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1955-06-28 第22回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十八日(火曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 高岡 大輔君    理事 臼井 莊一君 理事 辻  政信君    理事 堀内 一雄君 理事 中山 マサ君    理事 戸叶 里子君       眞崎 勝次君    仲川房次郎君       山下 春江君    河野  正君       楯 兼次郎君    柳田 秀一君       受田 新吉君    小林 信一君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      畠山 一郎君         外務事務官         (アジア局借入         金審査室長)  池田千嘉太君         厚生事務官         (引揚援護局         引揚課長)   坂元貞一郎君         農林事務官   斎藤 誠三君         郵政事務官         (郵務局国際         業務課長)   曾山 克己君         日本専売公社販         売部監視課長  市川  茂君     ————————————— 六月二十三日  在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改  正する法律案高岡大輔提出衆法第二五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改  正する法律案高岡大輔提出衆法第二五  号)  ソ連地区残留同胞引揚に関する件(慰問品の郵  送に関する問題)  遺家族及び留守家族援護に関する件     —————————————
  2. 高岡大輔

    高岡委員長 これより会議を開きます。  まずソ連地区残留同胞引き揚げに関する問題について議事を進めます。  ソ連地区残留同胞に対し留守家族より慰問品小包を送る問題につきましては、現在タバコ米並び主食加工品を入れて送る場合に郵便局などで受け付けないことがあるやに承わりますが、これらの慰問品を渇望しております未帰還同胞及び留守家族にとりましては大きな問題でございますので、この点につきまして政府当局より説明を求めることといたします。
  3. 曾山克己

    曾山説明員 郵政省を代表いたしまして御説明いたします。  ただいま委員長よりお話のありました、郵便局におきましてソ連地区抑留邦人あて小包内容品制限しておるやに承わったのでございますが、この内容品につきましては、ソ連同胞あて小包の制度が始まりました昭和二十八年の二月におきまして、外務省厚生省及び郵政省日赤ももちろん入っておったのでありますが、この四者におきまして、抑留邦人から内地留守家族にあてました通信、及びドイツ、つまり西独の抑留者ソ連との関係、さらにオーストリアとソ連との関係等をいろいろ情報をとりまして考慮してきめたのでございます。そのときには実はタバコ制限品目の中に入れたのでございます。と申しますのは、当時、古い情報でありますが、ソ連から私どもの方に参っておりますところの輸送禁止品品目表がございます。その中にタバコ制限品目に該当しておったのであります。ところが、最近新しい情報が参りまして、それによりますと、大幅にソ連タバコにつきましての制限解除しておりますので、今後留守家族方々の御要望に沿いまして、一刻も早くタバコにつきましては制限解除したいと思っております。なお、主食その他加工品につきましては、食管法関係がございまして、これは農林当局よりお答えがあるはずでございますが、私ども郵政省立場としましては、これを制限する筋合いのものでは実はございませんので、農林省の方さえよければ、この点につきましても解除いたしまして、かなり長時の保存が可能な食糧品につきましてはすべてソ連あて輸送できるようにいたしたいと存じます。  以上お答えいたします。
  4. 市川茂

    市川説明員 ただいまの委員長からの御質問に対しまして、日本専売公社から御説明申し上げたいと思います。  慰問品等に購入いたしまして製造タバコを海外に送ることにつきましては、そのタバコタバコ小売人から売り渡されたものである限りにおきまして、現行たばこ専売法においては、これに関しまして何らの禁止規定を設けておりません。従って、自由に送ることができるということに相なるのでございます。  簡単でございますが御説明いたします。
  5. 斎藤誠三

    斎藤説明員 食糧庁の方からお答えをいたします。  米穀加工品につきましては、従来もち、米穀粉等制限いたしておりましたが、昨年の四月十五日に食糧管理法に基く施行規則の一部改正を行いまして、全部制限を撤廃しておりますので、現在はもち、米穀加工品はすべて輸送制限なしに同胞の方へ送れるということになっております。
  6. 高岡大輔

    高岡委員長 これにて政府当局側よりの説明は終りました。  質疑通告がありますので、これを許します。中山マサ君。
  7. 中山マサ

    中山(マ)委員 私は慰問品についてお尋ねを申し上げたいと思います。  こういうタバコ禁止は解くということでございますが、留守家族から聞いておりますところでは、窓口ではまだそれを受け付けていないということを聞いておるのでございますが、この窓口に対して、そういうものは全部解かれたのである、そうして受け付けて輸送してもよろしいという通告をすでにお出しいただいておりますでございましょうか、お尋ねいたします。
  8. 曾山克己

    曾山説明員 御説明いたします。  今お尋ねのありました点につきましては、この委員会の御方針によりまして、直ちに解けという御意思だと存じますので、実は、今立案しておりまして、きょうその通達を出すことにしております。と申しますのは、先ほど申しました新しい情報が入りましたのがつい最近のことでございます。直ちに解くことにいたしたいと思うのであります。従って、窓口へもその点を通達いたす考えでございます。
  9. 中山マサ

    中山(マ)委員 食糧庁の方はいかがでございましょうか。
  10. 斎藤誠三

    斎藤説明員 食糧庁の方は、昨年加工品輸送制限を撤廃いたしました際、郵政省の方へ御連絡をいたしまして、下部に徹底していただくよう食糧庁としては通達いたしております。そのほか別に直接そういう局所に対して通達はいたしておりません。
  11. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは、郵政省の、方にお願いを申し上げるのでございますが、今お聞きになりましたように、もうすでに昨年これが解禁になっておりますのにかかわりませず、まことにこれは言いようが悪いかもしれませんが、お宅の方で行き届かないために、新聞等でも今度帰って見えました方々の公述を通してお聞き下さっておることと思いますが、向うではいろいろなる食料品の不足から非常に命が知かめられてしまっているというよう情報も輝いておりまするので、あなたの方の通達というものが人間の命に非常な重要性を持っておるということをどうぞ一つ深くお考え下さいまして——日本官庁というものは事務的に実にのろいのでございます。私がアメリカにおりました時分に、アメリカで一週間でできることが日本官庁では三カ月かかかるというようなある雑誌を読みまして、その当時はこういうことを全然知らない学生の時代でございましたから、非常に憤慨をいたしたのでございますが、こういうことを現実に見ますと、何年か前に読んだことがいまだにこの日本では当てはまると思わざるを得ないのでございます。ほかのことも何でございますが、どうぞ一つこの人命に関することについては、とくと迅速をもってお運び願います。この食糧問題については昨年解除になっているし、タバコはこのごろ解禁になったという御通告を受けたのでありましょうけれども、何とぞ一つこういうことは迅速に徹底さしていただきまして、その徹底ができましたときには、この委員会に、窓口には確かに出したという報告をぜひ私はいただきたいと思うのでございます。  もう一つ伺いたいのでございますが、捕虜郵便物でございます。今その価格はどういうものでございましょうか。一般航空便外国に出しますのは四十五円にこのごろお安くなっておりますが、これに対してのこの郵便物のお値段のことを一つ聞かせていたたきたいと思います。
  12. 曾山克己

    曾山説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のありました事務上の不連絡につきましては、実は、私どもの方では、農林省から解除の旨を受けましてから、郵便局へは通達いたしたのでありますが、私どもの監督の不行き届きのために、なお郵便局でそれを知らざる向きがありまして、昔の通達をそのまま順守しておったのかもしれないと存じます。その点、私ども責任でございますので、今御指摘のありました点につきましては、十分戒心して、あらためて通達をいたしたいと思います。  なお、お尋ね俘虜あて郵便料の点でございますが、これは、万国郵便条約規定を準用いたしまして、捕虜郵便という郵便規定によってやっておるのでありまして、この規定によりますと無料でございます。ただ、航空便料及び書留料、つまり特殊の扱いのものにつきましては、その郵便無料としないということになっております。従って、もし航空便でお出しになるということでございますれば、基本料金無料でございますが、航空便料金はいただかなければならぬことになっておるのであります。
  13. 中山マサ

    中山(マ)委員 そういう点も、どうぞ一つ御考慮下さいまして、働く人たちをかの地にとられて、残っております家族は非常に窮乏を訴えておるのでございますから、何とか一つその面も親切にお取り計らいが願いたいと思うのであります。どうぞ一つ窓口へ徹底さしていただきたい。私どもがこの国会におきましていろいろ親切な法律を作りましても、自分の選挙区へ帰りまして訴えられることは、その国会親心というものが末端に徹底しないということを、こういう問題だけではございません、ほかの問題でも特に感じさせられるのでございまするから、どうぞ一つ責任を持って、窓口で依頼を断わったりすることのないように、大々的に御宣伝を願いたいということをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  14. 曾山克己

