運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-12-15 第21回国会 参議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十五日(水曜日)    午前十時四十六分開会   —————————————  委員氏名    委員長     西郷吉之助君    理事      藤野 繁雄君    理事      土田國太郎君    理事      小酒井義男君    理事      東   隆君            青柳 秀夫君            井上 清一君            入交 太藏君            木内 四郎君            西川甚五郎君            安井  謙君            杉山 昌作君            豊田 雅孝君            前田 久吉君            野溝  勝君            平林  剛君            森下 政一君            井村 徳二君            石坂 豊一君            木村禧八郎君   —————————————   委員の異動 本日委員井村徳二君、森下政一君及び 東隆君辞任につき、その補欠として紅 露みつ君、松澤兼人君及び松永義雄君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事            藤野 繁雄君            土田國太郎君            小酒井義男君            東   隆君    委員            井上 清一君            入交 太藏君            木内 四郎君            西川甚五郎君            安井  謙君            杉山 昌作君            豊田 雅孝君            前田 久吉君            野溝  勝君            平林  剛君            松永 義雄君            紅露 みつ君            水村禮八郎君   衆議院議員            春日 一幸君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○調査承認要求の件 ○連合委員会開会の件 ○理事補欠選任の件 ○昭和二十九年の年末の賞与に対する  所得税臨時特例に関する法律案  (衆議院送付予備審査)   —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今より大蔵委員会開会いたします。  本日は最初調査承認要求についてお諮りいたします。本国会におきましても従来行なって参りました通り調査承認要求書を提出いたしたいと思います。例によりまして租税金融制度及び専売事業等に関する調査を更に進めて参るというふうな趣旨で、一昨日理事会におきまして、本件に対しましては調査承認要求手続をするように各理事かたがたお話をいたしましたが、理事会申合せ通り要求晝議長に提出することに御異議ございませんか。
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないものと認めます。つきましては右の要求書につきましては、その内容手続等前例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
  4. 西郷吉之助

  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に本日は連合委員会に関する件につきましてお諮りいたしたいと存じますが、一昨日の理事会にこの問題もお諮りいたしましたが、御承知通り本院、参議院の千葉信君外五名の発議によりまして、人事委員会国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案提案されておりまして、人事委員会では質疑等をいたしておりまするが、その法案附則所得税の一部改正の規定がございまして、その点が本委員会といたしまして関連事項でございますから、質疑等を行なつたほうがよういではないかと思いますので、皆機がたの御意見を承わりまして、人事委員会に対し連合委員会を申入れるかどうかについてお諮りいたしたいと思います。お手許に只今法案があると思いますが、所得税法改正の点がございますので、本委員会としては連合審査を申入れてはどうかと思いますが、如何でございますか。さよう取計いまして御異議ございませんか。
  6. 安井謙

    安井謙君 異議はありませんが、附則なんかでそういうことを取りきめるということは、なんですか、法律上別に問題になるようなことはないのですか、当委員会立場として……。
  7. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今の点は違法ということはないと思います。よくそういうようなことはございますけれども、本委員会立物から見れば、こういう附則でこういう手をやるということは余り感心したことではないと思います。  他にその点で御発議ございませんか……。それでは別段御異議がないと思いますが、国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の支絡に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、人事委員会に対しまして連合審査を申入れることにいたします。さよう決定いたしました。  それでその日時でございますが、人事委員会のほうでも急いでおるようでございますから、直ちに先方にお話いたしまして、今日できるだけ早くやつて頂くことにいたしたいと思います。   —————————————
  8. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) なおもう一点御報告かたがた御相談申上げておきますが、船刺二十九年の年末の賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案、これが衆議院大蔵委員会に付託されておりまして、こちらに予備審査になっておりまするが、この法案につきましては、昨日衆議院大蔵委員会におきまして採決がございまして、委員会としては否決になっておりまするが、まだ本会議報告が行われておりませんので、本日の午後一時からの衆議院会議報告が予定されておりをます。今申上げました通り委員会では否決されておりますから、まあこれは予想でございますが、本会議のほうもさような結果になるのではないかと思いますが、最終決定がまだ出ておりませんので、本委員会としてはそれまで待機するような格好になりますので、その点も御了承願いたいと思います。  本委員会として只今連合審査のほうを人事委員会のほうに申出ておりますので、現在としては以上の点を皆様がたにお諮りいたしまして、それで今手続をいたしておりまするから、ちょっとここで休憩いたします。    午前十時五十二分休憩    ——————————    午後二時四分開会
  9. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今より大蔵委員会を再開いたします。  最初理事補欠を生じましたのでその互選をお諮りいたしたいと存じます。  本日東理事が本委員会理事を辞任せられましたので、理事に一名の欠員を生じましたので、直ちに互選をいたしたいと存じますが、前例によりまして委員長より御指名申上げることに御異議ございませんか。
  10. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは理事松澤兼人君を御指名申上げます。   —————————————
  11. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは午前中お諮りいたしました昭和二十九年の年末の賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案について只今予備審査になっておりますので、提案者衆議院議員春日一幸君よりその趣旨説明をお願いいたします。
  12. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) お許しを得まして、只今議題になりました昭和二十九年の年末の賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案についてその提案趣旨について御説明申上げます。  この法律案昭和二十九年の年末の賞与について五千円を限り所得税を課さないこととするものでありまして、その趣旨とするところは、現下の経済事情の下において俸給賃金はストップの傾向にあり、一般給与生活者生活事情はますます窮迫しており、時に低額給与生活者生活は非常に苦しい状況考えまして、これら給与生活者の年末越年に特に経費のかさむ事情と、且つは年末賞与の性格を併せ考慮し、これに対して少しずつでも税負担を軽減することによっていささかながらうるおいを与えようとするものであります。  この法律案による税収減についてはいろいろ推算もありますが、おおむね六十億円前後であり、これに対する措置としては、法律が成立しましたならば政府において所要の措置を講ぜらるべきであり、この程度は何とか切り抜ける途もあると思うのであります。  以上が本法律案を提出しました理由であります。何とぞ御審議の上至急御賛成あらんことをお願いするものであります。
  13. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今提案者春日一幸君から趣旨説明がございましたので、提案者に対する御質疑がございましたらこの際お願いいたします。
  14. 杉山昌作

    杉山昌作君 現在のまあ経済情勢というのは結局本年のデフレ、不景気ということだと存ずるのでありますが、今年のデフレ、不景気で非常に痛手を被つておるのはひとり勤労所得者だけでは或いはないかと思うのです。中小企業者というようなものが非常にデフレで困っているんじゃないかと思うのです。現在の経済情勢に鑑みということになると、そういうふうな方向は一体どうお考えになっておるのかということが第一点。  それから同じ勤労者といたしましても、このデフレ景気のために、むしろ今までは年末賞与をもらつていたけれども、今年は賞与が出ないという勤め先が非常に多くなっているんじゃないかと思うのです。そういうことを考えると、むしろ今年賞与をもらつておるほうは有難いほうで、むしろ賞与をもらつていないほうが本当は困っているんじゃないかと、これは勤労者の中の権衡問題ですが、ところがこれは賞与をもらつている人だけに対しての法律ということになるのですが、そこら中小企業者との権衡、或いは同じ勤労者で今年は賞与ももらえなかったという人と、今年は幸い賞与をもらえたという人との問題、そこらは一体どういうふうにお考えになっておりましょうか。
  15. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 先ず第一番にこの他の中小企業所得者とか或いは農業所得との権衡を如何に見るかという御質問についてでありますが、これはまあお説一応御尤もと考えますが、御承知通り農業所得者に対しましてはあのような特別の減税措置も講じておるわけでございます。それから中小商工業者申告所得者、これも何らかのフエイバーを行わなければならないことは至極御同感でありますが、まあ考えてみますると、例えば本年度におきまして貸倒れ債権認定基準関係とか、或いは分割納税制度或いは手形による納税制度いろいろ行政措置によりまして中小企業の窮状を救済する、その行詰りを緩和する、こういうよう行政措置を講じて税に対する中小企業者立場に対してはいささか考慮も加えられておると思うのであります。  で特に御了解を願いたいと考えておりますのは、この俸の源泉徴収、この所得税年間徴収額は二千一百何十億を超えると思うのでありますが、いずれにしてもこのような巨額な税負担を行なっておりまする俸給生活者たちは、いずれにしてもガラス張りの所得でありますから、申告所得或いはその他の所得におけるようなごまかしも何もきかない。なお農業所得者中小企業人々はいろいろな行政措置或いは減税措置、或いは租税特別措置法によるいろいろな措置、こういうものを現実に受けておるのだが、この人々は何も受けていない。従いましてむしろこれらの人々権衡を図るためには、進んでこういうよう減税措置を講ずる必要があると考えてこういうよう提案行なつたのであります。  なお他の理由といたしましては、御承知通り官公労公労協、こういうよう人々が年末におきまして政府にいろいろな要請をして参りました。べース・アツプ要求或いは又二カ月分の年末賞与支給要求、それから第三にはこの年末賞与に対する減税要求、この三つ要求をいたして参りまして、随分熱誠を傾けての陳情を続けて参りましたが、ベース・アツプもこれは適えられませんし、ニカ月分賞与を頂くということも、これも国家財政上困難であろう、こういうことで殆んどそれらの要求が満たされておりません。そこで私ども三つ要求の中のニつはこの際やむを得ないとしても、こういうよう特別措置によって何とか減じられるかも知れないと考えられるこの税金の面だけは一つ何とかこの要求を適えてやろう、まあこういう面もこういう法律案を特に提出するに至つた動機一つでございます。そういうようなところを一つ考えを頂きまして、特にこの法律について御理解を賜わりたいと考えておる次第であります。
  16. 杉山昌作

