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1955-06-08 第22回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月八日(水曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    草野一郎平君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       稻村 隆一君    高津 正道君       細迫 兼光君    森島 守人君       戸叶 里子君  出席国務大臣         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 六月四日  南方地域残留日本人の捜査に関する請願(受田  新吉君紹介)(第一七二一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一  部を改正する法律案内閣提出第一二一号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年六月四日付で日本学術会議原子力委員会委員長藤岡由夫博士より、委員長にあててかような通達がありましたから、これを皆様方にお伝えいたします。書類の内容は、  衆議院外務委員会委員長          植原悦二郎殿   日本学術会議   原子力問題委員会委員長             藤岡 由夫    日米原子力協定交渉に関する要望書について   本委員会は本日、外務大臣あてに別紙のような要望書を提出いたしました。貴委員会におかれましても、これを御審議参考に供せられるようお願いいたします。    日米原子力協定交渉に関する要望書   日本学術会議原子力問題委員会は、濃縮ウラン受入れに関する対米交渉の結果如何が、今後のわが国原子力開発方針に少なからぬ影響を与えるものと考えます。   したがって、政府においては、まず交渉基本的方針について、原子力利用準備調査会総合部会の意見を十分に徴され、かつ、国民に事態をできるだけ理解させるよう努力されることを希望いたします。また、具体的にはつぎの2点について特に留意されることを望みます。  (1) 交渉にあたっては、妥結を急ぐことなく、内外の情勢、将来の見通しを十分把握しつつこれを進めるべきであり、少くとも、世界諸国原子力研究開発状況が発表される今夏の「原子力平和的利用のための国際科学会議」の結果を見定めることが望ましいと考えます。  (2) 協定内容は、濃縮ウラン受入れに直接関係する事項に止めるべきであり、将来にわたる拘束を含むような事項および今後の日本原子力開発方針を予め規制するような事項は、これをさけるのが適当であると考えます。 かような通達でありますから御参考に供します。     —————————————
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 次に日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案議題といたします。政府より提案理由説明を求めます。杉原防衛庁長官。     —————————————   日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案    日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律   日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法昭和二十九年法律第百六十六号)の一部を次のように改正する。  第一条第一項中「及び日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定」を「、日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定及び日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定」に改める。     附則   この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。     —————————————
  4. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ただいま議題となりました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  昨年、わが国は、アメリカ合衆国との間に、日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定を締結し、すでに艦艇の受領を開始いたしておるのでありますが、同協定の中には、さきに締結いたしました日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定及び日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定の場合と同様に、貸与された艦艇について所要秘密保護措置を講ずべきことが規定されているのであります。御承知のように、さきの二協定に関する秘密保護措置につきましては、すでに日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法が制定され、これによって所要保護措置が講ぜられることとなっているのでありますが、保護対象等から考えまして、本協定に関する秘密保護措置も、さきの二協定に関するものと同様にすることが適当と考えられますので、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正し、本協定についても同法の適用を受けるようにするため、この法律案を提出いたした次第であります。  以上提案理由につきまして御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いいたします。
  5. 植原悦二郎

    植原委員長 杉原長官政府説明を補足したいという申出があります。これを許します。林一夫君。
  6. 林一夫

    ○林(一)政府委員 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案提案理由につきましては、ただいま国務大臣より御説明いたしたところでありますが、次に政府委員といたしまして本法律案内容について補足して御説明申し上げます。  御承知のごとく、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法は、防衛秘密について、その秘密保護関係行政機関のとるべき措置について規定するとともに、所要の罰則を設けまして、その保護をはかっている次第でありますが、この法律において保護される防衛秘密は、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定及び日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定により供与されるものに限られております。  他方、右協定に引き続いて昨年五月十四日に調印されました日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定は、その第六条において、日本国政府が、この協定により貸与されるものにつきましてその秘密保護すべき旨規定いたしております。この規定は、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定第三条第一項及び附属書B並びに日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定第七条と同趣旨規定であります。従いまして、日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定により貸与されるものとさきの二つの協定により供与されるものにつきまして、その秘密保護上の措置といたしましては、全く同様の取扱いをすることが最も適切であると考えます。これがため日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の第一条第一項を改正いたしまして、日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定を新たに加えようとするものであります。  以上をもちまして本法律案内容についての補足説明を終ります。
  7. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて提案理由説明は終りました。  これより本案について質疑を許します。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 きょう初めて提案されましてまだ内容をよく調べておりませんので、こまかいことに対します質問は留保いたしまして、参考のためにちょっと最初にお尋ねしておきたいのですが、今まで防衛協定並びに船舶貸借協定によりまして秘密保護法が発動されて、秘密対象として告示されましたものはどういうものがありますか、その件数と内容、それからそれが所在いたしまする日本の内地における場所を、協定別にどなたからでもけっこうですが、最初に御提示をいただきたいと思います。
  9. 林一夫

    ○林(一)政府委員 今までのMSA協定日米相互防衛援助協定による供与の分でございますが、これによって供与されました航空機、これは哨戒機でございましてTBMと申します、これに装備されておりますレーダー関係が約二十点、これに関する文書図画が二十五点、また駆逐艦に関します文書図画が二十点くらい、これは駆逐艦の全般的な構造、ゼネラル・フォーメーションであります。それと掃海艇でございますが、掃海艇に装備されております掃海具に関する文書図画が大体八点、また掃海艇についております逆探装置に関する説明書約二十点、大体その程度であります。  船舶貸借協定によって供与されたものについては今のところ何もございません。掃海具につきましては、現物はいずれもその哨戒機所在地にあるわけであります。TBM所在地は鹿児島の鹿屋でございます。航空機関係文書図画防衛庁にございます。駆逐艦の方の文書図画防衛庁掃海艇の方の文書図画並びに説明書防衛庁にございます。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 以上の秘密対象に対します秘密保護措置は、どういうふうにしておられますか。文書については極秘の判を押して一定の場所に保管しておくだけなのか、あるいは監視員のようなものを置いておられるのか。夜勤等もスタンディングに置かれて、昔の軍隊で申しますならば、不寝番みたいなものを置いておられるのか。それからさっきのレーダーでございますが、鹿屋飛行場での秘密物件取締り方法は、どういう方法でやっておられるのですか。文書レーダー物件取締り状況をちょっと御説明願います。
  11. 林一夫

