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1955-06-11 第22回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十一日(土曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       草野一郎平君    並木 芳雄君       福田 篤泰君    高津 正道君       森島 守人君    戸叶 里子君       松岡 駒吉君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務省参事官  寺岡 洪平君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 六月八日  木更津飛行場拡張反対に関する請願(福井順一  君紹介)(第一九六四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官  の職務等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第七六号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四四号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 帰国者が困った場合に、それに要する費用を貸し付けることは別に異存はございませんけれども、これを悪用する人がないでもないことがちょっと心配になるのです。それでたとえば移民などの関係でも、日本から費用を借りていきまして、向うで使ってしまってそして援助を受けてただで帰る、そういうふうな場合もなきにしもあらずと思いますが、そういう不正に対する取締りというようなものはどういうふうにお考えになっていられるかを承わりたい。
  4. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問の点はごもっともでございますが、実際の取扱いといたしましては、移民関係移民に出ますときの移民の契約その他で第一次的には救済が必要なら救済をいたすことにしておりまして、今日までこの法律関係移民に適用した例はありません。今後も移民関係は極力ほかの面で救済するようにいたしたい。この法律関係の範囲には入れないつもりでおります。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 移民関係はほかの法律ということはわかりましたが、それではほかの場合でこういうような不正の場合も起ることと思うのですけれども、そういうものに対しての取締りはどうですか。
  6. 島津久大

    島津政府委員 それらの場合は出先領事館が具体的にその場合々々に応じまして十分調査をいたしました上で適用いたすことになります。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはわかるのですけれども、なかなかそううまくいかないのじゃないかと思うのです。もう行ってしまっていて、それで出先領事館で調べたときにはもうどうにも手がつけられないから、そういうふうな人たち内地送還というふうなレッテルを張られる人たちが多いのじゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。そしてなおもっとわかるように伺いたいのですが、たとえば昨年度どのくらい国の費用をこれに充てたかということを承わりたいと思います。
  8. 島津久大

    島津政府委員 今日まで適用になりました件数が二十九件でございます。過去一年半であります。それで予算の点は、二十八年度の予算が百八万でございまして、実際に支出しました額が十四万、二十九年度が、予算が二百四十万でございまして、支出済みの額が七十三万でございます。三十年度が、四、五月分の暫定予算としまして三十二万計上してございます。今日までの貸し付けました費用の合計が約百万程度になっております。地域別に申しますと台湾関係が十二名、タイが九名、フランスが三名、その他ペルーとアルゼンチンとイタリアがそれぞれ一名ずつでございます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 貸し付けた場合に返ってきたというような例がございますでしょうか。
  10. 島津久大

    島津政府委員 今日まで回収できました件数は非常に少いのではございますが、十一件ほどは回収できております。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは二十九件のうちの十一件ですか。
  12. 島津久大

    島津政府委員 さようでございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今地域別に述べられましたが、これ以外の地には今までなかったわけでございますね。
  14. 島津久大

    島津政府委員 先ほど述べました地域だけでございます。
  15. 植原悦二郎

    植原委員長 他に御質疑はありませんか。——質疑がなければ、これにて本案に関する質疑は終了いたしました。本案は別に討論もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案を可決するに御異議がありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお本案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。     —————————————
  18. 植原悦二郎

    植原委員長 次に在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案議題といたします。本案に関する質疑を許します。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 私ちょっとほかのことでお伺いしたいのです。これは島津さんか、下田さんかどちらにお尋ねしたらよいかわかりませんが、いずれこれは大臣にもお尋ねしなければいけないと思いますけれども、もし事務的な点でおわかりになったら一つお答えいただきたいのです。例のソビエトの貿易代表クルーピンたち滞在期間の問題ですが、これが延長外務省お願いいたしましたところが、拒否されたわけですね。寺岡さんその事情は御承知通りまだ折衝する要務が残っておるということでございます。われわれが見てこれは当然な申請ではないかと思っておりますが、外務省はどういう理由でお断わりになったのか明らかにしていただきたいと思います。
  20. 寺岡洪平

    寺岡政府委員 クルーピン氏一行は昨年の八月参りまして、当時の政府の意向といたしましては最小限度に必要な限りは便宜を与えるということでございまして、八月から三ヵ月の滞在を許したのでございますが、十一月になりましてまだ進捗しないということで、さらにまた延長いたし、二月になりましてもう一ぺん三ヵ月の延長をしたわけでございます。この五月に実は滞在期間が切れたのでございますが、この点につきましては外務省法務省通産省、この三省が相談いたして参ったわけでございますが、主管省といたしましては法務省でございます。そこで今度の場合は実はこれは入国管理局長から御説明申し上げる方が適当かと思いますが、私の知っている限りにおきまして申し上げますと、五月に切れましたときに、日本側通商交渉に当っております商社方面から、再三にわたる延長政府に最初申し出たところとはなはだ違うけれども、船のことについては話がうまくいかないでもう一ヵ月ばかり延ばしてくれればよい、こういう話でございまして、それでこれは法務省の方の関係でございますが、また延長しないで猶予期間を認めるということがよいではないかということになって、私の承知いたしましたところでは一ヵ月の猶予期間を認めた、こういう経緯になっております。詳しくは方針などにつきましては入国管理局長に御質問願いたいと思います。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 それはほんとうは滞在期間を三ヵ月もう一ぺん延ばしていただくべきだと思うのですが、それがあまりたび重なるので猶予期間としても、やはりいろいろ事情を聞いてみますと、お聞きの通りあと一ヵ月では足りないわけです。一ヵ月と申しましてももうこの月二十五日で切れるのですが、そういうわけで商談はまだ重要なものが継続中のようでございまして、これは何もかの国のみ利益することではなくて、日本業者からも経済的な利益があるからというので強い申請がありますように、日本経済交流にとっても利益があるのに、どういうわけで延長できないのか、初めから三月、三月ということで切るにしても、事情にして正当な理由があるならば、これは延ばしていただいてもいいのではないか。そういうことでなく、経済上の正当な理由があっても、居留の期間延長等について、他に国の利益を害するような事実があれば別ですけれども、そういうことはなくて、彼にも、われにも経済的な利益のみ伴うことであって、実情は延ばすために商談を延ばしているのではなくて、単に商談が延びているために延ばしているのであって、真実の事情があるのですから、どういうわけで一月の猶予期間で打ち切りになったのか。あるいはもう一ぺん出直していただきたいという意味なのか、その間の事情を明らかにしていただきたい。三べんも四へんも延ばすと限度がないから、一ぺんはお帰りいただいて、またお見えになるならいらしていただきたいという趣旨でこういうことを考えておられるのか、その間の事情を、腹のうちを、もう少し納得のいくような御説明を一ついただきたいと思います。
  22. 寺岡洪平

    寺岡政府委員 ただいま私からちょっと御説明申しましたように、商社間では一月の猶予でもけっこうであるということで、私どもは了解しておったのでございまして、今穗積委員の言われますように、なかなかそうはいかないという事情がございますれば、その事情につきましては、法務省とも十分お話いたしまして折衝いたしたいと考えております。ただ、先ほども申しましたように、本件最小限度期間でなるべくその結果を上げたいという当初の政府の希望もありましたし、民間商社の方といたしましても、三ヵ月あればまずできるだろうというふうな話から始まったことでございまして、とにかく三回も延びるわけでございますから、その間のいろいろの事情——実は何かその辺でまじめな努力が足りなかったのではなかったか。実は詳しく聞きますと、さっぱり交渉が進捗しておらぬ。一般の通産省の御意見も、もしも六ヵ月話をしてもまとまらないようなものならば、実はまとまらない公算が強いのだという議論もございまして、これがまあ政府の態度にいろいろ影響を与えておるということだけは私から申し上げられるのであります。外務省といたしましても、通商事務につきましては、方針といたしましてできるだけこれが完結されるように期待しておるのでございます。何もじゃまをしておるということはございませんので、その点は御了解いただきたいと思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 結末をつけておきます。それじゃ事情にして正当であるならば考慮の余地があるということを言明していただいたわけですから、もう一ぺん事情をよく調査いたしまして、業者当事者からもまた、通産省法務省にも同時に陳情はいたしますが、当然外務省にもそういうふうにお願いに上ることがあろうかと思います。その場合には、今のように一つゆとりのあるお考えで御処理願いたいと思います。  最後にもう一ぺんお尋ねしておきます。それは、今度また、たとえば三ヵ月延ばしていただきまして、また何か他のケースによって話の途中のような場合がありましても、あまり長くなるから一ぺん帰ってほしい、何か正当な商談の目的があれば、そのときにはあらためて再入国を許す。このクルーピン氏に限りませんが、他の者にいたしましても、こういう貿易代表人たちを入れるお考えは当然ございましょうね。それをちょっとお伺いしておきたい。
  24. 寺岡洪平

