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1954-12-21 第21回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月二十一日(火曜日)     午前九時五十二分開議  出席委員    委員長 山口喜久一郎君    理事 西村 直己君 理事 西村 久之君    理事 川崎 秀二君 理事 中曽根康弘君    理事 佐藤觀次郎君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    天野 公義君       池田 勇人君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    大橋 武夫君       倉石 忠雄君    迫水 久常君       津雲 國利君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       福田 篤泰君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山中 貞則君    稻葉  修君       宇都宮徳馬君    河野 金昇君       椎熊 三郎君    園田  直君       高瀬  傳君    中村 梅吉君       中村三之丞君    福田 赳夫君       古井 喜實君    森   清君       足鹿  覺君    田中織之進君       成田 知巳君    松原喜之次君       三鍋 義三君    横路 節雄君       淺沼稻次郎君    稲富 稜人君       川島 金次君    河野  密君       小平  忠君    堤 ツルヨ君       久保田 豊君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 安藤 正純君         厚 生 大 臣 鶴見 祐輔君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         郵 政 大 臣 武知 勇記君         労 働 大 臣 千葉 三郎君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 大村 清一君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 西田 隆男君         国 務 大 臣 三好 英之君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         法務政務次官  櫻内 義雄君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         文部政務次官  小高 熹郎君         通商産業政務次         官       山本 勝市君         労働政務次官  志賀健次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (事務次官)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十二月六日  委員高橋圓三郎君、加藤常太郎君、廣瀬正雄君、  横路節雄君及び稲富稜人君辞任につき、その補  欠として木村俊夫君、宇都宮徳馬君、床次徳二  君、阿部五郎君及び川俣清音君が議長指名で  委員に選任された。 同 日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として稻  富稜人君議長指名委員に選任された。 同月七日  委員小林進辞任につき、その補欠として堤ツ  ルヨ君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員木村俊夫辞任につき、その補欠として高  橋圓三郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員倉石忠雄君及び小林絹治辞任につき、そ  の補欠として山口喜久一郎君及び前田正男君が  議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員高橋圓三郎君、山崎巖君、淡谷悠藏君、稻  富稜人君及び山花秀雄辞任につき、その補欠  として熊谷憲一君、山田彌一君、武藤運十郎君  中澤茂一君及び田中織之進君が議長指名で委  員に選任された。 同月十五日  委員岡田五郎君、尾崎末吉君、葉梨新五郎君及  び阿部五郎辞任につき、その補欠として篠田  弘作君、松岡俊三君、倉石忠雄君及び小川豊明  君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員松岡俊三君及び小川豊明辞任につき、そ  の補欠として尾崎末吉君及び横路節雄君が議長  の指名委員に選任された。 同月十八日  委員高橋禎一君、武知勇記君、山本勝市君及び  横路節雄辞任につき、その補欠として高瀬傳  君、楠美省吾君、稻葉修君及び森三樹二君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十日  委員楠美省吾君、舘林三喜男君、床次徳二君、  中村三之丞君及び中澤茂一辞任につき、その  補欠として園田直君、椎熊三郎君、古井喜賢君、  森清君及び稲富稜人君議長指名委員に選  任された。 同月二十一日  委員植木庚子郎君、熊谷憲一君、小峯柳多君、  篠田弘作君、原健三郎君、前田正男君、小枝一  雄君、高瀬傳君、伊藤好道君、滝井義高君、森  三樹二君、川島金次君及び黒田寿男辞任につ  き、その補欠として福田篤泰君、山中貞則君、  大橋武夫君、天野公義君、津雲國利君、池田勇  人君中村三之丞君、田中龍夫君、成田知巳君、  足鹿覺君、横路節雄君、淺沼稻次郎君及び久保  田豊君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  川島金次君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員長倉石忠雄君が委員長辞任した。 同月十三日  山口喜久一郎君が議長指名委員長に選任さ  れた。 同月二十一日  理事山本勝市君委員辞任につき、その補欠とし  て川崎秀二君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  予算編成並びに実施状況等に関する件     —————————————
  2. 山口喜久一郎

    山口委員長 これより会議を開きます。  この際一言ごあいさつを申し上げます。このたび不肖私がはからずも予算委員長に選任されましたが、この重責をになうことになりまして、まことにふなれのものでありまして、各位の御鞭撻、御協力によりまして、その職責を果し、大過なきを期して参りたいと念願いたしておるような次第であります。何とぞよろしく御協力をお願いいたします。(拍手)     —————————————
  3. 山口喜久一郎

    山口委員長 この際お諮りいたします。委員の交代によつて理事が一名欠員になりましたので、この補欠は先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山口喜久一郎

    山口委員長 御異議なしと認めます。よつてその通り決定いたします。理事川崎秀二君を指名いたします。     —————————————
  5. 山口喜久一郎

    山口委員長 次にお諮りをいたします。予算編成並びに実施状況等に関する件につきまして、議長に対し国政調査承認要求を行うこととし、その手続は委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  6. 山口喜久一郎

    山口委員長 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。  それでは議長承認を得るため、暫時休憩いたします。そのままお待ちを願います。    午前九時五十四分休憩      ————◇—————    午前九時五十六分開議
  7. 山口喜久一郎

    山口委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  予算編成並びに実施状況等に関する件を議題といたします。  質疑を行います。津雲国利君。
  8. 津雲國利

    津雲委員 まず鳩山首相に御質問申し上げたいと思います。十二月九日に発表せられたいわゆる三派共同声明、すなわち解散の時期と総選挙終了の時期を明示した、あの共同声明、この発表の前の経緯を見ておりますと、どうも社会党両派の強い要請によつて、その要請に屈して、ああいうことになつたような疑いが私には強いのでございますが、鳩山首相並びに岸幹事長の当時における新聞紙上談話等を通して見ますと、これは条件では断じてない、かように明言しておりますから、そのいずれであるかにつきまして、率直に御答弁を煩わしたいと思います。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 委員長の御許可を得まして、失礼ですが、すわつたまま答弁さしていただきます。  ただいま津雲君の御質問言葉の中にありました通り社会党強要によつて解散早期にするということを約束した次第ではございません。私ども日本民主党というものをつくつたのでありますが、国民から民主党の党員として選挙せられた次第でもございませんし、とにかく百二十有余名をもつて、ただちに政権にすわつて政治を続けてやるというようなことは、きわめて僭越しごくなことと考えまして、どうしても選挙の洗礼を受けた後に政治を行うべきものと思つたのであります。社会党希望しておつたことは当然でありますが、むしろ社会党希望を、私は天の声なりというような気分をもつて聞いたのでありまして、決して自分から屈服をして要請に応じたというわけではございません。
  10. 津雲國利

    津雲委員 よくわかりました。なおまたあなたの談話でも、岸幹事長談話というか、民主党両院議員総会における答弁というようなものを通して見ましても、この三派共同声明は、三党間の約束ではないということを明言いたしております。しかし、私が常識的に考えて、三党の間であの声明を出した以上は、三党間の信義を持つて守らなければならぬ約束であると同時に、これは天下に向つて声明した以上は、国民に対するところの公約でもあるということは当然のことと思う。しかしこれは約束でないとあえて言つておる。そこに私は少し疑念を持つのでありますが、時間がございませんから、この点についてはこれだけ申し上げただけで、御質問申し上げません。  ただ、ただいま鳩山首相答弁によりまして、ともかくも国会再開劈頭解散、三月初旬選挙終了、こういういわゆる三派の共同声明は天の声だ、これだけのことは御明言を得てはつきりいたしたと思うのでございます。そうすると、ただいまの御答弁から考えまして、私はこう解釈をいたすのであります。国会再開劈頭解散、三月初旬総選挙終了、こういう趣旨のいわゆる早期解散は、三党の意見が偶然に一致したものである、こう私は解釈するのが今の御答弁から見て無理のない結論であるように考えるのでございます。それでよろしゆうございますか。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうでございます。それでけつこうでございます。
  12. 津雲國利

    津雲委員 そうすると、もう一ぺん繰返しますが、鳩山総理大臣民主党諸君も、国会再開劈頭解散、三月上旬選挙終了ということがわが国情に照して最もいい時期である、最良最善の時期であると断じたに間違いないと思うのでありますが、そう解釈してよろしゆうございますか。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問は、国会再開後ただちに解散がよろしいと思うがという御質問ですか。
  14. 津雲國利

    津雲委員 その時期が、国会再開劈頭解散、三月上旬選挙、こういういわゆる選挙の時期がわが国現下国情に照し、なお政治的に支障万般のことを考え民主党としてもすべてのことを慎重に考えた結果、最善最良の時期であると御判断をなされたものと考えるがどうであるか。こういう意味であります。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国会再開というのは来年ですね。来年の一月二十日ごろに再開せられた場合に、劈頭解散するのが適当であるというように考えるかという御質問ですね。
  16. 津雲國利

    津雲委員 それが一番いい時期かということです。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府としては、政府の所信を一応述べまして、野党諸君質問を聞くという方が、民主的じやないかというように考えておりますが、まだ解散の時期、方法等についてはきめておりません。
  18. 津雲國利

    津雲委員 私の質問の要点が総理にははつきりおのみ込みになれぬようでございますが、声明文に記載してある国会再開劈頭解散、三月上旬選挙終了、こういういわゆる解散のきめ方が、民主政治議会政治の建前の上では最も重大であり、厳粛であるべきところの解散選挙ということに対しては、その時期を選ぶことが非常に大事なことであるが、これが天の声だといつてそれをおきめになつたのであるから、民主党としても鳩山首相としても、あるいは鳩山内閣としても、その選挙の時期がわが国現下国情に照して一番いい時期であると断定したときでなければ、解散もできず、選挙もできないはずでございます。一番いい時期とお考えになつたのか、最善最良の時期とお考えになつたのか、こういう質問でございます。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 三月上旬に選挙をやることが最良の時期のように考えました。
  20. 津雲國利

    津雲委員 それでは総理に対する質問は一応やめておきまして、経済閣僚諸君に簡単にお答えを願いたい。  高碕経済審議庁長官にお尋ねしますが、ただいまの解散の時期、選挙の時期について総理と御同感でございますか。
  21. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 総理とまつた同感であります。
  22. 津雲國利

    津雲委員 石橋通産大臣も御同感でございますか。答弁はごく簡単でよろしゆうございます。
  23. 石橋湛山

    石橋国務大臣 同感であります。
  24. 津雲國利

    津雲委員 大蔵大臣萬田君に御同様の趣旨で伺つておきます。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 同様でございます。
  26. 津雲國利

    津雲委員 それでは念のために申し上げておきますが、三月上旬までに選挙終了する、こういう三派の共同声明は、鳩山内閣経済閣僚も全部、これがわが国現下国情に照して最もいい時期であるということに御同感だ、これはさしつかえございませんね。
  27. 山口喜久一郎

    山口委員長 だれに御質問でございますか。
  28. 津雲國利

    津雲委員 あと河野君だとか、建設大臣とかに伺わなければなりませんが、大体それでよろしゆうございますね。——そのように承知いたします。  そうするとこの三派の北同声明は、鳩山首相がまだ内閣を組織しなかつた前に御同意なつ声明でございますが、もちろん今日内閣を組織せられたあとでもこれに御同意である——これをかえる御意思のないということはもうはつきりいたしているようでございます。そこで私は重ねて申し上げておくのでございますが、この声明はあくまでも社会党強要によるものではない、また社会党との約束でもない、これは鳩山さん自身また民主党自体が信念を持つて最もいい時期に解放をし、最もいい時期に選挙をするものであるとお認めなつたことが明瞭であるようでございます。  そこで私は一萬田さんにお伺いしたいのでございますが、昭和三十年度の予算規模については、新聞紙で拝見いたしておりますと、昭和二十九年度の規模、すなわち一兆円という範囲に限定する、そうして重点的にただ金の使い道をかえて行くのだ、こういうことのようでございますが、そう了解してさしつかえございませんか。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のお言葉で限定するというお言葉がありましたが、これは必ずしも私賛成しません。一兆円予算を組むように努力をあくまで払う、こういう意味でございます。それだけを修正して、あとはよろしゆうございます。
  30. 津雲國利

    津雲委員 もう一ぺん一萬田大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、暫定予算——これはかりに組むとして、暫定予算の性格の上から、私はそれは国政を運営して行くところの最低の費用、たとえば継続費とかあるいは事務費というようなものの範囲に限つてやるべきものと思うのでございますが、大蔵大臣の御見解はいかがでございますか。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところ暫定予算を組むということについてはまだ考えておりません。
  32. 津雲國利

    津雲委員 国会再開劈頭解散で、三月上旬選挙の場合でありますから、どんなに考えてみても、まず四、五月の二箇月は暫定予算を組むことは、今から予定しておかなければならぬことでございます。これは当然のことでございます。すでに与党の政務調査会長であるところの松村君が昨日の新聞で見ますと、どこかの談話で、現状のままで解散を行えば、どうしても、四、五月ごろまでの暫定予算を組まなければならない。もし暫定予算が四、五、六と三月にわたるようなことになれば、現在の日本経済状態としては、はなはだ危険であるということを明言しております。そういう状態のもとにおいて大蔵大臣はまだ暫定予算を組むということを考慮のうちに入れてない、こういう御答弁なさつた、これはもつてのほかでございます。昨年四月十九日選挙の場合に、二十八年度予算はまず四、五月の両箇月が暫定予算となり、次いで六月が第二次の暫定予算になり、それでも間に合わなくて遂に七月が第三次の暫定予算となりまして、そうしていわゆるこま切れ予算財界から称されて、その予算下におけるところのわが国産業中小企業その他経済界全般がそのために非常に苦しんだという実情は一萬田大蔵大臣は当時日銀総裁としてよく御存じのことと思う。しかるにちようどそのときと同じ状態でございまして、どうしてもこれは暫定予算を組まなければならぬというめに三月初旬選挙終了ということではなるのが、だれが考えてもあたりまえの常識でございます。(「絶対多数をとればすぐ組める」と呼ぶ者あり)うるさい、そんなことはあり御ない。万事想像政治をやるな。——そこで暫定予算はどうしても組まなければならぬということはあなたおわかりになりませんか。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私が答弁になれぬために言葉が足りません結果、いろいろと御議論があるようでありますが、私はまだはつきりいつ解散か大体今のお話で……(「同感だと言つたじやないか。」と呼ぶ者あり)それで一応一箇月、二箇月程度の暫定予算は組むようになるかもわからないというふうに今考えております。そういうような意味合いでありますから、そのような答弁をいたしたわけであります。
  34. 津雲國利

    津雲委員 昭和二十八年四月の解散のときの暫定予算による財界に対する重大なる悪影響については、一萬田当時の日銀総裁としても御存じでございましよう。そのときに比較して現在の日本経済状態は、まだはるかに解散暫定予算を組むということのためには悪い時期であると私は確信しております。当時はまだインフレの上昇期でございまして、まだまだ多少の余裕はあつた。今はデフレ政策遂行の途中、最も大事なときでございます。経済界神経過敏まつ最中だ。このときに解散を断行する。そうして暫定予算を組む。この影響昭和二十八年に比べてはるかに大きい。こういうことを大蔵大臣はお認めになりますか、なりませんか。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 暫定予算を組む場合には、経済界に本予算の成立に比べて悪い影響を与えることは、これは申すまでもないことであります。しかしなぜしからばそういうふうな経済界に悪い影響があるにかかわらず暫定予算を組むような、そういう事態になるかということは、これは単に経済という問題だけにとどまらない、大きな国の全体の事柄からやむを得ないことであろうと私は想像するのであります。しかしながら私は暫定予算を組んだ場合に経済界にできるだけ悪影響を少くする、できるだけこれを減少して、負担を軽くする。こういうふうにやるつもりでいたしております。これが今御質問の、前の暫定予算のときの影響よりどうかということは、私は前のときよりも影響を軽くする確信を持つております。
  36. 津雲國利