    ○林(一)政府委員 これの取扱いにつきましては、取扱い規定がありまして、文書図書、こういうものにつきましてはもちろん登録簿に登録いたします。これに段階が三つありまして、機密極秘、秘と段階がありますので、その段階極秘なら極秘の判を押しまして、そこにこれは秘密保護法による指定されたものであるということをしるしまして、厳重に金庫の中に保管しております。また航空機等装備品現物でございますが、これはその個所に秘密保護法による指定された防衛機密であるという趣旨のマークをつけて、これをはっきりさせております。これについての取扱い十分現場に徹底さして、十分漏れないように注意をいたしております。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 現在までのところで、機密保護法違反というような疑いまたは確定いたしましたケースがございますかどうか、お尋ねいたします。
  13. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在まであるいは現在、こういう事件は全然ございません。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 その他のことはこの次にまたお尋ねすることにして、今度追加されますこの艦艇貸与協定に伴います機密は、だいぶ多くのものが予想されておりましょうか。
  15. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在のところ数点予想されております。これは確認いたしております。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 その内容と点数、それから国へ参りましたならば、大体どこに配置されるのか、予定がありましたら、わかっておるだけでよろしゅうございますから、お示し願いたいと思います。
  17. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま穗積委員の御質問は、今度の協定によって貸与された分でございますか。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。
  19. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この分につきましては、まだ秘密保護法に該当しませんので、指定はいたしておりません。ただし指定に値するようなものは、現在若干確認されております。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 だからそれを聞いているのです。法律ができていないのですから、指定されてないのは当りまえです。しかし予想されるものがあるから、こういう改正案を出すのでしょう。その予想されるものは、どんなものだと聞いているのです。
  21. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ことしの春、艦艇貸与協定によって供与されました掃海艇に装備されております掃海具に関するものについて、その構造性能使用方法等文書図画について、この防衛秘密指定されると予想されるものがございます。これは現在防衛庁にございます。
  22. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 実は私、一昨年でありましたか、保安隊時代に新町の保安隊と、浦賀でありましたか横須賀にフリゲート艦が来たときに、見学に行ったのですが、フリゲート艦は、明らかに軍艦であるにかかわらず、船舶である、戦車は、明白に戦車であるにかかわらず、特車と言っておられますが、まことにごまかしのように聞こえて、非常におかしく、かつ士気にも関係するだろうと思っておった。その後自衛隊になったのでありますが、その名前は今でもやはり船舶でありますか、特車でありますか。そのことをちょっとお聞きしたい。
  23. 林一夫

    ○林(一)政府委員 今まで船舶という言葉も使っておりましたし、艦艇という言葉も使っておりましたが、今後は艦艇という言葉に統一しようと考えております。  もう一つ特車、これは昔の戦車でございます。現在は特車という名称を使っておりますが、今後のことにつきましては、別にどういうふうに言うか、現在のところきめておりません。
  24. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 この秘密保護法なんというものは、今日の日本におきましては、大して秘密のものをアメリカ日本に渡すはずはないと思う、ただ形式的のものだろうと思っているのですが、ここが秘密、あすこが秘密だというようなことを言って、法律適用すると、かえって注意を引いて目的に反するような結果になるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  25. 林一夫

    ○林(一)政府委員 逆に考えますと、そういう点も考えられるのでございますが、相互防衛援助協定並びに船舶貸借協定規定によりまして、アメリカにおいても秘密取扱いはとるのだから、日本においてもアメリカと同様の取扱いをしてもらいたいということになっております。もちろん内容的に申しますと、アメリカにおいても全然秘密であるということは間違いないのであります。アメリカにおいていささかでも公けになったものは、秘密指定にしないという建前になっておる。アメリカにおいては大したものではないが、日本においてだけ秘密にするというものでないということは、はっきり申し上げられます。
  26. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは構造とか性能とか使用方法等に関する技術的の秘密でございますから、いわゆる戦略上の秘密というものと違うわけであります。技術的の秘密ですから、これはやはり必要な部分があると思うのです。しかしこれでも一ぺん、原因のいかにかかわらず、公けになってしまったとかいうものは、もう秘密がないように法律もそういう規定にしておるわけでございます。
  27. 並木芳雄

    並木委員 ちょっと前でしたが、新聞でこういうことを見たのです。ジェット機の図型が非常によくある日本の雑誌に報道されたそのためにアメリカの方で、これは秘密を侵すものではないかという抗議が出されたというような記事だったと思います。これは防衛庁長官も御存じだと思いますが、この問題はどういうふうに片づいたでしょうか。
  28. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは私もその記事を何かで見た記憶がございます。そうして何か相当真相を伝えているというふうな意味のことが書いてあったのでございますが、これは別に日本供与を受けておるものじゃございませんし、またこの法律保護対象物になっておるものじゃございません。純然たるアメリカの方のものでございます。
  29. 並木芳雄

    並木委員 アメリカの方の法律に照らしては抵触するのですか。
  30. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはアメリカ法律でございますが、それが果してどういう具体的のケースか、それによりましょうから、私これはどうだというふうに申し上げることはできないと思います。
  31. 並木芳雄

    並木委員 秘密保護法についてでありますけれども、この前本法をわれわれが審議するときに非常に大きな問題を起したことがあります。それはアメリカのためにアメリカのものの秘密保護するような法律を作ることは、われわれのいさぎよしとするところではない。当時は木村防衛庁長官でありましたが、作るならばもっと自主的な秘密保護法というものが必要ではないか。もう少し具体的にいうと、防衛庁関係の、日本のための日本のものの秘密というものを含んだ自主的なものを作れということで議論があったわけでありますが、それなどはむしろ秘密を拡大する意味であって、好ましからないという片方の批判は受けたのでありますが、しかし当時の改進党としてはそれを非常に強く主張しておりまして、木村長官も賛意を表しておられたのです。新しい杉原長官は、秘密保護法というものに対してどういうふうに今後されるか、そのお考えを明示していただきたい。
  32. 杉原荒太

