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1955-05-23 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十三日(月曜日)     午後一時四十分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 有田 喜一君 理事 臼井 莊一君    理事 山本 友一君 理事 青野 武一君    理事 中居英太郎君       岡崎 英城君    堀内 一雄君       關谷 勝利君    徳安 實藏君       井岡 大治君    下平 正一君       正木  清君    山口丈太郎君       大西 正道君    竹谷源太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君         運輸事務官         (船員局長)  武田  元君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    朝田 静夫君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道理         事         (営業局長)  唐沢  勲君         日本国有鉄道参         事         (営業局船舶課         長)      篠田寅太郎君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 五月十九日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  上林山榮吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員今松治郎君辞任につき、その補欠として北  村徳太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十日  香住町に気象測候所設置請願有田喜一君紹  介)(第七〇四号)  国営自動車運転区間延長に関する請願山口  好一君紹介)(第七三八号)  二俣佐久間線敷設請願太田正孝紹介)(  第七七八号)  国営自動車中馬線運転区間を名古屋駅まで延  長の請願早稻田柳右エ門紹介)(第七七九  号) 同月二十一日  戦傷病者国鉄無賃乗車復活に関する請願(中  村時雄紹介)(第八一一号)  同(木村俊夫紹介)(第八四三号)  柏崎燈台設置に関する請願石橋政嗣君紹介)  (第九〇五号)  山元町、角田町間に国営自動車運輸開始請願  (愛知揆一君紹介)(第九〇九号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  越美北線開通促進に関する陳情書  (第一二三号)  上飯島信号場駅昇格に関する陳情書  (第一五三号)  舞鶴港湾改修工事継続に関する陳情書  (第一五四号)  気象観測機構拡充強化に関する陳情書  (第一六四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  海運に関する件     ―――――――――――――
  2. 原健三郎

    原委員長 これより運輸委員会開会いたします。  最初にお諮りいたします。現在大蔵委員会に付託されております地方道路税法案及び地方行政委員会に付託されております地方道路譲与税法案は、当運輸委員会といたしましても重大な関心を持たざるを得ない内容を含んでいると思われますので、この際、大蔵委員会及び地方行政委員会に、連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原健三郎

    原委員長 それではさよう決定いたします。  なお開会の日時に関しましては、大蔵委員長及び地方行政委員長と協議の上決定いたしますが、大蔵地方行政及び建設委員会連合審査会は、明二十四日午後一時開会いたすことになっておりますので、おそらく同時に行うことになると思いますから、御了承いただきたいと思います。     —————————————
  4. 原健三郎

    原委員長 次にお諮りいたしたいことがあります。例の紫雲丸衝突沈没事件に関しましては、当委員会より、議長の承認を得て現地委員を派遣して、その実情を調査した次第でございますが、本問題に関しましては、国会といたしましても重大関心を持った次第でございますので、本問題に対する運輸委員会調査の結果を本会議報告いたしたいと存じますので、これを議長に申し入れたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 原健三郎

    原委員長 それではさよう取り計らいいたします。     —————————————
  6. 原健三郎

    原委員長 これより運輸行政一般に関して調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。小山亮君。
  7. 小山亮

    小山(亮)委員 最初海難審判庁長官に伺いたいのでありますが、先般の紫雲丸と第三宇高丸衝突事件につきまして、海難審判所調査を進められましたか、この点を伺いたい。
  8. 長屋千棟

    長屋政府委員 お答えいたします。現地理事官、及び東京からも応援をいたしまして、全員五名でさっそく事実の調査にかかりました。
  9. 小山亮

    小山(亮)委員 幾日くらい御調査になりましたか。
  10. 長屋千棟

    長屋政府委員 きょう理事所長を帯同して来るつもりでございましたが、今やはり現地に行っておりますので、正確なことを申し上げられませんが、最初の一週間くらいで大体の調査を終えまして、その後一たん神戸審判庁へ引き上げて、そこで打ち合せをした結果、また出かけて行っており、ただいままた第二回目の調査にかかっておると思います。
  11. 小山亮

    小山(亮)委員 十三日に被疑者といいますか、船長その他の人たち高松検察庁に拘禁された、逮捕されたというと、審判所の方々が十四日にみな神戸にお引き上げになったように承知しておりますが、そうしますと、それでもう審査は終ったのですか、それとも引き続いてずっと審査を進めなければならないのですか、その点を伺いたい。
  12. 長屋千棟

    長屋政府委員 一たん最初取調べが済みまして、いろいろ各人が取り調べた結果を持ち寄りまして、そこで打ち合せをいたしまして、なお実地検証をする必要があればその方の手配をしたり、なお最初取調べでは不足だというので、またただいま現地へ行っておると聞いております。
  13. 小山亮

    小山(亮)委員 現地調査ばかりでなくて、関係者に対するお取調べは、拘置中である被告に対して審判所の方方がこれをまた調べるという場合には、どういうふうにしてお調べになりますか。
  14. 長屋千棟

    長屋政府委員 こまかいことはやはり理事所長がよく存じておりまして、私は大綱の報告を受けておるだけで、こまかいことは申し上げられませんけれども現地理事官高松の地検の検事と連絡をとりまして、こちらが取り調べる場合にはいつでも本人を連れて参りまして、取調べには支障がないということを聞いております。
  15. 小山亮

    小山(亮)委員 宇野——高松のような連絡船というものは、私どもから考えますと、普通の航洋船と同じには見られないと思うのです。その場合に、たとえば瀬戸内海はイギリスのドーヴァー海峡と同じで、これは船員にとっては世界における航行の一番難所であって、しかもその難所である瀬戸内海というものの面積が非常に広くて、船乗りから見ますと、瀬戸内海というのはちょうど海の道場であり、修練場であり、しかも陸でいえば銀座通りのような、船舶が輻湊する場所なんです。その場所を一時間ごとに横切っていく。銀座通りを車が流れるように、船が無数にどんどんと東西に往復しておるところを横切っていくということになりますと、これは非常に無理なやり方なんです。その場合に、そういうような職務を担当する人はどういうような人がいいのか。またそういうようなものに対する海難が起るという場合には、お取調べ方針はどんな方針でお取調べになるのでございましょうか。一般航洋船と同じようなお取調べをなさるのか、あるいは特殊な業務に従事しているものとしてお取調べをなさるのか、どちらですか伺いたい。
  16. 長屋千棟

    長屋政府委員 これは審判法をごらん下さいましてもわかりますように、ただ乗組員の技術、あるいは仕事、業務上の過失とか、そういうことだけを海難審判法では取り上げておるのではございませんで、その服務上に非常な無理があるとかないとか、あらゆる点を調べるようになっておりますので、そういう点についても、つまりダイヤが非常に無理になっておるとかいうようなことまで掘り下げて、今後そういう海難をなくそうというのが審判法の目的でございますので、航洋船であろうが、あるいはそういう特殊な船であろうが、その特殊性を十分勘案いたしまして、掘り下げて取調べを進めておるような次第でございます。
  17. 小山亮

    小山(亮)委員 私は瀬戸内海不祥事件に関連しまして、後刻刑事局長にお伺いしたいと思っておるのですけれども、せんだって私が国会において船員の逮捕について質問をしました。その翌日か翌々日になりますと、また予備船員が三名ばかり逮捕されたように新聞で見ております。これは私の邪推かもしれないけれども国会で問題になったからその反動で、もし船員が逮捕されたということになると、私は非常に自責の念に打たれるのです。私は元来過失をした船員を助けようというような、刑を軽からしめるため質問をしておるのではない。今後この問題を契機として、日本の他の海上船員全体に、こういうような非常な不安の感じを抱かしめるということになりますと、今後の日本海運の発展に非常に影響するところが大きいものですから、そのことを考えて私は言ったのですが、たとえば新聞でありますからさだかなことはわかりませんが、陸上におりました予備船長が、見張りを立てていないのに見張りを立てたというようなことを言えといって、使嗾したようなことが新聞に出ている。事実は私は知りません。しかし瀬戸内海がああいうような状態の場合に、見張りが立っておろうがおらなかろうが、全速力霧中を走っていたならば、これは私は同じことだと思う。かりに見張りが立っていて、霧中に船が見えたからといったところで、全速力で走っているのですから、海上衝突予防法第十六条できめられておりますように、適度の速力で走るとか、あるいは霧中において他の船の霧中信号を正横前に聞いた場合には直ちに船をとめろ、こういうようにはっきりした規定があるのです。それなのにレーダーで反対方向から来る船の船影までもわかっておる、そして霧中においても適度の速力で走らず、反対方向に船が来るということがわかっておってそれで船の速力をとめないということになりますと、見張りを置いたって置かなくったって、こういう大きな問題が起るということは当然なんです。だから私は見張りの問題は大した問題じゃないと思うのですが、海難審判庁の御意見はいかがですか。
  18. 長屋千棟

    長屋政府委員 個々事案につきまして、その内容についてここで私が断定的なお答えをすることはできないのでございますけれども一般的なこととしてお聞き願うならば、大したことでないといっても、今あなたのおっしゃるように衝突予防法の順守を怠っておったということになりますと、これは小さなことについてはそうむきになってやることはないように思いますけれども、しかし検察庁の方でどういうお考えでおやりになったかそれはわかりませんので、私検察庁の方のことについては何ともここで申し上げかねます。
  19. 小山亮

    小山(亮)委員 見張りを置いたか置かなかったかということは、私の常識からいいますと、今度のこの事件だけについて見ると、かりに見張りを置いたとしても、何にもならないと思うのです。ガスがかかって霧中を航行するときには、船を適度の速力にして、そうして絶えず見張りを覆いておるならば、私は見張りを置いた置かないということは問題になると思いますけれども、今までかつて一度も置かないで、この問題が起ったから急に見張りを置いた方が有利になるだろうというようなことを、もし船員の方で考えたとしたならば、これは実際噴飯ものでありまして、検察官の方の調べでわかることと思いますが、審判庁として御調査なすったとすれば、私の伺いたいのは、こういうような海上における突発的な危難は始終覚悟しなければならぬが、お客に対していつでもそういう準備ができていたか、あるいは平素訓練が行われていたか、こういう点を私は聞きたいのですが、その点はいかがですか。御調査なすったならば第一にその点に目をおつけになるはずだが、その点を伺いたい。
  20. 長屋千棟

    長屋政府委員 審判法できめてございますことは、役所の管理事務については——理事所は私の方の付属機関でございまして、私は指揮命令権を持っておりますけれども個々事件については私から指図できないことになっております。こういうところを調べろとか、こういうことは足らぬじゃないか、これは個人的な忠告はいたしましても、直接個々事件の捜査については理事所長指揮命令を受ける、こういうことになっておりますので、こまかいことについては私は報告を受けておりません。私が経験者としていろいろの忠告はいたしておりますけれども……。
  21. 小山亮

    小山(亮)委員 私は高等審判庁長官国鉄の内部にわたって指揮をしろとか、あるいはそれに対して指図をしろとか命令をしろとかいうことを言っておるのではない。あなた方が官庁の船に対して職権をもって指示することができないということは知っております。知っておりますが、しかし私は、少くも船員過失であるか、あるいは職務上どういうことをしたのか、あるいは船長として常に訓練を怠っていなかったかということをお調べになることは、重大な問題だろうと思う。たとえば外国に航洋船が出て行く場合には、客船は日本を出れば三日くらいは必ず火災の訓練もしますし、ボートで避難の準備お客さんに教えますけれども、これはわずか一時間で向うに着くのですから、そういうことはもちろんできないだろうと思うのですが、しかし私が非常に遺憾に思っておりますことは、船の沈没ということはあり得ることですが、善後処置がいかにも悪かったのではないかと思う。というのはなぜかというと、あの船は乗り組みの定員数が千三百名くらいでしょうが、乗っていた人は九百何人、そうすると、ボートとか救命浮袋——救命浮袋はもちろんそれだけ用意してあったことだろうと思うが、その救命浮袋というものが全部に行き渡っていないのです。全部に行き渡っていないからそれがために死んだ。数分間で沈んだということはあれはうそだと思う。これは私どもの長年の経験からいきまして、二つの船がぶつかった場合には、片方が全速力で衝突した船を押しているのですから、水の圧力で押しているから、押している間は沈まない。だんだん船が傾斜してくると離れますけれども、それまでの間はぴったりくっついている。それを押していたに違いない。沈むにしたってその間に少くとも十数分くらいは余裕があった。その間に救命浮袋を全部に行き渡らせなければならぬし、ひとりぶつけられた船ばかりでなく、ぶつけた船も遭難した人を救助しなければならぬ当然の義務がある。それを怠っていて、それがために大ぜいの人がなくなったということになると、ここが私は問題だと思う。そこでふだんから乗客に対してすぐに救命浮袋を配付するとか、ボートをすぐにおろす訓練をしていなければならない。ボートが一隻もおりていない。三分あればボートはおります。あれは新式の船ですから、ハンドル一つとればおりるようになっている設備の十分な船で、ほかの船とは違う。どうしてもボートがおりなければならないし、あるいは救命浮袋全員に行き渡っていなければならないのに、行き渡っていないとすれば、平素訓練はどんな訓練をしていたかということについて、審判所長なり審判官はそこをお調べにならなければならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。お調べになりましたか。またあなたは、この事件が起ってから今日まで、調べに行った調べに行ったとおっしゃるが、何らの中間報告も受けていないということは私はおかしいと思うのですが、何かあなたのお気づきの点があったら伺いたい。
  22. 長屋千棟

    長屋政府委員 ただいま御指摘の点は、今度所長向う指揮に参りましたから、十分調べているはずでございます。まだ調べたとかいう報告は受けておりませんけれども、十分調べておると思います。そういう点については遺漏なく調査するように一般的のことについては理事所長に話してございますし、理事所長も十分心得てやっておると思います。
  23. 小山亮

    小山(亮)委員 事件が起ってこんな問題になり、国会でも、事実審判とか刑事審判の結果を見ないうちに、すみやかにその責任の所在を明らかにすべきことを当委員会決議しておることは、皆様の御承知通りです。それにもかかわらず、いまだに中間報告も受けていない、この肝心なことに対して何にも報告を受けていないということは、いささかあなた方の方が事態を軽く考えておるのではないかと思うのですが、こういう事態が起ったならば、直ちに状況をお調べになって、国会でこれだけみんなが善後処置に頭を使っているときに、中間的に何らかの報告があってしかるべきだと思いますが、これに対しては長官はどういうお考えをお持ちになっておりますか。
  24. 長屋千棟

    長屋政府委員 いろいろ取調べの結果なり、個々の事実内容について公表いたしますと、衝突事件では両者の利害関係がございますので、それに対抗的のいろいろの手を打たれて、雑音が入るようなおそれもございます。従って取調べに非常に困難を来たすということもございますし、法律にも理事官の取り調べ内容については秘密を守らなければならないという規定もございますので、今まで個々のこまかいことについて報告いたした例はございません。またそういう個々内容についてお聞き下すっても、今のところではちょっと公表いたしかねますので、その点どうか御了承願いたいと思います。
  25. 小山亮

    小山(亮)委員 私の聞き方が悪かったのかもしれませんが、私はそういうことを伺っておるのではない。訓練とかいうようなことは、これは両方の過失であったか過失でなかったかというようなことが問題ではなくて、鉄道関係においてこういう訓練を始終しておったかどうかというようなことはすぐにもわかることです。またこれは罪の決定をするのに何ら影響のないことだと思います。そういう一般的なことでも御報告ができないとおっしゃるのですか。
  26. 長屋千棟