    曾山説明員 今の御要望につきましては、とくと私の方でも戒心いたしまして、先ほど申しましたように、末端に十分徹底するように努力をいたしたいと思います。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一点、関連してお伺いしておきたいのです。今度主食なりタバコなどが送れるようになって大へん喜ばしいのですが、何かほかに制限されているものがございますかどうですか、伺いたいと思います。
  16. 曾山克己

    曾山説明員 御説明いたします。なおほかに制限されている品目はないかというお尋ねですが、それはございます。その内容を申し上げますと、当時のコピーはいたしておりますが、書籍、新聞雑誌等の印刷物、さらに通信文、書類、及び酒、トランプ薬品、時計、刀物、以上申し上げた通りでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だいぶん制限されているものがあるのですけれども、この中で、これは解除してもいいと私どもに思われるものがあるのですが、そういうことは不可能なものでしょうか、どうでしょうか。
  18. 曾山克己

    曾山説明員 御説明いたします。  今解除しても差しつかえないと思われるものがあるというお尋ねでございますが、実は私どももさように思うのであります。ただ、先ほど御説明しましたように、この制限品目をきめましたいきさつは、外務省及び厚生省さらに日赤等情報を総合しまして、直接向うに聞いてやったのではなくて、向うから来ましたたより等によって、及び外国情報を総合しましてやったものでございます。そこで、もし、向うに直接聞きまして、ロシヤの郵政省の方からこうこういうものはいいんだという確答を得れば、私どもは直ちにその解除をいたしたいと思います。なお、当時、実はこのタバコにつきましても、万一、ソ連制限しておりますものをこちらで送りました場合に、好意的に送ったものがその制限品目に触れまして、逆に——規定上没収ないし差し押え、返送することになっておりますので、そういうことになりましては、かえって好意があだになるという私どもの老婆心から、若干不安心であったので制限いたしたのであります。従いまして、今後向う通信する機会を持ちまして、御要難の線に沿いまして、できるだけ解除いたしていきたいと思います。なお、刃物とか薬品とか、あるいはトランプ、酒というものは、これは郵便物として絶対に向うに入れないことになっておりますので、その点につきましては、私ども直接交渉しましても、おそらく不可能だと思いますが、そのほかのものにつきましては、なお交渉の余地があるかと思います。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの御答弁を伺っておりますと、私ども刃物とか酒類というのはどうかと思うんですけれども、あなたのおっしゃるように送っていいと思われるものがたくさんあるわけでございます。なるべく早く厚生省なりあるいは外務省とお話し合いになって、あるいはまた委員会でそういうことを申し入れしてもいいと思うんですけれども、そういうふうにいたしまして、そうして早く送られるような方法をぜひとっていただきたいということを要望する次第であります。
  20. 市川茂

    市川説明員 先ほど申し上げました通りタバコを送ることにつきましては、タバコ小売人から売り渡したいわゆる正規のタバコである限りにおいて、禁止されていないのでありまして、国内において私どもが所持することさえ禁止されておりますところのやみの外国タバコであるとか、あるいは葉タバコ等を送ることはもちろんできない。国内において所持すら禁止されておりますので、その点を一つつけ加えて御説明申し上げておきたいと思います。
  21. 高岡大輔

    高岡委員長 ほかに御質疑がなければ、本問題はこの程度にいたしたいと思います。     —————————————
  22. 高岡大輔

    高岡委員長 次に、遺家族及び留守家族援護に関し、戦傷病者戦没者遺族等援護法、未帰還者留守家族等援護法及び恩給法の一部を改正する問題について質疑を行うことといたします。  質疑通告がありますので、これを許します。堀内一雄君。
  23. 堀内一雄

    堀内委員 今度の恩給法並び援護法改正に伴って、留守家族手当関係はどうなりますか。
  24. 田邊繁雄

    田邊政府委員 政府原案におきましては、遺族年金増額に対応してそれだけ増額するということにいたしておったのでございますが、今度の国会修正によりまして恩給増額になり、従って遺族年金増額になりますので、それに対応して留守家族の方も引き上げることになるわけでございます。
  25. 堀内一雄

    堀内委員 これで私の質問を終ります。
  26. 高岡大輔

  27. 山下春江

    山下(春)委員 田邊援護局長に伺いますが、この戦傷病者戦没者遺族等援護法と、未帰還者留守家族等援護法、この三つの法律の適用を受ける人たちの間にバランスがとれているかどうか。私には留守家族の方があまりにも軽く扱われておるのではなかろうかと思われる節がのあるです。今堀内委員質問に対して恩給法等改正によって留守家族の受ける支給もそれに比例して上るのだという御説明はありましたが、そのほか、この法律全体が、両方が持っておりますウエートが留守家族の方が軽くはないかと考えられるのでありますが、そういうことに対して、お扱いになっているあなたの総括的な御意見を伺いたいと思います。
  28. 田邊繁雄

    田邊政府委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法と未帰還者留守家族等援護法とは、いずれも引揚援護局で所管しておりまする法律でございますので、援護を要する対象者の決定であるとか、あるいは金額等につきましては、同じ援護でありますので均衡をとるようにいたしておりまするが、ただ、二つ法律出発点におきまして根本的な理念で異なっていると思うのであります。遺族援護法は最初から恩給の復活をする前ぶれといたしまして、昭和二十七年独立早々の際に制定されたものでございます。この第一条にも、国家補償精神を基調としてとはっきり書いてございますが、これは恩給法における国家補償精神と全く同じものだと私ども了解しております。それの精神根本として、かつ援護という思想を入れて、二つ精神に基いて全体を構成しておる。これが遺族援護法根本理念でございます。未帰還者留守家族等援護法の場合におきましては何が根本理念になるかと申しますと、実はこういった法律はいまだかってないわけでございます。外国抑留されておる未帰還者という事態が今までなかったのでございます。そういう一つ理念を作ることについては私ども非常に苦心をいたしたのでございます。しかし、従来例がないからといって新しい法律ができないわけでもございませんし、いろいろ研究いたしました結果、終戦後平和が回復した後におきましてもなおかつ自己の意思によらず帰り得ないという立場に置かれておる人が現実にあれば、これはやはり国の責任と考えなければいかぬのじゃないか。本来ならば国の外交保護権を発動してそういった方々日本内地へ帰国できるようにするなり、あるいはそういう抑留という状態を解消すべき責任が国にあるのではないか。ところが、今日遺憾ながらそれができないという状態に置かれていると考えざるを得ないのではないか。また、状況不明の人につきましてもこれは同様でございまして、家族のこうむっている精神的物質的苦痛というものは、生存がはっきりし抑留されていることがはっきりしている人に比べてあるいはそれ以上大きいものかもしれません。国としてはやはり生きているか死んでいるかはっきりすることが国家責任として考えなければならぬのじゃないか。こういった責任が果し得ない結果留守家族方々に一定の損失を与えることにつきましては、少くともその問題が解決するまでの間待っている方々の経済的な力を援助してあげることが今日国家としてまた国民全体の考え方からして承認できる問題ではなかろうか。それは広い意味においては国家補償的精神がやはりそこに働いているのではないか。これが生活保護法とは別立てにした援護法を立てる根本になるのではないか。こう考えたわけであります。かたがた、未復員者給与法というものがあり、また一般邦人につきましては特別未帰還者給与法という法律があり、これらもすでに今月の段階において未帰還者留守家族全体をおおう援護法としては適当ではない。そこで新しいそういった考え方に基いて、こういう法律を作ったわけであります。従いまして、あくまでも待っている方々の経済的な力を援護してあげるということが根本でございますので、そこに従来の経緯があったのにかんがみまして、多少そこが遺族援護法とは違っております。遺族援護法におきましても留守家族援護法と同じよう建前をとることは不可能ではございませんが、終戦後すでに十年を経過しておる今日におきまして、死亡当時における生計関係その他というものを調べまして措置をするということはとうてい困難でございます。ことに二百万になんなんとする戦没者のそういったことを調べてやるということはできることではない。しかも、一方恩給法というものはそういうものを考えないという建前でできておる関係上、遺族援護法というものは生計関係を問わないという建前になっておるのでございます。これは私は理由があると思います。留守家族援護法におきましては、従来給与の前渡しということによって援護を行なっておったときから、すでに生計関係のある人だけに手当を支給するという建前をとっておりましたので、建前としてあくまでもそういう建前でいきたいということは、私はその建前としては正しいと思います。しかしながら、援護法生計関係の認定につきましては、建前をそういうふうにとるからといって、一部でやっておりますように、長男だからやる次男だからやらないというやり方は今日の時代に合わないのであります。留守家族経済的状態をよく見まして手当を支給するように進めて参りたい、こう考えておるのであります。法律建前は違っておりますが、その他におきましては極力同じようにいたしております。ただ、留守家族援護法遺族援護法なり恩給法と非常に関係の深い条文でございまして、今日状況不明の状態に置かれている人というのは実は大部分死んでおるかもしれないということもあるわけで、その実態が明らかになった場合においては、すぐ遺族援護法なり恩給法に切りかわるわけであります。そうなりますと、留守家族援護法はそういうものの単なる前払いという形になるわけであります。そういった関係で、この両者の間には非常に複雑な関係がありますが、わかりにくいという点と数の少いという関係がありましょうが、留守家族の問題につきましては国会その他においても遺族問題ほど論議される機会が少いし、また声も小さいわけであります。従って、遺族の問題は黙っておりましても一切の問題が海面に出て参りますが、留守家族の問題の方はよほどこちらから注意をしてこまかな点まで調べて不均衡な点は是正するように心がかてやりませんと、つい置き去りになるということは、私ども特に注意しなければならぬ点じゃないかと思います。
  29. 山下春江