    杉原国務大臣 この相互防衛援助協定に基くものと、現在の秘密保護法による秘密というものは、これは日本としても、そういってすでに日本の使用しております、日本の管理のもとにある船舶、艦船だとか、飛行機であるとかという装備品等に関する秘密でございますから、これは、その性質日本防衛秘密には違いない。これはまた同時にアメリカ側から見ればアメリカ秘密でありますけれども、しかし日本防衛秘密に違いない。これはあくまでも日本防衛秘密を守るという趣旨でできておるのに違いない、私はそう解釈いたしております。それから、今御指摘の現在の秘密保護法対象物になっておるのは、その範囲が、アメリカ側から供与にかかる装備品等に関するものだけに限定されているのは事実でございます。それでは一体そうでなく自衛隊が使っておる一般装備品等に関するものはどうか、なるほどそういうものについても技術的に見まして秘密にする必要のあるものは確かにございます。その取扱いといたしましては現在いわゆる行政的の、官庁内部措置としてやっておりまして、一般国民を拘束するような、それに適用を置くような秘密措置をとっておりません。今申しましたように秘密そのもの性質は非常に技術的なものでありますけれども、またこれの実際の適用の問題についてはよほど慎重にやりませんと、国民権利義務などにも非常に関係を持ってくるおそれもありますので、その辺のところは私、一つ慎重にやっていきたいと考えております。
  33. 並木芳雄

    並木委員 今のところ現在の秘密保護法を改正する意思がないというふうに了解していいわけですね。
  34. 杉原荒太

    杉原国務大臣 現在のところは、今ここに御審議をお願いしている範囲で考えております。
  35. 並木芳雄

    並木委員 艦艇貸与でありますけれども、予定通り進捗しておらないということを聞いております。今まで艦艇はどういうふうに貸与されてきておりますか。それから本年度貸与見通しも伺っておきたいと思います。新たに本年度はどういうものが加えられる見通しであるか。  それからジェット機でありますが、ジェット機には何らかの秘密がやはり付されるのではありませんか、そう聞いておりますがいかがでありますか。そしてジェット機貸与MSAで来るものか、それとも別途に艦艇のときに結ばれたような航空機貸与協定が結ばれるのでありますか、お伺いいたします。
  36. 杉原荒太

    杉原国務大臣 昨年の五月に結ばれました艦艇貸与協定に基くものといたしましては、護衛艦に二種類ございまして、DDというのが二隻、DEが二隻、あと掃海艇が八隻、それに潜水艦が一隻、こういうふうに相なっております。それはつまり艦艇貸与協定に基くものとしてのものでございます。その中で現実に引き取りをまだ了していないものがございます。DEとそれから潜水艦の方はまだ引き取りを了していない、掃海艇の方でも若干まだ引き取りを了していないものがございます。そのほかごく小型のもので、艦艇貸与協定に基くものじゃなくして、いわゆるMSA協定に基くものが若干ございます。これはごく小型のものでございます。  それからもう一つジェット機についてのお話でございますが、今F86、T33の部品等アメリカ側から供与を受けまして、これを組み立てるという計画でございまして、それに所要予算は今度の国会に御審議をお願いいたしておる次第でございますが、その予算が成立することを条件にいたしまして供与を受ける、その供与を受ける基礎はいわゆるMSA協定相互防衛援助協定に基いて受けるものでございます。しかしその中には、今の技術的な秘密ということが予想されます。これは御承知通り、今申しますように、いわゆるMSA協定に基くものでございますから、そのMSA協定に基くものは、すでに現行法の中に所要措置がとられておりますから、新しく法的の措置をとる必要はない、こう考えております。
  37. 並木芳雄

    並木委員 ジェット機から始まって、だんだん日本航空部隊が整備されていくのでありますが、私どもは陸上よりも航空に重点を置いてもらいたいということを強く主張しておるのであります。陸上なんかあと回しでも、航空部隊こそ先に整備すべきだという見解を持っておりますが、現在の情勢から推していきますと、日本航空隊というものは、アメリカ駐屯航空部隊にとってかわるようになり得る見通しでございますかどうか、私は切にそれを望んでおるのです。ことに飛行場滑走路拡張の問題などが起って参りますと、ジェット機の発着のために、どうしてもあと五百メートル延長が必要だとかなんとか言われても、だれもそれに対して、その通りだとか不必要だということを判定するものが日本におらない。ですから向うとしては、確かに必要だと思っていても、日本国民としては、果してアメリカ日本のために航空路拡張までやってくれるのかどうかということが、逆に作用して、これはアメリカのためにやっているのだろうというような反米思想にもなってくるわけです。従って私は、少くとも日米共同航空を支配する、そこまでは持っていかなければならないと思うのですけれども、杉原長官としては、航空整備についてどういうふうに計画をお立てになっていますか。
  38. 杉原荒太

    杉原国務大臣 航空自衛隊に関する計画といたしましては、三十年度予算所要経費を計上いたしまして、御審議をお願いしておるのでありますが、その前提となっております計画は、大体次の通りでございます。  三十年度中に航空機約二百三十機、そのうち百九十四機というものがアメリカ側からの供与を期待できる。そしてその百九十四機のうちで、六十機が実用機で、ほかのものは全部練習機でございます。全体としまして、練習機が非常に多いわけでございます。それが一つと、もう一つ計画といたしましては、先ほど申し上げましたF86とT33をアメリカ側から部品等供与を受けて、日本で組み立て生産する。そしてそのうちでは、これに相当の準備期間を要しますから、三十二年度に及ぶ国庫債務負担行為として、その経費の御審議をお願いいたしておるわけであります。それが現在の計画でございます。
  39. 並木芳雄

    並木委員 将来の問題といたしましては、長官日本航空部隊をもってアメリカにかわるという遠大な腹をきめておられるのかどうか、これをぜひ伺いたい。このままいつまでもアメリカ航空隊というものが日本に残っているのかどうか。これは鳩山首相もなるべく早く日本自衛隊を拡充強化して、駐留米軍には撤退してもらうんだということを言っておられますから、当然その一環として航空部隊というものもかくあるべしと私は思うのですがいかがでしょうか。
  40. 杉原荒太

    杉原国務大臣 近代国防における防空の価値というものは非常に高いということは、これは申すまでもないことだと申います。ただしかし、これは御承知通りほかのものより非常に金のかかるものであることもまた事実であります。その辺のところをよく考えてやっていかなければならぬことだと思います。それからまた日本として必要な、また可能なことを考えてみます場合にも、今のアメリカ航空隊と同じ程度にするというように必ずしも考えなくても、その辺のところは実は私もっとよく一つ検討していきたいと考えているのです。これはひとり航空関係のみでありません、ほかの陸にしましても海にしましても、それらを総合しての、一つ防衛力というものを考えなければならぬことだと思いますが、そういう点、実はいろいろの点からよく一つ慎重に考えていきたいと思って、実は研究中のことでございます。
  41. 並木芳雄

