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1955-01-24 第21回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年一月二十四日(月曜日)    午後二時五十八分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     高橋進太郎君    理事            北村 一男君    委員            木村篤太郎君            平井 太郎君            梶原 茂嘉君            吉田 法晴君            小林 亦治君            羽仁 五郎君   政府委員    外務省アジア局    長       中川  融君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法務省刑事局長 井本 台吉君    法務省人権擁護    局長      戸田 正直君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (外国人入国管理状況に関する  件)  (人権擁穫に関する件)   ―――――――――――――
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではこれより検察及び裁判運営等に関する調査の件を議題といたしまして法務委員会を開会いたします。まず外国人出入国管理状況に関する件を議題といたします。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 同じ問題について再度政府に対して質問をするということは、はなはだ失礼なことであつて政府の能力を疑うのかというような疑いをも招くことで、まことに遠慮を私としてはしたいのであります。重ねて同じ問題について政府意見を伺わなければならないことをはなはだ遺憾に考えます。しかし、その間には政府の高いレべルにおいて幾分反省をせられたような趣きもあり、本日ただいま参議院の本会議において花村法相凶悪きわまる犯罪関係があるものか、そういう情状まことに憎むべきだというような場合を除いて、現在大村収容所に収容している人はないということを断言しておられます。それから先日来、新聞紙の上でこの出入国の問題についての取扱いについて、政府がよほど反省をせられているのではないかというように考えられる記事が出ておりますので、あらためて現在政府がどういうようなお考えでいるかを伺いたいと思うのです。  質問要点は、大村収容所などにおいて収容しておられる方々の中で、ぜひともそこに収容しておらなければならないというような方々だけに厳格にそれをとどめておられるのか。りつぱにそういうところから外に出られても何ら害がないということが、どういう面から見ても明らかであるという方が一人でもおられるのじやないか。それは人権の問題から重大な問題です、国籍その他を問わず……。現在特にその点についてどうか一つはつきりと、どうしてもそこに収容していただかなければ、その方を釈放することによつて実害があるということが明らかだという方を除いては、そういうところから出ていただくという方針でおられる、かつその方針を実行に移されるという態度でおられることに誤まりがないと思うが、その点をはつきりとお答えを願いたいと思うのです。重ねてこれを申し上げますのは、私は非常に重大な心配を二つ持つております。その第一は、あそこに、ああいうふうに無理をして、大村収容所などに多数の方々を入れ、そうして動かすべからざる根拠というものに基かない方をも収容しておられることによつて、あそこに暴動のようなものが起るということの責任政府はとられるということは大へんなことだろうと思うのです。私はそういうことは絶対に起つてはいかんと思いますが、言葉を強めて申せば、実は私はあそこを一ぺん視察した者としても、どうかすればあそこでそういうような騒ぎが起るのじやないか。そうして人が一人でも傷つけられるのじやないかということを思えば、さらに心配にたえない。これは当局においても御同感であろうと思う。そういうような不幸な事態が発生するというような状況をそのまま一日でも続いていくということはできないことだろうと思うのです。  第二の理由ば、国際的、外交的にも外部から韓国政府なり、外国から、この点についての強硬な申し入れがあつて、そうして初めて日本がそういうような措置をとるというようなことであつては、これはまことに相済まない。沖繩の問題についてもアメリカからそういう問題が提出されて、日本が動かなければならないというようなことが最近もあつたことでありますし、新聞紙の報ずるところによれば、韓国政府から大村収容所に収容されておる人々の、釈放せらるべきものは早く釈放せられたしというような要求があつたかのように伺つておる。そういうようなことで、日本政府が、当局が初めて腰を上げるというようなことであつては、これはわれわれ国会議員としてもその職責上非常に恥じなければならない問題だと思いますが、どうか一つ率直に、収容されておる方々の中で、釈放するということができる方々が多数おられるということは、今さらるる申し上げるまでもない。で、昨日も理事会の席上で、緑風会梶原議員の知つておられる方で、その御主人日本りつぱに社会的地位を持つておられる方であり、その奥さんというのは収容所におられる。そうして、すでに年余、数年にわたつてその陳情をし、そうして当局においては十分再審査をして、一刻も早く釈放せられるということが了解されておるにもかかわらず、いまだに釈放せられない。そういういわゆる官僚主義的な方法でもつて人権をじゆうりんし、場合によつては流血の惨事が起るというような状態を放置し、かつまた国際的に外国から強硬な申し入れがあつて、初めてそういうふうな措置をとるというようなことがあつては大へんだろうと思いますので、今申し上げた点について、どうか決して無理なことを伺つていると私自身思いませんので、どうか率直なお答えをちようだいしたいと思うのであります。あまり一々の例をあげて詳しく申し上げませんが、十分に御承知のことだと思うので、客観的に見てあそこに収容されておることに理由がないと考えられる方々は多数おられるのですから、それらの方を一刻も早く釈放されるようにしていただきたいと思うのですが、いかがでしようか。