    長屋政府委員 あなたは、それは事実に関係がないようにおっしゃいますけれども審判の結果、それが過失であったとかなかったとかいう一つの材料になるのでございまして、事の大小にかかわらず、すべてそれが裁決のもとになるものでございますから、それが過失であるとか、今まで十分にやっておらなかったからということを、審判裁決をする以前に発表することはどうかと思われるのであります。
  27. 小山亮

    小山(亮)委員 いつその審判を終りますか。
  28. 長屋千棟

    長屋政府委員 これは裁判所のいろいろな事件でも御承知でありましょうが、いろいろ調査する内容も、広範にわたって参りますと、なかなか早急にやることは困難でございまして、洞爺丸事件——ほかのことを申し上げて申しわけございませんけれども、前例のない、非常に予算、定員なんかも足りないのを無理いたしまして、ほかの事件は投げてしまってやっており、まあこの六月一ぱいで審理を終えて、大体七月中に理事官の論告をいたしまして、それをまとめて、九月の初めまでには結論を出そうと、今私も非常に激励してやらせておるようなわけであります。それで大体一年かかるような形になりますが、紫雲丸事件は、洞爺丸に比較しまして、衝突事件内容としては割合に単純でございますから、それほど時日は要しまいと思います。しかし今直ちにいつごろまでに済むかとおっしゃっても、ちょっと見当がつきかねるのであります。
  29. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、あなたのお話を伺っておると、海難事件が起っても、審判所が手をかけてその事件が一切完了するまで、それが一年かかろうが半和かかろうが、それが終るまでは何事も一切言えない、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
  30. 長屋千棟

    長屋政府委員 内容事案については私から申し上げるわけには参りません。
  31. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると、こういう問題に対しては、国民が何とかして真相を知りたいと思っておりましても、それはあなたの方の審判を済むまではわからない。それが済むまでは、国会でどんな決議をしても、あなた方の方はそれは言えないということになりますね。
  32. 長屋千棟

    長屋政府委員 事実がはっきりいたしますのは、結局審判が済んでから結論が出ますので、結論が出る前に個々内容について、この事件を担当していない者、その記録内容も知らない者から、断片的な発表をいたしますことは、結局その結論に対していろいろな混乱を起すようなことになりますので、結論が出ますまでは私としては発表できないということでございます。
  33. 小山亮

    小山(亮)委員 審判庁に対する質問はこれで終ります。  それでは大臣が見えましたから、ちょうど幸いですからここで伺いたいと思いますが、私は先般質問をいたしましてから後に、古い記憶をたどりまして図書館をすっかり調べまして、当時の記録を一切調査しました。私は船員が重大な過失等によりまして、あるいは軽過失等によりまして処分をされた場合に、刑事訴追を受けるという問題は、これは過去にも非常に大きな問題でありまして、昭和十二年の第七十議会においてこの問題は全国的な問題になりました。その船員法改正決定いたしましたときに、三月二十六日の船員法改正委員会でありますが、その法案議会附帯決議をつけております。その附帯決議は「政府ハ海運重要性ト船員特異性トニ鑑ミ刑法改正シ船員ガシク其職務ヲ怠リタルコトニ因リテ生ジタル過失ニアラザレバ罰セザル様之ヲ法文化スベシ」というのであります。そのときの政府委員会を通じての御答弁は、刑法は早晩改正しなければならないのであるけれどもひとり船舶ばかりではない。これから航空機が発達してくると、航空もあわせて、今日の刑法ではいけないから、これを改正しなければならないということを説明されましたが、それに対して議会は四つの附帯決議の条文をつけました。第二は「政府ハ船員業務上ノ過失ニシテハ海員審判所審判ニアラザレバ刑事訴追ヲナサザル方針ヲ採ルベシ」、これが第二、第三は「政府ハ船員業務上ノ過失ニシテハ慎重ナル態度以テ臨ミ軽々ニヲ所断セザル検察局ニシ訓令ヲ発スベシ」、第四が「政府ハ海難ニ際シ船員喚問取調ヲナスニ当りテハ其業務ニ支障ヲ来サザル様充分ニ理解アル態度以テ臨ムベク検察官ニ訓令ヲ発スベシ」、こういう附帯決議をつけました。これは満場一致で決定をいたしました。この審議に当っては、当時清原司法事務官は参加をされていろいろ答弁もされておりますし、松阪刑事局長及び塩野司法大臣がこの問題に対してしばしば答弁をしておられます。塩野司法大臣はこの決議に対しまして、決議案を尊重するということを明確にされて、第一点に対しては、「海難発生原因ハメテ複雑デアリマシテ頗ル特異性ノアリマスコトハ司法当局トシテモ固ヨリ十分之ヲ認メテ居ル次第デアリマスカラ刑法改正委員会ニ於キマシテモ、諸君ノ御意思ノアル所能ク伝ヘマシテ、篤ト研究シテ貰フコトニ致ス次第デアリマス」、第二点、これは海事審判を先にするということに対しての司法大臣の弁明です。「海員業務上ノ過失事件ニ付キマシテハ、前申上ゲルヤウニ特異性頗ル強イモノデアリマスカラ是ガ訴追ヲ為スニ当りマシテハ、極メテ慎重ニ取扱ハナケレバナラヌノデアリマス随テ司法当局ト致シマシテモ曩ニ通牒ヲ発シテ、全国ノ検察当局ニ対シ、海事審判所審判ガ確定シタ後デナケレバ、起訴シテハ相成ラヌト云フ趣旨ヲ伝ヘテアリマス、併シ既二十年ニ近キ以前ノコトデアリマスカラ、今回尚ホ改メテ記憶ヲ喚起スルヤウ二十分ナル訓示ヲ致ス考デ居りマス」、第三点、これは「船員業務上ノ過失事件ニ対シマシテハ、其取調並ニ起訴ニ付テ慎重ニ処置スベキコト八前申上ゲタ通リデアリマスカラ、軽々ニ之ヲ処置スベキニアラザル旨ヲ全国ノ検察当局ニ対シテ徹底スルヤウニ訓示致シタイト思ッテ居りマス」、第四点は「海難事件ノ捜査ニ付船員ヲ取調ベマスコトハ、延イテハ船舶ノ運行ニ支障ヲ生ゼシムルコトアリ、又ハ莫大ナル滞船料ヲ空費セシメルヤウナコトモ生ジマス、往々ニシテハ船長ノ失業スルヤウナコトモ発スル事情ガアリマシテ、其辺ノ点ハ深ク考慮ニ置キマシテ、十分ニ理解アル態度ヲ以テ取調に著手スベキモノト考ヘマスカラ、是亦前同様一般ニ訓示ヲ致スコトニ考ヘテ居りマス、尚ホ訓示ノ内容ニ付キマシテノ御話ガアリマシタガ、是ヨリ以上述ベマシタル趣旨ニ依ッテ訓示ヲ作成致シ、発布致スノデアリマスガ、当局ノ権限内ノコトデゴザイマスカラ、当局ノ言ヲ御信用下サイマシテ御任セヲ願ヒタイノデアリマス、此急ノ際ニ俄ニ案文ヲ作り、殊ニ之ヲ速記録ニ残スト云フコトハ避ケタイト思ヒマスガ、是ハ責任ヲ回避スル為ニ避ケルノデハアリマセヌ、其点を御諒察下サッテ、私ノ以上申シマシタ所ヲ御信用下スッテ御任セヲ願ヒタイト思ヒマス」、これが司法大臣の言明であります。  これによりまして海事審判を先行するということは、司法省において国会に対して言明された言葉なのでありますが、今回の事件のようなこういう大きな惨害が伴っております事件につきまして、検察当局がすみやかにこれを処断するために捜査を開始したということを、決していかぬという意味ではない。ただ事技術上に関する問題でありますから、技術審判ということを尊重されて、できるだけ技術審判審判官が取り調べますことに対してじゃまにならぬように、妨げにならぬような取調べをしていただきたい。そうでありませんと、船員が、何でも事件が起れば、すぐやれ過失艦船覆没罪であるとか、あるいは過失人命殺傷罪であるとかいうので、すぐ検察当局に引っぱられてしまう、そして拘禁されてしまうというので、非常な不安な感じを持って、もう海上に働く勇気がなくなるのです。その点を私は非常に憂えておる。これはただに今の連絡船のような場合だけにとどまらないで、全国の航洋船全体の船員が、こういうような問題を耳にして非常な不安に襲われて、今全国の商船学校出身者、全国の技術者あるいは海員組合というようなところから、これに対して相当強い抗議を当局にしようという大きな運動が現われております。戦後の風潮として、当局にでもすわり込みをやったり、あるいは徒党を組んで押しかけてきさえすれば、その言うことが聞かれるけれども、そうではなくて、静かに話をして聞いておるところは一つも通らない、そういう感じを私は持たせたくない。筋の通ったことであり、しかも司法当局が議会に言明されたことであるならば、それはやはり年月がたちましてもその点は強く尊重されまして、そうしてこうした実際不安、危惧の念を起した人たちが運動を下から起してくることのない間に、どんどんと処理されていくようないい政治を早く持ってきてもらいたい、こう考えるわけであります。それゆえにこの質問をしておるのでありますが、この点は前に刑事局長に伺いましたところが、準備がないからはっきりした答弁はできない、こういうふうなお話でありました。私はそのときにそれはもっともなことだと思いまして、調査をしてまたその点についての言明をいただきたい、こう申し上げてお別れしたのですが、できるならば、お調べになりましたならば、その点に対して司法当局が、前にこういうような決議がある、その通りにおやりになるかどうかということを伺いたい。
  34. 井本台吉

    ○井本政府委員 前回お尋ねがありましたので、役所に帰りましてから、昭和十二年当時の速記録を取り調べまして、大体お話しのような問答がかわされておるということを十分承知いたしました。われわれの方といたしましても、この海難審判先行に対する通牒を調べましたところが、前回にも簡単に申し上げたと存じますが、この問題は非常に古くからの問題でございまして、明治二十六年当時から海難審判先行を原則としろという趣旨の通牒が出ております。この通牒はその後大正四年にも確認されまして、お話の昭和十二年の問答のあとでどういう通牒が出ましたか、実は私の役所が火災になっておりますので当時の記録がはっきりいたしませんが、おそらく前の明治二十六年以来の通牒がそのまま確認されたであろうということは容易に想像がつくわけであります。本件の問題につきましても、原則といたしましては、まことにお話しの通り技術的な問題が非常に多いので、これを十分尊重するということは当然であろうと私も考えます。ただし個々事件につきましてはいろいろの事情もあるので、この問題につきましては高松の高等検察庁高松地方検察庁におきまして、検察官といたしましても早期にある程度調べなければいかぬという結論に達したと思うのでありますが、五月十三日以来船長、幹部職員を拘束して調べておるようなわけでございます。しかしながらこれは海難審判の方の関係を全然問題にしないというのではなくて、現地からの簡単な報告でございますが、海難審判所の方とも十分連絡しながらやっておるということでございます。しかしながら前回お尋ねがありました通り、かような拘束をして調べるというようなことは、できるだけ慎まなければならぬということでもありまするし、早く調べ結論を出すように、私どもとしては極力督促しておるような実情でございます。残念ながらなお関係者が三人ほど、証拠隠滅のおそれがあるというような事情でさらに拘束して取調べておりますが、これらも一刻も早く釈放の手続になりますように、現在調べを極力急がしておるような実情でございます。
  35. 小山亮

    小山(亮)委員 この前の質問が行われてから、たちまちまた三人追加して引っぱられているというようなことを見まして、私は何か非常に感情的に事件の処理をやられるようなふうに感ずるのです。こういう問題を処理するに当っては、最も慎重にしかも冷静に——新聞や何かの記事がたくさん出ますと、とかく人は興奮しやすいものなんです。検察官だってやはり人ですから、興奮をしたり感情的に動くということがあり得るのですけれども、これは罪をただすという立場から感情的にものを処理するというようなことのないように、一つとくと御注意を願いたい。それに対して御答弁が得られたらいただきたい。
  36. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろんさような感情的な点は毛頭ございません。以前御質問があった後に調べをしたのでございまするが、御懸念のような点は毛頭ございませんから、その点ははっきり申し上げます。なお、さような印象を与えますことは私どもといたしましても非常に恐縮に存ずる次第で、調べもなるべくすみやかに済ませまして、さような疑念を一掃したいというふうに考えております。
  37. 小山亮

    小山(亮)委員 運輸大臣に伺いたいのですが、ただいま私が刑事局長質問いたしました事柄は、運輸大臣もすでに御承知と思いますが、当時、法案が議決されましたときの所管大臣は永井柳太郎さんでした。そのときの附帯決議はもっぱら海員過失に対する刑罰に関するものと、その過失の場合海運業に従事しておる者の特殊の立場を考慮して、普通の犯罪嫌疑人を取扱うようにとっさに拘引するというような態度はよろしくないということについての附帯決議であります。これに対して永井逓信大臣は、御希望のあるところは十分尊重して、できるだけの努力をいたしたいということをはっきり言っておられます。船員の立場を保護したり、あるいはその権利を守り、あるいはその技術上の審判をして懲罰をするとかいうようなことは、申すまでもなく運輸大臣の権限下であります。こういう問題に対しまして、運輸大臣はこの機会において、今日までの決議その他を十分御調査の上、司法省に対しても私が申しましたように、海難審判調査を優先的にやるという建前だけはなくさないようにしていただきたい。これが前例となって、いつでも、ほかの場合でも、同じようにやるというようなことがありますと、重大問題です。これは特殊の例であって、ほかの軽犯罪に対してもどんどん同じようなことをやることのないように、特に御考慮願いたいのですが、一つはっきりと大臣の所信を明らかにしていただきたい。
  38. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小山委員の御指摘のように、今回の場合は特殊な場合だと思います。軽犯罪と申しますか、そういうものに船員が非常に不安になるようなことについては、今回のことは例にはならない。私は高松で検事正にも会いましたが、検事正自身も海難審判所とは緊密な連絡をとってやっている、そしていろいろ審判支障を来たさないような配慮をしておるということを言われておりました。従って今回の検察当局のこういうやり方が、一般的なものでないと私は考えている次第でございます。
  39. 小山亮

