運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-12-16 第21回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十六日(木曜日)    午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 喜多壯一郎君    理事 富田 健治君 理事 大橋 忠一君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       上塚  司君    金光 庸夫君       佐々木盛雄君    岡田 勢一君       北 れい吉君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    河野  密君       西尾 末廣君    有田 八郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  委員外出席者         外務政務次官  床次 徳二君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (経済局長)  朝海浩一郎君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務省参事官  矢口 麓藏君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十二月十六日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  岡田勢一君が議長の指名で委員に選任された。 十二月十五日  日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力  に関する協定締結について承認を求めるの件  (条約第二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力  に関する協定締結について承認を求めるの件  (条局第二号)  国際情勢に関する件     ―――――――――――――
  2. 喜多壯一郎

    喜多委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について並木芳雄君より質疑の通告がありますしこれを許します。並木君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 私政府当局緊急質問をしたいと思います。それは国民政府中共政権との関係についての緊急質問でございます。実は昨日重光外務大臣に、この点については私どもも超党派的に相当つつ込んだ質問をしたわけでありますが、従来の吉田内閣の考え方とは一歩前進して、かなり幅のある含みのある答弁で、こういう点についてはさすがに新しい外務大臣に期待を寄せることができるとわれわれは感じたのであります。それをさらに竿頭一歩を進めて、昨日鳩山総理大臣が、ラジオ街頭録音の中継においてはつきり答弁をした、私はゆうべおそく十一時過ぎでした。その街頭録音ラジオで聞きました。実にきつぱりと答えております。それは大阪のある六十歳ぐらいのおじいさんが聞いたことに対して、鳩山さんが親しみのある言葉で、おじいさんわかりましたか、こうですよと言つたところが、おじいさんがよくわからない、じゃ鳩山さんこういうことですか、結局台湾国民政府も認めると同時に中共政府も認めるということですかと開いたのです。そうしたら鳩山総理大臣が、そうですよ、そうですよ、そうですよというようなことを三度繰返して、両方ともりつぱな独立国であります。両方とも隣国のりっぱな独立国でありますということをはつきり言つたのです。私は実は心の中で手を打つたのです。ということは下田条約局長、覚えておるでしよう。あの日華平和条約審議するときに、ずいぶんあのころとしては言いにくかつたのです。当時の外務大臣である岡崎さんに対して、あまりアメリカと討死にをするようなことをしておくと、あとから引込みがつかないようなことになるおそれがあるのではないか、将来の含みとしては台湾中共とをそれぞれ独立して認める余地を残しておいた方がよいのではないかという発言をしております。これは速記録に載つておるのです。ですから私どもとしては、鳩山総理大臣か、並木芳雄の説を取入れて、きのうははつきり答えてくれたというような意味でうれしかつたのです。そこできようはおそらく野党の方からこの点については重光外務大臣にもじきじき質問がある思います。その前に私は条約局長に対して法的の関係を明らかにしておいてもらいたい。  そこでお伺いしたいのは、現在の日華平和条約交換公文にあるところの「第一号、書簡をもつて啓上いたします。」の中に「本日署名された日本国中華民国との間の平和条約に関して、本全権委員は、本国政府に代って、この条約条項が、 中華民国に関しては、 中華民国政府支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解に言及する光栄を有します。」とあるのは、これは当時の事情としては無理がなかつたにしても、今日のような状態においてまで、これがあくまでも日本として中共というものを認めることができないということを確約しておるかどうか、これか第一点であります私どもはそこまで確約しておらない、もつと幅があるというふうに思つておるのでありますが、はつきり局長答弁を求めたいと思います。それが第一、の重要な点です。  それから第二の重要な点は、きのう佐々木委員指摘した中国問題に関する吉田内閣総理大臣からダレス大使にあてた書簡及びダレス大使書簡です。これは一九五一年十二月二十四日、吉田茂として当時のダレス大使にあてております。きのう電光外務大臣は、その書簡については関知しないと答えておるのは当然です。関知しなくていいわけなので、この書簡はわれわれ日華平和条約審議のときに、ただ参考資料として政府から配付を受けただけであつて、別にこれに対して承認とかなんとかいう議決行為をしておりません。従つてこれは外務大臣がそれは知らないと答えてもちつともさしつかえないわけです。しかしそういう書簡があつたということは事実なので、これに書いてある最後のところです。「なお、千九百五十年モスコーにおいて締結された中ソ友好同盟及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事同盟であります。事実、中国共産政権は、日本憲法制度及び現在の政府を、強力をもつて顛覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。これらの考慮から、わたくしは、日本政府中国共産政権と二国間条約締結する意図を有しないことを確言することができます。」と書簡を送つております。これと昨日の鳩山総理大臣の言との関係はどうなつておるか、非常に重要な国際問題であります。ですから、これについて、この吉田書簡がどの程度現在の鳩山内閣を拘束するか、拘束の問題になつて来ると思うのです。いろいろ事情変化その他もありましよう。法律的のみならず、政治的情勢変化というものも含めて、この際局長からはつきり答弁をしてもらいたいと思います。
  4. 下田武三

    下田説明員 政治的観点からの見解は、私申し上げる立場にないので、純法律問題として、御指摘の点につきましてお答えいたしたいと思います。  まず第一に、並木さんの御引用になりました日華平和条約付属交換公文、これも当時国会台湾が四畳半だとか、本土が八畳だとかいう問題もありました通りでございまして、要するに日華平和条約におきます日本政府根本観念は、なるほど国民政府平和条約を結ぶけれども、そのことはいわゆる中国の全領土にこの条約適用するものであるという見解はとらないということであります。当時平和条約国民政府と結ぶなら、その建前に基いて条約を結ぶよりほかしかたがなかったわけでございます。でございますから、御指摘交換公文におきまして、現に国民政府支配し、また将来支配することがあるべき領土適用があるという、平和条約とは申しながら、適用地域的限界はつきり限りがあるということを認めた上での条約でございます。そこで、鳩山総理の昨日のラジオ録音を私不幸にして伺いませんでございましたが、おそらく鳩山総理法律的の見解からものをおつしやつたのではないと思うのであります。二つとも国だと言われました。国というのは、法律的に言いますと、めんどうくさい定義を要しますけれども、要するに一定の領土があり、その領土の上に人間が住んでおり、その上にそれを潜める政権があるとすれば、これは通俗観念からすれば、国がある、国民政府台湾にも領土があり、人民かおり、これを統治する政権がある、大陸の方にも領土があり、人民が住み、これを統治する政権があるとすれば、通俗観念から言つて二つの国だとおつしやることは、ごうもさしつかえないと私は思う。すでに日華平和条約付属交換公文において、片一方の国民政府平和条約を結びましたけれども、それは明瞭に先ほど申しましたように、地域的の限界があるという根本立場から申しますならば、その支配が及ばざる他の地域があるということも同時に裏から認めているわけですから、鳩山総理二つのいわゆる国かあるということはちつとも私は矛盾しておらないと思います。  次に第二の吉田ダレス交換書簡の件でありますが、これは将来の日本政府をも拘束する法律的のとりきめであるかどうかという点が御質問の核心だと思います。これは仰せのように、日華平和条約審議の際の参考資料として国会にも御配付したのであります。この中に掲げられてありますことは、当時の事態に基いた日本政府インテンションと申しますか、意図宣明にしかすぎないのであります。厳密な意味での国際条約と言うことはできない。これはその内容からただちに御判断できることでありまして、まずこの吉田ダレス書簡の前段が最も重要なのでありますが、「日本政府は、究極において、日本隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります。」これがつまり日本根本政策であります。時の事情によりいかなる人間が支那を治めようとも、隣邦中国はこれは恒久的な善隣平和の関係にあることを、日本政府は希望するものであると吉田総理は述べておりますしこれが根本原則であります。しからばその根本原則の上に立つて時の情勢によつてかわり得ることは何かと申しますと、第一段におきまして、つまり国民政府は、国連加盟国の大部分を含む世界の多くの国の承認を受けて、たとえば国連においても、中国を代表する政権と認められている、であるとすれば、日本政府はすぐにでもこれと国交関係に入ることが可能である。第三段におきまして、中共政権の方は、これは国連決議で武力による侵略者烙印を押されており、また御指摘のように中ソ同盟条約というものを結びまして、日本対象とする条約を結んでいるしこのような当時の情勢のもとにおきましては、これは国交関係に入ろうと思つても入れないということを申し述べております。ですから第一段の根本原則は、これは日本政府のおそらく明治以来の恒久的の意図であろうと思います。第三段のは、その当時の情勢において日本政府意図するところをただ宣明したにすぎない。と申しますことは、国連決議がいつまで続くものかわかりませんが、そのときどきの情勢によつて第二段、第三段のことはかわり得るものではないか、そういうように当時の情勢からの意図宣明にしかすぎない、そういうように解しております。
  5. 並木芳雄

    並木委員 きわめて明快な局長答弁であつたと私は今聞きました、そこで私はこれは重要な問題ですから確認したいと思うのです。最初の点で確認をしたいのは、要するに日兼平和条約地域的の問題は、隣国国民政府とともに中共政権というものが独立国として存在したとしても、それをまた日本が認めることがこれからあり得るとしても、ひとつも抵触しない、こういう意味でございますね。何ら矛盾しないということは、将来もし日本国民政府とは別に中共政府というものを認めるような事態が来るとした場合に、この条約を何ら改訂することなしにできる、こういうふうに了解してよろしゆうございますね。
  6. 下田武三

    下田説明員 御質問の点は、法律問題を離れまして政策の問題になつて参ると思いますが、法律問題として申し上げられることは、先ほど申しました日義平和条約は、国民政府が現に支配し、あるいは将来支配する地域適用があると適用地域限界を設けましたことは、その適用地域外のことは白紙に残しておるということだろうと思います。それ以上のことは政策の問題になりますのでお答えしかねます
  7. 並木芳雄

    並木委員 鳩山内閣でそれをやるかどうかということは別だけれどもりつぱな独立国であるとはつきり鳩山総理言つているのですから、将来そういう事態が来ないとも限らぬ。かりにアメリカ方針がかわつて来て、英国と同じよにしようじやないかということになれば、中共承認するということもあり得るわけでしよう。もしそういうととが起つたときに、この日華条約は訂正もしないでできますねと言つておるのです。これは答えられますね。そうでないとさつきの矛盾しないという答弁と矛盾して来るでしよう。
  8. 下田武三

    下田説明員 仮定の御質問でございますけれども、とにかく現に国民政府支配する地域以外の恥には、平和条約適用はないということを明らかに規定しておるわけでありますから、それ以外の土地は白紙である。これはもつぱら将来の情勢変化によつてきまるべき問題だ。この建前吉田ダレス書簡においても――むしろ吉田ダレス書簡の方が先にあつたわけですが、吉田ダレス書簡建前日華平和条約とちつともかわつていない。従つて白紙に残つておるということだけを法律的には申し上げられると思います。
  9. 並木芳雄

    並木委員 少しくどいようですけれども、大事な点ですからお聞きします。仮定の問題だと言いますが、仮定の問題はほとんど現実の問題と関係があるわけです。総理がきのうそういうことを言つておるのですからね。仮定の問題には違いないけれども、もし承認するようなことがあつても、今までの局長答弁では、日華条約には抵触しないと言つているのですから、私はこれに手を入れることなくしてできるのじやありませんかと聞いておる。法律的にできるのじやありませんか。条約上できるのじやありませんか。これのどこかにこういうことを訂正しなければできないということがあるかどうか。法律関係は答えられると思うのです。今の答弁でできるように承つたけれども、もう一度はつきり答弁願いたい。
  10. 下田武三

    下田説明員 これはたとい法律問題としてお答えしましても、お答えの内容はどうしても内外に対する政策的な考慮から、意外な波紋を起すこともあり得るということを覚悟の上で申さなければならぬと思います。これはむしろ根本問題になりますから、私といたしましては先ほど申しました日華平和条約適用ありとされた地域以外の地は、これは白紙である、もつぱら将来の現実情勢の動きと政策によつてきまるべきものであるということを申し上げるにとどめさせていただきたいと思います。
  11. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一つの点を確認しておきます。なるほど今局長の言う通り、その点は鳩山総理じきじきに聞くべき問題であり、聞けばはつきりわかつて来ると思うのです。ただわれわれが恐れるのは、野党の方から総理と外相とは言うことが違つているじやないか、また鳩山さんは軽々しく、何もよく研究しないでああいうことを言つたのじやないか、こういう攻撃に対して、私は先制攻撃をしておるわけです。そういう意味で聞いておるわけですから、特に御留意願いたいと思います。  もう一つの点で確認しておきたいのは、吉田首相から……。
  12. 喜多壯一郎

    喜多委員長 並木君に申し上げます。なるべく簡単に願います。
  13. 並木芳雄

    並木委員 ダレス氏にあてたるあれといりものは、結局意図の宜明をしたにすぎないので、これは鳩山内閣を拘束するものではない、約束ではない、こういうことを言われた。これは非常にはつきりしたわけです。ですから、しいて言えば、この点は道義上の義務くらいのところでしようか。
  14. 下田武三

    下田説明員 吉田ダレス書簡国際約束でないと申し上げましたのは、厳密に法律的の意味においての話でございます。しかしいやしくも一国の政府がその政府意図を外国に対して宣明するといたしますと、これは法律上の約束でないにしましても、すぐまたくるりとその意図をかえるということは、政治徳義と申しますか、モーラル・オブリゲーションを感じることは当然であります。しかしモーソル・オブリゲーションということの意味は、つまり日本は現に中共国交を開く地位にないと言いましたのは、前提があることであります。つまり国際連合侵略者としての烙印を押されておる。また中ソ友好同盟というものがあつて日本対象としておるという前提があつてのことでありますから、その前提は一体永久に存続するものであるかどうかということはちつともきまつていないわけですから、前提がくずれましたならばそれの意図がかわつても、ちつともモーラル・オブリゲーションとしてやましくないというよりに存ずるのであります。
  15. 並木芳雄

    並木委員 はつきりしました。よろしゆうございます。     ―――――――――――――
  16. 喜多壯一郎

    喜多委員長 日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件(条約第一号)、日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件(条約第二号)を一括議題といたします。政府側提案理由説明を求めます。床次外務政務次官
  17. 床次徳二

    床次説明員 ただいま議題となりました日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件並びに日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが政府は、かねてサンフランシスコ平和条約当事国でないビルマ連邦との間に正式の国交を開くために種々努力を重ねて参りましたが、前内閣の時代すなわち本年八月にウ・チョウ・ニエン氏を団長とするビルマ親善使節団が来朝いたしましたのを機会に、両国間の最大の懸案である賠償問題について先方と交渉を重ねました結果、円満妥結を見るに至りまして、九月二十五日に両国間平和条約中の賠償関係条項及び両国間賠償経済協力協定の仮調印が行われました。次いで、ラングーン両国間平和条約に関する交渉が行われましたところ、これまた円満妥結を見るに至りましたので、十一月五日に、この日本国ビルマ連邦との間の平和条約及び日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定は、ラングーン岡崎外務大臣ウ・チョウ・ニエン外務大臣代理との間で正式に調印されるに至ったのであります。  この平和条約は、賠償関係条項を除き、さきに締結されました目印平和条約と大体似た内容を有しております。賠償及び経済協力協定におきましては、わが国は、ビルマ連邦に対しまして、今後十年間にわたつてまず賠償として年平均二千万ドルの価値を有するわが国役務及び生産物を供与いたしますとともに、さらに経済協力として年平均五百万ドルの価値に達する同様の役務及び生産物同国の使用に供することになつており、このわが国義務とともにビルマ側協力すべて事一項を具体的に定めております。  思うに、ビルマに対する賠償負担は、わが国経済にとつて容易ならぬ負担ではありますが、この賠償問題の解決によりましてビルマとの間に正式の国交が開けることとなりましたことは、わが国の対東南アジア外交に一歩々進めることとなる次第でありまして、まことに喜ぶべきことと申さねばなりません。  しかるところビルマ側におきましては、本条約早期実施を希望し、同国国会は目下休会中でありますが、明年二月の休会明け劈頭条約を提出してその承認を求めることとなつておる趣であります。従来サンフランシスコ平和条約初め、日華日印平和条約のいずれの場合におきましても、まず日本側批准があつてしかる後相手方批准する例となつておりますので、本条約につきましても、もし右期日までに日本側批准が済んでおりません場合は、ビルマ側もわが方の態度決定をまつて審議を行うこととなるべく、従つて条約批准及び実施は数箇月の遅延を来すこととなるを免れません。  かくのごときは日緬間の正常国交関係の回復の一日もすみやかならんことを希望するわが方にとり、大なる損失と申さねばなりません。よつてここに歳末、年始にかけての御多端な時期であるにもかかわらず、あえて本委員会の御開催を仰ぎ、速急御審議を煩わすこととなつた次第であります。つきましては右事情を了とせられ、慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  18. 喜多壯一郎

  19. 下田武三

    下田説明員 昨日第二条まで事実上の御説明を申し上げましたので、その後につきまして簡単に御説明申し上げたいと思います。  第三条は、通商航海条約締結予約に関する条項でございます。これは桑港条約の先例をとつたのでありますが、ただここに落ちておりますことは、桑港条約等におきましては通商航海条約ができるまでの間、最恵国待遇を与えるという条項があります。これは片務的な最恵国待遇で、連合国側日本最恵国待遇を与える限度において、日本側もまた与えなければならないということがあつたのでございますが、これは本条約からは省かれておるということが大きな点でございます。これは実は日本はすでにガツトの事実上の加盟国になつておりまして、関税上も最恵国待遇を受けております。また人間が行くにつきましても船が行くにつきましても、事実上何ら差別待遇を受けてないのでありますから実質的には大したことはありません。  次の第四条、漁業条約締結交渉予約に関する条項でありますが、これは日印平和条約とまつたく同一でございますので御説明を省略さしていただきたいと思います。  第五条が本条約の実質的の眼目でございまして、賠償経済協力に関する基本条項に相なつております。この点につきましては後刻中川アジア局長から賠償経済協力の御説明がありますので、詳しい御説明を譲りまして、ただおもな点を申しますと、賠償の問題につきましては、サンフランシスコ条約役務賠償を払うという原則が樹立されております。原材料を連合国側から供与して、日本外貨負担をかけさせないという建前でありましたが、この条約におきましては役務のほかに生産物を提供するという点に一歩踏み出しておる次第であります。この賠償条項の中で二、三注意的にお話したいのは、1(a)の第三項で、他のすべての賠償請求国に対する最終的解決をしたときに、公正なかつ衡平な待遇という見地から、ビルマ連邦賠償問題を再検討するということがいわれております。これはビルマフイリピンインドネシア等に率先して日本との間の賠償をとりきめるわけでありますから、あと日本が、フイリピンインドネシア等とどういうとりきめをなすかということに関心を持ちますのは、これは当然の次第だと思います。従いましてこの再検討条項が繰入れられたわけであります。この賠償条項の他の規定は、大体においてサンフランシスコ平和条約のそのままの踏襲でございまして、こまかいことはただいま御説明申し上げるのを省かしていただきたいと思います。  第六条のビルマ財産返還規定、これもサンフランシスコ条約連合国財産返還規定同一の趣旨に出ておるものでありまして、これも御説明を省かしていただきたいと思います。ただ日華平和条約の場合におきましてはこのような規定がございません。つまり日華平和条約におきましては、第三条でお互いの相手方財産及び請求権の問題については特別とりきめで解決するという建前をとつておりますので、当然日本に対する無賠償方針という中国態度からこの規定はなかつたわけであります。ビルマの場合におきましては、ビルマ賠償を要求するという、建前をとつておりますから、第六条の入りましたのはこれまた当然と存ぜられるのであります。  第七条の戦前債務有効性確認規定、第八条の日本側のいわゆる戦時請求権放棄等規定は、これはもう前例通りでございますので、御説明を省かしていただきたいと思います。  第九条に、紛争の解決条項がございます。これは日印条約と多少迷うのでありまして、日印条約は仲裁で最後に解決するというようになつております。また日華平和条約の場合は、交渉または平和的手段で解決するということだけを書いておりますが、今回の平和条約では、紛争が起りましたならばまず交渉によつて解決することをきめておりますが、しかし最後的には国際司法裁判所に付託されるという点を明記されました点が日印条約と違う点であります。  第十条の批准条項以下の形式的条項はあえて御説明申し上げるまでもないと思います。  これで終ります。
  20. 喜多壯一郎