    津雲委員 それは大蔵大臣の御希望にすぎない。これはでき得ないことなんだ。(「仮定のことを聞いているじやないか」と呼ぶ者あり)仮定のことじやない、それならば事実を申し上げるよりしかたがない。私はなるほど一萬田さんが御就任のときに新聞に発表して、今の日本状態でじつと見てはいられない、体当りで行くつもりだということは、多分そのことだと思うのでございますが、それよりもこの解散の時期、この選挙の時期を社会党の言う通りに、こんな時期にきめなければ、一萬田さんの御心配になるようなことは少しもなかつたことははつきりしておる。しかしそれは一萬田さんはきまつたあと大蔵大臣を御承認されたのであるから、跡始末をされるつもりで入つて来たのかもしれませんが、跡始末するよりも、こんなばかな時期に解散を選び、選挙を選ばなければ、何もさしつかえなかつたことなんだ。私どもは率直に申し上げますが、当時の自由党の中には不信任案を受けて解散を強行しようと言う者と、私どものように総辞職をしなければならぬという議論があつたことは御存じ通りです。私どもがなぜ総辞職を主張したかといえば、それはちようど解散をする時期が暮れだ、選挙の時期は正月早々だ、それは日本財界としては一萬田さん、おわかりと思うのでございますがちようど一月ならば、暮れは節季だ、一月もまた一月遅れの節季だ、そうしてまた旧節季にもなる。このデフレ政策をやつているまつ最中に、神経過敏なときにそういうことをやつていいか悪いか、政治空白をつくつていいか悪いかということになりますと、日本産業のためとか、あるいは中小企業のためとかいうことになりますと、どうしても政治空白をつくつてはいけない、刺激を与えてはいけないという結論になるので、総辞職論をわれわれは主張したわけです。ところが総辞職をしてみると、今度は大きな政治空白をつくるような解散をやる、そうして同時に総選挙をやる、何でもないことのようにお考えなつたらとんだ間違いでございまして、これが何でもないというならば、私はお尋ねをしなければならぬのですが、どうしてもこのままの状態で行けば、四、五、六、三月の暫定予算を組まざるを得ないと私は思う。これはどうしても組まざるを得ない。暫定予算を四、五、六、三月組んだといたしまして——あなたがおつしやつた通り、大体一兆が予算規模でございますから、一月にすると八百億くらいの予算になると思います。四、五、六、三月を暫定予算といたしますと、暫定予算は、本予算に比べて、大きく見る人は大体半分に見る。しかし私はかりに三分の二に見てみまして、そうすると、八百億に対して暫定予算が五百億と見ると、月に三百億は民間への支払いが停滞して来る。四月の末は三百億、五月の末は六百億、六月の末は九百億、九百億の民間支払いが支払われずにそのまま停滞することになつたその財界への影響、これに対して一萬田さんは責任をもつてこれに対処し得るとお考えになりますか。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結論だけを申しますれば、私は責任をもつて十分経済界に大きな不都合がないようにやつて行くつもりでございます。
  38. 津雲國利

    津雲委員 どういうことで責任をお持ちになりますか。あなたも御存じ通り金融は梗塞いたします。これだけのものは民間に放出されない。その結果金融難になることははつきりしていますが、あなたはこれに対して銀行から貸させますか。お答え願いたいと思います。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 重ねて申しますが、ただいま暫定予算の点だけをお取上げになりまして、これがいかに日本経済に悪い影響を与えるか、本予算のときに比べてそれは大きな悪い影響を与えるじやないか。それはもう申すまでもないのであります。しかしこれは今日から、私自身考えますれば、やはり日本背負つた一つ運命と観ずる以外にないんじやないでしようか。それでできるだけ経済界への害を少くするようにお互いに努力する、ここまで持つて来たのは、やはりみんなが負うべきものであると思います。
  40. 津雲國利

    津雲委員 じようだんじやない。三派共同声明の結果なのであります。民主党社会党でつくつた運命なんです。それ以外にあるものではない。これはそうだ。(発言する者あり)それでは私はもう一ぺんお尋ねいたしますが、重大な金融難に落ちたときに、あなたは銀行の元締めである日銀総裁をやつておりましたが、そういう場合が必ず予想されますが、あなたは市中銀行に命じてお貸しになりますか。金を貸せと、こう申しますか。そういう場合に、政府が損害まで、賠償を背負つてつて金融をはかりますか。これだけはぜひお伺いしておかなければならぬ。(「仮定の問題だ」と呼ぶ者あり)仮定じやない、現実に必ず出て来る。   〔発言する者あり〕
  41. 山口喜久一郎

    山口委員長 静粛に願います。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。私耳が悪いものですから、騒がしくなると聞えが悪いのですが、暫定予算で組むために非常に小さい規模になりまして、従つて経済界の方に出る金も少いから、その場合に銀行から貸せるか、こういうわけでございましようか。——私の考えでは、暫定予算を組んで、そのために経済に出る金が少い。その影響は、やはりやむを得ない。経済も受けなければならぬことだと思います。そうでありますから、暫定予算がはなはだ経済界に悪い影響を与えるというて心配するのであります。しかしながら財政がそういうふうな形であります場合において、経済的に銀行から資金が出し得るものは、私は出していいと思う。そうして日本経済を上手に運行さして行く。これは何も金融でもつて財政をやるというわけではありません。これはしよつちゆうあることで、財政が非常に引揚げの場合は、金融面からこれを緩和するということは、一般予算、全体の予算が成立しておるときでもあることなのであります。すべてこういうことは財政と金融というものを総合的に考えまして、日本経済をいかに上手に運行さして行くか、こういうことにあると御承知を願いたいと思うのであります。
  43. 津雲國利

    津雲委員 実際これは実に困つた答弁です。じようだんではありません。(「歯が立たぬじやないか」と呼ぶ者あり)、歯が立たぬと思つておるのがどうかしておる。暫定予算を組めば、政府の財政投融資がとまることをあなたは御存じですか。それを伺います。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日の暫定予算経済に及ぼす影響を強く言われておりますが、私の考えでは、財政の投融資、むろんこれは今日大きな比重を占めますが、漸次これを一般金融の方に持つて行くように今後も続けて行くつもりでおりますので、そういう面からも若干緩和ができて行く、こういうふうに思つております。
  45. 津雲國利

    津雲委員 暫定予算となれば、政府の財政投融資がとまることは、一萬田大蔵大臣はもちろん御存じだと思います。もちろん国民金融公庫、住宅公庫、農林漁業公庫、中小企業公庫、日本開発銀行日本輸出入銀行、これに対する政府の財政投融資は全然ストツプになる。そこでこういつたような金庫で行うような救済は一切できない。このごろ民主党がしきりに庶民住宅をうんとつくるんだという宣伝をしておりますが、少くとも、四、五、六、三月は手がつかない。これはつきつこがない、ストツプしてしまうからつきつこない。こんなものがほかにざらにあると思うのです。少くともこのために、金融にあえぐところの中小企業等を救うためにできておるところの金融公庫がひとつも使えなくなることだけは事実だ。それに対して大蔵大臣は、私が今伺つてみると、一般の市中銀行にまわしてやるのだ、こうおつしやる。一般の市中銀行は、現状において、中小企業からはもうとるべき担保もほとんどないと思います。見返品もほとんどないと思います。そうしておそらく注文書がなければ、金は一文も貸さぬと思います。暫定予算中は注文書があるわけはないと思います。それだけは私は断言していいと思います。ほとんど金融が杜絶する状態に陥ることは、あなたが日銀総裁時代の昭和二十八年度の暫定予算を組んだときの通りであると私は断言してさしつかえないと思います。それをあなたが大蔵大臣として責任を負えると言えば、これはたいへんなことですが、負うと言うのだからしかたがない。それならさらに重ねて申し上げますが、暫定予算中は、どうしても公共事業を中心とした政府の事業は、大体において継続事業以外は一切中止になる。治山治水関係等一切中止になる。従つて国庫補助金が組まれない。その結果、都道府県、市町村の財政は、この国庫補助金を組み入れて予算を組むわけでございますから、それが一切組めない、こういう状態になる。そのほかに政府の交付金も中止になる。起債も一応ストツプになる。その状態のもとで、今でさえ混乱しておる地方財政が、暫定予算の間、その予算編成難に陥つて、非常な苦境に陥ることもあなたは予定の中にお入れですか。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 暫定予算というだけを取上げて、暫定予算なつた結果、財界にいろいろな障害を与えるじやないかという御意見、それは私は認めます。それは私おつしやつた通りと言つております。しかし経済はそれだけで動いておるのではないのであります。従つて全体の見地から、その暫定予算によつて受ける財界の悪い影響をなるべく可能な限りにおいて是正しつつ経済を動かして行く、そういう見地からして私は確信をもつて大きな混乱を起さずやつて行ける。こういうふうに申し上げたわけであります。
  47. 津雲國利

    津雲委員 それは詳しくお話すればあなたはもつとおわかりになるかもしれませんが、第一民間への放出される政府資金は非常に減つてしまうこと、それから政府の投融資も中止されること、その他日本興業銀行や長期信用銀行に対するところの金融債もストツプする、そうして地方に対する国庫補助金、これもなくなる、交付金もなくなる、起債もなくなる、こういう状態のもとで今も一銭一厘の金に対する非常なデリケートな神経でいる中小企業、それらがこういう条件のもとに拘束されて、そうしてデフレ下であなたのおつしやる通りにコストを引下げる、そうして企業の合理化だといつてほんとうに切り詰めた経営をやつているものが、あなたのその言葉一つで救われるでしようか、救う機関が全部なくなつてしまう、市中銀行以外には三月の間は全部なくなる、その市中銀行は容易なことでは貸すものではない。手形の割引だつてなかなか割引くものではございません。そういうところからこういう切り詰めた経済界ですから、どこかに亀裂が入つたならば、それは必ず私はえらいことになると見ている。もう昭和二十八年の例ではつきりしておる。あのときはまだよかつたが、このデフレのむずかしい時代ですから、非常な重大な局面に逢着することを考えなければならぬので、それを平気な顔でいるところを見ると、私は生きた経済界を見る活眼がないのではないかと言わざるを得ない。中小企業ももちろん大産業も、すべての財界人はこの政府解散の時期をもつて一番悪い時期だと断じておるのだ、そして選挙を延ばしてくれというのがほとんど全部の声なんだ。(発言する者多し)それはやり切れるものではないと見ている、財界人はみなそうなんです。われわれはいい、そんなことは何ともない、しかしながら中小企業財界を非常な困つたところへさらしておいて、危険区域にさらしておきながら、私は社会党の唱えるその時期に解散を断行するということは危険なことだ。あなた自身が今お認めになつていることでもすでにおわかりと思うのでありますが、これは決していい時期ではない。解散が最もいい時期だと考えていればとんだことだと思う。(「くやしがるな」と呼ぶ者あり)くやしがるのではない、いい時期でないだけははつきりしている。しかしながらあなたがどうしてもこの時期に解散するんだ、そうして暫定予算になるのだ、暫定予算なつた場合に中小企業なり一般の産業なりすべてが困つて来た場合には、あなたは責任をもつてこれをおやりになる、こう言うが、あなたの責任は私はとてもそんな責任財界が救えるものではない、私はこう思います。(「水かけ論だ」と呼ぶ者あり)水かけ論でも何でもない、二十八年のときにあなたがお骨を折つたことをこの時期にもう一ぺん考えてみたら、あのときに比較して財界は非常にデリケートな時期ですから、私は簡単に責任を負えるなんという言葉は言えるものではないと思うのでありますが、どうですか。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の今まで答弁した暫定予算に関係して、私の気のつかぬことがありましたので、少し補足をいたしておきます。それは緊急集会に暫定予算をかけるか、特別国会にかけるかによつて予算に組む内容も違うようであります。それでこれも一つの将来のことでありますが、特別国会にかける場合はある程度の政策的な経費も計上ができるわけであります。なお最小限度の財政投資も計上ができる、公共事業についても継続事業は計上ができる、このほか資金部の資金はこの場合は十分考えられる。それであまり御心配をなさらずに、そうしないと、それでなくてもいかにも大きな影響財界にあるかのように財界の人は思つております。私ども考えることは、この困難なる時局において日本をどうするか、経済界をどう救うかということで、これはお互いの間の問題よりも、国全体の問題です、こういうふうな事態になつたので、これをいまさらいかんともしがたいのですから、みんなでひとつ力を合せて行く、こういうことにお願いをしたいと思います。
  49. 津雲國利

    津雲委員 私も実は驚き入つておるのでございますが、こういう事態になつてしまつたから、こういう事態に処すことばかり大蔵大臣はお考えのようでございます。あなたはしかたがない、三派共同声明をお出しになつ責任はあなたにはないのだから、これはしかたがありません。そこであなたにお問いしたいのですが、どうしてその時期を一番いい時期だ、天の声だという鳩山総理同感だとあなたは言われるのですか。少くともこの時期がいい時期でないだけはあなたははつきりしていると思う。こんな時期をどうしてそれが天の声だ、解散としても選挙としても最もいい時期だということに御共鳴をなさつたのでしようか。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私がいい時期だという答弁をいたしましたのは、もう少し大きな全体の見地から見てのことであります。
  51. 津雲國利

    津雲委員 あなたは経済閣僚なのです。経済閣僚経済界の安定をはかることが一番大きな任務でなければならぬ、少くともこの時期の解散暫定予算を三月くらい組むということになつて——ここに経済界出身の方が幾人かおられるが、これが国会の答弁では何とかかんとか時間が少いからごまかしがつくが、実際財界へおいでになつて、そうして中小企業の前で何も影響がないのだ、この時期が一番いい時期なのだ、こんなばかなことを言つて二月、三月たつたあと通れるものではありません。こんなことを強行して、それを平気な顔で貫けるというはずは、これは財界人なら私はないと思う。みんな実際困り切つている、先の見通しのつくものほど困つている、悪い時期だと言つているのです。これに対して、それが一番いい時期だ、天の声だと言つている鳩山総理言葉にそのまま共鳴だという、私はこの事実だけを速記にとどめておけば、すぐに省みて自分でお気のつく時期が来ると思う。じようだんではないと私は思います。  私は最後に鳩山首相にちよつとお尋ねしておきますが、私はどう考えてみても暫定予算を二月ないし三月組むようなはめに陥る、再開劈頭解散、三月上旬選挙、こういうとりきめは、日本財界特にあなたが振興しようと明言せられておる中小企業にとつては一番悪い時期であるというのが私の考えでございます。その問題について、時間がございませんから詳しい話はできませんが、私の考えの概略だけは、一萬田さんと私との質疑の間に申し上げたつもりでございます。あなたも経済閣僚も、すべてその国会再開劈頭解散、三月上旬選挙というのが一番いい時期だ、こう御断定になつておる。これは今日のところでは水かけ論でございます。しかしながら、暫定予算を組む段になつて、それが一月になり二月になり三月になりということになつて参りますと、その効果はてきめんに現われて来ると私は思う。これは隠し得ないことだと思う。そのときになつてお互いに話し合つてみたのでは、もうおそくなるということがあるんじやないかと私は思うのでございます。そしてこの解散の時期は、あなたは先ほど社会党の要求によるものではないと言いますが、いろいろな経緯をずつと調べてみれば、それは社会党の要求によつたことは、大体だれでも見当のつかない人はないと思う。社会党との約束によつたことも私は明瞭だと思う。約束でもない、要求でもないと言いますが、私は大体において約束であり要求であつたと思う。(「解散は天の声だ」と呼ぶ者あり)そんなことが天の声だといつているうちに、失業者が続出する、給料が払えなくなる、ストライキが起る、とうとう払えない、そうして路頭に迷う労働者までが出て来るような幕は、三月目、四月目ぐらいには必ず出ると思う。だから最悪の時期だと見ている。中小企業の倒れるものは当然続出します。暫定予算を三月組まれて、この状態のもとで手形の不渡りが出ないはずはない、続出するにきまつている。ないないと言つていれば今は通つているが、通らなくなつた場合に結末はだれがつけるのだ、こうなつて来ると私は思うのでございます。その場合に、せつかく鳩山さんが内閣をつくりながら、何箇月目には暫定予算を組んだというような不始末なことになつて財界から非常な強い批判を受け、国内から強い批判を受けるようなことになることは目に見えていると思う。経済界のことを顧慮せずに政治をやるものじやない。そういうときのことを考慮せられて——私は解散を恐れるわけではもちろんない。七回も八回も選挙をやつている人間だから、そんなことを恐れているわけじやない。国家国民のために解散の時期というのは、よほど御考慮にならないと——民主党ではすでに心配されておる。松村君のごときはすでに非常な重大な考慮を払わなければならぬと言つておられるのであるから、非常な考慮を払わないといかぬと私は思う。私をして率直に言わせれば、こんなことに責任を負える大蔵大臣というものに私は驚いておる。あなたは大蔵大臣だから責任を負わぬと言えぬだろう、私はこれだけの御注意を申し上げたわけでございます。民主党諸君なんかにこんことがわかる人は少いと思うが、経済界へ行つたら全部非常な心配である。中小企業からすべてに至るまでが、この時期の解散ではたしてこのデフレ政策遂行下の日本経済が持てるかどうかということに対する心配は非常なものです。松村君でも、それだから、この状態のもとで二、三箇月の暫定予算を組むことは非常な危険なことだといつておる。これは慎重に御考慮願いたい。これをそのままで強行されるということは危険だと私は思う。そして、総理は天の声だとおつしやつた解散の時期だけを考えればそれは天の声かもしれぬ。しかしながら、この国の産業経済界に対する影響考えたらば、これはおそらくあとになると天の声ではなくて悪魔の声になるような気がする。これを私はあなたに申し上げておく。幸いに、この三派共同声明約束じやない、同時に社会党の要求によるものでもないというならば、経済閣僚とほんとうにしんみりと御相談せられて、善処せらるべきものだと思う。ただここで私に対する答弁で、何とか責任を持つた、こういうことで片ずけたというだけではあとからは済まされぬ問題であると私は思います。幸いに、約束でない、要求によるものでもないというならば、日本産業中小企業、ひいては労働者に対してほんとうに愛を持つて考えてあげるならば、慎重な考慮がこの際必要だと思う。約束通りに断行するというようなことはもつてのほかであるという自分の心配を残し、結論を申し上げて私の質問をこれで打切ります。(拍手)
  52. 山口喜久一郎