    寺岡政府委員 穗積委員に御了解を願いたいことは、本件法務省が主管いたしまして、外務省といたしましては意見を述べている立場でございますから、クルーピン滞在延期の件につきましては、法務省最後決定権を持つということだけは一つ了解を願いたいと思います。方針といたしまして、事務上の問題がございますが、もちろん実益につきましては、商社との話し合いの円満なる進捗ということについて大いに関心を持っており、その意味法務省にも意見を述べているということを申し上げたのでありまして、本件最終的決定はやはり法務省の所管でありますから、その点誤解のないように願いたいと思います。  それから将来のことにつきまして、これと同じようなケースで話がまた出るという件につきましては、今まで申しましたような方針に従って今後ともやるつもりでおりますので、具体的なケースについて見なければわかりませんが、なるべく御趣旨に従いたいと思っております。
  25. 植原悦二郎

  26. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 この前の私のクエスチャニヤに対するお答えはきわめて不満足なものでありましたので、そこで本日さらに質問をいたします。  実は大使任命でございますが、これは申すまでもなく、主要なところだけに置くというのが原則でありまして、現在欧米におきましても、着実な国はそうむやみに大使乱設しておりません。ただ中南米東南アジア方面のまだそのやり方の堅実じゃない国におきましては、いろいろな理由に基いて、むやみに大使を交換するという風があるようでありますが、着実な国においては大使なるものを乱設しておりません。従いまして、日本も人口その他の点においてなるほど大国ではありますが、まだ独立も完成しておらない今日の事情で、本来ならば大使なんかはなるべく制限をして慎しむのが当然だろうと私は思うのであります。従いまして、今までの大使さえも実は多過ぎるという感じを持っておったわけでありますが、今回のようにむやみに大使を作るということになりますと、日本もやはり着実じゃない軽佻浮薄な感じを与えて私は賛成しがたいのであります。こういう点について外務当局は、やはりアジアの新興独立国とか中南米方面の国にまねてむやみに大使乱設する、そういうやり方をとっておられるようでありますが、これに関する見解を承わりたいと思います。     〔委員長退席菊池委員長代理着席
  27. 園田直

    園田政府委員 お答えをいたします。主要なところだけに大使を置くのが、堅実な国家では原則であるが、乱設をするのではないかというよう御意見であります。われわれはさようには考えておりません。もちろん大使はみだりに設置すべきものではなく、重要な地点に置くべきであるという御意見はごもっともでございますが、その重要という解釈については、漸次その解釈が進展をしておると考えております。御承知のごとく、各国におきましては、大使公使見解というものが相当以前とは変ってきておるとわれわれは考えております。先般から御報告申し上げました通りに、日本は戦後在外公館を一挙に縮小いたしまして、今日においてはこれを拡大充実する段階にあると考えておりますので、御注意の点はよくわかりますが、そういう点を勘案しつつ濫設に陥らないように逐次所要の重要な地点に増設していきたいと考えております。
  28. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 しかし多数の大使を作っていくということになりますと、事実上東南アジア方面の他の国も全部これは大使にせざるを得ない。さらに数日前に回ってきた書類によりますと、ペルー代理公使からの要請によりますと、ボリビアにも一つ公使館を置く、しかもそれを大使にしてもらいたい、こういう要請がきております。ところがこれも、これから新たに移民もつき、経済関係がつくということになりますれば、決して東南アジアに劣らぬだけの重要性が当然起ってくる。東南アジアは重要といっても中には実質的には重要ならざるところがある。ボリビアあたりの方がはるかに重要になるかもしれない。その他中南米ドミニカにつきまましても、移民が行き、経済関係が生ずる、また重要だ。ペルーのごときも多数の居留民がいる。チリーもこれから大いに経済発展をする。中南米方面も、つり合い上からいっても全部大使を置く、あるいは大使に昇格せざるを得ない、そういうふうになりますと、世界の最も不堅実なラインの大使濫設という方向にいくようになってしまうのです。従いましてかくのごとく多数の大使館を一挙に作るということは不健全なやり方である、こう思うのであります。たとえば中南米方面公使館をどうされるつもりか、そういう点についてどうお考えになりますか、その点一つ御答弁願いたい。
  29. 園田直

    園田政府委員 ただいま御相談申し上げております通りボリビアには公使館ドミニカにも公使館設置お願いをしておりますが、将来ボリビアドミニカ等予算面あるいはその他の事情の許される段階になれば、やはり大使昇格申請をすべきようになると考えております。従いまして、そのようになりますれば大使館の数が相当数ふえてくるということは予想されますので、そういう大使館設置する場合には、御指摘点等十分留意検討をしつつやらなければならぬとは考えておりますが、以前と違いまして、大使館の数がふえますることはやむを得ない今日の状態であると考えております。
  30. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私はどうもそういう不堅実なやり方には賛成できないのでありますが、その問題は別といたしまして、ヴェトナムは今度大使館にする、アメリカヴェトナムには大使を置く。ところがヴェトナムアメリカには公使を置いておるらしいのであります。一九五四年のステーツマンス・イヤー・ブックによってそういうことになっております。日本ヴェトナム大使を置くが、ヴェトナム日本公使を置く、こういうふうになるのでありますか、その点を一つお伺いしたい。
  31. 園田直

    園田政府委員 ヴェトナムも、日本に対しては大使館設置する見込であります。
  32. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 向うもこちらに大使を置くことを希望するというならば一応納得がいきますが、アメリカにさえ公使を置いている国が、大使日本に派遣することはちょっとふに落ちぬのであります。その点をもう少しお調べになりまして、もしも日本にも公使しか置けないというようなことになった場合には、よろしくこちらも公使でけっこうだ。アメリカは、今政治的に非常に重大なときでありまして、世界の紛争の一つの中心でありますから、大使を置くことは当然でありますが、日本側向うから公使をよこすのに日本から大使をやることは、はなはだおかしなことではないか。その点はどうお考えになりますか。
  33. 園田直

    園田政府委員 ただいま申し上げましたように、ヴェトナムは近日中に日本大使を置く見込みでございまして、アメリカは、やはり大使館を出しているようでございます。米、英、日、仏の四カ国にヴェトナム大使館を置く計画のようでございます。
  34. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 今言ったイヤー・ブックによると、スイス大使は置いてないようであります。全部公使であるように思うのですが、そうすると日本だけ大使を置いて、スイスからはやはり公使というわけですか。あるいはスイス日本に対して大使館にするという意味ですか。
  35. 園田直

    園田政府委員 スイスだけは、御承知通り大使館は全然どこにも設置をいたしておりません。これはよく大橋氏の御承知通りであります。
  36. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 もっと具体的な問題になるのですが、スイスは、国際会議の場所としてそういう大物の使節が必要というならば、ベルギーあたりは、さしあたり兼任にしてけっこうだと思う。ベルギーの兼轄のかわりにスイス大使級の人間を派遣するというようなことを考えられたことがありますか。ことにフランスのごときは、相当フランス語のできる人がおるのですが、そういう人も使い得るのであって、スペアの大使を幾人も置く必要はないように思う。その点はどうお考えでしょうか。
  37. 園田直