    喜多委員長 次に中川アジア局長から賠償及び経済協定に関する説明を求めます。
  21. 中川融

    中川説明員 賠償及び経済協力に関する協定につきまして簡単に御説明申し上げます。  この協定は、条約局長から御説明になりました平和条約の第五条に規定いたしております賠償及び経済協力に関する件、これらの細目規定になるわけであります。  第一条は、賠償原則並びに経済協力原則を掲げておるのであります。内容平和条約の第五条と同じことがそのまま繰返して規定してあるのであります。違いますところは、第三項におきてまして、どのようなものに賠償並びに経済協力をやるかということが書いて刈るのであります。附属書にさらに各項目が列挙いたしてあるのでありますが、この主たる目的はビルマ連邦経済の再建並びに発展、社会福祉の増進のためにこういうものに協力するということになつておるのであります。  その次は第二条でありますが、これはビルマ連邦賠償並びに経済協力実施に関連し負担しなければならない義務につきまして規定してあるのでありまして、その義務の第一といたしまして、現地で調弁しなければならない労務、資材等はビルマ側が提供するということが第二項に書いてございます。なお経済協力については合弁事業、共同事業という形が考えられるのでありますが、その場合はビルマ側が先方の負担分は負担しなければならない、当然でございますが、さような規定が第三項に掲げてございます。なお賠償として日本側から提供いたしましたものをビルマがさらに第三国に再輸出するということになりますと、これは日本としては正常貿易の領域を蚕食されることになりますので、再輸出はしないということが第四項にビルマ側義務として規定してございます。  その次の第三条は、共同事業あるいは合弁事業の大体の原則をここに規定してございます。ビルマ側の持分は六〇%より少くないものにするということが第一項に規定してございます。第二項、第三項は、合弁事業についてビルマ側が強制収用する場合のことについて規定してございます。第四項は、合弁事業等からいろいろ日本側に送金する必要が出て来るのでありますが、その送金についての規定でございます。このような事項は、いずれも結局個々の合弁事業の契約においてはつきり書くことということをここにはつきり約束しておるのでございます。  第四条は、賠償並びに合弁事業に関連いたしまして、日本ビルマとの間の緊密な連繋をはかるために合同委員会を設置するということが書いてございます。  第五条は、さらに細目のいろいろな規定が必要になるわけでございますが、さようなことは別に政府間で細目協定をつくるということを規定してあります。  第六条は、この賠償並びに経済協力に関連いたしましていろいろ紛争が起る場合の紛争解決規定でございます。第一次的には外交上の径路で紛争解決する、それで片がつかない場合には、仲裁委員会というものをつくりまして、これで仲裁してもらう、そういうことを規定してございます。  第七条は、これが両国によりまして外交上の手続に従つて承認されなければならない、承認規定でございます。  以上簡単でございますが、賠償並びに経済協力協定の御説明を終ります。
  22. 喜多壯一郎

    喜多委員長 これで政府側説明は終りました。     ―――――――――――――
  23. 喜多壯一郎

    喜多委員長 この際昨日に継続して外務大臣に対する質疑を行うことといたします。細迫兼光君。
  24. 細迫兼光

    細迫委員 ビルマとの平和条約審議いたします前に、重光外務大臣の御意見の発表に対しまして、一般的な基本的な外交問題について質問をいたしたいと思います。昨日のお話によりますれば、アジアという言葉は使われておりましたが、これはアジアに局限せられた思想ではなくて、全世界の国々に適用せられる意味でおつしやつたと理解いたしておるのでありますが、平和と進歩に寄与する、こういう基本的な線がうかがわれるのであります。もとよりわれわれ双手をあげて賛意を表するところでありますが、この平和という問題における根本原則と申しますか、平和を確保する裏づけ事実といたしまして、およそ基本的な考え方が従来存在しておつたと思いますが、その二、三について簡単明瞭に御質問をいたしますから、でき得べくんばイエスかノーかというような簡単明瞭な御答弁でお願いいたしたいと思うのであります。  世界平和の確保のためには、第一に、相互相手国の領土と主権とを尊重するという基本観念がなくてはならないと思うのでございますが、この点についての御所感いかがでございましよう。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話は私は理論上のお言葉と思います。理論であればそれは当然のことだと考えます。但しその裏面に存する意味が、どういうものであるかという実際問題になると、よほど御質問意味をよく言つていただかないと私は答えられません。理論の問題としてはその通りでございます。
  26. 細迫兼光

    細迫委員 理論の問題でけつこうでございますから、以下そのつもりでお答えが願いたいと思います。  とかくある両国間に紛争が起り、その紛争が増大尖鋭化するということは、ある国の内政に干渉をするということから惹起せられる場合が多いと思うのであります。あるいはある党派が勝利してくれれば、よろしいと答えて、その党派を援助するとかいうようなことから、その国に国内紛争を惹起せしめるような事例が多々あるのであります。そういうことは国際平和にとつて望ましくない事実だと思うのでありまして、国際平和確立のための基本的な一つの理論としまして、他国の内政には干渉しない、内政不干渉ということは確固として貫かなければならぬ理念であると思うのでございますが、御意見はいかがでございましようか。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 このままでお答えいたします。  理論としては私はその通りだろうと思います。実際の状況についてはまたおのずから考慮しなければならぬことがあると、こう考えます。
  28. 細迫兼光

    細迫委員 次にはきわめてあたりまえのことでございますが、国際平和を確保しますには、どうしても他国はこれを侵略しない、不侵略ということが理論的な原則として、心がけとして持つていなければならぬ大切なことだと確信いたすのでございますが、この点に関する御所感はいかがでございますか。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 理論上私もそう考えます。
  30. 細迫兼光

    細迫委員 次には政治上、経済上相手国よりも有利な条件に立つて国交を持続したいというような考えがありますと、相手国の面目あるいは利益を押えつけることに相なりまして、押えつけられたものとしてはこれに不満を持つというようなことから、とかく国際平和が乱れることに相なると思うのであります。そういうことのないようにという意味からいたしまして、使いなれておる言葉としては平等互恵という言葉があるのでありますが、これまた理論上の問題としまして、国際平和確保のためには、お互い平等互恵を基本観念として交際を結ぶべきものであるということがなくてはならぬと思うのでございますが、この点について御所感はいかがでございましようか。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 理論としては私はそうだと思います。
  32. 細迫兼光

    細迫委員 次にもう一つ、これはまたあたりまえのことでございますが、他国の宗教あるいは人種が異なりましても、あるいはまた思想、あるいは政治形態がたとい異なりましても、これを敵視し、これに戦争身構えをするというようなことでなくて、平和にお互いが存立しよう、平和のうちに交際をしようという観念が持たれていないと、世界の平和は維持せられないと思うのでございますが、この点に関する御所感はいかがでございましようか。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 平和のうちに国際紛争を解決すべきだということは、私も理論上その通りだと思います。
  34. 細迫兼光

    細迫委員 質問の趣旨を少しくお取違えのようでございますが、国際紛争を戦争に訴えずに解決するということではなくて、繰返して恐れ入りますが、宗教、人種、あるいは政治形態等が違う国でありましても、その宗教を自分の思うままに変改してもらいたいとか、あるいは政治形態をわが好むままの形に建て直してもらいたいとかいうような希望はあるいは持つたにいたしましても、そのことはその国自身の権利であると認めて、違うながらに、平和の間に交際を結ぶという観念は、これ世界平和維持にとつて一つの基本的な観念でなければならぬと思うのでございますが、御所感いかがであろうかということです。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 宗教、人種の問題について、他国の内政に干渉してはいかぬということについては、私は理論としてまことにその通りだと考えております。
  36. 細迫兼光

    細迫委員 以上私は世界平和に対する原則的な五つの観念についておただしをいたしたのであります。すなわち、主権、領土の相互尊重、内政にお互い干渉しない、またお互い侵略しない、第四番目には、平等互恵の観念によつて交際を結ぶ、またお互いにたとい政治形態が違つておりましても、それはその国の自由であつて、国相互の交際としては平和に共存して行くということ、大体理論上御同意が願えたと思うのであります。あたりまえのことであります。この五つの平和に関する原則的な観念は、実は国際場裡におきまして、最近具体的な問題として現われておるのであります。それは中国首相周恩来氏とインドの首相ネール氏とが、いわゆる平和五原則なるものを打立てまして、これに基く協定を結んだのであります。その内君が、今私があげました五つの観念であります。そうしますと、重光外務大臣は、理論上の問題としては、この周恩来、ネール両首相の間にかわされました両国平和に関する五原則の問題は、日本といたしましても、他国と平和に交際を結ぶ際の原則であり得るということをお認めになつておると理解してさしつかえないと思うのでございますが、御確認が願いたいと思います。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の周恩来、ネール両氏の合意になったこの平和五原則、これは実は、広く国際社会において、時にわが国において、外交政策として従来とつておった政策、言われておつたことに非常に合うのであります。従来は、領土の尊重ということはどこも言つておることであり、それから内政不干渉ということも国際的に言つておることである。領土の尊重、内政の不干渉。領土の尊重をすれば、不侵略の政策をとることは当然のことであります。だから、われわれの承知しておる外交上の原則としては、領土の尊重、内政の不干渉、それから平等互恵と、この三原則を常に言つておつたわけであります。従いまして、そういう原則を五つに広げてみれも大体同じものでございます。それはけつこうなことだと思つております。ただ申し上げる通り、それは原則の問題でありまして、いかにこれを運用し、国際外交の上に用いるかという、その外交手段としては、これはおのずから別問題であることをつけ加えて申し上げます。
  38. 細迫兼光

    細迫委員 問題を転換いたしまして、やや具体的な方面に入りますが、きのうお言葉にありましたように、アジアの平和安定に主導的な立場をとつてわが国が寄与すべきことは、われわれの双手をあげて賛意を表する御方針だと思うのでございます。さしあたつて現在、この希望、原則に反する事態がアジアの地域に存在していることはまことに遺憾でございます。それはいわゆる中央、中輩人民共和国とわが国との国交のみ回復の問題でございますが、基本問題は別といたしまして、通商問題、これの拡大を願われていることは、いろいろなお言葉によつてうかがい知れるのです。もちろん、いろいろな国際条約等によつて制約せられることはやむを得ないと思いますが、この通商拡大のためには交通でございます。つまり通商代表、これは政府代表でなくてもよろしい、民間の事業家の代表でも、あるいはエージェントでもよろしいと思うのでありますが、この人間の往来を開かない限りにおきましては、通商の拡大は非常に阻害せられると思うのでございます。たとえば一つのモーターを取引したいと思いましても、そのモーターのメーカーの工場を視察し、比較研究するというようなことによつて、初めて取引の品目も特定化されるのでありますから、人の交通ということがまず第一に開かれなくては相ならないと思うのであります。その人の交通によつて交渉の結果としまして、希望せられる取引が国際法上許されないことになれば、これはまたやむを得ない次第でありますが、とにかくに人の交通ということが、まず第一に画策せられなくてはならないと思うのでございます。とかく従来この人の交通が実は非常な制約と申しますか、原則としてしないというように方針立てられたように私どもはとつておるのでございます。これを緩和するについての御意見いかがでございましようか。あるいは進んでその促進をはかるおつもりでありましようか、この点についての御意見を承りたいと思うのであります。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 具体的の問題となりますと、やはり十分その状況を調査する必要があると思います。しかし今は理論的のお話でありますから、私は昨日も申し上げた通りに、でき得る限り、また今御質問の御趣旨の通りに、外国等に負うた日本義務等に反しないことは当然のことだとおつしやる、私はその意味で昨日も申し上げました。そこでその範囲内において中共との貿易等を事実上できるだけ拡大するということは、私はいいことだと考えております。従つて今おつしやる通りに、人の交通も必要だと思います。それは私はできるだけの便宜をはかりたいと考えます。しかしここにおいても私はいろいろな真相を具体問題については調べなければならぬと思う。たとえば、先ほど申された内政不干渉の原則を非常にたつとばなければならぬということ、これはまことに私はその通りだと思うのでありますが、さあ通商の問題で、通商のことに名をかりて日本の内政に干渉するようなことがややともすると行われまじき状態であるとすれば、これは気をつけなければならない。だから、そういう状況はよく真相を注意しなければなりませんが、通商そのもの、貿易そのものの促進のために、人の交通もできるだけ便宜をはかるべしだという御趣旨については、私も全然そういうふうに考えております。
  40. 細迫兼光

    細迫委員 これは通産委員会等でも問題になつたことではないかと推測いたしますが、さしあたつて中華人民共和国との間の漁業協定の問題も、国交回復のいかんにかかわらず、民間団体同士の間においてでも、でき得るものならばする方が、国交の調整、世界平和、アジア平和のためにけつこうなこだと思うのでございますが、でき得るならば、そういうこともしたいというお考えをお持ちであろうかどうか、お伺いをいたします。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 その点についても今の原則論に従つて純粋な経済的の処置として、そういうような漁業問題などというものに支障のないように進めたい、こういうように考えております。
  42. 細迫兼光

    細迫委員 それでは私は質問を打切ります。
  43. 喜多壯一郎

    喜多委員長 戸叶里子君。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 昨日自由党の福田委員から、集団安全保障の問題についての御質問がございました。そのときに重光外務大臣は、一国の安全保障は集団安全保障でなくてはならない、こういうふうに、そこまでは答弁なさいましたが、福田委員がSEATOに対しての考え方をお聞きいたしましたのに対しましては、あまり触れられておらなかつたように私は思いました。そこで、先ごろUPのが伝えるところによりますと、タイのパオ・スリヤノンという警視総監が米国の旅行から帰つて参りまして、東南アジア集団防衛条約としてのSEATOの第一回会議が来る二月二十三日にバンコツクで開かれる、そのときにダレス、イーデン両氏が参加するということを声明しております。従つてこれは非常に近い将来に起る問題ですが、もしも日本にこれに対しての招請状、あるいはまたオブザーヴアーとしてでも参加しないかというような話があつた場合に、どういうふうな態度をとられるか、またもつと根本的にSEATOに対してのお考えというものをこの際はつきりお示し願いたいと思います。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 私は昨日、国の安全保障は一国限りではできない、これはその国を中心とする国際関係に非常に支配されるものであるというような意味のことを申し上げました。今お話の、SEATOのバンコツク会議に出席するかどうかということにつきましては、まだそれに対する何らの招請状も受取つておりません。またそういうような招請状が来るけはいがあるというような準備的な情報もまだないようでございます。従つてそういう形勢になつて来た上で考えなければならぬと思うのでありまして、今日これに参加するしないを申し上げるはいかがかと考えます。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 またそれに対しての参加要請があるかないかのけはいもおわかりにならない今日、それに対する態度を御発表できない、こういう御答弁でございましたが、二月二十三日と申しますと、ちようど国会も解散されて選挙の最中と思いますが、もしもそういうふうなことがかりにあつた場合には、どういうふうになさるかということを承りたいと思います。  それから今の重光外相のお考えとして、今日の日本の憲法の範囲内ではSEATOへの参加ということはあり得ない、こういうふうにお考えにたるかどうか、根本的な態度を承らせていただきたいと思います。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 かりにあつた場合はどうするかということに対しては、今申し上げました通りに、こういう問題について今日から仮定のことに御返答をするということは私どうかと思いますので、それは私は差控えたいと思います。  SEATOの問題が具体的に起つて来ましたときには、十分これに対する日本の国内法的の見解をも慎重に考究して判断をしたい、こう申し上げます。今日それが憲法上当然許される、許されないというようなことについて、はつきりお答えをするまだそこまでの心用意がございませんからそのときに譲りたいと考えます。
  48. 細迫兼光

    細迫委員 関連して。SEATOが憲法の範囲内において許されるかどうかについては、まだ心の準備がないとおつしやつた率直な御答弁を私は歓迎するものであります。御研究の足らないことはあり得ると思うのです。でありますが、仮定の問題には答えられないという御態度は私は承認できない。これはその都度外交ということで従来いろいろ外交当局が非難されておつた、将棋をさすにしましても、相手がこちらの桂馬を飛ばして来たらどうしようか、銀をこちらへ動かしたらどう受けようかということがなくては、うまい外交はできないと思うのであります。言明はともかくとして、あらゆる場合を想定するということは不可能でありますが、しかしながらSEATOという問題は世界的には現実の問題となつておる。まだ呼びかけはないにしましても、もしも呼びかけがあつたらどうしようかというあらかじめの方針はお考えになつており、でき得べくんば御言明がなくてはならぬと思うのであります。とかく従来の仮定の問題には答弁できないというような態度は、真摯はほんとに国を思う人としましてはとらない態度であると私は思うのであります。よろしくそこらをお考えの上、将来のわれわれの質問にもお答え願いたいと思います。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の御意見には私もとくと考慮は払うつもりでございます。むろん仮定の問題であるから全部答えができないということを申し上げ意向は私は少しもございません。また仮定の問題について私の口からいろいろなことを申すことが非常に大きな意味を持ち、また対外的にもある場合においていい場合があるのでございますから、決して私はそういうことについて全面的に否定すると申しますか、全面的の態度をとるわけじやございません。今御津点の点をよく念頭に置いてやることに異議はございません。しかしこの問題について、今私がSEATOに参加するとかしないとかいうことをここでお答えして、その結果が対外的にどう響くかということもお考え願つておきたいと思うのです。この際はさようなことは、私個人としてこれはどうであるとかこうであるということならば申す意見のないこともございませんけれども、今この席のお言葉並びに私のお答えは日本国内でない、世界人に向つて言つておる言葉としてその点を慎重にいたしたい、こう考えておる次第であります。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの問題でございますが、フイリピンでSEATO会議が開かれましてから、そしてまた新聞やラジオでこのSEATOという言葉を聞くたびに、国民は日本がどういうふうな態度をとるのだろうかということに対して非常に心配した態度をもつて臨んでおります。そういうふうな立場にありますので、私は外務大臣のお考えを伺いたいと思いましたが、ただいまの御答弁も了解できる点もございますけれども、しかし何と申しましても、間近にそうした会合が開かれるということになつておりますので、何らかの機会にそれに対する外務大臣としてのお考えもお聞かせ願えるようなときをなるべく早くつくつていただきい、こう私は希望したいと思います。  次にお伺いしたいのは、昨日の外務大臣の御所見を伺つておりまして、アジア諸国との平和と進歩に日本が安定勢力として貢献し、その第一歩としてビルマとの賠償協定を結ぶ、平和条約を結ぶというようなお話でございましたし私どもも今回のビルマとの平和条約によつてそれが一つの糸口となつて、他のアジア諸国との友好関係が結ばれるという観点から非常に望ましいと思いますが、その協定審議に入るに先だちまして、ビルマのウー・ヌー首相の考え方というものと重光外相日本の国の外務大臣としての考え方が、一致しているかどうかというような点で少し伺つてみたいと思います。  ウー・ヌー首相が先ごろ中国を訪問いたしましたときに言われた言葉は、自分は中国と米国間の理解の促進に努力する、こういうことを言明しておりまして、これはネール首相の言つた平和五原則とともにアジアの有力国家として重要な発言であつたと思うのでございます。このウー・ヌー首相の言つたこうした外交上の見解と、そして重光外相の見解というものは、これまでのアジアに対する積極的な外交推進の御発言から見れば、私は相似たものであると了承しておりますが、そう了承してもよろしゆうございましようか。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 私は今ビルマの首相の考えをよく承知をしておりません。従つてそういう大きな問題について考えが一致しておるということを今端的に申し上げることはできないわけでございます。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは観点をかえて伺いますが、重光外相が言われておりましたことは、中ソとの経済交流というものを深めて行きたい、こういうふうな主張をせられておるように思います。それはたいへんけつこうなことですけれども、そのあとからまた言われましたことは、国際的な義務に反しない程度というふうに言われております。そうしますと、これまである条約に反しない範囲内で中ソとの折衝を行つて行く、こういうことになりますと、今まである諸条約というものに非常に制約を加えられるのではないかと思います。そういうふうな既存の条約というものまである程度進んで直しながら中ソの調整に努めて行く、経済提携にいたしましてもあるいは外交にいたしましても、既存の条約にとらわれずにと言つては語弊がありますか、それを進んで直しながら行きたい、これほどの積極性をお持ちになつておられるか、この点伺いたいと思います。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 中ソの共産国とに対する通商の問題については、今日まで義務を負わされている、その義務に反しない限り、これは進めてやりたいということを繰返し申したわけであります。そのことについて、ほかの国との約束をその方向に将来できるだけ必要なものは改めて行くということについては、これは当然含まれるわけであります。しかしながら改めてやるというのは、従来の条約約束を無視するという意向では少しもございません。現存の義務条約は完全にこれを守つて行かなければならぬ。これが国際関係に処する基礎的の考え方でありますから、それはそれで行くのであります。しかしながらこちらの希望に応じて、機会のあるごとにその希望を速成するようにこれを改善して行くという方針をとらなければならぬということは当然のことであると考えております。
  54. 河野密

