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1954-12-17 第21回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十七日(金曜日)    午後二時五十三分開会   —————————————   委員の異動 十二月十五日委員上條愛一君辞任につ き、その補欠として天田勝正君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            小滝  彬君            羽生 三七君            曾祢  益君    委員            大谷 贇雄君            佐藤 尚武君            高橋 道男君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            天田 勝正君            大山 郁夫君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    外務省アジア局    長       中川  融君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国ビルマ連邦との間の平和条  約の批准について承認を求めるの件  (内閣送付予備審査) ○日本国ビルマ連邦との間の賠償及  び経済協力に関する協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣送付、  予備審査)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは只今より外務委員会開会いたします。  開会前に理事会を開きまして、御協議をいたしたのでありますが、ビルマとの平和条約並びに賠償経済協定につきましては、本日から審議を始めまして、明十八日及び明後十九日の二日間を以て委員会審議を了しまして、二十日の本会議に上程をする運びにいたすように各派でお話合いがつきましたので、先ずこれも御報告申上げておきます。  それではこれより日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件、日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。  先ず政府提案理由の御説明を願います。
  3. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 本題に入る前に一言御挨拶を申上げます。  私が今回外交の重任を負うことになりました。それにつきましては、参議院の本委員会皆さんがたには特別いろいろお世話になるわけであります。どうかよろしくお願いをいたします。  それでは只今議題となりました日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件並びに日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  我が政府は、かねてサン・フランシスコ平和条約当事国でないビルマ連邦との間に正式の国交を開くために種々努力を重ねてまいりましたが、前内閣時代即ち本年八月にウ・チヨウ・ニエン氏を団長とするビルマ親善使節団が来朝いたしましたのを機会に、両国間の最大の懸案である賠償問題について先方と交渉を重ねました結果、円満妥結をみるに至りまして、九月二十五日に両国間平和条約中の賠償関係条項及び両国間賠償経済協力協定の仮調印が行われました。ついで、ラングーン両国間平和条約に関する交渉が行われましたところ、これまた円満妥結をみるに至りましたので、十一月五日に、この日本国ビルマ連邦との間の平和条約及び日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定は、ラングーン岡崎外務大臣ウ・チヨウ・ニエン外務大臣代理との間で正式に調印されるに至つたのであります。  この平和条約は、賠償関係条項を除き、先に締結されました日印平和条約と大体似た内容を有しております。賠償及経済協力協定におきましては、我が国は、ビルマ連邦に対しまして、今後十年間に亙つて先ず賠償として年平均三千万ドルの価値を有する我が国役務及び生産物を供与いたしますと共に、更に経済協力として年平均五百万ドルの価値に達する同様の役務及び生産物同国の使用に供することになつており、この我が国の義務と共にビルマ側協力すべき事項を具体的に定めております。  思うに、ビルマに対する賠償負担は、我が国経済にとつて容易ならぬ負担ではありますが、この賠償問題の解決によりましてビルマとの間に正式の国交が開けることとなりましたことは、我が国の対東南アジア外交に一歩を進めることとなる次第でありまして、誠に喜ぶべきことと申さねばなりません。  然るところ、ビルマ側におきましては本条約早期実施希望し、同国の国会は目下休会中でありますが、明年二月の休会明け劈頭条約を提出しその承認を求めることとなつておるものであります。従来サン・フランシスコ平和条約を初め、日華日印平和条約のいずれの場合におきましても、先ず日本側批准があつて然る後相手方が批准する例となつておりますので、本条約につきましても、若し右期日までに日本側批准が済んでおりません場合は、ビルマ側も我が方の態度決定を待つて審議を行うこととなるべく、従つて条約批准及び実施は数箇月の遅延を来たすこととなるを免れません。  そうなりますことは、日緬間の正常国交関係回復の一日も速かならこんとを希望する我が方にとり、大きな損失と申さねばなりません。よつてここに歳末、年始にかけての御多端な時季であるにもかかわらず、あえて本委員会側開催を仰ぎ、速急御審議を煩らわすこととなつた次第であります。  本案は今申上げました通りに前内閣遺産でございます。私はこれを貴重な遺産として直ちにこれを相続して、私の仕事の第一歩として皆さまがたの御承認を得たいとお願いをする次第でございます。  つきましては右事情を了とせられ、慎重御審議の上、速かに御承認あらんことをお願いいたす次第でございます。