  17. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) なるほど現在の段階におきまして或る面においては年末賞与がもらえるし、或る面においては賞与どころか、賃金すら避遅欠配の現状にある、こういう我が国の経済状況企業内容全体を通じての事柄については、当然私どもも深く考究をいたさないではないのでありますが、併しそういうような問題の根本的な解決は、所詮は国の行財政の全般を通じていろいろ考えられなければならない問題であり、そのことは当面いたしておりまするとの年末臨時国会、更には又この休会前の通常国会の短い期間においてそういう問題を論議したり、或いはそういういろいろな欠陥を補完することのための政策を樹立するということも事実上困難でありますので、そういう人々との権衡は十分考えるのではありますが、併しながら現実賃金ストツプ生活に困っておる多くの俸給生活者たちが幸いにそういう年末賞与がもらえるならば、そのもらえる賞与に対して一つ減税をしてやつて、まあ子供に下駄の一足、親にメリヤスのシヤツの一枚、そういうよう一つフエーバーを行なってはどうであろう、こういうことでございまして、全般的な問題は次期通常国会において一つ同僚各位の格別の御尽力によって逐次問題の処理を図るということを考えておるわけであります。
  18. 杉山昌作

    杉山昌作君 お話を伺いますと、私非常に不満足に感ずるのは、今の最後のお答えのように、一番下層階級は今すぐと言っても駄目だから次にゆつくりやろうと、どういうことで、むしろ賞与のもらえない、貸金遅欠配になつた人は次にゆつくりやろう、賞与のもらえる人だけとにかく今やろうということで勤労生活者の中でも最下層より上の人の問題である。その問題との権衡で今中小企業者お話がありましたが、中小企業者には手形でどうするとか、或いは分割納税をするとか、貸倒れ準備金は免税するとか、それとの権衡というようなこと、中小企業者の中でも手形の問題とか分割納付とか、貸倒れとかいうような問題に関連する人は中小企業者としても中のほうだと思うのです。むしろ貸倒れ準備金は免税するとか分割納税をしますとか、手形はどうしますとかいうよう納税行政上の便宜措置を受けられないその下のほうが多いんじゃないか。その人たちこそ今年は困っているのじゃないか。勤労者の仲間においても最下層の者よりも上の賞与でももらえる人を考える。それを対象として、中小企業者のほうはやはりこれも手形なり分割納税なり、貸倒れというようなことを受ける程度の人をおいて考える。とすると一体それに至ならい勤労者並びに中小商工業者は、これは短い期間ではできないからこの次ゆつくりというのだが、その考え方自身が私は非常にどうかと思うのですが、むしろそれを先にやるというような意気込みを持つのが今の世の中では必要ではないかと思うのです。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。只今杉山さんの御質問に関連して質問したいのですが、今の杉山さんの御意見、年末賞与をもらえない人、それから中小企業で不渡りの出るような経営困難な人、そういう人の救済措置は僕はやはり根本的には景気対策にあると思うのです。景気をよくして中小企業が成り立つようにする、賃金の遅欠配をなくす、そういう対策を基本的に立てなけれぱこれは解決できないと思うのです。  そこで私は、これは金額は六十億、或いはも少しになるかもしれませんが、とにかくこれを景気対策一つとして、一部として考えられたら、それは廻り廻つて行くのじゃないか、そういう面でやはり考える必要があるのではないか、そう私は思うのです。ですから、今少しでも大衆に購買力をつけるということは、景気対策の面から言っても、それから中小企業者にも廻り廻つて行くんですよ。そういう形で一つこれを解釈する面もあるのではないかと思うのですが、春日さんはどうお考えですか。
  20. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 大変いい援護をして頂きましたから、私の答弁は駄弁かと思いますか、今回緊急失対の労働者、これらの諸君に対しましては御説の通り何らかの措置を講ぜよというので、これは賃金外給付は行わないということの建前になっているにかかわらず、年末について今まで五日分の支給を行なっていた。ところが本年度は更にこれに対して一日か二日、何とか三日くらいは余分に払つてもらえないだろうかという衆参両院から労働大臣宛に強い要請が行われておりまして、御指摘の面も他の同僚諸君が分担しまして、その趣旨則つて処理が進められていると思うのであります。賃金欠配工場等についても当然その問題の解決は図らなければならないのでありまして、とれ又両院の御斡旋によって賃金欠配融資に充てるために四億円の融資が先般地方庁を通じて行われるということで、それぞれケース・バイ・ケースの問題といたしまして、それぞれの委員会の強い御推進によりまして処理が図られていると思うのです。そういうものができないからこれもやらないでおくというのでは、それでは何もやらないのかということになるのじゃないかと思います。我々は本年度において、とにかくこういう俸給生活者たちがべース・アツプしてくれとか、或いは年末賞与を二カ月分くれとか、いろいろ痛切な要望がありましたが、そのいずれも適えがたいならば、この一つくらいどうだろうか。そこで問題の六十億の財源操作によって一つだけでもとにかく取上げよう、こういうことに我々の意見が帰一いたしまして、こういう提案行なつたわけでありまして、他の問題を等閑に付するとか何とかいうことではなく、他の問題も併せて別途努力を傾けつつ、この問題はこの問題として一つ進めて行こう、こういうことでございますので、よろしくお願いいたします。
  21. 杉山昌作

    杉山昌作君 これは言葉の裏をひねくるようで甚だ恐縮ですが、只今の御答弁、それからその前の私の質問に対する御答弁にも、官公労等の問題が出て参りました。何か伺つているとべース・アツプも今年はできなかった。二カ月の賞与をもらいたいと言つたけれどもそれもできなかった。まあそれじや気の毒だからせめてこれでも、こういうふうなことも提案者説明の一部にあったかのように受取られるわけですが、結局そうなりますと、政府から支払を受けている人たちが支払いが少いからそれをコンプレメントする意味税金をまけると、こういうふうなお考えが多少でもおありなんですか、その点を伺いたい。
  22. 春日一幸

    衆盛院議員春日一幸君) これはもとより官公労或いは公労協関係労働者のみを対象にするものではないわけでありまして、一般給与所得者対象とするものであります。ところがその要求は、この年の瀬を越すために何らか一つ措置を講じてくれという要求ひとり公労脇官公労ばかりではなく、他の業界における単産等におきましても同様の要求が提出され、それぞれ同様の処理を受けているわけであります。まあ一部砂糖工業セメント工業等におきまして十分な年末賞与を頂いている面もないわけではありませんが、殆んど大部分は御指摘通りその要求の何%というようなことしか満たされておりませんで、その足らざるところを一つ端的にこのような惜置を講じてやろうと、こういう考え方にはほかならんのでありまして、御了解を願いたいと思います。
  23. 杉山昌作