    園田政府委員 スイスは今度大使お願いいたしておりますが、在スイス大使館は、御承知のごとく英、米、仏、伯、伊、カナダ等でございます。とりあえずは専任で置きたいと考えております。
  38. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 ベルギーのごときは、実質的な仕事もないから兼轄でけっこうだというように考えておった。もっと経費を節約する意味において、ああいうのはフランスあたりの兼轄にされて、そのかわりスイスならスイスにそういう国際会議用大使を置かれるというふうにせられるのが当然だろうと思うのであります。かくのごとく大使がたくさんできるという場合においては、大へん大使の数になる。ところが大使という格式を保つために、いわゆる大使任命するということになりますと、この前指摘いたしました通りに、結局は外務省出身のいわゆる古手外交官にいってしまう。そして向うへ行っていわゆる貯金大使というようなものができてしまう。何ら働けない、全く無意味な存在になるおそれがあると思う。そこで私としては大使を多数に置かれる場合においては、昔は領事か副領事くらいおれば足りるところまで大使を置くというならば、やはりかりに領事級のものでも大使任命し得るもっと幅の広い大使制度をとられぬことには、国家費用が持たないし実情に即さない。現在でも相当幅を広げられておりますが、これも実は岡崎君のときに私がここで注意した結果、意見が一致してそういうふうにされたのでありますが、まだまだ足りない。大使公使も私はもっと幅をうんと広げて、うんと下級の者でも任命し得る弾力性を持たせることが当然必要になってくると思う。そうして任命するに当っても格式関係なく適任者である場合には、どんな下の者でも大使という名を持って活動し得る、そうしてその任を終ったならば公使にもなる、あるいは、本省に帰っても事務官になる、こういう弾力性のある大使制度を作ることがロジカル・コンクルージョンだと思うのですが、この点についてどうお考えですか。
  39. 園田直

    園田政府委員 ベルギー財政金融の問題あるいは貿易の問題、あるいは石炭、鉄鋼等関係もございまして、ベルギーにおります者にルクセンブルグの兼轄をさせております。外務省としては先般来申し上げます通り、正式の国交の開かれた国に対してはその国に対する関係あるいはこれに対する尊敬の意図の関係もございまして、無理をいたしましてもできるだけ兼任は避けて専任をおきたい方針でございます。しかしそのあとで御指摘に相なり御注意をいただきました大使公使の幅の問題、人選等の問題は全く同感でございまして、これは深く考え、将来の人事等の場合にはいかなる問題があっても、強く通さなければならぬことと考えております。すなわち大使の幅を広くして下級者といえども大使につけるようにしよう、なおまた大使をかりに終って本省に帰った場合におきましては、大使であった者が再び局長あるいはその他の職につくことが当然であるかのような制度をとることこそは、これは今日の大使公使の格というか、一般的な印象というものが変遷してきたという意味におきましても、あるいは少壮はつらつたる外交を進める意味におきましても、重大なことでございますので、ただいまの御注意は、御注意をいただく以前から深く考えておるところでございますから、そういう点は積極的に、今までの事務上そういういろいろな障害があるとするならば、そういうものを改正しましてでも進めていきたいと深く考えております。またそれが戦後の変った意味においての大使公使の席順、あるいはこれを増設することをお願いできる理由になると考えております。
  40. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 大公使人事を見ますと、大体において外務省古手外交官が盛んに起用せられるのでありまして、私は全部が悪いとは申しませんが、中にはいかがわしい人もおります。それは何も今の重光外相になってからばかりではない。前の吉田外相時代からわれわれとしては感心しないような人事が非常にある。これは実にいい人事だと思う人事もないではありませんが、そういうものよりも首をかたげるような人事が非常に多い。そこで私はこの大公使任命に当りまして、一つ情実をやめてもらいたい。だれそれはおれの下におったことがあるという因縁任命するとか、あるいは親類だからどうこうするとか、そういった情実因縁によってものの役に立たぬような者を任命することは私はふまじめであると思う。こういうことはぜひやめていただきたい。具体的には私は申しませんで抽象的に申しますが、これだけは一つぜひやめていただきたい。これに関する御意見はどうですか。  さらに人事について、たとえばセイロンに今度大使ができる、だれを任命するか、セイロンは御承知通り小乗仏教の非常に盛んなところであります。ビルマにしても非常に小乗仏教の盛んなところであります。ビルマのごとき非常に経済関係の重要なところはそうはいかないかもしれませんが、セイロンのごときはむしろ非常に適任な人があったならば坊さんのような人を一つやってみたらどうか、むろんなければそれはしいて坊主でなければいかぬとは申しませんが、もしあればやったらどうか。それからアフガンの大使でありますが、これも説明書によりますといろいろ理屈をいっておられますが、私が戦前アフガンに参りました当時は仕事が一つもありはせぬ。そこで何を公使館員はやっておるかというと、同じ区域に住んでおる外国の公使館員とテニスをやっておる。まことに所在ないくらい。ここに説明すればなるほどもっともらしくあるようでありますが、実際行ってみると仕事なんかありはしない。そこで結局どこにいくとかいうと、金ためになってくる。そこでアフガンに大使を送るなら送っただけの意味のある人事をやらなければならぬ。これも私はそういう適任者があるかは知りませんが、アフガンは非常に熱心な回教徒の国です。従って向うの回教徒と深く手を握って、その基盤において日本経済的の発展を遂げるというような回教徒——日本でも回教徒のりっぱな人がおる。そういうような人が得られ、かつ行けたら、そういうような人を物色するというように、実際送るならば血になり肉になる役に立つ人事をやろうと努力してみる考えがないか、この点を一つ伺いたい。
  41. 園田直

    園田政府委員 在外公館人事に古手の者を集めてくる、あるいは情実に陥ることは十分注意しろという御意見でありますが、全く同感であります。大いに反省をいたしております。この情実人事に関しましては、事務当局が必ずしも情実ではなくて、自分が能力を知っておる者を持ってきて外交を順調にやろうという観点から、ややもすると情実に陥る点もございましょうし、あるいはまた政党政治の弊害として与党のいろいろな関係のためにそういうことが行われることもございましょう。しかしいずれにいたしましてもそういうことを排撃をして、純粋な外交の目的から人事をやることは当然のことでございますから、この点もよく承わりまして十分その方針通りますように人事をやりたいと考えております。  なお人事をやる際に、たとえばセイロン、アフガニスタン等のお話を具体的に出しての御注意でございますが、そういう点も考慮の中に入れてやりたいとは考えておりますが、この際ただ考えなければならぬことは、今日の外交が昔の外交と幾分変って参りまして、経済的な問題あるいはその他農業、貿易、こういう専門的なことに入ってくるので、ややもすると重大な国交の任に当る者として経済的な面が大きくなったという意味において、経済的な専門家、民間者等を採用して必ずしも成功しなかった例もございますが、また一面にはローマのヴァチカン等におりました参事官等で非常な成績を上げた点等もございますので、今仰せられました点はよく留意して参考として人事を進めていきたいと考えております。
  42. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私が先年アメリカに行きましたときに、私は実は領事館などのお世話にはほとんどならなかったのでありますが、開くところによると、非常に経費が切迫して、そしてツーリストの案内さえできぬような状態です。こういうような公館を置いても、これはむろん西洋人、アメリカ人との交際もできぬし、意味をなさぬと思う。これは場所々々によってむろん一律ではありませんが、やはりもう少し使い得る流動費用を増して、そしてその機能を発揮し得るだけの費用をやらぬことには、置いてもこれは何にもならぬ、こういう感じを持ってきました。聞くところによると、最近非常にこれもふえたそうでありまして、けっこうでありますが今外務省としては、こういう点についてどういう努力を大蔵省に向ってしておられるのでありますか。われわれも次第によっては応援してもいいと思う。場所にもよりますが、そういう点についてどういう処置をとっておられるか。
  43. 園田直