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に関係局長より両件の条文につきまして説明をいたしたい旨の趣きでございますが、お聞きを頂いたら如何かと思います。発言を許したいと思います。
  5. 小滝彬

    小滝彬君 ちよつとその前に、実は大臣は本会議もあるらしいのですが、皆さまはどうか知りませんけれども、場合によつては早くこれを上げます関係上、事務当局説明は又あとで聞くことにして、大臣がいらつしやる間に質問に入つたらどうかと思いますが如何でしよう。大臣の御時間によりまして……。
  6. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  7. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは速記を始めて下さい。  只今提案の御説明のありました件に関しまして、御質問がございますれば順次御発言を許したいと思います。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ビルマとの正式国交回復条件でございますが、国交回復を全面的にやるべきであるということは勿論御異存のないことだと思うのですが、そこで私は本件自体に入る前に、一体新しい内閣、特に重光大臣一般的に国交回復の国との間の国交回復について、どういう態度一般的にお持ちなのかという点、更に特に中国或いはソ連との国交回復について、どういう御意見か、それを先ず承わつておきたいと思うのです。で、中国大陸では申上げるまでもなく中華人民共和国がすでに成立をして、人民大衆はこの新政権協力をして新らしい建設にいそしんでおります。特に新政権が成立してから五年を迎えて、昨今では新政権はすでに確固とした基礎の上に立つて、全く安定をしたといえるのではないかと思うのであります。私たちは十月一日の国慶節前後にあの地に参りまして、一カ月間に亙つて各所を視察をし、いろいろな人たち話合いをいたしました結果、そういう感じを深く持つたのですが、同時にこの新政権当路者は勿論でございますが、労働者も農民も或いは一般市民も、学生も子供も、人民大衆は挙げて戦争を避けて平和を守ることが新らしい中国建設、或いは中国人民大衆生活水準引上には絶対に必要であるといる見地から、各国との友好関係回復を非常に熱望をいたしております。特に周総理とも会談をいたしましたが、周総理自身もこのことを非常に熱心に希望をし、特に周総理日本に対しては、日本人民大衆が認めた政府をそのまま我々も受取つてこれを認める態度をとりたいと思う、従つて日本としても是非中国人民大衆が認めておる政権を正当な政府として認めて頂くことが当然じやないかと思う、ということを非常に熱烈に希望をいたしておりました。中国状態がそうでありますが、翻つて我が国から考えてみましても、日本の地理的な位地或いは歴史的な関係、更には経済的な関係から考えて、中国とあたかも敵対関係であるような現在の状態が継続することは、もはや許されない段階になつて来ているのじやないか、そういう点から考えれば、今こそ中華人民共和国承認すべき時期ではないのか、それに関連をした実際的な措置が早急にとらるべき時期であるというような感じを持つのでありますが、これに対する新政府の明確な態度を御答弁願いたいと思います。
  9. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 新らしい内閣外交方針といたしましては、新聞若しくは一般には大体公表をいたしました。勿論この平和の増進に貢献をしたいという一般的の方針であることは、これはわかりきつたことでございます。又それがためには、世界のいずれの国とも友好関係増進し、且つ又樹立してゆくということが当然の措置でございます。併しその政策を実行するためには、むろん日本の置かれたる今の国際上の地位、これははつきりと自覚をしなければならんと思つております。その日本の置かれたる国際上の地位の主なるものは、サンフランシスコ条約によつて、即ち戦後平和を回復した平和条約によつて定められたるところのもの及びそれと同時に締結せられた米国との安全保障条約によつて定められたるもの等がございます。その他にもございます。これらのこれまで他国との間に関係が定められたそのことについては、これは日本国際上持つておる地位としてはつきりとこれを守つて行かなければならんと考えます。従いまして外交関係の基調としては、どうしてもこの今日まで国交回復した民主自由の諸国との関係をますます改善し、固めて行くということは当然のことでございます。更に進んで国交回復のできていない民主諸国との国交回復ということも、できるだけ速かに又できるだけ故障を排して進んで行かなければならんことも当然でございます。特にアジアにおける諸国というのは何といつても身近かな国々でございます。これらの国々との関係を新たに始め、若しくは増進するということは、必要な処置であることは争うことはできません。その一つのまあ先駆としてビルマに対する条約の御審議を仰ぐわけでございます。  さて中共との関係をどういたしますかということにつきましては、これはそう簡単には私は参らんだろうと思つております。何となれば御承知通り日本は中華民国の政府として台湾における国民政府承認をした。その承認をしておることはこれは法理上そうなつておる。その態度日本だけじやございません。国際連合におけるマジヨリテイの国々は同じ態度である。アメリカもその中に含まれておる。さようなわけでありますから、その態度を今すぐに変更するように向けるということは、日本国際連合諸国外交上の協調をして進むという上において直ちに支障が起るのでありますから、すぐというわけには、すぐこれを考慮するといる今事態には、ないと考えます。併しながら中共が今日支那大陸において非常な広い地域において実際の権力を設定し、その領土を持つておる、こういうことはこれ又少しも争うことのできん事実でございます。そうでありますから恐らくは将来の取扱ということについては、国際的に漸次大きく変つて来ることだろうと私は考えます。日本が東亜の国であるから、他国意向を顧みず、すぐ自分の利害関係のみで考慮するということも勿論ございますが、併し一般国際関係からみて、恐らく形勢が次第に変つて来るものと思います。