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1955-03-29 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 有田 喜一君 理事 今松 治郎君    理事 臼井 莊一君 理事 木村 俊夫君    理事 山本 友一君 理事 中居英太郎君       岡崎 英城君    上林榮吉君       佐伯 宗義君    中嶋 太郎君       濱野 清吾君    堀内 一雄君       眞鍋 儀十君    伊藤 郷一君       關谷 勝利君    徳安 實藏君       畠山 鶴吉君    井岡 大治君       下平 正一君    正木  清君       山口丈太郎君    池田 禎治君       大西 正道君    竹谷源太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局長)  粟沢 一男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  甘利 昂一君         運輸事務官         (船員局長)  武田  元君         運 輸 技 官         (港湾局長)  黒田 静夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         運輸事務官         (自動車局長) 真田  登君         日本国有鉄道経         営委員会委員長 佐藤喜一郎君         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道理         事         (経理局長)  石井 昭正君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月二十九日  委員大西正道君辞任につき、その補欠として木  下哲君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件  海運に関する件  観光に関する件  港湾整備促進に関する件     —————————————
  2. 原健三郎

    原委員長 これより運輸委員会を開会いたします。  最初陸運行政海運行政一般に関する件について、三木運輸大臣質疑を行います。質疑通告順にこれを許します。なるべく簡潔に要点をお願いいたしたいと存じます。木村俊夫君。
  3. 木村俊夫

    木村(俊)委員 運輸大臣にはいろいろお伺いしたいことがありますが、本日はまず昭和三十年度の港湾予算の問題につきまして、大臣の御所見を伺いたいと思います。  昨日の委員会におきまして、昭和三十年度の港湾関係公共事業費予算要求について、事務当局からアウト・ラインについて概略御説明を承わったのでありますが、それによりますと、一昨年昭和二十八年度におきましては、港湾予算全体として百十六億円、昨年昭和二十九年度は八十五億円に減っておりますが、これは緊縮予算関係もあっだのでありましょう。私ども心配しておりますのは、総選挙中におきまして民主党が特に住宅政策等につきまして大いに宣伝をされた。そういう関係もありまして、昭和三十年度の港湾予算について、総予算ワク内におきまして非常に減りはしないかというのが第一点、第二点は、御承知通り昭和三十年度におきましては、安全保障費が打ち切られるという話を聞いております。従来直轄事業面において安全保障費にたよっておるのが約二、三十億円、明確にこういう直轄事業面において穴があくということが予見されております。こういう事態を前にいたしまして、もうすでに事務当局から港湾関係予算につきまして説明をお聞きになつておると思います。大臣昭和三十年度の港湾予算につきまして、どういうお心がまえを持っておられるかということにつきまして、まず承りたいと思います。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 最近毎年港湾予算が減少して参ってきておることは、木村委員の御指摘通りであります。しかしその後船舶事情もいろいろ変って参りましたし、そういう点も勘案して、港湾整備は緊急の課題の一つであります。今折衝しておる状態をまだ申し上げる段階ではございませんが、港湾予算に対しては、極力安全保障諸費等が減額になって、急激な予算の減少を来たさないように、予算確保をいたしたい心がまえでございます。
  5. 木村俊夫

    木村(俊)委員 ただいまの大臣の御答弁によりまして、大臣港湾予算につきましては大いに関心を持っておられるということを拝承いたしました。しかしながら現実の問題といたしましては、昨日も大蔵省の主計局長をこの部屋に呼びましていろいろ話を伺ったのでありますが、先ほど申し上げた総予算ワク内において、港湾予算が非常に危ないということも承わりました。そこでこれは非常に申し上げにくいことですが、大蔵大臣に御折衝になる場合に、最後の腹として、額としてはどの程度のことをお心がまえに持っておられるか、参考までに承わっておきたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 一応私もめどは持っておるのでございますが、まだ今日の段階でこの席上で申し上げるのもいかがかと存ずるのでございます。
  7. 木村俊夫

    木村(俊)委員 これは老婆心なんですけれども、昨日いただきました資料によりますと、今度民主党内閣でお考えになっておる経済六カ年計画、これによりますと、経済六カ年計画現実に遂行するために、昭和三十年度から三十五年度まで六カ年間において、総額約八百四十四億円に上る港湾整備費が必要だ、こういう数字が出ておるわけであります。これは経済六カ年計画によって海上輸送計画というものをお立てになって、それに基いて港湾取扱い貨物数量というものがありますが、それに対応する外国貿易港、内国貿易港の整備に要する必要欠くべからざる必要経費である、こういうことが出ておるのですが、そうしますと、民主党内閣経済六カ年計画なるものが、総合的実行性を持つためには、もちろんこれらの費用が必要だということになってくると思います。そこでこれによりますと、大体六カ年計画によって一カ年平均所要額約百四十億円になると思います。それに自然災害復旧費が六十億円要るという数字になっておりますが、計二百億円というものが昭和三十年度からどうしても毎年要るという数字に相なっております。大臣が今どういう数字を頭に置いておられるかわかりませんが、われわれとしては大体これに近い数字をお持ちになっていると拝承しておりますが、いかがでありますか。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 六カ年計画が今後民主党内閣経済施策中心になるのでございますが、その数字については今後において相当検討を要する部門もあると思います。そういう点で港湾輸送力等から割り出した今年度の港湾予算が二百億必要であるという計算は、一応の基礎でございますが、しかし今年度の一兆円という限られた予算ワク等も勘案いたしまして、基礎にはなりましても、これが直ちに予算化されるということは、相当困難があろうかと考えておるのでございます。
  9. 木村俊夫

    木村(俊)委員 大臣のお立場もありますから、私それ以上には申し上げませんけれども、閣議におきましても発言力の強い大臣が御就任になっておりますから、われわれ運輸委員会といたしましては、少くとも従前以下に港湾予算が減ることはないということを期待しておりますから、一つよろしくお願いいたします。
  10. 原健三郎

  11. 小山亮

    小山(亮)委員 運輸大臣に伺いたいと思いますが、先般未曽有疑獄事件を引き起しました海運造船業界は、私の見方からしますと、現在のような運輸省造船計画をやっておりますと、ああいう問題は今後引き続いて起る可能性が十分にあります。私がこの際伺いたいのは、運輸省は、この敗戦によって荒廃した日本海運を、どうして再建していくかという、その基本になる方針というものをお持ちであるかどうか。もしありましたならばそれを伺いたい。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 小山君もよく事情を御承知のように、端的に一国の経済の消長は、国際収支の面に出てくるわけであります。そういう点で経済危機中心も、国際収支のアンバランスというところに出て参った。そういう見地から今後経済自立の達成のために、海運界の果すべき役割は非常に大きい。そこでまず基本的な方針としては、ある程度の船舶を今後確保して、政府としても昭和三十五年に至る六カ年計画目標立てて、毎年二十二万トン、今年も六カ年計画の中においての二十二万トンの計画造船をやって、そういう目標のもとに船舶確保をはかっていく。それには計画造船によって政府の財政的な投資をやって、船舶確保していくということが根幹になっておるわけでございますが、その間一方においては海運界資本構成が、戦争によって非常な打撃を受けたわけでございますから、この他人資本自己資本というものが問題にならぬ比率になっておる。この資本構成を是正して、海運界を軌道に乗せるためには、御承知のように目下経済閣僚懇談会においてもこの問題が議題になって、これは単に海運界のみならず、日本一般産業界資本構成が非常に悪化して、そのために企業の基盤が非常に不安定になり、不健全になる、こういう点で全般の問題にも関連をいたしますために、海運界再建方法について、ただいま経済閣僚懇談会検討を加えておるわけでございます。一方において、また海運合理化につきましては、海運船舶等合理化審議会等の答申もございますし、その線に沿うて海運合理化による国際競争力をつけていこうという諸般の政策立てて、日本海運業再建、振興をはかっておる次第でございます。
  13. 小山亮

    小山(亮)委員 大臣の言われた海運政策としては、いわゆる計画造船である。計画造船をやってきたのだ、こう言われるのだが、その計画造船をやってきた過程において、ああいう不祥事件が起った。そうするとその計画造船を推進しておる過程において、何か欠陥があるのではないか。それには運輸省がその欠陥を早く認めてそれを是正する。そうでなければやはり疑獄事件が起る。何か計画造船を推進しておいでになるうちに、どこか非常に欠陥があるということをお認めになりはしませんか、それを伺いたい。それが認められなければ、新しい政策なんか立てられはしない。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 私は計画造船を進めることによって、常に疑獄事件がつくとは考えません。これはやはりああいう形においても、そういう疑獄事件のような忌まわしい事件が起らないやり方はあり得る。これはいずれにいたしましても、大なり小なり政府行政の中には、やはり計画的なそういう面はほかの行政にもあるわけであります。そういう計画的なやり方に、疑獄事件が必ず付随するとは思いません。確かに計画造船の中には国民の側から見ましても、何かこうすっきりしないような面があることは事実でございます。こういう点で、今後計画造船を推進していくということは政府方針でありますが、これをもっと明朗、簡明なものにするために、今後の計画造船やり方についてはとくと研究を加える。この問題については船主の選考問題が中心になるのでありますが、これは今申したような合理化審議会等に、どういうふうに今後計画造船における船主選考基準をやって行くことが、今申したような趣旨に沿うかということの意見を徴しますし、あるいはいろいろなほかの意見も徴して、計画造船には、今の方式に改善を加えていきたい。これが理想的だとは必ずしも考えていないのであります。できる限りこれに改善を加えていきたいという考え方は持っておるものでございます。
  15. 小山亮

    小山(亮)委員 大臣専門家でないから、細目にわたっての質問はいたしませんが、大臣海運計画造船の推移を見ておいでになりまして、どうしても目につかなければならぬと思うことが一つある。それは何かというと、第五次までの船価は、イギリスやドイツと比べて必ずしも日本が高くなかった。第六次からの船価は世界一高い。世界一船価の高い船をもって、そして安い船価でできている船と日本海上において競争して勝てるわけがない。だから結局利子補給をやって、利子を下げるということが必然的に起きてくる。だから結果においてああいう問題が起ったということは、計画造船を推進しておいでになる運輸省考え方が、低船価、高能率の船を作るという考え方に持っていかなかった。世界一高い船を作るということが、ああいう事件が起る根本の原因なんです。現在においては高い船しかできないかというと、現在現われている現象は、外国から注文をされて外国に作ってやる船ならば安い。日本の国の中から船主注文してくる船は船価が高い。同じような船を外国注文を出した場合にははるかに安い。これは実におかしいじゃないか。競争する相手の国に安い品物を売ってやって、日本の国が高い船価の船を持って、海上競争して勝てといっても、これは無理でしょう。そういうような矛盾にお気づきになりませんか。それに気がつかなければ、あなたがこれからどんな政策をお立てになったって、それはでたらめの政策でわれわれは信用できない。その点お気づきになりましたならば、それに対する率直なお考えを私は承わりたい。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 私も小山君と全く同感であります。外国への輸出船舶に対して非常な補助を与えて、そして安い船価で、日本の船が高い船価競争しようといっても無理であります。今まで前内閣のやっておった砂糖リンク制によって、安い船価船舶輸出をしておったわけでありますが、今後このリンク制はもうやらない。そうして直接の補助輸出船舶に対してやらない方針でございます。ただ輸出奨励のいろいろな一般的な措置はとるつもりでございますが、外国輸出する船舶に直接補助は与えない。国内における船舶輸出船舶との間に非常な差をつけて、それがやがて海運国際競争において不利な立場日本船舶を追いやるようなことはとらない。やはり同じ立場に立って競争のできるようにしたい。特別の保護を、輸出船舶に直接の補助を与えること等によってやるような方針はとらぬ。そういう同じ基礎の上に立って、今後日本海運行政をやっていきたい、こう考えておるのであります。
  17. 小山亮

    小山(亮)委員 砂糖リンク制のことを言われましたが、砂糖リンク制を実施する以前から、輸出する船の方が安かったのです。砂糖リンク制をやったから安くなったのじゃない。すでに安くできる船を、日本の国の中では高く作らなければならぬような現状だったのです。その点をよく御検討を願いたい。これ以上のことは、また後日あらためて詳しいことを、あなたの方の案ができてから、私はあなたと論戦をしたいと思っております。  それからもう一つは、従来の運輸省海運行政は、大型船主、つまり大船主だけの利益を擁護するようにのみやっておって、大造船所や大船主中心のいろいろな政策をお立てになるけれども、たくさんおりまする中小船主、あるいは中小造船所というものに対するところの保護制度というものとは、著しく差があるのです。ほとんど現在では中小船主というのは、その経営が全く行き詰まってしまって、どうしてやっていっていいかわからないような状態です。これに対して政府は、大造船所に対しても中小造船所に対しても、あるいは大船主に対しても中小船主に対しても、やはりひとしく平等のお取扱いがなければならぬと考えますが、今までのお取扱いの中で、平等な取扱いをしておる、差別の取扱いはしたことがない、こういうようなことを運輸省が言明できるでしょうか。私は一つこの点に対する運輸大臣の御所見を承わりたい。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 今までの海運造船というものが、外航船舶中心にしてきたために、やはりその間、たとえば造船所についても大型船というものの建造になって、中小造船所に対してはそういう点で注文等も行かなかったような点もあろうかと思いますが、特に運輸行政が大企業中心としてということではないが、日本海運界事情というものが、急激に外航船舶を充実しなければならぬということで、外から見れば御指摘のような結果が現われておったと思います。これについては、なかなか困難な問題でございますが、できる限り中小海運あるいは造船企業についても均霑できるような方針をとっていきたい、こう考えております。
  19. 小山亮

    小山(亮)委員 この点がきわめて微妙な点でありまして、先般ああいういろいろな事件が起りましたが、これは大体全部特権大財閥の経営しておるような会社、これがあの事件中心なんです。そしてそれと運輸省がいかに密接な関係にあるか、さらにそれがどれだけ政界を動かすところの潜勢力を持っているか、こういう点を考え合せますと、今日までやられました運輸省海運行政というものがへんぱになるということは、私は当然だと思う。だからへんぱでないということは私は言い切れないと思う。これから私はそういう点を機会あるごとに申し上げるつもりですが、当局の方もこの点をよく勘案せられまして、公平なる取扱いをなさるように極力やっていただきたい。この点は運輸大臣専門家でないしろうとであるから、なおさらやりいいのじゃないかと私は思う。何にもそういうくされ縁がない人がやる方がやりいいと思う。だからこの際あなたが、日本海運の将来のために、はっきりとした海運政策というものをお立てになる必要がありはしないか。日本海運が今日までこのような混迷状態を続けておる一つ原因は、日本には確たる政策がないからです。いわゆる計画造船で船を作ればいい、船は高かろうが安かろうがかまわぬ、こういうようなやり方なのです。それでは日本海運というものは振興しない。ぜいたくな船は作る必要はないのですから、どこまでもむだを排して、能率の高い、しかもドイツより船価の安い船を作る。そこに重点を持っていかなければ、日本海運というものは、たとい船は幾らできても、競争のできない船なんです。競争のできる、競争したら勝てる船を作る、そこにねらいを持っていかなければ、私はだめだと思います。今までの日本のように、海運行政あるいは計画造船というようなことをいわれるけれども、定期船をふやしてみたり、不定期船をふやしてみたり、あるいはまた今度は不定期船の方がいいから定期船を少くしてみようというような、机の上の勝手なことをお役人がきめて、そうしてその日暮しの政策をおやりになったら、ほんとうに船を持って外国競争しようという業者はやり切れたものじゃない。だからこれは一つ根本的に今までのような、いわゆる戦時中の官吏が民間事業を統制したような考え方を一ぺんきれいに払拭されて、新しい立場に立って、そうして公平な立場海運政策というものをお考え直しになる必要がありはしないか。私はこれが今日の急務と思いますが、この点に対しての御所見を伺いたい。何かそれに対して新しい別の構想がおありになりますか。先般新聞なんかに何かちょいちょい出たようでありますが、ああいうことに対しても構想がおありになったら、率直にお話しを願いたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は先ほど申し上げましたように、全般産業とも関連して考えなければならぬ問題でありますので、海運政策ということについては、ただいま経済閣僚懇談会議題にして、結論が出次第皆さんの御批判を受けたいと考えている次第であります。
  21. 小山亮

    小山(亮)委員 率直に言いますと、この間新聞に出ておりましたいろいろな数字から見ましても、本年度どのくらいの船を作るという御計画をお持ちになりますか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 運輸省がただいま折衝をいたしておりまするトン数は、計画造船二十二万トン、これを基礎にして折衝を始めておる次第でございます。
  23. 小山亮

    小山(亮)委員 今までは船主が個人の担保で金を借りたのです。従来のような行き方になりますと、担保力というものがもうすでに底をついておるだろうと思う。その場合に担保なしに金融ということはあり得ないのです。何らかの方法によってこれを打開しなければならないが、それに対するお考えがありますか。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 今御指摘のような事情にありますために、そういう場合における開銀融資関係等もにらみ合して何らかの処置を講じたい、こう考えておるわけであります。
  25. 小山亮

    小山(亮)委員 何らかの処置というだけじゃわからない。新聞にこの間出ましたことは事実なんですか。新聞に出た範囲くらいのことは、委員会お話しになってもいいのじゃないかと思うのですが、あれはでたらめに運輸省の中からどこかへ漏れて出たのですか。それとも運輸省が御発表になったのですか。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 新聞に出たのもいろいろの案があるわけで、その一案であることは事実でございます。たとえば新聞に出た案は、特殊会社を作って、そうしてそれが財政資金を受けて、共有の形で海運会社と船を共有してやっていこうという案、あるいはまた開銀融資の中で見返り資金を株式化するという方法、これもいろいろな案が検討されておる。その案の一つであることは事実でございます。どういうふうにして海運界再建していくかということについて運輸省検討いたしておりますが、新聞に出たような原案がそういう案の一つとして、運輸省にあることは事実でございます。
  27. 小山亮

    小山(亮)委員 私の大臣だけの質問はこれで終ります。
  28. 原健三郎

  29. 上林山榮吉

    上林委員 私は運輸大臣国鉄総裁に一言お尋ねいたしたいと思います。日本戦争が済んでもう十年になるのでありますが、国鉄独立採算昭和何年度ごろになったら完全にできるお見込みであるか。ことに新線建設を含んでの独立採算は、昭和何年度になったならば実施できるものであるか。この基本的な問題をまずお尋ねいたしたいと思います。
  30. 長崎惣之助

    長崎説明員 ただいまのお尋ねでございますが、大へんにむずかしい問題でございます。これから先の見通しの問題、これは日本経済全体の見通しとも関連いたします。また国際経済の面にも相当に大きな関連があると思いますので、それらについて的確なる見通しを申し上げることは非常にむずかしいことでございます。ただ建設線につきましては、ただいまわれわれがやっております建設線は約八百キロございます。これがただいまの運賃で参りまして、八百キロ建設線ができ上りますと、最初の年ではむろん損でありますが、四、五年たった後におきましても、年間約四十五億の損失を来たすという見込みでございます。
  31. 上林山榮吉

    上林委員 あまりにも断片的でよくわからぬのでございますが、基礎的な問題の質問は申し上げませんが、一応の見通しとして、新線建設を含んで昭和何年度ころになつたら、これは五年先でもあるいは十年先でもよろしいが、何年度ごろになったら一体完全に実施できる見込みかという、あくまでも見込みでございますから、そういうこまかい点まで私は論争しようと思っておりませんが、一応の見通しは、もう戦争が済んで十年になったのでありますから、もうぼつぼつ見通しが立たなければならぬ。それば新線キロを非常に多くすればこれはまた別問題であるが、そこにはおのずから常識的な計画というものが立つはずであります。この点を一つ見通しを伺っておきたいと思います。
  32. 長崎惣之助