  4. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 私まだ花村大臣がいかなる御答弁をなさいましたか、伺つておりませんので、それと全く関係なく私の知つている限りにおいてお答え申し上げます。  現在大村に入つております人々はいろいろな種類がございます。第一は密入国者関係、このカテゴリーに属する人、第二は査証で入つて来まして、その査証の期限が切れても帰らないために入つている人、それから第三のカテゴリーの人は、これはごく大ざつぱに申し上げるのでございますが、犯罪、あるいは麻薬関係、その他の要するに広く申し上げれば、犯罪関係等理由で入つている人、こういうことになると思いますが、犯罪関係で入つている人の中に、今羽仁委員の御質問は主としてこれに関連しているのじやないかと考えますのですが、必ずしも凶悪凶悪の観念がどこを、どういうのを指すか存じませんが、これはわれわれのほうのテクニカルな、この法令上のことから参るのでございますが、たとえば一応刑務所から出ますときに、この管理令にかかる者は、一応われわれのほうの手に移されます。そしてその結果少くとも現状におきましては八五%くらいは釈放と申しますか、在留許可をいたしておるのでございますが、従来地方の事務所において調べを受けましたときに、なんと申しますか上訴権のような形で上に異議を申し立てて来る権利を放棄いたしまして、法令上当然にその結果退去命令が出ている人も相当数ございまして、その人たち大村に入つているという事実はございます。その中には今のその凶悪の意味がどうか存じませんが、必ずしも凶悪とは申し得ない人もありはしないかと存じます。しかしこれはわれわれのほうの法律的な管理令の構成上そういうふうになつておりますのでございますが、われわれといたしましても、これはまあ法律的に申し上げますと、いろいろ問題があるのでございまして、実はそうなればこの法律上当然に退令が発付されるという建前になつておりますのでございますが、しかしこういうふうに長期にわたりましたという実情にもからみまして、ただいまお話のようにわれわれとしても釈放考慮しているものがございます。そしてまさにお説のように人権あるいは人道的な考慮からそれを考えたいとわれわれも考えております。しかし法令建前上、そういう人が入つているということが、直ちに人権じゆうりんであるとか、あるいは人道的な考慮に欠けているものとはわれわれとしては考えておりません。普通でございますならば、正常な国交関係の場合に各国が大体同様な法令を持つているわけでございますが、退令を発付されたような場合には、たとえて申しますならば、日本人がどこかの国でいかなる理由にいたしましても、特に不当な取扱いなら別問題でございますが、その国内の法令上退令を発付されたような場合には、日本ならばいつでも喜んでで引き取つております。これが大体国際的な慣行であるとわれわれは考えております。ただいろいろな事情のために、非常に長期にわたる人もありますので、これにつきましてはまた別途われわれとしては考えなければならないということを考えておる次第でございます。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 重ねて申し上げるのは非常に恐縮なんですが、どうもその問題の要点が御了解になつていないように思うのですが、最初に出入国管理令というものが、占領中の方式から現在の方式に変えられるときにおいて、参議院の外務、法務委員会などにおいてこれは明らかにしたことですが、これは常に念頭に置かれていなければならないと思うのですが、朝鮮方々に対しては、一般外国人取扱いをすることはできないということは当時政府としてはつきり言明されたことなんです。そして具体的には人情にもとるようなことはしないということは、当時の岡崎外相はつきりと言明されたことなんです。法律適用さえやつていればよいというようなお考えでおられることは、毛頭私はないと思いますが、この法律適用の場合でも、今申し上げたように、この法律適用の前提となる事実がある。韓国政府から大村収容所などの現状に対して強硬な申し入れがせられ、またはせられるのではないかと憂えるのも、やはり根拠はそこにあるのです。かつては、朝鮮の人を日本に無理に引つぱつてきて、そして日本国民としてこれに対して不当な取扱いが多いような、そういうふうな取扱いをしておいて、そうして今度は、日本国民ではない、朝鮮の人であるからすぐに引き取れというようなことに対して、引き取ることはできないといううぅな立場韓国朝鮮の側でとられているということについても、日本の側で反省すべき理由があります。どうしてもそういうような点から……、今おつしやるように、日本の場合には引き取つているでしよう。しかし、韓国なり何なりの場合で、すぐお引き取りにならないということにも、その理由はあるのではないかということも私は当然お考えになるべきだと思う。そうして最後の問題は、ああいうところに長いこと収容しなければならないというような理由のない方を、ああいうところに長く収容しているということは問題なんです。ですから、その問題を今どういうふうに解決しなければならないかというところに問題があるのであります。法律の上でどうなつているかというようなことだけで解決できる問題ではないのです。しかも、そういう無理をやつている結果は、あそこに収容することによつて防ごうとする実害よりも、はるかに重大な実害を発生してしまう。そういうことの責任はいわゆるキャリヤー・ビューロクラットの立場人たちは負わないかもしれないが、われわれ国会議員なり何なりは、そういう責任を感ぜざるを得ない。ですから、今あそこに収容していることによつて防げる実害よりはるかに重大な実害が発生するということも十分考えてみなければならない。結論としては、ああいうところに法律の上から言えば、それは罪を犯して刑務所から出た人が収容されるというふうなことが中心になつて考えになるかもしれませんが、そうではなく、そうして退去をしていただきたいというように日本の国の政府考えている人は退去してほしいのに、向うが受け取らないからいつまでもあそこにいるのだというようなことではなくて、今申し上げたような点で、かつて日本国民として日本生活をしていただいて、その後に朝鮮が独立されたことによつて日本国民ではなくなつた方々なのである。そして今密入国々々々というふうにおつしやいますけれども、日本朝鮮外交関係が正常に開かれているならば、それらの方々は決して密入国の形をとつてお入りになる方ではない。ところが、そういう外交関係が開かれていないために、形式の上では密入国の形をとつているかもしれない。しかし実際について判断すれば、密入国ではない正式の外交関係に基くそうした手続を踏まれることができないという方々、しかも何ゆえに正式な手続を踏まないで日本に入ろうとしておられるかと言えば、それは、日本に御主人がおられ、家族がおられるというような、法律などをはるかに超越される人情人道からそういう行動をとられる。ただ一片の法令などによつてそういう人情とか、人道とかいうことをどうにかしようというようなことはできることではない。法令をはるかに越えるところの人情なり事実なんです。それをあくまでも法令をたてにとつて解決を一日でも延ばしておかれると、どういう不祥な、不祥なことが起るかわからない。それはいわゆる行政官吏責任の範囲内ではないとお考えになつて平気でおられる方があるならば、それはとんでもないことと思います。ですから、要するに先はど法務大臣がどういう答弁をなすつたか、今御承知がないということは実ははなはだ承服しかねることです。あなたの方の最高責任者国会質問を受けるという場合、どういう種類質問を受けるかといことはすでに事前にわかつておることです。従つてそれに対する答えは、本来ならばその場でお聞きになつておることが当然であるし、かりにそうでないとしても、そういう問題についての答弁をお聞きになつておることは当然です。しかし法相お答えになつているのも今の点なんです。凶悪な、つまり実害のある犯罪を重ねて犯すであろうという明かな微候がある場合、そうしてその密入国などの場合というふうに言うておるのだが、その問題はそういうところにあるのではない。密入国の場合だつても、正式に外交関係がないにもかかわらず、人情上どうしても日本に渡りたいという方があるために、形式上においては密入国ですが、実質的においてはそういう密入国とか何とかいうことでは解決できない問題である。それからもう一つは、犯罪を再び犯されるおそれがあると判断して、退去願つておる方であつても、相手方の国においてお引き取りになることができないという主張を持つておられる、こういう事態が今ある。それを解決するには、実質的において実害がないと考えられる方は即刻釈放されるのが当然だと思う。しかも、今それでは韓国政府からそういうような申し入れがあつたという事実があるのですか。それはどうなんですか。これを外務省の方から……。法務省の方では直接権限がないというように御答弁になるかもしれないけれども、新聞などを通ずると、そういうふうな強拠な申し入れがあつたようにも承知するのですが、どうですか。もしおわかりになつているならお答えしていただきたい。