その変つて来るのとまあ睨み合わせて将来対中共に対する政治的の態度決定するのが適当じやないかと、こう考えております。併しながら今申す通りに、中共は現に立派な大きな広大な地域において実権、実力を立てておる、でありますからさような政治的若しくは法理上の関係は、暫くいろいろな故障がありますから、故障の除かれるような四囲形勢を馴致し、若しくは四囲形勢の変化するのを待つて考慮することとして、差当つて今問題になつております中共との貿易関係増進というようなことを事実問題として取上げて行つて漸次両国の、両国と申しますか、日本中共との関係改善を図ることも非常な有意義なことである。さようなことで今お話のような中共承認するという時期は今来ていると私は断言することはいたしかねますが、併し遠き将来、お話の遠き将来の、と申しますか、長い目で見た考え方において、漸次その関係改善して行くということに努力をいたしたいと、こう考えておるのでございます。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務大臣は遠き将来の問題として問題を押しやつておられる感じがいたすのでありますが、もつと問題は近接をした、緊急な問題じやないかという感じがいたすのであります。外務大臣国際情勢を無視するわけに行かないからというお話でございましたが、この点については、私も全く同感でございます。国際情勢と睨み合せながら我が国態度決定をするということは、外務大臣の言われる通りに誠に必要であると思います。それならば、国際情勢をどう認識をするかという問題だと思うのでありますが、事、中国に関する限りは、申上げるまでもなくイギリスはすでにこれを承認をいたしております。更に日本が最も関係の直接に深いアジア諸国、特に東南アジア諸国、インドにしましても、ビルマにしましても、それから今私たちがこれから審議をしようとする東南アジア諸国は、始んど挙げて中国承認をしておるという状態であると思います。こういう世界的な情勢考えるならば、而も東西貿易の必要なそれらの国々と正式に話合わなければならないという空気は非常に最近とみに大きくなつておりますので、それらの点から考えるならば、外務大臣の言われるように遠い将来の問題でなくて、近い将来にその点を考えなければならない時期じやないかと、こういうふうに思うのでありますが、更に対米関係、或いは日華条約問題等があるというお話でありましたが、対米関係も、サンフランシスコ条約或いは安保条約或いは行政協定、そういうものが日本が隣国の中国友好関係を結ぶことに障害になるのであれば、それを改正をするなり或いは廃止をするという決意でやつて行くことが本当にアメリカに隷属をしない独立国日本の真の姿であると、日本は今やそれを決然と決意をしなければならない時期じやないかと思うのでありますが、それらの点をどうお考えになるか。更には日華条約の問題が出ましたが、日華条約にしても或いは条約局長その他の御解釈によると、これは地域的な限定があるから法律上或いは国際法上必ずしも中共大陸中国一つ独立国家とみなすのは少くとも法律的には、国際法的には、妨げになるものではないというような御答弁もあつたように承わつておりますが、それらの点を考えれば、問題は事実の判断からむしろ政治的に解決をしていい問題であると思います。そうであるとすればさつきの国際情勢関連においてむしろ今可能であるという結論が出て来るんじやないかと思うのですが、それらの点をどういうふうにお考えになるか。  更にもう一点、ソ連との問題でありますが、今日あたりの新聞が伝えるところによりますと、モロトフソ通外相は次のように声明したと言われております。ソ連政府日ソ関係についての重光外相声明に肯定的に対処するものである。若しも日本政府日ソ関係正常化について処置をとることを真に考慮しておるならば、ソ連政府も又日ソ関係正常化ならしめる実際的措置を検討する用意があるという声明をしたと伝えられておりますが、若しソ連にこういう態度があるのならば日本もこれに応じて少くとも両方の国交正常化のために実際的な措置を考慮し、それに着手して然るべきじやないかと、こういうふうに考えるのでありますが、それらの点をどういうふうにお考えになるか。
  11. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今日サンフランシスコ条約を、中共との国交回復のために必要であるならばむしろそれを改廃してはどうかというお話のようでありましたが、これは重大なことでございます。今サンフランシスコ条約及び安保条約、この両条約を、中共承認するに必要なふうに改廃するということは、これは根本的に改めなければならん。そのようなことはこれは日本の基本的の対外政策を改めることになる。私はさようなことは日本の今日立つておる国際上の立場を非常に危くするものであると考えますので、むしろそうでなくして、私はこの基本的の関係をますます強化して行きたいというのが日本の要求でなければならんと考えております。即ち自由主義民主主義諸国との関係をますます改善をし、増進をして行く、又これまでにない国交はこれを樹立して行く、こういうことが必要であろうと考えるので、先ほどその点について縷々説明を申上げたのでございます。  それからお話通りソ連モロトフ氏のモスクワ放送が出て来ておることは承知いたしております。これは私が実は就任する前に、いろいろ私の意見外国に誤解を与えないために、外国新聞記者に話をしたのでございます。それを皆集約して書いたものもございます。その中でも、私の考え方は先ほど申した通り世界の平和を増進する、増進するためには世界各国いずれの国とも友好関係を設定し又は増進して行きたいという見地に立つてつて、それはイデオロギーの問題は別としてやるべきである、私は共産主義は排撃するものであります。反対であります。併し共産主義とか何々主義とかいつていなくても、国と国との関係はこれは円満にやるべき問題である、少くとも円満にやることに努力しなければならんと、こう考えております。日本はそれに対して経験を持つておるのであります。ソ連承認し、ソ連国交を開いた最も最初の国の一つ日本はあるのでありまして、そうして長い間ソ連国交を持続したこともあつて経験を持つておるのであります。さような経験もありますから、イデオロギー関係はなく国交を開くということは、これは適当であると私は考えております。