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1955-05-17 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十七日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 今松 治郎君 理事 臼井 莊一君    理事 山本 友一君 理事 青野 武一君    理事 中居英太郎君       岡崎 英城君    加藤常太郎君       濱野 清吾君    眞鍋 儀十君       越智  茂君    徳安 實藏君       畠山 鶴吉君    井岡 大治君       栗原 俊夫君    下平 正一君       正木  清君    山口丈太郎君       池田 禎治君    竹谷源太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         日本国有鉄道参         事         (運転局保安課         長)      山本  優君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 五月十七日  委員吉田賢一君及び越智茂君辞任につき、その  補欠として大西正道君及び伊藤郷一君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十六日  船舶積量測度法の一部を改正する法律案内閣  提出第四三号)(予)  海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出  第四九号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  紫雲丸沈没事件に関する件  東海道線原東田子浦間列車脱線事故に関する  件     —————————————
  2. 原健三郎

    原委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  紫雲丸衝突沈没事件について調査を進めます。最初に昨日に引き続き、派遣委員より報告を聴取いたします。加藤常太郎君。
  3. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 われわれ四名の調査団報告は、とりあえず昨日中間報告いたしましたが、本日はお手元に資料もとりそろえまして、正式に御報告いたしたいと思います。  まず御説明をいたす前に、お手元に配ってあります図面を先にごらん願うと、あとのパンフレットの説明がよくわかると思います。この図面の図解の説明をいたしますが、これは衝突現場付近宇野高松間の航路の略図並び衝突当時のコースを想定いたしまして、ここに書いたのであります。調査団の方から運輸省の方へこういう図面を引いてくれというのでお願いいたしまして、ここに新しく引いたのでありますが、そのうちで上り便という白くずっと引いてありますラインがあります。点線になっておりますのは下り便であります。これは昨年宇高航路に従事しております船長たちが寄りまして、こういうコースを制定したらどうかというような申し合せをいたしたのでありますが、その申し合せ通り今回も航海しておれば、事故発生しなかったのであります。その申し合せ自体そのものにもはっきりとそれが確定しておらなかった関係上、時によっては申し合せコース以外の航路をとることもあったのであります。それは潮流とかいろいろな関係で変ったコースをとったのでありますが、それが今回の衝突一大原因になっている点もあるのであります。その次にコース点線の横に赤い線がありますが、これが第三宇高丸衝突いたします前の六時三十七、八分から衝突の五十六分までのコースであります。その赤線の横に白い線がありますが、これは百二十度にとった、百四十度にとったというほんとうのコースでありますけれども、潮流関係上多少流されまして、実際の推定が赤線であります。コースとすれば白いラインでありますが、潮流関係で流れたのが赤線であります。下に黄色い線がありますが、これは紫雲丸のったコースであります。そうして中間にちょうど船のような格好で沈没現場を示してありますが、これが衝突現場であります。その横にところどころ四十分とか、五十六分とか、六時五十一分とかいう時間を書いてありますが、この時間と今度御説明いたします。冊子の御説明とを照合してもらえばよくわかると思います。図面について御質問がありましたら、御返事いたしたいと思いますが、この点おわかりになったでしょうか。  その次に、小さい図面がありますが、これを一つごらん願います。これは紫雲丸の見取図でありますが、側面図俯瞰図であります。そこに、上の船体をそのまま出しているところに赤線がありますが、これが衝突個所であります。大体深さは一番上の幅の広いところで一メートル、下の方は三十三センチか一尺程度、こういうようなことで、この紫雲丸右舷に第三宇高丸が食い込んだ。この赤線衝突個所であります。それからその下の方はずっと甲板の層になっておりますが、参考になりますのは下から三番目の貨車を積んであるところであります。ここが特に参考になると思いますから御参考に申し上げたのでありますが、この小さい方の図面でわからない方があったらどうぞ。——わかりましたか。(「了解」と呼ぶ者あり)おわかりになったと思います。  ついては紫雲丸沈没事件に関する衆議院調査団報告書、これを一つごらんを願いたいと思います。これにつきましてとりあえず私から一応朗読いたしまして、誤字もありますし、またきのう急いでこしらえたものでありますから、前後している点もありますし、また難解の点もありますので、あとで御質問をいただけば御返答いたしたいと思います。昨日越智君から四ページまでは正式に御報告がありましたから、四ページまでは略したいと思います。五ページから朗読並びに説御明を申し上げたいと思います。  まず当日の紫雲丸及び第三宇高丸運航状態両船衝突に至るまでの経過概要について御説明申し上げます。紫雲丸乗組員及び第三宇高丸乗組員陳述によれば、紫雲丸は五月十一日午前六時四十分第八便として乗客約九百四十八名、貨車十五両等を搭載し、定時高松鉄道桟橋を離岸し、宇野に向け航行を開始いたしました。出航当時の気象状況天候霧雨視界四百五十ないし五百メートル、無風、潮流はほぼ転流時でありました。六時四十三分港口を通過後、レーダーを発動、機関を解除、六時四十四分羅針路を北西とし、航行中、急に濃霧となり、視界七十メートルないし百メートルとなり、霧中信号を聞き、六時五十四分ごろ両舷機関停止取りかじ一ぱい命令がなされ左回頭中、右舷船首より約六十度ないし七十度、距離百メートル付近に第三宇高丸らしき船影を認めたので、直ちに面かじ一ぱい命令がなされたが効なく、六時五十六分ごろ第三宇高丸船首本船右舷機関室付近に激突したのであります。紫雲丸は直ちに緊急信号を吹鳴、全員に救命胴衣着装及び退船、あわせて第三宇高丸への移乗手配をし、救命艇及び救命浮器降下作業中、急激に左舷に横転し、沈没したのでありますが、衝突から沈没までにはわずか数分の時間を経過したにすぎなかったのであります。沈没位置女木島三角点(二百十七メートルの山頂)より二百四十五度、距離一・三海里の地点であります。  次に第三宇高丸は、同じく五月十一日午前六時十分第百五十三便として貨車十八両を搭載し、定時宇野鉄道桟橋を出発し、高松に向け航行中、六時二十分ごろ宇野桟橋より濃霧注意報を受信したが、いまだ霧はなく、視界は良好であったので航海を続け、六時三十五分オゾノ瀬右灯浮標左舷約百メートルに航過後、視界が約六百メートルになったので、レーダーを発動し、百二十度に変針して、六時四十分ごろ西行する汽船を避航するため、百三十度に変針したのであります。そのころから濃霧となったので、本船霧中信号を励行しながら、かつ船首に見張員配置し、厳重な見張りのもとに続航し、六時五十分ごろ他船、すなわち紫雲丸レーダーによりほぼ船首に認めたので、約一分間その方位を監視したが、方向が変らないので、直ちに百四十度に変針して相手船、すなわち紫雲丸の動静に注意していたところ、左へ方位が変り、他船、すなわち紫雲丸霧中信号左舷に聞えたので、安全に変り行くものと思っていたところ、六時五十五分ごろ突然左舷船首に他船、すなわち紫雲丸船影を認めたので、機関用意を令し、該船は本船進路を横切るよう急激に接近してきたので、六時五十六分取りかじ一ぱいを令したが、その効なく本船船首紫雲丸右舷機関室付近に約七十度の角度で衝突し、本船船首紫雲丸に食い込み、相当の損害を与えたのであります。本船紫雲丸沈没を防ぐため、そのままの状態を続け、紫雲丸乗客を極力移乗させるとともに、救命艇降下を命じ船内救命具を投下し、救助に全力を尽したのでありますが、ちょうど七時ごろ紫雲丸左舷に傾斜し、ついに横転沈没したので、漂流している遭難者を極力救命艇により救助し、本船に収容するとともに、その間陸上に救助手配連絡し、七時三十分ごろ鉄栄丸高松海上保安部所属艇その他の応援を得てさらに救助に努めた後、本船は十一時五十分抜錨し、十二時二十六分高松鉄道桟橋に急行着岸したのでありまして、以上が当日紫雲丸及び第三宇高丸運航状態両船衝突に至るまでの経過であります。  次に右の陳述等に基いて、本件に関する調査団の所見を申し述べてみたいと存じます。すなわち本件沈没原因の主なるものとしては、 一、霧中航行における警戒が不十分である。   当日は気象台より視界四十メートル以下の濃霧注意報が出ていたにかかわらず、船員霧中航行に入る前に警戒態勢に入る手配を講じた形跡がない。 二、両船とも霧中航法上に注意が不十分で、かつ航法上の過誤があった。霧中航行にあっては昭和二十八年八月一日法律第百五十一号海上衝突予防法第十六条によって、船の速度を落すとか、機関運転を停止するとかの措置を講ずべきであるにかかわらず、両船とも全速航行していたのである。 三、濃霧中のレーダー使用霧中航法との関連を十分に理解することなく、両船とも転針を行なったことが最大の原因と認められる。  次に紫雲丸沈没原因については、責任者一部死亡のため、詳細は海難審判を待たなければ判明しないのでありますが、本航路宇野高松間海上十八キロ、航行約一時間程度平水航路であり、平常の場合は平易の航路と見られるが、船舶の輻湊、潮流激甚等に基く航行上の困難は想定せらるるにかかわらず、これに対する万全の対策の欠如によることが認められるのであります。従って、本件発生原因についてはいろいろな事柄、すなわち航行船舶の行き違い方法上り便下り便航路設定方法旅客船貨物船の優先取扱い方、鉄道ダイヤとの接続の取扱い方などを初め、非常時に対する平素訓練、ないしは船体構造の再検討並び国鉄部内における船舶運航管理組織等について検討を要する点が関連して参ると思うのでありますが、直接の原因としては、本調査団が三十数人にわたる参考人について調査した結果並び四国鉄道管理局見解等を総合いたしまして、紫雲丸、第三宇高丸ともそれぞれ濃霧中における航行につき警戒体制が十分でなく、かつこれがための両船の行き違いに際して航法を誤まったこと並び非常事態に対する訓練が徹底していなかったためか、衝突の危機に瀕してから衝突に至るまでの間の処置、衝突時における船員配置、その緊急作業等について完璧とはいい得なかったと存ずるのであります。  すなわち紫雲丸二等運転士立岩正義(二十九才)は『衝突数分前同船右方霧笛を二回ないし三回聞いた』と述べ、また紫雲丸は『女木島手前霧笛を吹鳴した』と述べているに対し、第三宇高丸船長三宅実(三十七才)は紫雲丸霧笛を『確実に本船左方に聞いた』と主張し、それぞれ判断が異なるほかに、両船とも衝突直前まで過大の速力を保持していたることを認めらるるのみならず、第三宇高丸三宅船長は『本船左方紫雲丸が見えたとたん、同船は大きな円を描き航跡を残しつつ本船進路を横切りつつあったので、本船取りかじ一ぱいを令したが間に合わず、紫雲丸右舷機関室付近衝突してしまった』と述べたのであります。  両船ともレーダーを発動しておったことは、紫雲丸二等運転士鈴木秀夫(二十九才)第三宇高丸三宅船長及び同二等運転士杉崎敏(二十九才)の陳述にもある通り明らかでありまして、第三宇高丸三宅船長は『六字五十一分まで映像を見ていたが、紫雲丸既定進路航行していたごとくであり、進路を変える様子はなかった』と述べておりますが、一方紫雲丸の方は三等運転士鈴木秀夫は『中村船長だけが終始レーダーを見ていて、二等運転士右方から霧笛が聞えますねと言ったら、船長レーダーを見ながら「ああそうだ、そうだ」と答え、次いで取りかじを命じた』云々と述べております。すなわち双方ともレーデーを監視しつつ進行していたと推定されるのでありますが、レーダーを発動監視しつつ航行したならば、何ゆえに衝突したのであるかまことに不可解でありますが、レーダーも近距離、例えば百メートルくらいになると相手船を正確に判定することは困難のごとくでありますので、正確な断定はむずかしいのでありますが、レーダーの監視を断続したかあるいは霧笛による相手船位置判断に重きを置き過ぎ、しかも減速措置をとらなかったため、濃霧の中から突然相手船の姿を発見したときは意外の地点におり急遽避けようとして避け損じたのではあるまいかと推定する次第であります。  すなわち濃霧中における航行について、平素あまりになれ過ぎている航路であるため、警戒態制が十分でなく、特に濃霧船首及び船尾へ当然見張りを立たすべきでありますが、その命令を下したという確認がないのであります、かつ危険を感ずるに至るまで減速措置をとっていないのであります。また両船とも霧中航行の場合は権利義務船の適用なしといえども、レーダーにより少くとも二海里以上の距離において正常の航路をとるべきにかかわらず、何らその跡も認められません。次に非常事態に対し平素いかなる訓練を行い、船員がどの程度慣熟していたかについて種々質問を行なったのでありますが、明快な回答を得られなかったのでありまして、通常の訓練程度のごとくでありました。そのためか衝突の際ブザーを鳴らすとか、救命胴衣着装とか、救命艇救命用具投下等、一通りのことは行い得たごとくでありますが、特に統一した指揮のもとに整然たる配置により完璧な応急措置に出たとは言い得ないのでありまして、遭難乗客は一様にこの事実を認めております。  ただ第三宇高丸の方は、船首紫雲丸に突き込み、乗り移れる状態にあったので、この状態の保続を決意して乗客移乗を極力助けたことが、犠牲者を幾分でも少くすることに役立ったようであります。  以上をもって紫雲丸沈没事件経過概要とその直接の原因に関する調査の結果を御説明申し上げたのであります。  本事件発生にかんがみ、今後この種事故絶滅をはからなければなりませんが、そのためには以下述ぶる対策の実施が必要と思うのであります。  ここでちょっと御説明いたしたいのは、ここで対策となっておるから、項を改めましてずっと列挙いたしたような原稿であったのでありますが、昨晩タイプの方が間違いまして列挙しなかったのであります。もう一枚行っております小さな紙が列挙になっておるのでありますが、これはもうタイプの打ち変えができなかったので、こっちに調査団報告書中における対策一覧表と書いてありますものを参考にごらん願いたいと思います。  まず第一は、本航路における航行船舶行き違い方法についてであります。「行き合い船の航法等」の原則については、海上衝突予防法第十八条の定むるところでありまして、「二隻の動力船真向かい又はほとんど真向かいに行き合う場合であって衝突のおそれがあるときは、各船舶は、互に他の船舶左舷側を通過することができるように、それぞれ針路を右に転じなければならない」云々とあり、また横切り船の航法としては同法第十九条をもって「二隻の動力船が、互に進路を横切る場合であって、衝突のおそれがあるときは、他の船舶右舷側に見る船舶は、他の船舶進路を避けなければならない」と規定し、いわゆる権利船義務船を定めておるのでありますが、本航路は各ダイヤごとは必ず真向いに行き合う場合があり、平素いかなる航行をしていたかというと、原則的には「行き合い船の航法」によっているが、風向き、潮流状況によっては、変則的に左側運航により行き違いをなすことは必ずしもまれでないことは、第三宇高丸三宅船長も述べておるところであります。また霧中航行の場合には権利船義務船関係はなくなると思いますが、他の方法、たとえば速力を落すとか、機関を停止するとかの措置を講ずべきであり、これらの点については航法原則を励行せしめる必要があると思うのであります。  第二、上り便下り便の行き違い個所は現在二百メートル以上の間隔を置くよう定めてあるが、これもまた航行当時の事情により必ずしも守られていないような陳述がありました。しかしながら過去数回に及ぶ衝突接触事故経験にかんがみ定めたものである以上、これを励行せしむべきは当然であり、さらにこの間隔を拡大せしめ、中ノ瀬、高松港口間浮標等により画然と分離させる必要があります。  第三、旅客船貨物船との取扱い方は、現在おおむね同様にしてあるごとくでありますが、万一の場合を考えるときは、やはり行き違いの場合その他についても旅客船をべて優先せしむるよう定めて、人命の損傷を絶対に避けるようダイヤを変更すべきものと考えるのであります。  第四、鉄道連絡船鉄道との連絡に大きな使命がありますので、できるだけ航行時間も短縮するとともに、列車との接続間合いに大きな待ち時間を置かないよう、接遇上の強い要求を受けやすく、ややもすると船舶安全航行の点における安全度と申しますか、ゆとりを犠牲にさせられる傾向がありますので、この面における運航ダイヤ根本的改正を行うべきであります。  第五、非常時に対する平素訓練の必要については今さらここに申し上げることもないと存じますが、本航路のような平水航路で、かつ短区間の場合においては、ややもすれば忘れ去られがちになる傾向があるのではないかと存じます。ことに非常事態発生の際、乗船ダイヤによって船内休養中の乗組員に対する配置運用等を一層明確にしておく必要があるのではないかと存ぜられます。  第六、船体構造の再検討については、まことに根本的な大きな問題があるのであります。すなわち国鉄接遇輸送の完遂の面から申しますと、現在の構造は歓迎せらるべきものと存じますが、他面非常事態における船舶安全度を高める上から申しますと、現在の構造、特に客、貨車積み込み構造はいわゆるトップヘビーでありまして、船舶覆没の主原因たること、洞爺丸事件についてもしばしば論議されたところであり、本事件についても同様に悲惨な教訓となっておるのであります。  第七、いわゆる貨車甲板内部もつぶさに監査いたしましたが、非常時においては、この内部からは専門家である船舶職員すら外部に脱出することは不可能に近く、紫雲丸操舵手石井武義君(二十八才)の悶死の状況を見てもよくわかる通りであるとの話も聞いたのでありまして、もし旅客乗車中の客車がかかる場合に遭遇いたしましたとすると、脱出はほとんど不可能に近く、まことに悲惨なことと相なるは明らかであります。これらの点について直ちに適切な方策をとるとともに、早急に船体構造について再検討を加うべきものと信ずるのであります。特に客車航送はこれを停止すべきであります。  第八、国鉄部内における船舶運航管理組織についてでありますが、連絡船運航の指令、監督の実務に当る機構も比較的小さく、かつ船長経験を有する有力な実務者もきわめて少いので、勢い船長判断にまかせざるを得ぬこととなっており、船長に対しあるいは指示を与え、あるいは船長相談相手となるような人の配置なく、またこれらの人々が喜んで就職するごとき待遇、地位もないことが、特に民間商船会社海務部に比して欠点と考えられるのでありまして、この際この点に関する思い切った改革を必要と考えるのであります。  なお、紫雲丸沈没に関する救難救護措置応急輸送対策等につきましては、四国鉄道管理局を中心とし、関係機関の十分な協力によっておおむね遺憾なく進められたようでありました。不幸犠牲となられた人々やその遺家族に対するとりあえずの弔慰方法も、大体において問題はないようでありまして、特に遺霊に対する態度、敬弔方法は、高松宇野付近はもちろん全国鉄機関一般及び職員について十分その誠意を認めることができたのであります。また現地関係機関は、海上保安庁、自衛隊、地方庁を初め警察、公共団体等真に一体となって、この沈没事件救難救護善後措置を講じつつあって、大いにその成果も上っているように認められたのであります。  なおこの際特に申し上げておきたいことは、救命衣救命具等備付場所、その数量、ことに救命衣等非常時における取りはずし方法等については、根本的に考え直す必要があると認めたのであります。  次に本調査団現地にあって調査に従事している間に、本事件関係船舶職員刑事事件容疑者として逮捕されたことを耳にいたしたのでありますが、海難特殊性にかんがみ、海難審判庁側検察庁側の両者は常に密接に連絡し、十分協議の上、事に当り海難審判調査、審議に支障を来たさざるよう、一そうの考慮を払う必要があると認めるのであります。  最後に、昭和二十九年九月二十六日台風十五号による洞爺丸沈没事件に引き続き、今回再び紫雲丸衝突沈没事件を惹起したことは、政府及び日本国有鉄道としてまことにその責任は重大と存ずるのでありまして、特に今回の事件日本国有鉄道のみの責任事故と推定されるのであります。政府及び日本国有鉄道は今後この種事故絶滅をはかるために、次の事項につきすみやかに適切な措置をとる必要があると認める次第であります。 一、日本国有鉄道における連絡船運航の現在の体制並び運航管理機構改革及び運航業務根本的刷新をはかり、運航安全性を絶対に確保すること。 二、本事件の処理は海難審判庁の結審を待つまでもなく、すみやかに責任の所在を明確にすること。 三、沈没原因にかんがみ、この際特に上下を通じ、広く綱紀の粛正、志気の高揚をはかり、特に船員特殊使命にかんがみ、海員精神の涵養をはかること。四、日本国有鉄道連絡船構造につき、客貨の分離、トップヘビー改善等根本的検討を加え、運航安全性を絶対に確保すること。 五、右のほか特に宇高航路については上り便下り便航行路につき再検討を加え、新航路の制定をはかり、運航ダイヤ根本的改正を実施し、もって航行の安全を確保するのか、高松港入出港の際の混雑を改良すること。 六、本州と四国とを結ぶ最短距離安全性を考え、すみやかに海底隧道の実現につき、特段措置を講ずること。 七、遭難者に対する弔慰方法については、今回の事故の性質にかんがみ、特段措置を講ずること。  なお、詳細につきましては御質問の際お答えいたしたいと思います。調査団報告を終ります。
  4. 原健三郎