  53. 成田知巳

    成田委員 本日はたくさん閣僚が御出席になつているのですが、その閣僚には、張り切つて御出席になつているので、まことにお気の毒でありますが、私は鳩山総理質問をいたしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。  世間が今度の鳩山内閣に期待しているものは、総理も御承知と思いますが、解散をして総選挙を断行する、これ以外にはないと思うのです。現に総理自身も十一日の記者団会見あるいは本日の津雲委員の御質問に対して、百二十一名の民主党で長期の内閣を組閣するということは僭越しごくだ、また民主党選挙によつてできた政党じやないのだから、国民がはたして現在の内閣を歓迎しているかどうかわからない、こういうことを率直に言われている。従つて鳩山内閣はいわゆる選挙管理内閣です。この選挙管理内閣の首班である鳩山さんに、言葉の厳格な意味における本来の意味内閣の長である総理大臣に対する質問をするということは、それ自体無意味だと思います。そこで私は、以下、総理大臣である嶋山一さんにお聞きするというよりは、総理たる鳩山一郎氏個人に対して、日本政治あるいは月の経済、外交、こういうものについてどういう見解を持つていらつしやるか、特に自由と民主主義に対してあなたはどういう見解を持つているかという基本的な考え方をお尋ねしたいと思います。  鳩山さんはみずから自由主義者、民主主義者をもつて任じておられるようでありますが、そのいわゆる自由主義というのはオールド・リベラリストだと思う。その範囲を一歩も出ない。また民主主義者といつても、それはブルジヨア・デモクラートの範囲を一歩も出てないと思うのです。ところがその鳩山さんのいわゆる自由主義あるいは民主主義も、過去の行動から見ますと、必ずしも徹底しておつたとは考えられない。ある意味では自由主義、民主主義の仮面をかぶつてつた、こう言われてもさしつかえない点が多々あると思うのです。  そこで私具体的に申し上げるのでありますが、その一つの例であります。昭和八年、あなたが文部大臣をなさつてつたときに、いわゆる京都帝大の滝川事件というものが起きた、京大事件が起きたのです。あの事件があつてから、日本の学問の自由、思想の自由に対する弾圧というものは非常に強化された。フアツシヨへの道をあの事件において開いたことになつているのです。自由主義者だとか民主主義者だと言つておるあなたが実は自由を扼殺した、こういう結果になつておるといつてもさしつかえないと思うのです。言うまでもなく、あの京大事件というのは単なるブルジヨア・デモクラシーを守るための闘いにしかすぎなかつた。そのブルジヨア・デモクラシーを守る闘いでさえも、あなたは文部大臣としてこれを弾圧した。当時私は大学の学生でありました。そして私はあなたを自由主義者と信じておつた。その信頼が裏切られたというさびしい気持と同時に、非常な忿懣を私はあなたに感じたのです。当時の学生はみんなそうであつたと思うのです。あなたが滝川教授を赤化教授として罷免なさつたその理由は、ここにあります刑法読本がけしからぬということで滝川教授を罷免なさつたと思うのです。読本は発禁になつたのですが、この刑法読本のどこが悪かつたか、どこが滝川教授は赤化教授だつたか。あの当時文部大臣としてあなたがおやりになつた処置を、はたして現在でも正しかつたとお考えになつているかどうか。これは、あなたが自由主義者であるか民主主義者であるかという判断の、非常に重大な資料になるわけですから、率直に当時の気持と現在の心境をひとつ言つていただきたいと思います。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 成田君の御質問に答えます。  今あなたがおつしやつた通りに、私は刑法読本はやはり共産主義の本だと思つております。この本を内務省では発売禁止をしておる。その発売禁止しておる共産主義を若い学生に教えることは慎むべきであり、そういうことはしない方がいいと思つた。それで滝川君にやめてもらいたいと総長の小西さんに相談をしたところ、それでは私が責任をもつてやめさせます、こういうことだつたのです。どの点が共産主義かということになりますね。つまりあなたも、共産主義と対照的のものであつて、まつたく自由主義と反対のものが共産主義だということは承認されるでしようね。その共産主義を教えるのだから、共産主義の人をやめさせるということは自由主義の尊重になるでしよう。そのどこが悪いかと言えば、たくさんの点はよくは覚えておりませんが、とにかく刑法の先生が、いくら刑罰で処罰しても、その処罰しても、その処罰によつて刑をなくなすわけには行くまい、刑罰を加えても何の役にも立たぬ、ということを刑法の先生が教えたら困るでしよう。やはり刑の量定と刑罰との関係はあるはずなんですから。それを学校の先生が、いくら刑罰をやつても減少せしむることはできないと言えば、これは先生の値打がないと思う。とにかくそういう論があるからその本があるのです。そういう本が出たのはやはり共産主義が根本になつているのです。つまり経済組織を共産主義のようなぐあいに変更しなければ刑罰はなくならないというのです。よくは覚えてないけれども、とにかく理想郷、同じ着物を着、同じ時間眠り、そして……。
  55. 成田知巳

    成田委員 少し簡単に的確に答えていただきたい。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうような共産主義の理想郷を刑罰は実行しているんだというようなことで刑罰を説明しては、若い生徒たちには悪い影響を与えるものと私は思つたのです。そういうことでありましたから、まず小西さんにも相談をし、小野塚さんは当時の東大の総長でありましたが、その小野塚さんに、京都大学でまた騒ぐだろうが、東京にも来た日にはたいへんなことになりますなと言つたら、小野塚さんは、東京に来ても私が責任を負いますから、ぜひおやりなさい。つまり小西さんも小野塚さんもみな同意してくれたのです。それで閣議に出しましたら、閣僚も全部賛成しまして、そして結局ああいう結果におちついたのであります。
  57. 成田知巳

    成田委員 そういたしますと、今鳩山さんの御説明によりますと、滝川教授の刑法読本というのは共産主義の思想宣伝のための本だ、滝川さんは共産主義者である、こうお考えになつたのですか。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そう思いました。
  59. 成田知巳

    成田委員 それでは進歩的な政治家と言われている鳩山さんのものの考え方を疑わざる得ないのです。あなたが休職処分にした共産主義の学者が、御承知のように終戦後、いわゆる一九四五年八月十四日、日本がポツダム宣言を受諾して連合国に降伏し、連合国の日本管理が始まつたそのとき、自由主義的または反軍国主義的思想とか行動のために休職、免職になつた教師は優先的に復職せらるべし、こういうことによつて滝川教授は京都帝大へ復職している。すなわちあなたのいわゆる自由主義的な学者であり、反軍国主義的な学者である、そのために復職を命ぜられたのです。まだあなたは滝川さんを共産主義者であつたとお考えになつていますか。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 滝川君がこのごろ共産主義に反対で、むしろ右翼の評判があるということも聞いております。
  61. 成田知巳

    成田委員 当時のことです。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 当時のことは知らない。けれども司令部がした行為によつてあなたが共産主義者と自由主義者とを区別するのは間違いだろうと思う。司令部は共産主義者をみんな自由主義者だと言つていたんです。共産主義者と自由主義者を区別しなかつたのが司令部の態度であつたのですから、その司令部の態度によつて滝川君が自由主義者であつたということは言えないのです。
  63. 成田知巳

    成田委員 あなたは当時の状況を詳しく御存じないと言われましたが、滝川さんが復職されまして刑法読本の再版を出された。そのあとがきに、いかに滝川さんが自分は自由主義者として行動したかということが書いてあります。たとえば問題になつたところは姦通罪の問題です。刑法読本で問題になつたところとして、姦通罪は女だけ処罰するのはおかしい、やるのなら両方処罰すべきである、あるいは両方とも処罰すべきじやない、こういう考え方が非常に階級的であり、マルクス主義的であるという判断であなたは休職処分にされた。まあ議論になりますからあえて申しませんが、そういう点から申しまして、滝川さんは共産主義者であつた、刑法読本は共産主義の本であつた、こういうような認識であなたが自由主義者らしくふるまうということは私非常に遺憾だと思う。  次に問題を転じまして、あなたが総裁をしていらつしやる日本民主党の性格についてひとつ承りたいと思います。民主党はあなた自身認めのように、今度の成立にあたつて選挙の洗礼を受けてできた政党ではない。言葉をかえれば、選挙民の意思を無視して、選挙後の離合集散、特に政権争奪を目的とした離合集散によつてできた政党なんだ。従つて民主党という名の政党は、政党の名に値しない政党だと申しても間違いないと思います。すなわち民主党の構成分子を見ますと、空中分解寸前にあつた改進党と、それから自由党の脱落者の寄せ集めだ。それをただ民主党というオブラートにくるんで国民に飲ませようとしている。それだけのことだ。しこうして民主党の構成分子である旧改進党は、過去六年有半政権にはつかなかつた、こういう意味では形式的には野党であつたでありましようが、吉田内閣の六年半の秕政、悪政の、たとえば財政的、法律的、経済的な裏づけであるところの予算案には全部賛成しておる。重要法案にも全部賛成しておる。自由党から脱党した人がその責任あることはもちろん言うまでもない。現在日本政治が混迷して腐敗している、あるいは経済界が非常に危機に陥つていることは、自由党と同時に民主党諸君にも大いなる責任がある。従つて民主党諸君が自由党を攻撃する資格というものは全然ない。まさに共同正犯といつても私は間違いないと思う。あなたはそういう点をはたしてまじめに反省されたことがあるかどうか。過般の本会議質問のときに、野党側から選挙管理内閣であるにもかかわらず、かつてな政策を羅列して選挙運動をやつておる、これはまさに内閣による悪質なる選挙違反だと言つた。ところがその質問に対してあなたはどう言われたか。内閣である以上国民に政策を訴えるのは当然だ、次には第一党となるのだと言われたが、これは鳩山内閣がやるべきではなくして、与党である民主党がやるべきだ。民主党がそういう政策を出すならけつこうだ。ところがあと一箇月か二箇月で済んでしまうところの鳩山内閣が、こういう政策をやるのだ、ああいう政策をやるのだというような長期の政策を発表するということは間違いである。従つてこの二点の問題、民主党は現在の政治の危機あるいは混迷、経済の危機、これについては自由党と共同責任があるのだということを反省していらつしやるかどうか。またああいう悪質な事前の選挙運動に類するような政策発表を今後おやめになる意思があるがどうか、この二点をひとつ承りたい。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主党内閣が政策を発表することが悪質の選挙法違反だ。それはずいぶんひどい攻撃だと思います。政府がもしも政策を国民に示さなかつたならば、国民は暗やみの中に落ちてしまうのです。一日も政治は休むわけには参りませんから、政府考えていることを国民に示すことの責任政府にあると思つております。世の中を明るくしたいとか、希望を世の中に与えたいというのならば、何をするかということを国民に早く示して行つて国民に納得と支持とを求めるのがわが党の方針であります。自分が何を考えておる、何をするんだということをできるだけすみやかに国民に示すこそ、民主政治のやり方であると思つており、この方向でやつておる次第であります。その点は御了解願いたいと思います。選挙は、先刻申しましたように大体の国民選挙のすみやかなることを欲しておると私は思つております。国民の輿論に従つて選挙を早くすべきだと思つた次第であります。もう一つの質問は何でしたか。
  65. 成田知巳

    成田委員 もう一つの問題——その前に今の御答弁ですが、政府として国民に向うところを示すのは当然でしよう。しかしそれはできることを示さなければ国民が信頼しないですよ。選挙管理内閣でありながら長期にわたる計画を出すということ、できないことを国民に示したら国民は信用しませんよ。その問題についてはあとから質問します。選挙管理内閣ですぐできる問題、この問題について私もお教えしますから、これだけはぜひひとつやつていただきたい。  もう一つの私の質問をお忘れになつたそうですが、民主党の実体は、空中分解寸前にあつた改進党、自由党の脱落者、しかもこの改進党、自由党の脱落者は過去六年半吉田内閣の重要政策には全部賛成して来たのであります。従つて現在の政治の混迷また経済界の危機は、民主党諸君は共同責任がある。それをいかにも責任がないように自由党を改撃されておることは間違いだ、これについて反省なさつたことがあるかどうか、これを承りたい。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 吉田内閣を早くつぶしてもらいたいというのが輿論だと考える。それによつてわれわれは集まりまして吉田内閣を倒したのであります。倒したあとにわが党の内閣ができたのであります。
  67. 成田知巳

    成田委員 次にお尋ねしますが、これはすぐできる問題だと思うのです。鳩山内閣とか民主党は、御承知のように汚職のない清潔な政治をやるんだ、こう言つておられる。これはまことにけつこうなことで私も同感であります。しかし将来に向つて汚職のない清潔な政治をやるというならば、現在ある汚職、現在汚れている政治にまず手をつけて一掃することが先決問題だと思う。そこであの造船疑獄が起きましたときに、吉田前首相は指揮権発動をやつて国民はこれに対して憤激した。あなたは口を開けば汚職だけは徹底的に糾明しなければいかぬ、指揮権の発動攻撃をしていらつしやる。そこで造船疑獄の問題は別といたしまして、まだ国民が疑惑を持つておる事件がたくさんある。世の中ではこう言つておりますよ。造船疑獄は自由党、保全経済会は民主党、こう言つていますよ。あなた自身はその点はすでに御承知だと思うのです。現に衆議院行政監察特別委員会でこの保全経済会の問題が取上げられておるのでありまして、民主党の最高幹部、私は名前は申しません。最高幹部、失礼な話でありますが鳩山さん自身さえ名前がちらほら出ておるのです。これはあなたは十分御承知と思う。私はあなたとかあるいは民主党の幹部諸君の潔白を信じております。だからこそ私申し上げるのでありますが、汚職なき清潔な政治とか、ガラス張りの政治をあなたが主張されるならば、行政監察特別委員会の出席要求を待たないで、みずから行政監察特別委員会に出てその間の事情を明らかにする、これが当然だと思う。ところが行政監察特別委員会の民主党諸君は、あなたたちが出ることを反対しておる。これは明るい政治、ガラス張り政治というあなたの気持を、親の心を子知らずで曇らしているやり方だと思う。あなたがここで行政監察特別委員会に積極的に出ないということは、瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さずということわざがありますが、あなたたちが出席を回避する、また民主党諸君が出席を拒否しようとする、こういう態度がかえつて国民の疑惑を深めるゆえんだと思う。あなたが明るい汚職のない政治、ガラス張りの政治を言うならば、回避しないで積極的に行政監察特別委員会にあなた並びに問題になつている民主党の幹部諸君は出る御意思があるかどうか、これを承りたい。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は司法部は公正にして明朗にやつてくれると思いますから、司法部に命じましてそれらの点を明らかにしたいと思います。
  69. 成田知巳

