○長正路君 私は、
日本社会党を
代表いたしまして、鳩山首相ほか
関係閣僚に対し
質問を申し上げたいのであります。
鳩山総理大臣ほか
関係閣僚の皆さん方におかせられましては、よけいなことは必要でありませんから、私の
質問に対する核心だけ明快にお答えを願いたいのであります。(
拍手)
鳩山首相、重光外相、一萬田蔵相は、一昨
日本院
において
施政方針
演説をされ、盛りだくさんの題目を並べられたが、私は、その内容に論及する前に、これらの
演説がどういう心理状態でなされたかをまず疑わざるを得ないりであります。先刻より同僚議員
諸君も申される
通り、
鳩山内閣が
選挙管理
内閣として生まれ、しかも、われわれの
質問の直後には
衆議院の解散を断行し、
選挙によ
つて国民の審判を受けることは、もはや明らかなる事実であります。鳩山首相は吉田前首相に対して
相当手きびしい攻撃をされておるようでありますが、この吉田さんでさえ、総辞職直前の二十国会劈頭の
演説では、さすがに
施政方針
演説とは言わずに、
政府の
所信に関する
演説と遠慮をされたことは、よもや鳩山首相はお忘れでなかろうと思うのであります。(
拍手)
鳩山内閣は、総
選挙後は直ちに総辞職をしなければならないのであります。この明らかなる事実があるにもかかわらず、いかにも長期政権を担当するかのごき印象を持たす
施政方針帆説をや
つてのけるとは、きわめて悪質なる
選挙事前運動であると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)その点だけでも吉田前首相を攻撃する資格はない。いかなる観点から
施政方針
演説をなさ
つたのか、その所見を承わりたいのであります。
次に、一兆円予算を踏襲する一萬田財政に対して石橋通産
大臣は反対の立場をと
つておるとの風評が強く伝えられておるのであります。事実、これを裏書きするように、石橋通産
大臣が機会あるごとに発表をしておる産業の拡大生産均衡論は、その主張を現実に進めて参りますると、一兆円緊縮財政を堅持する一萬田財政と鋭く対立をするはずであるし、明らかに矛盾をすることになるのであります。これに対し石橋通産
大臣はいかなる
考え方を持
つておられるか、お伺いをしたいのであります。
さらに、巷間伝えられるところによりますと、
鳩山内閣の組閣に当り、石橋さんは大蔵
大臣のポストにつくことを極力希望せられたやに承わ
つておるのであります。それに関連をいたしまして最近、金融界
方面において、きわめて妙なうわさが広ま
つておるのであります。すなわち、大蔵
大臣のポストをめぐる一萬田、石橋両氏の暗闘は、転じて
日本銀行の支配権争奪に発展をしておるといわれておるのであります。鳩山首相の女婿に当る古沢日銀理事を通じ、日銀内に強力なくさびを打ち込まんとする石橋と、井上現副総裁を腹心とする一萬田が、火花を散らして、日銀の支配権を自分の手に握ろうとする権謀術数をめぐらし、日銀内部は、ために深刻なる動揺をしておると伝えられておるのであります。(
拍手)私はこの種のうわさを手放しで信用するものではありません。しかし、俗に火のないところに煙は立たないと言うのであります。いわんや、
日本銀行といえば
日本の金融の総本山であります。この支配権を握れば、
日本経済の死命を制する動脈を握つたも同然であります。別な
言葉で言いまするならば、
日本の
政治を動かす金の力が生産される場所であります。その生きた証拠に、現にここに一萬田大蔵
大臣というりつぱな見本が存在しておるではありませんかはなはだ失礼ではありまするけれども、
日本銀行総裁に就任するまでは一介の銀行マンにすぎなかつた一萬田さんが、今日こつ然として大蔵
大臣のいすにすわり、民主党次期総裁説まで流布されるゆえんのものは那辺にありますか。一にかか
つて日銀総裁として八年の歳月を日銀の上に君臨していたというこの一点に尽きるのであります。中央銀行たる
日本銀行が
政治色に染まつたり、その運営が公正を欠くことがあつたならば、
わが国の産業
経済に及ぼす悪影響はきわめて甚大であります。(
拍手)かような見地から申しますると、かかる不明朗なうわさがちまたに流布されることはまことに憂慮にたえないのであります。もしこれが事実でありましたならば、将来
日本の
政治の腐敗はここに発すると言
つても過言ではなかろうと思うのであります。
なお、日銀機構の独裁化を防止し、その公正なる運営をはかるためにも、現在の
政策委員会の強化拡充をはかることはきわめて必要なことであります。現在の