    ○河野(密)委員 今の外務大臣の御答弁に関連してこの際お聞きしておいた方がいいと思うのですが、昨日鳩山総理が、中国台湾政権も町方独立国として認めて、これとの国交調整をはかり、貿易その他のことを進める、こういうことを申されておるのでありまして、この言葉は非常に重要な意味を持つておると思うのであります。おそらく重光外務大臣とどれだけ打合せができておるか私は存じませんけれども、その意味は、中共承認するという方向に向つてお進みになるというお考えなのか、それとも単なる現状を認めるという程度にとどまるのであるか、台湾政権に対して政府はいかなる考えを持つのであるか、こういう根本問題に触れておると思うのであります。そこで私は一つずつ一ぺんにお伺いいたしますが、政府中共に対する政策を従来の方針よりも一歩進められる見解を持つておるのであるか。そしてその一歩は中共政権承認するという方向に行かれるのであるか。その場合に、台湾政権に対してどういう照度をとられるのか。台湾問題についてどういう御見解を持つておるのであるか。これを一ぺんにお答えが願いたいと思います。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題に日本の将来行くべき道として非常に重大な問題だと考えております。そこで、法理的の問題、条約上の問題と実際の問題とにわけて考えなければならぬように思います。条約上の問題は、これは今日台湾中華民国政府として承認をして平和条約締結しておるのでありますから、中華民国政府台湾政府である、こういうことにはこれは少しも間違いはございませんしそして日本だけじやない、ずいぶん多くの国が台湾政府中華民国政府として取扱つておる、承認しておる。国際連合でもそうである。日本も自由民主国の一員としてそういう取扱いを台湾政府に与えておるのであります。しかしながら今日支那大陸において大きな中共という共産国がそこに出現をしたということは、これは事実てあります。そこでこの事実を認めないわけには行かぬ。いくら台湾と話をして通商のことが進んで行つても、支那大陸と通商をするわけには行かない。そこで支那大陸に対しては、実際上の権力を持つておるところといろいろ直接間接の折衝をして貿易も進められることがいい。こう考えておるのであります。それは何も条約上の建前をこわすという意向は今少しもない、まだその時期には逹していないと私は考える、だからそれはこわさなくても、実際問題として、実際外交としていろいろ両方の利益に合するような処置を通商関係においてとるということは、これは適当であろうと私は考えておるのであります。しかしそれならば、今世界の民世自由国が、国際連合が中心としてとつておる中華民国に対する態度と異なつ態度日本がすぐ突き進んでやり得るかどうか、またやることが適当であるかどうかということについては、これは非常に慎重に考えなければならぬ、私は、むしろそういうことは従来の日本中華民国に対してとつ関係をも考慮しなければならぬし、また将来の日本の国際的の全般を考慮してこれは進むべき問題、あつて、現状を法理的にかえるという考え方を今日持つておりません。しかし今申しておるように、この問題は条約上の関係以外に、実質上のまた事実上の関係を考えなければいかぬ。従つて繰越して申します通り、通商のごときも、われわれの国際上負つた義務に反せざる限り、なるべく双方の利益になるように進めて行く、通商はできるだけこれを拡大して行く努力をする、こういうことが実際的に解決になる、こう考えておる次第であり
  56. 河野密

    ○河野(密)委員 今のお話で慎重にお考えになる意はよくわかりましたが、私のお尋ねしたいのは、鳩山総理が、もつとも公式の席上ではないと思いますけれども、非常にセンセーションを起しておる言明をなされておる。同国とも独立国と認めるのだ、こういうふうに発言されておる。その独立国と認めるという意味はどういう意味であるかということを一つお尋ねしたので、それにお答えが願いたい、両者の間が独立国として存在して行き得るならば、今外相がお答えになつたことも成り立つこともおると私は思いますが、実際問題としては、現在一つ一つを否定する、こういう立場に立つておる状態なので、もしこういう状態が現実に対して――事実関係がそういう一つはこの問題つを否定するという関係になつておるときに、日本だけが両者は独立国として両立し得るものだ、こういうふうに考えられておるとするならば、それを国際的に何らかの形で打出して行く関係になければならぬと思いますが、この何者は独立国である、並存すべきものであるという考えで、この並存を国際的に日本立場として主張なさるのであるか、この点をひつ明確にお答えが願いたい。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 鳩山総理の言明は、私はけさそういう問題があるということを初めて実は知つたようなわけで、どういうふりな言明をされたかというその内容を突きとめるまでには時間の余裕を持たないのでありますが、今お話の点から伺つてみても、鳩山総理の言われたことと私の方針とか一致していないところは少しもないように払は解釈いたします。お話の通りにきまつたことに一つ一つを否定する状況があるわけであります。一体一つ一つを否定する根本の問題は、やはり世界全部にわたつて行われている今日の共産陣営と民主陣営との冷たい戦争が、一つ一つを否定している根本の問題になつている、こう思うのであります。しかしさようなむずかしい状態であるから、ここにいろいろ実際問題として考えなければならぬことになるのじやないかと私はこう考えます。もし一つ一つを否定しない状況にあるならば、これは割合に実際問題として取扱いがしいい、こう考えております。しかしそうでない。中華民国政府としては台湾政府を認めるのだという一つ一つの民主陣営のこれは多くの国がそう認めている。日本もその域を脱しない。つまり民主主義陣営の一員としてそういうことになつている。これは今一つ一つを否定するような状況のもとにおいてすぐ解決をすることはできぬ。解決のかぎはこつちになくしてその状態にあると私は思います。これはおそらく御異論のないことだろうと思う。そこで実際そういうような状態になつている場合に、これと適当に通商問題等を進めて行くということは、これは私は国際法上にもでき得ることであつて、また日本の利益に合致することだと考えて申し上げているわけであります。その意味鳩山総理も頭を使われているわけでありますから、それに矛盾したことはない、こう私は思つております。それで大体御質問の趣旨に全部お答えしたいと私は考えております。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの点は私もお伺いしたいと思つていたことなんですけれども、今の御答弁を聞いておりまして私にはどうもはつきりしないように思われるのです。今の外相の御答弁を聞いておりますと、お互いに相反している、反しているけれども、その解決のかぎはつまりその状態に置かれているのだ、そういうふうな状態にあつても適当に通商関係は進めて行くことはできる。こういうふうなお話でございました。通商関係は進められたといたしましても、鳩山首相の言われましたことは二つの国を両方とも、国府も中共独立国とみなしている、そういう点を河野さんがつかれていると思うのです。そうすると一体今の政府がこの二つ政権を独立政権として認められた上に立つての外交を進めて行くかどうか、そういうことが問題になつて来ると思うのですけれども、その点がはつきり伺えなかつたように思いますが、いかがでございましようか。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 二つ独立国としては認める意向は少しもございません。先ほど申す遡りに、民主国は国際連合を中心として台湾政府中華民国政府として認めているのでありまして、日本もその線にに沿うて進むのであります。しかしながら実際問題として、繰返して申しますが、中共という勢力がそこにある。その勢力を実際の勢力として通商上の相互の利害関係を進めるということは、これは外交上さしつかえないことだ、またそうしたい、こう考えている次第であります。
  60. 喜多壯一郎

    喜多委員長 並木君、議事進行ですか。
  61. 並木芳雄

    並木委員 外務大臣のただいまの答弁は、やはりわれわれとしても非常に関心が持たれるわけなのでございます。私は実は昨晩鳩山総理録音による答弁を聞きました。はつきり言つています。総理二つりつぱな独立国があるということを言つているのです。ですからその両方を認める意味ですかとあるおじいさんが聞いたとき、その通り、その通り、その通り、三度繰返して、おとなりには二つりつぱな独立国があるのです。と答えております。私は先ほど条約局長に法的の根拠尋ねまして、鳩山さんのこの言明は何ら法的条約上矛盾するところはない、こういうきわめて明快な答弁を得て満足したわけなのです。そこで残る問題は、先ほど河野委員からも御質問で出ました通り日本が将来そういう方向に向つて行くのかどうか、これは国民ひとしく超党派的に関心が持たれる問題でございますので、この際委員長から特に外務大臣に対して鳩山さんの真意を確かめてもらいたい。それが議事進行なのです。これは大事な問題ですから、今の外務大臣答弁ではまだその点について鳩山さんと話合つておらないよりでございますから、これは与党のわれわれとしてもやはり必要であります。
  62. 喜多壯一郎

    喜多委員長 並木君にお答えします。これは委員長総理に確かめるより、外務大臣自身確かめて政府が御答弁つてしかるべきだと思いますから、その議事進行ならその程度にしていただきます。戸叶里子さん。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 今並木委員の御指摘になりました通り鳩山首相と重光外相との間には、中共、国府の主権問題をめぐつての食い違いがあるように思いますので、この点は次のなるべく早いときにはつきり説明を願いたい。これを要望いたします。  そこで先ほど重光外相の言われましたことは、国際上の義務に反するようなことはしない、条約は無視はしない、けれどもたとえば経済外交などを進めて行く場合において、その希望を達成するための障害となるものは除々に改めて行きたい、こういうよりなことをおつしやいました。私はそれを伺つておりまして思い出すのは、次のアメリカの下院の議長と予定されておりますリチヤード氏が十三日に言われたところによります。日本の工業というものは大規模な対アジア援助計画の中で中心的な役割を果すようにしなければならない、こう述べられたあとで、戦略物資の輸出さえ行わなければ、日本中共貿易には賛成である、ということをはつきり言われております。こういうことを考えてみましても、米国の考え方というものも非常にかわつて来ておりますが、こういう際に重光外相は進んでこのリチヤード氏の言われたように戦略物資以外のものは、どんどんと中共との貿易促進をやつて行く、そういうお考えを持たれるかどうかということが一点と、もう一点は、今まで中共へ行く人の旅券の問題が非常にやかましく言われておりましたが、これから中共との貿易を積極的に進めて行くにいたしましても、あるいは中共との交流をするにいたしましても、旅券の問題というものがまたそこに障害とならないという意味から申しまして、この旅券問題というものに対して、今まで縛つていたほど強い束縛を与えないで、もう少し自由にさせるというようなお考えはないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  64. 重光葵

    重光国務大臣 リチヤード氏というのは、おそらくアメリカ人のことだろうと思いますが、私はどういうことを言つておるかは承知しません。しかし今あなたの言われた内容であるとするなら、これはけつこうなことで、実はそういうふうにだんだん向かつて行くべぎだ、こう考えております。ところが今事務当局からの話によりますと、そういうことはあるけれども、少しもアメリカの考え方がかわつた証拠が実はない、こういう材料を提出してくれました。しかしそれはそれにしておいて、さような大きな方向に向くことは好ましいことだ、こう実は考えております。  それから旅券の問題は、もうすでに先ほど申し上げた通りですから、それによつて御承知おきを願いたい。人の交通の点について先ほど御質問があつたことについて私の考えていることは申し上げました。それで私の答弁を終ることにします。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは私は話題をかえて韓国との間の問題を少し伺いたいと思いますが、これは長くなりますのでたた一点だけ伺つておきたいと思います。  日韓の交渉がなかなか打開をされませんで、竹島の問題をめぐつて相かわらず紛争を続けております。ことに先ごろ韓国がが竹島を書いた切手を使つたということで大分日本で問題になつて、それに対する締出しの法案を郵政委員会で出そうというような話まであつたようです。それに対して重光外相が、まあそれは望ましくないからしばらく待つているようにというお話しで、その法案が出されなかつたということを私は聞いたのですが、もしそれが事実であるとするならば、この日韓との関係に対しての何らかの明るい見通しがおありになつてそういう発言をなさつているのじやないかと思いますが、どういうふうな状態になつておりますか、ちよつと、お聞きしたいと思います。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの日韓関係を実は非常に重大に思い、また心配をしておるものでございます。私は前会にも申し上げた通りに、アジアの平和及び進歩に日本が安定勢力として十分貢献したい、こういうことを申したのでありまして、それからまた善隣友好ということもこれまでたびたび目にいたしておる、これは私だけじやない、皆さん方のお口からどんどん出るだろうと思いますが、そこに善隣関係というならば、朝鮮関係は最も必要なことでありますから、私はそういう近い国からの関係を改善することができなければ、これはほんとうに残念なことだ、こう考えておるわけであります。ところがこの日韓関係を考えてみますと、今日の悪化した状態は、これはずいぶん長い歴史の積み重なりでこうなつたのであつて、これは一朝一夕に解決するということも困難でありましよう。しかし気持はあくまで善隣の関係をもつて進んで行かなければならぬ。しかしそれはわれわれの主張すべきところを主張しない、もしくは先方の要求をすべて認めるとかいうような意味でそういうことをやつたつて、決して国交というものが改善されるものではない。そこでこれは従来のいきさつその他を十分考慮して、詳細に研究もし、手数もとつて徐々に関係を改善するように努めなければならぬと思うのであります。その手初めとしていろいろなこともありましよう。竹島の問題のごときは、これはもうまつたく双方の主張が相いれないものでありまして、これは容易に根本的な解決が困難かと思います。国際裁判所に持ち出すという日本の提案すらしりぞけられておるようなことでございます。しかし竹島のスタンプの問題でまたこの日韓両国人の関係を極度に鋭敏にせしめるということはいかがなものかと考えました。のみならず、これは郵便条約等の問題がありまして、さような処置がはたして適当であるかどうかということもまた慎重に考えなければならぬ。そういうことから大切な善隣友好の関係を目ざしておるのが根本的に傷がつくようなふうになつて来てはたいへんなことでありますから、すべてのことを十分に慎重に考えて、もちろん大局上日本のとるべき態度は十分にとらなければいかぬ、しかしながらでき得るだけ忍耐強く、そうして大局を誤らないようにして行きたいこういうふうに私は考えておる次第でございます。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 今のところ何ら善隣友好を促進させるための具体的な方法というものが承れなかつたのは残念でございますが、何とか平和のうちに話合いをよく詳細に調べてして行きいた、こういうふうな御意図のほどは承りましたので、この問題は次の機会に譲ることにいたしまして、私の質疑は打切りたいと思います。
  68. 喜多壯一郎

  69. 北昤吉

    ○北委員 重光外務大臣の本委員会の御答弁によつて中共その他の共産諸国との外交に吉田総理よりははるかに弾力性があるということは私は敬服いたします。私は現に日中貿易議員連盟の会員でもあります。また最近村田省蔵さんが会長となつてできた日ソ日中国交回復国民会議の役員でもあります。まあ元の自由党の諸君では私と石橋湛山君と平塚常次郎君が入っております。また参議院では鮎川義介君が入つており、改進党の系統では北村徳太郎君が入つておるし、社会党の諸君や共産党の諸君も入つております。現に一月前に日本青年館でその演説会をやりました。入場料は三十円とつたけれども超満員でありました。いかに国民が要求しておるかということは、これは超党派的に考え得る問題だと思うのです。私は日中貿易ということを唱えておりますが、一昨年長崎で、あの焼け跡で演説したのでありますが、そのときにこういう自分の意見を述べたところが、みなが非常に共鳴してくれた。私は日中貿易を無条件的にやるのは日本に危険がある。たとえてみれば、中共から日本の日教祖のうちのレツド・パージにおうた職のない人に百何十万とか金を送つている。それを元自由党幹事長の佐藤君が、日教組は共産党から金をもらつておるという攻撃をしたために、日教組は選挙妨害だといつて訴えたことがあります。また埼玉県でもその事件が起きた。これは調べてみると、日教祖に直接送つたのではなくて、レツド・パージの犠牲者に送つたということがわかつたりそういうことがあるから自由な貿易をさしては不自然だ。共産諸国の貿易会社はみな国営的の貿易会社であります。それであるから日本も共産諸国と貿易をするには国家管理貿易をやるべきである。すなわちメーカーが国家管理貿易会社に持つて来て、品物をさばくのは国家管理貿易会社でやればよろしい。向うはそうやつておる。そうして戦略物資ならざる限りはどしどし送つて、向うからも買うたらよろしい。物々交換でたいていのことはできる、私はその意気を持つております。また商品を見ないとぐあいが悪ければ、中共の開港場も二ところくらい設ける。たとえて申しますと、上海と青島くらい、日本でも長崎か門司港、博多あたりに設けて、貿易官が互いに出張して、向うの自由は今日の状態ではあります与えることができないから、国家が監視して貿易会社と取引をさせる。それが中共貿易の第一歩である。中共貿易ということを口にする人はたくさんあるけれども、方法の研究が足らぬ。私に方法の研究を数年前からやつておりますが、こうしたならば日本の内政干渉という露骨なことはやれぬでも金銭的の援助があり得るから、それを防ぐことができる。そうしてまず貿易を盛んにしたらよろしい。日本中共との貿易は、戦争中までは全貿易額の二割であつた。これは満州の満鉄関係、それから重工業関係日本の手に入つてつて、そうして日本人が四、五十万もおつたから、日本人のいる物資の輸出がどんどんできた、向うからも輸入したのであるから、二割なんという大きな貿易関係は今日回復しても求められないけれども、まずほしいのは海南島の鉄とか開らん灰とか。満州の豆のごときは一番良質で一番安いことは天下公知の事実であります。こういうものをどんどん入れる。日本から送つていいものは、車両関係のものは、今まで蒋介石政権のときはやつておりました、今はアメリカがきゆうくつに解釈して戦時物資ということで禁止されておりますが、電気機械とかあるいは薬とか、それから紡績機械は許されております。また繊維類もいけます。そうして物々交換をやれば私は相当の額に上ると思う。鉄鉱石を石炭をアメリカから買うよりは、隣国中国から買えばはるかに安いのであるから、どんどん貿易を進める。進める方法として私はそういう考えを持つております。重光外務大臣は、共産国に対して弾力性ある外交をやろうというのですから、ひとつこういう方法でも御一考なさつてはいかですか。  それから日本の代表者が向うに行くにも、岡崎外務大臣がやめる前にラジオで伝えられましたが、今までよりはもつと旅券を発行するに厳密にやろうと考えておる。日本から相当行つておるが、支那から正式の君を迎えることは非常に足らぬ。これはやはり相互的なものであるから、日本からやるくらいのものは中共からも迎えてよろしいと考えております。ちよつと私の思いつきのようであるが、二年も考えた案でありますから、これらに対する外務大臣のお考えを伺いたい。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 中共貿易をどうして進めるかということについて、今具体的のお示しがあつたわけであります。私は非常に参考になる有力な資料だと思います。実は私も大よそそういうことは前から考えておるのでございます。しかしこのことは外務省だけの問題でもございませんし、ひとつその考えを資料として通産省なりその他に十分にやつてもらうように私の方からも進めてみることにいたしましよう。私はやはり実際的にもう少しやらなければならぬと思う。共産国との貿易というのは、日本は非常に経験を持つておるのであります。ソ連との国交を最も早く開いた国は日本である。その以後ソ連との通商関係を進めたいと思つて私自身その衝に当つておつた。しかし事実はどうしてもできなかつた。北京条約、基本条約で通商条約を結ぶと約束をしておる。しかしそれにもかかわらず、とうとう最後まで、戦争になるまでこれはできなかつた。しかしながら若干の物々交換はできておる。その物々交換をする方法には共産国との間には非常に困難があると私は思う。その困難に打勝つためにいろいろなくふうをしなければならぬ、そこで向うのそういう組織も考えに入れて、そしてこつちも組織立つて話をするということは最も実際的な方法だ、こういうふうに考えております。
  71. 北昤吉