    並木委員 MSAに基いてアメリカから顧問団をたくさん日本に駐屯せしめるということでも議論があったのでございます。当時岡崎外務大臣は、一年たったならば顧問団は半分に減る見込みであるという答弁をしておられます。MSA協定が結ばれてから一年以上もたったのでありますが、果して顧問団は半減しておりますかどうか、具体的にお答え願います。
  42. 杉原荒太

    杉原国務大臣 半減するに至っておりません。具体的の数字は政府委員から御説明申し上げます。
  43. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在顧問団関係の職員全部含めて約三百名程度でございます。それがMSA協定前と比べてどのくらい減っているかということは、ちょっと今資料がありませんから申し上げかねますが、現在のところは三百名前後であります。
  44. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点お尋ねしておきます。それは今度できます国防会議でありますが、この国防会議日本防衛庁関係、つまり自衛隊だけのものであっていいと考えておられるかどうか。それと申しますのは、日本の国防を考えますときに、どうしても駐留米軍との関係を考えざるを得ないわけです。そこで安保条約、行政協定審議するときに、一体米軍と日本と、どちらがイニシアチブをとるのか、出動なんかの場合に、どちらがリードするのかということを質問したときに、これは結局双方で協議してきめるんだというところしかいっておらなかったわけです。ですから結局それはアメリカの方の言いなりに日本の方は従っていかなければならない、そういう点でわれわれは非常に歯がゆさを感じておったわけでありますが、国防会議ができますと、これを通じてアメリカ軍との間の密接な関係を保ちながら、だんだんと駐留米軍に対する指導——という言葉は当らないかもしれませんが、協議してきめる最後の決定的のものを日本側で私は持ちたいと思う。そういうおつもりが長官にありますかどうか、国防会議と米軍との関係について日本の方にイニシアチブをとる、自主性を持つという意味で、どういうふうに運用していくお考えでありますか、お聞きしたいと思います。
  45. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ただいま国防会議の構成等に関する法案を提出いたしまして、御審議を願っておるわけでございます。これの設立そのもの及びその所掌事項は、御承知通り昨年できた法律できまっておるわけでございます。私の理解するところによりますと、これの設立の趣旨は、国防のことは国家国民の運命にも関するようなきわめて重大なことであるから、慎重の上にも慎重を期さなければならぬ。     〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕 もちろんこの国防のことにつきましても、内閣が全責任をもって処理することは言うまでもないし、内閣自身としてそういった広い大所高所から総合的の判断をやっていかなければならぬことは言うまでもない。そういう趣旨で責任はあくまでも内閣がとるけれども、それについては慎重の上にも慎重を期する。こういう趣旨から私はできるものと理解いたしております。そして国防のものが、単に狭義の防衛というよりも、普通の言葉で言いますと、単に軍事上の要求でなしに、もっと広い視野から、全体の日本の安全を保つというところを主眼にしていかにするかということに遺憾のないようにすることが、非常に大事な点であろうと思う。従いまして、国防会議はただ自衛隊だけのことをやる、そういうふうなことだけではないだろうと考えます。  それから、自衛隊と駐留軍との関係でございますが、これは御承知通り、安保条約及び行政協定の中には、自衛隊の行動等については直接の規定はない。行政協定の二十四条の中には、日本区域において敵対行為が起った場合あるいは敵対行為の脅威が生じた場合には、これに対して日米両国政府がとるべき措置について協議するという協議義務をそこに規定はいたしておりますけれども、それ以上のことは規定していない。そしてまた、それに基く日米両国政府間の合意というものは現在存在していない、こういう状況であることは御承知通りであります。そしてまた、自衛隊の出動というような場合につきましては、御承知通り自衛隊法の中に、出動の中で一番重大な防衛出動は、かくかくの場合に出動し得る、そしてそれにはこういう手続を要するというふうに非常に厳密に法律規定してある。私が特に申し上げるまでもなく、外国からの武力攻撃がある場合でも、それが国を守るために絶対に必要と総理大臣が認めた場合に、国会の承認を求めてその上でやる、こういうことを要求しておるわけであります。そうしてまた自衛隊の防衛出動というものは、この法律に定めた要件に該当する以外にはあり得ないことに相なっておることは、御承知通りであります。今の御質問の御趣旨に少し沿わないかと思いますが、そういうことを申し上げて、なお御質問がありましたら一つ
  46. 菊池義郎