    成田委員 問題は、あなたは司法部に依頼すると言われるのですが、最近世の中では犯罪なき汚職という言葉がはやつておる。犯罪なき汚職——戦力なき軍隊ではありませんが、犯罪なき汚職という言葉がはやつておる。これは犯罪になるとかならないとかいう問題ではない。政治道徳の問題だ。あなたの言われる清潔な政治、明るい政治をやるなら、この際そういう疑惑を一掃するために司法権なんかにたよらないで、国会で問題になつているのですから、民主政治家であるあなたは、堂堂と行政監察特別委員会へ出てこの間の事情を明らかにする、これが当然だ。司法部にまかすなんというのは、旧吉田さんの考え方と全然かわらない。もう一度はつきり申していただきたい。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もう一ぺん言つてください。どういうことですか。
  71. 成田知巳

    成田委員 どうも私の説明がおわかりにならないようでございますが、私は遠慮しまして非常に抽象的に申し上げた。ところがおわかりにならないようではやむを得ない、ある程度具体的に申し上げなければならぬと思いますが、保全経済会問題で、特に去年の末からことしの初めにかけて、保全経済会の経営状態が一番悪いときに巨額の金が現在民主党の幹部諸君に伊藤斗福から渡つているという評判がある。これは平野力三氏が国会で証言しているのです。これは速記録もありますよ。簡単に申し上げますと、十七日の毎日新聞には、行政監察特別委員会の経緯を記載しておりますが、こう書いてある。「衆議院行政監察特別委員会では十六日正午過ぎから理事会を開いて保全経済会の政党献金問題に関する証人喚問を協議した。前日の理事会で元同会理事長伊藤斗福、池田勇人(自)駒井重次(民)の三氏を喚問する方針だつた自由党は同日さらに「去る二月一日の平野力三氏の証言で同会の政党献金に関係があるとされた鳩山一郎、重光葵、大麻唯男、三木武吉の四氏はいずれも政府与党の重要な地位にあるが、国民の疑惑を解くために証人として喚問すべきだ」と主張、これに対して民主党側は「平野証言後の証人喚問問題で自由党は池田勇人氏を呼ぶのにあれほど反対しながら、鳩山内閣ができると急に騒ぎ出したのはこの問題を政争の具に供するものだ」と反対しておさまりがつかず——」、自由党も自由党、民主党民主党なんですね。(笑声)そこで、すでにあなたが保全経済会問題に関連があるということは、国会の行政監察特別委員会で問題になつている。だから民主党諸君が親の心子知らずなんで、鳩山さんは潔白だと思う。明るいガラス張りの政治をあなたは主張されているのだから、民主党の行政監察委員諸君は、あなたの出席を拒否するような態度に出ないで、やはり親の心がかなうように、出席できるようにしていただきたい。またあなた自身積極的に出て、この間の事情を明らかにするのがほんとうじやないか。また関係のある民主党の幹部諸君もあなたをお勧めになつて、行政監察特別委員会に出て、この疑惑を一掃しろという態度に出るのがほんとうじやないかと申し上げているのです。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのおつしやる通りだと思います。疑いのあるものはただして行つたらいいと思います。
  73. 成田知巳

    成田委員 そうしますと、積極的にお出になりますね。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 行政監察委員会に呼はれていることを、私は知りませんでした。
  75. 成田知巳

    成田委員 そこで私が申し上げるのは、行政監察委員会で正式に召喚要求をやらなくとも、明るい政治を主張されるあなたは、みずからお出になるのがほんとうじやないか、こういうことを申し上げているのです。だから積極的にお出になると了承してよろしうございますね。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうような、伊藤君とどうしたということは全然関知しません。
  77. 成田知巳

    成田委員 それはあなたがここで言われる必要がない。私もあなたの身の潔白を信用している。ただ問題になつている以上は、行政監察委員会に出て積極的に疑惑を解くべきだと思うのですが、いかがですか。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 なるべくそういう会合には出席することにいたします。
  79. 成田知巳

    成田委員 さすがは鳩山首相であります。まつたく見上げた態度だと思います。  次に、先ほどちよつと申し上げたのですが、選挙管理内閣でありながら、できもしない長期計画なんかを立てて、そうして発表して、国民選挙運動をやろうとしても、国民はそうばかじやない。できないことはできないとはつきりわかつている。そこで、それほど選挙運動をおやりになりたいなら、私はいい方法を教えて上げたいと思う。選挙管理内閣でもすぐできる、やろうと思えばあすからでもできる問題がある。その一、二を申し上げてみたいと思うのですが、その一つは、首相は十九日名古屋においでになつた。あのときの演説で次のように述べていらつしやる。「今の世界の状態には第三次世界大戦の危機がある。原水爆が完成した今日、戦争が起れば国民の過半は死滅する。戦争の危機を避けることに国民は重大な関心を示さなければならぬ。」こう述べられて、平和に対する国民の心構えというものを非常に強調していらつしやる。これもまつた同感しごくです。そこで私首相にお尋ねしたいのでありますが、右の演説で首相は、原水爆の破壊力の恐ろしさを力説していらつしやるるのですが、それでは原水爆の実験とか使用禁止、これを世界各国に訴えて、特にあのビキニの水爆実験で死の灰の恐怖の前に日本人は立たされている。この日本人として、アメリカに対して水爆実験の禁止を即時要求する。それは選挙管理内閣でも十分できることです。これをまず一つおやり願いたいと思う。   〔発言する者あり〕
  80. 山口喜久一郎

    山口委員長 傍聴席で発言してはいけない。
  81. 成田知巳

    成田委員 御承知のように、ビキニの水爆実験によりまして、あの福龍丸の事件が……。   〔発言する者あり〕
  82. 山口喜久一郎

    山口委員長 退場を命じます。
  83. 成田知巳

    成田委員 委員長、退場を命じてください。
  84. 山口喜久一郎

    山口委員長 退場を命じました。
  85. 成田知巳

    成田委員 ああいう人がフアツシヨですよ。鳩山さんがああいう人をつくつているのです。あのビキニの水爆実験によつて福龍丸事件が起きました。御承知のように、国会では水爆実験の禁止の決議を満場一致でやつた。ところが当時の吉田内閣の官僚出身である宮廷外交官と申しますか、岡崎前外務大臣は、国会の満場一致の決議があつたにもかかわらず、今後ともアメリカの水爆実験に協力する、こういう驚くべき発言をやつている。国民は憤激した。あなたは官僚出身じやない。大衆政治家とみずから任じていらつしやる。国会の決議というものは国民の意思の表明なんです。水爆実験の禁止の署名がすでに二千万以上できていることは、御承知の通りと思う。そこで選挙管理内閣でもこのことだけはすぐできるのですから、ぜひ鳩山さんはこの国会の意思あるいは国民の意思を代表されまして、アメリカに対して水爆実験を即時廃止してもらいたい、こういう要請をなさるのが当然だと思いますが、その決意があるかどうか、ここで承りたい。   〔発言する者あり〕
  86. 山口喜久一郎

    山口委員長 御静粛に願います。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 水爆だの原子爆弾がいらないような世の中になればいいということは、非常に熱望しておりますが、何がゆえに米ソ戦争、第三次世界大戦がないか、これは一言にして言えば、アメリカの戦闘力がソビエトよりも優越しておるために、第三次世界大戦がないものであろうかと思うのです。それですから、アメリカだけがやめてソ連だけがやつておるというような世の中ならば、アメリカに原子爆弾や水爆をやめてくれと言いましても無効だろうと思うのです。そういうもののいらない世の中に早くしたいということにわれわれは努力すべきであつて、ソ連もアメリカもともに原子爆弾や水素爆弾を用いないというような世の中にしたいことはしたいのですけれども、一方だけがやらないというのでは戦争はむしろ始まるわけですから、そこはそういうような技術的な行動、行為は外務大臣にまかして、適当な時期にそういうようなことを発言してもらうというような心持ちで、やつてもらいたいとは思つております。
  88. 成田知巳

    成田委員 私は何もアメリカの水爆実験だけを禁止するように言つているのではない。特にアメリカの水爆実験によつて日本人が非常に被害を受けている。あの第五福龍丸事件を見てもわかる。そこで、必要あればソ連にだつて要求していいと思う。鳩山さんは水爆とか原爆のいらないような世の中にしたいという、そこでアメリカに対しても、ソ連でもいいです、原子爆弾、水素爆弾を持つている国に対して、こういうものは人類の破滅になるのだからやらないようにしてもらいたい、こういう声明、要求を鳩山総理大臣としておやりになる意思があるかどうか、これを承りたい。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうようなことは外務大臣に適当な時期にやつてもらいたいと思います。
  90. 成田知巳

    成田委員 外務大臣にやらすことはいいですよ。しかし私は最初に申し上げましたように、総理大臣である鳩山個人の政治、外交、世界観、人生観というものを聞いているのです。だからあなたは総理大臣として鳩山一郎氏個人として、こういう水素爆弾、原子爆弾は人類の破滅をもたらすものだから、世界各国の持つているところはぜひとも実験、使用禁止をやつてもらいたい、こういう声明あるいは要求を外務大臣にやらす意思があるかどうか、これを承りたい。
  91. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世界の情勢が、そういうようなことがきき目があるような場合でなければまつたく無効になりますから、そういうようなきき目があるときに、米ソ両国に対してそういうような発言はしたいと思います。
  92. 成田知巳

    成田委員 こういう要求をすること自体は正しいということなんですね。ただその時期等をタイムリーにやりたいという話ですね。そうしますと、こういうものは即刻おやりになることが一番効果的だと思うのです。それからもう一つ申し上げたいのは、アメリカのことを特に言つたというので民主党諸君は喧々囂々としているのですが、実際アメリカの水爆実験で日本人は被害を受けているのです。そこでアメリカに対してぜひ要求してもらいたい。一歩譲つて、原爆あるいは水爆の使用、実験禁止まで行かなくても、たとえば太平洋かなんかで、日本人にすぐ被害の来るような場所では絶対に実験をやつてもらいたくない、こういう正式の声明をしてもらいたい。これをひとつお願いしたい。
  93. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは必要だと思います。日本に直接被害が来ないようなところでやつてもらいたいということを注文するわけですね。それはいいと思います。
  94. 成田知巳

    成田委員 今必要とお認めになりましたが、それをおやりになりますね。政府声明としてアメリカに要求されますね。はつきりひとつ答えていただきたい。
  95. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本に直接被害のあるような場合にそういうような実験を禁止してもらいたいということは、当然日本が要求すべき事項だと思います。
  96. 成田知巳

    成田委員 被害がある場合といつて、すでにビキニの水爆で被害があつているのですよ。だから即刻あすにでも、太平洋とかああいう日本に被害をもたらすような地域での水爆実験は禁止してもらいたい、やらないでくれ、こういう要求をやつてもらいたい、外務大臣にやらせなさい、こう言うのです。ひとつ明確に御答弁願いたい。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 明確に申し上げます。それはやるべきことであると思います。
  98. 成田知巳

    成田委員 やるべきことなら、当然やらなければいけないのです。当然おやりになるのだから、あすにでもおやりになる意思があるかどうかというのです。
  99. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうような技術は外務大臣に……(「技術じやない」と呼ぶ者あり)外務大臣が適当な時期にやつてくれるものと確信します。
  100. 成田知巳

    成田委員 外務大臣が適当な時期にやつてくれると確信されているということですが、ぜひとも総理大臣として、これは選挙管理内閣でもできるのですから、外務大臣に、即刻そういう要求をすべきである、こういう話をしていただきたい。特に私は念を押しておきます。  次に、これも選挙管理内閣ですぐできることなんです。これをおやりになると非常に選挙対策になるからお勧めいたします。首相は名古屋の演説会でチヤーチルの言葉を引用されまして、世界の平和を確保するためには、ソ連とも自由に交通、貿易して、平和による繁栄をはかるという態勢をつくることが必要である、ソ連とも共存共栄をはからねばならぬと、こういう非常に注目すべきいい発言をしておられますが、私もこれまたまつた同感なんです。そこで問題はいかにしてソ連または中国とのあなたの言われる交通及び貿易を盛んにするかという具体的な方法なんです。ただしなければいかぬというのでなしに、あなたがやらなければいかぬというソ連あるいは中国との交通貿易をいかにして盛んにするか、この問題です。そこで、まず第一に私は首相に申し上げたいのは、吉田内閣のもとで現在までソ連、中国との交通は、あの旅券法の非常に悪意ある間違つた解釈で禁止的制限を受けているのです。ソ連、中国との渡航の自由、航行の自由、この禁止的制限をこの際一挙に撤廃して、一般人も自由にソ連、中国に行ける、これが交通を盛んにするゆえんなんです。あなたがやらなければいかぬという交通なんです。この方法を当然おとりになるべきだと思うが、鳩山総理としてはどうお考えになるか、これは選挙管理内閣でもできるし、また非常に選挙運動になる。
  101. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は具体的方法についてはつまびらかにいたしませんから、外務大臣あるいは通産大臣から答弁をしてもらいます。
  102. 成田知巳

    成田委員 これは常識の問題なんでして、手続の問題を具体的につまびらかにしないから、外務大臣あるいは通産大臣に答弁させるというような問題でなく、常識の問題です。なぜソ連、中国との交通を盛んにしなければいかんと、あなたは言つていながら、現在ソ連中国との交通はできないか、これはやはり渡航の制限があるからだ。今までの吉田内閣のやり方が旅券法の非常に悪意ある解釈をやつている。旅券法の正式解釈でどんどん一般人も行けるようにすれば、あなたの希望していらつしやるソ連、中国との交通の自由というものは盛んになつて来る。そこで交通を盛んにするためには一般人の渡航を許す。これだけはあなたはお認めになりますか。そうしなければ交通は盛んにならないと思います。一般人の渡航も許す、その大方針だけはお認めになるべきだと思いますが……。
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことも、外務大臣か通産大臣に聞かれた方が、あなたも収穫があると思います。
  104. 成田知巳

    成田委員 外務大臣に私はお尋ねしますよ。しかしあなたの言われる交通を盛んにするためには、一般人の渡航を認めなければだめなんです。今までのような全面的な禁止的な取扱いじやだめなんですから、その方針だけはあなたは確認されますか。
  105. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 方針はけつこうです、私が言つたのですから……。
  106. 成田知巳

    成田委員 今その方針だけは確認された。じやどうするかという問題ですが、外務大臣に今私が総理にお尋ねしたことをひとつ御答弁願いたいと思います。
  107. 重光葵

    ○重光国務大臣 中共との間の交通が主たる質問のようでございましたが……。
  108. 成田知巳

    成田委員 ソ連、中国です。
  109. 重光葵

    ○重光国務大臣 いやよろしい。これは私はまず、実際的にこういう問題は解決して進めて行かなければいかぬと考えております。そこで実際的にソ連、中共との交通を、特に通商関係の交通を開いて、便利にして、そうして行くうちに漸次了解の度が進んで来る、こう思つております。私はそれをやりたいと考えております。それは旅券の問題も今現にあるでありましよう。しかしながらこの旅券の問題についてできるだけやると言つても、これは御承知の通り、国内において旅券を利用していろいろ宣伝をやられるとか何とかいうことも防がなければならぬ。それだからそういうような気持はできるだけ交通を開いて行こうという気持においてこれらの問題を具体的に処理して行きたい、こう考えております。
  110. 成田知巳