    長崎説明員 重ねてお尋ねでございますが、これはやはり運賃にも関係がございます。御承知のように国鉄運賃は、なるべく安いのがむろんけっこうで、なるべく安い運賃でいいサービスをしなければならぬという考え方であります。ただいまの国鉄運賃は、御承知と思いますが、戦前に対比いたしまして、物価の約三百三十倍に対して国鉄運賃貨物が百七十倍、旅客は百十五倍という低位にございます。従いましてこういう低位運賃をどこまでも推し進めて参りまして、いつになったら独立採算ができるかということは、非常に見通しがむずかしい問題でございます。  それからもう一つ参考までに申し上げますと、国鉄は約二万キロ営業キロを持っております。その中の約七五%は赤字でございます。しかも人ならず私どもの今やっておりますることは、残念ながら第三次評価の減価償却さえやれない状態にございます。こういうような状態でございますから、それらが健全なる財政に立ち戻りますのは、やはり運賃とかその他の全般的な経済関連いたしまして考えなければならぬ問題でございます。
  33. 上林山榮吉

    上林委員 それはお説の通りでございます。国鉄経済の変動の問題、あるいは日本の物価の高くなったり安くなったりする問題、あるいは減価償却の問題、すべての問題を勘案しなければできないことはわかりますが、そうだからといって、経済六カ年計画を現内閣立てるわけであります。これと並行して国鉄独立採算という問題についても、もう一皮むいて具体的に推し進める時期に来たのだと私は思います。こういう時期について、今総裁のおっしゃるようなむずかしい問題であるからできないのだ、だからいつまでたってもできないのであるから、現状のままを続けて、一般会計から新線建設等のごときに対しても、その他の問題に対しても、財政資金を持ってこなければならぬ、こういう行き方は私はあまりにも依存度が高いと思う。だから五年後にどうなるとか、あるいは十年後にはどうなるとかいう、一応の見通しを持っていかなければならぬのではないかと考えるのでありますが、この点についてどういうようにお考えになっておるか。  さらに私は、これは国鉄全体としては経営が非常に大きいのでありますから、比較にはならないと思いますが、経営の一つ参考にはなると思う。というのは、私鉄の経営が相当の利益を上げておる。独立採算が十分にいっているものが多い。これはスケールの問題の相違でありますけれども、一つの重要な参考にはなろうかと私は考える。これに対してはどういう見解を持っておられるか。なお数字の点については、きょうは私は詳しくは論争いたしません。その点はお含みの上でお答えになってけっこうでございます。
  34. 長崎惣之助

    長崎説明員 ただいまのお話でございますが、私鉄は大体におきまして、成績のいい私鉄は大都会の近辺あるいは中都市の近辺にございます。従いまして輸送量も非常に豊富でございます。同時に私鉄で採算のいいものは、大体において電車運転をいたしております。電気を使っております。私どものところは電化されましたところが、まだ一割にも達しない状況でございます。電気の料金と石炭の値段というものの相違ということも、私は一つの大きな要因であろうと思います。私どものところは約二万キロございますけれども、大都市附近だけをとりますと、むろんこれは相当の成績を上げております。たとえば東海道線というようなものは、むろん採算が合っております。しかしながら、ただいま申し上げましたように、約七割五分という大多数の線路は、みな地方にございまして、大した輸送量がございません。それともう一つは、御指摘の私鉄におきまして成績のいいところは、貨物をやっておりません。大体お客さんだけでございます。お客さんの方は、何と申しましても自分で動きますから、営業費としてはあまりかからぬものでございますが、貨物の方はそれと違いまして、営業費が非常にかさむものでございます。そういう点で、大分国鉄と比較のむずかしい点がございます。  また今のお説でございますが、何か国有鉄道は一般会計から、財政的な資金の援助あるいは損失の穴埋めをしてもらっておるかのように御理解になっているかに思われるのでございますが、ただいまのところは絶対にそういうことはございません。新線も資金運用部その他から利子のついた金を借りまして、それでもって建設をいたしておるということでございまして、今日まで一般会計から御援助を受けたことは、終戦直後二、三年ははそういうこともあったそうでございますが、ここ数年来は全然そういうことはなく、日本国有鉄道法もそういう援助を受けないようになっております。
  35. 上林山榮吉

    上林委員 一般会計から繰り入れているというのは、私の言い回しが悪かったのでございますが、国鉄自体が公債を発行するような、そういう問題を含んで申し上げたわけでございました。  そこで、私鉄と国鉄との経営のスケールからいって、これは比較にはならないが、一つ参考になるのだといったことは、民間の経営者になりますと、こまかい神経まで十分に使って、非常にむだを排除し、合理的な経営に進んでいくという熱意が、国鉄の経営をしておられる、どちらかというと月給を取ってただやっておられる人たちの考えとは、根本的に心がまえが違うように思うのであります。これはあくまでも抽象論になりますから、どこにむだがあるかという点を、私は次の機会に指摘をいたしたいと思いますが、この問題はこの程度にいたしまして、新線建設の問題について少しく申し上げてみたい。  新線建設のうちで——全国各所にあったのでありましょうが、私の県の山川−枕崎線のごときは、着工するというので、すでに祝賀会まで、当局おいでになっていたしたにもかかわらず——これは必ずしも現内閣の責任ではありませんが、それにもかかわらず、これが中止になっておる。せっかく起工式まであげて、これが中止になったということは、沿線の国民の感情を非常に悪化せしめておりますが、今おっしゃった八百キロでございますか、その中にこういうものも入っておるか、あるいは入り得る用意があるかどうかという点について、一つはっきりした御答弁を願いたいと思います。
  36. 長崎惣之助

    長崎説明員 ただいま申し上げました八百キロの中には、山川−枕崎線は入っております。お説のように、私どもも一たん国民の前にこういう線をやるということを発表いたしました以上、これはできるだけ早い機会において実現していきたいということは、きわめて御同感でございます。また国民各位の鉄道に対する熱望の大きいこともよく存じております。ただ何分にも国の予算関係その他におきまして、遺憾ながらまた資金の面でどうも窮屈でございますので、実施できないということでございます。
  37. 上林山榮吉

    上林委員 三十年度に着手する見込みがあるかどうかという点を、簡単にお答え願いたい。
  38. 長崎惣之助

    長崎説明員 これは今後成立します予算が、どの程度建設線に振り向ける資金ができますかどうか、これにかかっておる次第でございまして、今日まだ折衝中でございますので、はっきりしたお答えはできないのでございますが、先ほど申し上げましたように、一たん発表いたしましたことはできるだけ早くやることが、やがては国鉄企業としての財政の面から申しましても、国家全体の面から申しましても、私はできるだけ早い機会にやるべぎものだと思います。
  39. 臼井莊一

    ○臼井委員 関連して。ただいま上林山先生の御質問で、国鉄の採算問題、これは非常にむずかしい問題で、一方において運賃政府が押えている。そうして新線建設等はどんどんやらざるを得ない情勢にある。事実運賃の安いことも私たち認めますが、ただ非常に国鉄が不利になっている一つの大きな原因は、最近の非常なバスの発達といいますか、それによるところが非常に多いのじゃないかというふうに思うのであります。というのは国鉄は、バスがそう発展しないうちは、一つの独占事業としての強味があった。それがほとんど競争線ができたと同じように、しかも所によっては、バスが待合所を作らなくても、駅を待合所のごとく使って、そこに集まってくるお客さんを、列車の到着前に来て、それをさっとさらっていくというような所が、特に私は北海道へ昨年参りまして、そういうことを聞いたのであります。そういう点については運輸省で、お客さんの便利からいっても、たとえば列車の間隔が二時間あるならば、バスの到着はその次の列車との間に到着するようにすべきではなかろうか。国鉄で設備した待合所を、バスの待合所のごとく使ってやるというようなことも非常に不合理であって、運輸省はバスを認可する際に、そういう定期の時間等のことについて十分御監督あって認可しているものであるかどうかを、自動車局長にお伺いしたいのであります。  それとともにもう一つは、国鉄自体が、これは民間の業者から相当反対があるようでありますが、ある程度バスの路線をみずから開拓して、そうして将来の発展性のあるところは、国鉄がむしろそれを競争線を防ぐという意味においてもやっていくことが必要だろう、こういうことを私は考えるのであります。  新線等においては、私はもう政府運賃を停止させておる、そういう点からいっても、政府財政資金をむしろ投入して国家の資源の開発とか土地の開発のためでありますから、やるべきであるというように思っておりますが、大臣いらっしゃいませんから、それについて御意見は伺いませんが、もう一つ、しからば運賃の値上げは、安いからしでいいかというと、これは現在の物価がやはり今の運賃というものを基準にしてできております。従ってこの運賃が安いからというので鉄道運賃を上げれば、必ずこれは物価に響いてくるので、これは現在の物価水準をとどめる、あるいは引き下げるという低物価政策である以上は、むやみに上げるということはできないという矛盾がある。そこで私は政府の非常な力をこれに入れていく必要があろうと思う。私はせめて新線くらいは政府財政資金でまかなうべきである、こういう考えを持っておる。これはその程度にして、ちょっとバスについてお答え願います。
  40. 真田登

    ○真田説明員 ただいまのバスの免許について、鉄道との関係を考慮しているかというお話でございますが、実はこの問題は世界的な問題となっておりまして、運輸省でも最近交通政策連絡会というものを設けまして、鉄道と自動車の調整をどういうふうに持っていくかということを研究いたしております。なおわれわれの方でも具体的なバス路線の審議に当りましても、鉄道との関係は十分考慮して、免許の事務をやっていきたいと思っております。
  41. 臼井莊一

    ○臼井委員 それから定期バスとともに観光バスについても相当考えなくちゃならぬと思うのは、観光バスができて、どこへでも観光に行かれるので非常にけっこうですが、日本の現在の耐乏生活をやらなくちゃならぬという時勢においては、少しぜいたく過ぎる面があるのじゃないかと思う。たとえば私の方の成田なら成田には、京成あり、国鉄あり、そこへ持ってきて、バスが非常な勢いであそこに入って参ります。ということは、レクリエーションで非常にけっこうであるが、ぜいたくとは今日の時代では言えませんけれども、日本経済の実情には必ずしも合っていない点があるのではないかと思う。そういう点も将来十分お考えをいただいて、御研究願いたいと思うのです。  最後にもう一つは、先般来委員会で絶えず国鉄に申し上げておるように、相当の帳簿外の資産というものもあるのではなかろうかということと、それから土地の財産の管理している面で非常にまだ安いところがある。そして中間にそれを搾取しているということを聞いている点もあるのでありますが、そういう点に十分お考えいただきたいということを申し上げます。これで関連質問を終ります。
  42. 上林山榮吉

    上林委員 国鉄総裁の話では、財政資金を持たないでも新線建設はやる自信がある、ただ現在折衝中であるからわからないという。しかし一例を山川−枕崎線にとれば、着工祝賀会までやったのであるから、そういうものは特に考えたい、こういうふうに了解していいと思いますが、そういうふうに了解してようございますか。それから国鉄総裁の自主性において、こういうものはやり得るのだというふうに私は受け取ったのでありまして、運輸省がどうの、政府財政資金がどうのということには何ら関連がないのだ、こういうふうに了解しておりますから、私は総裁の人格とその御決意に信頼するものでありますが、そういうふうに受け取っていいかどうか、この点をまずお答え願いたい。
  43. 長崎惣之助

    長崎説明員 日本国有鉄道法によりますと、日本国有鉄道というのは独立採算でありまして、財政的自主性を持っておるように書いてございます。しかしながら実際の問題といたしましては、予算運輸大臣に要求し、運輸大臣大蔵大臣お話し合いの上調整いたします。そして国会の議決を得るために、これを国会に提出いたすのであります。従って形式的にはいかにも自主性があるようでございますけれども、実は二重、三重の監督を受けるわけでありまして、私がちょうど会社の社長のように、自由に自分の見るところによって借金をしたり、予算を増減したりすることはできません。これは非常な拘束がございます。のみならず、借金も相当に多額の借金でございますので、資金運用部にいたしましても、また一般から公募いたします鉄道債券にいたしましても、このワクというものは、おのずから国の財政の面から制肘を受けるのであります。また一方において、先ほど申し上げましたように、また臼井委員からのお話もございましたように、国家全般経済財政の面からいたしまして、運賃というものも、いかに物価とかけ離れておっても、ある程度制約を受けるというようなことでございまして、国鉄の財政というものは私どもが自主的に決定をいたしまして、何ら他から制肘を受けないというものではございません。非常に大きな制肘を受ける。しかしこれはむろん国鉄の大きさ、あるいは国民経済に及ぼす影響その他から考えまして、そういう監督を受けることは私は当然であろうと思います。それをとやこう申すのではありませんが、いかにも私自身が自由にできるかのように御理解になっていただいたのでは、非常に困るのであります。そういうことは私にはできない。ただ自分といたしましては、先ほど来申し上げましたように、これはヨーロッパにおいてもアメリカにおいても同様でありますが、今ごろ鉄道の新しい線を敷くようなことは非常に珍しい話でございまして、ほとんどございません。むしろ採算の合わない線を引きはずして、そこにバスなりトラックなりやる、みずからやるか、あるいは下請業者にやらせるかというふうなところまで、だんだん道路運送と鉄道運送との調整とでも申しますか、共同的な作業とでも申しますか、そういうふうなことでございまして、両方とも国民経済の上から見て、何が一番利益であるかというふうなことから今整理をしているのが、ヨーロッパあるいはアメリカの現状でございます。しかし日本におきましては、そういう面も必要であるが、他面におきましては、地方開発のために新しい鉄道線路を敷くことも必要ではなかろうかと考えております。鉄道を敷くことによりまして、眠っておった森林から木材が出る。あるいは眠っておった水が電気になるというようなことは、国家全般からいたしましたならば、非常な利益であろうと私は考えておりますので、新線建設はやらなければならぬのではないかと思っております。従いまして先ほど来申し上げましたように、ただいま着手しております線路は、企業経営の面からいたしますと、一刻も早く、また国民経済全体の面からいいましても、なるべく早い時期にこれを完成するという方向にいかなければならぬと考えております。不幸にして昨年のごときはわれわれの要望いたしました資金が得られませんで、予算面上われわれは少くとも六十億なり五十億の金をほしかったのでありますが、それが半分になってしまったのであります。こういう状態でありまして、遅々として進まない状態をどうかして打開していきたいと考えておりますので、運輸大臣にもそういうことを申し上げ、この打開については一段の努力をいたしたいと考えております。
  44. 上林山榮吉

    上林委員 長々と説明がございましたが、やるのかやらぬのか、やるようでもありやらぬようでもあり、ヨーロッパやアメリカの例を御説明になって、なかなか御苦心の御答弁があったようであります。われわれだってむやみやたらにそういうものを無限大にやれというわけではないのでありますが、ただ着工の祝賀会までやっており、それを資金が得られなかったからやらない、あるいはそれを言いわけするために、採算の合わぬところははずしてバスでも通すのだというふうに、全体の経営からその一つの問題をせんじ詰めて御答弁になっているようでありますが、頭が非常にさえておられる総裁の答弁としてはりっぱだが、現実の政治を行うという点から私ども批判すると、これは無責任な答弁だ、こういうように言いたいのであります。しかしこれはもう言いませんが、それならばことしは、鉄道のいわゆる公債は、今の折衝過程では大蔵省はどれくらい許すということになっておりますか。その目鼻が大体おつきになっておるかどうか。これは非常に重要な問題だと思いますので承わっておきたいと思います。鉄道の借金の問題……。
  45. 長崎惣之助

    長崎説明員 皆さん御承知のように、私はぜひ運賃の値上げをしていただきたいということを申し上げましたけれども、それは物価水準その他から押えられて、今度は見送るということになっておるのであります。従ってそこに大きな隔りができたのでありまして、政府からどれだけの出資が得られるか、あるいはどれだけの金を一般市場なりあるいは資金運用部から貸すかということにつきましては、ただいま折衝中でありまして、はっきりしためどはまだついておりません。
  46. 上林山榮吉

    上林委員 この問題については、大蔵当局はなかなか要領がいいのでありますから、普通のお上品な交渉だけでは妥結しないのだというくらいの御決意で、御奮闘を一つお願いいたしたいと思います。  次に、これは与党、野党に限らず真剣に考えなければならない問題として、十年前の一キロ当りの経費と、現在の一キロ当りの経費はどれくらいになっておりますか、この点を私はまず伺いたい。さらについででございますから、十年前の一キロ当りの人件費と、現在の一キロ当りの人件費はどれくらいになっておるか、この点をお聞きしたい。それからもう一つついでに申し上げますが、石炭は何カロリーを基準にして納入させておるか。その納入のカロリーは、私どもの聞いたところでは不十分なものもある、業者とのくされ縁によって、カロリーの下ったものまで納入しておる。これは単にうわさとして私はお尋ねいたしますが、そういう点はどういうふうになっておるか、この三点の資料をお出しください。
  47. 原健三郎

    原委員長 それでは資料を御提出願います。
  48. 上林山榮吉

    上林委員 私の質問にお答えできなければ、資料を整えていただきたい。
  49. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま職員は、十年前との数はどうなっておるか……。
  50. 上林山榮吉

    上林委員 職員の数じゃない。一キロ当りの人件費、それから経営費。
  51. 石井昭正

    ○石井説明員 一キロ当りの人件費あるいは経営費につきましては、ただいま正確な数字が手元にございませんから……。(「表があったじゃないか」と呼ぶ者あり)人件費と物件費の割合はございます。
  52. 上林山榮吉

    上林委員 そうじゃない。ぼくの言うのは、十年前の一キロ当りの人件費は幾らかかっておるか。あるいは経営費、これは物件費も入れて幾らかかっておるか。それから現在それはどうなっておるか、こういう質問です。答えがすぐできますか。
  53. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいまこの席ではちょっとお答えしにくいのであります。
  54. 上林山榮吉

    上林委員 それではあとでけっこうですから、資料をお出し下さい。  それからもう一つ、石炭のカロリーは幾らを基準として納入さしておるか、あるいはその検査は十分に行われておるか。僕らは行われていないといううわさを聞いておるのです。中には四千カロリーくらいしかないものまで入っていると聞いております。
  55. 石井昭正

    ○石井説明員 石炭の購入につきましては、私直接担当しておりませんので、もし間違っておりましたら後に訂正させていただくことにいたしますが、ただいまのところ大体六千五百カロリー見当を標準にしております。標準のカロリーと違ったカロリーのものが出ますれば、そのカロリーに応じて価格の上下をいたしておるわけであります。そのカロリーの計算につきましては、全国に三カ所の検炭所がございまして、そこで正確な検査をやって、カロリーを検定いたしておるのであります。従いまして悪い、使えないような石灰は、もちろん廃却いたしまして受け取りませんが、カロリーが予定より若干低いというものは、その分だけ代価を差し引いて受け取っておる、かようにやっておるはずでございます。
  56. 上林山榮吉

    上林委員 若干低いものは安くとるというのだが、六千五百カロリーを基準にして、何カロリーまでが若干悪いというものに入っておるのでございますか。
  57. 石井昭正