    ○菊池委員 アメリカの上院の外務委員長でありますジョージが、過般新聞記者団に意見を発表しておるところを見ますと、アメリカは欧州からは絶対に撤兵しないということを言っております。ところが過般こちらで条約局長は、アメリカ日本からは早く撤退したいというような考えを持っている、早期に撤退するであろうという見込みのあるようなことを言われましたが、私はむしろ欧州よりも日本の方にアメリカは長く駐兵したいという意向を持っておるのじゃないかと考える。欧州はああいうふうに一通り安定しておる。日本はまだソ連との平和条約も整っていない。いつ何どき侵略がくるかわからぬという状態にある。あべこべに考えておりますが、防衛庁長官は、これについてどういう考えを持っておられますか。アメリカは早期に撤退するであろうという考えを持っておられますか。米国は撤退を希望しておるように考えておられますか。
  47. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私がアメリカ側と非公式に接触して受けておる印象からいたしますと、アメリカ側としても日本側でみずから防衛に責任を負うことがだんだんできるに応じて撤退したいという希望を持っておる、これは確実だと思います。それからもう一つ具体的なことでございますが、実はまだこの委員会において私発言の機会がなかったのでございますが、ごく最近アメリカの方から一個の混成団を撤退するということを言って参っております。これは私おそらく今月中には完了するくらいになるのじゃないかと思っております。
  48. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この機会に日本における軍国主義の復活についての防衛庁長官の考え方を伺っておきたいと思います。と申しますのは、だいぶん前のことですが、オーストリアの国家条約が成立いたしましたときに、私は第十六条の問題で外務大臣に御質問申し上げた。それはオーストリア国家条約の第十六条に、オーストリアはドイツ及び日本で設計された航空機を購入あるいは製造しない、こういう規定があるわけです。これは非常に重要な問題で、一体どうしてオーストリアの国家条約の中に、このような重要な規定を挿入しなければならなかったのか、それがどういう事情かおわかりであったならば政府一つ御答弁願いたいといって、外務大臣にお伺いしたのですが、当時はまだ外務大臣は何らの情報もなくて、今初めて聞いた、そういう規定のあることも初めて知った、こういうことであったわけです。従いまして、その後すみやかに、どういう事情でどういう経過でこういう規定が挿入されたのか調べて御返事を願いたいということは、外務大臣にもお願いしてあるのでございますが、そのときに下田条約局長の判断、予想からいたしますと、おそらくこれは旧枢軸の復活を非常に欧州で警戒したために、こういう規定が設けられたものだと思う、こういう御返事が一応あったわけです。私もそういうことをおそれたればこそ、そういうことをまた御質問したわけなのでございますが、おそらくそういうことの心配からでなければ、こういう規定をわざわざ国家条約の中に入れることは考えられない。そこで私は防衛庁長官にお伺いいたしたいと思いますのは、日本防衛力の問題その他、防衛庁長官は国際政治に相当御理解がございますから、私はこういう時代の防衛庁長官としては最も適任だと思うのですが、憲法の改正の問題だとか、あるいは再軍備の問題だとか、あるいは国防会議の問題、これは先ほどあなたの言われたように、狭い視野からじゃなしに、やはり総合的に広い視野から日本の防衛というものは考えなければならない。そのことは防衛ということだけでなしに、日本全体の今後の方向とかあるいは国際的な信用とか、そういう面にもやはり考慮を払いながら、具体的な問題を解決していくべきだと思うのです。そういう大切なときに当って、外国に枢軸の復活をおそれておるというような傾向があるということは、私は見のがすことができないと思います。枢軸という形は、昔のそのままの形はとらなくとも、軍国主義の典型的な現われが枢軸という形になって現われてきたわけでございますから、今後軍国主義が復活した場合に、必ずしも昔のドイツと結んだ枢軸という形をとるとは限らないと思う。私どもがおそれますのは、欧州では、アメリカの最近の行き方についても、やはり軍国主義がだんだん頭を持ち上げてきておるのではないかということを、非常に憂慮されておる部面もあるわけであります。ちょうど日本の昔の関東軍が政治にくちばしをいれたように、今のアメリカの政治には相当軍部の力というものが反映しておるということは見のがせないと思います。そういうところから私は、アメリカにも軍国主義の芽ばえが出てくる、同時に日本にもこの独立の問題とからんで、相当軍国主義が復活する心配があるのではないかと思いますので、防衛の担当長官であるところの防衛庁長官に、この軍国主義復活について、アメリカ軍国主義復活にはどういうふうな考えを持っておられ、また日本における軍国主義の復活についてはどう考えられるか、このオーストリア国家条約についての関連で、この条約の規定についてはどのように考えられるか、この三点をお伺いしておきたいと思います。
  49. 杉原荒太

    杉原国務大臣 軍国主義というものを中心にしてのいろいろの御意見と御質問でございますが、日本において軍国主義、むしろさらに具体的に言いますと、軍事が政治の上に立って、軍事が政治に優先するといいますか、優位の地位に立ってやる、そういうふうなことは、今後の日本の行き方といたしまして、もちろんとるべきじゃないし、またそういう点十分留意してやらなければならぬ。実は今日まで、防衛庁の設置法の関係におきましても、防衛との関係に関する国家の組織というものも、今そういう点を十分考えて、いわゆる政治優先といいますか、政治優位ということを確保する趣旨で、現在の制度もできておるわけであります。もう少し内容に立ち至ってみますというと、日本の場合、軍令系統というものと軍政系統というものが分れ、さらに政府というものと軍令機関というものが両方独立的の機関としてあった、そこに一つの大きな国家制度上の欠陥があったのじゃないかと思うのです。現在はそういう点のないように組織が相なっておることは御承知通りでありまして、そういう点は、制度の面からいたしましても運用の面からいたしましても、十分気をつけてやっていかなくちゃならぬことだと思います。  それからアメリカのことにつきましては、今私はあまり批評的なことを申し上げたくないのです。しかしアメリカでもやはり民主国として政治の優位、いわゆるシビリアン・シュープレマシイということは、非常に大事なこととしてやっておるものと私は考えます。  オーストリア国家条約のことでございますが、この方は、四七年のベルリン会議当時の案がそのまま残っておるわけでございますから、その辺のところは向うがどういうところから何しておりますか、ちょうど外務省の政府委員も来ておられますから、その方から御説明を願うことにいたしたいと思います。
  50. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外務省の政府委員の御説明あとで受けるといたしまして、軍令と軍政をはっきり分けて、そうして軍政の方は政治が軍事に優先する建前になっておるかというお話ですが、私のお伺いしたいのは、そういう機構だとか、その機構に基いてどういうふうに運営したいというような、そういう希望でなしに、今、日米関係について言葉を濁されましたけれども、とにかく今の政府は日米協調ということを基本にしておるわけですね。従って欧州各国では、一応の形の上からいえば民主的な国家とされておるアメリカにおいてさえ、最近では軍部の発言力が相当強くなり、また帝国主義的な軍国主義が相当復活し、激しくなっておるという警戒を持っておるわけなのです。ですからそういうことについて、しからば日米協調を基本とされておる現内閣の防衛庁長官でああるなたは、この米国の軍国主義について警戒を要すると考えられるのか、それとも全然警戒する必要なし、これは全幅の信頼を持ってよろしいと、こういうふうに考えておられるのか、そこのところをはっきりお伺いしたいのでございます。
  51. 杉原荒太