    原委員長 次いで三木運輸大臣より説明を求めます。三木運輸大臣
  5. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま運輸委員会の詳細な御報告がございましたので、いろいろ重複する点もあろうかと存じますが、私は五月十三日の夜東京を出発して、十四月神戸港より海上保安庁巡視船あわじにて高松に向い、午後二時半遭難現場に到着して弔意を表しました。次いで高松に上陸、四国鉄道管理局において事故原因、遺体引き揚げ作業を初めとする各般の措置などについて、関係出先機関より事情を聴取しました後、遺体安置所四国鉄道病院に入院中の負傷者遺家族学校関係者などの高松市内宿舎等をそれぞれ弔問、または見舞を行いまして、夕刻には紫雲丸遭難者救援対策連合協議会代表者とも会見をして、帰って参りました。運輸委員の方々が現地におもむかれましたときと、多少状態が変化をしておる点もございますので、その後の事後処置について御報告申し上げたいと思います。  遺体の引き揚げにつきましては、潜水夫七組、文鎮こぎ十二隻等で全力を上げております。船内はすでに数回にわたって捜査をいたしており、今後船内から遺体を発見するのはなかなか発見し得ないのではないかとも申しております。しかし船内の捜査を続行するように、なお今後も漁船などによって捜査を継続するように指示を与えて参りました。十六日の午前八時現在では、学童のみ十名の行方不明者がございました。なお十六日午前八時現在の全体の状況は、死亡百五十八名、生存七百七十五名、行方不明十名、合計九百四十三名となっております。すでに遭難いたしましてから日時もたっておりますので、大体この数字は正確に近いのではないかと香川県の警察部等においても申しておりました。負傷者につきましては、負傷者五十二名が御承知のように四国鉄道病院に加療したのでございますが、私が参りました十四日午後四時現在には、二十六名を残して退院をいたしました。二十六名中特に重い症状の方は一名でございましたが、病院長は生命は取りとめ得るという話でございます。なお入院後死亡した者は一人もございません。なお一たん帰郷後大阪鉄道病院に入院した軽症の方が一名ございます。今後も希望によりましては、居住地の病院に入ることも手配をしてございます。なお生存者ですでに帰郷された方々には、健康診断を居住地の鉄道病院において御希望によってする指示も与えて参りました。遺族の方々につきましては、まだ不明の学童、入院中の負傷者遺家族、学校その他の関係者が高松に滞在中でありますので、これらの方々を中心として、紫雲丸遭難者援護対策連合協議会なるものが設けられておりまして、その代表者の方々から次のごとき要望がございました。  一、紫雲丸遭難事件国鉄側の全面的責任であることを確認できるか。二、遺体引き揚げ作業は今後も継続実施し、一定時期に作業打ち切りなどの処置をとることがあり得るや。三、弔慰すなわち慰謝料の問題については、最高の礼をもって処置する意思ありや。四、従来の例による慰謝料については、年令、収入、生計等による等差を付していたが、人命尊重の意味を考慮する考えがあるか。五、遺家族関係者の来高につき人員の制限などの処置をとる考えがあるか。六、生存者の被害補償並びに健康保持等につき万全の処置を講ずる用意がありや。  私より、できるだけの処置をとりたいということを、この六つの項目についてそれぞれ私としての考え方を申し述べて参りまして、遺家族の方々も了とせられました。また関係機関連絡につきましては、県、市、検察庁、警察、海上保安庁、その他政府出先機関、あるいは公共団体等国鉄に対する協力ないし相互間の連絡協調については、まず遺憾なく行われている模様でございます。また客貨輸送につきましては、旅客輸送は、十一日は関西汽船まいこ丸、十二日は同じく関西汽船のひかり丸をチャーターいたしまして、輸送力の欠陥を補いましたが、十二日広島三菱造船所入渠中の鷲羽丸を緊急回航し、十三日以降は眉山丸、鷲羽丸両船にて所定通り輸送を行なっております。また貨物の輸送につきましては、十一日は四国発本土行貨物の受託発送の停止を行い、十二日より十四日まで四割減、十五日より十九日まで二割減でございましたが、二十日より所定計画ダイヤとなる見込みでございます。  なお事故原因については、今運輸委員調査団の御報告にもございましたが、事故原因については現地出張前に考えておったことと特段に違ったものではございませんが、神戸地方海難審判理事並び高松地方検察庁に対し、できるだけすみやかに調査をされるよう要請をいたしました。理事所と検察庁はそれぞれの立場より調査されるわけでありますが、両者緊密な連絡がとられておりました。なお十三日に紫雲丸の二等運転士、第三宇高丸の一等運転士船長並びに二等運転士の三名が逮捕されましたが、これは海難審判理事所の調査には支障を与えないような措置が講ぜられることになっております。事故原因の詳細は今後の調査に待たねばなりませんが、とにかく両船のスピードが高かったということが、大きな事故の要素であることを強く感じました。  今後事故の防止につきましては、これは早急に改善をしなければならぬ、今後いろいろ対策を立てなければならぬという調査団の御報告とほとんど同様なことを私も強く感じて参りました。運輸省の中に連絡船改善対策委員会を設けて、いろいろ恒久的な対策検討いたしますと同時に、至急に改善のできる点は現地でも指示を与えましたが、今後国鉄当局に対して指示を与えまして、すみやかに改善をはかっていきたい、こう考えておるのでございます。御報告申し上げます。
  6. 原健三郎

    原委員長 ただいまの運輸大臣並び派遣委員に対する質問があれば、これを許します。
  7. 山本友一

    山本(友)委員 調査団報告は各派遣委員から詳細に承わったわけでありますが、なおその調査団報告以外に二、三要約いたしまして加藤委員にお尋ね申し上げたいと思います。すなわち紫雲丸と第三宇高丸のいずれに落度があったとお考えになるかということを要点的に承わりたい。御報告は詳細でちょっと把握しにくいように思いますので、これが概念を承わりたいと思います。それから第二に海上衝突予防法の罰則というものは、どの程度のものかということを承わりたい。第三に宇高航路連絡船及び貨車運航船の運航回数並びに交差の回数はどういうような度数になっておるか。この三点を御迷惑ですが重ねてお願いいたします。
  8. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 沈没原因といいますか、それは紫雲丸と第三宇高丸のどちらに非があるかというお伺いかと思うのですが、昨日も中居委員から中間報告で御説明申し上げましたが、これはここで特に釈明いたしておかなければならぬのは、われわれ調査団といたしましては、ほんとうはその海難原因を追及するというのは調査の趣旨でなかったのであります。しかしやはり原因も多少追究しなければ、今後の対策並びに運輸当局並び国鉄に対する要望の事項も出てきませんので、この調査団報告書の中に衝突状況を相当詳しく専門的に述べたのは、多少行き過ぎた感もあるのでありますが、これは何といっても海難審判所の結審に待つよりほかその結論はないわけです。ただわれわれがしろうとなりに現地においていろいろな各方面の事情調査いたしましたところでは、現地における国鉄四国管理局並び関係者の言を聞きますと、大体紫雲丸に非があるというようないろいろな報道なりいろいろの話でありますが、われわれ調査団調査してみましたところでは、必ずしも紫雲丸宇高丸のどちらに非があるということは認められないと思います。ただ第三宇高丸船長三宅君の話では、衝突個所に至りますまでのところでは、減速をしたとか、船をストップしたというような形跡は本人もないということを認めておりまして、ただ機関をスタンバイした、この程度であります。ところが紫雲丸の方は、この報告書には書いてありませんが、二分前に機関を停止した。そうして多少速度を減じたということを、生き残り船員のボースンなり三等運転士も、これは確かにあったということを陳述いたしておりまするので、こういう点から見ますると、コースの取り方、その他においては、私は両方に錯誤があったと思う。これは同様だと思いますが、結局そういう減速の点からいくと、宇高丸に非があるような感じがするし、またレーダーその他の監視の方法についても、船長が殉職いたしておりますので、判然とはいたしませんので、これはわれわれしろうとから見ましても、どちらが悪いかということは判定がしにくいと思います。この程度であります。  それから次の海上衝突予防法の罰則の点であります。これは、海上衝突予防法には罰則はありません。ただ海上衝突予防法の順守義務に、特に本法は罰則は設けられていないが、民法、刑法、船舶衝突の条約上の責任を生じ、また海難審判所審判法に基く行政処分を受けることになっておりますので、海上衝突予防法には罰則はありません。結局行政処分でございます。  それから宇野高松航路運航回数でありますが、これは私が御説明するよりは、国鉄の方から御説明するのが当然と思いますけれども、私が調べたところでは、全部ダイヤ通りに行きますと、客車が上り十回下り十回、それから貨車航送が上り十九回、下り十九回、こういうようになっておりまして、交差するのは、ダイヤ通りに行きますと、大体危険な交差地点が——宇野に近寄った場合にはコース違いますから危険ではありませんが、高松寄りに交差するときには危険な交差があるのであります。それが十六回でありますが、普通十二、三回、それから客船の方も十回となっておりますけれども、ドック入りとかいろいろな関係があって、大体十回か八回くらい、それから貨車航送の方も十九回となっておりますが、十五、六回この程度であります。以上の通りであります。
  9. 山本友一

