが、政治的な問題にわたるために御答弁を多少留保されたような格好だったのです。重光さんは今、自分の了解しておるところであるから信用してほしいというふうなことを御答弁になりました。私は国会言明されまして、しかもそれに対してアメリカ側から別に抗議も来てない、従ってこの点については誤まりはない、こう確信いたしております。しかしながら、重光さんが自他ともに許す非常に老練な外交官であるということは申すまでもないことであります。これは私は岡崎君あたりとは大分違うと思います。(笑声)この日本とビルマとの賠償協定につきまして、岡崎君は千二百万ドル予算に計上する、向うの外務大臣は二千万ドル計上するという、根本的な問題について意思のそごがあった、それが今回ビルマとの細目協定が実施に至らなかった大きな原因である。これも岡崎君は了解のはずである。従ってこういうようなことはややもするとないとも言えない。もう一つ例を引きますれば、大野・ガルシァ協定の仮調印をしたものまでがひっくり返ったというような事実もあります。しかも重光さんとアリソン大使との会談については、非常な重要会談であるにもかかわらず、別に記録にはとってないというお話でございます。その点につきまして、ただいま外務大臣が適当な時期に適当な方法をとりたい、この点はあまり追及してくれるなという答弁、これは一応ごもっともだとは思いますが、すでに鳩山さんの力による平和がジヤスティファイされるなら、戦争の防止、平和の維持に役立つならば、原爆の貯蔵も認めていいのだという答弁においてもはっきりしておりますし、しかも国会内におきましては、国会における外務大臣答弁だけでは全国民は安心しておるわけにはいかない、国会において原水爆の貯蔵の問題についてかくのごとき熱心な論議がかわされておるのでございますから、従って外務大臣としてはこの国会の論議を基礎といたされまして、アメリカに対して重光さんとアリソン大使との間の了解を、日本側から一応この通りかというコンファメーションを求められて、その通りだという回答でもおとりになるべきだと思う、その最もいい時期ではないか。総理大臣も、貯蔵してもいいのだ、それは前提があるのだないのだというような非常にいかがわしい態度をとられたのでありますから、この機会こそその点を文書の上で明確にする絶好の時期ではないかと私は信じておるのでございます。この点に対する御所見はいかがでありますか。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 御意見ごもっともに伺いました。この問題につきまして、私はこれは先ほど申し述べた意見を繰り返すにすぎません。また繰り返さざるを得ないのであります。これを十分に明らかにすると申しますか、いわば話し合いだけでなく、はっきりとした取りきめ、条約的なものにしておいたらよかろう、こういうようなことはごもっともなことでございます。そういうことを私はやらぬというわけじゃない。一つ機会をつかまえて十分その御趣旨に沿うということを先ほど穗積さんにもお答え申し上げておるわけでございますが、私は同じ御質問でありますから同じようなことを申し上げるので、私をそれほど御信頼下っておるならば、どうか一つそういうような点も少しは私におまかせ願って――私はできるだけこの委員会を通じていろいろやっておるつもりでございますから、あなた方も一つその辺おまかせを願いたい。御趣旨はその通りでございます。  それからこの席上でも私は総理の言説だとかいろいろな言説を伺いましたが、これはつぶさに御議論になるのが有効であるだろうと思います。この席上でも、先ほど申し上げる通りに極端から極端への御意見がございます。どうぞこれは一つ十分に議を練られて、私どもの実際に処置する処置ふりに参考になるように、一つ御議論を願いたい、こう私は思うのであります。
  146. 森島守人

    ○森島委員 今十分慎重に考慮するという御答弁でございましたが、内閣の寿命の問題もありますし、いろいろな点を考えますと、一日も早くその処置をおとりになることが適当だと思う。私は国会の議論を基礎にして、直ちに措置をお取りになってもアメリカ側には断じて反対すべき理由はない、最も適当な時期がただいまである、こう私は信じておるのであります。  私ついでにお尋ねしたいのですが、予算委員会で、防衛分担金の削減につきましての日米共同声明の問題に関しまして、電光さんはわが党委の員の質問に対して、アメリカ側と相談してそのいきさつをなるべく早く、国会を開いているうちに答弁をするという御答弁をなさったように私は記憶しておりますが、この点はいかがになりましたか。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 私はその通り申しまして、その通りにやりました。あまり早くやり過ぎて御記憶がないのかもしれませんが、(笑声)できるだけ詳細にと思いまして書いたもので説明書を配付いたしました。
  148. 森島守人

    ○森島委員 それでは今度もその通りの御措置をおとりになって、一日もすみやかに適当な措置を講ぜられんことを要望してやまない次第でございます。
  149. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。もう時間ですから、長くかからないようになるたけ要点だけにして下さい。
  150. 岡田春夫

    岡田委員 今委員長から注意があったので簡単にします。今の原爆問題ですが、これは重要ですから、再三にわたるけれども伺っておきたいと思います。あなたは一つ自分にまかせていただきたいということですが、これは国民の命に関する問題です。それを、あなたはどういう医者か知らないが、自分に命までまかせてくれと国民に要求されるのは、あまりに虫がよ過ぎるのではないか、私はこう思います。そこでこういう問題についてまかせてくれというのは、文書にはっきりいたしますから、一つこれについて時間的な点について、もうしばらく待ってくれ、こういうのならわかりますが、文書にするかどうかわからないが、もう少しまかしてくれと言っても、日本の八千万国民が命をあなたにまかせることはできない。ですから私はまかせるわけにはいかないということを言っておるのです。こういうことを言っておると委員長に注意されますからこの程度にいたしますが、しかし今度の原爆問題についての話し合いというのは、正式のコミットメントとして解釈すべきである、こういう意味のことが、先ほど条約局長からははっきり答弁がありましたし、あなたからも大体そういう意味答弁があったと私は考えております。そこで一つ伺いたいのですが、こういうコミットメントを今度は取り消さなければならないという場合においては、これはどういう方法をもってお取り消しになるのか。コミットメントのいわゆる拘束力、これをどういう形で現在の段階としては取り消すことになるのか。まさか文書でお取り消しになるとはわれわれ考えていない、おそらく口頭でお取り消しになるという形をとるだろうとわれわれは考える。そうするとそういうコミットメントをきめた場合においても口頭でやる、そしてまたこれを、こういう拘束力をなくするという場合においても口頭でやる、そうなってくると、あなた自身が、先方との話し合いを、思うようなときに口頭でするならば、いつでも原爆というものを日本に持ってくることができるようになってしまう。従って外務大臣の権限において、また言葉をもう一歩進めて言うならば、政府の権限で口先だけの話し合いでいつでもやったり、やらなかったりどっちにもできるというような心配が非常に出てきておるわけです。ですから、国民が実は心配しておるわけです。今度の問題を口頭によって話し合いをしたことが正式なコミットメントであるということが、たとえばあなたの言うように拘束があるものとして認められたにしても、これを打ち消す場合も単なる口頭によって打ち消されるから、これを国民が重大な関心を持っているわけです。ですからこういう点についてもう少し率直な御意見を承わりたいと思いますけれども、きょうは時間がないからまず、その点を取り消す場合にはどういう形をとるのか、それから第二の点は、先ほどから私の責任においてということを盛んにお話になっております。私の責任においてということで、そのコミットメントの内容は法的な拘束力を持つ、こういう意味のことを答弁されているわけであります。そこであなたが今度のコミットメントによって拘束力を受けるのだとお話になったが、先ほど外務大臣のお見えになる前に、私はちょっと杉原さんに伺っておいたのですが、防衛分担金の日米共同声明の場合においては、文書において作られたものに対しても政府限りの拘束力鳩山内閣政府限りだけの拘束力しかないのだ、こういうことが明確に答弁されておる。そうすると一般の国民の人間としての常識を持っているならば、文書においてのその権限についてはこの政府限りといっているのに、ましてや口頭におけるところの話し合いというもの、約束というものが、これがいかに正式のコミットメントであっても、あなたの内閣外務大臣の在任当時だけしか拘束力を持たないのではないかということを、私たちは一般常識として考えざるを得ないわけです。この拘束力の及ぶ範囲については、それではあなたは一体どういうようにお考えになるのか、こういう点が第二の点として伺って、おきたい点でございます。もう一つばかりありますけれども、それはあとでいたしたいと思います。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 簡単にお答えします。これは取り消す場合を考えておりません。それからその拘束力のことについては、これはいろいろ議論はございましょうけれども、私はこれは一国の代表者代表者との了解でありますから、非常に確かなものだと考えております。もしそうでなかったならば、条約にしておいたって、これは変えればいつでも変えられる。そういう議論なら同じことです。
  152. 岡田春夫

    岡田委員 それはそうじゃありませんよ。文書に基く両者における――たとえば条約の場合に、正式の調印を行う、あるいは国会承認をとる、こういう場合においては、あなただけの拘束力ではありません。これは国全体が明らかに拘束されるという、そういう手続に基いた拘束力が生まれるわけです。あなた御自身は、今度の問題については口頭だけによるところのいわゆるコミットメントによって拘束されるわけですから、あなた御自身はこれによって何ら変りがないとか、条約によるところの拘束力と変りはないとお話になっているけれども、これは私はそうではないと思う。もしかりにこの口頭のコミットメント拘束力関係だけで考えるならば、いわゆる政府間におけるところの行政協定に類したものの程度としてならば理解できるけれども条約と同じものであるというようなことは、まさか外務大臣であり、専門家であるあなたがそういう御答弁をされるとは私は常識として考えられないのだが、この点についても非常に問題があると思うのだけれども、時間がありませんから、あれしますけれども、少くとも今度のこのコミットメントについて、拘束力はあなた限りしかないと思う。なぜならば、例をあげましょう。あなたの次にほかの内閣ができ、ほかの大臣がなって、そんなことは知らないといった場合に、それに対して拘束力は生まれてこないじゃありませんか。あなたのコミットメントだけによって、それでは何によって拘束力があると具体的に保証し得る客観的な基礎をあなたはお持ちなんですか。そういう客観的な基礎をお持ちであるとするならば、それを具体的に言っていただきたいという点が一つ。それからもう一つは、先ほど非常に聞きのがせないことを一つ言われた。今の委員会秘密保護法の議案について質疑応答をしている。これに関連をしてくる問題ですから、ぜひ重光さんにも伺いたいのですが、これはこの前の委員会で、たしか穗積君からもちょっと杉原長官質問があった問題のように思います。先ほどだれかの答弁で仮想敵国と言えばおかしいですが、向うがと、こういうことを言われておる。それでは仮想敵国とはおかしいとしても、向うがとは一体どこの国ですか。この点について一つ伺っておきたいと思います。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 これは非常に言葉じりをつかまえたように思いますが、私は今御質問が、原爆ですぐやられるじゃないか、こういう菊池さんの御質問でありました。日本原爆しようとする国を想像しておった御質問であります。でありますからそれは日本原爆でやっつけようというのは、もしそういう国があるとすればこれは仮想敵国だ、しかしそれは不穏当、言葉はおかしいから、おかしいけれどももしそういう国があるとしたならば、日本はこれを決して無抵抗主義でやるのじゃない、こう私が言ったわけであります。それを非常にとがめられるならば、ちょっとおかしくはありませんか。  それから国際間に話し合いをした、私は何も口頭で話し合いをしたことが条約と同じだということを申し上げたわけじゃありません。私の申し上げたのは、口頭でやったことはいつでもまた口頭で取り消しできるのじゃないか、そういう御質問であったようであります。そこで私は、文書にしたってそれはまた文書をもってすれば取り消しができるのだ、こういうことを申し上げたのでありますが、それは別の議論といたしまして、それでは口頭でしたのは何もお前限りで、お前がやめたら何もない。私はそういうものじゃないと思う。国際間の国際信用というものは、私はそんな軽々しいものじゃないと思う。もっともごく簡単なことで、すぐ忘れるようなことで口頭でやったことは、それは忘れられたり、またかわったりすることはありましょう。しかし重要な問題について国際間の信用というものは、そう私は軽視せられるものじゃない、これでちゃんと、しっかりとその信用を重んじていくことが国際的の言質にもなるし、また将来の国交の何にもなるわけであります。その点はそう説明して差しつかえないと思うのでありますが、大体そのようなことで……。
  154. 植原悦二郎

