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羽仁五郎君 以上のようなことが不安として訴えられており、そうしてわれわれも自分が視察をしました際の結論としても、長くなり、そうして多数の人ということになると、いろいろな問題が起るだろうということは心配していたのですが、果してその
通りにな
つてしま
つたので、この際、さつきもお願いしましたが、多数の方を
長期に置いておくということが、元来法の精神でもないし、
収容所の目的でもない。しかるにそれがそういうふうにな
つてしまつておるということの原因については、これはどうか
一つ、第一には管理局のほうから外務省のほうに向
つても、
外交交渉の成否いかん、
日本の
外交担当者の
朝鮮あるいは
韓国に対する態度のいかんということ、その態度がどうであるか、
外交問題の
解決がこういう点にもゆゆしい
人権蹂躪なり、あるいは悲惨な、中には家庭が破壊されたというような人もあるでしようから、この点は
一つ管理局のほうから特にこの際申入れを願いたい、そうしてどうか
外交解決の上で根本的に、今までの日韓会談の失敗というものの根本原因を十分反省せられて、この前にも申し上げたと思うのですが、とにかく根本的に、
日本が
朝鮮を植民地としていたということについての反省がなければ、私は
解決しないのではないか。最近
中国の紅十字会代表の李徳全女史なり
中国側では、古いことはすべて水に流してというふうなことをおつしやる、これはあちら側がおつしやることとしては非常にりつばなことで、われわれも感謝するのですが、われわれのほうが、
日本のほうがいい気分にな
つて、古いことは一切水に流すというような
気持に
なつたら、これはとても
解決するものではない。あちらが昔のことは忘れるということをおつしやるのは、忘れることができないことをお忘れになるのですから、
日本においては、過去においてや
つた、それは悪いことばかりや
つたわけではないでしようけれ
ども、悪いことばかりをや
つたからというのではなくして、根本的に
一つの国土と、民族というものを、
日本が植民地として支配していたということについての深い反省と、自己批判というものがなければ、とうてい
解決するものではない。痛い目に合せたほうはすぐ忘れられるけれ
ども、痛い目にあわされたほうは永久に忘れるものではない。そこで戦争でも
つて殺された
方々の骨……、この間外務省の土屋条約
局長が毎日の夕刊に書いておられたのですが、南京で釣をしようと思
つたら釣の糸が切れて、あとで聞いてみたら、池の底には
日本兵が殺した
中国の人の死骸が一ぱい詰
つているというので、ぞつとして
しまつて、もう二度とそこへ釣に行かなか
つたというようなことを書いておられる。そういう点、そういうお
気持で、
朝鮮や
中国、その民族の血で塗
つたということを十分反省せられて、日韓会談の失敗などを続けておられないように、それが続いている限りは、管理局としては非常な御苦労で、また
収容所としても大
へんな御苦労で、しかもそれだけの御苦労をなさ
つても、多くの悲惨の発生を防ぎ得ないということになる。この際私は厳重に申し入れていただきたいのですがどうでしよう。