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1955-07-04 第22回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月四日(月曜日)     午後二時七分開議  出席委員    委員長 高岡 大輔君    理事 臼井 莊一君 理事 辻  政信君    理事 堀内 一雄君 理事 中山 マサ君       赤城 宗徳君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君       高橋  等君    山下 春江君       河野  正君    島上善五郎君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         検     事         (保護局長)  齋藤 三郎君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         文部事務官         (調査局宗務課         長)      宮川 孝夫君         厚生事務官         (引揚援護局援         護課長)    大崎  康君     ————————————— 七月四日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として島  上善五郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  遺家族及び留守家族援護に関する件     —————————————
  2. 高岡大輔

    高岡委員長 これより会議を開きます。  本日は遺家族及び留守家族援護に関する問題について議事を進めます。堀内委員より靖国神社合祀の問題について発言を求められております。この際これを許します。堀内一雄君。
  3. 堀内一雄

    堀内委員 旧軍人出征後戦死または病没の際に靖国神社に祭られるということは、出征の際の非常な誇りであり希望であったわけでありまするが、それが敗戦後いろいろ状態が変ったために、いまだに奉祀してない英霊がたくさんあるというようなことを聞いておるのでありますが、現在靖国神社に対する英霊奉祀状況という点を伺っておきたいと思います。
  4. 宮川孝夫

    宮川説明員 御説明申し上げます。現在の靖国神社終戦前までの祭祀は三十七万五千柱でございます。そして終戦後昨年の秋までに六十万柱の合祀をいたしております。そのうちで四十万柱につきましては遺族通知をいたしております。残りの三十万柱につきましてはまだ通知が発送されていないそうであります。そして大東亜戦争英霊は大体二百万と見込んでおるそうでありまして、そのうち六十万が一応合祀いたされておりますので、あと百四十万柱が残っておるという現況でございます。靖国神社といたしましては、大体この四、五年以内に合祀を終りたい、こういうところで進んでおるということでございます。
  5. 堀内一雄

    堀内委員 卑俗に三年たてば墓を建てるとかいうようなことを言いまするが、すでに終戦後十年になり、しかも合祀した英霊は四分の一というようなことで、今後なお四、五年かかるというようなことは、まことに英霊に対しても遺族に対しても申しわけないと存ずるのでありますが、この点に対して政府の方面からこれを援助するとか指導するとかいうようなことがしてあるのかどうか、その点を伺いたい。
  6. 宮川孝夫

    宮川説明員 御存じのように、憲法上、宗教団体に対しましは国としては財政的援助を与えてはいけない、それから国自体がどんな宗教活動をしてもいけない、こういうような規定がございますので、現在国としては特別の措置はとっておりません。ただ、合祀に対しましては、慣例によりまして、靖国神社としましては、復員局とか、現在は引揚援護庁にお願いをいたしまして名簿をちょうだいして、それでお祭りをしておるというようなことであります。  それから、ついででございますから関連として申し上げておきますが、この靖国神社が今後英霊合祀いたしますためには、約六億円の経費が要るというように申されております。この六億円を調達いたしますために、援護団体と申しますか、靖国神社讃会というものを作りまして、これは昭和二十八年の十一月十六日に発足をいたしまして、会長は北白川祥子さんであります。この現在の支部設置状況は、東京、福岡、鳥取、佐賀、徳島、岡山、大分、山口、埼玉、三重、長野、十一都府県で支部が設置されております。そのほかに、近日中に群馬県、それから青森県、鹿児島県、島根県、長崎県、大阪、この六府県で支部が設置されるというように承わっております。本年六月までの協賛額と申しますか、集まりました、——これは現金で集まったということではないと思うのでありますが、申し込みを受けました協賛額が大体六千万円というふうに承わっております。
  7. 堀内一雄

    堀内委員 第一に、何か英霊靖国神社合祀するということの法的根拠があるか、戦前、戦後の変化の状態等をお伺いしたいのであります。
  8. 宮川孝夫

    宮川説明員 靖国神社の成立のときからのことを申し上げてみたいと思います。明治維新前後国事に殉じました人たちの霊を初め、その後西南の役、日清日露日独戦争、それから済南事変満州事変、それから上海事変、大東亜戦争等に身を賭した人々の霊を合祀するということになっておるのであります。初め明治元年にごさたがございまして、嘉永年間以来国難に殉じた人たちの霊を合祀するということになりまして、明治二年に九段の坂上に東京招魂社というものができたわけでございます。第一回のお祭りは同年の六月二十九日から五日間にわたって行われております。それから同十二年六月四日に靖国神社と改称いたしまして、別格官幣社ということになっております。こういうことで、ごさたによりまして合祀するということになっておりますので、その他特別に法令はなかったようでございます。ただ、経費の面から申しますと、当時、靖国神社経常費及び臨時費に対しまして、国から終戦のときまで補助金が出ております。これは所管陸海軍省の共管になっております。予算といたしましては陸軍省予算に計上されております。ちょっと御参考までに申し上げますと、昭和十九年、二十年の決算書から見たのでございますが、経常費といたしましては、靖国神社供進金ということで、十九年度も二十年度も一万二千円ずつ計上されております。
  9. 堀内一雄

    堀内委員 そうすると、靖国神社英霊合祀するということは、明治天皇のごさたによって行われておるというふうに解釈していいわけですね。そうすると、その次に、ただいまのお話で、現在靖国神社単独宗教法人というようなことになっておるやに聞いておるのでありますが、この宗教法人、むしろ靖国神社は、今のようなお話からいっても、これは皇室の関係なり日本の国なりの廟所といったような意味が強いので、宗教といったような意味は非常に少いのじゃないか、御利益を拝む宗教でなくて、先祖の廟所というような意味に解釈する方が至当じゃないかと思いますが、当局はいかようにお考えですか。
  10. 宮川孝夫

    宮川説明員 ただいまの御質疑に対しまして御説明を申し上げます。今堀内先生がおっしゃいましたようなこともあるかと思いますが、現状では一般宗教法人としての扱いになっております。ただ、靖国神社特異性と申しますか、そういう面から申しまして、一般神社は大多数神社本庁所管法人になっております。それの包括団体として神社本庁ができておるのでありますが、靖国神社は単立法人としてでき上っておる、こういう現状でございます。単なる墓というような工合に解釈ができますかどうか、今のような祭祀行事を行っております面から見ますと、やはり宗教法人というのがほんとうではないかというように私ども考えております。
  11. 堀内一雄

    堀内委員 今のように、天理教でも、そのほかの神道の方でも、みなやはりお葬式は神主が来ておはらいしてやるのが当りまえで、そういうような意味から、靖国神社のああいう儀式考えられないことはないと思うのですが、そこで、今のお話に、単独宗教法人と二つに分れておるというお話ですが、それは取扱いなり監督なりはどんなふうに変っておるのですか。
  12. 宮川孝夫

    宮川説明員 お答え申し上げます。現在の扱いといたしましては、宗教法人包括団体とそれから単立の二種類ありますが、包括団体と申しますのは、単立法人を大体数法人以上各県にわたりまして持っておるのを包括団体と申しておるのでございます。これは文部省が直接に監督、というよりは法人認証事務を行なっております。それ以外の単立法人、あるいは包括団体に入りまする並立法人も同様でございますが、それは各県の所管になっております。従いまして、靖国神社としては東京都の管轄に入る、こういうことでございます。
  13. 堀内一雄

    堀内委員 その次にお伺いしたいのは、ただいま英霊合祀するのに約六億円の金が要るというようなお答えでありましたが、関係者雑誌等に書いたところによりますれば、この六億というものの中にはいろいろな建物や何かがたくさん入っておるので、実際は一億五、六千万円であるというふうに書いてあるのですが、その六億という額の根拠をお伺いしたい。
  14. 宮川孝夫

    宮川説明員 まことに申しわけないのですが、私東京都の方を通じまして一応調査をいたしまして、六億の内容の記録を実は持っておりません。もし何でしたらば、この内訳を調査いたしまして後刻御報告いたします。
  15. 堀内一雄

    堀内委員 その次に、援護団体の奉讃会のことでございますが、これも、われわれの調査したところでは、すでに先年三千四百万円の寄付ができた、ところが、その中の三千万円と別に、三千万円を借金してあそこの休憩所を作ってしまったというようなことで、奉祀がおくれておるというようなことでございますが、その当時もこれを三年計画でやるというようなことで、その当時の計画からいえば本年くらいは全部奉祀が終っていなければならぬ。そうして三千四百万円の金が集まった、しかるにまだ奉祀されておるのが三分の一であるというようなことで、遺族並びに奉讃会に寄付した人などの中では非常に疑問に思っておる筋があるのであります。その辺につきまして、どんなふうになっておるか……。
  16. 宮川孝夫

    宮川説明員 その点は私どもの直轄の件でないというふうなことで、実は調査をいたしておりません。  もう一つこの機会に申し上げておきますが、私ども宗教法人扱います上におきましては、信仰の自由を害するということのないように非常に細心の注意をいたしておりますので、調査の面も、大体は神社あるいは寺院なりに照会をいたしまして、そのままを信頼するというような現状でございまして、それ以上突っ込んだ調査は現段階ではちょっと困難だと考えております。
  17. 堀内一雄