    山本(友)委員 私もたまたま自由党から今の慰問を中心とした調査を命ぜられまして、現場に行ったのでありますが、報告書にもあり、今もお伺いした通り、この事故そのものはこの両船の技術上の衝突原因をわれわれしろうとがここで議論いたしましても、定義づいたものは出ないと思います。これは無理だと考えておりまするが、ただお亙い常識の交流上、どういう状態であったかということだけは一通り調べて参ったわけであります。ことに私自身といたしましても海運業をやっておりますので、同様な事件で百六十人の人を殺したことがあります。そういうことでございまするので、まことに身につまされた思いがいたしまして、実に私はこの場合経営者、いわゆる国鉄の立場、局長の立場が、たまたま私の過去味わいました百六十人の先ほどの悩みを繰り返しておられる姿をまざまざと見て参りました。その方面から私は非常に関心を深く善後の処置を見守って参りましたわけであります。経験のうちからも聞いて参りますものもございましたわけですが、前段申しますように衝突原因等はいずれ海難審判所できめなくては、これは政治に関係する人がかれこれ申しましたって、かえって中途半端でうそなことなのです。そこで私が申しますのは、このとった処置が、社会が肯定するような処置がとられておるか。また今後これらの事件を防止するにはいかようにしたらよろしいのかというような点を私は自分の体験から、また洞爺丸事件等を見ましても、鉄道連絡船がああいうようにもろくいくのは、一体どういう点かという点を勘案してみましたわけですが、御報告にも私の常識とほとんどひとしいことが書いてございます。今さら申し上げるまでもないのでございまするが、ただ私は通念的にこの場合の処置といたしまして、いわゆる海難が起りました場合の処置、人命救助に対しまする海員の動作が、私どもには少々納得しがたいようなうらみを持っておるのであります。海員というものはああいうようなことになりますると、不文律のうちに海員魂というものがございまして、人命の救助には何をおいても献身的にやるものなのです。またやらなくてはならないのでございます。ことにこれらのことについてずっと勘案してみますると、前段も申し上げまするようなことが、高松等の巷間伝えるところでもあまり芳ばしくない情報を聞く。また一方当局の方から申しますれば、ああいう千人近くの人が、とっさの場合に、ああいう事故が起りましても大部分の人が助かったことは、私は非常に仕合せだと思っております。これは本来ならば、五分間や三分間ではおそらくもう半分以上が大ていいっておるはずであります。それが第三宇高丸がうまく接触しておりましたのが一つの天佑でありました。従いましてこういうものが非常に救助率がよかったということは、客観的に喜ばしいことでございまするが、お客さんの中に子供がたくさんいる。ことに引率者の学校の先生方は、いろいろ思想問題も世間にとやかくいう事態もございますがああいうような事件になって一たん自分が助かって安全なところにおり、その子供が危険なところを見て、それをまた救助に行ってともに帰らざる結果になった先生方が、二人もあるというような美談が残っております。ところでこの船側の方には、まことにそういうような善行美談を口にする人がない。むしろ私はありのままのことを申し上げまするとはばかりまするが、国鉄船員魂を持った船員がおるのかというようなところが、私は非常に恨めしいと思います。また今後の処置におきましても、私は広く罹災者並びに国民の中にも、この問題だけは私は割り切れない何ものかの心持が残っておるのではないかということがうかがわれるわけでありまするが、とにかくこういうような原因は、天災ということは避けられないことでございますけれども、何と申しましても海上のお互いの乗組員の気持というものが前提にならねば、こういう海難事故というものは未然に防止することはできないので、これが弛緩しておるのではないかということが、私どの体験の上から出て参りまする一つの感覚でございます。これは今総裁もおやめになったと承わっておりまするが、総裁や大臣がおやめになりましたところで、この問題は解決がつく問題ではない。これは型の上でそういうような責任態度を明らかにされることは、一面からいえばけっこうなことかもしれませんが、こういう型では解決つかない。今後の処置につきましては、総裁並びに運輸大臣等が責任が持てる体制下において、これら従業員の方々の精神的なあり方を根本的に、再教育というとおこがましゅうございますが、さような考え方に立っていただかなくてはならぬのではないか。普通の工場労働者のような考え方ではいかぬ。大切な生命を預かっておる交通機関なのでありますから、これに特殊な責任感を持ってもらうような再教育をする、これがまず基盤にならねばならぬということを痛切に感じましたのは事実であります。どういう総裁がなるか知りませんが、このことだけはぜひやってもらわなくてはならぬのではないかということを、私はむしろここで運輸大臣にお願いを申し上げるつもりでございます。  なお、国鉄の船が今申しますように、こういうような災害に非常にもろいということは一体何か。加藤さんの報告書にも出ておりますが、私ども当然これは何ものか改善しなくてはならないと思います。まずあの船の災害の原因は何かというと、御案内の通りあの船は仮分数でございます。それで貨車を積むために水平線のサイドがちょっとしかない。千五百トンもの船が三分や五分で沈没するはずがないのに、なぜそうなるかと申しますと、横転でございますから時間も何も要らない。本来は衝突したところから浸水して沈むのが原則であるが、国鉄の船は反対側に横になってひっくり返った、これでは時間も何も要らないわけです。それはなぜかといえば、船の水平線が全部仮分数になっていて、貨車があるため水平から上に重心がある。だから激突でもあると列車が横転いたしますから、重心がくねってしまって、一ぺんにいくという危険を蔵している。これは構造上の欠陥で、普通の千五百トンぐらいの商船でございましたら、サイドが高うございますから、横転しても抵抗力というか、復元力があろうかと思います。洞爺丸事件のときにも、私どもはその点でそういうことを想像しておりましたが、今度の事件で私はしみじみとそう思いました。でありますから、トンネルでも抜いていただける時代でもくれば別でありますが、ここ当分は何といっても船でなければならない。それにはどうしても私は貨客の分離、お客を第一主義として安全な船でやる、そして荷物を分離する、こういう輸送体系を立ててもらいたい、当面の問題としてはこれが喫緊事ではないかと考えます。船舶構造改革等についてはそれぞれの専門家がございますが、私ども常識的に考えて、とにかくあの船はあまりにも華美過ぎて、今言ったような脆弱性を伴っておる、これは忘れてはならぬ一つの要素ではあるまいかと、今日しみじみと感じたわけでございます。従って、運輸省なり国鉄なりが、今まで船員の方々に対しどういうような訓練海員精神を涵養されておるか、それから船舶の改善改革について何か御意図があれば承わりたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように今まで国鉄船員に対しては、下級船員あるいは高級船員等に分けて、学校などに入れて訓練をやっておったわけですが、こういう事件が起っていろいろ感じますことは、私も山本さんと同じ考えで、やはり訓練というものはもう少し強化しなければならぬ。ことに交通事業に関係する君たちは、身命に最も直接に関係する業務でありますので、そういう意味からいって、他の業務に携わる者よりも一そうそういう訓練というものの必要を感じます。それには精神的な面において海員魂と申しますか、そういう精神的な訓練も必要でございましょうし、また技能的な訓練も必要でありましょう。従って今後海員の訓練を強化していかなければならぬ。私は、これは運輸大臣として運営の権限があるわけではございませんが、今後国鉄側にもこういう点で検討をしてもらいたいと思っておる点は、訓練などは海上保安庁に委託して訓練したらどうかと思っております。海上保安庁はああいう特殊な用務を帯びておりますから、精神的な面における訓練というものに対しては相当効果が上るのではないか、あるいは技能の点においてもそういう面があります。今後御指摘の通り海員の訓練に対しては強化していきたい。  それから船の構造については、船が衝突事故の場合に非常にもろいというのは、やはり御指摘の通りだと私も思う。非常に頭でっかちになっておる。しかしこの連絡船の構造ということについては、いろいろ専門家検討しなければならぬ。そういう点で船舶の造船技術審議会に船舶安全部会というのがあって、洞爺丸のときにそういうものができて結論が出ておるわけですが、今度の紫雲丸のああいう沈没事件ともにらみ合せまして、そういう点で連絡船の構造にも今後改善を加えていく必要があるのではないか。すでに今二隻建造しておるのは、安全部会の結論に従って設計の変更を行なったようであります。そういうふうに今後もこういう事件が頻発しましたので、さらに検討を加える必要がある。必要ならば古い連絡船に対してもやはりできる限りの改善を加える必要がある。また私自身は専門家でありませんが、客船に貨車を積むのはよしたらどうかと思っております。向うへ着いたら貨車を用意しておけばいいわけです。専門家はどういう必要があるのか知らぬが、私個人はそういう感じを持っており、今御指摘のような点は私も今後改善をしなければならぬと痛感しておりますので、今後そういう線に従って検討を加えて参りたいと考えております。
  11. 原健三郎

    原委員長 質問者がたくさんおりますから、質問も答弁も簡単明瞭に願います。池田禎治君。
  12. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私は運輸当局に対する質問等は本調査団の結論を待ち、本委員会の決定を見た上でいたしたいと思っておりますので、本日は調査団報告に基く二、三の質問にとどめたいと思っておるのであります。委員長でも調査団のどなたでもけっこうですが、私のお尋ねしたいことは、第一点は、第三宇高丸及び紫雲丸乗組員陳述に相違がなかったかどうか、食い違いはなかったかどうか。第二には、新航路を制定すると言っておるが、その幅はどの程度のものを適当とするか、あるいはそういうものについてのお考え方はどうでございましょうか。  第三に、聞くところによりますれば、海難審判所は調査団に対し必ずしも協力的でなかったということであるが、そういう事実があったかどうか、あったとすればどういうわけでそういうことであったかとお考えになるか、この三点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  13. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 第三宇高丸並び紫雲丸乗組員陳述に食い違いがあったかどうかということですが、その点は第三宇高丸並び紫雲丸船員の約七名から聴取いたしましたが、三宅船長並びに二等運転士などはぴったりと合っております。ところが操舵手が合わない、並び紫雲丸船員は各自が合わない、また相手方の第三宇高丸紫雲丸陳述は全然合わない、こういうような点は食い違いが相当ありました。しかし私たちはその食い違いを追求するのが目的でありませんので、そのまま聴取いたしまして、判断をいたしました点もあるのでありますが、これは審判所の審議にまかすべきもので、その食い違いに対しては判断をいたしておりません。ただ総合いたしまして、かような食い違いとか、かような点から見て、大体両船とも霧中航行措置をとっておらなかったというような点の結論だけを申し上げたのでありまして、食い違いは大いにあったと思いますし、また今の御質問だけでなく、生存乗客の方と船員との食い違い、こういう点もありました。これは海難等におきましては、乗客の方でも、事によったら専門家の方でも、あまりにも驚いたためにいろいろ見方が違う場合がありますが、かような食い違いは相当ありました。  第二点の新航路の制定の問題でありますが、先ほど配付いたしました図面で、昨年の二月中ころ船長が寄りまして上りと下り便との航路を申し合せて、なるべくかような衝突を予防したいというような趣旨で航路を制定したのでありますが、これは狭い場所におきますと、二百メートルくらいな間隔になっておりますが、瀬の関係とか、いろいろな関係がありますが、大体われわれしろうとの考えでは五百メートルくらいまではこれを拡大して、潮流関係とかまたは風波の関係というような点もありますが、もう少しダイヤを改正すれば、この新航路の制定通り大体いけると思います。これは必ずしも第三者の私たちが言うのでなくて、それに従事しておる船長もやれるだろうと言っており、多少ダイヤの制定に対して無理はあるが、これは陸上のダイヤを少々改正してもらわなければならぬという点はあるだろうと思いますが、かような五百メートルの幅を置いたこの新航路を申し合せによってきめた場合には、かような障害はないと思います。この二百メートルの幅においても、この航路通り原則を励行しておればかような衝突はなかったのでありますが、やはり私が先ほど調査報告にも申し上げた通り、出帆いたしましたら、あとは各自船長判断で船は航行するのでありまして、潮流やいろいろな関係上、時によってはこの申し合せ以外のコースを、船長は個人の単独の見解でいろいろ変える場合があるのでありまして、これが今回の衝突事件の大なる原因になっておるのでありまして、幅五百メートルは私はとり得ると思います。  次に、海難審判所の問題であります。これは私たち調査団が行なったとき、海難審判所長は木村という人であったと思いますが、その人にいろいろ事情を聴取したのでありますが、所長の立場としては、審判の公平とかいろいろな点を期するためには、あまり部外に発表することは、洞爺丸の事件を考えてみましても、なかなかいろいろな問題が起りますので、そういう点から本省の方から何か審判のことについては、決して口外するなというような口どめでもあったものと思います。われわれは何もさようなことは聞きたくないので、われわれの調査に対していろいろ便宜をはかってもらいたかったのです。あくる日紫雲丸と同じダイヤを実施して検事の調査がありました。その際われわれも同船したのですが、われわれの調査に対しましては何ら便宜を与えず、説明もしてくれず、ただ検事の方の調査に対して便宜をはかった。そういうようなことがありましたので、多少調査団といたしましては不満な点があったのですが、これについては多分われわれ議員団にしゃべるとうるさいから、よけたのではないかという推測であります。この点は審判所の責任のある方にお聞きする以外にないと思います。三点に対する答弁は、以上の通りでありす。
  14. 原健三郎