    ○石井説明員 私の担当の仕事でございませんので、後ほど担当の局に問い合せまして、正確なお答えをいたします。
  58. 原健三郎

    原委員長 下平君。
  59. 下平正一

    ○下平委員 大臣がいないので、大臣質問をあとにいたしまして、長崎総裁にお尋ねをいたしたいわけでありますが、最近の国鉄の経営状態はかなり逼迫して、見ようによっては重大な危機になってきておると思うのです。国鉄当局としては運賃の値上げというようなことを計画いたしたようですが、今日値上げによってまかなっていくというようなことは、不可能な状態になっておるではないかと思う。そこで私は、昭和二十九年度の国鉄の経営等に相当詳細にメスを入れて、こまかく分析して将来の方針立てるということが必要だと思うのです。もう一つは、国鉄の今日の経営の危機というものは、御承知のように昭和二十四年に公共企業体になって以来、この公共企業体そのものに対する統一した考え方、統一した方針というものがなくて、公共性の追及と変則的な独立採算制の間にはさまって、今日国鉄の経営が妙な形になっていると思うのです。この点については大臣お尋ねするとして、昭和二十九年度の赤字は、資料によりますと三十八億というような数字が出ておりますので、これらの赤字の原因の大まかな点を御説明願いたいと思うのです。もう一つは、このままの状態で行けば、昭和三十年度においては百億円くらいの赤字が出るというようなことも言われておりますので、運賃値上げのできないという今日、どうして三十年度の経営、もちろんこまかい数字的なものは要求いたしませんが、大綱としてどういうような方法で経営をやっていかれるのか、こういう点について御質問をいたしたいと思います。なお佐藤経営委員長の出席を希望しておきましたが、御出席がないようでありますし、昭和二十九年度の特に支出経営費に対する詳細な資料を要求しておきましたが、これも出ておりませんので、三十八億円の赤字のおもな原因と、昭和三十年度の経営方針等について大綱をお尋ねいたしたいと思います。
  60. 長崎惣之助

    長崎説明員 二十九年度の赤字の一番大きな原因は、何と申しましても貨物収入が非常に減少したという点でございます。なおそれに付随しまして、われわれの予備費で予定いたしておりました以上の災害があったというようなことも、大きな原因になっているのでございます。
  61. 下平正一

    ○下平委員 そういう赤字、二十八年度において八十億、二十九年度において約百三十億くらいの災害による被害があるのですが、昭和三十年度においても当然そういうような状態が出てくると思うので、昭和三十年度の経営の大綱について御説明していただきたいと思います。
  62. 長崎惣之助

    長崎説明員 これは先ほど上林委員にもお答えいたしましたように、今日まだ収支の予算というものが的確にきまっておりません。われわれのやりたいこと、またやってもらいたいこと、いろいろございますけれもど、これはやはり国の一般財政あるいは国民経済というものにも重大な関連がございますので、今後運輸大臣にお願いをいたし、また政府関係の方面にも十分な御了解を得まして、でき得る限り国鉄の財政の健全化に向って進んでいきたいというふうな、きわめて抽象的なことしか申し上げられないのはきわめて遺憾でございます。
  63. 濱野清吾

    ○濱野委員 資料の提出を要求いたします。  第一に、タクシー運賃料金認可について、当局が重要な資料としていると言っている大型、中型、小型の各車両営業上の原価計算書並びに需給関係の資料。第二に、本年二月暫定料金として当局が認可したところのトヨペット及びプリンス、いずれも五五年の新車ですが、これの営業上の原価計算書並びに需給の資料。第三に、前第二項の暫定料金の認可に至るまでの経過概要並びに特別に認可をせざるを得なかった事情があれば、それを記録して書類を提出願いたい。
  64. 原健三郎

    原委員長 午前はこの程度にいたしまして、午後一時半より再開いたします。    午前十一時五十三分休憩      ————◇—————    午後二時四十一分開議
  65. 原健三郎

    原委員長 それでは午前に引き続いて調査を進めます。  最初に山本委員より発言を求められておりますのでこれを許します。山本友一君。
  66. 山本友一

    ○山本(友)委員 この際決議案を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    港湾整備促進に関する件   我国経済の自立は、現下の情勢に鑑み貿易の振興と国内産業の発展にあること、論を俟たない。然るに海陸輸送の接点として物資の輸送上極めて重要な役割をもつ港湾諸施設は、従来予算制約によつて極めて不備なるものがあり、為に海陸輸送の能力を充分発揮し得ないのが実状である。   よつて政府は、昭和三十年度に於て港湾関係の所要経費百五十億円程度を確保し、以て港湾諸施設の速かなる整備をはかられんことを望む。  右決議する。  この趣旨は今さら申し上げるまでもございませんが、従来の軍政下の惰性によって、とかく港湾行政が等閑に付せられておった次第でありますが、われわれはこの際海運行政の基盤をなしますこの港湾予算につきましては、ぜひともこの貧困を充実ならしめんがために、百五十億円程度の予算を獲得して、よってこの貧困を充実ならしめんとするの緊急度をさらに痛感いたす次第でございまして、よって本案を提出いたした次第でございます。何とぞ各位におかれましては、満場の御賛成を賜わりますようお願いをいたす次第であります。
  67. 原健三郎

    原委員長 ただいま山本委員より決議案が提出せられましたが、御意見があればこれを許します。臼井莊一君。
  68. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま提出されました決議案につきましては、その趣旨においては全く同感でございまして、われわれもけっこうな決議案だと存じますが、ただ「所要経費百五十億円程度を確保し、」という事項が入っておりますので、この金額を明示するということはいかがかという疑念を持つのであります。と申しますのは、国会自粛という観点から先般国会法が改正せられました際にも、予算を伴う立法については五十名以上の署名を要するというふうに改正せられました。もちろん立法とは違いますけれども、その精神において一つの疑念を持つのでございます。また御承知のように現在の政府が、一兆円予算というワク内の制約において予算を編成中でございまして、その点についてはすでに自由党の当時、同じワク内において八十五億しか確保できなかったという点から見ましても、果して百五十億程度というのが確保できるかどうかということについては、現在の政府が各種の公約を実行せんとする際に、その点においていまだ明確な目途が立っていないと思うのでありますが、さらにもしこの決議がそのまま実行できなかった際には、やはり委員会の権威というものも考えなくてはならぬと考えますので、この金額を明示するということについては賛成いたしかねるのでありますが、しかしその金額におきましてもただ程度という字句がございますので、それを一つ十分政治的に解釈いたしまして、必ずしもその点において満足するものではございませんけれども、趣旨においては賛成でございますから、本決議案に対しましてはその理由を付して賛成いたします。
  69. 原健三郎

    原委員長 ほかに御意見がなければ、それでは右案を当委員会の決議といたすことに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 原健三郎

    原委員長 それではさよう決定いたしました。右決議の取扱いにつきましては、委員長に御一任をいただきたいと存じます。  この際運輸大臣から発言を求められておりますが、これを許します。運輸大臣三木武夫君。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいまは港湾整備に対して御熱意のある御決議を賜わったわけでございます。その趣旨においては全く同感でございます。ただ百五十億という金額につきましては、今臼井君のお話もありますように、今後の予算折衝に待たなければなりませんので、御希望の金額になるかどうかということについては、将来の交渉にゆだねていただきたい。しかしこの趣旨に沿うて、極力港湾整備予算確保いたしますように努力をいたしたいと考えております。     —————————————
  72. 原健三郎

  73. 徳安實藏

    徳安委員 昨日の委員会におきまして、トヨペット、プリンスの料金値下げの問題に対して質疑が行われたようでありますが、私もその点につきまして運輸大臣に率直な御意見を伺いたいと思います。この問題につきましては、経営が健全であって、しかも従業員の待遇もよくでき、あるいはまた車の維持、償却等が完全に行われます限り、できるだけ安くするということにつきましては、国民の世論でもございましょうから、私どもは決していなむものではない。むしろ歓迎するものであることを先につけ加えておきます。ただ本件の取扱いにつきまして若干私どもの不審に思う点がございますので、大臣の所信を伺いたいと思うのであります。  料金引き下げに対する申請が昨年の夏出まして、十二月に聴聞会が開かれておるのであります。その結果の賛成、反対のいきさつにつきましても、大臣はおそらく詳細御存じのはずであります。しかるに陸運局長が権限をもってこれを決定すべきであるにかかわらず、陸運局の意見も私どもの耳にするところによりますと、この委員会に対してはあまり賛成しがたい空気が強かったらしいのであります。しかるに外部の世論もあり、いろいろな制約もございまして、その取扱いに困窮を来たした結果、これは異例のことと思いますが、権限が陸運局長にありながら、その認可不認可に対する態度を決しかねまして、本年の一月に本省に意見を聞いて参ったそうであります。その結果運輸大臣から、本件に対しては暫定という文字を加えて認可してしかるべしという御命令が出まして、その命令に基いて東京陸運局長が認可したというように聞き及んでおります。この問題に対して運輸大臣としてタッチされました範囲について、その御経過を承わりたいと思います。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこういうふうに考えておるのであります。タクシーが料金のいたずらな値下げをして、ダンピングの状態になることはよろしくない。しかしトヨペット、プリンス十円の値下げ、そういうことによって利用度が高まってきてバランスが合うということであるならば、大部分の自動車業者が下げてほしい、それでやっていけるということであるならば、利用者の立場に立ってその程度の値下げは認めてよかろう。しかしながらそのために今日まで保っておる料金のバランスが破れることによって、また他の車、たとえば八十円、七十円、六十円となっておるわけでありましょうが、そういう点でバランスが破れて、たとえば他の七十円の料金によっておるものが十円程度下げてもやっていける、こういうふうな申請が大部分の業者から出るならば、その程度の値下げを認めよう。そうして従来のバランスは維持していこう、こういうふうに申したのであります。やはりこれが何十円も下げて、そうしてダンピングが行われるようなことは処置しなければならぬが、十円程度の値下げは、それでやっていけるという業者の意見であるならば、この値下げを認めてよかろうという考え方の上に立って処理をいたしたわけでございます。
  75. 徳安實藏

    徳安委員 申し上げるまでもありませんが、料金というものは車の大きさであるとか、馬力によって大体区分されまして、どの車にもあまり大きな隔たりがないような、公正な料金を認可さるべき建前のものであろうと考えますが、いかがでありましょうか。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 従来料金を決定いたしましたときには、いろいろ乗客の数、馬力を勘案してきめられたと思います。そういうことで料金の基礎が出ておると思いますが、一面において料金が下ることによって利用度が多くなる。そういう面における自動車業者のバランスの取り方もあると考えるのでございます。
  77. 徳安實藏

    徳安委員 その点ももちろん一理はございましょうが、しかしこの企業の健全なる発達を助長するという意味から申しますならば、均衡を破壊するような行き方というものは、決してよろしくないと思います。もちろん低廉な料金で取り扱うことにつきましては、これは歓迎することでありますから、決して悪いとは申しません。しかしそのことによってもし業界に波乱が巻き起り、あるいは混乱を来たし、あるいはまたその値下げによって他の車との間に均衡を失うというようなことがありますと、おそらく運輸省のお考えになっておる意図とは、逆な結果に陥りはしないかと考えるのであります。今回のトヨペット、プリンスの料金値下げに対しましては、他の車との均衡を決して失わない、そして同時に公正なる料金構成を破壊したものではない、こういう工合に大臣はお考えでございましょうか。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 料金のどの程度が均衡であるかという算定は、なかなかむずかしい問題だと思います。そこで運賃にはいろいろの算定の基準があるわけです。今私が運輸当局にも言っておることは、何か運賃を決定するために総合的に検討を加えていく——今運賃委員会というものをやっておるようでありまして、おそらく暫定というのも、根本的に日本のタクシー、ハイヤー等の運賃を決定しようということで、検討を加えておるのであります。なかなか御承知のようにハイヤー、タクシーの組合が幾つにも分れておって意見が一致しないために、組合側全体としての運賃というものに対しての意向がまとまりにくいという点にも、その運賃委員会の決定がなかなかむずかしい点もあるようであります。これは何とかして今後改良を加えて、タクシー、ハイヤー等の運賃に対してはなるべく合理的な基準を出すように、工夫を加えていきたいと思っております。ただ今後、従来より保っておったバランスが破れて、そうしてなかなか営業がやっていきにくいという事実があったときには、その業者の申請によって、十円を限度として値下げをしてもよろしいという考え方に立っておるわけであります。そうしてバランスを維持していきたい。
  79. 徳安實藏

    徳安委員 この料金の変更は、他の車にもおのおの影響がございますから、きわめて慎重なる態度をもって認可を決定さるべきであろうかと存じます。そうした意味におきまして昨日自動車局長の話によりますと、最近業者関係とも御相談の上で、公正妥当なる体系のもとに基本的な料金を決定するように話し中だというお話がございましたが、私はこのトヨペット、プリンスの決定認可をなさいます事前に、むしろそうした努力をお払い下さって、これと並行して認可をなさることが業界のためにも、また一般国民のためにも望ましいことではなかったかと考えるのであります。しかるにそうした努力が、払われたかもしれませんが、その結論を得ずして、急遽総選挙中にトヨペット、プリンスだけに、大臣の御指示によって料金が認可になったというようなこと、しかもその後における影響がきわめて甚大であるという実相を見ましたときに、私はどうしてもそこに納得のいかないような気がするのであります。しかしこれは見解の相違と言われれば別問題でありますが、何ゆえその結論を待たずして、ただこの二つのものだけに急いで、この選挙中に許可されなければならなかったかという理由がございますれば、それをちょっと承わりたいと思います。
  80. 三木武夫

    三木国務大臣 選挙中ににわかにやったという理由はないのであります。この問題は昨年度、ずっと長い間の懸案で、運賃の決定は慎重を期さなければならぬということで、公聴会を開いたり、いろいろの手続をとって、事務当局の方へ検討を加えることを命じてあったわけであります。急に選挙中にこういう料金をあわててしなければならぬ理由もございませんし、そうやったこともない。長い長い懸案で、いろいろな手続を経て、そういうことを今日の段階においてすることが適当であろうという、事務当局の結論がそこに到達いたしましたから、私も利用者側の立場に立って、料金が安くなることはけっこうである、こういう立場に立ってよかろうということを申したわけでございます。これは急に天から降ってきたようにきまったわけではない。長い間の懸案であった。その問いろいろな手続を経て事務当局の結論が出て参ったから、私もこれに承認をいたしたわけでございます。
  81. 徳安實藏

    徳安委員 長い間とおっしゃいますが、昨年の夏に出ておるのでありますから、もちろん長い間であったとは思いますけれども、十二月に聴聞会が開かれておるのであります。しかしかようなものは先ほど申しましたように、きわめて慎重な態度で、他にも影響があるようでありますから、ともどもに話し合って、そうして一つの結論を得た上で、これも下げる、同時に他のものも下げさして、みんなが両立していく形において助成をなさいますことが妥当ではないか、かように思うのであります。そうした他の結論が出ないのに、この二つだけを先に申請があったからやった。しかもそれも事務当局で取り計らいかねて、運輸大臣に伺って、運輸大臣が指図されたということに、私どものちょっと納得のいかない点があるのであります。  しからば最後に一言お尋ねいたしますが、もちろん運輸省にも専門家がたくさんそろっておるのでありますから、ここに遺漏があるはずがございませんが、将来にわたりましても、この種の認可料金で車の保持、あるいは従業員の給与関係、あるいは償却等を完全に行なって、しかも健全経営が成り立つという結論が、運輸当局の専門的な立場からはっきりと大臣から伺えましょうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  82. 真田登

    ○真田説明員 その点はトヨペットの値下げ申請がございました際に、それ以前の各車種についての原価計算、あるいは実車率等から割り出した計算が古いものですから、新たにトヨペットについて原価計算をいたしました。一キロ当り走るのにどのくらいの経費を要するだろうという経費を、今度は実際に車に人を乗せて走る率はどのくらいあるだろうか、それを計算いたしまして、逆算いたしますと、大体七十円にしても一応原価はまかなっていけるという見通しがつきましたものですから、認可したわけであります。その原価計算の中には、健全な経営をやっていくためのいろいろな要素は、われわれとしましては十分見込んだつもりでございます。
  83. 徳安實藏

    徳安委員 もしそうだといたしますならば、日本には決して二つの車だけではありませんので、タクシーに使っておるものがたくさんございます。従って認可の申請がなかったからしなかった、あったものだけ取り扱ったと言われればそれまででございますけれども、しかし監督行政立場におられる運輸省あるいは陸運局が、他のたくさんの車の存在することを無視して、そうしてこの二つだけを認可なさったということには、私ども従来の運輸省のおやりになっておることから考えて、どうしても納得がいかないのであります。他の種類の車の使用者に対しましても、同様な見地から勧告もできましょうし、招致して意見を述べることもいいと思います。少くとも基本的な体系を立て、どこもあまり迷惑せずに、足並みをそろえて一つの原価計算によって、この程度ならばやっていけるのだという基本がきまりましたならば、それに足並みをそろわせるような努力をなぜお払いにならなかったか、これを一つ伺いたいと思います。
  84. 真田登

    ○真田説明員 実はトヨペットの運賃の申請がありましたのは、昨年の八月ごろだったと記憶いたしますが、非常に古いのでございまして、それが全部の業者でなしに、ぽつりぽつりとふえてくるという格好でございましたために、その聴聞をやりましたのも十二月になってからでございます。それまでにいろいろと原価計算は始めておったわけでございますが、われわれといたしましてはお説の通り、できるだけ他の車種との関係についても、十分将来の見通しをつけてやるのが一番いい方法だ、こう考えておりましたので、それについての話し合いを関係の事業者の方々に寄っていただきまして、何回か会合を催したのでありますが、最後の線に行きますとどうしてもうまく合わない。こういった状態で一月まで参りました。前国会の最終のときだったと思いますが、この運輸委員会で、なぜ早く認可しないのだというおしかりを受けたような状態で、それでまずこれを認可して、すぐあとで追っかけて調整のとれた運賃をきめるということで、認可した次の日かその次の日にはすぐ運賃委員会を開きまして、全体としてのバランスのとれた運賃について協議を始めたわけであります。それと同時に申請のなかったトヨペット等も認可申請を出すということで、トヨペットについては各事業者の間のバランスがとれたのであります。他の車種との関係についての話し合いが、その後本数回にわたって繰り返されたのでありますが、どうしても全会一致といいますか、各組合の意見を全部まとめるところまで参りませんでしたために、意見の合いました四組合から、新たにダットサン、オオタ等の値下げを含む申請が提出されたというのが、現在の状態であります。
  85. 徳安實藏

    徳安委員 では局長にちょっと伺いますが、今回の認可は東京だけのようでありますが、もし同種のものが大阪、名古屋あるいは神戸等から出ましたならば、大体東京の例によって直ちに御認可になる方針でありますか。
  86. 真田登

    ○真田説明員 この問題につきましては、大阪あるいは名古屋では業界が一本になっておりまして、各事業者が勝手に申請するというふうな状態になっておりませんので、その点は事業者たちが、ほんとうにみんなでやっていける運賃を相談して出してくるという態勢になっておりまして、今度の運賃値下げ問題につきましても、大阪その他の地区ではあまり賛成をしておりませんで、お互いに勝手な案の申請はしないようにという申し合せをしておるようであります。
  87. 徳安實藏

    徳安委員 国家的見地から考えまして、東京がそれでやっていけるということでありましたならば、組合から申請があるない、個人の申請があるないにかかわらず、そうした有力な統一した団体がありますから、むしろ国民のために、陸運局なり運輸省がみずから勧告されて、その基準の料金を示されて、これでやっていけるじゃないか、これにならえというくらいのことがあってもいいのじゃないかと思うのです。すべての料金は東京より大阪の方が安い。物の相場がそういう慣例がありまして、東京でやっていけるならば、大阪でやっていけないはずはない。東京では異例な大臣命令によって値下げの認可をした。ほかの方は言ってこないから、高かろうとほうっておくのだというようなことは、これは従来の運輸省のお考え方から考えてみれば、どうしても矛盾しておるのじゃないか。東京で下げられるくらいならば、大阪、神戸もそうした団体があって一本でいけるなら、なおさら幸いなことですから、早く手を伸ばして東京と同時に安くしたらどうか。同時にまたほかの業種に対しても、この車はこれでやれるのだから、お前の方もこれでやれるじゃないか、早く申請しろと言って、足並みをそろえさせたらどうか。もちろん陸運局で毎日々々折衝されておるわけです。朝から晩まで局長と業者との間というものは緊密な連繋があるわけですから、そうした話し合いのできないはずはない、かように思うのであります。しかしこの点については一つ局長さんにもう一ぺん伺いたいと思います。  さらにもう一つ伺いたいことは、全部の意見が一致しないまでも——今うわさに聞きますと、三分の二以上の者から妥当公正だといって一つの案ができまして、申請をしたいという考えを抱いているそうでありますが、一体これに対してはどういう御方針でありますか。先ほど大臣のお話を聞きますと、値下げをすることにおいて十分経営が成り立つのだ、ほかの方からもしそういう希望者が出るならば、もちろんそれは許可してやらなければならぬ、こういう御答弁でありまして、これは当然だと思います。この問題につきましても、もうすでに運輸省の方に原価計算なりその他の基本的な調査が完了いたしておりますならば、手数のかかるはずはありません。すみやかに陸運局長をして料金値下げの承認を与えられるのは当然じゃないか。そういうことが延びておりますことはどういうわけでありますか。できることならばこれらも早くして、そうして世の誤解を一掃されることが妥当ではないかと思います。
  88. 真田登