    成田委員 外務大臣に聞けば非常に具体的に御答弁があるかと思つたのですが、やはり抽象的な答弁なんです。私は念を押しますが、少くともそういう御方針なら、今まで吉田内閣がやつて来たようなあの全面的な禁止的取扱い、ああいうやり方はおやりにならない、できれば一般人の渡航も認めたい、こういう御方針だと了承していいと思いますが、いかがでしよう。
  111. 重光葵

    ○重光国務大臣 今お答えいたしました通りであります。通商問題などに必要な交通をできるだけ開きたい、こういうことでございます。
  112. 成田知巳

    成田委員 通商問題に限つているのですか。文化の交流とか、そういうものはございませんか。
  113. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう問題も私は決して除外はいたしません。しかし国家として国家の安寧秩序を守るという大きなかせは十分保つて行かなければならぬ、こう考えております。
  114. 成田知巳

    成田委員 何かソ連、中国と交通の自由を認めたら、日本の安寧秩序は破壊される、こういうような被害妄想にかかつておると思います。日本の安寧秩序が保たれるかどうかということは、日本の国力、特に国民生活が安定するかどうかという問題なんです。国民生活さえ安定しておれば、いくら共産主義の宣伝があつたつて国民がついて行かない。その前提をまずお考え願いたいと思います。  もう一つ、交通及び貿易と言われたのですが、貿易の問題を今聞こうと思つたのです。これはまず鳩山総理に基本的な考え方をお尋ねして、あともし必要があれば通産大臣にもお尋ねしてみたいと思います。  御承知のようにソ連、中国との貿易、これはバトル法制限以上のひどい制限を受けて、戦略物資でないところの物資でさえ、ほとんど輸出は認められていないのです。そこで通商を盛んにされるというならば、当然戦略物資以外の非戦略物資については、輸出の許可を与えるべきだと思う。私が特に申し上げたいのは、あの英国のバトラー蔵相でさえ、英国が生きるためにはバトル法の禁止に違反してもかまわない、戦略物資も中国に送らなければならぬ、こういうことを言つておるのです。中国貿易の重大性は日本にあるわけなんですから、日本としては当然少なくとも英国程度の中国あるいはソ連との貿易はやるべきである、これがあなたのいわゆる交通及び貿易を盛んにするゆえんだと思うのですが、その根本方針を承りたい。
  115. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はただ抽象的に、できるだけ範囲を広くして、交通、貿易をやりたいと言うだけでありまして、どうかこまかい、具体的のことは、通産大臣からお聞き取り願いたいと思います。
  116. 成田知巳

    成田委員 こまかいことと言いますが、これは非常に大事な問題なんです。通産大臣に御方針を承りたいと思います。
  117. 石橋湛山

    石橋国務大臣 原則論としてはお説の通り。ですから今総理大臣が言われたようにできるだけ拡大をしたい。ことに日本は欧州並という以上に日本の立場から中共ともソ連とも通商をしたいのです。そういう方向で努力をするつもりであります。但しこれはなかなかデリケートな問題ですから、きようあしたすぐにどうこうというふうにはなかなか参りません。どうぞ御了承願います。
  118. 成田知巳

    成田委員 デリケート、デリケートと言われますが、それでは基本方針としては、先ほど私がお尋ねしましたように、少なくとも英国程度の取扱い、これはぜひおやりにならなければならぬと思いますが、それだけの決意があるかどうかお伺いしたい。
  119. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私がただいま聞いておりますところでは、禁止品目は現在においては英国並になつておるようであります。向うへ出しておつたものを最近向うの方が禁止したというものもあります。現在においては大した差はないだろうと信じております。
  120. 成田知巳

    成田委員 そうすると御答弁結論としては、世界各国に劣らないだけの中共貿易、ソ連貿易はやる、こういう御方針だと解釈してよろしゆうございますか。
  121. 石橋湛山

    石橋国務大臣 申すまでもございません。
  122. 成田知巳

    成田委員 最後に、これは鳩山首相にお伺いいたしますが、憲法改正と再軍備問題について、鳩山さんのお考えを明らかにしていただきたいと思います。  日本民主党は、先ほど申し上げましたように、旧改進党、旧日本自由党、それから自由党の脱落者の寄せ集めなのですが、一つだけ共通点がある。というのは、これらの諸君はみな憲法改正、再軍備の積極論者である。ここだけは共通しておる。あとは寄せ集めなんです。鳩山総裁は在野時代から、憲法改正、再軍備の主唱者であつたことも明らかな事実です。世間では、鳩山さんの顔には憲法改正、再軍備と書いてある、こう言っております。それから改進党が憲法改正、再軍備の党であつたことは言うまでもありません。またあなたの党の幹事長である岸さんが、自由党の政務調査会長として、憲法改革の恐るべきフアツシヨ案をつくつたことも周知の事実であります。そこで憲法改正、再軍備に関するあなたの率直な御意見を承りたいのであります。特に正直で率直でいらつしやる鳩山さんにまずお聞きしたい。現在の自衛隊は、警察予備隊から保安隊になり、自衛隊になりました。人員も装備も格段の飛躍をしております。目的もかわつて来た。この自衛隊は軍隊であるとお考えになるか、あるいは軍隊でないとお考えになるか、現に林幕僚会議議長はアメリカで、自衛隊は国際的に見れば軍隊であるということをはつきりつておるのです。率直な鳩山さんは、吉田さんのような詭弁はお使いにならないと思いますが、自衛隊が軍隊であるかどうか、その点のはつきりした御答弁を承りたい。
  123. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊と軍隊はどこが違うかと言うことをちよつと知らないのです。
  124. 成田知巳

    成田委員 自衛隊と軍隊がどこが違うか、よく知らないということは、逆から言えば自衛隊と軍隊は同じだ、こう了解してよろしゆうございますか。
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊を軍隊と言えば誤りなのか、同一と言うのがいいのか、違つたと言うのがいいのか、そこは知らないのです。(笑声)
  126. 成田知巳

    成田委員 これがたとい短期選挙管理内閣であり、短期選挙管理内閣総理大臣であるといつても、自衛隊が軍隊であるかどうかわからない、これでは答弁にならない。あまりに不見識じやないですか。実に不見識ですよ。吉田さん以上にひどいですよ。自衛隊が軍隊であるかどうか、これは常識でわかると思います。国民の中には軍隊と言つておる人も大分ある。林幕僚会議議長も国際的には軍隊だと言つておる。総理大臣であるあなたが自衛隊が軍隊かどうかわからない。これでは国民は満足しませんよ。はつきり答弁願いたい。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊も自衛権のために戦争することは認められておるわけですね。自衛力を行使する点において交戦することは認められておるのですね。
  128. 成田知巳

    成田委員 それは鳩山さんの解釈なんでしよう。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 解釈なんだ。私はそうだと思う。自衛隊も自衛のためならば戦争は許される。戦争をするための自衛隊は軍隊にあらずと言うこともむずかしいようなんですね。だから軍隊とも言えるし、軍隊とも言えないというようなものが自衛隊なんでしようね。(笑声、拍手)
  130. 成田知巳

    成田委員 非常に鳩山さんとしては苦しいところだと思うのですが、鳩山さんを国民が信頼しているのは、あなたが率直な点を信頼しているのです。あとはあまりいいところはないのです。率直な点を信用している。それを今のような答弁をされましたら国民が非常に悲観したしますよ。そこで自衛隊は御承知のように外敵の侵略に対して出動することは、自衛隊法できまつた。それからあの装備を見ましても、これは軍隊と解釈するのは当然なんです。軍隊でなくて何ですか。率直に自衛隊は軍隊とここでお認めになるか。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法が誤解を招きやすいような文字を使つてでき上つているものですから、戦闘力なき軍隊というような答弁も出て来るし、私の言うような答弁も出て来るのです。元は憲法が明白になつていないからです。そこで私は憲法の改正は必要だと今日でも思つております。
  132. 成田知巳

    成田委員 憲法がああいう規定になつているから、自衛隊が軍隊であるとかないとかいう問題が起きるのではないのです。自衛隊の実質なんですよ。実質自衛隊が軍隊の性質を持つておるかどうかという問題です。憲法とは無関係なんです。憲法が非常に不明確の規定だから、自衛隊が軍隊かどうかわからない——軍隊というのは、世界各国一つの通念があると思う。だから林幕僚会議議長も国際的には軍隊だと言つている。憲法とは無関係なんです。軍隊をつくることがいいか悪いかということは憲法問題だ。しかし自衛隊が軍隊であるかどうかという事実問題は、憲法とは関係ない。その事実問題を私は答弁を要求しているのです。率直に御答弁願いたい。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しましたように、自衛のためならば戦い得るのですね。日本の自衛隊は自衛の目的のためならば戦うことが許されているわけなんですよ。そうしますと、戦うことを許されている自衛隊は軍隊であると言えるはずなんです。戦いは禁止されていないのですから、軍隊だと思う。けれども軍隊を持つてはいけないということを書いてあるから、それでまた制約を受けている。
  134. 成田知巳

    成田委員 そこが問題なんですよ。あなたは自衛隊は軍隊だということをお認めなつた。憲法が持つてはいけないというから言えないというだけなんでしよう。あなたは軍隊とお認めなつた。だから憲法違反を今やつているということです。そこで私はお尋ねしたいのですが、憲法がいい悪いは別問題ですよ。憲法が禁止しているから、軍隊であるけれども軍隊と言えないということはないのです。軍隊ということはあなたはお認めになつたのですから、憲法違反ということが出て来たわけです。そこでおやりになるとすれば、憲法を改正するか、自衛隊をなくするか、この二つのうちの一つなんです。今率直に自衛隊は軍隊だとお認めになつたのだから、憲法を改正してこの憲法違反の事実をなくするか、あるいはまた自衛隊をなくして憲法違反の事実をなくするか、この二つのうちの一つだということです。
  135. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 成田君の言うように、そう簡単に結論は出せないのです。自衛のためならば戦争は許されているものですから、戦争が許されている範囲内においては、自衛隊も軍隊なんです。だから軍隊だ……。
  136. 成田知巳

    成田委員 お認めなつたじやないですか。
  137. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛のための戦争が許されていれば、自衛隊は軍隊です。ある目的の範囲内において軍隊なんだから、その目的を逸脱はできないわけです。私はその考え方で正しいと思う。
  138. 成田知巳

    成田委員 何だかわからないのですが、どこの軍隊でも侵略のための軍隊を持つておるという国はないのです。どこの軍隊でも自衛のための軍隊ということは常識なんです。自衛隊は自衛のためにあるのだ、戦闘もやるということを、今総理大臣はお認めなつた。私は何もそうせつかちに結論を出しているわけじやない。軍隊である以上、憲法はそういう軍隊を持つてはいけないというのだから、憲法違反の事実をなくするためには、憲法改正をやるか、あるいは自衛隊を廃止するか、この二つのうちの一つだと思います。はつきり答弁願いたい。
  139. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自分の言つておることは、それでわかつておると思うのです。自衛のためならば軍隊を持つてもいいから、自衛隊も自衛のために働く軍隊だと言つてさしつかえないと思います。
  140. 成田知巳

    成田委員 鳩山さんは自衛隊は軍隊であるということをお認めなつた。しかし憲法で軍隊を持つことを禁止しておるから、軍隊であるようでもあり、ないようでもあるような、あいまいな答弁を最初していらつしやつた
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうじやない。
  142. 成田知巳

    成田委員 ところが今はつきり自衛隊は軍隊であるということをお認めなつた。そうすると事実は憲法違反なんです。この憲法違反をどうするかという問題です。この憲法違反を解決するためには、憲法を改正して軍隊を持てるようにするか、あるいは今の自衛隊をなくするか、この二つのうちの一つしかない。これは小学生でもわかる。はつきり答弁を願いたい。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 二つのうちの一つというわけには行かない。あの憲法自体において、自衛のためならば軍隊を持つてもいいことになつておるのだという解釈なんです。
  144. 成田知巳

    成田委員 それは自衛のためならば軍隊を持つてもいい、こういう御解釈なんですね。
  145. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  146. 成田知巳

    成田委員 そうすると、自衛隊は自衛のための軍隊だから、憲法違反ではない、こう御解釈になるわけですね。
  147. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律の純解釈ということをあなたが御希望になるならば、法制局長官から答弁をしてもらいます。
  148. 成田知巳

    成田委員 もう時間がないからけつこうです。自衛のためならば軍隊を持つてもいいというような解釈は京都帝大の佐々木惣一博士ですか、ごく一部の方だけです。大部分の学者というものは、自衛のための軍隊も平和主義の見地からは持つてはいけないという解釈なんです。この憲法の問題で非常に解釈の相違がある。しかも大部分の者が持てないという解釈が強いのです。支配的なんです。そういうときに一部の説を取入れまして、自衛のための軍隊なら持つてもいいという憲法解釈を軽々にやられるということは、非常に問題だと思います。もう一度確認してよろしゆうございますか、はつきりつていただきたい。
  149. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は今までの私の答弁を繰返すにすぎません。
  150. 成田知巳

    成田委員 そこで憲法改正問題についてお尋ねしたいのでありますが、名古屋においでになるときの車中談で、憲法改正をやるのだ、特に第九条は改正しなければいかぬということを、鳩山総理はおつしやつておる。これは現在の自衛隊は軍隊である、自衛隊は自衛のために持てるのだ、これが解釈なんだけれども、憲法に疑義があるから、改正して、はつきりそういう規定をつくる、こういう御趣旨であると思うのですが、その点ひとつ御答弁を願います。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 成田君のお考え通りであります。
  152. 成田知巳

    成田委員 そうしますと、憲法改正、憲法改正と申しますが、憲法改正は大体どの程度おやりになるのか、第九条だけなんですか、それともそれ以外にあるのですか。
  153. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法を改正すべき点は多々あると思いますけれども、これは憲法改正審議会でもこしらえまして、よく調査いたしませんと、具体的には申し上げられません。
  154. 成田知巳

    成田委員 それは詳細の点につきましては、検討しなければ今御答弁できないと思いますが、一応一国の総理大臣として、今まであなたは在野時代から憲法改正を積極的に主張されておつたのだから、大体の構想はあると思う。憲法第九条だけでいいのか、あるいはその他にもあるのか、たとえば第一条の天皇の象徴の問題なんですが、この象徴をかえて元首とするというような意見もあるらしいのですが、この第一条の問題もお考えになつておるかどうか、この点も伺いたい。
  155. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問は非常に重大な問題でありまして、ただちに元首にした方がいいというようなことを答弁するわけにも行かないのであります。やはり審議会にかけまして、十分調査をして間違いのないようにやつて行きたいと思います。とにかく最も憲法改正をしなければならぬと思つたのは、やはり九条に違いない。最初私は九条はもつと狭義に解釈をしておりましたから、独立国家として軍隊を持たないではおられないと思つたのです。やはり日米関係の変化とかあるいは米ソ関係の変化とか、いろいろの変化がありまして、だんだんと解釈が自衛のためならば軍隊を持つてもいいというようになつて来たのであります。最初二年半ばかり前の時代におきましては、自衛のための軍隊も禁止せられておるという方が私は多数の意見だつたと思うのです。そこで自衛のための軍隊を持たずに独立国家はおられるはずはないと思つて、非常に憲法改正を熱心に主張したわけでありますが、自衛のための軍隊というものは自衛隊法の制定によりまして、大分日本においての輿論が違つて来たと私は思う。御了承願いたいと思います。
  156. 成田知巳

    成田委員 今憲法改正のために憲法改正審議会というものを設けるというような御発言があつたのですが、この憲法改正審議会というのは、憲法改正のために憲法議会、このように解釈していいですか。それとも特別の構想がおありになるのですか。それを承りたい。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法審議会は設けたいと思つております。
  158. 成田知巳

    成田委員 そこでお聞きしたいのですが、憲法審議会の構想なんですが、憲法改正のための憲法議会ともいうべき性質のものか。それともそういうものではなくして他の性格を持つているものか、これを承つているのです。
  159. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 成案ができるようなもつとも有力なる委員会をつくりたいと思つております。
  160. 山口喜久一郎