    杉山昌作君 それからもう一つ、これは理屈の問題ですが、大体所得税というようなものは、総合所得税が一番合理的だということでできているのだろうと思います。総合所得税ということになりますと、その人に入って来る収入全部を総合するということで初めて意味をなす。ところがその賞与だけについて特別なことをやるということになりますと、賞与は少ししかもらつていないけれども利子収入、配当がたくさんあるという人もいる人もいる。併し賞与が全部だという人もいると思います。そういう場合に所得税について、その一つ一つの面についてとの賞与は安くして上げよう……。先般この席で僕等は反対いたしましたが、不本意ながら通過した社会保険診療、これだけは免除してやろうというようなことで、総合性を欠いて、個別にいろいろ免税をやつて行くということをやりますと、それがだんだん拡がりますと、総合所得税というふうな根本が脅かされて来るということになるわけです。そうしますと、結果的には提案者が企図しておられるよう低額得者を保護してやろうということでこれは出ていると思いますが、総合所得税制度そのものをこわすということになると、結果的には低額所得者が損をするといことになる。そこまで進んで行くかどうかは、無論実際問題として必ず途中でストツプすると思いますが、併しながら理屈の上ではそういうふうな方向に、先般社会保険診療の問題で一歩を踏み、更にこれで二歩を踏むということになりますと、非常に所得税総合性というものに対して大きな妨げになると思いますが、その点についての御見解は如何ですか。
  24. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 御指摘通り、まあ低額所得者税金をどうするかという拔本的な問題は税体系全体の問題としてこれを何らかの形で調整をされなければならん問題であることにつきましては、私どもは極めて同感でありますが、我々がこの提案をいたしましたその理由一つにこういう事柄もあるのであります。それは昨年十月税制調査会答申をいたしました答申案の中にも明確に答申されております通り、即ち月間所得二万円以下の者には租税公課をかけるべきではないと、所得税を課すべきものではないという答申がございました。更には基礎控除、それを当時は六万円でありましたものを八万円にしろと、なお扶養控除等におきましてもそれぞれその引上げ方答申がなされておりましたが、御承知通りその答申案は時の吉田内閣によって実施せられなかったのでありまして、六万円を八万円に引上げろというこの基礎控除の問題も、これは中をとつて七万円、扶養控除問題等におきましても、これは一部の引上げしか見なかったわけであります。  で、そういうよう立場から、成るほど全体的な問題の研究も、いずれは税体系全般亘つての検討が加えられなければならないと思いますが、これはこの法律のタイトルにも明示してあります通り臨時特例といたしまして、当面本年度において賃金ストツプになり、而も物価が横這いの状況にあり、年末に際してその要求が満たされていない状態だから、当面本年度臨時特例としてこれだけのことをやつて頂きたいということでございまして、根本的な問題は当然来るべき国会において共に論議を加えまして、完全理想的なものに直して行きたいと考えておりますが、取りあえず年末に当面するものを臨時措置といたしましてとの程度のことをやりたいと考えるに至つたわけでございます。
  25. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 さっき提案者春日さんから中小企業とのバランスについて御答弁があったのに関連しまして少し質問したいと思います。  貸倒れ債権に対して特別の税制或いは徴税上の措置が認められているというようないろいろお話がありましたが、これはもう我々から見ると全く二階から目薬で、而もそのやつておる措置というものは貸倒れになっておる債権を前提にしておる。要するに不良なる取引先、とても返つて来ないよう回収見込みの立たないようなものに対する特別の措置なんです。だから、こんなものを考えつてなんにも中小企業対策には私はならないと思う。もうあれは、或る意味においては、むしろこけおどしというくらいに私は考えておる。  それから又ガラス張りであることの給与生活者についての主張だったのですが、中小企業者も青色申告をやつている者は全くガラス張りだと思う。この点においてなんにも変つていない。更に中小企業に対しては御承知ように、これは春日さん最もよく御承知だと思うのですが、事業税というものを商工業者だけにかけるわけです。これが地方税の、従来は六六%を、我々がやかましく言つたものだから四八%程度に下げておるけれども、その四八%の府県税にせよ、これは商工業者だけが負担する。而も物品税というものも、これ又商工業者だけが負担する、こういう重荷を受けておるのです。そうして今度のよう特別措置が出る。大体特別措置が出るときには、法人税についても、大企業、大法人についてはああいう祖税特別措置法が出て、それでうまいことをやれるが、中小企業はそれを指をくわえて見ておらなければならない。又こういうよう勤労生活者に対して特別措置がとられる。同時に中小企業に対してどういうことがとられるかというと、なんにやらない。今日中小企業というものは非常に乏しきを歎いております。乏しきを憂えると同時に、最も今忿懣の状態になっているのはひとしからざる状態に置かれてることだと私は思うのです。又最もひとしからざる状態に置かれているのは、今デフレーシヨン下一番悩んでおる中小企業だ。どういうことをおやりになることについて、私は悪いとは思いません。と同時に最も中小企業者の味方である春日さんが提案せられる以上は、私は中小企業者立場を併せてどうして提案せられてもらえなかったか、それを非常に遺憾に思うのです。その点についてどうか端的率直な御意見を伺いたいと思う。
  26. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 只今豊田先生から御指摘になりました中小企業に対する行政措置によるいろいろな税逓減のテーマは二階から目薬という御説明でございましたが、これは至極御同感でございます。ところがこの我々が提案をいたしました法律によるところの大体の結果も同様二階から目薬程度のものでございまして、この六十億を八百万人で仮に分けるといったところで、その恩恵を分けるといたしますと、大体において七百円かれこれというようなことでございます。今まで中小企業者諸君がいろいろの減税要求をいたしておりますが、こういう要求は当然適えられなければならない問題であり、その事柄只今も申述べております通り次期通常国会で深く掘下げて、その要求について研究……、例えば中小法人に対する法人の税率問題或いは事業税問題等いろいろ御検討を願わなければならないと考えておりますが、当面年末にこの年末賞与を受ける諸君のために、三つ要求の中で何もかもやれないのだから、例えば二階から目薬程度でも、他の農業所得者も受けておる、中小商工業者もいろいろと受けておる面もあるのだから、むしろ権衡を図るためにこの程度の最低の優遇措置は講じなけれぱ権衡が図れないじゃないか、こういうような確信の上に立っておるわけでございます。  当然中小企業の問題も、減税措置を年末になぜ講じなかったかという御主張に対しましては、我々としてその力の足りなかったことをお詑びするのでありますが、臨時国会の性格、並びにこの休会前の短期間国会における実情等を一つ御勘案頂きまして、我々の行動半径はこの程度にしか伸びなかったわけでございまして、今後に一つ御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  27. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 これも又勤労生活者に対する年末対策であると思いますが、年末が過せんか過せるかでは、一番困っておるのは勿論私は中小企業者の大部分だと思います。これについて勤労者に対しての特別年末対策が講ぜられるということは、さっきも申すように乏しきを歎くこともさることながら、ひとしからざるを最も憤つておる中小企業者としては、私は忿懣やるかたないものがあると思うのであります。そういう点において、年末対策として考える場合には、少くともこの際デフレ下における中小企業者に対して年末対策としての減税措置というものを併せ考えられるべきではないか。若しもそれがやれんというようならば、これは少し先に延ばして、そしてこれは遡及さしてもいいではないか。共に泣さ共に喜ぶという行き方が現在の政治においても最も必要ではないか、そういう点について重ねて御意見承わりたいと思います。
  28. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 年末調整に当面をいたしておりまする納税者は、取りあえずこの給与所得者だけであろうと思うわけであります。申告所得税、その他農業所得関係におきまして、それに対しましていろいろの措置を講ずる、時間的スぺースは繰延べるといたしましても、これはその効果を及ぼすことができないわけではないと思うわけであります。ところが給与所得者に対しましては、この年末の機会を逸しますならばそういう措置を行う意思があったとしても、時間的にずれてしまう、こういうよう考え方から取りあえずこの給与所得者に対してのみこの特別措置を行わんとするものでありまして、他の所得税納税者の諸君に対しましては、これは国会再開劈頭に何らかの措置を講ずることによって十分豊田先生御指摘ような諸懸案の解決は図り得るのではないかと考えておるわけでございまして、我々は中小企業者に対する減税措置はこれに相次いで強力に実施に移さなけれぱならんと考えておるわけであります。
  29. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 いろいろ伺つたのでありますが、中小企業の年末の年の瀬を如何に越すかという窮状を見ると、この際やはり手を打たないというとその効果はないのであります。少くとも他に手を打たれたにかかわらず、それを打たれなかったということ自身が、私は非常に問題になると思う。その点を特に強調いたしておきます。
  30. 春日一幸

    衆議院議員春日一幸君) 実は法律案に関連しまして衆議院の自由党からは、豊田先生御指摘よう中小企業者に対する税の減免、農業所得者に対する税の減免とコンビネーシヨンでこの法律案を出せば、自由党自体としはこれを通すことにやぶさかではないという御申出等がございました。御承知通り明日と本日の本会議を契機といたしまして、暫らく衆議院のほうでこれが休会されるような見通しがございまして、そういう関連する法律案を同時に御提案願うということが事務的に困難な情勢にありましたので、そこでまあそれはそれとして切り離して、この問題だけの取扱いをするというようなことに相成つたわけであります。従いまして若し参議院のほうにおきまして、中小企業者に対する減免の問題、或いはこれに関連する権衡を図るところの減免の法律案が出まするならば、この提案者たちはそういう法律案に対してはこれはもう全然賛成をするものであるということは、昨日の自由党の御申出に対して回答いたしておるような次第でございます。従いまして或いは自由党からそういうような関連した形でもう一遍法律案が出るかも知れませんし、或いは又参議院独自においてそういうよう法律案が御提出願えますならば、我々はその問題はその問題として、我々提案者たちはそういう法律案に対処いたしたいと考えておるわけでございます。
  31. 小酒井義男