政策委員会の顔ぶれを見てみますると、財界、
経済界の大物や、あるいは特定の学者を並べて、真にその機能を発揮しておるかどうかということは、はなはだ疑わしいものがあるのであります。この際、その人選を一新して、
政策委員会を強化する
意思があるやいなや、特に中小企業
代表を加えて中小企業金融の完璧を期する考えがあるかどうか、それらの点につきまして、あわせて一萬田蔵相の明確なる
答弁をお願いしたいのであります。
次に、商社の統合強化問題について、一萬田蔵相は商社の救済たな上げ策として、日銀の二次高率適用免除を積極的に推進すると言
つておるのであります。この問題をいかように取り上げようとするのか、具体的な内容を承わりたいのであります。この種の大商社の債務は、東京百五十億、大阪二百億といわれておるのでありますが、もしこれが
実現の暁は、債務にあえぐ大商社は膨大なる金利支払いを免れて、労せずして息を吹き返すことになるのであります。商社の整理統合の名目に隠れて、
政府の保護助長
政策が特殊な企業だけに及ぶことは、その裏
において
政治的汚職、疑獄の種をまくおそれなしとしないのであります。昨年十九国会を通じて暴露された造船疑獄など、最もその適例であります。私は、この造船疑獄の真相さえいまだに明らかにされておらない今日、同じような弊害を生むおそれのあるこの種の商社統合の特殊な企業保護
政策を
軽々に口にすることは、まことに軽卒なふるまいと思うのであります。ことに、大阪
方面において
選挙資金集めに利用されておるといううわさがあるに至
つては、言語道断であると言わざるを得ないのであります。(
拍手)
この商社統合問題のごときは単なる一例にすぎないが、総じて、一萬田大蔵
大臣にせよ、石橋通産
大臣にせよ、
鳩山内閣の
経済閣僚は、人気取りの空疎なるから景気論をしやベ
つて、実質的なことは今日まで何もや
つておらないのであります。たとえば、石炭
関係について見ましても、今日石炭企業は言語に絶する危機に直面をし、労賃の遅配と中小炭鉱の廃休山による失業者の増大は今や重大なる
社会不安を醸成しておることは言うまでもないところであります。十九国会の通産委員会は、この危機打開のために、二十九年度石炭消費量を四千八百万トンと、定め、
外国よりの重油、石炭の買い入ればこれに見合うように制限するということを超党派的に決定をしたのであります。しかるに、
政府は何らなすところなく傍観をしていたために、二十九年度はこれをはるかに下回る四千百五十万トンと、昨年より二百万トンの減少を示すなど、解決の曙光は何ら見られていないのであります。もつとも、これは吉田前
内閣の無為無策の責めに帰するところでありまするが、石橋通産
大臣は、この現状を百も承知しながら、先般、関西
において財界、
経済界の
代表者懇談会におきまして、重油の規正は行わないと言明をしておる。一体、今後国内石炭の需給調整をどうするのか、明確なる見通しと方針とを伺いたいのであります。(
拍手)
次に、河野農林
大臣にお尋ねをいたします。過日
政府部内より韓国米購入に関する報道がなされておりましたが、事実であるかどうか、もし事実ならば、その数量、価格、取引の方法はどういう方針であるかということを承わりたいのであります。農林省内部からの話によりますると、数量は十一万トン、FOB価格トン当り百八十五ドル、バーター制により購入するとのことであります。百八十五ドルの価格について農林
大臣は適正価格と考えられるかどうか、また対韓貿易
において
日本は四千万ドルに上る貸し越しを持
つて、これが焦げつきにな
つておるのであります。バーター制をと
つて取引をやる場合に、その焦げつきの四千万ドルはどういう処理をなさるつもりか、それもあわせてお伺いをしたいのであります。(
拍手)商社筋の交渉では、韓国米の相場は百七十八ドル程度というのが常識であ
つて、昨年は豊作の
関係もあ
つて交渉次第ではこれ以下になることも可能であるというのが今日の常識であります。何ゆえに百八十五ドルという割高な買い入れを行わんとするのであるか。昨日、本議場
において、百八十五ドルでは買わないと河野農林
大臣はおつしや
つたのであります。ところが、京城発のAFP電報
においては、すでに韓国
政府ではこの輸出を決定しておるということを伝えておるのであります。また取引も、韓国側大韓産業一社に、
日本側は第一通商一社に指定をするといわれておるのであります。農林省内部
においてすら、こうごうたる非難が起