    園田政府委員 在外公館費用等の関係で、ツーリスト・ビューローみたいな状態になっておるという御注意でございますが、これはむしろいろいろな電報なり在外公館から帰った者の報告を聞いてみましても、外交官が最も悲哀を感じておりますことは、日本の海外旅行者の道案内的なことをするのが在外公館の任務であるというふうに、むしろ彼らが押し込められておることが、彼ら自身として最も悲哀を感じているところでございまして、これは費用の面ばかりでなく、海外に旅行する方々のお考え等も、一つよろしくお願いしたいと考えておるところでございます。経費の面につきましては、終戦後外務省が終戦連絡事務所的な地位に転落いたしまして、ややもすると、費用関係からさらに通訳の地位に転落するおそれなきにしもあらずでございます。この意味におきまして、ほんとうの内政の頂点に立って、国家のありとあらゆる面を打開するために、外交がその前衛として働くためには、やはりこの経費の問題が非常に重大でございます。御承知通り、戦後各省は逐次国家財政の緊迫につれて経費の縮小をされましたが、これが一律に縮小されましたために、伸ばすべきものと縮めるべきものとの比率がうまく参らずに、特に外務省のごときは、いろいろな関係から他省に率先して経費を非常に削減されております。本年度の予算の折衝においては、皆さんの御支持によりまして、昨年よりも他省と比較しては多少ふえた格好でございますが、ただ昨年に比べて、ふえたというだけでございまして、外務省本来の任務からいうと、まだまだ最低線を満たす点まで達しておりません。なおまた金額の面ばかりではございませず、たとえば外務省の使う経費の面では、御承知のごとく工作費あるいは情報費あるいは謀略費等、多数一般会計において判断できないような問題がございますが、終戦後これが報償費という名目に変えられまして、一般会計の中に入り、会計検査院の検査を受け、報告するような格好になっております。こういう経費の使い方につきましても、外交の特殊性というものを認めさせることに非常な困難を感じておりますので、こういう点についても、皆様方の御支援を受けまして、この外交というものの地位がもっと躍進をし、しかも内政の頂点に立ってありとあらゆる面を打開するのには、諸先輩各位の御支援をさらに賜わって、われわれといたしましても、絶えず各関係当局に向って啓蒙啓発をやらなければならぬと考えております。
  44. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 ことに東南アジア方面のごとき、私は特に今言った機密費的のものが必要であると思う。やはりごちそうをしたり、贈りものをしたりしてフレンドをふやすべきである。ただ単に旗を立てて、あそこにいばっておるというだけでは何も役に立たぬ。従って私はどうしても、会計検査院の検査を受けなくてもいい経費というものをもう少しふやさぬことには、大使館を置いても公使館を置いても、そんなものは何にもならないということさえ思っておるのでありますが、一つそういう点もさらに考えていただきたい。われわれも必要ならば援助をするにやぶさかでありません。  さらに領事制度であります。今度もまた領事を置かれるそうでありますが、われわれが領事をやっておった時代の領事制度から見ますと、日本領事というものは実質的に仕事のないものであります。ことに英米の領事は、コンシュラー・インボイスであるとかシップス・クリアランスというような領事館における実務があった。ところが、北米沿岸の居留民の多いところの領事ならば、証明とかいろいろありましたが、今や北米においてはほとんど帰化して証明事務はない。そしてシップス・クリアランスもなく、コンシュラー・インボイスもない。通商貿易を進めると口では言うけれども、実際商売人は自分のルートでもって自分でやって、領事館なんか問題にしないというような傾向でありまして、かえってこちらから向う日本商社に行っていろいろ聞いて、そして通商報告をするというような状態のものでありまして、もしわれわれのやっておった時代の領事制度というようなものならば、いろいろ拡張してみたところが大した通商貿易の促進にはならない。戦後においてその制度がどういうふうに変えられ、現在どういうような具体的な方法で、カサブランカとかその他に置かれた場合に、通商貿易の促進をやられるのか、その点を一つ具体的に私はお聞きしたいと思います。
  45. 園田直

    園田政府委員 お答えいたします。在外公館の活動、領事の活動等は、現実には個別的なものがごいます。従ってその活動分野にはおのおの特色がある次第でございますが、一方において最小限度まず大事なものは、今日日本外交が国際外交の一環に立ち入る段階にある時期でございますので、まず第一に考えておりますことは、情報の収集でございます。すなわち、定期的に国外事情につき把握をしておかなければなりませんので、定期的な政治、外交あるいは経済統計に関する情報報告、宣伝に関する報告、あるいは貿易その他の報告を逐次やらせております。そればかりでなく、各種の選挙あるいは政党、特に変転の多い各国の状態に即しまして、行政機構、政党に関する報告、あるいは評論機関等の報告等、情報を第一にいたしまして、第二に統計調査、続いて具体的な貿易諸問題のいろいろな契約等の推進をいたすようにしております。
  46. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私の言うのは、公使大使ではなく、領事館制度についてお伺いしたのでありす。そういう政治情報とか何とか、それは関係がないこともないでしょうけれども、そんなことよりも通商貿易、居留民の保護というのが領事制度の本務なのです。ところがそういうような方面におきましても、居留民があまりいないところは、通商貿易貿易促進のためにこれは置くが、どういうようにして貿易の促進をしておられるか。彼らが実際的商売人であり、仕事に携わったことがある人ならば、その報告なるものもいわゆるかゆいところに手の届くような報告が来て、多少日本の実業家の参考になるかもしれませんが、さもないとその報告なるものも新聞を翻訳して出すくらいのところであって、ほとんど実務家の用をなさないことになる。従って領事館を置いても、コンシュラー・インボイスもなく、シップス・クリアランスもないから、どこの商社がどういう品物を送っているかもさっぱりわからない。そこでますますその報告なるものがつまらなくなる、こういうのが私は実情だろうと思うのです。もう少し地に足のついた領事館制度を設けられぬことには、こんなものは幾ら拡張しても経費を使うだけで何も役立たぬのじゃないか。そこで具体的にどういう方法でこの領事館あるいは領事館にかわるような公使館をして通商貿易の促進をやっておられるか。たとえばその方面の有力者と交際して話し合って、積極的に日本の品物を見本を持ってきて売り込む、そしてそこへわざわざ人を出して調べるだけの資力のない人のために具体的の通商上の調査をやるとか、あるいは向うの実業家と進んで交わりを結んで、彼らに日本の商品を買うような意欲を起させるとか、あるいは向うの品物で、ほかの国で買うよりも割安のいい品物があるならば、そういう品物を日本に報告して買うように働きかけるとか、そういうような具体的の仕事をやっておられるかやっておられないか、やっておられるならどういうふうにしてやっておられるか、そしてやったことについて成績が上ったかどうか、これが実は私はお聞きしたかったのだけれども、この間の答弁には一つもそれがなかったのです。
  47. 園田直