    小酒井義男君 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、新聞で見たことなんで真偽のほどはわかりませんが、衆議院大蔵委員会に御出席になって、この年末手当に対する税金のこの法律案ですね、これの質疑の際に大臣が、現在財源がないからこれはもう非常に無理だという答弁と同時に、この給与所得者に対する課税の問題は、これは非常に重いから検討しなければならんというよう意味のことをおっしゃったように拝見したんです。専門家として財政金融の問題についていろいろ御意識を持っていらつしやると思うのですが、新聞で書いておるようなことをやはりお考えになっておるかどうかということを先ずお尋ねいたしたい。
  32. 杉山昌作

    杉山昌作君 甚だ失礼ですが、実は私もそれを伺いたいと思っていたのでございますがね、日本経済新聞によりますと、この問題の衆議院における委員会において大藏大臣は、「この案を実施すると税の減収は七十五億円と予想され、今の財政事情からみて賛成できない。将来長く蔵相の地位にあるようならば実施するよう努力する。」こう新聞に出ております。これは今のお話ように、新聞でございますから、どの程度まで本当かどうかわからない。ここで改めてお伺いするわけですが、ただ私のお伺いしたいことは、「将来長く蔵相の地位にあるようならば実施するよう勢力する。」ということは、今のお話ように、勤労所得者に対する税が大体今重いから基礎控除を上げるとか、或いはその他をやるというふうな、或いは低額所得者全般の軽減というふうなことについて将来努力するとおっしゃる意味なのか、それともこの案に盛られているような特殊軽減の方法について実施するよう努力されるのか、そこらの点を一つはっきりお伺いいたしたいと思うのですが。
  33. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私一萬田でございます。今回本当にはからずも大蔵大臣に就任いたしました。今後何かと御指導を仰ぐことと思いますのでよろしくお願いいたします。  なお、只今の御質問でございますが、この提案ような給与所得者の所得税、こういうことによる減収は七十五億円、これは衆議院でそのように言いました。そしてそれが今日の財政におきましてこれが仮に減収になりますと非常に大きな影響を与えます。財政の運営上困難を来たす。これも申したわけであります。  それからもう一つの御質問は、私が税について将来考える、こういう意味は、衆議院提案されておるような、ああいうふうな五千円についてどう、こういうものじゃないのでありまして、実は単に所得税ばかりではないのでありまして、税全体について再検討を加える必要がある。無論そういう場合に今日の税制ではどうも所得税について比重が大きいのであります。勤労所得税等は重くはないかという、これは私そう税について深くそこのところは研究しておりません。今後の研究に待ちますが、私の感じとしましては、勤労所得税をかける場合にもう少し軽くすることが可能であろうと、こういうふうなことで十分それを考慮をいたしたい、こういう意味であります。  もう一つ何かお尋ねがありませんでしたか、これでよろしうございますか。
  34. 平林剛

    平林剛君 今のことに関連をしてお尋ねをするわけでございますが、これは大臣でなくてもようございます。  昭和二十九年の年末の賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案の影響が七十五億円の減収になるというお見込を立てられたようでありますが、私は減収の見込に対する基礎をお伺いいたしたいのであります
  35. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 便宜私からお答え申上げます。  この法律の適用を受けます人員、これは過去の実績から一応推計を立てたのでありますが、人員にしまして七百六十四万四千人、それで一応これを階級別に分類してみたのであります。これも一応我々のほうにデータがございます。十一万円以下ですか、十万九千円までの人が八十九万二千人、これはあとで御必要ならば細かい数字を差上げますが、十万九千円から十五万円の人が百五十三万五千人、こういうふうに階級別に一応全部出しまして、そうしてその人たちの総所得の額を出し、同時にこの場合における五千円ずつ一応それを控除された場合におきましてどういうふうになるかということで、これも階級別に出しまして、一応収入の率をかけまして七十五億四千九百万円、こういう数字になっております。
  36. 平林剛

    平林剛君 今の基礎にされたのは、昨年における一つの実績に基いておると思うのですが、今年は極めてデフレの影響を受けまして、年末手当は払い方が非常に悪いわけであります。七十五億円になるというようなことが、どうもその点は今日の現状から見て、すぐには納得できないのであります。今年に準じて考えてみてそういう計算を立てたのでありますか。
  37. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) これは二十九年度予算を作りましたときに使いました数字をそのまま一応使つております。従いまして最近の数字とそれが合うか合わないかという点が、今の御質問ようでございますが、勤労所得税の数字をずっと見て参りますと、ベース的には官公吏などのように昇給などがありまして、多少とも上って行く傾向のものがあります。ただ臨時給与などが大分下つて来ております。それからボーナスの点でありますが、確かに今年は例年のように出ないところもあるようでありますが、併し又絶対額からいいますと、やはり相当出ているようでございますし、従いまして結局まああと細かい点になりますと、階級税率が一体上のほうに行くか、下のほうに行くかといったような問題がいろいろあると思いますが、ただ我々のほうで以て見ますと、大体このくらいで以て計算しましても、そう大きな誤差はないだろうというふうな考え方ができますので、それほど大きくボーナスが減るというふうには思えませんし、税額を出す場合におきましては、この程度の数字で以て大体間違いがないということを確信しております。
  38. 平林剛