つておることを、あなたは知らないのでありますか。(
拍手)また世間では、こんなことも言
つておるのであります。この筋書きは根本官房長官と個人的に懇意な間柄にある韓国大使館の—特に私は名前をあげませんが、某参事官との合作によ
つて話が持ち込まれ、当初河野農林
大臣はこれに反対しておつたが、その後賛成に急変をしておるのであります。その間の事情はともかく、この話は、もともと日韓双方とも
選挙を前にして
政治資金と重大なる関連ありといわれておるのであります。これを裏書きする証拠といたしまして、韓国側の引受け商社である大韓産業の社長は李承晩
政府の騨財務部長であ
つて、韓国における参議院
選挙の資金工作として秘密裏に進められておるという事実があるのであります。韓国側の事情がかような
実情であるとするならば、
日本側の第一通商につながるものが何であるかということはきわめて容易に想像されるところであります。伝えられるところによりますと、国会が解散をした直後に発表をするとい
つて、虎視たんたんとしておるということであります。この際、河野農林
大臣より、本問題に対する明快なる御
答弁を願いたいのであります。
次に鳩山首相にお尋ねをいたしますが、首相は、去る一月十二日に、中国遊説の途中、岡山から広島に向う汽車の中で、新聞記者団に談話を発表いたしておられるのであります。その談話の内容によりますると、一、首相に対して、すなわち鳩山首相に対してアリソン駐日大使から書簡が寄せられたこと、一、その書簡の中でアリソン氏はダレス国務長官からの伝言を首相に伝えておること、ダレス氏は特に鳩山首相によろしく伝えてくれと述べておること、一、そこで鳩山首相は、去る十日ダレス氏にあてて、
日本の国内に潜在する反米感情を一掃するように努めたいという返事を書いて出したということが新聞に書いてあるのであります。私は朝日新聞の切り抜きを今ここに持
つておるのであります。他の新聞の報道も大体
において似たり寄つたりのものであります。そこで私は首相にお尋ねをいたしたいのは、この新聞記事に出ておるものは間違いないかどうかということであります。また、アリソン駐日大使が鳩山首相に寄せた書簡というものは、どういう種類に属する書簡であるか、公文書なのか、私文書なのか、私文書だとすると、どういう種類のものか、また書簡の内容を発表されることができるかどうか、さらに、ダレス氏にあてて出された返事の書簡についても、公文書、私文書いすれのものかを、詳しく御説明を願いたいのであります。
これらの点を詳細に御説明願いたいと思うのは、実は、私は、この新聞報道の内容について少しく違つた事実を伝え聞いておるからであります。私が聞くところによりますると、アリソン駐日米大使は、鳩山首相に対して別に書簡などは寄せていないというのであります。ただ、ダレス米国務長官からアリソン大使にあてて書簡が寄せられたということは、これは事実であります。このダレスからアリソンあての手紙の中で、ダレスは、たまたま
日本の政変の問題に触れて、新しく
総理大臣に
なつた鳩山という男は、数年前に自分が再軍備と講和条約問題で
日本を訪問していたときに、ニューズ・ウィークという雑誌の東京支局長。パッケナム、このパッケナムのあつせんで、石橋湛山という男や野村吉三郎氏らと一緒に会つたことがある、この男のことなら記憶に残
つておるという
意味のことが書かれてお
つたのであります。別にダレスが鳩山首相に特によろしく伝えてくれなどとは決して書いてなかつたというのであります。このアリソン大使あてダレスの書簡を、官房副長官をしております松本瀧藏君がアリソンのところへ情報を取りに行
つて伝え聞いて、これを松本君が持
つて帰
つて鳩山首相に報告をしたというのが真相であります。さらに、首相は、松本君のこの報告を聞いてダレスが自分を覚えていてくれたということはありがたい、さつそく自分も手紙を書いて、一つアメリカに対して宣伝外交の手を打
つておこうという気で手紙を書いた。ただし、その手紙は、直接ダレスあてに出したものではなく、アリソン駐日大使あてに出しておるのであ
つて、しかもその返事はいまだに来ておらないのであります。こういうふうに私は聞いておるのでありますが、鳩山さんの記者会見の話とはだいぶそのいきさつが変
つておるのであります。外務省
方面のうわさによりますと、大体一国の総理が外交上の問題で
外国の
責任者と私信を取りかわすということは従来その慣例を見ないところであるし、いわんや、外交上の私信のやりつぱなしということは、その類例を見ない醜態きわまるということを言
