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1955-03-31 第22回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十五日       大橋 忠一君    菊池 義郎君       須磨吉郎君    北澤 直吉君       福永 一臣君    穗積 七郎君       松本 七郎君 が理事に当選した。     ————————————— 昭和三十年三月三十一日(木曜日)     午後二時三十八分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       高岡 大輔君    松本 俊一君       山本 利壽君    犬養  健君       福田 篤泰君    稻村 隆一君       高津 正道君    細迫 兼光君       戸叶 里子君    西尾 末廣君       石野 久男君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         外務政務次官  園田  直君         外務省参事官  寺岡 洪平君         外務省参事官  矢口 麓蔵君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長心         得)      稲垣 一吉君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         通商産業政務次         官       島村 一郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 三月二十五日  委員犬養健辞任につき、その補欠として植木  庚子郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員植木庚子郎君辞任につき、その補欠として  犬養健君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として石  野久男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  本日は国際情勢等に関する件について、内閣総理大臣及び政府当局に対し質疑を行うことといたします。  なお委員各位に申し上げておきますが、質疑通告が多数でございますので、議事整理の都合上、関連の質疑はこれを許可いたしません。さよう御承知を願います。  なお理事諸君の御決定によって時間に制限がありますので、約一分前に御注意を申し上げることにいたしたいと思います。  総理には座席のまま御答弁を願いとう存じます。皆様方の御了承を願います。時間の節約にもなって皆様方にも御便宜かと存じます。三時半に参議院の予算の採決がありますので、総理はそのころ御退席にならなければならないこともあらかじめ御了承を願いたい。外務大臣はそのまま居残られますので、外務大臣に対する質疑はそのまま御継続を願ってよろしいと思います。  これより通告順によって質疑を許します。福田篤泰君。
  3. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今まで総理並びに外務大臣は、衆参両院におきまして、あるいは本会議または委員会で、当面しておりまする重大な外交問題についていろいろ御答弁をされておりますが、場合によりましてはこの答弁が食い違い、場合によりましては不明確な点もあるようでありますが、本日の委員会はこの意味できわめて重大な意味があると思うのであります。すなわち今まで御答弁なさいました各種の問題について、いわば締めくくりをされる、一方から言えば、現内閣外交方針に関する思想統一をせられる絶好機会であり、この委員会を通じまして、国民各位が知らんとしておる点について明確に率直にお答えをいただきたいと存じます。  まず第一に、昨日のニューヨークにおける沢田大使からソボレフ・ソ連代表に向いまして申し入れ内容、並びにこれに対しましてソ連側がどういう回答をしたか、この会談内容につきましてお伺いいたしたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣の方に直接沢田君から電報が来ておるようでありますから、外務大臣から答弁をしていただきます。
  5. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉をこれから始めるというわけで、その準備のために、沢田大使ソボレフ大使に会って、その交渉場所等について話し合いをしたのでございます。ソボレフ大使はその申し入れをそのまま政府に取り次ぐ、こういう返事をいたしております。
  6. 福田篤泰

    福田(篤)委員 一部の新聞の情報によりますると、ソ連側はいわば全権的な外交官アメリカに派遣するというようなことも伝えられておりますが、そこまでの具体的な話は一切向うからなくて、わが方の沢田大使申し入れを一応伺ってソ連政府に伝えるというだけの内容でございますか、もう一言御答弁願います。
  7. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  8. 福田篤泰

    福田(篤)委員 そういたしますると、一部の希望的観測と大分違いまして、まだまだソ連交渉に対する真の意図並びにその気がまえ等もきわめて不明確であります。そこでお伺いしたいのでありますが、昨日の参議院の御答弁におきまして鳩山総理は重大なる発言をされております。すなわち、これもわが党から最初第一日に総理に御答弁を要求して御答弁がなかったのでありますが、この日ソ交渉の大前提として、日ソ間に今ありまするいろいろな懸案問題、漁業でありますとか戦犯とかあるいは領土問題、こういう懸案を解決しなければ国交調整の話と認めない、いわば懸案解決日ソ交渉の大きな前提である、わが方の当然要求すべきものは率直に強く要求する、こういう御答弁があったようでありますが、まずこの点につきましてはっきり総理から伺いたい。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国交調整目標として相談しょうという文書でありましたから、国交調整目標として相談しょうというならば、単に国交調整宣言戦争終結宣言というぐらいでもって満足はできません。それですから領土問題なり漁業問題なりあるいは未帰還抑留者戦犯の問題などを同時に相談をするのが当然だと考えております。
  10. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の御答弁で私どもは非常に意を強くするのであります。単なる戦争終結あるいは平和回復だけでは国民がとうてい納得し満足できない——総理が言われました通り、重大な懸案問題を解決して初めて正常化の実をあげ得ると私ども考えます。そこで具体的になりますが、そうなりますと、領土権に関する回復問題、千島並び南樺太に対する返還も、昨日の御答弁通り必ずソ連にもはっきりと要求すると了解してよろしゅうございますか。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 南樺太あるいは千島列島に対しても話はすべきものだと思っております。
  12. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ソ連に対しまして、いわばわが領土回復を要求すると同時に、小笠原諸島並びに沖縄の完全なる統治権回復、これも当然アメリカに要求する絶好機会だと考えるのであります。御承知通りアメリカ日本から一寸の領土も割譲せしめない。また賠償もとらぬというきわめて公正な態度を中外に宣明しておりますので、日米間の今後の友好関係を増進する意味におきましても、この機会をいい機会といたしまして、アメリカにも当然われわれが要求し、統治権回復をすべきである。また本会議におきまして鳩山総理も要求されるとはっきり御答弁に相なりましたが、こ点もう一度再確認しておきたいと思います。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はとにかくある時期においては、アメリカに対してもそういう話をすべきものだと思います。けれども一方においてソビエトに対して領土問題などを要求し、同時にアメリカに対してもこういうことを言うと、何かアメリカの方ではソビエト交渉することをアメリカ交渉することによって、バーターにでもしようとするのではないかという疑いも受けますから、同時にするということは不利ではないかと思っています。これは外務大臣の管掌にありまして、外務大臣がなすべきことでありますから、私がまたこんなことは言わない方がよかったと思うのでありますが、つい言ってしまったわけです。(笑声
  14. 福田篤泰

    福田(篤)委員 つい言われたことが実はほんとうの声であって、私どもはその声を支持申し上げたいのであります。なるほど外交技術から見て、政府側としていろいろお取り扱いもむずかしいでございましょうが、私の考えはどこの戦敗国でも見られました通りに、一定の時期を経ましたあとは、当然不当な条件あるいは内容を持ちました講和条約改訂運動が起ることは、イレデンタの問題として当然起る問題であります。これはむしろ自主外交を強力に主張せられておりまする現内閣国民に率直に呼びかけまして、領土回復国民運動にまで展開するのがあなた方の義務ではないかと思うのでありますが、その点いかがでありますか。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さように考えます。
  16. 福田篤泰

    福田(篤)委員 昨年の十月十二日の中ソ共同宣言はこの日ソ交渉について一つの大きなじやまになっておることは御承知通りでございます。これについてイズヴェスチァその他の機関を通じてソ連側日ソ交渉の話と、それから中ソ共同宣言とは必ずしも矛盾しないというような、いわば緩和した宣伝はしておりますが、何ら公式な政府筋意見の表明はございません。そこでわが方としましては、この中ソ共同宣言、すなわち日本アメリカとの関係を清算してやってこいといったあの中ソ共同宣言に対しまして、修正ないし撤回をソ連側に要求されるお考えがありますか、あるいはこの点について何らかの意思表示政府筋にあったかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  17. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連側言説を見ますと、それを取り消したような言説もございます。しかし直接にその問題について今日まで交渉はございません。日ソ国交調整交渉が始まれば、さような基本的な態度については十分確かめて行かなければならぬように考えます。
  18. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これについてお確かめになるという政府側の御答弁を得て一応安心いたしたのでありますが、これに関連しまして、鳩山総理がしばしば公式にも非公式にも言われております二つの中国の問題が必ず出て来ると思うのであります。中共との国交調整台湾国民政府との問題につきましては、しばしば論議されておりまするからこれは取り上げませんが、もし中共との共同宣言に関連して、国交調整問題がかりに起った場合、政府は一体どういう考えで対処せられますか、基本的な問題だけをお答えいただきたいと思います。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 中共との国交調整のことをお尋ねになりましたが、今わが国は台湾国民政府を承認しておることは御承知通りであります。それでありますから、今中共政府中国政府として承認する、これは条約上の問題になり、むしろ法律問題でありますので、さようなことを今すぐきめる時期には来ておらぬと思います。しかしながら、中共が事実上支那大陸において強大な権力、地域を設定しておることは事実でございます。でありますから、その事実を無視するわけには参りません。従いましてその地域との貿易関係等を増進することはやり得ることで、いいことだろうと思います。さようなことにして漸次正常関係を設定するように進めていくこともいいことだろうと思います。しかし、そういうようなことがいかに法律的に、条約的に実を結ぶかということは、世界一般形勢に順応しなければなりませんので、その形勢変化を待っておもむろに考慮していい問題だろう、こう考えます。
  20. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最後にA・A会議の全権はおきまりになりましたか。それから遣米特使の問題について人選がおきまりになりましたか、この点をお伺いいたしたい。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 今日まで正式にまだきめておりません。不日正式にきめることにいたしたいと思います。
  22. 植原悦二郎

  23. 細迫兼光

    細迫委員 総理大臣にお伺いをいたします。先日本会議でお伺いいたしました原水爆貯蔵問題につきまして、一歩深くと申しますか、お尋ねをいたしたいのであります。御答弁を総合しますれば、要するにそのことが平和のためによいと思えば考えてもよろしい、悪いと思えば拒絶する、こういうことで、このことの実現するかどうかは、一に総理大臣が、このことが平和のためによいと思うか悪いと思うかということにかかっておる。ここがキー・ポイントだという結論に相なると理解いたしました。従ってここでお伺いいたしたいのは、総理大臣は現在の瞬間におきまして、原水爆日本の国土内に貯蔵せしめることが平和のためによいとお考えであるのか、悪いとお考えになっておるのか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が平和を維持するために必要ならば考え得るということを申したのはその通りであります。ただし、今日アメリカ日本原爆貯蔵したいという申し出をすまいということも同時に申しました。同時だか、あとだかにそういうことを申しております。それは片山君の質問でしたかに、そういう答弁をしたような記憶があります。現在においては、そのいずれであるかということを明言する機会ではない。わかりませんから……。そのアメリカ側が要求してきたときの状況によって判断をして諾否を言うより仕方がないと思いますが、アメリカ日本貯蔵を要求する必要性を持っていないと思います。
  25. 細迫兼光

    細迫委員 アメリカ日本原水爆貯蔵の必要を感じないだろうというお考えは、私は正反対な考えを持っております。非常に必要としておるだろうと思う。その点は意見の相違でありますが、貯蔵のことが現実の問題となったときに考えるとおっしゃることははなはだ不安なのでありまして、鳩山さんの頭のどっちに動くかによって、それがきまることに相なりますので、はなはだ不安であります。しこうして、そのことは、そのつど外交、そのつど方針をきめるというようなことに相なりまして、原水爆日本貯蔵することが平和のためによいか悪いかということは原則的に考え得る問題だと思うのであります。これはきっと頭の中では総理はすでに何かを感じておられるに違いないと思うのでありますが、思わず口に出したという調子で一つ笑声)おあかし願えると、安心するか、あるいは心配になるかわかりませんが……。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在全く頭のすみの中に、そういうことを判断する機会じゃないと思っております。全く白紙であります。
  27. 細迫兼光

    細迫委員 総理お答え外交辞令だと解釈をいたしますが、平和のためによいか悪いかという観点から考えるとおっしゃることは私も一応賛成でございます。しかし、なおもう一つ観点として、日本国民の安全のためにはいいか悪いかという観点からも、これは考えるべき問題だと思うのであります。私は、これはあたかも電車の中にガソリン箱を持ち込むようなものだと思うのでありますが、何人か、電車の中にガソリン箱を持ち込むものは、と聞きたいのでありますが、そういう日本国民安全——もちろん世界平和にも総理責任を持たれますが、一番重大な責任国民の安全だと思うのであります。国民の安全という観点から、原水爆日本への貯蔵問題をいかがお考えでありましょうか、お伺いいたしたい。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世界情勢判断外に置けば、日本のうちに原爆貯蔵するということの不当なことは当然でありますが、世界情勢のいかんによっては、あるいは日本原爆貯蔵する必要があるかもしれない事態が全くないとも今から想像はできないだろうと思います。それですから、世界状況変化に伴うて、その必要性は、その申し込みを受けたときに判断するというのが一番いいと思っております。
  29. 細迫兼光