    小山(亮)委員 なおこの際大臣に特に御考慮願わなければならぬのは、ただいま海難審判庁長官の話によりましても、洞爺丸事件調査をして一年たたなければ結果がわからぬ、金がないし、いろいろ困難があってわからぬということです。高松事件も、いつこの海難審判所の結果が出てくるかわからぬ。そして途中では、その取り調べ事件に対して中間報告もしないのだ、これはできないのだということになりますと、事件が起って自分たちの子供がなくなったというような人たちは、一体その結果がどうなるか、だれがどうなるのだということがわからず、それがわからなければまた弔慰金も出てこないという気の毒な状態なのです。これがソ連なんかに起った事件なら、一年もたたなければわからぬということもありますが、国の中の、目と鼻の先に起った事件でどうしてこれがわからないのか。金がないのならもっと金を出してやるとか、その設備がなければ設備をするとか、調査をもっと迅速に進める方法はないものですか、この点を伺いたい。
  40. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私もその点は、洞爺丸事件の記憶が国民の間で薄らいでいくようなことで、その責任と申しますか、事故の原因あるいは自然責任の問題にもなってくるわけですが、裁決がなされるというようなことは、これは好ましいことではない。今度の事件の起らない前ですが、洞爺丸事件についてもっと早くできないか、そういう点でしばしば注意を喚起したのですが、参考人を呼んだり、まあ非常に速度を速くすることをいろいろ検討するということでありました。また事実洞爺丸のときには、参考人の召喚等についても非常に日程を詰めてやっておるようでしたけれども、やはり私どもから考えると少し時間がかかり過ぎる感がいたします。今度の高松の場合も、洞爺丸事件より簡単じゃないか、もう少し早くこの結論を出してもらいたいということを審判所に申しておった、審判所も今度は洞爺丸事件よりもずっと単純だから、できるだけ早く結論を出すようにいたしますということでございます。そういう点でこれは仰せの通り、あまりにも時間がかかり過ぎる点がございますので、これは今後ともなるべく督促をしまして、結論が早く出るようにいたしたい。そのために御指摘のようないろいろな原因があれば、それを改善することにやぶさかではございません。
  41. 小山亮

    小山(亮)委員 その審判が早く済まなければ、原因、結果が発表されない。そうすれば、それまで国鉄が改良すべき船体の構造であるとか、許備のやり方であるとか、あるいはダイヤであるとかが、高等審判庁の技術審判がはっきりきまらなければできないということになれば、その間は危険じゃないですか。洞爺丸事件審査ができない間は、次の船の改造の計画も立たなければ、何もできないというようなばかなことがありますか。これは早急にやらなければならぬ。早急に技術的な立場にある人が、ある程度の勘で、こうでなければならぬ、ああでなければならぬと考えて整備するのでなければならぬ。その責任が明確になってからなどというと、それが明確になるまでに一年もかかり、総裁もかわってしまっている。また次に、高松事件の問題でも、一年もたてば、大臣もかわってしまっているかもしれぬ。そうすれば、一体いつになって鉄道の機構の改善ができ、あるいは遭難がなくて、国民が安心して般に乗れるようになるか。これがわからないのですか。そうしたら今後の長い調査——調査なんというものは慎重もいいのですが、慎重も事によりけりなんです。少くとも私は調査する予算がないのじゃないかと思う。その点私はよく御調査なさって、積極的にやっていただく、臨時的な金を出してもいいから積極的にやっていただきたいと思うのです。
  42. 三木武夫

    ○三木国務大臣 予算の関係審判庁長官がお答えした方が適当だと思います。  これは小山君のおっしゃる通り、こういう事件があって、海難審判庁裁決が出るまで、いろいろ事故に対しての改善をする施策をじっと待っているという性質のものではない。大体においてどういう原因でこういうふうになったかということは、これは海難審判庁ではございませんけれども、いろいろの角度から検討せられますので、そういう裁決の結果を待つということでなくて、直ちにかからなければならぬ。洞爺丸のときにも、そういう点で、般の構造等についても造船技術審議会において検討いたしておるわけであります。今回の場合も、先週の金曜日に閣議の了解を得まして、連絡船の改善のための審議会を運輸省に置くことになりました。これは委員の人選も始めておりますので、できる限り早く結論を出して、全部の結論というのでなくして、結論が出次第、改善すべきものは改善していく。海難審判庁裁決を待っておるというのではなくて、その前に改善すべき必要な点は改善していくという方針でやっていきたい。こう考えております。
  43. 長屋千棟

    長屋政府委員 ただいまの予算員の件でございますが、これは昭和二十三年に海難審判所から海難審判庁として発足いたしまして、海難審判法を運営していきますのに予算定員を相当要求いたしましたが、自来行政整理とか、いろいろ縮小の機運になって参りまして、十分な予算定員が得られませんので、毎年要求いたしまして、大蔵省からも少しずつ入れてくれておりますが、まだ予算定員は、大体一箇年の事件を残らず処理し得るに至っておりません。従いまして、毎年あとへ繰り越していく事件がございますので、それがほとんど一カ年分くらいたまっておるような次第でございます。ただいまも洞爺丸事件あるいは紫雲丸事件がいつ終るかわからぬ、非常に怠慢だというおしかりを受けましたが、審判庁といたしましては、今おります人間、今いただいております予算で、予算が足りなければ予備費をいただきましてできるだけのことをやっておりますので、もしわれわれのやり方に怠慢の点がございましたら十分御指摘いただきたいのでございますが、われわれとしては今の予算定員において、ほとんど無理をして、それにかかり切りでやっておるわけでございますので、各審判庁から手伝いをやってまで処理しておるようなわけでございまして、私どもとしては怠慢はないという考えでやっております。
  44. 原健三郎

    原委員長 運輸大臣に対する質疑を一括して行いたいと思いますが、通告順にいたします。青野武一君。
  45. 青野武一

    ○青野委員 三木運輸大臣のあげ足とりではないが、長崎総裁が辞職なさいまして、十河信二さんが後任の総裁になったということを新聞記事で見せていただきましたが、三木運輸大臣の選考の方針は、国鉄の機構外から後任総裁を作りたいという意思であったことは、新聞その他で承知しておった。これはどういう関係から十河さんを——元満鉄の理事をしておった人ですが、こういう人を持っていかなければ、ほかに適任者がなかったのかどうか。その点について、運輸大臣の御意思はそこにあったのだが、ついに志と違って十河総裁に落ちついたのか、そのいきさつを私どもはお聞きしておきたいと思います。
  46. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は率直に申しまして、今回は国鉄関係者外と申しますか、でき得べくんば経済界から国鉄の総裁を起用して、新しい角度から国鉄の再建をはかるようにすることが好ましいのじゃないか、そういう考え方を持っておりました。そのため新聞等でも、その考え方を述べたようなわけであります。一々どういう人に交渉したかということは、これは御迷惑でもございましょうし、申し上げるのもいかがかと思うので申し上げませんが、なかなか今日の国鉄というものはいろいろ問題も多いし、あるいはまたこの事業が一つの鉄道という専門的な事業でもあって、民間の人を起用するということが困難でございます。またそうかといって、だれでもというわけにいきませんで、こういう大きな事業でありますので、危な気がある感じを与えてもいけない。そういうことで、民間と申しますか、国鉄に全然関係のない人を総裁に起用するということが、非常に困難になって参ったのであります。十河信二氏の場合は、国鉄関係者で、いかにも国鉄におったことはおったのですけれども、三十年も前の話で、三十年前の国鉄というものは、必ずしも国民の非難があったわけではない。最近いろいろ国鉄の問題について非難が起って、最近の国鉄というものに対して一半の責任を持っておる人は、これは当然避けなければならぬ。そういうことで必ずしも現在の国鉄に対して責任を持つという立場の人でもないために、また本人が最後の御奉公として国鉄の再建のために一つやってみようという強い御決意もあるようでございましたので、内閣として十河信二氏を起用することになったわけでございます。
  47. 青野武一

    ○青野委員 重ねてお尋ねいたしますが、私どもは、三木運輸大臣より一足先に、十二日の晩の飛行機を利用いたしまして、各党から一名ずつ四名、紫雲丸沈没問題について遺族の慰問と調査に参ったのでありますが、これは調査に行く前に、すでに国鉄の責任であるということは、長崎総裁の口を通じてこの委員会で明瞭にされたのであります。私が心配しておりますものは、百五十六名、私ども向うをたつときには死体が上った。翌日の新聞を見ると一名増加し、また翌日の新聞を見ると、百五十七名から百五十八名になっておりましたが、こういう点について、今の沈没しておる紫雲丸の船内にまだ遺体があるのかどうか。それからこの前の運輸委員会でも質問したのですが、これは海藻十八メートルのところですから、洞爺丸のように沈没船を引き揚げるのに、そう無理なことをしなくとも大体揚るのではないかと、専門家じゃないのですが、思う。揚るまで船内に遺体がかりにあるとすれば、今のところでは手がつけられないのかどうか。結局乗船名簿というものがなかったのですから、確実な数字は出てこないでしょうが、私どもがあちらを十四日の朝だって東京に帰って参りまするときには、百五十六名の死者の数字が出ておりましたが、船内にいまだにその遺体が残っておるかどうか。私どもと一足違いで現地においでになった運輸大臣に、この点についてどういうことになっておるか、お聞きしたい。  それと、この沈没しておるのは、サルベージに依頼して揚げるということになれば、いつごろ揚げられるか、こういう点についてお尋ねしておきたいと思います。
  48. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在まで参っております報告によりますと、死亡が百六十六名、行方不明がもうあと二名ということになっております。その後運輸委員会調査団がおいでになったときから、遺体が毎日二体揚ったり、三体揚ったりして、今行方不明の遺体は二つになっております。私もまだどこか船内に遺体があるのではないかということで、潜水夫の人たちも続けて船内の捜査をするように言ったのですが、現地へ私が参りましたときには、もう二回通りずっと船内をやった。船内にはもうないと思われる。その後遺体が次第に発見をされましたのも、やはり船外で発見をされたわけであります。大体もう船内には遺体はないのではないかと考えられておりますが、なお遺族の方々は、これはせめても遺体を発見してもらいたいという希望があるわけですから、捜査を続けていきたいと思っております。とにかく今は遺体は二つになっておるということであります。  それから紫雲丸は、これはお説のように洞爺丸よりも引き揚げが簡単だと思います。それでなるべく早くこれを引き揚げたいと現地でいろいろ計画を立てておるようであります。なるべく早く引き揚げたいと考えております。
  49. 青野武一

    ○青野委員 これらの百五十六名が決定されて、私どもは先ほど申しましたように戻って来たのです。あとに十四名くらいまだ行方不明があるのではないか。その十四名のうち十名は学校の生徒、それは名簿に照らし合せてみるとそうなっている、こういうことでございまして、われわれが帰ってから十名ばかり遺体が揚った勘定になるのですが、問題の行方不明の二名、これは船内にあるのか、船外にあるのか、この点をお聞きしたい。  それからもう一点あわせてお尋ねいたしますのは、国鉄の責任である、こういう言明は、しばしば運輸委員会を通じて聞いたのでありますが、長崎総裁だけが辞職の手続をとれば、それで責任問題に関する限りはすべてが解決がついたとは私どもは受け取りかねる。現地の局長であるとか。直接関係をしている人とか、あるいは監督官庁の重要な地位を占めている人とか——長崎総裁だけでは、責任を取ったとは私どもは言えないのです。この点についてそのほかの人の善処方を私どもは期待しているわけですが、こういう点についての運輸大臣のお考えを伺いたい。  それから少し早いかわかりませんが、洞爺丸の例もあることであり、弔慰金の問題はどういうふうな数字が出てくるのか、私ども非常な興味を持っているのですが、特に急いでおきたいと思いますのは、学生が非常にたくさん死んだ。おとなも学校の子供も、生命の貴重な点については、これは論ずるまでもなく、人命尊重の立場からいけば、個々に弔慰金で差別を設けるということはどんなものであろうか、こう私ども考えるのですが、今回のような大きい事故は将来そうたびたびあってはなりませんし、今回のことについておとなと学校の生徒の弔慰金の差別をつけべきではない、私どもは個人的にこういう考え方を持っておるのですが、大臣の御所見をこの点についてお伺いしておきたい。  それと、一段落ついて、行方不明が二人ありますが、それらの目鼻もつき、都合よく遺体でも発見することができれば、大体合同慰霊祭等は早急に行わなければならぬと思いますが、それらの点についても心準備を一つお聞かせ願いたいと思います。
  50. 三木武夫

    ○三木国務大臣 二名の遺体が未発見である。これは一体船内にあるのか、船外かというお話でございましたが、今の現地の模様を聞きますと、船外という意見が非常に強いわけでございます。これは絶対的にどうということを言い切ることも困難でございますが、船内は潜水夫が相当綿密に調査をしたので、今日では船外でないかという感じがいたすのでございます。  また沈没船の引き揚げに要する期間は、今事務当局の方から、着手後二カ月間はかかるということでございますので、あわせて申し上げておきたいと思います。  それから責任の所在の問題については、お説の通り、これは長崎総裁だけで責任が十分だとは思っておりません。いろいろ現地の状態等の調査ともにらみ合せて、この責任を明らかにする点はいたさなければならぬと考えております。  それから弔慰金の問題でございますが、人間の生命という点から申せば、これは今青野さんのお話しのようなこともごもっともな点もあるのでございますが、とにかく補償ということになると、従来の例から申しまして、年令とか、その人のいろいろな条件というものによって差がついておるようでございますので、今回の場合も私が国鉄に申しておるのは、いろいろな例もあろうが、できる限り最高の弔慰の方法を講ずるようにしてもらいたいということを強く国鉄に申しておるのですが、年令あるいはまたそういう環境上の条件を全然無視して、全部一率に弔慰金を支給する方法は困難ではないか、こう考えておるのでございます。
  51. 青野武一