    平林剛君 私は政府が七十五億円というような数字を出したことは、多分にこの法律案を肚から賛成をしておらないので出た数字のように思うのです。なぜかと言えば、この趣旨を立てるためには、例えば最高を抑えるよう措置もできたはずでありますし、又別な角度から言えば、大体徴税の経過から見まして、例年自然増収が多いように思うのですね。だから税金に与える影響というものがすぐ大きな数字になるというよう説明にはどうも納得しかねるのでありますが、例年の自然増収を例にとつてみましたら、かなり影響が少くなって来るのじゃないでしょうか。そういう点についての御判断を聞きたいと思います。
  39. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 自然増収が出るか出ないかという問題とこの七十五億の問題とは多少性格が違います。七十五億の問題は、一応今申したような数字で以つて計算したわけでございまして、まあこれが正しいか正しくないかという御判断は別個だと思います。昨日大蔵委員会で社会党の柴田委員が、六十億というような数字をお話になっていらしやるのですが、柴田委員のお示しになつた数字の基礎は、人員の点と、それからそれの五千円の控除による総額、これはおおむね我々の数字と合つております。ただ税率が、柴田委員は一割五分という税率を一応使われておりました。それで六十億。我々のほうで計算して参りますと、我々のほうで計算しましたやつは、今申しましたように、平均税率というものを初めから出して計算したのではありませんが、結果的に、我々のほうで計算して参りますと約ニ割になります。この減税額の適用を受けるその率ですね。これはまあ階級の低いところの人はこれは率は最低が一割五分になっております。それから上のほうが三割、五割、六割五分まで行っております。そんな六割五分の適用はともかくとしまして、我々のほうで平均したところでは二割であります。その二割の数字で以て、これは結果的に我々のほうもニ割になつたわけですが、それで七十五億でございまして、柴田委員のそのとき指摘された数字は六十億、これは大体社会党の人が、柴田委員のみでなくおっしゃっていた数字であります。その数字は一割五分ということになっておりまして、一割五分というのは現在においては最低の税率であります。最低の階層における税率でございます。従いまして我々のほうとしましては、一割五分の税率によって算出する数字というのは、これはどうも我々のほうとしては、それでよろしいというふうにはちょっと考えられないのじゃないか。我々のほうで階級別にやりました数字は、一応結果的にはニ割、これが極く大ざつぱに考えまして、まあ少くともこれくらいの税率になるのじゃないか、こういうよう考え方をしております。これが七十五億であります。  それからもう一つ、あとの自然増収の問題でございますが、これにつきましては我々のほうでもいろいろ検討した結果としまして、今度の補正予算におきまして、税収としましてば法人税において一応百五十億出したわけでございます。他の税収におきましてはいろいろもう少し先行きを見てみませんとわからない要素がたくさんございますので、減る税もあれば殖える税もあるように思いますので、この際として補正予算以上の税収を期待するのは無理じゃないかと、かよう衆議院でもお答え申しておいた次第でございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の自然増収の問題について伺いたいのですが、大蔵大臣はさっき七十五億、仮にいたしまして、今の税収では困難であるというようお話をされましたが、この自然増収について私予算委員会で一応主税局長に伺つたのですが、我々の計算も示して伺つたのです。併し時間がないので、ただ説明を聞きつ放しでありましたが、大蔵省から出してもらつた資料で我々が計算しても相当の自然増収があるはずですし、それを相当内輪に見ても私は自然増収が相当あると思うのです。大蔵大臣に伺いたいのですが、一応昨年度の実績を基礎にしまして、本年の上期の税収をもとにして本年の下期はどのくらいの税収になるかというのを計算をして見たわけです。そうしますと、給与所得については昨年は上期に対して下期は二四%殖えておるのです。そうしますと大体二千百八億ぐらいの収入になるわけです。ところが予算のほうは千八百七十五億です。その計算によりますと二百三十三億給与所得においては増収があるという計算になるんです。併しその昨年の上期から下期に対する伸び二四%は、本年はそれほど伸びないと見て、これを仮りに半分にして一二%の伸びにしても、なお百二十億の自然増収があるはずですこの計算によれば、それから酒税につきましてもやはり同様の昨年の実績をもとにして計算しますと百二十一億の増収がある計算になるわけであります。砂糖消費税については九十五億、揮発油税については七十二億です。そうしますと五百二十一億乃至四百八億ぐらいの自然増収が法人税以外にある計算になるんです。従って、これは非常に機械的な計算です。機械的な計算ですけれども、これよりほかに我々としては計算方法はないわけですから、従ってこの方法によれば五百億乃至四百億の自然増収があると思うのです。これを仮に半分と見たつて二百億ぐらいの自然増収が法人税以外になければならんはずだと思うのですよ。従って自然増収を隠していると思いますが、又いろんな事情で自然増収が相当あるとなると、補正で各省から或いは又議院のほうからその歳出の増加が法律案で出されるので、大蔵省としては隠しておると思うのですけれども、この点私は、殊に二十九年度予算においては前から問題になっているのです。自然増収が、大蔵省のように法人税百五十億どころじゃない、もっとあるはずだと、こう思うのです。従ってその財源のほうから行きますと、大蔵大臣がさっき御心配になつたように仮に七十五億の支増加になっても私は十分賄えるのであつて、それは御心配ないと思うのです。大蔵大臣如何ですか。
  41. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) ちょっと私から大蔵大臣の答弁の前に申上げます。  勤労所得税につきまして、木村委員ような計算をなさいますと確かにそういう数字が出るかも知れんと思うのですが、勤労所得税につきましては、御承知ように本年の一月からベース・アツプがございました。そしてこれはべース・アツプの歳出を組みますときに、勤労所得税のほうで以て補正で増を見ました。こんなようなわけでございまして、昨年度におきましては相当べース・アツプで、これはまあ一番顕著な問題でございますが、相当先太りになっておるということがありますので、お話ような割合の点につきましてはそのまま使うべき数字じゃないというふうに我々は思っております。我々のほうでも一応検討してみたのでございますが、全体としまして見て参りますと、どうも臨時給与ですね、何といいますか、時間外手当とか、そういったようなものがだんだん減つているのと、それからボーナスなどの点におきましても、先ほども別の見地からお話がありましたが、今年はそんなに出ないのじゃないだろうか、こういう心配もあるわけでございまして、従いましてどういうことになりますか、我々もはっきりそのでき上る最後の姿をここで以て申上げられませんけれども、まあそんなに増収は期待できないのじいだろうか。  それから酒とか揮発油、砂糖、いろいろ御指摘になりましたが、今年度につきましても、将来の問題を考えて参りますと、昨年のように、昨年はどちらかと言えばインフレがまだずっと続いていたといいますか、物価指数などを見ましても本年の二月が最高で、こういった姿でございますので、そのままの姿で伸びて行くとも考えられないのじゃないかと思います。同時に現にもう相当予算に比べまして減が見られておりますのが、一番顕著なのが関税収入で、最近の月平均十七億ぐらいの数字になっております。物品税などにおきましてももうちよって減収、これは滞納の問題など殖えて来ておりますし、そんなこともございますので、我々といたしましては今補正予算以上の歳入がここで確保できるんだというふうには言えないんじゃないかと、かよう考えております。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣にお伺いしたいんですが、この税収については非常に問題があるのです。いわゆる一兆円予算というものを、歳入が一兆円を超えると歳出も一兆円を超えることになるので、成るべく歳入が一兆を超えないように、従って国民所得の計算においても成るべく歳出が一兆になるように、例えば五兆九千八百億、こういうふうに計算して、そうしてその一兆を超えないような作業をするということは大蔵大臣御存じだと思うんです。ところがその後そういう計算で一兆円以下の予算を作つたところが、経済審議庁でいろいろ又国民所得の計算をし直したところが、五兆九千八百億ではなく、最近は六兆を超えた国民所得の計算になって来ていると伝えられております。そういうとこから見ましても、この一兆円予算というものに非常にこだわつて、そうして歳入が一兆を超える、歳出も超えるのじゃないかというので非常に無理に、実際に税収があるのにこれを隠さなければならんというところに無理なことがあるのじゃないか。この点大蔵大臣十分検討をされたいと思うんです。  それで成るほど私の計算は機械的です。素人としては、我々としてはこうやつて計算するほかないんです。併し又大蔵省のほうでも今までの計算方法では、こうした計算方法よりほかはないんですよ。そのほかにいろいろな要素も加えて計算されると思いますが、一応今のような計算をされると思うんです。それ以外に私は、更にさっき申しました四つの大きな税項目、あれ以外に著しく減収になるものがあるために、四つの税項目では増収になるが減収になるというような、機械的ですが、私の言つたように、四百億乃至五百億の増収があるとは、これは私は言いません。併し半分としても二百億はなければならんはずです。それを実は一兆を超えるものですから、無理に一兆を超えないように税収を少いように少いように見ている、こういう点は確かに私は隠すことができないと思うんです。率直に言ってですよ、この点を大蔵大臣はどうお考えですか。非常に一兆円というのに捉われて、歳入面も非常に無理をして一兆円を超えんように超えんようにと非常に努力しておるようですが、大蔵大臣のお感じは如何ですか。
  43. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 大変いい御注意で、とにかく私としては新しい眼を以て財政全体について検討したいという考えでおります。御注意の点もよく考えてみましょう。
  44. 平林剛

    平林剛君 私は二つばかり質問があったのでありますから、それをやらして頂きます。  今大蔵大臣からお話がありましたように税全体について検討を加える必要があるということは私もそういう必要を感じまして、是非やつてもらいたいと思っておるのでありますが、全般税制の建前から見ましても、別な意味で今日はいろいろな根本的な欠陥が出て来ているように思うのであります。先ほども指摘されましたように大企業に対してはいろいろな特別措置が講ぜられる。今国会におきましても御承知であると思うのでありますが、医師に対する租税特別措置法通りました。私はこれらの点から考えまして、今回出されました一般勤労所得者に対する賞与に対する所得税臨時特例が決して不合理ではない。まああつちにもこういうのがある、こっちにもこういうのがあるから、だからこれもせいという意味では決してありませんけれども税制の建前から言って、今度のやつが全く根本的に違うのだという理論は、現在の体系上からは少し強弁になるのではないかと思うのであります。そういう意味から一つ大蔵大臣としての、ちょっと皮肉な聞き方かも知れませんけれども、今回の医師の租税特別措置法に関連をしてどういうものであろうかという御見解を聞きたいのであります。
  45. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私から答弁すればいいのでしようが、私は何も存じませんので、主税局長がおりますから主税局長から一つ話をさして、私も聞いておりまして又そのあとで……。
  46. 平林剛

    平林剛君 よろしうございます。ただ私は、今挙げました法律趣旨から言いましても、今度の法律案というものは決して全く不合理な見地から出されていると、そういう点から反対をされるべき理由はないということを申上げたかったわけなのであります。  そこで自然増収の点について今議論がありましたけれども、私もやはり別な立場から言って、今までの例を見ますと、今年も自然増収はあるのではないか、こう思うのであります。そこで今出されております法律案は、衆議院委員会では否決という形になりました。趨勢としては多数の賛成を得られないというにとは理解できるのでありますけれども、如何でしょうか、これを政府行政措置というようなことにしまして、何か特別な措置を講じて、この際政府として何かの措置をやつてやろうというお気持はございませんですか。
  47. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) これは私もまあよくわからないのですけれども行政措置、これはできがたいところで、まあ私はこの機会に申上げておきますが、この勤労者等の給与といいますか、そういうかたがたが少しでもいい生活をして頂くということには少しも私自身異存はない。これは大蔵大臣としても私はそういう気特で今後の施策の上で奄そういう面を打出して行くつもりでありますが、併しそういうようなことが税の関係において考慮されるとすれば、これはどうしても先ほど申しましたよう税制全体について近く再検討をしようとしている、全体の観点においてこれを考えないとどうも面白くない、筋が通らない。例えば先般来の一つ意見でありまする給与所得者の年末手当を五千円免税するということでありますが、これは私の考えでは、所得税の免税点をどこにあるかという、この問題にあると思います。年末手当だけについて五千円免税するということにしますと、これは統制全体の体系から見て均衡を失するようになります。簡単に、いや、それは年末手当をもらう者だけでもそうしてやれぱいいじゃないかとおつしやいますが、併し年末手当をもらわずに塗炭の苦しみに喘いでおる人が非常に多い。年末手当をもらう人だけがよいということではいけない、こう思います。  今日幾らか議論をすれば、この社会の惜勢におきましてはでこぼこがある。割合に楽、楽ということもありませんが、比較的恵まれておる者があり、他方に苦しむ者があるというでこぼこがあります。私は率直に申しまして、これをできるだけみんなが苦しむように、みんながよりよくなるように、こういうふうな形態に持って行きたい。それでいろいろ御意見もありましょうが、どうぞ一つ暫らく御猶予を頂きたいと思います。
  48. 松永義雄