    ○北委員 ただいまの答弁で満足いたしました。  それからソ連との貿易も、ソ連は、木材を輸出したがつておる、私の聞くところではカナダやアメリカから買うよりも、また日本の相場よりも安いそうです。新潟は、私の選挙区でありますが、戦前には国際貿易港として相当発注した。このごろ北鮮との航路が絶え、ウラジオとの航路が絶えたからすつかり劣えて困つておりします。そこで私は貿易促准の会に呼ばれまして、行つてその話をやめた。向うは木材は輸出物のうちではAクラスになつているそうです。それだからAクラスのものをほしい。すなわち汽船をほしい。貨物船などはまだアメリカは許しにくいかもしれぬが、漁船がほしい。漁船は日本の北海道炭礦汽船会社あたりでは多少修繕してやつておりますが、新潟鉄工所あたりは漁船の修繕なら幾らでもやる能力があつて非常に望んでおります。最近は日本車両という会社にロシヤから千台の冷凍車を注文に来ておる。冷凍車はココムの禁止課目のうちに入つておらぬ。機関車と貨車は入つているそうですが、冷凍車は入つておらぬそうです。こういうものはちようど境目くらいなのでございますから、相当寛大に考えて――千台といえば三十六億だそうです。そうすれば向うでは日本に必要なパルプの材料をよこしてくれるというのだから、こういうものは品物をみな研究いたしましてどしどし貿易をした方がよろしい。あるいは油もよこす、石炭もよこす。石炭は少し高いそうでありますが、大倉商事会社などは輸入の許可を受けているようであります。三井関係も入つて五社だけはロシヤも指定して来ておる。今そういうことではなくして、もつと大規模に物々交換をやる。ロシヤも経済的の利益があれば、日本と物々交換をどんどんやりますから、それが国交回復の端緒になると思う。私は国交回復という形式の問題ができなければ貿易はできないというのは間違いであつて、貿易をやり互いに善隣友好の関係を結べば、早く条約締結したという考えになるだろうと思う。私は貿易関係の促進という外務大臣の考え方については全面的に賛成いたします。すなわちウラジオあたりを開港場にしてくれればいいけれども、あれは軍事港であるからなかなかできないでしよう。あるいは樺太の豊岡あたりを開港場として、日本では小樽あたりを開いてもよろしい、そうしてどしどし貿易をやる方が私はいいと考えております。中共との貿易についての私の意見に御賛成くださつたら、これも御賛成くださるであろうと思いますが、現に日本でないサントニンをイギリスを通じて買つておる。ロシヤから買うと半分です。ロシヤの貿易官はそういつております。ところがまわりまわつてイギリスから買つておるから、サントニンは倍の価格になるそうです。こういうことは非常に損でありますし、ロシヤと貿易すれば、東ドイツのカリあたりもどんどん来ます。そうすると安く手に入る。イギリスは香港が仲継港となつておるために中共を認めておる、英国は御承知のごとく実利主義の国でありまして、アメリカと、中共に対する見解根本的に異なつておりますから、日本は折衷しなければならぬと、私は個人として考えております。英国はチヤーチルの方針で、今原子爆弾を受けては損だというので、コエクジステンスのために非常に働いて、そしてスターリンとも会いたがつておつた。今マレンコフとも会いたがつておる。それほど英国はコエクジステンスを考えておる。アメリカは、もう少し貿易を進めろという説もあるし、特に共和党のノーランドなどは、中共が十一人の兵士を返さなければ封鎖せよといつておることは御存じのことと思います。マツカーシーはもちろんその方であります。マツカーシーは今勢力が衰えておりますが、タフトの後継者のノーラントがそれを主張して、強硬論をとつておりますが、吉田さんは、イギリスの、コエクジステンスをやりたいといつている国に行つて、反共演説をした。しかもアメリカに着くクイーン・エリザベス号の中で、アメリカとイギリスとが中共に対する見解が違うから、日本はその中をとらなければならぬ。これは吉田さんも腹の底から、やはり条約上認めた蒋介石政権を否認する意思はない、是認する、これは電光外相と同じ考えであります。そのほか、中共との貿易もやりたいという意味で、そういうことを言つたのであろうと思いますが、アメリカではあまり人気がよくなかつた。あとから弁解をしておるようであります。イギリスでは、場所柄もわきまえず反共演説をやり、それからアメリカでは、間へ入つて仲直りをさせるような話をしたのであります。日本立場としては、条約上の義務を重んじて蒋介石政権を否認するわけには行かない。ことに戦犯君に対しては、世界中で戦争の惨禍を一番よけい負うておる蒋介石政権が一番寛大で、どんどん戦犯者を返してくれた。それから軍人の巨頭連中の岡村寧次、辻政信君あたりもどんどん返してくれた。東洋は仁義の国であるから、そういう恩義を忘れて、お前の国は弱くなつたから率先中共を認めて、お前の国はそでにするということは、日本の武士道的の精神からいえば、私は了解に苦しむ。ところが、デエジユウレの国が蒋介石で、デエフアクトの国が中共のようになつておる。私は、やはり正式には蒋介石政権を認め、そうして中共とは善隣友好の立場から貿易をやれ、重光外務大臣方針には全面的に賛成いたします。古田さんのような反共一点張りでは、日本の形勢はますます縮まると考えております。共産主議がきらいといつても、今度はヴエトナムがだんだん強くなつて、南ヴエトナムの形勢も悪くなつておるような状態でありますから、やはりイデオロギーにとらわれず、貿易を促進し、文化の交流もやり――共産主義には、日本の現在とは違つて、青年の勤労精神は、非常に盛んであるから、とるべきところもありますから、文化交流もある程度まで進めた方がよろしい。そうして国際連合中共を加入させて認めたせつなにおいては、国際的な形勢に従つて中共を認めるべきである。今日本が率先して認めるという外交の主導権は、日本の国力からいつても国際的地位からいつても、とるべきでないという外務大臣の御意見には私も賛成しております。これは、日本の常識ある人はみな賛成するであろうと思います。あるいは鳩山さんのお考えは、独立国二つあること――これは交戦団体を両方承認した例は、歴史上たくさんありますが、交戦団体と認めれば、一方は条約上の承認国であり、一方は、条約上は承認しなくとも、貿易の必要があるからやる、交戦団体として二つ認めるという立場であろうと思うのです。重光外相の御意見と反対ではない、独立国のごとく言つたのはしろうとの論で、交戦団体を両方認めることはあります。ところが今日は交戦団体たることは事案であります。そうして日本台湾との条約も、台湾並びにポテンシャル・テリトリー、いつ支那本土に侵略するかもしれないから、それまで認めるという文句かあるから、やはりこの条約の条文に従わざるを得ないと考えておりますが、いかがでございますか。
  72. 重光葵

    重光国務大臣 御意見しまことにごもつともで、私も特にお答えする余地を見ないわけであります。今最初にお話になつたソ連と日本との通商の問題等につきましては、最初申し上げた通りに、これは具体的に物々交換をして、分量を多くしてやりたいということは、私は当分いい政策だと思います。それについても、これは両国の制度の異なる関係でいろいろ困難があるということも御指導の通り。私としては、こういう問題で障害があるとするならば、相手国からも、十分にひとつこの考え方に賛成をしてもらつて、障害を除くようにしてもらいたい、こう思つておるわけであります。なお、材木その他の商談は、大分現実の問題として今取扱われておるようでありますし、当業者の間にも話合いが進んでおるようでございます。しかし、まだ値段やその他の問題でいろいろな故障があることも事実のようでございますが、それも適当に折り合うことを希望しておるわけであります。その他の御意見については、私どもも十分にそれを資料として進んで行きたいと思います。
  73. 喜多壯一郎

    喜多委員長 午後二時半から、平和条約案、賠償協定案及び移民問題その他を審議いたしますから、委員諸君は正確に御出席をお願いします。同時に外務大臣以下、この審議は重要でありますから、時間通り正確に御出席を願つておきます。  暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十六分開議
  74. 喜多壯一郎

    喜多委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。上塚司君。
  75. 上塚司

    上塚委員 私は、移民問題について二、三の質問をいたしたいと考えております。大綱にわたることでありますから、大臣御自身で御答弁をお願いいたしたいと思います。  第一は、移民問題をどう考えておられますか、一般論として大臣のお考えを聞きたいと思います。もちろん、大臣は最近の御就任でございますから、移民問題の経過についてはあるいは御承知ないかと存じますから、簡単にその経過を申し上げておきます。第二次大戦によりまして、わが日本のおもなる移民先であつた南米との交通、通信が断絶せられまして、約十年の間わが日本の南米に対する移民はまつたく空白でありました。昭和二十六年八月に、まだサンフランシスコ条約前でありましたが、私はブラジルに参りまして、前大統領ジエトリオ・ヴアルガス氏に面会いたしまして、日本移民のブラジル入国を再開してもらうように懇請いたし、昭和二十七年度以降毎年五千人、五箇年にわたつて二万工十人の入国の許可を申し出たのであります。ブラジル政府はただちに移民審議会にこれを提出しまして、移民審議会は約一箇月の後に満場一致をもつてこれを通過いたして許可を与えたのでございます。その後、昭和二十八年に至りまして、松原安太郎君、これはサンパウロの在住者でありますか、同じく日本移民の入国を申請いたしまして、一年に四千人、五箇年にして一万人の許可を与えられておるのであります。従つて現在ブラジルに入国し得るところの数は一年に千八百家族、九千人を許容せられておる次第でございます。しかるに、その後ブラジルヘの移民は、官民一致の努力にもかかわらず、十分の人を送ることができない、すなわち昭和二十七年度においてはわずかに五十四名、昭和二十八年度においては千五百五名、今年度すなわち昭和二十九年度においては今日まで約三千数一名を送り出しております。いわゆる予定の九千人に対してはまだ非常なる距離があるのでございます。この距離はどこから来ておるかと申しますと、第一は予算の問題であります。第二は輸送力の問題でございます。予算の問題というのは移民がブラジルまで参ります船賃が一人につき約十一万円を必要とします。従つて一家族五人とすると約人十万円近くの資金を要するのであります。この六十万円近くの金をととのえるということは、現在の農村の人々にはとうてい不可能でありますから、この移民の当初から政府資金を借り受けて船賃を払つて向うへ行つておるのであります。従つてこの点において予算上の制約を受けるのでございます。  第三は船がありません、現在ぶらじる丸とあふりか丸とあめりか丸との三隻がありますけれども、その全能力を発揮しても、現在一年間に輸送し得るところの能力は、わずかに五千人を出ることができないのであります。従つてこの二つの難点を解決しなければ、とうてい多数の移民を海外に送り出すということはできないのであります。まずこの点について大臣がいかなるお考えを持つておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 移民の重大なる意味を持っておるということについては、今日何人も認めておるところだろうと私は考えます。われわれもむろんそれを非常に重大視するものであります。過去において北米の移民問題といえば、移民の制限等のことでいろいろと故障だらけであつたのでありますが、今日において今お話のように南米等において日本の移民を相当数歓迎されるということは、非常に私どもといたしましては隔世の感があるのでございます。これはおそらく関係の皆さん方の非常な努力と御配慮の結果が多いことだと考えます。南米の松原安太郎君のことも私はお日にかかつて承知いたしております。単に人口問題の解決とかいうような根本的な大きな問題があるのみならず、通商方面から見ても、これは非常に重大なものであることは言うをまちません。移民の仕事がうまく行くということによつて、どれだけ日本全体の社会問題としても、何かそこに明朗性を与えるということを考えますと、でき得るだけの施策をして、これを促進するということには少しも異存がないのでございます。ただ私就任早々でどういう施策を今いたしておるかということの実際面においては、十分御希望に応ずるような御答弁もできかねることを非常に遺憾としますが、今お話の予算の点、それから特に配船の点であります。それについては移民奨励のための借款等もこれに関連して利用するということも当局の方では十分考慮し、立案もしておるようでございます。さようなわけでありますから、将来十分御意見をも承つて進めて行くことにいたしたい、こう考えております。なお具体的に今どういうことが問題になり、どういうことをやつておるかということについて、いささか当局の方から説明を申し上げさせましよう。御参考になるかと思います。
  77. 矢口麓藏

    ○矢口説明員 御答弁申し上げます。予算の問題につきましてはただいま上塚代議士御説の通りでございまして、問題の最もむずかしい点は輸法力にあります。しこうしてその輸送力は予算の問題に関連いたします。われわれこの移民の担当者と内外一緒になりましてこの予算の獲得のために種々努力しておりましたけれども、今日までのところ遺憾ながら四億しかとれませんので、四億のうちの三億八千万円は輸送力に充ててございます。ただいま上塚代議士のおつしやられました通りの船で運びつつあるのでありますが、この状態では松原氏ほか種々努力をされました数にも足りませんので、現在種々努力いたしまして来年度におきましてはその倍以上の予算を獲得いたしまして、はるかに多い移民を送り出すために努力しております。予算に関連しまして輸送力の問題になるのでございますが、輸送力につきまして現在事務当局で考えておりますのは、新しい船をつくるということは相当の経費もかかりますので、古い船を改装いたしまして七はいを目途にしておりますが、七はいの船を改装いたしまして、その金は約二十三億円を要しますが、その七はいの船を改装いたしますと一ぱいについて輸送力は五百人であります。それと今先生のおつしやいました三隻を加えまして十艘でもつて大体一年間一万人送出の計画を持つております。はたして一万人の人間を送り出せるやいなやは、先ほど申しました予算の問題と関係いたしますので、幸いにして先ほど大臣も一言言及せられました借款等の話合いもできることになれば、何とかこの目的を達し得るのじやないかと考えております。予算の問題、それに関連いたしましての輸送力について御答弁申し上げました。
  78. 上塚司

    上塚委員 ただいまは予算の問題についてはできるだけ努力する、来年は少くとも今年度の倍額以上を獲得する覚悟であるということを聞きまして、大いに安心いたしました。しかしただいまお話の借款の問題でありますが、これは吉田総理大臣が外遊当時にアメリカにおいて、交渉しておられたものでありまして、ナショナル・シテイ・バンク、チエーズ・ナショナル・バンク、バンク・オブ・アメリカの三行から千五百万ドルを借り、これを移植民の事業に投下するという目標のもとになされたのでありますが、これは外貨であります。これをもつて日本の汽船の改造費であるとか、あるいは輸送船賃であるとかいうことに支払うことは、おそらく銀行当事者も同意しまいと考える。従つて船舶の改造費のごときあるいはただいまの移民の船賃のごときは、当然他の財源を必要とするのではないかと思うのであります。あるいは財政資金または他の農産物余剰物資に関連しまする見返り資金のごとき、こういう方面を使わなければならぬのじやないかと考えられますが、その点について大臣の御意向はいかがでありますか。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 アメリカの銀行の借款等の使途、はたして移民問題にどういうぐあいにこれを利用し得るかということについては、私まだ十分研究のいとまがございません。できるだけそういうものも利用し、その他の今お話の通りに国の財源に支援を求めるという点も十分考慮すべきだと考えます。十分に御意見のあるところを尊重して仕事をいたしたい、こう考えております。
  80. 上塚司

    上塚委員 現在移民が計画的に送られておるところはブラジル国のみでありますが、なおこのほかに日本の移民を受入れたいという希望を持つている国が二、三あるのでございます。たとえば西インド諸島のドミニカ国のごときあるいはまたボリヴイア国のごとき、少数でありますが、アルゼンチン、コロンビアのごときも日本移民を受入れる態勢にあります。なかんずく前二者ドミニカ国及びボリヴイアは相当多数の日本人を受入れる用意をいたしておる。ドミニカの移民につきましては、先般私南米親善使節として参りました帰途立ち寄りまして、大統領及びその令兄に当るトルヒリヨ元帥に面会しまして、日本移民についての考えを確かめましたところ、とりあえず四、五千家族、約二万人程度を日本から送れるかどうかということを向うから質問されたくらいであります。向うの方では少くとも二万五千家族、十四、五万人の移民を求めておる状態にあるのであります。ボリヴイアのごときは、今村忠助代議士が昨年と今年二回向うに参りまして交渉の結果、これも相当多数を要求いたしておるのであります。かくのごとき機会はたびたび来るものではありません、十年、十五年の間にこれを完了してしまわない限りにおいては、また時勢かかわって日本移民を拒否せられるような時も来ないとも限らない。今日本の移民が海外に歓迎を受けておるのは、日本移民がその地においてその国の法律をよく遵奉し、よき市民としてその国の産業発展のために努力して大いにこれに貢献した結果、日本移民に対する声価が上つておるのであります。こういう機会において政府及び民間におきましてもでき得るだけ努力いたして、少しでも多く毎年出す必要があるのでありますが、これらの諸国に対する移民問題について大臣はどう考えておられますか、お考えを承りたいのであります。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 非常に私は御趣旨に御同感でございます。今お話の趣旨によく参照してこの問題をとりはからつて行きたいと考えます。
  82. 喜多壯一郎

    喜多委員長 大臣に申し上げます。委員の方に声が徹せぬようでありますから、もっと高声に願いたいという要求があります。
  83. 上塚司

    上塚委員 あまり多くをお尋ねいたしません。最後に移民問題とは直接関係はありませんけれども、私がドミニカ滞在中に、同国の労働経済大臣から日本の外務委員長である資格の私に対しまして、日本とドミニカとの通商航海条約締結促進に対して、あつせん方を依頼されたのであります。よつて私はただちに代理公使を通じまして政府当局にその旨を通知いたしまして、その促進を促したのでございますが、その後いかなる経過に相なつておりますか、その点を承知いたしたいと思います。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 その問題はおそらく前内閣の時代だと思います。従いまして私からお答えするのはいかがかと考えますが、しかし今事務当局にそのことを尋ねましたところ、その問題については通商航海条約協定案をすでにわが方から提出して、向うと交渉中である、こういうことでございますから、御了承願います。     ―――――――――――――
  85. 喜多壯一郎

    喜多委員長 日本国ビルマ連邦との間の平和条約賠償及び経済協力に関する協定について質疑を行います。並木芳雄君。
  86. 並木芳雄

    並木委員 前の吉田内閣は数々の汚点を残して退陣をいたしました中で、せめて拾い上げてみれば、このビルマとの平和条約賠償協定くらいなものがたつた一つのものでないかと思います。しかしそれにもかかわらず、私どもとしてはインドの平和条約なんかと比べてみるときに、なお相当不可解なこともありますし、十分満足の行かない点もございますので、これらの点について重要な事項けを質問してみたいと思います。  第一にビルマとの平和条約は、賠償のために平和条約をつくつたような感じがいたします。つまり平和条約がまずできて、それに基いて賠償協定というものができるのが通常の形でありますけれども、この平和条約の本文の中にはすでに賠償の金額まで入っておる。賠償の方の協定にも金額が入つておる。ダブつておる。こういうようなところからあたかも賠償のための平和条約である。これでは本末転倒の感がするのでありますけれども、今度はどういうような事情でこの一種の変態な形になつたのでありますか、お尋ねいたします。
  87. 下田武三

    下田説明員 ただいま賠償のための平和条約であるというお話でございますが、これはお説の通り本末転倒でございまして、わが方としては一日も早くビルマを含む策南アジア諸国との間の正常関係を回復いたしたいと念願いたしておるのでありまして、ただビルマ側においては賠償問題が解決しない以上は、平和条約締結ができないという態度でありますから、賠償問題の解決ということは正常国交関係回復の手段であるわけであります。あくまで平常の状態を回復するというのが大目的でございまして、そのための障害たる賠償問題の解決が同時に行われたという関係に相なつております。
  88. 並木芳雄

    並木委員 平常国交回復のための手段であるということになりますと、日本の方ではビルマに実をとられたのではありませんか、つまりこちらでは国交回復を目標として、そのために賠償という実を大きくとられたのではないかと思うのです。それが証拠には第三条の貿易、海運、航空その他の通商関係規定した条文がございます。サンフランシス三平和条約の場合には、通商航海条約ができるまでの間においては最恵国待遇、それが与えられるこういうふうに規定ができております。しかるにこのビルマとの間ではそういう暫定的の規定がございません、これは明らかに日本にとつて不利だと思います。そういうような点を考えますと、どうも実利を占められたのであるというような感じがいたしますが、この点はいかがですか。
  89. 下田武三