    園田政府委員 領事館の任務につきましてはただいま御指摘通りでございまして、貿易情報の収集あるいは商社の調査あるいは二世、在外日本人の調査等をやっておりますが、具体的に例をとって申し上げますと、ロスアンゼルスの総領事館におきましてはまぐろの輸出、絹スカーフの問題等を逐次進めておることは御承知通りでございます。なおまたニューヨークの総領事館では今御指摘の中にありました日本の商品の紹介すなわちメーシー百貨店等を使って日本の商品展示を行うということを具体的に進めております。  なおただいまお願いしておりますカサブランカの領事館設置につきましては、カサブランカは御承知通り西アにおける最大の貿易港でありまして、わが国にとっては西アとの貿易が前途きわめて有望でございますが、ただいままで現地に在外公館がなかったために十分な市場調査ないしはあっせんができなかった事実にかんがみまして、本領事館設置せしめて、こういう事項を重点的に所掌せしめ、あわせて回教民族独立運動等についての現状を的確に把握したい、こういう考えでございまして、カサブランカでは現在まで何も調査等がございませんので、市況あるいは産業につき事実を調査させ、あるいはただいま御指摘の商品展示や紹介等も逐次やらしたいと考えております。御承知のごとく日本貿易においては、貿易業者が自分で業者を派遣するあるいは情報を集めるというような業者は僅少でございまして、中小企業者が集まって貿易を再開するという状態で、めくら貿易の状態でございます。そういう観点から、御指摘点等を十分注意いたしまして、領事館の任務を逐次的確に付与し、これを堅確に進めていきたいと考えております。
  48. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 絹のスカーフとかまぐろのカン詰めなんという問題はワシントンの問題でありまして、私は羅府の領事館がやるような仕事はあまりないというふうに思っておるのであります。しかしそんなことは別として、ぜひ一つ自分自身が商人になったつもりで、そして中小企業の代表になったつもりで、中小企業がこっちから行かなくても商売ができるくらいに立ち入って親切にやるというところまで行かぬと、私はもうこの在外公館の意義というものは実はなくなると思う。  さらに、こういうふうにして必要なところにそういう趣旨領事館を拡張せられるということはむろん異議ありません。けれども私が北米なんか回って歩きまして感じたことは、中にはもう領事館なんかやめてもいいところが非常に多いのじゃないか、ポートランドのごときはまさに住むにはいいところでありますが、一体どういう仕事があるか、昔は居留民がたくさんおりまして、それが第一世で日本国籍を持った者であるがゆえにそういうような仕事も多少あったのであります。今日はそれがみんな帰化してしまって、そういうような仕事はない。もう二世、三世の時代に入ろうとしておる。従って通商貿易の問題のごときも、領事館なんかにたよるような貿易業者はおりません。自分のルートでやっていくのでありまして、私はああいうようなところは名誉領事館でけっこうだと思う。ここに名誉領事館ということを申しますのは、これは私がシアトルにおったときの例でありますが、英国のごときはペリーという名誉領事のもとにそこに書記生級のものを送って実務をやらしている。しかもこれは当時カナダも代表しておって、なかなか交通往来のひんぱんにある名誉領事館だ。そういう実質的な仕事のできる軽便な名誉領事館というようなものを考えられて、今の割度とは変ったウワーカブルな名誉領事館を置いたらどうかという意見を昔から私は持っておるのであります。従って要るところに公館を拡張されることはよろしいが、要らぬところまでしいて位置のために位置を置くというようなことでは、将来持っていけなくなるときが来る。今は外貨も非常に潤沢でいいのでありますが、こんな状態はいつまでも続かない。必ず将来そういう困難な時代が来る。そういうような点も見合せられまして、外貨の一滴血の一滴という観点から、まだ経済的に独立もしてないというような日本でありますから、私は要らないところの領事館のごときはどんどんやめられたらどうかと思う。むろん要るところにどんどん設置することには、もしそれがさきに申しましたようにほんとうに問に合うならば私は異議ありません。そういう意味において、もう少し在外公館のほんとうの役割、やっておる仕事をまじめに検討されて、要らぬところがあったら整理するという意図があるかないか、この点を一つ伺いたい。
  49. 園田直

    園田政府委員 在外公館を整理縮小すべき段階ではなく、むしろこれは戦後の外交の飛躍と相待って逐次拡張すべきであるとは考えておりますが、その在外公館設置するに当っては、戦前の常識から来る以前あったところに逐次置いていくという考え方ではなくて、ただいま御指摘通りに必要でなくなったものと、あるいは以前はなかったが今度は置かなければならないものなど十分検討いたしまして、不必要なものは整理をするということは、全く御指摘通りだと考えております。またそういう面についての整理は、今後逐次一方において不要なものは整理するとともに、一方重要なものは御相談をしたいと考えております。  名誉領事の件につきましては、よく御承知通りに、今日特に日本外交上の経費の僅少なる時期においては、名誉領事等の制度はこれを利用して、これで済ませるべきものは暫定的な措置として済ましたいという考え方もございまして、ただいままですでにペルー、イタリア、コスタリカ、オランダ、ドイツ、スペイン、スイスフランス等に名誉領事任命して置いております。ただしこれは御承知通りに外国人でございまして、イギリスの名誉領事とは違いまして国家公務員ではございませんので、国家公務員の国家公権力を行使し得ないし、また国家行政組織法に載せてあります行政機関ではございませんから、これに対して任務等が著しく制限されて参りますので、ことごとく名誉領事をふやしてそれで済ますわけには参りませんが、国家経費の僅少の折柄、ただいまの御注意等も十分考えてやりたいと考えております。御意見はまことにありがたく考えております。  なお太平洋沿岸の問題につきましては、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア等の点は、戦前とは違いまして商品販売網を通じて経済的に販路を開拓すべきときでございますので、こういう点は太平洋沿岸諸都市の購売力等をも考えて、さらにこれは考えなければならぬことであると考えております。
  50. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 そう言われるともっともらしく聞えますが、実際問題として向うのビヂネス・マンが領事館などに頼むような、そんな者はおりません。それはそうといたしまして、以上申し上げたように、私は必要なところには置く、置く以上はそれに潤滑油を与えて積極的に仕事をやってもらいたい。それがためにはやはりどうしても査察を厳重にしなければいかぬと思う。今までの査察使は外務省の先輩のうちの、要するに非常におとなしい事なかれ主義の、ロボットのような人ばかりを送られている。そうして結局悪いところがあっても見て見ぬふりをする。だから最後には妥協してしまって何にもならぬということになる。ことに流動経費の潤滑油をたくさん与えるとなったならば、やはり彼らの活動を常に査察をして、事務が非常に多いところならば人をふやす、事務が全然なくて遊んで困るようなところならば人を減らすというようにして、公館に弾力性を持たせる。そして経費が適正に使われているか、よく活動しておるかどうかということを厳格に査察をして、鞭撻をし、監督をし、在外公館の莫大な経費をむだに使わぬようにしなければならぬ。この査察制度についてはどういうお考えを持っておられるか。
  51. 園田直

    園田政府委員 まず初めに経費、人事の問題からくる在外公館の活動の不活発なる点につきましては、私も同様に考えておる点が多々あります。海外におきまして、他国の在外公館というものは単に商品の見本ばかりでなく、その国の特色とする農業もしくは林業などの基本政策に関する宣伝資料等も持っておるのでありまして、一つの公館に飛び込めば大体その国の、本国の政治、経済並びに商品等の概略がわかるような仕組みになっておりますが、わが在外公館は今まで経費の不十分な点やその他のこともございまして、ほとんど商品の見本等がないばかりでなく、日本業者との連絡が密接でなかったわけであります。この点は戦後の日本外交が、国民との間のバルブが密接でなかったという点とも相まっておりますので、こういう点は経費の点とも相待ちまして十分考えてやりたいと考えております。  なお査察使の業務の遂行並びにその報告につきましては、これも大橋委員と同様に私は考えております。政務次官に不肖ながら就任いたしましてより、直ちに査察報告書を取り寄せて私も見ましたところ、本省におきまして在外公館の業務を監督するのは、日々もしくは定期の報告あるいは逐次起るべき諸問題の解決等以外に、査察使の報告によってそれの適正か不適正か、またはどういうことをやっているかを見まして、査察使が帰ってくればこれに応じて当然人事もしくは経費あるいは在外公館等の配置、本省外交行政の根本方針が逐次修正されていくのが当然であります。しかるにただいままで私が読みました査察使の報告には、御指摘通りこれを読みまして外交行政を修正し、もしくは根本方針を確立する上に参考になるような点は一遺憾ながら私も見出し得なかった状態でございます。ただいままで派遣しております査察使は、御承知通り浜口、日高の査察使を派遣いたしまして、ただいま北田査察使が派遣の段階にあり、東大から向うに参っております尾高教授をして経済的な査察をせしめるべく計画をしております。ただいま御指摘の点は私これを十分くみ取りまして、また大臣もその方針でおりますようで、出発する査察使にはそういう点を十分厳重に数十分間にわたって私自身からも詳細に注意をし、なお本委員会における空気並びに各委員の御注意等も具体的に指摘をして、今後査察使が査察を終って帰ってからの報告においては、少くとも人事や、あるいは行政上の参考にすべき資料を持って帰れ、なおそのほかに経済上の将来の見通しに対する査察もしてこい、このような点はすでに十分注意を与えておりますが、今後ともそういう点は特に注意いたしまして、日本の内政が行政管理庁の行政報告書によってあるいは不正あるいは間違つた点等指摘され、修正されますように、外務行政というものも査察使の報告によってそういう成果が上るように十分留意したいと考えております。
  52. 植原悦二郎