    細迫委員 総理はまたこういうことも言っておられるやに伝えられております。力による平和、これは長続きはしないと思っておるが、しかし力による平和という状態が続く限り、原水爆貯蔵という問題も考えなくてはならぬ、こういうふうなことを発言なさっておるかと記憶いたしておるのでありますが、総理の再軍備問題に対するお考え憲法改正に関するお考えなどとあわせ考えまして、総理自身が力による平和論者であると私は見ておるのでありますが、そうすれば鳩山総理自身、力による平和を現在の状態であり、それを公認しておる立場から、原水爆貯蔵もやむなしという結論に達しておると理解してよろしいのじゃないかと思うのでありますが、それでよろしいのでしょうか、どうでしょうか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 力による平和ということも、現在はやむを得ない事実だと思っておりますけれども日本にこれを貯蔵するかどうかということは、また別の問題だと思っております。日本貯蔵しておるがために、日本が侵略を受けるという危険もあるわけでありますから、貯蔵しないで済むならば、できるだけ貯蔵しないで平和を維持していきたいということを考えております。
  31. 細迫兼光

    細迫委員 問題を変えますが、台湾の問題であります。平和条約におきまして約束しておりますことは、台湾に対する権利放棄であります。台湾に対する権利放棄以後の処理については、何らはっきりしたところがない。台湾に対する権利放棄しましたあと、すなわち台湾はどこに返還したものだと認識していらっしゃるかどうか。このことによりまして、台湾問題に関する総理考えの基本を察知する資料になると思うから、私はお聞きするのでありますが、どこへ返還したものと認識していらっしゃるかどうか、お尋ねいたしたいと思うのであります。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 考え方によっては、台湾放棄世界に対して声明したものと考えております。
  33. 細迫兼光

    細迫委員 時間がありませんからそれだけにしておきます。
  34. 植原悦二郎

  35. 松本七郎

    松本(七)委員 鳩山総理大臣は、かねがね日ソの間に戦争終結宣言をすることが、国交回復を達成するのに非常にいい道であるというようなことを声明されたり、あるいは演説をされておるのでありますが、昨日の参議院におけるわが党の同僚の曾祢議員質問に対する御答弁によりますと、そこのところが少しあいまいになってきたように思うのでございます。ただいま福田議員質問に対する御答弁では、単に宣言だけでは満足できない、こういう御答弁があったのでございますが、具体的にはっきりお伺いしておきたいと思いますのは、今、日ソ交渉がいよいよ近く始まろうとしております。そのときに日本側から、一つ戦争終結宣言お互いの了解のもとにやろうではないか、こういう申し出をされるおつもりかどうか、その点をまずお伺いします。
  36. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が戦争終結宣言を非常に欲しまして演説をしたのは、三年前の九月の十二日、日比谷公会堂でやったのが初めてであります。その当時は、一九五二、三年ごろに第三次世界大戦が勃発するだろうというのが、アメリカにおいての大体の考え方であったと思います。よく新聞、雑誌に、一九五三年が危険の年だと言っておった。それだものですから、そういうような第三次世界大戦の起きる場合には、日本ソ連中共戦争状態終結未確定の状態にあるということは、非常に危険だと思ったものですから、戦争状態終結を早くしたい、それには宣言であってもいい。それでソビエトにそういう宣言を求めるのが順当であるけれどもそれも、ソビエトは聞くまい、少くとも日本から、異例ではあっても、日本でそういうような単独の宣言をして、それも時の経過によって、事実的に戦争状態が終結したというような事実を作り上げる必要もあるだろうと考えて、そういうことを言ってみたのであります。けれどもこのたびはソ連から、国交関係正常化することを目標として相談をしたいというようなことを言ってきたのでありまするから、国際関係正常化するのには、懸案となっている領土問題なり、あるいは未帰還抑留者なり戦犯者なりの問題、あるいは北洋漁業の問題なりを解決する方がいいと思いまして、向うから国際関係正常化したいというのでありますから、正常化する事実を作り上げたい、向うから言ってきた会談には、そういうことを申し出そうということを考えたのであります。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうことを申し出そうと言われるのは、おそらくいろいろな懸案をまず申し出そう、そういう御意見だろうと思いますが、その懸案を解決するについても、それは過去において総理考えられておったと同じようなことが今でも言えるのじゃないか。それは二年前、三年前の国際環境と今とは違っております。しかし懸案を解決するについても、一応両方の合意のもとで戦争終結宣言をやるのとやらないのと、いずれがこの懸案解決に有利に展開できるかという観点からしますならば、私はこの戦争終結宣言を一応やって、その上で懸案解決お互い相談する方が、合理的に進むと思うのですが、この点いかがですか。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国交関係正常化したいという希望のもとで話し合いをしようというのでありますから、いろいろの問題を解決するというような心組みをソ連は持っているのではないかと推測しているのであります。それですから、そういう問題を解決する時期だと考えております。 松本(七)委員 きのうの参議院の御答弁でも、千島あるいは南樺太返還問題は必ず出した方がいい、こういうふうに答弁されているようでありますが、先ほど福田議員に対する答弁で、そういうことを言われたのですけれども、さらにきのうの御答弁の中に、しかしおそらくソビエトは、この千島南樺太返還には応ずまい、こういうことを言っておられるのですが、それは間違いございませんでしょうか。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、応ずまいと向う意思をそんたくして、そういうような答弁をしたようには記憶しておりませんが、とにかくソ連に対して歯舞、色丹の領土権を主張するのと、南樺太あるいは千島列島を主張するのとは、理由が違いますから、同様の理由をもって主張するわけにはいくまいと思う、こういう意味で言ったのであります。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 しからば、南樺太千島返還も、この国交調整交渉のときには出されることは間違いないと私は思いますが、その見通しはどういうふうに立てておられますか。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことについて、今論議するのはよくないだろうと思います。
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうことはないのです。今から交渉をやろうというのですから、交渉をやる以上は、どういう問題を持ち出そうとしているのか、持ち出す以上は、それの見通しというものを十分論議して、その上で乗り込まなければ、交渉というものは成立するものじゃないのです。ですから、ああいう発言をされている以上は、そういう問題についてもっとざっくばらんに論議されることこそ、むしろ必要ではないかと思うのであります。いかがでございましょう。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それについては、あなたと同一の意見を持っておりません。
  44. 松本七郎

    松本(七)委員 さらにもっとたくさん御質問申し上げたいのですが、時間もございませんから、もう一つ別な問題を質問したいと思いますが、そういう今の総理の御意見であるとすれば、先ほど迫議員からもいろいろ御質問した場合のあの原爆貯蔵の問題はなお不謹慎な言辞だと思う。先ほどからの御答弁によりますと、この原爆貯蔵問題についてはまだ頭ではそう考えておらないのだ、形式的に頭の中で考えて、そういう可能性もある、平和のためになるならばそれは貯蔵考えられるというようなことを、今日の国際環境の中で、総理大臣ともあろうものが公言されるということは、いかに軽率きわまることであるか、御自身でもよくおわかりだろうと思います。現に北大西洋条約機構理事会では原子爆弾の使用まで決定しております。こういうふうな事態で、日本国民が心配しておるときに貯蔵問題を公言されるということは行き過ぎだと思いますが、いかがでございますか。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 平和維持のために必要ならば、アメリカの要求したそのときに、平和維持のために必要かいなかを審査して判断をすると言っておることは当然だと思っております。
  46. 松本七郎

    松本(七)委員 しからば、総理日ソ国交回復を念願しておられる、それをどうやって目的を達成するかについて、私どもと十分にその議題にすべき問題をいかようにして——平和宣言を先にやった方がお互いのためになるのかならないのか、並行して平和宣言をやった方がいいのか、あとでやった方がいいのか、そういうことを徹底的に論議すれば、世界の平和のためにも日本国民のためにもなると思いますが、いかがですか。
  47. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これを多数で論議する必要はないと思います。
  48. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんから、これで終ります。
  49. 植原悦二郎

  50. 石野久男

    ○石野委員 首相にお尋ねいたします。今防衛分担金の減額の折衝が行われているはずでありますが、この防衛分担金の問題については、二月三日にアリソン大使から削減まかりならぬという覚書が出ていると聞いておるけれども、それはほんとうであるか。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 そういう申し入れですか、ノートですかは正式に参っておりません。
  52. 石野久男

    ○石野委員 正式には申し入れが来ていないと言うが、いろいろと情報が伝えられていることはともかくとして、今折衝を行なっている過程において、しばしば総理からは防衛分担金の削減をして、その金を民生安定関係費に使うのだということをいろいろと公約の面で言っておられます。この民生安定関係費に使うという考え方は、その後いろいろな面でふらふらと変って来ているようですが、現在そういう考え方をお持ちになるかどうか。首相から御答弁を願います。
  53. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛分担金の減額ができて余剰ができて、それが住宅建設の方に回るようになれば、もっと楽に予算が成立するものと思っております。しかしながら防衛費と防衛分担金とを合わせたものがこの前の費用のワク内においでできれば、やはり公約は実行できると考えております。
  54. 石野久男

    ○石野委員 この前のワク内でできればということについてはいろいろまた問題がありますが、ともかくその余剰ができたらばということ、それができれば民生安定費に回すのだという考え方と、いわゆる行政協定の合同会議の公式議事録の中に出ておる二十五条に関する考え方との間ではっきり政府お尋ねしたい。これによると、「「防衛のため自ら責任を負う」ことあるべきに応じ、そのような防衛のための経費が増加するということにかんがみて、日本国にある合衆国軍隊の維持のための2に規定する経費の減額に考慮が払われるよう要請する。」と岡崎氏が前に言っておるのであります。この金のそのまま減額されたものが防衛費として増額されなければならないというように考えられないのか、それともそれを民生安定費に回していいというふうに考えていいのか、この点の政府のはっきりした考えをお聞きしたい。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 防衛分担金の減額は、アメリカ側は防衛費の増加ということを希望しておるのでありまして、主としてそちらの方に使いたいというアメリカ側希望でございます。
  56. 石野久男

    ○石野委員 それならば防衛分担金の削減額というものは、そのまま防衛費に回されるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 自動的にはそうはなりません。
  58. 石野久男

    ○石野委員 首相にお尋ねいたしますが、首相はしばしば選挙のときに防衛分担金の削減額は民生安定費に回すと言ったが、そのことはただいまの外相の説明を十分承知の上で言ったのであるか、それとも別に考えがあってであるか、それを承わりたい。
  59. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣答弁も防衛分担金というものを当然に防衛費の方に持って行くようにはならないと言っておるのであります。それですから、厳重に言えば防衛費は日本が独立した以上は日本自体の考え方によって決していいだろうと思うのです。
  60. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの首相のそういう考え方は、今度の分担金の削減交渉に当って政府の貫いている考え方であるというふうに考えてよろしいですか。
  61. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうふうに思っております。
  62. 石野久男

    ○石野委員 分担金の折衝に当ってはアメリカからの基礎数字としては九百億の要求があるということはすでにはっきりしておると思います。そうしますと、これは本年度の防衛費削減後の額が七百四十億、削減前が七百八十億で、非常に大きな差があるわけでありますが、その分だけ当然分担金が削減されるというふうに考えてよろしいか、その点承わりたい。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 それはむろん当然にはそうはなりません。それは日米の間の折衝の問題となるわけでございます。
  64. 石野久男

    ○石野委員 分担金の折衝の問題については、すでに前の大村防衛庁長官から三月の八日に記者団に対してこういうことが言われておる。原爆攻撃には原爆で応戦できるわけだ、鳩山内閣がこのような積極的な考え方を持てば、必ずアメリカは分担金百億減額に応ずる見通しが十分であるということを言っております。これは当時の第一次鳩山内閣の閣僚である大村氏の言った言葉でありますが、その考え鳩山総理は持っておられますか。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は大村君の考え方と少し違います。私はとにかく日本の憲法九条によれば、防衛という範囲内において自衛隊を持つことができる、こう解釈できると思います。原爆というものが日本を防衛するために必要だとは、当然の結論にはならないだろうと思うのです。これは原爆を持たずして日本が防衛し得るというような範囲内においての意味じゃなかろうか。原爆兵器というものは攻撃するものですから、防衛という制限がつくと、原爆貯蔵は当然できるという結論にはならないだろうと思うのですよ。大村君の考え方は、防衛のためには原爆も必要だという論拠の上にそう言ったと思うのですが、原爆というものは必ずしも防衛のために必要にあらずという論が正しければ、持ってはいけないということになろうと思います。
  66. 石野久男

