○大橋(忠)
委員 今度の提案によりますと、大使を一挙に六人もふやすという提案でございます。東南アジア方面は重要であるというので、かくのごとき増加を来たしたという御説明でありますが、そういたしますと、さらに中南米方面の移民を送る、また経済的にも発展し得る国々にもつり合い上、やはりふやさなくちゃならぬというようなことになりまして、公使よりも大使の方がはるかにふえる事態になるのであります。本日いただきました表によりますと、国交を開いた国だけでもすでに六十五に及んでおるのでありまして、将来
ソ連圏とも国交が開ければ、さらにこの数はふえまして、
在外公館の数はおびただしい数に上るのでありますが、かくのごとき膨大なる
在外公館の網を維持するためには、莫大な
外貨が必要であります。従いまして何とかしてこの
在外公館に、少くともその経費につり合うだけの効能を発揮せしめる必要があるということを
考えて、私はいろいろ
質問をいたした次第であります。
そこで、今度の御提案に対していろいろ説明を承わりました結果、まことにやむを得ぬとは存じますけれ
ども、それに対しては強い
希望を持っておるのであります。第一には、かくのごとく大使を非常にふやす、公使も非常にふやすということになりますと、昔のようなスタンダードにおいて大公使を任命するということは、経費の
関係上からいたしましても事実上不可能であります。そこである場合においては領事級の人間でも大使という名をつけて、そうして
向うへ送り出す必要が起り得ると思うのでありますから、現在も相当幅が広くなっておりますけれ
ども、さらにその大公使の幅を広くされまして、いかなる階級の者でも御任命になって、本省に帰ればもとの階級で働くという手軽な大公使を作っていただきたい。大公使という名からして宮廷
外交のにおいがするのでありまして、今日はもう宮廷
外交から経済
外交の面に移っておりますので、そういう見地から大公使を選択し、任命されるその幅を現在よりうんと広げて、かつその館館の
実情に適した人間を
一つ送っていただきたいということであります。従いまして、大使であるがゆえにやはり年を食った、昔で言うならば勅任官を卒業してすでに親任官に近づいたような人をやるという格式や
形式を無視して、各地の
実情に適応した人間を
一つ送る。大使を作ったからやはり
外交官の古手をやるというようなことでは、いわゆる老後のためにお金をためるというようなことばかりに頭を使って、何らの活動ができない無能な人間を送るというようなことになるのであります。これは吉田内閣時代から、はたから見ておりますと、相当情実による老朽
外交官が任命されたような観が非常にあるのであります。重光外相の時代においても、そういうにおいがせぬというわけにはいかないのであります。私はぜひともそういう格式やそういう
形式を離れて、実質的にその館々に適した、やれば実際間に合うような人材を広く朝野に物色されて送っていただきたい、これが注文であります。
さらに第三には、外国にちょっと行ってみましたわれわれの感じでは、いわゆる流動経費というものが非常に不足しておるのでありまして、一々会計検査院の検査を経なくちゃならぬようなああいう経費でもっても、その任務を完全に遂行することはできない。ことに東南アジア方面のごときまだよく開けていない国におきましては、やはり宴会をやるとか、物を贈るとか、
向うの有力者と親交を進め、
日本との
関係をなごやかにするという
関係で、特に昔の機密費的な経費をもっとよけいおとりになって、そうして通商
関係、経済
関係の下地を作るようなふうにしていただきたい、こういう
希望を私は持っておるのであります。
次に、今後時がたつに従って
在外公館の新設を大分
考えておられるような話でありますが、必要な公館を作られることはわれわれは反対じゃありません。けれ
ども同時に、現在ある公館でも事実上要らなくなったような公館はちゅうちょなくやめていただきたい、こういう
意見を持っておるのでありまして、またそういう公館を具体的にも私は指摘し得ると思っておるのであります。従いまして今後作られる上においても、経費節約の上から、でき得る限り兼轄でもってやっていただきたい。それからまた仕事をやり得るような名誉領事、名誉総領事、英国が現在やっておるような名誉領事、名誉総領事の制度も御研究になって、なるたけ経費の節約をしていただきたい。
かくのごとく館によって流動経費、機密費的のものを支給するためには、やはりもう少し査察制度を厳重にしていただきたい。と申しますのは、
日本の内地の
官庁と違いまして、遠く離れておるからなかなか
向うの状態がよくわからない。だから事実上名だけで活動をしない、そういう不心得なものもできるのであります。そこで私はもっと公正、厳正な査察使を送りまして、そうして人の足らぬところは人を増す、人のあまり要らぬところは人を減す、要らなくなったところは容赦なくやめて他の重要な方面をふやすというふうに、公館制度に対して
弾力性を持たせる、そして効果を増進する必要があると思うのであります。この
在外公館のうちで通商経済
関係が最も重大でありますから、私は
在外公館の選択、訓練に特に注意をせられまして、やはり
向うに行ったならば
——中小企業の人は送れない。その代理を務めるくらいのやはり経済上、通商上の知識を持たし、実際働き得るようなものにせぬことには、
在外公館を置いた効果がないと思うのであります。これは英
米等が今までやっておりました領事部、コンシュラー・デパートメントというものとディプロマティック・サービスというものとを別にして、特殊な訓練を与える。あまりこれを厳格に区別してしまってもいろいろ弊害ができる。英米においてインターチェンジァブルにいたしたことは御
承知でありますが、
日本にはあまり交流が激し過ぎて、従ってその経済上及び通商上の知識が散漫になる。従って私は、通商経済問題についての訓練及びその人の選択、任命については特に御研究になって
向うへ行ったならばそれだけの役に立つところの人間を送っていただきたい。そうして査察を厳重にして公館の能率を上げていただきたい、こういう私は強い
希望を持っておるのであります。私はこれに対して賛成はいたしますが、同時に附帯決議を出したいと思います。
一、大使の階級を多くし大使の任命につき任地の
実情に応じ少壮者をも任命し得る制度を確立すること。
二、大公使は格式若くは情実による老朽無能者を排し任地の需要に適ら役に立つ人材を任命すること。
三、
在外公館の固定経費、人件費を節約し流動経費を増額して館の効率を挙げること。
四、名誉領事制度並に兼轄制度を拡充し重要ならざる正式公館を整理すること。
五、公正なる
立場の査察使による査察を厳重にすること。
六、
在外公館の種類を変更するには、特に緊急の必要ある場合を除き、政令によらずして法律により之を行うこと
この六つの附帯決議の動議を提出いたしたいと思います。
これで私の討論を終ります。