    植原委員長 穗積君。時間の都合がありますから簡単に願います。どうか主観的な考え方は抜きにして……。
  155. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは秘密保健法の審議の中で原爆の持ち込みの問題に終始したわけですが、それの締めくくりとして当然、あなたとアリソン大使との了解事項の解釈についてちょっと確かめておきたいのです。と申しますことはどういう趣旨で私が言うかということをのみ込んで答えていただきたいのですが、たとえば先般富士地区におきまして実弾射撃をやるとき、あのときに使用協定の中に、地元の了解を求めるということになっておる。これに対して山梨県知事その他が県民を代表して、この使用に関しては絶対に永久に困るという趣旨の申し入れをしたのです。そうするとそれに対して日本外務省、あなたの部下並びにアメリカ側の諸君は、これは承諾条件にしておるけれども、使うということについては基本的、根本的に承認されておるんだ、だから絶対に永久に実弾射撃は困るというようなことは、これは協定の根本に違反するものであって、協定違反の答弁であるからこんなものに左右されるわけにはいかぬ。日本側がそういう答えをすることは誤まりだという解釈を、外務省当局も向う側もされたようであります。そういうことがありますから、承諾なくして日本原爆基地にしないということについての解釈、先ほどは情勢のいかん、条件のいかん、時期のいかんにかかわらずこれをお断わりするつもりだという御答弁があったわけですね。そうすると実質的にはその承諾なき限りは、いかなる情勢のもとにおいても、いかなる時期においても、アメリカ日本原爆基地として使うことはできない結果になるわけです。ところが向うからそういう申し入れがあって、日本側からそれを拒否した場合に、向う側としては、世界中で原爆を禁止する条約がまだできていないときに、アメリカにのみ日本という一定の地区において原爆を絶対に使ってはいかぬというようなことをやるのは、常識的に非常に困ることだ。さらにまた安保条約というものを持ち出して、安保条約は、日本を中心にしてアジアの治安の維持のために、アメリカ責任を持ってやるということになっておるのだから、それを遂行するために現在は原爆を使用することが必要な情勢になってきた。それに対しアメリカ側から見て正当と思われない理由によって、いかなる情勢でもいかなる時期でもこれを使ってもらっては困るというようなことを言うのは、その拒否の態度は、この協定の根本に違反する考え方だという解釈をされる危険を、われわれは今から見ておかなければなりませんから、そこでこの承諾という言葉は、いかなる内容――その拒否する場合のノーと断わるときの理由、あるいは情勢、条件等についてはこちらに全くの自由があって、これは使用する場合の不可欠の条件であるとわれわれははっきりここでその解釈を統一しておきたいと思うのです。その解釈については重光外務大臣は一体どういうふうにお考えになっておられるか。すなわち了解事項である承諾なくしては日本原爆基地にしないということに対して、いかなる情勢、いかなる条件、いかなる時期においても理由のいかんを問わず日本が断わった場合には、それに対してアメリカはそれ以上押してこれを基地とすることを強要する権限はないという解釈でよろしゅうございますね。その点を確かめておきたい。
  156. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の御質問があまりにも長いので、どこにどういうのかということがあまりよくわかりませんが、しかしこれをすなおに伺えば私はその通りだと思います。というのは、私は未来永劫そういう考えであるということを今約束するわけには参りません。私は今日の私の気持もしくは方針を申し上げることはできます。それはそういう場合があったら許諾を与えないという……。
  157. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことではないのです。この了解事項の承認条件としておるところの承認が、ノーと言えば使うことはできない解釈ですか。
  158. 重光葵

    重光国務大臣 それはそうです。
  159. 穗積七郎

    穗積委員 下田条約局長、それでよろしゅうございますか。
  160. 下田武三

    下田政府委員 その通りでございます。すなわち日本側は承諾を与えるといなとの完全なる自由を有するということだと思います。
  161. 植原悦二郎

    植原委員長 暫時休憩いたします。午後二時より再開いたします。    午後一時十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十分開議
  162. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本海外移住振興株式会社法案議題といたします。通告順によって質疑を許します。戸叶里子君。
  163. 戸叶里子

    戸叶委員 海外移民は非常に重大な問題でございますが、それと同時に、企業として考えましたときに、この移民会社というものは、今までの例から見ますと、ある程度の危険を伴うものではないかと考えます。そういうのに対して、外国からの資本が入ってくるということは、何かそこに政府の裏づけがなければならないと思いますが、大蔵省の方で、危険のある場合には政府の裏づけがあるというような点をお持ちになっていらっしゃると思いますが、この点をはっきり承わりたいと存じます。
  164. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 外資については、元利金の支払いを日本政府保証をする、こういうことになっております。
  165. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、もう少し具体的に申しまして、三銀行から投資された場合に、これを企業に貸し付けますが、そうして、もし回収ができなかった場合に、政府が、当然これは大蔵省の管轄になりますけれども、これを引き受けるというふうな建前をとっていられるわけでございますね。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さようでございます。そうしないと外資は入らないです。
  167. 戸叶里子

    戸叶委員 これは両方に伺いたいと思いますが、今までこの会社を作る前にありました同体、それを伺いたい。そうして、それは海外協会連合会だと思うのですけれども、そこがどのくらいの政府の補助を受けておったか、そしてどのくらい回収できなかった、またどういう団体があったかということを伺いたいと思います。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一番おもなのは日本海外協会連合会、村田さんが会長でございましたか、これだと思います。なお詳しいことは政府委員がおりますので答弁させます。
  169. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大臣からお答えがありました通り日本海外協会連合会という団体がございまして、この団体に対して渡航費の貸付事務をいたしていただく関係上、一千万円くらいの手数料が出ておりますが、この渡航費の回収の状況につきましては、前会外務省当局からお答えがございましたが、今日までのところ、まだあまり大した成績が上っておりませんが、これは据置期間の関係その他がある関係と私どもは了解いたしております。
  170. 戸叶里子

    戸叶委員 そこに働いている人たちというのは、大体どのくらいいらっしゃるわけですか。県下にも支部などがあったように思うのですけれども、その点をどうぞ……。
  171. 石井喬

    ○石井説明員 私からお答え申し上げます。ただいままでございました団体は、中央においては日本海外協会連合会というのが一つごさいまして、これは会長が村田省藏氏でございます。それから、そこに働いております職員と申しますか、それは大体十二、三人でございます。昨年度におきましては、政府の委託費によって募集、選考、訓練、それから渡航費の貸付事務等を行なっております。その委託費として七百万円だけ金が出ております。本年度はそれが千二百万円ということになっております。それでこの団体の性格と申しますか、それは民法による財団法人でございまして、各都道府県に別個の財団注入になったもの、あるいはまだならないものもございますが、そのほとんど全部に海外協会というものがございます。これの連合体として中央に海外協会連合会があるという関係になっております。地方の海外協会につきましては、政府の補助金は昨年度においては全然出ておりません。
  172. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今度会社法案ができました場合に、この協会は、一応会社の方へ併合するのでしょうか。それとも別に存在するのかどうか。そしてまたそういうふうに別にあった場合に、その協会の維持費とか、そういったものはどういうふうにするか、その点も伺いたいと思います。
  173. 石井喬

    ○石井説明員 それは当初会社を作るということになりました際に、いろいろ議論のあった点でございます。両方を一つにして一本にしたらいいじゃないかという議論もございました。しかし結局いろいろ議論いたしました結果、アメリカからの借款の千五百万ドルを運営いたしますためには、これは私どもの見通しといたしましては、ドイツ、イタリアその他の例を考えまして、現地において十分にペイする、非常に利潤を上げないまでも、少くとも回転し得るという観点からいたしまして、そういったような一つの採算ベースと申しますか、回転をさせるという観点からいたしまして、これはやはり別個に作った方がよろしい。海外協会連合会は募集、選考、訓練というような、非常な公共的な事業をやることになっておりますので、これとやはり企業的なものとは指導理念も違いますし、それからまたそれに適当する人もおのずから違いがあると思いますので、私どもはやはり別途に作った方がよろしいというつもりで、海外協会連合会というものは、会社ができるにかかわらずこれを存続させることにいたしております。そういたしましてこれの維持費でございますが、この点は、最も移民事業の基本的なものと申しますか、公共的なものでございまして、それ自身何ら収益の上る性質のものではございませんので、これはやはり政府からの委託費ということでやっていきたいというふうに考えております。
  174. 戸叶里子

    戸叶委員 そっちの方へのことしの援助といいますか、補助は、政府からどのくらいやるのですか。
  175. 石井喬

    ○石井説明員 本年度は千二百万円ということになっております。
  176. 戸叶里子

    戸叶委員 この千二百万円というのは、大体技術の指導とか、さっきおっしゃったような、そういったことに使われるわけですね。違いますか。
  177. 石井喬

    ○石井説明員 そういったものは、連合会の本来の任務でございます募集、選考、いろいろな教養関保、そういったようなことに使う事務費と人件費ということに相なります。
  178. 戸叶里子

    戸叶委員 この前の委員会のときに出たかもしれませんが、私ちょっと聞き漏らしたのですけれども、渡航費はこの協会を通して貸し付けることになるのですか、その点を伺いたい。
  179. 石井喬

    ○石井説明員 渡航費は、従前におきましてはこの海外協会連合会を通して、政府が連合会に貸しまして、連合会が個々の移民に貸すという形式をとっておりました。しかしこの法案におきましては、渡航費の貸付、回収は会社が行うということになっております。従いまして連合会の方からその仕事は落ちるということになるだろうと思います。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 戸叶さん、大蔵大臣は長くおられぬと思いますから、大蔵大臣に対する質疑を願います。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは委員長の御注意がありましたから、外務省関係のこまかい質問はあとにすることにいたします。  そこで大蔵大臣に一点伺いたいのですが、二十三条の、大蔵大臣外務大臣意見が違った場合の調停はどういうふうにするのでしょうか。
  182. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 理論的に言えば意見の違うこともあるのですが、こういうふうな仕事の性質から、意見の違うことも大体折り合っていくと思っております。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣大へんあっさりお片づけになりましたけれども、それだけではなかなか了承できないと思うのです。そういうような場合にどういうふうにするとか、はっきりと何か裏づけになるような御説明いただければ大へんけっこうだと思うのです。
  184. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これには協議ということで、協議がととのわぬ場合の規定はないのでありますが、これは海外発展の関係もありますし、ただいま申し上げましたように、事柄自体は海外移民でありますから、日本の人口政策から見ても、あるいはまた海外市場の獲得という意味からいっても、ぜひともこれはやっていかなければならぬという点については異存がありませんし、ただそのときの財政の事情から、出資等において外務大臣意見の違う点は、立場上あるかと思いますが、結局これも財政全体についての理解を得れば、そうこれについて何か判定でもするようた規定を設けておかなければならぬというようなことではなかろう、こういうふうに思っております。
  185. 戸叶里子

    戸叶委員 結局こういうふうな事業の場合には大体予算を必要とする場合が多いと思います。そうなってきますと、大蔵大臣に相当御理解がないと、こういう問題は行き詰まりになると思いますので、この場合だけは、やはり大体において外務大臣の方にいろいろな点を譲られるような結果になるようにやっていただいた方がいいのじゃないかと私は考えます。こういうことを一応要望したいと思います。
  186. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはおそらくだれが大蔵大臣になっても、十分理解を持ってやるだろうと私は考えております。
  187. 植原悦二郎