    ○石野委員 時間がありませんから、最後に一つだけ鳩山内閣外交の基本方針についてお尋ねしたい。  選挙戦にも中ソとの国交回復、平和外交ということが鳩山内閣の訴えた点なんです。第二次内閣が出来てからそれが非常に方向が変ってきて、むしろアメリカのごきげんをとるような考え方、昨日のプレス・クラブでの外相の話を聞くと、とにかく東西のかけ橋論を出して、両方の橋つなぎをしたいというような話し合いが出ておる。そこで私は鳩山内閣外交方針の基底がどこにあるかわからない。ここではっきりしていただきたいことは、中ソ共産陣営に対する鳩山内閣考え方、それからアメリカに対する考え方について、どういうような立場をとっておられるか。ことに今度のAA会議に参加する基本的な態度についてでありますが、アメリカ・グループとして参加するように一般には伝えられておりますけれども、これはSEATO会議におけるそういうものと日本政府考え方とがぴったり一致して、そういう態度でいくのであるかどうか、この点をはっきりしていただいて、かけ橋論議というものは、中ソの側とアメリカの側との間に立って、どういう立場でそのかけ橋をするという意味なのか、この点を総理並びに外相から答弁願いたい。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 私の昨日のプレス・クラブにおける演説の問題もございましたので、私がまずお答えいたします。日本の対外政策の基調は、今も御指摘の通りに平和でございます。つまり世界の平和に貢献するための外交が基調でございます。アメリカとの関係は、民主自由陣営の中におる日本として、そして条約上の関係を持っておる日本として、アメリカとの協力関係を基調といたすことにきまっておるのでございます。しかし同時に平和外交の一環として、今日まで法律的に戦争の状態にある共産陣営との平和を回復したい、こういうことで進んでおるのでございます。  なお日本の将来を考えてみますと、どうしてもアジア諸地域に対する日本の利害関係が非常に大きくなります。特に通商関係は増進して参らねばなりません。日本はアジアに国をなしておるのでありますから、当然のこととはいいながら、どうしてもその方面に努力を進めていかなければならぬ、こう考えております。アジア・アフリカ会議に関しましても、今お話し申し上げたような意味で、これを最も重要視しておるわけでございます。私が昨日東西の橋となると言ったその東西の意味は、今あなたが言われるように、共産陣営と民主自由陣営との間に橋をかけるという意味を指したのではございません。むしろ東洋文明と西洋文明というような意味で言葉を使ったのでございますから、どうぞさように御承知願いたいと思います。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私も重光君が言いました通りで、外交方針というものは平和の維持を目的とすべきものだ、これはどの国でも、どの内閣でも同じだろうと思うのですが、ただその平和の維持をどうやって持つかという点については、これは内閣によって変るかもしれませんけれども、力による平和だけでもって満足してる国があるかもしれません。けれども力による平和というものは決して永続性を持つものでもないし、確定的のものでもないと思うのです。力によって平和を維持すると同時に、いずれの国とも友好関係を増進していって、そうして世界戦争を避くべきものだと思います。それですから、世界戦争を避けたいということは、イギリスでも、アメリカでも、その他の自由国でも同じだろうと思います。アメリカが、ソ連中共友好関係を結びたいという日本希望を決して妨害する理由はないと思うのです。世界の平和を維持したいという一環として働くのでありますから、ソ連中共国際関係正常化を期するということが、やはり世界戦争を避けるために必要だと思っておるだけでありまして、これがアメリカとの協力関係を害するというわけでも何でもないのでありますから、決してアメリカとの協力関係を基本とする外交を改めるというわけではありません。平和維持のためにソ連中共ともさらに国際関係正常化することを必要なりと思って、それをやっておるわけであります。
  69. 植原悦二郎

    植原委員長 ちょっと御相談申します。民主党の菊池義郎君以外の各派は、一応総理に対する割当の質問を終った形で、ただ残るところは稻村隆一君の三分と、戸叶里子君の五分でありますが、最初に皆さんに申し上げた通り総理は三時半に参議院の予算の審議に出席しなければならないので、どうか、一応終りましたから、皆さま方の御了解を得て、この質問はまた他日することとして、ここで総理参議院に行くことの皆様方の御了承を得たいのであります。
  70. 松本七郎

    松本(七)委員 議事進行について。参議院に行かれるのはやむを得ないと思います。けれども、かねがねから理事会でも強調いたしましたように、できれば、質問もまだ残っておりますし、それは大体一時間ということでわれわれ了承したのですけれども、これは総理としてもそう冗長になっては困るから一応一時間くらいしかおれないと言われたのだろうと思います。参議院の方が終って、われわれが再び続けることができればなおいいと思います。その点一つ委員長の方から総理の事情を聞いていただいて、もしできれば、終るまで待って、さらに続行してもいいと思います。  それから議事進行についてわれわれの提案をすることについて、参考にぜひしたいので、一つ総理の御答弁をお願いしたいと思いますが、私ども常任委員会制度ができてから、これを非常に重要視して、総理あるいは担当の大臣にどんどん出席してもらわなければならぬと思います。これは前吉田首相にこういうことを申し上げてもなかなか理解していただけなかっただろうと思うのです。ですから言いもしません。けれども鳩山総理大臣は長年の議会生活の老練家ですから、おそらく理解はあろうと思う。昔のように常任委員会というものがない場合は、予算委員会偏重もやむを得なかったと思います。今日のように常任委員会がある以上、十分こういうところで外交問題その他首相の関心を持っておられることについて、首相自身がどんどん出席をされて、十分われわれと隔意のない意見の交換をするということが必要だと思います。従いまして今後われわれも首相の出席をしばしば求めますが、なるべくその質問も冗長にならないようにわれわれも努めますから、できるだけ出席していただきたいと思います。この点について総理の御意見をちょっと伺いたい。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 事情の許す限り出席いたします。
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 稻村隆一君。
  73. 稻村隆一

    ○稻村委員 実は私総理大臣質問したいのですけれども、時間がありませんから、外務大臣日ソ国交回復に関する所見をお伺いしたいのですが、鳩山内閣日ソ国交問題を取り上げたことは、私は後藤新平氏がヨッフェと交渉して、日ソの国交を回復したと同じような、それよりも重大な問題だと思うのです、日本の平和と自立のために。そこで日ソ国交の回復は、これはもうどんな場合でも日本のためにはマイナスにならぬと思うのです。漁業問題だって今よりも悪くなるようなことは絶対にないので、よくなるにきまっている。それでこの問題は非常に重要ですから慎重に実現できるような現実的な立場からやってもらいたいのです。そこで領土の問題、これは一番重要な問題で、ヤルタ協定によって日本千島、樺太を返すことになっており、日本はポツダム宣言を受諾して講和を結んだのですが、歯舞、色丹と千島、樺太とはおのずから違うのです。しかしこの同じヤルタ協定によって返還せしめられた領土でも、千島と樺太は少し違うのじゃないか。カイロ宣言日本領土の処分を言っているのですが、日本領土の処分は日本が武力または暴力をふるって獲得した領土返還せしめるということになっておるので、千島というのは何も日本が暴力によって取ったわけでもない。武力によって取ったわけでもない。これは自然に日本の所有になったので、明治の初めに南樺太と交換したのですから、これは沖縄や小笠原と同じなんで、自然に所有したものなのです。そこで南樺太の問題と千島の問題はおのずから別個に取り扱うことが必要じゃないかと思うのです。歯舞、色丹、千島南樺太等を一緒にやることはどうも国際交渉上非常に現実的じゃないと思うのです。そういう点に対して慎重に——もちろんこれは慎重にきまっておるのですが、外務省としてはわけて慎重に、そうして現実的な折衝をやってもらいたいと思う。この点私は党は違いますけれども鳩山内閣日ソ、日中の国交調整に乗り出したことは非常に意義があると思うのです。その点できる可能性のあることからやってもらう、これが必要なのじゃないか、こう私は思うのですが、外務大臣の御意見をお伺いしたいのであります。
  74. 重光葵

    重光国務大臣 今の御意見は私はまことにごもっともな御意見だと思って謹聴いたしました。御承知通りにヤルタ協定は日本は何も関係ございませんが、ヤルタ協定の当事者はもちろん、領土問題につきましては主としてサンフランシスコ条約から始まる、サンフランシスコ条約においては南樺太千島の問題は日本放棄したということになっております。それでありますから、今北海道の本島に属しておる島とは違うことは条約上の現実の関係でございますし、それからまた千島南樺太との歴史的関係、従来の関係の異なっておるということもよく考えなければならぬ、またこれはわれわれもそれを十分検討をし、承知をいたしておるわけであります。さようなことを十分考慮に入れまして交渉を慎重に進めて行きたい、こう考えております。
  75. 植原悦二郎

    植原委員長 戸叶里子君。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 簡単に総理大臣に御質問申し上げたいと思います。ヤルタ秘密協定が戦時中の謀略的な秘密協定であったということ、そしてまた他国の主権を侵害しているということは私ども認めるところでございますが、当然この問題に対しては、サンフランシスコ講和条約が締結されるときに、日本の全権が主張すべきことであったと思いますが、これは別にいたしまして、今回日ソとの国交調整の問題が起きて参りましたときに、アメリカでヤルタ協定の破棄ということを言って参りました。このことは、あるいは日ソ間の親近にある程度ひびを入れるものであるという見方もありますが、それは別にいたしましても、せっかくそういうふうな意見が出てきておるのでありますから、日本としては、米英ソ三国がその当事者でありますから、その当事者間で会談をしてもらって、この秘密協定の破棄というようなことをはっきり宣言してもらうような要請をしてもいいのではないかと思いますし、またその要請が決してこの日ソ国交調整の妨げになるというふうには考えられませんが、この点はいかにお考えになるか、お伺いしたい。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戸叶君の考え方は正しいと思います。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そうであるといたしますならば、日本といたしましては米英ソ三国の会談を開いてもらって、ヤルタ協定の破棄というところまでしてもらうような要請をする御意思はございませんか、お伺いしたいと思います。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連交渉するときにはむろん南樺太問題も千島の問題も出して相談をしたいと思っております。そうして場合によったらそのヤルタ協定の当事者に対しても、交渉するような場合が生ずるかもしれません。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、総理大臣のお考えとしては、ソ連との交渉に当ってヤルタ協定の破棄を当事者の三国に要請するというふうに確認してもよろしゅうございますか。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 これは非常に大きな問題になります。今ヤルタ協定の破棄を日本がそういう当事者に要請するという、さようなことをいたすことの利害得失はよほど考えなければならぬと思います。それでしいてお答えを申し上げれば、今そういうことは考えておらぬということを申し上げるよりほかにしようがありません。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 それではその問題は別にいたしまして、もう一点だけお伺いいたしたいと思いますが、先ほどアジア・アフリカ会議に臨む日本外交方針というようなものの一端をお述べになったと思います。そこで私のお伺いいたしたいのは、そこへ臨まれる場合に、ネール首相が中共に向って結んでおります平和五原則、こういうようなものも当然出てくると思いますけれども、それに対して日本は積極的に支持されると思いますが、その点がどうかということ。  それから時間がありませんのでもう一問ついでに申し上げますが、アジア、アフリカには、ビキニの影響を受けるような国がたくさんにあると思います。そこで、もしもビキニの実験というようなことが行われるようなことがありますと、日本にとりましてはもちろん重大問題でありますけれども、そういった国々にも影響がありますから、出席する全権が、その会議において当然ビキニにおける原水爆の実験はしないでほしいということを各国と話し合って提案すべきと思いますが、この点に対するお考えを承りたいと思います。
  83. 植原悦二郎

    植原委員長 戸叶里子君の御質問は、外務大臣お答えになると思います。実は時間が何だから、総理大臣は早く参議院へおいでになった方がよろしい。外務大臣はどうせ居残りでありますからどうぞ。今の御質問は時間内で外務大臣が御答弁になった方が適当と思います。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆弾の実験の問題をお話しでございました。この原水爆弾の実験は、今実際問題としてアメリカ関係になっております。ほかにも実験をしておるところがあるようでございます。あるようでございますが、実際問題としてはアメリカ関係になっておる。そこでアメリカとの間に、実験についてはできるだけ日本の利益を害しないようなところでやってもらいたい。そしてまたそれに対しては住民に被害の起らないようなあらゆる準備をしてもらいたいというようなことを申し入れて、そうして注意を喚起しておるわけでございます。しかし原子爆弾全体の問題といたしましては、これはむろん原子力を平和的に利用するという問題が中心になると思います。この原子力はあくまで軍事力に使わない、平和的にこれを利用するということにしなければならぬ、こう思うのでございます。それはわれわれの考え方だけではない、むろん世界的にそういう考え方があり、特に国際連合においてその考え方を持って問題を現実的に取扱っております。そして幾多の会合が開かれております。この会合には専門家をも含めて日本も参加をいたしておるわけでございます。さようなわけでありますから、単に実験という問題でなくして、原子力一般の問題としてこれを平和的に発達せしめ、かつ平和的に進めていきたい、こういう趣旨をもって私は機会あるごとに会議に臨むことはけつこうだと思う。そうすることがいい、こう考えております。  それから平和五原則というのが、これは前内閣の時代にこの委員会でずいぶんと議論がございました。私もその質問に応じたわけでございますが、それはまあそれといたしまして、平和五原則は御承知通りに、ネール・インド首相と周恩来中共首相との間に話し合った結果が、平和五原則になったという発表でございました。その当時も申し上げた通りに、これは文字としてはきわめてりっぱなことであるが、何も新しいことではなかった。日本としても、外交方針としてさようなことをずいぶん前から言っておったようなことであって、これはむろん反対すべきことは少しもございません。しかしながらいかにりっぱな原則であり、りっぱな主義であっても、これをある目的のために利用するということになって来ますと、これは政治問題になります。そこで平和五原則であるから、表面でこれはりっぱな文字であるからといってすぐ賛成をするということは、私は実益をたっとぶ外交方針としては果してどうかと考えます。平和五原則の中で、日本として非常に重要に感じているものは、国際紛争を侵略をしないで平和的手段で解決するということは、実際問題として今日の社会情勢等から見ても、特に台湾問題のような一つの危機がそこに存在する場合において、非常に大きな平和外交の精神に合することだと私は考えております。しかして特に日本は、東亜の平和及び安定ということを常に心配し、これを念願しておるのでありますから、紛争は、戦争に導かずして平和を害せず安定を害しないような方法によって解決するということは、実際問題として私は大いにこれを唱道したいのでございます。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 原水爆実験の問題に対しては、外務大臣は根本的な態度としてこれを平和利用の方にしか賛成できないというお考えで、私どもも当然だと思いますが、ただ現実の問題として、あるいはビキニでまた実験が行われるかもしれないということがいわれているやさきでもありますし、そうしてアジア・アフリカ会議というものもあります。もしまたビキニで行われるようなことがありますと、その影響を受ける国々もアジア・アフリカ会議に出席するわけですから、こういう会議で、日本が当然はっきりとこの原水爆の実験をビキニでやるべきではないということの意思表示をするなり、あるいは決議をお互いの国ですべきではないかと思いますが、そういう御意思がないかどうか承わりたいのであります。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 ビキニでやってもらいたくないということはアメリカに申し込んでおるのでございます。しかしアジア・アフリカ会議でビキニでやらぬようにというその問題を提出することは今考えておりませんが、これはよく研究をしてみましょう。
  87. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池義郎君の分を除いて、理事において御決定になった総理大臣に対する質疑は一応終ったのであります。  これから外務大臣に対する質疑を御通告の順によってお許しいたします。北澤直吉君。
  88. 北澤直吉

    北澤委員 鳩山内閣におきましては、共産圏諸国ともできるだけ国交を正常化したい、こういうふうに言われておるのでありますが、私どもの聞くところによりますと、ソ連以外にも、東ヨーロッパの共産主義の二つの国からも、日本との間に相互に戦争状態を終結したい、終結の宣言を出したい、こういうふうな申し入れがあるやに聞いておるのでありますが、その点は事実でありますか。
  89. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連以外からもそういうような意思表示が一、二のところからあったようでございます。しかしこれはまずソ連との交渉が今始まりつつあるわけですから、その交渉状況及び結果を待ってやるつもりでございます。
  90. 北澤直吉

    北澤委員 その点は今大臣が御答弁のように、日ソ交渉の模様を見た上で、その他の東ヨーロッパの共産圏諸国との国交の正常化考えたいというのでありまして、私も了承いたします。  次の点に移りますが、それは日米関係の問題であります。外務大臣日米協力関係をますます緊密にしていきたい、こういうことを言われておるのでありますが、残念ながら今回日ソ交渉に関連しまして、アメリカ政府、それから民間に、いかにも日本が二また外交、二元外交をやっているような印象を与えているようであります。大臣の言われますように、日米協力関係をますます緊密にしたいというならば、まずもってこういう日本が二また外交、二元外交をやっているというような誤解を取り除くことをまっ先にしなければならぬことと思うのでありますが、そういう点について政府はいかなる方法によってこういうふうな誤解を除去されますか、その点を伺いたいと思います。
  91. 重光葵

    重光国務大臣 日米協力関係をますます強化するという方針は、日ソの国交を正常化するというのと少しも矛盾はないと、これは繰り返し申し上げておるわけでありますが、お話の通りアメリカの世論の一部においてそのことについて誤解を生んでおるということも、これは否定することはできません。そこでそれを解く方法として、まず第一にそういうような誤解のないように、政府筋に十分に理解をさせておくということが必要でございますから、その点において東京においても、ワシントンにおいても十分に努力をしておるのでございまして、その点については誤解は少しもないということを先方も申しております。しかし今お話の通りに、世論の一部においていろいろな誤解のあるということは、その通りでありますからこれに向ってはできるだけいろいろな、あらゆる方法をとってこの誤解を解くように努力をいたしております。これが漸次効果をおさめることと考えております。
  92. 北澤直吉

    北澤委員 外務大臣の御答弁によりますと、アメリカ側の誤解もだんだん解けつつある。こういうようなお話でありますが、ダレス長官が先般バンコックで開かれましたSEATOの会議においてこういうことを言っております。日本が経済上の圧力によって共産主義の支配する大陸と政治上の調整をするということになりまするならば、これはアジアにおきまする自由世界の地位に重大な影響があるのである。もし国際的な共産主義のもとでソビエト・ロシヤの力と中共の力と日本の工業力というものが連結されるならば、自由世界の地位は極端に危険になるということをわれわれは認めざるを得ない、こういうことをダレス長官がバンコックの会議で言っておるわけでありますが、先ほどお話のようにもちろん民間の新聞ども日本がいかにも二また外交をやっておるというふうな誤解を持っておりますが、こういうふうにアメリカ外交の当事者でありますダレス長官もバンコック会議で述べておりますということは、私はどうもまだアメリカ政府におきましても、日本日ソ交渉に対する鳩山内閣の腹についてまだ十分な理解ができておらない、こういうふうに心配するわけでありますが、政府はこういう点についてアメリカ側の誤解を取り除き得るという確信を持っておるのでありますかどうか、この点を伺いたいと思います。
  93. 重光葵

    重光国務大臣 今御引用のダレス長官の言説、これは新聞だと思います。私もそういうようなものを読んだことを記憶しております。それが正確であるとしての御議論のようでございますが、私もその前提のもとにお答えをいたします。ダレス長官の言われたと称せられるものは、日本の対ソ国交の正常化という問題と私はあまり関係はないと思っております。そこに書いてある通りであるとするならば、もし極東の形勢が変って、中共、北鮮のほかにまた東南アジアも共産圏の中に入り、日本も赤化されて共産圏内に入るとすれば、日本の工業等がすべて共産陣営に利用される、これは危険千万なことで、東亜における自由陣営の基礎はほとんどこわれる、こういうふうに、いわば非常に飛躍的に考えて心配をしておる、ということであろうかと考えます。むろん日ソ交渉をやるから日本を共産化に導くというようなことは少しも考えられぬことで、そういう方向に向けてはならぬのでありまして、日ソ国交正常化ということは、日ソの国交の正常化、国と国との関係を正常に復する、こういうことにわれわれは考えておるわけであります。ダレス長官のその引用される言葉の意味とは少し違ったものであろう、こう考えております。
  94. 北澤直吉

    北澤委員 日米協力関係をますます緊密にするというその方法でございますが、日本政府アメリカ政府との間の理解を深めるということはもちろんでありますが、今日この日米関係にある種のひびと申しますか、そういうものがありはせぬかということを私どもは心配します。両方の国民の間の理解が非常に欠けている。アメリカ国民は、日本がある場合には共産陣営の方に走りはしないか。一体日本は自由陣営の味方であるかあるいは敵であるか、その点につきましての心配があると思うのであります。一方日本国民の方におきましては、アメリカが占領をやめた後におきましても、日本を植民地化する、こういうふうな誤解がある。こういうわけで、アメリカ国民の方にも日本国民の方にも誤解があるがために、今日の日米関係というものは、必ずしも私ども希望するようなところまでいっていない、こういうふうに思うのであります。特にアメリカのような世論の国においては、政府よりもむしろ世論あるいは国会というようなものが、この外交問題についてはより大きな力を持っておるわけでありますので、どうしてもこの日米の協力関係をさらに進めるというためには、両方の国民の間の理解を深め、誤解を除くということが最も大事ではないかと思うのであります。そういう点について、政府はどういう具体的な方法を考えておりますか、伺いたいのであります。
  95. 重光葵

    重光国務大臣 まことにお話の通り国民的理解を進めていかなければ、ほんとうに国と国との理解はできません。それはその通りでありますから、その国民的理解を進めるために、新聞、通信なりその他人の交通なりいろいろなことは、非常に必要だと考えておるのであります。昨今そのために人をアメリカに派遣したらばいいというような案も出ておることは、御存じの通りでございます。それも考慮中でございますが、いずれにしても両国の誤解のないように、すべての政府方針等を、はっきりと打ち出すことが必要だと考える次第でございます。
  96. 北澤直吉

    北澤委員 次の問題に移りまして、アジア・アフリカ会議の問題についてお尋ねしたいと思うのでございますが、重光外務大臣は常々日本はアジアの安定勢力としての地位を確保しなければいかぬと、昔から仰せられておるわけでありますが、今度日本がこのアジア・アフリカ会議に参加をすることは、そういうふうな大臣が昔から考えておりまするような政策を実行し、アジアの安定勢力としての日本の立場を、十分アジア、アフリカの各国に理解せしめる絶好機会と思うのでありますが、今度日本がこの会議に参加しまするについての、日本政府の根本的な考え方あるいは方針というものについて伺いたいと思うのであります。
  97. 重光葵

    重光国務大臣 アジア・アフリカ会議の重要性は、もはや申し上げるまでもございません。それは先ほども議論があった通りであります。これについてはいかなる方針で臨むかということは、具体的には今準備中でございます。しかしながら、私の考えといたしましては、日本の戦後といいますか、今日の対外方針、対外的な態度、これはあくまで平和的な発展を希望するものであるということを骨子として、これを会議出席者によく理解せしめることが一番必要である、こう考えております。そう申し上げますれば、きわめて平凡なことでございますが、しかし御承知通りに、日本の従来の行動、戦争のときのことはしばらく別問題といたしましても、日本の対外発展政策について非常な誤解が、東南アジア方面にあるのであります。こういうものをあらゆる機会において払拭するように努力をして、そして初めて日本の通商なり経済発展ができるのでありますから、それを骨子としてこの会議に臨むことが必要だと考えている次第でございます。
  98. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺って私の質問を終ります。今度アジア・アフリカ会議に参加する国は、アジア・アフリカの約二十九カ国と思うのでありますが、これが大体三つのグループに分れている。一つはいわゆる西欧陣営、英米の自由主義陣営に属する国々と、それから中共あるいは北ヴェトナムのような共産主義の国、それからインド、セイロン、ビルマのような、いわゆる第三勢力と申しますか、中立的な立場をとっている国々、大体この三つのブロックに分れた国々が参加するわけであります。従って、この三つのグループの国際外交に関する立場、あるいはただいま大臣も仰せられましたような、世界平和に対する考え方というものは、非常に違うのであります。そういうところへ日本が入って参って、そして一体日本はこの自由主義陣営の一員としての立場でいろいろな政策を述べられるのか、あるいは先ほど大臣が仰せられましたような、この三つのグループの間に日本が入って、いわゆる橋渡しをやるという立場において、この会議において行動をとられるのか、その点を伺っておきたいと思うのであります。
  99. 重光葵

    重光国務大臣 ちょっと釈明をしておきますが、先ほど東西の橋渡しをやるということのお話がありましたことは、今申されたような、どのグループとどのグループを先に橋渡しをやるという意味じゃないということを、あらかじめ御承知を願います。  そこで基礎的に、今日日本が民主自由陣営の一員であるということは、これは日本が置かれたきまった地位である。これは事実問題であります。しかしそれだからといって、民主自由陣営の強国の意のままに動くということでは、むろんないのであって、日本としてはあくまで自主独立の立場をもって、すべてものを考え外交も運営しなければならない、こういうことになるので、それは疑問の余地がないところであろうと私は思います。そこでアジア・アフリカ会議に臨む場合においても、むろん日本は民主陣営の国——日本はむろんそういう国なのです。立場がそこにあるのです。その立場は持っておりましょうけれども、そのグループを代表する意味でも何でもないと私は思う。やはり民主自由陣営にいる日本として、独立自主の立場をもってこれに臨みたい、こう考えます。そういう意味において、私は特に重きを置いて考えなければならぬのは、日本がアジアの一国である、アジアにおいて重大なる地位を持っている、アジアの平和安定のために努力すべき地位にあるという自覚を持って、この会議に臨んだらどうかと思います。でありますから、先ほども申した通りに、どのグループとどのグループの橋渡しをやるという現実の外交が、果していいか悪いかということは、これは一々の問題について考えなければならぬと思いますが、しかしそれが決して悪いというわけではありませんが、しかし任務としては直接にそういう任務を持っていく、こういうふうに前提を置かなくてもいいかと思うのでございます。
  100. 植原悦二郎

  101. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にいろいろな問題についてお尋ねしたいと思いますが、きょうは私の持ち時間が約六、七分しかございませんので、緊急な問題についてちょっとお尋ねしておきたいと思います。  それは、御承知通り、一昨日中国の貿易視察団がすでに日本に到着いたしました。そして貿易協定の新しい締結をするためと、日本における各産業施設その他を視察する目的で来ておるのでありますが、第一に私のお尋ねしておきたいのはこの視察地域の問題でございます。今まで大体主催者である民間団体と政府との間の了解では、東京並びに京阪神地区、それから中京地区が了解されておるやに聞いております。しかし参りましてからいろいろと話をしてみますと、やはりたとえば北九州であるとか北海道地域であるとか、あるいは東北のごときは重要な品目であります硫安の施設等もありますし、それから北陸地帯は御承知通り水力発電の施設並びに貿易のための港湾の問題等もありますので、今まで了解されておる以外の他の地域についても、希望がありまして話し合いができますならば、政府はその視察に対して協力していただけるかどうか、この問題について外相から直接御方針を伺っておきたいと思います。
  102. 重光葵

    重光国務大臣 中共視察団は御承知通り民間団体の招請によって貿易の増進、またそのための協定をするために来ておる。その目的のために旅券を発行して、その目的に必要なる期間を限って許可をしておるものでございます。そこでその目的のためには十分の便宜を与えなければならない、与えたいのでございます。そこで大体今その目的を達するために視察をする場所としては、東京地域、これにはむろん横浜も入っております。それから名古屋地域、大阪地域、これで十分目的は達する、こういうふうに承知をして、そういうふうに今取り計らっておると私は報告を受けております。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 私の伺いましたのは、今までの話し合いのことではございません。そのことはもうわかっております。そうではなくて、その他の地域、たとえば私が先ほど申し上げたのはその一つの例にすぎませんが、他の地域についても、向うの視察団並びに主催者の民間団体が今の目的を達するために視察の必要ありと認めた場合には、政府は新しくそれに協力していただけるかどうかということを聞いておるのであります。
  104. 重光葵

    重光国務大臣 その点については、私としては対中共方策の一般方針の問題もありますし、できるだけの便宜を供与したい意向は持っておりますが、しかし御承知通りにこれはあまり簡単でありません。共産国の多数の旅行者をどこでも自由自在に見せる、これは日本向うに視察に行ったって自由自在には見せません。きわめて狭い地域を限って見せております。国際関係にはやはり幾分双務的なことも考えなくてはなりません。そういうわけで、これは治安当局その他とも十分に打ち合せをしなければなりませんから、私の考え方はそういう考え方でございますが、今それでは北海道に行く、どこに行くということをここで許すことをお約束申し上げるわけにはいきません。しかし中国視察団の来られたことはわれわれは非常に希望したところでございますし、旅券の問題についても御承知通りに、できるだけの便宜を供与したい、これは十分にその目的を達してもらいたい、こういう気持には少しも変りはございませんが、あまりこれを広げていくとそこに困難を生じますことをお考え願いたいと思います。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 大事な点ですから、もう少しはっきりお答えをいただきたいのですが、先般予算委員会におけるある質問に対して、あなたはこれは民間団体が主催であるので、民間の当該団体から話があれば考慮してもいいというような御答弁があったように記憶しております。ですから、絶対に今まで了解された三地域以外にはいけないとおっしゃるのか。今申しました通りに視察団並びに民間主催団体が希望いたしまして政府にお話をいたしますれば、そこで話し合いをしていただくだけの余裕があるのか、あるいはどういう話があって、どういう正当な理由がついて参りましても、これは絶対に不可能なのか。その点も私はお尋ねしているのですから、一つ簡潔にお答え願いたい。
  106. 重光葵

    重光国務大臣 不可能ではありませんが、私は困難だと思っております。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 重ねてお尋ねいたしますが、それでは簡単にどの地域ということを内諾するわけにはいかないと思うが、そういう申し入れがあれば話し合いに応ずるだけのゆとりはおありになると解釈してよろしゅうございますか。結論についてはここでお約束いただきたいわけではありません。
  108. 重光葵

    重光国務大臣 その上で審議をいたします。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 審議をするだけのゆとりがあるということになりますね。
  110. 重光葵

    重光国務大臣 さようであります。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 その点の問題についてもたくさんお尋ねしたかったのでありますが、時間がありませんので、簡潔にお答え願います。  今度の旅行は単に視察だけではなくて、中心の問題は新しい協定を結ぶということでございます。これはもとより許された三週間の期間内に協定を結ぶべく双方が努力することは当然でございますが、万が一正当な理由によりまして交渉か長引きましたときには、この渡航許可に対します期間はその場合にはもちろん延長していただける余裕があるものと理解しておりますが、さよう理解してよろしゅうございますか。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 簡単にお答えいたします。これもきわめて困難なことでありますが、そのときにこれは審議することにいたします。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 時間が参りましたから、それでは一括して念のためお尋ねして、足らざるところはまたの機会にいたしたいと思います。現政府国交調整問題だけでなくて、中国との貿易の発展を希望しておられることは言うまでもありません。そのことはすでに選挙におきましても公約の一つとなっておる。そういう意味で、今度の交渉によりましてどういう協定ができるかは別でございますが、おそらく予想されます点については、第一禁輸品目のボーダー・ラインになっております品目、たとえば亜鉛引鉄板でありますとか、建設資材、造船資材のための鋼材でございますとか、こういうようなものの緩和に対して努力される用意があるかどうか、その点が一点でございます。  それから第二に一緒にお尋ねしておきますが、取引に当りましては額がどのくらいになるかは別問題でございますが、前年度よりはおそらく協定の中ではワクを拡大する可能性があると思うのですが、そうなりますと問題は二点生じて、一点は外貨の割当についてできるだけ幅を広げるだけの用意が政府であらかじめおありになるかどうか。もう一つは、バーター取引になりますと、特に硫安その他でございますが、見返りの品物に対して、物動計画——そういう言葉を使うのは不適当ですが、普通語として使えば、国内におきまする割当計画、これについても同様日中貿易を促進するという政府の建前からいきまして。これに対してもなるべくワクを広げて協力される御用意があるかどうか、この三点について一括してお答えをいただきたいと思います。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 その問題は私がお答えし得ると思います。ボーダー・ラインを侵すとめんどうがありますから、ボーダー・ラインをなるべく侵さないように協力していただかなければならぬと思います。ボーダー・ラインをどこに引くかということは、これはまた他の問題として、これはできるだけ広くしたいということで、お話の点はココムの問題などに関係するのでしょうが、これはやらなければならぬ。そしてまた現にそれをやってもらうべく、これも困難な問題ですけれども、ゼネバを中心として実は非常にやっておりますが、これは他の問題。この中国使節団との交渉は、ボーダー・ラインの範囲内というか範囲外というか知らぬが、これに差しさわりのないような品目について一つ協定をしてもらいたい、こう考えております。  それからあなたのお話は、物資交換の方法を円滑にするために、外貨の割当及び品物の品目をいろいろバラエティを多くするということじゃないかと思いますが、これは私といたしましては、これらのことについてできるだけの便宜を供与するように取り計らいたい、こう思っております。ところが外貨割当とか、この品物の問題は、実は私の直接管掌しておる問題でないものですから、私の今申し上げることは、一般的の気持として申し上げたのです。それでお許しを願いたいと思います。
  115. 植原悦二郎

  116. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣に対する質問の前に、ちょっと杉原防衛庁長官にお尋ねしておきたいと思います。防衛の責任者である長官といたしましては、できるだけ世の中が平和であって、防衛力の発動に及ばない方が望ましいと考えておられると思うのでございますが、そういう建前から、今の国際関係ですみやかに日ソの間に一応合意の上で戦争終結宣言をやった方がいいと考えておられるかどうか、その点を一言お尋ねしておきます。
  117. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいまおっしゃいましたように、私防衛の方の責任でございますが、防衛の目的から見まして、それが発動しないで済むということ、その点を常に考えていかなければならぬことだと思います。  それから今お尋ね日ソ関係について、戦争の終結宣言をやった方がいいと考えておるかどうか、この点は外務大臣の所管事項でありますが、私が防衛庁長官としての立場から申し上げますと、私は戦争終結宣言問題に関しまして中心的な大事なことは、戦争の終結ということになるに違いない。そこに持っていく方法としましていろいろの方法がある。結局大事なことは、両国の間に戦争終結について意思が合致するということ、そこが一番大事なんです。そこに行くまでに、これは一つの方法としてはあるいは戦争終結宣言というようなことも考えられると思います。しかし今日ソ話し合いをやるということになっておりますから、その過程におきまして、向うから戦争終結意思表示をするという、そうしてまた戦争終結意思表示の方法は、必ずしも終結の宣言という方式によらないでもいいだろう、こういうふうに考えております。
  118. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいま管轄のお話が出ましたけれども、今は特に日本においては防衛力の問題が一つ外交と密接な関係がある、これは離せないのですから、特にこの点を長官にお伺いするわけですが、もちろん御指摘のように方法はいろいろございましょうけれども、かりに日ソ交渉が始まって、ソビエトの方から、一つお互いにここで戦争終結宣言をやろうじゃないか、こう言ってきた場合に、それに応じてそういうことを早くやった方が方法としてよいとお考えになるかどうか、それを長官の立場から一つ答弁を願いたい。
  119. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は端的に申しますと、戦争終結意思表示が大事だと思っております。その方法は必ずしも宣言というんじゃなくてもいいものだと考えております。
  120. 松本七郎

    松本(七)委員 意思表示が大事なんですけれども、その方法は必ずしも宣言でなくてもいいのですが、しかし宣言向うがやろうじゃないかと言ってきた場合には、これに応じた方がいいと考えられますか、ほかの道を取った方がいいと考えられますか。
  121. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 交渉に入ってしまえば、今申しますように、正常化をはかろうというのですから、当然に戦争終結について話し合いがあるに違いない。だから自分の方は戦争終結意思がある、日本側もむろん異存のあろうはずはない。だから私は先ほど申しますように、終結の宣言というもう一つ前に、戦争終結意思表示があって、こちらもそれに同意だということであれば、これはその交渉の過程においてはっきりしますから、そういうことが実は大事だと私は思っておるのです。しかし今お尋ねの点は、方法として向う戦争終結宣言をしたいというときは、私はこれを拒む理由はなかろうと考えます。
  122. 松本七郎

    松本(七)委員 なお詳しくお尋ねしたいのですが、外務大臣の割当時間がなくなりますので、あとに回したいと思います。  鳩山内閣外交政策の基調というものは、対米協調ということが変らないことになっておるわけでございますが、実はそれについても、国際関係においては、たとえばソビエト側がアメリカの対外政策をどのように評価しているか、そういう第三国側がアメリカの政策に対してどのような評価をしているかということを考慮に入れた上での協調でなければ、これは限界点があると思う。そういうことを考慮に入れますならば、当然これは複雑な国際情勢下においては、一口に協調と申しますけれども、どうしても限界が出てくる。その場合に考えなければならぬのは、アメリカ外交政策がどういう過程を経てどういう状態にあるかということが一つの中心問題になると思うのですが、それについて最近のアメリカ外交政策には、一つの大きな本質的な変化が来ておるのじゃないかと思う。と申しますのは、御承知のようにマーシャル・プランが最初打ち出されました当時には、これは第一次大戦後のアメリカ資本による救済というような形でなしに、国家の計画に基いて自分の利益は度外視して欧州の復興をはかろう、こういうふれ込みだった。それがだんだん最近はマーシャル・プランというものは、結局はアメリカの資本の利益中心になされておるというふうに変つてきておるというのが、最近世界のどこでも指摘されておるところなのでございます。たとえば日本からワシントンに行っておる大使なり公使なりのMSAの評価についても、吉田内閣考えておったように、決して援助じゃないのだ、やはりあくまでもアメリカの資本の利益本位にアメリカの政策というものが一貫して考えられておるのだ、こういうことを日本人の向うに駐在しておる者の報告等にもしきりに述べられておるのですが、こういう点を外務大臣は少し考慮されて、そうしてアメリカの政策をどの程度に評価されておるか、そういう点を少しお伺いしたいと思います。
  123. 重光葵

    重光国務大臣 私は今お話の通りに共産国特にソ連の言論機関が、アメリカの資本主義は世界を征服しようとしておる、征服政策を持っておって東洋あたりに援助の形で進出しているのだと批判していることをよく承知いたしております。しかしこれは共産国の言論の批判でございます。これもむろん参考にはなりますけれども、それをもって直ちにこれをそのままだと信ずるわけには参らないので、アメリカがどういう意図をもってマーシャル・プランだとか対外援助、MSA等をやっておるかということは、その政策のメリットによって、その政策そのものについてよく検討し、われわれとしてはこれを考慮しなければならぬことだと考えております。従いまして資本主義による外国侵略をするのだというようなイデオロギーに関係したことは、あまり実際の問題としてこれにとらわれることはいかがかと考えておる次第でございます。
  124. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんからほかに移りたいと思いますが、先ほどどなたかの質問お答えになった場合に、今の中国の二つの政権の問題、これは法律的にどうなるかということは先のことで、一応は蒋介石政権を承認しておるのだから、事実上の関係を中華人民共和国政府とは結んでいく、こういうふうな御答弁だったと思うのですが、その事実上の関係、たとえば通商代表部を置く、あるいは文化交流その他貿易を盛んにやるということは、異存のない、またやっていただけると思うのですが、そういうことをやり始めるのもなるべく早い方がいいと思うのです。法律的にはどちらを正統政府と認めるかということは、最終決定は先のこととしても、事実上の関係はなるべく密接にした方がいい。それをやるのにはやはり早く一応ここでどことの間にも法的な戦争状態は終ったという宣言の形で一段階を区切った方が、私はこういう通商代表部の設置とか、文化交流とか事実上の関係を深めるのに便利じゃないかと思うのですが、この点いかがでしょう。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 今は中共の問題についてお話があったようでございますが、中共は御承知通りに、中国の革命によって起った政権であります。この政権と他国との関係はまだ十分に明瞭に規定する時期に達していないような国際情勢でございます。さような関係から今中国との間に、戦争終結宣言をするといっても、日本中共に対して戦争宣言をやっておるわけじゃございません。中共が戦争宣言日本にやっております。これは満州事変の前からやっております。さようなことでありますから、戦争終結宣言をやるということがどういう意味合いを持ちますか。少くともそういうことを今日本側でやれば大きな政治的の意味合いを持つことはわかり切っておることであります。私はまだ中国問題に関連する世界情勢がそういうような事態にまわっておらぬ、こう思っておるのでございます。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと満州事変前に中共戦争状態宣言しておる、こう言われるならば、今度は向う側がもう戦争状態は終結したのだ、こう宣言することは向うとしては当然あり得ることですね。もしそういう事態になれば、当然中華人民共和国政府との間にも通商代表部の設置だとか、いろいろな関係を今以上に深めることは可能になりますか。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 中共戦争終結宣言をすることはこれは中共の勝手でございます。それは一方的にやり得ることでございます。しかしその宣言をやったからすぐ通商代表部の設定が可能になる——可能は可能でございます。それは話し合いの上できめます。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんから一つ。きのうの外人記者クラブの昼食会の中であいさつされたことが新聞に報ぜられておるのですが、その中に最後に——最後か途中かわかりませんが、「また戦犯問題にしても巣鴨にまだ数百人の戦犯を残しておきながら、再軍備しろというのは時代錯誤である。」こう述べておられる旨が朝日新聞のきのうの夕刊に載つておるのですが、これは事実とすれば米国に対する非常に頼もしい警告だと思って喜んだのでありますが、これは事実でございましょうか。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 事実でございます。私はアメリカ関係はあくまで協力関係を強化したい、こう考えております。そのためには先ほどどなたか御意見がございまして、日米の両国民の正当な理解ということが基礎になる、こう言われましたが、私は全く同感でございます。その意味において両国の国民が納得のいくようにすべてを持っていくことが必要であると思うのであります。私はその意味において戦争の創痍——戦争をしたということは事実だ、敵味方の関係になって切り合いをやったのであります。その創痍がいまだに残っておるとすれば、なるたけ早く傷を消していって、その傷をむしろいやして忘れていく、こういうことが両国の国民の理解を増すゆえんだと考えております。その意味において特にプレス・クラブの連中はアメリカ人が大半でございますから、私はアメリカ人に日本人の感情を訴えることのよい機会だと思って訴えたのであります。われわれは協力をやる、われわれの方針としてあくまでもアメリカと協力をして密接に一つしていきたい、いきたいのであるけれども、いかにもそれについてそういう政府方針についてどうもふに落ちないという人間が日本にはいるんだ、それは戦争の犠牲者がまだ今日たくさんおる、現に巣鴨にもおる、これは何とか一つアメリカ人の方で考えてもらいたい、こういうことを私は訴えたのでございます。これは日本人のほとんど例外ない考え方だと私は考えております。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 これが事実だとすれば、そういう重要な問題をそのまま放置しながら再軍備しろという要求を出すのは時代錯誤だと言われるのはよくわかるのでありますが、そればかりでなしにもう一歩進めて、そういう再軍備しろとかいう要求を出すこと自体がこれは一種の明らかな内政干渉だ、そういう内政干渉を排するという意味からも、そういう点ももう少し強く向うに警告したらどうかと思います。こういう点に対する考え方を伺いたい。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 軍備を増強してもらいたいというアメリカ希望は、御承知通りこれは条約の規定から来ておることであって、私は内政干渉とは思っておりません。
  132. 植原悦二郎

    植原委員長 松本君の時間はもう超過しております。
  133. 松本七郎

    松本(七)委員 それではあとにします。
  134. 植原悦二郎

  135. 石野久男

    ○石野委員 一昨日の参議院の予算委員会でわが党の木村議員に対して、首相、外相、蔵相からそれぞれ本年度の防衛関係費について、特に千三百二十七億のワクは守れるということを強く強調されたのであります。ところが一方では本年度の防衛庁関係の予算として、来年度の予算として本年度より約二百億以上の多い額が防衛庁から要求されておる、そういう事情のもとでは千三百億のワクを守ることは非常に困難だと思うのでありますが、それについてただいま対米折衝をしておる、いわゆる防衛分担金の問題をどのように考えておるか。     〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕 先ほども尋ねたのですが、いま一度外相から御答弁いただきたい。なお防衛長官からも防衛庁の考え方を御説明を願いたい。
  136. 重光葵

    重光国務大臣 今の防衛庁の予算の問題でございますが、それはそのワクで行きたい、こういうことで、そういう強い希望を持って今折衝中でございます。折衝は必ずそういうふうなことに結末をつけたいと思ってやっておるわけでございます。それで御承知願いたいと思います。
  137. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛庁費と分担金の総額において、本年度のワク内でということはその方針考えております。防衛庁自体の経費の点につきましては、若干の増額の必要があると思っておりますが、それがためにもどうしても分担金の減額ということは必要だと考えまして、それについて今折衝中でございます。
  138. 石野久男

    ○石野委員 防衛長官からどうしても本年度は防衛庁費を増額したいという強い要望のあることがわかりました。そうしますと、本年度の額のワク内で、防衛庁費及び分担金を納めるということになれば、当然やはり防衛分担参の減額ということが爼上に上って来る、このことはすでにまた鳩山内閣が今度の選挙で強く国民に約束した点であるので、それといま一つはアリソン大使の、これは正式ではないけれども、一応防衛分担金は減らさないんだという要望のあることも言われておるわけであります。こういう事情のもとで政府はいわゆる分担金折衝が今答弁になられたようなふうに進むと思っておられるかどうか、いま一度外務大臣からお伺いしたい。
  139. 重光葵

    重光国務大臣 お話の通りアメリカ側で強い希望のあることも事実でございます。しかし何とかそれを双方のために意思合致のできるように努力をいたしておるわけでございます。
  140. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの御答弁で、大体政府考え方としては、防衛支出金の減額というものの折衝は可能であるというふうに見てよろしゅうございますか。
  141. 重光葵

    重光国務大臣 可能にしたいと思います。
  142. 石野久男

    ○石野委員 可能であるか、したいと思っているかという分れ道は、非常に昭和三十年度予算の編成に当って重大な問題だと思っております。それだけに政府としては国民に対してその点もまたはっきりしてきたと考えます。もしこのことができないとすれば、鳩山内閣国民を偽わるもはなはだしいといわなければならない、だから私はここで重ねてお聞きしますが、もしこの分担金の削減の問題が解決しない場合には、防衛費の増額はしないということをはっきりここで言えるかどうか、その点を防衛長官から伺いたい。
  143. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 先ほど申しましたように、防衛関係の総額は本年度のワク内でという線は堅持して行くつもりでございます。そうして分担金の減額につきましては、ぜひそれをやってもらいたいということで今努力しております。
  144. 石野久男

    ○石野委員 それではいま一度お尋ねしますが、もしこの分担金の削減ができない、一方では防衛庁費を増額するということになれば、国民を偽わることになるので政府責任はきわめて重大であると思います。そのときには政府はその政治責任をとる覚悟があるかどうかということを重ねて伺っておきたい。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 三十年度予算編成までに十分それを実現したい意向でございます。
  146. 石野久男

    ○石野委員 私は今重光外相がそういうふうにおっしゃるけれども、ただいまの御答弁の中からはなかなか困難な問題のように受け取れます。おそらくこの問題は分担金の削減はなさらないで、しかも防衛費の増額がなされるというような結果が出てくるのじゃないかというようなことを憂えるのでありまして、そういう問題をおそらく鳩山内閣は別な政治折衝の問題で解決することを考えているのじゃなかろうか、私はこのように思います。この点は一つお尋ねしなければならないんだが、前の大村長官はいわゆる原爆を所有するという、原爆には原爆、ということを記者団にも発表しておるし、そうしてまたそのことによっていわゆる原爆貯蔵ということと、いわゆる分担金の削減ということの何か政治的な取引をアメリカとやるというようなことを考えていないかどうか、政府一つ聞いておきたい。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 ちょっと今の質問の要点だけを……。
  148. 石野久男

    ○石野委員 先ほど来いろいろと問題になっているいわゆる原爆の問題でありますが、アメリカ日本原爆貯蔵を非常に要望しておるということがはっきりしていると思います。この原爆貯蔵の問題といわゆる分担金の削減の問題等を兼ね合いにして折衝がなされているのじゃないかどうかということ、これを私たちは非常に心配するわけです。そういうことがないのかどうかということです。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことは今日までないのみならず、今後もそういうふうには考えておりません。
  150. 石野久男

    ○石野委員 時間があまりありませんので、別な問題をちょっとお聞きします。先ほどアジア・アフリカ会議に対する基本態度の問題についてお尋ねいたしましたが——時間がありませんので一つだけお尋ねします。先ほど戸叶議員からも質問のありましたように、ここでは当然平和五原則を中心とする国といわゆるSEATOの中で固まっている国との折衝が行われるわけであります。そこで問題になるのは、この平和五原則を中心とするネール氏あたりから、原水爆兵器の禁止とか、あるいは使用禁止等の問題が当然出てくると思います。わが国の代表がここに臨む場合に、こういう問題に対してどういう態度をとる所存であるか、外相の御意見を伺いたい。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆の問題は、先ほども御説明申し上げた通りに、これは国際連合でももうすでに取り上げられておる問題でございます。その取り上げられておる精神は、日本としてもきわめて賛成しておる精神でございます。その精神によってこれを取り扱いたいと考えております。
  152. 石野久男

    ○石野委員 昨日のプレス・クラブでの外相の談話の中に、いわゆるかけ橋論があったのですが、そのかけ橋論は、東洋文明と西洋文明とをつなぐという意味だと先ほど答弁がありました。私はその場合、これは私ども考えておったような、いわゆる東西の両方をつなぐという、今日米ソの問題が非常に重大なときでありますので、そういう中に立つという発言であったかと思ったら、そうでなかったようであります。そこでお尋ねしますが、よく新聞などでは、日本アメリカ・グループとしてこの会議に臨むのだ、こういうように伝えられておりますが、このアメリカ・グループというのは、いわゆるSEATO会議に集まる、そういう立場を意味するのであるかどうか、そしてまた、そういう立場で行けば、このSEATO会議は原子力、機構だとかあるいはそれの統一事務局の設定ということなどをきめておりますので、当然そういうものを是認するという立場で臨まれるのかどうか、この点を一つお聞きしておきたいと思います。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 日本は、SEATO関係会議にも列席しておりませんし、また条約にも何ら関係はございません。
  154. 石野久男

    ○石野委員 最後に一問だけお尋ねします。先ほど質問にもあったのでありますが、ただいま中国から貿易使節団が来ております。簡単に一つだけお聞きします。この使節団は、いわゆる取引に対する協定を結ぶことが大きな使命になっておりますが、政府はその取引協定というものができました場合に、これを吉田内閣当時のように全く無視するのかどうかということを、簡単でよろしゅうございますから、一応外相の御意見を承わりたい。
  155. 重光葵

    重光国務大臣 無視する意向はありません。
  156. 須磨彌吉郎

    須磨委員長代理 菊池義郎君。
  157. 菊池義郎

    菊池委員 ただいま日本とフィリピンとの交渉が続けられておるのでありますが、私は南方の賠償問題について、至って実際的に、しかも実行可能な事項についてお伺いしてみたいと思うのでございます。  まず最初に、賠償実行についての原則であります。ドイツのごときは、最初から戦勝国を一まとめにして、そうして賠償の総額をきめまして、それから賠償の額を各国に振り当てる、そういうような方式でもって賠償の支払いに当っておるようであります。     〔須磨委員長代理退席、委員長着席〕  日本といたしましても、最初はこのドイツの方式にならってそのようにする方針であったはずです。ところが、いつの間にかそれが変って、一国々々を相手にして賠償の交渉をしているが、それは大へん高いものにつきはせぬかと思うのです。国策上非常に不利益じゃないかと私は考えるのですが、これについてどういうようにお考えになりましょうか。
  158. 重光葵

    重光国務大臣 ドイツは、私の承知しているところでは、敗戦国として立ち上るのには、そういう賠償等の義務は大いに努力をして、進んでこれは払うべきだというような、何といいますか、積極的な国民意識をもって出発したということを承知いたしております。そういう関係で今お話のようなことに相なっておるであろうと思います。それが今日ドイツが大へん経済復興した大きな原因かもしれません。日本の今日の賠償交渉状況は、ややこれとは異なっております。日本の経済力は非常に低い、少いので、その経済力に応じてできるだけ勉強をしようと、こういう立場から出発をいたしております。サンフランシスコ条約によって賠償は役務賠償ということに相なっております。現金賠償でない。そこで、サンフランシスコ条約に入っていない国々との間は、そういう規則がございませんから全面的にこれを交渉しなければなりません。ビルマとの間にも、自由党内閣のときにその交渉をいたしまして妥結を見たわけでございます。それはむしろ今お話のドイツ方式と申しますか、金の総額をきめてやっておる方式でございます。フィリピンの賠償でございますが、フィリピンの賠償も、これは実にいろいろ複雑な経緯がございました。それはフィリピンの政情の複雑なことからも来るのでございますが、賠償の総額をきめてどんどんやるというわけにはなかなか参りません。そこで今日では、それよりも、何がほしいのか、どういうものがほしいのか、これをまず専門的に検討をして、それから一つ賠償額や賠償方法などを案出したらよろしかろうというので、今専門委員をフィリピンからこちらに招いて、その招請にはフィリピン側は快く応じてくれました。そうして今ここで毎日折衝をいたしております。そこでそういう方法によって——お話のドイツ方式とは違いますわけでありますが、さような方式で行くことが、一番賠償問題を片づけるのには近道であろう、こう考えておる次第であります。
  159. 菊池義郎

    菊池委員 戦争中に軍閥内閣が、もうこの南方諸地域をすっかり自分の保護領にしたつもりで、勢力範囲に取り込んだつもりで、予定して南方圏に医者をたくさん送ろうというわけで、全国に医科大学が乱立いたしました。あの時分に作ったものであります。ところでこの医科大学を乱立いたしました結果、医者が増加して大へんな重大な問題になって、今後十年もたったら医者は全く転業せなければならぬというくらいな重大問題が起っておるわけであります。それで、賠償の対象といたしまして医者を向うへ、つまり医療を賠償に充てる、あるいは薬剤師を送ろう、そういったようなことをこの賠償の中に取り込んではどんなものかというように考えられるのです。もちろん小規模のようでありますが、それではまだとうてい日本の国情を満たすに足らぬので、向うでは非常に歓迎しておりますから、大量的に医者を向うに吐き出す、こういうことも絶好機会であろうと思うのでありますが、これについてはいかがでございましょうか。どういうふうにお考えでしょうか。
  160. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことも考えて今折衝しておるそうでございます。
  161. 菊池義郎

    菊池委員 それから農業の開拓団、そういうものを取りまぜて大量に送ろう、そうして賠償に充てるという方式も両国の話し合いによって幾らでもできることです。別に国交回復をしなくても両国の折衝において幾らでもできるのであります。南米あたりに大へんな旅費をかけて出すよりも、こういう機会をねらって、大量的に農業開拓団を向うに送る絶好機会であろうと思いますが、これについてどういうようにお考えになっておりますか。
  162. 重光葵

    重光国務大臣 御承知通りに戦争中の空気の反映もありますが、開拓団を南洋に送るというような時期になっていないようであります。向うの受け入れ態勢がなかなかそこまでいっておらぬのでありまして、そこでこれはむずかしいといわざるを得ません。しかし開拓団が自由に向うに入り、向うもこれを歓迎するような空気になるためには、これは相当長い間の日本人の努力を要します。その努力は各種の機会において続けていかなければならぬと思っております。
  163. 菊池義郎

    菊池委員 私は向うに参りまして、向うの指導者あたりに会ってよく話しましたが、日本人が国籍を脱して来るならば大量的に受け入れることができる。二千万人なんということはほらでしょうけれども、そういうことを言っておる。そういうように日本人の農業移民を歓迎しておる。支那人はこわがられております。支那人はすぐ金貸しになるということでこわがられておりますが、日本人は非常に歓迎されておる。国交の回復しない前から折衝されておいたら非常にいいだろうと考えます。
  164. 重光葵

    重光国務大臣 さようなふうな報告もありました。またそれにさようでない報告もございまして、これはジャワ——ジャワといいますか、インドネシアに対する計画だけでなくして、他の方面、たとえば豪州の関係、いろいろな関係にも考慮する必要があるのでございます。しかしいずれにしても開拓移民等がたくさん行き得るような環境または国際情勢になるように、せいぜい努力をいたさなければならなぬと思っております。
  165. 菊池義郎

    菊池委員 外務省に移民局を設けたいというような希望があったようでありますが、この移民局を設けてもう少し積極的に移民を送るように努力せられてはどんなものですか。
  166. 重光葵

    重光国務大臣 今私もさように考えております。これは人口問題に直接関係しております。食糧問題にも関係しております。この重要な移民問題を少くともある程度進めていくために、さような機構を必要とするのであります。それがために今大蔵省との間に困難な折衝を続けております。
  167. 菊池義郎

    菊池委員 南方の賠償原因と損害ですが、日本が加えた損害は至って少い。日本の進撃をはばむために橋梁を破壊する、日本人の宿泊を妨害するためホテルを焼き学校を焼く、そういうふうにしてその損害の起った原因の六割、七割は、彼らみずからのゲリラ戦によるということははっきりしておる。そういうことを外務省でもって調べられてこの賠償等の折衝をやっておられるのですか。
  168. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそれは検討していろいろ調べてやっております。
  169. 植原悦二郎

    植原委員長 高津正道君。
  170. 高津正道

    ○高津委員 重光外相に質問いたします。同僚穂積議員の中国貿易使節の視察範囲についての御答弁の中で、双務関係という言葉が出まして、私はすぐに鉄のカーテン、竹のカーテン、日本はそれだから菊のカーテンでいくんだというように頭に浮かんだのであります。まだ巣鴨に戦犯がおるのをそのままにしておいて、軍備の増強をアメリカさんが要求するのは時代錯誤である。英語ならアナクロニズムという言葉だと思いますが、それらについていろいろ言いたいのでありますけれども、小さく見える、しかし大きな問題をここでお尋ねしようと思います。  政府日ソ、日中の国交回復希望して、中ソと、あるいは政府として会談をしたり、あるいは民間が交渉を持つのを見るような態度をしておられるのでありますが、国交回復には文化の交流あるいは貿易の推進ということが大いに役立つことは、だれもの常識であろうと思うのであります。そういう見地からの質問でありますが、今日本の地学団体研究部会が本日、すなわち三月三十一日から四月二日まで、また日本地質学会が四月四日から七日まで総会をするのであります。会場は東京大学理学部二号館大講堂及び東京大学文学部教室を使ってその規模はきわめて大きいようでありますが、この二つの学者の団体がその総会に中ソの学者を招き、中国地質学会の代表許傑など学者四名、外に随員二名、計六名、ソビエト科学アカデミーからは、同会の代表フェドルクロフ氏などの学者、通訳計四名、合計中ソで十名でありますが、それを参加させるとの意思表示があって、ソ連の学者一行は現在ストックホルムに、中国の学者一行は香港に待機して、日本政府の入国旅券のおりるのを待っているのであります。また日本学術会議の茅会長から外務省に対して旅券の申請をして、それらの人々のために、日本の参加者もまた入国許可がおりるのを今か今かと待っているのでありますが、私は政府日ソ、日中の親善、国交回復を真に希望していられるのであれば、このような場合に、一日も早く好意的に十分の便宜を与えられるべきが当然であろうと思うのであります。この内閣の松村文相は、科学立国を強く主張しておられるので、これら学者の要望をむげにけられないようにすることが、この内閣の政策らしくなるだろう、私はこういうことも思い浮べながら、外相のこの問題に対する御見解をお伺いいたします。何かそうはできないという理由があればそれをもお示し願いたい。二つであります。
  171. 重光葵

    重光国務大臣 今の旅券のお話ですが、香港または、ストックホルムのわが公館に対して査証の申請などは出ていないということです。何かもし申請があれば、審査の上で入国を許可するかどうかということをきめる、これは普通の手続でございます。そういうことのようでございます。
  172. 高津正道

    ○高津委員 ストックホルムにおける日本当局あてに、入国査証の番号は五七九番で、そうして向うの方から日本に対してそれをただしてくれということがこちらの学界あてに電報が来ておるそうであります。大臣あるいは関係局長はそれを御存じないでしょうか、学界はそれを伝えたと言っております。
  173. 重光葵

    重光国務大臣 それはあなたにその番号が来ておるのでしょうか、学会に来ておるのでしょうか。
  174. 高津正道

    ○高津委員 学会に来ておるのであります。私は学会から、外務委員をしておるので、こういうようになっておるという経過を聞いたので、これは学会が外相に伝えておるに違いないと信じております。
  175. 重光葵

    重光国務大臣 その旅券の番号というのは向うの、つまりソ連の旅券の番号であり、査証申請番号でないのじゃないかという知らせがうしろから参りました。
  176. 高津正道

    ○高津委員 そうであるならば、向うからもそういうように要請をして来ておる、日本学術会議は学者の一番権威ある団体でありますから、そこの茅会長などからそんなに熱心に要請があるならば、これに便宜を与えていただきたいと私は思うのです。外務大臣内閣の性格から見て、それこそ大所高所に立って大いにやってもらいたいと思うのです、御意見はいかがでしょうか。
  177. 重光葵

    重光国務大臣 その御趣旨は私は少しも異存はございません。しかし旅券のことでありますから、旅券の手続がありますから、それによってこれは取り計らいまして、少しも異存はございません。よく取調べさせて御報告いたします。
  178. 植原悦二郎

    植原委員長 高岡大輔君。
  179. 高岡大輔

    ○高岡委員 いろいろ話が出ておるので重複をいたしますから、ほんの要点だけ一つお聞きします。先ほどからアジア・アフリカ会議には平和五原則が議題になるということでありますが、一応皆さんお尋ねなっておりますが、これはコロンボ・グループでアジア会議の議題をきめるということから、そういう推測が行われておるのでありましょうけれども、必ずしも平和五原則が議題に上るとも考えられないかと思うのであります。先ほど外務大臣は平和五原則は非常に言葉がりっぱで云々とおっしゃったのでありますが、この平和五原則はネール氏がガンジーの思想を受け継いでおるということも御存じでありましょうし、またネール氏その者の人となりも研究なさっておりましょうし、また周恩来と会談をしました当時の、いろいろの発表の言葉も一応研究なさっていらっしゃいましょうし、いろいろなことで平和五原則についての私の考え方を今ここに述べようとは思いません。いたずらに時間がかかりますからそれは省略いたしますけれども日本として、このアジア・アフリカ会議に提案する何か議題をお持ちであるのかどうか、もしもおありとすれば、少くとも今日の国の機構上、国会、少くとも外務委員会にその議題を明示されます御意思があるのかどうか、そういう機会がありますれば、その際そういった問題について少くとも外務委員会において、十分審議すべきものだ、かように考えております。  なお時間がございませんので、続けてみなお尋ねする要点だけを申し上げます。この会議には会議そのものと同時にとでもいいましょうか。俗に言う別な休憩時間とでもいいましょうか、ベランダでトウいすに寄りかかっておるときのような、そういうときに、私は賠償問題は十分ここで話し合いができるのではないかと考えるのであります。しかもその賠償問題につきましては、私は多少見解を異にするのでありますが、これは初めから額をきめてかかるということは、外交外務大臣はその道の練達堪能な人でありますから大丈夫でございましょうが、額を先にきめるということは下の下策であって、向うのまず言い分を聞くとでもいいましょうか、そういうことのアウトラインを十分につかんだ上で、それを日本がやることにおいて、日本がみずからそこに計算すべきものでありまして、たとえていえば、向うで土地改良を必要とする場合には、向うのいわゆる計算でやるべきか、またこれを日本が受け取ったような格好で日本がするかということにおいて、ここに非常に金額の上において相違が出てくる。そういう面でいろいろと数字的には相違が出るのでありますから、その点初めから金額で交渉するということは、最も下策ではないかという感じがするのであります。  しかももう一つ会議の中に考えなくてはいけないことは、これは全然別個の問題でございますけれども、御承知のように、日印平和条約が結ばれましたが、これには在インドの資産の返還があります。この返還の金額は、私の聞いておりますところでは、約九十億円あるという話でありますが、このうちの二割の二十億円程度は、ネールさんの希望で、これを日本とインドとの文化親善のために使いたい。一口に申し上げますれば、日本において使うべき約十億近い金額の中で、日印会館というようなものを作って、そこでインドの研修生その他のいろいろのあっせんをする、ないしは日本向うでいろいろな施設を作りたいというようなことを聞いておるのでありますけれども、これらの問題から考えまして、私は今後こういう諸国に対して文化使節のようなものを派遣するとか、文化協定のようなものを作りまして、実際日本がアジアに重点を置いているということを形の上で示すのは、このアジア・アフリカ会議がその最もいい機会だ、かように考えているのであります。イギリスにおいては御承知のようにブリティッシュ・カウンシルのような大規模な行き方で行っておりますし、またアメリカはアジアに対してFOAその他いろいろのことで力を入れております。今日日本としてはただ単に口先だけのような感じがしますが、これらについての外相の御意見一つお示しいただきたい。
  180. 重光葵