    山口委員長 成田君時間が大分経過しておりますから簡単に願います。
  161. 成田知巳

    成田委員 では結論だけ申し上げます。私は本日鳩山さんなら非常に率直にして明るい御答弁があると思つてつた。あの吉田さんとは大分違つていると思いましたが、きようの御答弁を承つて、吉田さんと同じように、またさらにずるい感じがして、まことに遺憾であるということを最後に申し上げまして質問を終わります。
  162. 山口喜久一郎

    山口委員長 河野密君。
  163. 河野密

    河野(密)委員 私はきわめて簡単に要点だけをお尋ね申し上げたいと存じます。非常に先ほどからの問答を聞いておりますと、何か鳩山総理が非常にいたいたしいような感じがいたしますので、私は何か質問の闘志が鈍るような感じがいたします。私は鳩山総理は東京の先輩でもありますし、多年の宿望を達して総理大臣になられたという意味におきまして、敬意を表したいと思うのでございますが、多少言葉のはしはしに礼を失するところがございましたらお許しを願いたいと思います。  世間では新内閣ができてから非常に世間の評判がよろしいようでございます。これはおそらく鳩山総理個人に対する国民の同情の声ではないかと思うのであります。世間には判官びいきという言葉がありますように、鳩山さんの多年の不遇に対しまして非常に同情しておるその声が、鳩山内閣の人気となつておるのではないかと思うのです。そこで鳩山総理大臣の人気に甘えて鳩山内閣そのものが、あるいは日本民主党内閣が非常に世間の期待を受けておるのだ、こうお感じになつたならば私は非常に違うのではないかと思うのであります。  そこで私は率直にお尋ねを申し上げますが、鳩山内閣ができて以来、いろいろな場合に総理大臣を初めとして各閣僚諸公のいわゆる放言に類するところの言葉をしきりに承つておりますが、鳩山内閣として一体どういう根本的な考え方を持つておるのであるか、鳩山総理政治に対する識見、抱負いかんということについては、まだわれらは何ら承知いたしておらないのであります。もとより先ほどお話のありましたように選挙管理内閣でございますから、いろいろなことを申されても実行することにおいて不可能な制約があるとは存ずるのでありますが、私はまず第一にお尋ねしたいのは、鳩山総理大臣内閣を組織したならば第一番のまず何をおやりになりたいと考えていたのか、何をしようと、思つておるのか、現下の日本の情勢に照して何をしたいとお考えになつておるのか、率直なる総理の抱負識見を承りたいと思うのであります。
  164. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 一言にして言えば、私は独立の完成だと思つております。独立の完成をするのには、まず第一には道義心の回復だと思つております。第二には占領政策の是正だと思つております。そして明るい希望ある世の中を建設したい。抽象的に言えばそういうようなことだろうと思つております。希望のある明るい政治にしたいというのは、とにかく何を考えておるのかということを機会あるごとに国民に示して、国民に明るい希望を持たせたいと思つておるようなわけであります。簡単に言えば、そういうことだろうと考えております。
  165. 河野密

    河野(密)委員 きわめて明確なお話でございましたが、私はそこでお尋ねを申したいのであります。独立の完成をしたい。これはまことにけつこうなことでございます。独立の完成とは何を意味するのであるか、この点が重要であると思うのであります。私は具体的にひとつお尋ねを申しますが、鳩山総理大臣はこういうことをしきりに言つておられるのであります。たとえて申しますれば、外交については自由主義諸国家との緊密な関係を基礎として共産圏諸国とも交通、貿易を行うようにしたい。日本の場合ソ連、中共との交通、貿易をまつたく無視するのは誤りである。英国のチヤーチル首相は、世界の平和のためには共産国家とも平和的に共存することの必要を説いておるが、自分もまつた同感である、こういうことを述べておられるのであります。口を開けばこれと同じような趣旨のことを申されておるのであります。私はそこで二つお尋ねを申し上げたいのでありますが、鳩山総理大臣がまだ総理に就任される前に、アメリカの雑誌ニユーズ・ウイークの記者とインターヴユーをされたものがこのニユーズ・ウイークに載つております。それを見ますと、同じくチヤーチルの言葉を引かれて、国際的観点においてはチヤーチル英首相の、西欧が強くならなければならぬということにまつた同意する。日本の立場もこれと同様である。われわれは平和を要望し、西欧と密接に連繁する。特にアメリカと緊密なる連繁をとる。戦争を予防する基本的な力はアメリカであり、西欧諸国はアメリカと結ばなければならぬ。日本は再軍備すべくみずからの防衛軍を持たなければならぬ。こういうことをあなたは言われておるのであります。このあなたが内閣をつくられる前のニユーズ・ウイークの記者とのインターヴユーの中においては、一言半句も中共、ソ連との国交を調整しなければならぬということが言われておらないのであります。しかるににわかに総理大臣になられますと、しばしば中共、ソ連との間におけるところの国交調整をしなければならぬ。この考え方というものに私は非常な考え方の飛躍があると思うのであります。これを悪く解釈すれば、今日本の国内には中ソ両国との国交調整をなすべしとの声が、経済不況打開の道としてほうはいとして起つておる、この声に迎合するという人気取りの政策ではないかという疑いがまことに濃厚であるのであります。この点についての総理大臣の見解を承りたい。  もう一つ、私がお尋ねを申し上げたいのは、先ごろ十二月十八日の東京新聞にUP特電が載つておるのであります。このUP特電によりますと、鳩山内閣ができますと、鳩山内閣の代表者がアリソン米国大使のところに参つて鳩山内閣は中ソ両国との国交調整を特にやるという意思を持つておるものではないということを言明しておる。日米友好関係にひびの入るような取引を共産側と行う意思がないということを特に保証したということが書いてある。これは暮夜ひそかにおいでになつたのかどうかは存じませんが、もし鳩山内閣の若干の構成員がアリソン米国大使に会つてこういう言明をされたというならば、鳩山内閣の構成員とは一体たれとたれであるか、いかなる言明をなされたのであるか。総理大臣が民間においてなされるところの言明と、カーテンの陰でなされる言明とはまことに違つておる。これははたして鳩山内閣の一枚看板となされておるところの、明朗なる秘密なき外交をなされるという趣旨といかなる関係になるのであるか。今独立の完成と鳩山総理はおつしやられるが、その独立の完成ということと、アメリカ大使の門を暮夜ひそかにたたいて、内閣は表ではこう言うけれども、実際の意思はそういう意思はありませんという保証を与えるこの態度と、いかなる関係があるか、これを承りたいのであります。
  166. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ニユーズ・ウイークの記事は、ニユーズ・ウイークの東京支局長のパツケナムに話しましたが、私は演説したと同じようなことを申し述べたのでありますが、中共やソ連との貿易関係をパツケナム氏が出さなかつたならば、それはパツケナム氏の自由で書かなかつたのであります。私は同じことを話しております。  それからアリソンにはだれも私の代理なり使いとして行つた者はありません。またアリソンにも会つたことはないのであります。アリソンに対してさような、暮夜ひそかに自分の発言を修正して述べるというような、そんな卑怯なまねは断じていたしません。(拍手)
  167. 河野密

    河野(密)委員 もし今鳩山総理の御言明の通りでありますならば、在日米国大使館のスポークスマンが発表したというこのUP特電はうそでありましようか。
  168. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その記事に対して私は責任をとることはできません。
  169. 河野密

    河野(密)委員 それでははつきり承りますが、鳩山総理はもちろんのこと、鳩山内閣の構成員も米国大使とはまだ会つたことはない、しかも米国大使に向つて日本は日米関係に影響を与えるような共産側との取引をする意思はないという保証を与えられたということは絶対にない、こういう御言明でございますか。
  170. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのとおりであります。
  171. 河野密

    河野(密)委員 では外務大臣に承りますが、外務大臣もこの事実なしとおつしやいますか。
  172. 重光葵

    ○重光国務大臣 総理のお答えの通りであります。
  173. 河野密

    河野(密)委員 そうすればこの在日米国大使館が発表したというこの発表は事実無根である、それならばそのように私も考えてこれからの質問をしたいと思います。  そこで総理大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、中ソとの国交調整を進められるということを内閣の大きな方針の一つとされておる。その中ソとの国交を調整するにあたつて、しかしながらアメリカとの関係にも影響を与えないようにして中ソとの国交調整をするのである、こういう御趣旨のようでございますが、こういうことがはたして可能であるかどうか、可能とお考えになるのであるか。中ソ両国との国交調整を進める場合において、自由主義諸国との関係というものを現在以上に緊密にする、こういうことで中ソとの国交を支障なくでき得る、こういうお考えの上に立つておるのかどうか、この点をお尋ね申し上げます。
  174. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はチヤーチルが申しましたように、一面において力による平和、これによつて米ソ戦争の回避をやるが、他面においてはやはり五十年間、飢饉と戦争と革命とによつて疲弊しているソビエトの国民に、衣食と娯楽と友人とを与えて、そして平和の方が気楽な繁栄の生活を求め得るということを体験せしむる必要があるということを言つて、交通、貿易をソ連とやりながら、それによつて米ソ戦争を避けようとしているチヤーチルのやり方、それをアメリカとの関係を基礎としてやるというのですから、日本もやはり同じように、アメリカとの関係を緊密にしながらソ連との交通、貿易をやるということのできないはずはない。日本の主張が正しくして理由があるのならば、アメリカは当然聴従するものと考えましてそういうことを言つたわけであります。
  175. 河野密

    河野(密)委員 次に私はお尋ね申しますが、政府の先般の声明によりますと「日本の自主独立を本義とし」という言葉を使つておられます。ただいま総理大臣の御答弁の中にも、独立を完成したいということを強く言われておりましたが、その日本の自主独立を本義とするという意味は一体どういう意味であるか。これはアメリカ依存の態度を脱却するということを意味しておるのであるか、あるいはMSA援助について何らかの修正をするという意味であるか、あるいはアメリカ駐留軍に対して何らかの手を打つという趣旨であるのか。日本の自主独立を本義とし、日本の独立を完成するということを、具体的にはどういうふうに総理はお考えになつているのか、これを承りたいのであります。
  176. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、日本の主張すべきことを勇敢に正直にアメリカに主張すればアメリカは了解するというように考えておるので、アメリカの言うままに日本が動く必要はないというようなことを考えた次第であります。
  177. 河野密

    河野(密)委員 きわめて抽象的でございますが、してみると、今の駐留軍の問題とか、基地の問題とか、MSAの援助の問題とか、そういうことには直接には触れない。ただ心構えとして、アメリカに対して卑屈でなくするという程度の意味にお考えになりますか。
  178. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、日本がやはり独立国家としてやるべきことはやつて行くということになればアメリカとの了解は正常に立ちもどる、このような考え方を持つております。
  179. 河野密

    河野(密)委員 次にお尋ね申し上げますが、先般の政府声明によりますと、国力に応じた自衛力を整備するとともに進んで云々、こう書いてありますが、この国力に応じた自衛力とは何を意味するのでありますか。現在わが国が防衛費として支出しておる予算に対して、これが国力に応じた自衛力と考えておるのか、あるいはこれでは足らぬと考えておるのか、あるいはこれでは多過ぎる考えておるのか、この国力に応じた自衛力というのは一体どういう意味であるか。前内閣考えておるところの防衛の方針というものを踏襲されるのか、それともこれと違つた方針を打出されるのか、この点を承りたいのであります。
  180. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体におきまして、日本は現在支出しておる防衛のための費用以上に出すということは非常にむずかしいのだろうと思う。なるべくならばその費用を土台として、その費用の範囲内においてやつて行きたいというような考え方を持つております。しかしながら、いつまでもアメリカの防衛力に依存して行くということは、改めて行かなくてはならないような気がいたしております。
  181. 河野密

    河野(密)委員 非常に抽象的でありますが、現在の予算に計上しておるものは大体その程度に計上して行く、こういうことでありますか。前内閣がつくつたと称せられる防衛計画、一年間に四万人ずつの者をふやして行くという防衛計画は、そのまま踏襲して行かれるというお考えでありますか。この国力に応じた自衛力というものの限度、その具体的な内容というものを、一つお示しが願いたいと思います。
  182. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点は防衛庁長官から答弁していただきたいと思います。
  183. 大村清一

    ○大村国務大臣 御承知の通り、日米安全保障条約の前文にございますが、日本の国力に応じて防衛力は漸増されるものと了解するということになつておるのであります。前内閣におきましても、日本経済力を考慮いたして、御承知の通りの程度の自衛隊、防衛庁が運営されておるわけであります。しこうしてすでに予算編成期に相なりまして、前内閣において前年程度の予算が大蔵省に要求されております。これは自衛隊のごとき恒久的に持続的にその整備充実をはかる建前を持つております以上、その予算は組みかえる必要はなかろうと私は思う。しかし防衛庁の要求しておりますところを大蔵省あるいはまた現内閣において十分に検討いたして、そうして国力に応じた、また国の経済、財政の規模にマツチした防衛力をつくる、自衛隊を整備するという方向で行くべきだと考えております。この点につきましては、防衛庁長官経済閣僚各位との間に十分なる検討を遂げまして、そこに誤りなきを期したい。結論を申しますと、従来の方針を踏襲いたしまして、現段階における国力とマツチした進み方をいたす、このように考えておる次第でございます。
  184. 河野密

    河野(密)委員 ただいまの御答弁でありますと、この民主党内閣でお示しになつた国力に応じた自衛力というものは、特に改まつた内容をお持ちになつておるのではない。従来の吉田内閣と同じ方針、同じ計画に従つてお進みになることを、ただここにこういう表現を使つたにすぎないのだ、こういうふうに解釈して誤りないように承るのでありますが、総理大臣それで間違いございませんか。
  185. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛庁長官の申した通り考えております。
  186. 河野密

    河野(密)委員 今私の言うことをお聞き取りにならなかつたと思うのですが、私の申し上げたのは、今の防衛庁長官の言う通りであるとするならば、前内閣の吉田内閣が立てた計画をそのまま踏襲するのであつて、特に国力に応じた自衛力という文字をお使いになつておるけれども、これは単に修飾の文字にすぎないのであつて、内容的には何らかわかるものではない、こういうことにわれわれは了解してよろしいか、こういうお尋ねであります。
  187. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛庁長官以上に知らないのだから、しかたがないじやないですか。
  188. 河野密

    河野(密)委員 私は次に少しく憲法の問題をお尋ねしたいと思うのでありますが、これは総理大臣あまり御存じないと思いますので、閣僚諸公の中でわれと思わん者はひとつ出て答弁してください。  世人は、鳩山内閣の重大政綱の一つは憲法の改正と再軍備にあると考えておるのであります。これがよい悪いはしばらく別として、政府は当然に憲法改正と再軍備の問題を堂々と世間に訴えてその批判を仰ぐべきであると思うのであります。そこで私は総理大臣に尋ねたいと思うのでありますが、吉田内閣が今までやつて来た自衛軍の創設並びにその増強計画は、現在の憲法に照して違反と考えておるのか、それとも憲法に合致すると考えておれれるのか、この点をまず明確にお尋ねをしたいのであります。憲法にさしつかえないものと考えておるのか、あるいは憲法違反であると考えておられるのか。これは私はあえて鳩山総理とは申しません。閣僚諸公の中でわれと思わんものはどうぞ答弁してください。
  189. 大村清一