    山下(春)委員 今局長の御答弁を聞いておりましても、局長がきょうまで留守家族問題について非常に心を砕いておることはよくわかります。法律に取り上げる場合は、常に声の大きいものだけが取り上げられて、声なき声はおおむねいつも退けられるようであります。これははなはだ遺憾なことであります。特に戦後十年、帰りたくても帰れないという抑留者の苦労、及び留守家族におきましても、ほとんど大部分の方が今日もはや生存を期待することが困難であろうと思われるようなことを考えますときに、そういう声なき者がより以上悲惨なところに追い込められつつもそれが取り残されるということは、はなはだ遺憾であります。その点で、きょうまで援護局長が非常に心を砕いて手落ちのないように善処してもらったことは非常にありがたいことであります。しかしながら、これも常にやはり予算関係のあることでございます。ただ一片の法律ということでなく、こうした気持がお金を出す大蔵省の方に徹底いたしませんと、せっかくの親心がまた予算のためにやむを得ず消えてなくなるということに相なったのでは、はなはだ遺憾なことだと思うのであります。そこで、法律建前は今御説明のあった通りでございますが、私どもがこの法律を見て、あるいは法律規定できるというものはこれでとにかく手落ちなく救済されたと思うのでありますけれども、どうにかしなければならないもので、なかなか法律には書き切れないいろいろな問題があることも事実であります。そういう問題に対しましては、援護局としては、前にこれらのことに対して経験のある業務でございませんだけに、もっぱら援護局長のそういうことに対するほんとうに声なき声に報いてやるという全く涙ぐましい親心が浸透するかしないかということは、かかって予算等にも関係があると思いますけれども、そういう声なき声国家としてはどういうふうに処遇してやりたいとお思いになるか、そのお心がけを一つ承わっておきたいと思います。
  30. 田邊繁雄

    田邊政府委員 実は、一口に引き揚げ問題と申しましても、終戦後十年の間に問題の重点がいろいろ変ってきております。本委員会におきましては、その問題に詳しい方ばかりでありますので、あえて詳しく申し上げる必要はないと思いますが、当初は六百万からの引揚者定着援護ということが非常にやかましかった時代があったわけであります。その関係で、引揚者団体等が非常に強い要請を持って政府なり国会なりにいろいろ要請した時代がございます。それが末端におきましていろいろなトラブル等を起し、引揚者全体が評判を悪くするという場面もたびたび耳にしたのでございます。これは、結局、国家がこういった方々の声を正式に聞く機関が必要ではないか、また、こういった問題は、役所のそれぞれの機関、職務によって権限が分れておりまして、相互の連絡も十分でないという点が事務を迅途に運べない根本になっておりますので、やはりこれは政府機関の中に、そういった民間の人の意見も取り入れるような総合的な機関を作る必要があるということから、実は引揚同胞対策審議会というものが法律によって設定されたわけであります。これは、関係各省の次官と学識経験者と、それから関係団体の代表者が正式に団体自身から選任されまして、それを国家の当該機関委員に任命するという方式をとっております。従って、留守家族の団体におきましても引揚者の団体におきましても代表者がその委員会に出ておりますので、そこで問題のすべてをさらけ出していただきまして、政府の代表者あるいは民間の学識経験者等が集まりまして、その意見をよく聞きまして、いろいろ検討して結論を出す、それを内閣の方に答申をする、あるいは勧告をするということをやっております。今日までしばしばこれを開きまして決議がなされておりますが、その結果は非常によく政府内に取り入れられまして、実現を見ているよう状態でございます。今後も、未帰還問題が最終の段階に立ち至りましたので、できるだけひんぱんにこれを開きまして、こういった留守家族の声を政府部内によく反映させまして、そして遺漏なきように措置して参りたいと考えております。
  31. 山下春江

    山下(春)委員 今日までできておりますこの審議会は私ども伺ってはおりましたが、はなはだ不河発なようでございます。ときどきお開きになっているかもしれませんが、よくその内情を存じないのでありますが、それには、各省ということでありますが、やはり特に大蔵省あたりが理解を持ってそれに参画していただかないと、結局大蔵省がやかましくて、こういう問題にあまり理解がないために、せっかくの審議されたことが形になって現われないということになっておりますが、きょう大蔵省がお見えでないようでありますので、大蔵省に対する質問は次の機会にいたしますが、恩給援護法との関係というのが、私どもはなはだ未熟な者には何ともその線の引き方に困り果てておりますので、役所の方で、これは年金をやる資格があるけれども、これはないのだと言われると、もうそれで参ってしまうようなことになってしまうのですが、気持ではどうしてもそれでいいのだと了承できないような問題もたくさんあります。恩給の場合も、声の大きい方はどんどん通るが、実際はこれはどうしても何か国の補償をしてあげなければならないというような、一番みじめな、線の引き方にやっかいなような問題は、恩給局の方でも、めんどうだからそんなのは片づけておくというわけではないのでしょうが、どうも恩給局ではそういうものを採用しないというような傾向がきょうまでありまして、長年訴えておることがはなはだ遅々として取り上げられないというような点もございます。この援護法恩給法との境にあるような、ボーダー・ラインにあるようなものを、なるべく援護法の方へおっつけないで、与う限り恩給、いわゆる国の補償という年金の力で救い上げるというような考えをもって今御審議を願っておるかどうか。個々の問題でなく、総括的な問題について恩給局の方の現在の思想的な考え方一つお聞かせおきを願いたいと思います。
  32. 畠山一郎

    ○畠山説明員 援護法恩給法とのボーダー・ラインにあるようなものについて援護法におっつけるようなことはないかというような御質問かと思いますが、われわれの方の審査事務の動かし方といたしましては、別にそういうことは考えておりません。恩給法法律上定められている要件に合致するものにつきましては、当然に恩給法に入れております。抽象論のようでございますが、別段援護法におっつけるというな考えをもって審査を進めておりません。
  33. 山下春江

    山下(春)委員 それはまそうでございましょうが、そう言わないで、もうちょっと何とかあたたかい——恩給局というものは国民に対して国の補償をやる一番あたたかい仕事をするところなんですが、あなたの方の答弁はいつもひやっと氷を当てられたようなところがあって、どうもうまくないのであります。そういう答弁はまことによくないので、あなたの方の上長官がそういう答弁をさんざんされまして、私どもも聞き飽かされておりましたので、お若いから、もう少し温情のある話が聞きたかったのであります。もうちょっと何とかうまい言い方を速記録に残しておいていただきたいと思います。
  34. 畠山一郎

    ○畠山説明員 行き届かないお答えを申し上げまして、おしかりを受けて恐縮でありますが、実を申しますと、一般論としてということでお答え申し上げたのでありますが、具体的にどういう問題があるのかということによってお答え申し上げませんと……。
  35. 山下春江

    山下(春)委員 具体的なことは法律に書けばすぐわかります。恩給局というものは、具体的でなく抽象的に、出てきた事件をみなこういう温情をもって処理しておるのだ、こういうことだけでよろしいのです。個々ではないのです。
  36. 畠山一郎