  6. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) 強硬かどうか存じませんか、ともかく釈放ということについての希望表明があるということはわれわれも承知いたしております。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 希望表明があつた場合に、それらが即時解決されなければ、次は強硬な申し入れになるということは申し上げるまでもない。ですから、どうか、さつき申し上げたように、あんなに多数の方々を、しかもこれはまあそこに収容されておることはいたし方ないのだという根拠がないのに、そういう方々を多数あすこに収容しておかれてあすこの所長さんにもじかに聞きましたが、そんなに長く人を入れておくところではない、そんなに長く人を入れておくと、そこに騒ぎが起つたとか、そういう不祥な悲しい事件が起らないとも限らない、それに対してそれを処理できるというふうなことの設備は持つちやいないと言つておりました。ですから、あんまり長く、そうして人情にもとるような方法で、そうして今のように収容してもやむを得ないというような確実な根拠がなくして長く収容しておるというと、不祥事件が起ることを十分考えなけれぱならぬ。それから第二に、外交上の問題というものをどつちの方向へ向つて進めていくのが日本としてとるべき態度であるかというようなことから申して、両面から申して、実害がないと考えられる、明暸実害があると考えられる場合を除いては、そうしてそれを引き取られる家族があるとか、あるいは責任を負われる団体があるという方々の場合には、すみやかにこれを釈放せられることが当然だと思いますが、どうです。
  8. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) われわれといたしましても、本来大村収容所はそういう長期のことを予想していないということは確かに事実だと思いますし、われわれ自体といたしましても、あすこ収容所長期になるというようなことははなはだ望ましからざる事態だと考えております。それで、ただいま羽仁委員のるるお述べになりましたようなことは、われわれといたしましても考慮をいたしておるつもりでございまして、その結果が羽仁委員のおつしやいます通りになりますかどうか存じませんが、目下その御意見のようなことも考慮の中に入れながら、いろいろ考えておる撮中であります。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 大へん差し出がましいようですけれども、その釈放することによつて再び罪を犯されるであろうということの明らかな証拠がある場合ですね。そういうことについてまで私は申し上げているんじやない。実はその点にも問題は私はあると思うんですよ。たとえば酒の密造とか、あるいはヒロポンなり、麻薬の製造というふうなことをさつき法相もおつしやいましたが、しかしなぜ朝鮮方々の中に、そういうような御自分でもいいとはお考えになつていないようなことまでなさる方があるかということを考えてみなければならない。日本の国の政府が、かつて日本国民として取り扱つたところの、そしてその後日本国民ではなくなつた方、その朝鮮方々が、正しい労働なり生業なりによつて生活を立てていかれるような、そういう社会生活を十分にやつておいでになるならば、それにもかかわらず麻薬を作るということについては、これは憎むべきものだというふうに考えることは当然だと思うのです。日本に連れて来て、日本国民にしてしまつてずいぶん長くたつて、今朝鮮に帰れと言つてもできない。それで日本では失業者が町にあふれ、いわんや朝鮮方々が職業を得るということは非常にむずかしいんです。ですからその方々がそういうようなあまり喜ぶべきことでないことをなさるということにも理由があるんです。しかし私は今そこまでは申し上げない。そこまでは申し上げませんが、その方々釈放しても直ちに害をなすという明らかな証拠がない場合、すなわち、その方の御主人がおられるとか、家族がおられるとか、引き受ける団体があるとかいう場合には、御主人がいるのに、また、そういうことをやる明らかな証拠があるというには、よほどの証拠がなければならないことだと思いますよ。それは最近アメリカなんかでは、そういう罪を犯す明らかな証拠があるということについての基準というものが、だんだんでたらめになつていくということを新聞でも見ましたが、まさか日本法務省においてそういうふうになつているということは私はないと思います。出したならば必ず悪いことをするという人の場合には入れておくでしようけれども、出して悪いことをするかしないかということがわからんという人までも入れておく、いわんや、ちやんとした家庭があり、あるいは引き受ける団体があり、悪いことはさせないというふうになつている人までも入れておくということは、私は大問題だと思う。せめてその程度までのところは、もうこれはお考えの段階じやないのじやないか。私はさつきも申し上げたように、重ねて国際的に強硬な申し入れがあつたり、あるいは悲しむべき不祥なる事件が起きたりするということになる前に、今申し上げたような実害がない方々については、一刻も早く釈放せられるようにお願いしたいのです。この点については引き続き政府の方から他の関係方々もお見えのようでありますから、今申し上げているような点について、あなたはさつき私の申し上げたような努力をなさるというお答えであつたのですが、ほかの方からも御答弁をいただくのであれば、お答えをいただいた方がいいと思いますが、どうでしよう。
  10. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) どうですか、もしなんでしたらアジア局長……お見えになつておりません。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 人権擁護局においてもこの問題はやはり重大な関心を払つておられることと思います。なかんずく、国際的な関係もあることだから、もちろん日本国民人権を軽く見ていいということじやありませんけれども、しかし事実問題は、日本の国の中において、日本国民であれば日本の国の政府のいろいろな保護というものがあるのでしようけれども、朝鮮方々の場合には、その方々が受けておられる保護の点について薄い場合が多い。そういう点について弱い立場人権が侵されている場合には、特に重視していただきたいと思いますが、それを一つ管理局の方と御協力を願つて、そうして悲しむべき状態を一刻も早く解決をしていただきたいと思いますが、いかがでしようか。
  12. 戸田正直