    ○大村国務大臣 事自衛隊に関係をいたしますから、その所管の関係でまず私からお答えを申し上げます。  結論から申し上げますと、今日の自衛隊は憲法上何ら抵触するものでなく、合憲だと確信をいたしております。御承知のごとくこの憲法と自衛隊……(「総理とは違う」「内閣不統一じやないか」「違わない、続けろ」「休憩休憩」と呼びその他発言する者多し)御存知の通り憲法と自衛力の問題につきましては、新憲法成立以来世上非常な疑義もあり、議論もあつたのでありますが、さきに自衛隊法案が国会に提出せられまして、この点は十分に国会において御審議になり、衆議院におきましてもこれは違憲にあらずということになりましたから、あの自衛隊法が成立したのであります。また参議院におきましても同様の経過をたどりまして、自衛隊法はここに成立を見たのでありまして、合憲を前提としなければ国会がこのような決議をするはずはないと思う。しかしなお申し上げますが、私どもの憲法の規定を解するところは、憲法では御承知のように第九条におきまして、侵略戦争はこれを否認をいたし、また侵略戦争……(「そんなことは書いてないぞ」「憲法のどこに侵略戦争と書いてある」「憲法の条文をはつきり読んで来い」と呼び、その他発言する者多し)なお申し上げます(発言する者多し)さらに国家が自衛力を持つことは当然すぎるほど当然でありまして、これは———のものと申しても過言ではない。自衛力は……(「———のものがあるか」「———とは何だ」と呼び、その他発言する者多し)自衛力は国家固有の権力として当然これを持ち得る、この見解であります。(「———のものとは何だ」と呼び、その他発言する者多し)自衛力は憲法もこれを認めておるのであります。どこにもこれを否認しておるところはないのであります。  (「(「———のものとは何だ」「取り消せ取り消せ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然)
  190. 山口喜久一郎

    山口委員長 河野君の発言を許しております。国務大臣待つてください。河野君の発言を許しております。
  191. 河野密

    河野(密)委員 ただいま大村国務大臣の発言を聞いておりますと、国会が自衛隊法を決定したからしてこれは合憲的である。それから———のものによつて云々———とは一体どういうことを意味するのか、———というものがあるべきはずはない。国権の最高の条規は憲法によつてきまるものである。その———のものとは一体何を意味するのか。
  192. 大村清一

    ○大村国務大臣 ふなれなものでありますから、———と申しましたのは私の失言でありますから、これを取消します。
  193. 河野密

    河野(密)委員 今の御答弁を承つておりますと、はなはだもつて勉強が足らないのです。一体憲法の第九条に、自衛軍ならば持つてもよろしい、侵略戦争に対抗する軍隊ならば持つてもよろしいというようなことが書いてあるようにお延べでありますが、さようなものは毛頭ございません。憲法をよくお読みになればそういうことは絶対にないのであります。そこで先ほど鳩山総理大臣成田君の質問に対して答えて、自衛の軍隊ならば持つてもよろしいのだ、こういう趣旨のことを御答弁になりましたけれども、これまたたいへんな問題のある点でございます。そういう議論で進みますならば、それを反駁することはもういとやすいことでありますが、私は鳩山総理があまりにいたいたしいので、鳩山総理大臣に対してもうそういう憲法上の議論をしようとは思わないのでありますが、閣僚諸公に対しては私は何らの遠慮をすべき必要は毛頭ないのであります。そこで……(「そんな心配は不必要だ」「いたいたしいとは何だ」と呼びその他発言する者あり)黙つて聞け、現にいたいたしいじやないか。聞いてもよろしいか。聞いてよろしければ聞く。それならお尋ねしますが、一体憲法の第九条のどこに自衛のための軍隊ならばよろしいということがありますか。憲法の第九条と平和条約の第五条と安全保障条約の前文並びに第一条の関係とを一体どういうふうにお考えになつておりますか。その点をあなた方は研究なさつたのでありますか、その答弁を承りましよう。
  194. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律的の解釈は法制局長官から明白に答えていただきます。
  195. 林修三

    ○林政府委員 ただいま総理大臣から御指名がありましたから私から憲法問答についてお答えすることにいたします。  憲法第九条は御承知のように第一項におきまして国際紛争を解決する手段として武力の行使というものをはつきり放棄いたしております。この第一項の解釈につきましては大体において説は一致しておりますが、これにつきましては、日本は固有の自衛権というものを独立国である以上放棄したものではない、従いまして他国から急迫不正の侵害を受けた場合に、その自衛権を行使するという形において武力抗争をすることも第一項は放棄したものではないということも、これも大体通説と考えてよろしいと思います。ただ問題は第二項に参りまして、第二項に前項の目的を達するために陸海空軍その他の戦力は保持しないという規定がございます。この意味につきましてこれはいろいろ説もあるわけでございますが、第一項におきまして、国は自衛権、あるいは自衛のための武力行使ということを当然独立国家として固有のものとして認められておるわけでありますから、第二項はやはりその観点と関連いたしまして解釈すべきものだ、かように考えるわけでございます。それでこれにつきましては、大体においてただいままでの解釈といたしまして、この陸海空軍その他の戦力を保持しないという言葉意味につきましては、戦力という言葉をごく素朴な意味で戦い得る力と解釈すれば、これは治安維持のための警察力あるいは商船とか、そういうものもみな入ることに相なるわけでありますが、憲法の趣旨から考えて、そういう意味の国内治安のための警察力というものの保持を禁止したものとはとうてい考えられないわけであります。戦力という言葉にはおのずから幅がある、陸海空軍その他の戦力を保持しないという意味においては幅があるというふうに考えられます。従いまして国家が自衛権を持つておる以上、国土が外部から侵害される場合に国の安全を守るためにその国土を保全する、そういうための実力を国家が持つということは当然のことでありまして、憲法がそういう意味の、今の自衛隊のごとき、国土保全を任務とし、しかもそのために必要な限度において持つところの自衛力というものを禁止しておるということは当然これは考えられない、すなわち第二項におきます陸海空軍その他の戦力は保持しないという意味の戦力にはこれは当らない、さように考えます。
  196. 河野密

    河野(密)委員 くどくどと説明をせられましたけれども、前内閣のときには別な解釈で第九条を解釈し、現内閣のときにはまた別な意味で解釈をする、そういう法制局の憲法解釈なんというものは大して信用するに当らないと思います。そういうもので私たちは煩わされずに率直に聞きたいと思うことは、自衛隊が現在の憲法に合して合憲的なものであるということを考えるならば、何を好んで憲法第九条の改正をなさろうとするのか、もし合憲的であり、現在のままの自衛のための軍隊であるならば持ち得るというならば、憲法改正を云々される必要は毛頭ないはずだ、現在の憲法のもとにおいては自衛隊を持つことができないという解釈に立たれるからこそ、憲法第九条を改正しよう——憲法改正を打出して再軍備というのろしを上げられたと思うのです。しかるに現在の憲法のもとにおいても自衛隊を持ち得るのだ、こういう解釈であるならば、何を好んで憲法を改正しようとするのであるか、それならば鳩山総理の憲法改正の真意は侵略のための軍隊をつくりたい、こういうために憲法を改正したいとおつしやるのですか、その点を明確に御答弁願いたい。
  197. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法の解釈を自衛のための軍隊ならば持つてもよろしいというように解釈いたしませんければ、日本の防衛は一日としてできないわけです。一日としてゆるがせにすることのできない日本の防衛をしないで済ますことはできないわけですから、疑いがあつてもこれをりくつに合して解釈して——憲法違反ということをとれば日本の防衛ができないでしよう。日本の防衛をするためには憲法を融通解釈いたしまして、そうして日本の防衛をしなくちやならないし、すでに自衛隊法というものも国会を通過しているのでありますから、それに準じて憲法を解釈しても決して憲法の違反ということは言えないと思う。しかし疑いは確かにあるのですから、そういうような疑いのもとに日本の防衛をするということは非常に不愉快な話でありますから、防衛のために十分に防衛力を持つてもよろしいということをあらためて書いた方が、日本の防衛の実があがると私は思つておるのであります。
  198. 河野密

    河野(密)委員 憲法第九十九条によりますと、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」こういうことを書いてあるのであります。それから憲法第九十八条には「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅」云々とこう書いてあります。もし鳩山総理大臣が今お話のように憲法に違反するかもしれないという疑いをお持ちになるならば、このいずれかの条章に従つて適当な処置をおとりになるべきはずだと私は思うのであります。少なくとも憲法改正をもしなすべきものとお考えになるならば、堂々とこの改正のための処理をなすべきはずだと思うのでありますが、この点を承りたいのであります。ことに私は総理大臣にはつきりと申し上げますが、世論がいかにあろうとも、もし総理大臣がさようなお考えであるならば、この次に来るべき総選挙においては、鳩山内閣は当然憲法改正を輿論に問うのである、再軍備を輿論に問うのである、こういうことを堂々と打出して選挙の主たる題目として、いわゆるメイン・イシユーとしてこれを争うべきはずだと私は思うのであります。その点を明確にしておらないのは卑怯千万ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 まだ日本国民に外交問題をよく徹底せしむる必要があるので、外交上世界の平和が達成できるというような形になつたときに、自衛軍設置の憲法改正をやればこれはその目的を達成できると思う。いまだ国民が侵略戦争のために兵隊を持つのではないかというような疑いがある場合に、いくらやつた方がいいからといつても実現はできません。やはり憲法を改正する輿論というものが起きなければ、われわれがやつてよいと思つても、その目的は達成できないのでありますから、国民が世界の情勢を見て、これならばもう侵略戦争はないというように感じたときに、憲法を改正するのが実行をあげ得る時期なりと私は思つておるのであります。それで明確に示さなかつたのであります。
  200. 河野密

    河野(密)委員 吉田総理大臣からこの席で同じような言葉をたびたび私たちは聞いておるのでありまして、同じ考え方ならば、特に鳩山内閣はこの憲法改正、自衛隊の問題については別な考えを持つておらない、まつたく吉田内閣と同じような考えである、かように了解してよろしいのでしようか。
  201. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は吉田君がどういう考えでいたかよく知りませんが、私は私の考えを申し述べたと了承してください。
  202. 河野密

    河野(密)委員 私は今までの憲法問題についてちつとも満足もしておらないし、何ら了解点に到達しておりませんけれども、時間がありませんから次の問題を御質問したいと思います。  次に私は経済閣僚を中心にしてお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、まず第一にお尋ねを申し上げたいのは、最近におけるわが国の経済情勢をいかに御判断になつておるかということであります。最近年末を控えまして、貿易の好転、国際収支の改善ということがしきりに報道をいたされまして、当初年度末に九千万ドルの赤字という予想をわれわれは吉田内閣のもとに聞いたのでありますが、最近におきましては年度末におそらく一億七千八百万ドルも逆に黒字になるであろうというような国際収支の見通しを聞くのであります。これは経済上の情勢としては楽観すべき材料であるかのごとくに見えるのでありますが、一方においてこれらの国際収支も、依然として特需に依存しておる。国内における中小企業状態は憂慮すべき状態にある。失業者の数は最近の統計において七十一万人に及んでおる、こういう悲観的な材料があるのであります。政府昭和三十年度の経済情勢に対していかなる見通しを立てておられるのであるか、この経済情勢をいかに判断し、いかなる施策をもつてこれに対処して行かれようとしておるのであるか、この全般的な財政経済の見通しについて、経済閣僚から明快なる御答弁をいただきたいと思うのであります。これは一萬田大蔵大臣にお願いいたします。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の昭和三十年度におきます日本経済の大体の見通しを要約いたしますれば、経済の健全化の基礎をだんだんと強化しつつ輸出もふえ、雇用の機会もふえ、そして経済が全体として徐々によくなつて行く、こういう見通しでございます。
  204. 河野密

    河野(密)委員 私はただいま大蔵大臣からきわめて楽観的な御答弁を承つたのでありますが、その楽観的な御答弁をするについての根拠をひとつお尋ねを申したいと思うのであります。貿易の見通しについてはこれこれであるから楽観すべきである、国際収支の見通しについてはこれこれであるから楽観すべきものである、失業問題についてはこういう見通しであるから心配はいらないのだ、こういう問題を、こまかくとは申しません、具体的に理由をあげて御答弁が願いたいのであります。
  205. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一言申しておきますが、決して私は日本経済の前途を楽観しておるのじやないのであります。ただ一口に見通しをつかめるような言葉で申し上げますれば、さようになるということを申し上げたにすぎません。それで、それならそういう見通しをお前はどういうふうにしておるのかという御質問と思いますので若干具体的に申し上げてみましよう。  国際収支の関係が大まかに申して大体日本経済の国力を集約的に反映するというふうに考えてよろしかろうと思うのであります。先ほどお話のように、この三月の年度末では約一億八千万ドル近くの黒字になる。むろんこのうちから債務としてきまつておるものを引き去らなくてはならぬと思いますので、実際は一億ドルぐらいというふうに大体考えてもよろしい。これは当初約一億ドル、九千ドルの赤字がこの年度の初めにおいて予想されておつた。言いかえればプラス・マイナス約二億ドルに近いものになるのでありまして、ある程度日本経済がよくなりつつあるということは、これはこの点からも十分御判断ができるのであります。  そこで、はなはだこまかくなりますが、もう少し御納得ができるように申し上げたい。むろんそうであるからこれはすべて日本経済がよくなつて自力ですべて行つたと申すのではありません。しかしそのすべてがまた悪いわけではない。むろんいろいろ補償費あるいは出血輸出というものもありますが、しかしそうでないものも多いのであります。それは今日の物価をごらんくださればわかる。大体今まで、昨年の十月からいわゆる財政は緊縮、一口に言えば一兆円のわく、それから金融の引締め、こういことをやつて来た。なぜその当時これをやりましたかと言えば、いわゆるオーバー・インヴエストメント・オーバー・コンサンプシヨン、過当投資、過当消費が日本の国力以上に行われた。そこでこれに対する対策としてどうしても購買力を締めて行かなければならぬ。たくさんの金を投資し、たくさんの物を消費するというのですから、どうしても金を引締めることから出発するのは、これはもうそれをほうつておいたら物価の騰貴を招来し、輸入の増大を来し、輸出の減少を来すことは申すまでもない。それが昨年の秋までの状況である。いわゆるそこでずつと緊縮政策を前内閣がおとりになりました。これは非常にいい政策なのであります。そこで今日この物価体系がどうなつているかと申せば、あれほどやかましく日本の物価が国際水準に比べて非常に高い高いと言われておつたのであります。ところが今日統計をごらんくだされば明瞭にわかるのであります。石炭は高うございますが、鉄になりますと大体国際水準、しかもこれは赤字では必ずしもない。鉄というような基礎的な素材、各産業に関係あるそういうものについてもそこまで、その他の商品をとりましても相当安くはなつておりますが、しかし同時にそれが生産コストを割つているのではなく、生産コストが下つてやはり物が下つている。そういう状況を相当強く今日来しているのであります。ですからそういうふうな物価情勢から見ても、今日の経済の情勢がいわゆる堅実なる基盤を徐々に示して来ている。しかし、そうだからといつて決してそれが今日の日本経済の困難を減殺しているというのではないのであります。そういうことになりつつあると同時にまた相当苦しい。その苦しいということは私どもは決して無視するものではなく、忘れるものではございません。そうして今日の緊縮政策の結果どういう段階に来ているかというと、今日は生産段階に来ている。そこで問題はもう金融の引締めだけでは生産段階では困る。従来の金融引締めは大体流通段階において——それはなぜかというと金融から始まつたものは過当の投資、過当の消費ということが中心である。これは何をおいても金融を引締めることが当然先行しなければならない。財政を引締めることが先行しなければならぬ。ところがそれが生産段階になると、それは経済政策と産業政策と相まつて行かなくてはならぬ。この産業政策の今までの不融通なところに問題がある。これみながいわゆる総合政策を望んでおるゆえんで、この総合施策のなるように産業政策、経済政策を十分にここに確立して行こうというのが、おそらく新内閣の一つの大きな使命ではなかろうかと思う。そうしますとここに財政金融の引締めによつて日本経済をりつぱにして行く基盤をならしつつ、他方において産業政策によりましてだんだんと合理的にものを持つて行く、いわゆる金融だけではない、どうすれば生産コストが下がるかという産業の合理政策をここに打込んで行く、同時にこういう地ならしをするには御承知のように失業者が出ることははなはだもつて遺憾であるが免れない、そこでここに失業対策を十分立てよう、こういうのも今度の新内閣の使命であろうと思う。失業対策を立てて盛んに融資する、そういうふうにして行くから物価も下り経済も健全化して、同時にこうなれば物も下つていい物ができるから輸出が増大して行く、こういう状態が来る、これが私の考えであります。
  206. 河野密