    ○真田説明員 最初お話しのございました運賃の決定に際して、陸運局なりが相当指導すべきであるというお話は御説の通りでございまして、前回運賃を決定いたしましたときには、陸運局の方でいろいろと計算いたしまして、また事業者の計算いたしましたものと突き合せまして、大体この線ならいいじゃないかという話がついてから、各事業者が申請をしてきた、こういったような状態でございまして、実際上の指導をやって参ってきたわけでありますが、今回の申請は、東京都内の特殊事情と申しますか、組合が非常に割れておりましたために、そういった話し合いがつかないまま出てきたというので、いろいろと審査が長引いたわけであります。現在出てきております申請につきましては、きょうも東京陸運局は、課をあげてその原価計算その他をやっております。これにつきましては聴聞の会を開きますが、これも来月の上旬中には何とか開いて、関係の方の御意見を聞き、また陸運局の方で計算いたしました原価計算、そういうものに基きましてやっていきたい、こういうことなのでございます。先ほど大臣からお話のございましたように、もしある程度下げてもお客がふえるといいますか、需要が増加することによって経営が成り立つものならば認めたいという考えでございますが、今回の申請は、そういった値下げだけの申請でなしに、新しく出てきました新型の車に対する値上げといったような問題も含んでおるものでございますから、その点でなかなか意見が合わないというように陸運局から報告してきております。
  89. 徳安實藏

    徳安委員 陸運局の報告はどうありましょうとも、先ほどの大臣のお説は私はほんとうにもっともだと思いまして、心から賛成するわけでありますが、かりに量が同じことだ、一日にお客が一万人しか乗らないのだ、しかし車の種類によっては、一方がうんと値下げされた場合にはその方にお客が流れていく。一万人が、料金が安くなったために一万二千人に量がふえるというのではなくて、一万人のうちからある特殊なものにお客が流れていくのだという考え方なら、私はよくないと思います。やはり一万人のものが、その料金が安くなることにおいて、一万二千人になり一万五千人になるということならけっこうだと思います。しかし特殊なものだけ安くして、それにお客が流れていく。そうしてそのためにあとに取り残されたものが、料金が高いために収入が減ってくるということならば、これは本省としては考え直さなくちゃならないと思いますが、すでに現在そういう傾向が現われているのではないか。これは私が多く申し上げなくても、大臣専門家であるあなた方運輸省がよくおわかりのはずであります。  私は本日はもっといろいろお尋ねしたいこともございますけれども、いずれ適当な機会にもう少し掘り下げて、私の持っております資料に基いて御意見を承わりたいと思いますから、本日はただ基本的な大臣の御方針だけ承わっておけばけっこうであります。いずれまた日にちを改めて御質問申し上げることを申し上げておいて、私の質問はこれで打ち切りたいと思います。
  90. 原健三郎

  91. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は徳安さんの今の質問関連をして、二、三質問をいたしておきたいと思います。  外車と国産車の料金の問題の起きましたのは、今答弁にありましたように昨年の夏からで、長い間の懸案をどうしてこうしておくのかという質問を、昨年の十二月に私はいたしております。そして国内の産業を向上発展させ、一面にはドルを国内産業に有効に使って、国際収支に貢献をさせていく、そういうためにも国産車を奨励していくことは非常に大きな意味を持つものだ、こういうことを私は質問をして、その通りだという同感の答弁を得たのであります。そのときに答弁のあった点から考えますると、このトヨペット、プリンスの国産車に対する料金の改訂は、これは東京地区に限っての値下げの要求であったようであります。しかし私はやはり国産車を使用することによって、日本経済に及ぼす影響の非常に大きいことを了解いたしまして、また同時に、ただそれは経済事情というだけではなく、いわゆる労働者の雇用の面からいたしましても非常に大きな貢献をなすものでありまして、私は何としても国産車を奨励するということには賛成であります。しかし、だからといって、今徳安さんも申されるように、業界の需要面の、いわゆる業界の中で混乱を生ずるような運賃政策をとるということは、これまた好ましからざるものだ。そこで私は申し上げたいのは、今一番問題になっておりますのは、業界においてお互いに非常な競争のあることを承知いたします。そしてそのために公益性を持つものとして免許制度がしかれて、それをある程度セーブしていく。そしてダンピングに陥らないように、ある程度の抑制をもってこれを制禦していく。こういうことは当然行われなければならぬものであります。しかしそれがまた一面には車種、いわゆる車の名前だけをもって事務的に画一化される弊害が生ずる。この弊害が今日一番大きな問題になっているのであります。たとえばトヨペットあるいはプリンスにいたしましても、五五年型あるいは五四年型の後期からの車種につきましては、客の収容力は、五五年型でありますと大体大型と同じような収容力を有し、しかもそのエンジンの出力は、五四年型中期以前のトヨペット、プリンスに比べまして、非常に大きな出力を持っておる。ほとんど大型の出力と変らない出力を持ち、しかも客の収容力も、無理をすれば大型とほとんど同じような収容能力を持つ。こういうようなものまでも、ただトヨペット、プリンスであるというだけをもって七十円で競争されたのでは、これは非常に迷惑になるのだから、そういうような画一的なものを排除して、実情に即した料金をきめてもらいたい、こういうのが私は今日の業界の大きな争点であり、希望ではないかと思うのでありますが、一体当局ではただ車の名前のみをもって、その収容能力等を勘案せずに、画一的に、事務的に料金をきめて、それで満足していこうというのか、あるいはそうではなく、私が今申しますように、実際面に即して料金を設定し、合理的にこれを考えていこうとなさるのか、その点がこの料金政策については一番基本的な問題ではないかと私は思いますので、大臣から一つこの点について御答弁をいただきたいと思います。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 この料金制度は、私もいろいろな不合理があると思います。そういう点で料金をいろいろ諮問する機関、適正な運賃はどういうふうな運賃がいいかというようなことについてきめるような一つ委員会というものが、もう少し納得のいくような方法でできないか、これを何か作る工夫はないかということを事務当局にも言っておるのであります。運賃というものの決定を、もう少し合理的な基礎の上で決定できるような機関というものを作りたい。そういうことが一つと、もう一つは組合が御承知のように幾つもの組合に分れて、その組合の中  にいろいろな対立もあるようであって、これがハイヤー、タクシー事業というものの企業の安定を阻害しておる面がある。いたずらにダンピングのような競争をしては共倒れになるのでありますから、こういうことで組合自体をもう少し整備させていく。これはいろいろ法律でどうというわけではないのですが、そういう方法考えて、一方においては運賃のきめ方というものが、もっと合理的にきめられるような式にしていきたい。これに対して一つの案を出すように、事務当局にも言ってあるわけであります。その場合に御指摘のような単に名前ばかりでもいきますまい。外国などは、同じ車でも人間が何人乗るかによって、料金が違ったりしている。イギリスなんかは、一人乗った場合と二人乗った場合と、同じ車でも料金が違ったりしている。各国とも料金というものについては、いろいろ工夫をしておるわけでございますから、これはまた日本の国情に適したような料金制度でなくてはならぬのですから、そういう点に検討を加えて、この料金というものを合理的にきめていくような機関を持ちたい。今お話のような名前だけというわけにもいかぬことは、御説の通りだと思います。いろいろ人間の乗る容積等も問題になってくる。そういうものをいろいろ勘案して、もう少しこの運賃というものの決定が、合理的基礎の上できるような工夫はないかということを検討いたしておるわけであります。
  93. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 考えられている点につきましては私も同感で、それを進めてもらいたいと思いますが、しかし業界の料金改訂の問題が一番問題になりました原因は、まず最初はルノーとかワーゲンとかいう足の速い車ですが、これと同じ料金ではとうていトヨペットは競争できないのです。従ってあの勢いでワーゲンだとかあるいはルノーというような小型車、中型車がどんどん入ってくるということになれば、日本の国産車はほとんど窒息せしめられる。だからこれを防止するためにも、ぜひとも改訂をしたいというのが、この料金改訂の起因をなしておる。ところが今度はその料金を改訂してみたらば、今申しますように一九五四年後期から五五年前期のトヨペットとかプリンスというものは、能力においてはほとんど大型車と同じものである。こういうようなものが画一的にきめられるのでは、これまた大型車を所有しておるものは、とうていそれは競争相手にならないのではないか。というのは、もうこれでバランスが破れておるのですから、こういうようなことは画一的、事務的には考えられない。だからこういう面については、合理的な料金を設定してもらわない限り、われわれとしては困る、こういうのが現在の業界の声ではないか。現に陳情が参っておりますが、それを見ますると、それが起因ではないかと思うのですが、そういたしますと、陸運行政を監督される大臣としては、そういうような料金改訂の問題がどこから生まれるか。これの原因をもっとよく探究していただいて、ただ表面に出てくればそれだけを直していくということではなくて、もっとそのよってくる原因を突きとめて適切なる措置を講ぜられるならば、このような問題は起らないで済むのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、これについて大臣はどう考えておられるか。  第二点としては、大型車を持っておりまするものの問題ですが、広く地方を歩いてみましても、大型車はほとんど中型車、小型車に対抗できない状況です。大きな車を動かし、燃料、資材をよけい使って、収入は小型車より少い。こういうようなことで大型車は、それでは小型車と同じ値段で行きますからという違法行為をやろうとしても、大型車へは乗らない。こういうようなことがあるということを、実際の現場の者は訴えております。従って今日ではそういう逆の需要面からいたしますと、根本的に料金を建て直さなければ、時代に合わないことになるのではないかというふうな点が考えられるのであります。そういたしますと、これはただ単に国産車あるいは外車というような関係において、料金の問題が業界でのみ争われるということではなくて、大きな政治問題として私は発展して参ると思うのですが、これについてはどういう態度をもって臨もうとされるか、この二つについてお伺いいたします。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも各営業主がいろいろな種類の車を持っております。外国のタクシーなら車は同じです。ところが日本では小型、中型、大型みんな持っておる。そういう点もありますし、また組合が強固になっておれば、プール計算みたようにして、多少どの車が歩がいい悪いということがありましても、プール計算でうまくいく。ところがその組合も必ずしも強固になっていない。そして車の種類が多いという日本のような場合には、料金がどういうバランスできめられるかということについては、いろいろな利害関係が生じてくると思う。しかも料金が全国一律にきめられるような時期でないのです。陸運局長には、こちらからこの料金にしろという命令する権限はないのです。申請があって、それを認可するという形になっている。しかも持っておる車の種類は種々雑多である。実際問題としてこういうところになかなかむずかしい点があると思います。そこで私が今考えていることは、すでに従来のバランスにおいてもいろいろな問題があったのです。問題があったからいろいろ料金改訂の申請が出てきていたわけですから、この一つ運賃と申しますか、タクシー、ハイヤーの料金についてはこれを何とか合理的に、今申したような一つの営業成績、あるいは車の容積、馬力、どういう形が、また年代にもよりますし、いろいろな要素があると思いますが、こういういろいろな要素をはじき出して、どういう料金が一番適正であるかという全面的な検討を加えたいと考えております。さしあたりのところは今申したような、こういう申請によってやっていけるということならば、利用者の立場に立って、ダンピングにならない範囲内で私はものを考えていく。それでバランスを持たしたいという方針によっているのです、これはいろいろな点でもう少し合理的に運賃をきめられないか。一つ委員会でそういうことがはじき出せないかということについては、今後検討を加えていきたいと考えている次第でございます。
  95. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 なるほど大臣は非常に協同組合主義的な考えをお持ちになっている。その考え自体につきましては私も賛成いたします。しかし大臣のお考え、また私どもの考えるそういう協同体主義を考えていく場合には、今日のハイヤー、タクシーの料金をきめるべき法的体制が、その組合をたよっていくような社会構成に沿うように実はなっていないのです。ここに私は大きな不備があると思います。たとえば各地方々々において、その陸運局の管内において料金が定められる。しかもそれは幾らまでにするということくらいはその陸運局においてきめられるといたしましても、現行の料金を改訂するとかなんとかいうことにつきましては、これはやはり申請に基かなければならない。こういうことですから、いわばこれは計画経済に乗せられるべきものではなくて、免許とかそういうものについては計画経済的要素を持ち、たよるところは大臣の言われる協同組合主義的なところにたよらなければ行政執行はできない。そういう形になっていながら、一方その業界を監督し、あるいは料金その他の運営面を担当して参りますためには、自由経済的な機構でそのまま放任されている。こういうところに私は非常に苦心が存すると思う。今申したように矛盾が生じてきて、業界の争いがここで論議されることになり、政治的な解決をしなければ、業界の自主性においては、とうてい解決することができないような事態になっていることが明らかでありますから、従って私はこの際何らかの法律的措置を講じて、公益性に富むこれらの事業を、名実ともに計画経済的な要素をそこに実現でき得るように配慮する必要があるのではないかと考えるのですが、大臣はこれについて将来といわず、この国会においてでもそういう何らかの法律的な措置をとる考えがあるかどうか、お伺いしたい。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 計画経済という話はだいぶ大きくなって参りますが、地方などでは組合などによらないで、個人でやっているものもあるのでしょうから、私の考えているのは大都会においては、やはり組合でないといろいろな面において不便があるわけです。現に組合によってやっているわけです。この組合が強化されて、いろいろな面に対してお互いに組合員が助け合い、不正な競争も防止するということになることが、タクシー企業を安定させるためには必要だ、こういう意味において組合を強化することがいいと考えているわけでございます。ただし運賃の決定というか、認可の制度については、検討を加えましょう。何かもう少し合理的な方法があるのに違いないので、もう少し合理的な運賃を認可できるような仕組みを工夫していきたいと考えている次第でございます。
  97. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 最後に大臣に申し上げたいと思いますが、先ほどから申しますようにトヨペット、プリンスにいたしましても、一九五四年中期以前のものは、収容能力、そのエンジンの出力等から考えましても、現行料金でいいと思います。しかしそれにつけ込んでと言うとちょっと言葉がきついかもしれませんが、今日六人もの大型車が国産車として、名前がトヨペット、プリンスだということだけでもって、同一料金でやられるということは、あまりにも私は国産車使用者が横暴だと思います。従ってこれはやはりそれに見合う料金をきめて、画一にわたらないように即刻措置せられたいと思うのでありますが、大臣その勇気があるかどうか、承わっておきたい。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 勇気という問題でなく、今の建前が、一つの認可という建前ですから、今御指摘のようなことも運賃委員会の問題になっているそうです。大きな問題の一つだそうです。トヨペットの新型車の料金については問題の一つになっており、検討を加えているようでございますから、その結論を、その話し合いをまとめることを促進する努力はいたしたいと考えております。
  99. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 もちろん運賃委員会でそれがきめられることが民主的であり、妥当だと思います。しかし私が強く要望したいのは、そのようなつけ込んだことをするのじゃなくて、やはり正常な、純真な、すなおな措置によって、お互いが正当なる競争をし、共存の実をはかっていく、こうありたいと私は思うし、そうでなければならぬと思う。ですからこの場合においては一そう大臣は指導する責任があるのですから、よろしくこれらを勘案せられて、そうして私の申す希望を一つ強力に実現せしめていただきますように、格段の御努力をお願いしたいと思います。
  100. 原健三郎

    原委員長 下平正一君。
  101. 下平正一

    ○下平委員 運輸大臣に国有鉄道の運営について一つ二つお考えを聞きたいと思うのであります。先刻の資料でわかりますように、昭和二十九年度において赤字が出た。三十年度においては公社の考え方としては運賃値上げをやっていきたい、こういう意向を持っておるようです。大臣の方は運賃の値上げをやらない、こう言っておられるようですが、今国有鉄道の実態というものは、単に赤字だからすぐ運賃を上げる、そういう簡単な問題でなくて、もうぼつぼつ公共企業体そのものについて抜本的な改革をしなければ、国有鉄道の機能がこれ以上よくなっていかない、こういう時期に来ていると私は思うのです。もちろん国有鉄道自体においてもその内部において監督機構の問題だとか、あるいは管理方式の問題だとか、あるいは経営の細部にわたって十分検討する余地もあると思うのですが、大きな問題としては、公共企業体ができて独立採算制という点が非常に強調されているが、半面においてきわめて高度な公共性を追求されている。この独立採算制と公共性の板ばさみにあって、今日国鉄の経営が非常に危機になってきておる、こういうことが言えると思うのです。一、二の例をとってみても、物価指数は三百倍になつているが、国鉄運賃は旅客は百十五倍、貨物は百七十倍、こういうような形に公共性の場面から据え置かれてきておる。従って二百三十四線の路線を持っていながら、採算のとれる路線はわずか一〇%、二十二、三線しかない、こういうような状態に置かれているわけです。あるいはまた新線の開通だとか地方鉄道の買収、そういうような費用等についても、すべて企業内の収入によってまかなわれておるというような状態であります。従ってこれらの問題を根本的に改革するためには、どうしても公共性を追求する部面に対しては、ある程度の国家補償をしなければ、国鉄の経営は円満にいかない、成績が上らない、こういうことが言えると思います。今日辛うじて国鉄が運営しておるのは、さっき総裁も言っておりましたが、資産再評価も第一次だけ、このことは、国鉄の設備その他が食いつぶしにされておるということだと思うのであります。また一方においては、ここに勤めておる四十数万人の労働者諸君に対して、公共性のしわというものがいっておるわけです。昨年の年末手当を見ましても、他の公社は〇・二五、国鉄は〇・二一、こういう状態に置かれておりますし、賃金ベース等を見ましても、公務員、他公社に比べて千円くらいの低いベースに差し置かれておるし、あるいは同一産業である私鉄等の例によりましても、私鉄の賃金ベースに対して千五百円くらい低い賃金ベースに置かれております。また最近の期末手当等に見ましても、専売公社においては〇・五カ月の期末手当が支給されておるが、国有鉄道の従業員については〇・一しか支給がされない。こういうふうに施設その他の食いつぶしと、使われておる四十数万人の国鉄従業員の犠牲の上に、今公共性の追求が行われております。私はこれらの国鉄の経営を改めていくためには、どうしても公共性を追求するという部面についての国家補償が必要ではないか、こう考えておりますが、この公共性と国家補償の点について、大臣はどのようなお考え方を持っておるか、聞かせていただきたいと思います。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 お説のように、国鉄運賃の決定については、これはやはり国会の承認を必要とすることになっていて、勝手に運賃の改訂は行えないわけであります。その運賃の決定は政府が諸般の状態を勘案しまして決定をするわけでありまして、値上げをする場合には国会の承認を願わなければならないわけであります。そういう公共性と申しますか、全般の公共的な立場に立って運賃が決定されているために、お説のように公共企業体としての弾力性がやはり乏しい点はあるのであります。そこで公共企業体というものについてはまだ日本でこういう企業形態というものは、始めてそう日がたたないわけであります。政府におきましても公共企業体の合理化審議会というものを設置しまして、公共企業体のあり方に対して改善する余地等も検討を加えて、それの答申案等も出ているわけでございます。そこで実際問題としてはそういう点が非常にむずかしい点で、国鉄再建するために私が就任以来考えていることは、やはり国鉄の財政再建に関しては、一つ委員会でも運輸省内に設けて、公共企業体のあり方を含めて根本的に検討してみよう。これは各方面のいろいろ意見を持っておる人等も参加を願って、国鉄の財政立て直しに関する委員会を設けて、根本的に国鉄の財政立て直しというものについて検討を加えたい、こういう考え方でございます。今仰せのように、公共企業体については矛盾も多くあるし、いろいろな問題点があります。これを根本的に解決するために、そういう方法をとって検討を加えたいという考え方を現在抱いているものでございます。
  103. 下平正一