    ○畠山説明員 恩給法援護法のボーダー・ラインと申しますよりも、恩給法に当てはまるかということのボーダー・ラインということで申し上げたいと思いますが、そのような場合におきましては、実は私実際の審査事務を担当いたしておらないのでございますが、ボーダー・ライン・ケースとしてどちらにしたらいいかなという問題が起りますと、必ず審査を受け持っております係から私の担当しております課の方へ回って参ります。もちろん、われわれは事務的に見ておるわけでありますから、人情として気の毒だと思うようなものでありましても、法律上許されなければ、さしあたりばやむを得ないという場合が多いわけでありますけれども、そういった場合には、現在の法律の許される範囲において解釈のワクをいかに広げるかということをわれわれ法令担当の課でいろいろ考えておりまして、それによって処理しておるものも相当あります。と申しますのは、今まではだめだということになっておりましたのを、あらためて新しい目で恩給法を考え直しまして、恩給権があるというふうに認定していくというふうな処置をとっておるものも相当ございます。決して頭から単純に、人情もなく、冷酷に切っておるわけではございません。具体的な例としては、もし御質問があれば申し上げたいと思いますが、今、私の方の事務といたしましては、そういうふうな目で考えております。そして、いかに解釈のワクを広げましても救えないというふうなものもございますので、これはやはり機会を見て法律改正をお願いするというふうに進めたいと思っております。
  37. 田邊繁雄

    田邊政府委員 ちょっと私から補足してお答え申し上げます。今畠山課長からお話になったことで恩給局の最近の考えは現われておると思いますし、具体的に申しますと、援護法が制定されまして、百何十万という年金の裁定をやったわけでありますが、短期間に膨大なものを処理した関係上、中にはわれわれ間違いがあるということを是認せざるを得ないわけです。これはその都度訂正しておりますが、しかし、中には、これはどうしても間違いだったというものがある中で、すでに恩給法で公務でないと裁定の済んでおるものがあるわけであります。つまり、公務扶助料でなくて、普通扶助料の方で済んでおるものがある。同じ公務といいながら、援護法では公務と判断し、恩給法では公務にあらずということで裁定した。その場合にはどちらかが間違いであるわけです。そういう場合には、できるだけわれわれの方の裁定を尊重して、過去においてわれわれが公務にあらずと裁定したものも、もう一ぺん考え直して、過去の裁定を訂正していただくということもやっていただいておるわけであります。一がいに、援護法で可決になったものであるけれども恩給法では認めないということではないのでありまして、私の方でこれはどうかなあと思った場合においても、中には相当御援助をいただいておるものもあるわけであります。また、今度御承知のよう政府提案で公務の認定範囲が広げられておりまするが、これは、それが実施になりますれば、こうしても過去において却下になったものの中からも公務に浮び上ってくるものが相当数あることは当然でございます。その場合に、われわれの方で、恩給法では公務でないということで却下になっているから、これも公務でないからといって却下するものもたくさん出てくる。これをその都度恩給局と相談して恩給の方を直してもらうことはめんどうでありますので、法律においてはっきりしておこうということで、公務認定範囲の拡大の結果、従来非公務としてなされたものが公務になった場合には、恩給局において公務にあらずとして却下したものも自動的に公務に切りかわるという措置も今度の法律の中に現われているような次第であります。恩給援護法との関係が密接に連関して、お互いによく話し合いまして常に連絡をとるよう事務の取扱いをしておりますし、法律建前どもそうなっております。
  38. 山下春江

    山下(春)委員 援護法は、非常な国民の不安焦燥の気持に対するあたたかい措置によって、戦後のあの大混乱を少くしてきたという、非活に大きな事業をなし遂げられてきたものですから、私はほめてばかりおりますが、援護局の方でも少し考えるべき点もなきにしもあらずでありまして、この点は、援護局の方におきましても、どうしても恩給局に回せないというものに対しましては、今回の法の改正でこれでもう終ったというこでなく、今後もあとう限りこういった残根をぬぐい去るという意味で一つ御尽力を賜わりたいと思うのであります。  それから、具体的な問題で、今回の未帰還者留守家族等援護法の一部改正法律案の中に、療養給付のことで改正を試みられた点があるのですが、これが、現在実際に行われている点では非常にめんどうが多いので、この点についてちょっとお尋ねをしてみたいと思います。これによりますこの療養給付の手続は、ただいまどんなふうにやっておいでになりますか。
  39. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 お答えいたします。現在の法律建前では、未帰還者が帰ってきましてから一年以内に申請することになっております。その申請の手続といたしましては、大体公務で疾病にかかったとか負傷したとかいうようなことが根本でございますので、自己の責めに帰すべからざる事由によって疾病にかかり負傷したというようなことの申立書、それから現在の病状のはっきりした具体的な証明書というような資料を、都道府県の世話課に最初出していただきまして、都道府県の世話課で一応審査いたしまして、それから私の方の援護局に回って参りまして、援護局の方で最終的な審査をいたしまして、厚生大臣の認可を待って手続を終る、こういうような手続の容領になっております。
  40. 山下春江

    山下(春)委員 今の坂元課長のお話でございますと、この法律に書いてあります自己の責めに帰することのできない事由によるということですが、これは法律に書くときはこういうことを書かなければならないでしょうが、未帰還者が十年間シベリアにいて帰ってきて病気になったというときには、こんな法律の文句は要らないくらいのものであります。今の説明は、法律に基く取扱い上の説明でいたし方がないと思いますが、そういたしますと、この未帰還者の療養と生活保護法との関係はどんな関係になりますか。
  41. 田邊繁雄

    田邊政府委員 お答えします。これは生活保護法の療養とは全然別でございます。生活保護法の療養に優先してこの未帰還者留守家族の療養が行われることになっております。
  42. 山下春江

    山下(春)委員 そうでございますれば、私は、引揚者が舞鶴で診察を受けまして療養を要するものとあそこできまりましたらば、定着地に帰りましたら直ちに療養させる方がいいと思います。そういうふうに今なっていないはずでございますが、それはどうなっておりますか。
  43. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 現在引揚者が舞鶴に帰りましてからも、舞鶴援護局の方で一応病気の者については診断をいたして、その診断に応じた証明書というものを援護局の方で交付して、本人に持って帰らしておるわけでございます。御指摘のありました未帰還者留守家族等援護法による療養の給付につきましては、本人からそういうことでその病状のいろいろな証明書を都道府県を経由しまして厚生省の方に出していただかないと、具体的に私の方でどういうような原因に基いて病気になったのか、あるいは現在どういうような病状にあるのかということが把握できませんので、そういうような証明書といいますか、そういったいろいろな資料を出していただいて、それによりまして厚生省の方で調査しますので、そこに若干の期間がやはりどうしても必要なわけです。舞鶴に上りまして、国に帰ったとたんに直ちに療養の制度に持っていくということについては、できるだけ早く私の方も資料を出していただき、審査を終えまして、手続的に一応パスするものについてだけ療養を認めるということをやっておりますので、若干時間的な経過というものは必要でございますが、できるだけ急いでやって、療養の認可をするように心がけております。
  44. 山下春江

    山下(春)委員 課長はそう心がけて下さっておるのでしょうが、それがうまくいっていないのですよ。そこで、今私がお尋ねをしたことは、舞鶴へ上ってきたときには、みな気が張っているのか、お医者様の診察も短時間にやるので、精密検査ができないせいかわかりませんが、とにかく大したことではないような診察を受けました者が、定着地に行きますと、もう肺結核で手術しなければどうにもならないというような事例があります。はっきり覚えておりませんが、その間相当な時間があります。病院へ入れたときにはもう非常に悪化しておって、私自身も非常に困った問題があった。引き揚げの問題の詳しい手続上のことを私は知らないにもかかわらず、直ちに訴えられまして、非常にまごまごして困ったことがあるのでございますが、これは、あの舞鶴の状況から見ますと、援護局の方の審査も非常に短時間にしておる関係上精密にはできないと思います。設備の不完備ということもないでしょうが、いろいろ時間の関係等で精密にできないはずのものが、あそこで療養を要すると発見された場合はずっと悪いのです。そういうことですから、あの証明を持っていって、定着地ですぐ療養給付を受けられるようにしてやると、よほど違うのです。私も現実一つ例を持っているのです。肺結核で肋骨を切る手術を受けたのですが、私が療養所へ行ってみましたが、もうちょっと早かったらよかったと、そこのお医者さんに言われたのです。その間何でも四カ月か五カ月くらいかかっております。それが、手続がすっすっといくといいのですが、非常に遠隔の地だったものですから、県庁が非常に遠いし、いろいろなことから、おそかったのがこの病人をして非常に難儀をさせた。どうにか一命は取りとめたようでございますが、こういう事例があるのです。そこで、これは舞鶴で健康診断をいたしましたときには、今申したようないろいろな諸般の事情から、本人も気が張っておりますし、時間も少い、精密にやることが不可能だ、それでもなおかつ療養を要すると発見された者はよほど悪いと見なければならない。そういうことから、定着地に行ったら直ちに療養給付が受けられるようにしてやることが、せっかくこれだけの法律があるならば、私はその方がいいと思いますが、局長はどういうふうにお考えになりますか。
  45. 田邊繁雄