    植原委員長 和田博雄君。
  188. 和田博雄

    ○和田委員 この前私が要求しておきました資料がまだ出ませんので、大蔵大臣に関する限りちょっと聞いておきたいと思います。その前に、今外務省の石井参事官の御説明によると、どうもこの会社の主たる仕事はコマーシャル・ベースによる投資にあるような説明だったと思います。それだと非常な疑問が私には起るのです。借款のいきさつからいってみても、 コマーシャル・ベースに乗った投資を主にするようなものであるならば、政府がわざわざたくさんの金を出す必要はないのです。採算に乗った仕事だけやるなら、政府がたくさんの金を出してこんな会社を作る必要はないと思う。その点については大蔵大臣どうですか。
  189. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 コマーシャル・ベースというのはどういう意味で言われたか私承知しておりませんが、先ほどちょっと聞いた点ですが、私の考えでは、相当外資も入れる、これは金利も安い、ところが南米というところは世界的にも金利の非常に高いところです。そういう意味からそのときの情勢で資金の運用ということを考えると、そこに自然にコマーシャル・ベースに乗り得るという考え方です。しかし実際のこの会社の運営につきまして、これで何か商売をしてもうけて高い配当までしよう、そんなことは、はなはだ趣旨が違う。コマーシャル・ベースに乗り得るような客観的な条件もあるが、しかしできるだけそういうふうな有利な条件で一人でも多く移民の人たちを向うに送るために使う、こういうふうに私は考えていくべきじゃないかと考えております。
  190. 和田博雄

    ○和田委員 どういう意味でコマーシャル・ベースと言ったかわからないと言われたのですが、普通のコマーシャル・ベースに乗るといえば、資本主義の中においての企業なのですから、とにかく採算がとれるということだと私は思う。損を覚悟でやるなら、わざわざこんなところにコマーシャル・ベースに乗せてということを書く必要は私は毛頭ないと思う。そうすると特にそれをうたっているのは、やはり企業として成り立つもの、そういうものを主にしてやるということに解釈せざるを得ないのです。もしもそうじゃなくて、損益も何もなしに、ただどんどん出していくのだ、場合によっては損もしていくのだというようなものであるならば、特にコマーシャル・ベースということを書く必要はない。それからこの借款の性質からいって、これは自由党の時代にできたことですが、石井参事官の言うことを聞いてみると、向うからその点を実は突っ込まれているのではないか。農業移民というものは、本来日本でいろいろやってみたけれども実は政府の金でやってきた。会社でやれば損をするにきまっている。従ってそういうものは本来なら財政資金で出すのだけれども、しかし政府は予算を一兆円というワクの中におさめたいので、今政府の財政資金をこの方に出すわけにいかないからというて初めて米銀がサービスで出すというのが実情です。そういうことはあなたは報告を受けておられるだろうと思う。そうだとするとなおさら私はこの会社の目的、事業内容は、農業移民、しかも今までの大部分は全部が農業移民なのですから、そこに中心を置くという形でないとおかしいと思うのです。それから今も答弁を聞いておりますれば、わざわざこの会社とそれから海外協会連合会と、二重に分けてこの仕事をやっていくという点も、考え方にいろいろおかしい点があるのですから、大蔵大臣としてはもっとこの会社についてよく性質なり何なり、実態というものをおつかみになる必要がある。大蔵大臣としての主張は正しいと思う。大蔵省の主張からは今言ったように、損をするようなものは、国家の国策としてやるべきでない。ある意味で、それは私は正論だと思う。そういう点については、あなたの方でも十分にお考えになってもらいたいと思う。その点についての御見解を伺いたいと思います。
  191. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いろいろ問題はあると思います。株式会社にしたのは、海外進出に資するための相手方の感触をやわらげたいというのが――これは公団にするとか、いろいろな何がありますけれども、感触の上ではそれがよかろうというので、私は株式会社というものにしたと思うのです。それから先ほどからしばしば申されますように、これはもうける、いわゆる営利的な株式会社というふうには、運営の上において少くとも考えておりません。それはおそらく外務省も同じ意見だろうと思います。ただしかし、今後海外から多額な借款もして、そして向うで営農一資金にしていろいろ仕事をさせる。こういうふうな建前をとっております。従いまして初めから移民の金はくれてやる金だというような行き方でなくて、やはり外国から借りた金を払っていくのだということが、結局移民の方を海外において成功させるゆえんだ。自分でかせいで借りた金を払っていかなければならぬというような気持を十分持たせることが、私はいいであろうというような意味考えての、幾らかビジネスというような意味も含まれると思うのですが、しかし会社自体が何か移民事業というものを目的にして、この会社自体がもうける、そういうような運営は、少くとも財政資金が出ている限りは――外務省が直接監督で運営されるのですから、当然私はそういう考えは持っておりません。従いまして外務省も、大蔵省の方が商売はうまいのですから、大蔵省の意見を十分聞いてくれると考えております。
  192. 和田博雄

    ○和田委員 しかし、この会社の根本の考え方が、もうけをするのではないということであれば、実はそういうように運営されるようになっていなければならぬと思います。日本の移民は、ただ政府が金を出してくれるから移住しようというような甘い考えではないと思います。ことに海外に対する日本の移民政策は、この会社が成功するかしないかということで将来の勝負がきまってくると思います。もちろん移民だけで日本の人口問題は解決しないと思いますが、しかしこれが大きな方途であることは間違いない。しかもそれがブラジルやその他の国々で道が開けて参り、日本の移民というものが向うでも十分に成り立っていくし、また経営自体としても会社自体が損をしないようになってよい経営になっていくことは、これはわれわれとしても喜ぶべきことである。大蔵省というものは、もともと金を出すことについては非常にやかましくて、むしろ引き締めてしまうところですが、そうすると逆にコマーシャル・ベースに乗せるということをやっていけばいくほどきれいごとに過ぎてしまう。もうかりそうなところに投資していくということになって、ほんとうに移民の世話をして、移民自身の経営が成り立っていくようにすることについては、どちらかと言えばおろそかにしておるということが今までの通弊です。移民の仕事は今に始まったことではないのですから、それをわれわれは心配しております。今大蔵大臣がこの会社の実際の問題は運営にあるというように言われたことは、私もそうだと思います。法律自体としては大して文句を言うところはないが、しかし運営がどうされるかということで、この法律が死んだものになるか生きたものになるかということがはっきりしてくると思います。ですから私の聞きたいのは、なるほど財政上の融資は政府が出すのだから、大蔵省としての根本の考え方は、やはりコマーシャル・ベースということではなくて、移民の事業そのものが成功するようにするために金を出すのだ、こういう運営の仕方をしていくのだということにあなたの考え解釈してよいかどうかを承わりたい。
  193. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今和田さんの御意見と大体同じであります。
  194. 和田博雄

    ○和田委員 それからもう一点伺いますが、これは会社ですから、政府の方として一つの出資の対象にはなっておりますけれども、あとの一般からの出資の点につきましては、大蔵大臣の見通しはどうですか。
  195. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは一応民間から入れるようにいたしております。努力してみようと思います。
  196. 和田博雄

    ○和田委員 今大蔵大臣なかなか苦しい答弁をされたが、実際上は民間からはなかなか金が集まらないと思います。相当の威力をもってしてもなかなか集まらないと思います。それだけその会社の仕事の性質を物語っておると思います。ですからその点を相当考えられて、予算の範囲内においては一億ということのようですが、やはりもう少し大蔵大臣としてのはっきりした見通しをお聞かせ顔いたいと思います。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体私の聞いておるところでは、政府出資が一億で、民間から五千万円程度というふうに考えているようですが、これはいろいろの関係で五千万円くらいならばできるだろうと思っておるのでありますが、できるだけやるつもりであります。
  198. 和田博雄

    ○和田委員 金融のことはよく知っておられるでしょうから私はこれ以上追及いたしませんが、そこの実態をよくお考えになって、大蔵省としても、ほんとうの移民の政策が伸びていくように考えてもらいたいと思うのであります。  それからもう一つ、これは大蔵大臣の管轄ではないと思うのですが、大蔵大臣というものは、この法案では外務省が大体主管省ではあるけれども、相当重い責任と権限を持っております。そこで私はきょう大蔵大臣意見を伺っておきたいのは、一昨日か昨日かの夕刊だったと思いますが、この会社がまだできておらないのに、青木一男氏がこの会社の総裁になることがきまったという記事が出ております。これは全く国会議員をばかにしていると思います。まだできていないんですよ。審議中の通るか通らないかさえわからないのに、事業計画を出せと言っても事業計画さえ出していないのに、この総裁を政府がきめたというようなことは、これがもしもほんとうであるならば、政府は非常なあやまちを犯した重大な責任があると思います。これは果してほんとうなりやいなや、お伺いいたしたいと思います。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 実は私も新聞を見て驚いておるのです。どうもいろいろなことがありますけれども、これは政府も全然知らないのじゃないかと思います。それは、私責任を持って政府も知らないと言ってよいと思います。
  200. 植原悦二郎

  201. 楠美省吾

    楠美委員 私はめんどうなことは言いません。大蔵大臣としての将来のこの移民問題に対する覚悟のほどを伺っておきたいのでありますが、私は昭和十七年、日本の人口問題移民問題を片づけるべく衆議院に入ったのでありまして、現在も日本の当面する大きな問題はこれだと考えてやっております。申し上げるまでもなく、日本の国土は半分になり、人口は数百万も帰って来ており、そうして毎年人口が百万以上も増加しております。犯罪の状況を調べてみますと、親にして子を殺した者、子にして親を殺した者、これはもう日本の歴史始まって以来の犯罪の状況であります。保元、平治の乱は親子が争ったいくさでありますが、これが今の日本の現状だと考えます。その原因を究明すると、やはり土地問題、財産の分配問題、人が多過ぎること、こういうようなところに結論が参ります。それでこの移民問題に対しても、今年はようやくこの会社ができ、あるいはまた横浜にあっせん所ができて、五千五百名分ほどの画期的な大きな予算をとりました。私はこの移住会社を作るまでいろいろ政府にも折衝してみたのでありますが、私は将来大きな規模のもとに移民をやることなくしては、これだけで日本は滅亡すると考えております。それで大蔵大臣の部下であられる皆さんが、一生懸命努力しておられることについては、まことに敬服に値するのですが、しかし私は、日本の大問題であるこの移民の問題を片づけるのには、大蔵省当局にもっと目を開いてもらわなければできないと考えております。それで和田委員に対しても今大蔵大臣がいろいろ申されておりますが、私に言わしめれば、日本の予算の一割くらいはこの移民政策に向けていただきたい。イタリアは今でも毎年十五万人の移民を出しております。一番出したときには、私の調査が間違いなければ、昭和二十二、三年ごろには三十八万人もの農業移民を海外に出しておるのであります。それくらいの勢いで私はやっていただきたい。今中南米は日本人を盛んに迎えようとしています。また将来は東南アジア等も盛んに迎えるでしょう。先般の委員会での外務省参事官委員との質疑応答を聞いておりましても、もうアマゾンはやれないというようなことを言っておりましたが、私はそんなことはいけないと思います。いかにアマゾンが雄大で千古斧鉞を入れなくとも、今原子力をもって農業をやる時代が来ておるのだ。私は、評判の悪いアマゾンの問題で、サンパウロで約三千名の民衆からほとんど発言のできないほどやられたのであります。あの地域はわれわれの手によって開墾しなければならぬ。グァマ川という二千五百万町歩の水田ができる川があるのでありますが、これは大統領のヴァルガス氏がやってくれと言っておるのであります。そうした意味において、大蔵大臣は、日本の政界で大きな地位を占められる方であり、また財政関係でも最も有望な人だと思いますから、何としてもこの移植民政策に対しては大きな抱負経綸を一つ考えて、部下を督励鞭撻してもらわなければならぬと考えておる次第でございます。それで一つ具体的にお伺いしたいことがございます。それは先般もこの委員会の問題になったのでございますが、たしか正金銀行の金だと思いますが、ブラジルに約八億か七億の金が凍結されておるようであります。これはわれわれはどうしても移民政策に使わしてもらった方がいいと考えております。これはどういうものでしょうか。先般の答弁によると、親善関係に使う、こう言っておりますが、親善といったっていろいろありましょうけれども、これを移民政策に使ってたくさんの人間をやれば、将来観光のために人が来る、また貿易が盛んになる。いろいろ副産物も出てくる。そういうことで現在のイタリアも生きておるのでございますが、こうした凍結資産の問題も大蔵大臣は思い切って移民政策に使うことができないものでしょうか、その一点だけ伺いたいと思います。
  202. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 移民に関します御意見は、全く私も同感であります。もう少し早くやはり政府が本腰を入れるべきであったろうと思います。移民についてはいろいろ問題もあり、せっかく家族をあげ、あるいは自分の生命を託して国家のために海外に発展しようという方に、非常に行き届かないところが多かったように思います。今後国家として非常に考えなければならぬと思います。なお具体的の一つの問題として海外の、特に正金銀行の財産というもの、これは何さままだきまっておりませんが、ただ法律関係がありまして、向うの返す場合におけるいろいろの条件もあり、また私有財産というような点もあるのであります。これは法律問題がありますから何とも確言ができませんが、もしもこれが政府の財産に帰して、政府が自由に使っていいというような場合におきましては、これはお説のような点について十分考慮を払うべきだ、かように考えております。
  203. 楠美省吾