    堀内委員 実はわれわれは、戦争の跡始末というような意味、そうして遺族援護といったようなことを日本再建の基礎として非常に重要だと考えて、先般の恩給扶助料等の問題についても、当委員会におきましてもいろいろ論議しておったのでございますが、とにかく、この英霊軍人が最も光栄としておる靖国神社合祀するということが、終戦後十年になってもまだできない。しかもまだ前途五年くらいはかかるというようなことでは、私はまことに困ったことと思うのでございます。そこで、宗教法人になるときの経緯等が、米軍の占領直後であって、いろいろの関係でとりあえずといったようなことで宗教法人というワクに入れたのではあるけれども、実際にはいわゆる宗教ではないので、そこに非常な野川がある。もしこれが円の廟所といったようなことになりますれば、国家からもこれに補助してやれるではないか。一例を申しますれば、先般から無名戦士の墓とかいうような、名前は適当でないかもしれませんが、そういう意味のものが過ぐる議会でいろいろ問題になって、厚生省所管においてそれを作るというようなことになっておるやに聞いておるのでございますが、もしこれが廟所というようなことになりますれば、これは当然国家経費を出してやってよいじゃないかというふうにも考えられるのでありますが、その辺のことに関するお考えを伺いたい。
  18. 宮川孝夫

    宮川説明員 これは靖国神社の性格をどう解釈するかという問題になってくるかと思うのであります。現在のところ廟所というようなふうには私ども考えておりません。しかし、将来の研究問題であるとは考えますけれども、現在の扱いではやはり宗教法人というワクに入れるべきではないか、さように考えております。
  19. 堀内一雄

    堀内委員 そこで私はこういう過渡的の時代においてはいろいろ例外事項的に考えてやる必要があると思うのでございますが、この問題については、廟所でなくて、どこまでも靖国神社という名前がほしいということがあったやに聞いておりますが、私は、名前廟所でも靖国神社でも差しつかえないし、そうしてまたその儀式等も、神道はみなああいう儀式をやっておるのですから、神道儀式でやっていれば差しつかえないと思うし、同時に、私は、この際何とか方法を講じて、まだ百四十万も残っておってその三分の一も合祀してないのですから、すみやかにこれを合祀するように一つ方法を研究していただきたいと思いますので、この点政府のお考えをお伺いして、私の質問を打ち切ることにいたします。
  20. 宮川孝夫

    宮川説明員 ただいまの御希望は個人的にはよくわかるのでございますが、先ほど申し上げましたように、信仰の問題と正面からぶつかって参るので、そういうことに触れないで、私ども合祀を早めることに力が尽せる面がございましたならば、できるだけそういうふうにやりたいと考えております。
  21. 堀内一雄

    堀内委員 今あなたの御答弁の中に個人的にはというお言葉がありましたので、私しつこいようですが重ねて申し上げるのですが、こういう要望に対しまして一つ関係当局として努力していただきたいと思います。これで質問を終ります。
  22. 高岡大輔

    高岡委員長 次に、遣家族及び留任家族援護の問題について質疑の通告がありますので、これを許します。山下春江君。
  23. 山下春江

    山下(春)委員 今法務大臣が見えておりますので、法務大臣にお願いいたします。聞くところによりますと、両三日前から、第三国人で現在巣鴨拘禁中の戦犯者の人が、いろいろの条件を申し入れて総理大臣その他関係各省陳情をいたしておるようです。それに対しまして法務省ではこれの対策を御協議なさる御準備ができておるようでございますが、こういう問題に対しまして、私は、私なりに、長い間こういう問題を扱ってきた関係考えがあるのでございますが、今どうしようということは、先ほど聞きましたら本日午後から御協議をなさるということで、法務大臣としてもただいまどういうふうにきまったという御返事はないと思いますが、一般第三国人戦犯者に対する扱いについて、法務省としてどういうふうなお考えを持っていらっしゃいますか。
  24. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの御質疑の点でありまするが、それは、過般、次官会議において、この第三国人の取扱い方を、どうすべきかということをあらゆる観点から検討されまして、その結論を出されまして、そうして閣議にもこれを報告せられたのでございます。それによりますると、大体、職業及び住宅あっせんは、法務省なりあるいは厚生省なりが骨を折りまして、この二点は解決をしてやるように努める。それからなお、三国人戦犯者の方からは、ただいま申し上げました二点のほかに、三十万円の金の支出を要請いたしておるのであります。この点については、いろいろ検討した結果、日本人は、巣鴨を出まする場合においては、三万円を支給されて仮出所をするということにきめられておるそうでありまするが、その日本人の受くる待遇よりもよりよく考えなければならないということで、その三万円のほかに、戦争受刑者世話会並びに国際善隣クラブ等から三万円を提供してもらいまして、六万円だけを支給するということでがまんをしてもらうよりほかに方法がないではないかということの結論が出まして、その旨実は閣議にも報告がありまして、これを了承したような次第でございます。  しかるに、二、三日前に、それではどうも不服だということで、総理に面会を求めて、そうして第三国人人々陳情をいたしたそうであります。きのうは私のところへも参りましたし、厚生大臣のところにも行ったようであります。これはなかなかむずかしい問題でありまして、またむずかしい問題でありまするがゆえに、長い間はっきりした結論も出ずに来ておるというような次第でありまするので、私といたしましても、これは、個人的の気持を申し上げますれば、彼らの言い分も無理からぬことである、何とかできることなら通してやりたいものだという念願は持っておる一人でありまするが、しかし、これを国家的見地から考えると、なかなかそう簡単に参りませんので、従いましてこのことは関係官庁において事務的に一つもう一度慎重に検討を重ねて、そうして何かもっとよい結論を出してもらいたいものだということで、実は先ほど官房長官にもその旨相談をして了解を得、法務省次官にもその相談をいたしましたが、次官としても——実はきょう次官会議がありまして、そのときに厚生省次官等も来ておれば話をする機会があったのでありますが、厚生省次官が出てこなかったというようなことで、その問題に触るる機会がなかったので、私の先ほど申し上げましたような趣意に基いて、関係官庁において事務的にこれをもう少し検討するということに相なっておりまするから、その結果があるいはよくなるか悪くなるか、その辺はここで私が申し上ぐるわけには参りませんが、かような次第で、この問題に対してはあらゆる努力を傾倒して善処をいたしておりますることだけは、御報告申し上げてよろしいと思います。
  25. 山下春江

    山下(春)委員 今法務大臣が非常に御苦労をいただいておる点を承わりました。関係各省でありますが、これは私は政府一大決意をいただくことが非常に好ましいことだと思います。それはどういうことかと申しますと、第三国人はあくまで第三国人で、日本人ではございません。従いまして、日本に今ございますどの法律を持っていっても、ぴたっとうまく合いません。従って、一つ法律を持っていって、それに当てはめて解釈して、いろいろ御努力願っても、それではなかなか納得しないと思います。それでは短かい、それでは足らないで、なかなか話がつかないと思いますので、これはあくまで第三国人であるということを基調にして、しかしながら、戦争中に日本に協力させたことも事実でありますし、そのゆえに拘禁されていることも事実でありますので、これは何とかして国の態度を明確にいたしましてこれに対処するという一つの方途がございませんと、国内の問題、たとえば就職のごあっせんもいいことであるし、住宅のごあっせんも非常にけっこうなことでありますが、しょせんは私はそうではないと思います。住宅をよこせ、就職あっせんしろ、三十万円よこせということに対しては、今日までは、国の規定いたしました三万円と、戦争受刑者世話会その他のいろいろな団体によって御工面を願って、相当な金額を出しておられましたが、しかし、戦争受刑者世話会等も、今日ではなかなか内部のまとまりも悪く、金もなくなったようであります。こういうものに依存してうまい方法考えようとしても、なかなか考えつきません。そこで、私は、これは日本国として一本こういうものは当然持っている方がいいのではなかろうかと思いますことは、これに対するいわゆる特例法を作りまして、そうして第三国人に対して、こういう問題が起った場合はこうするという、しっかりしたものがございますことが、いろいろ国際上こういう問題が起ってくる場合にはいいと思います。御承知のように、まだ巣鴨に在所しております君は、朝鮮人二十名、その中の二名はすでに仮釈放の時期が参っておるにもかかわらず、いろいろ条件が整いませんので、出ませんから、従って二十名、台湾関係が三十八名、合計五十八名の三国人がおります。うち台湾人の方は、私もしばし、は会ってもおりますが、日本当局努力を非常によく承知いたしておりまして、おとなしくございましたが、実は、政府の方で、突然だったかどうか、意見がまちまちだったために、それじゃけしからぬというようなことで、その五十八名が一緒になったような形を作り上げておるようでございます。従いまして、こういうことは、こうもしてやりたい、ああもしてやりたいということで、いろいろ会議をお持ちになりまして御検討願いましても、それは、国の意思でなく、いつでも行政措置とかなんとか陰の仕事でございますので、お骨折りになったことが必ずしも向うに徹底的に通じないというような形になっておりますので、こういうものを処理いたします特例法のようなものを設けて、それによって日本国の国としての意思を明確にこういうことだと打ち出すような措置をやってみようとお考えになりませんか。
  26. 花村四郎

    花村国務大臣 まことにお説ごもっともであります。まことに傾聴に値するものがあると思います。先ほども申し上げましたように、各所管官庁が事務的にこれを検討するということに向ってただいま進んでおりますので、十分に研究をいたしてみたいと思っております。
  27. 山下春江