    杉原国務大臣 アメリカ日本に対する関係の部面でございますが、これを律する基準というものは、具体的には安保条約というものが存在しておるわけでございます。その趣旨とするところは、言うまでもなく日本区域の安全の保障ということに違いないし、そしてまた安保条約も明確にうたっておりますが、日本国の安全平和、そこが根底をなしておる。その趣旨から日米関係というものをすべて処理していかなければならぬと思っております。
  52. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今はそういう現実にあるわけですから、これから日本が歩みを進めるに当って、今の総理大臣も、独立国家である以上は当然自分の意思でもう少し憲法を改正したい、そういうことをしばしば言われるわけです。そういう問題に関連して私はお伺いしておるわけなのです。ですから米国に多少ともそういうふうな軍国主義的な傾向があると判断された場合、それから列国がそういうふうな警戒的な目をもってアメリカの動きを見ておるということをあなたがもし認められるならば、政府が認められるならば、私は日本の立場だけからでなしに、今後世界がどのような目でもって日本をながめるかというようなことも考慮しなければ——総合的に判断しなければならぬのですから、そういう場合にはやはり日米協調を基本とされている以上は、アメリカの動向というものを十分考慮して、この憲法の問題にしろ、あるいは国防会議の問題にしろ、すべてを考えていかなければならぬのじゃないか。こういう点からアメリカの今の動向についての評価をはっきり伺っておるわけなのです。現在はなるほど日米安全保障条約というものが基準になっております。これをもとにして前進するについてどういう方向にその協力をいよいよ強化するのか、あるいはアメリカに軍国主義的傾向が出てくるとすれば、これに批判的な態度になってくる場合もありますでしょうから、私どもはそういうところは大いに警戒すべきだという考えを持っておればこそ、この点政府の考えはどっちなのかということをはっきりお伺いしたいわけなのです。
  53. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私は今アメリカが軍国主義的になっておるのだというふうに断定することはできません。しかしこれはアメリカに限らず日本に限らず、どこにせよ軍国主義的の行き方はとるべきでなく、またそれがどこの国であろうと、軍国主義というようなものに日本が左右されたりすべきものではない、こう考えます。
  54. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それでは政府委員からオーストリアの国家条約の経過をお伺いしたいと思います。
  55. 下田武三

    ○下田政府委員 先日御提起になりましたオーストリア国家条約第十六条の問題につきまして再び御発言がございましたので、前の御説明を補足させていただきたいと存じます。  当時私ども非常に奇異な規定だと思いましてあのような御説明を申し上げたのでありますが、私は軍国主義の表われだというようには決して御説明しなかったのであります。つまり連合国の旧枢軸国に対する警戒、これは何も枢軸国が軍国主義でなくても、シビリアンの政府のもとの国でありましても、連合国側から見ますればやはり警戒する必要はあるわけでありますから、それであの規定が残ったのであります。それで昔の案と比較さしてみました。御承知のようにオーストリア、ドイツの条約の問題は、ポツダム会議、ベルリン会議あるいはパリー会議と三度の国際会議を経てきたものでございますが、この十六条の規定は一九四七年のベルリン会議のときにすでにできていた規定なのでございます。でございますから、ことしは一九五五年ですので、八年前に考えていたことがそのまま残った。でございますから、終戦直後の四七年のものがそのまま残った、変えればいいのでありますれども、このようなデリケートな問題をたくさん含んでおります条約をいじり出したら、せっかくの話ができなくなるという考慮から、前に一たんきまったものはそっとしておこうということで妥協ができて、ああいう規定も残ったということであろうと推察されるのであります。でございますからあの規定が入っておるからといって、現在の連合国側の考えを表明するものとは考えられないのでございます。その点を補足させていただきます。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 この機会に長官に二点だけお伺いしておきたいと思います。先ほど菊池委員質問に対しまして長官がお答えになったことは、アメリカの駐留軍がだんだん日本から撤退の意思を表明しているというようなことでございました。先ごろの新聞に出ておりましたが、アメリカの国家でも日本から撤退した駐留軍を、なるべく沖繩に持っていこうというような考えが述べられたということも新聞で見ております。そこで今沖繩においても、アメリカがあの領土を取り上げて恒久の基地化するというようなことで、だいぶ騒いでいるようでございますが、この点に対しましての長官のお考えをまず一点伺いたいと思います。  それからもう一点は、時間を省略いたしまして伺いたいと思いますが、先ごろの日米共同声明の中でも航空基地の拡充というようなことがいわれておりましたが、今年度におきまして航空関係の基地に対しての拡充で、どのような計画長官はお持ちになっていらっしゃるか、この点をお伺いいたします。
  57. 杉原荒太

    杉原国務大臣 沖繩の問題でありますが、沖繩は御承知通り平和条約によって信託統治区域にするまでの間は、その施政権というものはアメリカ側に認めるということに条約上相なっておるのであります。それに基いてアメリカがあそこにいろいろの施政をしておる。その中には今の軍事上の基地というようなことも含まれておるわけであります。そしてそれはアメリカ側の見地からいたしますと、極東軍方面の平和安全の維持上必要だという見地から、やっておるに違いないと思うのであります。これはやはり極東方面の実際の現実の情勢の推移ということと非常に関係があることだと思います。今、日本といたしまして、アメリカ側の基地等についてかれこれ言うことは差し控えたいと思うのです。それなどは何としましても、極東全般の情勢あるいは世界の情勢の推移というものと、やはり相伴っていなくてはならぬことだと思うのであります。  それから第二は、これは共同声明にうたっておりますのは、アメリカ軍に日本側から提供しております飛行場に関するものだけのことをいっておるわけでございますが、日本側の自衛隊の方は、予算関係も別系統でやることはもちろんであります。私の方の所管の自衛隊の方では、なるべく方針といたしましては、航空施設の必要が生じました場合にも、新規に作るよりは、既存の設備をできるだけ活用していくということの方針のもとにやっておるのでございます。具体的に申し上げますと、現にアメリカ軍の使用しておるものと、共同使用をするというようなことでございます。たとえば防府だとかあるいは松島、そういうところは共同使用でやっておる。またそれから現に共同使用やあるいは解除を申し入れて、手続中のものもございます。たとえば八ノ目、霞ノ目、崎辺というようなところは、そういうような手続をしております。それからさらに民間航空の方とも、できるだけ可能な限り共用してやるという方針で考えてやっておるわけであります。現に具体的に決定しおりますのに、阪神飛行場などがございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 沖繩の問題ですけれども、沖繩が今どういう状態に置かれているかということは、私どもよく了承しております。しかし沖繩民の国籍が日本にあり、そして潜在主権とはいえ、そういうものが日本にある場合に、沖繩民が非常にあそこの恒久基地化ということに反対しているようなときに、やはり日本の国としても、日本の国籍のある人たちを保護するという立場で、日本国民の気持をよく取り入れて働いてあげるというふうな立場から、やはり沖繩民の保護ということにも立たなければいけないと思うのですが、こういう点について長官としてはどういうふうにお考えになっておるか、もう一度お伺いしたいと思います。
  59. 杉原荒太

    杉原国務大臣 沖繩島民の人たちのことにつきましては、日本として十分考えていかなければならぬことは当然のことでございます。ことにいろいろの苦痛を経験し、いろいろ困難な状況にあることについて、深い関心を持ってやっていかなければならぬことは当然だと思います。ただそれともう一つ、つまりアメリカ側でいろいろ軍事上の施設をする。これはアメリカ側としてやはり極東の安全保持の必要上、これが必要だというところからきておる点とは、やはり混同するわけにいかぬだろうと思います。
  60. 菊池義郎