    説明員戸田正直君) 人権擁護局の直接の所管にならんかと存じますけれども、やはり人権の問題に関係がございますので……、長く入つておりますということは、いずれにしましても決して好ましいことだとは思いません。入管局とも連絡いたしまして、十分協議いたしたいと思います。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の問題について、簡単に私からもお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。局長努力をすると、こういうお話でございますが、具体的な事例について羽仁委員と私が、これは公けではございませんが、管理局局長あるいは課長に折衝をいたしました経験からいたしますと、従来のあの出入国管理令、あの法律を、法律として審議いたします際に、私どもはアメリカ当局と申しますか、  日本におりますアメリカ人々朝鮮人々に対する感じといぅものが、あまりに露骨に現われ、あるいは日本におります朝鮮の諸君をいろいろなロ実を見つけて帰す方針ではないか、こういうような方針にさえも感じつて法律修正までも考えたのでありますが、それはそういうことはない。こういうことで修正もなしにそのときの情勢で今日施行されているわけであります。具体的な事例を通じて見ますと、そのとき持ちました疑問というものは、なお感ぜられる実情でございます。私が取り扱いましたと申しますか、関係いたしました問題は、戦争中空襲が激しくなつて避難をした、その大ぜいの中の一人として、主人は内地にとどまつて家族朝鮮に帰つた。引き続いて戦後主人はこちらにおつたわけでありますが、家族が参りたいということで、形はあるいは密航ということになつておりますかしりませんが、参りましたが、本人は家族の点を心配をいたしまして、病気で倒れた。そこで奧さんあるいは家族、子供を仮釈放をしてもらいたい、こういうことであつたのでございますが、その当時の担当課長と申しますか、まるで家族を遇しますのに、一般犯罪人を取り扱うがごとき態度であつたと私は感じました。別に私はこれは今の局長課長の時代ではないかもしれませんが、こちらに平和に生活をしております家族が、自分の郷里に帰りまして、これは慶尚北道であつたと思いますが、帰りまして、帰つてくるときに形が密航という形になつたということで、大村収容所に入れられた。従来内地におつたものでございますから、これの仮釈放その他を願つたのでございますが、結局は送り帰された、こういう事例等も持つております。そうしますと、この法律の運用について、私どもは大へん法務省の言明と違つた実際の運用がなされておることを感じとるのであります。先ほども羽仁委員からもお話がございましたが、あるいは戦争中徴用という形で内地に連れて参つた人もあります。あるいは勤労報国隊ということで、当時の日本の戦争に相当無理をして協力をさせるという姿で、内地に居住を願つた、あるいは産業に協力を願つた。そしてその家族の中心が引き続き日本におられる。こういう人の家族が、形はあるいは公けでなく、ひそかにということになるかもしれませんが、家族のおる日本に来たい。これは当然の心情だろうと思うのであります。法律がございますから、その法律の形を踏ませるようにということは、これはわかるわけであります。しかしそういう実際の事例が起りました場合に、私は法の運用というものは、これは理解と同情とをもつてなされなければならんと思うのであります。努力をするということでございますが、実際にはまだそう参つておらん実例を私ども見せつけられます。そこであらためて現在において法の運用をどういう工合にされようとしておるか、あるいは過去において家族の中心であります主人、あるいは家族等が日本にあつて、そして一緒に生活をしたい、こういう心情と事情によつて参りました者については、法の許す範囲内において最大限のお取扱いができるかどうか、同情あるお取扱いができるかどうか、この点をもう少しはつきり願いたい。まあ韓国との国交調整については、今後努力をしたいということであります。大臣等の答弁もございましたが、これを実際に進めて参る点から言いますと、出入国管理令の運用についても、理解と同情があつて、最大限の努力をなさることが法の運用の衝に当つておられる管理局なり皆さんの責務だと思うのであります。重ねてでございますが、その点について明確な答弁を承りたいと思います。
  14. 内田藤雄

    説明員内田藤雄君) ただいまの御質問の中で、まず第一に従来から日本に居住なさつておられます朝鮮半島の出身者につきまして、ことさらにある口実を設けて国へ帰らせようとしておるというような、もし誤解がございますならば、そういうことはわれわれは考えておりません。しかしただいまの第二の問題の新しい密入国のケースにつきましては、われわれは原則として密入国ケースは帰つていただくということにいたしております。これは前段に申し上げましたことと何ら矛盾いたすことではないとわれわれは考えております。ただいま、もつとも御指摘の通りに、従来の朝鮮日本関係、あるいは台湾と日本関係等におきまして、ただ一般的な、国際的な原則だけで押し通すことが妥当でないような場合があるのではないかということにつきましては、われわれも反省いたしておりますが、しかし大体の原則ということになりますならば、管理令の個々の条文の問題を離れまして、この法令建前そのものが、またこれは国際的にいかなる独立国におきましてもとつておる基本的な政策であると存じますが、「外国人は、有効な旅券又は乗員手帳を所持しなけれぱ本邦に入つてはならない」これは出入国管理令の第三条の条文でありますが、このような条文は世界いかなる国におきましてもとつておる基本的な条文でございまして、ただ、ただいま申し上げましたような特殊の考慮を加えてある場合に許可を与えておるのでございますが、しかし原則はどうかと言われますならば、やはりわれわれとしては、この原則にのつとつて管理令を運用して参らざるを得ないと考えておりますし、これが国際的な人道に反するとか、あるいは義理人情に反するものとはいかなる国も考えておらんと私は考えます。この条文をゆるくやらないから国交の調整ができないということもまあないと信じておる次第でございます。具体的な、今、委員の御指摘になりましたケースも私はよく記憶しておりますわけでございますが、あの場合、たしか当時非常にどういう理由か存じませんが、密航のケースが著しく、かつ急激にふえた時代でございまして、そうして、しかもいわゆるわれわれの言葉で申しますと、現行犯という形で陸に上る前、あるいは上つてすぐに、海上保安庁なり、警察なりで集団的に逮捕されたような事態であつたと記憶いたします。そういう場合におきましては私は今いたずらに原則論を振りかざすつもりではございませんが、これも大体の原則といたしましては、そういう現行犯でつかまつたようなものまであまりルーズにいたしますとろことは、これは大きな意味で果して妥当かどうかということを疑ぐつておるわけでございまして、個々のケースといたしましてはいろいろお気の毒な場合もあろうかと存じますが、大体たとえば集団で二十何人一緒につかまつたという中から、今度はピックアップしてある人だけは許してやるということは、なかなかまた、われわれの方の立場からいたしますとやりにくいことでございますので、個々のケースといたしましてはなるほど非常にお気の毒な場合もあるかも存じませんが、大体原則といたしましてはこういう現行犯のケースでは帰つていただくということにしておるわけでございます。それであの場合もたしかそういつたケースであつたのではないかと思いまして、その意味から一応……。原則はただいま申しましたようにやはり退去ということになりましたが、お申し出でのような御事情もございましたので、たしかその婦人と一番下の子供か何かは仮放免いたしまして、その御主人のところに、たしか家庭に、とにかく出ることを許したように記憶しております。