    ○青野委員 最後にもう、一、二点お伺いしたいと存じますが、それは新聞で見ますと、現地で運輸大臣が、最短距離において四国と中国を結ぶ海底トンネルを早急に作るべきである、それについては一千万円とかの調査費も三十年度予算に計上したい、こういうことを言っておられましたが、それについて具体的な御意見があれば承わりたいと思います。  それからもう一つ、もしこの沈没しておる紫雲丸が引き揚げられたときに、そのまま何ら改造せずにお使いになるのかどうか。これは中村船長と石井さんという船員の方が二人、紫雲丸では乗客以外に気の毒にもなくなったのですが、行って調べてみますとエンジンのあるところの上の段に貨車を入れてある。その貨車の一番奥の方に入っておって、そうして衝突後数分間で沈没した。そのために相当なれておる石井という船員が、とうとう貨車の奥の方に入っていたために出てくることができなくて、船と運命をともにしたということですが、この貨車とか客車とかを積まずに、ただ客を乗せるだけに紫雲丸は改造したらどうかと私は個人的に考えておるのですが、こういう点について、このまま沈没しておるものを引き揚げて、そうしてこのままの姿で将来やはり宇高連絡船に使うようになるのですか、こういう点を承わりたい。  それからもう一つは、現地調べてみると、事務長とかボーイあたりが救命胴衣の箱を全部出したということですが、私は大体五尺三寸ですが、これくらいやらなければ——救命胴衣は四人分入れてある。そうして妙な工合にとめてあるのをバネをはずすとふたががたっと落ちて、そうして四人分が一ぺんに出ることになっていますが、私が五尺三寸で、これだけ手をあげなければそのとめ金がはずれない。そうすると大体中学生や小学生は全然手が届かない、こういうことになる。あの救命胴衣を自分であけられて、そうしてそれを持って海に飛び込めば、まだ五十人や七十人は助かったのではないか。それが船の甲板の横にしても、客船の中にしても、おとながぎりぎり一ぱい、少し背伸びしなければその救命胴衣をあけることができないような状態では、これはさあといった急場の役に立ちません。それから定員が千五百名のところを九百何十人乗っておったということですが、定員の数だけ救命胴衣が事実上ないということです。そういうような関係が、この犠牲者をことさら多くしたのではないかとも思います。これは運輸大臣現地においでになったのですから、よく御調査になってきていると思いますが、こういう点については、小さいこれくらいの子供でもそれをあけて、引っぱればふたががたっと落ちてすぐ出られるように、船に乗ったときには船員が生徒に、そういう訓練、というよりも説明するぐらいのことをしておけば、五十人や七十人は船と運命をともにしなくても済んだのではないかと私は思いますが、こういう点についてどういうお考えを持っておられるか。  それから高松港から紫雲丸が出ていって十七、八分ぐらいから、急に視界が七十メートルか百メートルぐらいの濃霧になったのですが、あそこですれ違うときに、大体航路としては二百メートルの間隔があるのが、一直線で二マイルの距離で、第三宇高丸は左の方で霧中信号を聞いたというので、一分間走ってみたが、紫雲丸は全然よけないから、右に寄った。ところが紫雲丸はずっとやってきまして、左側で霧中信号を聞かなければならないのを、どういうわけか二等運転士やあるいは死んだ中村船長あたりが右舷の前方で聞いた。しかも二回あるいは三回聞いた。左に船がいるのを右で聞くはずはないのですが、どういうわけでそういうことをおっしゃられたか、私どもはふに落ちないのですが、船長が終始一貫レーダーにかじりついて見ておって、そうして命令を下して、立岩という二等運転士に操舵機を握らしておった。ところが第三宇高丸は左で聞いた。紫雲丸は左で聞かなければならないのを右で聞いた。そういうことになると、せっかく高価な金を投じてアメリカから買ってきたレーダーというものが、何にも役に立たない結果になる。しかも第三宇高丸の航路を円をかいて左にかじをとって横切るところへ胴中に突っ込んだというのが大体最大の原因であったと、私どもは三十数名の関係者の意見を聞いて、そういう判断を下しているわけでございますが、こういうように十七、八分高松港から出ていって、二百メートルぐらいのところですっとすれ違う。それをもう十分ほど早目に出れば、少くとも千メートルぐらいの距離で絶対に接触や衝突をしないわけで、そういうダイヤの組み方もあるはずです。そうしたからといって、宇野に着いてそんなにばたばたしなくても、大阪行きの準急には十分に乗れる。七分でも八分でもいいのです。それをあそこですれ違うようにしたところに、ダイヤの無理な組み方があったと私は思いますが、こういうダイヤの変更について運輸大臣は具体的な腹案があれば、これを一つお聞かせ願いたい。救命胴衣の箱が子供の手の届かないところにあること、それから定員の数だけないこと、そういう点についてのお答えを願いたいと思います。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 紫雲丸を引き揚げた後に船をそのまま使うかというお話でございますが、私個人の意見で、まだ検討したわけでないのですが、これは貨物にでも使った方がいいのではないかと思っております。しかしこれはいろいろ国鉄連絡船の全体の関連性において考えなければなりません。これはやはりいろいろ改造も加える必要も起りましょうし、この点はよく検討を加えてみたいと思います。  それから救命ブイでございますが、これは定員の数だけないということはなく、定員の数はむろん備えてあるわけでございます。しかしお説のように、子供が手を伸ばして取るのには高過ぎる場所にございますので、そういう意味からいたしまして置き場所等には検討を加える必要がある。私は現地に参ったときに、天候が悪化した場合には、これはむだになってもいいから一人々々に救命ブイをみなつけて、子供たちにもそれは社会教育の一つにもなるのだから、むだになってもそれをつけて、そして説明を加えるようにしてほしいということを申してきたのであります。そういう点で数はあるのですけれども、やはりいざという場合に対しての予備的な知識を与えておく必要があると思います。  また海底トンネルの問題でございますが、やはりこういうように領土が限られて参っておりますので、北海道と本州、本州と四国というものは、将来は相当な経費を伴うわけでございますから、財政的な見地からも考えなければなりませんが、しかし将来は隧道にすることが好ましい、こう思っております。そのためには地質等の調査も十分にしなければなりませんので、四国と本土との連絡にも一千万円くらいの調査費を出して調査を始めたい、こう考えておるのでございます。  またダイヤはお説の通り、私も現地に参って、旅客の場合はいろいろ汽車の時間等にも間に合わさなければならぬわけでありましょうから、時間的な制約があるが、貨物の場合は相当弾力性があるのではないか、ああいう一番狭いところですれ違うようなことにしなくても、もっと距離のあるところですれ違うようなダイヤを作ったらどうだ、ダイヤを至急に変更してもらいたいということを現地で申しておきました。ところが御承知のように第三宇高丸の参ったような時間——いわゆる貨物の方をきのう決定をいたしまして、五月二十五日からダイヤを変更することにいたしました。従って第三宇高丸と。紫雲丸とがすれ違ったような、ああいう狭い地域ですれ違うことのないようなダイヤの変更を行なった次第でございます。
  53. 青野武一

    ○青野委員 救命胴衣の話を今質問で申し上げましたが、救命胴衣は定員だけないのです。これは同じ構造で名前は違いますが鷲羽丸、同じ事故で衝突をいたしました鷲羽丸に乗って私ども調査団は帰っきましたが、それはいかだなんかを入れると辛うじて定員の数だけあるそうですが、救命胴衣は定員の数だけは明瞭にないということを、私ども質問船長答弁をしております。これは船に乗ると同時にやはり救命胴衣をつけるとかあるいはおろされるとか、もう少し便利のいいような備付方をするのが当然と思いますし、これは財政的に見ても、人命尊重の立場からいきますならば、定員の数だけの救命胴衣は備えつけておくのが当然ではないかと思うのです。いろいろ雑多なものを拾い集めてきて、寄せ集めてきて、それで辛うじて定員の数だけあるのでは、それはやはり航海の安全の上からは、ダイヤ偏重主義でいけば当然かもしれませんが、人命尊重の立場に立っていろいろな品物を用意するということは当然なことだと思うのです。これは鷲羽丸の船長が私ども質問答弁をし、実際に調査してきたのですが、救命胴衣の数は定員の数だけはない、これは明瞭な事実になっております。この点を一つはっきりしていただきたいと思います。
  54. 三木武夫

    ○三木国務大臣 紫雲丸の場合も、私は現地でさように聞いておったわけでございます。救命ブイが今度の乗客に足らなかったのではないか。そういうことはなかったということであったのですが、やはり今御指摘のようにいろいろなものを入れて、定員の乗客に差しつかえないような式になっておる。今青野さんの御指摘の方が正しいようでございます。しかしながらこれはお説の通り、私も定員数の救命ブイは用意した方がいいと思います。こういう点について御希望に沿うように検討したい、こう思っております。
  55. 小山亮

    小山(亮)委員 関連して。今の問題は非常に大きな問題です。旅客定員だけの救命浮袋がないということを大臣が言明されたが、それは事実ですか。
  56. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は紫雲丸の場合には定員千五百名ですか、それに九百なんぼですから、そういうことの事実はなかった。今お話しになった鷲羽丸ですか、そういう場合には、御質問になったようないろいろなものを入れて、そういう場合があるという事務当局の話であります。これは国鉄の方からお話を願う方が適当と思いますから、国鉄から御説明をいたすことといたします。
  57. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 それではちょっと御説明させていただきます。実は現行の法規では短艇、伝馬、救命浮器、救命浮環、救命胴衣、こういったものを全部合せまして定員数だけを持てばいいというのが、現在の規定でございます。それでその中でなお救命胴衣は、少くとも全定員の三〇%持てというのが現在の法規でございます。しかしながら私どもの方といたしましては、そういう方法では非常にまずいものですから、先般の洞爺丸事件以来——今までも規定以上に持っておったのでございますが、さらに強化いたしまして、紫雲丸の場合には旅客定員が千五百九十くらいですが、救命胴衣二千七十七個という記録が出ております。それからあと短艇、伝馬、救命浮器、救命浮環等全部合計いたしますと、二千九百九十四人分の救命設備を持っておるのでございます。
  58. 小山亮

    小山(亮)委員 これは重大な話です。今千五百人の定員に対して二千七十七個救命浮袋を用意しておられるのですか。
  59. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 そうでございます。これは実際に私どもの方で定員の数と同一数というので最大搭載人員に、実際の場合には子供が乗りますから一割程度増せばいいという話もあります。これは遠洋を走る旅客船の場合でも、最大搭載人員にあと子供の分を見まして一割くらい増しておるのが普通の状態でございます。しかしながら非常に短時間の場合を考えますと、おのおの船内にちゃんと定員に割り振って、部屋の定員が幾らというところにその数だけ置くのですが、実際にはその数だけでちょうど人が一ぱいになった、同じ数だけでは非常事態に必ずしも満足に全部渡らないというきらいもありますので……。
  60. 小山亮

    小山(亮)委員 それはわかっております。私の聞いたことだけ返事して下さい。それでこの紫雲丸に対しては、千二百名の乗組員に対して二千七十七個ですか、非常にたくさん積んでおられて、それで鷲羽丸はどうなんですか、あるいはまた宇高丸はどうなんですか。何名の定員に対してどれだけお置きになっておるのですか。
  61. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 今ここに数字は持っておりませんが、洞爺丸以後に旅客船には全部救命胴衣の増し積みをしております。それから第三宇高丸の例がここにございますから簡単に申し上げますと、短艇として救命浮環と救命胴衣と全部合せまして百八十二人分でございます。
  62. 小山亮

    小山(亮)委員 何名の乗組員に対してどのくらいということを聞かしていただきたい。よけいなことは要りませんから、私の聞いたことだけ返事してください。それから沈んでしまった船は調べようがない。沈んだ船には定員よりよけいあって、現に浮いて、現に浮いている船には少い、これは私ちょっと不思議に思うのです。とかく沈没してしまうと、その船だけが責任を負うようになって、陸におるのはみな責任がないようになりやすいのです。そこで私はこれをお伺いするのですが、衝突した宇高丸の方はどれだけの定員でどれだけ持っていたか。今伝馬だとかボートだとかそういうものを除いて、救命浮袋だけが千二百人に対して二千七十七、こうおおっしゃった、これは非常に親切なんです。これでなくちゃいけない。定員々々と言いますけれども船舶法の規定は最低なんですから、いやしくも運賃を取ってお客を乗せるのに、沈没したときにこれが救われないような装備を持っているということは、国鉄としてあり得る道理はないのですから、旅客を積む船は、規定はそうですけれども、少くともお客全体には救命浮袋が行き渡るだけのものがほしい。民間の客船は持っております。しかるに鉄道がそれを持っていないということは重大なことなんで、沈んだ船にはそれだけあるが、それでは宇高丸の乗組定員は何名で、鷲羽丸の乗組定員は何名で、救命浮袋ボートやそんなことを聞くのではない。ボートが足りないことはきまっているのですから、救命浮袋がどれぐらいあるか、これを伺いたい。
  63. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 第三宇高丸乗組員四十、それから馬その他の荷送り人が参ります場合の人の定員として四十二人取ってございまして、合計八十二人でございます。救命胴衣は九十二個でございます。
  64. 小山亮

    小山(亮)委員 鷲羽は。
  65. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 鷲羽は今ここに記録がございませんものですから、後ほど調べさしていただきます。
  66. 小山亮

    小山(亮)委員 いつわかりますか。
  67. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 今すぐ調べて参ります。
  68. 原健三郎

    原委員長 この際新たに日本国有鉄道総裁に就任されました十河信二君から、本委員会に対しごあいさつを申し上げたい旨の申し出がございました。これを許します。
  69. 十河信二

    ○十河説明員 ただいま御紹介いただきました十河信二と申します。不徳浅学非才の私がこの難局をお引き受けいたさなければならぬことに相なりました。省みて深く恐懼しておる次第であります。私は多年鉄道に奉職いたしておりまして、すでに退職いたしまして三十年にも相なるのであります。今日ほどいいろな事故が続発し、国民の皆様に御迷惑をおかけし、国会でも皆さんに非常に御心配をいただきまして、何とも申しわけがないと恐縮いたしておるものであります。  私の第一の任務は、この事故をなくし、交通の使命である安全、確実、迅速に旅客、貨物を輸送できるように、皆さんの御安心をいただいて国鉄の信用を回復するということに、全力をあげたいと覚悟いたしております。それには何としても綱紀を粛正し、人心を作興して、信賞必罰、規律厳正ということが第一であると心得まして、その旨職員にも訓示をいたしておいたような次第であります。何さま戦争中から今日に至るまで種々の制約がありまして、設備も非常に老朽いたしておるものが多いのであります。物心ともに改善を要するところが多々あります。今後とも皆さんの御注意をいただいて絶大の御支援を願いまして、すみやかに皆さんが安心して御旅行ができ、貨物をお託しなさることのできるようにいたしたいと、ひたすら念願いたしておるものであります。どうぞ力強い御支援、御鞭撻のほどをお願い申し上げまして、私のごあいさつといたしたいと思います。
  70. 原健三郎

    原委員長 運軽大臣に対する質疑を続行します。徳安實藏君。
  71. 徳安實藏

    徳安委員 三木運輸大臣に一、二お尋ねをいたしたいと思います。総裁の起用に対しましては、先ほど他の委員から御質疑があったようでございますが、私は三木運輸大臣が財界から起用したいという強い信念を各機会ごとにお話になっておりますので、非常に心強く感じ、そしてぜひともその目的を果していただきたいと、私どもともどもにこれを願っておりました。しかるに結果を見ますと、先ほど経過の御報告がございましたが、事志と違って全く財界人にあらざる人が選ばれておるのであります。この点につきまして、うわさによりますと、国鉄モンロー主義のために災いされたというようなことが巷間盛んに伝えられております。私どもさようなことがあってはならず、あるべきでないと思います。しかし世間には相当そうした批判が行われておるようであります。もしさようなことが事実であるならば、今後の国鉄ために断じてこれを是正せなければならぬ。もしそれがうそならば、この誤解を解かれることが必要ではないかと思います。新聞等もこうした点については相当強く批判しておりまして、これは一流新聞によりましても、こんなことも書いておるようです。「洞爺丸紫雲丸など大事故続出の国鉄刷新に、部外者で有力な財界人を後任総裁に、というのが三木運輸相の公約であったが、この三木構想も「国鉄モンロー主義」にぶつかって脱線転覆の形である」こういうようなことを天下の一流大新聞が堂々と書いておる。私どもは、先ほどから新総裁からもお話しになりましたが、国鉄をほんとうに引き締めるためにも、むしろ部外者の有力な手腕力量のある方をこの際お据えになることがいいではないかと思い、また大臣もそうした御方針でおりましたので、深く期待していたのです。ところがそうでなかった。これは国鉄ためにも、また新総裁のためにも、また運輸大臣ためにも私はとらぬところだと思うのです。ほんとうにこのモンロー主義によって多少阻害せられた形跡がある。うわさによりますと、うわさに乗った人々のところには、あなたが国鉄総裁になったら大へんだ、そんなことをお受けにならぬ方がいい、そういうことを、これは鉄道の職員みずからではないかもしれませんが、相当に遠回しでそういう話があったので、みんなおじけづいてしまった。そこで勇気百倍して受けようという人もしり込んでしまって、片っぱしから断わることになったといううわさもあるのであります。私はそういうことはあり得ないと思いますし、あってはならぬと思います。こういう大きな事件が起ったときには、謙虚な気持で、国鉄の職員もやはり大臣方針に従って行くべきだと思いますが、それが事志と違った経緯には、そこにそうしたうわさの起きる原因があると思う。この点につきまして、むしろ運輸大臣から、率直に、飾らないお話をいただいて、そして今後の国鉄運営の上に刷新すべき面があるならば、大いにお互いに考慮しなければならぬ、かように考えます。
  72. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国鉄モンロー主義という立場から。人事に妨害が入ったかというお話でございますが、妨害が入った事実はございません。ただ財界の方々で、今日の国鉄というものに対して、国鉄の現状を何とかしなければならぬということに対して、非常に強い関心をお持ちになっておる方は相当おられました。しかしみずからが出ていって、国鉄を再建するという段になって来た場合には、何と申しますか、しり込みをされまして、思うようにいきませんでした。それが思うようにならなかったのは、運輸大臣の微力のしからしめるところだ、こう考えておるのでございます。今度の新総裁も、自分の最後の御奉公としてやるというような非常な御決意であって新総裁に私は大きな期待を持っておるのですが、私自身が最初考えたことは、少し角度を変えて、一つ国鉄を時期的に見直すのがいい、そういう考えのもとで努力をいたしたのでございますが、それは国鉄自身の妨害というよりかは、お話をした方々も、いざという場合に決意をされることを非常にちゅうちょせられて、私の最初考え方は実現をしなかったというのが真相でございます。
  73. 徳安實藏