    田邊政府委員 引揚者援護関係で医療の問題は特に私の方で重点を置いてやっておる仕事でございます。舞鶴援護局内ではできるだけ医療の検査をする、あそこで検査を受けておらなかったためにあとでいろいろな不便をこうむることのないように、その趣旨を十分に引揚者に徹底させまして、あそこにおる間にからだが悪い人があるならば悪いということの申し立てをしていただきまして、証明書を出さすように心がけております。この点は、この前お帰りになった方にも、職員の人数もだいぶ少くなりましたが、この点だけは十分強く言いまして、短期間でございましたけれども、レントゲンその他の検査をいたしたのであります。あそこで、病気でこれはすぐ治療を要するという人につきましては、その人をすぐ舞鶴の病院に入院させます。それから、すぐ帰りたいという人につきましては、帰ってすぐ入院させる手続をとります。そして、入院しておる間に、さっき申したよう法律的な認可の申請をするわけであります。従って、入院させておきながらそういう手続をとるということもできますので、認可がなければ入れないということはいたしておりません。
  46. 山下春江

    山下(春)委員 それは徹底をいたしておりましょうか。たとえば、今の局長のお話ですと、とりあえず必要の者は入院させて、それから手続をさすというふうにおっしゃいましたが、それは大へんいいことと思いますが、徹底いたしておりましようか。
  47. 田邊繁雄

    田邊政府委員 実は、私の方は、法律ですと手続が要りますので、法律とは別個に、帰ってきたら行政措置で一カ月間療養してやるという制度を作ってあるわけであります。それで片方でやっておって、その間に手続をする、法律とは別にそういう医療援護の制度を設けてありますので、両方で間隙のないように措置するよういたしておるわけであります。
  48. 山下春江

    山下(春)委員 時間がないだろうと思いますが、そこで、私は、今度はこの法律から離れまして、援護局長ではちょっとお門違いかと思いますが、私どももきょうまでいろいろ遺族の問題、留守家族の問題に関係をいたして参ったのでありますが、どう考えましても法律では明確に線を引くことのできないような諸般のいろいろ気の毒な情勢があります。今ソ連の場合も中共の場合もそうでありますが、留守家族といわれておるいわゆる消息不明の方方の大多数の方は、近い将来にやはり未亡人、母子家庭になる運命を持っておる人と思うのであります。今回のこの三十年度の予算をきめられるに当りまして、私どもは、近い将来遺家族等で相当母子家庭になられる方があるであろうことを勘案しつつ、ぜひともこの予算の面にこういったようなものを盛り込んでもらいたいと、実に熱心に予算折衝に当る省の人々に陳情をしたのでありますが、これも、声が細く力が足らなくて、ついに今回は増額を見るに至らなかったのみならず、母子福祉資金貸付等の資金におきましては、本年度七千万円削られた、たださえ少かった資金でありましたが、七千万円削られたというような、はなはだ残念な事態が起ったのでありますが、諸般の国の援護がありましても、留守家族であった者が遺家族になって母子家庭になりますれば、何かと生活に非常に困窮するであろうと思います。それらの子弟は、何かやはり別な、学校にやれる、あるいは生活のできる方法がなければ、うまくいかないと思います。何でもそういう者は全部生活保護法に追い込めばよいというものではございませんので、あとう限り遺家族意思を尊重した社会政策があってよろしいと思うのでありますが、そういう意味から言うと、この母子福祉資金貸付等の法律などは、この際、この三十年度ごろからは、なおさらもって拡大強化されるべきであったのですが、どう考えましても、予算の面から見ると少し縮小されておるのです。資金が五億円ありますけれども、この五億円も、今日の地方財政の全く逼迫しておる状況下にありましては、地方がこれに半分足さなければ貸し付けられないという状況に置いたのでは、地方財政はやはり声なきこういう予算を一番あとに回す。年末になってとうとう貸し付けないで政府に返還してしまうというような不届きな実績も起っておる今日でございますので、これも、私どもは、今度予算が決定する前に、せめてこれを国が八割持って、地方のこれに足す金を二割くらいにして、八対二くらいにして流してくれれば、何とかこれがほんとうにフルに活用されると念願して、こういう点も予算折衝に当って私どもは力一ぱい陳情したのでありますが、でき上らなかった。また、こういったような問題の中で一番大切なのは就学資金であります。この母子福祉法ができるときに、これは厚生省もよく御承知の通り厚生省あるいは労働省等が、後家の子は使わないというような社会情勢を何とかこの法律によって助けてやろうという意味で、貸し付けた金を返してもらうという意味からも、優先的に職業をあっせんしてもらうというようなことを、あのとき厚生省も労働省も約束してくれておったのであります。その後このことは多少は援護してもらっておるようでありますが、これらの資金が今の程度で——田邊さんが十年も扱ってこられたが、どうにも法律でこれを規定することができない、しかし何とかしなければならないという援護の手がこういう法律だと思いますが、これくらいの資金でもって事足りるとお思いでございましょうか。
  49. 田邊繁雄

    田邊政府委員 未帰還問題が最終の段階に入りつつございますので、いずれ遠からざる機会に未帰還者の死亡処理をされる方が多数発生することは覚悟しておかなければならぬと思うのであります。それをいついかなる段取りでやるかという点に、われわれも非常に頭を悩ましておるわけでございます。そうなった場合に、一体未帰還者留守家族の経済的な問題はどうなるか、これは遺族援護法あるいは恩給法によって公務扶助料ないし遺族年金の該当者に切りかわるのが大部分であろうと思います。しかし、中共関係におきましては、一般邦人が多かった関係上、お話の通りの問題が出ております。これは法律の面でもある程度は考えなければならぬ。ことに、経済的な打撃が急激に起るという点については、ある程度の緩和的な考慮が必要ではないかと思っております。しかし、同時に、御指摘通り、そういう問題はただ年金とかそういう問題だけで解決できるものではございませんので、これはいろいろ一般的な均衡その他を考えましたときになかなかむずかしい問題がございますが、ひとりそういった未帰還者家族だけの問題ではなく、遺族援護法の対象にならないような多数のいわゆる戦争犠牲者の方々もおられるわけでありまして、こういった方々の問題はやはり一般の社会福祉ないしは社会保障的な施策の充実ということによって援護していくのが実際に合うのではないかと考えるわけであります。そこで、今お話しになったような母子対策その他の施策の強力な推進ということが、その面からも望まれるわけであります。この点は遺児の育英の問題につきましても同様でございまして、私どもの方では、極力そういった方面とも密接な連絡をとって、今後もそういうように心がけて参りたいと思いますが、御指摘ように、未帰還問題に関する最終的な処理をするという段階が来ましたならば、特に一そうその重要性が痛感されますので、今後ともその問題については、片方の未帰還問題の最終的処理という時期ともにらみ合せつつ努力して参らなければならぬと考えます。
  50. 山下春江

    山下(春)委員 もう時間がないので私の質問を終りますが、局長の今の御答弁通り、こういう問題は私どもも今後機会あるごとに、今政府の持っている予算の中で多少でも——私ども多くの望みたいものもありますが、その中の一つだけでもぜひ実行いたしたいと思いますので、予算面その他におきまして格別の御努力を願って、そういう問題は、今年度予算内においても、また将来起るであろう諸般の情勢等に備える意味においても、一つ格段の御努力を願い、御協力を得たいということをお願いして、質問を終ります。
  51. 高岡大輔

    高岡委員長 受田新吉君。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還者留守家族等援護法の第二十九条に掲げてあります調査究明及び帰還促進の事項でありますが、この責任者は、政府としてはだれが当られることになっておられますか。
  53. 田邊繁雄