  15. 北村一男

    理事(北村一男君) 吉田委員に御了解をお願いいたします。ただいま中川アジア局長見えられまして、できるだけ早く衆議院に行きたいというのでですね、すぐ羽仁委員の……羽仁委員はあれですか、御質疑ございますか、局長に……。ちよつと間にはさむことに御了解を願いたいと思います。
  16. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 外務省の方に伺いたい点が二つあるのですが、一つ新聞などの報道によりまして、われわれが心配をしている点は、この大村収容所に収容されておる朝鮮方々に対して、朝鮮の方の、韓国政府のほうからそれを釈放されるようにというようなも申し入れがあつたのではないかというように心配をしておりますが、そういう事実があるでしようかどうでしようか、その点を第一に伺つておきたいと思います。それから第二に伺つておきたいのは、外務省としてこの不当に収容されているというような感じ外国の方が持たれるということが好ましいことだというふうにお考えになつてまさかいないと思うのですが、事実上においていやしくも外国政府から不当に収容しているものを早く釈放しろというような申し入れがあるというような事実に対しては、どんなにお考えになつているか、それを慎重にお考えになつているかどうかということは、十分私は慎重にお考えになつていることと思うのでありますが、その点についてこの際政府態度を明らかにせられたいと思うのであります。これは繰り返して申すのははなはだ恐縮なんでありますが、現在の出入国管理令というものができる当時に、参議院においてわれわれは委員会でこれを審議した際に、朝鮮方々というのはかつて日本国民として生活をしていただいた方々であり、ずいぶんつまり無理な形において日本に長くいていただいたというような場合もあり、場合によつては、はなはだ残酷なる事件もあつたことであり、かつ日本朝鮮との過去の関係というものは、日本側においてもちろんいろいろのあれもありましようけれども、しかし朝鮮なり韓岡なりの方からお考えになつて、そうしてこれはなかなか氷解しないということはあるということは当然と思う。またそのために日韓会談というようなものもなかなか困難をきわめておられることだろうと思う。それで現在としては日本側の立場を先に述べるのではなくて、やはり韓国側のお考えというものも十分考慮せられなければ、私はとうてい解決できることじやないと思うのです。かつて日本が植民地として支配していたという事実に対する、そして今日それは一般に独立をしておられるという関係の段階ということは、かつて日本が帝国主義の国家であり、外務省が帝国主義国家の外務省であつた時代の考えを今日続いて持つておられるようでは、とうてい解決されることはできない。万々そういうふうなお考えはないことと思う。従つて今申し上げたような点ですね。第一に韓国政府からそういう大村収容所に不当に収容されている人間がいる。従つてそれを直ちに釈放すべきであるというような申し入れがあつたのか、もしあつたとするならばそういうような問題に対してどういうふうにお考えになつておられるか。で、問題の性質は十分御了解下すつておることと思うのですが、単にいわゆる普通の法律解釈とか何とかいう点だけで解決できる問題ではないことは、さつきからるる申し上げている点です。歴史上の理由を持つており、従つてそれが解決せられるには、そういう歴史上の理由というものを十分に念頭に置かなければ解決できないと思う。痛い目にあわしたほうの国の立場じやじき忘れるのです、それは……。けれども痛い目にあわされた方の国ではなかなかそれは忘れられないということは当然のことだと思う。植民地を特つて支配していた日本の側の感覚というものと、植民地としてそれが支配されていた国とのお考えというものとはこれは非常に違う。しかしそれは植民地としての国の考え方が百八十度というか、根本的に転換しないと、その問題は私は解決しないだろうと思う。そのために今日までじんぜん日を送つておることだと思う。なお、つけ加えて申し上げておきますが、日本日本に滞在せられる外国人取扱いについて、今まで名誉ある伝統を持つておられるとはおせじにもみずから考えることはできない。日本においてとかく外国方々一般の国際的なレべルに比して低いレべルで扱われていたという非難は、われわれいつも耳にして心を痛めた点ですし、従つてそういう点も改めて行くということは、現実の上にも現われて行かなければならない。従つて大村収容所に収容されている方々は不当に収容されている人があるのじやないか。たとえば一人でもそういう人があるということは、私どもははなはだ悲しむべきことだと思う。従つてそういうことがないように、一人でも不当に収容されているというように判断せられる方々がなく、それらの方々釈放せられることは日本韓国、あるいは日本朝鮮との外交関係の上にもきわめて望ましい。最も日本として近いところにある国であり、過去においてはいろいろにその苦しい立場に先方を置いたというような関係もあり、今申し上げたような点で、大村収容所に収容されている方々で、ぜひともそこに収容しておかなければ非常な害悪があるという方々を除いて、その他の方々に対しては、その法令の末端というふうなものの適用に拘泥することなく、ただいま吉田委員からもお話がありましたように、その法律適用の上において十分な理解と同情とを持ち、かつまた、この法令が立法されました当時の外務省方針というものにおいても、当時岡崎外相から人情にもとるようなことは絶対にしないから御安心を願いたいという言明があつたことでもありますし、今申し上げたような点について一つどうか十分の同情のあるお答えをいただきたいと思います。
  17. 中川融

    政府委員(中川融君) 大村に収容されております韓国人の人たちをできるだけ早く釈放してもらいたい、こういう申し入れ韓国側から来ておるのでございます。これに基きまして外務省としてはその申し入れの次第を法務省のほうに一応移牒いたしまして、法務省で研究してもらつているのが現在の段階でございます。日韓関係全体につきましての羽仁委員のお考え、われわれも全く同感に考えておりま素。日韓会談ということがいろいろお話がもつれまして進行しないのでありますが、これを振り返つてみますと、韓国側と日本側というものの考え方の上に非常なまあ何と申しますか、相違がある、一般に相違があるということが根本の原因じやないかと実は考えるのでございまして、これは初めから従来何十年にわたる日本韓国との関係というものが、おのずからそれらに反映いたしまして、一つのことを見るのにも、日本人が見ますのと韓国の方が見ますのと、非常に見方が根本から実は違つておる。それらの問題が会談に当りまして主として論議されるということになりますと、両方の意見が正面衝突のような格好になりまして、会談が進まなくなるといつたような今までの実情であつたかと思います。先般重光外務大臣の外交方針演説にもあります通り、日韓両国というものは最も近い隣国でありますので、ぜひこの関係を親密にしたいというのが政府としての考えでございます。