つておるのであります。そこで私が問題だと考える点は、首相は、ダレス氏に書簡を出したと言いながら、実際は出しておらない。この
通り出したと書いてある。車、中談の漫談で、ついうそを言
つてしまつたといえばそれまでだが、いやしくも、一国の総理が、しかも他国のアメリカ
政府の
代表者を引き合いに出して、出しもしない手紙を出したと宣伝するなど、これは外交上ゆゆしき問題をかもすおそれさえあるのであります。(
拍手)この点につきましては、外務省の高官でさえ苦々しく思
つておるところでありまして、
選挙宣伝の具に供さるるには問題の性質がきわめて重大でありますから、その真相をはつきりお答えを願いたいのであります。(
拍手)
次にお尋ねしたいことは、鳩山首相の
政治家としての信条についてであります。今、あなたは、口を開けば吉田前首相の悪口を言
つておられる。その吉田を政界に送り込んだ張本人は
鳩山一郎自身であつた事実を忘れておられるのであります。吉田が
責任をとるとともに、あなたも
国民に対しその不明をおわびをしなければならない立場にあるのであります。しかも、近来のあなたの
政治行動は、
議会政治を毒するもはなはだしいものがある。この数年来の政局不明朗と混乱は、むしろあなたの無定見、無軌道の
政治行動にその
責任の大半があると言
つても過言ではないのであります。(
拍手)古くは
政治活動を禁止されていた追放中の裏面の
政治活動、追放解除の後は、自由党内の不半分子の頭目とな
つて、鳩山自由党を作
つて飛び出し、幾ばくもなくまた復帰して吉田と手を握り、一年たつかたたないのに、再び飛び出して民主党を作る。あなたの主観は、すべて吉田が悪いからだと割り切
つておるかもしれないが、そのために生じた政界の混乱、不安は民主
政治の堕落という形にな
つて現われておるのであります。(
拍手)かような一連の行動から批判いたしますと、
民主政治家としての鳩山首相は、肉体的障害者であるとともに、
精神的にも重大なる欠陥があると私は考えるのであります。(
拍手)この点に関する首相の信条を承わりたいのであります。(
拍手)
最後に、もう一言鳩山首相にお尋ねをいたしますが、一昨年来くすぶ
つて、ついに指揮権発動にまで発展をいたしました造船疑獄、保全
経済会その他の汚職疑獄問題の処理についてであります。首相は、一昨日の
施政方針
演説の中に特に言及をして、
政官界の
粛正と道義、
道徳の
高揚を推進すると言
つておられるが、この際先にあけた汚職問題等の究明を徹底的に行う
意味であるかどうか。あれだけ
国民関心の的に
なつた造船その他の事件をそのままにしておいて、これから
政官界の
粛正をするといかに大みえをお切りにな
つても、
国民は納得をするものではないのであります。(
拍手)この際乾坤一擲の勇気をふる
つて事件の全貌を
国民の前に明らかにされるように、特に強く
要望をいたしておきたいのであります。
また、昨年六月、本院の
行政監察特別委員会における平野証言によりますと、保全
経済会
関係で伊藤理事長より献金を受けた内容は、廣川弘禪君に三千万円、大藤唯男君、重光葵君の両君に二千万円、鳩山首相に一千万円と、明らかにこれは速記録に書いてあるのであります。(
拍手)かつ、同じく九月十五日の大蔵委員会
において、同僚春日委員の、これらの献金に対する所得税、贈与税をいかに扱うかとの
質問に対して、平田国税庁長官その他の
答弁は、
政治資金規正法の届出なき分については所得税、贈与税を課せられる、内容については目下
調査中であると言
つておるのであります。この件については、今日に至るも何ら明確にされす、うやむやのうちに葬り去られておる状態であります。
一般の
国民の税金は強硬
手段に訴えても取り立てるが、こうした
政治献金をやみからやみに葬り去るのみならず、税金までもごまかしてしま
つては、
国民の納税思想に影響することきわめて甚大であります。(
拍手)ことに、献金リストの中には、現鳩山首相のほか、外務
大臣、
国務大臣、さらに民主党の領袖の名が連ねられておるのでありまするから、一そうその点は明確にしていただきたいのであります。(
拍手)鳩山首相その他の方方は、
政治資金規正法の届出をなされたかどうか、またもしそうでないとしたならば、所得税を払
つておられるかどうか、明快なる御
答弁を願いたいのであります。
以上をもちまして私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇〕