○川崎国務大臣 私よりも
援護局長の方が深く知っておりますから、あとでお答えいただきますが、今の、先ごろオランダ
関係の
戦犯を解除されて、なお今日
巣鴨に残っておる二名の者についての話でありますが、これは
閣議で田中副長官が報告をいたしました際に、私も非常にけげんに思っておりまして、その生活の問題についてはやはり
厚生省が主体になって相当お世話をしなければならぬものじゃないかという
考えをいたしておりまして、あとで実は副長官に聞いて、これはどういうふうに処理をすべきものかという話までしたほどであります。そこで、お答えをいたしておきますが、一昨日
厚生省にこの
戦争受刑者の方々が見えまして、そうしてこの二名といわず、
一般に
就職の世話あるいは
住宅の世話をしてもらいたい、特に今日差し迫っているのはこの二名の問題であって、
巣鴨に長くおるということは精神的な苦痛もあるから、従って早く受け入れ態勢を整備してもらいたいという話でありました。第一には職業を
あっせんしてくれ、第二には
住宅を世話してくれ、第三には生業資金として三十万円を世話してくれ、こういうことであろうと思うのであります。そこでこれは、先ほど
法務大臣はどういう
お話でありましたか知りませんけれ
ども、私セクショナリズムで申すのではありませんが、
戦争受刑者に対する善後
措置につきましては
法務省が世話をするということになっておるのであります。しかし、
法務省の方で、内容については
厚生省だとか、あるいは外務省だとかいうようなことの責任転嫁みたいな話し合いがありますれば、私の方としては、むしろ進んで
厚生省が主体となって世話をしてもよいとさえ
考えておるほどでありまして、最近では強くこの申し入れをいたし、われわれの方も積極的に問題の解決に当ろうといたしておるほどでございます。ただ、そのうちで
一つだけ今
お話の点と違うのは、ただいまも
援護局長が申したように、
住宅の方は、とりあえず
厚生省が主体となってお世話をした大森寮というところには、
一般の引揚者の方が百人足らず入っておられるそうであります。そこへ、引揚者も入っておられるのですから、
戦犯を解除された方々が入れないという理由は私はなかろうと思うのであります。そこで、先ほ
ども答弁をいたしておりますが、この際もっと明確に
答弁をいたしますと、この引揚者の寮というのは、
戦争中に相当大きな
住宅を借りたそうでありまして、その後あまり手入れをいたさない
関係で相当さびれてはおるかとも思いますけれ
ども、のら犬が住むようなところだとか、あるいは
巣鴨よりも悪いとか
——巣鴨は最近内部は非常によくなったそうでありまして、そういう
住宅の単なる比較からいえばあるいは悪いかもしれませんけれ
ども、何といったって精神的な苦痛、つまり
戦争受刑者といういわば忌まわしい犯罪を着せられたものから解除されるわけですから、雨露をしのぐということが完全であり、ちゃんと骨も敷いてあって、
一般の
家族が入っておるところにお入り願えないということは私はなかろうと思うのであります。そこでバリケードを築いておるという
お話があったのであります。自分は行ってみたことがないから、自分の言うことが正しいかどうかわからないけれ
ども、しかし自分の下僚から報告を聞いておるところによると、その大森寮というものには、なるほどへいはある。しかし、ブルジョアが昔住んでおったところであるからへいのあるのは当りまえで、何も営門とかあるいは
巣鴨の門とは違うのだ。従って、門の上に鉄条網があるというのは、鉄条網ではなくて、聞いてみるとガラスのとげを刺した、昔金持ちの家にどろぼうが入るので防御などをする態勢をしくときに、ああいうものをやったことがありますな。あれをしておるのを鉄条網と称しておるのだそうであります。そこで私がそう言いますと、その点については何らの御反駁もなく、その通りだという顔をしておりました。言葉は発せられませんでした。従って、
住宅の問題は、この二名の方々が
同意をしていただけるならば、今日でも入れる態勢はしいてあるわけであります。
それから職業の問題につきましても十分ご
あっせんをしておるそうでありまして、ただ、今までほかのなにについて十分御
同意を得られなかったというような
関係でありまして、今
厚生省として非常に十分なことができないというのは、生業資金三十万円という問題は、大蔵省の
関係もあり、その他財政
当局の資金融通の
関係もありますので、まだ十分なことはできておりませんが、その他については確信を持っておるわけであります。
住宅はもうすでに現に提供できるものもあり、それから職業についても、
法務省と
相談をしまして、
厚生省がむしろイニシアチブをとっても解決をいたそう、こう思っております。生業資金の三十万円ということは、今直ちにこれをやりますと、その方お二人であればよろしゅうございますけれ
ども、五十八名という数が当然問題になるのですから、それもお世話すべきでありましょう。しかし、今これを入れますれば、千七百四十万円という金を直ちに用意をいたさなければならぬ。これを貸し付けるということは、今日では、国民金融公庫などに頼んでみましても、なかなかすぐにはできないというような
関係で、しかし、
厚生大臣としては、十分御協力を申し上げて、これらの問題の解決に当ろうといたしておるのであります。従いまして、先ほど来御
質問でありますが、
住宅、職業の
あっせん等につきましては、誠意を持って今日までもやってきたということの経過だけは、この際御
承知おきを願いたいと存ずるのでございます。