    下田説明員 第一点につきましては、戦争をやつておりました国家が再び国交を回復するにあたりまして、賠償問題を解決するということはちつとも異例なことではございません。桑港平和条約自体も十四条で賠償をきめております。過去のヴエルサイユ平和条約でも同時に賠償をきめておるわけでありまして、戦後正常状態に入るには、必ず賠償の問題を定めたところの平和条約ができるという国際慣例でございまして、今回の場合もきわめて自然な慣例通りに行われたということだと存じます。  第二点の、第三条で桑港条約のような最恵国待遇及び内国民待遇の相互付与が落ちておるではないかという点でございます。これは午前にも簡単に御説明申し上げましたように、わが方としてはすでにガツトの事実上の締約国に相なつております。しかもビルマ日本のガツト仮加入の際にこれを積極的に推進して賛成してくれた国なので、ございます。でございますから、すでに関税上は最恵国待遇に均霑しておるわけでございます。その他入国でございましても、滞在にいたしましても、職業に従事することにいたしましても、事実上は日本は何ら差別待遇を受けていないのであります。しかしながらわが方としては最恵国待遇を挿入したかつたことは事実でございます。これはわが方は最後までその挿入を求めたのでありますが、ビルマは独立後日なお浅くして、いまだいかなる国とも最恵国待遇条項を含む条約締結したことがないというわけでございまして、この日本との平和条約で最初の先例をつくることには、躊躇せざるを得ないという態度でございました。結局その問題を最後まで残しまして妥結が遅れたわけでありますが、しかしなが先ほど申しましたように、実際上何らの支障がないという点と、本来はこの最恵国待遇ということは通商航海条約でこまかく規定することでありまして、国交回復にあたつてとつぱしから実は必ずしもきめておく必要がある事項とも認められませんので、この意は譲歩しまして、第一項の原則のみ、第二項以下の規定は削除するということにいたしまして、妥結しました次第であります。
  90. 並木芳雄

    並木委員 次に、インドの平和条約では日本に対する賠償をとらない、無賠償であります。またインドにおける日本財産返還ということを規定しております。返してやろう、ところが今度のビルマ平和条約においては賠償を取立てるのみならず、ビルマにおけマ財産の没収の条項があるのであります。それは私はインドとの条約との間の大きな違いであろうと思いますが、大体同じような状態にあると思つておつた社会党内閣のもとにおけるビルマとの条約で、どうしてこういう差が出たのでございましようか、この点を、伺いたいと思います。
  91. 下田武三

    下田説明員 その点も御指摘通り、明らかにインドとの平和条約と違つておる点でございます。しかしながらインドは現実に戦争中日本が戦争いたしたことはないのであります。ごく一部に爆撃が行われたということはありますが、実際問題としてインド自体は日本の戦争遂行によつて何ら被害を受けていないわけであります。これに反しましてビルマ日本が占領をいたしまして、そうして占領するまでの過程において、また終戦に至る過程におきまして、非常な荒廃をビルマはこうむつておるわけでございます。でございますから、賠償をとりたいという気持が起るのは、インドと違いまして私は当然だろうと思うのであります。それで賠償条項におきましても、日本の資源をもつてしては十分な賠償を払うことはできないという原則を認めております以上は、反面存緬日本資産をその埋合せとしてとるということは、サンフランシスコ平和条約の思想をそのまま継承いたした次第でありまして、これも先方の立場からいたしましたならば、当然の要求ではないかと存ずるのであります。
  92. 並木芳雄

    並木委員 在緬日本資産の総額は大体どのくらいと政府は見積つておりますか。
  93. 下田武三

    下田説明員 これはビルマ政府自体が正確な統計を持つておりません。従いましてわが方も的確な数字を把握できないのでありますが、ただ大まかに申しますと、これは非常に微々たるものであるということが申し上げられる次第であります。
  94. 並木芳雄

    並木委員 今度の賠償について日本経済自立を阻害しないようにというような趣旨があげられておる点では、これはなるほどサンフランシスコ平和条約と同じでございます。しかし役務賠償をもつて建前とするサンフランシスコ条約とは違つて、今度は役務賠償のほかに生産物賠償という新たなる項目が加わつております。これは一体日本にとつて負担が加重されるのであるかどうか、またどういうわけで役務賠償だけに限られたものに生産物というものが今度追加されたのであるか、お伺いします。
  95. 中川融

    中川説明員 サンフランシスコ条約におきましては、お説の通り役務賠償ということが原則になつておりまして、もしも生産物賠償として供与する際には、原料は先方が持つて来るというふうな規定になつております。しかしその規定も必ずしもはつきりはしないのでありまして、日本外貨負担を課さないということがまた書いてあるのであります。その思想からいいますれば、原料のうち外貨を伴うもののみを求償国の方で持つて来るということかとも考えられるのでありますが、要するに役務賠償という考え方、さらに生産物を提供する際に、どの程度の負担を有償国がしなければならないのかという点が、その後におきます具体的な求償圏との折衝において一番問題になつた点でございます。フイリピン、インドネシア、ビルマ等の求償国としては、日本から賠償をもらう際に単に純粋の役務に限つて、たとえば機械をほしいという場合に、その原料を自分の方から調達して持つて行かなければ困るということでは、これは非常に自分たちの負担が多くなつてはなはだ困る。先方から見れば賠償としての利益があまりないということが非常な苦情の種であつたわけであります。従つてサンフランシスコ条約の解釈といたしましても、はたしてどの程度の原料を求償国から要求して来るかという点につきましては、日本側の解釈としてもいろいろな議論があつたわけでありますが、ビルマは御承知のようにサンフランシスコ条約の調印国でございません。従つてサンフランシスコ条約に拘束される必要はないわけでありまして、ビルマとの賠償協定を円満に妥結するためには、少くとも生産物、これは日本生産物に限るわけでありますが、生産物はやはり役務とともに提供し得るということにしなければ、話がとうてい妥結し得ないという状況であつたわけでありまして、日本としてもそれほどサンフランシスコ条約原則から離れるわけでもございませんので、従つてこの点は新しくビルマとの間におきましては日本生産物をも提供し得るというように考えをきめたわけでございます。これによつて日本経済に非常な障害が来るかということになりますと、ただいま提案いたしております十年間に二値ドル程度のものをビルマに出す場合におきましては、決して日本経済、財政力を非常に圧迫して害を与えるというようなことはないというふうに、われわれ政府としては考えておる次第でございます。
  96. 並木芳雄

    並木委員 生産物として予見されるものはどういうものでありますか。
  97. 中川融

    中川説明員 ただいま御審議を願つております賠償及び経済協力に関する協定に附属書というのがありますが、附属書にいろいろの項目を列挙してございます。これは生産物の性質を列挙みているのではございませんが、この項目をごらんになりますと、たとえば水力発電所の建設でありますとか、製鉄所の建設でありますとか、その他多数め項目が書いてあるのでございますが、大体これらに必要なる資材ということになります。おもなものは機械等の生産資材になる予定でございます。
  98. 並木芳雄

    並木委員 それらの点でまず第一に着手して行きたいと政府が考えているのは何でありますか。
  99. 中川融

    中川説明員 附属書には十九の項目が掲げてございますが、必ずしもこの順序によつて賠償実施するという考えではございません、これはビルマにおける経済建設計画というものとにらみ合せまして、今後ビルマ政府交渉の上具体的な順序等をきめて参りたいと考えております。  なお、その一般的な大体の計画を立てるために、ただいま政府は稻垣平太郎氏を団長とする経済調査団をビルマに派遣いたしました。これには各方面の専門家を相当団員としてお願いしたのでございますが、現地に行つてビルマ側経済計画の実情も聞きかつ現地をも視察いたしまして、実情に合つた案をつくる準備を進めております
  100. 並木芳雄

    並木委員 その交渉は順に行つておるのであるかどうか、また近く日本へ帰つて来てのその後の段取りはどういうふうになつておりますか。
  101. 中川融

    中川説明員 現地に参りました経済調査団は、参りましてからまだ十日ほどにしかなりません。しかし結局全部で三週間ほど滞在いたしまして現地の視察をしたい、また交渉もしたいということになつておりますので、今月末には帰つて来る予定でございます。状況につきましては逐次電報等をもつて会議の様子等も知らして来ておりますが、ビルマ側も非常に熱心でありまして、この条約の調印にあたりましてはウ・チヨウ・ニエン工業大臣兼外務大臣代理みずから先方の交渉団長になりまして、関係各省の人を団員に加えまして日本側の調査団と緊密な連絡をとつて打合せをいたしておる模様でございます。
  102. 並木芳雄

    並木委員 次にふに落ちない点といたしましては、今度賠償をきめますけれども、それには将来再検討をするという条項が入つております。これは今まであまり例を見なかつたのではないかと思います。将来他の賠償と見合うということは、おそらくフイリピンとかあるいはインドネシア等賠償ができたときと思われるのですけれども、これは一体どういうわけでこの条項を入れなければならなかつたのでしようか。日本がこういうもので縛られると、まずく行くとまたいたちごつこで、フイリピンの方が案外いいからフイリピン並に上げろとか、そういう問題が起らないでしようか。今まで政府もいろいろ交渉しておつたようでありますけれども、大体四対二対一というのが比率だつたと思います。フイリピンが四で、インドネシアが二、ビルマが一ということでしたが、こういう比率通り行かなくなるのではないか。フイリピンとの交渉では日本は四位ドルを主張しております。フイリピンを四の四億ドルとすると、インドネシア二、ビルマ一ですから、ビルマの場合には一億ドルにならなければならない。そうすると今度の場合は二億ドルですから、すでに倍であつて、四対二対二ということになります。こういうような率で、今度はフイリピンの方をせり上げられて、四億ドルではだめだということで、大きな額でとりきめられたような場合に、今度は逆にビルマの方から再検討をしてくれ、こういう中入れがあつた場合には、日本としては相当窮地に追い込まれるのではないかと思うのです。どういうわけでしようか。フイリピン交渉の状況とともに説明してもらいたいと思います。
  103. 中川融

    中川説明員 御指摘のようにこの再検討に関する第五条第一項の(a)の三という規定は、ある意味でほかの協定にはないような珍しい規定かとも思いますが、この点はビルマとの賠償交渉におきまして、いろいろありました困難な折衝意の一つでございまして、その結果がかような規定となつて出て来ているわけでございます。今御指摘になりました四、二、一というような比率を賠償政府は考えていたようではないかという点でございますが、これは新聞にはいろいろそのような比率のようなものが出たことは事実でございますが、政府として一ぺんもこのような方針をきめたことはないのでございまして、これは決して政府方針になつているわけではないのでございます。しかるに新聞等に出ました結果として、ビルマとしては自分のところをフイリピンに比べて四分の一というようなことにされては非常に困る。これは政府としてはそのようなことはないということを再三申しましたが、新聞等に出ておるために、自分の国の国民としては非常にいやな感じを持つているということで、交渉の過程におきまして、どうも日本は何かそのような考えがやはり腹にあるのではないかというようなことを大分最初は懸念していたようでございます。従つてビルマが今二億ドルということで賠償をきめるにあたりまして、フイリピンインドネシア等に、今後の折衝の結果日本の与えるものが今大体予見されておるものよりも非常に多くなるというような事実が出て参りますと、ビルマとしても自分の国民に対して非常に説明が困るから、やはり一種の権衡を維持する条項を入れてもらいたいということが交渉の過程に出て参つたわけでございます。これまた日本側といたしましては、賠償というものがあまり最終的にならない、いつかまたかえられるというような可能性のあるものでは非常に困るのでございます。それが折衝で非常に苦心いたしたところでございまして、結局日本は将来ほかの国の、すべての賠償請求国に対する賠償最終的解決があつた際は、ビルマ側の今まで言つておりました公正なかつ衡平な待遇に関する要求というものをビルマは持ち続けておつたわけでございますが、その要求をもう一ぺん再検討してみる、英語ではりエクザミンという言葉でございますが、もう一度日本側が自主的に見直してみるということを約束したわけでございます。現実の結果はこれを発動することがありやいなやはわかりません。また発動した際に、日本義務としては、要するに日本が自主的にこれをもう一ぺん見てみるということでございます。日本側としてもこれによつてさほど実質的な支障を来すような懸念はないのではないか、われわれとしても日本の財政能力の範囲内であらゆる国に対する賠償額というものを予定しながら、賠償交渉を今後もフイリピンインドネシア等と進めて行くことができるのではないか、かように考えております。
  104. 並木芳雄

    並木委員 通商航海条約はできる限りすみやかに交渉を開始することとなつておりますが、政府はもうすでに交渉を開始しておりますか、それともこの条約批准を待つてすみやかにやることにたりますか、大体いつごろを目標として通商航海条約締結しようと考えておられますか。
  105. 下田武三

    下田説明員 その点につきましては、まずこの平和条約実施されまして、正常な国交関係ができました上での問題でございますが、ただいまのところ、いつから折衝を始めるという時期の見通しはつけておりません。しかしながら日本といたしましては、もうすでにずいぶん前から、戦後各国との間にどういう加商航海条約締結すべきかという、通商航海条約のモデル案というものを外務省でつくつておりまして、これをビルマに当てはめた場合にどういう形のものにするかということは、案はただちに提出し得るのであります。ただいまはまだ平和条約実施前の段階でありますので、その提出ということは控えております。
  106. 並木芳雄

    並木委員 しばらく行き詰まつておりましたフイリピンとインドネシアとの賠償の問題が、今度内閣がかわつて再び生気をとりもどして話合いが始まつたということも伝えられておりますが、そういう事情があるかどうか、最近フイリピン、インドネシアとの状況はスムースに行つているのかどうか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  107. 中川融

    中川説明員 賠償問題につきまして、まずフイリピンとの現況を簡単に申しますと、本年春わが方から村田全権団が参りまして、向うと賠償を含む平和条約交渉をすることになつたのでありますが、われわれとしては、その前に現地におきまして大野公使とガルシア外相との間にできました、四億ドル支払いを内容といたしますいわゆる大野・ガルシア覚書というものが基礎になるというふうに当然考えたのでございます。先方は国会方面から非常な強い反対が出ましたために、大野・ガルシア覚書というものに拘束されたくないということを言い出したので、結局平和条約交渉は不可能になり、村田全権団はむなしく日本に引揚げて来たことは、御承知の通りでございます。その後そのまましばらく経過いたしたのでありしなすが、フイリピン側としては大野・ガルシア覚書に拘束されないで、再び日本側と予備的折衝を始めたいということを十月ごろになりまして申し入れて参つたのであります。日本側といたしましては大野・ガルシア覚書というものは、一応正式な権限のある外務当局者の間で仮調印されたものではありますけれども、これは本調印したものでもございませんし、かつまた先方がどうしてもそれがいやだというものを固執するということも、決して今後の交渉を円満にするゆえんでもございませんので、要するにフイリピン政府は大野・ガルシァ覚書に拘束されたくないということであるならば、日本側としてもそれでは大野・ガルシア覚書というものには今後拘束されないという意向をはつきり向うに表明いたしました。従つて大野ガルシア覚書の拘束力は一応双方にとつてなくなつた次第でございます。ある意味フイリピンとの話合いは全然白紙に返つたとも申していいわけであります。しかし同時に日本側は、フイリピン側の言うように新しい基礎における交渉を開始することはさしつかえないということも申し入れたのであります。従つて大野・ガルシア覚書に基かない新しい基礎による解決を発見すべく、日比間に非公式な話合いを始めるということについての同意は双方にできたわけでありますが、先方はネリ大使という人を全権団長に任命いたしまして、日本側の全権と申しますか主席代表と申しますか、交渉者の任命を待つているところでございます。日本側といたしましては、内閣の交代等もありましたために、現在まだ交渉者というものを任命するに至つておりません。近く何らかの意味における交渉者の任命がありますれば、その交渉者と先方のネリ代表との間に予備的交渉が開始せられることとなる予定でこざします。  インドネシアにつきましては、倭島公使が本年初めから先方と折衝しておるのでありますが、岡崎前外相が約一年前にインドネシアに参りまして、ある額を提示いたしたことがあるのでありますが、その額に対しまして先方は不満を唱え、さらに日本側からもつとよい額を出すようにということを言つておるのであります。わが方としましては、そもそも交渉の常道として、一方から案が出れば、他方がそれに対する対案を出す、そういうことによつてだんだん歩み寄つて行くのが常道であるにかかわらず、一方的に日本側から次次と案を出せといわれるのでは少々技術上困るから、先方から出せということを申しておるのでありますが、先方はまだそれに応じておりません。従つて交渉はその後停頓の状況にございます。しかしながらビルマとの賠償が一方に片づき、なおフイリピンとも逐次話が始まりそうなけはいにありますので、インドネシアとしてもやはり現実的な段階において、何とか話をつけるべきであるというような空気が逐次濃厚になつて来ておるのではないかというふうに観測いたしております。
  108. 岡田勢一

    岡田(勢)委員 関連して、中川局長にお尋ねいたします。村田全権団の解消されましたことはおつしやる通りでありまして、その後、吉田内閣辞職以前の、これは私の一種の情報でありますが、今説明されましたように、マニラ政府の空気がよほどかわつて参りまして、再び日本の全権団が任命されて交渉を早く開きたいという情勢になつて参つたようでありましたが、吉田内閣の交代いたします少し前に、吉田政府においては村田全権団に参加しておられましたある一人の関係の深い全権の方が、今度代表全権で行くのであるかのような内定が行われたやのうわさを聞いておつたのであります。そういうことはありましたでしようかどうでしようか。また外務当局のそういう行きがかり上のお考えがあるのでございましようか、それが一点。もう一点はレクト派が非常に反対の論を唱えまして、マニラが険悪な空気になつておりました本年の五、六月ごろ、大野公使に帰れというような張紙などが盛んにマニラで行われたことがあつたことを聞いておりますが、当時大野公使は非常に困難な立場に立たれて、あるいは東京に帰つて来るというような空気もあつたようでありますが、その後のマニラの情勢が相当緩和されて来たのではないかと思われるわけであります。大野公使は、今日この空気がかわつて参りましたことによつて、安心してしりをおちつけて日本のためにマニラ政府との交渉をするという状態になつておりますかどうか、お伺いしたい。
  109. 中川融

    中川説明員 前内閣の末期におきまして、日本からだれか交渉者を派遣したらという話があつたことは事実でございまして、人選等も進んでおつたのでありますが、決定に至らない前に政変がございまして、内閣がかわりましたので、そのままになつております。なお大野公使に対しまして、現地においていろいろ新聞等で非難をするというようなことがあつたことは事実でございます。しかしながら、これは新聞等の非難でございまして、決してフイリピン政府の意向を代表したものではないと思われるのであります。従つて、大野公使も依然として日本の正式代表者としてマニラに駐在しておるわけでございます。
  110. 並木芳雄

    並木委員 今度の特色の一つとして、賠償とはまるつきり性質の違う経済協力という項目が入つて来ております。しかもこれは政府がやるのじやなくて、民間同士がやるように読まれるのですが、政府が将来全然投資をやることはありませんか。またここできめられた願が、十分民間の方で投資が行われなかつた場合にどうするのですか。政府がこれに何か保証でも与えるのですか。それとも民間にとつてかわつて政府が代行するというようなことがあるのでしようか。これは条約でもつて民間の企業なり投資なりを、いい意味では、経済協力促進になりますが、悪い意味では私有財産制限という私有財産不可侵の憲法にも抵触して来るのではないか。知らない間に、逆の意味で、みんないやがつてだれも出資するのがいやだというときに、この条約に縛られて政府が無理なことをやるのではないか。この三つの方面が考えられますから、はつきり説明しておいていただきたい。
  111. 中川融