    ○菊池委員 国民日本自衛隊の使命について、まださっぱりはっきりした認識を持っておらないのであります。内乱、暴動に備えんがためであることはもちろんでありますが、さらに外敵に当るという場合に、国外に出動する場合も当然あり得なければならない。クラウゼヴィッツの戦法を見ても、孫子、呉子の兵法を見ましても、守ることはすなわち進んで敵の本拠をつくことであると言っておる。ただ守るだけであるならば、とうていそれでは防衛の使命を達することはできない。当然に出動しなければならない。その点について防衛庁長官はどういうようにお考えでありますか。
  61. 杉原荒太

    杉原国務大臣 その点は非常に大事な点でありますが、自衛隊法の中に、その使命、行動する場合の要件、その限界というものをはっきり規定してありますから、特に私が御説明申し上げるまでもないと思いますが、つまりわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つということを目的にして、そして直接または間接の侵略に対して、わが国を防衛するということを主たる任務とすると、はっきりこの法律にうたわれておりますので、それにのっとってやるべきことだと思います。
  62. 菊池義郎

    ○菊池委員 そういったようなやり方は、全く不完全きわまる防衛の方法であろうと思います。防衛を徹底せんとするがためには、やはり出動しなければならない。織田信長のように、桶狭間に切り込んで、進んで敵の本拠をつかなければ防衛の目的を達することはできはしません。そういったような根拠の薄弱な自衛隊は、ほとんど持つ必要はないというように私は考えているくらいでありますが、それについてどういうように考えておりますか。
  63. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私はやはりわが国法律に明示しておりますように、あくまでも平和と独立を守り、国の安全を保ついうところにこそ、私は真に国を守るという士気も上り、道義的の力も——ただ外国が侵略するという意味でなく、あくまでも日本の国を守る、自衛のためだというところにこそ、私は真の道義的の力というものがわいてくるものだと思います。
  64. 菊池義郎

    ○菊池委員 どうも私の質問に対するピントがはずれているようでございます。守ることはすなわち攻めることで、これは東西の兵家の口をそろえて異口同音に言っていることです。敵の本拠をつかなければどうして守ることができるか。時と場合によっては敵の本拠をつかなければならない。それには当然国外に出兵しなければならないというように私は考えるが、それについてどういうお考えですか。
  65. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今申し上げましたことをさらにもう少し具体的に申し上げますと、自衛隊が防衛のために出動するという場合は、どういう場合かということを、これもやはり国会の議決できまっております法律の中に明示してあるのであります。それは、外国からの武力攻撃があった場合でも、いろいろの態様があると思います。たとえばそれがほんのわずかの場合は必ずしもこっちがすぐ実力で対抗しなくても処置ができる場合もありますが、しかし多くの場合は自衛隊の出動を必要とすると思いますが、法律の中には、つまり外国からの武力攻撃の場合、国の安全を保つため必要と総理大臣が認める場合には、国会の承認を求めて出動することができるということが規定してございますから、私はやはり厳格にこれを守っていくべきものだと思います。
  66. 菊池義郎

    ○菊池委員 大体政府の意見はわかりました。ところで日本の米軍の軍事基地に原爆を持ち込ませないということは、みんな委員会において答弁しておられますが、いざ事ある場合において、米軍がただ普通の爆弾をもって敵対しても、敵の方では普通の爆弾に対して、原爆をもって日本の基地を襲うかもしれない。そういう場合においては、米軍の方でも、日本の基地から原爆をもって応酬しなければ勝つことはできないのでありますが、そういう場合においても、なおかつ米軍はただ普通の爆弾のみをもって原爆に応酬するという考えは持たないだろうと思うのです。それについて防衛庁長官はどういうふうに考えておられますか。
  67. 杉原荒太

    杉原国務大臣 大規模の全面的な原爆戦争なんということは、これは人類の破滅であることは、だれしもそう考えておるわけであります。ですからこれをいかにしてそういうことがないようにするかということこそが、言うまでもなくみんなが考えておることだと思います。私、いろいろ外国の、ことに防衛などに関係した責任者たちの意見などを書いたものを見ておりましても、やはりそういう人たちは、防衛の第一義の任務は戦争の防止にあるというところを常に考えてやっておると思うのです。私もほんとうにそうであると思います。それからチャーチルあたりが原爆などを作ります趣旨も、実は決して原爆を現実に使って原爆戦争をやるというのではなくて、どうしても戦争の防止というところに目的を置いており、またイギリス国民もそれに賛成しておるのだと思うのです。外国の原爆戦争ということのないように、すべての防衛の場合においてもいろいろ固めていかなければならぬことだと思います。
  68. 菊池義郎

    ○菊池委員 原爆にはやはり原爆をもって臨まなければ戦争はできないわけでございますが、普通の爆弾を入れることを日本が認容するならば、原爆を入れても差しつかえないということを認めてやっていいじゃないかという議論もあるわけです。これに対してどういうお考えですか。別にこれを相手が使わなければ、こっちが使うわけではないので、何も危険はない。
  69. 杉原荒太

    杉原国務大臣 この点は今まで国会でも総理大臣及び外務大臣からたびたび政府の見解を申し上げておる通りでございます。外務大臣が言っておられますことの要点の一つは、現在日本に原爆が貯蔵されていないことを確かめておるということをおっしゃっておる。それからまた行政協定との関係、安保条約との関係においては、原爆を持ってくるかどうかの問題は新たなる問題で、そういうことは日本に相談なくして持ってくる問題ではないのだということが第二で、第三には、日本としては今原爆を日本に入れるということは承認しがたいと思っておる、こういうことを言っておられるわけであります。これが今の政府の見解だと思っております。
  70. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから総理は過般の予算委員会において、安全保障条約や行政協定を改正したいということを言っておりますが、防衛庁長官もやはり同じ考えを持っておられますか。
  71. 杉原荒太

    杉原国務大臣 安保条約は御承知通り日本がまだ自衛する手段を持っていないという事実を前提にしてできたものでございます。そうしてまた暫定的な措置としてということはあの条約自体の中にもうたっており、それからあの協定自体の中に、将来安保条約がその効力を失う場合のことを予想いたしておりますので、いずれはそういうことも考えなければならぬことだと思います。
  72. 高津正道