    原委員長 次に徳安實藏君。
  15. 徳安實藏

    徳安委員 きわめて簡単にお伺いいたしますが、調査団の方の御調査は非常に至れり尽せりで感謝いたします。また同時に運輸省あるいは国鉄事件発生後にとられた適切な措置も、この報告によって明瞭でありますから、この点についても感謝いたします。まず航法についてでありますが、新聞によりますと紫雲丸の方も、第三字高丸の方も航法には誤りはなかったという主張を、書面によって四国海運局の船員労働基準課をおとずれて報告しておるということです。先ほどの御報告によりますと、私どもが想像しておるように航法に多少の遺憾な点があったのではないか、誤りがあったのではないかと考えられるのですが、その点について運輸大臣はどうお考えになりますか、お聞きいたします。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 私は最終の決定は海難審判所がすべきものだと思いますが、私が現地で受けた点は、一つはやはりスピードの問題であります。ああいう濃霧警戒警報が出ておるときに、第三宇高丸が十二ノット、紫雲丸が十・八ノットの速度を出していたということは、やはり問題があるのではないか。それからもう一つ紫雲丸が左にかじをとったという点であります。一体なぜ左にかじをとったのか。残っておる船員は、とにかく船長がそういう措置をとったと言っておる。その船長はなくなっておりますから、何のために左にかじをとったのか、現地ではその原因は解明できませんでした。これは私自身が考えても、なぜそういう場合に左にかじをとったのであろうか、いまだに不思議に思っている点でございまして、スピードの点、そういう点から考えて、これは単にしろうとの勘だけでこういう問題は論断すべきものではないとは思いますか、利自身のしろうとの感じでは、航行上においても非常にいろいろな点で、どうもこれは正しかったとは言い得ない感じを受けて帰って参りました。
  17. 徳安實藏

    徳安委員 次に山本委員からもちょっとお話がございましたが、新聞によりましても、救助に際しまして学校の先生が助かっているものを、子供から先生助けてと言われて、おりていって殉職したというようなこともあり、あるいは年取った方が小船を操りながら五十人も学童を救ったということが、新聞に大きく出ております。ところが最近私どもが聞きますと、船員の方々が六十名乗っておって、そして船長責任を感じての完全な自殺だというように聞いておりますし、もう一人は船の一番底に休んでおって、とうとう出られなかったのだというように聞いておりますが、あとの五十八名の方は全部助かっている。もちろん全部助かることはけっこうなことでありますし、決してそういう人々が遭難されることを望むのではありませんが、どの新聞を見ましても船員の方々が船員魂と申しますか、その責任を感じて非常によくやって救助されたという美談めいたことが、一つも新聞に出ておらないのですが、この点につきましては向うに行かれまして、運輸大臣が何かお聞きになったことがありますれば、御発表くだされば世間の誤解を解くこともできるだろうと思いますが、この点いかがだったでしょうか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 船員犠牲者が少かったわけですが、これは非難すべきものではないと思います。問題はそういう場合に適切な処置がとれたかどうかという点で、これはいろいろ注意も与えたという話も聞きました。しかしどうも何の指示もしなかったという不平も聞きまして、全般として現地で受けた感じは、そういう場合に乗組員全体に対して万遺憾なかったとは言い得ない印象を受けて帰ってきた。そこで私は今後こういう点についても至急に実施をしたいと思っているのですが、ああいう瀬戸内海のような、天候の変化でもなければ至って静かな航海を毎日々々同じようにしているということになれば、非常に精神的にも弛緩し得るような条件も持っている。そういう点で今後の船員のああいう連絡船などに対する服務規程と申しますか、服務状態というものを、天候の悪化に従って変えたらいい。たとえば今私が考えていることは、平時の場合には大して問題は起りますまいが、濃霧になったとかあらしが出たとかいうときには、直ちに警戒態勢に入る。そして天候の悪化によって非常態勢をとる。だから平時と警戒態勢、非常態勢という三段がまえくらいの勤務態勢をとる。たとえばあのとき、船が出る場合には五時三十分ですか、濃霧の警報が出ておったのですから、これが正常な状態航路につくということはでき得べき条件ではなかったのですから、やはり船員警戒態勢につき、あるいはまた乗った客に対しては救命ブイの所在を明らかにして、船員がこのようにして救命ブイはつけるのだということをみなに説明を与えて、みなが手荷物くらいにしている。そういうことは大げさなようではありますが、十万べんのむだがあっても、一ぺんそういう事故に遭遇した場合には、やはりそれだけの意味があるのではないか。そういうことで船員乗客も、だらだらと勤務するのでなくして、天候の悪化によってやはり勤務状態を切りかえていくということで、精神的な緊張をはかりたい。日ごろ訓練の必要もあると同時に、勤務の状態というものを、これは陸の汽車のようにレールの上を走っているのではないのでありますから、こういう点を今後改革をしていきたい。勤務状態一つのけじめをつけて考えていこう、こういうことも実施をしたいと考えている点でございます。
  19. 徳安實藏

    徳安委員 もう一つだけ。先般長崎総裁がおやめになりまして、すでに責任を感じておやめになりました以上は、もちろん追い打ちなどというものはなすべきでないと私は考えているのでありますが、当日の本会議において大臣から御報告の中に、経営委員会にかけて処置するというお話がございましたが、それには非常に何か含みがあるようなことを、一部では信じられておったようにも見受けられるのであります。一体総裁がやめますときには、大臣に辞表をお出しになって、それでもうすぐに受理されればいいのではないかと思うのですが、経営委員会にかけて御相談の上でやるということも、御慎重な意味でおやりになったとすればそれでけっこうですが、時あたかも罷免決議というようなものが出ておった際であったものですから、大臣の下心地は、一応そうした形式を経営委員会にとられたのだ、そのやられたあとを見た上でやったらいいじゃないかというような御議論も、大分議運あたりでもあったようでありますが、その手続なり、また慎重に取扱われたなら扱われたという経過を、将来のためもありますからちょっと伺っておきたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように辞表を出した場合には、これは政府が受理すればいいのです。罷免をする場合には経営委員会の同意を得なければならぬ、私は本会議であるいは今御指摘のようにちょっと同意というふうに申し上げたかもしれぬが、それは日本国有鉄道法による一つの手続として言ったのでなくして、経営委員会に念を入れて御報告してという意味であったのですから、そうおとりを願いたいと思います。
  21. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 船員救助作業についての措置でありますが、これは今大臣から話があった通りであります。乗客の二十何人の話では、大体大丈夫大丈夫と言う以外に、的確な指示はなかったという点は一致しております。船員の話を聞きますと、最高度に海員魂を発揮して大いに救助に当った、こういうような陳情だそうでありますが、私が大体想定いたしましたところでも、ただいま大臣が言ったように、万遺憾なく救助に当ったとは思いません。ただ三宇高の方が多少紫雲丸の方よりも救助に当って——これは三宇高の方は自分が沈没の危険性がない、自分は安全だ、たとえば堀へはまった者を陸上から助けるというような立場上、三宇高の方が助けた率は多少多いようなことになっております。紫雲丸の方も相当救助に当った形跡はありますが、命令一下統制ある救助をしたというような点はなかなか認められません。ただこの際御報告申し上げたいのは、船員の方には美談がありませんけれども、愛媛県の三好町の庄内小学校のPTA会長の青野忠義という方が−これは遭難した中学生の話でありますが、青野さんは先生と協力して子供を出すのを大いにやった、そして最後まで踏みとどまって、最後には自分は船室へ残った、そうして遺体を引き揚げてみますと、自分の子供とともに抱き合って死んでおった、こういうような美談を聞きましたので、この際つけ加えて御報告申し上げます。
  22. 小山亮

    ○小山(亮)委員 運輸大臣は調査団報告に対して、いささか違った見解を持っておるというふうに言われました。私はそれゆえに三木運輸大臣が見られた現状についてのお話を伺いたいのです。まず伺いたいのですが、これは調査団でもどちらでもいいのですが、この報告書には両船衝突をして、紫雲丸が数分で沈没したということが書いてあります。しかしながら新聞に出ておるところによりますと、衝突をした、それでどんと音がした、すぐ飛び出した、ところが船の者が、大したことはない、大丈夫だ、大丈夫だと言った、ところが相手の船が横腹へ突っ込んでおる、それでだんだん船が傾いてきたので、これは大へんということになって、みんな騒ぎ出したということを言っておりますが、そうしますと数分ということはないと私は思います。単独に船が沈む場合には数分ということもありますが、衝突をして横腹に相手の船が突っ込んでおって、全速力かけてそれを押えているのでありますから、水圧と両方でその間というものは力を受けるために、数分間で沈没するということはないので、おそらくもう少し余裕があったことだと私は思うのです。紫雲丸乗客定員は千二百名です。しかるに乗っておりましたのは九百何名です。そうしますと救命艇の用意であるとか、あるいは救命浮標というものは、十分に間に合っているはずなんです。そうするとこれは全部の船員に救命浮袋というものを渡してやって、その浮袋をつけたかつけなかったか。要するに私が伺いたいのは、船というものは好んで衝突をさせる者はないのですから、鉄道ダイヤに間に合うように真剣に努力をして、全力を尽して安全をはかっていった結果、ぶつかったものと私は思うのです。そう善意に解釈します。それは悪意で船を沈める者はないから。そうすると、その善後措置ということが一番大事です。船員の勤務ぶりを見ますのには、事件が起ったときの善後措置がよかったか悪かったかということによって、いい悪いが決定する。先ほど山本委員が言われましたように、全部の乗組員に救命浮袋を配ってやったか、またちゃんと用意してあったところのボートがおりたかどうか、そして今現に遭難した人は救命浮袋を身につけておったかおらなかったか。助けられた人たちは全部救命浮袋を持っておったかおらなかったか。その点お調べになりましたら伺いたい。
  23. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 その点でありますが、大臣の話と私の話が食い違うかもしれませんが、御了承をいただきたいと思います。われわれ四名が調べたところによりますと、先ほど私が話したように、上手を言いたいのでありますが、調査の真相から申しますと、衝突をした瞬間、紫雲丸の方の船長並び乗組員が、統制ある指示のもとに救命胴衣並びに救命いかだ、救命艇の操作等について、統制ある動作がなかったということであります。これはあと海難審判の結果によりますが、われわれの聞いたところではそうでありまして、生き残りの立岩君、この方本人に聞きましたところ、救命艇は、そのそばへ行って作業に着手するようになったが、おろさずして、そのままで横転した。胴衣の点は、乗客の方の話を聞きますと、今小山委員から言ったように、大丈夫だ大丈夫だ、心配するな心配するなという声を聞いたが、救命胴の着用について統制ある指示のもとに、こうせいああせいというようなことは、乗客の方は聞いておらなかった。しかし乗組員の話では、相当統制あることをやった。特に事務長の話では、自分としては船長の指示を仰ぎ、そうして各サービス係の船員に対しては、各救命胴衣の格納庫の開扉を命じ、各乗客に対しては適当な胴衣着用を励行するように指示し、それをやった。こういうような話でありまして、乗客乗組員との食い違いはありますが、しかし相当数の胴衣は、読売の写真でもごらんのように、胴衣を相当着用しておったことは事実であります。それでありますから、開扉を命じて救命胴衣船員に渡したことも、私はあると思います。全然さようなことがないとは認められません。その点については救命艇並びに救命いかだは用をなさずして、自然のままにまかしたような状態と思います。
  24. 小山亮

    ○小山(亮)委員 遭難して死骸になって揚げられた人たちは、救命浮袋をつけておりましたかおりませんか。
  25. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 大体死骸になった人は、つけた方もありますし、つけてない方もありますが、浮いた方は、その場で死骸となった方はつけておりません。しかし船内の場合はつけておる方もあり、つけておらない方もあります。その数はつけておらない方が多いような感じがいたします。
  26. 小山亮