    田邊政府委員 引き揚げ促進ということは、事柄の性質上当然対外的な交渉を伴うのでありますから、外務省と考えております。調査究明は、これは一応厚生大臣が責任を持ってこれに当っております。かつては軍人、軍属等については厚生省一般邦人については外務省、こういうふうに所管が分れておったわけでありますが、昨年以来これを厚生省に一本化いたしましたので、この調査究明上の責任は厚生大臣、かように考えております。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 その外務大臣、厚生大臣において、この法律施行後における引き揚げ促進並びに調査究明に努力したおもなる点をお示し願いたいと思います。
  55. 田邊繁雄

    田邊政府委員 調査究明につきましては、この法律施行後、調査を一元化するということによって、その調査の正確と迅速とを期した、こういうことが言えると思います。従来、一般邦人外務省、軍人、軍属は厚生省であった関係上、その間とかく重複また間隙がありまして、能率的にこれを施行するということにいろいろ困難があったわけであります。これを私どもの方に一元化して以来、その趣旨が都道府県にも十分徹底いたしまして、従来あいまいであったいろいろの問題がはっきりして参りました。調査究明の結果得られた数字につきましても、いろいろの疑問点がだんだんなくなってきた、こういうことが言えると思います。
  56. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいま御指摘のありました、法律が施行されましてから外務省が分担しております引き揚げ促進の成果と申しますか、やりましたことといたしましては、中共地区、ソ連地区からの引き揚げ、これは政府が直接表に出なかったのでございますが、日赤その他の団体を通じましてこれの促進をはかり、相当数の帰還が実現したことは御承知の通りでございます。なお、政府が直接したことといたしましては、それ以前からやっておったことでございますが、国際連合の特別委員会に対して、こちらから代表を派遣すると同時に、詳細な資料も常時提供いたしまして、国際連合を通じて国際世論をいろいろ起す、こういう方法によって、間接的ではございますが、ソ連、中共の邦人帰還の措置を促進してきたのでございます。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 この援護法の十三条には、「この法律の施行後三年を経過した日以後においては、過去七年以内に生存していたと認めるに足りる資料がない未帰還者留守家族には、留守家族手当を支給しない。」と掲げ明文が掲げてあります。従って、この法律を施行して丸二年たちましたから、あと一年、運命の日は刻々と迫っております。この運命の日が刻々と迫っている段階において、調査究明においても引き揚げ促進においても相当の努力をされていることを今お示しになられたと思うが、あと一年間にこの調査究明、引き揚げ促進がいかに進められるかによって、この十三条の問題に重大な影響が与えられると思います。政府としては、この十三条であと一年の運命の日を迎えるに当りまして、調査究明、引き揚げ促進に今後万全の努力をささげて、この犠牲者を救わなければならぬのであります。具体的に申し上げると、まず帰還促進においては、問題点の多いソ連に対しては目下松本全権が努力しておられる。しかし、末端の収容所における実態は依然として解決していないのでありますが、松本全権に交渉をまかせるのみで、そのほかに具体的にこの引き揚げ促進に対して外務省としてもっと積極的に乗り出す用意はないか。また、中共に対しては、近く政府として正式折衝の任に当りたいということを、この間の委員会以後しばしば言うておられるのでありますが、具体的にどういう形をとろうとしておられるのか、この点について、非常に差し迫った問題でありますから、外務大臣のかわりとして中川さんから御答弁願いたいと思います。
  58. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ソ連及び中共地区にいまだに残存しておられる未帰還者の引き揚げを促進することは、御指摘通り目下の急務であると考えております。ことに、これから一年の間にできるだけ多くの人を帰して、未帰還者のないようにするということが好ましいことは申すまでもないのでありまして、その意味で、従来は、政府が直接出ることは、いろいろ国際関係その他の関係から、いわばこれを遠慮していたかっこうであったのでありますが、最近は、御指摘ように、日ソ交渉ということを機会といたしまして、ソ連については直接政府代表が向うの代表と折衝するということになりまして、目下現実にロンドンにおきましてその方法を講じておるのであります。いまだ会談開始以来日が浅いのでありましてまだ確たる成果は出ておりませんけれども、この方針で相当の効果を期待し得るのではないか、かように期待いたしております。  なお、この松本全権によるロンドン会談以外の方法を講ずる考えはないかという御質問でございましたが、もちろん、政府としては、この方法のみにたよるわけではないのでありまして、あらゆる可能な方法を講ずべきであると考えております。しかしながら、ソ連関係におきましては、ただいまはロンドンにおきます松本全権による交渉によって一応これの解決をはかるということで進みたいと考えております。その成果いかんによって、さらに別の方法を考える必要があると思われます場合には、さらに別の方法について港構いたしたいと考えております。  なお、中共からの引き揚げでございますが、これについては、先般本委員会におきまして外務政務次官から一応御説明いたしましたように、やはり中共についても、今まで政府がうしろにおっていろいろと促進をはかるという方法から脱却いたしまして、直接何らかの意味におきまして先方と交渉をやるべき時期であるというふうに考えております。従って、その具体的方法を目下真剣に検討しております。できるだけ近い機会にこれを公けにする機会を持ちたい、かように考えております。目下いかなる方法でやるかということにつきまして、まだ結論が出ておりません。これはいろいろの方法があると思います。そのうち最も効果的であり、また国際的に見ましても最も摩擦の少い方法、要するに目的を貫徹するに一番適当な方法という意味でいろいろ研究しております。何らかの意味におきまして、政府が直接先方に対して政府意思を伝え、必要に応じては直接折衝をするという道を開きたい、かように考えております。その具体的方法につきましては、先ほど申しました通り、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 具体的な方法について御猶予を願いたいと言っておりますうちに、この十三条に規定している一年がすぐやってくるわけですが、その一年がやってきたときに、留守家族手当を支給しないということになるのです。昨年から今年にかけて帰られた方々の実態を見ましても、生死不明者、この十三条に規定してある生存していたと認められる資料のない未帰還者が、ソ連からも中共からも帰ってきております。そうすると、調査究明が徹底しないために、引き揚げ促進が徹底しないために、そういう人が出た、それははっきりしておる。今までわからなかった人がおったということがはっきりしている以上、あと一年たって運命の日が来て帰ってくることがある程度想像できる人々に対しても、未帰還手当を支給しないということになると、これは非常に重大な問題です。もう日にちがない。しばらくお待ちを願いますと言っているうちに一年が来る。こういうときには政府はいかなる措置をとるのか。その未帰還者を路頭に迷わして、未帰還の留守家族手当を支給しないということになると、これは社会上の重大な問題になると思うのでりあますが、法律改正その他の用意があるのかないのか、御答弁願いたい。
  60. 田邊繁雄