なお、それにつきましては、いたずらに従来の経緯に拘泥することなく、抜本的な解決をはかりたいというのが、また現内閣の方針でもあるのでありまして、この方針に基きまして日韓関係を打開していきたいといぅのがわれわれの熱烈な希望でございます。  具体的な大村収容所の問題につきましては、これも今の日本韓国考え方が、何と申しますか、両方とも無理のない考え方をしていながら、それが合わないということの一つの例と考えられるのでありまして、御承知のように昨年第一回の日韓会談が開かれました際に、その一つの題目といたしまして、日本に在留しておられる韓国人の方々の国籍の問題をどうするかという議題があつたのでありますが、それが解決しないままになつている。日本政府といたしましては、この韓国人、韓国籍の韓国出身の方々及び台湾出身の方々というものも外国人というふうにして扱つておるのであります。法制上扱つておるのでありまして、その関係出入国管理令というものも適用されるのであります。韓国側から申しますれば、在留韓国出身の人たちに対する国籍の問題がきまらない間に外国人として法規の適用を受けて、それで国外退去処分になるというのは受け取れないというような議論から、従来までは引き取つておられました方々も、一昨々年第一回の日韓会談が中絶いたしましたときから引き取らなくなりまして、日本側として法規に基いて韓国に送り還すという意味で大村収容所に収容するのであります。韓国が引き取らないために、今まで延引しているのであります。韓国側はこれを人道上見のがせない問題であるから、即刻釈放するようにという申し入れであります。日本側は法規に従つておるということで、これまた理屈のあることであります。この問題は法務省におきまして実際的解釈をできるだけはかるという趣旨のもとに、研究を進めておられるようでありまして、われわれは結果を待つて処置したいと、かように考えております。
  18. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 今衆議院の本会議が開会されて、アジア局長の出席が要求されております。アジア局長よろしゆうございますか。
  19. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 一言だけ。
  20. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) その趣旨で簡単に。
  21. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは入国管理局長もアジア局長も両方にお願いしておきたいのですが、この問題は今のようにかなり複雑な根拠がある問題ですから、そしてなかなかデリケートな問題であり、しかも現状のまま放置されているということは許されないことでありますから、どうか十分御研究になると同時に、特にこの際それぞれの最高の責任者である法相あるいは外相に十分この点をお話下さいまして、本日ここで私が申し上げておることをお伝え願つて、現在のような状態を続けているということは許されない、一刻も早く何とかせねばならない問題です。それは法規とか、あるいはそれぞれのお役所のルーティンでは解決できない問題で、仕方がないからこのままでいいということであるかもしれないが、現状を一日でも続けていくということは私は許されないことだと思いますから、どうか十分にその点をそれぞれ法相ないし外相と御協議を願つて、そうして現在のよぅな状態を一刻も続けていかないという方向に御尽力願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  22. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま申し入れの御趣旨のように外務大臣に詳細報告いたしたいと、かように考えております。   ―――――――――――――
  23. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) では次に、人権擁護に関する件を議題にいたします。ちよつと今四時から大体本会議を再開するという連絡がございましたから、そのおつもりで一つ質問を簡潔にお願いします。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどの質問は要望になるかもしれませんが、外国からたとえばアメリカ人が入つて来ました場合、これは日本人との間に恋愛関係があつてつてくる、しかも旅券等がない場合、あるいはアジアの諸国から恋愛関係、あるいは事実上の結婚関係、こういうものがあつてつてくるときには、これは相当同情ある運用がなされておるやに新聞級等でお聞きしている。朝鮮の諸君の場合にそれがなされておらん点が、法の運用として欠けるところがあるとして運用の改善を願つたわけでございます。これは研究をするということでございますから、強く、今後の運用についてすみやかに方針の変更を願いまして、もう一つの問題に移りたいと思います。  人権擁護局とそれから刑事局長に来ていただいておると思うのでありますが、問題は広島県の蘆品郡近田村字昭和というところで起りました問題でございます。私が入手いたしました資料によると、これは入手の経緯もはつきり申し上げてかまいませんが、部落解放全国委員会から入手いたしました資料でございます。和田利明という人と、それから高橋早子という二人が、高田久夫あるいは高田清子という人の実質的な媒介によつて結婚をした。ところがその高田清子の兄になります者が警察官をしておつた。そこで翌日でございますが、結婚をいたしました一両日あとに参りまして、家族としては賛成をいたしかねるから帰らないか、こういうことを申しましたが、本人はその意思がない。まじめな和田利明君と結婚をして、そうして幸福を築いていきたい、こういうことを表明いたしましたので、その兄も、それではよろしくお願いします、妹をよろしくお願いいたしますと言つてつた。ところがあとで、高橋早子の兄の同僚である警察官が行つて、戸籍調査と称して家族の名前その他を調べ、その間に親戚と申しますか、あるいは部落の人を同行しておつて、そして婦人に抱えられるようにして連れて行つた。そうして田丸巡査その他同僚の巡査、警察官を使つて、これらの和田あるいは高田久夫、高田清子というような諸君に供述を強要した疑いも十分あるようでございますが、調書をこしらえて起訴をした。起訴状の中にも、差別観念がはつきり表われておりますが、警察での取調べ、あるいは検察事務官でありますか、検察事務官が取り調べた際にもはつきり差別的な取扱いと、あるいは言辞が起きているという事件であります。広島地方検察庁福山支部、検事は内山豊硯、こういう人の名前で起訴がなされている。罪名は誘拐あるいは不法監禁ということでございますから、おそらく起訴状等はお特ちであろうと思うのでありますが、こういう新憲法のもとにおいて、あるいは民主主義のもとにおいて、身分的に、あるいはいかなる意味においても差別がなくなつている時代において、こういうことが事実において行われるということを看過することも問題でございますが、あるいは警察官あるいは検察庁等がこうした差別を、あるいは身分的な差別を拡大し、あるいはこれを罪をもつて問擬する、こういうような態度はもつてのほかだ。そういうことはあり得べきではないと思うのですが、どういう工合に考えておられるか、事実を知つておられるか。あるいはその事実に対する警察官あるいは検察庁の態度についていかように考えておられますか、伺いたいと思います。