    松永義雄君 ちょっと主税局長に申上げたい。今のお言葉の中に出ました免税点という言葉、基礎控除という言葉のことですが、これは言い古された問題でしようが、基礎控除といいますと、これは基礎控除を上げれば税収に非常な減収を来たす。ところが今度のような免税点だというと減収が比較的少くて済むということになるのじゃないかと思いますが、今更昔の制度に返つて、新らしくできたところの所得税をやめるということには議論がある。この基礎控除と免税点との間に根本的の何か哲学的な差異があるのか、便宜上そういうものが出て来て税収の上に都合がいいのか、その点をあなたは学者だから御説明願いたい。
  49. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 非常に恐縮でありますが、ちょっと申上げさせて頂きますと、御承知ように昔の第三種所得におきましては千円、その前は千二百円が免税点でありました。十五年の税制改正の機会におきまして、その免税点の制度はやめて、現在の基礎控除にしたわけであります。第三種所得の場合におきましては、御承知ように一番下の税率は百分の〇・八だと思います。従って千円でありまして八円の税金、こういうように税率が低い税率でありましたために、その場合におきましても極端に言いますと実は九百九十九円の人は税金が全然かからない。ところが千円になって八円なら八円の税金を払いますと、手取りは九百九十二円になる。まあ一円余計になつたために手取りは却つて減る。こういう問題になるわけでございます。そこでどうもこれはどういうふうに作りましても、免税点の制度の場合におきましてはそういう差はここに出るわけでございまして、免税点が高けれぱ高い、特に最近のように、これは額だけの問題でございますが、七万とか何とかということになりますと、そこで手取りのちょっと多いために税金がかかる人というものの差が付いて来るのであります。これは幾らでも実は技術的には手はあります。そういう場合におきましては手取りが千円を下らないようにする。従って千一円の場合の人は一円だけが税金になる、千二円の人はニ円だけが税金になる、結局まあ少くとも千円は手取りにする。こういった免税点の作り方がございますが、やはり何と申しましても、そうして参りましても、丁度累進税率のカーブが相当そこまで妙に急に、ジグザグじやありませんが、ぎこちない実は格好になるわけであります。そこで結局現在のよう基礎控除という制度をとりまして、その残つた残額だけに税率をかけよう、こうしますと税率は当初から割合に高くならざるを得ません。免税点でありますと今度は逆に最初の税率は相当低くし、同時にしまいまでその税率で行く場合におきましてばなかなか税収が上りませんので、急速に上げなければならん。とういうようないろいろな技術的な面がございまして、どうも私は、我々はやはり基礎控除の制度がよろしいのじゃないか。それは税収におきましては御承知ように確かに基礎控除のために非常に税収の減が多くなります。  そこでまあ多少衒学的になって恐縮ですが、ロイド・ジヨージが一九〇八年でございましたか、初めてイギリスの所得税に累進税率による当時のスーパー・タツクスというのを作りました。これは現在附加税、サー・タツアスで残つておりますが、これを持込みました。これは免税点は相当高かったんですが、基礎控除の額定を、例えば日本の例で言えば免税点を千円と定めて基礎控除を八百円にした。こんなところで減収額を調整した例もございます。この二つをどういうふうに使い分けて行くか、いろいろ技術的に考え得るところでございますが、できるだけ税制を簡明にする意味におきまして、それから今の税率の面から考えますと、どうも基礎控除の制度のほうがいいのじゃないか。簡単で同時に税率のなだらかさもいいのじゃないか、かよう考えております。
  50. 松永義雄

    松永義雄君 僕は実際不思議に思うことは、経団連から勤労所得税減税主張が出て来ております。えらくどうも経団連は御親切な考え方だと思っております。ところが聞いてみると、やはり重役報酬の減税や目標としておる。重役報酬というのは月給というやつです。だから基礎控除があるというと、毎月何十方円も給料を取る人の税金減税になる。もとより非常に少いかたにも減税になるということであつて基礎控除であるがために、基礎控除を上げるということは非常な勤労所得のある人も減税を受けるという弊害を生ずるのではないかというふうに考えられますが、そういう一面の弊害はあるのでございましょうか。考えが違いましようか。
  51. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) お話ように免税点制度だけにして、そうして基礎控除的なものを……、これは極く話を簡単に進めて、流してしまつて免税点だけを上げる。こうすれば結局上げられた免税点と昔の免税点の中間にあった人だけが影響を受ける、変化を受けるわけであります。従ってそれによる税収の減というものは比較的少くて済む、これはおっしゃる通りです。同時に先ほど言いましたように、免税点の制度でありますと、その特に境目の人におきましていろいろの問題が起る。  それから経団連が勤労所得税に熱心であるという点は、私は実はこんなふうに理解しております。これは税制調査会を昨年やりましたときに、私まあ幹事としてずっと皆さんの御意見を聞いていた印象でございますが、実はそのときもまあ労働団体のかたとしては松岡駒吉先生がいらしたのですけれども、松岡さんがそれほど口をすつぱくしてお言いにならなくても済むほど、実は経営者のかたがたが、勤労所得税は高いじゃないか、こういう声が非常に多かったのです。それは松永委員がおっしゃっているように、重役さんの自分の下取りが税金が高いということよりも、むしろどういうふうに理解したのであります。現在のとかく賃金の協定に手取りで以て、税引手取りで以て幾らというふうなきめ方が割合に殖えている。最近はその傾向が少し減つて来ましたが、過去において特にその傾何が多かった。従って税金が高いということは、労務者のほうから見ますと、どつちかと言えぱ経営者のほうに皆押し付ける。故に経営者のほうは、実はやはり勤労所得税というものを自分が背負わなければならない、これは源泉課税の故がそこにあつて、従ってどうしてもやはり勤労所得税が高いと、そこに労賃として労務者の手に入るやつは少いが、経営者として払うやつは多い。従ってコストの維持においてもやはり勤労所得税を安くして欲しい、こうしたような角度が一つあるのじゃないか。経済団体がやかましく言っております面にはあなたの言われたような面もあるかも知れませんが、余りまともな線として、輸出振興とかそんなようなものが結び付いておつて、そういう議論があるように聞いております。
  52. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ちょっとお諮りいたしますが、大蔵大臣はたまたま用件がおありだそうでございますから、大蔵大臣に対する質疑のおありのかた先に一つお願いいたします。
  53. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 今日の議案に関連しまして、大臣から給与所得税制についてのお考えは伺つたわけでありますが、そのバランスから、この中小企業に対する税制……、まあ税制と言うとえらいやかましいようでありまするが、それに対するお気持、これは今後主税局長など上手にいろいろ説明せられるでしょうから、だんだん固まつてしまいますと、御質問を改めてしても余り価値のないことになりますので、大臣の御答弁通りになるならんは別といたしまして、率直な一つお気持を伺つておきたいと思うのです。  具体的に言いますというと、一番困る問題というと、法人税が、非常に大きな法人に対しても小さな法人に対しても税率が一本の四割二分になっておる。これが非常に酷だというような実情になっておるのであります。そこへ持って来て祖税特別措置法というので、利益や何かあると、もう特別償却をやるとか、積立をやると、そのたびに税金は安くなって、四割二分の税金が三割から、場合によると二割くらいになる。儲けの多い者ほど手取りはますます多く、儲けの少い者はいよいよどうも手取りの少いところへ追い込んで行くという今の建前になっております。この点が一つ。  それからもう一つは、この事業税が今日府県税になりますね。もう六割六分を占めておるのですが、まあ今日少し下つて来て四割八分くらいにはなりましたけれども、それを商工業者だけが納めておるところに、輸出のコストが非常に高くなるところのその原因が私はあると思います。その点が第二。  それからもう一つは、物品税が今まで最初数百の品目にかかっておつたのですが、もう今じやたつた七十三くらいに限られておる。限られておるその七十三くらいの中の関係の、而もこれは零細なる業者なんですが、それが今非常な不均衡な扱いを受けている。この三つが一番問題なんですが、これにつきまして、今申すように、特に法人税関係につきましてこれは率直なる御意見を、お気軽な気持で伺えれば結構だと思います。
  54. 一萬田尚登