    山下(春)委員 なお、この際に、私戦犯全体について法務大臣の今日までの御努力の経過並びに今後のことについて、政府を代表して御答弁を願いたと思うのでありますが、日本は御承知のようにまだ巣鴨にただいまのところ五百八十六名が在所いたしております。ところが、一方、西ドイツにおきましては、御承知のように、西ドイツ国内にアメリカとフランス英国とがそれぞれ戦犯収監所を持っております。その総人員は最初千三百十八名でございました。それがただいまのところ群二十三名という、まことに少い数になっております。日本でも、いろいろ今日までに裁判確定後非常な努力をされまして、その成果がぼつぼつ今日まで上っては参りましたが、現政府におかれましては、日ソ国交調整により、ソ連に抑留されておる気の毒な人人をもすみやかに国内に帰ってきてもらうような措置をいろいろ講ぜられておることは、留守家族にとりましても、一般国民の悲願から申しましても、まことにありがたいことと思いますが、この戦犯問題についてはどのような御処置をおとりいただいておりましょうか。最初人数から比べまして、日本の減り方があまりにも遅々として進まないことは、はなはだ遺憾に存ずるのでありますが、どのような御処置を賜わっておるのでありましょうか。
  28. 花村四郎

    花村国務大臣 戦争が終了いたしましてから、すでに御承知のごとく十年を経過いたしておるのでございますが、今日なおかつ巣鴨刑務所に五百八十六名の同胞を戦争犯罪者の名のもとに拘禁を余儀なくいたしておりますことは、まことに遺憾しごくに存ずるところでございます。これら巣鴨所在者は、平和条約によって、わが方の赦免減刑または仮出所勧告に対しまして関係国同意をすれば、その釈放ができることになっておりますので、全員に対しまして、すでに個別的にあるいは全面的に一回ないし数回の勧告をいたしまして、熱意を持って関係国同意を求めて参ったのでありまして、今日まである程度の人数関係国同意を得て釈放の運びになっておるのでございますが、先ほど申しましたように相当数の人がまだ残っているのであります。すなわち、中国関係でありますると、九十一名の者が昭和二十七年中に全員赦免されました。そうしてフィリピン関係は五十六名でありましたが、二十八年中にはこれまた全員赦免になりました。しかしてフランス関係は四十二名でありましたが、二十八年、二十九年にわたって赦免または減刑と相なっております。これら中国フィリピンフランス関係は全部解決いたしたのでありまするが、現在は米国英国、オランダ、豪州の四カ国関係だけ残っておるような次第でございます。しかしてこの米国関係は、百九十七名が仮出所もしくは減刑の上仮出所となり、現在二百二十名が残っております。米国政府は、昨年七月、終身刑を含む刑期三十年以上の者の仮出所適格性を、この期間を十年に短縮し、本年五月十七日には日本人戦犯減刑、仮出所許可決定の権限を大統領から三人委員会——国務省内にある戦犯釈放委員会意味するのでありまするが、これに委譲をし、その結果最近三回にわたって四十二名の者の仮出所または減刑に基く仮出所を許可してきたのであります。英国関係は、二名の仮出所、二名の赦免、十九名の減刑、うち七名は即時出所を見たのでありますが、現在八十五名が残っており、オランダ関係は、八十二名の仮出所を見ましたが、現在百三十三名が残っており、豪州関係は現在百五十名となっておるのであります。このほか、A級は、四名が病気仮出所を許され、現在八名となっております。これら五百八十六名の者は、あるいは戦場にあるいは、戦犯として十数年ないし三十年家郷を離れておるのであり、本人はもちろん、その家族の困窮に対しては心から同情を禁じ得ないのでありまして、これらの人々の早期釈放についてはあらゆる方策を講じておるような次第でございます。従いまして、関係国がわれわれの熱望を容易に受け入れてくれない理由は、多くはそれぞれの政府国内世論を考慮して、そうしてちゅうちょしておるものがあるやに想像いたすのでありまするが、過般も横溝委員を各国に派遣をいたしまして、そうしてこの赦免に関するあらゆる観点から、説得なりあるいは懇請なりをいたしてきておりまするが、その結果は非常に好転いたしておるような次第でありまして、政府としては、この機会を逸することなく、あらゆる面にさらに深い考慮をめぐらして努力を続けておるような次第でありますので、その辺御了承を願いたいと存じます。
  29. 山下春江

    山下(春)委員 詳細な経過及び今後なさんとされる政府の御決意を承わりましたが、今申しましたように、各国の事情もあり、いろいろ戦犯釈放問題については国々によってその考え方が違うことはよく存じおてりますが、日ソ交渉の好転——まだ結果は私は存じませんけれども、好転いたしますならば、戦犯と称せられてソ連に抑留されておる人たちも、近い将来に帰還をすることができるようになるであろうと思います。そのときに自由諸国家群のきめました裁判によって拘禁されておる人たちだけがぽつんと残るというような事態が生じますれば、はなはだ遺憾のきわみでございます。私は先年ダレス国務長官にじかにこの問題で話しましたときも、巣鴨に五十年というのがアメリカのケースに一人ございます。私は何人も四十五年も四十六年もいることを知っておりましたが、その一々を拾い出すことはあれでしたから、五十年と言ったのですが、これはあまりに苛酷な不当な刑であるということを主張いたしましたところが、非常に早急に二十五年に減刑された例が一人だけでありますけれどもあります。そういう点から申しまして、政府一大決意をもってお当りになれば、たとえば、オランダの場合などは、非常に多くの人々が印緬鉄道事件か何かで傷つけられたり、あるいは戦死したりしておりますが、それに対する補償、あるいはインドネシアを失いましたことにより、老齢者が帰国いたしまして養老院に入っておる。それらの費用を国が負担するのは大へんだというようなぐちをいろいろ申しておりましたが、それらの問題に対しても、政府が責任をもってこの人道上の問題を片づけるという決意をいたされますならば、もう少し早急に——ドイツの場合りは非常に苛酷な状態であったのであますが、急速度に片づきまして、あと百二十三名しかいないというような状態になっておる点から申しましても、なお一そうの御努力を願いたいと思います。  話が前に戻りますが、先ほど申しましたように、第三国人処置につきましては、どうか一つ大臣も、関係各省でいろいろ御会議をなさいますときには、そういう踏み切った、割り切った考え方を持ちませんと、あっせんとか、あるいは行政措置でどうとかという、下をもぐり歩くような考え方をいたしておりましたのではいけない。要するに、あちらは貸しがあると考えておりましょう。こちらも借りを返すというような割り切った物の考え方で御処置を賜われば、将来起ってくるいろいろな問題を解決するのに国の態度が一つ決定しておる。国の態度が一つ打ち出してあるということの方が、国としても対外関係に非常にいい影響を与えるのではなかろうか、そうしてまた跡始末の解決としてはそうあるべきだと私は考えますので、どうか、政府におかれましても、そういう点を、こそくな考え方でなく、一つ踏み切って、割り切って御処置を賜わりますことが、今起っておりますさしあたりの問題のみならず、今後のそういったような問題を国家がきれいに片づけるということの一つの定石になると存じますので、その点なお強く要望いたしまして、私は本問題に対する質問を終ります。
  30. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの御意見を尊重して、でき得る限りの善処をいたしたいと存じます。
  31. 高岡大輔

    高岡委員長 ただいま法務大臣は参議院の本会議に出席を要求されておりますが、なお島上君から御質問があるようでありますので、大臣にしばらくごかんべん願って、簡単に一つ島上君から御発言を願います。
  32. 島上善五郎

    ○島上委員 質問が残ればあとに留保することにしまして、お急ぎでしたら簡単に質問します。  私は、過ぐる第二次世界大戦の戦争犠牲者一般に対しては、国ができる限りの救済措置を講じなければならぬものだ、こう考えておりますが、とりわけ今日戦犯として巣鴨になお残っている多くの人々の問題、さらにその中で最も気の毒な状態にあるのは第三国、すなわち韓国及び台湾の戦犯者人々であろうと思います。これらの人々は、巣鴨を一たん出ますと、出たとたんにもう日本人でないというので、日本人戦犯に適用さるべき一切の保護から除外されております。御承知のように、台湾及び韓国の現地から軍属として戦地に持っていかれて、十数年日本軍の命のもとに忠実に働いてきた人、その現地で戦犯として牢獄に投ぜられ、それが日本に護送されて参りまして、今日巣鴨にいるという状況でありますから、日本人戦犯とは、そういう点においても非常に趣きを異にしている。そういう人々が単鴨から一ぺん仮釈放もしくは釈放の名によって出されると、そのあとはもう日本人でないから知らぬといったようなことは、これは、人道的にもあるいは国際信義の上からいっても、ゆゆしい問題だと思う。私は、少くとも、今法務大臣は今後のことについてはかなり熱意のあるような御答弁がございましたけれども、今までの扱いについては非常に遺憾なものが多かったと思います。私も、不敏にして詳しい事情は存じませんでしたが、最近聞いてびっくりしました。すでに釈放されてまだ日本にいる者が五十名、帰国した者が四十七名いるそうですが、その在日している五十名の大部分の者が非常に惨たんたる生活をしている。中には巣鴨から残飯をもらって辛うじて露命をつないでいる者がある、こういうことを聞いております。それに対して日本政府が何ら誠意のある措置をとらなかったということが、第三国戦犯の諸君からるる訴えられまして、私どももその一半の責任があるというふうに感じておりますが、すでに戦犯によって死刑に処せられた者が二十二名ある、こういうような人々に対しても、国として何らの措置をとらなかったということを聞いております。私は今後の措置についてもお伺いいたしますが、今まで国として、どのような措置をとったか。たとえば死刑になった二十二名に対してどういうことをやったか。日本人と比較して著しい差別をしているのではないか。それから今まで、今申しましたように、日本へ参りましてから釈放もしくは仮釈放になった人々に対して、国としてどのような措置をおとりになったか。これをまず最初にお伺いいたします。
  33. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまお話しになりましたうちで、法務省所管のものもあり、しからざるものもありますが、所管に属するもので、戦犯にして今まで出た人にどういう扱いをしてきたかということは、ただいま資料がありませんから、ここで即答しかねまするので、いずれ調べて申し上げたいと存じます。
  34. 高岡大輔