    徳安委員 ただいまそうしたモンロー主義のために災いされたのではない、こういう力強い言明がありましたので、私どももさようであろうと考えます。従って、そういうことが流布されることは誤解だというふうに、私どもも了解いたしたいと思います。先ほども運輸大臣は盛んに御本人が最後の御奉公として力強くやるという意思だというお話でありますが、新聞に出ておるところによりますと、むしろ本人はいやだ、いやだと言って固辞したのだけれども、しかし赤紙を突きつけられて、祖国の難におもむくことをちゅうちょするのは不忠者だ、こう言われたので、私は不忠者になりたくないと思って引き受けた、こういうことを聞いておる。だから私ども考えるのにむしろ御本人が、そういう意味でなくて、不忠者と言われるのをつらさにやったと言うのですから、ちょっと大臣のお考えと違いはせぬか。これは総裁にもあらためて聞きたいと思います。  そこで、もう一つ大臣に伺いたいことは、新総裁がいろいろなことをしゃべっております。経営委員会の問題とか、あるいは運賃のきめ方に対する機構を新しくこしらえたいとか、いろいろなことを言っております。また予算の面については、もっと株式会社の予算、決算報告を承認してもらうくらいな簡易な行き方をしたいということを言っております。これは国鉄法を改正するだけではなしに、財政法等を全部改正しなければならぬことですから、こうした問題を言うということは、おそらく運輸大臣としても、政府の腹がきまって、かくすべしという結論が出たときに、こうした思い切ったことは言えるのであって、全然権限もない国鉄の総裁が、法律を根本的に改正しなくちゃならぬ、経営委員会委員をたくさんにするとか、あるいはこの条文によりますと、経営委員会は名誉職で実費だけを支給するというのを、専門的に専従にしなければいかぬ、そういうことをはっきりおっしゃっているのですが、こういうことは、事前に責任者である運輸大臣と協議の上、御了解の上で、そういうことがなされたのでしょうか、一つ承わりたいと思います。
  74. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どういう場面で、新聞記者とどういう問答がされたかということは、私も新聞紙上でそれをちらっと見た程度で、よく事の真相を存じておりません。しかしいろいろ国鉄の経営について、これは日本国有鉄道法との関連もあることでございますので、私どももこういうふうに考えているのであります。それは新総裁がどういうことでどういうふうに言われたかということは、私も徳安委員と同じように新聞でちらっと見た程度で、真相は知りませんが、しかしこの機会に日本国鉄が再検討しなければならぬ段階に来ていることは間違いがない。そういう点で運輸省としては、国鉄の経営調査会というのを金曜の閣議にかけたい、こう思っております。各方面の方々の委員に御委託をいたしまして、今申した国鉄自身の、あるいは今徳安委員の御指摘になったような公共企業体のあり方それ自体についても、いろいろ検討すべき点もございましょう。また国鉄の財政面にもいろいろの問題があり、機構の問題にもいろいろに問題がある。そういう調査会を通じてこの際に徹底して国鉄というものを検討しよう。その結論を待って——その調査会もだらだらと長いものでなくて、これはあまり長期にわたらない程度に結論を出して、法律の改正を伴うことがあるならば、御審議を願って、この機会に国鉄の相当な改革を断行したい、こう考えているのでございまして、そういう上に立って今後いろいろな問題を検討して、法律の改正が必要ならば御審議を願いたい、こう思っております。
  75. 徳安實藏

    徳安委員 運輸大臣のおっしゃることはよくわかるのです。私ども国鉄がこのままでいいとは考えておりませんので、調査だ、研究だと言っておらずに、もっと手っとり早く根本的な対策を講じなかったならば困ると考えているのです。ただそうした根本的なことは運輸大臣の口をついて出るべきであって、国鉄総裁としては自分の権限に属する範囲のものはどうする、こうするとおっしゃって差しつかえないと思う。しかしそうでない、政府みずから言われなくちゃならぬこと、法律を根本的に改正しなくちゃならぬこと——またおっしゃることを見ると、国鉄法を根本的にくつがすような意味のことをおっしゃっているということを考えてみますと、何か運輸大臣との間に話し合いがあったのではないかと考えられ、また一面におきましては、この至難な国鉄を引き受けるためには、無条件では引き受けまい、必ず運輸大臣との間に何か条件があるのじゃないか、それを聞いてやるから受けいというので受けたのじゃないかという説も一部にある。こういう点について、運輸大臣にもしそういうことがあるなら、率直にお話を願いたい。もしないのなら、今後研究をして政府自身が御発表になるなら別問題でありますが、こうしたまだお互いに結論に達しないことを、あたかも自分の手ですぐあすにでもできるように新聞に発表なさることは、私新総裁として不謹慎だと考えるのです。しかもそれをただ一、二の新聞が何か随筆的に聞いて書いたというならともかくも、公けな記者会見においてお話しになり、それがあたかもほとんど全部一様なのであります。ただ文字の上において少しの違いがございましても、十何紙が全部一様にこれを書いております。ですからこれは間違いであるとは言えません。こういうようなことは、一体国鉄という大きな世帯を背負っていかれる上において、ああした行き方が部内、部外から信任を受けることができるかということ、それからもしないならないように、あるならあるようにお聞かせを願いたい。大臣に伺いますが、絶対にその点については事前に御了解は何もないのでございますか。
  76. 三木武夫

    ○三木国務大臣 就任を受諾されます場合に、公共企業体というもののあり方について再検討を加えてもらいたい。これはいろいろな点で、公共企業体というものが日本の企業形態として未そしゃく的なところがあるから、これに検討を加えてもらいたいという注文がございました。これは運輸省としても、むろん先ほど申し上げましたようにこれは公共企業体のあり方ばかりを検討する会ではございませんが、これも大きな一つの課題になるわけであります。党として、政府与党としましても、公共企業体のあり方について政調で検討するということ、それは総裁に申したわけでありまして、もし条件があるとするならば公共企業体に対して今後検討を加えていくということだけでございまして、ほかには何もございません。  また今総裁の言についていろいろお話でございましたが、就任をされて国鉄を何とかしなければならぬという感じを非常に強く持たれておるようであります。そういう情熱のほとばしるところがあったと思いますが、しかし法律の改正を伴うことは、運輸大臣を通じて言うべきことが適当である、これもあなたの御意見と同意見に考えておる次第であります。
  77. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 今のは旅客定員千六百四十八、乗り組六十、計千七百八に対して約二千個というものでございます。こまかい端数までは今詳細にちょっとわかりかねます。
  78. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと当運輸委員会から調査に行きました調査員の報告と大へん違うわけですが、鷲羽丸には乗客千六百四十八、乗り組六十、合せて千七百八名に対して二千個の救命浮袋が現に備えてある、こういうことなのですか。
  79. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 今そういう返事をいたしました。なお正確な数字は一応現地の方から情報を取りたいと思っております。
  80. 小山亮

    小山(亮)委員 私は非常に不安になってきましたので、あらためて資料を要求したいと思います。国鉄関係しております連絡船、青函連絡も下関もそうですし、高松あるいはそのほかの国鉄関係して、いやしくも料金を取ってお客を乗せる連絡船の一切の救命具の状態を、あしたの委員会までに知らしていただきたい。この資料を出していただきたい。
  81. 原健三郎

    原委員長 大西正道君。
  82. 大西正道

    ○大西委員 私の運輸大臣にお伺いしたいのは二つありますが、一つは海技専門学院の問題、もう一つは紫雲丸の、特に船長の問題を私はこの際ちょっと聞いておきたいと思います。その前に、紫雲丸沈没した際に船長はどういう行動をとって、最後にはどうなったかということを、運輸大臣質問する前に係の方からお伺いをしたいと思うのです。
  83. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 紫雲丸の中村船長は、生き残りました甲板部員に聞いてみますと、やはりあのときにはずっとレーダーをのぞいておりました。そうしてかじの命令をしておるのです。結局運転士の方も相手船の霧笛が右の方に聞えたので、船長、右の方に聞えますねと言ったら、ああそうだそうだと言いながらずっと見ておった。それからレーダーをかわろうかと言ったところが、いやおれがレーダーを見るからということで、ずっとレーダーを見ていたとのことであります。そしてかじをとることを命じておりました。それから一度汽罐要員に汽罐の停止を命じております。さらに左の方の取りかじを命令しております。それからすぐ前に宇高の船体が見えたときに、それを避けようと思って右へとって、おしりを振るつもりであったのですか、面かじ一ぱいを命令しております。それから衝突以後は、事務長がすぐかけ上っていって指示を仰いだときには、すぐ胴衣をつけて避難することにさせるという命令をしております。また当時は船内の放送がききませんので、非常のブザーを鳴らして、そうしてあとは退避の命令といいますか、短艇をおろすなり、あるいはいかだをおろすなり、それから胴衣を着用して逃げるという、そういった非常措置をとるように、それから水密のとびらを締めるということを命令しております。その後は操舵の部屋から出ていろいろ避難の指導をしております。結局最後は向うの甲板の自分の持ち場へ帰って、そこでその船と運命をともにしたというふうに承知しております。
  84. 大西正道

    ○大西委員 私のお聞きしたいのは、最後に自分の部屋へ帰って、そうして船と運命をともにした、ここなのであります。そうしますとこの船長が、自分の命を船と運命をともにせずに、もし最後の瞬間に脱出しようと思えばできたのであろうと、私は今でも方々から聞くのであります。これは主観的には本人の口からでなければわかりませんが、状況を判断いたしますとそういうことが可能であったということになりますか。
  85. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 おそらく脱出しようと思えばできたのではないかとと想像しております。
  86. 大西正道

    ○大西委員 そこで従来、船長というものは、船が沈没する場合には船と運命をともにするというようなことが何か習慣となっておったのか、あるいはまた従来の事例から見ますと、ほとんどみなそういうふうになっておるのか、こういうことをごく大ざっぱでよろしいから一応聞かせください。
  87. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 船長は最後までお客の救出に努めるということは、そういう責任を負わされておるので、最後までお客の救出に努めるのが当然の義務と思います。それ以後船とともに死ななければならぬということは何も命令しておりませんし、規定にもないのであります。もって主観といいますか、そういう精神的の問題だと思います。
  88. 大西正道

    ○大西委員 運輸大臣にお伺いいたしますが、こういうふうな船長の態度に対しまして、運輸大臣はどういうふうな見解をお持ちですか。
  89. 三木武夫

    ○三木国務大臣 非常にむずかしい御質問だと思います。これは結局本人の船長個々の一つの主観、人生観、いろいろの問題にゆだねられる点が多いと思います。あるいはそれを外から見て、情においては、それは責任を全うする意味において運命を船とともにするということは、人間の感情として、そういう行動は肯定もされましょう。しかしあるいは事故の原因を究明するという点から見て、船長が生きておってくれたならば、いろいろの点において将来の事故防止の参考になったという理性の面からの問題もあろうと思いまするので、これは私からこの場合にどうしたことが適当だと申し上げましても、その場における船長個々考え方というものが、やはりその場合の処置を決定するのだと思うのであります。この問題はこうだといってお答えを申し上げるのには、あまりに複雑ないろいろな要素を含んでおると思います。
  90. 大西正道

    ○大西委員 船長個人に対する社会的な批判はどうあろうとこうあろうと、これは運輸大臣がその人の主観にまかせられるべきだということは私もわかりますが、今あなたの答弁にもあったごとく、もし事後処理の見地に立って、今後こういう事件の絶滅をするためにはその沈没の原因について、本人みずから生存しておるなれば、さらによくその原因が明らかになるであろうということは当然のことなんです。もしそうだとすれば、ただ個人の道義的な批判云々の問題で、その人の主観とか、そういうものにまかせる以外に、一つの大きな政治的な立場から——従来私の記憶からいたしますれば、船と運命をともにすることが、むしろ船長としての美談であるかのごとく考えられでおった。この船長の船の沈没に対する態度に対しては、一つこの際検討を加えなければならぬであろうと私は思うのでありまするが、いま一歩突き進んで運輸大臣個人のお考えでけっこうでございます。一つお聞かせを願いたい。もし今のような答弁でおられるならば、私からもう少し質問を申し上げます。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 非常にむずかしいと申したのは、船の沈没の場合にも、船長は常に生き残るべきだという前提に立つ考え方は、一がいにそうも言えない。それはなぜかといえば、やっぱり貴重な人命を預かっているのですから、最後まで船長としての義務がある。その義務を最後まで完全に果した後に、将来においてそういう事故を防止するために、船長の証言というものは重大でございますから、そうした後に生き残ってくれることが、私は日本海難を防止する上においても必要である。しかし初めからどうしても生きてもらわなければならぬという前提に立っては考えられない。完全に自分の職務を果した後において生き残る方が、船長としてはさらに社会的責任を大きく果すゆえんであると私は考えております。
  92. 大西正道

    ○大西委員 あなたの今のお話では、沈没の原因とかその他の使命を果すというような面からは、最善を尽してしかる後に生きておるということも、これはいいことだと言われます。私もそれはその通りだと思いまするが、もう一つ忘れられてならないのは、船長並びにその国鉄の現場の職員の責任は非常に追及されております。しかし船長といえどもこれまた一個の人間であるし、民主主義の原則から申せば、たとい一人の命といえどもみずからこれを救うことができるのに、みずからその生命を断つということについて、これはどうでもよろしいというようなことは私は許されぬと思う。百人であろうが一人であろうが、救える者の命をみずからそこで、今の場合であると船長室に入って船と運命をともにしたということについては、最善を尽すということの評価は後世まちまちでありましょうけれども、やはり今後の一つのあり方としては、こういう古い物を主にして人の命を従にするというような考え方は、この際改めていくということが必要ではなかろうかと思うのですが、どうでございましょうか。
  93. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私はその生命をたっとばなければならぬということについては全く同感でありますが、それは同時に他人の生命も尊重しなければならぬ。船長はやはり他人の生命を多数預かっておるのでありますから、他人の生命を守るために最善を尽す義務を持っておる。その義務を完全に果した後において船長が生き残ってくれる方が、将来のいろいろなためにもよろしい、こういうのであって、ただもちろんその場合には船長というその船を預かっておる、多数の生命を預かっておる責任があるのですから、船長考えるべきものは第一に他人の生命である。その救助に対して万全を尽して後に、今大西委員の御指摘のように自分の生命を尊重して生き残るための努力というものは、それは当然のことだと思います。しかしそれには今申したような一つの義務を果すというその前提があると思います。
  94. 大西正道