    河野(密)委員 私のお尋ねしたいのはそういうこまかいことではなくて、一体財政投融資はどの程度に抑えるのか。あるいは昭和三十年度の予算はやはり一兆円のわくを押えて、デフレ政策を堅持して行くのかどうか。そういう要点をお尋ねしたい、こう思つたのでありまして、単なる財政の講義のようなことはひとつやめていただきたい。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは私がこういうふうなところに出ての答弁になれませんから、はなはだ御意に観たなかつたかもしれませんが、だんだんなれて来ます。(笑声)財政の規模につきましては、私は一兆円のわく内で押えて行く決意を持つております。それだけ申し上げておきます。
  208. 河野密

    河野(密)委員 一つも要点に触れて来ないのでありますが、現内閣が閣内にたとえば石橋通産相のようなインフレ積極論者を持つており、一方においては一萬田さんのようなデフレ政策の本尊を擁しておる、この二つの要素を持つておる内閣が一体デフレ政策を強行して行こうとするのか、それとも適当な機会にインフレ政策に転換しようとしておるのか、こういうことが私は国民の一番知ろうとしておる根本だと思うのであります。その点を、デフレ政策で行くのだ、デフレ政策で行くならばそのデフレ政策の現われは一兆円予算なら一兆円予算、九千億の予算なら九千億予算、財政投融資は幾らくらいで押えて行くのだ、そこに現われなければならぬが、それを伺つておるのであります。その要点を大蔵大臣から御答弁願いたい、こういうのであります。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 このインフレ、デフレという言葉が非常にあいまいなので、常に論議の的になりまして、しかも結局これはいくら言つてみても得るところがない、こういうことになりがちなのです。私どもの当面考えておりますことは、生産コストを下げるようにして日本の物価を国際水準に持つて来る、そして輸出の増大をはかる、そういうことが可能なるようにもろもろの——財政金融についてもそういうようにしたい、おそらく他の政策もそうだろうと思いますが、これはあるいは私の答弁範囲ではないかもしれません。私の答弁範囲にとどめておきます。
  210. 河野密

    河野(密)委員 具体的なことをお話申し上げてもどうも要領を得ないのでありますが、石橋通産大臣は前からオーバー・ローン解消論ということをしきりに主張しておられました。私は三年前であれば——石橋さんがあのことを主張になつた三年前であれば、あれも一つの役割があつたと思います。しかし三年も四年も同じことを言つておる間に世の中の情勢はみな違つてしまうのであつて、今日においてはあのオーバー・ローン解消あるいは石橋さんが主張しておられるような財政投融資を増やして行こうということを、財政しよう理の任に当る大蔵大臣はどういうふうに考えておられるか、財政投融資というものをどの点で押されようとされておるのか、まず第一に三十年度の予算を今までのわくから広げるのか、広げないのか、そういう点の見通し、あるいは抱負、考え方、そういうことを明確にお答え願いたいのであります。大蔵大臣どうですか。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的に投融資をどういうふうにするというような点は、今度は一兆円の予算の配分になるのでありまして、これについては……。
  212. 河野密

    河野(密)委員 一兆円で行くか、行かぬかということから先に答えてください。予算のわくをどの程度に押えるか……。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは先ほど申しましたように、一兆円のわくにとどめる、これは先ほど御答弁申し上げた通りであります。そのあとは配分になるのでありますが、これは今せつかくいろいろな御意見もありますので、それらを今検討しております。
  214. 山口喜久一郎

    山口委員長 河野さん、大体時間が……。
  215. 河野密

    河野(密)委員 最後に綱紀粛正の問題についてただ一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  これは鳩山総理大臣にお尋ねを申し上げますが、先ほど同僚の成田君から行政監察委員会の問題を取上げて鳩山総理大臣にお尋ねがございました。私はその点を——ここに行政監察委員会の速記録を持つておりますが、そういうことをこの席上で追求しようとは思わないのでありますが、ここでただ一つ総理大臣に私は念を押しておかなければならないのは、総理大臣は口を開ければ綱紀の粛正を主張され、清澄にして明朗なる政治ということを言われておりますが、その鳩山総理大臣は昨年の選挙の前には吉田内閣に対しての不信任案に御投票になつて自由党をお出になつた。昨年の秋には自由党にお帰りになつた。今度は新たに日本民主党にお移りになつた。私はこの間の政治家としての出処進退について鳩山総理大臣はいかなる考えを持つてこういう行動をとられたのであるか、国民すべてが非常な疑惑を持つておると思うのであります。私はおそらく昨年自由党を出て選挙をやられたことについても一応の理由があつたでありましよう。自由党にお帰りになつたのにも一応の理由があつたでありましよう。今度民主党をつくられたのについても理由があることでありましよう。しかし国民から見るならば、この政治家としての出処進退というものをきわめて不明朗なるものを感ずる。この点について清澄にして明朗なる政治ということを主張される鳩山総理大臣は、みずから省みてどういうお感じを持つておられるか、どういう気持をお持ちになつておるか、これを私はまずお尋ねをしたいのであります。
  216. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そのときどきの場合で理由は違いますが、要するに私の良心に従つて行動をとつただけです。
  217. 河野密

    河野(密)委員 良心に従つてと仰せられるのでありますから、おそらくみずから省みて期するところが十分おありになると思うのでありますが、私は政治家として選挙あとで党をしばしばかえるということは好ましきことではないと思うのであります。いやしくも政治家が国民の信頼を受けて一つの政党でもつてでたならば、その党を移る場合においては再び国民の審判を仰ぐべきだと思うのであります。この意味において私は鳩山総理大臣としてはこれはまことに遺憾なことではないかと思うのであります。しかしこの点を特に追求はいたしません。みずからひとつお考えを願いたいと思うのであります。  いま一つお聞きいたしたいのは、綱紀粛正の問題に対して鳩山総理大臣は、口を開けば吉田総理が指揮権の発動をしたのはけしからぬことである。こういうことを主張されております。今もおそらくそのお考えにはかわりはないと思うのでありますが、その指揮権発動の結果、造船汚職の問題というものはうやむやになつたのであります。決算委員会におきましてはしばしばこの問題に対して追求をいたしましたが、前吉田総理大臣は遂にこれに出席いたしませんでした。そうして内閣声明を出して指揮権発動をやり、あれを押えたことは合理的であつたのだ、こういうことを主張されております。この点についておそらく鳩山総理大臣はそれと違つた考えを持つておられると思うのであります。そこでお尋ねするのですが、この内閣声明なるものは内閣がかわれば当然その効力を失うものであると思うのでありますが、総理大臣の見解はどうでありますか。もし内閣声明内閣の更迭によつてその効力を失うものであるといたしますならば、前の内閣声明にとらわれることなく、鳩山内閣は正々堂々たる態度をもつて、この問題を徹底的に糾明さるべきところの責任がある。これは当然の責任であると思うのでありますが、総理大臣のこの点に対する明確にして率直なるお考えをひとつ聞かせていただきたい。
  218. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 指揮権発動が効力を失うという意味は、すでにその指揮権発動は効力を済ましてしまつたのでしよう。その指揮権発動は当然無効になるという意味じやないでしようね。御質問趣旨は……。
  219. 河野密

    河野(密)委員 その指揮権発動はすでにそのときの役割を果たしたのだが、それを前内閣は合理的なりとして内閣声明を出しておられ、その内閣声明なるものは内閣の更迭によつてもうすでに効力を失つたものである。そこで白紙の状態になつて鳩山内閣は独自の立場から、新しい観点からこの問題を取上げられるべき性質のものである。内閣の態度を明確にしてもらいたい。
  220. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 内閣声明もまたそのときだけの問題であつてすでに効力は済んだものと思います。司法部に全部まかしまして、司法部が自由に行動できるような措置を政府はとつて行くつもりであります。行政権が司法部に干渉するような形は残さないようにいたしたいと思つております。
  221. 河野密

    河野(密)委員 私はこれ以上追求することをやめて、はなはだ不満足でありますけれども質問を終わります。
  222. 山口喜久一郎

    山口委員長 先刻の津雲國利君の質疑に関して尾崎末吉君より関連質疑の発言を求められておりますから、これを許します。尾崎末吉君。
  223. 尾崎末吉

    尾崎委員 関連質問でありますから、ごく短かい時間でございますので、ひとつ御答弁も率直にごく簡潔に希望申し上げておきます。  第一にお伺い申し上げてみたいと思いますことは、従来もしばしばお話になつたことでありますが、先ほどの御答弁を伺つておりましても百二十名くらいの与党では政策の実行はできないのだ、すなわち選挙管理内閣であるのだ、こういうことをはつきりされたのでありますが、これに対しまして鳩山総理大臣は、一体内閣というものについてどういう御見解をお持ちになつておるか、ごく率直に伺いたい。すなわち内閣と申しますものは、政策を実行する行政府だ、こう私どもは心得ておるのであります。ところが選挙だけを管理するのであつて、政策は何も実行しないのだ、こういうことを最初からきめておかかりになることは、正しい内閣ではない、変態な内閣だ、こういうことになるのでありますが、内閣というものについての御見解をまず伺つてみたいのであります。
  224. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 選挙管理内閣であるというようなことは一回も言つたことはございません。
  225. 尾崎末吉

    尾崎委員 選挙管理内閣であるとみずからおつしやらなくとも、百二十名くらいでは政策の実行はできないのだ、だから選挙の結果を待つのだ、こういうことでありますと、これは世間で言うように、また新聞でも書きますように、選挙管理内閣である、こういうことになりますから、言葉じりを私はとらえるのではないので、ただ政策は何も実行しないのだ、選挙だけをやるのだ、こういうことを初めからきめてかかることはどういうものであるか。これに対する御見解を伺います。
  226. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政策の実行はしないなんて言つたことはない。一日も政策を国民に発表し得ないということはないと言つたことはありますけれども、政策を実行しないというようなことは一回も申したことはございません。
  227. 尾崎末吉

    尾崎委員 先ほど御答弁なつたことを伺つてつたのでありますが、たとえば名古屋において御演説になつた中に、政府は方針をあらかじめ国民にわかつてもらう、こういうことのために政策をいろいろわれわれが言つている、これを選挙運動をやつているのじやないかというような非難をする者があるが、これはけしからぬ話だ、こういう意味の御演説をなさつておる。そこで私が伺うのは、一つの政党が政策を発表せられるのは御自由である。内閣というものが政策を発表せられる、政策を公言せられるということでありますならば、予算というものの裏づけがなければいかぬ。予算の提出もなく、予算編成も終わつていない。それにもかかわらず、あたかも今すぐにでも具体的の政策を実行するかのようなことを政府の閣内の方々、どの方もおよそみんなこういう具体的なことをやるようなことを——どもから言わせますれば放言であるが、こういことを言つておられる。そのことを伺つておるのであります。いわゆる予算というものの裏づけがなくして、政党ではない内閣があれもやる、これもやる、こういうことを言うことが、選挙管理内閣であるということを言つておりながら、はたしてこれは言えるべきことであるかどうか、こういうことを伺つておるのであります。
  228. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は選挙管理内閣であるということは言わないと言つておるのです。予算はどうしてもつくらなくちやならぬのです。
  229. 尾崎末吉

    尾崎委員 それならば伺いますが、その予算は提出されるのでありますか。予算編成して提出なさいますか。
  230. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 予算の提出は法律の命ずるところでありますから、これを出さぬといつたら法律違反をやるわけであります。
  231. 尾崎末吉

    尾崎委員 そうすると、先ほどお述べになつたような、休会明けには解散をするとおつしやるのでありますが、その前に編成された予算案をお出しになりますか。または予算の大綱をお出しになるつもりですか。その辺をはつきりしていただきたい。
  232. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 予算を出したいと思つておるわけであります。
  233. 尾崎末吉

    尾崎委員 その点がわからないのです。予算を出す、あるいは予算編成したものを出す、こういことがはつきりならないでおつて、見渡しますと、各閣僚、これは通産大臣にいたしましても、農林大臣にいたしましても、あるいはその他の国務大臣にいたしましても——私ここにたくさん資料を持つていますけれども、ことごとく申し述べる時間がありませんが、具体的にこうもやるのだ、ああもやるのだ——われわれから考えてみますと、予算の面からとうていできそうでないことまでも盛んに放言をしておられる。しかも予算というものは、今総理のお話を伺つてみると、出したいと思つておる、こういうことだけであります。一方では出したいと思つておるが、出していない。一方では今にもこういうことをやるのだ、ああいうこともやるのだと、国民の喜びそうなことを盛んに閣僚が言つておる。そういうことでいいのかどうか、そういうことを聞いておるのであります。
  234. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 予算の要綱は国民に示す方が親切な措置なりと思つております。
  235. 尾崎末吉

    尾崎委員 ちよつとこれは変ですが、さつき伺いますと、予算は出したいと思つておるということでしたが、今度は予算から要綱にかわつて来た。要綱や大綱と予算案そのものと違うことは御承知であろうと思う。でありますから、予算案そのものがなくしておつて、重ねて申しますが、具体的の政策を各閣僚が言われるということはまことに不謹慎ではないか、こういうのであります。要綱を知らせるなんというものではないのであります。
  236. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 不謹慎とは思つておりません。当然各国務大臣がそういうことを言うべきものだと思つております。
  237. 尾崎末吉

    尾崎委員 そうしますと、話が元にもどりますが、予算は出してない。あるいは出そうと思つておるが、出してない。ところがそういうこと——そういうことというのは、私が申し上げましたような、私どもから考えますれば、できそうでないことまでも、あたかも具体的にできるかのようなことを盛んに言つておられるのだが、そういうことは各大臣が言うべきものである。こうおつしやるのでありますか。(「その通り」)そうしますと、ここに問題があります。総理が名古屋の演説でお述べになつたような、われわれが国民に政策を知らせようと思つてこれを発表すれば、選挙運動をやつているがごときことを言う者があるが、けしからぬ、こう言われるのでありますが、今のお話、御答弁をだれが聞きましても、予算は出してないのだ、出したいとは思つている、ところができそうでないことまでも閣僚が言うことはそれはあたりまえだ、こういうことになつて来ますと、これが選挙運動、選挙宣伝でないとどうして言えるでありましようか。これは世の中の人がそれを認めましようか。
  238. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 各国務大臣は実行したいと思うことを話しておるのでありますから、いいかげんなことをしやべつているわけじやございません。
  239. 尾崎末吉

    尾崎委員 ところが実行したいと思うことといいまして、さつき私は二つに区別して申しましたが、政党ならば、ややともすれば予算が伴わない、具体的のことになつていないこと、やりたいと思うようなことをよく発表する者がある。それでも私どもは不謹慎だと思う。ところが少なくとも閣僚が、鳩山内閣というものの大臣が、やりたいと思うことといつて予算の伴わない、予算上の計画のないものを言うことはあたりまえだというのは、これはどうもふしぎでたまらないのでありますが、その点もう一ぺん御答弁を願いたいと思います。
  240. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 実行できると思う確信のもとに演説をしておるものと思います。
  241. 尾崎末吉

    尾崎委員 一体物事をなしますのには、申すまでもなしに、すべて予算というものがなければこれは実行はできません。その予算というものが伴わないでおつて、実行だできそうだ、こう言つてみたつて、これは国民はちよつと納得できないと思いますが、そこをもつと御親切に御答弁願いたいと思います。
  242. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 前の通り答弁をもつて答弁といたします。
  243. 尾崎末吉

    尾崎委員 それでは前の通り答弁だとおつしやるならば、予算は出したいと思つておる、出すか出さぬかわからぬが、出したい、こう私は了承いたします。ところが私が述べました通りに、具体的にそれらのことができるかできないかわからないが、国民のすきそうなことは自由かつてに閣僚がこれを発表していいのだ、すべきものだ、こういうのでありますね。
  244. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先ほど答弁した通りでございます。
  245. 尾崎末吉

    尾崎委員 それでは関連質問でありますからこれで終わりますが、今申し上げました通りに、できないことでも述べるのがこれは鳩山内閣の宣伝内閣たるゆえんだ、こういうふうに了承いたしまして、関連質問を終わります。
  246. 山口喜久一郎

    山口委員長 本日はこの程度にいたしまして、次回は明二十二日午前九時三十分より正確に開会いたしますから、どうぞよろしくお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十八分散会