    ○高津委員 私は、この法律の一部改正案日本がまた新しい義務を一つよけいに負うことであると思う。私はアメリカ日本支配というものについては元来こう考えている。政治的な面と経済支配と文化支配と軍事支配、こういうように思うのだが、それが内政干渉に及ぶように広がってくるのを今は防がねばならぬ時代なのに、またここに一つ新しい義務を負い、日本が一そうアメリカから束縛されるのだ、こういうように考えられるのでありますが、長官日本が解放されるように、何かこの法律は国のために有利になるとでもお考えになっているのじゃないですか。日本に大へん新しいマイナスがまたここに一つ加わろうとしている、こうはお考えにならないのかどうか、それをまず第一にお伺いしておきます。
  73. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今回御審議をお願いしておりますこの法律の前提をなしております艦船貸与協定は、御承知通り昨年の五月に国会の御承認を得たものでございます。     〔須磨委員長代理退席、委員長着席〕 その協定に基いて、供与を受けます艦艇関係装備品等についての技術上の秘密を守るための措置をとるということに、あの条約自体の中に規定をしておりますから、それに伴って今回の法律の一部改正案を御審議願っておる次第でございます。先ほども申し上げましたが、これは装備品等構造性能使用方法等についての技術的の秘密事項でございますから、そしてまた日本の防衛のために必要上使用するものにかかるものでございますから、これは当然必要だと私は思っております。
  74. 高津正道

    ○高津委員 列挙してある中にまた一つこれが加わることは、アメリカがこの秘密防衛法の適用について、日本政府に、ここが違反だといってくる個所が一つふえるのであって、これは前の延長で何でもないことだというようなことでなしに、新しく加わることであることには違いないでしょう。そうすると新しく干渉の口実がまた広がるわけです。それは何とお考えになりますか。
  75. 杉原荒太

    杉原国務大臣 いろいろ御懸念のようでございますが、これは今まですでにいわゆるMSA援助協定に基いて供与を受けております装備品等についてとっております一つ防衛秘密措置、それの実行上から見ましても、これによってアメリカが干渉というようなことは、私は御懸念には及ばないと信じております。
  76. 高津正道

    ○高津委員 それは秘密保護法というもののあらゆる場合に、政治情勢の変化などで拡張解釈が行われるのであって、おそろしいものであるとしてわれわれは非常に反対しておるのでありますが、それではもっと話をかえてこの法案についてでありますが、第二次大戦以後、人類の悩みというか、それは米ソの対立だと思うのです。米ソのあの感情的な激しい対立を、どうすればいわゆるおそれられる第三次世界大戦から避けられるかとわれわれは考えております。今世界の大勢を見ればスイスやスウエーデンは中立の立場ははっきりしておるが、それに新しい立場からインドのネールがビルマやインドネシアと一緒になって、ソ連に属さずアメリカにつかずという、自主中立の外交方針を進めておる。そのネールの考え方がまた広がって、オーストリアがああいうようにまた中立国になった。深入りしておったユーゴが、アメリカの方から相当離れて、やはり自主中立の線に入ってきたと私は考えております。そうしてこの間のバンドンの会議で決定された十カ条の決議、声明のほかに、そこで一番大きく現われた最大公約数というものは、ソ連につかず、アメリカにつかないという自主中立の方針、あの二十九カ国のそうして人口で十四億の地球上の人類の過半数によって、自主中立ということが叫ばれたのだと私は思うのです。そうして日本政府は、アメリカにいよいよ深く関係を結ぼうと、好んでこっちの方からやるように見えるのでありますが、国民運動としては日本の世論がどういうふうに動いておるかといえば、ソ連と組んでいこうという共産党に対する投票はうんと減ってしまい、アメリカと軍事同盟でいこうとする保守政党の合計の得票が比較的に減って、自主中立でいこうという社会党左右両派の票がどんどんふえていっておるということは、アメリカとの同盟の線に反対する世論が、次第々々に強まっていくのだ、こういう世論の意思表示であると考えるのであります。こういうようなアメリカの把握が一層強まるような法律がまたこの内閣によって出され、ことにここは防衛庁の対応する委員会じゃなしに外務委員会ですが、与党の議員からあのような戦国時代の、またかつての軍国主義時代のような、敵の本拠をつかなくてはというような議論を今聞いて驚いておるのでありますが、防衛庁長官はこういう世界の大勢にこれは逆行するのであるとは考えないのか。私のようなしらがの男が、新しい愛国者として、われわれの方針で国を救おうと思うのに、口ではあなたどう言われるか知らぬが、これが日本が解放されることに役立つのか。束縛されるのに何パーセントまでさらに深入りするかは、あなたの良心ではわかっておろうと私は思うのです。これは深入りすることじゃないですか。世界の大勢に反することではないでしょうか。われわれはこの自主中立の方針で日本を進めていくことが国を守るゆえんである、二十世紀の半ばを吹いている大いなる風はわれわれに味方をしているのだ、アメリカのお供をあくまでもしていこうということは、歴史の大きい進行に反すると思う。こういうことを幾ら言ってもしようがありませんが、世界の大勢に反する法律である、こういうように私は考えますが、長官はどのようにお考えでありますか。これで私は終ります。
  77. 杉原荒太

    杉原国務大臣 わが国の安全を守ることはたれしもその点何の異論もない。それはあくまでもわが国の独立と平和を守って国の安全を保つ、それがいわゆる国防の目的だと思うのでありますが、そのことはまたただ私の意見というだけでなく、現に国会の議決を得た法律の中にもそういう趣旨のことが出ているわけでありますが、そうしてまた自衛隊も実はその目的を達成するためのものだと思う。そうして国の安全を保つというためには、多少私の卑見を添えて申し上げますと、これは狭い意味の防衛というか、私はそれの相当の備えというものは、やはり現在の世界の実情からいたしましても必要だと思います。それとともに相伴って外国との関係を調整して戦争の防止ということを目的にした、いわゆる平和を目的とした外交政策をとっていかなければならない。そういった防衛と外交ということが相伴って、初めて国の安全というものが保たれるのだとこう思います。  それからまた、実はそういうところから現在でも政府の政策も行われていることと思います。  それから今度の法律が世界の大勢に逆の方向に進んでいることになるのではないか、こうおっしゃいますが、これは先ほどから私の申し上げますような趣旨のものでございますから、私はこれが今おっしゃったようなふうには考えておりません。
  78. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十八分散会