    ○下平委員 公共企業体そのものに根本的なメスを加えて改善をしていくということについては、私もそのようにしていかなければならぬと考えておりますが、それらの公共企業体の改組の問題は相当大きな問題であります。従ってきょうあすに解決する問題ではないと思うのです。しかしもうすでに昭和二十九年度において相当の赤字を出し、昭和三十年度においてはそれに数倍する赤字が出るというような予想もされている今日、そのままにしておいて公共企業体の再編成なり、企業体そのものの検討が進むということでは、国鉄の経営自体に今後ひびが入ってくると思うのです。そこで当面の措置としては、たとえてみれば洞爺丸が沈んだというような災害、あるいは台風や水害によるところの災害等も相当出ております。昭和二十八年度においては約八十億くらい臨時支出がある。これはすべて台風の災害です。二十九年度においては百三十億円、こういう臨時の災害によるいろいろの損失が、国鉄の経営に大きなひびを与えている原因になっておりますが、こういうような臨時災害等については、何らかの国家補償をするというようなお考えがあるかどうか伺いたい。  それからもう一つは、国鉄の長い間の借入金の利息が、おそらく三十年度においては百億円くらい支払っていかなければならぬような状態になっております。今鉄道債券を大体百億円発行しておりますが、すべて利息に支払われている。結果的には鉄道債券はこの借入金の利息のために出されているようなことになっているのです。こういうような問題について電電公社等の例を聞いてみると、電電公社は移行の際に、これらの借入金については政府の責任で処理をされていると聞いておりますが、こういう借入金についての利息の問題とか、あるいは不時の災害によるところのいろいろの負担についての補償、あるいはまた運転資金がいろいろの面から必要で、政府借り入れ資金もありますが、これらに対する利息の免除というような具体的な問題について、やはり早急に国家補償をすることがどうしても必要ではないかと考えておりますが、そういう点についての御意見を聞かしていただきたいと思います。
  104. 三木武夫

    三木国務大臣 災害に対しての国家補償ということは考えていませんが、たとえば新線などに対しては、今後はこれを一つ政府出資の形においてやる方法はないかという検討を加えておるわけでございます。まだこれは結論が出ておるわけではないのでございますが、結局政府といたしましては、いつの場合においても、国鉄の赤字に対してはいろいろ借入金等の便宜をはかって、そして経営を維持しておるわけでございます。今年も、御指摘のように相当な赤字が出てくるわけであります。いろいろ第三次資産評価あるいは減債基金等を繰り延べましても、結局赤字が出てくる。この赤字の処置については、政府の方としても、今後の国鉄の経営ともにらみ合せて適切な処置をとりたい。これは公共企業体の根本的なあり方についての問題と切り離して、これはおっしゃられたように時間がかかる問題でありますし、予算の編成に伴っての問題でございますから、どうしても国鉄自体で解決のできない赤字については、やはり政府の方として処置を講じたいということで、現在折衝を続けておるわけでございます。  また金利の問題でありますが、言われた通り毎年百億円程度あるわけであります。これも大きな問題でございますが、この問題はやはり今申した国鉄の財政の根本的立て直しの場合に検討を加えたい。予算の編成を迎えて、今直ちにこの百億の利子を全部たな上げしてしまえという話は、これはそういう話は根本的な問題に触れますから、なかなか解決のできる問題ではない。だからどうしても国鉄で吸収できない当面の赤字というものを、政府の方で処理する措置を講じていきたい。その金利等の問題は、国鉄財政再建の根本的な課題の一つとして、今後検討を加えたい、こう考えております。
  105. 下平正一

    ○下平委員 大臣のお答えで、わかったような点もありますが、わからぬ点が大へんあるのです。私どもは率直に言って、公共企業体であり、独立採算制という建前をとるのだったら、やはり採算のとれる運賃にしてほしいというのが、公共企業体の主張だと思うのです。しかし採算がとれるまでに運賃を値上げすれば、公共的な立場から非常に影響が多いというので運賃を上げない、据え置くという点については、私ども賛成なんです。ところがその据え置かれた差額というものが、今言った施設の問題や従事員の労働強化や低賃金という形で消化されていくところに、私どもは問題があると思うのです。形はいろいろ違っても、やはり公共性を追求するためには、その公共性を追求する上において赤字になる部面というものは、やはり公共的な立場から国家補償をしなければならぬ、こういうふうに考えているのですが、その考え方については大臣はどうなんですか。
  106. 三木武夫

    三木国務大臣 国家補償と申しますが、結局においては政府が何らかの資金的な処置を講じなければならぬ、それを補償するというふうには考えていないのであります。めんどうを見ていこう、資金的な措置を講じていきたい。そしてこれは国鉄自身にも思い切った経営の合理化をやって経費を節約してもらう、増収もはかってもらう。そして、どうしても吸収のできない赤字が残って参ります。それをいつまでも政府がめんどうを見ていくということはできませんから、将来においては運賃の改訂の必要を認めておるわけであります。改訂しなければならぬ時期がくる。しかし今日においては、今運賃の値上げをすることは適当でないという政府の判断のもとに、これはやらなかったわけでありますが、しかし永久にそういうふうにやれるものではなくして、将来においては運賃の改訂をしなければならぬ時期がくる。合理化をやって、そして最後にどうしても吸収のできない部分は、運賃の改訂に待たなければならぬものがあることは事実でございます。そのようにして国鉄の財政のバランスをとっていく以外に方法はない、こう考えております。
  107. 下平正一

    ○下平委員 将来にわたって運賃改正をしなければならぬというようなことは、これは将来の問題ですから別として、さしあたって昭和三十年度の問題が、当面の問題としては重要な問題になってくると思うのです。そこで今大臣は、どうしても出る赤字等については政府でめんどうを見る、こう言われておったのですが、昭和三十年度も、私どもが推測するところでは、現在の状態の中ではやはり相当の赤字が出てくると思うのですが、これらは政府の責任で何とか善処する、こういうふうに大臣の御答弁を承わって差しつかえありませんか。
  108. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、国鉄自身にも経費節約等に対して最大の努力を求めなければなりません。国鉄予算で出てくる赤字を全部政府がめんどうを見るというわけにはいきません。これは国鉄自身非常な努力を要しますが、それでもなおかつ国鉄の今後の経営をやっていく上において、いろいろな建設の面においても資金が要るわけであります。それを全部繰り延べてしまうというわけにはいかないので、ある程度の資金は政府がめんどうを見たい、こう考えておるのでございます。
  109. 原健三郎

    原委員長 堀内一雄君。
  110. 堀内一雄

    ○堀内委員 私はまず大臣に、私鉄に対する保護方針をお伺いしたいと思います。  御承知のように、国鉄の賃金問題並びにその費用の補てん等につきましては、今日までいろいろ論議があったようでございますが、その論議の中に、ややもすれば私鉄はああやっておるじゃないかというようなことを言う人もあったのでございますが、私鉄の実情というものは、非常に困難な状態にあるのでございます。御承知のように私鉄におきましては、国鉄と違って、株主に対する配当を出し、また非常に高率の税金を払いするということであり、しかも国鉄のように補助を受けるというようなことがないのでございます。そこで現在の私鉄の、ことに小さい地方の私鉄は、非常に困難な状態にあるのでございまして、現在約百六十何社かの私鉄があるのでございますが、その中ですでに経営困難で合併に終ったものが六社か七社あります。また無配当の状態になっておりまするのが、たしか六十社くらいあると私は聞いておるのでございます。そこで実際の状態を申しますと、私ある会社関係しておる関係上、その状態をざっくばらんに申し上げますと、年間約一億六千万円の収入を上げておるある地方の私鉄が、一昨年度においては八万円の利益があったのでございますが、昨年度におきましては、やはり同様の収入を上げておるにもかかわらず、十数万円の赤字が出ておるのでございます。しかし私鉄というものは、民間会社として、その赤字をざっくばらんに出すということは、いろいろな関係があるので、他の方法でこれを補てんしておるという状態でございますが、実際現在の地方鉄道の困難な状態というものはひどいものであります。ただバス等を兼営しておる場合には、その方の利益で補てんして、何とかやっていっておるのでございますが、このままほうっておきますれば、戦前と同じような状態になってしまうと私は思うのでございます。こういうような際において、私鉄に対する保護方針、お考えをまずお伺いいたしたい。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 従来とも私鉄に対してやっておりまする方法は、融資のあっせんとか、あるいはまた税における税法上の措置とか、あるいはそれの競争路線になるような自動車に対しての輸送の調整でおるとか、どうしても立っていかぬというような鉄道には、御承知のように補助を与えておる。地方鉄道軌道整備法という法律によって補助を与える、こういうことでやってきておるわけでございます。
  112. 堀内一雄

    ○堀内委員 そこで私はこの際、税の方面に関して、政府といたしまして大蔵省当局とどんなふうな交渉をしておられるか、それを一つお伺いいたしたいと思います。
  113. 植田純一

    ○植田説明員 私からお答えいたします。地方鉄道軌道につきましては、最も関係の多いのは地方税でございます。実は昨年地方税の改正のときにおきましてもいろいろ工作したわけであります。もちろんそれ以前からもいろいろやっておるわけでありますが、問題点は事業税におきましては、現在は外形標準によっての課税になっております。これをぜひ所得税に変えてほしいということをかねて主張しておるわけであります。それにつきましては昨年の改正のときにも相当論議になったわけでありますが、電力等の関係もございまして、これは鉄道につきましては実現しなかったわけであります。自来引き続き何とか所得課税にしていただかなければ困るということで、実はバス事業が所得課税に変りましたので、当然私鉄事業もぜひ所得課税に変えていただきたいということで、交渉しておるわけであります。また電気ガス税につきましては、昨年の交渉のときに私鉄につきまして電気料金の改訂の機会に、これは撤廃するということになりまして、二十九年度の下半期から電気税は撤廃になっておる状態でございます。なお固定資産税につきましては、全般的に率の問題もございますが、この私鉄の線路敷き、土地のようなものは収益性が非常に薄いわけであります。また公共的に使われておるものでありますので、これはぜひ一つ免税してほしい。御承知通り戦前これにつきましては、税の対象になっていなかったのでございます。ぜひそういうようにしてほしいということを、機会あるごとに主張いたしておるようなわけであります。これは昨年の税制改正のときには、遺憾ながら実現しておりません。今後もこういう線に沿いまして、機会あるごとに交渉を続けて参りたい、かように考えておるわけであります。
  114. 堀内一雄

    ○堀内委員 今の税に関して私どもの研究といたしましても、要するに所得課税にしていくということが一番妥当なことでありまするが、現在外形課税になっておりまするために、所得課税と外形課税の問題についてはすでに御研究のことと思いますが、小さい会社ほど非常に苦しいのであります。また収益率の小さい会社ほど苦しいのです。それで私どもの研究では、一割二分の利益率のあるところでありますると、そこがちょうどバランスでありまして、利益が一割二分くらいから多いところの会社は、むしろ外形課税の方がいいのであります。そういうようなことから、都市を中心としたところの大きい会社はみんないいものですから、この点において、私鉄経営委員会というような会合がありますが、京浜地方の大きい人たちが幹部をやっておるために、痛痒を感じない。ところが地方鉄道の小さい方は小さい方、収益率の悪い方は悪い方と、そこに差が大きいことは御承知通りでございます。そこでこの問題については一つ根本的に研究する必要があると私は思います。そこでとりあえずこういう資料をお願いしたいと思っておるのです。私鉄会社の全国の経営状況、それからこの税の算出の基礎としての営業収入とか所得率、現在の税金等の関係において外形課税並びに所得課税、両方の比較というような関係の資料をお作りいただいて、そうして私鉄のものを一緒に指導して、その力によってこの問題を解決するように努力したいと思っておるのでございます。むしろ経営状態のいいところの自動車の方がすでに所得課税になって、非常な困難な状態にあるところの鉄道が外形課税になっておるというようなことでは、とうてい鉄道を救い得ない。そのうちに非常な困難な状態に来ると思いますので、この点について一つ大臣におかれてもぜひ御努力願いたいと思います。
  115. 原健三郎

    原委員長 この際観光に関してもあわせて調査を進めることにいたします。畠山鶴吉君。
  116. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 私は観光問題についてお伺いしたいのであります。時間も大へんおそいものでありますから、ごく簡潔に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  本委員会におきまして昨日観光小委員会を設置していただきました。この小委員会は、第七国会以来継続いたしております委員会であります。また同時に昨日自由党におきましても観光部会を作りまして、観光行政を推進いたしまして、今後の政策を遂行していくことになっておるのであります。そこで大臣に特にお伺いしたいことは、運輸当局にも観光局というものがございましたが、現在は観光部に落されました。もちろん落されたということには幾多の問題がおりますけれども、あまり仕事もしてなかった。私に言わせるならば、この観光問題というものは無限の資源を活用して、見えざる貿易の外貨獲得をはかるという大きな問題がありながら、先ほども御討議のありましたように、これでは金が少いとか、これでは経営が成り立たないとか、いろいろの経済問題があります。私はこの無限の施設を活用いたしまして、今後運輸省がこれをどういうふうに活用するかということが、大きな経済問題になってくる。同時にこの観光問題につきましては、私が申し上げるまでもなく、厚生省がその一部門を持っておりますし、また運輸省は交通関係と旅館関係の問題を取り上げておりますが、しかし現在の段階におきましては厚生省の方がややもすれば権限が厚いのでございます。それは旅館業者あるいは観光業者の許可をする権限を厚生省が持っておる。しかしこれに反しましてこの委員会ができたために第八国会におきまして、ホテル整備法とかいう法律によってこの権限を運輸大臣が持って、今後観光行政を統一するという法律を作ったのであります。その後におきましてはさっぱり、いざりの何とか申すように、事が進まず、私が前二回国会を休ませていただきました間におきましては、これらの問題は有名無実になっておるのであります。しかし本日の産経の新聞を見ますと、観光問題がごらんの通り第七面にこんなに大きく取り上げられております。また同時に、本日は間島観光部長においでを願おうと思いましたところ、貿易外輸出会議、この会長が村田省三さん、また部会におきましては、海運部会の秋山龍さん、あるいは船客部会におきましては飯野さん、観光部会におきましては横田巌さん、こういうお歴々がきょう何でも会合されて、今後観光問題を取り上げるようでございますが、これは非常にけっこうなことでございますけれども、かようにいたしまして膨大な資金をかけて、今後観光行政が実際に運営されるか。また運輸大臣としてこれらをどうお考えになるか。古い話でありますが、現在の鳩山総理が熱海におりますとき、熱海の観光問題その他いろいろの問題を取り上げて、私が再三にわたって観光問題を説明いたしたことがありますが、鳩山総理もこれに対して一言半句反対なく御同意でありましたが、今回の民主党内閣におかれまして、運輸大臣を担当されております三木大臣におかれまして、これらの問題を私はこの際強く取り上げていただけるか、ほんとうに観光行政を真剣に取り上げていただけるかということについて、その他にも二、三お伺いいたしたいことがありますが、まずこの点をお尋ねいたします。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 今お話の通り、観光事業は目に見えない貿易でもございますし、あるいは国際親善の上からいっても、非常な大事なものであります。ただこれが右から左へすぐに幾ら幾らの、貿易のような計算にならないものですから、隠れておるけれどもこれは大事な点で、この内閣におきましても特に力を入れていきたい。そういう意味もありまして、従来の観光宣伝、ことに国際的観光宣伝の一つの有力な機構を整備したいということで、きょうの二時から財団法人国際観光協会の発起人会総会をやっておるわけであります。私も時間があれば出席したいと思っておりましたが、国会で行けませんでした。これは日本国有鉄道とか交通公社その他を有力な母体として、今後一元的な国際観光宣伝をやりたい、政府もこれに対しては相当な補助を与えて、この協会の育成に対しては力を入れていきたい。まずいろいろ仕事をするにしましても、そういう有力な母体があって、政府行政と申しましても、なかなか国際観光事業というものは、直接政府行政という面よりは、やはり民間団体を政府が援助してもり立ててやっていくということがよろしいということで、そういう強力な協会を作り上げることに政府は指導をしてきたわけでございます。そのほか厚生省と運輸省とのいろいろな共管問題も、一元的にできれば非常にやりやすいと思いますが、今までなかなか問題になってやり得なかったので、これも簡単にはいきますまいが、今後この観光事業というものには力を入れていきたいという考え方は、この内閣も強く抱いておるわけでございます。
  118. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 大臣説明も大体の方針としてはわかりましたが、今大臣がおっしゃられた程度のことは、在来においてももう耳にたこのできるほど伺っておる問題でありまして、まず要点に移りまして二、三お尋ねしたいのは、今かような最高会議ができるとか、あるいは在来におきまして交通公社とか国際観光連盟とかに対しまして補助金を出しておりますが、今後また政府から国鉄あるいは運輸省方面からこれらの会議に対してどのくらいの補助会を出すか、また出したならばその会議の運営とか、あるいは社会的な方向をどういうふうに取り上げていくかということをお尋ねしたい。その一つの例を申し上げますと、国際観光連盟におきましても相当の補助金をもらっておるのでございますが、あるときには緑樹祭をやる、あるいは何をやるとか言って、美麗のことは多々伺いますが、実際に業者の発展とか社会の発展ということに寄与した例は少いのであります。私は今後この補助をする金は——金を惜しむわけではありませんが、実際に悪口を言えば、お役人の捨て場の、金もうけをする仕事を作るような会合であったならば、あまり作らないようにしていただきたい。その点をお伺いいたします。
  119. 三木武夫

    三木国務大臣 外国からの観光客を日本に誘致するということには、相当な宣伝というものが必要なんです。各国ともやっておるのです。この宣伝費がどれくらいになりますか、外国客が日本に落しておる金は、相当な数字になっておるわけで、外国からの観光客を誘致するあっせんをしたり、広告をするということは、観光客を受け入れることの大きな要素にもなっておることは事実であります。各国とも力を入れております。このごろ外国の観光客を招致するために、各国の払っておる努力というものは大へんなものである。日本などは少い方でございます。そういう点で国際観光協会——発起人会でありますが、設立されるわけでありましょう。それが今御指摘のような役人の姥捨山のようなことには断じてしない。そして外国からの日本への観光客を一人でも多くこれを誘致して、外貨の収入にもし、日本の文化宣伝にもしたい。今後でき上る国際観光協会というものは、実際的に生きた仕事をしてもらいたい、そういう指導を行いたい、そういう協会をただ役人のたまり場のようなことには断じてしたくないと強く考えておる次第でございます。
  120. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 大臣はどうもなかなか答弁を要領よくされますので、少し面くらいますが、しかし私のお尋ねする点は、今後この問題を強く取り上げていただきたいというところにあるのでございます。要するにただいまお話がありましたが、この本日の新聞にもあります通り、お客が来ても泊らない。きょうのこの新聞に発表になっておるのを見ますと、昭和十一年には一億七百万円の収入でもって貿易の第四位に置かれた。ところが昭和三十年から三十五年までの五カ年計画は四億二千万ドル、しかし昭和十一年は三千百万ドル、これから五年間の四億二千万ドルを金の価値に換算してみると、これは決して私から言わせれば進歩でない。かような数字をもってこれから観光事業を推進していくならば、必ず国鉄のように赤字になってしまう、こういうような点を考えましたときに——なぜこういうことを申し上げるかというと、今東京駅ができましても、上は大丸に貸し、隣に観光会館ができて——これはだれがやったんだかわからない。また問題にもなったようでありますが、至るところの都市の駅の改修工事等はほとんどああいったような業態で、もっと悪い人ができたら無血占領で、みんな取られてしまうのじゃないか、かようにわれわれが懸念するような点もあるような状態でありますが、しかしその陰におきましては観光という美麗の文字が使われておるのでございます。しかし一般の観光業者の問題はあとに譲りますが、実際苦しい中を何とかして国際観光の使命を果そうというので、きゅうきゅうといたしておるのでございます。しかし私はこの機会に申し上げたいことは、今から口説を言っても、これは古過ぎる話ですが、大きなタイをつるのにはえさが要るのでございます。国家がほんとうに真剣にこのえさを出してくれたならば、大きなタイもマグロもつれる。世界のドルは幾らでも手先の器用なものによってつり上げられるのですが、口先だけで実際に手を動かしておりませんから、現在国内経済というものは根本から改善されないということを、私は観光問題を取り上げております一人といたしまして、はなはだざんきにたえないのであります。たの機会に運輸大臣のほんとうに心からなる御熱心をいただきたいと思います。それから国会また政府官庁方面におきましても、各欧米文化国家を視察して帰ってきた当時一カ月、二カ月は、なるほど道路もいい、観光施設もこういうふうだ、ホテルもりっぱだといってほめるが、三カ月か半年たつと何とも言わなくなって、相変らず昔の封建思想のようなことだけを取り上げているような状態でありますから、ほんとうに考えるならば、この問題は真剣に国家が取り上げていただく。たとえていえば、えさを出したなら大きなタイがつれるということにお考えを願うなら、国家の経済問題に大して支障はないのじゃないかということを私は考えます。同時に本日は専門家の観光部長も見えておりませんので、こまかいことを申し上げては恐縮でございますから、概要を申し上げまして、私は次会に譲ってもう一応お尋ねをいたしたいと思いますが、本日は委員長がどうも早くよせというような顔をしておりますから、この辺で私の質問を終りといたします。
  121. 原健三郎

    原委員長 正木清君。
  122. 正木清

    ○正木委員 私はこの機会に、運輸大臣おいででございますし、長崎総裁並びに私の要求いたしました経営委員会委員長も御出席のようでございますから、まず順序として経営委員会委員長お尋ねをしたいと思うのですが、日本国有鉄道法の第十条を見ますと、経営委員会の権限が明確にされております。経営委員会日本国有鉄道の業務運営に関する重要事項を決定する機関だ、こう規定されておるわけです。そこで委員長お尋ねしたいと思いますことは、委員会はこの法の命ずるところによって今日、そして今日まで国鉄の経営に対してどのような具体的な処置をとってこられたか、こういうことをまず第一に抽象的にお尋ねをいたします。
  123. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 お答えいたします。具体的の措置というのはどういう意味でございましょうか。今までの運営のやり方は、大体一週間に一ぺんずつ委員会を開きまして、事前に相談を受ける仕事はそれぞれ相談を受けて採決をし、また報告を事後に受けておるものもございますし、その他万般の大体大がかりな問題だけを取り上げまして、二時間くらい毎週やっておるのが、大体具体的の措置とでも申しますか、そういうところでございます。   〔委員長退席、山本(友)委員長代理着席〕
  124. 正木清

    ○正木委員 これも抽象的になりますが、そうすると委員会では独立した事務局をお持ちになっているのかどうか、この点答弁を願います。
  125. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 独立の事務局を持つべきか持たざるべきかという点は、われわれが委員会を始めました当時議論したわけでありますが、国鉄には事務局が十分そろっておりますし、また二重の機構を持つ必要もなかろう、必要があればこういう事項を調査してくれとか、ああいうことはどうなっているかとかいうような報告を求めることもできますので、そういう事務局は持っておりません。
  126. 正木清

    ○正木委員 そうしますと、あなたを委員長として他の四名の委員——この四名の中には、法の規定するところによって国鉄総裁の長崎さんが加わっている。これだけで週一回会議を開くだけで、あとは事務の一切の仕事は国有鉄道の職員がそれに当る、こう解釈してよろしゅうございましょうか。
  127. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 大体その通りでございます。
  128. 正木清

    ○正木委員 そこで私はお尋ねをしたいことは、第十条の二項に「左の事項は、経営委員会の議決を経なければならない。」とある。私どもこの法を審議しますとき、実は経営委員会というものを非常に重要視いたしました。従ってこの事項の中には、予算、事業計画及び資金計画、決算、借入金、借入金の償還計画、その他経営委員会が特に必要と認めた事項、こういうようになっておることはあなた御承知通りですが、そこでこうした非常に大切な重要な権限を持っておられまする経営委員会としては、現在の国鉄の全体としての経営に対して、一口に申し上げますと楽観すべき状態にあるのか、悲観すべき状態にあるのか。楽観すべき状態であるとするならば、公共性の建前からいって、たとえば貨物の面においても、旅客の面においても、いろいろ改良改善を加えて国民に報いなければならないと思います。また国鉄全体として悲観すべき状態に置かれるとすれば、これまた公共性の建前からしても、いっときも早くこれを健全なる営業状態立て直さなければいけないと思います。経営委員会としてそれらの問題については、もちろん今日まで長期にわたって研究討議をされてきたと思いまするが、それに対するあなたの所見をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  129. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 非常に問題が大きいのでありますが、御承知のように公共企業体でありますので、普通の企業と違いまして、自分の製品の値段を自分できめることができないというような特殊の性格もございます。それはつまり運賃につきましては、国鉄自身は資料を出し、そのときの企業状態を十分説明しまして、運輸大臣を通じ、政府を通じ、国会を通じて、運賃の値上げをお願いする。あるいは値下げの場合もあるかと思いますが、運賃自身については、国鉄自身が自己の判断によって上げ下げができません。運賃の問題は他の機関、運輸審議会等を通じてきまるのだと思いますが、一番大事な収益面に一番大きな影響を及ぼします一つのファクターというものは、国鉄の権限の中にございません。それを除きまして経営がむだがないように、合理化ができるようにということだけに、今専念しておるわけであります。従ってわれわれが考えますことは、鉄道の施設が老朽化しないようにということ、それから従事員が最高の能率を上げるようにということ、また荷主及び旅客に現状においてでき得る限りのサービスを国鉄の方から提供したい、こういう観点を主にしてやっておるわけでございます。御指摘のように現在の国鉄状態というものは、本年度も相当な赤字を出すようであります。これにはいろいろな原因があるかと存じますけれども、そういうわけで、国鉄自体としてはこの際運賃を上げていただくべきだという観点に立っておりますけれども、これが御承知通り、なかんずく貨物運賃につきましては、物価にかなりの影響を及ぼしますので、政府の持っております物価政策というものとの関連において、この運賃値上げの希望が達成されなくてもあるいは仕方がないかもしれない。しかしながらその場合においては、資金の手当の面で政府に特段の御配意をお願いしたいのである、こういう方針当局がおるようでありますし、また経営委員会においてもこれらの方針につきまして、まあそれ以外にさしあたって打つべき手がないのじゃないかというのが、今私どもの考えておることであります。
  130. 正木清

    ○正木委員 私は国鉄当局の事業担当者としての立場、このことについてはいろいろな意味において事情はよく知っておるつもりでございます。しかし国鉄当局とそれから監督機関である運輸省、この間に経営委員会というものがあるわけですから、経営委員会として、現在の国鉄の実態から見て今後どうあるべきかという、経営委員会それ自体としての御方針があってしかるべきではないか、こういうように私としては感ずるのですが、あなたの御所見はどうですか。
  131. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 平素そういうような問題については、特別委員として長崎総裁が必ず出席せられておりますので、委員それぞれの所見というものは、絶えず総裁を通じて事務局に反映し、それが実施されるように努力をしておるわけであります。
  132. 正木清

    ○正木委員 あなたのただいまの御答弁は、長崎さんもこの委員会に参加しておるのであるからして、その実施は、下に向っては完全に行き届いていると、こういう御意見のように承わったのですが、私は直接監督の機関にあるべき運輸大臣を通じて政府に対して、委員会としてはどのような方針をとってこられたか、これも聞いておきたいと思います。
  133. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 先ほどからのお話は、経営委員会というものは、国鉄当局運輸大臣との中間にある一つの機構であるかのようなお話なんでありますけれども、私どもの経営委員会というものは、国鉄と一体をなしていて、こういうことを運輸大臣に進言したいとか、あるいはこういうことを相談したいといったようなことは、すべてこの委員会できめました上で、総裁を通じてそれぞれ申し上げているというのが今までのやり方でございます。
  134. 正木清

    ○正木委員 そうすると、これはあなたにお尋ねすることが妥当かどうか、私自身が疑問になってきたわけですが、あなたのただいまの御答弁を承わっていると、実質的には国有鉄道の事務当局の諮問機関的な性格を持ったもの、こういうようにも感じられますが、この点どうですか。
  135. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 諮問機関ではないのでありまして、そこにも書いてあります通り、議決を要する事項はわれわれがきめます。たとえば重要な事項について議決をいたしましたが、それについて特に大臣に申し上げたいということがあれば、もちろん経営委員会は自分で出向きますけれども、大ていの場合においては、こういう場合には運賃の値上げがこのぐらいの限度必要じゃないかというような意見その他すべて、総裁を通じて運輸省との間の話し合いはするようにしておるわけであります。
  136. 正木清

    ○正木委員 そうすると、経営委員会というものは、今の経営委員会それ自体の運営の一つ方法として、運輸大臣等に対するすべての事柄は国鉄総裁を通じてやっているようでございますが、経営委員会それ自体として、直接運輸大臣に対していろいろ意見の具申等はやっても差しつかえない、こう解釈してよろしゅうございましょうか。
  137. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 差しつかえないと思います。
  138. 正木清

    ○正木委員 そこで具体的に私お尋ねしたいと思うのです。これは一つの具体的な例としてお尋ねすることが、あなたの答弁も非常に楽だと思うのですが、昭和二十九年度の損益勘定から資本勘定へ三百三十五億ほど繰り入れることになったような記憶があるのです。これは当然償却費だ、こういうように今私記憶しておるわけですが、実際これは償却のために使われておるというようにあなたはお考えになっておりましょうか。これはいずれ国鉄事務当局にも詳細にお尋ねしたいと思うのですが、逆に、この償却費に使われないでしまって、災害復旧等にこの金が流用されておるというような点はないのでございましょうか。この点は私は国鉄の現在の経営の実態から見て、考える必要があるのではないかという感じを非常に強く受けるのです。  これと関連してもう一つあなたにお尋ねしたいと思うのですが、たとえば昨年の洞爺丸の事故、これからくる国鉄の損害、それから風水害復旧からくる損害、これらの資金上の処置内容がどうなっているのか。こういう点について経営委員会のあなたとしては、十分国鉄当局から報告なり、また進んでこれらの点について研究なりをされたことがあるかどうか、この点を承わっておきたい。
  139. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 問題が二つあるようであります。初めの方の償却の問題ですが、償却として三百三、四十億というものをとっておるのであります。これは償却のために使われたかどうかという御質問のようでありますが、そういう意味は、どういう意味か、私ちょっと了解いたしかねますが、この償却費は国鉄の施設の少くも現状維持及び改良ということに使用されているのであります。従いまして昨年のように非常な天災が多かったような場合には、その中の一部はもちろん償却費の中から使われているということはございまするが、それぞれ大小を問わず、災害が出ましたときには、どれだけの損害がおよそ出たか、これを復旧するについてはどういう手段が必要であるか、予算がどのくらいかかるであろうか、一切そういうような事項につきましては報告も受けておりますし、かつその場合に委員会でもってきめてそれが下部へ流れていくというようなやり方をとっております。昨年の非常に残念でありました洞爺丸の事件につきましても、遺族があそこへ殺到しておられます前後の経費の所要事項、その他沈船の引き揚げ、入札の状態、それからどういうふうに代替船を作ろうとするかといったような問題、その他事しさいなく報告も受け、また必要な指示をしておるわけであります。
  140. 正木清

    ○正木委員 私は経営委員会委員長の佐藤さんに、いろいろの資料を土台として具体的にお尋ねしたいと思うのですが、きょうは突然であったと見えますから、私は抽象的な質問に終るのですが、たとえば損益勘定から三百三十億を償却費に繰り入れる、これは非常に大切なことですね。しかし繰り入れられたその金が、たとえば洞爺丸の事故の面であるとか、それから台風その他の風水害の復旧であるとかいう面に重点的に流用されてしまったのでは、本来の償却という精神は一体どうなっていくのだ。ここに問題があるのじゃないかと思うのですね。そうお思いになられませんか。私はそう思います。そこで本来国鉄の経営というものが、これをいろいろの角度で検討を加えなければならない時期にきておるとするならば、当然日本のような国で、年々台風による大きな損害を国鉄自身が受けておるわけですから、であるとするならば、私は予備金でこれを見るか、それともこうした災害なら災害からくるこれらの基金というものは、別途に、すでに当初予算において経営委員会としてはやはり考えて、積み立てておかなくちゃならぬものではないだろうか、こう思うのです。この点を経営委員会は今日までどうお考えになってきたか。
  141. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 ちょっと私間違ったことを言ったようでありまするが、災害については、今も指摘がありましたように予備費も使っておりまするし、さらに運輸省及び大蔵省と打ち合せの上で別途借入金をして、特殊の災害については使用されておりまして、今私申し上げましたが、減価償却費というのは大体取りかえ費用として、国鉄の施設維持改良というものに使われておりますので、先ほどちょっとまぎらわしいことを申し上げましたが訂正いたします。   〔山本(友)委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 正木清

    ○正木委員 私の第二の質問でございました台風その他洞爺丸のような事故に対して、あらかじめ経営を健全化する一つ処置として毎年度、一口に言うと災害基金というような性格のものを積み立てておく必要があると、経営委員会はお考えになっておられますか、おられませんか、その点を承わっておきたいと思います。
  143. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 これは経営の健全化からすれば、そういうものを積み立て得るだけの余裕があればけっこうだと思いますが、現状においては経営上それが許されない。またその他の事情等から見て、それもやむを得ないというようなことで、一定のたしか二十億の予備費を毎年計上してございます。災害が出たときにこれを充当するというのが現状でございます。ゆったりしたそういう災害積立金ができれば経営上はいいのでありますが、経理上それが許されいのが私は現状だろうと思います。
  144. 正木清

    ○正木委員 私はあなたに、ほんとうに楽な気持で、国鉄のあり方等についてあなたの考えておられることを一つおっしゃっていただきたい、こういう気持で実はおいでを願っているのです。私はあなたの今日までのお仕事のことなども承わっておりました。ですから私は、あなたはあなたらしくこの独自な国鉄の経営に対して、かくすれば国鉄の経営の内容はこのように改善されるのだというような御方針があるのではないかというようにも、実はそれとなく想像をいたしたおるわけです。今の私の御質問いたしました点でも、私、これが一般のあたりまえの企業会社であったならば、そういう準備金等が用意されなかったら一体どうなるのだろう、このことをまず考えるのです。一体そういうような基金を積み立てておかなくていいのか、そういう場合に、一体金融機関がその企業に対して金を貸すであろうか。今国鉄は公共企業体だという性格から、政府からも借入金の道がある。だから、当然積み立てておくべき基金も、運賃その他の関係で、現在の状態でほうっておいていいのだということで、一体今の国鉄が健全に経営がされていくであろうか。今年また昨年と同じような大きな台風が来ないとだれが保証できるのでございましょう。その場合に、ここに出ておりますこの資料によると予備金三十億ですか、この程度のことで一体いいのであろうか。そのときまた政府資金の借り入れをやるのだということでは、やがて国鉄の経営の実体は、借金と利子支払いのために一生懸命にならなければならないという事態が来ないと一体だれが保証できるのでしょうか。この点について私は、あなた、自身が民間のすぐれた経営の担当者と承わっておるのですが、あなた自身は何かしらお考えになっておられるのではないかと思いますので、その点に対する忌憚のない意見をこの際御発表願いたい。
  145. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 先ほども申し上げましたように、支出の面においては十分最善の努力をしておるのでありますが、お話しのような災害が日本に非常に多いために、不時の出費ができるわけであります。一方、収入の根源であります運賃を適正なところに直していただかないと、健全なる経営はできないということは事実であります。ただこれが一年、二年の短期でものを考えるならば、ある時期の間政府の物価政策、あるいは国会でお考えになる経済政策というものが、しばらく運賃を上げては困るといったときに、つなぎに資金の供給を別途配慮していただいて急場をしのぐということであって、根本的には、長い目で見た場合には、運賃を適当なときに直していただいて、国鉄の施設が老朽化しないようにやっていただかなければ、私は将来非常に悪い場合が起る、あとで莫大な金を使わなければ困るという時期が来はしないかということを感じておるわけであります。
  146. 正木清

    ○正木委員 あなたが経営委員会の責任者になられてから今日まで、国鉄の経営の実体を十分に研究、調査されたと思うのですが、よく世の人々は、国鉄が経営の合理化さえやれば、決して今国鉄当局が言うようなことでなくてやっていけるのだということを、しばしば言う方があるわけです。きょうの当委員会における運輸大臣の答弁の中にも、経営の合理化、こういう言葉が使われたのです。そこであなたは経営委員会の責任者として、今の国鉄当局企業努力に最善の努力を払っているとお考えになっておられますか。またあなたは今の国鉄の経営の中で、かくすれば世にいう経営の合理化が行われて、ここで相当の経費の節約ができるのだ、こういう見通しをお持ちになっておられるか。忌憚のないあなた御自身の意見をここで発表してもらいたい。
  147. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 どうも収入の根源である運賃が思うように上げられないということ自体が、あるいは国鉄従業員の企業意欲というものを阻害している面が、遺憾ながらないことはないかもしれません。しかしながら大体私の見るところでは、公共企業体としては漸次改善されて、今日の状態というものはまずかなりの点をやってもいいという企業努力は全体が払っている、こう見ておるわけでございます。ただ最近、これは忌憚なく私見を申し上げるのでありますが、いわゆる荷物につきましては、他の運送業者の許可が非常に放漫にされております関係だと考えますけれども、割のいい荷物は、実際は国鉄が運ぶ方が国家的に見て経済的であるにかかわらず、それらの荷物が国鉄から逃げて、企業的には成り立つが、根本的、国家的に見れば損だという運び方をしておる。そのために国鉄の経理状態を若干悪化させている遺憾な点があるかと存じます。  人間の点についてもまた、バスがあるわけでありますが、バスなども私はしろうとでよくわかりませんが、不必要に許可されておりまして、これがやはり当然乗っていくべき国鉄の旅客をとっているという面があるのじゃなかろうか。そうしますと、総合的の運賃行政について確たるものにしていただかないと、いわゆる多少二重投資的な面が出ておる。その結果、どうしても割の悪い品物だけが国鉄に残って、経営を一そう困難ならしめる、こういう遺憾な点は見受けられると思っております。今後国鉄状態の改良につきましては、第一は運賃の問題でありますが、第二の点については今言った総合的の運賃政策というものがもう少し行われたならば、幾らか国鉄の経営に資するところがあるのじゃないか、これが国家的に見てむだを排する一つのゆえんではなかろうか、こういうように感じております。
  148. 正木清

    ○正木委員 そこであなたのところの経営委員会として、今あなたがここで御発表になった事柄をも加えて、国鉄全体としてどうすればよいかということについて、今後でもけっこうですが、一つ思い切って立案をする御意思はございませんか。いかがです。
  149. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 開き直って立案ということはございませんが、委員会を開いております途中において、絶えずそういう気持では委員会を運営しておるつもりであります。
  150. 正木清

    ○正木委員 今あなたがおっしゃったように、私、国鉄の現状を通じて非常に心配しておりますことは、一体現在のような経営状態国鉄が推移したならば、国鉄はどうなるのであろうか。やがて施設関係等にも大きな支障を来たすのではないか。これが心配なのです。もちろん長崎総裁以下の国鉄当局の諸君は、間違ってもさような心配はございませんと、そうおっしゃるに違いありません。しかしながら災害が来て、これに対する資金がない。政府その他の短期借り入れで一時しのぎにやっていく。運賃収入は減ってくる。一切の施設は漸次老朽化してくる。それらの一切のしわ寄せがどこへくるかというと、いかなる企業体であっても、だれしもが一番先に手をつけやすい人件費に手をつけてくる。この人件費に手をつけてくるということは、とりもなおさず先ほど同僚が運輸大臣質問しておりましたように、他の企業体では年度末に〇・五をもらっておる。あなたのお言葉の中にもあったように、総裁以下国鉄四十万の職員が一生懸命企業努力をやっておる。にもかかわらず一切のしわ寄せが、独立採算制の名のもとにおいてこの人件費にくるのですから、働くことは一生懸命働いておるが、さて年度末になると、〇・一しかいただけない。これでは企業意欲は出てこない。幾ら働いてみても、他の方面と比較して待遇はだんだん国鉄が悪くなつていく。一体こういう経営の仕方が、本来の経営の仕方でございましょうか。この点経営委員会としては真剣にお考えになる時期に到達しておるのではないでしょうか。大へん失礼ですが、率直に言って今、国鉄当局国鉄を経営しておる事柄は、ずぶのしろうとであります私が総裁になってもやられることです。経営委員会にも民間のそれぞれの企業のエキスパートを持ってきておりますが、それは全くのしろうとを据えてもやれることなんです。国家の生命とも見らるべき企業性を持った国鉄が、そういうことを放任しておいていいかどうかということが、この三十年度の予算の審議ともからみついて、真剣に取り上げるべき時期にきているのではないか。私はこう考えますが、一体あなたは率直にどうお考えになるか、この点最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  151. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 大体今御指摘のあったような点は、ごもっともだろうと存じます。従いまして先ほども申しましたように一、二年の短期であるならばともかくとして、長い目で見て言うならば、運賃を適正なところへ持っていくことが、ぜひとも必要であると考えております。
  152. 正木清

    ○正木委員 五時になりましたので、本日は経営委員会委員長に対する私の質問はこれで打ち切りますが、いずれさらにこの委員会が開かられると思いますから、そのときにはあらためて委員長に御出席を願って、さらに委員長国鉄経営に対するいろいろの所信をお伺いしたいと思います。そこでどうか委員会としても、国鉄に対する現在の状況及び今後の経営等に対する意見等もございましょうから、それを文書にして一つ委員会に御提出を願いたい。これを申し上げて、私の質問は本日は終ります。
  153. 臼井莊一

    ○臼井委員 関連して一点だけ。国鉄が赤字で大分困る。これを私鉄、私の経営にでもすれば非常にうまく行くのじゃないかというような議論がよく行われるのですが、国鉄国鉄だけの従来の仕事のほかに、副業として、たとえば地所なら地所という、土地の問題のあれなど従来おやりになっているのかどうか、その点をちょっとお伺いしたいのです。
  154. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 国鉄を民間企業にすれば黒字になるであろうというのは、一応よく聞く議論でありますけれども、私はそうは思わないのであります。多分御承知だと存じますが、いわゆる不経済線と申しますか、赤字でどう考えても……。
  155. 臼井莊一

    ○臼井委員 副業の点です。
  156. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 副業は、つまり遊休施設を賃貸しているのが大部分です。
  157. 臼井莊一

    ○臼井委員 土地を買って分譲するというようなことは……。
  158. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 そういうことはやっておりません。
  159. 臼井莊一

    ○臼井委員 そこで土地の開発のためには、鉄道が敷かれると非常に開発されることがありますが、その利益をどうも国鉄は個人にみなもうけられてしまうのです。私鉄が非常にもうかるというけれども、近郊の、たとえば京成とか東武を見ても、非常にいろいろな方法で副業をやっております。たとえば地所を買ってこれを分譲するとか、バスを経営するとか、京成など聞いてみても、電鉄ではもうからぬけれども、バスで非常にもうかっている。そこでこれはやはり独立採算制でやっていくとすれば、何かほかで利益を補うことをやらなければ、今お話始めたような工合で、これは運賃だけだったら赤字になることはわかっている。そこで将来発展する土地に対しては、あるいは国鉄を敷く土地に対しては、そういう見地から住宅になるような土地をあらかじめ相当買収するというようなことは、公社としておそらくできないことじゃないと思うのです。それがまっ正直に輸送一点張りでやっていたところから、利益はほかの方にみな取られてしまうというようなことになったのじゃなかろうかと思うのです。一つそういう点を十分御研究願いまして、そういうことが果してできるものかどうか。できるならば、私は今後新線等の場合には十分あらかじめ考えて、国鉄で苦労したところをみなほかの方へ利益を取られることのないように、一つ御勘考願いたいということだけ申し上げて終ります。
  160. 原健三郎

    原委員長 濱野清吾君。ごく簡単に願います。
  161. 濱野清吾

    ○濱野委員 経営委員長にちょっと伺いたいのですが、一体コーポレーションの性格に徹底して、国鉄の経営をしたらいいのか、あるいは国有国営で昔日のように赤字の線であっても新設運営に向うとしなくちゃならぬのかということは、非常に大きな問題だと思うのだが、あなたの意見を簡単に聞いておきたい。  もう一つは、先ほど正木君の質問中に、総合的な施策を行うならば合理化ができて、相当むだが排除されるだろうというお話でありますが、一体レール輸送とバス輸送とを並行してやっていいのか悪いのか。昔からこれは国有鉄道の先輩もそう言っているのですが、大体日本国有鉄道などが、時代の推移とは言いながら、二万キロもの膨大なレールを持っておって、そこで複雑なバス輸送やトラック輸送まで手を出すところに、大きな間違いがあるとさえ国有鉄道の先輩は言っているのですが、この二点について貴殿の見解を承わりたいと思います。
  162. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 先ほど私が申し上げました第二点から先に御返事しますが、国鉄がバス輸送をやる方がいいと申し上げたのではなくて……。
  163. 濱野清吾

    ○濱野委員 いやそうではなく、ああいうことをやっていいのか悪いのかという……。
  164. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 それは場所によるのでありまして、培養線の意味でやるのであって、国鉄のあるところにさらにダブってそういう輸送をする必要は私はないと思います。  それから第一の独立採算制であって、しかも赤字がわかり切っている線をなぜ経営するのだ。これは初めから矛盾を包蔵してこの公共企業体がスタートしておるのでありますから、この点については、そういう性格のままで、ある意味において黒字線で赤字線を補給しながら行くというのが現状であり、またそれ以上ほかに考えようがないのじゃないかと私は考えております。
  165. 濱野清吾

    ○濱野委員 培養線の意味でバスを運行するというのだが、それは現実の姿ではないのではないか。そういう理由で、バスを運行したりトラックを運行したりしておるけれども、これを厳密に調査すると、そういうことではなくなっておるから、赤字が出てくるのじゃないか。  それから私の第一の質問は、コーポレーションとして徹底しようとするならば、政策的な国家の資源開発等のレールなどは、なるたけ敷きたくないのだろうと思うのだけれども、そういうことをやらざるを得ない国情にあるから、結局赤字経営というものが生まれてくるのじゃないか、こういうふうに考えるのだが、その所見、非常に大きな問題だが、その点一つ明確にあなたの意見を承わりたい。
  166. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 それは御指摘通り、赤字であっても国策的にはそれがいいからというので、新線建設というものが審議会で通れば、国鉄はこれを敷かざるを得ないだろうと思います。その場合に私は国家が無利息に近い金を出してその線をやらせるのみならず、運営の上で出てくる赤字というものは、独立採算をやれというのだったら、これを負担しろというのは少し間違っているのじゃなかろうか、こう思っておるのであります。
  167. 濱野清吾

    ○濱野委員 もしそうだとするならば、そのコーポレーションなどという制度は、あなたの意見として廃止したらよろしい。昔のままで、国有国営でやった方がはっきりする。経理の上においても、あるいは本日のような議論が少くなっていくし、徹底できるのじゃないかと、こういうふうに考えておるのだが、貴殿の所見はどうです。
  168. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 その点だけを取り上げれば、その方がいいだろうと思いますが、私はやはりなるべく独立採算制というはっきりした企業体の形をとった方が、業務の運営の能率化ははかれるのじゃないか、やはりアドヴァンテージの方が大きいだろう、こう思っております。
  169. 濱野清吾

    ○濱野委員 それはうそなんだ。そういうことを言うから、こんがらがってしまってむずかしくなる。それではあなたの説明を聞くと、国有国営で昔の経営の姿のままで行けば、一般会計からでもこれは繰り込むことができる。すなわち国としてのプラスをかせごうとすれば、それは議論にならない。しかし表向きはやはりコーポレーションで独立採算制をとっておる。独立採算制をとっていながら、しかも赤字の線、あるいは新線というようなものを作らなくちゃならぬところに、こうした今回のような議論が出ると私は思う。必ず計数的にできてくるのです。それを表向きは独立採算制をとっておって、しかも国有鉄道のあり方は昔のように、国家経済を推進していく。企業にコーポレーションの制度をとっている国有鉄道に少しは赤字が出ても、国家的な利益を推進しなければならぬ。そこに大きな矛盾があって、その矛盾が数字に現われてくるから、正木君のような議論が大きく浮んでくるのじゃないかと思うのです。この点を少くとも経営委員長ともあろう人が明快にすれば、この点は納得のいくことじゃないかと思うのですが、どうですか。卑怯ですよ、少し……。
  170. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 もう一ぺんお答えしても結果は同じだと思いますが、これは結局意見の分れるところじゃないかしらんと思います。それだけにしておきます。
  171. 濱野清吾

    ○濱野委員 それはおかしいじゃありませんか。コーポレーションの制度というものを廃止して、昔のままの国有国営の経営をやるならば、そこに赤字が出ても国家経済の全体としてはあるいは黒字になるかもしれぬと、こういうのだ。国有鉄道がかりに赤字が出ても、不振路線やその他が出ても、国家経済の全体からいえばこれは黒字になるのだから、少しくらいな赤字はもって瞑すべきだという議論等も、実際として出てくると思う。それをあなたの方ではコーポレーションという制度のもとで赤字を出しておるから、そこで私はこういう議論が形式的に出てくるのじゃないかと、こう申し上げておるのです。
  172. 佐藤喜一郎

    ○佐藤説明員 もう一ぺんお答えしますが、今のような例ですと、つまり新線をやった場合に、その新線だけの賃金を特別に考えれば、赤字は出ないのであります。また資金も十二分に供給すれば、赤字が出ないで済むのであります。そういうことさえできれば、私は別に公共企業体であって少しも困ることはないと思っております。
  173. 濱野清吾

    ○濱野委員 運賃ということばかりで考えておりますけれども、それは普通の商人だって、高く売ればどんな事業だって損はしませんよ。赤字は出ませんよ。今運賃を上げさえすれば採算はだれがやったって、経営委員長がいなくたってだれでもやれますよ。そこに社会的な限度があり、経済的な制約があり、あるいは国の政策や低物価政策、いろいろなことがありますから、運賃を上げられないということなのでありましょう。ただ運賃政府から制約を受けていて、どうもやりにくいからというふうに聞えるのたが、事業経営というものは、失礼な話だがそういうものではないと私は思う。運賃を上げれば赤字が出ない。これは当りまえの話ですよ。運賃を上げずに、しかも巧みに赤字を新しく生み出さないというところに、経営委員会の使命があり、そこに経営技術があると私は思います。それはおかしいじゃないか。
  174. 原健三郎

  175. 小山亮

    小山(亮)委員 大臣に先ほど質問しましたことに関連しておりますが、先般来天下を聳動したいわゆる造船海運疑獄事件が発生して参りました。その原因というものはやはりどこかになければならない。日本計画造船を推進していく間に、あなた方が申請された申請を受け付けられて、申し込みを査定されます。その査定をされるときに、非常に船価の高いものを特に御査定になるようでありますが、標準船価というものをお出しになって、その標準船価よりも下回っている船を、まず第一に受け付けていくというやり方をおやりになれば、高い船が出てこない。従って利息を引き下げてくれという運動が起らないわけなのですが、私はその点について今までの海運局の査定に対して多少の疑惑を持っているので伺いたいのですが、第一に標準船価をどういう方法でお出しになって、今まで認可された船はその標準船価よりも上回っているか下回っているかという点を船舶局長に伺いたい。
  176. 甘利昂一

    ○甘利説明員 今のお尋ねですが、前に標準船価ではありませんが、基準船価というものを一応作りましてやったことがありますが、十次船においてはいろいろな事情から基準船価というものを廃止いたしたのであります。その理由は、一定の型あるいは性能の船を作るのであれば、基準船価も出ます。しかしこの場合においても、各造船所によっていろいろなチャージが違いますので、造船所ごとにだいぶ意見が違って参りますが、大体標準であればある程度の基準船価は出ます。各社まちまちのその航路に合った、あるいは荷物に合ったような船を作りますので、基準船価を作ることは非常に困難だということで、一応作りましても、それはただある想定された性能なり船形を持った船の船価でありまして、それより違った船に対しては多少また違って参ります。そういう観点から、従来やっていた基準船価は十次船においては廃止いたしまして、個々の船形について詳細にゲージとかチャージあるいはその性能なりを調べまして、十次船においてはこの船価をきめていったわけでございます。
  177. 小山亮

    小山(亮)委員 日本造船所によって非常に船価がまちまちなのですが、どうしてこんなに相違があるのですか。その点はあなたは監督の立場からどういうふうにお考えでありましょうか。
  178. 甘利昂一

    ○甘利説明員 今の御質問は同じ性能、同じ使用の船についても、各造船所によって船価が違うという御質問と解釈いたしますが、それは結局各造船所におけるチャージが相当違いがあるわけです。たとえば例を長崎の造船所に引きますと、あそこでは世界でも相当有名な船形試験所、その他材料試験所等の研究施設が相当付属しております。それから一方、そういうところでいろいろな性能あるいは研究をしてもらったものをそのまま受け継いで、ただ自分のところで船を作るという造船所もありますので、従って各造船所間で間接費の開きが相当ありますから、これが標準船の場合に船価の開きになってくる、こういうふうに考えております。
  179. 小山亮

    小山(亮)委員 砂糖リンク制がない以前でも、船価外国輸出船は非常に安くて、同じ性能のものを内地船に作った場合には非常に高い、こういう点に対して不思議だというふうに私は考えますが、その点はどういう関係ですか。
  180. 甘利昂一

    ○甘利説明員 よく巷間にそういうお話があって、われわれも質問を受けて困っているのですが、詳細に検討いたしてみますと、やはり船の内容が相当違うのであります。たとえばデッド・ウエート一万トンでスピードが十三ノットの船、そういう船は大体似たような船価が出そうなものでありますが、内容をよく見ますと、たとえば発電機の容量が片っ方は大きいとか、あるいは荷役の運賃が片っ方は多いとか、いろいろその仕様なり装備に相違があるから差が出てくるのでありまして、それらを詳細に計算いたしまして標準船価に直してみますと、実際問題としてそう差はないと思います。
  181. 小山亮

    小山(亮)委員 戦後できます船は私ども専門的立場から見まして、非常にぜいたくな船がたくさんできております。たとえて言いますと、室内の装飾や何かでも、貨物船であんなぜいたくなものは必要ないというものができております。そしてこれが外国に荷物を運んで参ったりする場合に、外国人がこれを見て、日本では賠償金が払えないなんて言うけれども、こんなぜいたくな船を作って、乗組員がこんなぜいたくなところに住んでいるくらいなら、賠償金が払えるのじゃないか、ということを私は聞いておりますが、そういうふうなぜいたくな船を作れば、値段が勢い高くなる。外国から注文してくる船を私も見ましたが、そういうぜいたくな装備は一つもない。日本が作るのだから、そういうぜいたくな見てくれだけのものを作るということに対して、監督行政立場におられるあなた方の方としては、どういうふうにお考えになりますか。
  182. 甘利昂一

    ○甘利説明員 その点は今小山委員のおっしゃった通りで、私も全く日本貨物船は、外国船に比べてぜいたくだと思っております。従ってそのつど具体的の装備あるいは設備について、船主あるいは造船所に勧告はいたしておりますが、なかなか問題がこまかくなって参りますと、たとえばこういう装備がなければ荷物が取れない、あるいはそういう荷物ばかり取るのじゃなくして、たまには冷凍の大きな荷物も取るのだから、冷蔵庫の大きなものを備えつけなければならぬ、こういうのでありまして、実際の商売の話になりますと両方の見解が分れるものですから、いつもどちらかといえばぜいたくな船ができがちでありますが、少くとも十次船については、その点を相当船主に対しても勧告をいたしましたので、われわれもそうぜいたくな船はできていないと考えております。また先ほど御指摘の船員設備については、これもいろいろな国際条約なんかもありまして、部屋の数あるいは部屋の面積等も、船員の優遇の意味でだんだん大きくなって参りますので、そういう点についてはやはりぜいたくとは言えなくても、以前に比べれば相当りっぱな船ができてきているわけであります。これらは国際条約の関係で、そう一がいに昔の通りにするわけにいきませんので、できるだけ採算の点を考えまして勧告はいたしますが、今小山委員の御指摘のようになかなか徹底した簡素化はできないのであります。しかし従来の経過から見ますと、漸次簡素化されてきていることは見られると思います。
  183. 小山亮

    小山(亮)委員 十次船から見ましても、特に同じ性能を持った船が、六万円くらいから七万九千円くらいまで非常に差があるのです。そして査定の結果きまりましたものは、一番高い方の船がみんなきまっている。今船舶局長の言われましたように、必要以上の装飾なんかしたようなものに対して、やはりあなた方が監督行政立場から、こんなものは不必要だということを勧告しても、なおそういうものを作るという。それならばそういうものを作るような会社には、その次に認可をしないように御処置をなさったらどうなんでしょうか。あなた方の考えているのと反対なことをどんどんやっても、それが常に通っていて、あなた方の意思が少しも通らぬということになり、あなた方が認可されるときに、心にもなく、自分ではいけないと思いながら認可するということになれば、陰の何かの力があなた方を動かしていると考えられるのですが、それはどうでしょうか。
  184. 甘利昂一

    ○甘利説明員 これは御承知のように船価の点あるいは造船所の観点から船主を選んでおるのではなくて、やはり船主の資産、信用とか、あるいはその船主の配船するいろいろな航路計画とか、そういうものから主として船主を選んでおるわけでありますから、従ってそれを一緒に申請している造船所が選ばれるわけであります。この点については船主だけを選考して、造船所はその船主がまた別個に数カ所の造船所の間にビットとか何かをやって、さらに造船所をきめた方がいいという選考の方法もありますが、これも一考をわずらわすべき問題と思っておりますが、従来は船主選考でありますから、そういう船価の点あるいは装備の点等について基準と申しますか、航路計画あるいは採算というような点に重点を置いておらなかったために、そういう弊害が起っておった、こういうふうに考えております。
  185. 小山亮