  25. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) ただいまお話しの事件につきまして、書類の報告が実は私の方の手元まで来ておりませんので、電話で照会いたしました結果、大体の事情が判明したので申し上げます。私どもといたしましては、昨年の十月三十日付で広島地方裁判所福山支部に、先ほどお話しの和田利明、高田久夫、高田清子、この三人を誘拐罪及び不法監禁罪として起訴しているのでございます。起訴しております趣旨は、この利田利明が婚姻をしたいという相手方の高橋早子当二十年なるもとを詐言を弄しまして、この三人で共謀の上で連れ出して、この高田方の離れの六畳の間に連れて帰つて、結婚の目的をもつて同女を誘拐したというのが第一の事実であります。それから第二の事実は、この和田利明と高田清子の両名が共謀の上で高橋早子に対しまして利明との結婚をしてもらいたいということを迫りまして、承知しなければ帰宅を許さないというような気勢を示して同人を脅迫、昭和二十九年九月二十六日の午後三時ころから夜の十一時ころまで監禁をしたという事実になつております。電話の報告ではただそれだけの事実でありまして、何ら差別的な事情は現われておりません。もちろんお話のありましたよぅな新憲法下で差別的処置をとるということは、これはもつてのほかのことである。われわれといたしましてもさようなことはもちろんこれはいけないことで、検察官としてとるべきものではないと考えておるのでございます。ただ、この事件は申すまでもなく結婚誘拐罪でございますから、もし当事者の間で婚姻が成立いたしますれば、親告罪で公訴棄却になる筋の事件でございますので、どのような点からかようなことが問題になつたか、ただいまのところではこの三人の結婚誘拐並びに不法監禁という事件裁判が進行中であるということ以外には、詳細な事情は判明しない事情でございます。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから、詳細な事実をここで申し述べるいとまがないのでありますが、高田清子という事実上の媒酌に当りました者が高橋早子さんを誘つて、そして自分のうちに連れてこようとしたが、これは風水害のあとで自分のうちに連れて来れなかつた。そこで和田利明のうちに連れて行つていろいろ話をしているのです。本人の意思を聞いて、本人からあの人ならいいと思う、あるいはきらいではございません、それからなお高田久夫から、早子さん、きらいじやないだろう、しんぼうする気があるならしんぼうしてくれないか、無理には勧めん、こういう話をしておつて、その人は映画に行くと断わつてきてあるから、急いで帰らなくてもよろしい、帰宅の意思のない意思表示を受け、そして今晩はおまかせをいたします。なお、利明の母、姉らも加わりまして人生の重大なことだからよく考えて下さい、こういう念を押して本人の結婚の承諾を得ております。あるいはたとえば夜がおそいのだから、帰るというなら二人でも三人でもつけて送つてやろう、こういうことを申しましたが、早く帰るという意思表示がない。そこで二人は合意の上結婚後同棲をしておる。あるいはいろいろ手紙を書こう、親もとに自分の意思を伝えようとか、あるいは兄貴から、その翌日まあ連れに来たといいますか、あるいはしかられたりいたしましたので、和田利明君の友人を通じて兄貴に電話をしよう、こういうことはとざいますが、何ら事実の強制は、これは私の知れるところではない。詳細に経緯が、事実が述べられておりますが、ところがその早子の兄なる福山警察署勤務の警官が来て、そこでいろいろ話をして、帰りません、まあ押問答をしたが、結局死んでも帰りません、最後にお前もまだ若いのだから結婚しろ、川へ飛び込んだりするようなことをしてくれるな、思いあまつたら警察に電話をしなさい、こう言つてしまいにはいたらぬ妹ですからよろしく頼みますとあいさつして帰つておる。そのあとで福山警察署勤務の兄貴の友だちがたずねて参りまして、先ほど申すようなこの部落の人、早子さんの親の部落の人たちを連れて来て、そうして無理やりに連れて帰つた。そうしてあと田丸巡査というこの連れに来たあれでありますが、それがたとえば高田清子さんに部落の者だけ無理が無理よということを言つたり、あるいは石井検察事務官が利明さんの兄貴に、あなたが特殊部落の立場におるということはよく知つておる、あるいはお母さんに、あなたたちは特殊部落だからといつて、石川五右衛門の子孫というわけではないのだから、そう気を悪くせんでもよかろうが、こういつたような言葉がはかれておりますが、そのこともでございますが、高橋早子さんの兄貴の勤めております警察署の職員が供述を強要しておる。たとえばこういうあれがございます。これは検察官が調書を読み上げて、早ロに読み上げて、これに印を押せと言われたが、違う個所がたくさんあるので、それを言おうとしたときに姉が面会に来た。受付の者が石井検察事務官に伝えると、面会々々と言つてうるさいやつだ、あとのやつらみんな逮捕してやらにやいけんとどなりつけた、といつたようなことが、これはほかにもたくさんございます。あるいは結婚生活に入つてたんすを買いに、この和田利明さんの友人であり、森岡箪笥店に勤めておる職人、岡田という人を連れて行つていろいろまあたんすを値ぎつてつたりいろいろなことをしておりますが、そのあとでねえさんに電話をしてくれ、こういうことをつかまえてその警察への電話が救助を頼むものであつたのだろう、こういうことを警察で考え、あるいはそれを検察事務官に通じ、あるいはたとえば石井検察事務官が、おそらくこれは警察に来たのだと思うのでありますが、そこへ木之原あるいは田丸こういう警察官の諸君と協議をいたしまして、そして高田に供述を強要している事実もございます。これは石井検察事務官でありますが、おまえらはロを合せて言つても、言うことが違つたら、どうにもならんことになるぞ、そういうことはいけんぞ。それからこれは警察官でありますが、木之原という警察官が、それもそうですな、偽証罪でやられちやいけんな、馬鹿らしいけなと言うて、偽証罪をもつておどしをいたしております。これを要しますのに、警察官あるいは検察事務官等が、高橋早子さんの兄貴の同僚であつたり、あるいは警察官と近い立場にあります検察事務官であるということで、この供述を強要したり、それからその言葉の中にも高橋早子さんの兄貴なり、あるいはその家族のような差別的な観念があり、あるいはその差別的な観念に基いてこの結婚をこわそうとする、しかもその結婚をこわそうとするために、あるいは警察権やあるいは検察権を行使したということを十分に疑うに足る事実がここに明らかになつておるのであります。詳しい供述をここでして、事情を述べて、検察事務当局のここで責任を追及しても、明らかにすぐにはならぬと思うのでありますが、もつと調べて一つそういう警察官あるいは検察事務官の行動の上に、もし起訴が行われるとするならば、これは警察権あるいは検察権として非常な大きな問題だ、こういうことは、おそらくお考えになるだろうと思うのでありますが、これに対する刑事局の御見解を承わつておきたいと思います。  それからもう一つあわせて事実とそれから警察官あるいは検察事務官の関連を申し述べたのでありますが、最近反動のいろいろな傾向の中で、こうした新憲法のもとにおいてはなくなつたはずの、あるいはなくなつておるべき、人間的な差別観念、あるいは差別的な行動がちよいちよい起つておりますが、むしろどちらかと申しますというと、これはふえる傾向にあるようであります。これに対してこれは最も顕著な事例、しかもこの国家の権力、行政権でございますけれども、権力も関与いたしました事例であると思うのでありますが、これに対して人権擁護局としてどういう工合にお考えになるか、一つ人権擁護局長の方からもはつきりした御見解を承わつておきたいと思います。