    中川説明員 今度の条約には賠償のほかに経済協力ということが出ておるのでございまして、年平均五百万米ドル、これが十年間にわたりますから五千万米ドルに相当する経済協力がここに書いてございまして、これについての国家としての義務はこの条項はあります通り、こういう経済協力を容易にするため、あらゆる可能な措置をとることに同意するということでございます。つまり、容易にするためそういうことができるようにするということでございまして、必ずしも十年間に五千万米ドルの経済協力が行われなければ、政府として義務を果さなかつたということにはならないと思うのでございます。政府としてはあらゆるルートをつけておいておかなければいけないと思うのでございます。結局経済協力は、原則といたしまして日本の民間業者の人が先方と契約をいたしましていろいろ資本の輸出、投資などをやるということになると思うのでございます。それでは政府はそれ以外に関与しないかと申しますと、これに一つの例外と申しますが、賠償及び経済協力付属交換公文というのがございます。これはやはり今の条項に関連してできておる交換公文でございまして、これによりまして右の年五百万米ドルの経済協力のうち二百万米ドルまでは、ほかの合意をした場合は別といたしまして、二百万米ドルまでは貸付の形で出すことができるということが書いてございます。いわゆる貸付でございますので、この貸付は日本国が貸し付けるのでありますから、日本国政府とも日本国民とも書いてございませんが、実際は政府が輸出入銀行等を通じて年一百万米ドルに相当する貸付をビルマ側にいたします道を開かなければいけない。この意味では、やはりこの貸付については、政府としてはある程度資金的に必ずそれだけの貸付ができるようにする道は開かなければいけないと思います。従つて二百万米ドルは大体貸付の対象になるのではないか、あとの余りが三百万米ドルありますが、この分は民間の合弁事業の形になります。但し合弁事業でも、民間業者で資金が足りないという場合には、輸出入銀行等に金を借りることになろうと思いますが、その際には貸す金については政府がやはりある程度の目途を立てまして支障がないように道をつけておかなければならないと思います。しかし合弁事業は必ず三百万米ドルのわくぎりぎりに行くかどうかということは、これは結局その契約の内容その他によることでございまして、これは結局民間とビルマとの話合いにまかされているということになると考えるのでございます。従つて民間の契約の自由というものに政府が干渉するというようなことは起こらないと考えております。
  112. 並木芳雄

    並木委員 その貸金に充てるために、吉田内閣時代愛知前通産大臣が、アメリカと例のMSAに基く余剰農産物の円代金を貸し付けるよりに交渉したはずでありますけれども、その結果は成功だつたのですか、失敗だつたのですか。またそれに関連して、MSAに基く余剰農産物の関係は、来年度においてはどういうふうな見通しになつておりますか。その円資金の用途についていろいろ今まで折衝も行われて来たようでありますが、この際それらの点もあわせてはつきりしておいていただきたいと思います。
  113. 下田武三

    下田説明員 その点につきましては、愛知前通産大臣はワシントンに行かれまして話合いをなさいましたが、細目までの確定した案をきめて帰られたわけではないのでありまして、なお目下十分交渉を要する点が多々あるわけであります。そこでアメリカ側からの援助、余剰農産物購入の見返り円を賠償の方のローンに充当することができたら、これは日本の財政の、直接腹を痛めないでできるので、まことに好都合であるということに考えついたのは事実でございます。しかしながらアメリカのMSA法自体にいろいろな制約がございまして、なかなかわが方の思う通りには参りません。ただいまのところの観測では、先ほどアジア局長説明申し上げましたように、輸出入銀行から業者への貸出しということになるかと思いますが、この輸出入銀行にしからば見返り円賞金を流入できるかというと、それがどうもできないようでございます。そういたしますと別の方途、つまり、開発銀行というのがございます。開発銀行の方にMSA見返り円資金を流入さして、それで開発銀行からまた輸出入銀行の方にまわして、そうして輸出入銀行から業者の方に貸し出すという間接方式、そういうことが法律的には可能でないかというただいまの見通しでございます。
  114. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ、それでは最後にお尋ねしておきます。本年度は賠償その他に約百五十億でしたか、予算に計上したと思います。来年度はこれだけでも七十二億円であり、その他いろいろ処理費として相当な額が必要ではないかと思いますが、政府としては賠償その他に充てる額をどのくらい今度の新予算に要求するつもりですか、それを伺いたい。
  115. 中川融

    中川説明員 今年度の平和回復善後処理費は百五十億円でございまして、来年度は御説の通りビルマにおいても七十二億円、そのほかもしフイリピンインドネシア等々が解決すれば、さらに多くの金がいるのでございまして、百五十億円では足らないかと思うのであります。この点につきましては、大蔵省が主務省になりまして予算の編成に当つておりますので、外務省から特に賠償についての予算を請求するというふうな措置はとつておりません。大蔵省において、われわれの方からの大体の外交交渉の見通し等々を勘案して、必要な予算措置を講じておるのでございます。はたして今何億円をこれに計上することになつておりますか、外務省としては承知していないのでございます。いやしくも条約義務として規定されましたところはこれは当然国家としてしなければならないところでありまして、私どもはその点について支障はないものと考えております。
  116. 喜多壯一郎

    喜多委員長 細迫兼光君。
  117. 細迫兼光

    細迫委員 平和条約第五条の1の(b)の(1)ですね、差押えしたり、処分する権利がビルマに認められておる、あの点でありますが、これは観念賠償の二億ドルの中に含まれるのではなくて、以外の利益を供与する――供与というのもおかしいですが、結局ビルマが収益することに相なるのではないかと思うのでありますが、いかがでございます。
  118. 下田武三

    下田説明員 その点は仰せの通りでございます。二億五千万ドルのわく外に在緬日本資産というものをとられるわけであります。
  119. 細迫兼光

    細迫委員 つまりこれは二億五千万ドルの担保ではなくて、全然別わくのものと理解していいですね。――この五千万ドルの経済協力の問題でありますが、これは共同出資、共同事業という形で行われる。だからこれの所有権は、それぞれ持分に従つて共有であろうと思うのでありますが、これをビルマ政府あるいは国民の使用に供するということは、管理の使用、一切の支配権というものをビルマ政府及び国民に認める、こういう趣旨でありますか、
  120. 中川融

    中川説明員 経済協力の結果できます共同事業、あるいは合併事業と申した方かさらに通俗な言葉でよろしいかと思いますが、合併事業に出資いたしました日本側の持分、これは普通の合併事業の場合と同じでございまして、要するに一応その会社の資産になるわけでございます。それに対して日本側の持分について配当を受ける権利があるわけでございます。なおその会社自体の管理と申しますか、運営と申しますか、これはその契約に従いまして、やはり会社の管理者がそれぞれできましてやるわけでございます。その際におそらく、今までの交渉の状況で見ますと、先方は管理の経験というか、そういう管理の経験者が少い関係上、主して日本の技術者あるいは日本の事業経験者にやはり管理をまかすというのが多くの形ではないか、かように考えます。これはしかしいずれにせよ、日本の出資者と、先方と契約を結ぶ、その契約の内容によつてきまることでございます。その協定なり条約それ自体からは、これがどのような形の合併事業になるかということは何も出て来ないのでございます。しかしながらそれをビルマ政府が、たとえばその事業を強制収用するという場合のことについては規定を設けまして、その際には一定年度は強制収用しないというようなことであるとか、あるいは一定年度を越しして強制収用した場合に、その補償の額は大体どの程度補償する、補償で払つた金は内地送金を認める、あるいは認めるとして、どのような形で送金を認めるかというようなことは、必ず契約に書かなければならないということが、この賠償並びに経済協力に関する協定の方で規定してございます。従つてただいしま御質問になりましたような事は、結局ほとんど全部が当事者間の契約において、それぞれ最も事態にあつた方法によつてきめられるということになろうと思います。
  121. 細迫兼光

    細迫委員 頭が悪いらしくて、あまりはつきり入らないのでありますが、私はこういう形かと思つていたのです。日本からも出資しまして、共同事業を始める、それは会社になりましよう。会社には会社の機関ができましよう。それが直接すべてを運営するのではなくて、ときにはビルマ政府、あるいは民間の人にその施設を賃貸するというようなことによつてビルマ政府あるいは民間の人がこれから利益を受けてビルマの国のためになる。ただ合併会社はそれから賃貸料をとつて暮して行く、こういうような形になるかしらんと思つたのですが、これは私の誤解でありますか、
  122. 中川融

    中川説明員 合併会社はビルマにできるわけでございますが、それができまして、さらに会社が自分で直接事業をしないで、施設その他をビルマ政府なりほかのビルマ人に賃貸するというようなこと特に予定していないのでありまして、原則といたしまして当該会行自体が事業を経営する。それによつて出る利益につきましては、日本側日本側の持分に応じて利益を受ける、ビルマ側ビルマ側の持分に応じて利益を受ける、かつその当然の事業それ自体の結果としてビルマ国民が広くいろいろな利益を受ける、かようなことになると思うので、ございます。
  123. 細迫兼光

    細迫委員 よくわかりました。これで終ります。
  124. 喜多壯一郎

    喜多委員長 戸叶里子君。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 今度のビルマとの平和条約を結ぶことによつて日本が太平洋戦争で戦争状態に入つていた国々といろいろな国交整調をした。それは何番目くらいになりますか。六十番目だと思いますが、ちよつと念のために伺つておきます。
  126. 下田武三

    下田説明員 国交調整と申しましても、条約関係によりましてはつきり国交を調整する場合もございますが、大部分はサンフランシスコ平和条約当事国が、それぞれ批准することによつてその国と日本の間の国交が開ける、これがたしか今日まで四十箇国に相なつております。そのほかに単独の平和条約国民政府とインドとがございしますので、条約に基く正式の国交関係というものはこれで四十三番目に相なる次第でございます。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 次に伺いたいのは、このサンフランシスコ平和条約の十六条と、それからたとえば日本ビルマ賠償協定、あるいは日本フイリピンとの賠償協定というふうな個々の賠償協定との関係はどういうことになるのでしようか。
  128. 下田武三

    下田説明員 桑港条約の二十六条、つまり日本がサンフランンシス平和条約当事国に与えた待遇よりも有利な待遇を与えましたならば、サンフランシスコの条約当事国は、その有利な待遇にひとしく均霑し得るような規定がございます。そこでその二十六条との関係についての御質問だと思います。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじやないのです。十六条の問題です。非連合国にある日本の資産です。
  130. 下田武三

    下田説明員 桑港条約の十六条は、戦争中中立でありました国及び連合国側と戦争をしておつた国、これはいわゆる枢軸国あるいはタイ等でございますが、それらの国にある日本の資産を、戦争によつてあるいは捕虜となり、あるいはしいたげれた軍人を慰める費用に充当するという規定でございます。これはあたかも先般それらの国々、十六箇国ございますが、その国の代表者のロバート公使が参りまして、大体下打合せはできしまして、一定の額の在中立国日本資産というものを連合国側に引渡すということに相なつておりますし。この十六条の問題は、ビルマのような戦争中、日本と戦争関係にあつた連合国側財産の問題とは、まつたく別個の問題でございます。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと今御説明に相なりましたように、先ごろ英国のロバート公使が来て、その問題で署名して行かれたというその対象となるのが、今十六箇国あるとおつしやいましたが、その中にはビルマなど入らない。そうするとどういう国々が入つているわけなんでしようか、
  132. 下田武三

    下田説明員 十六箇国をただいま記憶いたしておりませんか、これは対日戦争に積極的に参加して、日本軍の手中にたくさんの捕虜を出した国、アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ等が一番大口でございます。日本の捕虜抑留所で戦時中苦しんだ人に対する償いをいたすために、連合国自体にあつた日本財産をとるならわかりますが、それにプラスいたしまして、中立国にあつた財産までも赤十字国際委員会に引渡して、そうして連合国側に分配するということに相なつております。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、ビルマとかインドネシア、フイリピンなどの個個の賠償協定と、この間のロバート氏が署名したものとは全然別個のものである。何ら関係ない、こう了承してよろしいでしようか。
  134. 下田武三

    下田説明員 ビルマサンフランシスコ条約当事国でありませんので、この十六条の利益に均霑しないわけであります。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど並木委員からも聞かれたと思いますが、平和条約の五条の(a)項の三号に「日本国は、また、他のすべての賠償請求国に対する賠償最終的解決の時」とありますが、この「最終的解決」というのはいつをさすのか、この点を承りたい。
  136. 中川融

    中川説明員 「最終的解決」と申しますのは最終的に話がきまつた時と申しますか、そのように考えております。従つて必ずしも全部賠償支払いを完了した時というふうには解釈いたしておりません。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますとフイリピンあるいはインドネシアその他の国との賠償協定が成立して、そうして一応決定した時に採集定解決、こういうふうに了解していいわけですね。それをもう一度念のために……。
  138. 中川融

    中川説明員 ここに書いてあります通り「すべての賠償請求国に対する賠償最終的解決の時」でございますから、やはりすべての求償国との話がついた時、かように考えております。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 その項のおしまいの方に「公正なかつ衡平な待遇に対するビルマ連邦の要求を再検討することに同意する」とありますが、この場合にビルマ連邦からの要求に対しては同意するという解釈なんですか。それに同意する義務があるわけですか。それともそれに対しては何ら日本側としては義務ほど強いものではないというふうに了解してもいいのでありますか。
  140. 中川融

    中川説明員 この条約をつくります際にビルマ連邦は、そのほかのいろいろの賠償請求国についてと同様公正なかつ衡平な待遇を自分らに与えてもらいたいということを主張していたわけでございます。従つてそのビルマ連邦の主張というものについて、もう一ペンその時に日本がこれを見直してみようということでございまして、ビルマ政府から要求があつて日本が見直すというのではないのであります。日本が自主的にこれをもう一ぺん見てみよう、その際もう一ぺん考えてみようということでございます。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 そうするとその場合もしもビルマ側から何らかの要求があつたならば、それに対して応ずる義務があるのですか。
  142. 中川融

    中川説明員 この規定から申しますと、ビルマ政府から要求があるなしにかかわらず再検討することとなるわけでございます。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 再検討するのですけれども、もしも何らかの要求があつた場合には、それに応じなければいけないという義務があるのですか。
  144. 中川融

    中川説明員 これはまつたく法律的な解釈でお答えするわけでございますが、要するに再検討するということを約束しているのでございまして、ビルマ側の申出に応じなければならぬということをここでは約束しているのではないわけでございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 それで今のところはわかりました。  次に伺いたいことは、先ほど他の委員から御質問なさいました五千万ドルの投資の問題なんですが、その場合に、日本の一定の商社なり何なりがきめられて、そしてビルマで合弁事業というのですか、それをするわけですが、その場合に、二千万米ドルに大体政府の方で持つてあと三千万ドルくらいを投資する場合に、輸出入銀行などを通した場合の利率はどのくらいになるかということを承りたい。特にその場合に、政府がその商社に対しての考慮を払つてやるかどうかという点を承りたいと思いします。
  146. 中川融

    中川説明員 十年間に五十万米ドルの経済協力をすることを容易にするように、日本政府はあらゆる措置をとるわけございますが、その五千万米ドルのりら、大体二千万米ドルは借款という形になし得ることは交換公文でなつております。おそらく借款になるのではないかと思います。余りの三千万米ドルがいわゆる合弁事業になるわけでございます。その合弁事業は、結局日本の民間業者とビルマ側――ビルマは社会主義の国家でありますから、おそらく政府が直後やる事業か多いと思いますが、ビルマ政府との契約合意によつて事業が成立するわけでございしよす。従つてその内容等、あるいは資金繰りをどうするかということは、当該当事業者がまず一応きめるわけでありますが、その際に日本側の当事者が金がなければ、どうしても輸出入銀行というところに行く、それが自然ではなかろうか。来た場合には、今申します三千万米ドルの限度で、希望があり、かつその条件、内容がいいものであれば、輸出入銀行が金を貸せるように政府としては措置をとらなければならぬわけであります。その際金利等がどうなるかということは、特に何ら条約規定がございません。しかしながら借款として出す分、これにつきましては、金利等その他の条件は、国際復興開発銀行が大体きめておる条件を考慮して、両国間の合意によつてきめるということが交換公文に書いてあるのでありまして、十年間に二千万米ドル見当の借款するにあたりまして、その条件は、国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行の大体同様なものに出す条件を参考にしてきめるということになつております。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 経済協定の三条に、共同事業をした場合の「ビルマ連邦政府又は国民の持分又は所有株式の割合は、当事者間で別段の合意をした場合を除くほか、六十パーセントより少なくないものとする。」というふりに規定してありますが、これから他の国と同種類の協定を結ぶ場合にも、結局こういうふうなことになるのじやないかと思うのです。そうしますと、日本アメリカとの関係で、アメリカから外盗難入などして来た場合の持株というような例から比べてみますと、大体そういう場合は五〇、五〇のようですけれども、この場合六〇、四〇にしておいたということになつて日本はどこから見ても非常に不利になるのではないかと思いますが、その点を伺います。
  148. 中川融

    中川説明員 合弁事業における持分の割合を四対六というふうに原則としてここに書いてございますが、これはビルマの憲法に、外国人と合弁事業をする際には、少くとも六割はビルマ国民が資本を打たなければいけないということがあるのでありまして、その憲法の原則から見て、どうもこの数字をかえもらつては困る。しかしながら憲法も決して例外を認めないわけではありませんので、例外はかまわない。一国難事業間で別に合意した際には例外を認めてよいということがございますが、六割ということは、憲法の建前からどうしても書いてもらいたいというビルマ側の希望で、六割という数字がここに出ているのであります。これは今申しましたようなまさしくビルマ側の憲法に基く関係で出ているのでありまして、その他の国では、お説のように四割、六割というよりは、五一%対四九%というような率が大体普通でございますので、ほかの国と同種の協定を結ぶ際には、おそらくその国にそれぞれ行われております制度に従つてこの数年等が出て来ると思いますこれが決して悪い例になろうとは考えていないのでございます。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 その四対六という数字はもう決定的なものであつて、それを変更することはできないわけですか。
  150. 中川融

    中川説明員 ここに書いてあります六〇%という数字をかえるということは不可能であると思いますが、ここでも別段の合意をした場合に除外しておるのでありまして、さらにこれを四九ないし五一とするということは決して不可能ではないのであります。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 この平和条約の方には批准条項がありますけれども、この経済協力に関する協定の方には批准条項がないのです。この両方関係はどういうふうになつているのでしようか。
  152. 下田武三

    下田説明員 これはほかの協定にもたくさん例がございますように、批准という言葉を使いますのは、平和条約でございますとか、あるいは通商航海条約でございますとか、いわゆるトリテイとか、コンヴエンシヨンという名のつく最も重大な条約の場合に、批准という言葉を使つております。批准ということは、要するに承認ということとかわりないのでありまして、そこで国会に御審議を煩わしました多くの協定、日米間の諸協定もみなそうでありますが、承認という言葉を批准という言葉のかわりに使つております。そこでこの賠償協定自体は平和条約第五条の実施協定で、一段下の協定でございますので、従来の慣例から申しまして承認という言葉を使いわけた次第でございます。実質はまつたく同じでございます。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 この平和条約を結ぶことによつて――平和条約というよりも、むしろこの経済協力に関する協定を結ぶことによつて、何か国内法で新しく法律を設けなければならないとか、あるいはかえなければならないというような問題はありませんか。
  154. 下田武三

    下田説明員 これはビルマ平和条約が初めてでないために、国内法制も大部分すでに整つております。たとえばビルマ財産返還なんかも、連合国財産補償法というような法制がすでに整備されておりまして、ただその法制に基きまして、政令でもつてどこの国の財産と国名を指定いたしますが、そういうところに持つてつてビルマ国という追加の指定を政令でいたすというような、こまかい法制措置は必要だと思います。その他は今後の賠償実施とりきめのきめ方で、たとえばビルマ賠償実施のための特別会計を設置するという必要が起ります場合には、特別会計設置法というものが必要になつて来るかと存じます。
  155. 喜多壯一郎

    喜多委員長 富田健治君。
  156. 富田健治

    ○富田委員 私一点経済局長にお伺いいたしたいのであります。東南アジア向けの日本の貿易の大体の現状はどういうことになつておりますか。概略でけつこうでございますが……。
  157. 下田武三

    下田説明員 所管違いでございますが、大体のところを私から申し上げますと、東南アジアの貿易につきましては、一つの大きなハンデイキヤツプがございます。それはアメリカその他と違いまして、通商航海条約というような完全な条約の保障のもとに商売を行うという地位にないわけでございます。これはフイリピンにいたしましても、インドネシアにいたしましても、ビルマにいたしましてもそうでございますが、それより先に平和条約締結という大前提がまだできておりませんので、ビルマ条約を初めといたしましてだんだんそういうことができますと、それから通商航海条約締結ということになりまして、日本人も入れるし、滞在もできますし、商業やいろいろな職業に従事するという条約上の基盤ができるわけであります。しかしながら、遺憾ながら現状におきましてはまだごく初歩の段階でございまして、大部分の国とはそういう条約上の保障がないわけであります。しかしそれを待つておりますわけには参りませんので、事実上の問題といたしまして、すでに平和条約発効以来二年半以上たちますが、大部分の国に事実上日本人は入つておりますし、日本船も行つておりますし、いろいろな商売をしておる人もあるわけであります。そこで現状におきましては通商航海条約という大前提の基礎なしに貿易とりきめ及び支払いとりきめという、政府間の権限内で、政府のさじかげんでできる範囲内におきまして、どこからは大体何を買うあるいは先方に売るというような商売契約みたいな貿易とりきめを結びますとともに、一方その取引の跡始末をいたします支払い方法なりもまたとりきめまして、何と申しますか、ちょうど前提なしに先のところだけが事実上動いておるというのが、現在東南アジア諸国との貿易通商関係に相なつております。
  158. 富田健治