    高岡委員長 島上君、なるべく要点を抽出して一つ……。大臣は参議院から呼ばれておられるのですから……。
  35. 島上善五郎

    ○島上委員 どうも資料がないから答弁できないということ自体がずいぶん私は納得行きませんが、私の聞いているところでは、死刑になった二十二名に対しても何もしていない、こういうことを聞いているのです。資料がなければ、あとで資料が整ったときに御答弁いただくことにします。  それでは、今後の問題でございますが、先ほど大臣は、山下委員質問に対して、今台湾及び韓国の諸君が要求しておる事項は私個人としては無理からぬことだと思う、こういうお話でございましたが、個人として無理からぬとお考えになられるようでしたらば、私は、個人としてではなしに、今度は閣僚の一人として日本政府の責任において積極的に措置するというふうにお考え願わなければならぬと思います。今第三国の事態というものは非常に緊迫している事態だと思う。もしこのままにして政府が誠意を示さなかったならば、不測の事態が起らないとも限らぬと思うのです。そういうことになりましたならば、これはひいては大きな国際問題にも発展しかねない、こういうことを考えますれば、もし特別の法的措置を講じられるというお考えがありますれば、それは、もっと具体的に、もっと積極的に、すみやかにされるというお考えはないかどうか。何か問題が起ってからあと迫っかけて措置を講ずるというようなことじゃなしに、事前に、不測の事態の起ることのないように、これは政府の責任においてなすべきものだと思うのです。そういう点に対してもう少し具体的な積極的なお考えをお持ちであるならば伺いたい。
  36. 花村四郎

    花村国務大臣 二十二名の、死刑を受けた者に何もしておらないじゃないかという御質問でしたが、それは法務省所管に属せざることでありますので、私から答弁は申し上げかねます。  それから、今のその後のお話については、先ほど山下委員に御答弁を申し上げました範囲を出ません。
  37. 島上善五郎

    ○島上委員 あの程度の答弁では、一体いつごろになったらどういうふうにしてもらえるかということが、今待望している第三国人の諸君には全く見当がつかぬことだと思うのです。個人として無理からぬという御答弁のその具体的な内容は——要するに、出たら住宅の世話をしてほしい、仕事の世話をしてほしい、それからさしあたりの生活資金のめんどうを見てほしい、三十万円という金額を出しておりますが、それは支給でなくて貸与でもよろしい、こういう要求があるのに、残飯をもらわなければ生きていけないようなそういう状態の中に放擲しておくということは、私は大きな問題だと思う。次官が事務的に協議しておる、そしてもっとよい結論を出すようにしてほしいという希望を持っておるということでございましたが、私は、その程度の、関係官庁次官が事務的に協議をする、事務的に検討するという程度のことでは、大臣がもっとよい結論希望されましてもなかなか困難ではないか、法的に何ら根拠がないということでもって逃げるのじゃないか、こういうふうに心配せざるを得ないわけなんです。たとえば、特別の法的措置を講ずるということになりますれば、急いでやるとしましても、どうしたって多少の時間はかかるわけで、私どもは、その法的措置は法的措置としても、さしあたって、出た人が住宅がない、仕事がない、食っていけない、こういうようなことに対して、先ほど住宅あっせんを……。
  38. 高岡大輔

    高岡委員長 島上さん、発言中で恐縮ですけれども、参議院の本会議法務大臣の出席を催促しているということで、今保護局長がお見えになっておりますから……。
  39. 島上善五郎

    ○島上委員 それじゃこれだけで……。住宅と仕事のあっせん次官の方で措置するようにしているという御答弁でございましたが、事実はこれは何ら具体化していない。今のところはさしあたってはたった二人のことでございますけれども、それも全く住むにたえないようなひどいところヘ二人入れというようなことで、それがもつれているというような話でありますが、こういうような問題も、ほんとに日本政府に誠意があり責任があるならば、もっと積極的にやるべきものでないか。何かお座なりの答弁で誠意が欠けているというような気がしてならない。大臣はこれに対してもっと積極的な施策、措置についてのお考えがあるかどうか。しつこいようですが、これを重ねて伺いまして、またの機会に大臣の御出席の際に若干の質問を留保しておきます。
  40. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまいつごろその問題が解決されるかわからぬというようなお話でありましたが、このことについては、先ほども申し上げましたように、直ちに各所管官庁が集まって事務的に話を進めるということに相なっておりますから、従ってその結論の出るのはそう長くかかるとは私は考えません。  それからなお、その他の事柄についていろいろ御意見でありましたが、これは、ただ単に法務省だけでやるべきものでなく、ほかの官庁との権限が錯綜しております面もありますので、この戦犯出所に関しまする処遇等に関するすべての問題を法務省だけで解決ができるかといえば、そうは参りません。でありますから、従って、そこに法務大臣だけで責任を持ってどうこうすると言うことは、はっきり申し上げられない事情が伏在している次第でありますので、従いまして先ほども申し上げましたように、所管官庁と協議を遂げるということを申しておるのでありまして、決してそれがためにそれをただ長引かしていけばいいというような意味考えておるわけではないということを、はっきり申し上げておきたいと思います。
  41. 山下春江

    山下(春)委員 私は、前回本委員会におきましてこの問題の御審議を願い、委員長にも御賛同を得たのでございますけれども、なお若干の予算を伴いますので、大蔵省等とのかけ合いの時間も必要と存じまして、その後この最終的な意思決定を留保いたしておきましたので、あらためてお諮りをいたしたいと存じます。ということは、この問題は、この前も申し上げましたように、未帰還者が帰還いたした場合に、舞鶴で留守家族援護法の支給金を打ち切られるのでありますが、これははなはだ残酷でありまして、長い間外地におりまして全く日本の事情に精通しないこれらの人々が、帰りまして突然支給金を打ち切られるということになったのでは、就職その他の問題で非常に困窮いたす。むしろいろいろ金がかかる問題がたくさん出てきますので、本人はもちろんのこと、家族も非常に経済的に困るのでございますので、この帰ってきました者に対しましては、帰還の日からさらにあらためて三カ月間留守家族援護法の援護の金を支給してもらいたいということでございます。こういうことを申し出まするに当りましては、戦前には、軍人が外地から帰還いたしました場合には、軍人扶助法によりまして二十日間の扶助を受け、なおそのほかに法外援護といたしまして三カ月間援護されていた実績が過去にございます。これはその当時といえどもやはり同じような感じから出たのであろうと考えます。しかもこの帰還者は一時恩給あるいは普通恩給を受けざる一般法人に該当する規定でございまして、このことをぜひとも一つ委員会におきましてあらためて御確認を得て実施いたしたいと思います。  なお、もう一つは、今日生還者及び生死不明の人々に対する調査も相当進められておりまして、大部分の方々がすでに死亡をされておるのではなかろうかと考えられますが、この方々の死亡が確認されまして、死亡処理を受けられました方々に対しては、これがたとい一時恩給あるいは普通の恩給を受けられる家庭の方といえども、その恩給法に切りかえられます間相当の時間を要します。その間全く何らの援護の手が差し伸べられていないということは、物心両面に非常に大きな打撃を与えることになりますので、この死亡処理を受けた者に対しましては、その死亡処理を受けた日から六カ月間引き続いて留守家族援護法による援護資金を支給いたしたい、こういうことでございます。  こういう問題を私本委員会に提案いたしますゆえんのものも、この八月でもはやちょうど十年になります。十年という長い歳月をけみした今日なお外地にいるという方々に対しましては、お気の番は同じとはいえ、今日までに帰還された方々と同等であってはならないというような、そういう意味からも考えまして、こういうことを提案いたのであります。何とぞ一つこのことにつきまして本委員会意思を御結集願いたいと思いますが、その前に、こういうことを本委員会がぜひとも実行いたしたいと考えるのでありますが、これをお扱いになっております援護局長の御意見を一応承わっておきたいと思います。
  42. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 ただいま山下委員から御提案になりました件については、先般の当委員会におきましても、これと同様の御質問がございましたので、私お答えを申し上げたのでございます。留守家族援護を強化する意味合いにおきまして、私どもも、もとより望ましい修正であると考えております。また、過去の例をお引きになってのお話、また今後帰ってくる者あるいは死亡された者のいろいろの実情に即した措置としてお話があったのでございますが、まことに御同感の点が多いのでございます。ただ、問題はこれを実施するための予算の問題でございますが、私の方でいろいろ検討してみますと、未帰還公務員の死亡した場合になお六カ月継続支給するという問題につきましては、本年度において今後死亡処理をされる者は大部分軍人でございます。従って、少くとも、現行法におきましても、死亡確認の日から直ちに公務扶助料の支給がなされるわけであります。しかしながら、若干の日数を要しますので、この間留守家族手当を支給することになるだろうと思います。従って、留守家族手当を支給しましても、その金は、若干日にちがおくれて裁定されるであろう公務員扶助料の内払いとしておきますれば、予算にはほとんど影響がないわけであります。ただ、前段の帰還後三カ月間手当を支給するという問題につきましては、本年度帰還者総人員は三千人と見込んでおります。もちろん三千人以上帰ってこないとも言えませんが、今日われわれが、調査究明上、生存残留確実であって、しかも短期間内に帰還できるという見通しの立つ人数は、おおむねこの程度であろうと考えております。三千人全部帰ってきたといたしましても、三カ月間留守家族手当を支給するのに該当する者を計算しますと、多くても五百万円程度ではなかろうかと思っております。もちろん、その中には帰ってきたとたんに直ちに普通恩給の権利が発生する者もございますので、さような場合はこの手当と調整することになると思います。従って予算的には大した金額ではありませんで、現行予算の範囲内でやりくりできるのではないかという見当をつけまして、部内でいろいろ研究をいたし、また関係当局ともいろいろ相談をいたしているような次第であります。
  43. 山下春江

    山下(春)委員 援護局の方で、この取扱いは賛成だ、妥当だ、こういう御答弁でございました。ただ、援護局長の御答弁の中に、未帰還公務員が死亡処理をされた場合に、なおその人に向って六カ月支給するということだが、恩給に切りかえる間は若干の日にちがあるから、その支給をすることは妥当と思うが、それは、ただし、やがて支給される扶助料の内払いだ、こういうことでございますので、まあ、予算関係上、そういう説明を聞いて、はい、さようでございますかと言うことがいいとは思いますけれども、そういう残酷なことを言わないで、六カ月は六カ月で、手続上に何日間かかりましょうとも、これは控除しないということにお考えを願わしいと思うのでございます。ただし、その前に、大蔵省の方で、そういうなまぬるい考えでは金は出せないと言われたのでは困りますから、大蔵省の御意見を承わっておきたいと思います。私ども、この予算は、こんなところでいじめられないように、実は自民両党の予算折衝の際にも私は一生懸命予算措置を私の党に申し出たのでありますけれども、声なき問題でございます。非常に声の盛んな問題は、われわれから見れば、この際こんな大事な予算をこんなところに使わないでもというようなのが組まれていたり、あるいは、かような全く人道上ほんとうに何ぼかでも削ることは実に耐えられないようなことでも、そのとき出ていなかったものですから、ついそういうことを言われても、われわれも、いたし方ないから、それを了承しなければならないようなことに相なるのでありますが、一応、田邊さんにお願いする前に、大蔵省で——かような人道上の問題であり、しかも声なき問題でございます。留守家族は、陳情に来たくとも、訴えたくとも——私この中に手紙を持っています。長い手紙だから読まれませんが、実にそれは涙なくして読めないような手紙が来ておるのであります。そういう点から、一つこの際、これに要しまする費用、先ほど担当責任者である田邊局長から、それは前渡しとして差し引くのだというふうに了承してくれと、どうも言われたような気がするのであります。私まだ了承するともしないとも申し上げませんが、合計約二千万あればまかなえると思うのであります。三カ月の方五百万、死亡処理の方千五百万、二千万あればまかなえると思いますが、それに対しての大蔵省のお立場はどのようでございましょうか。
  44. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。ただいま御提案になっております未帰還者留守家族援護法の一部を改正する法律案の一部修正、これに伴います経費は、厚生省で御算定になった金がございますが、七月実施といたしまして約三千百万円くらいになっておりますが、この経費は実は本年度予算に計上してございませんものですから、予算上実は非常に困難だと思うのでございます。ただいま援護局長のお話によりますと、死亡処理の分は、これは公務扶助料ないしは遺族年金をさかのぼって支給する際に、その分だけ遡及して控除する、従って予算上は迷惑かからないのだ、ただ生還者の分につきまして約五百万円程度負担増になる、その点は先般通過いたしました予算の範囲内でまかなえるのじゃなかろうかという御発言がございました。従いまして、その点どの程度今の予算でやりくりできるのかということを十分検討してみたいと思います。
  45. 山下春江

    山下(春)委員 ただいまの前渡しとして控除するということに対しては異議があると言ったのは、私が個人で異議があるのでありまして、法律といたしましては支払うべきものから控除するということは実はそうであるべきでありまして、私の提案の中にはそのように実は書いてございますので、個人としてそれでは少し残酷なような気がいたしましたので、お尋ねをいたしたのであります。生還者三カ月の方に対する五百万円程度のことは何とか考えてやるという大蔵省の方のお話でございましたので、大体安心をいたしたのでありますが、なお、こういう問題は、何と申しましても、先ほど申しましたように、これは大体根拠がないことではございませんで、戦前にもりっぱに軍がこういうことをやっていた先例がございますので、ぜひとも生還者に対しての三カ月ということは御実施を願いたいと思います。  そこで、委員長にお願いをいたすのでありますが、他にも御議論がございましょうと思いますが、すみやかに今の問題について委員会意思決定をお願いいたしまして、そうして委員長からすみやかに社会労働委員会の方にこの修正意見をお取り次ぎ願いますよう、お取り計らいをお願いいたすものであります。
  46. 高岡大輔

    高岡委員長 この際お諮りいたします。ただいま山下委員より提出されました御提案につきましては、理事会に諮りました上善処いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 高岡大輔

    高岡委員長 さよう決定いたします。  次に、先ほどの第三国人の問題でありますが、厚生大臣がお見えになりましたので、厚生大臣に対する御質疑を願います。島上善五郎君。
  48. 島上善五郎

    ○島上委員 先ほど法務大臣にもお伺いしましたが、満足な答弁が得られないのと、時間がなくてもうお帰りになりましたので、厚生大臣にお伺いします。  戦争犯罪人として現在拘禁されておる者、あるいはすでに出所した者も相当ございますが、これらの人々の裁判が公正であったかどうかという点についても大いに議論のあるところでありますし、私どもは、戦争犠牲者全般に対して政府ができるだけのことをしなければならぬ、こういう考えの上に立って、戦争犯罪人も、その一環として、政府は、政府の責任において、できるだけ生活の援護遺家族援護及び戦犯者出所後の生活等について見てあげるべきものである、こう考えております。そうして、その戦犯者については、日本人であろうと、あるいは終戦第三国人になった台湾、韓国の人々であろうと、日本政府としては、同じ責任において、差別をしないで見てやるべきものではないか、こういうふうに考えておりますが、その点に対する考え方をまず最初厚生大臣からお伺いしたいと思うのです。先ほど、花村法務大臣は、私の所管外のことは答弁できないと言って多くを答弁しませんでした。根本的な考え方として、日本戦犯であろうと、第三国人であろうと、日本の責任において戦場に出動を命じて、日本人、特に第三国人の場合には、大部分が日本軍人の命のもとに忠実に働いた人々ですから、差別をつけないで見てやるべきものではないか、こういうふうに私ども考えております。そういう基本的な考え方について、まず大臣に所見を伺いたい。
  49. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大東亜戦争におきまして、当時領土でありました関係で、朝鮮、台湾の同胞をともに戦線におもむかしめたということは、これは、今日になりまして考えてみますると、彼らは、戦いの庭におきましては、わが日本のはらからと同じ気持で戦ってくれたわけでありますから、その犠牲に対しては十分に報いるべきであるという考えを私どももいたしております。従って、不幸にして戦争のために受刑の苦しみを受けたという者に対しての政府の取扱いというものは、当然日本人と同様な考え方をもって取り扱うべきものであるという点は、御質問の御趣旨と大体同じ考え方であります。ただし、でき得るならば、やはりなるべく近い将来において祖国に帰り、そこにおいて生業を営むということが理想的でありましょうが、今日台湾、朝鮮の置かれておる客観情勢といいまするか、政治上の非常な変化、ことに南鮮、北鮮はあのように分裂いたしておりまするし、台湾においても当時の状況とは違った政府が生まれておるのでありますから、従って、当時日本の旗のもとに戦ったという環境に置かれておる者が帰りましても、これをあたたかく受け入れることはなかなか困難ではなかろうか、かように考えております。従って、本来は帰るべきでありますが、こちらに残っておる間は、やはり日本人戦犯をあたたかくわれわれが迎えたと同じような気持でお世話をすべきが当然だと思っております。
  50. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 先ほど巣鴨に入っている第三国人日本人との間で差別があるというお話でございました。実はそういう声をわれわれ聞くのでございますが、差別待遇は法律の上ではいたしておりません。問題となるのは、留守家族手当が日本人戦犯の場合には出るけれども第三国人の場合は出ないということにあるようであります。しかし、この点は区別はいたしておりませんで、第三国人でありましても、内地に留守家族が居住している場合におきましては、留守家族手当を渡しております。日本人戦犯でございましても、内地に留守家族がおらない場合には出さないのであります。ただ、実際問題として、第三国人は内地に留守家族がおられる方がほとんどございませんので、適用を受けられないという結果になっております。そこで、厚生省といたしましては、その特殊性を考えまして、特別に見舞金を出しておるわけであります。一般日本戦犯の方々でございますれば、家族手当ももらえ、また家族のもとに帰り、また地元の方々がいろいろ見舞に来てくれるということがございますが、朝鮮人の方々、台湾人の方々はそういう点がございませんので、それにかわってせめて見舞を差し上げまして、これはできるだけ適当な団体を通じて差し上げるのが適当だと思いますが、かわってお世話を願いたいという意味で、千円、盆と暮れに六千円ずつ差し上げているわけであります。これは日本人戦犯で単身者の方には出しておりません。朝鮮、台湾の戦犯の方々だけに差し上げております。それから、第三国人出所した場合におきましては、これは日本人戦犯には出しておらないのでございますが、特別に戦争受刑者世話会その他の団体から合計三万円の手当を差し上げているわけであります。政府としては帰還手当というものを全員に差し上げておりますが、これは、外地に抑留されている人及び巣鴨拘禁されている人々は平等に扱わなければならぬというので、全部一万円でありますが、その他に、第三国人戦犯に対しては、政府の方からそういう団体に話をいたしまして、日本側全体として三万円という金を特別に差し上げているのであります。差別待遇というよりは、むしろその点は有利にしてあげてあるわけであります。なお、住宅等につきましては、一般の引揚に準じましていろいろお世話しているわけでありますが、現在もすでに台湾人の方々につきましてそういうお世話をし、今回二人の方につきまして、東京都の引揚者寮というものがございますが、その一室をわれわれの方で準備をいたしまして、提供したのでございます。必ずしも十全とは申しませんけれども、とりあえずそういうところへお入りいただくということでお世話をしたのでありますが、なかなか御満足いただけない関係上、そこに御同意をいただけないという実情でございます。差別待遇しているわけでないということを御了承願いたいと思います。
  51. 島上善五郎

    ○島上委員 差別待遇しているのではなく、むしろ優遇しているのだという御答弁でございましたが、なるほどある部分だけを取ってみれば優遇しているように見える面があるかもしれませんけれども、台湾や韓国から戦地に持っていかれ、十数年戦地で働かされ、戦犯として投獄され、そして日本に護送されてきた人々と、日本に妻子があり、親戚があり、出たら友人もありというような人々とは非常な違いがあると思うのです。それを考慮の中に入れないことには、日本人にやっていないのに千円やるとか三万円やるということでは、実質的に大きな差別をされているという結果になると思うのです。そこで、まず最初に伺いたいのは、今まで出た人、五月三十一日にオランダ関係で仮釈放の恩典に浴した人が今日なお出ていない、全体、伊泉という二人の韓国人がまだ出ていないということを聞きましたが、今のあなたの御答弁では引揚者寮を世話したとおっしゃいますが、これらの人々の御要望によりますと、巣鴨にいるよりもっとひどい、高いへいを張って鉄条網まである、巣鴨からもう一つ巣鴨に移ったような印象を受けるというようなことであります。それから仕事の面も、おそらくぜいたくは言わぬだろうと思うけれども、自分たちがこれならやっていけるし、また生活もどうやらできるというような仕事については世話していただけなかった、そうして今まですでに出た人が非常に悲惨な状態にある、台湾の人のごときは、これは何名か人数は聞きませんでしたが、現在巣鴨の残飯をちょうだいして露命をつないでおる、自分たちが今うかうかと出ると、それの二の舞いになるのだ、こういうことで、二名の人は出ることを快しとしないということを聞きましたが、今までのそういう悲惨な人人に対して、政府は何らかの積極的な救済の方法を講じたでしょうか。
  52. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私よりも援護局長の方が深く知っておりますから、あとでお答えいただきますが、今の、先ごろオランダ関係戦犯を解除されて、なお今日巣鴨に残っておる二名の者についての話でありますが、これは閣議で田中副長官が報告をいたしました際に、私も非常にけげんに思っておりまして、その生活の問題についてはやはり厚生省が主体になって相当お世話をしなければならぬものじゃないかという考えをいたしておりまして、あとで実は副長官に聞いて、これはどういうふうに処理をすべきものかという話までしたほどであります。そこで、お答えをいたしておきますが、一昨日厚生省にこの戦争受刑者の方々が見えまして、そうしてこの二名といわず、一般就職の世話あるいは住宅の世話をしてもらいたい、特に今日差し迫っているのはこの二名の問題であって、巣鴨に長くおるということは精神的な苦痛もあるから、従って早く受け入れ態勢を整備してもらいたいという話でありました。第一には職業をあっせんしてくれ、第二には住宅を世話してくれ、第三には生業資金として三十万円を世話してくれ、こういうことであろうと思うのであります。そこでこれは、先ほど法務大臣はどういうお話でありましたか知りませんけれども、私セクショナリズムで申すのではありませんが、戦争受刑者に対する善後措置につきましては法務省が世話をするということになっておるのであります。しかし、法務省の方で、内容については厚生省だとか、あるいは外務省だとかいうようなことの責任転嫁みたいな話し合いがありますれば、私の方としては、むしろ進んで厚生省が主体となって世話をしてもよいとさえ考えておるほどでありまして、最近では強くこの申し入れをいたし、われわれの方も積極的に問題の解決に当ろうといたしておるほどでございます。ただ、そのうちで一つだけ今お話の点と違うのは、ただいまも援護局長が申したように、住宅の方は、とりあえず厚生省が主体となってお世話をした大森寮というところには、一般の引揚者の方が百人足らず入っておられるそうであります。そこへ、引揚者も入っておられるのですから、戦犯を解除された方々が入れないという理由は私はなかろうと思うのであります。そこで、先ほども答弁をいたしておりますが、この際もっと明確に答弁をいたしますと、この引揚者の寮というのは、戦争中に相当大きな住宅を借りたそうでありまして、その後あまり手入れをいたさない関係で相当さびれてはおるかとも思いますけれども、のら犬が住むようなところだとか、あるいは巣鴨よりも悪いとか——巣鴨は最近内部は非常によくなったそうでありまして、そういう住宅の単なる比較からいえばあるいは悪いかもしれませんけれども、何といったって精神的な苦痛、つまり戦争受刑者といういわば忌まわしい犯罪を着せられたものから解除されるわけですから、雨露をしのぐということが完全であり、ちゃんと骨も敷いてあって、一般家族が入っておるところにお入り願えないということは私はなかろうと思うのであります。そこでバリケードを築いておるというお話があったのであります。自分は行ってみたことがないから、自分の言うことが正しいかどうかわからないけれども、しかし自分の下僚から報告を聞いておるところによると、その大森寮というものには、なるほどへいはある。しかし、ブルジョアが昔住んでおったところであるからへいのあるのは当りまえで、何も営門とかあるいは巣鴨の門とは違うのだ。従って、門の上に鉄条網があるというのは、鉄条網ではなくて、聞いてみるとガラスのとげを刺した、昔金持ちの家にどろぼうが入るので防御などをする態勢をしくときに、ああいうものをやったことがありますな。あれをしておるのを鉄条網と称しておるのだそうであります。そこで私がそう言いますと、その点については何らの御反駁もなく、その通りだという顔をしておりました。言葉は発せられませんでした。従って、住宅の問題は、この二名の方々が同意をしていただけるならば、今日でも入れる態勢はしいてあるわけであります。  それから職業の問題につきましても十分ごあっせんをしておるそうでありまして、ただ、今までほかのなにについて十分御同意を得られなかったというような関係でありまして、今厚生省として非常に十分なことができないというのは、生業資金三十万円という問題は、大蔵省の関係もあり、その他財政当局の資金融通の関係もありますので、まだ十分なことはできておりませんが、その他については確信を持っておるわけであります。住宅はもうすでに現に提供できるものもあり、それから職業についても、法務省相談をしまして、厚生省がむしろイニシアチブをとっても解決をいたそう、こう思っております。生業資金の三十万円ということは、今直ちにこれをやりますと、その方お二人であればよろしゅうございますけれども、五十八名という数が当然問題になるのですから、それもお世話すべきでありましょう。しかし、今これを入れますれば、千七百四十万円という金を直ちに用意をいたさなければならぬ。これを貸し付けるということは、今日では、国民金融公庫などに頼んでみましても、なかなかすぐにはできないというような関係で、しかし、厚生大臣としては、十分御協力を申し上げて、これらの問題の解決に当ろうといたしておるのであります。従いまして、先ほど来御質問でありますが、住宅、職業のあっせん等につきましては、誠意を持って今日までもやってきたということの経過だけは、この際御承知おきを願いたいと存ずるのでございます。
  53. 辻政信

    ○辻委員 ちょっと関連して。社会党の諸君が第三国人戦犯に対して非常にあたたかい取扱いをせよとおっしゃるのは、大へんありがたい御意見だと思います。ただ問題は、一般原則でなく、現実をよく見てもらいたいのであります。私の方へもたびたびやって参りましたが、その内容を詳細に検討すると、玉石混淆であります。まことに順良な気の毒な者がおると同時に、きわめて悪質であって、共産党の手先になって扇動しておる連中もあるのであります。ことに、ただいま川崎大臣がお答えになったように、引揚者の寮に入れてやると、きたないといって文句を言う。また生業資金三十万円をよこせと言う。三十万円やったら、それでどぶろく、密輸をやるにきまっておる。それがいやならば、彼らがいいと思っておる巣鴨にしばらく宿を貸して、自分の適当な住宅があるまで住まわす。日本の勤労大衆が困っておるのだから、それ以上の待遇を求めるということは、私は政府においても十分お考えになって処置をしてもらいたい。ことに、私戦場におって朝鮮出身の兵と台湾の兵を使った者であります。台湾の兵隊に感心しましたことは、日本の壮丁よりも勇敢にまじめに働く者が多いのです。朝鮮の者の大部分はおそらく捕虜収容勤務に充てておったのであります。彼らが戦犯になったのは、責任罰ではなくして、下手人が多いのです。なぐったとか殺したとかいう下手人の方が多い。一般戦犯は責任罰——部下の兵が起した責任をとるという責任罰が大部分であります。そこで、この処理は、道なる感傷論や感情論でなくして、そういう現実をよくお考えになって、いい者はあたたかく迎え、悪い者はさとしながら、戒めながらやっていかぬと、玉石混淆で、共産党の手先になってストライキをやるような連中に国家が甘い目を見さすことは適当でないと私は思うのであります。その辺はどうか処置を誤まらぬようにしていただきたいと思います。
  54. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま辻委員から御注意がありまして、われわれとしてもよくその旨を含んで善処いたしたいと思います。ただ思想の問題について世話をしないというようなわけにも参りませんので、これは、われわれとしては、そのときの話し合いで、無理な問題を持ち出す者は、思想のいかんを問わず拒否したいと思っております。従って、原則としては、島上委員の申されるように、われわれとしては、やはり日本人戦犯等と同様にあたたかく迎えて、そうしてあらゆる努力をしてお世話を申し上げたいと思っております。従って、一番難関の生業資金につきましても、私はできる限りの努力をいたし、法務大臣とも連絡をいたしますが、たとえば今の住宅問題などで全然話にならぬというようなことでは、せっかくお世話をいたしましても、ことに引揚者が入っておるわけなけなんですから、引揚者が入っておられまして、戦犯として受刑されて出られた方が今度は入れないという理屈は私はないのじゃないか、この点を十分御勘案をいただきまして、今後ともに、辻委員の御注意もありましたので、そういう原則は島上委員にお答え申した通りでございますが、全然話し合いにも乗っていただけないということになりますれば、こちらとしてもこちらの道を進まなければいけない、こう考えております。この点もお考えおきを願いたいと思います。
  55. 島上善五郎

    ○島上委員 私が日本政府の責任において日本人と同様に扱ってほしいと言いましたのは、大臣も御承知のように、台湾及び韓国の人々は、日本人とは非常に異なった不遇な状況にあるということです。私は詳しく聞いてみましたが、たとえば台湾の戦犯などは、自分の郷里に帰りたいと思っても、当時国民政府の捕虜を収容しておったその場所で、日本軍人の下働きをさせられた、そういう関係で、今の台湾におる国民政府との関係が非常にまずい。帰りたくも帰れないというような事情にある、こういう気の毒な状態にある。それから、さっき言ったように、日本には親戚も友人も知己も何もない、こういう状況ですから、今、辻委員が、三十万円やったらどぶろくを密造するにきまっていると言われるようなことは、私は辻委員にしては少し軽率な言葉であると思います。やはりもっとあたたかい心やりをもって考えてやらなければならぬ。(「人種が違うし、考え方が違う」と呼ぶ者あり)それは、大ぜいの人ですから、いろいろ考え方の違いもあるでしょうけれども、やはり、大臣が言われるように、思想の違いでもって待遇を異にするというようなことはすべきでないと私は思います。(辻委員「共産党に援助する必要はない」と呼ぶ)それは見解の相違ですが、どぶろくを密造するとか、共産党の手先になるということは、あなたの独断であって、こういうような長い間日本軍の下で働いて、戦犯となって、あたら青春をほとんど失ってしまった状態にある人に対しては、やはり国家の責任で、もっとあたたかい思いやりをかけなければならぬ、それは日本戦犯に対すると同様にしなければならぬ、こういうことです。日本戦犯でも、あいつは共産党だからこれをやらぬとか、こいつは何党だからやれというような区別をすべきではないと私は思う。その人が自由なからだになって、自由な仕事について、その後何をやるか、それは本人の自由意思できめることであって、戦犯に対する国の処遇としましては、やはり同様に見てやらなければならぬ。その同様にというのは、私がさっき言ったように台、湾や韓国の人々国内釈放された場合、いろいろな条件日本戦犯より非常に不遇な状態にあるということを十分に考慮に入れてほしい、こういうことです。三十万円くれとか、寮ではきたないとか、仕事もあの仕事はいやだ、この仕事はいやだと、非常にぜいたくなように聞えるけれども、そこは日本人よりも非常に悪い条件のもとにあるということを十分考慮してやってほしいということです。私はこのことについては特に答弁を求めませんけれども、それを強く要望して、不測の事態が起ることが万一にもないように——私は、あの中に共産党の手先を勤めて何かやっている人がいるとは思いませんけれども、よしんばそういうことをしておる人がおったとしても、政府がするだけのことをすれば、そういうような不測の事態が起ることはなかろうと思いますので、誠意を持ってなるべくすみやかにこの問題を解決していただくように強く要望しまして、大臣の所見を、もしありましたら最後に承わっておきたいと思います。
  56. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまのお話は、御趣旨の点は先ほど答弁いたしましたようによくわかっておりますので、十分に善処するつもりでございます。
  57. 山下春江

    山下(春)委員 関連して。この問題について、私先ほど一番の責任の衝だと思われます法務大臣といろいろお話し合いをいたしました。法務大臣は、私の申し上げたことは非常に参考にもなり同感であるということでございましたので、厚生省としても、いろいろな面でこの仕事に御協力をなさる立場の省でありますので、お聞きしたい。なお、島上委員あるいは辻委員お話もございまして、そうして厚生省の立場としての御見解も聞きましたが、問題は、第三国人はあくまでも第三国人であります。日本人ではございません。従いまして、どんなあたたかい気持を持って接しましても、日本人と同様の法律をもってしては、なかなか割り切れないものが出てくると思います。ただいまの住宅の問題などにつきましても、私が引揚委員長をしておりますときに、初めてソ連からの引揚げが再開せられましたとき、あまり破れ果てた引揚寮にお入れしてはいけないというので、たまたま大森寮は視察をいたしました。そうして壁の落ちているところ、あまり畳のきたないところ、そういうところを東京都が責任を持って修理いたしたのであります。これは相当大きな料亭でありまして、りっぱな家でありますけれども、使い方が乱暴なために相当いたんでおりましたところを修理いたしまして、大分きれいにいたしました。この状況ではあまりきたなくて住めないというようなお話で、ございましたが、私は思いますのに、これを職業とか住宅とか事務的にいろいろお考えになりましても、それではとうてい解決のつかない問題だと思います。しょせん、やはりこれは日本のために働きまして戦犯に問われて十年の間拘禁されておるということは確かに事実であります。そこで、特例法政府でお立てになりまして——要するに、この問題は、日本のどの法律かに当てはめて何とか処理しようと思いましても、たとえば、巣鴨を出る人が、三万円ということで、戦争受刑者世話会に頼んでも、受刑者世話会にも今日は金がないようであり、そうして中も分裂したような形にありますし、いろいろな意味で、とてもそういうことで何とかかんとか言っていても骨が折れるだけで、国の大義名分は立たないと思います。朝鮮と台湾とは違うというお話もありまして、事実その通りでございますが、今回のこのやや問題になっております姿は、朝鮮の人に同情をした意味もありましょうし、あるいはこれは当るか当らないかわかりませんが、厚生省等に参りましたら、政務次官かどなたかが、そういう陳情が出ておるとは知らなかったと言われた。あれほど、法務省の人などが、当局にこういうふうに頼んだ、ああいうふうに頼んだと言うのに、何もわかっておらないじゃないかということで、在所者五十八名が一諸になってしまったというような話であります。こういうことでございますので、第三国人も確かに気の毒であります。日本のために働きまして、罪に問われて十年の拘禁生活をしておるということは気の毒でありますが、気の毒だからといいまして、日本人と同じ法律をどこかから探してうまくはめようとしても、それはうまくはまらないことでありますから、この際、政府といたしましては、責任を持ち決意を深めて、そうして特例法を打ち立てられまして、それに対する国の態度を明らかにしてこれの処置をしていただきたい。私は、国際上からいっても何からいっても、今後起ってくるあらゆる問題を処理するのに、何かそういうものを一本立てていくということが非常によい方法だと考えております。法務大臣にさようなお考えはないかと申しましたら、同感であるということでございましたので、厚生大臣におかれましても、そのような処理の方法をお考え願うことが必要じゃないかと存じますが、いかがでありますか。
  58. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 戦争受刑者の中の第三国人は非常にわずかでもありますし、ただいま仰せになりましたことは非常に青紫に値する点が多々あると思いますので、法務大臣と十分協議をいたしまして、もしそういう法律が必要であるという結論に到達いたしましたら、なるべく近い機会に提出いたしたいと思います。
  59. 山下春江

    山下(春)委員 今度は、その第三国人戦犯の話と違いまして、これは簡単に大臣の御意思を承わって、次会にこの問題については詳しく審議をさしていただきたいと思いますが、沖縄の鉄血勤皇隊あるいはその通信隊等の、沖縄の学徒を召集いたしまして軍隊に使いましたその多くの者が死没いたしております。そこで、援護局といたしましては、これの援護の手は差し伸べておられることは了承しておるのでありますが、考えてみますると、この人たちは、兵隊であったという——私非常にまだたくさん持っておりますが、兵隊であったという実績がたくさん残っておるのであります。これがなぜ恩給法に行かなかったかというと、十七才未満であるからでありますが、その十七才未満でも、これはりっぱに軍服を着せまして、特にその当時の記事を見ますると、知念弘という人はこれは十五才であります。十六才はここに六、七名書いてありますが、死没後二階級特進して上等兵に進級しておるのであります。そういう点から考えますと、これはどうしてもただ援護だけでこれを処理いたしますことはどうもむずかしいように考えられるのでありますが、今日終戦後これらの人々靖国神社に祭られることもなく、あるいはまた沖縄は日本に帰属したいと島民全体がこいねがっておるにもかかわらず、このこともかなわないというような気の毒な状態にあります。これらの人々を特にできれば現在の恩給法の中に認めていただきたいのであります。これが恩給法に認められない理由は、今は死滅したものでありますが、兵役法の中に十七才以上となっておるからだそうであります。しかし、現在兵役法などを持ち出すということは、すでに死滅しておる法律で、まことにどうもおかしな話だと思いますが、しかし、それでも恩給法全体の体系をこわすということでできないならば、特例法でも設けてこれらの者の身分を保障してやるというようなお考えはございますまいか。
  60. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この問題については前から多少聞いておる点もありまするけれども、沖縄の戦いは大東亜戦争中における最も悲惨な出来事でありまして、国土を守りあるいは郷土を守るという意味合いにおいて、強制的に徴集をされたというような点もありましょうし、また志願して戦線にはせつけたというような点もあろうし、これらの問題に対しては、やはり相当に当時のことを顧みて、どこへ当てはめてよいかということについては相当検討しなければならぬことがあるかと思います。一般的に申し上げれば、旧軍人恩給それから遺族の補償という問題は終戦以来の大案件でありまして、御列席の委員の方々にはこれらの問題について実は長年にわたって御研究になり、だんだん戦争死没者、遺族あるいは旧軍人関係国家の補償というものは完成の域に近づいてきたと思いますので、従って、その際において不公平があったとか、最後には歴史を顧みて後の世代になって非常に不公平であったということのないように処理をしたい、かように思っております。私は、政治の上から見まして、ときどき恩給と年金問題に関連して政治的な発露をいたし、かなり問題を提供したような形になっておりますが、でき得る限り軍人恩給の問題はここ一両年のうちに大体のけじめをつけたいと思いますので、その際において、沖縄関係の戦没者の取扱いに対しても、数もそう多くないことでありますから、ただいま御指摘のようなことについては十分検討してみたいと思っております。
  61. 山下春江