  27. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) 先はどお尋ねの際にお述べいただいたような事実がもし事実とすれば、取調べの警察官なり、検察事務官のやり方は好ましからざるやり方だと私も考えます。ただ、起訴状を慨観して見ますると、何か結婚をするにいたしましても、非常に無理がある。求愛の相手方に対しまして、詐言を弄して、友だちの関係を利用してだまして連れて来たということになつておりますが、その連れて来たときの事情も、この高田清子という被告人の一人でございますが、これが以前目分の関係があつた亀川から来た手紙が夫に発見されて関係を疑われて困つているが、あなたも知つて通り亀川との関係とつくの昔に切れているから、あなたも来てその事情を話してくれないかというようなことを、これはでたらめの手紙ですが、かようなことを言うて、この起訴状によれば被害者と思われる高橋早子を連れて来たというようなことになつております。さようなことでこれはおそらく私の考えでは、早子が、自分が非常にきらつているかどうかわかりませんが、無理な手段で連れて来られて、しかも監禁されて、結婚を強要されたというようなことでこの事件ができ、しかもさような供述をしているように想像されるのでございます。しかしながらこれは法廷に出ておることで、裁判所で明らかになると思うのでありまするが、お話の趣旨もございますので私どももまた私どもといたしまして、別個にこの間の事情を今すぐ調査してみたいと考えております。
  28. 戸田正直

    説明員戸田正直君) この事件につきましてはまだ私のほうに報告を受けておりませんので、さつそく実情調査いたしたいと思います。従つて事実がはつきりいたしておりませんので、意見を申し上げることは多少誤解を招くおそれがあると思いますが、ただ先ほどの御質問のような趣旨だと仮定いたしますと、今日の新しい憲法において差別的な取扱いをする、差別待遇をするというようなことは許されないことでありますし、また、御承知のように婚姻の自由は憲法に認められております。婚姻は、両性の合意のみによつて成り立つものであつて、これを他の者が妨害すべきものでないことは申し上げるまでもありません。そこで本件のような、先ほど来事情を聞いておりますと、実情をまだ調査いたしておりませんから、はつきり申上げられませんが、もし女のほうが本当に婚姻する気持であるならば、こういう問題が起きやしないのではないかという気持も多少いたしておるのであります。この両性が、二人が本当に結婚しようとすることは、これは何ものも押えることはできません。また、本当に結婚いたしますれば、先はど刑事局長からもちよつとお答えがありましたが、これは起訴することはとうていできませんし、起訴すれば、これはこの起訴は成り立たないことになると思うのであります。ただ、今御質問の中でこうした問題が非常に大きくなりつつあるのじやないかという御質問でございましたが、私の方で従来この部落民の結婚問題、これについて取り上げた事件が二、三ございまして、これに対しては法務局で努力をいたしまして、円満に解決をいたしております。ただ、本件のように警察官が関与したというような事件は、今回が初めてでございますが、よく実情調査いたしまして善処いたしたいと考えます。
  29. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 速記をとめて下さい。
  30. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 速記を始めて。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 法務当局も、あるいは人権擁護局当局も、事実を十分御存じないようでございますから、調査の上また御回答を願うということになると思いますが、しかし刑事局長の言葉の中にありました、問題は裁判にかかつているのだから、裁判で明らかになるだろう、こういうことでございますが、裁判なつた、起訴された事件はもう裁判による以外はない、こういう考え方でなくて、私はこの事件の中にありますのは、警察あるいは検察庁、これが結婚という自由意思に基く行為に対して、強権的な形で入つておる、いわばなくなつておる家族制度が、なくなつておるはずの家族制度がここに顔を出して、そうして兄とか、あるいは親の意向として入る、しかもそのあとからたまたま兄貴が警察官であつたということで、警察官が入る、あるいはそれを検察庁が援護しておる、しかも家族制度の点もそうでございますが、あるいはこの憲法に許されない差別的な言動が警察官、あるいは検察庁の言動の中に入つておる、あるいは多少あとで訂正をしておりますけれども、起訴状の中にさえ入つておる、こういう点を問題にしておるのであります。従つてそれが裁判にかかつたからといつて、国の機関が、行政機関がこうした問題に責任がないというわけにも参らないのであります。この点を問題にしておりますので、行為が有罪になるかどうかという問題の前に、警察官あるいは検察官、あの場合は検察事務官ということになるかと思いますが、そのこうした問題に対する強権的な、あるいは憲法で許されない差別、あるいは結婚の自由というものについての妨害、強権的な妨害、こういうものについて調査をし、そうして直すべきところのあるものは直してもらいたい。これはおそらく都会でしたら、あるいは東京のどまん中だつたら、こういうこともおそらくなかろうと思います。いなかの場合には、これはこういうこともやつばり多少想像されるなくなつておるべき家族制度が頭を出したり、あるいは婦人の兄貴が警察であるということで入るということも、私ども容易に想像し得るのでありますから、憲法の精神が実際に活かされるようにこれはしなければならない。あるいは人検擁護局なり、あるいは検察権の元締めであります法務局の刑事局長は、ころいう問題についてこれは一つの問題じやない、あるいは相当普遍性を持つておる問題として対処願いたい、かように考えております。こまかい事件調査、あるいは真相については、起訴状にありましたような、私起訴状も見ておりますが、起訴状にこう書いてあるということではなくつて、もつと本当の真相を究明し、そうしてこれに対する政府態度を明らかにするということで調査と、次の御答弁を願いたいと思います。
  32. 井本台吉

    説明員(井本台吉君) われわれといたしましては、一応起訴状にかように書いてあるので、先ほどのようなことを申し上げたわけですが、今日この委員会で何か警察官、あるいは検察事務官に非違があるのではないかというような御趣旨のお話がありましたので、さような事実は私といたしましては初耳でありますので、先ほど申し上げたようにその点につきまして調査したいとかように考えておるわけでございます。
  33. 戸田正直

    説明員戸田正直君) 十分調査いたしまして、善処いたしたいと思います。
  34. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後四時二十五分散会