    ○国務第臣(一萬田尚登君) よくわかりました。十分そういう点も考慮いたし、なお又それ以外にもあるかも知れませんから、一つ私のほうも研究しますけれども、御研究願つて、こう思うのだがどうかということはどしどし一つ御申出願いたい。ひとり中小企業に限りません。いろいろなものに対して考えております。
  55. 安井謙

    安井謙君 お急ぎのようでありますから極く簡単に伺いますが、先ほど勤労所得税はちょっと苛酷に失するようだという大臣の御感想でありますが、これは結局まあ減税をやるというお気持でしよう。事務当局の話では、今年でもう自然増は先だつての補正予算で取つた以上の財源は見込まないというようなことになっている。今の豊田さんの質問ような点も併せていろいろ新考案をお考えになるということになりますと、どうしてもどこか新らしい税源を見付けなければいかんということになるでありましょうが、何かそれについての見通しでもお持ちになっていらつしやるのでしょうか、どうでしょうか、その点を。
  56. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私の考えでは減税する面もありましょう。増税する面もあるかも知れません。それらを一切私は新らしい目で見て、その上で又御相談をしたいと思います。
  57. 安井謙

    安井謙君 それで今差当つてそういった何か減税なり増税の、これの目安でもお持ちになっているのかどうか。今お持ちにならないとすると、いま暫らく御猶予願いたいというお話でございましたが、この施策というのは大体いつ頃までのお話なのか、伺つておきたいと思います。
  58. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) それはこの話では三月で、私自身が三月で御免をこうむらなければならないかも知れませんが、これは三月の選挙でも済んでどうなるかということでありましょう。併し私の考えでは、誰が大蔵大臣になりましようとも、今日日本の客観的情勢がそういうことを検討する状況にあるという、これは私の見解です。そういう見解で、どなたでも一応お取上げになるだろうと思います。
  59. 安井謙

    安井謙君 そうしますと、来年の一月末の休会あけ早々にでも一つ政策を打出して、何か議会でどうとかなんとかいう意味じやなくて、これは選挙でもやつて、それまでに一般論として考えて行こうという大臣の御方針、こういうふうに伺つてよろしうございますか。
  60. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) そういうことでしよう。私今大蔵大臣ですけれども、これはまあ事実上政策を現わす予算も組めないのですから、どうしてもそういうふうなことは、すべて予算の編成に現われて来なくちやならんと私は思っておるのです。それはやはり選挙後の新らしい政府じゃないですか。新らしいか続くのか知りませんけれども、とにかく選挙後の大蔵大臣ということじゃないですかね。
  61. 松永義雄

    松永義雄君 関連して。希望だけを大蔵大臣に申上げておきたいのです。減税の面もあれば増税することも生ずるかも知れない。このことは極めて重大なんです。減税し放しだというならば、これは又それも一つの議論でしよう。御承知でしようが、日銀の出している雑誌に、本年度のアメリカの法人税の減税の結果社会保障税を増税しているのです。そういう記事が載つている。そういうことのないように希望だけを申上げておきます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に伺いたいのですが、何も政策を今具体的に現わすことができない状態で、一切選挙後において政策は具体的にやるというお話があったのですが、昨日あたり新聞を見ますと、閣議で予算について一兆の枠を超えない。九千億が望ましいというようなことを言っておられますし、従ってやはり結果としてどうなるかわかりませんが、一応選挙後においても大蔵大臣をおやりになるというお考えで御意見を述べてもいいのじゃないかと思うのです。一応誰がやつてもこうなければならんという御意見もあろうと思うのです。大蔵大臣一萬田さんとしましてそういう御意見はあると思うのです。  私一番伺いたいのは税金も関連あると思うのですが、金融の問題ですね、この問題を一言だけ伺つておきたいのです。これまでの金融政策、日銀総裁としておやりになっておりました。今度大蔵大臣になって、これまでの自由党時代の金融政策というのか違わないのか、そ点。  それから、私はいわゆるデフレ政策が破綻して来ていると思うのですね、すでにそれは貿易の黒字で外為会計が支払超過になって来ておりますね、小笠原大蔵大臣は、これはまだ金額が僅かだから大したことないと言っているのですよ。併しこれは大したことないじやなくて、二億ドル近くの黒字は七百二十億円の支払超過になる。ドッジ・ラインのときはインベントリー・ファイナンスをやつていた、ところがこれをやらない。輸入を殖やせばバランスが合うのですが、出超し放しで二億も黒字になる。そうしたらこれは支払超過がどんどん多くなるばかりですね。一兆円予算というのは、一般会計の枠を一兆にしたところで、外為会計からどんどん支払超過が殖えて来れば、そういうものはちつとも健全財政のバランスとしては合わない。そこでもう破綻して来ていると思うのですが、そういう場合に金融をどんどん詰めて通貨の膨張を防ごうとすれば、非常に金融の引締めというものは一部に偏した引締めになって、非常にひどい状態が起るのじゃないかと思うのです。そこで一萬田総裁、今度大蔵大臣ですが、金融政策についてはどうお考えか、大蔵大臣になってからのお考えを伺つておきたいと思うのです。
  63. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 金融政策につきまして極く骨子から言えば、今のところ従来の政策を変えなくちやならんとも思いません。大体私の目標にしていることは、通貨については常にそのときの経済活動に、或いは国民生活に必要なだけの量を過不足なく供給するというので、それは或るときに比べれば締まるという形がある、或るときに比べれば緩むということもあるかも知れません。常に政治活動に妥当な通貨を出す。そうしてその結果がどういう現象形態になるかと言えば、物価が安定する。又物価が安定して来ている状況から、国際収支がバランスがとれる、こういうことを目標にして常に考えて行く。  又具体的な基本線から見て先ほどの外為の問題に触れますと、私の考えでは、若しも今日の日本の輸出が本当に整備が十分できて、言換えれば生産費が下つて、物も安くなって、物も安くなるという意味は国際水準に合う、国際競争に勝ち得るだけのところまで物価が下つて来ておる。そうして正常な力で輸出が伸びている。従ってこれは永続性を持っている。そういう状況にある場合ならこの外為の金が、外為が金が払えなくても、私はこれをそのままにしてもこれは……。併しそういうふうでなくて伸びている輸出ですね。例えば今日で一、二の例をとれば、船の注文を受けて、それで砂糖を一方輸入して、いわゆる輸出補償リンク制にしておる。或いは又出血がある。これは日本の経済の力が国際水準に達した意味で輸出が増大したのじゃない。一番極端な例が朝鮮の動乱のお蔭であのとき非常に輸出が伸びておつた。あれは決して日本の経済が国際的に見て立派になつたから輸出が伸びておつたのではなかった。だから手放しにああいう工合に、あのときはいろいろ私が国民経済の責任者でありまして、あれについてはいろいろ批判がありますけれども、それは十分私はあれについてはああいうときにああいうことをせねばならん理由はありますけれども、併しそういうことは別にして、ああいうふうな正常でないときの輸出、それを手放しにしておくと、その限りにおいてはこれは適当でないという意味で、私はやはり今日の外為の支払超についてはこれは或る程度吸上げて行かなければならない。相当吸上げて行く。それはまあそのことを実現するために私は……、これはここでいろいろ言うこともあれだと思うので、これは私の、まあ大蔵大臣の見解とまでは言わんでいいかも知れませんけれども、私見で、内輪話で、内輪話としても、もうこの辺で外為会計というもののあの特別会計のあり方について検討を加えていいんじゃないかというふうな考え方で、これは商売ですから、商売ということは余りいつまでも特別会計というような形にしておくのは……、当然市中で以て正常の金融でまあ資金も増減して、通貨も増減すべきものが、一方で財政で支払う、一方金融で支払う、財政で払う金は外為証券というものをこっちから取つてこうするというようないろいろな躁作があるが、こういうものを一般に許すと、そういうものが何も要らなくてうまく行くのではないかというような……、併しこれは検討しなければいけませんけれども、そういうふうにすべきではないかと、そういうふうにいろいろ検討したいと思っております。財政資金のそういうものの支払いは或いは今の段階で放つておいていいという見解ではありません。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうほかの人の御質問もあるようですから私はやめますが、ただ最後に、外為を廃止する場合に、貿易が自由になっていたときならいいんですね、黒字になつたときに、昔のように金本位の上で、それによって輸出が伸びると輸出超過になるのですね。そうすると物価が上って来る。その次に輸入が殖えて、自然にバランスが合う制度になっておれば、貿易のほうがそうなればそうしてもいいんですけれども、貿易のほうが許可制みたいになって、外為だけをそう自由に取払うということになると非常に妙なことになるのではないかと思いますけれども、これは意見ですからあれですけれども……。
  65. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只令の法案に対する御質疑は大体尽きたように思いますので、この際お諮りいたしまするが、この二十九年の年末の賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案は、今朝ほど申上げました通り、本日の午後の衆議院の本会議にかかりますが、まだ本会議が始つておりませんので、まだ最終決定状況まで至っておりませんが、だんだんに時間進んで参りますので、恐らくこの法案委員会の結果から見まして、本会議においても同様の結果が出るのではないかというふうに予想されますが、その時間がまだわかりませんので、それは一応あと廻しにいたしまして、先ほど午前中の休憩の時間に社会党のほうから一つの要望事項を取りきめたいという御提案がございまして、非公式の理事会でいろいろお諮りいたしましたので、その問題につきまして一つ社会党のほうから御説明願いたいと思います。速記をとめて。
  66. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは速記を始めて下さい。
  67. 平林剛