    重光国務大臣 時間が少いようでありますから、ごく簡潔に御答弁申し上げます。  インドの資産の返還、またこれを文化交流方面に利用したらどうかというような御趣旨のことは、しごくけっこうなことではあるのでありますが、インドの返還資産は、金額にして十六億ほどになるのでありますが、日本にあるインド財産の返還とのにらみ合せで、なかなか実現が容易にできておりません。文化交流のことは、文化協定でもこしらえたいという意向は持っておりますが、まだその運びに至らないのであります。  賠償問題については、先ほどどなたかの御質問に対してお答えを申し上げたことによって大体御了承をいただきたいと思います。今あなたの御説はその趣旨において私は同感でありまして、その意味先ほどお答えをしたかと思っております。  アジア・アフリカ会議の議題その他のことをここで討議をしてやったらよかろうということでありますが、これは政府責任でやるよりほかに方法がないと考えます。  また五原則のお話がありましたが、これがガンジーやネールの思想とどれだけ通じており、それを基礎としておるかということは、私は非常に深い研究はいたしておりませんけれども、私はそうとは思いません。五原則というものはごく外交上これまで言い古されたことを五つ並べた原則だ、私はこう思っております。そうしてそれはどこの国もそういうような不干渉とか不侵略その他のことは、もう当然のこととして言い古されたことのように少くとも外交関係においては見られるのであります。それを五つの原則としてそのときに当てはまる一つの大きな政治効果をねらったものであることも想像にかたくないのでございます。大体以上の通りであります。
  181. 植原悦二郎

    植原委員長 これで総理大臣外務大臣に対する今日の所定の質疑は終りました。松本七郎君から特にこの場合防衛長官に質問したいとのことでありますから、これをごく少時間である条件において許します。松本七郎君。
  182. 松本七郎

    松本(七)委員 大へん時間がおそくなりましたから、質問事項は山積しておるのですが、あとにまた譲るといたしまして、二、三だけお伺いしておきます。  防衛長官に特にお伺いいたしますのは、先ほども申しましたように、今日の特に日本においては防衛ということと外交が切り離せませんので、特に長官のお考えをこの際はっきりお伺いしておきたいと思うからでございます。  まず第一に、杉原さんは長官に就任される際に、特に外務大臣と大蔵大臣の協力方を求められて、その確約を得て後に防衛長官に就任を承諾されたということが伝えられております。そのときのお考え方、どういう理由から特に外相と蔵相の特別の協力を求められたのかを御説明願いたいと思います。
  183. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいま松本さんからおっしゃいました通り、防衛と外交というものはその国家目的からして分つべからざる関係にあることは申すまでもありません。そしてまたそういった一般的のことだけではなく、日本の現在の実情からいたしまして、特にまたその点がわれわれ深く痛感されるのであります。そしてこれは日本の内政の問題としましても、また外交の問題としましても、その両面にわたって非常に困難な問題があると思います。そして内政の問題につきましては、ただ単に財政というだけじゃないけれども、特に財政の面に具体的にしぼられる点が非常に多いということは申し上げるまでもありません。また防衛とアメリカとの関係につきましては、密接な重要な関係があることも私が特に申し上げるまでもありません。そういう点からいたしまして、この両方との関係を調整しなくては、私は防衛の任務といいますか——承知通り自衛隊法、防衛庁法というものでこの防衛庁の任務、自衛隊の任務というものもきめられておるのであります。またそういう法律とは別にしましても、日本の今後の防衛をどうもっていくかという点につきまして、特に財政の面、また外交の面との調整なくしては、私はできないことだと考えております。
  184. 松本七郎

    松本(七)委員 非常に妥当な考え方だと思います。今日日本の大衆は国際政治の問題についても感覚が非常に鋭くなっておるわけであります。非常に成長しております。そしてこの総選挙を通じまして鳩山総裁以下民主党は、自主外交ということと日中、日ソ国交回復を非常に大きく訴えたわけであります。これについては今は杉原さんは防衛の方の責任者になっておられますけれども、第二次鳩山内閣ができる前は、相当杉原さんは民主党内において外交問題の専門家だ、こういうふうに一般の大衆は受け取っておった。そして鳩山さんの選挙に対するところの公約、外交問題に対して発表された御意見については、杉原さんの御意見というものが相当反映しておるというふうに国民は理解しておると私は思います。そういうような国民側の受け取り方というものも今後ほんとうに民主政治を確立していく上においては度外視するわけにはいかないと思う。そこで私が先ほどから聞いておりますのは、国民はこの民主党に内閣を組織する程度の数を与えたということは、やはりこの国交調整国交回復ということに大きな期待を持っておるからだと私は思います。ですから何とかして具体的に前進する政策を一歩でも鳩山内閣はとるべきである。そういう観点から特に先ほどから平和宣言ということも取り上げて御質問しておるわけでございますけれども、きのうからの参議院における答弁を聞いておりますと、何かすべての懸案を解決してしまってからでなければ、外交関係の代表の交換だとか——もちろん条約ができなければ大使の交換なんてできませんけれども、実質的な文化の交流、あるいは通商代表部の設置というような、できる程度のことを早くやるべきじゃなかろうかと思うのですが、そういう点についての長官の御意見を伺っておいて、何か具体的な、こういうふうにしたらそういうことができるだろうというような御意見がございましたら、一つ御披露願いたいと思います。
  185. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今おっしゃいました、つまりすべての懸案が解決した後でなければ国交回復ということはしない、そういうふうに必ずしも持っていくべきじゃないかという御意見だったように存じますが、そういう点は今政府でも十分考え方の中に入れてやっておることだと思います。何分交渉内容の問題でありますし、あまり私から申し上げることは御遠慮申し上げることが至当だと思います。御了承願いたいと思います。
  186. 松本七郎

    松本(七)委員 お立場上あまりこの問題を深く御答弁願うことは御無理だと思いますから、この程度にしておきますが、先日の御答弁の中に、憲法第九条に関連した中で、自衛隊は国際的には軍隊であるというような御答弁をされたように新聞で報道されておりますが、このことはどういう意味でありますか。
  187. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 御承知通り自衛隊は自衛隊法によって法的に性格づけられております。そうしてそれはわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つために、直接侵略及び間接侵略に対して国を防衛することを主たる任務とするということが規定されております。そしてまたその任務を果すために武器の保有ということが許されており、それから外国からの武力攻撃があった場合、国会の承認を経ていわゆる防衛出動することができる。そうしてその防衛出動した場合には、その武器の使用については国際の法規慣例を守らなくちゃならぬ。またさらにその具体的の事態に応じて、合理的に必要と判断せられる限度を越えてはならない、こういうふうに規定されております。今申しましたような自衛隊の性格からいたしまして、いわゆる普通の常識で軍隊という場合、大体外国からの武力攻撃とか、あるいは外国からの侵略とか、それに対抗する任務を持った実力部隊は、これは軍隊だというのが普通の常識観念かと思います。従ってその意味でならば軍隊と言っても差しつかえなかろう。しかしながら自衛隊は、法によってそれぞれ陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊というふうに、その名称も法定されております。従ってこれを公けに置く場合に勝手に名前を変更するわけには参りません。もし軍隊と呼ぶならば、法の改正を必要とすることは申し上げるまでもありません。それから国際法上の点でございますが、私がここで講釈申し上げるまでもなく、御承知通り国際法上の観念におきましては、主として実質的に外国との武力抗争に備える任務を持っておる実力部隊という実質的観念を中心としたものだと思います。そしてそれがどういう名前のものでどういう編成のものということは、これは国内法に譲っておると思います。そして今国際法上問題になる主たる点など一、二申し上げますれば、御承知通り俘虜の待遇を受ける権利—これは今の自衛隊でもそういう事態になった場合には、もちろんこれは希望する事態でございませんが、法律論として言いますと、俘虜の待遇を受ける権利があるということは、これはへーグの陸戦条規の、ほとんど成文法というよりも、実質的に国際法の規則として確立しているところだと私は思いますが、それからしましても、またジューネーヴの条約等からいいましても、俘虜の待遇を受ける権利があることは、私は明瞭であろうと思うのであります。そういった意味合いにおきまして、現在といいますか、国際法でも御承知通り軍隊ということで行く。ことに戦時国際法の場合には、交戦国の兵力ということを中心に考えて法律問題が取り扱われることが多いと思いますが、今申しましたような意味合いにおきまして、国際法上はそういった兵力ないし軍隊というものの受ける待遇を受ける権利はあるだろう、こういう私の見解を申し上げた次第でございます。
  188. 松本七郎

    松本(七)委員 結局国際法的に見ればこれは軍隊、質的にも軍隊であるから、軍隊と言ってもよろしい。しかし国内では法によって自衛隊という名前がついておるのだから、これはやはり軍隊というより自衛隊という方が呼び名としてはいい、こういう御意見だと思うのですが、そうなると、鳩山総理大臣の御答弁にもありましたように、鳩山さんの解釈では、自衛のためのものならば軍隊を持ってもいいのだというのですが、こういう解釈をとるとすれば、国内的にも—長官も、実質的にはやはり軍隊だ、けれども法で自衛隊と言っているから、公的には呼び名は自衛隊の方がいいのだ、こういうわけですから、鳩山さんのような解釈がここに確立されるとすれば、当然実質に適応した名前に改正した方が、実質と一致してはっきりしていいということになると思うのですが、いかがですか。
  189. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今御質問の点は、自衛隊法それ自体との関係もありますけれども、むしろ憲法の九条の問題にも関係してくる問題だと思います。それで九条の解釈の問題でございますが、御承知通り第一項については、これはもうこれで禁止の対象となっておるものは、国際紛争の解決手段としての戦争と、武力による威嚇、武力の使用ということになっております。これはいわゆる平和条項、平和主義の原則をここではっきりと書いている。これは御承知通り日本だけの憲法でありますが、こういう立法例はたくさんあるわけではございません。この点ではそういろいろ解釈の相違はないのじゃないかと思いますが、二項の方は非常に説が分れておることは特に申し上げるまでもありません。そうしてこの分れておる説というものは、一方の説が他方を説得し切るだけの力がなかなかないように私存じます。私の従来考えておりますところでは、自衛の目的のためだからといって無制限に持つことが許されておる精神じゃない、その目的論だけでいくのじゃないと思います。自衛の目的、そそうしてれに必要相当の限度というものがあると思います。必要相当の限度というと非常に抽象論のようになりまが、これはしかし法律の性質上おのずから抽象論になると思いますが、そういう点が、具体的にはその定員とか、その他編成、装備とかいうことで具体的になってきますが、そういう点は、それじゃ具体的にどうするかという点については、これはすべて法律事項でございますから、まず政府責任をもって判断して、そうして、案を国会にかけて、国会で決定さるべきものだと存じます。
  190. 植原悦二郎

    植原委員長 松本君、まだ長いですか。
  191. 松本七郎

    松本(七)委員 今委員長に申し上げようと思っておったのです。まだたくさんありますけれども……。
  192. 植原悦二郎

    植原委員長 もう時間が時間ですから、各委員の心情をも御考慮願って処理していただきたいと思います。
  193. 松本七郎

    松本(七)委員 今非常に重要な答弁ですし、これを続けますとまた長くなりますから、まだほかにもございますが、またの機会に出ていただいてゆっくりすることにして、きょうはこれでやめます。
  194. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十五分散会