そこで私はさようなソ連との間にもこの通常関係の開かれることを希望するという趣旨のことを申したのでございます。それに対してソ連外相モロトフ氏が答えて、今丁度お話通りの言明を以てこれに応じて来たわけでございます。ただそれならばソ連との国交回復はすぐ緒につくか、こういうことになつて来ますというと、私はまだいろいろな手続があるように感じます。ソ連は御承知通りサンフランシスコ条約調印を拒絶した国であります。他の民主諸国は随分たくさんこれに調印をして、日本との間の戦争状態を終結して平和に復帰したのでありますが、ソ連サンフランシスコ平和条約調印することを拒絶して、そしてそののちには御承知通り中共との間に日本仮想敵国とする中・ソ同盟条約すら締結しておる、それは今日存続しておるのであります。これは具体的な事実である、さような国であるのにもかかわらず、即ち日本平和増進のこの政策を了承して、日本平和希望に応じて来るという意向を表示したことは、私は確かに前進であると思います。そこで私はこれを歓迎するのにやぶさかでないものであります。併しながらソ連日本との間は戦争状態にある、そうして平和条約を結ぶということすらソ連は拒絶しておる、そうして更に日本仮想敵国とした同盟条約を他の共産国締結をしておる、そうしてその間において常に日本仮想敵国とした言動を以て今日まで来ておる、最近におきましてその政策漸次に変つたことはいわゆる平和攻勢の一部分としてよく私は承知しております。そしてそれが平和攻勢と言われても平和を希望するということは私はこれは非常にいいことだと思つております。今回のモロトフ氏の発言も私は非常に一歩の前進であることを確かに認めます。併しながらそれならば今日本モロトフ氏の言つた言葉そのままをすぐそれを具体化する手段を今とれるか、私はソ連意向がどうしてそういう前進をして来たのであるか、又どうして更に前進しようとするのであるか、又日本との間にいろいろな案件もございます、それらについておおよそどういう考え方を持つておるか、等々について少しく見解を、一つ真意を突きとめるだけの準備行為は、これは必要であろうかと考えます。それを十分に注意を深くして、そして而も相手即ちモロトフ氏の言うことをむやみに裏面々々として裏面のことばかりを考える必要も私はないと思いますから、よく勘案して、そして進むべきじやないか、即ち少し様子を見て、そして徐々に進む、併し大体の方策としては私は交戦状態を終熄せしめて、如何なる国とも終熄せしめて行くということは平和に貢献する途であると思いますから、将来の方向としては私は非常な前進であるとしてこれを喜んでおる次第でございます。併し大体そういうように行くつもりでございます。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。今の外務大臣の御答弁で或る程度わかつたのでありますが、もう一つ突込んでお伺いしたいことは次の点であります。それで、私もお尋ねする前にちよつと前提を申上げておきますが、我々もソ連のやり方をそのままを容認するわけじやないし、それから共産党ではありません。併しそれにもかかわらずイデオロギー外交とは別だという重光外相考え方には我々は同感でありますので、その線でお尋ねするわけであります。  それで今佐多さんの質問にお答えになりましたが、私も一応中共ソ連と分けて考えたいと思うのであります。なぜならばソ連は、これは国連加盟国であります。それから日本が一番問題にするアメリカともお互いに外交関係を結んでおる国であります。それから中共のように国連から非難決議も受けておりません。若し中共に対する承認云々の問題が、国際情勢、特に国連加盟国であるとか、或いは国連から非難決議を受けておるとかいうようなことが中共不承認一つ条件だとするならば、その事のよし悪しは別として、ソ連のほうは国連加盟国であり、同時に自由主義国家群の殆んど大多数がこれを認めておる。而も戦前今外務大臣みずからお話なつたように、長い間日本国交を持つていた国であります。その当時からソ連共産主義国であつた。今別に新しく共産主義国なつたわけではないのであります。それが一つと、今外務大臣サンフランシスコ講和条約を認めておらないからと言われたのでありますが、今度のマレンコフ声明はずつと前にもありました。これはサンフランシスコ講和条約、或いは日米安保条約日本が持つておる現状においても、その現状においても国交回復が不可能ではないということを示しておるのであります。だから廃棄しなければ国交回復しないとは言つておりませんから、恐らくソ連はこの現状の上で国交回復意思のあることを示しておると思うのであります。  それからもう一つは中ソ同盟条約を引例なさいましたが、これも日本仮想敵国としておるのではない。日本の新らしい侵略的な企図を防ごうとする意思にほかならないことを言つております。従つてこれも私は余り大きな理由にはならないと思います。この前、岡崎外務大臣時代に、私この問題と同じことをお尋ねしたら、岡崎外務大臣サンフランシスコ講和条約を認め、日米安保条約の廃棄を要求しないという形で、而も現状のままで、このままで国交回復ということを認めて来た場合には、それを拒絶するというようなことはできないだろうということを答えられておつたわけでございます。ただ問題はイニシアテイヴをどちらがとるかという点に問題があると思いますが、その点は別の機会に別の質問として、私の質問を結論的に申上げますと、そういう国連加盟国であるし、而も非難決議も受けておらんし、世界の大多数の民主主義国家もことごとく国交を持つているソ連、それが而も日本アメリカと結んでいる条約について何ら廃棄を要求しない、現状の線で、つまり外交関係を普通の形に戻して、それで重要な懸案はケース・バイ・ケースで一つずつ片付けて行くという、そういう態度で若し向うが正規の提案をして来た場合には、日本政府として、特に重光外務大臣として、これを受入れられる用意があるか、これをお伺いしたい。