    田邊政府委員 お答えいたします。ただいま受田委員の御指摘になりました問題については、三年をもって打ち切られるという一応の建前になっておりますが、対象は生存確認者ではございませんで状況不明者であります。状況不明が過去七年間引き続いておる者につきましては、この法律の施行後三年の後に打ち切るという建前になっておりますが、これは実はこういう考え方に出ておるわけであります。状況不明という問題を、戦後十年にもなるのにいつまでもそのままにしておくということはどうだろうか、こういう問題は早急にはっきりさせなければならない問題ではないか、——これは私ども全力を注いで国内的手段方法によってやっておりますが、何としても限界がございます。どうしても相手国の持つておる資料を出していただくということが必要であり、相手国の持っておる資料をすべて出していただきましても、なおかつ状況不明という問題に逢着しました場合には、最後の決心をしなければならぬし、また留守家族におきましても御了承を願わなければならぬのでありますが、尽すべき手段を尽さずして死亡処理ということはとうていできるものではございませんので、そういう事態をできるだけ早く解消したいという努力目標として、かようなものを置いてあるわけであります。この間に何とかして解消したいということで、目下ソ連の場合におきましては交渉が進められておりますので、現在の生存者はだれとだれであるか、また死亡した人は、全部についてはわからないまでも、確認されておる人はだれであるかということを教えてもらうことは当然の要求であると思います。それはぜひ実現したい。また皆さん方にも強力に支持してもらいたいと思うわけであります。もし万一——万一ではなく相当可能性が強いわけでありますが、三年以内にそういう状態を解消するだけのすべての手続きが済まない場合においては、その事態に即応して、善処をせざるを得ないと考えております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 来年の七月までということになりますと、来年の通常国会にはこの法律の処理をしなければならないわけで、非常に切迫しております。一応の目標を置いておるということでございますが、現に、先ほど申したように、中共、ソ連では状況不明者がどんどん出ており、それが来年の七月に一応整理されるということになる。調査究明が十分徹底しておればよいが、それが徹底しておらない。今ソ連の収容所などを実地に調査してみても、当然相当はっきりすべきものがはっきりしてこない。この点において、外交上から、この未帰還者の帰還促進において思い切った手を打って、日本にはこういう法律があるのだ、この法律によって運命がきまろうとするのだ、願わくは貴下の国においても全幅の協力を願いたいというような外交上の手を打っておるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  62. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今ロンドンで交渉しております松本全権に対しましては、出発前に、ことに引き揚げ促進問題については詳細な資料を整えましてあらゆる意味においてのこの交渉に必要な資料を全部持っていってもらっております。もちろん、この法律及び今御指摘になりました関係条項の存在ということは十分全権に伝えてありますから、全権が当然交渉の過料におきましてこれを先方に伝えて促進をはかるということを、われわれとしても期待しておるところでます。  なお、先ほどの私の答弁の中で、中共関係の具体的な方策については目下検討中である、しばらく猶予を願いたいということを申したのでありますが、これは一年とか何カ月とかいうような長い期間を考えておるのではございませんで、ごく近い将来におきまして、この関係の結論に達したい、かように考えておるのでありますので、その点御了承を願いたいと思います。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 ここに掲げてあります十三条の規定は、これはしばしば申し上げたように差し迫った問題でありますが、この問題の解決のために、特にソ連と中共は最も大きな対象になるので、帰還促進という点において非常手段をとる必要がある、それはごく近いうちに中共へも手が打てるのだというお言葉でありまして、もう一カ月と間がないということでありましたが、そうすると、何日が一カ月足らずという目標になるのでありますか。非常に差し迫った段階で、中共の実態を明らかにする必要がある。しかも、この十三条の規定は、今度中国との折衝の擦には十分政府としてこれを示してもらわなければならぬ非常に大事な問題でありますから、折衝の見通しがつく期間というのを、もっと具体的にお示しいただきたいと思います。
  64. 中川融

    ○中川(融)政府委員 どういう具体的な方法を講ずるか、その方法の選択の問題でございますが、これはできるだけ近い機会にということを申しておるのでございまして、これはおそらく一カ月とかからないと私ども考えおります。なお、それに基きまして現実に先方との交渉というか折衝というか、これを開始しましたあとで、果して先方がこれに応ずる時期がいつであるかということになりますと、まだこれは予断を許さないのでありまして、果してどのぐらいが必要かということは、私としては早く目的を達することを希望しておりますが、これはまだ相手方りあることでございますので、いつまでということは言えないわけでございます。なお、その交渉いたします際に、この十三条の規定を十分向うに徹底させるということにつきましては、お説の通り非常に大事なことであると思いますので、そのように措置いたしたい、かように考えております。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 田辺さんにお伺いしますが、調査究明した結果の死亡確認等にたいするワクが厳重であり過ぎて、ある一人の人は死亡であったと確認をしておる帰還者がおったのに、他の方には資料がないというよう関係で、何人か生存確認あるいは死亡確認をする人がいなければ、処理ができないというような厳重なワクが厚生省にあるのではないか。お伺いしたいと思います。
  66. 田邊繁雄

    田邊政府委員 死亡処理というのは、未帰還者の生命に関することでありますので、非常に慎重にやっております。死亡に関する何らの資料かない場合におきましては、たとい留守家族から死亡処理としてもらいたいという要請がありましても、それにただちに応ずるわけに参らない。そのかわり、死亡確実という資料が出ました場合、ことに現認者があったという場合におきましては、御家族にはお気の毒ではございますけれども、死亡の処理をいたしておるわけでございます。もちろん、事柄の性質上、非常に慎重にやっておるのでございます。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 慎重にやっておられる結果、死亡確認がおくれた。慎重さを少しゆるめる程度であったら、この前の帰還者のときに死亡が確認されていたはずであるのに、慎重にやり過ぎて死亡確認がおくれた。おくれたために、恩給法の附則の改正案のときに問題になったように、死亡確認の日の属する翌月から恩典を与えるということになっている関係上、その前にもらうべき手当が抹殺されてしまう、こういう結果になっております。従って、厚生省の死亡処理の判定の慎重さがもっとゆるんでおって、前に帰った人から、あの人は死んだのではないかという声を聞いたときに、それを確認されておったら、前の手当がもらえていたはずだ。それがおくれたために、恩給法上においては、公務死の比率が従来は四倍であったのが今は一・七倍から二・四倍という低い比率になっておる。そういうように、公務扶助料の比率というものにも、また留守家族に対する手当の上にも影響する。死亡確認を早くされないために、前にさかのぼってもらえるのをもらえなかったという場合もあるので、死亡の日というものを基準にしてすべて処理するようにしたら、政府の死亡処理がおくれても問題ないと思います。この点、死亡の日と死亡確認の日の間に大きな差があるために、その留守家族の受けるものに対する国家責任が非常な違いを生じております。この点について恩給局及び厚生省としての御所見を伺いたいと思います。
  68. 田邊繁雄

    田邊政府委員 この問題は、先般当委員会において柳田委員から御指摘のあった問題でございます。そのときにお答えしました通り、ごもっともな点がございますので、厚生省としても恩給局と密接に連絡をとって検討をして善処したいと思っております。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 具体的にはどういう検討ですか。今度法律改正案を出されるときにやる用意があるかないか、聞いてわるわけです。
  70. 畠山一郎

    ○畠山説明員 ただいま援護局長からお答え申し上げましたように、恩給局におきましても、御指摘の点感じておりますので、いろいろ研究いたしております。ただ、今お話がございました今度間に合うかどうかという点につきましては、ちょっと確言申し上げかねますが、現在、御承知の通り恩給法改正法案は政府案を撤回いたしまして議員提出法案が出ております。こういうような状況から申しましても、今国会には間に合わないのではないかと思います。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 この法律に基いて未帰還者留守家族には二千三百円の留守家族手当が支給されています。この算定基礎はどこに置かれておるのでありますか。
  72. 田邊繁雄

    田邊政府委員 現在の留守家族手当が二千三百円という点はその通りでございますが、これは恩給法の兵の公務扶助料、それからそれに見合う遺族年金の金額、これと同額にしておるわけであります。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、兵でなくして伍長とか軍曹とか、さらに上級の人人を一括してその線まで引き下げた根拠はどこにありますか。
  74. 田邊繁雄

    田邊政府委員 受田委員留守家族援護法が制定になったときの事情をよく御存じだろうと思います。これは、あなたのおっしゃるようになさるなら、留守家族援護法という形では私はまずいと思います。軍人軍属と一般邦人とを別にして、軍人軍属については月給を出すというやり方をとらざるを得ないと思います。そしてソ連抑留されておる人にも階級別で月給を出していく、こういうことになるわけであります。すでに終戦後十年たっておる状態において、あらためて留守家族援護法という新たなる理念法律を作るということでございますので、そういう点は、一応過去の事態を考え直しまして、一般邦人を入れて留守家族援護法を作るという以上は、階級差によって手当額を変えるということはとうてい体系においては困難であります。そうする方が妥当であろうという各方面の一致した意見に基いてできておるわけでございますので、これはやむを得ない。ただし、受田委員のいろいろ御心配になっておりますように、過去においてそれよりも多くもらっておった人たちにつきましては、これは下げるわけにいきませんので、実質的補償という形で従来の金額の手当を差し上げるようにいたしておるわけであります。今日のところ、これを階級別に分けて出すということはいかがなものであろうかと考えます。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 これは問題があるのです。当時兵であったが、軍隊がそのままあったとすれば、兵が十年もおれば階級が進みますよ。そうして手当も増加する。元の兵は現におればもう兵じゃないのです。だから、死亡された人とは違うのです。現に生きているという想定のもとに支給されておる給与でありますから、もちろん法律改正で一番最初の百円からちょびり上ってきましたけれども、当時兵であったものを基準にして今日まで置くというのは、あまりにも哀れですよ。今山下さんからお話があったのですが、恩給法と未帰還者留守家族等援護法とでは、この方がどうも差別待遇を受けておるという一つの理由にもなるのですが、少くとも、兵という一番低い三千三百円などという線を基準にしないで、相当年数を経過した以上は、せめて伍長とか軍曹とかいうぐらいの給与に少し引き上げたって、だれも不満を抱く人はないのであります。留守家族手当は今度も当然増額されて、例の恩給法の兵と同じ基準にされることと思うのですが、実際の問題として、現に生きていると想定される人々は、死なれた人とは立場が違って階級が進むであろうという想定のもとに給与を考えてあげないと、留守家族は大へんな不幸なことになるのですから、その基本的な給与をもう少し進めて考えるという給与理論を考える必要はないのですか。
  76. 田邊繁雄