    植原委員長 森島守人君。——なお、私は政府に対してちょっと申し上げておきたいのですが、政府の御答弁が懇切丁寧で、微に入り細に入ることもよろしいのでありますが、時間もなかなかとうといのでありますから、質問者の質問をまた繰り返して答弁するようなことは時間節約のためになるべく御注意下さって、御意見通りでありますと一言言えばよろしい場合は、なるべくそういうふうにして時間の節約をお願いしたいと思います。
  53. 森島守人

    ○森島委員 時間もないので、私はほんの一、二点御質問したいのですが、大使を交換することが世界的な風潮になっておる、この御意見は私はある程度賛成できる。しかしアメリカ中南米に全部大使をやっておるから、東アに国をなしておる日本が東アの諸国には大使しか出さぬということは、どうも重光さんの個人的なお好みがあるように思われます。外務省事務当局の中でも必ずしもこれに対して賛成をしておらぬということも聞いておりますが、この点は別に追究をいたしません。  それで私は、根本問題といたしまして、政令でもって外務省限りでもって御勝手に公使大使にするというような制度が現存しておるところに、問題の根源があるのではないかと信じております。この在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、この説明の第一にヴェトナム、カンボジア、セイロンとイランのことが書いてありまして、その説明によりますと、本年二月彼我間の合意が成立し、わが公使館を至急大使館に昇格せしめる必要があった、こうあるのですが、この昇格は、第五のところにあります在外公館増置令(昭和二十九年八月二十四日政令第二百四十三号)、これによって昇格されたものですか、いかがですか、この点をお伺いいたします。
  54. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。
  55. 森島守人

    ○森島委員 もう一つ聞きたいのは、二月合意が成立して至急大使館に昇格せしめる必要がある、これはどんなことを意味しておるのですか。作文のようなもので私は解しにくいのですが、速急に大使館にする必要があったかいなかという点を明確に御答弁願いたい。
  56. 園田直

    園田政府委員 相手国との話し合いによりまして話し合いができましたので、そうきまったわけでございます。
  57. 森島守人

    ○森島委員 今の御答弁は私は非常に不満足です。二ヵ月や三ヵ月延ばせないということは絶対に私はないと思います。これは要するに政令でもって勝手に既成事実を作って、まあ外務委員会が知識があるかないか私は知りません。知識のないのに乗じて既成事実を国会に押しつけるというやり方だ、こう判断せざるを得ないのでありますが、この点はどうお考えになっておるか。
  58. 園田直

    園田政府委員 政令に許されたる国会閉会中の昇格設置等は十分制限をいたしまして、必要やむを得ないもの以外はしないように十分注意しているつもりであります。決して外務委員会が知識がないわけではなくて、あまりに知識が豊富であられて事務当局が困っておるような実情であります。
  59. 森島守人

    ○森島委員 今の御答弁はまことに人を食った御答弁です。私は彼我の間に合意ができても二ヵ月や三ヵ月延ばせないという理由は絶対にないと思います。かくのごとき外務省やり方を今後は排して、——法律を改正するかしないかという問題はまた別個に考えたいと思っておりますが、政令によってやる方針を今後おとりになるかいなか。この点について明確な御答弁をいただかなければ、この法案全部は私の方としては通せない、こういうふうに考えます。
  60. 園田直

    園田政府委員 政令の運用に関しましてのとかくの行き過ぎ等があるかもわかりません。率直にこれは反省をいたします。ただしこの政令で設置される道がふさがれますと、たとえば今日行われております日ソ交渉が妥結しても、国会が開かれて法律改正が成立するまでは大使の交換等ができないというようなことも出て参りますので、今までの運用上等にもし誤まり、行き過ぎがあるとすれば十分注意をいたしまして検討いたしますので、今までの欠点によってこれを閉ざすというようなことは、ごかんべん願いたいと考えております。
  61. 森島守人

    ○森島委員 ただいま従来の取扱いにあやまちがあったらという御答弁のようです。私はあやまちがあったと思う。ラオスやカンボジアやこの辺の国国と二、三ヵ月延ばしたって何ら差しつかえない。私が聞きたいのは、要するに至急大使館に昇格せしめる必要があったというのは、彼我の間に合意が成立した、その事実だけしかないのだ、これは全く作文です。その点について大臣にもっと明確なる答弁をこの際求めておきたいというのが私の趣旨だったのであります。大臣の御出席がないので政務次官にお聞きしてもいいですが、この点について明確なる一つお約束をしていただきたい。
  62. 園田直

    園田政府委員 ただいまの点は大臣によく申し伝えておきます。今御質問になった理由につきましては、私は相手国と話し合いができたという以外には、特に申しわけをする理由はないようでございますので、率直におわびを申し上げます。
  63. 森島守人

    ○森島委員 私は大臣からの御答弁を留保いたしまして、この次の機会に大臣から明確にこの点に対する御所見を聞くことにいたします。  もう一つ、もしこの法律が通らなかった場合には、外務省としてお困りになるだろうと思うが、その点は実質的にどういうふうなことになるとお考えになっておるか、その点お聞きしたい。
  64. 園田直

    園田政府委員 すでに国会の委員会に正式に法律の改正として御相談申し上げました以上、各委員の御意見によっていけないということになればそれを無理に政令等を悪用いたしまして、外務省意見を通そうなどという不遜な考え方は絶対に持っておりません。誤まりがあれば率直におわびし、今後の御注意をいただいてこの法案に御了承いただきたいと念願する次第であります。
  65. 森島守人

    ○森島委員 率直な御意見を承わりましてまことにけっこうなのですが、もし通らぬ場合には予算措置その他においてどういう結果を来たすか、この点に対する御答弁がなかったようですが、念のためにこの点の御答弁をお聞きいたしておきます。
  66. 園田直

    園田政府委員 ただいままでいろいろ苦心をいたして御支持をいただいた予算が、この法律が通らなければそのまま残置されるだけでございまして、予算上いろいろな問題は起らないと考えます。
  67. 森島守人

    ○森島委員 予算が通らぬというのは、大使館昇格に関する分だけですな。その点はどうなりますか。
  68. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。
  69. 森島守人

    ○森島委員 けっこうであります。
  70. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約局長一つお願いがあるのですが、列国との国交回復の状況が、もし一覧表になっておりましたならば、それを一つ提出していただきたいのです。
  71. 下田武三

    下田政府委員 最近作りましたのができておりますから、さっそくお届けいたします。
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 なおこういう点を一つ御考慮願いたいと思います。大橋君の質問領事館制度の問題がありましたが、人事の問題もありますけれども、領事館をほんとうの通商問題を専門にするように、たとい総領事であっても練達堪能の士は大使の待遇まで受けることができるような、英国式のような制度に変えて、——領事館外交官の昇格のステップ・ストーンにするようなこの制度を改めない限りは、ほんとうの通商上の問題が解決できぬと私は考えておりますが、この点について政府から御答弁を願いたいと思います。
  73. 園田直

    園田政府委員 今の点は事務的にも何ら支障はないようでございますので、十分御注意を承わりまして、そのようにしたいと考えております。
  74. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて本案に関する質疑は終了いたしました。森島守人君の御質問に対する大臣の御説明を願って、本案は次会に採決いたしたいと存じます。さように御了承を願います。     —————————————
  75. 植原悦二郎

    植原委員長 次に国際情勢に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。森島守人君。
  76. 森島守人