  13. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お話の点は私は非常に謹聴いたしました。私もこれは繰返して申上げる通りに、たとえ現実の問題じやなくても、敵国であるという敵対関係は成るべく早く解消をすることが、非常に平和増進のため、又日本の利益のためにもいいことだ、その方向に向つて進むことには少しも異存はないのでございます。ただ御承知通りに、この共産陣営側とこの民主陣営側との対立関係世界的にこれは深刻であるということも説明を要しないわけでございますが、さような関係においてアメリカソ連とがまあ対立していることが中心になつている、そういう場合に、今態勢はだんだんと緩和の方向に向いているということも事実であろうと思います。これはまあ両立ができん、コウエグジストができるとかできんという議論の問題よりも、実際問題として漸次緩和の方向に向いているというのが実情であろうと思います。そこで私は今言われるような方向に徐々に向いつつあるように感ずるのであります。併しそれだからといつて、今日直ちにその方向にとび込んで行くのが国際関係全体の振り合から見て適当であるかどうか、そこで私は今はむしろ今お示しになつたような問題について、個々の問題について漸次その大きな方向に向つて努力をして行くべき時期じやないかと考えております。でありますからいろいろな問題があります。ソ連との間にはまだ抑留者の問題もございます。それからその他にもいろいろ問題がありましよう、併し例えば通商方面の問題というようなこともでき得るだけ現実の問題として取扱つて、そうしてこれが積み重なつて大きな方向に向くようにするということが、現在では一番実際的方法じやないか、こういうふうに実は考えておるのでございますが、併し私も就任早々でありますし、一つよく全体の関係を研究をいたしてみまして、更に又案でもできましたら或いは御相談の機会を得たいとも考えます。  大体以上の通りであります。
  14. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちよつと御注意申上げます。四時に総理と外務大臣との間に、衆議院の本会議における緊急質問に対する打合せがあるということでありまして、政務次官及び条約局長も同行なさりたい旨の連絡がありました。そのつもりで質問を願いたいと思います。なおあとに中川アジア局長はお残りになり得るのでありますが、四時で切りますか、或いは残つてアジア局長だけに御質問の点がありますればできるだけそういうふうにして運びたい、こう思います。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 今のに関連して簡単ですから……。  只今のお答えで一つ一つ既成事実を積み重ねて行つて、一面国際情勢を見ながらということに要約されると思うのであります。それはまあそれ以外に政府から見れば道はないようにお考えになるかも知れませんが、私は煎じつめて行つて更に念を押してお承わりしたいことは、今の戦犯釈放の問題、漁業問題、それから貿易一般の問題、そういう問題の一つ一つを片付けて行くということは勿論必要であります。又そういう努力をしなければならない。そういう途上に、或いは近い将来に、先ほど私が申上げたように、とにかくそんな既成事実を全部解決しようなんということは……。現状のままで取りあえず国交回復して、それから重要な案件は一つ一つ正規の外交交渉を通じて解決して行こうと、取りあえず国交回復しようではないかという、そういう提案が若しあつた場合、その場合に政府としてはどういうふうに御処置なさるか。つまりその間問題の一つ一つを現実に即応して解決して行くということは勿論やらなければならない。併しその過程に、今のような提案が若しなされた場合には、どういう態度を以てお臨みになるのでありましようか、これをお聞きしたいと思います。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは向うの提案をはつきり見届けなければ当局としては言われることじやないと思います。恐らくここの委員会のかたがたもそういうことについてははつきりしたことをこれはもう社会に向つてちよつと公けには言われんことだと思います。ただ私は現状そのままを認めておるのだと言われますけれども、それについてはまだ私は確信を持つことができんのであります。いろいろこれは発展を待たなければ、その確信を得るまでには今日のところでは至つていないということを申上げておきます。発展を見たいと思います。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今までの外務大臣お話で、中共中国に関する限りは少くとも確固たる政権ができている事実だけは、冷厳な事実だけは、事実として認識をしなければならん。承認するか否かは別問題として、少くとも事実としては認識しなければならん。更に、従つてその事実認識の上に立つて一つ一つの具体的な問題は実際的な措置として片付けることには積極的な態度をとつて行きたいというような御意向のように承わつたのであります。そうしますと、非常に具体的な問題になるのですが、実はこれはすでに外務大臣もお聞き及びだと思いますが、中共中国からは貿易の専門家の貿易使節団を是非日本に送りたい。従つて日本の然るべき機関でこれを招請をしてくれないだろうかという話があります。これは私たちが十月に参りましたときに、周恩来総理との会談に引続いて、あちらの国際貿易促進委員会の首脳、或いは中国進出口公司の首脳部と直接に会談をいたしましたときに、非常に具体的に提案をして参つた。殊に日本中共との間に結ばれている貿易協定の期限も切れるし、これは新らしい基礎によつて締結をしたいし、又これまでたびたび日本側からいろいろなかたがたを招待をし、日本側からはいろいろな形でたびたび来て頂いた。然るに中国からはまだ一遍も行つておらないし、特に貿易に関する話合いのために往復をするということが今まで行われていない。従つて、言わば一方交通のようなものだ。そこで、是非今度は中国の貿易専門家を貿易使節団として東京へお呼びを願いたいし、更に東京で貿易協定の新らしい締結交渉をして頂きたいという話を実は私たちは受けたのであります。従つて、これを実現するために民間の貿易関係方面その他と話合つて、招請して然るべきだというふうな態度をとり、その間が進んでおるのでありますが、これに対して外務大臣としては了承なり了解を与えられる意思があるかどうか。私たち希望としては先ほどの御説明から当然にお許しを願えるものと思いますが、その点の御答弁を頂きたい。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは私もいろいろ聞きました。実は私はそういうことがいいと思つておるのです。これは政府がどうするとかいうことになつて来るとなかなか角も立つし、又いろいろな問題が起つて来ます。民間代表あたりがそういう世話をして、而も何というか、向うの政治的の宣伝に乗ぜられんように十分に処置をとつて、そうしてただ貿易関係のことのみについて話合いを進めて行くというようなことは、実際問題として私は結構なことだと実は思つております。