    山下(春)委員 大臣の御答弁は全くその通りだと思います。思いますが、戦争苛烈の際には、防空壕の中で子供がおそれおののいて泣き叫ぶ、それを音探に触れてはいけないというので、銃剣の先で突き殺したというような、まことに哀れな話がたくさんあります。これらに対しても、沖縄人としては、国家補償云々には触れないで、ひたすら、懸命に戦って散華いたしました幼き英霊靖国神社祭り軍人として補償してもらいたい、こういうことを沖縄の遺族会長が来られて訴えられますと、大臣の仰せの通りこの戦争の跡始末の最終段階でありますので、本国会あたりで、特例法にならなければ、せめてさようなことを附帯決議として後の審議の足がかりにするというところに持っていきたいと思っております。大臣の御答弁でその意思もよくわかったのでありますが、私どもこの委員会としても、こういう問題をどういう格好でか心残りのないように審議を進めたいと思いますので、大臣もぜひそのつもりでお進めを願いたいと思います。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 仮出所されております第三国人である戦犯の皆さんを大森寮へ一時的に収容しておるということでありますが、これは一時寮で定着寮ではないと思うのです。しからば、まだ巣鴨におります五十数名の第三国人が出た場合に、定着寮を考える用意があるかないか、この点をお伺いいたします。
  63. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 今定着寮と一時寮に分けて御質問があったのでありますが、一般引揚者に対する処遇といたしましては、単身でお帰りになった方は、一時寮に一時お入りになる、そのうちに自分の生業その他をお見つけになると、それに対応してしかるべき住居を持って出ていかれる。家族持ちの方につきましては、一時寮にいつまでもお入り願っておきませんで、定着寮あるいは個々の住宅等をお世話しておるわけであります。従来も、一時寮一時寮と申しましても、恒久化すれば定着寮になるわけでありまして、そこは言葉の相違でありますが、多少定着寮的な意味合いも現在の一時寮には入っております。現に常盤寮と申しますところのものは、今までの一時寮という建前のもとで相当長い間入っておられます。今のところはそういう線で現在まで来ておるわけでございます。  今後の問題につきましては、先ほど法務大臣からもお話があり、また厚生大臣からもお話がありました通り、内閣あるいは法務省を中心といたしまして関係省が集まりまして、いろいろとこの対策に早急に検討を加えようということで、きょうも実はその会議を予定しておったわけでございます。時間がございませんので本日はできませんが、法務省にも積極的に推進いたしまして、できるだけ早く結論を出したいと思います。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 大臣がきょう内閣委員会で御発言になられた中に、第三国人の傷病者は何らの救済の道がないのだということでございましたが、現に困って路頭に迷っておる人を見て、君たちは国際的にも打つ手がないのだと言って放任しておくことは、人道的に許されない問題なのです。列車の中で、第三国人に、元日本軍人として召集されて、日本軍人としてけがをさせられた、しかるに日本政府は何ら手を打っていないと演説されては、われわれ日本人は黙っておられない。最近の列車の中における傷病者の演説は、日本政府に対する第三国人の悲壮な恨みの発言なのです。これを放任しておくということになると、独立国日本の権威いずこにありやということになる。目前に迫ったこの人たちの飢餓を救うために国際的にそういう手が打てない限りは——手がないのだということではなくて、生活保護法の道もあればいろいろな道があるのですが、日本国内において傷病年金、増加恩給と同額のものにしてこれを処遇するという措置をお取りになる道がないものかどうか、これをお尋ねいたします。
  65. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほどお答えしたのとちょうど裏表になった問題ですから、御質問があったものと思いますが、恩給を失権した者に対しては恩給を出すかあるいは手当金を出すかという点では、すでに問題としては今日は他に方法がないということを申し上げたわけであります。ただし、これらはやはり国際信義上の問題がありますから、外務大臣が申しておりますように、日韓交渉の際におきましてこれを解決することを責任を持って言明したわけであります。もとより、厚生大臣としても、これらの処遇については、日本国内におけるところの各種の法律がございます。生活保護法においてもこれらを見なければならぬ。またもしそれ以上の水準であるならば、それぞれの法律ワクの中において善処しなければなりませんけれども、しかし、こういう問題は非常な社会問題として見のがすことができないという世論が起ってくれば、当然、これに対するところの措置は、先ほど戦争受刑者の問題について御答弁申し上げたと同じような精神をもって政府はまた善処しなければならぬ、かように考えておるわけであります。もう少し明確に申し上げれば、これが相当大きな社会問題となって、どうしても政府処置をしなければならぬということになりますれば、これはわれわれの方としても具体的な措置をいたします。しかし、今日は、そういう問題は聞いてはおりまするけれども、明確に申し上げれば戦争受刑者の問題ほど社会問題とはなっておりませんので、従って、今日の段階では、外務大臣が外務委員会で御答弁申し上げた以外のことは私は申し上げる段階にはありません。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 目前に路頭に迷っている傷病者は、日韓会談その他の道が開けるまでは待ってもらわなければいかぬ、それからこういう問題は世論として声が大きくならなければ手がつけられないのだということでは、やはりこれは日本国の権威に関する問題だと思う。そういうものを発見したら端からどんどん保護を加えていく。日本軍人として大事なからだを傷つけたということが確認できれば、もっとどしどし積極的に手をつけていかれる。そういう人々がおらぬかと探し求めてでも、そういう厚生大臣の思い切った措置を講じてやれば、そういうときが熟するのを待つよりははるかにりっぱだと思いますが、いかがですか。
  67. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これらのことにつきましては、御承知の通り、生活保護法という法律があって、そうして実際にそういう路頭に迷っておる者がありますれば、生活保護というものは大体建前としては日本人というものを対象にしておるわけですが、朝鮮人あるいはその他の第三国人についても、法の建前のいかんによらず、これに準じて取り扱っておることは事実であります。従って、私どもといたしましては、これらの問題は、外務大臣が答弁をいたしましたように、日韓会談その他の正式の交渉の際におきまして処置いたしたい、かように申し上げる以外に方法はないのであります。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 外務委員会答弁というものは、日韓会談その他そういう問題について何かあったのですか。
  69. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 本会議答弁をいたしておるそうであります。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 それはこの間私が質問したときの答弁よりほかに何かあったのですか。あのときの答弁ですか。
  71. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 そうです。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 私は、ここで、大臣は御多忙のようでありますから、局長に一言お尋ね申し上げておきたいことがあります。  生活保護法とそれから援護法、これが重なる場合に、あるいは恩給法等が重なる場合に、生活保護の方の援助がその月分だけ打ち切られるという措置は、この法の建前からいったら矛盾ではないかと思うのであります。それぞれの法の精神を生かして、恩給法によって、公務扶助料をもらうに至ったから今度生活保護をそれだけ打ち切るというのは、これははなはだ主客転倒の考え方であろうと思いますが、援護法理論からいって公務扶助料は国家の公務に服した立場で支給するのだという局長の持論から言うならば、これはそれぞれ別の立場で支給すべきものではないかと思います。
  73. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 お答えいたします。これは、援護法理論ではなしに、生活保護法理論によって解決さるべきものであります。どちらが優先するかと申しますれば、援護法であります。援護法は国実補償の精神によって援護するということで、該当者があればすべて年金を差し上げる。公務扶助料も同じでございます。そこで問題は、生活保護法の上におきまして最低生活を保障するという補充的の性格から見ましても、一切の収入は収入としてそれを差し引くというのが生活保護法の建前でありまして、生活保護法の建前からいって、遺族年金なり公務扶助料というものは収入とみなす、こういうことでございます。もっとも、同じ援護法によるものでございましても、弔慰金というものは、弔慰金という特殊の性質のものでございますので、これは差し引いておりませんけれども遺族年金というのは生活のための資金、年金である、そういう色彩が濃厚でございますので、やはり生活保護の建前としてはどうしても差し引くということにならざるを得ないだろうと思います。
  74. 高岡大輔

    高岡委員長 他に御質疑がなければ、本日はこの程度にいたしたいと思います。  なお、明日は、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会