    ○森島委員 新聞で伝えておるところによりますと、ワシントンにおける濃縮ウランの話し合いが相当迅速に進んでおるようであります。なお参議院だと思いますが、トルコとの条約の第九条を条約の本文からはずして了解事項としてやるとかやらぬとか、そういうことを見たのですが、了解事項と申しますと、日本政府に対する法律的効果はどういうものであるかという点を伺いたいのです。根本からいって、当然条約に入れるものならば何も了解事項にしないでも入れればよい。ただしこれを削除するなら削除する了解事項というふうなものにして、いかにもインチキなぺてん師式なやり方はやめなければいかぬと私は個人的に考えております。法律的の効果について条約局長の御意見を承わりたい。
  77. 下田武三

    下田政府委員 条約の中の条文にいたします事項は、仰せの通り、それを当事国間の権利義務として明確に規定することに値する事項でなければならないと存ずるのであります。ところが発電用原子炉の問題は、現在特に日本側事情から見まして、これを供与してくれ、また受け取るという権利義務の関係で規定すべき事項ではないというように存じております。つまり時期尚早であると存じております。しかしながら、ただこういうことは言っても差しつかえないのではないかと思います。将来日本の原子力の平和的利用の研究が進みまして、日本でも発電用にこれを利用しようかというようなことを考えた場合には、もし日本が希望すれば、アメリカはその可能性について協議に応ずるかどうかということを聞きまして、そういう場合には御相談に応じますということぐらいを先方に言わしておくということは、これは日本においては何ら縛られなくて、しかも日本が将来アメリカ、ソ連、イギリス等を見比べまして、やはりアメリカの何が合理的に安いということでありましたならば、将来利用の道をちょっとあけておくということに相なりますので、そういうような両方のやり取りを議事録に載せて残しておくということでありましたならば、しごく適当ではないか、ただいまそういうように考えております。
  78. 森島守人

    ○森島委員 今の御答弁まことにごもっとものように聞えますが、おそらくはアメリカ側に押されてやむを得ず了解事項に入れるというのが政府の立場であることは、万人が認めると思う。もしそういう必要があるなら、その必要が起きたときに、あらためて御交渉になればいい、了解事項等に入れる必要はないと私は信じております。もう一応明確な御答弁をお願いいたします。
  79. 下田武三

    下田政府委員 アメリカは、トルコとの協定の九条を入れることをちっとも欲しておりません。これを何らかの形で入れるかどうかということは、もっぱらわが方の利益になるかどうかという観点から定めたいと思っております。
  80. 森島守人

    ○森島委員 もし日本の方で絶対に必要だというふうにお考えになるなら、何ら懸念は要らぬと思う。条約中にりっぱにお入れになればいい。そこに入れるとか入れぬとか言っているところに、私は交渉の過程において疑い得るものがある、こう思うのです。私は九条をはずして、了解事項を取りきめるということはおやめになったがいい、こう存じておりますが、この点あらためて御答弁をお願いしたい。
  81. 下田武三

    下田政府委員 日本側が希望した場合に、将来応ずるということを、条約中の権利義務の関係において規定することは、先ほど申しましたように、時期尚早であると思います。ただ日本側のために将来の道をあけておくということでありましたならば、これは日本にとってマイナスにはならないで、むしろプラスになる。プラスになることであるけれども、条文中の権利義務の関係を規定する事項として設けることは時期尚早でありますから、どうしても議事録なり何なりの、一段下ったもので書いておくということが適当ではないかと思っております。
  82. 森島守人

    ○森島委員 九条はそのまま了解事項として残される予定なのですか。
  83. 下田武三

    下田政府委員 ただいまのところ、九条を、そのままでありませんで、非常に形の変った形において議事録にとどめようかと存じております。
  84. 森島守人

    ○森島委員 御答弁私はきわめて不満足なのです。これはアメリカに押されておやりになっていることを隠していることは、争われぬ事実だ、こう確信いたします。その点につきましても関係大臣の御答弁を求めることにいたして、私の質問はこれで打ち切ります。
  85. 松本七郎

    ○松本(七)委員 協定の中に正式に入れることが時期尚早である理由は、どういうところにありますか。
  86. 下田武三

    下田政府委員 まず供与を受ける日本側の立場から申しますと、日本側はまだ発電用原子炉を受けるという体制にないようでございますれこれは外務省よりも、経済審議庁、また関係の学者の意見を聞きましても、やっとこれから濃縮ウラニウム、実験用原子炉をもらって、これから研究していくということでありますので、発電用原子炉を今もらうということは、現実から見ますとだいぶ先のことになる。従いましてそれを直ちに権利義務の関係として規定することは時期尚早であろうと思います。
  87. 松本七郎

    ○松本(七)委員 濃縮ウランを受け入れるか受け入れぬかという問題は、技術家その他の意見を聞いてみると、非常に急がなければならぬということが受け入れの大きな理由になっている。トルコの場合でも、日本よりはるかにおくれて、る。しかもトルコの場合は協定が十年間、そういう先のことまできめながら、やはりああいう九条を入れている。ですから、日本がこれを入れるのが早過ぎるということは、どう考えても今の御説明だけではわかりません。もう少し具体的に、トルコと事情がどういうところが違うのか、そういう点を明らかにしていただきたい。
  88. 下田武三

    下田政府委員 トルコはトルコの事情があるでございましょう。それで第九条はトルコ側の希望によってアメリカが応じたという経緯になっておりますから、トルコ側の気持は、あるいは将来までもアメリカの供与を確保したいという気持かもしれません。しかし日本側は、ただいまの学術関係者あるいは主管庁たる経済審議庁の考えからみましても、まだアメリカから将来発電用の原子炉をもらうという方針はきまっていないようであります。その方針をきめること自体が、まだなかなか先でないときまらないという現状で、これを協定中の規定にすることはおかしいと思うのであります。
  89. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それならば、了解事項にも入れなくてもいいのじゃないかと思う。将来あらためて交渉したらいいのじゃないかということになりはしませんか。
  90. 下田武三

    下田政府委員 それも一つ考えだろうと思います。しかしながら、現在何らかの形で日本のプラスになるならば、協定の付属文書において触れておいた方がいいという御意見方面もあるのでありまして、いろいろな御意見を勘案いたしまして、先ほど申し上げましたような方針でいっているのであります。
  91. 松本七郎

    ○松本(七)委員 どうもそこのところがすっきりしない。一方においては時期尚早だといいながら、片一方にやはり何らかそこに道をつけておきたいという、その相反した意見をそこで妥協したような形が見える。私なんかの考えるところでは、本来は協定の中に入れたかったけれども、これは国内でもいろいろこの九条の趣旨のことが問題になるので、表面には出さないで、隠れた形で了解事項くらいにとどめて、その道だけは残しておこうじゃないか、そういうふうな便宜的な手段のように私どもは解釈できるのですが、それならそれで率直にその事情を言っていただいた方がすっきりした説明になるのですが……。
  92. 下田武三

    下田政府委員 国内にも、トルコ協定みたよりなものを入れた方がいいという意見もあるのでございます。しかしそれは私どもからみますと、現実の権利義務の関係として規定するのはおかしいというわけであります。でありますから、先ほど申し上げましたような現段階にかんがみまして、最も適当な形で、条約に関連する文書の中でちょっと触れておくという解決策をただいまとっているわけであります。
  93. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほどからの条約局長の御答弁を聞いておりますと、協定のどこかに——しまいの方でしょうけれども、了解事項として道を開いておいた方がいい、こういうように了承したのですけれども、もうちょっと根本的な問題として、了解事項というものかどの程度拘束力があるかということか問題になってくると思いますが、協定なり何なりに付属した了解事項というような場合と、それから了解事項が別個の形で出た場合と、そのときの違いはどうなるか、伺いたい。
  94. 下田武三

    下田政府委員 それは了解事項の内容によると思います。了解事項でも本文の規定を直接引用しまして、本文の規定が大綱を定め、了解事項で細目を定めるという関係に立っております場合には、これは法律的に本文と同じように権利義務を発生させることに相なります。しかしながら了解事項で将来の方針とかあるいは政策を宣明したという場合には、これは権利義務の関係は生じないわけであります。それから本件の場合は了解事項という名の文書になるわけではございませんで、議事録中に掲げられた一つ了解ということになるわけであります。
  95. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 関連して。先ほど来の答弁を聞いておりますと、日本において必要を感ずる場合において、アメリカがこれに対して協力をしなければならないと義務づけられることは、アメリカとしてはごめんだというので、条約からはずそうということをアメリカ考えておるのであるか。それ以外にどうも考え方がないような気がするので、その点を明確にしていただきたいと思います。
  96. 下田武三