  19. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 先ほど外務大臣お話の中に、今日の世界情勢は共産陣営と自由民主主義陣営とが対立をしておる現状であるから、その深刻なる状態においては今の中共の問題についても、モロトフ声明の問題についても慎重な考慮を進めて行かなきやならんというようなお言葉がございました。新らしい鳩山内閣がおできになつて、この外交の問題に関しましてはそれぞれ今お話がありましたように極めて慎重な態度をとるべきものだと私は思うのでございます。然るに一昨日来衆議院におきましても鳩山総理の台湾の同民政府も独立政権であり、中共北京政府も独立政権であるというような言葉があつて、聞いておつた国民は了承をしがたいのであります。重光外務大臣お話を聞きまして、だんだんその点につきましては明らかになつて来ておるのでありまするけれども、併し一つ政府の中におきまして、少くとも一国の総理が軽々しく外交の問題に関しまして通俗的な発言をなさるというようなことは、私は厳に慎むべきことであると思うのでございます。又昨日は条約局長がこの日華条約についての法理的な説明をなされたということを承わつておりますが、これらに関しましても、相当の私は政治的な影響を世界各国に与えるものだと思うのであります。又大臣は吉田、ダレス書簡などは知らんというようなお言葉のように聞いておりますが、そういうような点につきましても、政府部内におきまして思想の統一をなさり、表現の統一をなさるということが、私は先ほどお話になりました非常な大事な今日の国際情勢の中に立つておる我が国としては、極めて大事な問題であろうと存ずるのでございます。その点に関しまして首尾甚だ不統一を暴露しておる新政府外交問題に対する態度であると私は思いますが、これに関しましての重光外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はお話の御趣旨は誠に御尤もだと考えます。私が内閣が変るに際しまして、特に注意を払つた点もその点でございます。私は新内閣成立後には外交の任に当つておるのでありますが、併しその前においても、党の外交政策には責任を持たなければならん。そこで将来新らしい内閣を組織する場合においてどういうふうな党の政策としてこれが運用されるかということについては、私もそのときから責任を持たなければならんと、こう考えまして、若し民主党が政権をとる場合においても、外交政策の基調はこれこれであるというようなことで、極めて慎重な態度をとつて外国新聞記者等にも接触をし、説明をしたわけでございます。この中共問題について私どもの立場といたしましては、先ほど御説明を申上げた通りで、これに思想統一をいたしておるわけでございますが併し十五日の鳩山総理の民間放送、これはまあ十分検討して見ましたが、まあ随分通俗的な非公式というか何というかちよつと雑談みたいなことになつておるわけなんで、恐らくこの現実の問題を幾分わかりやすく言うために言われたのであろうと思つて、今朝ほどもよく聞き合わしてみました。今日の閣議においても私は実は中共の問題についてこう考えており、又解釈をしておるのであるということをはつきり申したのでありますが、皆さんもその通りだ、鳩山総理も自分は実はそういうふうに思つてつておるのだというよう、なお話でございました。そこでいろいろな用語の関係上誤解を与えたとすれば、それはなんですが、事実そういうようなことでございますから、私はそういうことをはつきりと対外的にも繰返し繰返し今申しておるわけで、誤解を少しでも取去り若しくは少くしたいと努力をいたしておる次第でございます。御趣旨は私どももよく了承いたしまして、できるだけそういう方向に将来努めたいと考えております。
  21. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 大臣のお言葉で私も鳩山総理が善意に庶民的な表現をなさつたものだとは了承いたします。併しながら少くとも一国の総理大臣である以上は、これが部屋の中で話されたとか個人の対談であれば別でありますが、何万といる大衆を相手にしたラジオの対談における言論であるといたしますならば、これはただ善意だからということでは、私は許し得ない問題だと思うのであります。ふわふわしたような御表現は今後厳に閣内においてこれは何ぴとといえどもお慎みを一つ頂きたいと思うのでございます。  中共貿易について大臣外国新聞記者に御発表になりました文書は、国内の新聞記者に発表した文書とは大分外国向けのほうが非常に詳細であつて、内地の新聞記者諸君には極めて簡単でありますが、これを、二重になされたというようなことをかれこれ申すわけじやございませんが、これらの御発表を見ましても、中共貿易をココムの許す範囲以上にもつと積極的にこれを打開をいたして行くということが極めて大切な問題であるということは、これは大臣もそういうお考えであろうと同感をいたしておるわけでありますが……
  22. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちよつと大谷委員に御注意を申上げます。四時になりましたから、そこでおとどめ頂きます。先ほど申上げました通りです。
  23. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それでは……、同感でございますが、大臣のおつしやつているように、これは現在は比較的少量であるといる現実を認めて、今後一つ是非ともこの貿易量を拡大することに御尽力を頂きたいと思いますが、ただこれらの点は前の岡崎外相もそういう方針で進んでおつたのでありまして、これらの点になお加うるに東南アジアの貿易に関しましても御所見を承わりたいと思いますが、今は時間の関係上これで打切ります。