    田邊政府委員 受田委員、非常にこまかい点まで御心配になってお考えになったわけでございますが、これは給与理論をとっておられるわけであります。しかし、留守家族援護という点から考えますならば、しかも援護法という建前で出発する以上、軍人であろうと一般邦人であろうと、そこに差を設けることはできないわけであります。ことに、現在未帰還者の中には大多数が死亡しているのではないかと考えられる人があった場合に、あなたのおっしゃるように全部生きているという推定のもとにすべてを立論するということも、そこにちょっとおかしな点がある。現在生きている人と死んでいる人との差別はこちらにはわからない。そうすると、実は終戦直後に死んでいる人については遺族援護法なり恩給法で処理されている、それがわからないために留守家族援護法でもし高い金額を出すということになりますれば、死亡処理をされた者についても高い金額を出さざるを得ないという非常にむずかしい問題が出てくるわけであります。そこにいろいろ御議論はあると思いますが、留守家族援護法という建前で、軍人も一般邦人もすべてこれを平等に扱って手当を出すという見地に立つ以上、それに差等をつけることは困難ではないか。ただ、御指摘通り、音通の恩給の年限にすでに到達している人であって、普通恩給の方が高い人については、普通恩給を差し上げるよう恩給局に申し入れをいたしまして、恩給局で特別な取り計らいをいたしまして、本人が内地へ帰れない場合でも、その恩給を支給するという処置をとっているわけであります。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 田辺さん、今、階級を高いところに置いて留守家族手当を出すと、死亡処理の場合にそれと同じ程度を出さなければならなくなるから問題だとおっしゃったのですが、これが普通の恩給であるならば公務扶助料になると二万六千円か何かになる。公務扶助料の一番低い線の、兵として二千三百円という計算に今お考えになっておられるのですか。
  78. 田邊繁雄

    田邊政府委員 公務扶助料で調整をとっているわけであります。兵の公務扶助料の金額を基準として遺族年金留守家族手当というものを考えておると申し上げたわけであります。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 公務死の発表がされるならば、当然遺族に対する公債も支給されることになるのだし、弔慰命というものが出されることになる。それが今は何ら処理されていないのだから、もっと早く発表されたならば、もっと早く遺族公債ももらえたのが、発表した後にもらうということになれば、それだけ給与のポケットに入るのがおくれるということになる。従って、階級が兵の階級になったものとして処理しようとすれば、そういうことになるので、一個の人格として、海外で特に苦労しておられる人の立場のことを考えた線で、この問題をもう一歩進んで、たとえば兵の公務扶助料を伍長くらいの公務扶助料で、もう五千円でもちょっと上回って支給するという方が、未帰還者のすべての者に対するこちらの気持としては妥当性があるのじゃないか。恩給法の方では、階級が兵であった人は、兵の公務扶助料しかもらわないから、今度はその差額だけ減るじゃないかという御所見じゃないかと思うのですが……。
  80. 田邊繁雄

    田邊政府委員 私は、あなたがおっしゃるようなことをかりにした場合において、いろいろの問題が出てくる、その一環としてさようなことを申し上げたわけであります。確かにそういうことだろうと思います。実は、終戦直後に死んでおった、死亡処理がはっきりなされたときには兵隊の公務扶助料をもらった、ところが、死亡がわからないために今日まで生きている人が高い留守家族手当をもらい、その人が死亡したから、それを下げるというわけにはいかないだろうと思う、そういうものが出てきてなかなかむずかしい問題が出てくるということを申し上げたのでありまして、根本建前としては、私は、軍人も一般邦人もあわせて留守家族援護法という立場を考える場合には、やはり遺族年金と同じように考えるのが妥当であろうというふうに考えます。
  81. 高岡大輔

    高岡委員長 臼井君。
  82. 臼井莊一

    ○臼井委員 この機会にちょっとお伺いしたいのですが、引揚者の方で、上陸した際にすでに病気にかかっていた、それに対する医療の給付はどういうふうな扱いですか。
  83. 田邊繁雄

    田邊政府委員 具体的な問題についてのお尋ねでありますが、抽象的に申し上げますれば、いろいろあるわけであります。すでに御承知だろうと思いますが、現在は留守家族援護法、それから留守家族援護法のできる前は未復員者給与法、その中で療養の給付というものをいたしておるわけであります。これは大体国家公務員法にある規定に準じてできたのであります。従って、ソ連抑留期間中に自分の責めに帰することのできない事由によって疾病にかかった場合に、期間は最初は三年であります。それがだんだん延長になりまして、現在は七年であります。今度はそれをさらに三年間延長しよう、こういうことであります。
  84. 臼井莊一

    ○臼井委員 今お話が出たので、具体的な問題で伺います。赤羽文子さんという第三次の引揚者の方は、中耳炎その他の傷害があったので、舞鶴で証明書をもらって国立病院に行ったら、断わられた。福祉事務所でも、彼の女は生活保護を受けることの方が先決で、それを受けてからでないと医療の給付が受けられないというような事例があったということですが、そういう点はどうですか。
  85. 田邊繁雄

    田邊政府委員 帰還した後において相当の日数がたちまして中耳炎になったという場合において、それが果してソ連抑留中の原因で中耳炎になったかどうかということが問題になるわけで、これは個々の判断によるものであります。これは、どなたであろうと、先ほど申し上げましたように、ソ連帰還後一箇月間の疾病については無条件に見てあげるわけであります。中耳炎といった病気の性質上、またそれが発生した時期によって、ソ連における生活が原因となって中耳炎となったかどうかということで、その判断の問題になると思います。これは生活保護の問題とは関係ないわけであります。生活保護の医療でございましても、生活保護の適用がないからといって医療の給付ができないということではないと思います。生活保護自身の問題は別問題であります。これは、生活保護でありますれば原因は問いませんが、こちらの方の関係になりますれば、そこは実際問題の判定で違ってくるだろうと思います。
  86. 臼井莊一

    ○臼井委員 この赤羽さんの場合には、舞鶴へ引き揚げたときにすでに中耳炎になっておった、従って、ソ連にいたときにその発生原因があった、こういうことで証明書もその場で出しておる。しかし、実際国立病院に来てみるとそういう扱いをしてくれないということは、結局その趣旨を国立病院の方でよく了解してないのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  87. 田邊繁雄

    田邊政府委員 よく調査してみます。
  88. 臼井莊一

    ○臼井委員 結局、そういう取扱いの趣旨が病院で徹底してないのですかどうですか、その点、お調べを願いたいと思います。
  89. 高岡大輔

    高岡委員長 残余の質疑は次会に回すことにいたします。   〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕     —————————————
  90. 臼井莊一

    ○臼井委員長代理 次に、在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提出者より提案理由の説明を求めます。高岡大輔君。
  91. 高岡大輔

    高岡委員 ただいま議題となりました在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  第五回国会において成立いたしました在外公館等借入金整理準備審査会法は、終戦に際して、日本より外国へ送金できなかったため、朝鮮、満州、中国等各地における在外公館、居留民会等が、外務省の訓令に基き、邦人救済費、引き上げ費等のために在留邦人から借り入れた資金は、政府がその性質にかんがみ国の債務として確認することを目的とするものでありますが、借入金を提供した者は法律施行後百五十日以内に政令の定めるところにより証拠書類を添えて外務大臣に対し借入金の確認を請求することになっているのであります。その後、改正により、請求権を失っている者については昭和二十七年六月三十日まで請求できるように措置されたのでありますが、なお、引揚者の税関に預けた書類がその後解除になり返還されて参りました中に、未請求の借入金関係の書類が多数含まれていること等、確認未請求のものが現在相当数ありますので、この際、これら在外公館等借入金の確認請求の権利を失っている者に対して、昭和三十年十二月三十一日までに借入金の確認を請求することができるよう措置しようとするものであります。  以上が本法律案提出した理由であります。何とぞ、御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  92. 臼井莊一

    ○臼井委員長代理 これにて提出者の趣旨説明は終りました。  本日はこの程度にいたしたいと思います。次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後零時四十四分散会