    ○大西委員 私はこの紫雲丸のことに限って申すわけではございませんが、船長たる者はこういう危急存亡に対して自分の職務を忘れて、そして働く余地のあるのをあとにして自分の命だけが助かるような、そういう行動をする人は私はないと考えます。ところがこれまでの様子を見ますと、ほとんど船長は船と運命をともにし、しかもそれがうるわしい何か船長の責任を果したかのごとくいわれておる。こういう社会の一つの風潮に対しましては、民主主義下の船長のあり方としては、あなたが言われるように公けの命を預かるという責任はもとより十分果さなければならぬけれども、私はいま一応検討すべき段階じゃないかと考える。そこでこの辺の事情もよく一つ勘案されて、船長並びに乗組員の最後の進退に対しては、運輸大臣としては従来よりも一歩進めたところの見解を表明されるべき時期ではないかと思うのです。これを最後に承わっておきます。
  95. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは今申したように、ただ自分の船長としての義務を果した後において船長が生き残ってくれる方が、今あなたのおっしゃられた生命の尊重という点からいっても、また実際的に事故を防止する上からいっても、その方が好ましいということを私は申しておるわけでございます。そういう見解以上に、今どういうことを御注文になっておるのか知りませんが、私としてはそういうふうな考えを持って国会で申しておるわけです。そういう見解ならば大西委員の御見解と同じでございます。
  96. 大西正道

    ○大西委員 私はもうその問題はそれで終りたいと思いますが、しかし今もあなたの言われたように、もし生き残ってあのときの遭難の事情を克明に後世に明らかにすれば、今後起るであろうところの何百、何千の海難を、未然に防止することができるということも私は考えられると思うのであります。そういうことを考えますと、最善を尽した後に自分の命を生き長らえるということに、もう少し積極的な意味が持たれるべきであろうということを私は考えておるのであります。この点は大臣自身も問題が重大であると言われておりますから、一つよく考えておいていただきたいと思います。  それからもう一つの問題は、簡単にお伺いいたしますが、ああいう災害が起きまして、船員並びに国鉄船舶部門の従業員の資質の向上ということが、非常に重大視されております。私もまことに同感でございます。時あたかも神戸の商船大学に従来併置されておりましたところの海技専門学院が、依然として商船大学の中に併置されるか、あるいは別個に分離するかという問題をめぐりまして、いろいろ論議されておりますが、すでに御承知だろうと思います。他の委員会におきまして非常に論議されて、現地調査もするというようなことも言われておるのでありますが、大臣は、船員の資質向上のためには、今の海承専門学院の性格でありますところのもっぱら技術を向上せしめるという、ああいう一つの修練機関で事足れりと考えられるか。あるいはさらにそういう技術的な修練と同時に、基本的な教養、すなわち商船大学にこれを含めて、そうして基本的な教養を同時に高めるということが、ほんとうに海員の技術を向上せしめると考えられるか。もし後者なれば、この際商船大学の中にこれを併置して、そして一般教養もあわせ課するというような方向に大きく踏み切らなければなりません。今全国的に学校教育法によるところの学校以外に、各省所管におきましては三十に余るところの技術練磨の機関がありますが、これらとの問題が非常に微妙になって参ります。運輸大臣の見解をお聞きしたいと同時に、文部省の大学学術局長にお聞きいたしますが、すでに各省所管のこういう研修機関が大学令によるところの大学に昇格したり、あるいはいろいろ規模が拡充されたりしておりますが、この際海員の資質向上という非常に喫緊のしかも重大な問題を控えて、この海技専門学院が依然としてあそこに併置されていくのがいいか、分離して独立の校舎を持ってやっていくのがいいか、文部委員会における討論の過程等を参照されて、一つこの際御意見をお聞かせ願って、でき得べくんば文部省と運輸省との意見がさらに一致して、これが円満に解決できることを期待しておるのでありますが、運輸大臣の御見解を伺います。
  97. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように海技専門学校と商船大学とは、教育をしておる対象が違っておるわけです。商船大学の方は将来海員になろうという人をやるわけでありまして、海技専門学校の方は現在の船員の再教育というわけで、今御指摘のように専門学校の教育が単に技能ばかりでなしに、いろいろ基本的な問題も教育せよというように、海技専門学院の将来の教育に対して改革を加えていく点はあろうと思います。しかし何分にも現在の船員を再教育するのでありますから、基本的なものを教えよと申しましても、それだから商船大学の中に併置して、商船大学のいろいろな教育方針を専門学院に利用するという見地において、一緒に置く方が便利だということには賛成をいたしかねるのであります。いろいろ対象が違うのでありますから、分離をいたしまして、その分離をした海技専門学院の中で、こういう点は教育の方針を改善しなければならぬという点については、いろいろ御注意を承わって検討を加えていきたい、必ずしも両方一緒の中に置かなければ教育の目的が達せられないというふうには、運輸省としては考えておらないのでございます。
  98. 稲田清助

    ○稲田政府委員 ただいまの御質問の点でありますが、文部省といたしましても運輸省が計画を立てられる場合に御協議を受けたのであります。船員教育審議会の答申のことも承知いたしております。文部省として考えますことは、この大学は創立以来まだ年がたっておりません。形成の中途であります。従いまして従来この両施設が一カ所にあるという前提のもとに計画して参りましたことが、突然分離することによって、大学教育に支障を生じてはならぬと考えたのであります。すなわち分離しました当座において、器具であるとかあるいは定員であるとかあるいは教員住宅であるとか、これをにわかに分離いたしますと大学教育に支障を生ずる。それでこれらについて経過的に適切な措置をとられたいことを運輸省に申し入れましたところ、運輸省としてはそういう点について原則的に了解を与えられましたので、分離という将来の大目的に対して賛成いたしたのであります。現在文部委員会におきましてこの点について別個の御論議、御意見も承わっておるのでありますが、政府として閣議決定の上提出いたしております予算に即応しての運輸省の御計画に対しましては、文部省としても別段の立場をとって反対することはないのであります。御了解をいただきたいと思います。
  99. 大西正道

    ○大西委員 大体文部省と運輸省との見解は一致しておりますから、しごくけっこうであります。しかし文部委員会におけるいろいろの意見にみましても、むげにこれを退けて一つも言うことを聞かぬということでは、私は話が落ちつかぬと思いますが、分離するといたしますればどのような具体的な条件でこれを分離することができるか、これを一つだけ聞いておきたいと思います。
  100. 稲田清助

    ○稲田政府委員 われわれといたしましては技術の人とかあるいはその他の人々、主として教員以外の人、これを両省で協議いたしておりますから、当分の間兼任というか、あるいは両方の仕事をこの人たちにやってもらう。それから共有の道具が相当器具機械——これは将来大学の器具機械が充実いたしますまで、話し合いをして残しておいていただきたい。さらに教員住宅は運輸省所管と文部省所管とあって、入っております人が交錯いたしております。これらについても適切な処置をとっていただきたい、こういう応急処置を運輸省にお願いいたしまして、御協議をいただいておる次第であります。
  101. 大西正道

    ○大西委員 そこで委員長に一つお願いをいたしておきますが、文部委員会において現地調査団を派遣する等の議がきまっておるのでありますが、こういうふうな考え方でありますと、まことにこれは重大問題でありますので委員長はもし皆さんの御意向が一致いたすといたしますれば、一つ文部委員長と話し合いの上で、これに対しての妥当なる結論を出していただきたい、こういうことを私はお願いいたして私の質問を終ります。
  102. 原健三郎

    原委員長 ただいま大西委員の御発言でありましたが、文部委員会連絡いたしてみましたところ、委員会から委員派遣のことを申し出たそうですが、議院運営委員会においてこれが否決されて、派遣は中止になったように目下のところ聞いております。
  103. 小山亮

    小山(亮)委員 ただいま同僚委員から質問がありましたのに関連いたしましてお尋ねしますが、船舶沈没したときに船長はどうして死ぬのだ、死ななくてもいいのだというお話かありましたが、私は商船学校を出まして十六年間海上生活をして参りまして、現に私自身船舶沈没した経験も持っておりますが、法規にきめられております船長の権限というものは、船が沈没いたしましたときに、最後の瞬間まで船に残って乗組員の救助とか、あらゆる手段を尽さなければならぬということになっております。従って運輸大臣が言われましたように、全員が完全に救助されたときは船長は喜んで退船ができます。それも最後の瞬間であります。しかしながら乗客であるとか、乗組員の一人でも救助されないで、どこかにまだひそんでおるというような場合には、船長はこれを捜査しますから、古い話ですが、日露戦争のときに広瀬中佐が杉野兵曹長を探しに行ったという歌が残っておりますが、一人の行方が、一人の行方がわからないので探しに行った広瀬中佐が死んでおります。それとちょうど同じように、船長は最後の瞬間まで残っておる。と同時に、ただ残っているのではない。船内のどこかに一人でもいはしないかというので捜査しなければならない。それがために大体船長は生きてこられない。だれも生きたいのはやまやまだが、あの船橋におって、船が沈沈しますときに——私自身経験がありますが、船が沈没しますときには、船が沈むことによって大きな波が起きて、そうして引き込まれるのです。私自身七回引き込まれた。もし救命胴衣を私が身につけなかったならば、七回巻き込まれたときに生きてこられなかったのです。そういうような経験がございまして、船長は最後の瞬間まで残っていて、その重責を果す以上、生きてこられないのが事実なんです。でありますから、今まで、外国の船でも日本の船でも、船舶が遭難いたしましたときに、乗組員なりあるいは乗客がなくなりましたときには、船長というものはほとんど生きて帰ってくる人はございませんでした。けれども、完全に救助されたときには船長はもちろん生きて帰って参りました。それから船長が死んでしまったならば、衝突した事態の真相がわからないじゃないかと言われますけれども船長の下には、エンジンの方には機関長以下がおり、副船長格である一等運転士、そのほかそれぞれの船員がおりまして、それぞれポジションについていて知っておりますから、それらが生きている限りは、ひとり船長が死んでも、何ゆえにこういうことが起ったか、すぐにわかるのです。ですからその点は決して心配はない。それをことさらに、遭難に当っては船員はなるべく生きなければならぬというようなことを、もし運輸大臣の方で言われるようなことがございましたならば、そうでなくても、今度のこの高松における事件のように船員の精神が弛緩しておりますから、この事件のような事件が幾らでも起るので、私はこの点は反対でありまして、やはり船長がことさらに生きてくるということはあり得ないものと思います。これは私ども運輸大臣と同じような意見を持っております。それからもう一つ、ただいまに関連しまして、商船大学の問題であります。これも文部委員会の方ではどういうような見地から、いろいろのことがきまったか知りません。しかしながら実際において商船大学でわ教っておるところの生徒はまた卵です。生徒です。それから海技専門学院でいろいろ再教育を受けます者は、すでに高等商船学校を出まして、そうして免状を取って、船舶職員としてりっぱに働いている、いわば先輩です。その人がさらにそれ以上の免状を取るために、中間の訓練を受けるのであります。従って教えられる内容は、商船学校の教育とは全然違う。ですから大学の方も、それらの人々が一緒に授業をすることはできない、不可能なんです。どうしても別にしなければならない。それともう一つは、実際上の問題としまして神戸の商船大学は、川崎商船学校が前身ですが、その川崎の商船学校が戦争後廃止になりまして、そうしてそこにできたのが海技専門学校なんです。ところがどういうわけか知りませんが、商船大学が二つ要るというような議論が起りまして、神戸に商船大学というものができましたときに、その土地の人たちの条件としましては、設備その他について二億円の支出をする設備が足りないからなお七千万円の現金を醵出して、その学校の設備を完全にするというような約束がある。それにもかかわらずいまだにその約束は果されておらない。そればかりでなく校舎を引き渡しますときに、神戸の商船大学を海技専門学院に併設しても、授業その他には何ら支障を起さないようにするというはっきりした約束を文部省はしておる。しかるにかかわらず、ひさしを貸しておもやを取られたような格好で、今日になりましたら神戸の商船大学の方が生徒がよけいになってきたので、寄宿舎が狭いから立ちのけというようなことを言われるのです。そうすると一体今の海技専門学院は寄宿舎を追い出されるというようなことで、一体どうしたらいいかというようなことになって、やむにやまれず別に芦屋に舎宅を見つけてそこでやろうとしておるのです。ですから私は何のために一緒にするのか意味がわからないのです。そればかりでなくて、もっと根本の問題は、なぜ日本に商船大学というものが二つなければならないか、商船大学が二つある必要は全然ありません。今山口県、愛媛県、広島県、あるいは三重県、富山県にあります高等商船学校にいる生徒と、清水にありまする商船大学の生徒、この卒業生だけで船員が余って困るのです。失業して困るのです。にもかかわらず、さらにもう一つ大学をどういうわけか作って、そしてこれに対して多額の金をつぎ込もうというのは、私はおかしいと思う。校舎が狭いから二つにしたというならわかる。けれどもそうじゃない。清水の商船大学はもと戦時中に海軍兵学校と同様な授業をしておったところなんです。四千人の生徒があそこで訓練を受け、収容されておったところなんです。ですからあの膨大な校舎、りっぱな設備、それから教員などの住宅やなにかのりっぱなことは驚くべきものなんです。その四千人も収容されたところに、今わずかに五百人の生徒を入れているだけなんです。そして神戸に持っていって、さらに四百二十人ばかりの生徒を入れようというのです。今どこでも校舎がなくて困っておるというようなときに、商船学校だけが、必要でないところの学校を二つどうしても置かなければならぬという理由はない。しかも費用の点からいいますと、清水の商船学校だけで一年に一億二千万円の国費を費しています。さらに神戸の商船大学では八千二、三百万円の費用を必要としている。あれを一つにすれば一つで済むのです。生徒がわずか四百何十人に対して、教授と職員の数が百五十六名もおる。こういうぜいたくなものを何のために作ったか。そしてまた教授が神戸の商船学校から芦屋の海技専門学院に行くまでの間の距離が遠いから困るというのだが、今日本中に新しい大学ができておるが、校舎と校舎との間の距離が遠くて汽車で二時間ぐらい旅行して、ほかの校舎に行くというのはたくさんあります。車で行ったってわずか何分、歩いて行ったところで三十分か四十分で行かれるようなところに、離れていて授業ができないから一緒にしろなどということは、全く私は現在の日本の国情をわきまえざるものだと思う。それから費用がなくてあらゆる設備と費用を節約するときに、商船大学がなぜ二つなければならぬか。こういうことに対して政府当局はなぜ目をおつけにならぬか。なぜ一つにするようなことを断固としておやりにならないか。私はそれを非常に不可解に思いますが、運輸大臣のお考えはいかがでしょうか。
  104. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も運輸省の仕事に追われて専門学校の——小山さんのお話のように個人的な見解としては、大学校が多過ぎると思っておりますが、これは海技に限らず、大学の数がばかに多い。欧州全体よりも日本の大学校の数が多いということは、少し多過ぎるのではないか、やはりそういう点で、商船学校のごときも、小山委員のお話を承わるともっともだと思われる点もございますが、これは何分にも文部省の関係に属することで、運輸大臣として答弁はいかがかと思います。
  105. 小山亮