  24. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は遅れて参りまして恐縮ですが、今日の議事進行は今後どういうふうにおきまりですか。
  25. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 只今申上げようと思つていたところでございます。  先ほど御注意を申上げましたように四時には大臣、政務次官及び条約局長が退席なさいますが、中川アジア局長がおいでになつております。それで、質問をお続けになりますか、如何でありましようか。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  26. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 速記を始めて……。  それではこれより中川アジア局長に議題の件に関しまする説明を伺いたいと思います。
  27. 中川融

    説明員(中川融君) 日本国ビルマ連邦との間の平和条約につきまして簡単に御説明申上げます。  日本国ビルマ連邦間の平和条約締結の経緯につきましては、先ほど外務大臣から提案理由の御説明のありましたところに尽きておりますので省略いたしまして、条文について御説明申上げます。  この平和条約は、大きく申しまして日本とインドとの間に締結されました平和条約の大体そのままの形を踏襲しております。併しながら、御承知のように、インドとの間におきましては、賠償ということがなかつたために、賠償に関する条項は新たに、大体サンフランシスコ平和条約十四条の型に則りまして、この条約に挿入してあるのであります。爾余の条項はおおむね日印平和条約の形に則つております。  前文は大体これはインドとの平和条約と同様でございます。  第一条はこの平和条約の根本の思想を簡単に言つておるのであります。要するに日本ビルマとの間に、永久の平和があるということの精神を謳つておるのであります。これもインドとの平和条約にそのままの形のがございます。  その次は戦前条約の復活に関する規定でございますが、これもインドとの間の条約にもございますし、なおサンフランシスコ条約第七条と同じような規定でございます。要するにビルマ日本ビルマとの戦前ある条約の中で復活を希望するものを、日本国に通告することによつてこれが復活する、こういう規定でございます。現実には日本ビルマとの間に戦前に適用されております条約というものは極めて少いのでありまして、恐らく曾つて日本とイギリスとの間に、船舶積量に関する協定というものがございました。これがビルマにも適用されておりましたが、この日本とイギリスとの間の船舶積量に関する協定という条約が復活に該当する条約の例であろう、それ以外にはちよつと見当らないのでございます。  次の第三条は通商条約、通商航海条約を速かに締結するように交渉を開始するという規定でございます。これも日本とインドとの条約にその原形があるのであります。インドとの条約と違いますことは、暫定的に締結ができるまで最恵国の契約を相互にするという規定がこれに入つておりません。これはビルマとの交渉一つの難点、困難のありました点でありましたが、ビルマ側は末だ曾つて如何なる国とも最恵国待遇を含む条約締結していないということで、いわば敵国関係であつた日本との間に最初にそういう条項を入れた条約締結するということは、国内感情から見ても困難である、併し現実にはビルマ日本のガツト加盟ということについて承認を与えております。現実にはこのガツトの関係からも、最恵国待遇ができるようになる。従つて二国間の条約においてそれをはつきり謳うのはやめたいという非常に強い希望でありましたので、実質的にはこれがないことによつて支障はないものと認めまして、その点の規定がこれにはないのでございます。  次の第四条でございますが、これは公海における漁猟の協定というものを速かに締結するということの規定でございました。これもインドとの条約にその例があるようでございます。  第五条は、これはインドとの条約に例のない、いわゆる賠償に関する規定でございます。大体サンフランシスコ条約十四条の形に則つておりますが、併し違いますところは、サンフランシスコ条約は要するに賠償というものの原則だけきめまして、内容については何ら規定はないのであります。これには内容を規定しておるのでありまして、その賠償として払うものはこれは十年間に二億米ドルに相当するものを払う。従つて年平均は二千万米ドルということになるのでございます。なお規定の形式といたしましては、米ドルと共に、それに等しい円貨をも同じくここに記載してございます。なお賠償のほかに、経済協力という項目があります。経済協力といたしまして、年平均五百万米ドル、十年間通計いたしまして五千万米ドルに相当するものを経済協力としてビルマに提供するようにあらゆる可能な措置政府がとるということを約束しておるのでございます。なお、その次にほかの賠償請求国との関連を書いてあるのでございまして、ほかの賠償請求国に対する最終的解決があつた場合には、日本ビルマの公正且つ衡平な待遇に対する要求といるものを再検討するということがここに規定してあるのでございます。その次の(b)というところは、大きく言いましてサンフランシスコ条約十四条の(a)の二項というものに相当するのでありまして、在ビルマ日本財産を没収するといることに関する規定でございます。その次の第五条の第二項でございますが、これはビルマが、それ以外の対日戦争請求権を放棄するということを謳つておるのでございまして、サンフランシスコ条約の規定の趣旨にこれも則つたものであります。  次に第六条であります。これは日本にあるビルマ財産の返還及び補償に関する規定でありまして、これもサンフランシスコ条約及び日本インド間の平和条約にそれぞれこれに相当する規定があるのでございます。  第七条は戦争と戦前債務との関係について規定しておるのでありまして、戦争状態の介在が戦前の債務等に支障を及ぼさない、影響を及ぼさないという規定でございまして、これもインドとの間の平和条約及びサンフランシスコ条約にそれぞれ似た規定があるわけでございます。  第八条は我が国の対ビルマ請求権の放棄という規定でございます。これもインドとの条約サンフランシスコ平和条約にそれぞれ同じ趣旨の規定がございます。  