    ○富田委員 大体わかりましたが、どの地域といいますか、どの国が一番多いか、あるいは比率でもし何かおわかりでございましたら承りたいと思います。
  159. 下田武三

    下田説明員 これも所管外で正確なことは申し上げられませんが、大体額としてはパキスタンが一番多いのではないかと思います。それからフイリピンも非常に多いと存じております。インドネシアは非常に多かつたのでありますが、これはわが方の輸出が伸張し過ぎましたと申しますか、貿易が非常なアンバランスになりまして、現在一億五、六千万ドルの日本の債権がこげつきというような状態に相なつております。従いましてインドネシアに対しましては、多少輸出を抑制するという措置をとらざるを得ないようなことになつております。その他ビルマも相当多く、一番少いのはインドシナ事変の影響もございまして、インドシナ三国が独立早々だという政治的の事態もありまして、割合に伸びないで小さい段階にとどまつておりますのが仏印の新しい三国との関係だというように存じております。
  160. 富田健治

    ○富田委員 タイ、マレーはどんなものですか。
  161. 中川融

    中川説明員 タイにつきましては年額四、五千万ドル見当の輸出入がそれぞれ日本との間にございます。マレーにつきましては日本からの輸出が相当多いのでありますが、これはやはり四、五千万ドルになつておると思います。これは結局第三国、つまりインドネシアでありますとかその他の国から流れて行くわけでございます。輸入の方は鉄鉱石等で、それだけの金額にはなつていないかと思いますが、比較的貿易量は両国とも多い方であります。
  162. 富田健治

    ○富田委員 ちよつと比率をお伺いいたしたいのですが、東南アジア貿易は大体日本の全貿易量のどのくらいのパーセンテージになるのでありましようか。
  163. 中川融

    中川説明員 主管外で的確な数字を申し上げられないし、申し上げましてあるいは間違つているとはなはだ申訳ありませんから、経済局長等から御答弁することにいたしたいと思いますが、私が今記憶しておりますところでは大体三割弱、三割になつていないのじやないかと思います。あるいはもっと少いかもしれません。
  164. 富田健治

    ○富田委員 私はこれで終ります。
  165. 喜多壯一郎

    喜多委員長 河野密君。
  166. 河野密

    ○河野(密)委員 この平和条約賠償協定との関係についてごく簡単にお尋ね申し上げますが、平和条約の第五条におきましては「ビルマ連邦における経済の回復及び発展並びに社会福祉の増進に寄与するため協定する意思を着する。」こういうことを書いておられます。また賠償及び経済協力協定にも、第一条の三項にこういうことが書いてあるのであります。この条約はもちろんのこと、賠償経済の回復及び発展並びに福祉の増進ということに限らるべきはずだと私は思うのであります。しかるに附属書を見ますと「爆薬及び砲弾の製造」こういうことが入つております。これは一体どういう関係があるのですか。これをひとつ伺いたいと思います。
  167. 中川融

    中川説明員 今回の賠償並びに経済協力に社会福祉という字句が入つておりますのは、御指摘通り、ほかにちよつと例がないのじやないかと思います。これはビルマは社会主義の政府でございまして、社会福祉計画というものを立てておるのであります。その中は経済計画から何からみな含めておるのであります。たしか今の予定では七年間に十六億ドルぐらい使いましてビルマ福祉国家を建設する、その大目的のために政府が努力しておるのでありますが、その中の約半分の額は社会福祉の方面に使われるのであります。従つてこの社会福祉が入り得るのであります。お説の通り爆薬、砲弾の製造というのは非常に奇異に見えますが、ビルマは治安はまた必ずしもよいとは云えないのでありまして、国の中にいろいろの反乱分子がまだ割拠しております。ビルマの約半分くらいは反乱分子が蟠居しておるのでありまして、政府としては社会福祉国家建設に邁進する前提として、どうしてもこの反乱分子を鎮圧しなければならないのでありまして、従つて国内治安回復のために必要な爆薬なり砲弾ということでありますので、福祉国家の建設にやはり役立つ項目とわれわれは考えまして、これをリストに入れますことに同意したのでございます。
  168. 河野密

    ○河野(密)委員 もう一つお尋ねいたします。私がなぜそういうことをお尋ねするかというと、ビルマの地位というものが非常に微妙な関係にあることは御存じの通りでありまして、日本との平和条約締結というものが、何らかの形でもつて国際平和の関係に寄与するところのものでなければならないというこをわれわれも考えておるでありますが、その際にたまたまビルマにおける軍事力を増強するのではないかというような印象を与える協定であつては、はなはだもつて不本意である、こういう趣旨でお尋ねしたのであります。この趣旨を十分おくみとりの上お考えを願いたいと思うのであります。これは一体向うの要求で入れたのでありますか。
  169. 中川融

    中川説明員 光力の要求によつて入れたのでございます。
  170. 河野密

    ○河野(密)委員 わかりました。その次にもう一点きわめて簡単にお尋ねを申し上げます。先ほど来の御質問でほぼ明確になつたと思いますが、この平和条約の第五条の(a)項の三に書いてある「公正なかつ衡平な待遇」という問題は、これはきわめて重要なことだと思うのであります。日本国経済力に照して公正かつ衡平な待遇というのでありますけれども、これはひらたく言えば、日本フイリピンに対して四億ドル払うか、五億ドル払うかしれないが、そういうことになつたならば、ビルマの方でももつと上げてくれ、日本がインドネシアに対して幾らになつたら幾らに上げてくれ、こういうことだと思うのでありますが、その公正かつ衡平な基準というのは一体たれがどこでどうして定めるのでありますか。向うの要求とその決定した賠償額の比率を言うのであるか、それとも何らかの尺度によつて公正あるいは衡平ということを定めるのであるか、これを伺いたいと思います。
  171. 中川融

    中川説明員 ここの規定に出ております公正なかつ衡平な待遇と申しますのを現実に当てはめる場合におきまして、どのようなものさしを使いましてこれをはかるかというようなことについては、何らとりきめがないのでございますが、要するにこれは平等ということではないのであります。公正でありかつ衡平――衡平というのは結局ある意味で何か権衡を維持するといいますか、権衡を保つと申しますか、そのようなことであろうかと思うのであります。要するにこれはそのときの客観情勢によりまして、結局そのときにおけける判断はまつほかないのであります。目下のところこのような場合にはこのようにする、フイリピンがこのような額であればビルマはこのようにするのが公正かつ権衡を維持する額であるという、そのようなとりきめた願は何らないのでありますし、また政府としてもそこまで考えのきまつたものを持つておるわけではありません。
  172. 河野密

    ○河野(密)委員 平たくお尋ねしますが、そうすると将来フイリピンやインドネシアとの賠償額が決定した場合においては、その賠償額の決定いかんによつては、ビルマとの賠償額ももう一ぺん再検討するということを約束したのだ、こういう趣旨である、こう平たく解釈してよろしいですか。
  173. 中川融

    中川説明員 今御指摘になりました例で申しますれば、将来日本フイリピンインドネシア等賠償問題が最終的に解決いたしました際には、もう一ぺんビルマとのこの賠償額を日本は振りかえつてみるということをきめておるでありまして、その際にはたして見た結果どのような基準に従つてどうするかというようなことについては何ら触れていないのでございます。日本としてはその際にもう一ぺん見るということが義務として規定されておるわけでございます。
  174. 河野密

    ○河野(密)委員 見るというのはどういう趣旨であるかきわめてあいまいでありますが、要するに将来のフイリピンインドネシア等との賠償額の決定いかんによつては、もう一ぺんビルマとの賠償問題を再検討する、こういう義務だけは日本は負つておる、これははつきり、そういうことでよろしいですね。
  175. 中川融

    中川説明員 再検討と申しますと、再検討した結果変更するというような意味合いと申しますか、色合いが入るように思われますので、再検討する必要ありやいなやを見るということでございます。
  176. 河野密

    ○河野(密)委員 そうしますと、もう一ぺん私はお尋ねしますが、公正なかつ衡平な待遇に対するビルマ連邦の要求を再検討する、こういうのですが、それではビルマ連邦の要求は一体幾らであつたのですか。そしてビルマ連邦の要求はこれだけに縮めて来て、そしてもしほかの国との関係が出た場合においては、今まで提出されたビルマ連邦の要求を再検討する、こういう趣旨だと思うのですがどうなのですか。
  177. 中川融

    中川説明員 ビルマ政府は具体的な金額等についてこの点で要求しておるのではないのでありまして、公正かつ衡平な待遇をしてくれということを要求しておつたのであります。従つて公正かつ衡平な待遇をしてくれというビルマ政府の要求をその際もう一ぺん検討する、その意味ではまさしく再検討でありますが、もう一ぺん検討してみる、こういう約束をしておるのでありまして、具体的な金額、比率等について再検討ということではないのでありまして、ビルマ政府のその公正かつ衡平な待遇に対する要求を再検討するということになつておるのでございます。
  178. 河野密

    ○河野(密)委員 それでははつきりお聞きしておきますが、ここに協定ではこれだけの金額になつておりますが、ビルマ連邦の要求は幾らであつて、その算定の基礎は一体どういうところに向うは置いておつたのか、これをひとつお話願いたいと思います。
  179. 中川融

    中川説明員 交渉の過程でございますが、当初ビルマ側日本がその当時までフイリピンとの間に一応とりきめてありました大野・ガルシア覚書による四億ドルというものを要求したのであります。これがそのときビルマ側としてフイリピンよりも不利な待遇を受けることは困る、いわば公正平等の要求と申しますか、それをしたのであります。しかし結局のところ、交渉の結果今回提案になつております程度の額で話が妥結したのであります。従つて公正かつ衡平な待遇ということは、要するにこの賠償協定自体におきましては一応達成されておるのである、かように考えております。従つてフイリピンインドネシア等との間にさらに話合いの結果によりまして、ビルマ側としては公正かつ衡平な待遇に対する要求というものをやはり態度としては留保しておきたい、かような趣旨からこの規定ができた次第でございます。
  180. 河野密

    ○河野(密)委員 ますますわからなくなるのですが、そうしますと、ビルマ側の要求は少くともフイリピンと同額の要求をしておつた、しかるにそれは差別待遇をされては困る、こういうことであるためにこういう条項が入つたとすれば、将来フイリピンとの間に賠償協定が結ばれる場合においては、これ以上の条項をもつて結ぶわけには行かぬ、もし結んだ場合においては自動的に、オートマテイツクにビルマ側の要求が生きて来る、こういうことになると思うのですが、さように解釈してよろしいのですか。
  181. 中川融

    中川説明員 フイリピンと同額を要求いたしましたのは、交渉の最初におけるビルマ側態度であつたのであります。交渉は非常に困難な交渉でございましたが、交渉の結果この程度のことに話が妥結したのであります。従つてここに書いてあります規定も平等な待遇ということは書いてないのであります。「公正なかつ衡平な待遇」という字句になっておるのでございます。従つて必ずしも、フィリピンとの話合いがビルマできめました以上のものになつて話がつきました際に、このビルマの金額を上げなければならぬということにはならないと思うのでございます。
  182. 河野密

    ○河野(密)委員 そうすれば公正なかつ衡平な待遇ということは一体何を基準にするのか、その点はきわめて不明確であつて、われわれこれをこれだけである、年額平均二千万ドル、十年間二億ドルである、こういうふうに承知してこの賠償協定に同意を与えたとしても、その賠償額というものは、フイリピンあるいはインドネシアとの賠償協定締結いかんによつては、その額は上るかもしれない、これはもし将来国の負担となるべきものを不特定のものに対して同意を与えるということは、われわれとしてこれは与えられざる権限であると思うのでありますが、その点は、この賠償の二億ドルというものはどういうふうに動くのか、動かないのか、この点私は明確にしてもらいたいと思います。
  183. 下田武三

    下田説明員 その点につきましては、かりに万一将来この条約ができましてから動くというような場合でございましたならば、当然新たな追加の条約を結びまして、その条約につきましてあらためて国会の御承認を求めるわけに相なる次第でありまして、ここにこう書いてありましたからといつて、将来不特定な、あるいはふえるかもしれないというところまで、政府に自由裁量権をお与えくださいということを御要請申し上げておるのでは決してないわけであります。
  184. 河野密

    ○河野(密)委員 まだお尋ねしたいと思いますが、この程度でやめておきます。
  185. 喜多壯一郎

    喜多委員長 福田昌子君。
  186. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 おそくなりましたので簡単にお尋ねしたいと思いますけれども平和条約の第四条でございますが、これは「日本国は、ビルマ連邦が希望するときは、」云々となつておりますが、いかにも片務的な感じがいたすのでございますが、これをどうして双務的な条文にしなかつたのであるか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  187. 下田武三

    下田説明員 「ビルマ連邦が希望するときは」と先方の希望にかからしておりますのは、サンフランシスコ平和条約及び目印平和条約の例をそのまま踏襲いたしておるのであります。なぜかと申しますと、日本は公海自由を主張する立場にありまして、世界のどこに行つても自由に漁獲をいたしたいわけであります。でございますから、公海漁業を規制するような条約締結日本側から希望する手はないわけであります。しかし先方が希望するならば、こういう条約締結するため交渉をしてもいい――片務的とおつしやれ務片ば的でございますが、必ずしも日本側からあえて希望する必要のない問題でございますから、先方の希望だけにかからしておるわけでございます。
  188. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この平和条約及び経済協力に関する協定二つの条文とも、米ドルの金額とそれにひとしい七十二億云々とかあるいはまた十八億云云とかいろいろ日本の額面がわざわざうたい込まれてございますが、今までのこれに類する条約にはそういうことがなかつた。それにかかわらず今回に限つてこういう日本の貨幣価額というものをわざわざ書いてある。これはどういう意味ですか。
  189. 中川融

    中川説明員 ほかの条約に例がないというお話でございますが、多くの条約にはかような例はないのでありますが、すでに国会に提出して御承認を得ましたインドネシアとの沈船引揚協定にはやはりこのような用例があるのでございます。これは結局賠償というような金額をきめなければならないようなものにあたりましては、やはり米ドル建というのが常識になるわけでありますが、日本立場としては、外国通貨である米ドル建というのはおもしろくない、従つて米ドルと日本の通貨とを併記するかつこうにいたしたのでございます。例としては先ほど申しましたのが一つございます。
  190. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと、為替相場が変動いたしまして、これに変動が来ました場合には、どちらを中心にして運営をなさるおつもりであるか、その点を承りたいと思います。
  191. 中川融

    中川説明員 為替相場の変動が万一ありました場合に、米ドルによりますかあるいは日本円によりますかという問題が出て来るわけでございますが、これについてはその際に両国政府で協議したいと考えております。交渉の経緯等から見ますと、すべて米ドル建で話が進んでおりますので、そのときもおそらく米ドル建ということになると思いますが、これはそのときにおける両国政府の協議によつてきめたい、かように考えております。
  192. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 大体この条約を調印される場合に、そういうことは含みとして御相談しておられるわけでございますね。大体その際に米ドルを中心としてとりはからうということもお約束しておられるのであるかどうか。この点と、またインドネシアとの沈船引揚協定におきましても、そのように為替相場の変動があつた場合には、今御答弁のあつたと同様な措置をなされるおつもりであるか、その点をあわせてお伺いしたい。
  193. 中川融

    中川説明員 今回の条約交渉過程におきましては、そのような問題が一応議題に出まして、大体そういう場合には両国政府の協議によるけれども交渉の経緯等から見て、米ドルが自然ではなかろうかという程度の話合いはあつたのでありますが、インドネシアの場合におきましては、実はこの程度の話もなかつたと記憶しております。
  194. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 時間がありませんから、沈船引揚協定の場合のことはあとで伺いたいと思います。この条約におきましてさらに進んでお伺いいたしたいのは、先ほどほかの委員からもお尋ねがありましたが、第五条の(a)項の三に関する規定でございます。この他国との賠償最終的解決のときに、またビルマ連邦の要求が公正かつ衡平なものであるかどうかを再検討するということに対していろいろ御答弁がございましたが、その御答弁の結果からいたしまして、まずこの条約ビルマ連邦との最終的な条約である、かように私ども解釈していいということになるのですか。
  195. 中川融

    中川説明員 最終的な条約でございます。
  196. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この条約締結調印なさるその当時におきまして、賠償要求をされておりました国々は大体どれくらいあるか、また要求の額面がどれくらいあつたかをこの際承つておきたいと思います。
  197. 中川融

    中川説明員 賠償要求をしております国といたしましては、ビルマのほかには、フイリピン、インドネシア、それからインドシナの三国でございます。フイリピンにつきましては一応の交渉ができまして、大野・ガルシア覚書というものができたわけであります。この金額は四億ドルでございます。インドネシアにつきましては先ほど御報告いたしましたが、賠償交渉過程でございます。先方は的確なる総額、要求額というものをまだ正式には提示しておりません。しかし非公式にいろいろ言われるところによりますと、七十億米ドル程度であろうかと考えております。なおインドシナ三国につきましては、現在いろいろ現地の治安が乱れておるということもありまして、先方から的確に何ドルというような賠償額の提示はないのございますが、いずれにせよそう多額のものではない、せいぜい何千万ドルか、何千万ドルにも至らない程度のものであろう、かように考えております。またインドシナ三国中においては、必ずしも賠償を最後まで要求し続けるかどうかについて、態度はつきりしない国もあるのでごいますで。
  198. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 昨日の新聞によりますと、インドシナ三国の中で、カンボジアは賠償請求権を放棄したというような記事が出ておりましたが、それは正式な通達であるのかどうか、そしてまたインドシナの他の二国はどういう態度をとろうとしておるのか、この点をあわせて伺いたいと思います。
  199. 中川融

    中川説明員 昨日の新聞にカンボジアの賠償のことが出ておつたのは事実でございますが、あの件につきましては日を改めてまた御報告いたしたいと思います。というのは、カンボジアとの賠償問題につきましては、目下両国政府間で交渉中でございまして、先方政府の希望によりまして、しばらくその経緯については公表は差控えてもらいたいということになつておりますので、適当の、先方がよろしいという時期が来るまで、しばらく公表は差控えさしていただきたいと思います。なおそれ以外のインドシナの国、ヴエトナム及びラオスがございますが、ヴェトナムにつきましては、小規模のものではございますが、沈船引揚げに関する協定がすでに大体仮調印の段階まで相当前に来ておるのでありますが、現地におけるいろいろな治安状況その他もあるのでございましよう。先方がまだそれに調印する意思を表示して来ておりません。ラオスにつきましては、権利としては賠償請求権があるのでありますが、いまだ具体的に賠償要求というものはありませんし、これとの賠償問題解決という段階には交渉が進んで来ておりません。
  200. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 このヴエトナムとラオスとカンボジアのインドシナ三国でございますが、請求いたしたとしても数千万ドルであろうというような漠としたお話を伺いましたが、大体これらの三国の中で、どの国も大体それぞれの多少の要望額というものがほのめかされておるのじやないかと考えられますが、その多少の順位というものはどういうような姿であるのか。この三国の中では、どの国が一番多い額を要求しておるのか、この点重ねて伺いたいと思います。
  201. 中川融

    中川説明員 今まで具体的に賠償の問題が起きました国は、これらの三国の中ではヴエトナムでございます。ヴエトナムにつきましては、先ほど申しました通り沈船引揚協定交渉がすでに行われたのであります。そのときにおける金額はたしか二百五十万米ドル程度であつたと思います。なおそれ以外にどの程度の賠償をヴエトナムが考えておるかということにつきましては、的確な資料ないし情報というものはないのでございますが、しかしいずれにせよそう大きな金額は考えていないのじやないか、かように考えております。ラオス等につきましては大体の額というようなものも何も今までのところ情報その他ございません。
  202. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 平和条約の六条でございますが、その規定によりますと、日本の国内にビルマ財産が相当あつたやにうかがえるのでございますが、このビルマの在日本国内における財産というものはどれくらいあったのですか、それが大体戦後どのように処分されておるか、まだ解決してないものがあるのかどうか、こういう点を承らしていただきたいと思います。
  203. 下田武三