    小山(亮)委員 これは私は、運輸大臣としては聞き捨てならぬ言葉だと思います。なぜかといいますと、なるほど日本に大学が多いことは——総合大学、短期大学、単科大学合せて四百八十三ございます。これは多過ぎる、だから神戸商船学校をこのままに見のがすということの理由にはなりません。なお一つでも減らした方がいい。それからもう一つは、これは文部大臣の所管であるから、われわれはくちばしが入らぬということは大へんな間違いである。商船大学が二つあるとどういう結果になるか、卒業してきまして学閥の争いがひどいのです。地方の商船学校と東京の商船学校の卒業者が、海上においてどれくらい激しい競争をし、どれくらいトラブルを起したかということは、運輸省の方はみんな知っておりますよ。私どもは、戦後十年、どうにかして両商船学校の卒業者を融和させ、一致させようということに努力して、ようやく今東京の商船学校と地方の商船学校の卒業生が、渾然一体になってすべてのことをやるようになってきたのです。これは実に十年の努力が要ったのです。しかるにまた再び出まして、この二つの商船学校がお互いに学閥で争ったならどうなるか。船内の和平ということが保たれなければ、必ず海難が起るのですよ。それは先般も申しましたように、家庭争議が起きて、さんざん夫婦げんかをしてきた自動車の運転手が事故が多いというのと同じで、一年も二年も海上生活をするところの人間が、はしのあげおろしまで船内で融和が保てないでけんかをしているとしたら、必ず海難がある。これは海上経験を持った人に、どなたにお聞きになってもみなよくわかります。ですからこれは運輸大臣としては重大な関係があるのです。いかにして海難を少くしようかという問題を今日審議しているのじゃないですか。そうしたら一番重大な問題ですよ。現にこの二つの学校が争っていますよ。海上保安庁には神戸の商船大学の卒業生が入って、あそこには東京の商船大学を出る者は一人も入れないように、今がんばっていますよ。けんかしているのですよ。そういう事実がある。だから大臣は、これは文部大臣の管轄だからといって等閑に付してはおられない。むしろ商船学校や、海員の養成機関はおれの方によこせ、文部省では無理だから運輸省によこせというのがほんとうなんですよ。それを今のように、教育の建前上向うに渡しているなら、少くとも船員の教育に対しては重大な、強力な発言をなさるのが当然だ。あなたの注文通りに教育してもらうのが当然なんですよ。それを文部省のことだからおれは知らぬというような、そんなばかなことをやっていたら、何も事件の解決はつかない。将来永久に遭難が起りますよ。これは重大な問題ですから、運輸大臣のはっきりした所信を伺いたい。
  106. 三木武夫

    ○三木国務大臣 文部省の管轄だからわしは関心がないという意味ではないのです。(「国務大臣」と呼ぶ者あり)これは今委員長の御指摘のように、国務大臣としての責任もある。しかし今私はその問題について小山委員が御指摘になって、いろいろお話を承わると、それが全部が全部とは申しませんけれども、非常にごもっともな点も多い。今申したように、学校が二つできたということについては、いろいろな経緯があると思います。一つの方が教育の目的を達するのに便利だという御意見ももっともな御意見ですが、なぜ二つできたかということについてはいろいろの経緯があると思いますし、運輸大臣としても非常にこれは関係の多いことでありますので、よく文部当局の意見も徴して、この問題については検討をしてみたいと思います。しかしすでに二つということになっておれば、いろいろな今までのいきさつもあるでしょうから、これは小山さんの言われるように、一つにすることが適当だと私自身言い切るだけの知識は持っていないのであります。検討をさせていただきたい。一つの検討する課題にいたしましょうということを申し上げておきます。   〔委員長退席、山本(友)委員長代理着席〕
  107. 小山亮

    小山(亮)委員 お答えは十分了承しました。またそういうふうな方向に進まれるという気持もよくわかりましたが、私は冗談でこういうことを言っているのではない。ほんとうに日本の将来を考えるから真剣にまじめに言っている。全部が全部でないが、ごもっともだというような御答弁は、議員が質問するのに対して、運輸大臣はそういう考えでお聞きになっておるのですか。今後も質問する心がまえがありますから、はっきりと答弁して下さい。
  108. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小山委員の御指摘になったことを軽んじて言ったのではない。ただ二つできたことについてはいろいろないきさつがあるのである、一つでやる方が学校を強化する上によいというあなたの論と、二つあってすることが教育の目的を達するのによいという立場もある、そういう立場があればこそ二つ作ったことでありましょうから、一つでやる方が海難を防止したり教育の目的を達するためによいのだという論に対して、そのままその通りだとお答えできないということを言ったのであって、小山委員の御指摘になったことを軽んじて私が申し上げたのではないということを釈明しておきます。
  109. 小山亮

    小山(亮)委員 その話は子供のようになりますから、これでやめます。  次に鉄道関係の方に伺います。船員に対する訓練はどういうふうにしてやっておいでになりますか。指導監督とか、訓練ということについて伺いたい。
  110. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 国鉄船員訓練につきましては、常時は船が常に就航しておりますので、まとめて徹底的な訓練というようなこともなかなかしにくいのでありますが、結局その航海をしている間におきましても、たとえば非常時の訓練とか、防水、火災の訓練とか、その都度規定に基いてやらせております。特に練習船を作ってそこで訓練するというようなことは、従来はいたしておりません。今回は従来の事例にかんがみて、ああいった練習船を設けて訓練することが必要だと思いますので、そういうこともただいまは計画いたしております。従来は特に練習船でやるということはしておりません。それから養成につきましては、青函につきましては函館に、また四国におきましては善通寺に教習所を持っておりまして、そこで普通の船員には講習をしております。なお免許状を持っておる関係の者につきましては、海技専門学院を利用して、そこで講習を受けさせるというようなことをやっております。
  111. 小山亮

    小山(亮)委員 だいぶこまごまと何かおっしゃったが、私はこの問題を実際に調査したのですけれども海難とか火災というような訓練はやっていないのです。またやれないのでしょう。ドックに行く間にやるとかおっしゃるけれども、私は経験を持っているが、今から船をドックにやるというときに、火災の訓練や遭難の訓練をするわけはないですよ。そんな子供だましを言ってもだめです。ここは中学校じゃないのです。私はあなた方の責任を追及しょうとしているのではないのですよ。今後こういう事態が起らないように、だれか、それを訓練したり、監督したり、強く指導したりする人間がいなければいけないから、それを聞いているのです。だからといって、あなた方の責任を追及するとか、どうしろ、こうしろというようなことは、私がやることではない。運輸大臣がやることなんで、私はあなた方に対してどうこう言うのではない。今後そういう事態が起きないようにするためには、そういう機関がなければならないと思うからそれを聞いている。だれか積極的に一線に立って、船員に対して一々、このやり方ではいけない、あのやり方ではいけないということを、指導監督をしたり、救命浮袋ボート漕練というようなことも絶えず——絶えずといったところでしょっちゅうやるのではなくて、船は休むときもあるのですから、そのときにやらせるとかなんとかいうことがなければならぬのです。そういうことを今までしたことがないということは、非常に不幸なことなんです。それを私は伺っでおるのです。あなたのような養成するとかなんとか言われるが、鉄道が養成しなくても、全国に海員養成所があるのですから、そこで養成された船員がりっぱに役を勤めますから、ことさらに鉄道が今から練習船なんかを作ったり何かしてやる必要はないと私は思います。その心がまえで、絶えずそういうことをやらせるように指導していけばやるのですから、私はそれを伺っておるのです。いつ何時にはどういうことをしなければなならぬというのではなくて、いつでも、こういうときにはこうするのだということを教えていく、指導していく立場にある人が、鉄道には欠けているのではないか、それを伺うのです。
  112. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 ただいまのお話の通り、特にそういう訓練について積極的に指導するという組織なり役割というものを持ってやることは必要だと思います。特に訓練ためのそういう態勢というものは、今までのところできておりません。先ほど申し上げましたように、船長に、そういうことを適当なときに船員にやらせるように指導しているのでございます。また、そういう場合や、あるいは回航の途中に、今のボート訓練その他をやったというような報告も来ておりますので申し上げたのでございます。しかしただいまのお話のように、そういう責任者といいますか、訓練係といいますか、そういうものを置いて、徹底的にやるようにすることは必要であると考えますので、先ほど申し上げましたような訓練船の問題と同時に、機構の面におきましてもそういう組織を作りまして、訓練にさらに徹底を期したい、かように考えます。
  113. 小山亮

    小山(亮)委員 いろいろ弁解めいたことを言われますが、それならば、どうして洞爺丸のああいう事件が起ってから後に訓練をなさらないのですか、また指導をなさらないのですか。弁解する時期じゃないと私は思う。事件が起ったのですから、問題は善後処置をどうすればいいかということです。ですから、もしも鉄道が今までこうしていたというならば、それよりもっと強力な手を洞爺丸事件からすぐやらなければならぬのだが、洞爺丸事件から、ことさらにどういうことをなさったのですか、それを伺いたい。
  114. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 洞爺丸事件の以後に特にやりましたもので、訓練とか、そういうような関係におきましては——あのときの問題といたしましては、非常の警戒態勢というものが非常にまずいという点が特に考えられる。それからああいう大きな災害が予想されるときに、救難態勢というものが不十分である。こういう二つの点が特にあの事件について教えられた点でございます。従いまして救難並びに警戒態勢について、平生からいろいろな設備その他の点検なり、あるいは警戒態勢にすぐにみながつけるような船内警戒態勢、それから陸上におきましては、ああいう暴風のときには非番の者も動員して出勤して、いろいろな対策について準備をするという問題、それから事故が起った場合の各方面との連絡なり救急なり、そういう場合の手配、そういうことについて詳細な規定を設けたり、あるいはそれについての準備を十分にするというようなことを指令いたしまして、貨客に手配してやっておるのでございます。
  115. 小山亮

    小山(亮)委員 青函の貨車輸送船の補強整備をおやりになりましたか。あの洞爺丸事件の後に、貨車輸送船の改修工事をおやりになりましたか。
  116. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 貨車輸送船につきましては、補修の点でいろいろ不十分の点もなきにしもあらずでございますので、極力客船に補修を励行するようにいたしております。なお補強と申しまするか、客船の実際の状況がどうであったかということにつきまして、実際に船体の一部を取りまして、テスト・ケースを引いていくという方法をやっております。
  117. 小山亮

    小山(亮)委員 今の青函の貨車輸送船は全部規格船ですか。規格にちゃんと合う船ですか。
  118. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 現在の船は、一応検査を受けて合格している船でございます。
  119. 小山亮

    小山(亮)委員 洞爺丸が港外に出て沈没しましたが、そのときに港内におりまして、桟橋に繋留していた青函丸がありますね。それが出ていって沈没しておりますが、あれはどういう理由で沈没したか、お調べでしたか。
  120. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 小山先生のお話しになっております船は、日高丸のことではないかと思うのでございますが、これは現在海難審判所でお取調べを受けておるわけでございます。なお相当に船の中に、船のいわゆる後部車両甲板以下に浸水をしたという事実は、船員の供述その他でわかっております。
  121. 小山亮

    小山(亮)委員 洞爺丸が函館の港内において繋留しておりましたが、あの珍しい台風に遭遇して、函館の港内が装備が不十分ですから、岸壁が不十分ですから、港の中で自分の船の安全を保てない。一体港というものは、危険なときに安全地帯として逃げ込むところなるにもかかわらず、北海道の港というものは、みな中におったら危ないですから、やむを得ず外に出て、広いところにかかるのであります。ところがそのときに、中に入っておった貨車輸送船がありますね。それは桟橋に九本の綱を取ってつないでおった。太いワイヤー・ローブ九本です。それが一しけ来ましたら、八本切れてしまって一本だけ残った。その一本が危ないので、とうとうそれを自分から切断して、港の中へいかりを入れて、そこでエンジンをかけて安全を保とうとしたけれども、しけが強くてどうしても中では安全が保てそうもなくて、危ない。さらにしけていかりが切れると、すぐ岸壁へぶつかって海岸へのし上りますから、やむを得ず外へ出た。外へ出て、大きな波を食って、船体が三つに折れて沈没しているのです。それでこれを調べてみると、これは戦時中であるか、戦後作ったのか知りませんけれども、みんな造船基準の規格に合っていない。まことに粗製濫造の船なんです。戦漂船のようなものです。それで沈んでいるのです。そうしますと、その一点から見ますと、鉄道の貨車航送船にはほかにもそういう船があるのじゃないか。あるとすればそれに対して補強工作をやるなり、すぐに新しいものを作るということかできなければ、何らかの補強工作をやって、そうして万一に備えるだけの手当をとらなければならないと私は思う。事件が起ったということはやむを得ざることであっても、その後のあなた方の処置いかんということが、私はあなた方の責任を問われる大きな問題になるのじゃないかと思うのです。そこでこの点を伺うのです。何かあなた方がそれから後の手当に対してやらないのか。やらなければならぬ。やらないで今日までおって、また高松であの事件が起って、まことに申しわけない、申しわけないと言っておるのでは、ほんとうに申しわけないのだか、申しわけなくないのか、さっぱりわかりはしない。申しわけないというなら、申しわけないだけのことをやっておいでになるならいいのだが、洞爺丸事件があった、まだそのままで何もせずに、ただ審判がきまらない——さっき審判がきまるまでに一年かかるというが、一年間何もしない、いずれ審判官が言ってくるだろうということで、処置をとらないでおったらたいへんなことなんですが、それを伺いたいのです。
  122. 篠田寅太郎

    ○篠田説明員 ローブが切れてなかった船は石狩丸で、港内にアンカーを入れまして、幸いアンカーでとまりまして大丈夫だったのです。割れた船は十一青函丸という船でございます。これは港内にアンカーを入れてエンジンをかけておったのでございますが、風が非常に強くなりまして、また貨物船の停泊しているものが相当走錨をしましてあばれ出しましたものですから、とれてしまったのではないでしょうか。そこでさっきの十一青函は錨地におることができなかったので、出ていったわけであります。あの船は実に複雑な割れ方をいたしました。これは私たちといたしましても非常に問題点があると思います。これは海難審判の方の解決を待つまでもなく、運輸省の方の安全部会でもこの問題の研究に着手しております。なお私の方に設計委員会というのがございまして、それで今ようやく船体を港内に引きずり込みましたので、その切断部を一応とりまして、どういう張力になっておって、たとえば切り口の関係などを専門家に見ていただきまして、どういうことによってこういうことが起ったかということを至急突ききわめていただいて、それに対する善後措置を至急とりたいと実は考えておるわけであります。  なおそれに並行いたしまして、とりあえず戦争の末期に作りました船について、船体の主要部門をとって、一応試験片をとりまして試験をしておりますが、まだそうひどいというものが出ておらない状態でございます。なお今後研究してみなければならぬと思っております。  それから戦時中の船についての補強工作の問題でございますが、これは私たちといたしましても、戦時中にある程度手を抜いたと申すような点もありますものですから、戦後からそれを在来船のように復旧すべく、非常に努力をしておるのでございます。六、七、八という船はこれは二重底でございませんために、二重底を作っておったのでございます。それから十一を二重底に工事をいたしたのでございますが、ああいう事故が起りましたものですから、あと二重底のないのに実は石狩と十二青函というものがございまして、順を追うてやるという方針を立てておったのでございますか、今回の事故によりまして、なおさらにほかの問題があるのじゃないかという問題を技術的に早く検討、結論を出しまして、修理の補強の対策を立てていきたいと思っております。
  123. 小山亮