    ○小山(亮)委員 数ははっきりわからないのですね。
  27. 加藤常太郎

    加藤(常)委員 わかりません。
  28. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はこの問題が一番重大問題だと思っております。これは何ゆえに衝突したか、何ゆえにかかる惨害が起ったかということは、それぞれの専門機関調査しなければ軽々しく言えません。ただいま運輸大臣がここで発言しました言葉は、他船が進行してくるのに、なぜかじを左へとってそれを向けたか、どうもわからないと言うが、それはおわかりにならないわけなんです。こちらのお客さんをたくさん積んでいる船が、どうしても衝突は避けられないというときに、先ほど水夫長の話の報告の中にございましたが、すでに二分前にエンジンをストップして、速力はなくなった、しかし他船が接近して避けられないというときには、自分の船を救うためには自分の船のへききを相手に向けるということは常識なんですよ。だから向けるのがおかしいというのは、これはやはり技術の問題ですから、ここに私は専門家の審査が必要だということが言えると思う。ですから衝突原因について運輸委員会で、いかに明敏な頭脳を持っておいでになる方でも、これは海上に起った、特別の技術をもって審判しなければならぬ事故でありますから、事の善悪をはっきりさせるためには、慎重を期するために、かえってそういう問題には言及しないと委員が言われたことは正しいと私は思います。従ってその問題を私は言うのでなくて、船員というものに対しての、それから国鉄の士気が上っているか下っているかというようなことを検討するには、衝突した、事故が起った後のその処置、これを見ればよくわかるのです。  国鉄には今あれだけのりっぱな装備ができております。たとえばレーダーにしましても、たしかスペリーのレーダーだと思いますが、短距離と遠距離との間に五段の切りかえができる。たしかこれは最新式の装備のものでありましょう。けれども霧中においては、船影がまつ黒に出てくるものが鉄船である。非常に薄く黒く出てくるものが木船であるというような見当はつきますけれども、船がどちらの方向に向いておるかということは、幾らレーダーに取っついておったってわかるものじゃないのですから、そういう問題はどうしてもあげて専門家にゆだねなければならないことなんです。私どもの言わんとするのは、その善後処置なんです。あれだけりっぱな装備を持っておる。無線電話は持っておるし、あらゆる設備を持っておって、あの連絡船の装備というものは大したものです。ところがそれだけのものを持っていながら、それを使わなければ何にもなりはしない。  ボートを下げなければならないのですよ。数分間でボートが下らぬというような、そんな訓練を受けている国鉄船員だったら、それは船乗りじゃないのです。かつて私の船に乗っておりまして、大正五年第一次欧州戦争のときに、イタリアの沖でドイツの潜水艦に一発の魚雷を食らって、三分五十秒で沈没しました。三分五十秒だから何をするひまもなかったのですが、六隻のボートをちゃんとおろして、一人もけがもしないで、みんなのがれることができました。とにもかくにもそういう訓練を受けていなければならないのです。救命艇でも、ああいう装備の船ですから、ハンドル一つ回せばすぐおりる、非常にりっぱなものです。一人でも、そこへ行ってやりさえすれば、すっとおろせるようになっている救命艇も使わないで各室に用意してある救命袋もつけさせないような船員は、船員じゃないですよ。そういう訓練鉄道当局でおやりになっていないとすれば、鉄道当局の責任というものは私は重大だと思います。  これは要するに、先ほども委員報告にございましたように、鉄道船舶管理機構というものはゼロじゃないかと私は思う。だれが一体これを監督し、だれが一体これを訓練し、注意を与え、そしてこれに指示しているか、これを私は非常に不可解に思うのです。元来鉄道の管理機構においては、船員の発言権というものは少しも認められておりませんよ。船長——これは洞爺丸の事件でもそうなんです。そしてまた今運輸大臣が、この事件が起って、事あらためてこの機構問題を云々されるのは、私はおかしいと思う。洞爺丸の沈没事件の後に、日本の海洋会であるとか、十一会であるとか、海上出身の、全国の各商船学校を出た、あらゆるそういう専門家の寄っているところで検討しまして、そして鉄道当局にも運輸当局にも詳しくこの事情説明して、この機構を変えなければいかぬということをしばしば進言しておるのですよ。長崎君もこれを受け取っておられるのです。三木運輸大臣も、就任されてこれを受け取られております。しかしながら、こういう親切な技術家が出した意見書というものには、一顧も与えてくれない。何のためにそうした調査をし、そうした意見書を出しておるかわかりません、それを一つも見ないでおいて、事件が起るとたちまち大騒ぎして、さあ大へんだということになる。これは鉄道もそうですし、運輸省もそうですが、この問題はたくさんありますよ。私は今の機構を改めなければ、こんな事件がまだ幾らでも起ると思う。これはやみませんよ。鉄道がこわいこわいと言うが、鉄道ばかりじゃありませんよ。  これは余談になりますけれども、私は横浜を見ましても、東京を見ましても、このごろりつ然としておるのです。修学旅行の団体がどんどん来まして、そうしてあの港を見たいと言う。それを発動機船に乗せてどんどん見せていますよ。相模湖事件と同じようにもぐりがやっておる。業者がやっておるのじゃないです。よもぐりが料金を取って、港の中をさんざん見せて歩いている。ちゃんと一定の免状を持っておらない。定員制なんか守らない人たちです。横浜なんかきょうこのごろ、修学旅行の団体が一カ月に十万人くらい海上をすっかりやってますよ。それをだれが監督しておりますか。危険千万ですよ。これは必ず事故が起きますよ。そうなってから、それだれがやめろ、かれがやめろ——役人が一人、二人やめたって、死んだ人間は生き返りはしないのですから、ころばぬ先のつえ——こういう問題は大臣の管轄下にはたくさんあるのですよ。そういうのに対して、抜本的なことをお考えにならなければだめなんです。鉄道の問題だってそうなんです。船長責任といいますけれども、連絡船は普通の航洋船と違うのですから、商法によりまして船長は全責任を負っていますよ。船内において生殺与奪の権をつかさどるだけの権力を負わされております。しかし宇野高松のように、出帆してすぐ一時間で向うへ着いてしまう、また向うを出てすぐ一時間でこっちへ来るというものの生殺与奪の権なんか持っておったところで、船長はどうにもならないのですよ。もちろんダイヤがあります。実に厳重なダイヤですけれども、鉄道当局がここにおいでになったら伺いたいのですが、五分おくれると、なぜおくれたかという理由書を出すのですよ。十分おくれても、五分おくれても、三十分おくれても、おくれた理由書というのを出すのです。船長がたくさん出しますと、どうもあの船長は勇敢でないぞということで、だんだん受けが悪くなる。これは函館を調べてよくわかった。函館のようなところでも、あの何千トンという大きな船が、着岸して離れていくまでの間が八十分ないし百二十分です。着岸して、そうして桟橋から綱を取ってすっかり縛りつけて、お客を乗せる、貨車を載せる、手荷物を積み込む、食料品を積み込む、消耗品を積み込む、石炭を積み込む、これはやはりそれぞれ手分けしてぱあっと一斉にやるのです。そうして八十分ぎりぎり一ぱいでさっと綱を解いて出ていくのです。ふたをして荒天の準備をするとか、倉庫の入口にちゃんとキャンバスをかけて、綱で縛ってしまうなんということをする時間はありはしないのですよ。ただ積みっぱなしで出されるのですよ。これが八十分ないし百二十分の間に限定されておるのです。宇野高松もそうです。桟橋に着いてから出ていくまでの時間が限定されて、お客をみな乗せたらだあっと出ていくのです。だから、そういうやり方をするきびしいダイヤで、少しもゆるみがないでしょう。十五分おくれてきても、すぐお前は理由書を書け、また三十分おくれてきてもその理由書を書いて判をついて出さす、そういうことだから、どうしたってそんなことをやらないように、ダイヤに合せるようになるのですよ。命令はしないが無言の圧力なんです。そういうことに対して、船長がこれでは困るということを言いたい。言いたいけれども、上でわかってくれる人がない。陸の人ですから、鉄道の工学士ですから、こんなことはわからない。しようがない。だからやはりその上には——船長には責任を持たせればいいのです……。  鉄道にはいい規則がありますよ。私は国鉄の規則を拝見して——国鉄船舶就業規則第七条「船員は、安全を確保するため次の綱領を遵守し、その万全を期さなければならない。一、安全は輸送業務の最大の使命である。二、安全の確保は規定の遵守及び執務の厳正から始まり、不断の修練によって築き上げられる。三、確認の励行と連絡の徹底は安全の確保に最も大切である。四、安全確保のためには職責を越えて一致協力しなければならない。五、疑わしいときは手落ちなく考えて最も安全と認められる道をとらなければならぬ。」これはこの通りですよ。この通りやりさえすれば問題はないのですが、この通りやろうとしてできないのです。今の機構がじゃまになってできないのです。こういう点に対して鉄道当局の方、私はだれでもいいのですが、よく知っておいでになる方から、今までの機構において改める個所があるかないかということについて、明確な御答弁を承わりたいのです。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 その点は小山委員と私も同感であります。そういう点で、この事件を契機にして船舶の管理機構を変えたい。どういうふうに変えたいと私が考えておるかというと、宇野あるいは北海道、あの連絡船の船舶管理には、船舶管理局あるいは管理部というような一つの部か局かを設けて、そうして無言の隆上の圧力がかからないような処置をとりたい、こう思っております。またそういうふうに地方の船舶の管理機構が強化するに伴い、中央においても船舶の、今は一課でやっておるような状態であるのですが、強化された機構国鉄の中央においても持ちたい、これは実行したいと考えております。
  30. 小山亮

    ○小山(亮)委員 あなたは着任をされたときに、そういう機構の改正をしなければ、こういう海難がまた起るからというような陳情を受けたことがありませんか。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 私はそういう陳情を受けたことはございません。あるいは今私に渡したということでしたが、私自身はそういう陳情は受け取った記憶がないのです。
  32. 小山亮

    ○小山(亮)委員 海洋会代表と十一会代表が大臣室に参りまして、三木運輸大臣に親しく手渡しをしたということを申しておる。お年のかげんでお忘れになることはないだろうと私は思いますが、忙しいから、しかも選挙があったり、いろいろあったりしたので忘れられたかもしれませんが、これはお忘れになっても仕方がない。人間は忘れることがあるのです。しかしこれはあとであなたの名前でちゃんと差し出した写しをあなたに差し上げますから、それをよくごらん願いたい。それで機構改革機構改革と口で言うのは楽です。しかしだれにやらせるのですか。今の鉄道省の工学士や何かに一生懸命やらせようとしても、これはできはしないのですから、だれがこれをおやりになるのですか、それを伺いたい。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 国鉄の場合は企業の規模からいったら、鉄道の方がずっと規模は大きいわけです。しかしこういう事故がおもに連絡船から何回も起ったという事実から考えて、やはり鉄道のサービスというものは、人命を尊重していくということがサービスの基本にならなければならぬので、そういう点でやはり企業の規模からいえば、それは陸上の鉄道の方と比較にならぬけれども、これは強化したい。強化する場合には、単に陸上とは状態違います。陸上はレールの上を走っているのですから、やはり海上の連絡船については鉄道経験そのものを生かすということとは、大分交通の性格が違うものですから、そういう機構を強化した場合には専門家を置きたい。やはり海上に対して長い経験を持った人たちをこの中心に置いて、そうして強化されたものは、単に機構を変えるというだけでなしに、質的にもこれは強化したいという考えでございます。
  34. 小山亮

    ○小山(亮)委員 鉄道総裁にいきなり銀行家を連れてきても、その威令が行われないから、そこに就職させようとしても逃げてしまって、なかなか来ないだろうと私は想像すると同様に、今のような国鉄一家でしっかり固めているところに、いかに優秀な海上技術者でも、一人ぐらいそこへ押し込んだところで、その人はすぐたな上げされてしまって、その人の威令が行われるものではない。船舶管理機構をほんとうにおやりになれば、船舶管理部門というものは完全な独立した体系でお作りにならなければだめだと私は思うのです。そしてその最高責任者というものは、鉄道ダイヤ編成のときに強い発言力を持って、海と陸との連絡というものには相当ゆとりのあるダイヤを編成するように、強い発言力を持つ人がなければなりません。それから船長というものに重大な責任を負わせるということになりますと、船を新造するときに、やはりみずから運航する人の意見を取り入れないで、机の上だけで線を引いておるような人たちが自分勝手に作ったもの、人の作ったものを何でもかんでも運航しろということでは、これは無理だと思います。やはり運航する人の意見を取り入れて、最高の運航のエキスパートと最高の造船造機のエキスパートとが渾然一体となり、そこであらゆる努力検討した結果生み出されたものならば、これはりっぱなものだと言える。そういう機構を作らざる限り、今の国鉄鉄道第一で、いかなることがあっても他人の容喙を許さないというような排他的態度をとっておっては、私はどんな人を連れて来てもだめだと思います。これに対して運輸大臣はどういう構想をお持ちでありましょうか。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 今船舶の管理機構が強化された場合には、御指摘になりましたように、ダイヤの編成には発言権を持たせたい、それだけ海上は、今言ったように性質が違うのでありますから、そういう点が発言権を持たせるようなものにしようと思っております。そういうものはなかなかできないと小山さんはおっしゃいますけれども、こういう非常に大切な交通機関でございますから、そういう面において経験の深い人を、こういう管理機構の中に入れてもらうような努力をやってみたいと思っております。
  36. 小山亮

    ○小山(亮)委員 この船舶管理機構というものを一元的にやって、そうしてやらなければいけないということを申し上げました。その理由は、現に各専門の船会社でも、今は船舶管理部門の最高責任者は海員出身の重役をちゃんと置いて、その統制のもとにやっておる。国鉄が現在持っておる船舶数量を見ましても、日本におけるところの大会社に近いトン数を持っておる。すばらしい大きな船会社と同じものを持っておる。それなのに重役のような経営部門に船の者がいなくて、そうしてほんのただ船舶課長というのが、本省はどうなっておりますか、これはおそらく帝大の工科を出た人だろうと思いますが、船の方の者はおそらくその補佐官くらいのもので、発言力も何もない。居そうろうのようなことをしておるのではないか。高松地方を見ましても、そうです。課長という位置に立っておる人はみな工学士、その下に何かはっきりしないような係長のような位置で、船長あたりがさびしそうにやっておるらしい。そういうことでは人の意見は通るわけがない。船の船長というものはこういう重大なしけとか、海難とかいう場合に船を出すときは、非常に迷うものなんです。だれだって迷いますよ。責任が重大であればあるほど迷うものですが、だれかに助言をしてもらいたいものです。きょうは出ようか出まいか、とつおいつするものです。だからそのときに上の人が、船長、きょうは無理だから少し待ったらどうだと言ってくれたら、そこで待てるのです。ところがだれも言ってくれなかったら、今の無言の威圧を受けますから、やはり危ないところに出ていくという心理状態になりやすい。常に最高に助言してくれ、最高に指導してくれる人がどうしても必要だということになる。  それからこれは先ほど運輸大臣の報告の中にありましたが、船が航行中霧がかかったときに、もっと緊張してやるような態勢をとらせなければいかぬというようなことをおっしゃったが、こんなことはもう船員法ではきまっておるのです。船の慣習でもきまっておる。しけのときとか霧のときは、必ず総員甲板へ出てきて、非番の者も何も出てきて、全力を上げてその運航を手伝わなければならぬことになっておる。だからスタンバイということをさっきだれか言われたが、スタンバイというのはそこなんです。全部用意して、全部出てきてやることになっておるのです。それをやっていないとすれば、まことにけしからぬ話なんですよ。やるのが当然なのです。やらなければならぬのです。それで急速力を持ってはいけないのですから、右に進路を変えたとか、左に進路を変えたとか、いろいろ言いますけれども、霧中において権利義務というものが確定されるのは、かすかながら水平が見え、向うの船体がはっきり見えて、互いにどちらを向いているか、こちらを向いているかということがはっきり目で見られて、それをよけるのに十分な距離のある間が権利義務の関係が起るのです。霧がかかってきた場合にはもうあたりが見えないので、ちょうど目隠しをされたと同じですから、右向くか左向くかということは、音と自分の勘でなければ、相手の船がどっちを向いているかわからない。そこでは右へよけるとか左へよけるとかいうような権利義務の関係はなくなるのです。これは国際公法である海上衝突予防法というものをよくお読みになれば、一目瞭然なんです。だから霧がかかったときには、総員が出て見張らなければいかぬ、非常事態でやらなければいかぬことはきまっておる。速力を持ってはいかぬこともきまっておる。船長が全力を上げて船橋におって指揮命令しなければならぬこともきまっておる。それをやったかやらなかったかということは、審判官がきめて下さるでしょう。しかしながらこの後に起ったかりにも乗客を救済しないような船員がこの日本にまだおるということは、私は実に残念に思うのですよ。自分だけ助かってほかのやつは見ないなんということは……。学校の先生でも、自分が飛び込んでいって生徒を救い上げ、また飛び込んで命をなくしている人がある。それなのに船員であってそういうことをやらないということは、実に言語同断だ。いかに国鉄船員訓練がめちゃめちゃであり、士気が頽廃しているかということがこれでわかる。どこで頽廃しているか、どうしたらこの精神を緊張させることができるか、そこが重大な問題なんです。ただ機構心々とおっしゃるけれども、機構だけではだめなんです。どうしたらこうなるかということを慎重にお考えにならなければならぬと思うのですが、運輸大臣は現場に行ってこられて、いろいろ腹案もおありでしょう。あったらはっきりおっしゃって下さい。この機会が私は一番いい機会だと思うのです。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 船に乗られた経験のある小山委員のいろいろな御発言で、参考になることが多いのでございますが、とにかくすぐに一口で言えるような妙薬はなかなかないと私は思う。いろいろな総合対策を通じて、やはりこの事故を教訓として、精神的な面においても、あるいは技能的な面においても、機構の面においても、総合的な対策を立てなければならぬ。だから私が申し上げたのは、いろいろ服務規程、あるいは今お話になったようなことにはなっておるけれども、ああいうように霧が強く出てきたというような場合には、船員自身も今規定されておるようなことを遅滞なく行うと同時に、乗客に対してもその場合には救命の袋をみなにつけてもらう、そしてこれをどういうふうにつける、あるいはつけない場合はどこにある、こういう説明をする。あるいは非常態勢と申しますか、天候の悪化したときには、乗客と一体となって天候の変化に対応した勤務状態にしたい。今までもそういうことは規定にあると言われますけれども、乗客と一体になってそういうような態勢をとることが、万一の場合に被害を非常に少くすることになりはしないかという点で申し上げた。  また船を全然独立してやったらどうかというお話は、今そういう考えは持っておりません。やはりこれは一体のものとしてやりたいけれども、その場合に今申したような船の方が陸上の圧力を受けて、ダイヤの編成等にも言うべきことも言えない、あるいはまた出るべからざるときに船長が無言の圧力で連絡船を出すというようなことのないように、船舶の管理機構というものを、高松とか函館等においては陸上と対等の地位に置いて、圧力を受けることのないようなことをしていきたい、こういうことでございまして、あるいは訓練等については、先ほど山本委員の御質問に答えた通りでございまして、いろいろの点から今度の事故を非常な教訓として、国鉄連絡船海員の一つの精神訓練あるいは技能訓練機構あるいは連絡船の構造、こういうものに総合的な対策を早急に立てたい、こう考えております。
  38. 小山亮

    ○小山(亮)委員 運輸大臣は私の申し上げたことを曲解しておられるようだが、私は国鉄に独立して船舶の会社を作れというような意味でやれと言うのではない、やはりそれは国鉄の中になければだめなのだ。ただ問題は工学士の下に居そうろうのような地位で海上の専門家を置いたら、どんなに月給をくれてもだめだと私は言うのですよ。その部門だけは一つの会社において、海務関係は海務出身の重役が一切の訓練、指揮命令、船の運航、船の取締り、経費の節約から一切を目を通してやるために、厳重に悪い者をどんどん処断するというような方法をとっておる、そういうふうに上から下まで命令一下、どこまでもずっと浸透していくような、信頼できるような人が上に立っておって、技術の裏表を知っておるような人が立っておって、どしどしやかましく言うような、そういう意味での独立した部門をこしらえたらどうだということを言っておるでのす。何も国鉄と対等でなければいかぬとか、五分五分でなければいかぬ、そんなことを言うのではなくて、要は国鉄と渾然一体となった部門であるけれども、船の方のことに対してほかの方の者が権威をもって聞いてくれて、それにあまり容喙をしないで、ほんとうに思うようにやれるからだという意味の独立したということを私は言っておる。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 そのように考えております。お説のような機構にするように、中央から指示を与えていきたいと考えております。
  40. 小山亮

    ○小山(亮)委員 今宇野高松の問題でありますが、宇野で問題が起れば宇野高松の問題だけを取り上げて、北海道で起れば北海道だけの問題を論議しておるが、これは全部共通しておるのですよ。ですからやはり気象関係や何かの点についても、通報、連絡の点についても、これは運輸大臣の管轄下ですから、総合的にやらなければだめです。港もそうです。私に言わせれば、北海道の函館の港なんというものは港じゃない。港というのは、船が危険なときにそこへ逃げ込んで安全に身を守るところが港なんです。砂漠のオアシスなんだ。ところが函館は港の中にいたら危ないのですからね。現にあの洞爺丸が出たのが悪い、出たのが悪いといいますが、残っていた青函丸はどうです。桟橋に横づけになって九本の綱をとっていた。ワイヤーとこんな太い綱をとってつないでいた。そうしたところが、一風でばらばらに八本切れてしまって、一本残った。これは大へんだというので、それを切って外へ出ていかりを入れたけれども、入れられない。いかりが切れてしまった。そしてこれも外へ出てきて、あの大きな波をかぶって、船体が三つに割れて沈没しているのです。どうして船体が三つに割れたかと調べてみますと、あの青函丸は戦時中から戦争直後に作った船で、鉄板や何かが規格通りではない。規格にははるかに通らないようなもので作っているのです。国鉄の青函連絡船、青函丸なんという中には、そんなちゃちな船がある。宇高丸も第一宇高、第二宇高とたくさんあるのですが、その中にもそんな船がありまはしませんか。あったら規格に合わないような危ない船を作っておって、それでフルに動け、フルに動けと言ったって、これはバラックで、本建築と同じように使われたのでは、とてもたまったものではないと私は思うのですが、そういうようなものも至急改善する必要がある。港もそうなんです。北海道の港なんて、港らしい港はありません。どの港だって中にいる方が危ない。そうすると港も何カ年かの計画で直さなければならぬのを、費用の都合か何かでぐずぐずしてやってないのです。やっておりさえすればいいものを、やってない。そして責任だけは、やれ鉄道職員責任を負えとか、やれ船の船長が負えとか言っていますけれども、これではたまらない。ちょうどのものをあてがっておかないで、責任だけはちょうどに負わなければならぬ。はなはだしいのは、船長は死んでしまったのだから、これ以上の責任はありませんが、あとになって死んだ人がみないつでも悪く言われている。いつでも死んだらだめだ。洞爺丸の船長でも、死んでしまったら船長が一番悪いようなことを言っている。今度の紫雲丸もおそらくそうでしょう。黙っていれば紫雲丸船長が悪いということになってしまうでしょうがね。だからこれは死なないで生きていなければ、いつでも罪を負わされるということになりますから、こういうことをやめて、鉄道全体がいつでも助けてくれるような機構にならなければとてもだめだ。今の船長なんというものはほとんど楽しみがない。  それともう一つ重大なことは、海運局の人がおいでになったところで、私はぜひ聞いていただきたい。それは戦争後どういうものか、免状を取りますと、五年間免状を使わないでおると、免状を取り上げられてしまうのです。もう一度航洋船に乗ってこないと、免状は取り上げられてしまう。ところで宇野高松のようなああいう平水航路であるとか、あるいは保安庁関係の小さな千トン以下の船に乗っていますと、大きな三千トン以上の船に乗って履歴を取った人は、小さな船に乗ると履歴にならない。だから三千トン以上の船に乗ったことにならない。ならないと、小さな平水航路に従事して連絡船に乗っていますと、甲種船長のような一級の免状を取った者は、五年たつと免状を取り上げられてしまう。こんな実にばかな法律をだれが作ったか。役人が親切に作ってくれたらしいけれども、これは何のために作ったかわからない。だからいい船長は来ませんよ。幾ら来いといったところで、免状を取られちゃたまらないですからね。保安庁あたりもその悩みを悩み続けていますが、これは五年たったら免状を取り上げるなんというばかなことをやめて、持たしておいて乗せたらいいじゃないかと私は思うのです。こういう悪いことがございますが、海運局の人たちはおそらくおわかりでしょう。大臣も知っておいでになるかならぬか知りませんが、こんなばかな制度がまだあるのですが、これは改めていただきたい。いかがですか。そういうことは初めてお聞きになりますか。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 ずいぶん勉強はいたしておりますけれども、知らぬこともずいぶんございまして、それは知らぬ部に属します。
  42. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はこの際よく気候全体を運輸大臣に見ていただきたいのです。北海道あたりの気候は非常に荒いのですが、北海道の気象観測の方でも、定点観測でも、あるいは観測船にしましても、向うに行く人間は行きたがらないですよ。それでどっちかというと、仕方がない、まあ行かなければ首にでもされるから、がまんして行こうというのでなければ、向うに行かないのです。北海道はどういうものだか非常にいやがる。それがために人間のいい人もあまりいないと同時に、費用もあまりあてがってやっていないのです。北の極高気圧の観測というものは一番大事なのですよ。南方ははなやかですが、南方の低気圧の観測もすると同時に、極の高気圧の観測というものを怠ったら、気象はわからないです。シベリアから北方の高気圧の観測に対しても、南方と同じように力を入れて気象観測をやるようにおやりにならないと、また事件が起るです。ひとりこれは鉄道の方の関係事件ばかりじゃなく、日本全体の海運界がこれで脅かされる事件が起きますから、金は十分にないかもしれませんけれども、予算の修正くらいして金を出して、そして港湾設備であるとか、気象観測とかいうようなところは、十分におやりになる必要があると思いますが、運輸大臣の御高見はいかがですか。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 政府は予算を提出しておるわけでございます。いろいろ言い分はありますけれども、現在の状態で、この予算が一番いいということで予算を提出したのですから、今ここで修正をするということは、政府の意思としてはそういう意思はございません。しかし国会の意思として、この予算が不適当であるから御修正をなさるということならば、国会の意思を尊重することが議会政治のルールと考えております。
  44. 原健三郎

    原委員長 次に眞鍋儀十君。ごく簡単に願います。
  45. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 時間がございませんので、簡単にお尋ねいたしますが、報告書の結論の第四にあります客貨の分離ということでございます。この問題は洞爺丸以来相当取り上げられて参っておるわけでございますが、ことに今度は十五両の貨車を塔載しておったと申しますので、世間ではこれがおもしとなって、瞬間に海底に引きずり込んだとさえ批評する者がございます。運輸大臣の先般の発表では、この問題に対しては反対のような御意見でございましたが、何でしたら私は即答をいただかないで、もっと技術面から、あるいは経理面から、いろいろな事情がございましょうが、適当の時期にこの問題に対する運輸省の確定した方針を御説明願いたいと思います。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 そういたします。これはいろいろな角度から検討すべき課題がございます。今お述べになったいろいろな点から検討いたしまして、運輸省のきまったこれに対する見解をこの委員会で申し上げることにいたします。
  47. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 本委員会を通じて世論に対する一つの指導の意味で、はっきりした御答弁を願っておきます。
  48. 小山亮

    ○小山(亮)委員 先ほど運輸大臣のお話の中に、海事技術の審判官の方と検察庁の方と密接なる連絡をとって、支障のないような捜査をしておる、こうおっしゃいましたが、これはきのうも私は刑事局長に言ったので、先般、船員法の改正を昭和十二年にいたしましたときに、海員の特権が剥奪されたのです。海員というものは技術上の審判を受ける。その結果でなければ、刑事訴追は受けないということになっていたのです。ところがそういうことになると刑法の取扱い上困るということで、その特権だけ剥奪したのです。けれども、それが問題になりまして、運輸大臣もそのときはきっと議会におられたと思いますが、それは大へんな大きな問題になった。そこでとうとう当時の司法大臣は塩野司法大臣、それから刑事局長が松阪廣政さんです。それが協議の結果、刑法の改正は行わないが、今の議会の意思を尊重し、船員法の改正に当っては、船員の特殊の立場におるということをよく考慮して、そうして刑事訴追を行う場合には、海事審判があった結果、その結果によって刑事訴追を行う。あくまで海事審判を優先させるということをはっきり言明されたのです。それで納まったのです。それがたしか記録に載っております。運輸省では、私は船員局はそれを一番知っていなければならないと思いますから、お聞下きさればわかると思いますが、これは私は当委員会からも後刻正式に法務大臣の方に、強くその意思を主張したいと思いますが、三木運輸大臣からもこれは花村法務大臣にその意思をはっきり言っていただいて、あくまでも約束は約束です。戦争前であっても、一国の大臣がちゃんと約束して、それで安心をしているのですから、それをまた変えるということになると、また法律を作らなければなりませんから、その点を念を押していただきたいのでありますが、いかがでしょうか。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 法律の問題でございますので、その点は、いろいろ今お話の趣旨を法務大臣にも伝えて、検討をいたすことにいたします。
  50. 原健三郎

    原委員長 この際紫雲丸沈没事件に関し、中居英太郎君より発言を求められております。これを許します。中居英太郎君。
  51. 中居英太郎

    ○中居委員 先ほど来、当委員会から派遣せられました調査団並び三木運輸大臣から報告が行われたのでありまして、これに基いて各委員から種々貴重なる質疑応答がなされたのであります。これらの経過を総合いたしてみますると、今回の惨事のよってきたる原因は、きわめて簡単単純でありまして、あげて国鉄当局の過誤にあるということは明々白々なところであります。しかしながら、かと申しまして、その責任をすべて衝突いたしました両船のみに負わすということも、これまた当を得ていないと思うのでありまして、これが責任は膨大な国鉄機構とこれが運営の面に、根本的なものがひそんでおるのではないかと思われるのであります。なれ切った国鉄のマンネリズム的な機構の内容が、あるいは鉄道会館の事件となって現われ、あるいはまた昨年秋の洞爺丸の事件、今回の紫雲丸沈没事件等、一連の惨事となって現われたと私は考えておるのであります。また反面、国鉄内部はその経理、経営面におきまして、非常に重大な危機に今日立ち至っておるのであります。また世論は、相次ぐ国鉄の失態に対しまして、その憤激は極度に達しておるとも言い得るのでありまして、もしもこのような状態がこのまま推移するといたしましたならば、国鉄は崩壊してしまうのではないかと私は考えておるのであります。従いまして政府並び国鉄当局は、このような悲惨な教訓を無にすることなく、直ちに国鉄経理の改善を行うとか、徹底的な機構の粛正と士気の振興をはかる等、あらゆる運営上の改善を加えまして、もって今後かかる惨事を未然に防止して、その課せられておるところの責務を全うせなければならないと思うのであります。よって、今日までの各種の意見を総合し、この際私は当委員会の決議をもちまして、これに対する万全の処置を講じたいと考えておる次第であります。皆さん方の御了解を得まして、決議を朗読いたしたいと思うのであります。    決議   本委員会は、国有鉄道宇高航路連絡紫雲丸沈没事件の重要性にかんがみ、現地調査団を派遣して事件の真相責任の所在等について調査したものであるが、今日までの調査に基き、爾今此の種事件絶滅を図る為めには、政府及び日本国有鉄道は左の事項につき、速かに適切な措置を講ずる必要があると認める。  一、日本国有鉄道に於ける連絡船運航の現在の体制並に運航管理機構の改正及び運航業務根本的刷新を図り、運航安全性を絶対に確保すること。  二、本事件の処理は、海難審判庁の結審を俟つ迄もなく、速かに責任の所在を明確にすること。  三、沈没原因にかんがみ、此の際特に上下を通じ、ひろく綱紀の粛正、志気の昂揚をはかり、特に船員特殊使命に鑑み、海員精神の涵養を図ること。  四、非常時に際する訓練の励行並に乗組員非常時編成を平時より定め置くこと。  五、日本国有鉄道連絡船構造につき、客貨の分離、トツプ・ヘヴイの改正等根本的検討を加え、運航安全性を絶対に確保すること。  六、右の外、特に宇高航路については、上り便下り便航行路に付き再検討を加え、新航路の制定を図り、運航ダイヤ根本的改正を実施し、以て航行の安全を確保するの外、高松港の入出港の際の混雑を改良すること。  七、本州と四国とを結ぶ最短距離安全性を考え、速かに海底隧道の実現につき、特段措置を講ずること。  八、遭難者に対する弔慰方法に付ては、今回の事故の性質にかんがみ、特段措置を講ずること。  右決議する。  何とぞ諸君の満場の御賛同を賜わりたいと思う次第であります。
  52. 原健三郎

    原委員長 それではただいま中居君より提出されました決議案を、本委員会の決議といたすに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 原健三郎

    原委員長 それでは御異議なしと認めます。それではさよう決定いたしました。この決議の取扱いについては委員長に御一任願いたいと思います。  この際三木運輸大臣より発言を求められております。これを許します。三木運輸大臣
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいまの運輸委員会の御決議に対しましては、いろいろ技術的に検討を要する問題もございますが、大体において私も感を同じくするものでございます。国鉄当局をして、そういう精神をすみやかに生かして、諸問題に対する改善をいたさせますように、運輸大臣として努力をいたすことを約束するものでございます。     —————————————
  55. 原健三郎

    原委員長 この際、本朝未明起りました東海道線の事故について、当局の説明を求めます。山本日本国有鉄道保安課長。
  56. 山本優

    山本説明員 今日早朝東海道線の東田子浦−原間において起りました列車の脱線事故につきまして、概要を御報告いたします。  京都発東京行三一三八列車でございますが、これが客車十一両を持ち、団体の修学旅行の生徒八百三十七名を乗せまして、午前二時十九分ごろ原−田子浦間の踏み切りの約百五十メートルのところに、接近いたしましたときに、機関士が前方の踏み切りに何か異常があるようだということに気がつきましたので、直ちに非常停車の手配をとりまして、踏み切りから約百二十メートル進んだところで停止いたしました。そして機関車の前の車が二軸脱線いたしますし、客車が十一両のうち四両が各車輪が脱線しますし、五両目が二軸脱線いたしました。それはちょうどその踏み切りに、米軍の御殿場のミドル・キャンプ所属のミリエンという軍曹が操縦しておりましたトラックがとまっておりまして、これに数ははっきりいたしませんが、ガソリンとペイントの入ったドラムカンが積んであったのですが、その車にぶっつかったわけであります。そのために列車は脱線いたしますし、ぶっつかった衝撃でガソリンが発火いたしまして、それが車の下に入ったために、客車が五両全焼いたしました。その結果、上の電気の架線が約百メートル溶断いたしております。このため重傷が二名、軽傷が五名、それから擦過傷を受けた者が約二十三名、こういう事故発生いたしました。  現場は直線でありまして、勾配はございませんで平坦線でございます。踏み切りは第三種という踏み切りでございまして、これは列車が接近しますとベルが鳴り、またランプが点滅するという装置でありまして、踏切警手は置いてございません。またその踏み切りは、道路は大体線路と平行してきておりますが、その踏み切りを横断するときに約六十度の角度で線路と交差しております。  それから負傷者はそこに書いてございますように、それぞれ病院に収容いたしまして手当をいたしております。それからこの事故のために下り線上り線とも、一時運転が途絶したわけでございますが、下り線の方は八時五十分に開通いたしました。上り線の方は十四時に開通する予定でございましたが、ただいまの報告では十二時十八分に上り線も開通いたしまして、これで一応上下線とも開通しているという状況でございます。
  57. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 ただいま原−東田子浦間のこの事故に関しまして、当局から御説明がありましたが、これは夜中のことでありますが、このような被害のあるときに、続いてかようなことを海陸で起すということは、はなはだ国民に対して申しわけないことであります。私は常に考えていることでありますが、東海道のしかも本線である沼津から富士までの間に、東海道の大きな国道に面した踏み切りが三カ所ある。この三カ所の踏み切りが非常に不完全で、また角度から見ても危険を感ずる踏み切りでありまして、こういう事故がなければいいということを常に考えておりましたやさきでありますが、今回のこの事故に対しまして、割合から見て死者等が少いので私は喜んでいるものでありますが、この事故に対する今後の処置について当局はどう考えるかということ、この踏み切りの改善についてどうお考えになるかということをお伺いしたいと思います。
  58. 山本優

    山本説明員 先ほど概況のところで申し落した点があると思いますが、第三種踏み切りは、列車が踏み切りに接近します三十秒から一分くらい前になりますと、踏切警報機は赤い火が点滅し、ベルが鳴る、こういうことになっております。当時の状態は、自動車が故障してとまっておったようでございます。従いしまてその時間がどのくらい差があるかということははっきりわかりませんけれども、踏切警報機の機能は完全であった、こういうふうに報告を受けております。  それから先ほどの御質問でございますが、踏み切りの事故を防止するということにつきまして、私の方は二つ考え方があると思っております。一つは先ほど御指摘がありましたように、踏み切りそのものの設備が必ずしも完全になっていない。また現在の交通量から申しますと、第一種と申しまして踏切警手を置く方がよろしいというふうな踏み切りもございますし、また全然踏切警手を置いていないし、警報機もないという交通量の少い踏み切り、こういうのを第四種と申しておりますけれども、そういう踏み切りに警報機をつけなければならないというようなものもあります。また現在の四種の踏み切りにしても、交通者に対してもう少し注意を強く喚起できるような設備を考えなければならないと思います。また踏み切りの舗装の問題、また見通しの問題、踏み切りと鉄道との交差の角度の問題、そうしたような設備の面で改善しなければならないことがあるわけでございます。それからもう一つは、現在では踏み切りを車が通りますときには、一たんとまって列車の来る状況を見て、そうして踏み切りを横断するということになっているのでありますが、現在までの事故状況を見ますと、踏切警手がおりまして、そうしてそこで事故が起る。と申しますのは、踏切警手が遮断機の降下を失念しておった。こういう事故でございます。こういう事故は全然ないとは申しません。やはり多少ときどきございます。これは従事員のはっきりした責任であるわけでございます。それから三種の方の問題は、通る人は踏み切りを一応見て、警報が鳴っているならば列車が接近しているということなのでございますから、一たん踏み切りにとまって状況を見て通ってもらう。そうするならば一応この事故は防げる。従って三種の踏み切りの問題は、警報機の故障がないようにするということが大きな問題でございますが、こういうふうに設備を改善するということと、もう一つは通行者、通行する車が、踏み切りに対して十分な注意をさらに払っていただく。この二つの点をできるだけ改善するようにということで強力にやっております。そこで踏み切りの設備改善の問題でありますけれども、これは数字的に申し上げますと、二十九年度は踏み切りの設備を改善するのに三億使っております。ことしも特に踏み切りの事故を防止しなければならぬということでありますので、特にまた三億を踏み切りだけに計上しまして、その変更なり改善ということを考えております。さらに他の交通者の協力を求めるという意味におきまして、関係のところに御協力を願いまして、そうして毎年一回踏み切りの事故防止運動というものをやっております。
  59. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 ただいまの説明が、私のお尋ねが悪かったかもしれませんが、ごちゃごちゃしてよくわからないのですが、私の今お尋ねしようというのは、沼津と富士駅の間、ごく短距離の間に三カ所も重要な踏み切りがあって、それが不完全で危険な踏み切りであるという点をどう考えているか。今伺えば三億円の予算をもってほぼ改善すると言いますが、これはどこをさして言うたものか。鉄道全体の問題を言うのかもわかりませんが。それから先ほどの御説明によりますと、トラックがとまっておったという言葉をちょっと聞いたのですが、とまっておったというのは一体踏み切りの上にとまっておったのか、その近所にとまっておったのかよくわかりませんが、この点をお伺いしたいと思う。
  60. 山本優

    山本説明員 第一のトラックの方は故障が起って、踏み切りの上でとまっておりました。それから沼津付近の踏み切りの問題ですが、これは私ここにこまかい数字を実は持ってきておりませんので、今度の踏み切りの整備にこの踏み切りが該当していますかどうですかということは、明快なお答えができませんけれども、調べてまた御返事させていただきます。
  61. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 ただいま説明のうちで、時間がないのでせかせかして、私もまことに不明瞭な御質問を申し上げて恐縮でございますが、トラックが踏み切りの上にとまっていたということは、居眠りでもしておったのでしょうか、故障でもあったのでしょうか、故意にとまっておったものでしょうか。この点をお伺いしたいと思います。
  62. 山本優

    山本説明員 故障が起ってとまっておった、こう聞いております。
  63. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 このトラックのアメリカの人はけがもなく、またトラックの破壊程度、故障の程度というものは、どういう程度になったのでしょうか。
  64. 山本優

    山本説明員 トラックは非常にひどくいたんでおる。それで運転手は何らか列車をとめる措置を講じようと考えておった。これは事実だかどうか知りませんけれども、言っておりますけれども、何らとめる方法がなかった。そのうちに列車が接近してきた、こう聞いております。
  65. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 これはほかの委員の皆様からもお尋ねがあると思いますが、私としては、あの近辺が私の住居地の近くでございます関係上、今後責任を問われますので、この点をはっきりお伺いしたいのですが、この踏み切りを今後至急直すようなお考えが当局にあるかどうか、まずこれらの点をお伺いしたいと思います。
  66. 山本優

    山本説明員 今の御質問は、事故を起しました踏み切りでございますか。
  67. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 あそこに三カ所ございます。
  68. 山本優

    山本説明員 その点は一応調査いたしませんと、ここではお答えできませんけれども、至急に調査してみたい、こう考えております。
  69. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 今の調査しなければと言いますが、これは事故が起らないでも、どうしても踏み切りの改善をしなければならない重要な個所だと私は考えております。この点についてもっと明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  70. 山本優

    山本説明員 至急静岡の管理局の方に照会しまして、そうして実情を調べてお答えしたいと思っております。
  71. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 静岡の管理局というお話がございましたが、同じ管理局管内におきましては、東鉄管内と静鉄管内ということは、同じ国有鉄道でありながら何だか少し違いがあるようです。差別があるように考えますが、こういう点はもっと共通したところの鉄道施設——あるいは建設の方向に進むという点について、私は疑義があると思う。これらの点につきまして当局としては、管理局が違えば、その管理局の指示がなければ事ができないように考えられておるか、また国有鉄道としてこれをどう取り扱うかという点についてお伺いしたいのです。
  72. 山本優

    山本説明員 踏み切りの整備は、踏み切り整備基準というのがありまして、交通量がどのくらい、それから列車の回数がどのくらいというふうな、いろいろ踏み切りに関する条件を勘案しまして、そうしてこの程度のものはどういう踏み切りにする、一応こういう基準をもってやっておりますが、従いまして全国的に見ましてその程度が違うとは私は思っていないのであります。
  73. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 私のお尋ねしようというのは、東海道の本線であります国有鉄道と、それから東海道本線の国道とに面したところの踏み切りが、交通量のいかんという言葉はどうも少し納得できないのですが、この東海道本線と東海道国道という大きな問題は、交通量にそんなに支障、差別があるのでしょうか、お伺いしてみたいと思います。
  74. 山本優

    山本説明員 交通量と申しますのは、鉄道自体の線路の上を走っております列車の回数と、それからその踏み切りを通ります人の数あるいは車の数、こういうものは同じ東海道線でも、それぞれ踏み切りを通る人なり車なりの数が違いますから、そういうものを参考にして順位をつけて整備をしていきたい、こういうことであります。
  75. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 それは私の考えと反対なんです。なぜかといいますと、東海道の本線が、ところによってはどこかほかに線がありましょうか。私は裏日本の方の鉄道はあるということは聞いておりますが、東海道本線があの沼津−富士駅の間にほかに線があることを認めておりませんか、どこかに線がありましょうか、お伺いしてみたいと思います。
  76. 山本優

    山本説明員 私の説明が足りなかった点があるかもしれませんが、結局同じ踏み切りでも、踏み切りを通ります人なり車なりの数は違うわけでございます。   〔委員長退席、山本(友)委員長代理着席〕 どうも先ほどのお話では、東鉄と静岡の管理局とでは同じ交通量を持っておりながら、踏み切りの整備の程度が違うのではないか、こういうお話があったのじゃないかと思うのですが、そういうことは差別は全然ございませんで、同じものさしではかっていく、こういう事情でございます。
  77. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 そこに食い違いがありまして何ですが、今私が最後にお尋ねしたのは、東海道本線が、汽車の交通量が本線かどこかほかに通る道があるのか、そのために違うという御回答なのか。私の見ましたところではほかには本線はないと思っております。そうすれば汽車の回数も乗客も同じ車が通っておるわけだと思うのですが……。
  78. 山本優