    平林剛君 それでは昭和二十九年の年末賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案に関連をし、又それから発展をいたしまして、各党と相談をしました本委員会における要望につきまして、私からその内容を御説明をして、各位の御賛成を得たいと思うのであります。その内容を読上げます。  最近の経済事情にかんがみ低額所得者に対しては税負担軽減の措置を講ずる必要を認めるから、本委員会政府がこれに対して速やかに善処することを要望する  この要望提案をいたしました主な理由は、現下の経済事情の下で俸給生活者は賃金ストツプ、遅欠配が続出していること、一般中小企業者も農民もデフレ経済のためその生活の実情がますます窮迫をしているのに対しまして、税の負担軽減を図る措置政府に対して要望するものであります。特に低額勤労所得者の生活は我々の想像を超えるものがありまして、一般の中小企業におきましても年末越年には普段より出費がかさむために苦しんでおりますことは御承知通りであります。これらの低額所得者のただ一つの希望は、僅かな年末の賞与、或いは金融に繋がつておるのでありますが、その年末の賞与においてさえ税金は仮借なく課せられて、額面と手取金の差が余りに大きいのに呆然としてしまうということがある始末であります。この実情を少しでも救済をするため、二十九年度においては賞与に対する所得税臨時特例に関する法律案、その他が用意されたこともありますが、いずれにいたしましても、今日の現状は特に低額所得者に対して取りあえず何らかの措置をとることは何としても必要であります。この際政府においても所要の処置を講ずることを本委員会として要望するために案文を練つたのであります。何と各位の御賛成を得たいと思うのであります。
  68. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 先ほど委員長からの速記をとめてのお話ではありましたけれども、この申合せをするというか、それの気持は、年末手当に関連する問題じやなく、改めて別個の見地から行くのだというお話であったのでありますが、今平林委員からの御説明だと、やはりこの年末手当から出発し、又それに主眼が置かれておるように承わるのでありまして、私は申合せすることはいいのでありますが、一般的な立場に立つということになると、このデフレ下における中小企業者立場については特別決議すらあつて然るべきじゃないか、そういう見地からもう少し広く、先ほどの御説明のごとく漸次発展した沿革などはこの際きれいに捨てて、一般的な問題としてはっきり中小企業者なりその他農民も入るのだということをもう少し明確ならしめるようなふうにしてもらいたい、さよう意見を述べ、且つ希望いたします。
  69. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 今お聞き及びの通り豊田委員より御希望がございましたが、委員長からも一応更にお確かめしておきますが、今平林委員の御趣旨は、今豊田君が言われましたように、この「低額所得者」という意味は、中小企業者や、農業者、その他全般の者を含むものと、そういうふうに解釈していいわけでございますね。
  70. 平林剛

    平林剛君 さようです。説明がどうも多少不足になつたかも知れませんが、今の御趣旨通りであります。
  71. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 むしろそういう点で最後の説明の前後を通じて、むしろ尻から逆に始まつて行くようなふうにやつてもらつたらいいのだと思うのです。従ってこの決議の内容も、どうもやはりこれは速記録等もすべて官民ともに読むでありましようから、いろいろ誤解が出たのでは困ると思いますので、今のような経緯になって来ると、まあそうではないというふうになっておりますけれども中小企業者なり、或いはこの農業者なり、低額所得者は給与所得者に限らないということを、何かこの括弧でなり、何なりではっきりさしておつて頂きたいと思うのです。
  72. 紅露みつ

    ○紅露みつ君 今豊田委員のおつしやられたように、私はこの際誤解を招かないように何らか文章を明らかにしておいて頂きたいと思います。
  73. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今お聞き及びの通り数名の委員の御希望がございますので、この際平林委員に申上げますが、「最近の経済事情にかんがみ低額所得者」、その「低額所得者」の前に何か文字をお入れになつたらどうなんでしょうか。今言われますよう中小企業者とか農業関係者とか、「等」といいますか、その低額所得者という意味をもう少し明確にすればいいわけですね。ですから何かそこの所に言葉を挾んらいいのじゃないかと思います。
  74. 小酒井義男

    小酒井義男君 ちょっと速記をとめて下さい。
  75. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 速記をとめて下さい。
  76. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 速記を始めて下さい。
  77. 平林剛

    平林剛君 只今文面について多少議論がありましたので、この際先ほど提案をいたしました低額所得者意味を明らかにするために文面を一部修正をいたして御賛成を願いたいと思うのであります。全文を読み返しますか。
  78. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) どうぞ。
  79. 平林剛

    平林剛君 「最近の経済事情にかんがみ中小企業者、農業者、勤労者など、一般の低額所得者に対しては税負担軽減の措置を講ずる必要を認めるから、本委員会政府がこれに対して速かに善処することを要望する」  以上であります。
  80. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今お聞き及びの通り平林委員から御提案がありました要望の案件を本委員会の要望とすることに御賛成のかたがたの挙手をお願いいたします。
  81. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 全会一致であります。よって平林委員提案の要望案件を本委員会の全会一致の要望とすることに決定いたしました。  よってこの要望につきましては、委員長が代表いたしまして、この要望事項を政府に伝達いたしたいと思いますが、さよう取計らつて異議ございませんか。
  82. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではさよう取計らいます。
  83. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 こういう決議は今までは往々にしてお題目に終る傾向がありますが、これが必ず歩どまりのあるよう委員長、全員一致してこれを遂行するよう一つお願いいたしたいと思います。
  84. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは委員長よりもお願いいたしますが、委員長が参ります場合に各党の代表の理事も御一緒に願いまして、趣旨を徹底さすようにお願いいたしたいと思います。
  85. 松永義雄

    松永義雄君 希望を述べられたその回答を大蔵大臣からここで皆さんが聞くように取計らい願いたいのですが。
  86. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) その点でございますが、これは私の考えでございますが、先ほど貿疑応答を重ねました結果から見まして、具体的には今のところすぐ大蔵大臣がお答えになることはできないんじゃないかと思いますから、むしろこの際はこの趣旨をよく今後の政策に織込んで頂くことを強く要望して置いたほうがいいのじゃないでしょうか、如何でございましょうか。
  87. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではさよう取計らいます。
  88. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは先ほどの法案に戻りますが、この案件は今まだ衆議院の本会議が開かれておりませんが、大体の公算として、委員会と同じような結果が本会議で出ると思われます。皆さんがたも大変でございましょうから、一応本日はこの程度にいたしまして、若しあれが否決されないで参りました場合は、当然ここにかかって参りますから開かなければなりませんけれども、本日はちょっと無理ではないかと思います。大体委員会と同様な結果が出るのじゃないかと思います。その点を申上げておきます。  更にもう一点御報告いたしておきますが、午前中連合審査を申入れました件につきましては人事委員会では今日各委員等のお集りが悪いために、こちらの申入れは正式な決定に至っておりませんで、人事委員会では次回を十七日に開くそうであります、その際に連合の件をお諮り願えることと思いますので、誠に皆様がたお困りでしようが、向うでは必ずしも休会中に上げるということもそういう最終の態度もまだきめておられませんので、十七日の模様を見ないとわかりませんが、若し十七日に連合審査の日がきまりましたら、早速御連絡申上げますから、連合委員会は御出席願いたいと思います。  以上を皆様がたに御報告申上げておきます。  それでは本日はこの程度にして、これにて散会いたします。    午後三時五十五分散会