    小山(亮)委員 私はその点を非常に疑惑に思うのです。第一に、御承知のように戦争日本の船ができたのは、海運局が船主を選んでいるように見えますけれども、実は船を作っておったのは銀行が作っておった。銀行が思い通りに自分の船を作っておった。高くったって、銀行が金さえ貸してくれれば船はできた。これが実際なんです。選考は当っては海運局として、この船ができる、それによってどこに回す、どのくらいの採算がとれる、船の性能はこういうものである、船価は安い、それでは船主の経営がまじめであるとかまじめでないとかいうことをごらんになって、そしておきめになるべきであって、一々それが財閥関係か何かの会社で、銀行の方にいろいろ手が回っておって、銀行の方からすぐ補償するとか、あるいは財閥関係の船会社は、みんな財閥銀行を持っておりますから、そうしますと財閥関係の銀行を持っている会社で、その資本によって経営する船会社、そしてその資本によって経営する造船所、こういうふうに作れば、結局特権財閥だけが船を作って、そういう関係にないものはいかに造船意欲があり、あるいは海運の運営に当って熱心であっても、しょせんは船が手に入らないということになると私は思う。でありますから選考に当っては、海運局としての見解で是なりと信じたものは一応候補に乗せて、それからあとは銀行との折衝ということになるでありましょうが、それが第十次造船ではそういう形がなくて、ほとんど開銀に行って信用状態を聞いて来て、開銀のおっしゃる通りときめていったというような傾きがあるのですが、それであるならば海運局というものは何の権威もないと私は思う。新しい海運局長は、それに対してはいろいろ新構想は持っておいでになるでしょうが、今度の選考に当って、あるいは計画造船を推進されるには、どういう方法が一番妥当であるとお考えでありますか、伺いたい。
  186. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 先ほども大臣から御答弁がございましたように、新構想としましては目下まだ未決定でございまして、閣僚懇談会その他でも御検討をいただいておるわけであります。先ほどもお話のありましたように、大体財閥関係の方がよけいに作っておったということも、一つの結果ではないかと思っております。  なお船価についても、相当装備その他で十分な査定ができなかったということも事実でございます。これは十次でも先ほど船舶局長が御答弁になりましたように、われわれとしても船価審査室を設けましていろいろ内容的に検討もし、装備も相当落した。十一次につきましてはなお一そう、そういう点で努力いたしたい。要するに高性能の船価の安いものは、ぜひ日本海運の将来のためには望ましい。でありますからそういうものを採用したい、こういうふうに考えております。  なお定航路につきましては、いろいろやはり航路の計画等もいたしまして、そうして航路に入れるべき適格船というもの、おのおのきまって参る、そういう点を十次でも航路審査委員会というものを作ってやりました。十一次につきましても、定期につきましてはやはりそういう航路審査委員会のようなものを設けて、適格船の選定をいたしたい、こういうふうに考えます。
  187. 小山亮

    小山(亮)委員 海運局の方でいろいろのところを調べておいでになりながら、日吉丸でしたか、何か日産管下の汽船ですか、ばかでかいものを作ってしまって、採算にも何にもならぬものを認可なさったので、それはどこに持っていってもそろばんが立たなくて困っておるものがありますが、ああいうようなことはあなた方の方でいかに船主が作ると言ったところで、相当の忠告を与えるとか、あるいは制約をするという必要があるのではないでしょうか。
  188. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 それらの実績あるいは計画による荷物その他の検討をいたしまして、そういう点は今後とも十分注意いたしたいと思っております。
  189. 小山亮

    小山(亮)委員 これも私は名前をあげて一々言うのは、その会社の信用にもかかわりますけれども、ある新しい会社が、船を二、三ばいあなた方の認可を得て作っておった。それが三ばいか四ばいか作った後に、その会社がそっくりよその会社に身売りしてしまう、こういうようなことが実際ございました。そういうようなことに対しては、どういうふうに海運局の方はお考えですか。その会社というものが初めから不思議な存在で、経営者も何もほんとうに運航のできる人間はおりはしない。政治的な何か力を持った人だけが、どんどんと船を認可してこしらえてしまって、今になってすっかり身売りしてしまったというようなものがありますが、こういうような場合に、やはり海運局としては今の経営者の内容を見るとか、資産状態を調べるとか、いろいろ考えるとおっしゃるけれども、政治力で押されるところがきわめて多かったのではないでしょうか。率直な御意見を伺いたい。あなたのやっていらっしゃるときではないから、前のときなんですが……。
  190. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 私結果だけ見ておりますので、そういう事例がございましたことは承知いたしておりません。その会社のできるときの経緯、あるいは過去に二、三ばい作った船の経緯を存じておりませんから、御指摘のような事実があったかどうか、はっきりここで申し上げられませんけれども、もしかりにありとしますれば非常に困ったことでありますので、今後は絶対にないように注意いたしたいと思っております。
  191. 小山亮

    小山(亮)委員 ライナーとトランパーの問題ですが、第十次造船のときには、海運局ではどういうような御調査をなさったか知りませんけれども、極力ライナーを強く主張された。民間の方から多くトランパーを要求した。しかしながらその数を制限して率をきめて、あくまでライナーを推進した。その結果、今年になりますと、むしろトランパーがもっと日本にたくさんあれば、うんと運賃がかせげたのだが、肝心なトランパーを海運局は認可なさらなかった。こういうことを私どもは現実の問題として見まして、あなた方がどういうお立場で、どういう観点からライナーやトランパーの建造率をおきめになったか、そこを伺いたい。また今後もそういうことをおやりになるかどうか伺いたい。
  192. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 大体世界的に見ましてもトランパーが定期化しておりまして、定期航路の船が非常にふえております。そこで十次船以前におきましては、日本も新しく定期航路を開く。外国船が進出しておるところへ、新たにこちらから航権の拡張に出ていかなければならないという情勢が非常に強く、そのために定期船をたくさん作ったという状態であります。しかし御指摘のように、今日トランパー式がいい。また逆に見まして、定期航路の船は整理に近づいておるというような状況でございますので、少くとも十一次船以降は、トランパーの率を過去よりはふやしたいと思っております。ただいま考えておりますのは、御承知経済六カ年計画がございまして、それによる海上輸送物資の量、あるいは積み取り比率というふうなものを計画的に考えまして、これらから見た船腹の量を定期、不定期に分け、あるいはタンカーに分けて、これによって計画をしていく、こういうふうに考えております。
  193. 小山亮

    小山(亮)委員 これは私が申し上げるまでもなく、イギリスが世界一の海運国になった——今アメリカが船をたくさん持っておりますけれども、海運ではやはりイギリスにはかないはしないと思うのです。そのイギリスが今日になったのは、全部トランパーだった。トランパーに重点を置いていったから、イギリスは今日のような大海運国になれた。この点を私どもは考えて、船価が安い。そして能率のいい船を持ってくる。これはあくまでも日本がそれに持っていく。船価は、イギリスが今たしかトン七万一千円ですか、ドイツが六万五千円とか聞いておりましたが、それ以下の船価に下げて船を作るようにやりたいと思うのですが、あなた方の方はそういうような可能性があるとお考えですか、あるいはそれはできないとお考えでしょうか。
  194. 甘利昂一

    ○甘利説明員 現在の日本貨物船の船価が、英独に比して高いか安いかという問題ですが、先ほどお話がありますように、一定の基準の船について申し上げれば、ドイツ及びフランスあたりに比べて大体同じくらい、イギリスに比べてはやはり少し高いのであります。これは結局は船価の中に一番大きく占めておる鉄鋼の価格が、イギリスと日本とはずいぶん開きがありますので、その点から出てくる差でありまして、その点さえ是正されれば、船価の点については、さほど大きな開きはございません。
  195. 小山亮

    小山(亮)委員 日本もやりようによっては、世界一安い船ができると思うのです。それはぜいたくな一切のものを廃して、ほんとうに実用的に考え直したものを作り、しかもできれば同一船形の船、標準船を作るようにすれば、荷物を取るのにも同一船形の船は一番取りやすい。その船を持っていれば、商売もしやすいし、外国の荷物も集めやすいのですから、どうしても同一船形の船でいろいろむだな設備を廃して船を軽く作って、世界一安い船を持ってくるのでなければ、断じて日本海運というものは伸びないと思うのですが、その点に対する御所見はいかがでしょうか。
  196. 甘利昂一

    ○甘利説明員 お説の通りでありまして、できるだけその線に沿って今後もやっていきたいと思います。特に同一船形についてはわれわれも、航路によってはある程度は違わなければなりませんが、少くとも同じ航路につくトランパーについては、同一船形でいいのではないかという意見を持っておりますし、従来からもそういう意見があったのでありますが、戦時中、戦標船というものを作って、それに対する非難があり、同形船というと、必ず戦標船と思い出して、ああいう悪い船を作るのだというような誤解がありましたが、漸次皆さんもわかってきて下さるので、今後はその方向に進みたいと思っておりますし、また進まなければならぬと考えております。
  197. 小山亮

    小山(亮)委員 海運局でモデル・シップをきめてお作りにならないで、各造船所で独自の標準船といったようなものを作っておりますから、そういうものを注文する場合には前に作ったのと同じものを作らせる。同じものを作らせれば、必ず船価も一割は安いのですから、そういうような御指導をなさったらいいのではないかと思います。  それからもう一つ伺いたいのは、中小船主の問題ですが、今日中小船主というのはまことに気の毒な立場におります。そうしてまたこれはいろいろな問題等も関連しておりますが、たとえば船員が賃金値上げのストライキをする場合に、海員組合は日本中の海員を包含している単一組合でありますから、賃金の値上げを要求したり、最低賃金の要求をしますと、大船主であっても、中船主であっても、小船主であっても、みんな同じ比率で要求されます。そうしますと、大きな会社資本が充実して経営が楽ですけれども、中小船主というのは経営が非常に苦しい。それなのに要求される賃金は同じです。そうして船形によって乗組員はきまっておりますから、乗組員は多くも少くもない、みんな同じなのであります。そういう観点に立ちますと、中小船主というのは資本的には大会社からどんどん圧迫される。そうして従業員の関係からは賃上げの要求をされる。上下から攻撃をされて、中小船主というのはどんどん没落していく。具体的な例をみると、中川汽船というのは賞与と賃上げの要求をされて、要求に応じたけれども、それが払えないでとうとう船を身売りしてつぶれてしまった。そういうのがたくさんあります。現に相当大きな会社でも、賃金の値上げを要求されたり、賞与を要求されて、それに応じたけれども払えない。そうして越冬資金を来年の六月ころまでに払おうというようなのもあります。私はこういうような状態を見て、これに対しては何とか船員局長方針をお立てになって、海運の特殊性というものを考え、また海員の特殊な立場というものを考えて、特に船員局がこれらを監督といいますか、指導しておいでになるような様子に承わるのでありますが、それならばそれなりに特殊な考え方で、それぞれの出し得る範囲内の賃金を出させる。大きな船主、遠洋航路をやっておる船主、近海航路をやっておる船主、あるいは改Eだけを持っているような船主、これはそれぞれ乗組員の質も違うのですから、その質の違ったのは違ったなりに、安い賃金あるいは少い賞与でも仕方がないのですから、その経済につり合うように要求させる、こういうふうに導いていく方法はないでしょうか。あるいは場合によってはそういう正式な折衝だけでなくして、調停機関を作って、賃上げ要求であるとか、あるいは夏季手当であるとか、あるいは越冬資金であるとか、一年二回くらいずつの定期的なストライキのようなことをさせないで、もう少しうまくこれを指導していく方法はないでしょうか。何かその点に対して船員局長の方でお考えがございますか。
  198. 武田元

    ○武田説明員 この船員問題につきまして、基本的ないろいろな事項について、労使と政府と、この三者がお互いにもっと意思の疎通をはかる必要があるということを考えまして、昨年の暮れでございましたか、運輸省の中に海運懇談会というのを作りました。船主協会、海員組合、運輸省の幹部の者が定期的に集まりまして、腹蔵なく意見の交換をするという機関を作りまして、両三回開催をいたしましたが、今後もこの懇談会を活用しまして、今お話のような、労使関係をどういうふうに持っていったらいいか、それがためにはどういうふうに具体化したらいいかということにつきまして、ひんぱんに会合を開きまして、真剣に問題に取り組んでいきたい、かように思っております。  それから今のお話の船員の賃上げの問題に関連しまして根本的な問題の一つは、現在の労使の交渉方式であります。これが船主協会と全日本海員組合と、現在一本協定になっておる。船主協会といいましても、非常に大きい船主もあるし、あるいは中船主、小船主、いろいろの規模の業態の船主が包含されております。それが全日本海員組合と一本協定をやっておるところに、非常に無理があるのではなかろうかということで、船主協会といたしましては、現在の交渉方式について根本的に考え直す必要があるということで、現在いろいろ案を練っておるようでございますが、いずれその案が正式にまとまりますれば、海員組合と交渉を始めることになると思います。その際には私どもとしても十分その内容を説明を受けまして、われわれとして十分検討いたしました上で、必要があれば労使に適当な勧告をして、現在の交渉方式の根本的な検討をして、その改善を加えるという方向に努力して参りたい、かように思っております。
  199. 小山亮

    小山(亮)委員 賃金の値上げの問題は、大体計算を見ますと、船員の給料が船費の五割になるまでは、決して経営上困りはしない。苦痛じゃないのです。ただその場合に、金利が高い場合に一番苦痛なんです。ですから、中小船主の場合でありますと、中小船主は、たとえばF型の船なんかを作って、それを改造しろという政府からの慫慂もあって、金を借りてこれを改造した。その場合に市中銀行から借りていますから、一割以上の金利を払って、その利息に追われているわけです。ところが大型の方になりますと、開銀から長期の金を借りてやりますから、それは金利が安いのです。だから大船主の方は賃上げの要求をされても、そう苦痛じゃないのです。しかしながら中小船主の方は高い金利で追い回されておりますから、賃上げの要求をされれば苦痛だ。こういうような点についてはもうすでにお耳に入っておると思いますが、それは政府が別にこれに金を出してやれとかなんとかいうのではなくて、あなた方のあっせんで開銀あたりの長期の低利資金を借りて、これに肩がわりをさしてやるというような、親切にこれを指導してやるような、方法はお考えになりませんか。私は、大型船主に対しては海運局の方は絶えず非常に熱心に努力をされておるけれども、中小船主に対してはどうもあまり熱心にやっておいでにならぬように思うのですが、いかがでしょうか。
  200. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 大体今日までの海運政策は、外航船の方が主になっておりまして、特にその必要性と申しますか、その理由が外貨の獲得のためにこれを活用する、あるいは拡充するという問題が先頭に立っております。従ってそういう結果的な状況を来たしたのではないかというように考えるのであります。ただいま御指摘のたとえばF型船にしましても、一方大型船開銀で六分五厘の金利である。F型の改造の場合は一割の金利を払って非常にアンバランスがあるということは、私も痛感しておるわけであります。ただ今までの開銀の六分五厘という金利は、外貨獲得のために必要な外航船のために特殊措置をとったということでございまして、段階としては一応その方が成功してきたという現状になっております。ただ私どもの気持としては、同じ船でありながら、しかも内航船といえども国内で鉄鋼、石炭その他重要物資を運んでおりますので、できればそういうものもやはり同じように金利軽減の恩典に浴してもらいたいという希望はしております。ただ御承知のように開銀といたしましても、いろいろ資金繰りその他の問題もございますし、なかなかむずかしい問題だと思いますが、皆さんの御協力を得まして、できるだけ早く実現しますように努力をなお今後続けていきたいと思います。
  201. 小山亮

    小山(亮)委員 世界一海運国として恵まれた環境にあるわが国として、船というものに対して正しい理解をしてやって、そうしてそれが伸びるようにしてやらなければ、決して日本の繁栄はないと思うのです。私が申し上げるまでもなく、アメリカから横浜まで一トンのものを運んでくる運賃、それはトラックで横浜から東京まで運ぶだけの運賃に匹敵するのです。そんなに船は運賃が安いのです。海上を利用すれば安い運賃で物が運べるし、それから輸出を奨励するには日本の生産費を下げなければならぬ。そうすると、やはり低物価政策の見地から考えましても、今のように金利を安いものに振りかえてやりさえすれば、経営もできるし、賃上げの要求にも応じられるのです。ところが金利が高いために、賃上げの要求に応じられない。これでは働いておる人たちにも気の毒なんです。その点を考えられて、特に中小船主の対策に対して、従来はほとんど等閑視されておりましたが、今度はこれを強く取り上げていただきたい。これを特にお願いをしたいのですが、海運局長の御所見はいかがでしょうか。
  202. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 まことに御指摘通りでございまして、特に内航の場合には、先般来再々問題になっておりましたような、国鉄運賃自身が相当政策的に諸般の事情から決定されておりまして、これに対応する海上運賃も、当然ある程度の追随を余儀なくされるというような状況であります。しかし一般論といたしましては、海上運賃も重要物資を運んでおります関係で、安いに越したことはないのであります。そのためにはやはり相当の船主経済に対する施策といいますか、保護と申しますか、特殊な観点に立った政策をとる必要があると私ども痛感しております。にもかかわらず現在まであまりその対策が立っておりません。今後は仰せの通り全力を上げて内航船問題に取り組んで参りたい、こういうように考えております。
  203. 小山亮

    小山(亮)委員 船員局長に伺いたいのですが、今船員局長の言われたように、何らか特殊の調停機関を作られるということは、私も非常に賛成なんです。御承知のように陸上の争議ですと、たとえば電気会社の争議にしましても、あるいは鉄道会社の争議にしましても、電気会社が争議した場合には、電気を消されてしまえばだれが一番困るかというと、電気を使っている人が一番困るので、電気会社はその間たくべき石炭も油もたきませんから、それだけ——そして電気を消されても、電気料だけは差し引かないで取れるのですから、電気会社は痛くもかゆくもないということになるのです。それから電車の争議なんかを見ますと、私ども電車の争議を調べてみても、電車をとめるとどうなるかというと、電車会社に上ってくる一日の料金のその四割が賃金だ。あとの四割二分は定期券を持っている人たちだ。定期券を持っている人たちが足をとめられても払い戻ししませんから、電車会社がストライキをやられて損する分は、その一日の上りの一割八分だけ損すればいい。こういうことになっておるので、実際に腹を痛めつけられるのは、パスを持つている連中が一番悩まされているわけなんです。私はそういう点から見て、陸上の争議と海上の争議とは全然性質を異にしていると思う。船の争議は、船をとめられたら最後です。チャーターされておりましても、それはオフ・ハイヤーになりますので一文も入ってこない。それで完全に命を断たれたと同じことになる。だから海上争議というものは、船主が非常にこわがって、いつでも要求通り要求を受ける。それがために、払えない金まで承諾するのです。その結果、年末賞与を払えないで、来年の六月まで繰り延べて待ってくれというようなばかなことをやるものも出てくる。私はその点を考えまして、それは一つ情勢に応じて、これをちゃんとおやりになる方がいいのじゃないかと思うのです。私も長い間船乗り生活をしまして、船員出身なんです。船員が苦しんでいる状態というものは、身をもって体験しておる。だから、そういう人々は、自分の会社をつぶしてまで金を取ろうなんという考えはないのです。そこに企業体に応じての争議の解決方法というものがあるのですから、それを特にこの際取り上げて御考慮願いたい。一件賃上げというようなのはだめなんです。二百幾つの会社が、みな資産内容から何から違うのです。そのうちの十五社くらいは一流の会社ですから、一律でやられてもいいのですが、一隻とかあるいは三隻とか五隻しか持たないようなのが、あの大汽船会社に並んで争議の要求に応じられっこはないのです。その点を考えられて、ただいま船員局長の言われましたような、血を見ての争議でない。無血で解決のつくような、いわゆるドイツでやっておりますようなストライキまでいかないで、解決をつけるような方法をお考え願いたいと思います。御意見を伺います。
  204. 武田元

    ○武田説明員 現在の一本協定の形を改訂して、たとえば大は大、中は中、小は小といったグループごとの協定ということになれば、また問題解決の促進の方法になるかと思いますが、特別の調停機関という御趣旨は、あるいは戦前の海事協同会ということのお考えと思いますが、たとえば先ほど申し上げました海運懇談会のようなものをさらに組織化して、戦前の海事協同会のようなものに持っていくという考え方もございますが、これはいろいろとむずかしい問題がありまして、たとえば現在労働委員会というものが法的に認められておりまして、この労働委員会の機能との調整をどうするかというふうな問題もございまするし、特別の調停機関を作るという点につきましては、さらになお研究を要するだろうと思います。この点につきましては、ただいま総合的な海運政策の一環として、今後船員政策をどう持っていったらいいかということで、一生懸命で実は勉強しております。そういう問題も一つの重要な項目として、今後研究をして参りたいと思っております。
  205. 原健三郎

    原委員長 それでは本日はこの程度にして、次会は公報をもって御通知申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時散会