    山本説明員 鉄道自体の交通量を考えてみましても、同じ東海道線でも列車回数は場所によって差がございます。同時にまた踏み切り自身交通量が違うということになると思います。
  79. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 それは解釈が違うように思いますが、私は東海道線というのは一本しかない。また東海道の国道というものは一本しかない。それが二本ないのに違うというような御説明のように伺っておりますから、納得いかないのですが、これがもしそういうようにお考えになっておるとしたならば調査をして、——私は違っておらないと思います。すみやかにこの問題は取り上げていただきたい。最近でございますが、戸塚の踏み切りの問題が大きな問題になりまして、あの踏み切りを今度改善いたしまして、ほかの吉田道路というものができまして、今交通の問題が緩和されておりますが、あの戸塚とは多少違いますけれども、沼津から先の東海道本線としては、私は京都まで行く間にほとんど違いがないのじゃないかと思っております。この踏み切りについては私は根本処置をとるお考えがあるか、そういう考えはあるかないかというような点についてお伺いしてみたいと思います。
  80. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 ただいまの交通量の調査というような問題につきましては、若干お話とお答えとの食い違いか、何か聞き違えているか、お答え違いをしておるかという点があるかと存じますが、総括的に申しまして、お話がございましたように、東海道線と並行して走っております自動車の国道線というものが、とこどころに踏み切りを持ちまして、平面交差を現在たいしておることは事実でございまして、この問題は私どもといたしましても、何とか立体交差という根本的な解決をはからなければならぬというように考えます。しかしながら立体交差をいたしますのに非常に金がかかります。これにつきましては鉄道だけではもちろんできません。これは建設省の方で予算を組んでもらってやっておるわけなんでございますが、両方の話し合い、費用負担をどうするかという問題が根本的なもとの問題でございまして、先ほどお話がございましたように、まず戸塚の踏み切りが直ったというようなことで、毎年一カ所くらいできるかというような格好で進捗しておる状況でございます。しかしながら国道と東海道本線と交わっております踏み切りについて、何も警報装置のないような格好ではなりませんので、おそらく先生がおっしゃいました沼津−富士間の踏み切りも、第三種踏み切りか何かにはなっておるのではないかと考えますが、もしそれまでにもなっていないような踏み切りでありましたならば、至急直したいと考えます。事故が起った現場は、海岸寄りにりっぱな国道が踏み切りなしにずっと入っておりますところであります。
  81. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 大体今の説明で納得できましたが、この踏み切り問題は、大きな問題が今後残されておると思います。東海道本線は今汽車と並行したりっぱな国道を新設しておりまして、これが近い将来に完成すると思いますが、これに対して鉄道当局といたしましても、この道路に並行した新たなる考えを持っていただきたいということを私は希望申し上げます。  同時にもう一つお伺いしたいことは、たまたまけが人が非常に少かった、死者もなかったようでございますが、これらの手当につきまして、紫雲丸関係ではございませんけれども、これらにならいまして、今後どういう見舞その他の処置をとるお考えでありますか。
  82. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 今回の踏み切りの事故は、必ずしも紫雲丸事故と同一といえるかどうかについては、若干疑問があると考えます。とりあえず重傷なさっておる方々、そのほかのけがの重い方につきましては、病院に入れておりますが、この治療費は全部支弁いたしたいと考えます。そのほか相当の傷を負うてお宅にお帰りになった方々に対しましては、医者とお見舞を回しております。なおこの原因の問題でございますが、駐留軍等に必要に応じて国鉄としては賠償の請求をしたいと考えます。
  83. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 もう一点お伺いしたいと思います。この列車乗客の数が八百三十七名と出ております。これは全部学生のようになっておるようでございますが、これは平時もこの列車が運行されているのでございましょうか。
  84. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 大体旅行シーズンには毎日同じ時間にそういう汽車を動かしまして、申し込みのある団体にそれぞれその汽車に混乗していただくというふうな格好で運行しております。
  85. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 時間がありませんので大体これで質問を終りたいと思いますが、この踏み切りの問題と今後の操作の問題は、一応現地を調べました上でまたお尋ねしてみたいと思います。一応私はこれで質問を終ります。
  86. 山本友一

    山本(友)委員長代理 竹谷源太郎君。
  87. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 さきに海上では紫雲丸事件があり、また今日早朝に踏み切りで事故があって、まことに遺憾でありますが、今保安課長から事故発生状況概要説明がございましたが、その中で、これは通称植田という踏み切りだそうでありますが、ここは第三種の踏み切り施設がしてある。そして赤いランプが点滅をし、ベルが鳴る施設であって、踏切番がいないわけでありますが、これは一体踏切番を置くべき踏み切りの状況、通行の状況であるのか、あるいは第三種でよいところか。鉄道として金がないために、第一種なり第二種になすべき踏み切りを、第三種に放任しておいたというような事情がないかどうか、一番先にお伺いしたいと思います。
  88. 山本優

    山本説明員 第三種踏み切りでいい踏み切りでございます。
  89. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に、機関士は前方踏み切りに異状を認めたので、急停車をしたというのであります。これは機関士としては一応の安全に関する注意を払ったように認められるのでありますが、この事故に対して機関士は、法律上従来どのような責任を負わされておりますか。
  90. 山本優

    山本説明員 法律上どういう責任があるかと申されますと、ちょっとわからない点がございますけれども、第三種踏み切りで、あの速度が七十キロでございます。大体機関車の前照灯で、踏み切りに何かあるということがはっきりわかる距離は、せいぜい八十メートルくらいだと思います。百五十メートルと申しますのは、やはり車が大きかったせいですか、何か普通よりも状態が違うということを乗務員が発見して、すぐ制動機をとった、こういうように考えております。従いまして私の方の規程の面では、運転士としては処分する何はない、こう考えております。
  91. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと、当該運転士には刑法上、交通上の責任はもちろんのこと、職務上の責任においても追及すべきものがない、こういうことになりますね。
  92. 山本優

    山本説明員 そうでございます。
  93. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと結局不可抗力ということに判定されるのでございますか。
  94. 山本優

    山本説明員 鉄道の方の取扱いでは、責任がないと考えております。ただ米軍の方が踏み切りを通る場合にどういうふうな注意を受けて、どういう取扱いをしておるかという点がはっきりいたしませんから、その点の関連はわかりません。しかし鉄道としては、ああいう場所でああいう事故があれば、米軍に対してむしろ私は賠償を請求すべきではないか、こう考えております。
  95. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 海兵隊の大型のトレーラー・トラックか何かだそうでございますが、この自動車の運転手としては、踏み切りの上で故障を起して、一分くらいというのですからあまり時間もありませんが、踏み切りのランプが明滅したり、あるいはベルが鳴るというので、汽車が近づいておることはわかる。また近づいておるという踏み切りのベルやランプの明滅がなくとも、いつ汽車が運行してくるかわからぬというのは想定できることであって、これに対して踏み切り上において故障が起きた場合、進行してくるかもしれない列車に対して、直ちに停車の注意を喚起するような何らかの方法を講ずるのが、自動車運転者の責任であろうと思うが、この点いかようにお考えですか。
  96. 山本優

    山本説明員 私の知っております範囲では、運輸省令で、営業しておる乗用車、こういうものは赤い色の出せるランプを備えておいて、そうして踏み切りで動けなくなったら、それによって列車をとめる方法を考える、こういうことがございます。これは自分の車の故障のときには、やはり何かの方法でとめることを考えていただかないと、こうした事故は防げないのではないか、こう考えております。
  97. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そのような運転者として責任があるのに、これをなさなかったのでありますから、今回植田踏み切りにおいて発生した事故は、アメリカのトラックの全責任である、このように国鉄としてはお考えですか。
  98. 山本優

    山本説明員 そういうふうに私は考えておりますけれども、なお調査いたします。
  99. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 これは事重大でございます。アメリカの駐留軍が日本におりまして、東海道という日本の大幹線の踏み切りの上に大きなトレーラー・トラックをとめておいて、しかも十分の交通安全の運転者としての責任を果さないで、こうした事故を惹起したことは、まことに遺憾千万であって、この点については十分一つ抗議をするなり、あるいはあらゆる賠償なり、その責任の追及に万全の措置国鉄として講じてもらわなければならぬ、このように考えるのでありますが、幸いといっても数十名の重軽傷者を出しておる事故でございます。もしこれがもっと大きな事故にでもなりましたならば、また世上に非常なセンセーションを起したであろう事件になったかもしれない。重傷者が二人、あと軽傷者でありまして、人的損害はほかの大きな事故と比べて、比較的少かったのはせめてもの幸いでございましたが、米軍は日本に駐屯している以上、日本の社会の安寧秩序なり幸福なりに対して、全幅的な協力をなすのが当然の務めでなければならないと思うのでございまして、これに対して国鉄当局としては、いかなる決意をもって駐留米軍との折衝に当られようとするか、天坊副総裁の御決意を伺っておきたい。
  100. 天坊裕彦

    ○天坊説明員 ただいまの竹谷委員のお考えに私も全く同感でございます。もう少し詳細な調査をいたしませんと、当時の状況はわからぬところもございますが、アメリカ側の運転手も非常に危険と考えて、列車に向って何か合図をしておったという話はあるのでございますが、しかしそれだけでは及ばなかった。汽車の方も前方注視をやっておるのでございますが、その距離が制動をかけても間に合わぬ距離になって、結局踏みつけざるを得なかった、こういうことでございますので、その間の事情は十分調査いたしまして、必要に応じて駐留軍に対しても賠償を求めたいというふうに考えております。
  101. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 これは日本人全体として非常に関心を持つことであり、そうした日本の平和、安全、国民の幸福に協力する態度が不十分であれば、国際間にまことにおもしろくない事態も生ずるのでございまして、異常なる決意をもって国鉄はこの問題に善処せられんことを希望して、私の質問を終ります。
  102. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 実は今朝来社会党の本部へ多くの方からこういう話があったのです。これは私の方のけさの国会対策委員会でもこの問題を出されたが、たとえばこういうことを言ってきておる。東京駅に数百人の人間が詰めかけて、待合室とホームに充満しておる。そうして、どうなっておるだろうか、その不通個所は何時間すれば修復するか、その汽車は何時に東京駅に入るのだという質問に対して、駅長さんの方で答えたところでは、七時間後だという。中には三時間後だという。全くまちまちで、詰めかけておる人間は収拾がつかぬ。これは、ただいまのあなた方の報告並びに号外等によっては、幸いにして死者は出なかったということで、不幸中の幸いでありましたけれども、もし大事件が起きた場合には全く想像に余りあるが、そういう訓練はしておるのかどうか、こういうことがわれわれの方にもたらされた一般の人々の話でございます。こういう措置については国鉄としては十分訓練をしておるかどうか。それはとがめておるのではなくて、大きな事件が起きたたびに実に思いやられるのであります。こういう問題について現場とか東京駅では、国鉄としてどういう措置をなさったのでありましょうか。
  103. 山本優

    山本説明員 事故が起りますと、よくわかる責任者が一応現地を見まして、その状況によって復旧の判断を下して、それを管理局に通知しますし、さらに隣接の関係のあるところにはそれを連絡いたしまして、そしてそれに対処するような処置をとるように計画もしてありますし、訓練もしてあると思うのでございますけれども、現実には、聞かれた人がどなただったのですか、おそらく確実な指令の連絡がまだいかない人に対して聞かれたのではないだろうか、私はこういうふうに考えておるのですが、一応はっきりした連絡の系統、その周知の仕方——旅客に対してはどういうふうに周知するかということまできめております。
  104. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私はとがめておるのではない。あなた方は何か事故があると、十分注意してあるはずだと言う。この委員会で、この間運輸大臣は、こういう車両や何かの改良で事故は防げるかと聞いたら、大丈夫やれますと言われた。そうしたらあの紫雲丸事件が起きた。あなた方上に立つ人は、しておるはずだと言う。そういうことははなはだ僭越な言葉です。世の中にはいかなることでも万全を尽したということはない。尽せば限りがなく、無限大のものがある。それを事足れりというようなあなた方の考え方は、失礼ですが、僭越だ。たとえば課長の先ほどの報告だって、委員から聞かれて説明を加えるようなことでは困るじゃないか。あなたの方から進んで言うべきことがたくさんある。私は議事進行に名をかりて発言しょうかと思った。あなた方は委員から聞かれて報告を加えるようなことでは困る。けさの二時何ぼに起きた事件を、こちらから質問されて答えるなんて怠慢しごくです。東京駅へ何百人かが押しかけていって、自分の子供や親戚の子供の安否を気づかうに当って、命令系統が一本になっておらぬという現場の事実は、認めざるを得ない。こういうことをしてあるからといって、てんとしてうそぶいておる。そういうことではあなた方責任感がきわめて薄い。してあるけれども、なおかつするということを言わなければならぬ。あなた方が万全を尽したならば、事故はないはずだ。そういう点は改めていただきたい。私はこの問題をとがめておるのではない。大事件が起きた場合が思いやられる。そういうことに対して一そうの訓練を願いたいという希望を含めた質問なんです。将来ともこういう事故の起ることを予想するということは、まことに不幸なことでありますが、そういうときには大混乱が予想されるから、そういうことのなからぬように、訓練の上にもさらに訓練を重ねると同時に、さような緊急の態勢に対処し得るところの方法をとっていただきたい。こういうことを申し上げておる。別に答弁をいただきません。  けれどもこの際あらためて申し上げておきます。訓練はしてある。そういうことはしてあるはずだという言葉だけではお話にならないのですから、その点だけはよくお考えを願いたい。この事故のごときは、あなたが答えられますように、ある意味においては不可抗力かもしれません。不可抗力であったけれども、起きた事実は無視できない。その発生した事態についきましては、どういう措置をするかということを十分研究しておくことは、今日お互いが社会を形成しておる以上は当然の措置であります。鉄道に何らの責任がないから、われ顧みず、知らぬというがごときことは、おやめになっていただきたいのであります。やはり多くの人命を託されて輸送しておる以上は、それに必要な措置なり訓練の方式について、研究を重ねていただきたい、こういうことを要望するものであります。
  105. 山本友一

    山本(友)委員長代理 本日はこれをもって散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。    午後二時二十分散会