    小山(亮)委員 船舶局長に伺いたいのですが、運輸省あたりで船を作りますときに、その設計なんかに対しては協議をすることはないのですか。
  124. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 協議をすることはございません。ここにそういう構造規程なり、設備規程がございますので、その規程によって検査をするだけです。ただ鉄道の方ではそれについていろいろ委員会や何か設けまして、その委員会にわれわれの一部が参加する場合があります。そういうところで大体きめられております。
  125. 小山亮

    小山(亮)委員 洞爺丸事件にしましても、今度の紫雲丸事件にしましても、船の構造の問題が非常に重要問題になってくるのです。洞爺丸にしましても、乾舷があまりになさすぎたというようなことが重大問題になってきておりますし、それから紫雲丸の問題になりますと、スタビリテイの問題が非常に大きな問題になってくるのです。その点について私はやっぱり船舶局としても、そういうことに対しての検査だけはするが、注意をおやりになるということはないのですか。その点を伺いたい。
  126. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 検査をすると同時に、いろいろな欠陥があれば注意もいたします。それから今お話の洞爺丸の乾舷が少いとか、あるいは紫雲丸についていろいろ工事上の欠陥があるというお話でございますが、これらの船はいずれもあそこに就航するのにさらに一段と上の規格に作った船ですから、別段そういう規程上あるいは規格上欠陥があるとは思っておりませんが、ただああいう突発的な事故——今度の紫雲丸の場合に、衝突したときに非常に早く沈んだということで、洞爺丸以降いろいろ委員会で検討しておりますが、さらに一段上の規格のものにする。たとえば青函連絡については、今三級船ですが、二級船にする。そこで満載吃水線の指定をするとか、あるいは新しく区画満載吃水線規程を適用する等の方法を講じることによって、さらにより一層安全なものにしたいと考えております。おそらく今後の船についても、技術的あるいは構造上もしも改善する余地があるとすれば、さらにそういうような手をとられるほかに方法はないと考えております。
  127. 小山亮

    小山(亮)委員 規格であるとか規程であるとかということをおっしゃいますが、さっきも救命具の規程というふうなことを強く鉄道当局が言われた。時代が変っていますから、規程とか規格とかというものは再検討する余地があるのではないでしょうか。なお今までの規格でやったところが沈没したから、もう一段上の規格にしてみたらそれがまた沈んだから、もう一段上の規格にしたというような、そんなだらしない規格や規程なんかは再検討して、もっと実情に即したしっかりした規格なり規程なりを置く必要があるのではないですか。また救命具の規程なんかいつできたのか知りませんが、乗客の三分の一しか置かなくてもよいというようなことであればそれは大ごとで、船なんかへ乗る人はありませんよ。私はその点もう一度甘利君から伺いたい。
  128. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 規格については国際的に条約がきめられて、その条約に適合するように各国がそれに応じていろいろの規格をきめているのですから、この規格が一般によいとか悪いとかというようなことは一がいに言えないと思いますが、ただ今おっしゃった救命設備、それらについても同様に国際条約からきめられたものがあるのですが、今度の惨事にかんがみまして、たとえば救命設備等についても宇高連絡船などにおいては、ボートだとかそういうものは置かずに、救命いかだあるいは救命胴衣だとか、そういうものをもっとふやすとか、いろいろなことは考えられると思います。従ってそういう規程類もいろいろな事故にかんがみて、逐次改正はしておるのです。現在行われておるそういう国際条約も、タイタニック遭難以後みな考えたものでありますが、大きな損害があるといろいろとそういうものが検討を加えられるわけですが、われわれも今度の事故に対しまして、特に救命設備等につきましては最も現状に適したようなものにしたい、こういうふうに考えております。
  129. 小山亮

    小山(亮)委員 船舶課長に伺いたいのですが、鉄道はどうしても貨車と乗客とを同じ船へ乗せなければいけないのですか。あれは貨車の航送の場合と乗客というのを別にしては非常に能率に関係しますか。その点伺いたい。
  130. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 結局輸送の都合といいますか、輸送からいいますれば、客車のところに貨車を入れるということにした方が非常に便利なわけでございます。ただ客だけにしまして貨車をしないと、あれだけの大型の船にしないとそれだけ回数を増さなければならないという格好になりますので、港の桟橋の関係等から考えましても、結局ああいうふうに両方を一緒にやった方が非常に都合がいいわけでございます。それから手荷物、小荷物車といったものをすぐに客車に通してやるというような便利からいいましても、その点は非常に便利なのでありまして、ああいう制度を置くに当りましても、いろいろ研究の結果、船の安全度があればいいじゃないかということでそういう制度にしたのでありまして、事故が起りましてから、その問題が今でもいろいろ議論されておるのでございますが、安全であるということになれば、やはりああいうようなやり方が輸送の面からは非常に好都合である、分けるということになると、輸送の設備や輸送の能力からいって、非常な困難が起るのではないかと考えております。
  131. 小山亮

    小山(亮)委員 新しい船をお作りになるのには、やはりああいうような船をお作りになるおつもりですか。貨車と客を分けてやらないでは、あれ以上に復元力を強めることはできないでしょう。紫雲丸のようなのは、やはり貨車を輸送するのと人間を輸送するのと別にしなければ無理じゃないでしょうか。
  132. 唐沢勲

    ○唐沢説明員 そういう点につきまして、運輸省の安全委員会の方でいろいろ取り上げて研究していただいております。またそれを受けまして、私どもの方の設計委員会でそれに基いた設計をするということにいたしておりますが、今のところまだ客貨分離をした方がいいとか、分離しなければならないとかいう結論は出ておりません。その結論に従ってやろうと思っております。ただいまのところ今度貨物船だけを大急ぎで作らなければならないので、この二隻だけにつきましては運輸省の方の意見が出まして、従来も安全性を持たしたものにいたしまして、二はいの貨車航送船だけはやりましたが、これにつきましても例のうしろの方のとびらでございますが、その問題についてはまだはっきりした結論は出ておりませんが、私どもとしましては、ともかくそういう委員会方針に従ってやるということにしております。
  133. 小山亮

    小山(亮)委員 もう一点内航船のことについて、調整部長の御管轄だと思いますからお伺いしたいと思いますが、従来運輸省の方針というのは、外航船とかいうことには非常に力を入れておいでになりますけれども、近海輸送の船に対しては保護といいますか、あなた方のいろいろな後援というものが非常に薄いのです。同じような事業に従事しておって、近海を輸送しておるところの船舶の所有者というものは、非常に苦しい状態に追い込まれておることは私が説明するまでもないと思います。  第一にどの点で一番苦しんでおるかというと、船体の改造費なんです。大型船の船体の改造費というのは、開発銀行の低利資金を借りられて改造ができますけれども、近海航路の船は、改造資金というものが、外貨を獲得する船でないというような理由をつけられて、建造資金は一般市中銀行から借りますから、金利がうんと違う。そうでなくても近海の海上輸送というものは非常に不況なんです。外国の航路の船と比べて非常に苦しい。しかも船腹が小さいですから、費用ばかりかかってもうけが薄い。そのもうけが薄いのに、なお大きな船体の改造資金というものを、一割以上の高い金利で払わされたのでは、立つ瀬がない。それがためにたとえば戦争後初めてできましたF型の船というものは、あれは政府の方でこういう船を作れ、それで作ったときに油だきの船、オイル・バーナーにしないで、石炭をたく船にしろということを強く要求した。それだから、みな船主が石炭をたくような船に作っていた。ところがその後油の状態がよくなったらば、今度はまた油をたくように改造しろとまた強く要求される。やむを得ず今度は油をたくように改造した。それでもいけないので、今度は船体の構造を広げていろいろ改造したのですが、それに要した巨額の金がやはり高い金利でおおいかぶさっておりますから、につちもさっちもいかない状態である。これは申さば政府方針で、政府の指示でそういうものを作って、政府の指示でまた改造したのですから、これはどうしても運輸省の方でめんどうを見てやって、開銀の方に話をつけて、そうして何とか長期の低金利に借りかえてやるくらいの親切があっていいと思う。建造資金というものは、大型船のときには、計画造船で運輸省で非常に骨を折って借りてやるけれども、小さな船はみな自己資金で作って、しかも改造費まで自分で出すということではあまりにかわいそうなんですが、この点に対して当局では何か考えておいでになるだろうと思うが、御所見があったら伺いたい。また具体的な案がありましたら伺いたい。
  134. 朝田静夫

    ○朝田説明員 ただいまのお説のような事態でありますので、われわれといたしましても、内航を中心といたします近海船の船腹の拡充について、せっかく今検討をいたしておるのであります。またその船腹拡充の問題と別に、現在の内航の船質改善というような問題につきましても、石炭の合理化のような線で行くべきかどうかというような問題につきましても、業界ともただいま寄り合って話し合って検討中なのでございます。ただいまのお話のような金利の問題でありますけれども、この問題につきましては、他産業との関係もありますし、開銀の資金繰りの問題もありますので、折衝いたしておりますけれども、実現が早急に困難でありますので、全体といたしましては、内航の対策を根本的に立てまして、それに対する一つの具体措置として固定資産税の問題、あるいは金利の問題等を一緒に解決をいたしたい、こう考えております。
  135. 小山亮

    小山(亮)委員 今のあなたのお話だと、一体いつごろそうなるかわからないことになりますが、これは運輸省の方から開銀の方に話をしていくときに、何か向うにげたを預けられておるのじゃないですか。たとえば遠洋の船で外貨を獲得するという立場に立っておる船だから、そういう船ならば貸してやるということで、あなた方の方はげたを預けられておるのじゃないでしょうか。私はそう思う。そうするとF型の船でも、現在は南洋にも行っておりますし、アリューシャンにも行っておりますから、やはり外貨を獲得する役に立っておるのですから、近海といいますけれども、近海の船と遠海の船との区別もよくわからないような開銀は、あなた方の説明が唯一のたよりなんですから、開銀では近海と遠海とはどんなことをするかわからない。近海の船が遠洋に出るのだから、そういうのはそういうなりに説明をして、前にはどういうことをおっしゃったかわからぬけれども、新しい事態として新しい説明をして、そうして何とかそういう政府方針によって船の改造をやって、しかも同じ船主であって、大きいか小さいかだけで、片方は長期の低利資金を借りてやる、片方は短期の高利でにっちもさっちもいかないというようなことでは、あまり片手落ちだと思うのですが、融通性をつけて何とか話し合いをつける方法はないでしょうか。これは事務折衝でいけなければ、政治折衝を大臣からしてもらうより仕方がないのですが、この点について何か方法をお考えになっておりますれば、承わっておきたいと思います。
  136. 朝田静夫

    ○朝田説明員 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、開銀ともしばしば交渉をいたしておるのでありますけれども、現段階におきましては非常に困難であります。この点につきまして、なお政治的な解決がはかられる必要もあると思いますので、問題を至急上の方に上げたいと思っております。ただし開銀の金利の引き下げにつきましては、開銀みずからが決定することでございますので、政府当局から何分を何分に引き下げる、こういうことは直ちに御答弁できないとは思いますけれども、問題の性質上、内航問題の早期解決のために政治的な折衝を必要とするようにも思いますので、この点は一つ大臣によく御相談を申し上げて、事務的にも両方並行してやりたい、こう考えております。
  137. 小山亮

    小山(亮)委員 今私が申し上げたことは全部御信用になっていいことなんです。ですから事務当局がああいうことを言っておられますから、よく事務当局の意見をお聞きになりまして、できるだけ早く善処してやっていただきたい。これはもう日本の近海にあります小さな船の会社は、ほんとうに経営が困難で、どうしていいか方法がつかない。今大型船の不定期船はやや調子がよくなってきましたけれども、近海はいつまでたってもよくならないのです。そうでなくても運賃が上らないのに、鉄道の方の百万トンくらいの石炭の買付をするのに、マーケットを破って非常にたたきつけて安く買い上げるために、ほかの運賃がそれで押えられて上らないのです。これは鉄道当局は長距離の逓減法で貨車輸送をやって損して、そうして運賃を押えて損して、まだ石炭の運賃まで安くたたきつけて業者を困らしているというようなことを、今平気でやっておるのですけれども、長距離運送の逓減法をやめてもとに戻せば、そろばんがちゃんと出てくるのであります。それをそのまま押えておいて、船の方が高ければ貨車で輸送するぞといっておどかしては値段を押えているのですが、そういうばかな、弱い者いじめのようなことをやらないで、運賃を当りまえのところに直してくれば、近海の人たちも救われるのです。運賃がわずか一割上がれば浮き上るのです。それをいろいろに操作されておりますが、そういうかわいそうな状態にあります日本全体の小型の船を持っておる船主に対して大臣は、大型の船主も小型の船主も同じくあなたの管轄下にあるところの船なんですから、それに対しては両方ともそろばんが合って——私はもうけろというのじゃない。曲りなりにも食っていける程度にはめんどうを見てやっていただきたいと思うが、これに対しての大臣のお考えを伺いたいのです。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今調整部長からも政治的な折衝をする段階に来ておるということでございますから、私も微力でございますが、そういう近海の海運界の企業の安定のために最善を尽す覚悟でございます。
  139. 關谷勝利

    ○關谷委員 私は簡単に御質問申し上げたいと思います。前に私は大臣に対して、内航船に対しての対策といいますか、プリントを差し上げて、これはよく読んでおいてその対策を考えてほしい、こういうふうにお願いをしておったのでありますが、あれに対してどういうふうな措置をとっていただいたか、ちょっと承わっておきたいと思います。
  140. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今申したように、いろいろ政府全体の税あるいは金利の問題にも関係するわけでございますので、ただいまのところは事務折衝の段階であるが、時期として政治折衝を必要とする時期に参っておるわけでございますので、そういう点については今後政府部内において解決をいたしたい、こう考えております。
  141. 關谷勝利

    ○關谷委員 この内航船といいますか、近海航路の船につきましては、小山委員は自身がやっておられることであるというので、ほかの問題と比較して気がねしたのか、鋭さがないようでありますが固定資産税においては三倍まで払っておる、金利は市中が一割一分で開銀がほかより高い一割、こういうことでありますし、ことに内航船を安い金利のしかも税金の安い外航船が侵しているのが実情であります。いろいろ積荷の関係で内航を侵しているのであります。また近海航路の方は外貨の獲得をやっておらないといいますが、先ほども小山委員が言っておりましたように、南方にも出ておりますし、アリューシャンにも出ておる。外貨の獲得を同じようにやっておりながら、これが差別待遇を受けて非常に困っておる。すでに九社が倒産いたしておることは大臣も御承知であろうと思いますが、このままほうっておけば全部倒産する、こういうことであります。肩がわり等をいたしましても、損保あたりをのけますと、わずか一億程度のものの肩がわりで済むわけでありますから、開銀の金利も引き下げをいたしましょうし、市中金利のものもわずか一億くらいで対策ができて助かるのであります。それでみんながよくやっていけるということになりますので、この点は強力に進めてもらいたい。そうしていずれ私たちまたその経過等をその都度お尋ねいたしたいと思いますので、こういうふうにやった、そしてここまで話が来ているというふうなことを、適時経過の御報告を願いたいと思います。強力にやっていただきたい、こう希望をいたしまして質問を終ります。
  142. 山本友一

    ○山本(友)委員長代理 本日はこれをもって散会いたします。    午後五時散会