第九条は紛争の解決でありますが、これは紛争については先ず外交交渉によつて解決する。それで片付かないものは国際司法裁判所に付託するということになつておりまして、インドの場合には国際司法裁判所に付託する規定にはなつておりませんで、これは両国の定めるところによつて仲裁に付することになつておりまして、若干差異がございます。  第十条は批准に関する規定でございます。  引続きまして日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定につきまして簡単に御説明申上げます。これは今の平和条約の第五条に規定しております賠償並びに経済協力細目協定を作るということが書いてあるのでありますが、その細目協定として締結いたしましたのがこの協定でございます。  この第一条は、結局平和条約第五条に謳つてあります賠償の原則、金額というものをそのまま第一項、第二項に、賠償及び経済協力についてそのまま規定してございます。  第三項は新らしい規定でございまして、これらの賠償及び経済協力ビルマ経済回復及び発展並びに社会福祉の増進のために供与されるものである。而うしてその項目においては、付属書に掲げたところのものに使うということが規定してあるのでございます。付属書につきましてはあとで御覧願いたいと思いますが、十九項目ほど掲げてございまして、いずれもビルマ経済回復並びに社会福祉の増進に供与する項目が掲げてあるのでございます。  その次の第二条は、これはこの賠償及び経済協力実施関連いたしまして、ビルマ側でするべき義務が書いてあるのでございまして、この第二項におきましては、現地の労務、資材及び設備はビルマ側が提供するということが規定してございます。第三項には合弁事業に当りましては、ビルマ側が、そのビルマ側負担分を提供しなければならない、当然のことでございますが、そのことが規定してございます。第四項には賠償としてビルマに渡されました生産物ビルマが他の第三国にそのまま再輸出してはいけないということが規定してあるのでございます。これは我が国と第三国との正常貿易を阻害することがないようにということの注意のための規定でございます。  第三条は経済協力として行われます共同事業、或いは合弁事業と申しますか、この共同事業に関する基本的な事柄が規定してあるのでありまして、一項によりまして、共同事業におきます双方の持分は日本側が四割、ビルマ側が六割という原則が書いてあるのでございまして、これはビルマの憲法に、外国と合弁事業する際には、少くとも六割はビルマ国民が資本を持たなければいけないという規定があるのでございまして、そのことから原則としてこういうことにするということを書いたわけでございます。第二項及び第三項は、これら合弁事業をビルマ政府が強制収用するに当りましてのことを規定しておるのでございます。一定期間は強制収用しない、又その一定期間が過ぎたのちに強制収用する場合には、その条件はあらかじめ契約においてきめておかなければいけない、かようなことが規定してあります。第四項は同じく合弁事業から生じますいろいろな日本側の本国へ送付すべき利益等が出るわけでございますが、それらの日本側の送金についての条件は、やはり契約にはつきり書いておかなければいけないという規定でございます。  第四条は、賠償及びこの経済協力関連いたしまして両国間におこるいろいろな事案を円滑に協議するための合同委員会を設置するということが規定されております。  第五条は、細目に関することは別に両国政府間において協議されるという規定でございます。  第六条は、紛争の解決でございまして、先ず紛争は外交上の径路によつて解決する。なおそれを解決し得ない場合には、三人から成る仲裁委員を設けて、これに裁決を依頼する。その決定には両国が従わなければならないという規定でございます。  第七条は承認に関する規定でございまして、国内法によつてそれぞれ両国承認したときから効力を生ずるという規定でございます。  なお付属書は先ほど申しました通り賠償及び経済協力の項目が列記してございます。  更に交換公文というものがございますが、その交換公文によりまして、経済協力によつて供与される年五百万米ドルに相当するもののうち、二百万米ドルに相当するものは、日本からビルマ政府に供与される貸付の形によることができるという規定なのでございます。いわゆる労務に関する規定でございまして、その条件は同じく同種の貸付における国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行のきめます条件を参考といたしまして、両国政府において協議してきめるということを規定してあるのでございます。  以上簡単でございますが、両条約協定の御説明を申上げました。
  28. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 何か御質問ございましたら……。御質問ございませんか。じや、私、ちよつと伺つておきます。  八条でありますが、平和条約の八条に「ビルマ又はビルマ連邦」という文字が使つてあります。それが一九四八年の独立前がビルマであつて、独立後がビルマ連邦というのでありますか。
  29. 中川融

    説明員(中川融君) 御指摘の通りの区分けにいたしまして、一九四八年でございますか、ビルマ連邦成立前をビルマ、その後をビルマ連邦とする、こういうことでございます。
  30. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それについて伺いますが、それの時期的の違いだけで、地域に違いは全然ありませんか。
  31. 中川融

    説明員(中川融君) 地域については違いがないと了解しております。
  32. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 何か御質問ございませんか。
  33. 天田勝正

    天田勝正君 質問はあるけれども委員長、あとにするということで……。
  34. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それじや今日は散会いたしてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは散会いたします。    午後四時二十一分散会