    下田政府委員 この問題は、アメリカ側としては全く日本だけの利益のために置こうとする問題であるから、日本側が自由におきめになったらよかろうという態度であります。
  97. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 それであるとするならば、日本が何も義務づけられないで、アメリカの濃縮ウランを用いることによって、さらにこれを平和利用として発展せしめ得るという確信の得られた場合においてのみ、アメリカが相談に応じなければならないというならば、日本にとっては何らひものつくものではなくて、アメリカが義務をむしろ負担するものであるから、これであるならば条約のうちに明確にすることの方が利益であって、何らの害なきものという判断ができるのが当然じゃないかと思うのです。しかるにそれを条約のうちからはずして、——一部にどういう議論があったかしらないが、私は議論の余地がないような気がする。しかるにそれを簡単にはずしてしまうということをするところに、森島君がさっき御質問になりましたように、何かそこにはかくれたものがあるのではないかというような猜疑の念を持たすだけのことであります。ことにアメリカに対して日本は非常に遠慮して物事をやらなければならないような、一部の作為的な宣伝的な議論すら行われている場合において、何がゆえにさような態度をとる必要があるのか。これは日本外交のためにむしろ避くべきではないか。日本が義務づけられない限りにおいては、アメリカの方に義務を負担せしめるという立場をとる限りにおいては、明確に条約とするのが当然ではないか、私はこう考えるのです。これについての見解をお伺いしたい。
  98. 下田武三

    下田政府委員 アメリカ側といたしましては、これはアップ・ツー・ジャパンで、日本利益のためですから、日本がいいようにしたらよかろうという態度であります。この問題が紛糾しておりますのは全く日本側の内部の事情にあるのでございます。日本の内部の考えがちっともまとまっておりません。ある学者のごときは一たん不明を恥じ、また不明を恥じないというようなことで、日本側の内部の意見が実に支離滅裂なのであります。それらを私どもはほんとうに冷静に考えました場合に、やはり日本利益になることならば、これはむしろ何らかの形で書くべきである。何らかの形で書こうとする場合に、現実の法律的の権利義務の関係として規定すべきかあるいは将来の問題として書くべきかということになりますと、これはアメリカ側も日本側も直ちに発電用原子炉を今授受するという段階にはないのでございますから、これはやはり将来の問題として、将来の問題であるとなりましたならば、やはり将来の問題であるにふさわしい形で触れるということ以外に、解決の方法はないと存ずるのであります。
  99. 北澤直吉

    ○北澤委員 ちょっと関連して。今の濃縮ウランの問題ですが、きょうあたりのワシントン電報によると、どうも日本の主張がわからない。協定からはずして了解事項に入れてくれ、こういうことをいっている。どうも最近日本政府のやっていることは、余剰農産物の協定にしましても、今度の濃縮ウランのことにしましても、国内の感情的ナショナリズムに支配されて、つまらぬと言ってはおかしいですが、枝葉末節のことにこだわって大きなことをはずしているのだ。一体日本政府がそういう一部の世論の動きに左右されましてどうも態度がまちまちで困る、何か日本がだだをこねているのだという印象を受けておるということが新聞にあったのでありますが、私の考えから申しましても、もし将来日本が原子力発電についてアメリカの協力を得たいというのならば、それが将来問題としても、これは協定に書くべし、また必要がないなら協定からもはずしまた了解からもはずす。協定からはずしてくれ、了解には入れてくれということじゃ、私はアメリカの方でもわからぬと思う。そう一がいにはいかぬのです。その点私はあまり政府が一部の世論の動きに遠慮し過ぎると思うのでありまして、政府はもっと国内の世論をよく見て、一貫した方針交渉に臨まなければいかぬと思うのです。世論の一部にひもつきがいかぬという議論があるので、これに遠慮して協定からはずす、ところが実は将来原子力発電には協力を得たい、だから了解に入れたい、こういう矛盾した主張をやると、ますます日本政府の信用がなくなると思うのですが、その点は、必要なら協定に入れる、必要ないならば協定からも、了解事項からもはずす、こういうようなはっきりした態度で臨んだらどうかと思うのですが、政府意見を伺います。
  100. 下田武三

    下田政府委員 まことにごもっともであります。仰せの通りアメリカ側は、一体日本はほしいのかほしくないのかわからぬという状態にあるようであります。日本政府の態度は一貫しておったのですが、日本の世論、新聞がそのままアメリカに反映いたしまして、アメリカでは不審に思っておるのであります。第九条の問題も、実は国内でやかましくなります前に、外務省の一番最初の訓令において、落せということをはっきりいっておるのです。日本利益になるならば協定に現実に権利義務の関係として規定すべきでないということを外務省は認めましたので、これは落せということを、まだ日本でこれが問題になる前にいっておったのであります。その通り一貫しておるのであります。
  101. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今の局長のお話によっても、アメリカ側は日本利益本位でどうでもいいという態度でおるわけでしょう。それならばなおさらこれをわざわざ了解事項に入れなくても、全然落してしまって、濃縮ウランだけ受けて研究して、ある時期になったら、一つここまで来たから発電所の方も頼む、こういう申し入れをすれば喜んで了解してくれるだろうと思う。そういうことで了解してもらえない危険があればこそ、そういうことを協定に入れられないから、せめて了解事項でというのならば話はわかる。いつでも向う日本のためにやってくれるという了解があるにもかかわらず、わざわざ了解事項にとどめておくことがわからない。今局長は二つ意見があるということを言われました。了解事項として議事録にとどめておくやり方と、全然落してしまう方法がいいという意見もある。だから選択の余地があるだろうと思うのですが、今後すっかり落してしまって、すっきりした形にする余地があるのかどうか。もしあるとすれば、われわれは国会としての意思を具体的にはっきりさせる必要がある。そのことが一つ。  もう一つは別な問題で、この間から海馬島の漁夫の死体の引き揚げに対して協力をお願いしておきましたが、その後どうなりましたか、その御報告をお願いしたい。
  102. 下田武三

    下田政府委員 第一の問題につきましては、仰せのように適当な形で残すか、あるいは全然落すかという二者あるわけであります。これは外務省の当初の訓令で協定から落して議事録に入れろということをいってやっておりますので、この際また方針を変えるということはいかがかと存じております。  第二の問題につきましては、最近ソ連の赤十字の方から日本の赤十字に対して、死体引き取りの用意ができたら引き渡すという電報が参りまして、たしか六月二十日ごろと指摘してきたと思います。直ちに関係各省で相談いたしまして、遺族の方の強い希望によりまして、日本側から船を出しまして死体引き取りに行くことに最近きまりました。遠からず引き取りが行われるものと考えております。
  103. 松本七郎

    ○松本(七)委員 いつごろ引き取りになりますか。
  104. 下田武三

    下田政府委員 六月二十日前後に死体引き取りが行われると思います。
  105. 森島守人

    ○森島委員 私ははずす方がよいと思っているのですが、万が一議事録の一部に残すということになった場合に、国会の審議にかけられるものと思っておりますが、その点いかがですか。
  106. 下田武三

    下田政府委員 議事録は法律的に権利義務を規定するものでございませんので、これを国会の御承認の対象として提出いたさないことに相なると思います。ただもちろん隠す必要のない文書でございまして、お目にかけまして参考資料としては差し上げることになると思います。
  107. 植原悦二郎

    植原委員長 今いろいろここに濃縮ウラニウムの問題は御議論になったようにかなり重要な問題だと思います。ここの御議論に現われたことは、私は実に重要な点だと思います。どうか政府としては慎重に御考慮をしていただきたいということを、私は委員長として申し述べておきます。きわめて重要なる点であります。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十二分散会