    下田説明員 第六条は皆さんに御説明申しましたように桑港平和条約十五条の趣旨をそのまま受継いでおるのでありまして、しかし日本側としましては実は大したこれは実益のある規定ではないと存じてそのようにビルマに申したのであります。と申しますのは、御承知のように占領中に連合国財産の、返還の仕事はほとんど済んでおります。ビルマ財産といたしましては、日本軍が占領中あるいはすず、すずの延棒等を持つて来たことがございます。そういうものでビルマのものとはつきりわかりましたものは、もうほとんどすべて返しておるわけでございます。でございますから、こういう規定を設けてもほとんど実際適用になることはないだろうという予測なのでありますが、しかし万一出て来ないとも限らない。だから条約上の、法律上の権利だけは留保しておきたいという先方の希望でございましたので、あえて入れることに譲歩いたしたわけでございます。しかしその額はたといあるにいたしましても微々たるものであろうと存じております。
  204. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 賠償及び経済協力に関する協定の部門でございますが、第一条の第二項の場合は、これは主として民間人の経済協力という御説明でございましたが、この民間人がこの法律による経済協力をいたしました場合、損害をこうむつたというような場合におきまして、日本政府は何らか補償する措置をお考えになつておられるのであるかどうか、この点を承つておきたいと思います。
  205. 中川融

    中川説明員 その問題は、今後これの実施のために日本政府がどの程度のことを考えるかということに関連するわけでございます。目下政府部内でいろいろこれの実施細目等について研究いたしております。しかし今御指摘になりました第二項は、結局民間人が先方と契約する契約自由の原則を尊重いたしまして、契約は全部通例の商談として行う契約と同じようにしたい、かように考えております。従つて政府としていたします義務は契約ができました際に、たとえば輸出入銀行を通じて金を借りたいということになりますと、輸出入銀行で貸す金がないと言つて断るようなことはしない。しかしながらその際貸す条件その他についてはやはり通例のやり方でやつていいのじやなかろうか、損害等が起きた場合に政府が肩がわりして、これを補償するというようなことまではしない方がいいのではないか、かようなふうにだんだん話が今のところ進んで来ております。
  206. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういう業者に対する補償の問題その他は、今後検討なさる立場にあるということに了解さしていただきます。この条文の中で、さらにこの附属書のところに書いてございますこういった事業に対しての件でございますが、この協定を調印なさる場合に、多少の具体的な事業というものが相当考えられておつたものでございますかどうか、具体的に進められておつたものがどの程度あるのかどうか、この点を承らしていただきたいと思います。
  207. 中川融

    中川説明員 附属書に掲げられております十九の項目は、先ほどそのうちの第十項の爆薬及び砲弾の製造についての御指摘がありましたが、結局ビルマ側が大体自分の方で考えております社会福祉施設計画と申すものから勘案いたしまして、これこれの項目を考えてもらいたいというものを原案にいたしましてできたものでございます。従つてこれは大体ビルマ側の考え方をそのまま反映しておるわけであります。日本側として見ましても、これらのものに日本の資本なり賠償としての資材なりが行くということは結局将来の日本ビルマ間の国交に有意義で刈ろうという見地から、これをそのまま採用したわけでございます。このうち現実にすでに具体的な問題として取上げられておりますのは、第一の水力発電所の建設でございまして、これは現地におきまして二箇所ほどの相当大規模な建設計画がございますが、そのうちの一箇所につきましては日本の会社に設計を向うが依頼しております。設計の結果さらに工事する段階になるのでありますが、工事の段階についての契約はまだできていないと承知しておりますが、その分は多少進んでおります。その他の分といたしまして、話としてはたとえば塩田とか砂糖工場とか、ちよいちよいあるようでありますが、まだ具体的に着手されたものはないと考えております。
  208. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この附属書のこういった業種に対しまして、第一条の一項と二項とはどういう割合になるのかということでございます。砕いて申しますと、二億ドルの範疇に入る、いわゆる賠償として支払うことによつてのみ成り立つ企業あるいはまたさらにそれに含めて民間業者の合弁の会社の形で成り立つ事業というようなものがはつきりわけられておるのかどうか。第一条の一項と二項とはすべてのこの事業に対して有無相通じ、共通しておるものかどうか、こういった点について承りたいと思います。
  209. 中川融

    中川説明員 一項の事業と二項の事業と申しますと、これについては大体ビルマ側としては賠償でつくる事業と申しますか、営利事業として成り立ちがたいようなものは政府が直営で事業を行う。その直営で行う政府事業に必要な資材その他はできるだけ日本賠償からとりたい、かようなことのようであります。営利事業として成り立ち得る性質の事業ないしは計画については、できるだけ営利事業としての性格を生かすという意味もあり、かつ日本経済人に来てもらつて経営能力を生かすというような見地から合弁事業にできるだけしたいというように考えておるようであります。附属書に掲げてある各項目について順序は入りまざつておりますけれども、たとえば一の水力発電所、二の製鉄所、三の港湾施設、四の病院、このようなものは大体営利事業として成り立たないものであるから賠償の方になろうと思いますが、たとえば十三の砂糖工場、その他十四の化学工業等いろいろの工場類は、大体におきまして営利事業として成り立ち得る。従つて合弁事業の形でやりたい、かようなふうな様子に聞いております。
  210. 喜多壯一郎

    喜多委員長 まだたんさんありますか。
  211. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 あまり時間が長くなりますからもうやめます。その次のページでございますが、さらにビルマ側の要求がありました場合には、十年間にわたつて、年間二百万米ドル、七億二千万円の価値に相当する額を貸し付けることができることに相なつておりますが、そういたしますと経済協力に関します総額の額面は二千万米ドルの貸し付け得るものを含めまして、大体二億七千万米ドル相当額を見込んでおるのでありますか、この点承らしていただきたいと思います。
  212. 中川融

    中川説明員 この交換公文に書いてありますローンの問題は、これは年間五百万米ドルの経済協力の区わけになるのであります。この五百万米ドルの経済協力でありますが、そのうち年間二百万米ドルはローンの形にしてもよろしい。その場合には残りの三百万米ドルが結局合弁事業ということになるわけであります。従つて賠償及び経済協力の総額は、やはり十年間三億五千万ドル、こういうことになると思います。
  213. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと結局総額は二億五千万米ドルであつて、合弁的な形において投資し得ると考えられておる年間五百万ドルのうちにこの二百万米ドルの貸付も含まれるという二とはわかりました。そういたしますとこれはどういう形で貸し付けられるかということが問題になります。これは日本政府が貸し付けるのだと思いますが、どういう形をとつて貸付なさるのであるか、また日本の財政法との関係なんかについても御答弁いただきたいと思います。
  214. 中川融

    中川説明員 交換公文により、貸付につきましては日本国というふうに書いてあるのであります。日本国ビルマ連邦政府に貸し付けるということになつておるのでありまして、日本国政府とは特に書いてないのであります。結局実質的にはやはり政府の金が出て行くのでなければ、なかなかそれだけの資金もないと思いますが、政府の直接窓口にするのがいいのか、あるいは輸出入銀行のような機関を窓口にした方がいいかということは、今後の研究課題になつておるのであります。目下のところは大体輸出入銀行を使いまして、これからビルマ政府に貸し付けるというふうなかつこうにしたい、かように考えております。従つてこの際は政府が輸出入銀行に若干金のめんどうを見てやらなければいかぬと考えております。
  215. 喜多壯一郎

  216. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はビルマとの平和条約の問題でもなく、また外交政策の問題でもないのですが、時間もありませんので、一言だけ外務大臣に伺つておきたい。というのは私は外務省に行つて驚いたのですが、今まで外務大臣の隣にあつた政務次官の部屋は、三階から四階の片すみに押し込まれてしまつておるのです。そうしてそのあとにあなたの側近と言われるいわゆる参与であるとか顧問の方々をお迎えになつたのですが、あなたは外交官の出身で、根が官僚的な関係か知りませんが、国会軽視というような傾向がありはせぬかと思うのです。御承知の通り代議士というものは国権の最高機関に携わつておる人間でありまして、従つて各省へ行きましても最高の待遇を受けておるわけなのです。大臣の女房役であり、大臣にかわるべき人間なのであります。これがあなたの個人的な関係で、いわゆるあなたの側近と言われておりますところの諸君たちを、次官室をおつぱらつて、そのあとに入れてしまう。そうして次官の部屋は階を隔てた四階の片すみに押し込んでしまうというようなことはどこの役所にもない。私も政務次官をやつておりましたが、こんなことをされたら私は黙つておりません。ですから大臣にもお考えを願いたい。国会の権威と、特に外務委員会の権威のためにあえて皆さんに抗議を申し上げておるわけなのです。たとえばこの間の外国向けの声明文のごときにおきましても、外務省の首脳部に聞きましてもだれも知らない。だれがやつておつたかというと、あなたの側近が何やらやつて、一夜づけでぱつと発表した。こういうふうにあなたはかつて吉田側近政治を排撃しながら、あなたの側近ができて、しかもそれが省内においても特殊な待遇を受けている。こんなことをわれわれは黙つておるわけには参りません。ひとつこれは政務次官も単に同じ政党や何かということでなく、国会の権威のために奮起してもらいたい。こんなことが行われては国会議員のために大醜態ですよ。私ならば黙つてはおりません。ですからこの点に関する大臣の所見と、政務次官はどんな考えを持つておられるか伺いたい。国会議員の恥辱です。どこの役所にもありませんよ。政務次官の感想もあわせて承つておきてたいと思います。
  217. 重光葵

    重光国務大臣 部屋がどうなつたかということは、実は私は少しも知りません。私の部屋もかわつております。他の部屋がどうなつておるかということは、実は私は今初めて伺いました。よく調べてみますそれを国会軽視というようなことに結びつけられては、私ははなはだ心外千万で、決してそういうつもりはございません。
  218. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 政務次官もがんばつてください。
  219. 喜多壯一郎

    喜多委員長 これにて議題二つについて質疑は終りました。  これから討論に移ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。富田健治君。
  220. 富田健治

    ○富田委員 私はただいま上程されておりますビルマとの平和条約並びに賠償及び経済協力に関する協定に対して、全面的に賛成の意思を表明するものであります。  日本の自立経済のかぎと申しますか、すなわち国際収支の改善についても、いわゆる貿易の発展につきましても、東南アジア地域の諸国の重要性というものは申すまでもないのであります。そういう意味におきまして、今回ビルマとの間に賠償協定が結ばれ、また平和条約締結される運びになりまして、自然これが通商航海条約締結する糸口にもなり、またその他のフイリピンインドネシア等の、まだ条約協定締結されておりません国々に対しても、条約協定締結する端緒になるということも考えますので、ぜひひとつ日本経済の発展のために、今後これを踏台にして、外務当局も一層御奮発を願いまして、各国とも次々に条約協定締結するように御努力を願いたいと思うのであります。今日、中共、ソ連との貿易ということも言われております。われわれもそれを希望いたすのでありますが、またいろいろな問題からなかなか困難でなかろうかという考えもわれわれは持つております。この東南アジア方面の貿易につきましても困難はいろいろあると思いますが、比較的そういう煩わしいことはないのかとも思うのであります。しかも今日までの総貿易量の中で三割以上にも達しておるのでありまして、中共、ソ連との貿易に比較いたしまして、日本の貿易の中に占める地位というものは非常に重大なものであります。もちろんこの点は十分お考えになつておると思いますが、ぜひひとつ今後一層の御努力を賜わりたいと思うのであります。最後に岡崎外交ならびにわれわれ自由党の外交は数々の功績を残しておるのでありますが、そのうちの一つとして、私はこの平和条約並びに協定締結に心から賛成の意を表する次第であります。
  221. 喜多壯一郎

  222. 並木芳雄

    並木委員 私は日本民主党を代表いたしまして、本条約並びに協定に賛成の意を表明いたします。  率直に申しまして、この条約及び協定吉田内閣時代に調印をされたものでありますが、ビルマとの間の国交回復は日本国民長年にわたる待望のことでございましたので、私ども超党派的の立場から、その点については同慶の至りであると申し上げたいのであります。しかしせつかくただいま富田委員が数々の功績を残したと言われましたが、その点は間違いでございまして、われわれの方から言えば、吉田内閣は数々の汚点を残している。汚職とともに消え去りぬでございます。その中でしいて言えばこの一つが歳末に贈るプレゼントであるかという程度のものでございます。そういうわけでありますから、気持からいえばせめて吉田内閣のもとで批准にまで仕上げてやりたかつた、こういう感じがいたします。とうとうそれが私生子に終つてしまつて、皮肉にもわが党内閣の手で批准をするということになつたことは、これはやはり吉田内閣の秘密外交、国会軽視の結果でおります。何となれば、この条約協定が調印されたのは先月の五日、ラングーンであつたのであります。それから今日まで二月近く、一月半もあるのです。臨時国会は十一月三十日から召集されましたが、私どもはもつと早く臨時国会を開くべしということを要求しておつた。それに従つて、たとえば十一月十日ごろに開いておれば、今までに十分これを審議する時間があつたのでございます。臨時会国でも十二月に入つてわれわれはなお吉田首相の出席を求めておつたのでございますが、あのとき吉田首相が外務委員会に出ておつたとすれば、これまたこれを審議する時間が十分あつたと思うが、遂に吉田内閣みずからの手においてこれが批准ができなかつたということは、まことに気の毒でありますけれども、これは自業自得のいたすところである、こう思つてあきらめていただきたいと思います。  私ただいませめてものプレゼントと申しましたが、しかしながらやはりこの中ではなお今後幾つかの希望すべき条件がございます。特に金額の点でありますけれども、この点も当初日本政府は六千万ドルくらいを期待しておつたのであります。しかるにその三倍以上の二億ドルということになつたことは、やはり経済力の苦しい日本のわれわれとしてはつらいということをビルマの方でもよく了承していただきたいと思うのであります。戦争によつて与えた損害に対しては、幾ら精神的にも物質的にも賠償しても足らないでありましようけれども、それは気持の上ではそうでありますけれども日本の国は貧乏になつてしまつたのでありますから、その中でこの金額もなお苦しいのだということを了承していただいて――このとりきめの中に、将来他の国との賠償従つて、その額によつては、状況によつては再検討するというような義務を負わされておりますけれども、願わくはそういう義務が発動することのないように今後十分留意せられたいと思うものであります。  それから、このとりきめの中の特色は経済協力ということにございます。経済協力によつて両者間の密接なる提携をはかり、相互の貿易その他経済の発展を期する点は一つの特色であると思う。この点われわれはまことに喜ばしいと思うのであります。しかし平和条約、戦勝国と戦敗国との関係において生れた賠償に伴う経済協力というのであるならば、これがいよいよ実施なつたあかつきにおいては、ややもすると戦敗国であるところの日本の民間の商社というようなものが、不当に虐待を受けるということがあるのではなかろうか、こういうことをわれわれは懸念するのであります。おそらく社会主義の国のことでありますから、そういうことはないと思いますけれども、もしありとすればたいへんであります。従つてこの点については、特に政府は今後の経済協力を進めて行く途上において、いやしくも日本国民が不当な待遇を受けるようなことのないようにこれまた十方の注意を払われたいと思います。  その他なお幾つか申し上げたいと思いますが、とにもかくにもすみやかにでき上つたということに対して、われわれの賛意を表する方が急でありますからやめておきます。フイリピンが先に賠償問題を解決するのではなかろうかと思われておつたにもかかわらず、ビルマが先になつたということは――同じ自由主義国の立場に立つたフイリピンの方があとまわしになるということについては、私はやはりそこに何らか、前内閣攻撃するわけではありませんけれども、自由主義一辺倒というような点から甘く見られておつたのではないか、そういうような結果がいつまでたつて賠償に対する結論に達しなかつたのではないかと思うのであります。これらの点は幸いに自主外交、占領政策一掃のスローガンを持つて臨むわが民主党内閣ができたのでありますから、今後はこの協定とりきめ成立によつてフイリピンあるいはインドネシア及びインドシナの賠償問題も円滑に話が進み、円満なる解決を見ることを期待されるのであります。  以上をもちまして、私どもはこの条約並びに協定に賛意を表したいと思うものであります。
  223. 喜多壯一郎

    喜多委員長 細迫兼光君。
  224. 細迫兼光

    細迫委員 私は日本社会党の委員を代表いたしまして、日本ビルマとの間の平和条約並びに賠償及び経済協力に関する協定の二案件につきまして賛成の意思を表示いたします。われわれの希望するところは、世界の平和であり、身近き足元のアジアの平和でございます。しかるに各方面にいまだ正常国交を回復せざる箇所があることを遺憾に思つております。その際ビルマの尊敬すべき互譲の精神によりまして、ここにまず第一にこの条約並びに協定の結ばれるのを得まして、国交回復の緒につき、アジアの各国との友好関係の窓口があいたことは、まことに御同慶の至りであります。うらむらくは今日社会党内閣が成立しておりますならば、ビルマ政府と談笑のうちにもう少し有効な、有利な条約並びに協定が結ばれておつたであろうということを思い、まことに遺憾に存ずるのでございます。ただこの協定及び条約賠償を含むものでありまして、賠償が中心だと思われるのでありますが、賠償問題は何としても誠意が第一だと思うのでございます。いまだ若干不満の点もあることは、この誠意が足らない、くみとられるほどの誠意のほどばしりがそこに見えなかつたからではないかと遺憾に思うのでございます。それはつまりさつきの言葉にありました通り、あまりにアメリカ一辺倒の外交が行われておつたようなところにその片隣が見えるのでありまして、寄らば大樹の陰、とらの威をかるきつねというような、あるいはまた再軍備方針というようなことがいろいろと疑惑の種にもなつて、誠意がくみとれないというような面もなきにしもあらずと思われるのでありますが、爾余のいまだ未解決の諸国に対しましての話合い等は、誠心誠意疑う余地のない基本的な背景を持つて、国際方針を持つて対処していただきたいということをここに要求いたしまして賛意を表する次第であります。
  225. 喜多壯一郎

    喜多委員長 戸叶里子君。
  226. 戸叶里子

    戸叶委員 私はただいま議題になつておりますところの日本ビルマとの間の平和条約並びに賠償及び経済協力に関する協定に、社会党を代表して賛成の意を表するものでございます。  私どもが世界平和を望み、そしてまたアジアの平和を望む立場から考えてみましても、どこの国とも国交回復ということが最も必要なことでありまして、その意味から申しまして、まず今日ここに東南アジアにおいて、最初のビルマとの間の平和条約を結ぶことによつて国交回復ができたということは、将来他のアジアの諸国との親善友好関係を進めて行くための一つの糸口になつた、そういう点から考えてみましても、私どもは非常に喜ばしいと思うのでございます。ことにビルマの国は先ほどから多くの人から繰返されておりますように、社会主義国家としてどんどんと成長している国でございます。先ごろ賠償の使節団として日本に来られましたところのウ・チョウ・ニエンを初めといたしまして、その後アジア社会党会議に出席された国防大臣ウ・バー・スエ氏その他の各大臣がいずれも着く、そして元気に満ちて社会主義国家の建設に邁進している伸び行く国家であることは御承知の通りでございます。そういうふうな国と今日の日本政府が交流を結ぶことによつて、この社会主義というものに対しての大きな眼を開く大きないい意味の教育になる、そういう立場から考えましても私は非常に喜ばしいものであると考えるのでございます。この協定の円満な、あるいは今後の運営にあたつても、よりよく行くためには、やはり何と申しましても社会党の天下になることが一日も早く望ましいと思いますが、しかし今日の政府におきましても、ビルマの状態をよく見きわめて、その国のあり方に反しないような提携の仕方をぜひやつてつていただきたい、こう考えるのでございます。さらに望みますことは、まだ締結されておりませんところのフイリピンあるいはインドネシアとの賠償協定が一日も早くこれによつて締結されるような方向に政府が持つて行くように、その点をお考えになつていただきたいということを希望として述べて、賛成の意を述べる次第であります。
  227. 喜多壯一郎

    喜多委員長 これにて討論は終りました。  採決いたします。日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件、及び日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件、それぞれ承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  228. 喜多壯一郎

    喜多委員長 御異議なしと認めます。よつて両件は承認するに決しました。  なお報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますか、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 喜多壯一郎

    喜多委員長 御異議なければさように決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十三分散会      ――――◇―――――