    楠美委員 それではもう一つお伺いしますが、こういうことを国会の議員として尋ねない方がいいし、言わない方がいいのでございますが、渡航費の問題でございます。渡航費は以前は二百円でございました。これは国家の補助でございました。それを今日くらい移民をやらなければならない時代はないほど追い詰められておるのに、渡航費は現在十一万円でございます。私は渡航費の額についても非常に不満でございます。しばしば大阪商船の会長、社長等にも言っておるのでございますが、これは急に直らなければやむを得ないといたしましても、やはり渡航費ぐらいは国家がこれを補助すべきじゃないかと考えておるのでありますが、これは即答できない問題だと思いますけれども、これに対して大蔵大臣はどうお考えになるでしょうか。
  204. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 海外に移民するような人には渡航費ばかりでなく、はなむけぐらいは、気持としては大いにしてあげたいのです。しかし何分にも今日の日本の財政というものが、敗戦の結果非常に苦しいものですから、そこまで手が届きません。従いまして今日は貸付という形になっております。しかし移民をされる人にできるだけ条件を有利にしてあげたい、その辺でさしあたりはがまんしていただかなければなるまい、かように考えております。
  205. 植原悦二郎

  206. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 先ほど各委員から大臣質問になりましたが、いわゆる国策の程度をどの程度にお考えになっておるのでありますか。たとえば大蔵大臣外務大臣意見は一致しておるかもしれませんけれども、事務当局の意見は一致しておらぬ。絶対一致しておりません。一致しておらぬから内閣は非常に心配して調整をとってきたのである。これに対しては自由党と民主党との修正案を練って示したけれども、これもいつの間にか消えてなくなった。こういうことであります。ですからこの法案そのままではこの目的を達成することはとうていできないだろう。こういうことでこの前の委員会で私から、この法案の三方面にわたってこれを研究してもらいたいと、いわゆる研究課題として申し入れをしておきました。これは事務当局にあとでお伺いいたしますが、国策という程度、国策には間違いない、だろうけれども、とにかく千五百万ドルの外貨の借款に成功した。この組織に一億程度の金を出して、まずこれを借りようじゃないかという程度で国策ということを糊塗しようじゃないかということも考えるのでありますが、この点いかがでありましょうか。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今具体的な事柄は、借款につきましては千五百万ドルという程度になっております。しかし今後の日本の移民問題の重大性から見て、私はこの振興会社の将来は大きな働きと地歩を占めていくべきであり、またいくだろう、こう思っております。こういう問題につきましては、これはなかなか重大な問題であるとともに、むずかしい問題でもありますので、今後政府として、たとえば六カ年計画というような計画のうちにも人口問題その他海外市場の問題等とも関連をいたしまして、やはり確固たる方策を樹立すべきだろう。私はそういう政策が樹立されれば、それに対応して、それを実現するためにこれをどういうふうに施策するか、そうして同時にまた全体の計画の中の序列においてどういうふうな重点を持っておるか、こういうようなことで私はだんだんに解決していくのじゃないか。全体として日本を一体どうして今後再建をし、りっぱな国にしていくかという計画に対して、ある一つだけを取り上げてそれぞれの立場を強調して勝手なぶんどりみたいなことをやっていくから、結局国全体としてはうまくいかない、そう思っております。そういうことになるのですから、どうしても、六カ年計画はむろんですが、衆知を集めてりっぱな計画を立ててバランスをとる、そうして重点的に動いていくということになれば、仰せのような考え方が実際に実現していく。そうなればあまり論議が少くしていくのじゃないか。ほんとう言うと私は予算を初めてやってみたのですが、なかなかむずかしいですよ。全体のバランスにおいて国家のためにこれがいいというのじゃなく、やはりそれぞれの立場からの主張が非常に強い。そうすれば結局要るところにも行かぬということも起りますから、そこは今後の内閣というもの、あるいは政府というものはりっぱな計画を持たなければいかぬ、かように考えます。
  208. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 よくわかりました。ドイツ、イタリアの例を見ますと、先ほど和田委員からお話がありましたが、コマーシャル・ベースに乗らぬのである、なるほど最初は乗らぬでありましょう。ドイツ税関係いわゆる免税の処理によって、また金融の関係において、いろいろの面からこれを援助して、そうして現在商社の四二%程度は海外進出に非常な力を注いでおるのであります。またイタリアはおそらく現在一徳ドル以上、あるいは一億二十万ドルくらいになっておりましょう、この程度の現金送金ができておる。貿易関係その他において、はね返りと申しましょうか、経済面に非常にプラスになっておる。しかも最初やはりコマーシャル・ベースに乗らなかったけれども政府の施策よろしきを得て、大統領が率先して街頭にまで立って演説して、これを最大国策に取り入れたということが今日の大をなしたのである、こう私は見ております。しかしその人口は日本の半分、西ドイツもイタリアもわずかに四千三、四百万でありましょう。日本はその倍である。経済状態も御承知通り非常に日本は窮屈であり、すべて人口の過剰が大きな原因をなしておりますから、この移民問題はたとえば人口の面においても、あのハワイは日本人が大体四〇%おりましょう。その四〇%の入口があればこそ、社会的に、政治的に、経済的に非常に強い地位を占めて、ハワイの独立運動を起して、これも大体大統領が了承したように聞いております。また南米においても、パナマのあの運河に対して黒人を多数呼び寄せてあれに成功した。その黒人は今は非常な勢力を持って、しかも選挙権を持っております。私が行ってこれを視察して、間もなくこの国は黒人の政治的勢力が非常に大きくなるだろう、こういうように見て参りましたが、年々それの増加率が強いそうであります。またボリビアのごときは、私ボリビアの政府といろいろ折衝いたしましたとき日本の青年をほしい、何万でも何十万でもほしい。そうして日本人と完全に提携して経済の再建をはかりたい。けれどもこの国は領事官しか来ていたかった。その後代理公使をやるようになりましたれども、私の帰ってきての報告によって移民を出そうということになったようでありますけれども、それほど日本政府としては移民政策に対してはほとんど無関心同様であった、これはその通りあでります。よって多数の日本人を向うに送り出すことによって、日本人の政治的、社会的、経済的な地位が非常に大きくなることは申すまでもありません。そうだとしますと、これは日本の最大国策という点に触れなければならないのではないか。けれどもこの内容を見ますと、一億円の資本であって、五千万円の民間資本があったかないかわかりませんけれども、この内容から見れば、利害関係の強い一部の人の投資はあるか知りませんが、全体の面から見てそれはほど遠いものである。いわゆる移民というものはコマーシャル・ベースに乗らぬのだから赤字になるものである。この会社が金を借りてそうして欠損金ができることはわかっておる、だから出したくないのは当然であります。そういう問題の解決をはかっていかなければなりませんし、あるいはまた輸出入銀行においても、外国への投融資は輸出入銀行の規定のうちにちゃんと入っている。けれどもこの法案には外国への投融資が強くうたってあるが、この範囲はこえてはならない、輸出入銀行のその範囲に入ってはならないということは、事業の運営はできないということを表わしているのではないですか。そういたしますと、私の感じとしては一億円の資本を食ってしまうことは明らかである。そうするとアメリカからの千五百万ドルの借款だけでやるということである。それではあまり国策の線には遠いではないか。そこでこれをお伺いしたいと存じますが、ほんとうに国策の線でいこうとするならば、移民問題について先進国のそれを十分にお調べになって――日本のこの人口一過剰は、いかに国内でりっぱな政策を盛っていったところで、これはこれは解決のつけようはずはないのであって、あくまでも実際の問題であって、これは海外進出でなければならない。これは八口問題そればかりでなく、経済全体がはね返り経済ということに心をいたさなければならない、こう考えております。そこでコマーシャル・ベースに乗る、乗らないという問題は、中小企業を多く送り出して中小企業を育成するということだ。金もうけではなくて育成するのだ、それがいわゆる移民問題の大きな解決のかぎじゃないか、こう考えるのでありますが、この点について、まあその通りであるというお答えであればあれなのですが、十分に一つざっくばらんに御意見を拝聴したいと思います。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えも夏堀さんの考えもおそらく相違ないと思う。私も全く今のようなお考えに同感です。特に移民の問題は、たとえばこういう振興会社を作るが、むろん政府としては相当の出資も今後にいたしますから、その金を最も有効に使われることに非常な関心を持つことは言うまでもありません。しかしその最も有効に使われるということは、この会社がもうけるということではないと私は思う。移民をしたその移民の方々が、外地において成功するということが、この金の最も有効に使われたということになると私は思う。それは一つにはさらに将来の移民の発展があるばかりでなく、人口問題から見ても大きな役割を果し、他面これは海外市場の獲得あるいはまた国交の親善、あらゆる面において大きな役割を果すと思う。そうして具体的にそろばん勘定をかりにとっても、これは貿易の伸張という形においてすぐ現われてくる。この会社に直接効果があるのではなくて、日本と外国との全体の、先ほどお話のように政治、経済、社会各般の関係において実績が上ってくる、そういうことは私はやはり目ざすべきだというふうに考えております。この点、先ほどのお話と全く私は見解を一にしております。  なおまた資金等の関係についてのお話でありますが、この法案を見ますと、輸出入銀行からも借りられるのですが、これはいろいろまたそれを除いた部分についてこの会社も考えるというふうになっておりますから、問題は要するにこの会社の運営は、今私どもが想定をいたしておりますようにうまく運営されて、そうしてこれがますます大きく有力になっていく、それをまた政府はバック・アップしていく、こういうふうな過程が繰り返されていくことがいいのではないか。今回御承知のように予算が苦しい予算でありますから、初めはこの会社にはそれほど出ません。これも民主党、自由党共同修正で一億が出たのでこれがもとになったのですが、しかし私もこの移民については非常に関心を持ちまして、あの苦しい予算でありますが本年は六億一千万円ばかり渡航費に計上いたしまして、昨年に比べて二億数千万円ふやして、去年の三千五百人をことしは五千五百人というような、そういう程度で、これは船足の関係からいいまして日本の船を全部、また外国船もある程度使うということにして、それぐらい使うほかはなかろうというふうに考えておるのであります。そういうふうに乏しい予算でありますが、移民については私はできるだけ考慮を加えたつもりでありまして、今後この会社が今申しましたような意味において、ほんとうにりっぱに発展することを私も期待いたしておる一人であります。
  210. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 大蔵大臣は財政面を担当なさっておるからいろいろ御苦労なことでもありましょう。日本の現在の予算面において、あれもやる、これもやるということは非常に困難なことであります。開発もしたいのだ。国内開発もやっていかなければならぬし、海外の開発もやらなければならぬ。そこで実際の現状を一通り申し上げたいと思うのであります。  海外の方は、先ほど申し上げたように、たとえばボリビアの一例をもっても非常に地下資源が多い、開拓地が多い、人口はわずかに三百万人しかないのであります。そこでどうしても日本人と提携しようとあちらの農林大臣が閣議を休んでまでも私に話をして、日本と一緒にやろうじゃないかといって立ち上って私に非常な熱意を示したのであります。そういう状態が日本の経済にどれほど大きな影響を及ぼすかということは先ほど申し上げた通りであります。そしてかりにこれを漁業にたとえてみますと、私が行ったときには日本の国旗を立ててやろうじゃないか、いろいろな設備を作ることもどんどん開放しようじゃないか、全然未調査のところはたくさんある――その通りであります。けれどもあららはそういう技術を持っておりませんので日本に頼むと言っておる。しかも国連の連中がこの会議に出席して、ぜひ日本でも協力してもらいたいということになったのであります。これは政府に長女電報、書面によって私はちゃんと報告してあります。そういう状態で、あちらの方では日本人と提携したいがために、政府出資もしくは政府の指定する団体を作って、日本の進出を待っておるということをはっきり申しておるのであります。その場合に日本の移民が一人々々行ってもたよるところもないからいわゆる棄民になってしまうのだ。それは日本の移民政策を誤ったのだということで、今この法案が通ったならば、よほど政府が本腰を入れてやらなければ、やはりこの法案が一片の作文に終って全然移民ができないということになることをおそれる、こう私は申したいのであります。  そこで時期の問題であります。最近入った情報によりますと、もうノルウェーあるいはドイツ、イタリーはどんどん進出体制を作ってやっているということであります。日本だけぼんやりしておりますと、永久に四つの島に閉じこもった国民は一体どこへ行こうとするのであるか、経済の行き詰まり、その摩擦を受けてどうにもならぬ。その打開策はいつ求めることができるか、できないじゃないか、一番すみやかに進出しなければならぬということで、結局時期の問題として検討しなければならぬと思います。一年おくれると十年のおくれをとる。一日おくれると一年のおくれをとる、こう私は申さざるを得ないのであります。  そこで北海道の開発問題、これも総務会で大分活発な意見がありましたが、大へんけっこうなことである。非常によろしいことである。私どもも賛成いたします。しかしこれは国内の、いわゆる日本の北海道である。これはどこへも行かぬのである。本年やるか明年やるか明後年やるか、その時期は日本の開発であるから適当にこの方法に対しては御研究願ってもどこへも逃げはしないのである。ただ海外ということになりますと、せっかく日本人を待っておる。あちらの政府は非常な熱意を持って、一代議士に対して、絶対にこれを国会及び政府に進言して目的を達するようにして下さいということを、熱意を込めて私に申し入れたのであります。そうしたような機会をのがしてそうしてとうとうろくな進出の体制も作れない。たまにちょっと出たかと思えば一億円の会社で、大体一億円という金でどの程度の運営ができるか、一年の人件費と調査費で完全になくなってしまう。一年で一億円という金がなくなることはわかっておるのであります。そうすると他の金融機関、社債の発行がどうこうといったって、これはもうどうにもならぬのであって、信用のない会社に転落してしまう。いわゆる国策会社といっても永久的に国辱的な、国の恥となるようなものに転落しなければいいがということさえ私は考えておるのであります。国策であったならばなぜ国策らしくしないのか。そこで財政面を担当しておるあなたが相当な決意を持って、ほんとうに日本の死活問題であるから、ここで一つやっていかなければならぬというのであったならば、事務当局も非常に緻密なりっぱな頭ではありますけれども、国策の線と事務当局の考えとは違うだろうと思いますので、私は国策の線をもっと強く、日本の今後のあり方をこの移民政策に最重点を置いて――経済の自立発展はこの移民政策にある。しかしこれは人口問題であって、経済のはね返りであり現金送金である、こういうことにあるじゃないか。しかし現金の送金はできないじゃないかということでありますが、これは協定によってできるのではないか。またできる国もあるのであります。よってこの問題は国として強く取り上げて、たとえば漁業の場合、農業の場合というようにこれを業種別に分けて、政府として各国との協定の線に進めて、資金面についてその線に沿うた計画を立てなければならない。この法案ではどこをどう探したところで計画がない。各議員から計画書を出せと言っておるようでありますけれども、恥かしくて計画の立てようがない、こう考えております。大へん抽象的な御答弁でありますが、しかしその通りでありましよう。責任のある大蔵大臣としてはあまりはっきりした答弁のできないことはわかっておりますけれども、こういう事情を申し上げて――もっと手っとり早く申し上げますと、私は前に自由党におった際に、自由党の総理からの内意を受けて行ってきたのでありますが、外務省がちゃんと公文書で通達してありましたので、非常に便宜をはかって下さいまして、あちらの政府が完全に日本と提携しよう、こういう段階に達しておりますので、どうしてもこれをまとめて早く返事をしなければならぬ。返事がおくれると各国がどんどん入っていって、そういう各国と提携するという段階に入るから、私は特にこういうことを申し上げるのであります。もしこのようなことがよろしいということであったならば、はっきりした御答弁を願うことはあるいは無理かもしれませんけれども、私の今申し上げたことがその通りであるならば、これにふさわしい御答弁をお願いしたいと思います。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見通りでありまして、これは私先ほどからしばしば私の考えを申し上げて御了承を得ておると思います。ただこの会社は政府が一億、民間から五千万、一億五千万ということでありますが、この一億五千万というところにあまりとらわれなくても――これはこの形で今スタートいたしますが、しかし政府がかような会社をつくって今後移民に本腰を入れようということでありますので、そこのところをどうぞ御理解を得たいと思います。どうしても今後の日本の移民ということは非常に重大な国策に間違いないのです。今後これは強く推進されます。同時にまた今お話のようにただほかのことと違って便々としておってもいけない。これはやはり時期もあります。またほかの国との関係、競争とかいうようなことも――競争というのも変ですが、ほかの国が先に入ってしまうということがあってはこれはやはり不利です。そういうような関係も今後十分考慮いたしまして、またそういう点については園田君がここにおりますが、外務省が遺憾なきを期するでしょうが、私はそういう相談を十分に聞きましてやって参ることにいたしたいと思いますが、これは私も同じような心配をいたしておるものであります。これはスタートですからそういう意味で御了承を得たいと思います。
  212. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 よくわかりました。園田さんの御答弁はよく伺っておりますので伺いませんが、今の御答弁によって大蔵大臣はこれは大きな国策として取り上げようという意思表示をしたと私は考えております。もし間違っておったならばまたあとでこれに対してそうではないということをおっしゃって下さればけっこうであります。よって事務当局は大蔵大臣の意図を受けてこの大目的達成のために、修正及びいろいろなことに対して御協力願わなければならない。よってあとでこの法案の修正に当って委員長も、この間私が指摘した三点に対して御注意があったようですから、その線に沿うて、きよう直ちにということは無理でありましょうから、次の委員会までにこれをまとめてお示し願いたい。これをもって私の質問を終りますが、その通りでありましょう、大蔵大臣いかがでありますか。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国策であります点は間違いない。これは今後日本として取り上ぐべき重要な国策であります。どういう御修正かそういうことは私存じておりません。
  214. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 どうするこうするということを今ここで具体的におっしゃらなくても、非常に重要性を持ったこの政策に対しては賛成である、その一語で足りるのであります。そういたしますと、これに対して修正するようなこともあるかもしれない。そのときに大蔵大臣は、私はそういうことはどうも知らなかったというようなことがあっては、はなはだ気まずいじゃないか、こう思うのでありまして、あなたは、大局的に見てこれは国策的なものである、よってこれをすみやかに軌道に乗せなければならないという御意思であると私は伺ったのでありますから、その線に沿うてこの委員会の運営を妥当ならしめるように持っていきたい、こういうわけなのであります。
  215. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 誤解もないと思いますが、私の見解は先ほどからも繰り返し申し述べ、そしてこの移民が国の重要な政策であるということも異論はない。それはその通りであります。ただ先ほどから申しますように、三十年度においてはいろいろな関係からできるだけの配慮は加えたが、そう思うようにはいきません。これは全体の財政関係でこういう法案になっておるが、スタートをここで切るのですから、どうぞこれは御了解を得て、この法案は一つ御通過を願いたい、こういうふうに私は申しておるわけであります。
  216. 植原悦二郎

    植原委員長 森島守人君。
  217. 森島守人

    ○森島委員 二、三点簡単に質問したいと思います。第一に、前回の委員会で和田委員から会社設立に対する目論見書と収支計算書を要求しておりますけれども、土曜日の委員会までには提出される見込みでしょうか、どうでしょうか、この点をお尋ねいたします。
  218. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 現在努力しておりますから、土曜日でございますればできると思います。
  219. 森島守人

    ○森島委員 私はいたずらに時期を急ぐわけではない。非常に重要な国策会社のことでございますから、その点について十分御研究願いたいということを申しておるのであります。これだけの法案審議するとなりますれば、これは趣意書とでも言うべきもので、絵にかいたもちと同じで、これだけ審議したのでは十分な審議は尽せないので、なるべくすみやかに資料を御提出願いたいと思います。  第二点としてお尋ねしたいのは、この法案の第八条の二項に、会社は前項第一号の渡航費の貸付を指定する団体にまかすことができる、こうありますが、これは海外協会などをさしておるものですか、その点をお伺いしたいと思います。
  220. 石井喬

    ○石井説明員 これは私どもは海外協会連合会を考えております。と申しますことば、渡航費の貸付はだれでも無差別に貸そうというのではございませんで、やはり移民としての適格者にこれを貸すことが、将来の回収等を考えましても必要であるという観点からいたしまして、選考と教養の事務に当っております連合会をして、個々にこの人間がいい悪いというのを選定させるのが一番いい、それに金を貸すということになりますから、連合会をしてやらしめるのが一番いいと思います。
  221. 森島守人

    ○森島委員 この点は大臣にもお聞きしていいのですが、そういたしますと矛盾がありはしないか、この会社の目的の第一には、業務の範囲として、外国へ移住する者に対して渡航費を貸し付けるという趣旨がございますが、大蔵省当局としては海外協会と会社と二元的に存在をさせていく御方針であるか、あるいは一元的にこれを一緒にするつもりか、こういう点についてどう考えられるか。
  222. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 この点につきましては他の委員の方にも、たしか外務当局からもお答えをなさっておりますが、大蔵当局への御質問でございますから、あらためてお答え申し上げます。私どもの当初の考えでは、どういたしましても、この移民というものをできるだけコストを少くして、先ほども大蔵大臣から申し上げました通りに、移民のために国費でも、あるいは借款の金でも十分使って、移民の利益になることを本旨と考えるべきである。従いまして国内におきます募集、選考とか、あるいは貸付の事務等は、できるだけ簡素にいたしまして一元的に処理をいたしたい、こういう考え方を持っておったわけでありますし、今日もまだその希望を捨ててはおりません。ただ外務当局あるいはその他の方々の御意見もございまして、今日海外協会連合会が長年この事務をやって参られた関係上、一挙にこれを解消するということもむずかしいというふうなお考えもございましたので、とりあえず法律の中にこういう規定が挿入されたように了解をいたしておるわけであります。  将来この会社がだんだん育ちまして、かような委託の必要がなくなるということになりますれば、当然この規定は空文になるというふうにも考えられるのでありますが、とりあえずのところ、そういう現実の必要というところから、こういう規定が挿入されたように了解をいたしておるわけであります。
  223. 森島守人

    ○森島委員 第九条に前項の資金の貸付の利率その他の条件は政令できめるとなっておりますが、この点が非常に重要事項である。ただぼんやりと政令できめるというだけでは、どういうふうに運営され、どういうふうなことが規定されるかということがきわめて不明確であります。私はこの点がこの法案の中の非常に重要な点であると考えておりますが、この点については大蔵大臣は果してどういうふうなお考えを持っておられるか。
  224. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま御質疑の政令の内容は、今外務省と相談をいたしておる最中であります。
  225. 植原悦二郎

    植原委員長 高津正道君。
  226. 高津正道

    ○高津委員 海外移住振興株式会社法案が成立すれば、外務省にいま一つ外郭団体が加わるわけであります。が、海外から日本への留学生に対する学徒援護会の方に相当の金が出ておる。われわれから見ると、まだ本委員会質問しておりませんが、ずいぶん支離滅裂であることを知っておるのでありますが、この会社は外務省の外郭団体として何番目にできるものですか。これは大蔵大臣も大事な点だろうと思うので、それを承わって、そのあとで大蔵大臣質問します。
  227. 園田直

    園田政府委員 外務省の外郭団体といたしましては、大きな外郭団体としては海外協会連合会と今度できるこの海外移住振興株式会社だけでございます。今御指摘の留学生を取り扱っておるものは、中華の学生を取り扱っておる日華学友会及び各国の留学生の世話をしておる国際学友会のみでございます。
  228. 高津正道

    ○高津委員 和田委員からお尋ねした、まだこの法案の通らないのに、そのキャプテンには青木一男氏がなるという新聞報道が流れておるが、そういうことはわれわれは全然関知しないのだ、こういうお話でありました。青木一男氏には絶対にいかない、そんなことは全然問題外だ、新聞のデマ放送だ、青木一男氏にはいかないのだということを、大蔵大臣は今言明できるでしょうか。
  229. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。青木一男さんということは、これは青木さんも非常に御迷惑だろうと思います。だれがどうというのではないのでありまして、ああいうふうな人事は、少くとも大蔵大臣は全然関知していないということなのでおります。
  230. 高津正道

    ○高津委員 移民問題について楠美委員は、移民問題こそ一番大事だ、何もかも人口過剰のために一切の問題が起るかのように、すべて人口のせいにしてしまう。日本ではやむを得ないのだ、島は四つ、人口は大かた九千万になるのだ――人口一元論と私は呼びたいのだが、すべてをそのせいにして、だから移民問題は一番大きいのだ、こういう結論を引き出す人があるが、私はこの人口論や移民問題を、そうすべてに結びつけて考える前に、貿易をいかにすればうんと促進することができるかという角度もあろうと思うし、あるいは生産設備をいかに近代化するならばどれだけの人口を養い得るかという角度もあろうし、あるいはまた富の分配をどういうように適正化すれば、この人口のままでもどれだけ大衆の生活水準を引き上げることができるかということも考えられるだろう。  何もかも人口一本やり、そうして移民一本やりの議論が、この法案がかかってからあまり多く聞かれ過ぎるのでありますが、私が思うのに、昔、税金をとるなら土地だ、ヘンリー・ジョージが英国で土地単税論というものをずっと説いて回って、非常に人気を集めたことがございましたが、それは今や昔物語になってしまった。マルクスに対抗してマルサスがやはり人口が多いからやむを得ないのだと言ったマルサスの人口論も、各位御存じの通りでございますが、今やそれも通用しないことになってしまったのでございます。本員の考えるところによれば、海外に移民を何とかして送ろうと思う場合に、この法案に見られるように、新会社を作るという機構の問題もある、それから外交技術の問題もある、大蔵大臣でありながら、感触――フィーリングでしょう、感触という点から考えれば、やはり株式会社にした方が摩擦が少く行くだろう、そこまで配慮をなさっておるようであるが、私は一番大事なことはイデオロギーだと思うのです。外交の技術でもないとは言わぬが、非常に技術は少いのであって、世界の大勢がどういう方向に動いておるかというその方向を日本の行政当局が今キャッチしないで、機構や技術では国を誤まるのではないだろうか。まさにイデオロギー外交時代である。ただ一句だけはさましてもらえば、日米軍事同盟の線で日本を引きずっていこうとするか、日ソ軍事同盟の共産党の線で日本を引きずろうとするか、それとも今や何人も否定することのできないソ連と米国との中間に位して、いずれにもつかないで自主中立をがんばり通そうというその勢力を助けていくか、そういう三つの……。
  231. 植原悦二郎

    植原委員長 高津君、ここは討論の場ではありませんから、質問を願います。
  232. 高津正道

    ○高津委員 わかっています。これは前提ですよ。あざやかに質問に切りかえるのです。
  233. 植原悦二郎

    植原委員長 そういうイデオロギーの議論ではありません。質問を願います。
  234. 高津正道

    ○高津委員 議論の上に立った質問でなければしようがないですよ。これは国策の根本につながる問題であるから……。  そこで、新しい外交理念でなければ全く仕方がないと思うのであります。たとえばマリクがロンドンからモスクワへ帰るといえば……。
  235. 植原悦二郎

    植原委員長 ここでは大蔵大臣に対する質問に限定しております。大蔵大臣に対する質問に限定しておるときに、あなたの討論的なイデオロギーの問題は、ここで発言されては困ります。
  236. 高津正道

    ○高津委員 前提です。またすぐ質問に変りますよ。
  237. 植原悦二郎

    植原委員長 質問にお変りなさい。
  238. 高津正道

    ○高津委員 もし現在歴史の大いなる流れの中でイデオロギーをとらえるならば、こういう移民問題などは、すぱっと一ぺんに飛躍的に解決するものだと私は思うのであります。それでこういうふうな小手先の技巧だとか、外交技術だとか、そういうことのほかに、イデオロギーにおいて日本の政治の進み方がぐっと正しい方向に向うならば、移民問題は大蔵省の予算が多いとか少いとかいうことを越えて、格段に飛躍するということを私は信ずるのでありますが、そういうような事実を大蔵大臣はお認めになりますかどうか。
  239. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大へん御意見を拝聴いたしました。しかし今日の国際情勢からいたしまして、私はそんなにやすやすとどこかに日本の人がすっと行けるという状況ではないと思います。これはやはり日本国民日本の国が努力していかなければいけない、かように考えております。
  240. 高津正道

    ○高津委員 私はアメリカ日本支配について国務大臣たる一萬田さんにお伺いするのでありますが、よく見ておると、再軍備については武器でも財政でもアメリカは援助した援助したという顔をするし――幾らかやっていますよ――そしてガット加入でも早く踏み込んで世話をすればもっともっとどうにかなるのに、じらしてじらしてやっとああいうことです。韓国との竹島の問題とか、いや李承晩ラインだとかいっても、ちっともアメリカは乗り出さないで、今になって社会党などの運動によって、(「またやった」と呼ぶ者あり)そこを取り消しましょう。
  241. 植原悦二郎

    植原委員長 高津君、再び注意いたします。あなたは今問題になっておる海外移住振興会社に関して大蔵大臣に御質問願います。
  242. 高津正道

    ○高津委員 いや、根本的な質問ですよ。これがわかるはずです。
  243. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長はさように認めておりません。
  244. 高津正道

    ○高津委員 日韓会談に対しても、アメリカは今乗り出している。あるいは電源開発にも金を出して、世話をしたという顔をするのです。あるいは義務教育の学校給食に対し、あるいは学童の被服に対しても、今度またあの金を使って、ここへも世話をしたという顔をアメリカはするのです。日本生産性本部にもまたアメリカの金が少し入って、そして日本の労働者や各界の指導者をひっぱる金を使って、そこへもアメリカは世話をしたと、こういうのです。今また海外移住振興株式会社法案に対して……。
  245. 植原悦二郎

    植原委員長 あなたがそういう議論をするなら、委員長はあなたの発言をとめなければなりません。再度の注意をいたします。
  246. 高津正道

    ○高津委員 アメリカの民間の三つの銀行から金を出して、これも楠美委員などからいえば日本の何よりも一番大事な移民、そこへもアメリカは世話をするぞと、あらゆるところが何もかもアメリカのお世話になったように見えるようにして、アメリカがそういうことをやるのであるが、日本が何もかも押えられて見動きもならないような状態になるということを大蔵大臣考えられておるかどうか、そんなに向うの民間銀行から借りないで、大蔵省からこれだけは出そうというような気持は動かないのであるか、私はやはり愛国心からこれ々質問するのであります。
  247. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日の日米の関係が、お説のような結果になるとは毛頭考えられません。これだけお答えいたします。
  248. 高津正道

    ○高津委員 根本的なことを言うときに、委員長、制限しないで下さい。
  249. 植原悦二郎

    植原委員長 あなたの御意見に対して、大蔵大臣答弁はまことに誠意を持ったものだと委員長は思っております。  戸田里子君。
  250. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど中途で私の質問を打ち切りましたので、これから続けたいと思います。  私が先ほど伺っておりましたのは、海外協会連合会への政府の補助、またこの会社との関係を途中までお尋ねいたしました。その問題に森島委員も触れられまして、大蔵省としても、なるべく海外移住の人たちのために十分に補助してあげるという意味からも、幾本建にもしない方がいいというような御希望を述べられておりました。私どもから考えてみましても、この会社の中に今まである協会を一本にできないというようなことはないように思いますけれども、分けた場合の方が一本にしたよりも都合がいいというその理由を伺わせていただきたいと思います。
  251. 石井喬

    ○石井説明員 私どもはこう考えております。先ほど和田委員からもお話がございまして、この会社はコマーシャル・ベースに乗らぬというようなお話がございました。もちろんこの会社自体が非常にもうかるというようなことは決して考えておりません。もちろん移民の振興という大きな任務がございますが、しかし私ども考えでは、できるだけこの運営がペイするようにいたしまして、もしそこに利益が上りますれば、その金はさらに移民の推進のために使いたい。それからまた日本の現状に照らしまして、なかなか十分な資本も集まらない。従いまして私どもは、国内あるいはその他におきましても、できるだけこの事業のために金を集めまして、政府の財政資金だけではなしに、ほかからも金を集めて、この専業を進めていきたい、そのためにはやはりこの会社の運営はどこまでも損をしないように、少くともペイすることでやっていかなければならぬというふうに考えております。従いまして、この会社の指導理念は、どこまでも企業的な精神をもって貫いていかなければいけない。もちろん、ただいま申しましたように、もうけるということでないにしましても、運営としましては企業的な気持をもろて貫いていかなければいけない。従いまして、またそういうような仕事に適当した人を集めていくことが必要であるというふうに考えております。  一方連合会は、先ほど申し上げましたように、その仕事の内容は募集であり、選考であり、教養というようなことでございます。これ自体は、その指導理念と申しますか、指導精神と申しますか、やはりどこまでも公共的なものでなければならない。ペイをするとか、あるいはもうけるというような精神では、これはとてもできないと思います。従いまして、またその事業に適当な人を得ていかなければいけないというふうに私ども考えております。かつてブラジルで、ブラ拓というものがございました。それが公共的な面と、移民に伴う事業面と一緒に一つにしてやった例がございました。やりました結果を申し上げますれば、この公共的な面、つまり移民の指導、育成というような面が、結局だめになってしまったというような例もあるわけでございます。そこで私どもは、やはり全然別個の形で、おのおの特色を持ってやっていくことの方が、より全体の結果がよくいくのではないかということで別にいたしております。
  252. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの大蔵省の方の御答弁を伺っておりますと、大蔵省の方としては一本にしたいけれども外務省やほかの方々の御意見もあって二本に一応賛成をした、しかし、将来において一本にできるときにはしたいというような御希望を述べられておりました。今の外務省の方の御答弁を聞いておりますと、あくまでもこれは二本建でやった方がいい、こういうふうにおっしゃっておりますので、その間にもなお大きな意見の違いがあると思います。外務省としては、先ほど大蔵省の方のおっしゃったようなお考えは将来も持つべきではなくて、あくまでもこれは二本の線で進んでいくべきだ、こういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この点をもう一度伺いたいと思います。
  253. 園田直

    園田政府委員 外務省といたしましては、会社の営業が成るか成らぬかということよりも、もっと本質的な、突き進んだ渡航費という問題の解釈が違っております。渡航費というものは、戦後多数の日本の人々に働く場所と土地を与えるのは国家の責任と義勢である、このように解釈しておりますので、イタリアその他の各国と同様、国家財政が許す段階に至れば、渡航費は貸付ではなくて国家が当然支払って、働く場所、土地を与えるべきだと考えております。
  254. 戸叶里子

    戸叶委員 私もその点は賛成なんです。当然国家がこれはむしろ払ってやってもすべきだ、こういうふうに考えておりますけれども、そういうふうな考え方に基きますと、やはり二本にしなければいけないのですか。その点が私はっきりしないのです。
  255. 園田直

    園田政府委員 お説の通りでありまして、渡航費は言うまでもなく、国家財政が許すならば、向うに行かれた人の生活、営農資金等も国家が出すのは当然でございましょう。しかし、今日の段階では国家財政の現状上、渡航費を国家が支給するということが許されませんので、国家が貸し付けるということになっておるわけであります。しかし貸し付けるにいたしましても、たとい国家財政の乏しい今日であるとは言いながら、向うにお渡りになった人、あるいは天災地変、あるいは本人の病気等のために、移民された人が大事業を遂行される中途において倒れる方もあり、あるいはその渡航貸付を返済できない方もあるということは、国家として当然心の中に入れるべきであると考えております。従いまして、その渡航費の問題と渡られたあとの生活の保障や営農資金というものは国家で出せないから、国家資金と民間資本によって一つの企業体の形態をとりつつ、向うの方でお世話をしたいという考え方でございますから、国家より出したところの渡航費が、天災地変等のために回収が困難になるというようなことも私は見通しをつけております。今日まだお借りした金の支払いの段階には来ておりませんが、その利子の回収率は、わずかに二・七%しか集まつておりません。こういう点からしまして、お渡りになったあと据置の期間はございますが、それで一人前の移民として成功して国家に資金を返すことができるようになるのは、なみなみならぬ苦労ではないかと思います。そういうことを考えますと、その渡航費と、それからあとの生活の保障や営農資金その他の事業資金というものと一緒にして、渡航費の貸付が回収できないために逐次赤字ができて、それが食い入ってこの会社の経営が不能になるということは、この会社の企業自体ではなくて、渡航されたあとの移民の皆さん方のお世話ができなくなるおそれがあるから、これは二本にすべきであるという考え方です。
  256. 戸叶里子

    戸叶委員 わかりました。結局会社の方で渡航費の方まで負担することになりますと非常にむずかしくなるから、結局協会の方で渡航費の方を一応貸し付けて、そうして失敗しても協会の方だからその責任はある程度のがれられるからいい、こういうふうなお考えで二つに分けたわけでございますか。
  257. 園田直

    園田政府委員 さようであります。
  258. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は別といたしまして、それでは次に伺いたいのは、この会社法案を作りますまでに、会社案にしようというのと公社案にしようというのと、二つの意見があったそうでございますが、その両方の特質と会社案にきまったいきさつを伺いたいと思います。
  259. 園田直

    園田政府委員 公社案と会社案の二つの意見があったことは事実でございます。主として大蔵当局の方は公社案を主張されるし、われわれの方は会社案を主張したわけでございます。理論的に申しまして、移民というものが国家の国策、指導方針に従って移民されたあとのいろいろな指導なり干渉ができるとするならば、これは国家資金を使うのでございますし、あるいは移民という問題は国家的事業でございますから、公社にするのが理論的にはよいというということは私たちも考えます。しかしながら今日日本の移民の最大の障害をなしておりますのは、一言にして言うと排日思想でございます。その排日思想の根拠は、第一は基本的人種型統一の見地から黄色人種に対する反感、それからもう一つは言語、風俗、習慣が異なって同化性に乏しい、もう一つは移民されたあと集団を作って日本人部落とかあるいは日本人的な集団、習慣等で日本人の方々がやろうとすること、すなわち同化性が非常に乏しい、次には戦前の軍国主義、これが近ごろ形が変りまして、戦後は勝ち組、負け組の争いにまでなって暴力ざたまで起ったことは御承知通りであります。  これをまとめて申しますると、定着した移民及びブラジルその他に国籍を有した子弟に対して、日本政府が干渉し過ぎるという点が非常に日本の移民というものをきらう、これが障害になる大きな原因でございます。たとえば近隣東南アジア地域に移民をいたすことにいたしましても、ボルネオ等に移民するという話をしただけでも、インドネシアあたりでは日本が再び何か集団を作って日本帝国が進出するのではなかろうかという意見が非常に強いのでありまして、かつての満州に対する移民とは根本的に頭を変えていかなければならぬと考えるところでございます。従いまして国家資金を出してもらい民間資本を集め、国家の金銭的監督は受けるが、実質上はできるだけ国家から手を切った格好で、日本の民間の格好でお世話したい、こういうような見地からわれわれは会社案を主張したわけであります。
  260. 戸叶里子

    戸叶委員 結局対外的な問題を考えまして会社にした、こういうことでございますね。
  261. 園田直

    園田政府委員 さようでございます。
  262. 戸叶里子

    戸叶委員 次にその会社の内容、どういうふうな人たちをこの中に入れようとする構想を持っていられるか、この点を伺いたいと思います。と申しますのは、この会社案にいたしてもいろいろ問題がたくさんあると思います。たとえば農業移民の問題を考えましたときに、やはり農林関係の人も外務省の人と同じ地位で現地へ派遣しなければならないとか、いろいろ問題が出てくると思うのです。今構想として持っておられる規模、人員なり、あるいはその内容をおわかりになるだけ御説明を願いたいと思います。
  263. 園田直

    園田政府委員 会社の内容、人事等につきましては、法案も御相談中でございますから、内定または御相談したことは全然ありません。しかしただ考えております点は、まず社長は外務省あるいは大蔵省あるいは農林省等、関係各省の公務員を終られた方を持ってくることは、私は避けたいと考えております。これはやはり民間資本を集める点から考えましても、それからもう一つは政府の出先機関であるという印象を相手国に与えないという意味におきましても、相当な経綸、抱負と手腕を必要とする問題でございますから、財界人等からこれをお迎えすべきであると大体抽象的に考えているだけでございます。しかしその下のいろいろの取締りあるいは会社の幹部等につきましては、これは国家の資金を出すのでありますし、大蔵省等もそういう御意向もあるようでございますから、大蔵省の関係ある人をこの会計監督のできる方向に、それから取締りその他にはやはり農林あるいは外務等の関係のある人をと、こういうふうに考えております。大体総員四十名くらいの会社を想定いたしております。
  264. 戸叶里子

    戸叶委員 投資してくれる三つの銀行が会社に対してはどの程度の権限を持つようになるのでしょうか。
  265. 園田直

    園田政府委員 借款の交渉の経緯におきましては、いろいろ会社の形態であるとかあるいはその他に対する希望があったようでございますが、この点は十分注意をして折衝したところでございまして、ただいまのところでは、元利の保証さえ政府がやればあとは一切条件はついておりません。
  266. 戸叶里子

    戸叶委員 すると何か担保のようなものはやらないでいいわけでしょうか。
  267. 園田直

    園田政府委員 担保はございません。
  268. 戸叶里子

    戸叶委員 現地の企業なり何なりに貸し付ける場合には、ドルで貸すわけでございましょうか、そしてそれを返す場合にドルで返すかどうか。その送金なんかはどういうふうにするか。
  269. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 これは為替の関係でございますから大蔵省からお答えいたしたいと思います。三銀行からの借款は千五百万ドルを米ドルでお借りいたすのでございますが、御承知のように外国為替管理特別会計でございます外為資金会計というのがございまして、ここで円にかえましてそうしてこの会社に貸すことに相なります。この会社はこれを現地に送りまして、現地通貨にかえるわけでございます。これは外国為替管理法の手続を経てやるわけでございますが、この現地通貨を現地におきましてお貸しをする、従ってお返しを願うの本現地通貨でもってお返し願うわけでございますが、円を政府が全部保証いたしまして三銀行にドルで返しました場合、会社としては政府との関係におきりして、政府がいわば元利の支払いを全部保証いたしておりますから、ここでやはり円の関係の貸借関係ができる、こういうふうに理解をしております。
  270. 戸叶里子

    戸叶委員 外国人のやっておる企業で日本人の移民を受け入れるものに対しても、お金を貸すわけですか。
  271. 園田直

    園田政府委員 必要な場合にはそういうこともあり得るということを考えておるそうであります。
  272. 戸叶里子

    戸叶委員 私、きょうはこの程度にいたしまして、この次にいたします。
  273. 楠美省吾

    楠美委員 先ほど森島委員からの資料提出のお話でございますが、この間も和田委員からそれを言われまして、私はあれを聞きまして、ただいま政務次官がようやく四十名ぐらいの規模だということを申されておる程度のものですから、これは作れと言えば資料を作るでしょう。非常に苦しみながらその作った資料は満足するものができないと思います。私は端的に矢口氏はできないと言えないから、土曜日に持ってくると言ったのだろうと思いますが、やはりこうした何十億も使ってこれから海外に投資する大きな会社の資料というものは、私は簡単にできないのではないかと思いますが、これは矢口さん、ほんとうにできるのですか。できたって単にどうでもいいという作文だけ書いてくるのではやはり出さぬ方がいいと思います。森島さんに申し上げたいのですが、これはやはりかなり無理な注文だと思いますが、うんと苦しんでつまらぬ資料しか作れないならば、今のうちに取り消しておいたらいいのではないか。この間和田委員が申しておりましたが、なかなかできないのではないですか。収支決算の資料というのでしょう。
  274. 園田直

    園田政府委員 委員会で御指命を受けたのでございますから、全力をもって資料を提出するのが、政府の当然の責任であると考えておりますので、提出するつもりであります。しかしその計画そのものは、一例をあげますと前代議士の上塚氏がブラジル移民の計画を立てて向うの上院の承認を受けた際に否決されたごく最近の例があります。これはブラジルに組織的に日本人が入ってくるという刺戟をしたためでございます。こういう例が多々ございまして、この受け入れ機関の将来企図する事業計画なりその他の全貌を御報告申し上げますことは、将来の移民外交上非常に微妙な影響がございますから、この資料につきましては、要求された和田委員にも他の委員の方にも後刻御了解を得て、そうして許される限界において提出させていただきたいと考えております。
  275. 植原悦二郎

    植原委員長 森島さんに申し上げますが、委員長からあなたの資料要求について私が了解している意見を申し上げることをお許し願えればけっこうだと思います。  この会社は森島さん百も御承知通り、営利会社じゃありません。コマーシャル・ベースでいくわけにはいかないのです。しかし会社である以上は、プロスペクタスがなければならぬじゃないか、こういう御意見だろうと思います。しかしこれは決して採算がとれるとかどうとかいう計画でなくて、一年にこのくらいの移民を出すつもりだ、このくらいの経費だ、こういうことであろうと思うのです。森島さんの御要求は、決して商事会社のような計画でなく、この会社の本分に沿うところの、初年度において大体どのくらいの移民を出して、どういう計算をするか、あるいはかりに海外協会連合会というものを存立せしめるならば、この会社からその方の費用をどれくらい支出して、どのくらいの計画で歩を進めるかということだろうと思うのですが、いかがでしょう。それ以外のことならば、言ってできないことじゃないかと思うのですが……。
  276. 森島守人

    ○森島委員 楠美委員の意図がどこにあるか私存じませんが、この会社で非常に重要なことは、一億円の政府出資金のほかに五千万円をお集めになるということです。これについてもさっき大蔵大臣は明確なる御答弁がなかった。何とか集まるだろう、これくらいの御答弁だった。おそらく外務当局の考えておるのは、現地で、成功した人々からでも出資を得てやっていこうという考えだろうと私は思う、それからまた社債も募集する。そういたしますと、大体の輪郭がわからなければ、これだけの法案で金を出せなんということは無理だろうと私は思う。私はあえてこの会社を握りつぶすとかいうことは考えておりません。これをりっぱに育てるためには、やはり外務省としてもしっかりしたお考えがなければならぬ。それがこれまで一つも出てこないのです。最近出ましたこの資料にいたしましても、私今日初めて読みまして二、三点お尋ねしたい点があるのですが、私の意図は、この会社をりっぱに育て上げるために必要なだけの資料はお出し願いたい、こういうことでございますから、その点は誤解のないようにいたしたい、こう存じております。  なお一点ついでに私のお聞きしたいのは、さっきお聞きしようと思ったのですが、この会社自身が渡航費を貸し付けるということになっております。その次に、会社は民間の団体に対しても委託できる、こうなっておりまして、いかにも矛盾したような格好になっております。大蔵大臣の言われた通り、もうけはしないけれども、りっぱに育てていくという以上は、むしろ回収不能のような危険のある渡航費は――今お尋ねしますと、二元的に海外協会も置きたいのだ、こういう御答弁ですから、むしろ海外協会で支給する、それにやらすということで、会社からお除きになったらどうかと私は考えておりますが、この点に関する大蔵当局と外務当局の御意見を伺いたいと思います。
  277. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 外務政務次官からお答えをいただきたいと思いましたが、私からお答えを申し上げます。これは森島先生に申し上げるまでもなく移民の渡航費でございます。かっては渡航費を補助した例もあるのでございますが、今日の日本の税の負担、これは私ども勤労者も大へんな税負担になっております。先ほど来お話のように、なるほど海外に渡航して、海外において生活のかてを求めるのであるから、そういう渡航費にまで返すという条件をつけなくてもいいのではないかという御趣旨かとも思いますが、かっての移民と今日の移民とは、この委員会でもずいぶん御議論になったようでありますが、だいぶ違ってきているということも一つ考えなければならぬし、まず第一には税の負担で出すのであるということかと思いますが、その両方をあわせ考えましても、条件の定め方を適当にいたしますれば、今日これだけの重い税負担に耐えて国民が生きているときでございますから、相当長い期間にわたりまして相当低い利率ということであれば、お返しを願うという約束にしておきまして、現地で御成功の暁には十分これを返していただける。利率等も現地の利率よりは格段の低い利率にして、償還期限も格段に緩和していくというふうなことを、実は法律の第九条第二項におきまして政令で定める。これは私がこの前も他の委員の方にもお答えを申したと思うのでありますが、そういうやり方で今日一応スタートをするということも、私どもとしては十分合理性はあるのじゃないか。初めから渡航費は返さないのだというのは、むしろ移住される方々に対して、あまりにも失礼ではないかというふうにも考えるのでありまして、現に現地の営農資金その他については四分でアメリカの三銀行からお借りするのでありますが、これを一割で十分お返し願えるという見通しも一方におきましてつくわけであります。しからば渡航費はどうかということになりますと、渡航費はちっとも返す見込みがないのだということでは、そこのところは論理が一貫しないようにも思えるのでありまして、従って渡航費の貸付条件も一割ということはとうてい考えておりませんし、現に今日ですら法律のないときでも五分五厘でございますから、今回法律をお認め願えば、ただいま大蔵大臣から政令の内容はただいま事務当局間で打合せ中であるということであと全然御回答がなかったのでありますが、大体外務当局にこちらから申入れておりますのは、従来五分五厘であったのを政府からの渡航費の貸付は利率を三分六厘五毛くらいに引き下げたい。それから回収の期間でございますが、従来は四年の据置期間を含めて十二年ということになっておりましたが、これを五年据置の二十年にいたしまして、なおやむを得ない事情のある場合、天災、死亡その他のやむを得ない事情がある場合には、一定の基準に従いましてさらに五年延長する。そしてこの前御質問がございましたが、全然返還を免除するという規定につきましては、今日この法律にはございませんが、債権管理法というものをできればこの次の国会までに研究をいたしまして、あらゆる国の債権につきまして、こういう事由の場合にはどうするという、一つのはっきりした規定を設けることをお願いしたい、大体そういうふうに考えております。従っていきなりくれてしまうということは、いろいろな点からいいまして、私どもは不適当である。今日の段階においては今申し上げたようなことで十分御納得をいただけるものではないか、かように考えておるわけであります。
  278. 森島守人

    ○森島委員 時間をとりませんように簡単に。この点について大蔵、外務両当局の意見が漸次接近しておりますことは、私は非常に喜ぶべきことであると存じます。この内容が政令できめる条件その他になるわけですが、これは何とか早く意見を一致されまして、なるべく早く御決定を願いたいと思います。  その次にお聞きしたいのは、これを見まして私が非常に不思議なのは海外協会ですが、この役員を見ますとえらい人ばかり名前を並べておりまして、これでは果して海外協会の仕事が円滑にいくのかいかないのか、私は疑問だと思う。会長さんは村田省蔵さんで、年寄りの上にいろいろな役をやっております。副会長は青木一男、上塚司、坪上貞二、降旗徳弥、こういうふうにたくさんの人が並んでおる。しかもこの団体が法人格を持っていない。これはこれにもはっきり書いてありますが、法制化していないということですが、これは一体いつごろできた団体なのですか。
  279. 石井喬

    ○石井説明員 お答えいたします。いろいろいきさつがございまして、おえらい方々が並んでおられますが、実際問題といたしましては、村田会長のもとに現在理事の坂本氏が事務局長をやっておられます。その下に十数名の職員がおりまして、現実に仕事をいたしております。大きな問題につきましては、そういう副会長その他理事の方々がお集まりになりまして、いろいろ御討論なさるというような仕組みになっております。これが発足いたしましたのが昨年の一月でございます。  それから法人格云々の点でございますが、これは民法による法人格は持っております。外務省が認可いたしました。ただ昨年農林省との権限の問題につきまして、閣議決定がございました際に、連合会はすみやかに法制化するということになっておりまして、本国会にほんとうは出さなけはばいけなかったのでございますが、いろいろな関係で本国会に間に合わなかった次第でありますが、この次の国会には必ずこれの法制化の法律を出さなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  280. 森島守人

    ○森島委員 今度の会社の人事もこんなふうな古い人だけの顔を並べるようなことはしないで、しっかり仕事をやる人を御選任下さることを要望いたします。  もう一点お聞きいたしますが、新しい会社ができまして、現地へ相当の人を派遣して、現地でお仕事をなさることが多いと思います。この点につきまましては、移民受け入れ国との間で了解ができておりましょうか。
  281. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 私からお答えいたします。これは国によりまして非常にややこしい問題が起りますが、現実に受け入れ国とは別に話し合いはしておりません。といいますのは本件会社ができるかどうかは、まだきまっておらないので、話し合いができないからであります。しかし見通しといたしましては、ブラジル等においては若干の困難がありますけれども、自余の国におきましては、たした困難はないという見通しをつけてございます。
  282. 森島守人

    ○森島委員 それから移民の現地の技術調査等は、農林省が当るということがここにありますが、これは外務省では農林省から出た人を移民アタッシェと申しますか、あるいは農業アタッシェと申しますか、外務省の省員として各大公使館に受け入れて、実際に移民事業を円滑にするために側面から協力を与える、援助を与えるというふうなお考えのもとに、これは書いたものですかどうですか。
  283. 園田直

    園田政府委員 御案内の通り、戦後いろいろ外交の様相が複雑になって参りましたので、農林省ばかりじゃなく、通産省あるいはその他の省とも人事交流をいたしまして、ただいま外務省の人事は、大体四分の一は他省から受け入れた人事をやっております。この法律案通りました以後、そのような必要な場面には、必要な特殊な技術を持ったものを専従の外交官として在外公館に予算の許す範囲内においてやることは当然考えております。
  284. 楠美省吾

    楠美委員 時間がありませんから、二、三簡単にお尋ねいたします。外務省にお尋ねしたいのですが、先般この会社を作るのに自由党、民主党の政調会が、最後に二つほど入れてくれ、一つは渡航費は政府資金でやるのだということ、これはどうせ渡航費等が入れば赤字が出るにきまっております。その赤字を補てんするのだ、この二つを入れるように厳重に言ったはずでありますが、これでは入っておらないのですが、政府はこの原案を作るのに、自由、民主両党の政調会に対する背信行為じゃないかと思いますが、どうしてこんなあいまいなものにしたのでありますか。
  285. 園田直

    園田政府委員 ただいま仰せのごとく、それには私も立ち会っておりましたので、そのように考えておりましたが、依然として外務、大蔵両省の意見が一致せず、従ってそのために事務的な法案提出の時期がおくれたために、内閣において調停をして、このようなことになったと考えておりますが、第九条には政府は、予算の範囲内において、会社にこの渡航費の貸付に必要な資金を貸し付けることができるとなっておりまして、義務づけられてはおりませんが大蔵省におきましても国会におきましても、移民の重要性は十分御認識願っておるという確信がございますから、この箇条さえあれば、年々大蔵省と予算を相談をするには支障ないと考えましたので、この点で外務省は了承をいたしました  次の損失補償の点につきましては、先般来から大蔵当局より答えております政令の中で、どのようにその損失を補うか、この点は外務当局と大蔵当局と、ただいま相談折衝中でございまして、なるべく御意図にははずれないようにやりたいと考えております。
  286. 楠美省吾

    楠美委員 わかりました。私は今審議しておる外務委員のいろいろな質問等を通じてもわかるように、どうしてもこの会社というものをりっぱに育てなければいかぬと考えております。今見ると、大きなものが出ておるような感じを相当の人が持っておるようでございますが、アマゾンにあるトメヤスという、非常に成功しておるコショウの会社を作ったときに、鐘紡が昔の金で約三十万くらい出したはずでございます。ちょうど今の金にすると一億、一億の金というものは、一つの大きな移民団を作るくらいの金でございます。私はその程度にこの会社というものを初めから見ておるのでございますが、この会社を作ったことによって、あるいはたった一つの民間団体の連合会をなくするような意見もちょいちょい出る。また連合会自体も金がころげてくるから、自分らにやらせろ、金をほしいままに自分らの連合会自体がなくなるような動きも彼らはやっております。これは非常に愚かなる考え方であると思うのでございますが、この連合会については、海外移住に関する事務調整についての閣議決定事項というものが、昭和二十九年の七月二十日に出ております。この第四項にこういうことが書いてあります。「海外移住に関する事務の実施は民間団体たる日本海外協会連合会及びその組織団体たる地方海外協会をして国内国外を通じて一元的に行わしめるものとする。」こういう閣議決定事項があるのであります。日本人は徳川鎖国一青年のいろいろな関係から、どうしても海外に出て行こうとしない。私の議論に対しても高津委員あたりがいろいろな批判を申しておりますが、これはわれわれの頭に、徳川三百年来の鎖国政治が入っておる。もしかりに徳川家康が、ほんとうに偉い人間であったら、私は今ごろ中南米の半分くらいは日本人が闊歩しておったであろうと考えるのでございます。これだけの閣議決定事項のある連合会でございます。これに権威を持たせてやる。これは将来連合会というものは大きくなる。どうしたってこの力が大きくならなければ、日本の移民は出て行きません。これは私も経験があるのでございますが、そうした意味で渡航費はこの会社で分けて、まっしぐらに従前通り連合会にやらせる意思がないのかどうか、それだけ承わっておきたいと思います。
  287. 園田直

    園田政府委員 御指摘の通りでございまして、渡航門はこの法案で御相談願えれば、第九条の調停がついた上は、海外協会連合会に委託する所存でございます。ただし大蔵省でも心配しておるような重大な国家資金でございますから、これを委託するにつきましては、なるべくこれを早く立法化するなり、あるいはこの海外協会連合会の機構なりその他の問題については、これを一つの転機にして改革改正をやらなければならぬと存じます。
  288. 植原悦二郎

    植原委員長 楠美君に御相談申しますが、あなたの質問は次に継続することとして、きょうは一つこの程度でいかがですか。
  289. 楠美省吾

    楠美委員 もう一つ……。その点は一つ御考慮を願いたいと思います。  それから、外務省から聞いても、今移住地で一番気候のいいところはドミニカだと聞いておるのでありますが、この国にはまだ公使も行っておらぬということを聞いております。ドミニカからはしきりと、早く公使を派遣せいといわれておるようですが、いまだに公使も派遣しておらぬようだし、従ってまだ調査団も正式に行っておらぬようでございます。いつごろ公使を派遣して、また調査団をいつごろ派遣するように相なるのか。調査団を派遣する場合には、私は当然農林省の技術陣営も有力スタッフとしてお連れしてもらいたい。協力して、外務省一省でなく、各省とも連合して、りっぱな調査団を派遣してもらいたいと思うのでありますが、いつごろ交渉をやるのか、また調査団がいつごろ行かれるのか。それだけ聞きまして、あとの質問はこの次の機会に譲ることにいたします。
  290. 園田直

    園田政府委員 御質問通り、すでに外務省ではそのような計画を進めております。現にここに列席しております石井君が八月ごろこの方面に調査に参ることになっておりますし、あるいは各学者、あるいは各省から行かれる際には、それに付託して調査を進めたいと考えております。  公使のことにつきましては、すでに予算の折衝も相談がととのいましたし、その省令も施行いたしましたので、近く派遣することにいたします。
  291. 楠美省吾

    楠美委員 この公使を出してくれというのはだいぶ前からの話で、私が重光外務大臣にそのことを催促してからかれこれ二月以上にもなるのでございますが、こういう点は外務省としてももう少しすばしっこくやってよかりそうなものでございますが、移民に非常に関係のあるものでございますから、ぜひ一つ急いでりっぱな公使を派遣願いたいと思います。
  292. 園田直

    園田政府委員 公使館の設置は、早くやれとおっしゃいましても、予算をお願いしなければならぬし、国会承認をお願いしなければならぬのでございますから、これは普通のことのように一週間や十日のことではできませんが、できるだけ最少の期間においていたしたいと思います。
  293. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこの程度で散会いたします。    午後四時二十四分散会